2025年3月24日月曜日

<独自>長射程ミサイル運用原則、日本主体で発射 24日発足の統合司令部 米軍頼らず―【私の論評】台湾のミサイルが中国を震えあがらせる!ウクライナの悔しさから学ぶ日本の自立戦略

<独自>長射程ミサイル運用原則、日本主体で発射 24日発足の統合司令部 米軍頼らず

まとめ
  • 防衛省・自衛隊は、長射程ミサイル「スタンドオフミサイル」の運用で日本が主体的に発射する原則を策定。2025年3月24日に発足する「統合作戦司令部」が一元指揮を担い、敵の攻撃圏外から反撃能力を発揮し、防衛力強化を目指す。
  • 2022年末の国家安全保障戦略に基づき、2027年度までに日本主導の態勢構築を目標とするが、即時運用は困難。米国製「トマホーク」や国産ミサイルは2027年度から配備、統合システム整備は2029年度まで必要で、米国との情報共有や依存回避が課題。
令和5年「防衛白書」より スタンドオフミサイルの運用イメージ クリックすると拡大します

 防衛省・自衛隊は、長射程ミサイルの運用において、日本が主体的に発射する基本原則を策定した。2025年3月24日に発足した「統合作戦司令部」がこの原則に基づき運用を担う。長射程ミサイルは「スタンドオフミサイル」と呼ばれ、敵の攻撃圏外から反撃能力を発揮し、防衛力強化の要となる。運用には多様な情報収集手段と陸海空自衛隊の一体運用が必要で、新司令部の一元指揮が前提。

 自衛隊は2022年末の国家安全保障戦略に基づき、2027年度までに日本主導の態勢構築を目指すが、即時運用は困難。米国製「トマホーク」や国産「12式地対艦誘導弾能力向上型」の配備は2027年度からだが、統合指揮システムの整備は2029年度までかかる。米国との情報共有や支援依存も課題で、自衛隊は米国の許可なしでは発射できない状況を避けたい考え。

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【私の論評】台湾のミサイルが中国を震えあがらせる!ウクライナの悔しさから学ぶ日本の自立戦略

まとめ
  • 台湾は長距離ミサイルを自主開発、中国を牽制。雲峰、雄風IIE、雄風III、清天で武装し、国産技術で自由に撃てる。ウクライナは西側の鎖に繋がれ、ATACMS等の長距離ミサイルの使用を制限されて悔しさが煮えくり返る。
  • 台湾の軍はウクライナをはるかに上回る。兵力、F-16V、「海鯤」(2023年9月28日進水)、ミサイルで精強だ。中国が舐めたら痛い目を見る。ウクライナは西側頼みでボロボロだ。
  • 台湾は中国を睨み、自立を貫く。2022年のペロシ訪台後の演習で即応し、2024年の漢光演習で反撃力を誇示。ウクライナはロシアにやられ、西側の顔色を伺う。
  • 日本は台湾を見習うべきだ。2025年3月24日、「統合作戦司令部」で長射程ミサイルを自力で撃つ体制を整える。ウクライナの3年(2022〜2024)の苦闘が「自立が正解」と示している。
  • 中国は台湾を侮れない。台湾海峡と精密攻撃が壁だ。ウクライナの制限が教訓となり、日本も自由に撃てる道を選ぶべき。
台湾で行われたウクライナ戦争反対デモ 2022年

台湾と、ウクライナの違いから、日本の防衛について考えてみる。台湾は中国の脅威に立ち向かうため、長距離ミサイルをつぎつぎに配備してきた。国家中山科学研究院がその心臓部だ。雲峰、雄風IIE、雄風III、清天が主役だ。一方、ウクライナは縛られた手足で長距離ミサイルを撃つしかなく、台湾との差は歴然。さらには、台湾の軍がウクライナより精強であり、中国に「侮るなよ」と凄む。日本も台湾を見習い、自立の道を突っ走るべきであることが正解だと、ウクライナの苦闘が教えてくれる。
雲峰は超音速で敵をぶち抜くミサイルだ。射程は秘密だが、1,200〜2,000キロメートルと噂される。北京や中国の奥地を射程に収める代物だ。2019年、台湾の新聞が「量産開始」と叫んだ。2021年、特別予算でかなり加速し、2024年10月のGlobal Taiwan Instituteの報告では、一部がもう配備済みだと囁かれている。蔡英文総統は中国の軍事圧力に「負けるか」と吠え、国防を鉄壁に固めてきた。2023年から中国軍機が台湾周辺をウロつく中、雲峰は「来るなら覚悟しろ」と睨みを利かせている。

雄風IIEは陸を狙う巡航ミサイルだ。射程は600〜1,000キロメートルと見積もられる。2011年に姿を現し、2010年代後半から実戦に投入された。2025年1月のAsia Timesが「中国沿岸を叩ける」と太鼓判を押す。2011年、中国の空母「遼寧」が動き出した日に模型を意図的に公開し、「こっちもやるぞ」と威嚇した。頭脳戦の火花だ。
雄風IIIは艦を沈める超音速ミサイルだ。射程は150〜400キロメートルで、海も陸もぶち抜く。2007年にデビューし、現在艦艇に配備されている。2019年、蔡総統が「もっと作れ」と号令をかけ、数が増えた。2016年7月、訓練で誤って漁船にあたり、死傷者が出た。戦える力はあるが、ミスは痛かった。
清天は開発中の猛者だ。射程1,200〜2,000キロメートルで、極超音速の可能性もある。2025年1月のAsia Timesが「2024年末から少しずつ配備」と伝える。将来、屏東県で移動式発射台が火を噴く予定だ。中国北部を震え上がらせる一撃が秘められている。台湾が自分独自の判断でミサイルを撃てるかは、技術と政治で決まる。全部国産で、設計から製造まで台湾の手に握られている。
2022年3月、台湾南部で発射された、独自製造の弾道迎撃ミサイル。

雲峰や雄風は昔、米国らの助けを借りたが、今は自力だ。さらに2021〜2022年、中国で試験設備を直したという考えられないようなトラブルがあった。雄風シリーズや雲峰の試験に使う精密機器の一部が故障したためだ。しかし、その後修理ルートを見直し、国内や信頼できる国(米国や日本)にシフトした。現在は技術的には全く問題はない。総統が軍を牛耳り、「自分で守る」と息巻く。米国との絆は強いが、ミサイルに口出しはない。2024年10月、米国がNASAMSを売ってくれたが、攻撃ミサイルに対する指図はない。
だが、ウクライナは違う。米国からもらったATACMS(射程300キロメートル)は強烈だが、鎖に繋がれている。2024年4月、クリミアで使ったが、ロシア本土は長い間NGだった(PBS News, 2024年4月25日)。2024年11月17日、バイデンがクルスクへの攻撃をOKしたが、北朝鮮が絡んだ特別なケースだ(The New York Times, 2024年11月18日)。自由からはほど遠い。
ウクライナの悔しさは筆舌に尽くしがたい。
2024年9月、ゼレンスキーが「制限を解け」と米国に噛みついたが、バイデンはビビって動かなかった。プーチンが「NATOが戦争に突っ込む」と脅し、火花が散った(CNN, 2024年9月13日)。ロシアの重要拠点を撃てず、「片手で戦えってか」と嘆く。2024年11月19日、ATACMSで武器庫を狙ったが、6発中5発を落とされ、成果は薄い(NPR, 2024年11月19日)とされた。米国は弾が足りないとケチる。
ただ、その状況も多少は改善され、2024年11月27日の国連安保理では、ウクライナのミサイル使用に世界がザワついた。ロシアが「オレシュニク」で反撃し、「報復だ」と吼えた(UN Press, 2024年11月27日)。ウクライナは「自衛だ」と叫ぶが、米国の鎖が重い。最近では、ウクライナが開発した。長距離ドローンを用いロシアの領土内を攻撃している。ただ、最初から長距離攻撃でロシア国内をウクライナの意思により自由に攻撃できていれば、戦況はもっと有利になっていただろう。
台湾とウクライナはまるで別世界だ。台湾は国産ミサイルを自分で撃てる。米国は味方だが、邪魔しない。ウクライナは西側の傀儡ともいえるような状況で、戦略目標に自由に手が届かなかった。台湾は中国を睨み、ウクライナは西側の顔色を伺う。立場と自立の差が大きい。
台湾の軍はウクライナをぶっちぎる。2024年の国防部報告では、常備兵16万9,000人、予備役200万人だ(Taiwan Ministry of National Defense)。F-16V戦闘機66機、自国製潜水艦「海鯤」(2024年9月28日進水、2025年運用開始)、長距離ミサイルが揃う。2025年度予算は6,200億台湾ドル(約2兆6,000億円)、GDP比2.6%だ。ウクライナは動員100万人だが、西側頼みで消耗がきつい(SIPRI, 2023年)。中国が台湾を舐めたら痛い目を見る。
台湾の強さは現場で光る。2022年8月、ペロシ訪台後に中国が演習で威張った。台湾軍は戦闘機と艦艇をぶっ放し、対空ミサイルで睨んだ(Reuters, 2022年8月4日)。2024年10月の漢光演習では、雄風IIIと雲峰がバッチリ決まり、中国に「来てみろ」と挑んだ(Taiwan News, 2024年10月15日)。中国の胡錫進(中国の記者)が「台湾は侮れねえ」と呟き、向こうもビビっている(Global Times, 2023年9月28日)。「海鯤」進水式で蔡総統が「海の新時代」とブチ上げ、中国を牽制した(CNA, 2024年9月28日)。
昨年の台湾軍事演習「漢光40号」に参加した台湾軍のF16戦闘機

ウクライナは奮闘するが、ロシアにボロボロされている。2024年11月のキーウ空爆で、防空がスカスカで民が泣いた(BBC, 2024年11月20日)。台湾は戦ってないが、準備と技術で圧倒する。中国の200万兵は怖いが、台湾海峡と精密攻撃が壁だ。台湾のミサイルは、中国の艦船をメタメタにするだろうし、中国の海上輸送力は限られている。RANDの2024年報告も「中国は計算ミスるな」と警告する。
日本も台湾と同じだ。2025年3月24日、「統合作戦司令部」が動き出し、長射程ミサイルを日本主導で撃つ(産経新聞, 2025年3月23日)。射程1,000キロメートル超の「スタンドオフミサイル」を自衛隊が握る。2027年に「トマホーク」と「12式」が来るが、米軍の助けは少し要る。それでも、日本が舵を取る。ウクライナの過去3年を見ろ。2022年からATACMSの鎖で縛られ、ロシアにやられた。日本が同じ道たどるなら、中国と北朝鮮が笑う。台湾の自立が証明するように、日本も自由に撃てるのが正解だ。
結論だ。台湾は長距離ミサイルを手にし、自分で撃てる。制限はほぼゼロだ。ウクライナは米国に縛られ、自由がない。台湾の軍はウクライナを上回り、中国をビビらせる。日本も自立を選ぶべきだ。ウクライナの苦しみがそれを裏付ける。中国が台湾を舐めれば、大火傷する。日本もこれを目指すべきだ。
台湾初の“国産”潜水艦が完成、戦略を見誤った中国の海軍膨張一本鎗のやぶ蛇―【私の論評】台湾が潜水艦建造国になったこと自体が、中国への強烈な政治・軍事的メッセージに! 2023年11月26日

2025年3月23日日曜日

米特使 “ロシアの支配地域 世界が露の領土と認めるか焦点”―【私の論評】ウクライナ戦争の裏に隠れたソ連の闇と地域の真実:これを無視すれば新たな火種を生む

米特使 “ロシアの支配地域 世界が露の領土と認めるか焦点”

まとめ
  • トランプ政権のウィトコフ特使は、ロシアが実効支配するウクライナの地域を世界がロシア領として認めるかどうかが今後の焦点だと主張し、ロシア寄りの見解を示した。ロシアは東部・南部4州で「住民投票」を強行し併合を宣言している。
  • トランプ大統領は完全な停戦後に領土の一部割譲を含む協定の可能性を示唆し、ウィトコフ特使はウクライナがNATO加盟を断念する姿勢を受け入れつつあると指摘した。
  • 3月24日にサウジアラビアで米・ウクライナ・ロシアの代表団による停戦協議が予定されており、ウクライナの領土一体性や安全保障がどう扱われるかが注目されている。
ウィトコフ特使

トランプ政権のウィトコフ特使は、ウクライナ情勢を巡るインタビューで、ロシアが実効支配している地域について「圧倒的多数の人々がロシアの統治を望んでいる」と主張し、今後の焦点は「世界がこれらの地域をロシアの領土として正式に認めるかどうか」だと述べた。これは元FOXニュースのキャスターとの対談で3月21日に公開されたもの。ロシアは3年前、ウクライナ東部および南部4州で一方的な「住民投票」を強行し、併合を宣言しており、ウィトコフ特使の発言は明らかにロシア寄りの立場を示している。トランプ大統領も同日、完全な停戦後に領土の一部割譲を含む協定の可能性に言及した。

さらにウィトコフ特使は、「ウクライナは和平合意が実現した場合、NATO(北大西洋条約機構)への加盟ができないことをほぼ受け入れていると思う」との見解を示し、ウクライナの安全保障に関する妥協が進んでいる可能性を指摘した。3月24日にはサウジアラビアで、アメリカを含む代表団がウクライナとロシアの双方と停戦に向けた協議を行う予定だが、ウクライナの領土の一体性や長期的な安全の保証といった根本的な課題がどのように扱われるのか、国際社会の注目が集まっている。

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【私の論評】ウクライナ戦争の裏に隠れたソ連の闇と地域の真実:無視すれば新たな火種を生む

まとめ
  • ウィトコフ特使の「ロシア支配地域を世界が認めるかどうかが焦点」という発言は、ロシア寄りと騒がれるが、ソ連が引いた複雑な国境線と歴史の絡みが単純ではない。
  • ソ連はボリシェヴィキ、特にレーニンとスターリンの都合で国境を無理やり決め、民族や文化を無視。クリミアもフルシチョフが1954年にウクライナにポンと渡した政治の産物だ。
  • ウクライナは西側、中央、南東部でまるで別世界。南東部はかつて「ノヴォロシア」と呼ばれ、オデッサ州からクリミアまでロシア色が濃いが、西側は西欧に近く、中央はキーウ周辺は、ウクライナの心臓だ、西と中央は、反ロシアでガチガチだ。
  • 2022年2月24日のロシア侵攻は歴史抜きで一方的な過ち。国連憲章を一方的に破り、外交を捨てた暴挙だ。
  • 停戦交渉ではロシアの責任をハッキリさせつつも、歴史と地域のリアルを踏まえ、ウクライナのさまざまな顔を尊重して現実的な道を探るべきだ。そうでないと新たな火種を残すことになる

ソビエト連邦地図

ウィトコフ特使が言い放った。「ロシアが実効支配するウクライナの地域を世界がロシア領と認めるかどうかが焦点だ」と。ロシア寄りだと騒がれるこの発言、だが、単純に白か黒かで決めつけられる話ではない。そこには複雑な歴史が絡んでいる。ウクライナとロシアの国境線は、ソ連時代に無理やり引かれたものだ。民族や文化の流れなどて無視して、政治の都合だけで線を引いた。その結果、ウクライナの中は西側、中央、南東部でまるで別世界の違いが生まれた。この違いが、今日停戦をさらに複雑にしている。

ソ連が1922年に誕生した時、多民族をまとめ上げるため、連邦制をぶち上げた。ウクライナ共和国だ、ロシア共和国だと名前をつけたはいいが、国境線は自然な分かれ目ではなかった。ボリシェヴィキ—1917年のロシア革命をぶちかました共産主義者たち、マルクス主義を掲げてガチガチの中央集権を夢見た連中—が、自分たちの都合で線を引いた。

ウクライナ東部や南部にロシア語を話す連中がいたにもかかわらず、無理やりウクライナ側にねじ込んだり、逆にロシア側に押し付けたりした。その中でもレーニン、ソ連の初代ボスだ、連邦制をゴリ押しした。スターリン、民族問題を握ってた男だ、国境の細かい調整に手を突っ込んだ。だが、1920年代でもまだグチャグチャで、国境はフラフラ動いていた。それが後に火種になったのだ。

レーニン(左)とスターリン(右)

その後のソ連はもっと狡猾だった。民族同士がケンカしないように、分断して操りやすくするために、国境をわざと複雑にした。例えばクリミア半島だ。歴史を紐解けば、クリミア・タタール人やウクライナ人と縁が深い。13世紀からオスマン帝国の傘下だったが、1783年にロシア帝国がこれを飲み込んだ。ソ連ができてからはロシア共和国の一部だった。それが1954年、フルシチョフが「ウクライナにあげる」とポンと渡した。フルシチョフがウクライナ出身だからか、経済をくっつけたい思惑か、政治のゲームだ。1991年、ソ連が崩れて、クリミアはウクライナの一部として独立した。住民の声も歴史の流れもお構いなしだった。

ウクライナの中を覗いてみれば、地域ごとにまるで別の国だ。西側、リヴィウあたりだ、ポーランドやオーストリア・ハンガリー帝国の色が濃い。ウクライナ語が響き合い、民族主義が燃え上がる。ロシアなんて目じゃない、ソ連時代から反ロシアでガチガチだ。一方ウクライナ中央、キーウ周辺は、ウクライナの心臓だ。キエフ・ルーシ(キエフ大公国)の誇りを背負い、ウクライナ語とロシア語が混ざり合いながら独立を貫く。

だが、南東部はどうだ。ドネツク、ルハンスク、クリミアだ。ここはロシア帝国の時代からロシア語が響き、ロシア人がドッと流れ込んだ。18世紀後半から19世紀、「ノヴォロシア」、新ロシアと呼ばれた土地だ。今のオデッサ州、ミコライウ州、ヘルソン州、ザポリージャ州、ドネツク州、ルハンスク州、そしてクリミアだ。時期によってはロシアのロストフ州やクラスノダール地方まで入ったこともある。ロシアが開拓の手を伸ばし、ソ連の工業化がガンガン進んだ。ロシアとの絆が強い。今、ロシアがここを握る土台になっている。

ウクライナの西部、中央部、南部、西部を示すResearchGateの地図 

だから、ロシアが「東部や南部4州は俺のものだ」と叫ぶのは、ソ連時代の複雑すぎる国境と、ノヴォロシアの歴史を盾にしている。だが、ウクライナ全体の魂を映しているかと言えば、怪しいものだ。西側や中央は「ふざけるな」と怒り、南東部はロシアに寄る人々が多い。このギャップだ。ウィトコフ特使の発言を「ロシア寄り」と切り捨てるのは簡単だ。だが、ソ連の残した厄介な遺産と、地域のバラバラな顔を見れば、そんなに単純ではない。

しかし、2022年2月24日、ロシアがウクライナに侵攻したこと、この戦争の始まりとその後のドンパチは、このような歴史や地域の違いなど関係ない。ロシアの一方的な侵攻だ。国連憲章をぶち破り、領土を踏みにじった。本来侵攻などという乱暴な手ではなく、外交でなんとかする道があったはずだ。これは、間違いなくロシアの過ちだ。

だが、今は停戦のテーブルにつく時だ。ここまでの戦争責任はハッキリさせつつも、歴史のゴタゴタや地域のリアルを無視するわけにはいかない。双方の言い分をぶつけ合い、現実的で正しい落としどころを探るしかない。ウクライナのいろいろな顔と、地域の住民の声を踏みにじるような押し付けはダメだ。交渉で未来を切り開くべきだ。

ソ連時代の災厄の精算は、冷戦を経て終わったかにもみえたが、実は終わっていなかったのだ。ソ連が残した歪んだ国境と地域の対立をきちんと見据えないと、精算なんて夢のまた夢だ。そうでなければ、新たな災いの火種を残すことになる。

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2025年3月22日土曜日

中国外相、石破首相と会談 「相互信頼と協力強化を」=報道―【私の論評】安倍の『戦略的互恵関係』とは? 中韓に甘い石破が米豪等と互恵関係を維持するのはなぜ

中国外相、石破首相と会談 「相互信頼と協力強化を」=報道

王毅

訪日中の王毅・中国外相は21日、石破首相と会談し、相互信頼を高め、協力を強化して世界にさらなる安定と確実性をもたらすべきだと伝えた。国営の中国中央テレビ(CCTV)が報じた。

報道によると王毅外相は会談で、日本は二国間関係の政治的・法的基盤を維持し、歴史問題や台湾問題に関する政治的約束を履行すべきだと述べた。

【私の論評】安倍の『戦略的互恵関係』とは? 中韓に甘い石破が米豪等と互恵関係を維持するのはなぜ?

まとめ
  • 安倍晋三は中国との関係を「戦略的互恵関係」と呼び、これは良いことには良いことで、悪いことに悪いことて返すという意味だ。2006年にの胡錦濤との会談ででこれをぶち上げ、経済と交流で「お互い得する道」を目指した。
  • 石破政権は米国やオーストラリア等とは戦略的互恵関係を堅持し、2025年のトランプ会談時の圧力に防衛費増と兵器購入で応じた。親中派石破でも、動かせないほど固い「自由で開かれたインド太平洋戦略」を継承している。
  • 一方中国や韓国には甘い顔を見せる。2024年石破は中国の挑発に経済協力でニヤけ、2023年岸田は韓国尹錫悦の基金に輸出規制緩和で応じた。互恵がグラグラだ。
  • 日本人は中国や韓国の土地を買えないのに、相手は日本の土地を買い漁る。北海道、対馬、沖縄が次々と外国資本に落ち、2025年も止まらない不条理が広がる。
  • 石破政権は互恵を貫けず、ロシアに譲歩し、中国に依存、韓国に迎合。国民の怒りが爆発し、「弱腰」「売国奴」と罵声が飛び交う。安倍の鉄拳が形骸化し、国益が食い潰される
安倍(左)、胡錦濤(右)会談

安倍首相は、中国と日本との関係を「戦略的互恵関係」と呼んでいた。2006年10月、第一次安倍政権で中国に乗り込んだ安倍は、胡錦濤と会談した。日中関係は冷え切っていた。尖閣問題も歴史問題も、火薬庫のようなものだった。それでも安倍は「戦略的互恵関係」をぶち上げた。

経済協力と人の行き来を柱に、「お互い得する道」を切り開くと語った。北京での会談後、対話が動き出した。中国は日本の技術と金を欲しがり、日本は中国市場の大きさ目をつけた。互いに「良いこと」をぶつけ合う形だ。安倍はこれを「砕氷之旅」と呼び、凍った海を壊そうとした。だが、これは甘っちょろい理想、理念ではない。相手が「悪いこと」を仕掛ければ「悪いこと」で返す鉄則が芯にあった。

その魂は今も日本の外交に引き継がれている。石破政権の下でも引き継がれている。「相手が良いことをすれば良いことで返し、悪いことをすれば悪いことで返す」。これが互恵の魂だ。石破政権はこれをどこまで貫けるのか。米国やオーストラリアとの絆は金の糸で結ばれ、親中派と噂される石破ですら動かせないほど強力なものになっている。

一方、中国や韓国には、まるで甘い汁を差し出すような顔がチラつく。「日本人は中国の土地を買えないのに、中国人は日本の土地を好き勝手に買い漁る」。この不条理が目の前に広がる。石破の外交は、安倍の遺志を継ぐフリをしつつ、どこかで何かをかけちがえている。

米国やオーストラリアとの関係は、いまでは黄金の絆だ。2025年2月、日米収納会談でトランプが貿易で日本に挑んできた時、石破は防衛費を増やし、米国製兵器の購入を約束した。オーストラリアとは2024年の「タリスマン・セイバー」で汗と笑顔をぶつけ合った。クアッドの輪は輝きを増し、インドへの円借款も2023年から途切れない。相手が「良いこと」をぶつけてくれば、日本も「良いこと」で返す。これが互恵の真髄だ。「自由で開かれたインド太平洋」は、親中派とされる石破ですら動かせないほど鉄のように固い。


だが、中国や韓国に目をやると、風向きがガラッと変わる。互恵の旗がグラグラだ。中国は尖閣周辺で挑発を繰り返す。さらに、蘇州での日本人学校スクールバス襲撃(6月24日、日本人母子が負傷し、助けた中国人女性が死亡)や、深センでの日本人学校児童刺殺(9月18日、10歳男児が死亡)など、具体的な事例として日本社会に衝撃を与えた。このような状況下の2024年11月の首脳会談で、石破は経済協力をチラつかせてニヤけた。拳を振り上げるどころか、笑顔で握手だ。2025年1月、中国が日本産水産物の規制を少し緩めた。日本は農林水産省をフル回転させ、輸出をガンガン押し込んだ。規制が中途半端でも、日本が先に膝を曲げた。

韓国はどうだ。2023年、尹錫悦が徴用工問題で基金を作った。日本企業は金を出さずに済んだが、歴史問題でまた頭を下げさせられた。2024年3月の日韓首脳会談で、石破が「未来志向」と口にした。韓国の反日教育やデモがうるさいのに、だ。Xでは「日本がまたヘコヘコした」と怒りが噴き出した。これのどこが互恵だ。中国や韓国に甘い顔を見せ、国民の腸を煮えくり返させる。石破の外交は、まるで相手に尻尾を振る犬だ。

土地の話は目を覆う。「日本人は中国の土地を買えない。中国人は日本の土地を自由に買える」。このバカげた現実は、目を覆わんばかりだ。中国は土地を共産党が握っている。日本人が手に入れられるのは、せいぜい50~70年の使用権だ。それすら政府の一声でパーだ。中国人は日本の土地をガッチリ掴む。北海道の水源地が買われ、2023年には沖縄の屋那覇島が中国人の手に落ちた。

2025年もこの流れは止まらない。韓国も似たようなものだ。日本人が韓国で土地を買うには許可がいる。日本では韓国人が対馬を買い漁る。防衛施設の近くまで韓国資本が食い込んでいる。フィリピンもそうだ。外国人は土地を買えない。日本ではフィリピン人が好きに不動産を購入する。ロシアも同じだ。国境近くは買えないが、日本ではロシア人が北海道や東北を押さえている。日本だけが大きく門を開け、相手は鍵をかける。石破はどうする気だ。

互恵が崩れる場面はゴロゴロ転がっている。ロシアとの北方領土交渉は笑いものだ。安倍はプーチンとの会談で約3000億円規模の経済協力を提案し、その一部が実現した。しかしこれによって返ってきたのは北方領土の軍事基地の強化だ。私は、政治家に関しては、是々非々で評価している。安倍氏の評価は私の中では、全体的に高いが、この点は評価できない。その後2022年のウクライナ侵攻で岸田総理は制裁を強めたが、焼け石に水だったといえこれも評価できない。ただし、安倍の中国・韓国に対する互恵関係は評価できるものだった。

韓国への対応も弱い。2018年の徴用工判決、2019年頃から日韓関係が悪化する中で、韓国の一部政治家や市民団体が東京五輪へのボイコットや、GSOMIAが失効を一方的に失効させようとしたため、2019年に日本は輸出管理厳格化し継続した。しかし、2023年に尹錫悦が手を差し伸べると、岸田はすぐ輸出規制を緩めた。中国への依存も酷い。対中輸出は2025年でも輸出全体の20%だ。トヨタは2024年に中国でEV生産を増やした。技術移転を求められても、黙って従う。「悪いことには悪いことで対応する」がどこにもない。

米国やオーストラリアとの絆は輝く。ASEANにも優しい手を差し伸べる。ベトナムやフィリピンが友好を示す。ODAや海上保安支援で返す。2025年もこの流れは続く。だが、中国や韓国にはまるで別人だ。尖閣での挑発に目を瞑り、徴用工で頭を下げる。土地の不均衡も放置だ。石破政権は少数与党でフラフラしている。外交で支持を稼ごうと必死だ。2025年2月のトランプとの会談では、貿易赤字に言い訳を並べた。バランスを取るつもりが、相手に合わせて踊っていいた。

石破政権に国民の怒りが燃え上がる。「戦略的互恵関係」を貫かない姿が、国を売るように国民には見えるのだ。米国やオーストラリアとの絆は素晴らしいが、中国や韓国には甘すぎる。2025年3月の世論調査では、「弱腰」と答えた国民が4割を超えた。Xでは「中国に土地を売り渡す売国奴」「韓国に媚びすぎ」と罵声が飛び交う。安倍が命を懸けた報酬と報復の鉄則が、ボロボロに崩れている。石破の甘さが国益を食い潰す。

ボクシングをする安倍晋三氏 AI生成画像

安倍の「戦略的互恵関係」は、報酬と報復の鉄拳だ。石破政権でもその一部は継承されている。米国やオーストラリアとの黄金の絆、インドやASEANとの協力は形を残す。だが、ロシアへの譲歩、韓国への甘さ、中国への依存がその拳を緩める。土地の不均衡は国民の心に突き刺さる。米国やオーストラリアとの関係は親中派の石破ですら動かせない。中国や韓国には利他的だ。石破政権は互恵を貫けない。

地政学の嵐が吹き荒れる中、日本の足元が揺らぐ。「互恵」を求める声が響く。石破への批判は鋭い。「戦略的互恵関係」を貫かない罪だ。国益が削られ、信頼が崩れる。安倍の遺志は形骸化する。石破政権は、このままでは名ばかりの看板を掲げる亡魂になる。日本を弱らせるとは、何たる失態か。自民党政権の次の手が試される。石破政権は一刻も早く終わらせるべきだ。

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2025年3月21日金曜日

ドイツに訪れる「アベノミクスと同様」の大変化、日本が抜け出せない「緊縮病の宿痾」―【私の論評】ドイツ経済大変貌!メルツ政権の75兆円政策で欧州株急騰、日本はどうなる?

 ドイツに訪れる「アベノミクスと同様」の大変化、日本が抜け出せない「緊縮病の宿痾」

まとめ

  • ドイツを中心とする欧州株上昇の背景には、トランプ政権の安全保障政策変化による軍事費拡大期待と、ドイツでの歴史的な財政政策転換がある。具体的には、5000億ユーロ規模のインフラ投資基金設立と防衛費増額(GDP比3%目標)が憲法改正を伴って実現しつつあり、GDP比2%相当の歳出拡大が見込まれる。
  • ドイツの新首相フリードリヒ・メルツ氏は、緊縮財政を続けてきた従来の方針を転換し、増税なしの拡張財政で経済成長を目指す。これが2025年後半から欧州経済の停滞脱却を後押しすると予想される。
  • 2025年初来の株価騰落率でドイツ(DAX+15.5%)が米国(S&P500-4.1%)や日本(TOPIX-2.5%)を大きく上回り、金融市場に大きな変化をもたらす可能性がある。
  • 一方、米国株はトランプ政権の関税政策への不確実性、日本株は石破政権の緊縮財政と減税失敗が低迷の要因となり、欧州株との明暗が分かれている。
  • ドイツの政策転換は、メルケル体制からの脱却と安全保障環境変化への対応を意味し、経済停滞や社会不安への不満が背景にある転換点として注目される。
フリードリッヒ・メルツ独首相

 現在ドイツを中心とする欧州株が上昇している理由は、トランプ政権の安全保障政策の変化を背景に、欧州各国が軍事費拡大に踏み切る政治決断への期待が高まったためである。

 特に、長年緊縮的な財政政策を続けてきた経済大国ドイツでは、2月の総選挙でキリスト教民主同盟・社会同盟(CDU・CSU)を率いるフリードリヒ・メルツ氏が勝利し、首相就任後、大胆な政策転換を進めている。

 具体的には、5000億ユーロ規模のインフラ投資基金(GDP比11%)を設立し、防衛費を現在のGDP比2%前後からNATO目標の3%へ増額する計画を推進。

 これに伴い、財政規律を緩和する憲法改正が緑の党との合意を経て実現する見込みだ。

 この政策により、2025年後半から10年以上にわたりGDP比1%の歳出拡大が続き、インフラと防衛費の重複を考慮してもGDP比2%相当の追加歳出が期待される。

 さらに、増税を伴わず減税も検討されており、拡張財政が経済成長を押し上げる見通しだ。
これがドイツ経済の停滞脱却と金融市場の変革をもたらす歴史的転換点とされ、欧州株上昇の原動力となっている。

 一方、米国株はトランプ政権の関税政策や発言への不確実性から2025年初来でS&P500が-4.1%と停滞。日本株も石破政権下で減税が実現せず緊縮財政が続き、TOPIXは-2.5%と低迷している。ドイツの政策転換は、メルケル時代からの政治体制変化や移民問題、ウクライナ紛争といった脅威への対応としても注目され、欧州経済全体の回復期待を高めているが、その影響が金融市場にまだ十分織り込まれていないのではないか。

 この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になって下さい。

【私の論評】ドイツ経済大変貌!メルツ政権の75兆円政策で欧州株急騰、日本はどうなる?

まとめ
  • ドイツのメルツ新政権は、緊縮財政から転換し、5000億ユーロで経済を活性化。DAXは15.5%上昇だが、株価への反映はまだ不十分で、後から急上昇の可能性も。
  • メルツの政策とアベノミクスは、経済停滞打破と株価上昇で似るが、メルツは安全保障重視、アベノミクスはデフレ対策が特徴。
  • 日本はコロナ禍で100兆円の補正予算を投入し経済を支えたが、石破政権の緊縮財政でドイツのような転換は見られない。
  • ドイツの成功は政権交代が鍵で、日本も石破政権崩壊で緊縮脱却、アベノミクス再来の可能性がある。
  • メルツは減税と財政拡大で企業を後押し、アベノミクスは金融緩和を重視し、アプローチが異なるが、目指すところは同じである。

メルケル

ドイツの政策転換は、電撃的な衝撃だ。メルケル時代のケチケチした緊縮財政から、メルツ新政権が大胆に金を使う路線へ舵を切った。移民問題やウクライナ紛争という火急の脅威に立ち向かうため、5000億ユーロ(約75兆円、1ユーロ=150円換算)のインフラ投資と防衛費増額に突っ込む。憲法改正までぶち上げて、欧州経済に活を入れる気だ。メルケルのお花畑的優等生路線から、保守派の硬派な姿勢への転換が火種だ。

金融市場はすでにザワついている。DAXが15.5%も跳ね上がった。だが、まだこの変化の大きさが株価に反映されていないようだ。株価は未来を先読みするバロメーターだ。普通なら、6~12カ月先を見越して動く。なのに今回は、不確実性が影を落とし、投資家がその凄さを掴みきれていないようだ。

米国株や日本株がグズグズしている中、欧州株が光っている。それでも、アベノミクスの時のように、後から急激に織り込まれる可能性がある。ドイツの変貌はとんでもないが、株価にその全貌が映っていないのだ。簡単に言えば、もっと騒がれてもいいのに、まだ過小評価の段階だ。

アベノミックスでは、大胆な金融政策が一番目の矢とされていた

メルツの経済政策とアベノミックスを並べてみると、面白い。どっちも経済に喝を入れる点では似たようなものだ。メルツは2025年、緊縮の鎖をぶち切り、5000億ユーロ(約75兆円)のインフラ投資と防衛費増額をぶち上げた。経済をブーストする積極財政だ。アベノミックスも2013年、安倍晋三が公共事業やインフラに金をつぎ込んで景気を浮上させた。どっちも停滞をぶっ壊すのが狙いだ。メルツは減税で企業の尻を叩こうとする。アベノミックスも法人税を下げて、民間を焚きつけた。株価が跳ねるのも一緒だ。メルツの下でDAXが15.5%上がり、アベノミクス初期は日経平均が50%以上ぶっ飛んだ。

だが、違うところも大きい。メルツは安全保障が火種だ。トランプの圧力やウクライナ紛争で、防衛費をGDP比3%まで引き上げる。日本でも似た動きがあった。コロナ禍だ。2020~2021年、安倍政権が60兆円、菅政権が40兆円、合計100兆円(当時のGDPギャップに匹敵)の補正予算を増税なしでぶち込んだ。国債を大量に発行し、日銀がそれを買い取ってコロナ禍対策を大々的に行った。これが大当たりだ。経済がズタボロになるのを食い止め、2021年にはGDP成長率が2.1%まで持ち直した。

アベノミックスを説明する安倍首相(当時)

当時ドイツでは2020年に失業率が4.9%から6.1%にグンと上がったのに、日本は2.8%から3.0%でほぼピクリともしなかった。アベノミックスの柔軟な対応が効いた証明だ。一方、アベノミックスの本命はデフレをぶっ潰すことだ。金融緩和と円安でガンガン攻めた。メルツは金の使い方に頼りきりで、金融の話はほとんど出てこない。これには、EUの特殊事情がある。

そもそもドイツは独自に金融政策を実施できない。ユーロ圏の一員として、欧州中央銀行(ECB)が金融政策を管理する。ドイツ連邦銀行はECBの方針に従う。財政政策はある程度独自にできるが、金融政策はECBの枠組み内なのだ。さらに、メルツは憲法改正で財政の縛りを緩めるが、アベノミクスは、メルツみたいに憲法改正はせず、既存の仕組みでやりくりした。

つまり、メルツとアベノミックスは経済をぶち上げる点で似てるが、メルツは安全保障で財政を振り回し、アベノミクスはデフレ退治で金融を動かした。コロナ禍の日本は、メルツの現在の危機対応に似ており成功を収めた。今後、ドイツは経済政策で勝ちに行く可能性が高い。メルツの豪腕が経済を引っ張るだろう。だが、日本はアベノミックスで勝ったのに、それが軽んじられている。

ドイツの成功は政権交代が鍵だ。日本も石破政権が崩れれば、同じ道を突っ走れるかもしれない。緊縮の呪いから抜け出し、アベノミックスの再来を狙えるかもしれない。政権がひっくり返れば、日本も化ける可能性も十分あるのだ。しかも、ドイツと比較すれば、日本は独自の金融政策をとることもできる。これはドイツと比較すれば、かなり有利だ。もうそろそ、日本もドイツと同じように、長年の緊縮財政の宿痾から逃れるべきだ。

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宮沢税調会長の次男、公認候補から落選…許されぬ大世襲、「103万円の壁」潰した “ラスボス” 批判も一因か―【私の論評】自民党広島5区の衝撃決定!世襲打破で新時代到来か? 2025年3月20日

2025年3月20日木曜日

宮沢税調会長の次男、公認候補から落選…許されぬ大世襲、「103万円の壁」潰した “ラスボス” 批判も一因か―【私の論評】自民党広島5区の衝撃決定!世襲打破で新時代到来か?

宮沢税調会長の次男、公認候補から落選…許されぬ大世襲、「103万円の壁」潰した “ラスボス” 批判も一因か

まとめ
  • 自民党広島県連の候補者決定3月17日、「広島5区」の次期衆院選公認候補に弁護士の今井健仁氏を選び、宮沢洋一参院議員の次男・宮沢二郎氏が落選。野党が強い選挙区で世襲批判を避け新顔を採用。
  • 世襲批判と父親の影響二郎氏は宮沢喜一元首相の地盤を引き継ぐ3代目候補として当初優位だったが、決選投票で逆転。洋一氏の「103万円の壁」撤廃反対へのネット批判が落選を後押し。
  • 賢明な判断と新時代昔なら世襲で決まったが、今は勝てない時代。県連の選択は賢明とされ、Xで支持が広がる。世襲打破の意地を示した可能性がある。

 3月17日、自民党広島県連は次期衆院選の「広島5区」公認候補に弁護士の今井健仁氏を選んだ。これにより、税調会長・宮沢洋一参院議員の次男、宮沢二郎氏は落選した。今井氏は京都出身で、2017年から法律事務所を運営し、2024年夏に尾道市に移住して地域創生に取り組んでいる。

 広島5区は旧6区とほぼ同じエリアで、かつての亀井静香氏や現職の立憲民主党・佐藤公治氏が強い野党地盤だ。地元紙記者は、宮沢喜一元首相の地盤を引き継ぐ二郎氏が当初有利だったが、公募の決選投票で今井氏に逆転されたと語る。

 県連は世襲批判や親子同時議員への反発を避け、野党が強い選挙区で新顔を選んだ。自民党関係者は、洋一氏が「103万円の壁」撤廃に反対し「国民の敵」とネットで叩かれた影響で二郎氏が切られたと見る。昔なら世襲で決まっただろうが、今は地方でも勝てない例があり、県連の判断は賢明だったとの声もある。Xでは「ナイス」「朗報」と賛同が広がり、広島県連は世襲打破の姿勢を示したのか。

 この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になって下さい。

【私の論評】自民党広島5区の衝撃決定!世襲打破で新時代到来か?
まとめ
  • 自民党広島県連の候補者決定3月17日、次期衆院選「広島5区」の公認候補に弁護士・今井健仁氏を選び、宮沢洋一参院議員の次男・宮沢二郎氏は落選。野党が強い選挙区で、世襲批判を避けるため新顔を立てた。
  • 世襲への批判と逆転劇広島5区は宮沢喜一元首相の地盤。二郎氏は当初有利だったが、公募の決選投票で今井氏に敗れた。宮沢洋一氏への「103万円の壁」撤廃反対によるネット批判が影響。
  • 時代変化と県連の判断昔なら世襲で決まったが、二階伸康氏の敗北例のように今は違う。県連は賢明な選択をし、Xで「グッジョブ」と支持された。
  • 世襲問題の本質世襲自体は悪ではないが、地盤や知名度での選挙優位性が批判の的。広島5区の選択は自民党の戦略見直しの契機となるかもしれない。
  • 新時代への期待今井氏の登用は党刷新の試み。民主党の外部人材活用を彷彿とさせ、有権者主導の政治への転換の第一歩として注目されるものの、経済政策の失敗で長続きしなかったことを認識すべき。
3月17日、自民党広島県連は次期衆院選の「広島5区」公認候補に弁護士の今井健仁氏を決めた。税調会長・宮沢洋一参院議員の次男、宮沢二郎氏は落選だ。今井氏は京都生まれ。2017年から法律事務所を切り盛りし、2024年夏には尾道市に移住して地域創生に汗を流している。広島5区は、2022年の区割り変更前の旧6区とほぼ同じエリアだ。かつて政務会長を務めた亀井静香氏が2005年に自民党を飛び出し、立憲民主党の佐藤公治氏が連勝を重ねる、野党の牙城である。
地元紙「中国新聞」が内幕を明かす。広島5区は、宮沢喜一元首相が長年地盤を固めた地域だ。だから二郎氏の立候補は、3代目の世襲そのものだった。最初は宮沢元首相の名声と人脈がものを言い、二郎氏がリードしていた。公募には6人が名乗りを上げ、4人が最終選考に残った。1回目の投票では二郎氏が今井氏を上回ったが、決選投票で今井氏が逆転した。
県連は二郎氏を推せば世襲と叩かれ、親子揃って国会議員になることに批判が殺到すると読んだ。野党が強い選挙区だ。新鮮な顔を立てたかったのだろう。自民党関係者が声を潜める。二郎氏の落選は、父親の影響がデカい。宮沢洋一氏は税調会長として、財務省の威を借り、国民民主党の「103万円の壁」撤廃に真っ向から反対する旗頭だ。ネットでは「国民の敵」「ラスボス」と罵倒が飛び交う。洋一氏への怒りが予想外に膨らみ、二郎氏を諦めるしかなかったのではないか。昔なら1回目の投票で二郎氏が決まっていたはずだ。
だが、昨年の衆院選で二階俊博元幹事長の三男・二階伸康氏が和歌山2区で世耕弘成氏に敗れたように、地方でも世襲が勝ちを保証しない時代だ。広島県連の決断は賢いと言える。Xでは「広島のみなさん、グッジョブ!」「久々の明るいニュースだ」「バンザイ! マジ嬉しい!」と歓声が上がる。広島県連は、でかい世襲を許さない意地を見せたのかもしれない。
この出来事は、政局を揺るがす。自民党は長年、世襲で勢力を保ってきた。だが、国民の政治への不信が燃え上がり、世襲議員が選挙で有利な点が槍玉に挙がっている。世襲そのものが悪だというのは間違いだ。世襲を否定すれば、憲法14条の「法の下の平等」や職業選択の自由を踏みにじる恐れがある。問題は、世襲議員が地盤や知名度で選挙を有利に進めることだ。それが有権者の選択を歪め、政治の幅を狭めると批判が噴き出す。
2021年の衆院選で二階伸康氏がコケたり、安倍晋三元首相の地盤を巡るゴタゴタがあったり、世襲が必ず勝つわけではない流れが続いている。広島5区で今井氏が選ばれたのは、自民党が選挙での有利さ批判にビビり、作戦を立て直した証だ。宮沢洋一氏が「103万円の壁」撤廃に反対し、ネットで叩かれ、支持率が落ちるリスクが二郎氏の落選を後押しした。県連は批判をかわしつつ、党の印象をリフレッシュさせようとしたのだろう。
Xの反応は、世襲の有利さ打破を国民が支持している証だ。2023年の世論調査でも、自民党議員の世襲に反対が6割を超える。広島5区は野党の巣窟だ。世襲候補を立てれば、野党が「自民党の古臭い体質」をネタに攻め立て、苦戦は確実だ。今井氏は野党への切り札として期待がかかる。彼の経歴は政策への意欲と地元密着を売り込める。県連の判断は、野党の優勢をひっくり返す攻めの策だ。
宮沢洋一氏が党内で力を持つ一方、その政策が地方の選挙で足を引っ張った。県連が二郎氏を切った裏には、中央の意向より地元の現実を優先する姿勢がある。これは派閥の弱体化や地方の自主性が強まる自民党の内情を映し出す。2024年の総裁選でも地方票がバラけ、中央の支配が効かなくなった。
この出来事は、世襲の選挙優位性が限界を迎え、新しい政治の芽が出たことを示す。今は有権者の意識やSNSでそれが通用しない。立憲民主党や国民民主党が地元の実績や新鮮さを重視すれば、政治全体が「家柄」の有利さから「実力」に変わる兆しだ。
自民党は2025年現在、支持率が落ち、党内もゴチャつく。2024年のマスコミ野党は政治資金不記載問題ばかりを強調するが、その実経済政策への不満、財務省への不満が尾を引き、信頼を取り戻すのが急務だ。広島県連の決断は、危機感から党のイメージを一新し、次期衆院選で議席を守る狙いだ。今井氏のような外からの人材登用は、派閥や世襲の有利さに頼らず、多様な力を引き出す方向を示す。これは、2010年代に民主党政権が、外部から細野豪志氏、古川元久氏、藤井裕久氏、岸本周平氏、玄葉光一郎氏といった新鮮な人材を引っ張り込み、『政治主導』や『脱官僚』のイメージを打ち出したのを思い起こさせる。
Xの盛り上がりは、有権者が候補選びに関心を燃やし、声を上げている証だ。SNSの時代、選考の透明性が求められ、密室政治は通用しない。この流れが全国に広がる可能性は十分ある。広島は平和運動や市民活動が盛んで、政治家の特権意識に反発する土壌がある。亀井静香氏が離党後も支持を得たのは、この地域の独立心が関係している。
広島5区での今井健仁氏の選出は、自民党が世襲の選挙優位性批判や支持率低下に直面し、地方が柔軟で戦略的な一手を打った結果だ。党のイメージ刷新や野党への対抗力アップに効く。有権者が政治を動かす流れを象徴する。広島県連の意地は、自民党全体に選挙戦略を見直させる火種になるだろう。次の衆院選での広島5区の結果は、全国の政治の流れを占う試金石だ。

この出来事は一地方の話で終わらない。日本政治の古い殻をぶち破り、有権者の声が響き渡る新時代への第一歩となり得る。世襲の有利さが消え、多様な人材が火花を散らす政治が広がれば、日本の民主主義は健全で熱いものに生まれ変わる。広島5区の選択は、その始まりとして歴史に名を刻む可能性がある。有権者主導の政治が現実になる未来はすぐそこだ。この出来事は、希望の炎となって燃え上がる。

ただし、民主党政権は外部から新しい人材を引っ張り込んでも長続きしなかった。新人を取り込むだけではダメだ。真に国民経済を良くする政治があってこそ、政権は続く。民主党政権では、馬淵澄夫氏(経済やインフラ政策に明るい)や金子洋一氏(経済企画庁出身)のようにマクロ経済に詳しい人材がいた。しかし、幹部は彼らの意見を無視し、財務省寄りの緊縮財政や増税路線を押し進めた。その結果、経済成長よりも財政健全化を優先する政策が続き、アベノミクスのような大胆な景気対策は生まれず、政権は短命に終わった。

金子洋一氏

安倍政権を見ろ。アベノミクスで経済を回し、特に雇用を目に見えて誰にもわかるように劇的に改善したからこそ、長期政権を築けた。新顔を使うにしても、まず国民の暮らしを立て直すのが肝心だ。広島の決断がその第一歩になることを願う。

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財務省が“復興増税の防衛財源転用”をめぐって福島選出の森雅子・元法相の予算委質問に圧力 与党議員が“国会裏工作”を暴露する異例事態に

まとめ
  • 財務省の質問介入: 3月5日の参院予算委員会で、自民党の森雅子元法相が、財務省が復興予算に関する質問を石破首相にしないよう圧力をかけたと暴露。財務省は復興費用を地元負担とし国の負担を減らす意図から質問を回避させたかったとされる。
  • 復興予算の方針と背景: 行政レビューで地元負担が提案され、復興庁は2025年度で復興事業終了を計画。財務省は復興増税の一部を防衛財源に転用する方針で、森氏の質問を避けたがる理由に繋がる。
3月5日の参院予算委員会で、自民党の森雅子元法相が財務省の圧力を暴露

 3月5日の参院予算委員会で、自民党の森雅子元法相が、財務省が東日本大震災の復興予算に関する質問を石破首相にしないよう圧力をかけたと暴露する場面があった。森氏は、質問を予告したところ財務省が「ちゃんとやりますから」と懇願してきたと明かし、その意図に疑問を抱いたと述べた。財務省は、復興費用を地元負担とし国の持ち出しを減らす狙いから、森氏の質問を避けたかったとみられる。行政事業レビューでは有識者から復興交付金の現行制度見直しや地元負担が提案されており、復興庁も2025年度で復興事業を終了する方針だ。

 一方、財務省は復興増税の一部を防衛財源に転用する計画を進めており、その姿勢が背景にある。国会では与野党議員への「質問取り」が常態化しているが、財務省は野党には慎重に接しつつ、与党議員にも圧力をかける実態が浮き彫りに。政治アナリストの伊藤惇夫氏は、財務省の誘導的手法が永田町では周知だと指摘する。森氏は財務省の介入にも屈せず、質問権を貫く覚悟を示した。財務省の増長ぶりが自民党議員から公然と批判される異例の事態となっている。

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【私の論評】財務省の闇が暴かれた!森雅子暴露で国民激怒、デモ拡大中

まとめ
  • 森雅子の暴露: 2025年3月5日、元法務大臣の森雅子が参院予算委員会で、財務省が復興予算に関する質問を石破首相にしないよう圧力をかけたと暴露。財務省の権力が国会に及ぶ証拠だ。
  • 財務省の予算支配: 毎年110兆円の国家予算を握り、2011年の復興予算32兆円も仕切った。被災地より自分たちのルールを優先し、2025年には復興費を地元に押し付け、防衛費にカネを回す企みが発覚。
  • 歴史的な権力: ロッキード事件(1976年)や森友学園問題(2017-2018年)など、財務省(旧大蔵省)の暗躍や不正が繰り返し暴かれ、予算と税制で国を操ってきた過去がある。
  • 安倍・岸田・石破との対立: 安倍晋三は『回顧録』で財務省の硬直性や増税押しを批判。岸田は2023年防衛費増税、石破は2025年公共投資削減で財務省に従い、経済を低迷させた。
  • 国民の怒りとデモ: 2024年12月から全国で「財務省解体デモ」が拡大。2025年3月14日には東京で1000人以上が「国民の敵」と叫び、財務省の腐敗に怒りが爆発している。
財務事務次官 新川浩嗣

2025年3月5日、参院予算委員会でとんでもない爆弾が落ちた。元法務大臣の森雅子が、財務省から復興予算の質問を石破首相にぶつけるなと圧力をかけられたとぶちまけたのだ。法務大臣までやった森氏が、国会で財務省の汚い手を名指しで暴いた。この事実は大きい。財務省が日本で一番の権力者というを陰謀論として笑い飛ばすわけにはいかない。過去の事件や証拠をひっくり返せば、その恐ろしい力がイヤでも目に入る。安倍晋三の『安倍晋三回顧録』(2023年、中央公論新社)でも、財務省の横暴ぶりが赤裸々にぶちまけられていて、森氏の暴露としっかりと繋がっている。

財務省の力の根っこは、予算を握ってることだ。毎年110兆円もの国のカネを好き勝手に仕切る。2011年の東日本大震災後、復興予算32兆円を動かしたのも財務省だ。被災地の自治体は「査定が厳しすぎてカネが来ない」と泣き言をこぼした。宮城県の首長は「復興は現場じゃなく財務省の頭で決まる」と吐き捨てた。

今回のケースでも、復興費を地元に押し付け、国がカネを出さないように企んだ財務省が、与党議員にまで口止めをかけたのだ。復興庁が2025年度で復興事業を終わらせると言い出した裏で、財務省は復興増税の一部を防衛費に回す気だ。森氏の質問が邪魔だったのは、こんな汚い企みがバレるのが怖かったからだ。『安倍晋三回顧録』でも、安倍は復興予算で財務省が「枠を超える提案は絶対ダメ」と頑なだったと怒ってる。「国家の危機より自分たちのルールを守るのに必死」とぶちまけ、その硬さが復興を邪魔したと書いている。

歴史を振り返れば、財務省の権力はもっと危ない。1976年のロッキード事件、田中角栄が逮捕された裏で、大蔵省が怪しい動きをしてたと国会で噂が飛び交った。田中の「日本列島改造論」はド派手なカネ撒き政策だったが、大蔵省に潰された。1955年の高度成長期、池田勇人が大蔵省のボスとして吉田茂の下で公共投資をケチった。「国の礎は財政健全化だ」と言い張り、他を黙らせて国を動かした。

『安倍晋三回顧録』では、安倍が消費増税で財務省とバチバチにやり合った話が熱い。2014年と2019年の増税を財務省がゴリ押しした時、「経済が死んでも増税を急ぐ連中に腹が立った」とぶちまけてる。2014年の増税で経済がガタ落ちした経験から、「財務省の言いなりじゃ国が終わる」と悟り、再増税を延ばした。


1998年の接待問題では、大蔵省の幹部が金融機関から甘い汁吸って逮捕され、組織がぶっ壊された。国会で「大蔵省は霞が関の王様だ」と叩かれ、蔵相も事務次官も辞めた。100人以上が処分されたが、財務省に生まれ変わっても予算の力は手放さない。

2001年、塩川正十郎が「財務省は日本の屋台骨」と胸張った言葉がその傲慢さを表している。1995年、東京税関長が金融機関から接待受けて、事務次官がクビになった。2017-2018年の森友学園問題では、国有地を安く売り払い、文書を改ざんしたのがバレた。

佐川宣寿は「記録はない」とシラ切ったが、嘘がバレて辞任。国会を騙すほどの図太さだ。2008年の「居酒屋タクシー」では、職員がタクシー運転手からビールや商品券もらって、600人以上が処分された。麻生太郎が「体質直せ」と叫んでも、何も変わらなかった。

過去の暴露も山ほどある。ロッキード事件、接待問題、森友学園、居酒屋タクシー、税関長の接待スキャンダル。財務省の腐った体質が何度も暴かれてきた。森氏の今回の暴露は、与党議員がその場でぶちまけたって点で異常だ。法務大臣時代、財務省と予算バトルした森氏は、その力を骨の髄まで知ってる。

政治アナリストの伊藤惇夫が「財務省の国会工作は永田町じゃ当たり前」と言うように、与野党問わずその魔の手は伸びてる。『安倍晋三回顧録』でも、安倍は財務省を「霞が関の頂点」と認めつつ、「国益より自分たちの理屈を押し通す」と警告。アベノミクスで財務省がカネを渋った時、「成長を殺す元凶」とぶった切り、自分の判断で突き進んだ。

岸田文雄も石破茂も、財務省の犬だ。岸田は2021年に「新しい資本主義」とかカッコつけたが、財務省に引っ張られて2023年に防衛費増税を決めた。国民のカネが減り、消費が凍りついた。日経平均が2024年に4万円超えても、実質賃金は17カ月連続マイナス(2024年10月時点)。庶民は苦しむばかりだ。

石破も2024年10月に首相になった途端、財務省のケチ路線に染まり、2025年度予算で公共投資を絞った。復興予算を地元に押し付けるのも、森氏が暴いた財務省の企みそのもの。GDP成長率は2024年度で約1%と低空飛行、国民は息も絶え絶えだ。


今、全国で「財務省解体デモ」が燃え上がってる。2024年12月から火がつき、2025年3月14日には全国12カ所で一斉に爆発。東京・霞が関の財務省前じゃ1000人以上が集まり、「消費税やめろ」「カネを出せ」と叫んだ。SNSで広がり、北海道から福岡まで怒りが響き合ってる。加藤勝信財務相は「生活がキツいのが原因」と認めたが、解決策はゼロ。デモの連中は「財務省は国民の敵」と吠えてる。

結論だ。財務省は日本の癌であり、この国を食い潰す寄生虫どもだ。予算を牛耳り、税金をむしり、国民を貧乏に叩き落として自分たちだけ肥え太っている。森氏の暴露もデモの怒りも、財務省が国民を舐め腐ってる証拠だ。岸田も石破も、財務省の尻尾振って経済をぶっ壊した共犯者だ。復興を邪魔し、経済を殺し、国会を玩具にするこの腐れ集団をぶち壊さなければ、日本は終わりだ。今、国民が立ち上がっている。この怒りを力に、財務省をぶっ潰せ!

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