2022年7月29日金曜日

米中新冷戦下で見える途上国の「事なかれ」外交―【私の論評】戦後にウクライナが EUに加入し、急速な経済発展を遂げれば、途上国も「事なかれ」主義ではいられなくなる(゚д゚)!

米中新冷戦下で見える途上国の「事なかれ」外交

岡崎研究所

 ロシアによるウクライナ侵略を巡る国連緊急特別総会では、141カ国がロシア非難決議に賛成し、棄権した国の中にもロシアの行為を認めない発言をした国が多いが、対ロシア制裁に参加している国は40カ国強に過ぎず、アジア、アフリカ、ラテンアメリカ諸国は、ほとんど参加していない。


 その背景には、貿易や武器供与等のロシア依存、ソ連時代からの伝統的な友好関係、自国が関係する紛争について安保理でロシアに借りのある国々、欧米諸国に対する一般的な反発、或いは単に自国と関係のない紛争に巻き込まれたくないとの事なかれ主義など、さまざまな事情がある。

 Foreign Policy誌のコラムニスト、ジェイムス・トラウブ7月9日付けの論説‘Cold War 2.0 Is Ushering In Nonalignment 2.0’は、このような途上国がウクライナ問題で西側とロシアの間で中立の立場をとるのは、それ以前の米中覇権争いにおいて、既に醸成されていた超大国の間でいずれかの側に付くような選択を強いられたくないとの主張が結晶化したもので、新たな非同盟運動とも言える、と分析している。

 その背景には、西側諸国への批判と自国の利益を守るための実利的、方法論的判断基準があり、伝統的な非同盟運動がイデオロギーに基づいていたこととは異なっている。従って、ウクライナ戦争を民主主義と独裁主義の対立と位置付けるバイデン外交は、これらの途上国の支持を得られず、むしろ亀裂が深まっているのは、北と南の関係であると指摘する。

 しかし、非同盟運動は現在でも存在しており、現在はウガンダが議長国で2023年までには首脳会議が開催される予定である。非同盟運動の平和10原則の第1が基本的人権と国連憲章の趣旨と原則の尊重であり、第2が全ての国の主権と領土保全の尊重であるので、ウクライナ戦争での中立的立場とは相いれないはずである。

 非同盟運動はこの平和10原則と不可分のはずなので、最近の非同盟諸国の脱イデオロギー的な中立の傾向を第2次非同盟運動と呼ぶことにはやや抵抗感を覚え、むしろ非同盟運動の変質というべきであろう。

 バイデンの価値観外交とウクライナ戦争でロシアを敗退させるという外交目的の間では矛盾が生じ得る。すなわち、途上国には、民主的とは言えない国が多いのは現実であり、内政不干渉は非同盟運動のもう一つの重要原則でもあるので、米国による突出した民主化の圧力はこれらの国をロシア側に追いやってしまうことにもなりかねない。民主化促進は、国連や地域的国際機関或いは利害関係国との協調で取り組むといったバランス感覚が必要ではなかろうか。
経済は中国、安保は米国

 途上国は、経済的利益では中国を重視するが、安全保障の面では米国を頼りにしている国も多い。新冷戦構造において、これらの国々が中国を支持する側に付くかどうか注目される。

 この点につきトラウブは、「中国の一帯一路政策の背景には、経済面以外に、台湾有事の際に国連で非難決議が採択されないよう、インフラへの資金供給と引き換えに核心的利益の相互支持を取り付けるといった政治的意図がある。新冷戦構造が深刻化すれば、南の国々は、米中いずれの立場にもくみしないという中立原則をより重視することとなり、中国の思惑通りに行かない可能性がある」と分析する。しかし、そうなるかは、それぞれの国が置かれている状況にもよるので、そう単純な問題ではないと思われる。

【私の論評】戦後にウクライナが EUに加入して、急速な経済発展を遂げれば、途上国も「事なかれ」主義ではいられなくなる(゚д゚)!

上の記事では、米国による突出した民主化の圧力ということを強調していますが、民主化というと単なる理想主義と考えられている節がありますが、それは完璧な間違いです。実は、民主化は経済発展には欠かせないのです。

それは下の高橋洋一氏が作成したグラフをご覧いただければ、一目瞭然です。


中露の一人あたりのGDPは10000ドル強にすぎません。これは、韓国はもとより、台湾や、バルト三国よりもかなり低いです。

なぜ、このようなことになってしまうかといえば、先進国においては民主化を進めた結果、多く中間層を輩出し、これらが自由に社会経済活動を行い社会のありとあらゆるところでイノベーションを起こし、富を生み出すことになるのですが、民主化が進んでいない中露などでは、政府などか大規模な投資をしてイノベーションを行ったにしても、西欧諸国のような大規模で、星の数ほどのイノベーションにはなりえず、結果として経済が発展しないのです。

民主化しない国は、産油国などのほんの一部の例外を除いて、多くの途上国では政府が掛け声をかけて、投資をして様々な産業振興策を行えば、ある程度経済発展します。しかし、一人あたりのGDP が 10000万ドル前後になると、それ以上は経済が伸びないのです。

ロシア現在その状態にあります。中国は、数年前までは、経済発展してきたようですが(中国の出す経済統計はデララメなのでこうとしか言いようがない)ですが、一人あたりGDPは10000ドルを超えたあたりから足踏み状態です。

これは厳然たる事実です。民主化は、経済発展には欠かせないのです。西欧諸国はある時点で国内の民主化をして、経済を発展させ、国を富ませ、軍隊を強化することができ、現在に至っています。

さらに、一帯一路が頓挫しそうな状況であることも明らかになりつつあります。

世界銀行のデータによれば、中国から新興国の政府部門への資金の純移転は、16年をピークに減少し、19年と20年にはマイナスに転じています。中国の国有銀行はすでに成長のための資金提供者から債務の回収者へと転じている可能性が大きいです。

これについても、以前このブログに掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
スリランカが「破産」宣言“燃料輸入”プーチン氏に支援要請―【私の論評】スリランカ危機の背景にある、一帯一路の終焉が世界にもたらす危機(゚д゚)!
スリランカのゴタバヤ・ラジャパクサ大統領
セバスチャン・ホーン、カーメン・ラインハート、クリストフ・トレベシュは、Centre for Economic Policy Researchのオピニオンサイト、VoxEU.orgに寄稿した論考で、一帯一路に代表される中国の海外投資ブームが、ロシアとウクライナの戦争により深刻な障害にぶつかるだろうと述べています。

その根拠となるのは、中国の政府系金融機関がロシアとウクライナ、およびベラルーシに対して行っている融資額の大きさです。ホーンらによれば、中国の国有銀行は2000年以降、ロシアに対しエネルギー関連の国有企業を中心に累積1250億ドル以上、融資してきました。

中国はまた、ウクライナに対しても主に農業とインフラストラクチャー分野のプロジェクトを中心に70億ドル程度、さらに、ベラルーシに対しても80億ドル程度、融資してきました。この3カ国を合わせると、過去20年間の中国の海外向け融資の20%近くを占めるといいます。

もともと、近年急激に増加しつつある中国の対新興国への資金貸付は、どのような基準に基づいて行われているのかが明確ではなく、債務不履行などのリスクを生じやすいものであることが指摘されてきました。スリランカはまさにその一つの例です。ホーンらは、中国の対外貸付のうち、債務危機にある借入国に対する比率は10年の約5%から現在では60%にまで増加したと指摘しています。

世界銀行のデータによれば、中国から新興国の政府部門への資金の純移転は、16年をピークに減少し、19年と20年にはマイナスに転じています。ホーンらはこのデータをもって、中国の国有銀行はすでに成長のための資金提供者から債務の回収者へと転じている可能性があるとしています。ウクライナ危機およびその後の経済制裁によってロシアおよびその同盟国の経済が直面することになったリスクは、その傾向をさらに増幅させることになるでしょう。

中国の政府系金融機関は、今後ロシアなどに対する融資が不良債権化するリスクを、よりリスクの高い債務国への新規融資の停止あるいは債権回収によって埋め合わせるかもしれないです。このことが持つインパクトは、おそらくこれまで西側諸国によって喧伝されてきた「一帯一路が『債務の罠』をもたらす」という問題よりもはるかに大きなものになると考えられます。

さらに、 中国にもともとどうしようもない欠陥があります。それについても、以前このブログで述べたことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。

【日本の解き方】中国経済もはや重篤なのか 食い止められない資本流失―【私の論評】日銀に振り回され続けるか、資本規制かを選択せざるをえなくなった中国(゚д゚)!

これは2016年の記事です。 この頃、中国政府は、景気回復を狙い「固定為替相場制」をあきらめて、人民元を切り下げたところ、資本流出が加速したため、今度は資本規制に乗り出していました。

なぜこのようなことになるかについては、もともと「国際金融のトリレンマ」という原則があります。以下にその部分を引用します。

日本をはじめとするいわゆる先進国は、「固定為替相場制」を放棄して、変動為替相場制に移行しています。これによって、「独立した金融政策」「自由な資本移動」を同時に達成することができました。

しかし、中国の場合は「固定為替相場制」を維持していますから、これをこれからも維持し続けるというのなら、国際金融のトリレンマを克服するためには、「独立した金融政策」もしくは、「自由な資本移動」のうちのいずれかを捨てなけれはならないということになります。

以下に国際金融のトリレンマの図と若干の説明を掲載します。

  • ある国はこの3つの「自由な資本移動」「固定相場制」「独立した金融政策」のうち2つだけを受容することができます。もしある国が a の位置を選択し、「自由な資本移動」と「固定相場制」を導入するのであれば、金融政策の独立性は失われます。

  • 実際の例としては欧州連合ユーロ圏が挙げられます。もしユーロを受容し自国通貨を放棄すれば、ユーロ圏内で為替を固定することになります。また、域内での自由な資本移動も認められています。しかし、金融政策はすべて欧州中央銀行に一任することになります。
中国が、固定相場制を堅持し、自由な資本移動も堅持したとしたら、何がおこるかといえば、それは日本などをはじめとする、外国の金融政策に左右され「独立した金融政策」を実行できなくなるということです。

実際にそれはもうすでに発生していました。日本が2013年の4月から、金融緩和に転じてから、円安状況になり、それまで円高の状況とは異なり、中国経済にとっては、独立した金融政策が脅かされる事態となりました。

それまでの、中国の経済発展を支えていたのは為替操作によるキャッチアップ型の経済成長であり、円高とデフレを放置する日本銀行によるものでした。

慢性的な円高に苦しんでいた日本企業は、過度な「元安」政策をとる中国に生産拠点を移し、出来上がった製品の一部を逆輸入していました。日本国内で一貫生産するより、わざわざ中国を経由した方がもうかる構造になっていたのです。

日銀は、「デフレ政策で日本の産業空洞化を促進し、雇用と技術を中国に貢ぎ続けていた」のです。まさに、日本経済はこれによって、中国に振り回されていたのです。

しかし、2013年の4月から、日銀が金融緩和に転じたため、この構造は崩れ、今度は中国が日本の金融政策に振り回されるようになり、「独立した金融政策」を維持することが困難になってきたのです。 

脅威の経済発展をした頃の中国の経済運営は、単純でやりやすいものでした。景気が加熱して、超インフレになれば、金融引締、緊縮財政を行い、素早くインフレから脱却し、抑制状況になれば、今度は金融緩和して、積極財政をするという具合で、これを交互に繰り返し、中国は驚異の経済発展をしました。

しかし、日銀が2013年4月からまともな金融政策に展示、デフレを克服のために、金融緩和をはじめてから、中国金融は大きな問題を抱えるようになったのです。

先にもあげたように、人民元を切り下げる(金融引き締め)をすると、資本流出が加速したため、その後すぐに資本規制に乗り出すという有様です。

以前の中国であれば、国内で大規模投資するなら、元を大量にすればそれですんだものが、現在ではそのようなことをすれば、すぐに超インフレになったり、資本流出が起こるなどのことが起こるようになったのです。

さらに、過去には国内のインフラ投資を熱心に行ってきたため、それが一巡して、国内に優良な投資案件がなくなってしまったのです。だからこそ、中国は「一帯一路」に望みをかけて、海外投資によって発展する道を選んだのですが、これも国際金融のトリレンマにより、ドル資本流出が激化するなどのことがおこり、うまくはいかなくなったのです。

だからこそ、中国から新興国の政府部門への資金の純移転は、16年をピークに減少し、19年と20年にはマイナスに転じるなどのことが起こっているのです。

中国を救う道はあります。それは、日本が再び金融引締に転じることです。このような馬鹿なことはすべきではないと思いますが、親中派の林外務大臣が存在する岸田政権においては、また金融引締に転じて、中国を有利にする道を歩むことになるかもしれません。

これは、来年の4月、現在の黒田日銀総裁の任期が終了し、新たな日銀総裁が誰になるかではっきりするでしょう。いわゆる緊縮派の総裁になれば、中国は大喜びで、また海外投資を始めるでしょう。ただ、それを米国が座視するとも思えません。そのようになれば、米国は何らかの方法で中国のみならず、日本に対して報復に打って出るでしょう。

上の記事では、バイデン氏による民主化への圧力を、おせっかいのように批判しているところがありますが、そんなことはないと思います。

突然並外れた産油国になるなどのことでも起こらない限り、途上国は民主化しない限り、経済発展する見込みはありません。

途上国が民主化を嫌がるのは、その国の統治者とそれにつながる者たちの利権を離したくないという単純な理由でしょう。民主化をすれば、自国は豊かになるのは明らかですが、そうしたとしても、利権を手放せば、自分たちには全くメリットはないと考えているのでしょう。

そのような連中からすれば、中国は投資すれば良いだけの存在てあり、投資ができなくなった中国には何の関心もないでしょう。米国についても、投資はできそうだが、投資と引き換えに、民主化を強制されれば、自分たちの利権を失うということで、これにもあまり魅力はないのでしょう。

そうして、こうした途上国の多くの国民は、貧乏で、日々暮らすのに精一杯であり、民主化への声を上げることなど、思いもよらないというのが現実でしょう。一部の変わり者が、その声を上げることもあるでしょうが、変わり者が、多くの国民の声を代表するようにはならないというのが現実です。

結局、統治者とそれに連なる者たちの、利権が脅かされない限り、彼らは現在の投資しない中国にも米国にも無関心でありつづけ、これが続く限り、途上国は途上国のままであり続けるでしょう。

ただ、こうしたことを打ち破る可能性もでできました。それは、ウクライナの経済発展です。世界銀行は4月10日、ウクライナの2022年の経済成長率見通しをマイナス45.1%と発表しました。

大幅な落ち込みの要因は、鉄道や橋、港、道路などのインフラ設備が破壊されたことによって経済活動の継続が不可能になったことや、貿易の停止、多くの国民が隣国に避難したことや収入喪失による家計消費の急激な下落など。世界銀行によると、軍事侵攻によってウクライナ企業の約半数が閉鎖に追い込まれ、残りの半数も事業を縮小せざるを得ないといいます。

確かに、直近では経済が落ち込むのが目に見えていますが、戦争が終了すれば、復興がはじまります。また、ウクライナはEUに入ることを宣言し、EUもその前提で交渉をすすめています。そうして、なんとロシアのプーチンは、これに反対していません。

しかし、これは後にロシアを後悔させることになるかもしれません。なぜなら、人口が比較的に多く、軍事産業や宇宙産業、最近ではIT産業などもある、産業基盤がある程度整ったウクライナがEU諸国並に民主化されれば、急激に経済成長する可能性があるからです。

ウクライナが経済成長し、ロシア経済と同等もしくはそれ以上になれば、中露に対しては大きな牽制になります。何しろ、武力侵攻すると、武力侵攻された側が、一時的には疲弊しても、民主化の道を選べば、経済発展することが明るみにされるからです。

ロシアの隣にロシアと同程度の経済力を有するウクライナができあがれば、安全保障上にも良いことですし、途上国の国民に対しても強力なメッセージなります。いわゆる大国にいつも脅かされるような貧乏な国であっても、民主化すれば、その大国に経済的に対抗できるような国に生まれ変わることができるかもしれないという希望が生まれるからです。これは、バイデンの価値観外交よりもはるかにインパクトがあります。

米中新冷戦下で見える途上国の「事なかれ」主義にも大きな影響を与えることになるでしょう。

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2022年7月28日木曜日

石破氏ら台湾訪問 超党派、日台パイプ強化が急務 蔡総統や副総統と会談予定「安倍元首相が築いた遺産、関係の基軸になる政治家出てくるか重要」石平氏―【私の論評】日台関係の基軸になり得る政治家は、菅前総理をおいて他にない(゚д゚)!

石破氏ら台湾訪問 超党派、日台パイプ強化が急務 蔡総統や副総統と会談予定「安倍元首相が築いた遺産、関係の基軸になる政治家出てくるか重要」石平氏

台湾の空港に到着した石破氏(右から2人目)ら=27日

 自民党の石破茂元幹事長ら超党派の国会議員でつくる勉強会「日本の安全保障を考える議員の会」のメンバーが27日、台湾入りした。中国の軍事的覇権主義の拡大を受けて西側諸国が「台湾シフト」を強めており、日本も台湾とのパイプ強化が急務だ。

 「ロシアによるウクライナ侵攻を踏まえ、この地域の安全保障環境と、それぞれ果たす役割について議論し見識を深めたい」と石破氏は記者団に語った。

 訪問団には、石破氏のほか、自民党の浜田靖一衆院議員、長島昭久衆院議員、日本維新の会の清水貴之参院議員が参加した。滞在中に蔡英文総統や頼清徳副総統と会談や、李登輝元総統の墓参も予定している。

 27日には台北で開催された国際フォーラムに出席した自民党鈴木馨祐衆院議員らと蔡氏が会談。蔡氏は、中国などを念頭に「権威主義の拡張により民主主義国家は団結しなければならないと気付かされた」と述べた。

 3月以降、フランスやスウェーデン、スロバキア、欧州議会などの要人が相次いで蔡氏と会談した。来月上旬にはナンシー・ペロシ米下院議長の訪台計画が取り沙汰される。「台湾有事は日本有事」ともいわれる中、日台のパイプ強化を求める声は多い。

 評論家の石平氏は「議員の訪台は総じて評価できるが、議員個人のアピール材料にするだけではなく、国会や自民党内に台湾担当の委員会を置いたり、日台間の定期的な対話チャンネルを創設するなど組織的な動きも必要だ。親台派の重鎮だった安倍晋三元首相が築いた遺産は大きく、今後は日台関係の基軸になる政治家が出てくるかが重要だ」と指摘した。

【私の論評】日台関係の基軸になり得る政治家は、菅前総理をおいて他にない(゚д゚)!

台湾の、謝長廷(しゃちょうてい)駐日代表(大使に相当)は8日、フェイスブックを更新し、安倍晋三元首相が死去したことについて、哀悼の意を示しました。前週には表敬訪問の際に訪台を招請したところ、安倍氏が快諾していたことも明らかにしていました。

仮に安倍元総理が存命で、台湾を訪問した場合、今回の議員団の訪問よりもはるかにインパクトがあったことでしょう。

実際、安倍前首相は台湾訪問の意向があり、台湾外交部はこれを全力でサポートすると表明していました。そうして、実際に訪問する兆しがあったのですが、台湾でのコロナ感染の広まりなどの事情で、実現しませでした。

これについては以前このブログにも掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
安倍前首相、台湾訪問の意向 外交部「全力でサポート」―【私の論評】台湾は日本の優れた海洋戦能力に期待し、中国はこれに脅威を感じている(゚д゚)!

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下に結論部分を掲載します。

現在台湾は国産の潜水艦を建造中で、最終的には8隻を建造しようとしています。これに対して、米国の軍事アナリストは、もし台湾がこれに成功すれば、今後中国は数十年にわたって台湾に進行できないだろうとしています。

無論、これは、台湾が日本の潜水艦と同等のステルス性と攻撃性を有することを前提として、このように語っているのだと思います。そこまでいかなくても、中国側に探知されにくい潜水艦を作れば、これは成就すると思います。実際、台湾の潜水艦建造には日本の技術者も参加していますから、そうなることでしょう。
自前の潜水艦の着工式に出席した蔡英文総統=2020年11月24日、高雄市
ただ、現在は建造中ですから、すでに潜水艦22隻体制をとっている日本は、台湾にとってそれまでの間、強力な助っ人になりえるわけです。

以上軍事的には、日本が台湾有事に十分対抗できるわけですから、日米台の戦略対話に、日本が参加する意味が十分あるわけです。もしそうでなければ、参加の意味は半減するわけです。「インド太平洋戦略」も同じことです。

日本のこの優れた海洋戦能力があるからこそ、台湾は日本に期待しているのです。中国は、これに脅威を感じているのです。

安倍元総理には、議員による「戦略対話」から、日米台の政府による「戦略対話」にもっていくための架け橋になっていただきたいです。日米台が協力すれぱ、中国による台湾侵攻は、不可能になります。
以前からこのブログに述べているように、日本はステルス性に優れた潜水艦を22隻保有していることと、対潜哨戒能力が中露よりも格段に優れているため、海戦においては、中露に比較して圧倒的に有利です。

その日本が、台湾が高性能潜水艦を8隻建造するまでの間、台湾の安全保障に関与する姿勢を見せれば、これは中国にとっては大きな牽制になります。台湾有事に日本が潜水艦を何隻か台湾近海に派遣して、台湾を包囲してしまえば、中国海軍はこれを突破できません。

米軍も台湾有事に攻撃力が圧倒的に強い大型の攻撃型原潜を台湾に2〜3隻派遣すれば、十分対応できるとルトワック氏は語っています。

日米がこれを実行すれば、中国による武力侵攻は絶望的になります。それでも無理に侵攻しようとして、仮に台湾に人民解放軍を上陸させたにしても、補給ができずに、上陸部隊はお手上げになります。

米国の国防総省や海大までが、米中軍事衝突のシミレーションにおいては、潜水艦を抜きでシミレーションを行っています。そのためか、米国が負けるという結果になっています。しかし、現実には潜水艦を有効に用いれば、米軍が負けるなどというシナリオは、成り立ちません。

なせ、そのようなことをするかといえば、予算獲得と、多くの人々の耳目を惹き付けるためです。これは、多くの人が指摘するところです。私もこれを前提として物事を考えています。

ロシアは、台湾有事ということになると、当然中国に加勢しようとするでしょうが、仮に日露が有事になったとするとロシアの艦船は、日本の潜水艦が潜む宗谷海峡と津軽海峡は危なくて通れなくなるので、太平洋方面での作戦やウラジオストクから補給を受けるカムチャツカの基地の維持も難しくなり結局、中国に加勢はできなくなります。

海戦では、日本はロシアを圧倒することになるでしょう。実際もし第二次日露戦争が勃発したら「日本が海戦を制する」とロシアメディアが断言しています。これをなかなか信じない人もいるようですが、こういう人はロシアのGDPは今や韓国を若干下回るほどしかなく、一人あたりGDPは韓国を大幅に下回るという現実を無視していると思います。

防衛大臣と海軍長官を率いるプーチン露大統領

そうして、当然のことながら、米国もこの動きに対応するでしょう。対潜水艦戦争に優れた米国がロシアを牽制すれば、ロシア海軍は中国に加勢どころではなく、日米によって壊滅の危機にあうことになりかねません。

それでも、台湾有事などで中国の艦隊と連携行動を取られると、ロシア海軍も日米にとって煩わしい存在になるのですが、それも大したものにはならないでしょう。

潜水艦の行動は、昔からどの国でも表には出さないのが普通であり、このような実体を知る人は少ないです。ただ、様々な情報を辻褄が合うようつなぎ合わせるとこのようなことになります。

そうして、このようなことを総理大臣をつとめた安倍元総理大臣は熟知しています。この他熟知しているのは、歴代の総理大臣と防衛大臣だけでしょう。ただ、十年以上前と、現在とでは諸事情が随分異なっています。

十年以内ということになれば、岸田総理大臣、安倍元総理、菅前総理大臣、そうして何人かの防衛大臣歴任者ということになります。

ただ、安倍元総理はなくなり、岸田総理大臣は、上のような事実をデータとして知ったとしても、インテリジェンスの次元まで高め、日米台の政府による「戦略」にまで高められるかどうかは、はなはだ疑問です。

過去の防衛大臣の中には岸氏を筆頭に優秀な方もいらっしゃいますが、将来はともかく、残念ながら現状では政治家としての力ということになると疑問符がつきます。石破氏は論外です。

さて、菅前総理は、総理だったときの、2021年4月16日、米ホワイトハウスでバイデン米大統領と初めての日米首脳会談に臨んでいます。

日米首脳会談後の記者会見に臨んだバイデン米大統領と菅首相2021-04-17

会談後に発表された共同声明では、「台湾海峡の平和と安定の重要性を強調するとともに、両岸問題の平和的解決を促す」ことが明記されました。日米首脳共同声明に台湾が盛り込まれるのは52年ぶりでした。

台湾紙は「国際社会による台湾支持の輪が広がっている」と歓迎。一方、中国紙は「米日同盟はアジア太平洋の平和を脅かす軸」だと批判し、共同声明に反発しました。

その菅義偉首相は総裁選に出馬しない旨を公表した後の2021年9月24日、米ワシントンで開かれた日米豪印(通称クアッド)首脳会議に出席しました。国内では菅首相の後任を決める自民党総裁選(同年同月29日投開票)のさなかの異例の訪米でした。

まもなく退陣する菅首相がなぜ、米国を訪問したのか。外務省関係者は「各国とも日本の新しい首相が選ばれるまで待てない事情があった」と打ち明けました。

当時のクアッド首脳会議開催に最もこだわったのは米国です。外務省関係者は「菅首相の任期を十分理解したうえで、『ぜひ来てほしい』と言ってきた」と打ち明けたしています。

これは、クアッド首脳会談においては、日本は欠かせないという米国の意図があるからでしょう。しかも、当時の菅総理大臣のことを米国は安倍元総理の政策の継承者であり、かつ力のある政治家であり、仮に総理大臣を退いたとしても、クアッド首脳会談の合意事項を日本が反故にすることはないと見込んだからでしょう。

このような菅前総理です。日米台の「戦略」の重要性は熟知しているどころか、安倍元総理の考えを完璧に継承していると考えられます。


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2022年7月27日水曜日

〝宇宙大国〟崩壊の危機 ロシア、ISS計画から離脱 独自のステーション建設優先「西側の制裁が相当効いている…本格的な衰退見えてきた」識者―【私の論評】ソ連崩壊時のように現在のロシア連邦は、宇宙開発どころではなくなった(゚д゚)!

〝宇宙大国〟崩壊の危機 ロシア、ISS計画から離脱 独自のステーション建設優先「西側の制裁が相当効いている…本格的な衰退見えてきた」識者

国際協調の象徴とされるISS

 ロシアの国営宇宙開発企業、ロスコスモスのボリソフ新社長は26日、2024年で国際宇宙ステーション(ISS)の計画から離脱することを決めたとプーチン大統領に報告した。欧米の制裁や民間企業の成長でロシアの宇宙ビジネスは斜陽化が指摘されており、プーチン氏が掲げた「宇宙大国」の地位は崩壊しようとしている。


 15日に社長に任命されたボリソフ氏はモスクワのクレムリンでプーチン氏と会談し、共同運用期間が終わる24年での離脱が「決定された」と説明。地球の軌道を周回するロシア独自のステーション建設が当面の最優先課題になると述べた。

 日米欧露など各国の飛行士が滞在するISSは国際協調の象徴とされ、ロシアが14年にクリミア半島を強制編入した際も関係は保たれてきた。

 ISSの運用期限は24年で、米航空宇宙局(NASA)は30年まで延長する方針を示していたが、2月のロシアによるウクライナ侵攻で延長の交渉は事実上中断した。

 ISSへの有人輸送は、長年ロシアの宇宙船ソユーズが担ってきた。昨年12月、ISSに滞在したZOZO(ゾゾ)創業者、前澤友作氏を運んだのもソユーズだった。

 だが、イーロン・マスク氏が立ち上げた米スペースXなど民間企業が相次いで宇宙事業参入している。21年のロケットの打ち上げ回数でロシアは中国と米国に大きく水をあけられた3位だ。

 ロシアの宇宙開発企業、エネルギヤのソロビヨフ主任設計士は26日、ロシアが独自の宇宙ステーションを開発する場合、最初のモジュール打ち上げは早くても28年になるとの見方を示した。ステーション建設とISSへの参加を並行しないと、ロシアは数年間、有人宇宙飛行を中断することになり「新たに再開するのは、かなりの困難が伴う」と危機感をあらわにしている。

 筑波大名誉教授の中村逸郎氏は「ロシアにとって宇宙ビジネスは、米国に負けない技術力を持っていると誇示するプーチン氏の愛国主義と国威発揚の手段だった。重要な資金源でもあったが、ISSを放棄せざるをえないのは西側の制裁が相当効いているのだろう。技術力を欧米や中国にどんどん水を開けられ、ロシアの本格的な衰退が見えてきた形だ」と語った。

【私の論評】ソ連崩壊時のように現在のロシア連邦は、宇宙開発どころではなくなった(゚д゚)!

ロシアの宇宙開発というと、どうしても思い出すのは、ソ連崩壊時に宇宙飛行士が宇宙ステーションに、しばらくの間放置されことです。

1991年5月18日にミール宇宙ステーションに搭乗したセルゲイ・クリカレフが帰還したのは1992年3月でした。表向きの理由は、1991年12月26日、ソビエト連邦が解体され、クリカレフは国を持たない宇宙飛行士となったからだとされています。彼は、今でも最後のソビエト連邦市民とロシアでは呼ばれています。

セルゲイ・クリカレフ氏

ただ、本当の理由は、ソ連崩壊し、ロシア連邦がソ連の核兵器、軍事技術、宇宙技術などを継承したのですが、経済が極度に低迷し、宇宙ステーションどころではなくなったというのが実情でしょう。

実際、核兵器のメンテナンスなどでも、膨大な資金が必要です。実際、ソ連が崩壊に伴い独立した、ウクライナは、国内にソ連邦時代の核兵器が多数残っており、当時一時的に米露に続く世界第三位の核保有国になったくらいです。

ロシア連邦と同じく経済が低迷していたウクライナは、核兵器の破棄を決めました。そうして、ロシアも西側諸国もこの決定を歓迎し、核兵器の廃棄が進められることになりました。

ただ、ロシア連邦にはウクライナの核兵器を廃棄する余力すらなく、実際にウクライナの核兵器を無力化して廃棄したのは、米国をはじめとする西側諸国でした。

これだけ、経済が低迷していたロシア連邦が、宇宙開発に回せる資金はほとんどなく、ミールをしばらく放置せざるを得なかったのでしょう。

クリカレフは、現在ロスコスモス所属の宇宙飛行士です。1958年8月生まれの彼は現在63 歳、健在です。

さて今回、ロシアの宇宙開発の本格的衰退がみえてきた形ですが、今回はそれがはっきりしたということで、ロシアの宇宙開発は随分前から衰退傾向にありました。

米スペースシャトルが2011年に退役して以降、地球と国際宇宙ステーション(ISS)を往復する手段は露宇宙船「ソユーズ」だけとなりました。安定感を誇ってきたソユーズでしたが、その信頼は揺らぎました。

2018年8月にはISSに接続していたソユーズの穴が原因でISSの気圧低下が発生。同年10月に行われたソユーズ打ち上げも組み立てミスが原因で失敗し、米露の飛行士2人が緊急カプセルで脱出しました。米スペースX社は有人型ドラゴン宇宙船の実用化に成功した現在、ソユーズの独壇場は終わりました。

1950年~60年代、旧ソ連は世界に先駆けて人工衛星「スプートニク」の打ち上げやガガーリンによる有人宇宙飛行に成功。初の有人月面着陸(69年)では米国の後塵(こうじん)を拝しjましたが、71年には世界初の宇宙ステーション「サリュート1」の打ち上げを実現しました。

しかし、91年のソ連崩壊を境にロシアの宇宙開発は大きく停滞しました。90年代には国家資金が宇宙分野に回らず、人材も大量に流出。2000年発足のプーチン政権は宇宙大国再興を掲げましたが、明るい展望はありませんでした。

米科学者団体によると、19年3月末時点で稼働中の人工衛星は米国901基、中国299基に対し、ロシアは153基。昨年1月~12月中旬のロケット発射成功回数も中国の35回、米国の30回に対し、ロシアは15回にとどまりました。

ロシアは現在、ソ連崩壊後で初の純国産ロケット「アンガラ」の開発を進めています。汎用(はんよう)ロケットモジュール(URM)を組み合わせ、軽量級から重量級まで各種のロケットを造る構想です。ただ、技術不足から試験発射が2度行われたのみで、23年までの有人飛行という目標にはほど遠いです。

極東アムール州では12年から、アンガラの射場設備も備えたボストーチヌイ宇宙基地の建設が進んでいます。ところが、給与未払いや建設費の横領、作業員のストライキと醜聞続きで、やはり計画は大幅に遅れています。

ボストーチヌイ宇宙基地の建設現場

ちなみに、基地建設に関連して総額約110億ルーブルを超える規模の不正支出事件が摘発されて2019年に58人が有罪判決を受けました。

そもそも、現在のロシア連邦のGDPは、韓国を若干下回る程度あり、東京都と同規模です。一人あたりのGDP は10000ドルを若干超える程度であり、このような国が宇宙開発するのは、そもそも最初から無理筋というものです。中国の一人あたりのGDPもロシアを若干上回る程度ですが、人口がロシアの10倍ですから、国あたりのGDPでは、10倍あります。

しかし、中国ですら宇宙開発は難しいと思います。ソ連は、米国と宇宙開発競争と、軍拡競争を繰り広げた結果、国力が衰退し、結局崩壊しました。実際、このブログでも、中国が米国と宇宙開発競争と軍拡競争を繰り広げれば、旧ソ連のように経済が衰退し、旧ソ連のように崩壊する可能性があることを主張したことがあります。

中露がこのようになってしまうのには、もう一つ理由があります。それは、非常に非効率な官僚主義です。米国の宇宙開発でも、この官僚主義がはびこっています。特にNASAのそれは、非常に評判が悪いです。

実際ISSの運用管理は、NASAが管理すると、非常に非効率であり、採算を度外視した管理をするため、現在では、民間企業が行っています。民間企業が行うと利益が出るのですが、NASAが直接管理すると、信じがたいほど低効率で、利益が出るどころか、大赤字になるそうです。

中露とも、宇宙開発には民間企業を関わらせていますが、それでも官僚主義による弊害は免れないでしょう。

米国が、米スペースXなど民間企業などに委託するのも、官僚主義による弊害を避けるためです。

スペースX Crew-2 ISSへ接近するエンデバー

現在のロシアは、ウクライナ侵攻と、西側諸国による制裁で、宇宙開発どころではありません。ロシアは今後宇宙開発から脱落する可能性が高いでしょう。

ただし、ソ連崩壊後でも宇宙開発を完璧に捨て去らずに、何とか温存し、復活させたロシアです。何かの形で、将来復活してくる可能性は、わずからながら残されていると思います。ただ、しばらくの間表舞台から姿を消すのは間違いないでしょう。

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2022年7月26日火曜日

安倍派「跡目争い」をめぐる「集団指導体制」のトラブル爆弾!「キーマンは菅前総理」の舞台裏―【私の論評】今後の政局で、菅前総理がキーマンとなる可能性がでてきた(゚д゚)!

安倍派「跡目争い」をめぐる「集団指導体制」のトラブル爆弾!「キーマンは菅前総理」の舞台裏


13日にBSフジの番組に出演され言葉をつまらせたた菅前総理

 安倍晋三元総理の死去による、自民党最大派閥である安倍派(清和会)の「跡目争い」に関連し、安倍派の重鎮、森喜朗元総理の体調問題が注目されている。永田町関係者によれば、

「3日に1回の割合で通院しており、面会する人間もかなり制限しているようだ」

 安倍派の次期会長は森氏が指名し、当面の間はバックアップする必要があるとの見方がもっぱらだが、仮に森氏が表舞台に出られないのなら、安倍派の流動化は避けられない。

 安倍派は呼称に「安倍」の名を残し、集団指導体制とすることを決めている。塩野立元総務会長、下村博文前政調会長、世耕弘成参院幹事長、高木毅国対委員長、西村康稔前経済再生担当相、松野博一官房長官、萩生田光一経済産業相──この7人の世話人会で、運営方針を決めていくという。

 だが、派閥の集団指導体制はうまくいったことがない。古くは旧竹下派の七奉行、安倍晋太郎元外相死去後の「安倍派四天王」の中での三塚博元幹事長と加藤六月元政調会長の「三六戦争」などがある。派閥が推す総裁候補は一人ゆえ、最終的には権力闘争が勃発することになる。

 先の7人の中で一歩リードしているのは萩生田氏だと、自民党担当記者は言う。

「下村氏、西村氏、世耕氏はパフォーマンスが好きで、派内からの信用もいまひとつ。松野氏は岸田氏に近い。萩生田氏は、安倍氏が岸田政権で官房長官に推薦したこともありました」と前出の自民党担当記者。

 ここで浮上してくるのが、菅義偉前総理の動向だという。

 岸田文雄総理は安倍氏の国葬を今秋に行うと早々に発表したが、

「これは安倍派や党内保守派と、表面上は対立したくない、という配慮。今後の政権運営は、公明党を利用して独自色を出していく」(前出・永田町関係者)

 そうした中で岸田総理、公明党などと綱引きができる人物は、菅氏以外には見当たらず、

「安倍派は菅氏と連携する動きを模索するしかない」(前出・自民党担当記者)

 菅氏は安倍氏銃撃の直後、現場の奈良に赴いた数少ない政治家だ。三歩先を常に読んでいるのかもしれない。

【私の論評】今後の政局で、菅前総理がキーマンとなる可能性がでてきた(゚д゚)!

上の記事、アサ芸の記事で、なにやら胡散臭く、特に最後の結論の「三歩先を常に読んでいる」の部分は、本当にいやらしい書き方だと思いました。

大手新聞や週刊誌にはこういう部分があるので、あまり掲載したくないとは思いましたが、とはいえ、現状の政局については良くはまとめられていると思うので、敢えて掲載しました。それに、新聞はある程度確定してから記事を書く傾向がありますが、週刊誌はそうではなく、確定する前であっても、掲載することがあります。

それは無責任といえば、無責任なのですが、週刊誌にはそれが許されいるようで、場合によっては、様々な報道の先駆けとなる可能性もあります。この記事がそうなるかどうかは、わかりませんが、いずれにせよ、私も菅前総理が今後の政局のキーマンになる可能性は捨てきれないと思いますので、私の思うところを以下に掲載します。

私は、菅前総理が13日にBSフジで放送されたニュース番組に生出演したのを視聴しました。菅氏は安倍氏が銃撃された日に事件が起こった奈良にすぐに向かったそうです。最期の瞬間には間に合わなかったそうですが「胸だと聞いたものですから万が一のことを考えて…同じ空気を吸いたいという感じでした」「さみしがり屋でもありましたので、そばにいてやりたいっていう…そんな感じ。とにかく行ってみようと…」と語っていました。

この発言の直前に、約 5 秒くらいでしたか、私にはもっと長くも感じられた沈黙がありました。これ、テレビをこの時につけた人なら、「放送事故」ではないかと思うくらいの長い沈黙でした。

きっと、菅前総理の胸中には、安倍元総理との間での様々な思いが交錯していたのでしょう。私は、菅総理は必死で涙をこらえているように見えました。だから、「三歩先を常に読んで」安倍総理が銃撃された時に、奈良に赴いたなどという見方には、到底承服できません。この記事を書いた政治記者は、政治家の世界、野党はいざしらず、自民党の中では義理人情を欠くような人間は大成しないことを知らないようです。

きっと、菅前総理は、本当に「同じ空気を吸いたい」と無我夢中で、奈良に向かったのだと思います。誰だって、盟友があのような形で非業の死を遂げたら、そうなると思います。それが理解できない政治記者など、碌なものではないはないと思います。ただ、残念ながら、大手新聞の政治記者などほとんどがそのようなものです。

ただ、安倍前総理が暗殺された大ショックの後でも、政局は日々動いていくわけで、安倍総理亡き後のことを考えれば、菅前総理が、キーマンになるのも当然のことだと思います。

菅前総理は、2012年12月26日、第2次安倍内閣の発足に伴い、内閣官房長官に任命され7年8ヶ月勉め、そうして、ご存知のように2020年9月16日 から 2021年10月4日まで、総理大臣をつとめらました。首相時代は、安倍氏の路線を継承しました。

総理大臣のときには、安倍路線を継承しつつ、仕事師とも異名を持つ菅前総理は、様々な仕事をされました。これについては、このブログにも取り上げさせていただいたことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
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 この記事の高橋洋一氏の元記事より一部を引用します。
 要するに、菅首相は、国家観を語りながら大きな方向性を論じる理念型政治家ではなく、歴代政権がやれなかった案件を地道にこなす実務的政治家だったのだ。

 菅首相には、確たる国家観がないなどと批判され、外交での対中姿勢を疑問視された。親中とされる二階俊博幹事長がいるからで、そのために国会での対中非難決議ができなかったともいわれる。しかし、国会の決議は、政府の責任ではない。政府としては、日米首脳会談での共同声明に「台湾海峡の平和と安定」を明記したのは国会決議より大きな意味があった。国会決議には政府に対する拘束力はないが、共同声明は政府そのものの方針を示しているからだ。

 しかも、安倍政権でも二階幹事長のクビは切れなかったが、菅首相は二階氏と差し違えた形となった。

 外交姿勢は、韓国に対しても厳しかった。21年6月に英コーンウォールで開催された先進7カ国(G7)首脳会議や7月の東京五輪をとらえて、韓国政府は日韓首脳会談をやりたかったが、菅首相は「国と国との約束が守られない状況で、首脳会談をする環境にはない」と言い切り、誘いに乗らなかった。

 次の政権は、新型コロナを含む国内問題については菅政権が「大掃除」をしてくれたので楽だろう。政権の大きな目標を達成するために政治資源を残務処理に充てないですむ。

 一方、外交では、中国と韓国とどのように向き合うか、なかなか難しいかじ取りが求められるだろう。
この記事で私は、結論部分で以下のように結びました。
自ら短期政権になっても、自民党政権を守った菅総理そうして安倍元総理の思慮深さに学ぶべきです。政権交代に耐えられるような、まともな野党が存在しないし共産党に浸透されつつある立憲民主党が存在する現在、これは非常に重要なことです。現状では、場合によっては短期政権になっても、国民のため、自民党政権存続のためなどに何かを確実に変えるという覚悟も新総裁(注 : 岸田総理のこと)には必要になると思います。

ただ、これはもちろん、安倍元総理が存命であることを前提とした結論です。現在岸田政権は直近の参院選で勝利しましたが、安倍元総理が暗殺されてしまうというとんでもない事態に見舞われるということになりました。

政権運営する岸田総理としては、安倍元総理が亡くなったことは大打撃です。なぜなら、自民党にも様々な議員がいて、保守派もいれば、リベラル派もいます。

安倍元総理がご存命のときには、安倍元総理が保守派をとりまとめ、岸田総理がリベラル派をとりまとめ、安倍元総理と岸田総理が密接にコミュニケーションをはかることによって、自民党の党としての統一をはかることかできました。

ところが、安倍元総理が亡くなってしまったことにより、この党としての統制が難しくなったのです。しかも、自民党内で、岸田総理が属している派閥は第5派閥であり、岸田総理としても、これは、心穏やかではないでしょう。 

であれば、自民党内の最大派閥である安倍派が、実質的に党内を統治すれば、良いという考えも出てくるかもしれませんが、残念ながら、それはできません。

なぜなら、残念ながら、安倍派には総理大臣になり得る人材が育っていません。これについては、安倍氏はこれから育てていこうと考えていたのでしょうが、それはかなわぬことになってしまいました。

高市早苗氏は、安倍政治を引き継ぐことを宣言しましたが、高市市は無派閥です。安倍氏の支えがあったからこそ、高市待望論も高まったのでしょうが、安倍氏の支えがなくなった現在は、残念ながらその芽はなくなったと言わざるを得ません。

高市早苗氏

現在の政局はまさに八方塞がりの状況です。だかこそ、菅元総理が注目されるようになったのです。

自民党内で安倍元総理が担っていた、安倍派のとりまとめと、岸田政権がリベラル派に完全に振り切れてしまい、安倍氏が敷いた路線を逸脱することないように牽制するという役割を担っていたからこそ、自民党政権は安定し、参院選でも勝利を収めることができました。

しかし安倍氏暗殺により事情は大きく変わってきました。

安倍の死去で会長不在となった安倍派(清和会)は今後、幹部7人による集団指導体制をとるといいます。派閥というのは派の領袖 を総理に押し上げるために存在します。そうでなければ派のトップが政治的実力者で金集めが巧みな場合にかぎって機能します。 

集団指導とはあくまでも過渡的な措置です。 突然、派のトップが暗殺され弥縫策 として集団指導体制を敷いても、中長期的には必ず破綻することはわかりきっています。

そもそも清和会は、かつて森氏が「わが派は分裂と脱藩の歴史だ」と認めたように、分裂癖を持った派閥です。清和会内部からは既に、分裂もありうると心配する声も上がっています。現に「清和殿の7人」をめぐり、西村康捻・前経済再生担当大臣が派閥トップに意欲を示しているとか、世耕弘成・参議院幹事長が衆議院に鞍替えして総理の座を狙おうとしているなど、流言飛語が飛び交っている実情があります。

ただ、そのようなことをしても、自民党内での安倍派の力が弱まるだけです。そこに、長い間安倍元総理の懐刀でもあり、総理経験者でもある菅元総理が安倍派に属することになれば、事情が変わってきます。

あるいは、そこまでいかなくても、菅氏と安倍派が近い関係を築き、菅氏が安倍派の若手を育て、また党内の様々な軋轢から、安倍派議員を守り、そうして何よりも、岸田政権がリベラル派に完全に振り切れてしまい、安倍氏が敷いた路線を逸脱することないように牽制するという役割を担うことになれば、自民党の党としての統制も保たれることになります。

菅氏は先にもあげた、13日のBSテレビ番組で、かねて検討していた勉強会の開催を当面見送る考えを説明。安倍氏の死去を念頭に「こういう状況になったので考えるところがある」と述べました。 

勉強会は縦割り行政の打破をテーマとし、二階派や森山派など「非主流派」の議員の参加が見込まれ、「菅氏の影響力を借りて対抗軸を示す」(二階派若手)との声が出ていました。 

安倍氏の死去を受けて党内が動揺する中、菅氏は政局的な動きを避けたとみられます。ただ、首相も菅氏の影響力は無視できないです。参院選で菅氏が支援した神奈川選挙区の三原じゅん子氏や東京選挙区の朝日健太郎氏などが当選を果たし、力を保持し続けていることを印象づけました。 

首相は内閣改造・党役員人事で「党の結束」を演出するため、菅氏を副総理などで処遇するとの臆測も出ています。

国語の政局は、どのようになるかはわかりませんが、菅前総理を抜きに語ることはできなくなると思います。

今後、自民党の議員として力があり、さらに安倍路線を引き継ぐことができる人物は、菅前総理をおいていないと思います。

私としては、菅元総理が自民党党内派閥安倍派と近い関係を構築し、分裂を防ぎ、安倍派議員を庇護し、育て、育ち切る前には、場合によっては、総理大臣に返り咲き、安倍路線を確実に踏襲していただきたいです。できたら、安倍氏の遺志を引き継ぐ高市氏の庇護もお願いしたいです。

清和会が分裂したりすれば、鵜の目鷹の目で自分に有利な風を巻きおこそうと、いつも狙っている小池百合子や、小沢一郎などのゾンビ勢力が、また性懲りもなく蠢き出すと思います。もう、うんざりです。安倍派の方々や、菅元総理や岸田派の方々も、そのようなことになって奴らにつけこまれようになることだけは、避けていただきたいものです。

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2022年7月25日月曜日

安倍晋三元首相の国際的評価から学ぶべきこと―【私の論評】将来世代が迷い無く歩けるように、美しい日本を愛する心を大人のわたしたちも引き継いでいこう(T_T)

安倍晋三元首相の国際的評価から学ぶべきこと

岡崎研究所

 7月9日付の英フィナンシャル・タイムズ紙(FT)が、社説で、安倍晋三は日本を再び世界の舞台に押し上げ、長期政権の総理は経済と外交において並外れたレガシーを残したと称賛している。


 このFTの社説は、
①安倍は長年の経済、外交の停滞から日本を国際舞台に引き戻した。
②そのレガシーは政策にあり、安倍の名前は常に「アベノミクス」との関連で記憶されるだろう。
③ナショナリスト的な、時には修正主義的な歴史の理解は特に韓国との間で問題となった。
④自己主張を強める中国への懸念と相俟って、安倍の安保政策は「先見の明があった」。
⑤安倍の名前は日本を超えて世界に生き続けるだろう。
と述べる。社説は、アベノミクスを前向きに評価する。道半ばでコロナ禍に遭遇し、「安倍の大胆な政策をもっと続ける必要があったが、それが齎(もたら)した成果は日本の利益になった」という。

 安倍晋三論の議論は他でも続いている。7月8日付の米ウォール・ストリート・ジャーナル紙(WSJ)の社説は、「戦後の日本の総理で、安倍ほど重要な指導者はそういない」という。最大の賛辞だろう。7月11日付のワシントン・ポスト紙(WP)社説は、「安倍は余りに早く逝ってしまった」と書く。これ程まで世界から評価される総理は少なくとも中曽根総理以来であろう。

 世界から寄せられる弔意を見れば、安倍元総理が如何に大きな評価と信頼を得ていたかが分かる。弔意を表した世界の指導者達のうち注目したのは、バイデン米国大統領、トランプ前米国大統領、インドのモディ首相、マクロン仏大統領、台湾の蔡英文総統、韓国の尹錫悦大統領などである。ウクライナ戦争で日本と対立するプーチンも弔電を送った。

 主要20カ国・地域(G20)外相会議に出席中の中国の王毅は元総理の容態を気遣い、その後中国外務省は「安倍元首相は生前、日中関係改善と発展のために貢献した」と哀悼の意を表した。99歳のキッシンジャーもニューヨーク総領事館に弔問し、その際「安倍元総理は日本を米国にとって掛替えのない同盟国に、そしてアジアの体制の不可欠な柱に育て上げた」と述べた。

 バイデンは3日間の半旗掲揚を命じるとともに、G20会議でインドネシアにいたブリンケン国務長官を弔意表明のために急遽日本に派遣した。7月15日には、マレーシアのマハティール元首相が、安倍元総理の自宅を弔問した。

 安倍外交は世界に強い印象を残した。日米同盟の強化、自由で開かれたインド太平洋とクワッド(日米豪印)の立ち上げ、環太平洋連携に関する包括的および先進的な協定(TPP11)の発効、警戒と現実主義の対中姿勢等が特筆される。

 安倍外交には、強い世界観と戦略性があった。更に日本外交に新たな力とスタイルを吹き込んだ。恐らく元総理の最大の心残りは、対露関係であったのではないか。責任はプーチンに有るのだが、ウクライナ戦争により一層見通しがつかなくなった。

日本外交の損失を最小限にしなければならない

 安倍元総理の死は、日本外交にとり少なくとも一時的には大きな損失になろうが、その影響を最小化せねばならない。7月11日、岸田文雄首相は安倍元首相の「思い」を受け継いで行く旨述べている。日本外交を引き続き力強く、積極的に推進していくこが重要だ。特に来年は主要7カ国(G7)議長国になり、重責を担うことになる。

 このように安倍元首相は、最近国際社会で最も評価、信頼される日本の総理だった。それは日本にとり幸運なことだった。一つ気になることがあるとすれば、内外評価の乖離である。この乖離により、日本は何か重要な機会を逸しているような感がする。

 世界は現実的に評価する。われわれももう少し有りのままに指導者や政策を見るべきではないだろうか。更に自己や自国にもっと楽観的になるべきではないか。過度の悲観主義や完璧主義は良いことではない。

【私の論評】将来世代が迷い無く歩けるように、美しい日本を愛する心を大人のわたしたちも引き継いでいこう😭

安倍晋三氏の国会での演説で一番記憶に残っているのは、以下施政方針演説の動画での言葉です。

これは、全くそのとおりです。安倍晋三氏がこの話をしたのは、  2015年の施政方針演説においてでした。

その後安倍晋三氏はこの言葉通りに、安保法制の改正に取り組み、インド太平洋戦略を推進し、世界が安定し、日米が近年最も輝いていた時代が、トランプ・安倍政権時であったと思います。特に、日本は「失われた時代」が続き、多くの国民が意気消沈していましたが、安倍総理が登場し、雇用を劇的に改善させ、世界での日本のプレゼンスを高め、日本は輝きを放っていました。

インドやフィリピンを訪問した安倍総理が、現地で大歓迎を受け、その当時も漠然とそ思っていましたが、今になって振り返るとまさに、そうだったと思います。

これは、安倍総理がいなければ、なかったことだと思います。日本を輝かせてくれた、安倍総理に感謝です。

安倍晋三氏の御母堂の94歳の誕生日を祝う安倍ファミリー 午後7:54 · 2022年6月14日

安倍総理があんな形で亡くなられてしまい、反対派は亡くなってなお安倍総理を批判し侮辱し続けています。安倍総理が兇弾に斃れたあの日から、安倍総理について思わない日はありません。 同時に、いわれなき批判を浴びせ続けた朝日新聞をはじめとする無責任なメディアに腹が立ちます。

安倍総理のご逝去直後から各国の首脳が日本大使館に足を運んで記帳して下さる様子が報じられました。訪日して弔問したいという問い合わせが多いと聞いており、内閣が弔問の場を用意することは必要であると考えます。

安倍総理の国葬は、正式には『国葬儀』です。あくまでも、国が催行する葬いの儀式であり、無宗教で行われる典礼です。既に宗教上の葬儀告別式は家族葬として、浄土宗の仕来りにより終わっています。

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"安倍総理国葬に対する『国葬上めろ』『あべ正治』など、小学生レベルの漢字が書けない左翼の皆さん、義務教育を日本国で受けていないか、IQが著しく低い、あるいはその両方疑い
周囲も「これおかしいよ」と指摘し修正しないのだから参加者全員そのレベルってこと"と、くつざわ元豊島区議が語っておられました。確かに日本人なら絶対書かないようなプラカードが散見されます。

安倍総理の国葬が営まれると世界各国の要人が東京に集まり、安倍元総理の偉業が再確認され世界中に広まることになります。

それと共に中共の包囲網が再確認されることになります。これに一番困るのが中共の習近平です。

そして我が国で、大反対しているのがアレなメディア野党とその仲間達です。もう、最初からお里が知れているのです。

これは、本当に悲しいことですが、安倍総理は死して永遠に語り継がれる伝説となりました。献花台に並ぶ多数の若者や子どもたちを見て、私は彼らが日本を支える保守の流れを作ると確信しました。将来世代が迷い無く歩けるように、美しい日本を愛する心を大人のわたしたちも引き継いでいこうではありませんか。

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2022年7月24日日曜日

[スキャナー]ロシア産業界にじわり打撃、制裁で機械も原材料も不足…「一番怖いのは機械の故障」―【私の論評】対露経済制裁は確実に効いており、3年後くらいにはソ連崩壊時並になるのは間違いない(゚д゚)!

[スキャナー]ロシア産業界にじわり打撃、制裁で機械も原材料も不足…「一番怖いのは機械の故障」

ロシア銀行大手ズベルバンクから預金を引き出すために列をつくる人々=2月25日、チェコ・プラハ

 ロシアがウクライナ侵略を始めてから24日で5か月となる。プーチン露大統領は、侵略に伴って米欧や日本が科してきた対露制裁を、ロシア経済を発展させる機会にすると強弁してきたものの、産業界の基礎体力はじわじわと奪われている。
  「一番怖いのは機械の故障だ。ここの製本機はドイツ製で、企業が撤退したので保守サービスが受けられない。いざとなったら自力での修理も考えている」

 モスクワ北東部で印刷工場を経営するアルチョム・ジュジャコフさん(51)は深いため息をついた。工場にある印刷機器はすべて外国製だ。今年4月に欧州連合(EU)が発動した、精密機器の輸出を禁じる制裁の直撃を受けた。

 ジュジャコフさんの工場では、ほぼ全量を欧州製に頼っていたインクも輸入できなくなった。侵略前からロシアでは製造していなかった厚手の上質紙も手に入らない。それ以外の紙やインクは中国製などで代替しているが、調達コストは2割ほど上がり、最近はロシア製の紙も品薄だという。

対応に奇策次々

 プーチン政権は制裁の打撃を緩和し、自国経済の機能を維持するため、国際ルールも無視して様々な奇策を繰り出している。

 最も制裁の影響が顕著だとされる自動車産業の「生産を維持し、雇用を守る」(副首相)ため、政府は5月、新車を認可する際の安全基準などを引き下げた。

 ロシアの自動車大手アフトバスが6月に発表した「新型モデル」は、ブレーキ時にタイヤがロックしないようにするアンチロック・ブレーキ・システム(ABS)やエアバッグといった装備が付いておらず、排ガス性能も最新の基準には適合しない。アフトバスを傘下に置いていたフランスのルノーが保有株を売却して撤退したため、いずれも自前の技術では調達できなくなったのだ。

【随時更新】ロシア軍、ウクライナを侵略…最新ニュース・速報まとめ

 アフトバスは、ソ連時代に生産していた車種の復刻版も相次いで発表し始めた。ロシアの自動車業界は、急速に懐古色が強まっている。


 露政府は3月には、対露制裁で輸入が禁止された品目について、商標権者の許可なく輸入して流通させても合法とみなす「並行輸入」制度を導入した。産業貿易省が、スマートフォンや自動車、精密機器から医療品まで広範なリストを発表しており、国が率先して違法行為を推奨している格好だ。

 外国のリース会社から借りている航空機を返却せず、所有権をロシアの航空会社に移すことを認める法律も発効している。

物流混乱

 制裁対象の品目以外でも原材料の調達は課題になっている。モスクワでクラフトビールの醸造会社を経営するアレクサンドル・グロモフさん(32)は、欧州の仲介業者から輸入しているモルト(麦芽)やホップの供給が途絶える事態を心配し、精神安定剤を服用している。侵略の影響で物流が混乱したため、国境の税関も大混雑しており、原料を運ぶトラックの通関に1週間以上かかることもあるという。

 人材流出も加速している模様だ。米紙ニューヨーク・タイムズは、侵略開始から1か月で5万~7万人のIT技術者がロシアから出国したとの推計を伝えた。周辺国などで人材の囲い込みが起きており、侵略は長期的にもロシア経済に深い傷を残しそうだ。

【私の論評】対露経済制裁は確実に効いており、3年後くらいにはソ連崩壊時並になるのは間違いない(゚д゚)!

ロシア制裁については、すぐには効果がないとか、抜け穴があるので効かないなどの意見もありますが、どの意見も明確な定量的な裏付けがないままになさてれいます。

ただ、わかっていることもあります。ロシア経済発展省は24日までに、今年上半期に破産宣告あるいは債務返済のための資産整理を申告した同国国民の人数は前年同期比で37.8%増を記録したとの報告書を公表しました。

これらロシア国民の総数は12万1313人で、破産宣告が最多の地域は首都モスクワの6000人以上でしたた。首都近辺の地域がこれに続き5600人以上となりました。

同省当局者は今年上半期の数字に触れ、破産に見舞われた国民の人数は既に相当な高水準に達していると認めました。

報告書によると、個人の破産は2019年には6万8980人だったが、21年には19万2833人とほぼ3倍に膨れ上がっていました。

個人的な破産宣告の件数とロシアによるウクライナ侵攻との明白な因果関係を示す材料はないが、ロシアは侵攻以降、多数の国際的企業が同国市場から撤収するなどの影響を受けています。ロシアは日米欧やほかの諸国から資産凍結などの制裁も科されました。これは、やはり制裁の強化によるものとみるべきでしょう。

さらに、米ソ冷戦も参考になります。第二次世界大戦の終結直前の1945年2月から1989年12月までの44年間続き、連合国としては味方同士であったアメリカ合衆国とソビエト連邦が軍事力で直接戦う戦争は起こらなかったので、軍事力(火力)で直接戦う「熱戦」「熱い戦争」に対して、「冷戦」「冷たい戦争」と呼ばれました。

ソビエト連邦の崩壊(1988年 - 1991年)とは、ソビエト連邦(USSR)が内部分裂を起こし、主権国家としての存続を断念した出来事です。

冷戦が始まってから、ソビエトが崩壊するまでは、 45年もかっているのです。ソ連は崩壊しましたが、新たにできたロシア連邦が、ソ連の軍事技術、宇宙開発技術、核兵器などを継承しました。

ただ、経済は著しく低迷しており、その窮状は、想像を超えており、当時のロシア連邦空軍は燃料すら十分ではなく、国内のパトロールさえままならぬ状態で、見るに見かねた米空軍がロシア連邦空軍がパトロールできるように燃料などの支援を行ったとの記録があります。

このような状態にあってもロシア連邦は、核兵器や軍事技術を継承し維持したのてす。1991年ウクライナは独立しましたが、ウクライナはこのとき世界第三位の核保有国となりましたが、核兵器を廃棄することを決めました。もし、ウクライナが核兵器を廃棄しなければ、今日ロシアに侵攻されることはなかったかもしれません。

米シンクタンク、ピーターソン国際経済研究所(PIIE)は、1914年の第1次世界大戦勃発から約100年間の経済制裁、204ケースを分析した。対象国の政策変更を実現させたか、制裁の効果はどの程度あったか、などを1~16点で評価しました。その結果、制裁が「成功」とされる9点以上だったケースは、34%でした。

ジェフリー・ショット氏

分析を担ったPIIEのジェフリー・ショット氏(73)は、「中でも軍事行動に対する制裁の成功ケースは約20%にとどまった。いまのロシアに対する輸出制裁は武器を製造できなくし、徐々に兵力を弱めるだろうが、制裁でただちに軍事行動を止めることはできない」と説明しています。

だからといって、「さらに厳しい制裁を科して対象国を追い込むことは、激しい対抗行動を引き起こす」として、ショット氏は太平洋戦争前の日本に対する米国の制裁を例にあげています。1941年夏に米国が打ち出した石油輸出禁止によって追い込まれた日本は、真珠湾を攻撃し対米開戦に踏み切りました。「石油禁輸が日本に多大な圧力となり、不幸な結果を招いた」

ショット氏によると、最古の経済制裁は紀元前432年の古代アテネによる経済封鎖にさかのぼります。それがスパルタとの「ペロポネソス戦争」につながったといい、制裁が戦争の理由の一つになるのは昔から変わらないようです。

制裁が失敗に終わる原因について、ショット氏は「抜け穴」となる支援国の存在をあげる。「21世紀に入りグローバル化が加速し、モノやサービスを供給するさまざまな経路ができたため、制裁対象国を支援する国がでてくる」。実際、制裁を科せられたロシアも中国やインドに原油などを輸出することで、経済が下支えされています。

ショット氏は、ロシアの軍事行動に武力ではなく経済制裁で対抗するのは「やむをえない」といいますが、「歴史からの教訓の一つは、制裁は始めるよりやめるのが難しいことだ」と長期化を予測しています。

制裁には別の意味合いもあります。「制裁側が同盟関係を広げて、包囲網をつくることが重要だ。一致して制裁を科すことは、ロシアに対してだけでなく、他の国が将来とる可能性のある行動、たとえば中国が台湾に対して軍事行動をとることを牽する効果もある」
としています。

ただ、以上は具体的数値に基づくものですが、実際にロシア経済が戦争継続が不可能になるまで、どのくらいの年月を必要とするかの答えにはなっていません。

それに対する答え出した人もいます。それについては、このブログにも掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
対露経済制裁は効果出ている 3年続けばソ連崩壊級の打撃も…短期的な戦争遂行不能は期待薄―【私の論評】制裁でロシア経済がソ連崩壊時並みになるのは3年後だが、経済的尺度からいえばこれは長い期間ではない(゚д゚)!
販売できる商品が何もない魚介類専門店で店員に詰め寄る市民たち(1990年11月22日、モスクワ)

この記事の元記事で、高橋洋一氏はロシア経済について具体的に数字を出しながら推測しています。その部分を以下に引用します。
 5月13日の英エコノミスト誌によれば、ウクライナ侵攻以降、ロシアの輸入は44%減少、輸出は8%減少した。輸出の減少が抑えられているのは、エネルギー価格の上昇にも支えられているという。

 これらからロシアの国内総生産(GDP)の動きを推計すると、年率10%程度の減少になるだろう。これは、リーマン・ショック並みの影響だといえ、これが3年間程度継続すると、ソ連邦崩壊並みになる。

ロシアが公表するGDPなどの資料は、昔から信用できないことが多く、だから髙橋洋一氏は輸入、輸出に着目したのだと思います。GDPに関しては、ロシア政府が公表するものですが、輸出入に関しては、相手国があることですし、あまりごまかすことはできません。

GDPと、輸出入に関してはある程度の相関関係があります。経済が良くなると、輸入が増える傾向にあります。輸出は、GDPに直接影響を与えます。これらから推測すると、ロシアのGDPの事実額までは推定できないかもしれませんが、GDP伸び率などは、当たらずとも遠からずの予測はできます。

これらの推測から、現状の制裁が3年続けば、ソ連邦崩壊時並の経済状況になると高橋洋一氏は予測しているのです。

経済制裁だけで、こうなるのですから、ロシアのへの経済制裁は相当効いているといえます。冷戦が始まってから、ソ連邦が崩壊するまでには45年もかかっていることを考えると、3年でこれほどの成果を出せる現状の経済制裁はかなり有効だということがいえると思います。

第二次世界大戦後、ソビエト連邦のGDPは米国についで世界第二位だったこともあります。その後日本に追いつかれて、世界第三位に落ちましたが、その後は冷戦を経て、ソ連が崩壊し、ロシア連邦がその後を引き継いだのですが、経済は落ちる一方でしたが、プーチンになってからエネルギー戦略でいっとき多少持ち直したものの、また落ち始め、現在のGDPは韓国を若干下回るまでに落ち込んでいます。

そうして、韓国の人口は、5千万人であり、ロシアの人口は1億4千万人ですから、一人あたりのGDPではロシアは1万ドル(日本円で100万円くらい)に過ぎず、これは途上国並です。一人あたりのGDPは、一人あたりの年収に近似できますから、いかに低いかが理解できます。

もともとの水準低いからこそ、3年間現在の水準の経済制裁が続けば、ソ連崩壊並になるのでしょう。

これを期間が長いとか、効き目がないという人は、一体何をを標準としているのか、聞きたいです。

先にあげた、ブログ記事にも述べましたが、もし戦争がエスカレートして、NATOとロシアとの直接戦争になってしまったとしたら、ロシアは核兵器数だけは世界一ですから、これは大変なことになります。

通常兵力では、現在のロシア連邦軍は米国を抜いたNATO軍よりも遥かに脆弱であり、まともに対峙することもできません。

核兵器についても、数は多いものの、旧式なものが多く、新型を開発しているとはいっても実数は多くはないです。さらに、防空能力でも米EUにはとても及びません。核兵器を用いても何をしてもロシアには全く勝ち目はありません。

ただ、両陣営が本格的に武力で対立して、核ミサイルを打ち合えば、世界は第二次世界大戦よりもはるかに甚大な被害を被ることになります。そこから、復興するには数十年の年月を要することでしょう。

これと、経済制裁の3年とどちらが良いかということになれば、経済制裁のほうが良いに決まっています。

ただ、これは思ったよりは長いと感じてしまうのかもしれません。それに、たしかに直接被害を被っているいるウクライナの人にとっては、大変なことです。

経済制裁でロシアの国力を削ぎ、軍事的にも弱体化させ、3年間でロシア連邦の戦力を削いで戦争継続を不能にするには、現在はない新たな手立てが必要だと思います。

現状では、NATOはウクライナ軍がロシア領内に侵攻することがないように、兵器も制限をつけているようですが、これはそのままでも良いのですが、ウクライナの都市などが、ロシア軍のミサイルによって徹底的に破壊されている状況にあります。

この状況を変えるために、防御型の兵器を強化すべきです。特に、ロシアからのミサイルを迎え撃つ兵器が必要です。たとえば、イスラエルのアイアンフィストのようなミサイル兵器です。


この装置は、RADAエレクトリック・インダストリーズが開発した固定式のレーダーセンサー、およびエルビット・システムズ(英語版)の子会社であるエリスラ(英語版)社が開発した付属の受動型赤外線検知器により、飛来する脅威を探知します。脅威が差し迫っている際には、炸裂する投射迎撃体がその前方へ撃ち出されます。

迎撃体は脅威となるものの非常に近くで炸裂し、破壊もしくはこれを逸らして、弾頭を起爆させることなしに安定を失わせます。このためには炸裂の爆風効果のみが用いられます。迎撃体のケーシングは可燃性の素材で製造されており、そこで炸裂によって生成される破片は存在せず、副次的な損害を最低限にする助けとなっています。

このような防空システムは様々なものがあります。有効なものを配備して、ロシアからのミサイル攻撃による被害をなるべく減らしつつ、経済政策を継続するという方式が良いと思います。

そうすれば、ロシアからのミサイル攻撃を受けつつも、ウクライナの復興ができるでしょうし、現在国外に退去していた人たちが、ウクライナに戻ることも増えているといいます。防御兵器が充実すれば、これも加速すると思います。

いずれにしても、ロシアへの経済制裁が効いていないということはありません。そうして、私自身は3年間という期間は長いとは思いません。


近づきつつある民主主義国ウクライナのEU加盟―【私の論評】プーチンのウクライナ侵攻は、結局ウクライナの台頭を招くことに(゚д゚)!



2022年7月23日土曜日

防衛費増額と財務省の思惑 増税阻止した安倍氏の戦略 問われるトップの政治判断―【私の論評】原発稼働のまやかしをする岸田総理は全く「覚醒」しておらず、適切な政治判断は望み薄か(゚д゚)!

日本の解き方


高橋洋一

5月23日来日したバイデン大統領と会談し岸田首相は防衛費の増額を確約したが・・・・

 防衛費の増額をめぐって、岸田文雄首相は「内容と予算と財源で考えないといけない」と述べている。今後、増税が視野に入っているとの懸念もある。

 財務省の増税ロジックは単純だ。国債残高があると将来世代には償還・利払い負担が生じる。将来世代の負担をなくすために、現役世代で負担すべきだ―というものだ。

 そこで、新型コロナ対策では、安倍晋三元首相の言う「政府と日銀との連合軍」となった。つまり、政府は国債を市中金融機関向けに発行するが、最終的には日銀が買いオペで買い受ける。結果として、コロナ対策で発行された国債は日銀が保有する。日銀が保有する国債について、現行制度では償還・利払い負担は発生しない。これが、安倍氏の「日銀は政府子会社」発言の趣旨だ。

 財務省は、この発言に反応し、鈴木俊一財務相に「日銀は商法での子会社でない」と発言させ、マスコミは「安倍元首相の発言を否定」と報じた。

 安倍氏は、日銀保有国債について償還・利払い負担がないことの比喩として「子会社」と発言しただけだ。鈴木財務相は意味のないことを言っただけで、マスコミが意図的に曲解し報道した。あの騒ぎの時に安倍氏から電話があったが、このあたりの事情もよく理解していた。

 いずれにしても、「政府と日銀の連合軍」は財務省にとって難攻不落だ。

 安倍氏が、防衛費について「防衛国債」に言及したことは、財務省にとって悪夢だっただろう。また、コロナ対策と同様な手法が使われる可能性があるからだ。

 コロナ対策では100兆円だったが、その金額は、当時の予想国内総生産(GDP)を考慮し、過度なインフレ率にならないように設定された。

 防衛国債は数兆円と少額なので、インフレはそれほど心配ない。むしろ経済成長に見合った通貨増の範囲内にできるだろう。

 ただし、財務省が簡単に引き下がるとも思えない。各省の会計課長はその省の予算を握るので、エース級のプロパー職員が普通だ。だが、これまで防衛省の会計課長は財務省からの出向者だ。防衛省は財務省の「植民地」ともいわれるゆえんだ。財務省は出向者を送って防衛費の伸びを抑えてきたので、今回もさまざまな手を考えるだろう。

 とりあえず国防のあり方は国民的に重要なので、特別会計の設置などを言い出すかもしれない。これには国内左派勢力が賛同するはずだ。その中で、つなぎ国債を発行し、その償還には「増税」がふさわしいとか言いかねない。

 国防費は、他国との関係が重要なので、国際関係の中で判断するしかない。この意味で財務大臣の出番ではなく、トップの政治判断がキモだ。特に、今のような「有事」に準じる事態ではそうだ。

 有事では財務大臣を外して政治判断する国も少なくない。果たして岸田政権で、有事の対応なのか平時の対応なのか、安倍氏が望んだような適切な政治判断ができるかどうか。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】原発稼働のまやかしをする岸田総理は全く「覚醒」しておらず、適切な政治判断は望み薄か(゚д゚)!

上の記事にもある通り、安倍政権においてコロナ感染が顕著になり、二次わたって補正予算を組み、R菅政権においても、補正予算を組みました。これらを合計した予算が、真水の100兆円だったのです。

そうして、当時の安倍総理が補正予算の調達に用いたのが、安倍氏の言葉でいうところの「日銀政府」連合軍というわけです。政府が国債を発行して、日銀がそれを買い取るという方式です。

防衛費の増額など、数兆円にすぎないわけですから、髙橋洋一氏が上の記事でも語っているように、「日銀政府」連合軍による調達をしても、何も問題がないどころか、まだデフレ気味の日本ではそうしたほうが良いのです。

日本では、需給ギャプが30兆円程度もあるため、防衛費もあわせて30兆円ほどの補正予算を組むべきです。そうして、防衛費は自衛隊そのものや、装備品の調達先などの多くは、日本国内の企業にすべきでしょう。

最近、原発の稼働を決め、安倍元総理の国葬も決めたとして、岸田総理は「覚醒」したという論調があります。しかし、これは本当でしょうか。


国葬についてとやかくはいいずらいところがありますが、駐日米大使が安倍家に弔問に訪れるとか、わざわざ自民党本部にまで訪れたとか、ブリンケン国務大臣が技わさ弔問のために日本を訪れるなどのこともあり、これは米国が日本に対して安倍路線を踏襲してほしいと考えていることのあらわれであると解釈すべきと思います。

さらには、各国のプーチン、習近平までを含む首脳が弔意を示したりで、これは国葬にしなけば、日本の世界における存在感がなくなるでしょうから、国葬をせざるを得ないと判断したのでしょう。これは岸田氏以外の誰が総理になっていたとしても、そうしたことでしょう。

もし、国葬にしないという決定をした場合、国内の保守派からはかなり批判され、海外の首脳達からは奇異の目でみられたことでしよう。

そうして、岸田総理は原発再稼働を決めてなどいません。ただ、既存スケジュールを読みあげただけです。ただし、国葬とこのことを一緒に発表したので、このことは多くの人にとって、なかなか指摘しずらかったようです。それについては、以下の動画で高橋洋一氏が語っています。


髙橋洋一が指摘しにくかったであろうことを、私が下に指摘しておきます。

岸田首相の14日の会見では、原発再稼働が強調されました。これは、制度上では首相にも経産大臣にもできない原子力規制政策への政治的介入により再稼働をさせるということではありません。

事前に想定される可能な原発9基の再稼働を急ぐという意味です。「経済産業大臣に再稼働を指示する」という言葉で、勘違いが広がってしまったのです。つまり首相は嘘をついていないのですが、「ごまかし」と批判されかねない広報をしているのです。

首相の秘書官には、元経済産業省事務次官の嶋田隆氏が就任しています。嶋田氏は「策士」と評される人です。増税派であり、政権の墓掘り人という異名を持った与謝野馨氏に見いだされ、以降長い「秘書官人生」を送ってきた嶋田氏には、経産省主導で再建が進められた東京電力改革など“失策”と呼ぶべきものも少なくないです。政務と官僚の危うい関係に注目が集まっています。

嶋田氏は、首相に原子力再稼働の権限がないことは十分承知しているはずで、このずるい発表の「振り付け」をした可能性があります。本来はこれを野党やメディアが批判をするべきですが、「安倍国葬」に関心が向くというか、国葬と原発稼働を一緒に公表してしまったせいか、現在に至るまであまり批判は少ないです。

嶋田隆氏

ただ、マスコミや野党、識者は平然と「国葬」に反対することまで語っているわけですから、原発稼働のまやかしについて批判しないのはおかしいと思います。

電力需給ひっ迫問題に岸田首相が政治課題として真面目に向き合おうとしているのは事実でしょうが、言葉でごまかすかのような態度は批判されてしかるべきでしょう。言葉を操っても、現実の問題として、電力の供給は増えません。

それよりも、非合理な原子力規制政策の見直し、本当に原子力を活用し電力危機を回避する実際に効果のある政策を求めたいです。言葉遊びをする政府に、重要なエネルギー問題を任せて大丈夫でしょうか。

このようなことをする岸田総理です。とても「覚醒」したとは思えず、防衛費についても、安倍氏が望んだような適切な政治判断ができるかどうかは、本当に疑わしいです。

岸田総理には、安倍路線を継承しないことによって、みずから墓穴を掘らないようにしていただきたいものです。安倍路線を継承しなければ、経済面で雇用が劇的に悪化し、日本はまたデフレ・スパイラルの底に沈みこむことなります。

外交面では、せっかく安倍元総理が築き上げてきた世界での日本の大きな影響力を失うことになります。安保面では、世界から見放されることになります。親中路線を貫けば、いずれ中国を頼らないと何もできなくなり、下手をすると中国の実質的な属国になりかねません。ただ、日本人はそれほど馬鹿ではないので、こうした前兆が見えた時点で、岸田政権は崩壊します。

岸田政権は長期安定政権を目指すなら、安倍路線を継承すべきです。まずは、それで走ってみて、数年してからでも岸田カラーを出しても遅くはないと思います。そもそも、政治の継続性という観点からも、現状では安倍路線を引き継ぐべきです。

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2022年7月22日金曜日

黒海に面したルーマニアが潜水艦部隊を再建、フランスから潜水艦を調達か―【私の論評】ロシア軍がウクライナ南部で優位性を発揮できるのは潜水艦によるものか(゚д゚)!

黒海に面したルーマニアが潜水艦部隊を再建、フランスから潜水艦を調達か

黒海に面したルーマニアが潜水艦部隊の再建に動き出しており、スコルペヌ型潜水艦を調達するためフランスに接触していると報じられている。

参考:Romania’s Submarine Ambitions: Which Impact For The Black Sea Region?

ロシアが聖域と考えている黒海はNATO加盟国やウクライナの潜水艦が跋扈する海域になるのだろう

黒海に面したルーマニア海軍は1985年に導入したキロ級潜水艦「デルフィヌル」を現在も保持しているが、資金不足のため1995年以降は運用を停止して保管状態にあり、30年以上も港で係留されているデルフィヌルを再び動かすことも潜水艦を運用する人員も失われてしまった。

出典:Romanian Ministery of Defence/CC BY-SA 3.0 ルーマニア海軍の潜水艦デルフィヌル

しかしルーマニアのドゥンク国防相は現地メディアの取材を受けた際「軍の調達計画にはフランスのスコルペヌ型潜水艦やヘリコプターが含まれており、この調達に関してフランスの国防相と基本合意書(LOI)を交わした。我々は計画の実現に向けて国内手続きを開始している」と明かし、黒海にNATO加盟国の潜水艦が増える可能性に注目が集まっている。

因みに黒海に面したブルガリアもクリミア併合やウクライナ東部紛争を受けて潜水艦部隊の再建を決意、2021年に中古潜水艦を2隻手に入れるため交渉が開始されたと報じられていたが、ウクライナ侵攻リスクの高まりを受けて調達交渉がスピードアップしているらしい。

交渉相手は恐らくドイツで10年前に退役した206型潜水艦(稼働可能なものが残っているのか不明だが次期潜水艦/212CDは2032年頃に引き渡し予定なので212A型潜水艦は当面退役する予定がない)を引っ張ってくることをブルガリア海軍は考えている可能性が高く、ウクライナも今回の戦いが終結した先を見越してドイツと潜水艦導入に関する話し合いをスタートさせており、ロシアが聖域と考えている黒海はNATO加盟国やウクライナの潜水艦が跋扈する海域になる可能性がある。

【私の論評】ロシア軍がウクライナ南部で優位性を発揮できるのは潜水艦によるものか(゚д゚)!

なぜルーマニアが潜水艦を再配備しようとしているのか、以下の地図を見れば一目瞭然です。黒海にはルーマニアが接しているとともに、ロシアも接しているのです。

ですから、陸や空からの攻撃だけではなく、海からの攻撃に備える必要があるのです。それは、ルーマニアだけではなく、周辺諸国のブルガリア、モルドバ、トルコ、ウクライナも同じことです。


さて、ウクライナ関係ではほとんど報道されないロシア黒海艦隊の潜水艦ですが、実は、ウクライナ沿岸の対地攻撃と海上封鎖の主役を担っている可能性があります。

2022年2月下旬のロシア侵攻以来、ウクライナ軍は対艦巡航ミサイル「ネプチューン」や攻撃型ドローンで、ロシア黒海艦隊の艦艇に相当な被害を与えてきました。それでも、ロシアによる海上封鎖は解けず、大半を海運に頼るウクライナの穀物輸出の停滞は世界に影響を与えています。

もちろん、黒海艦隊の水上艦艇は対艦ミサイルの射程内まで近づけません。しかしロシア側には、対艦ミサイルでは撃退できない「改キロ級潜水艦」という切り札があります。

報道によると黒海における戦闘は、ミサイル巡洋艦「モスクワ」や、大型揚陸艦「オルスク」の沈没などが大きく取り上げられたこともあり、ニュースなどからはウクライナ軍が戦果を挙げているように見えます。しかし、潜水艦についてはあまりクローズアップされていません。

ロシア黒海艦隊にはキロ級1隻と改キロ級6隻、計7隻の潜水艦が配備されています。キロ級はNATO(北大西洋条約機構)の呼称で、旧ソ連時代の1980(昭和55)年から連邦解体後の1999(平成11)年まで建造された「プロジェクト877」の通常動力(ディーゼル電気推進)型潜水艦のことです。

キロ級潜水艦は、全長約74m、水中排水量は約3100トンあり、海上自衛隊のおやしお型潜水艦よりも一回り小型です。武装は艦首に備えた6門の魚雷発射管で、ここからは魚雷のほかに対地、対艦、対潜水艦の各種ミサイルを放つことができ、発射管射出型の機雷も使用が可能です。2000年(平成12)までに43隻が就役していますが、そのうち19隻がポーランド、インド、アルジェリア、ミャンマー、イランに輸出されて現役で、インドネシアも保有が疑われています。

対して、改キロ級はロシアでは「プロジェクト636」と呼ばれるアップデート型で、1996(平成8)年に建造が始まり、2019年までに20隻が就役しています。ただし、この20隻は輸出用で、中国に10隻、ベトナムに6隻、アルジェリアに4隻引き渡されており、これらは全て現役です。

この改キロ級のなかでも、ロシア黒海艦隊で運用されているのは、2010(平成22)年から建造が始まった「プロジェクト636.3」と呼ばれるモデルです。こちらは現在までに9隻が就役しており、前出の通り黒海艦隊には6隻配備、さらに2隻が建造中で1隻が発注済みです。

これらキロ級および改キロ級は、比較的水深の浅い沿岸警備用の攻撃型潜水艦です。潜水艦にとって必須の静粛性に優れており、さらに改キロ級はエンジン出力の向上やスクリューの改良など近代化改良が施されていることから、実質的に最新鋭の潜水艦といえます。

黒海艦隊にはフリゲートやコルベット、巡洋艦、潜水艦からなる第5作戦戦隊があり、2013(平成25)年のシリア内戦で軍事介入しています。この第5作戦戦隊の戦力を確保するためとして、改キロ級2隻がウクライナ侵攻後の5月に地中海へ配備されています。

2022年7月現在、黒海と地中海を結ぶボスポラス海峡とダーダネルス海峡は、トルコが軍艦の通航を表向きは制限しています。トルコが海峡の通航制限を行うのは、1936(昭和11)年に発効したモントルー条約が根拠になっています。ただしトルコ政府は黒海沿岸諸国の船舶が母港に帰港する場合は例外としています。そこでロシア側は、地中海に出るロシアの改キロ級を、最終的にバルト艦隊の基地で整備される名目で、海峡の通過を正当化しました。

先に述べたようにロシア黒海艦隊には、キロ級1隻と改キロ級6隻がおり、そのうち後者の2隻が地中海へ派遣されています。そして黒海に残った改キロ級のうち1隻は母港のセヴァストポリで整備中のため、いま黒海で行動しているのは、キロ級1隻と改キロ級3隻ということになります。

改キロ級潜水艦

ウクライナ軍は6月10日、ロシア軍が黒海艦隊に潜水艦1隻を新たに配備し、巡航ミサイル40発が発射できる状態にあるとSNSで明らかにしました。

潜水艦ならではの隠密性もあって、今般のウクライナ紛争における潜水艦の作戦行動について情報はほとんど出てきませんが、ムィコラーイウやオデーサ(ロシア名オデッサ)に対するミサイル攻撃は、水上艦艇だけでなく潜水艦から発射された可能性があります。

ウクライナは、「ネプチューン」や西側から供与された「ハープーン」といった対艦ミサイルでは潜水艦を掃討できないため、対潜哨戒機や対潜ヘリが必要になります。しかし、西側諸国は155mm榴弾砲や対戦車ミサイル、地対空ミサイルと違って、航空機の供与はより直接的な軍事介入になるとして及び腰です。

また、戦闘機ならウクライナ空軍のパイロットは使いこなせますが、対潜哨戒機となるとそうはいきません。一応、ウクライナ海軍には航空旅団があるものの、戦闘機や汎用ヘリコプター、無人機(UAV)の飛行隊に限られており、対潜哨戒用としてはMi-14PLヘリコプターが3機あるだけです。固定翼の対潜哨戒機は運用実績すらないので、機体だけでなく搭乗員も供与しないと使い物にならないといえるでしょう。

加えて、たとえ対潜哨戒の態勢がとれたとしても航空優勢を確保する必要があります。ただし、開戦初期にウクライナ軍の対空ミサイルで多くのロシア軍機を撃墜したとはいえ、ウクライナもロシアも航空優勢を確保できていない現状では、ウクライナ側もおいそれと対潜哨戒機を黒海周辺で使うわけにはいきません。したがって現在、ウクライナ軍には、改キロ級への対抗手段がない状況なのです。

今後も黒海艦隊の水上艦艇は対艦ミサイルに狙われ続けるでしょう。しかし、潜水艦ならウクライナが使用するミサイルの射程内まで近づけます。ウクライナ側が潜水艦に対処できない限り、ロシアによる対地攻撃と海上封鎖は終わらないといえるでしょう。

ウクライナに米軍もしくは日本並のASW(Anti Submarine Wafare:対潜水艦戦闘力)があれば、ロシアの潜水艦などほとんど問題にもならないでしょうが、残念ながらウクライナのASWは無いに等しいです。

これでは、いつまでもウクライナはロシアの海からの脅威に対処できません。2014年のクリミア危機のときにも、潜水艦のことは報道されませんでしたが、私はこの時にもロシアの潜水艦が活躍したと思います。ただ、潜水艦の行動は隠密にされるのが、普通ですから、他の報道にまぎれてほとんど報道されなかったのだと思います。

クリミア半島は半島とはいいながら島に近いですから、これを1〜2隻の潜水艦で交代制で24時間包囲してしまえば、これはロシア軍にとってかなり有利です。まずは、近くの海域にロシアの潜水艦がいるというだけで、ウクライナの艦艇などクリミアに接近することはできなくなります。

クリミアに常駐していた軍も、潜水艦で包囲され、陸路も絶たれてしまえば、艦艇を近づけようとしても撃沈されてしまうことになり、補給ができず、食料・水、弾薬などが尽きてお手上げになってしまいます。クリミア危機においては、ロシアの潜水艦はこのような動きをしていたと思います。

報道ではハイブリット戦などが強調されていましたが、クリミアが安々とロシアに併合されてしまった背景には、潜水艦の何らかの動きがあったのはほぼ間違いないと思います。

ちなみに、クリミア危機のときには、ウクライナは潜水艦「ザポリージャ」1隻だけを所有していたのですが、ロシア軍に接収されています。

最近、ウクライナ軍はクリミア大橋を破壊するという計画もあるといわれています。

ウクライナへの侵攻が始まったあと、この橋がロシア軍の物資の輸送に使われているので破壊すべきだという意見が、ウクライナ側から出ていました。クリミア大橋を破壊すれば、ロシアの黒海艦隊が母港としているセヴァストポリへの陸からの補給路を断つことができるからです。

クリミア大橋は、2014年にクリミア半島を併合したあと、ロシアが造りました。ロシアのクラスノダール地方にあるタマン半島とクリミア半島東端のケルチという町の間に架かっています。

全長およそ19キロメートルに及ぶ、鉄道と道路の併用橋です。2015年5月に工事が始まり、道路は18年5月に、鉄道は19年12月に完成しました。これによって、ロシア本土とクリミア半島が陸路でつながりました。

工費は37億ドルといわれます。 開通の式典には、プーチン大統領も出席。大型トラックのハンドルを自ら握って車列を先導し、ロシア側からクリミア半島へ渡るパフォーマンスを演じました。 

クリミア大橋の開通式でトラックを運転したプーチン

ただ、クリミア大橋を破壊することはでき、それによってロシア軍の兵站には支障がでることにはなりますが、それにしても黒海にロシアの潜水艦隊が存在するので、ロシア海軍の優位性は崩れることはなく、橋が破壊されれば、船や遠回りになるものの、他の陸のルートで物資を運ぶことになると思います。

ロシア海軍の優位性がある限りにおいては、ウクライナが南部を奪還したり、ましてやクリミアを奪還するのはかなり難しいでしょう。クリミア大橋を破壊したとしても、それで圧倒的にウクライナ側が有利になるというわけではないと思います。

このような背景があるからこそ、ルーマニアやウクライナもいずれ潜水艦を手に入れようとしているのでしょう。日米並の高い能力を持つ対潜哨戒機なども手に入れれば、ロシア海軍に対峙できます。

トルコ海軍は14隻の潜水艦を持っていますし、黒海はNATO加盟国やウクライナの潜水艦が跋扈する海域になる可能性があるのは間違いないようです。そうなれば、ロシア海軍の優位戦もゆらぐことになるでしょう。

おしむらくは、ウクライナが現在潜水艦もまともな対潜哨戒機もないことです。これらをウクライナが有していれば、戦況特に南部での戦況が変わった可能性は十分にあったと思います。

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2022年7月21日木曜日

安倍氏たたえる決議採択 米上院で全会一致―【私の論評】バイデン政権も米国議会も日本が安倍路線を継承することを強く望んでいる(゚д゚)!

安倍氏たたえる決議採択 米上院で全会一致

米連邦議会議事堂=ワシントン

 米上院は20日、銃撃されて死去した安倍晋三元首相をたたえる決議案を全会一致で採択した。安倍氏を「一流の政治家で民主主義の価値の擁護者」と評価し、「日本の政治、経済、社会、そして世界の繁栄と安全保障に消し去ることのできない足跡を残した」とした。

 決議は前駐日大使のハガティ上院議員ら70人近い議員が13日に共同提出。安倍氏が「自由で開かれたインド太平洋」の考え方を広めたことに触れた上で、現在の日米豪印4カ国の枠組み「クアッド」の基礎となる構想を推進したと強調した。米大統領とともに日米同盟を強化し、北朝鮮の非核化や日本人拉致問題の解決にも精力的に取り組んだと指摘した。

 「米国は偉大な友人を失った」としながらも「そのリーダーシップにより、日米が世界中で自由、繁栄、安全を促進し、専制主義や独裁政治に対抗するため今後数十年にわたって協力する基盤が築かれた」と締めくくった。

【私の論評】バイデン政権も米国議会も日本が安倍路線を継承することを強く望んでいる(゚д゚)!

何故、このようなことが米国に先を越されるのか残念でなりません。米国で安倍氏たたえる決議が全会一致で採択されている中、日本では野党が国葬反対、マスコミは死を喜ぶ川柳や「安倍は統一教会」「犯人にも一理ある」のような報道が目立ちます。

このような決議は、過去にはサッチャー元英首相や南アフリカのマンデラ氏に対してもなされたことがあります。ということは、米国議会は安倍晋三氏をこれらの人物に並ぶ人物であると認識しているということです。

この決議案は、米国の前の駐日大使を務めた共和党のハガティ上院議員が呼びかけ、議会上院の7割近くにおよぶ超党派の68人の議員が共同提案者となったものです。何とあの政治信条が真逆だろう社会主義者のサンダース議員まで賛成しました。

ウィリアム・フランシス・"ビル"・ハガティ四世(英:William Francis "Bill" Hagerty IV、1959年8月14日- )

それにしても全会一致はすごいことだと思います。国葬に反対するマスコミや野党は、国民の多数派だけでなく国際社会からもずれているということがはっきりしました。

そうして、忘れてならないことは、なぜこのようなことがなされたのか、その背後には何があるかということです。

米議会では夏休みが迫って日程タイトな中で、提出から1週間で本会議採決まで行ったところに米議会の意思が明確に読み取れます。善意だけであれば、日本で国葬が始まる9月27日位までに決めても良いはずです。

にもかかわらず、これだけ急ぐというその理由は、米国議会は超党派で、日本は安倍路線をしっかり引き継いでくれという強いメッセージであるということにつきます。

このブログでは以前バイデン政権も日本は安倍路線を継承することを望んでいることを掲載したことがあります。その記事のリンクを掲載します。
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記帳するエマニュエル駐日大使

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、一部を以下に引用します。
中国は、以前は日本を見下していました。実際に、1994 年中国の当時の李鵬首相が、オーストラリアを訪問した時に、当時の オーストラリアのジョン・ハワード首相に向かって 「い まの日本の繁栄は一時的なものであだ花です。 その繁栄を創ってきた世代の日本人がもう すぐこの世からいなくなりますから、20 年もしたら国として存在していないのではないで しょうか。 中国か韓国、 あるいは朝鮮の属国にでもなっているかもしれません」 という 発言をしました。
李鵬首相のオーストラリアでの発言
自民党がその頃のままであれば、本当にそうなったかもしれません。ところが安倍政権が誕生して以降、気がつけば日本が中国包囲網の中心になっていたのです。 安倍総理大臣が「自由で開かれたインド太平洋戦略」を2016年8月の第6回アフリカ開発会議(TICADVI)の場で提唱してから5年以上が経過し、アジア太平洋からインド洋を経て中東・アフリカに至るインド太平洋地域において、法の支配に基づく自由で開かれた海洋秩序を実現することの重要性が、国際社会で広く共有されてきています。

トランプ大統領の任期は2017年から始まっています。トランプ大統領は選挙選の最中から中国に対峙すべきことを主張してきましたが、安倍総理と会ってからは、中国の卑劣な行いが、「地経学的戦争」だとはっきりと認識したとみられます。

日本では安倍・トランプというとゴルフぎかりが強調されるが、それだけではなかった・・・・
当時の安倍首相がこの構想(注:安全保障のダイヤモンド構想、後にインド太平洋戦略)を出したとき、中国はほとんど気にしていませんでした。しかし、その枠組みが目の前にでき上がってしまったということが、彼らの誤算でした。しかも「AUKUS(オーカス)」、「ファイブ・アイズ」という2つ枠組みがあり、アジアのなかでは日本だけが枠組みの一部に入るような事態も招いたともいえます。

安倍元総理は、いわば今日の対中国の世界の枠組みを構築したのであり、現在の日米英印豪、EUもその枠組の中で対中国戦略を考え実行しているのであり、その本家本元の日本が親中に傾けば、世界の枠組みが毀損されかねないわけです。それは、米国としてはとても許容できないのです。

バイデン政権としては、日本政府が現在の世界の枠組みを毀損することは容認できないですし、米国議会が 安倍氏たたえる決議採択をしたのも、これを容認できないことを全会一致で表明したのです。なぜかといえば、この枠組を毀損してしまえば、米国の国益にはならないと、米政府も議会も認識しているということです。

そのことを日本自身が認識すべきです。それを認識していないからこそ、半旗の掲揚の徹底が米国より遅れたり、安倍氏たたえる決議採択を米国議会に先をこされるという自体に陥ったりするのです。

岸田政権は、外交や安全保障面で安倍政権を継承しなければ、米国政府と議会から激しい抵抗にあうことを覚悟すべきです。

私は、経済面でも、あまりひどい政策をとってしまえば、日本経済を毀損し、これも世界の枠組みを毀損しかねないので、米政権は圧力をかけてくる可能性があると思います。無論、派手にやれば、内政干渉であると避難されるので、そうとはわからない形で圧力をかけることでしょう。

もし、岸田政権が、財務省のいいなりになったりせず、日銀の次の人事でまともな人事を行えば、日本国内の保守派議員の努力もあるでしょうが、米国の圧力もある可能性もあります。

米国の圧力が全くないなら、岸田政権や宏池会は、保守派議員の圧力を跳ね除けてでも、より中国寄りの政策を実施し、経済も財務・日銀官僚のいいなりで、日本経済を毀損して、失われ三十年を繰り返し、中国に頼らざるを得ないようにし、より中国との関係を深める方向に動くでしょう。

それで、中国は現在の経済の低迷を持ち直すことができ、一息つくことができます。それは、ロシアも利することになります。そうして、日本は世界の中で安倍晋三氏が築いた、強い影響力を失うことになるでしょう。日本の保守派の人々、日本の保守派の議員は米国の保守派との連携を強めるべきです。

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