2021年12月29日水曜日

潜水艦建造、予算巡り与野党攻防 装備品、来年引き渡しピークへ/台湾―【私の論評】台湾は潜水艦で台湾を包囲して、中国の侵攻を長期にわたって防ぐことに(゚д゚)!

潜水艦建造、予算巡り与野党攻防 装備品、来年引き渡しピークへ/台湾

台湾初の国産潜水艦(試作艦)の模型

 潜水艦の自主建造の予算を巡り、立法院(国会)で与野党が攻防を繰り広げている。予算執行の凍結を訴える野党・国民党に対し、軍は来年、装備品の引き渡しがピークを迎えると説明し理解を求めている。

 外交および国防委員会は29日、来年度の国防部(国防省)の予算を審議。国民党は進捗(しんちょく)の遅れなどから急いで予算を通す必要はないとして、30億台湾元(約125億円)の凍結を求め、民進党の立法委員(国会議員)と応酬した。

 海軍の蒋正国・参謀長は、装備品107項目の調達のめどは全て立っているとし、来年はこれらの装備品が順次、台湾に到着する重要な1年になると指摘。建造や支払いもピークを迎えるとし、予算の執行が凍結されれば、国際社会や海外企業の台湾に対する信頼に影響が出るとの見解を示した。

【私の論評】台湾は潜水艦で台湾を包囲して、中国の侵攻を長期にわたって防ぐことに(゚д゚)!

海軍司令部は先月16日、台湾で初となる国産潜水艦の主要ブロックの完成を記念した式典を南部・高雄市で開催しました。2025年の試作艦引き渡しを目指しています。

蔡英文(さいえいぶん)総統は、軍艦や軍用機などの国産化を推進しており、先月21日には自主開発、製造した新型高等練習機「勇鷹」が初飛行に成功しています。

国産潜水艦は昨年11月から建造が進められていました。式典は、船体の主要ブロックの耐圧殻とセイルの結合が完了したことを受けて行われたもので、今後耐圧試験を経て問題がなければ、潜望鏡や通信用アンテナなどの設備を設置します。

式典には海軍司令の劉志斌上将(大将)や台湾国際造船の鄭文隆董事長(会長)らが出席した。劉氏は建造チームに対し、蔡総統と国民の期待と支援に応えるために、協調性と協力の精神を保ち、計画通りに初の潜水艦建造を進めるよう激励しました。

海軍司令の劉志斌上将(大将)

台湾国防部(国防省)は4月2日夜、台湾による潜水艦の新規建造計画を欧州の複数の主要国が支援していると発表しました。建造支援が米国からだけでないことを認めるのは異例です。

米政府は2018年、この近代化計画に米メーカーが参加するのを承認。台湾が主要部品を確保するのを助ける動きと見なされていました。ただ、関与する米企業名は明らかになっていません。

欧州諸国は全般に、中国の不興を買うのを懸念して台湾への武器売却承認には後ろ向きでした。ただ、台湾は18年、英領ジブラルタルに拠点を置く企業と新潜水艦の設計について協議していることを明らかにしていました。

現在台湾で活動できる台湾の潜水艦4隻のうち、2隻はオランダが1980年代に建造したが、同国はその後、さらなる潜水艦の売却を拒んできました。

フランスもこれまでに台湾にフリゲート艦と戦闘機を売却。台湾は昨年、艦船のミサイル妨害システム最新化のため、フランスから機器購入の意向があると表明している。

台湾国際造船(CSBC)は昨年、新潜水艦8隻の建造を開始。25年に最初の引き渡しを目指すとしていました。

一方、2019年の台湾報道を引用して北朝鮮が台湾の潜水艦支援へ協議していたとの米メディア報道について、国防部は2日これを否定しました。

台湾は、新型潜水艦によって、台湾の台潜水艦攻撃能力(ASW)を強化することを目指しています。これは、ASWが劣っている中国に対して、コストパフォーマンに優れた戦略といえます。潜水艦の建造にも多額の資金が必要となりますが、大型空母ほどではありません。

昔からの諺にあるとおり、艦艇には二種類しかありません。まずは、水上に浮く空母、戦艦、強襲揚陸艦などの艦艇です。もう一つが潜水艦です。水上の艦艇はいずれミサイルや、魚雷で撃沈されます。しかし、潜水艦はそうではありません。

そのため、現代では潜水艦こそが、海戦での決定打になるのです。だから、本当の海軍力とは、潜水艦とそれをサポートする能力なのです。

そうして、潜水艦の静寂性や攻撃能力などの能力の差異が、決定的な戦力の優劣につながります。第二次世界大戦中でもそのような傾向がありましたが、当時は水中から発射できる誘導弾(ミサイル)や、誘導魚雷などはありませんでしたし、艦艇や潜水艦を発見する電子機器などが発達していなかったため、潜水艦が海戦の主役になることはありませんでした。

第二次世界大戦中のドイツの潜水艦「Uボート」

当時は、空母打撃群が花形でした。しかし、第二次世界大戦後は、対艦・対空誘導弾(ミサイル)が実用化され、誘導魚雷も開発されたため、潜水艦が海戦の主役となりました。もはや空母打撃群は、時代遅れなのです。

台湾の潜水艦の能力がどの程度になるのかは、軍事秘密ですので、表にはでてきませんが、当然のことながら、日本の最新鋭潜水艦のようにステルス性(静寂性)に優れた、中国海軍には発見するのが難しい潜水艦の建造を目指していると思います。

ASWの強化には対潜哨戒機なども欠かせません。これに関しては、台湾はすでに導入しています。

台湾ではすでに2017年12月1日に米国から購入した哨戒機P3C12機の部隊編成が完了し1日、台湾南部・屏東県の空軍基地で式典が行われた。増強が進む中国海軍の潜水艦に対応するほか、中国が人工島の造成を進める南シナ海での哨戒任務にも当たるとされました。

それまでの対潜哨戒機S2Tは艦載型で航続距離が短い上、導入は50年前の1967年で老朽化が進んでいました。P3Cは2001年の米ブッシュ(子)政権下で売却が承認されましたが、1機目の納入は2013年まで遅れました。台湾の国防部(国防省に相当)は、P3Cは約12時間の連続飛行が可能で、対潜哨戒能力が大幅に向上するとしていました。

式典では蔡英文総統が訓示し、「P3Cの全機納入で、軍の戦力はさらに強化される」と述べました。台湾では13年以降、哨戒機は海軍ではなく空軍が運用しています。

台湾の対潜哨戒機P3C

台湾が潜水艦を自主開発することにより、P3C12機の運用ともあいまって、飛躍的にASWが高まります。これは、ASWが弱い中国にとっては、頭が痛いことでしょう。

米国の専門家は、台湾が潜水艦の開発に成功すれば、今後数十年にわたって中国の侵攻を止めらるだろうと論評しています。それについては、以前このブログにも掲載したことがあります。以下にその記事のリンクを掲載します。

台湾が建造開始の潜水艦隊、中国の侵攻を数十年阻止できる可能性―【私の論評】中国の侵攻を数十年阻止できる国が台湾の直ぐ傍にある!それは我が国日本(゚д゚)!

詳細は、この記事をごらんいただくものとして、この記事では台湾が8隻の優れた潜水艦を持つことができれば、中国の侵攻を数十年阻止できる可能性を指摘しました。元記事よりも、私の記事では根拠を明確にして説明しました。

ただ、この記事では、潜水艦8隻で最終的にどのような戦略をとるのかについては説明しませんでした。以下にこれを説明しようと思います。

台湾は、常時2〜3隻の潜水艦で台湾周辺を包囲する計画なのだと思います。ASWに劣る中国海軍は、多くの艦艇をもっていたのしても、潜水艦のステル性が低いのと、対潜哨戒能力が劣るため、台湾の海域に潜水艦が潜んでいれば、台湾に兵を送ることはできません。

送ろうとすれば、台湾の潜水艦に撃沈されてしまいます。その前に、台湾近海の中国の潜水艦は、台湾の潜水艦に撃沈されることになるでしょう。

それでも、中国が台湾に無理やり兵を送り込んだにしても、今度は補給船や航空機が台湾の潜水艦に破壊されることになります。それでは、中国軍は武器・弾薬、食料・水が補給できずにお手上げになってしまいます。

私は、台湾はこのようなシナリオを描いていると思います。常時2〜3隻で台湾を包囲するためには、交替艦としして2〜3隻は必要になります。さらに、故障や訓練のなどのことも考えて予備に2隻は必要となります。だから、最低でも8隻必要なのでしょう。

このような戦略をとられると、中国は台湾に今後少なくとも数十年は手出しかできなくなるでしょう。

ただ、こうした戦略すでに、米国の攻撃型原潜が実施していると思います。米攻撃型原潜は、台湾近海にすでに潜んで中国海軍の動きに睨みを利かしていることでしょう。日本もステルス性に優れた潜水艦により情報収集などに当たっているでしょう。何しろ、潜水艦の行動などは、各国とも表に出さないのが普通です。日本も例外ではありません。

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2021年12月28日火曜日

ソロモン諸島、中国が治安支援 警察関係者受け入れ―【私の論評】一人ひとりの国民が豊かになるために、ソロモン諸島は、民主的な道を歩むべき(゚д゚)!

ソロモン諸島、中国が治安支援 警察関係者受け入れ

ソロモン諸島の海岸

 南太平洋の島嶼国ソロモン諸島は28日までに治安維持能力の向上のために中国から警察関係者の受け入れを決めた。国内ではソガバレ首相が2019年に台湾と断交し中国と国交を樹立したことなどに不満が高まり、今年11月に暴動が発生していた。今回の決定はソガバレ氏の親中姿勢が変わっていないことを裏付けており、反発の高まりが予想されている。

 ソロモン諸島政府は23日の声明で、「将来の騒乱への対応能力を強化することが急務だ」と述べ、中国から警察関係者6人の派遣を受けると発表した。警察官の訓練などを担当するという。ヘルメットや警棒など装備の提供も受ける。

 ソロモン諸島の首都ホニアラでは11月、ソガバレ氏の退陣を求める反政府デモが暴徒化し、中華街で略奪や放火が相次ぎました。

 デモ参加者の多くは、ホニアラがあるガダルカナル島と長年対立するマライタ島出身者だった。マライタ島は親台湾派住民が多く、ソガバレ氏が中国と国交を結んだことに反発が強まっている。地元マライタ州政府は中央政府の親中的な政策に反発し、中国企業の島内での活動を禁止する措置を取っている。

 また、ソガバレ政権はデモ隊を沈静化させるために近隣国オーストラリアに支援を要請し、兵士や警察官約100人の派遣を受けていた。中国がソロモン諸島の警察力向上を支援することに対し、豪州が警戒を強めそうだ。

(シンガポール支局 森浩)

【私の論評】一人ひとりの国民が豊かになるために、ソロモン諸島は、民主的な道を歩むべき(゚д゚)!

太平洋島嶼地域の戦略上の重要性は一層増大しています。恐らく中国はこうした重要性を十分認識の上、これらの国々との関係強化に努めているのでしょう。いずれ中国が南シナ海でやっているような軍事化を太平洋の中心で行うような事態になることも考えられます。

太平洋にはグアム、ホノルル、クワゼリンなど米軍の戦略的施設があり、太平洋は米国が圧倒的な存在感を確立している地域です。更に今後の宇宙戦争を有利にするためにも太平洋の空間確保や施設設置は重要と中国が考えているとしても不思議ではありません。中国による本格的な太平洋進出は、米国のインド太平洋戦略を大きく複雑化させる。

12月9~10日に開催された、米国主催の「民主主義サミット」にはフィジー、キリバス、マーシャル諸島、ミクロネシア、ナウル、パラオ、パプアニューギニア、サモア、ソロモン諸島、トンガ、ツバル、バヌアツ等の島嶼国が招請されたことが注目されました。そこに米国の国防上の強い危機感が表れているようです。


日米豪欧州などが改めて太平洋島嶼国、太平洋水域の重要性を認識、確認することが重要です。なおインド洋では米中がセイシェルに注目していると言われています。地政学の舞台は益々大陸から大洋の開かれた地域に拡大しています。

ソロモン諸島では、反政府抗議行動が暴動に転じ、4人の犠牲者が出たことを受けて、オーストラリアは治安維持を支援するため警察・兵士を派遣するに至りました。

前週、3日にわたって続いた暴動では、抗議参加者による建物への放火や店舗での略奪が見られた。目撃者は、抗議者の怒りの矛先は高失業率や住宅難といった問題に向けられていたと話しています。

だがこの暴動に先立ち、ソロモン諸島で最も人口の多いマライタ州では、ソガバレ首相の率いる現政権が2019年に台湾と断交して中国を公式に承認したことに対する住民の抗議行動がありました。

ソガバレ首相

中国との外交関係樹立という決定は、マライタ州とソロモン諸島政府との緊張を招くだけでは終わらなかったのです。人口65万人のソロモン諸島は、大国間の地政学的な対立に巻き込まれてしまったのです。

中国と台湾はここ数十年、南太平洋を巡るライバル関係にあります。この地域の島しょ国の中には、一方から他方へと関係を乗り換える動きもあり、中台双方が影響力を高めるために援助やインフラの提供を競い合っているという指摘も表面化しています。

台湾と公式の外交関係を維持している国は15カ国。台湾と断交し、中国に乗り換えた最も最近の2例が、2019年9月のソロモン諸島とキリバスです。

ところがソロモン諸島マライタ州のダニエル・スイダニ州首相は、州内から中国企業を追放し、米国からの開発援助を受け入れたのです。

スイダニ州首相は5月に治療を受けるために台北を訪問し、ソロモン諸島の中央政府および駐ホニアラ中国大使館から抗議を受ける事態となりました。

担当医師らは、スイダニ州首相には脳腫瘍の疑いがあり、外国の病院での治療を推奨していたと話しています。州首相の帰国は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の関連で数回にわたり延期されいましたが、10月にはマライタ州に戻っています。

首相のソガバレは中国寄り、マライタ州のスイダニは親台湾で両者はパーソナリティーでも競争しているという状況にあります。

ソロモン諸島の首都ホニアラの中国系住民が多い地区で起きた火災(先月25日、交流サイトの動画から)


ただ、中台問題だけが暴動の要因ではなく、そこには経済的な問題もあります。フィナンシャル・タイムズ紙のキャサリン・ヒル中華圏特派員は12月1日付けの同紙解説記事‘Economic woes, not China, are at the heart of Solomon Islands riots’において、暴動の原因は、中国問題よりも経済にあると主張しています。

豪州ローウィ研究所のジョナサン・プライクも同様の分析を述べ、地政学、経済、島嶼人種間の格差の3要因を指摘の上、「地政学が火花になったが、真の原因は外交よりも深いものだ」、「人口の3分の2を占める30歳未満の多くが経済機会を見つけられないでいる」、「地域間の経済格差が島嶼間にある人種対立に油を注ぐことになっている」と中台の競争が最大の要因ではないと述べています(11月26日付ローウィ研究所サイト)。

IMF2021年10月13日の資料によれば、ソロモン諸島の一人あたりのGDPは、2,281ドル(世界140位)、中国は10,511ドル(世界84位))、台湾は28,358ドルです。これだと、ソロモン諸島そのものが貧困であるのは確かです。この貧困が対立の根本的要因になっていることは十分に考えられます。

中国は、国全体では、GDPは世界第二といわれていますが、個人ベースではこの程度です。そのため、以前このブログで中東欧諸国と中国の関係に関して述べたように、中国が、他国の国民を豊かにするノウハウがあるかといえば、はっきり言えば皆無なのです。

そもそも、中国が「一帯一路」で投資するのを中東欧諸国が歓迎していたのは、多くの国民がそれにより豊かになることを望んでいたからでしょう。

一方中国には、そのようなノウハウは最初からなく、共産党幹部とそれに追随する一部の富裕層だけが儲かるノウハウを持っているだけです。中共はそれで自分たちが成功してきたので、中東欧の幹部たちもそれを提供してやれば、良いと考えたのでしょうが、それがそもそも大誤算です。中東欧諸国が失望するのも、最初から時間の問題だったと思います。

ただ、中国は独裁者やそれに追随する一部の富裕層が儲けるノウハウを持っているのは確かであり、ソロモン諸島の為政者が、独裁者となり自分とこれに追随する富裕層が大儲けするという道を選ぶ可能性はあります。

ただ、一人ひとりの国民が豊かになる道を選びたいなら、やはり民主的な国家を目指すべきです。その場合は、急速に民主化をすすめた台湾が参考になります。このブログにも何回か掲載したように、先進国が豊かになったのは、民主化をすすめたからです。民主化をすすめなかった国は、たとえ経済発展しても、10000万ドル前後あたりで頭打ちになります。これは、中進国の罠と呼ばれています。

結局のところ、為政者の考え一つで大きく変わりますが、忘れてはならないのは、ソロモン諸島では大陸中国で行われていない選挙制度があり、有権者が将来を決めることができるということです。

米国や日本、台湾、それに太平洋に領土を持つフランスやイギリスなど、当然のことながら、ソロモン諸島が中国の覇権の及ぶところにはなってもらいたくないでしょうから、やはりソロモン諸島の住民に対して啓蒙活動や、一人ひとりの住民が豊かになり、自らの力で持続的に繁栄できるように支援をすべきでしょう。そのための、ノウハウなら中国にはありませんが、先進国ならあります。

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2021年12月27日月曜日

ロシア軍、1万人以上撤収 南部のウクライナ国境―【私の論評】一人あたりGDPで韓国を大幅に下回り、兵站を鉄道に頼る現ロシアがウクライナを屈服させ、従わせるのは至難の業(゚д゚)!

ロシア軍、1万人以上撤収 南部のウクライナ国境


 インタファクス通信は26日までに、ロシアの南部軍管区に属する1万人以上の部隊がクリミア半島などでの展開を終えて駐留する基地に撤収を始めたと伝えた。

  南部軍管区はウクライナに近いロシア南部の各州を管轄。欧米は衛星写真などを基に、ロシアがウクライナ国境付近に約9万人の部隊を集結させ、年明けにもウクライナに侵攻する可能性があると主張してきた。今回の撤収が欧米とロシアの間の軍事的緊張の緩和につながるかは不明。

  同軍管区は25日、インタファクスに対し、計1万人を超す部隊が1カ月の訓練を終えて撤収中だと明らかにした。

【私の論評】一人あたりGDPで韓国を大幅に下回り、兵站を鉄道に頼る現ロシアがウクライナを屈服させ、従わせるのは至難の業(゚д゚)!

このブログでは、以前ロシアがウクライナに侵攻するにしても、最大でいくつかの州であろうことを予測したことがあります。その根拠として、現状のロシアのGDPは韓国以下であり、しかも韓国よりも一人あたりではさらに低いので、とても大規模な戦争を遂行できるだけの力はありません。

ロシアは面積こそ世界一ですが、人口は約1億4000万で日本をわずかに上回る程度。経済規模は日本の3分の1以下、米国の10分の1以下で、世界で12位。G7各国はもちろん、韓国をも下回るのです。

一人あたりのGDPでは、韓国31,638ドル、ロシアは10,115ドルです。ちなみに日本は40,089ドルです。(2020年)

そうして、ロシア陸軍の兵站は、鉄道にかなり依存しているので、国境付近ではある程度のパフォーマンスを発揮できるものの、ウクライナの奥にまで侵攻はできないということも根拠にあげました。

これらを考慮すれば、ロシアがウクライナに深くまで侵攻して、ウクライナ全土を傘下におさめることなどできません。

現状でも、ロシアがウクライナに再度侵攻するにしても、できるのはせいぜいいくつかの州だけであり、それも軍事力だけで攻め落とすのは不可能であり、ウクライナでも、ロシア人が多く住む州で、ロシア人を味方につけてハイブリッド戦に持ちこみ、それでようやっといくつかのロシア人の多い州を併合できるということになると予測しました。

7日、ウクライナ東部ドネツク州で、親ロシア派武装勢力との境界線付近を歩くウクライナ軍兵士

そうして、この予測は現在だけではなく、将来にもあてはまります。ロシアの経済が今後すぐに上向くことはないでしょうし、さらに兵站の大きな部分を鉄道に頼っている状況が変わらいなかぎり、この状況は変わりません。

この状況は、当然のことながら、米国やNATO諸国に見透かされているでしょう。米国、NATOは環視衛星などで、ロシアの鉄道輸送を監視しており、南部のウクライナ国境の南部軍管区がどの程度の戦争ができるのか、詳細まで熟知していることでしょう。

このようなことを言うと、ロシアの軍事技術が高いし、核兵器があるから、ウクライナに簡単に侵攻できる、などと言う人いるかもしれません。

確かに、ロシアは軍事技術は未だに高く、核兵器も有しており、軍事的に侮れるような国ではありません。ただ、ロシアがウクライナに侵攻するのは、ウクライナを破壊するためではありません。破壊するだけなら、ロシアは存分に力を発揮できるでしょう。

ただし、ロシアにとっては、ウクライナの一部でも、占拠し、さらに統治する必要があるのです。そうなると話が違ってきます。長期にわたって、軍隊を駐留させる必要があります。そのためには、兵站は欠かせません。兵站に不安があるようでは、占拠し統治するのは不可能です。

ロシアの兵站の特徴については、「のりものニュース」に興味深い記事が掲載されていました。そのタイトルとリンクを以下に掲載します。

その差は鉄道の線路幅にあり? ウクライナとポーランド ロシアの脅威度が段違いなワケ

燃料が無くては、戦車は動けない。タンクローリーから給油されるT-72戦車。タンクローリーも鉄道で前線まで移動してくることが多い(画像:ロシア国防省)。

 この記事では、ウクライナとポーランドとでは、ロシアの脅威度が段違いであり、その根拠はウクライナはロシアと同じ広軌の線路を用いて、ポーランドはそうではないからとしていますが、確かに、平時ではそうかもしれませんが、戦時ではこれがウクライナにとって格段に不利だとはいえないでしょう。

ウクライナ軍は、国境内にロシア軍が入れば、自ら線路を破壊するでしょう。線路など、手榴弾でも破壊できます。

さらに、米軍やNATO軍は、先にもあげたように、ロシアの鉄道やウクライナの鉄道を監視していますから、ロシア軍がウクライナ侵攻をはじめれば、当然ウクライナの鉄道などを航空機かミサイルで破壊することでしょう。そうなると、ロシア軍には戦車の燃料や弾薬、水・食料などの物資が届かず、お手上げになってしまいます。

今回の1万人以上のロシア軍の撤退は、以上のようなことが影響しているものと思います。今回ロシアがウクライナ領内に入り込んだ場合、米軍やNATOに鉄道網を破壊する口実を与えてしまうことになります。

ロシアがウクライナ攻勢すれば、米軍、NATOはウクライナ領内だけではなく、ロシア領内の鉄道を破壊するかもしれません。無論、米軍、NATOの情報筋は、ウクライナの鉄道や、ロシアの鉄道のどの部分を破壊すれば、最も効果があるかを熟知していることでしょう。

一度、米軍やNATO軍が、ウクライナや、場合によってはロシア領内の鉄道網の破壊に踏み切れば、その後も何度も繰り返されるという危機もありえます。

バイデン米大統領(左)とプーチン露大統領(右)

それに、米国のジョー・バイデン大統領は7日、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領とビデオ会談し、ロシアがウクライナの国境周辺で軍備を増強させていることについて深い懸念を表明しました。そして、ウクライナへ侵攻すれば「強力な経済的およびその他の措置」を講じると述べました。

ジョー・バイデン米国大統領は4月15日、米国大統領選挙への介入や米国企業へのサイバー攻撃などを理由に、ロシアへの制裁を強化する大統領令に署名しました。同令を受けて財務省は、米国金融機関にロシア中央銀行などとの取引の一部を禁止するとともに、合計で25の企業・機関、21の個人を特別指定国民(SDN)に指定しました。国務省も、在米のロシア外交官10人の国外退去を決定した。バイデン政権は、状況次第で制裁内容を拡大するとしていました。

もし、ロシアがウクライナに侵攻すれば、米国の追加制裁が発動されるのは必定でしょう。そうなると、ロシア経済はますます疲弊することになります。

さらに、ロシアがウクライナの一部でも新たな占拠すれば、ウクライナがNATOに与する格好の根拠を与えることになります。ロシアとしては、それだけは絶対避けたいのでしょうが、現在のロシアにはウクライナに対して、十分な経済支援などできません。

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2021年12月26日日曜日

「日本も尿素水不足」報道は本当なのか? 韓国では需要逼迫し流通に打撃 経産省担当者「来年1月には緩和期待」―【私の論評】中国のような異常な社会ではまともな組織は生き残れない(゚д゚)!

 「日本も尿素水不足」報道は本当なのか? 韓国では需要逼迫し流通に打撃 経産省担当者「来年1月には緩和期待」

 韓国でトラックなどディーゼル車に使われる尿素水(アドブルー)の需要が逼迫(ひっぱく)し、流通に打撃を与えたことが話題になった。日本でもフリマアプリで高値で取引されており、韓国メディアでは、「日本も混乱の兆しがある」と報じたが、果たして本当なのか。

 韓国では、アドブルーの原材料となる産業用尿素の97%以上を中国に依存しているが、中国が輸出規制したことで物流や社会インフラが混乱し、詐欺事件まで発生した。

韓国で11月、尿素水確保のため列を作るトラック

 一方、中央日報(日本語電子版)は「韓国批判した日本も『尿素水大乱』の兆し…」と報じている。

 「価格が高騰していることは事実で、企業側から手に入りづらいと聞いている。ただ国内の製造メーカーはフル稼働していると聞いており、需要逼迫の明確な理由が分からず、われわれも困惑している」

 そう語るのは、全日本トラック協会の担当者だ。企業側が必要以上の在庫を抱えていることに加え、アドブルーの転売が横行している可能性があると推察する。

 フリマアプリ「メルカリ」を確認したところ、数多くのアドブルーが出品されており、従来1リットル当たり300円程度のものが1000円程度で取引されている。中には10リットルのアドブルー57個を約54万円で取引したものまであった。メルカリは21日、冷静な行動を取るよう呼び掛けた。出品者に入手経路を確認する可能性もあるという。

 そもそも日本は韓国と違って、アドブルーを国内で生産できるはずだが、なぜ逼迫しているのか。

 経済産業省は「10月15日からアドブルー用の尿素について中国が輸出を停止している状況のためだ。ネット上での高額な出品は把握しており、対策は不断に検討している」(素材産業課)と回答した。

 中国では尿素の原料となるアンモニアの生産に不可欠な石炭不足が輸出規制の背景にあった。

 一方、国内最大級の商用生産尿素プラントを持つ三井化学は「アドブルーの原材料が液化天然ガス(LNG)のため、中国の影響は受けていない。ただ10月中旬から11月末にかけて定期修理のため工場の稼働を停止していた。稼働停止中も在庫をお客さまに適切に供給しており、現在は高稼働を続けている」(コーポレートコミュニケーション部)と回答した。

 中国の影響と大手の一時的な稼働停止が重なったのが要因だと考えられるが、前出の経産省担当者は「早ければ来年1月を目途に需要逼迫の緩和が期待できる」と話す。

 国内での影響は限定的といえそうだ。

【私の論評】中国のような異常な社会ではまともな組織は生き残れない(゚д゚)!

日本ではまた転売ヤーが暗躍しているようではありますが、まだメルカリで転売して、小遣い稼ぎをしようという連中だけのようではあります。

どうやら、組織的に大掛かりに買い占めをしようとする大手転売ヤーや、中国企業でもその動きはないようです。

これにはやはり過去の苦い経験等が関係していると思います。そうです、あのマスクの転売です。日本でマスク不足になった背景には、日本国内の大掛かりな転売ヤーや中国の転売ヤーが比較的大きな資本を用いて、転売用マスクを買い占めたり、中国企業が多数マスク製造業に参入したうえで備蓄したりで、値上がりを待って売ろうとしていたことも大きな原因の一つです。

中国英字紙グローバル・タイムズの昨年7月の記事によると、新型コロナウイルスの流行が下火になった中国で、マスクの供給能力が需要を大幅に上回り、価格が急落していたと報道されています。

当時の価格は昨年2月の水準から80―90%も下落。年末までに95%の業者が経営破綻し、米食品医薬品局(FDA)や欧州連合(EU)の輸出許可を有する5%しか生き残れないとの予測も出ていました。

同紙によると、コロナ流行が本格化した昨年2月には数百社程度だった中国のマスクメーカーは1万社を突破。1―6月の繊維製品(マスク含む)輸出額は前年同期比32・4%も増加したそうです。

専門家によると、既に国内のマスク生産能力は世界全体の需要を上回り、「世界中の人が毎日1枚使ったとしてもなお、中国の生産能力は過剰だ」(大健康国際のバイ・ユ氏)としていました。

いわゆる、アベノマスクが配布されはじめたのが、4月の17日からですから、これもマスク転売ヤーや中国企業などに対して、インパクトを与えたのは間違いありません。アベノマスクは、布製でしたが、これもかなりインパクトがあったと思います。

もし、この布製マスクが日本で普及した場合、布自体は日本国内ではありふれたものなので、紙製が不足しても、布製で代替する可能性高いです。これに、あせった日中の転売ヤーや中国企業が4月あたりから買い占め、備蓄などをやめて、一斉に販売に転じたわけです。

日中の転売ヤーや中国のマスク業者がマスクで通常以上に儲けらた期間は、おそらく半年にも満たなかったでしょう。備蓄や、転売目的で買い占めをした組織の中には大損をしたところもかなりあるでしょう。

これについては、先日もブログに掲載したばかりです。私自身は、いわゆるアベノマスクは、日中の転売ヤーや中国企業などへの牽制になったものと確信しています。

このような状況を日中の組織的転売ヤーや中国企業などは見聞きしているはずです。マスク騒動の二の舞いにはなりたくないでしょうから、現在個人の転売ヤーのなかには転売するものもいるようですが、組織的な転売ヤーはまだ現れていないのでしょう。中国ではそもそも、原材料が少ないので、そもそもモノが入りにくい状況ですし、新規参入する企業もないのでしょう。

もし、マクス騒動とその後の組織的転売ヤーの没落がなければ、今ごろ日本でも転売ヤーが暗躍して尿素水の買い占め等を行っていたと思います。

かつて黄色いダイヤと呼ばれたカズノコ

日本ではかつて買い占めで大きな非難を浴び、会社が倒産したり、社名に傷がついたりする大事件がありました。それは、1980(昭和55)年の「カズノコ買い占め事件」です。

カズノコといえば、正月のおせち料理には欠かせない食べ物。ニシンの卵を原料にするカズノコは「黄色いダイヤ」とも呼ばれる高級品です。

カズノコが高級品となる理由は、漁期が短いことです。多くはカナダやアラスカで取れますが、だいたい3月から4月までの1か月間しか漁ができません。

そうして、取り扱う水産会社にとってもリスクの高い商品です。というのも、春ごろに取って加工し貯蔵できるにもかかわらず、売れるのは年末の1か月ぐらいしかないのです(卸は10~11月)。

そのため、買い付ける際は正月前にどれくらい売れるかを予測して価格を決めなければなりません。うまくいけば利ざやが稼げますが、売れなかったら大損です。

カズノコを仕入れる水産会社が利益を得るために考えるのは、市場価格だけではありません。為替相場も重要です。

仕入れたときよりも円高であれば、その分利益も増えます。いわゆる北商倒産事件の起こる1970年代後半は円高が進んでいる時期でしたから、いわゆる北商倒産事件前年の1979(昭和54)年も例年通り利益が得られるだろうと考えられていました。

北商の倒産を伝える当時の新聞紙面
三菱商事はそれを見越して、子会社である水産会社「北商」を通じて例年通り大量のカズノコを買い付けていました。ところが、1979年は思ったほど為替相場が円高になりません。

在庫を放出すればダメージを食い止められますが、カズノコの価格は暴落して業界全体に影響が出てしまいます。

そこで同社は卸の時期になっても在庫を売らず、年末が近づき価格が上がるのを待つことにします。そうなると、今度は市場への供給量が減り価格は高騰に転じます。

正月には欠かせないカズノコは、それでも売れるはずでした。しかし多くの人は買わず、「今年は高いから諦めよう」と思ったのです。

この予想だにしなかった「カズノコ離れ」によって、大量の在庫を抱えた北商は経営が悪化し、倒産してしまいます。

しかも大量の在庫を抱えての倒産だったことから、親会社である三菱商事はマスコミから買い占めをもくろんだとして大きな批判を浴びることになったのです。これは「カズノコ買い占め事件」として、今なお日本の経済史に残る事件として語り継がれています。

どんな理由や意図があったとしても、価格が高騰している中で大量の在庫を抱えていれば「買い占め人」のそしりを受けることは否めません。

転売ヤーやマスク事業に参入した中国企業の没落や、北商倒産事件の事例などをみているとドラッカーの「社会や経済はいかなる企業をも一夜にして消滅させる」という言葉を思い出してしまいます。

ドラッカーは、企業の社会的責任について以下のように述べています。
社会的責任の問題は、2つの領域において生ずる。第一に自らの活動が社会に対して与える影響から生ずる。第二に自らの活動とは関わりなく社会自体の問題として生ずる。(『マネジメント【エッセンシャル版】』)
工場の目的は、騒音を出し、有害なガスを出すことではありません。顧客のために高性能の製品をつくることである。そのために騒音を出し、熱を出し、煙を出す。これら社会に及ぼす影響は、組織の目的に付随して起こる。かかる副産物はゼロとすることが理想です。

他方、組織は社会環境のなかに存在します。それは社会の機関です。したがって社会自体の問題の影響を受けざるをえないのです。地域社会が問題視せずとも、社会の問題は組織にとって関心事たらざるをえないです。健全な企業、健全な大学、健全な病院は、不健全な社会では機能しえません。

あらゆる組織が、自らの本業を傷つけない限りにおいて、それら社会の問題の解決に貢献しなければならないのです。

社会や経済はいかなる企業をも一夜にして消滅させるとドラッカーは言います。企業は社会や経済の許しがあって存在しているのであり、社会と経済がその企業は有用かつ生産的な仕事をしていると見なす限りにおいて、その存続を許されているにすぎないのです。
社会性にかかわる目標が必要となるのは、マネジメントが社会に対して責任を負うからではない。企業に対して責任を負うからである。(『マネジメント【エッセンシャル版】』)

そもそも、組織的な転売ヤーとか、 短期的な儲けのためだけに新たな事業に参入するなどの組織は、組織ではあるものの、とてもまともな組織とは呼べません。

健全な社会においては、まともでない組織は生き残れないのです。たとえ、当初はまともな組織であっても、途中からまともでなくなった組織は生き残れないのです。そうして、不健全な社会ではまともな組織は機能しえません。

それは、特に中国にあてはまるでしょう。中国のような不健全な社会では、まともな組織は機能しえないのです。

特に最近の中国共産党の大企業に対する規制などは、いままで中国政府を支えてきた富裕層の反発を招くことになり、多くの一般国民からの反発に加え富裕層からの反発も招くことになれば、中国共産党の当地の正当性の基盤が揺らぐことにもなりかねません。

米中両サイドから中国デカップリンクがはじまり、チャイナ・リスクはさらに破滅的になりました。中国当局による中国企業への統制強化が新たな「チャイナ・リスク」となってるのですから、日本企業だけが安泰でいられるわけなどありません。

尿素は、石炭から作られますが、海外メディアなどによりますと、米中の対立によって、米国と歩調を合わせたオーストラリアに対し、中国は石炭の輸入を停止。尿素の原料となる石炭の不足に加え、中国国内では「農業の肥料」としての用途が高いため、そちらを優先し、尿素水の輸出を制限したのです。

中国の尿素水製造会社、特に海外輸出の多い企業は打撃を被っていることでしょう。中国ではこのようなことは、しょっちゅうおこります。現在は尿素水てすが、今後は様々な分野でこのようなことが起こり続け、中国の国内のあらゆる産業が毀損されることになるでしょう。

日本のような比較的まともな社会では、まともな企業こそが生き残るでしょうが、中国のような異常な社会ではまともな組織は生き残れないのです。だから、儲けを狙った新規参入が一般化しているのです。マスク騒ぎはその典型例です。誰もがまともに事業をして、成り立つのなら、このようなことはないはずです。

中国に拠点を持つ企業も、なるべくはやく撤退すべきです。もう、中国でまともにビジネスができると考えるのは大きな間違いです。

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2021年12月25日土曜日

岸田首相「1月訪米」“絶望” 外相・防衛相見送り、2プラス2はオンラインに切り替え 識者「ボイコット表明の遅れ影響」―【私の論評】岸田政権は、安倍・菅政権の方針を学び踏襲し両政権ができなかったことを成し遂げた後に独自カラーを出せ(゚д゚)!

岸田首相「1月訪米」“絶望” 外相・防衛相見送り、2プラス2はオンラインに切り替え 識者「ボイコット表明の遅れ影響」

バイデン米大統領は、岸田首相に不信感を持っているのか

 林芳正外相と岸信夫防衛相が来年1月上旬に予定していた訪米を見送る方向で調整に入った。米国側の提案で、新型コロナウイルスの新たな変異株「オミクロン株」の感染拡大を理由にしている。岸田文雄首相と、ジョー・バイデン米大統領による初の対面による日米首脳会談の1月開催も絶望的となった。岸田首相はやっと、北京冬季五輪の「外交的ボイコット」を表明したが、遅すぎて米国の不信感を高めたとの指摘もある。

 産経新聞は25日朝刊で、1月7日に開催予定だった日米外務・防衛担当閣僚による安全保障協議委員会(2プラス2)が、米国側からオンライン形式に切り替えるよう提案があったと報じた。

 菅義偉政権下の今年3月、東京で開催された日米2プラス2では、「自由で開かれたインド太平洋」の推進などで一致し、年内に改めて開催することで合意していた。

 バイデン氏は今月6日、中国当局による新疆ウイグル自治区などでの人権弾圧を受けて、北京冬季五輪に政府代表を派遣しない「外交的ボイコット」を表明した。英国やオーストラリアなどがすぐ同調した一方、岸田政権は「適切な時期に」「国益に照らして…」などと決断を先延ばし、24日になって表明した。

 首相周辺は「(米中間で)微妙なバランスをとった」と語っているが、人類の普遍的価値である「人権」と「損得」をてんびんにかけた、「米中二股外交」ではないのか。

 同盟国が即賛同しないことで、「米国の求心力を弱め、事実上、中国共産党を助けた」という指摘もある。

 日米2プラス2が対面で開催されなければ、外相らの微妙な事前調整も困難となり、岸田首相の通常国会開会前の「1月訪米」は相当厳しい。

 ジャーナリストの長谷川幸洋氏は、「日本が東アジアの当事者にもかかわらず、米国は『岸田首相は、ここまで中国に配慮するのか』と驚いているはずだ。2プラス2のオンライン開催は、米国の不快感を示すサインだ。『外交的ボイコット』の表明が、あまりにも遅れたことが影響している。これで1月の日米首脳会談は絶望的とみていい。岸田首相は10月に就任したが、通常国会閉会後の来年5月以降まで日米首脳会談が開催されない、極めて異例の事態に陥りそうだ」と語った。

【私の論評】岸田政権は、安倍・菅政権の方針を学び踏襲し両政権ができなかったことを成し遂げた後に独自カラーを出せ(゚д゚)!

米国での感染者数は増加傾向にあり、平均で1日191,326人の新規感染者が報告されています。1日平均人数のピークだった 1月8日の76%になります。

パンデミック(世界的大流行)開始以降、同国では感染者52,134,735人、死者819,218人が報告されています。以下に最近の日時統計のグラフを掲載しておきます。


確かに直近では、増えつつあることが認識できます。では、菅義偉政権下の今年3月、東京で開催された日米2プラス2(日米外務・防衛担当閣僚)時にはどうだったかといえば、以下のグラフが示すように、7間平均の死者数は3月15日では、7人ということで、かなり収束していました。


菅総理は、4月15日から16日まで、米国を訪問しています。その頃には死者数は2000人くらいとなっており確かに多くはありましたが、訪問の意思決定はその前になされており、その時には、感染者数・死者数とも少なかったといえます。

そのため、米国が「オミクロン株」などを理由に、2プラス2をオンラインで開催することにしたのは、格別不自然とは言えないと思います。

ただ、岸田首相は10月に就任しましたが、通常国会閉会後の来年5月以降まで日米首脳会談が開催されないという事態になりそうなことはあながちありえなくもない状況になってきました。

なぜなら、「外交的ボイコット」を表明したのが、24日と遅れたこともありますが、それ以前に林外相がしでかした、外交的不手際です。それは、このブログにも最近掲載したばかりです。その記事のリンクを以下に掲載します。
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林外相

詳細は、この記事をご覧いただくものとして一部を以下に引用します。
林芳正外務大臣は11月21日、フジテレビの番組に出演し、18日の中国・王毅外相との電話協議のなかで、中国訪問を打診されていたことを明らかにしていました。応じるかどうかについては、「現時点では何も決まっていない」としていました。

公式訪問は、招いた側が招かれた側の同意か感触を得たうえで発表するのが、普通の外交儀礼です。招いた側が友好姿勢を示す一方、応じるかどうかの選択を相手に委ねるのが普通です。ところが、今回は招かれた側の日本の外務大臣が3日遅れで、一方的にテレビで公表しました。これだけでも、十分に異例でした。

このことがあった上で、さらに 岸田政権の北京冬季五輪の「外交的ボイコット」を表明したが、遅すぎて米国の不興を買ってしまったおそれが十分にあります。

南アフリカ政府は24日、新型コロナウイルスの陽性者と接触しても無症状の場合は隔離や検査は不要との新方針を発表しました。コロナを巡る状況を勘案し、封じ込めから緩和策への移行が妥当としています。

南ア保健省は新たな方針の要因として、オミクロンなど感染力の高い変異株の出現、人口の60%がワクチン接種や感染したとの推計、無症状者が多いことや診断症例が少ないことなどを挙げました。南アでのオミクロン株騒ぎも収束しつつあります。

そうなると、5月あたりには米国でも収束している可能性があります。いまのところ、米国でコロナ禍により、感染者・死者数が増えているのは事実なので、岸田政権が米国の不興を買ったかどうかは、まだはっきりしない部分があります。

しかし上の記事でも指摘されているように、通常国会閉会後の来年5月以降、米国でコロナ感染が収束していても、日米首脳会談が開催されないということにでもなれば、極めて異例であり、米国の不興を買ったのは間違いないとみて良いでしょう。

そうならないように、岸田政権は今からでも失地を回復する努力をしていただきたいものです。

そうして、岸田政権はまずは、経済政策、外交政策に関しては、安倍・菅政権の政策をしばらくは踏襲するべきです。安倍・菅政権の政策がすべて満点とはいいませんが、方向性としては良かったです。

安倍政権は結局二度も増税してしまったとか、菅政権においては、コロナ病床確保には失敗たなどの失敗はありました。しかし、安倍政権下では、雇用が劇的に改善ました。菅政権においては、結局医療崩壊に陥ることもなく、ワクチン接種を強力に推し進め、結果としてコロナ収束に導いたほか、経済対策においては先進国中もっとも失業力を低くしたという偉業を達成しました。

外交政策においては、安倍政権においては、全方位外交で、特に中国包囲ということで成功しました。菅政権においては、安倍外交を踏襲するということで、目立った失点はなかったと思います。

岸田氏が属していた宏池会はしばらく総理を務める人がいなかったため、政権を担当したことがありません。その間に世界は激変しました。

そのことを考えれば、経済、外交、安全保障などの重要な政策は、まずは安倍・菅政権の政策の結果ではなく、その方針をよく研究して踏襲して、様子をみるべきでした。岸田カラーはそれ以外のことで出すべきでした。

これは、バイデン政権を参考にすべきでした。バイデン政権は現在のところ、結局トランプ政権を政策を踏襲しているところが多いです。移民政策では中途半端で、多くの国民から不興を買っています。経済対策についても踏襲していますが、さらに大きな対策を打とうとして、民主党の議員からも不興を買っています。

しかし当初は親中的政策に走るのではないかとも危惧されていましたが、対中政策に関してはトランプの政策を継承しています。バイデン政権がもしこれを外して、親中的な政策をうちだしていたら、政権の支持率は地に落ちたでしょう。

トランプのほうがより積極的だったとは思いますが、バイデンも中国に対して現状変更は絶対に許さないという厳しい姿勢で臨んでいます。

岸田政権は、まずは経済・外交政策、安全保障政策でも、安倍・菅政権の方針を真摯に学びとり、その精神まで自分のものとして、それを踏襲した上で、両政権ができなかったことを成し遂げその後に独自のカラーをだすべきでした。

安倍元総理大臣と菅前総理大臣

特に、安倍政権がなぜあのような長期政権になり得たのか、真摯に学ぶべきです。また両政権がなし得なかったことを実施することは、何もないところから始めるよりは、始めやすいですし、なぜなし得なかったのかも学べます。

岸田総理は、完全に順番を間違えてしまいました。しかし、いまならまだ間に合います。新しい資本主義なる、意味不明のキャッチフレーズは捨て去り、高市政調会長が総裁選で主張していた経済対策を参考にするとか、安倍総理の外交政策を参考にするなどして、政策の大転換をはかるべきです。

そうでないと米国の不興を買い続け、国内からも、特に保守層から不興を買ってしまうことになると思います。

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2021年12月24日金曜日

米、ウイグル輸入禁止法成立 強制労働防止、来年6月発効 日本企業に影響―【私の論評】ウイグル人への人権侵害をやめない限り、国際社会はより厳しい制裁を加えるだけ(゚д゚)!

米、ウイグル輸入禁止法成立 強制労働防止、来年6月発効 日本企業に影響

 バイデン米大統領は23日、人権侵害を理由に中国・新疆ウイグル自治区からの輸入を全面的に禁止する「ウイグル強制労働防止法案」に署名、同法が成立した。

中国・新疆ウイグル自治区で監視カメラの下を歩く子どもら=2019年6月4日

 180日後の2022年6月下旬に発効する予定。自治区全体を禁輸対象とするのは初めて。人権をめぐる米中の対立が制裁と報復の応酬に発展する可能性もあり、米国に進出する日本企業は厳しい対応を迫られる。

  同法は新疆ウイグル自治区で「全部または一部」が生産された製品の輸入を原則禁止。輸入企業に説明責任を負わせ、強制労働を利用していないことを「明確かつ説得力のある証拠」に基づき立証できなければ輸入できない。米政府に対し、強制労働に加担する海外の個人や団体の制裁リスト作成も求めている。 

【私の論評】ウイグル人への人権侵害をやめない限り、国際社会はより厳しい制裁を加えるだけ(゚д゚)!

同法案は今月、全会一致で上下両院を通過していました。民主・共和両党の間には大半の問題で大きな隔たりがあるが、対中国政策ではほぼ一致しています。

新疆ウイグル自治区は衣服に使用される綿花の主要産地で、太陽光パネルの原材料となるポリシリコンの生産でも重要な地位を占めています。世界的なサプライチェーンへの影響が大きい同地域で、イスラム系の少数民族ウイグル族らが抑圧されていることが懸念され、同法案の成立が後押しされました。

23日法案に署名するバイデン大統領

この成立で、新疆産の製品を米国で使用している企業は対応を迫られます。成立前からすでに、米インテルが新疆の労働力や製品を使用しないようサプライヤーに要請し、その後謝罪するなど、物議を醸していました。

新疆ウイグル自治区で2021年3月26日、綿花畑で働く労働者たち

同法は、新疆でのウイグル族や他の民族弾圧で中国政府に加担している企業・団体のリスト作成を国土安全保障省に義務付けています。米税関・国境警備局(CBP)局長が例外として認めない限り、同自治区からの全ての産品が強制労働で製造されていると見なす「反証を許す推定」も盛り込まれました。

これまで米国は、自治区で生産された綿製品や農産物の加工品などについて、強制労働で生産された疑いがあるとして輸入を停止してきましたが、この法律はすべての品目を対象としており、自治区で生産された製品などを米国に輸出してきた日本企業に影響が及ぶことになります。

一方日本では、新疆ウイグル、チベット、内モンゴルの各自治区や香港の出身者らで作る複数の民族団体は24日、中国政府による諸民族への迫害行為を黙認しないという日本政府の表明などを呼びかける要望書を中谷元首相補佐官(国際人権問題担当)に提出しました。

要望書は日本ウイグル協会やチベット亡命政権の代表機関ダライ・ラマ法王日本代表部事務所、南モンゴルクリルタイ(世界南モンゴル会議)など9団体が作成。ウイグル協会は「ウイグルジェノサイドに抗議の声を上げるタイミングはとっくに過ぎている」と訴えました。

自治区の出身者らが中谷氏に面会することは認められず、自民党の山田宏参院議員と長尾敬前衆院議員が代わりに要望書を手渡しました。山田氏によれば、中谷氏は「(海外での重大な人権侵害行為に制裁を科すための日本版)マグニツキー法も含めてしっかり検討する」と語ったといいます。

もう「検討」の時期はすでに終了したと思います。中谷氏には、日本版マグニツキー法成立に向けて努力すると、言い切ってほしかったです。

ウイグル人に対する人権侵害の実体は、様々なメディアで報道されていますが、以下のマンガでもその実体験が綴られています。ぜひご覧になってください。
私の身に起きたこと ~とある在日ウイグル人男性の証言2~

来年の北京オリンピック・パラリンピックへの対応をめぐり、24日松野官房長官は記者会見で、閣僚など政府関係者の派遣を見送り、東京オリンピック・パラリンピック組織委員会の橋本聖子会長ら3人が出席すると発表しました。

これは遅すぎです。中国と心中するという腹もない、現状の日本が、北京五輪に閣僚級を送り込むことなどできないことは、最初からはっきりしていました。閣僚送り込むだけの勇気もないのなら、もっと早い時期に決めるべきでした。

同盟国の米国、友好国のオランダなどが12月上旬に(外交的ボイコットを)表明していたのですから、同じ価値観外交を展開している日本としても早く表明しなければ、日本は人権より経済かという疑念を持たれかねないです。

中国外務省は24日に発表した報道官談話で、米国で中国の新疆(しんきょう)ウイグル自治区を産地とする物品の輸入を原則禁止する「ウイグル強制労働防止法案」が成立したことに対し、「中国の内政に乱暴に干渉したものであり、強烈な憤慨と断固とした反対を示す」と強く反発しました。

談話は「米国の行為は市場ルールとビジネスのモラルに完全に背く。全世界のサプライチェーン(供給網)の安定を破壊し、国際貿易の秩序を妨げるだけだ」と非難しました。

新疆の問題については「人権問題ではなく、反テロ、反分裂の問題だ」と主張。「中国は事態の発展を見て、さらに反応をとる」と米国を牽制(けんせい)したが、具体的な対抗措置については明らかにしませんでした。

中国政府は「さらに反応をとる」と虚勢を張っていますが、実際のところ米国に対して有効な対抗措置を何一つも取れないでしょう。毛沢東のいう「張子の虎」とはまさに今の習近平のことです。ウイグル人に対するジェノサイドをやめない限り、国際社会はより一層の制裁を加えることになるだけでしょう。

行き着く先は、ドルと元の交換禁止措置などになると思います。そうなると、現在の貿易の決済はほとんどがドルで行わているので、中国は貿易決済ができなくなります。

米国は、貿易などでも、投資の面でも、中国にとって上客であるはずです。そもそも、中国人民元は、最近はそうでもなくなりつつありますが、中国が大量のドルや米国債を保有しているから信用されているという事実を中国は忘れているのではないでしょうか。

そのドルの胴元でもある米国を怒らせて、何のメリットがあるというのでしょうか。通常の感覚なら、上客の頼みだからといって何から何まで聞く必要まではありませんが、できる範囲ではなるべくお客の要望に沿おうとするというのが、まともな商売人の道だと思います。

中国には、その程度の倫理感もないようです。

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2021年12月23日木曜日

「アベノマスク廃棄」 国の調達は本当に無駄だったのか?―【私の論評】本当は失敗ではなかったアベノマスク(゚д゚)!

高橋洋一の霞ヶ関ウォッチ
「アベノマスク廃棄」 国の調達は本当に無駄だったのか?

岸田文雄首相

「アベノマスク」は、昨年4月からマスク不足の解消を目的として、全世帯に配布されたものだ。その在庫について、岸田文雄首相は希望者に配布し有効活用を図った上で、2021年度内に廃棄する方針を表明し、報道もされている。

この問題が表面化したのは2021年11月5日の会計検査院20年度決算検査報告からだ。同報告で、「アベノマスク」と呼ばれた全世帯向けを含め、国が調達した布マスクは3月時点で8300万枚(約115億円相当)が倉庫で保管されていたと報じられた。マスク不足だった昨年、国が調達したのは無駄だったのか。

「アベノマスク」は1億3000万枚準備、1億2600万枚配布

この種の報道は、その後発表される政府資料を事前に政府が報道機関にリークしたもので、マスコミは政府からいわれるままに報道する。

10月末の報道によれば、昨年、「アベノマスク」といわれる世帯向け布マスクを約1億3000万枚、介護施設や妊婦向けには約1億5700万枚を調達。このうち、それぞれ約400万枚と約7900万枚が保管されていた。マスクの平均単価は約140円。

所管する厚生労働省は、介護施設向けはマスクの品薄状態が解消された後、希望する施設のみへの配布に方針を切り替えた。

「アベノマスク」は全世帯への配布を終え、保管されていた400万枚は余剰分という。

政府が2020年に配布した通称「アベノマスク」

介護施設向けは1億5700万枚準備し、当初は全施設にプッシュで配布したが、施設側が調達可能になった後、希望配布に切り替え。その時に7900万枚の在庫。「アベノマスク」は1億3000万枚準備し、1億2600万枚配布し、400万枚の在庫となった。

これでわかるだろう。「アベノマスク」については、全国民への配布だったが、予定どおり無駄なしで完了。一方、介護施設向けは多くが在庫になった。しかし、新聞の見出しでは「アベノマスクも」などと書かれて、「アベノマスク」が大量在庫になったかの印象となり、国民へのミスリードになった。

見込みを誤って介護施設でマスク不足になったら、その方が問題

介護施設向けについては、準備量が結果としては多かったが、当初のマスク不足への対応は出来た。マスク不足がどのように解消されるかを当時予測するのは不可能だ。後から過剰な準備だったと結果論で言うのは簡単だが、見込みを誤って介護施設でマスク不足になったら、その方が問題だろう。さらに、「アベノマスク」は当時売り惜しみをしていた業者に打撃を与えたともいわれている。

この20年度決算検査報告では、会計検査院法に基づく意見表示などは付されていない。つまり、会計検査院として調査をしたが、問題なしという見解だ。

マスコミは、10月末の報道で「アベノマスクも」という奇妙な見出しだったが、今回の報道では、介護施設向けまで含めて「アベノマスク」と称している。

マスコミは「アベノマスク」と揶揄したいがためか、事実は無駄なしで貶める余地がないのに、介護施設向けまで用語を広げているようだ。これでは、もはやまともな報道と言えない。そこまでしてでも元首相を話題にしたいのだろうか。

++ 高橋洋一プロフィール
高橋洋一(たかはし よういち) 元内閣官房参与、元内閣参事官、現「政策工房」会長
1955年生まれ。80年に大蔵省に入省、2006年からは内閣参事官も務めた。07年、いわゆる「埋蔵金」を指摘し注目された。08年に退官。10年から嘉悦大学教授。20年から内閣官房参与(経済・財政政策担当)。21年に辞職。著書に「さらば財務省!」(講談社)、「国民はこうして騙される」(徳間書店)、「マスコミと官僚の『無知』と『悪意』」(産経新聞出版)など。

【私の論評】本当は失敗ではなかったアベノマスク(゚д゚)!

国会閉会を受けて21日、岸田首相が首相官邸で会見を行いました。そのときに、岸田文雄首相は昨年政府が配布した布製マスクについて、希望者に配布し有効活用を図った上で、2021年度内に廃棄する方針を表明しました。新聞やテレビの報道の情報源はこれです。

この方針表明の動画を以下に掲載します。


この動画をご覧いただければ、冒頭の部分で、岸田首相は昨年政府が配布したマスクについて語っていますが、無駄だったなどとは一言も言っていません。布製マスクに関しては、簡単にまとめると以下のように語っています。
・国民の不安を解決した ・布製マスクの配布の後、マスクの製造・流通が回復 ・初期の目的を達成 ・現在5億枚を超える高性能マスクに備蓄に至った ・財政資金効率性に基づき見直し

この部分をマスコミは見事にスルーしています。しかも、高橋洋一氏も語るように、 20年度決算検査報告では、会計検査院法に基づく意見表示などは付されていません。つまり、会計検査院として調査をしたのですが、問題なしという見解です。問題とみなせば、必ず意見表示をすはずです。

「アベノマスク」については、上の高橋洋一氏の記事にもあるように、全国民への配布だったのですが、予定どおり無駄なしで完了。一方、介護施設向けは多くが在庫になったということです。

介護施設向けなどもあわせると、かなりの多さともみえますが、国家レベルの事業と考えると、この程度の余剰はむしろ、配布漏れを防ぐためには、致し方なかったと思います。

ただこれを、とんでもない余剰と受け取る人は、これが国家レベルの事業であったことを認識していないのではないでしょうか。自宅のマスク、あるいはせいぜい1介護施設や学校、あるいは大きくても市町村レベルなどのマスク等しか想定していないのではないでしょうか。

日本の人口は約1億2千万人です。世帯数は5340万世帯です。これらに、行き渡るように配布するというのは壮大な事業です。それに付随する保管費用なども、一家庭内や一企業内のレベルよりは、はるかに大きくなるのは当然です。

10年くらい前だったと思いますが、プーチンが北方領土に数千億円かけて支援するなどを公表したことがあって、これに対して「ものすごい」と評価する人がいましたが、数千億というと個人的には天文学的な数字と感じるかもしれませんが、日本ではこのくらいのこと以上のことを各自治体(都道府県単位)に対して普通にしています。

ただ、人口では1/3以下の韓国よりもGDPでは若干を若干下回る程度の現在のロシアでは、この国家事業はたしかに大判ぶるまいだったのでしょう。

国家レベルの事業と、個人事業や家計を同次元でみるととんでもないことになります。特にマクロ経済などはそうです。これに関しては、過去に何度か述べてきたので、ここでは詳細は述べませんが、マスク一つとってもそうだということです。

そうして、この国家事業をあの時期にあえて実行したということに大きな意義があったのです。

安倍政権でのマスク配布が組織的にマスクを買い占めていた日本国内の転売ヤーは無論、中国の企業も慌てて在庫を吐き出すしかなくなり、日本国内でもマスクが誰にでも手に入るようになったのです。費用対効果は絶大でした。私自身は、物理的マスクの効果もありがたいですが、こちらのほうが余程すごいことだと思いました。


私自身は、当時の安倍総理は、当然このことを意識していたと思います。そうして布マスクにしたということも意図があったと思います。不織布マスクは、確かに布製のマスクよりは効果があり衛生的でもありますが、布は洗えば何度でも使えますし、これが日常的に使われるようになれば、布そのものは日本国内にありふれたものですから、手作りも可能です。

これに気がついた、日本国内の転売ヤーや中国の企業も、恐慌状態になったと思います。だから手持ちの在庫を、吐こうとして躍起になったのです。大損したものも大勢いました。これからも、似たようなことが起こった場合、特に国内転売ヤーや中国の企業などにも、また悪巧みをしようと企てることを防ぐ抑止力になると思います。

これは、明らかな成功事例だからこそ、マスコミは大失敗だと歴史改竄に必死なのではと勘繰りたくもなってしまいます。

アベノマスクが配布されだしてから、儲からなくなった転売ヤーの悲惨な事例が報道されたり、転売ヤーと思しき人が道路上で安売りしている姿などみて、「ざまー見やがれ」と思ったものです。

ところで、岸田政権のアベノマスク廃棄宣言に“もらえるのか?”との問い合せ殺到。担当部署は昼食もとれない忙しさとフジTVのイットが報道しました。廃棄ならもし近くに在庫されている場所があるなら、取りに行くので私も頂戴したいです。


このアベノマスク、他の見方もできると思います。このブログでは、兵站のことをしばしば語っています。 兵站とは、軍隊の戦闘力を維持し、作戦を支援するために、戦闘部隊の後方にあって、人員・兵器・食糧などの整備・補給・修理や、後方連絡線の確保などにあたる機能です。

どの国の軍隊、日本では自衛隊は、兵站がなければ戦えません。いかに屈強な兵士であっても、一日3000キロカローの食料、水、兵器、弾薬は欠かせません。このブログも掲載したように、戦争の素人は戦略を語り、プロは兵站を語るといわれるくらい兵站は重要です。

日本では、戦後は戦争に直接見舞われたことがないので、国家レベルの兵站などどの程度なのかわかりませんでしたが、アベノマスクは無論戦略物資ではありませんが、国家レベルで物資を集め、全世帯に配布したということでは、兵站とも似たところがあり、日本の兵站の力量をみる上ではかなり参考になります。

日本はいざとなれば、あのようなことができる底力があるということが十分に示されたと思います。東日本大震災では、自衛隊の素早い展開力が海外から評価されました。アベノマスクでは、日本の兵站の能力を現在各国の軍事専門家が評価していることでしょう。そうして、その評価は決して低くはないでしょう。

そうして、安倍元首相をどうしてもマスコミは貶めたくて仕方がないことがわかり、本当はマスコミは安倍氏がまた総理に返り咲くことを恐れているのではないかと思ってしまいました。二度あることは三度あるという諺どおりに・・・・・・・・・。

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2021年12月22日水曜日

山口県職員ら公選法違反か 林外相の後援会に勧誘で県警が事情聴取―【私の論評】外交の失態をしでかした、林外相は失態を重ね岸田政権が揺らぐことになる可能性も(゚д゚)!

山口県職員ら公選法違反か 林外相の後援会に勧誘で県警が事情聴取

林芳正外相

 10月末に投開票された衆院選山口3区で当選した自民党の林芳正外相の後援会に入るよう勧誘活動をしたとして、山口県職員らが県警に事情聴取されていることが分かった。村岡嗣政知事が記者団に明らかにした。山口市職員も聴取対象になっていることも判明。県警は公選法に抵触するかどうか慎重に捜査しているもようだ。

山口3区をめぐっては、自民前職の河村建夫元官房長官と参院議員からくら替え出馬する意向を示した岸田派の林氏が激しい公認争いを繰り広げた。自民党本部は最終的に林氏を公認し、河村氏は政界を引退した。

林外相は21日の記者会見で「捜査機関の活動に関わることなので答えを差し控えさせていただく」と述べた。

【私の論評】外交の失態をしでかした、林外相は失態を重ね岸田政権が揺らぐことになる可能性も(゚д゚)!

一般職地方公務員については、地方公務員法第 36 条により、一定の政治的 行為が制限されています。 

地方公務員法第 36 条第 2 項においては「政治的目的」と「政治的行為」を 規定しており、「政治的目的」をもってする「政治的行為」に限り、制限の 対象となります。

詳細は以下の文書を御覧ください。


この事件では、小松一彦山口県副知事が、衆院山口3区の林芳正候補の後援会に入るよう県庁内で勧誘活動した公選法違反の疑いで書類送検されます。同副知事は無論辞任でしょうがが、林外相にも政治責任が生じる可能性はあります。


林氏が後援会への加入勧誘を公務員に依頼した事実が判明すれば、大臣辞職はもとより、議員辞職にも発展しかねないです。

林芳正外務大臣は11月21日、フジテレビの番組に出演し、18日の中国・王毅外相との電話協議のなかで、中国訪問を打診されていたことを明らかにしていました。応じるかどうかについては、「現時点では何も決まっていない」としていました。

公式訪問は、招いた側が招かれた側の同意か感触を得たうえで発表するのが、普通の外交儀礼だ。招いた側が友好姿勢を示す一方、応じるかどうかの選択を相手に委ねるのが普通です。ところが、今回は招かれた側の日本の外務大臣が3日遅れで、一方的にテレビで公表しました。これだけでも、十分に異例でした。

11月21日フジテレビ日曜報道 THE PRIMEに出演する林芳正外相

そもそも、いま中国と日本は、どういう関係なのか林外相は認識しているのでしょうか。

中国は沖縄県・尖閣諸島周辺で挑発行動を繰り返す一方、11月19日には中国軍艦が鹿児島県・屋久島沖の領海を侵犯しました。中国とロシアの艦隊が日本列島を一周したかと思えば、中ロ爆撃機の4機編隊が同月19日、日本上空を飛行していました。

一言で言えば、中国は日本を一段と脅しにかかっていました。 脅している中国が、脅かされた側の日本の外相を招待するというなら、日本の外務大臣なら「ふざけるな。まずオマエの態度を改めろ」と強く指摘して、招待を断るのが普通の対応でしよう。

強盗に襲われそうな家の人間が、強盗の招待を受けるなど、ありえないです。

ところが、林外相は番組で日程は未定としたものの、「招請を受けたので、調整はしていく」「ただ待っているのではなく、米中両方と話ができるのが日本の強みだ」などと、招請を受ける方向で前のめりに語ったのです。

林大臣には、「国家としての矜持」はないのでしょうか。事務方が慎重だったにもかかわらず、なぜ林大臣は公表したのか。

林氏は日中友好議員連盟の会長を務めており、自民党親中派の代表格です。外相就任に当たって、会長職を辞任しましたが、それで政治姿勢が変わるはずもないです。林氏には「米中の仲介役」「橋渡し」をしよう、という意図があったのではないでしょうか。

そんな思惑は「米中両方と話ができるのが日本の強み」という発言ににじみ出ている。そうだとしたら、訪中前から、中国の掌中に乗ったも同です。

中国は日米豪インド4カ国の協力枠組みである「クアッド(QUAD)」や、米英豪の軍事同盟である「オーカス(AUKUS)」に神経を尖らせています。そんな中国包囲網で、もっとも中国に近い日本が中核になるのを阻止するのは、中国の最重要課題といえるでしょう。

日米同盟の分断こそが、彼らの戦略目標です。林氏は「過去の田中角栄氏の中国訪問のように、政治家として、名を上げる絶好のチャンス」とみたかもしれないです。緊張関係が高まる米中の間に立って、緊張緩和のきっかけがつかめれば、大きな功績になると思ったのかもしれません。しかし、それは大きな勘違いです。

中国を訪問をして周恩来(右)と食事する田中角栄(左)

当時と今では、状況が全く異なります。当時は中ソ国境紛争があり、ソ連核攻撃を恐れる中国は、米国を仲間にしたいと考え、冷戦でソ連と対峙する米国は、中国を対ソということで、仲間に引き入れようとして、互いの利益が一致し、当時のニクソン米大統領が中国を電撃訪問した直後です。今思えば、これがその後の間違いの始まりだったかもしれません。

状況が変われば、互いに親しかった国々が反目しあようになったり、その逆に互いに反目しあっていた国々が親しくなるというような事例は過去にいくらでもありました。人間関係でさえも、一度親しくなったから、未来永劫親しくあり続けることなどないのです。特に相手が裏切った場合はそうです。そのような当たり前のことが、林氏には理解できないようです。

そもそも、日本は米国の同盟国です。しかも、このブログにも以前から掲載しているように、日本は冷戦戦勝国です。ロシア、中国、北朝鮮、東欧諸国は冷戦敗戦国です。中国は、米国などと国交を回復したこともあり、敗戦国といえるかどうかは、微妙なとこもありますが、冷戦前からの体制を維持した中国は、やはり敗戦国といえるでしょう。

日本は、冷戦中には、米国に基地を提供するほか、米国の要請にもとづきオホーツク海(ソ連原潜の聖域)において大規模な対潜哨戒を実施し、ソ連の原潜の行動を封じ込めました。そのため、日本の対潜哨戒能力は今日世界のトップクラスです。

日本も大きな貢献をしたのです。そうして、西側諸国は冷戦に勝利して、日本の国際社会における地位も高まり、国内も安定しました。

そのような日本が米中と等距離を置いて、仲介者になれるわけがないです。そんな思惑をにじませたからには、米国は当然、警戒します。仲介者どころか、二股外交の韓国のように、米国と中国の双方から信頼を失うことになるでしょう。それどころか、裏切り者とみられることになりかねません。

林外相の訪中発言は、米国の疑念に火を点けたに違いないです。そんな状況で訪中すれば、米国を怒らせ、逆に訪中しなければ、中国の面子を丸潰れにしてしまいます。どちらに転んでも、日本に良いことはありません。

これは明らかに「外交的失態」です。 いずれ結論は必ず、出さなければならないです。大臣自ら表面化させた外相訪中問題は、自民党の基盤である保守層を強く刺激して、岸田政権を揺るがす騒動になる可能性が高いです。

そこに降って湧いたのが、今回の山口県職員ら公選法違反の疑いです。警察が捜査に着手するのは、時間を掛ける価値と、それなりの手がかりや根拠があるからです。

後援会への加入勧誘を、林氏が公務員に依頼するなどということが通常まったくありえないことです。しかし、外交でも通常ありえないことをしでかしてしまった林氏です。選挙活動でも、ありえないことをしでかした可能性はあながち否定できません。

これが、きっかけとなって、岸田政権が揺らぐことになる可能性は十分あると思います。今回のことが大事にならなかったとしても、さらに何か大失態を起こしそうな予感がします。今後の趨勢を見守りたいです。

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2021年12月21日火曜日

武蔵野市条例案否決 八木秀次氏「全国波及の恐れ」―【私の論評】認識されてしかるべき「住民投票条例」と「自治基本条例」の末恐ろしさ(゚д゚)!

武蔵野市条例案否決 八木秀次氏「全国波及の恐れ」

八木秀次氏

東京都武蔵野市議会で21日、日本人と外国人を区別せずに投票権を認める住民投票条例案が否決されたことについて、麗澤大の八木秀次教授(憲法学)は「根源的な問題は自治基本条例にある」との考えを示した。


今回の条例案の根拠となるのは自治基本条例だ。国家以前に自治体が存在するとし、自治体外交や『無防備都市宣言』に代表される独自の防衛政策も想定する。法律より上位に位置付けられるとする、革命的な条例だ。

外国人投票権は、あくまで表面上の問題に過ぎない。さまざまな立場の活動家がやってきて街宣活動を繰り広げる中で、反対派の主張がヘイトスピーチ扱いされる状況が生まれてしまった。そもそもの根源である自治基本条例の問題に、土俵を変える必要がある。

自衛隊・米軍の基地や原発がある自治体、国境離島の自治体で同様の条例ができたらどうなるか。今回の条例案は否決されたが、市はこのまま断念すると思えないし、全国に波及する恐れもある。引き続き注視が必要だ。

【私の論評】認識されてしかるべき「住民投票条例」と「自治基本条例」の末恐ろしさ(゚д゚)!

八木氏の上の記事でも示されている、自治基本条例とは、「自治体の自治(まちづくり)の方針と基本的なルールを定める条例」であり、「他の条例や施策の指針となることから、自治立法の体系上の最高法規とであり、『自治体の憲法』ともいわれる。」とされます(礒崎初仁「自治体政策法務講義(改訂版)」(第一法規 平成30年3月)62頁)。

なお、全国で最初に自治基本条例を制定したニセコ町の取組みを紹介した木佐茂男・逢坂誠二編著「わたしたちのまちの憲法-ニセコ町の挑戦」(日本経済評論社2003)は、「その自治体の地方自治(住民自治・団体自治)のあり方について規定し、かつ、その自治体における自治体法の頂点に位置づけられる条例」と定義づけています(164頁)。

自治基本条例を推進する立場からの記事については、詳細は以下のリンクをご覧ください。


この記事によれば、最近自治基本条例を定める自治体は減少傾向にあります。以下にそれを示すグラフを掲載します。


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確かに、平成20年代後半以降はその伸びは鈍化しています。これは、自民党政務調査会が作成したパンフレット「チョット待て‼“自治基本条例”~つくるべきか、もう一度考えよう~」が平成24年1月に公表されるなどした結果、制定の勢いが下火になったとの見方もあります。確かに、これも大きいですが、多くの保守界隈の人々がその恐ろしさを伝え続けてきた結果でもあると思います。

ただ、上の八木秀次氏の記事にもあるとおり、自治基本条例は、国家以前に自治体が存在するとし、自治体外交や『無防備都市宣言』に代表される独自の防衛政策も想定します。法律より上位に位置付けられるとする、革命的な条例です。

この危険性については、北海道を事例として、その危険性をこのブログにも掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
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詳細はこの記事をご覧いただくものとして、以下に一部を引用します。

外国人参政権こそまだですが、日本に住んで、その市町村に住民票があれば、外国人でも事実上、政治に参加できるようになりました。「住民投票条例」と「自治基本条例」のためです。

あらかじめ投票方法や有資格者を条例で定め、請求要件さえ満たせばいつでも、どんな些細なことでも実施できるというもので、市町村体位で独自に制定されています。外国人にも投票権が保証されるケースがあり、地方行政に直接参加できるわけです。

北海道内ですでにこうした条例を定めている自治体は、芦別市、北広島市、増毛(ましけ)町、稚内市、安平(あびら)町、むかわ町、猿払(さるふつ)村、美幌町、遠軽(えんがる)町の9自治体で、2015年以降は、新たに北見市、苫小牧市、占冠村が続きました。この2市1村は、いずれも外国人に対して、居住期間など条件付きで投票権を認めています。

これら12の自治体はある意味、地雷を抱えているといえます。条例を根拠に、多数派の居住者(外国人)が首長のリコールを成立させることもできるとなると地方自治が将来、多数派に牛耳られることもあり得ます。そうした懸念を道議会に忠告したのが米国総領事館だったというところに、行政機構の弛緩が窺えます。

やはり、人口という数の力は厳然とした力であり、武力にも匹敵します。

かつて「北海道人口1千万人戦略」という構想が話題になったことがありました。国交省と道開発局が主催する講演会(2005年)において発表されたもので、北海道チャイナワークの張相律代表が提唱しました。

当時は荒唐無稽なプランという受け止め方でしたが、昨今の北海道を見ていると、単なる個人の思いつきレベルではなかったことがわかってきます。「1千万人のうち200万人が中国移民」というのがポイントでした。

5人に1人が中国移民、という「戦略」が14年前に提唱されていたのです。そして土地が次々と買収され、実際に人数も増えています。このことが何を意味するのか、少なくとも政治家や官僚は警戒心を持つべきです。

このブログでも述べたことですが、たとえば中国が北海道のいずれかの市町村に、多数の中国人を意図的に送り込んで、住民投票条例」と「自治基本条例」を活用して、いずれかの市町村の植民化に成功したとしても、最後には手放すことになります。

なぜなら、西洋列強などの事例でもわかるように、植民化はほとんどの場合大失敗して、何の利益ももたらさないどころか、金食い虫となってしまうからです。オランダの東インド株式会社などは、例外中の例外です。だからこそ、ほとんどの西洋列強国は、最終的には植民地を手放したのです。

ただ、列強が植民地を手放すまで、植民地とその宗主国との軋轢は、虐殺・虐待・弾圧など凄まじいものとなりました。だから、植民されないほうが良いに決まっています。植民する側も、利益がでないどころか、損をした上に、被植民地の住民からは恨まれることになります。こういうこともあり、かつての宗主国も新たな植民などしないのでしょう。

北海道の市町村も、「住民投票条例」と「自治基本条例」などを制定して、外国人が多くなればその次の段階では外国人参政権が施行されるようになり、そのいきつく先は、実質的な中国の植民地ということになりかねません。

しかも、中国は過去に本格的な植民の経験がありません。だから、「一帯一路」などで大儲けできるという幻想を抱いています。日本の市町村も中国の植民地になれば、とんでもないことになりかねません。大陸中国のように植民地の日本人が弾圧されることになるでしょう。

ただ、日本という国は、このような危機からは様々な理由や、時の運から免れることが多いです。その根拠となることが、渡邉哲也氏の以下の記事に掲載されていました。
日本の「不動産価格」がいよいよ下がり始める理由
中国人はしばらく日本には戻ってこない
渡邉哲也

 

渡邉哲也氏


この記事で、渡辺氏は、「コロナ禍が収束して「元のように通勤しなさい」と命じる会社はどのくらいあるだろうか。最もリモートワークに適した業種であるIT系の企業が多い渋谷区の空室率の高さがそれを物語っている。都心のオフィス需要は、コロナ前の7掛け程度になると予想される」と語っています。

一方中国人によるインバウンドについては、以下のように述べています。
中国は、海外からの文化輸入をさせたくない。現在の中国は文化的な鎖国状況に近い。習近平が恐れるのはズバリ「自由の味」だ。香港の例を挙げるまでもなく、一度自由の味をしめれば、中国政府に反旗を翻す者が増加するのは当然の成り行きだ。そのため、国民を外国になど自由に行かせたくない。こうした中国政府の姿勢に最も素早い反応をしたのが、いまや中国企業傘下となったラオックスである。

2021年8月、早々と全国13店舗のうち7店舗を閉店してしまった。コロナ禍の影響で外国人が入国できず、売り上げ回復の目処が立たないからとしている。2020年2月に111人が希望退職に応じたのに続き、同年夏には社員、契約社員を対象に250人程度の希望退職者を募っている。かなりあわただしい撤退戦である。

コロナ禍の影響による撤退に擬態しているが、中国企業傘下にあるラオックスが真っ先に逃げ出したことには注目したほうがいい。この先、中国からのインバウンドに未来はないと知る「上からの指示」に違いなく、中国系企業の日本撤退の連鎖は止まらないだろう。

今後中国によるインバウンドは期待できないでしょうし、「 国民を外国になど自由に行かせたくない」というのが習近平政権の方針であれば、今後日本の市町村の土地を買い漁っても無駄になるだけなので、その動きも鈍化するでしょう。

私自身は、東京の不動産価格については、まだはっきり断定はできないとは思っているのですが、中国によるインバウンドは戻って来ないのは確かだと思います。インバウンドに再び期待を寄せるのは間違いだと思います。

そうして、中国による日本の土地などの購入も鈍化することになると思います。そうなれば、「住民投票条例」と「自治基本条例」を活用した、日本の市町村の中国による実質的植民化への動きも鈍化するでしょう。

これにより、当面の脅威はなくなるかもしれません。しかし、潜在的な脅威はいまなお存在し続けているわけであり、中国の情勢が変わった場合は、またその脅威が増大するかもしれません。それに、中国の植民化が鈍化しても、他の国が植民化をすすめるかもしれません。

そもそも、国民国家において地方自治体がまるで憲法のような「自治基本条例」を定め、「住民投票条例」で外国人差政権に道を開くというのは、国民国家の趣旨からしてもまったくおかしなことであり、それを阻止するように、法律を改正するなり、新たな立法すべきと思います。

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