戦闘地帯に展開するウクライナ軍兵士 |
ロシア軍は人員、装甲車両、航空機で予想より大きな被害を受けている。これはウクライナの防空システムが侵攻前の米国による情報分析よりも有効に機能していることが理由のひとつとなっている。国防幹部はまた、ウクライナ空軍と防空システムが制空権をめぐって戦っていて、ロシアが制空権を握れていないと指摘した。
十分な制空権がないと、進行する陸軍が空からの標的を認識して攻撃することはより困難になる。
ただ、当局者は戦況は現時点のものであり、ロシア軍が攻撃を続ける中ですぐに変わる可能性があるとも注意を促している。
軍事情報企業IHSジェーンズによると、ウクライナ軍はレーダー誘導ミサイルや熱探知ミサイル、対空砲など様々な防空兵器を保有している。米国は対空ミサイル「スティンガー」をこの数週間で供与し、北大西洋条約機構(NATO)の同盟国も同様だ。
当局者によると、米国は26日夜の時点で、ロシア軍がウクライナの都市を制圧したことを示す情報を持っていない。ただ、ロシア軍は首都キエフを含む大都市のいくつかを包囲しようと行動を続けている。
ロシアの大規模な侵攻軍に燃料や弾薬の補給を維持するのも難しい状況となっている。ある米高官が説明するように、ロシアは早期の勝利を予想し、十分な再補給の計画を怠っていた可能性がある。この高官は、補給線は「明白なぜい弱性だ」と語った。
こうした課題がこれまで、ウクライナの主要都市の早期制圧を防いできた。米当局者は制圧は数日の問題だと懸念を示していた。当局が侵攻初日の夜に陥落の可能性があると見ていたロシア国境に近いハリコフも、まだロシア軍の手に落ちていない。
ただ、こうした当局者らはロシア軍がウクライナ軍を数で圧倒的に上回り、主要都市の周囲に軍を進めようとしていると指摘。軍の遅い動きの原因が補給の問題にどれほど帰着するのかは不明だとした。
ロシアは進軍の遅さについて、交渉の時間を与えるための停止であり、軍事的な後退ではないとしている。
ロシア国防省は26日、ウクライナ政府との交渉のため一時停止が指示されていたものの、その後軍に「全方向への」攻撃の再開命令が下ったと発表。ウクライナが協議を拒否し、攻撃継続が命じられたとしている。
ウクライナ政府の顧問は26日早くに、ウクライナが交渉を拒絶したことはないと否定した。
NATO当局者は最新の情報を基に、ロシア軍が「問題を抱えている」と指摘し、「燃料が不足し、進みが遅く、士気は明らかに問題となる」と述べた。
ロシア軍が攻勢を強めてくるかとの問いには、他に選択肢はないとの見方を示し、「彼らは予定より遅れている。彼らにとって手に負えなくなりつつある。1日延びるごとに大きな痛みとなる」と語った。
【私の論評】先が見え始めたか、愚かなプーチンのウクライナ侵略(゚д゚)!
ロシア軍の兵站は、鉄道に頼っているいるため、脆弱であることはこのブログで何度か述べたことがあります。鉄道に頼るということは、線路を破壊されれば、兵站が滞ることを意味します。米軍のMRE(Meals,Ready to Eat=携行食) |
実は第2次世界大戦よりもはるか昔から、戦争のあり方を規定し、その勝敗を分けてきたのは、戦略よりもむしろ兵站だったのです。極限すれば兵士1人当たり1日3000kcalの食糧をどれだけ前線に送り込めるかという補給の限界が、戦争の形を規定してきました。そう同著は伝えています。
エリート中のエリートたちがその優秀な頭脳を使って立案した壮大な作戦計画も、多くは机上の空論に過ぎません。餓死寸前で米軍の捕虜となったマーシャル諸島の日本軍の水兵たち |
では、トラックで運べばよいではないかという話になりますが、実はロシアではこれも頼りになりません。ロシア軍の旅団には2個トラック大隊があり、150台の貨物トラック、50台のトレーラー、260台の特殊トラックが定数になっています。
ロシアの旅団編制は米国など西側とは違うので単純な比較はできませんが、砲兵火力を重視した内容で、戦車や装甲車の数は米軍の旅団戦闘団(BCT)の4分の3、しかし砲兵は3倍、防空部隊も2倍です。航空優勢は米軍に取られることを念頭に、支援火力は自前で持ち、防空力を強化する編制になっているのです。
多連装ロケット砲大隊を含む砲兵は、短期集中で大火力を投射できますが大量の弾薬を一挙に消費します。この砲兵部隊に弾薬を完全に補給するのには、56台から90台の貨物トラックが必要になるとされます。しかし150台しかないトラックの半数を、砲兵部隊の弾運びのためだけに割くなど不可能です。
この兵站線の特徴からロシア軍は、旧ソビエト連邦領域内で「積極的防衛作戦」は行えますが、領域外で持続的な作戦行動を行う能力は限定的です。そうして、兵站を鉄道に頼ることの不利な点は、国境付近に集結した兵力を数えるだけではなく、軍用列車を観察することでロシア軍がどう動くつもりなのか占うことができるのです。
米軍では、偵察衛星などでこの動きをかなり詳細につかんでいることでしょう。そうして、その情報はウクライナ軍にも提供され、ウクライナ軍はあまり大きな不意打ちをくらうこともなく、逆にロシア軍に対して不意打ちをくらわすことができます。
それに、先日も掲載したように、都市部の武器を携行して立てこもるウクライナ軍を攻撃するのはかなり難しいです。人口280万人のキエフを占領しようと思えば、ロシアは数カ月の市街戦と利用可能な人的資源の全てを投入する必要があるとの見方もあります。米国の経験から、ホテル程度の建物一つを占領するだけでも、一個大隊または700-800人が必要だといいます。
ロシアとしては、ドンバス地方の侵攻だけではなく、首都攻略などを目指すようにみせかけた侵攻も含めて複数箇所から攻撃をして、脅せばゼレンスキー政権は崩壊し、ゼレンスキー大統領をはじめ幹部は、投降するか海外に逃亡すること等を前提として、戦略特に兵站計画を組んだのでしょうか。仮に代替案もないとしたら、あまりに愚かです。
ウクライナ東部と国境を接するロシア領ベルゴロドに急遽招集された約5,000人のロシア軍兵士は「ウクライナでの戦闘行為は契約に含まれていない」と主張して命令を拒否、そのため暴動に発展しているとウクライナメディアのObozrevatelは報じています。
招集された約5,000人のロシア軍兵士はウクライナで何が起きてるのかを知っており、プーチンの始めた戦争に自分の命を捧げるぐらいなら起訴された方がマシだと抵抗しているともいえるでしょう。
Obozrevatelの報道が真実かどうかは謎であり、ウクライナ側のプロパガンダである可能性も高いですが、本報道はウクライナ軍公式SNSなどを通じて多くの国民が目にしているため戦意高揚としての役割は十分果たしているようです。
ただし、報道の内容が真実で本当に暴動が発生しているなら「ウクライナでの戦いは先が見え始めた」と言えるでしょう。