反対運動に使われた看板 |
北京市にある中国共産党の子弟が通うエリート校「北京海淀外国語実験学校(海淀学校)」だ。1999年創立で、幼稚園から小・中・高校生の約6000人が、学校内で寮生活をしている。
IT(情報技術)、語学、芸術、スポーツ分野で英才教育に力を入れており、人民解放軍さながらに軍服や銃を使った軍事訓練を行っている。
そんな海淀学校と交流話が持ち上がり、地元住民を巻き込む大騒動となったのが、瀬戸内海に面し、香川県東部に位置する東かがわ市だ。
市と海淀学校が交流を始めたのは2017年のことだ。心温まる交流が続くと思われた矢先、19年12月の市議会定例会で、宮脇美智子市議(幸福実現党)がこの問題を取り上げ、市を二分する大問題に発展した。
海淀学校と市の交流について、市民にきちんと説明されないまま進められたためだ。住民が猛反発したのは当然だ。海淀学校側は、昨年3月に廃校となった市内の旧福栄小を借り上げ、「日本での進出基地としたい」と要請し、市が容認に傾いた。50人規模の児童や生徒が1週間ほど滞在するため、海淀学校が宿泊施設に改造するという。
反対派住民は、旧福栄小学校が海淀学校に拠点化されれば、トラブルに巻き込まれるのではないかと反対した。周辺住民の一部はすでに引っ越してしまったという。
実際、瀬戸内海の小豆島を望む市北部の海岸では、海淀学校がヨット訓練施設として空き家を買収する動きを見せ、これを察した地元住民が、先回りして買収を阻止した経緯がある。
この騒ぎに上村一郎市長は今年3月、拠点化の中止に加え、安全面の不安を理由に海淀学校との交流中止を発表した。だが、反対派住民は、安全が確保されると市が判断すれば、交流が再開されるかもしれないと疑心暗鬼になっている。
中国共産党の強い影響下にある海淀学校との交流は即、中国共産党との交流を意味する。ましてや日本側は年端もいかぬ義務教育の児童や生徒である。自由や民主主義という普遍的な価値観を共有できない相手との交流には、教育上もリスクが伴う。彼らと天安門事件や香港、ウイグル人弾圧をどう語るのか。
7月19日、筆者は市長室に上村市長を訪ねた。
上村市長は「国際情勢に鑑み、このまま中止もあるし(再開も)あり得る」と述べた。
異文化を知り、相互理解を深めることは大切である。人口減少に悩み地域の活性化を図る自治体が、主体的に国際交流を図るのを頭から否定するものではない。ただ、国際交流には地元住民の理解が欠かせない。市は頭を冷やし、海淀学校との交流をきっぱり諦めるのも見識である。
■佐々木類(ささき・るい) 1964年、東京都生まれ。89年、産経新聞入社。警視庁で汚職事件などを担当後、政治部で首相官邸、自民党など各キャップを歴任。この間、米バンダービルト大学公共政策研究所で客員研究員。2010年にワシントン支局長、九州総局長を経て、現在、論説副委員長。沖縄・尖閣諸島への上陸や、2度の訪朝など現場主義を貫く。主な著書に『静かなる日本侵略』(ハート出版)、『日本が消える日』(同)、『日本復喝!』(同)など。
農林水産省は、昨年5月外国資本による森林買収に関する調査を実施した結果、北海道で合計20haの森林買収が行われていたことを明らかにしました。
日本の農林水産省は、令和2年における外国資本による森林買収の事例について、森林法に基づく届出情報などの行政が保有する情報を参考に、都道府県を通じて調査を行い、結果を取りまとめました。
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北海道では、蘭越町において、2haが資産保有の利用目的で買収されていました。ニセコ町では合計3.7haが買収され、真狩村では合計10ha、留寿都村では3.4ha、喜茂別町では0.8haとなります。北海道では合計20haが買収されていました。
また、神奈川県では、箱根町において合計0.6haが買収されていました。京都府では、京都市において合計1.2haが買収されていました。
国内の外資系企業と思われる者による森林買収の事例として都道府県から報告があった事例は、26件あり、森林面積は404haとなっています。
なお、北海道に関しては、2019年10月に中国王岐山国家副主席が、習近平国家主席の特使として天皇陛下の「即位礼正殿の儀」に参列後、北海道に訪問しており、有珠山などを視察していました。
中国では、10年2月、国防動員法なる法律が採択、公布され、同年7月に施行されました。全14章72の条文からなり、一言でいうと、中国国内で戦争や武力衝突が起きた場合、金融機関や交通輸送手段、港湾施設、報道やインターネット、医療機関、建設、貿易、食糧など、民間資源をすべて政府の管理下に置くことができるというものです。
11年3月11日の東日本大震災時、新潟の中国総領事館が5日後の16~21日に、東北地方に住む中国人1万人以上を新潟市体育館など3カ所に集め、5711人を新潟空港から30便の臨時便で上海とハルピンに向けて出国させました。
もし、国防動員法が発令され、動員された在日の中国人が買収された森林や農地などに集結するとどういう事態になるのでしょうか。新潟のケースを当てはめると背筋が凍る思いがします。
冒頭の記事にあるように、中国資本の進出は北海道に限らないです。「経済振興」を目指す各自治体に「経済侵攻」を続ける中国資本。自衛隊施設の周辺が買収されると、安全保障上重大な事態になるという声が噴出します。しかし、安全保障は、軍事面だけではありません。
出所)平野秀樹・姫路大学特任教授作成 |
世界各国の外国資本による土地買収に対する法整備を見ると、取得や利用方法を制限していたり所有者や利用者を厳格に管理していたりしています。何ら法整備もルールも持たないのは日本だけともいえる。いわば、中国資本による〝草刈り場〟状態です。
とはいえ、中国資本の脅威ばかり唱えていてもこの問題は解決しません。現時点ではそれが〝合法〟であるからです。むしろ、問題は現状を放置している日本人の危機意識の欠如にあるともいえます。