2020年11月30日月曜日

豪首相、中国外務省報道官の偽画像投稿巡り謝罪を要求―【私の論評】人民解放軍や民兵は、台湾や尖閣を確保できないが、それと中国の傍若無人な発言・行動に抗議をしないこととは別問題(゚д゚)!

 豪首相、中国外務省報道官の偽画像投稿巡り謝罪を要求


    11月30日、モリソン豪首相(写真)は、同国軍の兵士がアフガニスタン人の子どもの喉元にナイフを
    突きつけているように見える偽の合成画像が中国外務省報道官の趙立堅氏によってツイッターに投稿された
    のを受け、「非常に不快」と批判し、削除を要求していると明らかにした。

 モリソン豪首相は、同国軍の兵士がアフガニスタン人の子どもの喉元にナイフを突きつけているように見える偽の合成画像が中国外務省報道官の趙立堅氏によってツイッターに投稿されたのを受け、「非常に不快」と批判し、削除を要求していると明らかにした。 

 中国政府に謝罪を求めていると述べ、豪政府としてツイッターに、30日掲載の同ツイートの削除を要請したと説明した。

 「甚だしく非常識で、いかなる理由でも正当化されない」と強調。「中国政府は恥を知るべきだ。世界の目から見れば地位を落とす行為だ」と続けた。

 豪中関係は、豪政府が新型コロナウイルスの起源に関する国際的な調査を求めて以来、悪化している。 豪軍は先に、アフガニスタンに派遣された軍特殊部隊の兵士25人が非武装の捕虜や民間人ら39人を違法に殺害したとの調査結果を発表。先週末には兵士13人に解雇を通知したと明らかにしていた。

 趙氏は投稿で「豪軍兵士によるアフガン民間人と捕虜の殺害にショックを受けた。われわれは強くこのような行為を非難し、責任を負わせるよう求める」としていた。

 同メッセージは27日に投稿されていたが、偽の画像はその時点ではなかった。
【私の論評】人民解放軍や民兵は、台湾や尖閣を確保できないが、それと中国の傍若無人な発言・行動に抗議をしないこととは別問題(゚д゚)!

モリソン豪首相の中国への抗議は、当然といえば、当然です。もし、厳しく抗議をしなければ、中国は中共の命令で、様々な機会にこのようなフェイク画像を合成して、SNSに投稿することでしょう。ちなみに掲載された合成写真を以下に掲載します。(一部加工しています)


日本の菅総理や政権幹部もこうしたモリソン豪首相の態度を見習うべきでしょう。

尖閣問題も、慰安婦問題も、最初に首相や幹部が厳しい抗議をしていれば、今日のようなことになっていなかった可能性が大です。

最近の例では、河野克俊前統合幕僚長は今月16日、東京都内で講演し、旧民主党の野田佳彦政権を念頭に、尖閣諸島(沖縄県石垣市)の周辺海域に中国海軍の艦艇が接近した場合は「海上自衛隊の護衛艦は『相手を刺激しないように見えないところにいろ』と(官邸に)いわれた」と明かしました。野田政権が平成24年9月に尖閣諸島を国有化した当時、日中の緊張関係が高まっており、中国側に配慮した措置とみられます。

野田佳彦氏

中国軍の艦艇は通常、中国海警局の巡視船が尖閣周辺を航行する際、尖閣から約90キロ北東の北緯27度線の北側海域に展開します。これに対して、海自の護衛艦は不測の事態に備え、27度線の南側で中国軍艦艇を警戒監視しています。


河野氏は「安倍晋三政権では『何をやっているのか。とにかく見えるところまで出せ』といわれ、方針転換しました。今ではマンツーマンでついている」と語りました。自民党の長島昭久衆院議員のパーティーで明かしました。

野田氏は尖閣で中国に配慮したつもりなのでしょうが、それが今日の度重なる領海審判、領空審判につながっているのは間違いないでしょう。

本来実施すべきだったのは、軍事衝突になることもおそれす護衛艦を前に出すことでした。そうすれば、今日のような有様はなかったかもしれません。

このような腰砕け的な、中国につけこまれるようなことをするのは、民主党(現在の立憲民主党、国民民主党)だけかと思えば、自民党も似たり寄ったりでがっくりきました。

皆さんもご存知のように、今月24日の茂木外相と王騎との会談です。これについては、このブログでもとりあげました。その記事のリンクを以下に掲載します。
中国外相、あきれた暴言連発 共同記者会見で「日本の漁船が尖閣に侵入」 石平氏「ナメられている。王氏に即刻帰国促すべき」―【私の論評】王毅の傍若無人な暴言は、中共の「国内向け政治メッセージ」(゚д゚)!
王毅

中国の王毅国務委員兼外相が、大暴言を連発しました。24日の日中外相会談後、茂木敏充外相と行った共同記者会見で、沖縄県・尖閣諸島をめぐり、中国の領有権を一方的に主張したのです。両外相は、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて制限しているビジネス関係者の往来を11月中に再開することで合意したといいますが、菅義偉政権はこの暴言を放置するのでしょうか。

茂木氏は記者発表で、「尖閣周辺海域に関する日本の立場を説明し、中国側の前向きな行動を強く求めた」と強調しました。

 これに対し、王氏からは、次のような看過できない発言が飛び出した。

「ここで1つの事実を紹介したい。この間、一部の真相が分かっていない日本の漁船が絶えなく釣魚島(=尖閣諸島の中国名)の周辺水域に入っている事態が発生している。中国側としてはやむを得ず非常的な反応をしなければならない。われわれの立場は明確で、引き続き自国の主権を守っていく。敏感な水域における事態を複雑化させる行動を避けるべきだ」

尖閣諸島は、歴史的にも国際法上も日本固有の領土です。

この傍若無人な王毅の振る舞いの背景には何があるのかをこの記事で分析しましたが、簡単にいうと、これは中国人民解放軍の制服組がときおり実行する、「国内向けブロパガンダ」です。

制服組が時折強硬発言するのは、結局彼らは他国と真正面から戦うと負けることはわかっているのですが、それを表面に出せば、人民や権力闘争の相手方から付け入るすきを与えることになるので、強硬発言をして、彼らの憤怒のマグマを直接浴びることをそらすことが目的です。

現在の中国の戦力は金をかけた分、核兵器なども含めて侮ることはできませんが、核兵器はおいそれと使うことができないし、通常兵器で戦えば、軍事的な弱小国には勝てますが、米露はもとより、海洋戦では日本にも勝てないです。

特に海洋戦においては、日米の潜水艦隊や哨戒力には中国はおよびもつかず、とうていかなわないと自覚しているのです。しかし、それはおくびにも出さず、強硬発言で国内向けプロパガンダを行い、自分たちや習近平政権を守っているというのが実情です。

実際に海洋戦になれば、日米は中国より数段優れた、哨戒能力により空母や艦艇をことごとく撃沈できますが、中国は日本の潜水艦の静寂性や、米国原潜の空母なみの破壊力には勝つことはできません。一方、中国の潜水艦は静寂性からは程遠く、すぐに日米に発見され、日米の潜水艦や日本の対艦ミサイル、米国のステルス機などに撃沈されてしまいます。

他の艦艇や航空機も同じです。台湾や尖閣に人民解放軍や民兵が上陸したとしても、日米の潜水艦隊に包囲されてしまえば、上陸部隊に補給ができず、結局上陸部隊はお手上げになってしまいます。このあたりのことは、なぜか日米のメディアでは報道されません。

潜水艦の行動は、昔から表に出さいないというのが、常識ですが、米軍は今年の5月に太平洋艦隊司令部がインド太平洋地域に新たに潜水艦を7隻派遣していますし、日本では今年の3月に最新鋭艦「たいげい」が進水し、潜水艦22隻体制にすることは周知ですし、これらの事実から日米はすでに海洋戦の戦術・戦略を変えたと認識すべきでしょう。

特に初戦でわざわざ、対艦ミサイル、魚雷などに対して脆弱な空母打撃群や艦艇を派遣して、中国に格好の目標を与えるような馬鹿マネはしないでしょう。初戦は潜水艦隊を派遣して、中国の潜水艦、他の艦艇、ミサイル基地などを破壊した後に必要があれば、空母打撃群派遣するというのが妥当な戦術・戦略です。

尖閣や台湾の守備には、日米とも潜水艦隊だけで十分に対応できるでしょう。何しろ、日米ともこれらの島嶼を確保する必要性などありません。これらを潜水艦艇で包囲し、中国潜水艦、補給船、航空機を近づけないようにすれば良いだけです。これだけなら、犠牲も少なくてすみます。一方、島嶼を確保しなければならない中国にはおびただしい犠牲がでることになります。

このあたりは、このブログでも最近力を入れて何度か解説しているので、興味のある方は是非ご覧になってください。

結局、中国は尖閣諸島や台湾なども、日米の潜水艦隊に阻まれ、これを奪取することは無理なのです。中国海軍のロードマップでは、今年は第二列島線を確保することになっていますが、現実には台湾、尖閣諸島を含む第一列島線すら確保できていません。

しかしこうした現実と、中国の強硬発言にすぐに抗議をしないということは別問題です。やはり、日本も豪州のように、中国が問題発言・行動をした場合には、すぐさま抗議をすべきでしょう。

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2020年11月29日日曜日

「未来投資会議」の廃止で、いよいよ菅総理が「経済政策」に本腰を入れ始めた…!―【私の論評】人事を駆使し、トップダウン方式の政策決定過程を日本でも定着させる菅総理(゚д゚)!

「未来投資会議」の廃止で、いよいよ菅総理が「経済政策」に本腰を入れ始めた…!

発足から2ヵ月…



「成長戦略会議」を新設

菅義偉内閣が発足して、約2ヵ月が経った。この間、「ハンコ行政」の廃止や、デジタル庁新設の決定など、霞が関周りでいくつもの変化があった。

中でも大きかったのが、前政権において経済政策の旗振り役だった「未来投資会議」を廃止し、「成長戦略会議」を新設したことだろう。そもそも、未来投資会議は2016年9月、安倍晋三前首相を本部長とする「日本経済再生本部」の下に設置されたものだ。

元来、経済財政運営を議論してきたのは、'01年に創設された経済財政諮問会議だった。

ところが、同会議は財務省や内閣府の影響力が大きかった。そこで、政策決定の主導権を握ろうと考えた経済産業省が音頭を取って'13年に立ち上げたのが、産業競争力会議で、その発展形が未来投資会議だった。

産業競争力会議も未来投資会議も、閣僚のほか民間議員により構成され、消費増税対策や社会保障改革、最近では新型コロナ後の社会像の設計など、幅広い分野の議題に取り組んできた。

そして、その会議運営には、総理大臣補佐官だった今井尚哉氏を筆頭に、経産官僚の意向が色濃く反映されてきた。

ところが、菅内閣が発足すると、同会議は「成長戦略会議」と名前を変えて機能を縮小され、議長も首相から官房長官に格下げされた。これは今後、首相が議長を務め財務省が主導する財政諮問会議よりも格下の会議として位置づけられることを意味する。

財務省の手練手管には乗らない菅総理

官邸周りの人事からも言えることだが、経産省の影響力が、菅政権において大幅に縮小されるのは明らかだろう。そのうえ、菅首相は官房長官時代に自らの秘書官だった財務省の矢野康治主計局長と親密であるとされる。

財務省の主流である東大法学部ではなく、一橋大学出身の矢野氏が入省同期でトップの主計局長に抜擢されたのは、菅政権の成立を見越した「布石」だったというのが、大方の霞が関ウォッチャーの見立てだ。

財務省矢野康治主計局長

こうして見ると、すっかり財務省優位のように思われるが、事はそう簡単ではない。

菅首相は、官房長官時代に内閣人事局を通じて霞が関官僚を掌握しているため、財務省といえども、かつてのように政策を完全にコントロールするのは難しいからだ。

さらに、菅首相は政治の師として故・梶山静六氏を挙げている。梶山氏は、官房長官時代の1996年、旧大蔵官僚の振り付けの下で、消費増税を決断した。ところが、後に梶山氏が「俺は大蔵省に騙された」と深く悔いていたというのは、よく知られたエピソードだ。

その姿を間近で見てきた菅首相が、財務省の手練手管にそう簡単に乗せられるとは思えない。

実際、政権発足以来、菅首相は学者やマスコミ、経済人など官僚以外の様々な人々を広く呼び込み、じっくりと話を聞いて判断を下している。こうした菅首相の人柄やスタイルから見れば、いずれかの省庁が主導権を握るとはどうしても思えないのだ。

課題によっては、省庁の判断を待たず、菅首相が自らで決断するという、これまでの日本にはなかったトップダウン方式の政策決定過程が生まれることになるかもしれない。

『週刊現代』2020年11月28日号より

【私の論評】人事を駆使し、トップダウン方式の政策決定過程を日本でも定着させる菅総理(゚д゚)!

財務省優位の組織の筆頭というか、実質財務省の隠れ蓑の組織としては、財務大臣の諮問機関である「財政制度等審議会」が筆頭にあげられるでしょう。その財政制度審議会は25日来年度予算案の編成に向けた意見書をとりまとめ、麻生財務大臣に提出しました。

財政制度等審議会=財政審は大学教授や経営者らがメンバーで、毎年11月頃に予算編成の在り方について提言する意見書=建議を取りまとめています。

財政制度等審議会 財政制度分科会 委員名簿

< 委員 > 赤井 伸郎大阪大学大学院国際公共政策研究科教授
 遠藤 典子慶應義塾大学グローバルリサーチインスティテュート特任教授 
  大槻 奈那マネックス証券(株)執行役員チーフアナリスト・名古屋商科大学大学院教授
  黒川 行治千葉商科大学大学院会計ファイナンス研究科教授
  神津 里季生日本労働組合総連合会会長
 榊原 定征東レ(株)社友 元社長・会長
櫻田 謙悟SOMPOホールディングス(株)グループCEO 取締役 代表執行役社長
佐藤 主光一橋大学国際・公共政策大学院教授
  角   和夫阪急電鉄(株)代表取締役会長
  

十河 ひろ美 

(株)ハースト婦人画報社ラグジュアリーメディアグループ編集局長
兼リシェス編集長 
  

武田 洋子

(株)三菱総合研究所シンクタンク部門副部門長兼政策・経済センター長
  中空 麻奈BNPパリバ証券(株)グローバルマーケット統括本部 副会長 
  南場 智子 (株)ディー・エヌ・エー代表取締役会長 
  藤谷 武史東京大学社会科学研究所教授
 増田 寛也東京大学公共政策大学院客員教授
宮島 香澄日本テレビ放送網(株)報道局解説委員
    

<臨時委員>

 秋池 玲子ボストン・コンサルティング・グループ
マネージング・ディレクター&シニア・パートナー 
雨宮 正佳日本銀行副総裁
  上村 敏之関西学院大学学長補佐・経済学部教授
  宇南山 卓京都大学経済研究所教授
葛西 敬之東海旅客鉄道(株)名誉会長
  河村 小百合(株)日本総合研究所調査部主席研究員
喜多 恒雄(株)日本経済新聞社代表取締役会長
  木村 旬(株)毎日新聞社論説委員
  権丈 英子亜細亜大学副学長・経済学部教授
  小林 慶一郎東京財団政策研究所研究主幹・慶應義塾大学経済学部客員教授
小林 毅(株)フジテレビジョン取締役
進藤 孝生日本製鉄(株)代表取締役会長
末澤 豪謙SMBC日興証券(株)金融経済調査部部長金融財政アナリスト
  竹中 ナミ(社福)プロップ・ステーション理事長
  田近 栄治一橋大学名誉教授
  伊達 美和子森トラスト(株)代表取締役社長
  田中 里沙事業構想大学院大学学長・(株)宣伝会議取締役
土居 丈朗慶應義塾大学経済学部教授 
  冨田 俊基(株)野村資本市場研究所客員研究員
  冨山 和彦(株)経営共創基盤IGPIグループ会長
  平野 信行(株)三菱UFJフィナンシャル・グループ 取締役執行役会長
  広瀬 道明東京ガス(株)取締役会長 
別所 俊一郎東京大学大学院経済学研究科准教授
  堀   真奈美東海大学健康学部長・健康学部健康マネジメント学科教授
神子田 章博日本放送協会解説主幹
村岡 彰敏(株)読売新聞東京本社代表取締役副社長
横田 響子(株)コラボラボ代表取締役・お茶の水女子大学客員准教授 
吉川 洋立正大学長
 

 (注)◎は分科会長、○は会長代理


東レ会長 榊原 定征氏

今年の建議ではまず、日本は危機的な財政状況にあり、新型コロナウイルスの感染拡大防止、経済回復、それに財政健全化という“三兎”を追う厳しい戦いを強いられるとしました。

その上で、新型コロナ対策で行った持続化給付金など、非常時の支援を常態化させれば「モラルハザードを通じて、今後の成長の足かせとなりかねない」と懸念を表明しました。「単なる給付金」ではなく、コロナ後を見据え経済構造の変化への対応などに支援の軸足を移し、成長力の強化につなげるよう求めました。

また、社会保障制度については、受益と負担のアンバランスを正す取り組みを着実に進め、「将来に不安を感じている現役世代が希望を持てるようにしていくことで、消費の促進にもつながる」としました。

言うに事を欠いて『新型コロナ対策で行った持続化給付金など、非常時の支援を常態化させれば「モラルハザードを通じて、今後の成長の足かせとなりかねない」』とは、なんという非情で傲慢な言葉でしょうか。財務省の隠れ蓑となっている財政制度等審議会こそが日本の未来をぶち壊すといっても過言ではありません。

そもそも「財政制度等審議会」は国民生活を無視し財政カットだけしか考えない財務省の隠れ蓑組織です。今やインフラ関連公共事業も1998年をピークに右肩下がりで減らされる一方です。政府には赤字であっても維持しなければならないものがあります。インフラは赤字であっても必要なのです。

しかも、このブログでも何度か掲載してきたように、日本政府の貸借対照表(BS)では、膨大な政府負債があるのは事実ですが、一方では政府債権もあり、正味(ネット)でみると、日本政府の負債は大したことはなく、英米よりも低い水準です。

それどころか、日本政府に中央銀行(日銀)も含める見方でみても、英米より良いどころか、2018年あたりには、財政赤字はなくなった状況です。

このような状況で、緊縮財政や増税などする必要性など全くありません。一日も早く、大幅な減税と、数十兆円規模の積極財政を行うべきです。積極財政として、実行しなければならないことは、コロナ禍の現在いくらでもあります。効果のある方式ですぐにも実行すべきです。

菅総理もそのことは、熟知していることでしょう。

さて、上にあるように菅総理は、官房長官時代に内閣人事局を通じて霞が関官僚を掌握しているため、財務省といえども、かつてのように政策を完全にコントロールするのは難しいというのは事実だと思います。

上の記事では、課題によっては、省庁の判断を待たず、菅首相が自らで決断するという、これまでの日本にはなかったトップダウン方式の政策決定過程が生まれることになるかもしれないとしていますが、本当にそうなるかもしれません。

菅総理は、すでに人事の魔術師ともいうべき面を垣間見せています。それについては、このブログにも掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載ます。
【日本の解き方】菅政権のマクロ経済政策は「第3次補正予算」が当面のポイント 内閣官房参与の仕事と決意―【私の論評】人事の魔術師、菅総理の素顔が見えてきた(゚д゚)!
人事の魔術師菅総理

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事では菅総理は、「人事が最大のコントロール」手段であることを熟知していると評価しました。まさに、人事こそは、他のどのようなコントロール手段にも増して最大のコントロール手段なのです。

この記事より一部を引用します。
"
経営学の大家ドラッカーは、組織において真に力のあるコントロール手段は、人事の意思決定、特に昇進の決定だといいます。
貢献させたいのならば、貢献する人たちに報いなければならない。つまるところ、企業の精神は、どのような人たちを昇進させるかによって決まる。(『創造する経営者』)
まさに、真に力のあるコントロール手段は、人事なのです。他にも様々なコントロール手段もありますが、しかし人事にまさるものはありません。単純な人事なら、AIにもできますが、政府の仕事に関わる重要な人事はやはり、総合的な観点から人間が行わなければなりません。
"
人事というと、報復人事などネガティブなものを思い浮かべがちですが、ドラッカーの言うように、特に昇進の決定、どのような人たちを昇進せるかによつて、菅政権の精神を示すことなのです。このことも、菅総理は熟知しているでしょう。無論、普通の会社で行われるような、マイナスの人事も当然行うことでしょう。これができて、はじめて政治主導が可能になります。

民主党が掲げた「政治主導」はまさに絵に描いた餅に過ぎませんでしたが、菅総理は、様々な人事手段を駆使して、トップダウン方式の政策決定過程を日本でも定着させ政治主導を実現するかもしれません。

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2020年11月28日土曜日

コロナ起源は中国外との主張「かなりの憶測」=WHO幹部―【私の論評】WHOは中国派でない勢力が息を吹き返したようだが、組織変革しなければ使命を果たせない(゚д゚)!

 コロナ起源は中国外との主張「かなりの憶測」=WHO幹部

マイク・ライアン氏

 世界保健機関(WHO)で緊急事態対応を統括するマイク・ライアン氏は27日、新型コロナウイルスの起源が中国「外」とする主張について、かなりの憶測だという見方を示した。

中国は国営メディアを使って「コロナの起源が中国」との見方を否定する情報の拡散を続けている。ウイルスは昨年終盤に武漢の海鮮市場で確認されたが、それ以前に海外に存在していたという主張だ。 ライアン氏は会見で「コロナウイルスが中国で発生しなかったとの主張はかなりの憶測で、公衆衛生の観点から、ヒトの感染が確認された場所から調査を始めるべきことは明白だ」と指摘。WHOとしてウイルスの起源を調べるため、専門家らを武漢の食品市場に派遣する方針を確認した。

WHOの疫学者マリア・バン・ケルコフ氏

こうした中、WHOの疫学者マリア・バン・ケルコフ氏は27日、新型コロナの新規感染者数が減少したとしても、各国は警戒を怠らないようにする必要があると述べた。 オンライン会見で、ロックダウン(都市封鎖)の再導入は避けたいとし、「われわれには感染率を低く抑える力がある。数十カ国がウイルスをコントロールし、それを継続できることを示した」と語った。

【私の論評】WHOは中国派でない勢力が息を吹き返したようだが、組織変革しなければ使命を果たせない(゚д゚)!

テドロス事務局長は中国寄りとされていましたが、WHOも一枚岩の組織ではないようです。マイク・ライアン氏や、マリア・バン・ケルコフ氏は、中国寄りではないようです。

上の記事では、ライアン氏が専門家らを武漢の食品市場に派遣する方針を確認していますが。これについて、テドロス事務局長は会見で、「調査チームは武漢に行く」と述べ、現地での調査を行うことを明らかにしましたが、具体的な時期については言及しませんでした。

WHOの中でも、中国寄りのテドロス氏でさえも、現状ではコロナ起源は中国外であると主張したり示唆することはできないのでしょう。

テドロス事務局長は、新型コロナウイルスの感染者との接触が確認されたとして、今後、数日の間、自主的な隔離措置をとることになりました。熱などの症状は出ていないということです。



WHOのテドロス事務局長は1日、「私は、新型コロナウイルスの検査で陽性が確認された人の接触者だと認定された」と自身のツイッターに投稿しました。

熱などの症状はなく、今後、数日の間はWHOの規定に従って自主的な隔離措置をとり、自宅から勤務を続けました。

このようなこともあり、一時的にテドロス氏のWHO内での権限は弱まり、WHOの他の勢力が権限を増したという背景もあるのでしょう。

世界保健機関(WHO)は16日、新型コロナウイルスの流行が始まって以降、スイス・ジュネーブのWHO本部で65人の感染者が出たと、オンラインでの記者会見で明らかにしました。先週には5人の感染が判明し、本部内でクラスター(感染集団)が発生した可能性についても調査しています。

感染者と接触したため自主隔離していたテドロス・アダノム事務局長も本部から記者会見に参加しました。「症状がなかったため検査の必要はなかった」といいます。そうして、会議に出席したということは、現在は全面復帰したと判断しても良いでしょう。

16日に復帰して、27日にマイク・ライアン氏が、新型コロナウイルスの起源が中国「外」とする主張について、かなりの憶測だと発言しているのですから、WHO内におけるテドロス氏の中国寄りの勢力は弱まったと見て良いです。

WHOに関しては、中国問題以外のもう一つ批判があります。それは「基本的な義務を果たさなかった」というものです。

WHO憲章によれば、WHOの義務とは健康に関する様々な基準を設定すること、必要な国に支援を行ったり、支援のための様々な協力を調整したりすることです。感染症対応に関しては必要な情報を集め、状況を評価し、適切な勧告を行うことがその義務です。

WHOは1月30日に専門家会合を招集して「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」であると宣言し、2月3日には国際社会に向けて対応のためのガイドラインを発表、3月11日には「パンデミックの様相をなしている」と発表しました。

その後も連日ブリーフィングを行い、5月末にはワクチン、治療薬、診断ツールを国際的に共有するためのイニシアティブを立ち上げました。基本的な義務は怠りなく果たしてきたのです。

むしろ今回明らかになったのは、「できることをやっていない」不作為の現状ではなく、「できることが限られている」という現状でした。

WHOはグローバル・ヘルスの情報塔として機能しつつ、各国に必要な指針を与え、連携を促し、協力に向けた調整をその任務とするのですが、いずれも強制力は伴わず、加盟国の自発的な協力があって初めて機能するのです。

例えば、感染症対応の国際条約である国際保健規則には、各国がその領域内で国際的拡大をもたらすおそれのある公衆衛生リスクが確認された場合には、24時間以内にWHOに通報するように義務付けられています。

しかし、現状ではその義務を多くの国が適切に果たせずにいます。WHOがより積極的に情報を収集し、発生が疑われる国に立ち入って調査できていれば、少しは状況は違ったのかもしれないです。

現状ではそのような権限は持たず、発生国が自発的に申告する情報に依拠するよりほかないのです。WHOが発生国・中国に特別な配慮を行ったことは、このような限界が招いた一つの帰結でもありました。

それではこのような各種問題点をいかに是正していくべきなのでしょうか。

まずは、先進国民間企業のように、新たな組織論によって国際組織そのものを新たなつくりかえるべきです。まずは、統治に関わる部分と、実行に関わる部分を分離すべきです。これに関しては、経営学の大家であるドラッカー氏の政府に関する主張が大いに参考になります。

ドラッカー氏は次のように主張しています。
統治と実行を両立させようとすれば、統治の能力が麻痺する。しかも、決定のための機関に実行させても、貧弱な実行しかできない。それらの機関は、実行に焦点を合わせていない。体制がそうなっていない。そもそも関心が薄い。
先進国の大企業では、統治と実行が両立できないように法律で義務付けられています。統治に関しては、いわゆる本部で行われるようになっています。形式は様々ですが、たとえば「セブン&ホールディングス」は、セブンイレブンとイトーヨーカドーの持株会社であり、統治を行う本部機能を有しています。

最近では日本でも「○○ホールディングス」という名前の会社を聞くことが多くなりましたが、これらはただ株式を所有するだけではなく、本部としての統治機能を担っているのです。このように民間では大企業は「コーポレート(統治会社)」と「カンパニー(事業会社)」とは厳密に区分されているのです。

このように、WHOも統治と実行に関わる部門とを厳密に分けるべきです。

以下は、マーガレット・チャンが事務総長だった頃のWHOの組織図です。WHOが組織変革をしたという話は聞いたことがないので、今も同じような組織なのでしょう。


この組織図をみる限りでは、「統治と実行」を分離するという思想はない組織のようです。無論、WHOが直接実行することないでしょうが、実行に関わる部署としては、局長クラスなのだと思います。その上の組織たとえば、保険システム革新部なども、直接実行することはないのでしょうが、それでも実行とは強く関わっているように見受けられます。

このままの組織で、憲章などを変えただけでは、何も変わらないでしょう。WHOに限らず国際組織の役割は、国債社会のために意味ある決定と方向付けを行うことです。社会のエネルギーを結集することです。問題を浮かびあがらせることであり、選択を提示することです。これが、国際組織による統治といわれるものです。

それ以外の部分は、WHOなどの国際組織の外に出すべきなのです。

まずは、このような国際組織を作ったうえで、憲章などを変えていくべきです。

まずは、WHOの権限を強化すべきでしょう。たとえば、各国がその領域内で国際的拡大をもたらすおそれのある公衆衛生リスクが確認された場合24時間以内にWHOに報告の義務があるのでほすが、これを怠った場合、強制的に調査できる権限を与えるのです。

それでも、拒否する場合には、当該国の国境を封鎖できる権限を与えるのです。

さらに罰則も強化すべきです。感染症対応の国際条約である国際保健規則には、先に述べたように各国で公衆衛生リスクが確認された場合には、24時間以内にWHOに通報するように義務付けられていますが、罰則はありません。

もし、このような違反があった場合には、当該国の国民やその支援を受けている国の国民は、違反があった日から5年間は、WHOの事務局長、事務局次長にはなれない、さらに職員になるにも制限を受けるなどの罰則規定を設けるべきでしょう。

いずれにしても、WHOは組織変革をするか、全く別の組織にしなければ、中国からの干渉などを防ぐことができないばかりか、本来の使命を実行することはできません。そうして、第2、第3のテドロスが登場することにもなりかねません。

そのことが、今回のパンデミックで白日のもとに晒されました。そうして、現在はWHOのみならず、国連そのものが、本来の使命を果たせず、機能不全に至っています。国連そのものを現在の世界に合わせて組織変革するか、それが不可能なら新しい組織を創設すべきです。

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2020年11月27日金曜日

中国の挑戦に超党派で立ち向かう米国―【私の論評】中国共産党の敵は共和党であって、民主党ではない(゚д゚)!

中国の挑戦に超党派で立ち向かう米国

岡崎研究所

 11月9日付のフォーリン・ポリシーで、新アメリカ安全保障センターのジョーダン・シュナイダーとコビー・ゴールドバーグが、米国は新大統領の下、中国に対する政策に関しては、民主、共和両党が協力して励むであろう、と論じている。



 シュナイダー他の論説は、米国では民主、共和両党の対立が激しくなるだろうが、ことさら中国に関しては一致するであろう、特に中国の挑戦に対し、研究開発の推進でそうであろうと述べている。

 米国は、歴史的に、挑戦されると底力を発揮する。

 1957年10月にソ連が世界初の人工衛星、スプートニク1号の打ち上げに成功すると、後れを取った米国は、まず1958年に人工衛星エクスプローラー1号を打ち上げたのち、1961年から1972年にかけてアポロ計画を実施し、1969年7月にアポロ11号が初めて月面に着陸した。その後、合計6回の月面着陸に成功し、宇宙開発でソ連を大きく引き離した。

 1980年代、米国の産業の競争力は日本の追い上げにあって弱まり、テレビなどの民生用電子機器、工作機械、半導体、半導体製造装置などで日本に後れを取った。米国の産業界、学界のリーダーなどが組織した「競争力評議会」が1987年に「アメリカ競争力の危機」と題するリポートを発表した。その中では、米国経済が日本から受けている挑戦がいかに厳しいものであるかを述べている。

 その後の推移は周知の事実である。日本でバブルがはじけたということもあったが、米国は、マイクロソフトを始めデジタル技術を中心に技術革新を図り、1990年代以降世界をリードする技術大国に復活した。

 現在、米国が中国から産業技術面でも挑戦を受けていることは間違いない。特に「中国製造2025」には危機感を持ったようである。米国は「中国製造2025」に関して、中国政府が介入しすぎていると批判しているが、先端技術で中国が本気で米国に追いつき追い越そうとしているとの危機感を持ったのは疑いない。

 そこで、シュナイダー他の論説にあるように、超党派で研究開発に大量の資金をつぎ込む努力をしている。これまでの例から察すると、今回も中国の挑戦に対し、米国が本気で立ち向かおうとしているので、底力を発揮する可能性が高いと思われる。

 研究開発以外でも、中国問題で民主、共和両党が協力できるだろうという分野が人権と国際機関への関与である。論説でも指摘されているように、新疆ウイグルや香港で人権弾圧にあっている人々への特別なビザ計画に関する法案が、民主党議員からも共和党議員からも提出されている。国際機関への関与はもともと民主党の得意とする政策だが、共和党スタッフが述べるように、中国は国連の専門機関のトップに積極的に中国人を送ってきている。それに西側諸国も対応しなければならないとの認識が米国内にあるようである。

【私の論評】中国共産党の敵は共和党であって、民主党ではない(゚д゚)!

これから、トランプ氏が大統領に再選されるのか、あるいはバイデンになるのか、まだはっきりしませんが、いずれになったにしても、米国は上の記事のように超党派で中国と対峙するのでしょうか。

8月10日、傲慢な表情とふて腐れた歩き方で、中国共産党を体現しているかのうような趙立堅報道官が、トランプ政権が香港政庁トップら11人に制裁を科したことへの対抗措置として「香港問題で言語道断な振る舞いをした」11人の米国人を制裁対象にしたと発表しました。

ちなみに、趙立堅の娘は米国の大学に入学しており、中国国内では「本当は米国が好きなのに、仕事だから反米をしているだけのか」と揶揄されているそうです。

趙立堅報道官

ただし、制裁とはいっても、中国による制裁は形ばかりのもので、意味をなさないのは明らかです。

なにしろ、中国国内の銀行等に大金を預ける米国人はいないですし、ドルは世界の基軸通貨であり、ドルがないといずれの国も貿易ができないというのが実情であり、その他あげるときりがないくらい、中国よりも米国は有利な点があり米国の対中国制裁は、中国人にとってかなりの脅威ですが、中国による米国人への制裁はあまり意味を持ちません。

中国に入国できなくても、大方の米国人にとっては、さほどの不都合はありません。別に中国にいかなくても、美味しい中華料理が食べられます。そのため、中国の米国人に対する制裁など実質的に意味を持たないのですが、ただ「香港問題で言語道断な振る舞いをした」11人の米国人の顔ぶれが面白いです。

11人の内訳は議員6人と国際人権団体の代表者5人です。この議員の顔ぶれが興味深いのです。列挙すれば、マルコ・ルビオ(1971年生)、テッド・クルーズ(1970年生)、トム・コットン(1977年生)、ジョシュ・ホーリー(1979年生)、パット・トゥーミー(1961年生)各上院議員とクリス・スミス下院議員(1953年生)。何と全員が共和党所属で、民主党は1人も入っていないのです。

マルコ・ルビオ上院議員

これは、香港問題に関する制裁対象者の名簿ですから、香港問題以上に枠を広げれば、もちろん民主党の議員の中にも対中国強硬派存在します。

ただし、これに先立つ7月には、トランプ政権が、新疆ウイグル自治区の中共幹部4人に制裁を科したことへの報復として、中共側も4人の米国政治家を入国禁止としました。列挙すれば、常連のルビオ、クルーズ、スミスに、政府の一員であるサム・ブラウンバック「国際宗教の自由」大使(1956年生。元上院議員、元カンザス州知事)。これもやはり全員共和党です。

この1年間に米国で成立した香港、ウイグルに関する対中制裁法案はいずれもルビオとクルーズが主導しました。無論、法案を提出するときには、民主党の議員も名を連ねてはいました。これは、議会で超党派で法律を成立させるための、手立てであると考えられます。主導したのは、共和党です。

またリストには名前がなく本人は心外かもしれませんが、中国スパイの摘発強化を議会で主導してきたロブ・ポートマン上院議員(1955年生。上院国土安全捜査小委員長)もやはり共和党です。

私自信は、twitterなどのSNSで野党の大物議員から、特に直接批判したこともないにもかかわらず、ブロックされているのを発見すると、何やら誇らしく嬉しい気持ちになり周囲に吹聴したりすることもありますが、米国議員も中国から制裁というと、実害もないので、これに近いような気持ちになるのではないかと思います。

ちなみに、ブラウンバックは、最も早い段階から日本人拉致問題に尽力してくれた上院議員(当時)で、スミスも、横田早紀江さんが下院外交委員会で証言した時の共同議長でしたた。人権に関する彼らの姿勢は一貫しています。

サム・ブラウンバック

トランプ氏は、大統領権限を拡大解釈して中国に関税戦争を仕掛け、台湾との関係も加速度的に強化してきました。米国の対中強硬姿勢は、共和党政権であれ民主党政権であれ変わらないと言う評論家が少なくないのですが、その楽観の根拠を示してほしいところです。中共は、ホワイトハウス、議会とも民主党が押さえることを切望しているはずです。

トランプ氏は、安全保障や人権にはさほど関心が強い方ではないです。しかし経済取引の分野については歴代大統領中、知識、経験とも自分がナンバーワンという強い自負を持っているでしょう。その分野で中共にコケにされることは絶対に許せません。

独裁体制である以上、習近平が一言命じれば、知財窃盗、テクノロジーの強制移転など数々の不正を明日にも根絶できるはずで、それをしないのは自分をコケにしているからだ、というのがトランプ氏の、今や確信と化した解釈のようです。中共が不当行為をやめない限り、トランプは対中締め付けに邁進するでしょう。

バイデン氏には、中国に関してそのような強い意識はありません。安全保障、人権、経済すべてにおいて一応立派な演説はするのですが、決断力、実行力が伴わない政治人生を送ってきました。オバマも、副大統領バイデンの優柔不断に辟易し、何ら重要な役割を与えませんでした。

バイデン氏はある批評家の「ジュージュー焼き音は聞こえるが、ステーキが出てこない」というバイデン評を、バイデン自身、至言として回顧録で引用しています。本人は、今はその弱点を克服し、ステーキを出せると言いたいのかもしれませんが、逆に認知症の進行が取りざたされる中、焼き音すらかすれがちになってきています。

バイデンが副大統領候補に指名したカマラ・ハリス上院議員も、対中制裁法や非難決議に関して、議会で何ら積極的役割を果たしていません。検事出身ですが、著書(2019年)で自らの最大業績と誇るのはLGBTQ(性的マイノリティ)の権利拡大に尽力したことで、国際問題に関しての成果といえるものは記述自体が何もありません。

というより、地球温暖化こそ人類にとっての最大脅威で、それへの対処が最大の国際問題と主張する民主党議員の1人です。この立場からは、中共は「敵」ではなく、同じ目標に向かって協力し合うべきパートナーという位置づけになります。

中国対策で民主党の代表格となった元通信会社幹部のマーク・ワーナー上院議員(民主党、ヴァージニア州選出)は昨年のスピーチで、5G技術、人工知能(AI)、量子コンピューティングなどの分野において、中国の技術規格の国際標準化を目指す中国の計画は「世界支配」を目指す計画の一環だと警告していますが、彼も民主党内では影が薄いです。ルビオ議員のように島内を主導する立場ではありません。

冷戦期にはスクープ・ジャクソン上院議員のような指導的な対ソ強硬派が民主党にもいましたが、現在、一貫性と行動力を伴った対中強硬派は共和党に偏っています。年齢的にも、40代前半(コットン、ホーリー)から60代後半(スミス)まで幅広く、層が厚いです。

日本としては、米国議会は共和党が主流になったほうが良いです。

日本の自民党にも米共和党を見習ってほしいところですが、現状は民主党に近いのではないでしょうか。ルビオ、クルーズは50歳になるかならないかの年齢で、すでに主導的地位を確立しています。自民党の若手の奮起を強く促したいところです。

中国側からすると、中国の敵はやはり共和党なのです。民主党は地球温暖化で協力できるパートナーなのです。中間選挙では、米国共和党が勝って、主流派になっていただきたいものです。


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2020年11月26日木曜日

国産潜水艦の建造がスタート、「国防自主」への強い決意示す―【私の論評】台湾潜水艦建造でますます遠のく、中国の第一列島線確保(゚д゚)!

 国産潜水艦の建造がスタート、「国防自主」への強い決意示す

 蔡英文総統は24日午前、台湾南部・高雄市で行われた国産潜水艦の起工式に出席した。蔡総統は、
 起工式は主権を守るという台湾の強い意志を世界に示すものだと述べた。(総統府)

蔡英文総統は24日午前、台湾南部・高雄市にある台船公司を訪れ、国産潜水艦の起工式に出席した。蔡総統は「今日の起工式は3つの重要な意義を持つ。1つ目は事実に反するデマを粉砕すること、2つ目は『国防自主』にかける政府の強い決意を示すこと、3つ目は台湾の主権を守る強い意志を世界に示すことだ」と述べた。蔡総統はまた、国産潜水艦の建造は美しい実を結び、国防に新たな力を添えることになるだろうと語った。蔡総統の祝辞概要は以下のとおり。

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本日は潜水艦の国産プロジェクトにとって非常に重要な日だ。過去4年余り、我々は潜水艦の国産化を決め、予算を組み、契約を結び、設計図を引き、潜水艦を建造するための造船所を作って準備を進めてきた。どの段階も、我々が「国防自主」の実践を目指す歴史におけるマイルストーンとなるものだ。

本日の起工式は3つの重要な意義を持つ。第一は、起工によって事実に反するデマを粉砕することだ。これまで我々は、多くの疑いの眼や批判にさらされてきた。本日に至ってもなお、潜水艦の国産化など到底不可能だと疑う人がいる。本日の起工式は、我々の実績を証明し、デマを粉砕するためのスタートとなるだろう。

第二は、起工によって「国防自主」にかける政府の強い決意を示すことだ。平和は国防によって得られる。着実な国防には、勇敢な国軍だけでなく、しっかりとした軍備が必要だ。近年、沱江級コルベットの量産を加速し、新型高等ジェット練習機「勇鷹(英語名:Blue Magpie)」の初飛行に成功した。それから本日の国産潜水艦の起工に至るまで、いずれも「国防自主」のエネルギーが日に日に強化されていることを国民に示している。

第三は、起工によって台湾の主権を守る強い意志を世界に示すことだ。潜水艦は海軍が非対称戦力を向上させ、台湾本島の周辺海域に出没する敵艦を威嚇するための重要な装備となる。これまで多くの人は、口先ばかりで行動が伴っていないと思ったことだろう。これからは国産潜水艦の建造から編隊まで、台湾の主権を守るという我々の強い意志を世界に示すことになるだろう。

国産潜水艦の建造が正式に始動する。国防部、国家中山科学研究院、台船公司に対しては、緊密な意思疎通を図り、慎重且つ厳粛な態度で最上のリスク管理を行い、国産潜水艦を予定通り完成させるようお願いしたい。

【私の論評】台湾潜水艦建造でますます遠のく、中国の第一列島線確保(゚д゚)!

台湾の潜水艦建造は民間造船大手の台湾国際造船が手掛けます。ディーゼルエンジンを使った通常動力型の潜水艦となります。米国製の戦闘システムなども導入される見込みです。1隻目の建造には、25年までに493億台湾ドル(約1800億円)の予算を充てました。

設計・デザインは、日本の海上自衛隊の主力潜水艦で、世界有数の高性能ディーゼル潜水艦「そうりゅう型」などを参考にしているともされます。

ただ、建造の難易度は非常に高いです。台湾国防部のシンクタンクである国防安全研究院の蘇紫雲所長は「6割は台湾の技術、4割は欧米などの技術輸入に頼ることになる。完成形としては、標準的な潜水艦よりも上のレベルのものになる」と指摘しました。

台湾は現在4隻の潜水艦を有します。しかし、旧式のため早急な更新が課題でした。新鋭の潜水艦を持てば、海洋進出を強める中国に大きなけん制となるため、米国などに潜水艦の売却を求めてきました。

米国はブッシュ政権(第43代)時代の01年に台湾への潜水艦の売却方針を固めました。しかし、最終的には中国の激しい反発などが考慮され実現しませんでした。

しびれを切らした台湾の海軍の強い要望で、馬英九前政権時代に初めて自前による潜水艦(IDS)建造計画が浮上しました。ただ、対中融和路線を敷く馬政権では結局、前進しませんでした。16年に総統に就いた蔡英文・民進党政権下でIDS計画が加速。ようやく今回、着工にこぎつけた経緯があります。中国は以前から計画に激しく反発しています。

台湾が潜水艦自主建造を始めたのは、本当に素晴らしいと思います。この決断は、コストパフォーマンからいっても、軍事戦略・戦術的にいっても本当に優れたものです。

しかし、残念ながら、日本の報道などはこの優れた面を報道しているものは皆無といって良い状況なので、本日このブログに掲載しました。

なぜ台湾が今回潜水艦を自主建造することが優れた判断であるかといえば、まずは、現在の海戦が、最初に日本が第2次世界大戦中に本格的に運用をはじめた、空母打撃群を中心としたものでは、時代遅れになりつつあるということがあります。

世界初の正規空母日本の「鳳翔」

中国ロケット軍が今年の8月に、対艦弾道ミサイル2発を南シナ海に撃ち込んでから10週間ほど経過した11月上旬、『超限戦』の共著者として高名な王湘穂・北京航空航天大学教授(『超限戦』執筆時は中国人民解放軍空軍大校=上級大佐)が、8月26日に実施したDF-21DとDF-26Bの試射は、内陸から西沙諸島南方海洋にミサイルを撃ち込んだのではなく、当該海域を航行していた標的船に命中させた画期的なステップであったことを明らかにしています。

これが本当だとすれば、過去半世紀にわたって米海軍が世界中の海に睨みを効かせてきた際の主戦力であり、米海軍だけでなく米軍の強大さのシンボルであり続けてきた超大型航空母艦(スーパー・キャリアー)に、強力な脅威が名実ともに出現したことになります。96年の台湾海峡危機の際のように、アメリカ軍が数セットの空母打撃群を東シナ海や南シナ海に派遣するだけで中国軍を沈黙させてしまうことなど、もはや夢物語となってしまったようです。

ただし、このような脅威は以前から言われており、これに対して最近米軍は海洋戦術を変えたようです。それに伴い、海洋戦略も変えたか、変えつつあるものと思われます。これは、すぐではないにしても、いずれ公表されることになるでしょう。

空母打撃群は海洋戦の初戦では時代遅れの産物になりつつある

では、どのように戦術を変えたのか、そうしてその根拠は何なのかについて掲載します。これについては、すでにこのブログの読者ならご存知でしょうが、再度簡単に解説します。

まずは、海洋戦術をどのように変えたかといえば、従来は初戦で空母打撃群を派遣する戦術とそれに基づく戦略だったのを、初戦では潜水艦隊を派遣する戦術と戦略に変えたか、変えつつあるということです。

その根拠としては、先にもあげたように、米軍が南シナ海などの海洋戦に従来のように最初に空母打撃群を派遣するようなことをすれば、中国の格好の標的になり、すぐに撃沈されとしまうからです。

中国の軍事技術は進んでいるいるところもあるのですが、現状では歪です。特に対潜哨戒能力等の哨戒能力は米軍に比較して今でも格段に劣っています。そのため、中国は米国の原潜を発見するのは困難です。これに比較して、世界最高レベルの対潜哨戒能力を持つ米軍は、これまた静寂性には程遠い中国の潜水艦を発見するのは容易です。

この米軍の中国に対する優勢を考慮すれば、米軍は従来の初戦に空母打撃群を派遣するという海洋戦術をやめて、初戦は潜水艦隊により制圧する方式に転換するのは当然のことです。しかも、現在の潜水艦は、第2次世界大戦注の潜水艦とは違い、何ヶ月も水中に潜り続け、様々なミサイルや魚雷を装備し、その破壊力は空母に匹敵します。

そうして、これには根拠があります。米軍はすでに5月下旬に潜水艦の行動に関して公表しています。潜水艦の行動は、通常どの国も公表しないのでこれは異例ともいえます。

この潜水艦群の動きは太平洋艦隊司令部のあるハワイ州ホノルルの新聞が同司令部からの非公式な通告を受けて今年5月下旬にマスコミで報道されました。太平洋艦隊所属の潜水艦の少なくとも7隻が西太平洋に出動中であることが同司令部から明らかにされました。

その任務は「自由で開かれたインド太平洋」構想に沿っての「有事対応作戦」とされています。この構想の主眼は中国のインド太平洋での軍事膨張を抑えることだとされるため、今回の潜水艦出動も中国が覇権を目指す南シナ海や東シナ海での展開が主目的とみられます。

お花畑の日本のマスコミ等は、このニュースを見ても、字面通りに受け取るのでしょうが、私はそうは受け取りませんでした。

無論、当時空母でコロナが発生したという事情もからんでいるでしょう。空母打撃群が水兵のコロナ罹患で出動できない間隙をぬって中国が不穏な動きを見せないように牽制したものと思います。逆に、米軍は空母打撃群でなくても潜水艦隊があれば、中国の動きを牽制できると考えているともいえます。これは、明らかに米国の海洋戦術、戦略の転換を宣言したものと受け取れます。

そうして、日本は今年の3月に22隻目の最新鋭潜水艦「たいげい」が進水しています。22隻もの潜水艦を持つこと自体が、日本の海洋戦術が潜水艦隊主体であることを如実に示しています。日本の潜水艦は静寂性では世界一であり、中国に探知されずに、自由にあらゆる海域を自由に航行できます。こちらのほうが、空母などより余程戦力になります。

米軍としては、カールビンソン等が水兵のコロナ罹患で、相当の危機感を感じていたのでしょう。しかし、潜水艦隊を空母打撃群のかわり派遣することで、十分中国を牽制できると考えて、異例ともいえる公表に踏み切ったのでしょう。それにコロナ禍はいつまでつづくかも予測できなかったので、潜水艦隊で中国に十分対処できることで中国側を牽制したのでしょう。

現在、南シナ海、尖閣諸島付近には、通常の潜水艦配置に新たな7隻が加わり、複数の米国原潜が潜んでいるでしょう。原潜は、通常型潜水艦と比較するとどうしてもある程度の騒音が出るので、中国側もこれを発見できるチャンスはあります。しかし、要所要所に潜水艦を潜ませておき、中国側が不穏な動きをみせれば、水中から魚雷やミサイルで突然攻撃するという戦法をとれば、これは中国側には防ぎようがありません。

米国の最新の攻撃型原子力潜水艦「ミシシッピ(SSN-782)」

以上のようなことを考えると、今回台湾が空母などを建造するよりは、潜水艦を建造するほうがはるかにコストパフォーマンスが高いといえます。

台湾が1隻目の建造には、25年までに493億台湾ドル(約1800億円)の予算を計上するのですから、これは本気です。おそらく、少なくとも中国の対潜哨戒機などには発見されない潜水艦を製造するでしょう。

そうして、将来少なくと6隻くらい建造すれば、3隻の潜水艦を交代で常時台湾付近をパトロールできます。

そうなると中国にとっては脅威です。仮に中国が台湾に上陸したとしても、台湾の潜水艦が台湾を包囲してしまえば、近づく艦艇や輸送機が潜水艦に攻撃され、補給ができなくなります。それと台湾の陸上部隊が加われば、中国の上陸部隊は降伏するよりなくなります。

それに、台湾有事となれば、日米も加勢するでしょう。日本は、静寂性を活かして哨戒活動にあたり、米原潜は近づく中国の輸送艦艇や輸送機などを破壊するでしょう。

今回の台湾が潜水艦建造にとりかかったことは、本当に正鵠を射たものといえます。

中国としては、日米が潜水艦隊中心の海洋戦術・戦略に変更しつつあることと、台湾が潜水艦を建造することにより、第二列島線確保どころか、台湾・尖閣を含む第一列島線の確保すら、難しくなることを痛感させられたと思います。

それにしても、日本のマスコミは以上のようなことは、それこそ日米が公表しないと気づかないのでしょうか。もちろん中国の脅威を侮るようなことはすべきではないとは思いますが、それにしてもこのようなマスコミの態度は、いたずら中国の脅威を煽り、結果として中国を利することになっているのではと危惧しています。

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2020年11月25日水曜日

中国外相、あきれた暴言連発 共同記者会見で「日本の漁船が尖閣に侵入」 石平氏「ナメられている。王氏に即刻帰国促すべき」―【私の論評】王毅の傍若無人な暴言は、中共の「国内向け政治メッセージ」(゚д゚)!

 中国外相、あきれた暴言連発 共同記者会見で「日本の漁船が尖閣に侵入」 石平氏「ナメられている。王氏に即刻帰国促すべき」

王毅国務委員兼外相

 中国の王毅国務委員兼外相が、大暴言を連発した。24日の日中外相会談後、茂木敏充外相と行った共同記者会見で、沖縄県・尖閣諸島をめぐり、中国の領有権を一方的に主張したのだ。両外相は、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて制限しているビジネス関係者の往来を11月中に再開することで合意したというが、菅義偉政権はこの暴言を放置するのか。

 茂木氏は記者発表で、「尖閣周辺海域に関する日本の立場を説明し、中国側の前向きな行動を強く求めた」と強調した。

 これに対し、王氏からは、次のような看過できない発言が飛び出した。

 「ここで1つの事実を紹介したい。この間、一部の真相が分かっていない日本の漁船が絶えなく釣魚島(=尖閣諸島の中国名)の周辺水域に入っている事態が発生している。中国側としてはやむを得ず非常的な反応をしなければならない。われわれの立場は明確で、引き続き自国の主権を守っていく。敏感な水域における事態を複雑化させる行動を避けるべきだ」

 尖閣諸島は、歴史的にも国際法上も日本固有の領土である。

 1919(大正8)年冬、中国・福建省の漁船が尖閣沖で遭難して魚釣島に漂着した際、日本人住民は中国漁民を救護した。当時の中華民国駐長崎領事は翌20(同9)年5月に感謝状を贈ったが、そこには「日本帝国沖縄県八重山郡尖閣列島」と記されている。

 中国が「領有権」について勝手な主張を始めたのは、国連の報告書で東シナ海に石油埋蔵の可能性が指摘された2年後の71(昭和46)年以降だ。

 中国海警局の公船は、今年だけで尖閣周辺を計300日以上も航行し、“領海侵犯”を繰り返している。先日、公船に武器使用を認める「海警法」案まで発表された。

 国家の基本である、領土・領海について許しがたい主張をされて、菅政権はなぜ怒らないのか。

 中国事情に詳しい評論家の石平氏は「日本はナメられている。中国の人権問題をめぐって欧州各国から批判が集まり、日本は『日米豪印戦略対話(QUAD=クアッド)』を推進する立場でもある。中国は本来、習近平国家主席の『国賓』来日など、日本に頼みごとをする立場だ。にもかかわらず、王氏は日本の首都で尖閣の領有権を堂々と主張した。言語道断であり、王氏には即時帰国を促すべきだった」と痛烈に批判した。

【私の論評】王毅の傍若無人な暴言は、中共の「国内向け政治メッセージ」(゚д゚)!

日中外相の会見で、中国側に「事実として日本漁船が魚釣島の水域に入った。必要な対応を取らなければならない。我々の立場は明確だ。我々は自国の主権を守って行く」と言われ苦笑するだけというのはいただけないです。通訳にも「東海」と訳される始末です。ニタニタしてないで、その場で訂正すべきでした。そうして、その場で会見を蹴っても良かったと思います。

中共が初期対応を誤った事により世界中が感染症に苦しむ中、ウイグルの人権問題、香港の弾圧、南シナ海の領海既成事実化、そして尖閣諸島への公船侵入。日本政府として毅然とした態度で抗議すべきなのに、王毅外相の主張に対して反論もせず、握手の代わりに肘タッチの茂木大臣。

では、会談の成果そのものはどうだったのでしょうか。

日中双方は五つの重要な共通認識と六つの具体的な成果を達成した。王毅氏は会談後の合同記者会見で次のように述べました。

茂木外相と中日関係および共に関心を持つ国際・地域問題について率直かつ踏み込んだ意思疎通を行い、五つの重要な共通認識と六つの具体的な成果を達成しました。

双方は、両国指導者の戦略的指導に従い、中日間の四つの政治文書を踏まえ、「互いに協力パートナーとなり、互いに脅威とならない」との精神を堅持し、相互信頼を増進し、前向きな相互作用を図り、新時代の要請に合致する中日関係の構築に努力することで一致しました。

双方は、引き続き手を携えて新型コロナ感染症と闘い、速やかに情報を交換し、医療・薬品に関する協力を展開し、両国民の健康を守り、地域・国際公衆衛生分野の協力に共同で貢献することで一致しました。

双方は、両国の経済回復を協力して推進し、新たな中日ハイレベル経済対話を来年の適切な時期に開催し、科学技術イノベーション、省エネ・環境保護、医療・健康、電子商取引、第三者市場などの重点分野での協力を引き続き強化することで一致しました。

双方は、地域包括的経済連携協定(RCEP)の早期発効を共同で推進し、中日韓自由貿易協定(FTA)の交渉と地域協力のプロセスを積極的に推進、ルールを基盤とする多角的貿易体制を共同で維持・強化することで一致しました。

双方は、東京五輪北京冬季五輪を互いに支持し、大会の成功に向け協力することで一致した。また中日ハイレベル人文(人的・文化的)交流協議メカニズムの会議を適時に開催し、感染症終息後に二国間の人的往来を全面的に再開、地方の交流・協力を拡大し、両国民の相互理解と友好を増進、両国関係の民意をめぐる環境を改善することで合意しました。

双方は次のように決定しました。

 1、厳格な感染症予防・抑制措置を前提に、両国が必要とする人的往来の「優先レーン」を今月中に始動し、操業再開・生産回復に向けた両国の協力をさらに促進する。

 2、中日食品・農水産物協力の部門横断協議メカニズムを構築し、意思疎通と協調を加速、この分野での協力が早期に成果を収めるよう推進する。

 3、両国の気候変動に関する政策協議メカニズムを構築し、気候変動・環境保護政策の協調と実務協力を推進する。

 4、2022年の中日国交正常化50周年記念行事の準備作業を開始するとともに、今年と来年に予定されていた「中日文化スポーツ交流促進年」を来年と再来年に延期することを積極的に検討する。

 5、新たな中日海洋事務ハイレベル協議を来月に行い、両国の外交主管機関と海上法執行機関の意思疎通と交流を強化する。

 6、両国防衛機関の海空連絡メカニズムの直通電話の年内開通を図り、リスク管理をさらに強化し、安全保障での相互信頼を増進する。

王毅氏はまた次のように強調しました。新たな情勢の下で、中国は日本と共に、より広大な視野、より効果的な行動、より幅広い分野で、共に責任を引き受け、協力を積極的に推進し、中日関係が両国民と国際社会によりよく利益をもたらすようにしたい。

当たり障りない内容で、こんな話などしないで、すぐに会見をやめるべきだったと思います。

一方、松井一郎市長が「習近平主席の国賓来日あり得ない」と、夕刊フジのコラム(下写真)で明言しました。菅首相ともつながりの強い松井さんのこの一文は、中国・王毅外相への茂木外相の対応に多くの国民が不満を抱くタイミングで、意義深い一文となりました。党代表は吉村府知事に代わるが、今後の維新のありようにも影響するでしょう。


先日もこのブログに掲載した、米国の大手世論調査専門機関ピュー・リサーチ・センター(Pew Research Center)が10月6日に発表した世界規模の世論調査報告によると、多くの先進国における反中感情は近年ますます強まり、この1年で歴代最悪を記録しました。

同調査によると、反中感情を持つ14か国とその割合は、高い順番から日本(86%)、スウェーデン(85%)、豪州(81%)、デンマーク・韓国(75%)、英国(74%)、米国・カナダ・オランダ(73%)、ドイツ・ベルギー(71%)、フランス(70%)、スペイン(63%)、イタリア(62%)となっている。また、米国、英国、ドイツ、フランス、スウェーデン、イタリア、韓国、豪州、カナダの9か国の反中感情は、同機関が調査を始めてからの15年間で、過去最悪となった。


それにしても、王毅の傍若無人な発言は何を意味しているのでしょうか。このブロクでは、先日制服組トップの許其亮・中央軍事委員会副主席は「能動的な戦争立案」に言及したことを掲載しました。

許其亮・中央軍事委員会副主席

これに関して、多くのメディアは中国で先月下旬に開かれた重要会議を受け、中国軍が「戦争準備」の動きを強めているとしていますが、これについて、私はこれは「国内向けの政治メッセージ」であると結論づけました。

それと同じような背景で、王毅も「国内向けの政治メッセージ」として、暴言を吐いたものと思われます。

このブログに何度か掲載したように、中国海軍や民兵が、尖閣に上陸したとしても、尖閣を維持することはできません。

なぜなら、静寂性に優れたどころか、最近の最新鋭艦では無音とも言っても良いくらいの、日本の潜水艦隊が尖閣を包囲してしまえば、中国軍の哨戒能力は日米に比較して極度に劣っているためにこれを探知できないからです。空母があろうが、超音速ミサイルがあろうが、宇宙兵器があろうが、三戦に秀でていようが、発見できない敵に対して、中国軍は何もできません。

中国軍や民兵が尖閣諸島に上陸したとしても、日本の潜水艦に包囲されてしまえば、補給船撃沈されるか、それを恐れて尖閣諸島に近づけず補給ができなくなりお手上げになります。

かといって、輸送機やそれを護衛する艦艇・潜水艦、戦闘機などを尖閣に派遣すれば、中国の潜水艦を日本側は世界トップレベルの哨戒能力ですぐに発見できるため日本の潜水艦隊等の格好の標的になるだけであり、郵送機や艦艇も日本の自衛隊の格好の標的になるだけです。

かといって、中短距離核兵器などを用いれば、日本の世論一気に悪化して、日本も核武装の検討をはじめるし、憲法改正もして、中国にとっては大きな脅威になるでしょう。だから、中短距離核兵器などは用いることはできません。

そのことを中国側は、熟知しているでしょう。結局尖閣を一時的に上陸はできても、確保することはできないのです。その証左として、中国海軍のロードマップによれば、今年2020年には第二列島線を確保することになっていますが、それどころか、尖閣諸島を含む第一列島線すら確保できていないのです。

王毅や中国のタカ派がよく見せる過激な発言は、必ずしも国際情勢に合わず、時には中国の利益にも反するものですが、ただその主要目的は国内宣伝にあるのです。

政権の対外強硬姿勢を見せなければ、怒りを沸騰させる愛国ネットユーザー等や権力闘争には対処できないのです。そしてそうした憤怒のマグマを、特に習近平政権には向けたくないのです。

以前中国は自分の都合て動く国だということをこのブログにも掲載したことがあります。このような中国は日中外相会談すら、中共の「国内向け政治メッセージ」を発信する場にするということも珍しくないてす。

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