2018年9月28日金曜日

さらなる政策柔軟化「検討の余地」、9月日銀会合の意見―【私の論評】雇用が改善されず物価が上がり続ける、雇用が悪化しつつ物価が下がらないなら政策変更すべき!現状はその必要なし(゚д゚)!

さらなる政策柔軟化「検討の余地」、9月日銀会合の意見

日本銀行

日銀は28日、9月18─19日に開催した金融政策決定会合における主な意見を公表した。好調な経済状況が維持されれば、市場への副作用を考慮し、さらなる政策柔軟化の検討を求める意見が出た。一方、現行の金融緩和を粘り強く続けるべきとの意見も根強く、委員の間での温度差もみられた。

日銀は7月の決定会合で、国債市場の流動性低下に対応するため、長期金利の一定の上振れを認めるなどの政策修正を決めた。

9月会合では、ある委員が「経済の需給バランスが維持されていれば、市場機能維持の観点から、金融政策の柔軟化を将来的に検討する余地はある」と発言。好調な経済と物価の伸び悩みが混在する複雑な情勢が続く中、局面次第では副作用対応を優先する可能性を示唆した。

一方、物価2%目標の実現が遠いことから「現在の強力な金融緩和を粘り強く続けていくことが必要」「息長く経済の好循環を支えて、『物価安定の目標』の実現に資するべく、現在の金融政策方針を継続すべき」との意見もあり、今後は効果と副作用を巡る議論の活発化も予想される。

「長期にわたって長短金利を一定水準前後に誘導するという戦略が有効なのか判然としない」として、追加緩和の必要性を主張する委員もいた。

また、7月会合の決定が金融市場に与える影響は「夏場の閑散期を挟んで2カ月ほどしか経過していないことから、引き続き注視していく必要がある」との意見が出た。

経済の不確実性では米中の貿易摩擦を挙げる声が複数あった。ある委員は「米国や中国などの通商摩擦や金融市場の変動による下振れリスクの増大が、現在もなお続いている」と警鐘を鳴らした。

【私の論評】雇用が改善されず物価が上がり続ける、雇用が悪化しつつ物価が下がらないなら政策変更すべき!現状でその必要なし(゚д゚)!

dual mandate(二重の責務)。物価と雇用の両方に中銀は責任を持つことを知っていれば、失業率が下がってインフレ率がたいして上がらないのは問題にならないならないどころか良いことであることが理解できるはずです。それなのにインフレ率が目標に達しないなどと騒ぐのは、不見識も甚だしいです。

日銀の審議員の中にも、金融が良くわかっていない人がいるということで、本当に驚いてしまいます。

FRB(米国中央銀行)の使命は物価の安定と雇用の最大化

米国の中央銀行であるFRBの使命(目的)はデュアル・マンデートと呼ばれ、物価の安定と雇用の最大化となっています。ただし、もうひとつ適度な長期金利も最後に加えられています。デュアル・マンデートがFRBの使命となったのは、1977年の連邦準備改正法の成立によるものですが、その源流には1946年の雇用法があるとされています。

2012年12月12日のFOMCで少なくとも2015年半ばまで低金利を維持するとの文面が声明文から削除され、その代わりに、米失業率が6.5%を上回り、向こう1~2年のインフレ率が2.5%以下にとどまると予想される限り、政策金利を低水準にとどめる、という数値のガイダンスに変更されました。いわゆるデュアル・マンデート(最大限の雇用と物価安定)のそれぞれに、期間を限定せずに目標が課せられたのです。

日本の中央銀行である日本銀行は、日銀法第二条に「日本銀行は、通貨及び金融の調節を行うに当たっては、物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資することをもって、その理念とする」とあります。

日銀は2013年1月の金融政策決定会合で「物価安定の目標」を消費者物価指数(除く生鮮食料品・消費増税の影響も除く)の前年比上昇率2%と定め、これをできるだけ早期に実現するとしました。これが、日本のフォワード・ガイダンスです。

フォワード・ガイダンスは、前もって将来における金融政策の方針を中央銀行が表明することです。 フォワードガイダンスは、ゼロ近くまで金利が下がり、伝統的な金融政策だけでは対処することができないと判断されるほどの景気が後退する状態や金融危機に陥った場合などに、中央銀行によって行われる非伝統的な金融政策の中のひとつです。

さらに2014年4月の会合では、2%という物価目標に対して2年程度の期間を念頭に置いて、早期に実現するとしました。ただし、日銀は雇用の安定については特に目的としていません。

日本ではインフレ目標のみが注目されがちだが、世界各国の中央銀行は雇用目標も定めているのが普通

やはり、これが問題です。米国のように、中央銀行(FRB)の使命は、物価の安定と雇用の最大化ということになっていれば、問題はなかったものと思います。米国では、金融政策というと雇用はかなり重要なファクターとみられ、市場でも雇用の統計数値などをみて、金融緩和の状況を推し量るるというこど行われています。

たとえば、近々FRBが利上げするか否かを判断するのに、雇用統計が良く用いられます。そうして、雇用が十分改善されていれば、すぐ利上げする可能性が高いと判断したり、雇用の改善が不十分だと、その可能性は低いと判断します。

これは、米国では普通のことです。日本国内でも、FRBの金融政策に関して、雇用と関連付けられて報道されているのは良く眼にするところです。

本来日本の中央銀行である、日銀も米国の中央銀行であるFRBの使命と同じく物価の安定とともに雇用の最大化もその使命とすべきなのです。

そうして、フォワード・ガイダンスにも物価目標だけではなく、雇用目標も含めるべきです。

消費者物価は消費税増税した2014年には2.0以上だったが、その後下がり低迷している

失業率は下がり続けている

日本では、そもそも雇用目標がないし、それどころから、金融緩和と雇用とは無関係であるかのような扱いです。だからこそ、現状で「金融政策の柔軟化を将来的に検討する余地はある」などという意見が出てくるのです。

二重の責務の観点から、現在の日本は雇用が改善されつつ、物価が上がらないのですから、中央銀行の責任は果たしているわけです。

これが、雇用が改善されず、物価が上がり続けるとか、雇用が悪化しつつ、物価が下がらないというような状況になれば、中央銀行は二重の責務を果たしていないことになります。このようなときに、金融政策を検討すべきであって、現状では全く変える必要がなくむしろ、今の状況(量的緩和)を継続すべきなのです。

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2018年9月27日木曜日

緩和政策「出口論」の実態は金融機関の“愚痴” 日銀が説明避けてきたツケ ―【私の論評】日銀は、金融機関のためではなく日本国民のために存在していることを再認識せよ(゚д゚)!

緩和政策「出口論」の実態は金融機関の“愚痴” 日銀が説明避けてきたツケ 

日銀黒田総裁

安倍晋三首相が自民党総裁選で、金融緩和について「ずっとやっていいとは全く思っていない」と述べたことや、黒田東彦(はるひこ)日銀総裁が「早期に物価目標を達成して正常化プロセスに入りたいのは、どこの中央銀行も同じで当然のことだ」との見解を示したことが話題となった。

 金融緩和の「副作用」を主張し、「出口」や「正常化」を強調する市場関係者やメディアは多いが、現状は出口を意識する段階なのか。

 マスコミ報道で「副作用」といっても、中身は「市場機能の低下」と「金融機関経営に及ぼす影響」という抽象的内容だ。

 「市場機能の低下」とは、金融機関の儲けがなくなると金融資本市場がうまく回らなくなって日本経済全体が落ち込む、という市場関係者の脅しにも似たものだ。「金融機関経営に及ぼす影響」も、マイナス金利下の運用金利では調達金利との利ざやがほぼなく金融機関が儲からないことを言い換えただけだ。

 日銀が常日頃、金融機関からこの金利水準では儲からないから何とかしてくれと愚痴を聞かされているので、それを「副作用」と言っているだけだ。

 もちろん、金融政策の本質は雇用政策であり、雇用の確保が最大目標だ。インフレ目標は、雇用を作るが、インフレ率が過度に高まらないようにするため設けられている。本コラムで何度も指摘したように、フィリップス曲線(インフレ率と失業率の逆相関状況)上で下限とされる失業率(NAIRU、インフレを加速しない失業率)に対応するインフレ率がインフレ目標である。

 経済学は精密科学ではないので、コンマ以下まで数値化することはなかなか困難であるが、NAIRUは2%台半ば、インフレ目標は2%程度であると本コラムに書いてきたとおりだ。

 こうした金融政策の基本フレームからみれば、「出口」が来るのは、NAIRUを達成した後、インフレ率が上がり続けるという状況である。失業率を下げずにインフレ率だけを上げ続けるような金融緩和は弊害でしかないから、当然ながら緩和から引き締め基調に転換する。

 もっとも、こうした政策転換を「正常化」というべきではない。「正常化」というのは、過去のある時点を想定して、今が「異常」と思うから出て来る表現であるが、金融政策は失業率やインフレ率を見ながら、他のマクロ政策である財政状況も併せて判断し、実行されるべきものだからだ。

 「出口」や「正常化」を強調する市場関係者やメディアは、マクロ経済政策に関する理解ができていないので、言葉だけが躍っており、とても政策議論に堪えうるものでない。

 日銀も、NAIRUについて定量的な議論をして、本コラムで述べたような金融政策基本フレームをしっかり説明しないと、市場関係者やメディアによる感情的な「出口」論に対抗できない。これまで日銀が雇用の話を避けてきたツケが出ているともいえるのではないだろうか。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】日銀は、金融機関のためではなく日本国民のために存在していることを再認識せよ(゚д゚)!

高橋洋一氏は、上の記事でフィリップス曲線について説明してます。正式名称は「マクロ政策・フィリップス曲線」です。これについての過去の高橋洋一氏説明を以下にグラフとともに掲載します。
 NAIRU(インフレを加速しない失業率)がマクロ経済政策、とりわけ金融政策において重要だと指摘してきた。一般的に、インフレ率と失業率は逆相関であり、NAIRUを達成する最小のインフレ率をインフレ目標に設定するからだ。ここから導かれる金融政策は、失業率がNAIRUに達するほど低くない場合、インフレ率もインフレ目標に達しないので金融緩和、失業率がNAIRUに達すると、その後はインフレ率がインフレ目標よりも高くなれば金融引き締めというのが基本動作である。


 そして、筆者の推計として、NAIRUを「2%台半ば」としてきた。国会の公聴会でも説明したが、経済学は精密科学でないので、小数点以下に大きな意味はないが、あえてイメージをハッキリさせるために、「2%台半ば」を2・5%ということもある。これは、2・7%かもしれないし2・3%かもしれない。2・5%程度というと数字が一人歩きするので、普通は「2%台半ば」といっている。
このグラフが頭に入っていないと、金融緩和と雇用の関係については理解しがたいと思われます。

インフレ率が数%もあがりさえすれば、他は何もせずとも一夜にして日本ならば数百万人の雇用が自動的に発生します。

これは、日本だけでなくどの国でも同じです。米国もEUも中国でも同じことです。ただし、各々の国で様々な基礎的な条件が違うので、数%あがったらどのくらいの雇用が生まれるか、定量的には同じではありませんが、とにかくインフレ率が上がると雇用が増加するということでは、どの国でも同じです。

上のグラフでいえば、場所や地域や、同じところでも時代によってNAIRUそのものの数値や、インフレ目標も異なり、グラフの傾き加減や角度、屈曲の程度が異なりますが、大体このようになります。

積極財政・金融緩和をすれば、インフレ率はあがり失業率は下がります。ただし、インフレ率だけがあがり失業率は差がない場合があります。緊縮財政・金融引締めをすればインフレ率が下がり失業率はあがります。ただし、インフレ率だけが下がって、失業率が上がらない場合もあります。

これは昔から経験則で知られていることです。 例外はありません。まともなマクロ経済のテキストにも、日本をはじめ世界中のテキストで、金融政策と雇用は関連付けられて掲載されています。

これは、米国でもそうですし、日本をはじめとした他のどの国でもこうした傾向があることは同じです。米国あたりの景気の話の場合は、金融緩和と雇用が結び付けられて報道されることが多いです。

米国のこのような報道は、ときどは日本国内でもそのまま直訳されて報道されることもあります。しかし、日本では日銀の金融緩和と雇用が関連づけられて報道されることはまずありません。

そもそも金融緩和と雇用が関連づけられていないので、金融緩和をするとどのように雇用状況が改善されていくかも知られていません。

金融緩和すると、第一段階として、少しタイムラグ(時間のずれ)があって、まず就業者数が増加します。初期段階では、それまで職のなかった人が非正規やアルバイト・パートという形で雇用増加に貢献します。

新たに就業者に加わった非正規やアルバイト・パートの賃金は、既に雇用されている人より低いため、それまでの就業者を合わせた全体の平均賃金を押し下げます。

この点だけをとらえ、就業者数が増えたことを無視して「賃金が下がっている」とあげつらい、金融緩和を否定する人もいますが、経済の波及メカニズムをまったく理解していないだけで、反論にもなっていません。

第二段階として、就業者数が増えてくると、失業率が下がり出し、もうこれ以上就業者数が増えないような完全雇用の状態に近くなります。

そこで賃金が伸び始める。特に、アルバイト・パートの時給や残業代などが上がります。そうなると、下がっていた賃金も反転し上がり出します。雇用形態も徐々に非正規やアルバイト・パートの割合が減り、正規雇用が多くなってきます。

最近は賃金の上昇傾向にある

さらに、給料がすぐ二倍にならないと景気の良さを実感できないという頭の悪い人もいるようですが、緩やかなインフレが続いている間でも、日本をはじめ多くの国々で、同じ仕事についていて、職位も変わらない場合なら給料が倍になるのは20年から30年かかります。

インフレ分を相殺して倍ということになれば、もっとかかります。たぶん30年〜40年はかかるでしょう。普通の人だと、賃金の上昇は1年〜2年では誤差くらいにしか感じられないでしょう。数十年たつと、明らかに理解できるようになるというのが普通です。しかも、これは経済発展していることを前提とした上での話です。

すぐに給料を倍にしたかったら、多少時間をかけて良いなら、努力して職位の階段をどんどん上に登るしかありません。それも嫌というなら、かなり儲かる事業を考えて起業するしかありません。

そうして、もっともどうしようもないのは、雇用が改善されて、物価目標が達成されない現状を良いことか、悪いことかも理解できないことです。

この状態は日本経済にとって決して悪いことではありません。この今の状態が100年続いたとしても、国民にとっては何も悪いことはありません。むしろ良いことです。

これが、良くないのは銀行です。その中でも特に怠惰な銀行にとっては良くないことです。特に、怠惰な銀行関係者は日銀のマイナス金利政策に対して文句を言うようです。これは筋違いです。国債や日銀当座預金を運用して儲けている金融機関がおかしいのです。当座預金など一般企業が銀行に預けても、利息などつきません。しかし、銀行が日銀に当座預金を預けると利子がついていました。

日銀のマイナス金利政策においては、すべての当座預金の金利がマイナスというわけではない


もし一般企業の当座預金に利子がつくということになれば、金を預けてばかりいて、あまり仕事をしなくなるかもしれません。まさしく、多くの怠惰な銀行もそのような状況で、本来の仕事である金貸しをあまりしなくなったのです。

そもそも銀行の社会的使命は企業などに適切な融資を行ない、社会全体の健全な経済発展を資金面からサポートすることです。ところ怠惰な銀行はリスクを極端に怖れて新規融資を避け、国債の運用や日銀への預金、投資信託販売などの手数料収入など、『本来の役割』とは違う業務で儲けてきました。

銀行業は、本来貸出ししなければ元々儲けは出ないのです。マイナス金利はそうしたぬるま湯体質の金融機関をしばくものでもあります。実際、銀行が金貸しにもっと精を出せば、お金はもっと市場に出回るようになるはずです。これに文句を言ったり、金利が高くて儲けられないという金融機関は潰れてしまえと言いたいです。潰してしまった方が日本国や日本人のためになります。

こんな怠惰な銀行を助けるために、物価目標すらまともに達成していない金融緩和を止められたらたまったものではありません。助けるべきは、怠惰な銀行ではなく日本国民です。

そうして、銀行関係者も忘れていることがあります。物価目標が達成され後には、今度は金利を上げるべき時が来るということです。そうなれば、今度はかなり銀行の本業はやりやすくなるはずです。本来、国債や日銀当座預金を運用などは銀行にとっては本命ではなく、副業のようなものであるはずです。

怠惰な銀行はそのこともあま理解していないようです。そもそも、私自身以前メガバンクの幹部と話をしていて、その人物が金融政策と雇用の関係を理解していないことに気づき、かなり驚いたことがあります。ちなみに、その幹部は増税も必要と考えていて二度びっくりしました。

このようなことですから、怠惰な銀行の多くは、目先ばかりを考えてはやくマイナス金利を終わらせて、国債や日銀当座預金を運用して儲けたいと考えているのかもしれませんが、「ちょっと待て」と言いたいです。その儲け方は、あくまでデフレの時の儲け方であると・・・・・・。

本来デフレでなければ、まともな銀行はもっと金を貸してまともに儲けられたはずだと・・・・。であれば、デフレから完全脱却するための金融緩和に対して反対するようなことはやめるべきどころか、強力にさらなる量的緩和を実施すべことを主張すべきです。さらには、増税にも大反対すべきです。

でも、やはり今の一部の怠惰な銀行は、今でも本来の使命を忘れてどこまでも国債や日銀当座預金で儲けたいと考えるようになってしまったのでしょうか。そんな考えに支配されているような銀行なら、もうおしまいです。潰れてしまえと言いたいです。

さらに、日銀に対しては、金融政策基本フレームをしっかりと銀行や市場関係者に説明したうえで、さらなる量的緩和を実施、政府に対して増税をやめるべきことも主張して、はやくデフレから完全脱却することを宣言すべきです。そうして、実行すべきです。

そうして、いつまでも国債、日銀当座預金で儲けたい銀行などは冷酷に切り捨てるべきです。そんな銀行は、本来は日銀にとっても邪魔なはずです。

こんなことを言うと、冷酷なように思われるかもしれませんが、これは普通の企業を思い浮かべていただければ、良くわかると思います。

自動車メーカーが自動車の製造などの本業はあまりやらないで、国債や日銀当座預金で儲けて本業をおろそかにしているとしたらどう考えるでしょうか。そんな自動車メーカーは潰れるほかないのです。銀行とて例外ではないです。

今までの日本は銀行にあまりにも甘すぎ、一般国民や民間企業に過剰に厳しすぎたと思います。欧米なみにしばかないと、怠惰な銀行はまともになりません。日銀は、日本や日本人のために存在するのであって、銀行のために存在しているわけではないことを強く認識していただきたいものです。

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2018年9月26日水曜日

米国に桁外れサイバー攻撃、やはり中国の犯行だった―【私の論評】サイバー反撃も辞さないトランプ政権の本気度(゚д゚)!

米国に桁外れサイバー攻撃、やはり中国の犯行だった

防御から攻撃に転じる米国の国家サイバー戦略

中国は米国政府職員の個人情報を大量に不正入手していた(写真はイメージ)

 米国政府に対する史上最大規模ともいえるサイバー攻撃は、やはり中国政府機関による工作だった――。トランプ大統領の補佐官ジョン・ボルトン氏が9月20日、公式に断言した。

 この攻撃はオバマ前政権時代の2015年に発生し、米国連邦政府関係者2200万人の個人情報が盗まれていた。当時から中国の犯行が示唆されながらも、米側ではこれまで明言を避けてきた。この新たな動きは、米国の対中姿勢の硬化の反映だともいえる。

米政府職員約2200万人の個人情報が流出

 トランプ政権は9月20日、「国家サイバー戦略」を発表した。米国の官民に外国から加えられるサイバー攻撃への対処を新たに定めた政策である。これまでの防御中心の戦略から一転して攻撃を打ち出した点が最大の特徴となっている。同戦略は、米国にサイバー攻撃を仕掛けてくる勢力として中国、ロシア、イラン、北朝鮮の国名を明確に挙げていた。

 国家安全保障担当の大統領補佐官ボルトン氏は同日、この「国家サイバー戦略」の内容を発表し、ホワイトハウスで記者会見を開いた。

ジョン・ボルトン米大統領補佐官

 ボルトン氏によると、米国政府は激増するサイバー攻撃に対して、これまで防御策しかとってこなかった。しかし、その対策はもはや時代遅れであり、今後、米国政府をサイバー攻撃してきた相手には必ず報復のサイバー攻撃をかけるという。

 ボルトン氏はその説明のなかで次のように述べた。

 「いまや多数の米国民のプライバシーが外国勢力のサイバー攻撃によって、危険にさらされている。実例として、数年前の中国による米国連邦政府の人事管理局(OPM)へのハッキングを指摘したい。連邦政府の現元職員ら数百万、数千万人もの個人情報が盗まれ、北京に保管されているのだ。そのなかには(元政府職員としての)私自身の情報も含まれている」

 ボルトン氏が言及したのは、2015年はじめから4月にかけてOPMのコンピュータシステムがサイバー攻撃を受けて、そこに保存された連邦政府職員らの個人経歴、家庭環境、社会保証番号、指紋、財政、賞罰などの個人情報が流出した事件である。被害を受けたのは合計2210万人とされ、米国政府へのサイバー攻撃の被害としては史上最大規模とされた。米国政府職員らの個人情報が流出したことで懸念されたのは、外国組織が職員たちの弱みを握り、スパイ活動の武器にすることや、米国政府職員になりすますことなどだった。

 このサイバー攻撃の犯人は当時から中国政府機関らしいとする未確認情報が流れていた。オバマ政権のジェームズ・クラッパー国家情報会議議長は、犯人が中国関連機関らしいことを示唆したが、その後、確認を求められた際に中国説を否定してしまった。この対応は、オバマ前政権が中国との友好的な関係の構築に重点を置いていたことによる。政権として中国の反発を招く言動は公開の場ではとらないという政策指針があったのだ。

 だが、トランプ政権では対中姿勢が根本から変わり、中国を名指することを躊躇しなくなったというわけだ。

 なおオバマ政権下では、中国がサイバー攻撃によるスパイ活動によって米側主要戦闘機のF35やF22、宇宙配備の新型レーザー兵器などの機密情報を違法に入手したという情報も広く流れていた。

これからは攻撃を受けたら即座に報復

 ボルトン補佐官は記者会見で「国家サイバー戦略」の基盤として、(1)国の国土と生き方と国民の安全の防御、(2)米国の経済繁栄の促進、(3)力による平和の維持、(4)米国の影響力の国際的拡大、という概念を強調した。

 ボルトン補佐官はそのうえで、トランプ政権のサイバー戦略がオバマ前政権の禁じた攻撃的な対応を含めたことについて、「米国にサイバー攻撃をかけた相手には即座に報復の反撃を加え、実害を与える。そのことによって、米国を標的とするサイバー攻撃は二度と試みないと思わせる抑止の原則が重要なのだ」と語った。

【私の論評】サイバー反撃も辞さないトランプ政権の本気度(゚д゚)!

今週出たトランプ政権の新しいサイバー戦略は、これまで検討されていた方針の寄せ集めにすぎません。

その40ページの文書で政府は、サイバーセキュリティーの向上、変化の促進、そしてコンピューターのハッキングに関する法改正の計画を述べています。選挙のセキュリティについては、ほぼ1/4ページで、“宇宙のサイバーセキュリティー”の次に短いです。

変わったのは語調です。アメリカを攻撃する人物や国に対する軍事攻勢の言及はないが、その行為に対する結果が課せられる(imposition of consequences)という、反撃を意味する遠回しな言い方が何度も使われています。

国家安全顧問John Boltonは、記者たちにこう述べています: “大統領の指示はこれまでの抑制を逆転して、実質的に、関連部門からの攻撃的なサイバー作戦を可能にするものだ”。

“われわれの手は、オバマ政権のときのように縛られていない”、とBoltonは前政権を暗に批判しました。

古い政策や原則の焼き直し以上に大きな変化は、オバマ時代の大統領指令PPD-20の破棄です。それは、政府のサイバー武装に制約を課していました。それらの機密規則は1か月前に削除された、とWall Street Journalが報じています。そのときの説明では、現政権の方針として、“攻撃の最優先”(offensive step forward)という言葉が使われました。

言い換えるとそれは、サイバー攻撃の実行者とみなされたターゲットに反撃する、より大きな権限を政府に与えます。近年、アメリカに対するサイバー攻撃が疑われているのは、中国、ロシア、北朝鮮、そしてイランです。

現実世界であれ、サイバー空間であれ、軍事的アクションの脅威を強調し、力の使用を掲げるレトリックはどれも、緊張を高めるとして批判されてきました。しかし今回は、誰もそれを嫌いません。トランプ政権の熱烈な批判者であるMark Warner上院議員ですら、新しいサイバー戦略には“重要かつ、すでに確立しているサイバーセキュリティの優先事項が含まれている”、と言っています。

北朝鮮によるWannaCryの使用や、ロシアの偽情報キャンペーンなど最近の脅威に対してオバマ政権は、対応が遅くて腰が引けている、と批判されてきました。しかし前政権の職員たちの一部は、外国のサイバー攻撃に対する積極的な対応を阻害してきたものは政策ではなく、各省庁に有効な対応を講じる能力がないことだ、と反論しています。

前政権でサイバー政策の長官だったKate Charletは、“彼らの大げさなレトリックも、それが作戦のエスカレーションを意味しているのでないかぎり、許される”、と言います。

Kate Charlet

彼女は曰く: “私が痛いほど感じるのは、各省庁レベルにたまっているフラストレーションだ。彼らは自分たちが、サイバー空間において自分たちの組織とアメリカを守るためのアクションが取れないことに、苛立っている。そのときから私が心配していたのは、振り子が逆の極端な方向へ振れることだ。そうなると粗雑な作戦のリスクが増え、鋭敏で繊細な感受性どころか、フラストレーションがさらに増すだけだろう”。

トランプの新しいサイバー戦略は、語調が変わったとはいえ、レトリックを積み重ねているだけであり、政府が一夜にして突然、好戦的になったわけではありません。より強力な反撃ができるようになったとはいえ、本来の目的である抑止力として十分機能すれば、実際に反撃をする機会もないでしょう。

しかし、この見方は楽観的にすぎるかもしれません。このような楽観的な見方をしていたからこそ、オバマ政権では中国にやりたい放題をされたのだと思います。

そもそもサイバー攻撃は、それが行われた事実を具体的かつ決定的に証明するのが難しいです。真実はどうであれ、中国は自らの関与を否定することができるのです。また、米国が公の場で中国の責任を問い詰めるためには、自国政府の機密やサイバー上の能力を露呈しなければならなくなります。その犠牲を払ってまでアメリカが中国を責めたてるとは考えられないです。

であれば、最も有効な方法は、米国から中国に対する報復のサイバー攻撃です。近いうちに、トランプ大統領から具体的に中国に対するサイバー攻撃が公表されるかもしれません。具体的に中国が何をし、それに対して米国がどのような報復をしたかを公表するかもしれません。

米政府は3月下旬に発表された中国の不正貿易慣行に関する最新報告書で、サイバー・スパイ活動を指揮したとして、人民解放軍総参謀部技術偵察部(総参謀部第3部、3PLA)部長だった劉暁北・少将に言及しました。米政府が中国軍の高官を名指したのは初めてのことでした。

米国でいうとNSAのような組織である3PLAの建物

同報告書は米通商法301条に基づいて行われた調査の結果をまとめたものです。調査では、知的財産権の侵害のほか、米企業が中国進出の条件として技術移転を迫られる状況などが対象となりました。

米政府は、劉氏が3PLAのトップとして、米企業を対象にサイバー・スパイを指示したとしました。同調査報告によると、中国国営石油・天然ガス大手の中国海洋石油集団(CNOOC)が3PLAに対して、シェールガス技術を有する米の石油天然ガス企業の情報を収集するよう要請していました。中国軍のサイバー攻撃によって、米企業の交渉計画書が盗まれ、商談ではCNOOCが有利となりました。

ほかにもCNOOCの要請を受けた3PLAは、企業の資産管理、経営陣の人事異動、シェールガス技術などの重要情報を取得するため、米石油天然ガス企業5社に対してハッキングを行ったといいます。

報告書は、中国当局は軍のスパイ活動を利用して、国営企業の国際競争力の向上に有利な商業情報を集めていると指摘しました。

中国当局は2015年末に、電子戦やサイバー戦などを管轄する中国軍「戦略支援部隊」を創設しました。翌年1月に、3PLAなどの軍部署に対して統合・再編を行い、「戦略支援部隊」下部組織の「網絡系統部(Cyber Corps)」を新たに設立しました。このサイバー部隊には、心理戦や情報戦などを展開する「311基地」も含まれています。

ワシントンタイムズによると、「網絡系統部」は北京市海淀区にあり、そこに約10万人のサイバーハッカー、語学専門家とアナリストがいます。また上海、青島、三亜(海南省)、成都と広州に支部があります

同報道では、米政府は今後、劉暁北少将に対して制裁措置を講じる可能性が高いとの見方を示しました。

米司法当局は4年前、上海に本部を置く中国軍61398部隊に所属する4人のハッカーをスパイ容疑で起訴しました。61398部隊は、3PLAの下部組織である「総参謀部技術偵察部第2局」です

ワシントンタイムズは、劉暁北氏の現職は不明だとしました。

このような中国に対して、貿易戦争や金融制裁にからめて、これらをより効果的にするため、サイバー攻撃も実施することは想像に難くないです。そのうち、中国の要人で天文学的な隠匿財産などが米国のサイバー攻撃で消されてどこにも訴えることもできず、発狂する者がでてくるかもしれません。

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2018年9月25日火曜日

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トランプ大統領の“切り札”か…中国、北朝鮮の「隠し資産」丸裸 米国、世界の“制金権”握る「無血戦争」のシナリオとは? 

国際投資アナリスト大原浩氏

 貿易で中国の習近平国家主席と、非核化で北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長と対峙(たいじ)するトランプ米大統領は、独裁国家の権力者がひれ伏す切り札を握っている-。こう指摘するのは金融市場に詳しい国際投資アナリストの大原浩氏だ。連邦捜査局(FBI)や中央情報局(CIA)の監視網を背景にした米国の「金融支配」により、独裁者の隠し資産は丸裸にされるという。「無血戦争」のシナリオとは-。

 相変わらず米中貿易戦争が話題になっているが、その議論の中で抜け落ちているのが「貿易戦争」は本当の殺し合いをする戦争の一部であるということである。

 現在、米国の徴兵制は制度そのものは存続しているが、議員の息子が徴兵され、ベトナム反戦運動が激化したこともあって停止している。

 その米国が、自国の若者の血を大量に流す戦争を長期間続行するのは、世論対策も含めて簡単ではない問題である。北朝鮮や中国などの独裁国家は、そうした事情を見透かしているフシがある。

 しかし米国は、どのような国も太刀打ちできない最新兵器に裏打ちされた強大な軍事力だけではなく、血を流さない戦争=「無血戦争」においても圧倒的な強さを持っている。

 いわゆる購買力の高い「消費者」の立場から「売り手」である中国を締め上げる「貿易戦争」もその一つだし、本当の戦争で言えば「海上封鎖」に相当するような「経済制裁」も、ボディーブローのようにじわじわ効いてくる効果的な戦略だといえる。

中国への攻勢を強めるトランプ大統領

 しかし、「無血戦争」における米国最大の武器は「金融」だ。世界の資金の流れを支配しているのは米国であり、戦争用語の「制空権」ならぬ「制金権」を米国が握っているというわけだ。

 例えば、経済制裁の一環として、北朝鮮やイランの高官の口座を凍結したというようなニュースを聞くとき、「どうやって口座を調べたのだろう」という疑問を持たないだろうか?

 このような人物が本名で海外に口座を開くとは考えにくく、当然偽名やトンネル会社などを使用する。しかし、そのような偽装をしても、FBIやCIAは、口座間の資金の流れを解析して、本当の口座の持ち主をすぐに特定できる。

 この基本技術は、筆者が執行パートナーを務めるシンクタンク「人間経済科学研究所」の有地浩・代表パートナーが30年ほど前にFBIで研修を受けたときにはすでに実用化されていた。

 その後、テロ対策、マネー・ロンダリング対策で銀行口座開設や送金の際の本人確認が非常に厳しくなったのは読者もよくご存じだと思うが、これは米国の指示によるものだ。日本だけではなく世界的な現象なのである。

 少なくとも米国の同盟国・親密国においては、どのような偽装をしても米国の監視の目からは逃れられないということである。以前スイスのプライベートバンクの匿名性が攻撃され、口座情報が丸裸にされたのも、この戦略と関係がある。

 そして、北朝鮮や中国など、米国と敵対している国々のほとんどが、汚職で蓄財した個人資産を自国に保管しておくには適さない。いつ国家が転覆するかわからないためで、米国やその同盟国・親密国の口座に保管をするしかないというわけだ。

 米国と敵対する国々の指導者の目的は、国民の幸福ではなく、個人の蓄財と権力の拡大であるから、彼らの(海外口座の)個人資産を締め上げれば簡単に米国にひれ伏す。

習近平国家主席、金正恩氏(右から)は全面降伏するのか

 孫子は「戦わずして勝つ」ことを最良の戦略としているが、まさに金融を中心とした「無血戦争」で、連勝を続けているトランプ氏は、そういう意味では歴代まれに見る策士の才能を持つ、もしくは優秀な策士のブレーンを持つ大統領なのかもしれない。

 そして、中間選挙でのトランプ氏の行く末がどうなろうと、長年準備されてきた「対中無血戦争」は、中国が全面降伏するまで延々と続くだろう。

 ■大原浩(おおはら・ひろし) 人間経済科学研究所執行パートナーで国際投資アナリスト。仏クレディ・リヨネ銀行などで金融の現場に携わる。夕刊フジで「バフェットの次を行く投資術」(木曜掲載)を連載中。

【私の論評】米対中国貿易戦争は単なる警告であり、前哨戦に過ぎない!本命は本格的な金融制裁(゚д゚)!

米国では、ドラゴンスレイヤー(対中国強硬派)ですら、中国と軍事衝突するのは現実的ではないとしています。となると、米国はこれからも、さらに貿易戦争を拡大していくことになります。実際、後もう少しで拡大できなくなる程度に拡大しています。

ただし、貿易戦争は米国にとっては、景気減速を招くこともめったにないです。米国の1930年の悪名高いスムート・ホーリー法による高い関税でさえ、大恐慌にせいぜい少し影響した程度です。中国も打撃を受けますが、それで現在の中共(中国という国という意味ではなく中国共産党という意味)が崩壊するほどのものにはならないことでしょう。


一方、国際的な金融混乱が経済への下押し圧力を強めた例には事欠かないです。大恐慌をはじめ、約10年前のリーマン・ブラザーズ破綻に至るまでそうです。

こうした危機は通常、民間セクターの暴走(リスクの高い国家や住宅購入者への過剰な融資など)を発端としています。ところが、触媒の役目を果たすのはどこかの政府の政策であることが多いです。

フランス政府による金の備蓄が大恐慌につながったたほか、米連邦準備制度理事会(FRB)のポール・ボルカー議長(当時)の徹底したインフレ抑制策が1980年代の中南米債務危機をもたらした例などがあります。

米政府はかねて、外国の危機を抑えることは米国の長期的な国益になるとみなしてきました。1982年と1995年にはメキシコに支援の手を差し伸べ、1997年にはアジア通貨危機を封じ込めるために国際通貨基金(IMF)と協力しました。2008年には住宅ローンによる金融危機の打撃を受けた国々の銀行を下支えするため、FRBが各国の中央銀行を支援しました。

米国が故意に経済的苦痛を与えるとき、それは戦略地政学的な理由によるのが普通です。そして可能な限り、同盟各国と協調して行動します。

最近では、ドル中心の銀行システムから北朝鮮とイランを締め出すことにより、両国に大きな打撃を与えています。ロシアによるウクライナ侵攻や米選挙への介入、英国在住のロシア元スパイとその娘の毒殺未遂などを受け、米欧が課した経済制裁はロシア経済に大きな混乱をもたらしています。

ここまで大きな制裁でなくても、米国は民間銀行にさえ金融制裁を課することがあります。マカオのバンコ・デルタ・アジア(匯業銀行)という銀行は、2005年9月、北朝鮮の資金洗浄に関与していることが発覚し、米国との送金契約が消滅、破綻危機に陥り国有化されました。

バンコ・デルタ・アジアのアジア本社

また、フランス最大の銀行であるBNPパリバは、2014年6月米国の制裁対象国との取引を理由に、1兆円近い制裁金支払いと為替関連取引の1年間の禁止を命じられ、大打撃を受けました。

米国にとっては、以前から金融は他国に対して制裁をするときにかなり有力でしかも手慣れたツールなのです。

超大国といわれるアメリカの一番の強さは、金融支配にあります。現在の世界の金融体制は、ブレトン・ウッズ体制に端を発します。これは、第二次世界大戦末期の1944年にアメリカのブレトン・ウッズで連合国通貨金融会議が開かれ、国際通貨基金(IMF)や国際復興開発銀行(IBRD)の設立が決定されたものです。

当時、世界の金の80%近くがアメリカに集中しており、アメリカは膨大な金保有国でした。その金と交換できるドルを基軸通貨とし、他国の通貨価値をドルと連動させるという仕組みで、金・ドル本位制ともいわれます。

その後のベトナム戦争で、アメリカは戦費調達のために膨大な国債を発行し、戦争後は巨額の財政赤字に苦しみました。そして71年、当時のリチャード・ニクソン大統領によって金とドルの兌換停止が宣言され、ブレトン・ウッズ体制は終わりを告げました。いわゆるニクソン・ショックです。しかし、その後も世界の金融市場におけるアメリカの支配体制は続いています。

今も世界の債権の約60%はドル建てであり、当たり前ですが、ドルで借りたものはドルで返さなければならないです。つまり、各国の金融機関にとって、ドルが手に入らなくなるということは破綻を意味するわけです。

ドル支配体制においてドルが手に入らなければ、石油や天然ガスなど資源取引の決済もできなくなります。国によっては、国家破綻の危機に直面することにもなりかねないです。

世界各国、特に先進国の中で、食料や資源を100%自給できている国は少ないです。そうして、中国の食料自給率は85%以下といわれており、アメリカから穀物を買えない事態になれば、13億の人民は飢餓に苦しむことになります。

だからこそ、中国はドル支配体制からの脱却を目指し、人民元の国際化を進めていました。IMFの特別引出権(SDR)の構成通貨入りも、そういった流れの中で推し進められたものだ。今年10月以降、人民元はSDRの5番目の構成通貨として採用される見込みであることが報道されたが、仮にSDR入りしても、ドル決済を禁じられてしまえば中国経済は破綻に追い込まれることになる。

資源を買うことができなければ、軍艦を出動させたり、戦闘機を離陸させることもできなくなり、これまでの「中国は今後も発展していく」という幻想は根底から覆されることになります。そして、その段階においても対立が融和しない場合、アメリカは金融制裁をさらに強めることになるでしょう。

ソ連が崩壊した直後のロシアでは、経済が低迷し哨戒機を飛ばす燃料にも事欠いた時期があった
写真はロシアの対潜哨戒機ツポレフ142M3

いわゆるバブルマネーによって、中国経済は本来の実力以上に大きく見られていますが、バブルが崩壊し、同時にアメリカが前述のような金融制裁を強めたら、どうなるでしょうか。当然、一気にこれまでの体制が瓦解し、中国は奈落の底に落ちることになります。

そうした構造をよくわかっているため、中国はアメリカのドル支配から抜け出そうとしていたわけです。アジアインフラ投資銀行(AIIB)や新開発銀行(BRICS銀行)の創設を主導し、さまざまな二国間投資を推進することによって、アメリカに頼らない体制をつくりたがっていました。

その動きを必死に妨害しているのが日米であり、同時にインドやASEAN(東南アジア諸国連合)の各国も日米に連動するかたちで自国の権益を守ろうとしています。欧州の国々も中国に対する警戒心を強めています。

そういった世界の流れをみると、貿易戦争では米中対立には決着はつかないでしょうが、次の段階では金融戦争に入り、この段階では中国に軍配が上がる可能性はきわめて低いと言わざるを得ません。

その時に中国に残されている道は2つだけです。1つ目は、知的財産権を尊重する体制を整えることです。それは、口で言うのは容易ですが、実際はそんなに簡単なことではありません。

まずは、中国は民主化、政治と経済の分離、法治国家化を実現するために、徹底した構造改革を実行しなければなりません。これが実現できなければ、知的財産権など尊重できません。しかしこれを実行すれば、中共は統治の正当性を失い崩壊することになります。

もう1つの道は、厳しい金融制裁を課せられても、そのまま今の体制を保つことです。そうなると、経済はかなり弱体化し、現在のロシアなみ(韓国と同等の東京都のGDPより若干少ない程度)になってしまうことでしょう。

そうなると、中国は他国に対する影響力を失い、図体が大きいだけのアジアの凡庸な独裁国家になり果てることになります。

これは、トランプ政権のみならず、ポストトランプでも米国議会が主導して実行され続けるでしょう。

米国の対中国貿易戦争は単なる中国に対する警告であり、前哨戦に過ぎないです。本命は本格的な金融制裁なのです。

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2018年9月24日月曜日

モルディブ大統領選で野党候補勝利、親中の現職敗れる 「中国依存」転換へ―【私の論評】モルディブでも意味不明な投資をする中国に未来はない(゚д゚)!


野党モルディブ民主党(MDP)のソリ候補

インド洋の島嶼(とうしょ)国モルディブの大統領選で、選挙管理委員会は24日、インドなどとのバランス外交を目指す野党モルディブ民主党(MDP)のソリ候補(54)が過半数を獲得したと明らかにした。親中派の現職ヤミーン大統領(59)は敗れた。アジアと中東を結ぶ海上交通路(シーレーン)の要衝、モルディブで進んだ中国依存政策が転換されることになる。

 選管によると、ソリ氏は有効投票数の58.3%を獲得した。ソリ氏は「人々は変化と平和、正義を求めた」と、勝利を宣言した。

 ヤミーン氏は2013年の就任後、中国から巨大経済圏構想「一帯一路」を通じた支援を受け、首都マレに2億ドル(約225億円)を投じた「中国モルディブ友好大橋」を建設するなどインフラ整備を次々と推進。野党幹部や最高裁判事を拘束する強権政治も展開し、国内外から反発を招いていた。

 ソリ氏は、中国に依存する外交政策の見直しや民主的な政治を訴え、支持拡大につなげた。MDPは隣国インドとの連携を重視しており、ソリ新政権は現政権で亀裂が走った対印関係の修復に乗り出す見通しだ。中国支援の事業の見直しも視野に入れるが、着工済みプロジェクトも多く、作業は難航が予想される。

 中国の海洋進出を警戒するインドは選挙結果について「民主主義の勝利」とのコメントを発表。選挙の不正を懸念していた米国も歓迎する声明を発表した。

【私の論評】モルディブでも意味不明な投資をする中国に未来はない(゚д゚)!

ブログ冒頭の記事によると「ソリ候補(54)が過半数を獲得したと明らかにした」としていますが、当選したのかそうでないのか、あるいは当確なのかなにやらはっきりしません。

ニュースサイトMihaaruによると、過半数を獲得したとは、472の投票箱のうち446を開票した段階での暫定結果で、得票率はソリ氏がヤミーン氏を16.6%上回っているそうです。

ヤミーン氏

ソリ氏は首都マレで記者団に対し「国民は変化、平和、公正を求めている。ヤミーン大統領に、国民の意思を受け止め、憲法に従い円滑な権力移行を始めるよう要請する」と述べました。

有権者が投票所で長い列を作ったため、モルディブの選挙管理委員会は投票時間を3時間延長しました。

ヤミーン氏が率いるモルディブ進歩党(PPM)の幹部はロイターに対し、同氏が高い支持を集める地域からの投票結果はまだ公表されていないと述べました。

同氏のメディア担当者はソリ氏の勝利宣言に関するコメントを控えました。

選挙管理委員会は憲法規定に従い、9月30日までに公式結果を発表するとしています。

とはいえ、よほどのことがない限り、ソリ氏の当選は間違いないようです。

米国とインドは平和的に行われた選挙を歓迎すると表明。ソリ氏率いる野党連合が勝利した可能性が高いとしています。

野党幹部によると、少なくとも5人の野党支持者が「有権者に影響を与えた」として拘束され、警察が22日夜に「違法行為を阻止」するため主要野党のオフィスを強制捜索したといいます。

欧州連合(EU)と国連の団体を含む大半の選挙監視団体は、モルディブ政府から選挙監視要請を受けたものの、選挙監視を行えば、不正投票があった場合でもヤミーン氏再選への支持に利用されかねないとして、要請を断りました。

ただ選挙を監視した団体の一つ、トランスペアレンシー・モルディブは、投票は当初円滑に行われ、ソリ氏が勝利する見通しだとし、「すべての当事者に平和的な権力移行を促す環境の維持を求める」としました。

モルディブを巡っては、従来のパートナー国であるインドと、ヤミーン氏のインフラ関連の取り組みを支援してきた中国との間で対立がみられています。西側諸国では中国の影響力拡大への懸念が広がりました。

ヤミーン氏は2月、同国初の民主選挙で選ばれたナシード元大統領ら野党関係者9人に対する有罪判決を無効とする最高裁の判断を受け入れず、非常事態宣言を発令。政治的な混乱が続いています。

モルディブの状況については、以前もこのブログに掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
「中国が土地を収奪している」 モルディブの野党指導者、対中批判強める 中国の手法は「債務のわな」―【私の論評】アジア諸国を「一帯一路」という妄想の犠牲にするな(゚д゚)!
記者会見する野党指導者のモハメド・ナシード前大統領=1月22日、スリランカのコロンボ

この記事は今年の1月のものです。詳細はこの記事をご覧いただくものとして、以下に一部を引用します。
 政治的混乱が続くインド洋の島嶼(とうしょ)国モルディブで、野党指導者が「中国によって土地が収奪されている」と批判を強めている。不透明な土地取引が行われ、投資には高額の金利が課されているとの主張だ。中国に傾斜するヤミーン大統領を批判する思惑もあるが、強引な中国の手法に警戒感を示した格好だ。 
野党指導者のナシード元大統領は、AP通信やインド英字紙タイムズ・オブ・インディアなどとのインタビューで、「中国のモルディブでのプロジェクトは土地の収奪だ」などと主張している。
政権側を批判するスローガンを叫ぶ野党の支持者たち=4日、モルディブの首都マレ
 ナシード氏によると、中国はモルディブで既に17の島々の権利を取得しているが、どれも手続きは不透明だという。中国は取得した島に約4千万ドル(約43億円)を投資すると約束しているが、ナシード氏側は「高金利であり、いずれモルディブ側は返済に窮する」と主張している。 
 野党側が念頭に置くのが、スリランカ南部ハンバントタ港の事例だ。中国の出資で港湾設備が建設されたが、スリランカは巨額の金利返済に苦しみ、最終的に昨年末に99年間の長期リースの形で中国側に明け渡すことになった。援助を受けていたはずが奪い取られた格好だ。ナシード氏は中国の手法は「債務のわなだ」と主張。憲法を改正して、外国人への土地販売を容認したヤミーン氏についても批判している。
政権側を批判するスローガンを叫ぶ野党の支持者たち=4日、モルディブの首都マレ
 最高裁の政治犯釈放命令に端を発したモルディブの混乱をめぐっては、ヤミーン氏は5日に発令した15日間の非常事態宣言をさらに30日間延長することを決定。ヤミーン氏側は、中国に特使を派遣して支持を訴えており、ここでも両国の蜜月の関係がうかがえる。一方、ナシード氏側はインドに援助を求めており、与野党の対立は深まる一方だ。

・・・・・・・〈一部略〉・・・・・・

しかし、ここの土地を収奪する中国にはそれなりの意図があります。それは、無論一帯一路と多いに関係しています。

「一帯一路」とは、(1)支那西部から中央アジアを経由してヨーロッパにつながる「シルクロード経済ベルト」(一帯)と、(2)支那沿岸部から東南アジア、インド、アラビア半島の沿岸部、アフリカ東岸を結ぶ「21世紀海上シルクロード」(一路)の二つの地域で、交通インフラ整備、貿易促進、資金の往来を促進していく構想です。夢のような構想ですが、中国は「本気」であり、具体的な目標を高速鉄道の建設に置いています。 
実際に、中国浙江省義烏と英ロンドンを結ぶ国際定期貨物列車の運行が、始まっています。支那が掲げる現代版シルクロード経済圏構想「一帯一路」の一環で、支メディアによると、両国間の直通貨物列車は初めて。支那は欧州との経済関係強化のため、中央アジアを通じた鉄道物流の充実を図っています。 
 中国は「一対一路」で「経済スーパーパワー外交」を展開するつもりのようです。中国の成長果実を周辺国にもシェアすることによって、周辺国との経済圏を構築し、善隣関係を強めることがねらいですが、同時に、過剰投資に悩む国内産業の新たな市場開拓、対外投資の拡大、約4兆ドルの外貨準備の運用多角化といった中国自身の経済的な思惑も込められています。
「一帯一路」を言い出したのは習近平・国家主席であり、彼の権力確立に伴って、この構想にも勢いをつけようとしています。私自身は、この構想は最初から失敗すると思っています。
なぜなら、世界航路や陸路などのインフラ整備はもうすでに出来上がっていて、われわれはそのインフラによってすでに貿易を行っています。そうして、このインフラは各国政府や民間機企業が、長年にわたり競争をしつつ切磋琢磨してつくりあげてきたものであり、さらに現在でも改良・改善が加えられています。 
今更中国が後から割って入って、最初から計画してつくりだすにしても、現在までにつくりあげられてきたインフラにまさるものを中国が中心になってつくりあげることはほとんど不可能だからです。 
中国としては、過去の国内のインフラ整備による経済成長が忘れることができず、その夢をもう一度海外で実現したいのでしょうが、国内において、共産党中央政府の鶴の一声で、何でも自由にできましたが、外国ではそういうわけにはいきません。
そもそも、一帯一路は、中国の余剰労働力を利用して、外貨獲得をしようというものであり、これがとてもうまくいくとは思えないです。

というのも、こういうブロジェクトはある程度国が成熟し経済成長も数%のような国が、経済成長率が十数%以上のような国に投資すると収益率がかなり高くなります。しかし、中国のように成長率の高い国が投資したとしても、収益率はかなり低くなります。

ちなみにモルディブの経済成長をみてみます。以下のグラフをご覧ください。


過去においては、26%と驚異的な成長をした年もあるようですが、最近ではそうでもないようです。2017年は4.8%、2018年は 5.0%(予測)です。

中国のGDPはあてになりませんが、一応は、2017年は6.9%、2018年は 6.56%(予測)です。中国のGDPなどの経済統計はデタラメだといわれていますが、仮にこれが本当だとすれば、中国によるモルディブ投資はかなり収益率が低いものであると言わざるを得ません。

仮に本当の中国成長率は低いとしても、モルディブが有力な投資先であるとは到底いえません。いずれにせよ、収益率は最初から相当低いと言わざるをえないです。

こういう国に、投資して中国企業に受注させ、中国人労働者を送り込んで工事をするという姑息なことをしたとしても、そもそも収益率がかなり低いので、外貨を獲得するなどということできません。

そこで、中国が考えだしたのは、当該国を一対一路で援助をしていたはずが、巨額の借金を抱えさせた上でインフラも奪うという方式です。

こうした手法は「債務のわな」と批判されています。3月にはティラーソン米国務長官(当時)も、一帯一路の参加国が、完成したインフラを中国側に譲渡する事態に対し、「主権の一部を放棄しないで済むよう(事業契約を)注意深く検討すべきだ」と呼び掛けました。

米シンクタンク「世界開発センター」は今年3月、一帯一路参加各国の債務についての調査結果を公表した。返済能力や債務の中国への依存度などについて、IMFのデータなどから検証しています。

債務にリスクがある国とされたのが、ジブチ、キルギス、ラオス、モルディブ、モンゴル、モンテネグロ、タジキスタン、パキスタンの8カ国です。


報告によると、東アフリカのジブチは対外債務が2年間でGDPの50%から85%に増加した。大半の債権を抱えるのは中国です。東南アジアのラオスでは、最大67億ドル(7327億円)に達する鉄道プロジェクトが国のGDPのほぼ半分を占め、債務返済が難しくなる可能性を指摘しました。

中央アジアのタジキスタンでは、IMFと世界銀行が債務について「リスクが高い」と評価しているが、今後もさらなるインフラ投資が行われるといいます。

調査で「最大のリスクを負っている」と指摘されたのが、パキスタンです。一帯一路関連プロジェクトである中国・パキスタン経済回廊(CPEC)に基づいて、インフラ整備が進行中で、中国から約620億ドル(6兆7800億円)の融資が見込まれています。調査は「高い金利が、パキスタンのリスクとなる」と警告しました。

さて、このような中、モルディブ大統領選で野党候補勝利し、親中の現職敗れる 「中国依存」転換されるというのは当然といえば当然です。

しかし、それにしても理解できないのは中国の挙動です。このような最初から儲からないことがわかりきっている投資をして、さらに投資先の国に債務を負わせ、最後にインフラを取り上げるなどのことをするのですが、それで何になるというのでしょう。

たとえば、「中国モルディブ友好大橋」を取り上げたとして、それが何になるというのでしょうか。考えてみてください、そもそも借金を返せないような国のインフラを取り上げて、何になります。

当然のことながら、そこからは富はほとんど生まれません。無論かなり経済成長をしている国であれば、そんなことはないでしょうが、であれば簡単に借金を返すことができるはずです。

巨大な橋を自分のものにしてしまえば、一見儲かったようにもみえますが、その橋ができたことによって、地域が繁栄すれば良いですが、そうでなければ、橋をメンテするのにかえって金がかかるだけになります。

土地でいえば、極端なことをいえば、中国のやり方はあまり高くもない土地に大枚をはたいてインフラを設置し、最終的にインフラをとりあげるというものですが、そもそもあまり高くもない土地に設置したインフラは富を生み出すのでしょうか。もちろん生み出す可能性がある場合もありますが、それは当該地域が急速に経済発展することが前提です。

もし儲かるというのであれば、他の国々も似たようなことをしているはずです。他国どこもやらないようなことを中国は「一帯一路」という美名をつけて、結局他国から富を収奪しようとしてるようですが、とても収奪できそうにもありません。

中国はまともに植民地経営をしたことがないので、その実体を知らないのかもしれません。かつての先進国による植民地経営も実体はほとんど儲かりませんでした、結局金食い虫的な存在になってしまったので、先進国は植民地を手放したのです。

余剰労働力をなんとかしようとしてるのかもしれませんが、それにしてもこんなやり方が長続きするとも思えません。そもそも、中国は自国内に豊富な内需が期待できそうな国ですし多くの先進国はそれに期待していました。

しかし当の中国はその潜在可能性を最大限に活用するでもなく、「一帯一路」で海外に投資をするという摩訶不思議なことをしています。何やら、経済合理性のみを考えても、中国のやり方は意味不明です。こういう意味不明なことをやる国には、未来はないと考えるのが当たり前でしょう。

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2018年9月23日日曜日

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【古森義久のあめりかノート】中国の「統一戦線工作」が浮き彫りに

「これまで考えられなかったことが実際に考えられる状態となりました」

最近の米国の中国への政策や態度の変化を評して日系米国人学者のトシ・ヨシハラ氏が語った。米海軍大学教授として長年、米中関係を研究してきた専門家である。そのとおりだと実感した。

写真はブログ管理人挿入 以下同じ

最近のワシントンでは官と民、保守とリベラルを問わず、中国との対決がコンセンサスとなってきた。トランプ政権の強固な立場は昨年末に出た「国家安全保障戦略」で明示された。要するに中国は米国だけでなく米国主導の国際秩序の侵食を目指すから断固、抑えねばならないという骨子である。年来の対中関与政策の逆転だった。

ワシントンではいま中国に関して「統一戦線」という用語が頻繁に語られる。中国共産党の「統一戦線工作部」という意味である。本来、共産党が主敵を倒すために第三の勢力に正体をも隠して浸透し連合組織を作ろうとする工作部門だった。

「習近平政権は米国の対中態度を変えようと統一戦線方式を取り始めました。多様な組織を使い、米国の官民に多方向から働きかけるのです」

米国政府の国務省や国家情報会議で長年、中国問題を担当してきたロバート・サター・ジョージワシントン大学教授が説明した。

ロバート・サター・ジョージワシントン大学教授

そんな統一戦線方式とも呼べる中国側の対米工作の特定部分がワシントンの半官半民のシンクタンク「ウィルソン・センター」から9月上旬に学術研究の報告書として発表された。米国全体の対中姿勢が激変したからこそ堂々と出たような内容だった。

「米国の主要大学は長年、中国政府工作員によって中国に関する教育や研究の自由を侵害され、学問の独立への深刻な脅威を受けてきた」

こんなショッキングな総括だった。1年以上をかけたという調査はコロンビア、ジョージタウン、ハーバードなど全米25の主要大学を対象としていた。アジアや中国関連の学術部門の教職員約180人からの聞き取りが主体だった。結論は以下の要旨だった。

・中国政府の意を受けた在米中国外交官や留学生は事実上の工作員として米国の各大学に圧力をかけ、教科の内容などを変えさせてきた。

・各大学での中国の人権弾圧、台湾、チベット自治区、新(しん)疆(きょう)ウイグル自治区などに関する講義や研究の内容に対してとくに圧力をかけてきた。

・その工作は抗議、威嚇、報復、懐柔など多様で、米側大学への中国との交流打ち切りや個々の学者への中国入国拒否などを武器として使う。

この報告の作成の中心となった若手の女性米国人学者、アナスタシャ・ロイドダムジャノビク氏はこうした工作の結果、米国の大学や学者が中国の反発を恐れて「自己検閲」をすることの危険をとくに強調していた。

こうした実態は実は前から知られてきた。だがそれが公式の調査報告として集大成されて発表されることが、これまでなら考えられなかったのだ。

いまの米国の対中態度の歴史的な変化の反映だといえよう。さて、わが日本でのこのあたりの実情はどうだろうか。(ワシントン駐在客員特派員)

【私の論評】米国ではトランプ大統領が中共の化けの皮を剥がしはじめた!日本もこれに続け(゚д゚)!

トランプ大統領就任後、米国は40年間続けてきた対中宥和(ゆうわ)政策を転換させました。経済が発展すれば中国は民主化するという考え方は誤りであり、逆に米国や他の自由主義諸国が中国共産党の成長に寄与する結果になったと結論付けました。そのためトランプ政権は対中強硬路線を取り、中国共産党政権に対する貿易戦争を開始しました。

米国は知的財産権や産業技術の保護にも力を注ぎ始めました。外国資本による米国企業の買収を安全保障の観点から審査する対米外国投資委員会(CFIUS)の権限を強化する法案が近日、議会を通過しましたが、中国共産党を念頭に置いているのは明らかです。

この「外国投資リスク審査現代化法(FIRRMA)」と呼ばれる法案により、米国の安全保障を脅かす可能性のある投資や買収を未然に阻止することが可能となります。

今日、アメリカは中国共産党政権が長年行なってきた統一戦線工作の手法と、それに関わる中国政府組織を暴露しています。これは中国共産党が続けてきた「硝煙のない戦争」に対する反撃であり、中国共産党の真の姿を暴く意味を持ちます。

また、トランプ政権が米国および世界各国を率いて中国共産党政権に対して反撃を開始し、貿易や統一戦線工作などの分野において「硝煙のない戦争」を始めたと言えます。


ブログ冒頭の報告書はその名称を『中国共産党の海外における統一戦線工作』と題するものであり、米国議会の「米中経済安全審査委員会(USCC)」において、8月24日に公表されたものです。

統一戦線工作は世界各国に対する「最も国家転覆的で、最も反民主主義的な浸透工作だ」と指摘しています。そのうえで、「中国共産党は統一戦線工作の範囲を海外まで広げ、外国政府や現地の華人に影響を与えることにより、北京政府に利する結果を得ようとしている」とし、「(中国共産党による統一戦線工作の)目的はアメリカ人を転向させ、アメリカ政府とアメリカ社会の利益に反対するように仕向けることだ」としています。

中国の人権問題に関心を示す他国に対し、中国共産党政権は「内政干渉」のレッテルを貼りつけました。ところがふたを開けてみれば、中国共産党政権は各種統一戦線工作を通して他国に対する内政干渉を行い、他国民を洗脳し民主主義体制と自由主義社会の転覆を目論(もくろ)んでいました。このような中国共産党政権は間違いなく世界最大にして最も陰険な脅威です。

中国共産党の統一戦線工作の特徴として「3つのD」、すなわち偽装(Disguise)・欺瞞(Deceive)・堕落(Deteriorate)が挙げられる。
1. 偽装(Disguise):中国共産党の官僚やスパイは偽装工作に長け、様々な肩書を使い分ける。こうして彼らはうまく他国に浸透し、各業界と関係を構築しパイプを作る。 
スパイ容疑で拘禁されたエドワード・チーリャン・リン米軍少佐

2. 欺瞞(Deceive):関係を構築したのち、中国共産党のスパイらは各国の政治、商業、軍隊、学術界などのキーパーソンを取り込む。名誉や利益、ハニートラップを駆使してキーパーソンを買収もしくはコントロールし、中国共産党にとって有利となるような言論を発表させる。同時に、中国共産党にとって不利となるような言論や政策を阻止させ、共産党にとって好ましくない人物を妨害する。このような工作を行うスパイらは、時には違法行為も厭(いと)わない。 
元FBIスミスは2003年四月、中国系アメリカ人の女性実業家カトリーナ・レアンに
機密資料を渡していたとしてFBIの同僚に逮捕された

3. 堕落(Deteriorate):統一戦線工作の「トロイの木馬」による浸透が奏功した後、スパイらは継続的に様々な不道徳的な手段を活用して買収工作を行い、さらに多くのインフルエンサー(影響者)を取り込む。 
取り込まれた人物らには中国共産党の利益となる言論を広げさせ、中国共産党が当該国で勢力を拡大できるような政策を制定させる。こうしてその国は政治や経済面において中国共産党にバックドアを開き、ますます堕落し、弱体化する。こうして中国共産党はその国における影響力をますます増大させ、ついには支配する目的を達成することができる。


米国の腐りきった歴史学会を語る米歴史学者ジェーソン・モーガン氏

中国共産党が相手国の立法に影響を与えることができない場合でも、世論を操作して市民社会に波風を立てることができます。例えば、中国共産党が社会の基本的価値観と乖離(かいり)した一部の者を扇動し、一般人から嫌悪される過激な手段で争いを起こすことにより、社会の分断を狙います。

または日常的に混乱や衝突を引き起こすことにより、「社会が自由すぎるのではないか」という感情を国民に植え付け、政府の権力増大を支持させます。この手法でも社会の左翼化と国家転覆の目的を果たすことが可能です。

この報告書は、中国共産党が長年アメリカの政治界と学術界に対し浸透工作を行い、アメリカのエリートが中国共産党のために声を発するように仕向けたと指摘しています。

アメリカ前政権の不作為で怠慢な態度と異なり、トランプ政権は中国共産党の「敵をもって敵を制する」作戦を暴露し、アメリカ国民に警鐘を鳴らしました。

中国共産党の脅威は東アジアや激安商品に潜んでいるのではなく、アメリカ社会の隅々まで浸透しているのです。政治界、軍隊、学術界、商業界、教育界など、中国共産党に浸透されていない部分はなく、その手段は極めて卑劣です。


米国内では日本を貶める工作も進めらている。その目的は日米を離反させること

米国では「大先生」と呼ばれた中国関連の学者や専門家が、会話の中で中国共産党統治下の中国を称賛していました。中国の将来はバラ色だと言う彼らは、書籍を出版し共産中国の素晴らしさを宣伝しました。しかし彼らは「中国と中国共産党は別物」であり、「中国国民は中国共産党員と同じではない」という基本中の基本すら理解していないようです。

後でわかったことですが、それらの「大先生」はみな中国国内で何らかの教育活動に従事し、中国政府から利益供与を受け、多くの肩書や賞をもらっていました。

事実、中国共産党の「敵をもって敵を制する」策略の目的は、徐々にアメリカ社会に浸透することであり、アメリカが中国共産党に対し警戒を解くよう仕向けるためです。同時にアメリカ内部で勢力を持つ社会主義者やリベラル派などの左翼勢力と連携し、アメリカを蝕(むしば)みます。そして米国の政権を奪い取り、最終的には完全に左傾化させ、社会主義国とすることが最終目的です。もし米国が社会主義国となれば、万事休すです。

「中国共産党の統一戦線行動は米国に対する重大な挑戦であるにもかかわらず、簡単に説明できる問題ではない。なぜなら中国共産党と中国は分割できないものだと中国共産党が頑なに主張してきたからだ。」

長年、中国共産党は「中国は中国共産党と同一の存在だ」というイメージを意図的に形作ってきましたた。そのため多くの中国人と外国人は「中国と中国共産党は別物である」ということを忘れてしまいました。そのため、中国共産党の統一戦線工作を封じ込めるための政策が、ポリティカル・コレクトの名のもとに「人種差別」「国家蔑視」と批判されてきました。

米国政府はすでにこれを警戒し始めました。今年5月、航空会社の「台湾」表記の問題について、ホワイトハウスの報道官は「中国共産党が」圧力をかけたと非難しました。

今年7月に行われた安全保障フォーラム「アスペン・セキュリティ・フォーラム(ASF)」では、中央情報局(CIA)東アジア部のマイケル・コリンズ氏が中国と中国共産党とを区別すべきだと強調しました。

そうしなければ、中国共産党を批判する言論が「反中国」「反中国人」であると誤解されるからです。「客観的に言えば、私たちは中国や中国国民、中国の発展を脅威とみなしているわけではない」とコリンズ氏は言います。「私たちが心配するのは中国共産党の向かう方向だ。中国共産党が達成しようとしている目標、および彼らが目的達成のためにますます高圧的な手段を用いていることを懸念している」

米国は度々「中国と中国共産党は別物である」と強調してきました。これはトランプ政権が、中国共産党が長年刷り込んできた誤った認識を見破ったことを意味します。中国共産党は長年「中国と中国共産党は同一の存在だ」とする嘘偽りを発信し続け、中国国民を欺き、全世界を騙しました。トランプ政権によってこの化けの皮がいま、はがされつつあります。

正確に言えば、中国共産党は西洋から来た悪霊(共産主義は元々西洋から生まれた思想)のような政権であり、中国伝統文化とは相入れない存在です。中国は中国共産党政権に寄生されたのであり、中国国民は不幸にも中国共産党政権の奴隷となってしまったのです。

米国メデイアが中国に浸透されていることを考えると、
米国メディアのトランプ報道は真に受けることはできない

メディアは中国共産党の統一戦線工作における重要な対象です。報告書によると、オーストラリアとニュージーランドのメディアに対する買収工作が最も進んでおり、オーストラリアの中国語メディアの95%近くは中国共産党政権に買収されています。

ジェームズタウン基金(The Jamestown Foundation)が2001年に行なった調査でも、アメリカでは少なくとも「星島日報」「世界日報」「明報」「僑報」などが中国共産党による直接的・間接的コントロールを受けていることが分かりましたて。

CIAのコリンズ氏もメディア買収に対し懸念を示しました。「私は彼ら(中国共産党)が選挙を操作するのではないかと懸念している。これは政治干渉である。ほかにもメディアに対する干渉、経済に対する干渉などなど。彼らが私たちの思想をも干渉するのではないかという懸念もある」

アメリカのメディアに対する中国共産党の浸透の度合いを調査した研究はまだないですが、トランプ大統領に対するアメリカ左翼メディアの猛烈な攻撃の背後には、中国共産党の姿が見え隠れています。

中国の各種不道徳な行為を暴くトランプ政権

中国共産党は長年外国に対して統一戦線工作を仕掛けてきましたが、中国共産党はこれを決して公にしてきませんでした。いま、米国政府は公式報告書で中国共産党の統一戦線工作を系統的に暴露し、その化けの皮をはがしています。同時にこれは、他国を転覆しようと画策する中国共産党の不道徳な国際戦略に対し、米国が照準を向けたことをも意味します。

過去数十年に渡り、中国共産党は不公平な貿易によって自身の経済規模を拡充してきました。また、非合法的な技術の取得による自身の先端科学産業を発展させてきました。そして非人道的な低賃金・人権無視の戦略を用いて外資企業を誘致しました。

その極みとして、不道徳的な統一戦線工作を通して外国の世論や政策を操り、もって他国の政権や民主主義社会の転覆を目論んだのです。

中国共産党の正体を暴いた同報告書はトランプ政権の大きな実績です。中国共産党の各種不道徳な行為は、トランプ政権によって次々と暴露され始めています。これからも、さらに中国の異形のおぞましい姿が次々に晒されていくと思います。

なお、この『中国共産党の海外における統一戦線工作』に書かれていことは、以前から知られていることです。多くの筋からそのような内容は、多くの人々に知られていました。その一旦は、このブログにも過去にも数多く掲載しています。

とはいいながら、このような内容が、米国議会の「米中経済安全審査委員会(USCC)」において、8月24日に『中国共産党の海外における統一戦線工作』という報告書によって正式に公表されたという事実は大きいです。

これで、中国に対して面と向かって擁護する人は少なくとも米国ではいなくなりました。そうして、これはトランプ大統領ならび米国議会が中共との対立もじさないという並々ならぬ決意を示すものです。

そうして、このような中国の統一戦線工作は無論米国にだけではなく、日本を含む他の先進国にも様々な工作をかけています。

日本も、米国のように中国の化けの皮を剥がし、白日のもとに晒すべきです。

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2018年9月22日土曜日

【日本の解き方】二度あることは三度ある!? 消費増税「スキップ」あるか 改憲とデフレ脱却の切り札に―【私の論評】安倍総理は増税を再延期を公約として参院選になだれ込む(゚д゚)!

【日本の解き方】二度あることは三度ある!? 消費増税「スキップ」あるか 改憲とデフレ脱却の切り札に

総裁選後はじめて官邸に入る安倍総理

自民党総裁選で安倍晋三首相が3選されたが、憲法改正やアベノミクスの今後など、残る首相在任期間中の課題は少なくない。

 憲法改正の手続きは、国会が改正案を示し、最終的には国民が投票で決めるが、まず衆参両院の憲法審査会に国会議員が憲法改正原案を提出するところから始まる。まだ、安倍政権はスタートにも立っていない。

 今回の総裁選を受けて、憲法改正について自民党内での意見集約が進むだろう。安倍首相は国会議員から多くの支持を受けているので、争点はいつ、憲法改正原案を自民党として国会に提出できるかである。

 仮に提出できれば、衆参両院において憲法審査会での可決、本会議において総議員の3分の2以上の可決があってから、憲法改正を国会が発議でき、国民投票にかけられる。国民投票では賛成過半数によって、ようやく憲法改正ができる。

 このように憲法改正では、衆参両院の3分の2と国民投票による過半数という普通の法律にはない高いハードルが待っている。

 安倍政権は、この憲法改正のスケジュールをどう考えているのだろうか。最短でいけば、総裁選後、自民党内で憲法改正原案をもんで来年の通常国会に提出し、衆参3分の2で国民投票案を可決して、その半年後に国民投票というスケジュールだ。来年には改元もあるので、新しい時代に新しい憲法という流れだ。自公は衆参ともに3分の2をとっているので、参院選前に国民投票案を可決しやすいという環境を生かせる。

 しかし、これは公明党がどう出てくるかが問題になる。もし「参院選前にはやめてくれ」となるとスケジュールは崩れ、来年7月の参院選で自公で3分の2を維持しなければ、憲法改正は遠のく。

 となると、来年の通常国会を諦め、参院選で再び勝利を目指していくのか。そのためには、来年10月に予定されている消費増税をぶっ飛ばすのが政治だ。

 もちろん、来年10月の増税はすでに法律があり、準備作業に入っている。財務省は、システム対応が行われているので、来年になってからの消費増税のスキップは社会混乱を招くと主張するはずだ。

 ただし、実務を考えると、来年春に増税スキップを打ち出せばギリギリ間に合うだろう。そうした公約で参院選に突入すればいい、と筆者は考えている。

 これは、アベノミクスの課題対応にもなり、一石二鳥である。というのは、消費増税スキップはデフレ完全脱却の切り札になるからだ。

 来年10月の消費増税の悪影響をなくすためには、バブル景気並みの良い環境と、かなりの規模の減税を含む財政措置が必要だが、消費増税をスキップすればそうした措置も不要で、デフレ完全脱却への近道になる。

 安倍政権は、これまで2回も消費増税をスキップした。二度あることは三度あっても不思議ではない。確かに、安倍首相は来年10月の消費増税を明言しているが、来年7月の参院選の前に「君子豹変す」となっても筆者は驚かない。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】安倍総理は増税を再延期を公約として参院選になだれ込む(゚д゚)!

来年の10月に消費税を10%にした場合、経済が相当落ち込むことは想像に難くないです。なにしろ、今度はかなり消費税が計算しやすくなります。1000円のものを購入すれば、消費税は100円です。1万円なら千円です。10万円なら1万円です。かなり計算が苦手の人でも、すぐに正確に計算できます。これは、かなり消費に悪影響を与えることになるでしょう。

10%への消費税増税が日本経済にかなり悪影響を与えることや、現状では消費税をあげる必要など全くないことはこのブログで何度も掲載してきて、いまさら再度似たようなことを掲載するのも何やら倦怠感すら覚えてしまうほどなので、それは本日はやめておきます。

その変わり目先を変えた変わった見方を掲載しようと思います。それは、産経新聞特別記者の田村秀男氏の記事です。以下にその記事のリンクを掲載します。
【田村秀男のお金は知っている】自民総裁選に物申す、「消費税増税中止」の議論を
この記事は、9月15日のものです。詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下にグラフと、一部を引用します。

グラフは10年前のリーマン・ショック前後からの家計消費動向である。リーマン後、急速に落ち込み、アベノミクス開始後に急回復したが、増税で台無しだ。最近になって持ち直す兆しが見えるが、3%の税率上げ幅分を差し引くと、消費水準は10年前を大きく下回る。 
安倍首相は来年の再増税について「自動車とか、住宅とかの耐久財の消費を喚起する、あるいは商店街等々の売り上げに悪い影響がないように、きめ細やかな対応をしていきたい」と述べたが、小手先の対応に腐心するよりも、すっぱりと中止を宣言すべきではないか。 
石破氏は「経済の7割は個人消費が支えている。個人が豊かにならなければ消費は増えない」と一見もっともらしく語るが、所得がわずかに増えたところで、消費税増税で年間8兆円以上も家計からカネを吸い上げ、内需を抑圧しておいて、どうやって賃金が上がると言うのだろうか。他方で「地方創生」を最重要目標に据えるが、飼料代が増税分だけ負担増になるのに、卵1個の出荷価格の1円上げすらままならぬ地方の養鶏家の苦境にどう応えるのか。 
消費税と自然災害は無関係とみなす向きもあるだろうが、天災はすなわち人災である。人災とは政策の無為または失敗を意味する。国土の安全は治山治水インフラ、それを維持、運営するコミュニティーと組織・機構が整備されなければならない。支えるのはカネである。 
財務官僚が政治家やメディアに浸透させてきた「財源がない」という呪文こそは、国土保全に対する危機意識をマヒさせ、インフラ投資を妨げてきた。「財政健全化」を名目にした消費税増税によって、デフレを呼び込み、税収を減らして財政収支を悪化させ、さらに投資を削減するという悪循環を招いた。「備えあれば憂い無し」という常識が失せたのだ。 
もとより、国家の政策とは、安倍首相が強調するように「政治主導」で決まる。家計簿式に単純な収支計算によって国家予算の配分を決める財務官僚にまかせる従来の方式では大規模で長期にわたる資金を動員する国土安全化計画を遂行できるはずはない。 
多発性の災害までが加わった「国難」に対処する手始めは、消費税増税の中止など緊縮財政思考の廃棄とすべきではないか。
石破氏は経済の7割は個人消費が支えていると言っていますが、これは日本のGDPに占める個人消費の割合が六十数パーセントであることを示しているのだと思います。

増税すると、個人消費が低迷して結局GDPの成長率が落ちてしまうということです。そのことをこのグラフは良く示していると思います。

このグラフ各年は、4月始まりで3月終わりとなっているのでしょう。2014年の4月から、消費税の3%分を差し引いた家計消費はどんどん下がっています、17年でも元の水準に戻っていません。これは、各家庭が増税前よりも消費を減らしているということです。

8%増税で、これだけ消費が低迷しているわけですから、10%増税などしたらとんでもないことになります。

このようなことは、安倍総理はしっかりと自覚していると思います。というより、財務省はもとより、増税推進派の官僚や政治家、マスコミなどは全く信用しておらず、根強い不信感を抱いていると思います。



現状では、安倍首相と菅官房長官が財務省に包囲されてしまい、消費増税阻止のハードルが高くなっているという説が有力のようですが、これは増税派の願望かもしれません。

しかし、それを一応事実であるとして仮定すると、財務省は国民からの文書改ざん、トップのセクハラ疑惑での辞任、パワハラ的構造などでの批判など一切影響をうけずに自分たちの思いのままに政治を攻略していることになります。

さすがの財務省もここまで強くはないと思います。私は、安倍総理は総裁選の前後は無論のこと、後になってもしばらくは増税の再延長などには意図して意識して全く触れないようにしているのではないかと思っています。

なぜなら、そうすれば、財務省や大多数の議員、マスコミ、識者らの増税賛成派に警戒心を与え、増税推進のための大キャンペーンをはられて、それこそ2013年の8%増税決定のときのようになってしまうことを恐れているのではないかと思います。

私としては、やはり憲法改正の国民投票を成功させるため、高橋洋一氏もブログ冒頭の記事で主張しているように、増税の先送りを後押しに利用すべきだと思います。最近は改憲派が増えてきたとはいっても、依然護憲派の力も大きいです。何より、マスコミが護憲派の後押しをするということが大きいです。

改憲派の人でも、いざ国民投票となって、投票するということになれば、おそらくその時にはマスコミが徹底してかつてないほどの巨大な護憲大キャンペーンをすることでしょうから、それに押されて一時的にも護憲のほうに回る人も増える可能性が大です。

そんな時に、消費税10%引き上げをすでにしてしまっていたとすれば、それに伴う駆け込み需要・反動減を抑えるための大型景気対策を実施したとしても世論の不興は避けられないです。憲法改正の国民投票で過半数の賛成票を集めるためには増税の再々延期をすべきです。

そうして、護憲派を強力につなぎとめ、デフレからの完全脱却と、改憲も成功させるのです。そうして、それは安倍総理にとっても良いことです。もし、増税をそのまま強行してしまえば、再び個人消費が今度は8%増税のときよりもさらに低迷して、日本はデフレに舞い戻ります。そうなれば安倍政権は改憲どころか、安倍おろしの嵐が吹き荒れ、政権の座から追われることにもなりかねません。

そんなことは、当の安倍総理が絶対に避けることでしょう。最近、文部科学省の戸谷一夫事務次官が汚職事件の責任を取って辞任し、前任の前川喜平氏と2代続けて事務方トップが不祥事により途中で辞める事態になっています。

辞任した文部科学省の戸谷一夫事務次官

さて、先程の述べたように、財務省は国民からの文書改ざん、トップのセクハラ疑惑での辞任、パワハラ的構造などで批判を浴びています。確かに、佐川国税庁長官が辞任したり、次官は辞任したりはしていますが、まだこれでは甘いと言わざるを得ません。

私は、来年の4月あたりに、さらなる財務省の悪事が露見して、先の文部省人事よりもさらに厳しい人事が行われ、事務次官辞任はもとより、かなりの人数が辞任などに追い込まれたりで、財務省を骨抜きにした後に安倍総理は、増税スキップを打ち出し、それを公約としてで参院選に突入するのではないかと睨んでいます。

財務省に言いたいです、「首を洗って待て」と。一国の総理を甘く見るととんでもないことになります。一国の総理をなめているということは、多くの国民をなめていることでもあります。ふざけるなと言いたいです。

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