2023年4月30日日曜日

動き出したスリランカ支援―【私の論評】スリランカの破綻の直接の原因は実はエネルギー問題、日本は途上国と先進国の両方を満足させる技術を持っている(゚д゚)!

動き出したスリランカ支援

深刻な経済的苦境にあるスリランカの新大統領にラニル・ウィクラマシンハ氏が選出され抗議する人々(2022年7月20日)

【まとめ】

IMF、スリランカに対する4年間で30億ドル相当の金融支援を行うことで合意。

G20中央銀行総裁会議、日本主導でスリランカの債務返済繰り延べに向け債権国会議を発足。

・中国は債権国会議の対応を見ながら、自らの力をより大きく見せる方途を探っている。

 
経済危機に直面するスリランカに対する支援を巡り、動きが活発化してきている。

スリランカは人口の70%が仏教徒主体のシンハリ人で、タミル人との紛争が終結した2009年以降も国内で政争が絶えなかった。

2019年の爆破テロ事件、同年のゴダバヤ・ラージャーパクサ大統領による減税や新型コロナ感染拡大での主力産業の観光の落ち込みなどで外貨準備が輸入額の1か月分にも満たない額にまで減少

2022年3月以降、大統領の退陣を求めるデモが起きた。同国財務省は同年4月12日、国際通貨基金(IMF)の経済調整プログラムに沿った債務再編が行われるまで債務支払いを停止するとデフォルト宣言をした。

このため、5月にはマヒンダ・ラージャーパクサ首相が辞任に追い込まれ、その後の大規模デモ・騒動でゴタバヤ・ラージャ―パクサ大統領は国外脱出後に辞任するという事態に陥った。マヒンダが兄でゴダバヤが弟だ。その後、ウィクラマシンハ首相が新大統領に選出され、今日に至っている。

IMFは同年9月の事務レベル会合で、スリランカに対する4年間で30億ドル(約3,950億円)相当の金融支援を行う拡大信用供与措置(Extended Fund Facility=EFF)を採ることで合意。今年3月20日の理事会でEFFを承認した。

EFFは国際収支の改善を通じ、マクロ経済の安定化、債務の持続性、貧困者や弱者に対する影響の軽減を狙ったもの。同承認を受け、IMFはスリランカにまず3億3,300万ドルの支援を行うこととなった。

◾️日本の主導で債権国会議が発足

日本は、1951年の二次大戦後のサンフランシスコ講和会議で、スリランカのジャヤワルデナ蔵相(当時)が「憎悪は憎悪によって止むことなく、愛によって止む」という仏陀の言葉を引用して演説したことに感銘。大統領になったジャヤワルデナを1979年9月、国賓として日本に迎えた。日本からは1990年に海部俊樹首相(当時)がスリランカを訪問、2014年9月には安倍晋三首相(当時)が、日本の首相として24年ぶりに同国を訪れている。老練政治家のウィクラマシンハ大統領は、そうした流れの中で日本政府関係者の受けが良い。

今年の4月13日には米ワシントンで、G20 ・中央銀行総裁会議が開かれた。途上国で問題化する債務問題などで共同声明は出せなかったが、日本の主導でスリランカの債務返済繰り延べに向けた債権国会議を発足させた。鈴木俊一財務相兼金融担当相、インドのシータラーマン財務相、フランスのムーラン経済・財政省国庫総局長、スリランカのウィクラマシンハ大統領兼財務相(オンライン参加)およびセーマシンハ財務担当国務相、国際通貨基金(IMF)のゲオルギエヴァ専務理事、岡村健司副専務理事が記者会見し、同会議の発足を表明した。

鈴木財務相はその席で「広範な債権国間の協調体制が生まれることは歴史的快挙」と述べた。G20 は2020年に低所得国の債務問題を扱う共通の枠組みをつくり、スリランカのような中所得国扱いに対する債務返済危機に対しては債権国で構成するパリクラブが当たっていた。今回のスリランカに対する債権国会議にパリクラブのメンバーでないインドも入っている。鈴木財務相は、国としてスリランカに最大の債権を有する中国が同会議に出席するかどうかについて言及しなかった。

◾️「債務のわな」を仕掛けた中国の出方がカギ

スリランカは中国の一大経済圏構想「一帯一路」の下で、「債務のわな」に陥ったとの見方が一般的だ。中国はそうした見方に反発している。しかし、スリランカは南部の主要港であり、ラージャーパクサ兄弟の地元であるハンバントタ港の建設資金約14億ドルに関し、中国からの負債と同港の99年間の運営権をスワップ(交換)している。その合意では、中国の軍関係者の関与を禁じるとなっているようだが、中国がミャンマー、パキスタンに続き、スリランカにインド洋進出の拠点を手中にしたと見る向きは根強い

スリランカの対外債務額は資料によって異なるが、IMFの今年3月段階の同国レポートによると、2022年の官民の対外債務総額は暫定値で587億ドル、2023年の予測値は562億ドルとなっている。外国法に準拠した2022年の公的対外債務額は約415億ドル弱。うち、IMF、世界銀行、アジア開発銀行など多国籍機関が115億ドル弱。個別国の総額は114億ドル強で、日本などパリクラブ所属国が48億ドル弱、非パリクラブ国の中国が45億ドル弱、同じく非パリクラブ国のインドが18億ドル強。中国の国家開発銀行などによる貸し付けが29億ドルなどとなっている。

IMFはスリランカの今年の実質GDP成長率をマイナス3.0%と見込んでいる。

スリランカの貿易相手国で、輸入で最大なのは中国でシェアは21%、2位はインドで22.4%、産油国のアラブ首長国連邦(UAE)が3位で6.8%。輸出は、米国が24.8%、英国が7.5%、インドが6.6%の順。

ロイター電は3月初旬、中国輸出入銀行がスリランカに送付した書簡の中で2022年と2023年が支払期限の債務について支払い猶予を数か月内に実施などと繰り返し強調、と報じている。

中国は債権国会議の対応を見ながら、自らの力をより大きく見せる方途を探っているように見える。(敬称略)

【私の論評】スリランカの破綻の直接の原因は実はエネルギー問題、日本は途上国と先進国の両方を満足させる技術を持っている(゚д゚)!

上の記事では、スリランカがなぜデフォルトしたのかについては、述べていません。特にデフォルトの直接にきっかけについては述べていません。これについては、以前このブログに述べたことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
破産宣言のスリランカ 債務再編主導を日本に依頼へ―【私の論評】スリランカは、日本に開発途上国から化石燃料を奪う事の非を欧米に理解させ、その開発・利用への支援を再開して欲しいと願っている(゚д゚)!
この記事より一部を引用します。
"
スリランカの経済が破綻し大規模デモがおきて政権が転覆したのは、数々の失政が重なった結果ですが、とどめの一撃となったのは燃料費の高騰でガソリンが輸入できなくなったことでした。

スリランカの最大都市コロンボで最近みられる、ガソリンスタンドでたくさんの車やバイクが行列ぎょうれつをつくる光景

いまの開発途上国でのエネルギー危機は、単にウクライナの戦争のせいではありません。近年になって、欧米の圧力によって化石燃料事業への投資が停滞していたことが積み重なって、今日の破滅的な状態を招いているのです。

インド人の研究者である米国ブレークスルー研究所のビジャヤ・ラマチャンドランは科学雑誌Natureに書いています。
「近代的なインフラを最も必要とし、世界の気候変動問題への責任が最も軽い国々に制限を課すことは、気候変動の不公正の極みである」。
ラマチャンドランは、国際援助において、気候変動緩和をすべての融資の中心に据えるという近年の方針について、偽善であり、二枚舌だとして、猛烈に抗議しています。
「それは、経済開発に使える資源を必然的に減らすことになり、しかも地球環境にはほとんど貢献しない。・・なぜそのような努力をするのか。世界銀行とIMFの主要株主である富裕国は、これまでのところ、エビデンスや合理的なトレードオフに基づく気候変動政策の策定にはほとんど関心を示していない。 
それどころか、天然ガスを含む化石燃料への融資を制限し、自国では思いもよらないような制限を世界の最貧国に対して課すことを、自画自賛しているのである。その規制の中には、化石燃料への開発金融をほぼ全面的に禁止することも含まれている。 
世界銀行は、気候変動緩和政策と貧困削減の間の急激なトレードオフを最もよく理解しているはずである。しかし、国内の環境保護団体を喜ばせたい資金提供者が課した条件には従うしかなかったようだ。・・欧州連合は、自分たちはクリーンエネルギーの原子力発電所を停止し、天然ガスの輸出入を増やし、国内の石炭発電所を新たに稼働させる一方で、開発金融機関に対しては、貧困国でのすべての化石燃料プロジェクトを直ちに排除するよう主張している。」
「さらに悪いことに、EUの官僚たちは現在、『何がクリーンエネルギーか』をめぐって一進一退の攻防を繰り広げている。燃料不足に直面する加盟国から、原子力や天然ガスまで定義(タクソノミー)を拡大するよう圧力がかかっている。その一方でEUの広報担当者は、“EUの柔軟な分類法は、開発政策に反映されることはない”と明言した。つまり天然ガスはヨーロッパ人にとってはグリーンだが、アジアやアフリカの人々にとっては事実上禁止されるということだ。」
何十億人の人々が、先進国のエリートたちによって、化石燃料のない、貧困に満ちた未来へと組織的に強制されているのです。気候危機説を信奉する指導者たちが、開発途上国の化石燃料使用を抑圧しているからです。哲学者のオルフェミ・O・タイウォは、この現象を「気候植民地主義」と呼んでいます。
"
「気候植民地主義」という言葉は、さまざまな学者や活動家によってさまざまな文脈で使われてきましたが、一般的にはインドの環境学者・物理学者であるヴァンダナ・シヴァの言葉だとされています。シヴァは、環境主義、社会正義、グローバリゼーションの交わるところについて幅広く執筆し、気候変動の緩和と適応の努力による費用と利益の不平等な分配は、新しい形の植民地主義を構成すると主張している。

ヴァンダナ・シバ

「気候植民地主義」とは、歴史的に温室効果ガスの最大排出国である先進国が、その富と権力を使って気候変動対策の条件を決定し、途上国に解決策を押し付け、しばしば地域社会や生態系を損なっているという考え方です。

これは、たとえば、ダムや再生可能エネルギー設備のような大規模なインフラプロジェクトが、しばしば地元の人々を追い出したりや生態系を傷つけたりすることにより、コミュニティ主導のアプローチや社会正義よりも市場ベースのメカニズムや技術的解決を優先する政策や協定をとることもあるとの主張です。

日本では、最近では無秩序な太陽光パネルの設置が問題になっています。

無秩序で危険極まりない太陽光バネルの設置(和歌山県)

CO2素排出削減目標や再生可能エネルギーの義務付けを行うことも、独善的と受け取られかねません。このようなアプローチは、途上国が経済成長と社会発展を支えるために、安価で信頼できるエネルギー源へのアクセスを必要とすることが多いという事実を無視しかねません。

 先進国は、エネルギー問題に関連する国際援助や開発資金に条件を付け、自国のエネルギーの優先順位を途上国に押し付けることがあります。これは、各国の多様なエネルギーニーズと優先順位を認識しない独善的なものと言わざるを得ないです。

例えば、エネルギープロジェクトに対する資金援助を、現地の状況における技術の適合性や実現可能性を考慮することなく、特定の技術やエネルギー源に結びつけることは、画一的なアプローチの押し付けと受け取られかねないです。

先進国は、再生可能エネルギー技術などのクリーンエネルギー技術の途上国への移転を制限することもあります。これは、途上国がよりクリーンなエネルギー源への移行や気候変動の緩和に役立つ技術にアクセスすることを妨げるものであり、独善的と受け取られかねません。

技術移転の制限は、先進国による知的財産保護主義や技術進歩の囲い込みの一形態と見なすことができ、途上国が持続的にエネルギー需要に対処するための進歩を妨げる可能性があります。

先進国は、南半球のエネルギー資源や管理に関する先住民や地域の知識を軽視したり、過小評価したりすることがあります。

これは、何世代にもわたって天然資源とともに持続可能な生活を送ってきた地域社会の伝統的な知恵や慣習を無視するものであり、独善的と受け取られかねません。先住民や地域の知識を無視することは、地域コミュニティの疎外や移動につながり、先進国と途上国の間の力の不均衡を永続させる可能性があります。

世界のエネルギー問題に取り組むには、開発状況にかかわらず、すべての国の協力的な努力と相互尊重が必要であることを認識することが重要です。すべての国が持つ固有のエネルギーニーズ、状況、視点を考慮した包括的かつ公平なアプローチは、世界のエネルギー問題に対する有意義で持続可能な解決策を促進するのに役立ちます。

気候植民地主義の支持者は、このアプローチは植民地主義を特徴づける搾取と支配のパターンを再現し、途上国や先住民の主体性と主権を損なうと主張しています。気候変動の影響を最も受ける人々の声やニーズを重視し、気候危機の原因となった歴史的・継続的な不公正を認識した上で、より民主的で公平な気候変動対策へのアプローチを求めています。

私は、「環境植民地主義者」の主張に関して、これをすべて支持するものではありませんが、それにしても、これを無視することは、先進国の傲慢であると思います。

日本主導でスリランカの債務返済繰り延べに向け債権国会議を発足したことは喜ばしいことです。今年日本はG7議長国となります。開発途上国から化石燃料を奪う事の非を欧米に理解させて、化石燃料の開発・利用への支援の再開を訴えるべきです。

もしこれに失敗すれば、開発途上国は本当に欲しいものを供給し支援してくれる国々を頼るようになるかもしれません。それはロシアであり、中国かもしれません。あるいは、原子力発電の実績のある北朝鮮かもしれません。北朝鮮は、原子力発電所の輸出ととも、核兵器を輸出するかもしれません。

開発途上国は先進国が呼びかけた対ロシア経済制裁に殆ど参加しませんでした。つまりいつまでも先進国の言いなりにはならないということです。

そうした中での、日本主導でスリランカの債務返済繰り延べに向け債権国会議を発足です。これを機会に、日本は開発途上国から化石燃料を奪う事の非を欧米に理解させて、化石燃料の開発・利用への支援の再開を訴えるべきです。

そうして、それができる裏付けが日本にはあります。日本の化石燃料を用いた発電など、かなり技術が進んでいます。たとえば、横浜市にある磯子石炭火力発電所は、「クリーンコール技術」とよばれる技術を活用し、大気汚染物質の排出を大幅に削減しています。2002年のリプレース(建て替え)前に比べると、窒素酸化物(NOx)は92%、硫黄酸化物(Sox)は83%、粒子状物質(PM)は90%減っています。

さらに日本には、火力発電所で発生するCO2を分離、回収して貯留することでCO2を削減するCSSという技術も開発しています。

世界には、石炭をエネルギー源のひとつとして選択せざるを得ない国が存在しています。その理由は、安定した供給を行うことができるという「エネルギー安全保障」、そして「経済性」にあります。

国際エネルギー機関(IEA)の分析では、インド、東南アジア諸国を中心とした新興国では、経済発展とともに、今後も石炭火力発電のニーズが拡大する見通しとなっています。新興国にとって、安く、安定的に採れる石炭は、引き続き、重要なエネルギーなのです。

日本は、エネルギー面での、グローバル・サウス(発展途上国)と、先進国の両方満足させる技術やノウハウを提供できます。これを活用しない手はありません。これによりグローパルサウスがエネルギーで中露に取り込まれるのを避けるべきです。日本は、この面で先進国と途上国の両方の架け橋になるべきです。戦後一度も、紛争等に直接介入したり、覇権を行使してこなかった日本こそが、その役を担うことができると思います。

先進国の理想を実現しようとし、グローバル・サウスのほとんどが、中露に取り込まれるようなことだけは避けるべきです。


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2023年4月29日土曜日

防衛財源確保法案のカラクリ 本当は「増税なしでも手当可能」だ 透けてみえる財務省の思惑―【私の論評】確実に税収が上ブレする現状で防衛財源確保法案は、財務省の増税の意図を隠す表看板に過ぎない(゚д゚)!



 防衛力の強化をめぐり、防衛財源確保の特別措置法案が提出された。「防衛力整備計画」の財源を裏打ちしたものだ。

 防衛力整備計画は国防に関する中長期的な整備計画で、改定された「国家安全保障戦略」および、防衛計画大綱に代わって策定された「国家防衛戦略」とともに昨年12月16日に閣議決定された。

 同計画の5年間の防衛力整備に係る金額は43兆円程度とされており、その財源として、歳出カット、外国為替資金特別会計(外為特会)の利差益などとともに実施時期未定の防衛増税がある。

 宇宙・サイバー・電磁波領域を含む全ての領域における能力を有機的に融合し、平時から有事までのあらゆる段階における柔軟かつ戦略的な活動の常時継続的な実施を可能とする多次元統合防衛力を抜本的に強化するとされている。

 日本を取り巻く安全保障環境の急変から、大幅な防衛予算には異論が少ないだろうが、財源にはさまざまな意見がある。

 安倍晋三元首相は生前、「防衛国債」を主張した。「道路や橋は次の世代にインフラを届けるための建設国債が認められている。防衛予算は消耗費といわれるが間違っている。防衛予算は次の世代に祖国を残していく予算だ」と語っていた。

 一方、岸田文雄首相は「国債でというのは、未来の世代に対する責任として採り得ない」と述べた。

 どちらが正しいかといえば、安倍元首相だ。防衛はインフラと同じで将来世代まで便益があるのだから、国債にふさわしい。そもそも「有事費用は国債で賄われる」という歴史事実さえ押さえておけば、事前の有事対応にも国債がふさわしいのは自明だ。だが、今回も経済や学者からはまともな声は出てこない。

 ドイツは防衛費の国内総生産(GDP)比2%のために1000億ユーロ(14・5兆円程度)の特別基金を創設し、国債発行で賄った。これは、安倍元首相の防衛国債そのものだ。

 国債に関連していえば、減債基金自体、先進国ではかつてはあったが今では存在していないので債務償還費の繰り入れがない。となると、日本の予算では、歳出が債務償還費分、歳入はその同額の国債が先進国から見れば余分に計上されていることになる。

 その債務償還費の一般会計繰り入れを特例法で停止し、それで基金をつくれば、少なくともドイツと同じ特別基金ができる。しかも増税は必要なくなる。事実上、防衛国債と同じだ。

 また、現状では外為特会の利差益は財源とするが評価益は使わないという。評価益を使えば、これも増税なしになる。

 これまでの中期防衛力計画では、今回のような財源確保法はなく、毎年度予算で対処してきた。もっと率直にいえば5カ年計画の財源はすぐに用意できるので増税の必要はまったくない。なのに防衛財源確保法案を出すのは、防衛予算の大幅増を奇貨として、増税にもっていこうとする財務省の思惑が透けてみえる。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】確実に税収が上ブレする現状で防衛財源確保法案は、財務省の増税の意図を隠す表看板に過ぎない(゚д゚)!

世界中の国々で、戦争や大規模な自然災害への対応として、政府が国債を発行して資金を調達するのは普通のことです。これにはいくつかの理由があります。

日本の戦時国債

まず、国債は、政府が多額の資金を迅速に調達するための手段だからです。政府が国債を発行するということは、実質的に投資家からお金を借りるということです。投資家は国債を購入し、お金を貸す代わりに国から利息を受け取ります。このため、政府は、増税や他の分野での支出を削減することなく、多額の資金を調達することができます。

第二に、国債は、政府が緊急の出費を長期にわたって分散させる方法を提供するものです。政府が債券を発行する場合、通常、一定期間(10年、30年など)、債券の利息を支払うことになります。戦費などの場合は、数十年から100年近くに及ぶ場合もあります。

実際、日露戦争(1904〜1905年)の戦費は、国債で賄っており、1980年代にその償還が終了しています。これにより、政府は緊急事態の費用を一度に支払うのではなく、より長い期間にわたって分散させることができます。

第三に、債券は、政府が信用力を維持するための手段でもあります。政府が債券を発行するということは、その政府が資金を借り入れ、債務を返済する能力があることを実質的に証明することです。このことは、政府の財政管理能力に対する信頼を維持することにつながり、経済の安定を維持する上で重要です。

政府が戦争や自然災害への初動を国債で賄った例としては、次のようなものがあります。

米国は、第一次世界大戦と第二次世界大戦の際に戦時国債を発行し、戦費を調達しました。日本もそうでした。

日本は、巨額の戦費を国債で賄ったため、終戦後超インフレになりかけました。これをもって国債を発行することを忌避するむきもありますが、これには一考を要します。

もし、日本が仮に巨額の戦費をすべて増税で賄っていたとしたら、国力が衰えて、そもそも米英等とは戦争できなかったかもしれません。この一面だけを捉えると現実を見失います。

米英と戦争しなくても、日本はソ連に一方的に押しまくられる存在になったていたでしょう。結局、日本はいずれかの形でソ連圏に組み込まれていたかもしれません。そうなれば、今頃わたしたちの国日本は、ウクライナのようになっていたかもしれません。それどころか、日本が加わったソ連は、さらに精強になり、今頃まだ冷戦は終わっていなかったかもしれません。

第二次世界大戦は、日本では日本と英米との戦いのみが、強調されますが、日ソの戦いがあったことも忘れるべきではありません。

朝鮮戦争後、マッカーサーは公聴会で日本の中国大陸での戦争について聴かれ、「朝鮮戦争で実際に戦ってみてわかったが、日本は満州でソ連と対峙していたのであって、その意味では彼らの戦争は防衛戦争だったといえる」と証言しています。


関東軍が満州で踏ん張っていたからこそ、日本はソ連圏に組み込まれることはありませんでした。もしそうでなかったら、日本だけでなく中国や朝鮮半島も、第二次世界大戦後ソ連に組み込まれていたでしょう。そのようなことが予め予想できたので、日本は中国大陸での戦争に踏み切ったのでしょう。

現在のように国連や国連軍もNATOもなかった時代には、自国を守るためには、残念ながら他に選択の余地はなかった思います。当時の日本のような地政学的な位置にあれば、他国でも同じようなことをしたでしょう。マッカーサーはこれを理解したのでしょう。現在の尺度で歴史を見たり判断すべきではありません。

米英がこのことを理解していれば、第二次世界大戦はもっと違った形のものになったかもしれません。戦争後はソ連に、今日では中国や北朝鮮に振り回されことはなかったかもしれません。残念ながら、歴史には「もし」はありません。

米英がいくら当面の戦争を早めに終わらせるためとは言え、全体主義国ソ連を仲間に引き入れたのは、明らかな間違いでした。その後の世界を複雑なものにしてしまいました。今日のウクライナ問題も、大きな枠組みでは、そのための余波といえます。

巨大な戦費に関して、目先のことだけで判断していれば、判断を誤ります。防衛費も大きな視野、長期の時間軸によって考えるべき筋のものです。ちなみに、英国では戦時には戦費を賄う会議に財務大臣を参加させません。

米国をはじめとする多くの国は、COVID-19の大流行に対する初期対応として、景気刺激策や医療制度への支援などのために国債を発行しています。日本もそうでした。

国債は、戦争や大規模な自然災害やパンデミック等への初期対応に必要な資金を調達するために、政府が多額の資金を迅速に調達できる便利で柔軟な方法です。

政府が防衛費倍増のための巨額の資金を得るためには、さまざまな方法がありますが、コロナ以前の二度の増税があったこと、さらにはコロナ禍があったことなどから、現在で需要ギャップが30兆円程度はあると考えられており、増税などではなく、国債で賄うべきなのは明らかてす。

防衛財源確保法案は、防衛省が中期防衛力整備計画に必要な財源を確保するために、必要な手段を講じることができるようにするために提出された法案です。この法案によって、防衛省は必要な費用を確保するために、税制改正や政府債券の発行など、様々な手段を講じることができるというのが建前ですが、これは財務省が増税するための隠れ蓑として用いているとしか思えません。

中期防衛力整備計画の財源を毎年度予算で対処することは可能であり、しかも、国の一般会計税収が大幅に増加していることからこれは確実にできます。

さらに足元の月次税収の趨勢を踏まえ、2022 年度は 72 兆円程 度への着地を予想されています。22 年度税収は当初予算時点で 65.2 兆円のところ、昨年 11 月の補正予算時点 で 68.4 兆円と上方修正がなされましたが、ここから更なる上振れ着地が予想されます。 

一般会計税収(4~翌 2 月の累計値)

背景にはインフレ・円安、賃金・雇用の回復などがあります。足元で特徴的なのが景気の振幅に影響 されにくい消費税が大きく伸びている点です。およそ 40 年ぶりの物価急上昇は、税収にもこれまでに ない変化をもたらしています。

このような状況でも、わざわざ防衛財源確保法案を出すのは、これを財務省は増税の隠れ蓑にするためだと判断するのが妥当だと思います。

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2023年4月28日金曜日

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 23日に投開票された衆参計5選挙区の補欠選挙では、自民党の「4勝1敗」という結果となった。衆院解散に追い風になるのかどうか。野党の勢力図に変化は出てくるだろうか。

 衆参の補選は政権にとって中間評価だといえる。手応えが良ければ政権運営に弾みがつくが、悪ければ行き詰まる。菅義偉政権では補選で全敗(不戦敗を含む)したので、解散もできずに退陣に追い込まれた。

 今回は衆院千葉5区、和歌山1区、山口2区、山口4区、参院大分選挙区で補選があった。補選の前はそれぞれ自民、国民、自民、自民、非自民系と「自民3、非自民2」だった。

 今回の選挙では、それぞれ自民、維新、自民、自民、自民が勝ち、自民は4勝1敗だった。注目の千葉5区は前職が不祥事で辞職、参院大分は自民候補の知名度が低く接戦だったが、自民が制した。和歌山1区は、岸田文雄首相が襲撃され、同情票もあったと思われるが、日本維新の会の勢いが強く、自民は負けた。維新が衆院小選挙区で議席を持っていたのは大阪府のほかは兵庫県だけだったが、和歌山県にも広がった。立憲民主党は議席を獲得できなかった。

 野党の立民や共産党は統一地方選でも芳しくなかった。その典型が参院大分で、自公対立民・共産の戦いだったが、立民・共産は負けてしまった。

 野党の維新は強いが、立民・共産は弱い。維新も強いのは関西だけなので、全国的にみると、まだ自公を脅かす存在にはなっていない。ただし、統一地方選で、合計約470人の地方議員と首長を「600人以上」に増やす目標を馬場伸幸代表は公約し達成したので全国政党に向けて着実に進んでいる。

 となると、5月中旬の先進7カ国(G7)広島サミット後の衆院解散・総選挙の可能性が高くなっているのではないだろうか。野党第1党が立民から維新に代わるかもしれない。

 補選は国政選挙なので、事実上の増税を予定する「防衛財源確保法」など今の国会で提出されている法案も一応審判の対象になったはずだ。だが、おそらく多くの有権者は、そんな法案を聞いてもいないだろう。国会における予算案審議で議論すべきところ、立民は「放送法文書」問題に拘泥し、成果を上げられないままに時間を浪費し、国民に防衛増税の危うさを訴えることができなかったからだ。

 「異次元の少子化対策」もその裏で増税の動きがある。本コラムで、いずれ消費増税になると予想したが、経済団体はそう主張し始めた。

 仮に総選挙になっても、自公は増税を明言することはないだろう。かといって増税を否定することもない。実際、防衛財源確保法でも増税を決めたわけでなく、行革や剰余金処理などいろいろな財源が列記されている。しかし、これらの財源捻出は財務省のさじ加減で決まるので、筆者は事実上、増税がセットされているとみている。

 本当に増税回避したいなら、外国為替資金特別会計の評価益や国債整理基金への債務償還費繰入停止などで財源を確保するはずだ。それをやらないことが増税志向だ。 (元内閣参事官・嘉悦大教授 高橋洋一)

【私の論評】消費者と企業経営者のマインドが安定し、将来に対する明るい展望が開けるまで増税、特に消費増税するな(゚д゚)!

安倍総理によるアベノミクスが行われた当時、第1の矢「大胆な金融政策」はよく飛び、第2の矢「財政政策」も、ある程度は飛びました。しかし、第3の矢「成長戦略」はさほど飛んでいないではないか、と批判されました。 


しかし、安倍政権においては、結局2度消費増税が行われ、特に二度目の増税は、経済にかなりの悪影響を与えたことを考えると、この批判は的を射たものとはいえません。増税すれば、成長戦略などできません。

1回目の消費税増税は5%から8%へ。そして2019年10月に行われた2回目の消費税増税は、軽減税率が付いていたものの、8%から10%へ上がりました。この2回のショックは多くの人の予想をはるかに超えて経済に悪影響をもたらしました。特に二回目の増税はかなりのものでした。

 1回目は「影響が出るだろう」と覚悟の上で実施したようです。エコノミストの中には、「消費税増税の影響は軽微」としたものもいましたが、その予想はことごとく外れました。

大和総研チーフエコノミスト熊谷亮丸氏は「消費税増税の影響は軽微」と語っていたが・・・・

2回目の増税は、当時の安倍首相も悪影響がなるべくでないようにと、工夫して、「全世代型社会保障政策を実施」することで、増税するけれども、お返しをするという方向で臨みました。しかし、増税されて所得が減っていくことの悪影響が、非常に大きく経済は落ち込みました。

その後、2019年の第4四半期、10~12月期には成長率がマイナスになりました。ただ、そこからコロナ禍が続いてしまいした。結局、経済の落ち込みが増税によるものなのかコロナによるものか原因がはっきりしないまま、低調が3年間続きました。

 これを見てもわかるように、消費者と企業経営者のマインドが安定し、将来に対する明るい展望が開けるまでは、増税はやめるべきです。特に消費税の増税はやめるべきです。

日銀や内閣府が計算している需給ギャップ、需要と供給のバランスで見ると、まだまだマイナスが続いています。30兆円前後のギャップがあります。やはり需要がなければ、どんな政策も難しいです。

アベノミックス第3の矢は基本的には規制緩和を行い、そして競争を喚起するものでした。それから政府のやるべき公共的な事業に投資し、それによって競争を喚起するものでした。とにかく競争を喚起しないと第3の矢は飛ばないのです。ところが、当たり前のことですが、需要がないと競争は起こらないのです。

インフレになれば「他社と違うことを行う」努力をしなければ持たなくなります。 それが生産性を上げ競争につながります。

需要がないなかで競争しようとすると、「価格を下げよう」となってしまいます。 価格が上がるなかで、どう企業が工夫するか。どのように価格上昇をお客さんに納得してもらうかという形で、工夫が生まれるのです。


これを無視して、米国のGAFAなどと比較して、日本企業は駄目になったと語る人もいますが、それは違います。米国は、日本のような深刻な長期にわたるデフレを世界恐慌以降経験したことはありません。そのような環境で生きている企業と、日本のようにデフレが長く続いた環境で生きてきた企業を同一次元で語るのは間違いです。

日本企業も、これから緩やかなインフレが長く続くと確信できるような社会になれば、さまざまな創意工夫をするようになるはずです。

価格の上昇をお客さんに納得してもらうには、もちろん政府の政策も大事なのですが、企業自身による「この環境を生き残っていくのだ」という主体的な動き、努力も合わせて必要になります。 

ただし、これまでは景気がまったく温まっていません。物価が上下しないなかで、「経済が価格によって動く」という現象が起こっていませんでした。そのため政府頼み、または同業他社を見て、同じようなことをやっていれば良かったわけです。 

このブログでも掲載しましたが、新規採用でも、いわゆる「コミュニケーション重視」が強調されることになったのです。「コミュニケーション」重視とは、景気が良くないので、やる気が目一杯、深い専門知識を持つとか、特殊能力や特技を持ちチャレンジ精神豊富でいわゆる「尖った」人よりも、周りの人を気遣う調整型の人を雇いたいのですが、それではあまりに格好が悪いので「コミュニケーション」重視というきれいな言葉で飾っただけです。

実際、私はデフレ真っ只中の最中に採用を担当していたことがありますので、就活フェアなどで、他企業の採用担当に「御社におけるコミュニケーション能力重視とはどういう意味ですか」と質問してみると、結構格好の良いキャッチフレーズなどをあげたりするのですが決起をく「ホウレンソウ」などのことを言うのみで、とてもコミュニケーションの本質を理解しているとは思えず、このことを確信しました。


現在も「コミュニケーション重視」とする企業は結構あります、これは実体経済を反映しているのてしょう。こんなことよりも、もっと「尖った」人を企業が採用するようになれば、実体経済も良くなっているということだと思います。

今後、インフレの時代になっていけば、競争力をつけて「自社が他社と違うことをやっていく」という努力をしないと、会社が持たなくなってくるでしょう。 値段以外で付加価値をつけるのです。それがまさに「生産性を上げる」ということに繋がっていくのです。

その意味では、日本はこれからがチャンスです。日本は昔からの風習が多く続いています。例えば正規職員と非正規職員の区別は、世界中にはありません。

基本的には不定期で雇う形と、フィックスターム、例えば3年契約~5年契約で雇うという、2種類しかないのです。 ところが日本では、待遇がまったく違います。社会保険の手当もそうです。同じ労働をしているにも関わらず、正規と非正規で違い過ぎます。

そういうことが非生産性を生んでしまいます。本来ならば、非正規職員の方がいつ解雇されるかわからないのですから、場合によっては高い賃金を払わなければならないのです。

 しかし、日本ではそういうことが久しくありませんでした。ベースアップは基本的には正規職員だけです。これはデフレのためにそうなってしまったのです。しかし、日本も少なくと90年代より前には、同じ仕事内容なら、正社員よりパートやアルバイトのほうが、時間あたりの賃金は高かったのです。現在の若年や中年層にはそのような経験はないでしょうが、それ以上の世代だとそれが記憶に残っている人もいるでしょう。

ただ、一部の老人たちの中では、それが記憶に残っていて、現状の経済環境を知らず、今の若者は根性なしだと、批判する人もいます。長時間働けたとか、過激に働けたのは少なくともデフレではなく、インフレ気味だっかったからです。デフレではびこった、ブラック企業での恒常的な低賃金の長時間労働とは全く性質が異なります。

さらに、特に日本では、定年制という慣行が良くないところがあります。米国では州によりますが、「定年制は年齢による不当な差別だ」として、違憲判決が出ている州が多いのです。そのような州では、担当している職務が、老化などによって規定どおりにできなくなった場合は、解雇しても問題はありませんが、年齢だけを理由にして解雇することはできません。 

無論定年制が必要な職業もあります。警察官や消防士だと、70歳~80歳の人が犯罪者を捕まえたり、火を消しに行くのは難しいです。しかし、例えば普通の会社員や公務員のような仕事は、定年を超えても普通に続けられます。

もちろん若い人に手伝ってもらわないといけないことも多いかもしれません。ただ、高齢の人は若い人にはできない各種の判断能力など備わっていることもありますし、さらには自らの職場だけではなく、会社全体のことを考えた上で業務を遂行する能力が身についている人もいます。しかし、そういうことを一切抜きにしてクビになってしまうのは、日本の生産性を損なうのではないでしょうか。非常にもったいないです。

これも、デフレであるため、このようなことがなかなか改善されないのです。インフレであれば、人手不足が恒常化し、今までは働く意思があっても、働けなかった高齢の人たちや女性や障害者の方たちにもさまざまな職場で働いてもらわなければ、事業が成り立たなくなります。

ただ、このような問題を改善していくためにも、まずは緩やかなインフレにならなければ、需要もなく、競争も起こらず、すべての前提が崩れてしまうのです。

増税の間違いについては、多くの人が理解するようになりました。特に少子化対策で増税で負担が増えるるということになれば、これこそ、本末転倒です。おそらく、増税で生活が苦しくなれば、本来子どもを産み、育てる世代の人たちの負担も増え、3人子どもを産もうと考えていた人たちが1人が2人にするとか、そもそも、子どもを持つことを諦めてしまう人もでてくるかもしれません。それどころか、結婚を諦める人もさらに多くなるかもしれません。

防衛費も同じことです。防衛増税で経済が落ち込めば、国力が衰え、防衛費を賄う事自体が難しくなります。日本は、戦中に巨額の戦費を国債でまかないました。そのため、戦後には超インフレになりかけたため、国債を忌避するむきもあります。

しかし、当時日本が巨大な戦費をすべて増税で賄っていれば、国力が衰え、米英とは戦争をしなかったというかできなかったかもしれませんが、戦後にはソ連圏に組み込まれ、現在のウクライナのようになっていたかもしれません。

それどころか、米英は冷戦に負けていたかもしれません。そうなっていれば、今頃私達は、ロシア連邦の一員となりロシア語を話し、他国との戦争の最前線に駆り出されていたかもしれません。経済もロシア(一人あたりのGDPは100万円を少し超える程度)並以下になっていたかもしれません。財務官僚も日銀官僚も、天下り先で優雅な生活を送ること等儚い夢になります。

財源をいつでも何でも増税だけに頼り続けるというやり方を続ければ、いつかはこのような破滅的なことになります。

やはり、先にもあげたように、消費者と企業経営者のマインドが安定し、将来に対する明るい展望が開けるまでは、増税はやめるべきです。特に消費税の増税はやめるべきです。絶対に駄目です。

そうして、私は何も積極財政、金融緩和を永遠に続けろと言っているわけではありません。消費者と企業経営者のマインドが安定し、将来に対する明るい展望が開ければ、その後いずれ必ず経済は加熱します。

物価が上がっても、失業率が下がらない状態になります。そうしたときには、財務官僚の大好きな増税を、日銀官僚が大好きな金融引締をすれば良いのです。

経済でも、人体でも中庸が重要です。人が、ダイエットをやりすぎて摂食障害になってしまうこもあるように、実体経済を無視して、いつでも緊縮・増税というのは明らかに間違いです。そんなことをすれば、国力が衰えるだけです。

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2023年4月27日木曜日

韓国への戦略原潜派遣、北朝鮮の攻撃から守る米国の決意示す―【私の論評】日本も日米「核共有」を検討し、中露北のミサイルを牽制できる「極超音速ミサイル」の配備を急げ(゚д゚)!

韓国への戦略原潜派遣、北朝鮮の攻撃から守る米国の決意示す

4月27日 バイデン米大統領と尹錫悦韓国大統領が合意した「ワシントン宣言」に基づき、米軍は核兵器を搭載できる弾道ミサイル原子力潜水艦(SSBN)を韓国に派遣する。写真はジョージア州キングスベイの潜水艦基地に戻ったオハイオ級原子力潜水艦アラスカ。

 バイデン米大統領と尹錫悦韓国大統領が合意した「ワシントン宣言」に基づき、米軍は核兵器を搭載できる弾道ミサイル原子力潜水艦(SSBN)を韓国に派遣する。SSBNの寄港は1980年代以来で、北朝鮮の攻撃から韓国を守るという米国の決意を示す。

 SSBNは秘密裏に行動するため、外国での寄港を公にすることはほとんどない。

 韓国の元潜水艦長Moon Keun-sik氏は「潜水艦の位置情報は通常明らかにされないため、北朝鮮にとって大きな圧力となり得る」との見方を示した。

 SSBNの寄港には韓国を安心させ、自国産の核兵器開発を思いとどまらせるという狙いも透ける。

 別の元潜水艦長Choi Il氏は「米国のSSBNが韓国に寄港するのは非常に珍しく象徴的なことだ」と指摘。「米国は抑止力の強化を目に見える形で示し、韓国の懸念を抑えたい考えだ」と語った。

 米海軍は現在14隻のSSBNを保有している。「オハイオ」級は1隻当たり20基の潜水艦発射弾道ミサイル「トライデントII D5」を搭載。同ミサイルは1基当たり最大8発の核弾頭の搭載が可能で1万2千キロ離れた目標を攻撃できる。

 米国科学者連盟(FAS)の報告書によると、1970年代にはSSBNが定期的に韓国に派遣されていた。数年間ほぼ毎月、時には月に2─3回安定したペースで寄港していたが、81年に停止され、それ以降は再開されていないという。

 SSBNの寄港に関する詳細は明らかにされていない。米政府高官は記者団に、空母、潜水艦、長距離爆撃機などの「戦略資産」をより頻繁に朝鮮半島に送ることになり、SSBN派遣はその一環と説明した。

 その上で「これらの戦略資産や核兵器を韓国に常駐させたり、基地化したりする計画はない」と言明した。

【私の論評】日本も日米「核共有」を検討し、中露北のミサイルを牽制できる「極超音速ミサイル」の配備を急げ(゚д゚)!

バイデン大統領は26日、ホワイトハウスで韓国のユン・ソンニョル大統領と首脳会談に臨み、核・ミサイル開発に一段と拍車をかける北朝鮮に対し、アメリカの核戦力を含む抑止力で同盟国を守る「拡大抑止」について、意見を交わしました。

会談後の共同記者会見でバイデン大統領は「アメリカや同盟国などへの北朝鮮の核攻撃を許さない。そうした行動を取れば、いかなる体制でも終わりを迎えることになる」とけん制しました。

会談後、両首脳が発表した共同声明には、北朝鮮の脅威に対する拡大抑止に加え、日米韓3か国の関係強化などについても盛り込まれています。

このうち、日米韓3か国については「両首脳は共通の価値観にもとづいた協力関係の重要性を強調した」とした上で「バイデン大統領は日韓関係改善に向けたユン大統領の大胆な決断を歓迎した」としています。


今後、核弾頭を搭載したオハイオ級等のSSBNが韓国に定期的に訪問し、交替制で韓国に常時核が存在することになるでしょう。

一方、米国家安全保障会議(NSC)のカービー戦略広報調整官は26日の記者会見で、日本や周辺地域に核兵器を搭載できる戦略原子力潜水艦の母港を置く可能性について問われ、「そのような計画はない」と否定しました。 

日本では、核に対する忌避感が未だ強いことに配慮したのでしょう。

かつて、安倍晋三元総理はNATOと同様の米国と日本の「核共有」主張しました。この「核共有」とは、日本と米国が核兵器を共有し、日本が核の抑止力を持つことを意味しています。この考え方によって、日本は以下のようなメリットを享受することができます。


安全保障が強化される:日本が核の抑止力を持つことによって、外部からの脅威を抑止することができます。これによって、日本の安全保障が強化され、国民の安全が確保されます。

財政負担が軽減される:日本が自前で核兵器を保有することは財政的に非常に高額なものとなりますが、核共有によって、費用を分担することができます。このため、日本は財政的な負担を軽減することができます。

米国との協力関係が強化される:核共有は、日本と米国の協力関係を強化することにつながります。米国は、日本が核兵器を持つことによって、自国の安全保障も強化されるため、核共有は日米同盟の強化につながります。

ユン・ソンニョル大統領は、当初は米韓で「核共有」を目論んでいたのでしょうが、米国はまずは過去にも実施していたSSBNの定期的寄港から始めることから合意したものとみられます。

SSBNの寄港については、軍事的には無意味という軍事評論家もいますか、やはり北朝鮮にとっっては脅威です。北が核ミサイルを発射すれば、米軍としては最悪、これに向けて核ミサイルを打ち込めば、確実にこれを破壊できます。しかも、北朝鮮の近くから打つということで、確実に早期に仕留められます。

仮に北朝鮮のミサイルがロフテッド軌道を取ったにしても、核ミサイルを含めて、かなり大きな部分が同時に破壊されることになります。

韓国は、今後も米国と「核共有」の話をすすめていくことになるでしょう。米国がなぜ今回、SSBNの派遣を決めたかというと、いきなり「核共有」の前に、まずはしばらく中止していたSSBNの派遣することにより、これから徐々にハードルをあげていくことを北朝鮮に示したものとみられます。

米国は核を搭載できる、B21爆撃機の昨年12月3日に公開もしたばかりです。この戦力化がある程度進めば韓半島への展開だけでなく場合によって暫定的または循環配備も可能になるでしょう。中国、ロシア、北朝鮮にとっては、ステルス性能がないB1、B52爆撃機よりはるかに脅威です。

昨年暮公開された米軍B21爆撃機

中露北には、新たな戦略爆撃機の開発計画はなく、米国がこれを随時展開すれば米国の抑止の拡大は、彼らにとってさらに大きな脅威になります。

米韓で検討されている金正恩が恐れるもう一つの軍事対応は「ダークイーグル(Dark Eagle)ミサイル」(LRHW)の実戦配備でしょう。

このミサイルの発射が初公開されたのは一昨年でした。2021年10月77日、ワシントン州タコマ市郊外にある米陸軍のルイス=マコード統合基地に、開発中の新型中距離ミサイル「LRHW」の試作型発射機が送られ初公開されました。

「ダークイーグル」は、陸海空共通の極超音速滑空体(C-HGB)を弾頭に使う極超音速滑空ミサイルで、マッハ17、射程2775km以上の最新式の新型中距離ミサイルです。

ダークイーグルの発射想像図

この「ダークイーグルミサイル」の韓国配備を金正恩は恐れているのでしょう。4月10日の党中央軍事委員会で、金正恩が韓国の地図を映し出し指さしている場面がありましたが、「ダークイーグル」対策を語ったかもしれないです。このミサイルが韓国の平沢(ピョンテク)市にある米軍基地(キャンプ・ハンフリーズ)に配備されれば、平壌へは1分、北京は3分で精密打撃できます。

北朝鮮から日本まで核ミサイルが飛んでくる時間は、約6 〜7分です。発射されてすぐにこれを発射すれば、撃墜できる可能性はかなり高いです。日本で言われているロフテッド軌道をとるようなミサイルであっても、発射後1分以内なら、その軌道を取る前に撃墜できます。

今後、二重三重に米国が選択できる手段はあります。北朝鮮にはこれに対抗手段を取るのは難しいです。

日本も、「核共有」や「ダークイーグルミサイル」の配備の検討、もしくは自国で開発する体制を整えるべきです。

岸田文雄首相は2月15日の衆院予算委員会で、米国の核兵器を日本国内に起き、共同運用する「核共有」政策について、今後の検討を改めて否定した。安全保障環境の厳しさなどを理由に検討を促した自民党石破茂元幹事長に対し、「政府として議論することは考えていない」と答えました。

日本も「極超音速ミサイル」の開発をすすめています。日本も、韓国なみに米軍の「SSBNの派遣」、「核共有」、「ダークイーグルミサイル」の配備も検討すべきです。検討するだけでも、抑止になります。そうして、これらは北朝鮮だけではなく、中国やロシアに対して抑止につながることはいうまでもありません。

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2023年4月26日水曜日

「性自認」が焦点 LGBT法案、国会で議論開始へ 保守派は「差別」訴訟乱発、悪用を懸念 山田宏氏「拙速に進めることは慎むべき」―【私の論評】米英では、反LGBTの声も大きくなった昨今、周回遅れで拙速に法律を制定するな(゚д゚)!

「性自認」が焦点 LGBT法案、国会で議論開始へ 保守派は「差別」訴訟乱発、悪用を懸念 山田宏氏「拙速に進めることは慎むべき」


 終盤国会の焦点に、LGBTなど性的少数者に対する理解増進法案が浮上してきた。公明党などは来月広島で開催されるG7(先進7カ国)首脳会議前の成立を求めている。自民党は週内に党内議論を再開する方針を決めたが、党内保守派は自分の性別を個人の判断に委ねる色彩が濃い「性自認」という文言などを問題視し、慎重な議論を求めている。

 「理解増進のための取り組みや課題について復習したい」

 自民党「性的マイノリティに関する特命委員会」の高階恵美子委員長は25日、党本部での会合で、こう語った。

 法案は2021年5月に与野党の実務者間で合意したが、「性自認を理由とする差別は許されない」などの文言が加わったことで、自民党内で賛否が割れた。

 保守派は当時、「差別」の定義があいまいなことで訴訟が乱発したり、トイレや更衣室、お風呂などの利用で混乱が生じると懸念を示し、法案の国会提出は見送られていた。

 一方、世耕弘成参院幹事長は同日の記者会見で、「スケジュールありきで議論を拙速に進めると、逆に亀裂を深める」と語った。

 当事者団体からも慎重論が挙がる。性同一性障害の人たちでつくる「性別不合当事者の会」など4団体は先月、拙速な法案審議を避けるよう求める共同要請書を岸田文雄首相に送付している。

この問題をどうみるか。

自民党の山田宏参院議員は「『性自認』という言葉の定義すらはっきりせずに、法律の文言に入れるのは時期尚早ではないか。多くの人は、身体と心の性が違っていることは理解するだろう。ただ、『自分が考えたから男、女』というのでは、心の中の問題で証明しようがない。これを悪用することも懸念され、スポーツやトイレ、浴場などで、他の利用者が不安に陥ることにもなる。LGBTの側からも『性自認』にさまざまな意見がある。拙速に進めることは慎んだ方がいいと考える」と語った。

【私の論評】米英では、反LGBTの声も大きくなった昨今、周回遅れで拙速に法律を制定するな(゚д゚)!

米国の州レベルでは、反LGBT法が可決された13州、LGBT法令自体ない州が14州と米国の半分以上が「差別禁止法」がありません。国レベルで共和党の反対にあってLGBT法案を成立させられないバイデン政権に急かされて浮き足立つ日本の政治家の愚かさが恥ずかしいです。


米国大使が公明山口代表、維新の吉村知事、立憲の泉代表とも面談。当然、政権の官房長官、西村大臣などと精力的に会合。はては、欧州駐日大使と連名でLGBTの法整備を要求。バイデン夫人の岸田夫人への説得。異常です。日本は、米国の内政干渉に屈するべきではありません。

近年、LGBT政策推進の先進国と言われてきた米国では、多様性や差別禁止をといったポリティカル・コレクトネスを信奉する過激な急進リベラル派の活動により、価値観を押し付ける全体主義の様相が強まりつつありました。

これに反対する国民は対峙することになり、事実、社会の分断が認識されるようになり、文化戦争とまで言われるようになり、ついにはリベラルメディアまでもが行き過ぎたLGBT運動の弊害を直視し、客観的に精査する動きが出ています。

米英では教育者による行き過ぎたジェンダー教育の影響で、たった15分の医療診断で性適合手術に踏み込み、後に取り返しのつかない状況となり、医師らが訴えられ、集団訴訟となっていること等が報道され、大きな社会問題になっています。 

行き過ぎた性教育による子供のアイデンティティ形成に混乱が生じることを懸念した米国の10州では、既に誤りに気が付き、幼稚園や小学校低学年での性的指向や性自認に関する教育を禁止する州法を制定しています。

それらどころか、むしろ最近ではLGBTQに対する反発も強まっており、2017年1月時点ですら19の州で50件を超える「反LGBTQ法」が制定されました。LGBT理解増進を目的にしていたはずの条文が、かえって当事者に対するタブー意識を強めてしまうだけでなく、対立や分断を生じさせてしまうことになったのです。

現在平穏の中で生活している「そっとしておいてほしい」と考える性的少数者の当事者と国民全体を不幸にすることになってしまったのです。

米国では「差別を禁止する法律や条例を作ることを禁ずる州法」もあり、全米の31州では「スポーツの性区分は出生時の性とする」と州法で定めています。

東京五輪に出場したトランスジェンダー・アスリート

英国では、「トランスジェンダーであると主張した性犯罪者が女子刑務所に収監され、女性の囚人をレイプ」「性別違和を訴える思春期女子が急増」「思春期抑制剤や性交差ホルモンの投与、外科手術など性別適合治療を受けた後で健康被害を訴えたり、元の性別に戻す事例が現れる」など、LGBT問題、特に「性自認」をめぐるトラブルや事件が注目を集めています。 

スコットランドでは性別変更の要件を簡素化する法律が昨年末に可決されましたが、女性スペースが危機にさらされるなどの批判もあって英国政府が実効化を阻止しました。 

日本にも同様の軽薄な状況がマスコミの後押しで広がっていることを直視する必要があります。 

これに対して英国政府は1月17日、同法案は国内の性専用スペースに身震いするような影響を及ぼすとして、国王による同意を得ることを阻止しました。青少年の性同一性サービスに関する中間レビューによれば、定期的かつ一貫したデータ収集が行われていないため、子供たちがジェンダー・サービスによってたどる経路や結果を正確に追跡できないため、特定のイデオロギーの理論的観点からデータを解釈する危険性が高いといいます。

性の多様性と「性的自己決定権」を尊重する「包括的性教育」によって、子供たちの性転換手術が急増し、大混乱に陥った英国が今、「性自認」の扱いに苦慮している現状、小学生に性の多様性と「性的自己決定権」を教えた米国で「差別を禁止する法律や条例を作ることを禁ずる州法』が制定され、性教育をめぐって親と学校の対立が深刻化している現実を直視する必要があります。

LGBT理解増進法の審議は先送りされたとされましたが、復活の可能性も出てきました。「こども家庭庁」が発足し、秋までに策定する「こども大綱」に向けて審議が本格化します。子供の最善の利益・ウェルビーイングを第一に考える「こどもまんなか社会」の実現に向けた「性の多様性尊重」の法律や条例はいかにあるべきかについて、欧米の教訓を踏まえて、慎重に議論を尽くす必要があります。

法律を制定するにしても、しないにしても、拙速に決めるべきではありません。米英などで多数発生した問題も踏まえて、じっくり検討してからにすべきです。

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2023年4月25日火曜日

予算凍結を求める強硬論も 学術会議「民営化」に自民党内で意見噴出 八幡氏「当事者能力ない。今後は民営化の方向に進むのでは」―【私の論評】学術会議は設立当初から共産主義者らの巣窟、審議会制度が定着した現在無用の長物(゚д゚)!

予算凍結を求める強硬論も 学術会議「民営化」に自民党内で意見噴出 八幡氏「当事者能力ない。今後は民営化の方向に進むのでは」


 自民党内で、日本学術会議の「民営化」を求める意見が噴出した。同党の学術会議に関するプロジェクトチーム(PT)と、内閣第2部会の合同会議が24日に開かれ、岸田文雄首相が日本学術会議法改正案の今国会への提出を見送ったことに対し、批判の声が相次いだ。

 「法案審議をやるべきだった」

 PT座長の塩谷立元文部科学相は会議冒頭、こう苦言を呈した。

 学術会議は、年間約10億円もの血税が投入されながら、特定の政治勢力の影響力が強く、日本の「軍事・防衛研究」に反対してきた。このため、安全保障や経済成長の妨げになっているとの批判もあり、菅義偉前政権では「廃止・民営化」論が出ていた。

 PTは学術会議について、「政府から独立した法人格(民間法人化)への組織変更」を提言していた。これに対し、政府は「国の機関」として維持したうえで、会員選考に第三者を関与させて透明性を高める法改正案をまとめた。

 「かなり妥協した」印象が強い政府案だったが、学術会議は「会員人事への介入で独立性が損なわれる」などと徹底抗戦した。結果、岸田首相は改正案の今国会への提出見送りを了承した。

 学術会議を担当する後藤茂之経済再生担当相は24日の会議で、「民間法人とする案を俎上(そじょう)に載せて学術会議と議論し、早期に結論を得ることにした」と説明したが、出席者からは「学術会議の予算を凍結すべきだ」といった強硬論も飛び出した。

 PT事務局長の大塚拓元財務副大臣は「政府から独立しなくて済む政府案は、自民党側としては妥協案だ。それが駄目だというなら、法人化案に戻って設計することになる」と記者団に語った。

 今後、学術会議はどうなりそうか。

 評論家の八幡和郎氏は「あの程度の改革案を受け入れる話もできない学術会議の幹部は『当事者能力がない』ことを示した。政府が改正案の今国会提出を見送ったのは、左派の影響の強い他団体などに、『(学術会議の改革は)仕方がない』と納得させる思惑もあったのでは。政府は今後、予算を減らしたり、締め上げたりして、『民営化の方向』に進んでいくのではないか」と話した。

【私の論評】学術会議は設立当初から共産主義者らの巣窟、審議会制度が定着した現在、無用の長物(゚д゚)!

他の国々にも、民間の科学技術に関する組織や機関が存在する場合があります。これらの組織は、政府から独立して運営され、一般には非営利的な民間組織として活動することが多いです。

例えば、アメリカ合衆国には国立科学財団(National Science Foundation; NSF)という独立機関があります。これは政府の支援を受けて運営されていますが、直接的には政府の一部ではありません。また、イギリスには王立協会(Royal Society)や科学技術施設の運営を行うUK Research and Innovation(UKRI)などもあります。

これらの民間組織は、科学技術に関する政策立案や助言、研究の支援や促進、科学者のコミュニティの発展などを目的としています。政府との連携を持ちながらも、独立性や柔軟性を持つことができ、科学技術に関する専門的な意見を提供することができるという利点があります。

ただし、これらの組織にも、資金調達や政府との関係の調整などの課題がある場合があります。国によって異なるため、具体的な組織の形態や運営方法は異なるかもしれません。

以下に、日本の世界各国の日本学術会議のような組織について掲載します。


日中以外は、すべて政府から独立しています。財源は、日中独が政府です。独だけが、州政府からも支出があります。

1949年1月に発足した日本学術会議は、前年12月に選挙で会員210名を選出されました。しかし、その選挙においては共産党関係者や民主主義科学者協会(民科)の候補者が多く当選し、学術会議の3分の1に迫る66名ほどの勢力を形成しました。

これはGHQ(連合国軍最高司令部)内の共産主義者の後ろ盾を持っていたとされています。このような状況の中で、学術会議は「戦争を目的とする科学の研究には絶対従わない決意の表明」とする声明を出しました。

一方で政府は、1955年に新しいエネルギー源を目指して原子力関連の研究に乗り出しました。しかし、学術会議の会長や国立大学協会会長らは反対し、原子力委員会設置法に「原子力利用に関する経費には、大学の研究経費は含まない」との付帯決議をつけさせ、日本の原子力研究を制限することになりました。

その後も政府は学術会議への対抗策として、1956年に原子力委員会を設置し、同時に科学技術庁も設置しました。さらに1959年には科学技術会議が設置され、学術会議の中心議題は全てこちらに移され、1967年には文部省が学術審議会を設置し、学術会議の役割が縮小されました。1980年代には各省庁が審議会を設置し始め、学術会議の役割は限定的なものとなってしまいました。

原子力委員会の初会合に臨む(左から)藤岡由夫、湯川秀樹、正力松太郎、石川一郎、有沢広巳の各委員(1956年1月4日、首相官邸)

学術会議の会員を長年務め、副会長も務めた唐木氏は、「1969年から1977年にかけて学術会議は自己点検をし、改善すべきところは改善しようとしたものの、政府との全面的対決を選ぶべきではなかった」と述べています。そして学術会議は政府に対して妥協し、その後の年代には各省庁の審議会に取って代わられる形で役割を縮小していきました。

振り返ってみれば、日本学術会議は最初から共産主義者らの巣窟だったといえます。

学術会議側は、菅首相が6人を任命しなかったのは学問の自由の侵害だと言っていました。とんでもない間違いです。学問の自由とは研究の自由、発表の自由、教育の自由を指します。

ところが学術会議は研究機関ではないため研究も教育もしません。発表するのは学術会議の中での検討事項だけで、学問の自由と学術会議は全く無関係です。

菅前総理の「任命拒否問題」によって国民的な非難が政権に向けられるだろうという野党の期待もあえなく外れ、政権よりもむしろ日本学術会議のほうが、現在非常に厳しい状況に陥っています。

日本経済新聞社とテレビ東京は先月24〜26日に世論調査をした。岸田文雄内閣の支持率は48%で2月の前回調査から5ポイント上がった。内閣を「支持しない」と答えた割合は44%で、7カ月ぶりに支持率が上回りました。

首相のウクライナ訪問や日韓首脳会談などが岸田政権の支持率を押し上げたようです。ウクライナ訪問を「評価する」との回答は71%で「評価しない」の20%と差がつきました。政党支持率のトップは自民党の43%でした。2位は立憲民主党と日本維新の会がともに8%、支持政党がない「無党派層」は24%だった。2月はそれぞれ39%、9%、8%、27%でした。

さらに、共産党は統一地方選・後半戦の市区町村議選で、909議席を獲得しました。総務省のまとめなどによると、一般市議選で55議席減らすなど、2019年の前回選と比べて計89議席減らしました。統一選・前半戦の道府県議選・政令市議選に続く議席減で退潮傾向が続いています。

統一地方選でひとり負けだった共産党

4月23日に投開票された衆参5補選。千葉5区や参院大分選挙区では当選確実が日をまたぐほどの接戦が繰り広げられましたが、ふたを開けてみるとどちらも自民党が制する結果に。 

対する立憲民主党は全敗となり、大きく明暗が分かれました。日本維新の会が和歌山1区で議席を獲得して躍進するなか、立憲の存在感低下は危機的状況になっています。早期の解散総選挙も想定され、体制の立て直しが急務となるが、内部からは「打つ手がない」という声が漏れるなど、その憂いは深いです。

民意は、共産党、立憲民主党からは離れているようです。あっ、社民党を忘れていましたが、これは最初からないのと同じようなもので、ここでは述べません。

もうここまでくれば学術会議は民営化するのが一番でしょう。民営化すれば、学術会議のメンバーは、自分たちがいかに無用の長物なのか思い知ることになるでしょう。

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2023年4月24日月曜日

『安倍晋三回顧録』を批判した「大物」大蔵次官の文春インタビュー記事に反論しよう―【私の論評】需要の低迷に対処せず、緊縮に走るのは、氷風呂で風邪を直そうするようなもの。全く馬鹿げている(゚д゚)!

『安倍晋三回顧録』を批判した「大物」大蔵次官の文春インタビュー記事に反論しよう

財務省のメディア工作の一環では

 10年に一度の大物大蔵次官といわれた齋藤次郎氏の、最初で最後というインタビュー記事が月刊文藝春秋5月号に掲載された。

 『安倍晋三回顧録』(中央公論新社)を読むと、財務省がどれほど日本の政治・経済の足かせとなっているかがよくわかる。私が数えたところ、財務省に言及している部分は、なんと71ヵ所もあった。たとえば安倍さんが消費税の10%への引き上げを延期しようとした際、財務省は「安倍政権批判を展開し、私を引きずり下ろそうと画策した。彼らは省益のためなら政権を倒すことも辞さない」とまで書いている。

斎藤治郎

 齋藤氏は、「安倍晋三回顧録」を読んで、あまりに財務省が悪者に扱われていることに我慢ならなかったようだ。そこに書かれていることは単純で、債務を減らそうと一生懸命やっているのに、安倍さんから「省益」を追及し政権をも倒そうとしているといわれて財務官僚は困っているということだ。

「国の借金が大変だから」ロジックの罠

 齋藤氏のインタビュー記事の読みどころは、

「大幅な赤字財政が続いている日本では、財政健全化のために増税は避けられず、そのため財務省はことあるごとに政治に対して増税を求めてきました」

 と述べている部分だ。

 「国の借金(総債務残高や国債残高)が大変だから増税する」というのは財務省の決まり文句だ。齋藤氏はつづけて、

 「それは国家の将来を思えばこその行動です。税収を増やしても、歳出をカットしても、財務省は何一つ得をしない。むしろ増税を強く訴えれば国民に叩かれるわけですから、“省損”になることのほうが多い」

という。

 この財務省の「国の借金が大変だから増税する」というロジックだが、筆者は大蔵省入省当時から疑問だった。借金があるのなら、増税ではなく「資産」を売ればいい。このロジックを会社で例えるなら、経営不振に陥り倒産間際の会社が、資産を売らずに営業利益だけで借金を返そうと四苦八苦するようなものだ。

 そこで、筆者は、大蔵官僚時代の1990年代前半に政府のBS(バランスシート)を作った。それは政府の金融活動ともいえる財政投融資が危機的状況だったからだ。その際、政府のBSも作った。


 政府の財政状況を見るには、BSの借金残高だけでは不十分で、左側の資産も考慮し具体的には資産を控除したネット借金残高で見なければいけない。これはファイナンス論・会計論のイロハである。しかし、当時の大蔵省は資産を対外的に明らかにすることには恐ろしく消去的で、ある幹部から筆者はBSを口外するなと厳命を受けた。それが事実上解けたのは小泉政権になってからだ。

 筆者はこの齋藤氏のインタビュー記事を見た瞬間、「『文藝春秋』はまんまと財務省に利用されているな」と思った。財務省は選挙が近づくとメディア工作を行い、世論を「増税」に誘導しようと画策する。

 財務省と『文藝春秋』といえば、2021年11月号に当時現役の矢野康治財務次官が寄稿し、自民党総裁選や衆院選をめぐる政策論争を「バラマキ合戦」と批判して話題を呼んだ。今回の齋藤氏のインタビュー記事も、G7広島サミット後の解散を睨んで出されたものだろう。

 もっとも、筆者から見れば、齋藤氏ほど財務省の増税指向と天下り指向を体現している人はいない。その意味で、もっともわかりやすい人が出てきた。

天下り官僚に好都合な論理

 小泉政権では、筆者は郵政民営化準備室・総務大臣補佐官として郵政民営化法の企画立案に携わった。一方、齋藤氏は、当時民主党の小沢一郎氏と深い関係だったので、民営化阻止・国営化の立場だった。その後、自公政権から民主党政権への政権交代があり、郵政民営化法は改正され、株式を一定程度保有する事実上の国営化になった。そこで、齋藤氏は日本郵政社長に天下った。

 これは、財政の見方と大いに関係している。というのは、筆者のようにBSで借金とともに資産を考えると、借金は返済しなければいけないが、その財源として資産売却になる。しかし、齋藤氏のように借金だけに着目すると、増税で借金返済となる。

 はっきりいえば、資産の中には天下り先の米櫃である出資金や貸付金が多く含まれているので、増税は資産温存で天下りに支障がないので天下り官僚には好都合だ。逆にいえば、借金は返済せざるを得ないから資産売却となれば、天下りもできなくなる。民営化は資産売却の典型例なので、官僚が民営化を否定するのは天下りを維持したいことがしばしばだ。

 斎藤氏は、郵政民営化から事実上の国営化に乗じて政府が株主であることに乗じて天下りをしたわけだ。最近、東京メトロへの国交省からの天下りが問題になったが、それも上場を延期するなど政府が株を手放さないことからおこる。財務省も、JTの大株主であることを利用して天下りをいまだに続けている。

 安倍さんが、財務省が「省益」を追及しているというのは、例えば借金返済のために増税を主張するが一方で資産売却を渋り天下りに拘泥することをいっている。

 これで、齋藤氏ほど財務省の増税指向と天下り指向を体現している人はいないという意味がわかるだろう。ちなみに、齋藤氏は民主党政権が終わると、自分は退任し次の社長に再び財務省からの天下りをすえようと画策したが、安倍政権に見つかり失敗した。

 もちろん、増税すれば財務官僚の差配するカネが増えるのも財務省の「省益」だ。

【私の論評】需要の低迷に対処せず、緊縮に走るのは氷風呂で風邪を直そうとするに等しい。全く馬鹿げている(゚д゚)!

「ああ、日本における"緊縮財政マニア"の典型的なケースだ!風邪を氷風呂で治そうとするようなものだ」と昨年ノーベル経済学賞を受賞した、バーナンキ氏の苦笑が聞こえてきそうです。

バーナンキ氏

デフレ等で経済が停滞しているときや需要ギャップが生じているときに、政府支出を削り、消費税を上げるのは、火に油を注ぐようなものです。手足を切って体重を減らすようなものです。確かに体重は減るかもしれないてですが、持続可能で賢明な解決策とは言いがたいです。

バーナンキ氏は、デフレの時や需要ギャップが生じているときには、需要を刺激して経済活動を活性化させるために、政府支出を増やしたり減税したりする拡張的な財政政策を実施すべきだと主張しています。消費税増税のような緊縮財政は、個人消費を減退させ、デフレ圧力を悪化させ、経済をマンネリ化させるだけです。

しかし、財政再建の熱にうなされれば、常識など必要ないのでしょう。これでは、経済的な不調は治らないでしょう。岸田政権は、バーナンキ氏のノーベル賞受賞の経済学上の知恵を借りて、経済政策を軌道に乗せ、日本経済に笑いを取り戻すべきです。

しかし、高橋洋一氏が指摘するように、財務省にはその気は全くないようです。なぜなら、財務省は省益優先であり、その省益とは、財務官僚が天下りをして天下り先で、優雅な生活をしたいからです。

不況や、デフレからの脱却、需要ギャップがあるときには、政府が有効需要を喚起すべきというのは、世界の常識です。日本だけが、これが常識ではありません。

有効需要を喚起するためには、経済全体にお金を投じ、雇用創出や経済活動の増加を促し、人々の消費や投資を刺激することが重要です。要するに何に投資しても良いのです。ただ、速やかに投資すべきです。あれこれと悩んでいるくらいなら、それこそ、バーナンキ氏がかつて語ったように「日銀はトマトケチャップを買えばよい」のです。そうして、さっさと投資すれば良いのです。

バーナンキ氏によれば、有効需要とは、ハンバーガーにトマトケチャップをかけたい衝動に駆られるようなものだといいます。ハンバーガーにトマトケチャップが欠かせないように、商品とサービスに対する十分な需要がなければ健全な経済は成り立たちません。


これは当たり前のことなのです。不況やデフレというのは、人々が買いたいものと実際に買っているものにギャップがあるということです。ジューシーなハンバーガーが食べたいのに、ケチャップのボトルが空っぽなのと同じで、悲しくて物足りない状況なのです。

財務省は省益のために、曲がったことを言うのでしょうが、政治家やマスコミ、財界などにも、この簡単明瞭な話を理解できない人がいるのは不可解です!トマトケチャップを食べたことのない人に、その概念を説明しようとするようなものです。しかし、政治家や経済学者の中には、いまだに頭を悩ませて、複雑な理論や的外れな政策を考え出し、完全に的外れなことを言う人がいます。

日本では多くの人が、未だ需要の低迷という真の問題に対処する代わりに、支出削減等の締め付けや増税に焦点を当てるかもしれません。これは、ハンバーガーが食べたくなったら、ケチャップを禁止したり、トマトの値段を上げたりするようなもので、まったくもって馬鹿げています!

だから、多くの政治家が目を覚まし、不況やデフレから脱却するためには、有効需要を刺激することが重要であることを理解することを期待したいです。ハンバーガーにケチャップが必要なように、経済が発展するためには旺盛な需要が必要なのです。

今こそ、バーナンキ氏のケチャップの例えの知恵を受け入れ、たっぷり投資して有効需要を喚起し、満足のいく、食欲をそそる景気回復を実現する時なのです!

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2023年4月23日日曜日

中国、TPP加盟「支持を期待」 日本は慎重な立場―【私の論評】日本は経済・軍事的にも強くなるであろうウクライナにTPPだけでなく、いずれ安保でも協調すべき(゚д゚)!

中国、TPP加盟「支持を期待」 日本は慎重な立場


 中国商務省の王受文次官は23日の記者会見で、中国が申請したTPPについて「中国には参加の能力があり、メンバー11カ国の支持を期待する」と述べた。3月に11カ国が英国の加盟で合意したことを受け、支持獲得への働きかけを強めるとみられる。 

 加盟には全会一致の承認が必要で、日本が慎重な立場を取っており中国は交渉入りも見通せていない。王氏は中国が加われば、域内の消費者とGDPの総額の規模が大幅に拡大すると述べ、巨大市場の魅力をアピールした。 
 
 王氏は、中国の加盟は「地域の供給網の安定にとっても重要だ」と主張した。ハイテクで中国排除を狙う米国に対抗する思惑もうかがえる。

【私の論評】日本は経済・軍事的にも強くなるであろうウクライナにTPPだけでなく、いずれ安保でも協調すべき(゚д゚)!

TPPには、自由貿易を維持するため、さまざまな規制があり、現状では中国は加盟できません。そのような規制がありながらも、中国がこのような規制をいずれ守るようになるだろうと期待して、当初は守らなくても、10年くらい年月をかけて守るようになれば良いと信じて、加入させるようなことはすべきではありません。

いかなる国も、最初からTPPの規制を満たしていないければ、それを満たすようになってから加入させるべきです。

過去を振り返れば、先進国の「経済的に豊かになれば共産主義中国も『普通の国』として仲間入りができる」という誤った妄想が、中国の肥大化を招き傲慢な「人類の敵」にしてしまったという現実があります。

その代表例が、2001年の中国のWTO加盟です。1978年の改革・解放以来、鄧小平の活躍によって、1997年の香港再譲渡・返還にこぎつけた共産主義中国が、「繁栄への切符」を手に入れたのです。

中国のWTO加盟調印式

この時にも、共産主義中国は「WTOの公正なルール」に合致するような状態ではありませんでした。 ところが、米国を始めとする先進国は「今は基準を満たしていないが、貿易によって豊かになれば『公正なルール』を守るようになるだろう」と考え、共産主義中国も「将来はルールを守る」という「約束」をしたことで加盟が認められたのです。

ところが、加盟後20年以上経っても、共産主義中国は自国の(国営)企業を優遇し、外資系いじめを連発するだけではなく、貿易の基本的ルールさえまともに守る気があるのかどうか不明です。しかも、先進国の技術を平気で剽窃してきました。

TPPも同じことです。WTOの時の違いは、TPPに加入する中国は今後経済成長ができないことです。このブログで述べてきたように、中国は現状ては国際金融のトリレンマにより、独立した
金融政策ができない状況に落ち込んでいます。

中共はこれを資本移動の自由化をするか、人民元の変動相場制への移行などをすれば、是正できますが、是正をすれば、統治の正当性が揺らぐため、是正するつまりはありません。そのため、これから経済発展する見込みはありません。

貿易ルールを守れない、経済発展する見込みもない中国をわざわざTPPに入れるような真似は、すべきではありません。

一方、ウクライナ政府は近く、環太平洋パートナーシップ協定(TPP)へ加盟申請する方針を決めています。インタファクス・ウクライナ通信が20日、報じました。実現すれば、今年3月に加盟が認められた英国に続き、欧州で2国目となります。

タラス・カチカ副経済相兼通商代表が4月中旬、米ワシントンで開催された米商工会議所主催の経済関連イベントでウクライナメディアに語りました。申請が受理されれば、夏にも加盟国から交渉開始の通知を受け取る可能性があるといいます。

ウクライナは4月中旬、カナダと自由貿易協定(FTA)の拡大で合意しており、カチカ氏はカナダとの経済関係強化がTPP加盟に向けた「大きな助けになる」と述べました。カチカ氏は3月に英国の加盟が認められたことに言及し、「英国は申請表明から加盟まで2年半かかったが、ウクライナはカナダとの合意の恩恵で、より早く加盟できることを期待する」と語りました。

ウクライナはTPP加盟で貿易を拡大し、ロシアによる侵攻で打撃を受けた経済の復興を促したい考えです。

TPPは2016年2月に米国、日本など12カ国が署名。米国が17年に離脱を表明し、18年に7カ国で発効した。中国、台湾、エクアドルなどが加盟を申請しています。

ウクライナについては、他の発展途上国とは異なり、航空産業、宇宙産業、軍事産業、IT産業などの産業基盤があるので、戦争が終わり復興に転ずれば、かなり経済発展する可能性があることは、このブログでも述べたことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
ウクライナ戦争の「ロシア敗北」が対中戦略となる―【私の論評】「ウクライナGDPロシア凌駕計画」を実行すれば、極めて効果的な対中戦略になる(゚д゚)!

人口4400万人のウクライナの一人あたりのGDP(4,828ドル、ロシアは約1万ドル) を引き上げ、人口1億4千万人のロシアよりGDPを遥かに大きくすることです。現在ロシアのGDPは韓国を若干下回る程度です。

韓国の人口は、5178万ですから、一人あたりのGDPで韓国を多少上回ることで、ウクライナのGDPはロシアを上回ることになります。 

ウクライナは戦争前のロシアのGDPを上回る可能性が十分あります。そうして、もしそうなったとすれば、これはとてつもないことになります。ウクライナは軍事にも力をいれるでしょうから、軍事費でも、経済的にもロシアを上回る大国が東ヨーロッパのロシアのすぐ隣にできあがることになります。 

ウクライナは、従来はソ連邦に組み込まれ、自由が失われ、独立後は汚職が横行し、経済発展することができませんでしたが、EUもしくはTPP、あるいはこの両方に加入することができれば、経済発展の前提条件ともいえる民主化がさらにすすみ、汚職塗れの体質も改善され、経済がかなり伸びることが期待できます。

TPP、EUにウクライナが入ることにより、自由貿易の促進だけではなく、民主化、政治と経済の分離、法治国家化がさらに進み、ウクライナの内需が飛躍的に伸びることになります。

ウクライナでは、戦争が終了すれば、まずは国内の内需が劇的伸びることになります。その余勢をかって、さらに経済の高度成長を遂げれば、日本の60年代のように発展する可能性があります。そうして、長い時間をかけて醸成されてきた、EUやTPPの規約に基づくことにより、高度成長による社会の歪などもあまり経験せずに、成長できるかもしれません。

ウクライナは、日米のように内需(輸出対GDP比率が低い)のほうが外需(同高い)より圧倒的に強い国を目指すべきでしょう。韓国や中国、ドイツのように外需比率が高い国は、世界経済の調子が良いときには、国際競争力の強い国などと持て囃されて良いようにみ見えますが、世界経済が悪くなるとその影響を直接受けることになります。まずは内需を伸ばし切ることにより、足腰の強い経済を目指すべきです。

日本は、ウクライナをTPPに加盟によって、ロシアの西隣に経済発展する国、軍事的にも強いウクライナができあがることにより、日本の安全保障にとっても良い結果を得ることができます。

特に、ウクライナはロシアと国境を接しているということで、この国の軍事力が強まれば、これはEUにとっても良いことです。東側でロシアと国境を接する国日本としては、ウクライナと安保上でも協力をすすめるべきでしょう。

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ドイツの脱原発政策の「欺瞞」 欧州のなかでは異質の存在 価格高騰し脱炭素は進まず…日本は〝反面教師〟とすべきだ―【私の論評】エネルギーコストがあがれば、産業も人も近隣諸国に脱出

 ドイツの脱原発政策の「欺瞞」 欧州のなかでは異質の存在 価格高騰し脱炭素は進まず…日本は〝反面教師〟とすべきだ


廃炉に向かうドイツの原発

 ドイツのエネルギー政策はひどい。2021年12月23日の米紙ウォール・ストリート・ジャーナル社説で「ドイツの自滅的なエネルギー敗戦」と酷評された。書かれていることは、10年前のエネルギー政策転換の時からいわれていたことだ。11年の福島第1原発事故を受けて、アンゲラ・メルケル前首相は原発の段階的廃止を打ち出し、それが完遂された。

 その結果、太陽光・風力発電政策に翻弄される状態を自ら作り出した。しかも、自国では原発を廃止するが、隣国の原発大国、フランスから電力を輸入する欺瞞(ぎまん)もある。さらに、電力供給維持のためロシア産天然ガスへの依存が、ウクライナ侵攻で裏目に出た。

 ここまで脱原発をしても脱炭素は進展していない。21年のエネルギー別発電割合をみると、石炭・褐炭が27・9%、再生可能エネルギーが40・9%、原子力が11・8%、天然ガスが15・3%などとなっている。

 世界的な脱炭素の動きもあり、さらにはロシアのウクライナ侵攻でロシア以外に天然ガスを求めざるを得ないこともあり、天然ガスやその他のエネルギー価格の上昇にもドイツはさらされているのが実情だ。

 そして、ドイツの電力料金は日本の2倍以上になっている。こうしたドイツにおけるエネルギー構成のゆがみや価格の高騰は、エネルギー問題ではあらゆる供給手段を用意しておくという「エネルギー安全保障」を完全に無視した結果だ。

 せめて原発を廃止しなければ、今のエネルギー価格の高騰の一部を抑えられただろう。さらに、天然ガスも段階的にゼロにするというのは、まともなエネルギー政策とはいえない。

 脱炭素については、いろいろな議論があるものの、世界の流れであるのは誰も否定できない。その脱炭素の流れの中では、二酸化炭素(CO2)を出さず、風力や太陽光と異なり天候にも左右されない原発は、もってこいの手段だ。

 ドイツとは正反対であるが、フランスや英国が主導し、欧州で再び原発を活用する動きが活発になっている。脱炭素を進めるためには、原発は欠かせない要素だからだ。ちなみに、オランダやフィンランドでは原発新設などの動きもある。ドイツだけが欧州のなかでは異質の存在だ。

 また、世界中で小型モジュール式原子炉は有望だ。そのシンプルな設計は安全性を高めるとともに、コスト削減や建設期間短縮化になる。

 日本国内では、ドイツを見習い脱原発を主張する向きもあるが、やめるべきだ。そもそも欧州連合(EU)は、石炭というエネルギー問題を多国間で解決するため1952年の欧州石炭鉄鋼共同体から発展してきた。

 ドイツが変なエネルギー政策をとっても民主主義の陸続きの欧州他国からの助けもあるが、日本は周りを海で囲まれ、隣国は専制国家である。ドイツのようなことは期待できない。

 むしろ、エネルギー政策において欧州の中で異質なドイツを反面教師とした方がいい。

(元内閣参事官・ 嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】エネルギーコストがあがれば、産業も人も近隣諸国に脱出!

ドイツでは、さらにエネルギー問題に追い打ちをかけるように、ハーベック経済相が19日、石油・ガスを使用した暖房設備の大半を2004年から禁止する法案を政府が承認したと明らかにしました。

ハーベック独経済相

 連立与党は先月、24年以降新設される暖房設備の大半について、稼働エネルギー源の65%を再生可能エネルギーにすることで合意しました。 ドイツは45年までに温暖化ガスの排出を実質ゼロにするカーボンニュートラルを目指しており、法案はこの目標達成に向けた計画の一環となります。

建設部門が昨年排出した温暖化ガスは全体の約15%を占めていました。 法案関連資料によると、化石燃料の代替として再生可能電気で稼働するヒートポンプや地域暖房、電気暖房、太陽熱システムなどを家庭用暖房として使用できます。 ただ、この計画を巡ってはコストが高く、低・中所得世帯や賃貸物件利用者への負担が大きいとの批判が政権内からも出ています。

ドイツの産業用電力、ロシアからの天然ガスを用いて発電してきたのですが、ロシアからの天然ガスの供給が止まり電気代35倍になりました。すでに企業はドイツを捨て始めています。家庭用の石油ガス暖房禁止した場合、暮らしていけない人だらけになるでしょう。

上の記事で、高橋洋一氏は、ドイツが変なエネルギー政策をとっても民主主義の陸続きの欧州他国からの助けもあるとしていますが、これは逆にいえば、産業用電気代が35倍になれば、多くの企業がドイツを離れ、それにともないドイツ人がドイツを離れ、家庭用の石油ガス暖房を禁止すれば、さらに多くのドイツ人がドイツを離れることになるのではないでしょうか。

世界には、スイスやイタリアなどようにドイツ語圏内の地方を有する国々が存在しており、そのような国では、ドイツ人は言語も生活習慣もほとんど変えないで移住することができます。そこまで行かなくても、生活習慣の似ている国も多くあります。しかも、近隣諸国は陸続きです。
ドイツ語圏とドイツ語が通じる国


おそらく、ドイツはこのような馬鹿げた政策をいつまでも続けることはできないでしょう。問題はいつやめるかです。ドイツ産業が流入してくる国々は大喜びです。一旦流出すれば、また元に戻すのは大変です。

ドイツの脱原発は、このブログにも以前掲載したように、首相辞任直後にロシアエネルギー企業の役員になり、多数のロシアエネルギー企業の役員を務めたプーチンの友人シュレーダーが始めたもので、彼は反原発、脱石炭をうたう環境団体のスポンサーでもあります。

再生可能エネルギーの推進派は、太陽光エネルギーが石油を置き換える存在になるとアピールします。そうして、ドイツでは、かつてエネルギーの80%を太陽光パネルで得ていたと主張する人もいます。

しかし、2019年時点で、太陽光や風力で満たされたのはドイツの電力エネルギー全体の34%でしかありませんでした。上の記事では、21年時点でも再生可能エネルギー40.9%に過ぎません。ドイツのエネルギーの大半は今でも、天然ガスや石油、トウモロコシ由来のバイオガスから生み出されています。

さらに、太陽光パネルの製造には膨大な種類の素材が必要になります。ソーラーパネルの製造には原子力発電プラントの16倍にも及ぶ、セメントやガラス、コンクリートや鉄が必要で、排出されるゴミの量は300倍にも達するといいます。

米国では、太陽光パネルの製造や、ソーラー発電所の建設に必要な資材の多くは、米国最大のコングロマリットの1社として知られるコーク・インダストリーズが製造しています。石油や石炭、天然ガスなどのエネルギー産業を操るコーク・インダストリーズは、環境保護活動家が目の敵にする企業です。

これは全く皮肉な話としか言えないです。環境に優しいはずの太陽光パネルが、環境問題の元凶となる企業の部品で作られているのです。

太陽光発電等CO2の排出を減らし、人類を未来に連れて行ってくれると信じ込んでいる人々は多いです。けれどもそれは、人間を含めすべての生き物が生存している限りは、呼気でCO2を排出し続けるし、特に人間が生存だけではなく、意義や意味のある生活していく上では、さらにCO2を排出することになります。

このことからもわかるように、CO2の排出を極端に減らすことはできません。電気自動車を製造するにしても、太陽光発電パネルを製造するにしても、現在は結局大量のCO2を排出します。

私自身は、 エネルギーミックスの多様性を確保するために、再生可能エネルギーの研究を維持するのは悪くはないと思います。なぜなら、現状では不可能と思われていることでも、将来は技術革新によって可能になることもあり得るからです。


しかし、現状では、まずはすでに過去に確かめられた方法によりエネルギーを供給すべきと思います。小型モジュール式原子炉は、冷却を行うのに多量の水を必要とせず、より安全で全く新しいものにもみえますが、すでに似たものは原子力空母、原子力潜水艦で何十年も前から使われています。その本質は、これらを民生用等多用途に使えるようにすることです。

そうして、再生可能エネルギーを研究しつつも、原発を含めた様々なエネルギー源を活用するべきと思います。

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