2024年7月19日金曜日

日本と台湾の海保が合同訓練、72年の断交後初…連携強化し不測の事態に備え―【私の論評】日台関係の変遷と政治家の二重国籍問題:蓮舫氏の事例から見る国家安全保障の課題

日本と台湾の海保が合同訓練、72年の断交後初…連携強化し不測の事態に備え

まとめ
  • 日本の海上保安庁と台湾の海巡署が2024年7月18日に初の合同訓練を実施し、1972年の日台断交後初めての海上訓練となった。
  • 訓練の目的は中国の海洋進出に対応し、東・南シナ海での不測の事態に備えることで、台湾有事への危機感から訓練の定例化も目指している。
  • 両機関は近年、交流を深めており、2017年には海難救助に関する覚書を交わすなど、協力関係を強化している。
  • 中国は尖閣諸島周辺や台湾周辺、西太平洋での海洋活動を強化しており、軍事演習や海洋調査を増加させている。
  • 日本は米国、フィリピン、韓国とも海上合同訓練を実施するなど、対中国を念頭に置いた海上保安機関の国際連携を強化している。
 日本の海上保安庁と台湾の海巡署(日本の海保に相当)が2024年7月18日、千葉県房総半島沖で初めての合同訓練を実施した。これは1972年の日台断交後、初めての海上訓練となる。この訓練の主な目的は、中国の強引な海洋進出に対応し、東シナ海や南シナ海での不測の事態に備えることだ。また、台湾有事への危機感が高まる中、訓練の定例化も目指している。

東京港に入港する「巡護9号」7月11日

 訓練には台湾海巡署の巡視船「巡護9号」と日本の海上保安庁のヘリコプター搭載型巡視船「さがみ」が参加した。両船は房総半島南端や伊豆大島近海で、海難救助を想定した訓練を行い、情報共有や捜索海域の割り当て・調整などを通じて相互運用性の向上を図った。

 この訓練に先立ち、「巡護9号」は太平洋中西部の公海上で違法漁業に対する国際的な共同パトロールに参加し、その後東京・お台場に寄港していた。また、海上保安庁は先月、幹部を台湾に派遣し、海巡署長と懇談するなど交流を深めている。

 一方、中国は尖閣諸島周辺での領海侵入を含む航行を常態化させており、今年5月には台湾周辺で実施された合同軍事演習に海警局も初めて参加した。さらに、中国は日本最南端の沖ノ鳥島周辺を含む西太平洋でも海洋調査や軍事演習を繰り返している。

 このような状況を踏まえ、日本は米国やフィリピン、韓国とも海上合同訓練を実施するなど、対中国を念頭に置いた海上保安機関の国際連携を強化しています。2023年6月には日米比がフィリピン北部近海で、2024年6月には日米韓が日本海・舞鶴沖で、それぞれ初めての海上合同訓練を実施した。

この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になって下さい。【まとめ】は元記事の要点をまとめ箇条書きにしたものです。

【私の論評】日台関係の変遷と政治家の二重国籍問題:蓮舫氏の事例から見る国家安全保障の課題

まとめ
  • 1972年の日台断交と尖閣諸島問題は、日本と台湾の複雑な関係を示している。
  • 日本と台湾は安全保障面で利害が一致する部分があるが、独立した国家として国益が完全に一致することはない。
  • 蓮舫氏の二重国籍問題は、政治家の国籍に関する透明性と説明責任の重要性を浮き彫りにした。
  • 蓮舫氏の都知事選出馬時に二重国籍問題が争点にならなかったことは、この問題の重要性が軽視されている証左である。
  • 政治家、特に都知事のような重要な公職には、明確な国籍状況と日本への揺るぎない忠誠が不可欠であり、厳格な国籍条項を課すべきである。
日本と台湾が1972年に断交した主な理由は、日本が中華人民共和国(中国)と国交を正常化したことにあります。1972年9月29日、日本は中華人民共和国との間で日中共同声明を発表し、正式な外交関係を樹立しました。この声明において、日本は中華人民共和国を中国の唯一の合法政府として承認し、台湾との外交関係を断絶することを決定しました。

日中国交正常化時の周恩来中国首相(左)と田中角栄首相(右)

この決定は、国際情勢の変化に対応したものでした。1971年に国際連合(国連)が中華人民共和国を中国の正当な代表として認め、台湾(中華民国)に代わって安全保障理事会の常任理事国の座を与えたことが大きな転換点となりました。日本はこの国際的な流れに沿って、「一つの中国」政策を採用し、中華人民共和国との関係正常化を選択しました。その結果、台湾との公式な外交関係は断絶されることとなりました。

尖閣諸島に関しては、日本の固有の領土であり、領有権をめぐる問題は存在しません。1895年1月に日本政府が閣議決定により尖閣諸島を正式に日本の領土に編入しました。これは国際法上の「無主地先占」の原則に基づくものでした。当時、日本政府は尖閣諸島が無人島であり、他のいかなる国の支配下にもないことを確認した上で領有を決定しました。

第二次世界大戦後、1951年のサンフランシスコ平和条約で尖閣諸島は米国の施政下に置かれ、1972年の沖縄返還とともに日本に返還されました。この間、日本は一貫して尖閣諸島を実効支配してきました。

2013年4月10日には日台漁業協定が締結されました。この協定は、尖閣諸島周辺海域における日本と台湾の漁業秩序を定めたものですが、尖閣諸島の領有権には一切影響を与えるものではありません。この協定により、長年にわたって続いていた日台間の漁業権をめぐる問題が大幅に緩和されました。

協定締結後、日本と台湾の間で漁業権を巡る大規模な問題は報告されていません。むしろ、最近では両国の海上保安機関が協力関係を深めている様子が見られます。2024年7月18日には、日本の海上保安庁と台湾の海巡署が初めての合同訓練を実施しました。これは両機関の協力関係を深めるものですが、尖閣諸島の領有権とは無関係です。

南京事件に関する台湾の立場については、中国との関係で複雑な様相を呈しています。台湾の教科書でも南京事件について言及されており、1974年版の中学教科書では「南京大虐殺」という見出しで約200字を使って虐殺の状況を記述しています。また、台湾の教科書では早い段階から「12月、南京は陥落してしまい、日本軍は意のままに虐殺してしまい、死者が30万人になった」という記述が見られました。

最近の例では、台湾の馬英九前総統が2023年3月29日に中国の南京大虐殺記念館を訪問し、「われわれ中国人は大虐殺から教訓をくみ取り、外国からの侮辱に対して勇敢に抵抗しなければならない」と述べています。また、馬氏は「人類史上まれな、けだものの行為に大きな衝撃を受けた」とも発言しています。

しかし、これらの事例は台湾の一部の見解を示しているに過ぎず、台湾社会全体の見解を代表するものではありません。特に馬英九氏の発言については、台湾世論とのずれも指摘されています。

2023年3月29日に中国の南京大虐殺記念館を訪問し馬英九ぜん台湾総統

台湾の南京事件に関する見解は、中国と完全に一致しているわけではありません。台湾は南京事件の発生を認識し、その重大性を認めていますが、その解釈や強調の度合いは中国とは異なり、台湾社会内でも見解が分かれる可能性があります。台湾の教科書では南京事件について言及されていますが、その記述の詳細さや強調の度合いは中国のものとは異なります。

日本政府は、尖閣諸島が日本の固有の領土であるという立場を堅持し、国際社会に対して正確な情報発信を続けています。同時に、この問題が日本の主権に関わる問題であることから、冷静かつ平和的に、そして毅然とした態度で対応しています。

日本と台湾は、中国の拡張主義的行動に対する懸念を共有し、安全保障面で利害が一致する部分があります。「台湾有事は日本有事」という表現は、この認識を端的に示しています。しかし、台湾は日本の一部ではなく、独立した政治体制を持つ外国です。

両国の国益が完全に一致することはありません。それぞれが独自の国家利益を持ち、それに基づいて外交政策を展開しています。この文脈において、二重国籍問題は極めて重大な問題です。

日本の国籍法は原則として重国籍を認めていません。これは、一人の人間が複数の国に対して忠誠を誓うことは困難であり、国家の利益に反する可能性があるという考えに基づいています。

特に政治家や高級官僚の二重国籍は、国家の機密や利益に直接関わる深刻な問題を引き起こす可能性があります。蓮舫氏の事例は、政治家の国籍に関する透明性と説明責任の重要性を浮き彫りにしました。

国民の代表者として国政に携わる者には、明確な国籍状況と、一つの国家への揺るぎない忠誠が求められます。二重国籍は、この原則に反するものであり、国家の安全保障と民主主義の根幹に関わる重大な問題として、厳格に対処されるべきです。

そのことが、ほとんど問題にされることもなく、蓮舫氏は都知事選に出馬し、都知事選においては二重国籍問題はまるで蓋でもされたように、誰も問題にせず、争点ともなりませんでした。

しかし、都知事が二重国籍である場合、特に重大な問題が生じる可能性があります。まず、東京都の重要な機密情報管理に関するリスクが高まります。都知事は都の機密情報にアクセスできる立場にあり、意図せずとも他国の利益のために情報が漏洩する危険性があります。


また、都政の公平性に疑念が生じる可能性があります。東京都は多くの外国企業や在日外国人が存在する日本の政治・経済の中心地であり、二重国籍の都知事が特定の国や民族に有利な政策を推進するのではないかという懸念が生まれかねません。

さらに、国際的な交渉力の低下や、緊急時の対応への不安も考えられます。これらの問題は都民の信頼低下につながり、都政全体の安定性に影響を与える可能性があります。そのため、都知事という重要な公職には、明確な国籍状況と日本への揺るぎない忠誠が不可欠です。

政治家に厳しい国籍条項を課すことは、国家の安全保障と民主主義の健全性を維持する上で極めて重要です。政治家は国家の機密情報にアクセスする立場にあり、二重国籍者の場合、意図せずとも他国に情報が漏洩するリスクが高まります。

2017年のオーストラリアでの中国系議員のスパイ疑惑事件は、この危険性を如実に示しています。また、政治家は国益を最優先に考えて行動する必要がありますが、二重国籍は潜在的な利益相反を生む可能性があります。

これは日本の国籍法が原則として重国籍を認めていない理由の一つです。さらに、政治家の国籍が不明確であると、有権者の信頼を損なう可能性があります。

2016年の蓮舫氏の二重国籍問題は、この点に関する国民の関心の高さを示しました。外交交渉においても、相手国が交渉相手の二重国籍を知った場合、不信感を抱く可能性があり、国益を損なう結果につながりかねません。これらの理由から、政治家に厳しい国籍条項を課すことは、国家の安全と民主主義の健全性を守るために必要不可欠であると言えます。

国民の代表者として重要な決定を下す立場にある政治家には、明確な国籍状況と揺るぎない忠誠心が求められるのです。

今からでも遅くはありません。現役政治家、そうしてこれからの議員に対して、政府は厳しい国籍条項を課する体制を整えるべきです。二重国籍疑惑のある国会議員が、都知事選に出馬し、都知事選における他の対立候補も選挙運動中にこの問題に関して誰もこれを争点にしようとせず、口をつぐんでいた様は異常であり、異様です。マスコミもこれについて何も報道しませんでした。この状況は、狂っていると良い状況です。

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2024年7月18日木曜日

5千億円のウクライナ支援へ 日本が年内実施で最終調整―【私の論評】G7ウクライナ支援最新情報:日本の33億ドル拠出と凍結ロシア資産活用の画期的プログラム

5千億円のウクライナ支援へ 日本が年内実施で最終調整

まとめ
  • 日本は、G7が合意したロシアの凍結資産を活用するウクライナ支援の一環として、33億ドル(約5200億円)を拠出する方向で最終調整に入った。
  • 総額500億ドル規模の支援のうち、日本の拠出額は約6.6%に相当し、米国とEUがそれぞれ200億ドルを拠出し、残りの100億ドルを日本、英国、カナダの3カ国で分担する。
  • G7は、ウクライナへの支援金を融資の形とし、ロシアの凍結資産から生じる運用益を返済に充てることを決めた。

 先進7カ国(G7)で合意したロシアの凍結資産を活用するウクライナ支援で、日本が33億ドル(約5200億円)を拠出する方向で最終調整に入ったことが16日、分かった。総額500億ドル規模の支援の6%強に当たる。年内の支援実施に向けて詰めの制度設計を急ぐ。外交筋が明らかにした。

 今月下旬にブラジル・リオデジャネイロで開く20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議に合わせてG7で協議し、大筋合意する見通しだ。ロシアの凍結資産を使った異例の枠組みが実現に向けて前進する。

 ロシアの凍結資産活用に向けて主導的な役割を担ってきた米国と欧州連合(EU)が500億ドルのうち200億ドルずつ拠出する。残る100億ドルを日本と英国、カナダの3カ国で分担する。

 G7はロシアの侵攻を受けるウクライナへの支援金を融資の形とし、ロシアの凍結資産から生じる運用益を返済に充てることを決めた。

【私の論評】G7ウクライナ支援最新情報:日本の33億ドル拠出と凍結ロシア資産活用の画期的プログラム

まとめ
  • G7諸国が総額500億ドルのウクライナ支援融資プログラムを計画し、日本は33億ドル(約5200億円)を拠出予定。
  • 支援プログラムはロシアの凍結資産の運用益を返済に充て、ウクライナの軍事、財政支援、復興に使用。
  • 日本の支援は、ウクライナの防衛力強化、財政安定化、復興支援が目的で、国際秩序維持と平和促進を目指す。
  • 日本の支援金額は、G7主要国としての役割に見合った貢献であり、国際的責任と財政状況のバランスがとれている。
  • 最終合意は今月下旬のG20会議で行われる見込みで、国際社会の新たな経済的対応として注目されている。

ウクライナ支援のために、G7諸国が総額500億ドルの融資プログラムを計画しています。この中で、日本は33億ドル(約5200億円)を拠出する方向で最終調整に入っています。これは全体の約6.6%に相当します。残りの金額は、米国とEUがそれぞれ200億ドルずつ、そして英国とカナダが日本と共に残りの100億ドルを分担します。

この支援プログラムの特徴は、ロシアの凍結資産を間接的に活用する点です。融資の返済には、EUが凍結したロシア中央銀行の資産から生じる運用益が使われる予定で、ウクライナ自体には返済義務がありません。支援金は、ウクライナの軍事、財政支援、そして復興に充てられます。

現在、この計画は最終調整の段階にあり、今月下旬に開催されるG20会議で最終合意される見込みです。このような仕組みは、ロシアの侵攻に対する国際社会の新たな経済的対応として注目されています。

日本政府がウクライナに支援金を提供する主な理由は、ウクライナの軍事、財政、そして復興を支援するためです。具体的には、ロシアの侵攻に対するウクライナの防衛力強化、ウクライナ政府の財政安定化による国家機能の維持、そして戦争で被害を受けた地域の復興プロジェクトを支援することが目的です。

この支援は、G7諸国が合意したロシアの凍結資産を活用するウクライナ支援の枠組みの一環として行われています。日本は国際社会の一員として、ウクライナの主権と領土保全を支持し、ロシアの侵略に対する国際的な対応に参加しています。この支援は日本の外交政策の一部であり、国際秩序の維持と平和の促進を目指すものです。

このように、日本の支援は単なる資金提供にとどまらず、国際社会における日本の役割と責任を果たすための重要な取り組みとなっています。

日本の33億ドル(約5200億円)という支援金額は、総額500億ドルの支援プログラムの中で妥当なものと考えられます。全体の約6.6%を占めるこの額は、G7の主要国としての日本の役割に見合った貢献です。

米国とEUがそれぞれ200億ドルを拠出する中、日本は英国、カナダと共に残りの100億ドルを分担しており、日本の経済規模や国際的立場を考慮すると適切です。

5月の岸田首相の発言は、ウクライナ支援の米国の肩代わりを印象付けたが・・・

この支援金額は、G7の一員としての国際的責任を果たしつつ、日本の財政状況とも整合性がとれています。したがって、日本は国際社会の中で適切な役割を果たしていると評価できます。

ウクライナへの支援に関して、日本が米国に肩代わりを迫られるという当初の憶測は現実とはならなかったようです。日本の33億ドルという拠出額は、G7の主要国としての役割に見合った適切な貢献といえます。

米国やEUがウクライナの将来的な経済成長に関心を持っているのは事実かもしれません、実際かなり成長すると見込んでいるのかもしれませんし、このような大復興、しかもウクライナのように教育水準が高く、産業基盤もある程度整った国の大復興は今世紀中には他にはみられない規模になるかもしれません。発展途上国等の支援とは水準や性質を全く異にしているといえるでしょう。

しかし、今回日本の支援が妥当なものとなったのは、ウクライナ復興の果実から日本を排除するため等が主目的ではなく、国際協調の一環として捉えるべきでしょう。日本は資金提供だけでなく、復興支援や技術協力など独自の強みを活かした支援を行っており、これは他国に取って代わられるものではありません。

むしろ、各国が自国の能力と役割に応じて協調的に支援を行っていると考えるべきで、ウクライナの復興と安定は国際社会全体の利益であり、日本もその一翼を担っているのです。

岸田首相とゼレンスキー大統領

今回の支援方式は、いくつかの重要な影響を世界に与えると考えられます。

まず、ロシアの凍結資産を活用するという異例の枠組みが、国際社会における新たな経済的対応のモデルとなる可能性があります。この方式は、侵略国に対する経済的制裁の一環として、凍結資産を被害国支援に転用するという前例を作ります。これにより、国際法や国際関係における新たなルールや慣行が形成されるかもしれません。

次に、G7諸国の結束と協力が強化される点も重要です。米国やEUが主導する形で、日本、英国、カナダが共同で資金を拠出することで、G7全体の連帯感が高まり、国際的な問題に対する協調行動の重要性が再確認されます。これにより、他の国際的な課題に対する協力も促進される可能性があります。

さらに、ウクライナに対する支援が強化されることで、同国の復興と安定が促進され、地域の平和と安全保障に寄与します。ウクライナの防衛力強化、財政安定化、そして復興支援が進むことで、ロシアの侵略に対する抵抗力が高まり、他の国々に対する抑止力ともなります。

最後に、今回の支援方式は、国際社会における日本の役割と責任を強調するものです。日本はG7の一員として、国際秩序の維持と平和の促進に貢献する姿勢を示しており、これが他の国々に対する模範となることが期待されます。

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2024年7月17日水曜日

トランプ前米大統領の暗殺未遂、警備はなぜ防げなかったのか―【私の論評】トランプ暗殺未遂と安倍元首相暗殺:民主主義を揺るがす警備の失態と外国勢力関与の疑惑

トランプ前米大統領の暗殺未遂、警備はなぜ防げなかったのか

まとめ
  • トランプ前大統領が支援者集会で銃撃され、警備体制の不備が問題視されている。
  • シークレットサービスと地元警察の役割分担が明確だったにもかかわらず、銃撃犯の接近を防げなかった。
  • 情報伝達の遅れや屋上警備の脆弱性など、警備計画の破綻が指摘されている。
  • FBIが捜査を指揮し、議会でも調査が行われている。
  • シークレットサービス長官は再発防止に向けて関係機関と連携し、議会の調査に協力する姿勢を示している。
銃撃犯がいた建物の近くを歩く米連邦捜査局(FBI)捜査官

 2024年7月13日、ペンシルヴェニア州で発生したドナルド・トランプ前大統領に対する暗殺未遂事件は、米国の政治界と法執行機関に大きな衝撃を与えました。トランプ前大統領が支援者集会で演説中、20歳の容疑者が近隣の建物屋上から約130メートル離れた場所にいたトランプ氏に向けて発砲し、トランプ氏は右耳を負傷しました。この事件では1人が死亡し、2人が重傷を負うという深刻な被害が出ました。

 事件の背景には、警備体制の不備が指摘されています。シークレットサービスは集会会場内の警備を担当し、地元警察が周辺エリアの警備を担当するという分担体制が取られていましたが、結果的に容疑者が妨害を受けずにトランプ氏に接近できてしまいました。専門家は、この事態の原因として、情報伝達の遅れや屋上警備の脆弱性を挙げています。

 事件を受けて、FBIが捜査を指揮し、議会でも調査が開始されました。シークレットサービス長官は再発防止に向けて関係機関と連携し、議会の調査にも全面的に協力する姿勢を示しています。また、国土安全保障長官も「このような事案は二度と起こってはならない」と述べ、警備体制の見直しの必要性を強調しています。

 この事件は、要人警護における課題と改善点を浮き彫りにしました。特に、複数の機関が関わる大規模イベントでの連携や情報共有の重要性、潜在的な脅威の事前把握と対策の必要性が再認識されています。今後、この事件を教訓として、警備体制の抜本的な見直しが行われる可能性が高く、米国の政治家や要人の安全確保に向けた新たな取り組みが期待されています。

 同時に、この事件は米国の政治的分断や暴力の問題にも光を当てることとなり、社会的な議論を呼び起こしています。政治的対立が激化する中で、どのように民主主義的なプロセスを守り、安全な政治活動を保障するかという課題に、米国社会は直面しています。

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【私の論評】トランプ暗殺未遂と安倍元首相暗殺:民主主義を揺るがす警備の失態と外国勢力関与の疑惑

まとめ
  • トランプ前大統領銃撃未遂事件と安倍元首相暗殺事件は、両国の警備体制の重大な欠陥を露呈させ、民主主義社会における要人警護の課題を浮き彫りにした。
  • トランプ氏の事件では、イランの関与の可能性が指摘され、事前に警戒情報があったにもかかわらず適切な対応がなされなかった疑いがある。
  • 安倍氏の事件では、奈良県警の驚くべき無能ぶりが明らかとなり、日本の要人警護システム全体の見直しが必要とされている。
  • 両事件とも、外国勢力の関与の可能性が完全には否定できず、より深い調査と分析が求められている。
  • これらの事件を受けて、両国とも警備体制の強化と民主主義の擁護のバランスを取る必要性に直面しており、徹底的な事件の検証と再発防止策の策定が急務となっている。


トランプ前大統領銃撃未遂事件と安倍元首相暗殺事件は、両国の政治と社会に深刻な影響を与えた重大事件として、多くの共通点と課題を浮き彫りにしました。両事件とも屋外の演説会場で発生し、警備体制の脆弱性が露呈しました。

トランプ氏の事件では、特に警備の不備が顕著でした。フル装備のライフル銃を持った男が、トランプ氏から至近の屋根に容易に侵入できたこと、さらに男の存在を目視できたはずのスタッフがステージ付近のスタッフに知らせなかったことなどが、米国内で強い批判を招いています。

この事態を受けて、イーロン・マスク氏は、「極度の無能か、あるいは意図的か。いずれにせよ、シークレットサービスの責任者は辞任すべきだ」と厳しく批判しました。

さらに、この事件にはより深刻な背景があった可能性が浮上しています。CNNの報道によると、米当局はイランがトランプ前大統領の暗殺を企てているとの情報を事前に入手していたとされます。これを受けて、シークレットサービスは数週間前からトランプ氏の警護を強化していたとのことです。しかし、今回の銃撃犯とイランの計画との直接的な関連性を示す証拠は現時点では見つかっていません。


一方、安倍元首相暗殺事件は、奈良県警の警備体制の深刻な欠陥を露呈させました。手製の銃を持った容疑者が至近距離まで接近できたことは、奈良県警の警備計画と実行における重大な失態を如実に表しています。警察幹部の「屋外の演説会場の警護は難しく、危険度が増す」という発言は言い訳にすぎず、元首相という要人の警護において、このような基本的な警備の不備は到底許容できるものではありません。

さらに、安倍氏暗殺事件の背後にも外国勢力の関与の可能性は完全には否定できません。公式な捜査では単独犯による犯行とされていますが、国際情勢の複雑化や地政学的な緊張の高まりを考慮すると、外国勢力の間接的な影響や関与の可能性について、より慎重な調査と分析が必要かもしれません。


これらの事件を通じて、両国とも社会の結束と民主主義の強化が急務であることが再認識されています。日米の偉大なリーダーを狙い、民主主義を脅かす卑劣な犯罪の全容が、両国で完全に暴かれることが強く望まれています。特に「安倍氏暗殺の闇」については、徹底的な解明が必要とされています。

今後、両国とも警備体制の強化が進められると予想されますが、同時に民主主義社会における政治家の安全確保と言論の自由のバランスをどう取るかという根本的な課題に直面しています。これらの事件の徹底的な検証と再発防止策の策定が求められており、今後の政治活動や公共の場での安全確保のあり方に大きな影響を与えることが予想されます。特に日本では、警察組織、特に要人警護に関わる部門の能力と準備態勢の根本的な見直しが不可欠です。

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2024年7月16日火曜日

「改造車内で若い兵士の腎臓と眼球摘出」 元中国医師が「臓器狩り」証言、台湾で会見―【私の論評】中国の臓器移植問題:非人道的行為の実態と国際的懸念の高まり

「改造車内で若い兵士の腎臓と眼球摘出」 元中国医師が「臓器狩り」証言、台湾で会見

まとめ
  • 台湾の立法委員と民間団体が、中国での違法な臓器移植の横行を指摘し、各国に規制法の制定を呼びかけた。
  • 元中国軍医の鄭治氏が、1994年に目撃した18歳未満の兵士からの臓器摘出の実態を証言した。
  • 中国当局による「臓器狩り」の対象には、法輪功信者やウイグル人、チベット人が含まれているとの指摘がある。
  • カナダの報告書によると、中国当局は年間6万〜10万件の臓器移植を実施していると推計されている。
  • 台湾の政治家らは、中国の臓器収奪を規制するための法整備を進める意向を示している。
中国軍の病院に勤務していた際の生体臓器摘出について証言する鄭治氏(中央)=15日

 台湾の政治家と民間団体が中国における非合法な臓器摘出と移植の横行を指摘し、各国に規制法の制定を呼びかける記者会見を開きました。この会見で、元中国軍医の鄭治氏が1994年に目撃した衝撃的な臓器摘出の実態を証言しました。鄭氏は、18歳未満の兵士から臓器を摘出し軍高官に移植する「秘密軍事任務」に参加させられ、改造車両内で麻酔なしに若い兵士から腎臓と眼球を摘出する手術を目撃したと語りました。

 中国当局による「臓器狩り」の対象には、法輪功信者やウイグル人、チベット人が含まれているとの指摘があり、カナダの報告書によると中国当局は年間6万〜10万件の臓器移植を実施していると推計されています。国連人権理事会が中国に独立機関による調査を求めましたが、中国側は否定し拒否しました。

 これらの深刻な問題に対し、台湾の政治家らは中国の臓器収奪を規制するための法整備を進める意向を示しています。この記事は、中国における非合法な臓器摘出の実態と、それに対する国際社会の懸念や対応を明らかにしています。

 この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になってください。

【私の論評】中国の臓器移植問題:非人道的行為の実態と国際的懸念の高まり

まとめ
  • 麻酔なしの臓器摘出は非人道的で、医療倫理に反する重大な人権侵害行為である。
  • 中国では「脳死誘発器」の存在が報告され、臓器移植のためのドナーを人為的に作り出している可能性がある。
  • 中国の臓器移植急増の背景には、強制的な臓器摘出や死刑囚からの臓器摘出、大規模な営利事業化などの要因がある。
  • 中国の臓器移植システムには不透明性があり、国際社会からの批判と疑惑が高まっている。
  • この問題は医療倫理と人権の観点から国際的な懸念事項となっており、継続的な調査と監視が必要である。
腎臓の移植手術を行う医師ら。移植を待つ患者は毎年約30万人に上る=2019年2月、中国湖南省衡陽市

麻酔なしに腎臓や眼球を摘出することは、医学的に正当化できない非人道的で残虐な行為です。通常の医療行為では、患者の苦痛軽減と手術の安全性向上のために必ず麻酔が使用されます。

しかし、この事例では麻酔を使用しないことに特別な意図があったと考えられます。残虐性を強調し、極限状況下での軍事的訓練の一環として行われた可能性や、非倫理的な人体実験であった可能性、さらには被害者や周囲の人々に恐怖を植え付け支配を強化する手段であった可能性などが考えられます。

これらの行為は医療倫理に反し、基本的人権を著しく侵害する重大な犯罪行為です。このような非人道的な行為は、たとえ戦時中の極端な状況下であっても決して正当化されるものではありません。

こうした証言は、戦争犯罪や人道に対する罪の実態を明らかにし、将来同様の事態が起こらないようにするための重要な記録となります。同時に、医療倫理や人権の重要性を再認識させ、平和の尊さを訴える強力なメッセージとなるのです。

ただ、この臓器を取られた若い兵士は、すでに脳死状態にあった可能性もあります。2022年4月、アメリカの非営利団体「世界臓器狩り調査委員会(WOIPFG)」が、中国の病院で使用されている「脳死誘発器」の存在を報告しました。この機器は、生きている人間を人為的に脳死状態にし、臓器摘出を可能にするものだとされています。

この報告によると、中国の複数の病院で、この機器が使用されているとのことです。機器の使用目的は、臓器移植のためのドナーを「作り出す」ことにあると考えられています。この情報は、中国の臓器移植システムにおける倫理的問題をさらに深刻化させるものです。強制的な臓器摘出や、同意のない臓器提供の疑惑に加え、このような機器の存在は、人権侵害の可能性をさらに高めています。

しかし、中国政府はこれらの疑惑を否定し続けており、独立した調査も拒否しています。国際社会からは、中国の臓器移植システムの透明性向上と、これらの深刻な疑惑に対する適切な対応が強く求められています。この問題は、医療倫理と人権の観点から極めて重大であり、継続的な調査と国際的な監視が必要です。

人を人為的に脳死状態にするという機器の模型

中国の臓器移植が急増した背景には、複数の深刻な要因が絡み合っています。まず、中国政府が危険視する集団、特に法輪功学習者やウイグル人、チベット人などからの強制的な臓器摘出が行われているとの指摘があります。また、中国は世界最大の死刑執行国であり、死刑囚からの臓器摘出が長年行われてきました。2015年に停止を宣言しましたが、実際の遵守状況は不明瞭です。

さらに、中国では臓器移植が「1兆円ビジネス」と呼ばれるほどの大規模な営利事業となっており、海外からの富裕な患者を引き付けています。特に注目すべきは、中国での心臓移植の待機期間が平均1〜2ヶ月と極端に短いことです。これは通常の臓器提供システムでは説明がつかず、不自然な臓器供給源の存在を示唆しています。


また、中国は米国以上の移植大国でありながら、国際学術誌に移植関係の論文が掲載されないのは、ドナー情報を明らかにできないためと考えられています。2013年には中国共産党が国家臓器流通システムを構築し、臓器移植の管理を強化しました。

これらの要因が複雑に絡み合い、中国の臓器移植数が急増する一方で、国際社会からの批判と疑惑も高まっています。中国政府は強制的な臓器摘出の疑惑を否定していますが、独立した調査を拒否しており、実態の解明が強く求められています。この問題は、医療倫理と人権の観点から国際的な懸念事項となっており、透明性の確保と適切な対応が急務となっています。

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2024年7月15日月曜日

都知事選予測が的中 石丸氏の浮動票は驚くようなことではない 前例に東国原氏 高橋洋一―【私の論評】高橋洋一氏の驚異的な選挙予測と石丸伸二氏の政治家適性:為替アナリストの経歴が政治にもたらす影響

都知事選予測が的中 石丸氏の浮動票は驚くようなことではない 前例に東国原氏 高橋洋一

日本の解き方

まとめ
  • 小池百合子氏が3選を果たし、SNSで知名度を上げた石丸伸二氏が2位、蓮舫氏が3位となった。高橋洋一氏は、小池氏の浮動票が石丸氏に流れたと分析し、選挙結果をほぼ正確に予測した。
  • 高橋氏の予測方法は、投票率の推計と候補者ごとの票の性質(基礎票・浮動票)分析に基づいていた。
  • SNSを活用した若者層への浸透戦略は効果的だが、それだけでは都知事選勝利には不十分。
  • 若者層の支持が自民党から離れている中、石丸氏はその層をうまく取り込んだが、選挙後の対応で支持を失う可能性がある。

 小池百合子氏は3選を果たし、62のすべての自治体で他の候補を上回る票を獲得した。NHKの出口調査によると、小池氏の都政運営に対する評価は肯定的で、67%が「大いに評価する」または「ある程度評価する」と回答している。小池氏は自民党、公明党、都民ファーストの会の支持層を固めつつ、無党派層の30%以上からも支持を得た。特に40代以上の年齢層で強い支持を集めた。

 石丸伸二氏は2位となり、特に世田谷区、渋谷区、中央区などで27%以上の得票率を記録した。朝日新聞の出口調査によると、石丸氏は無党派層から36%の支持を得て、候補者中最多だった。また、維新支持層の41%、国民民主支持層の約4割からも支持を集めた。

 蓮舫氏は3位に終わったが、128万3262票(得票率18.81%)を獲得し、前回2020年の都知事選と比較して得票数で1.52倍、得票率で5.05ポイント増加した。蓮舫氏は武蔵野市、国立市、多摩市などで20%を超える得票率を記録した。

 選挙戦では、小池氏の2期8年の都政運営の評価が主な争点の一つとなった。石丸氏は「既存の政党に属さない人間が東京の知事になれば世界が一変する」と訴え、若者層を中心に支持を集めた。蓮舫氏は市民と野党の共同候補として戦い、共産党を含む多くの支援を得たことを「財産」と評価している。

 この選挙結果を受けて、立憲民主党と連合の幹部が会談し、蓮舫氏が3位に終わったことについて敗因分析を行うことになった。今回の都知事選は、既存政党や今後の国政選挙にも影響を与える可能性があり、特にSNSを活用した選挙戦略や無党派層の動向が注目されている。

 この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になって下さい。

【私の論評】高橋洋一氏の驚異的な選挙予測と石丸伸二氏の政治家適性:為替アナリストの経歴が政治にもたらす影響

まとめ
  • 高橋洋一氏の東京都知事選予測は、投票率の正確な推計と候補者ごとの票の性質分析に基づき、驚くべき正確さを示した。
  • 石丸伸二氏は三菱UFJ銀行の為替アナリストとしての経歴を持つが、為替アナリストの短期的予測業務は博打的性質を持つと高橋氏は指摘している。
  • 政治家が博打的な思考や行動をとることは、国民の利益を損なう危険性があり、政治家としての信頼性や責任に反する。
  • 石丸氏の発言や行動には、為替アナリスト時代の博打的な考えが影響している可能性があり、政治家としてふさわしくない面がある。
  • 政治家には長期的視野、公正さ、信頼性、法令遵守の精神が求められ、博打的要素はこれらを損なう可能性が高いため、石丸氏の政治家としての適性に疑問が残る。
高橋洋一氏

高橋洋一氏の東京都知事選の結果予測は驚くべき正確さを示しました。その予測方法の核心は、まず投票率を正確に推計することにありました。高橋氏は期日前投票が有権者の約20%であることを踏まえつつ、投票日当日の天候などの要因も考慮して、全体の投票率を61%と予測しました。実際の投票率が60.62%だったことを考えると、この予測はかなり的確だったと言えます。

次に、高橋氏は候補者ごとに票の性質を分析しました。小池氏については基礎票と浮動票の両方を持つと考え、石丸氏は主に浮動票を、蓮舫氏は基礎票を中心に獲得すると予測しました。この分類に基づいてモデルを構築し、計算を行ったのです。

公選法の規定を考慮し、高橋氏は直接的な予測公表を避ける工夫をしました。投票前にX(旧Twitter)で「珍しい4つの素数」として11、13、17、29を投稿したのですが、これらの数字は実際には予想得票数(単位:10万人)を示していました。この暗号的な手法は、法的問題を回避しつつ予測を公表する巧妙な方法でした。

結果として、高橋氏の予測は実際の投票結果と非常に近いものとなりました。小池氏については予測290万票に対し実際291万票、石丸氏は予測170万票に対し実際165万票、蓮舫氏は予測130万票に対し実際128万票、その他は予測100万票に対し実際102万票となり、いずれも誤差は小さいものでした。

高橋氏の予測方法の特徴は、投票率の正確な推計、候補者ごとの票の性質(基礎票か浮動票か)の綿密な分析、そして過去の選挙データや現在の政治状況の詳細な検討にあると考えられます。特に小池氏と蓮舫氏の得票数予測が非常に正確であり、全体としても高い精度を示しています。この予測手法は、選挙分析や世論調査の分野で注目に値する成果であり、今後の選挙予測にも大きな影響を与える可能性があります。

石丸伸二氏は三菱UFJ銀行で為替アナリストとして働いていました。彼は2014年に初代ニューヨーク駐在員として赴任し、アメリカ大陸の主要9か国25都市で活動していました。その後、広島県安芸高田市長に選出され、政治家としても活躍しました。

石丸伸二氏

ただ、私自身は石丸氏の過去の経歴からみても政治家にはふさわしくないと思います。

長期的な為替レートは「世界に流通している円全体の価額 ÷ 世界に流通しているドル全体の価額」(円/ドル)という式で決まるとされています。しかし、中・短期的には様々な要因が絡み合うため、為替レートの予測は非常に困難です。

高橋氏は為替レートの短期的な予測を「競馬と同じ」と表現しており、予測の不確実性を強調しています。この見解に従えば、為替アナリストが行う短期的な為替予測は、実質的に博打と同様の性質を持つと言えます。アナリストは様々なデータや情報を分析しますが、予測不可能な要素が多いため、その予測は確実性に欠けます。

結果として、為替アナリストの短期的な予測は、情報に基づいた推測にすぎず、博打打ちの行為と本質的に変わらない可能性があります。したがって、高橋氏の見解に基づけば、為替アナリストの短期的な予測業務は、高度な分析を行っているように見えても、実質的には博打と同様の不確実性を持つ活動だと解釈できます。

ただし、長期的なトレンド分析や経済指標の解説など、より確実性の高い情報提供については、依然として意義があると考えられます。

しかし、中短期的な為替の予測をなりわいとする為替アナリストは、博打打ちといってもよく、政治家が博打的な思考や行動をとれば、国民の財産や生活に直結する政策決定において、不確実性の高い選択をしてしまう危険性があります。石丸氏にもこうした為替アナリスト時代の習慣や感覚が身についている可能性は高いです。

安芸高田市や選挙中や選挙後の石丸氏の発言は、とうてい常人の考えも及ばないところがあます。それは、博打打ち的な考えに石丸氏が支配されている可能性を示していると思います。


また、博打的な考え方をすることにより、政治家個人の金銭的な問題や倫理的な問題を引き起こす可能性もあります。これらは政治家としての信頼性を大きく損なう要因となります。さらに、政治家には長期的な視野で国や地域の発展を考える責任があります。

博打的な思考は短期的な利益を追求しがちで、この責任と相反します。また、政治家は法律を作る立場にあるため、博打的な考え方をすることは、法治国家の理念にも反します。したがって、博打打ちの性質や行動は、政治家に求められる公正さ、信頼性、長期的視野、法令遵守の精神と相容れません。政治家には冷静な判断力と高い倫理観が求められ、博打的な要素はそれらを損なう可能性が高いため、ふさわしくないと言えます。

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2024年7月14日日曜日

トランプ氏集会で発砲音 負傷か、拳突き上げ会場去る―【私の論評】トランプ前大統領銃撃事件2024:最新情報と歴史的考察 - 暗殺の真の影響とは

トランプ氏集会で発砲音 負傷か、拳突き上げ会場去る


 11月の米大統領選で返り咲きを狙う共和党のトランプ前大統領(78)が東部ペンシルベニア州バトラーで開催した支持者集会で13日、トランプ氏の演説中に複数の発砲音があり、現場からの映像によると同氏は壇上に伏せる格好で倒れ込んだ。

 トランプ氏はその後、警備にあたるシークレットサービス(大統領警護隊)に支えられて車両に乗り、会場を後にした。同氏は立ち上がる際に拳を突き上げる仕草をみせた。

 米メディアは、トランプ氏がけがを負ったと伝えた。現場では聴衆から大きな悲鳴が上がった。

【私の論評】トランプ前大統領銃撃事件2024:最新情報と歴史的考察 - 暗殺の真の影響とは

まとめ
  • トランプ前大統領の選挙集会で銃撃事件が発生し、トランプ氏は右耳付近を負傷した。
  • 容疑者は死亡したとされるが、詳細な情報は限られている。
  • 事件により会場は騒然となり、トランプ氏は警護下で退避した。
  • トランプ氏は声明を発表し、被害者への哀悼の意を表すとともに、事件の詳細を説明した。
  • 歴史的に見て、暗殺は意図した政治的目的を達成することはほとんどなく、むしろ逆効果をもたらすことが多い。

まずは、集会で亡くなった方のご家族の皆様に深い哀悼の意を表すとともに、重傷を負われた方々の一日も早い回復をお祈り申し上げます。

2024年7月13日、アメリカ東部ペンシルベニア州で行われていたドナルド・トランプ前大統領の選挙集会で銃撃事件が発生しました。以下に現時点での情報をまとめます:

## 事件の概要

- トランプ氏が演説を行っているさなかに、複数の発砲音が聞こえました[1][5]。
- 銃声は断続的に10発ほど聞こえたとされています[1]。
- トランプ氏は演台の下にしばらく伏せたような格好になりました[1]。

## トランプ氏の状況

- トランプ氏は警備にあたるシークレットサービスに支えられながら会場から退避しました[1][4]。
- 退避する際、トランプ氏は拳を上げるしぐさをしましたが、右耳のあたりから血が流れているのが確認されました[1]。
- CNNテレビはトランプ氏がけがをしていると伝えています[1]。
- トランプ陣営は「無事」との声明を出しています[4]。


## 犠牲者情報

- AP通信は、地元の司法当局者の話として、「銃を発砲した疑いがある人物は死亡した」と伝えています[1]。
- 米紙ワシントン・ポストは、容疑者が死亡したと報じています[2]。
- CNNは、銃撃犯と観客1名が死亡したと報じています[3][6]。

## 現場の状況

- 集まった人たちはその場で身を屈めていました[1]。
- 現場では叫び声が響き渡り、会場は騒然としていました[1]。
-トランプ氏は事件に関する声明を発表しています(以下)[7]

以下日本語に翻訳したものを掲載します。
ドナルド・J・トランプ
@realドナルド・トランプ
ペンシルベニア州バトラーで起きたばかりの銃撃事件に対する
迅速な対応に対し、米国秘密情報局と法執行機関の
皆様に感謝したいと思います。最も重要なことは、集会
で亡くなった方のご家族と、重傷を負われた方のご家族
にお悔やみを申し上げたいということ
です。このような行為が我が国で起こり得るとは信じ
られない。銃撃犯については現時点では何も分かっ
ておらず、現在死亡している。右耳の上部を銃弾で
貫かれました。ヒューヒューという音と銃声が聞こえ、
弾丸が皮膚を突き破るのをすぐに感じたので、何かが
おかしいとすぐにわかりました。大量の出血があった
ので、何が起こっているのかその時わかりました。
ゴッド・ブレス・アメリカ!
## 背景情報

- アメリカでは過去にも政治家を標的としたテロや暗殺が繰り返されてきました[4]。
- 1963年のケネディ大統領暗殺、1968年のロバート・ケネディ上院議員暗殺、1981年のレーガン大統領暗殺未遂事件などが挙げられます[4]。

この事件は現在進行形で情報が更新される可能性が高いため、今後も続報に注目する必要があります。

引用:
[1] https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240714/k10014511201000.html
[2] https://mainichi.jp/articles/20240714/k00/00m/030/023000c
[3] https://www.cnn.com/politics/live-news/election-biden-trump-07-13-24/index.html
[4] https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN1405Y0U4A710C2000000/
[5] https://jp.reuters.com/world/us/MPV37ZXXXBIYPJVUIOB2L4ZCWY-2024-07-13/
[6] https://www.nytimes.com/live/2024/07/13/us/biden-trump-election

容疑者に関する情報は現時点で限られています。ニューヨークポスト紙の報道によると、容疑者は中国人とされ、トランプ氏の演説中に演壇から離れた場所から発砲したとされています。複数の銃声が聞こえたという証言があります。

容疑者の状況については、死亡したという報道と、制圧されたという情報があり、詳細は不明です。シークレットサービスのスナイパーによって射殺されたという報道もあります。容疑者の身元や動機に関する詳細情報はまだ公表されておらず、この事件は暗殺未遂として捜査が進められているようです。今後の捜査の進展により、さらなる情報が明らかになる可能性があります。

暗殺は特定の意図を持って実行されますが、歴史的に見ると、暗殺が成功しようがしまいが、その目的を達成することはほとんどありません。むしろ、意図した結果とは逆の効果をもたらすことが多いのです。

例えば、1914年のフランツ・フェルディナント暗殺事件は第一次世界大戦の引き金となり、1963年のケネディ大統領暗殺は彼の理想をさらに強化しました。1968年のキング牧師暗殺も公民権運動を止めることはできませんでした。

日本の事例では、1932年の五・一五事件での犬養毅首相暗殺が軍部の影響力を強め、日本を戦争への道へと導きました。

2022年7月の安倍晋三元首相暗殺事件については、その影響は複雑で多面的です。事件の影響は現在も進行中であり、慎重に観察し評価する必要がありますが、首謀者の意図は成就されることはないでしょう。

このように、暗殺は短期的には衝撃を与えますが、長期的には意図した政治的変化をもたらすことはほとんどなく、むしろ予期せぬ結果をもたらすことが歴史的に示されています。今回のトランプ氏暗殺未遂事件も例外とはならないでしょう。

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2024年7月13日土曜日

バイデン大統領の衰退が国際危機を生む―【私の論評】バイデン大統領の認知能力低下と米国の危機:新たな指導者の必要性と世界秩序への影響

バイデン大統領の衰退が国際危機を生む

まとめ
  • アメリカの現職大統領の明らかな能力弱化は国際危機をも生みかねない。
  • 反米陣営が対米警戒を減らして、より大胆な侵略や膨張の行動に出る危険が生まれた。
  • 不法入国者問題、露中朝イランの反米的な行動の激化を懸念する声も。


 バイデン大統領の認知能力の衰えが顕著になり、民主党内からも撤退を求める声が上がっている状況は、単なる国内政治の問題にとどまらず、国際的な影響を及ぼす可能性がある。大統領の能力低下は、国際的な危機を引き起こす潜在的な要因となり得る。特に懸念されるのは、中国やロシアなどの反米勢力が、バイデン大統領の弱みにつけ込む危険性が高まっていることだ。

 歴史的に見ても、アメリカの大統領選挙の年は国際的な異変が起きやすい傾向がある。今回の状況は、アメリカでの大統領選挙による空白や混乱が、バイデン大統領の衰退によってさらに強調されている。これにより、アメリカの国際的な指導力や軍事抑止力が弱くなったと判断する材料を、対立的な立場の国々に提供してしまっている可能性がある。

 専門家らは、バイデン大統領の衰退により、様々な危険な動きが起こる可能性を指摘している。例えば、メキシコ国境からの危険分子の侵入増加、ロシアの反米的行動の激化、中国の反米的言動の増加、北朝鮮の対外姿勢の強硬化、イランとその傘下のテロ組織の活動の活発化などが懸念されている。これらの推測は、アメリカの国際的な影響力の低下と、反米勢力の台頭を示唆しており、国際秩序の不安定化につながる可能性がある。

 このような分析は、バイデン大統領の個人的な状況が、より広範な国際的な安全保障の問題につながる可能性があることを強調している。大統領選挙の結果や、バイデン氏の今後の対応が、単にアメリカ国内の政治だけでなく、世界の安全保障環境にも大きな影響を与える可能性がある。したがって、この問題は慎重に観察し、対応していく必要があるだろう。

 この記事は、元記事の要約です。詳細は、元記事をご覧になって下さい。

【私の論評】バイデン大統領の認知能力低下と米国の危機:新たな指導者の必要性と世界秩序への影響

まとめ
  • バイデン大統領の認知能力低下が米国の国益と世界秩序の安定を脅かしている。
  • 外交政策の失敗(アフガニスタン撤退、ウクライナ対応、イラン核問題、日本のLGBT法への介入など)が顕著。
  • エネルギー政策(キーストーンXLパイプライン中止など)が米国の経済と安全保障を危険にさらしている。
  • バイデン大統領は安倍元首相の決断を見習い、国家の利益のために退くべき。
  • 民主党は新たな候補者を擁立し、エネルギー自立、国境管理、毅然とした外交政策を実行すべき。
米民主党は、米国の国益と世界秩序の安定のために、即刻バイデン大統領に代わる新たな候補者を擁立すべきです。これは単なる政治的駆け引きの問題ではなく、国家の安全保障と世界の安定に関わる緊急の課題です。

アフガニスタンの首都カブールからカタールに向け出発した米空軍の大型輸送機の機内。米空軍提供(2021年8月15日撮影)。

バイデン大統領の認知能力低下は、もはや隠しようのない事実となっています。アフガニスタンからの無秩序な撤退、ロシアのウクライナ侵攻に対する優柔不断な対応、イランの核開発を事実上容認する弱腰外交など、その影響は国際社会全体に及んでいます。

特に懸念すべきは、日本のLGBT理解増進法への不適切な介入です。バイデン政権は、自国内で実現できていないLGBT関連の連邦法を、同盟国である日本に押し付けようとしました。

これは日本の国内事情や文化的背景を無視した、一方的な圧力です。日本の法案は、「全ての国民が安心して生活できるよう留意する」という文言が盛り込まれるなど、日本社会の実情に配慮した内容となっていましたが、バイデン政権はより急進的な内容を求めたとされています。無論こうした圧力を跳ね返すことができない、岸田政権にも問題はありますが、このような介入は、同盟国の主権を軽視し、国際関係を損なう危険性があります。

東京レインボープライドに参加するエマニュエル米国大使 SNSより

さらに、イエメンのフーシ派テロリスト指定解除、記者会見での度重なる言い間違いや混乱、国境管理の失敗と不法移民の急増、インフレ対策の遅れと経済政策の混乱、同盟国との関係悪化、中国に対する一貫性のない外交姿勢など、問題は山積しています。

エネルギー政策においても、大統領就任直後に、キーストーンXLパイプライン建設の中止しています。このパイプラインは、カナダのアルバータ州から米国のテキサス州までの原油輸送を目的とした大規模プロジェクトでしたが、環境への懸念を理由に建設許可が取り消されました。

そうして、連邦所有地での石油・ガス掘削制限など、米国のエネルギー自立を脅かす決定が次々と下されています。これらの政策は、米国の経済と安全保障を危険にさらすものです。

この状況下で、バイデン大統領は日本の安倍元首相の高潔な判断を見習うべきです。安倍元首相は、持病の悪化により二度にわたって自ら総理の職を辞しました。これは個人の野心よりも国家の安定を優先した、真のリーダーシップの表れでした。

バイデン大統領も同様に、自身の健康状態が国家の安全保障と世界の安定に与える影響を真摯に受け止め、潔く退く勇気を持つべきです。


米民主党は、党利党略を超えて、国家の利益を最優先に考えるべきです。バイデン大統領の続投は、米国の国際的地位をさらに低下させ、敵対国の挑発を招くリスクがあります。新たな候補者を擁立することで、米国の指導力を回復し、同盟国との信頼関係を再構築する必要があります。

具体的には、エネルギー自立政策の推進、強固な国境管理、そして毅然とした対外政策を実行できる候補者を選ぶべきです。同時に、同盟国の主権と文化的多様性を尊重し、一方的な圧力を避ける外交姿勢も求められます。それによって初めて、米国の国益を守り、世界の安定に貢献することができるのです。

民主党が自らの政治的利益よりも国家の未来を優先するなら、今こそバイデン大統領に代わる新たな候補者を擁立する時です。これは、米国の将来と世界秩序の安定のために不可欠な決断なのです。バイデン大統領自身も、安倍元首相の決断を見習い、個人の地位よりも国家の利益を優先する勇気を持つことが求められています。

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2024年7月12日金曜日

米バイデン大統領、ゼレンスキー大統領を「プーチン大統領」と言い間違え―【私の論評】バイデン大統領の言動と2024年選挙:懸念と展望

米バイデン大統領、ゼレンスキー大統領を「プーチン大統領」と言い間違え

まとめ
  • バイデン大統領がNATO首脳会議でゼレンスキー大統領を「プーチン大統領」と言い間違え、すぐに訂正した。
  • ゼレンスキー大統領は冗談で応じ、会場は騒然となった。
  • この言い間違いにより、バイデン大統領の再選に向けた圧力が強まる可能性がある。

2024年7月11日にワシントンD.C.で開催されたNATO首脳会議で、アメリカのバイデン大統領はウクライナのゼレンスキー大統領を紹介する際に「プーチン大統領」と言い間違えました。

バイデン大統領はすぐに訂正し、「プーチンを倒すゼレンスキー大統領です」と釈明しました。ゼレンスキー大統領は冗談めかして「私の方が(プーチンより)優れている」と応じました。

この言い間違いにより、プレスセンターは騒然となり、一部の記者は頭を抱える様子が見られました。この出来事は、バイデン大統領の再選に向けた圧力をさらに強める可能性があります。

この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になってください。【まとめ】は、元記事の要点をまとめ箇条書きにしたものです。

【私の論評】バイデン大統領の言動と2024年選挙:懸念と展望

まとめ
  • バイデン大統領の頻繁な言い間違いや不適切な行動が、職務遂行能力に疑問を投げかけている。
  • これらの問題は国家安全保障や外交関係、公衆の信頼に影響を及ぼす可能性がある。
  • 民主党は現職としての実績や中道路線、トランプ氏との対決での優位性などを理由にバイデン氏を支持している。
  • しかしバイデン氏の高齢とその言動は米国の威信を損なう可能性があり、保守派は深刻な脅威と捉えている。
  • 保守派は結束して、伝統的な価値観を持つ共和党候補、特にトランプ氏を支持すべき。
バイデンが大統領に就任して以来、メディアで報道された、今回のようないい間違えの事例を以下に列挙します。

1. ゼレンスキー大統領を「プーチン大統領」と言い間違え(2024年7月11日、NATO首脳会議)

2. カマラ・ハリス副大統領を「トランプ副大統領」と言い間違え(2024年7月11日)

3. ペンシルベニアでのキャンペーン中、叔父の誤った戦争エピソードを語る(2024年4月)

4. ドイツのメルケル前首相をコール元首相と混同(2024年2月7日)

5. 大統領選テレビ討論会での言い間違いや言葉詰まり
   - 2020年の討論会で「4年間で200万人」を「200年間で400万人」と言い間違え
   - 「我々は真実を選ぶ」を「我々は真実を保持する」と言い間違え
   - 「COVID-19」を「COVID-9」と言い間違え

6. カマラ・ハリス副大統領を複数回「大統領」と呼ぶ(2021年3月18日)

7. 国防長官ロイド・オースティン氏の名前を忘れる(2021年3月)

8. 故ジャッキー・ワウォースキー下院議員を聴衆から探す。2022年8月に死去したワウォースキー議員を、9月の演説で聴衆の中にいるかのように呼びかけた。(2022年9月)
   
9. プーチン大統領との首脳会談後、シリアをリビアと言い間違え(2021年6月)

10. 韓国の尹錫悦大統領の名前を誤って発音(2022年5月)

11. 法案署名時に自身の名前を間違える(2021年3月)

12. 「AFT」(米国教員連盟)を「ATF」(アルコール・タバコ・火器局)と言い間違え、教育関連の組織と法執行機関を混同した。(2021年3月)

13. ガソリン価格について「ガロン当たり10ドル」を「10セント」と言い間違え(2022年10月)

14. 電気自動車工場視察時にガソリン車を運転(2021年5月)

15. テレプロンプターの指示を読み上げる(2022年7月)


16. トルネード被害を受けたケンタッキー州知事の名前を間違える(2021年12月)

17. エリザベス女王の葬儀到着遅延の理由を「交通渋滞」とする(2022年9月)

18. アイルランド訪問中の不適切な発言(2023年6月)

19. アフガニスタン撤退に関する記者会見での混乱(2021年8月)

20. インフレ対策について「プーチンの価格上昇」を「価格減少」と言い間違え(2022年4月)

21. ウクライナ訪問後の演説で「ウクライナ」を「イラク」と言い間違え(2023年2月)

22. 「アメリカ人の平均寿命は200年」と発言(2020年9月)

23. 「私は上院に12年、副大統領に120年いた」と発言(2019年8月)

24. 「我々は真実ではなく事実を選ぶ」と発言(2020年5月)

25. 「貧困層の子どもたちはレコードプレーヤーを聴くべき」と発言(2019年9月)

これらの事例は、バイデン大統領の言動に対する注目度の高さを示すとともに、高齢の大統領としての能力に関する議論を引き起こしています。

バイデン大統領の頻繁な言い間違いや不適切な行動は、大統領としての職務遂行能力に正当な疑問を投げかけています。これらの問題は、単なる偶発的なミスを超えてパターン化しており、認知機能や判断力に関する懸念を生み出しています。

大統領職の重要性を考えると、このような言動は国家安全保障や外交関係に重大な影響を及ぼす可能性があります。また、公衆の信頼を損なう恐れもあります。バイデン大統領の高齢も、これらの問題をより顕著にしています。

しかし、言動のみで大統領の能力全体を判断するのは適切ではなく、政策決定や外交交渉などの実質的な成果も同時に評価する必要があります。結論として、これらの懸念は深刻に受け止めるべきですが、バランスの取れた評価と、大統領の健康状態や認知機能についてのより透明性の高い情報開示が求められるでしょう。

米民主党のシンボル「ロバ」

民主党としては、このようなことは十分予測できたはずです、にもかかわらず、民主党がバイデン氏にこだわった理由は複合的です。現職大統領としての実績と知名度、中道路線による幅広い支持、トランプ氏との対決での優位性が主な要因です。

また、党内の安定維持や政策の継続性も重視されました。長年の政治経験、特に外交面での実績も評価されています。さらに、労働組合や黒人有権者などの伝統的な支持基盤の存在も大きな利点です。

加えて、バイデン氏に代わる強力な候補者が不在であることも選択の背景にあります。これらの要素を総合的に判断し、民主党はリスクを認識しつつも、バイデン氏を最適な候補者と判断したと考えられます。ただし、高齢による懸念は依然として大きな課題となっています。

バイデン大統領の再選は米国の価値観と安全保障にとって深刻な脅威となります。彼の進歩的政策は、我々の伝統的な家族観や自由市場経済を脅かしています。また、国境管理の甘さは国家安全保障を危うくしています。

さらに、バイデン氏の高齢と頻発する言い間違いは、国際舞台での米国の威信を損なっています。これは、ロシアや中国といった敵対国に付け入る隙を与えかねません。民主党が新たな候補者を擁立したとしても、それは単に同じ進歩的イデオロギーを持つ若い顔に過ぎないでしょう。


米保守派は伝統的な保守的価値観を持つ共和党候補を支持し、結束してトランプ氏を支持し、米国の偉大さを取り戻すべきです。米国の未来のために、強力なリーダーシップと確固たる保守的政策が必要不可欠です。これこそが、米国の繁栄と安全を守る唯一の道筋と思われます。

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2024年7月11日木曜日

「ハマス殲滅」は、なぜ「空想」なのか?...国際社会が放置してきた「大きなツケ」―【私の論評】ハマス殲滅と中東和平:50年の長期統治案とルトワック理論の検証

「ハマス殲滅」は、なぜ「空想」なのか?...国際社会が放置してきた「大きなツケ」

まとめ
  • ネタニヤフ首相の「ハマス殲滅」と「人質解放」の目標は、多くの専門家によって「不可能」と指摘されている。
  • ハマスは思想と政党の側面を持ち、軍事的に弱体化しても完全な殲滅は困難である。
  • イスラエル軍の継続的な軍事作戦は、若い兵士の犠牲を伴う「空想」の追求になる可能性がある。
  • 国際社会はハマスのガザ統治終焉を望むが、その後の統治体制について明確な計画がない。
  • ガザでの戦闘終結後も、新たな混乱が予想され、国際社会は大きな課題に直面している。
ネタニヤフ首相

 ネタニヤフ首相が掲げる「ハマス殲滅」と「人質解放」の目標は、多くの専門家によって「不可能」と指摘されている。ハマスは単なる軍事組織ではなく、思想と政党の側面を持つ複雑な存在であり、軍事的に弱体化させることはできても、完全な殲滅は極めて困難だと考えられている。

 イスラエル軍が継続的な軍事作戦を展開することは、若い兵士たちの犠牲を伴う「空想」の追求になる可能性がある。実際、イスラエル軍内部でも、ハマス殲滅という目標の実現可能性に疑問を呈する声が上がっている。

 一方で、国際社会はハマスのガザ統治の終焉を望んでいるが、その後のガザ地区の統治体制について明確な計画が立てられていない。パレスチナ自治政府が最有力候補とされているが、ネタニヤフ首相や極右政治家たちはこれに反対しており、自治政府自体も機能不全に陥っているという問題がある。

 ガザでの戦闘が終結したとしても、それは新たな混乱の始まりとなる可能性が高い。17年にわたるハマスの実効支配や封鎖をそのままにしてきた国際社会は、今改めて大きな課題に直面している。ガザ地区の再建と安定した統治体制の確立、そしてイスラエルとパレスチナの長期的な和平プロセスの再開など、複雑で困難な問題に取り組む必要がある。

 この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事を御覧ください。

【私の論評】ハマス殲滅と中東和平:50年の長期統治案とルトワック理論の検証

まとめ
  • ハマスはテロリスト集団であり、排除されるべきだが、短期間での殲滅は不可能である。
  • 米戦略家ルトワック氏の理論に基づき、真の紛争解決には少なくとも50年にわたる軍隊の駐留により、根本的につくりかえる必要がある。
  • 長期的な国際的統治は、パレスチナ問題の抜本的な解決策となる可能性があるが、様々な課題も存在する。
  • イスラエル単独ではなく、過去にパレスチナ問題を複雑化させた国々とイスラエルによる共同統治が次善の策といえよう。
  • 長期的な解決策には、ハマスの思想は完全排除しつつも、パレスチナ人の意思尊重とイスラエルの安全保障への配慮が不可欠である。
ハマスの少年戦闘員 2012年8月のハマス25周年記念式典にて

私自身は、「ハマスは殲滅」すべきものと思います。なぜなら、ハマスはテロリスト集団だからです。テロリスト集団は、排除されるべきものです。排除が難しいからとか、犠牲がともなうからといって、これを放置する理由にはなりません。

ネタニヤフ首相の「ハマス殲滅」と「人質解放」の目標に関しては、ネタニヤフ首相がどのくらいのスパンでこれを達成しようとしているかでその評価が分かれると思います。とくに、「ハマス殲滅」に関してはそうです。

もし、せいぜいここ数年、長くても5年くらいで、これを達成しようとしているのであれば、それは混乱を生むだけであり、上の記事にもあるように、それは不可能です。

しかし、少なくとも50年くらいは、軍隊を駐留させて根本的に変えようというのなら、賛成です。

なぜ、このようなことを言うかといえば、それには根拠があるからです。それは、米国のルトワック氏の理論に基づくものであり、私はこの理論が妥当だと考えています。

エドワード・ルトワック氏

エドワード・ルトワック氏は、国連などによる短期的な紛争仲裁や介入が表面的な解決にとどまり、根本的な問題解決に至らないと批判しています。彼の主張によれば、真の紛争解決には少なくとも50年にわたる軍隊の駐留が必要としています。これは社会の根本的な変革には世代を超えた時間が必要だという認識に基づいています。

ルトワック氏は、単なる停戦や表面的な和平合意ではなく、紛争地域の社会、政治、経済システムを根本から再構築する必要があると考えています。この長期的な関与を通じて、紛争の根本原因に取り組み、持続可能な平和を構築することが可能になると主張しています。

この考え方は、国際社会により大きな責任と長期的なコミットメントを求めるものです。しかし、主権の問題や介入の正当性、実行可能性など、多くの課題も存在します。

ルトワック氏の理論は、複雑で長期化した紛争地域における平和構築の難しさを浮き彫りにし、国際社会の紛争解決アプローチに再考を促す重要な視点を提供しています。従来の短期的なアプローチの限界を指摘し、より根本的で持続可能な解決策の必要性を強調する点で、国際関係や平和構築の分野に大きな影響を与えています。

この位の覚悟がなければ、「ハマスの殲滅」はできないでしょう。もしネタニヤフ首相が、このくらいのスパンで物事を考えているのなら、賛成できますが、そうでないなら、単なる「空想」と言われても仕方ないでしょう。

ただ仮にネタニヤフ首相が、50年以上軍隊を駐留させ、根本的な解決を図るにしても、問題はあります。

イスラエルは、「ハマス殲滅」はできるかもしれません。しかし様々な問題が予想されます。まず、長期的な軍事占領は国際法違反とみなされ、イスラエルへの批判や制裁につながる可能性があります。また、パレスチナ住民の反感を高め、新たなテロリストを生み出す温床となる恐れがあります。ただ、他国がこのような批判をするにしても、自らが資金を提供するとか、軍隊を派遣する覚悟がない場合、たんなる「言うだけ番長」なるだけでしょう。

さらに、長期駐留に伴う膨大な経費はイスラエル社会に大きな経済的負担をもたらします。この莫大なコストは、国内の教育、医療、インフラ整備などの重要な分野への投資を圧迫し、イスラエルの社会発展を阻害する可能性があります。また、長期にわたる兵力の維持は人的資源の面でも大きな負担となり、イスラエル社会の生産性や経済成長に悪影響を及ぼす恐れがあります。

加えて、軍事占領の長期化はイスラエルとパレスチナの和平交渉を困難にし、地域の安定を損なう可能性があります。また、長期の軍事行動はイスラエル国内の社会的分断や道徳的ジレンマを引き起こし、国民の精神的健康にも悪影響を与える可能性があります。

次善の策としては、イスラエル軍だけが駐留するのではなく、過去にパレスチナ問題を複雑化させてしまった国々による共同統治です。その国々とは具体的に以下です。
  1. 英国:第一次世界大戦後、パレスチナ地域を委任統治し、ユダヤ人の「民族的郷土」建設を約束したバルフォア宣言を発表しました。これがユダヤ人とアラブ人の対立を深める一因となりました。
  2. 米国:イスラエルの最大の支援国として、中東和平プロセスに大きな影響力を持ちつつも、しばしばイスラエル寄りの姿勢を示し、問題の公平な解決を難しくしました。
  3. ソビエト連邦(現ロシア):冷戦時代、アラブ諸国を支援し、中東における米国の影響力に対抗しました。これにより、パレスチナ問題が東西対立の一部となり、さらに複雑化しました。
  4. エジプト、ヨルダン、シリア、レバノンなどの周辺アラブ諸国:イスラエルとの戦争に関与し、パレスチナ難民問題を抱えることで、問題の地域的な広がりを生み出しました。
  5. イラン:イスラエルに敵対し、ハマスなどのパレスチナ武装組織を支援することで、紛争の長期化に寄与しています。
これらの国々の介入や影響により、パレスチナ問題は単なる地域紛争から国際的な問題へと発展し、解決をより困難にしています。

このうち、ウクライナに侵攻中のロシアや、ハマスを支援しているイランは除き、これら以外の国々でも、中東和平に賛成する国々で、参加したい国々は参加してもらうという形で、これらの国々がパレスチナを統治し、和平をすすめるのです。

50年間にわたる国際的な統治は、パレスチナ問題の抜本的な解決策となる可能性があります。これまでの中途半端な対応では問題が解決せず、むしろ悪化してきた歴史を考えると、このような徹底的なアプローチには一定の妥当性があります。

この方式では、長期的視野での社会再構築が可能になり、国際社会の直接的な関与により透明性と公平性が確保されます。ハマスのような過激組織の影響力を根本から排除しつつ、教育や経済インフラの整備など、持続可能な発展の基盤を築くことができるでしょう。

しかし、実行にあたっては課題も多く存在します。パレスチナ人の自決権との調和をどう図るか、国際社会の長期的なコミットメントをどう確保するか、イスラエルと周辺アラブ諸国の協力をどう取り付けるか、そして莫大なコストをどのように分担するかなどの問題に対処する必要があります。ただ、50年以上という年月をかけるというのであれば、話は変わってきます。

これらの課題に対しては、段階的なアプローチや、パレスチナ人の意思を尊重しつつ国際管理を行う仕組みの構築、明確な出口戦略の策定などが必要になるでしょう。特に、ハマスのようなテロ組織を排除しつつ、一般のパレスチナ人の権利と尊厳を守る方策を慎重に検討する必要があります。

この方式は従来のアプローチよりも大胆で困難を伴いますが、長年の紛争を根本的に解決する可能性を秘めています。国際社会が本気で平和を望むのであれば、このような抜本的な解決策を真剣に検討する価値はあるでしょう。

ただし、その過程ではハマスの思想は完全排除しつつも、常にパレスチナ人の意思を尊重し、彼らの将来的な自治と独立の道筋を明確に示すことが不可欠です。同時に、イスラエルの安全保障にも十分な配慮を払い、両者の共存共栄を目指す必要があります。

このような共同統治が成功すれば、今後の紛争解決のモデルとなるでしょう。未だに20世紀までの世界のように他国に侵略したり、しようとする国、他地域を侵略したり、しようとしているテロリスト等にとって大きな警鐘になるでしょう。他国を侵略してその国を自分の国にとって都合の良い体制に変えたともしても、結局長い年月をかけても元に戻されてしまう可能性がでてくるからです。

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2024年7月10日水曜日

加速する中国人富裕層の海外移住、膨大な資産も流出―【私の論評】中国富裕層の海外移住:スマートマネー流出と安全保障リスク - 日本の対応と課題

加速する中国人富裕層の海外移住、膨大な資産も流出

まとめ
  • 中国富裕層の海外移住急増:2024年に1万5200人が他国へ、前年比10%増
  • スマートマネーの流出:1人あたり3000万~10億ドルの資産移転と推定
  • 中国脱出の主な理由:経済不確実性、不動産危機、政府の規制強化
  • 人気の移住先:米国、シンガポール、カナダ、UAE、日本が上位に
  • 富裕層流出の影響:中国政府の経済活性化策に障害、習近平体制への不信感


 中国からの「スマートマネー」の流出が加速しており、2024年には約15,200人の富裕層が中国から海外へ移住すると予測されている。これは前年比約10%の増加を示している。投資移住コンサルのHenley & Partnersによると、移住者の多くは米国やシンガポールを目指し、1人あたり3000万~10億ドルの資産を持ち出すと推定されている。

 移住の主な理由としては、中国の経済的不確実性、不動産危機と資産価値の下落、政府による民間企業や資産家への取り締まり強化、そして中国の信用格付け見通しの引き下げが挙げられている。特に、習近平国家主席の経済政策や「共同富裕」の推進が富裕層の懸念を高めているとされている。

 シンガポールは従来、中国の富豪が好む移住先だったが、最近では中国からの資金流入に対する監視を強化している。一方、カナダや米国、アラブ首長国連邦も人気の移住先となっている。日本も安全性や生活の質の高さから注目されており、中国に近いことや魅力的なライフスタイルが評価されている。

 この現象は中国に限らず、韓国や台湾でも安全保障上の懸念から富裕層の流出が見られる。専門家は、この富裕層の流出を習近平政権の経済運営に対する否定的な評価と捉えており、中国政府の経済活性化の取り組みにも影響を与える可能性があると指摘している。

 この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になって下さい。

【私の論評】中国富裕層の海外移住:スマートマネー流出と安全保障リスク - 日本の対応と課題

まとめ
  • 「スマートマネー」とは、大規模な資本を持つ投資家や機関を指し、中国では主に富裕層を意味する。
  • 中国の富裕層の海外移住は、中国経済にとって重要な資本や人材の流出を意味し、他国にとっては投資機会の増加を示唆する。
  • 中国のデータ3法や国家安全法、国防動員法などの法律は、海外に移住した中国国民にも適用される可能性があり、国家安全上のリスクを引き起こす。
  • これらの法律により、海外在住の中国国民が中国政府の指示に従って情報提供や協力を行う義務を負う可能性があり、移住先の国の法律と衝突する。
  • 日本政府は、中国からの移住者に対する対応が不十分であり、スパイ防止法の成立を含む包括的な対策が急務である。
「スマートマネー」とは、一般的に大規模な資本を持ち、高度な投資戦略や分析を用いて市場で優位に立つ投資家や機関を指す言葉です。中国の文脈では、この「スマートマネー」は主に富裕層を指しています。

上の記事にある富裕層の海外移住にともなう「スマートマネー」の流出は中国経済にとって重要な資本や人材の流出を意味し、同時に他国にとっては投資や経済活動の機会増加を示唆しています。したがって、「スマートマネー」の動向は、中国の経済状況や政策の評価指標として、また世界経済の資金流動の重要な指標として注目されているのです。

中国富裕層の住む街の一角

一方、中国の富裕層の海外移住に関する安全保障上の問題は、中国のデータ3法(サイバーセキュリティ法、データセキュリティ法、個人情報保護法)や国家安全法、国防動員法などの法律と密接に関連しています。これらの法律は、中国国民や中国で活動する企業に対して広範な義務を課しており、海外に移住した富裕層にも影響を及ぼす可能性があります。

特に注目すべきは、これらの法律の域外適用の可能性です。中国の法律は、中国国内だけでなく、海外に移住した中国国民や中国企業にも適用される可能性があります。

例えば、データセキュリティ法は、中国の国家安全や公共の利益に影響を与える可能性のあるデータ処理活動に対して、中国国外でも適用される可能性があります。これは、海外に移住した中国富裕層が、中国政府の要求に応じて情報提供や協力を求められる可能性があることを意味します。

香港に掲示された国家安全法の看板

さらに、国家安全法は、すべての中国国民に対して国家安全に協力する義務を課しています。この法律の解釈によっては、海外に移住した中国国民も、中国政府の要請に応じて情報提供や協力を行う義務を負う可能性があります。

これは、移住先の国の法律や利益と衝突する可能性があり、二重忠誠の問題を引き起こす可能性があります。個人情報保護法も、中国国民の個人情報を保護するために、海外のデータ処理者にも一定の義務を課しています。これにより、中国から移住した富裕層が関与する海外企業も、中国の法律に従って個人情報を処理する必要が生じる可能性があります。

特に戦争や重大な安全保障上の危機が発生した場合、中国の国家安全法と国防動員法は、海外在住の中国国民にも影響を及ぼす可能性があります。これらの法律は、中国国民に対して、戦時や緊急時に国防のために動員される義務を課しています。

具体的には、戦争や重大な安全保障上の危機が発生した場合、中国政府は海外在住の中国国民に対して情報提供や諜報活動への協力、技術や専門知識の提供、資金や物資の提供、場合によっては中国への帰国と軍事活動への参加を要求する可能性があります。これらの要求は、移住先の国の法律や国益と明らかに衝突する可能性があり、海外在住の中国国民を非常に困難な立場に置く可能性があります。

これらの法律の域外適用は、国際法上の問題を引き起こす可能性があり、各国の主権や法の支配との衝突を招く可能性があります。移住先の国々は、このような法律の域外適用に対して警戒を強めており、自国の安全保障や経済的利益を守るために、中国からの移住者に対する審査を厳格化したり、重要な技術や情報へのアクセスを制限したりする措置を講じています。

結果として、多くの国々は中国からの移住者、特に富裕層や専門家に対する審査を厳格化しています。一部の国では、重要なインフラや技術分野への中国人の参加を制限したり、国家安全保障上の理由で特定の個人の入国や永住権の取得を拒否したりするケースも増えています。

一方で、中国籍を放棄して完全に移住先の国籍に変更する場合、これらの問題は大幅に軽減されます。しかし、中国政府が元中国国民に対しても影響力を行使しようとする可能性は依然として存在します。このような複雑な状況下で、移住先の国々は、経済的利益と安全保障上のリスクのバランスを慎重に取りながら対応を進めています。

カナダは1980年代から2014年まで、投資家クラス移民プログラムを実施し、一定額の投資を条件に富裕層に永住権を与えていました。このプログラムは特に中国の富裕層に人気が高く、外国からの投資を呼び込む目的で導入されました。

しかし、予期せぬ問題が生じました。大都市で不動産価格が急騰し、多くの投資移民が実際の収入よりも大幅に少ない所得を申告したため、税収が期待を下回りました。

また、「アストロノート家族」という現象が生じました。これは、家族の一部がカナダに移住し、主な稼ぎ手が中国に残って働き続けるという状況を指します。この現象により、社会統合の問題も浮上しました。

これらの問題に対応するため、カナダ政府は2014年に連邦レベルの投資家クラス移民プログラムを廃止しました。現在、カナダの移民政策は、単なる資産の多寡ではなく、スキルや教育レベル、言語能力などを重視する方向にシフトしています。

カナダの経験は、富裕層を対象とした投資移民プログラムが短期的な経済的利益をもたらす可能性がある一方で、長期的には社会経済的な課題を引き起こす可能性があることを示しており、他の国々の移民政策にも影響を与えています。

カナダの中国人街

日本政府の中国人移住に対する対応は、安全保障上の重大なリスクを十分に考慮しておらず、極めて不十分かつ危険です。中国の安全保障や情報に関する法律の域外適用により、すべての中国人移住者は、その意思に関わらず潜在的なリスクとなります。この状況は中国共産党が作り出したものであり、日本側に責任はありません。

中国の国家安全法や国防動員法などの存在により、日本に居住するすべての中国国民が、有事の際に中国政府の指示に従って行動することを強いられる可能性があります。このリスクは個人の意思や性質とは無関係であり、すべての中国人移住者に適用されます。

さらに、中国政府がスパイを移住者の中に潜り込ませる可能性が高いことを考慮すると、日本の現状は極めて危険です。この状況に対処するため、スパイ防止法の成立を急ぐべきです。この法律により、外国のスパイ活動を効果的に取り締まり、国家機密や重要技術の流出を防ぐことが可能になります。

日本政府は、このような法体系を持つ国からの移住者をなるべく受け入れるべきではありません。経済的利益よりも国家安全保障を優先し、中国からの移住や投資を厳しく制限する政策を採るべきです。

総じて、日本政府の対応は問題の本質を捉えておらず、短期的な経済的利益を優先する姿勢が目立ちます。安全保障上のリスクを軽視したこの姿勢は、将来的に日本の国益を大きく損なう可能性があります。スパイ防止法の成立を含む、包括的かつ実効性のある対策を早急に講じる必要があります。この問題の責任は全て中国共産党にあり、日本はこの現実を直視し、適切な対応を取るべきです。

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