2022年4月23日土曜日

フランス・スペイン共同開発 インド海軍待望の新型潜水艦「ヴァグシーア」進水―【私の論評】印はやがて露から武器輸入ができなくなり、露に配慮しようがなくなる(゚д゚)!

フランス・スペイン共同開発 インド海軍待望の新型潜水艦「ヴァグシーア」進水

カルヴァリ級6隻の最終番艦、就役は2023年後半を予定

 インド国防省は2022年4月20日、同国海軍向けの新型潜水艦「ヴァグシーア」が進水したと発表しました。

 「ヴァグシーア」はインド海軍が整備を進めるカルヴァリ級潜水艦の6番艦です。全長は67.5m、幅は6.2m、高さ(深さ)は12.3m、水上航行時の喫水は5.8mで、満載排水量は1775トン、乗員数は43人。主武装は魚雷並びに対艦ミサイルで、ディーゼルエンジンと発電機によって、水中ならば最大20ノット(約37km/h)、水上ならば11ノット(約20km/h)の速力で航行できるといいます。


 カルヴァリ級は、フランスのDCNS社とスペインのナバンティア社が共同開発した輸出用のスコルペヌ級潜水艦をインドがライセンス生産し導入しているもので、開発元であるフランスとスペイン両国での採用実績こそないものの、インド以外にもチリやマレーシア、ブラジルなどが導入・運用しています。

 インド海軍はカルヴァリ級を6隻調達する計画で、「ヴァグシーア」はその最終番艦になるとのこと。建造はムンバイにあるマザゴン造船所で行われ、今後は各種艤装や試験などを経て2023年後半までに海軍に引き渡される予定です。

 なお、インド国防省によると1番艦「カルヴァリ」が2017(平成29)年12月に就役して以降、これまでに4番艦「ヴェラ」までが実運用に就いており、5番艦「ヴァギル」も2022年中の海軍引き渡しを目指して現在、海上公試が進められているそうです。

【私の論評】印はやがて露から武器輸入ができなくなり、露に配慮しようがなくなる(゚д゚)!

インドは、潜水艦に関してはフランス・スペイン共同開発のものをこれから運用していく予定のようです。ただし、インドは、ロシアの原潜も運用しています。

昨日も掲載したように、そのロシアは西側から部品の供給を絶たれ、まもなく軍事装備の製造も修理も完璧にできなくなります。

それは、今回のように輸入を一国にだけ頼っていると、その国との関係が悪くなったり、その国が戦争に突入した場合、武器の調達が難しくなるからでしょう。

英国のジョンソン首相はインドのモディ首相と会談し、ロシアによるウクライナへの侵攻を非難しましたが、モディ首相は、これまでと同様、直接的には軍事侵攻を非難しませんでした。

イギリスのジョンソン首相は、22日、インドのニューデリーで、モディ首相と会談し、安全保障面での協力を強化することや、2国間のFTA=自由貿易協定の締結に向け交渉を加速させることで一致しました。

モデイ印首相とジョンソン英首相

この中には、インドで製造される戦闘機などへの技術支援も含まれ、イギリスとしては、インドの軍事面でのロシアへの依存からの脱却を後押しするねらいもあります。

会談後、ジョンソン首相は「独裁的な支配力が拡大するなか、自由で開かれたインド太平洋地域などで、価値観を同じくするわれわれが協力関係を深めることが重要だ」と述べ、ロシアを非難するとともに、インドとの協力の重要性を強調しました。

一方、モディ首相は「われわれは即時停戦に向けた対話と外交、および、すべての国の領土の一体性と主権の尊重の重要性を確認した」と述べるにとどまりました。

インドをめぐっては、先月19日には岸田総理大臣が訪れたほか、オーストラリアのモリソン首相、中国の王毅外相、ロシアのラブロフ外相、それに米国のバイデン大統領が、首脳間または外相間の会談を対面やオンラインで行うなど、主要国による外交が活発になっています。

背景には、ロシアによる軍事侵攻を非難も支持もしないインドを各国がそれぞれの立場に引き込みたいという思惑もあるとみられます。

ここ数週間、米国が発するメッセージは、インドの姿勢を渋々受け入れるものから、インド側にロシアとの取引を継続した場合に起こり得る結果を警告するものへと変化してきました。

直近では、ロシアとの長期的な安全保障関係を見直すよう示唆しています。 米国家安全保障会議(NSC)の高官ダリープ・シンはニューデリーで今月、中国が次にインドとの国境付近で挑発行為に出た場合、インドはロシアの支援を当てにできないだろうと述べました。 

日本政府がウクライナの周辺国に自衛隊機で救援物資を輸送する計画をめぐって、物資を積み込むための経由地のインドから同意が得られなかったことについて、インド外務省の報道官は「民間機に載せて運ぶということで許可していた」と述べ、民間機を使うことが望ましいという考えを示しました。

ウクライナ情勢をめぐり日本政府は、避難民を受け入れている周辺国に今月下旬から自衛隊機で救援物資を輸送する計画でしたが、物資を積み込むための経由地のインドから同意が得られなかったとしています。

ロシアは以前から経済的に中国依存の状態でしたが、ウクライナ紛争によってさらに接近しています。 昨日もこのブログで述べたように、西側から部品の供給を絶たれ、まもなく軍事装備の製造も修理も完璧にできなくなります。実際昨日も述べたように、ロシアの戦車工場はすでに操業を停止しています。

ウクライナの旧ソ連制戦車の修理工場が戦車の墓場のようになっているロシアの戦車工場もやがて・・・・

AK47ライフルやRPGなどローテクな兵器はこれからも輸出できるでしょうが、ハイテク関連が含まれる兵器は絶望的です。

今後ロシアが、インドへの武器輸出をいつまで継続できるかどうかは不透明です。政治学者のバサブジット・バナジーとベンジャミン・カーチはウェブマガジン「ウォー・オン・ザ・ロックス」で、ロシアの防衛産業は2014年のクリミア併合以降、財政難に直面していると指摘しました。

インドは長年、自国の防衛産業の生産能力不足に悩まされてきました。ロシア製の武器に依存度が高い現状では、輸入を止めるわけにはいかないのでしょう。 結局、米国にとってインドをロシア製の武器から引き離すよりは、依存度が低いロシア産原油から引き離すほうが簡単です。

インドのジャイシャンカル外相は11日の記者会見で、「おそらくわが国の1カ月分の輸入量は、ヨーロッパの半日分にも満たないだろう」と述べたが、 バイデン政権には、長期的にみてもっといい戦術もあります。

米国は、ロシアはそう遠くない将来、武器の輸出なその部品も輸出できくなることを説得し、米国からインドへの武器輸出をさらに拡大し、他の主要なフランスやイスラエル等の武器供給国にも同調を促し、インドの国産兵器製造能力の強化を支援することです。

インド海軍のP8I哨戒機

米国からインドへの武器輸出はロシアほどではないですが、実績はあります。たとえば、2021年7月13日、ボーイング社はインド海軍に10機目の哨戒機P-8I(ネプチューン)を引き渡しました。インド海軍向けのP-8Iには、インド海軍の要望により磁気探知装置(MAD:Magnetic Anomaly Detector)とマルチモード(イメージング、天候回避、ビーコンモード等)レーダーを搭載しています。

米国政府は、フルスペックのP-8A(ポセイドン)の海外輸出を認めていませんでした。そのため 、インド海軍向けP-8Iの電子装備は簡素化され、データリンクなど統合情報伝達システムは、インド国内のBEL社製を装備しています。

それにしても、P-8IはAUKUS諸国と直接データー共有などができないだけで、中露の対潜哨戒機よりもはるかに性能が良いです。

今後インドはロシアからの武器輸入はできなくなります。その時が来れば、黙っていてもインドがロシアに配慮をすることはなくなるでしょう。そうして、インド自身もロシアに配慮することは、今後自国の安全保障を危うくしかねないと気づくことになるでしょう。

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2022年4月22日金曜日

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日本の解き方

 ロシアによるウクライナへの侵攻からまもなく2カ月となるが、短期でウクライナを降伏させることや、北大西洋条約機構(NATO)の東方拡大を阻止するといったプーチン大統領の当初の狙いは失敗している。


 ロシアが2月の北京冬季五輪閉幕後にウクライナ侵攻を始めた際、「平和の祭典時に何ごとか」という声の一方、ロシア擁護派からはパラリンピックまで「あと2週間ある」という意見があった。今思えば、これは五輪とパラリンピックまでの2週間で終わらせるという意味だったのだろうか。実際、公開情報からそうしたもくろみを示すものもあるので、あながち的外れではないのかもしれない。

 ベラルーシから首都キーウ(キエフ)を陥落させ、ゼレンスキー政権を転覆させるという見方もあったが、2週間でこれを行う計画だったのだろう。しかし、現在、ロシアはウクライナの東部、南部地方に勢力を再配置しており、明らかに短期間での首都陥落とゼレンスキー政権の転覆は失敗したといえる。

 プーチン氏は、ユーラシア大陸の覇権を握り、かつてのロシア帝国を復活させるという野望があると解説する研究者もいる。そのために「NATOの東方拡大は許せない」と言い、NATO加盟を意図しているウクライナに侵攻したという説が多い。しかし、今回のロシアの蛮行は、結果として中立またはロシア擁護だった欧州諸国の行動を変えてしまった。

 フィンランドのマリン首相は、ウクライナ侵攻で全てが変わったとして、NATOに加盟する意向だ。スウェーデンも与党の社会民主党は長年NATO加盟に反対の立場だったが、アンデション首相は、スウェーデンの安全保障の立場は根本的に変わったとして、やはりNATO加盟に前向きだ。

 スイスは永世中立国として有名で、これまでは欧米の経済制裁には加わらないとのスタンスだった。しかし、今回、欧州連合(EU)の対露制裁措置をスイス国内でも同様に実施することとした。今回はロシア政府関係者のEU域内の資産凍結をスイスでも行うので、プーチン氏らの関係者まで資産凍結された。永世中立国かつEU非加盟国であるスイスは中立的立場を重要視しており、2014年のクリミア危機の際にも対露制裁を実施しなかったが、今回は異例の措置だという。

 プーチン氏は、ドイツをも覚醒させた。左派政権のドイツは安全保障政策を180度転換し、国防費を国内総生産(GDP)比2%まで高める方針を打ち出した。

 プーチン氏の失敗は、欧州だけではなく、米国にも指導力を発揮させてしまったことにもある。米国はイラク戦争で誤った情報を出し、バイデン政権は昨年8月にアフガニスタン撤退で失敗を犯した。今回、バイデン政権は一貫して軍事介入しない意向を示すが、それ以外ではロシアの動きを正確に予測し、アジアを巻き込んだ対露包囲網の形成に大きく寄与した。

 背景にあるのはプーチン氏が独裁者だということだ。いかなる抑止力も、核を持った独裁者を抑止することは難しい。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】西側から部品の供給を絶たれ、まもなく軍事用装備の製造も修理も完璧にできなくなるロシア(゚д゚)!

ロシア誤算は他にもあります。それは、ロシアの軍事用航空機産業の崩壊です。

ウクライナ、ロシアの両国の戦争がどのような形で決着するのかはわかりませんが、最大の敗者がロシアとなるであろうことはほぼ確定的だといえます。 ロシア経済はほぼ資源の輸出によって成立しており、世界と対等の競争力を持つ産業はほかにほとんどなく、その数少ない例外のひとつに戦闘機産業があります。

世界の大国としての地位をほぼ軍事力だけに依存していたといってよいロシアにとって、戦闘機は産業の規模としては極めて小さいながら重要な地位を担っています。

ソ連時代より有名な戦闘機メーカー「ミグ」と「スホーイ」は2022年現在、ユナイテッド・エアクラフト社傘下の戦闘機部門として名目上は存続していますが、2022年1月にはミグとスホーイともにブランド名としてのみ残り解散、ユナイテッド・エアクラフト社へ完全に統合することが決定し、ユナイテッド・エアクラフトはロシア唯一の戦闘機メーカーとして世界シェアを伸ばす計画でした。

ユナイテッド・エアクラフトの最新型戦闘機

しかしロシア自身が戦争を決断したことにより、その見通しは困難なものとなりつつあります。 米国、EU、日本など先進国のほとんどは、戦争勃発と同時にロシアへ対する前例のない厳しい経済制裁に踏み切り、ロシア経済はウクライナ侵攻開始1か月にして、早くも崩壊の兆しを見せつつあります。 

ロシアは広大な国土から産出される資源こそ豊富ですが、ロシア国内にある工業製品のほとんど全ては海外から輸入したものです。今後それらを輸入することが困難となってしまいましたから、「戦闘機をつくるための工作機械」や「戦闘機の部品」さえ手に入らなくなりつつあります。 

ロシアにとって最も致命的であろう制裁のひとつに、「半導体」の禁輸があります。電子部品の一種である半導体は、CPU、メモリー、液晶ディスプレイ、照明などなど、何かしら電気機器を手にすればその中にはほぼ確実に使われている、現代文明になくてはならないものです。

その重要な半導体を製造できる国は、実はあまりありません。米国、韓国、台湾、EU、日本で世界シェアの95%を占めており、これらの国が一斉にロシアへ対する禁輸に踏み切りました。

残る5%を占める中国だけはロシアへ輸出を続けていますが、米国は中国に対して制裁を行うよう強い圧力をかけています。 

戦闘機やミサイルなどの搭載電子機器に使われている半導体も当然、輸入頼りですから、ロシアは何十年かかけて半導体産業を育成するにしても、当座は低い歩留まりと超高コストとなることを承知で量産するか、密輸するか、中国に頭を下げるかを選ばなくてはならないです。

それでも兵器に使われるコンピューターなどは、意外にも大した性能は求められないので、なんとかなるかもしれません。しかし、レーダーや電子妨害装置など電波を送受信する機器に使われる「ガリウムヒ素(ヒ化ガリウム)」を材料とする半導体は別です。 

ガリウムヒ素を材料とする半導体は、現代戦闘機において欠かすことのできない「AESAレーダー」と呼ばれる装置に大量に使われます。通常、ガリウムヒ素でできた小さい「TRモジュール」を1000個から2000個程度、搭載しており、AESAレーダーの性能は使用したガリウムヒ素の量で決まるといわれています。

ロシアのAESAレーダ「ベルカ」の2009年の試作品

 さらに次世代戦闘機では、機体のほぼ全体をガリウムヒ素で覆う「スマートスキン」になるともいわれます。そして、よりにもよってロシアの最新鋭戦闘機Su-57は、このスマートスキンの考え方を部分的に取り入れており、全方向レーダー索敵能力を有し、同時に電子妨害なども行う、F-35やF-22さえできない野心的な設計を取り入れています。

 Su-57用レーダーに使用されている、韓国のソウルセミコンダクター社製ガリウムヒ素はすでに禁輸となっており、Su-57の開発に悪影響を与える可能性は極めて大きいです。Su-57だけではなく、2021年に初めてモックアップが公開されたばかりの「チェックメイト」と呼ばれる軽量戦闘機コンセプトや、MiG-41ともいわれる次世代迎撃戦闘機、そしてPAK-DA次世代爆撃機にもこの問題は及ぶでしょう。

 新型機ばかりではありません。すでに配備されているロシア機にも影響します。AESAレーダーの搭載は、戦闘機の性能向上において必ずといっていいほど行われる改修ですが、それも難しくなります。さらにこれまで実施されていた、ロシア製戦闘機やヘリコプターに対しヨーロッパ製の既成電子機器を搭載することも、いまでは難しくなっています。

2022年3月2日の国連総会緊急特別会合では、ロシアを非難しウクライナからの即時撤退などを求める決議案が賛成141か国、棄権35か国、反対5か国という賛成多数で採択されました。

 棄権した国の多くは、ロシアから戦闘機など同国製兵器の供与を受けていました。しかしそれらの国も、もはやロシアから部品の調達さえままならないとなれば、ロシア製兵器を維持することは困難になります。また「世界の敵」となってしまったロシアからの新規調達をためらう国も出てくることでしょう。  

最悪、ミグやスホーイは過去のものとなってしまうかもしれません。そのトリガーを引く可能性があるとすれば、恐らく中国です。これまで中国製戦闘機はおもにエンジンの信頼性に問題があり、ロシアの支援が不可欠だったものの、それも改善されつつあります。また中国は、ガリウムヒ素の次世代を担う「窒化ガリウム」半導体の生産技術を有しており、自国で生産を完結できる態勢を目指しています。 

ロシア製戦闘機は中国の支援なくして成り立たなくなり、中国とロシアの立場は逆転するかもしれません。そうなれば世界の戦闘機市場でロシアが持っていたパイは、すっかり中国に奪われてしまうことでしょう。 

料理に例えるならば、ロシアは有名店、ユナイテッド・エアクラフトはそこで働くシェフです。彼らの手がけたミグやスホーイといったロシア料理は世界中で愛されていました。しかしそれは食材を売ってくれる相手とお客がいるから成り立っていたということを、彼らは忘れてしまいました。

ロシアのケンドラー米商務次官補(輸出管理担当)は先月30日、各国による輸出制限によりロシアの戦車生産などが打撃を受けているとの見方を示ました。 ウクライナ政府の情報として、ロシアの主要戦車2工場が部品不足で生産停止したと指摘。

ウラルヴァゴンザヴォートの工場を訪問したプーチン大統領

ロシアのバイカル・エレクトロニクスは偵察機器や通信機器に使う集積回路を入手できなくなったとしました。 台湾積体電路製造(TSMC)の撤退で、MCSTは軍事・情報システムで広く使用する半導体の調達を断たれたとも指摘。 また、仏ルノー傘下アフトワズの「ラダ」ブランドが部材不足で自動車生産を停止したと述べました。

現状では、産業の崩壊がどうのこうのというどころか、ロシア軍は、航空機や戦車を新しく製造することもできず、故障しても修理できず、いずれ活動を停止せざるを得なくなるでしょう。

1〜2ヶ月後には、軍事力で、ウクライナのほうがロシアよりも圧倒的に有利という事態になるかもしれません。

ロシア軍の武器はAK47自動小銃と、核兵器と化学兵器のみということになるかもしれません。そこで、核や化学兵器を用いれば、さらに制裁は厳しくなるでしょう。

いずれ、訪れるであろう2度目の「ソ連崩壊」は、前回よりも厳しいことが予想されます。

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2022年4月21日木曜日

自公、今国会の補正成立方針で一致 公明幹事長「2.7兆円前後と想定」―【私の論評】今のままだと失業率が半年後には上がる怖さを認識できない岸田首相(゚д゚)!

自公、今国会の補正成立方針で一致 公明幹事長「2.7兆円前後と想定」



自民、公明両党は21日、物価高に伴う総合緊急対策で、2022年度予備費を活用して迅速に対応するとともに補正予算を編成し、今国会に提出・成立を図ることで一致した。自民党の茂木敏充幹事長が明らかにした。公明党の石井啓一幹事長は、補正規模について2.7兆円前後になると国会内で記者団に語った。

今後の災害や新型コロナウイルス感染症の再拡大、原油価格・物価のさらなる高騰で予期しない財政需要に迅速に対応する必要があると判断した。両党の合意を踏まえ、政府は26日に総合緊急対策を公表した上で5月下旬に補正予算案を国会に提出するシナリオを描く。

木原誠二官房副長官は21日午後の記者会見で、与党から補正予算の編成を求める申し入れがあったとした上で、提案も踏まえながら総合緊急対策をとりまとめていく考えを示した。

補正予算では、総合緊急対策で使用する一般予備費5000億円の穴埋めに加え、新型コロナ予備費について「新型コロナウイルス感染症および原油価格・物価高騰対策予備費」と改組し、使途を拡大したうえで5兆円の水準を確保することで合意した。

燃料油価格の激変緩和事業として6月から9月までの事業費1兆円強を計上することでも一致した。

公明党の石井幹事長は岸田文雄首相への報告後、官邸で記者団に「政府として詳細を詰め、補正予算を指示するとの話だった」と述べた。総合緊急対策に関しては26日に公表する意向を示したという。

総合緊急対策では、5月分の原油価格高騰対策として0.3兆円程度を想定。エネルギー・原材料・食料などの安定供給に向け300億円を計上することを求めた。

価格転嫁を念頭に置いた中小企業対策や、生活困窮者への支援策も盛り込み、地方創生臨時交付金の拡充(留保分込みで1兆円程度)や、低所得の子育て世帯を対象に1人あたり5万円を給付するため0.2兆円を支出することで合意した。

【私の論評】今のままだと失業率が半年後には上がる怖さを認識できない岸田首相(゚д゚)!

内閣府は12日、日本経済の需要と供給能力の差を示す国内総生産(GDP)の「需給ギャップ」が2021年10~12月期はマイナス3・1%だったと発表しました。マイナスは9四半期連続。金額に換算すると年間17兆円程度の需要が不足していることになります。


新型コロナウイルスの感染状況が一時的に落ち着いたことで個人消費が持ち直し、7~9月期から0・9ポイント改善した。10~12月期の実質成長率は年率換算の前期比で4・6%と、2四半期ぶりにプラス成長となりました。ただ、需給ギャップが存在するので、これを解消しない限り個人消費が持ち直し続けることはないでしょう。

需給ギャップは政府がデフレ脱却を判断する際に重視する指標の一つです。マイナスの場合、需要が供給を下回っていることを示し、物価が下がりやすくなります。

需給ギャップは、本予算のほかに、臨時で実施する補正予算の目安ともなります。本予算は日本経済を維持するための予算であり、需給ギャップがあれば、それプラスの予算を組む必要があるからです。そのため、17兆円の需給ギャップがあるなら、本来17兆円の補整予算を組むべきです。2.7兆円の補正予算では話にならないわけです。

まずは、17兆円の補正予算を組み、そこからが政治力であり、どこにどのように使えば最も効果が上がるのか腕のみせどころになるわけですが、それにしても需給ギャップに達しないような補正予算では、最初から焼け石に水で、ほとんど期待はできないです。

安倍・菅両政権のときには、両政権が継続中には、結果として需給ギャップに相当する部分を、補正予算として組み様々な経済対策を実施しました。2020年〜2021年の両政権期間中の補正予算を全部あわせるとおおよそ100兆円の補正予算を組みました。

このようなこともあり、さらに日本では雇用調整助成金(米国にはない)という制度もありますから、これらによって、コロナ感染が世界中で蔓延して失業率が増えてい最中、日本では、多くの期間を2%台で推移しました。日本政府の経済対策この時期においては概ね及第だったといえます。なぜなら、このブログても過去に何度か掲載したように、雇用こそ最も重要な指標であり、これが良ければ政府の経済対策は及第といえるからです。


さて、内閣府の需給ギャプの計算は、17兆円としているわけですが、内閣府の見積もり元々は甘いとする人もいます。それは高橋洋一氏です。

高橋氏によると、内閣府は需給ギャップのいちばん上のところを少し低めに見積もっていると指摘しています。内閣府の推計だと、失業が多いところを需給ギャップの一番高いところと見ているようです。簡単に言うと、前は100兆くらいあったけれど、「いまはそれより30兆くらい低いでしょう」という言い方の方が無難なわけです。 

100%の実力を出したら稼げるGDPの額を低く見積もれば、需給ギャップが小さく見えます。しかし逆に言うと、需給ギャップが埋まっても、物価が上がらないという状況になるわけです。 

だから実績値が、内閣府の推計値を上回れば普通、物価が上がるはずなのに、上がらなかったのです。これは想定しているところが低過ぎるとわかります。高橋氏はこれを補正して計算しましたとしています。そうすると現状の需給ギャップは35兆円くらいになるとのことです。

そうなると、補正規模について2.7兆円というの桁違いということがわかります。内閣府の産出した需給ギャップ17兆円にも届かないということになります。

それでも17兆円なら、今回は足りなくても、また次の機会に同程度の補正予算を組めば、いずれ需給ギャップが解消される目処がたつと思います。

しかし、たった2.7兆円ならば、焼け石に水どころか、大きな山のような焼け石にバケツリレーで水をかけるようなものでは、全く効果は期待できません。次の機会に補正を組んだとしても、同程度であれは、これはほとんど効き目がありません。

女子学生のバケツリレー(昭和13年)

このブログでは、つい先日公明党が政府に補正予算を促していることを掲載しましたが、たった2.7兆円の補正というのなら、全く意味がありません。

いまのままだと、半年後くらいには確実に失業率が上がり始めることでしょう。安倍政権が過去最高の長期政権になった大きな原因の一つとなったのは、雇用状況の良さです。過去20年雇用が良くなかった政権はほとんどが短期で終わっています。雇用が悪くなれば、岸田政権の支持率も落ちます。その怖さを岸田総理は全く理解していないようです。お目出度いです。

日本の政治家のほとんどがそうであるように、岸田総理大臣や、公明党は所詮マクロ経済音痴なのは最初からわかりきっていますが、自民党には安倍元総理をはじめ少なくとも数人は、マクロ経済を理解している人がいますから、なんとか岸田総理を説得していただきたいです。

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2022年4月20日水曜日

コロナ、ウクライナ…「陰謀論」にハマらない方法 統計数字や用語の定義を確認、根拠の不十分な断定は無視―【私の論評】財務省が緊縮財政をしたがるのは、陰謀ではなく官僚の頭が悪いためか(゚д゚)!

日本の解き方

反ワクチン団体「神真都Q」は全国各地でデモ活動を展開している

 新型コロナウイルスについて、「一部の人間が仕掛けたもの」としたり、「ワクチンは殺人兵器」などとする陰謀論が広がった。ロシアのウクライナ侵攻をめぐってもさまざまな陰謀論がネット上で出回っているが、見極める手法はないか。

 自然科学系と社会科学系に分けてみてみよう。自然科学系ではイデオロギーと関係なく、事実に基づく実験と数理ロジックで論証されるのが基本だ。そのため、科学知識があれば、陰謀論はかなり排除できる。そもそも陰謀論の論法は自然科学ではありえないものだ。

 科学知識のない人はどうするか。自然科学の場合、陰謀論を排除する人や組織がかなりあるので、ネット上の情報だけでも、これは陰謀論かなと見分けることができる。少しでも陰謀論の匂いがあれば、避けるのが賢明だ。

 社会科学系の場合、どうしたらいいのだろうか。筆者の場合、自然科学と類似した論法でチェックしている。社会科学の場合、実験ができないので、統計数字に基づくモデルの検証を行って、妥当な理論を選び出すという作業になる。筆者の戦争確率論も、過去の戦争データから統計手法により導き出したものだ。社会科学の場合でも、定性分析と定量分析があれば後者を信頼する。

 「ユダヤ資本やディープステートによれば…」といった話が陰謀論の典型であるが、統計数字どころか、用語の定義も出てこない。筆者は、歴史的に明確な前提、定量的な事実関係や議論がない話は基本的には信用していないし、定義のない用語に基づく話は聞こうとも思わない。

 陰謀論は、根拠が不十分な説明に基づいて物事を断定しているので、筆者の判断基準から見れば、話を聞かないとなる。

 根拠が匿名の証言やコメントであったり、ソースが不明なものも時間の無駄なので無視することが多いが、陰謀論もその類いである。

 マスコミ報道でも、「関係者」「専門家」といった書き方で、具体的な名前が明かされないものは情報としてそれほど価値がないと思っている。「捜査関係者」や「政府関係者」とかもあまり信じない。

 筆者は役人時代、記者にとって都合のいい記事に付き合うために、しばしば「政府関係者」に仕立て上げられたが、適当な与太話にすぎないことも少なくなかった。

 いずれにしても、ソースが明らかにできない場合、証言を翻す可能性もあるので、それほど信憑(しんぴょう)性は高くないことが多い。

 筆者は、情報の信憑性について、発信者によって区別しないようにしている。ただし、陰謀論を唱える人は繰り返す傾向があるので、避けるのは当然である。

 総じて自然科学系の人は、あまり陰謀論にハマらないが、例外も少なくない。人によっては、年を取ると陰謀論に陥る人もいるので要注意だ。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】財務省が緊縮財政をしたがるのは、陰謀ではなく官僚の頭が悪いためか(゚д゚)!

陰謀論の中には、それを唱える人があまりに頭が悪すぎて、自分では正論を吐いているつもりでも、それが結果として陰謀のようになってしまっていることも、多々あるのではないかと思います。



たとえば、財務省の陰謀論もそうかもしれないです。財務省に関しては、前々からとにかく増税、とにかく緊縮財政をすれば良いと思っているとしか考えられない行動や発言を繰り返し、それを正当化する「ご説明資料」を作成し、政治家や、他の官僚や、場合によってはマスコミまで出向いて自分たちの言い分が正しいことを主張するという行動をとってきました。

そのため、多くの政治家や、官僚、マスコミ、経済学者までが、財務省の増税・緊縮財政に賛同し、日本経済がデフレであろうとなんであろうと、とにかく増税・緊縮をすすめてきました。これは、陰謀なのではないかと思わせられることもしばしばありました。

同時期には日銀も同じような傾向があり、日本経済がデフレだろうと、なんであろうと、とにかく緊縮するのが正しいという考えにもとづいて、事あるごとに金融引締を実行しようとして、実際現日銀黒田総裁前までの日銀はその傾向が顕著でした。日銀官僚も様々な異常な、言動を繰り返しました。

一番驚いたのは、日銀が資料として「デフレは人口減によって起こる」というとんでもない説を日銀のサイトに資料として掲載したことです。これは当時掲載されているのを見た記憶があるのですが、本日再度確認してみたところ、見つかりませんでした。削除されたのかもしれません。

ただは、白川元総裁などが、それを匂わすような発言をしている記録はありました。

そもそも、デフレ、インフレとは純然たる貨幣の現象であり、簡単にいってしまえば、その時々で貨幣が発行されすぎている(インフレ)、貨幣が発行されなさすぎている(デフレ)であって、人口増減とは無関係です。

ちなみに、過去にこれをわかりやすくする例え話を掲載したことがありますが、それを以下に再度掲載します。

非常にきな臭い話になりますが、これはあくまで譬え話です。日本で、中性子爆弾(生物は殺すが建物などの構造物は壊さないとされている)を爆発させて、人口がいきなり半分になった直後はどうなるかという話です。

正解は、インフレになります。貨幣がそのままで、人口が半減すれば、当然のことながら、一人あたりで比較すれば、貨幣量は従来の2倍となり、インフレになります。その後日銀がこれに対して何もしなければ、インフレが続くことになります。

これ一つ考えても、デフレの原因が人口減というのは間違いであることがかわかります。日本が長い間デフレだったのは、生産性の向上等に応じて日銀が貨幣を増刷しなかったからに他なりません。

生産性が向上しても、それに対応して貨幣が増えなければ、これもデフレとなります。ざっくり言ってしまえば、いままで日本全体で10個しか製品を製造していると仮定し、企業が努力して生産性を向上させて、12個製造できるようにしたとします。そうして、12個製造しても、なお需要はあり、デフレでもインフレでないものとします。

そのときに、日銀金融緩和をして貨幣の流通量を増やさなければ、12個の製品のうち、10個はすぐ売れたにしても、2個はなかなか売れないということになります。これが、まさにデフレです。

私は、日銀官僚や財務官僚がその時々で、まともな経済学の理論からいえば、金融緩和すべきところを金融引締し、積極財政をすべきところを緊縮財政にするのは、なぜなのだろうと、長年不思議に思ってきました。

そうして、財務省の場合は、緊縮財政で経済が低迷したとしても、とにかく増税で税収を増やし自分たちがそれを各省庁などに差配できる量や力を増やし、もって権力基盤を拡大し、自分たちの天下り先の確保のような利権を強化しようという財務官僚による陰謀によるものではないかと思ってきました。

そのためには、黒を白、白を黒と無理やりいいくるめて、まるで大きな政治集団であるかのように動き、様々な策謀をめぐらし、税の徴収実行部隊である国税庁で脅しをかけて様々な陰謀を企んでいるではないかと疑念を持ったこともありしました。

ただ、日銀官僚がなぜ金融引締にこだわるのか、それによって何のメリットが未だによくわかりません。とにかく金を出さないほうが、勝ちとでもいうような、単純なは馬鹿みたいな考えに支配されているようにしかみえません。

日銀白川元総裁

ただ、財務省には何か陰謀めいたものを感じていました。それは、なぜかというと、やはり財務省の官僚は優れているという考えを前提としていたからかもしれません。ただ、確証といえるものにたどり着くことはできず、そのためこのブログでは、財務省が陰謀を企んでいると主張したことはありません。

そうして、長年そうした不可思議な姿勢を続け、いまでもその姿勢を貫いているようであるのを見るにつけ、ひょとして財務省の官僚は頭が悪いだけではないかと考えるようになりました。

そうして、昨年の財務省の矢野康治事務次官の異例ともいえる「政治的発言」により、その考えを強めることになりました。それは、『文芸春秋』昨年11月号に掲載されたる「財務次官、 モノ申す『このままでは国家財政は破綻する』」と題された論説です。

矢野氏の主張は、論説に付けられたサブタイトルで、その趣旨はほぼ尽きています。「誰が総理になっても1166兆円の“借金”からは逃げられない。コロナ対策は大事だが人気取りのバラマキが続けばこの国は沈む」というものです。

「借金」とは無論「政府の借金」です。「政府の借金」なる言葉は得体が知れず、先日もそのような言葉は経済用語には存在せず、政府や日銀の金融行動と個人の行動とを同次元に扱う点で非常に誤解を招きやすいことを指摘しました。

矢野氏の発言は「政府の借金」という言葉はつかっていませんが、まさしくこれを指しています。

矢野氏は論説の中で、不偏不党の立場で、客観的に財政の危機的な状況を訴えたとしています。例えば、昨年行われた定額給付金や企業への補助金政策を「バラマキ」の典型例としてあげています。
 あえて今の日本の状況を喩えれば、タイタニック号が氷山に向かって突進しているようなものです。氷山(債務)はすでに巨大なのに、この山をさらに大きくしながら航海を続けているのです。(「財務次官、 モノ申す」より)
すでにこれらのバラマキ政策で、十分に民間にはおカネが行きわたっている、コロナ禍が終われば消費や投資が一斉に出てくるだけだ、というのが矢野氏の主張です。さらに昨年度予算の繰り越しが30兆円(4月時点)あるとして、「本当に巨額の経済対策が必要なのか。その経済対策は本当に有効なのか。そのコストや弊害も含めて、よく吟味する必要があります」と言い切っています。

先日も述べたように、これは全くの間違いです。現在でも需給ギャップは30兆円以上あり、これ埋めるための補正予算を組むべきなのです。それは、財務省や内閣府の出している統計資料を吟味すれば誰でも確かめられます。

矢野氏の発言は、全くの間違いです。この間違いを安倍元総理は的確にそうして、わかりやすく指摘しています。

安倍元首相
財務省の(矢野康治)事務次官が、このまま日本が借金まみれだと、タイタニック号のように氷山にぶつかって沈没してしまうという趣旨の論文を(月刊誌「文芸春秋」に)書いた。こういう話をするから将来に不安を持って、(消費者の)財布のひもが固くなる。

日本は決してタイタニック号ではない。日本がタイタニック号だったら、タイタニック号が出す国債を買う人はいない。ちゃんと売れている。

(新型コロナ禍での巨額の補正予算は)赤字国債でまかない、そのほとんどは市場を通じて日本銀行に買ってもらった。決して孫の代に(借金を)背負わせているわけではなく、借金を全部背負っているのは日本銀行だ。荒っぽい言い方だが、日本銀行は国の子会社。立派な中央銀行だが、5割は政府が株を持っているから、連結決算上は債務ではないという考え方も成立する。(昨年12月15日都内であった講演で) 

このように簡単に安倍元総理に論破されてしまうような、屁理屈を文書にして『文藝春秋』に平気で掲載してしまうのです。発言するだけならまだしも、あのような形で寄稿すれば、自らの間違った発言が公にさらされるだけではなく、文書として残り、いずれ歴史の一部ともなります。これは、並の「頭の悪さ」ではないと思います。

無論、矢野氏のこの行動は、財務省の省益を拡大したい一心からでしょうが、それにしても、あまりに筋悪です。

矢野氏も大学を卒業したばかりで、財務省に入ったばかりのころは、現在のように頭が悪すぎるということはなかったのでしょう。しかし、あまりにも長い間、民間企業などとはかけ離れた財務省という特殊な空間にどっぷりつかり、本当の意味で「成果をあげる」ことも要求されず、ひたすら、国民経済など無視し、とくにかく財務省省益ばかりを追求するように仕向けら結果のなれの果が、ただのポンコツになってしまたったということなのでしょう。 

そうして、これは他の財務官僚にもあてはまるのでしょう。そうでなければ、「とにかくいつでも緊縮こそ我が生命」的な考えや行動の説明がつきません。とにかく「省益」を最大限に追求することを優先するという財務省の立場にたったにしても、現在の財務省のやりかたは、あまりに筋悪です。うまいやり方をすれば、国民からも支持され、もっと豪華な退官後の超ウルトラリッチ生活を満喫できると思います。

国民をもっと豊かにすれば、企業も大いに潤い、その結果として、天下り先も増え、さらに天下り先での現在よりもさらに破格の待遇も期待できるかもしれません。それに国民から批判されることもないかもしれません。今の財務官僚まるで最近のプーチンのようにポンコツになってしまったようです。財務省がこの有様ですから、文部省の前次官前川などをみてもわかるように、他省庁相当ポンコツになっているのでしょう。

財務省がエリートなどといわれるのは、ポンコツ同士の間の想定的比較ではそうだというだけで、外の世界には全く通用しないのだと思います。

このように陰謀といわれているもののなかには、その陰謀を主導している人がただ頭が悪いので、陰謀のようにみえているということもおうおうにしてあるのでしょう。だからこそ、客観的な証拠もあけずに、平気で思いついた与太話ができるのです。

私自身は、陰謀論を撒き散らしたり、簡単に信じ込む人の殆どは、相当「頭の悪い人」なのだと思います。

ツイッターなどのSNSをしていると、こういった類の人にお目にかかることもよくあります。お目にかかるだけならまだ良いですが、ツイートにおかしげなリプライをしてきたりします。

たとえば、財務省への批判をツイートしたりすると、「ここにも馬鹿一人みっけ、○○はユダヤ資本が□□のため、△△したから」などとリプライしたりしてきます。

財務省の増税キャンペーンを批判すると、「そんな幼稚なこといっていないで、財政再建をしないと大変なことになるぞ」などとくだくだとリプライしてきたりします。

このような場合はすぐにブロックするようにしています。話をしても時間が無駄ですから、皆さんもすでにそうしていると思います。

そうして、このような事象にふれるたびに、このブログに掲載した、ドラッカーの主張である、「政府の中で、統治にかかわる部分は残し、残りはすべて政府の外にだすべき」という考えは正しいと思うようになってきました。

この話をすると多くの人は「そんな馬鹿な」というような顔をしますが、民間企業においても統治と実行する部門とが同じ部門にしておくと、統治でも実行でも、無様な程に成果があげられないということは明らかになっています。

そのため、大企業では、統治部分を持株会社等の本部が担い、その他は本部とは別組織の事業会社が担うようになっています。

民間がそのようにして、機能不全を防いでいるのに、政府だけが旧態依然とした組織で運営されています。そのため、今や世界のあらゆる政府が「馬鹿製造機」になってしまっているのかもしれません。その典型例がポンコツプーチンを生み出したロシア連邦政府かもしれません。

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2022年4月19日火曜日

ロシアへのさらなる経済制裁は課されるのか―【私の論評】日米ともに最終的にロシア制裁はエネルギー分野に踏み込むしかない(゚д゚)!

ロシアへのさらなる経済制裁は課されるのか

岡崎研究所

 4月2日付の英Economist誌が、西側の先例のない厳しい経済制裁を課せられたロシア経済の現状を紹介し、期待されたほどの大きな打撃が生じている訳ではないと述べている。

 ロシアによるウクライナへの軍事侵攻は先例のない厳しい経済制裁を招くとのバイデンの警告は、プーチンの蛮行を抑止することにはならなかった。ロシアのウクライナへの侵攻に対して、西側は文字通り先例のない経済制裁を発動したが、試されているのはプーチンに蛮行を断念せしめるために経済の力を使う西側の能力である。


 一連の制裁のなかでも最も破壊的な威力を持つと見られているのが、中央銀行の資産の凍結という先例のない措置である。ロシアにとってロシア中銀が保有する外貨準備は制裁に耐えるための有効な手段になるはずであったが、ロシア財務相によれば、6400億ドルの準備資産のうち約半分が西側諸国による資産凍結のために使えない状態にある由である――中国にある人民元建ての資産を中国がどうするか注目されるが、期待は持てない。

 恐らく、プーチン政権が恐れるのはルーブルの崩壊(それがハイパーインフレを惹起すれば市民生活を直撃する)のようである。ルーブルは侵攻前には1ドルが75ルーブル程度であったが、3月7日には、150ルーブルに下落したことがある。

 ルーブルを買い支えようにも中銀の資産が凍結され思うに任せない。そこで、金利を引き上げた。輸出による外貨収入の80%をルーブルに転換するよう命じた。外国の投資家による株式の売却を禁じた。「非友好国」にガスの代金をルーブルで支払うよう要求しているのもルーブルの買い支え努力の一環であろう。

 このような状況を見て、西側の制裁は利いているとする論評も目にする。今後、じわじわと影響が広がるのかも知れないが、目下の実体経済の状況といえば、エコノミスト誌の記事にあるように大打撃が生じている様子はないということであろう。ロシアの努力の効果であろうか、ルーブルも1ドル85ルーブル程度に戻し、侵攻前の水準に近くなっている。

やはり、エネルギー分野に踏み込むしかない

 そうであれば、ロシア経済に更なる圧力を加える方策如何ということになる。それは、この記事が示唆するように、エネルギー分野に踏み込むかどうかということにならざるを得まい――これまでのところ、欧州のエネルギーのロシア依存の故に制裁は非エネルギーの分野に限定されている。放置すれば、ロシアは外貨準備を再び蓄積し、輸入能力を拡大することが出来る。

 欧州がロシアの原油の輸入を止めても、他にこれを買う国が常にあろうが(もっとも買い叩かれるのでロシアの収入減となり痛手にはなる)、ガスは様子が異なる。ロシアのガスの輸出にはインフラ(パイプライン)を必要とすることから、主たる買い手は欧州に限定されている。従って、欧州がガスの輸入を止めることが出来れば、ロシア経済を痛撃出来る。

 西側の制裁の信頼性がかかっていると論ずる向きもあるが、そうはなりそうにない。ドイツのショルツ首相は、欧州は公共サービスや市民生活に必要なエネルギーをロシアからの供給以外の方法で確保は出来ないと述べて、その可能性を否定している。目下のところは、ガス供給源の多様化と再生エネルギーへの転換を含むロシア依存抑制のための欧州連合(EU)全体の努力に待つしかないらしい。

【私の論評】日米ともに最終的にロシア制裁はエネルギー分野に踏み込むしかない(゚д゚)!

上の記事で、最終的にエネルギー分野に踏み込むしかないとしていますが、この見立ては正しいと思います。

実際、ロシアのプーチン大統領の経済問題担当首席顧問を以前務めたアンドレイ・イラリオノフ氏は17日までに、西側諸国がロシア産原油の全面的な禁輸に踏み込んだ場合、ウクライナでの戦闘を即座に終結させ得るとの見解を明らかにしました。


同氏は英BBC放送の最近の取材に、「本当の意味での禁輸」を仕掛ければ、ウクライナでの軍事作戦は恐らく、「1、2カ月」で止まるだろうとも述べていました。

イラリオノフ氏はCNNのの取材に、全面的な禁輸発動について「クレムリンの政策決定過程に影響力をもたらす、非軍事面で極めて重要な対応策」と強調しました。

その理由は非常に単純とし、「現段階でロシアが原油や天然ガスの輸出で稼ぐ収益はロシアの全ての歳入の約4割を占めるとみなされる」と指摘。「連邦予算の編成では多分、全ての歳入源の6割近くまで達する」と指摘しました。

同氏は、これら歳入がロシアのエネルギー輸出に対する全面的な禁輸で相当な規模で減らされたとしても、「中国に加えほかの小規模な輸入国が一部おり、我々は全面的な禁輸ではあり得ないと考えるだろう」とも説明しました。それでも、ロシア産のエネルギー源の大手の輸入国の大半に影響を与えることにはなるとしました。

また、ロシアが経済制裁を受けて金融市場を利用出来ず、ロシア中央銀行の外貨準備高が凍結されている現状を踏まえ、プーチン政権は財政支出を賄う財源を持っていないとも説明。「全ての支出額が40~50%削られ、この圧縮幅は1990年代にも見られなかった水準になる」としました。

同氏はこれらの考察を踏まえ、プーチン政権は軍事作戦を止め、ウクライナとの間で何らかの停戦の枠組みや交渉を模索する局面に追い込まれるだろうとも予測しました。

ただ、エネルギー分野における制裁は即効性が期待できるということであり、他の制裁もじわじわと効いていくのは間違いないです。

たとえばルーブル利上げで、一時的には、安定したようにはみえますが、後々は大変なことになります。利上げ早くやり過ぎれば、ロシア経済潰す可能性が大きいです。現状で利上げをすれば、インフレが続く中で、企業の資金繰りが苦しくなり、企業倒産が増え、所得も減り、酷いスタグフレーションになるのは目に見えています。

これは、経済制裁への対応という以前に政策ミスであり、ロシアは経済的に自爆したと行っても良いですしょう。それは、過去に通貨安に悩んだ国の対応ではもはっきりしています。利上げなどせすに、市場に任せた場合は、いっとき苦しくてもなんとかなっています。しかし、利上げなどをした場合は、それが経済に悪影響を与え、立ち直るまでにかなりの時間を要するようになります。ルーブルは市場に任せた方が無難でした。

これは、ロシア側の完全な失敗であり、ロシア経済の低迷はこれから長く続くでしょう。プーチンは経済もわからないし、現状ではプーチンに経済に関してまともなアドバイスをする人もいなくなったようです。日本でも、円安だから利上げしろなどという愚か者もいますが、プーチンもこれと同次元の愚か者です。

これは、経済指標の一つだけ見て、他にどのような波及効果があるのか、見れない典型例です。日本でも「円安」という一事象だけ見て、他の事象を見ずに騒ぐ人もいますが、これはプーチン並みのポンコツとしか言いようがありません。

そうして、エネルギー分野における制裁は、日米の首脳が決心さえすれば、意外と簡単にできます。

昨年英グラスゴーで対面した岸田首相(左)とバイデン大統領

それは、以前もこのブログに掲載しましたが、日本の場合は安全な原発の速やかな稼働です。これを稼働させれば、日本では原野や天然ガスが余剰となります。その余剰分をEUに囘すのです。

そうして、米国ではバイデンが禁止したシェール・オイルの生産を再び開始して、米国内の需要を賄うとともに、EUにも輸出するのです。

さらに、ロシアへの制裁は今後長く続きそうなので、それに備えて、小形原発の開発を推進するのです。これは、小形であるがゆえに、工場でほとんどを製造して、現場には据付だけですむという優れもので、工期は従来の原発と比較するとかなり短縮できます。

さらに、核燃料を冷却する電力も少なくてすみ、さらに事故などで原発を冷却する必要性が生じたとしても、放置しておけば、自然冷却します。従来の原発から比較するとかなり安全です。

日米のトップは間近に選挙も控えています。日本では夏の参院選、米国は秋の中間選挙です。

両首脳とも、このような動きをみせてロシアを制裁すれば、環境派や原発反対派から、最初は反対の声もあるかもしれません。

しかし、良く考えてみれば、環境派からみれば、戦争ほどCO2や他の汚染物を排出して、環境を汚染するようなことは他にはないと考えられます。

ロシアによるウクライナ侵攻により、両国のみならず欧米諸国を中心に軍備を増強する動きが加速しています。これにより大量の化石燃料が燃やされて温室効果ガスの放出量が増えるのみならず、喫緊の課題であったはずの気候変動から目がそれてしまう懸念が指摘されているところです。

実際、航空機や戦車などの燃料が燃やされ、銃や機関銃から弾が大量に発射されれば、CO2を含む多くの汚染物質が排出されるのは間違いないです。大型の爆弾やミサイルが爆発すれば、これも凄まじい勢いで、汚染物質を撒き散らすことになるでしょう。

ウクライナ東部で発生した弾薬庫の大爆発

ここで、バイデンがエビデンスをもって、ウクラな戦争が継続されるよりも、米国が一時的でもシェール・オイル・ガスを製造して国内需要を満たすほか、EUにも輸出することで、戦争が継続されるよりは、自然環境にとって良いことを示し、実際にそのようにすれば、これはロシアに対してより厳しい制裁になり、戦争を早く終わらせることにつながります。

日本では、「原発停止=安全」という神話がまかり通っているようですが、燃料棒がそこにある限りは、リスクがあることには変わりありません。であれば、安全と確認された原発は稼働させるべきです。

岸田総理は、このままだと、ブラックアウトが起こるかもしれないこと、さらにはウクライナ問題でエネルギー危機はしばらくは続くことなどのエビデンスを示し国民を納得させるべきです。

GDP世界第一位の米国と第三位の日本が、自国内エネルギーの自給率を高めて余剰分をEUに囘すようになれば、国内のエネルギー需要は満たせるし、EUも助かるし、選挙戦も有利に戦えるかもしれません。

選挙のことは脇においておいても、ロシアに対しては有効な制裁をして、一日も早く戦争を終わらせるべきです。

両首脳、いつまでもエネルギー政策を転換しないというのなら、ウクライナ危機は放置し、国内のエネルギー需要を逼迫させ、ロシアを利して、日米を危うくすることになります。

一日も早く、両首脳ともエネルギー分野に踏み入ってロシアを本格的に制裁すべきです。

そうしなければ、両首脳とも、国内のエネルギー問題は放置し、ロシア制裁も効果なしということで、国民の反発は必至です。


東京電力 あす22日の節電呼びかけ 電力需給非常に厳しい見通し―【私の論評】原発稼働し、余った石油・ガスをEUにまわせば、ロシアに対する制裁、EUの窮地を救い、国内のエネルギー問題の解消となり一石三鳥(゚д゚)!

プーチン氏、ウクライナ東部への派兵指示 侵攻の危機に直面―【私の論評】バイデン政権はシェール・ガス・オイル増産でプーチンの「大国幻想」を打ち砕き、世界の危機を救える(゚д゚)!

岸田首相「省エネ」呼びかけで政府の対応は―【私の論評】エネルギー政策で失敗し、ロシアを利することになりかねない日米両首脳(゚д゚)!

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2022年4月18日月曜日

ロックダウン3週間…上海〝暴動寸前〟 世界の規制解除と逆行の習指導部「ゼロコロナ」政策へ不満 「専門家の話聞かない、政治的な病」の声も―【私の論評】ウクライナ危機、中国のゼロコロナ政策の失敗の二大リスクに岸田総理は対処できるのか(゚д゚)!

ロックダウン3週間…上海〝暴動寸前〟 世界の規制解除と逆行の習指導部「ゼロコロナ」政策へ不満 「専門家の話聞かない、政治的な病」の声も

中国の上海市が新型コロナウイルス対策でロックダウン(都市封鎖)を始めてから18日で3週間。当局の厳しい対応や食料不足が発生し、住民と警察との衝突も起きている。世界の規制解除と逆行する習近平指導部の「ゼロコロナ」政策への不満も高まる一方だ。


上海市浦東新区で14日、国有企業が開発したマンションを政府が隔離施設にするため立ち退きを強制されたことに住民らが反発した。防護服姿の警察官が住民を引きずり倒し、地面に押さえ付ける動画がSNSで拡散したが、当局が削除したとみられる。香港メディアによると、当局は隔離施設への変更を断念したという。

別の隔離施設とみられる場所では、大勢の人が「外に出たい」と警察官らに怒りをぶつける動画も出回った。

4日以上食事をしていないという男性が警察の派出所に助けを求めた際の録音も注目を集めた。男性は「始皇帝のころ、庶民はなぜ反乱を起こしたのかわかるか。自ら飢えを体験して初めて、造反しなければと気付くんだ」と話したという。

父親が4日間透析を受けられずに死亡したとの投稿や、女性看護師がぜんそくの発作を起こしたが治療を受けられず死亡した例もあった。

今月上旬、飼い主を乗せた車を追いかけたコーギー犬が防護服の人物にシャベルで殴られ、血を流して動かなくなった動画も出回った。飼い主は感染が判明して隔離施設に移送されるところだった。殺したのは町内会に相当する組織の関係者で、組織側は「コロナウイルスがいるのではないかと恐れた。配慮が足りなかった」と釈明した。

上海で16日に新たに確認された感染者が2万4820人で、2日連続で増加したが、約87%は無症状だ。

赤松秀一・駐上海日本総領事は15日付で、中国上海市に拠点を置く日系企業が「広範にわたって深刻な影響を受けている」と窮状を訴える書簡を市政府に提出した。

習主席は、10~13日に海南省を視察した際にゼロコロナ政策に触れ、「油断、厭戦(えんせん)気分、気のゆるみを克服しなければならない」と指示した。陝西省西安市や河南省鄭州市などで新たに移動制限に踏み切る都市が相次ぎ、中国の45都市で何らかの封鎖措置がとられている。

「われわれ専門家の話をだれも聞かない。いま、この病は政治的な疾病になっている」。上海の疾病予防管理センターの医師による発言とされる録音が拡散し、当局は調査を始めた。

【私の論評】ウクライナ危機、中国のゼロコロナ政策の失敗の二大リスクに岸田総理は対処できるのか(゚д゚)!

このブログにも掲載したように、ユーラシアグループが出した今年の地政学的リスクNo. 1は、実は中国のゼロコロナの政策の失敗です。ロシアのウクライナ侵攻による地政学的リスクはNo.5でした。

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今まさにそれが現実化しつつあります。これから数ヶ月の中露の経済動向は日本経済にも大きな影響を与えることが十分に予想できます。より注意深く見ていく必要があり、先手先手の対策が必要です。特に、岸田総理は、菅前総理や、公明党の山口代表からも「補正予算を組むべき」と提言されているにもかかわらず、未だその動きをみせていません。

これは、以前このブログで述べたように、これは素人より始末に悪いです。とにかく、現在はすぐに補正予算の議論をすべきです。

オミクロン株は従来型よりも毒性が低く、重症化リスクは低いが、そのもとで中国政府が、経済を犠牲にしてでもロックダウンを通じて感染封じ込めに努める「ゼロコロナ政策」を続けていることについて、内外から懐疑的な見方も出ています。

この過剰とも見える「ゼロコロナ政策」がとられていることについて、重症化しやすい高齢者のうちワクチン未接種者が多いことや、国内企業のシノファームとシノバック・バイオテックが開発したワクチンには、不活化ウイルスが使用されているが、それは モデルナ、ファイザーなどが開発したメッセンジャーRNA(mRNA)ワクチンに比べて、オミクロン株感染に対する効果が劣ることがその理由、との指摘もあります。

さらに、中国が他国に比べて感染者を少なく抑え込んできたことが、中国政府にとってはまさに大きな成功体験であり、また習近平体制が優れていることの証である、と政府がアピールしてきたことから、今さら軌道修正できなくなっているという面もあります。

上海は国際金融センターであるとともに、多国籍企業の多くが中国本社と工場を置いている場所です。米電気自動車(EV)大手テスラは3月28日に、上海工場の生産を停止しました。さらに上海には、国内最大でコンテナの取扱量では世界トップの上海港がありまう。

ロックダウンの影響で港湾業務は滞っており、中国の主要港の沖で待機するコンテナ船の数は、2月から2倍近くに増えました。配送担当の運転手への厳格な感染対策で貨物の積み下ろしに遅れが出て、入港を待つ船が増えているのです。

こうした事態は、中国経済だけでなく、サプライチェーンを通じて海外の経済にも打撃をもたらしています。世界のサプライチェーンは電子機器だけでなく、肥料から医薬品に至るまで、上海からの輸入に大きく依存しています。

ちなみに上海市のGDPは、中国全体の4%を占めています。他方、ロシアのGDPは中国のGDPのちょうど10分の1であることから、上海市のGDPはロシアのGDPの4割程度の規模に達することになります。ロシア経済の縮小と上海市経済の縮小とが、世界経済の成長率を顕著に押し下げているのです。

これが、上海だけで済めば良いですが、中国全土に波及することにでもなれば、その影響はロシア経済の縮小の10倍になります。そうなれば、ユーラシア・グループの予想のように、中国のゼロコロナ失敗による地政学的リスクのほうがはるかに甚大なものになります。

そうして、中国の「ゼロコロナ政策」とウクライナ紛争の大きな接点となっているのが食料供給です。ウクライナ紛争は、ロシアとウクライナの小麦の輸出に大きな打撃を与え、既に価格高騰をもたらしています。そうして、中国の「ゼロコロナ政策」は、中国での穀物の作付けの大きな障害となっており、世界の穀物需給を逼迫させる可能性が出てきています。

中国の小麦の収穫

ウクライナは2013年以降、中国にトウモロコシを輸出しており、中国では、ウクライナ産トウモロコシの輸入比率が最も高くなっていました。そうした中で起きたのがウクライナ紛争であす。

中国にとって重要な家畜飼料であるトウモロコシのウクライナからの輸入が止まってしまいました。そこに重なる形で生じたのが、「ゼロコロナ政策」の影響です。中国の主要農業地域の多くが重要な春の作付けに備える中、肥料、労働力、種子の深刻な不足に見舞われています。

また、都市部のロックダウンで多くの出稼ぎ労働者が行動を制限され、農村部の作付けに戻れなくなっています。仮に戻れたとしても、14日間の隔離期間を経なければ作業に取りかかれないのです。

このようにして、コメやトウモロコシなど春に作付けする穀物の生産量が減少すれば、中国は穀物調達のため海外からの輸入拡大を強いられます。それは、新型コロナウイルス問題や、ウクライナ問題によって既に高められている食料インフレの傾向を、さらに加速させてしまうでしょう。

それは多くの国で一段の物価高を生じさせ、家計への打撃となる。さらに低所得国では深刻な食料不足問題を生じさせる可能性もあるだろう。中国の「ゼロコロナ政策」は、このような経路でウクライナ問題と結びつき、世界経済の問題をより複雑にしているのです。

以上は、食糧に関連すことを述べたましたが、これは食糧がもっとも世界経済に対してインパクトがあると考えられることから、そうしたのですが、無論他の分野でも、日本も危機的な状況になることは十分に考えられます。

岸田文雄首相は15日の参院本会議で、物価高騰対策を巡り、今国会中の2022年度補正予算案の編成に重ねて慎重姿勢を示した。野党議員に早期編成を求められ「まずは予備費を活用した迅速な対応を優先する」と述べました。

補正予算案を巡っては立憲民主党や国民民主党のほか、公明党が早期の編成を求めています。

首相は月内にまとめる緊急対策について「原油価格や物価の高騰による国民生活、経済活動への影響に機動的に対応する」と強調しました。

これに対し、立民の泉健太代表は15日の記者会見で、今国会での補正予算編成を重ねて求めました。「予備費だけの小規模な経済対策では国民生活を守ることはできない。審議を回避している」と指摘しました。同時に予算委員会での集中審議や、党首討論の実施を与党側に要求する考えを示しました。

先日もこのブログで述べたように、政府の統計資料などからも、現在日本では需給ギャップが30超円以上もあることから、たとえウクライナ危機、中国のゼロコロナ政策の失敗による危機がなかったにしても、補正予算を組むべきことは明らかであり、それにさらなる危機が加わるわけですから、100兆円くらぃの補正予算を組んでも良いくらいです。

この財源は、国債を発行することによって賄うことは十分に可能です。

仮にそうして、様々な危機を脱したあとで、補正予算が余ったとしても、国土強靭化などに用いれば、全く問題はありません。

一昨日もこのブログで述べたように、たとえそうしたとしても、そもそも政府の借金が増えるなどということもありませんし。ハイパーインフレになることもありません。むしろ、穏やかなインフレとなり、日本は完璧に、デフレから脱却することになり、ウクライナや中国の危機があつても、日本はそれを簡単に乗り越え、黄金期を迎えることになるでしょう。

それにしても、岸田総理「予備費」ばかり強調し、補正予算に関しては非常に消極的です。本来は今こそが、大規模な補正予算を組むべきときであって、現在組まなければ、一体いつ組むのと言いたいです。


岸田総理の経済センス、素人より始末に悪いです。岸田総理はそれを自覚して、経済政策に関しては、自分の頭で考えることはやめて、財務省や日銀の官僚の言うことも聴くのをやめ、安倍元総理や、菅前総理の言う通りにしたほうが、良いです。そのほうが、余程良い政策ができます。岸田総理!ここは、自我を殺し、国民のためにまともな経済政策を実行してください。

いままま、補正予算を組まずに、予備費5兆円だけですませば、半年後には確実に失業率が増えます。民主党政権末期のように、派遣村が全国各地で設営され、テレビでも放映されることになるでしょう。

そうなれば、岸田政権が崩壊するのは、無論のこと、自民党が政権の座に収まり続けることも難しくなるかもしれません。そのようなことだけは、避けるべきです。何しろ、現状では政権交代が起こった場合、かつての民主党政権のように何もきめられず、漂流するか、そこまでいかなくても政権の座を護ことが精一杯でということになると思います。

2015年のような安保法制の改正のようなことはできなくなります。これは、安倍政権が比較的安定していて、政権の座を守るためということであれば、あのようなことはすべきではないのですが、それでも敢えて実行しました。野党政権になれば、そのようなことはできくなります。

ウクライナ危機や中国のゼロコロナ政策の失敗のリスクが重なり、甚大な悪影響を受けそうな現在では、そのようなことは絶対にすべきではありません。そうすれば、日本はまた失われた30年に突入し、その間賃金が上がらず、私達や私達の後輩や子供や孫の時代まで、30年前の賃金と同水準で甘んじなければならなくなるかもしれません。

それこそ、現在紛争中にあるウクライナの戦争が終わり、戦後の日本のように、急成長して、30年後には、日本人の賃金水準よりもウクライナ人のそれを下回るようになるかもしれません。そのようなことだけは、避けるべきです。

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2022年4月17日日曜日

日本の軍事・安全保障研究を長年阻んできた「考えずの壁」 事前審査は科学者の意欲を削ぐ―【私の論評】問題の本質は、学術会議理事会メンバーの多くが、一般社会常識に欠けること(゚д゚)!

日本の解き方

昨年4月に行われた日本学術会議の総会


 ロシアのウクライナ侵攻を受けて、軍事や安全保障研究の重要性が改めて意識されている。日本の学術界でこうした研究が忌避されてきた背景や、今後どのように改革すべきかを考えてみたい。

 日本の「非核三原則」は、しばしば「非核五原則」といわれる。①持たず②作らず③持ち込ませず―のほかに、④言わず⑤考えず―もあると揶揄されているのだ。④は言論の自由、⑤は学問の自由に反するが、筆者が役人当時は「非核五原則だから、言葉に気をつけろ」と言われていた。

 日本の安全保障研究はまさに、「考えずの壁」に阻まれてきた。日本学術会議のホームページをみると、「戦争を目的とする科学の研究は絶対にこれを行わない」旨の声明(1950年)、「軍事目的のための科学研究を行わない声明」(67年)、「軍事的安全保障研究に関する声明」(2017年3月24日)がしっかりと書かれている。

 学問の自由を守るべき日本学術会議が「考えず」を科学者に強いてきたのではないか。

 ちなみに、憲法23条で「学問の自由は、これを保障する」と定めている。一方、非核三原則は法律の根拠もない、首相の国会答弁に基づく政府の指針である。さらに、④言わず⑤考えずは、誰かが言い出したのかも明確でなく、単なる雰囲気でしかないが、⑤については日本学術会議が研究者に影響を与えているといえそうだ。

 海外において、安全保障研究を制限する動きを学会が行うかといえば、筆者は寡聞にして聞いたことがない。世界で普遍的な学問の自由に抵触するからだ。一部の人がそうした声を上げることはあっても、個々の学者の良心に委ねられており、学会全体で決定することはまずないだろう。

 そもそも科学技術の多くはは、軍事的にも民生的にも使えるものだ。ノーベル賞は、ダイナマイトを発明し巨額の富を得たノーベルの遺産に基づくものだが、そのダイナマイトはそもそも軍民両用だ。ダイナマイトに限らず、およそ全ての科学技術が軍民両用だとの見方もできる。

 一方、日本学術会議はデュアルユース(軍民両用)の研究を認めないとの指摘もある。「軍事的安全保障研究と見なされる可能性のある研究について、その適切性を目的、方法、応用の妥当性の観点から技術的・倫理的に審査する制度を設けるべきである」との見解を示しているが、研究者は本能的に興味があるものを研究する人たちなので、事前審査があるだけで研究意欲はなくなるものだ。

 実際のところ、研究段階では軍事用なのか民生用なのか識別困難だ。科学技術全体に多くの研究資金を用意し、研究者には一所懸命研究してもらう。民生用ならばそれでいいし、仮にその一部が軍事用になっても、実際の行使の段階で政治判断に委ねたほうがいい。

 全ての科学者が軍事研究しなければいいというのでは、科学技術研究を否定してしまう。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】問題の本質は、学術会議理事会メンバーの多くが、一般社会常識に欠けること(゚д゚)!

2020年当時の菅総理は、日本学術会議の会員候補6人を任命しませんでした。これについては、当時も様々な論議がされていましたが、一部を除いてほとんどがピンボケというか、そもそも人事とは何のためにあるかも理解していないような議論が多く、それは現在に至るまで同じです。


そのため、当時も人事の本質について掲載したのですが、本日はそれをさらに補足した形で再掲したいと思います。

人事の本質については、ドラッカー氏は以下のように語っています。
貢献させたいのならば、貢献する人たちに報いなければならない。つまるところ、企業の精神は、どのような人たちを昇進させるかによって決まる。(『創造する経営者』)
上では「企業の精神」という言葉を使っていますが、これは民間企業ではなく、あらゆる組織にあてはまります。実際、ドラッカーは他の著書では「組織の精神」という言葉を使っています。ドラッカーは、組織において真に力のあるコントロール手段は、人事の意思決定、特に昇進の決定だといいます。

コントロール手段としては、様々なものがありますが、真に力のあるコントロールとは人事の意思決定です。

それは組織が信じているもの、望んでいるもの、大事にしているものを明らかにします。

人事は、いかなる言葉よりも雄弁に語り、いかなる数字よりも明確に真意を明らかにします。

組織内の全員が、息を潜めて人事を見ているのです。小さな人事の意味まで理解しています。意味のないものにまで意味を付けます。この組織では、気に入られることが大事なのか、あるいはそうでないのか、探ろうとします。

“業績への貢献”を企業の精神とするためには、誤ると致命的になりかねない“重要な昇進”の決定において、真摯さとともに、経済的な業績を上げる能力を重視しなければなりません。

これは、無論民間企業のことですが、非営利組織の場合は、経済的な業績というところを「組織の使命を追求する」と言い換えるとわかりやすいです。実際、ドラッカーは非営利企業組織については、そのような言い方をしています。ですから、この原理は、もちろん「日本学術会議」の人事にもあてはまることです。

致命的になりかねない“重要な昇進”とは、明日のトップマネジメントが選び出される母集団への昇進のことです。それは、組織のピラミッドが急激に狭くなる段階への昇進の決定です。このトップマネジメンに関しては、民間企業で良く用いられる言葉ではありますがこれも同じことであり、非営組織であれぱ、意思決定機関である理事会メンバーなどを指します。

そこから先の人事は状況が決定していきます。しかし、そこへの人事は、もっぱら組織としての価値観に基づいて行なわれます。
重要な地位を補充するにあたっては、目標と成果に対する貢献の実績、証明済みの能力、全体のために働く意欲を重視し、報いなければならない。(『創造する経営者』)
そうして、真に力のあるコントロールとは人事の意思決定であることには、確かに人事的な措置としては、その時々で状況に左右される度合いは大きいですが、採用であろうが、ミドル・トップマネジメンの人事であろうが、その本質は変わりはありません。

『創造する経営者』表紙

そうして、これは社会常識でもあります。この社会常識が覆されれば、多くの組織が成り立たなくなります。無論、ここでいう組織が、反社であったり、プラック企業であったりすれば、これはそもそも組織そのものが議論の対象にならず、まともではなく、そのような組織は一刻もはやく潰すべきです。

反社でも、ブラック企業ではない組織ではないまともな組織においてこれは成り立つ原理です。無論、人事とはいえど、その手法が法律に違反していれば、別の話です。たとえば、違法な報復人事は、そのわかりやすい事例です。しかし、法律や社会一般通念に反しない限り、これもどの組織にもあてはまります。

これはいずれの組織にも当てはまるので、大学のような組織でも、大学の価値観にもとづいて、学生を選抜します。学業成績を重視するのか、他の要素を重視するのか、それはもっぱら個々の大学のマネジメントが最終的に決めるものです。

そうして、選抜試験の結果が判断基準は詳細に説明されることはありません。選抜されるか、選抜されないかによって、それを示すのみです。選抜されなければ、学業成績も含む、当該大学理事会の価値観に合わなかったということです。

会社の人事でも同じことです。昇進、降格、昇給、左遷など様々な人事的措置は、当該組織の価値観を示すのであって、その中身まで詳細に伝えられることはありません。それが、社会一般常識です。

ここで、大学の選抜試験に落ちたらといって、その理由を大学側に説明させようとしたり、反対したり、会社の人事が気に食わないというのであれば、それを個々人が直接組織に訴えたとしても、それは叶えられないのが普通です。

それを言い張る個々人は社会常識に欠けるとされます。どうしても不服があるなら、そもそもそのような組織に属さないという選択肢もあります、裁判で訴えるという手段もあります。

無論、これは学術会議にもあてはまります。学術会議の人事の最終・最高決定権を有するのは、内閣総理大臣です。であれば、内閣総理大臣が日本学術会議の会員候補6人を任命しなかったとしても、それは人事権を行使しただけです。

それに意義を唱えるというならば、先にあげたように学術組織が反社やブラック企業のような組織であるか、人事の発令が報復人事のように違法であったような場合に限られます。

ヤクザや暴力団が関係する職場は辞めるべきブラック企業の特徴


現在の政府はどの観点からみても、反社とはいえないですし、当時の菅総理の人事は報復人事とは言えないと思います。ただ、特に当時から学術会議に関しては、何やら非常に問題のある組織であることがいわれています。

さらに「軍事的安全保障研究と見なされる可能性のある研究について、その適切性を目的、方法、応用の妥当性の観点から技術的・倫理的に審査する制度を設けるべきである」との問題のありそうな、見解も示しています。

当時の人事に関して、問題があるというなら、学術会議には、高名な憲法学者も所属しているはずですから、裁判に訴えたらとも思うのですが、それは未だに行われていません。そうして、組織として重要な意思決定でもある「軍事的安全保障を事前審査すべきなどの」の提言も、学術会議として提言はできるかもしれませんが、それを実行すべき否かの最終判断は総理大臣によるものです。

学術会議のメンバーでどうしても、総理大臣による人事や意思決定が気に食わないのであれば、何も学術会議に属している必要はありません、学術会議を出て、別の組織を作れば良いのです。会社の人事や、経営者の意思決定がどうしても気に入らないという社員は、会社を飛び出して自らの理念を体現する会社を創業するということもできます。実際、そのようなことをして、大成功している経営者も大勢います。

小林科学技術相は15日の閣議後の記者会見で、政府が夏頃までに方針を示す日本学術会議のあり方について「学術会議の自己改革の進展状況などを総合的に考慮して検討する」と述べました。

学術会議は18日から始まる総会で、会員選考方法の見直しを行います。政府は、こうした自己改革の中身も判断材料にして、設置形態を含めたあり方の見直しを検討するとしています。

学術会議を巡っては、自民党プロジェクトチームが「政府から独立した法人格への移行」「第三者機関による会員推薦の実現」などを政府に提言しています。

政府がそうするというならそうしたら良いとも思いますが、学術会議の組織上の大きな問題は、学術会議のトップマネジメント(理事会)が、人事の本質が真のコントロールであるということを理解していないことにあるのは間違いないです。

これを批判する野党やマスコミなど、野党は野党内人事では、当然のことながら、党内人事の内容を詳細に公表したり、そこまでしなくても、要求すれば公表されたり、問題があればトップ・マネジメントを追求しているのでしょうか。マスコミの所属する会社組織でもそのようなことが行われているのでしょうか。

もし、そのようなことが行われていない、行うつもりもないというのなら、総理大臣にだけそのような要求をするというのは筋が通らず、完璧なダブルスタンダード(二重基準)です。

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2022年4月16日土曜日

日銀保有の国債は借金ではない 財務省の見解が変わらないなら国会の議論に大いに期待―【私の論評】高校の教科書にも出てこない「政府の借金」という言葉を国会で使わなければならない、日本の現状(゚д゚)!

日本の解き方


 11日の参院決算委員会で、西田昌司議員が、政府の借金は日銀が保有する国債を除いて考えるべきだとの持論に、鈴木俊一財務相が、「その通りだなという気がする」と答えたと報じられた。

 会計学やファイナンス論からいえば、政府の財政状況をみるには、連結された政府のバランスシート(貸借対照表)において、資産を考慮したネット債務額で判断するしかない。であれば、政府のバランスシートの右側に過ぎない借金残高だけを見るのはまったくナンセンスだ。

 この話は、本コラムの読者なら、筆者が初めて政府の連結バランスシートを作成した1995年以来、一貫して主張してきたことをご存じだろう。経済学でも、「統合政府」といい、古くから知られた考え方だ。

 この国際標準の考え方から、日本政府の財政状況をみておこう。分かりやすくするために、大ざっぱな概数で説明する。

 連結政府のバランスシートでは、資産1500兆円(うち日銀保有国債500兆円)、負債2000兆円(うち日銀マネタリーベース分が500兆円)だ。ただし、負債のうち日銀マネタリーベースは形式負債なので考慮する必要はなく、ネット債務額はほぼゼロとなり、財政状況が悪いとはいえない。


 政府(財務省)は「借金1000兆円」というが、それは連結バランスシートの一部でしかなく、しかも資産を考慮しないグロスなので、会計的には何を言っているのか分からないくらいだ。

 ここで、借金1000兆円ではなく、日銀保有国債を除いて考えれば、500兆円になるので、今の1000兆円というよりましだ。この方法は、借金をきちんと理解する第一歩としては評価できる。

 ちなみに、2017年3月、当時の安倍晋三政権で経済財政諮問会議に招待されたノーベル経済学賞学者のジョセフ・E・スティグリッツ教授も同様な話をしているが、ほとんど報道されなかった。

 ちなみに、本コラムでは、今は政府の基礎的財政収支(PB)で財政をみることも批判している。グロス債務対GDP比の変化は、「PB赤字対GDP比」と、「『前期のグロス債務対GDP比』に『金利から成長率を引いたもの』をかけたもの」との和になる。この意味で、PBは、グロス債務の動きを記述するための道具だ。

 ネット債務対GDP比はどう決まるか。結論を簡単に言えば、前述の式から、中央銀行によるマネー増加対GDP比を引けばいいことになる。これは、国債残高から日銀保有国債を除くことに対応している。

 財政といえば、昨年公表された矢野康治財務事務次官による月刊誌の論考は、会計への無知を露呈したものだった。

 本来なら財務省自身が、矢野論文を撤回し、会計的に正しく見なければいけない。せめて、財政制度審議会の専門家が議論すべきだが、今のメンバーでは難しいだろう。であれば、国会での議論を大いに期待したいものだ。これまで、財務省の意見をうのみにしてきたマスコミも焦るだろう。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】高校の教科書にも出てこない「政府の借金」という、得体の知れない言葉を国会で使わなければならない日本の現状(゚д゚)!

高橋洋一氏の上の記事にもある通り、現状ではネット債務額はほぼゼロであり、財政状況が悪いとはいえません。ただ、財務省の喧伝で、緊縮脳なっている人は、そうは行っても政府がさらに借金をすれば、財政破綻するだろうと考えているかもしれません。

しかし、現状では政府がいくら借金したとしても財政破綻することはありません。そもそも政府が国債を発行しても、その国債を銀行が買わなくなるのではないかと心配する人もいるかもしれませんが、それはありません。

日本銀行は、普段から通常業務として、市場に出回っている国債を売り買いしています。もしも、国債を購入する銀行が減ってきて、国債の価格が不安定になってくれば、日本銀行は安定化を目指して市場で売られている国債を買い増すことになります。

そうすれば、あるいは「そうする」と公言するだけでも、国債の価格が安定化し、国債を購入しない銀行も買い取るようになります。すなわち政府におカネを貸す人がいなくなっていく、という事態を回避することができます。

万一、とてつもない天変地異や戦争などで国民が困窮し、税金が1円たりとも納入されなかったとしても、そうして仮にそのとき政府が発行する国債を購入する民間銀行が一切なかったとしても、「最後の貸し手」である日本銀行が国債を購入して政府にお金を貸します。この「最後の貸し手」という機能は法律でしっかりと定められていますし、先進諸国ならどこの国の中央銀行にもある当たり前の機能です。

たとえば、記憶に新しいところでは、バブル崩壊後、コスモ信用組合や北海道拓殖銀行、山一證券などいろんな金融機関が相次いで破綻したときに、日本銀行は、「日銀特融」という制度で無担保・無制限の融資を行って預金者たちの預金を全額守ったりしています。そうしなければ、日本経済が大パニックになるからです。それを踏まえれば、もしも政府が破綻の危機にさらされることがあるとしたなら、そのときに日銀特融を発動しないわけがありません。


しかも、日本銀行は日本政府の子会社です。これは民間企業でも同じですが、親会社と子会社の間のおカネの貸し借りは、連結決算で「相殺」されます。つまり借金が存在しないことになるのです。驚かれるかもしれませんが、これは紛れもない事実です。一応、政府は日銀が保有する国債について利子を払い続けていますが、日銀の決算が終わると、「国庫納付金」として日銀から政府に返還されています。

つまり国債の利子が、政府→日銀→政府と行って帰ってくるのです。要するに、実質的にいうと、政府が日銀からおカネを借りても利子がつかないのです。

ちなみに、アベノミクスにおいては、日銀は年間80兆円もの国債を買い続けました。「預金取扱機関」が保有する国債が、「日本銀行」に移転されていったのです。

そうして政府の負債は事実上、減少し続けたことになります。なぜなら、預金取扱機関が保有する国債というのは、政府が過去に借りたおカネの借用証書ですが、それを政府の子会社である日本銀行が買い取るということは、実質的に「借金は棒引きされた」ことになるからです。

たとえばあなたが、隣のおじさんに100万円借りていたら借金ですが、その借用証書をあなたの(大金持ちで、かつ、絶対に別れることがないと決まっている)配偶者が買い取ってくれたら、その借金は実際上、事実上、帳消しになります。それと同じように、日銀が国債を買い取れば、政府の借金は事実上、「帳消し」になります。

もっとも単純な政府の資金調達の方法に「日銀直接引き受け」とか「ヘリコプターマネー」とか呼ばれているものがあります。これは、日銀が政府に資金を直接融資するという方法です。

日本銀行は、「銀行の銀行」であり、各銀行は日本銀行のなかに口座を持っています。その口座に入っている預金を「日銀当座預金」といいますが、これはちょうど、私たちが普通の銀行に「口座」を持っていて、そのなかに「預金」があるのと同じです。

銀行は、この日銀当座預金を引き出して現金に換えたり、銀行同士の支払いなどに使ったりしているわけです。そして政府もまた、日銀に口座を持っています。

日本銀行の役割

「ヘリコプターマネー」の場合、政府が借用証書を書いて日銀に渡し、日銀はそれと引き換えに、政府の日銀当座預金にその金額を書き込みます。一応、「日銀が政府におカネを貸している」という体裁にはなっていますが、前にお話ししたように日銀は政府の子会社ですから、事実上の借金ではありません(正式の会計手続きでは、「連結決算」で「相殺」されるということになります)。

つまり、借金が棒引きされて存在しないことになります。だから結局は、ただ単に政府が「貨幣をつくり出し、それを使う」ということにほかなりません。

ただ、この話を俄には信じられない人もいるかも知れないので、さらに説明を加えます。

日銀は政府の子会社だから親会社の子会社に対する借金は、借金ではない、という話でしたが、親会社と子会社の間であろうが、借金は借金じゃないか、と素朴に感じる方もおられるかもしれません。仮に日銀は政府とは別の組織だと考えたとしても、日銀による政府に対する貸し出しは、私たち一般の国民が銀行や消費者金融からおカネを借りる、いわゆる「借金」とは全く異なります。 

第一に、日銀は政府に対して「貸したカネを耳をそろえて返せ!」という圧力はかけません。日銀はいくらでもおカネをつくり出せる存在ですから、貸したカネを返してほしい、という動機がそもそもありません。

日銀以外の存在にとっては、おカネは大変に貴重な代物ですが、日銀にとっておカネは別に貴重でも何でもありません。なんといっても、おカネは「日本銀行券」であって、日銀が自らいくらでもつくり出すことができるのです。

もちろん、借金の返済期日が来れば、政府は借りたおカネを返さなければなりません。でも、そのおカネを、政府はまた日銀から借りることができるのです。一般にこれは「借り換え」といわれます。つまり10万円を1年間借りていたとしても、1年後にまた10万円を同じ人から借りる、というのを延々と繰り返すことができるわけです。そうなれば実際、その借りたおカネを返す必要が延々となくなります。それと同じことが、政府は日銀に対してできるわけです。 第二に、普通、借金すると利子を払わないといけませんが、さきほども指摘したように、政府が日銀からおカネを借りた場合、利子を払う必要がありません。これが、法律で定められています。 だから、あっさりいうと、日銀から政府がおカネを借りた場合、政府はその利子を払わなくてもいいし、元本そのものも延々と返さなくてもいいのです。

返さなくてもいいし利子もない借金など、もう一般社会における借金ではありません。はっきりいって、「もらった」のと全く同じ。 なぜ、そんなふうに「日銀から政府への貸し出し」は、私たちの借金と違ってものすごく優遇されているのかというと、それはひとえに日銀が政府の子会社だからです。

したがって、日銀が政府の一部だと考えても、そう考えずに独立の存在だと考えても、結局は、日銀から政府が借りたおカネは、いわゆる普通の「借金」としては考えなくても良いのです。ということになるんです。 たとえば、政府と日銀はものすごく仲の良い親子がいて、子どもが親からおカネを借りて、一応親は「貸した」とはいってるけど、利子も取らないし、返せともいわない、というのと同じような関係といえます。

それも親密な親子関係は、いつまで続くとも限りませんが、日銀と政府の関係は法律で規定されています。

以上は、おカネについてある程度知っている銀行員や税理士、財務官僚なら、「当たり前の常識」として知っている事実です。高校の「政治経済」にも当たり前に解説されていることです。ただ、もともと「借金」などではないので、高校の教科書では「借金」という言葉は使わないので、多くの人が別の話として理解していないのかもしれません。

そうして、ただ一つまだ言っていないことがあります。上の話では、日銀がいくらお金を刷ってて、政府の発行する国債を買い取っても借金にはならないというのは確かですが、それならどこの国でも国債やお金を擦りまくれば、国を豊かにできるではないかという話になってしまいますが、実際はそうではありません。

限界はあります。そうです、国全体の生産能力以上に、お金を刷って市場に流通させれば、何がおこるかといえばインフレです。需給のバランスが保たれるか、若干インフレ気味程度までならいくら刷っても大丈夫なのですが、供給より需要がはるかに上回るまで、お金や国債を刷ってしまい、お金を市場に供給すれば、ハイパーインフレになってしまいます。

2018年ハイパーインフレに見舞われたベネゼラではトマトを1キロが500万ボリバルとなった

だから、上の話にも自ずと制限があるということです。上の話があてはまるのは、無論超インフレにならない限度内の話です。いわゆるMTT理論では、これを無視しており、MTT理論は完璧に間違いです。

ただ、現在の日本は未だデフレから完璧に脱却しておらず、物価目標2%にも達しておらず、やはり上の話は当てはまります。それに誤解のないように言っておきますが、たとえハイパーインレになったとしても、いくら政府が国債を発行してそれを日銀が買い取ったとしても、それは政府の借金ではありません。ハイパーインフレと借金はまた別の話です。

そもそも、社会一般生活における言葉における借金でもないものを、わざわざ「借金」と呼ぶから、誤解を生じてしまうのです。そもそも日銀や政府の金融行動を、個人の行動と同じように捉えてしまうのが間違いです。高校の「政治経済」の教科書にも掲載されていない「政府の借金」などという用語を使って「政府の借金ガー」と煽る人の話は信じるべきではありません。

多くのまともな国では、ハイパーインフレにはしたくないため、国債を刷るにしても、お金を刷るにしても自ずと、限度が決まってくるわけです。

実際米国でも、8%を超えるインフレになったから利上げを実施したのです。しかし、現状の日本は需要不足から、物価目標2%にも達していませんし、原油や原材料価格が上がっているにもかかわらず、それに対する対策を現状では行っていませんし、ガソリンのトリガー条項の撤廃や、減税などの措置をとっていませんので、物価目標2%を超えたとしても、実体経済はインフレではない可能性があります。

現状では、国債を大量に発行したとしても、まったくインフレになる可能性はありません。以前高橋洋一氏が100兆円くらい刷っても、全く大丈夫と語っていたことをこのブログでも掲載したことがあります。

西田昌司議員が、「政府の借金」という言葉を用いたのは、あまりにこの言葉が使われてしまっているので、その言葉を使わなければ説明できないから使ったのでしょうが、彼自身は「政府の借金」なる言葉は、不適切と思っていることでしょう。

鈴木俊一財務相が、「その通りだなという気がする」と答えたのは、そもそも「政府の借金」なる言葉は適切ではないで、「その通り」とは言い切れないからでしょう。無論、鈴木氏がそう考えて発言したかどうかは、定かではありませんが、国会の答弁の雛形は財務省が作成するので、さすが財務省も「政府の借金」という言葉を国会で認めるわけにもいかず、「その通りだという気がする」という雛形を作成したのかもしれません。

そもそも高校の教科書にも出てこない「政府の借金」という言葉を国会で使わなければならない程現状の日本は経済政策に関しては、機能不全に至っているとしか言いようがないです。

本来経済対策で一番重要なのは「雇用」です。このブログでも何度か述べているように、経済指標で一番重要なのは雇用です。これが良ければ、他の指標が悪くても、経済政策は合格といえます。雇用がわるければ、その他の指標がのきなみ良くても、経済政策は落第です。

「政府の借金」という観点から、経済を論じるのはなく、まずは「雇用」という観点から経済政策を論じるべきなのです。

まるで、日本の経済対策は、経済対策としてしばしば「倹約令」を出していた、江戸幕府のようです。近代以降発展してきた、高校の「政治経済」の教科書にも掲載されている経済理論を無視するような考えや、発言、行動は厳に慎むべきです。これを無視すれば、何のために教科書を発行し、高校に先生を配置して、高校生に学ばせているのか、本末転倒になってしまいます。

国会での活発な論議を期待します。というより、それ以前に少なくとも政治家たるもの、高校の「政治経済」の教科書くらいは、読んでいただき、理解していただきたいです。その位の知識をすでに持っている政治家は別ですが、国会ではそれを前提として活発な論議をしていただきたいです。これを無視して「政府の借金」という言葉をつかえば、いたずらに混乱をきたすだけです。これを使うとすれば、西田議員のようにその誤りを正そうとする場合にのみ使うべきです。

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2022年4月15日金曜日

ネプチューン地対艦ミサイルによる巡洋艦モスクワ撃沈の衝撃―【私の論評】海戦の主役が変わったことを告げる「モスクワ」撃沈(゚д゚)!

ネプチューン地対艦ミサイルによる巡洋艦モスクワ撃沈の衝撃

ウクライナ防衛企業ウクロボロンプロムよりネプチューン地対艦ミサイル

 現地時間4月14日(日本時間4月15日)、ロシア国防省の発表によるとロシア海軍の黒海艦隊旗艦である巡洋艦「モスクワ」が曳航中に沈没しました。前日に爆発炎上し総員退艦、その後まだ浮いていたのでセヴァストポリ港に戻ろうと曳航している最中でした。

 ウクライナ側は前日に地対艦ミサイル「ネプチューン」2発を巡洋艦モスクワに命中させて撃破したと主張しています。ロシア側はこれを認めていませんが、どちらにせよ艦は失われました。

 ロシア海軍黒海艦隊旗艦スラヴァ級ロケット巡洋艦モスクワ撃沈。その衝撃は戦史に永久に刻まれることになるでしょう。ウクライナ海軍地対艦ミサイル部隊の大戦果であり、ロシア海軍の大失態となります。

巡洋艦「モスクワ」を喪失した意味

 巡洋艦モスクワはロシア海軍黒海艦隊旗艦であり、黒海艦隊の中では最大最強の艦でした。ただし主兵装の超音速巡航ミサイル「P-1000ヴルカン」には対地攻撃能力は無く、ウクライナとの戦争でこの艦は広域防空艦として価値を発揮していました。

 長距離艦対空ミサイル「S-300F」を搭載した巡洋艦モスクワはウクライナ南部の黒海沿岸の沖合いに進出し、防空網の一角を担っていました。長射程の対空ミサイルでウクライナ空軍機の活動を妨害していたのです。

 これが消えました。ロシア海軍黒海艦隊には他に広域防空艦は居ません。ウクライナ空軍は南部での行動の制約が大きく解かれたのです。

 また、これでもうロシア軍は揚陸艦隊を用いてオデーサに上陸作戦を行うことが困難になりました。ロシア艦隊は地対艦ミサイルを恐れて、容易には沿岸に近付けなくなった筈です。

 そして首都モスクワの名前を関する軍艦の喪失はロシア全軍どころかロシア全国民の士気を下げ、ウクライナの士気を大きく向上させることになります。

地対艦ミサイル「ネプチューン」

 ウクライナ語”Нептун”の発音は「ネプトゥーン」の方が近く、英語のNeptune(ネプチューン)と語源は同じでローマ神話の海神の名前です。

 ネプチューンは亜音速の対艦ミサイルで、アメリカ軍のハープーン対艦ミサイルやロシア軍のKh-35対艦ミサイルとよく似た性能です。固体燃料ロケットブースターで加速した後にジェットエンジンを始動して巡航し、海面を這うような低い高度で飛んで行きます。

 ネプチューンはウクライナ国産の新兵器で生産に入ったばかりであり、開戦前のスケジュールでは最初の1個大隊の編成完了が4月予定だったので、ぎりぎりでロシアとの戦争に間に合いました。

 ネプチューン地対艦ミサイル1個大隊は4連装発射機が6両で1斉射24発、予備弾含め3斉射分72発が定数となっています。

 ウクライナ海軍の想定ではトルコ製「バイラクタルTB2」無人偵察攻撃機で洋上索敵を行い目標艦を発見したらネプチューン地対艦ミサイルで攻撃するという手順を予定していましたが、実際の巡洋艦モスクワ攻撃ではどのような攻撃方法だったのかはまだ発表がありません。

 なおロシア海軍は巡洋艦モスクワが被弾する2日前に、黒海艦隊のフリゲート「アドミラル・エッセン」がウクライナ軍のバイラクタルTB2無人機を撃墜したことを誇る動画をUPしていました。これはウクライナ軍がドローン(無人機)による洋上索敵を積極的に行っていた可能性を示しています。

 あるいは無人機のバイラクタルTB2はロシア海軍を油断させるための囮で、本命の対艦索敵はアメリカ軍の偵察手段だった可能性もあります。一部のウクライナ報道ではバイラクタルTB2を囮に使ってその隙にネプチューンで攻撃した戦法が示唆されています。

 黒海にはアメリカ軍の大型無人偵察機「グローバルホーク」が開戦後も頻繁に飛んで来ていたので、巡洋艦モスクワの位置情報の提供を行っていた可能性があります。ただしこれが仮に事実だとしても公表したらロシアを怒らせるので、黙っている筈です。

 まだ不明な点は多いのですが、今回のネプチューンによる歴史的な大戦果の詳細はいずれ明らかにされていくことでしょう。

【参考外部記事】ウクライナ軍事ポータルサイト「Український мілітарний портал (ウクライーンシクィー・ミリタリニィー・ポルタル)」の英語版記事より。
The first battalion of “Neptune” coastal missile system will be delivered by April 2022 – Neizhpapa
“Moskva” missile cruiser – the flagship of the Russian`s Black Sea Fleet – sank

※なおネプチューンの発射車両は試作型と量産型で車両が異なります。
試作型の発射車両:КрАЗ-7634НЕ(ウクライナ製)
量産型の発射車両:タトラT815-7(チェコ製)

【私の論評】海戦の主役が変わったことを告げる「モスクワ」撃沈(゚д゚)!

今回の、モスクワの沈没に関しては、アメリカ国防総省 カービー報道官は、
「ウクライナ側が言うようにミサイル攻撃によるものかは確認できないが、それに反論する立場でもない。ウクライナ側がミサイルで攻撃したというのは、ありうることだ」と語っています。

上の記事では、ウクライナ側がミサイル攻撃したという記事が正しいものとして、ウクライナ側の主張を掲載しています。

この記事も、このウクライナ側の主張が正しいものとして、解説します。今回のモスクワ撃沈は、もう数十年前からいわれていた海戦の変貌ぶりを示したものといえます。

NHKどらま「坂の上の雲」で放映された日本海海戦における日本艦隊の旗艦「三笠」

海戦の主役は大きく2回変わっています。最初は、「大艦巨砲」ともいわれるように、巨砲を何門も持つ大艦同士が、海上で大砲撃戦を行い、海戦の雌雄を決定しました。その典型的な事例は、日露による日本海海戦です。

次の時代は、空母打撃群による海戦です。空母を主力とする艦隊を空母打撃群と呼び、この空母打撃群の空母以外の艦艇は、空母を護衛するのが主な目的であり、空母に積載した航空機が、海戦の雌雄を決めることになりました。その典型例は、大東亜戦争における太平洋の戦いです。

日本では、空母打撃群という呼び名はありませんでしたが、本格的な空母打撃群を最初に運用したのは、日本海軍でした。この空母打撃群は、ハワイ真珠湾攻撃等で活躍しましたが、やがて物量にまさる米軍が、空母の数でも、航空機の数でも日本をはるかに上回るようになり、各地で日本の空母打撃群を破るようになりました。

米国のハワイには、真珠湾の戦いの記念館があります。そこには、日本海軍が最初に空母打撃群を運用しはじめたということが展示物で示されています。米軍はそれを参考にして、空母打撃群を運用させるようになり、今日米海軍の主力になっているという旨のことが展示されています。

発艦した航空機から撮影した空母「赤城」

そうして、数十年前までは、実際にそうでした。しかし、もう随分と前から、実は空母打撃群は海戦の主役ではなくなっています。その主役は何かといえば、第二次世界大戦までは脇役であった潜水艦です。

このブログにも以前述べたように、米国の戦略家である、エドワード・ルトワック氏は次のように語っています。

「現在では、艦艇は2種類しかない、空母やイージス艦のような水上艦艇と潜水艦の二種類しかない。そうして、水上艦は空母であれ、他の巨大な艦艇であれ、いずれミサイルや魚雷で撃沈されてしまう。もはや、大きな目標でしかない。しかし、潜水艦はそうではない、水中に潜航して、容易に撃沈されることはない。現在の海戦の主役は潜水艦なのだ」

この言葉、最初はルトワックが語ったのかと思っていましたが、そうではないようです。潜水艦が原子力で動くようになり、さらに魚雷だけではなくミサイルを装備するようになった頃から言われはじめたそうです。

そうして、ロシアは2020年トルコ軍兵士が27日にシリアのアサド政権軍の空爆で死亡したことを巡り、トルコ側の対応に問題があったと主張し、シリア沖に巡行ミサイルを搭載した艦船2隻を派遣したことがあります。そのときの1隻が今回撃沈された「モスクワ」です。ルトワックは、これについて以下のような発言をしています。

「ロシアのミサイル巡洋艦など、象徴的なものにすぎない。米軍なら5分で吹きとばせる」

これは、事実なのでしょう。だからこそ、今回「モスクワ」はウクライナ軍に撃沈されたとウクライナ側は公表し、米国もこれをはっきりとは否定しなかったのでしょう。

無論、ルトワックの脳裏には、攻撃型原潜などを想定したものと思います。米国の攻撃型原潜の大型のものになると、100発以上もの巡航ミサイル「トマホーク」を搭載できます。しかも、米軍はロシア軍よりも、対潜哨戒能力に優れていいます。

この攻撃型原潜が、ロシアの艦艇を攻撃すれば、ひとたまりもないでしょう。

ただ、今回のウクライナによる「モスクワ」攻撃は、地上のミサイルランチャーから、ネプチューンを発射して撃沈したとされています。潜水艦から発射したものではないですが、ルトワックも語っていた「水上艦は空母であれ、他の巨大な艦艇であれ、いずれミサイルや魚雷で撃沈されてしまう。もはや、大きな目標でしかない」という発言を実証したといえます。

考えてみると、フォークランド紛争時には、ルトワックの語ったことは、現実になっていたと考えられます。

1982年3月のフォークランド紛争では、イギリス海軍の原子力潜水艦「コンカラー」によるアルゼンチン海軍巡洋艦「ヘネラル・ベルグラーノ」の撃沈はアルゼンチン海軍の戦意に冷や水を浴びせることになり、空母「ベインティシンコ・デ・マヨ」を始めとしたアルゼンチン海軍の水上戦闘艦は現存艦隊主義に転じて、二度と出撃してくることはありませんでした。

潜水艦の能力でも、対潜哨戒能力でも英軍に著しく、劣っていたアルゼンチン軍は、海戦においては最終的には、英軍の敵ではなかったようです。ただ、英軍はそれまでアルゼンチン軍のフランス製のエグゾセミサイルで、駆逐艦「シェフィールド」が沈没するなどの被害を受けています。

「モスクワ」と同程度以上の艦艇が撃沈されたのは、フォークランド紛争以来といわれています。今回の「モスクワ」撃沈により、まさに、水上艦は現代の海戦においては、「ミサイル」や「魚雷」の大きな目標にすぎないことが、さらに鮮明になったといえます。

なお、先のルトワックの発言については、「極端」と批判する人たちもいますが、今回の「モスクワ」撃沈が本当であったら、「極端」とはいえないと思います。

このブログでは、こうしたルトワック氏の発言などにもとづいて、私は日本の潜水艦隊の優位性を主張してきましたが、半信半疑の人も多いようです。今回の「モスクワ」撃沈がウクライナのミサイルのものであれば、「極端」とはいえなくなると思います。

陸上から放つミサイルも、水中から放つミサイルも同じことですし、潜水艦からの発射は、陸上からよりも、敵に発見されにくく軍事的にさらに有利といえます。しかも、日本の潜水艦のステルス性は「世界一」であり、この優位性についても理解が進むと思います。中国の台湾侵攻に関して、まるでこの世に潜水艦など存在しないかのような論評をする人もいますが、それでは全く意味がありません。

ウクライナ軍が日本の海自なみの最新鋭の潜水艦を持っていれば、軍事上かなり有利になっていたと思われます。もしそうだったら、初戦でロシア黒海艦隊は壊滅していたことでしょう。さらに、潜水艦からミサイルを発射し陸上の主要な目標を破壊し、かなり有利に戦争を遂行できたと思います。

このブログで、以前紹介したように、トランプは、「(プーチンが)またその言葉(核兵器)を口にしたら、われわれは原子力潜水艦核を送って、沿岸を上下左右に航行させるぞと言うべきだ」と語っていました。

これを、かなり物騒な発言とするむきもありますが、これはプーチンに対してかなりの牽制になりますし、核ミサイルでなくて、通常のミサイルを搭載する攻撃型原潜を派遣しても、ロシア側にとってかなりの脅威となるでしょう。

何しろ、米国の攻撃型原潜でも大型のオハイオであれば、巡航ミサイル・トマホークを154基も搭載できます。これは米誘導ミサイル駆逐艦の1.5倍以上、米海軍の最新鋭攻撃型潜水艦の4倍近いです。無論、その他にも魚雷、防空ミサイルも搭載しています。

このような攻撃型原潜を、2〜3隻黒海でも配置すれば、巨大なミサイル基地が即座にできあがり、米国のインテリジェンスンスに基づき、ロシアの軍事拠点を攻撃をすれば初戦でロシア軍は崩壊していたかもしれません。

今後の軍事研究の発展のためにも、ミサイル巡洋艦「モスクワ」の撃沈が、ウクライナのミサイルによるものだったのか、公表していただきたいものです。

それにしても、今回の「モスクワ」の沈没、ウクライナ側の発表が正しかろうが、正しくなかろうがロシア軍にとっては大打撃であることには変わりはないです。過去の日本の例でいえば、開戦2ヶ月目にして、連合艦隊の旗艦「大和」が沈んだようなものです。ロシア軍の士気の低下は免れないと思います。

ミサイル巡洋艦「モスクワ」

モスクワは、ロシア軍が3隻しか保有していない大型巡洋艦の1隻です。搭載する防空ミサイルシステムS300でウクライナ軍の戦闘機や無人機をけん制し、南部一帯での部隊展開を支えてきました。黒海艦隊は、ロシアにとって重要な標的である港湾都市オデッサなどの攻略を目指していました。

ところが独立系メディア、メドゥーザによると、ロシア軍はモスクワを失ったことで、残る部隊をウクライナ軍の攻撃から防ぐ能力が著しく衰える恐れがあります。ロシアとウクライナの交戦を理由に、トルコが黒海への軍艦の侵入を制限しているため、ロシアが地中海経由で代替の巡洋艦を派遣することも難しいです。

侵攻以降のロシア軍の被害も甚大とみられます。ウクライナ国防省は15日、ロシア軍の死者が「2万人を突破した」と発表。ロシア側は最新の死者数を1300人余としていますが、契約軍人を募るキャンペーンを強化するなど、実際は兵力不足が深刻な可能性が高いです。

こうした状況の中、ロシアの政権与党幹部は15日「軍事作戦は間もなく完了する」と同国メディアに強調。5月9日の対独戦勝記念日に合わせた「勝利宣言」名目で、プーチン大統領が幕引きを図る可能性も大いにありそうです。

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