2018年7月19日木曜日

なぜ日本は米国から国防費増額を強要されないのか F-35を買わないドイツと、気前よく買う日本の違い―【私の論評】国防を蔑ろにする「ぶったるみドイツ」に活を入れているトランプ大統領(゚д゚)!

なぜ日本は米国から国防費増額を強要されないのか
F-35を買わないドイツと、気前よく買う日本の違い

NATO首脳会議開始前の編隊飛行を見上げるNATO加盟国首脳

 トランプ大統領はNATO(北大西洋条約機構)加盟諸国(とりわけドイツやフランスなどEUを牽引する西ヨーロッパ諸国)に対して国防費増額を執拗に要求している。先週のNATO総会でも「NATO諸国が国防費の目標最低値として設定しているGDP比2%はアメリカの半分であり、アメリカ並みに4%に引き上げるべきである」と主張した。

 特にドイツへの姿勢は厳しい。ドイツはNATO加盟国の中でも経済力も技術力もともに高く、実際にアメリカの一般の人々も「メルセデスやBMWのような各種高級機械をアメリカに輸出している先進国」と認識している。そんなドイツの国防費がGDP比1%にすぎないことに対して、トランプ大統領は極めて強い不満を露骨に表明した。

 一方、日本に対する姿勢は異なる。日本はNATO加盟国ではないものの、ドイツ同様に経済力も技術力も高く、アメリカの一般の人々も「自動車や電子機器などをアメリカに輸出している先進国」と認識しており、やはりドイツ同様に第2次世界大戦敗戦国である。このようにドイツと日本は共通点が多いが、これまでのところ(トランプ政権が発足してから1年半経過した段階では)、日本に対しては、「日本の国防費はGDPのたった1%と異常に低い。少なくとも2%、そして日本周辺の軍事的脅威に目を向けるならば常識的にはアメリカ並みの4%程度に引き上げなければ、日米同盟の継続を見直さねばなるまい」といった脅しは避けてきている。

 なぜドイツに対しては強硬に国防費の倍増どころか4倍増を迫り、日本に対しては(これまでのところ)そのような強硬姿勢を示さないのであろうか?

 その原因の1つ(あくまで、多くの要因のうちの1つにすぎないが)として考えられるのが、大統領選挙期間中以来トランプ大統領が関心を持ち続けてきているステルス戦闘機「F-35」の調達問題である。

F-35への関心が高いトランプ大統領

 トランプ大統領は2016年の大統領選挙期間中から、将来アメリカ各軍(空軍、海軍、海兵隊)の主力戦闘機となるF-35の調達価格が高すぎるとロッキード・マーチン社を非難していた。2017年に政権が発足した後は、さらに強い圧力をかけ始めたため、結局、F-35の価格は大幅に値引きされることとなった。

 F-35最大のユーザーとなるアメリカ軍は、合わせて2500機近く(空軍1763機、海兵隊420機、海軍260機)を調達する予定である。トランプ大統領がその調達価格を値下げさせたことにより、国防費を実質的に増額させたことになったわけである。

 このほかにも、トランプ大統領はこれまで数度行われた安倍首相との首脳会談後の記者会見などで、必ずといってよいほど「日本がF-35を購入する」ということを述べている。

 米朝首脳会談直前のワシントンDCでの日米首脳会談後の共同記者会見においても、「日本は(アメリカから)莫大な金額にのぼる、軍用ジェット(すなわちF-35のこと)やボーイングの旅客機、それに様々な農産物など、あらゆる種類のさらなる製品を購入する、と先ほど(首脳会談の席上で)安倍首相が述べた」とトランプ大統領は強調していた。

 要するに、F-35という戦闘機はトランプ大統領にとって大きな関心事の1つなのだ。

F-35の共同開発参加国が機体を調達

 F-35統合打撃戦闘機は、アメリカのロッキード・マーチン社が開発し、アメリカのノースロップ・グラマン社とイギリスのBAE社が主たる製造パートナーとしてロッキード・マーチン社とともに製造している。

 F-35のシステム開発実証段階では、アメリカ政府が幅広く国際パートナーの参画を呼びかけたため、イギリス、イタリア、オランダ、オーストラリア、カナダ、デンマーク、ノルウェイ、トルコが参加した。後に、イスラエルとシンガポールもシステム開発実証に参画したため、F-35は11カ国共同開発の体裁をとって、生み出されたことになる。

 パートナーとして開発に参加した国々は、それぞれ巨額の開発費を分担することになるため、当然のことながらF-35を調達することが大前提となる。要するに、共同開発として多数の同盟国を巻き込むことにより、アメリカ軍以外の販売先も確保する狙いがあったわけである。

 開発参加国は、分担金の額や、調達する予定のF-35の機数などによって、4段階に分類された。最高レベルの「レベル1」パートナーはイギリスであり、F-35Bを138機調達することになっている。

(F-35には3つのバリエーションがあるため、正式にはF-35統合打撃戦闘機と呼称されている。3つのバリエーションとは、主としてアメリカ空軍の要求に基づいて開発された地上航空基地発着用のF-35A、アメリカ海兵隊の要求に基づいて短距離垂直離発着能力を持ち強襲揚陸艦での運用が可能なF-35B、アメリカ海軍の要求に基づき設計された航空母艦での発着が前提となるF-35Cである。このほかにもカナダ軍用にはCF-35、イスラエル軍用にはF-35Iが製造される予定となっているが、基本的にはA型、B型、C型ということになる。)

「レベル2」パートナーはイタリアとオランダであり、それぞれ90機(F-35Aを60機、F35Bを30機)85機調達することになっていた。その後、オランダは調達数を37機へと大きく削減した。

「レベル3」パートナーは、オーストラリア(F-35Aを72機)、カナダ(F-35AベースのCF-35を65機、F-35の大量調達に疑義を呈していたトルドー政権が発足したため、選挙公約どおりにF-35の調達はキャンセルされ、現在再検討中である。)、デンマーク(F-35Aを27機)、ノルウェイ(F-35Aを52機)、トルコ(F-35Aを100機)である。遅れてシステム開発に参加したイスラエル(F-35AベースのF-35Iを50機)とシンガポール(調達内容検討中)は「SCPパートナー」と呼ばれている。

F-35を買わないドイツ、気前よく買う日本

 以上のように、現時点でパートナーである同盟諸国は合わせて600機前後のF-35ステルス戦闘機を購入する予定になっている。

 しかしながらNATOとEUのリーダー的存在であるドイツもフランスも、ともにF-35を購入する予定はない。ドイツ空軍ではF-35に関心を示したことがあったが、F-35推進派の空軍首脳は更迭されてしまった。

 このようにF-35ステルス戦闘機を購入する予定がないドイツに対して、トランプ政権は強烈に国防費増額を迫っている(65機が予定されているF-35の購入をキャンセルしたカナダのトルドー首相とも、トランプ大統領は対立を深めている。)

 一方、NATO加盟国ではないもののやはりアメリカの同盟国である日本は、ドイツ同様にF-35の開発には協力しなかった。しかし、ドイツのメルケル政権と異なり、安倍政権はF-35の購入に積極的であり、すでに42機のF-35Aの調達が決定し、すでに引き渡しも開始されている。F-35開発パートナー諸国以外でF-35の購入、すなわち純然たる輸入を決定した国は日本と韓国(F-35Aを40機調達予定)だけである。

 そして、日本は調達する42機のうち最初の4機を除く38機は日本国内で組み立てる方式を採用した(ただ組み立てるだけであるが)。その組み立て工場(三菱重工業小牧南工場)は、今後世界各国で運用が開始されるF-35戦闘機の国際整備拠点となることが、アメリカ国防総省によって決定されている。

 上記のように「安倍総理が日米首脳会談の席上でF-35の追加購入を口にした」とトランプ大統領が述べているということは、すでに調達が開始されている42機のF-35Aに加えて、かなりの数に上るF-35を調達する約束をしたものとトランプ大統領は理解しているに違いない。首脳会談で一国の首相が述べた事柄は、一般的に公約とみなされる。さらに米軍内では、日本国内で流布している海兵隊使用のF-35Bを調達する可能性も噂として広まっており、アメリカ側では期待している。

 日本はドイツと違って、トランプ大統領が関心を持っているアメリカにとっての主力輸出商品の1つであるF-35を気前よく購入している。したがって、安倍政権がトランプ大統領に対してF-35を積極的に調達する姿勢をアピールしている限りは、トランプ政権も「日本に対して国防費を4倍増しなければ日本防衛から手を退く」といった脅しはかけてこないだろうとも考えられるのだ。

【私の論評】国防を蔑ろにする「ぶったるみドイツ」に活を入れているトランプ大統領(゚д゚)!

なぜ日本は米国から国防費増額を強要されないのかその原因の1つ(あくまで、多くの要因のうちの1つにすぎないが)として考えられるのが、大統領選挙期間中以来トランプ大統領が関心を持ち続けてきているステルス戦闘機「F-35」の調達問題であり、日本は気前よく購入するがドイツは購入しないからだとしています。

では他には、どのような原因があるのでしょうか。本日はそれについて掲載したいと思います。

まず第一にあげられるのが、ドイツと中国との蜜月関係でしょう。メルケル・ドイツは中国との蜜月関係を持ち、それがお互いに大きな利益をもたらしてきました。10年余りの就任期間でメルケル首相が中国を訪問したのは実に9回です。

ドイツと中国との距離を考えると異常な回数です。ちなみにメルケル首相の日本訪問はわずかに3回です。しかもそのうち2回は洞爺湖サミットと伊勢志摩サミットのサミット参加で、残りの1回はエルマウ・サミットに向けた事前調整のためというから、サミット絡みだけといって良いです。メルケル首相の親中のスタンスは明らかです。

ドイツと中国の貿易は拡大し、ドイツ経済の成長の柱となりました。中国は生産拠点としても、大市場としても魅力のある国でした。経済の発展が素晴らしい時には様々な不平等的な問題も隠されてきました。

ドイツと中国は密接なパートナーとして活動し、中国はEU、つまりヨーロッパへの参入権を得た形になりました。しかし、中国経済の成長が鈍ると、問題が噴出してきました。

中国との貿易が停滞しながらも、ドイツ企業は撤退しようにも撤退できにくい状況に置かれています。しかし、中国の企業はドイツの優良企業を買収していきました。中国家電大手の美的集団は、ドイツの産業用ロボット大手クーカを買収しました。

中国との貿易は好調な時には問題が隠されますが、不調になると問題が噴出してきました。中国との貿易拡大で成長してきたメルケル・ドイツは方向転換を迫られています。


そうして、メルケル首相が出した結論は、結局中国寄りのものでした。ドイツのメルケル首相と同国を訪問した中国の李克強首相が9日、会談を開き、200億ユーロ(235億1000万ドル)規模の取引で合意しました。両首脳は米国との貿易戦争が本格化する中、多国間の貿易秩序に関与していく姿勢を強調しました。

これは、11日のブリュッセルでのNATO首脳会談の直前のことです。米国が、対中国貿易戦争をはじめたばかりのこの時期に、ドイツがこのようなことをしたわけですから、トランプ大統領としては、ドイツに対して恨み節の一つも言いたくなるのは、当然といえば当然です。

今回中国側との契約に合意したドイツ企業は、総合エンジニアリングのシーメンス(SIEGn.DE)、自動車のフォルクスワーゲン(VOWG_p.DE)、化学のBASF(BASFn.DE)などです。

メルケル氏は李克強氏との共同会見で、両国が世界貿易機関(WTO)の規則に基づくシステム維持を求めているとし、「すべての国がそのルールに従えば、さまざまな国がウィン・ウィンの状況となるのが多国間の相互に依存するシステムだ」と述べました。 

李氏は、保護主義に立ち向かう必要性を強調し、自国が一段と発展するために安定的で平和的な枠組みが必要で、自由貿易でのみ実現可能と説明。「一国主義に反対する」と述べました。 

ドイツのショルツ財務相は、中国人民銀行(中央銀行)の易綱総裁と、ドイツの銀行に中国金融部門への市場アクセスを速やかに認めることで一致しました。経済紙ハンデルスブラットが、関係筋の話として伝えました。
 
同紙によると、中国政府は、同国内でドイツ企業・団体が近く人民元建て債券を発行できるようになるとも表明したといいます。
 
欧州連合(EU)と中国は今月16、17日に北京で首脳会議を開催しました。メルケル氏は首脳会議について、投資の保護のほか、世界的な貿易紛争の拡大防止につながるよう求めると述べました。

メルケル氏は、中国について「実にタフで非常に野心を持った競争相手」と指摘しました。
李氏は、中国が海外からの投資にさらなる門戸を開くと表明。保険や債券市場を海外投資家に開放する用意があるとし、ドイツ企業が中国で事業を行うに当たり自社技術を失うと懸念する必要がないよう、知的財産権の保護を保証するとしました。 メルケル氏は、中国金融市場の開放を歓迎しましたが、一段の取り組みも求めました。

しかし、現状はG7は中国の横暴に対して、結束すべき状況にあります。それについては、以前のこのブログに掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
中国の横暴に甘い対応しかとらなかった日米欧 G7は保護主義中国に対して結束せよ―【私の論評】最大の顧客を怒らせてしまった中国は、その報いを受けることに!虚勢を張れるのもいまのうちだけ?
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事の元記事から一部を引用します。
 今月8日から2日間、カナダで先進7カ国(G7)首脳会議(サミット)が開かれる。鉄鋼・アルミなどの輸入制限を発動した米国に対して欧州が強く反発し、トランプ米大統領が孤立する情勢だが、仲間割れする場合ではない。 
 正論は麻生太郎財務相の発言だ。麻生氏は先に開かれたG7財務相会議後の会見で、中国を名指しに「ルールを無視していろいろやっている」と批判、G7は協調して中国に対し国際ルールを守るよう促す必要があると指摘した上で、世界貿易機関(WTO)に違反するような米輸入制限はG7の団結を損ない、ルールを軽視する中国に有利に働くと説明した。
G7財務相・中央銀行総裁会議の閉幕後、記者会見する
麻生財務相(左)と日銀黒田総裁=2日

 WTOについて自由貿易ルールの総本山と期待するのはかなり無理がある。麻生氏に限らず、経済産業省も外務省もWTO重視で、世耕弘成経済産業相も、米鉄鋼輸入制限をめぐるWTOへの提訴について「あらゆる可能性に備えて事務的作業を進めている」と述べているが、WTOに訴えると自由貿易体制が守られるとは甘すぎる。 
 グラフは、WTOの貿易紛争処理パネルに提訴された国・地域別件数である。圧倒的に多いのは米国で、中国は米国の3分の1以下に過ぎない。提訴がルール違反容疑の目安とすれば、米国が「保護貿易国」であり、中国は「自由貿易国」だという、とんでもないレッテルが貼られかねない。事実、習近平国家主席はスイスの国際経済フォーラム(ダボス会議)や20カ国・地域(G20)首脳会議などの国際会議で臆面もなく自由貿易の旗手のごとく振る舞っている。


 実際には中国は「自由貿易ルール違反のデパート」である。知的財産権侵害は商品や商標の海賊版、不法コピーからハイテクの盗用まで数えればきりがない。おまけに、中国に進出する外国企業には技術移転を強要し、ハイテク製品の機密をこじ開ける。共産党が支配する政府組織、金融機関総ぐるみでWTOで禁じている補助金を国有企業などに配分し、半導体、情報技術(IT)などを開発する。 
 習政権が2049年までに「世界の製造大国」としての地位を築くことを目標に掲げている「中国製造2025(メイド・イン・チャイナ2025)」は半導体などへの巨額の補助金プログラムだらけだ。 
 一連の中国の横暴に対し、日米欧はとにかく甘い対応しかとらなかった。理由は、中国市場でのシェア欲しさによる。「中国製造2025」にしても、中国による半導体の国産化プロジェクトは巨大な半導体製造設備需要が生じると期待し、商機をつかもうと対中協力する西側企業が多い。 
 ハイテク覇権をめざす習政権の野望を強く警戒するトランプ政権の強硬策は中国の脅威にさらされる日本にとっても大いに意味がある。G7サミットでは、日米が足並みをそろえて、欧州を説得し対中国で結束を図るべきだ。米国と対立して、保護主義中国に漁夫の利を提供するのはばかげている。(産経新聞特別記者・田村秀男)
中国の現在の体制では、そもそも民主化、政治と経済の分離、法治国家が十分なされておらず、これらがある程度整備されている日米やドイツをはじめとする先進国との間で、貿易をすると仮に中国にはそのつもりがなかったにしても、構造的に自由貿易にはなりません。

中国は、必ず「自由貿易ルール違反のデパート」にならざるをえないです。であれは、中国も、民主化、政治と経済の分離、法治国家化を推進すればよいのですが、それを推進すれば、中国の一党独裁もとより、最近の習近平の独裁政権は成り立たなくなってしまいます。

それは、ドイツとても同じです。いくら、李克強が口約束をしても、中国はドイツに対しても「自由貿易ルール違反のデパート」にならざるを得ません。中国との関係を維持すれば、ドイツも国益を失います。

こうした中国に対して、米国としては、対中国戦略として、貿易戦争を発動したのです。そうして、この貿易戦争は、中国が現体制をある程度変更してまで、度民主化、政治と経済の分離、法治国家化を推進するか、現体制のままかなり弱体化するかのいずれかが達成できるまで継続されることでしょう。

7月6日、米中貿易戦争が開戦しました。中国内外の多くのメディアが「開戦」の文字を使いました。つまり、これはもはや貿易摩擦とか不均衡是正といったレベルのものではなく、どちらかが勝って、どちらかが負けるまでの決着をつける「戦争」という認識です。

この戦いは、たとえば中国が貿易黒字をこれだけ減らせば終わり、だとか、米大統領選中間選挙までといった期限付きのものではなく、中国が貿易戦争に屈しなければ、米国は次の段階に進み、厳しい金融制裁を課すことになり、どちらかが音を上げるまで長引くでしょう。

この貿易戦争がどういう決着にいたるかによっては、独裁者習近平が率いる中国の特色ある現代社会主義強国なる戦後世界秩序とは全く異なる世界が世界の半分を支配する世の中になるかもしれないですし、世界最大の社会主義国家の終焉の引き金になるかもしれないです。

まさに、米国を頂点とする、日本やEUも含めた戦後の秩序を維持できるか、それとも半分を中国に乗っ取られるかを決める争いであり、軍事力は伴わないものの、世界大戦に匹敵する大戦なのです。だからこそ、トランプ大統領は米国の国防予算を拡大したのです。


オバマ政権で削られた国防予算をトランプ大統領は拡大した

それをドイツが理解しておらず、NATOの首脳もあまり理解していないようです。だかこそ、トランプ大統領は、NATO(北大西洋条約機構)加盟諸国(とりわけドイツやフランスなどEUを牽引する西ヨーロッパ諸国)に対して国防費増額を執拗に要求しているのです。

彼らに対して、現状は彼らが考えているような甘い状況ではなく、世界の半分が中国という闇に覆われるかどうかの天下分け目の大戦に突入したことを理解されるために、あのような発言をしたのです。

その中でもドイツに対して、F-35への関心が高いトランプ大統領がさらに苛立つ実態があります。

何と、ドイツ空軍(ルフトヴァッフェ)の主力戦闘機「ユーロ・ファイター」のほぼ全機に“深刻な問題”が発生し、戦闘任務に投入できない事態となっています。現地メディアによれば全128機のうち戦闘行動が可能なのはわずか4機とも。原因は絶望的な予算不足にあり、独メルケル政権は防衛費の増額を約束したのですが、その有効性は疑問視されるばかりです。

ドイツは“緊縮予算”を続けており、その煽りを受けてドイツの防衛費不足は切迫しています。空軍だけではなくドイツ陸軍においても244輌あるレオパルト2戦車のうち、戦闘行動可能なのは95輌などといった実態も報告されています。

こうした状況に追い込まれた原因の一つとして、ドイツを含む欧州連合(EU)には、財政赤字が対GDP比で3%、債務残高が対GDPで60%を超えないこととする「マーストリヒト基準」があり、財政健全化を重視しすぎるとの声が経済専門家の間にはあります。

ドイツ空軍(ルフトヴァッフェ)の主力戦闘機「ユーロ・ファイター」

一方、ショルツ財務相は、昨年の総選挙で第2党となった中道左派のドイツ社会民主党(SPD)の臨時党首を務めるなど、選挙後の大連立において存在感を示してきたましたが、そもそもSPDは総選挙で戦後最低の得票率となり、野党に転じる予定でした。財務相という重要ポストをSPDが得たのも、大連立をなんとしてもまとめたいメルケル氏率いるCDU・CSUの譲歩と見られています。

自国どころかユーロ圏全域に緊縮財政を突きつけてきたメルケル首相と、じり貧の中道左派の財務相による予算編成に国防予算「2%」はハードルが高すぎたのかもしれません。19年度予算を本格的に議論するのは7月で、国防省はそれまでに防衛費の“改善”を求めていくとしています。

一方日本は、いくら自衛隊の予算が低いといわれつつも、これほど酷い状態にはありません。もともと、日本の経済の規模はドイツより大きいですから、GDP1%であっても、ドイツよりはまともな国防予算なのでしょう。

それに、若干ながら、最近は防衛費を上げています。自衛隊の航空機の稼働率は、米軍よりも高い状態にあります。日本としては、低予算ながら、何とか工夫して、最新鋭の潜水艦を配備したり、準空母ともいえる護衛艦を配備したりしています。

日本の防衛関係費の推移

さらに、日本の安倍政権は、中国に対抗するため「インド太平洋戦略」と称して東南アジア諸国連合(ASEAN)や台湾などと経済、安全保障、外交の3つの分野で関係を強化しています。そもそも、安倍総理は安倍政権成立直前にはやくも、「安全保障のダイヤモンド」という対中国封じ込め戦略を発表しています。これは、米国のドラゴンスレイヤー達も高く評価しています。

いくら中国から地理的に離れているとはいえ、ドイツも含まれる戦後秩序を崩し世界の半分を支配しようとする中国に経済的に接近するとともに、緊縮財政で戦闘機の運用もままならないという、独立国家の根幹の安全保障を蔑ろにするドイツは、まさにぶったるみ状態にあります。ドイツの長い歴史の中でも、これほど国防が蔑ろにされた時期はなかったでしょう。

このような状況のドイツにトランプ大統領は活をいれているのです。ドイツにはこのぶったるみ状態からはやく目覚めてほしいものです。そうでないと、中国に良いように利用されるだけです。

そうして、ドイツを含めたEUも、保護主義中国に対して結束すべき時であることを強く認識すべきです。

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2018年7月18日水曜日

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スクープ最前線 加賀孝英

トランプ米大統領は16日、フィンランドの首都ヘルシンキで、ロシアのプーチン大統領と会談
写真はブログ管理人挿入 以下同じ

ドナルド・トランプ米大統領は16日、フィンランドの首都ヘルシンキで、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領と会談した。米露関係を改善して、核軍縮や中東問題、テロ対策で協力するとともに、「中国の覇権拡大阻止」という隠れた狙いもありそうだ。過熱する「米中貿易戦争」は今後、南シナ海や東シナ海での、軍事的緊張を高めることは間違いない。ジャーナリストの加賀孝英氏が最新情勢に迫った。

 「トランプ氏は、中国に史上最大の貿易戦争を仕掛けた。中国の習近平国家主席は報復を宣言した。それどころか、習氏がキレて、南・東シナ海での、米国との軍事衝突まで想定した『極秘指令を軍に出した』という情報がある」

 旧知の米軍関係者は緊張した声でそういった。

 ご承知の通り、米国は6日の340億ドル(約3兆7600億円)に続き、10日、2000億ドル(約22兆円)の中国製品に対し、追加制裁を発表した。中国も同等の報復を宣言。全世界に衝撃が走った。

 外務省関係者は「トランプ政権は、中国が軍事を含む米国のハイテク技術を盗みまくり、『覇権国家を目指している』と激怒している。中国のハイテク産業の息の根を止めるつもりだ。これに対し、習氏は6月下旬、北京で開かれた外交政策の中央外事工作会議で、『中国中心の新たな国際秩序を構築していく』と宣言した。『米国を潰す』と言ったに等しい。このままでは、貿易戦争だけでは終わらない」と解説した。

6月下旬、北京で開かれた中央外事工作会議で、『中国中心の
新たな国際秩序を構築していく』と宣言した習近平

 米中が、軍事的に対峙(たいじ)する最前線は、南シナ海と台湾周辺、沖縄県・尖閣諸島を含む東シナ海だ。中でも、最も警戒すべきは南シナ海だ。

 ご承知の通り、中国は国際法を無視して、南シナ海で岩礁を埋め立て、複数の人工島を軍事基地化し、電波妨害装置や対艦巡航ミサイル、地対空ミサイルなどを配備した。戦略爆撃機の離着陸訓練まで実施している。

 「ふざけるな!」だ。中国は、世界屈指のシーレーンである南シナ海を、自国の内海として支配するつもりだ。

環太平洋合同演習(リムパック、RIMPAC)2018(VOA)

 米国防総省は5月末、世界最大規模の多国間海軍演習「環太平洋合同演習」(リムパック=6月下旬~8月初旬実施、20カ国以上参加)に「中国の招待を取り消す(=排除する)」と発表した。

 中国が周辺国を軍事力で恫喝(どうかつ)し、シーレーンの一方的支配を画策していることへの、米国の強烈な抗議表明だ。米国防総省は、対艦巡航ミサイルなど、軍事施設の即時撤去を求めている。当たり前だ。

 ところが、どうだ。習氏は6月27日、ジェームズ・マティス米国防長官と会談した際、南シナ海の軍事拠点化について、「祖先から受け継いだ領土は一寸たりとも失うことはできない」と一蹴。米国の要求を拒絶した。

 その南シナ海で、中国は仰天行動に出ている。以下、複数の中国人民解放軍、中国政府関係者から入手した情報だ。

 「中国海軍は5月下旬、南シナ海で、56基の無人小型ボートによる『群れ攻撃』の訓練を実施し、映像を公開した。米艦船が『航行の自由』作戦で、人工島周辺に侵入すれば、無人小型ボートに爆薬を積んで『特攻自爆攻撃をする』という米国への警告だ」

 「兵士が漁民に偽装してゲリラ工作をしている。米国が海中に設置したパッシブ・ソナー(=潜水艦の音などを監視する水中聴音機)を撤去し、米軍の監視網を破壊している。2~3人乗りの小型潜水艦で、米艦艇のスクリューを破壊する訓練も行っている」

 中国国内で「反米デモを日常化させ、人民の反米感情を扇動し、対米軍事衝突への世論工作」も検討されているという。

 驚かないでいただきたい。日本にも危機が迫っている。

 日米情報当局関係者は「中国は、台湾への武力侵攻を本気で計画している。その際、日本の尖閣諸島への同時侵攻計画がある。中国は今後、ロシアやシリア、イラン、北朝鮮、韓国などと『反米反日包囲網』を構築するつもりだ。安倍晋三首相潰しの世論工作、日本への恫喝が激しくなる危険がある」と語った。

 トランプ氏が16日、プーチン氏と米露首脳会談を行い、中国を牽制(けんせい)した意味は大きい。

 日本は断じて屈してはならない。あえていう。国難が迫っている。こうしたなか、一部の左派野党は、多数の犠牲者を出した「平成30年7月豪雨」まで、政争の具にして騒いでいる。いい加減にしろ!

 ■加賀孝英(かが・こうえい) ジャーナリスト。1957年生まれ。週刊文春、新潮社を経て独立。95年、第1回編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム大賞受賞。週刊誌、月刊誌を舞台に幅広く活躍し、数々のスクープで知られている。

【私の論評】米中貿易戦争は、国際秩序の天下分け目の大戦の始まり(゚д゚)!

2018年環太平洋合同演習(RIMPAC、リムパック)が6月下旬から8月初めまで、太平洋の米領ハワイ諸島で行わています。社会主義政権であるベトナムは、このたび演習に初参加しました。専門家は、アジア太平洋地域における中国の軍事プレゼンスが拡大するなか、米国が対抗手段として、アジア太平洋諸国と堅く協調していることを示す狙いがあるとみています。

今年の軍事演習には26カ国から2万5000人の兵力、戦艦や潜水艦など52隻、航空機200機ほどが参加しています。参加国は〇ブラジル、カナダ、チリ、コロンビア、フランス、ドイツ、インド、インドネシア、〇イスラエル、日本、マレーシア、メキシコ、オランダ、ニュージーランド、ペルー、韓国、フィリピン、シンガポール、〇スリランカ、タイ、トンガ、英国、米国、〇ベトナム(〇は初参加国)。

米シンクタンクのCNA海軍解析センターの上級研究員ロジャー・クリフ氏は米政府系VOAの取材で、米軍の目的は「志を共にする」国と訓練を実施し、アジア太平洋地域における中国の影響力を抑制することだと語りました。特に、中国不在のなかで、最も中国に近いベトナムが参加することは意義深いとしました。

ベトナム国防省によると、ベトナムは8人の海軍職員を派遣しました。船舶は参加していません。

米軍紙スター・&・ストライプスもまた、米国はベトナムは潜在的なアジア太平洋地域の均衡をとる力があると見なしていると報じました。

2016年以来、米国とベトナムの関係は強化しています。2016年、米国はベトナムへの殺傷力ある武器の販売禁止を解きました。2018年3月、米国空母は40年ぶりにベトナム港に寄港しました。日本官製の外交専門誌「外交」 によると、ベトナムは日本の提唱する「自由で開かれたインド太平洋戦略」の重要なパートナーだといいます。

軍事演習には、災害救援、水陸両用作戦、海賊対策、ミサイル射撃、地雷除去、海上保安、対潜水艦戦、防空作戦などがあります。米軍は専門特殊部隊がリムパックに初めて参加します。

実弾演習では、特殊部隊が海上の船舶を沈める「海軍打撃ミサイル」を発射します。上空では「長距離対艦ミサイル」を発射する予定です。

米紙ポピュラー・マシーナリーによると、ますます軍事力を強化させる中国海軍に対抗して、米空軍B-1B爆撃機は、新しい「長距離対艦ミサイル」を発射する可能性が高いです。同紙は、日本が「島に配備された対艦ミサイルが、日本の排他的経済水域を頻繁に通過する中国艦隊に圧力をかけることができる」ことを証明したいと望んでいる、と報じました。

陸軍の「海軍打撃ミサイル」は、地上の海岸線または島に配備を想定し、数千平方キロメートル離れた洋上の敵艦隊を排除できる能力があります。

中国共産党メディア・環球時報は、中国専門家の話として、リムパックのプログラムのかなりの割合は、中国を対象と想定しているとの分析を報じました。

5月23日、米国防総省は、リムパックに参加するための中国への招待をキャンセルすることを決めました。米国防総省の関係者は、中国の南シナ海における人工島の軍事拠点化に対する予備対応だと語りました。

中国は以前、2014年と2016年のリムパックに参加したことがあります。米国防総省は14日までに、中国のスパイ船がハワイ沖で実施中の環太平洋合同演習(リムパック)を偵察していることを明らかにしました。

米太平洋艦隊のチャールズ・ブラウン報道官は声明で、「ハワイ周辺の米領海外で中国の偵察船が活動しているのを監視中だ」と説明。この船は今後も米領海外にとどまる見通しだとし、リムパックを妨害する動きは取らないものとみていると述べました。

国防総省は5月に中国の招待取り消しを発表した際、南シナ海の係争水域での「軍事化の継続」を理由に挙げ、対艦ミサイルや地対空ミサイルシステム、電子妨害装置の配備などに言及していました。

米軍当局者がCNNに明かしたところによると、スパイ船がハワイ沖の海域に到着したのは今月11日。これまでのところ米国の領海には進入していないといいます。

演習参加国で作る合同部隊の海上部門司令官も、中国船の出没を批判。「非参加国の艦船の出没により演習が妨害される可能性があるというのは非常に残念」と述べました。

私自身は以前からこのブログで述べているように、米中が軍事力で直接対決するのは現実的ではないと考えています。

中国が軍事大国になった背景に、経済的な発展があります。言い換えれば、中国の経済発展をスローダウンさせれば中国軍の力は落ちます。そこで通商、金融、軍事、外交を組み合わせて中国の軍事的台頭を抑制しようという対中政策を提唱しているのが、『米中もし戦わば』(文芸春秋)の著者で経済学者のピーター・ナバロ氏です。

「ピーター・ナバロ」の画像検索結果
ピーター・ナバロ氏

トランプ大統領は就任当初、米国の通商政策の司令塔として新設した「国家通商会議」のトップに、このナバロ氏を据えました。

ところが、トランプ大統領が当選した直後、北朝鮮による弾道ミサイルと核開発問題が浮上しました。実はオバマ政権の間に軍事費が大幅に削られたため米軍が弱体化してきており、すぐ北朝鮮に対して軍事行動を起こせる状況ではありませんでした。

ゆえに時間稼ぎの必要もあり、トランプ政権は中国の習氏と組んで北朝鮮に圧力を加える方策を採用し、対中強硬策を控えてきたのですが、はかばかしい成果は見られませんでした。

そこでトランプ大統領は昨年12月、安全保障政策の基本方針を示す「国家安全保障戦略」の中で、中国とロシアを力による「現状変更勢力」、すなわち「米国の価値や利益とは正反対の世界への転換を図る勢力」として名指しで非難しました。このトランプ政権の「反中」戦略を真っ向から批判したのが、パンダ・ハガー(対中融和派)たちでした。

しかしその後、中国共産党自らが「長期独裁を目指す」と主張しました。ドラゴン・スレイヤー(対中国強硬派)とすれば、「やはりトランプ政権の反中戦略は正しい」となります。長期独裁を目指す習氏のおかげで米国では、ドラゴン・スレイヤーの力がますます増していくことでしょう。

そうして、7月6日、米中貿易戦争が開戦しました。中国内外の多くのメディアが「開戦」の文字を使いました。つまり、これはもはや貿易摩擦とか不均衡是正といったレベルのものではなく、どちらかが勝って、どちらかが負けるまでの決着をつける「戦争」という認識です。

この戦いは、たとえば中国が貿易黒字をこれだけ減らせば終わり、だとか、米大統領選中間選挙までといった期限付きのものではなく、どちらかが音を上げるまで長引くであろう、というのが多くのアナリストたちの予測です。

やはり、これは、ピーター・ナバロ氏の通商、金融、軍事、外交を組み合わせて中国の軍事的台頭を抑制しようとする戦略の最初の発動と捉えるべきです。この戦争は、中国がある程度の民主化、政治と経済の分離、法治国家化を実現するか、現体制のまま経済的に相当弱体化するまで継続されることになるでしょう。

こういう事態を招いた、責任の一端は習近平の対米戦略を見誤ったことにあるといえます。オバマ政権の初期が中国に対して非常に融和的であったことから、習近平政権が米国をみくびった結果、鄧小平が続けてきた「韜光養晦(とうこうようかい:「才能を隠して、内に力を蓄える)」という中国の外交・安保の方針)」戦略を捨て、今世紀半ばには一流の軍隊を持つ中国の特色ある現代社会主義強国として米国と並び立ち、しのぐ国家になるとの野望を隠さなくなりました。

「韜光養晦」という中国の外交・安保の方針を提唱した鄧小平

このことが米国の対中警戒感を一気に上昇させ、トランプ政権の対中強硬路線を勢いづけることになりました。

今、北戴河会議(8月、避暑地の北戴河で行われる共産党中央幹部・長老らによる非公式会議)を前に、米中貿易戦争の責任を王滬寧が取らされて失脚するといった説や長老らによる政治局拡大会議招集要求(習近平路線の誤りを修正させ、集団指導体制に戻すため)が出ているといった噂が出ているのは、その噂の真偽はともかく、党内でも習近平路線の過ちを追及し、修正を求める声が潜在的に少なくない、政権の足元は習近平の独裁化まい進とは裏腹に揺らいでいるようです。

この貿易戦争がどういう決着にいたるかによっては、独裁者習近平が率いる中国の特色ある現代社会主義強国なる戦後世界秩序とは全く異なる世界が世界の半分を支配する世の中になるかもしれないですし、世界最大の社会主義国家の終焉の引き金になるかもしれないです。

これは、間違いなく国際秩序の天下分け目の大戦なのです。我が国としては経済の悪影響を懸念したり漁夫の利を期待するだけでは足りないです。別の視点で補いながら、その行方と対処法を探る必要があります。

トランプ政権の対中国貿易戦争を単に自由貿易体制への脅威とみなす人もいるようですが、そのような見方は物事の裏表のうちの、片面しか見ていないと思います。

米中のこの大戦においては、北朝鮮の問題は、大戦を有利に戦うための、駒のようなものです。北朝鮮だけみていては、その真の姿はみえてきません。私は、トランプ政権は金正恩が米国の対中戦略駒として動き、役に立つというのなら、北の存続を許容するでしょうが、そうでなければ、見限ると思います。

場合によっては、中国への見せしめのため、軍事攻撃をするかもしれません。それは、中国も同じことです。米中のどちらにつくかによって、金正恩の未来は大きく変わることでしょう。

そして、ドラゴン・スレイヤーが期待しているのが、日本です。彼らは、「インド太平洋戦略」と称して東南アジア諸国連合(ASEAN)や台湾などと経済、安全保障、外交の3つの分野で関係を強化しようとしている安倍政権を高く評価しています。

期待が高いだけに実際に軍事紛争が勃発した際、日本が軍事的に貢献できなければ、日米同盟は致命的な傷を負いかねないです。何よりもさらに独裁体制を強化した習政権はますます日本に対して牙をむくことになるでしょう。特に尖閣諸島は極めて危険な状態です。

この危機に対応するためには、日本自身の防衛体制の強化、つまり防衛大綱の全面見直しと防衛費の増額、そして憲法改正を進めるべきです。そうして、日本も通商、金融、軍事、外交を組み合わせて中国の軍事的台頭を抑制する日本独自の方法を模索し実行すべきです。

特に金融に関しては、我が国は物価目標2%を達成するまで、量的緩和を実行し続けるべきです。実は、これが中国に対してかなりの圧力になることを忘れるべきではありません。中途半端でやめてしまえば、我が国の経済の回復が中途半端になるばかりか、中国を利することになることを忘れるべきではありません。

そうして、日本が金融緩和をやりきることが、中国の現体制の崩壊にむけて最大の貢献になるかもしれません。このあたりは、掲載すると長くなってしまうので、いずれまた改めて掲載しようと思います。

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2018年7月17日火曜日

お先真っ暗…韓国「雇用政策」大失態、貿易戦争も直撃、対中輸出3兆円減の試算も―【私の論評】金融政策=雇用政策と考えられない政治は、韓国や日本はもとより世界中で敗退する(゚д゚)!

お先真っ暗…韓国「雇用政策」大失態、貿易戦争も直撃、対中輸出3兆円減の試算も

経済政策で窮地に立つ文政権。そこに米中貿易戦争が直撃した

 「雇用拡大」を掲げる韓国の文在寅(ムン・ジェイン)政権が、大ピンチに陥っている。雇用状況を示す数値が5カ月連続で低迷し、メディアでは「雇用大惨事」との指摘も上がる。雇用不振の背景には、最低賃金(時給)の大幅アップがあるが、労働界はさらなる引き上げを要求。人件費高騰に苦しむ小規模事業者からは悲鳴が上がり、コンビニ店主でつくる団体は「全国同時休業」も辞さない構えだ。米中の「貿易戦争」の余波も直撃し、韓国経済はお先真っ暗の状態だ。

 《「雇用大統領」文在寅政権下の「雇用大惨事」》(12日、朝鮮日報日本語版)

 《雇用不振に陥った韓国経済、成長最優先への方向転換を》(12日、中央日報日本語版社説)

 韓国の保守系メディアは最近、雇用の低迷ぶりを相次いで報じている。

 韓国統計庁が毎月発表している雇用動向を見ると、今年に入って雇用状況を示す数値は急激に下がっている。文氏が大統領に就任した昨年5月から今年1月までは、就業者数が前年同月比で20~30万人多かった。だが、それ以降は10万4000人増(2月)、11万2000人増(3月)、12万3000人増(4月)、7万2000人増(5月)、10万6000人増(6月)と5カ月連続で20万人台を割り、政権が目標としている32万人増を大きく下回った。

 急激な雇用不振の理由は、1月からの最低賃金大幅アップにあるとの見方がもっぱらだ。その賃上げ率はなんと16・4%に上る。

 前出の社説で、中央日報は雇用不振が消費沈滞につながり、米中貿易戦争で輸出も減少の危機を迎えるとして、「韓国経済が四面楚歌から抜け出すには、まず最低賃金の急激な引き上げを自制しなければいけない」と指摘する。さらに社説はこう続けた。

 「最低賃金委員会で労働界は来年の最低賃金を今年より43・3%増の1万790ウォン(約1070円)を提示した。同意できない。政府は急激な最低賃金引き上げの副作用を認める必要がある」

 大幅に最低賃金を引き上げる動きに対し、人件費高騰に苦しむ事業者は怒りを隠せないようだ。

 東亜日報(日本語版)は13日、《「最低賃金に不服」宣言、350万人の小規模個人事業主の絶叫虚しく》という記事を掲載した。

 記事によると、350万人の小規模個人事業主を代表する小商工人連合会が12日、緊急記者会見を開き、「国家が一方的に定めた来年の最低賃金は受け入れられない」と闘争宣言を行った。

 全国7万余りのコンビニ代表でつくる全国コンビニ加盟店協会も同日、「零細事業主の生活を根こそぎ摘み取る心算で、零細事業主を犯罪者や貧困層に追いやっている」と絶叫し、全国同時休業も辞さない考えを明らかにしたという。

 文氏は昨年6月の施政方針演説で、「雇用」という言葉を44回口にするほど、雇用拡大を売り物にしてきた。だが、行き過ぎた経済政策は零細業者らを破滅に追いやろうとしているようにしか見えない。

 今月に勃発した米中貿易戦争の影響も深刻だ。朝鮮日報(日本語版)は7日、《対岸の火事でない米中貿易戦争、韓国経済に飛び火も》という記事で、現代経済研究院経済研究室のチュ・ウォン室長の試算を紹介している。それによると、米国で中国製品の輸入が10%減少して中国経済全体が大きな影響を受けた場合、韓国からの中国向け輸出は282億ドル(約3兆1100億円)の減少が見込まれるというのだ。

 こんな惨状にもかかわらず、韓国ギャラップが13日に発表した文氏の支持率は69%と高水準を維持している。

 韓国に精通するジャーナリスト、室谷克実氏は「韓国社会の大勢は『積弊(旧体制の弊害)が残っているから、文大統領がやっている政策がうまくいかない。積弊をもっと潰さなければいけない』という認識だから、支持率が高い。今の流れでいくと、人民共和国化に向けて止まらない状況だ」と話す。

 今後、韓国経済はどうなるのか。

 室谷氏は「文氏のやっていることは反米、反資本主義で韓国はキューバ化が進んでいるように思える。世界のどこの国でも『富国強兵』政策をやっているが、韓国は『貧国弱兵』政策を行っている。経済はどうしようもないところまでいくのではないか」と予測した。

【私の論評】金融政策=雇用政策と考えられない政治は、韓国や日本はもとより世界中で敗退する(゚д゚)!

文在寅政権は「韓国経済のパラダイム見直し」との考え方に基づき、「所得主導」と「革新」という2つの軸で成長政策を推し進めようとしています。所得主導は需要の側、革新は供給の側を刺激することで成長動力を引き出そうとする構想です。

所得主導成長の逆説、韓国低所得層の所得が大幅減

しかしこの2つの軸は現政権発足からわずか1年で大きな危機に直面しています。最低賃金を16.4ポイントも大幅に引き上げたものの、低所得層では1年前に比べて所得が逆に8ポイントものマイナスを記録しました。年間30万以上増加していた雇用も7万と大幅にブレーキがかかりました。現政権は自分たちを「雇用政府」と自負していますが、実際は正反対の結果を招いているのです。

革新成長にいたっては成果が全くありません。文大統領は革新成長のコントロールタワーとしてキム・ドンヨン経済副首相を指名しはっぱをかけているようですが、実質的にさほど大きな権限のない経済副首相がやれるような仕事ではありません。

革新成長は何一つうまくいっていない
過去10年続いた保守政権は「グリーン成長」「創造経済」などの旗印で供給側に重点を置いた成長政策を推し進めたのですが失敗しました。営利を前面に出した病院や遠隔医療は医師団体から反対され、カーシェアリングはタクシー業界、スマートファームは農民団体の反対によって挫折しました。またネットバンクは銀行と企業の分離、フィンテック(ファイナンス・テクノロジー)は個人情報保護などの規制に阻まれ全く進んでいません。

このような状況では、雇用を経済を良くするために、まずは何をさておいても、金融緩和をすべきです。それ抜きに、単純に最低賃金をあげたり、構造改革をしても、過去の日本がそれで失敗して、失われた20年に突入したように、何も得るものはありません。

そうして、金融政策の大きな転換の意識は文政権にはありません。むしろ民間部門を刺激する政策として、財閥改革などの構造改革を主眼に考えているようです。しかし、このような構造改革はデフレ経済に入りかけている韓国経済の浮揚には結びつかないです。

韓国の歴代政権が、金融緩和政策に慎重な理由として、ウォン安による海外への資金流出(キャピタルフライト)を懸念する声がしばしばきかれます。しかし金融緩和政策は、実体経済の改善を目指すものです。特に、雇用状況を変えるものです。

金融緩和とはいっても、無制限ではなく、インフレ目標値を設定しての緩和を実施すれば良いのです。そうすれば、実際にキャピタルフライトしたアイスランドのように、政府は黒字だったものの、民間が外国から膨大な借金を抱え込んでいるようなことでもなければ、滅多なことで、キャピタルフライトが起こるようなことはありません。

日本でも日銀が2013年から金融緩和に転じる前には、「金融緩和するとハイパーインフレになる」「キャピタルフライトする」等といわれてきましたが、そうはなりませんでした。

むしろ最近では、このブログでも解説したように、5月の失業率は2.2%となり、昨年あたりにささやかれていた金融緩和出口論など全くの誤りであったことが明らかになりました。また、昨年まで黒田総裁が主張していた日本の構造的失業率が3%という見解も誤りであったことがはっきりしました。

ただし、この2.2%の失業率が日本の構造的失業率かどうかについてはもう少し様子をみてから判断すべきものと思います。

ただし、政策的には構造的失業率がどうのこうのなどということはあまり重要な問題ではなく、やはり2%物価目標に向けてさらに量的緩和を拡大していくべきでしょう。まだまだ、日銀の量的緩和は手ぬるいとみるべきです。

いずれにしても、日本では、2013年4月から日銀が金融緩和に転じ、現在も継続しています。そのため、雇用もかなり良くなっています。

そもそも、雇用情勢が悪ければ、まずは金融緩和すべきです。そうすれば、雇用が改善され、人手不足になり、黙っていても企業は賃金をあげます。そのような状況になってから、世間相場をみながら最低賃金を上げれば良いのです。

しかし、そもそも文政権は日本と同様のリフレ政策を採用する可能性はいまのところないに等しいです。雇用情勢を良くするには、単純に最低賃金を上げるなどという発想ではうまくいかないのは当然のことです。

経済が大きくなっていないのに、最低賃金だけを機械的にあげれば、雇用が減るのは当然のことです。こんな明白なことに気づかないようでは、韓国経済の長期停滞、特に雇用問題が本格的に解消する可能性は無いです。

そうして、金融緩和をせずに最低賃金だけ上げるという政策は、文在寅の独壇場というわけではありません。日本の野党も政権公約に掲げていたものです。日本の野党の頭には今でも、雇用=金融政策という考え方は、文在寅のように全く無いでしょう。

日本の野党は、2016年7月の参院選挙のときに、最低賃金の引き上げを争点にしました。無論、金融緩和を含む、アベノミクスには反対していました。

同年5月17日には、最低賃金大幅引き上げキャンペーン委員会が「最低賃金をいますぐどこでも時給1000円に!時給1500円をめざす院内集会」を衆議院第二議員会館で開催しましたた。労働組合の参加者や国会議員ら約80人が集まりました。下の写真がその時撮影されたものです。


彼らの、政策は文在寅と本質的に同じです。なぜか、金融政策はすっぽ抜けて、最低値賃金を機械的に上げれば、それで雇用が良くなると単純に信じているようです。

日本の野党は、韓国の単純な最低賃金上昇政策が大失敗に終わったことを他山の石として、真摯に反省すべきです。しかし、そのような様子は全くみられず、何かといえば「アベガー、アベガー」と反政府キャンペーンを繰り返すばかりです。この状況ですから、野党はいつまでも野党であり続けるしかないのです。

私は、いずれ文政権も雇用政策で大失敗して、敗退すると思います。韓国にも安倍総理のように金融緩和を提唱する政治家があらわれないと、いつまでたっても雇用は改善されないでしょう。そんなことでは、国民は絶対に納得しないでしょう。

金融政策=雇用政策と考えられない政治は、韓国や日本はもとより世界中で大失敗しているのです。

この事実に目覚めない、政治家は与野党に限らず必ず失敗することになるのです。


雇用指標、5月は一段と改善 失業率は25年7カ月ぶり2.2%―【私の論評】出口論者に煽られるな!日銀の金融緩和は未だ道半ばであったことが明らかに(゚д゚)!

なぜかマスコミが報じない「大卒就職率過去最高」のワケ―【私の論評】金融緩和策が雇用対策であると理解しない方々に悲報!お隣韓国では、緩和せずに最低賃金だけあげ雇用が激減し大失敗(゚д゚)!

【究極の二択】韓国の若者、将来はチキン店を開業するか死ぬしかないと話題に―【私の論評】金融緩和に思いが至らない政府なら、日本も同じことになった(゚д゚)!

【メガプレミアム】もはや危険水域か、韓国庶民の「家計」…富める者に向けられる「国民感情」―【私の論評】安全保障の面から日米は韓国に強力に金融緩和を迫るべき(゚д゚)!

2018年7月16日月曜日

習主席統治に不満噴出か 中国、党内に異変相次ぐ―【私の論評】習への権力集中は、習政権の弱さを露呈したものであり、個人的な傲慢さの表れでもある(゚д゚)!

習主席統治に不満噴出か 中国、党内に異変相次ぐ

2016年上海では習近平のポスターを張り巡らした家屋が出現・・・・・ 写真はブログ管理人挿入

中国共産党内で、権力集中を進める習近平国家主席の統治手法に不満が噴出しているとの見方が出ている。国営メディアが習氏への個人崇拝批判を示唆、習氏の名前を冠した思想教育も突然中止されるなどの異変が相次いでいるためだ。米国の対中攻勢に手を焼く習氏の求心力に陰りが出ている可能性も指摘される。

「習近平同志の写真やポスターを全て撤去せよ」。12日、習氏の宣伝用物品を職場などに飾ることを禁じる公安当局の緊急通知の写真が出回った。通知の真偽は不明だが、写真は会員制交流サイト(SNS)などで一気に拡散された。

同時期に国営通信の新華社(電子版)は、毛沢東の後継者として党主席に就任した故華国鋒氏が個人崇拝を進めたとして党内で批判を受けた経緯を詳述する記事を伝えた。党が80年に「今後20~30年、現職指導者の肖像は飾らない」と決定したことにも触れた。記事はすぐ削除されたが、習氏を暗に非難したと受け止められた。

【私の論評】習への権力集中は、習政権の弱さを露呈したものであり、個人的な傲慢さの表れでもある(゚д゚)!

2016年には、上海で強制解体に必死の抵抗を試みた家主が、建物全面に「習近平ポスター」を貼りまくるという事件が発生しました。それがこのブログ冒頭の記事の写真です。

習近平主席の写真やポスターなど無断で引き剥がしたりすれば、不敬罪にあたるとして、家主はこれで、強制撤去を免れると目論んだのですが、呆気なく 十数人の作業員が動員されポスターは引き剥がされてしまいました。

今月の、7月4日の午前6時ごろ、中国の湖南省出身、現在は上海に住むとされる女性、董瑶琼さん、29歳が、習近平国家首席を支持しないという内容の動画を生配信し、習近平のポスターに墨をかけるパフォーマンスを行いました。

董瑶琼さんとされる写真

動画の中で、董さんは「私は、習近平とその独裁主義に反対です」と発言。動画は、「みなさん、私は彼の写真に墨をかけました」「彼が私をどうするかみものです」と続き、まるで習近平を挑発するような内容でした。習近平と中国共産党を批判した約2分のこの動画はTwitterで大拡散され、中国の人気メッセージアプリWeChatでも、多くシェアされました。

同じく4日の昼、中国の活動家・華涌さんが、董さんの動画をシェアし、彼女の安否を気遣うツイートをしています。以下にそのツイートを掲載します。

私自身は、このような事件があった後に、「習近平同志の写真やポスターを全て撤去せよ」という公安当局の緊急通知が出回ったので、中国共産党当局としては、董瑶琼さんのような行為が全国各地で頻発することを懸念して、このような通知を出したのではないかと思います。

ただし、実際出してみたもの、これも異常といえば異常です。それこそ、習近平の権威を貶めることにもなりかねません。だから結局引っ込めたのでしょう。その事実を中国共産党内の習近平反対派閥に利用されたのだと思います。

このようなことは、中国では珍しくはありません。たとえば、2010年あたりには、中国政府は反日デモを奨励していました。デモを起こしても、「反日デモ」であれば、「反日無罪」ともいわれたように、あまり厳しく取締りなど行いませんでした。

それどころか、その後は政府のほうが、反日を煽って多くの人々を巻き込んで大規模デモを実施させるという、いわゆる官製反日デモが繰り広げられました。

ところが、2011年から12年かけては、反日デモが起きると、いつの間にか反政府デモになったり、反日デモとして届け出されたデモが、実はそれを隠れ蓑として本当は反政府デモだったという事例も多数でたため、政府は反日デモを強力に取り締まるようになり、2013年あたりからは、全くなくなりました。

2011年の中国での大規模反日デモ

中国共産党中央委員会は2018年2月25日、国家主席の2期10年の任期を撤廃する憲法改正案を発表しました。3月5日から始まった全国人民代表大会(全人代)で憲法改正が成立し、習近平(シー・チンピン)主席は3期目以降も現職にとどまれることになりました

この動きが歴史的に重要なのは、習の終身統治が第二次大戦後の世界秩序を葬り去る可能性があるからです。市場資本主義、民主主義、個人の権利を中心とした政治制度など欧米の価値観に基づく秩序が失われかねないです。

これからは中国が世界のリーダーになると、習は明言しています。つまり、個人より国家を優先する「中国モデル」の独裁的統治が、過去75年間近く各国の統治の模範として、また国際的な枠組みをつくる上でも、重要な役割を果たしてきた欧米型民主主義に取って代わろうとしているかもしれないのです。

中国が影響力を増す一方で、アメリカはドナルド・トランプ大統領は、中国の勝手はさせじと、中国に対して貿易戦争を挑んでいます。そうして、当の中国は未だトランプ氏の本気度を測りかねているようです。

「アジア型」開発モデルについては、78年の鄧小平(トン・シアオピン)の改革開放以降、さまざまに論じられてきました。鄧の市場経済導入も、リー・クアンユーの指導下でのシンガポールの経済成長も、独裁的な統治と市場ベースの経済開発を組み合わせた、いわゆる「開発独裁」です。

政治活動の自由や個人の権利が制限されても、経済が成長していれば、人々は政府を支持し、社会の現状に満足するといわれています。特にアジア人はその傾向が顕著だとの説もあります。

開発独裁は中国古来の儒教文化とも親和性が高いです。儒教の伝統では政治は政治家の専売特許で、民が口出しすべきものではありません。政府は自分たちがつくったり、改革したりするものではなく、天候のようにただ受け入れ、耐えるものとされてきました。

結局のところ長年にわたる共産党の支配をもってしても、中国に深く根付いた儒教の伝統はなくせませんでした。実際、今の中国の政治と経済にとって、共産主義思想は人民服のように時代錯誤なものにすぎません。共産党政権ですら、儒教の伝統を統治に取り入れています。

朝服は古代中国の役人が朝廷に出仕する時の服装。冠は地位を表す
大事なもの、笏(しゃく)はメモとして必要なアイテムだった。

古代高級官僚の朝服をまとったナショナリズムは独裁体制を支える柱であり、習はかつての皇帝のように絶対的な権限を掌中にしようとしています。

毛沢東時代に個人崇拝が進み、1人の人間に権力が集中し過ぎた苦い経験から、中国は2期10年の主席任期を設けました。今それを捨て去った理由については、2つの可能性が考えられます。

1つは、習への権力集中は、習政権の弱さの裏返しだという解釈です。中国当局は厳しいメディア規制を敷いていますが、中国全土で毎年、数十万件ものデモが起きていることは隠し切れないです。人々は汚職や環境汚染、地方政府の怠慢に怒り、抗議の声を上げています。

一党独裁の中国共産党には、政府批判を建設的な声と受け止める発想がありません。そのため抗議の声が上がれば反射的にそれを圧殺しようとします。そうしながらも彼らは、自分たちの支配は見掛けよりはるかに不安定で弱いのではないかとビクビクしています。

中国の政府の政治家なるものは、民主的な選挙で選ばれたわけではなく、政権の統治の正統性に疑問が付きまとうことも、彼らの不安を駆り立てています。

習政権は「中華帝国の再興」を掲げ、ナショナリズムをあおってきましたが、その目的は国民に誇りを持たせ、愛国心を育てることだけではありません。政権の正統性をアピールし、人々の不満を抑え付ける狙いがあります。

もう1つの可能性として、2期10年ルールの変更は個人的な傲慢さの表れとも取れます。78年以降、中国は政治、経済、社会、軍事と、あらゆる面で驚異的に力を付け、人々の生活も豊かになり、国際社会でも大きな発言力を持つようになりました。

中国は対米貿易黒字で稼ぐドルを原資にした金融の量的拡大によって、経済の高度成長を達成したばかりか、軍拡路線を推進し、沖縄県尖閣諸島奪取の機をうかがい、南シナ海の岩礁を占拠、埋め立てて軍事拠点にしました。

拡大する市場に日米欧企業を引き寄せ、先端技術提供を強制しました。周辺の弱小国に輸出攻勢をかけて貿易赤字を膨らませ、返済難になると、インフラを接収するという暴挙を繰り広げました。

そうして、何よりも中国は自由貿易の前提でもある、民主化、経済と政治の分離、法治国家化を不十分なまま放置し、改善しようという気が全くありません。この中国が主席の任期のルールをなぜ変更するのでしょうか。しかも、それによって中国の制度の欠陥がなくなるわけではありません。1人の人間に永続的な権力が与えられるだけです。

習自身が強権支配を求めたのなら、これはかなり危うい状況です。共産党のほかの指導者や官僚は国家ではなく、1人の男に忠誠を誓わなければ、その地位が危うくなります。つまり、国家の命運が1人の男に託されるということです。

しかし、仮に才覚ある人間であったとしても、一人の人間が国家を丸ごと背負うのは不可能です。しかも皇帝であっても人間は皆いつか死にます。いつか来るそのとき、権力をどう継承するのでしょうか。


羅貫中の肖像画
独裁国家では常に跡目争いが支配の弱体化を招いてきました。古代ローマ帝国も、羅貫中が『三国志演義』に描いた古代中国の群雄割拠の時代もそうでした。

ソーシャルメディア上で憲法改正案への批判が噴き出すなか、中国政府は「クマのプーさん」などのキーワードを検閲対象にした。なぜプーさんを? 中国のネット民はしばしば親しみを込めて、習の「プーさん体形」をからかうからだ。

くまのプーさん(左)と習近平(右)

1800年前、中国の三国時代に武将・劉備が極寒のなか諸葛亮に会いに行くと、酒場から歌声が聞こえてきました。地位や名誉に背を向けた諸葛亮をうたう歌だ。「永遠に続く名声など、誰が望むというのか」

習近平はもとより、中国共産党幹部は、プーさんを検閲したり、するより、『三国志』を読み直すべきです。

そうして、読み直すにしても真摯に読み直さなければ、本気で中国に貿易戦争を挑むトランプ大統領により中国はかなり弱体化されてしまうことになるでしょう。

トランプ大統領としては、米国を頂点とする、第二次大戦後の世界秩序を中国に壊させることなど、絶対にさせないでしょう。

貿易戦争を挑んでも中国の態度がかわらなければ、次の段階では、本格的金融制裁に踏み切ることになるでしょう。その時、中国にはなすすべもないです。トランプ大統領は完璧に習近平の首根を抑えてしまったようです。

習は、国内では人民の憤怒のマグマの標的となり、国外でトランプ政権から徹底的に追い詰められることになります。私は、習政権は長持ちしないと思います。

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2018年7月15日日曜日

出ては消えるアベノミクス批判 「GDP改竄説」はデマの一種 改訂基準は過去の値にも適用 ―【私の論評】常識に欠けた人々には、永遠に満足する機会は訪れない(゚д゚)!

出ては消えるアベノミクス批判 「GDP改竄説」はデマの一種 改訂基準は過去の値にも適用 

高橋洋一 日本の解き方

 ネットメディアで「アベノミクスに重大な疑惑」といった記事がある。「マネタリーベース(中央銀行が供給するお金)が増えてもマネーストック(金融部門から経済全体に供給される通貨)はほとんど増えていない」「実質賃金は下がっていて生活は苦しくなっている」「アベノミクスがもたらしたのは、円安による為替差益と株価の上昇だけ」「GDP(国内総生産)はかさ上げされている」といったものだが、こうした説に妥当性はあるのか。

 約5年半前のアベノミクス開始当初にもこうした言説は多かったが、その後の実績でほとんど消えていった。特に、エコノミストらプロの世界では既に勝負がついているので、今やこうした話はまず出てこない。あるとすると、安倍晋三首相批判のためにする政治的な言説であることが多い。

金子勝氏はアベノセイダーズの急先鋒

 こうした批判では、雇用という国民生活で最も重要なことが語られない。失業率や有効求人倍率が記録的な良好水準であることの理由の分析を間違え、「実質賃金が上がっていない」という。

 金融緩和すると、まず就業者数が増え人手不足になる。その過程で物価はやや上がるが、名目賃金の上昇は追いつけない。それまで失業者であった人が就業者になる場合、名目賃金は比較的安い。こうしたことから実質賃金は上がらず逆に下がるという現象がみられる。これは効果のラグ(時間のずれ)であり、そのうちに名目賃金が物価上昇を追い抜いて上がり出す。

 「マネーストックが増えない」というのはそもそも批判にならない。筆者は当初から、マネーストックは金融機関からの貸し出しなので、当分増えないと断定していた。

 金融緩和によって実質金利が下がり、雇用とともに設備投資が高まる。しかし、過去の昭和恐慌の際にもみられたが、企業は当初は内部留保で設備投資をするので、すぐには外部資金に依存しない。過去のデータでは2、3年遅れるのが普通である。こうした批判をする人は、金融緩和のメカニズムが分かっていないと言わざるを得ない。

アベノセイダーズ五人衆

 「円安と株高だけ」との主張も左派の人に多い。実質金利が下がったことで円安と株高になるのであって、実物経済が良好であることの副産物である。

 そして、「GDPはかさ上げされている」というのはデマのたぐいだ。日本のGDP統計は、5年ごとに基準改定されている。2016年にも基準改定が行われたが、その際、09年に国連で採択された国際基準も取り込んでいる。改訂された場合、過去の値も遡及(そきゅう)適用されるので、改訂自体で統計数字が混乱するわけではない。もしこの手順が改竄(かいざん)というのなら、政府の統計委員会などに膨大な議事録が公表されているので、ぜひ指摘したらいい。

 それまでGDPに計上されていなかった研究開発費について、改訂後は「知的財産生産物」という固定資本として扱われ、その増分は設備投資になる。そこで「かさ上げ」という批判が一時出たが、過去データも遡及すればいいだけだ。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】常識に欠けた人々には、永遠に満足する機会は訪れない(゚д゚)!

経済政策が効果出すまでにはタイムラグがあるというのは、経済学上の常識です。これは、以前もこのブログに掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
高橋洋一 日本の解き方 物価目標2%は実現できる 黒田日銀の壁は消費再増税、財政出動で景気過熱が必要だ―【私の論評】次の総理はやはり安倍晋三氏しか考えられない(゚д゚)!
2期目に入った日銀の黒田東彦総裁
経済対策のタイムラグに関する部分のみを以下に引用します。
"
経済政策には以下のようラグがあります。

1)内部ラグ
経済情勢の把握から経済政策の実行迄
1-1)認知ラグ
経済現象を認知する迄
1-2)決定ラグ
政策当局が経済情勢を判断し経済政策の発動の決定を行う迄
1-3)実行ラグ
決定した政策を実行に移す迄
2)外部ラグ
 政策実行から経済に効果が生じる迄

金融政策は決定ラグ、実行ラグが財政政策に比べて短く、外部ラグが長くなります。これは、日銀の9人が金融政策決定会合(時には緊急開催もあり)で、即座に決定、実行することができます。過半数の5票を取ることが出来れば良いので、追加緩和が必要であれば、その政策提案に5人の賛成で決定・実行できます。

財政政策は、与党内の調整や国会での議論などを通じて法制化しないと実行できず、決定から実行までに時間がかかります。安倍晋三総理が消費増税延期のために(修正法案提出・可決に必須ではない)衆院解散したことを見ても、財政政策の決定から実行に時間とコストがかかることが分かります。

外部ラグですが、財政政策はどの部分にいくら、と直接的にお金を使うため効果が早く出ますが、金融政策は様々な波及経路を通じて経済に効果を及ぼすため、半年〜1,2年程度のラグがあります。


以上のようなラグがあるからこそ、金融政策と財政政策をうまく組み合わせる必要があるのです。世の中には、財政政策と金融政策を比較してどちらが良いとか悪いとか語る人もいますが、医療の分野では同じ病気を治療するにしても、患者のその時々の状況にあわせて、複数の薬を使い分けるのが普通です。金融政策と財政政策も同じようなものであり、どちらか一方というのでは、経済を速やかに立て直すことはできません。
"
経済政策のなかでも、特に雇用に密接に関連した金融政策は様々な波及経路を通じて経済に効果を及ぼすため、半年〜1,2年程度のラグがあるいうのは経済学上の常識です。

もし安倍政権がアベノセイダーズ等の批判に負けて、金融緩和政策を中途半端でやめていれば、現在のような雇用の改善はみられなかったはずです。

世の中には、アベノセイダースだけではなく、一般の人でも、マスコミのインタビューなどに応えて賃金が倍にならなければ、経済が良くなったという実感が得られないなどと応えている人もいるようですが、こんなことはいくら経済対策がうまくいったにしても、ありえないです。

どうしてもそうしたいというのなら、企業に居続けるなら、職位の階段を短期で上るしかありません。あるいは、会社をやめて消費者・生活者に支持される事業を起こすしかありません。

ハイパーインフレにならない程度の緩やかなインフレ下で経済が伸びている状況では、1年や2年では賃金があがったにしても、誤差程度にしか感じられませんが、20年〜30年たつと倍になっているという感覚です。

ただし、インフレによって物価が上がっているので、それを相殺すると1.5倍というところでしょうか。

そのようなことでは大したことはないと思われるかもしれませんが、デフレが続けばこれとは反対のことがおこるわけです。デフレでも1年や2年では誤差のような感じてあまり賃金が下がったという感覚はないでしょうが、5年、10年で絶望感が生まれてきます。

20年後には今よりは確実に賃金が上がるであろうと確信できることと、20年たっても賃金が同じが下がっているだろうと確信できることとの間には、天と地ほどの違いがあるのです。

特に若い世代にとってはそうです。20年後には現在の職位のままであっても、賃金は間違いなく上昇して1.5倍くらいにはなっているだろうし、職位がある程度あがれば、賃金が現在の倍になっている可能性は十分にあると考えられるのと、デフレで20年後にはリストラされている可能性すらあると考えるのは雲泥の差です。

若い世代は20年後の自分が今より確実に良い状況にいるであろうとかなりの確率で想像できれば、結婚も積極的にするだろうし、その後の様々なライフステージで結構な消費もするでしょう。車を購入するとか、子供部屋のある家を購入するとか、定年後のことも考慮に入れ様々ライフスタイルを模索するようになります。

しかし、デフレのさなかではそのようなこともままなりません。将来に対する絶望や、不安が支配するようになり、さしせまってとても大きな消費はできないと考えるようになります。とにかく自分の身を守ることで精一杯という状況に追い込まれます。

どちらが良いかといえば、デフレは絶対に駄目です。緩やかなインフレが良いに決まっています。

しかし、経済政策で緩やかなインフレにもっていくには、上記で述べたようにタイムラグがあります。タイムラグがあることを無視して、経済対策をはじめてすぐに効果があがらないとして、すぐに打ち切ってしまえば、元も子もなくなるのです。

こんなことは、何も経済を学ばなくても常識で考えればわかることです。たとえば、ある大企業が何らかの理由で一度業績を落としてしまえば、そこから回復するには少なくとも、3年以上はかかるでしょう。

にもかかわらず、企業が何か手を打ったからといって、打った途端に即座に回復しないのはおかしい、自分の賃金もあがらないなどと騒ぐ社員がいたら、それこそそのような社員はリストラの対象にされるかもしれません。

企業の対策も、政府の対策も、何か手を打ったからといって、すぐに効果が出て、回復などということはありえません。タイムラグの存在を認められない人は、何も成就することはできないでしょう。

「よーし勉強するぞ」と決意し、3日目で「効果が出ないからダメだ」などと思い込むのは、滑稽ですらあります。こういうのを世間では「三日坊主」といいます。

非常識なアベニクシーズのツイートの内容を打ち消す世耕大臣のツイート

いずれにしても、そもそも安倍憎しで、何でも安倍総理のせいする人々や、経済回復の兆しを感じるのは賃金がすぐに2倍にならないと感じられないなどというような人々は、常識に欠けていると言わざるをえないです。

常識に欠けた人々には、永遠に満足する機会は訪れないのは確かです。どんなに良い境遇に置かれたにしても、満足感は得られないでしょう。

安倍総理も次の総裁選では、勝ちそうですから、すぐに引退ということはないですが、いずれ引退の時期は必ずきます。総理が他の人に変わったとしても、常識に欠けた人たちは、今度は次の総理を憎んだり、相変わらず政策の効果が見えないままでいるだけ話です。こんな人たちに振り回されるべきではありません。

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ユーチューブの異変と現代版の「検閲」 背後に外国勢力の意向か…―【私の論評】我が国はスパイ防止法もない有様で、中国や北朝鮮を増長させ放題にしている(゚д゚)!

2018年7月14日土曜日

ユーチューブの異変と現代版の「検閲」 背後に外国勢力の意向か…―【私の論評】我が国はスパイ防止法もない有様で、中国や北朝鮮を増長させ放題にしている(゚д゚)!

ユーチューブの異変と現代版の「検閲」 背後に外国勢力の意向か…

ケント・ギルバート ニッポンの新常識

竹田恒泰氏

 ドナルド・トランプ米大統領が大統領予備選のときから、ツイッターを駆使して支持者を増やしたことは記憶に新しい。CNNやニューヨーク・タイムズなどの既存メディアを「フェイクニュース」と断罪し、歯に衣(きぬ)着せぬ言動で、対立候補の政策や経歴、容姿までこき下ろした。何度も物議を醸したが、そのたびに支持者は増えた。

 結局、選挙予測では常に優勢だったヒラリー・クリントン元国務長官が惨敗した。世論誘導をもくろむ既存メディアが、ネット民のメディアリテラシーに完敗した選挙だった。

 英国のEU(欧州連合)離脱の国民投票でも、SNS発信のネット情報が大きく影響した。今やツイッターやフェイスブック、ユーチューブなど、SNS発信のネット情報が社会に与える影響は計り知れない。

 ネット時代の到来で、メディアが報じない情報を入手しやすくなった。自由と民主主義を重視する人間にはうれしいが、世の中には都合の悪い情報を隠したい連中が必ずいる。ヤツらの「工作活動」はいつも卑怯(ひきょう)でしつこい。

 最近、ユーチューブに異変が起きていることを、ご存じの人も多いだろう。明治天皇の玄孫で、作家の竹田恒泰氏の公式アカウントなど、「保守系チャンネル」が相次いで利用できなくなった。約200件のアカウントが凍結され、動画は閲覧不能になっているとの情報もある。

 凍結されたチャンネルの共通点は、中華人民共和国(PRC)や韓国、北朝鮮に不都合な事実を発信していたことだ。

 私もいくつかのチャンネルは見たことがあるが、過激な差別表現を含む動画より、「日本軍の慰安婦強制連行はなかった」などの歴史的事実を伝える、普通の動画の方が多かったように思う。

 検閲とは本来、「公権力」が情報統制のために、出版物や放送、映画、郵便物などの内容を強制的に調べるものだ。

 しかし、現代版の検閲は違う。一般人を装った組織的クレーマーが、情報発信者本人とSNSサービスに大量のメールを送るなど、執拗(しつよう)な攻撃を仕掛けて屈服させているようだ。テレビ局の多くは同様の方法で20世紀にクレーマーに屈服し、今はSNSが標的になった。

 その背後に、外国勢力の意向がある可能性は高い。私はツイッターで、日本語が微妙に怪しい外国工作員らしき人間にいつも絡まれている。

 メディアが報じないPRCの内情を教えてくれる評論家、宮崎正弘氏のメルマガは、某ウイルスソフトが必ず「迷惑メール」に分類する。

 日本には憲法9条改正とともに、スパイ防止法が必要だと、経験から心底思う。

 ■ケント・ギルバート 米カリフォルニア州弁護士、タレント。1952年、米アイダホ州生まれ。71年に初来日。著書に『儒教に支配された中国人・韓国人の悲劇』(講談社+α新書)、『トランプ大統領が嗤う日本人の傾向と対策』(産経新聞出版)、『日本覚醒』(宝島社)など。

【私の論評】我が国はスパイ防止法もない有様で、中国や北朝鮮を増長させ放題にしている(゚д゚)!

私自身は、動画を見るより、文字を読んだほうが圧倒的にはやく情報を入手できるので、「保守系チャンネル」は以前はかなり見たこともあるのですが、最近はほとんど見ていません。しかし、文字を読むことが苦手とか、保守系の文章はあまり読んだことのない人には、かなり有益なツールだと思います。

竹田恒泰氏のYouTubeチャンネルの凍結されたのは、今年の5月のことでした。竹田氏は、チャンネルを通報して潰した人達に宣戦布告しました。

竹田氏は公式ツイッターで「左翼活動家たちに狙い撃ちされ、竹田恒泰チャンネルのYouTube版が閉鎖に追い込まれました」と述べ、今回の攻撃は左翼活動家だと断定しました。

その上で、今夜20時から反撃を開始すると言及し、「これは戦争です。一日も早く回復し不当な攻撃が無意味であることを示しましょう」と呼び掛けていました。以下にそのツイートを掲載します。
これを受けて竹田氏のチャンネルを通報した5ちゃんねるユーザーからは、「やんのか?」「判断したのはYouTubeなんですけど」「サブチャンネルも潰せ」「玉音放送はよ」などとコメントが相次いでいました。

竹田氏と5ちゃんねる(なんJ民&嫌儲民ら)の全面戦争になってきたと言え、ツイッター掲示板の方も大盛り上がりになっていました。

結局、竹田氏のYouTubeチャンネルは再開されました。


ご覧になりたい方は、以下のリンクから入ることができます。
https://www.youtube.com/channel/UCTxDz8sXbnpYAfulQMRFNEQ
これは、当然の措置でしょう。竹田氏のYouTubeの動画上の発言は、以前何度か視聴したことがありますが、その内容のほとんどは過激なものでもなんでもなく、事実に基づいたことを淡々と話しているという内容のものです。

ただし、その内容は普段テレビや新聞などでは報道されていないことなどが多いので、テレビなどが主な情報源の人がみると、最初は、結構ショックを覚えるかもしれません。ただし、私のように保守系の文章などを読み慣れている人間にとっては、そのようなことはなく、ごく当然のことを語っているとしか思えません。

一度チャンネルが凍結されると、再開したとしても、登録者数は凍結前のカウントではなく、ゼロからはじまるようになっているようです。現状の登録数を確認してみると、4.6万人でした。これは、凍結以前を回復したか、それ以上になっていると思います。

なぜこのようなことが起こったかといえば、ブログ冒頭のケント・ギルバート氏の記事にもあるように、一般人を装った組織的クレーマーが、情報発信者本人とSNSサービスに大量のメールを送るなど、執拗(しつよう)な攻撃を仕掛けて屈服させているのでしょう。

今回、竹田恒泰氏のアカウントはすぐに再開されたので、あまり大きな被害はなかったとは思います。そうして、なぜすぐに再開されたかといえば、竹田氏が著名人だからだと思います。

竹田氏の普段の発言など、さほど過激ではないし、多くの発言が文献を丁寧に読んだ事による情報に裏打ちされていることなど、はっきりしているので、はやく回復されたのだと思います。

著名人ではない人のアカウントの場合はすぐには回復されないことも多いようです。私自身は、自分の意見が異なる人が動画を発信していたとしても、ときには参考のために見ることもありますし、普段はあまりみないです。

朝日新聞なども、わざわざ購入してまでは読みませんが、時々朝日新聞がどのような主張をしているのかを見るため、デジタル版を時々見ることがあります。

やはり、普通の人ならその程度であり、たまたま見ていたら過激な内容であれば、YouTubeに報告することもあるかもしれません。

ちなみに、すべてのYouTubeの動画には、動画の内容をYouTubeに報告することができるようになっていて、「報告」というリンクがついています。これをクリックすると以下のような画面がポップアップして、さらに詳細を報告できるようになっています。


竹田氏のアカウントはおそらくこの報告システムを悪用して行われたのでしょう。人によって同じ動画を見ても、反応は違います。大勢の人が不快とは思わないような内容でも、不快と感じて報告する人がいるかもしれません。しかし、一般の人が個人で報告する程度では、竹田氏のアカウントを凍結に追い込むようなことはできなかったでしょう。

やはり、クレーマーの背後に、外国勢力の意向がある可能性は高いと考えられます。そうして、これから外国勢力が日本国内で好き勝手ができないように、スパイ防止法が本当は必要なのです。

国家の安全保障を脅かすスパイにほ日本に限らず、どこにでも潜んでいます。そうして日本以外の国々では、どの国も厳罰で臨んでいます。

にもかかわらず、わが国はスパイ罪すら設けていません。スパイ行為そのもので逮捕できないのは、世界で日本一国だけなのです。

自衛権は国際法(国連憲章第51条)で認められた独立国の固有の権利で、国家機密や防衛機密を守り、他国の諜報活動を防ぐのは自衛権の行使として当然の行為です。それで世界ではどの国もスパイ行為を取り締まる法整備(スパイ防止法や国家機密法、あるいは刑法など形態は様々)を行っています。それが諜報対策の基本です。

ところが、わが国にはスパイ行為を取り締まる法律そのものがありません。それで他国ではスパイ事件であっても日本ではそうならないのです。

初代内閣安全保障室長を務めた佐々淳行氏は、警視庁公安部や大阪府警警備部などで北朝鮮やソ連、中国の対日スパイ工作の防止に当たってきましたが、次のように述べています。
我々は精一杯、北朝鮮をはじめとする共産圏スパイと闘い、摘発などを日夜やってきたのです。でも、いくら北朝鮮を始めとするスパイを逮捕・起訴しても、せいぜい懲役一年、しかも執行猶予がついて、裁判終了後には堂々と大手をふって出国していくのが実体でした。なぜ、刑罰がそんなに軽いのか――。 
どこの国でも制定されているスパイ防止法がこの国には与えられていなかったからです。…もしあの時、ちゃんとしたスパイ防止法が制定されていれば、今回のような悲惨な拉致事件も起こらずにすんだのではないか。罰則を伴う法規は抑止力として効果があるからです。(『諸君』2002年12月号)
佐々氏は「他の国では死刑まである重大犯罪であるスパイ活動などを出入国管理法、外国為替管理法、旅券法、外国人登録法違反、窃盗罪、建造物(住居)進入などの刑の軽い特別法や一般刑法で取締らされ、事実上、野放し状態だった」と言います。

佐々淳行氏

世界各国では、CIA(米中央情報局)やFBI(米連邦捜査局)、SIS(英情報局秘密情報部)などの諜報機関を設けて取り締まるのが常識です。ところが、わが国にはそうした法律や諜報機関が存在しないのです。

オバマ前米国大統領は、「戦略的忍耐」で中国を増長させてしまいましたが、トランプ政権に変わってから、果敢に中国に対して貿易戦争を挑み、中国に対して民主化、政治と経済の分離、法治国家化を迫っています。

一方我が国は現在に至るもスパイ防止法もない有様で、中国や北朝鮮を増長させ放題にしているといっても過言ではありません。

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2018年7月13日金曜日

コラム:貿易戦争でも世界経済が失速しない「3つの理由」=村上尚己氏―【私の論評】米国から勝ち目のない貿易戦争を挑まれても、自業自得としかいいようがない中国(゚д゚)!

コラム:貿易戦争でも世界経済が失速しない「3つの理由」=村上尚己氏
村上尚己 アライアンス・バーンスタイン(AB) マーケット・ストラテジスト

習近平(左)とトランプ大統領(右) 写真はブログ管理人挿入 以下同じ

6月19日付の前回コラムで「市場心理はやや楽観方向に傾斜気味」と筆者は指摘したが、その後、中国などに対するトランプ米政権の関税引き上げ政策をきっかけに、世界経済の風向きが変わるとの懸念が高まっている。

政治・経済情勢への不確実性の高まりは、リスク資産の上値を抑え、米国債などへの投資を強める一因になっていると言えよう。実際、6月半ば以降、米国の長期金利は3%付近で頭打ちとなり、緩やかながらも低下。米国株市場も他国に比べれば底堅いとはいえ軟調に推移しており、ほぼ年初の水準にとどまっている。

確かに、米国などによる関税引き上げや投資制限措置は、グローバルで事業を展開する多くの企業の活動を抑制するため、個々のビジネスには大きな影響を与える可能性がある。一方で、保護主義的な通商政策の応酬が米国を中心に経済全体にどの程度ネガティブな影響をもたらすかについて見方はさまざまである。

率直に言って、トランプ政権がここまで強硬な関税引き上げ政策をとることは筆者にとって予想外であり、数カ月にわたり市場心理を圧迫する展開については、もっと慎重に見積もっておくべきだったことは認める。

7月10日には、追加で2000億ドル規模の中国からの輸入に関する関税リストが発表された。米国政府の強硬な姿勢に変化が現われるまでには、まだ時間を要するため、リスク資産は上下にぶれやすい状況が続く可能性がある。足元までの景気指標はサーベイ指標を含めて総じて堅調だが、関税引き上げへの備えで事業計画が滞るなど、製造業などのマインドが悪化するリスクもある。

<負のインパクトを相殺する要因>

経済指標の下ぶれは、当社にとってあくまでリスクシナリオだが、「貿易戦争」によって世界経済がソフトパッチ(景気の一時的足踏み)にとどまらず、米国を含めて景気後退に至るとの懸念が金融市場でさらに高まる可能性はある。

株式市場が調整した2016年前半にも米国経済の後退懸念が高まった局面があったが、今回も同様の市場心理の悪化があるかもしれない。

もっとも、現在想定されているように中国などへの関税引き上げの対象が広がり、世界経済の後退懸念が高まっても、米国経済の状況を踏まえると、実際には世界経済全体が景気失速に至るほどのショックは起きないと筆者は考えている。以下、3つの理由をあげる。

第1に、米国では減税政策などによる景気押し上げ効果が、関税引き上げによるネガティブインパクトをかなり相殺することが見込まれる。米議会予算局(CBO)の試算によれば、家計に対する減税政策だけで2019年までの2年間に年平均800億ドル、国内総生産(GDP)比0.5%相当の所得押し上げ効果がある。

すでにリストが発表された対中輸入2000億ドル規模まで関税引き上げが広がった場合は、累積的な関税負担は約435億ドルである。もちろん、これら以外にも、関税引き上げが製造業の活動を停滞させ、それが景気を押し下げる負の影響もある。ただ、米国経済全体でみれば、減税効果で家計部門の総需要が増え続けるため、潜在成長率を上回る経済成長が続く可能性が高い。

第2の理由は、政策金利サイクルと景気循環の経験則である。6月の米連邦準備理事会(FRB)による利上げで、政策金利がほぼ2%まで上昇したが、シンプルにインフレ率を控除した実質政策金利はほぼゼロだ。景気が後退局面に入る前には、多くの場合、実質政策金利が3%以上まで上昇、金融環境が景気抑制的に作用し、景気後退が訪れるのが経験則だ。

また、米国以外の中央銀行の金融政策が総じて緩和的な中で、長期金利は今年緩やかな上昇が続いているとはいえ低水準のままだ。金利サイクルと景気循環の観点からは、景気後退に至るにはまだ時間を要し、緩やかな利上げが続いても金融緩和的な状況はあまり変わらない。

<米景気後退の典型的パターンに合致せず>

第3の理由は、米国の景気後退をもたらす典型的なパターンと現状が合致していないことだ。米国が景気後退入りする前には、経済活動に何らかのブームや行き過ぎがあり、それが崩れることで需要縮小ショックが起きることが多い。

ところが、今の米国経済は失業率の低下こそ下限に近づいている可能性があるものの、景気後退をもたらすようなブームが起きている兆候はあまりみられない。例えば、米国の景気後退を招く典型的なケースは、住宅や自動車の総需要が増えて、金利上昇などでそれが大きく調整することだが、そこまでの総需要増が起きていることは確認できない。

住宅投資のGDP比率について、1940年代後半からの長期推移をみると、平均は4.6%。多くの場合、景気後退が発生する前には、この水準を超える住宅市場の盛り上がりが起きていたが、2018年初でこの比率は3.9%と、平均からかなり低い数値にとどまっている。2000年代半ばの住宅ブームの崩壊の余波がとても大きかったわけだが、住宅市場の回復は依然かなり遅れているように思われる。

同様のことは、自動車関連消費のGDP比率についても言える。家計の住宅・耐久財消費の状況から判断すれば、米国の景気後退入りはまだ遠いとみられる。

金融市場の値動きが、米国など各国の政治動向に起因する市場心理の揺らぎに支配される神経質な状況は、もう少し続くかもしれない。ただ、それがリスク資産の投資機会をもたらす可能性も十分あるのではないだろうか。

【私の論評】米国から勝ち目のない貿易戦争を挑まれても、自業自得としかいいようがない中国(゚д゚)!

ブログ冒頭の記事中の、「貿易戦争により、米国経済が落ち込み、世界経済全体が景気失速に至るほどのショックは起きないことの理由」を以下に再度まとめて簡単に掲載します。
第1に、米国では減税政策などによる景気押し上げ効果が、関税引き上げによるネガティブインパクトをかなり相殺することが見込まれる。 
第2の理由は、政策金利サイクルと景気循環の経験則である。米国では景気が後退局面に入る前には、多くの場合、実質政策金利が3%以上まで上昇、金融環境が景気抑制的に作用し、景気後退が訪れるのが経験則である。 
第3の理由は、米国の景気後退をもたらす典型的なパターンと現状が合致していないことだ。米国が景気後退入りする前には、経済活動に何らかのブームや行き過ぎがあり、それが崩れることで需要縮小ショックが起きることが多い。
米国による、中国に対する貿易戦争がさほど米国経済に悪影響を及ぼさないことは、貿易依存度からもうかがえます。

貿易依存度とは、一国の国内総生産(GDP)または国民所得に対する輸出入額の比率(輸出依存度、輸入依存度)をいいます。一般にGDPの小さい国ほど、貿易依存度は大きいです。

これは、GDPが小さい国の場合、自国市場だけで全ての産業を自給自足的に成立させることは難しく、国外市場への輸出もしくは国外供給地からの輸入に頼らざるを得ないためです。戦後の世界貿易は世界経済の伸びを上回って拡大しており、世界的に貿易依存度は高まってきているといえます。

2016年の米国の貿易依存度は、19.66%です。そうしてこの数値は、貿易依存度はGDPに対する貿易額の比率です。貿易額は貿易輸出総額と輸入総額の合計値で国際収支ベース(FOB価格ベース・所有権移転ベース)です。貿易額にサービス輸出・輸入は含めていません。

これは、米国のGDPに対する輸出+輸入の比率です。この中で、対中国の輸出・輸入ということになるとさらに比率は小さくなります。輸出がGDPに占める割合は、数%にすぎません。米国は経済の大きな国ですから、内需大国ということです。だから、もともと貿易の依存度はかなり低いのです。その中でさらに中国への依存となると微々たるものでしかありません。

ただし、米国の企業で直接貿易にかかわる企業でさらに、中国にかなり依存している企業はかなりの打撃をうけることでしょう。それと、米国の国家全体ということでは別次元の問題です。

さらに、米国は中国から様々な物品を輸入していますが、これらの物品のほとんどが、中国からしか輸入できないというものではありません。であれば、自国で生産するより、他国から輸入したほうが安い場合、他国から輸入することになるでしょう。このように考えていくと、確かに貿易戦争による米国への影響はさほどでもないといえそうです。

テレビ報道では貿易戦争が世界経済に大きな影響を与えるとしているものも多いが?

しかし、中国にとってはそうではないでしょう。

トランプ政権は中国との貿易戦争に本気です。第1弾の制裁500億ドル相当に加え、6031品目、2000億ドルにも及ぶ今回の追加制裁により、中国からの輸入額(約5055億ドル)の約半分が対象となりました。トランプ大統領はほとんど全ての中国からの輸入品に関税をかける可能性もあるとしています

11日の上海市場や深セン市場の株価指数は軒並み急落、人民元も対ドルで下落しました。

世界貿易機関(WTO)は11日、中国を対象にした貿易政策審査報告書を発表。中国政府の経済活動への介入により市場は閉鎖的な状態にあるとしたうえで、知的財産権侵害について「知財保護関連の法律に大きな変更はなく、改善が不十分」との見解を示しました。

米国の第1弾制裁に対して中国が報復措置を打ち出したことについて、USTRのライトハイザー代表は、「正当化できない」と批判する声明を発表。さらに中国による知財権侵害は「米経済を危険にさらす」と強調しています。

ライトハイザー代表

ホワイトハウスが6月に公表した報告書では、「中国国家安全部の諜報部員が国外に4万人いる」とし、「企業の部内者や企業秘密にアクセスできる者による産業スパイ」が行われていると指摘しています。

これを裏付けるような事件が発覚した。米連邦捜査局(FBI)は、米大手アップルの自動運転車の開発に関連する情報を盗んだとして元社員の男をカリフォルニア州の裁判所に訴追しました。男は母親が中国在住とみられ、自動運転車開発の中国企業に転職予定でした。退職を申し出る直前、広範囲の企業秘密のデータベースを検索し、ダウンロードしていたことが判明。今月7日、中国に向かうところを米サンノゼ空港で逮捕されましたた。


中国は対米貿易黒字で稼ぐドルを原資にした金融の量的拡大によって、経済の高度成長を達成したばかりか、軍拡路線を推進し、沖縄県尖閣諸島奪取の機をうかがい、南シナ海の岩礁を占拠、埋め立てて軍事拠点にしました。

拡大する市場に日米欧企業を引き寄せ、先端技術提供を強制しました。周辺の弱小国に輸出攻勢をかけて貿易赤字を膨らませ、返済難になると、インフラを接収するという暴挙を繰り広げました。

そうして、何よりも中国は自由貿易の前提でもある、民主化、経済と政治の分離、法治国家化を不十分なまま放置し、改善しようという気が全くありません。

このような中国が、米国から全く勝ち目のない貿易戦争を挑まれても、自業自得としかいいようがありません。身の丈知らずにも程があるといえます。

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2018年7月12日木曜日

立憲民主に“ブーメラン”直撃! 猛批判の自民懇談会と同じ日にパーティー挙行、多数のビール瓶が…―【私の論評】与野党に限らず、国民を不幸にする経済センスのない政治家は要らない(゚д゚)!

立憲民主に“ブーメラン”直撃! 猛批判の自民懇談会と同じ日にパーティー挙行、多数のビール瓶が…



 安倍晋三首相は11日、岡山県を訪れ、未曾有の被害が出た「平成30年7月豪雨」の被災地を初めて視察。立憲民主党など左派野党は、災害の危険が迫る5日夜に、安倍首相や自民党議員が衆院議員宿舎で懇談会を開いたことを猛烈に批判しているが、実は、立憲民主党の衆院議員も同日夜、枝野幸男代表や、蓮舫副代表らも出席したパーティーを開いていた。ネット上は「ブーメラン直撃」と炎上している。

 「ライフラインの早期復旧へ、スピード感をもって取り組む。全力で対応する。自治体が安心して復旧に当たれるよう、財政措置を講じる」

 安倍首相は10日、自民党広島県連所属の国会議員と官邸で面会した際、被災地支援策について、こう強調した。11日の岡山視察に続き、広島県や愛媛県も近く訪問する方向だ。

 こうしたなか、他人の批判だけは天下一品といわれる立憲民主党の蓮舫氏は10日、「赤坂自民亭」と呼ばれる5日夜の懇談会に、安倍首相や小野寺五典防衛相ら約50人が参加したことを、「責任感が欠如している。気象庁が警戒を呼び掛けていた夜だ。まさかと思った」と、国会内で記者団に語った。

 政権・与党は常に緊張感を持ち続けるべきであり、批判は当然だ。

 ただ、立憲民主党が災害への危機感を持っていたのか、疑問を感じる事実がある。何と、「赤坂自民亭」と同じ日に、同党の手塚仁雄(よしお)衆院議員(51)=比例東京=が、東京・永田町の憲政記念館で「手塚よしお政治活動25周年感謝の集い」というパーティーを開いていたのだ。

 手塚氏のブログによると、来賓者には、枝野代表や蓮舫氏のほか、長妻昭代表代行、辻元清美国対委員長、野田佳彦前首相や菅直人元首相ら、旧民主党政権をほうふつさせる面々が名を連ねていた。

 出席者がネットにアップした写真には、壇上で挨拶する枝野氏らとともに、多数のビール瓶が写っていた。

 夕刊フジは11日朝、手塚氏を電話で直撃した。

 手塚氏は、5日夜にパーティーを開いた事実を認め、「乾杯用にビールとかは出ていると思う」と話した。ただ、ネット上で疑問・批判が出ていることなどについては、「文書で対応する」として詳細な回答を避けた。

 政治評論家の伊藤達美氏は「まさにブーメランだ。災害発生後に、政府・自民党の対応を批判する野党の理屈は、結果論に過ぎない。前のめりになって、いつものブーメランが直撃する事態になっている。大災害をここぞとばかりに政権批判に利用する姿勢はどうか。ここは与野党が結束して、被災者の救出と復旧、対策などに全力を尽くすべきだ」と話している。

【私の論評】与野党に限らず、国民を不幸にする経済センスのない政治家は要らない(゚д゚)!

こうした政治利用はどちらの側からみても見苦しく、やめるべきです。被災地の当事者の方がこうした懇談会などを不快に思うならやめた方が良いかもしれませんが、被災地ではそれどころではなく必死に対応しているはずです。こうした会合などを批判するのは、政治的に利用したい第三者でしょう。

そもそも、政治家には会合はつきものである。もし会合なしの政治家がいるなら、民の声を聞かないという意味で政治家たる職務を果たしていないともいえる。

   自民党や立憲民主党も、身内の会合を政治家が喜々としてSNSで発信することもいかがなものかという批判もあるでしょうが、今やそうした時代です。

「手塚よしお政治活動25周年感謝の集い」というパーティーはSNSで公開されていた

しかも、与党でも野党でも、もし政治家が会合をしていても、政府や官僚はきちんと動いています。今回の豪雨でも、特別警戒警報は早い段階で出されていました。こうした災害では、必ずしも政治家によるトップダウンは必要ではありません。

政治家は、政府がうまく機能していない場合に重要な決断をする役目であり、官僚のように災害対応の日常業務を行うわけではありません。かつての民主党政権のように、片手の脇に大量の資料を小脇に抱えもう一方の片手に電卓をもち政治家が官僚の仕事をして、政治家としてのパフォーマンスをアピールしていたのは滑稽以外の何ものでもありませんでした。

この滑稽さは、一般企業でいえば、取締役が資料と電卓を持って、財務部や経理部の仕事をしているようなものです。まともな企業のまともな取締役ならこんな滑稽なことなど決してしないでしょう。

そんなことをしても、取締役は仕事をしたとはいいません。取締役の仕事の本質は、企業にとって意味ある決定と方向付けを行うことです。企業のエネルギーを結集することでああり。問題を浮かびあがらせることです。

政治家の仕事も本来、国の統治にかかわることに集中すべきであって、官僚の仕事をすることではありません。


民主党政権時代の政策で治水対策が遅れを取ったことは否めない

しかし、旧民主党は結局、政治主導の名の下にするべきでない官僚の仕事をしてしまい、その挙げ句の果てに、財務省の掌(てのひら)で、政治的な事業仕分けを行ったために、公共事業費は大幅なカットとなって、必要な予算を付けられず、その後の治水対策で後れをとるはめになってしまいました。

そうして、治水対策の遅れは、90年代から続く財務省(旧大蔵省)の緊縮主義の継続にあります。特に、90年代真ん中からの名目公的資本形成(政府のインフラへの投資など)が急減してしまい、2010年代に入る直前にはほぼ半減してしまいました。しかし、民主党がこれを加速したことは否めないです。


政治家に限らず、被災地以外の人は、できるだけ平常の生活を維持する方が良いです。被災地への旅行を予定していたのであれば、一時的に延期するのはやむを得ないでしょうが、時期をみて延期していた旅行も実施したほうが良いです。

被災地以外で妙な自粛ムードが広がると、経済的な「二次被害」になる可能性すらあります。それは、自然災害を超えた「人災」にもなりうるので、注意すべきです。

そうして、震災や今回の水害などのときには、中央の政治家はなるべく現場に任せて、カネの問題に特化すべきです。さらに、中央であろうと地方であろうと、政治家は官僚の仕事が上手くいかいないときに意思決定するのが役目であると心得るべきです。

あまり災害時に現場の話にまでしゃしゃりでる必要はないです。今回の水害では、当面は予備費3,500億円で対応し、次が補正予算ということになるでしょう。

さて、その補正予算が問題です。防災のためには増税ではなく、長期の国債(復興国債など)を発行してお金を集めるのが経済学のすすめる常套手段です。その方が経済的負担を将来にまたがって分散することができて望ましいからです。

また長期国債を新たに発行すれば、それを日本銀行の現状金融緩和政策によって無理なく吸収でき、むしろ経済の安定化に大きく寄与するになるはずです。そうすれば「財政危機」などの心配もありません。

しかも、現状では日銀が金融緩和で国債を市場から大量に買い取ったため、品薄状態になっています。しかも、国債金利は最低の水準です。この状況では、どう考えても国債を大量に発行して震災や、水害対策にあてるべきです。

しかしかつて東日本大震災のときに、財務省と緊縮主義の政治家たちは、「復興税」を推進しました。今回はどうなることでしょうか。

自然災害の復興は国債で賄うのが普通。古今東西、日本の復興税だけが例外!

今回も政治家たちが、「復興税」などのような増税で防災対策などをするなどの愚かな意思決定をしてしまえば、彼らは政治家の仕事を放棄したとみなされても致し方ないでしょう。

こんな馬鹿なことを決定する、経済の根本が何もわかっていない政治家ならいりません。そのような政治家は、増税によってかつてのように、デフレ・円高で国民を塗炭の苦しみに追いやることになるなどにはまったく無頓着で、財務省のいいなりだからです。

与野党に限らず、懇談会がどうのこうのなどということは本当にどうでも良いことです。旧民主党の政治家は、「コンクリートから人へ」などとして、緊縮財政を先導しました。

自民党の経済オンチの政治家の中には、「経済対策といえば公共工事」と単純に思い込んでいるものも多いと聞き及んでいます。金融政策や、減税、給付金などの他の積極財政のことは頭に思い浮かばないようです。

いずれにしても、経済オンチの政治家は国民を不幸にするだけで、全く存在価値がありません。

無論経済オンチは駄目とはいっても、何も経済を詳細にいたるまで完璧に理解していなければならないなどということはいいません。それこそ、電卓を叩いて、細かい計算をするようなことは官僚がすべきです。ただし、経済において、何が正しいのか何が間違いかを理解できるセンスだけは持っているべきです。そうして、財務官僚の嘘を見抜けるくらいのセンスはほしいです。

そうして、それはそんなに難しいことではありません。3日でもあれば、理解できるマクロ経済の基本中基本を知ることと、短期と長期で統計をみて、財務官僚のいったことと、現実の経済の乖離をみるだけのことです。それで十分に経済センスは磨かれます。

それでも疑問が生じるなら、まともなエコノミストに聴くことです。本気で、経済センスを磨くつもりがあれば、まともなエコノミストの選択眼が養えるはずです。それでも、センスが身につかないというなら、そのような政治家には政治の世界から退場していただき、経済センスを持っている政治家だけで、政治をすべきです。それで、政治家が足りなくなるというのなら、経済を理解できる新たな人を政治家にすべきです。

しかし、そうなると10年〜20年はかかってしまうかもしれません。なぜなら、与野党に限らず、政治家のほとんどは経済センスがないからです。情けないです。

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