2023年12月26日火曜日

マイナス金利は早期解除へ 欧米と異なる「金融正常化」 政治情勢ガタガタ〝火事場泥棒〟避けた? 来年1月にも決断する公算―【私の論評】金融引き締めでデフレ再来?日本はマイナス金利解除に慎重に

まとめ
  • インフレ目標政策では、インフレ率が2%でも4%でも社会的コストはあまり変わらない。
  • 金融引き締めは、インフレ率が4%程度を超えるような状況になってから行うべきである。
  • 今のマクロ経済環境では、インフレ率が4%程度を超える可能性は極めて小さい。
  • マイナス金利の早期解除は、景気への悪影響や金融機関の収益悪化につながる可能性がある。
  • 日銀は、来年1月の金融政策決定会合でマイナス金利の解除を検討するとみられる。

日銀植田総裁

 日銀は12月18、19日の金融政策決定会合で、マイナス金利の解除を見送った。

 インフレ目標政策では、目標の数値プラスマイナス1ポイントは許容範囲である。その上で、金融引き締めは遅れて行うべきである。

 その理由は、インフレ率が2%でも4%でも社会的コストはあまり変わらないが、金融引き締めを急いだ場合、景気への悪影響、とりわけ失業率上昇の社会的コストが大きいからである。

 要するに、インフレ目標が2%なら、今の金融政策を継続することで近い将来にインフレ率が4%程度を超えるような状況でなければ、金融引き締めをしてはいけない。これが基本である。

 一方、日本で「金融正常化」という人は、こうしたマクロ経済環境を考えずに、今の状態が「異常」なので、できるだけ早く直すべきだ、という価値観が含まれていることに留意すべきである。

 今のマクロ経済環境をみると、インフレ率が近い将来4%程度より高くなる可能性は極めて小さい。にもかかわらず、金融緩和を解除したらどうなるのか。目先は金融業界に好影響だろうが、前述したようにマクロ金融政策としてはまずい。

 今回、日銀がマイナス金利の解除を見送ったのは、こうしたインフレ目標の基本に忠実に、また、政治情勢や金融機関の収益状況などを考慮したためと考えられる。

 しかし、筆者は、マイナス金利を早期に解除すべきではないと考えている。

 今後のマイナス金利の解除時期については、来年1月の金融政策決定会合で解除される可能性が高いとみられる。

 この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になってください。

【私の論評】金融引き締めでデフレ再来?日本はマイナス金利解除に慎重に

まとめ
  • 日本は、米国やEUに比較すれば、物価の上昇はさほどではない。
  • コアコアCPIは、2023年には2.3%、2024年には2.0%になると予想されてい。
  • このようなときには、推移を見守り、金融政策は変えるべきではない。
  • 1月にマイナス金利の解除をしてしまえば、さらに物価が下がり、デフレ傾向になるだろう。
  • 日銀が来年早々にゼロ金利を解除し、その後利上げして、金融引き締めに走ってしまえば、また日本はデフレにまい戻り、雇用が悪化し賃金も上がらず、再び失われた30年を繰り返すことになる。
金融引き締めを急いだ場合、企業の投資や設備投資が減り、雇用が減少する可能性があります。また、消費者の購買意欲も低下し、景気後退につながる恐れもあります。

実際、欧米では、2022年から金融引き締めを進めていますが、その結果、景気減速や失業率上昇の懸念が高まっています。

例えば、米連邦準備制度理事会(FRB)は、2022年から政策金利の引き上げを開始し、2023年には0.75%の大幅な利上げを実施しました。その結果、米国内では、景気減速や失業率上昇の懸念が高まっています。


実際に、住宅市場の冷え込み、消費者の購買意欲の低下、企業の投資意欲の低下が起こっています。現在はまだ顕著ではありませんが、来年はその悪影響が色濃くででくることが懸念されます。

また、2023年7月21日の金融政策決定会合で、ECBは政策金利を0.25%引き上げ、0.75%にすることを決定しました。これは、ECBが2011年以来、約12年ぶりに実施した政策金利の引き上げとなります。

023年9月8日の金融政策決定会合で、政策金利を0.25%引き上げ、1.00%にすることを決定しました。これは、ECBが2023年7月に0.25%引き上げを行って以来、2回連続の利上げとなります。

ただし、ECBは、今後の利上げ幅については、経済状況を慎重に判断していく方針を示しています。ECBは、ロシアのウクライナ侵攻や中国の景気減速などの不確実性により、景気後退のリスクが高まっていると懸念しています。そのため、利上げを急ぐと、景気後退を招く可能性があるため、慎重な姿勢をとっています。

ECBの利上げにより、EUでも住宅市場の冷え込み、消費者の購買意欲の低下、企業の投資意欲の低下がみられます。

そうして、これは特にドイツでは顕著です。ドイツでは元々緊縮財政が行われ、原発を廃止、さらに利上げによる悪影響がかさなり、とんてもないことになっています。これについては、以下の記事をごらんいただければ、ご理解いただけるものと思います。
なぜ“強いドイツ”は「劣化」したのか?動かぬ鉄道、学力低下、荒れる国土…かつての勇姿は見る影もなし
日本のマスコミでは、名目GDPで日本がドイツに抜かれ、3位から4位に転落する見通しとなったことなどが報じられていますが。これは、円安の影響でドルベースで目減りしたことやドイツの高い物価上昇(インフレ)が主な要因です。円安の現在、ドルベースで比較すれば、当然そのようなことになります。決してドイツの実体経済が良いということではありません。それどころか、ドイツは世界では「欧州の病人」とまで言われています。



来年は、エネルギー・資源価格の価格高騰が、沈静化し下がる傾向にあります。これは、常識的に考えても理解できます。エネルギーや資源は、多くの国々が生産しているので、資源価格が上がれは、増産するなどのことをします。そうなると、価格が安定し、落ち着くのが普通です。資源価格も同じことがいえます。

無論、中東情勢の悪化などもあり、依然として上がる要素はありますが、それでも大勢としては、下がる傾向にあります。

そのようなときに、利上げをすれば、景気が落ち込むのは明らかです。特に、長い間デフレが続いてきた日本は、元々デフレではなかった米国やEUに比較すれば、物価の上昇はさほどでもありません。以下に、日本、米国、EUのコアコアCPI(食料及びエネルギーを除いた物価指数)の推移の比較の表を掲載します。(ブログ管理人 作成)

日本米国EU
2022年2.70%6.10%5.30%
2023年2.30%4.10%4.30%
2024年(予測)2.00%3.00%3.70%
この表をご覧いただければ、髙橋洋一氏の主張はもっともであるとご理解いただけるものと思います。米国やEUは、コアコアCPI6%、5%で利上げをしています。この水準でようやっと、利上げをしたのは、やはり経済の悪化をおもんばかったからでしょう。正しい判断です。

日本は、2022年には、2.7%に過ぎません。来年は、2.0%になることが予想されています。無論、この予想は、日銀の金融政策が現状のままだと想定したものです。このようなときには、推移を見守り、金融政策は変えるべきではありません。

1月にマイナス金利の解除をしてしまえば、さらに物価が下がり、デフレ傾向になるでしょう。そのようなことをする必要性は全くありません。早急にゼロ金利政策を排除し、利上げすべきなどと言う人は、こうした数字をみていないのではいなかと思います。

ただし、予想できない何かが起こる可能性は否定できません。しかし、その時にも、すぐにゼロ金利解除とか、利上げなどに走るべきではありません。あくまで、コアコアCPIが4%を超えるなどの事態でも無い限り、ゼロ金利解除や、利上げなどするべきでありません。

こうしたことを無視して、日銀が来年早々にゼロ金利を解除し、利上げして、金融引き締めに走ってしまえば、また日本は、デフレにまい戻り、雇用がかなり悪化し、賃金も上がらず、それに政府が増税などの緊縮路線に走れば、日本は再びデフレの底に沈み、日本人の賃金は上がることなく、また失われた30年を繰り返すことになるでしょう。そうなれば、日本の実体経済は、現状のドイツのように酷いものになるかもしれません。

そうして、デフレが亢進すれば、先日もこのブログで述べたように、今度は日本だけではなく、世界が悪影響を受けることになりかねません。

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2023年12月25日月曜日

フーシ派はなぜ、紅海での船舶攻撃を続けるのか―【私の論評】バイデン政権のフーシ派外し決定が招く中東危機:弱さから生まれた新たな脅威

フーシ派はなぜ、紅海での船舶攻撃を続けるのか

岡崎研究所

まとめ
  • 米ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)はバイデン政権がフーシ派をテロリストから除外したことは戦略的失敗としている。
  • バイデン政権は、フーシ派のようなイラン代理勢力に対して十分な強い姿勢をとっていない。
  • イランの支援を受けたフーシ派が紅海で商船を攻撃し、米海軍が介入した。
  • バイデン氏のイランとその代理勢力に対する宥和政策は、彼らを勇気づけた。
  • この抑止力の欠如は、さらなるエスカレーションと米国の利益への損害につながるだろう。
BP(旧ブリテッシュペトロリアム)の石油タンカー

 ウォールストリート・ジャーナル』紙の12月3日付社説は、バイデン政権がフーシ派を外国テロ組織リストから外したことを取り上げた。この動きは、イランとの関係改善を促進する試みの一環である。しかし、社説はこの決定を、フーシ派による最近の商船と米艦船への攻撃と結びつけて強く批判した。社説によれば、この攻撃は中東におけるイランの代理勢力を抑止するための政権の戦略の失敗を意味する。

 フーシ派はイランから武器と訓練の支援を受けており、紅海で商船への攻撃を行ったとされる。この侵略行為は、イランの革命防衛隊による制裁の一環であると考えられ、この地域における米国の軍事的利益と同盟国を標的にしたパターンの一部と見られている。

 社説は、バイデン政権が中東での紛争激化を懸念して、このような挑発行為に断固として対応しようとしないのは、その抑止アプローチの重大な失敗を意味すると主張している。警告を発し、フーシ派をテロ組織として再登録することを検討したにもかかわらず、攻撃は続いた。

 社説は、イランとその代理勢力に対するより強固な態度がなければ、挑発的な行動はさらにエスカレートし、米国の利益に大きな損害をもたらす可能性があることを強調し、米国がより毅然とした態度をとるよう求めている。さらに、シリアとイラクにおける米軍の交戦規定による制約を指摘し、米側に死傷者が出ない限り、報復攻撃は制限される可能性があることを示唆している。

 フーシ派の後ろ盾のイランのこの過去の行動を考えると、イスラエルの船に紅海を利用させないと言いつつ、フーシ派の真の狙いは、やはり、国際社会に圧力を掛けて、彼等がイスラエルに圧力を掛け、イスラエルのハマス攻撃を止めさせることにあるのではないだろうか。

この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になって下さい。

【私の論評】バイデン政権のフーシ派外し決定が招く中東危機:弱さから生まれた新たな脅威

まとめ
  • バイデン政権はイエメンの悲惨な人道危機を救うため、2021年2月にフーシ派をテロリストから除外した。
  • この措置にもかかわらず、イエメンの危機は避難民、飢餓、必需品へのアクセスの制限などを伴っていまでも続いている。
  • 結局バイデンの弱腰なアプローチがイランとフーシ派を大胆にしている。
  • バイデンは、即刻フーシ派を再指定し、積極的に行動すべきだ。
  • そうしなければ、既存の危機がさらに悪化し、米国とその同盟国を危険にさらすことになる。

バイデン政権は、2021年2月16日にフーシ派を外国テロ組織リストから外しました。この決定は、人道的な影響を考慮したもので、特にイエメンの深刻な人道危機に対応するためのものでした。

具体的には、トランプ前政権が政権交代直前の1月にフーシ派をテロ組織に指定したことが、停戦を遠のかせ、状況を悪化させるとの懸念が出ていました。そのため、バイデン政権はこの決定を反転させることを決定しました。

また、バイデン大統領は、イエメン内戦に介入を続けるサウジアラビア主導の軍事作戦への支援を停止するとも発表しました。これらの決定は、「世界最悪の人道危機」とされるイエメンの状況を改善するための一環として行われました。

しかし、イエメンの人道危機は依然として深刻で、改善の兆しは見られません。以下に具体的な状況をいくつか示します。

人々の犠牲は拡大する一方で、今年の9月以降、首都サナアの東に位置する都市マアリブでは推定40,000人、西部の紅海沿岸に位置する都市ホデイダでは10,000人以上が安全を求めて故郷を離れることを余儀なくされています。

水や食料、医療、教育などの必要不可欠なサービスへのアクセスも困難になっています。2021年時点で、人口の66%にあたる2,070万人が支援を必要としており、そのうち54%が18歳未満の子どもです。

人口の半数に当たる1,400万人が「過去100年間で世界最悪の飢饉」とされる危機に直面しています。6年間の長期にわたる紛争により、推定23万3,000人が死亡し、そのうち13万1,000人は、医療サービスやインフラ、食料の不足などの間接的な原因で死亡しました。

これらの情報から、イエメンの人道危機は依然として深刻であり、改善の兆しは見られません。国際社会の継続的な支援と関心が必要とされています。


現在の紅海の危機は、バイデン政権の外交政策の失敗を物語っています。フーシ派をテロリストリストから外したのは、悪党どもを増長させただけです。

イランとその代理勢力はあまりにも長い間、中東の安定を脅かしており、バイデンの弱いリーダーシップはさらなる侵略を招いているといえます。こうした脅威に対処する唯一の方法は強さと強い意思以外にありません。

バイデンのイランへの屈服は弱さを映し出し、今やフーシ派は報復されることなしに、自由に攻撃できると考えているようです。とても残念なことです。バイデンの失策が新たな危機を生み出しているのです。

フーシ派、ハマス、イラン......彼らはみな同じ穴のムジナに過ぎません。宥和政策は決してうまくいきません。バイデンは敵を挑発するのを恐れるのではなく、気骨を見せ、今すぐフーシ派を直ちにリストに戻すべきです。それは自らの過ちを認めることになりますが、それを恐れていては、テロリストによる犠牲者をますます増やし、米国やその同盟国にとっても脅威が増すばかりです。

フーシ派

そして、もし彼らが挑発を続けるのであれば、徹底的に叩く必要があります。それが彼らに理解できる唯一の言葉です。中途半端なことをすれば、さらなる危機を招くだけです。現在の世界秩序は良くも悪くも、米国を頂点として形成されており、米国が強ければ、世界はより安全になり、米国が弱ければ、悪政は強化されることになります。

今や強さによる平和の時代が懐かしいです。バイデンの招いた危機は、彼がそれに気づくまで、さらに制御不能に陥ることになるでしょう。それは、惨めなアフガン撤退、ウクライナにかかわるロシアに対する弱気な態度でも示されました。手遅れになる前に、米国民が目を覚まし、何が本当に起こっているのかを認識すべきです。日本を含む、米国の同盟国の国民もそうすべきです。

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2023年12月24日日曜日

保守主義の拡大とリベラリズムの後退【2024年を占う!】国際情勢―【私の論評】2024年の日本! 国際情勢の潮流の変化が日本政界の転換を促すか

保守主義の拡大とリベラリズムの後退【2024年を占う!】国際情勢

まとめ
  • 新年の国際情勢は保守派の台頭が著しく、国益重視と軍事力強化が主流となるだろう。
  • アルゼンチンやオランダで保守派指導者の勢いが増し、世界的な保守化が進展している。
  • 保守派は軍事力を重視し、グローバリズムの後退に伴い、自国主権の重要性を強調している。
  • この国際潮流の中で、各国が自らの動向を見直すことが求められている。
  • リベラル路線に対する批判が高まりつつある中、来年は保守勢力の影響力が拡大することになるだろう。



 新年の国際情勢は、保守主義とリベラリズムの対立が重要な焦点となっている。これらの思想は国家運営や国際政治における根源的な価値観とアプローチの相違を表しており、その定義や実践の違いは議論の的となっている。アメリカ流の区分いう保守主義は、国家の利益を中心に据え、自国の経済的、政治的、軍事的な利益を最優先に考える。政府の規制を緩和し、軍事力を重視する傾向がある。一方のリベラリズムは、国際的な協力や連携を重視し、個々の自由や権利を守ることに注力する。政府の規制を強化し、軍事力よりも外交や協力関係を重要視する。

 これらのイデオロギーの違いを明確にするために、アメリカの政治情勢や指導者の対比を見ることが有益だ。特にトランプ前大統領とバイデン現大統領の政策やアプローチの対比は、保守とリベラルの違いを示す良い例だ。バイデン政権下での国際安全保障の課題や不法移民問題が、リベラリズムの限界を浮き彫りにし、保守主義の勢いを後押ししている。この傾向はアメリカだけでなく、世界各国で見られるものであり、国際的な政治的パラダイムの変化を予示している。

 同時に、軍事力や国家の主権重視の動きも顕著だ。グローバリズムの後退や、各国が自らの主張や利益を強く主張する傾向が見られる。これが2024年においても継続し、国際関係や政策形成に影響を及ぼす可能性がある。このような国際情勢の変化の中で、日本を含む各国は自らの進むべき道筋を慎重に考える必要があある。国際政治の舞台では、保守主義とリベラリズムの対立が一層際立ち、それぞれの思想が政策決定に及ぼす影響が深刻化する可能性がある。そのため、各国は外交政策や国内政策を検討し、安全保障や国益の観点から進むべき方向を模索していく必要がある。

 2024年に予想されるこの国際潮流のなかで、わが日本がどう動くべきか。その進むべき方向は自然と明確になってくるといえよう。

 これは、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になってください。

【私の論評】2024年の日本! 国際情勢の潮流の変化が日本政界の転換を促すか

まとめ
  • 2024年についての予測記事が少ない。株価予想はあるが、政治や世界情勢に関する予測は少ない。
  • 中国とロシアが国際秩序の再編や力による現状変更を目指している。新型コロナ感染症の拡大は国際協力を難しくし、各国が自国の利益を優先し保守的傾向が強まっている。
  • 岸田政権の支持率低下と、政治資金不記載問題で政局が揺れており、次期自民党総裁は世襲や派閥に属さない総裁候補が有利になるだろう。
  • 高市氏は安倍氏の保守的な政策を受け継ぎつつ、新しい視点を持ち、リーダーシップを示すことができる人物である。
  • 高市氏の総裁に就任するかしないかが日本の安定や安全、繁栄の未来に重要な影響を与えることになり、その結果自民党や日本の姿勢や方向性が決まるだろう。

最近、2024年はどのような年になるのか、ネットで検索してみても、あまりそのようなものはみあたりません。来年の株価を占うようなものはありましたが、政治や政局、経済、世界情勢がらみのものはありませんでした。きっと来年の頭にはでてくると思います。

例年だと、そのような内容の記事が今の時期ならある程度はでているのですが、今年は違います。それだけ、来年については予想が難しいのだと思います。

そうした中で、上の記事は、珍しく来年の予想をしていたので取り上げさせていただきました。そうして、本日は、以下で、私なりの来年の予想したいと思います。

中国は、経済力と軍事力を背景に、国際秩序の再編を図る動きを強めています。ロシアは、ウクライナ侵攻によって、力による現状変更を図る姿勢を見せました。新型コロナウイルス感染症の拡大は、国際協力の難しさを露呈し、各国が自国の利益を優先する傾向を強めました。

ロシア軍のウクライナ侵攻

それが2024年の保守主義の拡大とリベラリズムの後退という世界の潮流につながったみられます。そうして、日本ではこの潮流に先駆けて行動していたのが、安倍元首相です。彼の政策は、日本の国益を最優先とし、国家安全保障を強化するという観点から、多くの人々に支持されていました。しかし、残念ながら、安倍晋三氏は昨年暗殺され、その死は日本だけでなく、国際社会にも大きな衝撃を与えました。

来年からの新たな保守主義の拡大という潮流を考えた場合、安倍氏の死後、彼の遺志を引き継ぐ政治家こそが、最も次の日本のリーダーとして相応しいとの意見が広がっています。特に、最近の政治資金不記載問題があることから、派閥に属さない、世襲ではない議員が次の自民党総裁に選ばれる可能性が高いと考えらます。


この観点からすると、小石河(小泉、石破、河野)連合や茂木、上川外相などは論外ということになります。これらの政治家は、派閥政治や世襲の象徴と見なされており、新たなリーダーシップを求める声には応えられないでしょう。彼らのうち誰が総裁になっても、日本はリベラル化をすすめることになるでしょう。

その道を塞ぎ、保守派としての道を歩むのは本来、安倍派の議員だったはずなのですが、政治資金不記載の問題で、自民党派閥5人衆というか、安倍派の議員が総裁となる道もなくなったとみるべきです。

石破氏は派閥政治とは無縁とみられがちですが、かつて自らの派閥を率いていたことがあります。それに、現在派閥に属していないのは、派閥を形成するための仲間が集められないだけです。なぜそうなったかといえば、石破氏は自民党内にあって度々野党のように、その時々の政権を批判してきたため、多くの自民党議員から蛇蝎の如く嫌われていからです。

その一方で、菅前首相と高市早苗氏も、世襲議員ではないし、派閥にも属していないので、次期の有力な総裁候補にあげられると思います。菅前首相は、安倍氏の政策を引き継ぎつつも、よりリベラルな政策を掲げています。しかし、彼は次期の自民党総裁選に出馬するのではなく、リベラル派河野太郎氏を担ぐとみられています。

そうなると、最も相応しいのは高市氏とみられます。彼女は、安倍氏の保守的な価値観を継承しつつ、新たな視点を持ち込むことができる政治家です。彼女のリーダーシップは、日本が世界に示すべき道を示し、国際社会においても誇りをもって存在することを証明するでしょう。

安倍晋三氏の暗殺は、日本と国際社会に衝撃を与えました。彼は日本の先進的な指導者であり、彼の死は彼のリーダーシップや国益を最優先とする姿勢を尊敬する多くの人々に悲しみをもたらしました。彼の保守的な遺産を引き継ぎ、間違った方向に進むことのないような後継者を見つけることが、日本にとって極めて重要です。

その中で、高市氏は日本の国益を重視し、国家安全保障を強化するという安倍氏の遺志を継ぐことができる人物です。

私は、高市氏は、安倍氏の後継としてふさわしだけではなく、彼女のリーダーシップが、日本が世界に示すべき道を示し、国際社会においても日本が誇りをもって存在することを証明することになるだろうと期待しています。高市氏の選出は、日本が安定し、安全で繁栄する未来を築くための重要な一歩となるでしょう。

来年の日本の課題は、高市氏を自民党総裁にできるか、できないかということが最も重要になることでしょう。これにより、日本の中国やロシアに対する姿勢、安全保証、経済、社会のあり方が保守的になるかリベラル化がさらに進むかが決まってしまうからです。

自民党にとっても、安倍派にとっても、次期の展開を狙えるかどうかは、自民党高市総裁が誕生するか否かにかかっているといえます。

もし高市総裁が誕生しなければ、自民党はリさらにリベラル化し、保守岩盤層の支持はますます離れ、誰が総裁になっても、凋落しつづけ最終的に政権交代前の麻生政権のようになり、最終的に下野することになるでしょう。

安倍派は分裂して、他の派閥に吸収されるか、無所属議員となり、今後日の目をみることはないでしょう。

いずれの道を選ぶかは、自民党の所属議員自身です。こればかりは、なんともできません。国民ができることは、選挙で候補者を選ぶことだけです。高市総裁になれば、自民党に投票する保守岩盤層も増えるでしょうが、そうでなければ凋落するだけです。

高市総裁にならなければ、無党派層が増えたり、日本保守政党などの保守勢力が伸びることになるでしょう。今は、まだ混乱状態でそれが見えにくい状態ですが、世界で保守主義の拡大とリベラリズムの後退が顕著になる来年はそれがはっきり見えてくることになるでしょう。

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焦点:予備選出馬禁止のコロラド州判決、トランプ氏の追い風に―【私の論評】安倍派と高市早苗氏が協力しトランプ戦略・戦術を採用すれば、高市総理大臣の可能性は飛躍的に高まる



2023年12月23日土曜日

台湾 記者が総統選の偽の世調記事を報じた疑い 中国から指示か―【私の論評】台湾のマクロ経済はコントロール可能な状態であり、それが中国につけ入る隙を与えなくしている

台湾 記者が総統選の偽の世調記事を報じた疑い 中国から指示か

まとめ
  • 台湾の記者が中国共産党からの指示で偽の世論調査記事を報じ、総統選挙に介入した疑いが強まった。
  • 記者は実際の調査を行わず、支持率を捏造した。
  • 検察は中国当局からの指示を受けて特定候補者の選挙結果を操作した疑いを調査している。
  • 台湾の情報機関は中国からの干渉に警戒し、資金流入にも注視している。
  • この事件は台湾政府の中国からの情報操作への警戒を高め、選挙の信頼性を強調している。

 台湾の記者が、中国共産党の指示を受けて、1月に行われる台湾総統選挙についての偽の世論調査記事を、複数のネットメディアで報じた疑いで、台湾の検察が身柄を拘束しました。

 この記者は、2023年10月以降、台湾北部、中部、南部で、それぞれ300人以上の有権者を対象とした世論調査の結果だとする記事を報じていました。しかし、実際には調査は行われず、候補者の支持率などをねつ造していたということです。

 検察は、この記者が中国・福建省の共産党委員会の当局者から指示を受け、特定の候補者を当選または落選させる意図で、うその情報を流布した疑いが強まったとしています。

 台湾の情報機関である国家安全局のトップは、11月、台湾の世論調査機関の専門家や責任者が中国当局の招待で現地を訪問した事例があると明らかにしていました。また、こうした機関に中国から資金が流れていないかどうか注視していることも明らかにしていました。

 今回の事件は、中国が台湾の選挙に介入する新たな手段として、偽の世論調査を活用しようとした可能性があると指摘されています。

 この記事は元記事の要約です。詳細は、元記事をご覧になって下さい。

【私の論評】台湾のマクロ経済はコントロール可能な状態、中国がつけ込む隙なし

まとめ
  • 台湾の次期総統選挙は、統一の是非ではなく、経済や社会政策などを中心に争われる。
  • 台湾の経済は、中国依存の課題を抱えているが、マクロ経済政策はコントロール可能の状態にあり、それが中国が台湾につけ込む隙を与えていない。

台湾総統選候補者 左から頼清徳氏、侯友宜氏、柯文哲氏

台湾の次期総統選挙は2024年1月13日に実施されます。現在の候補者は以下の通りです。
  • 与党・民主進歩党(民進党)からは、蔡英文総統の後継として路線を引き継ぐ頼清徳氏
  • 最大野党・国民党からは侯友宜氏(新北市長)
  •  第3政党「台湾民衆党」からは柯文哲氏(党主席)
各候補者は、中国との対話を掲げていますが、その前提や実現可能性に違いがあります。また、いずれの候補も独立や統一を追求するわけではなく、現状維持を主張しています。

最新の世論調査では、頼清徳氏が36.5%、柯文哲氏が29.1%、侯友宜氏が20.4%の支持率を得ています。これらの数値は選挙戦が進行するにつれて変動する可能性があります。選挙の争点は統一の是非ではなく、むしろ経済や社会政策などにあり、台湾の約4割を占める無党派層の支持の獲得が勝敗を分けると考えられています。

台湾の経済問題と社会問題とは、以下のようなものです。

経済問題
  • 台湾の経済は、製造業を中心に上昇の一途を辿っています。特に半導体産業が世界一の強みとなっています。しかし、台湾経済の最重要な問題は、中国依存です。台湾と中国は政治的な関係がよくありません。もし何かあれば、中国から経済的な制裁を受けることもあります。
  • 台湾の経済成長率はおよそ3%前後を推移しています。しかし、市民の間では不満が高まっているようです。
社会問題
  • 台湾と中国の関係は、近年緊張が高まっています。中国の習近平国家主席は台湾「統一」は「必ず果たさなくてはならない」とし、そのための武力行使の可能性を排除していません。
  • 台湾の国防部は中国との関係はこの40年間で最悪だとしています。台湾は自衛できるのかという問題もあります。

台湾の債務残高については、現時点では深刻な問題はないといえます。債務残高対GDP比は2022年12月現在、約29.7%で、国際平均の約60%や自主規制の50%を大幅に下回っています。

中央政府の債務が 債務総額の大部分を占め、2022年にはGDPの約26%です。

政府と中央銀行を含む 統合政府の債務総額はGDPの40%に近い可能性があると考えられています。

台湾の全体的な債務状況は短期的に管理可能です。

CBT(台湾中央銀行)はインフレ上昇に対抗するため、2022年3月から政策金利を徐々に引き上げてきました。しかし、2023年3月以降はインフレと経済成長鈍化への懸念のバランスを取りながら、政策金利を据え置いています。

台湾中央銀行

インフレ率は2023年初頭に約3.6%でピークに達しましたが、それでも他国と比較すれば、元々低い水準です。6月には約2%まで徐々に冷え込んでおり、今後も低下すると予想されます。失業率は3.5%前後と引き続き低い状況にあります。台湾の金融政策も特に問題はなく、今後何か起こったにしても、コントロール可能の状態にあるといえます。

台湾政府のマクロ経済政策がコントロール可能ということは、重要です。マクロ経済に大きな問題、特に大きな債務問題などがあると、中国はここにつけ込む隙を見出すでしょう。

これは、非常に重要なことで、戦後日本が高度成長をはじめた頃から、日本ではそれまで色濃かったソ連の影響がなくなったとされています。経済が不安定だと、それを不満に感じる人が増え、それが敵対勢力などに利用されやすくなります。これは、世界中で普通にみられる現象です。

しかし、台湾の現状は経済的にはあまり問題はなく、それが中国につけ込む隙を与えにくいようにしています。それどころか、現在の大陸中国の経済はコントロール不能の状態に入りつつあります。だからこそ、上の記事のように中国が台湾でフェイクニュースを流そうとするのでしょう。

 フェイクニュースの見極め方(クリックすると拡大します)

経済が悪くなれば、中国やロシアなどにつけ込む隙を与えてしまうというのは、無論日本も例外ではありません。現在の日本は、政治資金不記載問題で揺れていますが、不明瞭な慣行は正すべきですが、これ一色になり、経済がなおざりにされてしまえば、経済が悪化して、中国やロシアにつけ込む隙を与えかねません。

そのようなことにならないように、有権者は政府を監視し、政治家は、政局などに惑わされたり扇動されたりして道を誤らないようにしていただきたいものです。

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2023年12月22日金曜日

焦点:予備選出馬禁止のコロラド州判決、トランプ氏の追い風に―【私の論評】安倍派と高市早苗氏が協力しトランプ戦略・戦術を採用すれば、高市総理大臣の可能性は飛躍的に高まる

焦点:予備選出馬禁止のコロラド州判決、トランプ氏の追い風に

まとめ
  • 連邦最高裁が、連邦議会襲撃への関与を理由にトランプ氏の共和党予備選参加を禁止。逆境にもかかわらず、トランプ陣営は活気づいている。
  • トランプ氏は連邦最高裁に上訴予定。保守的多数派が判決を覆す可能性がある。
  • トランプ支持者からの反発が予測され、党を超えた寄付増加が期待されている。
  • 民主党は襲撃扇動を信じる無党派層を狙い、一方で共和党候補者は法的障壁にもかかわらずトランプ氏を支持。
  • デサンティス氏やヘイリー氏など、一部州でのトランプ氏の候補者としての挑戦が制約される中、バイデン氏に対する実力派候補として見られている。

ドナルド・トランプ氏が国会議事堂襲撃事件に関与したとされることを理由に、共和党予備選への参加を禁じた最近の最高裁判決は波紋を呼んでいる。興味深いことに、この後退はトランプ陣営を活性化させるようで、連邦最高裁判所への上訴を促し、そこではトランプが任命した3人の判事を含む保守寄りの多数派が判決を覆す可能性がある。このような法的なもつれから、政治的な方向性を問わず、献金者やアナリストの間では、トランプ氏の熱烈な支持者からの反発が予想されており、その結果、選挙献金が増加する可能性がある。

政治情勢では、民主党はトランプが暴動を扇動したという信念を持つ無党派層に目をつけ、彼らを味方につけることを狙っている。逆に、共和党の候補者とその支持基盤のかなりの部分は、法的なハードルがあるにもかかわらず、トランプ支持を堅持している。フロリダ州でバイデン大統領の資金集めを担当するストラテジストは、今回の判決は共和党の資金集めの好機だと見ている。

特定の州における障害がトランプの立候補を妨げる一方で、デサンティスやヘイリーといった人物は、バイデン大統領に対抗できる潜在的な候補者と見られている。この進化するシナリオは、トランプ候補を取り巻く複雑な法的・政治的力学と、これらの複雑さを乗り切るために両党が採用している微妙な戦略を浮き彫りにしている。

この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になって下さい。

【私の論評】安倍派と高市早苗氏が協力しトランプ戦略・戦術を採用すれば、高市総理大臣の可能性は飛躍的に高まる

まとめ
  • トランプ氏出馬禁止が支持層を活気づけ、資金調達を増やす。保守派は憲法権利の攻撃に傍観しないだろう。
  • トランプの最高裁上訴は誤りを正し、民主党の権力掌握の不当性を暴く。多くの米国人が再び偉大な米国を支持するでしょう。
  • トランプ再選への追い風の中、日本政局は混迷。財務省と検察の連携、岸田政権の不安定さ。高市氏の自民党総裁選挙への台頭と岸田政権のレイムダック化。安倍派と高市氏の協力関係強化で高市氏総裁実現の可能性は高まるだろう。
  • 日本でのスティーブ・バノン氏の政治への関与の可能性もあり得る。保守派の危機感、日本独自の社会性を考慮し、バノン氏の戦略が日本で有効に機能するか注目。
  • 日本での政治情勢は動的。高市氏と安倍派との接触でトランプ戦略模索の可能性がたかまるかもしれない。
トランプ大統領に対するこの裁定は、司法関係者の活動によるとんでもない権力の乱用です。米リベラル・エリートたちは、正当に選挙で選ばれた大統領が再選を目指すことを禁止することで、真の米国人の声を封じ込めようとしているようです。

この不当な判決は、トランプ氏の支持者の決意を強めるだけのようです。民主党とフェイク・ニュース・メディアの仲間たちは、急進的な左派の政策を押し進めるためには手段を選ばないようです。

トランプ氏の出馬を禁止することは、トランプ氏の支持層を活気づけ、資金調達に拍車をかけることになるでしょう。米保守派は、憲法修正第2条、信教の自由、その他の憲法上の権利が攻撃されている間、それを傍観するつもりはないようです。

トランプ氏の最高裁への上訴は、この誤りを正し、民主党の違憲である権力掌握の正体を暴くものです。多くの米国人が、米国を再び偉大にするというトランプ大統領のビジョンを支持しています。

この誤った判決は、2024年に国民の擁護者であるドナルド・J・トランプを再選させるために、保守派より活気づけることになるでしょう。

「アメリカを再びに偉大に」とコピーが書かれた選挙応援用ハット

一方日本でも、政局が混乱しつつあります。

高橋洋一氏等が指摘するように、現在財務省が岸田政権の「倒閣」まがいのスタンスをとっています。これをみた、検察も自民党議員の裏金問題を持ち出してきたようです。 財務省(国税庁)と検察は、ともに国家権力を支える役所として交流が深いです。特に、現状では裏金問題は政治資金規正法違反となりますが、それだけでは形式犯になりかねないので、税法違反(脱税)まで検察としては持っていきたいようです。そのところでは、財務省の協力が必要なので、検察は財務省とも水面下で協議しているはずです。 緊縮財政を進めたい財務省は、安倍政権には煮え湯を飲まされ、岸田首相に減税などの積極財政を吹き込んだとみられる、安倍派には恨みを抱いているようです。 検察庁は安倍派の重鎮を脱税などで有罪にしようと互いに協力しならがら動いているようにみえます。 こうしたなか、岸田政権はレイムダック化して、岸田政権はいずれ崩壊するでしょう。今後は時期の自民党の総裁選びが政局の焦点になっていくのは間違いないとみられます。

こうした中で、派閥に属せず、世襲議員でもない高市早苗氏が自民党総裁になることを望む声が大きくなっています。


これを確実にするためには、安倍派と高市氏の協力関係が強化され、安倍派が高市氏を総裁選で担ぐなどのことをすれば、高市氏が自民党総裁になる可能性が高まると思われます。

そこで、ヒントとなるのがトランプ氏の戦略です。トランプ氏のように批判されたり、裁判を起こされたりすればするほど、有権者の支持を集めたように、日本では安倍派ならびに高市氏が、議員と自民党員を含めた自民党内で支持が高まるようなシナリオを描ければ、高市総裁の実現の可能性が高まります。特に批判されれば、されるほど、支持が集まるようなシナリオが描ければ高市総理大臣誕生も夢ではありません。

ただ日本では、そのような人物はなかなかみあたりません。本当は安倍派の中で、そのような人物が存在すれば良いのでしょうが、残念ながら現在の安倍派の中には、そのような人物は存在しません。

米国のスティーブ・バノンならそのシナリオを描けるかもしれません。バノンは、2016年米国大統領選のトランプ陣営の中心でした。彼は、ナショナリスト的ポピュリズムを提唱し、従来のメディアのゲートキーパーを迂回するためにソーシャルメディアを活用します。

スティーブ・バノンは日本の政治に関心を示し、世界的に右翼運動を提唱しています彼の日本での活動に関しては以下からご覧になれます。

・ジャパンタイムズの記事

https://www.japantimes.co.jp/news/2019/03/08/national/politics-diplomacy/ex-adviser-steve-bannon-confident-donald-trump-win-2020-despite-probes/

・ロイターの記事

https://thediplomat.com/2018/06/why-steve-bannon-admires-japan/

・ディプロマットの記事

https://thediplomat.com/2018/06/why-steve-bannon-admires-japan/

これらの情報源は、バノンの日本訪問、彼の公的発言、日本の特定の右派系団体とのつながりに関する情報を提供しています。ただ、日本社会は一般的に調和とコンセンサスを重んじるため、あからさまな敵対主義は米国ほど効果的ではないかもしれないです。

日本における「トランプ戦略」の実行可能性はまだ不透明ですが、次期自民党党首選に影響を与える可能性はあります。成功するかどうかは、日本独特の政治状況をうまく乗り切り、文化的・制度的なハードルを乗り越え、メッセージを効果的に練り上げ、広めることができるかどうかにかかっていますが、こうした戦術から最も恩恵を受ける可能性のある人物は、日本初の女性、無派閥、非世襲総裁としての高市氏であると考えられます。

日本社会は一般的に調和とコンセンサスを重んじるため、あからさまな敵対主義は米国ほど効果的ではないかもしれないですが、日本の保守派はかなり危機を感じているので、これからは効果的になるかもしれません。また、日本の社会の特性をみて、バノン氏は戦術・戦略を日本では米国で異なるものにするかもしれません。

スティープ・バノン氏

ただ、これはあくまでも入手可能な情報に基づく分析であることを忘れないでください。政治情勢はダイナミックであり、予期せぬ展開で流れが変わる可能性もあります。展開されるこれからのレースから目を離さず、様々な情報源から提示される情報を批判的に評価し続けることにより真実が見えてくるでしょう。

ただ、バノン氏等が来日し、安倍派や高市氏と会談ということにでもなれば、安倍派と高市氏は、「トランプ戦略・戦術」を目指す可能性が高くなっているとみなすべきと思います。これは、突飛な見方、穿った見方ですが、政治の世界は一寸先と言われていますが、これは裏返せば、一寸先は光明ともいいかえることもできます。

以上の見方は、私自身の憶測に過ぎず、穿った見方にすぎないのですが、これは一重に日本の政治が良くなって欲しいという私の希望から出た、一つのシナリオです。

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2023年12月21日木曜日

これぞ未来の大砲「レールガン」の使い方、研究現場で聞いてきた 米軍も諦めた課題、日本―【私の論評】軍事から宇宙開発まで、電磁波武器の未来を切り拓く日本

これぞ未来の大砲「レールガン」の使い方、研究現場で聞いてきた 米軍も諦めた課題、日本

まとめ
  • 日本の防衛装備庁が公式YouTubeチャンネルでレールガンに関する研究動向を公開。
  • レールガンは電気を利用して弾丸を加速させる砲で、日本は世界で初めて洋上射撃試験を実施。
  • レールガンの開発には高速で射程の長い特性があるが、砲身摩耗の問題が大きな課題。
  • 日本は砲身素材変更と電流制御の改良により、120発以上の発射に成功し、実用化に向け進展。
  • レールガンはコストやサイズの利点があり、ミサイルとは異なる戦術的利点を持つが、技術的な試験が進行中で、自衛隊の要望に応じた最終運用形態が検討されている。


2023年12月1日、防衛装備庁は公式YouTubeチャンネルで、レールガンに関する研究動向を公開しました。この技術は電気を利用して弾丸を加速させる砲であり、その研究は従来の火薬を使用する兵器とは大きく異なります。世界中で未来の兵器として注目を集める中、日本は他国をリードし、今年10月には初めて洋上での射撃試験を行いました。

研究を担当する陸上装備研究所からは、現在のレールガンの開発状況や潜在的な用途に関する情報が提供されました。この兵器は、弾丸に電気を通して磁場を生成し、それによって弾丸を加速させて射出するものであり、現行の試験機は全長約6mで口径は40mm四方です。

従来の火砲と比較すると、レールガンは弾丸の速度が桁違いで、射程も極めて長い特性を持っています。ただし、この技術には砲身摩耗の問題があり、アメリカ海軍はこの問題から開発を中止しましたが、日本は砲身素材の変更と電流制御の改善により、120発以上の発射に成功し、実用化に向けて進展しています。

レールガンの優れた点は、コストとサイズの面での利点が大きいことです。ミサイルよりも小型で低コストな弾丸を多く携行でき、レーダーでの捕捉が難しく、迎撃が困難な特性を持ちます。ただし、ミサイルは射程や精度で優れており、それぞれの兵器には独自の利点があります。

現在は、技術的な試験が進行中で、単発の試射から始まり、連射や安定した飛翔に関する課題に取り組んでいます。最終的な運用形態は、自衛隊の要望によって決定される見通しです。防衛省の資料によれば、「早期装備化」が目指されており、研究者たちは実用化に向けて努力を重ねています。この先、レールガンが実戦配備されれば、日本の防衛力に革新的な役割を果たすことが期待されます。

この記事は、元記事の要約です。詳細は、元記事をご覧になって下さい。

【私の論評】軍事から宇宙開発まで、電磁波武器の未来を切り拓く日本

まとめ
  • 米海軍は2021年にレールガンの開発中止を発表し、予算案でレールガンプログラムへの資金供給を「0」に設定。
  • レールガンの開発は技術的課題やコスト面、極超音速兵器の出現など複数の要因で困難を伴い、米海軍は他の技術開発に資金と人材を集中する方針。
  • 小惑星探査機「はやぶさ2」の衝突装置「インパクタ」は人工クレーターを形成し、成功を収めた。
  • インパクタに代わる爆薬の代替として、電磁波を利用したレールガンの研究が進行中で、小惑星への衝突やクレーター形成に利用される見通し。
  • 日本はレールガン開発を進め、将来的には極超音速兵器への対処や低コストの射撃手段としての実用化が期待されているが、課題も残る。
米軍が試作したレールガン

レールガンの開発は相当難しいようです。米海軍は、レールガンの開発を長年にわたり進めてきましたが、2021年に開発の中止を発表しました。これは、2022会計年度予算案の中でレールガンプログラムへの資金供給を「0」に設定したことから明らかになりました。

レールガンの開発は、技術的な課題やコスト面、さらには極超音速兵器の登場による戦略的な変化など、多くの要因により困難を伴っていました。そのため、米海軍はレールガンの実用化に見切りをつけ、他の技術開発に資金と人材を集中させることを決定したと考えられます。

ただし、これは米海軍の予算案で示された方針であり、議会がレールガンプログラムへの投資継続を決断すれば、同プログラムへの予算が復活する可能性も残されています。

日本では、惑星探査の目的でレールガンの開発をすすめています。これをレールガンと呼んで良いのかは別の問題ですが、レールガンのようなものの開発をすすめているのは事実です。

小惑星探査機「はやぶさ2」の衝突装置「インパクタ」は、小惑星の表面に人工クレーターを作るための装置です。これは、直径約10m、深さ約2mの人工クレーターをつくることに成功しまた。

光跡を引っ張りながら地球に帰還する「はやぶさ2」の試料カプセル=2022年12月6日未明

現在、インパクタに使用される爆薬の代替として、電磁波を利用したレールガンのようなインパクタの研究が進行しています。

電磁波を使用したレールガンは、電気の力を利用して弾丸を加速し、それを小惑星の表面に衝突させることでクレーターを形成します。この場合、爆薬の使用がなく、電磁力を利用するため、より環境に優しく、クレーターを形成するプロセスにおいてもより制御が可能になると考えられています。

レールガンが実用化された場合、その特性を活かした様々な用途が考えられます。以下にいくつかの可能性を挙げてみます。

ミサイル防衛:レールガンは、その高速性と連射能力を活かして、敵のミサイルを迎撃する手段として使用される可能性があります。特に、中国やロシアなどが開発に力を入れる「極超音速兵器」に対する防衛手段として期待されています。

敵基地攻撃能力:レールガンは、その長射程性を活かして、敵の基地を攻撃する手段としても使用される可能性があります。

低コスト:レールガンは火薬を使わず、電磁力を使って弾を発射するため、理論上は低コストでの連射が可能です。

日本がレールガンの実用化に成功する可能性は十分にあります。その理由は以下の通りです。

技術的進歩:日本はレールガンの開発において一定の進歩を遂げています。防衛装備庁は2020年代後半にレールガンの実用化を計画しており、初速が秒速1700メートル程度の一般的なミサイルに対し、研究段階で音速の6倍を超える秒速2300メートル近くを達成しました。

高度な素材技術:レールガンは電気を通しやすい丈夫な材料が必要で、日本が強みを持つ高度素材が開発の焦点となります。

防衛需要:中国やロシアなどが開発に力を入れる「極超音速兵器」に対する防衛手段として、レールガンの実用化が期待されています。

中国の超音速ミサイルDF-ZF簡体字:東風ZF)

以上の理由から、日本がレールガンの実用化に成功する可能性は高いと言えます。ただし、レールガンの実用化にはまだ多くの課題が存在します。例えば、大電流の供給、加速距離やレールの摩擦・電気抵抗・耐熱限界といった物理的・技術的制約があります。これらの課題を克服するためには、さらなる技術開発と研究が必要となります。

ただ、いずれこれを克服できる可能性はあると思います。早期の実用化に向けて努力していただき是非実現していただきたいものです。

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2023年12月20日水曜日

中国のデフレを西側諸国が歓迎する理由―【私の論評】来年は中国のデフレと資源・エネルギー価格の低下で、日本に再びデフレ圧力が!


まとめ
  • 中国の消費者物価指数が前年比0.5%の下落でパンデミック以来の最低を記録。
  • 西側諸国では中国のデフレが一部のデフレを自国に「輸入」する可能性があり、これはインフレ抑制に役立つと考えられる。
  • 中国のデフレは西側諸国にとって好ましい影響をもたらす可能性があり、インフレ期待に影響を与えると議論されている。
  • アメリカの消費者物価指数は3.1%で、FRBの目標を上回っており、金融市場はインフレ鈍化を歓迎しているが、注目が集まっている。
  • 中国のデフレが西側諸国にとってはインフレ抑制になり得るが、アメリカでのインフレ崩壊につながる可能性もあり、債券投資家はこの状況を好ましく見るかもしれない。

11月の中国の消費者物価指数が、前年比0.5%の下落となり、パンデミック以来最低となった。

だが、これは西側諸国にとっては良い知らせであり、デフレの一部を自国に「輸入」できる可能性があると、アナリストは見ている。

中国のデフレ問題は、西側諸国にとっては歓迎すべきインフレ抑制効果があるという。

中国は経済的困難が続き物価が再び下落しているが、中国政府の苦悩は西側諸国の勝利につながる可能性があるとアナリストは語っている。

これは、中国のデフレ傾向が、アメリカのような必要以上の物価上昇を抑えるかもしれないからだ。

「中国が国際貿易を通じて世界にデフレを輸出するのではないかという懸念が高まるため、中国経済が回復を示せない期間が長くなるほど、西側諸国のインフレの期待は下がる可能性が高くなる」とマッコーリー(Macquarie)のストラテジストのティエリー・ウィズマン(Thierry Wizman)は述べた。

11月、中国の消費者物価指数は前年比で0.5%下落し、パンデミック以来の最低となった。2023年初頭には物価がマイナスから再び上昇したが、回復への期待は裏切られた。

一方、世界的に見ると、同期間におけるアメリカの消費者物価指数は3.1%で、前月の3.2%から若干落ちた。

アメリカの金融市場はインフレ鈍化を歓迎しているが、依然として連邦準備制度理事会(FRB)の目標の2%を上回っている。アメリカの投資家はFRBがいつ金利引き下げを開始するかを推し測っているため、これらのインフレの数値に大きな注目が集まっている。

ウィズマンと同様に、ソシエテ・ジェネラル(Societe Generale)のアナリストのアルバート・エドワーズ(Albert Edwards)も、中国のデフレは物価下落を自国に「輸入」したいと考える西側諸国にとって救済のサインになると見ている。

「中国のデフレ問題は、西側諸国にとって歓迎すべきインフレ抑制になり得る」

中国のデフレは、不動産セクターの崩壊、外貨の流出、パンデミック後の冴えない成長からくるものであるため、驚くものではない。

依然としてGDPの成長が健全なアメリカとは対照的だ。だが、突然の逆転は、中国のデフレをメリットではなく障害にしかねない。

「仮に(マネーサプライの弱さを反映して)アメリカのハードランディングが迫り、いずれにしてもアメリカ国内のインフレ崩壊を引き起こすなら、それは台無しになり、中国のデフレを輸入することは、歓迎されず状況を悪化させるだろう」とエドワーズは述べた。

「念のために言っておくが、債券投資家はこれを歓迎するだろう」


【私の論評】来年は中国のデフレと資源・エネルギー価格の低下で、日本に再びデフレ圧力が!

まとめ
  • 中国経済の減速により、中国国内のインフレ率が低下している。
  • 中国の輸出向け製品の価格も下落している。
  • 中国の景気減速は、世界的なインフレ圧力の抑制につながる可能性がある。
  • 中国の景気減速は、日本など西側諸国にとってプラス要因となり得る。
  • 日本政府は、来年の中国によるデフレ圧力とエネルギー・資源価格の低下に伴うデフレリスクに備えて、さらなる積極財政と金融緩和を行うべき。
中国のデフレ傾向が西側諸国にとってマイナスではなく、プラスになる可能性があることをこのブログでは過去に二度ほど指摘してきました。その記事のリンクを以下に掲載します。

中国のデフレ圧力、欧米中銀にとって朗報=PIMCO―【私の論評】中国の長期デフレにより、世界のマクロ・バランスが元に戻る可能性がでてきた(゚д゚)!

これは、8月17日の記事です。この元記事の要約を以下に掲載します。

中国のデフレ圧力  AI生成画像

 中国のデフレ圧力が世界市場に波及する可能性があると、米大手債券運用会社パシフィック・インベストメント・マネジメント(PIMCO)は分析した。中国経済の悪化は、中国国内のインフレを緩やかにし、中国製品が供給される市場でもインフレ鈍化が進む可能性があると指摘している。 
 PIMCOのエコノミスト兼マネジング・ディレクター、ティファニー・ワイルディング氏は、「中国におけるデフレの持続は先進国市場に波及する可能性が高い。人民元安と在庫・売上高比率の上昇により、中国製品の海外価格が下落するからだ。先進国の中銀はこのような展開を歓迎するだろう」と述べている。また、「通常の遅れを考えると、デフレの波及は世界の消費者市場に影響を与え始めたばかりであり、今後数四半期にわたって値下げが加速する可能性が高い」としている。

 中国にとって、デフレ圧力がさらに強まるリスクは今後数カ月の政府の政策にかかっている。内需拡大に向けた十分な財政刺激策はインフレを再加速させるかもしれないが、政策措置の遅れや不十分さは下降スパイラルにつながる可能性があるとした。

 中国国家統計局が今月9日に発表した7月の消費者物価指数(CPI)は前年比0.3%下落し、2021年2月以来2年5カ月ぶりにマイナスとなった。長引く不動産不況や輸出入の減少で中国経済が減速する中、デフレ圧力が強まっているという懸念を助長する内容となった。

 一方、オックスフォード・エコノミクスは16日付のメモで、中国の2023年国内総生産(GDP)成長率予測をコンセンサスを下回る5.1%に引き下げた。「デフレ、低調な貿易、ローン需要の急減、不動産セクターの麻痺がリスク選好度を低下させる」とした。

中国の景気減速が米FRBのインフレ対策の追い風に―【私の論評】中国長期経済停滞で、世界の「長期需要不足」は終焉?米FRBのインフレ対策の追い風はその前兆か(゚д゚)!

これは、7月18日の記事です。こちらも元記事を要約したものを以下に掲載します。 

FRBパウエル議長

中国経済は2023年に予想以上に減速しており、成長予測は引き下げられ、インフレ率は低下している。

中国の景気減速は世界経済と市場に悪影響を及ぼしている。一次産品の価格は下落しており、商品の需要は減少している。現状では、世界的にインフレの軌道修正が課題となっている。

中国経済の減速は、米国連邦準備制度理事会(FRB)にとって救いとなっている。中国の景気減速は、FRBに対する積極的な利上げ継続への圧力を軽減している。

中国ではデフレの兆候が見られ、消費者物価と生産者物価が多くの分野で下落している。中国の内需は著しく減速している。中国の輸出に対する外需も急減した。

中国の景気減速は、今年の力強い中国の成長を期待していた米国および世界経済にとって悪いニュースである。

中国は依然として金融政策と財政政策を通じて経済を刺激する可能性がある。しかし、中国は債務水準の削減と通貨安の回避に努めるため、大規模な景気刺激策の実施を躊躇する可能性がある。

今のところ、中国経済の減速により、米国を含む世界全体のインフレ圧力が低下している。しかし、中国の政策担当者が成長刺激を決定すれば、状況は変わる可能性がある。 

 中国の「中国のデフレ問題は、西側諸国にとって歓迎すべきインフレ抑制になり得る」のは十分にあり得る話です。

このところ世界はかなりのインフレに悩まされてきました。エネルギー・資源価格が、高騰しかなりのインフレが続いていました。未だデフレ気味の日本では考えられないほどの物価の上昇が続いてました。

エネルギー資源価格は、過去の経緯からいっても、常識的に考えても、いつまでも上昇し続けることはありません。価格が高騰すれば、多くの地域で、増産などがはじまり、価格はいずれ安定します。

ただ、エネルギーや資源などを増産するにしても、すぐにはできません、1年から数年は要します。そのため、増産までには一定のタイムラグがあるので、一時的に高くなるのです。

来年は、エネルギー・資源価格の高止まり状況は終わり、今度は低くなっていくことでしょう。それに加えて、中国のデフレにより、今度は全世界的なインフレ傾向は収まることになるでしょう。

日本においては、エネルギー・資源価格高騰のため、物価が上がっていましたが、それがおさまり、さらに中国によるデフレ圧力が加わり、デフレ傾向がまた顕著になる可能性があります。

これを考えると、日銀が昨日の金融政策決定会合で、現在の大規模な金融緩和政策の維持を決めたのは正解でした。

日銀植田総裁(左)と岸田首相

もし、利上げなとが決定されていたら、来年はさらにデフレが亢進したことでしょう。例年だとこの時期には、日銀が金融政策を変えるということはありません。なぜなら、来年度予算編成をしつつある今の時期に、日銀が金融政策を変えると予算編成の前提が狂ってしまい、編成作業をやり直さなければならなくなるからです。

ですから、余程のことがない限り変えないのが普通です。しかし、現在政治資金の不記載問題で、政局が揺れている現在、岸田政権はレームダック化しつつあり、この時期に日銀官僚等の思惑で、ゼロ金利政策をやめて金融引き締めに踏み切ってしまえと考える可能性もあったのですが、それは回避されました。

本当に良かったです。もし、利上げに踏み切ってしまえば、日本だけでなく世界に悪影響を及ぼし、リーマンショックよりもはるかに甚大だ悪影響を国内外に及ぼす可能性については、最近このブロクで指摘したばかりです。

リーマン・ブラザーズが入居していたビル

さて、来年はエネルギー・資源価格は下がり、中国のデフレ圧力が強まる可能性があります。現在政治資金の問題で、政局は揺れていますが、来年は日本ではデフレが深化する恐れがあります。今後政局がどのように揺れたにしても、国民のことを考えれば、政府は積極財政を、日銀は金融緩和を継続するだけではなく、量的にも質的にも、緩和政策を強化すべきです。

政局がどんなに揺れたとしても、政府・日銀が正しい政策をすれば、政府の信任も高まることになります。岸田政権はそのことをしっかり認識して、政権運営を実行すべきです。

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2023年12月19日火曜日

英BP、スエズ運河を回避 原油・ガス価格に上昇圧力―【私の論評】スエズ運河の安全を脅かすフーシ派、日本はタスクフォースに参加し貢献すべき

  英BP、スエズ運河を回避 原油・ガス価格に上昇圧力

まとめ

  • フーシ派による船舶攻撃のリスクが高まり、エネルギー企業やコンテナ船が紅海の運航を回避。
  • 原油相場と欧州の天然ガス価格が上昇。
  • 紅海はスエズ運河につながる重要航路で、喜望峰経由だと時間とコストがかかるため、供給網に影響。
  • フーシ派はイランの支援を受けており、米国は友好国と共同で対応する方針。
BPのタンカー

 英BP(ブログ管理人注:国際石油資本、いわゆる「スーパーメジャー」と総称される6社の内の1社)は、イエメンのフーシ派による船舶攻撃のリスクを理由に、紅海の通航を回避すると発表した。これにより、中東から欧州に向かう原油タンカーや液化天然ガス(LNG)船は、スエズ運河を避けてアフリカ大陸の喜望峰経由の運航を余儀なくされる見込みで、原油相場と欧州の天然ガス価格の上昇圧力につながった。

 コンテナ船にも影響が広がっており、欧州の海運会社や台湾の長栄海運などが紅海の運航を回避している。紅海はスエズ運河につながっており、欧州と中東・アジアを結ぶ重要な航路である。喜望峰経由の運航は時間とコストがかかるため、供給網(サプライチェーン)に大きな影響を与える。

 フーシ派はイエメンの武装組織でイランの支援を受けている。イスラエルのパレスチナ自治区ガザへの侵攻を受け、反発したフーシ派は、イスラエルと同国に近い船舶を攻撃している。

 米国は、フーシ派に対応するため、友好国と共同で行動する方針を表明した。

 この記事は元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になって下さい。

【私の論評】スエズ運河の安全を脅かすフーシ派、日本はタスクフォースに参加し貢献すべき

まとめ
  • スエズ運河は、物流の中心地であり、この付近での船舶攻撃は世界経済に深刻な影響を及ぼす
  • スエズ運河通過料がエジプト経済にとって重要であり、減少は大きな打撃を与える
  • 船舶攻撃を阻止するための米国手動のタスクフォースの設立に向けた動きがある
  • タスクフォースの目的は、船舶護衛、情報収集・共有、脅威の抑止
  • 日本にとっては、これに参加することで経済的利益の保護、国際的信頼の確立、自衛隊の能力向上が期待できる

スエズ運河は、年間2万隻以上の船舶が通過する、世界でも最も重要な海上交通路の一つです。欧州とアジアを結ぶ最短ルートであり、アフリカ南端の喜望峰を回る場合よりも、距離が約1万2千キロも短縮されます。

今回の攻撃により、原油や天然ガス、穀物、工業製品など、さまざまな物資の輸送に遅延や混乱が生じる可能性があります。特に、原油や天然ガスなどのエネルギー資源の輸送は、世界のエネルギー供給網に大きな影響を与える可能性があります。

また、スエズ運河の安全が脅かされる事態は、世界の経済・政治にも影響を及ぼす可能性があります。

すでに米国主導で、船舶護衛のための国際船団のタスクフォースを作る動きがあります。

このタスクフォースの目的は、紅海・アデン湾におけるフーシ派による船舶攻撃を阻止することです。紅海は、欧州と中東・アジアを結ぶ重要な航路であり、フーシ派の攻撃が続くと、原油相場や天然ガス価格の上昇、サプライチェーンの混乱などの経済的影響が懸念されます。

これには、すでにNATOの6か国以上がコミットしたと報道されています。具体的には、イギリス、フランス、ドイツ、イタリア、スペイン、オランダ、ポーランド、デンマーク、ノルウェー、ギリシャ、ブルガリア、ルーマニア、トルコ、イスラエルなどが参加する見込みです。

日本も、この地域の海運に依存していることから、タスクフォースに参加する意向を表明しています。しかし、フーシ派はイランの支援を受けており、攻撃にはミサイルやドローンなどの高性能な武器が用いられているため、日本は武器使用の基準など、法的問題を整理する必要があります。

自衛隊は、特に米軍と並び哨戒能力が高く、ソマリア沖の海賊対策などで培った経験を活かして、タスクフォースに参加し役割を担える能力を有しています。しかし、自衛隊は専守防衛の原則に基づいて運用されており、海外で武力行使を行うには、国際法上の正当防衛や他国からの要請などの要件を満たす必要があります。

八戸からソマリア沖の海賊対策に向かうP3C哨戒機

タスクフォースの活動は、主に以下の3つに分けられます。
  • 船舶の護衛
  • 情報収集・共有
  • 脅威の抑止
船舶の護衛は、タスクフォースの主な活動です。護衛艦や哨戒機などを派遣して、フーシ派による攻撃から船舶を守ります。

情報収集・共有は、フーシ派の活動を把握し、攻撃を未然に防ぐために重要です。衛星や無人機などの情報収集手段を活用して、フーシ派の活動を監視します。

脅威の抑止は、フーシ派に攻撃を思いとどまらせるために行われます。タスクフォースの存在をアピールすることで、フーシ派の士気を低下させ、攻撃を抑止する効果が期待されます。

日本のタスクフォースへの参加は、以下の3つの意義があると考えられられます。
  • 経済的利益の保護
  • 国際社会の信頼の獲得
  • 自衛隊の能力向上
経済的利益の保護は、タスクフォースの目的そのものです。紅海は、日本にとっても重要なエネルギー輸入路であり、フーシ派の攻撃が続くと、日本の経済に大きな影響を与える可能性があります。タスクフォースへの参加は、紅海の航行の安全を守り、日本の経済的利益を保護するために重要です。

国際社会の信頼の獲得も、日本のタスクフォースへの参加の意義の一つです。フーシ派の攻撃は、国際社会の秩序を脅かすものであり、日本は国際社会の一員として、その抑止に貢献することが求められています。これへの参加は、日本の国際社会における役割を示すものであり、国際社会の信頼を獲得することにつながります。

自衛隊の能力向上も、日本のこれへの参加の意義の一つです。ソマリア沖の海賊対策などで培った経験を活かして、自衛隊はこれに参加することで、国際平和協力の能力を向上させることができます。また、フーシ派による攻撃という新たな脅威への対応力を高めることにもつながります。

日本には憲法上、法律上の様々な括りがあって、こうしたことに対処するは他国と比較すると難しいですが、フーシ派を海賊とみなし、「海賊対処行動」を行うのであれば、船籍を問わず、襲撃を受けている船舶を助けることができます。また、武器使用も可能です。ただ、それにしても、他国よりは難しいことは否めません。これについては、以前このブログにも述べたことがあります。興味のある方は、この記事もご覧になってください。

日本はこのタスクフォースに積極的に参加することで、日本はフーシ派を含む地域の海賊等に対し、海洋安全保障に対する脅威を容認せず、米国の同盟国と協力してそのような行動を抑止するという明確なメッセージを発信すことができます。

海自の潜水艦「しょうりゅう」と護衛艦「いかづち」

また、ガザでの戦闘のさなかに、イスラエル船籍を含むタンカーをタスクフォースが協同で守ることは、象徴的な意味合いもあります。

これはイスラエルの自衛権を支持するという重要なメッセージを送ることにもなります。フーシ派とハマスとは、隣国を支配しようとするシーア派とスンニ派の過激派であり、イランの支援を受けています。

フーシ派を阻止することで、イランを牽制、イスラエルを支援することで、ハマスの牽制につながります。これはタスクフォースの参加国にとって互いにWin-Winの関係であり、タスクフォースの共同行動は軍事的にも外交的にも妙手になることでしょう。

日本は、このタスクフォースに参加し大きな役割を担えば、世界に向かって日本の強固な意思を伝えることになり、中・露・北に対する大きな牽制となり、日本の安全保障を強化することになります。

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2023年12月18日月曜日

レームダック化が止まらない岸田首相に「日銀」が仕掛ける「ステルス引き締め」―【私の論評】リーマン・ショックから15年後:日本銀行の政策修正が世界経済に及ぼす影響とは?

レームダック化が止まらない岸田首相に「日銀」が仕掛ける「ステルス引き締め」

まとめ
  • 岸田内閣に対する国民の支持率は歴史的に低く、政権の安定を脅かす可能性がある。
  • 安倍首相関連の閣僚を交代させ、林氏を起用しても、岸田内閣の支持率は改善しなかった。
  • 岸田氏の「自我の目覚め」による減税計画は財務省と衝突しており、検察は岸田氏をさらに弱体化させるために安倍派をターゲットにしている可能性がある。
  • 日銀は、岸田政権の苦境を、政治的干渉を受けずに金融政策を調整する好機と見ている。
  • 日銀はこの好機に、技術的にはマイナス金利政策を維持しながらも、金利を微妙に引き上げる「ステルス引き締め」をする可能性がある。

 岸田文雄首相は、安倍晋三前首相の政策に沿った4人の閣僚を交代させたが、内閣支持率の低迷は続いている。内閣改造の前後に行われた最近の世論調査では、内閣支持率は2012年に自民党が政権に返り咲いて以来最低の水準となった。

岸田首相

 この支持率の低さは、野党が強ければ政権交代の可能性を高める。検察庁と密接な関係にある財務省は、岸田首相の最近の減税重視の姿勢をよく思っておらず、安倍一派排除の動きを支持しているとされる。

 日本銀行(BOJ)も岸田政権のレームダック化を歓迎しているようだ。日銀の上田和男総裁は、金融政策の運営は今後数カ月でより難しくなると表明している。インフレターゲットが金融政策変更の指針であることに変わりはないが、現在の経済状況は変更を正当化するものではない。

 上田総裁は、雇用志向よりも金融機関志向の金融政策を好むことで知られている。短期マイナス金利と長期ゼロ金利からなる日銀のイールドカーブ・コントロール政策は精査されており、短期マイナス金利の解除の可能性は金融政策の「ステルス引き締め」となる可能性がある。

 現在、政治とメディアが政治資金問題に焦点を当てているため、金融政策から注意がそれている。岸田内閣が政治的課題に直面しているため、政策がアベノミクスとは逆の方向に傾く可能性があると推測されている。12月と1月に開かれる日銀の政策決定会合で、金融政策の方向性が変わるかどうかが見極められるだろう。

 「ステルス引き締め」に関しては、デフレ完全脱却のチャンスとでも官邸に説明すれば、官邸は何も言わないだろう。  

 短期のマイナス金利の変更は、超テクニカルなので、ステルスでやることもできる。今の日銀当座預金について、三層に分かれるが、一層の金利は0.1%、二層目はゼロ金利、三層目がマイナス0.1%。そこで、三層の分け方を微妙に変更すれば形式的にはマイナス金利は維持だが、実質的に金融引き締めというように「ステルス引き締め」が可能だ。 

 しかも、今メディアや世論は政治資金問題に染まっている。来年の通常国会開催までに、誰が検察に事情聴取され誰が立件されるかというのが延々と報じられることになるだろうから、金融政策への関心は若干薄れている。

 財政政策でも金融政策でも、逆アベノミクスになるような政策がでてくるかしれない。

 この記事は、元記事の要約です。詳細は、元記事をご覧になってください。

【私の論評】リーマン・ショックから15年後:日本銀行の政策修正が世界経済に及ぼす影響とは?

まとめ
  • 15年前のリーマン・ショックは「ブラック・スワン」と呼ばれる困難な出来事だった。
  • リーマン・ショック前にも危機の兆候があり、各国で金融機関の問題が発生していた。
  • 現在、日本銀行の政策修正についての議論が起きており、ゼロ金利政策の解除は慎重を要する。
  • 日本の政策変更が世界経済に波及する可能性があり、米国や中国の影響も大きい。
  • 日本が利上げを行い、それが世界経済に及ぼす影響が大きければ、日本ではリーマン・ショックを上回る災厄が起こる可能性がある。

リーマン・ブラザーズ本社があったタイムズスクエアビル

 2008年のリーマン・ショックから15年が経過しました。当時の金融危機は、確率論や従来の知識や経験に基づいて予測することが困難な極端な出来事である「ブラック・ スワン」と呼ばれました。

 日本銀行が本格的な利上げを実施すれば、次に起こる災厄はリーマン・ショックよりもはるかに大きくなる可能性があります。それは、日本のみならず、全世界的なものになるでしょう。なぜなら、グローバルな金融(マネー)がリーマン・ショック時よりもはるかに膨張しているためです。

 リーマン・ショック以前にも、危機の兆候はありました。2007年8月には、フランスの大手金融機関BNPパリバが投資ファンドの償還を停止すると発表した「パリバショック」が起きました。

 2009年には、スイスの金融大手クレディ・スイスが金融取引で巨額の損失を出した。同社は、今年8月にニューヨークの裁判所に Chapter 15 破産保護を申請しました。

 今年3月には、米国のシリコンバレー銀行が崩壊しました。ソーシャルネットワーキング時代の株高が電子ネットワークを介して「数秒のうちに」広がり、金融当局を慌てさせました。

 また、ロシアのウクライナ侵攻は依然として続いており、イスラエルとパレスチナの戦闘も10月に始まって以降、収まる気配を見せません。

 リーマン・ショック時、世界各国の中央銀行は経済を「支えるために」余剰資金を供給しました。当時の日銀は、それをしなかったため、日本はリーマンショックの震源地でないにもかかわらず、日本は申告なデフレと超円高に悩まされました。しかし、現在のインフレの時代には、その余剰流動性を維持することがますます困難になっています。

 米国の利上げは、債券価格の下落を通じて、先述のシリコンバレー銀行やその他の破綻に大きな影響を与えました。

 日本でも、金融緩和政策の修正を求める声が上がり始めています。しかし、現状では「ゼロ金利」の解除には、痛みを伴うのは確実です。なぜなら、現在の日本はデフレから抜けきっておらず、消費は相変わらず低迷しているからです。

 日本銀行がゼロ金利政策を解除すれば、米国や中国などにも影響が及びます。米国や中国のバブルは、日本では想像もできないほど膨らんでおり、それが崩壊すれば、被害は計り知れないです。

日銀植田総裁(左)と岸田総理

 日銀が「ステルス引き締め」により、引き締めに転じ、来年利上げに転ずることになれば、今度は日本が震源地となり、それが米中等にも波及し、世界経済が低迷することになるでしょう。

 そうなると、円高になり、日本の輸出企業も悪影響うけ、しかも国内消費はさらに低迷し経済は低迷し、そうして他国が利下げに走るなか、日銀が利上げを継続し、さらに財務省が緊縮に走れば、そのときリーマン・ショックをはるかに上回る災厄が日本を襲うことになるでしょう。

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