2023年10月29日日曜日

いずも型護衛艦「空母化」必要なの? 軍事的な合理性はあるか それ以上に大切な「日本の見られ方」―【私の論評】空母の利点と使い方:軍事戦力から災害支援まで(゚д゚)!

いずも型護衛艦「空母化」必要なの? 軍事的な合理性はあるか それ以上に大切な「日本の見られ方」

まとめ
  • 日本は空母を保有することになり、軍事力と国際社会における存在感を高める。
  • 空母の導入は軍事的な合理性よりも政治的な理由によって決まった。
  • 空母は戦闘にはそれほど有効ではないが、平時の外交の道具としては有効。
  • 空母は災害救援や平和維持活動などにも活用できる。
  • 空母の保有は日本の軍事力だけでなく、外交力も高める。
2027年度に軽空母化改修が完了する予定の護衛艦「いずも」

 日本の空母保有は、軍事的な合理性よりも政治的な理由によって決まったと言える。その根拠は、日本の防衛政策においては基本的に航空自衛隊の活動範囲内での作戦が推定されるから。加えて空母は高価であり、維持費や運用費も考慮するなら空中給油機のほうが、はるかに戦力の向上につながるだろうと考察したため。

 しかし、空母は政治的に非常に大きな意味合いを持つ。東アジアでは、中国の軍事的な挑発や領土問題が深刻化しており、日本は将来的にあり得る中国の海洋進出に対抗するために、自国の防衛力を強化するだけでなく、同盟国や友好国との連携を密にする必要があった。

 その点では、空母は有効な手段であると言え、日本は空母を持つことで、自国の防衛意志や能力を示すことができ、また空母はヘリコプターの運用拠点としては非常に効果的であることから、その能力を使って他国で協力や支援を行うことで、日本は国際社会から尊敬される存在として認められることにつながるかもしれない。

 空母は「軍事的合理性」だけで見るなら、日本にとってはそれほど必要ではないだろう。しかし、平時の外交の道具として見た場合は別だ。日本は空母を持つことで、自国の防衛意志や能力を示すことができ、また空母はヘリコプターの運用拠点としては非常に効果的であることから、その能力を使って他国で協力や支援を行うことで、日本は国際社会から尊敬される存在として認められることにつながるかもしれない。

 さらに、空母の保有は日本の軍事力だけでなく、外交力も高めることができる。かつて大日本帝国海軍(旧日本海軍)は世界最大級の空母艦隊を保有していましたが、それは侵略戦争の象徴となってしまいました。それを教訓とするなら、日本はいずも型護衛艦を使って自国の「お行儀よさ」を世界にアピールし、国際的な正当性を守っていることを示すことが重要になると筆者は考えます。


【私の論評】空母の利点と使い方:軍事戦力から災害支援まで(゚д゚)!

まとめ
  • 空母の最大の利点は、機動性と攻撃力であり、航空機を搭載し、任意の地域に短時間で展開し、遠距離から効果的な攻撃を行える。
  • 空母は制空権と制海権を確保した地域に展開し、敵の軍事施設、地上部隊、補給線、味方の支援などで効果的な攻撃を実施できる。
  • 潜水艦は海戦において重要で、発見や攻撃が困難。対潜水艦戦争(ASW)の能力が海軍の強さの指標で、日米が世界トップ。
  • 米国が空母を東地中海に派遣し、イスラエルとハマスの紛争拡大を防ぐために軍事的・政治的意味がある。
  • 空母は被災地支援にも活用可能で、過去の事例からその有効性が認識されており、国内外で平和的な軍事・政治的プレゼンスを高める手段として活用すべきであ。

空母の最大の利点は、その機動性と攻撃力にあります。空母は、航空機を搭載して、比較的短時間で任意の地域に展開することができます。また、艦載機は、さまざまな兵器を搭載して、遠距離から効果的な攻撃を行うことができます。

そのため、空母は、比較的限定された地域において、自軍が制空権と制海権を得た場合、その地域に空母を派遣して、ピンポイント的に効果がある地点に継続的に攻撃をすることができます。

具体的には、以下のような場面で空母の利点が発揮されると考えられます。
  • 敵の軍事施設やインフラへの攻撃
  • 敵の地上部隊への攻撃
  • 敵の補給線や輸送路の遮断
  • 味方の部隊への支援
もちろん、空母は非常に高価な兵器システムであり、その維持費や運用費も莫大です。そのため、空母を保有するには、十分な財政力と政治的意思が必要となります。

しかし、空母は、現代の軍事において非常に重要な存在であり、その利点は決して小さくありません。

世界最大の空母「ジェラルド・R・フォード」(手前)

ただし、自軍が制空権と制海権を得ていなければ悲惨な結果をまねくことになります。

現代海戦においては、艦艇は水上艦艇と潜水艦の二種類あると考えるべきです。自軍が制空権と制海権を持っていない海域においては、水上艦艇は空母も含めてミサイルや魚雷等の大きな標的でしかありません。しかも、現状の誘導型ミサイルや魚雷であれば、命中率は極めて高く、すぐに撃沈されてしまいます。

一方、潜水艦はそうではありません。いずれの潜水艦も敵方に発見されないうちに予めある水域に潜み動かなかったり、あるいは動力を駆動させずに、潮流に乗って移動している限りにおいては、敵方に発見されることはありません。

このような潜水艦を探知するのは容易ではありません。艦艇や航空機、監視衛星をもってしても現状では発見するのは困難です。

ただし、その状況で敵方を攻撃をすれば、敵方に発見される可能性は高まります。発見された場合は、攻撃を回避するためにできるだけ早く移動することになります。敵方に発見されないようにするためには、敵の探知を妨害する能力や、潜水艦のステルス性を高める必要があります。

この能力を含め、潜水艦を発見する能力、潜水艦を攻撃する能力を含めた総合的な能力を対潜水艦戦争(Anti Submarine Wafare:ASW)といい、現代海戦においては、この能力が高い海軍が海戦に強い海軍ということになります。

日本の対潜哨戒機P1

いかに多数の艦艇を持っていたにしても、ASW能力が低ければ、多くの艦艇が敵方に発見され、撃沈されることになります。

日米は、この能力に秀でており、どちらも世界トップクラスです。米国は、原潜しか所有しておらず、原潜であるがゆえにステルス性には若干劣るものの、ありとあらゆる武器を大量に搭載した巨大な水中武器庫ともいえる、攻撃型原潜を所有しています。日本は、原潜は保有していないものの、ステルス性では世界トップクラスの通常型潜水艦を備えています。

そうして、両者に共通するのは、世界トップクラスの対潜哨戒能力(潜水艦を発見する能力)です。これは、日米ともかなり高く、能力の方向性が若干異なるので、どちらが優れているかということは、甲乙付けがたいところがありますが、それにしても、日米と他国を比較すると日米は突出しており中露を含めた他国をはるかに凌駕しています。

このような観点からすると、日本の海自が過去には22隻の潜水艦隊を構築することに尽力してきたこと、台湾が自前で潜水艦を建造したことは、軍事合理的観点からコスト・パフォーマンスという観点から高く評価することができると思います。

米国が昔から空母を保有し続けていたり、日本がこれから空母を所有しようとするのは、上の記事で指摘されているとおり、軍事的合理性というより、政治的な意味合いが大きいです。中国もそうです。

アメリカ国防総省は、東地中海に追加の空母打撃群の派遣を指示しました。イスラエルとハマスの衝突が拡大するのを防ぐためだとしています。

国防総省のオースティン長官は14日の声明で、アメリカ海軍の空母「ドワイト・D・アイゼンハワー」を中核とする空母打撃群の東地中海派遣を命じたと明らかにしました。

アメリカ軍はすでに最新鋭の原子力空母「ジェラルド・フォード」を中心とする空母打撃群を東地中海に配備していて、2隻目の空母も合流するということです。

ハマスは海軍力、空軍力は皆無ですし、イランを含めた中東地域の国々には海軍力、空軍力は脆弱です。ここに、空母打撃群を派遣することは軍事的にも政治的にも大きな意味を持ちます。

このように、空母は軍事力と戦力の投射のために依然として重要な役割を果たしています。潜水艦がステルス性や奇襲攻撃において有利なのは確かですが、それが故に潜水艦の行動は、昔から秘匿されるのが通例です。

一方空母は敵を威嚇する目に見える強さの誇示を可能にします。空母はまた、自国から遠く離れた場所での軍事作戦に比類のない航空戦力を提供できます。多くの軍事的な弱小国においては、空母を威信とグローバル・リーチ(世界中への展開力)の象徴として重視しています。時代遅れだという意見もあますが、空母は、公海での優位性を主張しようとする世界の大国にとって、今後もその役割を果たし続けるでしょう。

さらに、空母は被災地支援等に活用することができます。

  • 災害発生直後の救援活動
  • 救援物資や人員の輸送
  • 医療支援
  • 復興支援

空母は、その機動性や輸送能力を活かして、被災地支援に大きな効果を発揮することができると考えられます。

熊本地震の災害支援のために「いずも」に乗り込む自衛隊員ら(2016年4月19日)

以下に、空母等が被災地支援に活用された事例をいくつかご紹介します。

  • 2004年のスマトラ沖地震では、米国の空母「カール・ヴィンソン」が被災地支援に投入され、復興支援物資の輸送や医療支援などに貢献しました。
  • 2011年の東日本大震災では、米国の空母「ロナルド・レーガン」が被災地支援に投入され、復興支援物資の輸送や医療支援などに貢献しました。
  • 2016年海上自衛隊のヘリコプター搭載護衛艦「いずも」熊本地震の被災地支援のために陸上自衛隊の輸送にあたった。

これらの事例から、空母等は被災地支援に有効な手段であることが世界中で認知されつつあると言えるでしょう。

日本としては、国内外の被災地支援でも空母を活用しつつ、平和的に軍事・政治的プレゼンスを高めるべきです。ただ、軍事的・政治的プレゼンスを高めるにもコスト・パフォーマンスは常に意識すべきでしょう。その上で、活用すべきはどんどん活用していくべきです。

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2023年10月28日土曜日

「増税感」の背景 国民1人71万円の「所得損失」 田中秀臣―【私の論評】岸田政権の経済政策は? 減税や給付で15兆円の需給ギャップを埋められるのか(゚д゚)!

ニュース裏表

まとめ
  • 岸田首相は「増税メガネ」と呼ばれている。
  • 国民は、岸田政権の増税感を強く感じている。
  • 国民の増税感は、政府の税収増と国民の所得損失の乖離による。
  • 岸田政権は、所得減税で名誉回復を図ろうとしている。
  • 消費税減税が最も望ましいが、期限付きの所得減税でも評価は上がる。

 岸田首相は、2021年10月就任以来、増税を否定し、減税を強調してきた。しかし、国民の間では、消費増税や防衛費増額などによって、実質的に増税が行われているとの不満が根強くある。

 このような国民の「増税感」は、経済学における「機会費用」という考え方によって理解することができる。日本経済は、毎年1%以上の成長をすることが望ましいが、2019年の消費増税や2020年以降の新型コロナウイルス感染症拡大などの影響で、その成長は阻まれていた。その結果、国民1人当たりの実質GDPは、2018年度から2022年度までに約71万円も減少している。

 一方、政府予算は、毎年度4兆円以上の税収増を続けている。国民の所得は減少しているのに、税収だけが増えていることで、国民の増税感は高まっている。

 岸田首相は、こうした国民の増税感を意識して、2023年10月に期限付きの所得税減税を表明した。これは、増税感の払拭に向けた「名誉回復」の試みと言える。しかし、消費税減税ができないのは残念であり、規模や「期限付き」の中身次第では、依然として「増税人間」の評価がついてしまう可能性もある。

 要するに、岸田首相は、国民の増税感を理解し、対応すべきである。具体的には、消費税減税の実現を目指すとともに、所得税減税の規模や「期限付き」の中身を国民の納得が得られるものにする必要がある。

 この記事は元記事の要約です、詳細を知りたい方は元記事を御覧ください。

【私の論評】岸田政権の経済政策は? 減税や給付で15兆円の需給ギャップを埋められるのか(゚д゚)!

まとめ
  • 岸田政権の増税、減税の具体的な動きは、防衛費増額による実質増税と所得税減税による実質減税の二つに集約されている。
  • 防衛費の増額は、ロシアのウクライナ侵攻を受けて実施され、10兆円の規模となっており、国民の負担への懸念が高まっている。
  • 防衛増税に関する法案は提出されておらず、与野党間で賛否が分かれるため、国民の理解と支持が必要とされている。
  • 所得税減税と非課税世帯への給付が実施されており、経済対策に取り組んでいるが、一部批判もある。
  • 現状は、複数年度にまたがっても需給ギャップを埋める経済対策をすべき。

岸田政権による増税、減税の具体的な動きは、以下の二つです。その他は、議論がなされているというだけであり、具体的なものではありません。

岸田政権が成立してからの減税、増税の具体的な動きは、防衛費の増額による実質増税と、所得税減税による実質減税の二つの動きに集約されます。

2022年10月に、岸田首相は、防衛費の増額を決定しました。この増額は、10兆円に上り、過去最大の規模となりました。この増額は、ロシアのウクライナ侵攻を受け、防衛力の強化を図る狙いがあります。しかし、この増額によって、国民の負担が重くなるとの懸念が高まっています。

しかし、防衛増税そのものはすでに決まったことではありません。

2023年10月28日現在、防衛増税に関する具体的な法案は提出されていません。岸田文雄首相は、2023年7月20日の参議院本会議で、防衛費をGDP比2%に引き上げることを表明しましたが、具体的な増税額や増税方法については、今後の議論の中で検討していくとしています。

防衛増税は、与野党間で賛否が分かれる議題であり、実現には国民の理解と支持が必要です。そのため、防衛増税が実現するかどうかは、今後の議論の行方次第となります。

ただし、岸田政権は、防衛増税を実現する強い意欲を持っています。そのため、今後の議論の中で、防衛増税の実現に向けた具体的な方策が検討され、実現に向けた動きが加速していく可能性は十分にあります。

一方、2023年10月には、岸田首相は、所得税減税と非課税世帯への給付を打ち出しました。この減税は、1人あたり4万円で、期限は2025年末までとなっており、物価高騰による国民の負担を軽減する狙いがあります。しかし、消費税減税を実現できなかったことや、規模が小さいことへの批判もあります。

今後、岸田政権は、国民の増税感を払拭するために、消費税減税や、所得税減税の規模拡大などの対応を迫られると考えられます。

岸田政権になってから、岸田政権そのものは、増税について具体的な言及をしていませんが、税調や財界人がその発言を繰り返しています。そのため、岸田政権は増税するだろうという認識が高まったと考えられます。

影響が大きかったものとしては以下のものがあります。

・政府税調の中期答申
2023年6月30日に公表された政府税制調査会(首相の諮問機関)の中期答申では、消費税率の13%への引き上げや、富裕層への課税強化など、増税を含む幅広い税制改革が提言されました。この答申は、岸田政権の税制改革の方向性を示すものとして、大きな注目を集めました。

 ・自民党税制調査会の宮沢洋一会長の発言

自民党税制調査会の宮沢洋一会長は、消費税率の13%への引き上げや、所得税の累進課税の強化など、増税を容認する発言を繰り返しています。宮沢会長は、岸田政権の税制改革を担う立場にあるため、その発言は大きな影響力を持っています。

・財界人などの発言

財界人の中にも増税すべきという人は少なくありません。

経団連会長の十倉雅和氏は、2023年7月の定例記者会見で、「財政再建の遅れは、経済の潜在成長率の低下や、社会保障の持続可能性を脅かす」と指摘し、増税の必要性を訴えました。また、消費税率の13%への引き上げについては、「国民の理解と納得を得ることが重要」と述べ、政府に丁寧な説明を求めました。

日本商工会議所会頭の三村明夫氏は、2023年7月の定例記者会見で、「財政再建は喫緊の課題であり、増税は避けられないだろう」と述べ、増税の可能性をにらみました。また、消費税率の13%への引き上げについては、「国民の負担を軽減する対策を講じることが重要」と述べました。

日経連会長の中西宏明氏は、2023年7月の定例記者会見で、「社会保障の持続可能性や、防衛費の増額など、財政再建には増税が不可欠だ」と述べ、増税の必要性を訴えました。また、消費税率の13%への引き上げについては、「国民の理解と納得を得ることが重要」と述べ、政府に丁寧な説明を求めました。

これらの財界人は、いずれも日本の経済界を代表する存在であり、その発言は、政府の政策に大きな影響を与えると考えられます。そのため、彼らが増税を容認する発言を繰り返していることは、岸田政権の増税への傾斜を示すものとして、注目されています。

ただし、岸田政権は、増税については具体的な言及を避けており、最終的な判断は、今後の議論の中で行われることになるでしょう。

こうした議論の中で、減税を選挙目当ての、バラマキなどと批判するむきもありますが、減税自体は、どんな形であれ、歓迎すべきものです。

上の記事で、田中氏は、「岸田首相は、国民の増税感を理解し、対応すべきである。具体的には、消費税減税の実現を目指すとともに、所得税減税の規模や『期限付き』の中身を国民の納得が得られるものにする必要がある」としていますが、その通りだと思います。

減税、給付その他を含めて、少なくとも15兆円(需給ギャップ)以上の経済対策を実行すべきです。

このブログでは、安倍・菅両政権において合計100兆円の補正予算を増税なしで組み、経済対策を行い、コロナ感染による経済の悪化を抑えることに成功したことを何度か掲載しました。し安倍元総理の言葉を借りると、この補正予算は、「政府日銀連合軍」により、政府が国債を発行し、日銀がそれを買い取るという方式で賄われました。


この方式を政府の借金が増えるからなどとして、批判するむきもありましたが、政府の借金は増えるどころか、ここ数年政府の一般税収は過去最高を更新しています。そうして、何よりも、「政府日銀連語軍」方式が巨大な借金を生み出しているなら、財務省や増税派はこれを「それみたことか」と喧伝するはずですが、そのようなことは一切ありませんでした。

ただ、安倍政権のときには、60兆円の補正予算であったので、当時は需給ギャップが100兆円だったので、若干不安感を感じていました。しかし、その後の菅政権がすぐに、40兆円の補正予算を組み経済対策を実行したので、計100兆円となり、安心しました。

この対策は、経済音痴のマスコミは評価しませんが、かなり功を奏したのは間違いありません。経済対策は必ずしも、単年度ですべて実行しなくても複数年度で実行し続けるという手法もあるのです。

こうしたこともあって、岸田政権は経済では比較的安定したスタートを切ることができました。しかし、その後のエネルギー・資源価格の高騰があり、岸田政権はこれに対処しなければならなくなりました。これには、需給ギャップを考えれば、先に述べた15兆以上の対策が必要です。

岸田政権は、2023年10月26日に、所得税の1人当たり4万円減税と、所得が低い世帯への7万円給付を打ち出しました。

所得税減税の規模は、対象者数を約1億人に想定した場合、約4兆円となります。給付金の規模は、対象者数を約5000万人に想定した場合、約3.5兆円となります。

したがって、所得税減税と給付金の合計規模は、約7.5兆円になると試算できます。

なお、この規模は、あくまでも試算であり、今後の議論の中で変更される可能性もあります。

また、所得税減税の対象となる所得は、給与所得と事業所得であり、給与所得者のうち、給与所得控除額が38万円を超える人が対象となります。給付金の対象となる世帯は、住民税非課税世帯と、住民税の課税額が3万円以下の世帯です。

7.5兆円だと、15兆円の半分ですが、これを単年度で終わらせることなく、複数年度で実施するとか、さらに消費税減税も行うことによって、複数年度では15兆円以上の対策をすることができます。

そうして、財源は税収上ブレ分を使うという考えもありますか、それだけでは15兆円には足りないです。需給ギャップの15兆円を国債で賄っても、それが借金になるということはありません。それは、安倍・菅両政権であわせて、需給ギャップに相当する100兆円の国債を発行しても、そうはならなかったことを見ればご理解いただけるものと思います。要するに、現在の日本は、財源の心配など全くせずに、減税できるのです。

スーパーを視察した岸田首相

国民も、そうして志のある野党も、マスコミや識者などのネガティブキャンペーンに煽られて、「どうせ増税」などと諦めずに、岸田政権が正しい経済政策を実行するように、これから世論を形成していくべきです。

ただ、岸田政権に反省を促したいのは、はやめに「消費税減税」を打ち出していれば、政権運営も安定していたであろうことです。しかも、規模としては、100兆円でなくて、15兆円です。やる気になれば、何とでもなると思うのですが、そんなに難しいことなんでしょうか・・・・・・。


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2023年10月27日金曜日

現時点では考えにくい中国の台湾侵攻―【私の論評】中国の台湾侵攻、兆候は「弱さを偽る」戦略?戦争を防ぐには(゚д゚)!

現時点では考えにくい中国の台湾侵攻

まとめ
  • 米国がウクライナやイスラエルに気を取られているので、中国が今こそ台湾を侵攻する絶好の機会だという見方あり。
  • 中国共産党は台湾侵攻の準備がまったくできていない。
  • 現時点で中国が台湾へ侵攻する可能性は著しく低い。

習近平国家主席は9日午後、米上院のシューマー院内総務率いる超党派議員団と北京の人民大会堂で会談

 現在、ロシア・ウクライナ戦争、イスラエルとガザ地区のハマス、レバノンのヒズボラ、イエメンのフーシ派といった紛争が続いており、イスラエルがガザ地区に地上部隊を投入するという動きもある。この状況下で、中国が台湾を侵攻する絶好の機会という意見があるが、その現実味は低いと言える理由が複数存在する。

 まず、中国政府自体が内部で不安定であり、軍事と外交の機能が低下している。また、習近平主席は暗殺やクーデターを恐れて身を隠し、国内外を頻繁に移動しており、台湾侵攻の準備が整っているとは考えにくい。

 中国の経済状況も不安定で、不動産市場の問題や金融危機の懸念がある。これらの要因から、中国が台湾への侵攻に備えているとは考えにくい。

 さらに、中国の人民解放軍は戦争に対する意欲が低く、長期戦に耐えられる資源や実戦経験が不足している。習近平主席も軍のトップを粛清し、統一的な指導を行う難しさがある。

 最後に、アメリカは中国との対話を促進し、習近平政権の安定を保とうとしており、敵対的なアプローチは取っていない。中国の台湾への侵攻は、国際的な混乱を招く可能性があるため、アメリカは穏便な解決を模索している。

 これらの要因から、現在の段階では中国が台湾に侵攻する可能性は低いと言える。

この記事は元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になってください。

【私の論評】中国の台湾侵攻、兆候は「弱さを偽る」戦略?戦争を防ぐには(゚д゚)!

まとめ
  • 中国が台湾に侵攻するのは、現時点では考えにくい。
  • 中国が台湾に侵攻するのは、ロシアのウクライナ侵攻と同様に、かなり難しい。
  • 中国が台湾に侵攻する兆候としては、ロシアのように「弱さを偽る」戦略を実行することが挙げられる。
  • 中国が台湾と統一のための交渉を平和的に実施しだしたら、逆に危険である。
  • 戦争を防止するためには、交渉の過程を適切に分析し、相手国の意図を正しく理解することが重要である。

私は、上の記事に関しては、基本的に賛成します。ただ、現時点では中国の台湾侵攻は考えにくいということであり、現時点というのがどの時点までを指すのかは、明示されていません。

私自身は、今年や来年辺りはないとはいえると思いますが、その後はなんとも言えないと思います。様々な条件が整えば、その後はないとは断言はできないです。

私は、開戦前の時点でさえ、GDPが韓国を若干下回るロシア(人口は韓国はロシアの35%程度)がウクライナに侵攻するのは難しいし、NATOと対峙するのは不可能と考えていました。そうして、ロシアがウクライナに侵攻したとしても、占拠できるのは、東部のいくつかの州に限られるだろうと予測しました。そうして、戦況はそれに近い形で推移しています。

私はが、ロシアがウクライナに侵攻すると考えだしたは2022年の1月から2月の頭くらいでした。その頃には、多数のロシア軍のウクライナ国境付近への配置状況からみて、これは侵攻する可能性が高まったと判断せざるを得なくなりました。

このロシアの挙動は台湾を考える上でも、参考になると思います。このブログでは、過去に中国が台湾に侵攻するのは、かなり難しいことを掲載してきました。ロシアのウクライナ侵攻は困難ですが、中国の台湾侵攻もかなり難しいです。

台湾は島であり、中国が台湾を侵攻するには大軍を海上輸送しなければならないですし、中国にはそれだけの兵員を一度に運ぶ海上輸送能力はありません。さらに、台湾の領土のほとんどは山岳地帯(台湾の最高峰玉山は富士山よりも高い)であり、台湾の東側は海からすぐに急峻な山がたちはだかり大軍が上陸するのは無理です、さらに、西側も上陸する地点は限られています。

山岳地帯の多い台湾では山の上にも多くの人々が住む

台湾軍は独自の対艦ミサイル、対空ミサイルを多数配備していますし、最近では最新型の潜水艦も配備しつつあります。それに台湾有事には、日米やその同盟国なども様々な形で加勢する事が考えられます。それを考えるとかなり難しいです。

ただ、ロシアはウクライナに侵攻するのは難しいとわかり切っていながらも、結果として侵攻しました。そうして、予想通りに苦戦しています。

今月に防衛研究所が公表した、政策研究部防衛政策研究室 研究員の本山 功氏の以下の論文は中国が本当に台湾を侵攻する兆候を見逃さないようにするための情報を提供しています。

ウクライナ危機における戦争の交渉と「弱さを偽る」戦略

本論文では、ウクライナ危機におけるロシアとウクライナの交渉を分析し、ロシアが「弱さを偽る」戦略をとった可能性を指摘しています。

「弱さを偽る」戦略とは、弱い姿勢を装うことで、相手を過大な警戒心や油断に陥らせ、有利な条件を引き出す戦略です。

論文では、ロシアがウクライナ侵攻直前、以下のような行動をとったことを指摘しています。

  • ウクライナ周辺に大量の軍を集結させたが、侵攻の意思を否定した。
  • ウクライナとの交渉を開始したが、交渉の過程で譲歩の姿勢を見せ、ウクライナを弱体化させようとした。

これらの行動は、ロシアがウクライナを弱体化させ、国際社会からの圧力を弱めるために、弱い姿勢を装ったのではないかと考えられます。

ウクライナ軍女性兵士

論文では、ロシアの「弱さを偽る」戦略は、一定の成果を上げたと評価しています。しかし、ウクライナの抵抗と国際社会の制裁により、ロシアの戦略は失敗に終わり、泥沼化した戦争を引き起こしたとしています。

論文の結論として、本山氏は、以下のように述べています。

戦争は、交渉の失敗によって引き起こされることが多い。したがって、戦争を防止するためには、交渉の過程を適切に分析し、相手国の意図を正しく理解することが重要である。

この論文は、ウクライナ危機におけるロシアの戦略を理解する上で、重要な洞察を与えるものです。また、戦争を防止するためには、交渉の過程を分析する重要性を示唆しています。

中国は、台湾に侵攻するのは、先に述べたように一般に考えられているよりは、かなり難しいです。軍事的破壊=侵攻ではないからです。侵攻とは、交戦したあとに、交戦地域を占拠することも含みます。

破壊しただけでは、占拠したことにはならないですし、占拠できなければ侵攻は失敗です。ロシアは、ウクライの多くの都市を破壊しましたが、占拠できた地域はわずかです。占拠した地域がわずかであっても、首都を占拠すれば、侵攻は成功したともみなせますか、それには失敗しています。これからできる見込みもありません。これを考えると、中国が台湾を侵攻するのは難しいです。

ロシア軍に破壊されたウクライナの都市

しかし、ロシアが無謀なウクライナ侵攻をしたように、中国が台湾侵攻をする可能背は否定はできないです。

中国が本気で台湾を侵攻する腹を決めたときには、ロシアのように中国も「弱さを偽る」戦略を実行する可能性が高いです。戦狼外交で、台湾に武力侵攻するなどと脅しているうちは本気ではないでしょう。台湾と統一のための交渉を平和的に実施しだしたら、逆に危険とみなすべきです。

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2023年10月26日木曜日

民間で唯一「潜水艦の目」開発拠点、33年ぶり新装 進む艦艇の無人化 ソナー需要爆上がり!?―【私の論評】日本が誇る水中音響技術、世界トップクラスへ(゚д゚)!

民間で唯一「潜水艦の目」開発拠点、33年ぶり新装 進む艦艇の無人化 ソナー需要爆上がり!?

まとめ
  • 海に設置された水中音響計測施設「SEATEC NEO」が完成
  • 海水の自然な状態を反映した試験が可能
  • 水中音響機器の開発・試験に貢献
  • 日本の海洋防衛能力の向上に期待
  • 世界トップクラスの水中音響技術の実現に期待
 

 沖電気工業(OKI)が33年ぶりにリニューアルした水中音響計測施設「SEATEC NEO」は、大型化が進む自立型無人潜水機(AUV)や感覚走査型無人潜水機(ROV)、無人潜水艇(USV)などのUUV(Unmanned Underwater Vehicle:無人潜水艇)のテストに対応できる設備を備えています。

 従来の施設では、開口部が小さく大型の機器を吊り下げることが難しかったため、バージの外で試験を行うことが多かったといいます。しかし、SEATEC NEOでは開口部が広く、最大2tまでの機器を吊り下げることができるため、屋内でも安定した試験が可能になりました。

 また、使用可能な電力の容量もアップし、より多くの機器を同時に使用できるようになりました。さらに、屋上のソーラーパネルで発電した電力を施設内で蓄電し、24時間連続で監視カメラや気象観測装置を稼働させることができるようになりました。

 OKIは、海洋事業への参入を視野に、SEATEC NEOを拠点に海洋データプラットフォームの事業化を目指しています。

 具体的には、風向、風速、気温、湿度、降雨量、水温、塩分濃度、溶存酸素量、日照などのデータを年間通じて取得し、海洋情報を必要とする漁業関係者へのデータ提供や、新たな事業創出などに活用していく計画です。

 SEATEC NEOは、OKIの海洋事業拡大に向けた重要な拠点となると期待されています。

 この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になってください。

【私の論評】日本が誇る水中音響技術、世界トップクラスへ(゚д゚)!

水中音響計測施設は、潜水艦等の目ともいわれる海中音響機器等が海中でどのように動作するかを調べるための施設です。海中音響機器は、海水の音響特性や、海流や潮流などの環境条件の影響を受けるため、これらの条件を再現した状態で試験を行うことで、水中音響機器の性能を正確に評価することができます。

その中でも、「SEATEC NEO」は海上に設置されているというか、船のように移動できる特殊なものです。

SEATEC NEOの内部

沖電気工業がリニューアルした水中音響計測施設「SEATEC NEO」に関して、軍事的、地政学的な意味を掲載します。

まず、軍事的な意味から掲載していきます。AUVやROV、USVは、いずれも無人水中システム(UUV)と呼ばれるもので、潜水艦や艦船の代わりに海中での偵察や攻撃を行うことができます。近年、これらの機器は大型化・高性能化が進んでおり、より高度な任務を遂行できるようになっています。

SEATEC NEOは、これらの大型化・高性能化したUUVのテストに対応できる設備を備えているため、海上自衛隊の潜水艦や艦船の能力向上に大きく貢献すると考えられます。

具体的には、SEATEC NEOは以下の点で海上自衛隊の軍事力向上に寄与すると考えられます。大型化したUUVのテストが可能になる

SEATEC NEOは、従来の施設よりも開口部が広く、最大2tまでの機器を吊り下げることができるため、大型化したUUVのテストが可能になります。これにより、海上自衛隊はより高度な任務を遂行できる大型UUVを開発・運用できるようになるでしょう。より安定した試験が可能になります。

SEATEC NEOは、従来の施設よりも波浪の影響を受けにくい場所に設置されているため、より安定した試験が可能になります。これにより、UUVの性能をより正確に評価できるようになり、開発の効率化にもつながるでしょう。より多くの機器を同時にテスト可能になる

SEATEC NEOは、従来の施設よりも使用可能な電力の容量がアップしているため、より多くの機器を同時にテスト可能になります。これにより、UUVの開発・試験のスピードアップが期待できます。

また、SEATEC NEOは海洋データプラットフォームの事業化も視野に入れており、海洋に関するデータを収集・蓄積する機能を備えています。これらのデータは、海上自衛隊の運用や訓練にも活用できると考えられます。

このように、SEATEC NEOは海上自衛隊の潜水艦や艦船の能力向上に大きく貢献する可能性を秘めた施設と言えるでしょう。

SEATEC NEOの整備は、自衛隊が今後本格的にUUVを活用することを暗に示していると言えるでしょう。

近年、UUVは急速に技術革新が進んでおり、潜水艦や艦船の代わりに海中での偵察や攻撃を行うことができるようになりました。また、UUVは人命や艦船を危険にさらすリスクが低いため、自衛隊にとって非常に魅力的な兵器となっています。

SEATEC NEOは、これらの大型化・高性能化したUUVのテストに対応できる設備を備えているため、自衛隊がUUVを本格的に運用していくための重要な拠点となるでしょう。

日本のUUV「OZZ-5 自律型水中航走式機雷探知機」模式図

具体的には、SEATEC NEOは以下の点で自衛隊のUUV運用に貢献すると考えられます。

・UUVの開発・試験の加速
SEATEC NEOは、大型化したUUVのテストが可能であるため、自衛隊はより高度なUUVを開発・運用できるようになるでしょう。また、より安定した試験が可能であるため、UUVの性能をより正確に評価できるようになり、開発の効率化にもつながるでしょう。
・UUVの運用能力の向上
SEATEC NEOは、海洋に関するデータを収集・蓄積する機能を備えています。これらのデータは、UUVの運用や訓練にも活用できるため、自衛隊のUUV運用能力の向上につながるでしょう。
なお、海上自衛隊は2022年3月に、UUVの運用を本格化するための「無人水中システム運用構想」を策定しています。この構想では、2030年代までに大型UUVを導入し、海上自衛隊の潜水艦や艦船の能力を向上させることを目標としています。

SEATEC NEOの整備は、この構想を実現するための重要な取り組みと言えます。

SEATEC NEOは海に設置されていますが、中国やロシアはこのような施設はなく巨大な水槽で行っています。水槽で行う水中音響計測では、水槽内の海水の状態を人工的に制御することができます。例えば、水温や塩分濃度、濁度などを一定に保つことで、より正確な試験結果を得ることができます。

ちなみに、日本にも水槽の水中音響計測施設が存在します。代表的な施設としては、以下のようなものが挙げられます。
  • 三菱重工水中音響試験場(三重県伊勢市)
  • 東芝海洋音響研究所(茨城県那珂市)
  • 日本大学水中音響研究所(神奈川県藤沢市)

三菱重工の水中通信機器の音響特性を計測する世界最大級の無響水槽

これらの施設は、主に民間の企業や大学によって運営されており、UUVやソナーシステムなどの開発・試験に活用されています。

一方、SEATEC NEOは海に設置されている(船のように移動できる)ため、海水の自然な状態をそのまま反映した試験結果を得ることができます。これは、実海域での運用を想定した試験を行う上で非常に重要です。

また、SEATEC NEOは、海洋に関するデータを収集・蓄積する機能を備えています。これは、水槽では実現できない機能であり、SEATEC NEOの大きな強みと言えるでしょう。

ちなみに、米国にもSEATECH NEOのように海に設置された施設があります。

その名は、Naval Undersea Warfare Center (NUWC) Keyport(ワシントン州)です。この施設は、米国海軍によって運営されており、潜水艦や艦船のソナーや、UUVなどの開発・試験に活用されています。

SEATEC NEOとこの米国の施設は、中露の水槽とは根本的に異なる水中音響計測施設です。

具体的には、SEATEC NEOと中露の水槽の違いは以下のとおりです。


SEATEC NEOは、海洋に関するデータを収集・蓄積する機能を備えているため、地政学的な影響力という観点からも、中国とロシアの施設よりも優れていると言えるでしょう。

「SEATEC NEO」の整備は、地政学的には、以下の2つの影響を与えると考えられます。

・日本の周辺海域の監視能力の向上

SEATEC NEOは、大型化したUUVのテストに対応できるため、日本の周辺海域の監視能力を向上させることができます。これにより、中国や北朝鮮などの軍事活動をより正確に把握できるようになり、日本の安全保障につながるでしょう。

・海洋資源開発の促進

SEATEC NEOは、海洋に関するデータを収集・蓄積する機能を備えているため、海洋資源開発を促進することができます。これにより、日本の海洋権益を拡大し、経済力を強化することにつながるでしょう。
SEATEC NEOは日本の海洋防衛能力と海洋権益の拡大に大きな可能性を秘めた施設と言えるでしょう。


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2023年10月25日水曜日

中国「一帯一路」の現状と今後 巨額な投融資の期待が縮小 債務返済で「あこぎな金融」の罠、世界の分断で見直しに拍車―【私の論評】一帯一路構想の失敗から学ぶべき教訓(゚д゚)!

高橋洋一「日本の解き方」

高橋洋一

まとめ
  • 一帯一路は当初の期待に沿った成果を上げていない。
  • 先進国からの参加は減少しており、中国からの投資も低下傾向にある。
  • 中国経済の失速や米中対立の激化なども、一帯一路の進展を阻む要因となっている。
  • 中国は債務返済が困難になった国の救済に消極的であり、一帯一路の評判は低下している。

一帯一路の国際フォーラムで演説をする鳩山元首相

 中国は10年前に提唱した巨大経済圏構想「一帯一路」の10周年を記念して国際フォーラムを開いた。中国はこれまでの実績を強調したが、出席者は先進国の代表団が減少し、グローバルサウスが中心だった。

 また、中国は「一帯一路内の貿易額が増加している」と主張するが、実際には投資額はピーク時の2015年以降減少している。さらに、中国経済の失速や米中対立、中露接近も一帯一路への関与を冷え込ませている。

 特に、中国経済の失速と米中対立は、一帯一路の今後にとって大きなマイナス要因となると考えられる。

 中国は債務返済が困難になった国への救済にも消極的であり、スリランカは中国の「あこぎな金融」の罠にはまった例とされている。日本はスリランカ債務問題について中国抜きで協議を開始しており、中国の思惑どおりに進んでいないことは明白だ。

この記事は元記事の要約です。詳細を知りたい方は元記事を御覧ください。

【私の論評】一帯一路構想の失敗から学ぶべき教訓(゚д゚)!

まとめ
  • 一帯一路構想は、開発経済学的に見て、無理がある。
  • 中国は、まだ発展途上国であり、貧しい国々を豊かにするノウハウがない。
  • AIIBの融資金利が高い。
  • 中国は、国内の投資案件が減少したことで、海外への投資を拡大しようとした。
  • 中国は、当面海外投資から手を引き、まずは国内問題を片付けるべき。

一帯一路構想は一見壮大なものだかその現実は・・・・

高橋洋一氏は、一帯一路構想が公表された直後、そのバスは「オンボロ」「高利貸」なのでやめた方がいいと語っていました。私も当時そう思いました。その理由は主に以下の二つの理由からでした。

まず第一に、開発経済学的に見て、無理があるというものでした。

開発経済学においては、自国より経済成長率が高い国に対する投資は、経済の拡大によって新たな需要が生まれるため、投資の機会が多く、利益率も高くなると考えられています。しかし、自国より経済成長率が低い国への投資は、利益率が低くなるというものです。

具体的には、以下の理由が挙げられます。
  • 経済成長率が高い国は、国内の需要が拡大するため、企業の売上や利益が増加する。
  • 経済成長率が高い国は、労働力や資源などの生産要素が不足するため、投資によって生産性の向上を図ることができる。
  • 経済成長率が高い国は、政治や社会の安定性が高く、投資リスクが低い。
もちろん、必ずしも自国より経済成長が高い国に投資すれば利益が上がるわけではありません。投資先の国やプロジェクトの選定は慎重に行う必要があります。

以下に、投資先の国やプロジェクトの選定において考慮すべき点をいくつか挙げます。
  • 経済成長率の見通し
  • 政治・社会の安定性
  • 法制度の整備状況
  • インフラの整備状況
  • 人材の質
  • リスクの大きさ
また、投資先の国やプロジェクトの選定にあたっては、専門家のアドバイスを参考にすることも重要です。しかし中国は過去に植民地経営をした経験はなく、海外に投資した経験も少ないですから、海外投資の専門家はいないと言っても良い状況でした。

中国政府は、一帯一路の推進にあたり、海外投資の専門家を育成するための取り組みを行ってきました。しかし、それらの取り組みが十分に成果を上げていないことも、一帯一路の失敗の一因と考えられます。

海外投資の専門家は、投資先の国やプロジェクトの選定において、経済成長率の見通し、政治・社会の安定性、法制度の整備状況、インフラの整備状況、人材の質、リスクの大きさなどの要素を総合的に判断する能力が必要です。また、投資先の国やプロジェクトの現地事情をよく理解し、リスクを回避するための対策を講じる能力も求められます。

中国が、一帯一路の成功を収めるためには、海外投資の専門家をさらに育成し、彼らの能力を最大限に活用することが重要なはずでした。

具体的には、以下の取り組みが必要でした。
  • 海外投資の専門家を育成するための教育・研修の充実
  • 海外投資の専門家が活躍できる環境の整備
  • 海外投資の専門家と政府や企業との連携の強化
これらの取り組みが十分になされていれば、中国は海外投資の経験とノウハウを蓄積し、一帯一路の成功につなげることができたかもしれませが、それを怠って失敗したのが中国です。

そもそも、一帯一路のほとんどのプロジェクトは、もし中国で海外投資の専門家が十分に養成されていれば、その専門家は実施すべきではないと判定していたでしょう。

年々参加者数が減る一帯一路国際フォーラム

第二には、中国は世界第二の経済大国といわれながらも、一人あたりのGDPは一万ドルを少し超えた程度であり、これは日本など世界の他の先進国や、韓国、台湾よりもかなり低いし、貧しいといわれる中東欧諸国のほんどの国よりも低いです。

そのような国が、貧しい国に投資して、プロジェクトを起こしたにしても、中国には元々貧しい国の人々を豊かにするノウハウはないので、一帯一路がうまくいく可能性は低いと考えられたからです。

中国の一人あたりのGDPは、2023年時点で約12,500ドルです。これは、日本の一人あたりのGDP(約40,000ドル)の約3分の1、韓国の一人あたりのGDP(約35,000ドル)の約4分の1、台湾の一人あたりのGDP(約30,000ドル)の約4分の3に過ぎません。また、貧しいといわれる中東欧諸国の平均的な一人あたりのGDP(約15,000ドル)よりも低い水準です。

このような状況で、中国が貧しい国に投資してプロジェクトを起こしても、中国自身が貧しい国の人々を豊かにするノウハウを持っていないことから、一帯一路がうまくいく可能性は低いと考えられます。

具体的には、以下の理由が挙げられます。
  • 中国は、まだ発展途上国であり、自国内でも貧困や格差の問題を抱えています。そのような国が、貧しい国に投資してプロジェクトを起こしても、そのノウハウが十分に確立されていない可能性があります。
  • 中国は、政治体制が独裁制であり、民主主義体制の国とは価値観や考え方が大きく異なります。このような国が、民主主義体制の国に投資してプロジェクトを起こしても、そのプロジェクトが現地のニーズに応えられない場合もあります。
  • 中国は、債務漬けの問題を抱えています。そのような国が、貧しい国に投資してプロジェクトを起こしても、そのプロジェクトが債務の負担となり、現地の経済を悪化させる可能性があります。
もちろん、中国が一帯一路を通じて、貧しい国の人々の生活を改善する取り組みを行っていることは事実です。しかし、中国自身が抱える課題や、一帯一路に対する批判などから、一帯一路が今後も成功を収めることは難しいです。

以下に、中国の経済状況と一帯一路の課題に関する数字的な根拠をいくつか挙げます。
  • 中国の一人あたりのGDPは、2010年から2023年の間に約2倍に増加しました。しかし、依然として世界平均の約半分に過ぎません。
  • 中国の外貨準備は、2010年から2023年の間に約3倍に増加しました。しかし、債務の増加に伴い、対外負債の割合も拡大しています。
  • 一帯一路の参加国は、2013年から2023年の間に約70カ国から約140カ国に増加しました。しかし、そのうちの多くの国は、中国の債務の罠にはまっているとの指摘があります。
中国が、一帯一路を通じて世界経済に貢献し、貧しい国の人々の生活を改善するためには、まずは、自国の課題を克服し、一帯一路の取り組みを改善していくべきです。

この二つについては、中国自身もよく理解していたと思われます。

そうして、一帯一路を支えるAIIBにも最初から問題がありました。AIIBとは中国の主導によって設立された国際金融機関のことで、アジアインフラ投資銀行(Asian Infrastructure Investment Bank, AIIB)と呼ばれる、アジア向けの国際開発金融機関です。

複数の国によって設立され、アジアの開発を目的として融資や専門的な助言を行う機関の一種で、米国主導のIMF(国際通貨基金)や、日米主導のADB(アジア開発銀行)のような機関です。これは一帯一路のプロジェクトを推進することも目的に創設されたものです。

プロジェクトの種類や融資額などによって異なりますが、一般的には、ADBの融資金利よりも0.5~1%程度高いと言われています。例えば、AIIBの融資金利は、インフラ整備プロジェクトの場合、LIBOR(ロンドン銀行間取引金利)に上乗せした5.5~6.5%程度となっています。一方、ADBの融資金利は、インフラ整備プロジェクトの場合、LIBORに上乗せした4.5~5.5%程度となっています。


AIIBの融資金利が高い理由は、AIIBの資金調達コストを賄うためです。AIIBは、中国が主導して設立された機関ですが、出資国は中国以外の国も多く、その出資比率は中国が30%程度に過ぎません。しかも、致命的なのは、日米が参加していません。そのため、AIIBは、国際市場からの資金調達に依存しており、その資金調達コストを賄うために、融資金利を高く設定せざるを得ないのです。

それでも、中国が強引に一帯一路をすすめたのは、中国は、2000年代以降、急速な経済成長を遂げ、国内の投資案件が減少してきましたため、中国政府は、海外への投資を拡大することで、経済成長を維持しようとからだと考えられます。

一帯一路構想は、中国の海外への投資を促進するためのものであり、中国政府は、この構想を通じて、海外のインフラ整備や資源開発に投資し、中国企業の海外進出を支援してきました。

中国は、一帯一路構想を通じて、貧しい国々の経済発展にも貢献しようと考えていました。しかし、その一方で、中国の経済的利益を追求することも、一帯一路構想の重要な目的であったことは否定できません。

中国は、一帯一路構想を通じて、海外への投資を拡大し、経済成長を維持しようとしていますが、その取り組みは、必ずしも成功しているとは言えません。

先進国からの参加が減少し、中国からの投資も低下傾向にあることに加え、債務問題や環境問題など、一帯一路構想に対する批判も高まっています。

中国が、一帯一路構想を通じて、経済成長を維持し、政治的・経済的影響力を拡大するためには、これらの課題を克服していく必要があります。

以上、長くなってしまいましたが、これが現時点での、最新の一帯一路のまとめです。

中国は、当面海外投資から手を引き、まずは国内問題を片付ける必要があります。その上で、個人消費を高める政策をとるべきですが、そのためには、経済的中間層を増やし、これらが自由に経済活動ができる体制を整えるべきです。

そのためには、民主化、経済と政治の分離、法治国家化は避けて通れません。

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2023年10月24日火曜日

日本保守党が政界に与える影響 安倍氏暗殺で自民を離れた岩盤保守層の獲得へ 衆院選であえて「茨の道」進むのか―【私の論評】保守の復権、日本保守党の台頭(゚д゚)!

日本保守党が政界に与える影響 安倍氏暗殺で自民を離れた岩盤保守層の獲得へ 衆院選であえて「茨の道」進むのか
まとめ
日本保守党は、国会で議席を取るかどうかは戦略次第だが、参院選では比例で複数議席を獲得できる勢力であり、岩盤保守層の支持を集められる可能性がある。


 作家の百田尚樹氏とジャーナリストの有本香氏によって立ち上げられた日本保守党は、現時点で、日本保守党の党員数は5万人を超えており、党費は年間6000円で、これは自民党よりも2000円高いにもかかわらず、多くの支持を得ている。

 百田氏が保守政党を立ち上げると宣言した際、一部ではその実現に疑念があったが、彼は約束を守った。今後の国会での議席獲得には戦略が求められるが、地方首長選挙での候補者の当選を目指すことが最も容易な方法とされている。

 また、参議院選挙では比例代表での議席獲得が可能であり、衆議院選挙が最も難しいとされている。日本保守党の具体的な戦略は不明だが、困難な道を選ぶ可能性もありえる。

 日本保守党の重要政策には、国体や伝統文化の保護、安全保障、減税と国民負担率の軽減、外交、議員の家業化の停止、移民政策の是正、エネルギーと産業政策、教育と福祉がある。

 日本保守党の動きは日本だけでなく、他国でも関心が寄せられている。自民党は保守政党とされいるが、実際には右から左まで幅広い層の議員から構成されている。したがって、岩盤保守層の支持を得る可能性がある。

 最終的には、日本保守党の台頭によって政界に大きな影響があるかもしれない。

この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になって下さい。

【私の論評】保守の復権、日本保守党の台頭(゚д゚)!

まとめ
  • 日本保守党の台頭は、日本の政治に大きな影響を与える可能性がある。
  • 保守票を分裂させ、自民党を弱体化させる可能性がある。
  • 自民党をさらに右傾化させる可能性がある。
  • より政治的多元主義を導入する可能性がある。
  • 保守的な政策や価値観が強化される可能性がある。
日本の保守党の台頭は、いくつかの点で日本の政治に大きな影響を与える可能性があります。

第一に保守票を分裂させ、自民党を弱体化させる可能性があります。日本保守党が従来の自民党の有権者や選挙区からかなりの支持基盤を得ることができれば、保守/ナショナリストの票が分裂し、野党がより大きな力と影響力を得ることができるようになるかもしれないです。これは、過去数十年にわたる自民党の日本政治に対する支配力を弱体化させる可能性があります。

日本保守党は、自民党や維新に次ぐ第3の勢力となる可能性を秘めています。日本保守党が一定数の議席を獲得した場合、自民党の政権基盤が揺らぐ可能性があります。


第二に、安倍元総理が亡くなった後、タガが外れたように左傾化する自民党を右傾化させる可能性があります。日本保守党に多くの有権者や党員を奪われるのを防ぐため、自民党は政策綱領に合わせ、よりナショナリスト的、ポピュリスト的、社会的に保守的な立場を採用する可能性があります。この場合、自民党は新党の支持層を取り込むために右傾化する可能性があります。


第三に、より政治的多元主義を導入する可能性があります。日本保守党は、自民党や維新とは異なる政策を掲げています。日本保守党が一定の影響力を獲得した場合、日本の政界に新たな選択肢が提供される可能性があります。

日本保守党の出現は、自民党の支配に代わるより現実的な政治的選択肢を導入するのに役立つ可能性があります。たとえ少数政党にとどまるとしても、その存在は、日本政治が検討すべき政策論争や代替的なビジョンをより多く生み出す可能性があります。政治的選択肢が増えることは、しばしば好ましいことです。

第四に、保守的な政策や価値観が強化される可能性があります。日本保守党が、自民党との同盟を通じて、あるいは国会で議席を獲得することによって、実権と影響力を得ることができれば、政策課題の重要な部分を推進することができるかもしれないです。

移民制度改革、防衛力強化、教育改革、減税などがより目立つようになるかもしれないです。保守的な社会的価値観も強化されるかもしれないです。

政治的に不安定になる可能性も否定できません。保守系新党の台頭も、自民党に本気で対抗することはできても、単独で効果的な政治を行えるほどの力を得られない場合、政治的不安定性をもたらす可能性があります。

国会がより分裂し、安定した連立政権の樹立や重要法案の通過が困難になるかもしれないです。

まとめると、日本における保守系新党の台頭は一定のプラス効果をもたらす可能性がある一方で、その成長がうまく管理されなければ、政治的分裂や不安定性、政策の行き詰まりのリスクもあります。

しかし、日本における保守主義のより強く、より原則的な発言力は、利益をもたらすことになるのは間違いありません。その影響は、日本保守党が最終的にどれだけの影響力と権力を獲得できるかにかかっています。

そうして、それは河村たかし・名古屋市長が、日本保守党の共同代表に就任したことによって強化される可能性が高まりました。河村市長は、これまで減税日本を率いて独自路線を歩んできましたが、日本保守党との「特別友党関係」を結ぶことで、国政進出を狙います。

河村名古屋市長 中央

河村市長は、日本保守党の結党記者会見にサプライズで登場し、共同代表就任を表明しました。河村市長は、日本保守党の政策が減税日本と一致していることを理由に、共同代表就任を決めたと説明しました。

河村市長は、衆院選愛知5区への出馬を表明しており、日本保守党の候補者を擁立して、自民党の神田憲次氏や維新の岬まき氏を破り、国政に進出する意欲を見せています。

河村市長は、独特の政治手法で知られる「河村流」を駆使して、国政で存在感を発揮することになるでしょう。

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2023年10月23日月曜日

強化される中露のスパイ活動への対応の難しさ―【私の論評】善人が行動せぬ限り、悪は勝利する! 中国の悪法に挑め(゚д゚)!

強化される中露のスパイ活動への対応の難しさ

岡崎研究所

まとめ
  • 2023年10月の英フィナンシャル・タイムズ紙の記事によれば、中露はスパイ活動を増加させ、西側諸国ではスパイ容疑の逮捕者が増加している。
  • 中露は報復として西洋人をスパイ容疑で拘束し、これが国際関係に緊張をもたらしている。
  • 中国の「改正反スパイ法」の曖昧な規定に対する懸念が高まっており、政府関係者だけでなく一般の国民も警戒が必要。
  • 中国において、反スパイ法に基づき日本人らが拘束され、中国リスクに対する認識が高まっている。
  • 中国の国家安全法と国防動員法により、中国国民や企業は政府の指示に従いスパイ活動に協力する義務があり、日本国内での協力が懸念されている。 

中国で牢に監禁された外国人 AI生成画像

 2023年10月5日の英フィナンシャル・タイムズ紙の記事によれば、中露はスパイ活動を活発化させており、西側諸国ではスパイ容疑の逮捕者が増加しているが、中露両国は報復として西洋人をスパイ容疑で拘束する可能性が高まっています。西側諸国では中国の「改正反スパイ法」の曖昧な規定についても懸念が高まっており、政府関係者だけでなく一般の国民も警戒が必要とされている。

 具体的な事例として、英国、ノルウェー、米国などで中露の諜報員と容疑者が摘発され、これに対抗措置として中露も西洋人をスパイ容疑で逮捕していることが挙げられている。ただし、スパイ活動を公にしても、中露両国は西洋人を無作為に拘束することで交渉の材料として利用しており、成果が上がりにくい状況だ。

 中国では2014年から施行された「反スパイ法」により、日本人らが容疑内容の説明なしに拘束され、その中には未だに拘束中の人もいる状況で、中国リスクに対する認識が高まっている。特に今年の改正反スパイ法では、中国当局の恣意的な解釈幅が広がり、経済依存度の低下と安全なサプライチェーンの確保に向けた動きが大きくなっている。

 中国の国家安全法と国防動員法により、中国国民や企業は政府の指示に従いスパイ活動に協力する義務があり、これらの法律に基づき、日本国内に協力を強いられる中国人も存在するとされている。

 最近の中国は、外交努力を通じて外国投資やハイテク分野の協力を模索している一方で、南シナ海や尖閣諸島における既存秩序の変更を図る動きに変化はないとされている。また、中国国内では幹部の消息不明や経済の不透明感が増大しており、国内の監視と統制が一層強化される可能性が懸念されている。このような状況において、中露両国でのビジネスや観光旅行に対する警戒が必要とされている。

【私の論評】善人が行動せぬ限り、悪は勝利する! 中国の悪法に挑め(゚д゚)!

まとめ
  • 中国は外国人だけでなく、自国民にも取締を強化しており、日本の金属商社での中国人社員拘束が報じられている。
  • 中国の改正スパイ防止法は曖昧で悪用されやすく、親中派政治家の対中協力は効果がない。
  • 日本人を中国に派遣することは人権と安全にリスクをもたらすため、できる限り避け、既に派遣された場合は早期に退去すべき。
  • 中国の法律の恣意的な性質に備えて、邦人の避難計画と対応計画を策定し、事業を中国外に分散させるべき。
  • 人権が最大の関心事であり、中国の悪法に立ち向かい、善人が行動しなければならない。いくつかの大手企業がすでに中国からの撤退を実施している。
  • 日本政府と経済界は中国に対して具体的な行動をすべき。

中国のこうした行動は、本当に困ったものです。中国は、外国人だけではなく、自国民に対しても取締を強化しています。中国当局が今年3月に、日本の金属商社で希少金属(レアメタル)に関する業務を扱う中国人社員を拘束していたことが22日、分かっています。関係筋が明らかにしました。中国の国有企業でレアメタルに関する業務を担う中国人社員が同時期に拘束されたという情報もあり、関連している可能性があります。

保守派として、我々は国家安全保障と国民保護を信条としています。ロシアの場合は、現在ウクライナ侵略中であり、あえて危険をおかして入国する人は、自己責任という色合いが強いですが、中国はそうではありません。

特に、中国の改正スパイ防止法は危険なほど曖昧で、悪用されやすいです。いまのところ、親中派政治家のいわゆる中国とのバイプは全く役に立っていませんし、そのような曖昧なものをあてにすることもできません。


このような状況下で日本人を中国に派遣することは、日本人の人権と安全に深刻なリスクをもたらすことになります。可能な限り、日本人を中国に派遣しないこと。すでに派遣した日本人は早期に退去させるべきです。

中国の恣意的な法律の下では、彼らの個人の自由と安全は保証されないです。 やむを得ず派遣する場合は、できるだけ短期間にすべきです。中国当局が理由なく個人を拘束する機会を最小限にするため、中国での滞在期間は短ければ短いほど良いです。

日本人が中国に渡航する場合、あるいは中国で働く場合には、そのリスクを十分に開示すべきです。潜在的な危険性を認識し、熟知した上で入国させるべきです。備えあれば憂いなしです。

日本等の先進国が協力して、中国に対し、スパイ防止法をより曖昧でないものに改正し、恣意的な拘束に対する保護を強化するよう圧力をかけるべきです。日本は、これまで通りの対応を続ける前に、具体的な変更を要求すべきです。

役に立たない親中派政治家の中国とのバイプ AI生成画像

この法律を口実に邦人が中国で拘束された場合に備えて、避難計画や対応計画を立てておくべきです。企業と日本政府は迅速に行動できるよう準備しなければならないです。

可能な限り中国の事業を国内か中国以外の国に分散させるべきです。中国での事業が減れば、中国が政治的な影響力を行使するために不当な法律を使って外国人を拘束する機会も減ります。

人権がここでの最大の関心事であるべきです。中国のような権威主義的な政権に、国民の生命や自由を犠牲にする価値のあるビジネス等ありません。中国は抗議するかもしれないですが、日本とその企業は、このようなひどい法律を前にして、自国の価値観と市民のために立ち上がらなければならないです。

悪の勝利に必要なのは、善人が何もしないことだ。保守派の元祖ともいわれるエドマンド・バークによるこの文は、悪が勝利するために必要なのは、善人が何もしないことだ、という考えを表現しています。

エドマンド・バーク

バークは、善人が悪を阻止するために行動しなければ、悪は勝利してしまうと主張しています。善人が何もしないことで、悪は自由に活動し、力を蓄えることができるのです。

この文は、善人が悪と戦うことの重要性を強調しています。善人が何もしないことで、悪はますます強くなり、社会に大きな悪影響を及ぼすことになります。

適切な日本語訳としては、「善人が何もしないことが、悪の勝利を許す」あたりが妥当だと思います。

すでに、トヨタ自動車、三菱自動車、ホンダ、スズキ、キヤノンなどの企業は中国から撤退しています。

私は、日本政府とその経済界が中国に対して何か具体的な行動を起こすことを望みます。

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2023年10月22日日曜日

日本保守党が河村たかし氏と組んだ理由 弱点を理解「共同代表」就任で連携効果 既存メディアも無視から一転、一斉報道―【私の論評】保守派の逆襲、いずれ米国と同じくマスコミの熾烈な批判が強力な追い風に(゚д゚)!

日本保守党が河村たかし氏と組んだ理由 弱点を理解「共同代表」就任で連携効果 既存メディアも無視から一転、一斉報道

【有本香の以読制毒】
  • 百田氏と有本氏が立ち上げた日本保守党が、河村たかし氏を共同代表に迎え、大きな注目を集めた。
  • 河村氏は、選挙に強く、自らの信念を貫き通す姿勢で知られる。
  • 保守党は、LGBT法の改正など、百田氏と有本氏がこれまで主張してきた政策を盛り込んだ。
  • 有本氏は、今後もさまざまな失敗をしながらも、保守党を成長させていきたいと語った。
有森香氏

 2023年10月17日、作家の百田尚樹氏とジャーナリストの有本香氏が立ち上げた政治団体「日本保守党」は、結党記者会見と結党パーティーを行った。

 同日のうちに、ほぼすべてのメディアが大きく報じ、党員数も急増した。

 その理由は、同会見で名古屋市の河村たかし市長を共同代表に迎えたことによる。河村氏は衆院議員を5期、名古屋市長を4期務めた大ベテラン政治家であり、選挙に強く、自らの信念を貫き通す姿勢で知られる。

 有本氏は、河村氏の政治信条に共感し、共同代表就任を要請した。河村氏も、保守党の政策に賛同し、共同代表就任を快諾した。

 また、河村氏の側近で、名古屋市の副市長を務めた広沢一郎氏を事務局次長に迎え、政務経験者の参画を図った。

 保守党は、同日、「8つの題目、37項目の重点政策」を発表した。

 LGBT法の改正、皇室典範の改正、憲法改正、消費税減税、再エネ賦課金の廃止、外国資本による土地買収の制限など、百田氏と有本氏がこれまで主張してきた政策を盛り込んだ。

 有本氏は、今後もさまざまな失敗をしながらも、保守党を成長させていきたいと語った。

■有本香

 この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になって下さい。

【私の論評】保守派の逆襲、いずれ米国と同じくマスコミの熾烈な批判が強力な追い風に(゚д゚)!

まとめ
  • 日本保守党は、今後も発展していくと予想される。
  • その場合、マスコミは、保守党の政策や言動を批判する報道を強めていくだろう。
  • 米国では、トランプ氏が大統領に就任した後、マスコミは、トランプ氏の政策や言動を厳しく批判してきた。
  • 日本保守党も、トランプ氏と同様に、リベラル左派の価値観や体制を批判する政策を掲げている。
  • 日本でも、マスコミやリベラル左翼系の識者が日本保守党を叩けば、叩くほど、米国でそうであるように、支持が集まるという現象がおこるであろう。

現在、マスコミは日本保守党の行動を社会現象の一つとして報道していますが、日本保守党が次の選挙で議席を獲得し、さらに発展していくと、マスコミは、保守党の政策や言動を批判する報道を強めていくでしょう。その理由は、マスコミが、保守党の政策や言動が、リベラル左派の価値観や体制を脅かすものであると考えているからです。

米メディアの熾烈なトランプ批判 AI生成画像

米国では、トランプ氏が大統領に就任した後、マスコミは、トランプ氏の政策や言動を厳しく批判してきました。それは、トランプ氏の政策や言動が、米国のリベラル左派が是とする民主主義や人権を脅かすものであるとマスコミが考えていたからです。

日本保守党も、トランプ氏と同様に、リベラル左派の価値観や体制を批判する政策を掲げています。そのため、日本のマスコミは、日本保守党をトランプ氏と同じように批判するようになるでしょう。そうして、米国のマスコミもそうするようになるでしょう。

しかし、米国ではマスコミがトランプを批判すればするほど、トランプ支持者の結束が更に強まるという現象が起きています。日本でも同じ現象がおこることでしょう。

その典型的な例が、トランプ陣営によるロシアとの共謀とされるモラー調査に関するメディアの執拗な報道でした。この2年間、専門家やジャーナリストたちは、モラーの報告書はトランプの違法性を証明する決定的な証拠だと大げさに報道しました。

モラー氏

MSNBCのレイチェル・マドーは、自身の番組のエピソード全体を割いて、秘密裏に起訴されるという荒唐無稽な陰謀論を宣伝していたほどでした。しかし、最終的にミューラーの報告書が発表されると、陰謀罪についてトランプは無罪となりました。

ギャラップ社の世論調査によると、報告書の発表後、トランプの支持率は実際に上昇しました。彼の支持層は、メディアの大げさな報道を自分たちの「魔女狩り」シナリオの裏付けとみなし、彼の周りに結集しました。

保守派のコメンテーター、ロッド・ドレハーが『The American Conservative』で書いているように、「メディアがトランプに対して激怒すればするほど、彼の支持者は彼を憎悪に満ちた体制に対抗する自分たちのチャンピオンとみなすようになる」のです。

ノンストップの反トランプ報道は、彼の支持層をより反抗的にさせただけでした。メディアはいまだに、トランプ元大統領への激しい、しばしばヒステリックな攻撃が裏目に出る傾向があることを学んでいません。古いことわざにあるように、"What doesn't kill you, makes you stronger."(人を殺さないものは人を強くする)のです。

そうして、トランプと彼の支持基盤との結びつきの場合、メディアの反対はそれを強固にしただけのようです。失敗したミューラー捜査は、トランプが批判されればされるほど、彼の支持者やお金が彼の周りに固まるという典型的な例です。

日本でも、マスコミやリベラル左翼系の識者が日本保守党を叩けば、叩くほど、支持が集まるという現象が起こるでしょう。そうなると、特に保守派にトランプ氏のことを理解する人が増えてくるのではないかと期待します。保守派の人々は、マスコミの批判に反発し、トランプ氏や日本保守党の政策や言動を支持するようになるでしょう。


また、米国では保守派の人たちとリベラル派の人たちの対立がトランプ氏によって激化した批判しましたが、しかしそれは、米国ではオバマ時代からあったものです。日本でも、リベラル左派と、保守派の分断は元々あったものであり、ただマスコミが保守派の主張をほとんど取り上げなかったので、分断しているという実感がなかったのです。それをはっきりさせたのが、日本保守党の登場ということもできます。

米国では人口の半分は保守派であるにもかかわらず、米国メディアのうち大手新聞は全部リベラルてあり、大手テレビ局もFOXTVを除いた他のテレビ局はすべてリベラルメディアであり、保守派が何を叫ぼうが、かき消されてきたというのが事実です。保守派に不満が高まり、トランプ現象を生んだと言っても過言ではありません。

日本でも似たところがあります。減税とかLGBT法反対等と叫んでみても、その声はほとんど報道されず、かき消され、自民党はLGBT理解増進法を拙速に成立させました。

いずれにしても、日本保守党の今後の動向は、日本の政治や社会に大きな影響を与えると考えられます。マスコミの批判や保守派とリベラル派の対立など、さまざまな課題を乗り越えて、日本保守党がどのような発展を遂げていくのか、これからが楽しみです。

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