2018年12月31日月曜日

米国が韓国・文政権を見放す日は近い―【私の論評】日米が韓国・文政権を見放すにしてもその前にやるべきことがある(゚д゚)!

米国が韓国・文政権を見放す日は近い

北朝鮮にひたすら接近する韓国、トランプ政権の政策を骨抜きに

文在寅大統領

 韓国の文在寅政権は北朝鮮との融和を最優先し、米国が求める北朝鮮の非核化を真剣に考えていない。トランプ政権内外では、文政権に反対する韓国内の保守派への期待が急速に高まってきた──。

 米韓関係のこうした不穏な現状が、アジア報道で実績のある米国のベテラン記者によって報じられた。

 韓国海軍が海上自衛隊の哨戒機にレーダー照射した問題で日韓関係はさらに悪化する気配を見せているが、亀裂が広がりつつあるのは米韓関係も同様だ。北朝鮮への対応を巡る米韓のギャップは、日本の安全保障にも複雑な影響を及ぼしそうである。

米国の政策に反する文政権の融和政策

 ワシントンを拠点とするネット新聞「デイリー・ビースト」は12月19日に掲載された長文の記事で、米国において文在寅大統領への不信が広がっている状況を伝えた。記事の筆者は米国メディア界でアジア報道の最長老として信頼度の高いドナルド・カーク記者だった。

ドナルド・カーク氏(写真はブログ管理人挿入 以下同じ)

 カーク記者は1960年代のベトナム戦争報道を出発点として、朝鮮半島、日本、東南アジア、中国などのアジア情勢を一貫して報じてきた。ロサンゼルス・タイムズ、USAトゥデイ、シカゴ・トリビューンなど米国主要新聞の特派員を務め、多数のジャーナリズム賞を受賞した。現在はフリーとしてアジアとワシントンを往来して、活発にアジア関連報道を続けている。

 そのカーク記者が最近、韓国発の記事を執筆した。見出しは「韓国の右派が台頭し、トランプ大統領と金正恩の平和を崩しそうだ」と付けられていた。

 この記事でカーク記者は、韓国の文在寅大統領が金正恩政権への経済協力など融和政策を進めており、その政策は北朝鮮の非核化を目指すトランプ政権の政策を骨抜きにすることになると指摘する。韓国内では、文政権に反対する右派が米韓同盟の重要性を主張して、同政権への抗議を強めているという。

 カーク記者による本記事の根幹は、韓国の文政権が米国の超党派の政策に反する行動を取っているとする厳しい糾弾でもあった。

トランプ政権が文政権に抱く不信の念

 カーク記者の報道の骨子は以下のとおりである。

・現在、韓国の首都ソウルで毎週、開かれる文在寅大統領への抗議デモは数千人から万単位へと広がり、金正恩政権との融和を求める文政権のリベラルな政策に対して、右派、中道派からの批判の勢いが高まっている。文政権への支持率も2017年の同政権発足以来、初めて50%を割り、これまでで最低となった。

文在寅大統領への抗議デモ

・文大統領は、米国が最優先する北朝鮮の完全非核化という大きな目標を軽視して、南北開通鉄道の開設など北の経済を利するプロジェクトを推進しようとしている。だが、南北鉄道構想に関わる韓国側の当事者たちは誰もが、北朝鮮の技術やインフラは南北鉄道開設を可能にする状態にはなく韓国側の一方的な持ち出しになると指摘する。

・文大統領のこの態度はトランプ政権の政策への事実上の反対であり、北朝鮮への甘い幻想の産物だともいえる。このまま文政権の対北政策が進めば、北朝鮮は非核化を実現することなく韓国との融和や韓国からの経済支援を獲得し、トランプ政権の政策を骨抜きにしてしまう。そのためトランプ政権側にはすでに文政権への強い不信や批判が生まれている。

 カーク記者は、ソウルだけでなく、北朝鮮との国境の非武装地帯に近い京畿道の南北鉄道開設計画の拠点も訪れて、文大統領の北朝鮮への経済協力がきわめて非現実的だという判断が文政権周辺にも広がっている状況を報告していた。その結果、文政権はトランプ政権の北朝鮮政策を骨抜きにして、米韓同盟の基盤までを侵食する危険があるという警鐘を鳴らしていた。

朝鮮半島を分断する南北軍事境界線上の共同警備区域で警備に就く朝鮮人民軍の兵士たち

韓国の保守派・右派の動きに要注意

 さらにカーク記者によると、韓国内部で、文政権の北朝鮮に対する政策や認識に反対する右派・中間派の動きが米国の政策にも影響を及ぼす可能性があるという。同記者は次のように述べる。

・文政権への反対派は、北朝鮮の金正恩国家委員長を残虐な人権弾圧の独裁者として非難し、金委員長のソウル訪問にも強く反対する。同時に米国との連帯を強調し、米韓同盟の重要性を改めて訴える。トランプ政権は、北朝鮮の完全非核化を主張する韓国の保守派の主張が拡大し、文政権にも影響を及ぼすことを期待している。

・だが韓国の保守派は、金委員長をあくまで敵視する点でトランプ政権の対北認識に合致しない部分もある。つまり、トランプ政権は、金正恩氏が非核化を公約どおりに進めることを条件として協調姿勢をとるのに対して、韓国内の保守派は金政権との協調自体にも反対する。その保守派のパワーの広がりは、トランプ政権の対北政策の土台をも崩しかねない。

 以上のように、韓国内の保守派・右派は、文政権の対北融和政策に激しく反対すると同時に、米韓同盟の堅持を主張する。ただし、金正恩委員長とその政権をどうみるかについては、トランプ政権の政策が甘すぎるとする傾向もみられる。そのため、仮に保守派・右派が韓国民の支持を高めた場合、米国政府の対北政策を一部否定する動きにまでつながる可能性がある、ということになる。

 韓国内部における文政権への支持の状況は、日本にも大きな余波をぶつけることになる。韓国内の保守派・右派の動向には十二分の注意が必要だといえよう。

【私の論評】日米が韓国・文政権を見放すにしてもその前にやるべきことがある(゚д゚)!

冒頭の記事に、「韓国海軍が海上自衛隊の哨戒機にレーダー照射した問題で日韓関係はさらに悪化する気配を見せている」とありますが、この事件は米韓関係を悪化させる可能性もあります。

そもそもこの事件の真相に関して、様々な筋がいろいろ分析していますが、なかなかしっくりきません。

実は、韓国以外にも似た事例は過去にありました。1987年の「対ソ連軍領空侵犯機警告射撃事件」です。日本の領空を侵犯したソビエト軍偵察機に対して、自衛隊が実弾警告射撃を行いました。日本はソ連に抗議し、「ソ連は計器故障による事故」として関係者を処分しました。その後もろもろのやり取りはあったのですが、基本的にはソ連側の処分をもって終わった話です。

ソ連軍偵察機に実弾警告射撃を行った第302飛行隊所属のF-4EJ(同型機)

ここからもわかる通り、今回の事件もおそらく韓国が「偶発事故」として関係者を処分していれば、それで終わった案件です。もしも韓国側が、「日本が映像記録を残していないだろう」と考えていたなら、現状認識不足は致命的です。

そうではなく「日本政府はまさか映像を公開しないだろう」というような、日本に対する甘えが、現場にも政府上層部にもあるのかもしれません。これは、決して友好国として望ましいものではありません。

もしもこのほかに、韓国側に「正直に言えない理由」があるのだとすれば、それは日韓関係においてかなり重症であるといえると思います。
そのことについて、28日の読売新聞で、興味深い記事がありました。それは、韓国が日本海周辺で密漁していたと思われる北朝鮮の漁船を日常的に救助していたからというものです(https://www.yomiuri.co.jp/politics/20181228-OYT1T50096.html?from=tw)。これは、確定的証拠はない仮説にすぎないですが、確かに防衛省が公表した動画とも整合的です。
現場の能登半島沖は、好漁場の「大和堆」の周辺で、北朝鮮漁船によるイカの密漁で問題になっているところです。「大和堆」は、平均1750メートルと深い水深の日本海にあって、浅いところで、好漁場になっていますが、ここは日本の許可なしでは漁ができない排他的経済水域内です。
しかし、この数年、大和堆の海域には中国や北朝鮮の漁船が大量に押し寄せ、密漁をしているのは周知の事実です。水産庁の取締船や海上保安庁がそれらの漁船を追い出していますが、手が回らない状態です。
北朝鮮は、現在国連の経済制裁を受けているので、石油は手に入りにくいですが、大和堆にやって来る漁船は、北朝鮮軍からの石油割当を受けているはずなので、軍の指揮下にあるとみて良いでしょう。
その北朝鮮の密漁漁船を韓国軍が(日常的に)救助していたとすれば、国連の制裁決議を北朝鮮に課している国際社会は「韓国が北朝鮮の国連制裁決議の尻抜けを手助けしていた」というように見ることでしょう。
そうして、これは北朝鮮に対して前のめりの文在寅大統領の行動をみていれば、本当に尻抜けを手助けしているということも十分に考えられます。
実際、韓国の東海地方海洋警察庁(大韓民国海洋水産部隷下の沿岸警備隊)が6月11日早朝、エンジンの故障と浸水により北東部の江原道・束草沖を漂流していた北朝鮮の小型漁船の乗組員を救助したと発表しています(WOWKOREA)。
同庁によると午前6時20分ごろ、束草の東方約218.5キロの海上で韓国漁船が漂流中の北朝鮮の小型漁船を発見し、関係機関に通報しました。

海洋警察は艦艇を派遣して漁船の乗組員5人を救助し、関係機関と共に事故原因などを調べたとしています。

この出来事自体は、無論韓国が北朝鮮の尻抜けを手伝ったものとはいえないですが、それにしても何度もこのようなことが重なった場合、予め韓国の艦艇が北朝鮮の艦船が出没する近くに出動し手助けするのが恒常化しているおそれもあります。

ひょっとしたら、韓国がひた隠しにしたいのはこのことなのかもしれないです。日本の海上自衛隊に見られたくないものを見られたから、そのシラを切り続けるために、日本に強硬な態度をとり続けているのではないかと疑ってしまいます。

さらにこの海域には、中国の潜水艦が行動する水域でもあり、韓国駆逐艦の行動は、(日米連携での)中国潜水艦の探査活動を妨害し、日米連携を分断し中国を利するものともいえます。

こうしたことから、韓国がもし北朝鮮の制裁尻抜けに大きく関与していたとすれば、米国の韓国に対する態度も一気に硬化することになります。

真相の解明は翌年に持ち越されましたが、日本は毅然とした態度を取り続けることが重要です。

そうして、韓国が南北統一にまっしぐらに進むということがわかった場合には、このブログでも前に掲載したように日米がすぐに韓国を見放すということではなく、その前に、日米が韓国に対して金融制裁等を実行して、経済的にも科学技術的にも徹底的に疲弊させるべきです。

現在のままの韓国をわざわざ、北朝鮮に引き渡し、金正男を喜ばせ、韓国の経済力をもとにさらに軍事力を強化させるようなことはすべきではありません。それどころか、韓国が金正恩の負担になるようにすべきです。

現在のロシアのGDPは、韓国を若干下回るくらいの規模です。南北が統一されれば、ロシアの経済規模を上回る独裁国家が半島に生まれることになります。韓国の経済規模は、東京都と同規模です。

絶対にそのようなことをさせるわけにはいきません。そもそも、現在の体制のままの南北統一はさせない、最悪させてしまうにしても、韓国の経済を徹底的に潰しておいてから統一させるべきです。

さて、今年も最後になりました。皆様、昨年中は大変お世話になりました。良いお年をお迎えください。

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2018年12月30日日曜日

官僚不祥事を斬る 高橋洋一嘉悦大教授「官僚は合理性を武器に」―【私の論評】国民本位の合理的な考えでなく省益本位で仕事をする財務省は排除せよ(゚д゚)!

官僚不祥事を斬る 高橋洋一嘉悦大教授「官僚は合理性を武器に」

厚労省、財務省,法務省の看板(左から)

平成30年は官僚の不祥事やミスが多かった。「官僚の劣化」という人がいるけど、世界からみたらもともとそんなに優秀ではない。事務仕事だけやっていればよいのだから。たまたま噴出しただけではないか。

 学校法人「森友学園」(大阪市)への国有地売却をめぐる財務省の決裁文書改竄(かいざん)は、とんでもない話だ。佐川宣寿前国税庁長官が、自分の答弁に合わせるために改竄を主導した。佐川氏は懲戒免職にすべきだった。停職3カ月相当の懲戒処分なんて軽すぎる。

 2月にこの問題が報じられたときに決裁文書を読んでしっかり答弁していたら改竄する必要がなかった。これが佐川氏の「チョンボ」。財務省近畿財務局は、土地を入札にかけていれば何の問題もなかった。問題の土地と道路を挟んで隣接する同規模の元国有地を大阪府豊中市が実質負担2千万円で購入していたので、このぐらいで売れたはずだ。こちらは近畿財務局の「チョンボ」だ。

 財務省では、福田淳一前事務次官はテレビ朝日の女性記者へのセクハラ発言で辞任した。あれは仕事とは別の失敗だ。福田氏は地頭もよく、官僚としては優秀だった。

佐川宣寿前国税庁長官と福田淳一前事務次官

 「働き方改革」は、厚生労働省による裁量労働制に関する調査で異常値が相次いで見つかり、政府が法案から裁量労働制の対象拡大を削除する事態に追い込まれた。そもそも、裁量労働をしている人は、仕事時間が明確に分からない。私も裁量労働だが、外でふらふらして情報収集している時間も仕事といえば仕事だが、そうでないともいえる。知人は朝起きてから寝るまで仕事の時間と答えたそうだ。

 統計では、そうした数値は「外れ値」といってカウントしないというルールがある。統計を分かっていない。率直にいうと、官僚に文系が多すぎる。データの専門家が役所にほとんどいないんだよ。野党のほうがそういうことをよく分かっていて、政府を責めた。戦術的に野党が勝ったという話だ。

 外国人労働者の受け入れ拡大に向け在留資格を創設する改正出入国管理法は、拙速すぎた。中身は詰まっていない。世界の例では総量制限などをきちんと法律に書き込むが、日本は政省令だ。審議の中で法務省で失踪技能実習生の調査をめぐる集計ミスなどもあった。法務省はゆっくりだけど、きっちりやる役所だ。せかされたらこうなるのは目に見えていた。将来、混乱が起きるだろう。

 外国人材の受け入れは2月の経済財政諮問会議で安倍晋三首相の指示が出てキックオフとなり、6月の「経済財政運営と改革の基本方針2018」(骨太方針)に「来年4月」と盛り込まれた。秋の臨時国会で法改正が行われた。法務省は「骨太」が決まる前に、ちゃんとした制度を作るには「来年4月では無理だ」と説明すべきだった。「来年度」とすれば何の問題もなかった。自分たちの力を過信したのか。

 官邸の力が強いから逆らえないという指摘もあるようだが、関係ない。「政」は合理性に弱い。平成17年に小泉純一郎元首相が郵政民営化の施行を「2カ月遅らせろ」と指示したことがあった。郵政選挙の空白期間が2カ月だったからだ。私は「半年ごとのシステムしか構築していないから無理だ」と説明したら、小泉氏は「えっ」といって、あっさりと受け入れた。合理性とはこういうものだ。

 確かに安倍政権が長いから「政」が「官」に比べて強い。だが、こういうときこそ官僚は合理性を武器にすべきだ。合理的に説明する人材を人事で飛ばすわけがない。排除されるとすれば、合理的に説明する能力が足りていないだけだ。(沢田大典)

【私の論評】国民本位の合理的な考えでなく省益本位で仕事をする財務省は排除せよ(゚д゚)!

ブログ冒頭の記事ては、「こういうときこそ官僚は合理性を武器にすべきだ。合理的に説明する人材を人事で飛ばすわけがない。排除されるとすれば、合理的に説明する能力が足りていないだけだ」と締めくくっていますが、確かにそうです。

官僚が合理的に、特に数字を用いて合理的に説明できれば、排除されることなどありえないです。ただし、例外もあります。その例外とは、官僚や役所が合理的な考えで仕事をしていないときです。この場合はどう考えても合理的説明ができません。

それは実際に事例があります。それについては以前このブログに掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
株急落は来年の様々なリスクの前兆、消費増税の余裕はない―【私の論評】財務省は本気で全国民から恨まれ、米国を敵にまわしてまでも増税できるほど肝が座っているのか?
 

この記事は、今月の27日のものです。元記事は高橋洋一氏が書いています。この記事には、高橋洋一氏が、上司に日本の財政赤字はさほど深刻でいないことを説明したところ、とんでもない答えがかえってきたことを掲載しています。その部分のみ少し長いですが、引用します。
 本コラムでは、政府の財政について、負債だけではなく、資産も含めたバランスシートで考えなければいけないと、何度も書いてきた。筆者は20年以上もこのことを繰り返してきた。「統合政府論」というファイナンス論の基礎でもある。 
 この考え方をもとに、大蔵省(現財務省)勤務時代に、単体のみならず連結ベース政府のバランスシートを作成した。それをみると、それほど国の財政状況は悪くないことが分かった。 
 国の徴税権と日銀保有国債を政府の資産と考えれば、資産が負債を上回っていることも分かった。この財政の本質は、現在まで変わっていない。
 また資産といっても、一般に考えられている土地や建物などの有形固定資産は全資産の2割にも満たない程度だ。大半は売却容易な金融資産で、政府関係機関への出資・貸付金などだ。
 その当時、筆者は上司に対して、ファイナンス論によれば、政府のバランスシート(日本の財政)はそれほど悪くないことを伝え、もし借金を返済する必要があるのであれば、まずは資産を売却すればいいと言った。
 それに対し上司から、「それでは天下りができなくなってしまう。資産は温存し、増税で借金を返す理論武装をしろ」と言われた体験もいろいろなところで話してきた。
 ちなみに、日銀を含めた連結ベース、つまりいわゆる統合政府のバランスシートに着目するのは、その純資産額が政府の破綻確率に密接に関係するからだ。
 これもファイナンス論のイロハである。IMF(国際通貨基金)も、統合政府の純資産に着目して、日本では実質的に負債はないといっている。
 純資産額の対GDP比率は、その国のクレジット・デフォルト・スワップ・レートと大いに関連する。それは破綻確率に直結するからだが、日本の破綻確率は今後5年以内で1%にも満たない。
 この確率は、多くの人には認識できないほどの低さであり、日本の財政の破綻確率は、無視しても差しつかえないほどである。
この文書から、高橋洋一氏の上司は「天下りをするために、資産は温存し、増税で借金を返す」と発言したわけです。

これは、高橋洋一氏きが大蔵省(現在の財務省)に在籍していたときの話であり、この話は当時の大蔵省や現在の財務省では、通じる話かもしれませんが、政治家や一般国民には通じる話ではありません。

一国の財政は、国民生活が円滑に進むようにすべきであって、財務省(大蔵省)の官僚の天下りのために実施されるべきではありません。

しかし、大蔵省、そうして現在の財務省は、現実に天下り先を確保するために、増税や緊縮財政を続けているわけです。その典型的なものは、来年10月の消費税の10%へのひきあげです。財務省は、日本国民にとって合理的な考えでなく省益本位で仕事をしているのです。

このために財務省は、増税のために様々な論拠をあげるのですが、それらはことごとく合理性に欠けています。

このように財政に関して、財務官僚や財務省は合理的な考えで仕事をしていません。そのため、財務省は財政に関して合理的な説明ができません。

財務官僚の説明する財政に関する話は、学校法人「森友学園」(大阪市)への国有地売却をめぐる財務省の決裁文書改竄(かいざん)において、佐川宣寿前国税庁長官が、自分の答弁に合わせるために改竄を主導したのと同じように、ことごとく非合理的です。



ただし、財務省は、税務権力、特に強制的な財務調査権を持っているため他省庁や、政治家、あらゆる民間組織、個人に対して、強力なパワーを発揮できます。税務権力は軍事力、警察権力と並んで、国家権力の典型です。

この財務省が財政に関して非合理的なことを語っても、政治家もマスコミも、民間組織も個人もそ非合理性を強く非難したり、追求したりしないのです。

こうした国家権力はいうまでもなく強力で、政治学や社会学では軍事力や警察権力はしばしば「暴力装置」と呼ばれます。学問の世界では税務権力は暴力装置から外されることが多いですが、実質的には含まれていると考えるのが妥当だと思います。この税務権力に政権・政治家は怯え、メディアや財界も事を荒立てないようにするのです。

荒立てないだけなら、まだしも、財務省の緊縮財政の根拠についてそれを補強するような論説をする恥知らずのマスコミや識者も大勢存在する始末です。これらに籠絡されて、増税すべきと頭から信じ込む政治家も多数存在します。

そのため、財務省のどう考えても、経済的に非合理な財政に関する考え方、たとえば消費税の増税なども、多くの国民は、正しいものと信じ込んでしまうわけです。ただし、この非合理性に関しては、以前よりは多くの識者が暴露するようになってきたので、徐々にこれを信じなくなってきてはいます。

冒頭の記事では、「(官僚が)排除されるとすれば、合理的に説明する能力が足りていないだけだ」と語っていますが、財務省という官庁そのものが、財政に関して合理的説明ができないのですから、この状態がいつまでも続くなら財務省を排除するしなくなります。

すなわち、財務省の解体です。ただし、このブログでも何度か掲載したように、財務省という官庁は単純に分解すると他省庁を植民する習性があるので、いくつかに分解した上で、それぞれを他省庁の下部組織として組み入れるのが適当です。

他の文科省などの組織も、自らの仕事に関して合理的な説明ができない官僚や、組織自体も、その状態が続き治る見込みがないなら排除すべきです。

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2018年12月29日土曜日

レーダー映像公開…日米、韓国に金融制裁の可能性も? 米政府関係者「われわれが離れるとき韓国は焦土化する」 ―【私の論評】日米で韓国に対して金融制裁を発動し金融面で焦土化することも視野に(゚д゚)!

レーダー映像公開…日米、韓国に金融制裁の可能性も? 米政府関係者「われわれが離れるとき韓国は焦土化する」 


文在寅大統領

 韓国海軍の駆逐艦が、海上自衛隊のP1哨戒機に、攻撃寸前の火器管制用レーダーを照射した問題は、米トランプ政権が水面下で進める「米韓同盟消滅」の決定打となるのか。北朝鮮への制裁緩和を訴える文在寅(ムン・ジェイン)政権に対し、日米共同の金融制裁という報復措置がありうると専門家は指摘。米政府関係者は「われわれが離れるとき、韓国は焦土化する」と不気味な予告をしている。

 レーダー照射について「韓国では、日本とのもめ事を起こす文政権に対する批判がある一方、『日本の哨戒機を撃墜すべきだった』と、日本との対決を求める声もある」。長年の韓国ウォッチャーとして知られ、『米韓同盟消滅』(新潮新書)などの著書がある元日本経済新聞編集委員の鈴置高史(すずおき・たかぶみ)氏はこう解説する。

 「もともと韓国軍が『親日』だったことはない。『日本撃滅』のスローガンがかかっている海軍基地もあると聞く。北朝鮮との緊張が緩和する中、韓国海軍が日本海に目を向けるのは当然だろう」というのだ。

 ハリス駐韓米大使は11月、韓国誌『月刊朝鮮』で「米韓同盟は確固として維持されているが、当然視してはいけない」と異例の警告を発した。レーダー照射問題は、米政権側に募った韓国に対する不信感を一段と際立たせることになる。

 文大統領は、9月に米国、10月中旬に欧州を歴訪し、一貫して対北制裁の緩和を呼びかけるなど、「親北」姿勢を強めてきた。これを受けて米政府関係者のヒアリングを受けた鈴置氏は「米政府関係者は『なぜ韓国はわれわれをいらつかせるのか』と聞いてきた」と振り返る。

 「特に米国を怒らせたのは、欧州に制裁緩和を持ちかけ、米国を孤立させようとしたことだ。当然、欧州各国も応じるわけはなく、『韓国は何を考えているのか』と驚いた。世界中の専門家が韓国をけげんな目で見るようになっている」

 鈴置氏以外の日本人の専門家と情報交換した米政府関係者から、「われわれが韓国を離れるときは、このままでは離れない。焦土化する」といった発言があったという。

 「経済面でボロボロにするということだろう。韓国が北朝鮮の別動隊だということを世界中の人が見抜いており、韓国も北に連座する形で制裁対象になってもおかしくないという見方が強まっている」という鈴置氏。文大統領は南北統一という野心を隠しておらず、「南北共同の核保有は、米国以上に日本に脅威となる。日米共同の制裁もあり得る」というのだ。

 ここにきてレーダー照射問題が浮上。日本が韓国に「制裁」に出るとの見方もある。その場合、「韓国に報復するならまずは経済、なかでも金融に即効性がある。米国も韓国への『お仕置き』のタイミングを見計らっている」(鈴置氏)。

 米連邦準備制度理事会(FRB)が利上げを進めることで、韓国から資本が流出する懸念が一段と強まっている。景気や雇用が低迷するなかで、韓国銀行(中央銀行)は11月末、政策金利を引き上げたが、米国も今月、追加利上げした。米国に追随して利上げを進めると、韓国が抱える家計負債などの問題が再燃する恐れもある。

 韓国に対する金融制裁について鈴置氏は、「米国系の銀行が韓国から資金を引き揚げるという情報をマーケットに流す、日本が半導体製造装置を売らない、日米の銀行が一緒に、韓国がドル調達をできないようにするなど手口はいくらでもある。韓国国債の格付けが下がるようなことがあれば、市場は資本逃避(キャピタルフライト)に直面するとみるだろう」と話す。

 「ロックオン」されているのは韓国の方かもしれない。

【私の論評】日米で韓国に対して金融制裁を発動し金融面で焦土化することも視野に(゚д゚)!

防衛省は28日、火器管制レーダーの照射問題で映像を公開しました。韓国側が照射をかたくなに否定しているためです。日本の主張の正当性を訴えるとともに、真相の解明を迫る狙いがあります。以下がその映像です。



「海上自衛隊が適切な行動をとったことを国民に理解してほしい」

岩屋防衛相は28日の記者会見でこう述べ、映像公開の意義を強調しました。

火器管制レーダーの照射は20日、日本海の能登半島沖で発生。防衛省は21日に公表しましたが、韓国国防省は記者会見で火器管制レーダーの照射を否定しました。27日に日韓の防衛当局間で行ったテレビ会議でも、韓国側は事実だと認めませんでした。

約13分間の映像は冒頭、韓国海軍の駆逐艦や海洋警察の警備救難艦、北朝鮮漁船とみられる遭難船などに、海上自衛隊のP1哨戒機が近づく様子から始まっています。映像開始から6分すぎ、駆逐艦から約5キロ離れた地点で、哨戒機が火器管制レーダーの電波を初めて探知しました。

哨戒機の乗員の一人は「避けた方が良いですね」と緊迫した様子で声を上げ、機長が駆逐艦の大砲の向きを確認するように指示した。哨戒機が回避行動をとった後、探知音を聞いていた乗員が「めちゃくちゃすごい音だ」と強い電波に驚く場面も記録されています。

その後、乗員は韓国駆逐艦に対し、三つの周波数で「行動の目的は何ですか」などと英語で問い合わせましたが、韓国側からの応答はありませんでした。

現場は好漁場の「大和やまと堆たい」の周辺で、大量の北朝鮮漁船によるイカの密漁が問題となっています。日本政府関係者は「韓国軍は北朝鮮漁船の救助に普段から関わっている可能性があり、日本に知られたくなかったのではないか」と分析しています。

しかし仮にそうだったとしても、ではなぜこのような常識はずれの事案が起きたのでしょうか。事案発生当時、問題の韓国艦は日本海中央部の大和堆に近い日韓中間水域(11月15日に起きた日韓漁船衝突事故の現場付近)にいたとされます。韓国艦は当該海域で、北朝鮮の木造漁船(しばしば工作船としても使われる)の監視と、通常の訓練を行っていたと思われます。韓国側が主張する「北朝鮮漁船の救難活動」も、あったとすればその中で行われたのでしょう。



一方、海上自衛隊のP‐1は能登半島沖の、日本の排他的経済水域(EEZ)の上空にいたとされています。当該機は厚木の第4航空群の所属で、こちらも厚木航空基地から日本海側へ進出し、そこから日本の領海線に沿って回る通常の哨戒活動をしていたと思われます。

具体的には目視(光学式観測)と対水上レーダーによる、海上哨戒活動です。P‐1の水上レーダーは非常に高性能で、海上に浮かぶ多数の船舶の大きさや形、動きなどをすべて把握できます。

軍事秘密なので公表はされていませんが、一説には、水面から数センチほど顔をのぞかせた潜水艦の潜望鏡さえも探知できるらしいです。そうした性能を使って、北朝鮮船による沖合での安保理決議違反である瀬取り行為の監視も行っていたでしょう。

韓国艦も自衛隊機も、お互いに通常の任務中であったといえます。その中でなぜ、あのような事案が発生したのでしょうか。

おそらくは韓国艦が何らかの監視活動、あるいは救難活動を行っているときに、P‐1哨戒機の航路に過剰に反応したのではないでしょうか。軍艦は常に、周辺の航空機の動きを対空レーダーで監視しており、軍用の敵味方識別装置(IFF)や民間用のトランスポンダを用いて、レーダーでとらえた航空機がどこに所属するのか、友軍か否かも把握できます。ここまでは、どんな艦でも行う問題のない行為です。

ところが、火器管制レーダーの照射は違います。ビームが目標に照射された時点で、いわゆる「ロックオン」という、艦の射撃指揮システムが目標を正確に把握した状態が成立します。照射された航空機では、システムが画面表示と警告音によって、ロックオンされた事実を乗組員に伝えます。

2013年に中国海軍のフリゲート艦が海自の護衛艦に火器管制レーダーを照射したときもかなりの騒ぎになりましたが、このときは敵からのものであり、あり得ることであると多くの国民が考えたかもしれません。

しかし、今回は「友軍」から照射されたということで、現場では意味不明としか言いようがない状況だったと思います。そういう状況のもとでも、防衛省が公開した動画ではP‐1の乗組員は終始冷静で、レーダー波の周波数確認を含む必要な任務を高い確度で遂行していたのが印象的できした。

もっとも、実際にミサイルを発射できるシークウェンス(手順)にまで入っていた可能性は低いです。艦のシステムがIFF(敵味方識別装置)で友軍機と認識した航空機を、ミサイル攻撃の目標に設定することは基本的にできない仕組みになっているからです。

しきかしそもそも、友軍機に火器管制レーダーを照射する段階で、途中のシステムの警告(味方だが大丈夫か、といった確認を求められる)を手動でオーバーライド(上書き)する必要があり、そこに何らかの「人為」が働いたことは間違いないです。その人為を、一体誰が行ったのでしょうか。




火器管制レーダーを操作するのは、艦のCIC(戦闘指揮所)の射撃管制員ですが、通常は艦長あるいは副長の命令がなければ照射は行われないです。少なくとも、自衛隊で言えば砲雷長や砲術長など火器管制に関わる幹部の指示が必要です。

さらに火器管制レーダーを使用しているという事実は、CICの全員に伝わります。末端の人間がこっそりやれるような行為ではないですし、誤って照射した場合はすぐに制止が入るはずです。もしそのような事象であれば、「レーダー員のミスだった」と韓国側が公表して謝罪すれば済む話であったはずです。

おそらくは、もっと上の階級の人間が関わっているために、そうした簡単な処理ができなかったということでしょう。交戦規則などの武器使用に関する規定をここまで無視できるのは、やはり艦長か副長クラスなのではないかと思われます。

「のぞきやがってけしからん、ひと泡吹かせてやれ」と、そのクラスの人間が命令したというのが、一番ふに落ちるシナリオです。

国際的な慣習において、公海上の軍艦は旗国(帰属する国家:今回の事例では韓国)以外のいずれの国の管轄権も及びません。一つの独立国と同等の扱いを受けます。その艦長の権限と責任は、いわば一国の主に等しいのです。もし艦長あるいは副長クラスの上級幹部が今回のような暴走を行ったのだとすれば、韓国軍には指揮統制上の重大な問題があるということの証明になってしまいます。

実際、韓国側のこれまでの対応を見る限り、韓国国防部も大統領府も、何が起きているのかを把握する能力がないように見える。文民統制や軍の指揮統制という面から見れば、末期的症状をきたしているといって良いでしょう。

韓国海軍士官学校の若者たち 2009年12月13日


クァンゲト・デワン」級のような旧型艦は一般に、若手艦長の最初の任官先になることが多いです。そして今の韓国の若手の職業軍人は、反日教育の「毒」が回った世代です。

今回の事案の背景には、文在寅政権のもと韓国国内でますます高まっている「日本には何をしてもいい」という韓国国内の空気感の影響もあるでしょう。そして西太平洋の安全保障体制の中で日本と韓国のつなぎ役を果たしてきた米国は、韓国との同盟関係を加速度的に細らせつつあります。韓国が軍事政権から民政に移行して以来、長年にわたってありとあらゆる工作活動を韓国で展開してきた北朝鮮にとって、これら日韓/米韓の離間はまさに望み通りの結果のはずです。

そして当の韓国軍は、本来なら優先順位がはるかに高いと思われる北朝鮮軍の南侵やミサイル攻撃に備える装備より、強襲揚陸艦やイージス艦、弾道ミサイルや巡航ミサイルを発射可能なミサイル潜水艦、射程500キロ以上の新型弾道ミサイルといった、日本への対抗を主眼とするかのような装備の充実に力を入れています。日本にしてみれば、朝鮮半島への軍事侵攻などもはやありえない選択肢なのですが、韓国国民の認識は異なり、それが軍内部にも反映しているのでしょう。

韓国海軍は、12月13日に島根県の竹島の周辺海域で、島の防衛を想定した定例の合同訓練を14日までの日程で行っていました。島の防衛というからには仮想敵国は日本です。その延長線上に今回の「ロックオン」があるのでしょう。

韓国の女子中学校の生徒名で、日本の竹島教育を批判するハガキ41通が島根県内の中学校に届きましたが、まるでカルト教団のように反日教育を洗脳される生徒たちが哀れです。反日教育を受けて入隊すれば、自衛隊機に向け「ロックオン」くらい、彼らの愛国精神からやるのは当然なのかもしれません。

日米韓の協調関係が終わり、核武装した南北統一軍が成立する可能性への備えを、わが国はそろそろ真剣に考え始めるべきなのかもしれないです。

それ以前に、今回の事件に関して韓国側がいつまでも、謝罪や遺憾の意を評さないというのであれば、この記事の冒頭の記事にもあるように日米で韓国に対して金融制裁を発動して、それこそ韓国を金融面で焦土化するということも視野にいれるべきです。

南北統一が成立したときには、韓国は経済的には何の価値もない状況にしておくべきです。韓国など経済的に手助けして、経済を良くした状態で、南北が統一されてしまえば、意味もなく敵に塩を送ることになります。

金正恩や習近平を喜ばせる必要はありません。

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2018年12月28日金曜日

ルトワック氏単独インタビュー詳報―【私の論評】今後日本は日米英の結束を強めつつ独自の戦略をたて、繁栄の道を歩むべき(゚д゚)!


米戦略家のエドワード・ルトワック氏。米東部メリーランド州の自宅にて

米歴史家のエドワード・ルトワック氏は産経新聞との単独インタビューに応じた。「米中冷戦」の下で日本は米国に最も近い「パートナー国」として米国を支えていくべきだと訴えた。詳報は以下の通り。(ワシントン 黒瀬悦成)

 ■トランプ米政権の対中政策

 オバマ前政権は外交政策に関し非常に消極的だった。一方、トランプ大統領は大統領選に立候補した当初から中国をあらゆる分野で押し戻すと唱えてきた。

 トランプ氏は本来、中国に集中するためにロシアのプーチン大統領と(関係改善に向けた)合意を結びたかった。結局、これは(ロシア疑惑などにより)実現はしなかったが、トランプ氏はその後、確実に中国に焦点を定めていった。

 現状の中国との衝突は、中国が以前の「平和的台頭」路線に回帰しない限り、現体制が崩壊するまで長期にわたり続くだろう。

 ただ、「中国封じ込め」の必要性を最初に公言し主導してきたのはオーストラリアで、米国ではない。豪州は2008年以降、このままでは中国の植民地になるという危機感から日本や米国、ベトナムなどに連携を働きかけてきた。当時のオバマ大統領は封じ込めに否定的だったが、トランプ氏は積極姿勢に転じた。

 そうした流れから、日本や米国、ベトナム、豪州、インドなどの国々の間で、多様な方式と水準の自然発生的かつ必然的な「同盟」が形成されるようになった。英仏も南シナ海での「航行の自由」確保のため艦艇を派遣している。インドや豪州、日本がベトナムを支援するのも中国を押し返すためだ。

 ■日本の役割

 こうした(対中)同盟は正式な条約を必要としないが、中国に対抗するために能力向上を図らなければならない国々もある。日本は軍備に穴がある比較的弱小な国々に向けた武器輸出国になるべきだ。米国が東西冷戦時代、欧州に多数の戦車を提供し、同盟諸国に安価で取り扱いが容易なF5「フリーダムファイター」戦闘機を提供したように、インドネシアやフィリピンに廉価版の飛行艇を輸出したり、モンゴルに戦闘装甲車を供与できたりするようにしなくてはならない。

F5「フリーダムファイター」 写真はブログ管理人挿入以下同じ

 この対中大連合の中心は米国で、日本はそのパートナー国、他の国々は同盟国だ。ちょうど東西冷戦で米国が中心国で英国がパートナー国だったのと同じ構図だ。パートナー国は中心国と同じことをするのではなく、中心国ができないことを補完するのが役目だ。例えば、日本は中国の周辺国であるラオスやバングラデシュ、ミャンマーなどで、経済的、歴史的つながりの深さから米国よりも容易に能力向上支援などの活動を展開できる。

 また、日本は外国の的確な現地情報を収集する情報組織を外務省の下につくるべきだ。日本の右翼勢力の中には外務省には「パンダ・ハガー(媚中派)が多すぎる」として外務省の傘下にすべきでないと主張する者もいるが、今の外務省ではもはや媚中派は一掃されている。中央情報局(CIA)のような肥大化した低水準の独立組織は必要ない。

 ■対中ハイテク冷戦

 中国との対決の本質とは「地政学(geopolitics)」「地経学(geo-economics)」「地テク学(geo-technology)」の分野での戦いだ。米中が核保有国である以上、軍事的解決はできない。南シナ海での角逐は単なる象徴にすぎない。

 経済と技術分野の競争では、対中連合に加わる国が続々と出ている。欧州諸国では数年前から許認可の厳格化で中国が先端技術企業を容易に買収できなくなった。ただ、中国による先端技術のスパイ行為に関しては、つい最近までは野放しだったのが実情だ。

 諜報という裏の世界で起きていることは必ずしも極めて重要というわけではないが、国同士の本当の関係を照らし出すものだ。

 現状では、米英など西洋対中国による開発研究競争と中国によるスパイ行為が展開されているわけだが、中国にも盗む価値のある技術があるにもかかわらず、私が知る限り、米国はそれらを盗もうとしない。これは重大な過ちだ。中国の先端技術企業をスパイすることで、連中が私たちから何を盗んだかを知ることができるからだ。

 また、中国のスパイ行為への対応が非常に鈍いのも問題だ。私たちは中国との冷戦の初期段階にある。東西冷戦に突入しつつあった1946年、(当時の)チャーチル前英首相が訪米し「鉄のカーテン演説」で旧ソ連を批判した際、誰もが「ソ連は同盟国だ。チャーチルは好戦主義者だ」と攻撃したのと同じ状況だ。

 ■中国は海洋勢力になれない

 地政学上の「ランドパワー(陸上勢力)」である中国は「シーパワー(海洋勢力)」にもなろうと海軍力を増強しているが、それだけで海洋勢力になることはできない。

 海洋勢力になる要件とは周辺国に(艦船が)寄港でき、これらの国々との協力関係が確立できているかだ。海洋勢力は各地の島国や半島国家などと友好・同盟関係を結ぶ必要があるが、中国は友人どころか敵ばかり作っている。


 陸上勢力が海洋に進出すれば各国は警戒する。中国が進める巨大経済圏構想「一帯一路」も、結局はうまくいかないだろう。

【私の論評】今後日本は日米英の結束を強めつつ独自の戦略をたて、繁栄の道を歩むべき(゚д゚)!

産経新聞は本日以下のような記事も掲載しています。
「米中冷戦は中国が負ける」 米歴史学者ルトワック氏
冒頭の記事と重複するところもあますが、こちらの記事から以下に引用します。
 ルトワック氏は現在の中国との「冷戦」の本質は、本来は「ランドパワー(陸上勢力)」である中国が「シーパワー(海洋勢力)」としても影響力の拡大を図ったことで米国や周辺諸国と衝突する「地政学上の争い」に加え、経済・貿易などをめぐる「地経学」、そして先端技術をめぐる争いだと指摘した。 
 特に先端技術分野では、中国はこれまで米欧などの先端技術をスパイ行為によって「好き勝手に盗んできた」とした上で、トランプ政権が今年10月に米航空産業へのスパイ行為に関与した疑いのある中国情報部員をベルギー当局の協力で逮捕し米国内で起訴するなど、この分野で「米中全面戦争の火ぶたを切った」と強調した。 
 一方、中国が南シナ海の軍事拠点化を進めている問題に関しては、トランプ政権が積極的に推進する「航行の自由」作戦で「中国による主権の主張は全面否定された。中国は面目をつぶされた」と強調。中国の軍事拠点については「無防備な前哨基地にすぎず、軍事衝突になれば5分で吹き飛ばせる。象徴的価値しかない」と指摘した。

 ルトワック氏はまた、中国の覇権的台頭を受けて2008年以降、米国と日本、オーストラリア、ベトナム、インドなどの国々が「自然発生的かつ必然的な『同盟』を形成するに至った」と指摘。これらの国々を総合すれば人口、経済力、技術力で中国を上回っており、「中国の封じ込めは難しくない」とした。 
 ルトワック氏はさらに、これらの国々が中国に対抗するための能力向上を図る必要があると指摘。日本としては例えばインドネシアの群島防衛のために飛行艇を提供したり、モンゴルに装甲戦闘車を供与するなど、「同盟」諸国の防衛力強化のために武器を積極的に輸出すべきだと提言した。
現在の中国との「冷戦」の本質は、本来は「ランドパワー(陸上勢力)」である中国が「シーパワー(海洋勢力)」としても影響力の拡大を図ったことで米国や周辺諸国と衝突する「地政学上の争い」に加え、経済・貿易などをめぐる「地経学」、そして先端技術をめぐる争いだと指摘した。 

四面海に囲まれた「海洋国家」である日本のこれからの国家戦略は、あくまでも、「海洋国家の雄」である米国と、「海洋国家の大先輩」である英国との間で政治的にも軍事的にも、また経済・文化的にも「シーパワー連合」を強固に組み、日本の進路を誤らないようにしていく必要があります。

8月3日晴海埠頭に入稿した英海軍揚陸艦「アルビオン」

これに対して、「大陸国家」である「中国」と「半島国家」である「韓国」「北朝鮮」との間での結びつきは、できるだけ「緩やかな関係」にしておくべきです。

日本は「政経分離」の原則に立ち、「大陸国家」「半島国家」とは政治的・軍事的な結びつきや関与は、極力避けるべきです。「海洋国家」が、「大陸国家」や「半島国家」にかかわると、命取りになります。これは、大東亜戦争に敗北した日本が、痛烈に感じさせられた歴史的事実です。

今後ともに、ゆめゆめ「大陸や半島」への「政治的・軍事的野心」を抱くべきではありません。

日本は戦後、「戦略なき国家」と揶揄され「外交防衛政策」の対米追従姿勢が内外から厳しく批判を浴びてきました。しかし、日本に「戦略」がなかったというのは、大きな誤りです。

日本が、本当に「戦略なき国家」だったのであれば、米国が「双子の赤字」を抱えて苦しむほど「経済的疲弊」し、「ソ連東欧」が経済破綻により崩壊して米ソ共倒れのような格好で冷戦が終結したのに、日本が、「経済的繁栄」を実現できた理由を説明できなくなります。

たとえ「日本国憲法」が米国による「押しつけ」であれ、また、「米国の核の傘」の下で「保護」されてきた国であろうとも、こうした「受け身」の状態とそのなかに含まれていた諸条件を上手に利用して、ひたすら「通商国家」の道を歩み、「経済大国」を実現してきたのは、立派な「国家戦略」が存在したからであり、偶然に「経済大国」になったわけではありません。米ソが駆使したような「地政学」を活用しなかっただけにすぎません。

「地政学」を活用した米ソが、疲弊ないし崩壊したというのは、何とも皮肉だと思います。現在「地政学」を駆使するととに、古代の叡智を過信する中国もルトワック氏が予言するように崩壊します。

米国は、海洋国家として「シーパワー」による世界制覇を、ソ連は大陸国家として「ランドパワー」による世界制覇をそれぞれ目指しました。いわゆる「地政学」をフルに活用して世界戦略を展開してきたのです。

日本も戦前、戦中は帝国海軍がアルフレッド・マハンの「海上権力論(シーパワー)」を、帝国陸軍がマッキンダーの「ハートランド論」をよく研究していました。

秋山真之

日本海会戦を勝利に導いた秋山真之が立てた「来攻する敵艦隊を迎え撃つ」という戦略戦術構想とその中心思想は、大東亜戦争に至るまで堅持されました。佐藤鉄太郎中将は、古今東西の戦史を深く研究して兵学各部門に貢献し、陸海軍備の関係については当時台頭した「大陸進出国防論」をいましめました。

「帝国国防方針」は1909年に策定されましたが、以来、仮想敵国(米・露・支)の関係から、「陸主海従」か「海主陸従」かの根本問題も解決をみず、「二重性格」の国防方針のまま大東亜(太平洋)戦争に突入し、大陸に深く入り込みすぎ、また戦線も拡大しすぎて、「空母中心」の新しい海戦の意義を理解した米国に敗北してしてしまいました。日本がいかに「海洋国家」であったかを思い知らされ、痛烈に反省も迫られたのでした。

戦後は、連合国軍最高司令部(GHQ)の意向で、これら「地政学」の研究がはばかれ、「地政学」に立脚した「国家戦略」を立てられなくなりました。

しかし、戦後の日本が、「国家戦略」を持たなかったかと言えば、そうではありません。日本の大戦略は、「日本国憲法」の持つ「機能」のなかに仕込まれていました。このことは、日本に憲法を押しつけた米国でさえ気づきませんでした。気づいていたのは、ただ一人、「吉田茂元首相」でした。米軍を「番犬」とし、軍備に巨費を投ずることなく、経済大国を築くという「戦略」でした。

吉田茂元首相

これは、「米ソ対決(東西冷戦)」と「南北朝鮮の分裂」という地政学的な状況と条件を日本の生き残りに活用するという巧妙なる戦略でした。

東西冷戦とその後のソ連崩壊、中国の台頭により、これらの「状況と条件」は、大きく様がわりしてしましたが、日本は再び、「東アジア情勢」を活用する「国家戦略の策定」が求められています。それには、

 ①日本は、武力による「覇道」ではなく、あくまで通商・経済により「王道」を歩む。
 ①米国、英国などとの「シーパワー連合」を強化する
 ②中国大陸に深入りせず、米中を覇権争いさせるとともに、朝鮮半島にはコミットしない。(危機が刻々と迫っているかに見える北朝鮮や米中の熱戦の火の粉をかぶらないようにする)

との原理原則を貫き、従来通り「通商国家」「超経済大国」を目指し続けるのです。「シーパワー連合」に最も関係の深い「シーレーン」の防衛に協力するのは、当然です。また、ルトワック氏が主張するように、日本は軍備に穴がある比較的弱小な国々に向けた武器輸出国になることも実行すべきです。

しかし、自民党憲法改正案にもあるような、「憲法第9条1項」はそのままに、「2項」を改正するとしても、「国連」への関与は最小限に止めるべきです。

日本は、「安保理常任理事国」となり、先々、「国連旗」を隠れ蓑に地球のどこにでも出兵させられるような立場には絶対に立たされてはならないです。「分担金」をいまの「19.468%」からさらに上乗せさせたり、米軍に成り代わって、「大陸」であろうと「海洋」であろうと、世界中の紛争地帯に出撃し、「日本の青年の血」が多く流されたりして、ロクなことはないです。日本の若者を「犬死に」させていならないのです。

それよりも日本の防衛に全力を上げた方が良いです。この限りの意味で、日本は戦前とはまったく違う新たな「富国強兵」の道を「国家戦略」とすべきです。そうして、自国の領土はまずは自国で守るのです。これについては、米国議会もトランプ政権以前からそれを望んでいます。

今後日本は、シーパワー、ランドパワーなる地政学的な考え方も援用しつつ、日米英の結束を強めつつ独自の戦略をたて、繁栄の道を歩むべきです。

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2018年12月27日木曜日

株急落は来年の様々なリスクの前兆、消費増税の余裕はない―【私の論評】財務省は本気で全国民から恨まれ、米国を敵にまわしてまでも増税できるほど肝が座っているのか?

株急落は来年の様々なリスクの前兆、消費増税の余裕はない


 25日の株価は大荒れだった。東京株式市場では日経平均株価が1000円超下落し、2017年9月15日以来1年3ヵ月ぶりに2万円の大台を割り込んだ。

 24日の米国ダウの653ドル(2.9%)の下落を受けたものだが、日経平均は1010円(5.0%)の下落であり、米国を上回る下げだった。

 米株価急落は世界的な景気減速や米中貿易戦争への懸念が市場を覆う中で、米連邦政府の一部閉鎖やマティス国務長官の辞任など、トランプ大統領の政権運営への不安が広がったのが背景だが、日本では株価だけでなく、来年はさまざまなリスクが予想される。
日経平均株価が2万円台割れ12月では69年ぶりの下落率

 12月に入って、米国ダウは3日の25,538.46ドルから24日の21,792.20ドルまで、3746.26ドル下がった。下落率は14.67%だ。

 月内の下落率は、大恐慌の1931年(17%)に迫る歴史的な下げ幅だ。

 日経平均株価の12月の下落幅も、3日の22,574.76円から25日の19,155.74まで3419.02円、下落率は15.14%とほぼパラレルに下落している。
 
 過去の日経平均でも、1949年5月から今年12月までの836ヵ月で、、今月1ヵ月の下落率15.14%は、21番目に悪い数字だ。12月に限ってみれば、1949年12月に19.55%下落して以来、69年ぶりに悪い数字だ。(図表1)


 836ヵ月の1月間の値動きのデータをみると、平均は0.69%、標準偏差は8.02だ。
来年はもう一回、大幅下落あれば、「リーマン級の事態」

 株価急落を受けて、菅義偉官房長官は25日午前の記者会見で、「経済のファンダメンタルズ(基礎的条件)は堅調だ」と述べ、来年10月の消費税率引き上げに向けて「経済運営に万全を期していきたい」としている。

 また、消費税増税については「リーマンショック級の事態が起きない限り、法律で定められた通り来年10月から引き上げる予定だ。引き上げる環境整備が政府の大きな課題だ」と述べた。

 たしかに、今の時点では「リーマンショック級の事態」とは言えないだろう。12月の株価の変動は、リーマンショック直後の2008年10月の36.99%、11月19.09%、2009年1月16.85%ほどではない。

 だが、来年にもう一回、大幅急落が来れば、リーマンショック級になるだろう。

 もう一回来るかどうかは、わからないが、その確率が以前に比べて高まったのは事実だ。

南海トラフと首都圏直下地震5年以内の発生確率は2割

 また来年のリスクは、経済変動に限らない。筆者が心配しているのは、自然災害である。

 これは、確率計算が可能だ。南海トラフ地震について、今後30年間での発生確率は70~80%というのが、政府の見解である。また、首都直下型地震についても、今後30年間が横浜市で78%となっている。

 今後30年間で8割程度の発生確率となると、今後5年に引き直せば、2割強の発生確率になる。

 そうなると、関西の南海トラフ地震か関東の首都直下型地震のいずれかが、今後5年以内に起こる確率は2割強になる。

 いずれかが起こるというのは、1から両地震が起こらない確率を引いて得られるが、両地震の起こらない確率は9割弱×9割弱で8割弱になるからだ。

 2割強というとどの程度の確率かと言えば、プロ野球で規定打席に達した選手のうち最下位レベルの打者の打率である。規定打席に達しているので、一応レギュラークラスの野手であるので、投手よりはもちろん高い。

 巨大地震が起こるリスクはかなりの“打率”と考えたほうがいい。

北朝鮮問題などで有事のリスクも

 このほかにも、日本には有事のリスクもある。これはなかなか定量的に表せないが、極東アジアは、これまでの歴史の中で紛争が比較的多い地域である。

 筆者は、米国プリンストン大留学で国際関係論を学んだ。指導教官は、民主平和論の大家であるマイケル・ドイル教授だった。

 ドイル教授は、民主的な国同士は戦争をしないというカント流の考え方を現代に復活させたが、筆者はドイル教授の意見を統計的に示した。

 つまり、(1)民主国同士、(2)民主国と非民主国、(3)非民主国同士はそれぞれ戦争確率が増加する傾向があるのだ。

 これを極東アジアに当てはめると、(2)のケースになるので、戦争確率は決して低くはない。もちろん、この戦争確率は、外交努力などによって下げられるので、その努力は必要だ。

 今年は、シンガポールで行われた米朝首脳会談での「非核化合意」で、極東アジアでの紛争確率は一応は低くなった。

 しかし、北朝鮮は核を依然として手放していない。アメリカも慎重派のマティス米国防長官の辞任が決まっている。今回の株価急落にトランプ大統領はいらついているようだ。

 戦争の確率を考えたくはないが、不満や閉塞状況を打開する手段として、軍事オプションの可能性が、少なくとも今後は高まるようにみえる。

 このように、来年は、経済、自然現象、安全保障のすべての分野でリスクが高まる状況ではないか。

財政破綻のリスクはない増税はやめるのが合理的

 そうした状況で消費増税をやっている余裕があるのか。

 本コラムでは、政府の財政について、負債だけではなく、資産も含めたバランスシートで考えなければいけないと、何度も書いてきた。筆者は20年以上もこのことを繰り返してきた。「統合政府論」というファイナンス論の基礎でもある。

 この考え方をもとに、大蔵省(現財務省)勤務時代に、単体のみならず連結ベース政府のバランスシートを作成した。それをみると、それほど国の財政状況は悪くないことが分かった。

 国の徴税権と日銀保有国債を政府の資産と考えれば、資産が負債を上回っていることも分かった。この財政の本質は、現在まで変わっていない。

 また資産といっても、一般に考えられている土地や建物などの有形固定資産は全資産の2割にも満たない程度だ。大半は売却容易な金融資産で、政府関係機関への出資・貸付金などだ。

 その当時、筆者は上司に対して、ファイナンス論によれば、政府のバランスシート(日本の財政)はそれほど悪くないことを伝え、もし借金を返済する必要があるのであれば、まずは資産を売却すればいいと言った。

 それに対し上司から、「それでは天下りができなくなってしまう。資産は温存し、増税で借金を返す理論武装をしろ」と言われた体験もいろいろなところで話してきた。

 ちなみに、日銀を含めた連結ベース、つまりいわゆる統合政府のバランスシートに着目するのは、その純資産額が政府の破綻確率に密接に関係するからだ。

 これもファイナンス論のイロハである。IMF(国際通貨基金)も、統合政府の純資産に着目して、日本では実質的に負債はないといっている。

 純資産額の対GDP比率は、その国のクレジット・デフォルト・スワップ・レートと大いに関連する。それは破綻確率に直結するからだが、日本の破綻確率は今後5年以内で1%にも満たない。

 この確率は、多くの人には認識できないほどの低さであり、日本の財政の破綻確率は、無視しても差しつかえないほどである。

 一方で、来年は上述したような経済や自然災害、安全保障のリスクが考えられるのだ。

 消費増税は、社会保障の安定財源確保や財政再建のためだと言うが、財政破綻の可能性を考えれば、経済、自然災害、安全保障のリスクのほうがはるかに大きいので、やめるのが合理的な判断だろう。

(嘉悦大学教授 高橋洋一)
【私の論評】財務省は本気で全国民から恨まれ、米国を敵にまわしてまでも増税できるほど肝が座っているのか?
ブログ冒頭の記事で、高橋洋一氏は、「消費増税は、社会保障の安定財源確保や財政再建のためだと言うが、財政破綻の可能性を考えれば、経済、自然災害、安全保障のリスクのほうがはるかに大きいので、やめるのが合理的な判断」と締めくくっていますが、全くそのとおりです。
しかし、増税をやめるべき理由は高橋洋一氏が述べる国内事情にとどまるものではありません。それは、トランプ政権による反対です。
これについては、以前もこのブログに掲載したことがあります。その記事のリストを以下に掲載します。
G20「各国の力関係の変化」と共同宣言の本当の読み方を教えよう―【私の論評】トランプが目の敵にしてる日本の消費税引き上げを安倍総理は本当に実行できるのか(゚д゚)!
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、トランプ大統領がなぜ消費税増税に反対するのかを説明した部分のみ以下に引用します。
日本では、輸出業者に消費税が還付される「消費税還付制度」があります。たとえば、自動車を1台生産する場合、部品をつくる会社は部品を売ったときの消費税を国に納め、その部品を買って組み立てて製品にした会社は、それを親会社に売るときに消費税を納めます。そうやって、いくつもの会社が払ってきた消費税が、最終的に製品を輸出する企業に還付される仕組みになっています。
本来なら、部品をつくる会社、それを組み立てる会社と、消費税を払うそれぞれの業者にも出されてしかるべきですが、最終的に輸出されるときには輸出業者は免税で、そこにまとめて還付されることになっています。 
この輸出業者に還付されるお金は、全国商工新聞によると約6兆円。つまり、消費税徴収額約19兆円のなかで、主に輸出業者に戻される還付金が約6兆円もあるということです。みんなから集めた消費税の約3割は、輸出企業に戻されているのです。 
これに対してトランプ大統領は、アメリカに輸出する日本の企業は政府から多額の補助金をもらっていると怒っていて、だからダンピングでクルマなどが売れるのだと考えているようです。消費税を「輸出を促すための不当な補助金」だと非難しているわけです。 
そもそも、米国には消費税がありません。州単位では「小売売上税」という消費税に似たような税金を徴収していますが、国としてはないのです。1960年代から何度も消費税導入の議論はされていますが、ことごとく却下されています。 
なぜ米国の議会が消費税導入を却下するのかといえば、彼らは消費税というのは不公平な税制だと思っているからです。アメリカには、儲かった企業がそのぶんの税金を払うのが正当で、設備投資にお金がかかるので儲けが出にくい中小企業やベンチャー企業からは税金を取らないという考え方があります。儲かっていない中小企業の経営を底支えし、ベンチャー企業を育てて、将来的に税金を払ってくれる金の卵にしていく。それが正しい企業育成だというのです。 
しかし、消費税は、儲かっていても儲かっていなくても誰もが支払わなくてはいけない性質の税金です。さらにいえば、儲かっているところほど相対的に安くなる逆進性を持っているので、アメリカでは不公平な税制だというのが議会や経済学者のコンセンサスになっています。

消費税の引き上げにおいては、国内での議論とは別に日本が無視することのできない「巨大な外圧」があるのです。

来年以降、『アメリカ・ファースト』(アメリカ第一主義)を掲げるトランプ政権との貿易交渉が本格的にスタートするこのタイミングで、日本が消費税10%引き上げへ向かえば、アメリカの強い反発を招くことは避けられないでしょう。

日本やヨーロッパなど、約140の国と地域で採用されている消費税(日本以外では付加価値税と呼ばれる)ですが、実はそこに連邦国家アメリカは含まれていません。

ただし、米国には商品の小売り段階でのみ消費者に課税する『小売売上税』という州税があります。しかしこれは、原材料の仕入れから、製造、流通、卸売り、小売りに至るまで、すべての商取引の段階で課税される『消費税』や『付加価値税』とは根本的に異なるものです。

以下に消費税と小売売上税(売上税)の違いを示すチャートを掲載します。



米国でも過去何度も消費税導入が議論されたことがありますが、そのたびに退けられてきました。その背景には、上での述べたように消費税や付加価値税を『不合理で不公正な税制』ととらえる米国の考え方があります。そのため、この税制に関して、米国は一貫して否定的なスタンスを取り続けてきたのです。

もちろん、消費税を採用している国から見れば、米国は『少数派』ということになりますが、多くの政策で独自路線を突き進み、公平な市場環境を訴えるトランプ政権が『こちらに歩調を合わせるべきだ』と言いだしても不思議はないです。

しかし、米国が消費税導入に否定的だとしても、彼らが他国の税制に「不公正だ」「非関税障壁だ」と不満を訴えているのはなぜなのでしょうか。

その最大の理由は、上でも述べたように日本も含めた消費税導入国が自国の輸出企業に対して行なっている「輸出還付制度」の存在です。米国はこれを「自由競争の原則を歪(ゆが)める制度」だとして問題視しているのです。

消費税は仕入れから小売りまで、すべての段階で課税されます。そして事業主は基本的に、最終的な売り上げにかかる消費税(購入者から預かった消費税)から、その前の段階の仕入れなどにかかる消費税を差し引いた額を税務署に申告することになります。ただし、インボイス制度未採用(*)の日本で正確に計算ができるのかという問題がまずあります。

仕入れから製造までを国内で行なう企業がその製品を海外に輸出する場合、消費税は実際に消費が発生する輸出相手国の税制に沿って課されることになります。

仕入れの段階でも日本の消費税を払っているので、このままでは輸出相手国と国内とで2度消費税が課されることになります。そうした『二重課税』が起きないよう、輸出製品については仕入れなどにかかる消費税が国から還付されることになっています。これが『輸出還付制度』です。

(*)日本の消費税は、ヨーロッパの付加価値税のように取引に関する個々の請求書、領収書ベースで消費税額を計算するインボイス制度を採用していません。


例えば、日本の自動車メーカーが国内から部品を調達していれば、そのメーカーは国内の下請け企業に「部品代+消費税」を支払っていると見なされ、そのクルマを輸出して海外で販売した場合は、国内で払った消費税分が全額還付されるのです。これは消費税制度のない米国に輸出する場合も例外ではありません。

米国はこの還付金を、政府が輸出企業に与える『実質的なリベート』だと見なしていて、強い不満を訴えています。消費税制度のある国からアメリカに輸出する企業は消費税免除により『輸出還付金』の形でリベートを受け取るのに対し、アメリカ国内の企業にそうした制度はなく、輸出先の相手国の消費税を課税されています。これが米国からすると『不公正だ』という主張です。

ではアメリカにとって日本の消費税引き上げはどんな意味を持つのでしょうか。

もちろん、こうした米国側の主張については、さまざまな異論もあると思います。しかし、あくまで米国側の立場で見れば、日本の消費税の8%から10%への引き上げは、『日本の輸出企業へのリベートの引き上げ』と『日本向けアメリカ輸出企業への実質的な課税強化』ととらえることになります。当然、米国が強く反発するのは避けられないでしょう。

米国は日本だけ目の敵にしているわけではありません。欧州の付加価値税や日本の消費税のような間接税については還付制度を認め、直接税では認めないWTO(世界貿易機関)のルール自体を変えるべきだと主張しているのです。

「日本自動車工業会」会長豊田章男氏

実は、そうしたアメリカ側の空気に最も敏感に反応しているのが、日本の自動車メーカーによる業界団体で、トヨタ社長の豊田章男氏が会長を務める「日本自動車工業会」(自工会)です。

これまで基本的に政府の「消費税引き上げ」という方針を支持してきた自工会が、今年9月20日に発表した「平成31年度税制改正に関する要望書」では増税反対という明確な表現は避けながらも、消費税10%への引き上げについて国内市場縮小への懸念を強く訴えています。

こうした自工会の消費税に対する姿勢の変化に、彼らの日米関係に対する「シビアな現状認識」が表れているようです。

韓国とのFTA(2国間貿易協定)の見直しに続いて、10月にはメキシコとカナダとのNAFTA(北米自由貿易協定)に代わる新たな協定(USMCA)の合意にこぎ着けたトランプ政権が、『次のターゲット』として日本を視野に入れるのは当然でしょう。

日本はこれから、自動車関税25%への引き上げをチラつかせるトランプ政権と、2国間貿易協定の交渉に臨みます。しかし、前述したように米国は日本の消費税に対して、強い不満や不信感を抱いています。

そんな状況で日本が消費税の引き上げを強行すれば、日米交渉のテーブルでは米国側が態度をさらに硬化させ、場合によっては自動車関税25%発動という、自工会にとって最悪のシナリオを招きかねません。

今年9月25日、国連総会出席のため訪米した安倍首相に同行した茂木敏充経済再生担当大臣がUSTR(アメリカ通商代表部)のライトハイザー代表と会談しましたが、このライトハイザー氏は消費税の『輸出還付制度』を一貫して不当なリベートだと訴え続けてきた人物として知られています。

安倍首相の訪米直前のタイミングで、自工会があえて『消費増税への懸念』を表明したのも、アメリカ側に配慮した自工会のメッセージではないかとみられます。

また、先ほど述べたUSMCAでは、アメリカへの関税が免除される製品に関して『部品の現地調達率』などの条件が大幅に強化されており、これまでメキシコでの現地生産でNAFTAの恩恵を受けていた日本企業にとって、かなり厳しい内容になっています。

日本の自動車メーカーにとってはトランプ大統領の言う『メキシコ国境の壁』がつくられたも同然で、今後アメリカ市場での拡大があまり期待できないことを考えれば、『消費税引き上げで国内市場まで縮小されてはたまらない』というのが自工会の本音ではないでしょうか。

もちろん、税制は日本の「内政問題」です。それに消費税を採用せず、輸出還付制度を不公正なリベートと見なす米国の考え方が必ずしも正しいとは限らないです。

しかし、世界には米国のように消費税に対して否定的な超大国もあるということです。そして、その米国の姿勢がさまざまな形で日米関係に大きな影響を与えかねないという現実があることは理解する必要があるでしょう。

日本の税制をめぐる大切な議論が、日米貿易交渉の「取引材料」に使われる可能性は大いにあるということだけは認識すべきでしょう。

消費増税は、社会保障の安定財源確保や財政再建のためだと言うが、財政破綻の可能性を考えれば、経済、自然災害、安全保障のリスク、さらには米国による自動車関税25%のほうがはるかに大きいので、やめるのが合理的な判断です。

ムニューシン米財務長官

ムニューシン米財務長官は10月13日、日本との新しい通商交渉で、為替介入をはじめとした競争的な通貨切り下げを防ぐ「為替条項」を要求する考えを示しました。インドネシア・バリ島で記者団に語りました。日本政府は通貨政策や金融政策を縛られるため受け入れがたく、日米交渉の新たな火種になる可能性が出てきました。

日米は9月、安倍晋三首相とトランプ米大統領の首脳会談で、農産物や工業製品の関税引き下げに向けた「日米物品貿易協定(TAG)」の交渉開始で合意しました。ムニューシン氏は今回、この交渉に絡み、「今後の貿易協定に(通貨安への誘導を禁止する)為替条項を盛り込むことが目標だ」と発言しました。

今後の交渉では、消費税がやり玉にあがる可能性はかなり大きいです。米国は自動車関税を皮切りに他の製品や、鉄鋼や部品などにも関税をかけてくる可能背もあります。さらに、「為替条項」まで強制されれでば、とんでもないことになります。このような危機を招く消費税増税は絶対にすべきではありません。

為替条項などは、経済学の常識で、「一国が為替操作のために、意図的に金融緩和策を採用しつづけると、今度はハイパーインフレに見舞われる。そのため、為替操作を続けることはできなくなる」という一般論で十分切り抜けられると思いますし日本は実際為替操作などしていません。しかし、消費税に関してはなかなか、合理的に説明するのは難しいです。米国も納得しないでしょう。

ふたたび増税すれば、個人消費が落ち込み、また日本はデフレにまいまどりとんでもないことになります。過去においては、デフレの原因などあまり明るみにされませんでしたが、今後は多くの識者がその原因を詳細にわたって解説することでしょう。そうして、その現況となった財務省は当然のことながら糾弾され、やがて全国民から恨まれることになります。

財務省は、本当に国民経済を破壊し国民から恨まれるだけではなく、さらに米国を敵にまわしてまで増税するつもりなのでしょうか?

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2018年12月26日水曜日

中国情報当局トップ“極秘来日”の真相 専門家「日本を取り込みたい中国側の意思のあらわれ」―【私の論評】中国≒盗人!そのような見方をさせるようにしたのは当の中国(゚д゚)!

中国情報当局トップ“極秘来日”の真相 専門家「日本を取り込みたい中国側の意思のあらわれ」

陳文清国家安全相

中国の情報機関トップ、陳文清国家安全相が今秋、極秘来日して公安調査庁や外務省の幹部らと接触していたと、読売新聞が23日朝刊で報じた。マイク・ペンス米副大統領が10月4日、「(中国に)断固として立ち向かう」などとワシントンのシンクタンクで演説し、米中新冷戦が顕在化した直後のタイミングだけに、中国側の意図が注目されている。

 同紙によると、陳氏は10月末から11月初旬の来日中、日本の情報当局幹部と面会し、2020年東京五輪と22年北京冬季五輪を見据えたテロ対策での連携や、情報当局間の交流強化を確認。北朝鮮情勢についても意見交換したという。

 国家安全省は、中国の情報機関で、諜報・防諜活動を主業務とする。米国のCIA(中央情報局)やFBI(連邦捜査局)、英国のMI6(秘密情報部)やMI5(情報局保安部)に相当するとされる。

 中国の通信機器大手「華為技術(ファーウェイ)」の副会長兼最高財務責任者(CFO)が今月1日、米国の要請でカナダで逮捕された直後、中国でのカナダ人元外交官らの拘束を実行した当局といわれる。

 トップである陳氏は、習近平国家主席の側近の一人とされ、16年11月に、同省党組書記から国家安全相に起用された。

 日中間には現在、スパイ容疑などで邦人12人が中国当局に拘束されている問題がある。読売新聞は、陳氏の今回の行動を「極めて異例」と報じたが、一体何が目的なのか。

 元公安調査庁調査第二部長の菅沼光弘氏は「異例といえば異例だ」といい、こう続けた。

 「米中新冷戦が激化するなか、米国は、日本経由で中国への軍事・ハイテク技術が流れることを警戒している。陳氏の極秘来日は、中国がいかに日本を取り込みたいかという意思のあらわれといえる。中国としては、日本と接近して、有利な立場を取りたいということもあるだろう」

【私の論評】中国≒盗人!そのような見方をさせるようにしたのは当の中国(゚д゚)!

中国が世界を自分たちの都合でメチャクチャにしてきたことは、もうはっきりしすぎるくらいはっきりしています。

日本にとっても、尖閣の問題一つとっても、中国の行動はハチャメチャでした。このような国は全く信用できず、米国に経済冷戦を仕掛けられても当然としか言いようがないです。

このことは、現在の日本人なら、誰でも知っていることです。しかし、何年か前までは、多くの人がこのことを知らないどころか、中国幻想に酔っていました。

NHK「クローズアップ現代」国谷元キャスター

2009年の9月17日のNHK「クローズアップ現代」では当時の多くのマスコミがそうであったように、中国進出大キャンペーンを行なっていました。番組タイトルは「シリーズ アジア新戦略(2) “ボリュームゾーン”をねらえ」というものでした。

当時の国谷キャスターがはもはや欧米の市場は狙えないから中国に活路を見出せという事を語っていました。番組ではダイキンが中国市場に本格参入するために中国企業と合弁すると言うことを報道していましたが、代償としてインバーターの技術を提供すると報道されていました。

しかし、当時の私は中国企業は技術を手に入れたらダイキンを追い出して、新技術の新型クーラーを格安で売り出すだろうと思いました。このようにして中国は13億の巨大市場を餌にして世界の先進企業の技術を手に入れていました。当時中でも中国の経済発展にもっとも貢献しているのは米国のグローバル企業でした。

そのダイキンは現時点ではすでに中国から引き上げています。当然といえば、当然です。ダイキン工業は、チャイナリスクの回避を着々と実行しています。今年ダイキン工業は米国で製造する空調機の一部部品を中国から賄っているのですが、調達先の変更などを検討中です。日本のメーカーの多くがこのようなチャイナリスク回避を実行しつつあります。

米国イリノイ州 ロックフォードの町並み

さて、2009年当時の米国をふりかえってみます。米国のロックフォードは東京や大阪の下町にあるような機械工業部品の生産地でした。多くが数十人規模の中小企業であり自動車のエンジンを作る精密工作機械など高い技術力を持っていました。

そこに中国企業が三分の一の価格で部品の販売攻勢をかけてきて、一つまた一つと伝統ある金属加工会社が倒産して行ったのです。そして倒産した会社の機会や設計図や操作ノウハウを中国が買いあさっていきました。

アメリカ政府はこのような国防上も影響のある中小企業を保護する事もなく見捨てて、300万人もの雇用が失われていったのです。GMやクライスラーが新世代の自動車が作れなくなったのは、このような中小企業が倒産してなくなってしまったからであり、GMやクライスラーは中国の安い部品で自動車を作るようになりました。

ボーイング社も世界最大の航空機メーカーですが、安い部品は中国から輸入して組み立てていました。当時のGMやボーイング社のようなグローバル企業から見れば、国内で生産するよりも人件費がただのような中国で部品を作ったほうが合理的だったのです。中国は広い国土と膨大な人口を持つから自動車や航空機の巨大市場になる可能性がありました。事実中国は世界一の自動車大国になりました。

中国の自動車メーカーは400社もあるそうですが、自動車が国産化できるようになったのも早くから米国のメーカーの下請工場として部品を作ってきたからであり、米国のグローバル企業は日本やヨーロッパと対抗するには中国の安いコストで対抗する必要があったのです。だから米国は中国の人民元の切り下げにも協力しました。80年代は1ドル2元が90年代には1ドル8元にまで切り下げられました。これは、GMやボーイングにとってはその方が良かったからです。

米国政府は国家戦略として製造業は切り捨てて金融立国を目指していました。1997年のアジア金融危機は米国が仕掛けたものであり、米国資本は倒産したアジアの企業を買いあさったのです。韓国の主要銀行はすべて外資に買収されて米国の経済植民地になってしまいました。物作りは中国や韓国や台湾に任せて金融で稼ぐのが一番効率がいい良いはずでした。

しかし米国ではバブルが崩壊して金融立国戦略は破綻しました。そうして製造業はロックフォードの例を見るまでも無くほとんどの会社は倒産して熟練工もいなくなりました。新製品を作ろうと思っても国内では作る事が出来ないのです。製造工場がいったん無くなれば元に戻す事はなかなかできないです。工場は海外に自由に移転させられますが、人は移す事ができないです。失業した熟練工は時給7ドルのウォルマートの販売店員になるしかなかったのです。

この光景は当時日本で起きていた光景と同じであり、トヨタやキヤノンといったグローバル企業は工場を中国に移転して国内は空洞化してしまいました。当時は、経済的にはそれが合理的だったのでしょうが、中国は全くアンフェアな国です。

技術を手に入れたら格安で販売攻勢をかけてくるでしょう。NHKは当時アジアの巨大市場を手に入れるには技術を移転させていくしかないと言っていましたが、それはまさに米国と同じ道を行けと言うのと同じでした。

当時といえば、中国経済は10%前後の程度の伸びを続け、安くて豊富な労働力、そして何よりも13億人という圧倒的な市場規模。だからこそ、当時の日本企業は雪崩を打って中国に進出していました。中国政府が発行する「中国貿易外経統計年鑑」によれば、2012年には、約2万3000社の日本企業が中国に進出していました。

ところがです、当時から中国のことを知らずに企業経営をするのは、譬えるならば、マンホールのふたが開いている道を、新聞を読みながら歩いているようなものと警告されていました。

そもそも、中国には当時から世界中から一流企業が大挙して進出しており、世界一競争が激しい市場でした。地場の中国企業も酷い目に遭っていました。そこへ進出するのは、ベンチャー企業を創業するのと同じようなものでした。中国の国情をあまり知ろうとせず、中国人と付き合おうともせずに企業経営するのは、あまりにも危険でした。

実は、日本企業の中には、中国に進出して、破産に至るほどの深刻な目に遭った会社も少なくありませんでした。しかし、体面やその後のビジネスを気にして泣き寝入りしたケースが跡を絶たたなかたのです。

当時は、日銀も中国におもねるように、金融引き締めを繰り替えし、超円高状況を創出し、中国にとって都合の良いような状況ばかりをつくりだしていました。

この状況は、2013年4月から、日銀が従来のスタンスを変え、金融緩和に転じたため、ずいぶんと改善されました。従来の異常な超円高状況は改善され、現状は従来よりは円安傾向でまともな為替状況なっています。

この状況下、中国に進出した先にも出したダイキン工業のような企業が日本に生産拠点を戻しています。そうして、多くの企業がチャイナリスクを回避しようと日々努力しています。

盗人中国 パンダもともとはチベットのもの

中国の情報機関トップ、陳文清国家安全相が来日したとして日本国内での工作を強化したとしても、こうした企業や多くの人々の考えを変えることはできないでしょう。

そうして、日本人はこの中国の汚いやり口を終生忘れるべきではありません。中国≒盗人とみるべきなのです。そうして、これは一見ひどいことのようにも思えますが、そのような見方をさせるようにしたの当の中国であることを忘れるべきではありません。

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2018年12月25日火曜日

北朝鮮に強いシグナルを送った米国―【私の論評】ダメ押し米国!着実に奏功しつつある北制裁、中国への見せしめにも(゚д゚)!

北朝鮮に強いシグナルを送った米国

岡崎研究所

 米国財務省は、12月10日、北朝鮮の高官3名に対する制裁を発表した。そのプレス・リリースの主要点を紹介する。



・米国財務省の外国資産管理室(OFAC)は、北朝鮮で行われている深刻な人権侵害・弾圧に対して、3名の個人を指定した。この財務省の措置は、2016年の北朝鮮に対する制裁及び政策強化法(NKSPEA)に従って、本日、国務省が議会に提出した「北朝鮮の深刻な人権侵害・弾圧に関する報告書」に基づくものである。

・ムニューチン財務長官は述べた。「財務省が制裁対象とする北朝鮮高官は、北朝鮮による人権侵害を指揮した人達である。この制裁措置は、米国が行っている表現の自由の擁護や人権侵害への反対等の立場を示した行動である。米国は、一貫して、北朝鮮の人権侵害や表現の自由への弾圧に対して非難してきた。米政権は、引き続き、世界における人権侵害に対して行動を取って行く。」

・今回の措置は、北朝鮮が自国民に対して行っている扱いとともに、18か月前に亡くなった米国民、オットー・ワームビアさんに対する酷い扱いも想起したい。彼は、この12月12日で、24歳になるはずだった。彼の両親及び遺族たちは、いまも彼を追悼している。トランプ大統領は、2018年の一般教書演説で、米国は決意をもって、オットー・ワームビアさんに哀悼の意を捧げると、約束した。今回の措置は、この米国の決意の表れでもある。

・今回の指定は、大統領命令13687に基づくもので、北朝鮮政府と朝鮮労働党(WPK)等の幹部を対象にし、NKSPEAと適合する。今日指定された個人は、既に制裁対象となっていた組織、国家保衛省(MSS)、公安省(MPS)、WPKの組織・指導部(OGD)及び宣伝扇動部(PAD)に属す。

・国務省によると、今回指定された鄭敬沢(チョン・ギョンテク)は、MSSが行った人権侵害・弾圧を指導したと言われている。崔竜海(チェ・リョンヘ)は、OGDの部長であり、党、政府、軍を統括する「ナンバー2」と言われる。OGDは、党の強力な部署で、イデオロギーの監視を行ったり、党の政治的政策を実施したりする機関である。例えば、WPKの幹部が党の方針と異なることを述べてしまった際は、すぐに自己批判をさせる。崔竜海は、党中央員会の執行部の副委員長でもある。朴光浩(パク・グァンホ)は、WPK宣伝扇動部長で、表現の自由の弾圧を行なったり、イデオロギーの統制をしたりする責任者である、と国務省の報告書では述べられている。

左から 鄭敬沢,崔竜海、朴光浩

・米国は、深刻な人権侵害をした者に制裁を課し、その者たちが濫用をしないよう米国の金融システムを守る。2017年1月以来、米財務省は、500人以上の個人・団体を制裁対象として指定した。北朝鮮以外にも、シリア、南スーダン、コンゴ、ベネズエラ、イラン、ロシア等を対象にした。

・今回の制裁により、OFACによって指定された者の米国内の資産は凍結され、米国人と指定された者たちとの取引は禁止される。

参考:U.S. Department of the Treasury ‘Treasury Sanctions North Korean Officials and Entities in Response to the Regime’s Serious Human Rights Abuses and Censorship’ December 10, 2018

 12月10日、米国財務省は、北朝鮮の3人の高官に対しての金融制裁を発表した。

 今回の指定により、3人の在米資産は凍結され、米国人がこれらの者と取引を行うことが禁止される。実質よりも象徴的な意味合いの濃い措置であるが、北朝鮮に一層の圧力を掛けるものであり、北朝鮮に強いシグナルを送ったものと言える。

 12月10日の崔竜海等の制裁発表に続き、翌11日には、国務省が、北朝鮮では信教の自由が侵害されているとして、北朝鮮を今年も「宗教自由特別懸念国」に指定した。これは1998年に制定された「国際信教の自由法」に基づく指定であり、北朝鮮等10か国がそれに指定され、北朝鮮の指定は17年連続だという。

 北朝鮮の非核化を巡る米朝交渉が膠着し、南北関係も文在寅大統領が望むようには進展していない。文在寅が熱望する金正恩労働党書記長の年内ソウル訪問もほぼ不可能になったと青瓦台も今や観念したようだ。

 そんな最中に、米国は12月10日、11日と連続で人権侵害などを理由に対北朝鮮措置を出したことになる。

 また、米国政府は、11月末には北朝鮮に人道支援以外の支援をしないこと、国際金融機関による北朝鮮への融資に米国から出ている理事が反対するよう訓令する大統領決定を行った。これは、6月発表の今年の「人身売買報告書」で北朝鮮等を引き続き最悪国に指定したことを受けたものである。なお、昨年11月には、北朝鮮は、「テロ支援国家」に再指定された。

 北朝鮮はゆくゆく IMF、世銀、アジア銀行など国際金融機関に加盟し、融資を受けることを望んでいると言われ、韓国の文在寅政権はそれに好意的な姿勢を示している。しかし一連の米国の措置は、国際機関からの融資を難しくするものである。早速12月11日、北朝鮮労働新聞は米国による北朝鮮人権問題措置に対して、「米朝首脳会談の精神に反する極悪な敵対行為」だと反発している。

 トランプ大統領は基本的に人権には関心がないと言われている。シンガポールの米朝首脳会談でも人権問題は話されておらず、その点が批判されもした。なお、米国が今月開催しようとした北朝鮮の人権侵害を議論する国連安保理会合は、今年は断念せざるを得なくなったと報道されている。中国の他、中国の圧力でアフリカの理事国が反対したので、安保理で9か国の支持が確保できなかったと見られている。

【私の論評】ダメ押し米国!着実に奏功しつつある北制裁、中国への見せしめにも(゚д゚)!

米国の北朝鮮制裁は、実はかなり効いています。昨年から北朝鮮制裁は厳しさを増していました。米国による北制裁の徹底ぶりは、昨年から続いていました。

昨年10月1日、北朝鮮製武器の不正取引事件の奇妙な顚末が、米紙ワシントン・ポスト電子版の報道で明らかになりました。

事件が起きたのは一昨年8月でした。米当局からの情報に基づいて、エジプトの税関当局が同国沖でカンボジア船籍の貨物船を拿捕。北朝鮮を出発地とするこの船からは、携行式ロケット弾約3万発(推定価格2300万ドル相当)が見つかりました。

その買い手は、実はエジプト軍の代理人であるエジプト企業でした。同国が米国から巨額の支援を受けていることを考えると、驚きの事実でした。

トランプ米政権は昨年8月、エジプトへの経済・軍事支援を3億ドル削減・留保すると決めました。エジプト国内での人権侵害を懸念してのことだとされましたが、複数の米当局者によれば、決断の契機はこの武器輸入事件でした。

支援削減は、アメリカが北朝鮮問題を最重要視する現状を浮き彫りにしました。トランプ政権の目的はエジプトを罰すると同時に、同盟国であっても北朝鮮と武器取引をすればどうなるか、見せしめにすることでした。

この出来事からは対北朝鮮制裁の実態も浮かび上がりました。すなわち、国連による制裁と米国による制裁の在り方です。

北朝鮮が初めて核実験を行った06年、国連安保理は最初の制裁決議を採択。北朝鮮からミサイルや関連物資を調達することが禁じられました。北朝鮮が2回目の核実験を実施した09年には、北朝鮮による武器の輸出入が全面的に禁止されました。

国連加盟国は対北朝鮮武器禁輸措置を遵守すべきであり、北朝鮮から武器を輸入したエジプトは違反を犯したことになります。ただし、強制的に制裁を執行する権限を持たない国連が、北朝鮮の不法な武器取引に歯止めをかけるのは不可能です。

国連の専門家の推定によると、北朝鮮の武器取引額は年間1億ドル近く。韓国の朝鮮日報はその3倍の数字を挙げていました。

国際的制裁を補完するため、アメリカは強制力がある独自の制裁を行ったのです。手段の1つが、自国民を対象に敵国やテロ組織との取引などを禁じる1次制裁と、経済制裁を主とする非米国人対象の2次制裁です。

米国は、北朝鮮に関して幅広い1次制裁を実施。北朝鮮とのあらゆる「物資、サービス、技術」の取引を禁じ、財務長官は米国法の下で制裁遵守を求める権限を有します。

エジプトによる北朝鮮製武器の輸入は、アメリカで昨年成立した北朝鮮制裁強化法に抵
触。国益を理由に国務長官が見合わせを要請しない限り、大統領は同法に従い当該国への支援を留保しなければならないのです。

北朝鮮制裁強化法は大統領に、武器取引を手助けした人物を特定する権限も付与しています。財務長官は広範囲の2次制裁と併せ、武器取引の当事者(この場合はエジプト政府関係者)に対して、米金融システムへのアクセスを遮断することができます。

北朝鮮の武器密輸を阻止し、取引を手助けする国を規制すべく、国連と米政府は複数の措置を講じています。エジプトについて米国は可能な手段を全て行使していないですが、その必要はないでしょう。問題の貨物船が拿捕されて以来、エジプトは協力姿勢に転じています。

一連の出来事は、アメリカの支援対象国に米政府の法施行の徹底ぶりを印象付け、北朝鮮と取引する国に再考を迫ることになりました。そう、制裁はきちんと機能していたし、今でも機能しているのです。

昨年決議された北朝鮮への国連制裁決議

さて、この制裁が継続している現在、当の北朝鮮経済はどうなっているのでしょう。

2018年の北朝鮮の経済は、その構造的脆弱性が国連安保理及び米国の制裁と重なり、一層深刻な状況を余儀なくされました。最近北朝鮮を訪問した在日朝鮮人は、「北朝鮮はいま第2の苦難の行軍」に入ったと異口同音に語っています。

アジアプレスも7月、北朝鮮内部協力者からの報告をもとに、「ついに一部農村で飢餓発生、“絶糧世帯”増加で慌てる当局」との報道を行いました。“絶糧世帯”とはお金も食べ物もまったくなくなった家庭のことです。

中国の統計によると、北朝鮮からの1~10月の輸入額は前年同期と比べて89%も激減しました。米朝首脳会談直後は「もうすぐ制裁は解除され貿易や合弁事業が活性化する」との期待を膨らましていた北朝鮮の経済関係幹部たちはいま意気消沈しています。

「金正恩経済」をけん引してきた「市場」は、輸出入の減少で活気を失っています。需要の低迷でガソリン価格は一時下落しましたが、このところの供給不足で再び上昇に転じ始めています。内部からの情報によると、平壌市内のガソリン価格は、一時ℓ当1.5ドル(約185円)まで下落していましたが、11月上旬にはℓ当1.9ドル(約234円)まで上昇しました。

食糧危機も深刻化しています。北朝鮮では7月に入って一部地域では気温が40度を超すなど記録的猛暑が続き、コメやトウモロコシといった農作物に大きな被害が出ました。特に一般大衆の主食であるトウモロコシは、発育が悪く収穫量が前年比10%も減少しました。

韓国の農村振興庁は12月18日、北朝鮮の今年の穀物生産量が455万トンと昨年よりも3.4%減少したと発表ましたが、これで2年連続の減少となりました。国連食糧農業機関(FAO)は、食糧不足量が約64万トンに達すると推算しており、ほとんどの北朝鮮の家庭が食糧不足に陥ると診断しました。

板門店から開城に行く途中の農村

自由アジア放送によると、北朝鮮は9月に人民保安省(日本の警察庁に相当)名義の布告を出し、協同農場はもちろん一般の道路に設置された検問所などでも食料の持ち出しに対する取り締まりを強化しているといいます。布告では「農場の田畑に侵入し窃盗を行った者には法律で厳正に対処するのはもちろん、悪質な場合は死刑に処する」と警告しているといいます。

自由アジア放送の咸鏡北道消息筋は12月10日、「国営農場が一年間農作業を総括(決算)したが、農場員個人への分配があまりにも少なかった」とし「今年も軍用米をはじめとする国家計画分をあまりにも多く徴収したために農民に分けて与える食料が足りなくて農場ごとに頭を悩ませている」と伝えました。国連食糧農業機関(FAO)が公表した報告書によると、コメの価格は8月から月にかけて17%ほど上昇したとのことです。

そうしたことから、9月初めに黄海南道載寧の合同農場では、現場の責任者が自殺したといいます。当局は食料生産の40%を軍に供給するよう命じましたが、この責任者は命令に不満を抱いて自殺したようです(朝鮮日報日本語版 2018/10/01)。

こうした農村での悲惨な状況が伝えられる一方で、都市では一時暴騰したアパート価格(所有権ではなく使用権)が暴落し始めています。そればかりか、金正恩委員長が自慢した黎明通りなどの新しいアパート群もいま雨漏りに悩まされ防水作業に必死だといいます。そのために中国にブルーシートの注文が殺到しています。金正恩委員長の「制裁は効いていない」とする「見せるための政策」はボロを出し始めたようです。

黎明通り

韓国銀行(中央銀行)が7月20日に発表した推定統計によると、北朝鮮の2017年実質国内総生産(GDP)は、干ばつや経済制裁の影響で前年比3.5%も減少したとされ、20年ぶりの低水準となったとしていますが、2018年度の落ち込みはそれ以上になると予想されています。

北朝鮮はいま対外宣伝サイトで「自力更生が徹底している北朝鮮への制裁は無駄だ」と強調し、「時間は米国の愚かさを悟らせるだろう」と主張していますが、実態を覆い隠し経済危機を住民の犠牲で乗り切ろうとする思惑の表れと見られます。

金正恩委員長は今年4月の朝鮮労働党中央委員会で、核兵器が完成したので経済に集中すると宣言し、昨年に比べ経済部門の視察を59.2%も増やしたしましたが、その結果は見るも無残な状態です。このまま「非核化」に乗り出さず米国とのこう着状態が続けば、2019年の北朝鮮経済は一層深刻な事態となるに違いないです。




米国務省のスティーブン・ビーガン(Stephen Biegun)北朝鮮担当特別代表は19日、韓国・仁川(じんせん)国際空港で記者団に対し、北朝鮮に対する人道支援に関する米国の政策を緩和する方針を述べました。

具体的には、北朝鮮に対する人道目的の支援を確実に北朝鮮民衆に行き届けるための取り組みを現地で実施できるようにするために、米国人の北朝鮮渡航禁止措置を見直すこととし、さらには来月初頭に複数の米民間支援団体とニューヨークで協議すると表明しました。

北朝鮮の核放棄が遅々として進まず、それどころか、むしろ今年6月12日の米朝首脳会談の成果が後退、あるいは実質無効になりつつあることなどから、この米国による北朝鮮に対する人道支援方針を見直しに関して、深読みする人もいるようです。

しかし、現在の北朝鮮の実情を知れば、これは今後本当に人道支援が必要になるほど、北朝鮮が疲弊することが予め予想できるため、それに対する備えであると考えられます。

特に、「北朝鮮民衆に行き届けるための取り組みを現地で実施できるようにするために、米国人の北朝鮮渡航禁止措置を見直す」という具体的なメッセージもあります。

米国としては、まずは「北朝鮮の高官3名に対する制裁」という明確な強いシグナルを北朝鮮に対して発信して、その後人道支援に関する声明を発表したということです。

この強いシグナルとは無論、核廃棄などをしなければ、ますます制裁は強くなるだけであるとの最後通牒に近いものだと思います。

実際米国は、北への制裁をさらに強化し、北朝鮮の経済を破壊するでしょう。それに対して、北が米国の人道支援を受け入れざるをえなくなったとき、本格的な米国の北への交渉がはじまることでしょう。

そうして、トランプ大統領としては、経済冷戦継続中の中国への見せしめとする腹でしょう。米国が軍事的手段によらずに北を屈服させてみれば、中国に対してもかなりの脅威になることでしょう。

ただし、金王朝がたとえ国民の多くが飢えたとしても、なお人道支援を受け入れない場合には、最後の手段として米国軍事力行使ということもあり得る ます。その意味で、北朝鮮の高官3名に対する今回の制裁は、米国による最後通牒でもあると受け止めるべきと思います。

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