金正日の葬列 |
北朝鮮の故金正日(ジョンイル)総書記の長男、正男(ジョンナム)氏(40)から届いた「世襲批判」メール内容を東京新聞が特報した。中央日報などの韓国メディアも「東京新聞が報じた」として記事を追いかけている。
金正男氏 |
【私の論評】すぐれたジャーナリズムは地道な日々の積み重ねから生まれてくるものである!!
五味洋治氏 |
正男氏から年明けにメールを受け取ったのは、東京新聞編集委員の五味洋治氏だそうですが、この方がなぜこのようなことができるのか、上の記事を見ている限りでは良くわかりません。それは、さておき、まずは、この方の経歴を以下に掲載します。
1958年7月26日長野県茅野市生まれ。1982年早大第一文学部卒。1983年東京新聞(中日新聞東京本社)入社。川崎支局、社会部、政治部(官邸、野党担当)を経て1997年、韓国延世大学語学留学。1999~2002年ソウル支局、2003~2006年中国総局勤務。2008~2009年、フルブライトフェローとして米・ジョージタウン大学在籍。主に北朝鮮問題を取材。現在東京新聞本社外報部勤務。やはり、普段からの地道な積み上げあるからこそ、このようなことができるのだと思います。 特に、北朝鮮問題に関して、積み上げのあるところといえば、ラヂオプレスを忘れることはできないと思います。ちなみ、昨年暮れの金正日の死亡に関しては、日本政府や、韓国政府もその情報を掴んでいませんでしたが、これらにさきがて、ラヂオプレスが公開していました。おそらく、世界で一番早かったと思います。
ちなみに、ラヂオプレス(RP)=1941年に設置された外務省ラヂオ室が前身。情報機関として、戦時中は米国や英国の短波放送を受信・翻訳し、情勢分析などに利用されました。46年に財団法人となり、現在は北朝鮮のほかロシア、中国など約20か国・地域のラジオやテレビが報じるニュースの翻訳を、報道機関や官公庁へ配信するのが主な業務。職員は約60人。
ラヂオプレスの職場風景 |
以下は、2009年9月6日03時13分 読売新聞の『北に耳傾けるラヂオプレスって何?元は情報機関とか』というタイトルの記事の内容です。現在のラヂオプレスの有様を良く現しているとおもいましたので、掲載させていただきます。
北朝鮮のラジオなどの放送内容を伝える通信社「ラヂオプレス(RP)」に注目が集まっている。
昨夏の金正日(キムジョンイル)総書記の健康悪化説浮上後、現地メディアによる動静報道が急増する北朝鮮。今年は3日で100件に達し、過去最多(129件)だった2005年を上回るペースだ。金総書記の健在ぶりをアピールする狙いと見られるが、スタッフは、その背景にある意図を読み解くヒントを探し、24時間、耳を傾ける。
東京・新宿のビルにあるラヂオプレスのオフィス。受信機に囲まれた席にモニターと呼ばれる8人の編集部員が交代で座り、朝鮮中央放送と平壌放送の二つの短波放送を聴きながら、ニュース項目を書き取る。
1994年7月9日の金日成(キムイルソン)主席死去の報も、ここでキャッチされた。これまで聞いたことのない「特別放送」という言葉を何度も予告する放送に、重大な意味を感じ取ったモニターらが速報を流し、報道各社に緊張が走った。死去の一報を、北朝鮮以外のメディアで世界で最初に伝えたのも、ここからだ。
最近では、先月4日、クリントン米元大統領の電撃訪朝を報じたニュースも速報した。このときは、平壌放送が同日正午のニュースで、元大統領訪朝の冒頭部分を報じた後、突然、音声が消えた。約7分後、朝鮮中央放送と同時に、元大統領訪朝のニュースを再び伝え始めたが、平壌放送が決められた放送時間を間違えてしまったとみられる。
また、今年1月1日に金総書記の「新年の辞」を報じた放送は、録音にもかかわらず、アナウンサーがつっかえたり、読み間違えたりしたまま放送された。
斉藤竜成・編集部主任(39)は「北朝鮮メディアで、こうしたミスは考えられない事態」と指摘、金総書記の後継に三男・正雲(ジョンウン)氏が内定したとされていることについては「公式報道からは、正雲氏が後継とは断言できないが、国内の体制に緩みが生じ始めているのは間違いない」と話す。
無論ただ、「血統はしっかりと継承されているので、革命は引き続き勝利するであろう」(5月24日)などと、権力継承が進行中であることを示唆する文言を耳にすることが多くなっている。斉藤主任は「北朝鮮情勢が重大局面を迎えて注目が集まるが、流されることなく、正確な速報に努めたい」と話している。五味洋治氏しろ、ラヂオプレスにしろ素晴らしい仕事をしていると思います。このような仕事はどうすればできるのかと考えてみました。
そのヒントになるのは、 あるイギリスの元スパイが書いた、スパイの手口です。それも、第二次世界大戦中の話です。古い話ですが、その基本はいまでも受け継がれていると思います。この書籍随分前に読んだので、その書籍の名前も作者も忘れてしまいましたが、いわゆる、手口だけは覚えています。本日は、それを掲載させていただきます。
スパイというと、大方の人は、007とか、ミッションインポシブルなどの主人公がやっているようなことや、一昨年アメリカから国外追放になった、ロシアのスパイであるアンナ・チャップマンのハニートラップなどを思い浮かべるでしょうが、この元スパイによれば、そんなことはなく、日々やっているのは、各国が公式基出版している、新聞、雑誌、書籍などを丹念に調べるというものだそうです。もちろん、スパイ映画のように、敵地に潜入とか、女スパイによる手練手管というのもありますが、それは、スパイ全体の仕事の5%にしかすぎないそうです。
ロシアスパイ アンナ・チャップマン |
メンデレーフ |
メンデレーエフ(1834~1907 ロシア)は〈原子量〉という数値と〈元素の性質〉の間にある法則性(周期律)を発見した化学者で、「数量に基づく推理」の達人でした。その能力を見込まれて、あるとき彼はロシア政府から「無煙火薬」の研究を頼まれました。無煙火薬は、当時、限られた国だけの最新技術でした。
「火薬の原材料の配合比率がわからない……」
彼は、フランスの無煙火薬の工場に見学に行き、探ろうとしました。しかし見学はできても、肝心の部分は、当然機密で教えてもらえません。そこで彼はフランスの鉄道局で貨物列車の時刻表や輸送統計を調べました。統計には、火薬工場のある駅にどんな材料が何両編成運ばれたかが載っていました。そうして、列車時刻表を用いてその輸送量の割合を計算し、配合の比率を解明したのです。
「統計数値を使った謎解き」で、優秀なスパイ顔負けの活動をしたということです。
一見派手にみえるアドベンチャーの粋ともみられている、スパイ活動も実は、このような地味な活動によって支えられているのです。 そうして、その根底にあるものは、あくまで、国益のため行うという姿勢だと思います。これがブレているようだと、良い仕事はできないと思います。良い仕事どころか、相手に取り込まれてしまうのがおちです。
それから、忘れてはならないのは、自衛隊などもこのような地味な活動を日々行っているということです。自衛隊というと、最近では、災害派遣がクローズアップされていますが、日々地道な情報収集活動をしています。ただしこれは、あくまで、隠密行動であり、東京新聞やラヂオプレスのように表にはでません。私は、自衛隊OBの方から、冷戦時代のこのような活動についてうかがうチャンスに恵まれたことがあります。
冷戦時代に函館空港に飛来したこともあるMIG25、パイロットは米国に亡命 |
これをするためには、もとろん、ロシア語ができなければなりません。とにかく、日々当時のMig25などのパイロット達の交信を聴きどのような会話がなされているかを記録し、報告していたそうです。長く続けていると、パイロットたちの個人名や、家庭環境、健康状態までわかってくるそうです。おそらく、このようなことを日々実施して、異変があれば、それが上に伝わり、それに対する備えをするのだと思いました。
おそらく、上記の記事の五味洋治氏も、ラヂオプレスもこのような地味な活動を日々続けているのだと思います。彼らの活動もスパイと同じように、95%が地味な活動であり、後の残り5%が、たとえば金正男(ジョンナム)氏(40)から届いた「世襲批判」メール内容や、金正日氏の死亡のスクープだったりするのだと思います。
普段から、地道なこのような積み上げを行わない人には、このようなチャンスは永遠に訪れないのだと思います。特に最近の日本のメディアなど大部分がそうだと思います。 特にテレビの劣化は酷いものがあります。あまりに安直すぎるものが多すぎです。
私たちの平素の仕事だってそうです。日々の地道の積み上げと、周到な段取り、それに大きな使命感が大きな仕事をやり遂げる原動力になることは言うまでもないことだと思います。
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