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2023年10月15日日曜日

中東で「戦争状態」突入の余波 第三次世界大戦前夜の状況 欧米首脳より遅れた岸田首相の投稿、日本の異質さが浮き彫りに―【私の論評】日本の未来を守る!強固な安全保障政策の必要性(゚д゚)!

まとめ
  • ハマスがイスラエルを急襲し、「戦争状態」が発生
  • ハマスはパレスチナを代表せず、ガザ地区を支配し、イスラエル殲滅を目指す
  • 国際的に支持されている「二国家解決」へのバイデン政権の賛成が変化をもたらしている
  • 米国がイスラエルへの軍事支援を行うことで、ウクライナ支援が制約されている可能性。
  • 日本は台湾有事に備え、国際情勢が不安定であるため慎重な対応が必要

ハマスに誘拐された子どもたち(左は三歳、右は7歳) 写真はブログ管理人挿入

 ハマスによる急襲がイスラエルとの「戦争状態」を引き起こしている。ハマスはイスラエルの殲滅を目指し、パレスチナ全体を代表するわけではなく、特にガザ地区を支配し、パレスチナ人を抑圧してい。

 長い歴史にわたる紛争の背後には、第一次世界大戦中の英国の「二枚舌」政策があり、アラブ人とユダヤ人に独立国家を約束していたことが挙げられる。国際的には「二国家解決」が支持されており、バイデン政権はこれに賛成しているが、これに反対してきたイスラエルとの関係が変わりつつある。

 アラブ諸国は一般的にパレスチナを支持しているが、最近ではイスラエルとの関係改善が進んでおり、ハマスはこれを嫌っていた。ハマスの急襲は単なるテロ行為であり、平和的なイベントを襲撃し多くの人々を攻撃し、人質を取ったことがその明白な証拠だ。また、一部の報道では、イランがハマスを支援し、イスラエルに核兵器で対抗しようとしている可能性も指摘されている。

 米国はイスラエルに高い優先度を置いており、軍事支援を提供する見込みだ。これがウクライナ支援に影響を及ぼす可能性があると指摘されている。現在の国際情勢は不安定で、日本にも影響を及ぼす可能性がある。台湾有事が最も懸念されており、日本の対応についても検討が必要だ。この事件の解決が難航する場合、ウクライナ、イスラエル、北朝鮮に対する対応が影響を受ける可能性があるため、日本は慎重に行動しなければならない。

【私の論評】日本の未来を守る!強固な安全保障政策の必要性(゚д゚)!

まとめ
  • 現在の国際状況は複雑で不安定であり、第三次世界大戦のリスクは依然として極端な可能性に留まるものの、指導者の外交、国際協力、慎重な意思決定が重要である。
  • ウクライナ、東アジア、中東で同時に大規模な戦争が発生するリスクが存在し、誤った対応が世界的な大戦につながる可能性がある。
  • ロシアのウクライナ侵攻は複雑な要因によって引き起こされたが、バイデン政権の判断ミスも一因とされており、その教訓を踏まえた外交政策が必要。
  • 日本はアジアにおいて重要な役割を果たし、台湾有事に備えて米国と協力し、明確な戦略を採用すべき。
  • 日本は中国からの依存を減少し、貿易と同盟を多様化し、中国への制裁や貿易制限を強化すべき。また、台湾を支援し、北朝鮮問題にも積極的に対処すべき。

確かに現在は、国際的に複雑で潜在的に不安定な状況にあります。ただし、第三次世界大戦のような本格的な世界大戦のリスクは、依然として遠くて極端な可能性にとどまっているようにも見えますが、この状況は、世界の指導者による外交、国際協力、慎重な意思決定が重要なことを示していると思います。

一歩間違えると、ウクライナ、東アジア、中東で同時に大きな戦争になりかねません。今すぐにではなくても、各国の指導者が対応を間違えると、後に世界的な大戦になりかねません。

我々は、すでにそれに近いことを経験しています。わずか1年数ヶ月前までは、多くの人はロシアのような国が、情報戦などを駆使して、武力を背景としながらも、本格的に武力を使わずにクリミアを手に入れるようなことはあり得るにしても、今世紀に過去のような本格的な武力侵攻などないだろうと、考えていました。

しかし、その考えは、ロシアのウクライナ侵攻で見事に打ち破られました。一歩判断を間違えれば、このようなことはあり得ます。

ロシアのウクライナ侵攻は、複雑な要因が絡み合って引き起こされたものではありますが、バイデン政権の判断ミスもその大きな一因であったと考えられます。

バイデン大統領

バイデン政権は、ロシアのウクライナ侵攻を阻止するために、ウクライナへの軍事支援を拡大し、ロシアへの経済制裁を実施しましたが、ロシアの侵攻を阻止するには至りませんでした。

バイデン政権の判断ミスとして指摘されているのは、次のようなものです。
  • ロシアの侵攻を過小評価した。
  • ウクライナへの軍事支援を遅らせた。
  • ロシアへの経済制裁を十分に実施しなかった。
バイデン政権は、ロシアがウクライナに侵攻するとは考えていなかったようで、侵攻を阻止するための十分な準備ができていなかったと指摘されています。また、ウクライナへの軍事支援も、侵攻が始まってから遅れて実施されました。本来は侵攻前に行うべきでした。さらに、ロシアへの経済制裁も、当初は十分な効果がなかったとされています。

バイデン政権の判断ミスは、今後の外交や安全保障政策に大きな影響を及ぼす可能性があります。バイデン政権は、これらの判断ミスの教訓を踏まえて、今後の外交や安全保障政策を再構築していく必要があります。

ロシア、ウクライナ国境付近で、ロシアが大規模な軍事演習を行ったり、その後軍隊を撤収するとみせかけて、さらに大規模な軍隊を配置し続けた段階までに、これに対して厳しい対処をしていれば、ロシアのウクライナ侵攻はなかった可能性も十分にありました。

具体的には、米国はウクライナ、ポーランド付近の国境に大規模なNATO軍を配置したり、場合によってはウクライナ国内にも配置すべきでした。プーチンの核の恫喝に怯むことなく、プタペスト合意に基づき、すぐにロシアと協議するなり、協議に応じなかったり、応じても態度を改めなかった場合、ウクライナを守り抜くことを宣言すべきでした。ウクライナ侵攻を阻止する手立ては何段階においもありました。

もうすでに、現在唯一の超大国米国がこのような判断ミスをしているのですから、日本としても警戒を強める必要があります。特に台湾有事は十分にあり得ることを念頭において行動しなければなりません。

無論中国が台湾に侵攻するのは、このブログでも何度か指摘したように、一般に思われているよりはるかに難しいことですが、それにしても、中国が台湾をかなり破壊することは、侵攻せずともすぐにでもできます。

実際、ロシアのウクライナ侵攻はうまくはいっていませんが、それでもロシアはウクライナの多くの都市を破壊しています。ハマスもイスラエルに大量のミサイルを発射したため、イスラエルはこれに反撃したものの、全部のミサイルは撃墜しきれず、イスラエル国内に甚大な被害をもたらしました。このような惨禍はくりかえすべきではありません。

バイデン政権は、ウクライナでの失敗を繰り返さないために、中国が台湾を攻撃したり、侵略してきた場合、米国は台湾を軍事的に守ると宣言すべきです。それも、明確で揺るぎないものでなければならないです。そうして初めて、中国を抑止することができます。

日本はアジアにおいて重要な役割を担っています。日本はかつて安倍晋三氏がそうであったように、 台湾に関して「戦略的明確性」のある政策を採用するよう米国に強く働きかけるべきです。

安倍元首相

米国は、中国の台湾に対するいかなる武力行使や侵略にも軍事的対応を取ることを明確にすべきです。これが中国を真に抑止する唯一の方法です。日本の安全保障は台湾の民主主義に依存していることを強調しなければならないです。

米国が曖昧な態度をとれば、他の国々がいくら強硬な措置をとったにしても、中露北やハマスなどのテロ組織は自分たちのチャンスが到来したと、ぬか喜びすることになるでしょう。

さらに、特に北朝鮮のミサイルや中国の野望の脅威がある以上、日本は米国だけに頼ることはできないです。ミサイル防衛システムと海軍力をさらに拡充すべきです。

 日本は、オーストラリア、インド、ベトナム、台湾との協力強化など、中国を取り巻く戦略的軍事同盟に米国とともに参加すべきです。中国に対抗するための基地を設置し、合同演習を行うべきです。

 中国に対する制裁と貿易制限を強化し、中国の経済力を抑制すべきです。中国の国家に対する経済的強制は脅威であり、民主主義国家は団結してこれに対抗しなければならないです。主要産業への技術移転と中国の投資を制限すべきです。

中国からの圧力に直面している台湾に対し、外交的・経済的支援を行うべきです。台湾が独立を維持し、民主的な政府を承認し続けることを支援すべきです。

日本は、中国に過度に依存しないよう、貿易と同盟関係を多様化すべきです。TPP加盟国のように、民主的価値を共有するパートナーに焦点を絞るべきです。

バイデン政権に、北朝鮮問題にも直接関与し、非核化なしに制裁を解除することを拒否することで、北朝鮮のミサイル計画に厳しく対処するよう要求すべきです。北朝鮮は依然として危険であり、特に中国と協力しています。

ただ一方では、日本ではほとんど認識されてぃませんが、北朝鮮とその核の存在が結果として、中国の朝鮮半島への浸透が防いでいる面もあります。国際情勢は単純ではないのです。バイデン政権は、これを無視する可能性もあり、そうなれば、かえって朝鮮半島の危機は高まります。これに留意しつつも、北を抑制する方向に米国が動くように日本は働きかけるべきです。

北は、かつて日本人を多数拉致しています。そうして、韓国内で軍事行動を起こしたこともあります。

江陵浸透事件(カンヌンしんとうじけん)は、1996年韓国の江原道江陵市付近の海域において、韓国内に侵入して偵察活動を行っていた工作員を回収しにきた北朝鮮の特殊潜水艦(サンオ型潜水艦)が海岸に接近したところ座礁し、帰還の手段を失った乗組員と工作員26名のうち艦長以下11名が集団自決、他は韓国内に逃亡・潜伏し、大韓民国国軍がこれに対し掃討作戦を展開した事件です。

天安沈没事件は、大韓民国海軍の浦項級コルベット「天安」が2010年3月26日に朝鮮人民軍の魚雷攻撃で撃沈された事件です。日本では、外務省が韓国哨戒艇沈没事件と呼称した他、韓国哨戒艦撃沈事件との表記も見られました。

北朝鮮は日本に対してこのような行動をする可能性は否定できません。中国も、正規軍ではなく、民兵を使って、尖閣上陸、実効支配する可能性は否定できません。それで成功すれば、さらにエスカレートさせる可能性もあるでしょう。

バイデン米大統領と岸田首相 頼りない二人だが、世界の安保のためできるだけのことをしてほしぃ

今はそのような兆候はないかもしれませんが、長期にわたってそのような危機はありえないとの保証は誰にもできないでしょう。朝鮮半島有事、台湾有事があれば、日本に難民が押し寄せる可能性がありますが、かつて麻生太郎氏が語っていたように、その中に武装難民がいる可能性もあり得ます。仮にそうなれば、日本も現在のイスラエルのような立場になることもあり得ます。

日本は世界の出来事に影響を与える極めて重要な立場にあります。米国に主導権を発揮させながらも、脅威に対抗するために独自の行動をとることで、日本はウクライナやイスラエルのような事態を避けることができるでしょう。岸田政権はその責務を果たすべきです。

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2023年8月30日水曜日

中国、処理水問題で国内不満をガス抜きか 神田外語大教授、興梠一郎氏―【私の論評】同盟国等との同盟強化、経済的自由の強化、国力を強めることが、日本が中国に対抗し日本の未来を守る道(゚д゚)!

中国、処理水問題で国内不満をガス抜きか 神田外語大教授、興梠一郎氏

まとめ
  • 中国当局が福島原発処理水の海洋放出に反対し、反日感情を煽る。
  • 以前の尖閣諸島国有化と類似し、中国政府への不満は沈静化措置をとりつつ、日本を非難。
  • 中国経済悪化で政府批判広がる可能性あり、日本は中国依存軽減と輸出多様化に注力すべき。
 東京電力福島第1原発処理水の海洋放出をめぐって中国当局が強硬に反対し、庶民の反日感情を扇動している。その背景について神田外語大教授の興梠一郎氏に聞いた。

興梠一郎氏

 中国当局は東京電力福島第1原発処理水の海洋放出に反対し、庶民の反日感情をあおっている。これは以前の尖閣諸島国有化の際の中国の行動と類似しており、中国は国内の経済的不満や政治的不満を抑えるために日本を批判する狙いがあるとされる。

 中国政府は社会メディアで不都合な情報を削除し、日本批判の投稿を黙認している。

 しかし、現在の抗議の動きは限定的であり、中国政府はこれが広がることを危惧している。中国経済の悪化や不満の高まりがあり、政府批判の動きが広がる可能性もある。

 中国は日本との関係を悪化させたくないため、処理水の抗議を増やすメリットは薄いとされている。今後は日本政府が中国依存を軽減し、外交カードとしてのリスクを減らすために中国依存の高い輸出品の販路を多様化する努力も必要だ。

この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になってください。

【私の論評】同盟国等との同盟強化、経済的自由の強化、国力を強めることが、日本が中国に対抗し日本の未来を守る道(゚д゚)!

まとめ
  • 中国の日本からの、水産物輸入規制は、中国国内で塩の買い占め、中国国内水産業の衰退の兆しなどの思わぬ副作用をを生み出している。
  • 中国政府の選択肢不足と国内の憤り、共産主義の制約により国民の憤怒のマグマは高まるばかり。
  • 中国の政府に対する不満を抑えるための日本批判が続くが、これは沈静化する可能性も。
  • 日本は中国依存を減らし多様な国々との経済パートナーシップを強化すべき。中国に対抗し、国力強化のためには民主主義国家との同盟、自由貿易、国内基盤強化が必要。中国のプロパガンダに惑わされず警戒を。

私は、このブログの以下の記事(リンク)で、まさに興梠氏が語るのと同じようなことを掲載しました。
日本人「慎重な言動を」 北京の大使館が注意喚起―【私の論評】日本の水産物輸入規制で、思わぬ副作用に見舞われる中国(゚д゚)!

かつての中国の反日デモ

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下に結論部分のみを掲載します。

選択肢の欠如と生活費の上昇に対する国民の憤り。共産主義の中央計画が失敗するのは、少数の官僚(中国には選挙がなく、西側諸国でいう政治家は存在しません)が何百万もの個人が市場で自由に選択するほどの知恵を持ち得ないからです。諺にもあるように、地獄への道は善意で舗装されているとされています。

いかなる動機があったとしても、他国を罰したいという願望は、しばしば高い代償を伴います。中国による日本の水産物輸入規制もその例外にはならないでしょう。予測のつかない事態が発生する可能性も十分あります。

この記事に掲載しましたが、すでに中国では、塩の買い占めや、水産市場などで一般顧客が激減するなどの副作用が起こっており、さらに予期せぬ副作用が起こる可能性もあります。

このようなことから、中国が国内で「処理水」を巡って国内で日本批判を継続し続けることはないとみられます。しかし、尖閣諸島への威嚇などのように、恒常可する可能背性がないと断言することもできません。特に、反日デモや反日サイトが禁止されたとしても、政府サイドによる嫌がらせは続くかもしれません。そうして、今回のような出来事は、水産物以外でも起こる可能性もあります。

日本固有の領土尖閣諸島

興梠氏が言うように「今後は日本政府が中国依存を軽減し、外交カードとしてのリスクを減らすために輸出品の多様化に努める必要がある」のは確かです。

中国の習近平政権は民主主義の価値観や自由市場の原則を共有しない権威主義政権です。このような国に過度に依存するのは賢明ではないです。

日本としては、台湾、韓国、インドなどのアジアの民主主義国家との経済・貿易関係を強化するべきです。これらの国々は、日本と同じく自由主義を共有し、経済大国として成長しています。

さらに、アメリカ、カナダ、オーストラリア、ヨーロッパ諸国など、欧米の同盟国との新たな自由貿易協定の交渉を推進すべきです。欧米の経済力と価値観の共有は、日本に大きな利益をもたらすことになります。特に、日本が主導で発効したTPPに米国に戻ってもらい、さらに多くの国々に参加してもらうべきでしょう。

緑はTPP加盟国、黄緑は加盟検討国もしくは加盟が決まった国

さらに、中国依存の割合が大きい国内産業を支援し、中国から自立できるようにすべきです。グローバルな貿易は重要ですが、いずれの国も強固な国内基盤を維持しなければならないです。特に、減税や規制緩和は、民間部門の成長をさらに促すことができます。

中国の覇権主義と拡張主義に対しては、強硬姿勢をとるべきです。尖閣諸島のような日本固有の領土を守るために一歩も譲らないことが肝要です。強さと決意を示すべきです。宥和的な態度は、さらなる要求を招くだけです。

中国の脅威に対抗するため、日本の他国との同盟を増やすとともに、強化すべきです。さらに、国防と安全保障に関する米国との緊密な協力が不可欠です。力の均衡による平和を目指すべきです。

中国のプロパガンダや誤った情報キャンペーンに振り回されてはならないです。中国の権威主義的な政府は信用できません。彼らは、常に日本のような民主主義国家を弱体化させようとしています。警戒を怠るべきではありません。

民主主義の同盟国との同盟の強化、経済的自由の強化、そうして国力を強めることが、日本が中国に対抗し、日本の未来を守る道です。

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2023年8月13日日曜日

「バービー」公式アカウント問題 きのこ雲の下で起きたことを想像できないのか ケント・ギルバート―【私の論評】原爆の犠牲者の尊厳を踏みにじるような行為だけは、いかなる理由があろうともやめていただきたい(゚д゚)!

ニッポンの新常識

問題になった合成画像

 終戦の日が近づく中、原爆をめぐって許しがたい行動が続いている。

 広島市では、原爆の日に合わせ、反戦・反核を掲げる左派団体がデモ行進を行いました。デモ行進では、太鼓を打ち鳴らされ、岸田文雄首相を批判するシュプレヒコールが上がりました。また、ヘルメットにマスク姿の集団もいたようだ。

 心静かに原爆死没者の霊を慰める式典会場近くで、騒がしくデモ行進することは、犠牲になった方々への侮辱に等しいものだ。一部のイデオロギーに固執する活動家らが主導している可能性もある。

 また、米国では、バービー人形を題材にした実写映画「バービー」と、原爆開発者のロバート・オッペンハイマーを描いた映画「オッペンハイマー」が公開された。ファンらは2つの映画の合成画像をSNSに投稿して盛り上がった。バービー役の女優の髪形をきのこ雲に置換えた画像もあったそうだ。

 こうしたなか、バービーの公式アカウントが、炎に包まれたビーチで、オッペンハイマーの肩にバービーが乗る画像に、「忘れられない夏になりそうだ」という文章を、ハートの絵文字付きで返信して問題となった。日本から批判の声が殺到したそうだ。

 合成画像で盛り上がっていた人々は、78年前、きのこ雲の下で何が起きていたのか想像できないのか。日本語版も公開されるのに、公式アカウントは問題になると思わなかったのか。疑問に思うし、腹立たしいものだ。

 バービー人形は長年、世界中の女の子たちに愛されてきた。米国の文化を象徴するキャラクターといえる。

 米国では、映画に限らず、話題を集めるために、商業広告に政治問題を取り入れるケースがある。今回の騒動は、日本に対する侮辱だけでなく、米国の文化に対する侮辱だと感じている人が多い。

 米国の若者の間では最近、広島や長崎への原爆投下に「罪」を感じる向きが多い。多くの米国人が、軽々しく論じられる問題ではないと理解しています。原爆は面白おかしく利用するものではない。

 原爆投下に関する私の見解は拙著『日米開戦「最後」の真実』(宝島社)第4章に約30ページにわたり書いた。ぜひ読んでほしい。

 「核反対」の意見を否定するつもりはない。「核なき世界」が実現できればいいと、誰もが思っているはずです。ただ、これまで第三次世界大戦が起きなかったのは「核抑止」があったからで、容易に片付けられる話ではない。

 ウクライナ侵攻に絡んで、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領が「核恫喝」に出たことで、世界のバランスが崩れようとしています。核問題はシビアだ。

 今こそ、国際社会が結束して、プーチン氏に核使用の「NO」を突き付けるべきタイミングだ。別の目的のために、原爆を軽々しく見る向きがあることは憂慮すべきだと考えている。

 ケント・ギルバート

 この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になってください。

【私の論評】原爆の犠牲者の尊厳を踏みにじるような行為だけは、いかなる理由があろうともやめていただきたい(゚д゚)!

広島と長崎の甚大な悲劇を軽んじることは、極めて悪趣味だといえます。原爆投下は甚大な犠牲と苦しみをもたらしたのであり、それを矮小化したり、安っぽいジョークやマーケティングに利用すべきではないです。

広島平和記念博物館に展示されている原爆投下直後に機能を停止した時計の写真

バービーのメーカーは、ここで驚くべき判断力の欠如を示したといえます。日本の人々、特に保守的な人々が、このことを深く不快に思うのは十分理解できます。日本の保守層は、私を含め、名誉、尊厳、尊敬といった価値観を最も大事にします。これは、米国の保守層も同じでしょう。

大量破壊兵器についての冗談は、これらの原則のすべてに反するものです。バービーのソーシャルメディア・チームは、直ちに誠意ある謝罪を表明すべきです。個人的には、このレベルにまで自らのブランドを貶める彼らに対しては、軽蔑の念しか感じません。

彼らはモラルと基本的な人間としての良識に著しく欠けています。多くの人が憤慨するのはもっともであり、私もこの無味乾燥な行為は断じて許しがたいです。この件に限らず売名行為や利益やプロパガンダのために、原爆の犠牲者の尊厳を踏みにじるような行為だけは、いかなる理由があろうともやめていただきたいです。

平和のシンボルでもあり続けるべきバービー人形

歴史のこの瞬間に核兵器を矮小化することは、とりわけ危険で無責任だといえます。ロシアとウクライナのような国家間の緊張が高まっている今、世界は原爆や核兵器の使用は容認できないと声をそろえるべきです。

このバービーに関するような行動は、こうした壊滅的な兵器を常態化させ、それが象徴する恐怖を薄めることにしかならないです。

ウラジーミル・プーチンはすでに、国際法や規範に違反するような発言を繰り返しています。プーチンが核兵器を配備するということは、恐ろしいことではありますが、現実に配備しているわけであり、プーチンが核兵器の使用をすることを思いとどまらせるために、あらゆる努力を払うべきです。

広島と長崎を軽視することは、そのメッセージを著しく損なうことになります。保守派として、私たちは力による平和を信じています。それは、侵略を阻止するために強力な核兵器を維持する一方で、安定と道徳的行動規範の遵守を促進することを意味します。安倍元総理が、核共有を主張したのもそういう意味だと思います。

ソーシャルメディア上でキノコ雲について冗談を言うことは、逆にならず者たちを増長させ、核兵器の使用に対するタブーを弱めることになります。核戦争の脅威に対しても世界は団結すべきです。しかし、行動は言葉よりも雄弁です。バービーのように著名な企業がこのような無神経な行動をとれば、プーチンのような危険な指導者たちに、誰も本気で核兵器使用を非難していないと認識させることになるでしょう。

バービー人形のマーケティング・スタッフ AI生成画像

これは、潜在的に広範囲に及ぶ結果をもたらす無責任な大失態でした。国際社会はこの問題について、道徳的なあいまいさではなく、道徳的な明確さをもっと対処すべきです。かつて米大統領レーガンが言ったように、「平和とは争いがないことではなく、争いを平和的手段で処理する能力である」。

私は、この出来事が、私たちを平和からさらに遠ざけるのではないかと憂慮しています。たとえ他の人々がそうでなくても、日本と米国の保守層はそうだと思います。日米の保守派は、これからもさらにビジョンを共有すべきです。

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2023年8月12日土曜日

日米捕鯨問題でインド太平洋貿易協定が脅かされる―【私の論評】中国への対抗軸を形成するのに残されている時間は少ない!日米が捕鯨で争っている時ではない(゚д゚)!

日米捕鯨問題でインド太平洋貿易協定が脅かされる

日本の商業捕鯨

米国と日本が捕鯨をめぐって対立

ジョー・バイデン大統領が歴史的な三国首脳会談に日本と韓国の首脳を迎える準備を進めている中、米国はアジアにおける重要な貿易事業を脅かす日本との捕鯨戦争に巻き込まれている。

米国通商代表部(USTR)は日本に対し、アジアで経済的に中国に対抗するため昨年東京で発足した14カ国による貿易協定「インド太平洋経済枠組み(IPEF)」に反捕鯨の文言を採用するよう求めている。しかし、日本政府は「捕鯨は日本の伝統であり文化であり、科学的根拠に基づいたものである」と反論しており、IPEFへの署名を拒否する可能性がある。

この問題は、米国と日本が長年対立してきた捕鯨問題の再燃であり、バイデン政権のアジア政策に大きな影響を与える可能性がある。

捕鯨問題の背景

国際捕鯨は1986年に国際捕鯨委員会(IWC)によって禁止された。しかし、日本は「科学研究の目的で」クジラの殺処分を認める条項を付けた「例外」を適用し、捕鯨を継続してきた。このため、日本は国際社会から批判を受けている。

日本は2019年にIWCを脱退し、排他的経済水域(EEZ)内での捕鯨のみを認めている。しかし、国民の好みも変化する中、日本国内の捕鯨産業は苦境に立たされている。

捕鯨問題とIPEF

IPEFは、米国が中国に対抗するために立ち上げた経済連携協定である。IPEFは、貿易、投資、サプライチェーン、脱炭素、税制、人権など、幅広い分野で協力を強化することを目的としている。

USTRは、IPEFに反捕鯨の文言を盛り込むことで、日本政府に圧力をかけて捕鯨を中止させることを狙っている。しかし、日本政府は「捕鯨は日本の伝統であり文化であり、科学的根拠に基づいたものである」と反論しており、IPEFへの署名を拒否する可能性がある。

捕鯨問題は、米国と日本が長年対立してきた問題であり、バイデン政権のアジア政策に大きな影響を与える可能性がある。バイデン政権は、日本政府と捕鯨問題について協議し、IPEFへの署名を促していく必要がある。

この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になってください

【私の論評】中国への対抗軸を形成するのに残されている時間は少ない!日米が捕鯨で争っている時ではない(゚д゚)!

これは、重要な戦略的パートナーシップを脅かす、残念で不必要な事態であるといえます。

米国は、捕鯨という些細な問題で、IPEFに関する協力のような、より広範な地政学的・経済的利益を頓挫させるべきではありません。捕鯨は一部の人々にとっては感情的な問題ではありますが、中国の影響力に対抗し、この地域での自由貿易を推進することに比べれば微々たるものに過ぎません。米国は優先順位を明確にすべきです。

Top Priority(最優先)


日本は、科学的なガイドラインに基づき、節度を持って捕鯨を認めるべき合理的な主張をしています。すべての国は、自国の文化的伝統や天然資源について自主性を持つべきであり、捕鯨の全面禁止は行き過ぎです。米国は日本の立場をもっと尊重すべきです。

しかし、米国の立場たてば、米国には環境保護や動物福祉に関する倫理的な懸念を考慮する義務もあります。クジラの個体数は保全されなければならないです。持続可能性を確保しつつ、限定的で規制された捕鯨を可能にする妥協案は、すべての人の利益になるでしょう。双方に柔軟性と理解が必要です。

この一件でIPEFを頓挫させると脅すのは近視眼的としか言いようがありません。同様に、日本が反捕鯨の文言に反抗してIPEFへの署名を全面的に拒否するのも、極端な反応に見えます。静かで誠意ある交渉の方が解決の可能性は高いです。

今回の日米韓の首脳会談は、対立ではなく建設的な対話の機会です。日米韓は多くの共通の利益、価値観、戦略的目標を共有しています。政治的な点数稼ぎではなく、信頼と協力の構築に焦点を当てるべきです。

捕鯨と貿易に関する妥協とコンセンサスは、冷静な判断が勝てば達成可能です。

この捕鯨問題を巡る対立は、インド太平洋における協力という広範な地政学的プロジェクトを損なう危険性があります。しかし、オープンなコミュニケーションと他の観点を理解する意欲があれば、合理的な解決策を見出すことは可能です。妥協に向けた米国のリーダーシップは大歓迎です。

元記事には、以下のようなことも掲載されていました。
日本や他の国々がこの構想を支持しているのは、この構想が米国の環太平洋パートナーシップに関する包括的および先進協定への参加につながることを期待しているからだ。この協定は、当時のドナルド・トランプ大統領が前協定から離脱した後、日本が復活させた主要な貿易協定である。

協議に詳しい関係者によると、USTRは当初、捕鯨を完全に禁止する文言を求めていたという。 その後態度を軟化させたが、日本はいかなる制限も含む合意を支持しないと断固としていた。
IPEF構想が成功裏に進めば、米国が最終的にTPPまたは同様の包括的貿易協定に復帰する可能性はあるでしょう。これに影響を与える可能性のある主な要因をいくつか挙げてみます。

バイデン政権は、トランプ政権よりも大規模な多国間貿易協定に寛容な姿勢を示しています。IPEFと日米関係がうまく進めば、TPP再締結の機運と信頼が高まるかもしれないです。

日本や他のTPP参加国は、IPEFを米国の完全復帰への足がかりとみなすでしょう。TPP産カ国は、は最終的にTPPに戻るか、より広範な協定を求めるでしょう。IPEFがサプライチェーンの弾力性のような重要な問題で勝利を収めれば、TPPはより魅力的なものになるかもしれません。

TPPは本来米国オバマ政権が提唱したものだった

中国の影響力の増大は、米国が独自の地域貿易リーダーシップで対抗することに拍車をかけるかもしれないです。TPPは、アジアにおける米国の経済的リーダーシップを確立し、中国に対抗するための最も現実的な選択肢です。IPEFだけでは中国の野心にはかなわないでしょう。

貿易をめぐる米国の国内政治はより有利になっています。アジア貿易統合の戦略的・経済的必要性に対する認識が高まっています。米国のTPP離脱の代償がより明白になっています。これは議論を変えるかもしれないです。

しかし、障害もあります。 捕鯨問題は、現在進行中の相違点を反映しており、より大きな協定を結ぶ際にも、その相違点が残る可能性があります。TPPの進展のためには妥協点を見つけなければならないでしょう。

バイデンは、トランプ時代に離脱した協定に再び参加することに反対するでしょう。捕鯨が解決したとしても、TPPの「再合意」を批判する人もいるでしょう。新たな包括的協定が必要かもしれないです。

米国の 選挙サイクルや党派性は不確実性をもたらすかもしれません。将来の共和党政権が再び離脱するかもしれないです。この不安定さがTPP参加国を米国の再参加に慎重にさせているところがあります。

中国は米国の貿易の野心に対抗するために攻撃的な行動をとり、TPP参加国を分裂させるかもしれなです。これはパートナーシップを弱め、多国間協定への復帰を複雑にする可能性があります。

その可能性は否定できないものの、米国のTPP復帰は困難で不確実なままです。しかし、もしIPEFが加盟国同士の結びつきを強化し、重要な問題での協力につながり、中国の影響力に対抗するのであれば、その確率は時間とともに向上するでしょう。

戦略的忍耐と長期にわたるインド太平洋地域の安定を考えれば、米国と同地域の諸国は、より広範で互恵的な経済関係に向けて政治的ハードルを乗り越えることができるかもしれないです。しかし保証はありません。緊密なコミュニケーションと着実な進展が鍵といえるでしょう。

しかし、どのような形であれ、日米ならびインド太平洋地域の国々は、中国に対する対抗軸を築き、一致協力していくべきことにはか変わりありません。

インド太平洋地域

日米、そして他のインド太平洋民主主義諸国がより緊密な協力関係を築くことは、戦略的に極めて重要です。

なぜなら、 中国が経済的、軍事的、技術的に台頭を続ける中、地域の小国は単独で自国の利益を守るのに苦労することになるでしょう。安定したパワーバランスを実現するには、集団的協力が唯一の方法です。同盟政治は中国に対抗する鍵です。

米国と日本のような同盟国は、政治的、経済的、安全保障上の深い価値観と利益を共有し、両者を結びつけています。「自由で開かれたインド太平洋戦略」を推進することは、中国が支配する地域よりも日米のすべての利益に資することになります。日米の未来は単独で存在するのではなく互いに絡み合っているといえます。

米国を含め、どの国も単独では、この地域における中国の野心と投資に匹敵することはできません。しかし、米国、日本、インド、オーストラリア、その他の国々が力を合わせれば、中国の構想に代わる規模の資源を提供できます。パートナーシップこそ、鍵です。

中国は、最大限の影響力を享受できる近隣諸国と中国と当該国の二国間で関係を強化することで、優位性を発揮してきました。多国間協力は中国のこの優位性を否定し、パートナーに地域問題や国際機関に対するより大きな影響力を与えることになります。結束は力です。

健全な同盟関係は、世界の貿易、金融、ガバナンスに利益をもたらす安定性を提供することになります。中国は同盟関係を自国の利益に "反する "ものとみなすかもしれないですが、実際には中国経済が依存する国際システムの安全確保に同盟関係は役立っています。相互依存は協力を要求します。

より緊密な同盟政治と多国間協力は、今後数十年にわたって中国とバランスを取り、関わっていくために不可欠なものです。TPP、IPEF、あるいは他の構造など、どのような形であれ、重要なのは日米と同盟国が協調して取り組むことです。

経済的、軍事的、外交的な力を結集することで、中国に変わる選択を提供し、すべての人に利益をもたらす地域秩序を築くことができます。しかしそのためには、ビジョン、共有利益へのコミットメント、そして多くの障害を乗り越え着実な協力が求められます。

民主的なパートナー同士による対抗軸は、まさに唯一の実行可能な戦略ですが、その成功は、巧みな外交、約束の実行、信頼を築くための頻繁な協議にかかっています。時間と一貫性さえあれば、このような同盟はダイナミックな地域の安定をもたらす柱となり得ます。しかし、それは今始めなければならないです。残されている時間は少ないです。まさに、日米が捕鯨を巡って争っている場合ではないのです。

妥協、信頼、そして長期的なビジョンの共有が不可欠です。捕鯨自体は些細なことですが、失敗した場合の影響は深刻で広範囲に及ぶでしょう。しかし、政治的な意志と知恵があれば、これはチャンスにもなります。

意見の相違を速やかに解決すれば、日米のリーダーシップと同盟の連帯に対する信頼が高まります。中国に同盟の連帯に対する楔を与えず、共有する民主的価値を再確認することができます。そして、地域の秩序を形成するために必要な政治、経済、軍事のあらゆる分野における協力の基調を整えることになります。

日米両国は戦略的利益を最優先し、可能な限り歩み寄り、捕鯨を前向きにとらえなければならないです。妥協すれば、この争いは危険ではなく、同盟の結集点になり得ます。しかし、世界は注目しており、時間はないです。断固としたリーダーシップが必要です。

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2023年7月16日日曜日

英TPP加盟を承認 発効後初の拡大、12カ国に―【私の論評】日本が旗振り役となって、TPPのルールをWTOのルールとすべき(゚д゚)!

英TPP加盟を承認 発効後初の拡大、12カ国に



 環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)に加盟する日本やオーストラリアなど11カ国は16日、ニュージーランド・オークランドでの閣僚級会合で、英国の新規加盟を正式に承認した。12カ国体制となる。協定が2018年に発効して以来、加盟国が増えるのは初めて。

 今後は同じく新規加盟を申請している中国や台湾、ウクライナなどの取り扱いが焦点となる。

 英国の加盟でTPPの経済圏がアジア太平洋から欧州に広がり、参加国の国内総生産(GDP)の合計は世界全体の12%から15%に高まる。英国と経済連携協定(EPA)を締結済みの日本にとって直接的な恩恵は限定的だが、先進7カ国(G7)の一角が新たに加わることでTPPの影響力が増すことが期待される。

【私の論評】日本が旗振り役となって、TPPのルールをWTOのルールとすべき(゚д゚)!

英国の TPP 加盟は日英にとって重要な進展です。 英国にとっては、5億人以上の人口を抱える市場へのアクセスと、EU離脱後の経済の活性化をもたらすことになります。 日本にとって、英国における貿易と投資の新たな機会が開かれます。

TPPは、オーストラリア、カナダ、チリ、日本、マレーシア、メキシコ、ペルー、シンガポール、ベトナム、ニュージーランドを含むアジア太平洋地域の11か国間の自由貿易協定です。 この協定は、商品やサービスの貿易、投資、知的財産、政府調達など幅広い問題をカバーしています。

英国のTPP加盟により、日英間の貿易が促進されることが期待されています。 2021年の両国間の貿易額は145億ポンドに達しました。 TPPにより、この数字は年間最大25億ポンド増加すると予想されています。

TPPは英国と日本双方で雇用を創出することも期待されています。 英国政府は、この協定により英国で最大6万5,000人の雇用が創出される可能性があると試算しています。

TPPは経済的利益に加えて、英国と日本との関係を強化することも期待されている。 両国はすでに緊密な同盟関係にあり、TPPによってさらに協力が深まることが期待されます。

安倍氏の英国TPP参加表明の歓迎から5年越しで英国加入の実現。安倍外交がまた一つ大きなレガシーを残した格好となったといえます。以下は、安倍氏が英国訪問時の写真、右は当時のメイ英首相。


英国が TPP に参加することによる英国と日本にとっての具体的な利点は次のとおりです。

貿易の増加:TPPにより、英国と日本の間の貿易は年間最大25億ポンド増加すると予想されています。 これにより両国の経済成長が促進され、雇用が創出されることになる。
投資: TPP は日本から英国へのさらなる投資を呼び込むことが期待されています。 これは雇用を創出し、英国経済を成長させるのに役立ちます。
新しい市場へのアクセス:TPPにより、英国企業はアジア太平洋地域の新しい市場へのアクセスが可能になります。 これは、ビジネスを成長させ、世界経済で競争するのに役立ちます。
法の支配の強化:TPPには法の支配を促進し、知的財産権を保護する条項が含まれています。 これは、英国と日本の企業にとって、より予測可能で安定した環境を構築するのに役立ちます。

全体として、英国の TPP 加盟は両国にとって前向きな進展である。 これにより、貿易が促進され、雇用が創出され、英国と日本との関係が強化されることが期待されている。

TPPの拡大は更に大きな意味を持つことになります。私自身は、TPPルールをWTOルールにすべきと思います。 TPPWTO よりも包括的かつ現代的な貿易協定であり、デジタル経済や国有企業など、21 世紀の経済の課題の一部に対処する条項が含まれています。 TPPのルールをWTOのルールにすれば、すべての国の競争条件を平等にし、誰もが同じルールに従うようにするのに役立つでしょう。

TPP ルールが WTO ルールになれば、次のような多くのメリットが期待できます。

貿易の増加:TPPのルールは企業にとってより予測可能で安定した環境を生み出し、企業の貿易の増加を促すでしょう。 これにより、世界中で経済成長が促進され、雇用が創出されるでしょう。
保護が強化される知的財産: TPP ルールは知的財産権のより強力な保護を提供します。 これはイノベーションと創造性の促進に役立ち、企業と消費者の両方に利益をもたらすでしょう。
貿易障壁の軽減:TPPルールは、関税や割り当てなどの貿易障壁を削減します。 これにより企業は商品やサービスを輸出しやすくなり、経済成長が促進されるでしょう。

WTOのルールを必ずしも遵守しない中国にとっての影響は重大でしょう。 TPPのルールがWTOのルールになれば、中国はそれに従うよう圧力を受けることになります。 これは中国の貿易政策の変更につながり、世界経済にプラスの影響を与える可能性があります。

もちろん、TPP ルールが WTO ルールになった場合に対処しなければならない課題もいくつかあります。 たとえば、一部の国は TPP ルールのすべてに同意することに消極的になる可能性があります。 さらに、TPPルールをWTOに導入するには時間と労力がかかります。

全体として、私は、TPPルールをWTOルールにすることの利点が課題を上回ると信じています。 TPP ルールは、世界中の貿易と経済成長の促進に役立つ貴重なルールです。特に、これは中国に対して厳しいものになるでしょう。

2001年11月10日、中国WTO加盟の調印式

中国は、2001年にWTO加盟しました。1978年の改革・解放以来、鄧小平の活躍によって、1997年の香港再譲渡・返還にこぎつけた共産主義中国が、「繁栄への切符」を手に入れたのです。 

この時には、共産主義中国は「WTOの公正なルール」に合致するような状態ではありませんでした。 ところが、米国を始めとする先進国は「今は基準を満たしていないが、貿易によって豊かになれば『公正なルール』を守るようになるだろう」と考え、共産主義中国も「将来はルールを守る」という「約束」をしたことで加盟が認められたのです。 

ところが、加盟後20年以上経っても、共産主義中国は自国の(国営)企業を優遇し、外資系いじめを連発するだけではなく、貿易の基本的ルールさえまともに守る気があるのかどうか不明です。

WTOに提訴される件数自体は、中国よりも他の国のほうが多いです。これをもって、中国はWTOのルールを遵守しているなどと言う人もいますが、それは正しくはありません。確かに件数だけみれば、そうみえるかもしれませんが、中国の不遵守にはかなり深刻な事例が多いのです。

件数だけでみるのは、たとえば犯罪において重犯罪と、軽犯罪を同次元にみるのと同じようなものであり、明らかな間違いです。

以下にに中国の WTO ルール不遵守の深刻な例をあげます。

輸出補助金:中国は、鉄鋼、アルミニウム、その他の産業に輸出補助金を提供していると非難されています。 これらの補助金により、中国企業は自社製品を原価以下で販売することができ、世界市場で不当な優位性を得ることができます。
知的財産の盗難: 中国は広範な知的財産の盗難で告発されています。 これには、衣料品や電子機器などの商品の偽造や、外国企業から企業秘密を盗むことが含まれます。
市場アクセス:中国は外国企業に公正な市場アクセスを提供していないと非難されています。 これには、外国投資に対する制限や外国企業に対する差別的慣行が含まれます。
国有企業: 中国の国有企業 (SOE) は政府から優遇措置を受けています。 これにより、国内外の民間企業に対して不当な優位性が得られます。

これらは中国がWTOルールを遵守していない例のほんの一例にすぎません。 これらの違反は他国に重大な影響を与えており、中国と他のWTO加盟国との間で多くの貿易紛争を引き起こしています。

私は、TPPのルールをWTOのルールにすることで、まずはルールを守れない国には、WTOから抜けてもらうべきです。無論、猶予期間は設けることとし、その期間に守ることができる状態にできない国々には加盟取り消しなどの措置をすべきです。

このようなことを考えると、今回TPPに環太平洋諸国ではない英国が加盟したことは、将来TPPのルールをWTOのルールにすることに、一歩近づいたともいえる出来事だと思います。

今後さらに、TPPを拡大し、TPP加盟国がが大きく繁栄し、WTOのルールへと昇格させるための、下地作りをすべきと思います。

旗振り役日本 AI生成画像

そうして、日本こそTPPルールをWTOルールにする旗振り役となるべきです。日本はTPPを強力に支持しており、すでに国内で協定を履行するための措置を講じています。 日本は、WTOの加盟国であり、WTOの紛争解決機関の一員となっています。 これにより日本はWTOで強い発言力を持ち、TPPルールの採用を主張できる有利な立場にあります。

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2023年7月12日水曜日

中国の罠にはまった玉城デニー知事、河野洋平氏ら訪中団 仕掛けられた「沖縄分断」に…米国とズレた甘い対応の日本政府―【私の論評】1980年代、中共は日本はやがて消滅するとみていた、それを変えたのが安倍元総理!この流れはもう誰にも変えられない(゚д゚)!

高橋洋一「日本の解き方」

2019年 玉城デニー沖縄県知事と、安倍総理

 日本国際貿易促進協会(会長・河野洋平元衆院議長)の訪中団に参加していた沖縄県の玉城デニー知事は先週、中国共産党序列2位の李強首相と会談した。

 しかし、玉城知事は尖閣諸島の問題に触れず、海警局船の連日の周辺海域侵入を黙認したと受け取られかねる状況になった。

 玉城知事は中国訪問時の査証(ビザ)の手続き簡素化や直行便再開を要請したが、米国務省は中国への渡航を再考すべきだと警告し、意見の相違が浮き彫りになっている。

 訪中団を歓待した習近平政権の狙いは政府と沖縄県を分断し、中国の影響力を高めることだと指摘されている。中国にとって沖縄は海洋進出にとって重要な拠点であり、玉城知事の訪中はその戦略の一環とみられている。

 玉城氏が訪中団に参加するのは2回目であり、中国側からの待遇は相当なものです。今回の訪問は台湾有事に備えた中国側の策略の一環とも考えられます。

 松野博一官房長官は6日の記者会見で、今回の河野氏と玉城氏が訪中し、李首相と会談したことに関し「歓迎する」と述べた。本来は「地方知事の行動にはコメントしない」とすべきでした。

 政府の対応には疑問が呈されており、米国は中国渡航について警戒を強めている。

 これは、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になっって下さい。

【私の論評】1980年代、中共は日本はやがて消滅するとみていた、それを変えたのが安倍元総理!この流れはもう誰にも変えられない(゚д゚)!

地球儀を俯瞰する外交 AI生成画像

都道府県知事などの外国訪問は国際親善に限定されるべきものであり、外交は外務省、場合によっては総理大臣が行うべきものです。

これにはいくつかの理由があります。第一に、外務省は効果的な外交を行うために必要な専門知識と経験を持っています。彼らは国際関係や異文化のニュアンスを深く理解しています。また、関係を構築し、日本の国益を増進するために利用できますし、世界中に張り巡らされた人脈も持っています。

第二に、外務省は国際舞台で日本を代表する責任があります。つまり、外務省には日本を代表して約束する権限があります。都道府県知事が外国の元首と約束をしても、日本政府を拘束するものではないです。これは混乱や誤解を招きかねないです。

最後に、外交政策に関しては、統一見解を維持することが重要です。日本政府の異なる部分が異なる国に対して異なる約束をすることは、国際舞台における日本の立場を弱めることになりかねないです。

もちろん、都道府県知事が外交目的で外国を訪問することが適切な場合もあります。例えば、当該国の地域の首長(道府県の知事や、市町村・特別区の長が)集まるサミットに知事が招待された場合、日本の利益を有意義な形で代表することができるかもしれないです。しかし、こうしたケースは例外であって、ルールではありません。

一般的に、外交は外務省が担当するのがベストです。そうすることで、日本の利益が効果的に代表され、国際舞台での統一戦線が確保されます。

外交とは、国家間の関係を築き、紛争を解決する技術です。世界における自国の地位を向上させ、自国の利益を促進し、他国とのパートナーシップを構築するのに役立つため、どの首相にとっても不可欠な手段です。

首相にとって外交には多くの利点があります。第一に、国際舞台での国のイメージ向上に役立ちます。首相が世界の指導者たちと会談し、関係を築くことは、その国が尊敬され、世界の舞台で活躍しているというメッセージを送ることになります。これは投資、観光、貿易の誘致に役立ちます。

第二に、外交は国の利益を促進するのに役立ちます。首相が他国と交渉する際、自国に有利な合意を取り付けようとすることができます。例えば、より良い貿易取引、新市場へのアクセス、安全保障問題での協力などを得ることができるかもしれないです。

第三に、外交は他国とのパートナーシップの構築に役立ちます。首相が他の世界の指導者と良好な関係を築けば、共通の目標に向かって協力しやすくなります。これは、気候変動、テロリズム、核拡散といった世界的な課題に取り組む際にも役立ちます。

ここで、安倍首相の外交について振り返っておきます。

2013年の訪米ではオバマ大統領と会談し、環太平洋経済連携協定(TPP)などさまざまな問題について話し合いました。

2014年の訪中では習近平国家主席と会談し、両国関係改善の方策について話し合いました。

2015年のインド訪問では、ナレンドラ・モディ首相と会談し、両国間の経済関係を強化する方法について話し合いました。


これらは、首相にとって外交がもたらすメリットのほんの一例にすぎないです。関係を築き、利益を促進し、パートナーシップを構築することで、外交は世界における国の地位を向上させ、目標を達成するのに役立ちます。

1956年から1987年まで中華人民共和国の副首相を務め、中国政府で最も権力のある人物の一人とされていた中国高官「陳雲」はオーストラリアを訪問したときに、日本についてある発言をしました。

その発言は、「日本という国はいずれ消滅する」というものです。彼は1982年、オーストラリアを訪問した際にこの発言をしました。彼は中国と日本の経済的な対立について語ったとされ、日本は「紙の虎」であり、いずれ崩壊するだろうと述べたとされています。

陳氏の発言は日本に対する脅しと広く解釈され、日本国内で大きな怒りを買いました。しかし、陳氏は後に、日本が文字通り消滅するという意味ではなく、いずれ経済的な優位性を失うという意味であったと、自身の発言を明らかにしています。

陳雲氏の発言は、中国と日本の長年のライバル関係を思い起こさせるものです。両国には複雑な歴史があり、経済問題や領土問題でしばしば対立してきました。しかし近年、両国は関係改善に努めてきました。

2008年、日中両国は自由貿易協定に調印し、気候変動や核不拡散などの問題でも協力しています。両国が歴史的な対立を乗り越え、真に平和的で協力的な関係を築けるかどうかは、まだわからないです。

ただ、陳雲は、「日本という国はいずれ消滅」すると語っており、現在からみると当時の日本野与党自民党はかなりリベラル色が色濃く、そのままであれば、確かにいずれ中国に何らかの形で飲み込まれてもおかしくはない状態でした。陳雲はそのことを語ったとみられます。そうして、当時の自民党の主流であったリベラル派のお粗末ぶりをみて、彼らは与しやすく、御しやすく本気でそう思っていたことでしよう。

このことに脅威を抱いた、安倍晋三氏が首相になってから、特に第二次安倍政権においては、安倍首相は地球儀を俯瞰する外交といわれたように、様々な国を訪問し、あれよあれよという間に、中国包囲網を構築してしまいました。しかも、中国にこれに対抗する暇も与えず、急速に構築したのです。

この包囲網は現在では、米国をはじめとする西側諸国を中心として、他の地域も巻き込んだ大規模なものになっています。これは、構造的変化といっても良いようなものになっています。

この流れを変えることは難しく、中国はかなり脅威を感じていることでしょう。だからこそデニー知事の訪問は、渡りに船であったのでしょう。

渡りに船 AI生成画像

ただ、安倍総理は、在任中に日本の同盟国や、親しい国々と中国のとの関係を、完璧に変えてしまいました。それも、根底から、質的に完璧に変えてしまいました。今や、中国が世界秩序を変えて、自分たちに都合の良い秩序を樹立しようと試みていることは、世界中の国々が理解するようになりました。これは安倍外交の成果です。

この流れは、デニー知事などの努力で到底変えられるものではありません。それは、韓国の文在寅前大統領が、北朝鮮との関係を改善しようとしたものの、結局のところ文は、金正恩掌で転がされ続け、結局金づるにされただけで、最後にかえって関係が悪化したことをみても理解できます。仮にデニー知事に賛同して、自民党の現在の重鎮たちがそれを変えようとしても、多くの国々がそれを許さないでしょう。 

ただ、韓国で文在寅が台頭したように、自民党のリベラル派やデニー知事などが台頭すれば、結局大きな流れは変えられないでしょうが、それでもかなり後退することになる可能性があることには留意すべきでしよう。

まさに、中国はこれを狙っているのでしょう。文在寅時代の韓国のように時代の潮流に乗り遅れることだけは避けるべきです。

せっかく安倍晋三氏によって、日本は存在感を増し世界の中でリーダーシップを発揮できるようになったのですから、これからも世界の中で先頭を走り続けるべきです。

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2023年6月22日木曜日

ゼレンスキー氏「欧州で何十年も成長の源になる」と協力呼びかけ…ウクライナ復興会議が開幕―【私の論評】ウクライナは、ロシアとの戦いだけではなく、国内でも腐敗・汚職との戦いに勝利を収めるべき(゚д゚)!

ゼレンスキー氏「欧州で何十年も成長の源になる」と協力呼びかけ…ウクライナ復興会議が開幕


 ロシアの侵略を受けるウクライナの復興を話し合う「ウクライナ復興会議」が21日、2日間の日程でロンドンで開幕した。61か国の政府や民間の代表、世界銀行や欧州連合(EU)など国際機関の代表ら1000人以上が参加。巨額の復興費用の調達や、戦闘終結を待たずに経済を活性化させる方法などが議題となる。

 復興会議の開催は昨年7月にスイスで開かれて以来で、今年は英国とウクライナが共催した。初日は日本の林外相を含む各国の首脳・外相級が演説。スナク英首相はウクライナに3年間で30億ドル(約4200億円)の融資保証を発表し、ブリンケン米国務長官は13億ドル(約1800億円)以上の追加支援を約束した。

 ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領はオンラインで演説し、「ウクライナは欧州で何十年にもわたって経済、産業、技術の成長の源となるだろう」と述べ、協力を求めた。世銀の試算では復興費用は4110億ドル(約58兆円)に上り、経済基盤の再構築も求められる。英政府によると、会議を通じ、米シティグループ、英ヴァージングループなどの大手企業が復興への協力を表明する。

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ウクライナ戦争が終結すると、戦後のウクライナが急速な経済発展を遂げる可能性を裏付けるいくつかの事実があります。

ウクライナ戦争が終わり、経済発展で幸せになった人々 AI生成画像

まずは、他の途上国と比較すれば、かなり発達した産業基盤があることがあげられます。

農業:ウクライナは主要な農業生産国で、小麦、トウモロコシ、ヒマワリ油の産地として知られています。2021年、ウクライナは278億ドル相当の農産物を輸出し、世界第10位の農産物輸出国となりました。

 製造業: 鉄鋼、機械、化学製品などの製造業が盛ん。2021年、ウクライナは143億ドル相当の製造品を輸出し、世界第47位の製造品輸出国となった。

航空宇宙産業:ウクライナは宇宙産業で実績があり、戦争前まではロシアに部品を供給していました。また、航空産業でも実績があり、世界最大航空機An-225「ムリヤ」はソ連時代のウクライナで製造されたものです。

IT:ウクライナはITセクターが成長しており、多くのハイテク新興企業が進出しています。2021年、ウクライナのITセクターは68億ドルの収益を上げました。

ウクライナには優れた学術の長い歴史があり、その大学は世界的に高く評価されています。実際、ウクライナはQS世界大学ランキングで2022年、高等教育システムの質で世界40位にランクされました。

ウクライナ戦争の前までは、ウクライナは中国人学生にとって手頃な留学先になっていた程です。その背景を以下に述べます。

授業料:ウクライナの大学の授業料は、ヨーロッパの他の国に比べて比較的安いです。例えば、ウクライナの公立大学の1年間の平均授業料は約2,000ドルです。これは、米国の国公立大 学の1年間の平均授業料(約35,000ドル)よりもかなり低 いです。

生活費: ウクライナの生活費も、ヨーロッパの他の国々と比べると比較的低額です。ウクライナの学生の1ヶ月の平均生活費は約500ドルです。これには宿泊費、食費、交通費、その他の費用が含まれます。

奨学金: ウクライナへの留学を希望する中国人学生には、数多くの奨学金が用意されています。これらの奨学金は、授業料、生活費、旅費までカバーすることができます。

こうしたことから、ウクライナは留学を希望する中国人学生に人気の留学先となっていました。戦争前の2021年には、2万人以上の中国人留学生がウクライナで学んでいました。

さらに、ウクライナの教育の質に関して掲載します。

ウクライナの教育制度はヨーロッパのボローニャ・プロセスに基づいており、ウクライナの大学の学位はヨーロッパ中の大学に認められています。

また、ウクライナの大学は、学部課程、大学院課程を含む幅広いコースを提供していますし、研究に力を入れており、教員 の多くは各分野で国際的に有名な専門家です。

ウクライナの大学で学ぶ学生 AI生成画

産業基盤を持ち、人口も四千万人台と、ヨーロッパの国々と比較すると多い方であり、さらに、ウクライナはヨーロッパとアジアの交差点に位置し、黒海とバルト海の両方にアクセスできます。

 こうしたことから、戦争が終結すれば、ウクライナは急速な経済発展を遂げる可能性を秘めています。ただし、戦争がウクライナ経済に与えたダメージは大きく、回復には時間がかかることに留意する必要があります。

一方ウクライナにおける、 汚職は長年にわたりウクライナの経済発展の大きな障害となってきました。トランスペアレンシー・インターナショナルの腐敗認識指数によると、ウクライナは2022年に180カ国中122位となり、世界で最も腐敗した国のひとつとなりました。これは、ロシアとあまり変わらない水準です。

ウクライナの腐敗には多くの例がりますが、代表的なものをいくつか挙げます。

贈収賄:贈収賄はウクライナで広く見られる問題です。例えば、企業は許認可を得るため、あるいは罰金や営業停止を避けるために役人に賄賂を贈らなければならない場合があります。

縁故主義:縁故主義もウクライナにおける大きな問題のひとつで、政府との契約やその他の利益を、その資格に関係なく友人や同盟国に与える慣行を指します。これは非効率と浪費を招き、新規事業の競争を困難にします。

脱税: ウクライナでは脱税が大きな問題となっており、政府は毎年数十億ドルの税収を失っていると推定されています。その結果、公共サービスのための資金が不足し、政府がインフラや経済発展に投資することも難しくなっています。

汚職はウクライナ経済に多くの悪影響を及ぼしています。外国からの投資を抑制し、企業の経営を困難にし、政府に対する国民の信頼を失墜させました。その結果、ウクライナはその経済的潜在力を十分に発揮できずにいます。

ウクライナの汚職・腐敗 AIイメージ画像

近年、ウクライナ政府は汚職に対処するために一定の措置を講じていますが、まだ道のりは長いようです。政府は汚職の取り締まりを継続し、より透明性が高く、説明責任を果たせる政府システムを構築する必要があります。そうして初めて、ウクライナはその経済的潜在力をフルに発揮できるようになるでしょう。

ウクライナは戦争を終わらせるだけではなく、国内でのこうした深刻な腐敗・汚職を撲滅する必要があります。もしそれができなければ、EUには加盟できないでしょうし、NATOへの加入もできなくなるかもしれません。TPPに加入の意思を示しているようですが、これもできなくなる可能性もあります。

当初はウクライナに好意的で、多額の投資をしようとしていた、各国政府や民間企業なども、投資をしなくなり、ウクライナへの投資をためらうようになるかもしれません。

ウクライナは、ロシアとの戦いだけではなく、国内でも腐敗・汚職との戦いに勝利を収めていただきたいものです。

そうすれば、ロシアの西隣に、経済発展した国、経済に裏打ちされた軍事大国ができあがることになり、経済的にも安全保障的にも良い結果を生むことになります。

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2023年6月11日日曜日

墜落事故から40日 子ども4人無事発見 アマゾン密林でどうやって生存?―【私の論評】ウイトト兄妹のサバイバルは、生存と回復力、そして家族の力の物語(゚д゚)!

 墜落事故から40日 子ども4人無事発見 アマゾン密林でどうやって生存?

アマゾンの熱帯雨林

 先月、コロンビアで起きた小型機の墜落事故で、1歳から13歳のきょうだい7人が行方不明となりました。

 しかし、約40日後にコロンビア軍が彼らを南米アマゾンのジャングルで発見し、救助しました。

 この奇跡的な救出劇では、子どもたちのうち4人が無事であることが確認されました。彼らは猛獣の生息するジャングルで40日間も生き延びたのです。

 コロンビア軍は救助犬や捜索隊を投入し、子どもたちの存在を示す足跡やシェルターを見つけました。

 この地域は危険な存在も潜んでおり、生存するために子どもたちは煙を上げるなどの方法で助けを求めました。

 40日以上の捜索活動の末、子どもたちは無事に見つかりました。彼らの生存は驚異的であり、彼らの祖父母やコロンビアのペトロ大統領も喜びと感謝の気持ちを表明しました。

 子どもたちは先住民のウイトト族の知識を活かして生き延び、果物などの自然の資源を利用したと報じられています。

 これは、元記事の要約です。詳細をご覧になりたい方は、元記事を御覧ください。

【私の論評】ウイトト兄妹のサバイバルは、生存と回復力、そして家族の力の物語(゚д゚)!

テレビで、コロンビアに何度も足を運び、現地の人たちとも交流しており、いわゆる現地通の人が、テレビでインタビューを受けていて、今回の子どもたちの発見に関して、答えていました。

食べものや、水の入手などに関して、様々な推論を述べていて、最後のほうにインタビューアーが「この子たちは、ウイトト族の子どもたちだそうです」というと、その人は、「ウイトト族の子どもですか。それなら大丈夫なわけです。水や食料の入手法も知っているし、乳児の面倒のみかたも知っているわけです」と力強く明るい顔で、答えていました。

最初にコロナワクチン接種を受けたとされるウイトト族の女性

やはり、今回の救出劇では、遭難したのがウイトト族であるということが大きなキーポイントであるあると考えられます。

では、ウイトト族とはどんな民族なのでしょうか。コロンビア南東部およびペルー北部の先住民族であるウイトト族。コロンビアに約6,000人、ペルーに約4,000人、合計約10,000人が住んでいると推定されています。ウイトト族は、南米の他の言語族とは無関係なウイトト語族の言語を話します。

ウイトト族は伝統的にアマゾン川とその支流に沿った小さな遊牧民の村に住んでいました。彼らは狩猟採集民であり、漁業や農業で食事を補っていました。また、ウイトト族は幻覚作用のある嗅ぎタバコを宗教的、薬事的な目的で使用していたことでも知られています。

19世紀後半から20世紀初頭にかけて、ウイトト族はヨーロッパからの入植者がもたらした病気(伝染病)によって壊滅状態に陥り、伝統的な生活様式を捨て、より定住的なライフスタイルを強いられることになりました。もともとウイトトト族は、定住民ではなかったのです。

現在、ウイトト族は、コロンビアやペルーの主流社会と同化し続ける中で、自分たちの文化やアイデンティティを維持するために奮闘しています。

ウイトト族は、何世紀にもわたって多くの困難に直面してきた魅力的で回復力のある人々です。彼らは、南米に存在する多様な文化の豊かさを思い起こさせる存在なのです。

ここでは、ウイトト族について、さらにいくつかの事実を紹介します。

彼らの、伝統的な衣服は樹皮の布から作られています。また、熟練した船大工であり、航海士でもあります。

ウイトト族の伝統的衣装

神話、伝説、歌など、豊かな口承伝承があります。精巧なボディペインティングと宝飾品で知られていますし、彼らは平和的な人々で、そのもてなしで知られています。

ウイトト族は、アマゾン地域の文化的・生物学的多様性の重要な一部です。彼らは、この地域の豊かな歴史と先住民の文化を保護することの重要性を、今に伝える存在なのです。

ウイトト族は、。アマゾンの熱帯雨林の天然資源をベースに、豊かで多様な食文化を持っています。

ウイトト族の食生活は、魚や鳥獣、野生の果物や野菜が主なものです。また、トウモロコシ、マニオク、プランテンなど、さまざまな作物も栽培しています。

魚はウイトトの主食で、ピラニア、ナマズ、カメなど、さまざまな種類の魚を捕ることができます。サル、シカ、バクなどの狩猟動物も重要なタンパク源です。

野生の果物や野菜もウイトトの食生活の重要な一部で、バナナ、プランテン、パパイヤ、アボカドなど、さまざまな種類のものを採取しています。また、トウモロコシ、マニオク、プランタンなど、さまざまな作物も栽培しています。

ウイトト族は、ロースト、ボイル、フライなど、さまざまな方法で食べ物を調理します。また、唐辛子、ニンニク、タマネギなど、さまざまなスパイスを使用します。

ウイトトの食文化は、アマゾンの熱帯雨林の豊かな自然資源を反映したものです。伝統的な知識と慣習に基づいた、健康的で持続可能な食事です。

ここでは、ウイトトの伝統的な食べ物の具体例をご紹介します。

ピカディージョ:魚や鳥獣、野菜などを使った煮込み料理で、唐辛子やニンニク、タマネギなどで味付けされることが多い。

カサベ:キャッサバの粉で作った平たいパンで、シチューやスープと一緒に食べることが多い。

チチャ:トウモロコシから作られる発酵飲料(酒)で、特別な日によく飲まれる。

チチャ

ウイトトの食文化は、彼らのアイデンティティと生活習慣の重要な一部です。自然界とのつながりや、伝統的な知識や習慣への依存を思い起こさせます。

子どもたちがウイトト族であったことが、彼らの生存に一役買っていた可能性は十分にあります。ウイトト族は、アマゾンの熱帯雨林で何世紀にもわたって暮らしてきた先住民族です。

熱帯雨林とその資源について深い知識を持ち、厳しい環境の中で生き抜く術を身につけています。子どもたちが40日間もジャングルで生き延びることができたのは、熱帯雨林に関する知識と、土地に根ざした生活を営む能力があったからだと思われます。

また、ウイトト族は、家族の絆が強いことで知られています。そのため、子どもたちは家族の絆に支えられながら、試練を乗り越えることができたのでしょう。

ここでは、ウイトト族が熱帯雨林を熟知し、その土地で生活する能力を備えていたことが、子どもたちの生存を助けたと考えられる理由をいくつかあげます。

彼らは、熱帯雨林のどこで食料や水が手に入るか知っていますし、狩猟や漁労に必要な道具や武器の作り方を知っています。

そうして、彼らは、毒のある植物や動物の見分け方を知っています。さらに、熱帯雨林を移動する方法を知っています。

さらに、これだけではなく、ウイトト族の強い家族の絆も、子どもたちが生き延びるための支えとなったかもしれません。子どもたちは、家族の支えによって力を得ることができ、愛する人と再会するために生き延びようとする意欲が高まったのかもしれません。

ウイトト兄妹の物語は、本当に驚くべきものです。それは、生存と回復力、そして家族の力の物語といえます。

彼らのサバイバルはこれから、徐々に明らかにされていくでしょう。私達も、真摯に彼らのサバイバル法を学ぶべきでしょう。

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2023年5月31日水曜日

日本の先端半導体「輸出規制」、中国はどう見るのか、材料は対象に含まれず短期的な影響は軽微との見方も―【私の論評】最近の半導体製造業の旺盛な投資は、リターンが見込めるから。岸田政権もこれを見習うべき(゚д゚)!

日本の先端半導体「輸出規制」、中国はどう見るのか、材料は対象に含まれず短期的な影響は軽微との見方も


 日本政府は、5月23日に先端半導体の製造装置など23品目を輸出管理の対象に追加した。追加された品目のほとんどは半導体の製造装置と部品であり、洗浄や薄膜形成、回路焼き付け、エッチング、検査などの工程に関連している。背景として、経済産業省は国際的な安全保障環境の厳しさや軍事転用の防止を目的として、最新の輸出管理動向などを総合的に勘案し、特定の貨物と技術を輸出管理の対象に追加したと説明している。

 中国商務省は、日本政府の決定を輸出管理の乱用として批判し、自由貿易や国際的な貿易ルールから逸脱していると述べた。

 専門家や投資業界関係者の意見によると、日本政府の規制強化は中国の半導体産業にどの程度の影響を及ぼすかは不明ですが、規制対象は回路線幅14nm以下の先端半導体の製造装置に限られており、材料などは含まれていないため、影響は小さい可能性がある。ただし、規制の運用次第で規制が成熟プロセスにまで拡大する可能性もあると指摘されている。

 また、中国の半導体メーカーは規制強化を見越して予備の装置や材料を大量に買い付けており、短期的には影響は大きくないとされているが、長期的には中国の半導体産業は国産の製造装置を開発し、輸入装置の代替能力が問われることになるかもしれない。

これは、元記事の要約です。詳細は、元記事をご覧になってください。

【私の論評】最近の国内半導体製造業の旺盛な投資性向は、リターンが見込めるから。岸田首相もこれを見習え(゚д゚)!

日本の措置は昨年の米国の輸出規制より中国をさらに不安にさせるでしょう。細部条項を検討してみると日本が米国よりも一歩踏み込んで中国の半導体生産を防ぐ措置を出したとみられているからです。

米国が18ナノメートル(1ナノメートルは10億分の1メートル)DRAM、14ナノメートル以下のシステム半導体など先端半導体の輸出だけ規制するのに対し、日本は45ナノメートル級汎用半導体製造に使われる露光装備などまで輸出規制に含むとみられるためです。もし汎用半導体製造にまで支障が出るならば中国企業は洗濯機などの家電製品から自動車に至るまで多様な製品生産に打撃を受けるほかありません。

半導体露光装置

また、こうした日本政府の動きがオランダと米国の今後の歩みに影響を与える可能性もありまう。オランダは7月に関連規制を出す予定です。

このため中国半導体産業協会は先月、「日本が制限する輸出装備の範囲がとても広範囲で、成熟した半導体技術供給網に影響を及ぼしかねない。日本が日中半導体産業間の協力的な関係を破壊しようとするならば中国政府が断固とした対応措置を取ってほしい」という内容の声明を出しました。

中国商務部も23日、「日本政府の措置は輸出管理措置の乱用であり自由貿易と国際経済・貿易規則に深刻に反するもので、これに対し断固として反対する」として即時是正を要求しました。これと関連し日経新聞は、中国が米国の半導体輸出規制に対して世界貿易機関(WTO)に提訴したように日本にも同様の行動を取る可能性があると予想しています。

一方、人工知能(AI)用先端半導体分野で世界1位の米エヌビディアのジェンスン・フアン(台湾系米国人)最高経営責任者(CEO)は24日に報道されたフィナンシャル・タイムズとのインタビューで、「米国と中国間の半導体戦争が米国のテック産業に途轍もない被害を与える恐れがある」と話しました。

ファンCEOは「バイデン政権が中国の半導体産業牽制に向け実施した輸出統制でシリコンバレーの企業は後ろ手に縛られた状態。米国のテック業界で3分の1を占める中国市場を失えばわれわれは米国にこれ以上半導体工場を作る必要がない」と話しました。バイデン政権が自国内に半導体工場を作らせるためにCHIPS法を通じた大々的な支援を施行中ですが、対中輸出制裁でこの政策が無用の物になりかねないという警告です。

ただ、私はそのようなことにはならないと思います。AIの進歩が半導体の需要をさらに高めることが予想されるからです。

まずAIは、新しい製品やサービスの開発に活用されています。AIは、医療、金融、交通、製造など幅広い業界で、新しい製品やサービスの開発に利用されています。これらの新しい製品やサービスには、それを支える半導体が必要です。

例えば、自動運転車の開発にはAIが使われていますが、センサーからのデータを処理し、リアルタイムで意思決定を行うためには、多くのコンピューティングパワーが必要です。

さらに、既存の製品やサービスを改善するためにAIが活用されています。例えば、医療診断の精度向上、金融取引アルゴリズムの効率化、交通システムの安全性向上などに、AIが活用されています。こうした改善には、より強力な半導体が必要です。

さらに、AIはより広く普及しています。企業や消費者がAIを搭載した製品やサービスの利点を実感していることから、AIはより広まりつつあります。AIがより普及するにつれて、半導体の需要はさらに増加し続けることでしょう。

この主張の出典は、半導体産業協会(SIA)の報告書です。SIAは、世界の半導体業界を代表する業界団体です。「2022年の半導体産業」と題されたこの報告書は、2022年の世界の半導体市場が10.3%成長すると予測しています。同レポートは、この成長の要因として、AIを活用した製品やサービスの継続的な導入など、さまざまな要因を挙げています。

結論として、AIの進歩は半導体の需要をさらに促進すると予想されます。これは、AIが新しい製品やサービスの創出、既存の製品やサービスの改善、普及に活用されているためです。その結果、半導体の需要は今後も伸び続けると予想されます。

今後、AIの進歩はさらに半導体の需要を増していくことになるでしょう。たとえ米国のテック業界で3分の1を占める中国市場を失えば、米国にこれ以上半導体工場を作る必要がないという予想は間違いではないかと思います。

米国は世界の半導体産業における主要なプレーヤーです。米国には、インテル、クアルコム、Nvidiaなど、世界有数の半導体企業があります。これらの企業は、スマートフォン、コンピュータ、自動車など、さまざまな製品に使用される半導体を設計・製造しています。

米国政府は、半導体サプライチェーンの安全性に懸念を抱いています。米国政府は、米国が半導体を中国などの外国に依存しすぎていることを懸念しています。この懸念は、中国が半導体へのアクセスを利用して米国企業から知的財産を盗んでいると非難されている事実によって高まっています。

バイデン政権は、CHIPS法の一環として、半導体産業への520億ドルの投資を提案しています。この投資は、米国内でより多くの半導体工場を建設し、半導体産業での雇用を創出するのに役立つことでしょう。

AIの進歩が半導体需要を喚起している具体例をいくつか紹介します。

たとえば、自動運転車です。センサーからのデータを処理し、リアルタイムで意思決定を行うには、多くのコンピューティング・パワーが必要です。このコンピューティングパワーを提供するのが半導体です。

バーチャルアシスタント Amazon AlexaやGoogle Assistantに代表される仮想アシスタントの普及はますます進んでいます。これらのバーチャルアシスタントは、自然言語を処理し、応答を生成するために強力な半導体を必要とします。

ロボティクスもまた、AIが大きな影響を及ぼしている分野です。製造業、医療、物流など、幅広い産業でロボットの活用が進んでいます。これらのロボットを動かすには、半導体が必要です。

AI技術の発展が進むにつれ、半導体の需要はさらに高まると予想されます。なぜなら、AIは新しい製品やサービスの創造、既存の製品やサービスの改善、そして普及に活用されるからです。そのため、米国のハイテク産業は、需要の拡大に対応するために、米国内に多くの半導体工場を建設する必要があります。中国が製造できないというなら、なおさら必要になります。

そうして、これは米国だけではなく、日本も同じことです。

日本における半導体工場設立の近況を紹介します。

2022年12月、株式会社ラピダスは北海道千歳市に半導体新工場を建設すると発表した。工場の建設費は1兆円(約86億ドル)で、2ナノメートル(nm)チップの製造に使用される予定です。工場は2025年に生産を開始する予定で、3,000人以上の雇用を創出する予定です。


千歳市が工場に選ばれた理由は、インフラが整っており、東北新幹線の高速鉄道路線に近いことです。また、同市には熟練した労働力があり、政府も協力的です。

千歳市での半導体工場の設立は、日本の半導体産業にとって大きな後押しとなる。この工場は、多くの産業に不可欠な半導体の安定供給を確保するのに役立ちます。また、この工場は雇用を創出し、日本経済を活性化させるでしょう。

サムスンは、日本に新しいチップ開発施設を建設する予定です。この施設は横浜市に建設され、1,000人以上の雇用を創出する予定です。サムスンはこのプロジェクトにいくら投資するかはまだ発表していません。

東京エレクトロンは、日本に新しいチップ装置工場を建設します。この工場は大分市に建設され、200人以上の雇用が創出される見込みです。東京エレクトロンは、このプロジェクトへの投資額をまだ発表していません。

ジャパン・アドバンスト・セミコンダクター・マニュファクチャリング(JASM)は、日本で新しいチップ製造工場を建設しています。この工場は熊本市に建設され、1,700人以上の雇用が創出される予定です。JASMは、台湾のチップメーカーTSMCと日本のソニー、デンソーの合弁会社です。この工場は2024年に生産を開始する予定です。

TSMCの熊本新工場

これらは、日本における半導体工場設立の最近の動きのほんの一部です。日本政府は、国内生産を促進し、輸入への依存度を下げるために、半導体メーカーに補助金を支給しています。また、政府は、半導体産業への外国投資の誘致にも取り組んでいます。

世界の半導体市場は、今後数年間で大きく成長すると予想されます。この成長は、スマートフォン、コンピューター、自動車、産業機器など幅広い製品における半導体の需要の高まりによってもたらされています。日本は強力な製造基盤と熟練した労働力を有しているため、この成長の恩恵を受けるのに有利な立場にあります。

日本に新しい半導体工場が設立されることは、日本が半導体を安定的に供給できるようにすることにつながります。半導体は多くの産業にとって不可欠なものであるため、これは日本の経済的安全保障にとって重要です。また、新しい工場は雇用を創出し、日本経済を活性化させるでしょう。

日本の半導体企業は、中国が半導体製造ができなくなることを見込んでいることと、これから反動大重要はますます旺盛になることを見込んで、大型投資をどんどん実施しようとしています。

私は、最近の株価がバブル後の最高値が続いている、背景にはもちろんこうした事があるからだと思います。これに関しては、政府の動きは全く関係ないと思います。というより、政府の動きはマイナスに作用するだけだと思います。

先日もこのブログに述べたように、現状では、子どもへの投資、防衛費増は、明らかに日本ではリターンがかなり高く、であれば、財源は増税や保険料の値上げなどではなく、国債を発行して賄うべきなのですが、政府は何かというと「増税」ばかりしようと考えているようです。

半導体製造業の今回の工場新設には、無論銀行などからお金を借りるなどの手段を講じて行うのでしょう。多額の借金をしたとしても、十分リターンがあるし、意義のある事業であるからこそそのような挑戦をするのです。政府のように少子化対策や防衛費増額の、財源を税金で賄うということは、企業でいえば、大事業を内部資金だけで賄うようなものです。

確実にリターンが期待できる投資に、内部資金だけで行うのは全くばかけています。政府も半導体製造業と同じく、リターンが期待できる投資には、財源として国債をあてるべきです。

リターンが期待できる投資は、お金を借りて実行するというというのは、社会常識です。金融機関からお金が借りられるということは、企業の信用もありますが、投資が大きなリターンを生むと金融機関も理解するから、貸すのです。

岸田首相や、財務省や多くの政治家は、これを理解していないようです。彼らには、満足に企業経営もできないでしょう。満足に企業経営もできない人が、政府を運営するのは難しいです。ビジネスセンスのない人には、任せられないです。

岸田首相は、今回の半導体製造業の矢継ぎ早の投資の意味を良く考えて、そろそろ、財源に税金ばかりを用いるのは、間違いであることを理解していただきたいものです。

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