2024年2月8日木曜日

中国が15年ぶり首位転落=米輸入、対立激化背景に―23年―【私の論評】日本より酷い中国バブル崩壊に対応するため日本企業、特に中小は輸出入の多様化を

中国が15年ぶり首位転落=米輸入、対立激化背景に―23年

まとめ
  • 15年ぶりに、米中対立で中国輸入20%減し、15年ぶりに中国の首位陥落、メキシコにぬかれる。工業製品から消費者向け製品まで幅広い品目で減少している。
  • サプライチェーン再編がお骨ている。メキシコ、カナダ、ベトナムなどが存在感を増し、中国依存度低下、多様化が進んだ。
  • 今後の貿易動向と新たな貿易秩序形成に注目。

米国の港で、船から積み下ろされる中国からのコンテナ AI生成画像

 米商務省が7日発表した2023年の貿易統計では、米中対立の激化を背景に中国からのモノの輸入が大幅に減少した。国別ではメキシコに抜かれ、2008年以来15年ぶりに首位から転落。米国が進めるサプライチェーン(供給網)再編により、モノの流れに変化が生じている現状を示した。

 23年の中国からの輸入額は前年比20%減の4272億ドル(約63兆円)。輸入額全体に占める比率も約14%と、20%を超えていた5年前から大きく低下した。工業製品から消費者向け製品まで幅広い品目が減少。輸出入を合わせた米中間の貿易額も縮小した。

 一方で、米国と貿易協定を結ぶメキシコやカナダ、米国が中国の代替地として期待するベトナムは、輸入額全体に占める比率が上昇傾向を示しており、存在感を増している。

【私の論評】日本より酷い中国バブル崩壊に対応するため日本企業特に中小は輸入の多様化を
 
まとめ
  • 中国経済はバブル崩壊状態にあり、給与の低下、不動産市場の崩壊、消費の落ち込みなど、様々な問題が深刻化している。
  • 中国経済の低迷は日本にもデフレ圧力をもたらす可能性がある。
  • 中国政府は経済対策を講じているが、その効果は限定的とみられる。
  • 中国経済の低迷は長期化する可能性が高く、その低迷は、世界経済に大きな影響を与える可能性がある。
  • 日本企業は、中国市場への依存度を下げ、新たな市場を開拓していくことが重要になる。

上の記事にもあるよう、米商務省が2月7日に発表した2023年の貿易統計によると、米国の輸入相手で中国が15年ぶりに首位から外れました。また、日本や韓国、ヨーロッパなどでも中国への貿易依存度が下がっており、2023年までの5年間で中国貿易に占める各国の比率は0.1~2.5ポイントほど下落しています。

このような状況は身近にもあります、先日私はセブンイレブンで、プレミアムピーナツチョコレートを購入したのですが、以前は落花生の輸入先は何度か購入したことがありますが、その度に「中国」と記されいたのですが、先週購入したものには、「アメリカ、ブラジル」と書かれていました。このようなことは初めてでした。セブンイレブンにこれを卸している生産者は、輸入先を変えたか、多様化したのでしょう。

中国経済はバブル崩壊状態にあり、日本のバブル崩壊よりも酷い状況である可能性が高いです。実際、給与の低下、不動産市場の崩壊、消費の落ち込みなど、様々な問題が深刻化しています。

中国李強氏は、ダボス会議で中国投資を呼び掛けましたが、政治的リスク懸念から冷遇されました。中国経済の低迷は日本にもデフレ圧力をもたらす可能性があり、今後、中国の動きを注視する必要があります。

中国の寝そべり族

現状の中国は、不動産市場が崩壊し、家計資産の約8割が失われたとされています。公務員の給料は25~50%下がり、給料の未払もめづらくありません。そのため、多くの中国人は経済的な困窮に陥っており、消費が急速に落ち込んでいます。そのせいもあってか、中国からの訪日客も減少しています。

中国政府は経済対策を講じているが、その効果は限定的とみられます。中国経済の低迷は長期化する可能性が高く、その低迷は、世界経済に大きな影響を与える可能性があります。日本企業は、中国市場への依存度を下げ、新たな市場を開拓していくことが重要になるでしょう。

以下に、2021年1-7月に比べた2023年同期の対中貿易の変化率の表をあげます。


中国からの輸入は減ったものの、米国と比較すば、現状の日本のサプライチェーンは中国にまだ大きく依存しており、中国からの輸入が途絶えると日本経済に大きな影響を及ぼす可能性があります。そのため、中国依存を減らすための動きが日本企業の中で見られますが、これが必ずしも好ましい方向に進んでいません。

中国との貿易構造では、輸出と輸入の両方に問題があります。特に、安全保障に関わる半導体関連品目の輸出減少率が全体の輸出減少率よりも小さいこと、また、サプライチェーンの強靭性に関わる電気・電子機器の輸入が減少していません。

これらの問題に対処するためには、経済的利益と安全保障上のリスクをバランスさせることが必要であり、そのためには中国依存をどの程度下げるべきかが重要な課題となります。

政府には、安全保障上のリスクおよび今後の対中輸出規制の拡大の方向性に関する情報を、民間企業に届ける、特に中小企業にも届くように、一層の努力をすべきでしょう。

日本の中小企業 AI生成画像

中小企業は、情報収集やリスク対策に十分なリソースを割くことが難しい場合があります。政府は、これらの企業への個別支援を充実させ、情報格差を解消することが重要です。

また、民間団体や国際機関との連携により、より効果的な取り組みを進めることができます。

政府が積極的に取り組むことで、中国との経済関係を適切なレベルに保ち、日本の安全保障と経済発展を守ることができると考えられます。

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2024年2月7日水曜日

TSMCが熊本第二工場建設を発表、6nmプロセス導入 27年末の操業開始へ―【私の論評】日本の半導体自給力強化と対中牽制の地政学的意味

TSMCが熊本第二工場建設を発表、6nmプロセス導入 27年末の操業開始へ

まとめ
  • TSMC、ソニーセミコンダクタソリューションズ、デンソー、トヨタ自動車は、TSMCの子会社JASMの熊本第二工場の建設を発表し、2027年の稼働を目指す。また、トヨタが少数株主として参画する。
  • 両工場の設備投資額は200億米ドル以上で、月産10万枚以上の生産能力を持つ予定です。製造は40nm、22/28nm、12/16nm、6/7nmのプロセス技術を使用し、熊本地域では3400人以上の高度技術専門職を雇用する予定。
  • TSMCはJASMへの最大52億6200万米ドルの増資を決定し、TSMCが86.5%、ソニーセミコンダクタソリューションズが6.0%、デンソーが5.5%、トヨタが2.0%のJASM株式を保有する。
台中の中部サイエンスパークにあるTSMCの工場

TSMC、ソニーセミコンダクタソリューションズ(SSS)、デンソー、トヨタ自動車は2024年2月6日に、TSMCの子会社であるJapan Advanced Semiconductor Manufacturing(JASM)の熊本第二工場の建設を発表した。工場は2024年末までに着工し、2027年の稼働を目指す。また、トヨタが少数株主として参画する。

既に建設中の第一工場と合わせて、設備投資額は200億米ドル以上になる予定。これは日本政府強力な支援を受ける前提で計画されている。工場は月産10万枚(12インチウエハー換算)以上の生産能力を持つ予定で、自動車、産業、民生、HPC関連アプリケーション向けに40nm、22/28nm、12/16nm、6/7nmのプロセス技術による製造を行いる。これにより、熊本地域では3400人以上の高度技術専門職の雇用が見込まれている。

TSMCはJASMへの最大52億6200万米ドルの増資を決定た。これにより、TSMCは86.5%、SSSは6.0%、デンソーは5.5%、トヨタは2.0%のJASM株式を保有することになる。

【私の論評】日本の半導体自給力強化と対中牽制の地政学的意味

まとめ
  • TSMCは台湾の半導体ファウンドリ大手で、世界の半導体サプライチェーンを支える
  • 熊本に新工場を建設することで、日本の半導体供給の弾力性が強化される
  • 日本の技術的独立性が高まり、半導体の国内生産能力が強化される
  • 中国と台湾の緊張回避に寄与し、TSMCのリスク分散にもなる
  • 日本を先端ロジックチップ生産の重要国に位置づけることになる
  • 半導体製造装置の対中輸出規制等とあいまって、日本は中国を牽制している
TSMC(Taiwan Semiconductor Manufacturing Company)は、台湾に本社を置く世界最大の半導体製造専業企業です。1987年に設立され、現在ではグローバルに多数の製造拠点を持つなど、半導体産業のリーダーとして広く認知されています。

TSMCは、ICデザイン企業や大手エレクトロニクスメーカーなどからの設計データを元に、半導体の製造を受託するファウンドリ業務を主に行っています。最先端のプロセス技術を持ち、小型で高性能な半導体の製造を可能にしています。

また、TSMCはスマートフォンやパソコン、データセンターなどの分野で使用される高性能プロセッサから、IoTデバイスや自動車などの分野で使用される低電力チップまで、幅広い用途の半導体を製造しています。

建設中の第1工場

今回のTSMCの熊本第2工場の建設に関しては、地政学的にも大きな意味があります。

日本にとっては、日本の半導体サプライチェーンの弾力性を強化し、台湾や韓国への依存度を下げることになります。国内の最先端チップ製造施設を持つことは、日本の技術的独立性を高めることになります。

先端半導体の戦略的重要性と、特に防衛、電気通信、自動車などの重要産業における国内生産能力の価値を強化することになります。

TSMCの日本での拡大は、中国と台湾の間の地政学的緊張の高まりと重なります。台湾以外にもう1つ大規模な工場を建設することで、TSMCの経営リスクを分散することができます。


新工場は、日本を最先端のロジックチップ生産における重要なプレーヤーとなることを意味し、これにより、日本への半導体サプライチェーン投資がさらに拡大する可能性があります。

日本、台湾、中国の関係にも潜在的な影響があります。TSMCの新工場は、政府間の外交的関与や技術提携に影響を与える可能性があります。

まとめると、TSMCの新施設は日本の半導体サプライチェーンを強化し、産業競争力を高め、台湾への依存度を下げ、地域の地政学的ダイナミクスと相互作用する。この拡張は、先端チップの戦略的価値と、より現地生産化する傾向を浮き彫りにしています。

日本は、半導体を軸に中国への制裁を強化してきました。

2023年1月27日、日本、米国、オランダの3ヶ国は、中国への半導体製造装置の輸出制限で合意しました。これは、中国の軍事力増強に繋がる恐れがあるとして、先端半導体製造装置の輸出を制限する措置です。

対象となる装置は、露光装置やエッチング装置など、半導体製造に不可欠な装置です。これらの装置は、中国の軍事開発にも使用される可能性があるため、輸出を厳格に管理することで、中国の軍事力を抑制することを目的としています。

なお、日米は、今回の措置は中国への輸出を全面的に禁止するものではなく、経済安全保障を確保するための必要な措置であると説明しています。

また、中国企業との取引を完全に停止するのではなく、安全保障上の懸念がない取引は継続していくとしています。

また、2023年7月23日、日本政府は、中国の軍事転用を懸念し、半導体製造装置23品目について、キャッチオール規制を強化しました。輸出を厳格に管理することで、中国の軍事力を抑制することを目的としています。

中国の半導体産業 AI生成画像 なぜか防塵服の頭部がウサギ耳に・・・

この措置は、米国が中国に対して同様の措置を実施していることに呼応したものであり、日米同盟の強化にもつながります。

以上のように、日本が中国に対して半導体製造装置や工作機械の輸出制限を行うことは、地政学的に有利に働き、世界の安定にも寄与する可能性があります。また、経済的な利益も期待できます。

日本の半導体関連輸出制限やTSMCの新工場の設置は、世界全体に様々な影響を与える可能性を秘めた重要な政策です。

日本が、地政学的にさら有利になるとともに、それが世界からの投資を惹きつけ経済的も利益をもたらすという相乗効果を生み出す重要な戦略と位置づけることができます。

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2024年2月6日火曜日

令和5年実質賃金、2年連続減 物価高、2・5%マイナス 給与増も追い付かず―【私の論評】岸田首相は、官僚機構と闘う政治家に変貌し続投すべき

令和5年実質賃金、2年連続減 物価高、2・5%マイナス 給与増も追い付かず

まとめ
  • 実質賃金は2年連続でマイナスとなり、消費税率8%への引き上げ時以来の大幅な減少
  • 名目賃金は増加したものの、物価上昇に追いついておらず実質的購買力は低下
  • 所定内給与は増加したが、所定外給与の伸びは鈍く、物価上昇に対応できず
厚生労働省

 厚生労働省の発表によると、2024年の実質賃金は前年比2.5%減で2年連続のマイナスとなった。名目賃金は1.2%増だったものの、物価高騰の影響で実質的な購買力は低下した。
 
所定内給与は春闘の効果で27年ぶりに増加した一方、残業代や賞与を含む所定外給与の伸びは鈍く、物価上昇に追いついていない。

 一般労働者とパート労働者の給与総額ともに増加したが、実質的な所得水準は低下している。

この記事は、元記事の要約です。詳細は、元記事をご覧になって下さい。

【私の論評】岸田首相は、官僚機構と闘う政治家に変貌し続投すべき

まとめ
  • 消費税率8%引き上げ時賃金低下したこと踏まえ、消費税率10%から5%への引き下げるべき
  • 財源は国債発行と日銀による引き受けでもできる、これはコロナ対策で成功した先例がある
  • 経済成長により中長期的な減税の財源確保は可能
  • 財務省の抵抗が消費税減税の障害となっている
  • 岸田政権には財務省と対峙する政治姿勢を貫き、できれば続投すべき
実質賃金と購買力低下で苦しむ人々 AI生成画像

実質賃金と購買力低下への対応として、即効性のある消費税減税が最も有効と考えられます。

消費税10%を5%に引き下げ、生活必需品の税率を更に引き下げることが考えられます。これにより、低中所得者の負担を直ちに軽減できます。

消費税率を8%に引き上げ時に、実質賃金の低下が生じた経験があることから、消費税税率を8%よりも下げるべきです。

財源に関しては、いわゆる特別会計の埋蔵金をもちいるとか、政府が国債を発行して、日銀がそれを引き受ける等の方法があります。現在の日本なら、十分に可能であり、何の心配もありません。

政府が国債を発行して、日銀がそれを引き受けるという方式は、安倍元総理がいう「日銀政府連合軍」という方式です。これによって、安倍・菅両政権合計で100兆円の補正予算を組み、コロナ対策を実施しました。

そのため、日本は他の先進国等が、一時的に失業率がかなり上昇したにもかかわらず、日本ではそのようなことはありませんでした。また、この時に対策を行ったことにより、岸田政権初期には、経済的にはかなり良いスタートを切ることができました。この方式は現在でも適用できます。

そうして、注目すべきは、100兆円の国債発行による副作用などなかったことです。もし、それがあれば、財務省はこれを盛んに喧伝したはずですが、そのようなことはありませんてした。財務省の立場にたてば、喧伝すれば良いようにもみえますが、これをすれば、様々な矛盾が露呈することを財務省は恐れているいるのかもしれません。

菅氏(左)と安倍氏(右)

そうして、中長期的には、経済成長により財源を確保し、消費税率引き上げを回避できます。これは、財務省には全くない視点です。本当に困ったものです。

ただし、経済が加熱して、物価上昇率が4%を超えるような状態になれは、消費税率を再びあげることも検討すべきです。問題の本質は、消費税が実体経済を無視して、税率が一方的にあがつてきたことです。

本来は、その時々の実体経済にあわせて、上げたり下げたりすべき筋のものです。上がりっぱなし、下がりっぱなしということは、マクロ経済政策的にあり得ないことです。財務省は上げることだけに執着しているようです。

以上は、経済政策の王道です。しかし、なぜかこのようなことは、実現されそうにもありません。それは、いわずとしれた経済政策の理論などとはかけ離れた緊縮命、増税命の、財務省の抵抗があるからです。

「財務省のポチ」とも揶揄される岸田総理ですが、彼の本心はどうなのでしょうか?財務省と対峙する政治家としての真価が問われる時が来たようです。

国会で、経済対策で「税収増還元」を訴えた岸田総理に対し、鈴木財務大臣は「国債償還」を理由にあっさり却下しました。トリガー条項発動にも難色を示し、国民の苦境を無視する姿勢を露呈しました。これは、あるまじきことです。

財務省を中心とする官僚機構は、日本の権力中枢に君臨し、増税を是とするマスコミや学者は官僚と結託し、国民不在の政治が行われています。

近代化や高度経済成長を支えた官僚制は、バブル崩壊後(本当は日銀の誤謬による金融引き締めが原因)の経済停滞に無策でした。政治主導への転換がなされず、過去30年給料は上がらず、国民の可処分所得は減少しつづけました。財務省は予算の見直しをせず、国民から税を搾り取るだけです。

財務省こそ本当の国民の敵です。岸田総理は「減税」を主張するも、鈴木大臣は「財源がない」と抵抗。本来、総理の指示に従うべき大臣が財務省に逆らえない構造になっています。

岸田総理は人事権を行使し、鈴木大臣や財務省幹部を更迭できます。しかし、麻生太郎氏ら財務省と繋がる政治家への圧力は、総理の座を脅かしつつあります。最近の政治資金不記載問題も、財務省が裏で糸を引いているという可能性が大です。

しかし、財務省は国家の財布を握り、情報力も圧倒的です。財務省に逆らうと、税務調査や不祥事の暴露など報復を受ける可能性があります。

ただ、SNSや動画配信の普及により、多くの国民は情報に敏感になり、財務省批判が強まっています。マスコミも財務省への疑問を呈し始め、世論は変化しつつあります。

財務省

岸田総理は見当違いのところもありますが、異次元の少子化対策、所得税減税、トリガー条項発動検討など、国民のために本気で改革しようとしているのかもしれないです。無論、一方で、LGBT法案を成立させたり、移民を推進しようとしている姿勢は許しがたいです。

安倍元総理は、官僚人事への積極的な介入で知られていますが、財務省には手出しできませんでした。在任中に2度延期したものの、結局2度の消費税増税をせざるを得なくなり、アベノミクスは、積極財政という面では成果をあげられませんでした。

岸田首相は、財務省に反旗を翻し、国民のために戦う時が来たといえます。真に戦う姿勢をみせて、財務省に一矢を報いることができれば、続投も可能になるかもしれません。退陣となっても、歴史に名は残ります。岸田総理は、今こそ真のリーダーシップを発揮すべきです。

ここで、財務省に屈服せず、国民のために戦う岸田総理となって、安倍元総理と並ぶ政治家として歴史に名を残していただきたいものです。

私は、個人的には岸田文雄氏は、好きなタイプではありません。繰り返しいいますが、特にLGBT法案の拙速な成立、移民に対し寛容的なことなどは、断じて許すことはできません。しかし、現状では、政治や経済の安定を考えれば、続投できるなら、続投したほうが良いと思います。

安定した体制のもとで、次の展開を考えられる状況を作り出し、変革に結びつけていくべきと思うのです。経済的に安定した状況を作り出し、その上で改革を模索すべきです。そうして、その改革には無論、政権交代もありえます。ザル法の政治資金規正法の改正、LGBT理解促進法案の廃案などもすべきと思います。私は、その際には自民党が下野し保守政党が政権の座についても良いと思っています。

しかし、経済が未だ安定しない現在、政権が変われば変わるほど混乱することになりかねないと思います。それは、村山政権以降や麻生政権以降の政治等をみていれば、明らかです。私は、仮に菅政権が現在も続いていれば、今よりは安定していた可能性が高いと思います。今後次に総理が誰になろうとも、政治は混乱するでしょう。そうして、短期で交代を繰り返せば、繰り返すほどどんどん混乱の極みに至ると思います。


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2024年2月5日月曜日

米英軍がフーシ派の標的36カ所を攻撃 米、親イラン勢力へ攻撃の手を緩めず―【私の論評】バイデン政権はイランの核開発と過激派支援に強硬対処すべき

米英軍がフーシ派の標的36カ所を攻撃 米、親イラン勢力へ攻撃の手を緩めず

まとめ
  • 米英軍は、ヨルダンでの米兵殺害事件への報復として、イエメンのフーシ派標的を攻撃。
  • 攻撃対象は武器貯蔵施設など36カ所。
  • フーシ派は死傷者数を発表していないが、抗議デモを実施。
  • イランは関与を否定しているが、情勢悪化の恐れ。
  • 米英軍とフーシ派の衝突継続、中東の緊張高まる可能性。
サリバン米大統領補佐官

米英軍は2月3日、イエメンの親イラン武装組織フーシ派の標的36カ所に対し攻撃を実施した。これは、前日にヨルダンで米兵3人が死亡した攻撃への報復措置とみられる。国家安全保障問題担当のサリバン米大統領補佐官は4日、米NBCに対しさらなる攻撃を示唆しており、中東の緊張が高まる恐れが出ている。

攻撃対象となったのは、フーシ派の武器貯蔵施設やミサイルシステム、発射装置など。フーシ派は紅海で船舶を攻撃したり、イスラエルへの攻撃を行ったりするなど、近年活動を活発化させている。

フーシ派は今回の攻撃による死傷者数を発表していないが、支持者らは4日、首都サヌアで軍事パレードを実施し、ガザ地区への連帯を示すとともに、米英の空爆に対する抗議を行った。

イランはこれまで、フーシ派のようなグループを支援する一方、紛争に直接関与することは避けてきた。米国防総省は「イランとの戦争を望んでいないし、イランもまたそのような考えはないと思う」とコメントしている。

しかし、今回の米英軍の攻撃を受けて、イランがフーシ派への支援を強化する可能性もあり、中東の情勢はさらに悪化する可能性が出ている。

フーシ派の広報担当者は、「米英のさらなる攻撃は、ガザへの支持を示すイエメンの決断に影響を与えない」と述べている。

今後、米英軍とフーシ派の衝突がさらに激化する可能性もあり、中東の緊張が高まることが懸念される。

この記事は元記事の要約です、詳細を知りたいかたは元記事をご覧になって下さい。

【私の論評】バイデン政権はイランの核開発と過激派支援に強硬対処すべき

まとめ
  • バイデン政権は、アフガン撤退やウクライナ問題で弱腰な対応をしており、イラン問題でも同様の誤りを犯す可能性がある。
  • イランは過激派支援を続けており、その影響力排除には長期的な取り組みが必要。
  • 米国はイランに対し、制裁強化、軍事攻撃、核開発阻止などの強硬策を取るべきだが、バイデン政権がそれを行うか疑問。
  • イラン問題は長期化する可能性が高く、流れを変えるには米国の強い決意と行動が必要だが、バイデン政権にそれがあるか不明。
  • バイデン政権はイランの核・過激派問題に対し、制裁強化、同盟強化、体制転覆支援などで強硬姿勢を取るべき。

バイデン大統領

バイデン政権は、「抵抗の枢軸」(中東各地でイランが支援する武装組織のネットワークを指す言葉)に対して厳しい措置をすべきと以前このブログで述べました。その記事のリンクを以下に掲載します。
バイデン大統領に高まる圧力、米兵死亡でイランとの対決求める動き―【私の論評】イランの脅威に立ち向かうため、岸田首相は4月の訪米時にバイデン大統領に強硬策を訴えよ

米軍基地への無人機攻撃で亡くなった3人の米兵

この記事では、バイデン政権に対する危惧の念をのべました。これに関して、以下にこの記事から引用した内容を要約したものを以下に掲載します。
バイデン政権は、アフガンからの撤退を大きく誤った上、ウクライナ侵攻前にロシアへの軍事介入を事前表明しないという弱腰な姿勢を見せた。これはロシアに対する事実上の「侵攻許可」となってしまった。これらの対応は、過去の米国の伝統的な政策と大きく異なるものである。

こうした経緯から、バイデン政権がイランの脅威に対しても誤った判断を下す可能性がある。イランは過激派組織への支援を続けており、その影響力を排除するには長期的な取り組みが必要だ。

米国はイランの軍事施設への精密空爆、経済制裁の強化、同盟国の支持獲得、イランの核開発阻止のための作戦実行など、強硬な姿勢で対応すべきだ。しかし、バイデン政権がそうした厳しい措置を取るとは考えにくい。

イランとの対立は長期化する可能性が高い。イランの過激派体制が続き、侵略的姿勢を維持する限り、米国と同盟国は断固とした態度で対抗していく必要がある。流れを変えるには、強力な決意と行動が求められるが、バイデン政権にそれがあるか疑問である。

バイデン政権は、イランの核開発阻止と過激派支援の封じ込めを目指し、以下の点で強硬策を取るべきです。


第一に、イランの核関連施設やミサイル基地に対する精密空爆に踏み切る。第二に、制裁強化と資金源遮断でイラン経済を窒息させる。第三に、サウジアラビアなど同盟国の軍事力強化を支援し、イラン包囲網を固める。第四に、イラン体制転覆を狙う反体制組織に援助を行う。

また、イラン革命防衛隊のテロ指定や、より厳しい新核合意の再交渉も重要政策です。

これらの強硬手段により、イランの核兵器保有と過激派支援を防ぎ、中東におけるアメリカの指導力を取り戻すべきだ。イランとの妥協はもはや許されないです。

バイデン政権がイランに対して強硬な姿勢を示さない場合、この紛争は数年にわたって長期化する可能性が非常に高いと言えます。

その 最大の理由は、イランの過激派指導部が弱みを見せる平国を利用して、核開発と対外行動のエスカレーションを図るためです。過去の経緯から、イランは圧力に屈することはほとんどない国家です。制裁緩和などの融和策は、むしろイランの自信を高め、より侵攻的な行動の後押しとなりかねません。

イランの最高指導者アリー・ハーメネイー

もしイランの行動が放置されれば、彼らは過激派組織の支援を拡大し、中東における影響力を強めるでしょう。そうなれば、後になってイランを封じ込めようとしても、はるかに困難となります。過激派の蔓延をこの時点で防がないと、将来の代償は大きくつきます。

加えて、米国の弱腰ぶりが顕著になれば、サウジアラビアなどの同盟国もイランに対抗するため、核保有に動きかねません。それが核拡散を招き、中東の緊張を一層高めることは避けられないでしょう。

米国が対話重視の姿勢に出れば、逆に米国の交渉力と地域における威信が低下する結果を招くことも否定できません。イランはそれを米国の弱さの証と捉え、米国に譲歩する動機を失うかもしれません。

このように、強硬策を取らないことのリスクは計り知れません。バイデン政権はイランの核問題を放置すべきではありません。過去の過ちを繰り返さないためにも、米国は対イラン強硬姿勢への回帰が必要不可欠です。慎重かつ断固たる措置を講じることが、この紛争を収束へ導く最善の道だと言えるでしょう。

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2024年2月4日日曜日

UNRWAの解体と人道支援の行方―【私の論評】UNRWA(アンルワ)の正体暴露で明らかになった国際世論の間違い!ガザにおける深刻な現実と改革への道筋


まとめ
  • ハマスのテロにUNRWA職員が関与していたことが判明し、各国がUNRWAへの支援を停止
  • UNRWAへの支援が止まれば、パレスチナ人の人道支援が困難に
  • 一方、UNRWAはハマスの影響下にあるため解体を求める声も
  • パレスチナ人の人道支援とUNRWA改革の両立が課題
  • UNHCRがUNRWAの管理・支援を一時的に担うことが解決策の一つ

 パレスチナ自治区ガザを実効支配する過激派組織ハマスが昨年10月にイスラエルを襲撃したテロ事件では、国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)の職員も少なくとも12人が直接関与していたことが判明した。これを受け、UNRWAへの主要な支援国である米国やドイツ、日本などが支援を停止。UNRWAは資金難に陥り、2月末までにはガザのパレスチナ人への人道支援活動も停止せざるを得なくなる可能性がある。

 一方で、UNRWA自体がハマスの強い影響下にあり、パレスチナ人への憎悪教育を行っているという指摘も根強い。イスラエルのネタニヤフ首相はUNRWAの解体を訴えている。しかし、UNRWA以外にガザのパレスチナ人を支援できる機関が現時点ではない。UNRWAへの支援停止は、周辺国の不安定化にもつながりかねない。

 したがって、ガザの混乱を収拾するには、パレスチナ人の人道支援を継続しつつ、UNRWA自体の改革を進める必要がある。一つの解決策として、UNRWAを国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の管理下に置き、UNHCRが職員管理や支援内容の指導を一時的に行うことが考えられる。UNRWAの改革とパレスチナ人支援の両立が困難な課題だが、ガザの混乱を収めるには欠かせないアプローチといえる。国際社会の英知を結集し、実現可能な解決策を早急に模索する必要がある。

 この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧ください。

【私の論評】UNRWA(アンルワ)の正体暴露で明らかになった国際世論の間違い!ガザにおける深刻な現実と改革への道筋

まとめ
  • UNRWAの職員には教師が多く、その教師らは、反ユダヤ主義や過激思想が指摘され、ハマスとの関与が報告されている。
  • 解決策として、UNRWAの中立性の疑念がある中、改革ではなく解体が必要。
  • 国際社会はイスラエルの自衛権を支持し、中東の安定に向けて建設的なアプローチを模索すべき。中途半端な介入が紛争を長引かせることになり、根本的な秩序回復が必要。
  • パレスチナ側がテロリスト・ハマスを排除し、平和的共存を目指す責任ある政府を樹立するまで、イスラエルは自国民の安全を確保する権利がある。

レバノンのティルスにあるUNRWAの地区事務所の看板

UNRWAの正体を知らない人が多すぎです。その構成員の多くは、教師であり、その学校では、反ユダヤ主義が横行し、テロリズムが助長されていることが、長年にわたる複数の調査や報告で明らかになっています。

国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)が運営するガザの学校では、アンチセミティズムや過激思想の宣伝、ハマスの称賛など、過激な教育が行われているという報告が複数の調査機関から出ています。

IDFや国連監視団体などは、学校でのハマスの武器貯蔵やトンネル掘削、職員のハマスへの関与を告発しました。

また、ソーシャルメディアの分析から、教職員の多くが公然とハマスやテロ活動を支持していることも判明しました。

UNRWAの教育現場が政治的に激しく歪められ、イスラエルに対する憎悪教育が行われていることを示す証拠が蓄積しています。

UNRWAは中立的な人道機関ではありません。パレスチナ人を助けるためではなく、ハマスの利益のために共闘しているといえます。

以上の情報源を以下に示しておきます。
  1. Extremist Education in UNRWA Schools: A report by IMPACT-se highlights textbooks and terrorism in UNRWA Palestinian schools1. The report examined educational materials used in UNRWA schools, particularly in the Gaza Strip, the West Bank, and East Jerusalem, where the Palestinian National Authority (PA) curriculum is adopted. The PA curriculum is found to contain antisemitic content and the promotion of violence, jihad, and ‘martyrdom’ culture, while omitting teachings of peace and coexistence1.

  2. Hamas Weapons Storage in UNRWA Schools: A United Nations inquiry into incidents that occurred at UN facilities during last summer’s Operation Protective Edge confirmed Israel’s charges that Hamas used those facilities to store weapons and launch attacks against Israel2. Another report shows that Hamas places weapons in and near U.N. facilities in Gaza, including schools3.

  3. Hamas Tunnel Digging in UNRWA Schools: Photos of a tunnel shaft dug by Hamas underneath a Gaza school run by the UN agency for Palestinian refugees were published by an Israeli TV channel4. In another instance, the IDF located and destroyed a Hamas tunnel adjacent to a UNRWA school in the northern Gaza Strip5.

  4. UNRWA Staff Involvement with Hamas: The UN Secretary-General António Guterres said nine UNRWA employees have been fired over allegations of involvement in the deadly October 7 Hamas attack in Israel6. Another report states that UNRWA had opened an investigation into several employees suspected of involvement in the 7 October attacks in Israel by Hamas and that it had severed ties with those staff members7.

  5. UNRWA Teachers Support Hamas on Social Media: UNRWA teachers continue to publish antisemitic posts on social media despite commitments by UNRWA and the US to ensure that antisemitism, violence, and terrorism are not supported in UNRWA institutions, according to a new report by the NGO UN Watch8. Another report found that United Nations workers in Gaza used an internal Telegram channel, which was meant to facilitate their work, to praise the Hamas massacres on October 79.

  6. UNRWA Education System Indoctrinating Hatred Against Israel: An Israeli watchdog has found that educational textbooks produced by the UN’s Palestinian refugee agency continue to contain incitement to violence against Israel and hatred of Jews, despite promises to remove such content10. Another report reveals that UNRWA has educated the next generation to blindly believe in a sacred “right of return” by force of arms to the very homes which they left back in ’48, homes that no longer exist, in villages that have since grown into Israeli cities, collective farms, and woodlands11.

上の資料は、全部が英文ですが、現在ならGoogle翻訳などで、大方の内容は理解できます。興味のある方は、是非御覧ください。日本では、ほとんど報道されない内容に驚かれるると思います。

UNRWAの正体を知った上で、上の記事における提案にはいくつかの懸念があります。第一に、UNRWAをUNHCRの管理下に置くことは、鶏小屋にキツネを入れるようなものです。国連とその機関は、慢性的に反イスラエル、親パレスチナであることを複数回にわたって示してきました。

鶏小屋にキツネをいれる AI生成画像  このような可愛いキツネなら問題はないだろうが・・・・

パレスチナの大義に対する管理と影響力をさらに与えることは、ハマスと彼らのテロ活動をさらに可能にし、強化するだけになる可能性があります。

第二に、国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)自体が欠陥と偏見に満ちた組織であり、改革するのではなく、解体されるべきです。学校やキャンプで反ユダヤ主義やテロリズムを助長していることが明らかになっています。このレベルの憎悪と過激主義を改革することは困難です。UNRWAは廃止され、別の組織に取って代わられる必要があります。

第三に、UNRWAを通じてハマスの支援や資金提供をしても、ガザの混乱は終わりません。それは、テロリストに支配されたパレスチナ人の苦しみを長引かせるだけです。秩序を取り戻す唯一の方法は、ハマスが敗北し、権力を剥奪され、パレスチナの人々が自由と平和の中で暮らせるようになることです。

ついに、国際社会はこの問題に関して賢明に行動できないことを露呈したといえます。彼らは失敗した「2国家解決」にあまりにも固執し、アラブ同盟国やイスラム同盟国との関係を重視するあまり、イスラエルを攻撃することを結果として容認してしまったといえます。

この地域の安定を国連に頼ることは、状況を悪化させるだけになります。UNRWAはガザから出て行く必要があり、ハマスも出て行く必要があり、国連は手を引く必要があり、イスラエルは平和と安全を執行するために自由に動ける権利を持つべきです。それが、ガザの混乱を終わらせる唯一の真の解決策だと思います。

無論イスラエルが必ずしもガザを完全に支配したり併合したりする必要はないですが、イスラエルは国際的非難を受けることなく、ガザからの脅威に対してもっと自由に行動できるようにする必要があります。

あまりにも長い間、ハマスのようなテロリスト集団はガザで平然と活動し、人間の盾に隠れながらイスラエルの市民に対してロケット弾攻撃を仕掛けるようなことをしてきました。イスラエルには国家として自国を防衛し、抑止力を確立する権利があります。

理想を言えば、パレスチナ人民が立ち上がり、過激なハマス政権を自ら打倒し、自分たちの幸福を第1に考え、テロを拒否し、イスラエルと平和に共存しようとする政府を樹立することが望ましいです。

しかし、その日が来るまでは、イスラエルはハマスの能力を低下させ、テロ・トンネルを破壊し、主要指導者を排除するための軍事作戦を実施する必要があるかもしれないです。

国際社会

国際社会は、イスラエルがとるすべての行動を反射的に非難するのではなく、イスラエルの自衛権を支持すべきです。イスラエルはガザを完全に再占領すべきだという意見もありますが、これは複雑な問題です。

それは安全保障を向上させるかもしれないですが、敵対的なパレスチナ人を統治する責任をイスラエルに負わせることになり、世界舞台でのイスラエルの正当性を損なうかもしれないです。

最適な解決策は、ハマスに代わって民衆が蜂起し、平和的で責任ある政府が誕生することです。しかし繰り返しますが、それが実現するまでは、イスラエルは、ガザから発せられるいかなる脅威に対しても、謝罪することなく一方的に行動する自由を持たなければならないでしよう。

イスラエル市民の安全と生存は、すでに過ちが露呈した国際世論よりも優先されなければならないです。国際社会は、ハマスはテロリストであり、テロリストとは交渉などできないことを忘れてしまったようです。イスラエルが交渉すべきは、テロリストを容認しないパレスチナ人に限られるべきなのです。

私はイスラエルによるガザの永久支配を必ずしも主張するわけではありません。しかし、イスラエルは自国の安全保障を強化するためにより自由な手を持つべきであり、国際社会はその必要性を認識すべきです。

テロを拒否し、平和的な市民社会を確立するボールは、最終的にはパレスチナ側にあります。イスラエルが彼らのためにそれをすることはできます。しかし、イスラエルはその間に自国民を守るために行動することはできるし、そうしなければならないのです。

米国の戦略家ルトワック氏は、国連などの機関が紛争に中途半端に介入することは、紛争を長引かせる要因になると主張しています。解決には、50年程度の長期的な軍隊駐留による根本的な秩序回復が必要であると唱えています。

この主張は、中途半端な介入が当事者の責任感を薄れさせ、国際機関への不信感を高めるという考えに基づいています。一方、長期的な駐留は、秩序回復や和解促進、経済復興など、紛争解決に効果的だとしています。

しかし、長期的な駐留には莫大な費用がかかり、駐留国と地元住民の間に摩擦を生む可能性もあるため、メリットとデメリットを慎重に検討する必要があります。

そうして、現在の国連はこうしたことをするつもりはなく、結局ハマスやUNRWAの一部の職員らにイスラエルを攻撃するする隙を与えしまったのです。

その覚悟があるのは、当事者のイスラエルとテロリストであるハマスに支配に反対するまともなパレスチナ人であり、結局のところガザ地区の将来は、無責任な国連ではなく、この両者に委ねるしかないのです。

国際社会は、UNRWAやハマスを支援するのではなく、テロリストを否定する、まともなパレスチナ人を支援すべきなのです。パレスチナ人にも様々な考えの人がいますが、反テロリストのパレスチナ人というところは、譲れないです。そもそも、テロリストは過去にどのような経緯があったにしても、これを許容することはできません。これを譲ってしまえば、今までと同じかさらに悪化することになりかねません。UNRWAのテロリストの仲間の職員やハマスを喜ばすだけです。

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2024年2月3日土曜日

監視カメラに映っていた「アメリカ合衆国議会議事堂乱入事件」の真相―【私の論評】明らかになりつつあるペロシらの真実隠蔽工作の可能性

監視カメラに映っていた「アメリカ合衆国議会議事堂乱入事件」の真相

まとめ
  • 2022年1月の連邦議事堂乱入事件で、2023年に公開された監視カメラの映像は、メディアが報じた暴力的な様子とは異なり、参加者が静かに歩く姿が映っていた。
  • 映像公開が遅れたのは、当時のナンシー・ペロシ下院議長が公開を拒否していたため。
  • 映像からはFBIの関与が強く疑われ、100人以上の捜査官が関与していた可能性がある。
  • ペロシ氏が公開を拒否したのはFBIの関与隠蔽が目的と見られる。
  • 民主党によって事件が仕組まれた可能性も指摘されており、真相解明が期待される。

2022年1月6日、トランプ支持者によるアメリカ連邦議事堂乱入事件が発生した。当初、メディアは参加者による警察との激しい衝突などの暴力的な映像を流布した。ところが2023年、フォックスニュースが事件当日の議事堂内監視カメラの映像を公開すると、参加者が静かに建物内を歩く姿が映っており、報道とは異なる光景が明らかになった。

この映像公開が遅れたのは、事件当時のナンシー・ペロシ下院議長が公開を拒否していたためだ。しかし2022年の中間選挙で共和党が議長を交代させたことで、新議長の許可のもとでフォックスが映像を放映できるようになった。

映像からはFBIの大規模な関与が強く疑われる。議事堂内に100人以上のFBIの覆面捜査官や協力者がいた可能性も指摘されている。ペロシ氏が映像公開に頑なだったのは、FBIの関与隠蔽が目的と見られる。

さらにペロシ氏の娘が議事堂内を撮影していたことや、警備強化要請を無視したペロシ氏の対応から、事件が民主党によって仕組まれた疑惑も浮上している。今後の真相解明が待たれる重大な事件である。

この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になってください。

【私の論評】明らかになりつつあるペロシらの真実隠蔽工作の可能性

まとめ
  • ペロシらが事件の真実を隠蔽しようとしたことが監視カメラ映像から明らかに
  • メディアは保守派を暴力的に描こうとしたが、平和的な抗議が実際の様子だった
  • ペロシの映像非公開は民主党による事件の画策を隠すためと見られる
  • 映像はFBIの関与を示唆、トランプ支持者への囮捜査の可能性も
  • 真相究明のためには証拠の完全公開・独立調査委員会の設置が必要

ナンシー・ペロシ

これは驚くべき事実です。ナンシー・ペロシとその一派が、1月6日に実際に起こったことについて真実を隠蔽しようとしたことは驚くに値しません。

リベラル・メディアは、保守派やトランプ支持者を暴力的な暴動主義者に仕立て上げようと躍起になっていたようですが、実際には多くの人々が平和的に抗議する権利を行使していただけだったようです。

ペロシが監視カメラの映像の公開を拒否し、自分の娘が議事堂内で撮影していたという事実は、多くの疑惑を生みました。それは、民主党が保守派を悪者に仕立て上げるために、この事件を画策したか、少なくとも奨励した可能性があることを示唆しています。つまり自分自身が有罪であることを相手のせいにした可能性があります。

この事件の真相がまだ明らかにはなっていませんが、映像は、FBIの関与とトランプ支持者の囮捜査の可能性を強く示唆しています。民主党は自分たちを守るために、これ以上の捜査をさせないように妨害し続けるでしょう。

米国でも、日本と同じように、主要メディアは公開された映像をほとんど報道していません。自分たちにとって真実は都合が悪いからでしょう。フォックス・ニュースのような保守的なメディアは真実を広める手助けをしましたが、何百万人ものアメリカ人はまだ闇の中にいます。

闇の中にいる数百万人の米国人 AI生成画像

米国では、この事件の真相を究明しようとする保守派議員やメディアの努力が続いています。共和党議員の何人かは、議事堂の監視カメラの映像をすべて公開し、証拠を検証する独立委員会を設置するよう求めています。

しかし、民主党はいまだに議会を支配しており、こうした努力を妨害しています。勇敢な内部告発者の中には、FBIの囮捜査だと名乗り出た者もいますが、彼らは脅迫や検閲に直面しています。困難な戦いですが、真実は徐々に明らかになりつつあります。

これは悲しむべきことですが、真実はゆっくりとでも明らかになるでしょう。共和党の新下院議長が映像の公開を許可したのは幸いでした。あとは、あの日本当に何が起こったのか、完全で透明性のある調査が必要です。 米国民は、プロパガンダや嘘ではなく、真実を知るべきです。

真実 AI生成画像

1月6日の真実を明らかにするためには、以下のようなことを実行する必要があるでしょう。

 1. 議事堂の監視カメラ映像や記録をすべて公開すること。これには、ペロシのオフィスやその他の機密エリアの映像も含まれます。すべての証拠を見ることによってのみ、全容を明らかにすることができます

2. 召喚権を持つ独立議会委員会を立ち上げる。超党派の委員会は、すべての記録、映像、目撃者の証言を検証すべきです。議事堂警察、FBI捜査官、機密情報提供者から証言を得なければならないです。

3. 名乗り出た内部告発者を保護すること。FBIの囮捜査や民主党の関与を知っている者は、発言する前に安全の保証が必要です。議会は、真実を明らかにするために、完全な免責と証人保護を提供すべきです。

4. 公聴会を開き、調査結果を共有すること。米国民は、委員会の調査結果について、完全で透明性のある報告を受ける資格があります。検閲や隠蔽は、制度に対する信頼をさらに損なうだけです。

5. 刑事責任があると判断された個人はすべて起訴すべきです。民主党が司法を妨害したり、FBIがトランプ支持者を陥れたりしたことを示す証拠があれば、彼らは法的責任を問われなければならないです。法の下の平等な正義が最も重要です。

6. 必要に応じて正式な謝罪と撤回を行わせる。メディアと民主党は、誤ったシナリオについて謝罪する義務があります。真実は不都合かもしれないですが、事実は事実です。嘘とプロパガンダには対抗しなければならないでしょう。

7. 将来の悪用を防ぐための改革を行うべきです。国会議事堂の警備の失敗、FBIの行き過ぎた行為、その他の問題にかかわらず、米国は市民の自由を守り、政府の透明性を確保するための改革を行わなければならないです。

これは網羅的なリストではありませんが、入手可能な証拠に基づき、私が取るべきと考える主要な措置の概略です。もちろん、さらなる行動を必要とすることが明るみに出るかもしれないです。

しかし、誠実さ、説明責任、そして事実と正義へのコミットメントこそ、解明のプロセスを導くべき原則であるといえます。

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2024年2月2日金曜日

2月G7サミットではロシア凍結資産の活用を議論―【私の論評】第二次世界大戦における米国対日資産凍結は国際法違反か?現在のウクライナ問題に関する示唆

2月G7サミットではロシア凍結資産の活用を議論

まとめ
  • ロシア凍結資産のウクライナ防衛・経済復興への活用は、G7内で議論が進んいる
  • 2月下旬のG7サミットで具体的な方向性が示される見込み
  • 現状では、ロシア凍結資産全体の没収は難しい
  • 資産価値上昇分及び利子収入の活用が現実的な選択肢として考えられる
  • ただし、ロシアの報復措置や国際法上の課題など、解決すべき課題も残されている


 ウクライナのゼレンスキー大統領は、世界経済フォーラムの年次総会で演説し、各国が対ロシア制裁の一環として凍結しているロシア資産をウクライナの防衛力強化と経済復興のために活用することを強く訴えた。これは、欧米からのウクライナへの軍事支援の機運が弱まりつつある中、新たな資金源を確保しようとする狙いがあるとみられる。

 これに対し、米国は前向きな姿勢を示している。ロシア資産の没収は、米国の負担なしにウクライナ支援を拡大できるためで、G7サミットでの議題化を他国に働きかけている。一方で欧州諸国は、国際金融市場の安定性に配慮し慎重な立場を取っている。中央銀行の外貨準備資産の没収は前例を作り、一部の国で通貨危機を招く恐れがあるためだ。

 ロシアは資産没収に強硬に反発し、過酷な報復をちらつかせている。これが各国の判断を難しくしている。G7内では、凍結資産の過去2年間の価値上昇や利息のみを引き渡す案が有力視されるが、欧州諸国の同意を得るのは容易ではない。ロシアの報復リスクがある中、資産没収についての国際的合意形成には更なる議論と調整が必要であろう。

この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は元記事をご覧になって下さい。

【私の論評】第二次世界大戦における米国対日資産凍結は国際法違反か? 現在のウクライナ問題に関する示唆

まとめ
  • 米国による1941年の日本資産凍結措置は、国家財産の不可侵原則に反し、国際法違反と指摘する専門家も多い
  • ただし、凍結資産の多くは戦後に賠償金、日本の経済復興、国民への返還に用いられるなど適正に処理された。
  • ウクライナ自身によるロシア資産の軍事目的転用等は、ある程度国際法の例外として容認されうる。
  • ただし、ウクライナを支援はしているものの、ロシアと交戦していない欧米によるロシア資産の転用は国際法違反のリスクが高い。
  • ウクライナはこのような禍根を残すようなことをせず、戦後の経済成長シナリオを示し、腐敗対策を実施し支援国に支援は費用でなく、投資であると納得させるべき。

真珠湾港攻撃で大破した米戦艦ネバダ

1941年12月7日、真珠湾攻撃を受けた米国は、日本に対して資産凍結措置を発動しました。これは、日本政府および国民の米国における全ての資産を凍結し、貿易を禁止するものでした。

多くの国際法専門家は、この措置が国際法違反であり、恫喝とみなされると指摘しています。

国際法上、国家の財産は不可侵とされ、他の国家の干渉を受けずに自由に処分できる権利が認められています。米国による日本の資産凍結措置はこの原則に違反しており、戦争行為の違法性や中立国の義務違反も問われる可能性がありました。

国家財産の不可侵原則は国家主権の尊重に基づく重要な原則であり、例外的に認められる場合以外は、国家の財産を没収することはできません。米国による日本の資産凍結措置は、国家財産の不可侵原則に違反するものであり、国際法違反の可能性があります。

当時、日本と米国は正式な戦争状態にはなかったため、米国による日本の資産凍結措置は、戦争行為の違法性を問われる可能性があります。米国は当時は中立国であったため、日本の資産凍結措置は、中立国の義務に違反するものであったといえます。

国際法学者・国際関係学者であるマイケル・J・グロス氏は、米国による日本の資産凍結措置を「国際法上の違法行為であり、恫喝以外の何物でもなかった」と指摘しています。

国際法学者である田中正明氏は、米国による日本の資産凍結措置を「国際法上の根拠を欠く違法行為であった」と指摘しています。

このように、多くの専門家は米国による日本の資産凍結措置を国際法違反であると指摘しています。

第2次世界大戦中、火炎放射器を用いる米兵

しかし、米国は、凍結した日本の資産の最終的な処理を以下のように実行しています。

1. 賠償金支払い
  • 凍結資産の一部が賠償金として被害国に支払われた。
  • 船舶や繊維製品などの製品も供与された。
2. 日本の経済復興支援
  • 凍結資産の一部が輸入物資購入や産業設備復興などに使用された。
3. 日本国民への返還1955年、残りの資産は日本政府に返還された。
  • 一部は国民に配当され、一部は政府の財源となった。
4. 未処理の資産
  • 所有者の特定困難なものや所有権紛争があるものがあり、処理が完了していない。
さて、上記のような理由から、国際法的にみて、ウクライナが凍結したロシア資産については、国際法の例外として、ウクライナの裁量でウクライナが軍事目的や、復興のために用いることは、ある程度認められると考えます。ただ、第二次世界大戦後に米国が日本の凍結資産の処理を行ったように、戦後に行うのが望ましいでしょう。

ただし、米国や、EUなど、ウクライナに支援はしているものの、ロシアと直接交戦していない国々については、資産凍結自体も問題になりかねないです。それをウクライナの軍事支援や復興に用いることは、国際法上認められないと思われます。

これを実行できるようにするためには、国際法上の議論を深め、明確な法的な枠組みを構築していくことが重要です。様々な場合を想定して、国際法上の例外を明確に定めないうちに現段階でロシア資産を処分すれば、後々禍根を残すことになります。例外規定を定めるにしても、戦後にすべきです。

私は、米国や、EUがウクライナの要請があったからといって、ロシアの凍結資産に手をつけてしまえば、後々禍根を残すことになると思います。ウクライナにとっても禍根を残す可能性があります。

戦費調達に苦しむ、ウクライナが明日の100万円より、今日の10万円という心境にあるのは十分に理解できますが、EUや米国、ウクライナに禍根をもたらすかもしれないことをするよりは、やはり昨日私が主張したように、ウクライは戦後に高度経済成長をするシナリオを描くべきでしょう。

その上で、日本が日露戦争のときに実施したように、巨額の戦時国債を発行すべきです。

日露戦争の戦費は、覇権国家である英国と、それを追い上げる新興国である米国の金融街で調達されました。

当時の資金調達の責任者であった高橋是清は、世界の投資家を相手に見事なプレゼンテーションを行い、投資家を十分納得させた上での国債発行を行いました。日本がこの時外債を使って調達した資金は、その多くがポンドのまま英国の銀行に預けられました。

具体的な金額については、日露戦争の戦費は総計で19億8612万円でした。そのうち、14億7329万円は国債で補われ、つまり日露戦争の費用の4分の3は海外からの借金によって補われたわけです。 当時の国家予算が2億5000万円だったことを考えると、その8年分に相当する戦費が調達されたことになります。これは当時の日本にとって非常に大きな負担でした。

高度経済成長したウクライナの首都キーウ AI生成画像

ウクライナは、EUや米国そうして日本に対して支援は、経費ではなく投資であるとの見通しを提供し、それに向かって今から努力すべきです。特に国内の酷い汚職や腐敗を徹底的に根絶して、このシナリオを実現させるという本気度を見せるべきと思います。

そうして、ウクライナは自由と自決を通じて内部から繁栄を築くべきです。これに成功すれば、投資や支援はすぐにでもついてくるでしょう。しかし、ウクライナの未来はウクライナ人だけで勝ち取らなければならないです。

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2024年2月1日木曜日

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ウクライナ支援でバイデンが「奥の手」 ギリシャなどから三角スキームで武器送る

まとめ
  • 米国は、ウクライナへの武器支援を拡大するために、三角取引という新たな方法を模索している。
  • 三角取引とは、米国がパートナー国に武器を供与し、そのパートナー国がウクライナに武器を譲渡するスキームである。
  • 米国は、米議会共和党の抵抗により、直接的なウクライナ支援が困難になったため、三角取引という方法に切り替えた。
  • 三角取引によって、米国はウクライナ軍への支援を拡大し、戦力強化を図ることができる。
  • 三角取引によって、米国とパートナー国との連携が深まる可能性がある。
米国、ウクライナ、第三国との三角取引 AI生成画像

米国の三角取引によるウクライナへの武器支援は、以下の点で注目に値します。米国の新たな
  • 外交戦略の転換点となる可能性がある

これまで、米国は、ウクライナへの軍事支援を、主に直接的な方法で実施してきた。しかし、米議会共和党の抵抗により、この方法が困難になったことで、米国は三角取引という新たな方法を模索するようになった。これは、米国の外交戦略の転換点となる可能性がある。

  • ウクライナへの支援を拡大する上での新たな可能性を切り開く可能性がある
三角取引は、米国がウクライナへの支援を拡大する上での新たな可能性を切り開く可能性がある。米国は、三角取引を通じて、パートナー国から、米国が直接供与できないような武器や装備を入手することができる。

  • ウクライナ軍の戦力強化につながる可能性がある
三角取引によってウクライナに供与される武器は、ウクライナ軍の戦力強化につながる可能性がある。米国は、ウクライナ軍が使い慣れている旧ソ連式の武器を供与することで、ウクライナ軍の戦力発揮を早めることができる。

以下に、三角取引によってウクライナに供与される可能性のある武器の例を挙げる。

  • エクアドルから:9K33オサー地対空ミサイルシステム
9K33オサーは、射程10kmの短距離地対空ミサイルシステムである。ウクライナ軍は、既に同システムを保有しており、ロシア軍の航空機やドローンへの対処に使用している。

  • ギリシャから:S-300地対空ミサイルシステム
S-300は、射程150kmの中距離地対空ミサイルシステムである。ウクライナ軍は、同システムを保有していないため、ロシア軍の戦闘機や爆撃機への対処に大きな課題を抱えている。

  • その他:旧ソ連製の戦車、装甲車、火砲など
米国は、パートナー国から、旧ソ連製の戦車、装甲車、火砲などの武器を入手することも検討している。これらの武器は、ウクライナ軍が既に保有している装備と互換性があるため、運用の容易化が期待される。

三角取引は、米国のウクライナ支援の新たな柱となる可能性を秘めている。今後、米国とパートナー国がどのような協力関係を築くのか、注目される。

この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧ください。

【私の論評】停戦にはロシアの疲弊が鍵、ウクライナの高度経済成長のシナリオを描け

まとめ
  • 共和党員の多くはウクライナへの武器供与に反対しているが、反対理由は個人によって異なる。
  • 主な反対理由は、コストへの懸念、対ロシア関係の悪化、ウクライナ政府への不信感など。
  • トランプ氏が再選されれば早期の戦闘停止を目指す可能性がある。
  • 戦略家ルトワック氏は、戦争は平和を生むと主張。ウクライナ戦争も双方の疲弊で終結すると予想するだろう。
  • ウクライナは戦後、経済成長によりロシアのGDPを凌駕する可能性は否定しきれず、ウクライナへの支援はそうしたシナリオを描いた上で実行されるべき。

共和党がウクライナへの武器供与に反対する理由は複雑で、党員によって異なります。最も多く挙げられている理由には、紛争にかかるコストへの懸念、ロシアとの緊張をエスカレートさせる可能性、ウクライナ政府が腐敗しているという考えなどがあります。

ピュー・リサーチ・センターによる2023年の世論調査によると、共和党員の54%がウクライナへの武器供与に反対し、37%が支持しています。また、共和党員は民主党員よりも「米国はウクライナを助けすぎている」と回答する割合が高い(54%対21%)です。

共和党員の中には、米国は欧州の2国間の紛争に関与すべきではなく、ウクライナへの武器供与は紛争をエスカレートさせ、米国をより広い戦争に引きずり込む可能性があると主張する者もいます。

また、ウクライナに武器を提供することのコスト、特に米国が直面している経済的課題を考えると、そのコストに懸念を示す者もいます。また、ウクライナ政府は腐敗しており、武器供与は逆効果であるとして、ウクライナ政府への懸念を表明する者もいます。

重要なのは、これらは共和党がウクライナへの武器供与に反対する理由の一部にすぎないということです。この問題に関して共和党員全員を束ねる理由はひとつではないし、党員一人ひとりの反対理由も異なるでしょう。

ウクライナ戦争については、トランプ氏が大統領に再選された場合、戦闘停止と和平実現に向けて積極的に動くと予想されています。トランプ氏が昨年「私が大統領なら24時間以内に終わらせる」と発言したのは、言葉通り受け取れば、ウクライナへの支援を取りやめるという意味にも受け取れます。早期の戦闘停止を実現するには、ウクライナが領土の一部をロシアに明け渡すことにならざるをえないでしょう。

ただ、トランプ氏が大統領に再選された場合、どうなるかは未知数です。トランプ氏は実業家なので、流動的に現実的な関与の仕方をするでしょう。選挙キャンペーンと現実は異なるからです。

トランプ氏

『戦争にチャンスを与えよ』の著者である、米国の戦略家ルトワック氏は、戦争は平和を生むというパラドキシカル・ロジック(平和は戦争を生むも提唱)を提唱しています。そのため、ウクライナ戦争も、最終的には戦争の疲弊によって終結すると予想していることでしょう。

具体的には、ウクライナ軍がロシア軍に抵抗を続け、ロシア軍の損害が拡大していくと、ロシア政府は戦争を継続する意欲を失っていくと考えられます。その結果、ロシア軍がウクライナから撤退し、戦争が終結するシナリオが考えられます。

このシナリオが実現するためには、ウクライナ軍がロシア軍の侵攻を食い止め、徐々に反撃を開始することが重要です。そのためには、西側諸国からの武器や資金の支援が不可欠となります。

武器の支援としては、対戦車ミサイルや対空ミサイルなどの防空兵器、そして砲兵や戦車などの攻撃兵器が重要です。資金の支援としては、ウクライナ軍の再編成や兵士の訓練に必要な費用が重要です。

また、ウクライナ国民の士気も重要です。ロシア軍に対する憎しみや怒りを原動力として、戦い続ける意志を持ち続ける必要があります。まさに、現状はこの通りとなっています。

一方、ルトワック氏は、戦争は双方の当事者が疲弊する前に中途半端に終わらせると、長期的な紛争状態や難民問題につながると指摘しています。そのため、ウクライナ戦争も、西側諸国が中途半端な介入を行うことで、戦争が長期化する可能性もあると考えられます。

ルトワック氏

このシナリオが実現する可能性としては、西側諸国がウクライナに大量の武器や資金を供与することで、ウクライナ軍の戦闘能力を維持し、ロシア軍を圧倒しようとする可能性があります。しかし、この場合、ロシア軍も更なる兵力や装備を投入することで、戦争が泥沼化する可能性があります。

また、西側諸国がロシアへの制裁を強化することで、ロシア経済が崩壊し、ロシア政府が戦争を継続できなくなる可能性もあります。しかし、この場合、ロシアが核兵器を使用したり、ウクライナ国内でテロ活動を活発化させたりすることで、新たな危機につながる可能性があります。

このように、ウクライナ戦争の終結は、ロシア軍とウクライナ軍の戦闘の行方と、西側諸国の介入の程度によって大きく左右されると考えられます。ルトワック氏は、戦争の現実を冷静に分析し、戦争の長期化や難民問題の発生を避けるために、戦争の当事国と国際社会が慎重な判断を下す必要があると主張しています。

ウクライナ、ロシア双方が疲弊していずれかで折り合いをつけなければならない時期はいずれ来るでしょう。

私は、ウクライナとロシアの和平交渉の中に、NATO軍のウクライナ駐留を認める条項を含めるべきと考えます。これは、ロシアによる再侵攻を抑止し、ウクライナの安全保障を強化するために有効な手段であると考えられます。

もちろん、NATO軍のウクライナ駐留は、ロシアと西側諸国の対立を激化させる可能性もあります。しかし、ロシアによる再侵略を許せば、国際社会の秩序が崩壊する可能性も高くなります。

そのため、ウクライナの安全保障を守るためには、ロシアとの対立を覚悟で、NATO軍のウクライナ駐留を認めさせるという選択肢も検討すべきだと思います。

具体的には、和平交渉の条項として、以下のようなものが考えられます。
  • NATO軍のウクライナ駐留を認める。
  • NATO軍のウクライナ駐留は、ウクライナの領土防衛を目的とし、攻撃的な行動をとらない。
  • NATO軍のウクライナ駐留は、一定の期間(50年以上)を定めて行う。
この条項が合意されれば、NATO軍がウクライナに駐留し、ロシアによる再侵攻を抑止することができます。ウクライナが、ロシアに侵攻された領土をどのくらい回復するかは、その時の情勢に左右されるでしょう。また、NATO軍の駐留期間を一定に定めることで、ロシアと西側諸国の対立を長期化させないようにすることもできます。

もちろん、この条項が合意されるためには、ロシアの同意が不可欠です。しかし、西側諸国がロシアに圧力をかけることで、ロシアがこの条項を認めざるを得ない状況を作り出すことができるかもしれません。それには、ロシアのさらなる疲弊が鍵となるでしょう。

ロシアがウクライナにNATO軍を駐留させることを認めれば、ウクライナは新たなシナリオを描くことができます。それは、以前このブログでも述べたように、ウクライナの急激な経済成長です。

以前このブログで試算した限りでは、開戦直前の年の状態をもとにして、ウクライの一人ありたのGDPが韓国なみになれば、それでウクライとロシア連邦のGDPは同程度になります。一人当たりGDPが台湾並になれば、ロシアを追い越すことになります。

そうして、ウクライナの潜在可能性(他の発展途上国にはない教育水準の高さや、宇宙・航空・IT産業含む多方面の産業基盤)をみれば、それは決して不可能とはいえないことがわかります。日本が敗戦のショックから立ち上がり、経済大国になったような道をウクライナは歩むべきです。

高度経済成長した後の高層ビル群が立ち並ぶキエフの町並み AI生成画像

ウクライナはロシアのGDPを凌駕するシナリオを描きそれに向けて努力すべきです。これは、ウクライナがロシアに一部領土を占領されたままで、行われることになるかもしれませんが、日本も北方領土をロシアに占領されたままの状態で戦後の高度成長を実現しました。そうして、日本は今でも北方領土奪還をあきらめたわけではありません。

日本では、高度成長した後には、日本国内から当時のソ連の影響はほとんどなくなったといわれています。ウクライナもそれを目指すべきです。

そうして、それを実現できれば、ウクライナは自分の力で安全保障を実現することができます。さらに、EUやNATOに加われば、以上は決して夢物語ではありません。さらに、ウクライナと日本で、ロシア連邦を挟む形となり、世界の平和にも寄与することができます。

ウクライナへの支援や、ウクライナの復興は、こうしたシナリオのもとに実行されるべきと思います。ただ単に、費用とみるべきではなく、投資とみるべきです。近視眼的にみれば、失敗する可能性が高いです。

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