2024年7月16日火曜日

「改造車内で若い兵士の腎臓と眼球摘出」 元中国医師が「臓器狩り」証言、台湾で会見―【私の論評】中国の臓器移植問題:非人道的行為の実態と国際的懸念の高まり

「改造車内で若い兵士の腎臓と眼球摘出」 元中国医師が「臓器狩り」証言、台湾で会見

まとめ
  • 台湾の立法委員と民間団体が、中国での違法な臓器移植の横行を指摘し、各国に規制法の制定を呼びかけた。
  • 元中国軍医の鄭治氏が、1994年に目撃した18歳未満の兵士からの臓器摘出の実態を証言した。
  • 中国当局による「臓器狩り」の対象には、法輪功信者やウイグル人、チベット人が含まれているとの指摘がある。
  • カナダの報告書によると、中国当局は年間6万〜10万件の臓器移植を実施していると推計されている。
  • 台湾の政治家らは、中国の臓器収奪を規制するための法整備を進める意向を示している。
中国軍の病院に勤務していた際の生体臓器摘出について証言する鄭治氏(中央)=15日

 台湾の政治家と民間団体が中国における非合法な臓器摘出と移植の横行を指摘し、各国に規制法の制定を呼びかける記者会見を開きました。この会見で、元中国軍医の鄭治氏が1994年に目撃した衝撃的な臓器摘出の実態を証言しました。鄭氏は、18歳未満の兵士から臓器を摘出し軍高官に移植する「秘密軍事任務」に参加させられ、改造車両内で麻酔なしに若い兵士から腎臓と眼球を摘出する手術を目撃したと語りました。

 中国当局による「臓器狩り」の対象には、法輪功信者やウイグル人、チベット人が含まれているとの指摘があり、カナダの報告書によると中国当局は年間6万〜10万件の臓器移植を実施していると推計されています。国連人権理事会が中国に独立機関による調査を求めましたが、中国側は否定し拒否しました。

 これらの深刻な問題に対し、台湾の政治家らは中国の臓器収奪を規制するための法整備を進める意向を示しています。この記事は、中国における非合法な臓器摘出の実態と、それに対する国際社会の懸念や対応を明らかにしています。

 この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になってください。

【私の論評】中国の臓器移植問題:非人道的行為の実態と国際的懸念の高まり

まとめ
  • 麻酔なしの臓器摘出は非人道的で、医療倫理に反する重大な人権侵害行為である。
  • 中国では「脳死誘発器」の存在が報告され、臓器移植のためのドナーを人為的に作り出している可能性がある。
  • 中国の臓器移植急増の背景には、強制的な臓器摘出や死刑囚からの臓器摘出、大規模な営利事業化などの要因がある。
  • 中国の臓器移植システムには不透明性があり、国際社会からの批判と疑惑が高まっている。
  • この問題は医療倫理と人権の観点から国際的な懸念事項となっており、継続的な調査と監視が必要である。
腎臓の移植手術を行う医師ら。移植を待つ患者は毎年約30万人に上る=2019年2月、中国湖南省衡陽市

麻酔なしに腎臓や眼球を摘出することは、医学的に正当化できない非人道的で残虐な行為です。通常の医療行為では、患者の苦痛軽減と手術の安全性向上のために必ず麻酔が使用されます。

しかし、この事例では麻酔を使用しないことに特別な意図があったと考えられます。残虐性を強調し、極限状況下での軍事的訓練の一環として行われた可能性や、非倫理的な人体実験であった可能性、さらには被害者や周囲の人々に恐怖を植え付け支配を強化する手段であった可能性などが考えられます。

これらの行為は医療倫理に反し、基本的人権を著しく侵害する重大な犯罪行為です。このような非人道的な行為は、たとえ戦時中の極端な状況下であっても決して正当化されるものではありません。

こうした証言は、戦争犯罪や人道に対する罪の実態を明らかにし、将来同様の事態が起こらないようにするための重要な記録となります。同時に、医療倫理や人権の重要性を再認識させ、平和の尊さを訴える強力なメッセージとなるのです。

ただ、この臓器を取られた若い兵士は、すでに脳死状態にあった可能性もあります。2022年4月、アメリカの非営利団体「世界臓器狩り調査委員会(WOIPFG)」が、中国の病院で使用されている「脳死誘発器」の存在を報告しました。この機器は、生きている人間を人為的に脳死状態にし、臓器摘出を可能にするものだとされています。

この報告によると、中国の複数の病院で、この機器が使用されているとのことです。機器の使用目的は、臓器移植のためのドナーを「作り出す」ことにあると考えられています。この情報は、中国の臓器移植システムにおける倫理的問題をさらに深刻化させるものです。強制的な臓器摘出や、同意のない臓器提供の疑惑に加え、このような機器の存在は、人権侵害の可能性をさらに高めています。

しかし、中国政府はこれらの疑惑を否定し続けており、独立した調査も拒否しています。国際社会からは、中国の臓器移植システムの透明性向上と、これらの深刻な疑惑に対する適切な対応が強く求められています。この問題は、医療倫理と人権の観点から極めて重大であり、継続的な調査と国際的な監視が必要です。

人を人為的に脳死状態にするという機器の模型

中国の臓器移植が急増した背景には、複数の深刻な要因が絡み合っています。まず、中国政府が危険視する集団、特に法輪功学習者やウイグル人、チベット人などからの強制的な臓器摘出が行われているとの指摘があります。また、中国は世界最大の死刑執行国であり、死刑囚からの臓器摘出が長年行われてきました。2015年に停止を宣言しましたが、実際の遵守状況は不明瞭です。

さらに、中国では臓器移植が「1兆円ビジネス」と呼ばれるほどの大規模な営利事業となっており、海外からの富裕な患者を引き付けています。特に注目すべきは、中国での心臓移植の待機期間が平均1〜2ヶ月と極端に短いことです。これは通常の臓器提供システムでは説明がつかず、不自然な臓器供給源の存在を示唆しています。


また、中国は米国以上の移植大国でありながら、国際学術誌に移植関係の論文が掲載されないのは、ドナー情報を明らかにできないためと考えられています。2013年には中国共産党が国家臓器流通システムを構築し、臓器移植の管理を強化しました。

これらの要因が複雑に絡み合い、中国の臓器移植数が急増する一方で、国際社会からの批判と疑惑も高まっています。中国政府は強制的な臓器摘出の疑惑を否定していますが、独立した調査を拒否しており、実態の解明が強く求められています。この問題は、医療倫理と人権の観点から国際的な懸念事項となっており、透明性の確保と適切な対応が急務となっています。

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2024年7月15日月曜日

都知事選予測が的中 石丸氏の浮動票は驚くようなことではない 前例に東国原氏 高橋洋一―【私の論評】高橋洋一氏の驚異的な選挙予測と石丸伸二氏の政治家適性:為替アナリストの経歴が政治にもたらす影響

都知事選予測が的中 石丸氏の浮動票は驚くようなことではない 前例に東国原氏 高橋洋一

日本の解き方

まとめ
  • 小池百合子氏が3選を果たし、SNSで知名度を上げた石丸伸二氏が2位、蓮舫氏が3位となった。高橋洋一氏は、小池氏の浮動票が石丸氏に流れたと分析し、選挙結果をほぼ正確に予測した。
  • 高橋氏の予測方法は、投票率の推計と候補者ごとの票の性質(基礎票・浮動票)分析に基づいていた。
  • SNSを活用した若者層への浸透戦略は効果的だが、それだけでは都知事選勝利には不十分。
  • 若者層の支持が自民党から離れている中、石丸氏はその層をうまく取り込んだが、選挙後の対応で支持を失う可能性がある。

 小池百合子氏は3選を果たし、62のすべての自治体で他の候補を上回る票を獲得した。NHKの出口調査によると、小池氏の都政運営に対する評価は肯定的で、67%が「大いに評価する」または「ある程度評価する」と回答している。小池氏は自民党、公明党、都民ファーストの会の支持層を固めつつ、無党派層の30%以上からも支持を得た。特に40代以上の年齢層で強い支持を集めた。

 石丸伸二氏は2位となり、特に世田谷区、渋谷区、中央区などで27%以上の得票率を記録した。朝日新聞の出口調査によると、石丸氏は無党派層から36%の支持を得て、候補者中最多だった。また、維新支持層の41%、国民民主支持層の約4割からも支持を集めた。

 蓮舫氏は3位に終わったが、128万3262票(得票率18.81%)を獲得し、前回2020年の都知事選と比較して得票数で1.52倍、得票率で5.05ポイント増加した。蓮舫氏は武蔵野市、国立市、多摩市などで20%を超える得票率を記録した。

 選挙戦では、小池氏の2期8年の都政運営の評価が主な争点の一つとなった。石丸氏は「既存の政党に属さない人間が東京の知事になれば世界が一変する」と訴え、若者層を中心に支持を集めた。蓮舫氏は市民と野党の共同候補として戦い、共産党を含む多くの支援を得たことを「財産」と評価している。

 この選挙結果を受けて、立憲民主党と連合の幹部が会談し、蓮舫氏が3位に終わったことについて敗因分析を行うことになった。今回の都知事選は、既存政党や今後の国政選挙にも影響を与える可能性があり、特にSNSを活用した選挙戦略や無党派層の動向が注目されている。

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【私の論評】高橋洋一氏の驚異的な選挙予測と石丸伸二氏の政治家適性:為替アナリストの経歴が政治にもたらす影響

まとめ
  • 高橋洋一氏の東京都知事選予測は、投票率の正確な推計と候補者ごとの票の性質分析に基づき、驚くべき正確さを示した。
  • 石丸伸二氏は三菱UFJ銀行の為替アナリストとしての経歴を持つが、為替アナリストの短期的予測業務は博打的性質を持つと高橋氏は指摘している。
  • 政治家が博打的な思考や行動をとることは、国民の利益を損なう危険性があり、政治家としての信頼性や責任に反する。
  • 石丸氏の発言や行動には、為替アナリスト時代の博打的な考えが影響している可能性があり、政治家としてふさわしくない面がある。
  • 政治家には長期的視野、公正さ、信頼性、法令遵守の精神が求められ、博打的要素はこれらを損なう可能性が高いため、石丸氏の政治家としての適性に疑問が残る。
高橋洋一氏

高橋洋一氏の東京都知事選の結果予測は驚くべき正確さを示しました。その予測方法の核心は、まず投票率を正確に推計することにありました。高橋氏は期日前投票が有権者の約20%であることを踏まえつつ、投票日当日の天候などの要因も考慮して、全体の投票率を61%と予測しました。実際の投票率が60.62%だったことを考えると、この予測はかなり的確だったと言えます。

次に、高橋氏は候補者ごとに票の性質を分析しました。小池氏については基礎票と浮動票の両方を持つと考え、石丸氏は主に浮動票を、蓮舫氏は基礎票を中心に獲得すると予測しました。この分類に基づいてモデルを構築し、計算を行ったのです。

公選法の規定を考慮し、高橋氏は直接的な予測公表を避ける工夫をしました。投票前にX(旧Twitter)で「珍しい4つの素数」として11、13、17、29を投稿したのですが、これらの数字は実際には予想得票数(単位:10万人)を示していました。この暗号的な手法は、法的問題を回避しつつ予測を公表する巧妙な方法でした。

結果として、高橋氏の予測は実際の投票結果と非常に近いものとなりました。小池氏については予測290万票に対し実際291万票、石丸氏は予測170万票に対し実際165万票、蓮舫氏は予測130万票に対し実際128万票、その他は予測100万票に対し実際102万票となり、いずれも誤差は小さいものでした。

高橋氏の予測方法の特徴は、投票率の正確な推計、候補者ごとの票の性質(基礎票か浮動票か)の綿密な分析、そして過去の選挙データや現在の政治状況の詳細な検討にあると考えられます。特に小池氏と蓮舫氏の得票数予測が非常に正確であり、全体としても高い精度を示しています。この予測手法は、選挙分析や世論調査の分野で注目に値する成果であり、今後の選挙予測にも大きな影響を与える可能性があります。

石丸伸二氏は三菱UFJ銀行で為替アナリストとして働いていました。彼は2014年に初代ニューヨーク駐在員として赴任し、アメリカ大陸の主要9か国25都市で活動していました。その後、広島県安芸高田市長に選出され、政治家としても活躍しました。

石丸伸二氏

ただ、私自身は石丸氏の過去の経歴からみても政治家にはふさわしくないと思います。

長期的な為替レートは「世界に流通している円全体の価額 ÷ 世界に流通しているドル全体の価額」(円/ドル)という式で決まるとされています。しかし、中・短期的には様々な要因が絡み合うため、為替レートの予測は非常に困難です。

高橋氏は為替レートの短期的な予測を「競馬と同じ」と表現しており、予測の不確実性を強調しています。この見解に従えば、為替アナリストが行う短期的な為替予測は、実質的に博打と同様の性質を持つと言えます。アナリストは様々なデータや情報を分析しますが、予測不可能な要素が多いため、その予測は確実性に欠けます。

結果として、為替アナリストの短期的な予測は、情報に基づいた推測にすぎず、博打打ちの行為と本質的に変わらない可能性があります。したがって、高橋氏の見解に基づけば、為替アナリストの短期的な予測業務は、高度な分析を行っているように見えても、実質的には博打と同様の不確実性を持つ活動だと解釈できます。

ただし、長期的なトレンド分析や経済指標の解説など、より確実性の高い情報提供については、依然として意義があると考えられます。

しかし、中短期的な為替の予測をなりわいとする為替アナリストは、博打打ちといってもよく、政治家が博打的な思考や行動をとれば、国民の財産や生活に直結する政策決定において、不確実性の高い選択をしてしまう危険性があります。石丸氏にもこうした為替アナリスト時代の習慣や感覚が身についている可能性は高いです。

安芸高田市や選挙中や選挙後の石丸氏の発言は、とうてい常人の考えも及ばないところがあます。それは、博打打ち的な考えに石丸氏が支配されている可能性を示していると思います。


また、博打的な考え方をすることにより、政治家個人の金銭的な問題や倫理的な問題を引き起こす可能性もあります。これらは政治家としての信頼性を大きく損なう要因となります。さらに、政治家には長期的な視野で国や地域の発展を考える責任があります。

博打的な思考は短期的な利益を追求しがちで、この責任と相反します。また、政治家は法律を作る立場にあるため、博打的な考え方をすることは、法治国家の理念にも反します。したがって、博打打ちの性質や行動は、政治家に求められる公正さ、信頼性、長期的視野、法令遵守の精神と相容れません。政治家には冷静な判断力と高い倫理観が求められ、博打的な要素はそれらを損なう可能性が高いため、ふさわしくないと言えます。

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2024年7月14日日曜日

トランプ氏集会で発砲音 負傷か、拳突き上げ会場去る―【私の論評】トランプ前大統領銃撃事件2024:最新情報と歴史的考察 - 暗殺の真の影響とは

トランプ氏集会で発砲音 負傷か、拳突き上げ会場去る


 11月の米大統領選で返り咲きを狙う共和党のトランプ前大統領(78)が東部ペンシルベニア州バトラーで開催した支持者集会で13日、トランプ氏の演説中に複数の発砲音があり、現場からの映像によると同氏は壇上に伏せる格好で倒れ込んだ。

 トランプ氏はその後、警備にあたるシークレットサービス(大統領警護隊)に支えられて車両に乗り、会場を後にした。同氏は立ち上がる際に拳を突き上げる仕草をみせた。

 米メディアは、トランプ氏がけがを負ったと伝えた。現場では聴衆から大きな悲鳴が上がった。

【私の論評】トランプ前大統領銃撃事件2024:最新情報と歴史的考察 - 暗殺の真の影響とは

まとめ
  • トランプ前大統領の選挙集会で銃撃事件が発生し、トランプ氏は右耳付近を負傷した。
  • 容疑者は死亡したとされるが、詳細な情報は限られている。
  • 事件により会場は騒然となり、トランプ氏は警護下で退避した。
  • トランプ氏は声明を発表し、被害者への哀悼の意を表すとともに、事件の詳細を説明した。
  • 歴史的に見て、暗殺は意図した政治的目的を達成することはほとんどなく、むしろ逆効果をもたらすことが多い。

まずは、集会で亡くなった方のご家族の皆様に深い哀悼の意を表すとともに、重傷を負われた方々の一日も早い回復をお祈り申し上げます。

2024年7月13日、アメリカ東部ペンシルベニア州で行われていたドナルド・トランプ前大統領の選挙集会で銃撃事件が発生しました。以下に現時点での情報をまとめます:

## 事件の概要

- トランプ氏が演説を行っているさなかに、複数の発砲音が聞こえました[1][5]。
- 銃声は断続的に10発ほど聞こえたとされています[1]。
- トランプ氏は演台の下にしばらく伏せたような格好になりました[1]。

## トランプ氏の状況

- トランプ氏は警備にあたるシークレットサービスに支えられながら会場から退避しました[1][4]。
- 退避する際、トランプ氏は拳を上げるしぐさをしましたが、右耳のあたりから血が流れているのが確認されました[1]。
- CNNテレビはトランプ氏がけがをしていると伝えています[1]。
- トランプ陣営は「無事」との声明を出しています[4]。


## 犠牲者情報

- AP通信は、地元の司法当局者の話として、「銃を発砲した疑いがある人物は死亡した」と伝えています[1]。
- 米紙ワシントン・ポストは、容疑者が死亡したと報じています[2]。
- CNNは、銃撃犯と観客1名が死亡したと報じています[3][6]。

## 現場の状況

- 集まった人たちはその場で身を屈めていました[1]。
- 現場では叫び声が響き渡り、会場は騒然としていました[1]。
-トランプ氏は事件に関する声明を発表しています(以下)[7]

以下日本語に翻訳したものを掲載します。
ドナルド・J・トランプ
@realドナルド・トランプ
ペンシルベニア州バトラーで起きたばかりの銃撃事件に対する
迅速な対応に対し、米国秘密情報局と法執行機関の
皆様に感謝したいと思います。最も重要なことは、集会
で亡くなった方のご家族と、重傷を負われた方のご家族
にお悔やみを申し上げたいということ
です。このような行為が我が国で起こり得るとは信じ
られない。銃撃犯については現時点では何も分かっ
ておらず、現在死亡している。右耳の上部を銃弾で
貫かれました。ヒューヒューという音と銃声が聞こえ、
弾丸が皮膚を突き破るのをすぐに感じたので、何かが
おかしいとすぐにわかりました。大量の出血があった
ので、何が起こっているのかその時わかりました。
ゴッド・ブレス・アメリカ!
## 背景情報

- アメリカでは過去にも政治家を標的としたテロや暗殺が繰り返されてきました[4]。
- 1963年のケネディ大統領暗殺、1968年のロバート・ケネディ上院議員暗殺、1981年のレーガン大統領暗殺未遂事件などが挙げられます[4]。

この事件は現在進行形で情報が更新される可能性が高いため、今後も続報に注目する必要があります。

引用:
[1] https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240714/k10014511201000.html
[2] https://mainichi.jp/articles/20240714/k00/00m/030/023000c
[3] https://www.cnn.com/politics/live-news/election-biden-trump-07-13-24/index.html
[4] https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN1405Y0U4A710C2000000/
[5] https://jp.reuters.com/world/us/MPV37ZXXXBIYPJVUIOB2L4ZCWY-2024-07-13/
[6] https://www.nytimes.com/live/2024/07/13/us/biden-trump-election

容疑者に関する情報は現時点で限られています。ニューヨークポスト紙の報道によると、容疑者は中国人とされ、トランプ氏の演説中に演壇から離れた場所から発砲したとされています。複数の銃声が聞こえたという証言があります。

容疑者の状況については、死亡したという報道と、制圧されたという情報があり、詳細は不明です。シークレットサービスのスナイパーによって射殺されたという報道もあります。容疑者の身元や動機に関する詳細情報はまだ公表されておらず、この事件は暗殺未遂として捜査が進められているようです。今後の捜査の進展により、さらなる情報が明らかになる可能性があります。

暗殺は特定の意図を持って実行されますが、歴史的に見ると、暗殺が成功しようがしまいが、その目的を達成することはほとんどありません。むしろ、意図した結果とは逆の効果をもたらすことが多いのです。

例えば、1914年のフランツ・フェルディナント暗殺事件は第一次世界大戦の引き金となり、1963年のケネディ大統領暗殺は彼の理想をさらに強化しました。1968年のキング牧師暗殺も公民権運動を止めることはできませんでした。

日本の事例では、1932年の五・一五事件での犬養毅首相暗殺が軍部の影響力を強め、日本を戦争への道へと導きました。

2022年7月の安倍晋三元首相暗殺事件については、その影響は複雑で多面的です。事件の影響は現在も進行中であり、慎重に観察し評価する必要がありますが、首謀者の意図は成就されることはないでしょう。

このように、暗殺は短期的には衝撃を与えますが、長期的には意図した政治的変化をもたらすことはほとんどなく、むしろ予期せぬ結果をもたらすことが歴史的に示されています。今回のトランプ氏暗殺未遂事件も例外とはならないでしょう。

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2024年7月13日土曜日

バイデン大統領の衰退が国際危機を生む―【私の論評】バイデン大統領の認知能力低下と米国の危機:新たな指導者の必要性と世界秩序への影響

バイデン大統領の衰退が国際危機を生む

まとめ
  • アメリカの現職大統領の明らかな能力弱化は国際危機をも生みかねない。
  • 反米陣営が対米警戒を減らして、より大胆な侵略や膨張の行動に出る危険が生まれた。
  • 不法入国者問題、露中朝イランの反米的な行動の激化を懸念する声も。


 バイデン大統領の認知能力の衰えが顕著になり、民主党内からも撤退を求める声が上がっている状況は、単なる国内政治の問題にとどまらず、国際的な影響を及ぼす可能性がある。大統領の能力低下は、国際的な危機を引き起こす潜在的な要因となり得る。特に懸念されるのは、中国やロシアなどの反米勢力が、バイデン大統領の弱みにつけ込む危険性が高まっていることだ。

 歴史的に見ても、アメリカの大統領選挙の年は国際的な異変が起きやすい傾向がある。今回の状況は、アメリカでの大統領選挙による空白や混乱が、バイデン大統領の衰退によってさらに強調されている。これにより、アメリカの国際的な指導力や軍事抑止力が弱くなったと判断する材料を、対立的な立場の国々に提供してしまっている可能性がある。

 専門家らは、バイデン大統領の衰退により、様々な危険な動きが起こる可能性を指摘している。例えば、メキシコ国境からの危険分子の侵入増加、ロシアの反米的行動の激化、中国の反米的言動の増加、北朝鮮の対外姿勢の強硬化、イランとその傘下のテロ組織の活動の活発化などが懸念されている。これらの推測は、アメリカの国際的な影響力の低下と、反米勢力の台頭を示唆しており、国際秩序の不安定化につながる可能性がある。

 このような分析は、バイデン大統領の個人的な状況が、より広範な国際的な安全保障の問題につながる可能性があることを強調している。大統領選挙の結果や、バイデン氏の今後の対応が、単にアメリカ国内の政治だけでなく、世界の安全保障環境にも大きな影響を与える可能性がある。したがって、この問題は慎重に観察し、対応していく必要があるだろう。

 この記事は、元記事の要約です。詳細は、元記事をご覧になって下さい。

【私の論評】バイデン大統領の認知能力低下と米国の危機:新たな指導者の必要性と世界秩序への影響

まとめ
  • バイデン大統領の認知能力低下が米国の国益と世界秩序の安定を脅かしている。
  • 外交政策の失敗(アフガニスタン撤退、ウクライナ対応、イラン核問題、日本のLGBT法への介入など)が顕著。
  • エネルギー政策(キーストーンXLパイプライン中止など)が米国の経済と安全保障を危険にさらしている。
  • バイデン大統領は安倍元首相の決断を見習い、国家の利益のために退くべき。
  • 民主党は新たな候補者を擁立し、エネルギー自立、国境管理、毅然とした外交政策を実行すべき。
米民主党は、米国の国益と世界秩序の安定のために、即刻バイデン大統領に代わる新たな候補者を擁立すべきです。これは単なる政治的駆け引きの問題ではなく、国家の安全保障と世界の安定に関わる緊急の課題です。

アフガニスタンの首都カブールからカタールに向け出発した米空軍の大型輸送機の機内。米空軍提供(2021年8月15日撮影)。

バイデン大統領の認知能力低下は、もはや隠しようのない事実となっています。アフガニスタンからの無秩序な撤退、ロシアのウクライナ侵攻に対する優柔不断な対応、イランの核開発を事実上容認する弱腰外交など、その影響は国際社会全体に及んでいます。

特に懸念すべきは、日本のLGBT理解増進法への不適切な介入です。バイデン政権は、自国内で実現できていないLGBT関連の連邦法を、同盟国である日本に押し付けようとしました。

これは日本の国内事情や文化的背景を無視した、一方的な圧力です。日本の法案は、「全ての国民が安心して生活できるよう留意する」という文言が盛り込まれるなど、日本社会の実情に配慮した内容となっていましたが、バイデン政権はより急進的な内容を求めたとされています。無論こうした圧力を跳ね返すことができない、岸田政権にも問題はありますが、このような介入は、同盟国の主権を軽視し、国際関係を損なう危険性があります。

東京レインボープライドに参加するエマニュエル米国大使 SNSより

さらに、イエメンのフーシ派テロリスト指定解除、記者会見での度重なる言い間違いや混乱、国境管理の失敗と不法移民の急増、インフレ対策の遅れと経済政策の混乱、同盟国との関係悪化、中国に対する一貫性のない外交姿勢など、問題は山積しています。

エネルギー政策においても、大統領就任直後に、キーストーンXLパイプライン建設の中止しています。このパイプラインは、カナダのアルバータ州から米国のテキサス州までの原油輸送を目的とした大規模プロジェクトでしたが、環境への懸念を理由に建設許可が取り消されました。

そうして、連邦所有地での石油・ガス掘削制限など、米国のエネルギー自立を脅かす決定が次々と下されています。これらの政策は、米国の経済と安全保障を危険にさらすものです。

この状況下で、バイデン大統領は日本の安倍元首相の高潔な判断を見習うべきです。安倍元首相は、持病の悪化により二度にわたって自ら総理の職を辞しました。これは個人の野心よりも国家の安定を優先した、真のリーダーシップの表れでした。

バイデン大統領も同様に、自身の健康状態が国家の安全保障と世界の安定に与える影響を真摯に受け止め、潔く退く勇気を持つべきです。


米民主党は、党利党略を超えて、国家の利益を最優先に考えるべきです。バイデン大統領の続投は、米国の国際的地位をさらに低下させ、敵対国の挑発を招くリスクがあります。新たな候補者を擁立することで、米国の指導力を回復し、同盟国との信頼関係を再構築する必要があります。

具体的には、エネルギー自立政策の推進、強固な国境管理、そして毅然とした対外政策を実行できる候補者を選ぶべきです。同時に、同盟国の主権と文化的多様性を尊重し、一方的な圧力を避ける外交姿勢も求められます。それによって初めて、米国の国益を守り、世界の安定に貢献することができるのです。

民主党が自らの政治的利益よりも国家の未来を優先するなら、今こそバイデン大統領に代わる新たな候補者を擁立する時です。これは、米国の将来と世界秩序の安定のために不可欠な決断なのです。バイデン大統領自身も、安倍元首相の決断を見習い、個人の地位よりも国家の利益を優先する勇気を持つことが求められています。

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2024年7月12日金曜日

米バイデン大統領、ゼレンスキー大統領を「プーチン大統領」と言い間違え―【私の論評】バイデン大統領の言動と2024年選挙:懸念と展望

米バイデン大統領、ゼレンスキー大統領を「プーチン大統領」と言い間違え

まとめ
  • バイデン大統領がNATO首脳会議でゼレンスキー大統領を「プーチン大統領」と言い間違え、すぐに訂正した。
  • ゼレンスキー大統領は冗談で応じ、会場は騒然となった。
  • この言い間違いにより、バイデン大統領の再選に向けた圧力が強まる可能性がある。

2024年7月11日にワシントンD.C.で開催されたNATO首脳会議で、アメリカのバイデン大統領はウクライナのゼレンスキー大統領を紹介する際に「プーチン大統領」と言い間違えました。

バイデン大統領はすぐに訂正し、「プーチンを倒すゼレンスキー大統領です」と釈明しました。ゼレンスキー大統領は冗談めかして「私の方が(プーチンより)優れている」と応じました。

この言い間違いにより、プレスセンターは騒然となり、一部の記者は頭を抱える様子が見られました。この出来事は、バイデン大統領の再選に向けた圧力をさらに強める可能性があります。

この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になってください。【まとめ】は、元記事の要点をまとめ箇条書きにしたものです。

【私の論評】バイデン大統領の言動と2024年選挙:懸念と展望

まとめ
  • バイデン大統領の頻繁な言い間違いや不適切な行動が、職務遂行能力に疑問を投げかけている。
  • これらの問題は国家安全保障や外交関係、公衆の信頼に影響を及ぼす可能性がある。
  • 民主党は現職としての実績や中道路線、トランプ氏との対決での優位性などを理由にバイデン氏を支持している。
  • しかしバイデン氏の高齢とその言動は米国の威信を損なう可能性があり、保守派は深刻な脅威と捉えている。
  • 保守派は結束して、伝統的な価値観を持つ共和党候補、特にトランプ氏を支持すべき。
バイデンが大統領に就任して以来、メディアで報道された、今回のようないい間違えの事例を以下に列挙します。

1. ゼレンスキー大統領を「プーチン大統領」と言い間違え(2024年7月11日、NATO首脳会議)

2. カマラ・ハリス副大統領を「トランプ副大統領」と言い間違え(2024年7月11日)

3. ペンシルベニアでのキャンペーン中、叔父の誤った戦争エピソードを語る(2024年4月)

4. ドイツのメルケル前首相をコール元首相と混同(2024年2月7日)

5. 大統領選テレビ討論会での言い間違いや言葉詰まり
   - 2020年の討論会で「4年間で200万人」を「200年間で400万人」と言い間違え
   - 「我々は真実を選ぶ」を「我々は真実を保持する」と言い間違え
   - 「COVID-19」を「COVID-9」と言い間違え

6. カマラ・ハリス副大統領を複数回「大統領」と呼ぶ(2021年3月18日)

7. 国防長官ロイド・オースティン氏の名前を忘れる(2021年3月)

8. 故ジャッキー・ワウォースキー下院議員を聴衆から探す。2022年8月に死去したワウォースキー議員を、9月の演説で聴衆の中にいるかのように呼びかけた。(2022年9月)
   
9. プーチン大統領との首脳会談後、シリアをリビアと言い間違え(2021年6月)

10. 韓国の尹錫悦大統領の名前を誤って発音(2022年5月)

11. 法案署名時に自身の名前を間違える(2021年3月)

12. 「AFT」(米国教員連盟)を「ATF」(アルコール・タバコ・火器局)と言い間違え、教育関連の組織と法執行機関を混同した。(2021年3月)

13. ガソリン価格について「ガロン当たり10ドル」を「10セント」と言い間違え(2022年10月)

14. 電気自動車工場視察時にガソリン車を運転(2021年5月)

15. テレプロンプターの指示を読み上げる(2022年7月)


16. トルネード被害を受けたケンタッキー州知事の名前を間違える(2021年12月)

17. エリザベス女王の葬儀到着遅延の理由を「交通渋滞」とする(2022年9月)

18. アイルランド訪問中の不適切な発言(2023年6月)

19. アフガニスタン撤退に関する記者会見での混乱(2021年8月)

20. インフレ対策について「プーチンの価格上昇」を「価格減少」と言い間違え(2022年4月)

21. ウクライナ訪問後の演説で「ウクライナ」を「イラク」と言い間違え(2023年2月)

22. 「アメリカ人の平均寿命は200年」と発言(2020年9月)

23. 「私は上院に12年、副大統領に120年いた」と発言(2019年8月)

24. 「我々は真実ではなく事実を選ぶ」と発言(2020年5月)

25. 「貧困層の子どもたちはレコードプレーヤーを聴くべき」と発言(2019年9月)

これらの事例は、バイデン大統領の言動に対する注目度の高さを示すとともに、高齢の大統領としての能力に関する議論を引き起こしています。

バイデン大統領の頻繁な言い間違いや不適切な行動は、大統領としての職務遂行能力に正当な疑問を投げかけています。これらの問題は、単なる偶発的なミスを超えてパターン化しており、認知機能や判断力に関する懸念を生み出しています。

大統領職の重要性を考えると、このような言動は国家安全保障や外交関係に重大な影響を及ぼす可能性があります。また、公衆の信頼を損なう恐れもあります。バイデン大統領の高齢も、これらの問題をより顕著にしています。

しかし、言動のみで大統領の能力全体を判断するのは適切ではなく、政策決定や外交交渉などの実質的な成果も同時に評価する必要があります。結論として、これらの懸念は深刻に受け止めるべきですが、バランスの取れた評価と、大統領の健康状態や認知機能についてのより透明性の高い情報開示が求められるでしょう。

米民主党のシンボル「ロバ」

民主党としては、このようなことは十分予測できたはずです、にもかかわらず、民主党がバイデン氏にこだわった理由は複合的です。現職大統領としての実績と知名度、中道路線による幅広い支持、トランプ氏との対決での優位性が主な要因です。

また、党内の安定維持や政策の継続性も重視されました。長年の政治経験、特に外交面での実績も評価されています。さらに、労働組合や黒人有権者などの伝統的な支持基盤の存在も大きな利点です。

加えて、バイデン氏に代わる強力な候補者が不在であることも選択の背景にあります。これらの要素を総合的に判断し、民主党はリスクを認識しつつも、バイデン氏を最適な候補者と判断したと考えられます。ただし、高齢による懸念は依然として大きな課題となっています。

バイデン大統領の再選は米国の価値観と安全保障にとって深刻な脅威となります。彼の進歩的政策は、我々の伝統的な家族観や自由市場経済を脅かしています。また、国境管理の甘さは国家安全保障を危うくしています。

さらに、バイデン氏の高齢と頻発する言い間違いは、国際舞台での米国の威信を損なっています。これは、ロシアや中国といった敵対国に付け入る隙を与えかねません。民主党が新たな候補者を擁立したとしても、それは単に同じ進歩的イデオロギーを持つ若い顔に過ぎないでしょう。


米保守派は伝統的な保守的価値観を持つ共和党候補を支持し、結束してトランプ氏を支持し、米国の偉大さを取り戻すべきです。米国の未来のために、強力なリーダーシップと確固たる保守的政策が必要不可欠です。これこそが、米国の繁栄と安全を守る唯一の道筋と思われます。

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2024年7月11日木曜日

「ハマス殲滅」は、なぜ「空想」なのか?...国際社会が放置してきた「大きなツケ」―【私の論評】ハマス殲滅と中東和平:50年の長期統治案とルトワック理論の検証

「ハマス殲滅」は、なぜ「空想」なのか?...国際社会が放置してきた「大きなツケ」

まとめ
  • ネタニヤフ首相の「ハマス殲滅」と「人質解放」の目標は、多くの専門家によって「不可能」と指摘されている。
  • ハマスは思想と政党の側面を持ち、軍事的に弱体化しても完全な殲滅は困難である。
  • イスラエル軍の継続的な軍事作戦は、若い兵士の犠牲を伴う「空想」の追求になる可能性がある。
  • 国際社会はハマスのガザ統治終焉を望むが、その後の統治体制について明確な計画がない。
  • ガザでの戦闘終結後も、新たな混乱が予想され、国際社会は大きな課題に直面している。
ネタニヤフ首相

 ネタニヤフ首相が掲げる「ハマス殲滅」と「人質解放」の目標は、多くの専門家によって「不可能」と指摘されている。ハマスは単なる軍事組織ではなく、思想と政党の側面を持つ複雑な存在であり、軍事的に弱体化させることはできても、完全な殲滅は極めて困難だと考えられている。

 イスラエル軍が継続的な軍事作戦を展開することは、若い兵士たちの犠牲を伴う「空想」の追求になる可能性がある。実際、イスラエル軍内部でも、ハマス殲滅という目標の実現可能性に疑問を呈する声が上がっている。

 一方で、国際社会はハマスのガザ統治の終焉を望んでいるが、その後のガザ地区の統治体制について明確な計画が立てられていない。パレスチナ自治政府が最有力候補とされているが、ネタニヤフ首相や極右政治家たちはこれに反対しており、自治政府自体も機能不全に陥っているという問題がある。

 ガザでの戦闘が終結したとしても、それは新たな混乱の始まりとなる可能性が高い。17年にわたるハマスの実効支配や封鎖をそのままにしてきた国際社会は、今改めて大きな課題に直面している。ガザ地区の再建と安定した統治体制の確立、そしてイスラエルとパレスチナの長期的な和平プロセスの再開など、複雑で困難な問題に取り組む必要がある。

 この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事を御覧ください。

【私の論評】ハマス殲滅と中東和平:50年の長期統治案とルトワック理論の検証

まとめ
  • ハマスはテロリスト集団であり、排除されるべきだが、短期間での殲滅は不可能である。
  • 米戦略家ルトワック氏の理論に基づき、真の紛争解決には少なくとも50年にわたる軍隊の駐留により、根本的につくりかえる必要がある。
  • 長期的な国際的統治は、パレスチナ問題の抜本的な解決策となる可能性があるが、様々な課題も存在する。
  • イスラエル単独ではなく、過去にパレスチナ問題を複雑化させた国々とイスラエルによる共同統治が次善の策といえよう。
  • 長期的な解決策には、ハマスの思想は完全排除しつつも、パレスチナ人の意思尊重とイスラエルの安全保障への配慮が不可欠である。
ハマスの少年戦闘員 2012年8月のハマス25周年記念式典にて

私自身は、「ハマスは殲滅」すべきものと思います。なぜなら、ハマスはテロリスト集団だからです。テロリスト集団は、排除されるべきものです。排除が難しいからとか、犠牲がともなうからといって、これを放置する理由にはなりません。

ネタニヤフ首相の「ハマス殲滅」と「人質解放」の目標に関しては、ネタニヤフ首相がどのくらいのスパンでこれを達成しようとしているかでその評価が分かれると思います。とくに、「ハマス殲滅」に関してはそうです。

もし、せいぜいここ数年、長くても5年くらいで、これを達成しようとしているのであれば、それは混乱を生むだけであり、上の記事にもあるように、それは不可能です。

しかし、少なくとも50年くらいは、軍隊を駐留させて根本的に変えようというのなら、賛成です。

なぜ、このようなことを言うかといえば、それには根拠があるからです。それは、米国のルトワック氏の理論に基づくものであり、私はこの理論が妥当だと考えています。

エドワード・ルトワック氏

エドワード・ルトワック氏は、国連などによる短期的な紛争仲裁や介入が表面的な解決にとどまり、根本的な問題解決に至らないと批判しています。彼の主張によれば、真の紛争解決には少なくとも50年にわたる軍隊の駐留が必要としています。これは社会の根本的な変革には世代を超えた時間が必要だという認識に基づいています。

ルトワック氏は、単なる停戦や表面的な和平合意ではなく、紛争地域の社会、政治、経済システムを根本から再構築する必要があると考えています。この長期的な関与を通じて、紛争の根本原因に取り組み、持続可能な平和を構築することが可能になると主張しています。

この考え方は、国際社会により大きな責任と長期的なコミットメントを求めるものです。しかし、主権の問題や介入の正当性、実行可能性など、多くの課題も存在します。

ルトワック氏の理論は、複雑で長期化した紛争地域における平和構築の難しさを浮き彫りにし、国際社会の紛争解決アプローチに再考を促す重要な視点を提供しています。従来の短期的なアプローチの限界を指摘し、より根本的で持続可能な解決策の必要性を強調する点で、国際関係や平和構築の分野に大きな影響を与えています。

この位の覚悟がなければ、「ハマスの殲滅」はできないでしょう。もしネタニヤフ首相が、このくらいのスパンで物事を考えているのなら、賛成できますが、そうでないなら、単なる「空想」と言われても仕方ないでしょう。

ただ仮にネタニヤフ首相が、50年以上軍隊を駐留させ、根本的な解決を図るにしても、問題はあります。

イスラエルは、「ハマス殲滅」はできるかもしれません。しかし様々な問題が予想されます。まず、長期的な軍事占領は国際法違反とみなされ、イスラエルへの批判や制裁につながる可能性があります。また、パレスチナ住民の反感を高め、新たなテロリストを生み出す温床となる恐れがあります。ただ、他国がこのような批判をするにしても、自らが資金を提供するとか、軍隊を派遣する覚悟がない場合、たんなる「言うだけ番長」なるだけでしょう。

さらに、長期駐留に伴う膨大な経費はイスラエル社会に大きな経済的負担をもたらします。この莫大なコストは、国内の教育、医療、インフラ整備などの重要な分野への投資を圧迫し、イスラエルの社会発展を阻害する可能性があります。また、長期にわたる兵力の維持は人的資源の面でも大きな負担となり、イスラエル社会の生産性や経済成長に悪影響を及ぼす恐れがあります。

加えて、軍事占領の長期化はイスラエルとパレスチナの和平交渉を困難にし、地域の安定を損なう可能性があります。また、長期の軍事行動はイスラエル国内の社会的分断や道徳的ジレンマを引き起こし、国民の精神的健康にも悪影響を与える可能性があります。

次善の策としては、イスラエル軍だけが駐留するのではなく、過去にパレスチナ問題を複雑化させてしまった国々による共同統治です。その国々とは具体的に以下です。
  1. 英国:第一次世界大戦後、パレスチナ地域を委任統治し、ユダヤ人の「民族的郷土」建設を約束したバルフォア宣言を発表しました。これがユダヤ人とアラブ人の対立を深める一因となりました。
  2. 米国:イスラエルの最大の支援国として、中東和平プロセスに大きな影響力を持ちつつも、しばしばイスラエル寄りの姿勢を示し、問題の公平な解決を難しくしました。
  3. ソビエト連邦(現ロシア):冷戦時代、アラブ諸国を支援し、中東における米国の影響力に対抗しました。これにより、パレスチナ問題が東西対立の一部となり、さらに複雑化しました。
  4. エジプト、ヨルダン、シリア、レバノンなどの周辺アラブ諸国:イスラエルとの戦争に関与し、パレスチナ難民問題を抱えることで、問題の地域的な広がりを生み出しました。
  5. イラン:イスラエルに敵対し、ハマスなどのパレスチナ武装組織を支援することで、紛争の長期化に寄与しています。
これらの国々の介入や影響により、パレスチナ問題は単なる地域紛争から国際的な問題へと発展し、解決をより困難にしています。

このうち、ウクライナに侵攻中のロシアや、ハマスを支援しているイランは除き、これら以外の国々でも、中東和平に賛成する国々で、参加したい国々は参加してもらうという形で、これらの国々がパレスチナを統治し、和平をすすめるのです。

50年間にわたる国際的な統治は、パレスチナ問題の抜本的な解決策となる可能性があります。これまでの中途半端な対応では問題が解決せず、むしろ悪化してきた歴史を考えると、このような徹底的なアプローチには一定の妥当性があります。

この方式では、長期的視野での社会再構築が可能になり、国際社会の直接的な関与により透明性と公平性が確保されます。ハマスのような過激組織の影響力を根本から排除しつつ、教育や経済インフラの整備など、持続可能な発展の基盤を築くことができるでしょう。

しかし、実行にあたっては課題も多く存在します。パレスチナ人の自決権との調和をどう図るか、国際社会の長期的なコミットメントをどう確保するか、イスラエルと周辺アラブ諸国の協力をどう取り付けるか、そして莫大なコストをどのように分担するかなどの問題に対処する必要があります。ただ、50年以上という年月をかけるというのであれば、話は変わってきます。

これらの課題に対しては、段階的なアプローチや、パレスチナ人の意思を尊重しつつ国際管理を行う仕組みの構築、明確な出口戦略の策定などが必要になるでしょう。特に、ハマスのようなテロ組織を排除しつつ、一般のパレスチナ人の権利と尊厳を守る方策を慎重に検討する必要があります。

この方式は従来のアプローチよりも大胆で困難を伴いますが、長年の紛争を根本的に解決する可能性を秘めています。国際社会が本気で平和を望むのであれば、このような抜本的な解決策を真剣に検討する価値はあるでしょう。

ただし、その過程ではハマスの思想は完全排除しつつも、常にパレスチナ人の意思を尊重し、彼らの将来的な自治と独立の道筋を明確に示すことが不可欠です。同時に、イスラエルの安全保障にも十分な配慮を払い、両者の共存共栄を目指す必要があります。

このような共同統治が成功すれば、今後の紛争解決のモデルとなるでしょう。未だに20世紀までの世界のように他国に侵略したり、しようとする国、他地域を侵略したり、しようとしているテロリスト等にとって大きな警鐘になるでしょう。他国を侵略してその国を自分の国にとって都合の良い体制に変えたともしても、結局長い年月をかけても元に戻されてしまう可能性がでてくるからです。

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2024年7月10日水曜日

加速する中国人富裕層の海外移住、膨大な資産も流出―【私の論評】中国富裕層の海外移住:スマートマネー流出と安全保障リスク - 日本の対応と課題

加速する中国人富裕層の海外移住、膨大な資産も流出

まとめ
  • 中国富裕層の海外移住急増:2024年に1万5200人が他国へ、前年比10%増
  • スマートマネーの流出:1人あたり3000万~10億ドルの資産移転と推定
  • 中国脱出の主な理由:経済不確実性、不動産危機、政府の規制強化
  • 人気の移住先:米国、シンガポール、カナダ、UAE、日本が上位に
  • 富裕層流出の影響:中国政府の経済活性化策に障害、習近平体制への不信感


 中国からの「スマートマネー」の流出が加速しており、2024年には約15,200人の富裕層が中国から海外へ移住すると予測されている。これは前年比約10%の増加を示している。投資移住コンサルのHenley & Partnersによると、移住者の多くは米国やシンガポールを目指し、1人あたり3000万~10億ドルの資産を持ち出すと推定されている。

 移住の主な理由としては、中国の経済的不確実性、不動産危機と資産価値の下落、政府による民間企業や資産家への取り締まり強化、そして中国の信用格付け見通しの引き下げが挙げられている。特に、習近平国家主席の経済政策や「共同富裕」の推進が富裕層の懸念を高めているとされている。

 シンガポールは従来、中国の富豪が好む移住先だったが、最近では中国からの資金流入に対する監視を強化している。一方、カナダや米国、アラブ首長国連邦も人気の移住先となっている。日本も安全性や生活の質の高さから注目されており、中国に近いことや魅力的なライフスタイルが評価されている。

 この現象は中国に限らず、韓国や台湾でも安全保障上の懸念から富裕層の流出が見られる。専門家は、この富裕層の流出を習近平政権の経済運営に対する否定的な評価と捉えており、中国政府の経済活性化の取り組みにも影響を与える可能性があると指摘している。

 この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になって下さい。

【私の論評】中国富裕層の海外移住:スマートマネー流出と安全保障リスク - 日本の対応と課題

まとめ
  • 「スマートマネー」とは、大規模な資本を持つ投資家や機関を指し、中国では主に富裕層を意味する。
  • 中国の富裕層の海外移住は、中国経済にとって重要な資本や人材の流出を意味し、他国にとっては投資機会の増加を示唆する。
  • 中国のデータ3法や国家安全法、国防動員法などの法律は、海外に移住した中国国民にも適用される可能性があり、国家安全上のリスクを引き起こす。
  • これらの法律により、海外在住の中国国民が中国政府の指示に従って情報提供や協力を行う義務を負う可能性があり、移住先の国の法律と衝突する。
  • 日本政府は、中国からの移住者に対する対応が不十分であり、スパイ防止法の成立を含む包括的な対策が急務である。
「スマートマネー」とは、一般的に大規模な資本を持ち、高度な投資戦略や分析を用いて市場で優位に立つ投資家や機関を指す言葉です。中国の文脈では、この「スマートマネー」は主に富裕層を指しています。

上の記事にある富裕層の海外移住にともなう「スマートマネー」の流出は中国経済にとって重要な資本や人材の流出を意味し、同時に他国にとっては投資や経済活動の機会増加を示唆しています。したがって、「スマートマネー」の動向は、中国の経済状況や政策の評価指標として、また世界経済の資金流動の重要な指標として注目されているのです。

中国富裕層の住む街の一角

一方、中国の富裕層の海外移住に関する安全保障上の問題は、中国のデータ3法(サイバーセキュリティ法、データセキュリティ法、個人情報保護法)や国家安全法、国防動員法などの法律と密接に関連しています。これらの法律は、中国国民や中国で活動する企業に対して広範な義務を課しており、海外に移住した富裕層にも影響を及ぼす可能性があります。

特に注目すべきは、これらの法律の域外適用の可能性です。中国の法律は、中国国内だけでなく、海外に移住した中国国民や中国企業にも適用される可能性があります。

例えば、データセキュリティ法は、中国の国家安全や公共の利益に影響を与える可能性のあるデータ処理活動に対して、中国国外でも適用される可能性があります。これは、海外に移住した中国富裕層が、中国政府の要求に応じて情報提供や協力を求められる可能性があることを意味します。

香港に掲示された国家安全法の看板

さらに、国家安全法は、すべての中国国民に対して国家安全に協力する義務を課しています。この法律の解釈によっては、海外に移住した中国国民も、中国政府の要請に応じて情報提供や協力を行う義務を負う可能性があります。

これは、移住先の国の法律や利益と衝突する可能性があり、二重忠誠の問題を引き起こす可能性があります。個人情報保護法も、中国国民の個人情報を保護するために、海外のデータ処理者にも一定の義務を課しています。これにより、中国から移住した富裕層が関与する海外企業も、中国の法律に従って個人情報を処理する必要が生じる可能性があります。

特に戦争や重大な安全保障上の危機が発生した場合、中国の国家安全法と国防動員法は、海外在住の中国国民にも影響を及ぼす可能性があります。これらの法律は、中国国民に対して、戦時や緊急時に国防のために動員される義務を課しています。

具体的には、戦争や重大な安全保障上の危機が発生した場合、中国政府は海外在住の中国国民に対して情報提供や諜報活動への協力、技術や専門知識の提供、資金や物資の提供、場合によっては中国への帰国と軍事活動への参加を要求する可能性があります。これらの要求は、移住先の国の法律や国益と明らかに衝突する可能性があり、海外在住の中国国民を非常に困難な立場に置く可能性があります。

これらの法律の域外適用は、国際法上の問題を引き起こす可能性があり、各国の主権や法の支配との衝突を招く可能性があります。移住先の国々は、このような法律の域外適用に対して警戒を強めており、自国の安全保障や経済的利益を守るために、中国からの移住者に対する審査を厳格化したり、重要な技術や情報へのアクセスを制限したりする措置を講じています。

結果として、多くの国々は中国からの移住者、特に富裕層や専門家に対する審査を厳格化しています。一部の国では、重要なインフラや技術分野への中国人の参加を制限したり、国家安全保障上の理由で特定の個人の入国や永住権の取得を拒否したりするケースも増えています。

一方で、中国籍を放棄して完全に移住先の国籍に変更する場合、これらの問題は大幅に軽減されます。しかし、中国政府が元中国国民に対しても影響力を行使しようとする可能性は依然として存在します。このような複雑な状況下で、移住先の国々は、経済的利益と安全保障上のリスクのバランスを慎重に取りながら対応を進めています。

カナダは1980年代から2014年まで、投資家クラス移民プログラムを実施し、一定額の投資を条件に富裕層に永住権を与えていました。このプログラムは特に中国の富裕層に人気が高く、外国からの投資を呼び込む目的で導入されました。

しかし、予期せぬ問題が生じました。大都市で不動産価格が急騰し、多くの投資移民が実際の収入よりも大幅に少ない所得を申告したため、税収が期待を下回りました。

また、「アストロノート家族」という現象が生じました。これは、家族の一部がカナダに移住し、主な稼ぎ手が中国に残って働き続けるという状況を指します。この現象により、社会統合の問題も浮上しました。

これらの問題に対応するため、カナダ政府は2014年に連邦レベルの投資家クラス移民プログラムを廃止しました。現在、カナダの移民政策は、単なる資産の多寡ではなく、スキルや教育レベル、言語能力などを重視する方向にシフトしています。

カナダの経験は、富裕層を対象とした投資移民プログラムが短期的な経済的利益をもたらす可能性がある一方で、長期的には社会経済的な課題を引き起こす可能性があることを示しており、他の国々の移民政策にも影響を与えています。

カナダの中国人街

日本政府の中国人移住に対する対応は、安全保障上の重大なリスクを十分に考慮しておらず、極めて不十分かつ危険です。中国の安全保障や情報に関する法律の域外適用により、すべての中国人移住者は、その意思に関わらず潜在的なリスクとなります。この状況は中国共産党が作り出したものであり、日本側に責任はありません。

中国の国家安全法や国防動員法などの存在により、日本に居住するすべての中国国民が、有事の際に中国政府の指示に従って行動することを強いられる可能性があります。このリスクは個人の意思や性質とは無関係であり、すべての中国人移住者に適用されます。

さらに、中国政府がスパイを移住者の中に潜り込ませる可能性が高いことを考慮すると、日本の現状は極めて危険です。この状況に対処するため、スパイ防止法の成立を急ぐべきです。この法律により、外国のスパイ活動を効果的に取り締まり、国家機密や重要技術の流出を防ぐことが可能になります。

日本政府は、このような法体系を持つ国からの移住者をなるべく受け入れるべきではありません。経済的利益よりも国家安全保障を優先し、中国からの移住や投資を厳しく制限する政策を採るべきです。

総じて、日本政府の対応は問題の本質を捉えておらず、短期的な経済的利益を優先する姿勢が目立ちます。安全保障上のリスクを軽視したこの姿勢は、将来的に日本の国益を大きく損なう可能性があります。スパイ防止法の成立を含む、包括的かつ実効性のある対策を早急に講じる必要があります。この問題の責任は全て中国共産党にあり、日本はこの現実を直視し、適切な対応を取るべきです。

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<主張>日比2プラス2 新協定で対中抑止強化を

まとめ
  • 日本とフィリピンが外務・防衛閣僚協議(2プラス2)を開催し、「円滑化協定(RAA)」を締結。これにより両国の防衛協力が強化され、自衛隊とフィリピン軍の相互運用性が向上。
  • 両国は中国の南シナ海での行動に懸念を表明し、力による現状変更に反対。台湾海峡の平和と安定の重要性も確認され、地理的に重要な位置にある両国の安全保障協力の意義を強調。
  • この協力強化は、中国に対する抑止力を高め、自由で開かれたインド太平洋の実現を目指すもの。日本にとってはフィリピンとの準同盟関係構築や重要な海上交通路の確保という国益にも合致。
(左から)木原稔防衛相、上川陽子外相、フィリピンのエンリケ・マナロ外相、ジルベルト・テオドロ・ジュニア国防長官

 上川陽子外相と木原稔防衛相がマニラを訪問し、2プラス2を開催しました[。この会議で、両国は自衛隊とフィリピン軍の相互運用性促進など、防衛・安全保障協力の強化で合意しました。

 重要な成果として、自衛隊とフィリピン軍の相互往来を容易にする「円滑化協定(RAA)」が署名されました。これにより、両国軍の共同演習や災害救助活動がスムーズに実施できるようになります。

 会議では、中国を念頭に置いた議論も行われ、南シナ海のアユンギン礁周辺での中国の行動に深刻な懸念が表明されました。両国は力による一方的な現状変更の試みに強く反対する立場を示しました。

 さらに、台湾海峡の平和と安定の重要性が確認され、日本とフィリピンの地理的重要性が強調されました。両国は第一列島線を構成し、台湾を挟む位置にあることから、安全保障上の協力が重要視されています。

 この協力強化は、中国に対する抑止力を高め、自由で開かれたインド太平洋の実現を目指すものとされています[4]。日本にとっては、フィリピンとの準同盟関係の構築や、重要な海上交通路の確保という国益にもつながります。

 この文章は、元記事の要約です。詳細は、元記事をご覧になって下さい。

【私の論評】日比円滑化協定(RAA)の画期的意義:安倍外交の遺産と日本の新たな安全保障戦略

まとめ
  • 円滑化協定(RAA)は日本とフィリピンの戦略的パートナーシップを強化し、両国軍の相互訪問手続きを簡略化する画期的な協定である。
  • RAAは日本にとって3カ国目の締結国となり、フィリピンとの関係を「準同盟」級へ格上げする重要なステップである。
  • この協定は中国の海洋進出に対抗し、日米比の安全保障面での連携強化を可能にする。
  • 安倍元首相の「地球儀を俯瞰する外交」や「インド太平洋戦略」の継続性を示し、彼の外交ビジョンが日本の外交政策に深く根付いていることを表している。
  • RAAは安倍外交の遺産を体現し、日本の国益を守りつつ地域の平和と安定に貢献する理念を実践するものである。
木原防衛大臣

木原防衛大臣が円滑化協定(RAA)を「画期的」と評価していました。その理由は、この協定が日本とフィリピンの戦略的パートナーシップを大幅に強化するからです。

RAAにより、自衛隊とフィリピン軍が共同訓練などで相互に訪問する際の手続きが簡略化され、入国のためのビザ取得や武器弾薬の持ち込み手続きが容易になります。さらに、この協定は日本がフィリピンとの関係を「準同盟」級へと格上げする重要なステップとなり、日本にとってオーストラリア、イギリスに続く3カ国目のRAA締結国となります。

また、東シナ海や南シナ海で海洋進出を強める中国に対抗するため、日本は米国とともにフィリピンとの安全保障面での連携を強化できます。

加えて、RAAを基盤として、日本とフィリピンの二国間だけでなく、米国や豪州を交えた重層的な協力関係の構築が可能になります。これらの要因により、木原防衛大臣はRAAを日比関係の新たな段階を象徴する重要な協定として位置づけ、「画期的」と評価したのです。

故安倍晋三元首相の三回忌に日本とフィリピンの間で円滑化協定(RAA)が締結されたことは、安倍氏の先見性と外交政策の継続性を示す極めて意義深い出来事です。


安倍元首相は「地球儀を俯瞰する外交」「自由で開かれたインド太平洋」構想、そして「安全保障のダイヤモンド」構想を通じて、日本の国際的地位向上と地域の安定に大きく貢献しました。これらの戦略は、世界秩序と日本国内の政治的風景を根本的に変革しました。

特筆すべきは、安倍元首相の外交ビジョンが、自民党内の親中派やリベラル派の存在にもかかわらず、中国共産党に対峙する姿勢を日本の外交政策の主流に据えたことです。この転換は、もはや後戻りが困難なほど日本の外交・安全保障政策に深く根付いています。

今回の円滑化協定は、このような安倍外交の遺産が現在も生き続けていることを如実に示しています。協定は、インド太平洋地域の安定と平和への貢献、中国の海洋進出に対する抑止力の強化、同盟国・友好国とのネットワーク拡大という安倍外交の核心的要素を全て包含しています。

自衛隊とフィリピン軍の相互運用性の向上や共同訓練の拡充は、安倍元首相が推進してきた積極的平和主義の実践そのものであり、「インド太平洋戦略」の具現化と言えます。

安倍元首相の三回忌にこの協定が締結されたことは、彼の外交ビジョンの先見性と重要性を改めて世界に示す機会となりました。安倍氏が築いた外交の基盤が、彼の退任後も、さらには彼の死後も日本の外交政策の指針として機能し続けていることは、極めて称賛に値します。

長門市油谷新別名の安倍家菩提(ぼだい)寺の長安寺で行われた安倍晋三元首相三回忌の法要

この協定は、安倍元首相の遺志を継ぎ、日本の国益を守りつつ地域の平和と安定に貢献するという彼の理念を体現するものです。安倍氏の先見性と努力なくしては、今日の日本の外交的地位と影響力、そして中国に対する明確な対峙姿勢は存在し得なかったでしょう。

故安倍元首相の俯瞰外交の理念と方針は、この円滑化協定を通じて今なお実現され続けており、彼の政治的遺産は日本の外交政策に深く根付いていると評価できます。安倍外交が築いた新たな日本の立ち位置は、今や日本の外交・安全保障政策の不可逆的な基盤となっているのです。

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2024年7月8日月曜日

立民、勢いに冷や水 共産との共闘に不満―都知事選―【私の論評】2024東京都知事選の衝撃:野党連携の限界と新たな政治勢力の台頭

立民、勢いに冷や水 共産との共闘に不満―都知事選

まとめ
  • 立憲民主党は東京都知事選で蓮舫氏が敗北し、最近の勢いに水を差された。党は次期衆院選に向けて敗因分析を急ぐ。
  • 蓮舫氏は「オール東京」を掲げたが、実質的には立憲民主党と共産党の協力体制だった。この戦略が無党派層への訴求力不足につながった可能性がある。
  • 党内では敗北を受けて「裏金批判だけでは不十分」という声や、共産党との協力に対する不満が出ており、今後の戦略見直しが必要とされている。


 立憲民主党は東京都知事選で支援した蓮舫氏が敗北し、最近の勢いに水を差される結果となった。党は次期衆院選に向けて敗因分析を急ぐ方針である。

 蓮舫氏は無所属の石丸伸二氏にも敗れ、立憲民主党にとって衝撃的な結果となった。党は4月の衆院3補欠選挙全勝や5月の静岡県知事選での勝利を受け、都知事選でさらなる弾みをつける計画だったが、失敗に終わった。

 党内では「失敗だった」「裏金批判だけでは駄目だ」といった声が上がっている。蓮舫氏は「オール東京」を掲げて党派色を抑える戦術を取ったが、実質的には立憲民主党都連と共産党の協力体制だった。

 この結果を受け、立憲民主党内では共産党との協力に対する不満や、無党派層への訴求力不足を指摘する声が出ている。党は今後、敗因を詳細に分析し、次の選挙に向けて戦略を見直す必要に迫られている。

 この記事は元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になって下さい。

【私の論評】2024東京都知事選の衝撃:野党連携の限界と新たな政治勢力の台頭

まとめ
  • 立憲民主党と共産党の選挙協力は、一部の選挙で成果を上げたが、一貫した結果をもたらしていない。
  • 2021年衆院選と2024年東京都知事選での敗北を受け、立憲民主党は選挙協力戦略の見直しを検討している。
  • 蓮舫氏の東京都知事選での大敗は、次期衆院選での立候補計画に影響を与える可能性がある。
  • 2024年東京都知事選の結果は自民党に有利な状況をもたらしたが、無所属候補の台頭は既存政党への不満を示唆している。
  • 石丸伸二氏の政治手法や政策提案には多くの懸念事項があり、特に保守派から警戒されている。


立憲民主党と共産党の選挙協力について、過去5年間の事例を掲載させていただきます。

勝利した事例:
1. 2021年4月の衆院3補欠選挙: 立憲民主党は全勝を果たし、共産党との協力が一定の成果を上げたとされています。

2. 2022年7月の参議院選挙: 一部の1人区で野党統一候補を擁立し、勝利を収めた選挙区がありました。

3. 2023年10月の衆参2補欠選挙: 野党候補が一本化された結果、参院徳島・高知選挙区では勝利し、衆院長崎でも接戦に持ち込みました。
敗北した事例:
1. 2019年参議院選挙: 一部の1人区で候補者を一本化しましたが、32の1人区のうち10区でしか勝利できませんでした。

2. 2021年10月の衆院選: 立憲民主党と共産党は選挙協力を行いましたが、立憲民主党は議席を減らし、想定した結果を得られませんでした。

3. 2024年7月の東京都知事選: 立憲民主党と共産党が支援した蓮舫氏が3位に終わり、大敗を喫しました。
これらの事例から、立憲民主党と共産党の選挙協力は必ずしも一貫した結果をもたらしていないことがわかります。特に2021年の衆院選と2024年の東京都知事選では、協力体制が逆効果となった可能性が指摘されています。

2021年衆院選の総括では、立憲民主党は選挙協力について「選挙戦における全体的な戦略の見直しを図る」と結論づけ、小選挙区の野党候補一本化について「想定した結果は伴わなかった」と評価しています。

これらの結果を受けて、立憲民主党は選挙協力の戦略を見直す必要性を認識し、今後はより慎重に対応する方針を示しています。選挙協力の効果と課題について党内で継続的な議論と見直しが行われていることが伺えます。

蓮舫氏は2024年東京都知事選で3位となり、小池百合子氏や石丸伸二氏に大差をつけられる結果となりました。当初は敗北しても次期衆院選への出馬を予定していましたが、今回の大敗により、その計画が変更される可能性が出てきています。

一部では蓮舫氏の政治生命が絶たれたとする見方もありますが、知名度の高さなどを考慮すると、即座に政界引退を意味するとは限りません。今後の展開は、蓮舫氏本人の行動や立憲民主党の判断、そして有権者の反応次第であり、政治家としての再起の可能性も残されています。

ただし、党の看板候補としての期待に応えられなかったことは事実であり、次期衆院選での候補者擁立計画にも影響を与える可能性があります。

2024年東京都知事選の結果は、自民党にとって概ね好ましいものでした。自民党出身の小池百合子氏が圧倒的な得票差で再選を果たし、立憲民主党が支援した蓮舫氏が3位に終わったことで、野党の勢いに水を差す形となりました。

自民党は小池氏への公式な推薦を控えることで「政治とカネ」の問題など党への批判を回避しつつ、実質的な勝利を得ることができました。この結果は次期衆議院選挙に向けて自民党に有利な状況を作り出し、与党の優位性を示すことになりました。ただし、無所属の石丸伸二氏が2位となったことは、既存政党への不満も示唆しており、自民党としてもこの点は注視する必要があるでしょう。


今回、蓮舫氏を追い越し得票数が第二位となった石丸伸二氏についても、問題があり、特に保守派から懸念されています。

石丸伸二氏に対する具体的な懸念事項について、詳しく説明いたします。

安芸高田市長時代の石丸氏の実績については、目立った成果が乏しいという批判があります。特に、公約として掲げた人口増加や財政改善などの目標が達成されず、その糸口さえ見出すことができなかったことが指摘されています。

選挙ポスターの経費未払い問題については、2019年の安芸高田市長選挙時に遡ります。石丸氏は当時、ポスター制作会社に対して約180万円の支払いを行わなかったとされています。この未払い問題は、選挙後に表面化し、政治家としての信頼性や財務管理能力に疑問を投げかける結果となりました。石丸氏は当初、支払いの遅延を認めつつも、最終的には支払いを行ったと主張しましたが、この説明の過程で複数の矛盾した発言があったとされ、さらなる批判を招きました。

議会との関係においては、対立姿勢が顕著でした。石丸伸二氏と議会との関係において、いくつかの重大な軋轢が生じました。特に注目すべきは、石丸氏が市議会議員から脅迫を受けたと公の場で発言した事例です。

この主張は後の調査で事実ではないことが判明し、市政の信頼性を大きく損ない、議会との対立を深刻化させました。また、財政状況や観光政策に関する発言でも、実際の数字と大きく異なる誇張した情報を提供し、議会から強い批判を受けました。

これらの事例は、石丸氏の政治手法や情報管理能力に対する懸念を深め、議会との信頼関係構築を困難にする要因となりました。特に虚偽の脅迫発言は、市長と議会の関係を著しく悪化させ、市政運営に大きな支障をきたす結果となりました。

デイリー新潮の記事によると、石丸伸二氏はドトールコーヒーの創業者である鳥羽博道氏から1億5000万円を借り入れたとされています。この借入は2023年7月の参院選広島再選挙の際に行われ、石丸氏は個人的な借入だと主張していますが、選挙事務所関係者は選挙資金として借りたことを認めています。

ドトール珈琲の店舗の前で選挙演説をする石丸伸二氏

鳥羽氏は石丸氏の政治活動に共感し支援を行ったとされますが、この借入が政治資金規正法に抵触する可能性が指摘されています。石丸氏は借入の事実を認めつつも、使途については詳細な説明を避けており、選挙資金の透明性や法令遵守に関する疑義が提起されています。この問題については、さらなる調査や公的機関による確認が必要とされています。

限界集落対策として外資の活用を提案したことは、日本の農村や地域社会の伝統的な価値観を脅かす可能性があるとして懸念されています。外国資本による土地買収や文化の変容などのリスクが指摘されており、地域のアイデンティティ保持の観点から批判が出ています。

石丸氏が提案する政策の多くは、実現可能性に乏しいとの批判があります。特に、財源の裏付けが不明確な政策や、既存の法制度との整合性が取れていない提案が多いとされています。これらは、現実的な政策立案能力への疑問につながっています。

最後に、石丸氏の政治手法については、過度に挑発的な発言や行動が目立つとの指摘があります。このような姿勢は、建設的な政治対話を妨げ、政治の場を混乱させる可能性があるとして警戒されています。特に、複雑な問題に対して単純化された解決策を提示する傾向が、政策の深い議論を阻害する恐れがあるとの懸念が示されています。

これらの要因が複合的に作用し、石丸氏に対する警戒感が高まっているのが現状です。

2024年東京都知事選の結果は、日本の政治に新たな課題を投げかけました。小池百合子氏の圧勝は現職の強さを示す一方、石丸伸二氏の2位は既存政党への不満を反映しています。蓮舫氏の3位は野党連携戦略の再考を促しました。

この選挙は、有権者の変化を求める声と、政治家の資質や政策の実現可能性への厳しい有権者の視線を浮き彫りにしました。各政党は次期衆院選に向けて戦略の見直しを迫られ、特に野党は信頼回復が急務となっています。

今後の日本政治は、既存政党の改革と新たな政治勢力の台頭、そして変化する有権者の期待にどう応えるかが焦点となるでしょう。政治家には高い倫理観と実行力、そして国民の声に真摯に耳を傾ける姿勢が求められています。

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2024年7月7日日曜日

<正論>「太平洋戦争」か「大東亜戦争」か―【私の論評】大東亜戦争vs太平洋戦争:日本の歴史認識と呼称の重要性を探る

<正論>「太平洋戦争」か「大東亜戦争」か 

東京大学名誉教授・平川祐弘

まとめ
  • 戦時中の日本政府は「大東亜戦争」の呼称を公式採用したが、戦後の占領軍による「太平洋戦争」呼称が強制されるようになった
  • 「太平洋戦争」と「大東亜戦争」両面の存在しているし、 地理的にも太平洋以外での戦闘(ビルマ、マレー、インド洋など)
  • 特定の立場に偏らない見方が重要であり、日本の軍部には責任はあるものの、東京裁判や原爆投下により立場が逆転した面は否めない
  • 当時の日本は「反帝国主義的帝国主義」と位置づけることができ、デモクラシー対ファシズムという単純な図式の批判はすべきでない
  • 皇室のインドネシア訪問では、脱植民地のためインドネシア将兵と共に戦って戦死した日本人将兵の墓に参られ、「大東亜戦争」の側面の公的認知され再評価されている
東京大学名誉教授・平川祐弘氏

 昭和期の戦争の呼称について、「太平洋戦争」と「大東亜戦争」という二つの名称をめぐる議論が続いている。戦時中の1941年12月12日、日本政府は閣議で「大東亜戦争」を公式名称として採用した。しかし、戦後、占領軍によって「大東亜戦争」の使用が禁止され、「太平洋戦争」の使用が強制された。

 筆者は、この戦争には「太平洋戦争」と「大東亜戦争」の両面があり、単一の呼称では全体を捉えきれないと考えている。例えば、日本が英国と戦ったビルマやマレー、インド洋などの戦場は地理的に太平洋とは呼べない。戦争の呼称は単なる言葉の問題ではなく、政治的意味合いを持ち、歴史認識に大きな影響を与える。

 筆者は、特定の国や立場に偏ることなく、複眼的な歴史観を持つことの重要性であると考える。東京裁判については「勝者の裁判」であるが、同時に日本軍部の責任もある。特に、原爆投下に関しては重大であり、これによって戦争の善悪の立場が逆転したといえる。

 戦後の歴史認識については、デモクラシー対ファシズムという単純な図式ですませられるものではなく、日本を「反帝国主義的帝国主義」の国と位置づけられる。また、「慰安婦」問題や日本軍の残虐行為に関する主張の中には誇張がある。

 最近の動向として、天皇皇后両陛下のインドネシア訪問を例に挙げ、日本の脱植民地化への貢献が公的にも認知されつつある。これは、戦後長く抑圧されてきた「大東亜戦争」の側面が再評価されているといえる。

 この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になって下さい。

【私の論評】大東亜戦争vs太平洋戦争:日本の歴史認識と呼称の重要性を探る

まとめ
  • 米国では1846-1848年のメキシコ・アメリカ戦争を「太平洋戦争」と呼んでいた歴史がある。
  • 戦後、日本に「太平洋戦争」という呼称が強制された背景には、「大東亜戦争」の正当化を避け、国際的認識との整合性を図る意図があった。
  • 「大東亜戦争」という呼称は、日本の戦争目的や理念、アジアにおける日本の役割を反映している。
  • 米国の保守派は、自国の歴史を自国の視点から捉えることの重要性を強調し、日本の文脈では「大東亜戦争」呼称の使用を支持する可能性がある。
  • 日本独自の歴史観を保持することは国民の歴史理解と誇りの醸成につながるため、「大東亜戦争」という呼称を用いるべき

米国の歴史には、通常「太平洋戦争」と呼ばれる第二次世界大戦中の日米戦争とは別に、もう一つの「太平洋戦争」が存在します。これは1846年から1848年にかけて行われたメキシコ・アメリカ戦争を指します。

この戦争は、アメリカ合衆国とメキシコ合衆国の間で行われ、テキサス併合や西部への領土拡張を巡る両国の対立が主な原因でした。1846年5月に始まり、1848年2月まで続いたこの戦争は、アメリカの勝利に終わりました。その結果、グアダルーペ・イダルゴ条約が締結され、アメリカはカリフォルニアやニューメキシコなど、現在の南西部の大部分を獲得することとなりました。


この戦争は「メキシコ・アメリカ戦争」や「米墨戦争」とも呼ばれますが、当時のアメリカでは「太平洋戦争」という呼称も使用されました。これは、カリフォルニアなど太平洋沿岸地域の獲得を目指した戦争だったためです。

この19世紀の「太平洋戦争」は、アメリカの領土拡張政策(マニフェスト・デスティニー)の一環として行われ、アメリカの国土を大きく拡大させる結果となりました。しかし、現代の米国では第二次世界大戦中の日米戦争を指して「太平洋戦争」と呼ぶことが一般的となっているため、この19世紀の戦争を「太平洋戦争」と呼ぶことは稀になっています。

では、なぜ米国には過去に「太平洋戦争」という呼称があったにもかかわらず、日本に「太平洋戦争」という呼称を強制したのでしょうか。

「太平洋戦争」という呼称が日本に強制された背景には、複数の要因が絡み合っています。まず、「大東亜戦争」という呼称には日本の侵略戦争を正当化する意味合いがあると捉えられたため、より中立的な立場を取るために「太平洋戦争」という呼称が選ばれました。これは同時に、日本の戦争責任を明確にし、侵略戦争の正当化を防ぐ意図もあったと考えられます。

また、「太平洋戦争」(Pacific War)は英語圏で広く使用されていた呼称であり、国際的な認識との整合性を図る意図もあったでしょう。さらに、戦前の公式名称とは異なる呼称を使用させることで、過去との断絶を図り、新たな歴史認識を促そうとした可能性も指摘できます。


直接的な要因としては、連合国軍総司令部(GHQ)が「大東亜戦争」の使用を禁止したことが挙げられます。これにより、「太平洋戦争」という呼称が日本で主流となりました。

これらの複合的な要因により、戦後の日本において「太平洋戦争」という呼称が強制され、広く使用されるようになったのです。この呼称の変更は、単なる言葉の問題ではなく、戦後の日本の歴史認識や国際関係に大きな影響を与えたと言えるでしょう。

「大東亜戦争」という呼称は、上の記事にもあるように、当時の日本政府が1941年12月に閣議決定したものです。この名称には、日本の戦争目的や理念が反映されています。

当時の日本政府の立場からすれば、この戦争は西洋列強の植民地支配からアジアを解放し、「大東亜共栄圏」を建設するための戦いでした。日本は、アジアの盟主として、欧米列強の支配から東アジアと東南アジアを解放し、アジア諸国との協力関係を築くことを目指していました。

この観点からすれば、「大東亜戦争」という呼称は、日本の行動の正当性を主張し、その目的を明確に表現するものでした。日本は、単なる領土拡張や資源獲得のためだけでなく、アジアの解放と繁栄という大義のために戦っているという認識がありました。

実際、日本の進出によって、東南アジアやインドの独立運動が刺激され、戦後の脱植民地化の流れにつながったという側面もあります。例えば、インドネシアやベトナムの独立運動指導者たちが、日本の支援を受けて活動を展開したことは歴史的事実です。

「大東亜戦争」という呼称を使用することは、このような日本の戦争目的や理念、そしてアジアにおける日本の役割を強調する意味合いがあります。それは同時に、日本の行動を単なる侵略や拡張主義として捉えるのではなく、より複雑な歴史的文脈の中で理解しようとする試みでもあります。

米国草の根保守の重鎮であった故フィリス・シュラフリー女史のような保守派の歴史観では、自国の歴史を自国の視点から捉え、表現することの重要性が強調されます。シュラフリー女史は、米国の伝統的価値観や国家主権を重視し、グローバリズムや国際主義に批判的でした。この観点を日本の文脈に適用すると、「大東亜戦争」という呼称を用いることは、日本の国家主権と歴史的視点を尊重する行為と解釈できます。

米国草の根保守の重鎮であった故フィリス・シュラフリー女史

「太平洋戦争」史観とも呼ぶべき、この歴史観は、終戦直後の民主党政権によるリベラル的な歴史観であり、米保守派とのそれとは異なります。

実際、米国の草の根保守を牽引してきた米国の「保守のチャンピョン」ともいえる、フィリス・シュラフリー女史は、「ルーズベルトが全体主義のソ連と組んだのがそもそも間違いだ、さらにルーズベルトはソ連と対峙していた日本と戦争をしたことが大きな間違いだ」としています。さらに、女史はなくなる直前には、「全体主義のソ連と組んだために、今日米国は中国や北朝鮮の核の脅威を被っている」と語りました。

かつて日本を占領したマッカーサー元帥は、朝鮮戦争に赴き、現地を調査した結果「当時の日本はソ連と対峙するため朝鮮半島と満州を自らの版図としたのであり、これは侵略ではない。彼らの戦争は防衛戦争だった」との趣旨の証言を後に公聴会で証言しています。

自国の歴史を自国の視点から捉え、表現することは、国家のアイデンティティと歴史認識を維持する上で重要です。それと同時の軍部の考えとは、別ものです。私自身は、この軍部の間違えは、もっと非難されるべきであり、それこそ当時の日本の大義に反する行動をとったということで、指弾されるべきと考えます。

中国大陸にこだわり続けた関東軍、米軍とは一線を画し太平洋の小さな島嶼まで、ことごとく占領した海軍の戦略など理解に苦しみます。

私自身、なぜ軍部が大陸で中国と対峙しつづけたのか、本当に疑問です。そんなことよりも、ソ連との対峙にエネルギーを費やすべきだったと思っています。しかし、もし当時日本が満州で踏ん張っていなければ、現在の中国もソ連の版図に含まれることになった可能性すらあると思います。現在は、中国も朝鮮半島もロシアの一部になっていた可能性があります。

他国の視点や解釈に過度に影響されることなく、日本独自の歴史観を保持することは、国民の歴史理解と誇りの醸成につながります。これは、戦後の占領政策や国際的な歴史認識の影響を受けつつも、日本の立場や経験を適切に反映させた歴史観を構築することを意味します。その観点から、日本は「大東亜戦争」という呼称を用いるべきです。

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