財務省 国税庁 |
統計をさらにみると、全産業の営業利益は30・2%増の54兆2156億円、設備投資は9・3%増の45兆6613億円。なお、設備投資は、有形固定資産(土地を除く)増減額、ソフトウエア増減額、減価償却費、特別減価償却費の合計である。
利益剰余金の増加額は34兆3343億円なので、基本的には利益以上に他の金融資産を取り崩して設備投資したので、まずまずの数字である。
金融緩和効果が出てきたものと思われる。それとともに、最近の「円安是正のために利上げ」というマスコミ論調がおかしいことを示している。
国内総生産(GDP)統計を見ても、民間設備投資はまずまずだが、政府公共投資はさっぱりだ。政府が出てくれば、呼び水効果でさらに民間投資を伸ばすチャンスなのに残念で仕方ない。公共事業を評価する際に使われる社会的割引率は現在4%という法外な水準であり、その見直しなど政府がやるべきことは少なくなく、せっかくの民間投資が好調な状況を生かしていない。
法人企業統計では、21年度のほか、22年4~6月の分も公表されている。全産業の営業利益は前年同期比13・1%増の17兆6716億円、経常利益は17・6%増の28兆3181億円。経常利益は製造業、非製造業のそれぞれでも過去最高である。
営業利益が伸びているのは、コロナ禍からの経済・社会活動の正常化で業績回復が進んだからだ。
また、経常利益が営業利益よりも伸びているのは、非営業利益の投資収益が伸びているからだ。受取利息等は7兆3573億円で過去最高だった。
その主因は円安による海外投資収益の増加である。円安効果は輸出拡大という形でも現れるが、過去の海外投資収益という形でも表れる。
一般に現地生産に移行していると輸出増にならないので、円安効果は限定的だといわれるが、現地生産なら海外投資を既に実施しているはずで、その場合には輸出増でなく海外投資収益増に替わっているはずだ。今回の法人企業統計では、その効果が強く表れている。
設備投資は4・6%増の10兆6108億円だった。5期連続で前年比プラスで、民間設備投資の基調はいい。脱炭素やデジタル化への投資意欲は相変わらず堅調だ。
円安でも企業収益は良くなったわけで、本コラムで筆者が円安ならGDPは伸びると主張していたことと整合的だ。
企業収益増は法人税増になるので、その増収分を円安で困っているところ、例えば中小企業などに使うといい。いずれにしても、円安はGDP増になるので、その果実を有効に活用すればよく、角を矯めて牛を殺すような、円安是正という間違った対応をしてはいけない。 (元内閣参事官・嘉悦大教授 高橋洋一)
【私の論評】小鳥脳のマスコミと識者は、円高で日本が酷い目にあったことを、もう忘れたか(゚д゚)!
2009年8月の衆院解散総選挙で自民党は歴史的大敗を喫し、民主党への政権交代が起こりました。民主党鳩山内閣の誕生しました。7月に亡くなられた、鳩山内閣の財務大臣の藤井裕久氏は円高原理主義者であると同時に、財政再建原理主義者でした。
藤井裕久氏 |
この超円高によって、製造業の海外移転がさらに進み、国内産業は衰退していきました。円高によって海外からの輸入品の競争力が相対的に強くなり、国内産業も大打撃を受けました。
さらに、リーマンショック後のさらなる超円高によって、日本の産業は衰退してしまいました。これを民主党政権は放置しまし、日銀に金融緩和を促すようなことは一切しませんでした。日銀も、マネタリーベースを増やすことはほとんどしませんでした。まさに、悪夢でした。
2022年8月30日現在で1ドルは約138円です。当時と約60円も違ったのです。とんでもない違いです。
鳩山内閣は円高放置政策のみではなく、郵政民営化の見直しと称した逆回転政策を実行しました。完全民営化予定だった郵政三事業を半官半民の中途半端な状態に戻す法律も可決させました。
2011年3月、菅首相は外国人からの献金問題の発覚で追い詰められ、退陣までのカウントダウンが始まりました。これで民主党政権が終わるのでは、と思われたその時の3月11日に東北地方を中心とするマグニチュード8.1の大地震が起こってしまったのです。献金問題は、大震災でうやむやになってしまったのです。何と日本人にとって不幸なことだったことでしょう。
もちろん反対意見もありました。野党の自民党の中川秀直元幹事長は「はじめに増税ありきで、どうして国民が奮い立つようなビジョンを作ることができるのか」と述べていますし、連立与党の国民新党の亀井静香代表は「谷垣は気が狂っている」と痛烈に批判しています。ところが、彼らは少数派でした。
マスコミは、当時大増税キャンペーンをはり、日本中が増税一色に染まり、国民の側からも反対の声は上がらなくなりました。増税に反対する人はまるで「被災地を見捨てる非国民」であるかのような雰囲気さえありました。
そうして、復興増税法案はあっという間に国会を通ってしまったのです。これは今から考えると、日本人の優しさにつけ込んだ経済犯罪ともいえる暴挙です。復興財源として増税が適切でない理由は簡単です。国債と異なり、増税では財源の手当が遅すぎますし、あまりに少なすぎですし、世代間の応分な負担を図れないからです。
阪神淡路大震災後は増税ではなく国債で復興しました。いや、それどころか自然災害などの復興を増税で賄ったのは、古今東西を問わずこのときの日本だけです。
震災対応で醜態をさらした菅首相の支持率は急落しました。憲政の常道に従うなら、ここで民主党は解散総選挙をすべきでしたが、もちろん彼らはそのような日本の伝統に従うわけがありません。
いわゆるリフレ派といわれる人々の、「デフレ下での増税で税収は減る」「名目GDPの上昇なくして財政再建無し」「デフレは日銀が招いた人災」「金利が上がって財政破綻はウソ」というし主張はかき消され、消費税増税はもはや既定路線でした。
財務省が消費税増税の必要性として挙げる理由は、過去の少なくとも3回変っています。
- 消費税導入時の平成元年の時点→直間比率の見直し
- 橋本内閣の消費税増税から野田内閣以前まで→財政危機、財政再建
- 野田内閣以降→社会保障の安定財源
財政危機説ですが、残念ながらこの説には根拠がありません。政府債務は完済する必要が無く、債務総額よりも債務の維持可能性が重要だからです。政府は永遠に生きると仮定されており、ある条件さえ満たせば永遠に借り換え続けることも可能です。また特別会計まで含めた政府のバランスシートからも、日本が財政危機ではないことが導き出せます。
政府が日銀に売却した国債は、買い戻す必要などありません。なぜなら金利は国庫納付金として政府に環流し、元本も同額の国債を渡すことで事実上永久に借り換えることが可能だからです。
実際に2018年IMF財政モニターにおいて、日本の純債務はゼロだと認定されています。このことを繰り返しリフレ派などに、突かれて返答に窮した財務省は再び論点を変え、今度は社会保障の充実のために財源が必要だと言い始めたのです。
消費税の社会保障目的税化というのは、先進国では実例がありません。なぜなら、どの先進国においても社会保障財源は基本的に社会保険料だからです。
社会保障が保険で賄われる限り、それを負担する人と給付を受ける人は同一人物です。デタラメな給付はいずれ自分のクビを絞めるため、歳出に抑制が効きます。ところが、消費税を財源とした場合、負担する人が必ずしも恩恵を受けるわけでもなく、給付を受ける人も誰が負担しているか分かりません。こうなると歳出に抑制が効かず、給付が無制限に拡大する可能性があります。
直間比率の見直しもとっくに終わっていましたし、財政危機もウソ、社会保障財源というのもデタラメ。つまり、消費税を増税する正当な根拠は存在していないのです。ではなぜ消費税を増税するのでしょうか。それは財務省の権限が大きくなるからです。
2012年12月に誕生した安倍内閣はアベノミクス3本の矢を経済政策としました。第一の矢が金融緩和、第二の矢が大胆な財政出動、第三の矢が成長戦略です。変動相場制の国において最も重要なのは金融政策です。
2012年12月に誕生した第二次安倍内閣 |
(1) 総合指数は2020年を100として102.3
前年同月比は2.6%の上昇(2) 生鮮食品を除く総合指数は102.2
前年同月比は2.4%の上昇
(3) 生鮮食品及びエネルギーを除く総合指数は100.6
前年同月比は1.2%の上昇
日本の物価高を推進しているのは、エネルギー価格であり、エネルギー価格の高騰が生鮮食品などの物価高の原因になっているのです。コアコアCPIでは、2020年基準では1.2%しか上がっていないのです。 こちらの数字のほうが、日本の実体経済を現しています。
この場合、金融引締をしたらどうなるでしょうか。 まだ、コアコアCPIが2%にも達していないのに、そうすれば、また日本はデフレに逆戻りです。
そのようなことをすれば、また民主党時代のような悪夢の再現になるかもしれません。そのようなことをするくらいなら、高橋洋一氏が主張するように、円安はそのままにして、法人税増税分を中小企業の救済にあてるなどの措置をすべきです。
さらに、できれば、消費税減税、ガソリン税減勢などの減勢をすべきです。それとともに、それ以上金融緩和を継続しても雇用が良くならない状況に至るまでは、緩和を継続すべきです。
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