2020年6月19日金曜日

国家安全法で締め付けられる香港人の受け入れ— 【私の論評】香港市民が観光では日本を頻繁に訪れながら、移住となると豪英加・台湾になるのか、今一度真摯に考えてみるべき!(◎_◎;)

国家安全法で締め付けられる香港人の受け入れ

岡崎研究所

 中国は、香港国家安全法の適用を強行し、香港への締め付けを強化し、国際的約束である香港の一国二制度を葬り去ろうとしている。

 これに対し、トランプ大統領は5月29日、記者団を前にホワイトハウスで「香港には最早十分な自治はなく、返還以来我々が提供して来た特別な待遇に値しない」「中国は約束されていた“一国二制度”の方式を“一国一制度”で置き換えた」と述べ、「香港に異なる特別の待遇を与えている政策上の例外を撤廃するプロセス」を始めると言明した。これは、昨年成立した「香港民主主義・人権法」に基づく措置である。その他、トランプは中国の悪行を列挙し、「(中国寄りの)WHOとの関係を停止する」ことを含め、各種の対応策を講じることを予告した。


 香港に対する特別な待遇の撤廃は、犯罪人引渡、技術移転に対する輸出規制、ビザ、香港を中国とは別個の関税地域として取り扱うことなどに関係するとされるが、トランプは具体的詳細には踏み込まなかった。トランプは敵対的な調子で対中非難を展開したが、例によって、言いたいことを言っておいて、具体的詳細は中国の出方を測りつつ今後の検討に委ねるということのようである。対中輸入に発動している高関税を香港に適用するか否かの問題にも言及しなかった。

 香港に対する特別待遇の撤廃は強い副作用を伴うことになろう。香港住民の生き様を大きく害し、香港の金融センターとしての地位を損ない得る。2000社ある米国企業は撤退するかも知れない。資本も逃避するかも知れない。香港の価値が下がることによって世界は関心を失う。場合によっては、香港は自壊する。そのことは北京の思う壺かも知れない。仮に米国が、香港の自治の侵食に責任のある中国および香港の当局者に対する制裁を発動するとしても、それで中国の行動を抑止できる訳ではない。

 そこで、5月29日付けのウォールストリート・ジャーナルの社説‘Visas for Hong Kong’が提案するのが、希望する香港人を米国へ受け入れ、更には市民権を与えることである。香港国家安全法が施行されるに伴い、香港を脱出することを希望する人達は当然いるであろう。脱出するだけの財力ある人達の数は限られようが、多くは、まずは米国を目指すであろうから、米国は当然受け入れるべきである。

 逃避する香港人の自国受け入れについて、上記ウォールストリート・ジャーナル社説は中国に対する懲罰という捉え方をしているが、むしろ、自由と人権の擁護という理念に基づく行動、あるいは人道上の行動と捉える方が良いのではないか。5月28日、英国のラーブ外相は英国が一定の香港人を受け入れる用意のあることを表明したが、これも英国の旧宗主国としての立場を考慮して香港の人達を守る趣旨によるものと理解すべきであろう。ラーブは「中国が国家安全法を履行するに至るのであれば、香港の英国海外市民旅券(BNO passport)の所持者が英国に入国し、現行の6ヶ月ではなく、12ヶ月(更新可能)就労し就学することを認める、このことは将来的に市民権を得ることを可能にする」との趣旨を述べた。また、5月28日、台湾の蔡英文総統は、香港人を受け入れ支援する仕組みを整備したいと述べるとともに、過去1年香港からの移住者は41%増え5000人を超えていることを指摘している。

 日本への逃避を希望する香港人も、数は多くはないであろうが、出て来る可能性は十分予測できる。その場合、現在の入国管理制度でどうなるのかという問題があるかも知れないが、門前払いだけはすべきでない。むしろ、有能な人材の確保の観点を含め予め検討しておく必要があろう。 


【私の論評】香港市民が観光では日本を頻繁に訪れながら、移住となると豪英加・台湾になるのか、今一度真摯に考えてみるべき!(◎_◎;)

香港人の受け入れの話は、英国では昨年もありました。それについては、このブログでも取り上げたことがあります。その記事のリンクを以下に掲載しました。
香港人に英国籍付与、英議員の提案は香港問題の流れをどう変えるか?―【私の論評】コモンウェルズの国々は、香港市民に国籍を付与せよ(゚д゚)!
英国国会議員、外交委員会委員長のトム・タジェンダット(Tom Tugendhat)氏

この記事は、2019年8月17日のものです。元記事は、立花 聡氏によるもので、以下のようなことが、掲載されていました。
「 英国国会議員、外交委員会委員長のトム・タジェンダット(Tom Tugendhat)氏は、1997年香港撤退(中国返還)の際に放置されてきた市民の国籍問題の解決を促し、英国籍付与の範囲を香港の中華系市民(ホンコン・チャイニーズ)にも及ぶべきだとし、英国が香港から引き上げた当時そうしなかったのは間違いであって、それを是正すべきだ(wrong that needs correcting)と主張した(8月13日付け英字紙デイリー・メール Online版)」。
なおこの記事には、立花 聡氏自身のコメントが寄せられていたのですが、最近はもっぱらツイッーを用いているので、コメントのほとんどはツイッターで寄せられるで、ブログに直接コメントが寄せられることは滅多になく、立花氏からのコメントがあったことに数ヶ月間も気づかず、比較的最近気づいたので、そのままになています。せっかく寄せていただいたのに、残念なことをしてしまいました。ここにお詫びいたします。(ただし、この記事も読んでいだければということになるとは思いますが・・・・)

この元記事を受けた形で、私自身は【私の論評】において、英国だけではなく、顧問ウェルズの国々も香港市民に国籍を付与すべきだと主張しました。

コモンウェルスの国々とは、イギリスの旧植民地の国々のことです。 地図で示すと以下の国々です。


これらの国々と英国は、今でも関係が深いですし、法体系なども似たところがあり、香港市民も全く縁もゆかりも無い国々よりは、移住しやすいと思います。

元々コモンウエルズとは、コモンウェルス(英: commonwealth)とは、公益を目的として組織された政治的コミュニティーを意味する用語です。歴史的には共和国の同義語として扱われてきましたが、原義としては哲学用語である「共通善 (英: common good)」を意味します。だからこそ、これらの国々が香港の人々を受け入れるべきと思ったのです。

かつてイギリスの植民地だった諸国との緩やかな連合体として「Commonwealth of Nations」が結成されており、その加盟国の中で現在もイギリスの君主を自国の君主元首)として戴く個々の国を「Commonwealth realm」(「レルム(realm)」の記事も参照)と呼びます。

米国でも、コモンウェルスを名乗っていないものの、バーモント州は、その州憲法の4箇所で「The Commonwealth」と自己言及しており、同様にデラウェア州も、州憲法で「当コモンウェルスの安全を脅かし得る手段を以って…」と自己言及しています。

これらコモンウェルズの国々と、米国のパーモント州や、デラウェア州なども香港の人々を受けいれる歴史的な根拠があるわけです。

日本にはこのような歴史的背景はないのですが、コロナ以前の香港人の日本訪問客はかなり多いです

コロナ直前の、2019年の年間訪問者数は、229万700人でした。これまで過去最高だった 2017 年 の223万1568人を超えました。年々、右肩上がりに上昇しており、2013年から約3倍ほど増えています。

香港の人口は、2018年で745.1万人ですから、この訪問客数は、かなりのものです。単純計算では、香港人の4人に1人以上は日本を訪れている計算になります。

もちろん単純に香港人の4人に1人が日本を訪れているというわけではなく、リピーターの数が多いことが見て取れます。日本政府観光局(JNTO)の調べによると、日本を訪れる香港人のうちリピーター率は82.1%でした。

訪日香港人人旅行者の消費額 は、2019年は約3,525億円。2013年時点では1,054億円程度だったため、数年で3倍以上に増加しています。

ちなみに、訪日香港人旅行者の都道府県別訪問率は以下の通りです。
1位:⼤阪府(33.3%)
2位:東京都(30.0%)
3位:千葉県(27.6%)
4位:京都府(20.2%)
5位:福岡県(11.2%)
出典:観光庁『訪日外国人消費動向調査(2018年版)』
最近の訪日香港人旅行者の傾向として、関西地方の人気が高く、大阪、京都、奈良へセットでまわる人が増えています。大阪はグルメやショッピング、京都は金閣寺、銀閣寺、清水寺など写真に収めたくなるような歴史の古いお寺巡りの人が多く訪れています。

リピーターが多いため、定番のスポットを巡るより、観光客があまり多くない穴場スポットへ行きたがる人が増えています。また、香港から日本までのLCCの路線が多く、東京や大阪など大都市だけではなく、九州や四国や中国地方の直行便もあります。

そのため、同じ場所へ旅行するより、いろいろな都市を制覇したがる傾向にあります。また、短期間で多くの観光地に行きたいという願望があります。さらに屋台文化のため、夜遊び好き。夜遅くまで営業している商業施設やドラッグストアの買い物が好きです。朝から夜遅くまで出かけて、時間を存分に使う人も少なくありません。

日本にこれだけ頻繁に訪れる香港の人々ですが、いざ移住ということになると、やはり
は豪英加ということになりそうです。台湾にも関心が高まっているそうです。

豪英加は、香港市民は、無論コモンウェルスの価値観を共有しているという側面があるのでしょう。それに、香港では、広東語と英語が公用語です。英語が公用語という豪英加は、魅力でしょう。

香港の人は広東語を話しますので、本当の中国語、北京語を理解しているか疑問に思う日本人が多いです。

また、台湾のことを違う国と考え、中国語と言ってもたぶん中国の中国語とは違う言葉を話していると思う日本人も少なくないでしょう。

実は北京語は香港でも台湾でも通じます。しかも香港と台湾だけでなく、マカオ、シンガポール、マレーシアでも通じます。香港は1997年に中国に帰還されてからすでに20年以上経ちました。

返還されてから中国語と中国史が必須科目になりましたので、今の香港の若い世代はもちろんのこと、非常に年配の方以外、ほとんどの世代の香港人は中国語を話せます。

ただ家族や友達同士での会話となるとやはり広東語が主流です。

台湾は香港よりもっと前、内戦後国民党が台湾に引っ越ししてから、中国語の普及教育が始まり、すでに70年位の歴史があります。

香港と違って、今はもはや家族、友達同士など身内でも中国語で会話している台湾人はとても多いです。

台湾の友人から聞いた話では、台南ではまだ家族で方言「台語」を使っている家庭はありますが、台北ではほとんどみんな中国語で会話しているとのことでした。

そうなると、台湾は香港人にとっては言葉も通じるし、文化的にも近いということで、魅力でしょう。

香港の人々にとって観光目的で日本に来るのと、日本に住むということでは、やはり隔たりが大きいのでしょう。

ただ、安倍晋三首相は11日の参院予算委員会で、香港の金融センターをはじめとする人材受け入れを推進する考えを表明しています。「香港を含め専門的、技術的分野の外国人材を受け入れてきた。引き続き積極的に推進する」と強調しました。自民党の片山さつき氏への答弁でした。

中国が香港への統制を強める「香港国家安全法」を巡り、片山氏は「香港の金融センターの人材を日本が受け入れるのも選択肢ではないか」と質問しました。

首相は「東京が金融面でも魅力あるビジネスの場であり続け、世界中から人材、情報、資金の集まる国際都市として発展を続けることは重要だ」と述べました。「金融センターとなるためには人材が集まることが不可欠だ」とも語りました。

英国のジョンソン首相は中国が香港国家安全法を撤回しない場合、香港の住民に英国の市民権を取得させる意向を示しています。香港情勢について首相は「日本としても深い憂慮を表明している。関係国とも連携し、適切に対応する」と強調しました。

英国ジョンソン首相

首相は新型コロナウイルスの感染拡大を受けてマスクや防護服などのサプライチェーン(供給網)を見直す意向も示しました。国民生活で必要な製品に関し「保健衛生、安全保障などの観点で、価格競争力だけに左右されない安定的な供給体制を構築する」と述べました。

中国を念頭に過度な依存を避ける考えを示したものです。「多角的な自由貿易体制の維持、発展が前提だ」とも語りました。

新型コロナの感染拡大を踏まえ、首相は「国難とも言える状況の中で様々な課題が浮かび上がった」と指摘しました。主要7カ国首脳会議(G7サミット)などの場を通じ「世界のあるべき姿について日本の考え方を提示し、新たな国際秩序の形成をリードする」と主張しました。

この言葉の通り、日本も新たな国際秩序の形成をリードできるようにしていただきたいものです。そのための指標として、香港の優秀な人材が日本を目指したくなるように、社会経済をレベルを上げていくべきです。経済的には日本は、今後大発展している可能性があることをこのブログでも掲載したとがあります。

香港市民がなぜ、観光では日本を頻繁に訪れながら、移住ということになると豪英加・台湾になるのか、今一度真摯に考えてみる必要がありそうです。これらの国々あって、日本にはない魅力とは何なのかを探る必要がありそうです。


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2020年6月18日木曜日

トランプ大統領「ウイグル人権法案」署名 中国反発必至の情勢— 【私の論評】「ウイグル人権法」は中共が主張するような内政干渉ではないし、国際法に違反でもなく前例もある!(◎_◎;)

トランプ大統領「ウイグル人権法案」署名 中国反発必至の情勢

トランプ米大統領=17日、ホワイトハウス

アメリカのトランプ大統領は、中国でウイグル族への人権侵害があるとして、これに関わった中国の当局者に制裁を科す「ウイグル人権法案」に署名し、法律が成立しました。

「ウイグル人権法」は、中国の新疆ウイグル自治区で、大勢のウイグル族の人たちが不当に拘束されているとして、アメリカ政府に対しウイグル族の人権侵害に関わった中国の当局者に制裁を科すよう求める内容で、先にアメリカ議会の上下両院で可決されていました。

これについて、トランプ大統領は17日、法案に署名し、「ウイグル人権法」が成立しました。

トランプ大統領を巡っては、元側近のボルトン前大統領補佐官が近く出版予定の著書のなかで中国の習近平国家主席に対し、ウイグル族を拘束する施設の建設を容認した疑いがあると記すなど中国国内の人権問題を軽視する姿勢が明らかになり、関心を集めています。

一方、アメリカでは新型コロナウイルスの感染拡大で中国への反発が広がっていて、トランプ大統領は、このところ秋の大統領選挙に向けて強硬姿勢を示しています。

ウイグル人権法について、中国政府は法律が成立すれば対抗措置を取る可能性を示唆していて、反発を強めるのは必至の情勢です。

中国外務省「内政干渉で強い憤慨」

アメリカのトランプ大統領が中国でウイグル族への人権侵害があるとして、これに関わった中国の当局者に制裁を科す「ウイグル人権法案」に署名したことについて、中国外務省は、声明を発表し「このいわゆる法案は、中国政府の新疆ウイグル自治区への政策に悪質な攻撃をし、中国の内政に乱暴に干渉するものだ。中国政府は強い憤慨と断固とした反対を表明する」と激しく反発しました。

そして、「アメリカが直ちに間違いを正すよう再度忠告する。さもなければ中国は必ず反撃し、生じるすべての結果はアメリカが完全に負わなければならない」として対抗措置を取ることも辞さない考えを示しました。


【私の論評】「ウイグル人権法」は中共が主張するような内政干渉ではないし、国際法に違反でもなく前例もある!(◎_◎;)

中国ではウイグルの建物や街が廃墟化され、文化、言語、信仰が破壊され、男性は収容所に送り込まれて労働させ、女性は中国男と強制結婚させらています。

民族浄化した末にウイグル文化園なるものを作り出して「文化の保存に尽力」とプロパガンダを打っています。このような悲惨な状況に終止符を打つためにも、ウイグル人権法の成立が待望されていました。

     両親が投獄され路上生活者となった男の子。寒さで凍死してしまった…
     中国によるウイグル族迫害をなぜマスゴミは報道しないのか?

トランプ氏がウイグル人権法案に署名。これで弾圧に関わった中国当局者の資産凍結やビザ発給停止が可能になります。180日以内に共産党幹部を含む関わった人物リスト作成 入国禁止、資産凍結、世界中の銀行口座廃止されます。習近平によるウイグル族に対する指示文書がリークされているので、習近平も対象になる可能性もあります。

トランプ大統領は、ハワイでの米中外相会議の会議中に、ウイグル人権法に署名成立させました。これは、無論意図的なことと考えられます。

中国外交トップが米国領ハワイへ出向いて会談しにへ行ったのはそもそも、習政権が追い詰められていることの証拠だと言えますが、会談の最中、トランプ大統領がウイグル人権法に署名、G7が香港国家安全法を「懸念」 する声明を出し、さらに中国を追い詰めたと言えます。

習近平の面子も、共産党の面子も丸潰れです。もう米国は中国の面子など気にせず、できるだけ潰して、恥をかかせ、意図的に怒らせ平静さを失わせ、徹底的に中国共産党を追い詰めようとしているようです。

日頃、人種差別や人権を叫ぶ文化人や芸能人が中国相手となると途端に大人しくなるの異常です。野党議員も声を上げるべきです。なぜ彼らは中国の人権弾圧とは闘わないのでしょうか。

もうすでに日本政府得意の「誠に遺憾」がこの世界で通用しないのは明らかになっています。日本もこの問題に関して腹をくくるべき時が来たようです。

中国外務省の華春瑩報道局長は10日の記者会見で、中国による香港への国家安全法導入方針に対して安倍晋三首相が先進7カ国(G7)による共同声明の発表を目指していると述べたことについて、「日本側に重大な懸念を表明した」と語り、日本政府に抗議したと明らかにしました。

中国外務省の華春瑩報道局長
華氏は、国家安全法の導入に関して「完全に中国内政に属し、いかなる外国も干渉する権利はない」と主張し、香港問題をめぐる国際社会の批判に反発しました。

安倍晋三首相は、G7で香港だけではなく、ウイグル問題も含めた、中共の人権侵害についても、G7で共同発表を実現して、日本の存在感を増すべきです。

中共は、人権に関わることで。米国などが何か行動を起こすと、その度に「内政干渉」として退けようとしてきました。しかし、それは中共の思い違いです。

世界には大小190余りの国があります。力の強い国、弱い国、豊かな国、貧しい国と様々です。これらの国が集まっているのが国際社会です。そこでは国同士が守らなければならない「きまり」があります。

それが国際法です。第二次世界大戦後にできた国際連合(国連)では、様々な国であっても、それぞれ独立して、互いに平等であること、自国のことはほかの国に干渉されないでその国が決めることを、すべての国連加盟国が守るべき原則として定めました。

この原則のために国際連合は、はじめのうちは、「内政干渉になる」ということを主張する国があったために、特定の国の人権問題に口出しできませんでした。これが変るきっかけになったのが、南アフリカの人種差別問題とパレスチナでの人権問題でした。

その後、いろいろの国の人権問題の現地調査などが行われるようになるにつれて、「特定の国の人権問題は、その国の内政問題ではあっても、国際社会の関心事でもあり国際連合がこれに関わることをさまたげられない」という考えが広く受け入れられるようになったのです。

この考えは、1993年オーストリアのウィーンで開かれた世界人権会議で採択されたウィーン宣言および行動計画で、「すべての人権の伸長及び保護は国際社会の正当な関心事項である。」と文書で確認されました。

今では特定の国の人権問題について意見を述べたり批判したりすることを「内政干渉である」と主張する国はありません。むしろ、そのような国は、自国に人権問題は存在しない、その国をおとしめるために嘘の情報を流していると、人権問題があるのを否定することにやっきになるのです。

国際連合は現在、世界の人権問題について積極的に討議し、調査し、報告を公表しています。簡潔にいえば、人権侵害の情報が根拠のある確かなものである限り、他国の人権に懸念を表明したり批判することは内政干渉とは考えられません。

さらに、今回のように米国が「ウイグル人権法」を定め、弾圧に関わった中国当局者の資産凍結やビザ発給停止することも、国際法的に見れば合法です。すでにこのようなことは、「ウイグル人権法」に比べれば、規模は遥かに小さいですが、「マグニツキー法」により、ロシアに対して実施されています。

「マグニツキー法」とは、ロシア人弁護士だったセルゲイ・マグニツキー氏が顧問をしていた英国人投資家が、ロシア国営企業の大規模不正を暴露した際に、代理人として逮捕されたマグニツキー氏が投資家に不利な証言を迫られたもののそれを拒否した結果、一年以上拘留されながら暴力を受け続け、結局2009年に獄中死したことに端を発します。

セルゲイ・マグニツキー氏 享年37歳

この事件には、ロシアの官僚たちも多数関わっていました。そのゴロツキ官僚たちが、マグニッキー氏を逮捕させ、勾留したのです。米国投資家らの運動により、「弁護士の死とロシアにおける人権侵害に関わった全ての者に制裁を科す」として2012年に成立したのが同法です。

人権侵害を行なった者への制裁の内容は、ビザ発給禁止や資産凍結などです。同法は、ロシアにとって極めて厄介である一方、自由や民主主義を標榜する米国にとっては、ロシア側に改善が見られない以上、その撤回は国家の威信をかけてできないのです。

当時ロシアは、グアンタナモ湾とアブグレイブに関与した11人のビザ発給を停止して、報復措置に出ました。しかし、ロシアに入国を拒否されても困ることはほとんどないので、これは報復としては弱いものでした。なお、米国人がロシアに資産を蓄えることなどは、滅多にないことなので、無論資産凍結などはやりようもありませんでした。

中共は、中国は「ウイグル人権法」に必ず反撃するとしていますが、「マグニッキー法」に報復したロシアのように、ほとんど何もできない可能性のほうが大きいです。

まずは、米中冷戦たけなわの現在、米国から中国に入国できなくなることは、さほど困ることはありません。いまは、コロナ禍もあり、そもそも行き来はできないし、将来的にも行けなくなること事態に関してさほど困ることないでしょう。

そうして、そもそも米国人大多数が、中国に資産を蓄えるなどの習慣はないし、中国の人民元は、事実上中国のドル保有が信用の裏付けとなっていることからも、中国が米国人の資産凍結などできません。

中共ができることとしては、中国国内にある米国企業や米国人に対する嫌がらせでしょうが、そんなことをすれば、ますます多くの企業が中国から逃げ出すことになるだけで、それは、中国の損失になるだけです。

中共は、ロシアと同じく、米国に報復するための有効な手立てはありません。それどころか、中共がウイグル弾圧をやめなければ、「マグニツキー法」に似たような法律が他の多くの先進国でも作られように、他の先進国でも「ウイグル人権法」に似たように法律が施行されることになるかもしれません。

日本も「誠に遺憾」と表明するばかりではなく、日本版「ウイグル人権法」を検討して、成立させるべきです。

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2020年6月17日水曜日

中国軍が尖閣奪取、詳細なシナリオが明らかに— 【私の論評】中国の尖閣奪取は、日本への侵略であり、侵略すれば攻撃してなきものにするだけ!(◎_◎;)

中国軍が尖閣奪取、詳細なシナリオが明らかに
ミサイル攻撃で使用不能になる那覇基地、米軍は動かない

護衛艦「こんごう」型(出典:海上自衛隊ホームページ

(古森 義久:産経新聞ワシントン駐在客員特派員、麗澤大学特別教授)


 中国海軍は日本の海上自衛隊に対して戦闘能力面で大幅に優位に立ち、日本が尖閣諸島を奪取される危険が高まった──そんな衝撃的な調査報告書が米国の主要研究機関から公表された。

 日米同盟の危機が懸念されるなか、中国側は米軍を介入させずに尖閣を占拠するシナリオを具体的に作成しているという。日本の安全保障への切迫した危険の警告だといえよう。

日本に対して大幅な優位を獲得した中国海軍力

 ワシントンの大手安全保障研究機関「戦略予算評価センター(CSBA)」は5月中旬、「ドラゴン 対 太陽~日本の海洋パワーに対する中国の見解」と題する調査報告書を公表した。報告書は、同CSBA上級研究員で中国海洋戦略研究の権威トシ・ヨシハラ氏が中心となって作成した。

 トシ・ヨシハラ氏は米国海軍大学校の教授を長年務め、中国の海洋戦略研究では全米有数の権威とされる。トランプ政権にも近い立場にある。ヨシハラ氏は日系米人だが台湾育ちのため中国語が堪能で、今回の研究も中国側の言明や証言、発表に基づいている。

トシ・ヨシハラ氏

 報告書は「中国はこの5年ほどで海軍力を劇的に増強し、日本に対して大幅な優位を獲得した」と総括していた。報告書によると、中国人民解放軍の大規模な海軍増強は2010年ごろから始まり、習近平政権下のこの5年ほどで海軍艦艇の総トン数、性能、火力などが画期的に強化された。日本の海上自衛隊はこれまで、アジアの主要なパワーとして戦闘力や抑止力を保持してきたが、現在では確実に中国に後れをとっており、インド太平洋での重要なパワーシフトが起きているという。

 同報告書の内容は、ワシントンの他の研究機関の間でも議論の対象となり、一般のニュースメディアでも報じられた。日本でも海上自衛隊が同報告書の概要を内部資料として配布するとともに、その一部を海上自衛隊幹部学校のウェブサイトに掲載した。

「日本を屈服させることは容易になった」

 同報告書は中国側の研究や資料を基に、中国側が自国海軍の大増強をどうみて、日本への戦略をどう変えてきたかという点に焦点を合わせて考察していた。その結果として、以下の諸点を指摘する。

(1)中国は、尖閣諸島奪取でも東シナ海での覇権獲得でも日本を屈服させることは容易になったとみて、軍事力行使を抑制しないようになりつつある。

(2)中国は尖閣占領に関して日本側を敏速に圧倒して米軍に介入をさせない具体的な計画をすでに作成した。

(3)中国は日本との全面戦争をも想定し、その場合に中国側の各種ミサイルの威力で日本の防衛を崩壊させる自信を強めてきた。

 同報告書は、中国海軍力のこうした画期的な強化は日本や米国にとってきわめて危険な動きだと強調する。そのうえで、中国を抑止するための日本独自の海洋戦闘能力の強化や日米連携による海上防衛強化の具体策を提案していた。

尖閣諸島が占領されるまでのシナリオ

 これまで米国では、中国の海軍力を米海軍のそれと比較する研究はあったが、日本の海上自衛隊の戦闘力と比較する研究は少なかった。今回の報告書の大きな意味は、アジアでは最強水準とされた日本の海上自衛隊がいつのまにか中国海軍に完全に追い越されていたという現実を提示したことだろう。

 とくに象徴的な例として挙げられるのが、艦艇配備の垂直発射ミサイルシステム(VLS)である。中国海軍のVLSは2000年にはゼロだった。しかし2020年にはセル(発射口)数で2000基を超え、日本側の約1500基を大幅に上回った。

 ヨシハラ氏は、章明、金永明、廉德瑰ら中国政府系の学者や専門家の最近の論文などを引用して、中国が日本に対して海軍力で優位に立ったことで「自信と誇り」を強め、好戦的な対日戦略の傾向を増してきたことを指摘する。

 同報告書によると、中国は尖閣諸島への上陸強行による占拠作戦をすでに複数パターン準備している。その例証として、中国海軍公認の海軍雑誌「現代艦船」の最近号に、軍事専門家2人による尖閣奪取の詳細なシナリオが掲載されていたという。

 そのシナリオとは以下のような内容であった。

(1)日本の海上保安庁の船が、尖閣海域にいる中国海警の艦艇に銃撃を加え、負傷者が出る。すると、近くにいた中国海軍の056コルベット(江島型近海用護衛艦)が現場に急行し、日本側を攻撃し被害を与える。

(2)日中両国が尖閣を中心に戦闘態勢に入る。中国海軍空母の「遼寧」主体の機動部隊が宮古海峡を通過すると、尖閣防衛にあたろうとした日本側の部隊が追跡する。しかし、この機動部隊の動きは中国側の陽動作戦だった。

(3)日中の間で東シナ海での制空権争いが始まる。日本のE-2C早期警戒機とF-15が東シナ海上空で戦闘パトロールを始め、中国側が一方的に宣言した「防空識別圏」内に入り、中国のJ-20ステルス戦闘機と戦って撃墜される。

(4)中国軍のロケット軍と空軍が、日本の航空戦力主要基地である沖縄・那覇基地に巡航ミサイルの攻撃をかける。続いて中国軍は多数の弾道ミサイルを発射し、日本側のミサイル防衛システム「パトリオット」を無力化し、那覇基地を使用不能とする。中国側は周辺の制空権を24時間ほどで確保する。

(5)米国政府は日米安保条約を発動しない。大統領は、尖閣をめぐる日中紛争への全面介入は米国の利益に合致しないと判断する。ホワイトハウスは中国に対しておざなりの経済制裁の警告を発するが、それ以上には中国に対する行動はとらない。

(6)宮古海峡の西側で、日本と中国の海軍、空軍の部隊が激しく交戦する。中国側はフリゲート艦を撃沈され、艦隊をその海域から撤退させる。だが、中国側のJH7A戦闘爆撃機とSU30MKK多目的戦闘機が、尖閣に向けて上陸用部隊を運ぶ日本側の艦隊をみつけ、対艦巡航ミサイルで、こんごう型の誘導ミサイル装備護衛艦2隻を沈め、他の1隻を大破して、日本側の尖閣上陸作戦を阻む。

(7)米軍の偵察機が、日中両部隊の戦闘を遠距離から観察して、中国軍が攻めていない沖縄・嘉手納基地へ帰投する。中国は、嘉手納基地など沖縄の米軍基地には一切手を出さないことを米国に約束し、米軍不介入の言質を獲得していた。

(8)中国軍の上陸作戦艦隊を追尾していた日本側のそうりゅう型潜水艦が中国の対潜航空機に発見され、撃沈される。日本側は中国の尖閣上陸を必死で阻止しようと中国の沿岸警備用のコルベット艦1隻を沈めるが、大勢を変えられない。結局、戦闘開始から4日間で、尖閣諸島は中国人民解放軍に占拠されてしまう。

 こうして最終的に中国軍が日本の部隊を撃退して尖閣諸島を占領するわけだが、このシナリオでは、中国軍は嘉手納基地など米軍の部隊や施設には一切手を出さず、米軍も日中衝突には介入しない、という設定となっていた。

 同報告書は、中国がこのように尖閣奪取作戦を遂行する場合、米国が介入してこないだろうと想定することの危険性を指摘していた。中国の日本に対する軍事優位の確立は中国側にこんな想定さえも抱かせる、という警告である。

【私の論評】中国の尖閣奪取は、日本への侵略であり、侵略すれば攻撃してなきものにするだけ!(◎_◎;)

米経済誌フォーブス(電子版)は先月25日、米ワシントンのシンクタンク、戦略予算評価センター(CSBA)の最新リポートを引用し、「中国海軍は規模の上では日本の海上自衛隊を追い抜いているが、艦艇の平均サイズでは海自がリードしている。より重要なのは、有事の際に、海自は米国の支援を得られることだ」と報じています。

フォーブスの記事によると、中国はアジアをリードする海軍大国としてすでに日本を追い抜いているとしています。20年間の爆発的な成長を経て、中国海軍は現在、日本よりも多くの艦船とミサイルを保有しています。

上の記事にもあるように、CSBAのトシ・ヨシハラ氏は最新のリポートで、「アジアにおける海軍力のバランスは劇的に変化している。海洋大国としての中国の台頭は、西太平洋における日本の長年の地位を損ない、その過程でアジアにおける米国の地域戦略を弱体化させる可能性がある」と指摘しています。

リポートによると、上にもあるように、中国は1990年代後半から大規模で強力な軍事力の増強に見合うだけの経済成長を遂げました。一方、日本の経済はほとんど成長しておらず、軍事支出(防衛費)にも明らかな影響を与えています。

90年から2020年の間に、海自のコルベット、フリゲート、駆逐艦、巡洋艦、ヘリ空母の数は64隻から51隻に減少しました。一方、同時期に中国の同種の艦艇数は55隻から125隻にまで増加しています。




もちろん数だけでは全てを語れません。日本の艦艇の平均サイズは中国に比べてはるかに大きいです。サイズが大きければ大きいほど、海上に長くとどまることができ、戦闘での生存率が高くなります。

中国海軍は海自よりも多くのミサイルを配備することに成功しています。艦隊の垂直発射システム(VLS)のセル数は、艦隊の火力の量とほぼ一致しています。

日本列島はアジア太平洋の米軍に重要な基地を提供しており、これが西太平洋における米国の力の基盤となっています。有事の際に、米国は日本と一緒に戦うことになるでしょう。中国の尖閣奪取戦略は、あまりに自分たちに都合が良すぎます。

何やら、米国映画の戦闘シーンで、敵方のドイツ兵が、まるで打ってくださいといわんばりに、無防備でできて、米軍に易々とやられてしまうシーンを思い浮かべてしまいました。

言い換えれば、米国の海軍力を考慮に入れずに、日本と中国の実力を評価するのは不正確です。中国が約3300発、日本が約1600発のミサイルを配備できるのに対し、米国は1万発のミサイルを配備できます。

その約3分の2は米太平洋艦隊に属している。つまり、日米海洋同盟は、中国の3300発に対し、7600発のミサイルを配備できることになります。

それに、上でも示された戦略予算評価センター(CSBA)の最新リポートでは次のような分析もなされています。

中国の軍事兵器、機材の多くは完成品を入手して分解や解析を行い、その動作原理、構成要素や製造方法を明らかにする「リバースエンジニアリング方式」であるので、一般的に機器の信頼性が低いこと、艦艇やその装備品が最新鋭であっても乗組員の技量や練度について未知数であること、また戦力構成上対潜水艦戦能力があまり高くないことなど、いくつかの不安要素があります。

ただし、中国の政治指導部や海軍上層部が「攻撃的な戦略を採用したい欲望にかられていること」という状況は看過できないシグナルです。我が国としては、中国海軍の戦闘能力の正確な分析評価を行い、十分対応できる防衛力整備を行うとともに、堅固な日米同盟および価値観や理念をともにする台湾、豪州やインド等との連携も図りながら、中国が無謀な暴挙に走り出さぬよう、しっかり抑え込むべきです。

「超音速対艦ミサイルASM-3」の射程延伸型のものを、早く製造して大量に現場に配置することと、中国の対潜哨戒能力では、発見が難しい最新型潜水艦の隻数を増やすことや、F35の現場での運用訓練を早めに終えて、1日でも早く現場で活躍させるなど、やるべきことは山のようにあります。

それとともに、中国の戦意を喪失させることが最大の防御なります。人民解放軍の将官たちの戦意を挫くべきです。そもそも、尖閣は日本の領土であり、日中間には領土問題がないわけですがら、中国が尖閣を奪取しようとすることは、日本への侵略であり、侵略すれば、攻撃してなきものにするだけの話です。

このあたりは、政府はもっと単純に考え、中国に対する備えを固めるべきです。米国も尖閣が中国に奪取されそうになった場合、単純に考えて行動すべきです。

このブログでは台湾が中国に奪取されそうになった時の、米国のやり方を掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
習近平いよいよ「台湾潰し」へ…迎え撃つ蔡英文総統の「外交戦略」―【私の論評】中国が台湾武力奪取に動けば、急襲部隊は崩潰し、習近平の中国内での評判は地に堕ちる(゚д゚)!
米軍のF35A
中国の台湾急襲舞台は、当然のことながら航空機ならびに艦艇により派遣されると思います。それには、米国のステル性の高い航空機ならびに、潜水艦で隠密理に攻撃すれば、中国の台湾急襲部隊のほとんどが、崩潰することになります。

崩潰した後の中国台湾急襲部隊への追撃戦は、米国が行うことなく、台湾が実施すれば良いです。そうして、軍事力も強化しつつある昨今の台湾はこの追撃戦を首尾良くやり遂げるでしょう。中国にとっては屈辱的かもしれませんが、捕虜になる人民解放軍もかなりの数に登ることになるでしょう。

その後米国は、この軍事行動に関して、何も公表しなければ、台湾が独力で中国軍を粉砕したということになります。そうなると、台湾に軍事でも負けた習近平ということになり、国内でも習近平の評判は地に堕ちることにります。
中国が米国によるものだと批判しても、中国流に突っぱねれば良いのです。そもそも、中国は米軍攻撃の証拠を見つけることができないでしょう。
これと同じことを米軍は日本で実行すれば良いのです。ただし、日本の自衛隊は台湾の軍隊よりも、人員でも装備で優っていますから、米軍の出番はあまりないでしょう。

ただし、ここぞというときには、日米共同で、中国軍を徹底的に叩き、追撃戦は日本が行うことにします。

そうして、米軍はこの作戦に参加したことを発表しないようにします。そうなると、中国は日本に撃滅されたということになり、中国で習近平はもとより、中共の評判も地に墜ちることになります。

このような奇策も含めて、様々なシナリオを考えておき、いざというときには、中国を完膚なきまでに叩き潰すべきです。日本の領土尖閣などに野心を抱いたことを後悔させるべきです。

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2020年6月16日火曜日

陸上「イージス」配備断念!河野防衛相決断の真意は… 落下の危険性と高額コスト 識者「北に対抗するため日米で次世代システム開発も— 【私の論評】日本にとって合理的判断とは何か、憲法9条の改正を含め、国会でも大きな争点として議論すべき!(◎_◎;)


イージス・アショアの計画停止を発表した河野防衛相
日本の安全保障は大丈夫なのか-。河野太郎防衛相は15日、地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」の配備計画を停止すると発表した。迎撃ミサイルのブースター(推進エンジン)が演習場外に落下する危険性を排除できないうえ、巨額のコストも問題となった。ただ、北朝鮮は30~40発の核弾頭を保有し、ミサイル技術も年々向上させている。計画が白紙となれば、日本は弾道ミサイル防衛(BMD)計画を根底から作り直さなければならない。迎撃ミサイルを共同開発してきた米国との同盟関係に影響はないのか。「次世代の迎撃システム」を日米で共同開発する案とは。複数の識者に聞いた。


 「イージス・アショアの配備は、防衛計画大綱にも明記している。とりあえずの『計画停止』だが、別の候補地が見つからなければ『中止』になりかねず、大変な話だ。自民事前の相談はなかった。機密保全に配慮したのだろうが、残念だ」

 自衛隊OBで「ヒゲの隊長」として知られる、自民党参院議員の佐藤正久前外務副大臣は、こう語った。

 イージス・アショアは、イージス艦と同様の高性能レーダーと、ミサイル発射装置で構成する地上配備型の弾道ミサイル迎撃システム。北朝鮮の弾道ミサイルへの対処を目的に導入が進められていた。陸地にあるため、イージス艦と比べて常時警戒が容易で、長期の洋上勤務が必要ないため部隊の負担軽減につながるとされた。

 ところが、日米で協議を進めるなかで、迎撃ミサイル発射後に分離されるブースターを海上や演習場内に落下させるには、ソフトウエアだけでなく、ハードウエアの改修が必要だと判明した。5月下旬には、10年以上の開発期間と、数千億円の費用がかかると分かり、「計画停止」もやむを得ないと判断した。

 河野氏は15日、「コストと配備時期に鑑みてプロセスを停止する」「当面はイージス艦でミサイル防衛体制を維持する」と記者団に説明した。

 安倍晋三首相には12日に報告し、了承を得たという。今後は国家安全保障会議(NSC)に報告したうえで、閣議で正式に計画停止を決定する方針。

 気になるのは、日本の安全保障体制だ。

 現在、日本の弾道ミサイル防衛は、海上自衛隊のイージス艦の迎撃ミサイルと、航空自衛隊の地対空誘導弾パトリオット(PAC3)の2段構えだ。これにイージス・アショアを加えて3段構えにする計画だった。

 北朝鮮は昨年13回、今年は4回の弾道ミサイルを発射した。従来型の液体燃料に比べて、機動性に優れる固体燃料を使ったミサイルの開発が進展しているうえ、発射後に軌道が変わるミサイルもあり、迎撃が困難になりつつある。核弾頭も着々と増やしている。スウェーデンのストックホルム国際平和研究所(SIPRI)は15日、北朝鮮の保有数は昨年の20~30発から30~40発に増加したと発表した。

 軍事ジャーナリストの井上和彦氏は「今回の計画停止で、『イージス・アショアが不要になった』と考えるべきではない。イージス・アショアのレーダーによる覆域の広さは、日本の防衛を考えるうえで重要な役割を果たす。日本としては依然として3段構えの弾道ミサイル防衛が必要だ。北朝鮮に備えるだけでなく、日本に弾頭ミサイルの照準を向けているとみられる、中国やロシアといった脅威に備える面にも注目すべきだ」と語る。

 評論家で軍事ジャーナリストの潮匡人氏は「なぜ、このタイミングで発表したのか疑問だ。(ブースターの)問題点は、当初から言われていたことだ。北朝鮮がミサイルを発射する兆候もあるなか、世界に向けて『(日本の防衛は)穴だらけだ』と示したに等しい」と指摘する。

 日米同盟への影響も懸念される。

 潮氏は「日米間でイージス・アショアは契約済みだ。莫大(ばくだい)な解約料を払うか、THAAD(高高度防衛ミサイル)を代わりに購入するかという問題もある。計画停止を前向きにとらえ、中国やロシアの極超音速ミサイルや、北朝鮮の軌道が変わるミサイルに対処するため、日米で次世代の迎撃システムを共同開発することも考えられる」と語った。

 ミサイル防衛全体だけでなく、日本の防衛体制を見直す案もある。

 前出の佐藤氏は「イージス・アショアが計画停止となれば、イージス艦は日本海周辺などに張り付くしかなく、南西諸島の守りが手薄になりかねない。中国の軍事的台頭を考えれば、大きなマイナスだ」と指摘したうえで、続けた。

 「これまでは、『盾と矛』の『盾』の部分を強くしてきたが、これからは『矛』の能力、例えば、(専守防衛の範囲で)『敵基地攻撃能力』につなげる議論が出てくる可能性もある。『盾』についても、イージス・アショアや、数少ないPAC3に限らず、地対空ミサイル(中SAM)にも弾道迎撃ミサイル能力を持たせる議論があってもいい」

【私の論評】日本にとって合理的判断とは何か、憲法9条の改正を含め、国会でも大きな争点として議論すべき!(◎_◎;)

河野防衛相がイージスアショアの導入を停止したの悪いことではないと思います。ブースター落下が危険だからというわけではありません。自衛隊の戦力は防御に偏しておりこれ以上防御に大金をかけるよりは攻撃力を持つことに金をかけるべきだと思うからです。攻撃力を持たない軍は抑止力にならないです。

尖閣諸島が攻撃されている時に、防御システムイージスアショアがあっても、あまり意味をなさないからです、そのような時には攻撃力が必要だからです。

北朝鮮のミサイルに関しても、防御だけでこれを防ぐには、いくら金をかけても限界があります。そのようなことよりも、北朝鮮が日本にミサイルを発射することを未然に防ぐ先制攻撃能力を持つこととの方が、より経済的であり現実的であると考えられるからです。

2019年6月28日、米国の著名シンクタンク、ブルッキングス研究所が開催したシンポジウムで、ポール・セルヴァ米統合参謀本部副議長(当時)がミサイル防衛をめぐって注目の発言をしました。

ポール・セルヴァ米統合参謀本部副議長(当時)
日本ではほとんど報じられませんでしたが、ジェーンズ・ディフェンス・ウィークリー(軍事と軍需産業情報に関する週刊誌であり、編集長はPeter Felstead)では大きなニュースにな離ました。米国軍制服組ナンバー2にあたる軍高官が、ミサイル防衛に対する旧来からの考えを変えるよう、聴衆に強く訴えたのです。

セルヴァ副議長は、この年の初めにロシアが公開した新型の地上発射型巡航ミサイル「9M729」への対抗措置として、ミサイル防衛の強化より、ロシア軍のキルチェーン(ミサイル先制打撃システム)を無力化するなど、もっと攻撃型のオプションを検討するよう訴ました。「攻撃は最大の防御なり」という古くからの格言を想起させる内容です。
その理由として、セルヴァ副議長は「(ミサイル迎撃という)命中撃墜型の対策では、どちらがより多くのミサイルを持っているかの数争いとなるため、常に攻撃側が有利になる」と述べた。

セルヴァ副議長は、ミサイル防衛システムでは「弓の矢をやっつけるか。あるいは、弓の射手をやっつけるか」という重要な問題に直面すると指摘した。

「迎撃システムにおいては、私たちは常に攻撃で立ち遅れる。なぜなら、その言葉の定義の通り、私たちは敵の行動にまず順応しなくてはいけないからだ。私が今、提案しているのは、このリンクを断ち切ることだ。つまり、(サイバー攻撃や電子戦で)敵の指揮統制システムやミサイル制御システムに入り込んだり、発射台そのものをターゲットにしたりすることだ」

さらに、セルヴァ副議長は、「ミサイル防衛の駆け引きでは、相手の一発目のパンチを受けても大丈夫なほどこちらは優れていなくてはならない。そして、(敵のミサイル発射位置を突き止めて)相手が二発目のパンチを出すのを防げるほど賢くなくてはいけない」とも述べました。

米軍のナンバー2がミサイル迎撃システムの限界をいち早く示す一方で、日本はイージス・アショアの導入を目指してきました。米国防総省が5月18日に発表した最新のデータによると、イージス・アショアに関する日本の米国との契約総額は既に32億3000万ドル(約3470億円)に膨らんでいます。

この契約はアメリカのFMS(対外有償軍事援助)を通じて結ばれています。日本の会計検査院はこれまでも、FMSを通じた契約額がアメリカの言い値になり、日本が不利益を被っていると指摘してきました。

イージス・アショアはそもそも北朝鮮の弾道ミサイル攻撃を念頭に、対抗手段として導入が進められてきました。しかし、その北朝鮮も弾道ミサイル以外にも次々と新型のミサイルを開発しています。

日本はこの際、3500億円近くの高い買い物を米国からするより、事前に相手国の基地などを攻撃する能力「敵基地攻撃能力」の保有を目指すべきです。政府は、この能力について憲法上は認められているが、専守防衛への配慮から政策判断として保有しないとし、実際に攻撃能力を持つ方針を示したことはありません。

とは言いながら、日本も攻撃型兵器について全く検討されてこなかったわけではありません。昨年3月19日に岩屋防衛大臣(当時)が定例記者会見で「超音速対艦ミサイルASM-3の射程延伸型を開発し、F-2戦闘機の後継となる新型戦闘機への搭載を視野に入れている」と説明しました。開発は完了済みで量産はまだ開始されていないASM-3を改良するという異例の方針でした。
私どもは近年、諸外国の艦艇に射程が長い対空火器の導入がどんどん進んでいることから、これに対応するためには、平成29年度に開発完了した空対艦誘導弾、ASM-3の更なる射程延伸を図るべく早期に研究開発に着手し、順次航空自衛隊に導入していくこととしております。出典:防衛省:防衛大臣記者会見 平成31年3月19日(09:39~10:05)
記者会見でASM-3射程延伸型の具体的な射程の数値は説明されませんでしたが、ASM-3の射程150~200kmを倍増する300~400kmを目指して搭載燃料を増加する改修を行うと推定されます。


また外国製の長距離巡航ミサイル取得と並行して進められる計画であるとも明言されています。取得する理由は仮想敵国の軍艦が搭載している艦対空ミサイルの射程が伸びてきたため、これを上回る長射程の対艦ミサイルを装備してスタンドオフ(相手の攻撃が届かないところ)攻撃を行う目的と説明されています。

防衛大臣の記者会見では言及されていませんでしたが、私の推定では「中国海軍の艦対空ミサイルが近い将来に米国製SM-6艦対空ミサイルと同様のデータリンクによる超水平線射撃能力を手にする」という重大な事態への対抗策として、自衛隊はこれに対するスタンドオフ攻撃を行える長距離対艦ミサイルを用意するのだと考えます。相手が古い装備のままなら自衛隊も古い装備のASM-2対艦ミサイルのままでスタンドオフ攻撃を行えますが、もうすぐそうではなくなるのです。

すでに取得が予定されている外国製の長距離巡航ミサイル「JASSM-ER」「LRASM」「JSM」と国産の「ASM-3射程延伸型」で決定的に異なるのは速力です。ASM-3はマッハ3を発揮できる超音速対艦ミサイルであり、この種類の対艦ミサイルは米軍も保有していません。

米軍の新型対艦ミサイルLRASMはマッハ1未満の亜音速で飛翔する遅い巡航ミサイルで、その代わりに射程は800km以上と長くなっています。ASM-3射程延伸型はLRASMと重量がほぼ同じくらいの1.1~1.2トン程度になると予想されますが、超音速飛行の燃費の悪さで射程は400kmが限界です。

亜音速の対艦ミサイルと超音速の対艦ミサイルではこのように性能に一長一短があります。1本あたりの取得費用は超音速型の方が数倍も高価になるので、ASM-3射程延伸型は特別な切り札的な存在として使われることになるでしょう。保有数の少ない貴重な対艦兵器として温存されることになるので、敵基地攻撃用の対地兵器への転用は現時点では全く考慮されていません。

そして当時の防衛大臣の記者会見でASM-3射程延伸型はF-2戦闘機の後継となる新型戦闘機への搭載を視野に入れていることが示唆されました。新型戦闘機が対艦攻撃の主力を担うことが初めて明確になったのです。

ただすでに取得予定の長距離巡航ミサイル「JASSM-ER」「LRASM」「JSM」を北朝鮮への敵基地攻撃に使うとは一言も説明していません。

実際に亜音速で飛翔する巡航ミサイルは1000kmも飛ぶと1時間以上掛かってしまい、敵の弾道ミサイル移動発射機が発射準備しているのを見付けてから攻撃しても間に合いません。亜音速の巡航ミサイルは弾道ミサイル阻止には全く役に立たないのです。

日本が長射程巡航ミサイルを取得する理由は防衛庁の説明通り、島嶼防衛で敵の対空兵器の射程圏外から発射できるスタンド・オフ攻撃を行う為です。

今後は、北朝鮮の核基地を迅速に発見し、これを叩く戦略をなるべく早く開発する必要があります。スタンド・オフ攻撃だけに拘らず、航空機にミサイルを搭載し、北朝鮮の近くまで運び発射するという手もあります。北朝鮮の防空システムは、数十年前のままであり、日本の航空機には全く歯が立ちません。

北朝鮮70周年軍事パレードでは超旧式複葉機
「An-2(アントノフ2)」の儀礼飛行も行われた

もし北朝鮮を本気で攻撃し北の核兵器を無力化するつもりであれば、空からだけでなく地上からの支援も必要です。地上に要員を配置して、ミサイルをレーザーなどで誘導しなければならないからです。

つまり「現場の兵士」が必要となるのであり、ミサイルの着弾後も、攻撃目標が間違いなく破壊されたかを確認する必要があります。ミサイルが着弾しても、爆発による煙やホコリが落ち着くまで写真撮影は不可能であり、破壊評価が遅れるので、現場の人員が必要になるのです。そのためには、北朝鮮内に何らかの方法で人員を予め侵入させておき、目標を把握しておかなければならないです。

このようなことは、現状の憲法や法律では、なかなかできないものも含まれています。しかし、イージスショアの配備を中止すれば、これらに対する財政的手当は十分にできます。

さらに、北朝鮮など相手国が日本への攻撃に着手した段階で日本は個別的自衛権行使が可能になるので、日本の攻撃に着手した敵基地への攻撃は専守防衛の範囲内ということになります。敵のミサイルが日本に着弾して被害が出てから行使可能ということではありません。

そうして、打撃力を保有していること自体がそれを行使しないまでも、抑止力につながります。中国、北朝鮮等からの高まる軍事的な脅威を踏まえ、日本にとって本当に合理的判断とは何なのでしょうか。憲法9条の改正を含め、国会でも大きな争点として議論すべきです。

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2020年6月15日月曜日

コロナで中国との蜜月、EU分断を招くイタリア— 【私の論評】イタリアが中国の傘下に入ることはないが、EU離脱可能性は捨てきれない!(◎_◎;)

岡崎研究所

 イタリアはEUの大国中、唯一中国の「一帯一路」の正式の署名国となり、中国からの投資を積極的に受け入れるなど、中国との関係を急速に深めている。問題はそれがイタリアのEU離れをもたらしていることである。


 これまでイタリアは、EU、特にドイツやオランダの北の諸国に批判的に見られてきた。2019年のイタリアの通貨危機に際し、ドイツやオランダはイタリアを財政支援することはイタリアの放漫財政のつけを勤勉な国が払うことになるとして反対した。そのことが、イタリアが中国との関係を緊密化する一方で、イタリアのEU離れの傾向を強めている1つの要因になっている。

 武漢発の新型コロナウィルス(COVID-19)の感染拡大は、イタリアでEUで最初の爆発的増加をもたらした。それが中国離れをもたらすかと言えば、結果は逆であった。中国からもたらされた感染拡大でイタリアが困り、マスクや医療機器の不足への支援をEU諸国に求めると、支援の手を差し伸べたのは、フランスでもドイツでもなく、中国であった。感染拡大の時間のずれが、中国にそれを可能にさせた。

 5月24日付の英フィナンシャル・タイムス紙では、ウォルフガング・ミュンチャウ同紙副編集長が、イタリアの中国との関係緊密化で、EUの団結が次第に失われていると述べている。その中で紹介された世論調査の結果が興味深いので、以下に紹介する。

 イタリアの世論調査では、中国が最も友好的な国として挙げられ、ドイツが最も友好的でない国とのことであった。また、別の世論調査では、イタリア国民の中で、EU残留を望む者が44%、離脱を望む者が42%とのことである。EU残留を望む者のほうが若干多いが、2年前の同じ調査では、EU残留を望む者が65%、EU離脱を望む者が26%であったということなので、ほんの2年余りでイタリア世論は急速に離脱の方向に傾いていることになる。上記論説では、これらの数字は極めて警戒すべきものであると言っているが、EUの団結という見地からは当然の感想だろう。

 イタリアは、今回の新型コロナウィルスのパンデミックで甚大は被害を被った。6月6日現在のジョンズ・ホプキンス大学の統計によると、感染者数は、世界第7位で、23万4531人、死亡者数では世界第4位の3万3742人である。EU内では、感染者数ではスペインに次いで2位、死者数では1位である。もちろん、経済の損失も極めて大きかった。

 EUは域内のパンデミック被害対策の1つとして、EU共通の「コロナ債」の発行を検討したが、ドイツとオランダが拒否し、イタリアのコンテ首相は「この未曽有の困難に立ち向かえないなら、欧州という建物全体が存在理由を失う」と、強い不満を述べたと報じられた。

 その後、メルケル独首相とマクロン仏大統領が5000億ユーロの欧州コロナ復興基金を設立することで合意した。これはドイツが従来の立場をやわらげ、大きく譲歩したことを意味する。EUはこれでイタリアのEU懐疑に歯止めがかかることを期待しているようだが、上記フィナンシャル・タイムズ紙の論説は、イタリア支援としては不十分であると述べている。ドイツの思い切った方針転換も、イタリアから見れば‘too little, too late’ということか。

 イタリアの中国傾斜、EUに対する懐疑的な見方は今後とも続くと見てよい。イタリアが正式に EUから離脱することは考えられないが、EUの団結にひびが入るのは避けられないものと見られる。

【私の論評】イタリアが中国の傘下に入ることはないが、EU離脱可能性は捨てきれない!(◎_◎;)

上の記事を読んでいると、イタリアは経済的に追い詰められ、EU諸国の助けの手もなく、中国に飲み込まれそうな状況とも見えますが、現実的はそうとばかりとは言えないようです。あれだけの被害を被り、それが中国コロナの初期対応が間違っていたことが原因なのですから、当然と言えば当然でしょう。




「中国政府の新型コロナウイルスの隠蔽工作は全人類に対する犯罪だ」  

現在欧州ではイタリアの有力政治家によるこんな激しい糾弾の言葉が、欧米メディアで繰り返し報じられるようになっています。

中国の習近平政権が当初、新型コロナウイルスの感染拡大を隠し、感染の状況などについて虚偽の情報を流していたことに対しては米国でも多方面から非難が浴びせられています。

しかし「全人類への犯罪」という激しい表現はなかなか見当たらないです。なぜこれほど厳しく中国を糾弾しているのでしょうか。

この言葉を発したのは、イタリアの前副首相で右派有力政党「同盟」の党首(書記長)、マッテオ・サルビーニ氏です。サルビーニ氏はイタリア議会などで次のように発言しました。

「もし中国政府がコロナウイルスの感染について早くから知っていて、あえてそのことを公に知らせなかったとすれば、全人類に対する罪を犯したことになる」

「もし」という条件をつけてはいますが、中国政府がコロナウイルスの武漢での拡散を隠したことは周知の事実です。つまりサルビーニ氏は「全人類に対する罪を犯した」として明確に中国を攻撃しているのです。

4月から5月にかけ、サルビーニ氏は数回、同じ趣旨の中国非難を繰り返しました。議会で次のように述べたことも報道されています。

「中国は新型コロナウイルスのパンデミックを隠蔽することによって全人類への罪を犯した」

 サルビーニ氏は47歳のイタリア議会上院議員で、現在イタリア政界で最も注目を集める政治家の1人です。欧州議会議員を3期務めたあと、右派政党「同盟」を率いて2018年の総選挙で第三党となり、連立政権の副首相兼内相に就任しました。2019年9月には内閣を離れましたが、その後も活発な政治活動を展開してきました。

ジュセッペ・コンテ首相が率いる連立政権は中国への接近策をとってきましたが、サルビーニ氏は中国への接近を一貫して批判してきました。イタリアが中国の「一帯一路」構想に参加して、中国から技術者や学生、移民などを多数受け入れてきたことに対しても、サルビーニ氏の「同盟」は批判的でした。

新型コロナウイルスがイタリアで爆発的に感染拡大する直前の1月下旬、中国に帰って「春節」を過ごしたイタリア在住の中国人がイタリアに戻ってきました。「同盟」は、イタリアでの感染拡大を防ぐ水際対策として彼らの検査を行い、隔離することを提案しました。だがイタリア政府はその種の規制を一切行いませんでした。

その後、イタリアで悲劇的な感染爆発が起こり、全国民の封鎖状態が長く続きました。6月頭時点で、感染者は累計23万3000人を超えて世界第9位、死者は3万3000人を超え、世界第3位を記録しています。

だからこそ、元々、中国への接近に批判的だったサルビーニ氏が激しい言葉で中国政府を糾弾するのはもっともだと言えます。しかしそれでも中国政府に浴びせる「全人類への犯罪」という表現は過激です。


マッテオ・サルビーニ氏

米国や欧州の主要メディアは サルビーニ氏の発言を「中国への激しい怒り」の実例として報道するようにな離ました。米国の有力新聞ワシントン・ポストは、4月中旬の「中国に対して怒っているのはトランプ大統領だけではない」という見出しの記事で、サルビーニ発言を詳しく紹介していました。ヨーロッパでも、イタリアのメディアに加えてイギリスやフランスの新聞、テレビなどがその発言を伝えています。

ヨーロッパ諸国のなかでこれまで中国に対して最も友好的な政策をとってきたイタリアでこうした激しい中国糾弾の言葉が発せられ、広く報じられるという現実は、今後の国際社会で中国が置かれる厳しい状況を予測させるともいえそうです。

コンテ首相は、ユーロ圏の救済基金、欧州安定化メカニズム(ESM)に連動する最大360億ユーロ(約4兆3400億円)の信用枠提供を7月末までに申請する可能性があります。同国紙レプブリカが、情報源を明らかにせずに報じました。

同紙によれば、連立パートナーである反エスタブリッシュメント(既存勢力)政党「五つ星運動」は欧州連合(EU)の復興基金利用に反対していましたが、同党のディマイオ外相からコンテ首相は予備的な承認を得ました。イタリアは、スペインとポルトガルを含む他のEU加盟国と共にESM融資の申請を目指しているといいます。

グアルティエーリ経済財務相は13日遅くにイタリアの公共放送RAI3テレビとのインタビューで、ESM信用枠に関する決定前にまず、復興基金を巡る協議がまとまることをイタリア政府は望むと語りました。

EUの行政執行機関である欧州委員会は先月、実質的な復興基金となる総額7500億ユーロの経済再建策を提案。欧州委のフォンデアライエン委員長は、コンテ首相がローマで主催した非公開のフォーラムに寄せたビデオメッセージで、「次世代EUプラン」は「イタリアの絶好のチャンス」だと述べ、構造改革加速のために復興プランの活用を強く求めました。

欧州委のジェンティローニ委員(経済担当)も、反景気循環的なリセッション(景気後退)回避が支出プランの目的だとしながらも、 2兆4300億ユーロのイタリア債務を「確かな減少軌道」に最終的に乗せるはずだと主張しました。

イタリアでは昨年、ユーロに次ぐ事実上の「第2の通貨」を発行する構想が浮上していました。財政難にあえぐ伊政府が少額債券を発行し、民間企業への未払い金や市民への税還付などにあてる案です。

市中で流通すれば事実上の通貨とみなされ、欧州連合(EU)のルールに反する可能性が高いです。イタリアが財政ルールを逸脱しているとして制裁を検討中のEUはユーロの信頼を傷つけかねない事態に懸念を強めていました。

この構想はコンテ政権を支える極右「同盟」の発案で「ミニBOT」と呼ばれます。伊政府が発行する短期財務証券「BOT」のミニチュア版のイメージです。構想段階のため詳細は不明でしたが、欧州紙によると、満期はなく利子はないとしていました。1~500ユーロの少額債券を発行し、企業や市民に流通した後は納税や決済にも使えるとされ、通貨に近いです。

この案が浮上した背景には伊財政の悪化がありました。政府と取引のある伊企業には政府からの支払いが滞っているとの不満がたまっていました。同盟を率いるサルビーニ副首相は昨年6月18日「民間企業に支払う手段がほかにあれば検討するが、なければこの計画を推進する」と語りました。

しかし紙幣の形で発行すれば通貨とみなされるため、ユーロ採用国に他の通貨の発行を禁じるEU規定に違反します。欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁はミニBOTが事実上の通貨であることから違法との認識を示していました。

ECBが発行するユーロと伊政府が発行するミニBOTの2種類の通貨が市中に出回るとどうなるでしょうか。企業や市民は信用力の高い通貨を持とうと銀行からユーロを引き出します。信用力の低いミニBOTは受け取りを拒否されるか、割引された価格で流通することになるでしょう。ユーロ不足が国全体に広がり、政府もユーロ建ての債券を償還できずに債務不履行に陥ることになります。この結果「将来のユーロ離脱につながる」(欧州系金融関係者)と懸念されていました。




伊政府内からは「新たな債務になる」(トリア経済・財務相)、「政府で議論していない」(コンテ首相)と異論が出ています。ミニBOTの発行には法整備などが必要で、すぐに実現するとの見方は多くないです。ただコンテ政権を支える与党の同盟に加え、左派「五つ星運動」はEU懐疑派であることから、将来的に実現しかねないと危惧する見方も増えつつあります。

EUルールを尊重しない伊政権の姿勢にEU側は疑念を募らせました。ただでさえイタリアの財政状況は深刻です。公的債務は国内総生産(GDP)比で132%で基準の60%を大きく上回ります。EUの欧州委員会は昨年6月5日、EU財政ルールに基づく制裁手続き入りが「正当化される」との報告書を公表。EU各国は7月に制裁手続きに入るかどうか判断することになっていました。

EU側はユーロ圏3位の大国との対立激化は望んでいません。EUで財政を担うモスコビシ欧州委員は「対話を続けたい」と述べ、伊政権の歩み寄りがあれば、制裁手続き入りは回避できるとの考えを示しました。ところが、政権内で力を持つサルビーニ氏の態度が軟化する兆しはみえませんでした。

結局ミニBOT関する議論は、昨年の夏以降は下火になっています。EUはこれに、断固として反対しています。もちろんトリア財務大臣、首相、共に政権を担う5つ星運動、そしてPDー民主党など野党からも反対の声が上がっています。

この政策を、強引に推し進めようとした姿勢から、谷原『同盟』は、ブレグジットの行方が定まらないまま、デリケートな空気が流れるEUを揺さぶりたいのか、あるいは本当に離脱を計画しているのかもしれません。

ただ、イタリアの中国傾斜は、一定の歯止めがかかり、中国に対する懐疑的な見方が拡大し、EUに対する懐疑的な見方は今後とも続くと見て良いでしょう。イタリアが正式に EUから離脱し、中国の傘下に入ることはなかなか考えられないですが、EUの団結にひびが入るのは避けられないものと見られる。

EUが中国に対抗して、イタリアなどをまともに救う手立てを講じれば、イタリアはEUにとどまり続けるでしょうが、そうでなければ、イタリアがEUを離脱する可能性は捨て切れないでしょう。

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新型コロナ危機を利用し世界的地位向上を図る中国―【私の論評】世界に謝罪しないと米国の怒りをかい、石器時代に戻るかもしれない中国(゚д゚)!


2020年6月14日日曜日

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第2の天安門に!?香港デモ

天安門事件追悼集会で「香港独立」の旗が振られた=4日

 ドナルド・トランプ米大統領は、「香港の優遇措置廃止」と、「世界保健機関(WHO)からの脱退」という2つの重大な決断を下した。中国を見限り、英国や台湾を巻き込む「世界新冷戦」の様相だ。国際投資アナリストの大原浩氏は緊急寄稿で、米英など民主主義勢力と反民主主義勢力の二極化が進むなか、日本も決断を迫られていると現実を突きつける。


 トランプ大統領が関税などの優遇措置の廃止の方針を決めるなど、米中対立の舞台の一つが香港だ。問題の発端である1997年の英国から中国への香港返還・再譲渡は、84年に英中両国が北京で連合声明などの草案に署名したことに遡(さかのぼ)る。

 中国側の署名者は趙紫陽首相だったが、署名の場に同席したトウ小平氏が返還を実現した立役者である。英国側の署名を行ったのは「鉄の女」マーガレット・サッチャー首相だったことは少し意外かもしれない。

 サッチャー氏は、地球の裏側のフォークランド諸島がアルゼンチンに侵攻された時には、軍を派遣して守り抜いた。フォークランド諸島は、香港に比べたら経済的・軍事的価値などほとんどないにもかかわらずだ。

 メディアでは「99年間の租借期限」が到来したから返還したと報道されたが、99年間租借していたのは「展拓香港界址専条」という条約で定められた新界地域だけだった。主要部分の香港島は、1842年の南京条約(第一次アヘン戦争の講和条約)によって、清朝から割譲された英国の永久領土なのだ。1860年の北京条約(アロー号戦争の講和条約)によって、九龍半島の南端も英国に割譲された。

 租借部分を返還した後に香港島だけを守ることが戦術的に難しかったために「再譲渡」されたと考えられるが、香港島は英国の永久領土であり、九龍半島の南端も含めて「再譲渡」する必要などなく、当然英国内で大きな議論が巻き起こった。

 そのような事情もあって、中国共産党政府はトウ小平氏が提示した「一国二制度」をもとに、社会主義政策を将来50年(2047年まで)にわたって香港で実施しないことを約束したのだ。つまり、英国側から見れば、香港譲渡は50年間の約束を守れば…という「解除条件付き契約」であったといえる。

 したがって、共産主義中国がお得意の「ねじ曲げ解釈」をいくら駆使しても、英国としては、「一国二制度」という約束が破られれば、香港の再譲渡契約は無効であり、香港が英国領に戻るのは当然である。

 もちろん、英国だけの力で香港を守るために中国と一戦を交えることは難しい。しかし今回、中国の横暴に激怒しているのは英国だけではない。前述のように、米国は強烈な牽制(けんせい)球を投げた。ドイツをはじめ媚中的行動が目立つ欧州大陸の国々も、あからさまに香港の人々の人権が侵されれば声を上げざるを得ない。しかも武漢発のウイルスの影響で国民の対中感情は最悪だ。

 現在の英国首相であるボリス・ジョンソン氏は、サッチャー氏やウィンストン・チャーチル氏のような強烈な個性を持つ。フォークランド紛争、あるいはナチス・ドイツとの戦いと同じように「反民主主義国家・中国」との戦いに踏み切る可能性は十分あるのではないか。

 ■日本も「新世界組織」に参加すべきだ

 第二次世界大戦は、英国とフランスの同盟国だったポーランドをナチスドイツが侵攻したことで始まった。香港は同盟国どころか、「一国二制度」が守られなければ「英国領」に戻るべき存在なのだ。

 トランプ氏は「中国に支配されている」としたWHOからの脱退も表明したが、これも重要な決断だ。台湾は即座に米国が今後立ち上げるであろう「新世界組織」への参加を表明している。日本も後に続くべきだ。米国はWHOだけではなく、「中国に支配されている」国連をも見限っているのである。

 米国が新型コロナウイルスの感染拡大や白人警官による黒人男性暴行死を発端とした抗議デモなどの問題を抱えるなかで、「火事場泥棒」のような中国による香港への「国家安全法」導入は、ますます米英を怒らせる。そして、歴史的に正統な台湾主体の世界再編が米国によって推進されるという大ブーメランとして返ってくるだろう。

 「民主主義勢力」と「反民主主義勢力」の二極に分かれつつある世界で、日本がどちら側につくべきかは明らかだ。共産主義の代表を「国賓招待」する話がいまだに残っているのは言語道断だ。むしろ、台湾の蔡英文総統こそ、国賓として招待すべきではないか。

 ■大原浩(おおはら・ひろし) 人間経済科学研究所執行パートナーで国際投資アナリスト。仏クレディ・リヨネ銀行などで金融の現場に携わる。夕刊フジで「バフェットの次を行く投資術」(木曜掲載)を連載中。

【私の論評】日本はG7のアングロサクソン3カ国とEUの独仏伊を調整し、台湾とも関係を強化し、コロナ後の新世界秩序の中で存在感を増せ!(◎_◎;)

香港割譲は中国史上最も大きな損失でしたが、香港がいずれ中国に返還されるとは、当初誰も考えていませんでした。

1842年に結ばれた南京条約で、香港島は英国に割譲されました。第一次アヘン戦争で英国の巨大な軍艦と圧倒的な軍事力の前に敗れた中国(当時は清国)に選択肢はなく、香港島は英国に永久割譲、1860年に九龍半島が割譲されました。

不毛の島である香港島には水が不足していました。そのため英国は1898年、中国から新界を租借し、99年後の1997年に「新界のみ」返還すると約束しました。この時点では、香港島まで返還することは想定外だったのです。

イギリス軍がアルゼンチンに奪われた島を奪還したフォークランド紛争の勝利に沸いていた1984年、当時中国の実質的な最高指導者だった鄧小平と香港の返還交渉を行っていたマーガレット・サッチャー英首相は「なぜ(新界だけでなく)香港を返還しなければならないのか」と周囲に聞いていたそうです。

マーガレット・サッチャー英首相

それは鄧小平が香港島と九龍島の同時返還を求め、軍事介入も辞さない姿勢を見せたからでした。軍事力も指導者も、アルゼンチンとは格が違しまそち。結局サッチャーは、1997年6月末に香港を中国に返還することで同意したのです。

1997年6月30日の夜、雨が降る中でイギリスによる香港の委任統治が終わりました。260の島と世界一美しいスカイラインを持つ香港で、午前0時に警官たちが帽子のバッジを王冠からランに付け替え、英国旗「ユニオン・ジャック」が降ろされました。

香港返還に際し、住民の間には混乱というより不安が漂っていました。イギリはすでに香港住民に対するパスポートの発行を止めていました。完全にストップ、立ち入り禁止でした。EUの拡大でポーランド人労働者がイギリスで働ける時代になったというのに、なぜ香港住民はだめだったのでしょうか。

人々が疑問の声を上げたのは他でもない、もし中国政府が(1989年の天安門事件のように)弾圧に乗り出したときは、イギリスが守ってくれる、受け入れてくれると保証してほしかったからです。

その素朴さは胸を打ちました。当時の香港は世界で最も成功した植民地で、香港総督も人気があったのですが、英国にとってはしょせん植民地でした。重要なのは中国本土のほうで、香港は中国市場に参入するうえで障害になっていました。天安門事件後いちばん最初に北京を訪問した西側首脳も当時のジョン・メージャー英首相でした。英国にとって中国は、商売の相手だったのです。

引き揚げを指揮したのは、最後の第28代香港総督を務めたクリス・パッテンでした。それは香港返還にとどまらず、大英帝国の事実上の終焉でした。

パッテンは、多くの政治家のように成功することでのし上がるのではなく、屈辱的な失敗を成功に変える抜け目のない政治家でした。1992年の英総選挙でメージャー率いる保守党が勝利したとき、幹事長として勝利に貢献したパッテンは、自分の選挙区で労働党の候補に敗れて議席を失いました。

そのニュースが流れた時、保守党本部は大いに盛り上が利ました。多くの保守党議員は、パッテンは左寄り過ぎると思っていたのです。サッチャーにも嫌われ、周囲もそのことを知っていました。

それでもメージャーはパッテンの味方をし、1997年6月30日の香港返還までの香港総督に任命しました。英国政府はこのポストに、中国市場での利益を危険にさらさない無難な人材を望んでいました。選挙に落ちたパッテンは安全な選択肢に見えましたた。よもや総督という特権的地位と年金に満足し、政治には干渉すまいと考えたのです。ところがそうした見方は見事に外れたのです。

パッテンには、羽飾り付きの帽子も、論争は傍観するという総督の伝統的なたしなみも捨てて、論争に参加しました。1992年7月の就任時、パッテンは人権や自由、民主主義などの言葉を口にして中国政府を不快にさせました。

中国だけではありません。英経済界がどれほどパッテンの言動を憂慮していたか、1993年にパッテンが心臓の手術を受けた時に明らかになりました。報道で彼が手術中だと伝わると、ロンドンの株価は高騰。回復に向かっていると発表されると、わずかだが売り注文が増えました。

パッテンには妻と3人の娘がいたが、一家は気さくで、妻が病院や慈善団体を訪問する時もリラックスした雰囲気でしたた。

新聞の風刺漫画にはよく、ウイスキーとソーダというパッテンの愛犬が登場しました。どちらも犬種はノーフォーク・テリアで、中国の政治家のかかとに噛みついたりする場面が描かれました。

パッテンは、上流階級が住む高台ではなく香港の旧市街を散歩しました。どこから見ても彼は人気者でしたた。高齢の婦人から建設現場で働く労働者まで、パッテンを見つければ誰もが握手を求めました。カフェに入れば、中国の政治家が夢にも思わないようなもてなしを受けました。

イギリス統治下の香港には、香港住民の意思を反映させる政治制度がなく、民主主義は存在しませんでした。パッテンはそうした状況を正そうとしたのですが、ビジネス上の重大な関心を優先する地元の大立者や中国政府の頑なな反対にあいました。民主主義を経験したことのない一般大衆も、パッテンが目指した議会の民選化に反対しました。

香港住民は中国政府に立ち向かってくれる香港総督に感謝していましたが、中国政府には強い不信感を抱いていました。立法会を作って選挙を行っても、投票権のある有権者のうち35%しか投票しませんでした。

低い投票率で、パッテンが目指した選挙改革は失敗しました。パッテンが離任するまでに立法会の権限は縮小され、中国政府は民主化を疎かにしても民衆の反感を買うことはなさそうだ、と自信をつけました。

パッテンは1997年に中国政府から繰り返し中傷されましたが(「1000年来の男娼」というのもその1つ)、それ以降、香港のカフェに彼以上に人気がある客は現れていません。

このクリストファー・パッテン英オックスフォード大学名誉総長が、最近英与党・保守党の支持者と草の根保守主義者の言論フォーラム「コンサーバティブホーム」のインタビューに応じています。

クリストファー・パッテン氏

その内容を以下に掲載します。
パッテン氏「1989年6月の天安門事件を知らせる外交公電を見た時、もし仮にそれが、軍が自国民に向けて発砲するということを意味しているのなら、中国共産党指導部の一部による権力の座を保持する絶対的な決意の表れだと考えた」
「香港返還後、全てが変わったのは習近平国家主席が現れてからだ。習氏が選ばれたのは、中国共産党重慶市委員会書記だった薄熙来氏がクーデターを計画(2012年に失脚)していると中国共産党指導部が考えたことが一部にあると私は考えている」
中国共産党の行動原理は中国共産党一党支配という体制をどんな手段を使ってでも守るという防衛本能に基づいているとパッテン氏は考えているようです。胡錦濤時代(2002~12年)にそのタガが大きく緩んだとして、習氏が引き締めのため選ばれたというのです。

パッテン氏が危機感をさらに強めたのは2013年の「第9文書」と呼ばれる内部文書を目にしてからです。この中で7つの危険な西洋的価値が列挙されています。
(1)立憲民主制
(2)自由や民主主義、人権など普遍的価値
(3)市民社会
(4)市場原理を重視する新自由主義
(5)報道の自由
(6)中国共産党による中国建国の歴史に対するニヒリズム
(7)中国独特の社会主義に対する疑問
中国共産党は、体制を維持するために、自分たちを脅かす全ての思想や信条を敵視しています。だから西側陣営の私たちが中国を敵視せず、中国との冷戦を望んでいなかったとしても「中国が私たちを敵とみなしていることが問題を引き起こす」とパッテン氏は断言します。

習体制が自由と民主主義、人権、法の支配、自由経済を、中国共産党支配を脅かす危険な敵だと見ていたら、チベット自治区や新疆ウイグル自治区、天安門事件で起きた悲劇が香港や台湾、南シナ海、そして東シナ海でも繰り返される恐れがあるということです。

「香港は中国共産党が嫌う全てのものを体現している」とパッテン氏は指摘しています。

パッテン氏「中国によるいじめの黄金時代になったのは間違いない。他国と協力しなければならないにしても中国にもっと厳しく対応しなければならない。中国は黄金時代の見返りにイングランド北部や同中部シェフィールドへの巨額投資を約束したが、そんなものは起きなかった」
「駐英中国大使があらゆる機会に略奪やいじめのために英中黄金時代というスローガンを使っただけだ。ドイツが、自国のロボット産業に対する中国の略奪的投資について神経質になっている理由をイギリスも考えた方がいい」
ベルリンにある研究機関、メルカトル中国研究センター(Merics)によると、2000年から昨年にかけ中国が欧州各国に対して行った直接投資(FDI)は次の通りです。
イギリス503億ユーロ(約6兆1200億円)
ドイツ227億ユーロ(約2兆7600億円)
イタリア159億ユーロ(約1兆9300億円)
フランス144億ユーロ(約1兆7500億円)
フィンランド120億ユーロ(約1兆4600億円)
オランダ102億ユーロ(約1兆2400億円)
イギリスとドイツへの投資が大きいのは経済規模が大きい上、投資価値のある企業や技術が多く、市場が開かれていることに関係しています。中国に対して欧州の市場は開かれているのに、中国の市場が同じように開かれているわけではありません。

研究開発力のあるイギリスの大学から軍事転用可能な最先端技術が中国人留学生を通じてリアルタイムで中国に流出しています。

さらに新型コロナウイルス・パンデミックでは感染防護のためのN95マスク一つとっても中国抜きではつくれなくなったことが浮き彫りになりました。中国は世界のサプライチェーンにガッチリと組み込まれています。

英シンクタンク、ヘンリー・ジャクソン・ソサエティー(HJS)がアングロサクソン5カ国の電子スパイ同盟「ファイブアイズ」のサプライチェーンにおける中国依存度を調べています。例えばラップトップ型PCのサプライチェーンではこんな感じです。

オーストラリア94.3%
ニュージーランド93.1%
アメリカ92.7%
カナダ87.5%
イギリス67.6%
携帯電話のサプライチェーンは以下のような状況です。
カナダ77.6%
オーストラリア74.9%
アメリカ72.5%
ニュージーランド67.3%
イギリス61.2%
30年前の天安門事件の時は西側が中国に対して経済制裁を加えることで中国に西側の自由と人権、法の支配、自由経済に従わせることができました。当時、中国経済の世界に占める割合は2%未満でしたが、現在は約20%まで急拡大しています。

中国はもう西側に気兼ねしないで行動できると考え出しているようです。

パッテン氏「これは英保守党の問題だけではない。あらゆる分野で中国との関係を検討すべきだ。貿易、教育、投資、安全保障、中国がどこでルールをねじ曲げているのかを見ること、サプライチェーン、戦略的産業の独立性を明らかにして、行動する必要がある」
安倍晋三首相は10日の衆院予算委員会で、中国の香港国家安全法導入問題を受け「一国二制度を前提に、声明を発出する考え方の下に先進7カ国(G7)の中で日本がリードしていきたい」と意気込みを述べました。

安倍総理 10日の衆院予算委員会にて
これは、アングロサクソン系の米英加豪と連携した動きだと見られます。
西側諸国を代表するG7はアングロサクソン3カ国と欧州の独仏伊に意見が割れがちで、どちらにも属さない日本が仲を取り持つのは、欧州でドナルド・トランプ米大統領への反発が強まる中、外交上、非常に意義があることです。

西側のプラットフォームであるG7や北大西洋条約機構(NATO)、ファイブアイズをフル活用して中国に対し、香港の「一国二制度」と「高度な自治」を維持するよう働きかけ、新型コロナウイルスのゲノム情報を全て開示し起源の確定に協力するよう迫っていかなければなりません。

中国共産党はあらゆる手段を講じて西側諸国を分断し、揺さぶりをかけて、最後には支配しようとしています。日本でも鼻薬を嗅がされ、知らず知らずのうちに中国共産党の「有益な愚か者」として利用されている政治家、企業家、大学関係者は少なくありません。

自分の利益だけを優先して自由と民主主義、法の支配、人権をないがしろにして良いわけがありません。日本でも超党派の議員で中国が関わる全ての問題を詳らかにして公に議論し、国民に知らせるプラットフォームをつくることが重要です。

日本も、穏健でリベラルな保守主義者パッテン氏の警鐘に耳を閉ざしてはならないです。


そうして、安倍総理自身は、これから新世界秩序の構築に日本としてもこれに乗り遅れることなく、機先を制することには、前向きなようです。

G7のアングロサクソン3カ国と欧州の独仏伊、この二つをまとめ、さらには台湾とも関係を深めコロナ後の新世界秩序の中でリーダー的地位を獲得していただきたいものです。

それと、これは以前もこのブログで述べたことですが、香港はすでに中国の地方都市になったも同然ですから、国際金融センターは、香港から台湾に移すべきです。G7が協調すれば、世界に新たな秩序を構築するとともに、それも十分可能になり、台湾の国際金融センターは世界の繁栄に大きく寄与することになるでしょう。

従来は華僑の人々の力が、中共に都合良く利用されたのですが、台湾に国際金融センターを移すことにより、今度は新社会秩序の構築と、その上で自由な経済活動を活発化させるための大きな力となることでしょう。そうなると、台湾は大きく変貌することになるでしょう。国土は、小さくても経済的には中共を脅かす存在となるでしょう。

金だけで、中共との関係を強化してきた、華僑の人々も、今後の安定した取引を考えれば、台湾の国際金融センターへと乗り換えるでしょう。

ただし、香港の奪還に関しては、諦めることなく、中共がそれを認めざるを得なくなるまで迫るべきです。
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2020年6月13日土曜日

「日本は成功例の先駆け」米国が大絶賛したコロナレポートの衝撃内容— 【私の論評】日本人は「ジャパン・ミラクル」は連帯感によるものと認識するだけではなく、それを誇るべき!(◎_◎;)

「日本は成功例の先駆け」米国が大絶賛したコロナレポートの衝撃内容

まさに「ジャパン・パラドックス」だ

米国から見た日本のコロナ禍対策

ワシントンDCから米国人の目で日本の金融・財政政策を分析・解説する在米金融アナリスト、斎藤ジン氏がパートナーの一人である「OBSERVATORY VIEW」をほぼ毎号、読み参考にしている。

ニューヨークを本拠とする有名なユーラシア・グループのイアン・ブレマー代表が編集・発行する「eg update」も必読のニューズ・レターである。その他にも、DCで政治コンサルタントを務めるカール・アイゼルバーグ氏の「Monitor」も定期送付してもらっている。

本来、いずれも高額な購読料を支払うべきであるが、零細事務所を運営するジャーナリストに免じて贈呈扱いになっている。

日常が戻りつつあるニューヨーク市街地

さて、直近の「OBSERVATORY VIEW」(6月9日付)に斎藤氏が寄稿した「日本公衆衛生政策―コロナ、政治、ジャパン・パラドックス」は日本のコロナ禍対策を分析した秀逸のレポートである。

同レポート冒頭の長文リードは次のように始まっている。

<コロナに関して市場は以下を確認したがっている:(1)金融政策によって確実な信用フローが維持される、(2)財政政策が蒸発した需要を穴埋めする、(3)コロナを封じ込め、経済活動を再開する、この三つだが、現在(3)が最大の不透明要素だ。我々は感染症そのものについては何の付加価値も生み出せない。しかし感染症研究に基づいているとしても、公衆衛生政策は最終的に政治判断である。>

「日本はその成功例の先駆けと言える」

途中のパラグラフを割愛して、リードの最後を紹介する。

<日本は(感染症学分野で)主流派の予言を忠実に守らなかったことから、強い批判に晒されてきたが、その(新型コロナウイルス感染者の)死亡率は0.73と相対的に成功した国の一つだ。そして将来、日本のように政治的な裁量判断を多用する国が増え、社会の様々な側面(=公衆衛生危機、経済コスト、個人の自由とプライバシーに対する懸念など)を政治指導者の政治資本の範囲の中で考えるようになるだろう。日本はその成功例の先駆けと言える。>

レポートの見出しにある「ジャパン・パラドックス」とは、まさに我が国の政治指導者、即ち安倍晋三首相がコロナ危機当初、感染症学の専門家の助言よりも独自の裁量判断を重視するアプローチを追求し、国内外の専門家やコメンテーターから批判されていたが、様々な側面のバランスをどう取るのかと、政治資本の中で考えて優先順位を付けてきたのでコロナ感染者数と死亡者数の低さを得たことを指す。

日本は、韓国や台湾のように個人の自由とプライバシーの侵害の懸念よりもデジタル追跡ツールの使用を優先させ、且つ広範なPCR検査や感染者隔離のために民間施設徴用などが実施できなかった。それ故に、声高に日本のコロナ禍対策は間違っていると断じられたのである。

だがしかし、人口密度が高い大都市圏を抱えるだけでなく、約1億3000万人もの人々が米モンタナ州と同程度の広さの国土に住んでおり、しかも最も高齢化が進んでいる社会である日本の死亡率0.73は韓国(0.53)より若干高く、ドイツ(10.48)を大幅に下回っているのだ。

PCR検査の優先順位が低くなるのは不可避

斎藤氏の指摘はこうだ。確かにラッキーな面があったかも知れない。しかし、日本のアプローチの起点は「限られた能力でできるだけ多くの命を救うために医療崩壊だけは回避しなければならない」ということであり、そこから全ての優先順位付けを行ったと言う。

換言すれば、戦術的優先事項(1)クラスター(感染者集団)を最小限に抑え、(2)一定の症状(持病を含む)を持つ患者を優先的に治療する、の2つであった。であるならば、PCR検査の優先順位は低くなるのは不可避というのである。

斎藤氏の数多い指摘の中でも得心した件があった。<日本は先端医学の分野では決して米国と比肩することは出来ないと考えている。しかし感染症との闘いは結局、トップレベルの「ベスト・アンド・ブライテスト」ではなく、現場の名もない一兵卒の頑張りにかかっている。>

同氏が言う「現場の名もない一兵卒」とは、各地の保健所に監視と追跡のプロを含む様々な医療専門家で構成される現場の実行部隊であり、彼らがクラスターの特定と感染経路を愚直に追跡した影のヒーローであると讃えている。

そうであっても、コロナウイルスの「第2波」「第3波」は必ず襲来する。そのためにはSARS(重症急性呼吸器症候群)やMERS(中東呼吸器症候群)を含めて一連の相対的な成功体験に満足するのではなく、感染症対策の最新技術や医療システムを導入すべきだ。支給するマスクの数やPCR検査件数を競うのではない。いつの日か痛い目に遭って世界の笑いものにならないためにも、それは必要である。

【私の論評】日本人は「ジャパン・ミラクル」は連帯感によるものと認識するだけではなく、それを誇るべき!(◎_◎;)

コロナに限らず病気は、命を保つことができれば克服できます。どれくらいの方が亡くなるか、逆から言えば病気にかかった方のうちどのくらいが生き残るかということがいちばん重大なことです。

客観的な数字として人口100万人当たりで考えると、日本ではコロナ肺炎で亡くなった方は、英国の100分の1です。米国と比べても50分の1以下です。それを考えると、いままでの国民の努力は政府の要請と合致して、大成功していまい。海外の方からは、今回の日本の対応について「ジャパンミラクル」とか「ジャパンミラクル」と言われるのです。


WHOの首脳陣は、テドロス事務局長をはじめ、中国に支配されていると以前から批判しているのですが、現場には非常に優れた方々がいらっしゃいます。日本の方もいらっしゃるのですが、そういう人たちの共通の言葉も「日本の奇跡に学べ」です。

まもなくコロナによる異常事態は終息して行きますから、国民の方々は自信を持たれて、最後の踏ん張りとして、いままでのペースを守っていただきたいと思います。

まだまだ不安であることには変わりはありませんが、不安があってこそ対応策を考えるので、不安そのものにこだわらず、不安があることは自然だと考えていただきたいです。

諸外国と異なり、都市を強制封鎖するなどの強権的なことを行ったわけでもなく、ある意味で国民の連帯によって、ここまで押さえ込んで来たということは、何か日本にだけ特殊なことがあるのでしょうか。

同じアジアでも、韓国は個人情報を追跡してスマホも使い、トレースして行ったのですが、日本はそれすら一切やっていないのです。ではなぜかと言えば、やはり日本人の「連帯感」によるものではないでしょうか。

しかし、このようなことを言うと「いや、そんなはずはない、政府不審の声が溢れかえっていたじゃないか」と言う方も多いかもしれません。確かに、コロナウイルスが引き起こした心の病の1つが政府不審でした。

政府に対する指摘や批判が自由にできることが民主主義なのですが、政府に対する不審が世界的に高まっていることが、中国が引き起こした問題の根底にあります。そのため日本だけで特殊な政府批判が起きているわけではありません。

日本人の連帯は今回のコロナウイルスに対するものが初めてということではありません。2009年に日本列島を襲った新型インフルエンザのことを覚えておいででしょうか。感染力は強く、とりわけ高齢者の致死率が高いとして恐れられました。

当初政府は、新型インフルエンザウイルスの上陸を阻止する水際作戦に力点を置いていました。しかしそうした中で海外渡航歴のない人々の集団感染が判明しました。

過去の空港での水際作戦

その時点で政府の対処方針は、今回のコロナウイルスと同様、水際作戦から重症化を防ぐ作戦へと転換しました。軽症患者には十分な注意と指導を徹底して、地元の病院、或いは自宅で療養してもらい、重い症状の人をふやさないという作戦でした。

当時私も、手洗い、ウガイを励行し、外出時と会社内ではマスクを必ずつけ、自身を守り、周囲の高齢者や弱い存在を守れるよう心掛けました。そしてそれは成功しました。その頃の習慣が残っているため、その時から今まで一度もインフルエンザや風邪を患ったことがありません。

自分の健康と周りの人、他者、さらに社会全体の健康を重ね合わせて考えることが大事なのです。それは連帯意識と助け合いの精神に直結します。

あの3.11の東日本大震災で大地震と大津波に襲われたとき、東北地方の人々を中心に、日本人は全員が助け合いました。自分の身を守ったうえで、自分より弱い人たち、お年寄りを、皆が助けました。
日用品を買い求める人たちの行列=仙台市青葉区で2011年3月20日午前11時8分
一緒に頑張りました。こうした日本人の資質から見ても、やはり「コロナミラクル」は、日本人の連帯に負うとこが間違いなくあります。

今回のコロナでは、政府への不審もありましたが、それを乗り越えて、結局多くの日本人が連帯したことが、今回のジャパンミラクルにつながったと考えるべきでしょう。政府不審で反対の方々も多くは結局は従ったのでしょう。

ブログ冒頭の記事では、「いつの日か痛い目に遭って世界の笑いものにならないためにも」などと第2波、第3波の懸念を表明していますが、第2波、第3波は必ずあります。それがない大きな感染症はありません。

ただし、第1波の経験、100段上り切った経験があります。人の体で喩えれば、どこで膝が痛んだのか、どの人が弱かったのかということを経験しているので、第2波、第3波ではその経験を活かせます。

特に失敗を活かすことで乗り越えやすくなります。備えることは必要ですが、不安を増幅させる必要はありません。それに私は、第2 波、第3波でも、日本人の連帯が十二分に、発揮されることを信じて疑いません。

それと、私達日本人は、「ジャパン・ミラクル」に関して、もっと誇りを持つべきです。日本人の連帯が、コロナ・ウイルス封じ込めに効果があることは、間違い無いと思います。

私自身は、海外の人には、「ジャパン・ミラクル」は日本人の連帯によるものと、話しています。2009年に日本列島を襲った新型インフルエンザの時の日本人の連帯や、東日本大震災の時の日本人の連帯についても話をすると大抵は理解していただけます。

ここで、日本人は過度に謙虚になる必要はないと思います。なぜなら、日本人の連帯が世界に理解されれば、世界は変わるかもしれないからです。世界の国々でも、日本人の連帯が理解され、受けいられれれば、世界の他の国々にも将来また感染症が発生した時にミラクルが起こるかもしれないからです。

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