2025年5月22日木曜日

【自民保守派の動き活発化】安倍元首相支えた人の再結集—【私の論評】自民党保守派の逆襲:参院選大敗で石破政権を揺さぶる戦略と安倍イズムの再結集

【自民保守派の動き活発化】安倍元首相支えた人の再結集


まとめ
  • 自民党保守派の活発化と戦略本部の再始動:石破茂首相の支持低迷を背景に、高市早苗氏主導の「自由で開かれたインド太平洋戦略本部」が2025年3月に再始動。麻生太郎氏や旧安倍派の西村康稔氏、萩生田光一氏ら「非石破」「非岸田」の保守派が集結し、党内権力争いと安倍元首相のビジョン継承を目指す。
  • 消費税減税をめぐる対立:高市氏は石破首相の消費税減税への慎重姿勢を批判し、「食料品の消費税率ゼロ」を主張。保守派は石破政権の左傾化や政策に反対し、2025年7月の参院選での敗北を機に党内主導権を握る準備を進める。
  • 野党の動向と自民党の強み:立憲民主党は石破政権への対応が甘く、参院選まで「左傾大連立」を視野に入れる一方、国民民主党が勢いを見せる。自民党は保守派の結集を通じて、派閥の多様性を活かし、形式的な政権交代なしに事実上の政権交代が可能である。
自民党の「自由で開かれたインド太平洋戦略本部」の初会合であいさつする麻生最高顧問(14日、党本部)

石破茂首相が支持率低迷に直面する中、自民党内の保守派が活発な動きを見せている。高市早苗前経済安全保障担当相は13日のネット番組で、石破首相の消費税減税への慎重姿勢を批判し、「賃上げの恩恵を受けられない人々にとって食料品の消費税ゼロが有効」と述べ、失望感を表明。

彼女が政調会長時代に設立した「自由で開かれたインド太平洋戦略本部」を14日に再始動させた。この組織は2021年に高市氏主導で設置されたが、安倍晋三元首相の死去で活動が停止。今年3月に高市氏が麻生太郎党最高顧問に再開を要請し、初会合が実現。本部長に麻生氏、代理に高市氏、幹事長代理に小林鷹之氏、顧問に茂木敏充氏、副本部長に旧安倍派の西村康稔氏と萩生田光一氏が就任し、「非石破」「非岸田」の保守派が集結。表向きは「活動再開」だが、党内権力争いの動きと見られている。

一方、野党では国民民主党が勢いを見せるが、立憲民主党は石破政権の10万円商品券配布や高額療養費問題の混乱、予算成立への対応などで攻めきれず、内閣不信任案にも消極的。立民は7月の参院選まで石破政権を維持させ、「左傾大連立」の可能性を見据えて有利な立場を狙う。自民保守派は、石破自民の左傾化や消費減税否定への対抗軸として、参院選での敗北を機に党内主導権を握る狙い。豊富な人材を抱える自民党は、形式的な政権交代なしに事実上の政権交代が可能な強みを背景に、保守派は安倍元首相支持層の再結集を図っている。(たかはし・よういち=嘉悦大教授)

この記事は、元記事の要約です。詳細は、元記事をご覧ください。

【私の論評】自民党保守派の逆襲:参院選大敗で石破政権を揺さぶる戦略と安倍イズムの再結集

まとめ
  • 保守派の活発化と戦略本部の役割石破茂首相の支持低迷を受け、自民党内の保守派は「自由で開かれたインド太平洋戦略本部」を2025年3月に再始動。麻生太郎氏や高市早苗氏ら「非石破」「非岸田」のメンバーが中心となり、旧安倍派のイデオロギーを反映し、党内権力争いと安倍元首相のビジョン継承を目指す。
  • 税制調査会との違い税制調査会は財務省の影響下で増税や財政健全化を優先し、派閥の色を薄めるが、インド太平洋戦略本部は財務省の関与がなく、外交・安保に特化し、保守派の主張が強く反映される。
  • 高市氏の消費税減税主張高市氏は石破首相の消費税減税への慎重姿勢を批判し、「食料品の消費税率ゼロ」を訴え、財務省主導の増税路線に対抗。2025年度の防衛予算8.7兆円は保守派の影響力を示す。
  • 参院選後の戦略2025年7月の参院選で自民党が大敗した場合、保守派は石破政権の失策を批判し、総裁選で高市氏や小林鷹之氏を擁立。1998年の橋本退陣や2012年の野田政権終焉の例が、保守派の責任追及の効果を示す。
  • 課題と競合2026年からの法人税・所得税増税への反発や、国民民主党・日本保守党など野党保守派との競合が課題。戦略本部の再始動と安倍イズムの継承は、保守派の健在ぶりを示す基盤となる。
石破茂首相の支持が低迷する中、自民党内の保守派が力強く動き始めた。「自由で開かれたインド太平洋戦略本部」は、議連ではなく、党則に基づく自民党の公式組織である。税制調査会と並び、党の政策立案や運営に直接関与するこの組織は、党内での影響力が大きい。

しかし、税制調査会とインド太平洋戦略本部は、その性格において決定的な違いがある。税制調査会は財務省の強い影響下にあり、増税や財政健全化を軸に党内の意見を調整するが、実際には財務省寄りの合意形成が優先される。これにより、旧安倍派や麻生派の主張は抑えられ、特定の派閥の色は薄まる。

一方、インド太平洋戦略本部は財務省の影がなく、外交・安全保障に特化し、旧安倍派や麻生派の保守派のイデオロギーが色濃く反映される。麻生太郎氏や高市早苗氏、西村康稔氏、萩生田光一氏といった「非石破」「非岸田」の面々が中心となり、党内権力争いと保守派の再結集を明確に目指す。

無論岸田首相により「自由で開かれたインド太平洋戦略」ではなく「自由で開かれた国際秩序」という言葉が重要な場面で意図的に持ちいられたり、石破首相が「アジア版NATO構想」構想を提唱したりで、世界で評価される安倍首相が提案した「自由で開かれたインド太平洋戦略」を毀損されたり、安倍首相の功績をなきものにされる可能性につき危機をおぼえた、保守派の結集という意味もあるだろう。

この本部が自民党の公式組織として発足したことは、自民党は派閥等の力学や自民党の幹部の思惑などとは無関係に安倍氏のレガシーでもある「自由で開かれたインド太平洋戦略」を継承させ、発展させることを党内外に自民党として公式に示したことをも意味する。これが、議連などの発足とは大きな違いである。


この動きは、2024年の派閥解散騒動を経てもなお、保守派が党内での影響力を維持している証左である。2021年11月、高市氏が政調会長時代に設立したこの戦略本部は、安倍晋三元首相の「自由で開かれたインド太平洋」構想を継承するものだった。しかし、安倍氏の死去で活動が停滞し、2025年3月に高市氏が麻生氏に再始動を要請、3年半ぶりの初会合に至った。

これは、保守派の粘り強さと組織力を示す。麻生氏の承諾を得て再始動した戦略本部は、57人の参加規模を誇り、党内での保守派の基盤の強さを物語る。Xでの投稿でも、保守派支持者が「麻生・高市らが石破を潰す」と期待を寄せ、2025年7月の参院選を見据えた動きが活発化している。

高市氏は、石破首相の消費税減税への慎重姿勢を痛烈に批判した。2025年3月13日のインターネット番組で、「食料品の消費税率ゼロが国民の負担を軽減する」と訴え、石破氏の対応に「かなりがっかりした」と語った。この発言は、保守派が財務省主導の増税路線に真っ向から対抗する姿勢を示す。実際、2025年度の防衛予算は過去最高の8.7兆円に達し、スタンドオフ兵器や統合防空ミサイル防衛に重点を置く。これは安倍元首相の積極的防衛路線を継承するもので、保守派の影響力が予算にも反映されている証拠だ。

参院選で自民党が大敗すれば、保守派は戦略本部を基盤に石破・岸田派を牽制し、党内主導権を握る戦略を展開する。選挙直後、石破政権の失策—消費税減税の否定や高額療養費問題の混乱—を批判し、総裁選の前倒しを求めるだろう。

1998年の参院選大敗後の橋本龍太郎首相の退陣の例や、2010年の民主党の大敗で菅直人政権が弱体化し、2012年の衆院選大敗後の野田佳彦政権の終焉した歴史は、保守派の責任追及が効果を発揮する可能性を示す。高市氏や小林鷹之氏を擁立し、旧安倍派、麻生派、茂木派の支持を集めて総裁選で勝利を目指すだろう。


Xでは、保守派支持者が「戦後80年談話」を阻止すべく石破氏の退陣を求める声が上がっており、党内での反石破ムードが高まっている。しかし、課題も多い。2026年4月からの法人税・たばこ税増税、2027年1月からの所得税増税は、国民や党内の減税派から強い反発を招いている。2024年10月の衆院選で自民党が単独過半数割れの危機に直面した際、Xで高市氏を推す声が上がったが、増税への不満が保守派の足を引っ張る可能性がある。

さらに、野党の保守派—国民民主党や日本保守党、維新の会—との競合も無視できない。日本保守党は単独では脅威とならないが、2024年衆院選で3議席を獲得し、自民党不満層を取り込んだ実績は、保守層の票を分散させるリスクを示す。国民民主党の経済重視の姿勢も、参院選で自民党保守派の支持を奪う可能性がある。

それでも、戦略本部の再始動と安倍イズムの継承は、保守派の健在ぶりを示す強固な基盤である。麻生氏の影響力、高市氏の減税主張、旧安倍派の組織力は、参院選後の政局で石破・岸田派を圧倒する力を持つ。保守派の成功は選挙結果と党内調整にかかっているが、彼らの動きは自民党の未来を左右する力強い一歩である。

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2025年5月21日水曜日

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江藤農相が辞任、「コメを買ったことがない」発言で引責-政権に打撃

まとめ
  • 江藤拓農相が「コメを買ったことがない」発言で批判を受け、21日に石破茂首相に辞表を提出。佐賀市での講演で発言し、Xでトレンド入り、辞任要求が高まり発言を撤回。
  • 石破首相は続投方針だったが、野党5党の反発と不信任決議案検討の圧力で方針転換。後任に小泉進次郎元環境相が有力で、与党少数の中、参院選前の求心力低下が懸念される。


 江藤拓農相は21日、「コメを買ったことがない」発言の批判を受け、石破茂首相に辞表を提出した。石破首相は当初続投の方針だったが、野党の反発で方針転換。

 後任には小泉進次郎元環境相が有力。野党5党は江藤氏の更迭を求め、不信任決議案の検討も確認。江藤氏の発言は佐賀市での講演で飛び出し、Xでトレンド入りし辞任要求が上がった。石破首相は発言を不適切と認め謝罪したが、参院選を前に求心力低下が懸念される。

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【私の論評】石破発言の暴論が暴く日本の危機:失言より政策の失敗が国を滅ぼす

まとめ
  • 石破茂首相の「日本の財政はギリシャより悪い」発言は、事実を無視した暴論であり、緊縮財政を正当化し、日本経済をデフレの泥沼に沈める危険がある。農水相の失言より、はるかに重大である。
  • 日本の財政は、統合ベースデータで債務対GDP比230%、財政赤字対GDP比4.5%と、G7主要国(米国6.8%、英国5.2%)やギリシャ危機時(7.2%)と比べ健全。自国通貨建て国債と日銀の支援で破綻リスクはほぼゼロだ。
  • 日銀の2024年利上げ(短期金利0.5%)はデフレを強める誤りであり、石破氏の「金利の恐ろしさ」発言はこれを助長。財政拡大と金融緩和が必要だ。
  • 日本の病は、失言を騒ぐ一方で、緊縮財政や利上げの政策失敗をスルーする風潮。財務省の「財政規律至上主義」が経済を窒息させる。
  • 解決策は消費税減税(10%→5%)、低所得者向け給付金、日銀の金融緩和維持、財政破綻論の払拭。誤った政策を正さなければ、日本は衰退する。

失言を叩くのは簡単だ。しかし、失言を追及する前に、政策の失敗を正す方が重要である。農水相の失言も然りであり、まずは政策を徹底的に叩くべきである。失言を叩くだけなら、農相が辞任すれば、それでお終いということになりかねない。失言といえば、石破茂首相が2025年5月19日の参院予算委員会で放った「日本の財政はギリシャより悪い」という言葉は、ただの失言ではない。今の日本は、政策の失敗に甘く、失言に厳しい。そんな風潮が続けば、日本は衰退の道を突き進む。

この発言は、日本経済を縛る緊縮財政の呪いを象徴する。加藤勝信財務相が「市場の信認」を盾に国債発行を否定したことも、同じ誤った経済観の延長線上にある。世界標準のマクロ経済学から見れば、この発言は根拠を欠き、日本をデフレの泥沼に沈める危険な一撃だ。農林水産大臣の失言より、はるかに大きな失言であり、間違った政策を暴く大失言である。なぜこんな暴論が飛び出し、なぜ大騒ぎにならないのか。そこには日本の深い病が潜んでいる。失言を騒ぐ暇があるなら、経済を窒息させる政策を正せ。それが日本の未来を救う唯一の道だ。
財政比較の誤りと市場の冷静な判断
石破首相の「日本の財政はギリシャより悪い」という発言は、事実を無視した暴論である。国際通貨基金(IMF)の2025年統合ベースデータによれば、日本の一般政府債務対GDP比は約230%で、ギリシャの約140%を上回る。しかし、この数字だけで比べるのは愚かだ。政府には、負債があるとともに、資産もある。しかも、資産の80%は金融資産であ。 さらに財政は統合ベースで見るべきである。これは、中央政府、地方政府、公的機関(特に中央銀行)の債務をまとめて計算し、内部取引を除く手法だ。企業で言えば、連結決算であり、大企業では普通に行われている決算の仕方である。

なぜこれを使うか。企業の本社が、子会社を通じて赤字を隠すのと同じように、政府が子会社や公的機関を通じて赤字を隠すのを防ぐためだ。ギリシャ危機(2009-2012年)では、非統合ベースのデータが債務の実態を隠し、破綻を招いた。日本は全く違う。自国通貨(円)で国債を発行し、世界最大の対外純資産(約4.5兆ドル、2024年時点)を誇る債権国だ。日本銀行は国債の約50%(約600兆円)を保有し、破綻リスクはほぼゼロである。ギリシャはユーロ圏に縛られ、自国通貨を持たず、外貨建て債務に苦しんだ。両者は天と地の差だ。日本で、統合ベースによる財政が顧みられないのは、財務省による黒字隠しのためであると言っても良いくらいで、摩訶不思議、頓珍漢な状況になっている。それを石破首相をはじめ多くの政治家が、信じ込んでいるというが実態のようだ。
日本の財政再建は「統合政府」で見ればもう達成されている』より。クリックすると拡大します。

日本の財政をG7主要国と比べても、石破発言の誤りは明らかだ。2025年の統合ベースの財政赤字対GDP比は、日本が4.5%、米国が6.8%、英国が5.2%、ドイツが2.1%である(IMF、2025年予測)。日本より良いのはカナダだけだ。ギリシャ危機時の7.2%(2010年)に比べ、日本は健全な範囲だ。米国や英国より低い赤字比率で、なぜ危機を煽るのか。石破発言は、国際金融市場に「日本が隠れた負債を抱えている」と誤解を与えかねない。

しかし実際には、発言後の市場は冷静だった。クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)や株価に大きな変動はなかった。市場は日本の財政の強さを理解している。しかし、首相がこうした発言を繰り返せば、国債利回りの上昇を招く火種になりかねない。2024年10月の「イシバ・ショック」で株価が2%下落した記憶は新しい(日本経済新聞、2024年10月3日)。市場の信頼はいつまで続くのか。
緊縮財政と金利引き上げが経済を窒息させる
石破発言の罪は、緊縮財政を正当化し、日本経済を窒息させる点にある。日本は30年以上デフレに苦しみ、2025年第1四半期のGDPは0.7%縮小した(日本経済新聞、2025年5月15日)。消費は低迷し、輸出も弱い。こんな時に必要なのは消費税減税や低所得者向け給付金だ。なのに、石破首相は「金利の恐ろしさ」を盾に国債発行を拒む。2014年と2019年の消費税増税が消費を冷え込ませ、経済を傷つけた教訓を忘れたのか。

石破氏は「社会保障費の増大」を理由に財政規律を振りかざす。2024年度の社会保障費は約37兆円、歳出の約3割を占めるが、経済成長で税収を増やせば債務比率は自然に下がる。G7の米国は巨額の財政出動で経済を支え、債務比率(約120%)を管理している。日本が緊縮に固執する理由はない。歳出抑制にこだわるのは、経済の自殺行為だ。

 昨年日銀は17年ぶりの利上げに踏み切ったが・・・・・・

日銀は2024年にマイナス金利を解除し、短期金利を0.5%に引き上げ、2%インフレを目指している(日銀発表、2024年3月)。世界標準のマクロ経済学は、こうした急な金利引き上げに反対だ。過度な金融引き締めはデフレ圧力を強め、経済成長を阻害する。石破氏の「金利の恐ろしさ」一見まともなことを言っているように聞こえるが、その実増税などの緊縮財政を肯定するものであり、この発言は、日銀の金融引き締め政策を助長しかねない。日銀の利上げは、賃金上昇や消費拡大の好循環を遠ざける。財政拡大と緩和的な金融政策こそが必要だ。なのに、緊縮財政と金利引き上げは経済をさらに冷え込ませる。失言を騒ぐより、この誤った政策を批判すべきだ。それを放置すれば、日本経済は沈む。
日本の病と経済を救う道
石破発言が大騒ぎにならないことこそ、日本の病の根深さを示す。財務省の「財政規律至上主義」が国民やメディアに染みつき、「国の借金」という誤解がまかり通る。国の債務は家計の借金とは違い、日銀が買い支えれば管理可能だ。なのに、野党は江藤農相の「コメ発言」に血眼になり、財政政策や日銀の誤りをスルーする。2024年10月の石破政権発足時、緊縮姿勢への懸念で株価が下落した(日本経済新聞、2024年10月3日)。Xでは「円安リスク」「国債の信用毀損」との声が上がった(X投稿、2025年5月20日)。市場は日本の強さを信じているが、誤った発言と政策が続けば信頼は崩れる。失言を追及する風潮が、政策の失敗を隠す。こんなことでは日本は終わる。

解決策は明快だ。消費税を10%から5%に引き下げ、低所得者向け給付金を出す。日銀の金融緩和を維持し、財政拡大と連動させて経済の好循環を築く。財政破綻論を払拭し、日本とギリシャの違いを市場は周知しているが、それ以外、特に日本国内では未だ周知されていないので、これを明確に示す。石破政権がこの道を選ばない限り、デフレは続き、7月の参院選で求心力は落ちる。

失言を騒ぐ暇があるなら、経済を窒息させる政策を正せ。日本経済を救うには、緊縮と利上げの呪いを断ち切る勇気が必要だ。石破発言は、その必要性を突きつける警鐘である。日本の未来は、誤った政策を正せるかどうかにかかっている。

引用: 日本経済新聞、2025年5月15日; 日銀発表、2024年3月; X投稿、2025年5月20日; IMF統合ベースデータ、2025年予測。

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2025年5月20日火曜日

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高橋洋一氏 物価高対策「今でしょ」 与党が秋に補正予算検討 立民は石破政権の延命に協力

まとめ

  • 補正予算の先送り: 自民・公明は物価高対策の2025年度補正予算案を秋の臨時国会で検討。今国会(~6月22日)で対応すべきなのに、参院選狙いで先送り。物価指数(総合3.6%、コアコア1.6%、食料品7.4%など)高騰で消費税軽減が必要。
  • 与党と財務省の影響: 財務省の減税反対で消費税軽減せず、補正予算を今国会で出さない。予備費対応は参院選向けの戦略。
  • 野党の消極姿勢: 立憲民主党は不信任案を出さず石破政権に協力。両党の思惑一致で同時選挙回避、自民・立民ともに有利な状況を優先。
石橋首相

自民・公明両党は13日、物価高やトランプ米政権の高関税に対応するため、2025年度補正予算案を秋の臨時国会で検討すると合意。しかし、現在開催中の第217回国会(1月24日~6月22日)で十分に対応可能であり、物価高対策を今行うべき。3月の消費者物価指数は総合3.6%、生鮮食品を除く総合3.2%、基調を示す米国版コア(食料(酒類除く)・エネルギーを除く総合、いわゆるコアコアCPI)1.6%、食料品7.4%、エネルギー6.6%と高騰。

食料品の消費税軽減税率を8%から0%にすれば効果的だが、財務省の減税反対で政府は動かず、補正予算を先送り。参院選を意識した与党の戦略に加え、立憲民主党が内閣不信任案を出さず石破政権に協力的な姿勢を見せる。結果、衆参同時選挙の可能性が消え、自民は損失を抑え、立民は国民民主の台頭を防ぐ思惑が一致。与党が補正予算を避け、野党が不信任案を出さない状況が続く。

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【私の論評】経済危機を救う補正予算の力! 石破政権の減税拒否が日本を沈める

まとめ
  • 補正予算の重要性:経済危機を乗り切るには迅速な補正予算が不可欠。コロナ禍(2020年、57.6兆円)と阪神淡路大震災(1995年、3.2兆円)の成功事例は、雇用維持(失業率2.9%、3.2%)と生産回復を示す。
  • マクロ経済の基本:需要と供給のバランスが生産、物価、失業率を動かす。需要増で生産と雇用が上がり、物価も上昇。需要減では逆。
  • フィリップス曲線:物価と失業率の関係。失業率が低いと賃金と物価が上がり、高いと物価は上がらない。コロナと阪神は労働市場の余裕で物価下落(CPI-0.4%、-0.1%)。
  • 現在の物価高:2025年3月、CPI3.6%(食料品7.4%)は供給ショック(高関税、エネルギー高)が原因。消費税0%化で消費を増やし、失業率上昇(2.6~3.0%から3.5%)を防げる。
  • 石破首相の誤り:2025年5月19日、減税を「金利の恐ろしさ」で拒否(ロイター)。マクロ経済やフィリップス曲線を理解せず、財務省に従い、ギリシャの特殊事情を無視。政権の継続は国民と自民党に有害。
迅速に補正予算を組むことは、経済危機を乗り切る生命線だ。過去の成功事例からその力を学び、現在の物価高(2025年3月、CPI3.6%、食料品7.4%、エネルギー6.6%)に立ち向かう道を探る。だが、その前に、マクロ経済とフィリップス曲線の基本を押さえておく必要がある。経済の仕組みを認識すれば、石破茂首相の減税反対の愚かさが浮き彫りになる。


マクロ経済は、国の経済を大きく見る視点だ。GDP(生産)、物価、失業率、金利が絡み合い、需要と供給のバランスで動く。需要が強ければ、生産が上がり、仕事が増え、物価も上がる。需要が弱いと、生産も仕事も減り、物価は下がる。この単純な理屈が全てだ。

フィリップス曲線は、物価と失業率の関係を示す。仕事が豊富で失業率が低いと、企業が人を奪い合い、賃金が上がり、物価も跳ね上がる。逆に仕事が少なく失業率が高いと、賃金も物価も上がらない。ケインズ経済学の核心である。この曲線は、経済の「物価と雇用のせめぎ合い」を教えてくれる。

コロナ禍でマスクをつけて歩く大勢の人々

コロナ禍(2020年)は、需要と生産が同時に崩壊した危機だ。補正予算57.6兆円(給付金12.9兆円、企業支援15.4兆円)が消費を押し上げ、消費は2.5%増、生産(GDP)は2020年第3四半期に5.3%増(内閣府)。失業率は2.9%(米国は14.7%、総務省)にとどまり、労働市場の余裕で物価は0.4%減(デフレ)。フィリップス曲線上、失業率が高めでインフレは起きなかった。給付金の効果(乗数1.0)は貯金(30%、日銀)でやや弱まったが、雇用を守り抜いた。迅速な予算編成が成功を呼んだ。

阪神淡路大震災(1995年)は、生産が壊滅した危機だ。複数回の補正予算3.2兆円(復旧・復興)が生産を立て直し、神戸の生産は1996年に9割回復(兵庫県統計)。失業率3.2%(米国5.6%より低)、物価は0.1%減(デフレ、総務省)。フィリップス曲線では、労働市場の余裕でインフレなし。震災後3カ月で第1次予算を組んだ迅速さが勝利を呼んだ。


今、物価高が日本を襲う。トランプ政権の高関税やエネルギー高で生産が縮み、物価は3.6%上昇(食料品7.4%)。失業率2.6~3.0%(推定)でも、フィリップス曲線上、供給ショックが物価を押し上げる。消費税を8%から0%に下げれば、消費が上がり、失業率の上昇(3.5%リスク)を抑えられる。

だが、石破首相は動かない。2025年5月19日の参院予算委員会で、「金利の恐ろしさ」を理由に減税を拒否。「日本の財政はギリシャより悪い。社会保障費が増える」と財政規律を振りかざし、加藤勝信財務相も「市場の信認」を盾に国債を否定(ロイター)。

石破の頭には、マクロ経済やフィリップス曲線の基本がない。供給ショックで物価が上がるのに、消費を増やす減税を「国債が怖い」と拒むのは、財務省の操り人形だ。ギリシャの危機はユーロ圏の特殊事情(通貨主権なし)なのに、それを無視して増税を避けるだけ。経済を救う気ゼロだ。国民経済を犠牲にしても、自らの政権を維持しようという魂胆が丸見えだ。参院選に負けても、内閣支持率が低下しても、居座るつもり満々だ。厚顔無恥とはこのことだ。

コロナと阪神の補正予算は、迅速に動き、雇用を守った。今、供給ショックを放置すれば、国民の生活は物価高で疲弊、参院選で自民党は大敗する。石破政権は経済を殺す疫病神だ。マクロ経済は需要と供給の綱引き。フィリップス曲線は物価と雇用の羅針盤だ。今すぐ減税で家計を救え。石破の緊縮脳では日本が沈む。国民のために、そうして自民党にとってもこの政権は一刻も早く終わらせるべきだ。

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2025年5月19日月曜日

高橋洋一の霞ヶ関ウォッチ まだまだ下がらぬコメの値段、カギはJA抜きの「備蓄米直接販売」だ—【私の論評】コメ価格高騰の真相!JA独占と輸出補助金の闇、政府直販で解決なるか?

高橋洋一の霞ヶ関ウォッチ まだまだ下がらぬコメの値段、カギはJA抜きの「備蓄米直接販売」だ

まとめ
  • コメ価格高騰の解決策: 供給不足によるコメ価格高騰に対し、備蓄米50万トン以上の放出で価格を50%下げられると提案。
  • JA独占の課題: 農水省の備蓄米放出条件(買戻し義務、玄米仕入量5000トン以上)がJA全農の落札独占(93~94%)を招き、参加業者はわずか10社。
  • 直接販売の提案: 条件撤廃と一般国民へのコメ直接販売を推進。官公庁オークションサイトや造幣局の事例から技術的に実現可能。
  • 直接販売のメリット: JA独占を是正し、国民ニーズに直接応える。農家や国税庁の直販サイトが参考に。
  • 財政健全性と国債: 日本の財政はG7で2番目に健全。国債の直接販売(特に物価連動国債)を国民に開放すべき。

米の収穫

前回コラムでは、経済理論に基づき、コメ価格高騰の原因が供給不足にあるとし、備蓄米を50万トン以上放出すれば価格が約50%低下すると提案した。

今回はその実務的実現策として、農水省の備蓄米放出条件(買戻し義務や玄米仕入量5000トン以上の基準)を撤廃し、JA全農が落札量の93~94%を占める独占状態(3回入札で参加業者は10社のみ)を改善することを提案する。

一般国民への直接販売を導入すべきで、官公庁オークションサイトや造幣局の記念通貨販売のような既存の仕組みを活用すれば、技術的障害はない。これにより、JAの買い手独占を是正し、国民のニーズに直接応えるメリットが大きい。

また、財政危機は誤解で、統合政府のバランスシートで見れば日本の財政はG7
で2番目に健全であり、国債は優良投資対象。アメリカでは普通の国債直接販売が日本では金融機関経由に限られ、筆者が関わった物価連動国債も国民が入手しにくい。コメと国債の直接販売を推進し、国民本位の政策を進めるべきだ。

この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になってください。

【私の論評】コメ価格高騰の真相!JA独占と輸出補助金の闇、政府直販で解決なるか?

まとめ
  • コメ価格高騰の原因: 高橋洋一氏は2024年のコメ価格高騰(単価830円/60kg、価格指数2.3倍)が超過需要(需要>供給、超過需要率6%)に起因し、価格上昇率60%と連動(相関係数0.86)すると分析。
  • 備蓄米放出の効果: 備蓄米50万トン以上を放出すれば、理論的には、年間生産量約700万トンの6%(約42万トン)の不足が解消され、単価が50%下落(830円/60kg→約415円/60kg)すると試算。ただし、過去事例からは30~40%下落にとどまる可能性も。
  • JA独占と直販の提案: 上の要因として、JAの独占(落札シェア93~94%)が供給を制限するため、政府直販を提案。消費者価格の安定と国民が直接コメを手に入れられるメリットを強調。
  • 輸出補助金の影響: 輸出補助金が国内供給を減らし、超過需要を増大(2024年輸出急増、2025年2月3割増)。価格高騰の一因だが、JA独占やインフレなど他の要因のほうが大きいが、将来的な悪影響が懸念される。
  • 国債直販と政府の役割: コメと同様に国債の直販を提案。IT化で実現可能であり、JAや金融業者への依存が国民の利益を損なう「公金チューチュー」構造を防ぐべき。政府は硬直した考えを捨て、柔軟に対応すべき。

高橋洋一氏は、このコラムの政府直販提言の根拠となるツイートと、それに付随して、二つのグラフをXにポストしている。それを以下に掲載する。


グラフ1

グラフ2

高橋洋一氏は、グラフ1・2からコメ価格高騰が超過需要(需要が供給を上回る状態)に起因すると断言する。グラフ2を見れば、2024年の超過需要率は6%で、価格上昇率が60%と急騰しており、相関係数0.86でその連動は明らかである。グラフ1では、2024年の単価が830円/60kgと過去最高水準に達し、2010年比で価格指数が2.3倍に跳ね上がっている。この数字は、コメが国民の手に入りにくくなっている現実を突きつける。

では、どうすればいいのか。高橋氏は、備蓄米50万トン以上を放出すれば、年間生産量約700万トンの6%(約42万トン)の不足が解消され、超過需要がほぼゼロになると試算する。これにより、2024年の単価830円/60kgが50%下落(約415円減)し、約415円/60kgまで下がるという。確かに、2019年の単価650円/60kg程度に戻る過程で、需給調整が進むことで大幅な価格低下が可能だと高橋氏は見ている。しかし、過去の事例(2010年代の備蓄米放出)では、10%の供給増で価格が20~30%下落したケースもあり、実際は30~40%の下落にとどまる可能性もある。

なぜこうなるかといえば、JAの独占が価格抑制を妨げている面があるからだ。JAは備蓄米の落札シェアで93~94%を占め、一般消費者への供給を制限していると見られる。高橋氏は、この状況を打破するため、JAを介さず国民に直接販売する仕組みを提案する。政府が直販に踏み出せば、消費者価格の安定が実現するだけでなく、国民が求めるコメを直接手にできるメリットが生まれる。

さらに、米の輸出業者への補助金が価格高騰の一因となっている可能性も見逃せない。2024年以降、輸出が急増(1~7月で過去最高、2025年2月で3割増)し、グラフ2の超過需要率(6%)と価格上昇率(60%)に影響を与えている。補助金が農家を輸出向け生産にシフトさせ、国内供給が減少するからだ。無論現状ではJAの独占やインフレ、減反政策の影響も大きいが、将来的に輸出補助金がさらに悪影響を及ぼす可能性は否定できない。

高橋氏は、コメの直販と同じく、国債の直販も提案している。かつてこれらの直販は技術的に不可能だったが、IT化が進んだ今、それは現実的な選択肢となった。コメをJAや輸出業者に、国債を金融業者に任せきりにすれば、国民全体が享受すべきメリットが一部の業者の利益にすり替わる。いや、それどころか、公金が意図的に搾取される「公金チューチュー」構造に悪用される危険すらある。無論、農協や輸出業者だけが悪いとは言わない。高橋洋一氏もそのようなことは言っていない。むしろ政府の制度設計などに問題があると言える。

農協ビル

これでは本末転倒である。政府は従来の仕組みや硬直した考え方を捨て、柔軟に社会に対応すべきだ。国民が求めるコメを安く手に入れられる社会、国債を金融業者を介さず直接購入できる仕組みを構築すべきである。これは、何も、なんでも国営化し、社会主義を目指せと言っているのではない。

政府は、民間だけに任せるとうまくいかないどころか、国民の利益に反することになってしまいかねない事業について、従来の仕組みだけで対処するという硬直した姿勢や考え方を捨てて、柔軟に社会に対応できる能力を養うべきだと主張しているのだ。これは、経済安全保障の観点からも重要なことである。それこそが、今、政府に求められている真の役割である。

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2023年2月25日

2025年5月18日日曜日

中学生正答率38%の「アレクサンドラ構文」 “機能的非識字”にはリスクも? 「IQとは違いトレーニングで良くなる」鍛え方は—【私の論評】メディアの堕落と石破首相の失策を暴く! 機能的非識字と国家観の危機を徹底解説

中学生正答率38%の「アレクサンドラ構文」 “機能的非識字”にはリスクも? 「IQとは違いトレーニングで良くなる」鍛え方は

まとめ
  • アレクサンドラ構文:女性の名Alexandraの愛称がAlexであることを問う読解テストの問題で、ネット上で話題。正答率は中学生38%、高校生65%と低く、誤答の多くは「女性」を選択。
  • 機能的非識字:文字や単語は理解できるが、説明文や契約書などを正しく読み取れない状態。社会生活での説明書理解、社会保障活用、政治参加、偽情報への耐性などに弊害をもたらす。
  • シン読解力:新井紀子教授が提唱する、知識や情報を正確に読み取るスキル。子どもの教科書音読・視写や大人の助詞問題などで鍛えられ、年齢を問わず向上可能。
  • 教育現場での実践:福島県相馬市では理科・社会の教科書を活用した音読・視写で学力向上。クラスが活性化し、ニュースに基づく議論も行われるようになった。
  • 社会的影響:機能的非識字は世界で5人に1人に及び、経済損失は約176兆円(2023年)。受験テクニックやSNSの短文文化が誤読を助長する一因。


「アレクサンドラ構文」は、文章の正確な読解力を測るリーディングスキルテスト(上画像)で、女性の名Alexandraの愛称がAlexであることを問う問題がネット上で話題となっている。一見簡単そうだが、正答率は中学生で38%、進学校に通う高校生でも65%と低く、誤答の多くは「女性」を選ぶものだった。答えは、もちろんAlexである。この誤答の背景には、文字や単語は理解できても文章全体を正しく読み取れない「機能的非識字」が原因として挙げられる。

機能的非識字は、識字障害や知的障害がないにもかかわらず、説明文、契約書、学校のお知らせ、公的な文章などを正確に理解できない状態を指す。これにより、説明書や契約書の誤解、社会保障制度の活用困難、政治参加の制約、偽情報や詐欺への脆弱性など、社会生活に多岐にわたる弊害が生じる。世界では5人に1人が機能的非識字を含む非識字状態にあり、経済損失は2023年時点で約176兆円に上ると推定されている(World Literacy Foundation)。

国立情報学研究所の新井紀子教授は、教科書や新聞、辞書など、わかりやすく書かれた文章を引用したテストでも読めない人が多いと指摘。2017年から小学生から大人まで50万人が受験したこのテストは、視力検査のように難易度が調整される仕組みで、文章読解の弱点を明らかにする。受験テクニックに頼る学習や、SNSでの短文文化、脊髄反射的な反応が誤読を助長しているとされ、コラムニストの河崎環氏は、問題文から答えを「検索」する癖が誤答を招く一因だと分析。

新井氏は「シン読解力」を提唱し、知識や情報の正確な理解を可能にするスキルを重視。子どもの場合は理数社の教科書の音読や1分間視写、大人の場合は助詞の正確な使用問題などで鍛える方法を提案している。福島県相馬市では、理科や社会の教科書から30〜50字を抜き出した音読・視写の実践により、教科書特有の表現が身につき、学力が向上。1年でクラスが活性化し、ニュースを基にトランプ大統領の政策を議論するまでに至った。読解力はIQとは異なり、40歳を過ぎてもトレーニングで向上可能とされ、生涯学び続けられる力として注目されている。

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【私の論評】メディアの堕落と石破首相の失策を暴く! 機能的非識字と国家観の危機を徹底解説

まとめ
  • 西村幸祐氏の『マスコミ堕落論』:朝日新聞などのメディアが反日イデオロギーに染まり、尖閣や竹島問題の報道で堕落・劣化していると批判。GHQの「ウォー・ギルト・インフォメーション・プログラム」に起源を持ち、国家観欠如による機能的非識字が誤報の原因だと指摘。
  • 高橋洋一氏の「ど文系」批判:感情論や表面的な理解で経済を語る「ど文系」は、データや統計を軽視し、誤解や政策失敗を招く。機能的識字の重要性を訴える。
  • 石破首相の機能的非識字の可能性:2025年の商品券問題や米価発言で、文脈を捉えられない対応が見られる。国家観の薄弱さが機能的非識字を助長する。
  • 国家観と機能的識字の関係:文系・理系問わず、国家観がなければ情報の本質を見誤る。新井紀子氏のテストや相馬市の教育実践が、機能的識字の向上を示す。
  • 解決策と信念:成人教育で国家観と機能的識字を育て、誤報や誤った政策を見抜く社会を築くべき。国民一丸での真の社会実現を信じ、発信を続ける。

機能的非識字は、文字が社会の基盤となった遠い昔から存在する問題だ。情報を使いこなす必要が生まれた瞬間、その影はすでに忍び寄っていた。私は10年前、ブログで西村幸祐の『マスコミ堕落論』を取り上げ、その流れでメディアの機能的非識字を鋭く批判した。今、その核心を掘り起こし、さらには石破茂首相自身が機能的非識字に至っている可能性を、国民の視点から問う。

西村氏の『マスコミ堕落論』を読んで、朝日新聞をはじめとするメディアが反日イデオロギーに毒され、尖閣や竹島問題の報道で堕落し、劣化していると確信した。西村氏は、この病巣が終戦後のGHQによる「ウォー・ギルト・インフォメーション・プログラム」に根ざし、日本自身が反日報道を育てたと喝破する。さらに、メディアの知的レベルが一般国民に追い抜かれたとしている。

私はこの分析に心底共感する。メディアは安全保障や外交に無知で、社説では思考停止や論点のすり替えを繰り返し、国民の知る権利を奪う。2013年の特定秘密保護法や集団的自衛権の報道では、表面的な反対論を振りかざし、深い議論を避けた。こんなメディアに、国民はうんざりしている。

私が最も腹立たしく思うのは、メディアの知的レベルが一般国民に追い抜かれた背景に、多くの国民が、インターネットにより新たな情報源を得ただけではなく、記者やコメンテーターの機能的非識字が蔓延している現実だ。機能的非識字とは、文字や単語は読めても、新聞記事や公的文書を正しく理解し、社会で活用する力が欠如した状態である。この構図は基本的に今も変わっていない。

10年前のブログで私が触れた日経新聞の報道例は、物流危機の原因を単純な規制に帰し、長期デフレや雇用改善の影響を無視する誤報だった。読売新聞の貿易赤字報道も、赤字を一律に悪と決めつけ、経済全体を歪めて伝える。私は、これらの誤報がメディアの経済理解の浅さと機能的非識字に起因すると断言する。

高橋洋一氏が批判する「ど文系」も、同じ病巣を抱える。経済や政策を感情論や表面的な理解で判断し、数字やデータでの分析を軽視する姿勢だ。東京大学数学科出身の高橋氏は、複雑な経済現象を論理的かつ明確に整理し、統計やファクトで解説する。だが、「ど文系」の連中は、貿易赤字を一律に「悪い」と報じ、経済政策をスローガンで語る。デフレ下の雇用悪化やブラック企業を制度や悪意だけに帰し、金融政策の影響を見落とす。経済問題を基本原理で捉えず、細部に囚われる姿勢も問題だ。こうした思考は、日本経済の誤解や政策の失敗を招く。高橋氏は、数字、グラフ、統計を駆使した機能的識字の重要性を訴える。『「経済オンチ」が日本を破壊する!』で、この点を痛烈に論じている。

石破茂首相自身にも、機能的非識字の兆候が見られるのではないか。私はそう疑う。2024年10月に第102代首相に就任した石破氏は、2025年3月の商品券配布問題で火だるまになった。衆院選当選の自民党新人議員15人に10万円相当の商品券を渡し、「政治とカネ」の批判を浴びた。石破氏は「慰労は慰労」「政治活動ではない」と弁明したが、共産党の田村智子氏は「裏金」と断じ、維新の柳ケ瀬裕文氏は「詭弁」と追及した(朝日新聞、2025年3月14日)。この対応は、政治資金規正法や国民の不信を軽視し、文脈を正しく捉えられない機能的非識字の特徴を示す。国家観があれば、首相として「政治とカネ」の敏感さを理解し、こうした行動を避けたはずだ。

さらに、2025年5月の米価高騰問題では、石破氏が『日曜報道 THE PRIME』で「世界に日本米を提供」と発言し、国内の米不足を無視したとして国民の怒りを買った(週刊女性PRIME、2025年5月17日)。経済データや国民生活の文脈を軽視し、表面的なグローバル志向に走る姿勢だ。Xでは「経済音痴」との声が上がり(2025年5月12日)、機能的識字の欠如を指摘された。国家観があれば、食糧安全保障や国内農業を優先した発言ができたはずだ。

石破氏の答弁スタイルも問題だ。日本テレビの分析(2025年1月5日)では、予算委員会の22万語で「議論」「私ども」「委員」が頻出し、「石破構文」と揶揄される。具体性に欠け、国民に政策を活用させる機能的識字を欠く。国家観が薄弱だと、首相として日本全体の利益を優先するビジョンが持てず、議論のための議論に終始する。


機能的識字と国家観は、一見無関係に見えるが、実は深く結びつく。文系でも理系でも、国家観がなければ情報の本質を見誤る。文系では、特定秘密保護法報道でメディアが感情的な反対に終始し、国際的文脈を無視した。理系では、物流の2024年問題の報道で、日経新聞が危機の原因を時間外労働の上限規制(年960時間、2024年4月1日施行)に帰し、雇用改善やデフレ脱却の影響を無視した。

理系の素養がある記者なら、失業率低下や賃金上昇の統計を分析できたはずだ。国立情報学研究所の新井紀子氏のテスト(2017年開始、50万人受験)では、中学生の38%、高校生の65%しか「アレクサンドラ構文」を正解できなかった。これは、文脈を捉える力の欠如を示す。STEM教育の研究(2018年)も、技術的識字だけでなく社会的文脈の識字を求める。原発やAI開発で、国家戦略を無視すると、技術の意義を見誤る。

私は、国家観の欠如が機能的非識字を助長すると確信する。政府批判や情報理解には、国家観が不可欠だ。国家が世界の行政単位である以上、日本固有の国家観を前提としなければ、歴史、文学、政治、文化、外交を深く理解するのは不可能だ。深い理解は、その存在を認めなければ不可能だ。他国も同様で、各国独自の国家観を認めなければ、その本質はつかめない。何も、自国や他国の国家観を全て無条件に是認しろと言うのではない。まずその存在を認めなければ、判断も議論もできないのだ。特に日本の国家観は、日本人の潜在意識に根底にある、日本の霊性の精神文化を理解しなければ、本当には理解できないだろう。

福島県相馬市の教育実践(2023年)では、教科書の音読・視写で理科や社会を学び、ニュース議論を通じて機能的識字が向上した。World Literacy Foundation(2023年)は、機能的非識字が世界で5人に1人に及び、経済損失が176兆円と報告する。

私は、文系も理系も、機能的識字能力に欠ける人は、知識を記憶するだけで判断や解決ができないと断じる。石破首相の例に見るように、機能的非識字は指導者にも忍び寄る。成人向け教育でメディアや政治家の機能的非識字を克服し、国家観を取り戻すべきだ。私は、国民が機能的識字と国家観を磨き、誤った政策や報道を見抜く力を育てれば、真に健全な社会が築けると確信する。それが実現されるまで、私は発信を続ける。

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2025年5月17日土曜日

台湾、原発「ゼロ」前に運転期間延長法案可決 行政院長、再稼働までの課題に言及—【私の論評】グリーン・ファシズムの破滅:ドイツの脱原発失敗と台湾への警告

台湾、原発「ゼロ」前に運転期間延長法案可決 行政院長、再稼働までの課題に言及

まとめ
  • 原発運転延長の法改正台湾唯一の稼働中である第3原発2号機の運転期間を最長20年延長する法改正案が、野党主導で立法院にて可決。脱原発を掲げる与党・民進党は反対し、行政院長は稼働継続の判断には一定の時間が必要と表明。
  • 政府のエネルギー政策: 政府は民生・産業用の電力供給の安定を保証しつつ、クリーンエネルギー開発を積極推進。次世代原子炉には安全性、核廃棄物処理、社会的合意を条件に前向きな姿勢を示し、従来の原発には厳格な手続きを適用。
  • 今後の手続きと課題原子力安全委員会は改正法に基づく規則制定と安全確認手続きを進める必要があり、具体的な判断時期は未定。政府は、小型モジュール炉(SMR)などの次世代原子炉導入には、安全性確保と核廃棄物課題の解決が求められるとしている。
台湾電力第3原子力発電所(屏東県)

台湾で唯一稼働中の台湾電力第3原子力発電所2号機(屏東県)が、2025年5月17日に運転期間満了で停止する予定だったが、立法院(国会)は13日、原発の運転期間を最長20年延長可能な原発関連法改正案を可決した。野党が多数を占める中、脱原発政策を掲げる与党・民進党の反対を押し切る形で可決され、第3原発2号機の稼働継続の是非に注目が集まっている。卓栄泰行政院長(首相)は16日のメディア懇親会で、稼働継続の判断には時間を要すると表明し、電力供給の安定を保証しつつ、クリーンエネルギー開発を積極的に進める方針を強調した。

政府は従来の原発について必要な安全手続きを進め、次世代原子炉には安全性確保、核廃棄物処理、社会的合意の3条件を満たすことを前提に前向きな姿勢を示した。原子力安全委員会は、改正法に基づく規則制定と安全性の実質的な確認手続きが必要で、これらの手続きの策定に要する時間は現時点で不明とした。特に、小型モジュール炉(SMR)を含む次世代原子炉の導入には、厳格な安全性評価と高レベル放射性廃棄物の課題解決が求められるとした。

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【私の論評】グリーン・ファシズムの破滅:ドイツの脱原発失敗と台湾への警告

まとめ
  • ドイツの脱原発は大失敗だ:2023年4月15日の原発全廃はエネルギー危機と経済失速を招いた。石炭(24%)と天然ガス(16%)に頼り、電気代は3倍に跳ね上がり、GDPは2年連続縮小。BASFやフォルクスワーゲンは生産縮小や海外移転に追い込まれた。国民の78%が2022年に原発延長を支持したが、グリーン・ファシズムに固執した結果、莫大な無駄金を生んだ愚策だった。
  • 再エネは非現実的で有害だ:風力や太陽光は天候依存で不安定、風力タービンは住民反対で2017年比6割減。土地を奪い、コストを膨らませる再エネは電力供給を不安定化させ、ドイツの経済を低迷させた。台湾もこの幻想を追うが、現実的な解決策ではない。
  • 世界は核エネルギーに回帰している:アメリカはSMRや原発延長に巨額投資、マイクロソフトはスリーマイル島再稼働に10億ドルを投じる。EUはフランスの14基新設やスウェーデンの10基計画で核を強化、支持率は52%に上昇。核の安定性と経済性が再評価される中、台湾は逆走する。
  • 民進党の反核イデオロギーは台湾を危機に導く:2011年の福島
    事故を過剰に恐れ、2013年の「安全」評価を無視して原発全廃を強行。2018年の国民投票(59%が継続支持)を無視し、グリーン・ファシズムに染まる。エネルギーの98%を輸入に頼り、中国の封鎖リスクに脆弱な台湾にとって、核放棄は致命的だ。
  • 台湾は核の力を取り戻すべきだ:董建華(ドン・ジエンホア)氏が原発継続を訴えるが、民進党は無視。核廃棄物はアメリカのSMR技術やフランスの燃料リサイクルで解決可能だ。2025年5月17日の第3原発2号機停止を前に、台湾はアメリカやEUの核回帰に倣い、電気代高騰と経済衰退を防ぐため核を選ぶべきだ。
台湾は2025年5月17日(今日)、最後の稼働中の原発である馬鞍山(マーアンシャン)原子力発電所の2号機の運転を停止した。これにより、台湾は東アジアで初めて「核国家」から「非核国家」となった。馬鞍山2号機の40年の運転許可が本日満了し、台湾電力(Taipower)は予定通り停止を実施した。これは、ドイツの脱原発が大失敗だったことを考えると、暴挙と言わざるを得ない。

ドイツの脱原発はなぜ大失敗だったのか

ドイツが2023年4月15日、最後の原発を止めたとき、「エネルギー革命」の成功を多くのドイツ国民が願った。だが、現実は厳しい。脱原発はエネルギー危機と経済失速を招き、グリーン・ファシズムの幻想を暴いた。核を捨て、石炭と天然ガスに頼り、2023年の電力は石炭24%、ガス16%だ。2022年のロシア・ウクライナ戦争でロシアからのガスが止まり、ドイツは液化天然ガス(LNG)ターミナルを急造、閉鎖した石炭火力を再稼働させた。


環境保護の名目など虚しい。電気代は米国や日本の3倍に跳ね上がり、2023年、ドイツは電力の純輸入国に転落した。GDPは2年連続縮小、BASFやフォルクスワーゲンは生産縮小や海外移転に追い込まれた。Xでは「脱原発で経済が死に体」と怒りが広がる。

風力や太陽光といった再エネは、天候に左右され、風力タービンは住民反対で2017年比6割減だ。土地を食い、コストを膨らませる再エネは非現実的で、電力は不安定、経済は低迷した。核廃棄物の処分場は未定だが、核を維持していれば管理できた。

国民の不満も爆発した。2022年には78%が原発延長を支持、2023年には51%が廃炉を「誤り」と断じた。Xでは「グリーン・ファシズムの自業自得」と批判が殺到する。核を維持していれば、莫大な無駄金も半分で済んだはずだ。ドイツの脱原発は、核の安定性と経済性を無視し、再エネを押し付ける愚策だった。台湾よ、この破滅を直視せよ。

世界は核に回帰、台湾だけが逆走する

世界はドイツの失敗から学んだ。アメリカとEUは核エネルギーをエネルギー安全保障と経済の基盤と見直し、原発の延長と新設を急ぐ。アメリカでは、2022年の法律で原発延長に巨額支援、小型モジュール炉(SMR)に補助金を投じた。ジョージア州のボーグル原発は80年運転を認められ、カリフォルニアのディアブロキャニオンは2030年まで延長された。


2024年、テラパワー社がワイオミングでSMR建設を始め、マイクロソフトはAIデータセンターの電力を賄うため、スリーマイル島原発の再稼働に10億ドルを注ぐ。Xでは「SMRでエネルギー革命」と熱狂が広がり、核支持は61%に跳ね上がった。EUも動きは速い。2022年、核を「持続可能な投資」に指定。

フランスは14基の新原発を、ポーランドは初の原発を、スウェーデンは10基を計画する。ベルギーやオランダも原発を延長、核支持は52%に上昇した。Xでは「フランスの核が欧州を救う」と声が響く。ロシアのガス供給削減と電気代高騰が、核の価値を再認識させたのだ。

だが、台湾はどうだ。民進党はグリーン・ファシズムに染まり、2011年の福島事故を過剰に恐れた。2013年のEUテストで原発は「安全」とされたのに全廃を選んだ。2018年の国民投票で59%が継続を支持したが、民進党は無視した。Xでは「国民を踏みにじる」と怒りが爆発する。再エネは有害だ。風力や太陽光は土地を奪い、住民反対で進まず、電力は不安定でコストは高い。世界が核の安定性で未来を築く中、台湾はドイツの再エネ強制をなぞる。なぜこんな道を選ぶのか。

台湾よ、目を覚ませ

民進党の反核イデオロギーは台湾を危機に追いやる。福島後の反核デモを政治の道具にし、2025年5月17日の「非核アジアフォーラム」では「反核が政治を動かした」と胸を張る。だが、Xでは「グリーン・ファシズムが経済と安全を殺す」と非難が殺到する。台湾はエネルギーの98%を輸入に頼り、天然ガス備蓄は8日分だ。中国の封鎖リスクが迫る中、2022年のペロシ訪台後の演習で脆弱性が露呈した。


産業界の董建華(ドン・ジエンホア)氏は原発継続を訴えるが、民進党は耳を貸さない。核廃棄物は解決可能だ。アメリカのSMR技術、フランスの燃料リサイクルがそれを証明する。ドイツの脱原発は、再エネを押し付けた結果、危機と失速を招いた。

アメリカはSMRで、EUは新原発でエネルギー安全保障を築く。なのに、台湾はドイツの失敗に固執する。台湾は岐路に立つ。アメリカは原発を延長し、スウェーデンは脱原発を撤回した。台湾も核で進むべきだ。電気代高騰、経済衰退、危機を避けるには、世界の潮流を見据え、核の力を取り戻すしかない。台湾よ、目を覚ませ。エネルギー政策においては党派を超えて、台湾は核を取り戻せ。

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