2017年5月12日金曜日

2018年末ダブル選シナリオも… 安倍首相の改憲発言、財政条項は意図的に排除か ―【私の論評】安倍首相による憲法改正は、まともな憲法論議の最初の偉大な一里塚(゚д゚)!

2018年末ダブル選シナリオも… 安倍首相の改憲発言、財政条項は意図的に排除か 

憲法改正を訴える会合に寄せられた安倍首相
のビデオメッセージ=3日、東京都千代田区
 安倍晋三首相は「2020年の憲法改正の施行」を打ち出した。改憲(施行)のスケジュールが明かされたのは画期的なことだ。

 16年7月の参院選で、衆参ともに改憲勢力が3分の2超になっていることを考えると、今の時期に安倍首相が改憲スケジュールを示したということは、18年12月までの衆院の任期で、解散と衆院選より前に憲法改正の発議をする可能性が高いということだろう。

 改憲スケジュールの中で国会発議の可能性を考えると、(1)17年秋の臨時国会(2)18年の通常国会(3)18年秋の臨時国会-と3回ある。

 国会発議の後に国民投票が実施されるが、憲法改正では発議から180日以内というのが常識になっている。国民投票と衆院選が同日の方が与党有利になるだろうから、18年12月の衆院任期前に日取りを選べる(1)17年秋の臨時国会または(2)18年の通常国会での発議の可能性が高いだろう。

 18年12月は、衆院任期終了とともに天皇陛下のご譲位も予定されている。このときに、憲法改正の国民投票と衆院選のダブルをぶつけてくるというのが、今の段階での第1シナリオではないだろうか。となると、(2)18年の通常国会後半での発議が第1候補になる。

 もちろん、情勢次第では、衆院選の後に改憲スケジュールをこなすこともありえる。この場合には、今年中に解散と衆院選(まさに改憲選挙)を行い、(1)17年秋の臨時国会で発議という手順になるのが第2シナリオだろう。

 改憲の内容について安倍首相は、9条に自衛隊に関する条文を追加する意向を示している。「自衛隊は合憲」とする民進党と、「違憲」とする共産党は股裂き状態になり、選挙協力に支障が出ないのか、政治的には興味深い。

 安倍首相は教育無償化も改正の項目として例示した。民進党と共産党は、ともに「中身としては賛成だが、憲法改正には反対」という国民には分かりにくい行動になる。

 「憲法改正なしでも教育無償化は可能だ」と主張しても、「時の政権の意向に左右されずにしっかり国の基本となるから、憲法改正した方がいい」と反論されてしまうだろう。そうなると、民進党と共産党は苦しい。

 しかも、「自衛隊合憲」と「教育無償化」で改憲勢力は一致できる。国政選挙を考えると、「自民党、公明党、日本維新の会」対「民進党、共産党」という対立図式となり、「自公維」に有利に働くだろう。

 ちなみに「財政規律条項」については、民進党の蓮舫代表や自民党の一部が必要だと主張しており、両党で差別化できない。そもそも財政規律条項を憲法改正で入れると、緊縮財政の傾向がさらに強まり、日本経済にとっては害悪である。

 この点を考慮し、安倍首相は自衛隊合憲と教育無償化を改正事項に掲げることで、財政規律条項を憲法改正の俎上から意図的に落としたのではないか。

 なお、国民投票法では、発議は個別発議なので、憲法全体を示す必要はない。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】安倍首相による憲法改正は、まともな憲法論議の最初の偉大な一里塚(゚д゚)!

上の高橋洋一氏の記事には掲載されていませんでしたが、安倍首相自身にとって非常に重要なのはやはり、自民党総裁3選です。2期6年の任期が切れる2018年9月には総裁選が実施されるのですが、3月5日の自民党定期党大会で総裁任期が「連続3期9年」に延長されることを受けて、首相が出馬すれば3選は確実というのが現時点での常識ともいえると思います。
総裁任期延長を伝えたAbemaTV
そうなれば首相にとって第1次と合わせた「9年8か月の史上最長政権」という金字塔も現実味を帯びることになります。その場合の首相の任期満了は2021年9月で、次回も含めて2回以上の解散断行のチャンスが出てくることにもなる。

そうして、安倍首相にとって遠いゴールを見据えての解散戦略の中核となるのは「在任中に成し遂げたい」と明言した憲法改正の実現です。昨年7月の参院選での与党圧勝でいわゆる「改憲勢力」が衆参両院で3分の2を超え、数の上では衆参両院での憲法改正発議が可能な状況となりましたた。

このため、首相は衆参両院の憲法審査会での改憲条項の早期絞り込みに強い期待を表明し、二階幹事長も「今国会での発議」にまで言及していました。

ただ、昨年秋にスタートした憲法審査会での各党協議は、憲法問題も絡む天皇陛下の「生前退位」をめぐる与野党協議が先行しているため、改正が必要な条文などの詰めの協議は秋の臨時国会以降になると思われます。

こうなると、秋の臨時国会で与野党協議が進み、2018年の通常国会の早い段階で憲法改正の発議にこぎつけ、夏に改憲国民投票を実施するのがベストと考えられます。

7月2日の都議選を理由に通常国会の大幅延長は想定されていないため、政府・与党は9月末か10月初めには臨時国会を召集する考えのようです。その場合、首相が臨時国会での解散断行に「色気」を示せば、与野党の改憲協議は停滞し、18年春の国会による改憲発議も絶望的となります。

しかも、自民党の全国情勢調査などでは「次回衆院選では自民党が30~50議席減」(自民選対)との予測もあり、解散断行によって衆院の改憲勢力は3分の2を割り込み、早期改憲発議自体が困難になる可能性もあります。となれば、首相が今秋もしくは年末解散を見送って、「衆参3分の2」を維持したまま来夏の改憲国民投票に合わせての解散・衆院選という「ダブル選」日程が"本命"として浮上してくるのではないかと考えられます。

首相は1月5日夕の時事通信グループの新年互礼会の挨拶で解散について「今年は全く考えていないとはっきり申し上げておきたい」と発言しました。居合わせた二階幹事長や山口那津男公明党代表ら政府与党幹部の表情は変わらなかったのですが、同夜に首相周辺が「首相から『今年ではなく、今月の言い間違いだった』と聞いた」と解説したことで新聞各紙は「首相、年内解散を否定」とは報道せず、「首相が言い間違い」とする囲み記事でお茶を濁していました。

時事通信グループの新年互礼会で挨拶する安倍首相
ただ、永田町では「解散時期について首相が言い間違うはずがない。思わず本音が漏れただけ。軌道修正は自民党議員が安心して選挙活動をなまけないようにするため」(自民長老)と解説する向きが多いようです。

政府・与党内には来年の解散について「追い込まれ解散になりかねない」との危惧もあります。しかし、内閣支持率が6割前後をキープし、自民党支持率も4割前後という状況が続けば、任期満了が迫っても安倍政権が追い込まれることはないのも事実です。もちろんトランプ政権の暴走やアベノミクスの失速といった政局運営の不安要素は少なくないのですが、"安倍1強"が続いていれば、あえて解散せずに過去1回しかない任期満了選挙も有力な選択肢といえます。

やはり、来夏の改憲国民投票に合わせての解散・衆院選という「ダブル選」日程が"本命"ということになりそうです。

いずれにせよ、ブログ冒頭の高橋洋一氏の記事では「自衛隊合憲と教育無償化を改正事項に掲げることで、財政規律条項を憲法改正の俎上から意図的に落としたのではないか」としていますこれについては、現状を考えた場合緊急を要するものであると思います。

先日はいわゆる一部保守層による無責任な憲法改正論議について批判しました。その記事のリンクを以下に掲載します。
【参院予算委】安倍晋三首相が民進党に改憲案提出を要求 蓮舫代表は答えず… 首相批判に終始―【私の論評】土台が狂った日本国憲法典の字面を変えてもまともな憲法はできない(゚д゚)!

詳細は、この記事を読んでいただくものとして、この記事では、憲法改正はGHQによってわずか1週間程度で草案された日本国憲法はそもそも土台が狂っており、日本国憲法の字面を変えるだけでは、まともな憲法はできないことを主張しました。

そうして、まともな憲法をつくるなら一度帝国憲法に立ち返ってそこから、新たな憲法をつくるということをしなければ、まともな憲法など永遠にできないと主張しました。

以下に日本国憲法と帝国憲法の比較を示した表を掲載します。

大日本帝国憲法と日本国憲法の相違点
以上の表は、第日本国帝国憲法について若干の間違いはありますが、それにしても、この表からですら、そもそも日本国憲法は日本人のために作られたものではないことがはっきりわかります。

さらに、大日本国帝国憲法制定時の世界水準で考えると、大日本帝国憲法は世界の他の先進国と比較して、かなり民主的でありあらゆる点で斬新で進んだものであったことは確かです。

ただし、制定された時代は日本国憲法より遥かに古く、現状には即していない部分も多々あります。しかし、それでも日本という国ができときの経緯やその後培われた日本国の国柄を反映したものです。日本国憲法にはそのような内容は皆無です。

だからこそ、本来の憲法論議をしようとした場合、日本国憲法の条文の字面を変えただけではまともな憲法にはならないのです。

しかし、まともな憲法論議をするということになれば、少なくとも5年〜10年の時が必要です。そうなると、緊急を要する事柄に対しては、対応できないということも十分考えられます。

大日本帝国憲法制定の中心となった伊藤博文公
たとえば、自衛隊がそうです。自衛隊がすでに存在して、自衛隊員の方々が、場合によっては命の危険にさらされながら、我が国、我が国民を守ろうとしているときに、自衛隊は違憲だとか、法律違反ということにでもなれば、これこそ自衛隊員の方々に失礼なことであるし、自衛隊の方々の士気をくじくことになります。

そうして、教育の無償化も最近の日本の若者の姿をみれば、緊急を要する課題です。現在の若い世代は、将来の日本を担うわけですが、その若い世代がまともな教育も受けられないということにでもなれば、日本の将来は危ういです。

だから、このような緊急を要する、課題を克服するためには、日本国憲法典の字面を部分的変えるということもやむを得ないところがあります。

しかし、かつて伊藤博文が中心として10年もの年月をかけて、日本の国柄などを反映した憲法を草案しその後世界の伍することができたように、これからの日本の運命を左右する新たな憲法も、そのくらいの時間と手間が必要になるのはいうまでもありません。

安倍首相はまずは日本国憲法の部分改正をした上で、残り全任期をまともな憲法論議が日本でできるように雰囲気を醸成し、それだけではなく将来日本国憲法は完璧に葬り去り、新たな日本人による日本人のための憲法づくりができるように努力していただきたいものと思います。

戦後70年にもわたって、日本国憲法典の一字一句も変えることすらできなかったわけですから、憲法典に手が加えられたとしたら、それはそれで画期的なことです。

安倍首相による憲法改正は、まともな憲法論議の始まりに過ぎないのです。これを契機にいずれまともな憲法を制定するための、偉大な一里塚とすべきなのです。

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2017年5月11日木曜日

小泉進次郎が「こども保険」にこだわるホントの理由はアレしかない―【私の論評】経済における清貧思想が生み出した緊縮脳こそが社会の害悪(゚д゚)!

小泉進次郎が「こども保険」にこだわるホントの理由はアレしかない

田中秀臣(上武大学ビジネス情報学部教授)

毎年、3月11日になると、2011年3月にどんなことが起きたのか、当時の記録が掲載されている自分のブログを見て思い出すことがある。もちろん東日本大震災の悲惨な被害、そして失われた多くの命、さらには「人間的価値の毀損(きそん)」という事態の前では、いまだ復興への道のりが遠いことに思いを強くしている。だが、今日書きたいのは、当時の「非人道的」ともいえる動きである。

2011年6月、党首討論で発言する自民党の谷垣禎一総裁(左)と、菅直人首相
 それは2011年3月13日、当時の民主党政権の菅直人首相と自民党の谷垣禎一総裁の会談において、復興政策の一番手として増税政策があげられたことだ。その時点では、被害の実態も把握できず、復興自体よりも人命救助に努力を傾注すべきときだった。もちろん福島第二原発の状況は予断を一切許さない緊迫したものであった。

 さらにこの増税政策は、後に設置された政府の「復興構想会議」などでも最初の具体的提案として、議長や委員から提起されている。実際に復興政策として何を行うかさえもはっきりしない段階において、である。

 この復興構想会議では、事実上、後に「復興特別税」となる増税構想だけが具体的に決まったといっていい。当時、複数の復興構想会議の委員に会ったが、いまでも印象に残るのは、「僕らは経済のことはわからないから」という発言だった。経済のことを理解していない人たちが、なぜか増税だけを最優先にかつ具体的に決めたというのはどういったことなんだろうか。

 さらに時間が経過していくにつれてわかったことだが、この復興特別税での当時の与野党の連携は、民主党・自民党・公明党による「社会保障と税の一体改革」、つまりは今日の消費税増税のための「政治的架け橋」になっていたことだ。

 つまりは、大震災で救命対策が必要とされる中、消費増税にむけた動きが震災後わずか2日後には本格化していたことになる。つまりは震災を人質にしたかのような増税シフトである。これが冒頭で書いた「非人道的な動き」の内実である。

 実際、民主党政権はその政治公約(マニフェスト)の中には、消費増税のことは一切書かれていなかった。だが、この震災以降の増税シフトが本格化する中で、当時の野田佳彦首相(民主党、現在の民進党幹事長)は、自民党と公明党とともに消費増税を決定した。日本では社会と経済の低迷と混乱が続いていたにもかかわらず、ともかく消費増税だけは異様ともいえるスピードと与野党の連携で決まったのである。この消費増税は後に法制化され、第2次安倍政権のもと、日本経済を再び引きずり下ろす役割を果たした。その意味でも本当に「非人道的」であった。

 さてこの動きと類似した消費増税シフトをいまの政治の世界でも見ることができる。自民党の小泉進次郎議員が主導する「2020年以降の経済財政構想小委員会」が発表した、いわゆる「こども保険」だ。現在の社会保険料に定率の増加分をのせて、それで教育の無償化を狙うスキームである。「こども保険」と呼ばれているが、実体はただの「こども増税」である。以下でも詐称を控えるためにも、「こども保険」ではなく、正しく「こども増税」と表記する。

自民党の小泉進次郎衆院議員
 小泉議員らの主張によれば、高齢者に偏重する社会保障体系を、若年層向けに正す効果があるという。この一見するとあらがうことが難しいようなスローガンではある。だが、これがくせ者であることは、冒頭のエピソードを読まれた読者はピンとくるはずだ。

 消費増税シフトは、そもそも震災復興を契機に仕込まれ、そして社会保障の充実という名目で選挙公約を無視してまで導入された。この経緯を踏まえると、小泉議員らの「こども増税」は、消費税増税シフトを狙う政治勢力の思惑ではないか、と推察することは可能だろう。

 もちろん「こども増税」自体が消費増税ではない。「こども増税」は、消費増税をより実現しやすくするための、政治勢力の結集に使われる可能性があるのだ。小泉議員は国民の人気が高い。いわば「ポスト安倍」候補の一人であろう。

 現在の安倍政権は、首相の決断によって過去2回消費増税が先送りされた。さまざまな情報を総合すると、安倍首相の財務省への懐疑心はいまも根深いとみられる。なぜなら財務省は2013年の消費増税の決定時期において、「消費増税は経済に悪影響はない。むしろ将来不安が解消されて景気は上向く」と説明していたからだ。もちろんそのようなトンデモ経済論は見事に外れた。日本経済がいま一段の安定経路に入れないのは、この消費増税の悪影響である、と首相は固く信じているようだ。そのための二度の消費増税延期である。

 このような首相の決断は、財務省を中心とする消費増税派からすれば脅威に思えるだろう。今後の消費増税は本当に実施されるのか、また10%引き上げ後も財務省が現段階で狙っていると噂される15%以上への引き上げの道筋が早期にめどがつくのかどうか、彼らは不安であろう。

 ある意味で、ポスト安倍の有力候補としての力の結集、または現段階で安倍首相を与党の中で牽制(けんせい)する「消費増税勢力」が誕生した方が得策である、と消費増税派は踏んでいるのかもしれない。もちろん「こども増税は、消費増税を確実にするための前ふりですよね」と、小泉議員らにいっても即座に否定するだろう。だが、同時に思い出されるのは、数年前に復興構想会議のメンバーに「この増税路線は消費増税路線の一環ではないか」とただしたとき、「そんなことはない」と一笑にふされたことだ。今回はだまされたくはないものである。

【私の論評】経済における清貧思想が生み出した緊縮脳こそが社会の害悪(゚д゚)!

上の記事、簡単に言ってしまうと、小泉進次郎議員は大増税と緊縮財政で財政再建すると、まだ若いのに老害議員と同じ事を言っているということです。

この小泉進次郎氏はたびたびこのようなことを提言しています。実際昨年の4月にも、高齢者に偏った社会保障の見直しを目指して「65歳からは高齢者はもうやめよう」などとする提言を発表しました。

記者会見で小泉進次郎氏は以下のような発言をしていました。

「今、労働力が減る減ると言われている。このままだったら2045年には52%にまで減少するが、仮に18歳から74歳という年齢幅を、私の中ではより今の社会にフィットしている(と考えるが)、生産年齢人口として見てみると、意外に平気じゃないか、景色が違うぞと」

「65歳が高齢者の時代ではない。15歳から64歳までの生産年齢人口労働力、現役世代だという定義も 100年時代ではこのままではいかない。国の形をかえるという発想につながる」

「“65歳からは高齢者”はもうやめよう」「現役世代の定義そのものから変えていく」、そして、「それは働き方、生き方、教育の位置づけ、そして社会保障を見直すことにつながる」などと訴えています。提言のタイトルは、「レールからの解放」となっていました。


この発言そのものは、さほど悪いとは思わないのです。実際米国では州によっては定年制がないところもあります。定年がないということは、日本では考えられないことでしょうが、実際定年制が廃止になっている州も米国にはかなりあります。

そのような州では、人を雇用する際に年齢を理由に採用しないとか、年齢を理由として人を解雇することはできません。高齢者を解雇する場合でも、年齢ではなく他の理由がないと解雇できません。多くの場合、定年は被用者自らが決めます。要するに、自分が辞めたいときに辞めるということです。

かなり前からそうなっているのですが、結局社会保障費などの財源が不足することから、そのようなことにならざるを得ないということもあります。

そうして、経済学の大家ドラッカー氏も以下のように語っています。
高年者が働くのは、怠けているよりも働きたいからである。仲間が欲しいからであり、依存したくないからである。これらの欲求が、経済的な理由と同じように、あるいはそれ以上に、彼らの労働力市場への参入を促している。(『変貌する経営者の世界』)
96歳を迎える直前まで活躍していたドラッカーにしてみれば、65歳の定年退職が間違っていることは当然だったのかもしれません。

定年が65歳に定められたのは、ビスマルク時代のドイツにおいてです。これが米国に導入されたのが第一次世界大戦時で、今日の平均寿命と高年齢者の健康状態から計算すれば、当時の65歳は今日の75歳に相当します。

ドラッカーは、65歳定年は、元気な人たちをゴミ箱へ捨てているようなものだといいます。なぜななら、現在では昔と違い、多くの人の仕事が肉体労働ではなく知識労働に変わっているからです。一昔前の肉体労働者なら、55歳も過ぎれば、もう働きたいと思うのが普通でした。しかし、知識労働者は違います。彼らの反撃は当然です。しかも、65歳定年は、年金制度にとっても耐えがたい負担の原因となっています。

これも踏まえて、ドラッカー氏は定年の延長は当然であるとしたのです。実際ドラッカー氏がこのような主張してから間もなく、米国などでは定年をなくしたり延長するようになりました。

しかも彼ら高年齢者は、自らの主張を通すだけのパワーを持ちつつあります。ドラッカーは、この高年齢パワーを「パーマネント・マジョリティ」と呼びました。先進国では、彼らの人口は増える一方であり、選挙での投票率も高いです。

定年延長ないし定年制廃止は、政治的にも、経済的にも、不可避です。いまや、年齢による強制退職は差別といつても良いくらいです。残された問題は、高年齢者自身が納得する退職基準の構築だけです。
かつては、年齢の故に退職する者などいなかった。高齢者そのものがいなかった。(『変貌する経営者の世界』)
このドラッカー氏の主張は、私も正しいとは思います。 しかし、日本では現在では大企業の定年が60歳から65歳に延長されたばかりであり、このような主張を受け入れる素地はなかったとみえ、この小泉進次郎氏の発言は多くの人の共感は得られなかったようです。

そうして、小泉進次郎氏の発言などを分析してみると、結局65歳定年は、「年金制度にとっても耐えがたい負担の原因」となっていることに主眼が置かれているようです。だから、増税するか、定年延長をするしかないということです。

これは、とにかくどんな場合でも増税したい財務省からすれば、都合の良い話です。要するに増税が駄目なら、定年を延長したり、なくしたりすれば、今まで働いていなかった人が税金を支払うようになるため、増税したのと同じ結果になります。

さらには、小泉進次郎氏の主張は、「年金制度にとっても耐えがたい負担の原因」となっていることをアピールしやすくなり、増税に対する理解を得やすくなります。

そうです。とにかく、小泉進次郎氏の主張は、増税を促すことなのです。小泉進次郎氏はこの他にも「増税」すべきであるとの発言行っています。それについては、このブログでも以前何度か掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
総裁任期「3期9年」に延長=26日に全体会合へ提示―自民―【私の論評】財務省とわたりあえる人材が出てくるまでは安倍総裁とすべき(゚д゚)!
野田元総理の増税狂発言。おまけ、安住元財務省の増税狂発言。
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、一部分を以下に引用します。
現在の民進党の議員のほとんどは、増税推進派で、経済や財政について語るときは、まるで財務省のスポークスマンのようです。民主党政権だったときの、民主党は上記の事実でもわかるように、財務省の使い捨て政党です。その性質は昔から変わらず、現在もそうであり、将来も継承続けていくことでしょう。

一方自民党はどうかというと、これも民進党と同じように、財務省の影響下にあったのは間違いないです。というより、自民党でも安倍総理が、衆院を解散してまで、財務省に反旗を翻して増税を阻止して、真正面からわたりあった最初の総裁ということになります。

自民党も民進党の財務省の使い捨て政党というところまではいかないものの、同じように財務省の影響下にあって、財務省にはなかなか正面切って逆らえなかったというのが実体です。

ただし、今の自民党は、安倍総理と一部の安倍総理に近いブレーンが財務省と渡り合っているだけであって、他の自民党議員はなかなか財務省に諜略されているか、諜略されないまでも正面切って逆らえないというのが実体です。

例えばかって小泉純一郎元首相は在任時に「景気が回復すると構造改革ができなくなる」と明言していました。これは、平たくいうと、構造改革をするためには、金融緩和や積極財政はしてはならないということです。これでは、まるで財務省のスポークスマンのようです。

実際に8%増税は、大失敗だったことは統計数値をみれば明らかなのに、民進党は先ほど述べたように、ほとんどが増税狂です。

しかし、自民党でも安倍総理とこれに近いブレーンは別として、ほとんどの議員は金融政策の意味や、財政政策の正しい運用の仕方を理解してないか、理解していたとしても、財務省に正面切って逆らえないでいるようです。

ちなみに自民党の中の「ポスト安倍」と目されている人たち、たとえば、稲田朋美防衛大臣、小泉進次郎衆議院議員、石破茂衆議院議員らの過去の発言をみれば、消費増税ありきの財政再建主義か、もしくは金融政策中心のデフレ脱却への懐疑的であったり批判的であることが明瞭です。
稲田大臣は、先の再延期の前には「消費税をまず1%引き上げる」案をだしていましたが、そもそも消費増税を経済が低迷しているときになぜ増税にそこまでこだわるのか、その背景についての説明は全くありませんでした。最初から消費引き上げ自体を目的とした発言としか思えません。
そうして、小泉議員はより深刻です。先の再延期のときの報道を読むかぎりでは、消費増税先送りへの懐疑的な態度にくわえて、親譲りなのでしょうか、とにかく社会保障の見直しなどで、倹約という視点しかありません。景気循環的な発想が全くありません。増税延期が決まった直後の、「延期するけれども決まっていた(社会保障)充実策はやるというなら、こんなおいしい話はない。 そんなおいしい話に若い人たちはだまされない」と発言にはほんとうに驚いてしまいました。これでは、まるで財務省のスポークスマンであり、経済・財政などに関しては、民主党議員とほとんど変わりありません。
「(増税)延期するけれども決まっていた(社会保障)充実策はやるというなら、こんなおいしい話はない。 そんなおいしい話に若い人たちはだまされない」、「65歳からは高齢者はもうやめよう」、「こども増税」などの発言をみれば、小泉進次郎議員は明らかに増税推進派です。

口を開けば「増税すれば税収は増える」と言い、過去においては増税すればするほど財政悪化した事実はみようともしない。このような「緊縮脳」の政治家にはうんざりするのですが、小泉進次郎議員のような若手議員にもこんなボケ老人みないな人が大勢居るのです。それも自民党の中にさえいるのです。

小泉進次郎議員は、小渕優子議員とともに過去にはマスコミから「次期総理大臣候補」と呼ばれていました。

2012年12月に始まった第2期安倍政権は当時マスコミなどからは「持って1年か2年」と思われていたようで、これは過去の20年を振り返れば妥当な予想でした。

1987年の中曽根康弘以降、2年以上続いた総理は橋本龍太郎と小泉純一郎の2人しか居ませんでした。1年か2年後には次の総理を立てる必要があるので、早々と次期総理候補については多くの国民も関心があるであろうということで、マスコミも取り扱ったのでしょう。

名前が挙がったのは2人の他に石破茂や河野太郎、「女性の時代だ」というので野田聖子や小池百合子らも候補になっていました。その後は、稲田朋美も候補と言われるようになりまた。これらの人たちは人柄はともかく、経済を良くするための政策は特に考えていない人が多いです。

「経済の事はこれから勉強します」と昔大臣の就任会見で言った人がいましたが、日本での政治家はだいたいこのレベルです。経済の細かなことは知らなくても良いですが、不景気になったりデフレになった場合には、どのような財政政策や金融政策をとるかくらいは知っているべきです。知らないというのなら、政治家になるべきではありません。

政治家の言う経済の勉強とはそのほとんどが自ら学ぶというよりは、財務官僚によるレクチャーのようですが、実際には財務官僚は「経済」ではほとんどが素人です。

財務省はお金の使い方を制限する役所で、企業の財務担当者と同じような事をしています。これは、大企業では財務と経理と明確に区分されているから理解しやすいでしょうが、中小企業以下の企業でいえば、いわゆる「経理」です。

財務の人は「電気は消灯してください」「エアコンは28度」「エンピツやボールペンは最後まで使う」などうるさいです。

だがボールペンのインクを最後の一滴まで使いきっても、恐らくその会社の売上は1円も増えないのではないでしょうか。

これは、無論全部の財務部門の人にあてはまるわけではありませんが、よく見られがちな弊害として、売上を増やす事にはまったくの素人で、ひたすら支出を減らす事だけを考えます。

こんな人間が出世して社長になったら、社員に「エアコン禁止令」を出したり、幹部の秘書を廃止したりして、幹部の雑用を増やすようなことをし、だいたいその会社は売上が減って倒産しまいかねないことになります。

会社全体を良くするには、鉛筆を最後まで無駄なく使うことを絶対善とする「緊縮脳的」発想だけではダメで、むしろ一見浪費に見えるようなことでも出費してでも売上を増やすタイプが社長に向いています。

そうして、残念ながら現在の財務省は「緊縮脳」の集まりで、財務省の左遷先の経済省も似たようなものです。実際、財務省は確かに東大卒は多いのですが、経済学部出身者はあまりいません。一番多いのは法学部出身者です。

これは、財政は予算という法形式で規律される行政方式であり、さら予算があっても関連法律が通らないと実施できないですし、また税金の徴収も法律に則り行われるので、やはり法律に疎いと仕事にならないという面もあるとは思います。

しかし、経済とは法律で割り切れるようなものではない社会現象です。財務自体は、法律により執行されるものですが、それ以前に社会現象としての経済を正確に捉える力量が問われます。間違った経済認識のもとで、正しく迅速に法律を執行したとしても無意味です。 

さらには、大学院卒もほとんどいません。大学院で経済学を選考した人などは皆無に近いです。これは、経済学を大学院で選考した人も多い他国の財務省の官僚と比較するとかなり奇異なことです。言い方は、悪いかもしれませんが、他の先進国と比較すると低学歴と言ってもよいのかもしれません。

そうして、彼ら財務官僚は、どんな場合にも出費を少なくする事が善であるというような、何というか経済における清貧思想に染まっているとしか思えません。このような経済省の官僚から経済を教わった国会議員の多くもまた、救いがたい「緊縮脳」になるのです。

例えば財政再建といえば増税しか考えず、増税すれば税収が増えると考えているようです。実際には消費税創設、消費増税によって過去25年間税収が減り続けているのですが、都合が悪いデータを見ないのか、財務官僚に見せてもらっていないようです。

自民党の麻生太郎財務大臣、谷垣幹事長はその筆頭ですが、小泉進次郎議員のように若手のほとんども「緊縮脳」になっています。民進党では、現在では馬淵議員一人だけが「緊縮脳」ではないようです。実はももう一人、金子洋一参議院議員がもその一人だったのですが、誠に残念ながら昨年の参議院議員選挙で落選してましまいした。

2016年6月31日に消費増税延期について質問された小泉進次郎議員は先にも述べたように、「増税延期は無責任だ。若者は騙されない」と増税を主張しました。内容は財務省の官僚と同じで、増税をやれば税収が増え、財政再建できるという事です。

こういう「緊縮脳」の人でも、発言がしっかりして堂々と見えるから始末が悪いのです。過去4回の消費税創設と増税で、その後には必ず税収が減ったのは見ようとせず、ひたすら自分の意見だけを自信たっぷりに言うのです。

彼らの自信の根拠は結局のところ「東大卒のエリート財務官僚が間違っている筈がない」という事で、自分で頭で考えてはいないのでないでしょうか。

ちなみに最近も「緊縮脳」の暗躍で日本は結局のところ緊縮財政に傾いています。以下にグラフを掲載します。

上のグラフは一般会計の前年比の推移です。緊縮度は予算総額の前年比増減額から税収増減額を差し引いて算出したものです。税収が増えても、財政支出を通じて民間に還元しないと、民間の所得が奪われます。安倍政権はアベノミクスを本格的に作動させた2013年度、緊縮度はゼロに近かったのですが、14年度には消費税増税と歳出削減の超大型緊縮財政に踏み切りました。

15年度も緊縮を続け、16年度も当初予算でさらに緊縮を継続。すると消費は不振に陥ったままで、物価は下落し、デフレ局面に舞い戻りました。税収も減り始めました。そこで2、3次の補正予算を組んだ結果、拡張型に転じましたた。
ところが、17年度当初予算はトランプ効果による円安・株高の陰に隠れて目立たないのですが、補正後の16年度予算に比べてかなりの緊縮になっています。円高、株安に反転しようものなら、またもやあわてて補正という図式がみえみえです。

これほどの経済大国でありながら、「緊縮脳」の官僚の采配に国家予算が委ねられる先進国はほかにあるのでしょうか。

私たちは、緊縮脳こそが社会の害悪であるといい加減悟るべきです。経済における清貧思想はなんの解決ももたらさないのです。


2017年5月10日水曜日

【韓国新政権】文在寅政権の最重要課題は経済や外交 韓国メディア「対日政策、全般的に見直し」と展望―【私の論評】雇用を創出できない文在寅もスキャンダルに塗れて自滅する(゚д゚)!


文在寅(ムン・ジェイン)韓国新大統領
韓国の大統領選から一夜明けた10日、韓国メディアは文在寅(ムン・ジェイン)氏の当選をトップニュースで伝えるとともに、新政権の課題として経済や外交を挙げた。

 朝鮮日報は、元閣僚や識者らの話を紹介する形で、膨れ上がる個人債務や改善しない雇用問題の解決が急務であると指摘した。また、労働・教育を中心とした構造改革に取り組み、経済再生のきっかけを整えるべきだと新政権に求めた。

 外交・安全保障面では、米韓同盟を最も重要とし、北朝鮮の核問題の解決や、中国との協力関係強化による朝鮮半島の安定が最優先との見方を示した。

 聯合ニュースは、日韓関係について「当分は調整局面を迎える」と展望。「新政権では外交・安保ルートを構築しつつ、対日政策も全般的に見直すとみられる」とした。

 その上で、北朝鮮の核・ミサイルへの対応には日韓の協力が必要で、文政権と安倍政権の連携のきっかけになるとの見方を示した。

 一方で、慰安婦問題をめぐる日韓合意を「両国関係改善の障害物の代表例」として挙げ、文氏が選挙期間中、合意の再交渉を主張してきた点に触れた。

【私の論評】雇用を創出できない文在寅もスキャンダルに塗れて自滅する(゚д゚)!

本日は、文在寅新大統領の、経済対策について論評します。

文在寅新大統領の経済対策

韓国経済の現状を省みると、第19代韓国大統領に当選した文在寅(ムン・ジェイン)氏には準備期間はありません。すぐに手を打たなければとんでもないことになるでしょう。目の前の経済懸案を文氏が率いる新政権がどのように解決していくのか、以下にその公約を点検します。

文氏の大統領当選とともに10兆ウォン(約1兆円)規模の補正予算がカウントダウンに入ります。補正予算の表札は「雇用」に定められています。7日に文氏側の選挙対策委員会(選対委)は、政府が年初に発表した「2017年度公務員採用計画」に加え、1万2000人の公務員を追加で採用すると明らかにしました。

ユン・ホジュン選対委政策本部長は「追加採用と教育訓練に必要な予算を雇用補正予算に、人件費と法定負担金は『2018年度本予算』に反映する」と説明しました。公共雇用81万人創出は文氏の核心公約の一つです。問題は財源です。

文氏の公約には増税案もあります。文氏は先月19日のテレビ討論で「富裕層と財閥大企業中心に増税をするべき」と明らかにしました。公約集によると、利益(課税標準)500億ウォン超過企業に対する法人税の最高税率が22%から25%に上がります。大企業の大株主が株式譲渡過程で得た利益(株式譲渡差益)に適用する税率も20%から25%に引き上げられます。

高所得者に対する税金も強化され、5億ウォン超過で40%の所得税最高税率が3億ウォン超過で42%に調整されます。高額資産家に対する相続・贈与申告税額控除率は7%から3%に引き下げられます。

キム・カプスン東国大経営大教授は「税目と引き上げ率、対象と目的を明確にした後、国民を十分に説得する過程がなければいけない」とし「法人税引き上げも企業が労働者の賃金や家計など他の部分に税負担を転嫁しないよう厳密な設計が必要だ」と助言しました。

法人税引き上げ計画が国際的な流れに逆行するという懸念も新政権は考慮しなければいけないようです。財閥改革と経済民主化も文氏の経済公約の核心です。文氏は過去の調査局のような大企業担当部署を公正取引委員会に拡大・設置すると公約しました。その代わり公取委が独占している専属告発権を廃止する予定だそうです。

文氏の通商公約は他の経済公約に比べ細部が不足するという評価を受けました。通商組織を産業通商資源部から外交部に移管して東アジア地域包括的経済連携(RCEP)、韓日中自由貿易協定(FTA)を締結するという方向だけを提示しました。トランプ米大統領が「韓米FTA再交渉または終了」を主張していますが、文氏は「軍事同盟とFTAを基礎に韓米間の戦略的関係を強化する」という原則だけを明らかにした状態です。

LG経済研究院のキム・ヒョンジュ研究委員は「サービス収支まで考慮すれば韓米FTAは米国に決して不利ではない協定という点をトランプ政権と米議会に十分に説得していく必要がある」と注文しました。

過去の韓国経済

朴槿恵前大統領
さて、ここで韓国の過去の経済と、2013年2月25日発足した、朴槿恵大統領の経済政策を振り返ります。以下は、当時の日本国内での一般的な見方を掲載します。

韓国は米国や日本をベンチマークとするキャッチアップ型発展を違げてきました。韓国企業は米国や日本などが開発した技術にいち早く適応しそれをベースに製品開発を進めるアァストアォロワー戦略で競争力を高め2000年代に入るとサムスン電子や現代自動車を筆順にグローバル市場で存在感をたかめました。

しかし韓国企粟がグローパル市場で躍進する方で国内軽済に目を転じると家計部門をに問題が生じていました。まず企葉が非正規雇用を増やす対応を採ったたことなどを背景に労働分配率が低下し 家計所得が伸び悩むようになりました。また青年者失業が増加するなど人的資源が十分に話用されていない状況 が生じています。韓国では2000年代に雇用総出力が低下し、どのように雇用の拡大を図っていくかが課題となっていました。

こうした課題に対し2月25日発足した朴価恵(パククネ)政権は「創造経済」の名の下にICT(情 報通信技術)と科学技術をペースに新しい製品サービスを削出する中で雇用を拡大していく方針でした。「創造経済」の実現は、韓国自らが産粟を創出あるいは市場を先導することを意味しキャッチアップ 型発展からの転換を図るものとする予定でした。

韓国企業を取り巻く環境をみると李明博(イミョンバク)政権下で採られたウォン安政策の是正や低位に抑えられた電気料金の値上げなど価格面での優位性を支えてきた状況に変化が生じていました。そうして中国企業などの追い上げが子想される中韓国企業は価格競争力に依拠するキャッチアップ型の成長パ ターンから脱却し独自柱術に基づく製品開発カに注力する必要に迫られています。

 韓国企業の中には、既にサムスン電子のように液晶、半導体といった分野で独自柱術の開発に成功しそれを購争カの源泉としている企業もありました。また大企業を中心に行われている研究開発(R&D)投資は 世界上位に位置し韓国は技術力強化に注カしている姿が見て取れましたい。

独自技術や胆品開発カの強化は 一朝一タに成し遂げられるものではないのですが「創造軽済」実現に向けた政策的なパックアップの下競争力強化に取り組み始めた韓国企業はこれまで以上に手ごわい競争相手となる可能性がある点を日本企業は認識する必要があると見られていました。

過去と現在の比較

2016年7月21日、「創造経済」の拠点板橋創造
経済バレー(京畿道城南市)を訪れた朴槿恵大統領
朴槿恵大統領の経済対策は、結局のところ「創造経済」の名の下にICT(情 報通信技術)と科学技術をペースに新しい製品サービスを削出する中で雇用を拡大していく方針のみのようでした。

そうして、この「創造経済」は失敗しました。現在の韓国の経済の状況は、朴槿恵政権発足の頃と比較して良くなることはありませんでした。それは、当たり前といえば、当たり前でした。

朴槿恵政権というか、世界中のどこの国の政府でも、IT産業に力を入れたからといってその産業を興隆させることなどできません。それは、民間企業が競争し互いに切磋琢磨しながら築き上げていくものです。政府にはできるものではありません。

政府としてできるのは、インフラを整備するくらいなものです。そのインフラの上で、民間企業が競い合ってはじめて、イノベーションが生まれます。そうして、IT産業に限らず、一つの産業が国に大きな富をもたらすまでに興隆するには、かなりうまくいって5年、通常は10年から20年かかるのが普通です。

そうして、これは日本で昔言われていた「構造改革」と同じです。日本でも、失われた20年に入る直前から言われだしましたが、結局のところ「構造改革」は掛け声だけに終わりました。

それに、政府主導すなわち官僚主導で、IT産業を興隆させるということができるというのなら、官僚主導の計画経済を実施した共産主義だってうまくいっていたはずです。しかし、これは、皆さんがご存知のようにことごとく失敗しました。朴槿恵大統領の「創造経済」は残念ながら当初から失敗することが、方向付けられていたようなものです。

過去において、計画経済の共産主義はことごとく大失敗した!!
さて、これに比較すれば、文在寅新大統領の経済対策は、朴槿恵大統領のものよりはいくぶんまともなようです。

なぜなら、景気循環的対策である、財政政策を実行しようとしているからです。とりあえず、雇用対策として10兆ウォン(約1兆円)規模の補正予算を組むとしています。

しかし、これはいったいどの程度の規模なのか、何しろ韓国なのでそれが見えません。2015年の韓国の名目GDPは1兆3779億ドル(約138兆円)で、世界11位を記録しました。 日本は、4兆1233億ドルでした。割り算をすれば、日本は韓国の大体三倍の規模ということになります。

では、韓国で10兆ウォン(約1兆円)の経済対策をするとしたら、日本でいえばどの程度のものになるかといえば、約3兆円ということになると思います。しかし、これでは、十分とはいえないと思います。

日本でも過去にこの程度の補正予算は、組んでいろいろ対策を行いましたが、あまり良い結果を生むに至ってはいません。やはり、日本では10兆円以上できれば、20兆円の対策を打つべきでした。

これを韓国に換算すると、6〜7兆円(60兆ウォンから70兆ウォン)の対策をすべきということになります。さらに、財源が増税ということですから、現状の韓国の経済を考えた場合、残念ながら、ほとんど成果を期待できないです。いくら富裕層や、企業に対して増税するとはいっても増税は増税です。これは、悪い影響が出るのは必定です。

現に経済状況が悪いわけですから、本来だと国債発行などで賄うべきものだと思います。国債というと、日本ではなぜか悪者扱いで、将来世代へのつけを回すものと認識されているようですが、それは全く異なります。国債は逆に世代間の不公平を平準化するものです。

韓国を例にとれば、雇用を創出するために、増税すれば、現在の世代ばかりに負担がかかるものになってしまいます。しかし、国債ならば雇用が長期的に確保されるのであれば、将来世代もその恩恵にあずかることができるので、平準化できるのです。増税で雇用を長期的に安定された場合、将来世代は何の負担もすることなく、タダ乗りということになります。悪く言えば、親のスネをかじり続ける極道息子のようなものです。

そうして、朴槿恵前大統領も、文在寅新大統領も、財政政策以外のもう一つの景気循環的対策である、金融政策は頭に思い浮かばないようです。

文在寅(ムン・ジェイン)新大統領も、「雇用」を謳っておきながら、金融緩和には思いも至らないようです。普通は、雇用といえば、まずは金融緩和です。このブログにも過去に掲載したように、インフレ率と雇用の間には密接な関係があります。

米国や日本のような国であれば、物価が数%あがればその途端、他は何もしなくてもたちどこに雇用が数百万も発生します。これは、経験則として広く知られている事実です。そうして、それはこのブログにも以前掲載したように、最近の日本でも実証されていることです。

韓国も、雇用を改善するというのなら、まずは金融緩和をすべきなのです。しかし、このようなことを言うと、韓国の経済は遅れているし、腐敗がまかり通っているから無理だとか、はなはだしくは、金融緩和するとキャピタル・フライトが起こるなどという人もいます。

これは、韓国内だけではなく、日本でもそのような見方をする人がいるようです。しかし、これは間違いです。

いくら韓国の経済活動には不合理なことがまかりとおっていたにしても、構造改革をしてそれが効果をあらわすまでには、先に述べたように、最低でも5年、長ければ10から20年もかかる場合もあります。しかし、現状の経済がとんでもない状況にあるわけですから、構造改革はするなとはいいませんが、その前にまずは景気循環的対策を十分に行うべきです。

さらにキャピタルフライトに関しては現在の韓国は起こりにくい状況にあります。なぜかといえば、それは我が国と同じく、韓国は変動相場制の国であるからです。

通常変動相場制の国であれば、 金融緩和をすれば自国通貨安になり、外貨流出を抑えることになります。さらには、変動相場制の国であれば、政府の外貨準備は通常市場とは直接関係しません。したがってキャピタルフライトは固定相場制の国とは違って発生しません。なぜなら極端な通貨安に振れる理由がないからです。

現に1997年のアジア通貨危機では被害国は固定相場でした。韓国は、80年から変動相場制への移行をはじめ、97年アジア通貨危機後に完全変動相場制になりました。現在では完全変動相場制です。

無論、変動相場制の国の場合でも、キャピタルフライトは起こり得る場合もあります。それは、まずユーロなどの共通貨幣を用いている国ではあり得ることです。しかし、韓国は共通通貨を用いている国ではありません。

さらに、変動相場制の国でもキャピタルフライトがおこる可能性もあります。それは、対外債務が極端に多い場合です。しかし、韓国の現在の対外債務はキャピタル・フライトがおこるような水準ではありません。

であれば、本来は真っ先に大規模な、金融緩和を行うべきです。それなしに、韓国の経済を立ち直らせることはできません。

朴槿恵大統領退任要求の大規模デモ。主催者推定10万人を超える人数が集まり収拾付かなくなった。

文在寅も、このまま韓国経済を立ち直らせることができなければ、結局国民の不満が高まり、朴槿恵前大統領と同じような道を辿ることになります。

もうすでに、朴槿恵元大統領のときのスキャンダルのようなものが囁かれ始めています。

それは、文在寅氏の息子のムンジュニョンさん不正就職事件です。これは、10年前の2007年のことです。

ジュニョンさんは、韓国雇用情報院に採用されて就職をしました。その就職に関して、ムンジュニョンさんが、韓国雇用情報院の5級一般職の試験で、優遇を受けて入社したというのです。

これについては、ここではあまり詳細は触れません。詳細を知りたいかたは、ネットで調べて下さい。

文在寅大統領が、反日や親北に地道をあげて、金融緩和策を実行せず、韓国の雇用を改善できない場合、韓国民は最初のうちは大人しいかもしれませんが、いずれ朴槿恵元大統領を退陣に追い込んだような、嵐が吹き荒れることになります。そうして、任期は全うできず、様々なスキャンダルが暴かれ、文在寅もスキャンダルに塗れて自滅することになるでしょう。

【痛快!テキサス親父】韓国はまさに「赤化危機」 完全な日韓合意違反、国際的信用は失墜した―【私の論評】韓国の赤化で、半島全体が支那の傀儡になる?

2017年5月9日火曜日

【参院予算委】安倍晋三首相が民進党に改憲案提出を要求 蓮舫代表は答えず… 首相批判に終始―【私の論評】土台が狂った日本国憲法典の字面を変えてもまともな憲法はできない(゚д゚)!

【参院予算委】安倍晋三首相が民進党に改憲案提出を要求 蓮舫代表は答えず… 首相批判に終始


 安倍晋三首相は9日午後の参院予算委員会で、民進党の蓮舫代表と対決した。首相は「将来に向かって日本がどういう国を目指すのか、具体的な提案を憲法審査会に提案していただきたい」と述べ、国会に憲法改正の具体的な提案を出すよう求めた。

 首相は「憲法審査会で各党が提案を持ち寄って議論を深めるべきだ」とした上で「自民党内の議論を加速して党としての憲法審査会への提案を、いかに苦しくてもまとめ上げる決意だ」と強調。民進党の細野豪志前代表代行が改憲私案を発表したことを引き合いに「アイデアを持っている方もいる。代表としてしっかりとりまとめを行い、立派な提案をしてほしい」と蓮舫氏を諭した。しかし蓮舫氏は答えず、首相への批判に終始した。

参院予算委員会の集中審議で、質問する民進党の
蓮舫代表=9日午後、国会・参院第1委員会室
首相は改憲項目に関し「今、まずやるべきは自衛隊についてだ。憲法学者の7、8割が違憲と言っている。それを変えていくのは私たちの世代の責任だ」と述べ、9条改正を優先させる必要があるとの認識を示した。

 自民党が野党だった平成24年に発表した改憲草案とは異なるが、首相は「残念ながらこの案のままでは(改憲発議に必要な衆参両院での)3分の2の多数は得られない。批判を受け止める責任感を持ちながら、リーダーとして結果を出したい」と強調した。

 改憲の2020年施行を目指すとした理由については「東京五輪・パラリンピックも予定されている。まさに新しい日本を始めようという機運がみなぎっている」と述べた。

【私の論評】土台が狂った日本国憲法典の字面を変えてもまともな憲法はできない(゚д゚)!

民進党の蓮舫代表は、「首相」と「内閣総理大臣」と「総裁」の違いを理解していないようです。代表がこの有様ですから、他の民進党の議員もほとんど理解していないとは考えられますので、「教育」の意味も含めて以下に掲載しておきます。

「首相」と「内閣総理大臣」と「総裁」の違い

日本の行政権の長を表す正式な呼称は「内閣総理大臣」。

「総理」や「総理大臣」は、「内閣総理大臣」の略称です。

「首相」は、「内閣総理大臣」の通称。


外務大臣を「外相(外務相)」、財務大臣を「財相(財務相)」と呼ぶように、「相」は「大臣」のことで、首相は「内閣の首席大臣」を表します。

法律上の正式名称は「内閣総理大臣」であるため、法令で「首相」を使うことはありません。

しかし、「内閣総理大臣」は日本固有の官職名であるため、海外のメディアでは、英語で「Prime minister」、つまり「首相」と呼ばれます。

他の国にもそれぞれ固有の官職名ですが、議院内閣制をとっている国の政治の最高責任者を表す際は、基本的に「Prime minister(首相)」で、一般的な呼称はどちらかといえば、「内閣総理大臣」よりも「首相」の方です。

正式名称を必要としない場面では、「首相」に統一しても良さそうですが、新聞やニュースの文字では「首相」、ニュースの読みでは「総理大臣」や「総理」と使い分けられていることが多いです。

「首相」と「総理大臣」「総理」で使い分けられている理由は、聞き間違いをなくすためです。

財務大臣を「財務相」、外務大臣を「外務相」と読んだ場合、「財務省」や「外務省」と区別がつかないことから、官僚の呼称は「大臣」で統一されました。

それに合わせて「首相」も「総理大臣」や「総理」と呼ぶようになったことから、文字には一般的な「首相」を使い、読みには「総理大臣」や「総理」と使い分けられるようになったのです。

「総裁」も「首相」や「内閣総理大臣」と同義語に思われがちですが、「総裁」と「首相」「内閣総理大臣」は大きく異なります。

日本銀行のトップを「日銀総裁」と呼ぶように、「総裁」は組織や団体の長として全体を取りまとめる職務のことで、内閣に「総裁」という職名があるわけではありません。

日本では自民党が政権を握っている期間が長く、自民党の党首名が「総裁」で、党首が内閣総理大臣を務めることが多かったことから、「総裁=内閣総理大臣」となり、「総理総裁」とも呼ばれたのです。

ここのところを蓮舫代表は全く理解していないのです。本来は、総裁≠内閣総理大臣なのです。

自民党総裁としての立場で、ビデオメッセージで憲法改正に関する意見を述べた安倍晋三氏
しかし、他の党の党首名は「総裁」とは限らないため、他党が第一党で過半数を獲得していたり、連立で過半数を獲得していれば、「総裁=内閣総理大臣」ではなくなります。

また、自民党が第一党で過半数を獲得していたとしても、内閣総理大臣は国会議員であればよく、党首がなる必要はないため、必ずしも、「総裁=内閣総理大臣」になるとは限らないのです。

以上のことことから、安倍晋三氏が総裁としての立場でものを語るときと、内閣総理大臣の立場でものを語るときは、同じ場合もありますが、違い場合もあるわけです。

そうして、憲法改正に関して安倍晋三氏が「総裁」の立場で語ったということは、自民党の長として全体を取りまとめる立場から語ったということです。

そうして、自民党の長という立場で、他党にも憲法改正に関して、関与を促すことを表明したということです。

蓮舫代表はこのことを理解していなので、国会での論議でもチグハグになっています。

蓮舫代表をはじめ民進党の議員は、まずは、これを理解すべきです。こんなこともわからないのかと理解に苦しみます。

さらに、憲法論議もかなり幼稚です。安倍総理が、国会で民進党に改憲案提出を要求したにもかかわらず、蓮舫代表はこれには全く答えず首相批判に終始しました。

これは、民進党は故意に出さないのか、あるいは出せないのかもわかりません。私としては、出せないのだと理解します。

私自身は、現在の憲法論議そのものには、いわゆるリベラル・左派や左翼の方々が言う問題とは全く異なる別な面で問題があると思っています。それは、以前もこのブログに掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
【憲法施行70年】安倍晋三首相がビデオメッセージで憲法改正に強い意欲 「9条に自衛隊書き込む」「2020年に新憲法を施行」―【私の論評】憲法典を変えればすべてが変わるというファンタジーは捨てよ(゚д゚)!
沖縄の基地反対運動
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事では保守派の中にも、「憲法典(文字で書かれた憲法のこと)」の字面を変えれば、すべてが変わると単純に思っている人も多いようですが、それは間違いであることを掲載しました。

憲法とは、国の成り立ちや、国柄、長い時間をかけて様々な論議が重ねられた結果できるものであり、それが成文化されて憲法典になるべきであって、最初に憲法典の改変ありきではないのです。そのことを忘れている人が多いようです。

そのような単純な思い込みは、ある意味護憲派が憲法典を金科玉条のごとく一字一句守り続けることが絶対善であると信じ込むのと同じようなものであり、それでは本当の意味でのまともな憲法などできあがりはしません。

そうして、この記事では、現在の自衛隊のフアーストエイド・キットがお粗末なことや、トイレットペーパーが自前であること、陸自の隊員が米国の軍楽隊以下の実弾訓練しかできていないことなどを例にあげて、憲法改正の前に地道にできることは、するべきであることを主張しました。

この憲法改正以前にできることもしないようでは、憲法改正などできないと思いますし、仮にできたとしても有名無実になる可能性すらあると思います。

そうして、この記事には掲載しきれなかったことを以下に掲載します。

憲法改正は日本国憲法ではなく大日本帝国憲法を土台にせよ

それは、私たちは現行の日本国憲法を元に憲法改正をするというのではなく、大日本帝国憲法に立ち返りそこから、新たなに現在の憲法を考え出すべきだということです。

憲法論議に関して明治時代にまで遡ると、当時日本が生き残るために必要だったのは、西欧の人々が納得するような憲法や法体系でした。

憲法がなければ、不平等条約も改正できず、西欧に伍することもできなかったからです。そこで伊藤博文らが、西欧のサル真似ではなく、日本の歴史、文化、伝統に則りながら、西欧をも凌駕するような気概で作ったのが大日本帝国憲法でした。

日本古来よりある十七条憲法と五箇条の御誓文から『古事記』『日本書紀』までを徹底的に研究し、たとえば、議会制民主主義は『孝徳天皇や天智天皇のころよりから日本は話し合いで政治をやってきた、天皇が臣下と相談せずに物事を進めるという伝統は我が国にはない』というふうに解釈し解説書を著しました。

西欧の流儀を取り入れつつも、日本の伝統には則る。変わりゆく伝統のなかで歴史を紡ぐことを決意したのです。帝国憲法に書かれている国家観は『日本は天皇の国である』という一言に尽きます。これまでの日本は天皇によって統治されてきたことを条文で定めるのではなく、改めて『確認する』という内容になっています。

伊藤博文らは10年近くもの時間をかけて、伝統と国益が両立する憲法を作りあげました。一方の日本国憲法はマッカーサーの落書きをもとに素人が1週間で書き上げてものだと言われています。

かけた労力もさることながら、両者の最大の違いを端的に言えば、日本国憲法は、有事を想定していないことにあります。日本人が本当の意味で天皇を必要とするのは、『いざ』という有事です。

有事とは国家事変、戦争、天災の三つで、これらが起こったとき、大日本帝国憲法では天皇は日本の中心となって、国を滅亡から救う役割が求められるのです。たとえば、その典型は二・二六事件ですが、クーデターによって内閣がなくなったとき、反乱軍討伐の方針を示したのは昭和天皇でした。

帝国憲法では、『いざ』というときに日本国の本来の持ち主として、天皇は麻痺した政府機能を回復する役割を担っているのです。

これは、東日本大震災で菅直人首相が右往左往するなか、米軍が日本国内で日本国政府の承認を得ることもなく、自由に動き回っていた現在とはまるで様相が違います。実は、これがトモダチ作戦の現実です。

トモダチ作戦のためロナルド・レーガンから降り立った兵士ら

ところで、東日本大震災で自衛隊が大活躍したのは周知の事実ですが、あの震災時、米軍がいわゆるトモダチ作戦を実行しましたが、その米軍は武装解除はしていませんでした。武器は携帯するか身近な所に保管していたのです。

それは考えて見れば当然のことでしょう。軍隊が出動しなければならないほどの大規模災害が起きた場合、その地域の警察組織は寸断され機能しない状態になっていると考えられます。であれば暴徒に襲われる可能性があります。さらには住民は略奪されているかもしれません。

それを救うためには武器の携行は不可欠です。日本以外の国々では、軍隊が災害派遣される場合は治安出動も兼ねているのが普通です

しかし、陸上自衛隊は違いました。全兵力の3分の2近くを災害派遣に振り向けたのですが、災害派遣では基本的に武装をしていません。もし震災地に北朝鮮がゲリラ部隊を侵入させていたら陸自は住民の命を守れないどころか自らの身さえ危なかったのです。

陸自隊員の大半は非武装で作業をしていたわけですから、日本を原発テロ等から守ったのはまぎれもなく米軍でした。

震 災 地 で 救助 活動 を 展開 した 日本 の 自衛隊
東日本大震災での自衛隊の活動には、称賛の声もある一方、信じがたいことに震災後三日間で手持ちの食糧が尽きたために、コンビニで買ったレトルト食品で飢えをしのいだとか、震災派遣などで使用する専用の地図が自衛隊の派遣部隊になく、ゼンリンの地図で被災地に行けという無理難題の命令が出され、無理やり行かされたものの、軍用手袋も足りていない悲惨な状況であったという批判もあります。

自衛隊は、実は自己完結できる組織でなく、災害派遣の用意すらしていなかったことを証明することとなったのです。

自衛隊が派遣されるということは、武装組織が派遣されるということで、非武装で活動していたのであれば、普段から自衛隊が団体行動をとって一つにまとまって動けるということ以外では、全国から警察官や消防士を掻き集めて作業をするのとあまり変わりなかったともいえます。

災害派遣に於て、自衛官は武器を携帯することは出来ないのでしょうか。自衛隊法第87条には「自衛隊は、その任務の遂行に必要な武器を保有することができる」とあります。

ゲリラやテロを警戒するのであらば、それは治安出動(第78条)に当たります。その際に警察官と同様の活動が出来る(第89条第1項)から、当然武器の携帯が認められるはずです。しかし、その使用には正当防衛及び緊急避難の外には指揮官の命令がなければならない(同2項)から、むしろ警察官よりも要件が厳しくなっています。これでは自衛隊を派遣する意味がありません。

せめて第89条第2項を削除して、最低でも警察と同じ活動が出来るようにすべきです。例えば火事場泥棒が銃器を持って逃走している場合、自衛官は指揮官の命令が無ければ、彼に発砲することすらできません。

現行法では、少なくとも現実では、自衛隊が災害派遣されても、自衛官に治安を維持する能力はなく、自分の身を守ることさえ出来ないのです。

マッカーサーは日本を奴隷化するために、日本国憲法に『いざ』というときの文言をわざと入れなかったからこそ、このような馬鹿げた事態を招いてしまったのです。


以上のように厳然たる事実として、自衛隊は国を守るにはあまりにも脆弱です。正規軍、予備役合わせても、同じ島国で日本より領土が小さい台湾の兵力を大きく下回っており、東アジアの中だけでも完全に“戦力外通告”を受けたようなものです。

このような現実を招いている理由は簡単で、軍隊を持つか持たないかで国としての合意がないからです。そんな国が日本以外のどこにあるというのでしょうか。大半の国では『持つ』という合意があり、一部にはバチカンみたいに『持たない』という国もあります。

あるいはコスタリカのように、軍隊を廃止するかわりに有事には全国民が民兵として戦うという国もあります。その議論を経ずに、憲法の条文で自衛隊の名前を国防軍に変えただけで、“軍隊”になるわけがもありません。

戦後生まれの日本人にとっては当たり前の日常ですが、本当にいまのままで良いのでしょうか?そう言うと、70年間も日本国憲法をありがたく奉ってきた世代の思いはどうなるのか!と怒り出す人がいるようですが、それは民進党の蓮舫代表の国会での戯言と同じで何の意味もなしません。

実際、蓮舫代表はもとより、リベラル・左派、左翼の憲法論議はまるで意味をなしていません。まともな批判にも何にもなっていません。あまりに低次元です。

現行憲法を後生大事にしているから、今になって様々な矛盾が一気に噴出しているのです。日本という国を真剣に考えて作られたのは帝国憲法です。帝国憲法どころか、憲法改正を口にするだけでも、アジア近隣諸国の顔色をうかがわなければならないなど、日本は本当に独立国なのでしょうか。政治家に圧力がかかるなら、国民が力を結集すべきです。

日本が敗戦国のままでいることによって利益を得ている勢力がいる限り、憲法の見直しはなかなか進まないでしょう。だからこそ、帝国憲法を土台に、戦後70年の変化も踏まえて、新たな憲法を作り出す必要があるのです。

土台が元々狂っている日本国憲法典の字面を変えただけでは、まともな日本の憲法はできないのです。

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2017年5月8日月曜日

【痛快!テキサス親父】「反日」韓国人訪日増加のナゼ 日本人は世界で評価も、フランス人や中国人は人気がない―【私の論評】エリートではない一般の日本人の底力(゚д゚)!

【痛快!テキサス親父】「反日」韓国人訪日増加のナゼ 日本人は世界で評価も、フランス人や中国人は人気がない

京都・金閣寺。訪日した外国人の多くは、日本と日本人の素晴らしさを実感する
ハ~イ! みなさん。

 世界のホテル従業員が選ぶ「ベストツーリスト」(最高の旅行客)や、世界中をカバーしている大手旅行代理店が出しているアンケート結果で、常に「好まれる旅行客」のトップは日本人だ。日本人が世界に与えている良い影響は、一度でも日本に行ったことがある人なら納得できるぜ。(夕刊フジ)

 俺が初めて日本に行ったとき、街にゴミが落ちていないことに驚いた。そこで、「なぜ、ゴミ箱がないのに、日本の道路にはゴミが落ちていないんだ?」って聞いてみた。実に、面白い答えが返ってきた。

 「日本では、小学校から授業が終わったら児童が掃除をするからです」っていうんだ。つまり、日本では「汚したら、片付けるのは自分」という教育をしているわけだ。日本人が外国に行っても、他人に迷惑をかけず、誠実な対応をする理由が納得できたぜ。

 一方、世界で人気がないのは、フランス人や中国人のようだ。

 俺は中国には行ったことがないが、フランスには何度か行ったことがある。フランス人は、パリでもそれ以外でも、ゴミ箱にゴミを捨てない。「道路にポイ!」なんだぜ。おまけに街中を歩くときには、犬の糞(ふん)を除けながら歩かなければならない。そんな国の人々が海外に行けば、渡航先が同様の状況になるのは理解できるよな。

 さて、日本ではいよいよ大型連休(ゴールデンウイーク)らしいな。日本の友人によると、海外旅行に出かける人の渡航先の一番人気は「台湾」だという。台湾には「親日」というイメージがあるよな。

 これに対し、韓国への旅行者は2012年から減少傾向だと聞いたぜ。慰安婦問題などで、あれだけ一方的な「日本たたき」をしているうえ、お隣の北朝鮮が「核実験」や「ICBM(大陸間弾道ミサイル)発射」を示唆しているから、当然といえば当然だ。俺が日本人なら絶対に行かない。「1社で3000~4000人減少した」という旅行会社もあるそうだ。

 反対に、韓国からの日本への旅行客は3月で約48万8400人と、昨年の同時期に比べて30・6%も増加したそうだ。旅行会社によっては「8割増」だという。

 韓国は世界有数の「反日」国家で、歴代大統領が「日本たたき」をやってきたのに、なぜ、日本への旅行客が増加しているんだ? 円安の影響だけとは言えないよな。自らの国を「ヘル朝鮮」(地獄の朝鮮)と呼ぶ人々だけに、実は、日本に大きな憧れを抱いているのかもしれないぜ。

 親愛なるみなさんと、日本と米国に神のご加護がありますように。韓国人は日本を恨むことに力を注ぐのではなく、日本人が世界から好まれている理由をしっかり学んだ方がいいぜ。

 では、また会おう!


 ■トニー・マラーノ 評論家。1949年生まれ。テキサス州在住のイタリア系米国人。サラリーマンを定年退職後、動画サイト「ユーチューブ」などで連日、評論活動を行っている。世界のあらゆる“悪”と戦う「プロパガンダ・バスター」でもある。大変な親日家であり、日本でも圧倒的ファンを獲得している。自著・共著に『テキサス親父の「怒れ! 罠にかかった日本人」』(青林堂)、『日本は、世界の悪を撃退できる』(産経新聞出版)など。

【私の論評】エリートではない一般の日本人の底力(゚д゚)!

日本人の公共性や協調性の高さは、訪日外国人たちに感心されています。

しかし、それは国内に留まらず、海外でもいかんなく発揮されており、とても高い評価を受けているのです。

フログ冒頭のテキサス親父の記事にもあるように、以前、世界最大級の旅行サイトであるエクスペディアが、ヨーロッパの1万5000以上のホテルを対象に「ベストツーリスト」のアンケートを行ったところ、2位のアメリカを大きく引き離して、日本が見事1位に輝いているほどです。

日本人観光客の何が評価されたのかというと、マナーのよさ、礼儀正しさ、そして不平不満をいわないところ、だそうです。

また、部屋をきれいに使う、という点も高評価を得ています。

これらは、日本人の国民性ともいえる、個人よりも和を重んじる心が根づいているからにほかなりません。

「個性がない」「自分の意見をいえない国民性」と揶揄(やゆ)されることもありますが、世界の多くの人々からは好意的に見られているわけですから、変える必要はないでしょう。

この高評価は、パスポートの強さという部分にも表れています。

日本人観光客の礼儀のよさは古くから評価されており、
それが現在のパスポートの強さに反映されたのだ。
ビザなしで行ける国の多さで順位づけされるランキングの2015年版ではアジア1位の座を韓国と分け合い、総合では3位タイの172カ国。

今、世界で観光客の奪い合いが起こっている中国が45カ国で83というのを見ると、日本の順位がいかにすごいかがわかります。

さらに、入国審査では他国に比べてかなりスムーズ、かつ親切な対応を受けられるのは、日本が経済大国だということ以外に、とてもマナーがいいと歓迎される立場にあるからなのです。

本日は、テキサス親父の語る日本の凄さの他に、意外と当日本人もあまり気づいていない2つの事柄を以下に掲載します。

美容室&理容室の数は、じつに36万軒以上

国の規模や文化によって、美容院であったり床屋だったり、はたまた露天の散髪屋だったりという違いはあったとしても、「髪を切る」という習慣は万国共通のものです。


代金は世界的に見ても高額ですが、コストパフォーマンスも高いと評判。海外に進出する店舗も増えています。

ご存じのように、日本も理髪産業はとても盛んで、全国にある美容室&理容室の数は、合わせてじつに36万軒以上。

コンビニの総店舗数が5万ちょっとですから、この数字がいかに多いかがわかります。

そんな理髪大国の日本ですが、海外からは「理髪天国」として熱い視線が送られているのをご存じでしょうか。

その理由として、理髪技術が高いことも挙げられますが、外国人がとくに高い評価を与えているのが、理髪以外のサービスが多く、しかもクオリティが高いという点です。

なかでも美容室ならばシャンプー、理容室ならばシェービングが、大絶賛されているのです。

また、衛生管理もしっかりされていて、終始細やかな気配りのある接客も、外国人からは驚きと賞賛の声が上がっています。

このように、日本が理髪天国となったのは、相手の気持ちに配慮し、おもてなしの心で接するという国民性によるところが大きいのですが、理髪に関しては、江戸時代からこのような形態で行われてきたようなのです。

当時は「髪結い」と呼ばれ、理髪だけでなく、髭を剃り眉を整え耳掃除をするところまでがワンセットとされており、それが現在のおもてなしにつながっているではないかと思われます。

現代日本は人口が減少傾向にあり、理髪業界も苦しくなっているようですが、外国人をうまく取り込んでいくことができれば、再び成長産業へと転換できるでしょう。

「新幹線劇場」ともいわれる車内清掃!!

東北・上越・北陸・北海道新幹線などが発着するJR東日本の東京駅で、日本人からは「すごい!」「神業!」、外国人から「ソークール!」と賞賛され、毎日行われているのが新幹線の車内清掃です。

折り返し時間は12分。降車に2分、乗車に3分かかるので、清掃に費やせる時間はわずか7分間。

この7分間に清掃員たちが完璧な清掃を行い、それはまるでパフォーマンスを見るかのようで「新幹線劇場」ともいわれています。

 主人公はJR東日本テクニカルハートTESSEI(テッセイ)の車内清掃スタッフたちです。

10分足らずの猛スピードで進められる清掃作業(作業中に撮影した写真17枚を合成=7月30日
新幹線が速いのは、技術力だけではありません。東京駅のホームにいるピンク色の制服を身にまとった清掃員も、重要な役割を担っているのです。

ホームに滑り込んできた車両が、折り返し新大阪方面に向けて出発するまで平均16分程度。車内清掃はこの間、「超特急」並みのスピードでこなさなければならないのです。

ドアが開くと同時に車内に駆け込むと、ものすごい勢いで座席のほこりを掃き、窓やテーブルを拭き、座席カバーを取り換えます。手には、電動クリーナーやゴミ袋。10分足らずですべての車両をピカピカにすると、ホームで乗車を待つ乗客に一礼。作業終了後の一礼では、ホームで乗車を待つ乗客へ「お待たせしました」と礼を尽くします。

これは「お客さまに気持ちよく新幹線をご利用いただいてほしい」というスタッフ一同の気持ちの表れです。そうして風のように去っていきます。

ホームで乗車を待つ乗客に一礼するアロハシャツ姿の清掃スタッフ
清掃員は東海道新幹線だけでなく各地の新幹線にも広がっています。JR東日本が運行する東北新幹線などを担当する清掃員は利用客に「魅せる清掃」を楽しんでもらおうと、アロハシャツや浴衣、冬はサンタクロースの衣装などをまといます。

車内清掃のことをJRでは「新幹線劇場」と呼ぶほどです。米CNNなど海外メディアから「奇跡の7分間」などと紹介され、米ハーバード大のビジネススクールで、新幹線の車内清掃が必修科目で取り上げられることになりました。

ただ、一番の栄誉は、新幹線と速度競争を繰り広げ、「技術力では負けない」と自負する欧州の高速鉄道TGVからのこんな言葉でしょう。TGVを運行するフランス国鉄総裁も視察に訪れてすっかり脱帽し、こんな言葉を残している。
「これだけはかなわない。清掃員を連れて帰りたい」

日本では、どこの街角にもある理髪店や、美容院、それに日本で旅をするには欠かせない新幹線。日頃当たり前に思って使っているものです。

しかし、これらに従事する人たちの心意気が素晴らしいです。今度利用するときには、彼らの心意気に感謝して「ありがとう」と大きな声で応えたいものです。昨年は、函館から新幹線で仙台まで行きましたが、やはり清掃の方々が素早く清掃をしていらっしゃいました。そうしてもちろん清掃が終わった後に「ありがとうございます」と声をかけさせていただきました。

それにしても、これは他国にはとても真似出来ないことではないかと思います。日本では、いわゆるエリートといわれる人ではなく、このような人たちが日本を支えているのです。それが、日本の底力です。

いくらエリートが檄を飛ばして、外国からの人々へのおもてなしを良くしなさいと叫んだにしても、外国から来るお客様と直接接してサービスを提供するのは一般の人々です。一般の人々のレベルが高いからこそ、日本は世界に誇るサービスを提供できるのです。

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2017年5月7日日曜日

北朝鮮への武器輸送支援、67歳邦人野放し ミグ21戦闘機や大量ロケット弾…国内法整備追いつかず、制裁「本気度」問われる政府―【私の論評】憲法論議を憲法典の字面の改変程度に矮小化したつけがまわってきた(゚д゚)!

北朝鮮への武器輸送支援、67歳邦人野放し ミグ21戦闘機や大量ロケット弾…国内法整備追いつかず、制裁「本気度」問われる政府

 核・弾道ミサイルの開発に絡み、北朝鮮が求める巨額の外貨や物資、技術者の移動阻止が世界的課題となる中、日本の対北制裁への取り組みについて専門家から厳しい見方が出ている。国連安全保障理事会の北朝鮮制裁委員会専門家パネルが、北朝鮮の制裁違反を繰り返し幇助(ほうじょ)したと断じた企業の日本人経営者の男(67)についても、国内法の未整備もあり制裁措置は取られていない。安保理決議には法的拘束力がある。違反を放置すれば日本の対北制裁への“本気度”を疑われかねない。(加藤達也)


 2013年7月、パナマ政府によって北朝鮮貨物船「チョンチョンガン」が拿捕(だほ)された事件が契機となり、北朝鮮海運事業に関与する香港企業が浮上した。

パナマで拿捕された北朝鮮貨物船「チョンチョンガン」 
 拿捕された船舶は北朝鮮の海運大手「オーシャン・マリタイム・マネジメント(OMM)」(本社・平壌)の所有で、キューバから北朝鮮へ向けミグ21戦闘機の胴体など大量の武器を運搬していた。

「中核的存在だった」

 調査の過程で、OMMと密接に連携する香港企業の経営者である日本人の男の存在が判明。一方、専門家パネルは安保理決議違反で14年7月、OMMを制裁対象に指定し、船舶の移動も禁じた。ところが、香港企業が複数の船舶をOMMに代わって運航、制裁は骨抜きになっていた。

 パネルは香港企業が同年12月、貨物船「グレート・ホープ」を中国から北朝鮮に移動させた事例などをつかみ、制裁違反に加担したとして香港企業を制裁対象に追加した。

 パネル報告書などによると、男は1990年代、OMMの前身の頃から北朝鮮の海運に関与。事実上のOMM東京事務所の所在地と同じ東京・新橋駅前の雑居ビルの一室に海運会社を登記していた。少なくとも香港で北朝鮮のフロント企業11社を運営し、中国人と協力して多数の船舶を動員。「海運分野で北朝鮮の制裁違反を手助けするネットワークの中核的存在だった」(海事関係者)

 ネットワークは制裁で身動きが取れない北朝鮮海運のため船舶を融通し、武器輸送などで暗躍。昨年8月、エジプトで大量の携行式ロケット弾が押収された事件にも関与していた。

法整備が追いつかず

 香港企業を経営していた日本人の男について、パネル報告書は実名を記載。日本政府関係者によると、男は現在、活動を休止しているとみられる。ただ、日本政府が安保理制裁決議違反だとして制裁や法的措置を科した形跡は見られない。

 対北安保理決議(1718、2094)は制裁違反を行った個人に対して、渡航禁止措置を科すことを加盟国に義務づける。

 ただ、日本政府は現在、在日外国人の核・ミサイル技術者や一部の在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)幹部らについて訪朝後の再入国を認めないとの措置にとどまっている。国内法の整備などが追いついておらず、今後も類似事例で制裁を科すことは困難な状況だ。

 元パネル委員の古川勝久氏は「日本は取り組みが遅れている」と指摘した上で、「国連制裁は複雑化し、専門的な技術や法的知識を要する。米国や英国のように日本政府内にも制裁専門の組織が必要だ」と話した。


文世光事件 残した教訓

 重大な犯罪に関与した北朝鮮協力者に対する捜査や取り締まり、制裁について、これまでにも日本の姿勢が消極的だと指摘されたことはあった。韓国で1974年8月15日に起きた朴正煕大統領暗殺未遂(文世光)事件は代表例といえる。

 在日本韓国居留民団(当時)の団員で大阪市出身の文世光元死刑囚=当時(22)=は73年11月、朝鮮総連の大阪地方幹部の男にそそのかされ、資金提供や射撃訓練などを受けて朴大統領暗殺を決意した。

 文元死刑囚は74年5月、大阪停泊中の北朝鮮船「万景峰号」内で思想教育を受け、7月には大阪府警の交番から実弾入りの拳銃を盗み出し、8月に渡韓。日本統治からの独立を祝う式典壇上にいた朴大統領を銃撃したが失敗し、近くの陸英修夫人を射殺した。

朴正煕大統領暗殺未遂事件
 韓国当局は、朝鮮総連(北朝鮮側)の差し金で首脳殺害を企てたテロ事件とみて、日本国内での背後関係解明も視野に捜査。朝鮮総連の指令や支援のもとに行われた犯行と断定し、「対韓国テロの拠点」である朝鮮総連への捜査や、文元死刑囚を犯行に仕向けた男の身柄引き渡しを要請した。

 一方で日本側は、初動で文元死刑囚の渡航に協力した日本人女性を逮捕したものの、朝鮮総連の関与などについて解明できないまま捜査を終結させた。共犯とみられた男の身柄引き渡しにも応じなかった。

 朴大統領は「日本は赤化工作の基地だ」と指弾。日本政府の姿勢に不満を抱いた韓国民が在韓国日本大使館に乱入するなど、日韓関係は国交正常化後、最悪の状況となった。

 事件について、北朝鮮の対日工作に詳しい西岡力麗澤大客員教授は「日本がテロの基地になっていたことを示す事例だ」とし、「北朝鮮のテロに対して日韓がともに戦う体制が構築できず、結果として70年代後半に多くの日本人が北朝鮮に拉致されたといえる。テロと戦わないと必ず新たなテロが起きるという教訓を残した事件だ」と総括している。


【用語解説】国連安全保障理事会北朝鮮制裁委員会専門家パネル

 安保理制裁委の下で対北朝鮮制裁決議違反を調べる組織。北朝鮮の核実験を受けて2009年に設置され、定員は8人。調査は国連憲章7条により加盟国への法的拘束力がある安保理決議に基づいており、加盟国は調査への協力義務がある。調査結果は毎年、報告書にまとめられ、決議案にも勧告する。

【私の論評】憲法論議を憲法典の字面の改変程度に矮小化したつけがまわってきた(゚д゚)!

北朝鮮の武器輸出に関しても、国連安全保障理事会の北朝鮮制裁委員会で制裁違反を調べる専門家パネルがまとめた最新報告書の概要が2月8日に発表されています。

この報告書では、エジプトに昨年寄港した船舶から大量の北朝鮮製武器が見つかり、同国の弾薬類の押収量としては過去最多だとしています。北朝鮮が制裁逃れの手法を駆使して大規模な武器取引を続けている実態が浮き彫りとなりました。

最終目的地や具体的な押収量は明らかになっていません。北朝鮮による武器輸出は過去の安保理制裁決議で全面禁止されているのですが、核・ミサイル開発の資金源の一つとなっている可能性が高いです。

複数の外交筋によると、船舶から押収された武器には携行式ロケット弾なども含まれていました。エジプト政府関係者は、こうした武器が隠されていたコンテナの最終目的地はエジプトではなく、取引にも関与していないと主張しているといいます。

エジプトのほか、北朝鮮と軍事協力してきたシリアやアフリカに向けられたものだった可能性もあります。北朝鮮の武器取引を巡っては2009年、バンコクの空港に着陸した貨物機から携行式地対空ミサイルや対戦車ロケット砲など総重量約35トンが押収された例があります。

2009年12月、バンコクのドンムアン空港で、大量の北朝鮮製武器を積んでいるのが見つかった貨物機
共同通信が入手した報告書の要約は、北朝鮮による制裁逃れの手法が「より巧みになっており、規模や範囲も増している」と指摘しました。北朝鮮の制裁対象団体や銀行は海外の代理人を使って活動を続けており、世界有数の金融センターを通じて送金するなど国際的な銀行システムへのアクセスも維持しているとしました。

原則として取引を禁じられた石炭などの鉱物資源の輸出も続けています。

北朝鮮は昨年2回の核実験を強行、弾道ミサイル発射を繰り返し、安保理は2度にわたる決議採択で制裁を強化したのですが、専門家パネルは「制裁履行が不十分で一貫性がない」と指摘、加盟国の「政治的意思」が欠けていると厳しく批判しました。

北に対する制裁は、結局のところあまり効果が無いようです。

以上のように闇ルートで北朝鮮の武器が世界中に販売されたり、北朝鮮が求める巨額の外貨や物資、技術者の移動がなされている実体を見ると、危惧されるのは、テロリストへの武器の流出です。

テロリストばかりではなく、工作活動に従事する各国の諜報機関も、非合法な武器の調達のため、実は北朝鮮を便利に利用しているのではないでしょうか。

北朝鮮が核開発を強力に推進している現実を見れば、現在の脅威は深刻です。北朝鮮の核兵器がテロリストの手に渡る可能性さえあります。
ISなどと協力し、北朝鮮が表に姿を現さず核テロを起こすこともあながちないともいえません。

とすれば北朝鮮は、既に東京でもワシントンでも、或いはモスクワや北京さえも、テログループにより核爆弾で吹き飛ばす能力を保持しているといえなくもありません。そのような計画がないとしても、少なくとも、そうした潜在能力を秘めているのは確かです。

これは、世界の安全保障に対する深刻な脅威です。日本国内にはなぜか、親北系組織が多いです。朝鮮総連、朝鮮学校、朝鮮出身者によるパチンコ等を一掃すべきです。北朝鮮の工作組織が、日本を活動拠点の一つにするのは、何としても阻止しなければなりません。

北朝鮮の制裁違反を繰り返し幇助(ほうじょ)した企業の日本人経営者の男(67)についても、国内法の未整備もあり制裁措置は取られていません。このままだと、北朝鮮の日本への脅威を自ら真似ていしまっているというこの事実が、日本にとって有害であるばかりではなく、世界から日本が北朝鮮の隠れた支援国と見做されてしまいかねません。

これらを排除することは、現在の日本国憲法の枠組みでも十分にできるはずです。

先日は、このブログで憲法典が変われば何もかもがすぐに変わると思い込むのファンタジーに過ぎないことを掲載しました。その記事のリンクを以下に掲載しました。その記事のリンクを以下に掲載します。 
【憲法施行70年】安倍晋三首相がビデオメッセージで憲法改正に強い意欲 「9条に自衛隊書き込む」「2020年に新憲法を施行」―【私の論評】憲法典を変えればすべてが変わるというファンタジーは捨てよ(゚д゚)!

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事では自衛隊のトイレットペーパーが自前であることや、陸自の国内のフアーストエイドキットがあまりにもお粗末なこと、陸自の自衛官の実弾訓練が米国の軍楽隊以下であることなどを例にとって、これらの事柄は憲法典を変えなくても十分できるはずのものなのに、できていないことを批判しました。

そうして、憲法典が変わればすべてが変わる単純に思い込むことはファンタジーに過ぎないことを主張しました。

本日は、世界から日本が北朝鮮の隠れた支援国と見做されてしまいかねない状況であることを指摘しましたが、この事実からしても、現憲法下でもできるはずの、北朝鮮への制裁が法整備の不十分でできない現状からみても、やはり憲法典が変わればすべてが変わると思い込むのはファンタジーに過ぎないことが良く理解できます。

世の中には憲法典のないまともな法治国家も存在します。それはイギリスです。


グレートブリテン及び北アイルランド連合王国(United Kingdom of Great Britain and Northern Ireland、通称はイギリス)における憲法とは、議会決議や裁判所の判例、国際条約、慣習等のうち、国家の性格を規定するものの集合体です。憲法典が存在しないことは、憲法が存在しないことを意味するわけではないのです。

憲法典としては制定されていないため、不文憲法または不成典憲法であるといわれています。憲法を構成する大部分は成文法(憲法的法規、law of the constitution)であり、議会によって改正・改革が行われる軟性憲法であるのですが、慣習に基づき、伝統的に憲法を構成するとされる法典が、その他の法律のようにむやみに改廃されることはありません。

成文法の他、様々な慣習法(憲法的習律、conventions of the constitution)に基づく権力(国王など)の権能の制限、貴族の権限及び儀礼の様式なども、「イギリスの憲法」を構成する要素に含まれています。

議会主権を基礎とすることから、通常の手続に従って議会が法律を制定することにより、憲法的事項を制定、変更することが可能です。

そうして、憲法典のないイギリスでは、イギリスという国の成り立ちや、国柄、法典制定の過程で論議されて生まれてきた国家に関する基本的考え方を憲法としているのです。

この考え方からすれば、憲法典の文字面を多少変えたからといって、すぐに何もかもが急に変わるというわけではないことがご理解いただけるものと思います。

もし日本国憲法に「人間の命は永遠である」と書いた途端に日本人が不死身になったり、そこまでいかなくても日本人の多くが長寿にはならないということです。

日本の対北制裁への取り組みについて、真剣に考えれば、日本という国の成り立ちや国柄、その他日本国に関する基本的な考え方も議論されなければならないはずです。そのようなことを真剣に考えてこなかったのが今までの日本です。

だからこそ今日北朝鮮への制裁が十分にできないどころか、世界から日本が北朝鮮の隠れた支援国と見做されてしまいかねない状況を招いてしまっているのです。これは、与党にも野党にも重大な責任があります。

憲法論議を憲法典の字面の改変程度に矮小化して、議論してきたつけがまわってきたのです。

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