2024年3月16日土曜日

ゴジラの米アカデミー賞受賞、政府の政策ではなく民間競争の結果だ モノづくりからソフトへ 世界での商業的成功が大前提に―【私の論評】戦後日本の平和と国防意識を描く映画「ゴジラ-1.0」の成功の意味

 高橋洋一「日本の解き方」

ゴジラの米アカデミー賞受賞、政府の政策ではなく民間競争の結果だ モノづくりからソフトへ 世界での商業的成功が大前提に

まとめ
  • 「ゴジラ-1.0」は視覚効果が優れており、日本映画がアカデミー視覚効果賞を受賞したのは快挙だった。
  • 「ゴジラ-1.0」と「オッペンハイマー」は共に核兵器をテーマにし、戦中・戦後の日本を舞台にしている。
  • 宮崎駿の「君たちはどう生きるか」も戦中を描いた作品であり、これら3作品から反戦をテーマにしたステレオタイプの映画評論ができる。
  • 筆者は「ゴジラ-1.0」の視覚効果を高く評価しており、日本のソフト産業の成功は民間企業の競争による結果である。
  • 今後もこの傾向を温かく見守り、日本のソフト産業の成功者を称賛すべきである。

米アカデミー賞で日本映画「ゴジラ-1.0(マイナスワン)」が視覚効果賞を受賞した。ハリウッドの大作に比べ、低予算で少ない人数でつくられたことが米国でも話題になった。受賞時にゴジラのテーマ曲が流れ、視覚効果賞はこれまでアジア作品初の快挙だった。

同じくアカデミー賞で最多7部門を獲得した「オッペンハイマー」は、原爆開発の中心的役割を果たした科学者の伝記映画である。「ゴジラ-1.0」と「オッペンハイマー」が共に核兵器をテーマにし、戦中・戦後の日本を舞台にしており反戦を訴える映画評論ができる。さらに宮崎駿の長編アニメ「君たちはどう生きるか」の受賞も加わり、反戦をテーマにしたステレオタイプの映画評論が書ける。

炎に包まれたビーチで、オッペンハイマーの肩にバービーが乗る画像 日本から批判が殺到した

ノミネート作品の中で「ゴジラ-1.0」の視覚効果が最も面白かった。公開後に何度も鑑賞を重ね、戦闘シーンの迫力に圧倒された。

アカデミー賞は米国で上映された作品が対象だが、「ゴジラ-1.0」は他国でも好評を博した。映画やアニメなどのソフトビジネスでは商業的な成功が何より重要であり、鳥山明の「ドラゴンボール」のような世界的な人気作品の存在から、日本のソフト産業が世界に広がっていることがわかる。

このようなソフト産業の成功は政府の支援によるものではなく、民間企業の競争が生みだした結果である。筆者は今後もこの傾向を温かく見守り、成功者を称賛すべきだ。

【私の論評】戦後日本の平和と国防意識を描く映画「ゴジラ-1.0」の成功の意味

まとめ

  • 映画「ゴジラ-1.0」は、核戦争の恐怖や自国の防衛能力の重要性をメタファー的に描き出し、日本の戦後平和主義と国防意識の矛盾を示している。
  • この作品は、戦後体制の脆弱さや完全武装解除のリスクを指摘し、国家の自己防衛能力の必要性を強調している。
  • 日本の自衛力の重要性を訴える一方で、科学技術の力も評価しており、バランスの取れた国防戦略の必要である。
  • 高橋洋一氏は、ソフトウェア産業の成長に関して政府の介入よりも民間の競争が重要であると指摘し、政府はインフラ整備などのサポートを行うべきだと主張している。
  • クリエイティブな産業では政府の主導よりも民間の自由な活動と競争が重要であり、政府は後押し役に徹すべきだ。

高橋洋一氏は、この映画に関して「反戦をテーマにしたステレオタイプの映画評論」が書けるとしています。ステレオタイプになるかどうかわかりませんが、以下に私なりの、映画評論を書いてみます。
私は、この「ゴジラ-1.0」は、戦後日本の平和主義と非武装中立主義への重大な警鐘を鳴らす、極めて時宜を得た作品だと受け止めました。ゴジラが核実験の影響で生まれた怪獣であるというメタファーは、日本の非核三原則の危うさを物語っています。唯一の戦争被爆国としての経験から、核兵器の脅威を誠実に描き出している点は高く評価できます。

しかし同時に、この作品が冷厳に示しているのは、国家が国民を守れなくなった戦後体制の虚ろさであり、その現実から脱却すべきだという主張なのです。震電や軽巡洋艦がゴジラの前に次々と敗北を喫するシーンは、戦後の完全武装解除により、日本が自らを守る力を失った無力さを象徴的に表しています。
震電
そのようななか、いくら平和を唱えても何の意味もありません。国は国民の命と尊厳を守る存在でなくてはならないのです。それができなくなれば、国家としての存在理由そのものを失うことになるでしょう。

このように本作は、日本が自らを守れない現状からの決別を強く訴えかけているのです。最終的に科学者たちがゴジラを封じ込めることに成功するシーンは、確かに科学技術の力で立ち直った日本のたゆまぬ努力の姿を映し出していますが、同時に軍事力の完全な不在を白日の下に晒しています。国防の手段を持たぬまま、いくら科学技術が発達しても、究極的には自らを守れないのが現状なのです。

主権国家として最小限の自衛の覚悟は必要不可欠です。国家は、科学技術の発展に加え、一定の武力によって自らを守る決意がなくてはなりません。そうでなければ、いざ有事になったとき、国民の命は守れなくなるのです。

つまり、ゴジラ-1.0はまさに戦後の理想主義に対する反省から、国家主権と国防意識の重要性を説く保守的価値観への回帰を提起するものなのです。過去の軍国主義の過ちを決して繰り返さぬよう戒めつつ、主権国家として自立し、必要最小限の国防力の再構築を促しているのが、この作品の核心的なメッセージなのです。

国民を守ることなくして、国は存在できません。この基本に反する戦後体制からの脱却を力強く説いている点で、私はこの作品の趣旨に全面的に賛同するものです。我々は、決して二度と戦争をしてはならず平和を希求しなければなりませんが、同時に国家が自らを守れなくなった現状に危機感を持つべきです。そうした危機意識なくしては、国民の命と領土と主権を守ることはできないのです。この作品の投げかける重大な問題提起を、国民一人一人が深く自覚する必要があります。

以上が、私の映画時評です。 

高橋洋一氏は、上の記事の結論部分で以下のように締めくくっています。

かつて「モノづくりからソフトへの移行」と言われていたが、そのとおりになっている。

もっとも、これらは政府の支援によるものではなく、民間で競争した結果だ。今のまま、温かく見守り、成功者を称賛すればいい。 

これに関しても、説明させていただきます。

「モノづくりからソフトへの移行」という言葉は、1960年代後半から70年代にかけて提唱された日本の産業政策の転換を示す言葉です。

具体的には、1969年に通産省(当時)が発表した「産業構造研究会報告」が最初に「モノづくり産業からソフト産業への移行」を提起しました。同報告は、高度経済成長期に発展した鉄鋼、自動車などの「モノづくり」重厚長大産業からの転換を求め、知識集約型産業であるソフトウェア、情報サービス、エンターテインメント産業の育成を提言しました。

背景には、日本の工業化が一巡したこと、モノづくり産業での国際競争が激しくなったことなどがありました。また、当時の円高不況を打開するには、付加価値の高い産業への転換が必要と考えられていました。

モノづくりからソフトへ AI生成画像

この「モノづくりからソフトへ」という産業政策の方向転換は、その後の日本の産業発展に大きな影響を与えました。電機、自動車などのモノづくり産業に加え、IT、コンテンツ、ゲームなどのソフト産業の発展につながったと言えるでしょう。

つまり、高橋氏が言及した「モノづくりからソフトへの移行」は、1960年代後半から政府主導で提唱された産業政策の大転換を指しており、今日の日本のソフト産業発展の端緒となった重要な考え方だったのです。

高橋氏は「これらは政府の支援によるものではなく、民間で競争した結果だ」と述べていることから、現在のソフト産業の成功は、政府が主導したものではなく、民間企業の自由な競争の結果生まれたものだと指摘しているのです。

そして「今のまま、温かく見守り、成功者を称賛すればいい」と続けていることから、政府が今後もソフト産業の育成に過度に介入するのではなく、インフラ整備など環境づくりに徹し、あとは民間企業の自由な活動を温かく見守り、成功例を積極的に評価していけばよいという姿勢を示していると解釈できます。

つまり、政府はソフト産業の発展のためのインフラや制度面での下支えは行うが、実際の事業活動や競争の舞台は民間企業に任せ、官が過度に関与するべきではないという考え方を示しているのでしょう。

ソフト産業のようなクリエイティブな分野では、政府の主導では限界があり、民間企業の自由な発想と競争が重要であり、政府は後押しする立場に徹するべきなのです。

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2024年3月15日金曜日

スペースXの「スターシップ」、3度目の打ち上げで最長時間飛行―【私の論評】スペースX『スターシップ』の成功が変える宇宙開発の地政学

スペースXの「スターシップ」、3度目の打ち上げで最長時間飛行

まとめ
  • スペースXの大型宇宙船「スターシップ」が無人で打ち上げられ、軌道投入に成功したが、地球への帰還時に追跡不能になった。
  • これは過去2回の失敗から大きな進展であり、イーロン・マスクの月・火星有人探査の目標に前進した。
  • スターシップは将来的に宇宙飛行士や大量の貨物、衛星の運搬が期待される史上最大の宇宙船である。
テキサス州ボカチカの発射台に置かれたスターシップSN9

 スペースXの大型宇宙船「スターシップ」は14日に無人で打ち上げられ、軌道投入に成功した。しかし、地球に戻る際に宇宙船の信号が途絶え、追跡不能になった。

 スペースXは宇宙船が分解した可能性が高いと説明した。今回の試験飛行は過去2回の失敗から大きな進展があり、イーロン・マスク氏の人類を月や火星に送る目標に一歩近づいた。

 スターシップはサターンV型ロケットより大型で、将来的には宇宙飛行士や大量の貨物、大型衛星の運搬が期待されている。

 この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧ください。

【私の論評】スペースX『スターシップ』の成功が変える宇宙開発の地政学

まとめ
  • ISSへの補給と乗組員交代は主に、ロシア、米国、日本、欧州などが協力して行っている。
  • 各国の貢献度合いは、補給輸送ではロシアが約60%と主力、有人輸送ではロシアが約90%を占める。
  • スターシップが成功すれば、その大型輸送能力からロシアが外される可能性が高い。
  • スターシップの成功は、米国の宇宙開発主導権の確立や、宇宙資源をめぐる覇権争い激化などの地政学的影響がある。
  • 中露が経済的に疲弊し宇宙開発が制約を受ける可能性があり、日本は米国や民間企業との連携、アジア諸国との協力し、独自の有人宇宙活動推進し、新たな領域にも挑戦していくべき。
現在、国際宇宙ステーションへの補給と乗組員の交代は主に以下の方法で行われています。
  • ロシアのソユーズ宇宙船による有人運用 ソユーズ宇宙船は長年にわたり、ISS乗組員の食料や水、その他の補給品を運んでいます。また、新しい乗組員を送り込み、済んだ乗組員を地球に帰還させる役割も担っています。
  • 米国の民間宇宙船による貨物・人員輸送 スペースX社のドラゴン宇宙船やボーイング社のスターライナーなどが、無人で補給物資を運びISS に積み込む役割を担っています。有人運用も可能です。
  • 日本の基幹ロケット H-IIBによる補給機「こうのとり」 日本の無人補給機「こうのとり」は、H-IIBロケットで打ち上げられ、ISSに物資を運んでいます。
  • ヨーロッパ、ロシア等の各国の補給機も運用 欧州宇宙機関のATV、ロシアのプログレス補給船なども、ISSへの補給に使われています。
このように、現在はロシア、米国、日本、欧州などが協力して、ISSの補給や有人運用を行っています。

国際宇宙ステーション(ISS)への補給と乗組員の交代における各国の寄与度合いは、概ね以下のような割合になっていると考えられます。

【補給輸送】
  • ロシア:約60% ロシアのプログレス補給船が長年にわたり主力を担ってきました。
  • 米国:約25% スペースXのドラゴン宇宙船などで対応。
  • 日本:約10% 無人補給機「こうのとり」による貢献です。
  • その他(欧州など):約5%
ISSに接近するプログレスMS-11

【有人輸送(乗組員交代)】
  • ロシア:約90% ソユーズ宇宙船が事実上の主力でした。
  • 米国:約10% 最近、スペースXのクルードラゴンやボーイングのスターライナーでの輸送が開始されています。
ただし、これらの割合は年々変動しており、特に近年は商業宇宙船の割合が高まっています。また、今後新しい輸送手段が現れれば、この割合はさらに変化すると考えられます。

スペースXの超大型宇宙船スターシップが実用化されれば、ISS輸送における米国の存在感は一気に高まる可能性があります。

スターシップが成功した場合、ISSへの乗組員交代や補給においてロシアが外される可能性は十分にあると考えられます。

その理由は主に以下の点が挙げられます。
  • スターシップは大型で輸送能力が非常に高いです。スターシップは現行の宇宙船を大幅に上回る大型の輸送能力を持つと見られています。大量の物資や多人数の乗組員を効率的に運べるため、ロシアのソユーズ船に代わる主要な輸送手段となり得ます。
  • 米国は自国技術への依存を高めたい 長年ロシア技術に依存してきた米国は、自国の民間宇宙企業の技術で自立したい考えがあります。スターシップの成功でその可能性が高まります。
  • ロシアとの関係悪化 ロシアによるウクライナ侵攻で、西側諸国との対立が深刻化しています。米国がロシア技術への依存を排し、スターシップを活用する流れになる可能性は高いでしょう。
ただし、ISSは国際プロジェクトであり、ロシアの技術的貢献も大きいため、完全に外された場合の影響も考慮が必要です。段階的な移行が現実的かもしれません。

スターシップが成功すれば、地政学的に大きな意味を持つと考えられます。
米国の宇宙開発における主導権の確立。スターシップは史上最大となる大型宇宙船であり、月や火星への有人探査を可能にします。これにより、米国は宇宙開発における主導的地位を確立できます。ロシアや中国などに比べ、圧倒的な優位性を持つことになります。
民間宇宙企業の台頭による新たな覇権争い。スペースXのような民間宇宙企業が宇宙開発の主役になることで、国家間の覇権争いに加え、企業間の覇権争いが新たな地政学的課題となります。宇宙資源の確保などを巡り、企業間競争が熾烈化する可能性があります。
宇宙資源の獲得競争の加速。巨大なスターシップの輸送能力により、月や小惑星などの宇宙資源の獲得競争が一層活発化すると予想されます。希少資源を確保できる国や企業が有利になるため、資源を巡る地政学的緊張が高まる 可能性があります。
新たな宇宙協力の可能性。一方で、スターシップのような革新的な宇宙輸送システムは、国際協力を促進する契機ともなり得ます。共同で宇宙資源を開発・活用する新たな国際的枠組みが生まれる可能性があります。
つまり、スターシップの成功は、宇宙をめぐる覇権争いを激化させる側面と、新たな国際協調を生む側面の両方があり得ます。覇権争いは、西側諸国と中露の争いとなり、国際協調は、西側諸国内と中露内で行われることになるでしょう。

宇宙を巡る覇権争い AI生成画像

ただし、中国とロシアが経済的に疲弊し、宇宙開発を十分に続けられなくなる可能性は十分にあり得ます。

中国の場合、過去数年間の零コロナ政策による経済的打撃が大きく、さらに米国との対立による技術移転規制などの影響で、宇宙開発計画への投資が制約される可能性があります。

また、ロシアに関してはウクライナ侵攻による西側からの経済制裁の打撃が甚大です。武器開発など安全保障分野への予算は確保されるでしょうが、民生分野としての宇宙開発費が大幅に削減されかねません。

両国とも経済が低迷し、宇宙開発が後回しになれば、高額な有人宇宙計画は延期や中止を余儀なくされる恐れがあります。その場合、民間企業主導の米国などに遅れをとる可能性が高くなります。

一方で、宇宙開発は国家的威信の象徴でもあるため、一定の投資は継続されるかもしれません。しかし、技術力や財政力の面で、中露は米国などに比べ劣位に立たされる公算が大きくなるでしょう。

つまり、経済的疲弊次第では、中露の宇宙開発が大きく制約を受ける事態に陥る可能性は否定できません。

火星の日本の開発拠点 AI生成画像

このような状況下で、日本は以下のような方策を検討すべきでしょう。

1. 米国との連携強化
米国との技術協力関係を一層強化し、スペースXなどの民間宇宙企業との連携も深めていく。米国の宇宙開発の躍進に乗り遅れないよう努める。
2. 国際宇宙ステーションへのコミットの継続
ISSへの「こうのとり」無人補給機の運用を維持し、日本の技術的貢献度を高めていく。有人活動への参加も視野に入れる。
3. 自前の有人宇宙活動への投資
将来的に独自の有人宇宙活動を可能とするため、技術基盤の整備と必要な予算の確保に努める。有人宇宙船の開発も選択肢の一つ。  
4. アジア諸国との宇宙協力の模索  
中国が孤立する中、インド、韓国、台湾、ASEANなどのアジア諸国と宇宙分野での協力関係を深める。
5. 民間企業の育成と技術移転
日本の優れた宇宙技術を民間企業に移転し、新興の宇宙ベンチャー企業の成長を後押しする。
6. 月・火星探査への参画
NASA主導の有人月面探査計画などに協力し、日本の技術力を発揮する機会を得る。
日本は、日銀や財務省の過去の誤謬で、経済的制約はありますが、それを克服し、機会を捉えて着実に宇宙開発を進めることが重要です。同盟国や民間との連携を深め、日本の得意分野を生かしつつ、新たな領域にも挑戦していくべきです。

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2024年3月14日木曜日

いま金融緩和をやめたら日本は再びデフレに戻る…!経済学者が「植田日銀は金融緩和を継続をしたほうがいい」と主張するワケ―【私の論評】たった一表で理解できる、日銀が現状でゼロ金利解除をすべきでない理由

いま金融緩和をやめたら日本は再びデフレに戻る…!経済学者が「植田日銀は金融緩和を継続をしたほうがいい」と主張するワケまとめ
  • マネタリーベース(MB)増加と名目GDP増加には正の相関があるが、日本ではこの関係性が希薄である。
  • 日本のMB増が名目GDP押し上げに結びつかない主因はデフレ経済の持続にある。
  • 主要国ではMB増による金融緩和時に物価も上昇し、名目GDPも増加している。
  • 日本でもマイルドなインフレ(2%程度)があれば、MB増が実体経済を押し上げる効果が高まる。
  • したがって、デフレ脱却なくしては金融緩和の実効性に乏しく、当面は緩和継続が不可欠である。
日本銀行

 マネタリーベース(MB)と名目GDPの間には、長期的な正の相関関係が確認されている。しかし、日本ではこの関係性が必ずしも成り立っていない実態がある。具体的には、1997年から2012年にかけて日本はMBを拡大させたものの、名目GDPはほとんど伸びず、むしろ低迷を続けた。

 この主因は、日本経済がデフレ経済に長らく陥っていたことにある。デフレ下では、中央銀行がMBを増やしても、家計や企業がキャッシュや預金という形で資産を保有し続ける傾向が強く、マネーが実体経済に滲み出ず、有効需要や設備投資の増加につながらないためである。

 実際、本文で示された回帰分析の結果によれば、2009年以降の日本におけるMB1億円増に対する名目GDP増加分は僅か0.1億円にすぎず、米国の2.3億円、英国の0.6億円、ユーロ圏の0.7億円と比べて格段に小さい。

 一方、金融緩和に伴いMB増加の際に、物価も上昇(インフレ)傾向となった主要国では、マネーが実体経済の活性化に結びついている実態が確認できる。マイルドなインフレ経済下では、MB増加が有効需要の創出や、企業の設備投資を喚起し、名目GDPを押し上げる効果を持つと考えられる。

 仮に日本が2%程度のマイルドなインフレ経済に転じることができれば、MB増による名目GDP押し上げ効果が大きく高まる可能性がある。つまり、デフレ脱却なくしては金融緩和の実効性が乏しいということである。

 したがって、現時点で日本が異次元の金融緩和政策からの解除に踏み切れば、再びデフレ経済に逆戻りするリスクが高まり、それによって金融緩和の効果がさらに低下し、ひいては経済成長を阻害する恐れがある。そのため、当面は金融緩和の継続が不可欠であると本文は結論づけている。

 この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事を御覧ください。

【私の論評】たった一表で理解できる、日銀が現状でマイナス金利解除をすべきでない理由

まとめ
  • 市場では日銀による金融引き締め(マイナス金利解除)への警戒感から、株価が下落している。
  • 日本のコアコアCPIの伸び率は主要国に比べて大幅に低水準にある。
  • 金融引き締めを行えばデフレ再発のリスク、経済成長の鈍化、金融政策の機能不全などの重大なリスクが生じかねない。
  • デフレ下で金融引き締めを行えば、マネタリーベース増による物価上昇やGDP押し上げ効果が得られにくくなり、金融政策の実効性が失われる可能性がある。
  • したがって、当面は現行の金融緩和政策を継続し、物価の安定的な上昇を実現することが日本の金融当局に求められる。

日銀植田総裁

3月18日-19日に行われる「金融政策決定会合」が行われることになっているため、市場関係者の中に、マイナス金利解除(実質的な利上げ、金融引締)がなされるのではということで警戒を強める関係者も多いようです。

14日午前の東京株式市場の日経平均株価は続落しました。下げ幅は一時300円に迫りました。前日の米国市場でハイテク株の値動きが軟調だった流れを引き継ぎ、日経平均への影響が大きい半導体関連株が下落しました。

午前10時現在は前日終値比254円16銭安の3万8441円81銭。東証株価指数(TOPIX)は6・32ポイント安の2642・19。

日経平均の急上昇をけん引してきた東京エレクトロンなどの半導体関連株を中心に、朝方から売り注文が優勢でした。

前日は今春闘の集中回答日で、製造業大手を中心に高水準の賃上げ回答が相次ぎました。これを受け、市場では日本銀行の金融政策の修正スピードが速まるとの警戒感が強まり、積極的な取引を控える雰囲気もあったとされています。

この市場の反応は、まともです。原田泰氏は、MBの観点から、現在は金融引締すべでなく、緩和を続けるべきと主張していましたが、別の観点からもそれはいえます。以下にコアコアCPIの推移の国際比較を掲載します。

2020年〜直近までの先進国のコアコアCPI

国名2020年2021年2022年2023年2024年予想
アメリカ1.40%2.30%4.70%3.90%3.40%
日本0.00%0.10%0.60%0.70%0.80%
ドイツ0.70%1.90%3.30%2.60%2.30%
イギリス1.20%2.10%5.90%4.10%3.60%
フランス0.50%1.60%2.80%2.20%1.80%
イタリア0.00%1.20%3.80%3.10%2.80%
カナダ1.70%2.20%4.30%3.70%3.20%

参考資料:

コアコアCPIは、消費者物価指数(CPI)から酒類を除いた天候や市況など外的要因に左右されやすい食料と、エネルギーを除いた指数のことです。 毎月総務省が発表している指標として、金融関係者から注目されています。 何故酒類は省くのかというと、酒類以外の食料品は気象条件によって大きく価格が変わることがあるからです。

消費者物価指数(CPI)だけをみていると、エネルギーや食料品などが含まれていて、これらは変動が激しいことと、これらは、特に日本では、海外から輸入する割合が多いので、国内経済を正しく反映した指標とはいえません。

そのため、正しい状況を見る場合は、コアコアCPIを用いるのです。

上の表からは、日本のコアコアCPIの伸び率が2020年から2024年予想まで、ほとんどの年でアメリカやユーロ圏、カナダなどの主要国に比べて大幅に低い水準にあることが分かります。確かに現状では物価高ではあるのですが、それは海外から輸入するエネルギーや資源が値上がりしてそれが物価をおしあげているのであり、それを除いた日本国内では物価は低水準にあるといえます。

これを見誤るべきではありません。正しい政策は、金融政策においては、金融緩和を継続することです。財政としては、輸入企業などを支援しながら、金融緩和を継続というのが、当面の正しいあり方です。

物価上昇率が低位にある状況下で、日本が金融引き締め政策に転じた場合、以下のようなリスクが考えられます。
  1. デフレ再発のリスク: 日本の物価上昇率はすでに低水準にあり、金融引き締めによってさらに需要が減退すれば、デフレ経済に逆戻りする可能性が高まります。デフレ下では家計や企業のキャッシュ保有が増え、マネーの実体経済への波及が阻害されるため、金融政策の効果が著しく低下します。
  2. 経済成長の鈍化: 物価上昇率が低水準の段階で金融引き締めを行うと、実質金利の上昇を招き、家計の消費や企業の設備投資を減速させかねません。需要の押し下げを通じて経済成長が鈍化するリスクがあります。
  3. 金融政策の機能不全: デフレ経済下で金融引き締めを行えば、上の元記事で原田泰氏が主張しているように、マネタリーベース増によっても物価上昇やGDP押し上げ効果が得られにくくなり、金融政策の実効性が失われてしまう可能性があります。
以上のように、日本がいまだ物価安定の目標に届いていない状況で、金融引き締め政策に転じればデフレ再発や、さらなる経済減速、金融政策の機能不全などの重大なリスクが生じかねません。

デフレ・スパイラル AI生成画

したがって、この表が示すコアコアCPIの推移から、当面は現行の金融緩和政策を継続し、物価の安定的な上昇を実現することが、日本の金融当局に求められていると言えるでしょう。当面、マイナス金利解除(実質的な金融引締)もすべきではありません。

これは、上の一表をみただけでもあまりにも明らかなのに、なのになぜマスコミはマイナス金利解除など言い出すのか全く理解に苦しみます。このようなことをいうマスコミは、無論上の表なものを提示しません。示せば、すぐに間違いが露呈するのでできないのでしょう。あるいは、小鳥脳なのか・・・・・?

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2024年3月13日水曜日

日韓関係の改善は進んだのか 徴用工訴訟で日本企業に実害 肩代わりなくば「スワップ協定」白紙、さらなる制裁を検討せよ―【私の論評】日韓対立 - 韓国の約束不履行に対し日本国内で強硬対応を求める声

まとめ
  • 韓国政府は昨年、日本企業への賠償を政府財団が肩代わりすると約束したが、実行されていない。
  • 日本企業の供託金が原告に支払われるなど実害が生じており、韓国の約束違反が疑われる。
  • 韓国側は日本企業にも資金拠出を求めているが、請求権協定上おかしい。
  • 韓国の約束が怪しいにもかかわらず、日本は通貨スワップ再開などの対応をした。
  • 肩代わりが実現しなければ、日本は制裁措置を含む対抗手段を検討すべきだろう。
尹韓国大統領

 韓国政府が2022年3月に提示した「元徴用工」訴訟の解決策から1年以上が経過した。その解決策とは、韓国最高裁が日本企業に命じた賠償金支払いについて、韓国政府傘下の財団が肩代わりすることだった。日本政府はこれを受け入れ、2022年6月に通貨スワップ協定の再開や輸出規制の緩和などを行い、日韓関係改善に向けた一歩を踏み出した。

 しかし2023年2月、元徴用工訴訟の一件で、日本企業の供託金が原告に支払われるという実害が生じてしまった。韓国政府は早急に約束どおり、政府傘下の財団による肩代わりを実行すべきである。それができれば日韓関係は改善したと言えるだろう。

 ところが、当初予定されていた岸田首相の訪韓がキャンセルされたことから、肩代わりがすぐに実行されない可能性が示唆されている。原告に渡った供託金は僅か6000万ウォン(670万円)に過ぎず、韓国政府が約束を果たす意思がないのではないかとの疑念が生じている。

 さらに韓国側は、日本企業にも解決への協力を求めているが、1965年の請求権協定の精神に反する要求と受け止められかねない。仮に日本企業の資金拠出がないから肩代わりできないというのであれば、当初の約束自体が怪しいものと映る。

 そうした怪しい約束に基づき日本政府が前出の対応をしたことは軽率であり、肩代わりが実現しないのであれば、通貨スワップなどを白紙に戻すべきかもしれない。さらに、麻生元財務相が言及したような、関税引き上げやビザ発給停止など、様々な対抗措置の選択肢を検討する必要もあるかもしれない。

 一方で、韓国政府が約束を守れば問題ない。政府傘下の財団設立は政府主導で行われるべきで、そこからの6000万ウォン支払いは容易なはずである。

 要するに、韓国政府による約束の遵守が解決のカギを握っており、それがなされなければ日韓関係の改善は望めない状況に陥っている。

 この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になってください。

【私の論評】日韓対立 - 韓国の約束不履行に対し日本国内で強硬対応を求める声

まとめ
  • 日本国内で、国際法に基づき韓国政府に約束履行を強制すべき。
  • 経済制裁など対抗措置を講じ、韓国政府に圧力をかけるべき。
  • 日韓関係改善の取り組みを一時的に見直し、韓国に問題の深刻さを認識させるべき。
  • 国際社会に働きかけ、韓国への協力を求め、韓国に圧力をかけるべき。
  • 韓国の約束不履行により日本企業・国民が被害を受けており、日本政府の強硬姿勢をみせるべき
尹韓国大統領と岸田首相

韓国政府による元徴用工問題の解決策履行の遅延をめぐり、日本国内の世論は高まる一方です。政府に対し、韓国に強硬な態度で臨み、厳しい対応をとるよう求める声が大きくなっています。

代表的な意見の一つは、国際法に基づき韓国政府に約束履行を強制すべきというものです。1965年の請求権協定において、韓国政府は元徴用工問題が解決済みであることを確認しています。しかしながら、現在に至るまで韓国政府は約束した解決策の履行を遅らせており、これは国際法違反に該当します。日本政府は、国際法の下にある正当な権利として、韓国政府に対し約束履行を強く迫るべきです。

さらに、経済制裁などの対抗措置を講じ、韓国政府に圧力をかけるべきだと訴える意見も根強いです。韓国政府は日本企業に不利益を与え続けることで、日本側に譲歩を迫ろうとしているが、このような行為は国際社会の規範に明らかに反するものです。経済制裁を実施すれば、韓国経済に大きな打撃を与え、韓国政府の態度を改めさせる効果が期待できるでしょう。

一方で、韓国政府は表面上は日本との関係改善を望んでいるものの、実際には約束履行を怠っており、矛盾した振る舞いをしています。このため、日本政府は一時的にでも関係改善に向けた取り組みを見直し、韓国政府に問題の深刻さを認識させ、真剣な解決に向けた姿勢を促す必要があります。

さらに、韓国政府の対応は国際社会の信頼を損ねかねないものであり、日本政府が国際社会に働きかけ、韓国への協力を求めるべきです。国際社会からの批判の声が高まれば、韓国政府に大きな圧力となり、約束履行に向けた具体的な行動を取らざるを得なくなるでしょう。

このように厳しい対応を求める意見が大きな流れとなっている背景には、韓国政府による約束履行の長期間の遅延が、日本企業に多大な経済的損失をもたらしているだけでなく、日本国民の感情をも逆なでしているという事情があります。過去にも韓国政府が約束を反古にしたことがあり、今回も同様に約束が守られるとは思えないという、韓国政府への不信感も拭えません。

加えて、これまで日本政府が最大限の譲歩を重ねてきたものの、韓国政府の姿勢が改善される兆しは見えないことから、政府の対応に対する国民の失望感も大きいです。一部では、日本政府の対応に問題があり、もっと早期から強硬な姿勢に出るべきであったと批判する声すら上がっています。

このまま事態が進展しない限り、日韓関係の改善は見込めないでしょう。そのため、多くの有識者は、日本政府が韓国に対してさらなる圧力をかけ、約束の履行を迫る強硬な姿勢に出ることを提言しています。具体的な対抗措置の選択肢をあらゆる角度から検討し、実行に移す覚悟が求められています。


安倍政権下で検討された韓国への対抗措置としては、以下のものが挙げられます。

経済制裁

  • 貿易制限
    • 特定品目への輸出入関税引き上げ
    • 輸出許可制の導入
    • 輸出優遇措置の停止
    • 輸入割当制度の導入
    • 貿易協定の破棄
    • 国際機関における対韓支援の停止
  • 金融制裁
    • 対韓送金停止
    • 韓国金融機関への制裁
    • 対韓投資制限
    • 国際金融機関における対韓融資停止
  • 経済協力停止
    • ODAの停止
    • 技術協力停止
    • 開発援助停止
    • 国際会議への韓国招待停止

外交・安全保障

  • 外交関係降格
    • 大使召還
    • 領事館閉鎖
    • 外交関係断絶
  • 安全保障協力見直し
    • 日韓情報交換協定の破棄
    • 日米韓合同軍事演習の中止
    • 在韓米軍基地の縮小・撤退
    • 韓国への武器輸出禁止
  • 国際機関における対韓圧力
    • 国際機関における対韓非難決議の支持
    • 韓国の国際機関加盟阻止

その他

  • 入国制限
    • 韓国人へのビザ発給停止
    • 入国審査の厳格化
    • 韓国人に対する入国制限措置の導入
  • 文化交流停止
    • 文化交流事業の中止
    • 韓国アーティストの招聘停止
    • 韓国映画・ドラマの上映禁止
  • 国民への情報発信
    • 韓国政府の不当行為に関する広報活動
    • 韓国への渡航注意喚起
    • 韓国製品の不買運動の呼びかけ

北朝鮮が法令で定めた核兵器使用で高まる戦争の可能性―【私の論評】実は北も多いに脅威に感じている中国に対処することこそ、日米韓が協力していくべき理由(゚д゚)!

2024年3月12日火曜日

「中国軍は見掛け倒し」 不正横行、ずさんな兵器管理―インド軍元中将インタビュー―【私の論評】中国軍の実力不足が露呈、台湾侵攻は地理的に極めて難しい理由

「中国軍は見掛け倒し」 不正横行、ずさんな兵器管理―インド軍元中将インタビュー

まとめ
  • 中国は国防予算を7.2%増やし、軍拡を進めているが、実際の兵器は粗悪で不正や管理の不備が横行していると、ラビ・シャンカル元インド陸軍中将が指摘。
  • 大規模演習でのミサイルの誤作動や、中国製兵器の輸出先での不具合が問題視されている。
  • 多くの中国軍高官が昨夏以降、汚職により失脚し、後任の選定は政治的な要素が重視されている。
  • 中国軍は実戦経験が不足し、人事の選定が能力よりも政治的な要素を重視しているため、新しい兵器の運用に必要な知識と経験が不足している。
  • 中国軍は連鎖的な戦争に懸念を抱いており、特に米国と協力する形で、インドが国境地帯で軍事活動を開始すれば、中国は対処できない可能性があると述べられている。

インド陸軍中将時代のラビ・シャンカル氏

 中国軍の動向を研究してきたラビ・シャンカル元インド陸軍中将が時事通信のオンラインインタビューで述べたところによれば、習近平政権は今年の国防予算を前年比7.2%増の急増させ、軍拡を進めているが、その一方で不正や管理の不備が軍内に横行しており、兵器の品質が粗悪であるとの指摘がなされている。中国軍は外部に対しては力強く見えるが、実際はその実力に見合わないとの見解を示した。

 続けて、中国軍の兵器管理のずさんさが問題視され、昨年の大規模演習でのミサイルの誤作動や、中国製兵器が他国での運用においても問題が発生していることが挙げた。また、中国軍内では昨夏以降、多くの高官が汚職により失脚しており、彼らは核兵器を扱うなど経験豊富な人物であったが、後任の選定は習近平に対する忠誠心が重視され、能力よりも政治的な要素が優先されていると指摘した。

 さらに、中国軍の実戦経験が不足しており、人事の選定も能力よりも政治的な要素を重視していることから、新しい兵器の運用に必要な知識や経験豊富な人材が不足していると指摘。これまで中国軍は1979年以来、本格的な実戦を経験しておらず、戦意も乏しいとされ、習近平政権が台湾への侵攻を命じる可能性は低いと予測している。

 最後に、中国軍は連鎖的な戦争に懸念を抱いており、特に米国と協力する形で、インドが国境地帯で軍事活動を開始すれば、中国は対処できないだろうとの見方を示した。中国経済が停滞しており、台湾への侵攻が長期化すれば共産党体制に大きな打撃を与える可能性を指摘。習近平が侵攻を決断する可能性は低いとした。

 この記事は元記事の要約です。詳細は、元記事を御覧ください。

【私の論評】中国軍の実力不足が露呈、台湾侵攻は地理的に極めて難しい理由

まとめ
  • 中国全人代で軍首脳が「偽の戦闘力」を取り締まると表明し、中国軍の実力不足を指摘しており、ラビ・シャンカル元インド陸軍中将の発言を裏付けている。
  • 能登半島の地理的制約から、緊急支援でのヘリコプターや空からの物資投下が困難であったように、台湾侵攻も地形的に極めて難しい。
  • 台湾東側は急峻な山地で上陸点がなく、西側も平地が狭く、都市部、河川、防衛施設が障害となる。
  • 台湾の地理と発達した防衛網は中国軍の侵攻を困難にし、「天然の要塞」と評価できる。
  • 中国の立場に立てば、台湾への本格侵攻は避けつつ、ミサイル攻撃、爆撃、小規模ゲリラ活動、「グレーゾーン戦略」「ハイブリッド戦略」による圧力行使をしつつ台湾を疲弊させ実効支配に結びつけるという方法が現実的である。
ラビ・シャンカル元インド陸軍中将の発言を裏付けるような事実は、ごく最近でもありました。それも、中国内部からの発信です。その内容を以下に簡単に掲載します。

香港紙サウスチャイナ・モーニング・ポストによると、11日閉幕の中国全国人民代表大会(全人代、国会に相当)で、軍首脳が「偽の戦闘力」を取り締まると表明しました。不正により、中国軍の戦闘能力が目標とする水準に達していないことを問題視したとみられます。

発言したのは、中央軍事委員会副主席の一人である何衛東氏。全人代期間中に開かれた軍代表団の会議で述べました。

何衛東氏

ラヴィ・シャンカル氏の、中国軍が汚職と不正経理により実際には弱体化しているという発言には、一定の根拠があります。しかし、この問題は複雑であり、両論あります。以下に、その主張を支持する事実と、反する事実の両方を示します。

主張を支持する事実:
1. 汚職スキャンダル: 過去にも、中国軍内部で多くの高位将校が汚職や不正経理で処分・解任されるなど、大がかりな汚職事件が発生しています。例えば2014年には、徐才厚や郭伯雄の元最高指導者らが習近平の反汚職キャンペーンで処分されました。

2. 品質への懸念: ステルス戦闘機J-20やミサイル駆逐艦タイプ055など、中国の一部の武器システムには、エンジン問題や輸入部品への依存など、品質と信頼性に対する懸念が指摘されています。

3. ロジスティクス(兵站)上の課題: 中国本土から遠く離れた地域で大規模作戦を維持する能力に、物流・補給面での弱点があるとの指摘があります。
主張に反する事実:
1. 急速な現代化: 課題はあれ、中国軍は近年、高度な兵器システム、サイバー能力、遠距離作戦能力など、大規模な現代化投資を行っています。 
2. 品質の向上: 一部に課題があるものの、中国はハイパーソニックミサイル、ステルス戦闘機、空母などの先進兵器開発で進展を見せ、技術力の向上が伺えます。 
3. 台湾侵攻のリスク: 台湾侵攻は大きなリスクとコストがありますが、中国はそうした作戦を実行できる能力を着実に高めているとの見方が多数あり、成功の見通しについては議論があります。
軍事力の評価は、主観的な側面があり、政治的背景や情報の制約などの影響を受ける可能性があります。中国軍の真の実力は、実際の戦闘で試される まで正確に知ることはできないかもしれません。その日が来ないことを願うばかりです。

ただし、台湾に侵攻することは、中国に限らずいずれの軍隊にとっても難しいです。その難しさは、最近の能登半島地震での自衛隊の支援活動をみてもわかります。
  • 能登半島は急峻な山地が海に突き出した地形で、以下のような理由から空からの支援は困難だったと考えられます。
  • 着陸場所の制約 急峻な山地が多く、ヘリコプターが着陸できる平坦地が少ない。展開に時間がかかる。
  • 風の影響 急峻な地形により上空で強い横風が吹くため、ヘリコプター操縦や物資投下が危険。
  • 地形の障害 尖った山々が障害物となり、低空飛行や投下はリスクが高い。
  • 目標地点への到達困難 急峻な山々に遮られ、被災現場までの到達が難しい場所も。
このように、能登半島特有の地形的制約があり、広範囲に被害が出た直後の緊急支援では、ヘリコプターによる被災地への物資搬入やパラシュートによる物資投下は現実的ではなかったと言えます。 より迅速な陸路からの進入や、小型船舶による沿岸部へのアクセスなどが適切だったといえます。

以上は、支援活動ですが、これは軍事活動でも同じようなことがいえます。

能登半島と台湾の地理的条件を比較すると、中国が台湾に軍事進攻を行うことの困難さがよくわかります。

まず地形の面では、能登半島ですら急峻な山地が支援活動の障害になったように、台湾はさらにその地形が極端です。東側は海岸線から急峻な山岳地帯が連なり、上陸に適した平地はなく、東側も上陸地点が制限されてしまいます。また、中央部の山岳地帯は戦車や重火力の機動を著しく阻害すると考えられます。

台湾の東海岸


次に海洋条件では、台湾の西側は南シナ海に面し、水深が浅いため、中国の潜水艦が有利に活動できる海域ではありません。東側は太平洋に面し、海流や潮流が複雑で危険も多いでしょう。

西側は、比較的平坦なので、上陸しやすくも見えますが、そうではありません。

台湾の西側から上陸する場合の制約について、以下の点が挙げられます。

地形的制約 :西側の平野部は比較的狭く、上陸に適した砂浜が限られている。後背地付近は直ちに丘陵地帯となり、台湾の東側ほど急峻ではないものの機動の障害になる。
河川の障害: 中央山脈から複数の大きな河川が西側に注ぎ、上陸後の橋渡りが必要になる。河川は障害物となり機動を阻害する。
都市部の障害:台北などの大都市部が西側の平野部に位置し、市街地戦となれば中国軍は過酷な状況に直面する。これは、最近のウクライナでの都市部の戦闘や、ガザ地区の戦闘などが参考になる。
防衛施設の集中:西側平野部には空軍基地や防衛施設が多数配置されており、対空・対艦防衛網が精強である。
海岸線の複雑さ:西側海岸線は湾入部が多く入り組んでおり、大規模上陸に適した砂浜が少ない。よって、台湾軍による待ち伏せなどが可能。

このように、台湾西側は地理的に狭く、都市部や防衛施設の集中、複雑な海岸線といった理由から、中国による大規模上陸に適した場所は限られている と考えられています。東側と同様に、侵攻は極めて困難と言えるでしょう。さらに、台湾の防空・防衛網は高度に発達しており、米国から最新鋭の武器も提供されているため、中国軍の空からの攻撃を難しくしています。

以上のように、台湾の地理的条件と防衛力の高さは、中国にとって多大な制約となり、軍事進攻のリスクは極めて高いと言えます。

能登半島での自衛隊の支援活動の苦労に比べれば、台湾での作戦は格段に困難になると考えられます。つまり、台湾は中国からすれば、攻略が極めて難しい「天然の要塞」と評価できるでしょう。

能登半島地震に際して、徒歩で物資を運ぶ自衛隊員

中国が台湾にすぐに簡単に侵攻できると考える人は、上の事実を無視していると考えられます。しかし、だからといって、中国の軍事活動を軽視しろと言っているわけではありません。

中国は台湾の本格的に侵攻することはないかもしれませんが、ミサイルや航空機を用いて、台湾を破壊することはできます。また、本格的に侵攻しなくても、小数の部隊を上陸させて、破壊活動をしてすぐ引き上げるなど、ゲリラ活動をするなどのことはロジスティクス(兵站)を考慮する必要はなく比較的簡単にできます。

このようなことは、十分に考えられます。しかし、これは侵攻と呼べるような代物ではありません。侵攻となると、大部隊を上陸させて、台湾軍を打ち負かし、まずは台湾全土を占拠しなければなりません。これは、破壊やゲリラ活動から比較すると一挙にハードルがかなりあがることになります。このことを理解せずに、「侵攻」と簡単に言ってしまう人が多すぎだと思います。

しかし、破壊やゲリラ活動等もこれは台湾にとって、大きな脅威であることにかわりありません。

それに、破壊やゲリラ活動にあわせて「グレーゾーン戦略」や「ハイブリッド戦略」で徐々に台湾を疲弊させるということも考えられます。中国が得意のサラミ戦術です。これによって時間をかけてでも、台湾を最終的に実効支配するという手段のほうがより現実的です。

だからこそ、台湾政府は中国に対する警戒を強めているのです。台湾侵攻という言葉は刺激的で強烈ですが、何年たっても侵攻が現実のものとならなければ、人々の関心は徐々に薄れていくでしょう。そうして、ある日気がついてみたら、台湾が南シナ海のように中国に実効支配されているという事態になりかねません。私は、こちらの脅威のほうがより現実的であり、いまから備えなければならない真の脅威であると考えます。

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2024年3月11日月曜日

アメリカでEV販売失速、トヨタのHVがテスラのEVを逆転…欧米主導EVシフトが崩壊で見えた、日本一人勝ちの未来―【私の論評】究極的には核融合炉の実用化が内燃機関からの完全脱却を可能に

アメリカでEV販売失速、トヨタのHVがテスラのEVを逆転…欧米主導EVシフトが崩壊で見えた、日本一人勝ちの未来

まとめ
  • 日経平均株価が史上初の4万円を記録し、日本経済の好景気が期待されている。
  • 世界的にEV(電気自動車)需要が鈍化する一方で、トヨタが得意とするHV(ハイブリッド車)の需要が高まっている。
  • トヨタは2024年3月期の連結営業利益見通しを前期比80%増と大幅に上方修正した。
  • トヨタの時価総額が60兆円を超え、日本企業として唯一世界時価総額ランキングトップ50に入っている。
  • トヨタは新たにエンジン開発プロジェクトを立ち上げ、HVやエンジン車に注力する方針を示した。


 日本経済が長年の低迷から脱却する兆しを見せる中、日経平均株価が史上初めて4万円の大台に乗り、バブル経済期以来の高水準となった。企業業績の好調が株価の上昇を後押ししており、国を代表する自動車メーカー、トヨタ自動車は2024年3月期の連結営業利益見通しを前期比80%増の4兆9000億円と大幅に上方修正するなど、好調な数字を示している。

 このようにトヨタの業績動向が、日本経済の現状と行方を占う上で重要な指標となっている。同社は世界シェア6割を誇るハイブリッド車(HV)が柱となっており、米国をはじめ各国で販売が伸びている。一方で欧米勢は電気自動車(EV)への注力が空回りし、需要の鈍化に直面、戦略の見直しを余儀なくされている。

 豊富なハイブリッド技術とノウハウを有するトヨタは、EVのみならずHV、プラグインハイブリッド車、燃料電池車など、全方位で電動化に取り組む構えだ。とりわけHVについては「トヨタ一強」の状況が続いており、今後もさらなる需要の高まりが予測されている業界調査結果も出ている。

 かつてEVに傾注していた米自動車大手ビッグ3も、EV需要の停滞を受けてHVの開発に回帰する動きを見せるなど、日本勢の得意分野であるHVが再び注目を集めつつある。

 トヨタは創業者の言葉に基づき、時代の変化に先んじた革新的な取り組みを行うことで、日本の自動車産業の盤石な基盤を維持し、さらには裾野の広い同産業から波及する実体経済への好影響が期待されている。

 世界の自動車業界をリードし、時価総額でも世界トップクラスの存在感を放つトヨタの業績動向は、日本経済の浮沈を占う重要な バロメーターとなっているため、その先行きに注目が集まっている。

 この記事は元記事の要約です。詳細は、元記事をご覧になってください。

【私の論評】究極的には核融合炉の実用化が内燃機関からの完全脱却を可能に

まとめ
  • 20世紀初頭の自動車普及は、フォードのモデルTの低価格化と、ガソリンの低価格が大きな要因であった。また、馬糞の環境問題からの解放も後押しした。
  • 現状では発電・送電ロスが大きいため、総合的なエネルギー効率ではガソリン車のほうがEV車より優位にある。
  • 小型原子炉が普及すれば、送電ロス削減、CO2排出量削減、エネルギー安全保障の強化などによりEV車の普及が加速する可能性がある。
  • 小型原子炉の実用化により、自宅やあらゆる場所でEVの便利な充電が可能になり、ガソリンスタンドの必要性が低下する。
  • しかし、究極的にはより安全な核融合炉の実用化が、内燃機関からの完全な脱却につながると考えられる。
EV車、HV車に関しては、以前このブログでも掲載しました。その記事のリンクを以下に掲載します。
結局、豊田章男会長の予測が正しかった…アメリカで「日本製ハイブリッド車」がに売れている理由―【私の論評】EV車の普及にいまだ徹底的に欠けるものとは


 詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事より一部分を引用します。

米国において、輸送手段が馬から自動車へと大きくシフトしたのは、20世紀初頭とされています。この転換のきっかけとなった大きな要因は、ヘンリー・フォードによるモデルTの大量生産です。1908年にフォードによって導入されたモデルTは、低価格で大量生産が可能な自動車として、広く一般の人々に受け入れられました。以下に参考資料として、馬の餌代と、T型フォードの燃料代の比較を掲載します。

項目T型フォード
餌代月額10ドル~20ドル月額15ドル~20ドル
年間費用年間120ドル~240ドル年間180ドル~240ドル
燃料干し草、オオムギ、ニンジンガソリン
燃費1日あたり約20kgの干し草1ガロンあたり約25マイル

大雑把な比較ですが、餌代、燃料費との比較では、馬とT型フォードは伯仲していることがわかります。それと、当時都市部の環境問題の最大のものは実は馬糞でした。公共の交通機関から、個人の乗り物として、馬が多様されていた当時の世界中の都市部では、これが最大の環境問題となっていました。

これもかなり後押ししたものと思います。

馬とT型フォードのいずれを買うか悩む米国人 AI生成画像
当時の馬は、多くの人にとって手の届く価格でしたが、T型フォードは高価な買い物でした。T型フォードが普及するには、大量生産による価格低下と、平均的な労働者の年収向上が必要でした。

それと、米国における自動車の普及には確かにガソリンの低価格が大きな役割を果たしています。米国は世界有数の原油生産国であり、一般にガソリン価格は日本など他国と比べても低めに設定されています。20世紀初頭から中盤にかけて、特に安価な燃料の供給が自動車の急速な普及を後押ししたことは間違いありません。

自動車自体と、燃料が低価格ということが、米国で自動車が普及することに大きく貢献したといえます。

そうして、自動車が普及した背景として、馬糞の処理からの開放というのも大きかったことは間違いありません。これは、個人的にもそうですが、社会的にもそうでした。20世紀初頭の世界の都市の環境問題だったのは、馬糞の処理の問題でした。ガソリン車はこの環境問題を根本的に除去したのです。

この記事の結論は以下のようなものです。

私は、EV車が普及するのは、小型原発が普及した後であると思います。これについては、述べると長くなるので、詳細はまた別の機会に掲載しようと思います。ただ、小型原発が各地に設置されるようになれば、停電の心配はほとんどなくなるのと、従来の原発のように巨大な発電、送電施設も必要なくなるので、これはEV車の普及に間違いなく拍車をかけると思います。それまでの間は、やはりHV車が主流になると思われます。 

本日は、小型原発の普及がなぜEV車の普及に拍車をかけるのかを説明します。

まずは、エネルギー効率の観点から説明します。

現状の発電・送電システムにおいては、ガソリン車のほうがEV車よりもエネルギー効率が良いと考えられます。
  • 発電時の燃料損失: 火力発電所では、燃料(石油、石炭、天然ガスなど)の燃焼時に一部がロスしてしまいます。発電効率は最大でも約40%程度です。
  • 送電時の電力損失 :長距離の送電では10%以上の電力損失が発生します。
  • 充電時の電力損失 :EV車の充電時には、さらに5~15%程度の電力損失があります。
  • ガソリン車のエネルギー効率 :一方、ガソリン車のエンジン効率は20~30%程度です。燃料輸送時の損失も少なく、タンクから車両までは比較的エネルギー損失が少ないです。
つまり、火力発電から充電までの一連のプロセスで50%以上の損失が発生するEV車に比べ、ガソリン車のほうがエネルギー効率では優位になっているわけです。

例えば、発電効率40%、送電損失10%、充電損失10%とすると、EV車では実際に動力に使えるのは発電所の燃料の僅か32%にすぎません。ガソリン車のエンジン効率25%と比べると、ガソリン車のほうが良いエネルギー効率となります。

このため、発電・送電インフラの抜本的な改善がない限り、現状ではガソリン車のほうが総合的なエネルギー効率で有利だと言えるでしょう。

小型原子炉が実用化され、各地に配置されれば、EV車の普及が本格化する理由は以下の点が挙げられます。

電力供給の安定性が高まる: 小型原子炉は立地場所を選ばず、需要地の近くに設置できるため、送電ロスが少なく、安定的な電力供給が可能になります。EVの充電インフラが十分に整備されれば、電力不足に伴う充電の制約がなくなります。
CO2排出量削減が進む: 原子力発電は運転時にCO2を排出しないクリーンなエネルギーです。小型原子炉が普及すれば、化石燃料火力に比べCO2排出量が大幅に削減できます。EVの主要メリットである環境負荷の低減がさらに進むでしょう。
エネルギーセキュリティが高まる: 国内に分散配置された小型原子炉により、エネルギー供給のリスク分散が可能になります。中東情勢など海外に過度に依存しなくなり、エネルギー安全保障が強化されます。
EV普及のインセンティブが高まる: 環境対策や国家的なエネルギー安全保障の観点から、政府によるEV普及支援策が一層推進されるでしょう。補助金や税制優遇、インフラ整備など、EVを取り巻く環境が大きく改善する可能性があります。

つまり、小型原子炉の実用化により、EVの充電インフラが整備され、環境負荷低減とエネルギーセキュリティ確保が同時に図れるため、EV普及が加速する背景になると考えられます。

小型原発が普及した世界では、EV車の充電は自宅でするのが普通になるでしょう。それどころか、現在でも電化が進んでいますが、すべてがオール電化し、さらに、自宅以外で、充電できる場所もかなり広がるでしょう。そもそも電気料金がかなり下がるでしょう。それこそ、現在スマホの充電が無料でできるスポットがあるように、外で無料で便利に充電できるスポットもでてくるでしょう。

そのような世界では、ガソリン車、HV車のように、車のためだけに、ガソリンスタンドにわざわざガソリンを入れる手間は大きなものとなり、それこそ20世紀初頭の馬糞処理のように面倒なものとなるでしょう。

その頃には、EV車が当たり前のものとなり、ガソリン車、HV車は現在の馬のようなものであり、ノスタルジーを感じさせるものとなるでしょう。

小型原子炉は出力が小さいため、必要な冷却量は大型原子炉に比べて少なくて済みます。そのため安全ともいわれてはいますが、危険がないとうわけではないので、これを忌避する人々も多く普及には時間がかかるとみられます。

しかし、核融合炉が実用化し、小型化されれば、これは完璧にEV車は当たり前になるどころか、エネルギー源はすべて電気ということになり、世の中から内燃機関はなくなるでしょう。

逆に言うと、その時代が来るまでは、EV車の普及はないということです。

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