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岡崎研究所
スヴァールバル諸島の位置 |
中露の軍事化の動きは顕著で、ロシアはウクライナ侵攻後、軍事パレードや正教会の十字架の設置などを行い、さらには議員がテロリスト用の刑務所建設を提案するなど、強硬な姿勢を見せている。一方、中国も北極圏への関与を深めており、新たな砕氷船の建造や、北極圏から900マイル離れた場所に位置づける「近北極圏」国家として自らを宣言している。中国はスヴァールバルに「黄河」と名付けられた研究施設を運営し、軍事的な研究を含む活動を行っている。
スヴァールバル諸島の戦略的重要性は、その位置から来ている。ベア・ギャップと呼ばれる海域を通じてノルウェー本土と結ばれ、またロシアのコラ半島の北に位置し、軍事的な観点から非常に重要なエリアだ。ロシアは、もし紛争が起これば、このベア・ギャップを封鎖することで西側からの進入を防ごうとする可能性がある。
このような地政学的な動きは、スヴァールバル諸島の住民に不安を引き起こしており、特に2022年以降、信頼の崩壊が指摘されている。
さらに、インドも北極圏への関心を示し、ロシアとの連携を強化しており、中露だけでなくインドも含めた大国間のパワーバランスが今後の北極圏の動向を左右する可能性がある。以上の状況から、スヴァールバル諸島は国際的な緊張の火種となる可能性があり、各国間の軍事協力や対立がますます複雑化していることが伺える。
まとめ
- 中露の北極圏拡大: ロシアと中国は北極圏での軍事プレゼンスを強化し、特にロシアは北方艦隊の防衛体制を再編成している。中国も「氷上シルクロード」構想を推進し、資源開発に積極的である。
- スヴァールバル諸島の重要性: スヴァールバル諸島はノルウェーの主権下にあり、加盟国は自由な経済活動が可能だが、現在中露の影響力拡大のための戦略的拠点となっている。
- 日本への影響: 北極圏での中露の軍事活動は、日本にとって新たな安全保障上の脅威となり、エネルギー供給の安定性にリスクをもたらす。
- 過去の日本の取り組み: 日本は北極政策を策定し、国際的な協力や研究を進めてきたが、中露の影響下に置かれる可能性のある北極海航路の動向を注視する必要がある。
- 安全保障政策の再検討: 北極圏の動向に対応するため、日本は安全保障政策を見直し、国際的な協力を強化することが求められている。
中露の北極圏での影響力拡大はスヴァールバル諸島にとどまらず、ロシアが北極圏内で再開発を進める旧ソ連時代の軍事基地や、新設された施設もその例である。ロシアはフランツ・ヨーゼフ諸島やノヴァヤゼムリャに新たな軍事インフラを構築し、対空ミサイルシステムや新型レーダーを配備し、地域における軍事力を強化している。さらに、ノルウェーに近接するコラ半島にも潜水艦基地を増強し、北極海航路沿いでのロシアの存在感を高めている。このような施設増強は、ロシアが北極圏全体を支配する能力を増強し、NATOとの対峙の場を拡大する意図を示している。
一方、中国も「氷上シルクロード」構想の一環として北極開発を積極的に進め、ヤマルLNGプロジェクトへの大規模投資を行っている。具体的には、中国企業がこのプロジェクトに対して約270億ドルを投資したとされ、これはロシアの天然ガスをヨーロッパやアジアに輸出するための重要なインフラとなる。
さらに、グリーンランドやアイスランドにも中国の関与が増加している。中国はこれらの地域で科学調査やインフラ投資を進め、北極圏全域における影響力を強化している。例えば、グリーンランドにおける鉱山開発プロジェクトへの投資を通じて、中国は現地政府と密接な関係を築きつつあり、これは米国や西側諸国にとって戦略的懸念となっている。
北極圏の動向は日本の安全保障にとっても深刻な影響をもたらす。北極圏での中露の軍事活動は、従来の南西方面からの脅威に加え、北からの新たな安全保障上の挑戦となる。日本は、北極海航路が中国とロシアの影響下に置かれると、エネルギー供給の安定が揺らぎ、経済的にも不安定さが増すリスクに直面することになる。
北極圏の軍事プレゼンス強化は、ロシアの北方艦隊がアジアにまで影響力を拡大する可能性を含んでおり、特に日本海やオホーツク海周辺での軍事的緊張を高める要因となる。2021年には、ロシアが北方艦隊を使って日本海での軍事演習を行い、その一部は北極圏での行動を模したものとされている。
北極の白熊とパンダ AI生成画 |
2019年には日本が「北極海航路」の商業利用に向けた調査を行い、これに関する報告書を発表した。北極海航路は、従来の航路に比べて輸送時間を短縮できる可能性があり、日本にとって経済的なメリットが期待されている。