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2019年7月15日月曜日

「合意なき離脱」へ突き進む英国―【私の論評】英国がEUから離脱するのも、米国が中国と対峙するのも必然である(゚д゚)!

「合意なき離脱」へ突き進む英国

次期保守党党首確実のジョンソン氏の甘い見込み

岡崎研究所

 メイ英首相の保守党党首辞任に伴う、同党党首選挙は、6月20日の保守党議員による5回目の投票の結果、ボリス・ジョンソン前外相:160票、ジェレミー・ハント外相:77票、マイケル・ゴーブ環境相:75票となり、ジョンソンとハントの戦いとなった。16万人の保守党員による郵便投票により、7月22日の週に新たな党首が決まることになる。ジョンソンは、同棲中との恋人との喧嘩沙汰で警察が呼ばれるなど、様々な問題を提起されて資質を問われているが、保守党員の間での圧倒的優位は揺るぎないようであり、ジョンソンの勝利は確実と見られる。

1月16日、議事堂の外では各人の主張に応じた旗が振られた。

 そのジョンソンが、6月24日夜のBBCのインタビュー番組に出演してBrexitについて語っている。6月18日のTalk Radio における1つの発言とあわせて、6つの発言の要旨を紹介する。

1. 鍵となるのは、離脱協定の使える部分を取り出して使うことである。アイルランド国境の問題には10月31日以降の移行期間において取り組む必要がある。

2. 移行期間を得るためには、EUとの何等かの合意が必要であり、その合意を目標とする。

3. EUは英国と新たなディールを交渉しようとするであろう。何故なら、欧州議会には有難くもないBrexit党の議員がいる。彼等は我々を追い出したいのだ。清算金が欲しいというインセンティブがある。勿論、英国には離脱してWTOの条件に戻る用意があるが、そのこともインセンティブとなる。

4. 我々は、10月31日に離脱する用意をしつつある。何事があろうと。必死でやる。何事があろうと。(Talk Radioにて)

5. 「no-deal Brexit(合意なき離脱)」で下院の承認を得ることが出来ると思っている。与野党ともやり遂げなければ選挙区で致命的しっぺ返しに直面することを理解していると思う。

6. 人々は英国政治の背中にとりついた巨大な「夢魔」を熊手で取り除いて欲しいと渇望していると思う。彼等は我々がこの国のために何かとてつもなく素晴らしいことをやり遂げることを欲している。

 ジョンソンの言っていることの核心部分は、離脱協定を解体して、都合の良い部分は都合の良いように料理しよう、ということである。交渉には清算金を梃に使いたいらしい。アイルランド国境の問題は、離脱後に移行期間を設けてそこに先送りしたいらしいが、一方的な要求である。そもそもEUは離脱協定の再交渉はしないと言っている。6月21日のEU27の首脳会議でもこのことを確認している。

 こういうことでは、入口で衝突してEUとの交渉は成立しないのではないかと思われる。ジョンソンは新たな交渉チームを組織する必要があろうが、引き受け手があるのかも疑問である。下院は「合意なき離脱」を否認するのかも知れないが、下院がどう動こうとEUとの間に合意が成立しなければ、自然と「合意なき離脱」となる。事態は、間違いなくその方向に進んでいる。

【私の論評】英国がEUから離脱するのも、米国が中国と対峙するのも必然である(゚д゚)!

英国が合意なき離脱をした場合、一時的には経済が相当落ち込むことが見込まれています。にもかかわらず、なぜ英国はEUを離脱するのでしょうか。すくなくとも、なぜ国民投票で離脱が決まったのでしょうか。

英国のEU離脱の要因としては多くの理由があることは否定できないですが、よく移民の問題が主要な要因として取り上げられます。これは表面的には正しいのですが、より根底にある問題を見過ごすべきではないです。

英国の社会法制度が欧州大陸の国々のそれとはそもそも相容れないのではないでしょうか。特にEU諸国からの移民問題は、その根底にある社会法制度の違いという問題が一つの形で顕在化したのに過ぎないのではないでしょうか。

社会法制度の違いとは、簡単に言うと、大陸法の国と英米法の国の制度が異なるということです。ドイツ、フランスをはじめとする欧州の大陸国家は大陸法(シヴィル・ロー)の国であり、英国は英米法(コモン・ロー)の国です。

両者の違いを一言でまとめると、大陸法国家では成文法が法体系の根幹をなし、裁判官は成文法のみに縛られます。一方、英米法国家では不文法(成文化されていない法)が存在し、裁判官は成文法、不文法を踏まえて自分の判断を下します。

コモンローとシビルローでは歴史も体型も全く異なる

現在の裁判官は過去の裁判官が下した判断(判例)に拘束されます。大陸法では書かれたもの(成文法)が重要で、英米法では歴史的経緯(判例の積み重ね)を重視するともいえます。

最近の研究で明らかになってきたように、国内社会法制度の違いはそれぞれが選好する国際協力の在り方の違いにも反映されます。大陸法国家は条約を好みます。そして条約の締結とともに国内法を条約と整合的になるように改正します。

一方、英米法国家は条約より「ソフト」な国際宣言のようなものを好みます。英米法国家には不文法が存在するので、条約を締結しても大陸国家のように成文法を改正して整合性をはかるということができないからです。

しかし興味深いのは、国際宣言は大陸国家では無視されることが多いです(成文法の改正に至らないことが多い)が、英米法国家においては各々の裁判官が国際宣言を勘案するという意味で、結果的に履行される度合いが高いことです。不文法や国際宣言の良し悪しの話でなく、国内制度と国際制度の整合性が問題なのです。

法体系およびそれによって生じた社会法制度の違いは英国と欧州大陸国家の協力を困難にしています。少なくとも今までの欧州統合は英国に大きなストレスがかかる構造となっていました。

例えば欧州司法裁判所は基本的に大陸法的アプローチをとっています。大陸法国家は欧州司法裁判所の判決に合うように国内成文法を改正することで整合性を確保できます。

英国は紙に書かれたルールに基づいて下された欧州司法裁判所の判断と、不文法をも踏まえた国内裁判所の判断の間の整合性をとることが、大陸法国家よりも困難であることは容易に想像がつきます。

人の能力評価の方法についても英米法国家と大陸法国家では大きく異なります。大陸法国家では筆記試験で人の能力を計ります。例えば大学入学のための厳格な筆記試験が存在する場合が多いです。

そして試験をパスした後はエリートとして扱われ、よほどのことがない限り卒業できます。一方、英米法国家では大学入学のための筆記試験は不在であるか軽視され、高校時代の成績や推薦状がものをいいます。しかし入学後は卒業までサバイバル・レースが続きます。「成文法―筆記試験」、「過去の判例の蓄積―過去の経歴・経過重視」と見事に対応しているのです。

ここで国際協力の要素を入れると話はどのようになるでしょうか。入学のための筆記試験が国際交流の大きなハードルになりそうなことは容易に想像がつきます。直観的な例をあげるならば、大陸法国家出身者(例えばフランス人)が英米法国家(例えば英国)の大学に合格する方が、英国人がフランスの大学に合格するより容易であるということです。ただしこれは英国の大学に入学したフランス人が無事に学位を取得できるのかという問題とは別です。

一般的に、大陸法国家では専門職業(例えば技術士等)に就くには、難関の筆記試験に合格する必要がある場合が多いです。そして合格者が少ないので、合格後の労働市場における競争はそれほど熾烈ではありません。

一方英米法国家では、大学卒業後見習いで専門職に就き(筆記試験が不在である場合も多い)、経験を積み、学会で発表し、有名な先輩専門職の推薦状をもらい、審査を受けた後、専門職となる。

見習いとして働き始めることはそれほど難しくないですが、その後のサバイバル競争で生き残るのが難しいです。上述の大学入学の例同様、大陸法国家出身者が見習いの専門職として英米法国家で働き始める方が、英米法国家出身者が大陸法国家で専門職として働きはじめるよりも容易だということになります。

これは、弁護士の実数にも大きな影響を与えています。英国には、国民一人あたり694人の弁護士が存在します。フランスは、2461人に一人です。米国に至っては、320人に一人です。そのためもあってか、英米は訴訟社会ともいわれています。

米国ドラマ"フレイキング・バッド"に登場した悪徳弁護士ソウル・グッドマン

話をもう一歩移民問題に戻します。あなたがレストランにおける給仕のマネージャー格を採用しようとしたとします。二人から応募があり、一人は大卒ですがウエイトレスの経験は1年、もう一人は高卒ですがウエイトレスとしての経験を5年有していたとします。

他の要件が全く一緒ならどちらを選ぶでしょうか。大陸法国家では前者、英米法国家では後者が採用される傾向が強いです。大陸法国家では候補者が大学入試に合格した能力の持ち主であるということを評価し、英米法国家ではウエイトレスとしてのより長い経歴を評価するのです。

欧州大陸国家と英国とで社会・労働市場が完全に分かれていれば問題は生じないです。しかし両者が統合し始めたらどうでしょうか。ここで重要なのは、経験は後から追加的に積むことができるが、試験を受けなおすことは極めて困難であるという事実です。

結果的に、例えば、フランス人がロンドンのレストランで働く方が、英国人がパリのレストランで働くより容易であるということになります。上述の大学入学の例と同じです。ロンドンのレストランで働くのはフランス人かもしれないし、ポーランド人かもしれないですか、根底にある問題は、英米法国家(英国)の社会法制度が大陸法国家のものよりもオープンで柔軟的あるということです。

大陸法国家では社会のあらゆるところに門番(ゲート・キーパー)が存在し、入り口段階で規制しようとします。そして筆記試験やその類似物としての学位(入試を突破した証)が門番の役割を果たすことが多いです。

英米法国家では入り口には門番はおらず、とりあえず門の中には入れます(その後に熾烈な競争があります)。英国と欧州大陸国家の間で欧州統合のストレスの感じ方が違う根源的な理由はこの社会法制度の違いではないでしょうか。

英米法社会の強みはオープンであることとそれに付随する競争の存在ですが、これは外国人による参入が容易であることを意味します。職を追われた英国人は職を得た、例えばポーランド人が長い間仕事を続けられたか(サバイバルできたか)には関心示さず、職を追われた事実から外国人を敵視してしまいます。一方、英国人が大陸法国家においてウエイトレスの職を見つけるのは相対的に困難です。

英国のEU離脱を移民等の表面的な問題としてとらえるのでは、根底にある本質を見過ごすことになりかねないです。背景にある社会法制度のズレを看過してはならないです。オープン、筆記試験の軽視、経歴・経緯重視、競争重視、という英米法国家が有する従来の強みが、もしかすると現在国際協力の場において弱みになっているのかもしれないです。英国がその伝統である開かれた社会法制度を維持できなくなっているということに他ならないです。

このようなことから、英国がEUから離脱するのは当然といば当然なのかもしれません。EU 内の国々では経済の内容が大きくことなります。しかし、社会制度の違いという問題は経済の内容よりもさらに、埋めがたい溝です。

やはり、イギリスは短期的には経済的に大きな問題を抱えることになりますが、長期的にはEUから離脱すべきなのでしょう。問題はどのようにハードランディングを避けるかということです。

そうして、この問題は先進国と中国の関係にもあてはまります。中国が経済的に発展すれば、そのうち中国も他の先進国と同じようになるだろうと、先進国は考えていましたが、これはことごとく裏切られました。

中国と先進国の差異は、英国と大陸との違いよりはるかに大きいです。先進国では、英国とフランスのように、コモンローとシビルローの違いはありますが、民主化、政治と経済の分離、法治国家化という面でみれば、互いに似通っています。そうして、これが先進国の共通の理念となっています。

この面では、EU諸国も、英国も互いに理解することができ、ある程度の歩み寄りも可能でしょう。

しかし、中国には民主化、政治と経済の分離、法治国家などという概念はありません。だからこそ、中国は海外からの資金で、国内インフラを整備することにより、経済を発展させても、結局社会構造は何も変わらなかったのです。

しかし、その中国が経済力を軍事力を拡大させ、世界の秩序を自分たちの都合の良いように作り変えようとしました。オバマ政権までの米国は戦略的忍耐などとして、これに対して何も手を打ちませんでした。


しかし、トランプ大統領になってからは、これに対峙しています。世界中の社会が中国の都合の良いように、作り変えられてしまっては、先進国の人々にとってはこの世の闇になるからです。発展途上国の人々も今のままだと中国に搾取されるだけの存在になり、闇から抜け出すことは不可能ということになります。

このようにみると、英国がEUから離脱するのも、米国が中国に対峙するのも必然であるということができます。

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2019年1月22日火曜日

混迷深める英国のEU離脱 「リーマン級」打撃に現実味…日本も政策総動員で備えを ―【私の論評】日本は英国のTPP加入で窮状を救い、対中国包囲網を強化せよ(゚д゚)!

混迷深める英国のEU離脱 「リーマン級」打撃に現実味…日本も政策総動員で備えを 
高橋洋一 日本の解き方

英メイ首相

英国議会で、欧州連合(EU)離脱案が大差で否決された。今後、どのような影響が出てくるだろうか。

 英国のEU離脱は2016年6月23日に国民投票が行われ、僅差で決まった。

 そもそも英国は、貿易取引ではEUに加盟して有利な条件を受ける一方、ユーロに加盟せずに独自通貨のポンドで金融政策の自由度を確保するという「究極のいいとこ取り」であった。このため、筆者はそもそもEU離脱には懐疑的だったが、もはや時間は戻せない。

 国民投票の結果、英国のEU離脱の期限は3月末となった。ただし、行政機関や企業などが混乱しないように20年12月末までは「移行期間」として現行の諸法制が適用されるとされていた。

 そのためには、英国とEU間で離脱条件などが合意される必要がある。EUとの合意を前提として英国に有利なソフト・ブレグジットか、EUに有利なハード・ブレグジットのどちらになるかが関心事であった。

 今回、英議会が離脱案を否決したので、英国とEU間の合意の可能性はかなり遠のいた。つまり、「合意なき離脱」ということになりそうだ。この「合意なき離脱」ということになると、英国には打撃が大きい。

 EUのユンケル欧州委員長は、「もうすぐ時間切れだ」とし、「無秩序な離脱のリスクが高まった」と述べ、英国国内での意見集約を促している。

 しかし、英国のメイ政権ではいかんともしがたい状況だ。英議会でEU離脱案が大差で否決されたので、コービン党首率いる労働党が提出した内閣不信任案は否決されたが、英国内の政治が混乱したまま時間が過ぎ、3月末の期限を迎える公算が高い。

英政府は、その場合、国内総生産(GDP)を8・0~10・7%押し下げるという予測を昨年11月に出した。イングランド銀行は3~8%、国際通貨基金(IMF)は5~8%のマイナス効果になるとみている。

 具体的には、製造業で欧州から受け入れてきた労働者が不足して生産不足に陥る可能性が高い。金融業でも、適用ルールの不明確さから企業活動に混乱が生じかねない。こうした「合意なき離脱」による経済活動への悪影響はいうまでもなく計り知れない。EU側で、離脱の期日延期が検討されていると報じられているのもこのためだろう。

 筆者は、かつての本コラムで、英国のEU離脱は、世界経済にリーマン・ショック級の影響を与える可能性があると書いている。その当時は「合意ある離脱」が前提であり、英国政府の予測ではGDPに与える悪影響は、3・6~6・0%であった。今は、「合意なき離脱」を覚悟せざるを得ない状態であり、そのインパクトは2倍程度だろう。であれば、まさに、リーマン・ショック級になるのは避けられない。

 日本として政策総動員を準備すべきだ。実際のリーマン・ショック時は、「ハチに刺された程度」と楽観視し適切な政策が打てずに、大混乱したことを忘れてはいけない。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】日本は英TPP加入で窮状を救い、対中国包囲網を強化せよ(゚д゚)!

英国が欧州連合(EU)と合意したEU離脱案の採決は、保守党内から大量の造反者が出て、432対202という歴史的な大敗北となりました。

強硬離脱派も、残留派も反対し、労働党からは内閣不信任案が出されました(下院で否決)。EU側は当然ながら失望を表明し、メディアでは「合意なき離脱の可能性が高まる」との見出しが踊っています。

しかし、英ポンドはそれにも関わらず売られていません。「合意なき離脱」の可能性が高まっているのであれば、英ポンドはもっと売られていて良いはずです。つまり、表向きの混乱とは裏腹に「合意なき離脱」の可能性はやはり低いのです。そして今後ますますその可能性が低いことが明らかになっていくでしょう。

英ポンドは市場で売られていない

離脱案が否決されたので、メイ首相は3日以内(1月21日)に代替案を出すことになっているが、この代替案もどうなるかわからないです。

とはいえ、今後は野党の労働党との折衝が始まります。その中で、与野党の多くの議員はソフトな離脱案か再度の国民投票を希望しており、強硬離脱派はあくまで少数意見ということが明らかになってくるでしょう。

そして、万が一「合意なき離脱」の可能性が高まった場合、多くの議員は一致団結してそれを阻止するということがはっきりしてくるでしょう。

つまり、双方の多数派である労働党と保守党の穏健派が合意して超党派的な連合ができれば、簡単に終わる問題なのです。

ところが、そこに英国の政治事情が絡むので、スッキリとは進まないでしょう。メイ首相の頑な態度が、すんなりと合意に向かう道を閉ざしているとも言えるし、態度をはっきりさせないコービン党首が障害になっているとも言えます。

労働党は、結局どうしたいのか、はっきり態度を表明しなければならないです。ソフトな離脱案で行くのか、それとも再度の国民投票を行うのかです。それがはっきりすれば、超党派の連合も形成しやすくなるでしょう。

私は、ソフトな離脱案が結局成立する可能性が6、7割、再度の国民投票の可能性が3、4割と見たいです。個人的には「合意なき離脱」に至る確率は低いとみています。

現在、外国為替市場で少しずつ英ポンドが買われ始めているのは、結局「合意なき離脱」という選択肢が消えて、英ポンドが再評価され買い戻される、その動きを先取りしつつあるのでしょう。

英ポンドは極めて安い水準に放置されていたので、戻り始める(価値が上がる)とかなりのポテンシャルがあります。そして、「合意なき離脱」の選択肢が消えることは、この(2018~19)年末年始に不安定化していた市場に安心感を取り戻すことになるでしょう。

市場は過度な悲観にさらされていましたが、過度な悲観からの巻き戻しが今後、起こる可能性が高まっているのかもしれないです。

国旗を掲げながらブレグジットを支持するデモ隊

さらには、英国のTPP加入の可能性も高まっています。英国は、TPP参加を表明しています。英国のフォックス国際貿易相はロンドン市内で講演し、英国が欧州連合(EU)を離脱した後に環太平洋パートナーシップ協定(TPP)への参加を目指す意向を表明しました。

メイ首相はこれまで離脱後にEU以外の第三国との自由貿易協定(FTA)を締結する方針を示していましたがTPPは一国帯一国の交渉で決めるFTAではありません。TPPは貿易だけでなく投資や知的財産など多くの協定がすでに決まっていて加盟をすればTPPルールを守らなければならないです。

TPPの性質はFTAではなくEUに近いものです。FTAは相手国との貿易について自由に交渉できますがTPPはできないです。EUを離脱する英国がTPPに参加するというのは矛盾しているようにもみえます。

なぜ、EUを離脱する英国がTPPに参加しようとしているのでしょうか。それはEUとTPPは協定の性質が違うからです。

EUはEuropean Unionの略称であり、欧州連合のことです。2013年7月にクロアチアが加盟したことにより以下の28か国が欧州連合に加わっています。

IMFによると、2010年の欧州連合のGDPは16兆1068億ドル(約1300兆円)です。米国のGDPをやや上回っており、世界全体の約26%を占めています。

欧州連合には最高意思決定機関があります。全加盟国の政府の長と欧州委員会委員長、及び大統領にも相当するとされる常任議長による欧州理事会です。

欧州連合の市場は統合されています。外交・安全保障分野と司法・内務分野での枠組みが新たに設けられ、ユーロの導入によって通貨も統合されています。欧州議会の直接選挙が実施されたり、欧州連合基本権憲章が採択されています。

ただし、ブログ冒頭の高橋洋一の氏の記事にあるように、英国はこのユーロは用いていません。そのため英国独自で金融政策を行うことができます。

EU加入国(青)と加入する可能性がある国(緑)

第二次大戦後に急激に社会主義国家圏が拡大していきました。ヨーロッパの社会主義圏の拡大を防ぐためEUは資本主義経済圏の民主主義国家の連合を結成したのです。

1991年にソ連は崩壊し、強大な社会主義国家圏は消滅しました。EUを強固しなければならない根拠となっていた社会主義圏が消滅したためにEUの国家間の矛盾が表面化していきました。

政治は本質的にローカルであるグローバルではありません。国によって生活や経済の程度に差があります。GDPに差があるし国家予算にも差があります。どうしても政治的な対立は生じることになります。

ソ連が存在していた時は対立を我慢していたが、ソ連が崩壊すると対立にが表面化していったのです。この対立を調整するのがEUの課題となっていき、英国はEUを離脱を決意したのです。

英国のEU離脱と米国のトランプ大統領のアメリカファーストをきっかけに、米国や英国だけでなくヨーロッパの多くの国々で反グローバル化の動きが広がっているとマスコミや評論家が指摘しています。

政治はローカル=反グローバルであり、経済はグローバルです。政治と経済は密接に関係していますが、二つの本質的な性質の違いを区別しなければならないです。区別しないから反グローバルを安易に政治目的に使うようになってしまったのです。

格差や貧困が原因で国外に出た難民を受け入れるかどうかを決断するのは政治です。難民を受け入れるか否かを決めるのはそれぞれの国の経済力や国民性が左右するからです。それは政治であり、ローカルな問題なのです。

EUがソ連圏に対抗した政治優先の連合であるのに対して、TPP11は経済優先の連合です。それがEUとTPPの根本的な違いです。そもそも、EUはソ連が存在しなければ結成されなかったかもしれません。

1988年ソ連ではじめてミスコンが行われたときの写真

EUは社会主義国家と対峙した連合でしたから社会主義国家は参加できません。しかし、TPP11は違います。TPP11は社会主義国家であるベトナムが参加しています。このことからもEUとTPP11が性質の違う協定であることが分かります。TPP11は政治ではなく経済を中心とした協定なのです。

EUから離脱した英国がTPP11に参加するのはTPP11がEUのような政治協定ではなく経済協定だからです。

TPP11は政治的にはそれぞれの国が独立しています。EUで問題になっている難民受け入れはTPP11加盟国のそれぞれの国が自由に決めるのであってTPP11全体の問題にはなりません。

このように、TPP11は人類史上初めての新しい協定です。こういうと誇大な表現と思われるかもしれませんが、そうではありません。

EUも国際連合も政治を中心とした連合です。経済も問題にするが優先しているのは政治です。それに比べてTPP11は経済を中心にした連合です。このような連合は、過去にあってもよさそうですが、このような協定はありませんでした。

世界は第二次世界大戦までは戦争の連続であり、帝国主義の世界でした。戦後は議会制民主主義国家圏と社会主義国家圏の対立が続きました。まさに、世界の歴史は、政治対立の歴史であったのです。

ソ連が崩壊し、独裁国家も減り、議会制民主主義国家が増えていきました。政治対立、戦争が少なくなったアジア、環太平洋地域だからこそTPP11が誕生したのです。

英国がTPP参加を表明しましたが、TPPの正式名称は、環太平洋パートナーシップです。名称からすれば環太平洋の国ではない英国は参加できないことになります。しかし、英政府はTPPの参加条件に地理的な制約がないことを確認しています。

それに日本の茂木敏充経済再生担当相も、英国の参加が可能との見解を示しています。経済は政治と違い本質的にグローバルです。TPPには世界のどこからでも参加できるのです。

このTPP11実現をリードしてきたのが安倍政権です。経済政策を重視する安倍晋三首相は「保護主義からは何も生まれない」として、自由貿易体制の維持に取り組んでいます。それがTPP11の実現であり、欧州連合(EU)との経済連携協定(EPA)の署名です。

メイ首相はEUとの離脱交渉で、「EUの関税同盟と単一市場から英国を離脱させ人の移動の自由を終わらせる」、「モノに関しては自由貿易圏を創設する」などの条件を掲げています。これに対し、人、モノ、金、サービスの四つの移動の自由を基本理念に掲げるEUは、メイ政権の提示条件が妥協的であると批判し、交渉は膠着状態に陥っています。

しかし、EUの本音は別のところにあるようです。

実はEUは、域内2位の経済力と最大の軍事力を誇る英国の離脱と、英国に追随する他国の動きを警戒し、英国を牽制しているのです。その顕著な例が、メイ政権のモノの移動の自由に関する条件を逆手にとり、アイルランド国境管理問題を持ち出し、北アイルランドがEUとの関税同盟に残留せざるをえないよう仕向けています。

つまり、北アイルランドに経済的国境を作るという圧力をかけ英国の提示条件を拒絶しているのです。ちなみに、英国とEUは2017年12月、地続きであるアイルランドと英領北アイルランドの物理的な国境管理(税関、検問所)を離脱後も復活させないことで基本合意した。

これに対し、メイ首相はEUに「合意なき離脱」という脅しをかけ、自らの離脱計画案の再考をEU側に求めています。仮にメイ首相の案をEUが飲んでも、あるいは合意なき離脱となった場合でも、英国国会で批准されるかどうかは不透明で、メイ政権は厳しい舵取りを余儀なくされています。

もともと英国はEU加盟に積極的ではありませんでした。EUの前々身であるEECにはフランス主導であることを理由に加盟を拒否し、EU加盟時には共通通貨のユーロを使わなかったことなどの事例がそれを物語っています。

自国に対するプライドもあるし、EU経済圏に入ることのメリットも少ないと考えていたようです。ただ、ヨーロッパ全体が一つの経済圏としての機能を持ち始めたため貿易の面で加入せざるを得ない事情があったようです。

しかも、英国はEUの盟主であるのなら離脱はなかったと思われますが、英国がEUの大統領を輩出しているわけでもないし、フランス、ドイツなどにリーダーシップを握られていることが面白くなかったわけです。

英国がリーダーシップを取れなかった理由は国内経済の低迷にあります。英国は国家の伝統ばかりを後生大事に抱えていてイノベーションができていなかったことに起因します。

英国国内の一部には離脱以降、世界経済の中で英国が新たな立ち位置を築くことができるのではないかとの期待もあります。しかし、その一方で、メイ首相の構想ではEUの規制から逃れられず、世界各国と自由にFTAを結ぶことができなくなると危惧する意見が出るほど国論が混乱しています。

いずれにせよ英国が歴史的な変化の前に苦悩していることだけは間違いありません。

先日の英経済紙フィナンシャルの一面に「英国のTPP加盟を歓迎する」との安倍首相のインタビュー記事が掲載されました。内容は「日本は諸手を上げて英国のTPP加盟を歓迎する。英国は合意なきEUを回避するため妥協してほしい」「英国のEU離脱による、日本のビジネスを含むグローバル経済に対するネガティブなインパクトが最小化されることを心底願っている」というものでした。

「日本は諸手を上げて英国のTPP加盟を歓迎する」という安倍総理の
インタビューを掲載したフィナンシャルの記事を報道する日本のテレビより

実際、英国の窮状を救うことができるのは日本だけかもしれません。TPP交渉で米国の離脱後も粘り強く推進してきた日本が、英国をTPPの枠組みに入れることでEU離脱後の英国経済の破綻を防ぐことができるものと考えられます。

さらに、TPPのもう一つの本質的な機能は中国包囲網の形成にあります。

TPPへの英国の加盟は、海洋国家の日米英の連携が一層強まり、中国政府と中国海軍による違法行為の封じ込めに役立つものとなります。英国は、インド太平洋地域にも英領西インド諸島を領土として持ち、ヨーロッパでも英国の領海、領有は広く、軍事戦略上きわめて有効です。

英国のTPP加盟はEU離脱後の英国経済のマイナス面を補うだけでありません。日本は積極的に英国支援に向かうべきです。そうして、英国のEU離脱によるリーマンショック級の悪影響が出ることを未然に防ぎ、今後も日英同盟を強化していくべきです。

ただし、英国のEU離脱は、世界経済にリーマン・ショック級の影響を与える可能性があるのは事実であり、日本もそれに備えるべきです。米国が対中国冷戦を実行し、英国がEU離脱し、世界経済に悪影響を与えるかもしれない今日、わざわざ消費増税などすべきではありません。財務省は、このような世界情勢を理解できないのでしょうか。だとすれば、大虚け者(おおうつけもの=虚けとはもともと、からっぽという意味であり、転じて虚け者とは、ぼんやりとした人物や暗愚な人物、常識にはずれた人物をさす)と呼ぶ以外にありません。

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2017年6月16日金曜日

骨太方針から消えた「消費税」 財政再建は事実上終わっている、英政権は「緊縮病」で失敗―【私の論評】度々財政を間違える英国だが、日本はいつも間違えてばかりだった(゚д゚)!

骨太方針から消えた「消費税」 財政再建は事実上終わっている、英政権は「緊縮病」で失敗

「骨太の方針」の表紙

 政府が閣議決定した「骨太方針」から消費税の引き上げに関する言及が消えたと報じられている。

 昨年の「骨太2016」では、「『成長と分配の好循環』の実現に向け、引き続き、『経済再生なくして財政健全化なし』を基本とし、消費税率の10%への引き上げを2019年(平成31年)10月まで2年半延期するとともに、2020年度(平成32年度)の基礎的財政収支黒字化という財政健全化目標を堅持する」との記述があった。

 今回の「骨太2017」では、「『経済再生なくして財政健全化なし』との基本方針の下、引き続き、600兆円経済の実現と2020年度(平成32年度)の財政健全化目標の達成の双方の実現を目指す」とされ、消費税増税については書かれていない。

 もっとも、消費増税については、法律で予定されているものなので、政府としてその方針には変更はない。つまり、骨太方針に書かれていないといっても、新たな法律を制定しない限り、19年10月の10%への消費増税が実行されることになる。

 ただし、財政再建至上主義者にとっては、先日の本コラムで書いたように、財政目標でプライマリーバランス(基礎的財政収支)の重要性が当面なくなったことで、財政健全化の動きが大幅に後退すると心配しているかもしれない。

 ちなみに、「財政健全化」という言葉は、「骨太2016」では12回使われていたが、「骨太2017」では6回に減っている。これも彼らの懸念に拍車をかけていることだろう。

 実際のところは、債務残高対GDP(国内総生産)比とプライマリーバランスの間には密接な関係があり、債務残高比対GDP比を発散させないような経済運営が本来であるので、財政再建至上主義者の懸念は的外れである。

 これまで何度も書いてきたように、財政状況は、連結ベースの統合政府バランスシート(貸借対照表)でみるべきである。であれば、理論的には財政再建目標は、債務から資産を差し引いた「ネット債務残高対GDP」を低位に保つことが重要となる。

 現状において、ネット債務残高対GDPはほぼゼロであるので、そもそも財政を気にする必要がないというのが、理論的な帰結である。

 このような状況を安倍晋三首相はよく把握しているのだろう。ノーベル経済賞学者のジョセフ・スティグリッツ氏やクリストファー・シムズ氏を呼んで講演してもらっているのも、そうした意見を補強するという意味でうなずける。

 安倍首相はさらに、憲法改正で教育無償化を打ち出した。これに必要な財源はざっと見ても4兆~5兆円である。教育投資国債を抜きにして賄うことはまずできない。

 ネット債務残高対GDPはほぼゼロという事実からみれば、消費増税は必要なく、また投資のための国債を発行しても、財政状況を悪化させる要因にならない。

 財政再建至上主義者はこれらに反対だろうが、理論的根拠は乏しく、「緊縮病」を患っているようにみえる。英総選挙で、緊縮財政を指向したメイ政権は過半数を取れなかった。緊縮財政は政治的にも経済的にも失敗することを示した。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】度々財政を間違える英国だが、日本はいつも間違えてばかりだった(゚д゚)!

骨太の方針については、以下のリンクからご覧いただけます。


骨太の方針は、本来は「背骨(バックボーン)の方針」とするべきでしょう。背骨から生える各あばら骨という「政策」は、全てバックボーンの影響を受けます。

バックボーンの方針で「プライマリーバランス黒字化」が決定された場合、予算措置を伴う全ての政策が、「新たな支出をするならば、他の予算を削るか、もしくは増税する」という、狂った方針に従わざるをえないことになりかねません。

問題の「財政健全化目標」については、以下の通りとなっています。

『経済財政運営と改革の基本方針2017(略)基礎的財政収支(PB)を2020 年度(平成32 年度)までに黒字化し、同時に債務残高対GDP比の安定的な引下げを目指す。このため、「経済再生なくして財政健全化なし」との方針の下、デフレ脱却・経済再生、歳出改革、歳入改革という「3つの改革」を確実に進めていく必要がある。(後略)』

結局、2020年までのPB黒字化という狂った目標は、骨太の方針に残ってしまいました。何とか「債務残高対GDP比の安定的な引下げを目指す」を盛り込むことはできましたが、「基礎的財政収支(PB)を2020 年度(平成32 年度)までに黒字化」を削除することはできませんでした。大変、残念です。

PB目標が残ったことで、2017年の日本の再デフレ化の懸念を考えざるを得ない状況になってしまいました。

すでにして、GDPデフレータが対前期比▲0.5%と、デフレ化の方向に突き進んでいるにも関わらず、デフレギャップを埋める財政拡大は難しいでしょう。何しろ、PB目標がある限り、

「財政を追加的に拡大するならば、他の予算を削るか、増税」
 
という話になってしまいます。

ちなみに、経済がデフレ化すると、名目GDPが伸びにくくなります。実際、2017年1-3月期の名目GDPは、対前期比▲0.3%でした。

名目GDPの停滞は、既に2016年から始まっています。GDPデフレータも、2016年からマイナスが始まりました。

つまりは、日本経済は2016年から「再デフレ化」した可能性が濃厚なのです。まだ、推移をみてから判断する必要はありますが、それにしても、厳密にはデフレではなかったとしても、デフレすれすれという現実は変えようがありません。

経済がデフレ化し、名目GDPが伸びなくなると、税収が減ります。理由は、我々は所得から税金を支払っており、所得の合計がGDPになるためです。

そんなことは、あるはずがない! などと思う方々に、残念なお知らせがあります。
国の税収、プラス成長でも7年ぶり減 16年度   
国の2016年度の税収が7年ぶりに減収に転じ、政府の見積もりも2年連続で割り込む見通しだ。所得税収は7年ぶりの前年割れで、法人税収も伸び悩んだ。税収は今年1月時点で55.8兆円と見込んだが、さらに数千億円減るもよう。プラス成長でも税収が減った形で、安倍政権が経済運営の基本に掲げる「成長による税収増」の土台が揺らいでいる。(後略)
これは、現在の「プラス成長(=実質GDPの成長)」は、名目GDPが伸び悩む中、GDPデフレータというインフレ率がマイナスに落ち込んでいる結果を計算しているに過ぎないわけですから、こうなるのが当然のことです。

このような税収の減少は、財政再建至上主義者らの「このままでは財政破綻する! 早期のPB黒字化を!」という声を大きくします。

結果、我が国はデフレ脱却に必要な財政出動ができず、デフレが深刻化し、名目GDPが伸び悩み、税収が減るという悪循環に突っ込む可能性も高くなります。これは、結局のところ昨日のこのブログにも掲載したように、やはり8%増税の悪影響です。以下のグラフを見てもわかるように、消費性向が16年から急激に落ち込んでいます。


一方『骨太の方針』からは、消費税増税という文字は完璧に消えました。これは、安倍総理の増税はしないとの決意の表れともとれます。

これは、ブログ冒頭の記事にある高橋洋一氏が主張する統合政府ベースではすでに、政府の借金はないということからも、明らかです。借金をする必要のない政府が、増税をする必要性など全くありません。

上の記事でも、「英総選挙で、緊縮財政を指向したメイ政権は過半数を取れなかった。緊縮財政は政治的にも経済的にも失敗することを示した」とありますが、全くそのとおりです。

緊縮財政で足をすくわれた英国メイ首相
イギリスは良く財政政策を間違います。このブログでもかなり前に、増税の失敗を掲載したことがあります。これは、日本の8%増税の前に実施されたものですが、これは惨憺た大失敗でした。特に、若者雇用がかなり酷く悪化しました。その失敗を補うために、イングランド銀行(イギリスの中央銀行、日本の日銀にあたる)は大規模な金融緩和に踏み切りました。それでも回復までには、かなりの年月を要しました。それについてはこの記事の最後のほうの【関連記事】のところに掲載しますので、是非ご覧になって下さい。

さて、メイ首相は、前のキャメロン政権で治安対策の責任者である内相を務めました。当時の保守党は緊縮財政を進めるため、警察官を2万人削減。このことで、メイ首相を批判する声が出ています。労働党のコービン党首らは、メイ首相に辞任を求めています。

これに対し、メイ首相は6日の演説の中で、「選挙の数日前には、新たな政策を数多く発表するつもりはないが」と前置きした上で、「テロ行為で有罪判決を受けた人々の刑期を長くするべきだ」「当局が外国人のテロ容疑者を、自国に送り返すことをより容易にすべきだ」と述べ、移民の権利を手厚く保護する「人権法」を改正することで、さらなる対テロ対策を実施する方針を示しました。

 英タイムズ紙は13日、関係筋の話として、有権者による緊縮財政への忍耐が限界に達していることをメイ首相が認めたと報じました。

記事によるとジョンソン外相、デービス欧州連合(EU)離脱担当相や他の与党保守党議員らは、首相に対し、緊縮財政に対する国民のムードを首相は読み違えたと述べたといいます。

首相は前週の総選挙で単独過半数を取れず、北アイルランドのプロテスタント系民主統一党(DUP)との連立協議を開始しました。

このように、緊縮をすれば、経済が落ち込み国民の反発は必至です。緊縮、それも日本経済がデフレに再突入したか、しないかの現在の状況で緊縮をすれば、とんでもないことになるのはわかりきっています。GDPは伸びは更に落ち込み、マイナス成長になりデフレに逆戻りです。

緊縮は本当に高くつくということを日本の政治家は忘れてしまったようです。緊縮財政を続けてきた過去の日本の政権は、全部短期で終わっています。例外はありません。財政再建至上主義の政治家はまたこれを繰り返したいのでしょうか。

どうやらそのようです。安倍晋三政権の経済政策「アベノミクス」に否定的な自民党有志による「財政・金融・社会保障制度に関する勉強会」(野田毅会長)が15日、2回目の会合を国会内担当で開き、石破茂前地方創生相ら議員約30人が出席しました。講師の早川英男元日銀理事は「デフレ脱却による高成長は幻想だ」とアベノミクスを批判し、石破氏は記者団に「原油安と円安に頼る経済政策であってはならない」と述べました。

石破茂前地方創生相
どうやら、彼らは財政件至上主義で増税などすれば、国民をデフレスパイラルのどん底に落とし、塗炭の苦しみを与えるこになり、そうなれば、国民の反発を招きそもそも政権を維持することすら困難になりかねないということに気づいていないようです。まあ、私達国民としては、どのような政権になったにしても、まずは経済がまともであれば良いということなのですが、では野党はどうなのかといえば、経済に関してはほとんどが落第生です。それ以前に、森友・加計問題で、騒ぎ回る馬鹿集団です。問題外です。

そうなると、やはり経済を考えれば、今は安倍政権を支持するという選択肢しかありません。本当に困ったものです。


上には、英国の例を出しましたが、考えてみれば、日本は英国よりも財政政策を間違えてばかりです。こんなことですから、現在に至っても未だ、GDPの伸びは英国はおろか、韓国すら上回っていない状況です。馬鹿な政治家どもに言いたいです、いい加減に気づけよと・・・・!

【関連記事】

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2016年6月25日土曜日

「英国に続け」と気勢=各地で反EU投票の動き―【私の論評】英国のEU離脱は、EU崩壊の序曲(゚д゚)!

「英国に続け」と気勢=各地で反EU投票の動き

オランダの極右・自由党のウィルダース党首=2015年6月、ブリュッセル
    英国が国民投票で欧州連合(EU)からの離脱を決めたショックは24日、瞬く間に欧州全土に広がった。戦後の欧州統合が台無しになりかねない事態に身構えるEU当局者らとは対照的に、「反EU」「反移民」をスローガンに掲げる各地の極右・新興政党は「英国に続け」と気勢を上げている。

  「EUのエリートたちは敗北し、新たなスタートを切る時が来た」。オランダの極右・自由党のウィルダース党首は英国民投票の結果を手放しで歓迎し、次は自分たちの番だと訴えた。

オランダは1952年、フランスや西独とEUの前身に当たる欧州石炭鉄鋼共同体(ECSC)を設立した「原加盟国」。しかし、急速な統合強化には反対の立場で、英国と良好な関係を保ってきた。自由党は来春の総選挙に向けて支持率トップを走る。

今月公表された世論調査結果によると、「オランダでも国民投票でEU加盟の是非を問いたい」との回答は54%に達した。ウィルダース党首は声明で「われわれは国、カネ、国境、移民政策を自らの手で管理する必要がある」と強調した。

反EUのうねりは北欧でも脈打っている。デンマークやスウェーデンの極右政党は、EU残留か離脱かを問う英国同様の国民投票を要求。欧州債務危機でドイツとともに緊縮財政路線を張ったフィンランドでは、ユーロ圏からの離脱を問う国民投票の実施を求める声が出ている。

イタリアの新興政党「五つ星運動」も、ユーロ離脱の国民投票の実施を目指している。19日のローマ市長選では、同党候補が当選を果たした。

昨年7月、財政危機のギリシャはEUとの金融支援協議のさなか、国民投票を突如実施。EUが要求する財政緊縮策に「ノー」を突き付けた。EUに対する国民の不満が爆発した点は英国民投票と同じだが、ギリシャ国民の大半はEUやユーロ圏からの離脱までは望まなかった。結局、チプラス首相は民意に逆らって緊縮策を受け入れ、国家破綻を免れた。

ロイター通信によると、チプラス首相は英国がEU離脱を選択したことは欧州にとって「マイナス」と指摘。EU加盟各国は「より良い欧州」の実現へ協力していく必要があると語った。

金融危機、ギリシャ危機、ウクライナ危機、難民危機と何年もほぼ途切れなく非常事態が続く欧州。EUは、存在意義そのものが問われる重大な試練に直面している。

【私の論評】英国のEU離脱は、EU崩壊の序曲(゚д゚)!

私は、英国のEU離脱は、EU崩壊の最初の序曲になるのではないかと思います。上の記事のオランダの極右・自由党のウィルダース党首の発言などその兆候であると思います。

私自身は、EUは元々無理な組織であり、いずれ崩壊するものと思っていました。それについてはこのブログでも随分前から掲載していました。その記事の典型的なもののリンクを以下に掲載します。
第2四半期ユーロ圏GDP、初のマイナス成長-黄昏EUの始まりか?
 詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下にEUに関する部分を一部転載します。
黄昏EUの始まりか?
さて、EUに関しては、もともと無理が相当ありました。私は、いずれEUは没落していくと思います。その理由は以前のブログにも掲載したことがありますが、要点は以下のようなものです

1.各国の経済レベルなどが異なりすぎる
人為的にたとえ一つの経済圏を作ったとしても、それを構成している各国の経済レベルがあまりにも違います。少し考えれば判ることですが、ポルトガルとスゥエーデンの経済はかなり異なります。ポルトガルの経済は未だ労働集約的ですが、イギリス、ドイツ、イタリアなどの先進国では資本集約的な経済になっています。

今回のスペインや、イタリアの景気減速は、土地バブルの崩壊によるところが大きいですが、ドイツでは土地バブルの上昇はなく、輸出の不振が大きく響いてるなど、同じ不振といっても原因がまちまちです。

そのため、EU圏内で、不振対策をしようということになると、ごく標準的なものにならざるを得ず、一旦不況に陥れば、回復するまで結構時間がかかるものと思います。

EUのように、ヨーロッパ全体が団結して、大きな影響力を持とうという試みは、大昔からありました。その起源はローマ帝国にまで遡ります。ローマ帝国が栄えていたころは、現在のイギリス、スペイン、フランス、ドイツなど現代のEU圏にある経済大国がすべてローマ帝国の版図に編入されていました。

だから、ヨーロッパの人たちには、大昔からローマ帝国への憧憬の念や、憧れの念がありました。そのため、ローマ帝国滅亡より、機会があれば一致団結しようとしました。これは、古くは神聖ローマ帝国にまで遡ります。


その後いろいろ、試みられましたが、結局は成立しませんでした。では、かつてのローマ帝国のように一国による他国への侵略による統一も考えられましたが、ナポレオンのヨーロッパ征服、ヒトラーのナチスドイツによるヨーロッパ征服なども、ことごとく失敗しました。

しかし、これらの試みはすべて失敗して水泡に帰しました。おそらく、これからも無理だと思います。だから、私は、EUも結局は成功しないと思います。長い間には必ず失敗し没落していくものと思います。

2.地球温暖化二酸化炭素説に呪縛されている
最近では、EUは、いわゆる「地球温暖化二酸化炭素説」という、科学というよりは宗教の教義のようなものに呪縛されています。地球温暖化二酸化炭素説は、全くの間近いであり、それを信奉して、道徳律などを説くうちはいいのですが、それを現実世界の市場や産業に適用すれば、全くの徒労に終わります。

確かに、地球温暖化二酸化炭素説などは全く別にして、化石燃料・森林資源などの限りある炭素を含む資源を大事にしようということには意義があります。しかし、度を過ぎれば、単なる中世の魔女狩りのようになってしまいます。

北海道、瀬棚町の風車のある風景。北海道新幹線を風力発電で走らせようとしたら一体何基の風車が必要になるのだろうか?

たとえば、エネルギー効率の悪い太陽光発電や、風力発電がco2を排出しないクリーンエネルギーだからといって、それだけで、新幹線を走らせることができますか?もし、無理に走らせようとしたらな、一体どれだけの太陽光発電パネルや、風車が必要になると思いますか。太陽光パネルを作るには、化学薬品が必要になりますが、それを大量につくると、かえって環境汚染につながるかもしれません。それに風車の場合、遠隔地に設置するなら良いですが、民家の近くに設置すると、いわゆる低音公害が発生します。風車は、あまり音を立てないとおもわれがちですが、人間の耳にはほとんど聞こえないような低い音波を発生するので人体に害があるといわれいます。

だから、太陽光や風車はあくまで補完的な役割を果たすに過ぎないと思います。基幹部分は未だ化石燃料に頼り、ただし、なるべく省エネをして無駄遣いをしないようにして、少しずつ代替エネルギーに変えていくというのがまともなやり方だと思います。それに、CO2を排出しないからといって、原子力発電にすべて切り替えていったらどうなりますか?放射能漏れなどのリスクがかなり高くなってしまいます。いったん事故が発生したら、すべての産業活動が止まってしまうというのではとんでもないことになります。やはり、今は化石燃料などに頼りつつ、複数の代替エネルギーも実験的に使いつつ、次への展開を図ることが穏当だと思います。

EUでは、排出権取引など推進して、CO2を次世代の通過にしようなどという試みも熱心に行っています。しかし、これとて、実際どうなるのか?排出権の取引をしたとしても、実質上はさほど効果は得られなと思います。それよりも、何よりも、この取引の根本となっている地球温暖化二酸化炭素説が間違いなのですから、いくらCO2を削減したとしても、単なる気休めにしかならず、実効的な効果は何もうみだしません。ドイツなどでは、巨大なCO2貯留施設など設立していますが、これなど、全くの徒労です。実際昨年は、EUでは、CO2削減はできませんでした。これについて、いろいろ理由をつけていますが、私は3年後、5年後になっても削減できないと思います。でも、そうなれば、おそらく、何らかの方法で、無理やり数字あわせなどやることになると思います。

宗教裁判などのあった、中世ヨーロッパでは、なかなか産業などが発展せず、ルネッサンス以降に発展していったという歴史があります。以上に述べたEUのおかしな行動は、これと同じことです。ヨーロッパは何か間違えています。EUを経済共同体ではなく、教育期間、人的資本を速やかに動かすための機関として、EU内の教育レベルがある一定以上になって、しかも人的資本の流動がかなり高くなったときにはじめて経済統合するなどのことをする、さらに地球温暖化二酸化炭素説の呪縛から逃れることになれば、話は違ってきます。しかし、現状みているかぎりではそのような動きは微塵もみられません。

上記2点より、EUは、いまのままでは、いずれ没落するのは明らかです。今回のユーロ圏GDP初のマイナス成長は、黄昏EUの前触れかもしれません。
この記事は、EUが統合依頼初めて、経済成長がマイナスになったときのものです。

この記事にも掲載したとおり、EUの各国の経済、文化、伝統、国柄はことごとく個々にあまりにも違い過ぎます。

それに過去のローマ帝国は、強力なローマ軍団による他国に抜きん出た軍事力があったからこそあれだけ版図を広げて、維持することができたのであり、現代では過去のローマ帝国の再現など単なる幻想に過ぎません。

それと、 現在のEUは過去のローマ帝国とは違い、意思決定にあまりにも時間がかかりすぎます。ローマ帝国の意思決定は、ローマ帝国の元老院(皇帝による場合もあった)によって行われました。しかし、現在のEUは欧州会議によるものです。元々は別の国だった数々の国の代表者からなる会議を運営するのは至難の技です。

ローマ帝国の重装歩兵
さらに、経済対策も、EUの経済対策は、必ずしも個々の国にとって良いことばかりではありません。しかし、EU全体の経済という考え方で行うため、この経済対策では経済が良くならない国には、不満が鬱積することになります。

それと、現在のEUは地球温暖化二酸化炭素説に呪縛されています。私自身は、地球温暖化二酸化炭素説に関しては現在でもかなり懐疑的です。世界的にみても、ドイツをはじめEU諸国はどちらかというと、他地域に比較して地球温暖化二酸化炭素説に立脚した長期政策を多く実行しています。私自身は、たとえ地球温暖化二酸化炭素説が正しかったにしても、現在EUで行われている、温暖化防止策が本当に的を射たものなのか非常に疑問です。

このように排出されたCO2を何とかするとか、風力、太陽光発電などというカルト的なことをするくらいなら、日本の省エネ技術のように、元々の化石燃料をあまり使用しない機器を製造したり、システムを開発するほうがよほど理にかなっていると思います。これによって、明らかに石油などの化石燃料を節約することができます。

それに現在のように、原油価格が低落すると、ほとんどの代替燃料はほとんどペイしないというのが実情でしょう。そんなときに、排出されたCO2に拘泥していては、経済にも悪影響が出るし、有能な人材を無駄なことに使ってしまうという危険をおかすことにもなってしまいます。

さらに、ドラッカー氏は国民国家について以下のように語っています。
産業革命の初期以来、経済的相互依存は政治的情熱を凌駕するだろうと主張され続けてきた。これを最初に語ったのはがカントだった。南北戦争の直前、1860年の穏健派も、サムター砦で最初に銃声が轟くまでそう考えていた。オーストラリア=ハンガリー帝国の自由主義者たちも、最後の瞬間まで、分裂するには経済的な結びつきが強すぎると考えていた。明らかに、ミハイル・ゴルバチョフも同じように考えていた。 
しかし、この200年を見る限り、政治的な情熱と国民国家が、経済的な合理性と衝突したときには政治的な情熱と国民国家のほうが勝利してきている。
1997年、「フォーリン・アフェアーズ」 

これは現在でもそのままあてはまっています。経済的な合理性よりも、政治的な情熱と国民国家のほうが勝利するということです。まさに、イギリスの政治的な情熱と国民国家のほうが、EUという経済相互依存に勝ったわけです。

今後、国民国家への希求はますます強まり、いずれEUは崩壊することになります。国民国家を構成する、歴史、文化、伝統の重みは経済合理性よりも優るのです。そうして、最終的には経済相互依存ばかり強調するグローバリズムは破綻します。

このドラッカーの予言は、サブプライム問題に端を発する金融経済の崩壊とオバマ政権の社会保障への志向をみれば、その予言は見事に的中したといえます。極端にグローバル化に邁進してきた韓国の現状をみてもわかります。結局国民国家の経済をあまりにも過小に扱い大失敗しています。中国も同じです。現在でもまともな世界の日本などの先進国は、GDPの6割以上が国民の個人消費が占めています。アメリカにいたっては7割です。
結局、中韓のようにグローバル化を進めても、内需が低迷すれば、経済も低迷するのです。ちなみに、中国の個人消費はGDPの35%程度です。韓国は、50%です。

今後EUでも、国民国家への回帰を求める声が広まり、いずれEUは現在よりももっとゆるい連合体のようになり、国民国家が復活することになるでしょう。

今回の英国のEU離脱はその予兆となるものだと思います。

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第2四半期ユーロ圏GDP、初のマイナス成長-黄昏EUの始まりか?





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