2019年12月27日金曜日

ロシアが独自の内部インターネットのテストを開始―【私の論評】インターネット遮断で疲弊する中露(゚д゚)!



ロシア国内のニュース報道によれば、ロシアは世界的なウェブの代替として機能する、国家規模のインターネットシステムのテストを開始した。ロシアがどの段階に達したかは明確ではないが、障害回復力が高く、そして恐らくはより簡単にコントロールできるインターネットが追求されていることは確かだ。

もちろんインターネットというものは、物理的に、仮想的に、そしてますます政治的にインターフェイスしなければならない接続する国同士の世界的なインフラストラクチャの連携網で構成されている。中国など一部の国は、そのインターフェースのローカル側からアクセスできるウェブサイト、アプリ、およびサービスを制御することで、そのインターフェイスを極めて慎重に規制している。

ロシアも徐々にそのアプローチに傾いていて、今年始めにプーチン大統領はRunet(ロシアのインターネット)に関する法律に署名している。Runetは上記のような規制が必要になった場合(あるいは都合が良くなった場合)に、分離された内部インターネットを維持するために必要なインフラストラクチャを構築するためのものだ。

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プーチン大統領は今週初めに国営の報道機関であるタス通信に対して、これは純粋に防衛的な措置であると説明した。

その説明によれば、Runetは「主に海外から管理されているグローバルネットワークからの、世界的規模の切断の悪影響を防ぐことのみを目的としています。インターネットから切断されないようにオンにできる自分たちのリソースを持つこと、これがポイントで、主権というものなのです」ということだ。

BBCによって伝えられた、タスとプラウダからのより新しい報告によれば、この動きが理論上のものから実践的なものになったことを示している。いわゆるモノのインターネット(IoT)の脆弱性に関するテストも行われた。もしロシアのIoTデバイスのセキュリティ慣行が米国同様にお粗末なものるなら、それは残念なことだったに違いない。また、ローカルネットが、どのようなものであれ「外部の負の影響」に立ち向かうことができるかどうかも調査された。

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ロシアがここで試みていることは、小規模な仕事ではない。表向きは主権と堅牢なインフラストラクチャについての話だが、米国、ロシア、中国、北朝鮮、および高度なサイバー戦争能力を持つ他の国々との間の緊張関係も間違いなくその一部だ。

世界から切り離されたロシアのインターネットは、現段階ではおそらくほとんど機能しないだろう。ロシアは他の国と同様、常に世界のどこか別の場所にある資源に依存しており、もし国が何らかの理由で殻に閉じこもってしまった場合、インターネットが通常通りに機能するためには、そうした資源の多くを複製する必要があるだろう。

国の一部から他の場所に直接接続する物理インフラストラクチャと同様に、現在は国際接続を介して接続する必要があるDNSも別個のシステムが必要になるだろう。そして、それは単に、ロシアのイントラネットを機能させる基本的な可能性を生み出すために行われる。

堅固な「主権インターネット」が必要になる、という考えに反対するのは難しいが、それは国家インフラへの単純な投資というよりは、紛争への準備だと考えざるを得ない。

とは言うものの、Runetがどのように成長し、どのように使用されるかは、その機能と意図された目的に関するより具体的なレポートを受け取るまでは、推測の範囲を越えることはない。

【私の論評】インターネット遮断で疲弊する中露(゚д゚)!

ロシアは以前から自国のインターネットを海外から独立させる動きを強めており、実際に国全体を海外のインターネットから一時的に遮断する実験を検討中との報道もありました。しかし、こうした「インターネット鎖国」はロシアのインターネットを不便かつ脆弱するだけでなく、国外にも影響を及ぼす可能性があります。

ロシア国旗のビキニ


インターネットインフラには、中央権力と呼べるものがありません。インターネットを機能させるには、全員が相互扶助するしかないのです。結果として海底ケーブルや衛星がパッチワーク状になり、国境を無視して世界全体をつなげています。それゆえ多くの国は、オンラインでいるために自国のコントロールの及ばない国外の設備に頼るほかなくなります。

それでも、国家が自国のインターネット環境に大きな干渉を試みることはたびたびあります。そして、こうした試みがインターネットの遮断につながることも多いです。

例えば、2019年1月に実施されたコンゴ民主共和国の大統領選では、政府が選挙期間中にインターネット通信の遮断に踏み切りました。そしてロシアも国全体を海外のインターネットから一時的に遮断する実験を行なったようです。

大統領選挙で勝利した最大野党のUDPS党首、チセケディ氏

ロシアの国土は広大であるうえ、ネットインフラの高度さもコンゴの比ではありません。インターネットを遮断するとなれば膨大な労力を要すること、そして実行すれば無数の予期せぬ結果につながることも容易に想像がつきます。

ロシア国内のメディアの報道によると、インターネット遮断実験は昨年12月に提出された新法案によるもののようです。この法案は国内の各インターネットサーヴィスプロヴァイダー(ISP)に対して、ロシアのインターネット、すなわちルネット(Runet)の独立性の保障を求めるものです。

規制はロシア国内のISPに対してふたつのことを命じています。ひとつは世界との通信を遮断するための技術を確立すること。もうひとつは、インターネットの通信経路をロシア連邦通信局(Roskomnadzor)の管轄するルーティングポイントを経由するものに組み替えられるようにすることです。

インターネットは米国で発明されました。現在、世界のネットインフラの大部分は米国の企業によって管理されています。

そんななかで、ロシアは単にルネットの独立性を高めようとしているだけかもしれないですが、プーチン大統領がサイバー戦争に向けた「軍拡」をもくろんでいる可能性もあります。あるいは、国民がインターネットを通じて入手する情報を統制しようとしている可能性も否定できません。

詳しい動機はいまだ不明ですが、ロシアが数年にわたってインターネット上での独立性を高めようと準備を進めていることは確かです。実際、ロシアは2014年にはグローバルインターネットから独立する姿勢を表明していました。

しかし、実現に向けた課題はいまだに解決していません。ロシア当局がしなくてはならないことは、大きくふたつです。ひとつは、ロシア国民がロシア内のコンテンツにしかアクセスできないようにすること。もうひとつは、あらゆる接続ポイントをロシア国内に置き、通信経路を国内に限定することです。

ロシアはここ数年、実際にこのふたつに取り組んでいます。2014年には、企業がロシア国民の個人情報を集める際には、データをロシア国内に保存することを要求する法律が制定されました。LinkedInのように、これを拒んだサイトにはロシア国内からアクセスできなくなりました。さらに、ロシアは独自のドメインネームシステム(DNS)を開発したとも報じられています。

しかし、いくら入念に準備を重ねたとしても、世界をつなぐインターネットから実際に独立しようすれば、ほぼ確実に想定外の問題が起こるでしょう。

インターネットプロヴァイダーが、国外のネットインフラすべての信頼性を詳細に把握するのは困難です。プロトコルスタックはすべての階層が複雑な構造をしているため、どこかしらに致命的な問題が発生する可能性があります。

金融機関、医療機関、航空機関などがネット接続不能になるなどの大問題が発生しなかったとしても、多くのウェブサイトが機能を停止する可能性があります。ほとんどのウェブページは複数のサーヴァーに依存して機能しており、これらのサーヴァーは世界中に散らばっている場合もあるからです。

例えば、ニュースサイトのなかにはアマゾン ウェブ サービス(AWS)が提供するクラウドサーヴァーや、グーグルのトラッキングソフトウェア、フェイスブックのコメント用プラグインを利用するものがあります。もちろん、これらのサーヴィスはすべてロシア国外から提供されています。

それぞれが異なる膨大な数のものが集まって、ひとつのウェブページを構成しています。ロシアでウェブサイトを運営しようと考えるなら、その構成要素の所在地をすべて把握する必要があります。

ロシア国外ではどういう影響があるでしょうか。ロシアがグローバルインターネットから分離したとしても、米国が影響を受ける可能性は低いです。しかし、ロシアを経由する通信網を利用している国では問題が起こる可能性があります。ロシア国内を経由する接続はできなくなるかもしれないです。

完全に独立したインターネットを構築しようという試みは、事実上、既存のものよりも脆いインターネットを構築することになってしまうのです。

現行のグローバルインターネットは、通信経路が無数に用意されているため、移動している情報を完全に遮断するのは難しいです。例えば、欧州と米国を結ぶ海底ケーブルが破損したとしても、別の経路を通って米国からフランスへとメールやアプリのメッセージを送信することができます。一方でロシアがつくりあげたいのは、すべての経路を把握し、意のままに遮断できるようなシステムなのです。

そのようなシステムはネットワークの欠陥になります。新しいシステムは、インターネット上でロシアが占める領域の信頼性を損なうものになります。遮断可能なインターネットシステムを構築するということは、意図せず遮断されうるインターネットシステムを導入するのと同じことです。

ロシア政府はこれまで、インターネット上で起こることを国家管理下に置く「インターネット主権」を目指してきました(通信省の実験でも「主権」という言葉が用いられたことに注意)。

その究極形と言える形態が中国の運用する「金盾」であり、実際にロシア政府の最終目標はこうした「壁」を目指していると指摘する識者もいます。

    金盾の概要を解説するダイアグラム 中国のインターネット取締警察官は
    2005年時点で3万人を超えたとされている

もっとも、ロシアのインターネットをグローバル・インターネットから遮断することは上でも述べたように並大抵のことでありません。

たとえ一時期のことであってもロシアの国民生活や経済に与える影響は甚大なものとなるだろうし、平時からトラフィックやインフラを「ロシア化」し、完全管理するとなればインターネット事業者の負担は激増します。

実際、こうした理由からインターネットの「ロシア化」などは不可能だと指摘する専門家は多いです。

こうした事情もあってか、2016年末に通信省が公表した新たな「情報化社会発展戦略」の改定案からは「情報及び通信技術の領域におけるロシア連邦の技術的独立性の達成」という目標が削除されました。

資金不足が理由とされていますが、要するにとても経済的合理性にそぐわないということでしょう。

しかし、私はロシアはこれを強力に推し進めるべきだと思います。なぜなら、これを強力に推し進めれば、時間と労力と資金力がかなり必要になり、ロシアがその分疲弊するからです。

そのため、ロシアがこの度国家規模のインターネットシステムのテストを実施したことは、まことに喜ばしいことです。

中国もこらからさらに金盾をより洗練されたものにすべきです。金盾の運用は、かなりの労力と時間と資金力が必要でしょう。

これからも、インターネットの技術革新は、続きます。それに対して、中国とロシアは莫大なエネルギーと資金をさいてこれらに対応するため、金盾やRunetをアップデートしていかなければならないのてす。

これに比べて、日米欧などでは、インターネットを海外から独立させるなどという馬鹿げたことには、一切労力を使わず、ただし中露のサイバー攻撃には備える体制を整え、ますまますインターネットの技術革新を実行して、中露を疲弊させれば良いのです。

これは、軍拡、宇宙開発でも同じことがいえます。対中露ということで、日米欧等は同盟関係を強化し、それぞれの国の得意分野で中露を出し抜くようにして、同盟全体で中露に脅威を与えつつ、両国を疲弊させるのです。

たとえば、日本が低予算で、月の裏に宇宙船を派遣すれば、中国はこれに対抗するため、大予算で、月の裏にあまり意味のない軍事基地を構築するかもしれません。そうなれば、とてつもなく金食い虫になることでしょう。

米国が、最新鋭空母を構築して、南シナ海に派遣したり、イギリスが空母クイーンエリザベスを南シナ海に派遣すれば、それに対抗して中国もさらに新たな空母を構築するかもしれません。こういうことが、ますます中国を疲弊させます。

このような経済的疲弊が旧ソ連を崩壊に導いた大きな原因の一つともいえます。

そうなれば、今や韓国なみの経済力しかない、ロシアは日米欧側につくようになるかもしれません。そうなれば、中国の壊滅はかなりはやまるかもしれません。

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2019年12月26日木曜日

秋元議員逮捕 300万円、解散当日に直接受け取りか 贈賄側一部は「完落ち」の可能性―【私の論評】IR疑惑は、二階幹事長脅迫事件が発端か?


テレビで報道されたIR疑惑

 カジノを含む統合型リゾート施設(IR)事業をめぐる汚職事件で、東京地検特捜部は25日、収賄容疑で、IR担当の内閣府副大臣だった衆院議員、秋元司容疑者(48)=東京15区=を逮捕した。秋元容疑者は、IR事業への参入を狙う中国企業側から、2017年9月の衆院解散当日、選挙の「陣中見舞い」名目で、議員会館の事務所で現金300万円を直接受け取っていた疑いがあることが分かった。

 秋元容疑者は逮捕直前、ツイッターで「不正には一切関与しておりません」とコメント。報道機関の取材にも「そんな、はした金もらわねえ」「特捜部と戦うしかねえ」などと、べらんめえ調で否定していた。25日、自民党を離党した。

 特捜部は同日、贈賄容疑で、中国企業「500ドットコム」顧問の紺野昌彦(48)と、同顧問の仲里勝憲(47)、同社日本法人元役員の鄭希ことジェン・シー(37)の3容疑者も逮捕した。

鄭希容疑者 中央

 紺野容疑者は、企業側と秋元容疑者や自治体などを結ぶ役割を務めており、「疑惑のキーマン」とみられている。

 関係者によると、特捜部の調べに対し、贈賄側の容疑者の一部は、秋元容疑者への利益供与を認めているという。司法取引などで「完落ち」した可能性もある。

 また、特捜部は同日、事件の関係先として、自民党の白須賀(しらすか)貴樹衆院議員(44)=千葉13区=の地元事務所(千葉県印西市)と、勝沼栄明(しげあき)前衆院議員(45)の事務所(宮城県石巻市)の家宅捜索にも踏み切った。

 2人は17年12月、秋元容疑者とともに中国・深●(=土へんに川)(しんせん)にある「500」社の本社を訪問しており、訪問の経緯を調べる。

 IR事業は、安倍晋三政権が「成長戦略の目玉」と位置付けており、秋元氏らの逮捕は政権・与党に打撃となりそうだ。

 一方、野党側は首相主催の「桜を見る会」の疑惑に続き、政権与党への攻撃材料を得た、と勢いづく。年明けの通常国会では「カジノ禁止法案」を左派野党で共同提出する構えを見せている。

【私の論評】IR疑惑は、二階幹事長脅迫事件が発端か?
最初にこのニュースを知った直後に、脳裏をかすめたのが、このブログにも掲載した二階幹事長が、中国人ビジネスマンに脅された事件です。その記事のリンクを以下に掲載します。
絶望的な日本。自民・二階幹事長を反米媚中にした中国の浸透工作―【私の論評】日本も、米国のように超党派で中国に対抗する体制を整えるべき(゚д゚)!
二階幹事長
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事には二階俊博・自民党幹事長が中国人ビジネスマンに脅されていたという週刊誌の記事を引用しています。

その内容を簡単に以下にまとめます。

二階俊博氏が大物中国人経営者に脅されていたようだと週刊ポストが報じました。ちなみにこの記事は、2017年のものです。この中国人ビジネスマンは、二階派の経理資料などダンボール40箱分の資料を入手しそれをもとに「流せば大変なことになる」などと脅したそうです。この経営者は9月末に逮捕されたのですが、10月に示談となって釈放されています。

事件が弾けたのは2017年9月26日、折しも衆院解散の2日前で、小池百合子・東京都知事の「希望の党」結党宣言で政界に激震が走り、国民もメディアに視線を釘付けにされていたタイミングでした。

その日、警視庁捜査一課の捜査員10数人が中国籍の会社経営者・王俊彦氏の自宅や関係先に捜査に入り、王氏を逮捕しました。

さて、今回のIR疑惑で、中国企業から賄賂を受け取っていた疑いで逮捕された、秋元司容疑者(48)が賄賂を受け取った日付は、衆議院解散当日の9月28日でした。この2つを結びつける情報は今のところないのですが、それにしても何やらきな臭いです。

警視庁としては、この当時王俊彦氏の自宅や関係先に捜査に入り、王氏を逮捕したことから、資料そのものは入手しなかったものの、王氏を逮捕して事情聴取はしています。

この事情聴取には、中国によるIR工作に関するものがあったかどうか、今のところわかりませんが、その可能性はあります。東京地検特捜部としては、この情報ももとに、秋山氏などを内偵して可能性は十分にあると思います。

これが事実であろうが、なかろうが、これらの資料には二階氏自身や、二階派議員と、中国との不穏当な情報が含まれていた可能性があります。そうでなければ、大物中国人経営者が二階氏を脅したり、あるいは警察に一度は逮捕されながら、示談となって釈放されることもないと思います。二階氏側には、示談としなければならなかった何らかの事情があったものと考えられます。

そうして、二階氏の脅迫事件や、今回のIR疑惑に関しても、中国企業が関わっていますが、中国企業は日本等の自由主義の国々との企業とは異なり、国営企業は無論のこと、民間企業であっても中国共産党政府の傘下にあることを忘れてはいけません。

二階幹事長への脅しや、今回のIR疑惑は、中国企業による意思だけではなく、中国共産党の意思でもある可能性が高いのです。

私自身は、中国による日本の国会議員への賄賂など以前から、当然あるものと思っていました。ただし、それを明確に示す証拠は今まで存在しませんでした。しかし、今回それが東京地検特捜部によって明らかになりつつあります。

私自身は、中国共産党は、当然のことながら、与党に限らず、野党議員にも様々な工作を実施していると思います。東京地検特捜部は、このあたりも含めて全貌を明らかにしていただきたいと思います。

秋元議員事務所を捜査する東京地検

私自身は、今回東京地検特捜部は、意図的に与党の議員から逮捕し始めたのだと思います。もし、野党の議員を最初に逮捕し始めると、野党は「国策捜査だ」と騒ぎまくり、国会は収拾がつかなくなり、マスコミもそれに乗って「国策捜査だ」と報道しまくり、捜査に支障をきたすことも懸念されるので、与党議員の捜査、逮捕からはじめたのだと思います。

いずれ、捜査の手は、野党議員、官僚、企業経営者、マスコミ関係者等にも伸びる大事件に発展していく可能性もあると思います。チャイナマーを受け取った方々は、心配で心配で、夜も眠れないことでしょう。

このような、国会議員と中国企業との不明朗な関係があるからこそ、日本は米国のように挙党一致で、中国に対峙することができないのかもしれません。

米国の場合は、オバマ政権からトランプ政権に変わってから、野党である民主党の中にあった、中国に対する不満が顕になり、現在では超党派で中国に対峙する状況になっています。

日本もはやくそうなって欲しいです。

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2019年12月25日水曜日

あまりに酷い中国のウイグル政策に米国が人権法案可決―【私の論評】日本も国会で超党派での「香港、ウイグル対中非難決議」で中国共産党に対抗するべき(゚д゚)!


岡崎研究所

 今年1年を通じて、米国第116回議会では、「2019年ウイグル人権政策法案」が審議されてきた。法案の正式名は、「新疆におけるトルク族ムスリムの人達に対する酷い人権侵害を非難し中国内外でのこれらの人達への恣意的な拘留、拷問及びハラスメントを止めさせることを訴える法案」である。1月17日にマルコ・ルビオ上院議員(共和党、フロリダ選出)より提案され、上院外交委員会や下院では外交委員会、情報委員会及び司法委員会で審議がなされてきた。9月11日、上院では、全会一致で可決され、下院ではより強硬な法案として12月3日に407対1で可決した。同法案は、米国政府の様々な省庁に対して、中国の新疆における再教育センター(強制収容所)を含むウイグル人の状況を報告し、必要な措置を講じるよう求めている。



 12月3日の可決を前にして、米ワシントン・ポスト紙の論説委員長ともいうべきFred Hyattが、12月2日付の同紙に、中国共産党習近平政権が新疆ウイグル地区で、ウイグル人に対して行っている政策を、「今世紀最大の人道に対する罪が中国北西部で行われている」と断定する論説を寄せた。

 先般流出した中国共産党のウイグル人対策に関する内部文書などを読んだうえで書かれた論説であると思われるが、過激派のテロを防ぐために100万人以上を強制収容するということは、「鶏を裂くに牛刀をもってする」ようなもので、目的と手段が著しく不均衡である。ウイグル人のアイデンティティを根絶しようとする暴挙といってよい。

 先般の中国共産党内部文書によると、このキャンペーンは習近平の号令で行われているという。こういうひどいことをして、習近平主席が国際社会で尊敬される立場にいることは不可能であろう。

 12月2日、遼寧省瀋陽市の中級人民法院は、ウイグル自治区主席を務めたウイグル族のヌル・ベクリ元国家発展改革委員会副主任に汚職の罪で無期懲役を言い渡した。ヌル・べクリはウイグル人としては異例の出世をした人であるが、ウイグル人から見ると、この判決は反ウイグルキャンペーンの1つと見られるおそれがある。 

ヌル・ベクリ氏

ウイグル弾圧は、イスラム諸国からはイスラム弾圧と思われる危険があるし、欧米からは、人権侵害、人道に対する罪とみなされている。この中国のウイグル政策はテロをなくすどころか、テロを挑発する可能性が大きいと思われる。中国の不安定化につながるだろう。


 中国は正しいことをしているのならば、新疆での状況をオープンにして、赤十字による現地視察、国際的調査視察団の受け入れをすべきである。これだけ国際的な問題になっていることを秘密のベールで包み隠すことは国際的に認められないことであろう。

 米国議会が「香港民主主義・人権法」を通過させ、今回、「ウイグル人権政策法案」を可決したことに、中国は猛反発している。ただ、この件とは別個に、米中は、12月13日、貿易交渉において第一段階の合意に達した。中国が年間500億ドルとも言われる大量の米国の農産物を輸入するかわりに、米国は対中関税の一部を15%から7.5%に引き下げることで話はまとまった。が、今後も、米中間では、人権や技術問題、安全保障等では対立することが予想される。来年は米国大統領選挙もあり、当分、米中関係は紆余曲折を経ることになろう。

【私の論評】日本の国会も超党派での「香港、ウイグル対中非難決議」で中国共産党に対抗するべき(゚д゚)!


中国は二度と 新疆ウイグル自治区(ウイグル族 は東トルキスタンと呼ぶ)で犯した罪を隠蔽することはできません。数か月間にわたり、活動家、NGO、国際組織などからの激しい糾弾が続いた後、米国の上院を『ウイグル人権政策法案』(S.178)が通過したことで、先に進むしかない段階まで到達したのです。

9月11日、上院では、全会一致で可決され、下院ではより強硬な法案として12月3日に407対1で可決しました。かなり大きな動きです。両党全会一致で可決したのですが、そのような法案としては世界初であることが、何よりも重要です。実に初めて、主権国家の立法府がウイグル族ムスリムに対する虐待を非難し、行動をよびかけているのです。

それだけでありません。この法案は文字通り、「新疆のチュルク系ムスリムの重大な 人権 侵害を非難し、中国内外の当該コミュニティの恣意的な拘束、拷問、嫌がらせの中止を要請する」ために作られたのです。

これは、米国上院が承認した法案は以下の事柄を認めたことを意味します。

第一に、ウイグル族だけでなく(悪名高い 「教育による改心」のための強制収容所 に最大300万人が拘束されている)、カザフ族、ウズベク族、キルギス族、トルクメン族、タタール族やその他(何千人も)のチュルク系少数民族のすべてが中国で迫害されていること。

第二に、これらのチュルク系の人々をムスリムとして特定し、彼らが信仰を理由に迫害されていること。第三に新彊で迫害されているチュルク系ムスリムの人々は中国の国境外でも迫害を受けており、それは国際的にも違法行為であること。

有能な連邦議会議員であり、「中国問題に関する連邦議会・行政府委員会(CECC)」共同議長も兼ねるマルコ・ルビオ(Marco Rubio)上院議員(共和党、フロリダ州選出)、は、これらの虐待を非難するときには率直に中国を「全体主義(中略)政府」と呼んでいます。

マルコ・ルビオ(Marco Rubio)上院議員(共和党、フロリダ州選出)

なぜなら「広範囲に及ぶおぞましい人権侵害」と「米国本土で米国市民と合法的永住者に対して、脅迫、恫喝」を行っているからです。

これは前例のない出来事です。実質的には、この法案によって、国家情報長官が国務省と連携して報告書の公布を実行に移し、「新疆各地の取り締まりによって引き起こされた国家と地域の安全保障上の脅威、中央アジア、東南アジア政府がチュルク系ムスリムの難民と亡命申請者を強制的に送還する頻度、予測警備や大規模データ収集と分析など、中華人民共和国政府が使用しているチュルク系ムスリムの大規模拘留と監視を容易にする技術の移送と開発状況を査定すること」が可能になるのです。

この報告書には「政治的『再教育収容所』に拘束された個人の数および拷問、信仰の放棄の強制などの虐待の有無を含む新疆地方の収容所拘束者の状態」、「強制収容所の地理的位置の可能な限りの記述、当該施設に拘束されている人々の数の推定」、また「中華人民共和国の『再教育』の責任所在機関のみならず、中華人民共和国当局がウイグル族の拘束者を『再教育』する際に用いた手段を可能な限り記述」、そして「拘置所や刑務所をはじめとする施設に恣意的に拘束された個人の数の査定」などが盛り込まれます。

さらに、「新疆各地で『政治的再教育』収容所の建設と運営、監視技術や運用組織の提供と運用に携わった全中国企業の一覧の付記を含む」。そして「『政治的再教育』収容所への送還の危機にさらされた状態で収容所と地域の工場で行われた低賃金の強制労働」から「利益を得た中国企業と業界のリスト」も盛り込まれます。

「ラジオ・フリー・アジア(RFA)」が新疆の衝撃的な状況に関して綿密かつ正確な報道を行っていることを理由に、その従業員を脅迫している中国の動きを非難する一方、法案は国務長官に対し、「国務省内に新たな職位として『新疆担当米国特別調整官』を設立し、外交、政治、広報外交、経済支援、制裁、テロ対策、安全保障資源を行うほか、米国政府内で議会報告を義務付け、広く認知されている新疆地区の重大な人権侵害に対応する」ことも検討するよう嘆願しています。

最後に、9月11日に米国の議員が承認した文書は「人権の包括的責任に関するマグニツキー法」(『ロシア及びモルドバ、ジャクソン=バニク除外およびセルゲイ・マグニツキー説明責任法』)の適用を要請しています。この法律により、2016年から米国政府は、世界のどこかで人権侵害に関与した外国当局に制裁を加えることができるようになっています。

そして、2016年の『フランク・ウルフ国際信教の自由法』の徹底的な施行も求めています。フランク・ウルフ(Frank Wolf)元下院議員(共和党、ヴァージニア州選出)の名を冠するこの法律は、米国が外交の強化、教育、対テロ対策、外国支援を通して世界の信教の自由を促進する能力を向上させようとするものです。

これからが、米国議会の両院を通過した現在、新疆で違法に拘束され、嫌がらせ、虐待、拷問を受けている数百万の罪のない人々の苦しみが終わりの始まりを迎えるでしょう。長い道のりであることは間違いないですが、最初の一歩なくしては、何も成し遂げられません。

中国共産党は監視の行き届いた社会をつくることを目指しています。ウイグルのみならず、人権弁護士など民主化を推進する人を弾圧するなど圧政を行っています。中国は経済力でも軍事力でも米国と肩を並べるような国を目指しているのですが、こういう圧政をしていては、とても世界の指導国にはなれないし、すべきではありません。


米国アニメの #サウスパーク がこのほど配信した『band in China』(バンド・イン・チャイナ)が、言論の自由や人権に関する敏感な内容で中国を風刺したため、中国から視聴できなくなっています。この件について、主な国際社会は中国共産党を邪悪であると認識し、その認識は大きく変わったと考える人もいます。 

米国の成人向けアニメ「サウスパーク」は、ブラックユーモアで時世を風刺することで知られ、1997年に初配信されてから現在までに数々の賞を受賞しています。米ニュース雑誌『タイム』は同番組を「米国の過去数十年の中で最も鋭い風刺作品」と称賛しています。


こういう弾圧、圧政をしている背景は何なのでしょうか。それは、彼らが自らの統治の正統性に自信を持っておらず、共産党統治が一寸油断するとひっくり返されかねないとの恐怖におののいているからだと考えられます。

そもそも、中国共産党による政権は、選挙で選ばれた政治家ではなく、その正当性を主張できない、指名という手順で選ばれた人間によって運営されています。これは、政治家というよりも、官僚に近いというか官僚そのものです。このような体制が建国以来70年も続いてきたことが、奇跡に近いです。

天安門事件についての報道を今なおブラックアウトし、報道規制をしているのは、それが再び起こりかねない「悪夢」になっているからではないでしょうか。

国連の第3委員会や人権理事会で、ウイグル問題について考え方を同じくする国と共同で、中国の説明を求めるなどやるべきことは多いです。それがウイグル人のためにも中国人民のためにもなります。イスラム諸国会議にも役割がありえます。

そうして、無論日本にも役割があります。それは、習近平国賓訪日という最大の外交失政は防ぐことです。もし、日本が習近平一旦国賓待遇で招聘した場合、政府がこれを取り消すことは難しいです。

これに対し、国会としては、超党派での「香港、ウイグル対中非難決議」で対抗するべです。

もしこれが可決したなら、恐らく訪日は取り消しか延期となるでしょうが、仮に訪日すれば政府から面前で改善申し入れを行う事を定めて置くことにより、外交上の最大の失政を致命傷にすることだけは辛うじて避けられるでしょう。

外交の要諦は、「国際的大義を伴う長期的国益の追求」に他ならないです。

今回の習氏国賓訪日は、人権無視という面で国際的大義を、領土問題や経済的メリット等という面でも長期的国益を著しく毀損します。経団連会員企業の経営者任期に見合う程度のメリットはあるのかもしれませんが、そのような短期のメリットを優先すべきではないのです。


彼らの大半そうして、彼らの後ろ盾になる政治家などは、後10年、長くても20年すれば、確実にこの世にいません。そのような彼らのメリットよりも、現在の若者、子供たちのことを優先すべきです。そうして、無論弾圧・迫害を受けているウイグル人を優先すべきです。

与野党有志の決起を期したいです。


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2019年12月24日火曜日

「低所得国」へ転落する日本…元凶は“平成のマネー不足”だ 2度の消費増税も足引っ張る―【私の論評】日銀の金融政策の間違いを正すことなく、インバウンド消費に期待しても、日本がニセコ化するだけ(゚д゚)!

「低所得国」へ転落する日本…元凶は“平成のマネー不足”だ 2度の消費増税も足引っ張る



話題になつた日経電子版のツイート ブログ管理人挿入


日本経済新聞の「年収1400万円は低所得」という特集記事が話題になっている。記事では、システムエンジニアという特定業種に関して、米住宅都市開発省の調査によるサンフランシスコでの分類から、1400万円を「低所得」としたものだ。

 平成の30年間について、筆者は所得が「平に成った」時代だと言っている。他の国では大きく増加しているのに、日本だけが「平に成った」ので、日本の所得は相対的に他国に見劣りするようになった。

 世界銀行が公表している統計で確認してみよう。日本、米国、中国について、ドル建て国内総生産(GDP)を1990年と2018年で比べると、日本は3・13兆ドルから4・97兆ドル、米国は5・96兆ドルから20・5兆ドル、中国は0・36兆ドルから13・6兆ドルと、日本は大きく見劣りしている。


グラフはブログ管理人挿入 世界の中で日本だけが実質賃金が低下し続けた

 世界銀行のデータで統計がある範囲でみる限り、1990年から2018年の伸び率において、湾岸戦争でダメージを負ったイラクが世界最悪だが、日本はイラクに次いで2番目に悪い数字だ。つまり、平成の間の低成長は、戦争が起こっていたときと同じ程度にひどい経済状況だったのだ。

 この間の世界におけるGDPシェアについても、米国は2・5ポイント減、中国は14・3ポイント増だったのに対し、日本は8・1ポイント減と大幅に下がった。

 国民の平均的な所得という意味では、「1人当たりGDP」のほうが適切だ。同時期の世界銀行のデータでみると、日本は2万5400ドルから3万9300ドル、米国は2万3900ドルから6万2600ドル、中国は300ドルから9800ドルだった。日本は伸びがなく、相対的に魅力がなくなっている。

 平成における日本の低成長期は、いわゆる「失われた10年(もはや20年、30年)」だ。原因には諸説あり、構造問題としての企業投資の不振、不良債権処理の先送りなどが多くの経済学者によって主張されてきた。筆者は、日本だけがマネー不足だったためだとみている。

 企業投資の不振は、マネー不足によるデフレ経済の結果であるし、不良債権問題も世界中にあり、処理の先送りは他国でもみられる現象だ。

 しかし、世界銀行の統計で、日本のみならず他国を含めたGDPの動きを最もよく説明できるのが、GDPの伸びと相関の高いマネーの動きだ。1980年代に日本のマネーの伸び率は10%程度あり、先進国の中では標準的だった。しかし、バブルへの反省と懸念から90年代にマネーの伸び率は急落した。これがデフレの原因でもある。マネーの動きは基本的に金融政策の分野であるが、緊縮財政もその動きに輪をかけた。要するに、マクロ経済政策の失敗が原因だ。

 アベノミクスでは、金融緩和政策によって雇用が確保できた。しかし、2度も消費増税を行い緊縮財政を維持したので、所得が上がるまでには至らず、大きな課題を残したといえるだろう。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】日銀の金融政策の間違いを正すことなく、インバウンド消費に期待しても、日本がニセコ化するだけ(゚д゚)!

ブログ冒頭の話を如実にあらわしているのが、以下のグラフです。


いわゆる、リーマン・ショックのときに、米国、英国、EUの中央銀行は、マネタリーベースを増やす政策をとったのですが、日銀だけがこれをしませんでした。そのため、日本は酷いデフレと、円高に見舞われ、リーマン・ショックの震源地である、米国等よりも、経済の回復が遅く、世界の中で1人負けの状態になってしまいました。

この時、日銀がとるべき政策は、無論大規模な金融緩和をすることでした。もし、日銀がこのときに、大規模な金融緩和に転じていれば、あれほどのデフレ・円高に見舞われることはなかったでしょう。

このグラフは、このブログにも度々掲載したので、記憶にとどめていらっしゃる方も多いです。

ちなみに、マネタリーベースとは、日本銀行が供給している通貨のことをいい、マネーストックの基となることから、ベースマネーとも呼ばれます。

そしてマネタリーベースは、現金通貨(日本銀行券や補助貨幣)と民間金融機関の補遺亭準備預金(日銀の当座預金に預けられているもの)を合算したものです。

マネーストックとは、通貨残高と呼ばれるもので、世の中に出回っているお金の総額のことです。

これは、金融機関全体が持っているお金が、経済全体にどの程度供給されているのかを見るために、利用されている指標です。

具体的には、金融機関や中央政府を除いた、一般法人や個人、地方公共団体が持っている通貨量の残高を集計したものを指します。

計算方法は、マネタリーベース×貨幣乗数あるいは現金通貨+預金通貨となります。

ちなみに、マネタリーベースはコントロールできて、マネーストックはできないというのは、もともとトンデモ理論であり、現実世界でもすでに2013年に、証明されていることなので、もう存在しないと言っても良いです。どっちもコントロールできますから、どっちで議論をしても良いです。

日銀は、平成年間のほとんどを金融引き締めを継続しました。そのために、日本では賃金も上がらず、経済も成長せず、今日に至っているのです。

その日銀も2013年には、異次元の金融緩和を実行したのですが、2016年にイールドカーブコントロールを実施して、緩和を継続はしてはいるものの、引き締め気味の政策を実行しています。

本来ならば、今年10月に消費税を導入したのですから、日銀はイールドカーブコントロールなどやめて、2013年の異次元の金融緩和政策に戻るべきです。

増税したまま、大規模な金融緩和もせず、政府が大規模な経済対策もしなければ、どうなるかは、わかっています。それは、高橋洋一氏が冒頭の記事で、主張しているように「低所得国」へ転落することになります。

「低所得国」になっても、物価が安いし、それにアウトバンウンド消費をあげれば、それで良いなどと考えるのは全くの間違いです。これについては、以前このブログにも掲載しました。
「日本は貧乏」説に「でも日本は住みやすいし楽しいから充分」と反論するのはもうやめないとオレら後進国まっしぐらだぞ―【私の論評】最も恐ろしいのは日本のニセコ化(゚д゚)!
まるで外国のようなニセコの現在の町並み
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下に一部を引用します。
ニセコでの海外富裕層向けを中心としたコンドミニアムや別荘への不動産投資ニーズに、国内の不動産業者・銀行は、ほとんど応えられていないのです。海外不動産業者やプライベートバンクと海外富裕層との間には、独自のネットワークが形成され、日系企業が入り込む余地がほとんどない状態であるというのです。

それどころか、観光客のほとんどが外国人なので、現地で雇用も最近ではほとんどが外国人になりつつあるそうです。 
ニセコは、まさに「外国人の、外国人による、外国人のためのリゾート」と化していると言って良いです。地元ニセコ町の分析でも、民間消費や観光業の生産額のほとんどが、町外に流出超過だとされています。観光客や投資の増加は、もはや地域の収入には十分つながっていないというわけです。
日本が、日銀の金融政策の間違いを正すことなく、それによって低所得国であることを許容し続ければ、日本の賃金はさらに下がり、さらにインバウンド消費をあてにして、海外から多数の観光客を招くようになれば、まさに日本がニセコのような状況になってしまうのです。

日本国内にニセコのようなところが多くできあがり、多くの日本人は平均5000円のランチを出すような、外国人向けの施設には行くことができず、挙げ句のはてにそのような施設に就職することもできず、完全に締め出されてしまうことになるかもしれません。

しかも、外国人相手となると、国際情勢が大きく左右します。日本が平和であっても、海外で戦争が勃発することにでもなれば、日本を訪れる外国人がいなくなり、とんでもないことになるかもしれません。そうなれば、ますます賃金が下がり、前途有望な若者は海外を目指すようになるかもしれません。

今のままでは、この悪夢が本当になってしまうかもしれません。しかし、それを防ぐことはできます。それは、日銀にまともな金融政策を実行させることです。

それなしに、インバウンド消費を刺激しても、日本全体がニセコ化するだけです。

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2019年12月23日月曜日

沈没寸前の韓国と北。国際交渉人が憂う朝鮮半島の終わりの始まり―【私の論評】日本にとって、朝鮮半島の望むべき最良の状態は遺憾ながら「核つき分断現状維持」(゚д゚)!

沈没寸前の韓国と北。国際交渉人が憂う朝鮮半島の終わりの始まり

北朝鮮がアメリカに対し一方的に宣言した回答期限が迫ってきました。北朝鮮が示唆する「クリスマスプレゼント」が「長距離弾道ミサイルの発射実験」だった場合、朝鮮半島に訪れかねない最悪のシナリオをメルマガ『最後の調停官 島田久仁彦の『無敵の交渉・コミュニケーション術』』の著者で国際交渉人の島田久仁彦さんが解説します。島田さんは、韓国、北朝鮮それぞれが国内において一枚岩ではなくなっている状況、とりわけ国際社会から相手にされなくなっている韓国の惨状から、朝鮮半島にある2か国の消滅までも「妄想」し、警戒を強めています。

沈没寸前の朝鮮半島~韓国と北朝鮮に訪れかねない終わりの足音

アメリカに対するハードラインが復活している北朝鮮。外交ルートを通じた激烈な非難と、トランプ大統領のレッドラインがどこかを探るギャンブルともいえる度重なるミサイル発射実験。そして、北朝鮮がアメリカからの回答期限と一方的に宣言した年末まであと2週間弱となり、自らの反応を“クリスマスプレゼント”に例えた執行部。

北朝鮮からのこれらすべての反応は、一言でいえば、究極の焦りの表れと読み解くことができます。

自ら宣言することでアメリカのビーガン特別代表を“引きずり出した”9月のストックホルムでの協議が、思いの外、膠着したことを受け、まるでアメリカへの当てつけのようにミサイル実験を連発して、アメリカへの“警告”を行っています。

ビーガン氏

最も顕著だったのが、先月に軍の高官が発言したとされる「武力行使はアメリカにのみ与えられた特権でないことを思い知ることになる」という内容は、さすがの北朝鮮外交部も焦ったのか、「遅々として進まないアメリカとの協議へのいら立ちの表れ」とすぐさま言い訳を行っていますが、一枚岩の対応ができなくなっているほど、国内の統制は崩れ、状況は逼迫していると捉えることができると考えられます。

このまま外交的な反米の狼煙を繰り返しているだけならば、まだトランプ大統領も、忌々しく感じつつも、恐らくまだ看過してくれそうですが、“クリスマスプレゼント”の内容が、長距離弾道ミサイルの発射実験を伴うものであれば、彼を取り巻く国内での状況を考えてみると、トランプ大統領としても何らかのハードな対応に出る必要が出てくる可能性が一気に高まります。

ウクライナ疑惑で下院が弾劾決議を可決したことで、トランプ大統領としては、選挙イヤーに入り、世論に対して何らかの目眩ませを発動する必要が出てくるのではないかといわれています。過去の政権の例に漏れず、言葉は悪いですが、ベストチョイスといわれるのが、それらしき大義を掲げて戦争をスタートすることです。

このメルマガでも何度となく、トランプ大統領が北朝鮮攻撃にゴーサインを出す可能性、そして極限のところでは“ボタンを押す”可能性について言及してきましたが、今、その可能性はかなり高まっています。

その理由は、今回、弾劾決議をした米下院を含め、議会上院も全会一致で「北朝鮮の核開発はアメリカの国家安全保障にとっての脅威であり、アメリカ政府は何らかの対応を取る必要性がある」という決議をしていることで、トランプ大統領としては、国内的には法的なお墨付きを取り付けているため、攻撃の決定を下しやすくなります。

加えて、これまでの政権であれば気にした国連安全保障理事会決議の有無については、極限まで国連軽視を行うトランプ大統領は、さほど気にはかけないだろうと思われ、アメリカ単独での行動に出る可能性はかつてないほど高くなっています。

クリスマスプレゼントの内容が、意に反して、『平和的解決を望むため、アメリカの要求を受け入れ非核化へのステップを踏む』といった内容のものであればいいのですが、このところの論調に鑑みたり、今週、ビーガン特別代表訪韓時に接触がなかったことを踏まえたりすると、2020年年初から、何らかの物理的な衝突が起こる可能性は否定できないと思われます。

仮にそうなった場合、これも以前より何度かお話ししていますが、韓国は被害を免れないだろうと思われます。過去の米政権は、同盟国韓国における被害の可能性を踏まえて、クリントン大統領なども北朝鮮への攻撃をためらってきましたが、GSOMIA問題や米朝間の協議に関する文大統領の勝手な邪魔、そして、あからさまな韓国の中国への接近などを踏まえて、すでにアメリカは断韓の動きを加速させている状況下では、トランプ大統領が北朝鮮攻撃をためらう理由に韓国の存在はないと考えられます。ゆえに、北朝鮮のみならず、韓国も大変な危機に直面しているということになります。

その韓国ですが、アメリカとの同盟がもう有効とは言えない現実に直面し(自らまいた種なのですが)、中国への接近を図っていますが、先々週の王毅外相のソウル訪問時の雰囲気から、習近平政権の韓国に対するフラストレーションが高まっていることが読み取れますし、「助けてほしければ、言うとおりにしろ」とでも言いそうな圧力をかけ、同等の国とは見ていない感じが見て取れます。

ロシアからはすでに相手にされていませんし、欧米各国も韓国切りをし、また欧州は自らの問題で手いっぱいで、極東で起きる事態に真剣に対処する余力はなく、日韓関係はいまだに最悪な状況が継続中です。まさに八方塞がりの状態です。

手を取り合い、笑顔を交わした北朝鮮も、今では、韓国を間抜け扱いで相手にしていませんし、南北朝鮮の統一の話も、もう長く北朝鮮からは出てこなくなりました。酷な予測をすれば、仮に半島の統一が起こるとすれば、韓国の手によるものではなく、恐らく中ロにガチガチに固められた北朝鮮の手によるものとなるでしょう。

つまり、北朝鮮も主導権は握れない統一となり、極論を言えば、朝鮮半島にある2か国は消滅するかもしれない事態です。(まあ、そう簡単には起きえませんが、可能性はゼロではなくなってきています)。

さらに現実味を帯びてくる要素は、韓国経済の終わらない低迷と、文政権への支持が日に日になくなっていく実態です。

韓国経済が国際経済から取り残され、外資の投資引き上げに直面しているだけではなく、海外市場での韓国企業の締め出しが本格化していることで、以前のデフォルトの状況を超える危機の寸前まで来ている瀕死の状態と言われています。ただでさえ混乱している国際経済へのショックを緩めるために、あまり表立っては語られていませんが、諸々の要素に鑑みると、相当やばい状況まで来ています。

そこに追い打ちをかけるのが、文大統領の統率力への疑問符です。ここにきて隠しきれなくなってきているのが、韓国の軍部が、文大統領からの指示に真っ向から反対することが多くなってきているという状況です。

以前、日韓の間で問題として取り上げられ、今の険悪な関係の引き金の一つとなったレーザー照射問題については、韓国の軍関係者曰く、「レーザー照射そのものは褒められたものではない。しかし、これまでは自衛隊との間で、現場レベルの問題解決ができてきた。それなのに、文大統領が、自らの反日ポリシーのためにこれを政治化し、さらに外交問題化したことで、韓国軍の威厳は地に落ちる結果に至った。もう彼の気まぐれには我慢ならない」とのこと。

完全な私の妄想かもしれませんが、これまで韓国大統領と言えば、逮捕収監されるか、殺害されるか(自殺も含む)という悪評がありますが、この軍の反文政権の態度が明らかになってきた今、もしかしたら来年あたり、クーデターを含む、何らかの動きがあるのかもしれないと予測しています。

もしこの妄想じみた状況が現実になったらどうなるか。そして、それがもし、北朝鮮への攻撃と時期が重なったらどうなるか。いろいろな状況や入ってくる情報に照らし合わせると、とても恐ろしいシナリオが浮かび上がってきますし、それが起こるprobabilityは、これまでになく高いといえると思います。

来年2020年、我が国が存在する北東アジア地域はどのようになっているのか。予測が非常に難しくなってきました…。

【私の論評】日本にとって、朝鮮半島の望むべき最良の状態は遺憾ながら「核つき分断現状維持」(゚д゚)!

冒頭の記事をご覧いただければ、再び朝鮮半島が混沌としてきたことが理解できます。

この混沌とした、朝鮮半島に関して、米国の戦略家であるエドワード・ルトワック氏が『日本改造論』という書籍で興味深い見方をしているのでご紹介します。

彼にかかると、今の混沌とした朝鮮半島情勢を整理して俯瞰してみることができます。



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ルトワック氏

まずルトワックは「朝鮮半島の未来」を4つの象限に分けることから始めます。
2本の縦軸横軸を引きます。

・左右の軸・・・「核保有」と「非核(保有)」・上下の軸・・・「統一朝鮮」と「分断朝鮮」
以下にルトワックの書籍から、この4つの象限を以下に引用します。


するとこのような分け方が可能です。

①北が核保有して統一
②北が非核化して統一
③北が核保有して分断
④北が非核化して分断

では現状はどうかといえば

・北のみが核保有している 
・朝鮮半島は分断されている
では北がなぜ核保有をすすめるのでしょうか。ルトワックはその理由を、「北朝鮮は核が中国からの自立と存続を保証している」からだ、としています。

したがって、このまま④のように朝鮮半島が分断されたまま非核化された場合、北は「中国に完全に取り込まれ、植民地になるだろう」と考えられます。

では逆に①のように核兵器を北が持ったまま統一されたらどうなるのでしょうか。ルトワックは「日本は核武装した半島統一国家と対峙・直面する」ことになり、それは北一国よりも更に危険な敵性国家を誕生させてしまうことになると考えます。実際、現在の韓国の経済規模はGDPでは、東京都並ですが、これは現在のロシアのGDPと同程度です。

核武装したまま、南北統一をすると、ロシア並のGDPを持った核保有国が半島に誕生することになるのです。

逆に②の「非核化された統一朝鮮」というシナリオはどうでしょうか。これは「米軍が韓国に駐留しないかぎり、統一朝鮮は中国に取り込まれる」ことになります。

なぜなら在韓米軍が撤退して力の真空が生じた場合、それを埋めるのは中国以外ないからです。

その場合、「朝鮮半島全体が中国の支配下に置かれたら、日本にとって大災厄になり、こめかみに銃をつきつけられた状態となる」でしょう。

朝鮮半島統一というのは、北が南に侵攻する可能性がなくなるということですから、DMZ(非武装地帯)はなくなり、在韓米軍の仮想敵国がなくなることですから、もういてもらう必要がなくなります。

すると在韓米軍が消滅し、非核化された状態の「朝鮮半島統一」は、イコール中国圏への吸収だということになります。

日本の保守系のネット言論には、在韓米軍が撤退しようとすることをやんやの喝采で迎える風潮がありますが、それは大間違いです。

彼らは同時に北の非核化も支持していますから、つまりこれでは非核化+在韓米軍撤退=中国圏への吸収、という構図が成立してしまいます

それだけでは済みません。ルトワックは指摘していませんが、中国はロシアと戦後最良の関係を結んでいて、極東の軍事的連携を強めています。

すると、中国統一朝鮮ロシアという軍事同盟が作られる可能性が生まれます。その場合、日本は南西方面からは中国、対馬側からは統一朝鮮、沿海州側からはロシアという三正面で対峙せねばならなくなります。

中国一国でも勝てる保証がないのに、その上に二つの核保有国がそれと同盟してしまった場合、もはや日本の運命は定まったようなものです。

さて、在韓米軍撤退という事態は、とりもなおさず韓国が米国の核の傘から抜けることを意味します。では、韓国はどこの核の傘に入るのでしょうか。

核の傘はいらないというローマ教皇の言っているような選択肢は無効とします。いかに「核なき世界」を夢見ても、現代が核の均衡でなりたっている現実は変わらないからで、価値観の問題ではありません。

ですから現実に韓国が米軍撤退と朝鮮半島の非核化をセットで掲げる場合、次にどこの核の傘に入るかを選択せねばならなくなるのです。

世界の「核の傘」は基本的に2つしかありません。核保有国はまだありますが、他国に核の傘を提供できるとなると米中の2国に限定されるからです。

ただし、韓国の場合もうひとつありそうです。それが北の核です。

そこで先の4つの象限を思い出してほしいのですが、米国の核の傘から抜けた場合、北の核の傘に入るのが最もスムーズでしょう。

多くの核兵器を持ち、多種多様な弾道ミサイルを保持する北は、韓国にとって憧れです。
北の核を「統一朝鮮の核」とすることができれば、これ以上いいことはない、これが文在寅の考えです。

では統一朝鮮はどの国と友好関係を結ぶのでしょうか。

同盟なしで自立した国をめざすという北の主体思想は、従属を続けた先祖に対する屈折した心理の産物でしかありません。

韓国にしても米国と喧嘩別れした状態でしか「統一朝鮮」は出来ませんから、自動的にその同盟の対象国は限られます。いうまでもなく、それは中国です。

しかし中国は「核武装した統一朝鮮」を絶対に認めないでしょう。そのような物騒なものを認めたら首都北京や、北方艦隊の根拠地青島、工業の中核都市天津が、「統一朝鮮」の核ミサイルの射程距離に入ってしまうからです。

統一朝鮮が国際的に承認されるためには、隣国であり常任理事国である中国の承認が必須ですから、「統一朝鮮」にとって核の存在は悩ましいこととなるでしょう。

ところでルトワックは韓国の行動の基本は、「従属相手を切り換える」点にあるとしています。

その時その時で、地域でもっとも強い相手に従属するのが、行動の基本パターンです。かつては日本に従属し、その後には米国に従属し、そうしていまは地域覇権国にして米国を凌ごうという野心を隠さない新興の中国に従属しようとしています。

以上を俯瞰すると、現状では、「核つき、分断現状維持」という半島の状況が日本にとって一番良い選択肢であることがわかります。

戦略的にみれば、朝鮮半島に北朝鮮と、核があることで、朝鮮半島に中国が浸透するのを防ぐ形になっています。これは、日本に基地を置く、米国にとっても同じことです。現状でこの形が崩れれば、日米にとって安全保証上かなり不安定になるのは確かです。

だかこそ、少し前までのトランプ大統領は、北が短距離弾道弾を発射しても、あまり苦言を呈さなかったのです。日本人は、北がミサイルの発射実験をすると、これをすぐに米国や、韓国や日本に向けた脅しとりますが、無論そうした面があるのは確かですが、これは同時に中国やロシアに対する脅しにもなっているということを認識すべきです。

これは、当然米国側も強く認識していることでしょう。米国としては、北が核を維持しつつも、米国の脅威にならない程度にとどめ、中国の朝鮮半島への浸透を防いでいる状況が望みえる最上の状況でしょう。特に、対中国冷戦を実行しつつある現状では、望み得る最上の状況です。

ただし、ルトワックは昨年あたりまでに、日本が安保で独自の道を歩む決心をしていれば、別の道も歩めた可能性もあるが、今や「核つき分断現状維持」の状況しか選べなくなってしまったとしています。

これについては、ここで解説していると長くなってしまいすので、興味のある方は『日本改造論』を是非お読みになってください。

さて、ルトワックは日韓問題が外交では解消できない、韓国民族固有の心理的問題だとしています。

それは日本民族に対して「恨」を抱き続けているからで、一度も日本とまともに戦ったことがないというコンプレックスが原因だとしています。

ルトワックは、この韓国人の「恨」心理を、ドイツと戦った国と戦わなかった国の心理と重ね合わせています。

戦わずナチスドイツにむしろ「従僕のようにドイツに協力した」国、たとえばスウェーデン人オランダ人が「超がつくほどの反ドイツ感情を保持している」のと同じ心理構造だとしています。

戦後生まれの韓国人からすれば、かつて日本に従順だった父親や祖父の世代を「恥」だと思っていて、消し去りたい過去だと考えています。

この屈折心理が、日本とは交戦関係にあったという「1911年独立政府」というファンタジーを生み出したわけです。

ルトワックは、このような韓国人の屈折した心理は彼ら自身では解消できないので、日本による客観的な歴史研究を公的にするべきだとしています。

ルトワック氏は、自分が代表をしてもいいとすら言っていますが、この部分は私は聞き流しました。というのはかつてそのような試みは何度もされたからであり、ことごとく失敗しているからです。

いくらこちらがまともに資料を積み上げて、多方面から日韓の歴史を分析したとしても、かの国は聞く耳を一切持ちません。

ですからあの国は変わりません。百年たっても、千年たってもあのままだということを前提にして対応すべきなのです。

今日の韓国は、いやおうなしに李王朝の時代に逆戻りしようとしているようです。李王朝とは、自立する国力を持たず、中華帝国の属国であることを自ら望んだ従属国家でした。

高宗(ゴジョン、こうそう、고종、1852年7月25日 - 1919年1月21日)は、李氏朝鮮第26代国王

そして次に再現されるかもしれない「李王朝」もまた、中華帝国の辺境に位置する属国なのです。

ただし、その時に彼らが核を持つのか持たないのか、国際社会が持たせるのか持たせないのか、それによってもシナリオは変化していくことになるでしょう。無論、南北核つきで統合ということなれば、日米にとっては無論、中国にとってもロシアにとっても、大きな脅威です。これは、不可能でしょう。各国とも結局は、当面は現状維持を望んでいるのです。

日米としては、「核つき分断現状維持」が保たれていれば、朝鮮半島情勢は当面大きな変化はないとみて良いですし、この状況を維持すべきなのです。残念ながら、特に日本にとっては、これが現状では望みうる最良の状況なのです。本当に情けない限りです。

日本が少なくとも、北に関して核基地等を「先制攻撃」をできる体制を整えるなどのことをしていれば、半島情勢は大きく変わっていた可能性もあります。

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東アジアの運命は?

中韓北3国への米国の怒り

トランプ大統領は、11月27日に「香港人権・民主主義法案」に署名した。さらに、米下院は12月3日に「ウイグル人権法案」を、407対1の圧倒的賛成多数で可決した。

「ウイグル人権法案」では、陳全国氏(共産党政治局委員で同自治区の党委員会書記)を制裁対象に指定するようトランプ大統領に求めているが、成立すれば、中国共産党の政治局委員の制裁指定は初めてとなる。


来年の米国大統領選挙は日本の安全保障に大きな影響を与える可能性がある

10月15日の記事「『ウクライナ疑惑』で、トランプの大統領再選は確実になりそうだ」や、11月6日の記事「米国は変わった、とうとう高官が共産主義中国を『寄生虫』呼ばわり」で述べた様に、今やトランプ大統領がハト派に見えるほど、民主党左派を中心とするタカ派(対中国強硬派)の怒りはすさまじい。そして、その根底には「人権問題」が関わっている。

トランプ氏は、あくまでビジネスマンだから「対中貿易戦争」を仕掛けたのも、一種の脅しであり、ゲームを有利に進めるための手札の1つにしか過ぎない。

しかし、「人権問題」が主張の根底にある民主党左派、あるいはもっと広く言えば良識ある米国民は、「経済的利害」だけでものを考えているのではなく「政治信条」で正邪を判断する。

「人権問題」は、普段騒がしい自称人権活動家(人権屋)が香港やウイグルについてはだんまりを決め込んでいる日本と違って、「米国の建国の理念である自由と平等」に関わる核心的利益であるから、これに関して米国民は妥協をしないであろう。

したがって、本音では「そろそろ潮時かな」と思っていたとしても、民意に敏感なトランプ大統領が、共産主義中国に対してより強硬な姿勢をとり続ける可能性がかなりある。

北朝鮮についても同様だ。もちろん米国民は米国の若者の血が流されることを望んでいないが、人権(自由と平等)が侵害されつつあると米国民が感じれば、「自由と平等」を守るための軍事行動を喜んで容認するであろう。

金正恩氏は、たぶんこの件における判断を誤っている。

韓国は形式上日米の同盟国ではあるが、文政権による「GSOMIA」問題などの愚行の数々や従北・媚中の姿勢で、「あちら側の国」と米国から認識されているのは間違いない。


米国は、中韓北の「政府」を問題にしている

これらの3国では、要するに「共産主義独裁政権の1党独裁」によって、善良な国民が虐げられていると米国は考えている。

したがって、中北の共産主義独裁政権に虐げられたウイグルやチベット、さらには北朝鮮人民を始めとする国民は敵ではなく、むしろ救うべき対象である。

その点において、「革命」や「クーデター」によって国民自らが「巨悪」を排除するのが、米国の最も望むシナリオであるといえよう。

軍事クーデターの場合、新たな「軍事独裁政権」の誕生となる可能性も高いのだが、「共産主義1党独裁」よりも、「軍事独裁政権」の方がましだというのが米国の伝統的な考えである。これまでも、南米などで軍事独裁政権の後ろ盾になってきたことがその証だ。

実際、西側推計で8000万人を虐殺したとされる毛沢東政権、「収容所群島」(アレクサンドル・ソルジェニーツィン著)で有名なスターリン政権、「キリングフィールド」(1984年、英国)という映画の題材ともなったカンボジアのポル・ポト政権など、共産主義国家はファシズム国家に負けず劣らず残虐である。

韓国の場合は、少々事情が異なる。韓国は米国が北朝鮮や共産主義中国の魔の手から守った「自由主義陣営の国」である(あった)。

しかし文政権は、これほどひどいとは選挙の時には有権者が思っていなかったであろうが、あくまで国民の普通選挙によって選ばれている。

米国が、文政権に対して一応の敬意を払うのも、国民の選挙で選ばれたからである。しかし、2020年4月15日の国会議員を選ぶための総選挙で惨敗しながらも、文大統領が失脚しなかったとすれば、どうであろうか?

10月14日に曺国法相が電撃的に辞任を発表したが、同法相は就任から35日目で検察改革にも失敗した。これまで韓国の大統領は、職を失ってから悲惨な目にあってきたが、文氏も例外では無く、曺国法相の行いによって、マグマのようにたまっている検察の「恨(ハン)」を恐れ、夜も眠れないかもしれない。

したがって、死に物狂いで選挙に勝とうするだろうが、文政権のでたらめぶりが明らかなのに、選挙に勝利すれば、それは「国民の責任」とも言える。したがって、韓国民そのものが米国の敵になりかねないのだ。

これに関しては、日本も他人事ではない。オールドメディアに踊らされたとはいえ、2009年8月に「悪夢の民主党政権」を誕生させたのは、日本国民による選挙だ。幸いにして、自らの過ちに気がついた日本国民によって、3年で同党が政権の座を追われたのは不幸中の幸いだ。もしあのままであったら……と思うと背筋が凍りつく。

韓国民が、文在寅政権に同じような賢明な判断を下せるかどうかが来年の4月15日に明らかになる。もっとも、それに先行して軍事クーデターなどが起きればこの限りではないが……。


クーデターはまず北朝鮮で起こるのか?

金正恩委員長の叔父(金日成の息子)である金平一(キム・ピョンイル)駐チェコ大使が最近、31年間もの海外勤務の任を解かれ、北朝鮮に帰国した。

金正男氏の長男である金 漢率(キム・ハンソル)氏とともに、北朝鮮の革命組織・自由朝鮮が担ぎ上げようとしていた(本人は断ったとされる)人物である。

「自由朝鮮」の力は侮れない。また、ハンソル氏と自由朝鮮との関係も色々取りざたされているし、現在同氏は米国・FBIの保護下にあるとされる。

金正恩氏の真意はわからないが、「勝手に決めた年末までの交渉期限」を米国が無視すれば、振り上げた拳をおろせなくなって、米国の軍事行動を誘発する動きに出るかもしれない。

しかし、それ以上に可能性が高いのが、金一族の暴挙によって「心中」させられるのを望まない軍部のクーデターだ。特権階級である軍幹部は「失うには大きすぎる」ものを沢山もっているのである。


香港騒乱は広東省まで広がっている

区議会選挙での圧勝や、米国での相次ぐ人権法案の成立・可決によって民主派が勢いづいている中で、習近平政権は対応に苦慮している。その中で、共産主義中国に忖度する日本のオールドメディアは別にして、世界中のメディアが広東省における暴動を頻繁に報じるようになっている。

もちろん、中国における暴動はこれまでも年間10万件ほどあったと推計されるが、やはり「情報統制社会」である大陸中国においても、口コミなどによって情報は伝わるものである。

香港から勇気をもらった大陸の人民が、より強く自らの権利を主張しはじめたと見て間違いないであろう。

また、香港騒乱をきっかけに、世界中のメディアが共産主義中国における人権侵害に注目するようになり、頻繁にニュースに取り上げられるようになったことも影響している。

共産主義中国に忖度し、ガラパゴス的報道を続ける日本のオールドメディアのニュースがたれ流されている日本で、他人事のようなムードが続いているのは悲しいことだ。良識ある日本人は、オールドメディが流すフェイク・ニュースなど無視して、真実を見つめるべきであろう。

「グローバル・スタンダード」で見れば、習近平政権の運命は風前の灯であり、「革命」や「クーデタ」もかなり現実的な可能性として浮上している。

その中で、安倍政権がいまだに習近平氏を国賓で呼ぼうとしているのは言語道断であることは、11月27日の記事「習近平を『国賓』で呼ぶのは日本の国益に反すると断言できる理由」で述べたとおりである。

そもそも、厄介な共産主義中国という隣国の肥大化のきっかけをつくったのは、米国の頭ごしに「日中国交正常化」を行った田中角栄氏の「負の功績」である。しかも、角栄氏の勝手な行動に激怒した米国が、ロッキード事件を仕組んで政治生命を断ったとも噂される。

筆者はこれまでの安倍外交は、明治以来の首相の中で最高の結果を生んだと賛美していたが、この「この習近平氏来日」ひとつで、これまでの功績がすべて水泡に帰するかもしれない。

安倍首相には冷静かつ理性的な判断を望みたい。


海上保安庁では日本海は守れない

また、改憲論議に関しても、もしかしたら今は力をためているのかもしれないが、迫力不足なのは否めない。

12月12日公開の「日本は侵略されて初めて『憲法改正』を行うつもりなのか…?」で述べた様に、日本が侵略を受けてから泥縄式に憲法改正(そうなったら国会が正常に機能するかわからないが……)するなどということがあってはならない。

限られた予算と人員で、懸命に北朝鮮船を取り締まる海上保安庁には頭が下がるが、焼け石に水だ。

中韓北のいずれか、または全部が崩壊した場合、今のままでは、日本の安全保障は風前の灯といえる。

5月29日の記事「世界経済低迷の最大原因・中国が退場すればデフレが終わる」や、7月24日の記事「対韓輸出規制でわかった、『ニッポンの製造業』が世界最強であるワケ」で述べた様に、中韓いずれの国の混乱も日本の「経済」には、それほど大きな影響を与えないと思うが、安全保障は別問題である。

特定の野党の妨害工作にまけずに、「日本海防衛」を固めることに注力すべきである。


目に見えない脅威にも備えよ

日本が直面しているのは「目に見える脅威」だけではない。

ニュージーランドの現職国会議員(中国出身)が中国のスパイ容疑で、2017年に情報機関の捜査を受けている。この議員が中国軍の教育機関(洛陽外国語学院)に通っていた経歴を隠蔽していたことが捜査の始まりだ。洛陽外国語学院は、中国軍唯一の外国語大で、いわゆるスパイの養成を行う学校である。

また、同じ年には、オーストラリアの2大政党が、中国共産党とつながりをもつ富豪2人から長期にわたり、巨額の献金を受け取っていたことが明らかになっている。

さらに、今年の11月24日には、高級車ディーラーの男性に100万オーストラリア・ドル(約7400万円)を支払い、「メルボルンの選挙区から連邦議会選に立候補させようとした」という中国の工作疑惑をオーストラリア・大手メディが報じている。この男性は、2018年末に、スパイになるよう打診されたと明かし、今年3月にモーテルの部屋で死亡しているのが見つかっている。

共産主義中国は、自国から遠く離れた国々でも国会議員に対して、活発な工作活動を行っているのだ。

隣国であり、領土問題を抱えている世界第3位の経済大国である日本の国会議員に対する工作活動を北朝鮮や韓国も含めた国々が当然行っていると考えるのは、極めて自然だと思う。


【私の論評】来年は米国大統領選挙と、イラン議会選挙が日本の安保に大きな影響を与える(゚д゚)!

冒頭の記事で、大原氏は、米国における人権問題について以下のように主張しています。
しかし、「人権問題」が主張の根底にある民主党左派、あるいはもっと広く言えば良識ある米国民は、「経済的利害」だけでものを考えているのではなく「政治信条」で正邪を判断する。 
「人権問題」は、普段騒がしい自称人権活動家(人権屋)が香港やウイグルについてはだんまりを決め込んでいる日本と違って、「米国の建国の理念である自由と平等」に関わる核心的利益であるから、これに関して米国民は妥協をしないであろう。 
したがって、本音では「そろそろ潮時かな」と思っていたとしても、民意に敏感なトランプ大統領が、共産主義中国に対してより強硬な姿勢をとり続ける可能性がかなりある。
「人権問題」は、米国では避けて通れない問題なのです。 この人権問題に関しては、アジアだけではなく、中東にもみられます。

マイク・ポンペオ国務長官は米国が19日、イラン反体制派に極めて厳しい判決を言い渡したイランの悪名高い2人の「裁判官」をブラックリストに入れたと発表し、最近のイランの全国的な抗議活動に参加する勇敢な人々を支持すると述べました。

マイク・ポンペオ国務長官

国務省で2019年12月19日、ポンペオ長官はこう語りました。「米国はトランプ大統領の下、イランの国民を支持してきたし、今後も支持する。我々の公然の支持、倫理的支持が大切だ。我々が正義を要求することが重要だ」

「11月に始まり加速した抗議は、イラン国民がもううんざりしていることを明らかに示した。彼らはもう飽き飽きしている。政権の経済的な失敗にうんざりしている。国の財産を私物化する政治家にうんざりしている。また人間らしさの特徴として我々一人ひとりに由来する、人間としての基本的、根本的な尊厳を認めない政権にうんざりしている」とポンペオ長官は語りました。

「何千人もの人のことを思い出して欲しい――みなさんはその人たちの事を知っている――1988年の抗議後に牢獄で処刑された何千人もの人たちの事を、1999年の抗議で虐殺された学生のことを思い出して欲しい」

「それから2009年の抗議のことを思い出して欲しい」

「現在も同じ話だ」

「政権は11月半ばから何百人もの抗議者を殺害している。おそらく千人以上だ」

「政権は自国内で起きている恐怖を世界に見られるのを止めるために、基本的な通信手段であるインターネットを遮断した」

ポンペオ長官は、国際信教の自由法の下でイランを「特に懸念される国」に再指定したと述べました。

「世界はイランが基本的・根本的信教の自由の最悪の侵害国の1つであることを知るべきだ」とポンペオは語りました。

「2番目に、本日米国財務省は2人のイラン人裁判官、モハマド・モギッセとアボルガッセン・サラバティに制裁を課す」

ポンペオ長官はサラバティを「政権の圧制の道具であって、公平な正義の味方ではない」としました。

「3番目に、我々は移民国籍法の下で、平和的抗議者の虐待、拘留、殺害に責任を負うか加担する、あるいはその表現や集会の自由を妨げる現職元職のイラン高官に対するビザを制限している」

「我々の行動ではこうした人物の家族に対するビザも制限する。イラン全国の市民から提供されている資料は、我々がこの新たな権限を利用して本当の圧力を加え、イラン国民の自由と正義を否定する人々に責任を取らせる上でかけがえのないものとなるだろう」

「国民の子供を殺す悪党が、米国留学のために自分たちの子供を送ることは許されない」

「だがたとえ何があっても、私は何カ月もいってきたことをイラン国民に伝え、必要である限りずっといい続ける。つまり、米国はみなさんの声を聞いている。米国はみなさんを支援する。米国はみなさんを支持する」とポンペオ長官は続けました。

最近、米国とイランの対立が一段と鮮明化しています。その背景には、来年の米大統領選挙がある。トランプ大統領とすれば、トランプ大統領の大きな支持基盤でもあるキリスト教福音派からの支持を増やして選挙戦を有利に進めたいとの思惑がありそうです。

  ドナルド・トランプ大統領と共に祈った米国の福音派指導者ら=2017年11月11日
          ホワイトハウスの大統領執務室で

ここで日本にとっても大きな問題は、ブログ冒頭の記事のように、韓国・北朝鮮・中国の特ア三国のいずもが、今後激震に見舞われててもおかしくはない上に、さらに、米国とイランの対立がさらに激化しつつあり、しかもトランプ政権としては、これを見過ごすことができないことです。

アジアと中東で同時に、大きな危機が生じた場合、トランプ政権としては、アジアを優先すると考えられます。なせなら、イランは現状では核を保有しておらず、経済的にも大きくないです。

一方、アジアでは、中国の経済は大きく、中国も北朝鮮も核を有しています。しかも、米国はもはや、原油の輸出国であり、中東の原油は米国にとっては、さしたる問題ではありません。どちらのほうが米国にとって大きな問題なのかは、一目瞭然です。

ただし、イラン等でなにかが起こった場合、トランプ政権はこれを無視することができない事態もあり得るということを忘れるべきではありません。

米国のトランプ大統領は2017年の就任以来、核開発の疑いのあるイランに対し強硬姿勢を強めています。オバマ前政権による制裁解除でイラン経済は回復に向かうとみられていましたが、トランプ政権は核合意からの離脱を表明し、制裁を再開しています。トランプ大統領は今年9月の国連総会の機会にロウハニ大統領との首脳会談を模索しましたが、イラン側が拒否し見送られています。

そうしたなか、4年に1度のイラン議会選(定数290議席)が来年2月21日に投開票されます。前回の2016年は保守穏健派のロウハニ大統領を支持する勢力が反大統領の保守強硬派を上回りました。翌2017年の大統領選ではロウハニ氏が再選を果たし、融和路線が信認されています。ただ、議会は独立派を除くと保守穏健派の強硬派に対するリードは決して大きくないため、強硬派が多数となる可能性もあります。

トランプ政権による制裁の効果は絶大です。イラン産原油の禁輸措置により昨年から今年にかけてイランの原油輸出は激減し、同国の財政を圧迫。イランに進出していたフランス企業なども撤退し、製造業を中心に低迷が続いています。通貨リアルはドルに対し1年で6割も減価して、インフレと失業率の高止まりを招きました。そうした事態が国民の生活にも影響を及ぼし、11月には大規模な反政府デモに発展しています。

この反政府デモは、先月にはガソリンの補助費カットをめぐり全土に広がりました。死亡者数は数百人にのぼり、政府もそれを認めています。こうした経緯を踏まえ、イラン政府はシリア問題で歩調を合わせるロシアから50億ドルの融資を受け、来年度予算を編成。ただ、デモに対する当局の弾圧は、2期目のロウハニ政権への支持を弱める要因となりかねず、議会選の結果にも影響を与えそうです。
もし、強行派が、2月に行われるイラン議会選で勝利を収めた場合、中東でなにか突発的な出来事が起こる可能性もあります。

これに対処するため、米国が中東に空母などの機動部隊や、陸上兵力を送った場合、当然のことながら、アジアの米軍は手薄になる可能性があります。

特に、現在の米軍は、世界中で二正面作戦、三正面作戦などできない状況です。これについては、以前のこのブログにも掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
【国家の流儀】韓国と連動して中国、ロシア、北朝鮮による「日本海」争奪戦が始まる…安倍政権はどう対応するか―【私の論評】二正面作戦不能の現在の米軍では、日本を守りきれないという現実にどう向き合うか(゚д゚)!
海自のイージス艦「あたご」

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下にこの記事から一部を引用します。
中露や中東の軍事的脅威に対応する米軍の能力が「限界」にあるという厳しい評価が下されたのです。これは、米軍事専門シンクタンクによるもので、「現在の姿勢では、米軍は重要な国益を守るとの要求に、わずかしか応えられない」と強調しています。

問題なのは、特に海軍において、この相対的弱体化に即効性のある解決策がないことです。「世界最強」のはずの米軍に何が起こっているのでしょうか。

評価は著名な米保守系シンクタンクのヘリテージ財団によるものです。同財団が10月末に発表した「2020年 米軍の軍事力指標」と題する年次報告書は、米陸海空軍と海兵隊の軍事的対処能力を、非常に強い▽強い▽限界▽弱い▽非常に弱い-の5段階で評価していjrます。ただ、基準は「2つの主要な戦争を処理する能力」などとしており、2正面作戦を行うにおいての評価であるあたりが超大国米国らしいです。
この5段階で「限界」とは、乱暴な言い方をすれば「戦争になっても勝てるとは言えず、苦い引き分けで終わりかねない」、あるいは「軍事的目標を達成するのは容易ではない」ということです。

同報告書では欧州や中東、アジアの3地域での軍事的環境を分析。例えば中国については「米国が直面する最も包括的な脅威であり、その挑発的な行動は積極的なままであり、軍事的近代化と増強が継続している」などと、それぞれの地域の脅威を明らかにしたうえで、対応する陸海空軍などの米軍の能力を個別評価しています。ところが驚くことに、その内容は、「限界」ばかりなのです。
米国は、世界規模での、大規模な二正面作戦はできないのです。 トランプ大統領は、元々企業家ですから、このことの意味は十分理解していると思います。企業活動においては、資源が有限ということは、常識であり、何もかも同時に実行しようとする事業家など存在しません、優先度の高いことから実行するのが常識です。

しかし、そのトランプ氏でも、たとえばアジア方面で、小康状態が確実に保てると判断したときに、中東で問題が起これば、中東に力をいれるかもしれません。その時に、突如としてアジアで大きな問題が起きたときに、その問題に迅速に対応することができない等ということは、十分想定できます。

これは、今回は来年は米国の大統領選挙や、イラン議会選挙があるので、特にそういうことがいえるかもしれませんが、来年以降も同じようなことが起こる可能性は否定できません。

このようなことが起きた場合、日本はアジアに位置しており、アジアの危機は日本に大きな悪影響があります。また、中東で何かがおきたときには、日本は中東の石油に大きく頼っていることから、これも大きな悪影響があります。

これに対処するためには、憲法改正は無論したほうが良いですが、それにはまだ時間がかかりそうですから、憲法改正をしなくても、憲法解釈を変えるとか、あるいは有事立法ということで、どのような方法でも噛まないので、有事のとき、あるいは有事になりそうなときには、たとえば、敵基地を先制攻撃できるようにするとか、自衛隊が防御できるようにするなどのことを真面目に議論して、実行すべきです。

少なくとも侵略されて甚大な被害を受けた後に、初めて憲法改正をしたり、解釈の変更や有事立法をするなどのバカ真似はやめるべきです。

もうこれだけ、目にみえる危機が迫っているのですから、有事立法など積極的にすすめるべきです。野党もただ反対というのではなく、有事を想定して、あるべき姿を模索しつつ、これに関しては米国の民主党がトランプ政権の中国との対峙には両手をあげて賛成しているように、政府与党に協力すべきです。

そうでなければ、存在意義が疑われますので、有権者は、選挙で野党には票をいれるべきではありません。

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