2016年5月29日日曜日

消費税増税2年半延期 安倍首相が麻生、谷垣氏らへ方針伝達 麻生氏は「解散」主張―【私の論評】安倍総理は、伊勢志摩サミット声明に盛り込んだ「機動的財政政策」で衆院選大勝利(゚д゚)!

消費税増税2年半延期 安倍首相が麻生、谷垣氏らへ方針伝達 麻生氏は「解散」主張



安倍晋三首相は28日夜、首相公邸で麻生太郎副総理兼財務相、自民党の谷垣禎一幹事長、菅義偉官房長官と会談し、来年4月に予定している消費税率10%への引き上げを平成31年10月まで再び延期する方針を伝えた。国会会期末の6月1日にも発表したい考えで、政府・与党内の調整を急ぐ。

会談で首相は、消費税率の引き上げを「2年半延期したい」と伝えた。これに対し、麻生、谷垣両氏は財政規律維持の観点から予定通りの増税を求めて異論を唱え、引き続き協議することになった。

増税烈士の麻生、谷垣両氏
麻生氏は「再延期するなら衆院を解散して国民の信を問うべきだ」とも主張した。首相は同調せず、菅氏は公明党に配慮して衆参同日選を見送るべきだとの考えを示した。

連立与党の公明党も社会保障の財源確保のため再延期には否定的な立場をとってきた。首相は近く、同党の山口那津男代表とも会談して理解を求める。

26日の主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)の世界経済に関する討議で首相は、現在の状況が「リーマン・ショック前の状況と似ている」と指摘。世界経済が直面するリスク回避のため、あらゆる政策をとることで合意した伊勢志摩サミットの議論を踏まえ、政策を総動員して対応する方針を示していた。

首相は28日の政権幹部との会談でも、同様の観点から消費税増税の再延期の必要性を説明した。再延期については27日の記者会見では「是非も含めて検討し、参院選前に明らかにしたい」と語っていた。

ただ、首相は26年11月に消費税増税を1年半延期して衆院を解散した際に「再び延期することはない」と断言。その後は、20年のリーマン・ショックや23年の東日本大震災級の事態の発生を再延期の条件としていた。 

首相は新たな経済対策を盛り込んだ28年度第2次補正予算案の編成に向けた検討にも入った。補正の規模は5兆~10兆円程度になるとみられ、近く閣議決定する「骨太の方針」や「ニッポン1億総活躍プラン」から施策を盛り込む。

【私の論評】安倍総理は、伊勢志摩サミット声明に盛り込んだ「機動的財政政策」で衆院選大勝利(゚д゚)!

さて、消費税増税見送りはこれで決まったと見て良いと思います。なぜなら、いくら麻生、谷垣両氏が財政規律の立場からこれに反対したとしても、増税すればさらに個人消費は落ち込み、税収が減ることは過去の三度の3%、5%、8%増税のときであまりにもはっきりしすぎているからです。

むしろ、財政規律を重視するというのなら、10%増税はすべきではないです。にもかかわらず、なぜ増税するかといえば、財務省が税金の配賦権限を強め、さらに霞が関で絶大な権力を得ようという魂胆があり、財務省がそれを目指して、税と社会保障の一体改革などとして、無理やり増税が正しいというキャンペーンを繰り返し、政治家や新聞などのマスコミなどを巻き込んできたからです。

最近発表された今年1月〜3月期のGDPの発表をみても、どう考えても増税すべきでないことは、あまりにもはつきりしすぎています。それについては、このブログでも最近掲載したばかりです。その記事のリンクを以下に掲載します。
やはり嘘だった財務省の「増税の影響は軽微」 衆参ダブル選再燃も―【私の論評】政府は私が中学の時に味わった、鮮烈なアハ体験を国民に味合わせるべきだ(゚д゚)!
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事より2016年1〜3ガ突きのGDPのポイントと、うるう年効果に関する表、ならびに最近のGDPの推移を以下に再掲します。


本年度2月のうるう年効果、公表されたGDPの値から"うるう年効果"を控除したのが実質値


さて、公表されたGDPの1月〜3月の値は、実質成長0.4%で、年率換算では1.7%です。しかし、この値は無論のこと、うるう年効果は相殺されたものではありません。うるう年効果を相殺すると、1月 〜3月期のGDPの修正値は、0.1%、年率換算では0.5%です。

これをみれば、ぎりぎりプラスであり、もし海外情勢などの何か別な悪い要因が少しでも重なれば、マイナスになった可能性は大です。

これではとても、実質経済が安定しているとはいえません。ちなみに、昨年の10月〜12月もマイナスでした。2期連続でマイナスになれば、マクロ経済学では不況期入とみなしますから、日本経済はぎりぎりで、不況期入にはならなかったわけです。

この状況をみれば、8%増税の悪影響は明白であり、この上さらに来年の4月から、10%増税ということにでもなれば、とんでもないことになったことでしょう。

この状況をみて、アベノミクスは失敗などという人も多いですが、現在のところ金融緩和の政策が奏効して、雇用環境がかなり良くなっています。今春卒業した大学生の就職率は97・3%で、前年同期から0・6ポイント増え、調査を始めた1997年以来最高とななりました。

文部科学省と厚生労働省が今月20日発表した。2011年に最低(91・0%)を記録した後、5年連続で改善し、これまでの最高だったリーマン・ショック前の08年3月卒(96・9%)を上回りました。高卒の就職率もかなり改善しています。金融政策は成功しているのです。少し前までは、非正規雇用ばかり増えているなどと語っている人もいましたが、これをみれば、もはやどう考えても正規雇用も増えつつあるのは明らかです。


中には、まだ「実質賃金がー」と叫ぶ方もいるようですが、これははっきり間違いです。これは最初からわかっていることですが、雇用情勢が急激に改善しているときには、実質賃金は下がります。

このようなことは常識で考えてもわかります。今季高卒や大卒の採用が大幅に改善しているわけですから、大企業などで高卒や大卒を大量にある企業が雇用したとします。従来よりも、高卒・大卒の若くて、賃金が低い人の構成比率が増えるわけですから、会社全体の平均賃金は下がります。国全体でも同じことです。

だから、正確にいえば、8%増税が大失敗であったことは疑う余地がありません。これで、増税せよという人の神経が全く理解できません。さらにこのブログには、何度か掲載したきたように、現状認識として今の日本の財政状況は悪くはありません。連結政府(統合政府)のB/Sでネット債務残高のGDP比は40%以下で米英より良い状況です。財政再建は一般論として必要でも今の状況で優先順位はかなり低いです。仮に必要としてその手法として増税は間違いです。現状では、経済成長が最適です。

麻生氏、谷垣両氏は一体この現実をどう認識しているのでしょうか。彼らの言動は、増税のための増税と主張しているようにしか見えません。彼らは、増税烈士というあだ名がふさわしいかもしれません。

ところで、衆院解散で衆参ダブル選挙になるかどうかは、まだ五分五分の状況です。

この状況に関して、日経新聞では以下の様に論評しています。
12年12月に発足した安倍政権は安倍、麻生、菅の3氏と、経済再生相だった甘利明氏をあわせた「3A1S」で運営していた。1月に甘利氏が政治資金問題で辞任に追い込まれた後は「2A1S」の状態が続いています。 
しかし、増税再延期と同日選をめぐる結果が出れば、首相を頂点とした麻生、菅両氏の三角関係が、二等辺三角形なのか、そうでないのかがはっきりする。
麻生氏は再延期に反対し、同日選に賛成。一方、引き続き公明党と足並みをそろえる菅氏は再延期派で、同日選には否定的だ。28日夜の会合でも、首相は2人の意見の違いを把握できたはずだ。 
 サミット成功とオバマ米大統領の歴史的な広島訪問という大きな実績を築き、首相は勢いに乗る。ただ、政治決断の着地の仕方によっては、自身を支える政権幹部との関係を変えるリスクもある。
しかし、現実にはさらなる日経新聞の予想を上回るサプライズも考えられます。それは、8%減税が大失敗だったことははっきりしているわけですから、この悪影響を取り除くために、消費税減税を行い消費税を5%にして、その是非を問うために、衆院を解散して、衆参同時選挙にするというサプライズです。

8%増税は、大失敗とわかったわけですから、まともに考えればこの道もあり得るわけです。8%増税をそのままにして、新たな経済対策を組んだとしても、少なくとも10兆円、できれば20兆円クラスの対策でなければ、焼け石に水です。

無論、これはやってできないわけではありません。財源をどうするのかなどとい話もありますが、それはたとえば、為替特会労働特会もあるわけで、特に雇用情勢が良くなりかつ円高傾向の現在では、労働特会を主に用い、為替特会を為替対策に使いつつも余剰の分も一部使うなどの方法でも、十分すぎるほどです。

しかし、これには欠点もあります。経済対策は長期にわたっては続けられないということです。一方、8%増税も含めて、消費税増税は一度増税されると、それは不可逆的で永遠につづくものと見られています。

実際、過去には消費税は、上がる一方で、下がることはありませんでした。だから、経済情勢はどうであれ、一度決まった消費税率は下がることはないと思われています。

これでは、結局大規模な経済対策を行っても、それは一時のことであり、一度あげられた消費税率は、永遠に下がらないものと多くの国民は、思っているため一時の経済対策を行っても、長期的には消費が冷え込む恐れがあります。

しかし、ここで消費税を5%に減税したらどういう効果があるでしょうか。無論、8%増税の悪影響を取り除くことができます。しかし、これは一つの効果でしかありません。もう一つ大きな効果があります。それは、一時上がった消費税は下がることもあり得ると多く国民に理解してもらえることになります。これは、マクロ経済学では当たり前のど真ん中です。増税、減税は政府がその時々で採用する財政政策の一つすぎないのです。

マクロ経済循環 そもそも増税論者の頭の中にはこの循環がないのでは?まさか
政府がお金を支出するとそれは、この世の中から消えると思っているのでは?
そもそも、増税は緊縮財政の一つの手法です。これは、景気が良すぎでインフレのときなどに景気を冷ます効果があります。

一方減税は、積極財政の一つの手法です、景気が悪くてデフレのときなどに景気を浮揚させる効果があります。

安倍総理は、今回減税して、消費税を5%に戻し、今後政府は景気が悪すぎのときには消費税減税を、景気が良すぎの時には消費税増税をするという機動的な財政政策を行うことを宣言して、その是非を衆院選でその是非を国民に問うようにすべきです。実際に安倍総理は、伊勢志摩サミットの共同宣言で「機動的財政政策」という文言を盛り込んでいます。この言葉、マスコミなどはネガティブに受け取っているようですが、ポジティブに受け取ると、このようにも解釈できます。

同時に、日銀も不景気のときには、金融緩和を景気が良すぎるときには、金融引き締めという機動的な金融政策を行うことも、宣言して、衆院選でその是非を国民に問うようにするのです。できれば、それを実行できるように、日銀法の改正も宣言すると良いと思います。

そのような宣言して、衆院選に勝利できれば、財務省や日銀が政府の意向に沿わない、財政政策や、金融政策を実行しようと思ってもできなくなくなります。

これは、サプライズ中のサプライズです。これを実行して、過去の日本のように15年以上もの間デフレスパイラルの泥沼に沈むようなことが二度ないようにしていただきたいものです。これを宣言して、実行すれば、あっという間に日本経済は、回復軌道にのります。

このような衆院解散であれば、解散そのものと減税という2つの大サプライズを起こすことができます。

そうして、この2つとサプライズは大いに有り得ることです。もう、安倍総理も国民も、日銀と財務省に悩まされることにはうんざりです。そうして、上記のような要求は当たり前のど真ん中の、マクロ経済のど真ん中の政策を日銀や財務省に実行してほしいというだけで、根拠も明確ですし、説明をすれば、大多数の国民も認めるでしょうから、市場もかなり好感するでしょうし、衆院選も大勝利になります。

これは、たとえ衆参同時でなくても、まずは今回は参院選だけで、消費税見送りをして、その後に衆院を行うにしても、これを争点にすれば、かなりの大サプライズです。伊勢志摩サミットでも声明に盛り込んだ、「機動的財政政策」により機動的に景気が過熱したときには増税、景気が落ち込んだときには減税をその時々の経済状況に応じて実行することを宣言すれば、日本の経済政策の分岐点にもなる画期的なことになります。

衆参同時であろうが、衆院単独であろうが、ぜひとも実行していただきたいものです。

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2016年5月28日土曜日

【ニッポンの新常識】日本人が金慶珠氏に一定の敬意を払うべき理由 民主主義の根本は「是々非々」―【私の論評】真の保守は中庸を旨とする!敵をつくるより味方を増やそう(゚д゚)!

【ニッポンの新常識】日本人が金慶珠氏に一定の敬意を払うべき理由 民主主義の根本は「是々非々」

金慶珠(キム・キョンジュ)東海大学教授 写真はブログ管理人挿入 以下同じ
東京・有楽町のよみうりホールで19日、「南シナ海情勢フォーラム」(主催・産経新聞社 月刊「正論」)が開かれた。第1部は、軍事ジャーナリストの井上和彦氏の基調講演。第2部は、井上氏と、東海大学の山田吉彦教授、同大の金慶珠(キム・キョンジュ)教授、私の4人で、パネルディスカッションを行った。7月1日発売の月刊「正論」で詳報される。

金氏とは報道番組などで何度か共演したが、祖国を愛する韓国人なので、日本と韓国の主張が対立する場面では、原則として韓国側に立つ。日本側の立場で見れば、乱暴で腹が立つ主張も行う。結果、彼女は「反日」と思われているが、かなりの誤解がある。

金氏と私は、長期滞在の在日外国人であり、祖国の政治家や官僚以上に日本の歴史や国民感情に精通している共通点がある。当然、2人とも日本と祖国との良好な関係を常に願っている。

他方、金氏と私には決定的に違う点が1つある。私の祖国・米国は「言論の自由」を重視する国だが、韓国は違うという点である。

韓国人評論家の金完燮(キム・ワンソプ)氏は、日韓併合を肯定的に書いた『親日派のための弁明』(草思社)を出版したが、韓国では「青少年有害図書」に指定され、逮捕された。刑事・民事両方の名誉毀損(きそん)で何度も訴えられ、罰金刑や損害賠償の判決を受けた。韓国政府はパスポートの更新に応じないので、事実上の出国禁止状態にある。

済州(チェジュ)島出身で、日本に帰化した拓殖大学の呉善花(オソンファ)教授は2013年7月、韓国への入国を完全拒否された。

『韓国人による恥韓論』(扶桑社新書)など、韓国批判の一連の著作が累計40万部に及ぶシンシアリー氏は韓国在住の歯科医だそうだが、素性を明かせば平穏な生活は二度と戻らない。

これほど厳しい言論環境の下でも、前出の金慶珠氏は、李明博(イ・ミョンバク)前大統領が島根県・竹島(韓国名・独島)に上陸したり、天皇陛下への侮辱発言を行った一件を真正面から批判した。日本人は一定の敬意を払うべきだと思う。

自分と意見が違う人物を深く考察せず、全否定して排除しようとする傾向が、「自称・保守派」の一部に見られる。二元論的に「敵か味方か」と決め付けるのは、子供か全体主義者の思考回路である。民主主義の根本理念は「是々非々」なのだ。「昨日の敵は今日の友」になる場合もある。

少し考えてから行動しないと、安倍晋三政権の政策に、脊髄反射で反対する勢力と大差ない。

■ケント・ギルバート

【私の論評】真の保守は中庸を旨とする!敵をつくるより味方を増やそう(゚д゚)!

ケント・ギルバート氏の上の主張もっともだと思います。このブログでも、誰が正しい、誰が間違いなどという考えはすべきではなく、何が正しくて、何が間違いであるべきかを議論すべきことを何度か掲載しました。本当に、誰が正しくて、誰が間違いという議論の仕方ほど不毛で、危険なことはないと思います。

どんなに優秀な人だって、間違うこともあれば、どんなに愚かな人だって、正しいことを言っている場合もあります。

危険であるとは言い過ぎという人もいるかもしれませんが、考えてみてください、全体主義の国家では、トップが絶対に正しいということにするということを思い出すべきです。

パルチザンに射殺され逆さ吊りにされたムッソリーニらの遺体
かつてのソ連では、スターリンは何が何でも全部正しく、ナチス・ドイツではヒトラーが何が何でも正しく、現在の北朝鮮では、金正恩が何が何でも、全部正しいのです。

ムッソリーニは独裁者でしたが、敗戦後パルチザンにつかまり、裁判もなしで射殺され逆さ吊りにされました。パルチザンからすれば、ムッソリーニは悪いやつなので、殺すのは当然だったのかもしれません。しかし、本来ならば、ムッソリーニの行った何が悪かったのか、それを裁判などで明らかにすべきでした。「誰が悪い」という主張は極端になるとここまでいってしまうのです。

上の記事で、ケント・ギルバート氏が語っているように、誰の言っていることは間違い、誰の言っていることは正しいという論法を好んでする人は、全体主義に走りやすい性向を持つ人だと思います。

呉善花氏や、朴裕河氏はとりあげたことがあるのですが、金慶珠(キム・キョンジュ)氏に関しては、このブログでははじめてとりあげました。この方、時々テレビに出るのを見たことがあります。今月はじめ頃の「そこまで言って委員会NP」に出演されていました。

この番組でも司会の辛坊氏に指摘されていたのですが、とにかくよく喋る方です。番組内でそれを辛坊氏に指摘されると、金慶珠氏は「私は考えながら喋る」と語っていました。実際この方がテレビに出ている時には、かなり喋るので、焦点がぼやけてしまって、結局何が言いたかったのか記憶に残っていないというのが正直な感想です。

ただし、一つだけ記憶に残っていることがあります。それは、上の記事でも指摘されていたように、李明博(イ・ミョンバク)前大統領が島根県・竹島(韓国名・独島)に上陸したり、天皇陛下への侮辱発言を行った一件を真正面から批判したことです。これには、正直驚きました。だからこそ、記憶に残っているのだと思います。



この一点をもっても、ケント・ギルバート氏は金慶珠氏を日本人は一定の敬意を払うべきとしています。これは、正しい指摘だと思います。私達日本人はテレビなどの日本語の流暢な外国人の発言を、彼らの背景をあまり考えずに、日本人などと同じレベルで考えてしまいます。

しかし、同じ外国人の発言であっても、米国やEU内等の人の発言であれば、日本人と同じく自由に発言できるのですが、韓国や中国、ましてや北朝鮮などともなれば、なかなか自由には話すことはできません。場合によっては、危険をおかしてまでも話していることを忘れるべきではありません。

それと、これは外国人ではないですが、私は常々このブログの中で旧民主党や現民進党を批判しますが、その民主党の中でも尊敬する議員がいらっしゃいます。それは、金子洋一先生です。先生がかねてから主張しておられる、経済政策は本当に正しいです。民進党の幹部も金子先生の主張する経済政策に耳を傾けるべきです。そのことについてはこのブログに以前も掲載したことがあります。

金子洋一参議院議員
さらに、私はマルクス主義経済学を信奉するものではありませんが、松尾匡・立命館大教授の左派の立場こそ本来、金融緩和を重視するべきだとの主張には大賛成です。これに関しては、朝日新聞でもその主張が掲載されているので、是非ごになってください。

立命館大経済学部の松尾匡教授
私は、どうして左派やリベラルの人たちが、上の二人の主張を無視するのか全く理解に苦しみます。これは、左派やリベラルの人たちの多くが、ケント・ギルバート氏がいうように是々非々でものごとを考えないからです。安倍総理の提唱する経済政策である金融政策には絶対にくみしないということです。

このようなことは、保守派にもみられることで、ケント・ギルバート氏は、以前にもブログ冒頭の記事と似たようなことを語っていたことがあります。それもこのブログに掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
【ニッポンの新常識】SEALDsだからおかしい、との主張に私は与しない―【私の論評】誰が正しい間違いという考え方は、そもそも大間違い!成功は対立の中にある。自分と違う意見の人を見つけて、あえて議論せよ(゚д゚)!
ケント・ギルバート氏
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事でケント・ギルバート氏は以下の2つを主張していました。
「誰の主張か?」ではなく、「主張内容は合理的か?」を検証すべきだ。

学習や変化、進歩を拒むのは個人の自由だが、私はさび付いた常識に基づいて生きるつもりはない。
この主張も正しいです。特にこの2番目の主張は、「昔のケントはあんなことは言わなかった」と批判する人に向けてのものですが、これも正しいものと思います。世の中は変わっていきます。昔のままと何もかわらぬ主張をしていれば、一部の人は「ぶれない」などと評価するかもしれませんが、それでは何の進歩もありません。かといって、いつも革新・改革というのも考えものです。

だからこそ、保守的な考えが必要になってくるわけです。ケント・ギルバート氏は保守を自認していますが、まさしく、保守とは上の記事などでケント・ギルバート氏の主張していることを実践する人や考え方のことをいうのだと思います。

保守派というと、自民党が保守で野党は革新などという人もいますが、ご存知のように、このような分類は今や無意味になりました。さらに、人によっては、このような主張をする人が保守で、あのような主張をする人が革新やリベラルなどという人もいます。

しかし、このような考えは根本的に間違いだと思います。主義主張そのものは、保守であるかないかを明確に区分するものではありません。

それよりも、世の中の仕組みをどうするかというときに、「ステップを踏むなんてもどかしい」と「ウルトラCに賭ける」のが急進派、革命派であり、「ウルトラCなんかない」から「ステップを踏んでいくしかない」と考えるのが(反動ではない正しい意味での)保守派であり、中庸派であるということです。

コマネチ、オリンピックで10点満点。機械のように、
正確に技をこなすところはある意味怖いくらいだった。

そうして、民主主義の根本理念はケント・ギルバート氏が語るように「是々非々」であることを忘れるべきではないのです。世の中の仕組みを変えるときに、極端に走らず「是々非々」の民主主義というステップを踏む中庸主義が、保守主義と言えるでしょう。

そういうステップを踏まずに、「誰の主張か」で物事を判断して、事を進めようとする人はそもそも保守ではないのです。

それは、結局のところ真の保守ではないのです。世の中には、本当は保守はではないにもかかわらず、あたかも保守であるように振る舞う偽装保守などといわれる人々もいますし、そうではないまでも、主義主張がいわゆる保守派といわれる人々に似ているので、自分を保守とする自称保守という人もいます。

偽装保守、自称保守の見分け方は簡単です。一見保守のように振る舞いながらも、「誰の主張か」にもとづき物事を考え、変化や進歩に対応するのに、ステップを踏まずに一挙に「変革」を求めるようなことをする人です。特に、この変革に際しては、社会や現実をよく確かめもせずに「制度設計」等で性急に対応しようとします。

私たちは、このようなことにならないように、頭を使うべきです。そうでないと、「安倍死ね」と語る人々と大差がなくなってしまいます。

あるいは、単純な陰謀論者になってしまいます。SEALDsと日本会議が、日本を裏で動かす勢力であると考える陰謀脳の皆さんたちにはつきあいきれません。

このような考え方をする人たちは、結局多数の敵を作ることはできますが、味方を作ることはできません。

このような人たちは、断じて保守ではありません。真の保守とは、たとえ立場が違った人とも、一致できるところは一致し、妥協できるところは妥協し、敵よりも味方を多く作ろうとする人々のことです。それによって、順次世の中の仕組みを変えたり、良い方向に持っていこうとする人々のことです。

ソロモン王の裁き 半分のパンは役にたつが半分の赤ん坊は遺体に過ぎない
そうして、妥協と言った場合、無論半分の赤ん坊ではなく、半分のパンの妥協であるべきというソロモン王の裁きの故事を忘れるべきではありません。世の中には、妥協の仕方がわからず、いつまでも妥協できずに何も変えられないとか、半分のパンを得ることもかなわず、結局半分の赤ん坊を得てしまう事ばかりで失敗する人も多いですが、無論そのような妥協をする人も真の保守とはいえません。

妥協には正しい妥協というものがあります。というより、保守を自認する人は正しい妥協を厭いません。そもそも、民主主義とは妥協の連続です。何もかも、スパっと自分の思い通りにできるのは、全体主義のトップだけです。ただし、それも束の間の事にすぎません。

最後に、ケント・ギルバート氏は、ご自分のブログも公開されています。これは、日本語と英語で書かれています。ブログ冒頭の記事も英語と日本語で書かれています。これは、本当に英語の勉強になります。特に保守的な考えかたをされている人には、格好の英語の教材になると思います。以下にリンクを掲載しておきます。是非こちらもご覧になってください。
http://ameblo.jp/workingkent/
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2016年5月27日金曜日

【伊勢志摩サミット】中国「強烈な不満」表明 南シナ海問題言及のG7首脳宣言を批判―【私の論評】南シナ海からの中国の排除の準備が着々と進められている(゚д゚)!

【伊勢志摩サミット】中国「強烈な不満」表明 南シナ海問題言及のG7首脳宣言を批判

北京の中国外務省で記者会見する華春瑩副報道局長=27日

 中国外務省の華春瑩副報道局長は27日の記者会見で、主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)の首脳宣言が南シナ海問題に言及したことについて「日本とG7(先進7カ国)のやり方に強烈な不満を表明する」と批判した。

 議長国を務めた日本に対し「サミットを主催し、南シナ海問題をあおり立て、緊張を高めた」と反発。南シナ海問題の議題化は「先進国が経済について話し合う場というサミットの性格にそぐわない」と指摘した。

 G7に対しては「客観的で公正な立場に基づき、無責任な言論をやめ、地域の平和と安定に資するよう望む」と要求。南シナ海での軍事施設建設などは「完全に主権の範囲内だ」と重ねて主張した上で「個別の国が『航行の自由』を掲げて中国の顔に泥を塗るのには断固として反対する」と述べ、米国を暗に批判した。

【私の論評】南シナ海からの中国の排除の準備が着々と進められている(゚д゚)!
伊勢志摩サミットの記念撮影に臨む(左から)トゥスクEU首脳会議常任議長、イタリアのレンツィ首相、ドイツのメルケル首相、米国のオバマ大統領、安倍晋三首相、フランスのオランド大統領、英国のキャメロン首相、カナダのトルドー首相、ユンケル欧州委員長。後方は英虞(あご)湾=26日午後4時、三重県志摩市の志摩観光ホテル

G7伊勢志摩首脳宣言(骨子)に関して、その概要は以下のリンクをご覧ください。
G7伊勢志摩首脳宣言(骨子)
宣言の概要は、この骨子をご覧いただくものとして、中国が問題とする部分のみ以下にピックアップしておきます。4項目目の、(6)に以下のような記載があります。

4 政治外交

(6)海洋安全保障 
●国際法に基づいて主張を行うこと,力や威圧を用いないこと,紛争解決には,仲裁手続 を含む司法手続によるものを含む平和的手段を追求すべきことの重要性を再確認。東 シナ海・南シナ海の状況を懸念し,「海洋安全保障に関するG7外相声明」を支持。
これは、中国を名指しこそしていませんが、中国の南シナ海での環礁の埋め立てを、G7首脳は全員これを認めないことを示しています。

これは、骨子ですが、宣言には「法の支配の3原則」が明記されています。これに関しては、前もってこれを盛り込むことは、サミットの前に決定していました。これは、安倍総理による中国に対する最終警告と言っても良いものです。これに、に関して、以下に説明します。これは、安倍晋三首相が海洋安全保障をめぐって2014年に提唱したものです。

この3原則は、(1)国家は法に基づき主張する(2)力や威圧を用いない(3)紛争解決へ平和的解決を徹底する-が柱となっています。

これにより、伊勢志摩サミット首脳宣言は、中国による、南シナ海での軍事拠点化への懸念と反対を盛り込んだ宣言の素案に3原則の内容を新たに加えることで、沖縄県・尖閣諸島を含む東シナ海での挑発行為なども念頭に置き、名指しは避けながらも中国に対して「強い反対」を打ち出しました。

中国は14年5月、安倍首相がシンガポールで開かれたアジア安全保障会議で3原則を表明した際に反発した経緯がありました。G7によるこの3原則を含む首脳宣言は、中国にとって“屈辱的宣言”となりました。だからこそ、ブログ冒頭の記事のように中国は、本日「強烈な不満」を表明したのです。

中国が軍事基地化を進める南シナ海のスプラトリー(南沙)諸島にあるスビ礁
日、米、カナダ等とは異なり、欧州各国は、中国の覇権主義的手法を問題視しながらも、地理的に軍事的な脅威にやや鈍感で、中国を刺激して経済的利益を損ねないよう及び腰になる部分もありました。

これを、安倍首相が議長国の立場を活用して議論をリードし、南シナ海の「航行の自由」を守るオバマ氏とともに、欧州各国の対中観との隔たりを縮めていきました。

結果、各国首脳からは「力による現状変更や規範の無視は許されない」「基本的な規範や国際法の順守が重要だ」「海洋の安全保障や力による現状変更への反対には、明白で厳しい姿勢で臨むべきだ」などと賛同する意見が相次ぎました。

そうして、最終的にこの3原則が、首脳宣言に盛り込まれことになったのです。

これをけん制するため、中国海軍のミサイル駆逐艦「合肥」「蘭州」、ミサイル護衛艦「三亜」、総合補給艦「洪湖」からなる南海艦隊遠洋訓練艦隊は21日午後、西太平洋某海域で実弾射撃訓練を実施したことを、人民網日本語版が23日、中国軍網の報道として伝えていました。

中国南海艦隊
まさに「盗人猛々しい」とは、このような中国の振る舞いです。南シナ海の岩礁を勝手に埋め立てて軍事基地化したり、東シナ海の日中中間線付近に軍事拠点化が懸念される海洋プラットホームを次々に増設して、地域情勢を緊張させているのは、中国です。

さて、上で示した首脳宣言のなかの「海洋安全保障」の項目には、 「国際法にもとづき主張を行うこと」との記載があります。この意味するところを以下に掲載します。

国際法には「法」という字がついていますが、日常生活で「法律」という言葉からイメージするものとは大きな違いがあります。

民事や刑事の訴訟などで使われる法律は国内法です。国内法は主権を持った統一政府によって強制される法なので、「強制法」といいます。国内では、警察などの法執行機関が法律を破った人を取り締まるわけです。

一方、国際社会には警察のような強制力を持った組織はありません。国際法はあくまで主権国家同士の合意によって成り立っているものなので、「合意法」といいます。当事国のどれか一国が仲裁裁判所の裁定を破った場合は、その他の国は守る義務はありません。

この国際法の原則からいえば、現状のままだと、米国が軍事力を行使したとすると、中国は米国を強く非難することになります。それこそ、虚妄の南京虐殺や慰安婦問題などで鍛え上げた、ありもしない虚妄にもとづき歴史を修正して、米国に徹底的に噛みつきます。国連の場や、ありとあらゆる機会を利用して、様々な活動を展開して、米国を悩ますことでしょう。

オランダ・ハーグの常設国際裁判所
それに対して米国は反論することもままならない状況に追い込まれることすら予想されますが、南シナ海の領有権問題でオランダ・ハーグの常設仲裁裁判所の判断が今年の夏あたりに、出される予定です。この裁定は、当然のことながら、国際法に照らして、中国にとってはかなり不利な裁定となるのは必定です。

さらに、今回G7の首脳宣言は、上記で示したような海上の安全保障に関する宣言も含んでいます。これは、少なくとG7の首脳は、仮に中国が南シナ海の領有をやめない場合は、中国が一方的に国際法を破棄したものとみなすことになります。

裁定がおりた後なら、米国が南シナ海や、東シナ海で軍事力を行使したとしても、中国による力による現状変更を、力によって元に戻したということになるだけです。これは、上で示したように、中国が一方的に国際法を破ったことになり、南シナ海や東シナ海から中国を力ずくで排除したとしても、国際法を破ったことにはなりません。

中国が、現状を変更しないかぎり、米国は、何の後腐れもなく、軍事行動に打って出ることができるのです。

米国が本格的に軍事行動にでれば、南シナ海における中国にはなすすべがありません。中国の軍事力、特に海軍力は、米国よりはるかに劣っています。軍事力ランキングなどで比較すると、海軍力は日本よりも劣っています。

これでは、もう時間の問題です。中国としては、負け犬の遠吠えをする以外に何もできないわけです。

今回のサミットは、中国にさらに楔が強く打ち込まれた形となりました。着々と、南シナ海からの中国の排除が進められています。

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2016年5月26日木曜日

サミットとオバマ大統領の広島訪問 「中韓との違い」演出する好機―【私の論評】「霊性の支配する日本」を象徴する伊勢志摩でのサミットの意義は大きい!

サミットとオバマ大統領の広島訪問 「中韓との違い」演出する好機

伊勢志摩サミットが、きょう(2016年5月26日)から開幕した。サミットでの世界のトップ間の議論ももちろん重要だが、その前後に日米首脳が会うのもポイントである。米大統領選はトランプ対ヒラリーになりそうであるが、不透明感が充ち満ちている。その前に、日本としても日米関係をできるだけ確固たるものにしておく必要があるのだろう。

ところが、その直前に沖縄の元米兵による遺体遺棄事件が起こった。これは最悪のタイミングである。この機に、沖縄の翁長知事は「オバマに会わせろ」と、安倍首相に要求してきた。もちろん、その要求は筋違いであるが、安倍首相はオバマ大統領との25日夜の会談で、米に「強く抗議」といった。外交専門家の間には、個別事件で異例の言及という見方もあるが、それだけ今の日米関係が良好という証だ。会談の詳細な中身はわからないが、沖縄の在日米軍は出て行けという政治主張が増長しかねないので、政治的に「強く抗議」と言わせてもらうと安倍首相はオバマ大統領の了解もとっているだろう。

広島の原爆ドーム
 長年の日本外交の勝利

さらに、沖縄での米軍犯罪率は、沖縄県民より低く、来日中国人や来日韓国人に比べるともっと低いこと、沖縄の在日米軍に出て行けということは日本の安全保障リスクを高めることも日本政府は承知していることを伝えているだろう。ひょっとしたら、トランプが、日本だけではなく韓国などからも米軍を撤退させるという主張は、どの程度実現するのかを、安倍首相はオバマ大統領にこっそり直接聞いているかも知れない。

サミット前の日米首脳会談で、「強く抗議」と出ざるをえなかったのは日本政府としても誤算であっただろうが、サミット後の27日夕方のオバマ大統領による被爆地・広島訪問では友好ムードを盛り上げる。

日本人なら、一度は広島・長崎の被爆関係地を見ているだろう。それらを見れば、普通の人間なら理屈抜きに核根絶と思うはずだ。アメリカ大統領が広島を訪問するのは、長年の日本外交の勝利である。

 加害者」や「被害者」というレッテル貼り

一部の人から、日本はアメリカに謝罪を求めないのはおかしいという議論がある。

世界の普通の国、過去の戦争では、未来志向で「加害者」や「被害者」というレッテルを貼らない。特にヨーロッパは旧植民地帝国が集まっていて、旧植民地からみれば悪の枢軸ばかりである。とても誰も謝罪すべきとは言い出せないわけだ。ドイツの場合でも、その罪をヒトラーとナチスにかぶせることで、ドイツを「加害者」といわないのが普通だ。

日本は深い悲しみを持っているが、それを抑制しながらもてなすのがいい。これは、中韓に対して日本は違うという戦略にも通じる。

オバマ大統領の広島訪問について、多くの国では歓迎しない理由はない。ところが、中韓は世界の国とはまったく違う。日本の集団的自衛権について、世界のほとんどの国は賛成であるが、中韓だけは反対との奇妙な対応だったことが思い出される。

中韓は、日本を「加害者」として扱ってきたので、日本が「被害者」になっては中韓にとって都合が悪いのだ。こうした中韓の態度には辟易している国も多い。この際、日本は先進国の一員として、サミットに便乗して中韓との違いを演出するのは長期的には得策であろう。

++ 高橋洋一

【私の論評】「霊性の支配する日本」を象徴する伊勢志摩でのサミットの意義は大きい!

上の高橋氏の記事では、日本はアメリカの原爆投下に対して謝罪を求めるべきではないとしています。私も、そう思います。こう考える人は多いようです。

たとえば、歴史小説家の塩野七生さんも、そういう考え方をする一人です。朝日新聞のインタビューに応じて、その意見を表明していました。

詳細は、朝日新聞の記事をご覧いただくものとして、その一部を以下に朝日新聞から抜粋します。
 「謝罪を求めず、無言で静かに迎える方が、謝罪を声高に求めるよりも、断じて品位の高さを強く印象づけることになるのです」

「ただ静かに、無言のうちに迎えることです。大統領には、頭を下げることさえも求めず。そしてその後も、静かに無言で送り出すことです」 
 「原爆を投下した国の大統領が、70年後とはいえ、広島に来ると決めたのですよ。当日はデモや集会などはいっさいやめて、静かに大人のやり方で迎えてほしい」 
 「われわれ日本人は、深い哀(かな)しみで胸はいっぱいでも、それは抑えて客人に対するのを知っているはずではないですか。泣き叫ぶよりも無言で静かにふるまう方が、その人の品格を示すことになるのです。星条旗を振りながら歓声をあげて迎えるのは、子どもたちにまかせましょう」
私も、まったくこれらの意見に賛成です。直接の言葉による謝罪などなくても良いのです。これを声高に要求すれば、日本の品位は著しく損なわれることになりますし、ブログ冒頭の記事で高橋氏が主張しているような、中韓との違いを演出することは不可能になります。

広島の精霊流し
そうして、日本には、中韓の反日活動のように声高に、大げさに演出するまでもなく、
「中韓」とは異質な日本人の「精神世界」があります。それについては、このブログにも以前掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
「中韓」とは異質な日本人の「精神世界」…仏作家は「21世紀は霊性の時代。日本は神話が生きる唯一の国」と予言した―【私の論評】日本は特異な国だが、その特異さが本当に世界の人々に認められ理解されたとき世界は変る。いや、変わらざるをえない(゚д゚)!
式年遷宮「遷御の儀」で現正殿から新正殿に向かう渡御行列。
伊勢神宮は日本人と心のふるさと、未来への道しるべだ
=平成25年10月2日夜、三重県伊勢市の伊勢神宮



この記事は、平成14年1月18日のものです。この記事では、この前の年に三重県伊勢市の伊勢神宮で行われた「式年遷宮」に関して説明した記事を元記事にして、日本人独自の精神世界を説明したものです。伊勢志摩サミットの初日だった本日、安倍総理はこの伊勢神宮の鳥居の近くでサミットに参加する首脳陣を出迎えました。

伊勢神宮に集結したG7首脳
この記事は、今から2年以上前の記事ですが、今でも良く読まれている記事です。詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事から日本人の「精神世界」に関する部分を以下に引用します。
霊性の根源に万世一系の天皇制 
フランスの作家で、ドゴール政権の文化相を長く務めたアンドレ・マルローは自著各編で、こんな趣旨のことを書いています。

アンドレ・マルロー
「21世紀は霊性の時代となろう。霊性の根源には神話があり、それは歴史の一面を物語っている。世界の神話が現代なお生きているのが日本であり、日本とは、それ自体、そのものの国で、他国の影響を吸収し切って、連綿たる一個の超越性である。霊性の根源に万世一系の天皇制がある。これは歴代天皇の連続性であるのみならず、日本文化の継続性の保証でもあるのに、戦後日本はそのことを忘却してしまった。しかし、霊性の時代が、今や忘却の渕から日本の真髄を取り戻すことを要請している。また文化は水平的に見るのではなく、垂直的に見るべきだ」 
確かに、中国や朝鮮文化の影響を過大に語る一部日本の文化人には大きな誤解があるように思えます。知る限り、英仏独の文化人、史家には、後生大事にギリシャ・ローマを奉る人など皆無であり、米国の識者がイギリスをむやみにもてはやす事例を耳目にしたこともありません。日本文化・文明と日本人は、中華文明や長年にわたりその属国であり続けた朝鮮文明とは全く異質であり、むしろアジアの中でも、もっとも遠い存在であるといえます。日本人の氏神、天照大御神に思いを致すのは今でしょう。 
キリスト教中心の西洋文明の終末 
スイスの心理学者グスタフ・ユングも「キリスト教中心の西洋文明の終末は20世紀末から21世紀初頭にかけて到来する。そして次の文明は、一神教や独裁専制ではなく、霊性の支配する時代となるであろう」と期せずしてマルローと同じ予言をしております。

カール・グスタフ・ユング
要するに、カネ・モノに執着する物質依存世界から、人間の理性と精神世界を重視する義と捉えるならば、超大国アメリカや金と軍事力で餓鬼道に陥った中国を痛烈に批判・否定しているように思えます。それに比して、多神教日本は、古来、山や川に霊性を感じ、自然を畏れ、神を尊ぶ心を抱いてきたわけで、その代表が伊勢の森だったといえるのです。 
考えるに、人類文化の危機は「画一化」にあり、文明が衝突するのではなく、文明に対する無知が紛争の根源となるのだと思います。思考のプロセスを自省し、他にかぶれたり迎合させられたり、徒に自虐的になることから一歩距離を置いて、確信されてきたものを再吟味し、忘れ去っていた古き良きものへ思いをきたし、一方で他民族との交流においては、異質なもの・新たなものを受容し合う-。こうしたことが、文明間の対話で重要だと思います。 
国家的文化戦略は、長期構想として構築し、粘り強く世界へ向けて発信してゆくことが最重要です。世界的有識者の言説を待つまでもなく、21世紀が霊性の時代へと向かうならば、日本人としても1300年間継承されてきた伝統精神を矜恃し、発信・交流してゆくことが、自らの背骨を正すとともに、世界平和への貢献に資することにもなると確信いたします。
このように、神話が現代なお生きているのが日本であり、日本それ自体が、神話そのものの国で、他国の影響を吸収し切って、連綿たる一個の超越性を保つ国が日本であり、霊性の根源に万世一系の天皇制がある国が日本なのです。

そうして、日本では、過去が現在に現在が未来につながっているのです。そうなのです。霊的に時間を超越してつながっているのです。私たちの霊は、そうして私達の先祖の霊、未来に生まれる私達の子孫の霊はこの悠久の流れにつながっているのです。それどころか、石や木や山や川などの自然にも霊は宿り私達とつながっているのです。

このような霊性の精神世界は、かつて世界中に存在していました。ところが、イスラム教、仏教、キリスト教などの宗教ができると、この精神世界は世界各地から消えてしまいました。

原始社会の世界には、いわゆる宗教以前にアニミズムやシャーマニズムの形で霊性の時代がありました。今でも、宗教の洗礼を受けなかった少数未開民族の中には、残っています。そうして、この霊性を重んじる精神は、なぜか日本では失われることなく連綿として受け継がれてきて今日に至っています。それどころか、日本では今日の神道という形にまで昇華されました。

アニミズム、シャーマニズムを信奉する人たちは、未開の地ではまだみられる
日本の多くの人々は、霊性の支配する日本を普段は意識しないかもしれません。しかし、私達日本人の精神には幼少のころから、この霊性を重んじる精神がいつの間にか深く刷り込まれてしまっています。だからこそ、毎年かなり多くの人々が、初詣にでかけるとか、2014年1年間の伊勢神宮の参拝者数が1086万5160人(内宮680万9288、外宮405万5872人)となったりするというとてつもないことが起こったりするのです。

このようなことは、世界でもかなり珍しいことです。アメリカのホワイト・ハウスの年間訪問者数も150万人程度と聞き及んでいます。このようなことは、アジアでも日本だけです。中国では、この霊性の世界は継承されていません。韓国もそうです。例外的に民間伝承などで、ほんの一部は生き残っているものもありますが、呪術やまじないとして残っている程度で、日本のような式年遷宮のような形式が残って今も継続されているのは日本だけです。

今年の初詣
このような霊性の支配する国であり、歴史の古い日本に、新興国米国は70年前に原爆を投下したのです。

しかし、霊性が支配する日本では、霊性を顧みない中韓と同じように、米国に直接的な謝罪などを要求すべきではありません。

そんなことよりも、私たち日本人は、このような国日本に誇りを持ち、自信を持ち、世界に日本の素晴らしさを伝えていくべきです。日本の霊性を重んじる精神が、世界伝わりそれが理解されれば、世界は変わります。世界中の国々が、日本のように、様々な宗教のその土台に霊性の精神が宿るようになれば、世界は変わります。

霊性が支配する世界になれば、霊性が支配しない現在の世界ではほんどと困難と考えられていたような様々な事柄が、成就できるようになります。その中の一つに核廃絶があるかもしれません。



このように考えると、今回のサミットが伊勢志摩で開催されたことには本当に深い意義があると思います。無論安倍総理は、こうしたことも配慮に入れて、伊勢志摩でサミットを開催したのでしょう。

しかし、世界政治に関係するこのサミット、ひよっとすると安倍総理はそこまでは、想定していないかもしれませんが、霊性の支配する世界への端緒になるやもしれません。

あの原子爆弾による惨禍からも日本は力強くたちあがりました。1,000年に一度といわれた東日本大震災も、最近の熊本の震災も、ほんの一時のことに過ぎません。このような災厄からも日本は再び力強くたちあがることでしょう。朝廷をはじめとする私たち日本人の日本の伝統文化は、亡くなられた方々の霊、これから生まれてくる霊とともに、これからも悠久の歴史の中に燦然として輝き続けるどころか、さらに輝きを増すことでしょう。そうして、いずれ世界を変えていくことでしょう。

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2016年5月25日水曜日

京大出て専業主婦は「もったいない」のか? 女性のブログが話題「嫉妬されてるだけ」「大学は職業訓練校ではない」―【私の論評】京大卒女子は絶対働くべきと思い込むのは共産主義、全体主義を信奉するのと変わりなし(゚д゚)!


京大卒で主婦はもったいない?

偏差値の高い大学を卒業後、大企業に入社し、高収入を得る――成功や幸せのモデルとして多くの人が思い浮かべるケースだが、高学歴の人の中にはそういった考え方に辟易している卒業生もいるようだ。

京都大学出身の女性が、5月23日に「『京大出て専業主婦なんてもったいない』と言う人は、じゃあわたしが何をすれば許してくれるのか」というブログ記事を投稿し、話題を集めている。

専業主婦であることを「もったいない」と説教された

女性は今年の3月に入籍するとともに京都大学大学院の文学研究科を修了。このことについて、「京大出てそっこうで専業主婦、まあ少数派であることは重々承知している」と語る。周囲に「えっ、働かないの?」と聞かれることは予想していたが、「それに対する自分なりの答え」もあるのだという。

だが、ある人から専業主婦であることは「もったいない」という旨の内容で繰り返し説教をされ、気分が滅入ってしまったそうだ。女性は、
「いったい何がもったいないのだろう。もったいないってことは、わたしは何かを無駄にしているってことなんだろうけれど、何を無駄にしているのだろうか」
と疑問を呈している。女性は京大に行った理由を「勉強をしに行っただけ」「京大オケに入りたかった」と語っている。決して良い企業に就職するためではないのだ。そこで夫と出会い、夫婦での話し合いの末に「外で働かない道」を選んだ。それなのに干渉してくる人に対して、「なぜお前が口を出すのか」と心境を吐露している。
「嫉妬されてるだけ」「余所様の家庭に口を出す方がおかしい」

このブログには、はてなブックマークで多くの反応が寄せられた。中には、
「もっと日本の役に立つことをしろよ。専業主婦ならFランクでもなれるだろ。その枠を未来に活かせる奴に譲れば良かったと思えないの?」
と、女性に「もったいない」と言った人と同じような感想を抱く人もいたが、女性の主張に賛同する人も多かった。
「嫉妬されてるだけ。自分の人生だもの。気にしたら損」 
「余所様の家庭に口を出す方がおかしい。大学で修めた学問と関係無い分野で働いてる人も多い」 
「別に大学は職業訓練校じゃないし、生き方は人それぞれだし、主婦でいいでしょ」 
「なんで他人からの許しが必要なの?」という人も
また、「京大出て変なことしてる人は知人友人含め結構いますので、割とそんな大学です。開き直ってもいい気はします」と周りの卒業生の様子を語る人もいた。「なんで他人からの許しが必要なの?」「ただの社交辞令にいちいち本気にならんでも」といった意見もある。女性が自意識過剰、ということなのだろうか。

だが、24日に女性が更新した記事によれば、ブログに書いた内容は本当なものの、わざと炎上するような文体や煽り気味のタイトルで記事を書いたという。
「本を出そうかなと思っているので、宣伝対象=読者さまが増えたから、よかったんじゃない? て感じだし、そもそもこの燃料で炎上させられない程度の日本語力で本なんか出すべきじゃないやろっていう筆記 試験のつもりで書いたので、自信につながった」
これに対し、読者からは、「せっかく気を使ったコメしたのに『釣れましたーwwww』って性格悪すぎない?もう絶対読まない」と失望する反応が寄せられていた。

【私の論評】京大卒女子は絶対働くべきと思い込むのは共産主義、全体主義を信奉するのと変わりなし(゚д゚)!

何やら、上の記事を読んでいると、この京大卒の女性を「もったいない」と批判する人々は「保育園落ちた、日本死ね」というブログを書いた人や、それを国会でとりあげて、与党を批判した民主党政調会長山尾志桜里さんやこれを支持する人たちなどと似たようなメンタリティーなのではないかと思います。

なぜ、そのような感想を抱くに至ったかといえば、最近ある動画を見たからです。その動画を以下に掲載します。


この動画、50分以上にも及ぶものですが、私は結構面白くあっという間に見終わってしまいました。この動画では、河添恵子・赤尾由美さんらが、朝まで生テレビの鬱憤を晴らすのを倉山氏が聞き取るというような形でまとめらています。チャンネルくららとしては、久しぶりの「討論・暴論・強硬論!」です。タイトルは、「女性が輝く社会を目指す?」というタイトルで、保育園の義務教育化を推進することの問題点を指摘しています。

詳細は、この動画をご覧いただくものとして、とにかくすべからく、すべての女性は働きたいと思っている。いや、働かなければならない。働きたいのに、働けない女性は不幸である。働いている女性は、差別されている。この差別は何が何でもなくさなければならない。そうして、すべての女性が差別なく働けるように、保育園はすべからく義務教育化するのが、とにかく何が何でも正しく、そのことによってすべての女性は輝きを増すという考え方は、どこか間違っています。というより、どこか狂っています。

これは、上の動画をご覧いただくことで、実感していただけるものと思います。ブログ冒頭の記事にでてきた、京大卒の専業主婦の方のブログとおぼしきブログのリンクと、そのブログに掲載されていた本人と思われるかたの写真を以下に掲載します。

ブログのタイトルは以下です。
わたしのむしめがね
当該記事のリンクを以下に掲載します。
「京大出て専業主婦なんてもったいない」と言う人は、じゃあわたしが何をすれば許してくれるのか

さて、女性は全員働きたいと思っているし、働かなければならないとする現在の風潮はリベラルや左翼系の人々は、新しい風潮であるかのように思い込んでいるようですが、それは違います。これは、時代遅れです。アメリカで大失敗した古い考え方です。それに関しては、このブロクにも随分前に掲載したことがあります。

その記事を以下のリンク掲載します。

まずは、夫婦別姓の記事のリンクを掲載します。
選択的夫婦別姓を明記 第3次男女共同参画基本計画策定に向け答申―日本解体始動!!ゆとり教育の二番煎じになるか?
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事は2010年7月23日のものです。この記事から、一足早くビジネス現場などで、夫婦別姓が一時かなりすすめられた結果、米国では過去に何が起こっていたかを示す部分を以下に引用します。
さて、この選択的夫婦別姓に関しては、米国では、現在の日本と同様、結婚によって夫婦は同じ姓になりますが、婚前の姓をミドルネームと言う形で残すのは、普通のことのようです。「私のパパの名前をミドルネームにして使っているの」という女性も多いです。米国では、法律では夫婦別姓に関して決まりはありません。 
ところが、米国では1960年代からいわゆるリベラリスト(自由主義者)らによるフェミニズムの影響で、男性からの経済的自立で女性は自由を得るという生き方が吹聴され、夫婦別姓や事実婚を推奨する運動が盛んでした。 
だから、アメリカでは働く女性が自分の旧姓を名乗り続けるなどのことが、珍しくないことになっていました。あるいは、実質的には夫婦関係にあるにもかかわらず、結婚せずに、夫婦別姓で、いわゆる事実婚という形をとるカップルも増えました。ところが、この法律にもとづかない実質的な夫婦別姓制度が大きな不幸をもたらしました。 
夫婦別姓、女性の社会進出、子育ての外注化という流れの中で米国では多くの男性が妻と子供を扶養する責任を感じなくなっていきました。離婚や未婚の母が増加し、家族という生活の基礎的な基盤を失って苦しむ子供たちが急増しました。皆さんご存知でしょうが、現在アメリカで結婚したカップルのうち、半数以上が離婚します。半数以上ですよ!米国では、離婚は当たり前のことになってしまいました。近いところでは、あのおしどり夫婦で有名だったアル・ゴア氏の離婚が有名ですね。
ペンシルベニア州立大学ポール・アマト教授は「安定的な結婚を1980年の水準まで上昇させれば、停学になる子供を50万人、非行、暴力行為に走る子供を20万人、心理療法を受ける子供を25万人、喫煙する子供を25万人、自殺志向の子供を8万人、自殺未遂の子供を2万8千人、それぞれ減らせる」と警鐘を鳴らしました。 
「家族の絆(きずな)」よりも「個人の意向」を優先する社会-。これが何をもたらしたか。米国の女性たちは既に教訓を得ました。「(米国女性は)過去25年間で初めて女性の就労率が下降し、女性の86%が『仕事よりも家庭が大事だ』と思っている」(2002年3月12日付『USAトゥデー』)
過去に一時、「家庭の絆」よりも「個人の意向」を尊重したアメリカ社会では、今日の日本の「保育園義務化」のように、子育ての外注化がすすめられ、そのために上記にあるような社会の停滞と破壊を招いたです。

こんなことを、リベラルや左翼の人たちは日本でも繰り返したいというのでしょうか。数十年も前にアメリカで大失敗したことを、日本でも繰り返そうというのでしょうか。アメリカ社会は1990年代がこのような破壊と停滞の時代だったのです。2000年に入ってからは、その反省の上にたって、女性の考えが随分変わったのです。

そもそも、女性にも様々なタイプの人がいて、上昇志向が強くて、企業に入って、なるべく上を目指したいという人もいると思います。しかし、そうではない人も多数存在するのです。ブログ冒頭の記事の京大を卒業した女性はそのような女性だと思います。

主婦業 男性1割が"0円"評価とのアンケート結果があつた。主婦業を侮るべきではない!
とにかく、有名大学を卒業した女性はすべからく社会進出しなければならないという考えはあまりに偏狭すぎます。それに、「専業主婦ならFランクでもなれる」という言い方は、とんでもないです。これでは、完璧に専業主婦を愚弄しています。とんでもないことです。

これこそ、差別というものです。専業主婦も、良い大学を出ていようが、出ていまいが、優秀な人は優秀です。優秀でなければ、まともな家庭を築くことはできません。企業も家庭があって、まともな子育てができる家庭で、まともな成人が入社してくれなければ成り立ちません。

それと、ノルウェーなどクオーター制によって、役員や、管理職の一定数を女性にするという、リベラルや左翼系の人々が先進的だとするシステムに関しても、その齟齬が随分前からみられていました。それに関する記事のリンクを以下に掲載します。
実は不寛容だった!? 女性登用先進国の「不都合な真実」 フィナンシャル・タイムズ(UK)より―【私の論評】古今東西の事例をみないか、みても中途半端で失敗するというのは、日本の政治家・官僚・マスコミが何度となく繰り返したきた習性!これからも繰り返し続けるのだろうか(゚д゚)!
この記事は、2014年10月26日のものです。詳細は、この記事をご覧いただくものとして、女性登用のノルウェーでの実態を示す部分を以下に引用します。
首相、財務相、さらには経済界の要職である雇用主組合と労働組合連合のトップに、女性が君臨する。ノルウェーが女性登用先進国と言われる所以である。
2003年、会社法改正により、同国の男女平等政策は民間企業にも広がった。上場企業の取締役会における女性の割合を40%以上とすることを義務づける「クォータ制(割当制)」が導入されたのだ。 
国際的には、クォータ制は女性登用に一定の成果を挙げたと評価されている。だがノルウェー国内では、その効果を疑問視する声もあがっている。 
ノルウェーではいまや、上場企業の取締役会における女性役員が40・7%を占めるまでになった。だが、実際に経営に携わる女性役員は6・4%にとどまる。さらに言えば、ノルウェーの大手上場企業で社長の座に就いている女性は一人もいない。 
結局のところクォータ制は、企業社会の男女平等を後押ししたというより、経営の決定権を持たない女性役員の数を増やしただけだったというのだ。 
この制度が非上場企業には適用されないことも、大企業にとっては抜け道となっている。03年に563社あったノルウェーの上場企業は、クォータ制が法的強制力を持つ08年までに、179社に激減した。女性役員の比率を上げたくないがために、7割の上場企業が非上場に転じたのだ。その結果、役員ポストは上場企業全体で1400となり、現在570人の女性役員がいるにすぎない。他方、非上場企業の役員の50万のうち、女性が就いているポストは9万余り。女性の割合は2割にも満たない。
ノルウエーは左翼やリベラルの人たちにいわせると、素晴らしい国であり、女性がいきいきと働き、輝いていると映っているようですが、実際はこの状況です。

この状況は、現在ではさらに悪くなっているようです。上の動画でも河添恵子先生が、ノルウエーの企業で、本社を外国に移す企業が増えていると語っていました。

日本では、女性の社会進出を促すとリベラルや左翼の方々が、固く考えられているクオーター制といい、女性が働き易すくなると固く信じられている「子育ての外注化」など、これは何かを連想させます。

とにかく、優秀な人が何か制度をつくりそれを施行さえすれば、何でもうまくいくという、考え方です。


これはいわゆる制度設計というものです。これは、新しい制度を作る、または現行制度を改善する場合に、その目的、対象、事業内容、必要な組織、運営の仕方などをまとめた計画のことです。優秀な人が、この計画を立案して、実行すれば必ずうまくいという安易な考え方です。

そうです。これって、共産主義ですね。共産主義はどうなりましたか?結局大失敗しました。今では、共産主義など誰も信じなくなりました。

結局女性の社会進出や、子育てなどに関しては、制度設計で誰かが「これが最善」として考えて実行したとしてもうまくはいかないということです。

制度設計で何もかもうまくいくなら、共産主義の計画経済もうまくいって、共産主義国家も栄えていたはずです。そうして、今でも共産主義国家が存在しているはです。しかし、現在では、共産主義国家はこの地球上には存在しません。

中国は共産主義体制をとっているようにみせかけていますが、その実もうとうに共産主義は捨てていて、現在は破綻しかけた国家資本主義と呼ぶにふさわしい体制となっています。

京大を出た女性は専業主婦ではなく社会に出て働くべきという考えは、女性は社会進出すべきであり、それが絶対善であるという考え方と根本的に同じです。

しかし、実際の世の中には、そうではない女性も大勢います。そうして、上でも示したように、家庭の主婦の仕事も大事な仕事です。そんなことを無視して、社会全体の価値観を一部の人が定めて、その方向性で計画して、その計画を実行することにより、人々は幸せになるという考え方は、共産主義です。

共産主義は、結局全体主義であり、組織や個人の自由な活動をかなり制限して、制度設計で社会はうまくいくという前提のもとで運営され、そうして、大失敗しました。

共産主義国家においては、女性の社会進出が徹底されました。旧社会主義国では、これが社会を荒廃させる一因にもなりました。

過去の共産主義諸国の女性たちのほとんどが社会進出した
結局何が失敗だったかというと、個人や組織の自由を認めなかったことです。社会には、多様な考えや価値観を持った個人や、組織が存在しており、実体経済という縛りはあるものの、現実にそれらが自由に活動して、個人の幸せが得られたり、組織間が競争をしたり、他の組織とは全く異なることを実行したりして、成功したり失敗したりします。

そうして、一定の秩序ができあがり、社会が発展します。しかし、それを認めないというのなら、社会は発展しません。

女性は、社会進出して、高い給料や地位を得ることが幸せで、他は不幸であると決めつけることや、女性の社会進出のためには、価値の低い専業主婦の仕事は全部外注にして、女性が心置きなく社会進出して、少しでも高い給料と高い地位を得ることによってのみ、女性は輝くことができると思い込むのは、結局のところ共産主義、全体主義を信奉するのと変わりありません。

結局、一昔前のアメリカの不幸もこうした硬直した考えに支配されたためです。私たちは、多様な個人や組織の価値観や考えを尊重すべきです。だから、社会進出したいという女性の価値観も認めると同時に、家庭を大事にしたいという女性の価値観も認めるべきなのです。

そうして、明らかに間違いであるとか、社会に害悪をもたらすとか、犯罪につながるとか、他者にも無理に強要するような価値観や考えは、認めるわけにはいきませんが、それ以外の個人や組織のそれは、認めるべきです。本当はリベラルの人たちがこのような考えをすべきです。

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