2021年4月28日水曜日

「中国に舐められてる!」トランプ陣営がバイデン政権を辛辣批判―【私の論評】日本をはじめとする同盟国はバイデン氏に、環境問題よりも対中抑止を最優先させるよう説くべき(゚д゚)!

 「中国に舐められてる!」トランプ陣営がバイデン政権を辛辣批判

「我々にはこんな態度はとらなかった」とトランプ氏

米国アラスカ州で会談した米中高官(2021年3月18日)

(古森 義久:産経新聞ワシントン駐在客員特派員、麗澤大学特別教授)

 米国バイデン政権の対中政策は日本にも多大な影響を及ぼす。その政策は一見強硬であり、日本の識者の間では「トランプ前政権の対中政策を継続した」とする見解が広まっている。

 だが、本当にバイデン政権の対中政策はトランプ政権の政策と共通性があるのか?

 それを知る手掛かりの1つとなるのが、バイデン政権の対中政策をトランプ陣営がどのように見て、評価しているか、だろう。

 では、実際にトランプ陣営がどう評価しているのかというと、「バイデン政権の対中政策は軟弱で融和的すぎる」という批判が明確なのだ。

 「我々にはこんな態度はみせなかった」

 まず、トランプ前大統領の最近の発言を紹介しよう。バイデン政権の中国への対処について述べた言葉である。

 周知のようにバイデン政権のブリンケン国務長官らは3月18日、米国のアラスカ州で、中国の共産党政治局員で外交担当の楊潔篪氏らと会談した。会談は冒頭から激論となり、中国側が米側よりずっと長く語り、米国側の「人権弾圧」や「人種差別」を非難した。

  トランプ前大統領は3月下旬、FOXテレビのインタビューで次のように語った。

  「私たちが政権の座にあったとき、中国に対して正しい措置をとった。だが今の状況をみてほしい。つい先週、中国は米国側の代表をどう扱ったか。しかも私たちの領土のアラスカ州で、とてつもなく無礼な言葉をぶつけてきた。中国は私が大統領だったときは米国にこんな態度はみせたことがない」

  トランプ氏は、バイデン政権が中国に甘くみられていること、しかも、米国内で無礼な言葉を吐かれたことへの怒りを露わにした。バイデン政権の対中政策が融和的すぎるという批判である。

  中国政府は今回のアラスカでの米中高官会談を「戦略対話」と呼んでいた。米国のオバマ政権が中国への融和的な姿勢に基づいて推進したのが「対中対話」外交だった。経済、政治、軍事その他、広範な領域で対話の場を設けて、対中関与政策を進め、対中対話の数は40ほどに及んだ。だがその結果、中国は増長し、露骨に覇権主義的な行動をとるようになった。

 トランプ政権は、政権発足当初からこの対中対話を否定した。多数あった対話を次々に中断し、中国との対決姿勢を示したのである。

  バイデン政権下で行われたアラスカでの米中協議は米国側の譲歩だといえた。中国側が「対話」と呼ぶ会合を、米国に中国政府代表を招いて実施したからだ。だからトランプ氏が「中国は我々にこんな態度をみせたことがない」と怒るのも決して事実に反する主張ではないといえる。

  視野が狭く国際的な視点に欠けている 

  バイデン政権を批判する第2のトランプ前政権高官は、元国連大使のニッキー・ヘイリー氏である。  インド系米国人であるヘイリー氏は、サウスカロライナ州の知事として実績を積み、トランプ大統領から国連大使に任命された女性政治家である。保守派として内政、外交の両面で活発な言動をとってきた。

  そのヘイリー氏が、4月中旬にFOXテレビやニューヨーク・ポスト紙とのインタビュ―で、バイデン政権の対中姿勢について以下のように語った。  「バイデン政権は中国に関してナイーブ(単純)すぎる。アラスカでの米中協議でも、中国側から完全に侮辱されながら反撃しない。中国が、反米テロを支援するイランと連携していても抗議をしない」

 「中国はイランだけでなくロシアとも手を組み、米国に対抗しようとしている。中国はさらに北朝鮮とも反米の連携を進めている。だが、バイデン政権は中国のそうした野心的な動きに口を閉ざしたままだ。このままではバイデン政権は中国が危険な新大国となることを座視するだけだろう・・・」 

 ヘイリー氏は米中二国間の問題にとどまらず、中国と他の諸国との連携が今後米国にどんな影響を及ぼしていくかという多角的な問題を提起していた。バイデン政権は視野が狭く国際的な視点に欠けているという批判でもある。

  中国政府の責任を追及しないバイデン政権 

 第3の批判者は、トランプ前政権で国家情報長官を務めたジョン・ラトクリフ氏である。  ラトクリフ氏はテキサス州の連邦検事の出身で、共和党の下院議員を4期務めたベテラン政治家である。国際戦略やインテリジェンスにも詳しく、トランプ大統領から2020年に政府の各種諜報機関を統括する国家情報長官に任じられた。

 バイデン政権は3月下旬、CIA(中央情報局)やNSA(国家安全保障局)からの安全保障やインテリジェンスに関する報告を基に、国際情勢の概要をまとめた報告書を発表した。ラトクリフ氏はその報告書の内容について、FOXテレビのインタビューに応じて次のように語った。

  「バイデン政権のこの報告書は中国の動向も取り上げ、米国にどのような危害や悪影響を及ぼすかという視点から述べている。だが、ひとつ致命的な欠陥がある。それは中国政府が武漢での新型コロナウイルス発生直後から2カ月近くにわたり情報を隠蔽し、正しい情報を伝えようとする現場の医師らを罰し、さらにウイルスに関する虚偽の情報を拡散した事実をまったく伝えていないという点だ」

  以上のようにラトクリフ氏は、米国民を苦しめた新型コロナウイルスに関してバイデン政権が中国政府の責任をまったく追及しないのは不自然であり、中国への融和姿勢を感じさせる、と説いている。

  踏襲されていない対中姿勢 

 こうしてトランプ氏自身をはじめ前政権の中枢幹部だった人物たちが、バイデン政権の対中政策の具体点を挙げて批判を浴びせている。この事実は、バイデン政権の対中政策がトランプ前政権の対中政策と同じだとする主張を否定することになるだろう。  日本にとって米国の政権の中国への姿勢はきわめて大きな意味を持つ。バイデン政権の対中政策の本質はなにか、多角的かつ客観的にみていくことが欠かせないだろう。

【私の論評】日本をはじめとする同盟国はバイデン氏に、環境問題よりも対中抑止を最優先させるよう説くべき(゚д゚)!

バイデン政権の中国に対する及び腰は、トランプ前大統領と最初に会ったときのことを考えとよりはっきりすると思います。

トランプ前大統領と、習近平が最初に首脳会談をしたのは、2017年の4月6、7日、米フロリダ州パームビーチで開かれました。当時の、最大の焦点は、弾道ミサイルの発射に続き、「6回目の核実験」をチラつかせる、金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長率いる北朝鮮への対応でした。

これについては、このブログにも掲載しました。その記事のリンクを以下に掲載します。
米中会談、習氏土下座懇願 権力闘争も臨戦態勢 河添恵子氏緊急リポート―【私の論評】米による北の外科手術と正恩斬首を黙認する習近平?

この記事は、2017年4月7日のものです。この記事より一部を以下に引用します。
北朝鮮が5日強行した弾道ミサイルの発射は、米中首脳会談に衝撃を与えました。北朝鮮「単独解決」に傾いている米国と、中国のメンツを省みない北朝鮮の強硬姿勢の間で、習近平国家主席は窮地に立たされ会談に臨みました。

両者は約1時間、双方の夫人と通訳のみで会談した後、夕食会を開きましたた。米政府関係者によると、会談でトランプ氏は習氏に対し、北朝鮮の対外貿易の約9割を占める中国に対し、圧力を強めるよう要求。中国が協力しない場合は、米政府が独自に北朝鮮と取引がある中国企業を制裁対象に加える新たな政策を検討していることを伝えたといいます。

トランプ氏は夕食会の冒頭、習氏のそばで「我々はすでに長く話し合ってきているが、私はまだ何も得ていない。全く何もだ」と強調。トランプ氏の要請に対し、習氏が同調しなかったことにいらだちを見せました。

そうして、米軍のシリアへのミサイル攻撃が、米中首脳の夕食会とほぼ同時に行われたことで、習近平国家主席は、トランプ大統領との会談議題である北朝鮮の核・ミサイル開発阻止をめぐっても、同様の結末が中朝国境を流れる鴨緑江の対岸で現実に起き得ることを認識せざるを得なくなりました。
当時シリア北西部イドリブ県の反政府勢力の支配地域が空爆され、子供を含む80人以上が死亡し、数百人が負傷した事件がありました(2017年4月4日)。

これを受けて、米国のトランプ政権は、シリア領内ヒムス市南東約40キロに位置する政府軍のシャイラート空軍基地に50発以上の巡航ミサイルによる攻撃を敢行したのです。

この攻撃は、同年1月に誕生したトランプ政権が初めて発動した軍事作戦であるだけでなく、シリア紛争が始まった2011年春以降で初めての米国による直接的な軍事介入となりました。

当時のトランプ政権によるシリア攻撃は、様々な思惑があったでしょうが、それにしてもその攻撃を習近平との夕食会と同じタイミングで行ったのですから、習近平も度肝を抜かれたことでしょう。

そうして、習近平はこの攻撃を受けて、トランプ氏は従来型の大統領とはかなり異なった大統領であると受け止めたことでしょう。

そうして、米軍による北朝鮮攻撃も十分にありえると、腹をくくったことでしょう。

その後、トランプ前大統領は、米朝首脳会談を三度にわたって行いました。
第一回目 2018年米朝首脳会談 - 史上初の米朝首脳会談。アメリカのドナルド・トランプ大統領と北朝鮮最高指導者の金正恩2018年6月12日シンガポールにて行なった会談。

第二回目 2019年2月米朝首脳会談 - 2019年2月27日から2月28日にかけてベトナムハノイで開催されました。

(第三回目)2019年6月米朝首脳会談) - 2019年6月30日板門店で行われましたが、米国政府は「首脳会談ではなく両首脳が面会しただけ」と主張し、北朝鮮側も首脳会談としていません。

選挙戦の最終には、「米国ファースト」等と語っていたトランプ氏でしたが、いざ蓋をあけてみると、中国に対して厳しい要求をつきつけたり、制裁を発動するとともに、北朝鮮の金正恩 とはじめて日朝首脳会談を行うなど外交にも力をいれていました。

どうしてこのようなことを始めたかといえば、やはり外交問題を解決しなければ、当然のことながら「米国ファースト」になることはありえず、しかも、その中で最も最優先すべきは中国との対峙であることに気づいたからでしょう。

北朝鮮の問題に関しては、大統領就任の前後では、重要な問題とみなしていたのでしょうが、やはり最重要なのは、中国との対峙であり、その他の問題はこれに勝利するための制約要因にすぎないとみなすようになったのでしょう。

北朝鮮問題のみを単独で解消したとしても、中国の問題は何ら解消できないでしょうが、中国との問題が解消されれば、北朝鮮問題などさしたる問題ではないということに気づいたのでしょう。

さらに、北朝鮮の核ミサイルは米国を狙うだけではなく、無論中国も狙っています。ルトワック氏の語るように、北朝鮮とその核の存在が、中国の朝鮮半島への浸透を防いできたという面は否めません。

良い悪いは別にして、これは事実です。米国が北を単純に軍事的に潰せば、新北、新中的な韓国文政権は一気に、中国に接近し、朝鮮半島全体に中国の覇権が及ぶ状況になったかもしれません。

北朝鮮のミサイルは中国全土を標的にできる

そのようなことは、日米もロシアも到底容認できません。だからこそ、現状維持すべきであるとの認識から、トランプ前大統領は北との接近も一時はかったのでしょうが、北朝鮮が何も良い材料を提供してこなかったので、その後何の進展もありませんでした。

そうして、中国との対決を最優先するように、大きく舵をきったのでしょう。このようなことは、既存の政治家にはなかなかできないことです。

既存型の政治家や、役人は、外交でも、国内政治でもあれもこれもと総合的な政策を実施し、結局何もできないという状況に陥りがちです。

しかし、トランプ氏のような実業家は、物事に優先順位をつけつつ、当面は最優先事項に取り組むのが普通です。なぜなら、どのような企業であっても、たとえ巨大企業であったにしても、使える資源は限られているからです。

世界をみまわしてみると、すでにロシアのGDPは日本の5/1でしかなく、人口も1億4千万人と、日本より2千万人多いていどす。東京都のGDPと同程度です。韓国も同水準です。北朝鮮は韓国、ロシアにはるかに及びません。中東諸国を全部あわせても、日本のGDPにはるかに及ばず、金持ち国だとみらているサウジ・アラビアもGDPでみると日本の福岡県などとあまり変わりません。

しかし、中国は違います。確かに、国民一人当たりのGDPは100万円前後ですが、それにしても人口が14億人と多く、全体ではかなり大きなGDPになります。こうしてみると、米国に対する最大の競争相手は中国です。

だかこそ、実業家であるトランプ氏は中国との対峙を当面の、最優先課題としたのでしょう。そうして、それは正しい選択といえます。なぜなら、今や世界で唯一の超大国である、米国でさえも、使える資源は有限だからです。

トランプ前大統領

このような外交を展開してきたトランプ氏からみれば、確かにバイデン政権のやり方は手ぬるいです。

バイデン米大統領が就任して以来、演説やインタビューで外交政策について発信してきました。中国に対して厳しい姿勢で臨むと語ったことが特徴です。

2月4日の演説では中国を「最も手ごわい競争相手」と位置付け、「米国の繁栄と安全、民主的価値観は中国の直接的な挑戦を受けている」と語りました。同月7日放送の米テレビのインタビューでは、習近平中国国家主席について「彼を形づくるものの中に『民主主義』は含まれていない」と指摘しました。

バイデン政権は、「内政重視」へ偏っていると指摘される点を意識して、外交も重視し、同盟国との協調を目指す姿勢を示すねらいがあったのでしょう。

バイデン氏が中国に対峙すると語り、ブリンケン氏が警告を発し、トランプ前政権と同様に米海軍が台湾海峡や南シナ海で中国ににらみを利かせる構えをとったこと自体はいずれも歓迎できます。

ただし、残念なことですが、バイデン政権の対中姿勢が日本の国益や国際秩序の維持に寄与すると過信はできないです。

バイデン氏は演説で「米国の国益に沿うのであれば(中国と)一緒に取り組む用意がある」とも述べました。気候変動問題などが念頭にあるのでしょう。

ジョン・ケリー気候問題担当特使

ジョン・ケリー気候問題担当特使は、気候変動について中国との協力を推進する取り組みにおいて「人権についての相違」を考慮の対象外とすることにやぶさかではないようです。

フォーリン・ポリシーのラビ・アグラワルは、気候についてのジョー・バイデンの目標と、問題へのグローバルな対応をどのように促進しようと計画しているかについてケリーと対談しました。特に中国とどのように協力するつもりであるか、について対談しました。

「中国について話しましょう。この政権は中国についてかなり厳しい態度を取っています」とアグラワルは強調した。「米国は中国がウイグルに対してジェノサイドを行ったと非難し、台湾を引き込みました・・・しかしこうした中で、バイデン政権は気候変動との戦いで中国の協力を本当に必要としてもいます。あなたはこの1つの課題―気候変動―を他の全ての競争分野とどのように区切りますか?」

ケリーは答えました。「米国は気候問題で中国の協力を得ないことから恩恵を受けません。我々は全く統制されています。経済のルールについて、サイバーについては相違があります。他に人権についても相違があります・・・しかしそうした相違は気候対策ほどの重大なことの妨げとなるべきではありません」

中国は米国その他の国から、ウイグルのイスラム教徒に対してジェノサイドを行ったとして非難を受けています。何万人ものウイグル人が「再教育収容所」に入れられ、そこで数え切れないほどの人権侵害が起きています。人権侵害の例としては、強制労働、レイプ、性的虐待、人工妊娠中絶や避妊手術の強制があります。

ケリーは、中国はすでに「誠意を持って」交渉しており、当初の対話が厳しいものだったにもかかわらず「合意と前進ができる場所と方法を何とか見出した」と述べました。

「中国は、市民が失敗によって大いに影響を受けているため、両国が気候危機を解決することができることに利益があると分かっているという気がします」とケリーは述べました。

さらにケリーは、難点は米国民に気候について何を行う必要があるのかを納得されることにあるのではなく、むしろ何かを実際に行わせるために議会での「政治的意思」を引き出すことにあるのだと述べ、バイデンはもっと多くの先進国に大きな責任を担うよう求める計画を支持するだろうと考えていると付け加えました。

中国は気候変動に影響を及ぼす要素に対する寄与を理由に必然的にそうした計画に加わるでしょう。環境防衛基金によると、中国は世界の汚染の25パーセントを生み出しており、全世界で使用される石炭の約半分を燃やしています。

習近平は昨年、世界最大の温室効果ガス排出国である中国が2030年までに二酸化炭素排出量のピークを迎え、60年までに排出量を実質ゼロにする計画を示しました。

バイデン氏の演説や発言で気にかかるのは、全体主義政権が世界第2位の経済力を持ち、軍事力を急拡大させているという「中国問題」が、米国のみならず世界の自由と繁栄を覆しかねない極めて深刻な問題だという認識が示されておらず、この点ではトランプ前政権とは対照的です。

クリーンな地球環境になったとしても、全体主義が地球にはびこってしまえば、無意味です。無論、クリーンな地球環境の追求は重要なことではありますが、まずは人々の健康や生命を直接脅かす環境問題は、解消しつつも、炭素目標などは全体主義を克服してから行うべきものです。地球温暖化説は、未だ説の一つにすぎないのですが、全体主義の驚異は説ではなく、現実の脅威です。

さらに、エコファシズムという言葉もあるように、環境問題は中国の全体主義の正当化に用いられる可能性すらあります。

「エコファシズム」は、権威主義的な政府が個人に対してその個人的利益を「自然の有機体全体」のために犠牲にするように要求する、理論上の政治モデルの一つです。一部の作家は、環境問題に対処するために極端なまたは「ファシスト」的な政策に頼る可能性のある未来のディストピア政府の架空の危険性を述べるためにこの用語を使用しました。

またほかの作家は、環境問題に焦点を当てた歴史的または現代のファシズム運動を説明するためにこの用語を使用しました。「エコファシズム」の政府は存在した事は無いですが、ナチズムの中心的スローガンの一つである「血と土」には環境主義の側面がみられます。この用語はイングランド・ウェールズ緑の党の中で影響力拡大を図る極右勢力を記述するためにも使用されています。

世界はまずは最初に全体主義の魔の手から、世界中の人々を救うべきです。こちらのほうが、優先順位が高いのは明らかです。

私自身は、中国がまともな国になれば、それだけで環境問題などもかなり改善されると思います。その後に、環境問題に取り組んだとしても遅くはないです。

日本をはじめとする同盟国はバイデン氏に、環境問題よりも、対中抑止を最優先させるように、説くべきです。

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2021年4月27日火曜日

奇妙な3度目の緊急事態宣言 ワクチンの遅れや五輪危機はマスコミが騒いでいるだけだ―【私の論評】マスコミのコロナ報道は「さ・ぎ・し・か・な」で疑え(゚д゚)!

奇妙な3度目の緊急事態宣言 ワクチンの遅れや五輪危機はマスコミが騒いでいるだけだ 

高橋洋一 日本の解き方

3度目の緊急事態宣言発令前日、東京・表参道をマスク姿で歩く人たち=24日午後

 東京、大阪、京都、兵庫の4都府県を対象にした新型コロナウイルスの緊急事態宣言は、今回で3度目となる。正直言って辟易(へきえき)している住民も多いのではないか。

 もともと日本には、世界で当たり前の「非常事態宣言(戒厳令)」が存在していないため、個人に対して強制力のある行動制限はできない。このため日本では「緊急事態宣言」にとどまっている。

 日本で「感染第4波」と騒いでいるが、人口当たりの感染率を世界で比較すると、元厚生労働省技官の木村盛世氏は「さざ波」レベルだと指摘している。実際のところ今の日本は、ワクチン接種が進んで収束しつつある英国と同程度の水準だ。

 この意味で、日本の「緊急事態宣言」は、世界からは奇妙に見えるだろう。今回も個人に強制力はないが、その分、飲食店や商業施設、イベントなどの事業者にしわ寄せがある。筆者は本コラムで一貫して書いてきたが、休業要請するなら補償措置は当然である。

 2020年度補正予算では、資金使途自由の地方創生臨時交付金を地方自治体に約4兆5000億円計上したが、ほかにも事業者に対する協力金を地方自治体から給付するため、予備費(協力要請推進枠等)として約3兆3000億円も計上した。

 21年度予算でも、予備費に5兆円計上したので、当面地方自治体が休業補償するには困らないだろう。さらに必要ならば、今年度も補正予算を組むことができる。東京都は他の地方自治体とは異なり、財政余力がたっぷりあるので、独自に休業補償を行えばいい。

 それにしても、新型コロナでのマスコミのあおりはひどい。日本のワクチン接種が遅れている理由は「厚生労働省が副反応の責任を取りたくなくて及び腰だったから」とか、「この状況では東京五輪どころでない」といった意見も少なくない。

 だが、これはミスリーディングだ。日本のワクチン接種率は世界の中でも低いが、それは日本の感染率が低いからだ。感染の度合いを加味して順位を出すと世界の中で平均的になる。

 ワクチンの供給は原則として感染がひどい国・地域から行われている。データ入手可能な世界84カ国で、日本は71位と下位であるが、感染の度合いを加味すると、日本は45位だ。感染が少ないのに、人口の多い日本がワクチンを大量に集めたら、世界から批判を受けてしまうだろう。一刻も早くワクチンを確保してもらいたいのが人情だが、カネにものを言わせず、ワクチン格差に加担しないのは、奥ゆかしい日本らしいスタンスとの見方も可能だ。

 メディアがワクチンの副反応をあおっておいて、「厚労省が及び腰」というのはまさにあおりの典型だ。それを言うなら、マスコミがワクチン副反応をあおったために、日本では集団接種ができなくなって、今回自治体にノウハウがなく困っていると正確に伝えるべきだ。

 国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ会長が、日本の緊急事態宣言は、感染拡大予防のための措置で五輪の開催に関係ないと言ったのも当然だ。(内閣官房参与・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】マスコミのコロナ報道は「さ・ぎ・し・か・な」で疑え(゚д゚)!

冒頭の記事で、高橋洋一氏が語っている、マスコミのコロナ騒ぎは困ったものです。その中でも、テレビ番組の煽りは酷いものです。どうしてそうなってしまうかといえば、それは検証の困難さにあるのかもしれません。

テレビのコロナ煽りはいつまで続くのか・・・・

新聞・週刊誌・月刊誌の報道については、現物を保存しておけばその内容をいつでも検証することが可能です。

それに対してリアルタイム視聴が前提であるテレビの報道については、特別に録画をしない限り、後に検証できません。多くの人は、録画等しないでしょう。

ただし、最近ではYouTubeなどで、ワイドーショーの明らかに間違った発言の部分を切り抜き、その間違いを指摘しているものもあります。実際、私自身も、ワイドーショーなどで明らかに間違いであると思ったMCなどの発言の切り取りをYouTubeで何度もみたことがあります。

ただ、仮に検証して問題を発見したところで、著作権による保護があり、現物の放送録画を広く国民に示して立証することもできません。放送への苦情や放送倫理の問題に対応する第三者機関を名乗るBPO(放送倫理・番組向上機構)についても、バラエティ番組のやらせを検証することがあっても、日夜デマ報道や問題報道を繰り返し乱発している報道番組を自律的に検証することはほとんどありません。

このように、テレビ・メディアは、国民の電波を独占しているにもかかわらず国民からの検証をほとんど受けることのない極めて優越的で安全な立場にいるといえます。他業種と比べて緊張感のない中で製造された製品に欠陥が多いのはむしろ当然の成り行きです。品質保証の基準が事実上は放送法ではなく「自律」しかない彼らにとっては「ワイド・ショー」ほど素敵な商売はないと言えるかもしれません。

インターネットの登場で、テレビの情報発信力が以前より低下したことは間違いありません。しかし、『報道ステーション』や『サンデーモーニング』といった報道・情報番組は、いまだに10%を超える視聴率を保持し、社会に大きな影響を与えています。特に高齢者層には、未だに大人気です。


今回のコロナ禍でも、この恐怖発生源にゼロリスクの対応が当たり前であるかのよう印象操作されてしまった日本社会には、恐怖が蔓延し、大衆は集団ヒステリーを起こし、一部は自粛警察として暴徒化しました。大衆を一方向に誘導するテレビが発信のインフォデミックは社会に深刻な影響を与えるのです。

ちなみに、インフォデミックとは、英語のインフォーメーション(情報)とエピデミック(ある地域で短期的に感染症が流行すること)の合成語であり、噂やデマも含めて大量の情報が氾濫し、現実社会に影響を及ぼす現象のことです。疫病流行の際には出所不明の情報が広がりやすく、世界保健機関(WHO)も科学的に根拠のない情報を信じないよう、公式サイトで注意を呼びかけています

そんなテレビ報道に対して、数年にわたって収集した実際の報道を示した上で論評したものが本書です。

テレビ報道を録画するきっかけを私に与えてくれたのは、破滅的な政権を生んだ「民主党絶賛報道」と、原発関連死を多数誘発させると同時に日本経済の生産性を破滅的に低下させる原因を作った「原発反対報道」です。いずれもワイドショーを中心とするテレビ報道が一糸乱れぬ偏向報道を連日行い、大衆を特定の思想に誘導しました。

テレビの印象操作は昔からありましたが、記憶に新しいところでは「戦争法案反対報道」「小池劇場」に多くの人々が熱狂し、「モリカケサクラ報道」にハマりました。そして今、恐怖を煽る「コロナ報道」によって、多くの大衆はヒステリックなゼロリスクの追求者に仕立て上げらてしまったようです。

これが、昨年の夏くらいであれば、コロナ感染症の本質が知られていませんでしたから、まだしも、その後もテレビはゼロリスクを煽り続けています。

新型コロナウイルス(COVID-19)は感染者の75%は他の人に感染させていないことが知られています。ただ感染者が3密の状態にいると感染力が18.7倍になるとのデータが出ており、感染拡大の決め手はやはり「3密(密閉、密集、密接)」にいるかどうかということになります。

ウイルスが感染しやすい時期もわかってきました。ウイルス培養(生きているウイルスが検出される)期間は発症後8日まであり。6日が経つと接触者(家庭内接触も含む)であってもほぼ感染しないこともわかってきました。

最も感染しやすい時期は発症0.7日前で、実に44%は発症前に感染させていることがわかっています。だからこそ無症状の人も3密のところではマスクが必要です。症状が治まり、発症後10日(8日+2日間の猶予)が経てば人にうつすことはまずないでしょう。学校への登校、仕事復帰も大丈夫です。

このようなことが、コロナウイルスの発生したばかりのことはわかつていませんでしたが、現在ではそのような知見が得られているのです。

しかし、テレビ主導のインフォデミックが一度発生すると、日本の政治は停滞し、普通の人々が生きていくために必要な経済や安全保障が理不尽に犠牲にされ、生活に苦しむ弱者が決定的な打撃を受けるのです。

インフォデミックを発生させないためには、テレビの視聴者が、テレビのデマ報道や問題報道のやり口を見切って騙されないことが重要であり、騙されないためには、騙しのテクニックを知ることが効果的です。

ワイドショーの扇動報道は、もはや誘導される情報弱者のみの不利益の問題だけではなく、そのヒステリックな感情によって理不尽な被害を連帯して負わされる日本社会全体の深刻な問題になったといえます。

メディア・リテラシーを考える画像

現成では一人でも多くの方々が、メディア・リテラシーを身につけるべきです。リテラシー(英: literacy)とは、原義では「読解記述力」を指します。一昔前に言われた「読み・書き・算盤」です。現代ではインターネットやテレビ、新聞などのメディアを使いこなし、メディアの伝える情報を理解する能力のこと、または、メディアからの情報を見きわめる能力のことです。

メディア・リテラシーは、主に5つの原理によって成り立っています。

第一の原理は、「すべてのメディア・メッセージ」は「構成されている」ということです。
ここでいう「メディア・メッセージ」は、テレビや新聞など大手メディアだけでなく、個人で発信するソーシャルメディアを含みます。

第二の原理は「メディア・メッセージは、創造的な言語とその原理を用いて作られている」ということです。テレビのCMなどを考えるとわかりやすいですが、さまざまなカメラワークや音声などの要素によって、メディア・メッセージは構成されています。

第三の原理は、「メディア・メッセージは、多様な人々によって、多様に感じ取られる」ということです。一つの同じメッセージでも、東京に住むか、沖縄に住むかで、米軍基地問題についてのとらえ方も変わってきます。

第四の原理は、「メディア・メッセージは、価値観と視点を有している」ということです。新聞社や放送局にはそれぞれ「癖」があり、同じニュースを報じるにも、その価値観が反映されがちです。それはソーシャルメディアで個人が発信する際にも、同じことが言えます。

第五の原理は、「ほとんどのメディア・メッセージは、力や利益を得ることを目的として作られている」ことです。メディア企業には公益性もある一方、株式会社である以上、利益を得ることを目的としている面があります。また、クリックすればお金を稼げるような仕組みを利用して、「フェイクニュース」を作る人もいます。利益が目的でなくても、何らかの力(影響力)を得ようとする場合もあります。メディア・メッセージには、必ず目的があるということを頭に置く必要があります。

以上が、国際的にみたメディアリテラシーの基本原則だが、これだと、実際には使いにくいですし、忘れやすいです。法政大学・坂本旬教授は、米国のメディアリテラシー団体であるCenter for Media Literacyの5つのチェックリストを日本語に翻訳し、「さ・ぎ・し・か・な」というわかりやすい標語にしました。

それぞれ、上記の第1から第5の原理に対応しています。
さ:誰がメッセージを作り出したのか(作者の「さ」)
   (Authorship) Who created this message?

ぎ・私たちの注意を引くためにどんな創造的表現技法が使われているか(技法の「ぎ」)
   (Format/Techniques) What techniques are used to attract my attention?

し:他の視聴者は自分と比べてどのように違った理解をするだろうか(視聴者の「し」)
   (Audience) How might others interpret this message differently?

か:どんな価値観やライフスタイル、視点が表現されているか、あるいは排除されているか(価値観の「か」)
   (Content/Framing) What values, lifestyles and points of view are represented in-- or omitted from -- this message?

な:なぜメッセージが送られてきたのか(なぜの「な」)
   (Purpose) Why is this message being sent?

2015年に実施された「第6回世界価値観調査」という国際調査によると、「日本国民の73%が新聞から、94%がテレビから毎日情報を得ていることが判明」、そしていずれも「調査を実施した57カ国中で1位の数字」なのだそうです。ただ、この頃よりは、さすがに、新聞・テレビだけから、情報を得る人は減ったとは思いますが、それでも今でも多いのだと思います。

近年の新聞とテレビはオールドメディアと呼ばれて斜陽産業のレッテルを貼られてきましたが、影響力はいまだ充分に大きいです。コロナ禍でもテレビのワイドショーやニュース番組の情報は視聴者の心情と行動を逐一左右しましたし、見聞きした情報をまっすぐに受け止めてしまう素直な視聴者たちによってトイレットへーパー等の買い占め騒動が起きるなど、国民もどうかしていたのは我々の実感するところです。

去年はトイレットペーパー買い占め騒動があった

ワイドショーやニュース番組が番組カラーとして打ち出す政治色、攻めるコメンテーターの発言に対する生放送ゆえの検証不足、素人発言の確信犯的な利用など、テレビは様々な方法を駆使して、私達を印象操作しようとしている部分は間違いなくあると認識すべきです。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関して、SNSなどで正しい情報を発信している医師はたくさんいます。

しかしなぜか、テレビ番組に頻繁に出ている人の中に、疑問符がつく人がいます。もちろん、全員とは言いません。

COVID-19患者を1人も診ていない医師がどや顔で最前線の医療従事者を批判したり、新型コロナウイルスのPCR検査について明らかに誤ったコメント(検査を増やせば増やすほどよいと受け取られるような発言等)をしていたり、よくもあそこまで断言できるものだと感心することがありました。

一人の人間として「感想」を述べるのはかまわないと思いますが、「世の中のみなさん、こうですよ」と間違ったことを流してしまうのは、かなりメディアリテラシー上問題があると思います。

COVID-19に関して言えば、Twitterはデマも多いですが、インフルエンサーによる真実の流布も相応に多く、情報を集めるツールとしてはとても良かった思います。特に信頼に値する具体的な数値をもとにしたものは信用できます。しかし、テレビについては、出ているコメンテーターによってはひどいものがありますし、総合得点ではSNSをはるかに下回っています。

今回の騒動により、メディアに対するSNSの下克上が進んでいくのではないでしょうか。ただし、SNSにも明らかなデマも多いので、メディア・リテラシーがますます重要になってくるでしょう。

まともな感染症専門家の、SNS上のコメントだけではなく、そのエビデンスなども含む、添付資料にも目を通す人は、現在のさざなみ程度のコロナ感染症のことを十分熟知しており、マスコミ報道にはうんざりしているのではないかと思います。


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2021年4月26日月曜日

対中同盟の旗印に民主主義を掲げるのは難しい―【私の論評】実は民主化こそが、真の経済発展の鍵であることを中国をはじめとする発展途上国は認識すべき(゚д゚)!

対中同盟の旗印に民主主義を掲げるのは難しい

岡崎研究所

 3月30日付の英フィナンシャル・タイムズ紙に、同紙コラムニストのジャナン・ガネシュが、「米国はその同盟国を選り好みできない。中国について心配している国はすべてが模範的な自由な国ではない」との論説を書いている。バイデン政権が対中戦略において仲間を増やしたいならば、あまり民主主義の旗を掲げるのは得策ではない、と説いている。


 このガネシュの論説は今後の米中対立を価値の対立、すなわち民主主義対専制主義の対立として進めていくことについて、いくつかの落とし穴があることを指摘したものであり、それなりに的を射た指摘であると思われる。

 米ソ冷戦はヨーロッパが中心で、西ヨーロッパ諸国には民主主義国が多かったことはその通りである。

 現在は、米中冷戦というか、対立は主としてアジアで繰り広げられることになるが、アジアにおける政治体制は、民主主義が主流であるとは必ずしも言えない。そういう中での民主主義の価値の強調は、米国を中心とする陣営の仲間づくりにマイナスの効果もあることをよく考えておくべきであろう。

 ASEAN(東南アジア諸国連合)では、ベトナム、インドネシア、フィリピンが重要であり、それぞれ中国との関係で困難な問題を抱えている。これらの国に民主主義としての結束を説いても、すぐ賛同が得られるとも思えない。

 そこで、民主主義というよりも、中国の言動が国際法に反していることを厳しく追及していく方が各国の賛同を得られやすいのではないかと考える。例えば、香港の「一国二制度」の侵害は、英中共同声明という条約、国際法を侵害している事案であって、内政干渉の問題ではないことを強調すべきである。また、南シナ海での行動は、島の造成と軍事化は国際海洋法に反するものであることなどを指摘していき、その是正を求める方が民主主義と専制主義との戦いというより、ずっと進めやすいのではないかと考えている。

 まず第1に、中国の対外活動、海洋進出や外国への経済的圧力に注目していくべきであると思う。人権の問題については、南アフリカのアパルトへイト(人種隔離政策)以来、国内問題ではなく、国際関心事項であることが国際社会で確立してきている。この点も指摘していくべきであろう。

 バイデン大統領は、民主主義の有用性を示していくのが重要といっているが、例えばコロナの制圧において、民主主義と権威主義の体制のどちらがより良い成果を上げたかなどで競争すべきではないと考えている。政治権力は正統性を持たなければならないという問題であって、正統性はutility(効用)で測られる問題ではないだろう。

【私の論評】実は民主化こそが、真の経済発展の鍵であることを中国をはじめとする発展途上国は認識すべき(゚д゚)!

ジャナン・ガネシュ氏の主張は、正しい部分もあれば、明らかに間違いの部分もあると思います。こういう人たちに陥りがちなのが、しっかりとした数値分析です。ただ、私自身は、数値分析至上主義者ではありません。ただ、中国のことについても、ある程度の分析は必要であると考えています。

ジャナン・ガネシュ氏

私自身は、このブログの記事では、経営学の大家ドラッカー氏のことを掲載していますが、最近では米国でドラッカー氏のことが忘れ去られていること、特に経営学会では忘れられていることをを掲載しました。

ドラッカー氏の著作や論文などを読むと、あまり数値は掲げられていません。ドラッカー氏のそれは、叙述的なものが多いのです。そのことが、ドラッカー流マネジメントが特に米国の経営学会で忘れ去られている大きな理由であると、私は考えています。

米国の経営学会ではもう随分前から、因果関係がかなり重要視されていて、米国の現在主流を占める経営学者らは、当然のことながら、因果関係を探るために、分析し、その結果を論文や著作にまとめています。

だから、今日の米国の経営学会では、叙述的なドラッカー流の経営学は、あまりかえりみられなくなってしまったのだと思います。

ただし、ドラッカー氏は、米国の大手優良企業のコンサルタントもしていましたから、当然のことながら、数値分析も行っていたと思います。さらに、ドラッカー氏の書籍や、論文を読んでいると、確かに叙述的な内容が多いのですが、明らかに数値分析もしていることがうかがえます。

ドラッカー氏は自身を社会生態学者と呼んでいましたが、社会を観察するにしても、数値分析をしなければ、最初から見えないものも多くありますし、客観的に社会を見ることもできません。

だから、ドラッカー氏としては、分析はするものの、それは本質ではないと考えていたのでしょう。

実際、ドラッカー氏は、以下のように語っています。
300年前デカルトは、『我思う。ゆえに我あり』と言った。今やわれわれは「我見る。ゆえに我あり」と言わなければならない。(『新しい現実』)
デカルト以来、重点は分析に置かれてきました。ドラッカー氏は、これからは分析と知覚とのバランスが不可欠だといいます。


すでに1890年代、形態心理学は、われわれが理解するのは「C」「A」「T」ではなく、「CAT」であることを明らかにしています。以来、心理学のほとんどの分野が、分析から知覚へと重点を移しました。今日の心理学は、人間の心理過程、つまり衝動ではなく、人間そのものを理解しようとします。

最近、企業や政府の計画立案において、シナリオの果たす役割が大きくなりました。シナリオもまた、知覚的な認識です。

生態系なるものは、すべて分析ではなく、知覚の対象です。全体として観察し理解しなければならないのです。部分の和が全体ではありません。部分は全体との関係において存在するにすぎないのです。

ドラッカーは、今日われわれの眼前にある新しい現実は、すべて形態的であって、それらの問題を扱うには、分析とともに知覚が不可欠だといいます。グローバル経済、途上国問題、地球的環境問題、組織社会、教育問題など、すべてが形態的な問題なのです。
今日の生物的な世界では、中心的な役割を果たすべきは知覚的な認識である。しかも知覚的な認識は、訓練し発達させることが可能である。(『新しい現実』)
中国に関しても、今日われわれの眼前にある新しい現実は、すべて形態的であって、それらの問題を扱うには、分析とともに知覚が不可欠なのです。

中国の分析に関しては、このブログにも掲載したことがあります。特に高橋洋一が中国に関して分析した内容は注目に値します。それは以前このブログに掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
米中「新冷戦」が始まった…孤立した中国が「やがて没落する」と言える理由―【私の論評】中国政府の発表する昨年のGDP2.3%成長はファンタジー、絶対に信じてはならない(゚д゚)!

元記事は、高橋洋一氏の記事です。詳細は、この記事をご覧いただものとして、そこから、一部を引用します。 

開発経済学では「中所得国の罠」というのがしばしば話題になる。一種の経験則であるが、発展途上国が一定の中所得までは経済発展するが、その後は成長が鈍化し、なかなか高所得になれないのだ。ここで、中所得の国とは、一人あたりGDPが3000~10000ドルあたりの国をいうことが多い。
これをG20諸国の時系列データで見てみよう。1980年以降、一人あたりGDPがほぼ1万ドルを超えているのは、G7(日、米、加、英、独、仏、伊)とオーストラリアだけだ。
以上のG20の状況をまとめると、高所得国はもともとG7諸国とオーストラリアであった。それに1万ドルの壁を破った韓国、サウジ。残りは中所得国で、1万ドルの壁に跳ね返されたアルゼンチン、ブラジル、メキシコ、ロシア、南アフリカ、トルコの6ヶ国、まだそれに至らないインドとインドネシア。それに1万ドルになったと思われる中国だ。

さらに、世界銀行のデータにより2000年以降20年間の一人当たりGDPの平均を算出し、上の民主主義指数を組み合わせてみると、面白い。中所得国の罠がきちんとデータにでている。
民主主義指数が6程度以下の国・地域は、一人当たりGDPは1万ドルにほとんど達しない。ただし、その例外が10ヶ国ある。その内訳は、カタール、UAEなどの産油国8ヶ国と、シンガポールと香港だ。

ここでシンガポールと香港の民主主義指数はそれぞれ、6.03と5.57だ。民主主義指数6というのは、メキシコなどと同じ程度で、民主主義国としてはギリギリだ。

もっとも、民主主義指数6を超えると、一人当たりGDPは民主主義度に応じて伸びる。一人当たりGDPが1万ドル超の国で、一人当たりGDPと民主主義指数の相関係数は0.71と高い。

さて、中国の一人当たりGDPはようやく1万ドル程度になったので、これからどうなるか。中国の民主主義指数は2.27なので、6にはほど遠く、今の程度のGDPを20年間も維持できる確率はかなり低い。 
中所得国の罠をクリアするためには、民主主義の度合を高めないといけない。それと同時に、各種の経済構造の転換が必要だといわれる。

その一例として、国有企業改革や対外取引自由化などが必要だが、本コラムで再三強調してきたとおり、一党独裁の共産主義国の中国はそれらができない。

共産主義国家では、資本主義国家とは異なり生産手段の国有が国家運営の大原則であるからだ。アリババへの中国政府の統制をみると、やはりだ。

こう考えると、中国が民主化をしないままでは、中所得国の罠にはまり、これから経済発展する可能性は少ないと筆者は見ている。一時的に1万ドルを突破しても跳ね返され、長期的に1万ドル以上にならない。10年程度で行き詰まりが見えてくるのではないだろうか。

中国はどの程度の民主化をすればいいかというと、民主主義指数6程度の香港並みをせめてやるべきであった。しかし、逆に香港を中国本土並みにしたので、香港の没落も確実だし、中国もダメだろう。

私自身も中国はこれからは経済発展はしないと思います。中国が2028年、米国を抜いて世界トップの経済規模になる――こんな見通しを英民間調査機関「経済・ビジネス研究センター」(CEBR)が昨年の12月26日発表しました。

新型コロナウイルスの世界的大流行(パンデミック)にもかかわらず、当初の見通しより5年早く“世界一”を達成するという見通しです。これはありえないでしょう。

高橋洋一氏は、元記事で以下のようにも述べています。

中所得国の罠をクリアするためには、民主主義の度合を高めないといけない。それと同時に、各種の経済構造の転換が必要だといわれる。

上のグラフで、高橋洋一氏が示したように、民主化ができない国は経済発展しないのです。そうして、高橋洋一の語っている各種の経済構造の転換とは、ざっくり言ってしまうと「経済と政治の分離」「法治国家化」です。

「経済と政治の分離」が行われないと、政治が恣意的に経済に介入して、健全な経済発展を歪めてしまいます。それでは、経済成長はできません。現在の中国はまさに中国共産党により、経済への介入が何度も行われ、結果として中国経済はそうとう歪んでいます。

それを象徴するのが、現在の中国が「国際金融のトリレンマ(三すくみ)」にはまり込んでしまい、独立した金融政策が実行できない状況になっていることです。

これについては、述べていると長くなってしまうので、以下のリンクを参照してください。

https://yutakarlson.blogspot.com/2021/04/blog-post_9.html

独立した金融政策が実行できないと、雇用対策ができません。一昔前の中国だと、景気が悪くなると、政府は大規模な財政出動をし、人民銀行は大規模な金融緩和を行い、インフレ傾向になれば、それを中止しました。また、景気が悪くなると大規模な財政出動と、金融緩和を行い不況から素早く脱出していました。それによって、「保8」を維持してきました。

「保8」とは、経済成長8%を維持するという意味です。中国は発展途上でだったので、経済成長が最低8%でないと失業が深刻になるので、それを防ぐために経済成長8%を死守するのが中共政府の基本的な経済政策だったのです。

平成年間の日本は、デフレ傾向であっても、緊縮財政、金融引締を行い続け、そのため深刻なデフレと円高に悩まされたのとは対照的でした。

しかし、単純明快ともいえる中国の経済対策は現状できなくなってしまったのです。 「保8」は随分前からできなくなり、独立した金融政策もできなくなりました。

これでは、中国は経済發展できません。そうして、経済発展できない根本要因は中国が民主化されていないからです。

民主化されていなければ、当然のことながら、「政治と経済の分離」も行われません。「法治国家化」も無理です。だからこそ、「民主化」と一人あたりのGDPには相関関係あるのでしょう。

私自身は、「民主化」、「政治と経済の分離」、「法治国家化」がある程度以上実施されていない国では、経済発展しないのは当然のことだと思います。

これからがある程度以上実施されていなければ、中国のように富裕層は生まれるかもしれませんが、いわゆる中間層が生まれません。

以下に、分析ではなく私自身の知覚による見方を掲載します。

先進国においては、「民主化」をすすめ、「政治と経済の分離」を行い、「法治国家化」をすすめました。そのため、星の数ほどの多くの中間層が輩出され、これらが自由に社会経済活動を行い、あらゆる地域、あらゆる階層において、イノベーション(技術革新ではありません、社会を変革するものです)が行われ、それによって富が蓄積され、今日先進国になったのです。

「民主化」それに続く「政治と経済の分離」「法治国家化」が行われなければ、多数の中間層が生まれることもなく、今日の中国のように、いくら政府が音頭をとって巨額の投資をして、イノベーションをうながしたとしても、それは地域的にも、階層的にも、点のイノベーションにしかなりえず、一部の富裕層が豊かになるだけです。

そうして、あらゆる地域、あらゆる階層(特に多数の低所得層と数少ない中間層)の社会に非合理、非効率が温存され、旧態依然とした社会が残り、経済発展できないのです。

ジャナン・ガネシュ氏は、バイデン政権が対中戦略において仲間を増やしたいならば、あまり民主主義の旗を掲げるのは得策ではないとしていますが、これは当面は正しいとは思います。ただし、いずれ中国をはじめ多くの国々が、経済発展をしたければ「民主化」は避けて通れないことも周知徹底すべきです。

先進国が、故なく先進国になったのではなくそれにはまず「民主化」をすすめ、その後「政治と経済の分離」「法治国家化」をすすめたからこそ、先進国になったのであり、そうしなければ、「中進国の罠」に阻まれ、先進国になることはなかったのです。

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2021年4月25日日曜日

中国海軍 初の大型強襲揚陸艦など3隻就役 海軍力の増強を誇示―【私の論評】現在の中国海軍は、軍事力というよりは、海洋国に対しては「政治的メッセージ」と呼ぶほうがふさわしい(゚д゚)!

中国海軍 初の大型強襲揚陸艦など3隻就役 海軍力の増強を誇示


中国海軍の新たな軍艦が就役する式典が、習近平国家主席も出席して、南シナ海に面する南部・海南島で行われました。中国軍で初めてとなる大型の強襲揚陸艦など合わせて3隻が一度に就役し、海軍力の急速な増強を誇示した形です。

国営の中国中央テレビは、南部・海南島三亜にある軍港で23日、3隻の軍艦が就役する式典が、習近平国家主席も出席して、行われたと伝えました。

式典で習主席は艦長らに軍旗などを手渡した後、艦内を視察したということです。

中国共産党系のメディア、「環球時報」によりますと、就役したのは中国軍で初めてとなる大型の強襲揚陸艦、大型の駆逐艦、そして、最新鋭の原子力潜水艦の3隻で、いずれも周辺国と領有権の争いがある南シナ海の海域を管轄する艦隊に配備されたということです。

「海洋強国」を目指す中国は、3隻の主力艦を同時に配備することで、海軍力の急速な増強を内外に誇示した形で、南シナ海や台湾周辺などでの活動を一層活発化させていくとみられます。

【私の論評】現在の中国海軍は、軍事力というよりは、海洋国に対しては「政治的メッセージ」と呼ぶほうがふさわしい(゚д゚)!

上の記事のような、中国の軍備の拡張の報道を見ると、とても米国や日米は中国に対抗できないと思い込む人もでてくるのではないかと思います。

しかし、現実は違います。それに関して過去にこのブログにも掲載したことがあります。その記事の代表的なもののリンクを以下に掲載します。
中国は米大統領選の混乱をついて台湾に侵攻するのか―【私の論評】中国は台湾に侵攻できない(゚д゚)!
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事から一部を引用します。
日本の潜水艦は、このブログにも掲載したように、原潜ではない通常型のものですが静寂性は世界一です。その静寂性を利用すれば、あらゆる海域で中国に発見されず哨戒活動等にあたることができます。無論、これによって得られた情報は米軍と共有することができます。

これでは、中国に勝ち目は全くありません。そのため、中国は台湾に侵攻しても、意味がありません。中国ができるのは、せいぜい台湾海峡等で大規模な軍事演習をして台湾を脅すことくらいでしょう。そのことを理解しているからこそ、中国は三戦に力をいれているのでしょう。

それでも敢えて中国が台湾に侵攻した場合、ますば米国潜水艦隊によりほとんどの中国の艦艇、航空機が破壊されることになります。無論上陸用舟艇なども破壊され、上陸部隊は殲滅されるかもしれません。

それでも、中国軍が無理やり上陸した場合は、米軍は場合によっては、中国本土のミサイル基地等も潜水艦によって破壊するでしょう。そうして、中国の脅威を取り除いた後に、さらに台湾を包囲して、補給を断ち弱らせた後に空母打撃群を派遣して中国陸上部隊を攻撃してさらに弱らせ、最終的に強襲揚陸艦等で米軍を台湾に上陸させ、上陸した中国軍部隊を武装解除して無力化することになるでしょう。

今年4月11日、上海にある造船所の桟橋に係留艤装中だった中国海軍初の
大型強襲揚陸艦「075型」1番艦から出火、未だに中国は公表していない

よく軍事評論家の中にも、空母を派遣しても中国の超音速ミサイルに攻撃されて、米国は負けるなどとする人もいますが、こういう人たちに限って、なぜか潜水艦隊のことをいいません。

今年(ブログ管理人注:2021年)の5月に、太平洋艦隊所属の潜水艦の少なくとも7隻が西太平洋派遣されたことをもって、米軍は有事の時には、特に海洋での有事の時には最初に潜水艦隊を用いる戦術に変えたと認識すべきです。私自身は、ずっと前から変えていると思います。海洋で、わざわざ初戦で空母打撃群を派遣して、敵に格好の的を提供する必要性などありません。

ただ、手の内をわざわざバラす必要もないので、黙っていただけだと思います。ただ、コロナ禍に中国につけこまれることを防ぐため、わざわさ公表したということです。この公表の裏には、以上で述べたことを、それとなく中国に伝える目的もあったと思います。

ちなみに、今回就役する大型強襲揚陸艦は、上の記事の写真で示したように、昨年火災にあった「075型」1番艦です。

現状の中国の海軍力は、日米に決定的に劣っている部分があります。それは、哨戒能力です。特にその中でも、対潜哨戒能力(潜水艦を哨戒する能力)が徹底的に劣っています。一方日米の哨戒能力は世界のトップレベルです。

特に対潜哨戒能力は、米国は世界1です。日本は、おそらく2番目でしょう。

そのため、中国の艦艇は、潜水艦を含めて、日米にとっては常時丸裸状態です。中国軍のほとんどすべての艦艇は、港を出た途端に日米の潜水艦等から監視されており、常にその行動を把握されている状態です。

一方中国は、日米の艦艇の行動はある程度把握できますが、日本の潜水艦の行動は把握できません。特に、日本の潜水艦は静寂性(ステルス性)が高いので、その行動を中国は全く把握できません。

良く横須賀の日本の潜水艦隊基地には潜水艦がむき出し状態に置かれているという方もいますが、日本の潜水艦は一度潜水すると、中国側はそれを探知することはできないのです。

おやしお型潜水艦横須賀・楠ヶ浦地区にて

このステルス性には、逸話があります。日米が合同訓練をしているときに、米軍側が日本の潜水艦がどこにいるのかわからないので、「一体どこにいるのだ」と米側が照会すると、日本の潜水艦は米空母のすぐ横に浮上したそうです。これは、日本の潜水艦は米軍にも気が付かれずに、米空母を撃沈できることを意味します。

しかも、これは現在の最新型ではなく古いタイプの潜水艦だったそうです。現在の最新型は、リチュウム乾電池で駆動しており、事実上ほとんど無音です。さらに、潜航時間も思いのほか、長いです、最新型より一つ前の潜水艦では潜航時間は二週間といわれていましたが、最新型ではそれよりはるかに長いそうです。軍事機密なのか、潜航時間が大幅に伸びたとしか公表されていません。

米国の原潜に関しても、原潜そのものが、構造的に騒音が出るので、日本の潜水艦ほどには静寂性はありませんが、それでも、中国のお粗末な対潜哨戒能力ではそれを完全把握することは困難です。

さらに、米原潜の攻撃力は凄まじいものがあります。たとえば、巡航ミサイル原潜オハイオはトマホーク巡航ミサイルを154基搭載しています。巡航ミサイルは、現在は撃ち落とすことが可能になったとはいえ、オハイオから魚雷攻撃や巡航ミサイルによる飽和攻撃を受ければ、中国の空母も、強襲揚陸艦もひとたまりもありません。

トマホークミサイルが2018年の試験で米海軍の潜水艦から発射される様子。
オハイオ級巡航ミサイル潜水艦はトマホーク154基を搭載できる

これでは、中国は現状でいくら海軍力を強化しても無意味です。特に日米が連携して、日本の潜水艦が情報収集をして、攻撃力の優れた米原潜が攻撃にあたるような戦法をとった場合、中国はなすすべがなく、もし本当に戦争状態となれば、中国の艦艇は港を出た途端にすべて撃沈されるでしょう。

これは、潜水艦20隻体制になった現在の日本の潜水艦隊もやるつもりなら、日本が単独でもできるでしょう。無論、尖閣、台湾の守備も可能です。

尖閣や台湾を潜水艦隊で包囲してしまえば、たとえ中国人民解放軍が台湾や尖閣に上陸したとしても、中国は上陸部隊に補給することができなくなり、上陸部隊は弾薬、食料・水が尽きてお手上げになります。

中国海軍がまず最初になすべきは、日米並の哨戒能力を持つことです。これができれば、中国も日米と互角の海洋戦ができます。さらに、日本の潜水艦と同程度のステルス性のある潜水艦を開発することです。これができて、はじめて中国は世界一の海軍になれるかもしれません。

ちなみに、台湾はそれを実行中です。将来は、5隻の新型潜水艦で台湾を守備する計画です。米国の専門家は、台湾がこれに成功すれば、今後数十年間中国の台湾侵攻をとめることができるだろうと予測しています。

これに対して、中国の強大な軍事力を用いれば、中国はなんでもできるように言う方もいますが、目の見えず、耳が聞こえない人が、いくら重機関銃やレーザー銃を手に入れたとしても、たとえ素手であっても目が見える人と戦うことになれば、圧倒的に不利であるのと同じく、中国がどのような破壊力のある艦艇や潜水艦や超音速ミサイルなどを持ったにしても、哨戒能力が低ければ、哨戒能力が格段に高く、攻撃力もある日米に太刀打ちすることできません。

そうして、対潜哨戒装置や潜水艦の静寂性に関する技術は機密中の機密なので、さすがに中国も剽窃などで簡単にその能力を身につけることはできないようです。それにテクノロジーだけではなく、長い間の積み重ねによる、ノウハウもあるようで、この蓄積も中国海軍にはありません。特に中国は対潜哨戒能力はロシアのものを導入しているようですが、そのロシアの哨戒能力が元々格段に低いのです。これが、陸上国の宿命というものなのかもしれません。

低い哨戒能力しかない中国の海軍は、日米のみならず、通常型のステルス性の高い潜水艦を持つフランス、ドイツなどの海軍とも戦えば不利です。戦って、確実に勝利できるのは、発展途上国の海軍です。

これでは、現在の中国海軍は、軍事力というよりは、先進国、特に日米英などの海洋国に対しては「政治的メッセージ」と呼ぶほうがふさわしいかもしれません。

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2021年4月24日土曜日

「SOS」 インドで医療ひっ迫 新規感染、再び最多更新―【私の論評】現状では、深刻な医療崩壊が起こった場合まず陳謝すべきは、当該知事と当該区長市町村長(゚д゚)!

「SOS」 インドで医療ひっ迫 新規感染、再び最多更新

病院に搬送される、新型コロナウイルス感染者とみられる患者=18日、ニューデリー

新型コロナウイルス流行の新たな波に見舞われているインドでは23日、首都ニューデリー各地の病院が医療用酸素の不足を訴えた。同国の新規感染者数は前日に続き世界最多を更新。国内の医療体制はひっ迫している。

インドでの直近24時間の新規感染者は33万人、死者は2000人に上った。以前から資金不足が常態化していたインドの医療機関では現在、流行第2波の発生により医療用酸素や医薬品、病床数が深刻に不足している。

新型コロナウイルス流行の新たな波に見舞われているインドでは23日、首都ニューデリー各地の病院が医療用酸素の不足を訴えた。同国の新規感染者数は前日に続き世界最多を更新。国内の医療体制はひっ迫している。

インドでの直近24時間の新規感染者は33万人、死者は2000人に上った。以前から資金不足が常態化していたインドの医療機関では現在、流行第2波の発生により医療用酸素や医薬品、病床数が深刻に不足している。

【私の論評】現状では、深刻な医療崩壊が起こった場合まず陳謝すべきは、当該市町村長それに知事(゚д゚)!

インドは医療崩壊が始まったようです。英国はギリギリで医療崩壊しませんでした。現在の英国の感染者数はコロナワクチンの早めの接種が功を奏して、かなり感染者数が減ったため、現状では、日本と同じ程度です。その今の日本で医療崩壊が起こるなど、本来ありえないことです。

以下に、インド、日本、英国のコロナ感染者数の推移のグラフを掲載します。

クリックすると拡大します

インドの人口は13億人で、日本は1億2千万人です。英国の人口は6,665万人です。英国は日本の約半分とみて良いです。それを加味しても、インドの感染が凄まじいことがわえります。

また、英国は一時かなりの感染者数が出ていたこととがわかります。日本は、最初から最後まで、一番感染者数が少ないです。英国が医療崩壊しなかったのに、日本が医療崩壊するなどということはないずです。

これは、英国などで取り組まれたような感染対策が日本ではなされていなかったからなのでしょう。

英国政府は、財政支出をし、日本政府は財政支出をしなかったからでしょうか。そのようなことはありません。総額では人口あたりにしても、英国を凌ぐ規模で財政支出をしました。

その中には、地方自治体がコロナ対策で自由につかえるようにした「新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金」もありました。

交付金についてはYouTubeでも解説されている

内閣府では、新型コロナ対応に奔走する地方公共団体の取組を支援するため、令和2年度第1次補正予算で1兆円、第2次補正予算で2兆円、第3次補正予算で1兆5,000億円の地方創生臨時交付金を確保しました。

地方創生臨時交付金は、コロナ対応のための取組である限り、地方公共団体が自由に使うことができます。第1次補正予算のうち約7,000億円分については令和2年5月までに、第2次補正予算約2兆円分については令和2年9月までに、第1次補正予算の残額分及び第3次補正予算のうち約1兆円分については令和3年2月までに全1,788地方公共団体から実施計画が提出されたそうです。残額分については、令和3年度に、各地方公共団体から実施計画を提出される予定になっているそうです。

残額が出ているというのですから、足りないということはなかったのでしょうか。しかし、これでは辻褄があいません。なぜ今頃医療崩壊が起こるかもしれないという話になるのでしょうか。コロナが発生してから、第一波、第二派、第三派があり、今回は第四派になるかもしれません。

コロナ患者が増えると、病床が足りなくなり医療崩壊が起こるかもしれないことは、昨年の春あたりからいわれていたことです。

二度あることは三度あるとよく言われますが、今度は四波が起こるかもしれないといわれているわけですから、一体どうなっているのかと言わざるを得ません。ベッドだけ備えても、医療従事者がなどと言う識者もいますが、確かに直近ではそうはいえますが、一年もたってからその理屈は通じません。

もし医療崩壊が起こったとすれば、それが起こった都道府県知事知事が真っ先にすべきは謝罪会見だと思います。感染症対策の直接の責任は知事にあり、国はサポートする立場です。政府や国民に責任を押し付けるべきではありません。

無論、政府が十分に財政支出をしていないというなら、政府にも責任があるといえますが、先程述べたように、これからはどうなるかというのは別問題ですが、少なくとも現在までは、世界的にみても、政府は十分にコロナ対策のため財政支出していますし、さらには地方創生臨時交付金として、地方自治体のコロナ対策ための資金を提供しています。そうして、この資金は残額がでているのです。

コロナ対策などに関しては、国が直接的に何かできるわけではなく、災害や疫病の対策は元々都道府県が対応するものです。そのための平時の行動計画であり、病院や避難所などの確保と計画、それを支援するのが国という立て付けです。国は法律と予算面での支援が基本です。

大規模な場合など国からのプッシュ型の支援もしま 直接的な責任者は知事又は政令指定都市の市長です。例えばワクチン 国の役割はワクチン確保と自治体までの供給体制の構築、そして、行動計画の作成です。 実際の接種は都道府県であり、実務は基礎的自治体(市町村など) 都道府県や市町村により、接種体制の構築に大きな差が出ています。これは都道府県及び自治体の体制の問題です。

日本の医療に於いては、感染症のパンデミックが長期間起きていませんでした。結核も死の病ではなくなりました。結核病棟の廃止、縮小と受け入れ体制と保健所機能の縮小再編、これがコロナで問題になりました。自治体により維持している自治体と廃止に動いた自治体があり、差が生じています。

現在の結核病棟 この病棟では患者もwifiも使用できるという

それに医師会の問題もあります。国公立病院以外の一般病院で、コロナ患者を多数受け付けると、病院経営は赤字になるといわれています。さらに、コロナ患者を受け入れると、風評被害にあうというマイナス面もあります。

そのため、開業医が所属する医師会がこれを受け入れたくないというのは、当然といえば、当然です。しかし、たとえば、病床を一床あたり年間1000万円でコロナ病床として買い取るという制度もあり、それを実行している自治体もあると聞いています。1億円で10床確保できます。

このようなことを、地方自治体の長や知事が実行していれば、医療崩壊など起こるはずなどないと思うのですが、それともやはり、それぞれの地方において、医師会の力が強くて、なかなかそのようなことができないのでしょうか。

それに関しては、コロナが収まったあとに今後のことも考えて、都道府県単位で綿密な調査をすべきでしょう。

そのような問題が背景にあるのは確かです。ただし、深刻な医療崩壊が起こった場合に、まず陳謝すべきは、当該知事と当該区長市町村長です。実際もし、そのような事態が生じれば、そうするでしょう。私自身は、医療崩壊が起こるかもしれないと語った知事は、現時点でも陳謝すべきものと思います。

野党マスコミはなんでも政府の責任にしたいようですが、そうではないということを認識すべきものと思います。

無論、これからの話しは別です。もし政府が今後コロナ対策費をケチるようになれば、それは政府の責任ということになります。

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2021年4月23日金曜日

上院外交委員会が研究所流出説の評価を命じる法案を圧倒的多数で承認―【私の論評】何でも陰謀論と片付けていては、真実は見えてこない(゚д゚)!

上院外交委員会が研究所流出説の評価を命じる法案を圧倒的多数で承認

<引用元:デイリー・コーラー 2021.4.21
上院外交委員会は21日、米国の国家と経済の安全に中国がもたらす脅威に対する統一された戦略的手法を提示する、広範で超党派的な法案を圧倒的多数で承認した。

281ページにわたる2021年戦略的競争法(Strategic Competition Act of 2021)の方策の中には、COVID-19が武漢ウイルス研究所(WIV)からの流出によって人の中に入った可能性と、人畜共通の感染や波及といった他の起源説を評価したレポートを出すよう国家情報長官(DNI)に命じる条項がある。

「COVID-19パンデミックの起源を理解することは重要であり、そうすることで米国は将来のパンデミック的な健康被害に対して備えと予防を高めることができる。COVID-19パンデミックが米国人全員にもたらした影響を考えると、米国民は必要に応じて、米国がCOVID-19の起源についてどのような情報を所有しているかを当然知るべきだ」と法案には記されている。
米国の外交委員会の委員長である民主党のメネンデス氏(左)と共和党のリッシュ氏(右)

法案は、外交委員会の民主党委員長であるニュージャージー州のボブ・メネンデス上院議員と、委員会幹部のアイダホ州のジェームズ・リッシュ上院議員が後援した。委員会は21日に21対1で法案を承認し、共和党ケンタッキー州のランド・ポール上院議員だけが反対した。

法案が議会で可決されてジョー・バイデン大統領の署名で成立すれば、DNIはパンデミック前にWIVが行っていたコウモリ由来のコロナウイルスに手を加える研究について、連邦政府の知識を詳細に説明することも要求される。

アンソニー・ファウチ博士が主導する国立アレルギー感染症研究所(NAIAD)は、機能獲得実験としても知られるそのような研究を実施するために、2014年から2019年にWIVに対する60万ドルの送金を含めた補助金を拠出していた。

本紙は4月初めに、機能獲得実験を監視するために存在する連邦政府の監視委員会が、その研究を調査対象としなかったためNAIADの補助金を調査しなかったことを報じた。審査委員会が作られたのは2017年で、そうした実験のもたらすリスクは大きすぎるという幅広い科学的な懸念のために、機能獲得実験への連邦政府予算が3年間中止された後のことだった。

戦略的競争法では、COVID-19の起源についての世界保健機関の報告は中国政府の干渉によって妨害されたという、バイデン政権とその他13人の民主党議員が示した懸念を議会も共有するとしている。中国政府はどの科学者が調査に参加できるかについて拒否権を持ち、パンデミック初期の完全なオリジナルのデータとサンプルへのアクセスを禁止した。

DNIに研究所流出説の情報開示を命じる措置を上院外交委員会が超党派で支持する前には、WHOの報告後に、ウイルスが武漢の研究所から流出した可能性を完全に調査することが必要だと24人の科学者グループが4月初めに公開書簡で述べていた。科学者らによるとWHO報告は「信頼できる分析と評価の最も基本的な一定の基準に達しなかった」ということだった。

研究所流出説の支持がますます主流になって来る前、共和党アーカンソー州のトム・コットン上院議員のような初期の仮説提唱者は、2020年の全国メディアかや多くの科学コミュニティから陰謀論者というレッテルを貼られた。

【私の論評】何でも陰謀論と片付けていては、真実は見えてこない(゚д゚)!

研究所流出の可能性に関しては、中国寄りと批判されたあのWHOですら、完全否定していません。

世界保健機関(WHO)は3月30日、新型コロナウイルスの起源を調べるために中国に派遣した調査団の報告書を公表しました。WHOのテドロス・アダノム・ゲブレイエスス事務局長は、新型ウイルスが武漢市の研究所から流出した可能性は極めて低いものの、この説を決定的に排除するにはより広範な調査が必要との認識を示しました。

新型ウイルスは2019年末に中国・武漢市で初めて見つかりました。

中国政府は研究所からの新型ウイルス流出疑惑を否定しています。

米ジョンズ・ホプキンス大学の集計によると、新型ウイルスが初めて確認されて以来、世界で280万人以上が死亡し、1億2800万人以上が感染しています(日本時間31日午前時点)。

WHOの専門家チームは1月、新型ウイルス感染症COVID-19の発生源を調べるため武漢に入りました。調査は中国当局から提供されたサンプルや証拠をもとに行われました。

テドロス事務局長は、専門家チームが生データにアクセスするのに苦労したとし、今後の「より適時かつ包括的なデータ共有」の実現を求めました。

同チームは新型ウイルスが武漢ウイルス研究所から流出した説も含め、あらゆる可能性を調査した。同研究所はコウモリのコロナウイルスの収集・保管・研究で世界的権威となっている。

米国のドナルド・トランプ前大統領も、新型ウイルス流出説を支持していました。

ドラナルド・トランプ全米大統領

しかしWHOと中国の専門家は30日に発表した報告書で、研究所から新型ウイルスが流出した可能性は極めて低く、コウモリから動物を介しヒトに感染した可能性があると結論付けたと、AFP通信は伝えました。

一方で、テドロス氏はこの説をめぐっては「専門家を交えた追加ミッションを行うなど、さらなる調査が必要」だと述べました。

「WHOに懸念がある限り、全ての仮説がテーブルの上に残っている。このことを明確にお伝えしたい」

WHOの調査チームを率いたピーター・ベン・エンバレク博士も30日、武漢の研究所が今回のアウトブレイクと関係があることを示す証拠は見つかっていないと述べました。

エンバレク博士は、同チームは中国国外からも含め、政治的圧力を感じていましたが、最終報告書から何かを削除するよう迫られたことはなかったと付け加えました。

また、2019年10月あるいは11月頃に武漢地域で新型ウイルスが広がっていた可能性は「大いにあり得る」としました。中国は同国内で最初の感染が報告されてから1カ月後の1月3日にWHOに新型ウイルスについて報告しました。

米国や日本、韓国など14カ国は今回の報告書に懸念を表明。中国に対し、専門家にデータへの「完全なアクセス」を提供するよう求めました。14カ国は声明で、武漢での調査が予定より「大幅に遅れ、完全な元データやサンプルへのアクセスが欠如していた」と主張しました。

また、WHOと協力していくことを約束しました。

武漢市で最初の集団感染が確認されたにも関わらず、中国はこれまで、同市が必ずしも新型ウイルスの発生源とはいえないと主張してきました。同国国営メディアは輸入した冷凍食品でウイルスが運ばれてきた可能性があるとしています。これは、ほとんどありえないことと、多くの専門家が指摘しています。

冒頭の記事で、機能獲得実験(gain of function research)という言葉がでてきましたが、これは問題視されています。機能獲得実験では、病原体を遺伝子操作して病原体が持つ機能を増強したり、病原体に機能を付加したりします。

それにより、病原体がどう変異して感染力が高まるか研究することができたり、より優れたワクチン開発に向けた研究ができたりするというベネフィットがあります。しかし、その一方で、恐ろしい病原体が生み出され、それが研究所から流出してパンデミックを引き起こすリスクもあると懸念されていたのです。

そのため、2011年、ウィスコンシン州とオランダにある研究所が、フェレット間で効率的にウイルスが感染するようにH5N1鳥インフルエンザウイルスを変異させる実験を行っていたことが明らかになった時は、抗議が起きました。ちなみに、研究所は、フェレット間での感染実験は、ヒトヒト間でのインフルエンザの感染のしやすさを研究するモデルになるという理由で行っていました。

2014年10月、オバマ政権は、機能獲得実験により、機能を獲得して強力化したウイルスが市中に漏れ出すリスクを懸念し、機能獲得実験に対する連邦助成金の提供を一時中断しました。

しかし、2017年には、危険な病原体の研究を監督する機関としてP3CO(米保健福祉省"Human and Health Service"内にある監督委員会)を設け、機能獲得実験に対する連邦助成金の提供を再開しました。

P3COは、「大流行の可能性のある強化された病原体」に連邦助成金を出す価値があるか、また、強化された病原体が安全な環境下に置かれているかなどについて審査を行っています。また、P3COは、連邦助成金があてられる機能獲得実験に対し、追加的に危険低減措置を行う必要があるかどうかレコメンドする責任も担っています。

武漢ウイルス研究所で行われていたコウモリのコロナウイルス研究(コウモリのコロナウイルスを遺伝子的に改変するためのプロジェクト)に対しては、ニューヨークの非営利研究機関エコアライアンスを通じて、米国立衛生研究所の連邦助成金60万ドルの一部があてられていました。


しかし、エコアライアンスが米国立衛生研究所から受け取った、武漢ウイルス研究所でのコウモリのコロナウイルス研究のためにあてられた連邦助成金は、このP3COの審査を受けていなかったのです。

では、なぜ審査を受けなかったのでしょうか。背後にはシステム上の問題が潜んでいるようです。P3COは、連邦助成金を提供する米国立衛生研究所(NIH)の副機関である米国立アレルギー・感染症研究所(NIAID)が審査をするよう警告を出すまでは審査を行わないシステムになっているというのです。

つまり、米国立アレルギー・感染症研究所が、武漢ウイルス研究所でのコウモリのコロナウイルス研究のための連邦助成金について審査するよう警告を出さなかったことから、P3COによる審査が行われなかったのです。

ではなぜ、警告を出さなかったのでしょうか。NIHのスポークスパーソンはその理由について、デイリー・コーラーにこう話しています。

「NIAIDが連邦助成金を詳細に検討したところ、武漢ウイルス研究所でのコロナウイルスの研究は機能獲得実験ではないと判断したのです。ウイルスの病原性や感染力を強力化する研究が含まれていなかったからです」

NIAIDの判断に対し、分子生物学者であるラトガース大学のリチャード・エブライト氏は疑問を投げかけています。

先週出されたWHOの報告書によると、研究所で行われていた研究はコウモリのコロナウイルスの実験の際に組み替えウイルスを使っており、それは機能獲得実験に当たるとエブライト氏は指摘、「NIAIDが、エコヘルスアライアンスに認可した連邦助成金はコロナウイルスの感染力を増強させる機能獲得実験に関与していないと判断したことは間違っていた」と述べています。

CDC(米疾病対策センター)ディレクター(前所長)でウイルス学者でもあるロバート・レッドフィールド氏も、CNNで、コロナウイルスが効率的にヒトヒト間感染するような機能獲得実験が行われていた可能性を指摘しています。

ロバート・レッドフィールド氏

また、NIHの要約書は、コロナウイルスの感染実験については、P3COの枠組みの中で、その実験によりベネフィットがリスクを上回るか審査する必要があるとしているが、それがなされなかったとエブライト氏は指摘しています。

「NIAIDとNIHは審査をするよう警告せず、P3COをシステム的に無効にした」

実際、連邦助成金が交付されたコウモリのコロナウイルス研究はリスクがあった可能性があります。

ワシントンポストによると、2018年、中国にあるアメリカ大使館の外交官が武漢ウイルス研究所を訪問した後、外交公電で、研究所の安全運営に問題を見出し、研究所で行われているコウモリのコロナウイルス研究は、新たに、SARSのようなパンデミックを引き起こすリスクがあると警告していたからです。

もし、レッドフィールド氏の私見通り、武漢ウイルス研究所から新型コロナが流出していたとしたなら、その遠因には、コウモリのコロナウイルスの研究に対する連邦助成金が事前に米保健福祉省のP3COにより審査されていなかったという問題があったのかもしれないです。

もし、審査され、ベネフィットを上回るリスクが見出されていれば、追加的な安全措置が講じられたか、あるいは、連邦助成金が認可されなかった可能性もあります。翻せば、審査されなかったために、リスクが見出されることなく交付された連邦助成金で研究が行われ、それが新型コロナの流出に繋がった可能性もあるのかもしれないのです。米連邦助成金の審査問題は「研究所流出説」の信憑性を高めることになりそうです。

以上のことから、上院外交委員会が研究所流出説の評価を命じる法案を圧倒的多数で承認したことには、大きな意味があると思います。無論だからといって、「研究所流出説」がすぐに正しいということにはなりませんが、これから調査する価値は十分にあります。

初期の「研究所流出」仮説提唱者は、2020年の全国メディアかや多くの科学コミュニティから陰謀論者というレッテルを貼られました。これは、トランプ氏のように政治家ならまだしも、科学者なら大変なことです。このようなことがあったので、多くの科学者が口を閉ざしてしまったたという点は否めないです。

陰謀論という貶めの言葉は、暗黙のうちに実在論の正当性を前提にしています。つまり、「自分が見えている世界」「自分たちが社会だと思っているもの」の外部に意図や動きがある、という考え方そのものに対する忌避です。しかし、それを忌避していれば科学や学問、社会の発展もなくなるのです。現在の中共のように・・・・・・・。



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2021年4月22日木曜日

玉川徹氏が指摘 ワクチン接種の遅れは「厚労省が副反応の責任を取りたくなくて及び腰だったから」―【私の論評】現時点で国内でのコロナ禍を理由にオリンピック開催中止を声高に叫ぶ必要はない(゚д゚)!

玉川徹氏が指摘 ワクチン接種の遅れは「厚労省が副反応の責任を取りたくなくて及び腰だったから」

テレビ朝日本社

 19日放送のテレビ朝日系「羽鳥慎一モーニングショー」(月~金曜・午前8時)では、遅れがちの新型コロナウイルスのワクチン供給について特集した。

  コメンテーターで出演の同局・玉川徹氏(58)は「日本がなぜ先進国の中でここまで最低レベルのワクチン接種に甘んじているかと言ったら、厚労省が及び腰だったからじゃないですか」と指摘。その上で「他の国は戦略的に情報提供とか、オカネの面も含めて、どんどんワクチンを確保するんだって早い段階で動いていったわけでしょ。日本はそれをやらなかった結果として、これだけ遅れているんですよ」と続けた。

  さらに「ワクチンに対して後ろ向きというか、ワクチンで起こる副反応に対して、責任を取りたくないんですよ、厚労省は。自分たちが責任を負わされるのがイヤだって」と指摘していた。

【私の論評】現時点で国内でのコロナ禍を理由にオリンピック開催中止を声高に叫ぶ必要はない(゚д゚)!

玉川氏

玉川氏は、過去にも「コロナ検査においては偽陽性などない」という発言を同じ番組の中でしていました。このブログにも掲載したように、PCR検査においては、陽性と判定されたもののうち、本当に陽性である確率は上限で7割だとされています。

そうであれば、残りの3割は偽陽性であり、専門家もそのように語っています。玉川氏の発言は虚偽であるということになります。

このような明らかな虚偽を語った玉川氏にその後もコロナ感染についてコメントさせているのは、明らかにテレビ朝日の不手際です。

今回の、ワクチン接種の遅れは「厚労省が副反応の責任を取りたくなくて及び腰だったから」というコメントも何の裏付けもなく語っています。玉川氏には、官僚の心を読むことのできるいわゆるテレパシー能力でもあるのでしょうか?

日本のワクチン接種率は世界の中でも低いのですが、それは日本の感染率が他国に比較すると、低いからです。感染症対策として、ワクチン接種を感染率の高い地域、国から最初に多めに実施し、その後に感染率の低い国で実施するというのが当然の流れです。

それを無視して、日本が金をものをいわせて、世界中からワクチンをかき集めて、日本だけを優先して、接種を早めに実施すれば、世界中から非難を浴びることになります。

高橋洋一氏は、ワクチン回数と、感染者数と間の強い相関関係を指摘しています。

具体的には、データ入手可能な84ヶ国のこれまでのワクチン接種回数とこれまでの感染者数(ともに人口当たり)をみると、相関係数は0.73もあったというのです。感染者が多い国ほどワクチン接種回数が多いのです。

相関係数とは、相関関係があるかないかを示す指標であり、1が最大であり、1だと完全に相関していることになります。これが、0.6以下だと相関しているとは言い難いですが、0.7以上なら相関関係にあるといえます。

高橋洋一氏は、実際にこれをブロットしたグラフをツイッターに公開しています。


感染を加味して順位を出すと世界の中で平均的になります。これについて高橋氏は以下のように語っています

 感染の度合を加味して、より多くワクチン接種が行われているかを見てみよう。実際のワクチン接種状況(百人当たり)と平均的なワクチン供給(百万人当たりの感染者数に0.0004を掛けた数)の差を見て、これがプラスならばワクチン接種が多い国、これがマイナスならばワクチン接種の少ない国とみよう。すると、イスラエルは81、日本はゼロとなった。

   このコロナ感染を補正しない人口百人あたりのワクチン接種回数でみると、データ入手可能な世界84ヶ国で日本は71位、OECD諸国31ヶ国で最下位31位だった。しかし、補正した数字では、世界84ヶ国で日本は45位、OECD諸国31ヶ国で19位である。

   褒められた順位ではないが、先進国では真ん中の少し下、世界ではほぼ真ん中だ。新型コロナ感染に応じた平均的なワクチン接種であり、カネにものを言わせて集め批判を受けることもなく、あくまで日本らしく控えめではないだろうか。

   こうしてみると、オリンピック中止という議論にはとてもならないだろう。

結局マスコミはコロナ感染で煽りたいだけなのです。このブログでも以前指摘したように、ワクチンの副反応を散々煽ってきました。そのような過去があるのに、玉川氏の語るように「厚労省が及び腰」という言い方はまさに煽りの典型です。これは、典型的なマッチポンプです。

現状は、マスコミが過去にワクチン接種副反応を煽ったために、日本ではかつては普通に行われていた、集団接種ができなくなって、今回のコロナ禍において、自治体にコロナ集団接種のノウハウがなく困っているという状況です。

オリンピックに関しては、日本国内のコロナ禍を理由に開催しないということになれば、国際的にみれば、非常に不可思議ということになるでしょう。なぜなら、日本の感染者数は100万人あたりの感染者数でみれば、桁違いに少ないからです。

以下は、高橋洋一氏が作成したイギリスと日本の新規感染者数を比較したグラフです。


グラフでみると、確かにイギリスのほうが少ないですが、ただし、イギリスの人口は日本よりも少なく、約半分です。それを紙すると、イギリスのほうが若干多いくらいです。

イギリスは、ワクチンを早めに打って、いまの状況です。これだけ元々感染者数が少ない日本では、これから本格的にワクチンを接種し始めれば、オリンピック開催のころには更に感染者が減ることになります。

であれは、オリンピック開催は日本国内の感染で不可能とするには、あまりに感染者数が少ないということで国際的には奇異なことと受け取られるのではないでしょうか。

無論、他国からコロナ患者が入ってくることを恐れるというのであれば、国際社会にも受け入れられる可能性はあるかもしれません。ただし、IOCはどう受け止めるでしょうか。IOCはどちらかというと、オリンピックを開催したいと考えていますし、それに多くの人は忘れていますが、IOCの決定ではなく日本がオリンピック中止を決定した場合、多額の賠償金が生じます。

以下は、現在までのコロナワクチン投与数の推移を示したグラフです。


先に、自治体にコロナ集団接種のノウハウがなくなっているとしましたが、このノウハウが急速に蓄積されて、これから幾何級数的に投与が増えていくと思います。そうなると、感染者数もおのずから減っていくはずです。

各自治体は、ワクチン投与の良い事例に関しては、積極的に他の自治体に知らせるべきです。そのようなシステムを構築すべきです。それが、ノウハウの蓄積に大いに役立つはずです。

今から、オリンピック開催中止を声高に叫ぶ必要など本当にあるのでしょうか。

菅義偉首相は20日夜、新型コロナウイルス感染拡大に伴う緊急事態宣言を東京都に発令した場合、東京オリンピックの開催判断に影響するかどうかを問われ、「オリンピック(への影響)はないと思っている。安全・安心な大会になるように政府として全力を挙げていきたい」と述べました。首相官邸で記者団に答えました。

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2021年4月21日水曜日

日米が楽天グループを監視 中国企業株主で両国の情報流出を警戒 共産党の意向強く…経済的恩恵だけ享受はもはや通用せず―【私の論評】日本の外為法や米国のクリーンネットワーク計画など、無視した活動をする楽天(゚д゚)!

日米が楽天グループを監視 中国企業株主で両国の情報流出を警戒 共産党の意向強く…経済的恩恵だけ享受はもはや通用せず


 日米両政府が、経済安全保障の観点から楽天グループを共同で監視する方針を固めた。中国IT大手の騰訊控股(テンセント)子会社が3月に大株主となったことで、日米の顧客情報が中国当局に筒抜けになる事態を警戒しているという。

 携帯電話事業参入で財務が悪化した楽天は日本郵政などを引受人に総額2423億円の第三者割当増資を実施。テンセント子会社は657億円を出資し、3・65%を保有する大株主となった。

 外為法では安全保障にかかわるサイバーセキュリティーや通信などの分野で外国の企業と投資家が国内企業に1%以上出資する際、事前届け出を求めている。資産運用目的で経営に関与しない「純投資」の場合は免除する仕組みで、楽天はテンセントの出資を純投資と説明する。

 だが、日本政府は楽天が米国でもネット関連事業を手掛け、米政府が自国民の情報流出リスクを懸念する事情も考慮。テンセントによる経営関与の有無や楽天の情報管理の実態を継続的にチェックし、米当局と随時意見交換する方針だ。

 テンセントは中国を代表するITグループで、ゲームや通信アプリ「微信(ウィーチャット)」などを手掛けるが、中国当局は自国のIT大手への統制を進めている。

 中国と覇権を争う米国も中国ハイテク企業への締め付けを強めており、日米首脳会談でも経済安全保障が議題となった。

 共産党の意向が強い中国では、経済活動に大きなリスクがつきまとう。政治問題に耳をふさいで経済的な恩恵だけを享受するやり方は通用しなくなっている。

 楽天グループは「テンセント子会社の出資は純投資であり、業務での協力を前提としたものではない。楽天の経営、ガバナンス、データに関与するものでは全くない。楽天と株主の間で情報は遮断され、特段懸念されるような事態は生じない」とコメントした。

【私の論評】日本の外為法や米国のクリーンネットワーク計画など、無視した活動をする楽天(゚д゚)!

楽天グループを巡る「監視」が強まっています。共同通信は20日、楽天が中国のネットサービス大手、騰訊控股(テンセント)子会社から出資を受けた点について、日米両政府が共同で監視していく方針を固めたと報じました。この一報を受け、21日の東京株式市場では楽天株が一時前日比約6%下落しました。

日本政府は、通信事業を営み、莫大な個人情報を持つ楽天に対してテンセント子会社が出資する問題点に対して、きちんと対応する姿勢を見せるべく、共同監視の方針を打ち出したのでしょう。ただ、監視といっても日本側が「聞き取り」をして、それを米国と共有するスキームだといいます。

テンセント本社

米国では対米外国投資委員会(CFIUS)に、米国企業の買収や株式取得が安全保障に与える影響を調査する権限が与えられています。ところが、日本政府がそれをチェックする手段を持っていません。企業が必ず真実を語る性善説のうえに成り立つもので、プレッシャーにはなるものの、本質的な監視になるのか疑問符がつきます。

ただ、米国は国債金融を牛耳っているので、資金の流れを監視できますし、さらに高度なインテリジェンス能力を持っているので、様々な情報を得ることができます。これは、米国ではなく日本は日本政府にとって得られるものが多い共同監視ということができます。

楽天には、もう1つの監視が強まりつつあります。

それが、財務の健全性への監視です。

総務省は14日、高速・大容量通信規格「5G」向けの追加電波を、楽天モバイルに割り当てると発表した。東名阪エリアを除く全国において1.7GHz帯の基地局を開設できるようになる。地方での通信エリア拡大が期待でき、大手3社に比べて脆弱な楽天の通信環境の改善が見込まれます。

楽天にとっては悲願の割り当てです。ただ、認可にあたっては12の条件が課せられています。その1つに「設備投資及び安定的なサービス提供のために必要となる資金の確保、その他財務の健全性の確保に努めること」があります。

認可の条件に財務の健全性の確保が明記されているのです。これは2018年4月に楽天モバイルの参入を認めた際にもついた条件です。モバイル通信はライフラインの1つとなりました。インフラ事業を営むにあたり、資金難となって突然サービスを停止されては困るからです。

財務の健全性を示す指標の1つに自己資本比率があります。楽天の自己資本比率は20年末時点で4.86%でした。金融事業を抱えるため低くなるのは仕方がない部分もありますが、16年末の14.82%や19年末の8.03%と比べると、低下が著しいです。楽天はモバイル事業への投資がかさみ、前期に1000億円超の最終赤字となりました。今期もモバイル事業での投資を継続し、赤字の公算が大きいです。

  楽天グループ連結経営指標等(国際会計基準) クリックすると拡大します

楽天は4月19日、外貨建てでの永久劣後債の発行を決めたと発表しました。ドル建てが総額17億5000万ドル(約1900億円)。ユーロ建ては10億ユーロ(約1300億円)で、発行総額は約3200億円となります。一度の起債では同社の過去最大規模です。

劣後債は、償還や発行体の解散または破綻時に他の債務への弁済をした後の余剰資産により弁済される債券である。 このため、普通の債券による資金よりは株式発行などにより得られる自己資本に近い性格の資金となる。 そのため、通常は同じ会社が発行する普通の債券よりも高い金利が設定される。

ただ、格付け会社からの格下げリスクは抑えられるメリットもあります。また楽天グループは国際会計基準を導入しているため、永久劣後債で調達した資金を全額資本として扱えます。自己資本比率の改善にもつながります。

3月には冒頭で扱ったテンセント子会社や日本郵政などから総額2400億円の出資を受け入れました。矢継ぎ早に資金調達に走る背景には、財務の健全性を確保しつつ、モバイル事業のインフラ投資を加速する狙いがあります。

一方でまだ足りないとされている、数千億円をどう調達するかが課題です。楽天が非金融事業で稼ぐ営業キャッシュフローよりもモバイル事業の設備投資が大きくなり、その赤字額は「2年で1兆円」ともいわれています。劣後債の発行や第三者割当増資で6000億円弱を調達したのですが、その差である4000億円強をどう調達するかが課題なのです。

また、楽天モバイルは20年4月から今年4月まで、「1年間無料」とするキャンペーンを実施したため、モバイル事業の赤字は続きます。この4月からは、1年間無料だったユーザーの期限が終わり、有料へと切り替わるタイミングが始まっています。

楽天モバイルの売りの1つが、「いつでも解約、解約金は不要」というものです。いわゆる「2年縛り」のように、期間中に解約した場合の違約金も発生しないのです。ユーザーにとってはメリットがありますが、楽天からすればいつでも解約されるリスクでもあるのです。競合が20GBで約3000円という新料金プランを3月に始めており、楽天モバイルの競争優位性は低下しています。

楽天モバイルでの収益化が難しい中で、いかに資金を確保するのでしょうか。おそらく保有する海外株式の売却や傘下のフィンテック企業のIPO(新規株式公開)を用いるのではないかと考えられます。IPOは準備に時間がかかるため容易ではないですが、対応策を示さなければ格下げリスクが高まってしまうことになります。

もう一つ問題があります。それはクリーンネットワーク計画への対応です。

昨年8月5日、米国務省のマイク・ポンペオ長官は「米国の資産を守るためのクリーンネットワーク計画の拡大を発表する」という声明を発表しました。実はこの計画は突然湧いて出たものではなく、4月に発表された「クリーンパス・イニシアチブ」という、米国の5GインフラからファーウェイやZTEといった中国の通信企業を排除しようと再確認する取り組みが発展したものです。

クリーンパス・イニシアチブを発表したポンペオ国務大臣(当時)

クリーンネットワーク計画は、「中国共産党のような悪意ある攻撃者による執拗な侵入工作から、国民のプライバシーや米企業の最も機密性の高い情報を守るためのトランプ政権による包括的な取り組み」だと発表されています。この計画では、通信やテクノロジーのインフラを守るための5つの分野を指定しています。

まずは、「クリーンなキャリア」を標ぼうして、通信ネットワークが「信用ならない中国」の企業とつながらないようにすることを確認するといいます。さもないと、米国の安全保障への脅威になるからです。

2つ目は「クリーンなストア」。スマートフォンなどでアプリを入手するストアから中国製のアプリを排除します。中国製アプリはプライバシーを危険にさらし、ウイルスだけでなくプロバガンダや偽情報をばらまきます。スマホなどのデバイスから、個人や企業の貴重なデータが盗まれると、中国政府の利益になりかねないからです。

3つ目は「クリーンなアプリ」。中国のスマホメーカーは信用ならないアプリをスマホなどにプリインストールしたり、ダウンロードさせようとします。国務省によれば「中国政府による監視活動の手先であるファーウェイ」は、米国や他の国の先端企業のイノベーションを利用しており、そうした企業はファーウェイ製スマホなどのアプリストアから自分たちのアプリを撤退させるべきだと主張。さもないと、中国の人権蹂躙活動の片棒を担ぐことになると訴えています。

4つ目は、「クリーンなクラウド」です。中国製のクラウドサービスに対するけん制です。米国民の貴重な個人情報や、新型コロナのワクチン研究などを含む企業の知的財産が、敵対国家である中国のアリババやバイドゥ、テンセント、チャイナテレコム、チャイナモバイルといった企業のクラウドシステムで保存されたり処理されたりするのを防ぐ必要があると主張しています。さもないと、クラウドから中国政府などに情報が盗まれるというのです。

最後は、「クリーンなケーブル」です。インターネットの大半は、陸上や海底に設置された光ケーブルでデータを運ぶのですが、中国共産党はそうしたケーブルからとんでもない規模でスパイ工作を行って情報を獲得しています。世界中の大陸間を走る海底ケーブルから情報が盗まれないよう国外の同盟国と警戒を続けると述べています。

これらが、トランプ政権のクリーンネットワーク計画です。米国で禁止される方向で進んでいたTikTokやWeChatへの強硬姿勢も、まさにこの流れから出てきたものです。要するに、今後はこれまで以上に範囲を広げて中国企業などを締め付けていこうという意思表明なのです。

そうして、このクリーネットワーク計画は、バイデン政権にも引き継がれています。そしてこれに、既に述べた5Gなどの「クリーンパス・イニシアチブ」を加えることで、米政府の中国企業排除「クリーンネットワーク計画」が完全なものになります。

ちなみに米国務省は、これらの主張をクリアしたクリーンな通信企業を合わせて公開しました。その中には、日本からは、NTTやKDDI、楽天、ソフトバンク、NEC、富士通も含まれていました。

また英国やチェコ、ポーランド、スウェーデン、エストニア、ルーマニア、デンマーク、ラトビア、ギリシャなどが、ファーウェイよりもスウェーデンのエリクソンを優先的に導入すると約束していると発表しました。これらの国が、米国の中国企業排除に賛同しているということです。

楽天は愚かだと思います。新たなネットワーク構築するので、中国抜きのクリーンネットワーク作りやすい環境にあったのにもかかわらず、わざわざ中国を引き入れたのです。これで、米国からは楽天は「クリーンネットワーク計画」におけるクリーンな通信企業のリストから除外されたでしょう。

古いネットワークを用いる場合には、最初から中国のものを用いないことを前提とはしていないので、どこに中国のものが使われているかを確認した上で、それを排除し、さらに中国とは関係のない企業のものと交換しなければなりません。これには、膨大な時間とコストを要します。

日米政府による監視と財務の健全性の確保。強まる監視網に対し、楽天には丁寧な説明が求められています。そうでないと、クリーンネットワークとは認められないでしょう。

楽天では、法務部は機能しているのでしょうか。日本の外為法や米国のクリーンネットワーク計画など、無視した活動していますが、これでは国内では上場を廃止されたり、米国から報復される可能性もでてきたといえます。

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2021年4月20日火曜日

中国爆撃機10機超、9時間にも及ぶ爆撃訓練…台湾への攻撃力アピールか―【私の論評】中国が台湾侵攻のため航空機を派遣すれば、甚大な被害を被る(゚д゚)!

中国爆撃機10機超、9時間にも及ぶ爆撃訓練…台湾への攻撃力アピールか

空軍の爆撃機「轟(H)6」

 中国軍で台湾を管轄する東部戦区は20日、空軍の爆撃機「轟(H)6」10機以上が最近、連続9時間に及ぶ爆撃訓練を行ったとSNS上で伝えた。中国は日米首脳会談の共同声明で台湾問題が明記されたことに反発しており、台湾への攻撃力を誇示する狙いがあるようだ。

 中国東部の軍用空港を離陸後に編隊飛行し、敵地と想定した訓練場に爆弾を投下した。香港紙サウスチャイナ・モーニングポストによると、訓練場は内陸部の青海省にあるという。

 H6は対地・対艦ミサイルを搭載でき、台湾有事の際は台湾本島の攻撃を担うとみられている。

【私の論評】中国が台侵攻のため航空機を派遣すれば、甚大な被害を被る(゚д゚)!

台湾国防部(国防省)によると、中国軍機延べ20機が3月26日に、台湾の設定する防空識別圏に一時侵入しました。これだけの数の中国軍機が1日に侵入するのは異例。台湾側は空軍機を緊急発進(スクランブル)させました。

侵入が確認されたのは、戦闘機「殲16」10機、「殲10」2機、H6K爆撃機4機など。一部はバシー海峡上空を太平洋方向に飛行し、中国側に戻った軍用機もありました。最近では、今回の中国による爆撃訓練も含めて、このような中国による台湾への挑発が目立つようになりました。

日本のマスコミは、中国軍機が台湾の領空なとに侵入したことのみを報道し、台湾のこれに対する対抗手段などほとんど報道しません。そのため、多くの人は、台湾が簡単に中国に打ち負かされてしまうと思ってしまうことでしょう。これでは、バランスを欠いていると思いまます。そのため、本日は台湾の防空体制に関することを掲載しようと思います。

台湾への中国軍機による侵入が頻繁に行われている最中に、台湾国防部は3月31日、今年生産予定の地対空ミサイル「天弓3型」23基が全て完成したと明らかにした。また、中国からの威嚇に対抗するため、地対空誘導弾パトリオット(PAC3)の改良型「PAC3-MSE」の調達を決めたと発表した。2026年までに配備を完了させる見通しだとしています。

2007年10月10日のパレードで撮影された「天弓3」の写真

以下に、天弓3型ミサイルの性能を示した表を掲載します。

性能緒元(「天弓3型」ミサイル)
全長7m
直径46cm
重量1,635kg
弾頭重量不明(HE 着発/近接信管)
最大速度マッハ4.5
最大射程200km以上
最大射高25,000m
誘導方式中間誘導:慣性+指令誘導(修正)
  終末誘導:アクティブ・レーダー誘導


天弓3型は政府系研究機関、国家中山科学研究院(中科院)に生産を委託し、2015年から2024年まで製造されていすま。総予算は748億台湾元(約2905億円)超。蔡英文(さいえいぶん)総統が2019年1月に中科院を視察した際、天弓3型と対艦ミサイル「雄風3型」の生産を加速させるよう求めていました。

国防部は2007年から2021年までを期間とした「PAC2性能向上・PAC3調達」計画に関し、2017年にPAC3 の配備が完了したことも合わせて明らかにしました。

「天弓3号」の性能などの詳細については以下のサイトをご覧になってください。
「天弓3型」長距離地対空ミサイル
2007年10月10日のパレードで撮影された「天弓3」用の4連装ランチャーの写真

今回の爆撃機「轟(H)6」は、ソ連のTu-16を中国が国産化したものです。Tu-16は1940年代後半から開発が開始され、1952年に初飛行し、1954年には実戦配備が始まったものです。

当然のことながら、Tu-16にはステルス性が全くありません。そのため、この爆撃機が台湾を爆撃したり、ミサイル攻撃しようとしても、台湾側にすぐに察知され、「天弓3型」などのミサイルや、台湾空軍のF-16戦闘機等に撃墜されてしまうことになります。

ただし、このような古い爆撃機でも、役にたちます。それは、米軍のB-52爆撃機が現在でも現役で活躍しているのと同じ理由です。

たとえば、ミサイルや戦闘機を持たない、あるいはあったにしてもあまりないような脆弱な相手を攻撃するときです。あるいは、相手がミサイルや戦闘機を所有していても、こちら側が制空権を握った場合です。

現代の航空戦で雌雄を決するのは、ステルス戦闘機でしょう。米軍にはF-21やF-35のようなステルス戦闘機があり、それらが敵の戦闘機や、地対空ミサイルなどを駆逐してしまえば、その後にはB-52のような大型爆撃機で陸上や海上の目標を攻撃するほうが効率的ですし効果的でもあります。

そうして、中国にもステルス戦闘機があるとされています。ところが、このステルス性とやらが、かなり怪しいことがわかっています。

特殊加工が施されたステルス機は通常、レーダーでは探知が困難とされます。しかし、チベットで飛行訓練していた中国人民解放軍の最新ステルス戦闘機は、インド軍のレーダーによって探知されていたことが明らかになっています。軍事情報サイト・インド国防研究所(IndianDefenceReseachWing)が2018年5月20日に報じています。

報道によると、インド空軍は、中国軍ステルス戦闘機「殲20(J-20)」がチベット自治区空域を飛行訓練していたのを確認し、インド空軍のSu-30を出動させ追跡しました。すると、Su-30はJ-20をレーダーで捉えることができたというのです。

殲20(J-20)

インド空軍指揮官ArupShaha氏は「中国のJ-20にステルス性(隠密性)は全くない。特別な技能を使わずに通常のレーダーで探知できる」と同メディアに語りました。

中国国営メディアは、J-20はチベットで飛行訓練を行っておらず、「中国脅威論」に基づく捏造だと主張しました。

いっぽう、フランス国営RFIによれば、2018年の初めに発行された中国人民解放軍報には、運20、殲20、殲10などの軍機は「高原地区」で離着陸訓練を行う予定であると明記されていました。

中国のJ-20は、2002年に成都飛機公司所研が開発をはじめました。レーダーに検出されにくい特殊な外装で、ミサイルを搭載できる第五世代ステルス戦闘機として製造されました。2017年3月に正式に就役しました。

米軍では早くから、その性能に疑問を呈していました。米空軍のデービッド・ゴールドフェイン参謀総長(大将)は、2016年8月、米国防省で開いた会見で、J-20の能力は米軍の最新ステルス機と「比較する意味もない」と一蹴。30年前に発表された米国ステルス戦闘機F-117程度だと明かしました。

これが本当だとすれば、中国が台湾を攻撃しようとして、台湾に戦闘機と、爆撃機を派遣したとしても、中国の戦闘機は爆撃機を支援できません。

戦闘機も爆撃機も天弓3型ミサイルなどに撃墜されることになります。無論台湾が所有する地対空ミサイルの数を超えて、中国側がいくら犠牲を払ってでも、航空機を派遣してくれば、台湾もミサイルがつきて対抗できないことにもなるかもしれません。

しかし、台湾の地対空ミサイルは「天空3型」だけではありません。「天空2型」「天空1型」もあります。全部でどれだけの数があるのかはわかりませんが、いずれにしても、台湾を攻撃する航空機は甚大な被害を受けるのは確実です。

そのようなことは、中国側としても理解しているのでしょうが、このような演習とともに領空侵犯等を頻繁に繰り返すことにより、台湾が折れてくることを狙っているのでしょうが、台湾にはそのようなつもりは全くないようです。


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