□ Funny Restaurant 犬とレストランとイタリア料理

2022年8月24日水曜日

自民・二階元幹事長「自民党はビクともしない」 旧統一教会との関係めぐり―【私の論評】国会議員やメディアは、憲法20条を良く理解した上で、旧統一教会問題を論じないと、大火傷する(゚д゚)!

自民・二階元幹事長「自民党はビクともしない」 旧統一教会との関係めぐり


旧統一教会と自民党の議員との接点が相次ぎ浮上している問題をめぐり、二階元幹事長は「自民党はビクともしない」と述べました。

自民党 二階俊博 元幹事長
「電報を打ってくれって言われりゃ打つんですよ。『応援してやろう』と言ってくれたら『よろしくお願いします』っていうのは、もうこれは合言葉ですよ。モノ買いに来てくれたら『毎度ありがとうございます』って商売人が言うのと同じなんですよね。究明し修正をしてやっていくべきだと思いますが、自民党はビクともしないよ」

二階氏は講演で自身と旧統一教会との関係を否定したうえで、「応援してくれる人たちをこっちが選択する権利はほとんどない」、支援者が旧統一教会関係者かどうか「すぐ瞬時にわかるわけがない」と述べました。

また、政府が決定した安倍元総理の国葬の実施については「当たり前のことで、やらなかったら馬鹿だ」と述べました。

【私の論評】国会議員やメディアは、憲法20条を良く理解した上で、旧統一教会問題を論じないと、大火傷する(゚д゚)!

自民党の二階俊博元幹事長は24日、「世界平和統一家庭連合(旧統一教会)」関連の催しに祝電を送った自民党議員が相次いでいることに関し、「電報を打ってくれと言われりゃ打つ」と語っています。理由について「『応援してやろう』と言ってくれたら『よろしくお願いします』と言うのは『毎度ありがとうございます』と商売人がいうのと同じ」などと語ました。

政治解説者の篠原文也氏が主催する会合で講演し、質疑応答の中で言及しました。

自民党の茂木敏充幹事長は「社会的に問題が指摘されている団体との関係は一切持たない」としていますが、二階氏は「応援してくれる人たちを選択する権利ってのはそんなに無い」と主張。

「『この人は良い』とか『悪い』とか、瞬時に分かるわけがない。できるだけ気を付けてやったらいい」と述べました。そのうえで、問題が分かった場合に「見直していくということで良いんじゃないですか」としました。また「問題があればどんどん出して究明していくべきだ。自民党はびくともしない」とも述べました。

私自身は、二階氏は好きではないのですが、この発言は直截で、非常に良いと思います。現在1議員であり、閣僚でも、党内の要職にもついていないということで、言いやすい立場であることは間違いはないと思いますが、それにしても事実をはっきり発言しているところは、評価したいです。

立憲民主党は8月23日、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)と党所属議員の関係を調査した結果、新たに枝野幸男前代表ら7人が教団側と接点を持っていたと公表しました。接点が確認された立民議員は計14人となりました。そのなかには枝野前代表の名前もありました。岡田氏は既に報じられていました。


「旧統一教会側と“接触”したのは」と言う言い方は、まるでコロナのような言い方です。これは、濃厚接触者と一緒ではないですか。新型コロナもそうですが、濃厚接触者になった人が悪いわけでもないはずです。

旧統一教会の人々と接触してはいけないということになると、これはもう行き過ぎです。

接触しているというなら、マスコミも、接触しています。会報誌のバックナンバーを調べる方がいらっしゃって、「マスコミの広告が出ている」ということも言われています。

会報誌には、マスコミの広告は多く出ていますし、キャンペーン記事などで旧統一教会を持ち上げているものもあります。接触ということに限っていえば、マスコミのほうがはるか接触していると思います。

良く政教分離ということがいわれますが、この考えはどこの国にもあります。しかし、宗教の方からすれば、どんな政党を支持しても自由です。政治家も、いずれかの宗教に入信しても良いはずです。

政治家の接触が良くないというならば支持者全員に「あなたの宗教は何ですか?」と聞かなければならないことになり、内面の自由に反することになります。

唯一決まりがあるのは、「国が特定の宗教を助成してはいけない」ということだけです。だから「接触がダメだ」と言うのなら、政治家は事前に支持者一人ひとりに「あなたの宗教は何ですか?」と聞かなければならないことになります。これは、「内面の自由」に反します。

これは、憲法問題となる可能性があります。だから聞いてはいけないのです。内面の自由は尊重しなければいけないですから、「あなたの宗教は何ですか?」などと面接で聞いたら法律違反になります。

霊感商法は違法だが、宗教の自由、内面の自由には触れられないのです。他方、霊感商法と呼ばれるような問題は、30年ほど前からありました。これに関しては、さまざまな法整備等々が進められてきました。

霊感商法に関しては宗教とは関係なく、消費者契約法の問題なのです。そこで違法行為をしていたら法律違反です。宗教とは関係なく、消費者契約法によれば、取り消しができますが、消費者契約法ができる前は詐欺や公序良俗などの法的措置で対応していたのです。


違法の部分に関しては、法的に対応すれば良いですが、宗教の自由、内面の自由があるので、そこに触れるようなことは、すべきではないです。

政教分離に関しては、フランスで行われている「ライシテ」と呼ばれるような、かなり厳格なことを日本も実施するか否かというのが問題の本質です。

ロンドンのフランス大使館前でフランスのブルキニ禁止令に抗議する人々(2016年)

立法論でそういうものはあり得ますが、日本ではかなり難しいです。公共の場でスカーフを巻いてはいけないという事例も出てきて、「ここまでいくとやりすぎだろう」と意見がフランスのなかでも出ています。

人にとっては、内面の自由は重要ですから、要はルールをはっきり決めた上で、対応しなければいけない問題です。

ただ、そもそも論として、現行の憲法論として、宗教団体を教義等を理由に規制する事はできないです。教義に踏み込むには憲法20条(信教の自由に関する条項)の改正が必要ですが、それは同時に宗教弾圧のリスクも伴います。だから、宗教という枠組みでない「消費者契約法」実態規制ということになるのです。

このあたりの状況を二階元幹事長は、しっかり理解しているのでしょう。だから、明瞭に意見を述べる事ができたのだと思います。

日本国憲法第20条は、次のような条文です。
1 信教の自由は、何人に対してもこれを保障する。いかなる宗教団体も、国から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない。

2 何人も、宗教上の行為、祝典、儀式又は行事に参加することを強制されない。

3 国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない。
第20条は「信教の自由」を定めたものです。その「信教の自由」を実質的に支えるために、国家および公権力が宗教や個人の信仰に介入することを禁じています(政教分離原則)。

なぜなら大日本帝国憲法でも、文言のうえでは「信教の自由」は謳われていたのですが、
安寧秩序ヲ妨ケス及臣民タルノ義務ニ背カサル限ニ於テ(国家の安全と秩序を妨げず、国民の義務に反しない限りにおいて)
という条件付きなのです。

伝統的な法学の世界で使われる「政教分離」という用語は、英語では「Separation of Church and State」と表現され、文字どおり「教会と国家の分離」を意味します。「政」は「政治」や「政党」ではなく「国家」なのです。

国家に対して〝宗教への国家の中立性〟を求めるものであって、国民に対して〝宗教者の政治参加〟を禁じたものではありません。

最高裁判例でも、「政教分離原則」とは「国家の非宗教性ないし宗教的中立性」を意味すると示され、これらは日本の憲法学界の通説(多数説)として定着しています(「最高裁判所判例集」)。

このことは、日本国憲法の草案が帝国議会で議論された際、すでに確認されています。

これは、1946年7月16日の衆議院の「帝国憲法改正案委員会」における、松沢兼人議員(日本社会党)の質問と金森徳次郎・国務大臣の答弁の議事録をご覧いただければご理解いただけると思います。以下に議事録を現代語に直したものを掲載します。
松沢委員  「いかなる宗教団体も…政治上の権力を行使してはならない」と書いてあるのであります。これは外国によくありますように、国教というような制度を我が国においては認めない、そういう趣旨の規定でありまして、寺院やあるいは神社関係者が、特定の政党に加わり、政治上の権利を行使するということはさしつかえがないと了解するのでありますが、いかがでございますか。

金森国務大臣  宗教団体そのものが政党に加わるということがあり得るかどうかは、にわかには断言できませんけれども、政党としてその関係者が政治上の行動をするということを禁止する趣旨ではございません。(「帝国議会議事録」)

 

「帝国議会議事録」の原文より

 

ここで松沢議員は、「いかなる宗教団体も――」の条文が、特定の教団やその関係者が特定の政党に参画して政治上の権力を行使することを禁じていないことを政府に確認している。これに対し、政府(金森大臣)も「禁止する趣旨ではない」と明言しています。

この解釈によれば、創価学会のような、宗教団体が政治に関与することは、そもそも違憲ではないということになります。ましてや、旧統一教会が選挙運動の応援をすることも違憲ではないということになります。

22日、“統一教会”がホームページで、「異常な過熱報道に対する注意喚起」として文書を公表しました。現在の報道について、「不当に当法人等を貶(おとし)める報道に対しては、法的手段を講じて厳重に対処させていただく」と批判しました。法的手段も辞さないとの考えを示したのです。

統一教会のメディアに対する訴訟でメディア側が敗訴すれば、メディアの浄化も進むでしょう。さらに、問題発言した出演者はとんでもないことになるかもしれません。メディアは責任をとらず、出演者に責任を押し付けることになるかもしれません。

国会においても、野党議員などが、憲法20条の信仰の自由を無視した、問題発言をすれば、自滅するということにもなりかねません。

国会議員や、メディアはまずは、日本国憲法20条の内容を良く理解した上で、旧統一教会問題を論じるべきです。そうでないと、メディアや野党、識者、コメンテーターの中にも大やけどをする人がでてくるかもしれません。野党も半端な気分で、旧統一教会と自民党の議員の関係など国会でつついていると「内閣法制局」あたりにピシャリとやられ、大赤恥をかくことになるかもしれません。

【関連記事】

元首相は「変なことをすると、運も逃げていく」と語っていたが、今の岸田首相はその状況なのだろうか―【私の論評】内閣改造で大失敗して支持率が低下する岸田政権に、明日はあるのか(゚д゚)!

こんな馬鹿馬鹿しい内閣改造があるか?岸田氏が断行した「脱安倍」昭和人事で防衛も経済も危ない―【私の論評】組閣の大失敗で、岸田政権は短期政権に(゚д゚)!

内閣改造でなぜロシア協力相を続ける必要があるのか―【私の論評】岸田政権が派閥力学と財務省との関係性だけで動けば来年秋ころには、自民党内で「岸田バッシング」の声が沸き起こる(゚д゚)!

安倍氏死去/台湾で安倍元首相の追悼音楽会 頼副総統「感謝の思いは変わらない」―【私の論評】国葬儀の規模の大きさから、マスコミはこの詳細を報道せざるを得なくなり、多くの人々が安倍氏の偉大さを再確認することに(゚д゚)!

オリビア・ニュートン・ジョンさん、豪州で国葬 遺族が申し入れ受け入れる―【私の論評】世界標準では、国葬に対して異議を唱えることかできるのは遺族のみ(゚д゚)!
時刻: 8月 24, 2022 0 件のコメント:
メールで送信BlogThis!X で共有Facebook で共有するPinterest に共有

バイデン政権はロシアにもっと強硬に―【私の論評】バイデン政権は、これから段階的にいくつも強硬策のカードを切ることができる(゚д゚)!

バイデン政権はロシアにもっと強硬に

古森義久(ジャーナリスト・麗澤大学特別教授)

「古森義久の内外透視」



【まとめ】

・今まで一定以上のウクライナ支援を抑制してきたバイデン政権だが、ロシアへの姿勢が軟弱すぎるとの批判が高まっている。

・バイデン政権は、アメリカが強硬な軍事措置をとれば、ロシアは全面戦争も辞さない反撃措置に出る可能性があると説明してきた。

・しかし戦略研究家マックス・ブート氏は、プーチン氏は自滅的ではなく合理的な判断をしており、バイデン政権は必要のない譲歩や後退をしていると批判した。

 ロシアのウクライナ侵略もこの8月ですでに半年が過ぎた。戦況は膠着状態とも、消耗戦とも評される。ウクライナ側の善戦にもかかわらず、ロシアの侵攻は止まらない。そのウクライナを支援するアメリカ国内ではバイデン政権のロシアへの姿勢が軟弱に過ぎるという批判が高まってきた。バイデン政権がロシアのプーチン大統領の爆発的な反撃を恐れて、抑止のための強固な措置がとれないというのだ。

 だがそのバイデン政権のプーチン大統領に対する「なにをするかわからない危険な人物」という認識はまちがいだとする意見がアメリカ側の著名な戦略研究家から発せられた。この意見はプーチン大統領もアメリカの戦力の強大さを知る現実的で合理的な指導者だから、バイデン政権がもっと強く出れば、自制を効かす、と強調している。

 バイデン政権ではロシアのウクライナ侵略に強い反対を表明しながらも、一定以上のウクライナ支援には一貫して慎重な抑制を示してきた。アメリカ軍を直接にウクライナに投入するなどという案は最初から「飛んでもない暴挙」として排除された。

 アメリカと同盟を結ぶNATO(北大西洋条約機構)の加盟国が軍隊を送ってロシア軍と戦うという案にも、バイデン政権はもちろん大反対だった。バイデン政権はNATO側のポーランドが自前の戦闘機を隣国のウクライナに送って支援することも明確に反対した。

 バイデン政権のこうした姿勢の説明としては大統領国家安全保障担当のジェイク・サリバン補佐官の「ロシアとの第三次世界大戦を引き起こすわけにはいかないから」という言葉がいつも引用されてきた。つまりアメリカ側がある程度以上に強硬な軍事措置をとると、ロシアのプーチン大統領はアメリカ側との全面戦争をも辞さない反撃措置に出るだろう、という示唆だった。その背景にはプーチンというロシアの最高指導者は大規模で破滅的な戦争をも仕掛けてくる爆発的、破滅的な傾向を有する人物だ、という推定があるわけだ。

 さてこうした背景のなかで、バイデン政権の対プーチン観、対ロシア観に正面から反対する見解がアメリカの戦略研究でも著名な学者から発表された。外交関係評議会の上級研究員でワシントン・ポストなどの主要メディアに国際問題についての寄稿論文を定期的に発表しているマックス・ブート氏である。ロシア生まれで幼い時期に家族に連れられてアメリカに移住したブート氏は教育はすべてアメリカで受けて、1990年代から保守派の論客として活躍するようになった。ただしトランプ前大統領に対しては批判を表明してきた。

 ブート氏のワシントン・ポスト7月28日付に掲載された論文は「アメリカはロシアよりずっと強い。われわれはそのように行動すべきだ」という見出しで、バイデン政権のロシアへの姿勢を軟弱に過ぎると批判していた。そのブート論文の骨子は以下のようだった。

〇バイデン政権はロシアのウクライナ侵略に対して一定以上に強硬な対策をとると、プーチン大統領が無謀で非合理な行動で反撃し、核兵器までを使用しかねないと恐れている。だがプーチン氏はこれまで5ヵ月にわたるウクライナでの戦争で冷酷かつ残虐的であることを示したが、自滅的ではなく、合理的な判断を下していることが明確になった。

〇プーチン氏はウクライナの首都キーウの攻略を当初、目指したが、その実現が難しいとわかるとすぐにその作戦を撤回した。ウクライナ軍が一時、ロシア領内の標的にまでミサイル攻撃を加えたが、冷静に対応して、報復としての戦線拡大はしなかった。プーチン大統領はウクライナの兵器や弾薬の供給発信地となっているポーランドにも攻撃はかけず、NATOへの加盟の動きをとったスウェーデンとフィンランドに対しても威嚇の言葉を述べても、実際の行動はなにもとっていない。

〇プーチン氏はこうした実際の言動から弱いとみなす相手(たとえばジョージア、ウクライナ、シリアの反政府勢力など)には容赦のない威嚇と実際の攻撃をためらわないが、アメリカやその他のNATO加盟国との直接の軍事対決はあくまで避けるという合理的かつ計算高い行動様式が明確となった。実際の戦闘でもウクライナ軍を相手にしてすでにこれだけ苦労するのだからNATO軍との衝突はあくまで避けるという合理性を有することは確実だといえる。

〇アメリカは核戦力ではロシアと互角の水準にある。非核の通常戦力ではアメリカはロシアよりはるかに優位にある。しかしバイデン政権はあたかもアメリカ側の軍事能力がロシアよりも弱いかのようにふるまっている。その結果、プーチン大統領はアメリカがウクライナにより強力な軍事支援を供することを抑止することに成功してきた。

〇ウクライナでの戦闘ではロシア軍はすでに戦車1000台以上を失い、6万人以上の戦傷者を出した。今後ウクライナ軍がこれまでよりも強力な戦術ミサイル・システムなどをアメリカから得れば、ロシア側の敗北は確実となる。だがバイデン政権はなおロシア側の自暴自棄的な反撃を恐れて、その種の兵器のウクライナへの供与をためらっている。このロシア認識は変えるべきだ。

 以上、要するにプーチン大統領はいざとなればアメリカとの全面戦争をも辞さないような強気の言動をみせてはいるが、それはたぶんに演技あるいは、はったりであり、実際にはアメリカの軍事能力の優位を認め、自国の安全保障保持のためには合理的な判断を下して、アメリカやNATOと全面衝突するような方途は選ばない――という分析だといえる。だからその分析はバイデン政権がプーチン大統領のその真の姿を読みとれず、必要のない譲歩や後退をしているのだ、という批判につながるわけである。

☆この記事は日本戦略研究フォーラムの評論サイトに掲載された古森義久氏の寄稿論文の転載です。

【私の論評】バイデン政権は、これから段階的にいくつも強硬策のカードを切ることができる(゚д゚)!

今から振り返ると、開戦前から、ロシアの「強気」な姿勢に対し、アメリカ及びNATOの動きは弱いうえに遅いのが目立っていました。

バイデン大統領は、1月19日、就任1年を迎えたスピーチにおいて、ロシアはウクライナに侵攻するとの見解を示した上で、「深刻で高い代償を払うことになる」との警告を発していましたが、同時にロシアがウクライナを侵攻する脅威について問われた際、「小規模な」攻撃ならアメリカやその同盟国の対応はより小さくなるかもしれないと示唆していました。

トランプの大統領副補佐官(国家安全保障問題担当)だったキャスリーン・マクファーランドはFOXニュースに対して、バイデンの発言はプーチンにとって、ウクライナ侵攻の「ゴーサイン」を意味したと主張しました。

「バイデン大統領が先週、プーチンにゴーサインを出すような発言をしたことで、今やプーチンがどんな行動に出る可能性もあると思う。ウクライナ侵攻の可能性もあるし、ハイブリッド戦争を仕掛ける可能性もある。今すぐ、もしくは今後1年の間に、彼は何らかの方法で自分の目的を達するだろう」

ホワイトハウスのジェン・サキ報道官はその後、ロシア軍がウクライナとの国境を越える動きがあれば、それは全て「新たな侵攻」であり、「アメリカと同盟諸国は迅速に厳しく、一致団結して」対応すると説明。バイデンの発言を事実上修正しました。

昨年12月の段階ではウクライナへの米軍の派遣は明確に否定していました。それどころか、1月23日、米国務省は、ウクライナの首都キエフにある米大使館職員家族に退避命令を出したことを明らかにしていました。

バイデン氏は、昨年8月の米軍のアフガニスタン撤退でも、米軍幹部の反対にもかかわらず、早い段階から「8月撤退」を公言し、発言を撤回しませんでした。撤退時期を事前に言ってしまえば、武装派勢力がそれに合わせて攻撃計画を練るのは当然だ。結果として、撤退直前にテロ攻撃され、米兵13人の命が失われてしまった。重大局面での大統領の失言、妄言は、いまや定番です。

米軍のアフガニスタン撤退

NATOは、1月12日の「NATO・ロシア理事会」終了後、ロシアが求めるNATO東方不拡大の法的保証を拒否したことを伝えていましたが、次回会合に望みをつなげること以外、具体的方針は示していませんでした。むしろ、米国がウクライナへ武器供与を承認したのに対し、ドイツがウクライナからの武器供与の要請を拒否したことが伝えられており、NATO内での不協和音も認められました。

1月24日、NATOのストルテンベルグ事務総長は、NATO諸国が東欧の防衛力増強のため部隊の派遣を進めていることを発表し、米国防省も、8,500人規模の部隊に派遣に備えるように指示を出したことを明らかにしました。NATO諸国がロシアの強硬姿勢に、遅ればせながら力による対応措置を講じ始めました。

チキンゲームの観点からは、ウクライナに対するロシアの「強気」に対し、NATOの「強気」の範囲はNATO域内にとどまっていました。これにより、ロシアのウクライナに対する「強気」を、アメリカを含むNATOが是認する可能性が高くなったいえます。

ウクライナはNATOへの加盟を希望しているものの、現時点では加盟国ではなく、NATOとしても集団防衛の義務は負ってはいません。また、バイデン大統領は8月のアフガニスタン撤退に関し、国内外から批判を浴びたことから、海外への米軍派遣には消極的と見られています。

これらのことから、ロシアのウクライナに対する軍事力行使という「強気」に対し、NATOが軍事力行使という「強気」に出て、両者が直接軍事衝突する可能性は低いと見積もられていました。

これらが、プーチンのウクライナ侵攻を後押ししたことは間違いないでしょう。

それもそうですが、実際に侵略が起こった時点でも、即時にHIMARSのような武器が使えるように早めに支援を行い、ロシア側にもその事実を知らせるとか、場合によっては、NATOがロシア国内を攻撃するなどのことを告知していれば、ロシアのウクライナ侵攻を事前に防げたかもしれません。

そういうと、後知恵のように思われるかもしれませんが、私自身は、ロシアのウクライナ侵攻は無理であると当初から考えていて、その根拠の一つとして、いくらロシアがソ連の核兵器や軍事技術を継承した国であり、決して侮ることはできないものの、現在のロシアのGDPは韓国を若干下回る程度あり、東京都と同程度であり、とても NATOと対峙できる状態ではないということがありました。

しかも一人あたりのGDPでは、韓国を大幅に下回る状況です。にもかかわらず、広大な領土を抱えており、ロシア連邦軍の守備範囲も広く、現在のロシアには、ウクライナに攻め込むような大戦争は到底できないと考えたからです。

しかし、結局バイデンの弱気発言などが、ロシアのウクライナ侵攻を後押ししてしまいました。

ただ、プーチンは驕りから失敗しました。しかし、バイデンは駆け引きがあまりに下手すぎです。トランプだったら脅してすかしていなして、最後には「わが友、プーチン」くらいは言って侵攻を止めさせたかもしれません。それがビジネスマンです。

【G7サミット】膝詰めで議論を重ねる安倍晋三首相(中央)トランプ米大統領(手前右)ら

バイデン大統領の外交については、当初から危惧されていました。バイデンが副大統領をつとめたオバマ大統領は外交経験に乏しく、外交の中心はバイデンが担っていました。ところが、オバマ政権で国防長官だったロバート・ゲイツはバイデンについて「過去40年、ほぼ全ての主要な外交、国家安全保障問題で間違っていた」と回顧録で切り捨てています。

「誤り」として挙げられるのはイラク戦争への対応のほか、国連決議に基づいていた1991年の湾岸戦争への反対、2011年のイラク撤退でテロ組織の台頭を許したと批判されていること、アフガニスタンへの増派反対などがあります

米企業公共政策研究所の外交政策専門家コリ・シェイクも、バイデン外交について「軍事力をいつどのように使うかという一貫した哲学に欠けている」と米誌アトランティックへの寄稿で批判しています。

シェイクは、トランプの外交よりは良いとしながらも「バイデンが混乱し、誤った外交政策を唱え続けていることは見落とされるべきではない」と警告していました。

擁護の声もあります。プリンストン大教授アーロン・フリードバーグは「湾岸戦争への反対もイラク戦争への賛成も、同じ投票をした民主党議員はほかにもいた。バイデンは基本的には海外での軍事介入に熱心でなく、党内でもリベラル寄りだ」と語つてまいす。

バイデンはトランプが「同盟国との関係を損ない、北朝鮮など独裁国家の首脳との関係を重視してきた」と非難しました。民主主義国との同盟を再構築すると訴えました。

ただ、フリードバーグは、バイデン外交について「対中国を含め自身は強い信念を持っていない。そのため、政策は周囲の助言に左右される」とその不確実性を指摘しています。

一方、米国は昨年にアフガニスタンからの撤退を完了させ、今回のロシアのウクライナ侵攻にも、軍の直接介入を行わず、兵力を温存しています。これによりバイデン政権は国内政治的なリスクも回避したことも事実です。

しかも、今回のウクライナ軍のロシアの侵攻への善戦の背景に、米国の武器供与、財政支援、インテリジェンス情報共有、サイバー空間での協力などがあることは明らかです。バイデン政権は、米国との同盟国でなくとも、米国の支援を得ることできれば、大国を相手に自国を守ることができるという構図を世界に印象付けつつあります。

過去に米国民に多大な犠牲をもたらし、国内外からの批判に晒されたベトナム戦争やイラク戦争などと異なり、米国の負担を最小にして、世界からは支援と賛同も得られる効果的な協力を行っています。

1960年代フロリダ大学の学生による反戦運動

今後、ロシアがウクライナの戦争の継続あるいは停戦のカギは、ロシアのパートナー国である中国の動き次第です。ウクライナ侵攻前の2月4日、中ロ共同声明において、両国の友情には「限界はない」と宣言しましたが、中国は必ずしもロシアに全面的な支援を与えてはいません。

もし中国が、バイデン政権が再三警告する対ロシア軍事支援に踏み切れば、ウクライナでの戦争はさらに長期化するでしょう。一方で、中国がロシアの長期化する軍事作戦を支えることは、中国の体力も奪うことになり、米国にとって中国との長期的な競争には、米国が優位に展開することになるでしょう。米国にとって中国へのけん制は、いわば「王手飛車取り」です。中国が軽々にロシア支援に動けない理由がそこにあります。

ロシア・ウクライナ戦争は、軍事介入への高いハードルという米国のおかれた状況を考えると、インテリジェンスの先制的な開示という非常手段をとっても、抑止できませんでした。また、結果として、バイデン政権の軟弱な対応が、プーチンを後押ししたという面は否めません。

しかし、この戦争がどのように終結するかどうかで、その帰結は変わってくるため、軽々に結論づけることはできないですが、一方で、軍事介入への制約ゆえに、黒子に徹することしかできない米国に、あらたな戦略と優位性を与える可能性は十分あります。

その優位性を与える一つの方法として、バイデン政権は時にはロシアに対してもっと強硬に出るという方法もあるのではないかと思います。現在まで、バイデン大統領は強気な発言をしたことはありますが、それを実行したことはありません。しかし、そのせいで、バイデン大統領には、さまざまなカードか残されているということができます。

たとえば、NATO軍や米軍のウクライナへの派遣、派遣でも様々な段階があります。軍事訓練から、実際の戦闘に加わることか、戦略の一翼を担うまで、様々な段階があります。さらに強力な武器の供与、これも通常兵器から核兵器に至るまで様々な段階があります。

「飛行禁止空域」の設定も様々な段階があります。ウクライナの一部の空域から、ウクライナ全土まで様々な段階があります。

いきなり、過激な段階ではなく、米国側が何らかの条件を出し、その条件をロシアが満たさなかった場合、段階的なさまざまなカードを切れば良いのです。それも、はっきり目にわかるかたちで切れば良いのです。

この方針の転換が、プーチンを恐慌状態に陥れ、さら追い詰めることになります。今からでも遅くありません。十分できます。それに、ロシアが残虐なやり方をしてきたから今だからこそ、強硬な手段をとっても、国内外から非難を受けることもありません。それどころか、称賛の声が沸き起こるかもしれません。

【関連記事】

ウクライナ戦争下でもNATOが意識する中国の動き―【私の論評】将来は、日本等がAUKUSに加入し拡大版AUKUSを結成し、NATOと連携し世界規模の集団安全保障体制を構築すべき(゚д゚)!

習主席が墓穴!空母威嚇が裏目に バイデン大統領「台湾防衛」を明言 「『第2のウクライナにはさせない』決意の現れ」識者―【私の論評】バイデン大統領の意図的発言は、安倍論文にも配慮した可能性が高いことを報道しないあきれた日本メディア(゚д゚)!

米共和「反トランプ」急先鋒のチェイニー氏、下院予備選でトランプ氏「刺客」に敗れる―【私の論評】24年の次期大統領選に向け、着実に道筋をつけつつあるトランプ氏(゚д゚)!

FBI家宅捜索に新展開:トランプには持ち帰った文書を機密解除する「内務規定」があった―【私の論評】 背景には「トランプに弱みを握られた」かもしれない有力者の不安がある(゚д゚)!

ウクライナ危機は米中間選挙の争点になるのか―【私の論評】バイデン政権の大失敗であるアフガン撤退も、ウクライナ危機も中間選挙の大きな争点になる(゚д゚)!
時刻: 8月 24, 2022 0 件のコメント:
メールで送信BlogThis!X で共有Facebook で共有するPinterest に共有

2022年8月22日月曜日

元首相は「変なことをすると、運も逃げていく」と語っていたが、今の岸田首相はその状況なのだろうか―【私の論評】内閣改造で大失敗して支持率が低下する岸田政権に、明日はあるのか(゚д゚)!

元首相は「変なことをすると、運も逃げていく」と語っていたが、今の岸田首相はその状況なのだろうか

髙橋 洋一
経済学者
嘉悦大学教授
プロフィール





平均的な生活をしていた岸田首相がコロナ感染

 岸田首相がとうとう新型コロナに罹ってしまった。といっても、別に驚くことはない。

 バイデン大統領は先月下旬に陽性反応になり、一度陰性になったが、8月はじめに再び陽性となる「リバウンド」もしている。筆者のまわりの知人も、コロナに罹った人は少なくない。

 その意味で、岸田首相も平均的な日本人と同じである。コロナウイルスは人を選ばないので、普通の行動をしていればコロナに罹っても不思議はない。

 岸田首相は、8月15日から夏休みで、22日から公務の予定だった。始まりも終わりも、日本人の平均的な夏休みスケジュールだった。家族とゴルフ、温泉、旅行と、これも典型的な夏休みの過ごし方だろう。

 こうして平均的な日本人と同じ行動をとったら、コロナに罹るとは、まさにこれぞ平均的すぎる。

 22日から公務の予定だったが、21日に陽性反応が出た。これにより、25日から予定していた外遊(アフリカ、中東)はとりあえずやめることになった。今月末まで今後10日間は自宅療養だ。

 もっとも公邸に住んでおり、住まいと職場がひとつになる「職住一体」なので、執務には支障がないだろう。そもそも、岸田首相はトップダウン型ではなく、周囲の者が準備したことを慎重に実施していくタイプだ。「検討使」とも揶揄される所以でもある。だから首相がいなくても上手く回るといったら、叱られるかもしれないが……。


 岸田首相は、これまでワクチンを4回打っている。3回目は3月4日、4回目は8月12日だ。残念だったのは、4回目を打ったばかりで陽性反応が出たことだ。一般的に、ワクチンの接種で効果を発揮するような十分な免疫ができるのは打ってから7日程度経って以降とされている。もう少し早く打っていればよかったかもしれない。

 ワクチンを接種するかしないかは本人の自由であるが、一定の効果があることは知られている。岸田首相は4回目のワクチン接種後であったが、コロナに罹ったから、ワクチンの効果はないと早合点してはいけない。

 ところで、岸田首相の夏休み初日の15日午後、岸田首相は約10冊の本を購入したと報じられた。その中で、筆者が「あれっ?」と思ったのは、『フランクリン・ローズヴェルト 大恐慌と大戦に挑んだ指導者』だった。

 そこで筆者は、「彼は共産主義に甘く日本人を含む人種差別論者であるのを理解して読まないと」とツイートした。

 報じられた夏休み中の日程を見るかぎり、岸田首相はまだ読んでないかもしれないが、読むときにはよく注意してほしいものだ。

重症化率も死亡率も断トツの低さ

 コロナウイルスの感染者は、8月上旬にピークを迎えたように見えたが、再び増加している。政府は行動制限を行わない方針としているが、医療が逼迫している自治体も増えている。感染症法の区分や感染者数の全数把握の是非、ワクチン接種の促進などはどう考えるべきか。

 これまで新規感染者数でみると、1~6波が来ており、今度は7波となる。これまでの波で、死亡率(=死亡者数/感染者数)、重症化率(=重症者数/感染者数)はどうだっただろうか。

 死亡率は1波から5.7%、1.0%、2.2%、1.6%、0.4%、0.2%と推移した。重症化率は、1波はデータがないが、2波以降は21.6%、24.5%、24.9%、12.5%、1.3%と動いていった。それぞれの波の性格が違うため、厳密にいえば一定の補正が必要で、素データでみるのはやや適切でないところもあるが、おおよその傾向は出ている。

 大雑把にいえば、変異株で置き換わった結果の各波は、変異すればするほど、感染力は強くなるが、死亡率や重症化率は低下する傾向のようだ。7波では、季節性インフルエンザとあまり変わらないと話す専門家も少なくない。死亡率も重症化率も、6波の半分程度まで下がりそうだ。


 世界の状況をみると、G7諸国では、6波あたりが最大になっている。人口比の数字では、今の日本の新規感染者数の1.3~4倍程度であった。7波は日本を除くG7諸国では6波ほどではなく、日本がG7でトップになっている。

 といっても、重症化率や死亡率は他のG7諸国と比べて一桁違いの断トツの低さなので、それを考慮すると、大騒ぎする必要はないだろう。

 今の状況で問題なのは、重症化はしないものの、感染と認定されると元気なのに仕事ができないことだろう。筆者のマスコミ関係の知人でコロナ陽性になった人がいる。本人はまったくの無症状で体調に問題はないのだが、自宅からのリモート活動さえメディアの内規でできないらしい。

 この方の事情は知らないが、子供の間では感染しても熱も出ないので、子供から家族が感染し、そのために仕事ができないという話もしばしば聞く。そうした事情から、実際にはコロナ陽性になったという事実を隠した人も少なくないらしい。

 全数調査はもうやめよ

 5、6波の頃から、地域の保健所が感染症法上2類相当では事実上機能していないという話もしばしば聞く。現場の医療機関でも、全数調査による労働強化が医療サービスの低下にもなっているという。データとしても、死亡率と重症化率は季節性インフルエンザともそれほど大きく異なるわけでもないので、感染症法の区分の見直しという議論もあった。

 筆者としては、感染者数を全数把握することは、いかがなものかと思う。一部のマスコミは「コロナの隠蔽」というが、全数調査ではなくサンプル調査は継続すればいい。すべての場合に全数調査が必要ということはなく、テレビの視聴率調査でも800程度のサンプル調査だ。現場に過剰な負担をかけてまで全数調査に拘るべきではない。

 また、2類から5類への見直しに反対するのが、補助金をもらいたい医療側の思惑という説が出ているが、もし本当ならとんでもないことだ。

 ワクチン接種の促進はするべきだ。特に筆者のような高齢者や基礎疾患のある人は、罹っても重症化しないようにワクチン接種するのはいい。ワクチン接種をするのは自由であり、悪質なデマを広げて他人のワクチン接種を邪魔するのはいただけない。

 岸田首相が一刻も早く回復されることを祈っているが、折角ならば、ご自身が体験して、普通の人がどのように困っているかもわかってもらいたいものだ。

 岸田首相のコロナというニュースが出たあと、毎日新聞の20、21日の世論調査で、岸田内閣の支持率は36%で7月より16ポイント低下という話がきた。

 旧統一教会との関係が原因と毎日新聞はいいたいのだろうが、先週の本コラムで酷評したように10日の内閣改造があまりに酷かったのが本質的な理由だ。

 内閣改造のスケジュールも不自然だし、それでワクチン4回目接種が遅れて、首相がコロナに罹患したのだとしたら、これまで岸田政権に味方していた「運」も離れだしたのか。故安倍元首相が「変なことをすると、運も逃げていく」とかつて言っていたが、まさにその状況なのだろうか。

 コロナ対応でも「検討使」連発、防衛事務次官・海上保安庁人事、EEZ内に中国のミサイル着弾でも電話抗議だけ、NSC未開催などの「不始末」の後で、酷い内閣改造をしてしまったから、運が逃げていったのかもしれない。

----------

高橋洋一氏の近刊『安倍さんと語った世界と日本』(ワック)が9月1日発売

----------

髙橋 洋一(経済学者)

【私の論評】内閣改造で大失敗して支持率が低下する岸田政権に、明日はあるのか(゚д゚)!

上の記事にもでてく、毎日新聞の20、21日の世論調査結果のグラフを以下に掲載します。

上の記事で、高橋洋一氏は「旧統一教会との関係が原因と毎日新聞はいいたいのだろうが、先週の本コラムで酷評したように10日の内閣改造があまりに酷かったのが本質的な理由だ」としています。私のもそう思います。

内閣改造を行ってもなお支持率に改善傾向がみられず、むしろ支持率が低下するのは極めて異例のことです。一般には内閣改造・党役員人事は人身刷新の効果があり、内閣支持率を押し上げる効果があります。

具体的に言えば、閣内にいる不安材料を閣外に追い出すことでリスクヘッジを行うと同時に、人気政治家を抜擢にすることで内閣支持を取り付けることにより支持率はあがります。

内閣改造をして支持率が下がるのですから、岸田首相の人事というか、ほとんどが数日前に決まってことから、派閥の力学によって、他派閥と事前に話し合いをした結果の人事なのでしょうが、これは明らかに大失敗です。

内閣改造によって岸田首相は、政治姿勢では、党内派閥に配慮した布陣で一体何をやりたいのか見えてきません。政策方針では、新型コロナや物価高への対応に信念が見えず、指導力不足ばかりが目立ちます。

8月から、大手4社が電気料金を値上げしています。東京電力は一般的な家庭で9000円台になりました。食料品は値上がり、電気ガスも値上がり、ガソリン価格も高止まり。これでは、支持率が下がるのは当たり前でしょう。

政権の無為無策は、安全保障問題でも同じです。

日本は、中国とロシア、北朝鮮という核を保有する「独裁・専制主義国家」に立ち向かう「自由・民主主義陣営」の最前線に位置しています。まさしく、「世界で、もっとも危険な脅威にさらされている国」なのです。


だからこそ、安倍晋三元首相は今年2月、ロシアのウクライナ侵攻を受けて、「米国と核共有の議論を始めるべきだ」と提言していました。ところが、政府はいち早く否定し、自民党もろくに議論しないまま、フタをしてしまいました。

防衛費は「5年間でGDP(国内総生産)比2%」の目標を掲げたが、一方で、安倍氏の強い反対を振り切って、防衛力強化の要となる防衛事務次官を交代させる人事を断行しました。さらには、内閣改造で、岸田防衛大臣をやめさせ、どうしようもない防衛大臣に変えました。こうした姿勢が、国民に「一体、どこまで、やる気があるのか」と疑念を抱かせたのは当然だと思います。

参院選前までは、異例に高い支持率を謳歌(おうか)してきた岸田政権ですが、いったん今回のように、歯車が逆回転し始めると、元に戻すのは難しいです。何もしないで、マスコミや国民の目を欺いてきただけなので、人気回復に何かをしようとしても、抜本的対策は出てこないからです。

例えば、ガソリン代や食料費の高騰には、期間限定でもいいから、ガソリン税や消費税の引き下げで対処すべきです。ところが、財務省管理内閣である、岸田政権には望むべくもないです。むしろ、ドタバタすればするほど、ポイント還元のように、その場しのぎの弥縫策が国民に見透かされ、火傷してしまう可能性が高いです。

国民の生活に密着したことで、岸田政権が今すぐにすべきことを以下にまとめます。

    岸田政権がやるべきこと
円安を過剰に気にしない
・消費税の厳然・凍結(⇒価格の引き下げ)
・ガソリン税引き下げ(⇒価格の引き下げ)
・補償・投資の拡大(困った人を助ける)

脱「 輸入依存」体質
・原発再稼働(安全性確認は当然の前提)
・水力発電の加速
・食料自給率の向上(農業・漁業の活性化策)
このくらいのことにすぐに実行すれば、支持率はまた上がってくると思います。ただ、何をするにもお金がかかります。これを安倍・菅政権のときのように、日銀・政府連合軍により、政府が巨額の国債を発行し、日銀がそれを買い取るという方式で実施して、今秋あたりにすぐに補正予算を組めばば良いのですが、コロナ復興増税などの名目でそれを実行することにでもなれぱ、景気が低迷し、岸田政権は奈落の底に落ちることでしょう。

実行するにしても、内閣府が試算した、需給ギャップ20兆円(高橋洋一氏の試算では30兆円)に相当する真水の補正予算を組めば見込みがありますが、10兆円程度の予算て真水で数兆円レベルの補正予算であれば、全く見込みはないでしょう。

参院選直後までは、なんとかなってきたものの、今回の内閣改造で、自民党内の反主流派を刺激したため、政権の足元を揺るがす可能性もあります。ただ、自民党内には安倍元首相の路線を引き継ぐべきと考える人も多いですから、この人たちが、何とかしようと努力するはずです。しかし、今回の内閣の陣容をみれば、その努力は報われないのではないかと思います。

何とかしようと、試行錯誤した結果、岸田政権そのものが障害になっているということになれば、岸田バッシングの声が巻き起こるでしょう。

このブログでは、岸田政権が、派閥の力学と財務省の意向だけで動けば2年目を迎えることなく、崩壊するだろうという趣旨で記事を掲載しましたが、岸田内閣が今のままで、何ら抜本的な改革をしない限り、この予想は当たるでしょう。今回の毎日新聞の世論調査結果により、ますますこのことを確信しました。

【関連記事】

こんな馬鹿馬鹿しい内閣改造があるか?岸田氏が断行した「脱安倍」昭和人事で防衛も経済も危ない―【私の論評】組閣の大失敗で、岸田政権は短期政権に(゚д゚)!

内閣改造でなぜロシア協力相を続ける必要があるのか―【私の論評】岸田政権が派閥力学と財務省との関係性だけで動けば来年秋ころには、自民党内で「岸田バッシング」の声が沸き起こる(゚д゚)!

安倍派「跡目争い」をめぐる「集団指導体制」のトラブル爆弾!「キーマンは菅前総理」の舞台裏―【私の論評】今後の政局で、菅前総理がキーマンとなる可能性がでてきた(゚д゚)!

防衛費増額と財務省の思惑 増税阻止した安倍氏の戦略 問われるトップの政治判断―【私の論評】原発稼働のまやかしをする岸田総理は全く「覚醒」しておらず、適切な政治判断は望み薄か(゚д゚)!

財務省と日銀の巨大組織 アベノミクス継承しなければ金融と財政の引き締め復活、日本は新たに失われた時代に―【私の論評】真の安倍晋三の後継者が成し遂げるべき困難な仕事とは(゚д゚)!
時刻: 8月 22, 2022 0 件のコメント:
メールで送信BlogThis!X で共有Facebook で共有するPinterest に共有

2022年8月21日日曜日

安倍氏死去/台湾で安倍元首相の追悼音楽会 頼副総統「感謝の思いは変わらない」―【私の論評】国葬儀の規模の大きさから、マスコミはこの詳細を報道せざるを得なくなり、多くの人々が安倍氏の偉大さを再確認することに(゚д゚)!

安倍氏死去/台湾で安倍元首相の追悼音楽会 頼副総統「感謝の思いは変わらない」

 先月8日に凶弾に倒れた安倍晋三元首相を追悼する音楽会が20日、台北市内で開かれた。安倍氏と親交があった頼清徳(らいせいとく)副総統はあいさつで「安倍元首相に対するわれわれの思いと感謝は、彼の逝去によって変わることはない」と述べ、安倍氏を悼んだ。

 音楽会は聯邦商業銀行など民間の企業や団体が主催。客家語歌手の謝宇威さんや医師でテノール歌手の劉立仁さん、全盲のシンガーソングライター、大山桂司さんなど台日の歌手らが出演した。また、安倍氏の実弟である岸信夫首相補佐官や高市早苗経済安全保障担当相らがビデオメッセージを寄せた。

安倍元首相の追悼音楽会にビデオメッセージを寄せる岸信夫首相補佐官

 頼氏は、台湾での地震発生時の支援や新型コロナウイルスワクチンの提供、国際社会での台湾支持など、生前の安倍氏が進めた台湾への支援を振り返り、安倍氏の死去によって「台湾も家族のような良き友人を失った。国際上の損失でもある」と悲しみをあらわにした。また、安倍氏が提唱したインド太平洋の安全保障戦略上の方針は安倍氏の逝去によって止まることはなく、さらに大きな力を生み、インド太平洋の平和を安定化させる効果を発揮していくことだろうと述べた。

安倍元首相の追悼音楽会の様子は以下のリンクからご覧になれます。

https://www.youtube.com/watch?v=OF4fQp7NgU8&feature=emb_imp_woyt

【私の論評】国葬儀の規模の大きさから、マスコミはこの詳細を報道せざるを得なくなり、多くの人々が安倍氏の偉大さを再確認することに(゚д゚)!

日本では、亡くなった安倍元首相にまでネガティブな報道が多いですが、台湾ではこのようなコンサートまで開催されているのです。

以前にも述べたように、安倍元首相は、安保法制の改定・付加などをはじめ国内で様々な貢献をしたとともに、国際的にも多くの貢献をしました。その中でも最たるものは、安全保障のダイアモンドの提唱からはじまり、インド太平洋戦略を提唱し、提唱するだけではなく、実際に行動し多くの国々を巻き込み、世界に新たな枠組みを構築し、秩序をもたらしたことです。

特に米国のトランプ大統領が、中国は、米国に熾烈な「地政学的戦い」を挑んていることを理解し、この新たな枠組みの重要性を理解したことは大きいです。

この新たな秩序がなけば、台湾をはじめ多くの国々が、現在より熾烈な中国の干渉や脅威にさらされていたはずです。

このような安倍元首相の業績を称え、素直に安倍元首相に感謝しているからこそ、台湾ではこのような追悼音楽会が開催されたのでしょう。

安倍晋三元首相が参院選の街頭演説中に銃撃され、死亡したニュースは世界中を駆け巡り、大きな衝撃を与えた。世界各地で安倍氏の功績をたたえる動きが広がり、安倍元首相が暗殺されてからの一月で日本政府に寄せられた追悼メッセージは260の国・地域や機関などから計1700件以上にのぼりました。

以下に、インド太平洋地域からいくつか安倍元首相を追悼する国の事例をあげます。

安倍首相(当時)とインドモディ首相

安倍晋三元首相が7月8日に銃撃されて死去したことを受け、モディ首相は翌9日、半旗掲揚を指示し、国を挙げて喪に服した。襲撃事件の詳細は、主要各紙の1面に取り上げられました。

グジャラート州首相時代から親交があったモディ首相は、異例の長文の手記「わが友、安倍さん」を公開し、「最も親しい友人」の1人の悲劇的な死に対し、言葉にできないほどの衝撃と悲しみを受けていると述べました。

「安倍晋三氏は、世界有数の政治家、傑出した指導者であり、世界をより良い場所にするために人生を捧げた。経済や世界情勢に関する彼の鋭い洞察は常に私に深い印象を与えてくれた。日米豪印のクアッド(QUAD)首脳会合(2022年5月24日記事参照)、ASEAN主導のフォーラム、インド太平洋構想、アジア・アフリカ成長回廊(AAGC)を含むインド太平洋でのインドと日本の協力、災害レジリエント・インフラ連合など、全て安倍氏の貢献から恩恵を受けた」と賞賛しました。

また「常に日印関係の強化に情熱を注ぎ、日印協会の会長に就任したばかりだった」として、東京での安倍元首相との直近の会談の写真を共有し、深い弔意を示しました。

カンボジア フン・セン首相と安倍首相(当時)

カンボジアの、フン・セン首相は8日、岸田文雄首相に宛てた書簡で哀悼の意を表し、2013年から安倍元首相が同首相と協力し、カンボジアと日本の2国間関係を戦略的なパートナーシップに発展させた功績をたたえた。また、同首相は翌9日には自身のフェイスブック()にボイスメッセージを発信し、カンボジアとの2国間関係だけでなく、メコン地域やASEANに対する安倍元首相の貢献に謝意を表明。カンボジア国民に対して、10日は喪に服し、全土でカンボジア国旗を半旗にするよう指示しました。

同首相の指示を受けて9日、トン・コン観光相は通達を発出、全土で10日はカラオケやディスコ、ビアガーデンなどの営業停止、レストランでのアルコール提供を禁止しました。

情報省は安倍氏死去を悼む歌を2曲作り、その動画をフェイスブックに投稿。外務省や法務省なども追悼のメッセージを投稿しました。また、ノロドム・シハモニ国王は日本の天皇陛下に追悼レターを送りました。

一般市民も弔意を示しています。フン・セン首相が在カンボジア日本大使館に弔問し、自筆のメッセージを寄せたというフェイスブック投稿には、13日時点で8万8,000件の反応があり、7,000件を超えるコメントがついています。また、ジェトロ職員が利用したトゥクトゥク(三輪タクシー)のドライバーや飲食店のオーナーも、こちらが日本人と気づくと、哀悼の意を表する場面も見られたといいます。

カンボジア政府関係者によると、外国要人の死去に伴って追悼メッセージを政府として送ることはありますが、これほどの対応は異例とのことです。国民が親日的で、また、安倍氏が良く知られていたことがうかがえます。

ブータン ワンチュク国王と安倍首相(当時)

安倍晋三元首相が銃撃され死亡した事件を受け、ブータンは9日を追悼の日とし、国内各地や海外の大使館などで半旗が掲げられた。

ブータン外務省によると、寺院でワンチュク国王夫妻や政府高官らが安倍氏に祈りをささげたという。外務省は「ブータンと日本は緊密な友好関係を築いており、ブータンの重要な開発パートナーだ」としている。

安倍氏は2019年、天皇陛下の「即位礼正殿の儀」参列のため来日したブータンのワンチュク国王と会談しています。

オーストラリア議会は、7月26日安倍晋三元首相の追悼決議を行っています。


日本では、主要メディアが安倍元首相に対するネガティブな印象操作を安倍氏の死後ですら継続していますが、その中にあって「産経新聞」の発行元である産業経済新聞社(産経新聞社)が募集していた、安倍晋三元首相を追悼するクラウドファンディング(クラファン)が8月15日までに締め切られ、最終的に4000万円が集まりました。

当初の目標額は500万円だったため、8倍の金額が集まったことになります。政府は暗殺された安倍元首相の国葬を9月27日に実施する方針を示しており、同社も国葬に合わせて発行する特別紙面で弔意を示すそうです。

海外では、高く評価されている安倍元首相について、いら立ちを覚えた米国在住の作家馬場信浩氏は以下のようなツイートをしています。私のツイートも含めて馬場氏のツイートを以下に掲載します。



実は、多くの人々がこのように思っていると思います。そうでなければ、第二次安倍政権が最長の政権になることなどあり得ません。安倍氏に対して亡くなってからまで、ネガティブな印象操作をするニッポン人は、樒 (しきみ)と言っても何のことなのかわからないかもしれません。榊(さかき)も知らないのかもしれません。

政府が、9月27日に東京・北の丸公園の「日本武道館」で営む安倍晋三元首相の「国葬」(国葬儀)の参列者数について、昭和42年の吉田茂元首相の国葬と同規模の約6千人を軸に調整していることが分かっています。6日、複数の政府関係者が明らかにしています。

55年前に行われた吉田氏の国葬では当初、会場となった武道館の収容能力を踏まえ、参列者数は吉田氏の遺族や国会議員、外交団など6220人と想定し、実際に6千人余りが参列した。今回の安倍氏の国葬でも会場は同じ武道館が使用されることから政府は参列者数も同規模の約6千人を目安として警備体制などの準備を進めています。

ただ、吉田氏の国葬でも70カ国を超える外交団が参列しましたが、「地球儀を俯瞰(ふかん)する外交」を掲げ、国際的に存在感を示した安倍氏には、 8月6日現在で、米国のバイデン大統領をはじめとする260の国や地域などから1700件以上の弔意が寄せられています。外交団の参列希望も吉田氏を上回ることが予想されます。

【関連記事】

安倍晋三元首相の国際的評価から学ぶべきこと―【私の論評】将来世代が迷い無く歩けるように、美しい日本を愛する心を大人のわたしたちも引き継いでいこう(T_T)

安倍氏たたえる決議採択 米上院で全会一致―【私の論評】バイデン政権も米国議会も日本が安倍路線を継承することを強く望んでいる(゚д゚)!

こんな馬鹿馬鹿しい内閣改造があるか?岸田氏が断行した「脱安倍」昭和人事で防衛も経済も危ない―【私の論評】組閣の大失敗で、岸田政権は短期政権に(゚д゚)!

破産宣言のスリランカ 債務再編主導を日本に依頼へ―【私の論評】スリランカは、日本に開発途上国から化石燃料を奪う事の非を欧米に理解させ、その開発・利用への支援を再開して欲しいと願っている(゚д゚)!

内閣改造でなぜロシア協力相を続ける必要があるのか―【私の論評】岸田政権が派閥力学と財務省との関係性だけで動けば来年秋ころには、自民党内で「岸田バッシング」の声が沸き起こる(゚д゚)!
時刻: 8月 21, 2022 0 件のコメント:
メールで送信BlogThis!X で共有Facebook で共有するPinterest に共有

2022年8月20日土曜日

コロナ前を超えていないGDP、インフレ目標達成にもほど遠く…経済成長へ真水で30兆円の景気対策が必要だ―【私の論評】今秋の補正予算の組具合で、いつか来た道「失われた三十年」を繰り返すか否かの分かれ道が見えてくる(゚д゚)!

 コロナ前を超えていないGDP、インフレ目標達成にもほど遠く…経済成長へ真水で30兆円の景気対策が必要だ


高橋洋一


 15日に公表された今年4~6月期の実質国内総生産(GDP)を年率換算ベースで見ると、全体で2・2%増とプラス成長だったが、市場予想(2・5%)よりも低かった。1、2カ月前まで3%台の予想だったので、徐々に下がってきた予想をさらに下回ったことになる。

グラフはブログ管理人挿入

 これまでの推移をみると、2020年4~6月期にコロナ禍の影響で大きく落ち込み28・4%減だった。その後、7~9月期が23・7%増、10~12月期が6・7%増と回復した。

 しかし、21年1~3月期は1・4%減、4~6月期が1・8%増、7~9月期が2・1%減、10~12月期が4・0%増、22年1~3月期が0・1%増と一進一退だった。

 実額をみると、20年1~3月期が544兆円、4~6月期が500兆円、7~9月期が528兆円、10~12月期が536兆円だった。21年1~3月期が534兆円、4~6月期が537兆円、7~9月期が534兆円、10~12月期が539兆円。22年に入ると1~3月期が539兆円、4~6月期が542兆円となっている。

 4~6月期の実質GDPの実額542兆円はコロナ前を超えたという報道もあったが、これは19年10~12月期の541兆円を超えたという意味で、20年1~3月期の544兆円は超えていない。マスコミは当局の説明をうのみにしてはいけない。

 年度ベースの実質GDPの水準をみても、18年度が555兆円、19年度が550兆円、20年度が525兆円、21年度が537兆円なので、こちらもコロナ前の水準を回復していない。

 今期の内訳は民間消費が4・6%増、住宅投資が7・3%減、設備投資が5・8%増、政府消費が2・2%増、公共投資が3・8%増、輸出が3・7%増、輸入が2・7%増だった。

 民間消費は、新型コロナウイルス対策の蔓延(まんえん)防止等重点措置の解除で伸びた。設備投資もまずまずだ。しかし、住宅投資はいまいちだ。

 公共投資はかろうじて6期連続マイナスという汚名を返上できた。しかし、予算は確保しているのに執行がうまくできていない状況に変わりはない。事実上の公共事業採択基準になっているコストベネフィット(費用便益)分析における社会的割引率が4%と高すぎることを含め、執行の弊害を全て洗い直す必要がある。公的部門の投資で民間活動を引き出すべきで、民間部門の動きを待ってから政府が動くというのは本末転倒だ。

 いずれにしてもコロナ前を十分に回復していない。相当額のGDPギャップ(総需要と総供給の差)が存在しており、エネルギー・原材料価格が上昇しても、価格全般が上昇する「物価上昇」につながりにくい。

 8月19日公表の7月消費者物価は、総合2・6%の上昇、生鮮食品を除く総合2・4%の上昇だが、物価の基調を示す生鮮食品・エネルギーを除く総合は1・2%の上昇とインフレ目標の2%には程遠い。

 今後の経済成長のためには、秋の臨時国会の補正予算で、「真水で30兆円程度」のしっかりした景気対策が必要だ。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】今秋の補正予算の組具合で、いつか来た道「失われた三十年」を繰り返すか否かの分かれ道が見えてくる(゚д゚)!

上の記事で、高橋洋一氏は、以下のように語っています。
4~6月期の実質GDPの実額542兆円はコロナ前を超えたという報道もあったが、これは19年10~12月期の541兆円を超えたという意味で、20年1~3月期の544兆円は超えていない。マスコミは当局の説明をうのみにしてはいけない。
これは冒頭のグラフや以下のグラフをご覧いただければ、すぐに理解できます。下のグラフのほうが目盛りが細かいのと、19年平均と19年10-12月期を示していますのでより理解しやすいです。


これを見ると、2019年10~12月期の実質GDPは、前期比年率で11.3%ポイントも下がっています。日本のメディアによる経済報道においては「コロナ前水準」の比較対象として2019年10~12月期を用いる事が多いようですが、これはとても適正であるとは考えられません。

19年10~12月期といえば、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動により前期比年率マイナス11.3%もの落ち込みとなっており、通常よりも水準が大幅に低い時期でした。このように極端に落ち込んだ特殊な時期を「コロナ前」の比較に用いることは誤解を招きやすいです。

思い返すと2019年10月1日、2度にわたり延期されていた消費税率の引き上げが行われ、8%から10%に税率が引き上げられました。このため、増税前の9月までに消費者が商品購入を急ぎ、その反動から10月以降は一気に需要が落ち込んだのです。

実際、22年4~6月期の実質GDPの水準は、コロナ前ピークである19年4~6月期対比でマイナス2.7%、19年(暦年)平均対比でマイナス1.9%ポイントも下回っています。「コロナ前」としての比較対象としては、こちらのほうが適していると考えられます。

結局のところ、『22年4~6月期にコロナ前水準を回復』という言葉は適当ではなく、実際には経済活動の正常化には未だ距離がある状況という認識のほうが妥当です。

正確な比較対象として、「コロナ前」の水準を2019年4~6月期とすれば、今回発表した実質GDPは「コロナ前」に比べてマイナス2.7%であり、決して景気回復したとはいえません。

さらに、以下にコロナ禍が始まって以降の、名目GDPの四半期・年率換算のグラフを掲載します。

クリックすると拡大します

日本の総需要(名目GDPベース)のピークは、2019年7-9月期(消費税増税前)の562兆円(四半期・年率換算)でした。その後、消費税増税により縮小が始まり、そこにコロナ禍による経済活動の停滞がおこりました。

20年4-6月期(最初の緊急事態宣言が出た四半期)は、511兆円という信じがたい水準に落ち込みます。

その後、「少し戻して横ばい」が続いており、22年4-6月期は545兆円。つまりは、名目実績ベースで見ても、現在の日本は19年増税前と比較し、名目ベースで20兆円近いデフレギャップ(総需要不足)を抱えていることになります。

現在、日本はGDPデフレータベースのインフレ率がマイナス化しています。要するに、デフレが継続しているのです。

デフレータがマイナスの場合、名目GDPが増加しなくても、実質GDPは成長しているように「計算されてしまう」のです(実質GDPは、元々、計算で算出します以下に計算式を示します)。


多くの政治家は、GDP統計に関する知識がないため、財務省の公表する内容を、何も吟味せずオウム返しのように、報道する日経新聞をはじめとする報道機関の報道に軽くだまされてしまうのでしょう。


岸田政権は、GDPデフレータがマイナスというデフレ状態であるにも関わらず、「すでにコロナ禍前を回復した。補正予算は不要。通常予算も抑制」と、緊縮財政を推進してくるかもしれません。それどころか、あれこれ理屈をつけて「増税」をしてくるかもしれません。


ただ、自民党内には積極財政派も多いですから、まったく補正予算を組まないということはないかもしれません。

先に、名目ベースでの需給ギャップは約20兆と述べましたが、上の高橋洋一氏の試算では30兆となっています。これは、まずは名目ベースと実質ベースの違いです。

内閣府の試算では、実質ベースで需給ギャップは20兆円です。この違いは、内閣府は需給ギャプが少なめになるように計算しているからです。これについては、以前このブログでも述べたことがありますので、興味のある方は、これを参照していただきたいと思います。

ただ、内閣府が需給ギャップが20兆あると公表しているのですから、岸田政権が最低でもこれに相当する額の補正予算、それも真水の予算を組むべきです。そうでないと矛盾します。

この規模の予算を組んでおけば、あまり景気が落ち込こともなく、失業率もあまりあげることもなく推移し、また来期にでも真水の10兆円規模の補正予算を組めば、需給ギャップは解消すると思います。

しかし、今秋の補正予算を組まないとか、組んだとしても、真水で数兆円の桁違いの予算を組めば、その後岸田政権は緊縮路線を走り、来年の3月の日銀黒田総裁の任期終了にともない、金融引締派の総裁を据え、いつか来た道である「失われた三十年」を繰り返すことになるかもしれません。

最悪なのは、補正予算の財源を消費税増税やコロナ復興税で賄うことを条件に、補正予算を組むことです。こうなると「失わた三十年」は確実になるとみるべきでしょう。岸田政権は、かつての民主党政権のように財務省管理内閣になったとみるべきでしょう。

そうならないように、自民党内の積極財政派は頑張るでしょうが、安倍総理がなくなり、強力な後ろ盾がなくなってしまい、さらに今回の改造人事によって、財務省は政治的な圧力を心配せずに、緊縮的な補正予算と来年度予算編成の態勢ができたみられ、現在どれだけ主張を通せるか非常に心もとない状況にあります。

今後どのようになるかは、先に述べたように今年秋の補正予算の組み具合によってはっきりするでしょう。岸田政権が緊縮路線に走ることがはっきりすれば、次の政局は自民党内では「自民党自体は毀損することなく、いかに岸田政権をなるべく短期政権にするか」という方向で政局が動き出すかもしれません。

この動きにマスコミや、野党も連動してほしいものですが、「統一教ガー」などと叫ぶばかりでは、「もり・かけ・桜」の繰り返しになるだけで、大きな政局の流れからは、また無関係な存在になることでしょう。岸田政権が、崩壊して総選挙になっても、何も変わりなく、党勢や、存在感を増すこともないでしょう。

【関連記事】

こんな馬鹿馬鹿しい内閣改造があるか?岸田氏が断行した「脱安倍」昭和人事で防衛も経済も危ない―【私の論評】組閣の大失敗で、岸田政権は短期政権に(゚д゚)!

内閣改造でなぜロシア協力相を続ける必要があるのか―【私の論評】岸田政権が派閥力学と財務省との関係性だけで動けば来年秋ころには、自民党内で「岸田バッシング」の声が沸き起こる(゚д゚)!

給与引き上げは「夢のまた夢」...最低賃金31円増が「上げすぎ」である理由―【私の論評】アベノミクスを踏襲せず、派閥の力学だけで動けば岸田政権は2年目を迎えることなく、崩壊する(゚д゚)!

防衛費増額と財務省の思惑 増税阻止した安倍氏の戦略 問われるトップの政治判断―【私の論評】原発稼働のまやかしをする岸田総理は全く「覚醒」しておらず、適切な政治判断は望み薄か(゚д゚)!

財務省と日銀の巨大組織 アベノミクス継承しなければ金融と財政の引き締め復活、日本は新たに失われた時代に―【私の論評】真の安倍晋三の後継者が成し遂げるべき困難な仕事とは(゚д゚)!
時刻: 8月 20, 2022 0 件のコメント:
メールで送信BlogThis!X で共有Facebook で共有するPinterest に共有

2022年8月19日金曜日

破産宣言のスリランカ 債務再編主導を日本に依頼へ―【私の論評】スリランカは、日本に開発途上国から化石燃料を奪う事の非を欧米に理解させ、その開発・利用への支援を再開して欲しいと願っている(゚д゚)!

破産宣言のスリランカ 債務再編主導を日本に依頼へ

2015年10月 スリランカのウィクラマシンハ首相(当時)と首脳会談をした安倍首相(当時)

 深刻な経済危機に陥り、破産を宣言しているスリランカのウィクラマシンハ大統領は18日、ロイター通信の取材に対し、債務再編の協議の主導を日本に依頼する考えを示した上で、来月、日本を訪れ、岸田総理大臣と会談する意向を表明しました。  スリランカ・ウィクラマシンハ大統領「誰かが主要債権国を集める必要があり、我々は日本に依頼する」  ウィクラマシンハ大統領は、このように述べ、債務再編に関する協議の主導を日本に要請する考えを示しました。その上で、来月に日本を訪れ、岸田総理と会談する意向を表明しました。  スリランカの2国間債務は約62億ドルに上ると推定され、日本や中国、インドが主な債権国です。16日には、中国の調査船がスリランカ南部の港に入港し、インド側が「スパイ船」と批判するなど、中国とインドは、スリランカへの影響力拡大をめぐり対立しています。  ウィクラマシンハ大統領としては、経済危機からの脱却のため、日本の主導で、債務再編の交渉を円滑に進めたい狙いがあるとみられます。

【私の論評】スリランカは、日本に開発途上国から化石燃料を奪う事の非を欧米に理解させ、開発・利用への支援を再開して欲しいと願っている(゚д゚)!

スリランカの議会は先月20日、ラニル・ウィクラマシンハ首相を新たな大統領に任命しました。同国では政府に対する大規模な抗議行動を受け、先週にゴタバヤ・ラジャパクサ前大統領が国外に逃亡。その後、辞任していました。

ウィクラマシンハ氏は議会では対立候補のドゥルス・アラハッペルマ氏を134対82と大差で下したものの、国民の人気は低いといいます。

新大統領は今後、経済危機と、数カ月にわたる抗議運動による混乱を収める必要があります。

スリランカの経済が破綻し大規模デモがおきて政権が転覆したのは、数々の失政が重なった結果ですが、とどめの一撃となったのは燃料費の高騰でガソリンが輸入できなくなったことでした。

スリランカの最大都市コロンボで最近みられる、ガソリンスタンドでたくさんの車やバイクが行列ぎょうれつをつくる光景

いまの開発途上国でのエネルギー危機は、単にウクライナの戦争のせいではありません。近年になって、欧米の圧力によって化石燃料事業への投資が停滞していたことが積み重なって、今日の破滅的な状態を招いているのです。

インド人の研究者である米国ブレークスルー研究所のビジャヤ・ラマチャンドランは科学雑誌Natureに書いています。
「近代的なインフラを最も必要とし、世界の気候変動問題への責任が最も軽い国々に制限を課すことは、気候変動の不公正の極みである」。
ラマチャンドランは、国際援助において、気候変動緩和をすべての融資の中心に据えるという近年の方針について、偽善であり、二枚舌だとして、猛烈に抗議しています。
「それは、経済開発に使える資源を必然的に減らすことになり、しかも地球環境にはほとんど貢献しない。・・なぜそのような努力をするのか。世界銀行とIMFの主要株主である富裕国は、これまでのところ、エビデンスや合理的なトレードオフに基づく気候変動政策の策定にはほとんど関心を示していない。 
それどころか、天然ガスを含む化石燃料への融資を制限し、自国では思いもよらないような制限を世界の最貧国に対して課すことを、自画自賛しているのである。その規制の中には、化石燃料への開発金融をほぼ全面的に禁止することも含まれている。 
世界銀行は、気候変動緩和政策と貧困削減の間の急激なトレードオフを最もよく理解しているはずである。しかし、国内の環境保護団体を喜ばせたい資金提供者が課した条件には従うしかなかったようだ。・・欧州連合は、自分たちはクリーンエネルギーの原子力発電所を停止し、天然ガスの輸出入を増やし、国内の石炭発電所を新たに稼働させる一方で、開発金融機関に対しては、貧困国でのすべての化石燃料プロジェクトを直ちに排除するよう主張している。」
「さらに悪いことに、EUの官僚たちは現在、『何がクリーンエネルギーか』をめぐって一進一退の攻防を繰り広げている。燃料不足に直面する加盟国から、原子力や天然ガスまで定義(タクソノミー)を拡大するよう圧力がかかっている。その一方でEUの広報担当者は、“EUの柔軟な分類法は、開発政策に反映されることはない”と明言した。つまり天然ガスはヨーロッパ人にとってはグリーンだが、アジアやアフリカの人々にとっては事実上禁止されるということだ。」
何十億人の人々が、先進国のエリートたちによって、化石燃料のない、貧困に満ちた未来へと組織的に強制されているのです。気候危機説を信奉する指導者たちが、開発途上国の化石燃料使用を抑圧しているからです。哲学者のオルフェミ・O・タイウォは、この現象を「気候植民地主義」と呼んでいます。

残念ながら、日本もこれに加担しています。

6月22日に、日本の外務省はバングラデシュとインドネシアに対する政府開発援助(ODA)による石炭火力発電事業支援の中止を発表しました。CO2の排出が理由であり、G7の意向に沿った形です。


ちょうどその同日、この夏の電力不足に対応するため、停止していた火力発電所の再稼働を急いでいる、とのニュースが流れました。千葉県の姉崎火力発電所5号機、愛知県の知多火力発電所5号機などです。

自分の国で電力不足になると火力発電に頼る一方で、途上国の火力発電所は見捨ててしまうというのは道義にもとります。日本がいま電力不足なのは事実だですが、バングラデシュほど慢性的に電力が不足し停電が頻発し経済に甚大な悪影響を及ぼしている訳ではありません。

開発途上国の化石燃料利用を禁止する一方で、今後は経済開発を再生可能エネルギーで実現しろと命じるのは、発電の物理的現実と何十億人もの貧困を否定する傲慢さを示すもの以外の何ものでもありません。

これに対して、叛逆する指導者たちも出てきています。6月、ニジェールのモハメド・バズーム大統領は、次のように述べた。
「アフリカは、2022年末までに外国の化石燃料プロジェクトに対する公的融資を打ち切るという西側諸国の決定によって罰せられている…我々は戦い続けるつもりだ。アフリカ大陸が天然資源を開発することを許可すべきだ。100年以上にわたって石油とその派生物を搾取してきた者たちが、アフリカ諸国が資源の価値を享受するのを妨げているのは、率直に言って信じがたいことだ。」
他方で、能力を有する諸国は、エネルギー増産に励んでいます。国際価格が暴騰したのだから、当然の行動です。

中でも、すでに世界最大の石炭消費国である中国は、エネルギー不足を食い止めるため、生産量の増加に躍起になっています。昨年は世界最多の41億トンの石炭を生産していたのですが、2022年には更に3億トンの生産を追加する計画です。

2021年7月から10月にかけては、年間2億7000万トンの生産能力を追加しており、これは南アフリカの全年間生産量(年間約2億4000万トン)を上回ります。

また、中国には新たな炭鉱計画があり、今後数年間でさらに年間5億5900万トンの生産能力を追加する予定である。これは、世界第3位の石炭生産国であるインドネシアの年間生産量(年間5億6400万トン)よりも多いです。

中国は資金も技術もあるので増産できます。ところが殆どの開発途上国は資金も技術も欠いていて、たとえ資源を有していても、エネルギー不足と価格高騰の窮状にあえいでいまう。これを助けないならば、一体何のための国際支援なのでしょうか。

来年2023年は日本はG7議長国となります。開発途上国から化石燃料を奪う事の非を欧米に理解させて、化石燃料の開発・利用への支援の再開を訴えるべきです。

もしこれに失敗すれば、開発途上国は本当に欲しいものを供給し支援してくれる国々を頼るようになるでしょう。それはロシアであり、中国になるでしょう。

開発途上国は先進国が呼びかけた対ロシア経済制裁に殆ど参加しませんでした。つまりいつまでも先進国の言いなりにはならないということです。

そうした中での、スリランカによる債務再編主導の日本への依頼です。スリランカは、開発途上国から化石燃料を奪う事の非を欧米に理解させて、化石燃料の開発・利用への支援の再開を訴えて欲しいのだと思います。

日本の化石燃料を用いた発電など、かなり技術が進んでいます。石炭火力発電というと、皆さんのイメージの中には、もくもくと真っ黒な煙をあげるものというイメージがあるかもしれません。

しかし、最近の石炭火力発電は、環境にかける負荷がずいぶんと減ってきています。たとえば、横浜市にある磯子石炭火力発電所は、「クリーンコール技術」とよばれる技術を活用し、大気汚染物質の排出を大幅に削減しています。2002年のリプレース(建て替え)前に比べると、窒素酸化物(NOx)は92%、硫黄酸化物(Sox)は83%、粒子状物質(PM)は90%減っています。

特に日本は世界でも最高効率の発電技術を持っています。発電効率が向上すれば、少量の燃料でたくさんの電気をつくることができるようになり、そのぶん、火力発電から排出されるCO2の量も削減されます。また、大気汚染物質の排出も大幅に削減しています。今後もさらなる技術開発をおこない、効率化とCO2削減を進んでいくでしょう。

世界には、どうしても石炭をエネルギー源のひとつとして選択せざるを得ない国が存在しています。その理由は、安定した供給をおこなうことができるという「エネルギー安全保障」、そして「経済性」にあります。

国際エネルギー機関(IEA)の分析では、インド、東南アジア諸国を中心とした新興国では、経済発展とともに、今後も石炭火力発電のニーズが拡大する見通しとなっています。新興国にとって、安く、安定的に採れる石炭は、引き続き、重要なエネルギーなのです。

2017年11月に開催された「東アジアサミット」、2017年9月に開催された「ASEAN+3エネルギー大臣会合」においても、ASEAN諸国からは、エネルギー安全保障と同時にCO2削減にも貢献するクリーンな石炭火力発電技術について、積極的に活用していきたいとの言及がありました。また、その導入のため、金融面・技術面で支援を求める声もありました。

2017年11月に開催された「東アジアサミット」中央は安倍総理(当時)

日本は、海外に対して、再生可能エネルギーや水素、排出したCO2を貯める「CCS」や貯めて使う「CCUS」などを含んだ、さまざまなエネルギーの選択肢を提案し、支援しています。日本は、石炭火力発電を選ばざるを得ない国々に対しては、日本ができる貢献として、日本が持つ高効率発電技術の輸出をおこなっているのです。これは、途上国の発展に対する貢献になることはもちろん、アジア地域全体の温暖化対策、大気汚染物質の削減への貢献にもなります。

こうした事実があるからこそ、スリランカは日本に期待しているのでしょう。ロシアのウクライナ侵攻にともない、欧米諸国はロシアに対する制裁を強化しました。それに反発したロシアはエネルギーによって、西欧諸国を脅かしはじめました。

現在世界の多くの国々がエネルギー問題に直面しています。日本は、スリランカの債務再編を主導するだけではなく、エネルギー分野まで踏み入ってスリランカを支援すべきでしょう。

そうして、スリランカにとどまらず、日本の技術力によって、化石燃料を使いつつも環境を保全できるように、世界中の国々対して支援ができるように様々な努力を重ねていくべきでしょう。

その過程で、日本自身もエネルギー安全保障と、CO2 の削減に取り組んでいくべきです。原発なども視野に入れて取り組むべきです。この必要性は、ロシアのウクライナ進行によって多くの国が認識するに至りました。

石油などのエネルギー資源に昔から悩まされてきた日本だからこそ、エネルギー問題に敏感で、省エネ等様々な技術開発に取り組んできたのです。今こそ、日本が世界に貢献し、存在感を増す絶好の機会だと思います。

将来的には、小型原発や核融合炉にも挑戦し、世界のエネルギー問題を解決し、世界をエネルギー問題からの軛から解き放つべきです。これに向けて道筋をつければ、岸田総理は安倍総理と並んで、日本の傑出した宰相として高く評価されることになるでしょう。

【関連記事】

スリランカが「破産」宣言“燃料輸入”プーチン氏に支援要請―【私の論評】スリランカ危機の背景にある、一帯一路の終焉が世界にもたらす危機(゚д゚)!

高いロシア依存で苦境に 綱渡り状態の台湾の電力問題―【私の論評】日本はエネルギー分野で独走し、エネルギーで世界を翻弄する国々から世界を開放すべき(゚д゚)!

都の太陽光発電義務化で「ジェノサイド」の加担に 素材の半分以上がウイグル産、米ではすでに輸入禁止―【私の論評】義務化反対都民は、都へのパブリックコメントはもとより、義務化賛成派の議員に陳情しよう(゚д゚)!

ウクライナ危機は米中間選挙の争点になるのか―【私の論評】バイデン政権の大失敗であるアフガン撤退も、ウクライナ危機も中間選挙の大きな争点になる(゚д゚)!

脱原発だと「貧富の差広がる」 ダライ・ラマが記者会見で述べる―【私の論評】ダライ・ラマの言葉の意味をかみしめよ!!
時刻: 8月 19, 2022 0 件のコメント:
メールで送信BlogThis!X で共有Facebook で共有するPinterest に共有

2022年8月18日木曜日

台米の貿易交渉、今秋開始へ 行政院「貿易協定締結へ」―【私の論評】岸田首相は、TPP加盟で、中国については反対、台湾は賛成と表明すべき(゚д゚)!

台米の貿易交渉、今秋開始へ 行政院「貿易協定締結へ」


 台湾と米国の経済連携の強化に向けた新協議体「21世紀の貿易に関する台米イニシアチブ」の交渉が今秋、正式に開始する見通しだ。行政院(内閣)は18日、双方は「なるべく早期に具体的成果を出し、貿易協定を締結したいと願っている」と説明した。

 台湾と米国は今年6月、新協議体の始動を発表。貿易の円滑化やデジタル経済など11分野を柱とする。米通商代表部(USTR)が17日夜、報道資料を出し、今秋の協議開始について明らかにした。

 USTRのサラ・ビアンキ次席代表は、「台湾との貿易や投資における関係深化を促し、双方が価値を共有する貿易の優先事項の推進につながる」との考えを示した。

【私の論評】岸田首相は、TPP加盟で、中国については反対、台湾は賛成と表明すべき(゚д゚)!

米台の貿易交渉は、日米など14カ国が参加表明した経済圏構想「インド太平洋経済枠組み(IPEF)」に台湾が加われないため、米台イニシアチブを代替の枠組みとするとされています。 IPEFと他の貿易協定の関係を以下に掲載しておきます。


今月初めにナンシー・ペロシ米連邦下院議長が台湾を訪問して以来、米中間の緊張が高まっています。

中国は台湾を、自国から分離した省とみており、いずれは再び中央政府の支配下に置かれるべきだと考えている。一方で台湾は、独自の憲法と民主的に選出された指導陣を持つ独立国家を自認しています。

アメリカは台湾を正式に承認していないですが、強力な関係を維持しており、台湾が自衛できるよう武器を販売しています。

これとは別に、ダニエル・クリテンブリンク米国務次官補(東アジア太平洋担当)は18日、中国政府の「威圧感の増大が(中略)台湾海峡の平和と安定を脅かしている」と発言。

「平和と安定を損なおうとする中国政府の現在進行形の動きに直面する中で、我々は長年の方針に沿って、平和と安定を守るために冷静かつ断固とした措置をとり続け、台湾を支援していく」としました。

中国は、台湾に対する軍事的威嚇だけではなく、経済的にも報復する姿勢を示しています。

中国は台湾産のかんきつ類や一部水産物の輸入と、天然砂の台湾向け輸出を一時停止しました。果物から害虫や殺虫剤を検出したことなどが理由というが、誰も信じないでしょう。強大な経済力で対立する相手に圧力をかける経済的威圧は中国の常套手段です。

指摘したいのは、6月の先進7カ国首脳会議(G7サミット)でも7月末の日米経済政策協議委員会(経済版2プラス2)でも、中国を念頭に置き、経済的威圧に対処する考えを確認したことです。台湾が中国の圧力にさらされている以上、台湾に寄り添い、支えるのは民主主義国の責務です。

日本は当事国ではないから傍観するというのでは中国の振る舞いを黙認することになります。台湾と連帯するため日本が取るべき行動はあるはずです。手始めに、中国と台湾が昨秋、ともに申請したTPP加盟で、中国については反対、台湾は賛成と岸田文雄首相が表明してはどうでしょうか。日本の同意がないと中国加盟の道は閉ざされます。いつまでも強権姿勢を改めない中国がTPPにそぐわないことを、まずははっきりさせるべきです。

そうして、IPEFには、問題があります。

それについては、以前このブログにも掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
バイデンが転換すべき「貿易臆病」のナラティブ―【私の論評】TPPに復帰し中国を封じ込め「地政学的戦争」に勝利すれば、バイデン氏は歴史名を刻むことに(゚д゚)!
問題はIPEFの実効性です。米国の関税率引き下げが期待できず、自国の非関税障壁の縮小を迫られるならば、新興国にとりIPEFに参加するメリットは不透明と言えます。一方、日本政府は、TPP加盟こそが米国の本来採るべき道と考えているようです。萩生田光一経産相は、5月10日の閣議後会見で、IPEFに関し「加盟国のメリットが不明瞭」と率直に語りました。

米国もそうした指摘は十分に認識しているのでしよう。IPEFの交渉の柱とする「公正な貿易」、「サプライチェーンの回復」、「インフラと環境への投資」、「税制と腐敗防止」の4つの分野に関し、個々の国が全ての議論に参加する必要はなく、個別に選んで参加できる方式を導入する模様です。

それでも、今のところASEAN10ヶ国でIPEFへの参加が見込まれるのはシンガポールだけと言われています。トランプ前大統領がTPPから離脱したツケは、米国のインド太平洋戦略に大きなダメージを与えていると言えます。

このようなことがあるので、台湾は米国と貿易交渉をすること自体はやぶさかではないのでしょうが、IPEFに準ずる貿易協定になるため、あまり期待はしていないでしょう。

実際、ブログ冒頭の記事は、「フォーカス台湾」という台湾のサイトの記事なのですが、事実を淡々とは述べていますが、台湾側の期待などについては、触れられていません。

台湾はTPP協定を熱心に勉強していますし、大陸中国とは異なり、民主化が進み、市場は自由化し、変動相場制を導入しています。加入交渉に時間はかからないでしょう。台湾が高いレベルの協定を受け入れて中国ができないということになれば、中国のメンツは保てないです。

中国のTPP加入申請は、米国がTPPから離脱したために起こったものです。米国では自由貿易に反対する勢力も強いですが、中国に厳しい態度で臨むべきだとする勢力も強いです。米国が中国に対抗しようとするなら、TPPに復帰することが望ましいことを米国に働きかけるべきです。

TPP交渉を開始したオバマ政権の副大統領だったバイデン大統領なら、中国との関係でもTPPは重要であることを理解するでしょう。また、通商関係では、連邦議会は大きな力を持っています。

中国の台頭を懸念するチャック・シューマー民主党上院院内総務

中国の台頭を懸念するチャック・シューマー民主党上院院内総務などにもTPPの重要性を訴えるべきでしょう。仮に復帰のために必要があると米国が要望するのであれば、米国が希望するTPPの環境章や労働章を見直してもよいと思います。

岸田首相が、TPP加盟で、中国については反対、台湾は賛成と岸田文雄首相が表明し、最終的に台湾と米国をTPP に加入させることに成功すれば、世界が安倍元総理を注目したように、岸田首相を注目することになるでしょう。再び日本が、安倍総理時代の時のように、世界で自由貿易や、安全保障でリーダーシップを発揮する契機となることでしょう。

菅前総理は、安倍元総理のリーダーシップを継承しましたが、岸田総理はどうなのか、非常に疑問です。しかし今更これを継承しないというのなら、日本に存在感は地に落ちるでしょう。ましてや、親中派路線を強行することにでもなれば、日本も中国に並んで、世界から邪悪な存在とみなされかねません。

【関連記事】

台湾 軍による沿岸での「重砲射撃訓練」開始へ 中国軍に対抗か―【私の論評】大国は小国に勝てないというパラドックスに気づいていない、愚かな中国(゚д゚)!

バイデンが転換すべき「貿易臆病」のナラティブ―【私の論評】TPPに復帰し中国を封じ込め「地政学的戦争」に勝利すれば、バイデン氏は歴史名を刻むことに(゚д゚)!

トランプの対中関税で続くインフレ圧力―【私の論評】内需超大国米国こそTPPに加入しメリットを享受すべき(゚д゚)!

TPP12月30日発効 世界GDPの13%経済圏誕生へ―【私の論評】最終的にはTPPのルールを世界のルールに(゚д゚)!

TPP「拡大」打ち出して米国と中国を牽制―【私の論評】世界は、軍事・経済的覇権によって振り回され続けることに倦んでいる(゚д゚)!
時刻: 8月 18, 2022 0 件のコメント:
メールで送信BlogThis!X で共有Facebook で共有するPinterest に共有

2022年8月17日水曜日

米共和「反トランプ」急先鋒のチェイニー氏、下院予備選でトランプ氏「刺客」に敗れる―【私の論評】24年の次期大統領選に向け、着実に道筋をつけつつあるトランプ氏(゚д゚)!

米共和「反トランプ」急先鋒のチェイニー氏、下院予備選でトランプ氏「刺客」に敗れる

破れたリズ・チェイニー氏

 米国の中間選挙(11月8日投開票)に向け、ワイオミング州で16日、連邦下院選の共和党候補を決める予備選が行われた。複数の米メディアによると、昨年の連邦議会占拠事件を巡ってトランプ前大統領への批判を強める現職のリズ・チェイニー氏(56)が、トランプ氏の推薦を受けた「刺客」候補に敗れることが確実になった。

 ワイオミング州は保守の牙城で、保守層に対するトランプ氏の影響力が依然として強固なことが示された。チェイニー氏は議会占拠事件を巡るトランプ氏の 弾劾だんがい 訴追決議に賛成した共和党議員10人の1人。事件を巡って下院が設置した特別調査委員会の副委員長としてトランプ氏の責任を追及するなど、党内の「反トランプ」の急 先鋒せんぽう だ。

 トランプ氏はチェイニー氏の対抗馬として弁護士のハリエット・ヘイグマン氏(59)を推薦した。

【私の論評】24年の次期大統領選に向け、着実に道筋をつけつつあるトランプ氏(゚д゚)!

エリザベス・リン・チェイニー(英語: Elizabeth Lynne Cheney, 1966年7月28日 - )は、アメリカ合衆国・ウィスコンシン州出身の政治家、共和党員。愛称のリズ・チェイニーとも称されています。

セカンドレディ・リン・チェイニーとディック・チェイニー副大統領の長女で、ジョージ・W・ブッシュ政権下で国務副次官補(近東担当)などの要職を歴任しました。

2017年からはワイオミング州選出のアメリカ合衆国下院議員を3期務めています。2019年からは下院共和党で3番目に高い地位である共和党会議議長に選出されました。

ネオコンの主導的な政治家の一人であり、他国への介入を避けるトランプ政権のモンロー主義的外交政策には批判的態度を取ってきました。共和党の指導者でありながら、トランプ大統領の弾劾決議に賛成票を投じたため、トランプ支持者や共和党右派によって批判を受けています。2021年5月には党内の内部対立が原因で党会議議長を解任されました。

ハリエット・ヘイグマン氏

今回勝利した、ヘイグマン氏は弁護士で、共和党全国委員会の元メンバーでした。ヘイグマン氏は2018年のワイオミング州知事選に立候補したが敗れていました。13年には上院選に出馬したチェイニー氏のアドバイザーを務めてもいました。

ヘイグマン氏は2021年9月9日の声明で「多くの州民と同様、私は国政を目指したリズ・チェイニー氏を支持した」「しかしその後、チェイニー氏はワイオミング州を裏切り、国を裏切った。そして私をも裏切った」と述べていました。

7月26日、トランプは昨年1月の米大統領退任後、初めて首都ワシントンに戻り、自身を支持する政治団体の会合で演説しました。

「この11月、わが国の破壊を止め、米国の未来を救うために投票しよう」

11月の中間選挙を控え、トランプが矛先を向けるのは与党民主党だけでなく、エスタブリッシュメント(支配層)派と呼ばれる既得権益を持つ共和党内の支配層に近い議員たちです。先日もこのブログに掲載したように、米国の富の大きな部分を握ってるわずか上位0.1%がエスタブリッシュメントです。

このエスタブリッシュメントは、過去においては、大統領は無論のこと、連邦議員や、地方議員などの選挙にも大きな影響力を発揮してきました。この状況から、米国では大統領もエスタブリッシュメントの操り人形だと揶揄されてきたのです。


しかし、トランプは違いました。
実業家のトランプ氏はエスタブリッシュメントの資金ではなく、自ら選挙キャンペーン費用を調達し、大統領になりました。

トランプ氏はエスタブリッシュメント派を「腐敗した組織」と切り捨て、急進的な改革を志向する党内の「草の根派」の支持者らに自身への忠誠を求めました。

ここで言葉を整理しておきます。エスタブリッシュメントとは、先にも示したように、米国の富の大きな部分を握ってるわずか上位0.1%の実質上の米国の支配層のことです。エスタブリッメント派とは、エスタブリッシュメントに親和的な議員、大統領のことです。

トランプ氏は、大統領在任中にも反エスタブリッシュメント色を深めました し、大統領を退いてからは地方選の予備選にも、「刺客」の候補者を次々に送り込み、地方政治に深く関与するエスタブリッシュメントに脅威を与えています。

その象徴となったのは、5月に行われたアイダホ州知事選の共和党予備選でした。トランプの支持を受ける草の根派の現職副知事ジャニス・マクギーチン(59)が、エスタブリッシュメント派と目される現職知事ブラッド・リトル(68)に挑みました。

マクギーチンは副知事在任中、知事のリトルと激しく対立。リトルが出張で州外に出た隙を狙い、知事代理の権限で新型コロナウイルス対策のマスク着用義務やワクチン接種義務を独断で取り消したこともありました。こうした仕事ぶりが災いし、予備選の結果はマクギーチンが得票率で20ポイントも差をつけられる大敗でした。

連邦議会上下両院の予備選ではトランプの推薦が強く作用しますが、有権者の生活に直結する地方政治の代表は実績や好感度で選ぶというところがあります。こうした傾向は各地の地方選予備選で顕著に表れ、ジョージア州でも大物知事として知られる現職ブライアン・ケンプが、トランプの「刺客」候補を大差で破りました。ただ、反トランプ派の勝利はこれくらいのものでした。

そうして、共和党内では草の根派が着実に力をつけています。かつてエスタブリッシュメント派一色だった共和党は、10年の保守派運動「ティーパーティー(茶会)」で政治に関心のなかった層を取り込み、16年大統領選で当選したトランプがさらに大きなうねりを生み出しました。今やアイダホ州共和党の要職は大半が草の根派です。

中間選挙で与党・民主党の苦戦を予想する見方が広がるなか、攻勢を強めてきたのが共和党のトランプ前大統領でした。

220人以上の候補者に推薦を出して勢力を広めつつ、共和党内の「反トランプ派」には「刺客候補」をぶつけて再選を阻んできました。近く、2年後の大統領選に向けた出馬宣言をするかどうかも注目されています。

昨年1月の議会襲撃事件を受け、民主党はトランプ氏の弾劾(だんがい)訴追を提案しました。これに共和党から賛成した下院議員が10人。これらの議員が「裏切り者」として狙い撃ちにされているのです。

10人のうち、予備選を勝ち抜いて11月の中間選挙に出馬できる議員は2人にとどまります。3人は予備選で「刺客」に敗れ、4人は不出馬を決めました。

そして最後の1人が、リズ・チェイニー下院議員でした。ブッシュ(子)政権の副大統領だったディック・チェイニー氏を父に持ち、自らも過去3回の選挙で圧勝してきました。

ところがトランプ氏を批判したことで状況は一変しました。16日に投開票されたワイオミング州予備選に向けて、世論調査では「刺客候補」にリードを許す苦しい展開となりました。

米連邦下院選のワイオミング州共和党予備選に向けた集会で、トランプ前大統領(右)の支持を受け、握手するハリエット・ヘイグマン氏=米ワイオミング州キャスパーで2022年5月28日

そうして、今回ワイオミング州では、トランプ前大統領への批判を強める現職のリズ・チェイニー氏(56)が、トランプ氏の推薦を受けた「刺客」候補に敗れることが確実になったのです。

トランプ氏は6日にはテキサス州で開かれた保守系団体の集会で、「バイデン(大統領)をクビにする」と気勢を上げました

中間選挙で完全復権を果たし、24年の次期大統領選に向け道筋をつけるのかの、答えは3カ月後に出ます。ただ、今回リズ・チェイニーがトランプの刺客に敗北したことで、トランプ氏は、この道筋を着実につけつつあるといえます。

トランプ氏は、現在機密文書に関連して家宅捜査を受けたことなどが、報道されていますが、これに対して、私は米民主党はトランプ弾劾に続き、スパイ容疑でトランプ氏を貶めようとしたが、失敗に終わると断言しましたが、その見立ては正しかったと確信を深めました。

もし、これが本当だとすれば、今回のようにチェイニー氏がトランプ氏の刺客に敗北することなど考えられないからです。

日本のANNニュースも、このニュースを取り上げていました。そのニュースは以下のリンクからご覧いただけます。

https://www.youtube.com/watch?v=prr04qJSt6Y

このニュースでは、米CNNがコマーシャルを中断してまで、リズ・チェイニー氏が敗北したことを伝えていました。

そうして、最後のほうでは、アメリカを分断したトランプが共和党内でも、分断をはかっていると批判していました。

しかし、米国はもともと随分前から分断しており、オバマの頃から分断が激しくなり、それ故にトランプが登場したというのが現実です。実際オバマが大統領時代の米国を調べれば、分断が酷くなっていたことを確認できるはずです。

また、トランプが共和党を刺客を送ることにより、新たに分断したようなことを語っていますが、これも間違いです。

米国で最初の、反エスタブリッシュメントの大統領は、ケネディ大統領です。ですから、この頃から民主党はエスタブリッシュメント派とその反対派で分断していました。その頃から共和党も分断していました。

共和党にも、民主党にもエスタブリッシュメント派と反対派が存在し続けています。米国政治においては、共和党、民主党という党派の別があるとともに、エスタブリッシュメント派とその反対派が存在してきたのです。

その時々で、エスタブリッシュメント派が優勢であるとか、そうてもないときもありましたが、分断していたのは事実です。

ケネディ以後、はっきりと反エスタブリッシュメントを掲げた大統領は、民主党にも共和党にもいませんでしたが、トランプ大統領が反エンタブリュッシュメン派を掲げた大統領として登場したのです。これを理解しないと、メディアのネガティブな報道にも関わらず、トランプ人気がなぜここまで続くのか理解できません。

このあたりの事情も知らないで、トランプ氏が刺客を送ることにより、共和党内での分裂を招いたというのは、あまりにも浅薄な見方です。

【関連記事】

FBI家宅捜索に新展開:トランプには持ち帰った文書を機密解除する「内務規定」があった―【私の論評】 背景には「トランプに弱みを握られた」かもしれない有力者の不安がある(゚д゚)!

トランプ前大統領に〝スパイ容疑〟機密文書11件を押収 「捜査は不当」と大激怒 「共和党潰し」の声も 「韓国のようで、異例ずくめ」―【私の論評】米民主党はトランプ弾劾に続き、スパイ容疑でトランプ氏を貶めようとしたが、失敗に終わる(゚д゚)!

バイデンは左派との「対決」で活路を見出せ―【私の論評】インフレが収拾し経済が良くならなければ、トランプ氏の大統領再選は絶対にないとは言い切れない(゚д゚)!

インフレがトランプ氏の返り咲きもたらす可能性-サマーズ氏が警告―【私の論評】2024年の米大統領選挙でトランプ氏が返り咲くか、大きな影響力を行使するのは間違いない情勢に(゚д゚)!

トランプのPACが2021年下半期に5100万ドルを集める―【私の論評】トランプは2024年大統領選挙の有力な候補者である(゚д゚)!
時刻: 8月 17, 2022 0 件のコメント:
メールで送信BlogThis!X で共有Facebook で共有するPinterest に共有
新しい投稿 前の投稿 ホーム
登録: 投稿 (Atom)

自民党の消費税減税反対は矛盾だらけ! 経済の真実を暴く

  まとめ 消費税減税反対の矛盾 :自民党幹部は消費税減税を「財源不足」「現場の混乱」で否定するが、ケインズ派の理論では減税が低所得者の消費を刺激し経済成長を促す。給付策は貯蓄に回り効果が薄い。 給付金の財源二重基準 :減税の財源を問題視する一方、給付金の財源(例:2021年26...

  • 自分の時間が…幼児死体遺棄“鬼母”の父は有名監督―日本国解体法案を推進する民主党は、根源まで遡れば、下村早苗のメンタリティーと結局は何も変わらない!!
    自分の時間が…幼児死体遺棄“鬼母”の父は有名監督 (この内容すでにご存じの方は、この項は読み飛ばしてください) 下村早苗容疑者逮捕後(23歳) 下村早苗容疑者逮捕前(23歳) 大阪市西区のマンションで幼児2人の遺体が見つかった事件で、死体遺棄容疑で大阪府警に逮捕された母親...
  • 次世代電池技術、機微情報が中国に流出か 潜水艦搭載を検討中 経産相「調査したい」―【私の論評】全樹脂電池の危機:中国流出疑惑と経営混乱で日本の技術が岐路に
    次世代電池技術、機微情報が中国に流出か 潜水艦搭載を検討中 経産相「調査したい」 まとめ 情報漏洩の疑い: APB社の全樹脂電池技術が、中国と関係の深い日本企業(TRIPLE-1)経由で中国企業(ファーウェイ)に流出した可能性がある。 経済安全保障リスク: 福島伸享議員が、潜水艦...

このブログを検索

ページ

  • ホーム

自己紹介

山田 豊
札幌市, 北海道, Japan
twitterで主にブログの内容を日々つぶやいています  @yutakarlson こちらのほうもよろしくおねがいします。このブログも、設立当初から10年以上を経過しました。随分前からブログタイトルに似つかわしくない、国際問題、政治・経済に関する内容が多くなっています。よろしくおねがいします。
詳細プロフィールを表示

ブログ アーカイブ

  • ▼  2025 (181)
    • ▼  6月 (30)
      • 自民党の消費税減税反対は矛盾だらけ! 経済の真実を暴く
      • ホルムズ海峡危機の真相:イラン封鎖は絵空事か
      • ロシア・ウクライナ戦争の泥沼:経済崩壊と戦場限界で停戦はいつ?
      • 財務省職員の飲酒後ミスが引き起こした危機:機密文書紛失と国際薬物捜査への影響
      • イランの屈辱と米国の戦略勝利:2025年中東停戦の裏側と中国の野心
      • 2025年参院選と自民党の危機:石破首相の試練と麻生・高市の逆襲
      • トランプの停戦宣言が中東を揺さぶる!イスラエル・イラン紛争の真相とイランの崩壊危機
      • 2025年東京都議選の衝撃結果と参院選への影響
      • トランプのイラン核施設攻撃の全貌:日本が取るべき道は何か
      • 中東危機と日本の使命:世界の危機の連鎖を打ち破れ
      • 日本の護衛艦が台湾海峡を突き進む!中国の圧力に立ち向かう3つの挑戦と今後の戦略
      • 日本経済を救う鍵は消費税減税! 石破首相の給付金政策を徹底検証
      • トランプのイラン強硬策:核危機と中東の命運を賭けた対決
      • 羊蹄山の危機:倶知安町違法開発が暴く環境破壊と行政の怠慢
      • 衝撃!ミネソタ州議員暗殺の裏に隠された政治テロと日本メディアの隠蔽の闇
      • イスラエルのイラン攻撃:核開発阻止と中東の危機を読み解く
      • イスラエル空爆の衝撃!イラン核施設壊滅と中東緊迫の行方:日本への警鐘
      • 中国の異常接近:日本の対潜水艦戦能力の圧倒的強さを封じようとする試みか
      • 『WiLL』と『Hanada』の成功の裏側:朝日新聞批判から日本保守党批判への転換と商業メディアの真実
      • 安倍昭恵の電撃外交と安倍の魂復活:保守派の「千載一遇の大チャンス」は来るか?
      • NHKの偏向報道を暴く!トランプ政権の「法と秩序」が守る住民の安全
      • 中国の野望を打ち砕け!南鳥島を巡る資源と覇権の攻防
      • 衆参同日選で激動!石破政権の終焉と保守再編の未来
      • 夫婦別姓反対!日本の家族と文化を守る保守派の闘い
      • 保守分裂の危機:トランプ敗北から日本保守党の対立まで、外部勢力が狙う日本の未来
      • ロシアの戦争継続はいつまで? 経済・軍事・社会の限界が迫る2025年末の真実
      • AIを装った人力詐欺:Builder.aiの破綻と技術の虚偽が暴く政治の闇
      • 第二次小泉劇場の裏に潜む増税の罠:財務省の策略と国民の選択
      • ウクライナの「クモの巣」作戦がロシアを直撃:戦略爆撃機41機喪失と経済・軍事への衝撃
      • 中国の海洋覇権の野望を打ち砕く:米国防長官のシャングリラ対話での力強い宣言
    • ►  5月 (31)
    • ►  4月 (30)
    • ►  3月 (31)
    • ►  2月 (28)
    • ►  1月 (31)
  • ►  2024 (366)
    • ►  12月 (31)
    • ►  11月 (30)
    • ►  10月 (31)
    • ►  9月 (30)
    • ►  8月 (31)
    • ►  7月 (31)
    • ►  6月 (30)
    • ►  5月 (31)
    • ►  4月 (30)
    • ►  3月 (31)
    • ►  2月 (29)
    • ►  1月 (31)
  • ►  2023 (363)
    • ►  12月 (31)
    • ►  11月 (30)
    • ►  10月 (31)
    • ►  9月 (30)
    • ►  8月 (30)
    • ►  7月 (31)
    • ►  6月 (30)
    • ►  5月 (30)
    • ►  4月 (30)
    • ►  3月 (31)
    • ►  2月 (28)
    • ►  1月 (31)
  • ►  2022 (365)
    • ►  12月 (31)
    • ►  11月 (30)
    • ►  10月 (31)
    • ►  9月 (30)
    • ►  8月 (31)
    • ►  7月 (31)
    • ►  6月 (30)
    • ►  5月 (31)
    • ►  4月 (30)
    • ►  3月 (31)
    • ►  2月 (28)
    • ►  1月 (31)
  • ►  2021 (362)
    • ►  12月 (30)
    • ►  11月 (30)
    • ►  10月 (31)
    • ►  9月 (30)
    • ►  8月 (31)
    • ►  7月 (30)
    • ►  6月 (30)
    • ►  5月 (31)
    • ►  4月 (30)
    • ►  3月 (31)
    • ►  2月 (28)
    • ►  1月 (30)
  • ►  2020 (366)
    • ►  12月 (31)
    • ►  11月 (30)
    • ►  10月 (31)
    • ►  9月 (30)
    • ►  8月 (31)
    • ►  7月 (31)
    • ►  6月 (30)
    • ►  5月 (31)
    • ►  4月 (30)
    • ►  3月 (31)
    • ►  2月 (29)
    • ►  1月 (31)
  • ►  2019 (359)
    • ►  12月 (31)
    • ►  11月 (30)
    • ►  10月 (31)
    • ►  9月 (30)
    • ►  8月 (29)
    • ►  7月 (29)
    • ►  6月 (28)
    • ►  5月 (31)
    • ►  4月 (30)
    • ►  3月 (31)
    • ►  2月 (28)
    • ►  1月 (31)
  • ►  2018 (355)
    • ►  12月 (29)
    • ►  11月 (28)
    • ►  10月 (31)
    • ►  9月 (28)
    • ►  8月 (31)
    • ►  7月 (29)
    • ►  6月 (28)
    • ►  5月 (31)
    • ►  4月 (30)
    • ►  3月 (31)
    • ►  2月 (28)
    • ►  1月 (31)
  • ►  2017 (362)
    • ►  12月 (31)
    • ►  11月 (28)
    • ►  10月 (31)
    • ►  9月 (30)
    • ►  8月 (31)
    • ►  7月 (31)
    • ►  6月 (29)
    • ►  5月 (31)
    • ►  4月 (30)
    • ►  3月 (31)
    • ►  2月 (28)
    • ►  1月 (31)
  • ►  2016 (357)
    • ►  12月 (31)
    • ►  11月 (27)
    • ►  10月 (28)
    • ►  9月 (30)
    • ►  8月 (31)
    • ►  7月 (28)
    • ►  6月 (30)
    • ►  5月 (31)
    • ►  4月 (30)
    • ►  3月 (31)
    • ►  2月 (29)
    • ►  1月 (31)
  • ►  2015 (359)
    • ►  12月 (31)
    • ►  11月 (28)
    • ►  10月 (31)
    • ►  9月 (30)
    • ►  8月 (29)
    • ►  7月 (31)
    • ►  6月 (29)
    • ►  5月 (31)
    • ►  4月 (29)
    • ►  3月 (31)
    • ►  2月 (28)
    • ►  1月 (31)
  • ►  2014 (360)
    • ►  12月 (27)
    • ►  11月 (30)
    • ►  10月 (31)
    • ►  9月 (30)
    • ►  8月 (30)
    • ►  7月 (31)
    • ►  6月 (30)
    • ►  5月 (31)
    • ►  4月 (30)
    • ►  3月 (31)
    • ►  2月 (28)
    • ►  1月 (31)
  • ►  2013 (363)
    • ►  12月 (31)
    • ►  11月 (29)
    • ►  10月 (31)
    • ►  9月 (30)
    • ►  8月 (30)
    • ►  7月 (31)
    • ►  6月 (29)
    • ►  5月 (32)
    • ►  4月 (31)
    • ►  3月 (31)
    • ►  2月 (27)
    • ►  1月 (31)
  • ►  2012 (358)
    • ►  12月 (31)
    • ►  11月 (29)
    • ►  10月 (29)
    • ►  9月 (29)
    • ►  8月 (30)
    • ►  7月 (31)
    • ►  6月 (30)
    • ►  5月 (31)
    • ►  4月 (31)
    • ►  3月 (29)
    • ►  2月 (29)
    • ►  1月 (29)
  • ►  2011 (368)
    • ►  12月 (30)
    • ►  11月 (31)
    • ►  10月 (31)
    • ►  9月 (30)
    • ►  8月 (31)
    • ►  7月 (31)
    • ►  6月 (33)
    • ►  5月 (31)
    • ►  4月 (30)
    • ►  3月 (31)
    • ►  2月 (28)
    • ►  1月 (31)
  • ►  2010 (374)
    • ►  12月 (30)
    • ►  11月 (33)
    • ►  10月 (32)
    • ►  9月 (29)
    • ►  8月 (36)
    • ►  7月 (32)
    • ►  6月 (30)
    • ►  5月 (31)
    • ►  4月 (30)
    • ►  3月 (32)
    • ►  2月 (28)
    • ►  1月 (31)
  • ►  2009 (376)
    • ►  12月 (33)
    • ►  11月 (29)
    • ►  10月 (32)
    • ►  9月 (30)
    • ►  8月 (31)
    • ►  7月 (33)
    • ►  6月 (31)
    • ►  5月 (35)
    • ►  4月 (32)
    • ►  3月 (32)
    • ►  2月 (27)
    • ►  1月 (31)
  • ►  2008 (366)
    • ►  12月 (33)
    • ►  11月 (28)
    • ►  10月 (30)
    • ►  9月 (31)
    • ►  8月 (31)
    • ►  7月 (31)
    • ►  6月 (30)
    • ►  5月 (31)
    • ►  4月 (30)
    • ►  3月 (30)
    • ►  2月 (29)
    • ►  1月 (32)
  • ►  2007 (313)
    • ►  12月 (31)
    • ►  11月 (30)
    • ►  10月 (31)
    • ►  9月 (30)
    • ►  8月 (33)
    • ►  7月 (31)
    • ►  6月 (30)
    • ►  5月 (30)
    • ►  4月 (28)
    • ►  3月 (29)
    • ►  2月 (10)

不正行為を報告

ページビューの合計 アニメーション・カウンター

このブログ動的ビューに対応しました

ビューはすべてで7つあります。下のURLは、snapshotのものです。
Snapshot
snapshotのビューの上のほうのバーのボタンをクリックすることで、他のビューもご覧になることができます。是非ご自分のお気に入りの、ビューを探してそれをお使いください。

登録

投稿
Atom
投稿
すべてのコメント
Atom
すべてのコメント

フォロワー

テーマ画像の作成者: Airyelf さん. Powered by Blogger.