憲法改正を訴える会合に寄せられた安倍首相 のビデオメッセージ=3日、東京都千代田区 |
安倍晋三首相は「2020年の憲法改正の施行」を打ち出した。改憲(施行)のスケジュールが明かされたのは画期的なことだ。
16年7月の参院選で、衆参ともに改憲勢力が3分の2超になっていることを考えると、今の時期に安倍首相が改憲スケジュールを示したということは、18年12月までの衆院の任期で、解散と衆院選より前に憲法改正の発議をする可能性が高いということだろう。
改憲スケジュールの中で国会発議の可能性を考えると、(1)17年秋の臨時国会(2)18年の通常国会(3)18年秋の臨時国会-と3回ある。
国会発議の後に国民投票が実施されるが、憲法改正では発議から180日以内というのが常識になっている。国民投票と衆院選が同日の方が与党有利になるだろうから、18年12月の衆院任期前に日取りを選べる(1)17年秋の臨時国会または(2)18年の通常国会での発議の可能性が高いだろう。
18年12月は、衆院任期終了とともに天皇陛下のご譲位も予定されている。このときに、憲法改正の国民投票と衆院選のダブルをぶつけてくるというのが、今の段階での第1シナリオではないだろうか。となると、(2)18年の通常国会後半での発議が第1候補になる。
もちろん、情勢次第では、衆院選の後に改憲スケジュールをこなすこともありえる。この場合には、今年中に解散と衆院選(まさに改憲選挙)を行い、(1)17年秋の臨時国会で発議という手順になるのが第2シナリオだろう。
改憲の内容について安倍首相は、9条に自衛隊に関する条文を追加する意向を示している。「自衛隊は合憲」とする民進党と、「違憲」とする共産党は股裂き状態になり、選挙協力に支障が出ないのか、政治的には興味深い。
安倍首相は教育無償化も改正の項目として例示した。民進党と共産党は、ともに「中身としては賛成だが、憲法改正には反対」という国民には分かりにくい行動になる。
「憲法改正なしでも教育無償化は可能だ」と主張しても、「時の政権の意向に左右されずにしっかり国の基本となるから、憲法改正した方がいい」と反論されてしまうだろう。そうなると、民進党と共産党は苦しい。
しかも、「自衛隊合憲」と「教育無償化」で改憲勢力は一致できる。国政選挙を考えると、「自民党、公明党、日本維新の会」対「民進党、共産党」という対立図式となり、「自公維」に有利に働くだろう。
ちなみに「財政規律条項」については、民進党の蓮舫代表や自民党の一部が必要だと主張しており、両党で差別化できない。そもそも財政規律条項を憲法改正で入れると、緊縮財政の傾向がさらに強まり、日本経済にとっては害悪である。
この点を考慮し、安倍首相は自衛隊合憲と教育無償化を改正事項に掲げることで、財政規律条項を憲法改正の俎上から意図的に落としたのではないか。
なお、国民投票法では、発議は個別発議なので、憲法全体を示す必要はない。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)
【私の論評】安倍首相による憲法改正は、まともな憲法論議の最初の偉大な一里塚(゚д゚)!
総裁任期延長を伝えたAbemaTV |
そうなれば首相にとって第1次と合わせた「9年8か月の史上最長政権」という金字塔も現実味を帯びることになります。その場合の首相の任期満了は2021年9月で、次回も含めて2回以上の解散断行のチャンスが出てくることにもなる。
そうして、安倍首相にとって遠いゴールを見据えての解散戦略の中核となるのは「在任中に成し遂げたい」と明言した憲法改正の実現です。昨年7月の参院選での与党圧勝でいわゆる「改憲勢力」が衆参両院で3分の2を超え、数の上では衆参両院での憲法改正発議が可能な状況となりましたた。
このため、首相は衆参両院の憲法審査会での改憲条項の早期絞り込みに強い期待を表明し、二階幹事長も「今国会での発議」にまで言及していました。
ただ、昨年秋にスタートした憲法審査会での各党協議は、憲法問題も絡む天皇陛下の「生前退位」をめぐる与野党協議が先行しているため、改正が必要な条文などの詰めの協議は秋の臨時国会以降になると思われます。
ただ、昨年秋にスタートした憲法審査会での各党協議は、憲法問題も絡む天皇陛下の「生前退位」をめぐる与野党協議が先行しているため、改正が必要な条文などの詰めの協議は秋の臨時国会以降になると思われます。
こうなると、秋の臨時国会で与野党協議が進み、2018年の通常国会の早い段階で憲法改正の発議にこぎつけ、夏に改憲国民投票を実施するのがベストと考えられます。
7月2日の都議選を理由に通常国会の大幅延長は想定されていないため、政府・与党は9月末か10月初めには臨時国会を召集する考えのようです。その場合、首相が臨時国会での解散断行に「色気」を示せば、与野党の改憲協議は停滞し、18年春の国会による改憲発議も絶望的となります。
しかも、自民党の全国情勢調査などでは「次回衆院選では自民党が30~50議席減」(自民選対)との予測もあり、解散断行によって衆院の改憲勢力は3分の2を割り込み、早期改憲発議自体が困難になる可能性もあります。となれば、首相が今秋もしくは年末解散を見送って、「衆参3分の2」を維持したまま来夏の改憲国民投票に合わせての解散・衆院選という「ダブル選」日程が"本命"として浮上してくるのではないかと考えられます。
首相は1月5日夕の時事通信グループの新年互礼会の挨拶で解散について「今年は全く考えていないとはっきり申し上げておきたい」と発言しました。居合わせた二階幹事長や山口那津男公明党代表ら政府与党幹部の表情は変わらなかったのですが、同夜に首相周辺が「首相から『今年ではなく、今月の言い間違いだった』と聞いた」と解説したことで新聞各紙は「首相、年内解散を否定」とは報道せず、「首相が言い間違い」とする囲み記事でお茶を濁していました。
7月2日の都議選を理由に通常国会の大幅延長は想定されていないため、政府・与党は9月末か10月初めには臨時国会を召集する考えのようです。その場合、首相が臨時国会での解散断行に「色気」を示せば、与野党の改憲協議は停滞し、18年春の国会による改憲発議も絶望的となります。
しかも、自民党の全国情勢調査などでは「次回衆院選では自民党が30~50議席減」(自民選対)との予測もあり、解散断行によって衆院の改憲勢力は3分の2を割り込み、早期改憲発議自体が困難になる可能性もあります。となれば、首相が今秋もしくは年末解散を見送って、「衆参3分の2」を維持したまま来夏の改憲国民投票に合わせての解散・衆院選という「ダブル選」日程が"本命"として浮上してくるのではないかと考えられます。
時事通信グループの新年互礼会で挨拶する安倍首相 |
ただ、永田町では「解散時期について首相が言い間違うはずがない。思わず本音が漏れただけ。軌道修正は自民党議員が安心して選挙活動をなまけないようにするため」(自民長老)と解説する向きが多いようです。
政府・与党内には来年の解散について「追い込まれ解散になりかねない」との危惧もあります。しかし、内閣支持率が6割前後をキープし、自民党支持率も4割前後という状況が続けば、任期満了が迫っても安倍政権が追い込まれることはないのも事実です。もちろんトランプ政権の暴走やアベノミクスの失速といった政局運営の不安要素は少なくないのですが、"安倍1強"が続いていれば、あえて解散せずに過去1回しかない任期満了選挙も有力な選択肢といえます。
やはり、来夏の改憲国民投票に合わせての解散・衆院選という「ダブル選」日程が"本命"ということになりそうです。
いずれにせよ、ブログ冒頭の高橋洋一氏の記事では「自衛隊合憲と教育無償化を改正事項に掲げることで、財政規律条項を憲法改正の俎上から意図的に落としたのではないか」としていますこれについては、現状を考えた場合緊急を要するものであると思います。
先日はいわゆる一部保守層による無責任な憲法改正論議について批判しました。その記事のリンクを以下に掲載します。
【参院予算委】安倍晋三首相が民進党に改憲案提出を要求 蓮舫代表は答えず… 首相批判に終始―【私の論評】土台が狂った日本国憲法典の字面を変えてもまともな憲法はできない(゚д゚)!
詳細は、この記事を読んでいただくものとして、この記事では、憲法改正はGHQによってわずか1週間程度で草案された日本国憲法はそもそも土台が狂っており、日本国憲法の字面を変えるだけでは、まともな憲法はできないことを主張しました。
そうして、まともな憲法をつくるなら一度帝国憲法に立ち返ってそこから、新たな憲法をつくるということをしなければ、まともな憲法など永遠にできないと主張しました。
以下に日本国憲法と帝国憲法の比較を示した表を掲載します。
大日本帝国憲法と日本国憲法の相違点 |
以上の表は、第日本国帝国憲法について若干の間違いはありますが、それにしても、この表からですら、そもそも日本国憲法は日本人のために作られたものではないことがはっきりわかります。
さらに、大日本国帝国憲法制定時の世界水準で考えると、大日本帝国憲法は世界の他の先進国と比較して、かなり民主的でありあらゆる点で斬新で進んだものであったことは確かです。
ただし、制定された時代は日本国憲法より遥かに古く、現状には即していない部分も多々あります。しかし、それでも日本という国ができときの経緯やその後培われた日本国の国柄を反映したものです。日本国憲法にはそのような内容は皆無です。
だからこそ、本来の憲法論議をしようとした場合、日本国憲法の条文の字面を変えただけではまともな憲法にはならないのです。
しかし、まともな憲法論議をするということになれば、少なくとも5年〜10年の時が必要です。そうなると、緊急を要する事柄に対しては、対応できないということも十分考えられます。
大日本帝国憲法制定の中心となった伊藤博文公 |
たとえば、自衛隊がそうです。自衛隊がすでに存在して、自衛隊員の方々が、場合によっては命の危険にさらされながら、我が国、我が国民を守ろうとしているときに、自衛隊は違憲だとか、法律違反ということにでもなれば、これこそ自衛隊員の方々に失礼なことであるし、自衛隊の方々の士気をくじくことになります。
そうして、教育の無償化も最近の日本の若者の姿をみれば、緊急を要する課題です。現在の若い世代は、将来の日本を担うわけですが、その若い世代がまともな教育も受けられないということにでもなれば、日本の将来は危ういです。
だから、このような緊急を要する、課題を克服するためには、日本国憲法典の字面を部分的変えるということもやむを得ないところがあります。
しかし、かつて伊藤博文が中心として10年もの年月をかけて、日本の国柄などを反映した憲法を草案しその後世界の伍することができたように、これからの日本の運命を左右する新たな憲法も、そのくらいの時間と手間が必要になるのはいうまでもありません。
安倍首相はまずは日本国憲法の部分改正をした上で、残り全任期をまともな憲法論議が日本でできるように雰囲気を醸成し、それだけではなく将来日本国憲法は完璧に葬り去り、新たな日本人による日本人のための憲法づくりができるように努力していただきたいものと思います。
戦後70年にもわたって、日本国憲法典の一字一句も変えることすらできなかったわけですから、憲法典に手が加えられたとしたら、それはそれで画期的なことです。
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