2007年7月6日金曜日
次世代IT(3)
前回の次世代IT(2)で述べたように、現代ITの潮流が情報処理からコミュニケーションに比重が移りつつあります。では、この潮流に適合するために、次世代ITには何が求められるのでしょうか?
次世代のITは、結論からいうと、これもまたドラッカーが言っている通り、『認知』の問題です。次世代IT(1)でも述べたように認知科学が重要視されるようになるということです。
さらに、web2.0の興隆に伴い「所有から利用へのITマネジメント」に移るということで、特に個人ユーザーに対してweb2.0によるサービスを多様化・深耕して惹きつけ多数のユーザーを集めることに成功する企業が興隆するということです。集客のためにはいかにうまくサイバーコミュニティーを構築するかが重要になります。あらゆる方法を駆使して巨大なサイバーコミュニティーを作り出すか、多数の小さなサイバーコミュニティーを束ねるかが最重要課題となります。
ドラッカーが言っていたようにかつての活版印刷技術における印刷から出版への流れと同じく、既存のITから認知科学(特に言語学、心理学)や社会学を応用し都市を文明化させるコミュニティーの構築が主な課題となります。都市の文明化については、http://yutakarlson.blogspot.com/2007/04/web20.html参照。ITはようやっと人間復権の時代へと向かいます。人間を知ることが原動力となります。従来のITは基盤づくりの役割として残り、現代でいう鉄道事業や電気・水道事業と同じような存在となります。
現状ではたとえば、ブログをつくったりするにしても、タグをどう付与するかに頭を悩ませる人は多いのではないでしょうか?インターネットの世界を飛び回る言葉を主成分分析やクラスター分析などの多変量解析はできます。でも、これらの分析を実際に役に立たせるためには、人間を知らなければなりません。インターネットの中の言葉が必ずしもユーザーの本音を表しているわけではありません。今後ますます認知科学の応用分野が広まっていきます。コミュニケーションの前提のなかに「コミュニケーションは、私たちの中の一人から私たちの中のもう一人に伝わる」というのがありました。私はいかに、ユーザーや顧客と経験を共有することができるかが今後のITの本質になると考えます。
この分野奥が深いので、これからも機会を見つけてこのテーマで掲載させていただきます。
2007年7月4日水曜日
次世代IT(2)
次世代ITに関してはこのブログでも以前とりあげさせていただきました。
http://yutakarlson.blogspot.com/search?q=%E6%AC%A1%E4%B8%96%E4%BB%A3IT
現在から将来にかけてのITの動きはある一定の方向に進んでいます。それは、以下のような構図です。
過去 現在 将来
【データ処理】⇒【情報処理】⇒【コミュニケーション】
この構図簡単に説明すると、従来はコンピュータの能力も低かったので、主にデータ処理が行われていました。この時代私は、NECのN5000シリーズで様々なデータ処理を行っていたのを覚えています。そのころから、LANPLANという統合パッケージソフトがあってLANwordというワープロや表計算ソフトがあり、インターネットとグラフィックを除けば基本的には現在のパソコンとあまり変わりない環境だったと思います。そのころは、インターネットではなくパソコン通信の時代でした。会社ではN5000シリーズ、自宅ではPC9800シリーズを使っていました。自宅ではPC9800シリーズでパソコン通信をしていました。大分県のCOARAが流行っていて、パソコン通信を通じて、大分にも友人ができ、女の子たちが大挙して北海道までスキーツアーにきたなんてことがありました。この頃は通信料金が高く、一番高い時には4万円くらいかかったことを覚えいます。いずれにせよ、この頃のパソコン、オフコン(懐かしい言葉です!)は、処理速度が低く記憶容量が低かったのでグラフィックは単純なものしかできず、動画などもなく、文字情報がほとんどで、文字通りデータ処理という感じでした。
おっとついつい昔のことを思い出し話が長くなってしまいました。話を本題に戻します。現代に関しては、パソコンなどの処理速度、記憶容量が大きくなったため、いわゆる情報処理に比重が移ってきました。データを集約した情報の処理です。グラフィックの処理速度がかなりあがりました。動画の配信などが可能になり、最早文字情報だけでなく、音声画像のやりとりが可能となりました。会社の中でもデータのやりとりよりは情報のやりとりが主流となってきました。一昔前だとシステム部門の白衣を着た技術者の人がやってきて、厚さ30センチもあるようなコンピュータフォームを持ってきて、「はい、できました」とポンと偉い人の机の上にデータの羅列を置いていく、というような感じでしたが、現代ではメールで情報のやりとりを行い、必要なデータはエクセルなどに集約してメールに添付するというように変わってきました。
現在から将来に向けて今度はコミュニケーションが重要となってきます。情報とコミュニケーションは違います。では、コミュニケーションとは何でしょうか?
ここでは私の言葉ではなく、ドラッカーの言葉を拝借します。
※コミュニケーションとは?
■受け手に「知覚」されて成立する
大工には大工の言葉で話せ。(ソクラテスの言葉)
■受け手に「期待」されて成立する
人は期待しないものは受入れない。たとえ伝わったとしても、全く別のこととして認識される。
■受け手に対する「要求」を伴う
コミュニケーションは常に受け手に対する要求を伴う。
■情報とは異質だか相互依存関係にある
情報が多すぎるとかえってコミュニケーションは成立しにくくなる。
※コミュニケーションの前提は?
■目標管理
目標管理をすることにより、部下は上司の微妙な立場を理解する。上司も部下の考えを理解する。
■経験の共有-コミュニケーションとは私達の中の一人から私達の中のもう一人に伝わるもの
※コミュニケーションではないもの
単に「上から下へ」「下から上」へとコミュニケーションは成立しない。(私の補足:コミュニケーションとは単なるホウレンソウ(報告・連絡・相談)ではない。ホウレンソウを密にしていても、必ずしもコミュニケーションが成立しているとはいえない)
現代ITの潮流が情報処理からコミュニケーションに比重が移りつつあります。では、この潮流に適合するために、次世代ITには何が求められるのでしょうか?
本日はもうすでに話が長くなってしまったので、この問いに対する私の答えは次の機会に譲ります。よろしくお願いします。
2007年6月25日月曜日
次世代IT(1)
皆さんはハーバード・ビジネスの2001年12月号をご覧になったでしょうか?
【記事名】『ウェブ・サービス・アーキテクチャの可能性 「所有から利用へ」のITマネジメント』
【著者名】ジョン・ヘーゲル三世 12アントレプレナーリング CSO ジョン・シーリー・ブラウン 12アントレプレナーリング CIO
【要約】
企業が専有の情報システムを確立する時代は終わりつつある。今後は必要に応じて、ウェブでシステムを購入すべきだ。そうすればデータ互換の問題に悩まされることなく、常に最新のITを活用できるようになる。さらに、ここからは私の考えですが、ソフトウェアの流通を考える必要がなくなる。一昔前はソフトウェアというとすべてパッケージソフトでしたから、パッケージの物流を考える必要があったが、それがなくなる。
私は、この記事を読み、まさしくこうなるであろうと、予測していました。そうして、昨年の秋頃からweb2.0ということがさかんにいわれ始めました。しかし、私の予測ではこの記事の著者のと同じように企業のことばかり考えていました。まさしく、多くの企業がウェプによるサービスを受けるようになりました。
しかし、本当のインパクトは、企業ユーザーによるものではなく、一般ユーザーによるものでした。最近盛んに取りざたされているWEB2.0は、一般ユーザーに対するサービスが大きな話題となっています。2001年当時だと、googleのような企業がでてきて、ユーザーに対して現在のような無料のサービスを提供するなどということは考えにくい状況でした。だからこそ、そこに目が行かなかったのだと思います。
とはいいつつも、この予測は一部を除いて完全に当たったといえます。web2.0について、ブロガーの中には気軽に「web2.0なんて言ったって、特に何にもないですね~」などというので、特に何もないなどと受け取られる場合もあるようです。
しかし、これは大きな変化であって 、2001年当時の状況に立脚して再定義をすると「インターネットにアクセスするためのブラウザを、OSのように活用して提供するサービス群の総称」位の内容にはなると思います。
この大きな変化にともなう次世代ITに関して私の思うところを簡単に記載しておきます。当然のことですが、これからのIT企業では、パッケージソフトを開発し流通させようなどと考える企業に明日はないと思われます。
それとサイバーコミュニティーを最大限に活用する。あるいは、活用できるノウハウを形成できる企業が生き残っていくものと考えます。そのために重要になるのは、認知科学の中でも言語学、さらに社会学も重要になってくると思います。
次回より、数回にわたりこの内容に関して掲載していきたいと思います。
2009年5月26日火曜日
ローソンの業務改革を支える次世代システム「ローソン3.0」とは―どんなシステムも結局は人次第?
アメリカ・オハイオ州に住むJ.J.ローソン氏が1939年に開店した牛乳販売店(Lawson's)は、そのおいしさが評判となり大いに繁盛したという。
その社名とミルク缶のトレードマークを引き継ぎ、1975年6月に大阪府豊中市に日本での第1号店を開店したローソンは、現在コンビニエンスストアの 「ローソン」を始めとして、「ナチュラルローソン」、「ローソンストア100」、「ローソンプラス」(ローソンの生鮮強化型ハイブリッド店)など客層に合 わせたフォーマットを活用し、地域のニーズに合せた出店・改装を推進しつつある。
2009年2月28日現在、ローソン・ナチュラルローソン合せて約8602店舗、昨年9月に連結子会社になった九九プラスの「ローソンストア100」「SHOP99」を含めると47都道府県で9527店舗となり、1日平均800~900万人の顧客に利用されている。
3月末に予定していた「am/pm」を展開するエーエム・ピーエム・ジャパンの全株式および債権の譲渡契約は頓挫した形となったが、CSV各社とも既存 店売上高が好調に推移するとともに、taspo(たばこ自動販売機用の成人識別ICカード)の稼働開始に伴う来店客数の増加やATMの手数料収入の増加な どが増え、2009年2月期の営業収入は3494億7600万円(前年同期比16%増)、営業利益が491億円(前期比105.5%増)となった。
また、マイローソンポイントやローソンパス(Lパス)という独自のロイヤリティマーケティングが浸透。カード会員の利用率は売上ベースで14%となっている。
●データは主観的ではなく客観的に活用すべき
ローソンには、POSデータの購買履歴や会員の特性データなどが豊富に存在し、コンビニ業界では代表取締役社長CEOである新浪剛史氏が次々に打ち出す 事業戦略でイノベーションリーダーのイメージが強いが、目下の課題は、2000年頃からを境に出店数の伸びの鈍化に伴い売上も鈍化傾向にあることだ。
しかし、情報の分析力を駆使することで売り上げ、利益とも伸びる可能性は大きいと語るのはローソンの常務執行役員CIOでITステーションのディレク ターを務める横溝陽一氏だ。2009年5月14日に開催された「第14回データウェアハウス&CRM EXPO」の基調講演で、ローソンの次世代ITシステムと業務改革を解説した同氏は、「日々集まる膨大なデータを利用しきれているかといえば、まだまだ取 り組むべき余地はある」としながらも、今後もIT強化による業務改革を推し進める意志を示す。
三菱商事出身でi2テクノロジーズ・ジャパンの社長も務め、2年前にローソンのCIOに着任した横溝氏は、それまで「PRiSM」と呼ばれていた店舗シ ステムを再定義し、次世代の本部系システムと店舗系システムを「ローソン3.0」と名付け、それを使った業務改革をPRiSMとした。
情報分析力を武器とする企業を目指すという横溝氏は「コンビニには日々膨大なデータが集まってくる。それを見える化して科学的かつ客観的に情報を活用し ていく」と説明。多くの企業は自社の業務を正当化するため情報を主観的に利用しているが、ローソンはフランチャイズビジネスのため、蓄積する膨大な情報を 科学的なデータに加工し、客観的次のアクションに結びつけることで、顧客はもちろん、フランチャイズオーナーや社員、クルーからも選ばれるローソンになる のだという。
この、“情報分析力を武器とする”と選ばれるローソン"に横溝氏は何度もこだわる。
●目指すは廃棄ロスと販売機会ロスの撲滅
PRiSMによる業務改革とは、店舗と本部の双方が従来のやり方や常識を否定し、顧客基点の発注と品揃えをするためにイニシアティブをとり、商品の廃棄 ロスと販売機会ロスの2大ロスの削減を目指すこと。それを支えるIT基盤がローソン3.0となる。また、現状の縦割り組織を情報を軸にして横串を通すかが 課題だという。そのため、10年来使用してきたLotus Notes/Dominoを捨て、ユニファイドコミュニケーション型のソリューションで本部の情報基盤を再構築した。
そして、それらの要となるが、本部集約型の情報分析機能を担う「インテリジェンス・コンピテンシー・センター」(ICC)である。ローソンには、本部と 7支社に1000人のスパーバイザー(SV)を抱え、8600の店舗で12万5000人のクルーが働き、800万人のカード会員が関わっている。また、物 流部門としては53カ所のチルドディストリビューションセンター(CDC;主に弁当や総菜を担当)と27カ所のドライディストリビューションセン ター(DDC;菓子や日用品など)、38カ所のフローズンディストリビューションセンター(FDC;アイスクリーム等)が稼働し、1200社の取引先から 商品を調達するなど、非常に精緻な仕組みを構成している。
●生産者主導から消費者主導への新たなCRM
従来は本部、支社、物流網までを主軸オペレーションとしていたが、今後はICCで顧客から取引先まで全てを対象に含めるため、次の2つの施策をとるとい う。1つはバリューチェーンマネジメント。顧客起点の品揃えや発注業務のために、売上計画の精度をSCMで向上させ、販促やプロモーション、値引き戦略な どを企業全体として同期化させる。
また、2つ目はリアルタイムマーケティング。顧客を巻き込んだ商品開発と、販売計画実現のための同期化したマーケティング施策を実施する。
「過去の情報を基にした需要予測は古い時代のマーケティングであり、これからはデマンドシェーピング(新たな需要を形成すること)をしていく時代。ケータイやインターネットを活用し、生産者主導から消費者主導への新たなCRMを実現させる」(横溝氏)
そのため、ローソン3.0では、店舗・SV・本部といった3層の情報構造による現場起点型に加えて、マルチベンダーで情報基盤を入れ替え、情報分析機能を本部に集約し、個別店舗の顧客対応能力を高めていく本部発信型のインテリジェンス機能を提供していくという。
●定性情報の見せ方と定量情報の共有の方法とは
横溝氏は、「定量情報をどのように見せるか、あるいは定性情報をどのように共有するかが大切」だと強調する。ローソンでは機会ロスと廃棄ロスを削減する ため定量情報をいかに見える化して次のアクションに結びつけるかが課題だったという。情報を集める方法はいくらでもある。しかし、集めた後にクレンジング して使えるデータとすることが難しいというわけだ。
特にSCMではデータの精度が計画の成否を左右する。そのため、ICCにおいて情報を効率的に集め、使える形に加工する仕組みと、一元的に分かりやすく見せる工夫によって、情報に基づいた施策を実行する情報分析プラットフォームの構築を計画している。
「しかし、データを自社の強みにするのは簡単ではない。世の中は急速に変化しており見方も非線形に変わる。この大不況においては、自社のセンシティビティを磨いてアクションを的確に実施できる企業が勝ち残る」
また、定性情報の共有にはセールスフォース・ドットコムを活用。クラウドソリューションによって、本部方針の浸透からベンダーとの情報共有、有能なオー ナー候補の発掘、顧客の苦情共有といった定性情報のリアルタイムな共有と分析を可能にすることで、将来的には1200社のベンダーや12万5000人のク ルーともコミュニケーションを可能にしていくという。
●ローソンのICCを強化するDB・開発・分析能力
さらに、ローソンのICCにはいくつか特長あるシステムが使われている。その1つの「FOCUS」は、ローソンのデータ基盤として現行の商品販売動向や 店舗発注速報、商品客層分析などの情報系画面を網羅的に保有するシステムだ。店舗日単位で400日、店舗週単位で104週の50テラバイトのデータベース を抱え、仮説・検証、進捗確認を月次・週次・日次で行う。
また、「SLiM」は基礎データをFOCUSから引き出し、LINUXのコマンド・シェルスクリプトを使って、業務改革に必要な社内アプリケーション開 発や運用をアジャイルに実施するシステム。フラットファイルでのデータ管理、全店舗分のレシートデータを保持するデータベースとしての役割も持つ。
加えて、アクセンチュアと組みBPO(アウトソーシング)によって、マーケティング施策のROIを実施している。ローソン会員800万人の購入実績デー タの一部(約1億レコード)を利用し、BIで分析した定量的評価結果を施策期間中の収益押し上げ効果として測定。特定セグメント顧客が購入しやすい商品を リストアップし、販促の対象商品選定の参考にしているという。
CIOに着任した当時、横溝氏は経営と同期するIT部門を目指したが、現在は経営を変革するIT部門を目指しているという。
「経営課題に片足を置き、もう片足をITに置き、経営課題を解決するIT施策を自らの頭で考えることが重要」と持論を語る同氏は、IT施策を経営戦略に 仕立て上げ、それを実行し、経営改革の効果を継続的に創出することをビジョンに、選ばれるローソンを実現していくという。
どんなシステムも結局は人次第?
結構小難しい表現でいろいろ書いてありますが、結局は新たなシステムを導入するということです。特に気になるのが、「ローソンでは機会ロスと廃棄ロスを削減する ため定量情報をいかに見える化して次のアクションに結びつけるかが課題」というところが気になるところです。
どんなに、優秀なシステムを入れても、小売店の業績は結局は人次第ということです。イトーヨーカドーや、セブンイレブンなどでは、良くシステムに頼りすぎた失敗が報道されていました。イトーヨーカドーでの衣料品の失敗は記憶に新しいところです。これは、まず、あまりに過去のデータに頼りすぎたということと、バイヤー自身が自分で着たいとも思わないようなものを仕入れていたというのが大きな要因でした。
もっと具体的な私の体験からいうと、今から4~5年前くらいでしょうか、非常に全国的に冷夏のときがありました。特に7月の初旬は涼しいというより寒いくらいでした。しかも、北海道だと最高気温が18度くらいの時がありました。
その日私は行き着けのセブンイレブンにいって、かなり違和感を覚えたことがあります。バイクに乗っている人などは、よほど寒かったのでしょうダウン・ジャケットを着ている人が、セブンイレブンの駐車場にとまっていたのを記憶しています。私自身は、お酒を飲みますが、この頃は、お酒もビールではなくて、燗酒を飲んでいました。冷麺など食べるなど思いもつかず、家では、暑い麺や、鍋物なども食べていたと思います。
ところが、そのセブンイレブンの麺の売り場(インスタントやカップ麺ではない)で驚いたことには、そこに並んでいる麺類が全部冷麺だったということでした。季節がら、この陳列は間違いはないでしょうが、あんなに涼しいというより、寒いのであれば、やはり普通の暖かい麺を陳列しておくべきだったと思います。
しかし、過去のデータだけにたよれば、あの陳列は正しいということになります。しかし、お客様立場からすれば、暖かいものも欲しいと考えた人も多かったのではないでしょうか?そうした場合には、全部を暖かい麺に変えないまでも、一部でもおくべきだったと思います。そうして、売れ行きを見ながら、調整をしてくなどのことが必要だったと思います。
普通はこんなことは忘れてしまいがちでずか、その次の週に九州に出張したので、良く覚えているのだと思います。九州では、温度が30度を超えていました。さきほど、燗酒を飲んでいたという話を掲載しましたが、九州では、もちろんビールを飲みました、昼間暑い中を散々歩き回ったので、本当に美味しいビールでした。泊まったホテルの1階に「つぼ八」がはいっていたので、そこで晩御飯といっしょにいただきました。周りの人や店の人にも、北海道から来たというと、とても親切にしてもらえました。
九州でもセブンイレブンに入ってみましたが、ここでももちろん冷麺ばかり売っていましたが、ほとんど違和感をかんじませんでした。
2日いただけで、九州から北海道にとんぼ返りしましたが、何とそのときの函館の温度は18度でした。あいかわらず、寒い気候が続いていたわけです。また、いきつきけのセブンイレブンに行ってみましたが、麺売り場はあいかわらず、冷麺ばかりでした。すでに、何次にもわたって、大規模なシステムの開発も行ってきた、コンビニ業界のトップであるセブンイレブンにして、この程度なのかと思いがっかりしたというのが、本当です。
次の年になって、セブン&ワイ・ホールデングスの会長である、鈴木敏文氏が書籍を出版され、私も読んでみました。何と、その中で、会長は、私と全く同じような体験をされたようで、お客様の立場に立つことの重要さを切々ととなえていました。私も全く同感です。残念ながら、いかに精緻なシステムであったとしても、コンピュータシステムには過去のデータが蓄積されているにすぎません。今このときの情報や、明日、明後日の情報が入っているわけではないのです。
私自身は、小売店でものを販売するということは、目の前のお客様や、目に見えなくても、お店に来ていただける可能性のあるお客様に関して、お客様の立場に立って、こうしたら売れるだろう、こう変えたら売れるだろうという仮説をたてて、実際に販売してみて、その結果を詳細に見るための道具がコンピュータシステムだと思っています。そのための情報を流すとか、そのたの意見交換などスムーズにできるようなシステムであれば良いですが、そうでなければ、上記のような失敗をする可能性が大です。
いくら、コンピュータシステムが発展して、素晴らしいシステムができたとしても、あくまで人間が人の意向や、要望を見抜く技量がなければ、何の価値もないと思います。結局は、従来の分析重視型よりも、心理学とか、認知学、言語学などの立場からのアプローチとそれを支援するシステムという考え方が成功を収めるのではないかと思っています。
さて、ローソン3.0はどのような活躍をするのでしょうか。私の抱いている危惧など、とっくに熟知していて、そのための対処など十分にしてあり、全くの私の杞憂なのかもしれません。
しかし、そのへんを見極めるためにも、今後のローソンの動向を見ていきたいと思います。
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2009年1月23日金曜日
顧客のITガバナンス確立の企てに協力しませんか-情報の使い手は誰か?
顧客のITガバナンス確立の企てに協力しませんか(この内容すでにご存知の方は、この項は読み飛ばしてください 日経BP ITPRO)
最近、ユーザー企業の人からITガバナンスの話を聞くことが多くなった。ITガバナンスはユーザー企業にとっては永遠の課題だが、いくつかの事情で最近 ちょっとブームらしい。ITベンダーから言えば、「あまりカネにならない」領域。ただ、このご時勢、“ソリューションプロバイダ”の真価が問われている。 ITベンダーとしてもソリューションを考えたい。
まずITガバナンスって何、という話だが、私がゴチャゴチャ言うよりも、COBITの定義で十分。いわく「ITガバナンスは、経営陣および取締役 会が担うべき責務であり、ITが組織の戦略と組織の目標を支え、あるいは強化することを保証する、リーダシップの確立や、組織構造とプロセスの構築であ る」。
分かりやすい定義だ。そして極めて当たり前。だけど、ほとんどのユーザー企業はできていない。ITベンダーの人なら「客なんて、そんなものよ。こ の話、やはりカネにならないな」と思うだろう。しかし、ちょっと待て、である。ユーザー企業の問題意識にしばし付き合っても、損にはなるまい。
ユーザー企業の間でITガバナンスに関心が高まってきたと言っても、多くの場合、経営者が問題意識を持っているのではない。「うちもITガバナン スに取り組まなければ」と言っているのは、たいていはシステム部門である。まあ、そこが日本の企業ITの哀しい現実で、弱体化したシステム部門の復権につ なげたいという思いが見える。
大半の企業では、経営者はITに関心がない。というか、忙しすぎてITなんぞに意識のリソースを割けないといったほうが正しい。こんなご時勢なん で、「不要不急のIT投資は凍結」と言っておしまいである。で、新規案件でやることのなくなったシステム部門は、「それなら長年の課題であるITガバナン スに取り組むか」という話になる。
しかも、J-SOX対応がとりあえず一段落した。そう言えば、内部統制確立のためのフレームワークにCOBITを使った。その余勢を駆って、 COBITベースでITガバナンスの確立にも取り組もう・・・。システム部門の気持ちは分かるが、これでは大変なことになる。ITガバナンスを単なる統制 と読み替え、一方的にルールを決めて利用部門に押し付けたら、結果はミゼラブルだ。
ITガバナンスを確立・強化するためには、当然のことながら経営者のリーダーシップが前提。それに利用部門の協力も不可欠だ。リーダーシップも協 力もない中で、弱体化したシステム部門が「IT投資・運用ルール」なるものを作ったらどうなるか。大変な反発を受けるのが関の山で、ひょっとしたら黙殺さ れておしまいなんてことになるかもしれない。
まずは、忙しくてITなんぞにリソースを避けない経営トップに代わり、経営の視点でITを企画する強力なCIO機能がいる。そのためには経営陣と システム部門との強いリレーションが必須。さらに、システム部門と利用部門の円滑なコミュニケーションも不可欠だ。つまり、システム部門が経営陣や利用部 門と会話でき、課題や情報ニーズをくみ取れる体制がなければ話にならない。ルールなんぞは、その後だ。
そんなわけで、“システム部門主導のITガバナンス”の企ては、あっさりと瓦解するだろう。では、そんなユーザー企業を前にした時、ITベンダーとしてはどうするのか。「やはりカネにならない」と放っておけばよいのだろうか。
かつて、と言っても、ほんの数カ月前までだが、ITベンダーの多くが「選別受注」を口にした。危ない案件、つまりITガバナンスが怪しい企業の案 件は断ると豪語した。ITベンダーの中でも心ある人たちは、「ユーザー企業のCIO機能やシステム部門の強化に向けて我々も協力しないと、日本のITの未 来は暗い」といった話をしていた。
さて、景気がこうなってしまったが、ITベンダーはかつての発言を忘れてはいないと思う。案件受注は極めて厳しい情勢だが、パートナーとしてユー ザー企業のITガバナンスの確立・強化に向け、少しは協力してみてはどうか。COBITの成熟度診断もよいが、経営者と対峙できるシステムコンサルタント のノウハウや、利用部門に飛び込める営業担当者のリレーション構築力を、ユーザー企業のシステム部門に伝授することだって考えていい。
ユーザー企業のITガバナンスが強化され、システム部門が復活してくれば、ITベンダーにとっても中長期的にカネになるはずだ。くれぐれも、IT ガバナンスが欠如した、とんでもない案件に、「背に腹は変えられぬ」とばかりに食い付いてはいけない。そんなことをすれば、ユーザー企業との健全な関係を 作ろうとしてきた、これまでの努力はすべて水の泡である。
情報の使い手は誰か?
今日コンピュータを使える能力、いわゆるコンピュータ・リテラシーは当たり前のものとなっています。一昔だと、ユーザー・インターフェイスが良くなくて、コンピュータを使うこと自体が大変なことだったこともありました。それこそ、メインフレームがあって、忘れた頃にメインフレームから月に一度大量のデータが紙で吐き出され、もうそのころには情報の鮮度も落ちて手遅れとか?
しかし、現在ではそのようなことはなくなり、キーボードを叩ける人なら、誰でもかなり簡単にコンピュータを使いこなせるようになってきました。今では、誰もが短期間研修でも受ければ、相当なことができるようになり、コンピュータ・リテラシーは当たり前のものとなりました。
ただし、情報リテラシー(情報能力)関しては、まだまだです。本来あるべきところまではきていません。もう、現段階ではコンピュータを使うことではなく、情報を扱うことが当たり前になっていなければならないはずです。
しかし、そうなっていないにはそれなりに原因があります。それは、無論ITガバナンスにも深くかかわってくることです。
今日企業に働く多くの人が、自分が知るべき情報明らかにするのは、IT部門の仕事だと思っています。いうまでもなく、これは間違いです。IT部門は、道具をつくる場所であって、道具を使うのは働く人自身です。
企業で働く全ての人々は、道具としてのコンピュータの使い方を決めるのは、自分自身だということを知らなければなりません。すべての人には、情報責任を果たす責務があるということです。「自分はどのような情報をもたなければならないのか、誰から手にいれなければならないのか。どのような形で手にいれなければならないのか。それはいつか」、さらには、「どのような情報を与えなければならないのか、誰に与えなければならないのか。どのような形でか、そしてそれはいつか」を問い、実行しなければなりません
残念ながら、企業で働く人々のほとんどが、これらのことを考えるのはIT部門だと思っています。しかし、そのようなことは、これからは通用しません。CEOだろうと、昨日入ったばかりの新人であろうと、こうした情報責任を果たしていく必要があります。
最近、情報の観点から組織改革が行われるようになってきています。情報を経営資源ととらえるならは、階層の整理が俎上に上らざるをえなくなります。そうして、マネジメント上の階層がほとんど何もマネジメントしていないことが明らかになります。それらの階層は、トップとボトムから届くかすかな信号を増幅しているだけです。
情報理論の第一法則によれば、あらゆる中継器が雑音を倍増しメッセージを半減させるとしています。同じことが、人のマネジメントをせず事実上の意思決定もしないマネジメント階層についていえます。それらの階層は情報の中継器にすぎません。したがって、そのうような階層は必要ないということになります。
これからは、大企業であっても、四つ以上の階層を持つ企業はなくなります。しかも、そもそも企業で働く人々は、階層の多さ組織構造の失敗と意味すると受け入れられなければなりません。それは、既存の組織にとってまさに青天の霹靂だと思います。
さて、ITガバナンス、つきつめて考えると、とてつもない組織改革につながっていきます。しかし、現在の企業を取り巻く環境を考えたとき、今回述べたようなITガバナンスの問題は一部に過ぎなく、まだまだ、問題が山積しています。これらに、ついてはまた別の機会に掲載したいと思います。
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YUTAKARLSON、USA 市長からのお願い
2010年2月11日木曜日
ネット接続事業参入への布石!? Googleが高速光回線を5万世帯以上に提供-実業にもますます関心がでてきた?
ネット接続事業参入への布石!? Googleが高速光回線を5万世帯以上に提供(この内容すでにご存知の方は、この項は読み飛ばしてください)
米Googleがブロードバンド接続サービス提供に乗り出した。同社は2月10日(現地時間)、1Gbpsの光ファイバーネットワークで一般家庭を結ぶ"超高速ブロードバンド"サービスの実験を米国で開始する計画を明らかにした。
米国の家庭用インターネット接続はケーブルまたはDSLがほとんどであり、1Gbpsの光回線は「大部分の米国人が利用しているインターネットアクセスの100倍以上の速度になる」という。実験プロジェクトでは、米国全体にいくつかの試験地域を選択し、光ファイバーネットワークを構築・テストする。少なくとも50,000人、最大で500,000人規模の試験サービスになるという。
光ファイバーネットワークを提供する上で、Googleは以下の3つの目的を挙げている。
次世代アプリ:太い回線によって可能になる新たな"キラーアプリ"またはサービスの開発。
新しい導入テクニック:これまでにない方法でのファイバーネットワーク構築から得たデータの共有。
オープンネスと選択肢:Googleのサービスは"オープンで透明なアクセス"を実現するネットワークであり、またユーザーに複数のサービスプロバイダーの選択肢を提供するものになる。
米国において超高速ブロードバンドを土台とした次世代アプリ/サービスの開発を促すという点では、日本のネットユーザーや開発者にも影響が及びそうだ。国際的な問題にもなっている"ネットの中立性"に関わるプロジェクトとしても注目されるだろう。
同社は2006年8月から本社のあるカリフォルニア州マウンテンビューで、無料ワイアレスインターネット接続サービスの試験提供を行っている。無料ホットゾーンによって地域のネット利用スタイルがどのように変わるかを探るのが狙い。今回の光ファイバーネットワーク提供も同様の実地検証を目的としている。ただし今回は"無料"ではなく、「競争力のある価格での提供」であり、ブロードバンド接続事業の可能性も模索するプロジェクトであるとも考えられる。
Googleは試験サービス地域を決める上で、「Google Fiber for Communities」のページにおいてRequest for Information (RFI:情報提供依頼)を開始した。一般コミュニティから地方政府まで、幅広い規模を対象に協力を求めている。こうした情報収集を3月26日まで行い、今年後半に試験サービス提供でターゲットとするコミュニティを発表するという。
仮想世界も、現実世界とかけ離れた形では存在できません。現実世界も進化させなければなりません。そうした変化を促すためには、IT企業も自ら行動しなければなりません。ITの世界だけで閉じていたら、せっかくのITがITだけで終わってしまい、面白い程度のことで、何の役にもたたないことになってしまいかねません。
ところで、Nexusに関しては、多くの皆さんが単なる商標名であり、Nextの変形か何かのように思っておられるようですが、立派な英単語で、意味は「結びつき、重なり方」という意味です。Nexus oneで「結びつきや、重なりを一つにする」という意味でしょうか?何か、Googleの戦略を思わせる意味ありげな名称ですね。
■米Googleのメールサービスが一時ダウン-完璧なシステムなどありえない?!
■グーグル検索結果すべて「コンピュータに損害を与える可能性あり」、原因は人為的ミス-人為的ミスは避けられないことを前提として運用すべき!!
■Googleで検索ストーリーを作成しました-本年は、大変お世話になりました。来年もよろしくお願いします。
■ついにGDrive実現、「Google Docs」に オンラインストレージ機能-ますます使いやすくなってきましたが・・・・!
2018年12月9日日曜日
機密戦争勃発! 米英が中国駆逐へ、ファーウェイ&ZTEの5G覇権“徹底排除” 識者「中国通信分野の『終わりの始まり』」―【私の論評】現代のコミンテルン、中国の5G世界制覇を阻止せよ(゚д゚)!
トランプ氏(右)と習近平氏の戦いが本格化してきた 写真はブログ管理人挿入 |
孟晩舟容疑者 |
任正非 |
アレックス・ヤンガー長官 |
トランプ大統領の安全保障チームは、今年1月に3年以内に政府による5Gのネットワークの構築を検討するとしていました。中国の諜報活動に対抗するために、AT &T、ベライゾン、Tモバイルなどのモバイル通信会社の仕事を引き継ぐ形で行うといいます。
危惧されるインフラへのサイバー攻撃
日本政府は、日本の通信インフラに与える影響を考慮して、ファーウェイやZTEを規制すべきだが、対応は後手に回っています。
一方、アメリカは、議会を中心に着実な手を打ってきました。
最終的には外国投資委員会(CFIUS)によって阻止された3Comに対する買収案件に見られるような、ファーウェイの技術獲得を疑問視した米議員は、徹底的な調査を開始。6年前の2012年、米下院情報委員会は、その調査に基づく詳細なレポートを発表しています。
海外での事業収益が全体の6割を占めるファーウェイは、アメリカでの国防権限法の成立直前に、ロビー活動を展開。アメリカからファーウェイを排除すれば価格競争の制限となるため、消費者が不利になり、かつ、イノベーションも妨げると主張しました。
ところが、「安ければいいだろう」ということで、送電網にファーウェイの機器が使用されている場合、電気、ガス、金融機関、水道や鉄道など、サイバー攻撃を簡単に仕掛けられる危険と隣り合わせになります。9月に北海道で起きた地震の際の「停電パニック」を、中国は簡単に引き起こせるということです。
アメリカが国防権限法に基づいて成立させた対米投資強化法において、重要なインフラへの投資も規制の対象とするなど、商業の論理より、安全保障を優先したのはこのためです。
国防権限法成立以前の2017年12月、米上下両院の情報委員会のメンバーである議員がFCC(米連邦通信委員会)を通じ、AT&T社がファーウェイの携帯を顧客に提供することを断念させています。私企業の事業計画を、国民の安全保障を理由として変更させた事例として参考になります。
監視カメラ産業に群がる投資家たち
また、次世代の大容量通信を可能にする5Gが、監視カメラの顔認証技術などと結びつけば、監視社会がより一層強化されます。
現在のところ、中国政府は2020年までに6億2600万台の監視カメラを設置する予定です。
監視カメラの技術で有名なのが、中国のハイクビジョンとダーファ・テクノロジー。この2社で世界の監視カメラ市場のシェアの4割を超えます。
ハイクビジョンは、中国の治安当局に対し、「少数民族に属するかどうか」を判定する技術があるとして自社の製品を売り込んできました。新疆ウイグル自治区のウルムチで、3万台の監視カメラを設置する計画を受注するなどし、昨年だけで売上を30%伸ばしています。
ハイクビジョンに関しては、株式の4割を国有の軍需企業のCETCが保有するなど、中国共産党と密接な関係がある企業。2018年4月に米インテロス・ソルーションズが公表したレポートでも、ファーウェイやレノボとともにアメリカが警戒すべき企業の一つとして挙げられています。
しかし金融業界は、倫理的なリスクのある中国のテクノロジー企業を「買い」だと推奨し、間接的に一般の投資家たちを中国の人権弾圧に加担させています。投資家たちも知ってか知らずか、「人種主義」の片棒を担いでしまっているのです。
日本に目を転じれば、ソフトバンクがファーウェイと5Gの実証実験を行い、中国の5Gの規格化に手を貸しています。だがファーウェイが次世代通信規格の開発に成功すれば、ウイグル人等の弾圧、中国人の総監視社会の完成を間接的に支援することになります。
監視カメラと5Gがつくる全世界監視
それだけでないです。中国は、スマートシティを国内で構築し、そのネットワークを巨大経済圏構想「一帯一路」の沿線地域である東南アジアなどに輸出します。つまり中国の5G戦略は、中国の監視モデル体制の世界への輸出でもあるのです。
これは現代版コミンテルンともいえます。1919年にレーニンが発足させた共産党の国際組織であるコミンテルンは、全世界の共産主義化と全世界同時革命をその使命としました。実際大東亜戦争中には、米国の中枢、そうして日本の中枢にもソ連のスパイであるコミンテルンが深く浸透していて、日米戦争のきっかけを工作しました。現代は、それが5Gや監視カメラ、AIの技術によって可能となるのです。
第5回コミンテルン(共産主義インターナショナル)のプラカード。 1924年6月17日-7月8日 モスクワで行われた。 |
中国のスパイ進出の先進国ともなったオーストラリアでは、ファーウェイに対し、次世代通信規格である5Gを使った同国の無線ネットワークへの参入を禁止しました。第4世代(4G)では、5割超の通信設備にファーウェイを採用しているのにもかかわらず、です。
日本は中国の5G覇権を迎え撃つ戦略を持て
イギリス、オーストラリア、さらにロシアでも規制に向けて動き始めている。
10月12日付のロイター紙のスクープによると、中国の海外投資や国内工作に対抗するために、年初よりアングロサクソンの国際諜報同盟「ファイブ・アイズ」に日本とドイツとを加え、情報が共有されているといいます。
アングロサクソン圏では、早くから対中包囲網の構築の必要性が共有され、そこに日本もドイツも加わってほしいという要請があったと見て良いでしょう。
ところが、日本にはスパイ防止法がないために秘密保全の措置がまだ不十分です。一刻も早くスパイ防止法を制定する必要があります。
さらに中国のサイバー攻撃から国民を守るためにも、中国製の監視カメラや次世代通信規格を日本の産業から排除すべきです。
先にも述べたように米通信大手AT&TはFCCの警告を受け、ファーウェイの携帯を顧客に提供するのを断念しています。日本も、「国民の安全」を守るために、政府が私企業の事業計画を変更させることも視野に入れるべきです。
日本は、来年からポスト5G の研究開発に乗り出すといいます。欧米諸国と協調しつつ、6Gで中国を迎え撃つ戦略が急務となります。
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中国通信機器2社を入札から除外 日本政府方針 安全保障で米豪などと足並み―【私の論評】中国は体制を変えるか、内に篭もるしか生き残る術はなくなった(゚д゚)!
2011年2月2日水曜日
AppleのXserveが受注終了 - 既存ユーザーや業界関係者はどう動く?―【私の論評】もう、クラウド・デバイスをめぐる熾烈な戦いが先進国で始まっていることの査証か?
【私の論評】もう、クラウド・デバイスをめぐる熾烈な戦いが先進国で始まっていることの査証か?
アップルに関しては、最近では、iPhoneや、iPadの大成功で、華やかな側面ばかりが報道させています。しかし、このように撤退する製品もあるということです。私としては、この製品アップルでは最初から提供すべきではなかったのではないかと思います。
この製品は、従来からあるクライアント・サーバーシステムの延長線上の製品であり、提供しはじめた2002年頃には、すでに世の中の流れが、かわりはじめていました。そうです、この製品がでる少し前から、現在クラウドといわれている「所有から利用へのIT」の方向性はすでに定まっていました。
ちなみに、2001年には、ジョン・ヘーゲル三世 ジョン・シーリー・ブラウンの共著による『「所有から利用へ」のITマネジメント』という論文がハーバード・ビジネス・レビューに掲載されていました。
この論文の趣旨は、「情報システムのすべてを自前で構築する時代は終わりつつある。必要に応じて、ウェブでシステムやサービスを購入する、ウェブ・サービス・アーキテクチャーの仕組みと利点を紹介する」というものであり、企業が専有の情報システムを確立する時代は終わりつつある。今後は必要に応じて、ウェブでシステムを購入すべきだ。そうすればデータ互換の問題に悩まされることなく、常に最新のITを活用できるようになる」というものです。当時はクラウドなる言葉なかったものの、今日のクラウドの概念に関して、いちはやく掲載していました。
ただし、この論文では、主に企業の利用のことに力点がおかれていて、今日のような個人によるクラウド利用に関しては、ほとんど触れられてはいませんでした。Googleのような企業がでてきて、クラウドによって、無料のサービスを行ない個人ユーザーのアクセスを拡大し、トラフィックを増して、そこから、広告で収益をあげるといようなビジネスモデルに関しては、掲載されていませんでした。
しかし、今日の企業によるクラウド利用に関する概念に関しては、もうすでにここで確立されていたといえます。私は、今日セールス・ドット・コムのCEOが口にする「ITの民主化」という言葉について、この記事を読んだときに直感していたので、感銘を受けたものです。
この記事を読んで、感銘を受けていた私は、2002年の新聞にアップルが大々的にこの製品の広告を出していることに非常に違和感を感じたものです。今日、その違和感は、現実のものとやりました。
ちなみに、ジョン・ヘーゲル三世は、先の論文に先立つことの2000年には、同じハーバード・ビジネス・レビューに『アンバンドリング:大企業が解体されるとき ―インタラクション・コストが低下すると事業の専門分化が促される―』という論文を、マーク・シンガーと共著で掲載しています。この論文の趣旨は、「インターネットは、巨大組織を小単位に解体してしまう。この力学に逆らう組織は、ゴーイング・コンサーンを実現できないばかりか、専門集団やネット・ベンチャーの軍門に下るかもしれない。eエコノミーが加速すればするほど、この力学は強く作用していく。この時流に乗れるか否かが、大企業の存続を左右する」というもので、分かりやすくいえば、インターネットが発展して、コミュニケーションコストが低下した現在では、大企業が何もかも自前で持つよりも、コアでないものは、他所に任せたほうが、はるかに効率的あることを説いています。
ジョン・ヘーゲルはこのような概念をアンバンドリング(解体)という言葉で分かりやすく解説していました。本日は、このアンバンドリングに関しては、本題ではないので、詳細は記しません。機会があれば、また別の機会に記そうと思います。しかし、まさに、根底にこのような流れがあるからこそ、今日のクラウドの隆盛がみられるのです。何の理由もなく、ただ最新技術ということで、クラウドがもてはやされているというわけではないということです。
2000年には、あのジョブスもすでにアップルに復帰して、CEOになっていました。それから、2年後にこの製品を提供しはじめたということです。ジョブスを含む当時のアップルの幹部などが、この論文を読んてその意味を良く熟慮していたら、この製品は世の中にでなかったかもしれません。
しかし、クライアント・サーバーシステムが隆盛を極めていた当時としては、仕方のなかった事だと思います。それに、これは、失敗と呼べるほどのことではないと思います。当時としては、当然のこととして、取り組み、アップルとしてのあり方を世に示したという事だと思います。経営者としては、様々な可能性を吟味し、ありとあらゆる手を打っておくということで、その一環として実施したものでしょう。無論、先の論文の内容も、すでに知っていたか、仮に実際に読まなかったとしても、事実として理解はしていたと思います。
そんなことよりも、私たちが、ここで参照すべきは、ITの世界がここ数年で、激変するということです。今日のアップルのXserverからの撤退は、それを意味するべき象徴的出来事と理解すべきです。上の記事にも「iPadとiPhoneの法人向け営業が強化されているというニュースもたびたび伝わってきており、同社は次のフロンティアとしてMacを使った企業システムの売り込みではなく、より大きな台数の需要が見込めるモバイルデバイスを考えているようだ」としています。いよいよ「所有から利用」への流れが加速されるということです。
この撤退の意味するところは、次の時代には、いわゆるクラウド・デバイスの時代がやってくるということです。iPhoneや、iPadはデバイスの一形式にすぎず、クラウドを背景にして、ありとあらゆるデバイスが開発されて、運用されていく時代への突入を意味しているということです。
この流れを理解しない企業はいずれ、競争力を失い、陳腐な企業群の中に埋没していくことでしょう。こうした、クラウド・デバイスをめぐる、戦いは先進国で火蓋をきっておとされました。これは、IT関連の企業だけの話ではなくすべての産業をひっくるめて、これから、10年間にわたって大攻防戦が繰り返されるわけです。こんなときに、グローバル企業などといって、新興国の遅れた社会にあわせた製品開発をやっているだけの企業は遅れをとることでしょう。これから、テレビは無論のこと、車、時計、電気・水道・ガス、炊飯器、オーブン、体重計、医療機器、ゲーム機器、インターフォン、メガネ、湯沸かし器、冷蔵庫などありとあらゆるもの、がスマート化され、クラウド・デバイス化されるのです。もう、パソコンや、iPhone、iPadの世界だけのことではなくなるのです!!
21世紀の企業の攻防戦の舞台は先進国の先端的社会(ちみなみに、経済ではないですよ!!)であることにかわりはありません。Googleが、アンドロイドに力をいれて、Google Chrome OSに関しての活動が現在低調なのが、それを裏付けています。これも、本日は本題からずれてしまうので掲載しません。いずれ、また、機会があれば掲載します。ただ一ついえることは、こうしたクラウドを活用して、どのように社会(ここでも、しつこくいっておきますが、経済ではないですよ!!)に貢献できるかを真摯に考え、考えるだけでなく行動する企業だけが、21世紀の先端的な社会に、生き残るということです。
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次世代IT(1)
2017年5月1日月曜日
やっぱり「教育の無償化」は、国債発行で賄うのが正解―【私の論評】国債の原理を理解できない進次郎は顔を洗って出直してこい(゚д゚)!
進次郎発言のズルいところ
教育無償化について、維新の党が「憲法を改正して実現させよう」と問題提起したら、自民党・公明党でも本格的な検討が行われるようになった。自民党内の動向はどうなのか。
3月29日、自民党の「2020年以降の経済財政構想小委員会」(小泉進次郎小委員長代行、村井英樹事務局長)は、幼児教育無償化の財源を保険料で賄う「こども保険」を提唱した。さすがの小泉進次郎氏、発信力は大きく、これは多方面で話題になった。
この問題は、小泉氏も含めた教育再生本部の「恒久的な教育財源確保に関する特命チーム」で検討されることとなっている。
確かに小泉氏の発信力はたいしたものであるが、「保険」というのは詐称に近い話だ。政治家たるもの、言葉をもっと大切にしたほうがいい。学生時代に「保険数理」を勉強した筆者からみれば、これは保険でないものを保険といっているようにしか見えないのだ。
まず「保険」の意味をはっきりさせよう。
保険とは、偶然に発生する事象(保険事故)に備えるために多数の者が保険料を出し、事象が発生した者に保険金を給付するものだ。
さて、自民党若手が提唱した「こども保険」であるが、こどもの保育・教育のためなので、この場合の偶発事象(保険事故)はこどもが生まれること、になるだろう。公的年金の加入者、つまり20歳から60歳までの現役世代の人がこの保険に加入し、子育てする人が保険給付を受け取る仕組みになるだろう。
となると、矛盾が出てくる。子育ての終わった現役世代の人には、偶発事象がまず起こりえない。これらの人は「こども保険」に入るメリットはなく、保険料を取られるだけになってしまう。
すると、被保険者はこれから子育てをする若い人にならざるを得ない。しかし、それでは保険にならない。一般的に、若い人の多くがこどもを持つからだ。仮に、そういう保険を作ると、こどものいない人に大きな保険料負担を強いることになってしまう。
本音を言えば子育て支援について税金を財源にしたいが、税金では世間の反発が起こるので、「保険料」に名前を変えて国民から徴収しよう…そういう意図があるのだろうが、バレバレである。
おそらく「保険」という名称にしたのは、日本人の保険好きを悪用したのだろう。これまでの保険会社の営業努力の賜物であるが、保険契約額対国民所得比をみると、日本は2倍程度であり、先進国の5倍程度と比べるとかなり大きく、日本人の保険好きは国民性なのだ。
では、保険という名称ではなく、「こども税」ならどうか。これは政策論としてはありえる。ただし、筆者の提唱する「教育国債」との比較で、どちらがいいかを有権者がしっかり見定める必要があろう。
「未来への投資が大事」というなら…
新聞などでは「教育国債」という言葉自体はよく出てくるが、まとまった考察は筆者くらいしか書いていないようだ。本コラムの読者であれば、2016年10月10日付け「日本がノーベル賞常連国であり続けるには、この秘策を使うしかない!」(http://gendai.ismedia.jp/articles/-/49906)を覚えているだろう。
そこでは、「知識に投資することは、常に最大の利益をもたらす(An investment in knowledge always pays the best interest.)」というベンジャミン・フランクリンの名言を引用しながら、教育を投資として捉えると、社会的な便益もコストより高いことを紹介し、そうであるなら、国債で教育の財源を賄うのがいいと書いた。
実は、この考え方が以前から財務省の中にも存在していたことをバラしてしまったコラムでもあった。
簡単にいえば、有形資産も無形資産も、経済発展のためには欠くことができないものだ。しかし、今の財政法では有形資産の場合にしか国債発行を認めていない。政治的な議論をするのであれば、この財政法を改正して、無形資産の場合にも国債発行を認めるべき、というわけだ。
しかも、統合政府の考え方を用いれば、日本の財政再建はほぼ終了という段階であり、国債発行を気にする状況でない(この統合政府の考え方は、先日ノーベル賞学者のスティグリッツ氏が来日して経済財政諮問会議の場で安倍首相の前で披露しており、筆者の思いつきではなく、世界の常識であることが明らかだろう)。
いずれにしても有形資産と無形資産を差別するなというのは、強力な正論である。財務官僚は「無形資産はうまく計れない」などという小言を言うが、後に述べるように、教育の投資効果はかなり大きく、有形資産を凌駕するので、あまり細かいことを考えなくてもいい。
財務官僚は、官僚社会で裁量的に自分たちに都合良く振る舞いたい。これは、本コラムで指摘してきた森友学園問題の本質を見てもわかるだろう。
その財務官僚がもっとも嫌うことは、「財政法」の改正である。ここだけは、政治家には決してふれられたくない世界なのだ。もちろん、政治家はローメーカー(lawmaker)であるが、そんな建前はお構いなく、立法も事実上支配したいといのが官僚社会の本質である。
ただし、政治はそれではダメだ。しっかりと未来をみて、必要な法改正を行うべきである。
以下では、無形資産を有形資産と差別せずに同じように扱うべきという単純な正論以外にも、教育を「良質な投資」と考えるべき理由を挙げよう。
幸いにも、安倍政権は、未来投資が重要だという立場をとっている。であれば、教育を未来投資と捉えなかったら、画竜点睛を欠く議論になってしまう。
将来への付け回し」では断じてない
これほど、公的B/Cが大きいのであれば、日本は高等教育に公的資金をどんどん投入すべきである。
なぜ、日本だけが公的B/Cが大きいのであろうか。それは、日本の高等教育における公費負担が少ないからである。公的負担が少ないので、その便益は限界効用が低減する前であり、便益が大きいのだ。
ちなみに、初等中等教育では日本は他の先進国と比べて遜色ない公費負担になっているが、高等教育ではかなり低くなっているのだ。
公的資金投入にあたって、なにを財源にすればいいのか。
国債発行というと、すぐに「将来へのつけ回し」「財源の先送り」という議論が出てくる。しかし、これは、経常経費と投資性経費を混同したものであり、投資性経費であれば、国債発行のほうが合理的である。潔いのはどっちだ?
実際、世界をみれば、教育を投資として捉えて、国債発行で財源を賄った例がある。この点、大災害の時に復興を増税で賄った例は、筆者の知るところではない。先例がないことがいかにデタラメであるか、先例のあることには一定の合理性があると思っていいだろう。
教育投資のための国債発行では、フランスの「サルコジ国債」が有名である。
演説の中で大統領は、
「国土整備や教育、研究、技術革新など、我々の未来にとって極めて重要な分野が多くあり、年間予算の厳しい枠組みの中では対応できない。我々がやり方を変えない限り、優先課題を掲げるだけで実現できない状態が続く。私は投資を犠牲にしない。投資なくして未来はない」
と述べ、未来への投資のための国債発行の重要性を強調した。
まさに、安倍政権の未来投資と同じものだ。
サルコジ大統領の意向は、未来のための投資プログラム(Programme d’investissements d’Avenir:PIA)とされ、5つの優先分野(①高等教育:110億ユーロ、②研究:79億ユーロ、③産業・中小企業:65億ユーロ、④持続的な発展:51億ユーロ、⑤IT:45億ユーロ)を対象として投資することとなった。通常の予算とは別途管理し、未来のための投資プログラム委員長を任命し、実施等をフォローされている。
教育国債は決して奇策ではなく、未来投資のための王道である。しかも、今の日本は、統合政府で見れば財政再建が終了したようなものである……ということは、裏返せば、マーケットでは国債不足になっているともいえる。
そのため、先日、日銀は買いオペではなく売りオペをせざるを得なくなった。東京市場をまともな金融市場とするためにも、一定量の国債は必要である。その意味からも、教育国債が望まれる。
教育国債を否定する人は、「負担の先送りになる」というが、逆に言えば税財源で行うことは親の世代にせびっているようなものだ。
教育国債は出世払いであり、後で働いて返すという方が潔い。これは受益者負担原則にもかなっている話でもあるのだ。
国債の発行は、そもそも国民の資産を増やします。現在のように不況ゆえに金融緩和を行っている状態では、金利も上がらないのでクラウディングアウト(民間投資の追出し効果)も起こりません。
国債の発行については、財政法4条により厳しい制限が課せられています。現在の財務省が「財政法四条は、負担の世代間公平という考え方に立って公共事業費等に限って公債発行又は借入れを認めるという形で健全財政の原則を定めたものと解される」と、国債の発行は世代間の不公平に繋がると考えていることは明らかです。
(小村武「予算と財政法」(新日本法規出版、初版昭和62年(1987年)、四訂版平成20年(2008年))
しかし、そもそもこの考え方そのものが大きな間違いです。
財政法の立法当時の議論に戻れば、同時に、世界恐慌後の1930年代の北欧の財政論を参考にして、不況期には積極財政を採るべきであるという趣旨も含まれていたことが分かってきました。
さて、ここで話を本筋に戻します。小泉進次郎氏らの主張は、教育の無償化などは、国債ではなく「こども保険」はっきり言ってしまえば、実質上の増税によって賄うべきだというものです。
小泉進次郎 |
しかし、そもそも、本当に基礎的財政収支を均衡させることが、本当に世代間の公平に繋がるのでしょうか。結論からいうと繋がりません。
むしろ、誕生期から成人期にかけて人材育成にしっかりと国が投資をすることによって、国力を増大させていくということが投資対効果という意味で適切です。また、人の能力を引き出させるような機会を提供した上で、インフレとなり金利が上がるような経済状況の好転が実現した時に、増税をすれば、増税される世代は、過去の投資の結果によって生じた担税力で担税するので、こちらの方が公平です。
日本が仮に対外純負債国、経常収支も赤字という国であれば、「世代間の公平の観点から、基礎的財政収支を均衡させるべき」という原則はある程度は妥当であると考えられます。(この場合も、原則であって米国・英国などの例外はあります)
しかし、日本は対外純債権国、経常黒字国です。国債を発行しても、自国内で消化できますし、そもそも自国通貨建てなので対外的に取り立てにあうこともありません。さらに、ブログ冒頭の記事で、高橋洋一氏が主張しているように、統合政府府の考え方(政府と日銀の連結決算の考え方)を用いれば、日本の財政再建はほぼ終了という段階であり、国債発行を気にする状況ではありません。
日本は過去においては増税と、金融引締めなどによってデフレが続いていました。現在でも、増税の悪影響があり、デフレ一歩手前の状況にあると言っても良い状況です。そんな国では、金融緩和と、財政出動を大規模に継続的に行って初めて、経済状況を好転させ、デフレから脱却することができます。
つまり、多額の国債発行→財政拡張政策→経済状況の好転→資金需要の増加→金利の上昇という順番となります。国債償還時に得た資金が民間投資へ回るような状況になるということは、景気が良くなっているということなので、将来世代にとっても良いことになります。
また、現在の政府支出の構造が、子ども手当や高校無償化など、次の世代が競争力を持つ分野に力を入れている点が、世代間の公平性を議論する上で、更に重要な要素となります。
今まで、国債を発行して未来への投資をするということは、建設国債を発行して公共事業を行うということしかないと考えられてきました。しかし、この考え方は、ハードウェア中心の投資の考え方、分類すれば「産業革命期末期」の考え方だと言えます。
現在は、コンピュータの発明と電気通信網の整備により、情報通信革命期(IT革命期・ICT革命期)の初期にあります。投資については、人間の能力にどれだけ投資するかが国家の帰趨を決めるような時代になっています。
国債を発行して「人への投資」を行うことは、日本の経済力を更に拡大し、相対的な通貨の価値を維持することができるので、更に国債を発行する余力を持つことができるようになることに繋がります。
財務省の頭の中、もしくは政治家などを説得するためのご説明資料の中には、上記のような構図があるのでしょう。そうして、無論小泉進次郎氏の頭の中にも・・・・。しかし、結局のところ国債を発行せずに、実質上の増税で教育の無償化をしてしまえば、現代世代と将来世代の格差ならびに現在世代内の格差の両方をさら助長してしまうことになります。
今度は、逆に人への投資をしないとどうなるのか、という観点で見ていくことにしましょう。
同じ様なことは、クルーグマンが「さっさと不況を終わらせろ」でも述べていたことですが、大切なことなので、私の言葉で書かせていただきます。
最近では、ある程度緩和されてきましたが、わずか数年前までは、皆様の周りにも、大学院に行っても就職先がないというような人がいらっしゃったと思います。また、二十代、三十代に正規社員として仕事につくことができず、「安定したところでしっかりと働くゆえに自分の成長に取り組める場」を持てない若者も大勢いました。二十代、三十代にきちんとした成長を遂げなければ、四十代、五十代の働き盛りの時に、高い生産性を持つことはできません。
そのため、若年期には、できれば完全雇用が達成できるようになるくらい、仕事を提供することが必要です。それには、雇用状況が良くなるようにに、金融緩和策をとり、さらに経済状況が好転するように持っていく経済政策や社会保障の分野等で公的雇用を増やす政策が必要になります。それゆえ、若者の雇用状況を改善できるような経済状態になるまでは、公平の観点から見ても国債の発行を行い、政府支出を拡張することは正当性があるわけです。
2011年7月22日金曜日
Google日本語入力アップデート、マルウェアに感染していると思われるユーザーに通知、Google lab閉鎖―【私の論評】すべての企業は、今日の姿ではこれからの30年ではなく、5年を生き延びられない!?
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【私の論評】すべての企業は、今日の姿ではこれからの30年ではなく、5年を生き延びられない!?
本日は、たまたま、マイコミジャーナルでGoogleのニュースが三つも重なってしまったので、いつもだと、そこから一つだけ選んで、掲載するのですが、本日は、一挙に掲載します。
さて、本日は、たまたま、同じニュースソースに3つの記事が掲載されていたということですが、これは、Googleとって珍しいことではなく、常態といっても良いくらいだと思います。過去には、同じニュース・ソースの中に5つくらいGoogleの記事があったこともあります。それに、最近は、そうでもありませんが、ひところは、ほぼ毎日新たなニュースが掲載されていたこともありました。
記事の内容の詳細は、上記の内容を呼んでいただくものとして、本日は、なぜ、Googleがこのようにつぎつぎと新機軸を次から次へと、打ち出すのかを考えてみたいと思います。
Googleに限らず、普通の企業でも、時間とともにやっていることが、様変わりすることは皆さんよくご存知でしょう。たとえば、トヨタは、昔は、トヨタ紡績機を製造して、販売する企業でした。カネボウは、もともとは、会社名は、鐘淵紡績という会社で、昔は、繊維関係を製造する会社でした。最近では、最も有名なのは、化粧品かもしれません。
さて、このような企業の姿をみて、今日確信をもって言えることは、企業、教育、医療その他いかなる分野においてであれ、今日リーダーの地位にある組織の多くが、これからの30年を生き延びられず、少なくとも今日の姿では生き延びられないということです。
この壮大な転換期において社会の安定を確実なものにするには、既存の組織が生き残り、繁栄してくれなければならないわけです。昔、日経から「会社の寿命30年」という書籍がだされ、センセーショナルに扱われたことがあります。しかし、これは、間違いです。
正しくは、「事業の寿命30年」とすべきでした。この書籍の著者の想定の中には、事業=企業という暗黙の想定があったと思います。あの書籍が販売されてから、随分時がたち、確かに、多くの企業が30年を待たずして、消えていきましたが、30年以上経ても、存続している会社も多くあります。ただし、それらの会社でも、30年前と全く同じ事業だけをそのまま継続している企業はありません。
企業の経営者たるものは、既存の組織が生き残り、繁栄していくための術を学ぶ必要があるということです。そのためには、あらゆる者が起業家として成功するための方法を学ばなければならないということです。
知識が中心の社会になったというだけで、学習が一生続けるべきものとなりました。そこへ起業家精神まで日常のものとしなければならなくなったのです。
まさしく、道具は、道具にすぎなく、人がいなけはれば、何の役にもたたないものなのですが、人は、使う道具によってもアイデンティティー(自分は何者であり、何をなすべきかという個人の心の中に保持される概念)が大きく規定されてしまうことがおうおうにしてあります。
IT企業以外の企業て長期戦略を実行するためには、15年くらいの年月を費やすことなどいくらでもあります。だとすれば、実際に行動に移すには、5年位の猶予があるのかもしれませんが、5年も何も考えておらず、無為に時を過ごせば、行動しなければならないときに、何もできず、すべてが手遅れとなり将来はなくなるということです。
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世界経済と米国経済危機、3つのシナリオ「今の金融危機は問題の“症状”であり、“原因”ではない」-日本の明治維新を思い出すとき!!
世界経済と米国経済危機、3つのシナリオ(この内容すでにご存知の方は、この項は読み飛ばしてください)
Michael Mandel (BusinessWeek誌、主席エコノミスト)
米国時間2008年11月2日更新 「The U.S. Economic Crisis: Three Growth Scenarios」
10月30日、米商務省は第3四半期のGDP(国内総生産)の速報値を発表した。注目を集めたのは、1991年以来のマイナス成長となった個人消費だった。米大統領選挙の年である今年は特に、消費者の痛みは政治上の最重要課題となる(BusinessWeek.comの記事を参照:2008年10月29 日「Has the Consumer Finally Caved?」)。
だが、現在の経済危機が今後1年程度でどう推移するかを予測するには、別の数字に注目する必要がある。それは、米国の貿易赤字の規模だ。第3四半期の米貿易赤字は年率換算で7070億ドル(約70兆7000億円)とGDPの5%に相当。史上最高を記録した2006年第3四半期の年率換算で8000億ドル(約80兆円)近い額に比べれば少ないとはいえ、膨大な赤字だ。しかも、この貿易赤字は外国からの借金と表裏一体の存在なのである。
住宅所有者は巨額の住宅ローン返済にあえぎ、ウォール街は病に倒れ、米国は大恐慌以来の深刻な信用収縮に苦しんでいる。それでも米国は依然として多額の借金を続けている。今回の危機が過剰債務に起因するとしたら、米国は巨大な貿易赤字をいつまで抱えていられるのだろうか。
実際、貿易赤字の今後の動向については3つのシナリオが考えられる。それぞれ、米国経済と世界経済に異なる影響を及ぼす。
・現状維持: 第1のシナリオは、貿易赤字の高止まりだ。諸外国は米国への財・サービスの輸出を継続し、米国が輸入代金の支払いに充てる資金を米国に貸し続ける。
・世界規模の構造改革: 第2のシナリオは、米国消費者が輸入品の購入を控えることによる貿易赤字の縮小だ。このシナリオでは、諸外国は米国の輸入需要や借り入れ需要が従来のように存在しない世界経済に適応する必要がある。
・イノベーション(技術革新)による成長: 第3のシナリオは、米国が画期的な財やサービスの輸出を伸ばすことによる貿易赤字の縮小だ。
各シナリオのプラス面とマイナス面、それぞれの実現性を検討する前に、一歩引いて全体像を見てみよう。
ここ10年間、3つの流れが世界経済の成長を牽引してきた。まず、多国籍企業が中国やインドなどに技術やビジネスノウハウを移転し、こうした新興国に供給網を築いた。この目に見えない「暗黒物質(ダークマター)」のような技術の移転は、経済統計には表れないが、世界経済の成長にはまさに不可欠なものだった。
次に、技術移転の見返りとして、新興国から米国をはじめとする先進国へ安価な財・サービスが大量に流入した。
最後に、輸入代金の支払いに充てるため、米国は外国から借金を続けた。2000年からの累計額は約5兆ドル(約500兆円)にも上る。
だがここに、誰も気にかけていなかった問題がある。そのカネはどうやって米国に入ってきたのか。
米政府が直接外国から借りたのは約1兆5000億ドル(約150兆円)。残りの借金の大半(3兆5000億ドル~4兆ドルに達する可能性もある)はウォール街を経由して、社債や株式、複雑な証券化商品などの形で米国に入ってきた資金で賄われた。ウォール街の金融機関は、米国消費者と世界を結ぶ重要な仲介者だった。例えば、金融機関はサブプライムローン(信用力の低い個人向け住宅融資)債権を証券化し、外国の投資家に大量に売りさばいた。
世界経済の成長をもたらしたこの資金の流れは、ウォール街が近年なぜあれほど繁栄し、なぜ突然没落したのかを解き明かしてくれる。銀行家、ヘッジファンドマネジャーなどのウォール街の金融関係者は、外国から米国に流れ込む資金の上前をはねることで大儲けした。だが米国民がこれ以上借金を抱えられないことがはっきりしたとたん、資金の流れが止まり、世界経済の成長が脅かされることになった。
それゆえ、今回の金融危機は問題の“症状”であり、“原因”ではない。根本的に、現在の危機はここ10年間に蓄積された世界経済全体の問題に起因している。
■米政府の借金で時間稼ぎができる
では今後はどう展開するのか。第1のシナリオは現状維持だ。米政府が米国民に代わって借金をすることで巨額な貿易赤字が続く。つまり、外国からの資金はウォール街ではなくワシントンを経由して米国へ流入することになる。
前提としているのは、次期米政権が主に外国からの借金で巨額な財政出動(例えば2009年に4000億ドル=約40兆円=程度の景気刺激策)を行う方針であることだ。このような借金と支出には米国と世界の景気後退を緩和する効果がある。多国籍企業も少なくとも当面は、従来通り海外生産を続けられる。
この現状維持のシナリオが危険なのは、米国が借金を増やし続ける点だ。そもそも米国を窮地に陥れたのは過大な借金である。ただし今回は、借金をするのは個別の金融機関ではなく米政府だ。つまり事実上、米国経済全体が借金の担保になる。そのため、政府が外国からの借入金をインフラ整備、教育、イノベーション促進など適切な目的に使用しなければ、将来さらに深刻な危機が生じることになる。
第2のシナリオは世界規模の構造改革だ。米国が輸入を大幅に減らすことにより、貿易赤字が縮小する。このシナリオは、政府が深刻な景気後退を回避できるだけの規模の財政政策を行わない場合、ドル安が進行した場合、またはその両方が起きた場合に起こり得る。
短期的には、この世界規模の構造改革で米国も世界も相当な打撃を受ける。安い輸入品が減り、輸入品に頼る小売業などの業界では大規模な人員削減が行われ、米国の生活水準は低下するだろう(BusinessWeek.comの記事を参照:2008年10月9日「The New Age of Frugality」)。また、米国の消費拡大に頼っていた世界経済も揺らぎ始めるだろう。
■構造改革のシナリオでは経済成長は鈍化
長期的には、この世界規模の構造改革のシナリオには一長一短がある。プラス面はもちろん、米国が長期的に持続不可能な借金拡大を続けなくて済むことと、国内の製造業が再び活性化することだ。マイナス面は米国の生活水準が長期にわたり低迷することだ。たとえ国内製造業が復興しても、物価は高くなる。
世界では別の問題が生じる。米国の需要減をほかで穴埋めすることはできるが、米国からの技術・ノウハウの移転は代わりがきかない。海外発注が減ることで、先進国から新興国への技術・事業ノウハウの移転が減少または完全に停止し、世界経済の成長を妨げることになる。
第3のシナリオはイノベーション(技術革新)による成長だ。米国が画期的な製品やサービスの輸出を増やすことで貿易赤字が縮小する。実際、1990年代には、ハイテク製品の輸出が貿易の拡大に伴って増加するとエコノミストは予想していた。
近年の貿易赤字問題は、輸入の増え過ぎではなく、輸出が当初の予想ほど伸びなかったことに起因している。米国のイノベーションを代表する高度な電子機器や医薬品の生産がこれ程早く外国に移転され(BusinessWeek.comの記事を参照:2006年12月27日「India: More Than Just Call Centers」)、米国の輸出を脅かすことになるとは誰も予想できなかった。
イノベーションによる成長は米国にとっても世界にとっても好ましい。米国が輸出するものができるからだ。このシナリオが実現するためには、これまで巨額の費用を投じてきたバイオ技術やナノ技術といった分野の研究開発から大きな成果が生まれる必要がある。植物セルロースを効率的に分解してエタノールを生産できる遺伝子組み換えバクテリアなど、半導体革命に匹敵する飛躍的な技術進歩が必要だということだ。さらに、関連する生産活動の少なくとも一部は、外国に移転せず米国にとどめておかなくてはならない。
この第3のシナリオはたやすく実現できるものではない。だが我々が目指すべきはこのシナリオだ。最も好ましい結果をもたらす可能性が高いからである。
第3のシナリオは社会的イノベーションの実現によって成就できる?
■今回の金融危機の原因
さてビジネスウィークの結論は、目指すべきはイノベーションを起すというシナリオです。私もそう思います。ただし、ビジネスウィークで述べているイノベーションはバイオ技術やナノ技術といったいわゆる技術上のイノベーションだけです。しかし私はこれだけでは今の状況を打破できるイノベーションにはならないと思います。
かつて、アメリカは何度も金融危機に見舞われました。そうして、そのたびに他の国々も多大な影響をこうむってきました。しかし、金融危機に恵まれた時にまさにそれまで、芽吹いていたイノベーションがまさに花を開こうとしていしまた。そうして、実際に金融危機後に花開き大きな実を結んできました。その例を下に掲載します。
Ⅰ.IT産業の芽吹き
不況の時期に、芽生えたばかりのIT産業が次世代を狙って新たな技術開発をしていた。いまはなき、netscape社など。その後、ITバブルになった。
Ⅱ.金融デリバティブの芽吹き
ⅠT バブル崩壊で、金融危機あったアメリカ国内で、株による儲けを目論んだ、金融関係者がノーベル経済学賞級の学者を活用して、金融工学を駆使金融デリバティブ商品を数々開発した。その後株価は大幅に上昇し、金融関係者は無論一部の経済学者も今の景気はIT技術を駆使「ニュー・エコノミー」の勃興として小躍りした。
Ⅲ.個人消費拡大の芽吹き
ブラックマンデーの到来により株価は低迷し、最早株に期待することはできなくなった。そこで着目したのが、アメリカの旺盛な個人消費である。特に住宅である。アメリカ金融システムは、個人消費を煽る政策をとり、その極め付けは、金融工学を駆使した証券化したサブプライム・ローンである。しかし、旺盛な個人消費が永遠に続くはずもなく、この目論見は、今回の金融危機で水泡に帰した。
さて、問題なのは今回の金融危機後の芽吹きとしては一体何であろうかということです。ビジネスウィーク誌では、バイオ技術やナノ技術と述べていますが、私はそれだけでは不十分だと思います。仮に場乎技術やナノ技術がかなり発展したとして、確かに経済的に大きな効果があると考えられます。それだけで今回のような大きな変化に対して有効な手だてになるのかということです。確かにある程度経済が活発化しているときにこれらが新しい製品を生み出せばかなり有効な手立てとはなります。しかし、今のように経済が沈んでいるときはすぐに有効だとは考えにくいです。
私は、このブログでも過去に何回か掲載してきたことですが、いまこそ社会に着目すべきだと思います。今こそ社会的イノベーションが必要なのだと思います。なぜなら、健全な社会、あるいは時代に対応した社会にならなければ、実体経済も良くならず、したがって金融システムもまともにはならないからです。
ここ数十年アメリカはもとより、他の国でも「経済・金融」ばかりが重要視され、それに対するインフラやシステムの整備などはなされてきましたが、「社会」はなおざりにされてきました。特にこの10年くらいはその傾向が強かったと思います。特にアメリカにおいてはなおざりにされたどころか、ブッシュ政権により破壊されてきたともいえます。実際格差社会はブッシュ政権の間にかなり拡大しました。あるアンケートによると「アメリカ人の9割が、自分は負け犬か落ちこぼれだと感じている」という結果がでています。これほど多くの人が自信を喪失するような社会は健全なものとはいえません。
経済とは国の富の中でもごく一部のものでしかありません。いままでは、金融危機後にIT産業の躍進、株価の上昇、金融デリバティブによる様々な商品の開発、個人消費の刺激など経済や金融のみの施策がほとんどだったと思います。特にこの10年間ほどは完全に社会が無視され続けてきました。まさに、このようなことを長きにわたって続け社会になおざりにしたつけが今回の金融危機を招いたのだと思います。
■なぜ社会がを見直さなければならないのか
私たちは、もうすでに20世紀末にそれまでとは異なった「ネクスト・ソサエティー」とも呼ぶべき社会に入っているのですが、これに対する備えができないままに突入したのだと思います。実際に何が既存の社会と違うのかというと、大きなところでは人口構成の変化(少子高齢化)、ITによる技術革新、就業形態の多様化、第一、第二次産業の相対的地位の低下、知識労働者の台頭などです。
これらの一つひとつがかなり大きな変化であって、私たちの社会はこの変化に十分対応しているとはいえません。私たちの社会は人口構成の変化に十分対応していません。日本では時代にそぐわない年金システムが問題になっています。アメリカでは医療システムの不備が問題になっています。そのほかにも問題は山積しています。
私たちは厳密な意味で知識労働者の動機付けに関して十分熟知しているとはいえません。一昔前の、肉体労働者がほとんどだった時代の古い人事システムに頼っているというのが実情です。
ITによる技術革新が進んでいるというのに、Eラーニングなどが公的教育に生かされきっていません。私たちの学校では未だに古い集合教育という一昔前のシステムに頼っています。秋葉原大量殺人の犯人がネットで殺人予告していたという事実より、ネット予告に関しての警報システムをつくるのに、総務省のお役人が「数億で1~2年」かかると語ったのとは対照的に、あるシステムエンジニアがわずか2時間でサイト上に警報システムを作ってしまったなど、多方面でこのようなかなりのギャップがみられます。
就業形態の多様化により、多くの会社で非正規雇用の社員などが増えています。日本ではいわゆる派遣社員問題が発生しています。現在多くの組織で非正規雇用の社員が増えつつあり、将来は、大半がこれらに入れ替わることも考えられます。しかし、私たちの人事システムは未だ正社員がほとんどだった時代のシステムに頼っています。
第一次産業、第二次産業の相対的地位が生産性の向上により低下しています。生産性が高まるということは、逆にいうとそれに携わる人々はより少なくてすむからです。函館市は人口30万人弱ですが、この函館市で農林水産業に従事する人はわずか数パーセントの数千人にすぎません。この傾向は、特に先進国ではこれからも強まります。にもかかわらず、アメリカでは製造業者の政治的力が未だ大きいです。日本では、つい最近まで農民が選挙における大きな支持母体となってきました。
多くの人は未だ気がついていないようですが、第一次産業と第二次産業の飛躍的な生産性によって、より少ない人数で多くの人の衣食住が足りるようになります。そうすると、今まで第一、第二次産業で受け入れた雇用の受け皿が少なくなります、それを第三次産業が受け皿となって受け入れていたというのがごく最近までの実体です。実際第三次産業の中でも、ITに関しては、黎明期などではその先端性とはうらはらに、非常に労働集約的で生産性が低かったものです。しかし、これも最近ではITの革新などにより、生産性は飛躍的に伸びていますし、これからも伸び続けるでしょう。そうなると、どこにも雇用の受け皿がなくなります。これをどうやって解決していくのか?これに関しては、ここでは本筋からずれるので、いずれまた別の機会にのべます。
本来であれば、こうした大きな社会変化にあわせて、インフラの革新や、システムの革新がなされるべきでした。しかし、先進国特にアメリカでは、こうした問題はあまり注目されず、放置されました。そうして、社会に大きなひずみや格差を助長したにも関わらず、金融・経済にばかり力をいれ、結局は今回の金融危機を招いたしまったのです。
さて、上記のように今われわれを取り巻く社会には、様々なギャップがあります。これらのギャップを埋めることは立派な社会的イノベーションになります。そ うして、これを実行することにより実体経済にも良い影響を及ぼします。このギャップを埋めるのは、インフラ革新に関しては政府が主導で行うべきです。シス テムの革新に関しては、民間の営利企業、非営利企業が実施すべきです。
日本の明治維新を思い出すとき!!
さて、この社会的イノベーションに関して、ピンとこないとか、社会的イノベーションで本当に実体経済なども良くなるのだろうかなど、半信半疑の方のいらっしゃると思います。単なる理想主義、空想、夢想ではないかと考えられる方も多いと思います。
しかし、私たち、特に日本には素晴らしいお手本があります。それは、明治維新です。日本においては比較的軽視されがちな明治維新ですが、これに関して、経営学者の大家と言われる故ドラッカー氏も大絶賛されています。それまでは、西洋史、明治維新があったからこそ、世界史というものができあがったのだと語っています。そうして人類史上まれにみる無血革命であったともいわれてます。確かに明治維新のときの戦など他の国での革命と比較するとほとんど無血といってもいいくらいのものでした。現在放送されているNHKの時代劇「篤姫」にもいずれ近いうちに、様々な人々の英知で戦が避けられていく様子が見られると思います。
この明治維新は紛れもなく、坂本竜馬がいうところの「日本の洗濯」であり、大改革でした。それとともに大きな社会変革でもありました。当時の幕府も近代兵器を導入するとか、西欧の文化も取り入れようとしていましたが、結局古い幕藩体制を維持して古い社会のまま体制を革新しようとはしましたが、到底無理で結局は破綻しました。
明治維新では、それまでなかった、大きな社会変革が行われました。国会、地方自治体、民間企業、近代的郵便制度、学校制度、軍隊などの近代組織が続々とつくられました。鉄道も敷設されました。様々な欧米からの新技術が導入されました。今日の私たちが生活している社会のほとんどのものがこの時代に導入されたといっても過言ではありません。
もし、こうした大社会変革である明治維新が行われなかったとしたどういうことになったでしょうか?おそらく、弱体化した幕藩体制のもと、国力は弱まり、西欧列国の植民地になるか、独立性は維持できたとしても言うなりになっていたことでしょう。これは、プラスの面でいえば、おそらく大東亜戦争は起こらなかったかもしれません。しかし、マイナスの面では、おそらく今でも日本は発展途上国の中の一つだったに違いありません。国民も貧しい生活を強いられ、未だせいぜい昭和初期の生活水準で甘んじなければならなかったでしょう。それどころか、アメリカやロシアなどに分割されて、ようやっと独立を勝ち得て30年くらいなどという感じだったかもしれません。
明治維新という大社会変革があったからこそ、良くも悪くも、今日の日本があった思います。これがなければ、社会も疲弊し、その後の大きな経済発展もなかったと思います。
その意味で私たちはここでもう一度、明治維新をふりかえってみる必要がありそうです。
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