2020年12月17日木曜日

中国による米選挙介入疑惑、トランプ政権が新たな情報入手か―【私の論評】中国による選挙介入疑惑は何らかの形で解明されるべき(゚д゚)!

 中国による米選挙介入疑惑、トランプ政権が新たな情報入手か

ラトクリフ米国家情報長官、報告書の議会提出保留を検討-関係者
米国家情報長官、中国の脅威を十分に反映した報告書を望む

 11月3日の米大統領選挙に外国勢力が介入した可能性について、ラトクリフ米国家情報長官は報告書の議会提出を保留することを検討している。米有権者に影響を与えようとした存在として、中国にもっと言及するべきだというのが理由。事情に詳しい複数の関係者が明らかにした。

 トランプ大統領が選挙結果の受け入れを拒む中、同報告書は18日に議会への提出が予定されている。

 情報の機密性を理由に匿名で語った関係者によると、ラトクリフ氏は中国がもたらした国家安全保障上の脅威を十分に反映した報告書を望んでいる。 

ラトクリフ米国家情報長官

 トランプ政権ではラトクリフ氏のほか、オブライエン大統領補佐官(国家安全保障担当)、ポンペオ国務長官、バー司法長官らが今夏、米選挙に対しては中国がロシアよりも大きな脅威だと示唆していた。ただ、当時の情報機関の評価はそうした主張を支持していなかった。

 関係者らによるとラトクリフ氏が懸念を強めたのは、トランプ氏の再選を阻むために中国指導部が取った行動、もしくは立てた計画についてより詳しい最新情報が出てきたことが理由。

 関係者の1人は、その情報の一部は中国語によるもので、選挙の前後数週間で集められたものだと述べた。内容についてはまだ評価中だという。

 中国側は以前、トランプ政権の主張を虚偽だと否定していた。在ワシントン中国大使館はコメントの要請に応じていない。国家情報長官室(ODNI)はコメントを控えた。

【私の論評】中国による選挙介入疑惑の解明は、誰が大統領になるかよりも、米国と他の民主主義国にとってはるかに重要(゚д゚)!

今回の米大統領選で、トランプ大統領の陣営は大規模な不正が行われたと主張していますが、そこには中国の関与があったと断言しています。「両雄並び立たず」という格言が示すように、バイデン政権の誕生は、米中の力関係を逆転させ、中共の世界支配へ王手をかけるものです。

オブライエン米大統領補佐官(国家安全保障問題担当)は9月4日の記者会見で、外国政府による米大統領選への介入工作について「中国が最も活発だ」と非難しました。「過去40年の米外交で最大の失敗は対中政策だ」と述べ、中国への批判を強めました。

オブライエン氏は中国、イラン、ロシアを挙げ「この三つの敵国が米国の選挙を妨害しようとしている」と指摘。中でも「中国による米政界への工作が最も大規模」と強調し「介入しようとすれば深刻な結果を招く」と警告しました。

1989年に中国当局が民主化運動を武力弾圧した天安門事件を引き合いに「目を背ければ、中国は豊かで民主的になると思い込んだ」と過去の米政権の対中姿勢を問題視。中国による少数民族ウイグル族や香港、台湾への強圧的姿勢を例示し「全く逆に、人権侵害は年々ひどくなっている」と非難しました。

今度の選挙に中国共産党が関係したという様々な情報が巷に流れています。12月に入ってからの主なものを下に列挙します。

第1に、「紅3代」の伊啓威は中国広東省の工場で米大統領選挙の投票用紙が印刷された事実を暴露している(『エポックタイムズ』「中国製の偽投票用紙が米国に大量流入 選挙介入狙う 元高官子弟が証拠動画を公開」12月8日付)。


第2に、FBIが中国など外国での取引で税法やマネーロンダリング(資金洗浄)関連法に違反の疑いがあるとして、バイデン候補の息子、ハンター・バイデンに事情聴取を行っています(『CNN』「米連邦当局、バイデン氏息子を刑事捜査 中国ビジネスが焦点」12月10日付)。また、FBIが(バイデン候補に投じられたと疑われている)不正票に関する捜査がようやく動き出しました。(『BonaFidr』「FBIが50万枚の偽造されたバイデン票を犯罪捜査中―接戦州の4州が捜査対象」2020年12月12日付)。

第3に、シドニー・パウエル弁護士が大統領選挙当日、(日米開戦の象徴「パールハーバー」を模して、主に中国からの)「サイバー・パールハーバー」が起きたと発言しています(『Media Matters』「シドニー・パウエル氏、2020年の選挙は「サイバー・パールハーバー」攻撃の対象だったとルー・ドブス氏に語る」12月10日付)。

第4に、リン・ウッド弁護士が、中国製の投票用紙がメキシコ経由で米国に入ったと証言しました(『新唐人テレビ』「リン・ウッド弁護士『米国は決して共産主義に支配されない』」12月12日付)

第5に、中国人民大学国際関係学院副院長の翟東昇が、思わず口が滑ったのか、米中エリート同士の深い関係について暴露してしまいました(『看中国』「習近平のシンクタンクが米国エリート階層への潜入詳細を暴露」12月8日付、及び 同「翟東昇氏の演説は炎上を続け、彼が言及した人物の正体が明らかになった」12月11日付)。


第6に、「ロシアゲート」疑惑の急先鋒、米民主党エリック・スウォーウェル(Eric Swalwell)議員らが、中国共産党の女性スパイ(方芳<Christine Fang>)のハニートラップにかかった事が報じられています(『蘋果日報』「米情報機関:大量の女性スパイ  中国の女性スパイの手法は最高レベル」12月13日付)。

中国共産党の女性スパイ(方芳<Christine Fang>)

12月に入ってすら、これだけの情報が巷に流れているわけですから、これに関してはやはり、最高裁判所で審議をすべでした。

ただし、テキサス州パクストン司法長官やパウエル軍事弁護士の提訴は、『国家反逆罪』の審理であり、連邦最高裁の管轄外だという見解も出てきました。

連邦最高裁は、第3条の 反逆条項1および2により、 これらの提訴は連邦最高裁の管轄外というものでしたが、今回の不正選挙の疑義の中には、国家反逆罪とまではいかなくても、様々な不正疑惑があったはずで、それは管轄内であると考えられます。

次のシナリオ としては『軍事法廷』 か 『外国情報監視法(FISA)裁判』が考えられます。ただ、残念なのは、これらの裁判はその性格から審議は非公開となります。

FISA裁判所の権力は米国最高裁判所と並行し、判事による判決は最終判決として確定し、上告はありません。法廷審理は非公開であり、場合によっては一部抜粋された情報を公開することもありますが、すべての情報を公開することはまずありません。

訴訟の秘密性により、米国政府が許可した特別免許を保有する弁護士の出廷のみが認められています。国家安全を脅かす情報が一旦確定すれば、実質的抗弁すらできない状況であるため、FISA裁判所の被告にさえなれば、ほぼ有罪確定となります。

トランプ陣営が外国情報監視法裁判所に提訴できた場合、バイデンが敗北したと見て良いと思います。

国家情報長官「ジョン・ラトクリフ氏」のこれらに向けての早々の動きが注目されています。

ラトクリフ米国家情報長官は、米国と世界の民主主義にとって中国がナチスドイツ以来最大の脅威であり、政策担当者は中国政府との長期的な対立に備える必要があると指摘しました。

ラトクリフ長官は、中国をより重視すべく、850億ドル(約8兆8200億円)の情報予算の中で既に資源を移しつつあると述べた。「中国の意図や活動に関する率直な洞察を政策担当者に与えるのに必要な資源」が米情報コミュニティーに備わるようにするといいます。

3日付の米紙ウォールストリート・ジャーナルへの寄稿で、同長官は「中国は現在の米国にとって最大の脅威であり、世界中の民主主義と自由に対する第2次大戦後最大の脅威だ」と指摘。「情報は明確に示している。中国政府には米国やその他地域を経済、軍事、技術の面から支配しようとする意図がある」としました。

さらに同長官は「今後、中国を米国家安全保障の第一の焦点とすべきだ」と主張。「中国政府は米国との終わりなき対立に備えている」と続けました。

民主党の一部の議員は、中国による選挙介入についての懸念を一蹴していました。日本では、選挙直後からバイデン勝利の決め打ちをしていました。一部の保守層にも同じような動きがありました。彼らは、大統領選挙が終わった直後から、「不正はあったかもしれないが、選挙の結果を左右するだけのものではない、そんなことよりも日本はバイデン政権への対処法を考えるべき」と早急に結論を出していました。

このような性急な対応は危険です。中国に対してそうして米国の有権者に米政府が中国政府による干渉を「厄介だとは思っても危険だとは思っていない」というメッセージになりかねないです。日本の一部の早急な結論を出した保守層にも同じようなことがいえます。

それが中国をさらに勢いづかせるのはほぼ確実で、そうなれば彼らは米国をはじめとする先進国に対するさらなる介入工作を続けるでしょう。現に彼らは、南シナ海でのますます積極的な活動を含め、そのほかの地政学的な目標を追求する上でも同様の戦略をとっています。

行政や立法の当局者による早まった発言は、中国による選挙介入に関する米政府の知識がきわめて少ないという厳しい現実を無視したものでもあります。西側諸国では、ロシアの脅威に対処するための先進技術の開発が進む一方で、中国による悪質な活動をリアルタイムで暴き、阻止する能力や手段はないのが現状です。

最近では、オーストラリアでも、中国の情報機関が中国系の男性に資金を出して選挙に立候補させようとしたことがありました。オーストラリアの例が参考になるならば、中国による複雑な政治介入工作を解明するのには、何年もの時間がかかる可能性があります。

さらに悪いことに米国の政界は党派間の対立が激しいため、オーストラリア政府が採用したような、市民社会や学会、諜報コミュニティーや実業界からの先入観にとらわれない意見に頼る形の調査を行うのは難しいです。

中国による米選挙への介入について、これまで以上に統合的な対処を行い、民主・共和両党が協力して一般市民に脅威を伝える努力をしない限り、米国は2022年にも2024年にもほぼ確実に、また同じような状況に直面することになるでしょう。そして日本も含む他の民主主義諸国も適切な対策を講じない限り、同じような介入に直面することになる危険があります。

米国はまず、党派を超えて中国による介入の脅威を認めることで、第一歩を踏み出すべきでしょう。

そうして、今回の中国による選挙介入疑惑は何らかの形で解明されるべきでしょう。これは、誰が大統領になるかよりも、米国と他の民主主義国にとって、はるかに重要なことです。ただし、結果としてトランプ氏が再選されるなら大歓迎です。

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2020年12月16日水曜日

台湾企業の対中依存軽減に必要な「南向政策」と米台協力―【私の論評】英台を速やかにTPPに加入させ、中国が一国二制度を復活し香港を元に戻すなら香港を加入させよ!

 台湾企業の対中依存軽減に必要な「南向政策」と米台協力

岡崎研究所

 台湾の蔡英文政権は11月20日に、米国駐台湾代表処(AIT)との間で初の「経済繁栄パートナーシップ対話」を開催し、今後5年間にわたる覚書に署名した。その内容は、米台間の経済協力強化だけではなく、米台のアジア・太平洋地域への共通の取り組みを模索するものとなっている。


 Taipei Timesの11月28日付け社説は、「中国は過去数年、東南アジアやオセアニアに対し、米台を排除する方向で、投資を拡大してきた」と述べている。そして、米台としては、東南アジア、オセアニア諸国に対する今後のインフラ支援やサプライチェーン面での協力を通じ、これら諸国の対中依存の脱却を図るべし、と論じている。興味深い内容であると言える。

 中国は「一帯一路」政策を通じ、カンボジア人を土地から追い出し、環境を破壊して地域物流拠点を作り、また、スリランカでは、融資を返済できないことの対価として主要な港湾を買収するなどしてきた。台湾、豪州、ニュージーランド、米国にとって、南アジア、東南アジア諸国におけるインフラ支援から、大きな利益を得ることができる。それは、これらの諸国を対中国依存から解放し、生産活動を友好的なサプライチェーンに多様化してゆくことである。

 蔡英文政権自身、台湾が中国との間の貿易・投資の対中依存度を下げる方向で、台湾企業を中国から東南アジアへ移行させるという、いわゆる「南向政策」を進めてきてからすでに数年になる。しかし、数字から見る限り、台湾経済の中国依存度はその後も基本的には大きくは変わっていない。

 台湾の企業からすれば、中国の意に沿わない方針を取れば、中国がそれを利用して、台湾企業への締め付けを強化するのではないかとの警戒意識があるため、慎重にならざるを得ない面があるのだろう。かつて陳水扁・民進党政権下で、当時中国に進出していた台湾の「奇美企業」が「台湾独立派」であるとして、中国での営業活動から排除されようとしたことがある。このケースは台湾の関係者の記憶にはいまだ鮮明に残っているようだ。

 ただし、台湾の企業自身が中国市場への依存度を徐々に減らしていくためにも、「南向政策」を続け、米国と一緒になって、対アジア・太平洋政策を促進することは、中国の拡張主義を抑止するための安全保障上の重要な手段であることに変わりはなく、今日、台湾内部においてもそのような見方が強まっていると言って良い。

 米台間のさらなる緊密化は日本にとっても、懸案となっているTPP(環太平洋経済連携協定)への台湾加入を促進する良い機会となろう。最近は、中国自身がTPPに加入することについて意欲を示し始めたが、これは、米国の政権交代や、台湾のTPP加入の可能性等に対する警戒感や牽制から出ているのではないかと思われる。

【私の論評】英台を速やかにTPPに加入させ、中国が一国二制度を復活し香港を元に戻すなら香港を加入させよ!

菅義偉首相は11日のインターネット番組で、中国や韓国による環太平洋経済連携協定(TPP)への参加の可能性について慎重な見方を示しました。「参加11カ国の了解がなければ簡単には入れない」と述べました。

APECの関連業にあてた菅総理のビデオメッセージ

菅義偉首相は先月20日、アジア太平洋経済協力会議(APEC)の関連行事「CEO(最高経営責任者)との対話」にビデオメッセージを寄せ「環太平洋経済連携協定(TPP11)の着実な実施と拡大により、アジア太平洋自由貿易圏の実現を目指す」と呼びかけました。

TPPが他の枠組みより高い水準のルールの順守を要求することを踏まえ「大きなハードルがある。戦略的に考えながら対応する」とも語りました。

中国は今のままだと、TPPに加入できません。現在無理に入ろうとすれば、TPPに加入するために、民主化、政治と経済の分離、法治国家化を実現しなければなりません。これをすれば、中国共産党は統治の正当性を失い崩壊します。

そのようなことは、最初からわかりきっているのに、なぜTPPに入ろうとするのかといえば、結局のところTPPのルールを中国にも入りやすいように変えて、自由貿易の美味しいところだけをつまみ食いしようという魂胆でしょう。

しかし、日本をはじめ他のTPP加盟国もこれに与することはないでしょう。中国ができるとすれば、一国二制度を復活して、香港を元の状態に戻し、その上で香港をTPPに加入させるということならできるかもしれません。

中国が間接的にでも、TPPに加盟したいなら、このくらいしか方法はないでしょう。それに、TPPの現在の加盟国も、香港を元の状態に戻してその上で参加するか、それこそ大陸中国本土が香港のようならなければ、加盟を許すべきではありません。

厄介なのは、TPPに入る意向をみせた中国に追随する韓国です。

韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領が、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)への参加を検討すると表明しました。

文在寅韓国大統領(左)、習近平中国主席(右)

これまでの韓国の通商交渉は、2国間の自由貿易協定(FTA)中心だでした。これは相手国を選び、対象をモノの関税だけに限定するというスタイルです。

韓国の2国間FTAの相手国をみると、米国、欧州連合(EU)、オーストラリア、カナダ、ニュージーランド、ベトナム、中国などです。TPP締結国11カ国のうち、日本とメキシコを除く9カ国とFTAを締結しています。

韓国は今まで2国間FTAで日本を避け続けてきたのは明白です。もし、韓国と日本がFTAを締結すれば、韓国の産業構造は日本と似ており、両国で関税を互いに引き下げた場合、大量の日本製品が韓国に流入し、韓国内の産業を毀損することを韓国が恐れたためでしょう。

日本が入っているTPPに韓国が入れば同じことが起こります。だからこそ、韓国は最近まで、TPPに加入する気はなかったのでしょう。

さらに、TPPでは加入国の国有企業改革が求められますが、韓国には未だ韓国電力公社、韓国石油公社などの政府系企業が存在しており、TPPに加入すれば大きな影響を受けることは必至です。さらにコメの自由化を求められるます。

そのため、韓国はTPPに参加せず、中国とのFTAを優先しました。韓国がTPPに参加しなかった表向きの理由は、中国とのFTA交渉のために実務的にできなかったというものでした。実際、朴槿恵(パク・クネ)政権の時、TPP交渉が行われている間、韓国は中国とのFTA交渉に没頭していました。

そのあたりから、韓国の中国従属スタイルが強化されていきました。その中国がTPPに参加できないこともあり、中国を意識して韓国はTPPを加入しなかったという背景もあるでしょう。

日本はどう対応すべきかといえば、あくまで中韓が今のTPPルールを守るなら両国を拒む理由はありません。

ただ、先に述べたように、中国は今のままだとTPPには加入できません。韓国も相当ハードルが高いです。とはいいながら、中国よりは入りやすいです。

であれば、先程も述べたように、中国に対しては一国二制度を復活して、香港を元に戻せば、香港の加入を審査するものとして、中国が一国二制度を破棄する行動にでれば、香港の加盟をすぐにも取り消す旨を伝えるべきでしょう。それができないというのなら、中国不参加となっても良いでしょう。

韓国も相当ハードルが高いはずですから、ルールが守れないというなら不参加で良いでしょう。

そのようなことよりも、上の記事にあるよに台湾の参加を優先すべきです。そうして、現在EU との通商交渉が「合意なき離脱」になりそうな、英国のTPP参加も優先すべきです。

蔡英文台湾総統(左)とボリス・ジョンソン英首相(右)

そうして、米国の参加も視野にいれるべきです。TPP「拡大」は、米国と中国を牽制するだけではなく、混沌とする世界に新たな秩序をもたらし、世界を救うことにつながることになります。

このTPPを日本という軍事的・経済的覇権によらない国が旗振り役を務めたということが大きいです。

最早世界は、軍事・経済的覇権によって振り回され続けることに倦んでいるのだと思います。ここに、日本が世界でリーダーシップを発揮できる好機が訪れたともいえます。

そうして、いずれ日本はWTOにTPPのルールを元にしたルールをWTOの自由貿易のルールにすることを迫るべきです。

日本がWTOを改革のため、TPP協定の規定をWTOに採用するように働きかければ、元々オバマ大統領時代に、米国がTPPを推進しようとしたわけですから、これに対して米国も賛同せざるを得ないと思います。

単なる先進国だけの提案ではなく、アジア太平洋地域の途上国も合意したTPPの協定であり、しかも自ら加入の可能性を表明した協定をWTOに持ち込むことには中国も真っ向から反対できないでしょう。

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2020年12月15日火曜日

高橋洋一の霞ヶ関ウォッチ コロナ追加経済対策、批判的な報道は「まともだという証明」―【私の論評】ノーベル経済学賞受賞サミュエルソンが理論で示し、トランプが実証してみせた 「財政赤字=将来世代へのつけ」の大嘘(゚д゚)!

 高橋洋一の霞ヶ関ウォッチ コロナ追加経済対策、批判的な報道は「まともだという証明」

追加経済対策が決まった

事業費総額73兆円(財政支出40兆円)のコロナ経済対策がまとまった。筆者は、内閣官房参与でもあるので、政策決定には関与していないが、アドバイザーの立場だ。その観点から、マスコミ報道を見てみよう。

マクロ経済学では「まず規模」

日本経済新聞は、社説で「経済対策の規模が膨らみすぎてないか」という見解だ。

政府内にはいろいろな立場があるが、筆者から見れば、以下で理由を書くが、皮肉をこめていえばこれはありがたい見方だ。

日経新聞は、「無駄やばらまきを排除できたとは言い難い」といい、防災・減災事業(国土強靱化)をやり玉にあげ、「本当に必要な事業を選別したようにはみえない」としている。

公共事業が、コストベネフィット分析による費用便益費で採択されることを日経新聞は知っているのか。知らないのだろう。もし知っていれば、これまで割引率が4%と高すぎて、必要な公共事業が採択されなかったこともわかるはずだ。マスコミはこうした専門的な知見がないので、雰囲気でいい加減なことを書いている。この割引率は見直しが検討されており、今後の公共事業採択の可否を左右するものなので、日経新聞は取材して是非記事にすべきだろう。

日経新聞は社説の最後を「競うべきは『賢い支出』であって、経済対策の規模ではない」と締めくくっている。これでは、マクロ経済政策の基本がわかっていないと言わざるを得ない。

まず潜在GDPと実際のGDPの差であるGDPギャップは、内閣府の推計でも30兆円超もある。これを放置すると、半年後以降の失業率が上昇する。おそらく失業率2%程度上昇、失業者で見れば120万人程度が増えるだろう。それに伴う自殺者は6000人程度増えるだろう。それはコロナによる死者2400人の2倍以上だ。

マクロ経済政策の究極の目標は雇用の確保だ。それができれば自殺者の増加を抑えることもできる。

以上のことから、GDPギャップを経済対策の有効需要で埋めないと後で失業が増え、結果として命が失われるので、経済対策はまず規模というのが、マクロ経済学からは正解になる。日経社説を書いた人は経済学のイロハを学びなおしたほうがいい。

こうしたことから、日経社説で「大きすぎる」と批判されたのは、筆者から見れば、今回の経済対策が妥当だと評価されたようなものになる。

大量の国債発行をどう見るか

また、朝日新聞の記事では、今回の経済対策によりと大量の国債発行となることについて、「新型コロナ前から先進国で最悪レベルだった財政状況は一層の悪化が避けられない」と書かれていた。

これは間違いだ。これまでのコロナ対策では大量の国債発行がなされたが、ほとんど日銀が買い入れている。日銀買い入れ国債について利払いがされるが、それは日銀の収益になって日銀から政府への納付金になる。このため政府にとって財政負担はない。

これはやり過ぎればインフレ率が高くなるが、今のところ、コロナのためにインフレ目標には程遠い。こうした政府と中央銀行とのコラボは、日本だけではなく欧州でも行われている。

日経新聞や朝日新聞が批判的に取り上げたのは、今回の経済対策がまともだという証明だろう。

++ 高橋洋一プロフィール
高橋洋一(たかはし よういち) 内閣官房参与、元内閣参事官、現「政策工房」会長 1955年生まれ。80年に大蔵省に入省、2006年からは内閣参事官も務めた。07年、いわゆる「埋蔵金」を指摘し注目された。08年に退官。10年から嘉悦大学教授。20年から内閣官房参与(経済・財政政策担当)。著書に「さらば財務省!」(講談社)、「FACTを基に日本を正しく読み解く方法」(扶桑社新書)、「国家の怠慢」(新潮新書、共著)など。

【私の論評】ノーベル経済学賞受賞サミュエルソンが理論で示し、トランプが実証してみせた
「財政赤字=将来世代へのつけ」の大嘘(゚д゚)!

このブログでは、政府の経済対策については厳しいことも掲載してきましたが、それは菅政権による事業費総額73兆円(財政支出40兆円)のコロナ経済対策がまとまる前の話であり、さらに第二次補正予算の予備費10兆円が、つい最近まで使われず、7兆円積まれたままであることを批判したものです。

最新の報道では、政府は15日、追加経済対策を受けた2020年度第3次補正予算案を閣議決定しました。一般会計の歳出の追加額は21.8兆円で、税収減の穴埋めを含め新規国債22.4兆円を追加発行するとしています。


そうなると、真水の経済対策は約22.4兆円ということになります。高橋洋一氏は、コロナ対策には100兆円必要と語っていたことがあります。安倍政権でコロナ対策の約60兆使っていますから、菅政権ではこれに加えて、40兆使う必要があるわけです。今後来年の補正予算で、20兆くらいの真水の予算を計上すれば、経済対策としては満点になります。

これを考えると、日本の経済対策は金額的には、高橋洋一氏が語るように、まともといえます。

上の記事にもあるように、これまでのコロナ対策では大量の国債発行がなされたが、ほとんど日銀が買い入れています。日銀買い入れ国債について利払いがされますが、それは日銀の収益になって日銀から政府への納付金になります。

このため、政府にとって財政負担はありません。国債発行をし過ぎればインフレ率が高くなるるでしょうが、今のところ、コロナのためにインフレ目標には程遠いです。 

現状は、コロナショックで需要喪失なので、インフレの心配がなく、しかも通貨発行益を活用するので財政悪化もなく将来世代への心配もありません。こうした政府と中央銀行とのコラボは、日本だけではなく欧州でも行われています。 

この期に及んでも、まだ「将来世代への付け回し」というのは、呆れてしまいます。日銀以外が保有する国債についてはいずれ税金で返済するのですが、日銀が保有する国債はそうではなく、利払い負担も償還負担もありません。 

強烈なインフレにならない範囲で、国債発行という手法が使えるのです。不勉強なテレビのコメンテーターも似たような発言をしていますが、今や単なる無知をさらけ出しているだけです。

20世紀を代表する経済学者の一人であるポール・サミュエルソンは、たとえば戦時費用のすべてが増税ではなく赤字国債の発行によって賄われるという極端なケースにおいてさえ、その負担は基本的に将来世代ではなく現世代が負うしかないことを指摘しています。

なぜかといえば、戦争のためには大砲や弾薬が必要なのですが、それを将来世代に生産させてタイムマシーンで現在に持ってくることはできないからです。その大砲や弾薬を得るためには、現世代が消費を削減し、消費財の生産に用いられていた資源を大砲や弾薬の生産に転用する以外にはありません。

将来世代への負担転嫁が可能なのは、大砲や弾薬の生産が消費の削減によってではなく「資本ストックの食い潰し」によって可能な場合に限られるのです。

このサミュエルソンの議論は、感染拡大防止にかかわる政府の支援策に関しても、まったく同様に当てはまります。政府が休業補償や定額給付のすべてを赤字財政のみによって行ったとしても、それが資本市場を逼迫させ、金利を上昇させ、民間投資をクラウド・アウトさせない限り、赤字財政そのものによって将来負担が生じることはありません。

ノーベル賞を受賞した経済学者ポール・サミュエルソン氏

そして、世界的な金利の低下が進む現状は、資本市場の逼迫や金利の高騰といった経済状況のまさに対極にあるといってもよいです。それは、政府が感染拡大防止のために実施した経済的規制措置によって生じている負担の多くは、将来の世代ではなく、今それによって大きく所得を減らしている人々が背負っていることを意味します。そうした人々に対する政府の支援は、まさしくその負担を社会全体で分かち合うための方策なのです。

こうしたノーベル賞を受賞した経済学者であるサミュエルが、赤字財政そのものによって将来負担が生じることはないと述べ、事実米国のトランプ大統領が大規模な赤字財政を実行して、米国人の赤字財政に関する考えを変えてしまいました。

トランプ氏が経済政策面でもたらした最大のインパクトは、自らの想定とはかけ離れたものになるのかもしれないです。それは、財政赤字に対する米国人の常識を覆した、ということです。

トランプ氏は企業や富裕層に対して大幅減税を行う一方で、軍事支出を拡大し、高齢者向けの公的医療保険「メディケア」をはじめとする社会保障支出のカットも阻止し、財政赤字を数兆ドルと過去最悪の規模に膨らませました。新型コロナの緊急対策も、財政悪化に拍車をかけています。

これまでの常識に従うなら、このような巨額の財政赤字は金利と物価の急騰を引き起こし、民間投資に悪影響を及ぼすはずでした。しかし、現実にそのようなことは起こっていません。トランプ氏は財政赤字を正当化する上で、きわめて大きな役割を果たしたといえます。


米国では連邦政府に対して債務の拡大にもっと寛容になるべきだと訴える経済学者や金融関係者が増えています。とりわけ現在のような低金利時代には、インフラ、医療、教育、雇用創出のための投資は借金を行ってでも進める価値がある、という主張です。

このような巨額の財政赤字は金利と物価の急騰を引き起すこともなく、結局将来世代へのつけともならないでしょう。

ましてや、日本の場合は、デフレ傾向にあるのですから、インフレには程遠く、この状況を改善するには、国債を大量に発行して、感染対策にどんどん使うべきなのです。物価目標2%を超えるまで実行すべきなのです。そうして、日本は負債だけをみるのではなく、政府資産もみれば、トータルではさほど酷い財政赤字ではないのですから、なおさらです。統合政府(政府に日銀も含めた場合の政府)ベースでは、2018年くらいから、財政赤字どころか、黒字になっているくらいです。この状況は、米国や英国などよりも良い状況です。

大量の国債発行が将来世代への付け回しと主張する方々は、是非ともその内容を論文にでも書いて発表していただきたいです。これがノーベル賞委員会に受理されれば、サミュエルソンをはじめとする多くの経済学者の過ちを覆し、ノーベル経済学賞を受賞できます。日本では、未だ経済学賞の受賞者が出ていないので、日本からそれを出すという意味あいでも是非とも実行してみてください。無論これは、皮肉ですが・・・・・・

このブログでも何度か主張してきましたが、今回の戦後最大の危機のときに、今こそ大規模な積極財政と金融緩和をしなければ、大量の失業者や自殺者を出すことになり、その悪影響は長期にわたって続くことになり、それこそ将来世代に対してつけを回すことになります。

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2020年12月14日月曜日

GoToトラベル 28日から1月11日まで全国で停止へ 首相表明―【私の論評】GOTOトラベル批判は筋悪の倒閣運動の一種か(゚д゚)!

 GoToトラベル 28日から1月11日まで全国で停止へ 首相表明


 新型コロナウイルス感染症対策本部でGOTOトラベル全国一時停止することを
 表明する菅義偉首相(手前から2人目)=14日、首相官邸(春名中撮影)

 菅義偉首相は14日夕、首相官邸で開いた新型コロナウイルスの政府対策本部で、観光支援事業「Go To トラベル」を今月28日から来年1月11日まで全都道府県で一時停止すると表明した。

【私の論評】GOTOトラベル批判は筋悪の倒閣運動の一種か(゚д゚)!

すっかり悪者になったGoToですが、同様の政策を実施していない韓国では13日、1000人超の感染者が発生しました。外出や店舗営業の制限を行っている欧米などでも感染は止まっていません。

『GoToトラベル』を停止することが、感染者の減少に直結するとは言えません。それに関するグラフを以下に掲載します。

下のグラフは、日本の感染者数の推移です。下のグラフで7月22日は、日本でGOTOトラベルが始まった日です。


私自身は、GOTOトラベルの開始そのものには当初は、反対でした。しかし、GOTOトラベルを開始してある程度時を経て9月、10 月あたりには、コロナ感染者数が減りました。そのため、GOTOトラベルを実施したとしても、旅館やホテルさらには、旅行に出かける人たちが、それなりのコロナ対策を実施すれば、感染そのものを増やすことはないのだと納得できました。

以下に韓国の感染者数の推移を掲載します。なお、上の記事にもあるように、韓国ではGOTOトラベルのようなものは開催されていません。



韓国に関しては人口が4000万人程度なので、日本の約1/3です。最近の韓国はコロナ感染者数が1000を超えた日もありますが、これを日本にあてはめると3000を超えたことになります。

これは、3000近くになった最近の日本の状況と良く似ています。しかし、この韓国ではGOTOトラベルのようなことは実施していません。以上のようなことをみるとGOTOトラベルだけをやり玉にあげるのはおかしいです。

さら、冬に入る頃には、寒気と乾燥で、感染者数が増えるだろうことは、春くらいから言われていたことです。そのとおりになったということもいえます。

観光経済新聞社は、このGoToトラベルキャンペーンについて旅行会社がどうとらえているのかを把握するため、主要な大手旅行会社に対してアンケート調査を実施。その結果、67%の会社が「大きな効果があった」とし、残る33%も「効果があった」と判断していました。

調査はJTB、KNT―CTホールディングス、日本旅行、東武トップツアーズ、阪急交通社、HISの6社に実施し、全社から回答があった。なお、最近Go Toトラベルキャンペーンの見直しについて検討されていましたが、各社の回答時期はその報道が出る前であるため、その辺りの要素は含まれていません。

以下に、この調査の結果を示すグラフを掲載します。


実業家の堀江貴文氏が4日、TBS「サンデー・ジャポン」に出演。GoToトラベルについて、北海道民で全国を駆け回っている堀江氏は、東京が対象となって使いやすくなったとして「めちゃくちゃ使おうと思います。ぼくホテル住まいだから、毎日GoToトラベル」と語りました。

 「たぶん家賃とかより安い。簡単に使える」とも。

これにデーブ・スペクターが裕福なのに罪悪感はないかと突っ込むと、「なんでなんで?おれだって税金払ってるもん、何の問題もないと思いますよ」と返しました。

 さらに時間をおいて杉村太蔵が話題を戻し、「堀江さんにかみつくわけじゃないですけど、居住目的でホテルを使った者がGoToトラベルの対象になるかは、ご確認をいただいた方が良いと思いますよ」と語りました。「たとえば、通勤の新幹線で使えるのかとなる。制度趣旨からいうと分からない」と指摘しました。 

堀江氏が「そうじゃなくて!居住かどうかなんか。ずっとトラベルしてんだから俺は」と返すと、杉村は「堀江さんが居住とおっしゃったから、ここで、自分で言ったから」「あなた様の理屈はあるかもしれませんけどね、行政には行政の理屈がありますからね」とたたみかけました。 

収拾がつかない言い合いとなり、堀江氏は「だから嫌なんだよ!もおーっ!また来たよ、もおーっ!」とお怒りでした。

ただ、経済を回すという観点からすれば、堀江氏のような裕福な人が、どんどんGOTOトラベルを使うということは、決して悪いことではなく、良いことだと思います。堀江氏のような人が大勢これを使えば、それで潤う人も大勢でてくるわけで、これに道徳論を出すのはいかがなものかと思います。

経済対策に道徳論を持ち出せば、効果的な対策ができなくなります。以前給付された所得制限なしの10万円の給付金も、テレビでお年寄りが「私はいらない」などと語っているのを報道しましたが、これも道徳論の一種でしょう。

これでは、まるで江戸時代です。江戸時代には幕府は景気が落ち込むと、倹約令などを出して、結局いまでいうところの、金融引締、緊縮財政をやって、かえって景気を落ち込ませていましした。その精神は、現在の財務省にも脈々と受け継がれているようです。

GOTOトラベルは、かなり筋の良い景気刺激政策だと思います。このような政策に、難癖をつけてどんどん封じていくと、本当に何もできなくなるだけになり、結果、財務省的な緊縮政策に加担するだけになると思います。

一時的にGOTOトラベルの全国的な停止は世論動向でいうとやむを得ところもあるのでしょうが、これで年末年始の移動の歯止めになり、感染拡大の歯止めに寄与することになるのでしょうか。はなはだ疑問です。 ただこれでこの政策を全面否定する動きが定着しないことを願いたいです。また、できるような時期が来たら、期間も規模も拡大して欲しいものです。

GOTOトラベル悪者論は、結局のところ、マスコミなどの倒閣運動の一つではないかと思います。ちなみに、現在内閣支持率は低下していますが、それもで自民党の支持率が上昇することでいわゆる「青木率」は80%以上の高水準です。野党やマスコミは、GOTOトラベルに反対しておきながら、経済が落ち込めば「なぜGOTOをやめたのか」と政府を糾弾するのではないでしょうか。そのような予感がします。

これは、倒閣運動に対抗するためにも、財務省の緊縮に対抗するためにも、国民のためを思えば、菅政権は近々解散総選挙をすべきと思います。

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2020年12月13日日曜日

コロナ“震源地”中国、いまだにWHOの調査受け入れず 責任の謝罪と賠償、制裁関税課すべきだ―【私の論評】中共が態度を改めなければ、最悪他国から恒常的に国交を絶たれる可能性がある(゚д゚)!

 コロナ“震源地”中国、いまだにWHOの調査受け入れず 責任の謝罪と賠償、制裁関税課すべきだ

看板の文字が消され、塀に囲まれた中国・武漢の華南海鮮卸売市場=10月

 中国湖北省武漢市で新型コロナウイルスの初症例が確認されてから1年で、世界の100人に1人を感染させ、死者は150万人を超えた。経済損失も約3000兆円と試算され、こちらも命にかかわる重大事態だ。感染症発生当初に情報を隠蔽し、パンデミック(世界的大流行)を引き起こした習近平政権の罪は重いが、責任逃れに終始し、いまだに世界保健機関(WHO)による調査も受け入れていない。各国が制裁を下す日は来るのか。

 米ジョンズ・ホプキンズ大の集計によると、11日時点で、全世界の累計感染者数は約6943万人、死者数は約158万人に達している。

 武漢で原因不明の肺炎が確認されたのは昨年12月8日だったが、中国がWHOに通知し、27人が原因不明のウイルス性肺炎にかかったことを公表したのは同31日と遅きに失した。

 今年1月から3月にかけて世界各国で感染者が急増、入国制限やロックダウン(都市封鎖)を余儀なくされた。当の中国は4月ごろにはいち早く感染拡大に歯止めがかかったと判断。欧州への医療支援やマスク外交などを展開し、立場を一転させた。そしてウイルスの発生源についても「複雑な科学的問題だ」(外務省報道官)として、“武漢起源説”に否定的な姿勢を示す。

 中国は6月以降、輸入冷凍食品からウイルスが検出されたとする事例を相次いで報道し、税関当局が11月には「検疫強化」を発表した。

 ロイター通信は同17日、新型コロナの検査を名目にした中国による輸入食品の監視に、主要国が不満をあらわにしていると伝えた。

 これに対し、中国共産党の機関紙、人民日報系の「環球時報」は、ロイターの報道を受けて、冷凍食品からのウイルス検出に関する報告を「非常に詳細な時間、場所、基本的な患者情報、活動歴、さらには関係する製品数、企業などが記載されている」として当局擁護の論陣を張った。

 WHOで緊急事態対応を統括するマイク・ライアン氏は11月末、ウイルスの発生源が中国国外だとする説を「相当な憶測だ」と否定している。ただ、WHOは夏に調査チームを派遣したが、中国当局はいまも武漢入りは認めず、調査は遅々として進んでいない。

 元厚労省医系技官の木村盛世氏は、「中国は情報公開の透明性について信頼が置けず、発表も遅かった。WHOは本来、権限があるわけでもないので、中国でコロナが流行していた時点で発表を待たず、日本を含む各国が『人道的支援』という形でモニタリングに入るべきだった。中国の状況の注視を続けなければ、致死率の高い感染症に対応できなくなる」と振り返る。

習近平


 日本も4月に発出された緊急事態宣言や、相次ぐ自粛要請で、足元の経済の疲弊も顕著だが、世界では2020年内中にも9000万人近くが極度の貧困に陥ると指摘されている。

 国際通貨基金(IMF)は10月に改訂した世界経済見通しで、20年の世界の実質成長率は4・4%減で、コロナ禍がない場合に比べ、25年まで世界で約28兆ドル(約2916兆円)の経済損失になると試算した。

 今年5月以降、ドナルド・トランプ米大統領は、中国の情報隠蔽や感染拡大の責任を明確にし、制裁関税を含む「究極の懲罰」を課す意向を表明してきた。

 大統領選で勝利宣言したジョー・バイデン前副大統領は、現状では中国に対して厳しい姿勢を見せると強調するが、根本には「親中派」との懐疑的な見方も強い。今後、国際社会による中国への「報復」は見込めるのか。

 中国事情に詳しい評論家の石平氏は、「当然の権利として、各国政府は中国に対し、正式な謝罪と賠償を求め、責任を追及しなければならない。本来、各国政府は中国製品への制裁関税を課し、関税分を犠牲者の遺族への補償に充て、後々は経済的損失を含め賠償を求めるべきだ。国連に頼らず、各国政府の有志が一致団結して、国民的な持続的な運動として発展させる必要がある」と力説した。

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ウイルスはどこで発生したのでしょうか。当初は市場で売られていた野生動物が有力視されたのですが、その後の調査で市場以外の可能性が高まりましたた。市場では排水などからウイルスが検出されたのですが、野生動物のサンプルからは出なかったためです。また中国当局が昨年12月8日の発症を認定した最初の患者は市場を訪れていません。

中国政府はさらに論理を飛躍させています。「武漢で最初に流行したからと言って発生源とは限らない」(外務省報道官)と強調し、冷凍食品経由で国外からウイルスが持ち込まれたとの説に肩入れしています。

中国メディアも十分な根拠を示さずに国外発生説を盛んに報じ、中国では定着しつつあります。中国ではすでに発生源について冷静な議論はできないようです。それこそが発生源をあいまいにし、責任を逃れたい中国政府の狙いなのかもしれません。

結果として、発生源を巡る見方は中国の内外で大きな乖離が生じました。WHOで緊急事態対応を統括するライアン氏は11月下旬、「中国が起源ではないとの説はあやふやな臆測だ」と指摘し、「最初に人への感染が起きた武漢」での調査が必要だと強調しました。

ライアン氏

「発生源が分からなければ、私たちは同じような感染爆発に対して脆弱なままだ」。ライアン氏は2月中旬にも調査を求め、習近平国家主席も5月に受け入れを表明しました。ところが進展はありませんでした。調査の進め方について中国側は厳しい注文をつけているとみられます。

米紙ニューヨーク・タイムズは2月に武漢入りしたWHOの調査団について、中国側に市場での調査を拒まれたと報じました。同紙は親中的なWHOが迎合したとも指摘しています。WHOは7月にも先遣隊を中国に送ったのですが、武漢は訪れていません。

欧米を中心に高まる調査実施の圧力を受け、WHOのテドロス事務局長は今月7日の記者会見で「今計画している。できるだけ早く武漢の地を踏ませたい」と応じました。欧米メディアによると、中国側の専門家が市場などで調査を行い、国外の専門家はそれを評価して補完する形で調整が進んでいます。中国側の条件をWHOが受け入れたとみられ、調査の公平性に今後、疑問が生じる恐れもあります。

ただ、ある程度わかっていることで、公表されている事実もあります。新型コロナウイルスの大流行が深刻な事態を引き起こしていることから、世界中の研究者が査読の過程を省略し、遺伝子配列のデータや報告書を従来の学術雑誌ではない場所で公表してきました。2月の上旬には、華南農業大学の研究者2人が、遺伝子配列がSARS-CoV-2と99パーセント一致するコロナウイルスをセンザンコウから発見したと発表しました。

センザンコウ

この研究者たちは詳細を明かさなかったのですが、主張はテキサス州のベイラー医科大学の研究者が2月13日に公開した別の予備報告によって裏付けられた[編註:3月26日付の『Nature』にも、中国に密輸されたマレーセンザンコウが新型コロナウイルスと類似するウイルスを保有していたとの研究結果が掲載されました。ウイルスの遺伝子配列が85〜92パーセントの割合で一致していたといいます]。

コウモリとセンザンコウが市場で並べられていれば、2種の間でウイルスが伝染することもあるでしょう。そうして、センザンコウから人にうつり、その人から他の人へと伝染していった可能性もあります。

しかし、このような研究はいまのところ、すべて推測の範囲を超えないのです。なぜなら、中国が調査を受け入れないからです。

このような態度では、再度中国自体が危険にさらされる脅威は拭えません。SARSや今回のコロナ感染で懲りた世界中の国々が、再度中国で感染症の危険情報を知った場合、それも致死性の強いものであれば、多少不正確なものであれ、中国共産党の情報など全く信用せず躊躇なく国境を閉じることになるでしょう。

世界中の国々が国民の命を守るために、中国をデカップリングせざるを得なくなる

いずれの国もこうした国々を批判することはできないでしょう。例外は、ロシア、北朝鮮くらいかもしれません。いや、ロシア、北朝鮮も他国が一斉に国交を絶てば、結局これに追随するかもしれません。

そうなると、中国だけが、世界中から閉じられた環境の中で未知の病原体に立ち向かわなければならなくなります。それでも、多くの科学者は協力できることは協力できるでしょうが、それでも中国共産党がこれが拒めば、十分な協力ができなくなります。

こういうことが何度も起これば、中国は世界中の国々から恒常的に国交を絶たれる可能性もあります。どの国も、目先の利益よりも、再度コロナのような伝染病で再び苦しみたいなどと思わないはずです。

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2020年12月12日土曜日

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やりたい放題の中国。いずれはブーメランとなって返ってくるのだが…

 豪州のワイン生産の最大手「トレジャリー・ワイン・エステーツ」は、中国向けの出荷を欧米など他市場に振り向ける方針を明らかにした。同社は利益の約3割を中国市場で得ているが、中国商務省の「豪産ワインが不当に安く輸入された」とする反ダンピング(不当廉売)措置に対応したもの。

 反ダンピング関税措置は、輸出国の国内価格よりも低い価格による輸出が輸入国の国内産業に被害を与えている場合、価格を正常な価格に是正する目的で賦課されるもの。輸入業者は豪産ワイン輸入時に保証金を税関に納める必要がある。トレジャリー社のワインには輸入額の169・3%の保証金率が適用される。

 トレジャリー社の高級銘柄「ペンフォールド」は中国ですごい人気で、割当量も世界の25%を占めている。ダンピングする必要はない。これは中国らしい嫌がらせだ。

高級銘柄「ペンフォールド」

 豪州のワインの輸出先は中国が4割近いシェア。豪州政府の統計によると豪州産ワインの対中輸出額は2019年、過去最高の13億豪ドル(約1000億円)を記録し、中国は世界最大の豪州産ワイン市場となっている。

 しかし、豪州と中国の関係は、豪州政府が5Gネットワークからファーウェイ排除を決めた18年以降、悪化した。今年4月には豪州のスコット・モリソン首相が新型コロナのパンデミック(世界的な大流行)の発生源をめぐって、中国に調査を求めたことでさらに悪くなった。

 豪州産大麦の輸入に80%の関税をかけ、豪州産牛肉の輸入にも制限をかけ、主力をブラジルに変更した。木材の一部についても輸入を停止している。そして今回、ワインに対しても嫌がらせを始めたわけだ。

 中国の嫌がらせというのは、いまに始まったことではない。経済的手段を用いた報復事例はいくつもある。

 10年には、沖縄県の尖閣諸島沖で海上保安庁の巡視船に中国漁船が衝突し、船長が逮捕された報復としてレアアースの日本への輸出を規制した。12年にはスカボロ礁で領有権争いをしていたフィリピンのバナナの検疫を厳格化させた。その結果、大量のバナナが廃棄され、北京のスーパーから消えてしまった。

 17年に韓国政府の要請で米軍の新型迎撃ミサイルTHAAD(サード)の配備のためにゴルフ場を提供したロッテ・グループの場合は、中国で展開するロッテストア112店舗のほとんどが防火基準違反の疑いがあるとして閉鎖を命じられた。商品ボイコットも発生し、スーパーマーケット事業など中国進出戦略は失敗に終わった。

 台湾に対しては、今年1月の総統選で蔡英文総統陣営をけん制するため、昨年8月から中国大陸からの個人旅行を停止。中国大陸から台湾には一昨年には100万人を超える個人観光客が訪れたが、中国からの旅行客に頼る台湾の観光業に大打撃となった。

 今回はこともあろうに豪州で最も人気があり、私の好きなワインの1つにもなっている銘柄に意地悪をした。中国というのは、米国に対しては躊躇するくせに、相手が弱いとなると、理不尽な制裁、報復はためらわずに行う国だ。もちろん被害者は輸出国だけでなく中国の消費者なのだが、その声が聞こえないところが中国らしいところだ。

 ■ビジネス・ブレークスルー(BBTch)の番組「大前研一ライブ」から抜粋。

【私の論評】弱者に嫌がらせをした結果敵に塩を送る中国共産党(゚д゚)!

上の大前研一氏の記事にもあるように、中国の嫌がらせは、ブーメランとして中国にかえっていますが、それどころか、結果として敵に塩を送るような結果になっていることもあります。

上の記事にもあるとおり、中国は台湾に対しては、今年1月の総統選で蔡英文総統陣営をけん制するため、昨年8月から中国大陸からの個人旅行を停止しました。中国大陸から台湾には一昨年には100万人を超える個人観光客が訪れたのですが、中国からの旅行客に頼る台湾の観光業に大打撃となりました。

しかし、このことが台湾に大いに幸いしました。最近の研究では、昨年12月あたりの、もっと早い時期からコロナの感染があったのではないかとされています。その時期よりずっと前の8月から台湾には中国から個人客はいませんでした。

さらには、台湾当局は、武漢市が封鎖される前の1月22日に武漢との団体旅行の往来を禁止しました。同24日にはその対象を中国全土に広げ、2月6日には中国全土からの入国を禁止しました。今年の2月の春節の頃には中国のからの渡航者はいない状態となっていました。

台湾には大陸中国の福建省出身者等も多く、特に春節は里帰りで台湾から中国本土に脅すれたり、逆に中国から台湾に大勢の観光客が訪れるのが恒例でした。

今年1月の台湾総統選で蔡英文総統が圧勝しました。国民党の対立候補、韓国瑜氏は観光を含む中国との交流強化を訴えていました。もし、韓氏が当選していれば、春節に中国の観光客が大勢押し寄せ台湾もかなりコロナ感染が拡大していた可能性があります。

台湾のコロナ対策自体は優れたものであり、日本なども見習うべき点もありますが、それにしても、中国が前年の8月から中国客の個人旅行を禁止していなければ、もっとコロナが蔓延しておそれは十分にあります。

台湾でコロナが深刻にならなかったことにより、台湾は中国の「マスク外交」など全く必要がありませんでした。もし深刻になっていたら、中国はその間隙を縫って、「マスク外交」で台湾への浸透を強めたかもしれません。それによって、蔡英文総統の力が弱まり、国民党が息を吹き返す転機となったかもしれません。

コロナ政府対策本部長を務める陳時中氏

幸いそのようなこともなく、現在の台湾は独立を貫き、最近では米国高官が訪れるという状況になっています。台湾としては、おそらく100万人の中国からの観光局を失ったとしても、コロナ禍によって失われる損失よりは、はるかに少ない損失で済んだと思います。

事実台湾で、コロナ禍はほとんど深刻なものにならず、他国のようにロックダウンをしたり、日本のようにGOTOトラベルなどの措置も必要ありません。これでは、中国が嫌がらせをしたつもりでも、結果として台湾に塩を送るような結果になってしまったと思います。

台湾というともう一つ面白いエピソードがあります。上の記事にもあるように、中国は先月27日、豪産ワインに反ダンピング関税を課す方針を発表。これにより豪産ワインは、中国で最大212%の関税対象となっています。

これを受けて豪を支持する米国や台湾などは、豪産ワインの輸入を約束。台湾外交部長(外相)はツイッターに豪との連帯を表明しました。

台湾の立法院(国会)は豪州産赤ワインを200本余り購入しました。游錫堃(ゆうしゃくこん)立法院長(国会議長)が4日、SNS(交流サイト)で明らかにしました。

游氏は、フェイスブックやインスタグラムなどに「オーストラリアが国際社会で人権を擁護したことで中国の経済制裁を受けた」とつづり、「人権を守るオーストラリアを応援しよう」と訴えた。購入したワインは、来賓をもてなすために使われるといいます。

豪州産ワインを手にする游錫堃(ゆうしゃくこん)立法院長

米国家安全保障会議(NSC)も「ホワイトハウスで今週開かれる祝賀会で、豪産ワインが振る舞われる予定だ」と明かし、「中国のワイン愛好家らは気の毒だ、中国政府による豪ワイン醸造業者への高圧的な関税のせいで損をするのだから」とコメントしました。

また19か国の議員らから成る「対中政策に関する列国議会連盟(IPAC)」の構成員らも豪への支援を表明し、ニュージーランド産ワインやノルウェー産アクバビット、日本酒から豪産ワインに切り替えるとする人もいました

香港ではツイッターで「#SolidaritywithAustralia(豪との連帯)」がトレンド入り。英国に亡命した民主活動家の羅冠聡(ネイサン・ロー、Nathan Law)氏も「あまり飲まない方だが、私も豪産ワインのボトルを買いに行かないと、という気になっている」と話したそうです。

今後他国への豪州産ワインの輸出が伸び、中国での豪州産ワインはますます少なくなり希少価値があがり、高くなり中国国内の消費者の不利益を招くことになるのではないでしょうか。

中国に尖閣や台湾が中国に奪取されてしまうのではないかという脅威を中国は長年煽ってきました、そのせいでしょうか、日米はこれに備えて戦術・戦略を変え、台湾もこれに追随するようで、中国海軍のロードマップでは今年第2列島線を確保するはずが、台湾、尖閣を含む第一列島線すら確保できていません。

これからも中国が弱い者いじめをすれば、このような結果を招くことになるでしょう。

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2020年12月11日金曜日

【米大統領選】米ミズーリなど17州が大統領選めぐる提訴に合流―【私の論評】米民主党、マスメディア、SNSへの痛撃というトランプ大統領の目論見が、結局実現する(゚д゚)!

 【米大統領選】米ミズーリなど17州が大統領選めぐる提訴に合流

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米中西部ミズーリなど17州の共和党当局者は9日、大統領選をめぐり南部テキサス州の司法長官が8日に南部ジョージア、中西部ミシガンとウィスコンシン、東部ペンシルベニアの計4州の選挙結果の無効を求めて連邦最高裁に提訴したことに関し、訴訟に合流したと発表した。トランプ大統領も訴訟に参加するとしている。


 訴訟は、4州が新型コロナウイルス危機を受けて郵便投票を大幅に導入したのは違法だと主張し、最高裁に対して4州で大統領選挙人の選任を即時に差し止めるよう求めている。

 ただ、各州の選挙結果の確定期限となる8日が過ぎたことから訴えが通る可能性は非常に低いとみられ、トランプ氏の法廷闘争は「幕切れを迎えた」(米紙ウォールストリート・ジャーナル)との見方が支配的となっている。

 一方、米動画サイトのユーチューブは9日、米大統領選の一般投票の結果が8日に確定したのを受け、「選挙に大規模な不正があったせいで選挙結果が逆転した」などと主張する動画を削除する方針を発表した。

 削除されるのは9日以降にアップロードされた動画で、例えば「特定の大統領候補が広範囲にわたるソフトウエアの不具合や集計の間違いで勝利した」といった、事実と異なる主張が含まれる場合に削除対象になるとしている。

 ユーチューブは、集計結果が確定するまでは、民主党のバイデン前副大統領が当選を確実にしたことに疑義を呈する動画の投稿を容認してきたが、今後は「米選挙の完全性」を支持する立場から虚偽情報や誤解を引き起こす情報を排除していくとした。

【私の論評】米民主党、マスメディア、SNSへの痛撃というトランプ大統領の目論見が、結局成就する(゚д゚)!

アメリカ大統領選挙をめぐっては、上の記事にもあるように、大統領に近いテキサス州の司法長官が今週、連邦最高裁判所に訴えを起こしています。

このなかでは、激戦となった東部ペンシルベニア州や中西部ミシガン州など4つの州について、選挙制度が法に反して変更されたと主張し、選挙結果に基づいた選挙人による投票をさせないよう求めています。

この裁判をめぐって10日、共和党の下院議員106人が文書に署名して支持を表明しました。

米国大統領選挙は来週14日に全米50州と首都ワシントンに割りふられた選挙人による投票が行われ、この結果を受けてバイデン次期大統領の勝利が確定することになりますが、裁判はこの投票を遅らせるねらいがあると見られています。

トランプ大統領は、この裁判への参加を裁判所に求めていて、「これは大きなことだ」とツイッターに投稿するなど、法廷闘争での巻き返しにつなげたい考えですが、米国のメディアは訴えが認められる可能性は低いと伝えているものの、前代未聞の訴えですから、誰もこうした裁判について熟知するものは存在しません。

さらに、トランプ大統領の反撃が他にもある可能性があり、トランプの再選は今の段階で完璧に否定できるる状態ではないと思います。それとごろか、以前もこのブログに掲載したように、トランプもバイデンも大統領にはならないというシナリオすらあり得ます。

他のトランプ大統領の反撃としては、元陸軍中将でトランプ政権の元国家安全保障顧問のマイケル・フリン将軍の陳情書の内容を進め、トランプ大統領が臨時戒厳令を宣言し、2020年の大統領選の全国再選挙を軍に監督させるよう呼びかけています。

マイケル・フリン氏

この請願書は、オハイオ州に拠点を置く非営利団体「We The People Convention」が12月1日(火)に発表したものでした。請願書の中で、議員、裁判所、国会が憲法を守らない場合、戒厳法を発布して、新たな選挙を行い、私たちの票を守ることで、内戦の勃発を防ぐよう大統領に呼掛けたものです。

請願書には、歴史的にエイブラハム・リンカーン大統領は、南北戦争の間、米国を救うために非凡な行政行動を取ったことがあり、国会と裁判所が憲法第12条修正案を遵守できるかどうか、選挙を守れるかどうかの疑惑から、「私たちは、トランプ大統領がリンカーン氏のように特別な権限を行使し、限定的な戒厳令による憲法の一時停止を宣言することを呼掛ける。軍事統制により、国民の本当の意志を反映した全国投票を行う。投票は連邦候補者のみに限定されるものとする。選挙は紙の投票用紙を採用し、コンピュータを使用せず、両党が直接投票を見て、登録された有権者のみが投票し、投票者に対して有権者の身分検査を行うものとする」と書かれています。

「神様の前以外では、自由は決して膝を曲げることはない」とフリン将軍はツイートで書いている。

ただ、この内容自体は、実際には実行されないような気がしていますが、このような誰もが思いつかなかったような手段が講じられることもあり得ると思います。

ドナルド・トランプ米大統領の顧問弁護士のルディ・ジュリアーニ氏は、1994年1月1日から2001年12月31日まで107代目ニューヨーク市長を務め、マフィア等の脅しに屈することなく、凶悪犯罪の撲滅及び市の治安改善に大きな成果を挙げました。

ルディー・ジュリアーニ氏

このような人物がさしたる証拠もなく、「不正選挙」の裁判に加勢するとは考えにくいです。

シドニー・パウエル弁護士は今回の大統領選挙で大規模な不正があったとして、訴訟の準備を進めた人物です。また、先日軍事弁護士として登録をしたことで、被告を国家反逆罪で訴えることが可能になったとの情報もある。 同弁護士は不正に関わった人物は民主党、共和党にかかわらず処罰するという姿勢でその言動が注目されていますが、彼女は「私の真意は共和党であれ民主党であれ全ての不正行為を暴露する事。偉大な米国が内外の共産主義者に盗まれるのは許さない」と語っています。

シドニー・パウエル氏

これら両弁護士は、いくつかの隠し玉を持っている可能性は大きいです。これらが、表に出れは、当然のことながら、また一波乱、二波乱が起きそうです。

ただ現時点ではっきりしていることがあります。それは、バイデンが仮に大統領になったとしても、当初からほとんど死に体でスタートすることになることです。

トランプ陣営の「不正の疑いが濃厚なのに、きちんと調査をせずに選挙結果を承認すると罪に問われる」という戦術も有効です。それに、1000件におよぶ宣誓供述調書を、司法や州議会は無視できないはずです。

「(バイデン氏の息子である)ハンター氏の疑惑を知っていればバイデン氏に投票しなかった」という民主党党員支持派もかなり存在します。法廷、州議会戦術の可否に関わらず、民主党幹部は党員や支持者に対する「説明責任」を果たさなければならないです。これをおろそかにすれば、民主党は内部分裂の憂き目をみるかもしれません。

トランプ氏の法廷闘争は、民主党がこれまでスルーしてきた疑惑を明らかにしていくという意味合いもあるのです。こままだと、大統領選挙に仮に敗北しても、民主党、マスメディア、SNS痛撃という結果となりトランプ大統領の目論見が、結局実現する可能性はかなり高いと思います。

バイデン大統領の登場が濃厚になった一時米民主党、マスメディア、SNSはぬか喜びしたかもしれませんが、これが彼らの凋落が始まる一歩となるでしょう。

このドランプ氏の戦いは、きっと後世の歴史にも残ると思います。そうして、このときが米国史の転換点であったことが知られるようになることと思います。米国では、マスコミ等で報道されることはないでしょうが、多くの人が認識していることでしょう。それは、共和党員やその支持者だけではなく、民主党員やその支持者の中にも大勢存在するでしょう。

日本では、残念ながら、現状でこれを認識する人はほんの一握りであり、この出来事が終わってから20年、30年たって、一部の人が認識するにとどまるでしよう。

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2020年12月10日木曜日

こんなに危うい中国の前のめり「ワクチン外交」―【私の論評】対コロナの国家戦略の中で、ワクチンの価値を見定めなければ、備えの欠如に右往左往する愚が繰りされる(゚д゚)!

 こんなに危うい中国の前のめり「ワクチン外交」

衛生領域のシルクロードで新たな世界秩序構築を目論む中国


写真はイメージです


(福島 香織:ジャーナリスト)

 新型コロナウイルスワクチンの接種が英国でいよいよ始まった。米ファイザーと独ビオンテックの開発したワクチンで、最初の接種者は90歳の女性だった。アメリカでも年内に接種が開始される見通しだという。ロシアでも「スプートニクV」の大規模接種が始まっており、中国シノバック・バイオテック製ワクチンもインドネシアでの大規模接種にむけて第1便の120万回分が到着したことが報じられている。

 ワクチン接種が始まったことは、コロナ禍にあえぐ各国にとってとりあえず朗報ではあるが、やはり気になるのは、世界のコロナワクチン市場をどこの国が制するか、ということだろう。なぜならコロナをワクチンによって制した国が、ポストコロナの国際社会のルールメーカーになる可能性があるとみられているからだ。

 気になるのは、やはり中国だ。中国のシノファーム傘下のシノバック・バイオテックなどが開発する不活化ワクチンは、マイナス70度以下という厳しい温度管理が必要なファイザー製などと違い、2〜8度の温度での輸送が可能なため通常のコールドサプライチェーンを利用でき、途上国でも取り扱いやすい。しかも年内に6億回分のワクチンを承認する予定であり、その流通性と量産で世界の途上国市場を圧倒しそうな勢いだ。

 だが世界は、本当に中国製ワクチンに依存してよいのだろうか。

年内に6億回分のワクチンを市場に供給

 中国の王毅外相は、習近平国家主席の名代として出席した12月3日の新型コロナ対応の特別国連総会の場で、「中国が新型コロナワクチンを積極的に途上国に提供し、主要な大国としての影響力を発揮する」と強調した。中国は年内に6億回分の新型コロナワクチンを市場に供給することを12月4日に当局者が明らかにしている。要は、中国のワクチン外交宣言である。

 中国の孫春蘭副首相は12月2日に北京の新型コロナウイルスワクチン研究開発生準備工作の会合の場で、今年(2020年)中に空港や港湾の職員および第一線の監督管理人員などハイリスクに分類される職業から緊急使用を認めていく、としている。軍や医療関係者にはすでに投与が始まっている。

 中国工程院の王軍志院士によれば「中国の不活化ワクチンの主な特性は天然ウイルスの構造と最も近く、注射後の人体の免疫反応が比較的強く、安全性もコントロール可能」という。ファイザーやモデルナのワクチンはマイナス70度やマイナス20度といった非常に低温での厳密な温度管理が必要だが、中国の不活化ワクチンは2〜8度での輸送が可能で、通常のクール便で問題ないほど手軽だ、と主張していた。

 米ニューズウィーク誌サイト(12月4日付)によれば、トルコは12月後半から中国製ワクチンの接種を開始する予定である。一部南米国家でも数カ月内に中国製ワクチンの接種を開始するという。また、モロッコでは年内に国内8割の成人に中国製ワクチンを投与する準備を進めている。

 さらにアラブ首長国連邦も12月9日に、正式にシノバックの不活化ワクチンを導入することを表明。同国ではシノバック・ワクチンの第3期治験を実施していたが、その結果として86%の有効性が確認されたという。明らかな副作用もなく安全性も保障された、とした。すでに閣僚たちはこのワクチンの接種を受けている。

中国製ワクチンの効果に疑問符も

 一方で、中国製ワクチンに対して、中国人自身が根深い不信感を抱いていることも確かだ。たとえばウガンダの中国大使館によれば、現地のインド企業が請け負っている建設プロジェクトに従事している中国従業員47人が新型コロナ肺炎検査で陽性を示していた。このうち一部の患者は発熱、咳、倦怠感、下痢などの症状が出ている。台湾紙自由時報によれば、この47人はすでに中国製ワクチンを接種していたはずだという。だとするとワクチンの効果はなかった、ということになる。

 中国の公式報道によれば、シノバックのワクチンは、海外に出国した中国人労働者に6月から優先的に投与されていた。特に中央機関直属の労務従事者およそ5.6万人には接種済みと発表されている。ウガンダのプロジェクトの従業員も当然接種済のはずだという。中国側はこの点について正式に確認はしていない。

 また10月にブラジルで行われていたシノバック製ワクチンの治験が、治験者の深刻な不良反応を引き起こし死亡したという理由で一時中断されたこともあった。中国側は、この不良反応とワクチンの安全性は無関係であると主張しており、ブラジルの治験中断は多分に政治的判断である、としている。

 医学誌「ランセット」に寄稿された治験結果によれば、シノバックのワクチンは1回目の接種から28日以内に新型コロナウイルスへの抗体を作り出したが、その抗体レベルは新型コロナに感染したことがある人より低い、とあり、レベルが不十分ではないか、という見方もある。

ワクチンメーカー康泰生物のスキャンダル

 中国のワクチンに対するネガティブなイメージは、中国の製薬業界の伝統的な不透明さのせいもある。たとえば深センの大手ワクチンメーカー、康泰生物の会長、杜偉民にまつわるスキャンダルである。

 ニューヨーク・タイムズ(12月7日付)が改めて特集していた。康泰生物は自社独自で新型コロナワクチン開発を行うと同時に、英アストラゼネカ開発の新型コロナワクチン2億回分の中国国内製造を請け負うことになっている。

 だが、康泰生物と杜偉民はかねてからワクチン利権の中心としてスキャンダルにまみれ、2013年に、康泰製のB型肝炎ワクチン接種後に17人の乳幼児が死んだ事件も引き起こしている。ワクチンと乳幼児の死の因果関係は科学的に証明されていないが、それは父母ら批判的言論を行う人々に当局が圧力をかけて世論をコントロールしたからだとみられており、中国社会における杜偉民とワクチンメーカーに対する不信感はずっとくすぶり続けている。

 ちなみに杜偉民が関わったワクチンによる健康被害事件は2010年にも起きている。狂犬病ワクチン18万人分について効果がないことが監督管理機関の調べで分かり、大きく告知されたのだが、このワクチンを生産した当時の製薬企業は杜偉民の所有企業だった。杜偉民はこのスキャンダルから逃げるために、問題の製薬企業株を別の製薬企業に譲渡した、という。

 また同じ年に、康泰製のB型肝炎ワクチンを接種した広東省の小学生数十人が嘔吐、頭痛などを訴える事件もあった。当局はこれを「集団性心因反応」とし、ワクチンの品質が原因だとはしなかった。だがその3年後に康泰製B型肝炎ワクチンを接種した乳幼児の集団死亡事件があり、庶民の心象としてはワクチンの品質が怪しい、とみている。だが、当局も報道も、ワクチンに問題があったとはせず、ワクチンに問題があるとして訴え続けた保護者や記者、学者らは、「挑発罪」「秩序擾乱罪」などの容疑で逮捕されたりデマ拡散や名誉棄損などで逆に訴えられたりして、沈黙させられた。

 杜偉民は2016年に自社のワクチンの承認を早期に得るために関連部門の官僚に賄賂を贈り、その官僚は収賄罪で有罪判決を受けた。しかし、杜偉民自身は起訴されていない。ニューヨーク・タイムズもその真の理由については触れていないが、杜偉民が特別な背景を持つ人物であるとみられている。ちなみに出身は江西省の貧農の出で、苦学して衛生専門学校で学び、地元衛生官僚になったあと、改革開放の波に乗って「下海(官僚をやめて起業)」し、中国ワクチン業界のドンとなっていたことは、メディアなどでも報じられている。

 これだけスキャンダルにまみれているにもかかわらず、康泰生物は、ビル・ゲイツ財団の元中国担当責任者の葉雷氏から「中国最先端のワクチン企業の1つ」と絶賛され、新型コロナワクチンでも不活化ワクチンを開発、9月には臨床に入っている。同時に、英アストラゼネカ製ワクチンの生産も請け負うことになり、深セン市政府から2万平方メートルの土地を譲渡され、新型コロナワクチン用の新しい生産工場を建設している。

中国のワクチン外交に対抗せよ

 こうした問題を、中国の製薬会社の地元政府との癒着体質、という一言で受け流していいのだろうか。中国製ワクチンが中国国内で使われるだけであれば、それは中国の内政問題だが、新型コロナワクチンは世界中で使用される。しかも、世界のワクチン市場をどこの国のワクチンが制するかによって、国際社会の枠組みも影響を受けることになる。

 南ドイツ新聞は「中国のワクチン外交」というタイトルで次のような論評を掲載している。

 「中国は各国にマスク外交を展開し、ウイルスの起源(が中国だという)議論を封じ込めようとした。現在はワクチン外交を展開中で、その目的は単なる象徴的な勝利を獲得することだけではない。今後、何カ月後かに、中国が将来的にどのような世界を想像しているかはっきりと見えてくるだろう。南米とカリブ海諸国はすでに北京から十数億ドルの借金をして中国のワクチンを購入することにしている。メキシコも3500回分のワクチン代金を支払い、ブラジル衛生相はあちこちに頭を下げまわって中国のワクチンに対する不信を打ち消そうとしている。すでに多くのアジア諸国が北京からワクチンを購入したいという意向を伝え、少なくとも16カ国が中国ワクチンの臨床試験計画に参加している。ワクチン戦略は中国指導者に言わせれば衛生領域の“シルクロード”だ」

 つまり、中国が目論んでいるのは衛生版シルクロード構想、ワクチン一帯一路戦略である。中国に従順な国には優先的にワクチンを供与し、中国がゲームのルールを作る。WHOが中国に従順になってしまったように、中国からワクチンを与えらえた国々が皆、中国に従順になってしまう、という予測があると南ドイツ新聞は論じる。

 民主主義国が、こうした中国のワクチン外交に対抗するために、合理的な価格で途上国でも扱いやすいワクチンを開発できなければ、結局世界の大半は中国ワクチンの生産量に高度に依存する羽目になってしまう。こうして中国は新たな政治秩序を打ち立てようと考えているのだ、という。

 こんな状況を考えると、ワクチン実用化をただ、ただ喜ぶわけにはいかないだろう。日本は来年の東京五輪を実現するためになんとしてもワクチンを確保したいと考えているところだろうが、ここで中国製ワクチンに頼ろうとすることだけは避けてほしいと思う。

 それよりも、日本は少し遅れてでも、やはり自前のワクチン開発を成功させなければならない。それは自国民の健康と安全のためだけでなく、ポストコロナの世界秩序にも影響するのだという意識も必要だ。

【私の論評】対コロナの国家戦略の中で、ワクチンの価値を見定めなければ、備えの欠如に右往左往する愚が繰りされる(゚д゚)!

フィリピンのドゥテルテ大統領は12月3日、米ニューヨークで開催された国連の新型コロナウイルス対策を協議する首脳級特別会合で、各国代表に対して「新型コロナウイルスのワクチンは国際社会が平等にそのアクセスを保証されるべきである」と主張して、途上国や貧困国などがそれを理由にワクチンへのアクセスで不利になるようなことがあってはならないと訴えました。

ドゥテルテ大統領がこうした姿勢を示した背景には、中国が積極的に進める「ワクチン外交」を表向きは歓迎しつつも、2つの理由で中国に対する警戒心が内面には存在すると指摘されています。 

ドゥテルテ フィリピン大統領

まず、インドネシアなどでも同様ですが、中国製ワクチンの安全性に関する警戒感です。欧米の製薬会社と競うようにして早期開発、早期投与を目指す中国の製薬会社によるワクチンですが、フィリピン国民の間では、その安全性についての懸念が依然として強いのです。 

もう一つは、ワクチン外交の展開に関連して、医療保険分野以外での中国の攻勢が今後強まることへの猜疑心です。 

フィリピンは中国との間で南シナ海の領有権争いを抱えているほか、米軍がフィリピンで軍事演習をする際の「訪問米軍に関する地位協定(VFA)」の破棄問題、フィリピン南部を中心にした「テロとの戦い」、さらにフランス製が有力とされるフィリピン初の潜水艦導入問題などを抱え、安全保障の面で大きな転換期を迎えています。

その一方で中国からの多額の経済支援への依存という現実もあり、あらゆる問題で中国による影響を考慮せざるをえない状況にあります。

世界で突出してワクチンの生産能力を拡大している中国ですが、その需要は生産能力をはるかに上回る規模に膨らんでいます。世界経済フォーラムが8月下旬に行った全世界27カ国の成人約2万人を対象にしたアンケート調査の結果によれば、74%が「新型コロナウイルスのワクチンができれば接種する意向がある」と回答しましたが、中では97%と最も高くなりました。

さらに中国は多くの国にワクチンを優先提供するとしており、その数を概算してみると、20億人分に達します(8月27日付中央日報)。これに中国の人口14億人を加えると34億人となり、世界の人口77億人の約半分に中国がワクチンを提供する計算になります。

最近では、新型コロナワクチンは2回の接種が必要であることがわかってきたことも頭が痛い(8月31日付CNN)。34億人が2回接種することになれば68億回分が必要となりますが、中国の開発企業の供給量(6億回分)はその10分の1に過ぎません。

量的な制約に加えて、質的な問題を抱えていることも懸念されます。

中国の開発企業のうち、カンシノ・バイオロジクスのワクチン候補「Ad5-nCOV」は、ベクター(遺伝子の運び手)に遺伝子組み換え操作で無害化したアデノウイルス5型(Ad5)を利用しています。

アデノウイルスは風邪を引き起こすウイルスの一種です。新型コロナウイルスが持つ遺伝子をAd5に乗せて体内に運び込み、実際にコロナウイルスに攻撃されたときに免疫反応を起こさせることができるようにしておくとう仕組みです。カンシノ・バイオロジクスは、エボラ出血熱用のAd5由来のワクチンを開発した経験を新型コロナワクチンの開発に応用しています。

ところが多くの人が既に抗体を持つ風邪のウイルスを利用して開発されているため、その効果を不安視する声が高まっています。専門家によれば、中国や米国では約40%の人々が既にAd5の抗体を持っており、アフリカでは80%に上ると言われています(9月1日付ロイター)。

Ad5に対する抗体があると、免疫システムは新型コロナウイルスではなく、ベクター(Ad5)を攻撃する恐れがあり、ワクチンの効果が低下します。

一部の科学者は、Ad5由来のワクチンがヒト免疫不全ウイルス(HIV)の感染リスクを高めることにも警戒感を示しています。米メルクが2004年に行ったHIV向けのAd5由来のワクチンの臨床試験では、Ad5の抗体を持つ人のHIVの感染率が高まることがわかっているからです(8月31日付ロイター)。

ジョンズ・ホプキンズ大学のワクチンの研究員は「Ad5基盤のワクチンは、多くの人々が免疫力をもっているため憂慮される。効果が70%どころか40%程度かもしれない。これは、受けないよりはましだということになるが、これでは彼らの戦略が何のためのものなのかわからない」と語りました。 Ad5基盤のワクチン開発に参加したカナダのマックマスター大学の博士は「Ad5基盤のワクチンは、高熱を誘発する可能性がある」と指摘しました。

中国メデイアは9月1日、中国製のワクチンは使用後に重症化の可能性があると報じました。その原因はADE(抗体依存性感染増強現象)です。ADEとは本来ウイルスから体を守るはずの抗体が逆に細胞への感染を促進する現象のことです。中国では2万人以上が臨床試験に参加しましたが、多くの人が接種後に深刻な副作用に苦しみ、北京の病院で治療を受けているとの情報があります。


ADEの詳細なメカニズムについては明らかになっていないことも多いです。ただこれまでに、複数のウイルス感染症でADEに関連する報告が上がっています。例えば、コロナウイルスが原因となる重症急性呼吸器症候群(SARS)や中東呼吸器症候群(MERS)に対するワクチンの研究では、フェレットなどの哺乳類にワクチンを投与した後、ウイルスに感染させると症状が重症化したとの報告があり、ADEが原因と考えられています。

いずれにせよ、ワクチン製造の中国企業が全てのデータを公開し、競合各社の評価を受けることが一段と重要になっています。世界が中国製ワクチンを信頼するようになるとすれば、情報には透明性がなければならないはずです。しかし、それはワクチン外交で勝利を収めようともそのような情報が公開されない限り、我が国では使用すべきではありません。

このように、安全性・有効性などに問題を抱えたまま「ワクチン外交」を強引に展開すれば、中国は世界から猛反発を受け、ますます孤立してしまうのではないでしょうか。

日本がワクチン開発で出遅れた理由についてこの20年間を振り返れば、新型コロナを含め繰り返し新興・再興感染症が起きているのに警戒感は維持されなかったことです。「日本はなんとかなるだろう」と考えていたからです。しかし、今回の反省があって変わらなかったら、よほど鈍感ということになるかもしれません。

鈍感だったのは誰なのでしょうか。09年に新型インフルエンザが流行した際、麻生太郎政権は海外から大量のワクチン輸入を進めました。後に余ると、同年8月の総選挙で野党に転じていた自民党議員がこれを批判しました。

翌年6月、専門家による新型インフルエンザ対策総括会議は「ワクチン製造業者を支援し(略)生産体制を強化すべき」と結論付けました。インフルエンザワクチンの集団接種がなくなった80年代以降、接種率が低下し、国内の生産力は衰えていたからです。

縮小市場に対し、政府の資金的支援が必要だってにもかかわらず、実際に行われたことは逆でした。日本にも国立研究機関における基礎研究と民間企業の開発研究を資金的に橋渡しする厚生労働省外郭の財団はありました。しかし民主党政権の事業仕分けでやり玉に挙がってしまったのです。米国のような研究開発のサポートの仕組みはその後も不十分です。

この事業仕分けは、背後で財務省が民主党を操っていたといわれています。再政権交代後自民党政権になってもこの姿勢は変わらず、財務省は緊縮財政の名のもとで、ワクチンのような戦略物資への投資も緊縮してしまったのです。

備えへの投資については、自民党も民主党も真剣さを欠いていました。将来を見据えるどころか、その場しのぎのパフォーマンスをしていたのです。

こうした財務省に反発した安倍首相は二度にわたって、消費税増税を二度にわたって延期しましたが、財務省の力は強く、結局安倍総理は2度にわたって増税をしてしまいました。

それにしても、09年にも20年にも、同盟国が戦略物資として融通してくれる、という甘えはなかったでしょうか。平時ならともかく、有事に自国優先主義が跋扈するのは当然ですし、それどころか、中国は自らの覇権を強化するために、ワクチンを使おうとしています。

こんな姿勢で、さらなる有事が発生したときに本当に国民を守れるのでしょうか。

幸い、安倍政権の末期の第二次補正予算作成時には、政府と日銀の連合軍で、政府が国債を発行し、日銀がそれを買い取るという仕組みで、政府が大量の資金を調達しました。そのため、コロナ対策としては、十分な対策ができるはずでした。

ところが、第二次補正予算の予備費は10兆円あったにもかかわらず、未だ7兆円が手つかずになっているという有様です。この7兆円は、医療従事者への手当や、コロナ専門病院設立のためにも使われるはずでした。しかし、現実にはそうではなかったので、今日「医療崩壊」の危機が囁かれているのです。私は、これには当然のことながら、財務省から厚生省などへの圧力があったものと睨んでいます。

太田充 財務事務次官

本来、平時と有事は分けて考えられるべきです。有事には、有事対応ができるように、憲法に緊急事態条項を加えるべきであり、法体系も有事があったときの対応を含むものにすべきです。さらに、平時から有事に備えることも含めるべきです。そうでないと同じことが繰り返されることになります。

ただし、国産ワクチンも遅いと言われてきましたが、早ければ年内には臨床試験に入ります。確率された技術を使った開発のため、従来でいえばワープ・スピードに近い速さで、安全なワクチンができることになりそうです。

国産ワクチンで先行するのは、大阪大発の創薬ベンチャー、アンジェスです。ウイルスのDNAの一部を複製したワクチンの治験を6月に開始し、11月に第2段階に進みました。当初は来年春の承認を目指していたのですが、数万人規模の治験を検討する必要があり、時期はまだ見通せない状況です。 

塩野義製薬は、抗原たんぱく質を遺伝子組み換え技術で作ったワクチンを開発。年内の治験開始を目指しており、来年には国内外で大規模治験を実施する予定です。生産設備への投資も進め、年間3000万本を供給できる体制をつくります。

明治ホールディングス傘下のKMバイオロジクス(熊本市)と第一三共の2社は来年3月に、医薬品開発支援のアイロムグループ子会社のIDファーマ(東京)は3~5月に治験に入る予定です。 

海外では「安全保障の観点から平時でもワクチン技術の蓄積が進んでいた」(製薬大手)ことから、開発が国内勢に大きく先行している。ただ、継続的な接種には国産ワクチンが欠かせない。「技術を蓄積しておけば、次のコロナのときにすぐにワクチンを作れる」(KMバイオ)面もあり、国内開発に期待が寄せられています。

このような体制をつくるためにも、菅政権には安倍政権に引き続き、財務省と対峙し勝利していただきたいものです。これに勝利すれば、日本はワクチンだけではなく、様々な面で大変革され、経済も発展します。

ワクチンを避ける人も出るなかで、ウイルスの根絶は不可能です。それでも対コロナの国家戦略の中で、ワクチンという物資の価値を見定めなければ、備えの欠如に右往左往する愚が繰り返されることになります。

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2020年12月9日水曜日

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 コロナ予算まだ足りない!! 「菅カラー」の経済対策で大規模支出も国民が直接潤う施策必要

菅首相は新たな経済対策を打ち出したが・・・・・

 菅義偉政権初となる事業規模総額73兆6000億円の追加経済対策を決定した。国が低金利で貸し出す財政投融資などを含めた財政支出は合計で40兆円程度で、国の歳出「真水」は20兆円弱とみられる。当初の見通しよりは大規模な支出規模となったが、コロナ対策を含めてもっと上積みが必要だ。

 財政支出の内訳は、新型コロナ感染防止に5兆9000億円。病床確保支援のため「緊急包括支援交付金」を増額するほか、営業時間短縮に応じた飲食店などに支払う協力金の原資となる総額3兆円の自治体向け臨時交付金を1兆5000億円上積みする。全国知事会が要望していた1兆2000億円を上回る規模となった。

 産業の支援が急務のなか、「Go To トラベル」事業は制度を段階的に見直しつつ来年6月末をめどに延長。休業手当の一部を国が補填(ほてん)する雇用調整助成金の特例措置は、現行水準のまま来年2月まで延ばす。

 防災や減災など国土強靱(きょうじん)化にも5兆6000億円が支出されるが、デジタル化の推進や脱炭素化といった「菅カラー」の施策が大きな規模を占めているのも特徴だ。

 当初は「真水」が10兆円未満にとどまるとの見方だったのに比べると規模は大きくなったが、コロナ禍で給料が減り、個人の消費も冷え込むなか、追加の定額給付金や消費税の減税など、国民の懐を直接潤う財政措置が必要だとの声は根強い。

 4月と5月にそれぞれ事業規模約117兆円の経済対策を決定したのに続く今回の第3弾。11月の景気ウオッチャー調査で、街角の景気実感を示す現状判断指数(季節調整値)が前月比8・9ポイント下落の45・6と、7カ月ぶりに悪化している。これで打ち止めであってはならない。

【私の論評】平時ではない現在、予備費ケチるな、医療関係者に慰労金を何度も支給せよ、減税も実行せよ(゚д゚)!

上の記事にもあるように、政府は12月8日、新型コロナウイルスの感染拡大を受けた追加の経済対策を閣議決定しました。財政支出は40兆円、事業規模は73兆6000億円となっています。

これに対して、見出しを73兆とするか、40兆とするか、国の歳出30兆とするかで、大手各紙の一面が分かれています。

朝日新聞電子版の見出し

これに関しては、当然のことながら、財政支出の数字を見るべきです。なぜかといえば、これが経済に直接効く部分だからです。それと、予備費を見れば、具体的にどの程度の規模なのかを推定できます。事業費はマスコミ向けの大きな数字の見出しと言っても良いでしょう。

財務省としては、少な過ぎて「どうしようもない」と言われたら困るでしょうが、大きいと言われる分には、「何が悪い」ということにできます。そうして、大きな数字を出しておいたうえば、財財政規律がどうこうと言い出すというのがいつものパターンです。

実際、大手新聞でも財政規律の記事が出ていました。財務省の人が「歯止めが効かなくなる」ということばかり言いますが、現状では何の問題もありません。政府が財源にするために日本銀行が現状ではマイナスかかなり低金利の国債を買うのですから、財政負担はないのです。財務省が財源の大半が国債であることを心配していますが、何を心配しているのか全く理解に苦しみます。

戦後最大の危機でもある現在、政府がかつてない程の大型の追加経済対策を行うのは当然です。今やらないで、いつやるというのでしょうか。現状で、これをやらなければ、未来に禍根を残し、それこそ将来世代に大きなつけ回しをすることになります。

そもそも現状では日本銀行が政府が発効した国債をすべて購入するので利払い負担がありません。しかも、これに対しては最近では多くの政治家も理解したようで、これに対する反論等は、さすがにありません。

こういうときこそ第き歩な財政支出したいのだけれど、「財政規律や将来負担がと言われたらどうしよう」と考える政治家も多いようです。しかし、いまの段階でインフレ目標は達成していないですから、何の問題もありません。どんどんお金を使えば良いのです。

もともと日本はデフレ気味なのですから、インフレ目標を達成するまでは、積極財政や金融緩和をどんどん実行すべきです。

ただ物価がインフレ目標を超えたら控える必要がありますが、デフレ気味の現在、さらにはコロナ禍による経済の落ち込みによりしばらくは、インフレ率が下がります。インフレ目標を達成するまでの間にはこれからまだまだかなりの余裕があり、当面全く問題ないのです。

新型コロナウイルスの感染拡大防止策で6兆円となっています。これについては、全体から考えるとどうなのかという意見もあります。自治体に地方創生臨時交付金1兆5000億円とかもどうなのかという意見もあります。

ただ、実際には地方にコロナ対策実施してもらうのですから、国で考えるより地方に渡した方が良いです。地方財政が来年(2021年)は悪くなるのははっきりしています。地方は中央銀行がないですから「国債を発行して中央銀行に買わせて利払い負担をなくす」という手が使えません。これは、政府が国債発行を実施して、その利益は地方に渡すべきです。

新聞などの報道では、時間短縮や休業要請したときの補償金として充てるとしています。そうして、この交付金1兆5000億円は第二次補正予算の予備費がまだ7兆円あるので増やせます。この予備費は、看護師さんや現場の人たちの待遇を改善するためのものでもありました。しかし、現実にはなぜかもこういうところに使われていないようです。ただし、慰労金として、一時金は1回だけ出たようですが、これでは不十分です。

医療関係者に慰労金は出たが1回だけ・・・・・


現状では、看護師が足りないといわれています。誠意を見せられるのは、「手当てを上げる」ということしかできません。これは、一回だけで終わらせるのではなく何回も実施すべきです。

いろいろなところで目詰まりが起こっているようです。「予備費が大き過ぎる」という批判があって官僚が委縮しているところもあり、何かに使えば、批判されるのではないかということから、そのまま積んでおこうとなったのかもしれません。

それに財務省の方も「予備費が大き過ぎる」という認識があるようです。現状では、予備費をわざわざ閣議で決定して出すなど、手続きが過剰です。予算なのですから、後で会計検査院がチェックをスべきだと思います。事前のチェックは必要ないです。

今は平時ではなく有事ということは、誰もが認識していると思います。今後は、予備費を使うべきところにどんどん使っていくべきでしょう。

それと、経済対策で良くいわれることには、減税すべきということもありますが、これは税制改正ということになりますから、総選挙があるとやりやすいのですが、それ以外は難しいです。

経済対策でも与党大綱で減税を検討と書いてあり、各種の細かい減税措置はありますが、大きいものはなかなかできませんでした。これは、総選挙などの政治プロセスがないと残念ながらなかなかできません。ただし、経済対策としては、真っ先にやるべき筋のものです。これは、おかしな屁理屈を言う人もいますが、給付金のように給付事務も必要なく、積極的に何かをするということもなく、すぐにできる優れた経済対策です。

これが遠のいてしまったのは、総選挙そのものが来年9月くらいになるのではないかということからです。もし、1月あたりに総選挙を実施ということであれば、減税に向けての大きな動きなった可能性があります。

現状では、1月には解散しにくくなっています。従来は12月23日が天皇誕生日でしたが、今後は2月23日が天皇誕生日なったので、これに跨ぐことができません1月18日が召集日になるとすれば、冒頭解散としても、そこに公式の行事等々もありますから、かなり難しいです。

ただ、財務省は無論のこと、多くの政治家が、現状の戦争ではないものの、明らかに平時とは異なる有事であるということを念頭においていなさすぎだと思います。

今生天皇陛下

有事などというと、すぐに強制的なロックダウンを思い浮かべる人もいますが、そんなことをせずとも、昨日も述べたようにヒト、モノなどでもできることが多くあります。規制を緩和したり、平時にはできないことをどんどん実施すべきです。たとえば、総選挙を1月に実行したとしても、国民にとって良いことをするというのなら、今生天皇陛下がお怒りになるということもなくむしろお喜びになると思います。

平時と同じような考えで、何とかしようとしても、限界があります。政治家も国民も現在は戦後最大の有事であると自覚すべきです。これを機会に、憲法に緊急事態条項を含めることも検討すべきでしょう。

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