2023年2月5日日曜日

米軍機が中国偵察気球を撃墜 バイデン大統領が指示、残骸回収へ―【私の論評】日本も中国のスパイ気球を撃墜すべき(゚д゚)!

米軍機が中国偵察気球を撃墜 バイデン大統領が指示、残骸回収へ

中国スパイ気球撃墜の瞬間

 バイデン米大統領は4日、米軍機が米東海岸沖で中国の偵察気球の撃墜に成功したと明らかにした。1日に米上空への気球飛来の報告を受けた後、地上に被害が及ぶリスクがなくなり次第、国防総省にできるだけ早く撃ち落とすよう自ら指示していたと記者団に語った。

 オースティン米国防長官は声明で、気球は米本土の戦略的拠点を監視する目的で中国が使用していたと指摘。「民間の気象研究用」とする中国側の主張を否定した。米軍は残骸を回収し偵察装置などの分析を試みる。中国の機密情報の収集活動が浮き彫りとなる中、撃墜により米中関係はさらなる冷却化が進む可能性がある。

 国防総省によると、米南部バージニア州の基地から出動した米北方軍のF22戦闘機が4日午後(日本時間5日未明)、空対空ミサイルで南部サウスカロライナ州沖約10キロの米領海上に気球を撃ち落とした。バイデン氏は「撃墜を成功させた飛行士らを称賛したい」と語った。

 気球は1月28日にアリューシャン列島近くの米国領空に侵入。アラスカ州上空を通過して一旦、カナダの空域に入り、31日以降再び西部アイダホ州から米本土を東に向けて飛行。その間、米軍の大陸間弾道ミサイル(ICBM)発射施設がある西部モンタナ州上空も通過するなど、国防総省高官は記者団に「明らかに機密性の高い米軍施設の上空を飛んでいた」と指摘した。

 国防総省は今月2日、中国の偵察気球が米本土上空に飛来したことを発表。バイデン政権は「米国の主権と国際法の侵害である」と中国政府を厳しく非難し、ブリンケン国務長官は3日、予定していた中国訪問を延期していた。

 国防総省は1日にバイデン氏に気球飛来を報告。オースティン長官は声明で、バイデン氏が米国民の生命に危害が及ばない形で早期に気球を撤去するよう指示したと明らかにした。

 米本土上空では破片などで地上に被害が及ぶ危険が残るとして、気球の偵察活動と航路の追跡・監視を続け、東海岸沖に達した時点でバイデン氏が「最適なときと判断」し撃墜を指示したという。一連の作戦はカナダ政府の支援を受けたとしている。

 同省は3日、中南米でも別の中国の偵察気球が飛行していると明らかにした。同省高官は4日、中国の偵察気球がここ数年間、東アジア、南アジア、欧州など5つの大陸・地域で確認されているとし、「他の国々の主権も侵害しており、容認できない」と非難した。

【私の論評】日台韓も中国のスパイ気球を撃墜すべき(゚д゚)!

偵察気球は歴史的に重要な技術です。低軌道衛星・静止衛星が開発される以前は、冷戦下の1950年代において米国は広範囲に利用するなど、広く活用していました。しかし、昨今ではほとんど使用されていません。

偵察気球には衛星に勝る利点がいくつかあります。安価に配置しやすく、対象から比較的近くを飛行し、ある場所を長期間継続して観察できるます。一方で気球には重量制限があり、搭載できるセンサーの処理能力と多様性には制約があります。

これに対して人工衛星は地上にいる人たちの目につかず、気にされることもありません。中国の気球が大ごとになったことにより、気球の欠点が再度あぶり出されたともいえます。

なぜ、中国はこのようなことをシたのか、理解に苦しみます。これは、米政府だけではなく国民から反感を買う行為です。

センサー付きの気球は操舵性能を備えていますが、気流に乗って移動します。米国の当局者によると、偵察気球は2月2日に民間航空交通網の上空約60,000フィートを漂っていて、人や地上での活動に脅威はもたらしてはいませんでした。

国防総省高官によると、米国上空を飛ぶ偵察気球は「今回のものとは別に、この政権の前にも過去数年で何度か確認されています」。だが今回の出来事は明らかに、米国民から最も注目されることになりました。

気球は偵察の道具として、ここ数十年はほんど使用されていません。このため絶えず偵察気球を配置する行為は、多くの国々が、対抗する準備が十分ではない可能性があります。中国側としては、各国がどの程度の準備ができているかを探るという意図があったのかもしれません。

しかし国防総省高官は2日、人工衛星の写真から中国が入手できる情報と比較して、「機密情報収集の観点から、この気球には限られた付加価値しかないと評価しています」と発言しています。それでもこの気球は、いくつかの米軍基地やその他の機密施設の近くを飛行しています。

偵察気球による監視の対抗策としては、設備や人員の気球からの視野外への物理的移動、設備の配置換え、可能であれば気球のセンサーの妨害があり得ます。ただ、米国がどのようにしてこれを防ぐかについては、今のところ公表されていません。

中国外務省は気球について、「中国側は、この飛行船が不可抗力により意図せず米国領空に侵入したことを遺憾に思う。中国側は引き続き米国側と意見を交わし、この予期せぬ状況を適切に解決するつもりである」とコメントしています。

しかし、こうした譲歩にもかかわらず、極めて多くの人目に晒された今回の状況は、米国と中国間の緊張感を高めるだけになりかねないです。

台湾の中央気象局の鄭明典局長は4日、同様の気球は北部・台北上空にも過去に2度出現していると明らかにしました。

鄭氏はこの日、フェイスブックに気球の写真を掲載し「ニュースで言われている偵察用気球は、気象局の同僚が2年前に撮影している」とコメント。その後の中央社の取材に、気球は2021年9月と22年3月に台北上空に出現し、約3時間とどまったと説明しました。フェイスブックに投稿した写真は21年のもので、22年は台北市の松山空港上空に飛来したものを、市民が撮影したと語りました。

また台北上空で見つかった気球は、2020年に宮城県で見つかったものと完全に同じだと強調。米国上空のものも含めて「気象観測用気球ではない」との見方を示しました。


気象観測用気球については通常ゴム製で直径は約2メートルで遠くまでは飛ばないとし、台湾や米国などで見られた気球は少なくとも20メートルの大きさだと推測。高高度を遠くまで飛行できるのは特殊な素材を使っているからだろうと語った。

日本では、宮城県以外の類似事件としては以下のようなものがあります。
2019年11月20日に鹿児島県薩摩川内市にあるせんだい宇宙館が撮影した飛行物体がやや形状は異なるが類似の構造をしている。

2021年9月3日に青森県八戸市鮫町の大須賀海岸の南の空に現れた白い飛行物体に酷似している。

2021年9月24日に小笠原諸島父島の上空に現れた飛行物体がやや形状は異なるが類似の構造をしています。
東北大学服部誠准教授(天文学)は、形が球状であることと、吊っているものがほぼ一緒ということで、米国の気球は、宮城に来たものとほぼ同型のものだと考えられると語っています。

 服部准教授は、3年前の物体について、当時の風のデータを基に飛行ルートを分析した結果、パラメーターをいくつも変えてシミレーションしてもいずれも中国からやってきたとなるので、ほぼ間違いなく中国から来たんじゃないかと思うとした上で、日本政府は真相を解明してほしいでと語っています。服部准教授は「目撃されたもののほかにも数多く飛んでいるのでは」と話しています。

中国は、これとほぼ同じとみられる、気球を撃墜する動画を公表しています。

以下がその動画です。


この動画、現在(2月5日 18:40)でも掲載されています。ただ、米軍の気球撃墜のときのように、撃墜そのものは写ってはいないので、実際に撃墜したところは、写っていません。本当かどうかは、わかりません。

中国としては、撃墜できることを示したものと考えられます。米国としては、この事実をつかんでおり、すぐに撃墜しなかったのは、確実に撃墜できる方法を模索した上で、実行したと考えられます。もし、失敗して複数回攻撃して初めて撃墜ということになれば、中国をつけあがらせることになりかねません。

中国としては、米軍の弱点を探しているのだと考えられます。たとえば、今回一回で撃墜できなかったような場合、偵察気球はまだまだ使えると判断したかもしれません。

気球のバルーン部分は定高度気球と思われるため、ポリエチレンなどの樹脂製と思われます。直径30メートルとかなり大型ですが、これはレーダーに映りません。ただし、米国で確認された気球は、当初では高度18キロと言われていましたが、撃墜時の高度は20キロとの情報があり、高度を変更可能な気球だった可能性もあります。

懸架物は、かなりの重量があると推測されるため、構造材などに金属も使われており、レーダーに映ると思われます。米軍も気球を追跡していますが、日中は目視の可能性もあるものの夜間はレーダーでしょう。

このようなことは、容易に予想がついたのでしょうが、米国の弱点を探している中国として、日本や台湾の対応で「ひょっとしたら」という感触を得たのかもしれません。

何しろ、日本では上記で示したように、何度か今回のような物体が発見されているにも関わらず、ほとんど何の対応もしなかったという経緯があります。在日米軍も、特に何の公表もしていません。さらに、米国内で以前発見されているものについても、結局何もしていません。

「イスラエルとパレスチナ」や「韓国と北朝鮮」といった対立を抱えている国や地域間の上空では、偵察目的とみられる互いの気球が従来から頻繁に確認されています。最近は、ドローンも用いられているものの、長時間飛行させることができる、気球はそれなりに利用価値はあるのでしょう。

にもかかわらず、日本の一部マスコミは無責任な識者の「ラジオゾンデだ」「 イベント用だ」等の報道をして、それで終わらせてしまいました。それで、納得してしまった人も多かったのではないかと思います。

もし、中国が、日米がこれを発見するのが難しいとか、対応能力が低いことを発見すれば、索敵能力においては全ての点で、日米に劣る中国は、これで初めて優位にたてるかもしれないと考えたのかもしれません。サラミ戦術で、日米台韓の上空の気球を増やし、これらの国々の空を気球で満たし、いずれ何かできるかもしれないと考えたかもしれません。今回撃墜されたので、この目論見は潰えたといえるでしょう。

日米台韓とも中国の偵察気球は、情報収集能力は低いし、撃墜しようと思えば、すぐに撃墜できるので、さほど問題はないと捉えていたのでしょうが、現状では米中が対峙していて、冷戦に近い状況になっていますから、米国としても甘い顔を見せるわけにもいかず、今回は意図して意識して、撃墜したのでしょう。さらには、ブリンケン国務長官も訪中も取りやめました。


今回米軍がこの偵察気球を撃墜したことは、日台韓の安全保障にも寄与したものと思われます。日台韓も今後は、技術的にも、米国が口火を切ったことでも、これをかなり撃墜しやすくなりました。

日本の自衛隊も、今後は中国の偵察気球を発見した場合撃墜すべきでしょう。これを簡単に考えるべきではありません。細菌や放射性物質等の毒物のバラマキの危険もあります。領空は無害通航権がなく打ち落としても良いです、安全保障上は当然の行為です。

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2023年2月4日土曜日

「令和臨調」提言に透けてみえる〝アベノミクス否定〟と〝利上げ・増税〟 方向性を間違えると改革も困難に―【私の論評】「無能な働き者」の巣窟と化したか「令和臨調」(゚д゚)!

日本の解き方

令和臨調の平野信行共同座長(左)、翁百合共同座長(右)ら

 令和国民会議(令和臨調)は1月30日、政府と日銀の共同声明について、「2%の物価安定目標」を「長期的な目標」と新たに位置付けるなどの提言を行った。

 「令和臨調」は、昨年の参院選前の6月19日、発足大会を開催した。事務局が日本生産性本部にあることからわかるように、経団連ほどではないが、比較的政府寄りで改革系の民間経営者の集まりだ。岸田文雄政権が本格化することを見越して、基本的には政権サポートの色彩が濃いだろう。

 発足大会では茂木友三郎共同代表による発足宣言が行われたが、その中に「現下のコロナ禍や食料・エネルギー価格の高騰等により政府支出の暫定的な増大は避けられないにせよ、財政・社会保障の持続可能性を担保するための取り組みに道筋をつけることは、もはや避けて通ることのできない、まったなしの課題」という一節があった。

 この文章はわかりにくいが、コロナによる財政出動により債務残高が増大したが、そのために「増税」が必要という意見のようだ。

 そこで、令和臨調が目をつけたのが、政府・日銀の共同声明だ。令和臨調の提言では、「2%インフレ目標設定を明記した2013年の政府・日本銀行の共同声明以降の政府と日本銀行の政策を検証したうえで、新たな共同声明(いわゆる「アコード」)を作成、公表することを提言する」とされた。

 もっとも、新たな共同声明でも、インフレ目標2%だ。何が違うのか。令和臨調の出した関連資料を見るとわかりやすい。13年の共同声明では日銀は「異次元金融緩和〝できるだけ早期に2%〟」だったが、提言では「金融政策の正常化〝2%は長期的な目標〟」としている。政府に対しては「予算制約意識なきばらまき財政」を「財政規律回復、社会保障改革」に変えるとされている。

 やはり衣の下の鎧(よろい)が透けてみえる。本コラムで再三書いてきたが、日本のコロナ対策は、安倍晋三元首相の言葉を借りれば「政府・日銀の連合軍」だった。政府が発行した100兆円規模の国債は日銀が保有し、増税に結びつかないのだが、それを増税にまで持っていきたいようだ。

 そのために、政府と日銀の新たな共同声明によって、「政府・日銀の連合軍」を崩したいのだろう。要するにアベノミクスの否定である。日銀に「金融政策の正常化」、政府に「財政規律」を求めるとは、簡単に言えば「利上げ・増税」だからだ。

 今の日本は、消費者物価指数の対前年比が4%増といっても、エネルギー価格など海外要因が中心だ。GDPデフレーターでみると、まだマイナスである。これが安定的に2%を超えるまで金融緩和と積極財政を継続する必要がある。「利上げ・増税」のタイミングではない。

 令和臨調の提言には、各種改革については見るべき点もあるが、マクロ経済では間違った方向だ。マクロ経済をしっかりさせないと、各種改革もできなくなるだろう。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】「無能な働き者」の巣窟と化したか「令和臨調」(゚д゚)!

第2次安倍政権でブレーンの1人を務めた元内閣官房参与の本田悦朗氏は、2月2日に2回も以下のようにツイートしています。

本田氏は、頻繁にツイートする方ではないので、この「令和臨調」の提言は、よほど危険であると思われたのでしょう。だからこそ、ツイートされたでしょう。 

本田悦朗氏

金融を知らない人という言葉が気になったので、令和臨調の平野信行共同座長と、翁百合共同座長の経歴を調べてみました。

2013年三菱UFJフィナンシャル・グループ代表取締役社長に就任。2016年に三菱東京UFJ銀行(現・三菱UFJ銀行)代表取締役会長に就任。2019年に三菱UFJフィナンシャル・グループ執行役会長に就任。同年10月に三菱みらい育成財団を設立、理事長に就任。2021年に三菱UFJ銀行特別顧問に就任。
1982年 慶應義塾大学経済学部卒業
1984年 慶應義塾大学大学院経営管理研究科修士課程修了後 日本銀行勤務
1992年 日本総合研究所 副主任研究員
1994年 同 主任研究員
2000年 同 主席研究員
2006年 同 理事
2014年 同 副理事長
2018年 同 理事長(現在に至る)

お二人とも立派な経歴であり、一般には識者ともいわれるような人たちです。こういう人たちが共同座長をつとめている臨調が、このような提言を出すのですから、驚いてしまいます。

こういう人たちが、真面目な顔をして、提言などすると、信じ込んでしまう人も多いと思います。

しかし、臨調は形骸化しつつあるような組織です。元々は、統治構造改革や持続可能な財政を中心に政策を提言するはずであった「国民会議」(臨調)は昨年6月19日、東京都内で「令和国民会議」(令和臨調)発足大会を開催しました。

経済界や労働界、学界から有志が参加し、民主主義の再生や経済の立て直しといった日本が直面する諸課題の解決に取り組むものとされました。ただ、その政治改革への熱意は低下しつつあるとの声もありました。真の改革を再びリードする実行力が伴わなければ、形だけの組織で終わる可能性があります。


「改革の主役は次の世代の若者。さまざまな機会を通じて運動の輪を広げ、時代の閉塞(へいそく)と停滞を打ち破りたい」。茂木友三郎共同代表は、総会冒頭でこう意気込みを語りました。

行政改革を議論するため政府に設置した臨時行政調査会(臨調)は、昭和56年に発足し国鉄など3公社の民営化に道筋をつけた土光敏夫会長の「土光臨調」が知られます。その後、民間有志が参加する臨調方式の組織として平成4年に「民間政治臨調」が発足し、衆院中選挙区制廃止などにつなげました。

15年発足の「新しい日本をつくる国民会議(21世紀臨調)」は、マニュフェスト(政権公約)選挙や政権選択選挙の動きを後押ししました。今回の令和臨調は、3度目の民間臨調との位置づけでした。

日本の構造改革に対する民間臨調の影響力が低下しているとの指摘もあります。立ち上げ時に政権交代可能な二大政党制などの理想を掲げたが定着していません。30年にわたる経済低迷からの脱却も果たせていません。政治改革への熱意が失われつつあるとの意見もあります。

総会では「一歩でも改革を前に進めるために汗をかきたい」(茂木氏)など、「改革」という言葉は多く聞かれました。ところが、日本という国のありようについて強いメッセージは聞かれませんでした。世論喚起や合意形成に向け大きなうねりを作るには、明確なビジョンの発信が求められますかが、それもありませんし、ましてや今回の提言です。

「令和国民会議」(令和臨調)共同代表で、日本生産性本部会長の茂木友三郎キッコーマン名誉会長らは1月6日、東京都内で年頭会見を開き、3月末までに取りまとめる予定であった今回の令和臨調の提言に関して「立場や党派を超えて取り組まねば解決困難な課題に取り組む。本格的に世論喚起や合意形成に踏み出す1年とする」と述べていました。

茂木友三郎キッコーマン名誉会長

茂木氏は、政府が昨年末に決定した防衛費の大幅増に関しても、令和臨調で議論する考えを示しました。岸田政権は2023年度当初予算案で、建設国債で自衛隊の施設整備費や艦船の建造費を賄うことを決めたことに疑問を呈しています。

令和臨調共同代表の小林喜光よしみつ東京電力ホールディングス会長は会見で「大変な財政状況の中で国債はあまりに安易で、たがが緩んでいる」と指摘しました。

30年も経済の低迷が続いたのは、それはなぜなのかについても、まともに分析できていないようです。分析ができないようでは、まともな提言ができるはずもありません。そもそも、日本がデフレになったのは、過去の財政金融政策が間違いだったということを認識していないようです。

もう臨調もすでに財務省の走狗と成り果てたのかも知れません。臨調そのものは、恐れるような組織ではありませんが、その背後の財務省の動きには要注意です。財務省は、自らの教義に従い、ありとあらゆる組織や個人に対して、増税絶対善教義を吹き込んでいるようです。

それにしても、民間企業のそれも大企業の元経営者等の認識がこの有様では、本当に困ったものです。安倍さんが草葉の陰て泣いているかもしれません。もう臨調など廃止したほうが良いです。現在の臨調は「無能な働き者」の巣窟と化したようです。提言するなら、まともな提言をしていただきたいです。

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2023年2月3日金曜日

米韓、黄海上空で再び戦闘機訓練 中国けん制も狙いか―【私の論評】米軍が黄海で演習するのは、中国の潜水艦の建造・メンテは渤海で行うという大きな弱点があるから(゚д゚)!

米韓、黄海上空で再び戦闘機訓練 中国けん制も狙いか

米韓空軍は黄海で1日に黄海で共同訓練を行った

 韓国国防省は3日、米韓両軍の戦闘機が黄海上空で合同訓練したと発表した。米韓は1日にも米国のB1B戦略爆撃機が参加する訓練を実施。北朝鮮が米韓による圧力強化に対抗し、ミサイル発射などの軍事的な威嚇に出る可能性がある。黄海上空での頻繁な戦闘機展開には、中国をけん制する狙いもありそうだ。

  韓国空軍は、訓練は韓国防衛に対する「米国の意思と能力を示すものだ」とし、強固な米韓同盟を誇示。核・ミサイル開発を加速化させる北朝鮮の脅威に対応するため、引き続き合同訓練を強化していくと表明した。3日の訓練には、韓国側からステルス戦闘機F35A、米側からはF35Bなどが投入された。

【私の論評】米軍が黄海で演習するのは、中国の潜水艦の建造・メンテは渤海で行うという大きな弱点があるから(゚д゚)!


地図でご覧いただければ、おわかりになるように、黄海の朝鮮半島の対岸は、中国です。このような場所での訓練ですから、当然のことながら、中国に対する牽制も、狙っていることでしょう。

この黄海は、中国海軍にとって、ネックでもあります。その主たる原因は、黄海・渤海は、均水深は46m、最深部でも200m以下と浅いということです。

ところが、中国原子力潜水艦の建造は、黄海に続く渤海湾内の遼寧省葫芦島市葫蘆島造船所に集中しています。 ここに造船所があるのは、維持整備上のやりやすさというのが大きな理由の一つであると考えられます。

葫蘆島造船所に停泊する潜水艦(赤丸) クリックすると拡大します

現実に 中国は、渤海湾にある中国唯一の原子力潜水艦建造所の拡張を図っています、ただ、必 要であれば渤海湾以外での原子力潜水艦の建造もできるようにするでしょう。

ただ、その動きは全くありません。中国近海は、渤海・黄海はもとより東シナ海を含めて水深が浅く、潜水艦の行動には適していません。今や水深の深い南シナ海こそ、中国にとっては原潜の聖域と言っても良い状況で、私としてはなぜ中国が環礁を埋め立てて作った基地に、潜水艦の建造や本格的メンテができる造船所をつくらないのか不思議です。

中国の潜水艦を含む艦艇のメンテは潜水艦も含めて、大掛かりなものは、すべて渤海湾内の造船所で行わなければなりません。

そうなると、水上艦艇はまだしも、すべての潜水艦は黄海を通り、渤海にでなければメンテはできないことになります。渤海に行くためには、必ず水深浅い黄海をとおらなければなりません。

中共は、なぜこのような不合理なことを未だに続けているのでしょうか。それには、いろいろな観測がありますが、その中で最も合理的と思われるのが、様々な艦艇、特に潜水艦は、中国共産党にとって脅威になるからというものです。

中国の人民解放軍は、普通の国の軍隊とは違い、中国共産党の下に位置し、いってみれば共産党の私兵であり、いくつかの軍(戦区)にわかれており、その軍が、戦車や航空機、艦艇を持ち、核兵器も持っている軍もあるという異様な形態をしています。しかも、この軍はそれぞれ自ら事業も展開しており、これが不正の温床ともなっています。


それぞれの軍自体が、共産党の私兵であり、事業も展開しているのです。日本でたとえると、商社が武装しているようなものです。

そうして、共産党は決して一枚岩ではなく、派閥争いが絶えません。最近は、習近平が掌握しつつあるとはいっても未だ完璧ではありません。いつ派閥争いが激化し、軍隊もそれに呼応して、いつ中国共産党中央政府にたてをつくかわかったものではありません。

だからこそ、中国共産党は今でも北京の直接の勢力下にある渤海でだけ、潜水艦のメンテを行わせているのでしょう。

もし、自らの勢力下にないところの造船所で、潜水艦のメンテを行えば、造反しやすくなり、造反されれば、北京にミサイルを打ち込まれ、中国共産党中央政府は崩壊するかもしれません。それも核を打ち込まれれば、とんでないことになります。そんなことを避けるためにも、今でも渤海でしかメンテをさせないのでしょう。

中国の潜水艦はすべてメンテを行うためには、水深の浅い黄海を通らなければならないのです。これは、せっかくの潜水艦の隠密性を自ら放棄しているようなものです。

黄海を航行する潜水艦は、水深が浅いことから、米軍側としては、かなり発見しやすく、確実に仕留めることができます。これは、航空勢力で十分にできるでしょう。

米軍が黄海でたびたび演習するのは、こうしたことを見透かして、中国を牽制する目論見もあると考えられます。

海上自衛隊の艦船や航空機は2017年末以降、黄海や東シナ海の公海上で中国船などによる北朝鮮船への石油精製品の密輸を監視しています。これは大東亜戦争後初めてのことでした。北朝鮮への石油輸出制限の抜け穴をふさぎ、国連安全保障理事会による対北朝鮮制裁決議の実効性を高める狙いとされており。海自の集めた情報は米軍とも共有し、密輸防止に生かしているといわれています。

ただ、これも密輸にかこつけて、中国に対する牽制も行っているものと考えられます。黄海の浅い海を航行する、中国の潜水艦は対潜哨戒能力が高い日本も、簡単に発見できますし、すぐにこれを撃沈することもできます。

日米は、中国のすべての艦艇の音紋を採取し、メンテナンスの頻度なども把握しているでしょう。


海上自衛隊が黄海で監視をしていることは、テレビでも報道されていましたが、あまり話題にはなりませんでした。ただ、青山繁晴氏がテレビで「戦後初めて」という言葉を使って、その意味合いを説明していました。

中国にとっては、黄海で、米韓が演習をしたり、日本が監視活動を行うことは、本当は嫌で嫌でたまらないのでしょうが、これに強く抗議すると自ら弱点を世界に晒すことになるので、それもあまりできないのでしょう。

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2023年2月2日木曜日

チェコ下院議長、3月末に台湾訪問へ 呉外交部長、協力の推進に意欲―【私の論評】チェコがとうとう挙国一致で、台湾を応援できる日がきた(゚д゚)!

チェコ下院議長、3月末に台湾訪問へ 呉外交部長、協力の推進に意欲


呉釗燮(ごしょうしょう)外交部長(外相)は1日、チェコのマルケタ・ペカロワ・アダモワ下院議長とテレビ会談を行い、台湾とチェコの友好関係を確認した。外交部(外務省)によるとアダモワ氏は3月末に台湾を訪問する予定で、呉氏は歓迎の意を伝えたという。

外交部によれば、会談は約20分間行われ、国立故宮博物院とチェコ国立博物館との協力や産業面での連携、権威主義の脅威への対応など幅広い分野で意見交換した。呉氏はチェコが台湾と同じ価値観と理念を分かち合い、ウクライナを支持・支援していることに感謝を示し、台湾は今後も民主主義の価値を堅持するとした上で、チェコとの協力推進の継続に意欲を示した。

アダモワ氏は訪台について強い期待を表明した他、蔡英文(さいえいぶん)総統が先月30日、チェコ大統領選で当選したペトル・パベル元北大西洋条約機構(NATO)高官と電話会談したことに触れ、チェコの台湾に対する支持と民主主義陣営団結の力を際立たせたと強調。台湾との友好関係のさらなる推進と深化に期待を寄せ、ウクライナの戦後復興でも協力の機会などがあると信じると述べた。

【私の論評】チェコがとうとう挙国一致で、台湾を応援できる日がきた(゚д゚)!

上の記事にもあるように、チェコでは1月、現職のゼマン氏の任期満了に伴う大統領選挙が行われ、NATO=北大西洋条約機構の元高官のパベル氏が当選しました。

日本のメディアでは、この事実が淡々と報じられるだけで、この新大統領の登場が何を意味するのか、とりわけチェコと台湾に関係にとってどのような意味を持つのか報道されません。そのため、本日にこれに関して掲載します。

チェコ・台湾関係というと、コロナが猛威を振るっていた2020年8月にチェコは台湾に90人の代表団を送っています。これについては、このブログでもその内容を紹介したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
チェコ上院議長が台湾到着 90人の代表団、中国の反発必至―【私の論評】チェコは国をあげて「全体主義の防波堤」を目指すべき(゚д゚)!

   台湾北部の桃園国際空港に到着したチェコのビストルチル上院議長(中央)と
   出迎えた呉●(=刊の干を金に)燮外交部長(右)=30日

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事より一部を引用します。

まずは、元記事から引用します。
 東欧チェコのビストルチル上院議長(ブログ管理人注:現在も現職)を団長とし、地方首長や企業家、メディア関係者ら約90人で構成される訪問団が30日、政府専用機で台湾に到着した。台湾と外交関係を持たないチェコが中国の反対を押し切り、準国家元首級の要人が率いる代表団を台湾に派遣したのは初めて。国際社会での存在感を高めたい台湾にとっては大きな外交上の勝利といえるが、中国が反発するのは必至だ。

 チェコ上院議長の訪台をめぐっては、ビストルチル氏の前任のクベラ氏が昨年に訪台を約束したが、中国大使館から脅迫され1月に急死した。ビストルチル氏は上院議長就任後、何度も「クベラ氏の遺志を引き継ぐ」と表明していた。
この記事の【私の論評】から引用します。

親中的な現職ゼマン大統領
チェコ側も2013年に親露的でもある、ゼマン氏が大統領に就任して以後、対中関係の強化を図ってきました。ゼマン氏は訪中を繰り返し、2015年に中国が戦争勝利70周年記念の軍事パレードを実施した際も、欧米諸国のほとんどが国家元首出席を見送る中、北京に赴いて、中国との親密ぶりをアピールしました。
簡単に言ってしまうと、元々はチェコ政府は、親中的だったのですが、中国に反対する勢力が増大し、2020年にはチェコの憲法で大統領に次ぐ地位とされる上院議長のビストルチル氏をはじめとするチェコの議員団が90人も台湾を訪問したわけです。

そうして、大統領が新台派のペトル氏に変わることが決まってから、今度は下院議長のアダモワ氏は3月末に台湾を訪問する意向を表明したのです。おそらく、20年当時のように、下院の議員団も訪問するのではないかと考えられます。

台湾総統府によりますと、パベル次期大統領と蔡総統が先月30日夜、電話会談を行いました。

蔡総統はパベル氏の当選を祝福したうえで「台湾は、半導体設計や先端科学技術の人材育成、世界的なサプライチェーンの再構築などの分野で、チェコと協力を深めたい」と述べたということです。

次期大統領ペトル・パベル元北大西洋条約機構(NATO)高官

パベル次期大統領は会談後、ツイッターに「台湾とチェコは自由と民主主義と人権の価値観を共有していることや、将来、蔡総統と対面する機会を持ちたいことを伝えた」と投稿しました。

チェコは中国と国交を結び、台湾とは外交関係がありません。

こうした国の次期大統領が台湾の総統と電話会談するのは異例です。

ヨーロッパでは、中国の人権問題に対する懸念や、当初期待したほどの投資効果が得られないことなどを理由に、中国と距離をとり、代わりに半導体など先端技術で存在感を増す台湾との関係を深める動きが出ています。EUでも西側の諸国では、はやくからそのような動きをしていましたが、チェコを含む東欧諸国が当初中国の一帯一路による投資を歓迎しましたが、ここ数年はこれに離反するようになりました。

大統領がペトル氏に変わることで、チェコは国をあげて台湾を応援する国になったといえます。2020年当時のこのブログで、私が主張した通りになったということで、本当に良かったです。

先日、このブログにも掲載したように、最近では中国の南太平洋における動きが活発になっています。

中国の台湾侵攻は、現実にはかなり難しいです。実際、最近米国でシミレーションシした結果では、中国の報復によって、日本と日本にある米軍基地などは甚大な被害を受けますが、それでも中国は台湾に侵攻できないという結果になっています。そうして、無論中国海軍も壊滅的な打撃を受けることになります。

であれば、中国としては、台湾侵攻はいずれ実施するということで、まずは南アジアの島嶼国をなるべく味方に引き入れるという現実的な路線を歩もうとするでしょう。これによって台湾と断交する国をなるべく増やし、台湾を世界で孤立させるとともに、これら島嶼国のいずれかに、中国海軍基地を建設するなどして、この地域での覇権を拡大しようとするでしょう。

実は、中国はチェコも含む一帯一路による投資などで、東欧で似たよう動きをしていました。しかし、今では多くの国々が離反しています。

どうしてこのような動きになるかといえば、やはり経済に着目すべきと思います。特に一人あたりのGDPに着目すへきです。

上のグラフをご覧いただけると、2021年のチェコの一人あたりのGDPは2万ドル台です。これは、先進国から比較すれば、低いですが、それでも中国の1万2千ドルの倍以上です。

しかも、中国の経済統計はデタラメで、本当は1万ドル以下とみたほうが妥当です。このような国が、チェコなどに投資して成功する見込みはほとんどありません。

なぜなら、チェコ政府が中国の一帯一路などを当初歓迎したのは、それによって国民一人ひとりが豊になることを期待したのでしょうが、一人あたりGDPが低い中国には元々そのようなノウハウはありません。幹部とそれに連なる幹部が豊になるノウハウを持っているだけです。

チェコの一人あたりのGDPは2000年代頭までは、1万ドルを切っていましたが、現状では2万ドルを上回っています。1万ドルだった時代には、中国の投資は魅力的にみえたのでしょうが、自力で2万ドルを越してしまった後では、魅力も薄れたのでしょう。

それと第二次世界大戦前までは、チェコは議会制民主主義が機能しており、工業化も進んでおり、米国と並ぶくらい豊な国だったのが、英仏などが当時のナチス・ドイツに対して宥和政策を取ったがゆえに、ドイツに蹂躙され、占領され、戦後はソ連の衛星国となり、全体主義に翻弄された悲惨な経験があるということもあるでしょう。

一方、南太平洋の島嶼国は、未だ一人あたりのGDPが1万ドル以下の国が多く、中国の投資を魅力的に感じる国も多いことでしょう。東欧で一帯一路に失敗した中国は、ここしばらくは、軍事的にも重要な、南太平洋に注力することでしょう。

それにしても、今回チェコが挙国一致で、台湾を応援できる体制になったことは、まことに喜ばしい限りです。いずれ、チェコ大統領が台湾を訪問するというような、歴史の1ページを飾るようなイベントが催されるかもしれません。今から楽しみです。

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2023年2月1日水曜日

戦車供与 補給が課題…英国際戦略研究所 リサーチアナリスト ヨハン・ミシェル氏 [ウクライナ侵略1年]―【私の記事】深刻なウクライナのもう一つの戦い「汚職撲滅」は戦後の高度経済成長に欠かせない(゚д゚)!

戦車供与 補給が課題…英国際戦略研究所 リサーチアナリスト ヨハン・ミシェル氏 [ウクライナ侵略1年]

英国際戦略研究所

 最近発表された米欧の軍事支援の貢献は大きい。ウクライナ軍は西側諸国の装備を使い、装甲車や自走 榴りゅう弾だん 砲を大量に装備した機械化歩兵師団や、機動力を高めた自動車化歩兵師団を複数編成できる。独製「レオパルト2」や米製「M1エイブラムス」など100両近い戦車の供与にもメドがつき、戦闘力は大きく向上する。

 ウクライナ軍は現在使っている旧ソ連製戦車の弾薬が尽き始めており、数か月のうちに枯渇すると予想されていた。欧米製戦車を求めたのは、西側が供給できる弾薬へのアクセスを可能にし、継戦能力を維持するためだ。戦車は敵の防衛線を破って領土を奪還するだけでなく、機動的な防衛力も提供する。

 戦車は供与して終わりではない。最も重要な要素は補給だ。ベストは単一の戦車を大量に提供することだったが、今回は複数種に分かれた。それぞれにスペアパーツ、異なる訓練が必要で、隣国のポーランドやスロバキアには車両の補修を担う施設が要るだろう。戦車を前線に運ぶトラックもいる。それを守る防空網も必要になる。各国の役割分担が求められるだろう。

 ドイツが「レオパルト2」の供与に方針転換したことは意義深い。西側全体としてウクライナ軍事支援の方向性が当面続くからだ。米国は本音では戦車を差し出したくなかったはずだが、同盟結束のために実行し、欧州の安全保障に引き続き関与する姿勢を見せた。これも前向きに評価できる。

 戦車供与を巡る混乱では、ドイツ一国が拒んだ結果、西側全体の支援が何週間も滞った。同じ事態を繰り返すのは避けるべきで、ドイツ以外の国も兵器製造などで貢献し、欧州の選択肢を増やすことが望ましい。

【私の記事】深刻なウクライナのもう一つの戦い「汚職撲滅」は戦後の高度経済成長に欠かせない(゚д゚)!

上の記事の内容など、あまり詳しくはなくても多くの人がご存知だと思います。私も、以前戦車供与関係のニュースはこのブログに掲載したことがあります。

ただ、ウクライナのもう一つの戦争については、意外と知らない人もいらっしゃるかもしれません。もう一つの戦争とは、「腐敗や汚職」との戦いです。

本日も、以下のようなツイートを発見しました。


このツイートの裏取りはしていませんが、このようなことは、ウクライナであれば、十分あり得ると思います。

何しろ、ウクライナはもともと「腐敗まみれ」だったからです。その伝統は、今も引き継がれているいるようです。

1月29日の段階で、11人の政府高官が、汚職撲滅を目指すウクライナ政府の取り組みの一環として、辞任あるいは更迭されていました。

ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、一刻も早く世間の信頼を取り戻そうとしています。しかし、汚職疑惑の内容は深刻で、タイミングも悪いものでした。

汚職の指摘のいくつかは、現地メディア「ウクラインスカ・プラウダ」の調査報道記者、ミハイロ・トカチ氏のおかげで、表面化しました。

トカチ氏は最近、とある政府高官のパーソナル・トレーナーの会社が、ロシアの侵攻開始以来、数百万ポンドを受け取っていた疑惑を伝えまし。ウクライナ大統領府のキリロ・ティモシェンコ副長官の汚職についても報じました。

ティモシェンコ氏が大手デベロッパーの邸宅に家族を引っ越しさせていたとトカチ氏が報じた2カ月後、ティモシェンコ氏は辞任しました。

ミハイロ・トカチ氏

トカチ氏はさらに、ティモシェンコ氏が高額なポルシェに乗っていると様子に見える動画を公開しています。ティモシェンコ氏は、自分は何も問題のある行動はとっていないと主張しています。

「資金の出所がはっきりしない資金について、政治家や政府関係者は、その資産を近親者名義にすることが非常に多い」と、トカチ氏は話しています。

「これは、不透明な手口を示すものだ。今は政府関係者の一挙手一投足が、社会に明示されるべき時なのに」

トカチ氏は、汚職が横行するのはよその国も同じだ認めた上で、何より大事なのは、汚職にどう対応するかだと言います。

ウクライナが軍事、人道、財政面で数十億ドルの支援を受け取ることには、責任が伴う。監視の目も厳しくなる。

一方で、こうした資金が間違った相手にわたる可能性も増している。

「我々はウクライナの存在について話している」とトカチ氏は話す。

「ウクライナにとってこの1年は、ありきたりのものではなかった。ゼレンスキー大統領が引き起こした、大勢の辞職は、事態の重みを認める大切なもので、必要な対応だった」

2020年このトカチ氏が所属する、2犯罪汚職犯罪の調査報道「スキーム」の撮影班運転手の自家用車が何者かに放火されたことに対して、発言をしていました。

「スキーム」の記者であるミハイロ・トカチ氏がフェイスブック・アカウントで伝えていました。

トカチ記者は、「悪いニュースが続いている。私たちが4年間、撮影で使ってきた車両が、あなた方が見たように、燃やされた」と書き込みました。

「スキーム」の記者であるミハイロ・トカチ氏がフェイスブック・アカウントで伝えました。

トカチ記者は、「悪いニュースが続いている。私たちが4年間、撮影で使ってきた車両が、あなた方が見たように、燃やされた」と書き込みました。

トカチ氏は、この車両で最後に撮影したのは、「道路の王様たち」という名の、政権幹部による道路交通法違反に関する報道だったと伝えました。

これに先立ち、トカチ氏は、同年8月8日に自身の居住地にて通信傍受のための機器が見つかったと治安機関に通報しています。その後、同氏は、11日に警察捜査班が対応しないことに対するクレームも提出していました。

トカチ氏は、「撮影の際や、報道の中にて、私たちの車や私たちが国家警備局職員に監視されていると何度も強調してきた。車は、運転手の住む建物の近くに停められていた。盗聴、車両放火、次は何だ?」と書き込みました。

以下に、その書き込みを掲載します。

31年前に独立を宣言して以来、ウクライナでは公共事業と政界のほとんどに汚職が蔓延(まんえん)してきました。

2014年にはなんとしても民主化を求める国民の反政府デモによって、親ロ派のヴィクトル・ヤヌコヴィチ大統領が失脚しました。

それ以来、ウクライナ政府はさまざまな政治改革に取り組んできました。ロシアはウクライナに軍事介入を繰り返すようになったのが、改革への大きな原動力となりました。西側から継続的な支援を受けるためにも、ウクライナには改革が必要とされました。

新しい反汚職機関が設置され、公金の使い方にはに新しいシステムが取り入れられ、警察組織が再編されました。政治家は資産公開を求められ、時につらくなるほどの蓄財ぶりが明らかになりました。

ウクライナ議会の反汚職委員会で副委員長を務めるヤロスラフ・ユルチチン議員は、「我々には結果が重要だ」と語りました。

「確かに、過去の汚職の残りがまだある。だが少なくとも今は、それについて黙っていない。次の段階は汚職防止だ」

ユルチシン議員は、西側諸国からの支援が危うくなったとしても、今回の政府高官の違法行為発覚は最高のタイミングだったと話しています。

「西側のパートナーは、ウクライナが2つの戦争を戦っていることを知っている(中略)ひとつはロシアとの戦争、もうひとつはウクライナの将来に向けた内部の戦争だ」

昨年2月にロシアが全面侵攻してくる以前、欧州連合(EU)やアメリカはウクライナの反汚職対策に満足していませんでした。

2023年に持ち上がった疑惑がゼレンスキー大統領にどのような政治的ダメージを与えるかは不明ですが、今回の大統領の対応は、米国から「迅速かつ断固としている」と評価されています。

今後、さらに複数の汚職疑惑が浮上すると予想されます。それだけにゼレンスキー氏としては、米国以外の支援国からも同様の好意的な反応が欲しいところでしょう。

このような「汚職」はなぜ起こるのでしょうか。ウクライナにはウクライナの事情があり、汚職が頻繁に起こる他国には、他国なりの事情があるのでしょうが、私自身は、共通しているところもあると思います。

それは、貧困です。このようなことは、賃金が安い国で普通にみられることです。ウクライナも貧困国なのです。それは、下のグラフをご覧いただければ、おわかりいただけるものと思います。

一人あたりのGDP比較

日本も貧困化がいわれていますが、ウクライナの一人あたりGDPは2021年時点で、4千ドル台です。1ドル100円で大雑把に計算すると、40万円台です。大雑把には、一人あたりGDP≒賃金ですから、ウクライナでは一人あたりの賃金は40万円台ということになります。これは、日本の1/10です。

これらの国々では、土地や食料品の価格や、国内で生産できる物資の価格は低く抑えられるのが通例なので、なんとか生活してはいけるのでしょうが、それにしても貧乏です。

こうした国では、官僚や政治家など、いわゆるエリート層といわれる人でも、合法的に得られる収入はかなり少なく、そのため違法なことにでも手を染めて、多額の蓄財をするのが常です。そうして、それはいずれ、個人の汚職から、組織的で体系的な蓄財しシステムになるのも常です。

ウクライナも例外ではないですし、中国やロシアはその典型でしょう。

昔、会社の同僚が、東南アジアのある国に、事務所を開こうとしたのですが、本来開くはずの日を一週間過ぎでも、開かないので、現地に様子を見に行った所、役人に賄賂を支払っていなかったことが原因であることが判明しました。

現地に出向いた人が、彼の国では、賄賂が当たり前で、まともに申請していては、埒が明からないことを知らなかったため、賄賂を出さなかったので、いつまでも許可がおりなかったのです。

その同僚はさっそく役所に出向き、担当の役人に、相場以上の賄賂を提供したところ、数時間で許可がおりたそうです。彼の国では、このようなことが常態化していたのです。

低賃金の国では、このようなことが常態化しているところが多いです。

特に、ウクライナは、戦前には中国人の手頃な留学先になっていたように、他の発展途上国とは違い、宇宙産業、航空産業もあり産業基盤も整っており、文化水準も高く比較的教育水準が高いにも関わらず、低賃金です。一般の人も当然賃金が安く、生活が苦しいため、機会があれば、汚職に手を染めてしまいがちです。

こうした腐敗がさらに非効率を生み、経済成長を阻害し、なかなか貧困から抜け出せなくなるのです。

現在は、戦争中ですから、なかなかうまくはいかないでしょうが、戦争が終了すれば、「汚職」対策を徹底的に行い経済発展をさせるべきでしょう。

ゼレンスキー政権の与党幹部、アラハミア最高会議(議会)議員は1日、汚職疑惑で高官経験者や新興財閥(オリガルヒ)の一斉捜査が開始されたと明らかにしました。通信アプリ「テレグラム」で「国家は有事に変革する。変わる気のない者には国家が手助けする」と警告しました。

アラハミア氏によると、捜査では、巨額還付金の詐取が疑われる税務当局幹部や、1月に首都キーウ(キエフ)で墜落したヘリコプターの納入に関与したアワコフ元内相、2019年のゼレンスキー大統領当選に寄与した大富豪コロモイスキー氏が対象になったといいます。

アラハミア最高会議(議会)議員

私は、以前このブログに掲載しましたが、ウクライナは教育水準が高く、人口も比較的おおく、産業基盤も整っていることから、戦争が終わり、ある程度「汚職」を取り除き、EUに加盟できるくらいになれば、かなり経済発展をする見込みのある国だと思います。

今まで成長できなかったのは、国外ではロシア事あるごとに干渉され、国内は「汚職」塗れだったからです。この軛から開放されれば、ウクライナは、高度成長することでしょう。私は 10年後には、ウクライナが世界で一番経済発展する国になっている可能性もあると思います。

ただ、まずは汚職をある程度撲滅できなければ、EUには加盟できず、貧困状態が続くことになるでしょう。

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2023年1月31日火曜日

遂に減少し始めた中国の人口 背景に儒教の影響も―【私の論評】中国では「人口減」は大きな脅威!日本ではこれを大きな「機会」と捉えることができる(゚д゚)!

遂に減少し始めた中国の人口 背景に儒教の影響も

岡崎研究所


 1月17日付の英フィナンシャルタイムズ紙(FT)に、FTのEleanor Olcott在香港中国特派員とSun Yu中国経済担当レポーターが 「中国の人口が歴史的変化の減少になる。60年で最初の減少は国内および世界経済に長期的な影響を持つ」との記事を書いている。

 2022年、中国の人口は数十年で初めて減少した。中国は世界最大の人口を有する国家として、長い間、中国と世界の成長を支える労働力と需要の重要な源であった。2023年1月 17日、中国の国家統計局は、全人口が60年ぶりに2022年に85万人減り、14億1175万人になったと発表した。

 中国のゼロコロナ政策が出生率の減少を加速させたと見られている。昨年、出生数は956 万になり、一昨年の1062万を下回った。2022年の出生率は70年以上前に記録がとられるようになってから最低で、1000人当たり6.77人であった(2019年は10.41人)。

 国家統計局長は、15歳から49歳の出産可能年齢の婦人の数が100万以上減ったと述べた。赤ちゃん商品や産科関連株はこの発表で売られ、8.5~11%も値下がりした。

 この人口減少は1980年に課された一人子政策に根を持つ。当局はこの政策を2016 年に撤廃したが、その後も出生数は減りつづけている。2022年の死亡率は1000人当たり7.37人で 1970年代以降最大であった。

 中国のゼロコロナ政策の先月の突然の廃止とその後の感染増は病院を急速に逼迫させた。中国の人口上の転換点は、日本(2010年より人口が減り始め、その後毎年減り続けている)と同じ道筋に中国を置いている。

 国連は中国の人口は 2050 年までに13.1 億人に、世紀末には7.67億人になると予想している。インドの人口は今14億660万人で、今年インドが中国を追い抜き世界第一になるとされる。

*    *    *

 2022年に中国の人口が減り始めるという事は予想されていたことである。が、実際に起きてみると、それは世界経済、世界政治にとり大きなニュースになった。日本も少子高齢化に悩んでいるが、中国の場合その悩みはさらに大きなものになるだろうと考えている。

 第一に、2021年の特殊合計出産率は日本は1.33であるが、中国は1.15であり、日本より低い。ちなみに韓国は1.0以下であり、さらに低い。

 第二に、儒教の影響力が強い中国と韓国には女子より男子を優先する傾向があり、1人しか子供を持てないとなると女子は中絶し男子を生む傾向が出てくる。韓国の小学校を見学してみると、運動場で整列している子供は、男子の列の方が女子の列よりずっと長いことが多いようだ。中国でも同じ傾向があると聞いた。

 要するに、人口が男子に偏り、結婚相手たる女子が不足することがある。ベトナムから女子が中国側にさらわれたというような話があるが、そんなことで是正される問題ではない。問題の規模が違う。さらに婚外子に対する差別感情が強いように思われる。

 先進国は大概少子高齢化に悩んでいる。フランスとスウェーデンは子供の出生数が多く、少子化をある程度克服している。しかし生まれている子供の過半数は婚外子である。そういうことにすることには中韓両国ともに抵抗がある。

 日本は出生者数の男女比はほぼ同じで、中国や韓国とは異なる。日本の少子化問題の克服は中韓両国よりは易しいのではないか。シングルマザーの許容、支援をすれば、フランスやスウェーデンのような効果が得られるかもしれない。

 中国の人口減少は経済、政治の面で大きな影響を今後世界に与えていくだろう。注視していく必要がある。

 1978~89年の中国最高指導者であった鄧小平は、共産党指導者の任期制や集団指導制や外交での国際関係の処理などで新しい路線を打ち出した賢人であったと考えられる。今、習近平がそれを逆回転しているのを残念に思っているが、鄧小平の一人っ子政策は、長い目でみれば誤りであったように思う。

今年にもインドが「人口世界一」の座に

 上記のFTの記事にもあるように、今年にも、インドが中国を抜いて世界第一の人口を抱える国家になる。世界第一の民主主義国でもあり、若年層の人口割合の高いインドが、今後、世界経済や国際政治で、存在感を増して行くことは間違いないだろう。

 日印関係は、今までも良好に推移してきたが、さらに緊密化して行く余地がある。日米豪印のクワッドの枠組みが出来たことも、日本にとってプラスに働くだろう。

【私の論評】中国では「人口減」は大きな脅威!日本ではこれを大きな「機会」と捉えることができる(゚д゚)!

中国の人口減少しますが、日本もその傾向は続いています。2022年1月1日時点の日本人の人口は1億2322万人あまりで、2021年からおよそ62万人減り、13年連続で減少しました。新型コロナの影響で都市部への流入が減ったことなどから、東京は26年前の平成8年以来の減少に転じました。

出生数を、都道府県ごとにみると、増えたのは沖縄県のみで、神奈川県はほぼ横ばいでした。人口に関する統計には、生命表という「どのくらいになると死ぬか」という安定的な指標があります。これは、生命保険などに利用されています。

出生率の予測は難しくないですし、死亡率の予測はさらに簡単で、両者をあわせてみると、日本の人口の減少は、今後10年~20年は続きます。その後は、どうなるのかはわかりません。

そこから先は出生率がどうなるのかというこに依存します。日本の人口は約1億2000万人であり、減っていけばいずれ1億人を切るのは間違いありません。しかし、たとえ8000万人くらいになっても、世界のなかで20番以内には入るくらいの大きい国です。

ちなみに、大東亜戦争の時の日本の人口は「一億総火の玉」というキャッチフレーズがあったことから、多くの人が漠然と、一億人くらいと考えているようですが、実際には7000万人台でした。

昭和17年〈1942年〉大政翼賛会ポスター

7000万人台の人口の国が、最終的には負けたとはいえ、米英を相手に戦い、当時のソ連と対峙して、中国大陸や東南アジアにも兵を送り、豪州を爆撃したのですから、人口が8000万人になったからといって、特に大きな問題だとはいえないのではないでしょうか

それに、人口爆発は対応が難しいですが、人口減少には機械やロボットを導入することによって対応できます。

ロバート・マルサスの「人口論」でも指摘されているように、幾何級数的に人口爆発が起こるとほとんどコントロールができなくなって、対応策がありません。人口減少より、人口爆発のほうがはるかに脅威です。

人口減少の場合は、幾何級数的に人口が減少が起こることはなく、漸減していくので、これには対応策があります。要するに、機械化やロボットを増やすという単純な回避方法です。これは、経済学で言うところの、「装置化」するということです。

日本の産業ではロボット化が進んでおり、これとAIが結びつけばさらに生産性は向上する

さらに、人口について予測するのは比較的簡単です。予測するのが簡単であれば、それに合わせて社会制度を変えることも簡単です。人口減少を単に大問題と考え、目の前の問題を解決すれば、良いという考え方であれば、あまりうまくはいかないかもしれません。

それはマイナスの状態をゼロにするにすぎません。人口減少をマイナスと考えるのではなく、プラスの状態を起こすためには、機会に焦点を合わせなければならないです。

経営学の大家ドラッカー氏以下のように語っています。
問題ではなく、機会に焦点を合わせることが必要である。もちろん問題を放っておくわけにはいかない。隠しておけというわけではない。しかし問題の処理では、いかにそれが重大なものであろうとも、成果がもたらされるわけではない。損害を防ぐだけである。成果は機会から生れる。
ただし、人口が減ることによって、内需が縮小していくから経済が減速するので「人口オーナスだ」などといわれます。ただ同時に作る人も減るのですから、これはあまり関係ないです。現在でも、人口が減っている国は世界のなかで20ヵ国~30ヵ国あります。しかし、それらの国が大変になったという話はありません。


国内総生産(GDP)をみれば、「給与×人口」なのでGDPは減りますが、1人あたりGDPでみると、人口の増減はほとんど関係ないということがわかっています。

「人口オーナス・ボーナス」は一人あたりのGDPや、生産性など長期にわたって、全く同じという条件の下でのみ当てはまる現実にはあり得ない限定的な理論といえます。

これらを勘案すると、人口減少の何が問題なのかといえます。特にこれからは、AI(人工知能)の活用により装置化がやりやすくなります。

人口減少への対応は多くの人に思われているよりは簡単で、先ほど言った装置化するというようなことなのですが、「AIが出てくると仕事が減って大変だ」と言いつつ、「人口減少も大変だ」と言うのは大いに矛盾しています。

かつて日本では高度経済成長時代に「人手不足だ」と言われたときは、まさに装置化によって飛躍的にイノベーションが起こりました。

さらに、こうしたことをただ問題の解消として捉えるのではなく、機会として捉えるべきです。機会としては、賃金を現在の倍どころか3倍にすることも可能になるかもしれません。それこそ、学費の無料化、研究費などの倍増、軍事費のさらなる増額と高度化、新たな産業の創生など様々な機会が目の前に広がります。

これらのことは、人口減少しなくても実現すれば良いのですが、何かの変化があって、それに対応しようとして努力するというほうが、周りのコンセンサスが得られやすいです。

人口減少を単なるマイナスであり、この問題を解消するためだけに努力するというのでは進歩はありません。

経営学の大家であるドラッカー氏は以下のようにも述べています。
問題に圧倒されて機会を見失うことがあってはならない。ほとんどの組織の月例報告が第一ページに問題を列挙している。しかし、第一ページには機会を列挙し、問題は第二ページとすべきである。よほどの大事件でも起こらないかぎり、問題を検討するのは、機会を分析しその利用の仕方を決めてからにすべきである。

このように考えると、「少子化」「高齢化」は問題ではなく、機会になる可能性が大きいです。そうして、産業界は実際その方向に向けてすで動いています。

ただ、一つ心配なのは、日本の硬直的な財政金融政策です。人口が減って、それに対応しつつ生産性をあげているときに、それに対応して、政府が日銀や財務省に対して柔軟な対応をさせなければ、需要か供給のギャップが必ず発生します。このギャップに対応して、金融緩和+積極財政、金融引締め+緊縮財政のいずれかを柔軟に実行できる体制でなければなりません。

そうでないと、せっかく装置化をすすめても、深刻なインフレか、深刻なデフレを招くだけになってしまいかねません。人口減少は機会になるどころか、大問題となり、日本人を苦しめることになるかもしれません。

かつての平成年間の日本のように、景気が悪くても、デフレであっても、政府は緊縮財政を繰り返し、日銀は金融引締めを繰り返すという硬直的な姿勢では、人口減にも適切に対応できないでしょう。

今後の人口減は、いままでにない未曾有の経験です。装置化とは生産性を高めることを意味します。人口減による生産性の低下を装置化によって生産性を高めることのバランスをとることはさほど難しいことのようには思えないのですが、過去の日銀の金融政策をみているとは、そうとは言い切れません。

産業界は「人口減少」に対応していますし、これからもできるでしょうが、日銀や財務省がこれに適切に対応できるかどうかは、未知数です。これが日本の少子化に対応していく上での、唯一心配なところです。

さて、中国の場合も、「人口減少」は、それに対応できれば、大きな問題にはならないでしょう。それどころか日本と同じく「機会」となる可能もあり得ます。

ただし、中国には日本の問題よりもさらに大きな問題があります。それは、中国は日本などの先進国と異なり、民主化、政治と経済の分離、法治国家化がなされていないことです。

そのため、現在の中国は全体主義国家でありり、このような国では無意味な「ゼロコロナ政策」をやめるのですら、時間がかかりました。それに、やめるにしても、それに対して柔軟に対応しつつやめるのではなく、なし崩し的にやめてしまいました。

私は、中国共産党は、国民がどれだけ亡くなろうとも、集団免疫が獲得できれば、それで良いと、ほとんど何も対応策を講じずに、政策転換をしたとしか思えません。

そのため「人口減少」に対する対応も、柔軟にはできず、「人口ボーナス」を最大限に活かす体制をこれからもしばらく変えることができず、弊害が誰の目にみても明らかになってから、ようやっと転換するか、結局できないのではないかと思います。

特に、このブロクでも以前指摘したように、現在中国は国際金融のトリレンマにはまっており、その結果として、独立した金融政策が行えない状況になっています。

独立した金融政策が行えないとは、たとえば国内の失業率の増加などに対応して、金融緩和を行うと、深刻なインフレに見舞われたり、キャピタルフライト(資本の海外逃避)などが起こってしまうので、金融緩和したくてもできない状況のことです。

この状況を緩和するには、資本の移動を自由にするか、人民元の固定相場制を変動相場制にするという大胆な改革が必要なのですが、中国は未だにそれを実行していません。これを実行すれば、中国共産党の当地の正当性が脅かされるので、やりたくてもできないのかもしれません。

中国では「人口減少」がおこり、それに対応して、「装置化」をすすめるために、積極財政はできるかもしれませんが、独立した金融政策はできないのです。いくら積極財政をしても、金融緩和しなれば、全体の貨幣の流通量は変わらないので、金融緩和ができなければ、デフレが進行するかもしれません。あるいは、「装置化」が進みすぎて、逆にインフレが亢進するかもしれません。

いずれの場合も、金融政策を適切にすれば、それを克服することができるはずですが、中国はこれができないのです。金融政策をしようとすると、不都合がおこり、なかなか実施できないのです。

ただし、中国としててはまだできる手はあるかもしれません。それは、たとえば中国がデフレ傾向になれば、日銀が従来のように金融引締を続ける政策に戻させることです。そうなると、従来のように円高になり、中国は日本から部品や素材を安く買い、それを組み立てて安い製品を輸出することができます。そのため、中国は日本政府の高官や日銀官僚に工作をかけるかもしれません。

さらに円高が亢進して、超円高になれば、日本企業は国内で製品を製造して、輸出するよりも、中国で製造して日本や、海外に輸出するほうが安くなり、日本の中国への産業移転がすすみ、過去の円高時のように日本で産業空洞化が進むかもしれません。

しかし、これには伏兵もあるでしょう。中国に経済制裁を加えている米国がこれを見逃さないでしょう。現状では、米国は軍事転用できるうる先端的な半導体等を中国が製造したり、輸入できないようにしていますが、日本が超円高になれば、中国は先端的でない技術を用いた製品の製造でもかなり有利になるため、これを防ぐ方向に動くでしょう。

そうなると、中国は日本がどのような金融政策をとっても、無関係になります。

逆に中国がインフレになれば、理屈上は、日本に工作をかけ、日本をさらにインフレ傾向に持っていけば中国はインフレを克服できるかもしれませんが、さすがにこれは無理でしょう。

デフレは、少しずつ悪くなっていくので、ゆでガエルのように多くの人がすぐには気づきにくいですが、インフレ、それも超インフレの場合は、日々物価がかなりあがるので、多くの人がすぐに異変に気づきます。これは、すぐに大騒ぎになるので、日銀がインフレ政策を取り続けることはできないでしょう。


中国はいずれにしても、民主化や資本の自由な移動、人民元の変動相場制への移行などをすすめなければ、独立した金融政策ができず、「人口減少」に対応できなくなります。

日中ともに、「人口減少」そのものは本来さほど脅威ではないはずなのですが、独立した金融政策ができない中国では「人口減」は大きな脅威となります。独立した金融政策が可能な日本ではこれを大きな「機会」と捉え、社会変革を実現すべきです。

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2023年1月30日月曜日

岸田政権、韓国に「反省表明」の懸念 「元徴用工」訴訟めぐる賠償肩代わり「存在しない『責任』に『謝罪』するのは日本人の悪癖」藤岡信勝氏―【私の論評】日米ともに、戦時中の「徴用工」募集は、戦後の女性の社会進出を促した!この事実を歪める韓国に謝る必要なし(゚д゚)!

岸田政権、韓国に「反省表明」の懸念 「元徴用工」訴訟めぐる賠償肩代わり「存在しない『責任』に『謝罪』するのは日本人の悪癖」藤岡信勝氏

昨年8月24日リモート・ワークの「ぶら下がり」でモニター画面に映し出された岸田首相

対韓外交に新たな〝暗雲〟が浮上した。いわゆる「元徴用工」訴訟をめぐり、韓国の原告側が求める日本企業の賠償を韓国財団が肩代わりする解決案を韓国政府が正式決定すれば、日本政府は過去の政府談話を継承する立場を改めて説明して「痛切な反省」や「おわびの気持ち」を示す方向で検討に入ったというのだ。共同通信が28日、「独自ダネ」として報じた。尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権への後押しが狙いというが、原則を軽視した妥協には懸念が深まりそうだ。

【写真】無関係写真が「徴用工」写真と掲載された韓国の小6教科書

「政府『おわび』継承説明へ」「韓国肩代わり案後押し」

共同通信は、このような見出しで記事を配信した。

日韓政府は30日、韓国・ソウルで外務省局長協議を開き双方の取り組み状況を話し合う予定。韓国側は日本の「誠意ある呼応」を求め、岸田首相は、「韓国政府と緊密に意思疎通していく」としている。

冒頭の妥協案は、政府関係者が28日、明らかにしたという。

だが、日韓間の請求権問題は1965年の日韓請求権協定で「完全かつ最終的に解決」している。日本政府は当時、無償・有償を合わせて計5億ドルを韓国政府に提供した。元徴用工に資金が渡らなかったのは、一方的に韓国政府の問題であり、「肩代わり」という言葉自体が不適切だ。

さらに、韓国側の「肩代わり」を受け、有志の日本企業が財団への「寄付」を容認する案も浮上しているというが、「二重賠償」「迂回(うかい)賠償」と批判されても仕方ない。

そもそも、徴用は、戦時下の労働力不足に対処するため、1939年に制定された「国民徴用令」に基づき、日本国民すべてを対象とした義務だった。給与も法律で決められていた。

新しい歴史教科書をつくる会の藤岡信勝副会長は「存在しない『責任』に『謝罪』するのは日本人の悪癖だ。相手国が自国と同じ思考との前提で外交交渉するのは誤っている。近年、韓国を『戦略的に放置』する日本の方針は成功してきた。韓国が『反日』を繰り返してきた経緯を踏まえれば、原則を外した外交は得策ではない」と強調した。

【私の論評】日米ともに、戦時中の「徴用工」募集は、戦後の女性の社会進出を促した!この事実を歪める韓国に謝る必要なし(゚д゚)!

日本に限らず、世界中の国々で戦争の時、特に総力戦の最中には、労働力が不足し、徴用工を募集することは珍しくありません。無免、賃金は支払われます。日本でも徴用工には、賃金を支払っていました。下の写真は、徴用工に支払うための賃金台帳の表紙の写真です。


歴史の古い会社などでは、こうした賃金台帳などが、倉庫の隅に資料として保続されているのが、発見されることがあります。

日本が大東亜戦争時に、当時は日本の領土であった、朝鮮で徴用工を募集することは、当然ありえることで、それ自体は犯罪でも何でもありません。

44年11月に徴用され、東洋工業(現マツダ)で働いた鄭忠海(チョン・チュンへ)氏が著した『朝鮮人徴用工の手記』(河合出版)には、手厚い待遇の様子が描かれています。

徴用工は清潔な寮で、絹のような布団で寝起きし、食事も十分だった。当時では破格の月収140円という給料をもらい、終戦後には日本人と別れを惜しんだといいます。

危険が伴う職場では、さらに待遇は良かったそうです。九州の炭鉱では月収で150~180円、勤務成績の良い徴用工には200~300円が支払われました。屈強な朝鮮人の給与が、体力に劣る日本人を上回ったとされます。

高賃金にあこがれ、多くの朝鮮人青壮年が、内地に密航したことも分かっています。徴用工が「強制連行」でないことは、数々の資料や証言から判明している「歴史的事実」です。

無論、日本でも当時も裏社会があり、いまでいうところ、反社勢力も存在しており、そういう反社勢力の人間が、朝鮮人を非合法に雇い、強制労働をさせたということは、あったかもしれません。それは、あくまで非合法であり、犯罪であり、厳しく追求されるべきです。

ただ、それは、少数事例であり、そのようなことは、今でもみられることです。米国等でもありますが、それはあくまで犯罪です。

ただ、上の記事にもある通り、このような事例も含めて、日韓間の請求権問題は1965年の日韓請求権協定で「完全かつ最終的に解決」しています。このことで、韓国にいまさら、言いがかりをつけらるようなこと等ありません。

米国でも、第2次世界大戦中には、徴用工を募集しました。労働力が不足していたので、男女問わずに募集しました。下の写真は、鉄工所で働く、米国の女性徴用工です。


当時は、女性が様々な分野で徴用され、航空機づくりや、原子爆弾製造ブロジェクトにも女性が動員されていました。下の写真は航空機製造に徴用された女性の写真です。


米国では、こうした多数の女性の徴用により女性が男性と同じく様々な分野で労働力となりえることが示され、女性たちも自信をつけ、戦後の女性の社会進出を促したといわれています。

日本でも同じようなことが起こりました。

戦後、男性が復員してくると、女性は「家庭への復帰」を呼びかけられます。1945年(昭和20年)12月、厚生大臣の芦田均は、女性や高齢・若年者は速やかに男性に職を譲るようにと述べましたが、すでに戦争で一家の稼ぎ手を失った女性も多く存在しました。

その後、復興の中、軍需工場の民需転換や繊維産業の復活で女性の雇用は再び広がり始めました。

また、戦争中の女性の働きぶりから、性別による能力の差がないことがわかると、男女間の賃金格差が当然ではなくなりました。

そうして、1947(昭和22)年に制定された労働基準法第4条では「使用者は労働者が女子であることを理由として、賃金について男子と差別的取扱をしてはならない」と規定し、世界で最も早い男女同一賃金法が誕生しました。

一方、「女子保護規定」により生理休暇も世界に先駆けて認められましたが、この規定は、「弱い女性を保護する」という意味で、過酷な労働から女性を守ることができた反面、男女の平等雇用の点では問題がありました。

この解決には1985年の男女雇用機会均等法の制定を待つことになります。

現在、「女子保護規定」は、育児や介護に男女平等の負担が求められていく中、1999年に改定されました。

このようなことを考えると、戦時中の「徴用工」の募集は、米国においても日本においても、男女平等や雇用機会の均等化、女性の自立など、戦後の社会に変革をもたらしたといえます。

この変革は、現在の男女参画事業や、最近問題になっていcolaboのようなNPOの事業より、余程現実的であり、実効的であり、日米ともにこの歴史を誇っても良いと思います。戦争自体は、悲惨なものでしたが、それを遂行するために女性を活用したことが、後々の社会変革にもつながっていったのです。もし、このことがなければ、日米ともに女性の地位の向上が図られるには、かなり時間がかかったかもしれません。

現在韓国内で、行われている「元徴用工」訴訟など、以上のことを無視した暴挙以外の何ものでもありません。これは姑息な歴史修正以外の何ものでもありません。

韓国のやっていることは、米国の戦時中の女性徴用工の募集は、男女差別だと批判しているようなものであり、全く意味のない馬鹿げたことであり、このようなことを平気でする人たちの資質を疑わざるをえません。

日本政府としては、「徴用工問題」では韓国政府のいうことなど無視すべきです。岸田総理は、間違っても「痛切な反省」や「おわびの気持ち」を示すような愚かな真似はやめるべきです。

もしそのようなことをすれば、自民党の保守岩盤支持層が離れていき、統一地方選は自民の惨敗になるでしょう。

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2023年1月29日日曜日

自衛官冷遇の衝撃実態、ししゃも2尾の「横田飯」 ネットでは「病院食ですか?」の声 岸田首相は心が痛まないのか 小笠原理恵氏―【私の論評】横田めしの「ししゃも」は「樺太ししゃも」!糧食を疎かにされる軍隊は勝てない(゚д゚)!

自衛官冷遇の衝撃実態、ししゃも2尾の「横田飯」 ネットでは「病院食ですか?」の声 岸田首相は心が痛まないのか 小笠原理恵氏

航空自衛隊横田基地の公式ツイッターに投稿された「朝食」の写真 クリックすると拡大します

 岸田文雄政権が「防衛力強化」「防衛費増加」を進めるなか、危険を顧みず、国防や災害派遣に日々邁進(まいしん)する自衛官の待遇改善を求める声が高まっている。GDP(国内総生産)比1%程度の防衛費を長年強いられたため、老朽化した官舎や隊舎がたくさんあるうえ、給与も警察官や消防士に比べて高いとはいえないのだ。さらに、国防ジャーナリストの小笠原理恵氏が、自衛官に提供される「食」の貧しさについて、驚きの現状を明らかにした。 (報道部・丸山汎)


 小笠原氏は25日、インターネット番組「百田尚樹・有本香のニュース生放送あさ8時!」にゲスト出演した。そこで紹介した、航空自衛隊横田基地の公式ツイッターの写真が衝撃的だった。

 「空自横田基地の栄養バランスのとれた昨日の食事 #横田飯を紹介します」という説明文とともに投稿されたのは、白米とみそ汁、ししゃも2尾、一握りの切干大根と明太子が並んだ「朝食」の写真だ。粗食をはるかに通り越している。これで激務に耐えられるのか。

 小笠原氏は「おかずのお代わりは許されず、カロリーを補うのはご飯のお代わりだけなんです」と語る。

 さらに驚くのは、小笠原氏が明かした自衛官らの反応だ。

 「『横田飯』の写真を見た、別の基地に勤務する20代後半の隊員は『ししゃもが2本も付くなんてすごいな。普通、朝食は1本ですよね』が感想でした。幹部自衛官は『皆さんが驚かれたことに驚いた』と語っていました。これが国民が知らない実情なんです」

 小笠原氏は2014年から「自衛官守る会」代表として、自衛官の待遇改善を訴え続けてきた。息子が入隊したある父親は怒り心頭だという。

 「私は真面目に税金もずっと払ってきた。でも、入隊した息子が電話で口にするのは、『おなかが空いた』『おかずが食べたい』と食事のことばかり。自衛官がこんな状況を強いられていることは許せない、と」

 横田基地には在日米軍も基地を置くが、米軍の食堂はビュッフェ形式だ。ある自衛官は「向こうは好きなものを自由に食べられる。あまりの差に悔しさが抑えられない」と本音を吐露したという。

 自衛隊では、食をめぐる〝不祥事〟も表面化している。

 21年10月には、空自那覇基地(沖縄県)の食堂で、40代の3等空佐が、規定の分配量を超える食パンと納豆を不正に複数回、取ったとして停職10日になっている。

 昨年6月には、空自入間基地(埼玉県)の食堂で、50代の1等空尉が、「パン2個」か「ご飯茶碗(ちゃわん)1杯」を選択する朝食で両方を手にして、停職3日の懲戒処分となった。

 ルールと違うかもしれないが、国民の負託に応えるために危険を顧みず任務を完遂する自衛官には、おなかいっぱい食べさせてあげたい。

 実は、ししゃも2尾の「横田飯」の写真が投稿されたのは21年11月のことだ。当時、ネット上で「病院食ですか?」「これで戦えるんですか。たくさん食べさせてあげて」と批判が殺到した。

 投稿の3日後には、当時の河野太郎防衛相が「自衛隊の糧食費」というタイトルでブログを更新した。隊員の「『栄養摂取基準』の見直しに着手」したとして、肉類を100グラムから160グラムに増量するなど改め、隊員(陸上勤務員)1人当たり1日899円だった糧食費を932円に増額したことも強調した。23年度予算案では、現在の物価高を受けて947円が計上されている。

 河野氏が動いたおかげか、その後、横田基地の食堂には「サーロインステーキ」ランチ(昨年4月)や、「照り焼きハンバーグ付き〝朝カレー〟」(同10月)など、ボリューム感あるメニューも登場している。

首相は「横田飯」に心が痛まないのか

 ただ、「問題の根本は変わっていない」と指摘するのは、元陸上自衛官である拓殖大学防災教育研究センター長、濱口和久特任教授だ。

 「現在、自衛隊では民間業者に食事を外部委託をしている基地も少なくない。問題が起きたのは、味や内容よりも金額を重視した結果だ」「岸田政権が昨年末、防衛費増額を含む『安保3文書』を閣議決定したのはいいが、自衛官の待遇改善や人員確保などについて実効性を伴う方策が書かれなかった。いくら高額な武器を購入しても、扱う人員やその糧食の部分がおろそかになるリスクは非常に大きい」

 夕刊フジでは、冒頭の「横田飯」を踏まえて、自衛官の糧食費や食事面の待遇改善などについて、空自広報と防衛省報道室に質問した。ともに1日あたりの糧食費の単価や、栄養摂取基準などを説明したうえで、次のように回答した。

 空自広報「隊員食堂での食事については、精強な隊員の育成及び部隊の士気高揚を図るため、各部隊の栄養士を中心に、隊員のし好に合わせた魅力的な献立を作成しています」

 防衛省報道室「引き続き、隊員が任務遂行に当たって必要な栄養を摂取できるよう、適切な食事の支給に努めてまいります」

空自や防衛省に大きな非があるとは思えない。

 月額129万4000円の歳費や、同100万円の「調査研究広報滞在費」(旧文書通信交通滞在費)の支給を受け、都心の一等地に高級ホテル並みの議員宿舎を持つ国会議員は、自衛官の待遇を認識しているのか。岸田首相は「横田飯」の写真に心が痛まないのか。

 小笠原氏は「自衛官は国を守るための体をつくる食費さえも切り詰められている。一般企業でこれをやったら、訴えられてもおかしくないのではないか。人を大切にしないで、どうやって国を守るのか」と語っている。

【私の論評】横田めしの「ししゃも」は「樺太ししゃも」!糧食を疎かにされる軍隊は勝てない(゚д゚)!

上の記事を読んだとき、最初は漠然と、「ししゃもが2尾」というなら、そんなに悪くもないと思ってしまいました。なぜなら、「ししゃも」は「本ししゃも」だろうと漠然と思ったからです。

ただ、それにしても変だと思いました。「ししゃも」をおかずにするくらいなら、他の魚や肉や卵にすれば、もっと沢山おかずが付けられると思ったのです。

しかし、上記の写真をみて、納得がいきました。これは、「本ししゃも」ではありません。明らかに「樺太ししゃも(カペリン)」です。「樺太ししゃも」は、キュウリのような匂いがすることから、北海道では「キュウリ」と呼ぶ人もいます。

本物のししゃもと樺太ししゃもは、見た目が良く似ているからという理由で代用品に選ばれた過去があります。そのため、普段魚をよく見ていない人には、見分けが付きにくいかもしれません。

本物のししゃもと樺太ししゃもを見分けるにはいくつかのポイントがあります。
本物のししゃも
鱗が大きくクッキリして見える
干物の状態だと口が大きく開いている
生の状態では、ふっくら丸みを帯びて背中は黄色がかった魚体。お腹側は銀白色だったり赤みがかっている。


樺太ししゃも(カペリン)

全体的に青みがかった銀色で、シュッと細長いスタイルをしており、まるで小さいサンマのように見えるものが多い。
干物のなると見分けが難しいですが、生の状態でよく見比べてみると違いが分かりやすいです。

本物のししゃもの代用品である「樺太ししゃも」は100g当たり200円程で取引されています。一方、本物の「ししゃも」は100g当たり600円程の値段がつきます。大きさや、その年の漁獲量によっては更に高騰することもあります。

「ししゃも」というと私自身は、この「ほんししゃも」のほうを思い浮かべてしまうのです。そうして、「ししゃも」といってもオスとメスでは、また違った味わいがあります。

オスのししゃもは、卵を産まない分全身がふっくらとして栄養豊富で旨味が強く感じられます。ししゃもの風味や旨味を感じたいのであればオスを選ぶのがおすすめ。

ししゃも独特の風味を感じやすいので生で食べる際にはオスを使う事が多いです。


メスの魅力は何といってもお腹に抱えた卵でしょう。ししゃもを食べるなら子持ちししゃもが良いと言う人も多いです。

樺太ししゃもは卵がプチプチとしていますが、本物のししゃもの卵は全く違います。卵のとろけるような食感が特徴で口当たりが滑らかです。メスのししゃもは水揚げ時期の中でも、10月前半~半ばは身と卵が半々程で、魚肉の旨味と卵の風味両方を味わえます。また、11月に入るとたっぷりと卵を持ち、濃厚な子持ちししゃもになります。

私自身は、どちらも好きで、どちらとも酒の肴にはピッタリです。

ただ、子持ちししゃもは、美味しいのですが、このほかコレステロールが多いので、LDLコレステロール(悪玉コレステロール)や中性脂肪値が高いと指摘された人は気をつけたほうが良いでしょう。 なお、本ししゃもより、代用魚のからふとししゃもに多くのコレステロールが含まれています。

随分話がそれてしまいましたが、最初この記事を読んだとき、「ししゃも」という言葉から、2尾とはいえ、朝から随分良いものを食べていると思ったのですが、写真をみてこれは「ししゃも」ではなく「樺太ししゃも」であると気づいて、事の重大さに気づいた次第です。

上の記事にふれられているとおり、「樺太ししゃもが2尾」という状況は改善されたようではありますが、食費さえ切り詰めなければならないというのは異常です。しかも、平時においてこの有様なのですから、もし戦争にでもなったらどうなるのか暗澹たる気持ちになります。

実際、日本でも戦争中に南方戦線では、餓死した兵士が多いと聞いています。しかし、このような状況になったのは戦争末期のことです。特に、米軍は潜水艦等をもちいて、大々的に通商破壊を行ったため、日本自体が物資不足に陥り、軍隊ですら食糧にさえ事欠くようなったのですが、平時、戦中もそのようなことはありませんでした。

実際、昔の兵隊の写真などをみると、結構ふっくらした人もいたのに驚くことがあります。日本軍では、戦前・戦中では一人一日あたり最大で6合の米が食べられたといいます。当時米をこれだけ食べられたということは、貧乏な世帯では米も満足に食べられなかったことを考えると破格だったと思います。

これは、強い軍隊を作るには、まず兵隊に満足な食事を与えなければならないと考えたからでしょう。

これについては、ネットにも掲載されているので詳細はそちらをあたってください。おかずやデザートなど、結構種類も豊富であったことに驚かされます。

そのようなことよりも、軍隊とその食事の重要性は、切っても切り離せないところがあります。それについては、このブログにも掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
安倍元首相、台湾のTPP参加を支持 中国へは自制ある行動呼び掛け―【私の論評】中国が台湾に侵攻すると考える人は、兵站のことを考えていない(゚д゚)!

詳細は、この記事をごらんいただくものとして、この記事より一部を引用します。 

戦史家のマーチン・ファン・クレフェルトは、その著作『補給戦――何が勝敗を決定するのか』(中央公論新社)の中で、「戦争という仕事の10分の9までは兵站だ」と言い切っています。
マーチン・ファン・クレフェルト
実は第2次世界大戦よりもはるか昔から、戦争のあり方を規定し、その勝敗を分けてきたのは、戦略よりもむしろ兵站だったのです。極言すれば兵士1人当たり1日3000kcalの食糧をどれだけ前線に送り込めるかという補給の限界が、戦争の形を規定してきました。そう同著は伝えています。エリート中のエリートたちがその優秀な頭脳を使って立案した壮大な作戦計画も、多くは机上の空論に過ぎません。

現実の戦いは常に不確実であり、作戦計画通りになど行きません。計画の実行を阻む予測不可能な障害や過失、偶発的出来事に充ち満ちているのです。

史上最高の戦略家とされるカール・フォン・クラウゼビッツはそれを「摩擦」と呼び、その対応いかんによって最終的な勝敗まで逆転することもあると指摘しています。 
そのことを身を持って知る軍人や戦史家たちの多くは、「戦争のプロは兵站を語り、素人は戦略を語る」と口にします。
この記事では、中国が台湾に侵攻することを想定して文章を書いています。中国は海上輸送力が未だ脆弱なため、一度に数万人の兵隊と、それに対応する食糧、武器弾薬しか台湾に送ることができません。

しかも、台湾軍はウクライナ軍より現代的な軍隊であり、中国がたとえ台湾に兵を送り込めたにしても、その後船舶で食糧などの物資を送り込もうにも、台湾の強力な対艦ミサイルで輸送船がことごくと撃沈されることが想定されるため、兵站が途絶えることが予想され、かなり中国の台湾侵攻は難しいのです。

それは守備の側も同じことです。台湾が中国に攻め入られた場合も、同じく兵站は重要ですし、特に守備する兵隊に日々3000kcalの食糧を提供し続けなければ、戦争に負けてしまうのです。ただし、台湾側は、中国の侵攻に備えて、物資も蓄えているので台湾側は有利なのです。

こういうことをいうと、中国は核もあるので、すぐに台湾など落とせると語る人もいるかもしれませんが、それは破壊と侵攻を取り違えているのです。

侵攻と破壊は別ものです。中国が台湾を武力で破壊するのは比較的簡単にできるでしょう。しかし、侵攻となると兵隊を送り込んで、制圧しなければならず、難易度はかなり高くなるのです。

上の記事では「高額な武器を購入しても、扱う人員やその糧食の部分がおろそかになるリスクは非常に大きい」としていますが、まさにその通りです。

「糧食の部分」をおろそかにする軍隊は、侵攻も守備もできないのです。

そのことは、ウクライナ戦争でも明らかになりました。ウクライナを10日で落とせると考えたプーチンは、兵站のことなどあまり考えていなかったようです。兵站が脆弱なロシア軍は初戦においては最前線の兵隊の糧食もままならない状態であったとも伝えられています。

現代でも、糧食をおろそかにする軍隊は勝てないのです。自衛隊もそうです。岸田首相はそのことを理解すべきです。

結局、このような状態になったのは、財務省が何かというと緊縮をしたがるからなのでしょうが、岸田首相はこうした財務省の緊縮姿勢にあらがって、自衛隊の兵站を満足なものにすべきです。

また、財務省の安全保障を理由に必要のない増税をすれば、日本経済が落ち込み、将来の安全保証にも事欠く事態に陥るのは明白であり、このような馬鹿真似をする財務省と対峙して、防衛増税もやめるべきです。

そもそも財務省はいずれの国でも、防衛費は節約したがるのが常であり、英国等においては、戦時の戦略会議には財務大臣は入れません。日本は、戦時ではありませんが、現在は新たな防衛3文書ができあがり、それを実行に移していかなければならない時期にあります。これを絵に描いた餅にしてはならないです。

このような時には、安全保障に関しては、財務省の主張などは、全部話半分に聞いた上で、すすめるべきなのです。なんでも財務省の言うことを聞いていれば、とんでもないことになります。それこそ、先の「横田めし」の「樺太ししゃも」が一尾ということになりかねません。

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沈むハリウッド、日米産業逆転の理由 ■ Forbs Japan日本編集部 まとめ 日本のコンテンツ産業、特にアニメが国際的に人気を博しており、非英語番組の需要が増加中。 米国のZ世代は日本のアニメを好み、動画配信やゲームの普及がブームを加速させている。 日本のコンテンツ全体が注目...