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2017年10月12日木曜日

連立政権で経済悪化のワケ 官僚主導で筋悪の政策実行、政治も弱体化する悪循環に―【私の論評】今は政権交代や連立政権を組むような時期ではない(゚д゚)!

連立政権で経済悪化のワケ 官僚主導で筋悪の政策実行、政治も弱体化する悪循環に

衆院選では、早くも選挙後の各党の組み合わせについての論議も出ているが、かつての細川護煕連立政権や、自社さ連立政権にはどのような特徴があったのだろうか。

 細川政権は、元熊本県知事の細川氏が第79代首相に任命され、日本新党、社会党、新生党、公明党、民社党、新党さきがけ、社会民主連合、民主改革連合の非自民・非共産の連立政権で、在職期間は1993年8月9日から94年4月28日までの263日だった。

細川政権
その後、細川連立政権を支えた党派が、羽田孜氏を第80代首相に任命し、羽田政権が誕生した。しかし、各党派が離脱し、94年4月28日から6月30日までの在職日数64日の短命政権だった。

羽田政権
引き続いて誕生した自社さ政権は、村山富市政権と橋本龍太郎政権からなり、94年6月30日から98年5月30日までの自民、社会、さきがけによる連立政権である。

 村山氏は第81代首相に任命され、94年6月30日から96年1月11日までの在職日数は561日だった。

村山富市政権
橋本氏は村山内閣の通産相を経て第82代首相に任命され、96年1月11日から98年7月30日までの在職日数932日の政権だ。第二次改造内閣の途中、社民党と新党さきがけは98年5月30日に連立与党を離脱した。

第二次橋本政権
これらの連立時代から、日本経済は失われた20年に落ち込んだ。政権がしっかりしていないと、官僚の間違った経済政策を改めることができない。典型的な例が、バブル崩壊以降の日銀による過度な金融引き締めや、97年4月からの消費増税だった。

前者については、政治の混乱の中、バブル期のマクロ経済パフォーマンスは悪くなかったのに、金融緩和が問題だと日銀官僚が勘違いし、バブル崩壊以降に過度な金融引き締めを継続した。これがデフレによる失われた20年の主たる原因になった。

 98年4月から改正日銀法が施行されたが、政争の具となったこともあり、中央銀行の独立性について「手段」と「目的」を峻別できなかった。世界の流れについて行けないまま、その後のインフレ目標の導入に日本は遅れを取ってしまった。

 後者については、自社さ政権での政治パワーが低下している村山政権において、当時の大蔵省主導で97年4月からの消費増税が決められた。デフレ期の消費増税は最悪の経済政策であり、デフレをさらに激化させてしまった。

 なお、2014年4月からの消費増税も、導入決定は民主党政権であり、不慣れな政権運営時という意味では、1997年4月からの消費増税と似ていた。

 連立政権は、政党間で共通する政策が少なく、政治面で推し進めるものが乏しいので、どうしても経済面では官僚主導になりやすい。そして、筋悪の政策が選ばれ、その結果悪い経済パフォーマンスになって、さらに政治が弱体化される悪循環になりがちだ。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】今は政権交代や連立政権を組むような時期ではない(゚д゚)!

ブログ冒頭では、細川政権あたりから日本の政権は、短命になったことが記されています、この流れは第二次安倍政権になってから、止まったように見えます。以下に歴代政権の在職期間の表を掲載します。


この表をみるとここしばらくは、小泉政権を除きすべてが短命です。そうして、今回の選挙で安倍政権が勝利し自民・公明の連立政権が継続することになれば、第二次安倍政権も外になりそうです。

さて、ブログ冒頭の高橋洋一氏の記事を補足すると、日銀がバブル潰しのために金融引き締め政策を行い、その結果1991年にバブルが崩壊しました。

細川政権が成立する前から日銀は金融引締めを行い、その後も金融引締め政策は続きました。

そうして、このような状態になってからしばくして1997年4月から消費税増税が行われました。消費税増税をしたときの政権は橋本政権ですが、橋本氏は総理大臣を辞任するときに、「消費税導入は失敗だった」として国民に詫ています。

そうして、日本経済は未だデフレから完璧に脱出しきっていないにもかかわらず、2014年4月から増税をしています。

一方、金融緩和は、2013年4月から実施し現在に至っています。

そうして、その結果経済はどうなったのか、以下に振り返っておきます。

まずは株価ですが、昨日11日の東京株式市場で、日経平均株価(225種)の終値は、前日比57円76銭高の2万881円27銭となり、1996年12月以来、約21年ぶりの高値水準をつけました。


約21年ぶりの高値となった日経平均株価の終値を示すボード(11日、東京都中央区で)

以下に高橋洋一氏作成のグラフを掲載します。


さて、リベラル・左翼の金融政策の理解では、株価を上げだけと言うかもしれません。しかし、このグラフをみていると、株価を上げたのは正しいが、株価と雇用に関係があることを忘れているようです。株価と半年先の就業者数は関係あります。もっともこれは見かけ上の相関で、実は金融政策が裏にあって、金融政策は株価にも雇用にも効くのです。株価のみに言及し雇用をいわないのは非常に奇異なことです。


雇用改善。選挙になると必ず雇用改善はアベノミクス(金融政策)ではなく「失業率改善は人口減少だから当然」などという出鱈目を語る識者もいますが、これは完璧な間違いです。

確かに高齢化・団塊世代の引退で働ける人が減るので、失業者の数も減少するし、労働市場の需給バランスが改善するのは、そのとおりです。

しかし、現状の失業率が3%台を下回るまでの失業率低下の主たる要因が、人口・働き手の減少であるというのは、誤解です。まず、15-64歳(現役世代)の人口は、1997年がピークで、それ以降毎年減少し続けています。具体的に言えば1998年以降、同人口は毎年平均で0.7%減少し続けています。

ところが、現役世代の人口が減り続ける中で、1990年代後半から失業率は大きく上昇、2000年代には5%台まで悪化しました。

つまり、現役世代の人口の減少幅より、雇用削減幅が大きかったため、失業率が上昇していたのです。そして、2010年代に失業率は低下に転じたましたが、2000年代までとは逆に、雇用が増え失業が減ったので、失業率が1994年以来の水準まで再び正常化したのです。

以上がやや長い目でみた、現役世代の人数と失業率の関係です。景気の変動による雇用者数の増減が、失業率の動きのかなりの部分を説明しており、人口動態の影響が小さいということです。

一方、現役世代の数は1998年から減り続けていますが、団塊世代の引退などでその減少ペースが2012年から年率1%の減少にまで「ペースアップ」しています。それが、2012年の失業率低下(改善)を後押しした部分は多少あります。ただ、2013年以降、4%を下回る水準まで低下した失業率の主たる要因は、アベノミクスが発動された、2013年からの景気回復で新規雇用が生まれたことに原因があります。

リーマンショックが起きた2008年から、民主党政権最後の年の2012年までの4年間で就業者数は129万人減少しました。

その後アベノミクス発動後の4年間で就業者数は185万人増えています。民主党政権下で減少し続けた就業者数が、アベノミクス発動による景気刺激政策で一転して増えたことは明確であす。一方、2013年以降の4年間で、失業者は80万人減っています。4年間での就業者数から失業者数を引けば分かる通り、2012年まで就職を諦めていた人たちに新たな雇用の場が、約100万人分創出されたのです。

実は、失業率だけをみると、民主党政権下の2011~12年にも失業率は低下しています。そのため、失業率の低下と金融緩和強化は関係ない、などと言う枝野氏のような論者もいます。ただ、2011~12年までの失業率低下と、金融緩和が発動された2013年以降の失業率低下は、その中身が全く異なることは明らかです。

デフレと総需要の不足下において、景気刺激的な金融緩和、財政政策が適切かつ十分行われたとすれば、経済成長率は高まり雇用が増えます。

失業率だけでなく就業者数の推移など関連指標を丹念にみれば、2013年からの労働市場の改善によって、新たな雇用が生まれ、その分家計所得全体が底上げされたことは否定できません。そうして歴史的な長期政権となっている安倍政権の支持率の高さを保っている最大の要因は、満点とはいえないものの、妥当な経済政策運営を続けているからです。

枝野氏は民主党政権時代と安倍政権時代で就業者数で変化があったことを認めず、図が間違っているとテレビで語っていました。私は「失業率改善は人口減少だから当然」ということを数量的に説明した資料は、現在に至るまで見たことはありません。もし証明できるものがあれば、是非見せていただきたいものです。

さて他にも安倍政権による成果はあります。それを以下に掲載します。


これだけ、具体的な成果を数字で出せた政権は、ここ20年では安倍政権だけです。どう考えても現政権は、経済に関してはここ20年では最も成果をあげているし、外交や安全保証でも高い水準で議論をし、実行している政権です。

安倍総理が、消費税10%になったときを前提として、諸費税の配分に言及していたことをもって、安倍総理は諸費税を10%にあげると判断して、安倍政権は消費税をあげると考えている人たちもいるようですが、この問題について判断するのは早計です。

私自身は、以前このブログで述べたように、これは消費税増税分のほとんどが、本当はありもしない国の借金の返済というかたちで、財務省が溜め込むので、それを批判したものと思います。

安倍総理は、今回の選挙では、消費税増税を争点にはしたくないのでしょう。北朝鮮の危機への対応を考えた場合、現在は財務省と対峙するようなことはせず、それは後に回すと判断していると思います。

そんなことより、上記でも述べたように、各党の金融緩和に対する姿勢をみるべきです。

今のところ、実績をあげている安倍総理の金融緩和に対する姿勢が最も良いものと判断されます。

一方、希望の党も、現状の金融政策スタンスを維持することに言及しています。ただ、そこに至るまでに紆余曲折がありました。

当初は、「金融・財政政策への過度の依存から脱する」とされていましたが、これは、素直に読めば、「現行の金融政策を転換させ、『出口政策』へ舵を切る」ことを意味します。そうして、緊縮財政をすることも意味します。

直近の「金融政策は現状維持」の公約が実現すれば良いですが、実際に希望の党が政権のキャスティングボードを握った場合、誰が首相になるのかがわからないような状況から、政策の信頼性がやはりいまひとつ不透明です。

北朝鮮の危機が顕在化しつつある現在、政権交代したり、選挙後他党と連立政権を組むなどということはすべきではありません。

そのようなことは、必ず失敗するということを、上に掲げた「歴代政権の在職期間の表」が如実に示していると思います。

政権交代や連立政権など組んで良い結果を招く可能性が高くなるのは、北朝鮮や中国の危機が遠のき、経済的にはデフレから完全脱却し経済がかなり良くなったときであって、今ではありません。

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2017年7月28日金曜日

【国防最前線】必要性が低い女性防衛相 圧倒的に男性が多い自衛隊、弱体化しかねない「客寄せパンダ」的施策―【私の論評】現状で、憲法9条だけが変わっても無意味(゚д゚)!


稲田防衛大臣 写真はブログ管理人挿入 以下同じ
私はそもそも「女性を防衛相にする必要性は特にない」と思っている。非常時でも、すっぴんで髪ボサボサというわけにいかないだろうから、そういう意味で適さない。

 小池百合子防衛相時代も、演習場視察の前日から自衛官がひたすら散水を続けたり、動線に敷物をしたり、あれこれ心を配っていたことを思い出す。本人が知れば「そんなことは無用だ」と言うだろうが、やはり男性大臣よりも神経を使うことは確かだ(=ほとんど注意を払わせない、身だしなみなど気にしない女性ならいいかもしれないが)。

 もし、「女性活躍の象徴」として女性防衛相を選んだのだとしたら、何の意味もなさない。

 自衛隊には圧倒的に男性が多い。それは男性にしかできない任務が多いからだ。ただ、女性にできる分野もあり、これまで開放されなかった職種を希望する女性も出てきている。昨今は女性も活躍の場を広げつつあるが、それは人口減に伴う労働者不足を補わなければならない日本全体が抱える状況と同じ。つまり、人手不足が大きな要因だ。

 本来、戦場では女性は足手まといになる。女性防衛相が就任して応募が増えたというなら効果があるといえるが、おそらく、そのような成果は出ないだろう。まして、女性の魅力で(?)沖縄問題が進展したり、憲法改正に理解が広がるなどということもない。

 今後、本気で女性枠を拡大させるならば、女性防衛相を据えることなどではなく、インフラ投資のために防衛費のGDP枠2%以上へ増額など、相当の覚悟をすべきだ。スーパーマーケットとまでは言わなくても、基地や駐屯地に低料金か無料の託児所を完備するなりの徹底した措置を施した上で将来も女性を簡単に諦めさせない体制を構築すべきだろう。

今現在は「任務に全力をささげたい」と考えている女性隊員らが、ある時に価値観が変わり、家庭が優先順位のトップになることは大いにあり得る。その時に、引き留める要素が何もないのなら、それは組織の怠慢となる。

 しかし、問いたいのは、それだけの投資・支出を国民は許容できるのかだ。

 莫大(ばくだい)な経費を要するミサイル防衛、サイバー、宇宙など、日本の防衛に必要な金はまったく足りていない。それらを抑えてまでやるのか? あるいは別枠予算でも付けるか?

 マンパワー獲得という真の目的からかけ離れた、「客寄せパンダ」的な安易な施策では、自衛隊が弱体化しかねない。防衛省をめぐる一連の騒ぎは、自衛隊PKO(国連平和維持活動)のあり方、女性活用の今後を熟考する契機にすべきではないだろうか。 

 ■桜林美佐(さくらばやし・みさ) 防衛問題研究家。1970年、東京都生まれ。日本大学芸術学部卒。テレビ番組制作などを経て著述業に。防衛・安全保障問題を研究・執筆。著書に『日本に自衛隊がいてよかった』(産経新聞出版)、『自衛官の心意気-そのとき、彼らは何を思い、どう動いたか』(PHP研究所)など。

桜林美佐さん

【私の論評】現状で、憲法9条だけが変わっても無意味(゚д゚)!

ブログ冒頭の桜林美佐氏の、論評はやはり女性の軍事問題研究科だからできるというとろがあると思います。男性や、軍事の素人ではなかなか、ここまではっきりとは書けないです。このようなことを男性が書くと、女性差別主義者であるとみなされてしまうかもしれません。

それに、誰が正しいとか、誰が間違いなどというような、倒閣のために自衛隊を利用する輩共とは異なり、不毛な議論ではなく、何が正しい、何が間違いという観点から論じていて、理解しやすいですし、こういう論点なら、正しい意思決定のきっかけづくりにもなりえると感じました。

対戦車ヘリのパイロットの訓練を受ける女性自衛官
私も、女性の防衛大臣は必要ないと思います。これは、直接は関係ないのかもしれませんが、たとえば戦場で戦闘中に用を足すことを考えた場合、女性はなかなか難しいと思います。

昔聴いた話ですが、戦闘中に用を足したくなった場合は、無論我慢はするのですが、我慢しきれなくなった場合、米兵のほとんどは戦闘のその場で、銃をうちながら、大便でも小便でも、用を足すのが当たり前なのですが、日本兵は特に大便の場合など、人目をはばかり、人の見えないところまで行って用を足すものが多く、その間に敵から撃たれるものが結構いたという話をきいたことがあります。

これは、当然のことながら、米兵のやり方が正しいです。戦闘中には、その場で銃をそばにおきいつでも敵に対応できるようにして、用を足すべきです。

1945年3月 硫黄島 
このようなことは、確かに女性には難しいことだと思うのです。とはいいながら、女性のほうがが向いている役割も多いです。

しかし、そうはいっても、桜林さんが主張するように、「女性活躍の象徴」として女性防衛相を選ぶというのは、全く無意味だと思います。

そうして、桜林さんの語っているように"マンパワー獲得という真の目的からかけ離れた、「客寄せパンダ」的な安易な施策では、自衛隊が弱体化しかねない。防衛省をめぐる一連の騒ぎは、自衛隊PKO(国連平和維持活動)のあり方、女性活用の今後を熟考する契機にすべき"です。

自衛隊に関しては、憲法9条を変更する前に、できることは多くあります。また、憲法9条が変わったとしても、自衛隊がすぐに変わることを意味するわけでもありません。

それについては、以前このブログにも掲載したことがあります。
【憲法施行70年】安倍晋三首相がビデオメッセージで憲法改正に強い意欲 「9条に自衛隊書き込む」「2020年に新憲法を施行」―【私の論評】憲法典を変えればすべてが変わるというファンタジーは捨てよ(゚д゚)!
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下に一部を引用します。
安倍内閣で防衛費が5年連続増額しているのを、評価する向きもあるでしょう。しかし、防衛費1%枠などという何の根拠もない霞が関の掟を頑なに守っている枠内での話に過ぎません。 
トランプ米大統領は、「同盟国は義務を果たすべきだ。せめて防衛費を文明国水準のGDP2%にまで引き上げよ」と訴えています。 
これは大きなチャンスです。増やせば良いのです。これだけ北朝鮮が暴れまわり、中国やロシアといった不安定要だらけの隣国に囲まれているのです。日本が防衛費をGDP2%に増やしたとて文句を言うのは敵国だけです。 
しかし、国内には防衛費増額を拒む勢力がいます。財政支出抑制を金科玉条とする財務省主計局、彼らに唯々諾々と従う防衛省自衛隊、そしてそれを是とする政治家。
ある自衛隊の駐屯地でのトイレットペーパーに関する注意書き。予算の問題はこんなところにも。
防衛費増額と憲法は何の関係もありません。それとも、自衛隊が、「米軍並のファーストエイドキット携行できるにようにするとか、軽武装をできるだけの人数を充足させる、アメリカ軍楽隊よりもマシな訓練を行えるようにする、トイレットペーパーの減り具合を気にしないで済むようになする」というような、これらの予算請求もすべて憲法改正をしなければできないのでしょうか。そんな馬鹿な話があるはずがありません。
平成27年度自衛隊音楽まつりに参加した米軍の軍楽隊
本気で戦争に備えているのであれば、防衛省は予算の拡大を要求するはずです。現状を見るに、自日本の本気で戦争する気は無いように思えます。このような現状は仮想敵国には見透かされているでしょう。であれば、自衛隊の抑止力はかなり低いと考えられます。 
憲法を改正する以前に、努力してより自衛隊を実戦的に変えることは可能なはずなのです。ところが威勢のいいことを言う「保守の論客」はこのような小さな問題をコツコツと掘り起こし、解決しようという地道な努力をしようとしません。 
世論を煽り、新しい玩具を買え、防衛費を増やせ、自衛隊の定員を増やせ、憲法を変えろと叫ぶだけです。まあ、その方が楽だし人気もでるのかもしれません。しかし、いくら喰うためとはいえ、そんなことで良いのでしょうか。 
できるかどうかもわからない、非常にハードルが高い憲法改正を叫び、それが出来れば世の中は変わると主張し、小さな努力はしない。それでは沖縄で反基地闘争をやっている連中と同じではありませんか。
私は、憲法9条を変えるという安倍総理の考えには、賛成ですが、 その前にできることはするべきです。

そうして、憲法9条を変えさせまいとする野党や、マスコミが、ここにきて一気に日報問題で、稲田防衛大臣を辞任に追い込みました。

稲田大臣は、確かに安倍内閣の中で最も評判が悪い閣僚になっていました。失言も多く、メディア出演・答弁・記者会見も頼りないものでした。記者懇談会に出ないこともあってメディア等からの視線も厳しく、連日連夜、稲田大臣と彼女を支えている統幕・内局に不利な一部の陸自幹部からと思しきリーク情報が報道されていました。

政治指導者の過ちをただし国民に直接説明するという姿勢は一見もっともらしいですが、極めて危険です。なぜならば「国民」とは実際にはひとかたまりではなく、多種多様だからです。

「国民のため」という発想は、「天皇陛下の御為」「国民の為」を掲げた226事件がそうであったように、「自分と同じ考えの国民」という独善に陥りやすいです。だからこそ、今回のリークはクーデターであり、重大なのです。

日本を震撼させた2.26事件
このことを野党やマスコミも指摘すべきであるにもかかわらず、普段は過去の軍部の暴走の危険を例に出し、文民統制の重要性を指摘しておきながら、今回は、目的があくまで倒閣なので、稲田防衛大臣個人や、安倍政権を攻撃するだけです。

とはいいながら、リークの全てを否定するものではありません。例えばパワハラ等への内部告発はもっと行われるべきです。しかし、それはあくまでも文民統制に反しない限り、つまり政治的活動に関与しない範囲であるべきなです。
しかし、それにしても、稲田大臣が辞職し、制服組がリークによって大臣を辞職させ、首相の政治生命すら危うくさせたという前例を作ってしまったということは非常に残念であるし、かなり危険なことでもあります。

なぜなら、今後の防衛大臣が陸自に対して“忖度”せざるを得なくなってしまう可能性があるからです。その結果、陸自の不祥事を追及できず、陸自も含めた防衛省改革が不可能になるおそれがあります。

要するに、今後、稲田大臣に変わって優秀かつ能力があり、熱意あふれる防衛大臣が誕生し、改革を断行しようとしても、真偽不明の内部リークで潰されてしまう、もしくはそうされることを恐れて断念してしまう可能性がでてきたのです。

こうした事態を避けるため、今回の日報問題を踏まえた文書管理のありの方針を決めるべきです。それこそが、本来稲田大臣がとるべき責任であったはずでし、それを稲田大臣にやらせるべきでした。辞任はその後でも良かったはずです。

南スーダン派遣自衛隊日報
部隊がどこいるか補給物資や弾がどれくらいあるかといった部隊の安全に関わる情報が満載された何十ページにも及ぶ日報が、その都度、情報公開請求されれば、部隊にとっては大きな負担になります。

今回のように、その都度情報公開の判断をさせれば、部隊の活動の政治問題化、部隊への政治介入が起こり、部隊にも隠蔽のインセンティブが働いてしまうことになります。このままでは現場の部隊は、上級部隊に何も意味のある報告できなくなり、現場と上級舞台は、分離されてしまうことになります。そんなことになれば、自衛隊は崩壊します。

これらの日報は自衛隊全体では、膨大なものになります。これを逐一、政治家などが日々全部読んで、様々な判断をするなどということは不可能です。無論、自衛隊の幹部などもそのようなことは不可能です。

現場の日報は、何のためにあるかといえば、当該部署の1年間の流れを把握するという意味もあると思います。はじめてその部署についた人でも、日報をみれば大体の流れをすぐに把握できます。だから、現場で日報をある期間保存するというのは当然といえば、当然です。3年間くらいは保存したいところでしょう。5年前のものだと、随分状況が変わっているので、現場でも破棄しても良いかもしれまん。

そこで今後は、このような現場の実情も踏まえて、文書管理の方法を設定すべきです。PKO部隊なら活動が終わった直後あるいは年一回を区切りとして、他の部署なら3年に一回として、活動終了後3年といった公開時期を設定し、あらかじめ公開すべき内容と公開すべき範囲、非公開にすべき内容を定め、特異な事象が発生した場合には即公開するといった基準を設けるべきです。

こういうと、すべてをのべつまくなくリアルタイムで公開すべきであるという愚かな人もでてくる可能性もありますが、この日報は、いわば軍隊のものであり、そもそも最初から公開すべきでないものもあります。たとえば、部隊の脆弱性に関するものなど、一般に公にすれば、仮想敵に対して有益な情報を与えるだけになります。あるいは、当初は重要でなかったものが、後で重要であることがわかるということもしばしばあるはずです。

このあたりも、他国の軍隊のやり方を見習い、慎重に定めるべきでしょう。それから、稲田大臣は辞任しましたが、今後の議論が稲田大臣個人の問題や、安倍総理個人の問題に矮小されることなく、文民統制や日報管理のあり方、そもそも一義的な文民とは国民なのか、政治指導者なのか、まともに議論されべきものと思います。

そうして、憲法9条を変えることも重要なのですが、その前に文書管理等を明確にし、予算も増やすべきです。そうして、文書管理をまともにするためには、他の事柄もかえなくてはないらないことがいろいろと出て来るはずです。それも逐次変えていくべきです。今の状況で、憲法9条だけが変わっても、無意味です。

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2017年1月28日土曜日

台湾に米軍駐留、ボルトン元米国連大使の衝撃論文 琉球新報は報道するも…―【私の論評】支那共産党政府を弱体化することがトランプ大統領の狙い(゚д゚)!


ジョン・ボルトン元米国連大使

 米国はカーター政権下の1979年1月、中華人民共和国(PRC)と国交を樹立し、対日戦の同志だった中華民国とは断交した。支那大陸の支配権は49年から共産党に移っており、米国はついに、現実に屈服したのだ。

 54年12月に調印した米台軍事同盟である「米華相互防衛条約」も、同じ時期に失効し、在台米軍は撤退する。あらゆる周辺国と衝突してきた人民解放軍が、いずれ台湾を軍事進攻することは確実と思われた。

 だが、米国は台湾関係法を整備した。米軍駐留は終了するが、武器売却や沖縄などの在日米軍の力で、自由主義陣営である台湾を守れるようにしたのだ。沖縄(日本)はそれ以来、米国の台湾防衛政策に、片務的貢献を果たしてきた。

 17日のウォールストリート・ジャーナル紙に、ドナルド・トランプ政権での国務副長官(日本で言えば外務副大臣)起用が取り沙汰されるジョン・ボルトン元米国連大使が、素晴らしい論文を寄稿した。台湾に再び米軍基地を設置して、沖縄の戦力の一部を移すべきという内容だ。

 在日米軍基地が沖縄に集中した唯一の理由は、地政学上有利な位置に沖縄があるからだが、台湾は沖縄と同等か、それ以上の地政学的価値がある。

 ボルトン氏の提言が実現すれば、沖縄の基地負担を減らしつつ、南シナ海や尖閣諸島周辺でのPRCの横暴を、今より効果的に牽制(けんせい)できる。

 民主党政権の鳩山由紀夫元首相が無責任に言い放った「最低でも県外」を通り越し、国外移転が実現するかもしれない。在沖米軍基地への反対運動を行う勢力にとって、これ以上素晴らしい提言はないはずだ。

 ネットで調べると、産経新聞、毎日新聞、時事通信、琉球新報などのメディアは、この提言を取り上げていた。

 驚いたのは琉球新報の記事である。事実報道に徹しており、バイアスが感じられないのだ。立ち位置に困った揚げ句の観測気球かもしれないが。

 在沖米軍基地を「諸悪の根源」のように報じてきた一部の新聞やテレビ局が、ボルトン氏の提言を報じた形跡は、ネット検索では見つからなかった。

 その原因が、彼らの情報収集力不足のせいなのか、「報道しない自由」を行使した結果なのかは不明である。

 沖縄の自然環境保護と、オスプレイなどの騒音や事故発生の危惧を理由に、米軍普天間飛行場の辺野古移設に反対してきた市民団体や、翁長雄志知事の口から、ボルトン氏を大絶賛する声が上がることを期待していたが、今のところ聞こえてこない。

 複雑な心中、お察しいたします。

 ■ケント・ギルバート

【私の論評】支那共産党政府を弱体化することがトランプ大統領の狙い(゚д゚)!

ボルトン氏のウォールストリート・ジャーナル紙に寄稿した内容の要旨は以下のようなものです。
  • 米軍の台湾駐留によって東アジアの軍事力を強化できる
  • 台湾は地政学的に東アジアの国に近く、沖縄やグアムよりも南シナ海に近い
  • 日米摩擦を起こしている基地問題をめぐる緊張を和らげる可能性がある
  • 海洋の自由を守り、一方的な領土併合を防ぐことは米国の核心的利益であり、台湾との軍事協力の深化は重要なステップだ
ボルトン氏の発言、東アジア情勢にとって大変良い発信だと思います。もともと、在沖縄米軍は朝鮮半島情勢への対応と同時に、台湾防衛の意味も持っていました。支那は、トランプ氏が『1つの支那』に疑義を示したことに反発し、空母『遼寧』を台湾周辺に派遣して牽制しました。

これに対する、トランプ氏の『強烈な反撃』かもしれません。ボルトン氏は現在民間人ですが、トランプ政権に近い人物であり、支那に対する極めて強い抑止力になります。

まさに、台湾ならば、沖縄のように激しい基地反対運動などしないでしょうから、基地も構築しやすいです。これが実現されれば、沖縄の基地も軽減され、これほど沖縄にとって良いことはないと思います。

以下に、台湾と沖縄の地図を掲載しておきます。


この地図を見れば一目瞭然で、地政学的には、沖縄よりも支那本土に近く、また台湾は日本の、九州よりは小さいものの四国とは同じくらいですが、沖縄よりははるかに大きいです。

これだと、米軍基地用の用地も、みつけやすいことでしょう。台湾の現政権は、米軍駐留を望むことでしょう。

トランプとしては、南シナ海での軍事基地の展開をこれからもやめないというのなら、報復措置として、台湾の米軍基地を拡張すれば良いのです。

それでも、どうしてもやめないというのなら、最終的には戦術核を配備しても良いです。何よりも、これは支那の喉もとにあいくちを突きつけた格好になりますから、支那としてもかなり脅威に感じるはずです。

さて、発足から1週間を過ぎたたトランプ米政権に対し、対米関係を最重視する支那政府は、南シナ海問題や貿易問題を巡る批判に反論はしつつも、過剰反応は避けて出方を見極める慎重な構えを崩していません。その一方で、トランプ大統領の「自国中心主義」を好機とみなし、習近平国家主席は「開かれた経済」の重要性を訴えることで国際社会で存在感を高めようとしています。

支那が最も警戒するのは、台湾問題を交渉カードとされることです。トランプ氏は今月20日の就任直前まで、台湾を支那の一部とみなす「一つの支那」政策の見直しを示唆し、支那を慌てさせました。そうして、今回の米軍の台湾駐留という、ボルトン氏の寄稿は、さら支那を慌てさせたことでしょう。

習指導部は今秋に5年に1度の党大会を控えており、内政、外交の安定を最優先とする。台湾問題を巡って支那側が積極的に仕掛ける余地は小さく、あらゆるパイプを通じて米国に「一つの支那」政策の堅持を求め続けています。

特に今回の党大会は、5人の政治局常務委員が引退する予定であり、その後任が誰になるかで、現在の支那の権力闘争の趨勢が明らかになるということもあります。

以下に、次期党大会での有力候補者の名称などを含んだ図をあげておきます。


この図をみてもわかるように、習近平派の候補が二人しかいないということからも、現状の支那国内の権力闘争は、決して習近平に有利な状況で推移しているとはいえないことが理解できます。本来ならば、3人〜4人の候補者があがっていてしかるべきです。

次期党大会で、習近平派候補の二人が最高幹部になれば、7人のうち4人が習近平派ということになり、仮に一人も最高幹部になれなければ、最高幹部7人のうち、二人だけが習近平派ということで、これでは事実上の敗北です。

習近平は、実質上権力のない主席となります。しかし、この状況では、意思決定などに齟齬を生じることから、失脚に追い込まれる可能性が高いです。

一方で、環太平洋パートナーシップ協定(TPP)を「日米による支那封じ込め」と捉えてきた中国にとって、TPP離脱を決めたトランプ政権の動きは大きな好機となりました。中国が加わる東アジア地域包括的経済連携(RCEP、東南アジア諸国連合と日中韓などの16カ国で構成)の実現を急ぎ、自由貿易圏構築で一気に主導権を握る絵図も描いています。

ダボス会議で演説する習近平
「保護主義は暗い部屋に閉じこもっているようなものだ。雨は防げるが、光や風をも遮断してしまう」。習近平は今月17日、スイスで開かれた世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)での講演で保護主義の拡大に「危機感」を表明し、自由貿易の「擁護者」を演じてみせました。

しかし、そういう支那こそ、もっとも保護主義的です。

トランプ大統領は、冷徹なビジネスマンでもあります。支那の今秋の5年に1度の党大会に向けて、習近平を揺るがすように、着々と次から次へと厳しい手を打っていくことでしょう。そうして、それは反習近平派を多いに勇気づけるでしょう。

しかし、習近平が失脚したとして、その後に誰が主席になったとしても、同じように権力闘争に巻き込まれて、支那共産党政府は弱体化することでしょう。それがトランプ氏の狙いです。

私は、トランプ氏の対中強硬路線の成果は、まず最初に習近平失脚という形で具現化されると思います。

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2016年12月15日木曜日

衆院解散 1月見送り 安倍晋三首相決断、来秋以降―【私の論評】蓮舫・民進党の体たらくと財務省の弱体化で安倍首相は政局運営がやりやすい(゚д゚)!

衆院解散 1月見送り 安倍晋三首相決断、来秋以降

最近の安倍首相
 安倍晋三首相(自民党総裁)は、来年1月の衆院解散を見送る方針を固めた。各種情勢調査の結果を分析した結果、現状で衆院選を実施すれば、自民、公明両党で3分の2超を有する現有議席を割り込む公算が大きく、衆院任期2年弱を残して勝負を打つメリットはないと判断した。来夏は東京都議選が予定されているため、次期衆院選は来秋以降にずれ込む見通し。

 首相は、年末か来年1月の衆院解散を選択肢の一つとして、自民党の古屋圭司選対委員長に所属議員の集票力などを調査・分析するよう内々に指示していた。若手議員の一部差し替えも検討したが、民進、共産両党などが共闘して各選挙区の候補者を一本化した場合、自民党の現有議席(292議席)を割り込み、与党の議席数が3分の2を下回る可能性が大きいことが分かった。

 加えて、衆院任期を2年近く残して厳冬期に衆院選に踏み切れば「党利党略で国民を振り回すな」という批判が強まりかねない。首相はこのような情勢を総合的に勘案し、1月解散を見送った。首相は周囲に「1月の解散はない。メリットはない」と語った。

 来年の通常国会では、平成29年度予算案などに加え、天皇陛下の譲位に関する法整備など重要案件を抱えている。米英伊比など各国で首脳交代が相次いでいることもあり、首相は今後、外交・安全保障や内政などの政治課題に全力を傾注する構え。

 首相の悲願である憲法改正に関する審議は来秋の臨時国会以降に持ち越されることになる。このため、憲法改正の本格審議を前に、首相が来秋に衆院解散するかどうかが政局の焦点となる。合わせて日本維新の会など第三極勢力の動きが活発化する可能性がある。

 ただ、民進党の支持率は低迷を続けている上、蓮舫代表が「二重国籍」問題を抱えていることもあり、与党内では早期解散を望む声は少なくない。来年の通常国会冒頭で28年度第3次補正予算案を成立させ、速やかに解散すべきだという意見もくすぶっている。

【私の論評】蓮舫・民進党の体たらくと財務省の弱体化で安倍首相は政局運営がやりやすい(゚д゚)!

首相の来年早々の衆院解散については、このブログでも何度か掲載し、昨日の記事にもその話題に触れました。昨日の私の結論は来年早々の解散はないであろうとのものでした。昨日この話を掲載した途端に本日産経のこの報道が本日の夕方5時にあったので、本日はこの記事を掲載し、解説を加えることとしました。

なお、この首相の来年1月の衆院解散見送りの報道は、いまのところは新聞では、産経新聞だけのよううです。テレビなどでもほとんど報道されていません。

昨日のこのブログの記事のリンクを以下に掲載します。
GDP下方修正を読み解く 再びデフレ突入の瀬戸際も「600兆円」は達成可能―【私の論評】来年こそは安倍首相が財務省無視で、積極財政を推し進める(゚д゚)!
 
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、昨日の記事では、以下で述べる背景から、来年早々の衆院解散はないであろうと結論づけました。
①次の選挙戦で野党共闘が実施されれば、与党は議席をかなり多く失う可能性がある。
➁蓮舫民進党の体たらくと、強力だった政治集団財務省の弱体化により、安倍総理として政局を含めてかなりいろいろなことがやりやすくなった。
以上の二点から、来年早々の衆院解散はないであろうと結論を下しました。ただし、今から考えると、世界情勢の変化なども大きく影響を与えたと思います。ブログ冒頭の記事には掲載されていませんが、米国の大統領かトランプ氏に決まったこと、そうしてお隣韓国で朴槿恵政権が死に体になっていることも影響したと思います。

ところで、注目を集めた党首討論で安倍総理にこてんぱんにやられ、論理的に言い返せなくなった蓮舫氏はヒステリックに安倍総理を「嘘つき」「逃げる」「答えない」などとブーメランな言葉を吐きまくりました。

そのときの様子が風刺画になって、現在ネット上で実に的確であると話題になっています。その風刺画を以下に掲載します。




ブーメランを投げるどころか間髪入れずに自分の頭にぶち込む蓮舫氏の様子はまさに現実であった討論の様子そのもののようです。対する安倍総理は唖然としており、理解できない言行を繰り返す蓮舫氏に驚いています。

この風刺画をつくったのは絵を描くのが趣味というTwitterユーザーの「ヒカル@zwSZkh6wB2p5F9J」さん。投稿はあっという間に話題になり、即日3,000リツイートを超えて拡散されました。

党首討論など、普通はあまり話題にならないのですが、蓮舫氏の党首討論での振る舞い、発言があまりに上記を逸していたので、ネット上でもかなり話題になっています。

蓮舫氏は未だに二重国籍問題に関しては、はっきりさせず、未だに不明瞭です。そのためか、以下のようなピコ蓮舫の風刺画もネット上に人気を博しています。残念ながらこれを作成した方は誰なのか不明です。


このような時期には、選挙をするというより、安定的な政局運営をすべきと首相は判断したのだと考えられます。蓮舫氏は安倍政権の強力なチアリーダーをやってくれているのですから、確かにこれを利用しない手はないと思います。

そうして、上の記事に掲載してあるように、首相の悲願である憲法改正に関する審議は来秋の臨時国会以降に持ち越されることになりそうです。

そうなると、憲法改正に関する審議をするために、安倍政権が何をすべきかが、見えてきます。

それは、憲法改正審議の直前までに、なるべく内閣支持率を上げることです。そのためにできることのうち、最もやりやすくてかつ、効果のあるものは、やはり経済対策です。



これに関しては、この記事でも掲載したように、金融政策においてはさらなる量的緩和の拡大で、失業率を2.7%くらいまでにすることです。そうして、金融政策の効き目にはある程度のタイムラグがあり、来年秋ころまでにすぐに効果は出ない可能性もあるので、やはり、強力な積極財政政策を打ち出すことが考えられます。

過去を振り返ってみると、安倍政権における経済対策は、金融緩和はうまくいき、雇用状況はかなり良くなっていますが、残念ながら、財政政策においては、8%増税を実施してしまったため、その悪影響が未だに続いており、GDPの伸びは低迷していて、デフレに逆戻りしそうな状況にあります。

残念ながら、安倍政権が成立してからも、なぜか大規模な積極財政策は見送られるどころか、増税して、その悪影響を避けるために、補正予算を組むなどという、なんともちぐはぐな経済対策が行われるという有様でした。

この状況は何が何でも変えなければなりません。変えなければ、健忘改正までに経済を上向かせるようなことは到底無理です。大規模な28年度第3次補正予算案を打ち出すのは当然のこととして、消費税増税の悪影響の克服関しては、減税などの積極財政を打ち出すべきです。

安倍首相が、財務省の意向など完全無視して、選挙で民意を問うこともなく、安倍政権の裁量でこれを実行することができれば、経済はかなり上向き、憲法改正審議もうまくことが期待できます。

来年、安倍総理がまさに、財務省とは関係なく、政治主導でどの程度の積極財政ができるかによって、憲法改正への道が開かれる開かれないかの分水嶺になります。

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2016年11月24日木曜日

【スクープ最前線】トランプ氏が中国制圧決意、「通貨・貿易戦争」辞さず 安倍首相初会談の核心―【私の論評】トランプ大統領はオバマとはまったく異なる方法で米国を弱体化させる可能性も?


トランプ氏は、国防長官に「対中強硬派」で「狂犬」との異名を持つジェームズ・マティス
元中央軍司令官(中)を検討している。右端はマイク・ペンス次期副大統領
ドナルド・トランプ次期米国大統領の真意をめぐり、世界が動揺している。各国首脳に先駆けて、安倍晋三首相が17日(日本時間18日)、米ニューヨークの「トランプタワー」で初会談したが、核心的部分が伝わってこないからだ。こうしたなか、米情報当局者の間で「トランプ氏が対中強硬方針を決断したようだ」という情報が広がっている。習近平国家主席率いる中国は孤立化するのか。ジャーナリストの加賀孝英氏が緊急リポートする。

「先週末以降、各国情報機関が慌ただしい。『トランプ氏が、中国との激突も辞さない強硬政策を決断した』『安倍首相にも協力を求めたようだ』という極秘情報が流れているからだ」

旧知の米情報当局関係者はこう語った。

世界が注目した会談後、安倍首相は記者団に「胸襟を開いて率直な話ができた」「トランプ氏は信頼できる指導者だと確信した」と発言した。トランプ氏も自身のフェイスブックに、ツーショット写真をアップし、「素晴らしい友好関係を始めることができてうれしい」とコメントした。

米政府関係者が次のようにいう。

「会談は大成功だ。2人は意気投合し、『ゴルフ外交』の調整も進めている。トランプ氏には就任直後、世界の首脳が電話で祝意を伝えて会談を求めた。だが、『会おう!』と即決したのは安倍首相だけだ。日本を重視しているのが分かる。問題は、安倍首相が『話すことは控えたい』とした会談の中身だ」

私(加賀)は冒頭で「トランプ氏の対中強硬方針決断」情報を報告した。各国情報機関は、これこそが「会談の核心だ」とみている。

トランプ氏は選挙期間中、日本やドイツも批判していたが、一番激しく攻撃していたのは中国だ。彼は以前から「アンチ・チャイナ」を前面に出していた。

 いわく、「大統領就任初日に中国を『為替操作国』に認定する」「中国のハッカーや模造品に規制強化する」「中国の輸入品に45%の関税を課す」「中国の覇権主義を思いとどまらせる。米軍の規模を拡充し、南シナ海と東シナ海で米軍の存在感を高める」…。

 まさに、中国との「通貨戦争」「貿易戦争」「全面衝突」すら辞さない決意表明ではないか。

 重大な情報がある。なぜ、トランプ氏が大統領選で逆転勝利できたのか。なぜ、ヒラリー・クリントン前国務長官が敗北したのか。カギは中国だった。国防総省と軍、FBI(連邦捜査局)周辺が動いたという。

 以下、複数の米軍、米情報当局関係者から得た情報だ。

 「国防総省と軍は、オバマ政権の『対中腰抜け政策』に激怒していた。彼らは常に、南シナ海や東シナ海で、中国への強硬策を進言してきたが、オバマ政権は口だけで逃げた。米国のアジアでの威信は地に落ち、混乱した。オバマ政治を継続するヒラリー氏は容認できなかった」

 ヒラリー氏は12日、敗北の原因を「FBIのジェームズ・コミー長官のせいだ」と非難した。コミー氏は、ヒラリー氏の「私用メール」問題で、投票直前に議会に捜査再開の書簡を送り、10日後には「不正はなかった」との書簡を送って、ヒラリー氏の勢いを止めた。裏で何があったのか。

 「FBI内部では『なぜ、ヒラリー氏を起訴しないのか』という不満が爆発していた。『私用メール』問題は、巨額の資金集めが指摘されたクリントン財団の疑惑に直結する。クリントン夫妻は中国に極めて近い。FBIは国防総省と同様、『ヒラリー氏はノー』だった。コミー氏は国防総省にも通じるロッキード・マーチンの役員なども務めていた」

 そして、情報はこう続いている。

 「トランプ氏は、ロシアのプーチン大統領との連携も検討している。これが実現すると、シリア内戦をめぐる米露対決は解消し、過激派組織『イスラム国』(IS)掃討作戦で結束できる。中東情勢を改善させ、米軍を南・東シナ海に集中させる計画も立てている」

 こうした中での、安倍-トランプ会談だったのだ。

 中国外務省の耿爽副報道局長は18日の記者会見で、具体的な会談内容は不明としつつも、国家間の協力が「第三者の利益を毀損してはならない」といい、自国への影響を牽制(けんせい)した。

 笑止千万だ。国際法を無視した自国の暴走を棚に上げて、何をいっているのか。明らかに、中国がトランプ氏の一挙一動に震えている。

 トランプ氏は今後、軍事費を約300億ドル(約3兆3237億円)増額させ、米軍の大増強を図る。日本などの同盟国には「負担増」と「役割増」を求めるとされる。

 米国が劇的に変わるのは間違いない。日本も覚悟と責任が求められる。だが、自国と世界の平和と繁栄を守るため、怯(ひる)んではならない。 

 ■加賀孝英(かが・こうえい) ジャーナリスト。1957年生まれ。週刊文春、新潮社を経て独立。95年、第1回編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム大賞受賞。週刊誌、月刊誌を舞台に幅広く活躍し、数々のスクープで知られている。

加賀孝英氏

【私の論評】トランプ大統領はオバマとはまったく異なる方法で米国を弱体化させる可能性も?

トランプ氏と安倍総理との会談に関しては、トランプ氏がまだ大統領でもなく、現状では一私人に過ぎないことから、この会談の内容は安倍総理自身も語っていたように、これを表に出すことはできません。だから、ブログ冒頭の記事は、加賀氏の会談の核心が「トランプ氏の対中強硬方針決断」だったかどうかは、あくまでも加賀氏の推測に過ぎないわけです。

しかし、これが会談の核心であった可能性は高いですし、中国外務省の耿爽副報道局長が、国家間の協力が「第三者の利益を毀損してはならない」と語っていることから見ても、会談ではこのような話もあった可能性が高いですし、少なくとも中国に対する牽制について話がでたと中国側に思わせたのは間違いありません。

ブログ冒頭の記事では、加賀氏が「トランプ氏が大統領選で逆転勝利できたのか。なぜ、ヒラリー・クリントン前国務長官が敗北したのか。カギは中国だった。国防総省と軍、FBI(連邦捜査局)周辺が動いたという」としていて、その内容を記載していますが、ここで触れられていない内容で、保守派を激怒させたのは、やはりヘーゲル国防長官の解任だったと思います。


オバマ大統領とヘーゲル国防長官
オバマ米大統領は2014年11月24日、ヘーゲル米国防長官の辞任を発表しました。イラク情勢やシリア政策を巡るオバマ氏側との意見の対立が背景にありました。オバマ政権で国防長官の辞任は3人目となる異例の事態でした。

この年の11月4日の米中間選挙で民主党が大敗した後の閣僚辞任は初めてでした。後任は未定。ヘーゲル氏は決まるまで職務を続けました。オバマ氏はヘーゲル氏の辞任について「難しい決断だった」と語っていましたた。

ヘーゲル氏は共和党出身で2013年2月、オバマ政権2期目の目玉閣僚として迎えられました。オバマ大統領としては、ブッシュ政権下の共和党に所属しながらイラク戦争に反対したヘーゲル氏をテコに超党派の政策を進める狙いでした。

オバマ氏は2013年、ヘーゲル氏が進言したシリアへの軍事介入を土壇場で見送る一方で、 2014年にはライス大統領補佐官(国家安全保障担当)らの求めに応じてシリア領の過激派「イスラム国」への空爆を決断しました。こうした経緯にヘーゲル氏は不満を強め、ホワイトハウスとの不協和音が伝えられていました。

ヘーゲル氏はライス氏にシリア政策の「整合性がとれない」との趣旨の書簡を送り、ライス氏が退かなければ自らの辞任も覚悟した行動に出たのです。オバマ氏がライス氏の交代に動く気配はなく、最終的に辞任を決断しました。

そうして、ヘーゲル氏の辞任劇につながったのは、シリア政策だけではなく、ウクライナ問題での対ロシア政策、南シナ海、東シナ海での中国の強硬路線に対する政策に関しても、煮え切らない及び腰のオバマ大統領に対して保守派の不満は最高潮に達していたことでしょう。

ヘーゲル長官の事実上のオバマ大統領による解任は、保守派を激怒させたものと思います。この時点で、もう保守派はオバマは大統領としてはふさわしくないとの烙印を押していたものと思います。

そうして、このことが、後のトランプ旋風の遠因となったのは、間違いないものと思います。ヒラリー・クリントンが大統領になれば、オバマ氏の及び腰が継承され、とんでもないことになるという危機感が多数の保守派に共有され、大きな力となったのです。

だからこそ、かなり危機感を抱いた国防総省と軍、FBI(連邦捜査局)の保守派の周辺が動き、トランプ氏が大統領選勝利への大きな原動力となったのです。

このような背景でトランプ氏が大統領選に勝利し、非公式といえ日本のトップである安倍総理と会談したわけですから、中国をはじめとした世界各国からみれば、当然のことながら、トランプ氏は「対中強硬路線」をとると見るのが当然のことです。

さて、トランプ氏は大統領就任時にTPPから離脱すると宣言しました。


そうして、このトランプ氏の宣言に呼応したかのごとく、中国の国営英字紙チャイナ・デーリーは15日付の社説で、米国のトランプ次期政権は中国が主導する東アジア地域包括的経済連携(RCEP)への支持を検討すべきとの見解を示しました。

同紙は「中国政府は当然ながら、排他的で経済的に非効率かつ政治的対立をあおる環太平洋連携協定(TPP)が実現する可能性が日増しに低下していることに安心している」とした上で、「米次期政権は、より開かれた、包括的なRCEPが米国の利益の追求する上ではるかに効率的な枠組みになることを認識すべき」と指摘しました。

米国はRCEPに参加していません。

一方、米国のオバマ現大統領が推進してきたTPPに中国は参加していません。米国は中国よりも先にアジアの貿易協定を定め、アジアで経済的主導権を握ることを目指していました。しかし、トランプ氏はTPPから脱退すると表明しているほか、来年1月までのオバマ大統領の任期中に議会で承認される可能性はほとんどなくなりました。

RCEP参加国には東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟10カ国に加え、中国、日本、韓国、インド、オーストラリア、ニュージーランドが含まれるが、現段階ではTPPほど高度な貿易自由化は可能となっていません。

TPPに反対して、「TPP亡国論」を叫んでいた連中や民進党などのTPPを政争の道具に使おうとする連中は、日本が、中国のリーダーの下での国際ブラック分業体制ともいえる、RCEPには加入するか、米国の二国間での重商主義的な交渉に挑むことを主張しはじめるかもしれません。


さて、米国との二国間の重商主義的な交渉は日本にとっては、あまり良いことはないです。その事例として、2012年に発効した米韓FTAを例に出します。TPPのお手本とされたこの協定は再交渉で誕生しました。

ブッシュ政権時代に最初の協定が決まったのですが、08年の大統領選に出馬したオバマは「米国の利益を損なう」と反対しました。当選後、再交渉となり韓国に厳しい内容になりました。

北朝鮮と対峙する韓国は米軍の支援を抜きに安全保障を維持できず、隣接する中国との関係からも米国の後ろ盾を必要とします。当時の李明博大統領は米国の要求を呑まざるを得なかったようです。再協議は秘密交渉で行われ、膨大な協定の中身は国会で十分な周知がないまま決まってしまいました。

韓国は不平等協定を呑まされたようなものです。以下の様な不平等な点があります。

 ◎韓国サービス市場の例外品目以外の全面開放
 ◎仮にまたぞろ狂牛病が発生しても米国産牛肉の禁輸措置を韓国はとれない
 ◎韓国が他国とのFTAで相手国に認めた有利な条件は米国にも適用
 ◎米国産自動車の売上げが落ちれば米国の自動車輸入関税2・5%は復活
 ◎韓国で損害が出た米国企業は米国でのみ裁判を行う
 ◎韓国で利益が出ない米国企業に代わって米国政府が国際機関に韓国政府を提訴出来る
 ◎米国企業の韓国法人には韓国の法律を適用させない
 ◎知的財産権の管理は米国がする
 ◎韓国公営事業の民営化(市場開放の追加もある

さて、TPPの焦点のひとつに薬価がありました。日本は米国に次ぐ巨大市場です。日米二国間交渉となれば、薬価を高値に維持する特許期間の延長が協議されることになるでしょう。

TPP交渉では、日本の製薬会社も「特許期間が8年では短すぎる」としていました。TPPでは途上国が短縮を求め押し切って8年になったのですが、日米二国間協議には当然のことながら、途上国はいません。日本は、TPP交渉ではかなり粘りました。このように粘ったのは、日本側の努力もあるのですが、やはり多国間交渉であったという側面もあります。

FTAでは、薬価の決め方も米国は突いてくることが予想されます。TPP協定付属文書に「医療品及び医療機器に関する透明性及び手続きの公正な実施」という規定が盛られたました。当たり前のことが書かれているように見えるのですが、キーワードは「透明性」と「公正」です。

2011年の日米経済調和対話で「利害関係者に対する審議会の開放性に関わる要件を厳格化し、審議会の透明性と包括性を向上させる」という項目が入りました。審議会とは厚労省の中央社会保険医療協議会。実務を担う薬価専門部会に米国製薬企業の代表を加えろ、と米国は要求しています。

遺伝子技術の進歩で画期的なバイオ新薬がぞくぞくと登場したのですが価格がバカ高いです。小野薬品工業のがん治療薬オプジーボは、患者一人に年間3500万円がかかります。健康保険が適用されるが財政負担が問題となり、来年から薬価が半額になることが決まりました。

米国の製剤会社は日本の国民皆保険でバイオ製剤を売りたがっています。新薬認可や保険適応を円滑に進めるため、決定過程に入れろ、と圧力をかけています。高額薬品をどんどん入れれば財政がパンクし国民皆保険が危うくなりかねません。


米国は国民皆保険がないため、病院に行けない医療難民がたくさんいます。オバマケアで最低限の保険制度を作る試みが始まったのですが財政負担が嵩み、金持ちや共和党が目の敵にしています。トランプは「撤回」を視野に再検討する構えです。米国の製薬企業は、日本の皆保険は新薬の巨大市場と見ています。世界一薬価が高く政治力のある米国資本が薬価決定に参入すれば、日本の薬価はどうなることでしょう。

こうした問題は日米二国間交渉の一端でしかありません。TPPではなく、二国間協議に移ればなおさらこのような問題がでてくるのは日を見るより明らかです。多国間交渉である、TPPであれば、多く国々が参加していることから、米国一国だけが有利になるようなことは考えられないですが、二国間交渉になれば、それこそ重商主義立場から、米国の有利な内容になりかねません。

ちなみに、重商主義(じゅうしょうしゅぎ、英: mercantilism、マーカンティリズム)とは、貿易などを通じて貴金属や貨幣を蓄積することにより、国富を増すことを目指す経済思想や経済政策の総称のことです。

本来米国主導であるはずの、「TPP離脱」に、呆れている場合ではありません。米国企業はしたたかです。このような企業の強力な後押しもあることから、トランプ氏としては、TPP 離脱を決意したものと思います。しかし、それが必ずしも米国の国益につながるとは限らないのです。

米議会の諮問機関「米中経済安全保障調査委員会」は16日公表した年次報告書で、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)が発効せず、中国や日本などが交渉している東アジア地域包括的経済連携(RCEP)が発効した場合、中国に880億ドル(約9兆6千億円)の経済効果をもたらすとの試算を紹介しました。


報告書は、オバマ米政権のアジア重視戦略「リバランス」で、TPP構想は経済面での中核をなすとみられていると指摘。中国への警戒感を強めているトランプ次期大統領はTPP脱退を主張しているのですが、報告書はTPP脱退が逆に中国の立場を強めると警告した形です。

RCEP交渉には日中両国のほか、東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟10カ国などを加えた計16カ国が参加。TPPが発効した場合も、RCEPが発効すれば中国に720億ドルの経済効果があると試算。TPPが発効して、RCEPが発効しなかった場合には、中国の経済損失は220億ドルに上るとしました。

日本としては、TPPの米国離脱を阻止するのが当然です。何とか安倍総理の説得によって、踏みとどまっていただきたいものです。トランプ氏は、もともと企業経営者ですから、経営者の立場にたって、米国企業が儲けやすい体制を築きたいと思うのは無理もないのかもしれません。

しかし、米国企業の儲け、それも一部の企業の儲けそのものが、米国の国益にかなうことばかりではありません。場合によっては、著しく国益を毀損することだってあり得るのです。そのことに気づいて、トランプ氏が大統領就任時にTPPの再交渉を宣言するなら、かなりみどころがあると思いますし、大統領としてもうまくやっていけるかもしれません。

しかし、TPPに関する考え方がこのような状況ですから、威勢の良いことは言っていますがトランプ氏も意外と、方法は全く異なるものの、オバマ氏のように、米国を弱体化してしまうかもしれません。

そのようなことになれば、日本にとっても脅威です。たとえ、米国が衰退するにしても、日本がそれに引きずり込まれて弱体化してしまっては、中国の思う壺です。

安全保障面でも、経済でも、日本は日本の国益にあった独自の道を選択すべきです。そのためには、TPPが発効しないというのなら、RCEPからは脱退、米国とのFTA交渉もしない方針で臨むべきです。そうして、安全保障の面でも、日本独自の路線を歩めるように準備をすべきです。

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2016年6月17日金曜日

「オール沖縄」崩壊の兆し 那覇市議会議長の不信任案可決 唯一の保守系に亀裂―【私の論評】中国の傍若無人と弱体化とともに下火になる沖縄左翼運動(゚д゚)!


沖縄県那覇市議会
沖縄県那覇市議会の金城徹議長に対する不信任決議案が17日、自民、公明両党などの賛成多数で可決された。金城氏は翁長(おなが)雄志(たけし)知事の側近で、翁長氏を支える勢力のうち、県内の市町村議会で唯一となる保守系議員会派「新風会」に所属していた。

不信任決議案は、「公平・公正な議会運営と議会改革が期待できない」として提出された。新風会会長を務めていた知念博議員も賛成に回った。

那覇市議会議員名簿より

翁長氏は自身の支持勢力について保革融合の「オール沖縄」と喧伝してきたが、唯一の保守系議員会派に亀裂が入り、県政界では「オール沖縄崩壊の兆し」との声が上がっている。

6月5日の県議選には新風会系として市議2人が出馬したが、ともに落選。しこりが残ったとされ、知念氏は6日に新風会を離脱して無所属となった。金城氏も議長のため現在は無所属。

【私の論評】中国の傍若無人と弱体化とともに下火になる沖縄左翼運動(゚д゚)!

さて、以下ではまずオール沖縄についてまとめておきます。

「辺野古新基地を造らせないオール沖縄会議」の結成大会で手を
つなぐ参加者=2015年12月14日夜、沖縄県宜野湾市
オール沖縄(オールおきなわ)は、沖縄県のアメリカ軍普天間基地の辺野古移設反対派による政治的統一戦線・選挙運動です。また、その選挙運動を支える組織として結成された「普天間基地移設を目的とするオール沖縄会議」の略称です。

2014年沖縄県知事選挙において、辺野古移設反対派の翁長雄志を支援する枠組みとして誕生しました。

それまで沖縄では革新勢力による革新統一は頻繁に行われていたましたが、2014年の県知事選では戦後初めて革新勢力に加え辺野古移設反対派の保守勢力(翁長は元自民党である)も参加した統一戦線が結成されました。この統一戦線には、「辺野古移設に反対する圧倒的な県民世論の元で保守と革新の壁を乗り越え、沖縄が一致団結する」という意味をこめてオール沖縄の名称がつけられました。結成以後は、沖縄県内のあらゆる選挙において選挙協力・候補者調整・統一候補擁立を行っています。

沖縄県翁長知事
社会民主党・日本共産党・生活の党と山本太郎となかまたち・沖縄社会大衆党・民進党沖縄県連・那覇市議会新風会・沖縄県議会県民ネットなどの政党・会派が参加しています。

また沖縄県知事・那覇市長・名護市長といった首長も参加し、2016年5月現在は沖縄県議会および那覇市議会において過半数を確保しました。

ただし辺野古移設反対派でも、翁長県政に是々非々の立場を取る公明党沖縄県本部およびおきなわ維新の会(政党そうぞう)は参加していません。

保守、革新・リベラルの枠を超え、沖縄県民がこぞって辺野古移設に反対―というのが「オール沖縄」の建前です。地元メディアが意図的に定着させ、2014年の知事選、衆院選で辺野古移設に反対する候補が圧勝する原動力となった言葉です。

沖縄の海岸
しかし両選挙を地域別に見ると、たとえば八重山の場合、辺野古移設容認の候補の得票が多かったのです。要するに辺野古移設問題に対しては県内でも温度差があり、十把一からげに「オール沖縄」という言葉が使われるのには、県民として違和感がある人も多いようです。

そうして、上の記事では、この「オール沖縄」の崩壊の兆しを掲載しています。さて、このオール沖縄の崩壊の兆しは他にもありました。それについては、このブログにも掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
【編集日誌】中国軍艦侵入にもだんまり…翁長沖縄県知事、発言なしですか―【私の論評】何か語れば保守派に利用されることを極度に恐れている翁長知事(゚д゚)!
尖閣諸島
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、「オール沖縄」崩壊の兆しの部分を以下に引用します。
中国海軍の艦艇が尖閣諸島周辺の接続水域に初めて侵入したことに、沖縄県石垣市の中山義隆市長は「非常に強い危機感を持っている」と述べました。尖閣を行政区域に抱える市政トップとして当然の反応でしょう。対照的に何もコメントしなかったのが翁長雄志知事でした。

翁長氏は昨年5月の外国特派員協会での会見で「私も尖閣は日本固有の領土だと思っている」と明言しました。ならば即座にメッセージを発してもよかったはずです。共産党の志位和夫委員長も「軍艦侵入は軍事的緊張を高めるだけ」と批判したのですから。米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設反対を訴える翁長氏として、中国の脅威を強調すると米軍基地の重要性を認めざるを得ないと懸念したのでしょうか。それとも翁長氏には危機感がないのでしょうか。
・・・・・・・・・〈中略〉・・・・・・・・・ 
米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古移設反対を訴える翁長知事としては、尖閣問題を強調すると中国の脅威や米軍基地の重要性を認めざるを得なくなり、移設反対の論拠が弱まりかねないです。このため、知事や反基地派は尖閣問題を無視するか、「尖閣有事でも、米軍が出動することはない」「普天間飛行場の米海兵隊は抑止力にならない」などと反論していました。

しかし、尖閣に日米安保が適用されることはオバマ米大統領が明言しています。米軍が抑止力であることを否定する主張は日米安保の否定にもつながり、保守派の共感を得にくいです(注:太文字はブログ管理人によるものです)。現在、翁長知事を含めた辺野古移設反対派にとって「尖閣」は極力触れたくないキーワードになっています。

さらに、翁長知事は、自らの発言が安倍総理に利用されることを懸念している可能性もあります。 
青山繁晴さんが翁長知事が、安倍総理の術中にはまったと暴露しています。伊勢志摩サミットの直前に安倍総理に会った翁長知事がオバマ大統領に面談したことなどを利用して、オバマ大統領との交渉を有利にもっていったことを暴露しています。 
これについては、以下の動画をご覧になってください。

翁長知事は、こういうこともあったので、中国海軍の艦艇が接続水域に入ったことに関しては何か発言すれば、また保守派等にその発言を利用されてしまうかもしれないと懸念している可能性が大きいです。
政府は16日、中国海軍の情報収集艦が沖縄県・北大東島の接続水域を一時航行したことについて「看過できない」(政府筋)と反発が強めています。9日の沖縄県・尖閣諸島周辺の接続水域航行から始まり、15日の鹿児島県・口永良部島の領海侵入に続く行動です。政府内には「われわれの懸念などを顧みない行為で、度が過ぎている」との声が上がっていました。

短期間に三度も、中国海軍の艦艇は接続水域を航行しましたが、今のところ翁長知事はこれらについて何のコメントもしていません。さすがに、これは異常です。

米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設反対を訴える翁長氏として、中国の脅威を強調すると米軍基地の重要性を認めざるを得ないと懸念して発言をしないというなら、本当に無責任です。もし、これでも危機感がないというのなら、とても沖縄県知事などつとまりません。いずれにしても、翁長知事にとっても、「オール沖縄」にとっても、これは逆風です。

そうして、沖縄県那覇市議会の金城徹議長に対する不信任決議案が本日、自民、公明両党などの賛成多数で可決されたのです。

中国海軍の軍艦は、これからも接続水域に頻繁に出没することが考えられます。それにだんまりを通していては、さらに逆風が強くなります。しかし、中国の軍艦の侵入について、危機感を表明すれば、これも逆風になります。

いずれにしても、逆風からは逃れられないことになります。そうなると確かに「オール沖縄」崩壊の兆しになることが十分に考えられます。



そうして、これは後からみると大きなターニングポイントになっているかもしれません。

沖縄左翼には、地元企業や共産党や中国が資金を提供していることは、今日ではすでに多くの筋から明らかになっています。

しかし、これらが、いくら沖縄県民などに金を費やしたとしても、その対価を得られないようであれば、そんなことは無駄なので止めます。

成田闘争など、今さらいくら反対運動してみたところで、何の効果も期待できません。だからこそ、誰も支援をしないので、左翼もこれに対していまさらそのようなことはしないのです。

沖縄も同じです。翁長知事がいくら基地移転反対といいはったにしても、偏った沖縄二紙などいくら操作誘導しても、何も変わらなければ、左翼や中国もいずれ手を引きます。日本中から暇な老人をいくら動員しても、何も変わらなければ、いずれ資金提供をする組織も国もなくなります。

沖縄県民も、我が国の国民も馬鹿でも愚かでもありません。馬鹿で愚かなのは、翁長知事などのごく一部に過ぎません。そのことに多くの人が気づけば、いずれオール沖縄は有名無実となり、さらに沖縄の左翼運動もかなり下火になることでしょう。

成田闘争1971年7月 今ではこれが存在したことすら知らない人も多い
沖縄と日本を破壊する愚かな人々に、さよならする時期が近づきつつあります。時期的に早いか遅いかの話だけです。20年もたてば、成田闘争のように跡形もなく完璧に消えています。歴史は繰り返します。そうして、その頃中国は崩壊しているか、存在していたとしても、中進国のわなにはまり、図体が大きいだけの凡庸はアジアの一独裁国になっています。

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