2021年7月29日木曜日

安倍前首相、台湾訪問の意向 外交部「全力でサポート」―【私の論評】台湾は日本の優れた海洋戦能力に期待し、中国はこれに脅威を感じている(゚д゚)!

安倍前首相、台湾訪問の意向 外交部「全力でサポート」

自民党が野党だった2010年10月、訪台した安倍晋三氏(左)と面会した李登輝氏

安倍晋三前首相が日本紙の取材に対し、李登輝(りとうき)元総統の逝去から30日で1年を迎えるに当たり、台湾を訪問したい意向を示していることについて、外交部(外務省)は28日、安倍氏の訪問を強く歓迎するとし、必要なことがあれば全力でサポートするとの姿勢を示した。

産経新聞によれば、安倍氏は李氏について、世界でこれほど日本を思ってくれたリーダーは他にいなかったとした上で「諸般の状況が許せばお墓参りをしたい」と述べた。

同部は、安倍氏が李氏を強く慕っていることに感動させられたと言及。台湾の国際参加への支持表明や日本政府による新型コロナウイルスワクチンの無償提供の後押しなど、安倍氏の長きにわたる台湾への支持と深い友情に心から感謝するとの立場も示した。

頼清徳(らいせいとく)副総統は28日、日本語でツイッターを更新。安倍氏が訪台の意向を示していることに「とても感動しています」として歓迎する考えを示した。

【私の論評】台湾は日本の優れた海洋戦能力に期待し、中国はこれに脅威を感じている(゚д゚)!

安倍晋三氏の台湾訪問は、総理大臣だった頃はなかなかできなかったことだと思います。現在の元総理大臣という立場だからこそできたことです。李登輝氏の葬儀のときには、安倍氏は現役の総理大臣でした。葬儀に参加したのは、当時の安倍総理の指名を受けた森元総理でした。

その安倍晋三氏は、日本と米国、台湾の議員有志は29日、安全保障などを議題に「戦略対話」のオンラインの初会合に参加しました。日本側は日華議員懇談会(古屋圭司会長)の与野党議員が参加しました。中国の抑止策を巡って意見を交わしました。

日華懇顧問自民党の安倍晋三前首相は、新疆ウイグル自治区や香港などにおける中国当局による人権侵害に懸念を示し、「香港で起こったことが台湾で起こってはならないとわれわれは固く考えている」と強調しました。

「インド・太平洋地域の海が自由で開かれていることは決定的に必要だ。先般の日米首脳会談やG7サミット(先進7カ国首脳会議)で台湾海峡の平和と安定が明記されたことは極めて大きい」とも述べました。

安倍氏はまた、中国側に台湾の世界保健機関(WHO)年次総会へのオブザーバー参加を認めるよう要求。米国と台湾に対しては、連携を強めるために環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)への参加を呼びかけました。

一方、米国のハガティ上院議員(前駐日大使)は「なんのために戦っているのかを明確にしなければならない。米国と日本、台湾は民主主義と自由を守ってきた。われわれの生き方がかかっている。自由に発言し、自由に信仰し、自由に繁栄することを必ず守らなければならない」と訴えました。


軍事的圧力を強める中国に対して、最近では中国の軍事費の伸びが突出しているので、かなりの危機感を抱く人もいますが、現在の水準でも米軍の軍事費にははるかに及びません。

そうして、戦闘能力といえば、米国の戦闘能力が突出しているのは事実ですが、中国の戦闘能力も突出していると考えるひとも多いようですが、それも間違いです。

米英と同じく海洋国である日本は、核や原潜はもっていないものの、海戦においては中国を圧倒しています。

このブログでも何度か指摘しているとおり、自衛隊が台湾有事で活躍できるのは潜水艦隊の運用です。P1やP3Cといった哨戒機で、中国の潜水艦の位置を探知し、その位置情報を米軍に伝え、米艦艇や攻撃型原潜が対潜ミサイルなどで沈めることができます。無論、自衛隊の潜水艦や自衛隊機が対潜魚雷などで沈めることもできます。

海自の『そうりゅう』型やその後継の『たいげい』型は世界最高性能を誇る通常型潜水艦です。特に、静寂性(ステルス性)に関しては、世界一です。これを中国の貧弱な対潜哨戒脳呂では発見できません。

さらに、性能の高さだけでなく、世界最強の米海軍と共同訓練を行なっているので、練度も高いです。 

洋上を機動する中国海軍の空母をはじめとする水上艦艇に対しては、高性能の魚雷やハープーン対艦ミサイルで攻撃できます。もちろん中国潜水艦に対しても優位に戦う能力があります。

日本の潜水艦が展開するだけで、中国側はこれを発見できないのです、中国海軍の行動を牽制することができるでしょう。 

敵の潜水艦を駆逐する戦闘でも、自衛隊に分があります。対潜水艦では索敵能力が極めて重要で、先に相手を発見したほうが勝つとされています。 

海自の対潜能力(ASW)は米国とならんで世界トップレベルです。海上自衛隊はその誕生から、対潜水艦作戦に重点を置いてその能力向上に努めてきました。保有する護衛艦には最新鋭の対潜装備の他、高性能の哨戒ヘリコプターも搭載しています。さらにP1およびP3C哨戒機も多数保有しており、これらを駆使して水中の中国潜水艦を探知して捕促し、対潜魚雷、対潜ロケット、対潜弾投射機で攻撃し撃沈できます。

P1哨戒機

台湾有事では、巷の軍事評論家は、米中が空母や航空機やミサイルなどでドンパチやることを想定しているようですが、その発想はもう古いです。特に初戦においては、文字通り水面下で、潜水艦による“神経戦”が繰り広げられ、日本の潜水艦隊はその静寂性を最大限に活用し、情報収集にあたるでしょう。

中国がそれに怯むことなく、台湾を奪取しようとした場合は、瞬時にして米原潜が、中国潜水艦、艦艇のほとんどを撃沈するでしょう。場合によっては、日本もこれに加勢することになるでしょう。さらに付け加えると、日本の潜水艦隊だけでも、ほとんどを撃沈できます。

それでほとんど勝負がつきます。日中開戦となれば中国がもっとも恐れるのは海上自衛隊の対潜哨戒能力と潜水艦隊の戦力です。中国は、これには全く歯が立ちません。

現状の法制度では、台湾有事に自衛隊が本来持つ能力を発揮するのは難しいです。ただ、自衛隊の軍隊としての能力は中国軍を上回っていると見て間違いないです。中国の装備は徐々に向上していますが、まだ自衛隊のほうがレベルが高く、隊員の練度も中国より高いです。

正面からぶつかれば自衛隊は中国軍に負けないです。 制度を整え米軍と一緒に作戦を行い、初戦で日米が空母やその他の艦艇や海兵隊などを多数送り込み中国に格好の的を提供するようなバカ真似をせずに、初戦を潜水艦隊で戦い抜き、中国の艦艇・潜水艦のほとんどを撃沈し、台湾を潜水艦隊で包囲すれば、すぐに決着がつきます。

軍事評論家の中には、有事になってからでは遅いと主張するものも多いですが、そのようなことはありません。有事になったとしても、日本の潜水艦隊が無事なら、そこからゆっくりとでも十分勝負になります。

有事になっても日本はのらりくらりと、国会で審議したりして、台湾有事対応をするかもしれません。2年も3年も時間をかけていては、だめですが、すくなくとも数ヶ月以内に対処すれば十分間に合います。

何しろ、中国には日本の潜水艦を探知できないわけですから、数隻の潜水艦で台湾を常時包囲すれば、中国艦隊は撃沈をおそれて、台湾に近づけなくなります。そうなると、たとえ人民解放軍が多数台湾に上陸していたとしても、補給ができなくなり、お手上げになります。ただし、あまりのらのくらりしていると、台湾軍や中国軍の犠牲が多数ででしまいますので、はやめにすべきでしょう。

私が、最も恐れるのは、初戦で日本が何も対処しない場合、中国軍が調子づき多くの艦艇を台湾に派遣した場合です。その場合、日本の潜水艦隊がこれらをすべて撃沈せざるを得なくなる場合が想定できます。そうなると、中国の艦艇がほとんど全滅し途方もない数の犠牲者がでる可能性が大きいです。

そうならないように、普段から台湾有事の対応を決めておくべきです。ある段階を過ぎた場合、すみやかに潜水艦隊で台湾を包囲し、場合によっては条件を満たせば中国艦艇を撃沈できるように法的な裏付けをとっておき、最初から中国の艦艇が台湾に近づけなくすべきです。そうすれば、無用な犠牲者を出さずにすみます。

このようなことをいうと、中国のプロパガンダに煽られた人々が、「ドローンがぁー」、「超音速ミサイルがぁー」、「空母がぁー」、「核兵器がぁー」と叫ぶ人がいるようですが、どのような破壊力のある兵器であっても、探知できない敵を攻撃することはできません。

ロシアは核魚雷を開発中だそうですが、これさえも探知できない敵を攻撃できません。やまかんで、何発も核魚雷を発射することはできません。

現在台湾は国産の潜水艦を建造中で、最終的には8隻を建造しようとしています。これに対して、米国の軍事アナリストは、もし台湾がこれに成功すれば、今後中国は数十年にわたって台湾に進行できないだろうとしています。

無論、これは、台湾が日本の潜水艦と同等のステルス性と攻撃性を有することを前提として、このように語っているのだと思います。そこまでいかなくても、中国側に探知されにくい潜水艦を作れば、これは成就すると思います。実際、台湾の潜水艦建造には日本の技術者も参加していますから、そうなることでしょう。

自前の潜水艦の着工式に出席した蔡英文総統=2020年11月24日、高雄市

ただ、現在は建造中ですから、すでに潜水艦22隻体制をとっている日本は、台湾にとってそれまでの間、強力な助っ人になりえるわけです。

以上軍事的には、日本が台湾有事に十分対抗できるわけですから、日米台の戦略対話に、日本が参加する意味が十分あるわけです。もしそうでなければ、参加の意味は半減するわけです。「インド太平洋戦略」も同じことです。

日本のこの優れた海洋戦能力があるからこそ、台湾は日本に期待しているのです。中国は、これに脅威を感じているのです。

安倍元総理には、議員による「戦略対話」から、日米台の政府による「戦略対話」にもっていくための架け橋になっていただきたいです。日米台が協力すれぱ、中国による台湾侵攻は、不可能になります。

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2021年7月28日水曜日

中国の王毅外相、天津でタリバン幹部と会談―【私の論評】アフガニスタン情勢が、なぜ中露の警戒を強めるのか(゚д゚)!

中国の王毅外相、天津でタリバン幹部と会談

タリバンの代表団と写真に納まる中国の王毅国務委員兼外相(左から7人目)=28日、中国天津市


 中国の王毅(おう・き)国務委員兼外相は28日、天津市でアフガニスタンのイスラム原理主義勢力タリバンの幹部と会談し、アフガニスタン和平などについて意見交換を行った。中国外務省の発表によると、王氏はタリバンに対し、「アフガンで決定的な力を持つ軍事、政治勢力だ」と強調した。

 王氏は、タリバンについて「アフガンの和平、和解、復興プロセスで、重要な役割を発揮することが見込まれる」と述べた。中国は、アフガン政府とタリバンの双方と関係を保っており、米軍撤収完了後のアフガン安定化に向けて影響力を示す考えとみられる。

 中国側は、アフガンと国境を接する新疆ウイグル自治区の独立派組織「東トルキスタン・イスラム運動」(ETIM)の動きに神経をとがらせている。王氏は会談で、ETIMについて「中国の国家安全、領土保全の直接的な脅威だ」と主張。その上で、タリバン側に対し「ETIMなど一切のテロリスト組織と徹底的に一線を画することを望む」と求めた。タリバンへの支援姿勢を示すと同時に、ETIMとの関係を完全に断つようにくぎを刺した形だ。

【私の論評】アフガニスタン情勢が、なぜ中露の警戒を強めるのか(゚д゚)!

米軍がアフガン撤退を進める中、中国は「最大の隣国」(王氏)として影響力を確保する狙いとみられます。

米軍のアフガニスタン撤退については、以前このブログに掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
米軍アフガン撤収 タリバン攻勢に歯止めを―【私の論評】米国は、中国を弱体化させる方向で、対アフガニスタン政策を見直しつつある(゚д゚)!

アフガニスタン ヒンドゥー・シュク山脈

詳細はこの記事をご覧いただくものとして、この記事より一部を引用します。

超大国がアフガニスタンで苦杯を喫するのは米国が初めてではありません。米国と入れ替わるようにアフガニスタンを去った旧ソ連は、親ソ政権擁護のために1979年から10年間駐留したましたが、武装勢力ムジャヒディーンの抵抗で1万4000人以上の戦死者を出し、ソ連崩壊の原因の一つにもなりました。

それ以前に英国も、帝国全盛時代の19世紀から20世紀初めにかけて三次にわたりアフガニスタンで戦いましたが、1842年にはカブール撤退で1万6000人が全滅させられました。その後シンガポールで日本軍に敗北するまで「英軍最悪の惨事」と言われていました。

 こうしたことから、アフガニスタンは「帝国の墓場(Graveyard of Empires)」と呼ばれるようになり、米国もその墓場に入ったのですが撤退を余儀なくさせらました。
1979年、ソ連のブレジネフ政権が、親ソ政権を支援し、イスラーム原理主義ゲリラを抑えるために侵攻しました。反発した西側諸国の多くはモスクワ=オリンピックをボイコットしました。経済の停滞するソ連でも大きな問題となり、ソ連崩壊の一因となりました。

当時はソ連のアフガニスタン侵攻の理由は明確にはされず、諸説ありましたが、現在では次の2点とされています。

まず第一は、共産政権の維持のためです。アフガニスタンのアミン軍事政権が独裁化し、ソ連系の共産主義者排除を図ったことへの危機感をもちました。ソ連が直接介入に踏み切った口実は、1978年に締結した両国の善隣友好条約であり、またかつてチェコ事件(1968年)に介入したときに打ち出したブレジネフ=ドクトリン(制限主権論)でしたた。

第二位は、イスラーム民族運動の抑圧のためです。同年、隣国イランでイラン革命が勃発、イスラーム民族運動が活発になっており、イスラーム政権が成立すると、他のソ連邦内のイスラーム系諸民族にソ連からの離脱運動が強まる恐れがありました。

この記事でも指摘したように、米国のアフガニスタン撤退を決めたのは、トランプ前政権でしたが、私が指摘したその意図は、まずはアフガニスタンでの米国の勝利は、この記事でもその事情を述べたようにあり得ないことです。そもそもアフガニスタンでは何が勝利かもわかりませんし、仮に何らかの定義をしたとしても、それを達成するのはほぼ不可能です。であれば、撤退するのは当然のことです。

さらにもう一つは、米国の現在の軍事的、経済的競争相手は中国です。中国と対峙するためにも、泥沼化したアフガニスタンから撤退すべきですし、さらには、トランプ政権としては、その時々で中国を弱体化するとみられる勢力に支援する方向に切り替えたという面もあると考えられます。

タリバンの勢力は、すでに中国とロシアの国境付近にまで達しています。


反政府武装勢力タリバンの攻勢を受けて5日以降、旧ソ連タジキスタンに逃げ込むアフガンの政府軍兵士や市民が急増しており、北部の国境警備が米軍の完全撤退を前に崩壊している可能性があります。

ロシアメディアによると、タジキス担政府は5日、アフガンとの国境1430キロのうち7割が、タリバン支配地域と接するようになったと説明。7日に同政府は、同日までにタリバンの攻撃を受け、アフガンの政府軍多数と市民2000人以上がタジク領内に逃げ込んだことも明らかにしました。

ロシアのプーチン大統領は5日、同盟関係にあるタジキスタンのラフモン大統領と電話協議し、軍事支援の用意があると表明。タリバン支配地域からイスラム過激派組織がアフガン周辺諸国に流出するのを警戒しているとみられ、アフガニスタンとタジキスタンの国境地帯への派兵も辞さない構えだす。タジキスタンも2万人規模の予備役動員を開始しました。

ただロシア側は、アフガにスタン情勢への深入りは避ける方針とみられます。上にも掲載したように、ソ連は1979年にアフガンに侵攻し、10年近い戦闘で多数の犠牲者を出したほか、麻薬流入を招いたためです。

中央アジアへの影響力を増す中国も、米ソの失敗を教訓に、アフガンに直接介入する可能性は低いです。

一方で中国新疆ウイグル自治区はアフガニスタンと約90キロの国境を接っします。アフガにスタンからのイスラム過激派組織の流入や、中国国内の弾圧から逃れたイスラム系少数民族ウイグル族がタリバン支配地域で拠点を築く事態を警戒しています。

中国は米軍のアフガン駐留を非難してきたのですが、米軍の存在が中国国内への過激派拡大を抑えてきた面もあります。王毅国務委員兼外相は3日、「米国は責任ある方式で情勢の安定化を図るべきだ」と遠回しに駐留継続を求めていました。

中国はタリバンとのパイプを維持し、これまでに数回、北京に招くなどしてきました。王氏は3日、アフガン政府とタリバンの和平協議を後押しする考えを示しましたが、タリバンは米軍撤退で勢いづき、協議がまとまる見通しは立っていませんでした。

今回のタリバン幹部との、会談でそれが成就したのかどうかは、定かではありません。

米国としては、撤退によりアフガニスタン情勢に直接関与することはなくなりました。また、米国は中国のようにアフガニスタンと国境を接しているということもありません。ロシアは、アフガニスタンと国境を直接接していませんが、ソ連連邦に加盟していた中央アジアの国々(トルクメニスタン、ウズベキスタン、タジキスタン)を介してアフガニスタンと接しています。


アフガニスタンから撤退する米国は、中国、ロシアほどにはアフガニスタン情勢には左右されません。これらの地域の不安定化は、中国、ロシアには直接的に影響しますが、米国にとってはあまり大きな影響はありません。

ただ、なぜアフガニスタン情勢が注目されるかといえば、それは無論イスラムの価値観への警戒からです。

タリバン等が世界征服のために行う暴力行為は、イスラム法においては神に命じられたジハードとして正当化されますが、現代の国際社会では到底容認されません。

彼らの実践するイスラム法による統治も、イスラム法においては唯一正しい統治体制とされますが、それは間違いなくイスラム教というひとつの宗教だけが絶対優位に立つ政体です。

イスラム的価値観と私達の価値観は、それ自体が異なります。さらに重要なのは、両者の目指す目標が全く異なる点です。無論、わたしたちと全く価値観を異にする、中国やロシアともイスラムの価値観は全く異なりますし、目標も違います。

目標を共有してさえいれば、価値観の差異はあっても、その同じ目標を目指して共に歩んでいくことはできるでしょう。

互いのよいところを認め合うことも時には可能でしょうし、お互いの差異について議論したり切磋琢磨したりすることも肯定的な意味を持つはずです。

しかし、現実はそうではないのです。ヨーロッパ諸国が「政治的イスラム」を規制し始めたのも、米国ではトランプ政権のときにその推進の中核であるムスリム同胞団をテロ組織と指定することを検討し始めたのも、イスラム法による統治が実現され、イスラム教という価値だけが絶対優位におかれることの危険性に気づいたからにほかなりません。

そうなれば、多様なアイデンティティを持つ人々の平等も自由も、政治的多元性も失われます。

これは、ある意味では全体主義よりも恐ろしいかもしれません。全体主義はかつてのナチス・ドイツのように体制が崩壊すれば崩壊します。しかし、イスラムのような宗教は違います。

ある体制が崩壊したり、勢力が崩壊したとしても、宗教としてのイスラムは人々の心に残り、多大な影響を及ぼし続けます。そうして、また新たな勢力が生まれる可能性は大きいのです。

その恐ろしさに気づいたからこそ、米国はアフガニスタンから撤退を決め、中国やロシアは警戒を強めているのです。

米軍のアフガニスタン撤退の決定は、おそらくタリバンの勝利の後に、女性やその他の権利の後退、多くの残虐行為が続くことでしょう。
しかしここに留まるためには、アフガン二スタンの腐敗した茶番劇ではなく、陸軍と国家を構築するために米国/NATOの植民地政府が必要となるでしょう。それは、中国と対峙している現状では、米国にとっても不可能です。

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2021年7月27日火曜日

シンガポールはコロナを「はやり風邪」の扱いに…方針転換の根拠はイスラエルのデータ―【私の論評】なぜ私達は「ゼロコロナ」という考えを捨て、「ウィズコロナ」にシフトしなければならないのか(゚д゚)!

シンガポールはコロナを「はやり風邪」の扱いに…方針転換の根拠はイスラエルのデータ

シンガポールはコロナを「はやり風邪」の扱いに…

 4度目の緊急事態宣言が発出された東京の新型コロナウイルスの1日当たり感染者数がこのところ連続して1000人を超え、第5波の到来が懸念されている。

共生を目指す英国の動き

 一方、世界に目を転じると、成人の過半数が新型コロナウイルスワクチンを接種した国々では「コロナとの共生」を目指した取り組みが始まっている。

 中でも注目を集めているのは英国の動きである。

 英国政府は7月19日、マスク着用とソーシャルデイスタンスの維持などコロナ対策の主要な規制を全面解除した。1日当たりの感染者数は5万人以上と日本と比べて格段に多いにもかかわらず、政府が大胆な措置に踏み切った背景にはワクチンに対する信頼がある。2回のワクチン接種を完了していれば、感染することはあっても重症化することを防げることが明らかになっているからである。英国では新型コロナウイルス感染症でこれまでに約13万人が死亡しているが、7月に入ってからの1日当たりの死者数は50人以下にとどまっている。

 ジョンソン英首相が5日に「ワクチン接種が進み、感染と死亡の関係を断ち切ることができた。コロナと共生する新しい方法を見つけなければならない」と述べたように、これまでの感染抑制に重点を置いた政策からの大転換である。

 ジャビド英保健相は「新型コロナウイルス以外の医学や教育、経済上の問題がパンデミックを通じて蓄積されており、感染者数が1日当たり10万人に達したとしても、社会を正常に戻す必要がある」として、今回の措置は新型コロナウイルスと一緒に暮らすことを学ぶプロセスの一部だとの認識を示した。

 科学者の多くは今回の決定を不安視しているが、「これにより英国経済は第3四半期中にコロナ禍以前の水準に回復する」とする楽観的な予測が出ている。

 「新型コロナウイルス感染症を撲滅するのでなく管理しながら共生すべきだ」とする方針転換は、英国を始めとする欧米諸国の専売特許ではない。日本ではあまり知られていないが、シンガポール政府が一歩先んじている。

 シンガポール政府は6月下旬に「感染者数の集計をせずに重症患者の治療に集中する」と宣言、新型コロナウイルスを季節性インフルエンザのように管理する戦略に切り替えた。

 シンガポール政府の方針転換の根拠になったのはイスラエルのデータである。それによれば、ワクチン接種完了者が感染する確率は未接種者の30分の1、重症化は10分の1に過ぎないという。昨年の新型コロナウイルスの致死率は2〜3%だったが、イスラエルのワクチン接種完了者の致死率は0.3%まで低下している。この数字は季節性インフルエンザの致死率(0.1%未満)と大きな差はない。

 新型コロナウイルスはインフルエンザのような「はやり風邪」になりつつあるとの認識が今後定着するようになれば、「社会としてどの程度まで感染の広がりを許容するのか」という判断が次の大きな問題となる。

 残念ながら東京五輪の大部分の競技が無観客で実施されることになったが、「五輪の開催地がもし欧米の都市だったら、今の日本のような感染状況で無観客で実施されるだろうか」と疑問視する声が海外から上がっている(7月14日付ニューズウィ−ク)。

 ワクチン接種は欧米諸国に比べて遅れているが、7月末までに希望する高齢者すべての接種が完了する予定である。日本でも海外と同様、感染者数の急増にもかかわらず、重症者数と死者数はかつてほど上昇しない傾向となりつつある。

「ゼロ・コロナ」を目標にするのは望ましいが、感染者数を基準に対策を講じている限り、8月22日の期限までに宣言が解除される見込みは立たない。いつまでたってもコロナ禍以前の状況に戻れないとの不安が頭をよぎる。

 日本でも「重症数を基準にした対策に切り替えるべきではないか」との声が出始めているが、これに対して感染症専門家は「政治判断の問題である」としている。

 社会心理学の分野で人々のリスク認知に関する研究が進んでおり、それによれば「危険は実在するが、リスクは社会的に構成される」という。毎年犠牲者を出しているのに軽視されるリスク(自動車事故など)がある一方、犠牲者の多寡にかかわらず、心理的に受け入れがたいリスクがある。新しく出現した感染症はその典型例とされている。

 いったん「怖い」と判断したリスクについては、人はそれに対する認識を改めることは容易ではないことがわかっている。一方「リスクを制御できる」と考えるような状況になれば、人々のリスク許容度は格段に高まることもわかっている。

 リスク・コミュニケーションの重要性が指摘されているが、新型コロナウイルスを脅威と感じている高齢者に対して、政府は「切り札」と位置づけるワクチンの効果を積極的にアピールして、「ワクチンを打てばコロナ禍以前の日常生活に戻ることができる」と推奨すべきである。さらに「自らがワクチンを接種することで社会全体が元に戻ることができる」という「明るい展望」を語れば、ワクチン接種に消極的な若者の考え方も変えることができるだろう。

 変異株の危険性が喧伝されているが、米国疾病予防管理センター(CDC)は「ワクチンと控えめなマスクの着用を組み合わせるだけで変異株の感染拡大を防ぐことができる」と主張している。日本では欧米と異なりマスク着用に違和感が少ない。この利点をいかして「換気の悪い場所でのマスク着用」を条件とした日本独自の「ウィズコロナ」戦略を構築すべきではないだろうか。

藤和彦
経済産業研究所コンサルティングフェロー。経歴は1960年名古屋生まれ、1984年通商産業省(現・経済産業省)入省、2003年から内閣官房に出向(内閣情報調査室内閣情報分析官)。

デイリー新潮取材班編集

2021年7月27日 掲載

【私の論評】なぜ私達は「ゼロコロナ」という考えを捨て、「ウィズコロナ」にシフトしなければならないのか(゚д゚)!

世界中で新型コロナウイルスのワクチンの接種が進んでいます。しかし、ワクチン接種先進国である英国の専門家ですら、昨年の時点で、新型ウイルスがワクチンで消える可能性は低く、英国はこの先何年にもわたってこのウイルスと共存していくことになると、警告していました。

保健慈善団体ウェルカム・トラスト会長のサー・ジェレミー・ファーラー教授は昨年7月1日、英下院の保健委員会で「クリスマスまでに事態は収束しない」と述べました。この予想はあたりました。

続けて、人類は「数十年」にわたって新型ウイルスと共存していくことになると述べました。


ボリス・ジョンソン英首相は先週、クリスマスまでに平常の生活に戻るよう期待していると発言していました。この時、ジョンソン首相は新型ウイルス対策の制限緩和拡大を発表。レジャーセンターや屋内スイミングプールを今月下旬に再開するほか、今秋から大規模集会を認める見通しだとしました。

しかし専門家たちは、下院議員の超党派グループに証拠を示し、新型ウイルスが依然として存在していると、現実的に捉えるのが重要だと主張していました。

英オックスフォード大学は昨年7月20日、新型ウイルスのワクチンの臨床試験で免疫反応を誘発する効果と安全性が確認されたと発表しました。しかし同大学教授のサー・ジョン・ベルは、COVID-19が消滅する可能性は低いと考えていると述べました。

「この病原体はこの世界に永遠に存在し続ける。どこかへいったりはしない。それが現実だ」と、ベル教授は下院議員たちに述べました。

「こうした病原体を消滅させるのがどれほど大変なことか考えてください。例えばポリオの根絶計画は15年間続いているのに、ポリオはいまだに存在している」

「そのためこのウイルスの感染は今後も、増えたり減ったりする。このウイルスがまた活発になる冬が、たびたび訪れるようになる」

「このワクチンで長期的な効果が得られる可能性は低いので、継続的なサイクルでワクチンを接種しなくてはならない。そうするうちにまた感染者が出て、またワクチンを接種して、また感染者が出ることになる」

「新型ウイルスを撲滅するという考えは、現実的ではないと思う」とも語っています。ワクチン接種先進国である英国では、昨年からこのようなことが語られていたのです。

ゼロコロナは永遠もしくは、当面やってこないことは昨年からわかっていたことです。これについては、誰も否定できないと思います。結核も未だ、日本では毎年平均約18,000人が新たに結核を発症し、毎年約1,900人が結核で亡くなっています。

ゼロコロナが当面やってこないならば、コロナと共存するしかないということです。このブログでは、過去には高橋洋一氏の記事を引用して、日本の感染や死亡は他国に比較すると桁違いに少ないことや、高齢者のワクチン接種が進んだ現状では、東京などの緊急事態宣言は必要ないし、五輪は有観客で開催すべきことを主張してきました。

現役医師でも、これと同じ主張をする人もいます。その代表的なのが、大和田潔氏です。

大和田氏は、「新型コロナの死者数は70代以上の高齢者が8割以上を占める。高齢者へのワクチン接種が急速に進んだ今、もうコロナは終わったと言っていい」と語っています。

無論、大和田氏の発言は、ゼロコロナを前提として語っているのではありません。コロナと共存すること、新型コロナ感染症をマネジメントすることを前提として語っています。

ただし、テレビによる感染報道や、専門家会議の発言などを聞いていれば、なかなかそうは思えないと思います。

そういう方々には、是非とも、大和田氏の以下の記事をご覧になっていただきたいです。

大和田潔氏

 以下に大和田氏の略歴を掲載しておきます。
1965年生まれ、福島県立医科大学卒後、東京医科歯科大学神経内科にすすむ。厚労省の日本の医療システム研究に参加し救急病院に勤務の後、東京医科歯科大学大学院にて基礎医学研究を修める。東京医科歯科大学臨床教授を経て、秋葉原駅クリニック院長(現職)。頭痛専門医、神経内科専門医、総合内科専門医、米国内科学会会員、医学博士。著書に『知らずに飲んでいた薬の中身』(祥伝社新書)、共著に『のほほん解剖生理学』(永岡書店)などがある。

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下に結論部分のみを掲載します。

入手困難の時期にワクチンを世界から調達したのは、日本の信用と政府の力です。そして自衛隊の力を借りたり、地方自治体と直接連携をとったりしてワクチン接種を加速させ、成功につなげました。そこに専門家会議や医師会は存在しませんでした。

前に進むためにオリンピック委員会や政府が独自にガイドラインを作って運用を始めたのも当然のことです。有観客も良い選択であり、今後の経験につながります。

高齢者が安全になり被害が起きなくなった局面を迎え、コロナはもう身近な季節性ウイルスとしてあつかうべき世の中になりました。全体行動を取る必要はもうありません。一般国民自身がおのおの考え、自分で行動して良い局面になりました。

私たちに植え付けられた「陽性者は隔離」の考えを、自分たちで終わりにさせないといけません。ウイルスと共存して安全な世界がやってきたのです。屋外ではマスクを外して、熱中症対策を優先するガイドラインを作りましょう。

オリンピックの成功体験自体が、私たちの財産になります。また、日本が模索し作りだす新しいスタンダードは、季節性になったコロナと共存するお手本となり雇用拡大と景気回復にこぎ出した世界へ貢献することになるでしょう。

1年前のこのコラムで予想した通りに経過しています。オリンピックや甲子園を楽しみつつ夏の旅に出ましょう。
この記事は、今月7日に掲載されたものです。政府が五輪「無観客開催」を決めたのは、今月9日のことです。当然入稿は7日より、もっと前にされているはずですから、大和田氏は五輪は「有観客」で開催されることも前提としてこの記事を書いたのでしょう。

ゼロコロナはあり得ない以上、政府も、私達もそれを前提として考えていかなければならないのです。交通事故と同じく、絶対安全などあり得ないてのです。コロナと共存しつつ、そのリスクを低減し、日常を取り戻すべきなのです。コロナ感染をゼロにしようとすれば、それは不可能です。

そのためには、菅政権にもどこかで踏ん切りをつけ「コロナと共存」の道を歩むことを宣言しなければなりません。それに反対する勢力も多数存在するでしょうが、それに対しては「ゼロコロナ」はあり得ないことを数々のエビデンスで納得させるか、納得しないのなら、彼らの考えが荒唐無稽で根拠がないことを明確に主張すべきです。


そうして何よりも大事なのは、私達自身が「ゼロコロナ」という考えを捨て、「ウィズコロナ」にシフトしなければならないことです。政府主導だけでは、このシフトは困難です。私達自身がシフトし、その観点から政府に様々な要求をつきつけるべきなのです。

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2021年7月26日月曜日

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蓮舫氏が大炎上 五輪中止派なのに「金」祝福ツイート 「お見事なダブルスタンダード」痛烈な批判相次ぐ


 立憲民主党の蓮舫代表代行のツイッターが大炎上している。東京五輪・パラリンピックの中止を一貫して求めていたのに、開幕後は出場選手の健闘に歓喜していることに、「すごい手のひら返し」「あんだけ 中止しろ と叫んでおいて」「どの口が」「あきれた」などと批判が噴出しているのだ。蓮舫氏が反論すると、さらに燃え上がる状況となっている。

 「素晴らしいです! ワクワクしました!」

 蓮舫氏は25日、スケートボード男子ストリートで堀米雄斗選手が金メダルを獲得すると、こうツイートした。彼女は「仕分け人」として、「2位じゃダメなんでしょうか?」と発言した人物でもある。

 冒頭のような批判が相次ぐと、蓮舫氏は次のように書き込んだ。

 「開催そのものへの反対は変わらない。国民を守る危機管理の問題だからだ」「選手の活躍には心から敬意を表する。反対なら応援するな、ではない」「菅義偉首相には国民の命と暮らしを守るリスク管理ができていない」

 これに対し、「お見事なダブルスタンダード」「五輪を中止すれば選手の活躍もなかった」「どうやったらオリンピックができるかを少しでも考えましたか?」「金メダルを取った選手が『開催していただきありがとうございます』と言っている」「こんなのだから信頼されない」など、痛烈な意見が相次いでいる。

【私の論評】実は、オリンピック後に菅政権が存続できる政治情勢となる(゚д゚)!

日本では左翼運動家などが五輪開催中止を叫び、わずか数ヶ月前まではマスコミや野党も中止が当然のような論調だった

東京五輪反対を主張した野党の人のほとんどのツイッターでは、五輪を楽しんでいる様子は見えないです。そうした中で、蓮舫氏は、上の記事にもある通り、スケボーの堀米選手の金メダルについて、

「堀米雄斗選手、素晴らしいです! ワクワクしました!」とツイートしました(https://twitter.com/renho_sha/status/1419155844952854530)。

これに対し、高橋洋一氏は、

「こんなにスポーツで感動するのに、それまでの五輪中止は理解できないな。『五輪の感動>>>さざ波の中での医療崩壊リスク』ということは前からわかっていはずだが。五輪中止の人はあと2週間どうするの?」とツイートしていました。(https://twitter.com/YoichiTakahashi/status/1419206109919809538)。

なお蓮舫氏は、

「五輪で健闘された選手へのTweetに「反対してたのに」と言う反応がありますが、選手への応援と政府の危機管理体制への姿勢は別です。感染拡大の最中、今でもこの東京五輪強行の政府と東京都、組織委員会、IOCの判断には反対です。菅総理には国民の命と暮らしを守るリスク管理ができていません。」

ともツイートしています(https://twitter.com/renho_sha/status/1419184149466816517)。

なんともわかりにくい弁明だが、松井大阪市長は、

『蓮舫さん、オリンピックが開催されなければ、選手の皆さんが健闘する場所が無かったんですがね! オリンピックパラリンピックが終われば、いよいよ選挙ですからね。』

とわかりやすく応じた(https://twitter.com/gogoichiro/status/1419237008015167490)。

確かに、東京五輪の開催は、政局にも大きな影響を与える可能性がでてきました。

2021年に入ってから、菅義偉政権は新型コロナウイルスの感染者数の抑制を優先したため経済活動の停滞が長引きました。各種世論調査で内閣支持率は菅政権発足以来の低水準まで低下していますが、このまま総選挙を挟んで、菅政権発足1年余りで首相交代という展開も完全には否定できません。

実際に、自民党の中の公認候補を巡る「内輪もめ」が聞かれ、自民党の幹事長人事などを巡る思惑もあり、自民党内の「菅おろし」が本格化するシナリオさえ予想されます。

もっとも、内閣支持率は低下していますが「反対勢力」というパフォーマンスに徹しているとみられる野党に対して国民の期待が高まっているようには思えず、次の総選挙において野党への政権交代はほとんど想像できません。二階、小沢、小池のきな臭い動きもうわさされていますが、これが本格的に大きな動きになるという予兆はみられません。

この意味で、今後政局に変化が起こるとすれば、それは自民党内部の主導権争いが引き起こすことになりそうです。

まず、世論の風向きですが、実際にはオリンピックが始まり、テレビなどは日本人選手を中心とした活躍を大きく伝えるので、これまでのオリンピック同様に相応に盛り上がっています。すると、多くの国民が抱く釈然としない感情は、今後、当初の想定よりも容易に払拭されることになりそうです。

【東京五輪2020 スケートボード】〈女子ストリート決勝〉西矢椛の決勝の演技=26日、有明アーバンスポーツパーク

菅政権は新型コロナやオリンピック対応で迷走している部分もありますが、内閣支持率は新型コロナ感染動向に大きく連動している部分が大きいです。菅政権が注力するワクチン接種は他の先進国並みのペースにしっかり速まってきていますし、緊急事態宣言など経済活動制限の効果もあり、新型コロナ感染者数は秋口にかけて落ち着くでしょう。

それにこのブログでも指摘したように、最近では高齢者ではワクチンの接種が進んだため、そもそも感染者数が少なくなりました。確かに若年層の感染者数は増えていますが、それでも、元々感染者数が他国より二桁以下の日本では、若年層の死者数は交通事故の死者よりも少ないくらいです。

そのため、感染者数が増えても、ワクチン接種が進んでいなかった数ヶ月前と現在とでは、意味合いが明らかに異なっています。死者数は減っていることから、現在医療崩壊を声高に叫ぶ人はいなくなりました。

そうして、2021年末頃から日本経済が急回復する条件がそろうことになるでしょう。

結局、菅政権が注力する、「オリンピックというイベントを無事終わらせる」「ワクチン接種を進める」という2つの課題をクリアすれば良いのです。これらが高いハードルであるかと言えば、そうは見えないです。このため、オリンピックにおいて、テロ発生などのかなりの想定外の出来事でも起こらない限り、総選挙が近づく秋口にかけて経済活動の正常化期待が高まると予想できます。

確かに、オリンピックが多くの会場で無観客試合となったことが、経済活動の下押し効果を懸念する声もあります。しかし、無観客試合のチケットが払い戻しされるだけなら、数百億円程度でマクロ的には影響はほぼありません。

もちろん、首都圏を中心に7月から経済活動制限が強化されたため、これによる経済的な下押し効果は続いています。また、これまで飲食店などの営業自粛に対する協力金が、東京都などから迅速に支給されなかったという対応の不手際が目立っていました。

それでも7月以降については、先払いで飲食店への協力金支払いが行われ始めており、政府・自治体の対応は改善する方向にあります。今後こうした対応を続けるなかで、秋口以降期待できる経済活動の本格化とともに、これまで執行されなかった財源を必要な歳出に回すなどで、効果的に大規模な財政政策を発動する余地があります。

最終的には、官邸の判断次第ではありますが、いずれ再度補正予算を組み、30兆円はあるというGDPギャップが埋められる手立てが講じられれば、財政政策の発動が経済正常化を後押しし、春先から夏場にかけて米国で見られた経済活動の急回復が、日本でも2021年末頃から始まるでしょう。

新型コロナが収束に向かえば、どの程度経済成長率は高まるのでしょうか。日本人による国内旅行消費(2019年)は約21.8兆円(GDP比約4%)です。新型コロナで国内旅行消費は大きく落ち込んでおり、2020年4~6月以降の1年間では旅行消費は約8.3兆円へと半分以下に落ち込んでおり、この需要喪失はGDPの約2.5%に相当します。

政府が目指すとおりに、今年の年末までにワクチン接種が進めば、抑制されていた日本人の旅行消費がかなり顕在化すると見られます。中止されていた、GOTOキャンペーンも再び実施されることになるでしょう。

GOTOトラベルはかなりコスパの良い経済対策だったことがわかつている

2022年内に2019年の水準まで国内旅行消費が戻るとすれば、GDP成長率を約2%程度押し上げる効果が期待されます。

また、2022年に新型コロナリスクが低下すれば、現在ほとんど蒸発している海外からの訪日客の増加にも期待できます。新型コロナ禍前の海外旅行者による消費金額(2019年)は4.8兆円である(GDP比約1%)。

もちろん、国内旅行消費ほど早期に海外旅行者が増える可能性は低いので、訪日外国人への大きな期待は難しいです。それでも、訪日外国人が2019年の半分程度まで戻るだけで約2兆円の消費需要が現れることになります。

これらの旅行需要が顕在化することに加えて、営業自粛を余儀なくされていた外食やレジャーなどの産業の売り上げも、国内旅行消費と同様に2022年にはかなり正常化するでしょう。

これらのサービス消費が増える時には、同時に他の消費需要が減るので、旅行需要などの顕在化が全てGDPの押し上げ効果にはならないです。ただ、ワクチン接種が菅政権の想定する通りに進めば、2022年の日本経済の成長率はかなり高まるでしょう。

オリンピック後には、ワクチン接種も進み、30兆円規模の補正予算を組むことにより、菅政権が存続する政治情勢となり、上記のシナリオへの期待が強まるなかで、これまでの日本株の出遅れのかなりの部分が解消されることになるでしょう。

このような軌道にはやく乗れば、菅内閣が存続しうる環境が整うことになります。

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2021年7月25日日曜日

米超党派議員がIOCに書簡、北京五輪の延期や開催地変更を要求―【私の論評】人類は、ナチスドイツに五輪開催させてしまったという大きな間違いを、再び繰り返すな(゚д゚)!

米超党派議員がIOCに書簡、北京五輪の延期や開催地変更を要求

マルコ・ルビオ上院議員

上院民主党のジェフ・マークレイ氏や上院共和党のマルコ・ルビオ氏ら米議会の超党派議員は23日、2022年の冬季五輪を延期し、開催地を中国の北京市から変更するよう国際オリンピック委員会(IOC)に要請した。米国は中国政府がウイグルなどイスラム少数民族を弾圧しているとしており、議員らはその停止を求めた。

議員らはバッハ会長にあてた書簡の中で、「中国政府に行いを改めるようIOCが圧力をかけた具体的な形跡がみられない」とした。

議員らは「中国問題に関する連邦議会・行政府委員会」の委員。「五輪を開催する国の政府の行動が、五輪によって集める国際的な注目の制約を受けないという悪しき前例をIOCは作ろうとしている」と訴えた。

議員らは、東京五輪が新型コロナウイルスで開幕4カ月前に延期されたことに言及した上で、IOCには大会を延期する権限があると主張した。ロイターはIOCにコメントを求めたが、現時点で回答を得られていない。

人権団体や研究者、元住民、西側の政府関係者は、新彊ウイグル自治区のイスラム少数民族が強制労働に動員されていると指摘している。中国政府はこうした主張を認めていない。

【私の論評】人類は、ナチスドイツに五輪開催させてしまったという大きな間違いを、再び繰り返すな(゚д゚)!

日本でもボイコットの動きがあります。自民党外交部会などは20日、党本部で会合を開き、中国による新疆ウイグル自治区での人権侵害をめぐり意見を交わしました。出席議員からは、来年2月の北京冬季五輪について「外交的ボイコットを検討すべきだ」「中国自体が五輪憲章に反する人権侵害をしており、開催地変更を働き掛けるべきだ」などの意見が出ました。

欧米でも人権侵害への反発から、北京五輪に政府要人らを派遣しない外交的ボイコット論が相次いでいます。佐藤正久部会長は中国の人権問題について「人権という普遍的な価値を基軸とする日本外交にとっても非常に影響を受ける問題だ」と指摘しました。

佐藤正久参議院議員

五輪ボイコットとはいっても、選手団を派遣しないという本格的なボイコットではなく、外交的ボイコットや経済的ボイコットなどの間接的なボイコットが妥当だとする考え方があることは昨日のこのブログでも述べたばかりです。

ただし、私自身は、この間接的なボイコットやり方は望ましくないと考えていることも昨日このブログで述べたばかりです。

なぜかといえば、欧米が譲歩して、間接的なボイコットしかしなかった場合、中国共産党に誤ったメッセージを与えてしまうことになると考えられるからです。先進国の圧力など、おそるるに足りないと考え、さらに高圧的になることが考えられます。

先進国はすでに中国が豊かになれば、自ずと民主化などもするし国際ルールも守るようになるだろうと期待して、中国に対して譲歩したり、厳しい対処をせずに、放置したために手痛い目に何度もあってきています。もう、このようなことを繰り返すべきではありません。

ジェノサイドをしているのに、それを認めないような国で、五輪など開催すべきではありません。それは五輪の精神に反します。

だからこそ、直接的なボイコットをすべきなのです。これは、中国にとっては、痛撃になることは確かであり、それは中国の国内外で周知されることになり、国内でもただごとではないことが、周知されることになるでしょう。習近平は痛撃どころか、震撼することになるでしょう。

上の記事にある、上院民主党のジェフ・マークレイ氏や上院共和党のマルコ・ルビオ氏ら米議会の超党派議員らは、私と同じような考えなのだと思います。

彼らは、さらに先を行っています、確かに東京五輪を延期することができたわけですから、北京五輪の延期や開催地変更などもできる可能性は十分にあります。それにボイコットよりも、開催地変更をするというほうが、アスリートたちにとっては良いことだと思います。

2018年のジャカルタ・パレンバン競技アジア大会の女子水泳リレーでは国際ルールを守らなかった、中国と韓国が失格して、日本が金を獲得しました。


これは当然のことだと思います。オリンピック競技では、ルールを守らなければ失格するのです。しかし、中国は南シナ海の領有権を国際裁判所に認めらなかったにもかかわらず、いまでも実行支配を続けています。WTOの規約も平気で破ってきました。

国際ルールを平気で破るような国には、オリンピックを開催する資格はないとIOCは認めるべきです。

人類は、ナチスドイツに五輪開催させてしまったという大きな間違いを再び繰り返すべきではないです。そのためには、外交的・経済的五輪ボイコットではなく、延期および開催地変更などを行うべきです。

ベルリンオリンピック開会式におけるヒトラー(一番手前)

冬季五輪は、1年延期することにして、他の所で行うようにすべきです。そうなると、一箇所で行うには負担が大きすぎるので、いくつかの国で分担して行うようにすべきと思います。

その中に、日本も含めて、札幌・長野で行うようにすると良いと思います。柔軟に考えれば、やり方はいくらでもあると思います。

やは北京五輪は、外交的・経済的ボイコットではなく、開催の延期と開催地変更を行い、これを先例とすべきです。今後も、中国のような国が出てきた場合、同じような措置をとるべきです。

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2021年7月24日土曜日

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日米VS中国で応酬! WHOのコロナ起源追加調査巡り…米は賛同、中国「科学に反する」と反発 北京五輪に影響も


 世界全体で414万人以上もの死者を出し、東京五輪の大半を「無観客」開催に追い込んだ新型コロナウイルスの「起源」解明をめぐり、日米と中国の応酬が展開された。世界保健機関(WHO)が中国での追加調査計画を打ち出したところ、日米は賛同し、中国が猛反発しているのだ。このままでは、来年2月開幕の北京冬季五輪にも影響が出かねない。

 「起源解明につながることが重要だ。追加調査を重視している」

 茂木敏充外相は23日、東京五輪開会に合わせて来日したWHOのテドロス・アダノム事務局長と外務省で会談し、追加調査の徹底を要請した。

 「中国ベッタリ」と揶揄( やゆ)されるテドロス氏だが、自由主義諸国の強い怒りを懸念したのか、今月のWHO会合で、中国・武漢の中国科学院武漢ウイルス研究所の監査を含めた追加調査を提案した。

 ところが、中国・国家衛生健康委員会の幹部は22日の記者会見で、「常識を重んじず、科学に反するものだ」と非難し、拒否した。

 これに対し、米国のジェン・サキ大統領報道官は22日、ホワイトハウスでの記者会見で、「深く失望している。彼らの姿勢は無責任で、率直に言って危険なものだ」と述べ、中国政府の対応を強く批判した。


 茂木氏の発言も、米国に歩調を合わせるものだ。

 北京冬季五輪をめぐっては、欧米諸国が中国での人権弾圧などを批判し、「外交的ボイコット」で結束を強めている。マイク・ペンス前米副大統領も今月14日、中国が新型コロナの「起源」を明確にし、人権侵害を停止しない限り、「ジョー・バイデン大統領は五輪の開催地を北京から別の場所に変更するよう主張すべきだ」と主張している。

【私の論評】北京五輪、先進国は経済的・外交的ボイコットではなく、選手団を送り込まない本格的なボイコットをすべき(゚д゚)!

3月30日に米国務省は、国別人権状況に関する年次報告書を発表しました。報告書は、中国共産党政府によるウイグル族の虐待はジェノサイド(集団虐殺)であると断じました。これを受けて、4月2日付のワシントン・ポスト紙は、世界的な大企業は北京オリンピックのスポンサーであることを止めるべきであると主張する社説を掲げています。

米民主党のペロシ下院議長は4月18日、米議会でのオンライン公聴会で、中国国内の人権弾圧を「ジェノサイド(集団殺害)」と非難し、来年2月の北京冬季五輪に各国の国家元首を派遣しない「外交ボイコット」を行うように呼びかけました。

米議会内では、超党派でボイコット論が強まっており、4月に米上院外交委員会で可決された「戦略的競争法案」では、北京冬季五輪への参加を米政府当局者がボイコットすることを求める内容が盛り込まれています。

7月8日、欧州議会は、新疆ウイグル自治区の人権問題が改善されない限り、2022年に北京で開催される冬季オリンピックをボイコットするよう加盟国に求める決議を採択しました。

英下院議会の外交委員会も8日、中国による新疆ウイグル自治区の人権問題に関する報告書を公表しました。中国政府への国際的な圧力を強めるためとして、来年の北京冬季五輪の式典ボイコットや、ウイグル自治区で生産される新疆綿の取引禁止措置などを提言しました。


2022年の北京の冬季オリンピックをボイコットするよう求める声は、今後ますます高まる可能性はありますが、それが具体化するかどうかとなると、おそらく困難であろうとする声もあります。

北米および欧州の諸国にとって、冬季オリンピックは夏のオリンピックよりも遥かに重要です。過去23回の冬季オリンピックを通じて、北半球の10の諸国(米国、カナダ、ノルウェー、ドイツ、オーストリア、スウェーデン、スイス、オランダ及びソ連、ロシア)が1060個の金メダルのうちの748個を獲得したといいます。

従って、北米と欧州が欠けた冬季オリンピックは成り立たちません。それだけにボイコットは北京を痛撃することにりますし、逆に、それ故に、北米と欧州の選手に犠牲を強いるボイコットを実現することは至難と言えるからです。

3月15日付のニューヨーク・タイムズ紙では、ミット・ロムニー上院議員(共和党、ユタ州選出)が、ソルトレーク冬季オリンピック組織委員会の会長としての経験を踏まえて、北京冬季五輪のボイコットの方法を提案している。ロムニー議員は、選手の参加を止めることは間違いだとして、経済的・外交的ボイコットを提案しています。

共和党の重鎮ミット・ロムニー上院議員

即ち、米国民は米国にとどまりオリンピックの観客にならないこと、米国企業は顧客をオリンピックに招待することを止めること、政府高官が参加することは控えること、TV放送権を有する NBCが開会式や閉会式の好戦的愛国主義の場面の放映を控えることなどです。

いずれにせよ、何等かの形のボイコットが具体化することがあるとすれば、それは目下立場を定めていないバイデン政権が方針を固める場合でしょう。もし、行動を起こすのであれば、バイデン政権は予め同盟諸国に協議して来ることが予想されます。

現下の情勢は、北京オリンピックを間近に控えて、中国は台湾や東シナ海あるいは南シナ海で侵略的行動に出づらい状況だと思われますが、北京オリンピック後は危険性がさらに大きくなるかもしれません。

ボイコットが及ぼす中国へのインパクトについては、中国が過剰な報復に出る可能性も含めて、同盟諸国間で慎重に計算する必要があるかもしれません。

ただし、これは米国内の一部の見方です。バイデン政権はまだ結論を出していません。いずれにしても、このような事柄に関しては、議会の承認が必要であり、議会がどのような結論を出すのか注目されるところです。

私としては、以上のような米国内の見方は、理解できなくもないのですが、こういう見方をする人たちは、一つ忘れています。

そうです。過去において、日本も含めた先進国の多くが、中国がもっと豊かになれば、民主化するであろうと考え様々な面で譲歩してきました。しかし、これは何回も裏切られてきました。もうこのような考え方をする人はいません。

コロナ起源がどころであろうと、中国が初期の段階で隠蔽していなければ、世界全体で414万人以上もの死者を出すことはなかったと思わまれます。この隠蔽に対しても、まともに対応しようとしない中国です。

この中国が、今回のボイコットを本当のボイコットでなく、上に述べているような間接的なボイコットだけで態度を変えたり、ジェノサイドの問題に本気で取り組むようになるとはとても考えられません。

実際、中国は欧米のこのような動きに対して、かなり反発していますし、それどころか報復をちらつかせたりしています。

にもかかわらず、ここで欧米が譲歩して、間接的なボイコットしかしなかった場合、中国共産党に誤ったメッセージを与えてしまうことになるでしょう。そうです。先進国の圧力など、おそるるに足りないと考え、さらに高圧的になることが考えられます。

そうして、台湾や尖閣に対して、冒険的な行動にでるかもしれません。無論、そうなったとしても、このブログに述べているように、中国には台湾、尖閣を奪取する能力はありませんが、それにしても無用な脅威は最初から取り除くべきです。

それには、やはりまともなボイコットをして、中国に先進国の本気度を示す必要があります。米国はそれをすでに実行しています。

米国の外交代表部の役割をする米国在台湾協会(AIT)関連の航空機が相次いで台湾に到着し、中国側が強く反発しています。

AIT関連の米国の航空機が台湾に降り立ったのは、今月に入ってすでに2回目だ。15日にも沖縄の嘉手納空軍基地を離陸した米軍C-146ウルフハウンド輸送機が午前9時32分頃、台北の松山空港に到着しました。

台湾空港に着陸したC-130輸送機

中国国防部報道官は15日、ウルフハウンド輸送機の台湾着陸と関連して声明を発表し、「台湾は中国の一部であり、中国領土に着陸する外国軍用機は必ず中国政府の許可を受けなければならない」としたうえで、「米国が火遊びを止めなければ、厳しい結果を招く」と警告しました。中国陸海軍は翌日の16日、台湾海峡と接する東部福建省で大規模な合同上陸作戦演習を行いました。

米軍は、中国に台湾を軍事的に奪取する力はないと見透かして、このような行動をしていると思われます。その背景には、中国海軍の対潜哨戒能力が日米と比較すると格段に劣るということがあります。

これは、たとえると目の見える人(日米)と、目が見えない人(中国)とが戦うようなものであって、中国が海戦においては、日米に比較して圧倒的に不利であることを示しており、海戦になれば、中国海軍は日米に太刀打ちできません。

それに、昨年中国は4海域で大規模な軍事演習を行ったのですが、今年は航空機を大量に台湾に派遣したり、上陸作戦演習などでお茶を濁しており、以前から指摘されているように中国軍には現代的な兵站が欠如していることが示されていましたが、その通りのようであることがわかります。

このような軍事的な裏付けもあるので、米軍は航空機を派遣するどころか、一時的に軍を台湾に進駐させていることが判明しても、中国側には目立った動きはありません。

このようなことを考えると、北京五輪の中途半端なボイコットは、中国に対して誤ったメッセージを与えかねません。やはり、ボイコットするのなら、中途半端ではなく、選手を派遣しないというのが筋だと思います。

無論本格的ボイコットをすれば、北米と欧州の選手に犠牲を強いることになるのも事実です。ただ、モスクワ五輪のボイコットのときには、モスクワ五輪に対抗した競技大会を準備し、リバティ・ベル・クラシックという名前で1980年7月にフィラデルフィアで開催しました。これは、陸上競技だけでした。

北京五輪でも、欧米はこのような北京五輪に対抗する大会を盛大に開催すると良いと思います。そうして、五輪のほとんどの種目を実施すべきです。

ジェノサイドをしているのに、それを認めないような国で、五輪など開催すべきではありません。それは五輪の精神に反します。

ちなみに、モスクワ五輪を開催した約10年後に、ソ連は崩壊しました。ナチスドイツが開催した、ベルリン五輪のほぼ10年後にナチスドイツの第4帝国は瓦解しています。

中国が10年後に瓦解するかどうかは、わかりませんが、中国にとっては、痛撃になることは確かであり、それは中国の国内外で周知されることになり、国内でもただごとではないことが、周知されることになるでしょう。習近平は痛撃どころか、震撼することになるでしょう。

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2021年7月23日金曜日

米ロ合意でも必須となるサイバー攻撃と防御の向上―【私の論評】東京五輪のもう一つの見どころは、日本のサイバー攻撃対応能力(゚д゚)!

米ロ合意でも必須となるサイバー攻撃と防御の向上

岡崎研究所

 リチャード・ハース(外交問題評議会会長)が、6月23日付のProject Syndicateで、米ロ両国がサイバー攻撃を相互に抑制する合意の可能性を論じている。


 6月16日のプーチンとの首脳会談でバイデンが力点を置いた問題に、サイバー攻撃の問題があった。彼はプーチンに16の枢要なインフラのリストを手交し、サイバー攻撃の標的としないことに合意することを提案し、今後、専門家の間で協議することになった。バイデンは記者会見で、「勿論、原則は原則である。それは実際の行動で裏付けられねばならない。責任ある国は自身の領域でランサムウェア活動を行う犯罪人に対して行動する必要がある」と述べたが、これは去る5月に「ダークサイド」と呼ばれる犯罪組織によるサイバー攻撃でコロニアルパイプラインが停止した事件のように、政府は知らぬ存ぜぬというロシアの態度は容認し得ないことをプーチンに述べたということであろう。これらの枢要なインフラをロシアが標的としたらどうするのかと問われて、バイデンは「彼には我々が顕著なサイバー能力を有することを指摘した」「我々はサイバーで報復する」と述べた。

 一方のプーチンも記者会見で、この問題で協議を始めることに合意した、これは非常に重要なことだと述べた。彼はコロニアルパイプラインの事件に言及し、この種の事件はロシアでは毎年起きている、「ロシアの重要な地域の医療システムも攻撃された」と述べ、大多数のサイバー攻撃は米国の領域発、二番目はカナダ発だなどとも述べた。

 ハースの論説は、サイバー攻撃を米ロ両国が相互に抑制する合意を実現する上での障害を整理してくれている。両国が相互にサイバー攻撃の対象としない枢要なインフラに合意することが出来れば一歩前進かも知れない。そういう原則だけなら簡単に合意出来るかも知れない。しかし、その合意を担保する検証は不可能である。ハイブリッド戦略を多用するロシアが非国家の主体のサイバー攻撃の取締りに応ずるかも問題であろう。となれば、ハースの論説が指摘するように、合意の有無にかかわらず、抑止力としてサイバーの攻撃と防衛の両面の能力を磨くことが必須となろう。バイデンはサイバー攻撃には「我々はサイバーで報復する(we will respond with cyber)」と述べたが、この種の言い方はこれまでになかったことではないかと思われる。報復の意図を鮮明にし、抑止を働かせる試みかとも思われる。

 日本にとっても、サイバーの攻撃と防衛の両面の能力を磨くことは喫緊の課題である。米国との協力も能力向上の道かも知れない。米国はサイバー空間でロシアに対抗するために同盟国と協力する方針を打ち出している。因みに、6月14日のNATO首脳会議の共同声明は、「我々はサイバー攻撃が条約5条の援用に何時至るかの決定はケース・バイ・ケースで大西洋理事会により行われることを再確認する」と述べ、サイバー攻撃が、NATOの集団防衛の引き金となる武力攻撃を構成する場合があり得ることを排除していない。

【私の論評】東京五輪のもう一つの見どころは、日本のサイバー攻撃対応能力(゚д゚)!

日本のセキュリティ関係者の間では現在、緊張感が高まっているでしょう。東京オリンピックがサイバー攻撃を受ける可能性があると、数年前からセキュリティ企業などに警戒されてきたからです。

というのも、それは過去を見ても明らかで、近年のオリンピックは軒並みサイバー攻撃にさらされてきた経緯があります。

 実は昨年、英TV「BBC」によれば、イギリス政府はロシア軍のスパイ機関であるGRU(連邦軍参謀本部情報総局)が東京オリンピックの妨害を企てていると警告しています。

「組織委員会やスポンサー、ロジスティックス(物流)企業への攻撃」を警戒したほうがいいといいます。 米政治サイト「ザ・ヒル」でも、米セキュリティ企業の専門家などの言葉を引用し、東京オリンピックへのサイバー攻撃が警戒されると指摘しています。

実は東京オリンピックがサイバー攻撃の被害に遭う可能性が高いことは、数年前からいわれていました。少なくとも、こうした世界的な大会ではいきなり攻撃をしてうまくいくはずはなく、攻撃者は、数年前から準備を始めるものだからです。




 2012年のロンドン・オリンピックでは、開会式が狙われました。当時のロンドンでは開会式がサイバー攻撃にさらされており、妨害工作によって開会式の照明が遮断されてしまう恐れがあったといわれています。

一体何があったのでしょうか。米TV「NBCスポーツ」などによると、ロンドン・オリンピックのサイバーセキュリティ担当主任だったオリバー・ホーアは、2012年7月12日、まさにオリンピックの開会式が行われる当日、朝の4時45分に電話で叩き起こされたそうです。

 電話をかけてきたのはシギント(通信や電波などの情報活動)を専門とする世界でもよく知られた英国の諜報機関、GCHQ(政府通信本部)でした。英国でも屈指のハッカーを抱え、米国で凄腕ハッカーが多く属するNSA(国家安全保障局)と密な関係にある機関です。

 ホーアはこう述懐しています。「信頼できる情報として、オリンピックの電力インフラへのサイバー攻撃が検知されたという話が電話でもたらされたのです」。寝起きだったホーアは、「その話を受けた最初の私の反応は、『なんてことだ、ストロングコーヒーを飲まないと』というものだった」と言います。

 ロンドン・オリンピックが行われた2012年は、いまほどサイバー攻撃が注目されておらず、どちらかと言えば過激派などのテロがより警戒されてました。 このサイバー攻撃に対応したのはMI5の本部に拠点を置く、オリンピックサイバー対応チーム(OCCT)でした。

「BBC」によれば、その時点で2つのポイントが優先事項となりました。 「最初の事項は、この脅威がどれほど信頼できる情報なのかを捜査することだった。夜中のうちに情報が入ってきて、攻撃の兆候はサイバー攻撃ツール(マルウェア=悪意のある不正なプログラム)の発見や、オリンピックに関連すると思われる攻撃情報を元にしていたからだ。そしてもう一点、捜査が続けられるなか、攻撃が現実になった際の緊急時対応策も導入された」 。

ロンドン・オリンピックの開会式は夜の9時からスタートする予定でしたが、当日の朝にこんな事態になっていたのです。 その日、サイバーセキュリティ担当者らは必死で大失態が起きないように対策を急いだといいます。

ホーアは「(機密情報のため)細かい話は明らかにできないが」と前置きをした上で、時間がどんどんなくなるなかで、「わたしたちは効果的に電力を、自動からマニュアルに変更することができたのです。これはかなり大雑把な説明になってしまうのですが……とにかくさまざまな場所に多くのエンジニアを配置した」と述べています。

それと同時に、開会式の照明が落ちるなどした場合の対応策も、政府で議論が行われました。そして時間が過ぎ、現場の必死の対応により停電の心配はなさそうだとホーアが報告を受けたのは、開会式の開始時間である午後9時の1時間ほど前だったといいます。

 この時、仮に最悪の事態が起きたとしても30秒で電力供給を再開できるとも報告されていました。もっとも、オリンピックの開会式で30秒も停電したらそれは「敗北」を意味します。しかし幸いなことに、開会式は無事に終了しました。

 なお、そもそも最初の攻撃の兆候そのものが結果的に間違っていた(フォルス・クレーム)のではないか、との指摘もあります。一方で、1日をかけて対処しなかったら、実際にサイバー攻撃で停電か何かが起きただろうとの声も挙がっています。

こうした経験をしている英国は、冒頭のようにロシアのGRUが東京オリンピックを狙っているとの情報を受けて、日本側に警告を伝えています。英国はロシアと対立関係にあることから、特にロシアの動きに警鐘を鳴らしているのですが、それでも東京オリンピックではロシアの攻撃は警戒すべきです。

 というのも、実はロシアは2018年の韓国・平昌の冬季五輪でも開会式を狙ったサイバー攻撃を行ったことが確認されているからです。 米ニュースサイト「ヴァージ」によれば、平昌の開会式の会場で、インターネット接続とWi-Fiがサイバー攻撃によって使えなくなりました。

さらに、公式サイトもサイバー攻撃に遭い、開会式のチケットを印刷できない事態になったのです。 平昌で起きたサイバー攻撃の捜査に協力した英国の国家サイバーセキュリティセンター(NCSC)によれば、目的はオリンピックの進行を妨害することだったと分析しています。

ターゲットとなったのは中継を担当する部門や、オリンピック関係組織の幹部、また開催地となったスキーリゾートのホテルなどでした。 平昌五輪への攻撃は、ドーピング問題で大会に参加できなかったロシアのGRUが関与していたとみられています。元MI5職員はそう断言しています。


 東京五輪でも、ロシアはドーピング問題が理由で参加できないです。抜け道はありますが、正式には参加できないのです。その事実だけをとっても、日本の五輪運営関係者らは、少なくともロシアからサイバー攻撃が行われるという前提で動く必要があります。

また日本の公安当局も、オリンピックへの攻撃は警戒を強めてきてはいるのですが、特に電力や通信など、国民や参加者に直接的なダメージを与えるようなサイバー攻撃はいつ起きてもおかしくはないと肝に銘じるべきです。

 日本オリンピック委員会(JOC)や東京オリンピック組織委員会なども、開会式を狙ったサイバー攻撃をあらためて警戒していただきたいです。 NHKによれば、JOCは2020年4月にサイバー攻撃を受け、「一時的に業務ができなくなり、事務局で使用していたおよそ100台のパソコンやサーバーのうち、ウイルスに感染した可能性がある7割ほどを入れ替え、およそ3000万円の費用がかかった」と報じられています。

すでにオリンピックを運営するシステム内に侵入され、ほかの関係各所にもマルウェア(悪意ある不正プログラム)が広がっている可能性もあります。開会式の関係者各所にも潜んでいるかもしれません。

 開会式に絡むネットワークも今一度、安全性の確認を行うべきでしょう。なかでも最も注目され、世界中の注目が集まる開会式は、要注意です。 もちろん、開会式を無事に実施しても、パラリンピックが終わるまで油断はできないです。大変な時期ではありまうが、トラブル続きの東京オリンピックが無事に行えるかは、サイバーセキュリティ担当者たちにかかっていると言っても過言ではありません。


内閣サイバーセキュリティ戦略本部の第19回会合 2018年7月25日

これを書いている時点では、開会式が行われている最中ですが、今のところ不都合は起きていないようです。このまま無事に終わるところを祈りたいです。

これから、五輪、バラリンビックと祭典が続きますが、この期間に目立ったトラフルが起きなければ、日本のサイバー対策もかなりのものになったといえると思います。

サイバーに関しては、ロシア・中国が注目されますが、それは主に西側諸国は言論の自由があるために、重大なサイバー攻撃があった場合には、公表されることが多いし、ロシア・中国ではたとえサイバー攻撃があったにしても、政府に都合の悪いものは、報道されないのであまり目立つことがないのです。

中国のサイバー能力は、かなりのものとも認識されているようですが、米国に比較すれば、足元にも及ばないというのが実態です。ロシアも米国には及ばないようですが、それにしても進んでいるのは事実です。

そもそも、東京五輪を開催することに決まったときからこの問題はついてまわっていたともいえます。それに対して、日本政府や企業がどのような準備をしてきたのか、それも今回の五輪・パラの見どころともいえるかもしれません。

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2021年7月22日木曜日

被災中に抗日ドラマ 中国の水害、当局対応に批判相次ぐ―【私の論評】中国は全体主義体制をやめない限り、あらゆる矛盾、非合理・非効率なことが多数発生し徐々に衰退する(゚д゚)!

被災中に抗日ドラマ 中国の水害、当局対応に批判相次ぐ



中国河南省鄭州市で21日、排水作業を行う消防隊員=新華社

 中国河南省の豪雨による水害で、省政府は22日、計33人が死亡、8人が行方不明になっていると発表した。被災者は約300万人にのぼるという。中国のネット上では、地元当局やメディアの注意喚起や情報公開の遅れが被害を拡大させたとする批判が出始めている。

  20日夜に浸水した地下鉄で逃げ遅れた12人が死亡した鄭州市。気象台が前日には最高レベルの警報を出していたのにもかかわらず、市政府が出勤停止など具体的な注意喚起をしなかったことに、SNSで疑問の声が出た。

  市内の地下鉄に雨水が流れ込み始めたのは20日午後6時ごろで、被災した乗客には帰宅を急ぐ人びとも。地下鉄の運転停止の判断の遅れを指摘する意見も書き込まれた。さらに、市内のダムが20日午前には放水を始めていたのに、翌日未明になってようやく市がSNSで公表したことにも「情報隠しだ」という声が上がっている。 

 メディアも問われた。被害が出ていた20日夜、省政府系の地元テレビ局は「抗日ドラマ」を放送を続けていた。これに対し、「少しでも人間性があるなら、災害対策情報を放送すべきだ」などと投稿された。

  共産党機関紙・人民日報系の環球時報の胡錫進編集長は17日、すでに100人超が犠牲になっていたドイツの洪水について「西側諸国の統治レベルに対する信頼感が揺らぐ」などとSNSに投稿。一方、河南省の水害に対しては「極端な天気で水害は避けようがない」と当局をかばうような発信をした。 

 こうした発言に「憎まれ口をはやめろ」などと批判が殺到。胡氏は21日、「犠牲が避けられるはずだったという疑問は理解できる」とSNSで弁解した。(北京=高田正幸)

【私の論評】中国は全体主義体制をやめない限り、あらゆる矛盾、非合理・非効率に見舞われ徐々に衰退する(゚д゚)!

中国の水害では、他にも奇妙な出来事がありました。それを伝えるツイートを以下に掲載します。


本当に異様な風景です。これは、全体主義の象徴です。なお、この散水車は、普段から評判が悪いです。あまりに水圧が高すぎて、確かに道路の清掃はしやすいのでしょうが、バイクをなぎ倒したりします。これもかなり異様です。



では、全体主義ではどうしてこのような不可思議なことが起こってしまうのでしょうか。

ドラッカー氏は、政府の役割について、以下のように語っています。
政府の役割は、社会のために意味ある決定と方向付けを行うことである。社会のエネルギーを結集することである。問題を浮かびあがらせることである。選択を提示することである。(ドラッカー名著集(7)『断絶の時代』)
この政府の役割をドラッカーは統治と名づけ、実行とは両立しないと喝破しました。「統治と実行を両立させようとすれば、統治の能力が麻痺する。しかも、決定のための機関に実行させても、貧弱な実行しかできない。それらの機関は、実行に焦点を合わせていない。体制がそうなっていない。そもそも関心が薄い」というのです。

しかし、ここで企業の経験が役に立ちます。企業は、これまでほぼ半世紀にわたって、統治と実行の両立に取り組んできました。その結果、両者は分離しなければならないということを知りました。現在の上場企業等は、両者が分離されているのが普通です。たとえば、財務部と経理部は分離されているのが普通です。

企業において、統治と実行の分離は、トップマネジメントの弱体化を意味するものではありませんでした。その意図は、トップマネジメントを強化することにありました。

実行は現場ごとの目的の下にそれぞれの現場に任せ、トップが決定と方向付けに専念できるようにします。この企業で得られた原則を国に適用するなら、実行の任に当たる者は、政府以外の組織でなければならないことになります。

政府の仕事について、これほど簡単な原則はありません。しかし、これは、これまでの政治理論の下に政府が行ってきた仕事とは大いに異なります。

これまでの理論では、政府は唯一無二の絶対の存在でした。しかも、社会の外の存在でした。ところが、この原則の下においては、政府は社会の中の存在とならなければならないのです。ただし、中心的な存在とならなければならないのです。

おまけに今日では、不得手な実行を政府に任せられるほどの財政的な余裕はありません。時間の余裕も人手の余裕もありません。それは、日本も同じことです。
この300年間、政治理論と社会理論は分離されてきた。しかしここで、この半世紀に組織について学んだことを、政府と社会に適用することになれば、この二つの理論が再び合体する。一方において、企業、大学、病院など非政府の組織が、成果を上げるための機関となる。他方において、政府が、社会の諸目的を決定するための機関となる。そして多様な組織の指揮者となる。(『断絶の時代』)
政府の役割は、社会のために意味ある決定と方向付けを行うことなのですから、日本でいえば、最終的には各省庁の仕事は政府の外に置かなければならないのです。

これは、現代の民主国家に対してドラッカー氏が述べていることです。残念ながら、日本をはじめとする多くの先進国がドラッカー氏の主張するような構造にはなっていません。

ただし、欧米諸国では、日本よりは政府の仕事がはるかに政府外に出されています。特に、社会福祉や社会事業に関する実務は、NPOなどが行っている度合いがかなり高いです。

日本では、NPOなどというと、一般の人たちには、今でも奇特な人たちが、手弁当で集まって行う高邁な事業のように認識されていますが、西欧ではそのような考え方はありません。有名大学や有名大学院を卒業した優秀な人が、NPOに就職することも珍しくありません。欧米では、NPOは立派な就職先であり、有力NPOに就職することは名誉なことでもあります。

なぜ、そのようなことになるかといえば、欧米では寄付金制度が充実しているからです。日本は、財務省のいう似非財政民主主義とも呼べるような屁理屈で、寄付金制度が充実していません。このあたりは、このブログを書き始めた10年前ほどには良くこのブロクでもとりあげたのですが、本日はこれを述べると、長くなってしまい本題からずれてしまうので、ここには述べません。

ただ、寄付金制度が進んだ欧米では、NPOは決して奇特な人たちが行う手弁当の事業ではなく、本格的なビジネスになっています。米国では各地の多くのNPOに、銀行や建築業者等も入っていて、大掛かりに貧困者向け住宅の提供だけではなく、貧困者が自立して生活できるようにする包括的ブログラムを実行したりしています。このあたりは、NPOが貧弱な日本でも考えも及ばないかもしれません。

9万ヶ所の公園を生み出す!公園から地域づくりを目指す米国NPO法人『カブーム!』

ただし、寄付金制度が遅れたままで、NPOが未だ貧弱な日本でも、中国と比較すれば、はるかに多くの事業が政府の外に出されています。各省庁にも外郭団体などがあったり、最近では、様々なIT企業などに、関係省庁が仕事を依頼していることは、皆さんもご存知だと思います。さらに、各省庁は正職員だけではなく、臨時のスタッフも多いです。

しかし、現状では、日本をはじめとする先進国の政府が行う事業は、あまり評判が良いとはいえません。政府が直接・間接にでも、現場の仕事に関わると、非効率、非能率が常となるのです。やはり、本来はドラッカーの言う通り、政府がすべきは、統治であり、それ以外は政府の外に出すべきなのです。

先進国でも、このあたりは中途半端なのですが、中国においては中国共産党政府があらゆることに直接関わっています。そのためもあって、中国では民主化はおろか、政治と経済の分離、法治国家化もできていません。中国共産党は、そもそも最初から統治と実行を両立させようしているので、統治の能力が完全に麻痺してしまうのです。

この状態は現在の体制が続く限り改善されることはありません。全体主義体制をやめない限りこれからも、ありとあらゆる矛盾や非合理・非効率なことが多数発生し、徐々に衰退していく以外ないのです。

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2021年7月21日水曜日

中国共産党百周年祝賀行事で見せた中国の危険性―【私の論評】中国に迫る危機が透けて見えた習近平の演説(゚д゚)!

中国共産党百周年祝賀行事で見せた中国の危険性

岡崎研究所

 7月1日に天安門広場で中国共産党百周年の祝賀行事が行われ、習近平が演説した。その内容は既に多くの報道で取り上げられている通り、対外的に極めて強硬なことを言っている。


 習は、「中国人民は外国の勢力が我々をいじめ、抑圧、奴隷化することを決して許さない、その妄想を持つものは誰であれ、14億人の中国人の肉と血でできた鋼鉄の万里の長城でその頭を割り、血を流すだろう」と述べた他、Covid-19への対応、貧困問題、香港での反対派の弾圧についての外国からの問題提起に対し「我々はこれらの”教師”の傲慢な説教を決して受け入れない」と述べた。また、台湾問題につき「中国は平和的統一を望む。しかしその忍耐心は試みられてはならない。誰も中国人民の国家主権と領土一体性を守る決意、強固な意志、力強い能力を過小評価してはならない」と述べた。

 対外的に強硬な姿勢を打ち出した演説であり、中国と米国とその同盟国との対決の気運を強めるものであって、その緩和には役立たないだろう。しかし、そもそもこういう演説にそれを求めるのが無理であろう。7月1日付けのニューヨーク・タイムズ紙の解説記事は、「これは遊説演説のようなもので、少なくとも習があと10年は最高指導者、司令官で居残るべきであると主張したものだ」とするWo-Lap Lam(香港中文大学中国研究センター非常勤教授)の言葉を紹介している。その通りであろう。

 今回の演説の主眼が国内向けであるとしても、今後、共産党の学習会で繰り返し学習されることになり、その対外強硬姿勢が党員の頭に刷り込まれ、方針転換がしづらくなるというデメリットがある。

 中国共産党は1921年にコミンテルンの中国支部として上海のフランス租界で生まれた。習近平は今回の演説で「偉大で、栄光があり、正しい中国共産党 万歳」と叫んだが、かなり多くの過ちを犯した党である。1958年-62年の大躍進政策、1966年-76年の文化大革命では1000万人以上が死亡したと言われている。

 中国の経済発展が共産党によって遅らされたことは明らかである。鄧小平が改革開放を打ち出した以降、中国経済は急激に成長したが、それは西側諸国との協調があってこそのことではなかったかと思われる。日本は多額のODAを提供し、直接投資もしたし、中国製品を大量に輸入した。米国も同じようなことをした。西側は、中国が豊かになれば民主化につながり、世界はよりよくなると考えた。今から思えば幻想であったと言わざるを得ない。習近平は鄧小平の業績を引き継いだが、思想的な面は引き継いでおらず、対西側対決姿勢を打ち出している。それが中国経済に与える影響は今後よく見ていく必要があると思われる。

 中国の今後の政治については、習近平は、鄧小平が定めた最高指導者は2期10年とする制限を撤廃し、長期独裁政権を築こうとしているように見える。集団指導の原則もないがしろにする勢いである。鄧小平が行った政治改革を逆転させており、その結果がどうなるか、注意が必要だと思われる。独裁政権は安定しているようで、不安定であり、崩れる時には急に崩れるし、政策上の間違いも犯しがちである。

 中国は強大で、かつ危険な国になっていると思われる。「説教は拒否する」というのではなく、批判にも度量をもって、耳を傾け、民主主義国の意見との懸隔をできるだけ少なくする努力が中国に望まれる。他方、こちら側にも意見の懸隔を少なくする知恵がいる。

 日本としては、中国の危険性を認識し、経済関係の在り方をより制限的にすることや一層の防衛努力をすることなどが課題になるだろう。

【私の論評】中国に迫る危機が透けて見えた習近平の演説(゚д゚)!

現在「中華思想」丸出しの習近平政権ですが、ではその実力はといえば、核兵器、サイバー攻撃力のどちらにおいても米国の足元に及びません。 

2020年1月時点での各国の核戦力を比較してみます。世界の核兵器保有数は13,400ですが、そのうち、米国が5800、ロシアが6375で90%以上を占めます。 

中国は320で、フランスの290、英国の215と同程度です。また、インドが150、パキスタンが160保有しています。 


さらに、英シンクタンク「国際戦略研究所(IISS)」が公表した15ヵ国のサイバー能力を分析した報告書で「第1級」のトップクラスとされたのは米国のみです。 

共産主義中国はオーストラリア、フランス、ロシア、英国などとともに「第2級」に分類され、米国との差は圧倒的です。

ちなみに、よくサイバー攻撃で話題になる北朝鮮は、日本、インド、インドネシア、イランなどと同じ「第3級」です。日本の現状は悲しい限りですが、中国や北朝鮮が実力以上の脅威ととらえられるのは、これらの国々の攻撃で先進国(企業)が被害にあった場合は情報がオープンにされメディアで報道されるからです。 

逆に、北朝鮮や中国がサイバー攻撃を受けても、何事も無かったように「だんまり」を決め込むから実態が知られないだけなのです。 

さらに、米国最大の石油パイプライン「コロニアル・パイプライン」がハッカー攻撃を受けて支払った身代金の大半が回収されました。FBIなどが作戦に関与したとされますが、米国の実力の一端を垣間見せる出来事です。 

もちろん、空母など通常兵器でも米国が圧倒的に優位に立っています。最近では、空母は実戦ではあまり役立たないどころか、ミサイルや魚雷の格好の目標となるとされていますが、それは中国も同じことです。

現代の海戦は潜水艦によって決まるといわれていますが、その潜水艦でも隻数では、中国が米国を上回るとはいえ、攻撃力では米国が圧倒的です。さらに、中国にとって悪いことに、米軍の対艦哨戒能力は世界一であるのに対して、中国のそれはかなり低いです。これが、海戦では米国を圧倒的に有利にしています。

さらに、日本の潜水艦の静寂性(ステルス性)は、世界トップ水準で、中国にはこれを発見できません。さらに、日本も対潜哨戒能力で中国をはるかに凌駕しており、現状では米国についで世界第二位といわれています。

これでは、中国は海戦で日米に勝てる見込みは全くありません。実際に海戦になれば、中国の艦艇のほとんどは戦う前に海の藻屑となるでしょう。

台湾に中国軍が上陸しようとしたとしても、日米の潜水艦隊に囲まれてしまえば、中国の航空機も、艦船も台湾に近づくことができません。近づけは、日本の潜水艦隊は、静寂性を活用して、中国側に発見されることなく、台湾海峡、東シナ海、黄海などを自由に潜航して、情報収集にあたるとともに、許されれば中国の艦艇に魚雷攻撃を加えることになるでしょう。

米国の攻撃型原潜は、水中に潜み、日本の潜水艦の情報を活用し、中国の航空機、艦船、中国国内の基地などを攻撃するでしょう。中国の空母は、軍港を出た途端に撃沈されることになるでしょう。

そうりゅう型潜水艦11番艦のSS511おうりゅう

この状況で「中華思想」に基づく外交を行うことは、国家の破滅さえ導きかねないです。「毛沢東2世」どころの話ではないのです。

共産主義中国建国から長年にわたって毛沢東が支配できたのは、それ以前の悲惨というか壊滅的な状況を国民が記憶していたからです。どれほどひどい政治であろうと外国による支配や戦乱よりはましというわけでした。 

しかし、習近平氏が統治しているのは「天国のようなバブル時代」と「わずかながらの自由」を経験した人民です。毛沢東流の統治が成功する見込みはありません。 

それに、過去の中国は鄧小平の開放政策により、急速に経済が発展しましたが、現在の中国は国民一人当たりの所得が100万円に近づきつつあり、以前のこのブログで述べたように、今後民主化、政治と経済、法治国家化を進めなければ、中所得国の罠(国民一人あたりの所得が100前んをなかなか超えない現象、發展途上国に一般的にみられる現象)にはまりこむのは必定とみられます。

過去においては、中国が経済発展をし、鄧小平が語った「富めるものから富め」といわるように、多くの富裕層を排出することができましたが、今後は中所得の罠にはまって、新たな富裕層が生まれることはなくなります。

既存の富裕層が利権を独占して、固定化することになります。経済が今以上に発展しないのですから、富裕層の中にも脱落するものも増えるでしょう。そうなると、中国の富裕層も共産党を支持しなくなる可能性がでてきます。

習近平が演説で繰り返し「人民」に触れざるを得なかったのは、人民の共産党離れを懸念したからでしょう。中国は高度成長が終わり、債務問題を抱えています。共産党は経済成長を統治の正統性に据えることができなくなったのです。

共産党の統治の正当性は、もはや軍事力しか無くなったと言っても過言ではありません。

また、毛沢東は8000万人もの人々を死に追いやったのですが、文革の時は富裕層や知識人であり、大躍進の際には特権階級を除く全国民が犠牲の対象でした。ウイグルなどもともとは外国であった地域のジェノサイドでは、海外からの風当たりが違うということもあります。 

そうして、毛沢東時代の共産主義中国はソ連という悪の帝国の陰に隠れていましたが、ソ連が崩壊した後のロシアは、軍事力な軍事技術が進んでおり侮れないとはいいつつ、現在のGDPは韓国なみの水準となり、大国とは程遠い状況にあります。


現在のロシアは、米国を除いた、NATOと戦っても勝利することはできません。軍事技術などがすぐれているので、初戦には勝つかもしれませんが、その後は、貧弱な兵站能力しかなく、補給などができず、戦線を維持できず、後退を余儀なくされることでしょう。

この兵站の貧弱さは、中国も同じです。昨年4海域で軍事訓練を行いないましたが、今年なりを潜めています。実施できるのは、台湾に航空機を派遣することぐらいのようです。航空機の派遣であれば、短時間で引き返して来るので、兵站のことをあまり考慮せずに派遣できます。

そうして、現代の中国は「悪の帝国の本尊」です。 結局、国際レベルでの政治的駆け引きが無い、ウイグルや武漢ウイルス研究所の問題における一本調子の対応(稚拙な外交)は自滅を招くのみです。これが、本当の中国の危機です。

それが、何ら具体的な戦略や政策などがみられない、今回の習近平の中国共産党百周年祝賀行事での演説に助けて見えたと思います。


対中同盟の旗印に民主主義を掲げるのは難しい―【私の論評】実は民主化こそが、真の経済発展の鍵であることを中国をはじめとする発展途上国は認識すべき(゚д゚)!

“台湾有事は「存立危機事態」にあたる可能性” 麻生副総理―【私の論評】麻生氏の発言には、軍事的にも裏付けがある(゚д゚)!

中国による台湾の軍事的占領、近い将来起こる公算小=米軍トップ―【私の論評】「今後6年以内に中国が台湾を侵攻する可能性がある」との証言は、日本に対する米軍の「政治的メッセージ」(゚д゚)!

特報 米国司法省 IR疑惑で500ドットコムと前CEOを起訴 どうなる岩屋外務大臣―【私の論評】岩屋外務大臣の賄賂疑惑が日本に与える影響と重要性が増した企業の自立したリスク管理

特報 米国司法省 IR疑惑で500ドットコムと前CEOを起訴 どうなる岩屋外務大臣 渡邉哲也(作家・経済評論家) まとめ 米国司法省は500ドットコムと元CEOを起訴し、両者が有罪答弁を行い司法取引を結んだ。 日本側では5名が資金を受け取ったが、立件されたのは秋本司被告のみで、他...