2024年10月23日水曜日

〈ソ連崩壊に学んだ中国共産党〉守り続ける3つの教訓と、習近平が恐れていること―【私の論評】習近平体制の内なる脆弱性:ソ連崩壊と中国共産党の共通点

〈ソ連崩壊に学んだ中国共産党〉守り続ける3つの教訓と、習近平が恐れていること

岡崎研究所

まとめ
  • 習近平は中国共産党がソ連の運命を辿ることを恐れ、党の内部統制とイデオロギー強化を重視している。
  • 「ゼロコロナ」政策の急な終了や経済復興の困難さが、党の安定に影響を与えている。
  • 習近平は後継者の育成に無関心で、自らの長期在位を望む姿勢が将来の権力移行を不安定にする可能性がある。
  • 党の統治継続、イデオロギー堅持、米国との直接対決回避を教訓として、習近平はこれを守りつつも党内外のバランスに苦しむ。
  •  習近平の厳格な管理は党の自発性を奪い、腐敗や無気力を生むリスクがあるが、党の体制自体は強固で経済が崩壊しない限り維持されるだろう。

習近平

 エコノミスト誌10月5日号の解説記事が、今年10月に創設75周年を迎えた中国共産党は、支配年月がソ連共産党のそれを超えたが、指導者の習近平は中国がソ連のように崩壊することを恐れている、と書いている。要旨は次の通り。

 中国共産党が創設75周年を迎えた2024年、習近平国家主席は自身の党の永続的な支配について深い懸念を抱いている。特にソ連崩壊の歴史から学んだ教訓を基に、党の内部統制とイデオロギー管理の強化を図っている。

 習近平の政策は、ソ連の崩壊が党内の派閥争いやイデオロギー的、組織的規律の喪失によるものだと捉えており、これを避けるため、党の団結と戦闘力を維持する必要性を強調している。2022年の党大会やその後の演説で、彼は「我々を敗北させ得るのは我々だけだ」と述べ、内部からの崩壊に警戒を呼びかけている。

 しかし、習近平の施策は二つの面で問題を孕んでいる。一つ目は、経済政策の失敗とその後の景気刺激策が必ずしも成功を収めていないこと。2022年の「ゼロコロナ」政策の突然の撤廃やその後ろくな復興策なしに経済を回復させようとした結果、国民の間に不満が広がっている。

 二つ目は、習近平自身が後継者育成に無関心であり、自身の権力維持を優先する姿勢だ。これにより、将来的な権力移行が混乱を招く可能性が指摘されている。ソ連の指導者選びが党内争いやクーデターで決まったという歴史を反面教師にすべきだが、習はその教訓を活かしているとは言い難い。

 鄧小平時代以降、中国はソ連崩壊の原因を徹底的に研究し、政策提言をまとめてきた。鄧の教訓では、共産党の統治継続、イデオロギーの堅持、そして米国との力比べを避けることが挙げられた。これらの原則を習近平は守っているが、彼の厳格な党管理は、党内外のバランスを崩し、党官僚に過度なプレッシャーを与えている。党員の献身性を求める一方で、組織の自発性を殺し、腐敗や無気力さを招く可能性もある。

 習近平の路線は、党のガバナンスの難しさを象徴している。引き締めと緩和の適切なバランスを見つけることは容易ではなく、現在の中国が直面する最大の課題の一つである。しかし、党の内部には、党の統治継続というコンセンサスがあり、経済が崩壊に瀕しない限り、党の体制自体が傾くことは考えにくい。党内での是正力が働くという観点から、共産党の支配は今後も続くと見られている。

 この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になって下さい。

【私の論評】習近平体制の内なる脆弱性:ソ連崩壊と中国共産党の共通点

まとめ
  • 習近平の強権的な統制は、党内部の弱点を覆い隠すための手段である可能性が高い。
  • ソビエト連邦も中央集権による統制を試みたが、地方の腐敗や非効率性が崩壊を引き起こした。
  • KGBやプロパガンダなどで体制を維持したが、ソ連の根本的な問題は解決されず、最終的に崩壊した。
  • 習近平の政策はソ連の全体主義を継承しているが、同じ道を辿るリスクがある。
  • 中国の軍事演習は強大に見えるが、内部には多くの問題があり、体制の脆弱さを示唆している。
元記事には次のような記述が見受けられる。

「習近平による組織管理と精神教育の強化は、すべてを党が指導することを国政の中心に据えた結果、その実施部隊である党幹部と党員があまりにふがいないというので進めている可能性の方が高い」

中国共産党の結党100周年を祝う式典

この発言を深く考察すると、中国共産党の表面的な強さは実は内なる弱さを隠しているに過ぎないことが浮かび上がってくる。党の全てを握り、党幹部や党員に強権的な統制を敷くことは、一見すると党の結束力や支配力の強化に映るかもしれない。しかし、それは真に強固な基盤を築いているわけではなく、むしろ党の内部に潜む問題を覆い隠すための手段であると言えるのではないだろうか。

続けて、元記事では「1980年代の半ばまでは、ソ連は極めて厳格に管理された党と社会であり、現在の中国など足元にも及ばない」としている。だが、これは実情を表面的に捉えたものであり、実際にはソ連の崩壊に至る数十年の間に問題は徐々に蓄積されていた。その問題は表に出なかっただけで、ソ連の成立当初から内包されていた不協和音であると捉えるべきだ。

ソビエト連邦は、理論上は中央集権による完全な統制を目指していた。すなわち、国家全体を一つの統一した力で支配し、全ての決定権を中央に集中させることが目標であった。しかし、理想と現実は異なる。現実世界は、ソ連が描いた統制モデルを超えるほどの複雑な問題に満ちており、そのために完全な中央集権体制は最後まで実現されなかった。

中央集権の弊害として、地方ごとの自治や経済計画の非効率性が生じ、地方官僚たちが腐敗し、時には中央の方針を逸脱して独自の行動を取ることもあった。情報伝達も遅滞し、中央の意図が末端に届くまでには時間がかかり、時には誤解が生じることもあった。また、党内には権力闘争が絶えず、その度に政権内部が揺れ動いていた。

それでもソ連は、中央集権の欠陥を補うためにさまざまな政策を打ち出した。その中でも、秘密警察であるKGBの強化は、中央の統制を維持するための重要な柱であった。KGBは反体制的な動きを迅速に察知し、地方の反抗を力で抑え込んだ。また、プロパガンダや教育を通じて共産主義のイデオロギーを国民に浸透させ、国家全体の統一意識を維持しようとした。さらに、経済面では重化学工業や軍事産業に巨額の投資を行い、国家の優先事項としてこれらを発展させることで、国全体の経済成長を目指した。

ソ連はまた、党の幹部を養成するための教育制度を整え、忠実な党員を育成し、彼らに中央からの政策を実行させる体制を構築した。このエリート層は「ノーメンクラトゥーラ」と呼ばれ、ソ連社会において特権階級としての地位を築いた。しかし、こうした取り組みは短期的には一定の効果をもたらすことがあっても、中央集権体制が抱える根本的な問題を解決するには至らなかった。その結果、ソ連の崩壊は、中央集権体制が理想と現実の間で揺れ動き、最終的にその矛盾に耐え切れなくなったことを象徴する出来事となった。

ソ連崩壊を伝える新聞紙面

このような歴史的背景を鑑みれば、習近平の政策もまた、ソ連と同様に、中央集権の名のもとに体制を強化しようとする試みだと言える。しかし、ソ連の全体主義を継承するだけでは、その運命もまた同じ道を辿るだろう。現状を維持することに固執すれば、中国共産党は自らの崩壊に向かうしかない。政治体制を自ら変革し、改革の道を歩むか、それとも内部分裂と崩壊の道を進むか、習近平にはその選択が迫られている。

その兆候は既に見られる。たとえば、最近の中国による台湾周辺での大規模な軍事演習である。この演習は台湾の海上封鎖を狙ったものであるとされているが、その実態は2022年8月のペロシ米下院議長(当時)の訪台時に行われたものとほぼ同じである。規模こそ拡大しているものの、演習の基本的な枠組みは変わっていない。このような演習が、台湾や周辺諸国に対する脅威を高めることは間違いないが、同時に日米の抑止力を強化させる結果にもなっている。

さらに、中国軍の内部でも不穏な動きがある。戦略ロケット部隊では、異例のトップ交代が発生しており、これは汚職や機密漏洩が背景にあるとされる。また、戦闘準備の不備が指摘されており、訓練や実戦能力に疑問を投げかける事態が相次いでいる。潜水艦部隊においても、新型潜水艦の導入が進んでいるが、その運用能力や効果については未知数である。最近の報道では、新型潜水艦が沈没したとのニュースも流れており、装備の統合や訓練不足が実戦での即応性に影響を与える可能性がある。


こうした状況を踏まえれば、習近平の中国は外から見れば強大な軍事力を誇示しているかのように映るが、内部には多くの問題が積み重なっていることがわかる。米国防総省のロイド・オースティン国防長官も、中国軍が台湾を包囲した5月の軍事演習に関して、その実行の難しさを指摘している。米軍は中国軍の演習を詳細に観察し、その運用方法や動向を分析している。その結果、米軍は中国の軍事力に対して適切な対策を講じることができているという。

このような軍事演習は、ソビエト連邦が崩壊前に行っていた大規模な軍事演習を思い起こさせる。冷戦期、ソ連は「ザーパッド演習」や「ビースト演習」などを定期的に行い、崩壊末期まで実施され、西側諸国に対する抑止力として用いていた。しかし、これらの演習は強さを誇示するものではなく、実はその内部に抱える弱さを隠すための手段であった。それはまさに現在の中国にも当てはまると言えるだろう。軍事演習の規模が大きければ大きいほど、むしろその体制の脆弱さが浮き彫りになるのだ。

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2024年10月22日火曜日

“トランプ氏圧勝“の可能性「内気なトランプ支持者」を掘り起こすと激戦州で優位に…ハリス陣営はパニック!?―【私の論評】誰に投票するのか、自らの目で、耳で、そして頭で考え抜け

“トランプ氏圧勝“の可能性「内気なトランプ支持者」を掘り起こすと激戦州で優位に…ハリス陣営はパニック!?

まとめ
  • トランプ前大統領の優位性: スイング・ステート7州での僅差リードと「内気なトランプ支持者」の存在から、トランプ氏が選挙人数で圧勝する可能性が高い。
  • 世論調査の限界: 過去の世論調査の誤差や候補者の変更による影響を考慮しなければならない。
  • メディアと専門家の見解: 最近の報道や専門家の意見では、トランプ氏の優位性が強調されている。
  • ハリス副大統領の政策: 中東情勢ではイスラエルの安全保障やガザ地区への人道支援重視、ハリス氏は即時停戦を訴えている。
  • 結論の不確実性: 分析は世論調査の正確性に依存し、完全な確実性はないが、現時点ではトランプ氏の圧勝が予想される。


米大統領選挙の情勢では、トランプ前大統領がスイング・ステート7州で僅差ながらカマラ・ハリス副大統領をリードしていることが分かった。しかし、過去の選挙ではトランプ支持者が実際よりも少なく見られる傾向があり、それを「内気なトランプ支持者」と称する現象が確認されている。この現象を考慮すると、トランプ氏は6州で確実に優位に立ち、ジョージア州でもほぼ優位と言える。これにより、トランプ氏が選挙人数で圧勝する可能性が高い。

世論調査の背景に目を向けると、2016年と2020年の選挙では、トランプ支持者の数が実際よりも低く見積もられることが多かった。これは、トランプ氏の政策には賛同しながらも、その人柄や周囲との関係を考慮して本音を明かさない有権者が存在するからだ。この「内気なトランプ支持者」の存在は、スイング・ステートでの結果に特に影響を与えいる。

ただし、この分析には限界もある。まず、世論調査会社がこの「内気なトランプ支持者」を完全に補正できるかは疑問だ。また、2020年と2024年の民主党候補者が異なるため、この違いがデータにどれほどの影響を与えるかも考慮する必要がある。

メディアの報道や専門家の意見もまた、トランプ氏の優位性を強調している。最近の報道では、ハリス氏の勝利の可能性が低下していることが指摘され、選挙ギャンブル市場でもトランプ氏の支持が高まっていることが報告されている。

結論として、現時点での情報と分析から見ると、トランプ氏がスイング・ステートでの優位性を保ち続けると、大統領選での圧勝が予想される。しかし、この予測は世論調査の前提条件やその正確性に依存しており、完全な確実性はないことを認識する必要がある。それでも、トランプ氏の圧勝可能性は十分に高いと見て良いだろう。

この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧ください。

【私の論評】誰に投票するのか、自らの目で、耳で、そして頭で考え抜け

まとめ
  • トランプ前大統領が選挙ギャンブル市場で有利とされる一方、市場の予測は不確実であり、選挙結果は投開票日までの動向に左右される。
  • 米国ではメディアの信頼が低下しており、日本でも2021年の衆議院選挙でメディアの情勢調査が外れたことから、虚偽回答の増加や調査の信頼性低下が問題となっている。
  • メディアと有権者の信頼関係が揺らぎ、民主主義における情報の重要性が問われているが、最終的には個々の国民が自ら考え抜く必要がある。

米国選挙ギャンブル市場の現状では、トランプ前大統領が勝利する可能性が高いとされている。市場の予測によれば、トランプ氏の勝利予想は57.9%、一方でハリス氏は41.0%に留まっている。

これはベッターたちがトランプ氏に賭けていることを示しており、市場分析でも、彼の勝利が株価の上昇や特定の投資機会を生むと期待されている。しかし、ギャンブル市場の予測には常に不確実性が伴い、投開票日までの情勢が勝敗を左右することは言うまでもない。

10月はじめの賭けサイトpolymarketの予想

米国では、近年多くの国民がマスコミの選挙報道を信用しなくなっている傾向が顕著だ。特に共和党支持者を中心に、メディアが政治的に偏っていると疑う声が強まり、フェイクニュースや不正確な報道が増加しているため、メディアの信頼性は大きく揺らいでいる。この背景には、トランプ氏の在任中やその後のメディア報道が、公正さを欠いていたとの認識が根強く残っていることがある。

日本でも、この傾向は無視できない状況になっている。例えば、2021年の衆議院選挙では、各メディアが発表した情勢調査や予測が大きく外れた。特に出口調査の結果は実際の投票結果と著しく乖離し、多くのメディアが信頼を損ねた。

ここで注目すべきは、調査に対する有権者の意図的な虚偽回答の増加だ。保守系の有権者が左派系メディアに対して、あるいはリベラル系の有権者が保守系メディアに対して、わざと異なる回答をするケースが頻発しているのだろう。さらに、特定の政党支持者が自らの陣営に有利な結果を誘導するために虚偽の回答を行うことも考えられる。

出口調査

これらの現象は、メディアに対する根深い不信感を象徴しており、出口調査の精度を著しく損なっている。「マスコミです」と名乗った瞬間に、信頼性が揺らぐという皮肉な状況が現実となっているのだ。

この問題は単に出口調査の信頼性にとどまらない。メディアと有権者の関係性、選挙報道のあり方、そして民主主義のプロセス全体に関わる重大な課題を浮き彫りにしている。国民が正確な情報を得られなければ、民主主義はその土台から崩れ去る。かつて「第四の権力」とまで称されたメディアが、今や自らの手でその権威を失墜させ、信頼のない存在へと転落している。

果たして、次の選挙の時、我々は誰の言葉を信じるべきなのか。誰も答えを持っていないが、選択肢があるとすれば、それはただ一つ。「自らの目で、耳で、そして頭で考え抜け」。これこそが、今この時代を生き抜くための唯一の方法なのである。

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2024年10月21日月曜日

葛城奈海氏、国連女子差別撤廃委員会でスピーチ「日本の皇位継承は尊重されるべき」―【私の論評】守るべき皇統の尊厳

葛城奈海氏、国連女子差別撤廃委員会でスピーチ「日本の皇位継承は尊重されるべき」

まとめ
  • 葛城奈海氏のスピーチ: 10月14日から17日までスイス・ジュネーブで開催された国連女子差別撤廃委員会において、葛城氏が日本の皇位継承が男系男子によって引き継がれてきたことの重要性を訴え、皇位継承への批判は内政干渉であると主張。
  • 日本政府の立場: 10月17日に日本政府も国連で答弁し、男系男子による皇位継承が日本の伝統文化に根ざしたものであることを強調し、国際的な批判に対して反論。
  • 帰国報告会の開催: 「皇統を守る国民連合の会」は、スピーチや国連での活動についての帰国報告会を12月1日に開催予定であり、日本の伝統と文化の重要性を広めることを目的とする。
皇統を守る国民連合の会のサイトに掲載されていたポスター。クリックすると拡大します。

「皇統を守る国民連合の会」の会長である葛城奈海氏が、10月14日から17日にかけてスイス・ジュネーブで開催された国連女子差別撤廃委員会(CEDAW)に参加し、日本の皇位継承についてスピーチを行いました。葛城氏は、国際社会に向けて日本の皇統が男系男子によって引き継がれてきた歴史と伝統の重要性を訴えました。

葛城氏のスピーチは、「ローマ法王やイスラム教の指導者、チベット仏教のダライ・ラマが男性であることが問題視されないのに、なぜ日本の皇位継承だけが女性差別とされるのか」という問いかけから始まりました。彼女は、日本の皇位継承の伝統が「内政干渉」に該当するような批判を受けるべきではないと主張しました。

日本政府も答弁、内政干渉に対する反論

10月17日には、日本政府もこの問題について国連で答弁を行い、皇位継承に関する国際的な批判に対して対応しました。政府は、男系男子による皇位継承が日本の伝統と文化に根ざしたものであることを強調し、内政問題に対する干渉を避けるべきだとする姿勢を示しました。

「皇統を守る国民連合の会」の決意

葛城奈海氏やその仲間である佐波優子氏、saya氏は、「皇統を守る国民連合の会」の代表メンバーとして、日本の伝統文化を守る覚悟を示すため、着物姿で国連の場に登場しました。彼女たちは、これまでの日本の皇位継承が続いてきた背景を説明し、その重要性を世界に発信しました。

このような活動は、日本の伝統的な価値観を国際社会で強調し、グローバリズムによる影響から国のアイデンティティを守るための取り組みとして位置付けられています。

帰国報告会の開催予定

「皇統を守る国民連合の会」は、このスピーチと国連での活動についての帰国報告会を12月1日に開催する予定です。多くの人々に、日本の伝統と文化の重要性を理解してもらうことを目的とし、今後の活動についても広く共有する機会にする予定です。

この記事は、「皇統を守る国民連合の会」のサイトに掲載された記事を、会員以外の方々にも、理解しやすいように、新聞記事風にリライトしたものです。

【私の論評】守るべき皇統の尊厳

まとめ
  • 葛城奈海氏が国連女子差別撤廃委員会で、日本の皇位継承が男系男子によって受け継がれてきた重要性を強調し、国際的な批判に反論。
  •  皇室は日本の象徴であり、国民のアイデンティティや文化的根源を体現しているため、皇統の価値を国際社会で主張することが不可欠。
  • ローマ法王やダライ・ラマが男性であることは問題視されない一方、日本の皇位継承だけが女性差別として批判されることは不公平であり、多様な文化を理解し尊重する姿勢が重要。
  • 日本政府は、国際社会において日本の伝統文化を尊重する姿勢を示し、外圧には毅然とした態度で臨むべきである。
  • 葛城氏やその仲間の活動は、日本の伝統を維持し次世代に引き継ぐために重要であり、皇統は未来の日本人にとっても大切な存在である。

上の事実、日本のメディアは全く報道しませんが、これは保守派にとってはかなり重要なことであると判断したので、「皇統を守る国民連合の会」のサイトに掲載されたものをリライトした。

国連女子差別撤廃委員会でスピーチを行った葛城奈海氏

葛城奈海氏が国連女子差別撤廃委員会でスピーチを行ったことは、非常に重要な意義を持つ。彼女は、日本の皇統が男系男子によって受け継がれてきた歴史的意義を強調し、国際社会における批判に対して反論した。このことは、日本の伝統と文化を守るための明確な姿勢を示すものであり、内政に対する不当な干渉を拒むべきであるという信念を反映している。

現代において、皇統の重要性はますます高まっている。皇室は日本の象徴であり、国民のアイデンティティや文化的な根源を体現する存在である。国際的な舞台で、皇統の価値を主張することは、日本の伝統を守るために不可欠である。

皇位継承が男系男子に限定される理由は、長い歴史の中で築かれてきた日本の文化的背景に根ざしている。これを軽視することは、我々の文化や歴史を軽視することに他ならない。

神武天皇画

また、国際社会においては、多様な文化や伝統が存在し、それぞれが尊重されるべきである。ローマ法王やイスラム教の指導者、ダライ・ラマが男性であることが問題視されないのに、日本の皇位継承だけが女性差別とされるのは、実に不公平なことである。文化の多様性を理解し、尊重する姿勢こそが、国際的な理解を深める鍵となる。

このような背景から、日本政府は、国際社会に対して一貫して日本の伝統文化を尊重する姿勢を示すべきである。無用な外圧に対しては毅然とした態度で臨み、我が国のアイデンティティを守るためにあらゆる手段を講じることが重要である。特に、国際的な場での発言は慎重に行い、日本の伝統が持つ価値を正当に評価されるよう努力するべきである。

さらに、「皇統を守る国民連合の会」の活動は、現代日本において非常に重要な役割を果たす。彼女たちが着物姿で国際の舞台に立つことは、日本の美と精神を体現し、世界にその重要性を訴えるための象徴的な行動である。このような活動は、日本の伝統を維持し、次世代に引き継ぐために必要不可欠なものである。

連綿と続く日本の皇統

皇統は、未来を生きる日本人にとっても重要な存在である。我々がこの伝統を尊重し、守り続けることは、将来の日本が誇りを持てる国であるための土台となる。皇統は、単なる制度の維持にとどまらず、日本の精神文化を支える大きな柱である。

我々は、この伝統を守るために、一丸となって行動し、次の世代に誇れる国を築く必要がある。これは、我々の義務であり、責任である。先人の志を継ぎ、皇統の未来を刻むために、共に立ち上がり、進むべきである。これは決して一時の運動ではなく、日本国国民一人ひとりが心に留めるべき、永遠の課題である。

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2024年10月20日日曜日

米極秘情報が流出か イスラエルの対イラン攻撃計画めぐり―【私の論評】イスラエルのイランへの報復攻撃、石油生産施設・核関連施設は避けるか

米極秘情報が流出か イスラエルの対イラン攻撃計画めぐり

まとめ
  • イスラエルの対イラン攻撃計画極秘情報の流出が確認され、米当局が深い懸念を示している流出した文書は2件あり、「ファイブ・アイズ」の「最高機密」とされるものだ。
  • 文書にはイスラエルの攻撃準備状況、武器弾薬の移動、空対地ミサイル演習の詳細が記されている。
  • イスラエルの核兵器使用計画の兆候はないとされているが、これは暗に同国の核保有を示唆すしている。
  • 流出の経緯は不明だが、ハッカーの仕業か意図的な流出の可能性がある。
  • この事態はイスラエルの強い反発を招く可能性があり、米当局は捜査を進めているが、FBIはコメントを控えている。

イスラエルの対イラン攻撃計画に関する米政府の極秘情報が流出し、当局が捜査を進めている

米政府の極秘情報がインターネット上に流出し、イスラエルの対イラン攻撃計画の詳細が明らかになった。この情報は複数の関係者によって確認され、米当局者は深い懸念を表明している。

流出した文書は2件あり、「ファイブ・アイズ」の「最高機密」とされるものだ。これらはSNS「テレグラム」上の「中東の観測者」というアカウントに投稿された。文書にはイスラエルの攻撃準備状況、武器弾薬の移動、空対地ミサイル演習の詳細が記されている。

特筆すべきは、イスラエルがイランに対して核兵器使用を計画している兆候はないとの記述だ。これはイスラエルの核保有を暗に示唆しているが、同国はこれまで公式に核保有を認めていない。

この情報流出に対し、米当局は捜査を進めているが、FBIはコメントを控えている。専門家は、この事態がイスラエルの強い反発を招く可能性を指摘している。流出の経緯は不明だが、ハッカーの仕業か意図的な流出の可能性が考えられる。この事件は中東情勢と国際関係に重大な影響を与える可能性がある深刻な問題として注目されている。

この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になって下さい。

【私の論評】イスラエルのイランへの報復攻撃、石油生産・核関連施設は避けるか

まとめ
  • イスラエルは、イランの「誠実な約束2」作戦による弾道ミサイル攻撃に対して、大規模な報復攻撃を数日内に実施する可能性が高い。
  • 攻撃対象は、イランの戦略的施設(石油生産施設や核関連施設など)が考えられるが、これには米国が戦火の拡大を招く可能性があり難色を示している。
  • そのためイスラエルの反撃は、軍事基地や革命防衛隊の拠点を狙い、最新鋭の兵器を使用して民間人の犠牲がすくなく、イランの攻撃能力を大きく削ぐような攻撃目標を選ぶだろう。
  • イスラエルは公式には核兵器の保有を認めても否定もしていないが、これを攻撃に使うこととはないだろう。
  • イスラエルは、国際社会との関係を損なわないことと、イランとの総力戦にならないように、バランスを取るため時制的な攻撃をするとみられるが、引き続き注視すべきである。

イスラエル国防軍カラカル大隊(Caracal Battalion)、所属兵士の約7割が女性となっている。

イスラエルがイランに対する大規模な直接報復攻撃を実行するのは、もはや時間の問題である。緊迫した状況を考慮すると、この攻撃は数日中に発生する可能性が非常に高い。イランが「誠実な約束2」と名付けた軍事作戦で、2024年10月1日に約180発の弾道ミサイルをイスラエル本土に撃ち込んだ。攻撃の対象はテルアビブや南部のネバティム基地、そしてディモナの核施設であり、これに対してイスラエルが黙っているわけがない。

イランの攻撃は、イスラエルにとってまさに挑戦である。この事態に対する報復が必要なのは明らかだ。では、イスラエルの反撃はどのような形を取るのか?攻撃の標的として考えられるのは、イランの戦略的に重要な施設である。特に、イランの経済の命脈を握る石油生産施設や、エスファハーンの核関連施設が注目される。しかし、問題はここからだ。イスラエルにとって、これらの施設を攻撃することがどれほど効果的であっても、米国が強く反対していることは無視できない。

米国がこれほどまでに反対する理由は明白だ。もしイスラエルがイランの石油施設を攻撃すれば、湾岸地域全体の不安定化と原油価格の急騰が避けられない。これによって世界経済にも波及効果が及ぶことは明らかだ。さらに、イランが報復としてアラブ産油国の施設を攻撃する可能性も考慮しなければならない。核関連施設の攻撃もイランの大反発を招く可能性が高く、中東全体が戦火に包まれることを避けたいというのが、米国の本音であろう。

バイデン米大統領

では、イスラエルの攻撃対象は具体的にどこになるのか?ここで焦点が絞られるのが、イランの軍事施設だ。軍事基地、ミサイル発射施設、革命防衛隊の拠点、通信・指揮系統の施設などが主要なターゲットになるだろう。これらの施設を破壊することで、イランの攻撃能力を削ぎ、将来の脅威を根本から断つ狙いがある。特に革命防衛隊の司令官や軍の高官を標的とすることで、イランの指揮系統に混乱をもたらすことを目指すだろう。

イスラエルは、これらの攻撃を実行するために、ミサイルはもとより最新鋭のF-35戦闘機、精密誘導兵器、そしてドローン技術を駆使することになるだろう。複数の標的を同時に叩き、イランの防空網やレーダー施設を一気に無力化することが目的だ。イスラエルの軍事技術と戦術のレベルから考えて、これが成功する可能性は高い。

ただし、ここで見逃せないのが核の問題である。イスラエルは公式には核兵器の保有を認めても否定もしていないが、専門家の見解では約80発の核弾頭を保有していると推定されている。しかし、現時点でイスラエルが核兵器を使用する段階にあるとは考えにくい。なぜなら、核兵器の使用は国際社会からの激しい非難を引き起こし、自国にも深刻な地理的リスクをもたらす可能性があるからだ。核はあくまで最後の手段であり、主に抑止力として存在しているに過ぎない。

また、米国をはじめとする同盟国の圧力も無視できない要素である。イスラエルが核のカードを切れば、国際的な非難だけでなく、同盟関係にも亀裂が生じる可能性がある。加えて、現状ではイスラエルの通常兵器が非常に強力であるため、核兵器に頼らずともイランに対する有効な軍事行動が可能だ。

結局のところ、イスラエルのネタニヤフ首相が選ぶ道は、軍事施設や革命防衛隊の関連施設を徹底的に叩くことであろう。この選択は、国際社会の反応を見ながらも、イランの軍事力を確実に削ぐための最善の策であると言える。

ネタニアフ首相

しかし、攻撃の影響はイスラエルだけにとどまらない。攻撃によって引き起こされるイランの報復行為は、さらに地域の緊張を激化させる可能性が高い。そのため、イスラエルは、報復の規模と内容を慎重に考慮し、国際社会との関係を損なわないようなバランスを取る必要がある。結果的に、イスラエルは攻撃の計画を立てつつも、自己抑制を保つことが求められるだろう。

このように、イスラエルの報復攻撃がもたらす影響は非常に大きい。中東地域の安定と国際秩序に直結する問題であるため、国際社会は緊張感を持ってこの動きを見守るべきである。報復攻撃がどのように展開され、またそれに対するイランの反応がどのようなものになるのか、事態の推移は非常に重要な意味を持つ。

最後に、情報の流出に関しては、未だその意図や背景は明らかになっていないため、具体的な評価は難しい。しかし、イスラエルは「核の曖昧性」政策を維持し、核兵器を保有する一方で、その使用は国際情勢における最終手段であるという立場を崩さないだろう。この現状が、イスラエルのイランに対する報復攻撃の計画にどう影響するのか、引き続き注目が必要であるが、それほど大きいとは思えない。

数日中に示された軍事目標に向けた報復攻撃が行われるのは間違いない。それがどのように展開され、国際社会がどのように反応するのか、我々は注視していく必要がある。

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2024年10月19日土曜日

いきなり危険水域〝28%〟石破内閣支持率 時事通信調査 森喜朗内閣下回る「何かの間違いかと…発足直後で政権末期レベル」―【私の論評】石破内閣の崩壊と岸田総裁再登場の可能性

いきなり危険水域〝28%〟石破内閣支持率 時事通信調査 森喜朗内閣下回る「何かの間違いかと…発足直後で政権末期レベル」

まとめ
  • 石破茂内閣の支持率が28%で、「危険水域」に入る低さを示し、永田町に衝撃を与えている。
  • 衆議院選挙の中盤で、自民党が単独過半数を割る可能性が指摘されている。
  • 石破首相の政策や人事への批判、特に安倍元首相への厳しい態度が支持率低下に影響している。
  • 石破首相は大型補正予算編成や物価対策を強調する一方、党内の意見収拾に苦慮している。
  • ジャーナリストの分析では、早期解散の決定が失望を招き、衆院選の結果次第で更なる厳しい局面に直面する可能性がある。


 時事通信の調査で、石破茂内閣の支持率が28%と、発足直後から「危険水域」に突入したことが永田町に衝撃を与えている。衆議院選挙が中盤を迎える中、報道各社の情勢調査では、自民党が単独過半数を割る可能性が指摘されている。石破首相の「変節」や安倍晋三元首相を「国賊」と罵倒した人物の入閣などが影響していると見られる。

 自民党ベテラン議員は、調査結果に驚き、「旧安倍派を切り捨てた反動」だと述べ、党内外の不満が広がったことを示唆した。調査は全国の18歳以上の2000人を対象に実施され、内閣発足直後の支持率としては過去最低を記録している。

 同様に、日経新聞・テレビ東京の緊急調査でも内閣支持率が低く、石破首相の早期解散決定が批判されている。石破首相は長野市で物価対策を強調する演説を行ったが、党内の意見を収拾しながらの難しい舵取りを求められている。

 ジャーナリストの鈴木哲夫氏は、石破首相の早期解散が失望を招き、党内基盤の弱さが表面化したと指摘。衆院選の結果次第では、石破首相はさらに厳しい局面に直面する可能性があると分析している。

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【私の論評】石破内閣の崩壊と岸田総裁再登場の可能性

まとめ
  • 現状の低支持率により、石破内閣は来年の参院選まで持たない可能性が高く、解散も党内外から強い反発を呼んでいる。
  • 石破の最大の問題は党内基盤の弱さであり、政策決定や人事で統制が取れず、支持率が低下している。
  • 国民の政治への信頼が失われ、特に石破内閣に対する不信感が強まっている。閣僚の資金管理問題やスキャンダルも信頼性を損なわせている。
  • 次の総裁候補には高市早苗が浮上するが、財務省は彼女を阻止すべく岸田を支持するだろう。
  • 石破内閣の崩壊はほぼ確実で、岸田が再び総裁に選ばれる可能性が高いが、高市氏を含む積極財政を唱える政治家の台頭がこれからも有り続けるだろう。

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現状の支持率の低さを考えると、石破茂内閣が来年の参議院選挙まで持たない可能性が高い。発足直後から支持率が低迷していることは、政権の安定性への信頼を揺るがし、早々に石破首相が解散を決断したのも、無理もない。しかし、この解散自体が党内外からの強烈な反発を呼び、石破の政策やその政治姿勢に対する失望感を一層深める結果となっている。

石破の最大の問題は、党内基盤の脆弱さにある。新たな政策決定や人事においても、党内の意見をまとめることができず、統制が取れない。そのため、内閣の安定性がどんどん揺らぎ、支持率の低下に歯止めがかからない。特に、政策のブレや自民党の路線からの逸脱が、党内外からの批判を呼び寄せているのは致命的だ。

さらに、国民全体に広がる政治不信も石破内閣の存続を脅かす要因だ。今や政治全体への信頼が地に落ちている中、どの政権が立とうと厳しい審判を免れないが、石破内閣に対する不信感は特に強い。発足直後から政権の危うさが見え隠れしているのは、その象徴だろう。

そこへきて、最近のSNS投稿や報道で明らかになったのが、石破内閣に絡む「政治とカネ」の問題だ。閣僚の資金管理の不手際や親族のスキャンダルが次々と露呈し、信頼性がどんどん失われている。これでは、内閣の信用失墜は避けられない。これらの問題が続発すれば、来年の参議院選挙まで持たない可能性がますます強まる。

これらの要素を踏まえると、石破内閣が参院選まで生き残ることは厳しい。支持率の低さ、党内外からの批判、政策の迷走、さらにはスキャンダル問題が追い打ちをかけ、政権はもはや崩壊寸前といえるだろう。

さて、問題はポスト石破だ。次の総裁候補として真っ先に名前が上がるのは高市早苗だが、彼女がスムーズにトップに立てるかというと、そう単純ではない。ここで忘れてはならないのが、日本政治に深く絡む財務省の存在だ。総裁選にすら強い影響を与えたと見て間違いない。


高市早苗は積極財政と金融緩和を訴え続けた政治家だ。当初は泡沫候補扱いだったが、総裁選が進むにつれて勢いを増し、有力候補として浮上した。しかし、財務省にとってこれは大いに不都合だった。長年、安倍政権や菅政権が行ってきた経済政策に不満を抱いていた財務省は、高市が総裁になることを阻止すべく、岸田に「高市だけは絶対に総理にさせるな」と強く働きかけた可能性が高い。

その結果、岸田は石破を擁立し、高市を封じ込める作戦に出たと考えられる。石破と岸田は、高市を阻止するという一点で手を結び、安倍派の影響を排除するために暗躍したと言っても過言ではない。この動きが財務省の影響下にあったことは、容易に想像がつく。

さらに、財務省が次に期待を寄せているのが「コバホーク」、つまり小林鷹之の存在だ。彼は財務省にとって、新たな経済政策を推し進める上で都合の良い駒としての期待が高い。小林が総裁候補として浮上すれば、財務省の望む増税路線をさらに確実に進める可能性もある。小林鷹之が持つ柔軟な政治姿勢と、財務省出身であることがその理由だ。しかし、未だ経験が少なく、知名度も低いという難点もある。さらに、小林氏が財務省と同じく緊縮財政を志向するかどうかは不透明である。

麻生太郎の存在も無視できない。高齢にもかかわらず、彼の政治的影響力は未だ健在であり、党内での存在感も依然として強い。しかし、自らが再び総裁を目指すことは考えにくく、むしろキングメーカーとして、影から総裁選に影響を与える立場を続けるだろう。

財務省との長い結びつきから、麻生は財務省寄りの政治家を支援し、高市のような積極財政派を徹底的に封じ込める動きをとる可能性はある。ただ、現状では総裁になり得る人物の持ち駒が不足している。河野太郎は、麻生派だが、今回の総裁では沈んてしまい、今後復活する見込みは低い。ただ、今回の総裁選では、結局岸田旧派閥が麻生派に勝った形となっているため、麻生氏が今後どのように動くかは見えないところがある。

菅義偉氏は今回の総裁選では、小泉進次郎氏を強く推したが、小泉は当初は優勢だったものの、その後勢いを失い、結局総裁選の決勝選には残ることができなかった。


他の総裁選候補者は、すべて泡沫といってもよい状況だ。麻生・菅は強力なキングメーカーをめざしているようだか、もう総裁になりえる駒は両方とも不足しているといって良い状況だ。

こうした状況で、ポスト石破として再び浮上する可能性が最も高いのは岸田だ。財務省にとっても、石破に続いて増税路線を踏襲する岸田ならば、彼を後押しするのは理にかなっている。

来年の参院選前に石破内閣が崩壊する可能性は極めて高い。しかし、その後の総裁選でも、最終的に高市対岸田の戦いになり、再び岸田が総裁に選ばれる展開もあり得るだろう。我々保守派としては、まだまだ予断を許さない状況が続きそうだ。

しかし、唯一の希望は、たとえ石破内閣が倒れても、岸田が総裁に返り咲いたとしても、高市のような強力な政治家が完全に排除されることはないという点だ。財務省がどれだけ画策しようと、高市氏を含め積極財政を唱える者たちが再び台頭してくる可能性は残っている。

結局、岸田や彼に近い政治家が総裁に就いたとしても、その基盤は脆弱で、強固な支配体制を築くことは難しいだろう。財務省と対峙しながらも、安倍氏のような経済政策をとることが結果として政権を安定させ憲政史上最長の政権を築いたという現実は無視できない。

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2024年10月18日金曜日

空母にそっくりで大騒ぎに発展した、自衛隊所有の「ざんねんな乗り物」の名前…なにかと風当りも強かった―【私の論評】おおすみ型輸送艦の実力と日本の防衛戦略の未来

空母にそっくりで大騒ぎに発展した、自衛隊所有の「ざんねんな乗り物」の名前…なにかと風当りも強かった

まとめ
  • 「おおすみ」型輸送艦は空母に似た外観から誤解され、正当な評価を得られず「残念な乗り物」として扱われることがあるが、実際には固定翼機の運用はできない設計である。
  • その広い甲板とヘリコプター運用能力により、物資の輸送や揚陸作戦で優れた性能を発揮できるが、航空戦には不向きである。
  • 「おおすみ」型の本来の機能や活躍が過小評価されているため、正しい理解と評価を促すPRが必要である。

おおすみ型輸送艦と、エアクッション型揚陸艇(LCAC)(手前)

「おおすみ」型輸送艦は、その登場時に海上自衛隊が「ついに空母を保有したのか」と多くの人々に誤解され、大きな話題となった艦船だ。外見上の特徴として、艦首から艦尾までがフラットな全通式の甲板と、アイランド型と呼ばれる右端に配置された艦橋構造物が、第二次世界大戦中の空母に似ていたために、このような誤解を招く結果となった。しかし実際のところ、「おおすみ」型の甲板はヘリコプターの発着に対応しているだけで、戦闘機やその他の固定翼機を運用する設計にはなっていない。

このため、固定翼機を運用する空母とみなすことは無理があるが、「おおすみ」型の広い甲板は物資の輸送やヘリコプターの発着といった任務において優れた利便性を提供している。それにもかかわらず、そのシルエットや外観が原因で誤解され、正当な評価を受けることなく批判にさらされることが多く、その期待に十分に応えられなかった「残念な乗り物」として扱われている面がある。

拙著書籍『ざんねんなのりもの事典』では、このように優れた性能や可能性を持ちながらも、時代のニーズや世間の期待とズレてしまった乗り物を多く紹介している。「おおすみ」型もその一例として挙げられており、登場時には高い期待を寄せられたものの、その後の誤解や手のひら返しにより、正当な評価がなされていない。実際に軍艦の知識が少しでもある人であれば、「おおすみ」型で航空戦を展開することが無謀であることは明らかだろう。

「おおすみ」型は本来の性能と役割をもっとPRされて評価されるべきだとされ、無理解な批判を受け流し、真に評価されるための専守防衛の姿勢を持つべきだ。

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【私の論評】おおすみ型輸送艦の実力と日本の防衛戦略の未来

まとめ
  • 「おおすみ」型輸送艦は設計上、空母としての機能を果たせない。固定翼機の運用に必要な設備がないため、空母として扱うのは無理がある。
  • 一方で、ウェルドックやヘリコプターの発着能力を持ち、強襲揚陸艦としての機能は備えているため、その役割を果たすことが可能である。
  • 日本は「専守防衛」の原則に縛られているため、空母や強襲揚陸艦を建造することに対して国内の抵抗が強い。
  • 近年の安全保障環境の悪化により、「いせ」や「かが」の軽空母化が受け入れられ、防衛力の強化が必要とされる流れがある。
  • 日本は今こそ、防衛戦略を進化させ、より強力な防衛力を持ち、国の独立と安全を守るための決断をするべき時を迎えている。
巨大輸送船「おおすみ」の甲板

「おおすみ」型輸送艦を空母とみなすのは、どうしても無理がある。その理由は明白だ。設計そのものが根本的に違うからである。「おおすみ」型は、兵員や車両の輸送および揚陸作戦を主目的とした艦であり、空母のような固定翼機を運用するために作られたわけではない。空母とは、航空機の運用にすべてを捧げた存在だ。広大な飛行甲板、カタパルト、アレスティング・ギア、格納庫、整備施設、燃料供給設備に至るまで、すべてが航空戦力を最大限に発揮するために設計されている。「おおすみ」型には、そうした装備はどこにも見当たらない。

たしかに、F-35BのようなVTOL(垂直離発着機)を使えば、固定翼機の運用も理論的には可能だろう。しかし、それはあくまで「限定的な可能性」にすぎない。空母とは違い、「おおすみ」型には航空機の格納や整備、燃料補給などを行うための設備が充実しておらず、継続的な航空運用は困難を極める。また、空母には通常、航空機を守るための強力な防空システムと武装が求められるが、「おおすみ」型は軽武装であり、自衛力が限られている。空母としての役割を果たすには、圧倒的な防空能力が不可欠だが、それをこの艦に期待するのは無理な話だ。

しかし、一方で「おおすみ」型を強襲揚陸艦として見なすことには、一定の説得力がある。この艦にはウェルドックが装備され、エアクッション型揚陸艇(LCAC)の運用が可能である。ウェルドックとは、艦内部に設けられた乾ドックで、注水・排水が自在に行われ、上陸用舟艇の迅速な発進を支援する機能を持つ。これにより、兵員や装備を迅速に上陸させることができ、揚陸作戦の展開速度が飛躍的に向上する。

「おおすみ」のウェルドック

「おおすみ」型はさらに、ヘリコプターの発着能力を備えているため、ヘリボーン作戦にも対応可能である。これらの機能を考慮すれば、揚陸艦としての役割を担うには十分な資質を持っていると言える。確かに、強襲揚陸艦と比較した場合に限定的な武装や防空能力の面では劣るが、その揚陸および兵員輸送能力の点では、相応の役割を果たすことができるだろう。

問題は、日本の国防政策が長らく「専守防衛」の原則に縛られてきたことだ。だからこそ、空母や強襲揚陸艦を自ら建造することに対して、日本国内では強い抵抗がある。しかし、ここで注目すべきは、「いせ」や「かが」のように、ヘリコプター搭載護衛艦を軽空母に改装する動きが比較的スムーズに受け入れられたという事実だ。この背景には、急速に悪化する日本の安全保障環境が存在している。

中国の軍事的拡張や北朝鮮のミサイル開発が現実の脅威として迫る中、日本はもはや、旧来の防衛戦略だけでは対処できない状況に直面している。「いせ」や「かが」の軽空母化が受け入れられたのは、防衛力の強化が必要不可欠だという認識が広まったからにほかならない。これにより、日本は国際社会からも柔軟な防衛姿勢を求められ、防衛の「現実路線」を進むことに対する理解が得やすくなっている。


だからこそ、「おおすみ」を強襲揚陸艦へと改修するという選択肢が、将来的に排除されるべきではないという議論が生まれても不思議ではない。だが、そのためには日本国民自身が、専守防衛の枠を超えた新しい防衛戦略を受け入れる覚悟が必要だ。これは単なる軍事装備の問題ではなく、国家の未来と独立を守るための決断である。

同盟国、特に米国は、日本が強力な防衛力を持つことを期待している。今こそ、日本が「守り手」から「攻めの盾」へと進化する時なのだ。我が国は平和を守るために立ち上がり、自由と安全を確保するために、さらなる防衛力強化を進めるべき時を迎えているのだ。専守防衛に甘んじていては、日本の未来を切り開くことはできない。今こそ、日本が真に独立した国として、自らの手で運命を切り拓く時が来たといえる。

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2024年10月17日木曜日

アングル:中国のミサイル戦力抑止、イランによるイスラエル攻撃が教訓に―【私の論評】イスラエルへのミサイル攻撃の教訓:台湾防衛の現実と課題

アングル:中国のミサイル戦力抑止、イランによるイスラエル攻撃が教訓に

まとめ
  • イランのイスラエルに対する大量のミサイル攻撃は、米国とその同盟国のミサイル迎撃体制の課題を浮き彫りにし、現状の防衛システムの効力と限界を示唆している。
  • イランの攻撃を通じて、米国は中国のミサイル攻撃がイランのものより迎撃が困難であり、防御に加えて反撃能力の必要性があることが明らかになったといえる。
  • 従来の防御中心の抑止力だけでは不十分であり、懲罰的抑止力を重視する必要がある。
  • 中国のミサイルは高度で、長射程や精密誘導の能力を備えており、インド太平洋地域における米国とその同盟国の防衛体制にとって重大な脅威となっている。
  • 米国はインド太平洋地域で新たなミサイルシステムや兵器を配備しており、中国の対衛星攻撃やサイバー戦といった複合的な攻撃に対する防衛力を強化しようとしている。

ミサイルを迎撃するイスラエルの対空防衛システム「アイアン・ドーム」

イランが今月イスラエルに対して行った大量のミサイル攻撃は、4月の同様の攻撃と合わせて、インド太平洋地域における中国との潜在的紛争に関して、米国とその同盟国のミサイル防衛体制の効果と弱点を示唆している。複数のアナリストによれば、両シナリオには差異があるため得られる教訓は限られるものの、イランがイスラエルに向けて発射した400発近いさまざまなタイプのミサイルは、米中両国にとって重要な情報を提供している。

10月1日のイランによる攻撃は、近代的な防衛システムに対する弾道ミサイルによる攻撃として、これまでで最も多いサンプルを提供した。シンガポールのS・ラジャラトナム国際学院のコリン・コー氏は、米政府にとっての最大の教訓として、中国によるミサイル攻撃はイランに比べて迎撃が困難であり、大規模攻撃を阻止するには反撃能力が必要になる可能性を指摘している。コー氏は、純粋な防御による抑止力だけでなく、懲罰的抑止も重要になると述べている。

インド太平洋地域でのミサイル攻撃を伴う紛争の即時発生の懸念は低いが、中国の兵器はイランよりも高度で、機動式弾頭と精密誘導を採用している。米国は中国に対抗するため、インド太平洋地域で新たな兵器開発・配備を進めている。

米カーネギー国際平和財団のアンキット・パンダ氏は、イランの大量ミサイル一斉発射とその迎撃に関する情報が充実することで、紛争の可能性が低下する可能性を指摘している。パンダ氏は、ミサイル防衛システムの効果が不明確な場合、大幅なエスカレーションにつながる危険性を警告している。

イスラエルは多層的な防空・ミサイル防衛を展開しているが、インド太平洋地域における米国とその同盟国の状況は大きく異なる。米国側は「パトリオット」、THAAD、イージスシステムなどを使用している。中国のミサイル、特に東風26と東風21は、インド太平洋地域における米国及びその同盟国のほとんどの目標を攻撃可能で、高い精度を持つ。

戦略国際研究センターのミサイル防衛プロジェクトでは、中国が最も多く保有する通常型中距離弾道ミサイル「東風(DF)26」の命中精度を半径150メートルと推定している。また東風21は最大射程こそ劣るが、一部の改良型は50メートルの精度を誇る。米国防総省は、中国は東風26を数百発保有している可能性があると推測している。

対照的に「ファタハ1」などイランが使用するミサイルは、理論上は数十メートル以内と命中精度には優れるが、最大射程ははるかに短い。ケネス・マッケンジー米中央軍司令官は昨年、連邦議会において、イランはすべての種類を合わせると3000発以上の弾道ミサイルを保有していると証言した。

オーストラリア戦略政策研究所のマルコム・デービス上級アナリストは、中国の能力がイランを上回っていると指摘し、ミサイル攻撃が対衛星攻撃やサイバー戦争と連携して行われる可能性を示唆している。デービス氏は、インド太平洋地域における西側の防衛システムが中国の大規模ミサイル攻撃を撃退するのは、イランの攻撃に対する防衛よりもはるかに困難になると予測している。

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【私の論評】イスラエルへのミサイル攻撃の教訓:台湾防衛の現実と課題

まとめ
  • イランのイスラエルへのミサイル攻撃からみて、中国の大規模ミサイル攻撃に対する台湾の防衛は極めて困難であり、完全な防御は現実的ではない。
  • 台湾は多層防衛システムや国産ミサイル開発を進めているが、中国の圧倒的な軍事力に対抗するには不十分である。
  • 台湾の戦略は完璧な防御ではなく、攻撃を遅らせ国際社会の介入を呼び込む時間を稼ぐこと、および中国への攻撃コストを高めることに焦点を当てている。
  • 日米の強固な連携と明確な軍事介入の意思表示、経済制裁の準備が台湾防衛には不可欠である。
  • 現在の日本の政治家は安全保障問題に真剣に取り組んでおらず、北朝鮮、中国、ロシアに囲まれた現実を直視し、国家戦略を議論する必要がある。
専門家たちの意見をまとめると、現実は厳しい。「中国による大規模なミサイル攻撃は、イランの攻撃を防ぐよりも遥かに難しい。ミサイル防衛システムの効果が不確かならば、迅速なエスカレーションを招く恐れがある。こうした状況下では、ただの防衛だけでなく、懲罰的抑止の概念も必要になってくる」というのが、総じての見解だろう。

中国軍が訓練で発射した大陸間弾道ミサイル(ICBM)=9月25日

この難題を、台湾を例にして考えてみよう。台湾が中国の大規模ミサイル攻撃を受けた場合、その迎撃には並々ならぬ困難が伴う。台湾は現在、防衛システムの強化を急ピッチで進めている。だが、それが中国の圧倒的なミサイル攻撃に対抗するためにどれだけ有効なのか、疑問が残る。

とはいいながら、台湾は短距離から長距離まで多様なミサイルを組み合わせた多層防衛システムを導入しており、「天剣III」や「天弓III」などの国産ミサイルの開発が進展している。これにより、台湾の防衛力は確かに向上している。しかし、このシステムが中国の大規模ミサイル攻撃に完全に対抗できるかというと、それは難しい現実だ。中国は圧倒的な数のミサイルを有しており、台湾の防御を突破することは決して不可能ではない。

さらに、台湾は中国のミサイル発射をいち早く察知するために、山岳地帯に強力なレーダー基地を配置し、早期警戒システムを整えている。だが、いくら事前に察知したところで、数百発にも及ぶミサイルの飽和攻撃を防ぎきるのは極めて困難である。中国の軍事技術は日々進化し、台湾のシステムの脆弱性を突いてくるだろう。

結論として、台湾の防衛システムは年々改善されているものの、中国の圧倒的な軍事力に完全に対抗するのは難しい。しかし、これらのシステムは攻撃を遅らせ、国際社会の介入を呼び込む時間を稼ぐための重要な役割を果たす。台湾の防衛戦略は、完璧な防御ではなく、相手にコストを強いることで抑止力を高め、戦局の主導権を握ることに焦点を当てている。

次に、台湾の懲罰的抑止力に焦点を移そう。台湾は長距離ミサイル「雄風2E」や「雲峰」を開発し、中国本土の主要都市や軍事施設を攻撃する能力を持っている。これらのミサイルは台湾の懲罰的抑止力の柱となり、中国に対して強力な威嚇材料となっている。また、2026年までに「天弓III」を12の発射施設に配備する計画も進行中であり、これにより台湾の防衛能力は一層強化されるだろう。

こうした防衛強化に加えて、台湾は地理的にも戦略的なアドバンテージを持っている。中央山脈に設置されたレーダー基地は、中国本土の深部まで監視可能であり、敵の動きをいち早く察知できる。こうした情報戦の強化は、台湾が中国の攻撃に対して迅速に対応するための鍵となる要素である。さらに、このブログでは何度か述べきたが、台湾は天然の要塞といっても良い地形であり、これを侵攻するのはいずれの国の軍隊も困難を極める。

日本でいえば、台湾は能登半島のような急峻な地形であり、さらに能登半島よりも急峻であり、しかも台湾は半島ではなく、島嶼である。能登半島に物資を人力で運ぶ姿をテレビ報道で見た人も大勢いるだろう。中国の軍隊も台湾では、あのような戦いを強いられるのである。

米国も、大東亜戦争末期に日本領であり、軍事的にも重要であったはずの台湾に侵攻していない。これは、かなりの犠牲が強いられることが、最初から分かりきっているので意図的避けたのであろう。賢い選択だったといえる。このようなことが、台湾の軍事的な立ち位置を高めているともいえる。このあたりが日本では、ほとんど理解されいないようなので、そのような方で興味のあるかたは、是非ともこのブログの他の記事を読んでほしい。下の【関連記事】のところに、URLを貼り付けてあるので、是非御覧ください。

急峻な台湾の地形 最高峰の玉山(新高山)は富士山より高い

しかしながら、中国との軍事力の差は依然として大きい。中国の急速な技術革新と圧倒的な戦力の前に、台湾への侵攻自体は難しいものの、台湾の国土が破壊を免れるのは難しい。台湾の戦略は、中国の台湾への攻撃を高コスト化し、国際社会の支持と介入を引き出すことにあるのだ。中国にとって台湾の国土破壊がどれほどのリスクを伴うかを認識させることこそ、真の抑止につながる。

そしてここで、ウクライナ戦争が我々に突きつけた現実を無視するわけにはいかない。ロシアは未だ戦争目的(それすら曖昧になりつつある)を果たせないまま、日々ウクライナにミサイルを撃ち続け、その国土を破壊し続けている。もし台湾が同じような状況に陥ったらどうなるのか。中国が台湾にミサイルを発射し続ける光景は、決して非現実的なシナリオではない。実際のところ、台湾がウクライナのような状態に追い込まれる可能性も十分にあり得る。さらに、現在のウクライナのように戦争が泥沼にはまり、長期になる可能性もある。

ロシア軍のミサイルで破壊されたキーウの郊外

このような事態を避けるためには、日米の強固な連携が不可欠だ。中国に対して、台湾の国土破壊のコストが高すぎることを明確に伝える必要がある。日本と米国は軍事介入の意思を明確にし、台湾周辺の防衛体制を強化しなければならない。特に、日本の南西諸島への自衛隊の配備や、米軍の前方展開の強化が求められる。また、台湾の防衛力を高めるために最新の防衛技術や装備の提供も急務だ。非対称戦力の強化を支援し、台湾の防御を強固なものにする必要がある。

経済制裁の準備も抜かりなく進めるべきである。中国が台湾を攻撃した場合、即座に発動できる制裁措置を整え、中国にその代償の大きさを思い知らせるべきだ。また、サイバー攻撃や偽情報キャンペーンにも対応できる体制を構築し、情報戦においても中国に優位を渡さないようにするべきだ。

これらの措置は短期的には地域の緊張を高めるかもしれないが、長期的には台湾海峡の安定とアジア太平洋地域の平和を守るための最善の策である。台湾の中国に対する懲罰的抑止力と、防衛力の強化、そして明確な日米の姿勢が、中国に対して侵攻のコストを高くする最も有効な手段となるだろう。

現状、日本国内の政治家たちは衆院選を控えても、こうした重大な安全保障問題に真剣に取り組んでいるとは言いがたい。まるで、イランによるイスラエル攻撃などなかったかのようである。北朝鮮、中国、ロシアという三つの全体主義国家に囲まれている現実を直視し、安全保障のあり方を真剣に議論する必要がある。今こそ、政治家たちは「裏金」や「統一教会」問題に目を奪われず、日本の未来を見据えた国家戦略を語るべきだ。日本も台湾も、そして地域全体も、平和を守るためには現実と向き合い、備えを怠らないことが求められるのだ。

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2024年10月16日水曜日

ハリス氏の“意味不明発言”をCBSが“差し替え” インタビューに応じるも逆効果に?「まさにフェイクニュース!」トランプ氏猛反発―【私の論評】カマラ・ハリスの言葉の迷宮:ワードサラダとその政治的影響

ハリス氏の“意味不明発言”をCBSが“差し替え” インタビューに応じるも逆効果に?「まさにフェイクニュース!」トランプ氏猛反発

まとめ
  • カマラ・ハリス副大統領がCBSテレビのインタビューで意味不明な発言をし、その部分が「60ミニッツ」で異なる内容に差し替えられたことで、トランプ陣営から批判を受けている。
  • ハリス氏は対イスラエル政策に関する質問に答える中で、論理的な繋がりのない抽象的な表現を用い、視聴者から「言葉のサラダ」として非難された。
  • トランプ前大統領はこの差し替えを「フェイクニュース」と呼び、CBSに謝罪を要求した。彼は、編集が選挙資金違反の可能性があると指摘した。
  • ハリス陣営は、好意的なマスコミへの出演を増やす「電撃メディア作戦」を展開しているが、逆に「言葉のサラダ」を露呈してしまった。
  • CBSの編集による影響で、ハリス陣営の信頼性やCBSの報道姿勢が問われる事態となっている。


カマラ・ハリス米副大統領がCBSテレビのインタビューで発言した内容が、意味不明だと指摘された後、CBSはその部分をより分かりやすい発言に差し替えて放送し、これが選挙干渉だとしてトランプ陣営などから強い批判を受けている。

インタビューは、CBSの報道番組「フェイス・ザ・ネーション」で初めて放映されました。その際、ハリス副大統領が米国の対イスラエル政策に関する質問に答えた部分が「意味不明」だとされ、多くの視聴者からSNS上で「ことばのサラダ」だと非難された。「ことばのサラダ」とは、文法的には正しいものの意味が支離滅裂で理解しづらい発言を指す。ハリス副大統領は以前から「ことばのサラダ」の使い手として知られており、今回もその特徴が際立っていたことが問題視された。

その後、このインタビューが別の番組「60ミニッツ」で再放送された際には、問題となった発言部分が大幅に編集されて、より整然とした内容に差し替えられていた。この編集が行われたことで、映像の内容が最初に放送されたものと大きく異なることに視聴者や批評家からの指摘が相次いだ。

トランプ前大統領も、この件に対して激しく反発し、自身のSNS「トゥルース・ソーシャル」で「フェイクニュースだ」と強く非難した。彼は、「60ミニッツ」の制作者たちがハリス副大統領の発言を切り貼りして編集し、意味不明な発言を意図的に整えて報道したと主張し、これが選挙干渉にあたる可能性があると批判している。トランプ氏は、CBSがこの編集について説明し、国民に対して謝罪すべきだとも訴えている。

今回の編集に関して、CBS側からはその理由や意図についての公式な説明は出ておらず、透明性の欠如が批判をさらに強めている。ハリス副大統領は、選挙終盤に向けてメディア露出を強化している時期にあり、このインタビューもその一環だったとみられている。しかし、編集によって彼女の「ことばのサラダ」を排除したことが明らかになり、逆に批判を浴びる結果となってしまった

ハリス氏の発言が編集されることで、メディアが彼女を意図的に支援しているとの見方が広がり、特に保守系メディアやトランプ支持者からの強い非難を引き起こしている。これに対し、CBSのジャーナリズムに対する信頼性も問われる事態となっており、「フェイクニュース」としての批判がますます強まっている。

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【私の論評】カマラ・ハリスの言葉の迷宮:ワードサラダとその政治的影響

まとめ
  • ことばのサラダの定義: 文法的には正しいが意味が支離滅裂な発言を指し、カマラ・ハリス副大統領がその使い手として知られている。
  • 例示された文章: 一見すると政治的テーマに触れているが、論理的繋がりがなく、抽象的で具体性が欠ける内容。
  • 検索エンジンとの関係: ワードサラダはSEO対策として利用されたが、現在はスパムとして認識され、逆に評価を下げるリスクがある。
  • ハリスのレトリック: 彼女の発言は華やかだが中身がスカスカであり、リベラル派の主張を寄せ集めたようなものである。
  • リーダーの役割: リーダーは明快で率直な言葉で人々に訴えるべきであり、カマラ・ハリスのスタイルにはそれが欠けている。
word salad

皆さんは上の記事にもでてくる「ことばのサラダ」という言葉を知っているだろうか。 文法的には正しいが、意味がまったく分からない支離滅裂な発言を指す。カマラ・ハリス副大統領がこの「ことばのサラダ」の使い手として知られているのは、もはや驚きではない。今回も彼女の発言が「ことばのサラダ」として際立っていたことが批判の的となっている。

そもそも「ことばのサラダ」はWeb界隈で使われる用語で、英語では"word salad"という。例えば、「自由の権利が憲法に基づき実行される限り、国家の透明性は無限であり、社会主義的な理想が右傾化する現象は民主主義の相互依存性に依存している。すべての市民が集団的な平等性を維持するためには、インフレと人権の尊重が不可欠であり、グローバル経済における民族主義はエコロジカルな観点からも再分配的な義務を促進するべきである。」(無論これは、「ことばのサラダ」の事例として出したものであり、私の主張ではない)

この文章は、一見すると政治的なテーマに触れているようでありながら、実際には無関係な概念を混在させ、論理的な繋がりがない点が特徴だ。抽象的で曖昧な表現を多用し、それぞれの言葉の意味が具体的でないため、全体としての主張が見えない。

こうしたワードサラダは、検索エンジン最適化やコンテンツ量の増加を狙ったものだが、内容の乏しさから実際には何の情報価値も持たない。そのため、現在の検索エンジンではスパムと判断され、評価が下がることが多い。言葉の内容そのものは置いておいて、なにやら石破総理大臣や小池東京都知事の発言にも似たところがあるのではないかと感じてしまう。

ワードサラダが登場した背景には、検索エンジンを騙すという意図がある。昔の検索エンジンは、リンクの数でサイトの評価を決めていた。これを利用して、サイト運営者たちは自分のサイトにリンクを貼るためだけの専用サイトを量産(下の図)した。そこに必要だったのが「テキストの塊」で、内容の充実度などは二の次であった。ここで活躍したのがワードサラダだ。意味のない文章を大量に生成し、あたかも内容があるかのように見せかけたのだ。


しかし、検索エンジンも馬鹿ではなかった。アルゴリズムを進化させ、ワードサラダのような無意味な文章をスパムとして弾き出すようになった。現在、ワードサラダを使ってもSEO効果はゼロ。むしろサイトの評価を大きく下げるリスクがある。検索エンジンにスパムと認定されたサイトは、インデックスされず、検索結果からも完全に姿を消す羽目になるのだ。

カマラ・ハリスの発言も、このワードサラダと似たところがある。彼女のレトリックは華やかで耳障りのいい言葉を並べるが、中身はスカスカである。進歩的なフレーズを次々と口にするが、どれも本質的な政策には触れていない。まるでリベラル派の主張を一つの鍋でぐちゃぐちゃにかき混ぜたような、無味無臭のスープといったところだ。

小池東京都知事の外来語多用もワードサラダの一環か?

ハリス副大統領が選挙対策本部から言葉遣いや想定問答集の指導を受けているのは確かだ。しかし、それを自分の言葉として使いこなせず、ただの言葉の羅列になっているのが実情だ。トランプ元大統領が「60ミニッツ」でハリスの発言が意図的に編集されていると主張したのも、こうした背景が透けて見えるからだ。

リーダーはもっと腹を割って本音を語るべきである。政治的な言い回しや専門用語で煙に巻くのではなく、真っ直ぐで明快な言葉で人々に訴える必要がある。衆院選を間近に控えた日本でも、必要とされているのは、政治的な二枚舌ではなく、正直で率直な対話である。残念ながら、それがカマラ・ハリスのスタイルには見当たらないのである。

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2024年10月15日火曜日

最高裁の裁判官を国民がチェック 国民審査が告示、6人が対象―【私の論評】日本の未来を左右しかねない国民審査の重大な意義

最高裁の裁判官を国民がチェック 国民審査が告示、6人が対象

まとめ
  • 国民審査の告示: 10月15日に、総務省が最高裁判所裁判官6人に対する国民審査を告示。投票日は10月27日で、新たに在外投票が導入された。
  •  審査の方法: 解職を求める場合は対象の裁判官の欄に×印を入れ、過半数の×印で解職。信任の場合は何も記入しない。 -
  •  審査対象者: 対象の裁判官6人は、裁判官や弁護士、外交官出身で、審査公報や最高裁ホームページで情報提供される。

最高裁判所

10月15日に総務省の中央選挙管理会から、最高裁判所の裁判官15人のうち、2022年6月から2024年9月に就任した6人の裁判官に対する国民審査が告示された。国民審査は10月27日に行われ、これには18歳以上の全市民が参加可能で、期日前投票も可能。今回からは在外投票も導入され、在外投票用紙には裁判官の名前の代わりに数字が記載されている。

審査では、解職を望む裁判官の名前または番号の上の欄に×印を入れる。×印が有効投票の過半数を超えるとその裁判官は解職される。信任する場合は何も記入せず、○印などは無効。

審査の参考として、各世帯に「審査公報」が配布され、最高裁のホームページでも情報を得ることができます。審査対象の裁判官は以下の通りです:
  1. 尾島明氏(裁判官出身)
  2. 宮川美津子氏(弁護士出身)
  3. 今崎幸彦氏(裁判官出身)
  4. 平木正洋氏(裁判官出身)
  5. 石兼公博氏(外交官出身)
  6. 中村慎氏(裁判官出身)
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【私の論評】日本の未来を左右しかねない国民審査の重大な意義

まとめ
  • 国民審査の制度:最高裁判所裁判官の国民審査は、本来✕を記入する制度だが、何も記入しないと自動的に信任される仕組みになっている。
  • 問題のある裁判官:中村慎、宮川美津子、尾島明など、保守派から問題視される裁判官が含まれており、彼らの過去の判決は保守的価値観に反する。
  • 司法の重要性:司法は民主主義の最後の砦であり、国民審査において意識的に意思表示をする必要がある。白紙提出では司法の力が形骸化する。
  • トランスジェンダー判決:最近、最高裁判所はトランスジェンダーに関する判決を下した。彼らの判断はトランスジェンダーの権利に大きな影響を与える。この判断を下した裁判官の中には今回の国民審査の対象の裁判官全員がふくまれる。
  • 憲法と生殖不能要件:生殖不能要件を排除することは時期尚早であり、憲法第24条が結婚を両性の合意に基づくものと定義している以上、トランスジェンダーの権利に関する判決を出す前に憲法改正が必要だ。その観点からすると、私は国民審査対象の裁判官全員に✕をつける
来る衆議院選挙と同時に行われる最高裁判所裁判官国民審査は、本来✕を記入する制度である。しかし、何も記入しなければ自動的に信任されたことになる仕組みだ。つまり、驚くべき判決を下した裁判官も、理解に苦しむ判決を下した裁判官も、何も記入しなければ信任されてしまう。それで本当にいいのか。


国民審査の対象となっている裁判官には、保守派からすれば問題があるとされる者がいる。たとえば、中村慎という裁判官だ。彼は、死刑判決に対して被告の人権や再犯の可能性を過度に考慮し、実質的な減刑を行ったケースがあった。保守派からすれば、重大な犯罪には厳罰が求められるべきであり、こうした判決は犯罪抑止力を弱め、被害者やその遺族への配慮が欠如しているとの批判を受けている。

また、宮川美津子は夫婦別姓に関する訴訟で、従来の家族制度に変革を促す立場に近い判断を示し、家族制度の崩壊を危惧する保守派からは「左寄り」と非難された。さらに、尾島明という裁判官は、外国人労働者の権利保護を重視する判決を下し、国の安全保障や社会の安定を揺るがすとして、保守派から強い反発を受けたこともある。

司法は、民主主義の最後の砦である。立法や行政が暴走したとき、唯一それを止めることができるのが司法の力だ。しかし、国民審査で何も考えずに白紙のまま提出すれば、その力は形骸化してしまう。最高裁の判決が私たちの生活にどれほどの影響を与えるかを忘れてはいけない。こうした過去の判決が示すように、保守的な価値観を持つ者から見て、不可解な判決を下した裁判官が信任され続けることになるのだ。


だからこそ、国民審査ではしっかりと意思表示をすべきである。「なんとなく」で済ませるのではなく、私たちの社会の未来を左右する重要な選択肢として真剣に向き合うべき時なのだ。

最近、日本の最高裁判所は、性別変更を希望するトランスジェンダーの人々に対して、強制的な不妊手術の要件(生殖不能要件)を違憲とする判決を全会一致で下した。この判決は、リプロダクティブ・キャパシティを排除する法律の規定を無効とし、個人が性別を変更する際に外科手術を受けることを強制されるのは不適切であると認定した。

ただし、別の要件については結論が保留されたため、判決を受けた本人が正式に性別を変更できるかどうかは依然として不明である。この判決には、国民審査の対象となっている裁判官が参加している。具体的には、尾島明、宮川美津子、今崎幸彦、平木正洋、石兼公博、中村慎のいずれもが判事として名を連ねている。したがって、彼らの判断がトランスジェンダーの権利に大きな影響を与えたことは否定できない。

最近では、SNSなどに国民審査対象の裁判官に関する情報をまとめた一覧表が流布している。以下に掲載するのはその典型的なものである。

下の一覧表は、現在の最高裁判所の裁判官の一覧である。この中で、背景が黒の裁判官は、今回の国民審査の対象ではない裁判官であり、カーキ色が今回の国民審査の対象の裁判官である。それぞれ、トランスジェンダーに関連する生殖不能要件、外見要件、女子トイレ制限についてどのような立場をとっているか、明記されている。(クリックすると拡大)

クリックすると拡大します

私は、生殖不能要件を排除することは、現状では時期尚早であると考えている。そもそも結婚に関する条文は、日本国憲法の第24条に明記されており、この条文では、「結婚は両性の合意に基づくものであり、夫婦の平等を基本として相互の協力により維持される」と定義されている。

具体的には、第24条第1項が、結婚が両者の同意によるものであること、そして第2項では、配偶者の選択、財産権、相続、住居の選択、離婚など、結婚と家族に関する事項が個人の尊厳や両性の平等に基づいて法律で規定されるべきであると述べている。この条文は、どう読んでも男と女という両性の合意に基づくものとしか受け取れない。憲法のたてつけが男女を基本にしている以上、私は、トランスジェンダーの権利についての裁判をするのであれば、まずはその前に憲法を改正すべきと考える。

にもかかわらず、最高裁判所の裁判官がトランスジェンダーの権利に大きな影響を与えるような判決をすべきではないと思う。私自身は、以上のことから国民審査において全裁判官に✕をつけるつもりである。このブログを読んでいる読者の方々も、このような一覧表を参考に、判断されるとよいだろう。

以下にもっと詳しい表もあります。是非参考にしてください。


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2024年10月14日月曜日

トランプ氏集会近くで男を逮捕 車内に散弾銃所持か―【私の論評】日本では安倍元総理暗殺事件の解明こそが政治的暴力を防ぐ鍵

トランプ氏集会近くで男を逮捕 車内に散弾銃所持か


 米西部カリフォルニア州リバーサイド郡の保安官事務所は13日、トランプ前大統領が郡内で12日に開いた集会の会場付近で、車内に散弾銃や拳銃、大容量の弾倉を持った男(49)を逮捕したと発表した。男は訴追され、12日に釈放された。トランプ氏や参加者に危害はなかった。

 男の車は会場近くの検問で止められ、車内の拳銃には銃弾が装填されていた。

 トランプ氏は7月に東部ペンシルベニア州で演説中に銃撃され右耳を負傷。9月には男が南部フロリダ州のゴルフ場で待ち伏せて殺害しようとしたとされ、トランプ氏の暗殺未遂事件が続いた。

 この記事は、元記事の要約です。詳細は、元記事を御覧ください。

【私の論評】日本では安倍元総理暗殺事件の解明こそが政治的暴力を防ぐ鍵

まとめ
  • トランプ元大統領の集会で、会場近くにて武器を所持していた男が逮捕されたが、トランプ氏や参加者には危害は加えられなかった。
  • トランプ氏への暗殺未遂事件が相次いでいる中、安全対策が強化され、バイデン大統領の指示で軍事的保護も提供された。
  • アメリカでは政治的暴力や暗殺未遂事件が増加しており、特にトランプ氏に対する暴力を容認する意見が一定数存在することが問題視されている。
  • 日本でも安倍元総理の暗殺事件に関連して、一部の左派系人物の過激な発言や暗殺犯を称賛する動きが見られ、政治的対立が激化している。
  • 政治的暴力の根本的な解決には、警備の強化だけでなく、民主主義への信頼回復や透明性ある情報公開が不可欠。日本でも、まずは安倍元総理暗殺事件の十分な解明が行われなければ、政治的暴力の根本的な解決にはつながらないだろう。
集会で演説するトランプ氏

トランプ元大統領の集会がカリフォルニア州リバーサイド郡で開催された。その会場近くで、拳銃や散弾銃、大容量の弾倉を所持していた男が逮捕された。この男は訴追された後に釈放されたが、トランプ氏や集会の参加者に対して危害を加えることはなかった。男の車は集会場近くの検問で止められ、装填された銃弾を含む拳銃が発見された。

また、X(旧Twitter)上では、この集会に関する投稿が多く見られた。集会には過去最多の参加者が集まったと報告される一方、警備の厳重さが指摘されている。さらに、集会の雰囲気や参加者の反応、メディアの報道に対する懐疑的な視点も散見された。

今回の事件は、トランプ元大統領が最近経験した複数の暗殺未遂事件に続くものであり、7月にペンシルベニア州で受けた銃撃や9月のフロリダ州での事件と関連して注目を集めている。これらの出来事は、トランプ氏の政治活動に対する脅威と見なされ、その安全対策が再び問われている。

トランプ氏は、自身の安全確保のため、さらなる警護強化を求めていた。イランと関連のあるパキスタン国籍のアシフ・マーチャント容疑者(46歳)が、トランプ氏らの暗殺を企てたとして2023年7月に米当局に逮捕された。この容疑者は、ニューヨーク市で暗殺を計画し、覆面捜査官を殺し屋と勘違いして接触したとされる。

ワシントンDCの米司法省本部

この事件は、イランによるソレイマニ司令官殺害への報復の可能性があると考えられており、これを受けてトランプ氏の警護が一層強化された。バイデン大統領の指示により、軍用機や装甲車を含む軍事的保護も提供されるようになった。

近年、アメリカでは政治家や市民に対する襲撃や暗殺未遂が増加している。象徴的な例として、トランプ元大統領が三度の暗殺未遂に直面したことが挙げられる。シカゴ大学の調査によれば、トランプ氏への暴力を容認する意見が一定数存在し、その割合は有権者の約8.2%に達している。特に極右による過激派事件が頻発し、政治家だけでなく選挙管理委員会や一般市民も標的にされている。

政治的暴力の背景には、党派的イデオロギーやフェイクニュース、精神疾患、銃所有、善悪の単純化、対立を煽るリーダーの存在などが挙げられる。しかし、最も注目すべきは、政治や選挙に対する信頼の低下だ。この信頼の喪失こそが、政治的暴力を助長している可能性が高い。単に警備を強化するだけでなく、民主主義への信頼回復が必要だ。

日本もこうした状況に無縁ではない。例えば、安倍元総理の暗殺事件に関連して、一部の左派系の人物から過激な発言が相次いだ。作家や政治家たちが、暗殺事件を政治的批判の材料に使おうとする傾向が見られたことは、言論空間における問題点を浮き彫りにしている。

代表的なものをあげると、芥川賞選考委員であり、自身も作家で、法政大学国際文化学部教授の島田雅彦氏(62:当時)は、2023年4月14日に生配信した自身のインターネット番組「エアレボリューション」で、昨年7月の安倍晋三元首相暗殺事件を念頭に、「暗殺が成功して良かった」などと発言した。

望月衣塑子と島田雅彦

テロや殺人を容認したと受け取れるうえ、新たなテロを誘発しかねないだけに、ネット上だけでなく言論界からも「とんでもない発言」「リベラリズムからもかけ離れている」などと激しい批判が相次いでいる。発言翌日には、岸田文雄首相(当時)の選挙応援演説会場に爆発物が投げ込まれる事件も発生した。

さらに「山上ガールズ」と呼ばれる暗殺犯のファンクラブのような動きが出現し、一部では暗殺を「やったぜ」と喜ぶ声さえあったという。これらの発言や動きは、日本の政治的対立が激化する中で、言論の自由と表現の適切さのバランスが問われる状況を示している。

さらに、安倍元総理の暗殺事件については、捜査の透明性や背景の解明が不十分だとする声が強まっている。この事件が単なる個人の犯行ではなく、国家レベルの問題と関連している可能性も指摘されている。

事件の解決に向けては、いわゆる犯人とされる人物を罰するだけでなく、政治的な安全保障の見直しや情報管理の改革が求められている。国民の知る権利を尊重しつつ、透明性のある情報公開を行うことが不可欠だ。

アメリカでは、政治への信頼の喪失が政治的暴力を助長している現状がある。日本でも状況同様は異なるものの同様である。しかし、日本においては、まずは安倍元総理暗殺事件の十分な解明が行われなければ、政治的暴力防止の根本的な解決にはつながらないだろう。

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2024年10月13日日曜日

海自の護衛艦に「SFの兵器」搭載!? 防衛省が“レーザーシステム”研究へ 大群で襲ってくるドローンも無力化―【私の論評】安倍総理の貢献と安保新時代:日米協力と先進技術が描く未来

海自の護衛艦に「SFの兵器」搭載!? 防衛省が“レーザーシステム”研究へ 大群で襲ってくるドローンも無力化

まとめ
  • 防衛省は、小型無人機やドローン・スウォーム攻撃に対応するため、2024年度から「艦載用レーザーシステム」の研究試作を開始し、コスト効果の高いソフトキル能力を開発する予定です。
  • 2025年度から2029年度まで研究試作を行い、2027年度から2030年度に試験を実施して成果を検証し、既存の艦艇にも搭載可能な小型化・モジュール化を目指します。

防衛省は、小型無人機の脅威に対応するため、「艦載用レーザーシステム」の研究試作を2024年度から開始することを発表しました。無人機の発展や「ドローン・スウォーム攻撃」に対する費用対効果の課題を解決するため、レーザーによるソフトキル能力を持つ新兵器を開発します。

レーザーは連続発射が可能で、弾薬を必要とせず、対処コストが低いのが特徴です。2025年度から2029年度まで研究試作を行い、2027年度から2030年度にかけて試験を実施し、成果を検証する予定です。

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【私の論評】安倍総理の貢献と安保新時代:日米協力と先進技術が描く未来

まとめ
  • 新時代の防衛戦略: 陸上自衛隊が弾道ミサイルや極超音速兵器への対策を強化。10年以内の導入を見据え、無人機への対抗手段として高出力レーザー兵器の研究が進行中。
  • 日米防衛協力の深化: IBCSとADCCSの統合運用を通じて、日米防衛協力が一層強化。共同訓練と装備の相互運用性がキーとなる。
  • 艦載用レーザーシステムの開発: 小型無人機やドローン・スウォーム攻撃に対抗するため、艦載レーザーシステムの研究が進展。
  • 安保法制改正の影響: 集団的自衛権の限定的行使を可能にした改正が、日米の防衛協力と統合運用を支える。
  • 技術革新と戦略的対応: 三菱電機が無人機対策技術を開発し、防衛戦略の新たな局面を切り開く。

ドローンのスウォーム(集団)攻撃の想像図

陸上自衛隊は、弾道ミサイル防衛や極超音速兵器への対策を強化する計画を進めている。これらの新世代システムは、来るべき10年以内に実装される予定だ。しかし、現状では無人機のようなコストパフォーマンスに優れた兵器が大きな脅威と化しており、防空システムもこれに対応する必要が増している。

無人機への対抗策として、コスト効率の高い装備が求められる。そのため注目されているのが高出力レーザー兵器である。高出力レーザーは無人機に対して非常に有効だが、その効果を最大限に発揮するためには、少なくとも5秒以上の連続照射と、正確な追尾能力が不可欠だ。三菱電機は他企業と協力しながら、レーザー兵器の効果的な運用のためのセンサー技術や大気計測技術の開発を推進している。

さらに、現代の戦闘は各軍種が独立して活動する時代ではなく、陸海空を統合的に運用することが求められる。この「統合運用」を実現するためには、各種装備をネットワークで結びつけ、リアルタイムで情報を共有するシステムが必要となる。

そのため、米ノースロップ・グラマン社が開発した「統合防空ミサイル防衛戦闘指揮システム(IBCS)」と、三菱電機が開発した「対空戦闘指揮統制システム(ADCCS)」の統合が不可欠である。

陸自のADCCS(対空戦闘指揮統制システム)指揮車

三菱電機はノースロップ・グラマン社と協力し、日本の防空システムと米軍のIBCSの連携に取り組んでいる。特に、有事に米軍がIBCSを日本に持ち込む可能性を想定し、日米が共同で防空を行うために、これらのシステムが連携する必要がある。この協力は単なるシステムの結合ではなく、日米の防空戦略を一体化するための重要な取り組みだ。

この提携は日米同盟下での防衛産業の新たなステップであり、両国の防空体制を強化することを目指している。こうして日米が装備を連携させ、将来的な脅威に対し迅速かつ柔軟に対応できる防衛システムを構築しようとしている。

艦載用レーザーシステムの研究試作と、日米両国の防空システムの統合は、異なる取り組みではあるが、将来的な脅威への防衛能力の強化を目指す点で関連がある。

艦載用レーザーシステムの開発は、小型無人機やドローン・スウォーム攻撃に対する直接的な対策を目的としている。これは日本が自国の防空能力を強化し、費用対効果の高い新兵器を導入することに焦点を当てた取り組みだ。

一方で、日米両国の防空システムの統合に向けた取り組みは、広範なミサイル防衛や航空機に対する防空能力の向上を目指しており、ノースロップ・グラマン社のIBCSと三菱電機のADCCSの協力関係を含む。この統合の背景には、陸海空の各軍種が連携して戦闘を行う「統合運用」の必要性がある。

したがって、「艦載用レーザーシステム」の開発と日米防空システムの統合は、直接的に同じプロジェクトではないものの、どちらも将来的な脅威への対応を強化し、効果的な防衛を実現するという共通の目標を持っている。両者が最終的に統合されるかどうかは明確ではないが、全体的な防衛戦略において相互に影響を与える可能性は十分にある。

IBCSとADCCSの統合運用の根拠は、日米同盟に基づく防衛協力に強く支えられている。日米安全保障条約とそれに基づく防衛協力の指針が、両国間の防衛関係を基盤としており、これにより日米は防衛資産やシステムを緊密に連携させる体制を築いている。現代の防空戦略では、陸海空の各軍種が情報と装備をリアルタイムで共有する「統合運用」が求められており、IBCSとADCCSの統合はこの要請に応えるものである。

また、日米両軍は定期的に共同訓練を行い、これを通じて指揮統制システムの運用実績を積み重ねている。こうした実績が、システム間の信頼性と相互運用性を高める要素となっており、日本が防衛装備品の共同開発に関する規制を緩和したことで、ノースロップ・グラマンと三菱電機のような防衛産業の協力が進み、これが統合運用の実現を支える技術的な土台となっている。


この背景には、2015年に安倍総理によって行われた安全保障関連法制の改正が大きく影響している。安保法制の改正により、日本は集団的自衛権の限定的な行使を認め、日米間の防衛協力をより広範囲かつ実質的に行えるようになった。これにより、自衛隊が米軍と連携して行動できる範囲が広がり、統合防空システムの運用においても相互連携が強化された。安保法制の改正は、日米の防衛戦略がより一体的に進化するための重要な基盤となり、IBCSとADCCSの統合運用にも大きな寄与をしている。

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