検索キーワード「安全保障のダイヤモンド」に一致する投稿を関連性の高い順に表示しています。 日付順 すべての投稿を表示
検索キーワード「安全保障のダイヤモンド」に一致する投稿を関連性の高い順に表示しています。 日付順 すべての投稿を表示

2017年1月16日月曜日

トランプ氏が中露分断で「支那大包囲網」が完成か―【私の論評】日本は自国防衛のため軍事作戦を遂行する意思や能力があることを示せ(゚д゚)!

トランプ氏が支露分断で「支那大包囲網」が完成か

このブログでは、「中国」という表記は本年より用いません。そのため、引用記事などで、中国と表記されているものもすべて支那に変えています。

村上政俊氏 写真はブログ管理人挿入 以下同じ
 トランプ次期大統領の米国ならば北朝鮮との劇的な接近があり得る、と元外交官で前衆議院議員の村上政俊氏は読む。支那が北朝鮮を支えられなくなれば、北朝鮮が新たな事大の相手先として米国に急接近する可能性は高いという。

* * *

 トランプ大統領によって“支那大包囲網”が実現した際に、北朝鮮が支那を裏切るというのが二番目のシナリオだ。「現代のツァーリ」プーチンはトランプを才能ある人物と述べたのに対し、トランプはプーチンをオバマよりも優れた指導者だと称えており、トランプが大統領に就任して真っ先に打ち出すのは米露関係のドラスティックな改善だろう。

 そもそも米国における伝統的な安全保障観ではロシアが米国にとっての最大の脅威と位置付けられており、米国の安全保障専門家からはトランプのプーチンに対する宥和姿勢にかねて疑問符が付けられていた。

 しかしそこは大実業家のトランプだ。思惑なしにプーチンに対して一方的に譲歩しようということではなかろう。

 一つの可能性として考えられるのが“中露分断”だ。プーチンと習近平がいまのところガッチリとタッグを組んでいるのは、米国主導の国際秩序を打破しようという大戦略が一致しているからだ。しかし、冷戦期には中ソ対立という東側陣営の内輪揉めの歴史があり、現在もシベリアへの支那人大量流入など、表面的には蜜月にみえる中露にも地雷は数多い。

 トランプがこれまでの米国の安全保障観を転換し、支那を最大の脅威と考えているとすれば、プーチンへの接近とその先に見据えているであろう“中露分断”が全て一本の線で結ばれる。

 1971年の「ニクソン・ショック」になぞらえればよりわかりやすいかもしれない。反共の闘士ニクソンが策士キッシンジャーを使って支那に接近したのは、支那を抱き込んで最大の敵であるソ連を孤立させるためだった。

 トランプがもし支那を最大の敵と見做すのであれば、支那を孤立させるためにロシアを抱き込みたいと考えるのは自然の成り行きだろう。ダマンスキー島(珍宝島)での武力衝突のように、中ソ対立が公になっていた点が当時と現代の違いだが、先程述べたように中露関係には潜在的な火種が多く、トランプがそこに火を点けて回るかもしれない。

 安倍晋三政権下での日露関係の改善もこうした流れの中で位置付けられる。元来、日露接近を最も嫌っていたのは米国だった。一番の敵ロシアと一番の子分(と米国が一方的に思っているだけだが)日本が近付くことは地政学上の大変動に繋がるという認識で、日ソ国交正常化(1956年)の際に北方領土問題は解決の可能性があったが、国務長官ダレスは当時米統治下にあった沖縄を返還しない可能性をちらつかせて日ソ接近を牽制した。いわゆるダレスの恫喝だ。しかし、トランプ大統領自身がロシア接近を打ち出せば前提が変わり、日露接近と北方領土交渉にはプラスに働く。

 こうして日米同盟だけでなく、米露、日露関係の改善でロシアも加われば、水も漏らさぬ“支那大包囲網”の完成だ。このシナリオで一番あたふたするのは北朝鮮である。従来のまま支那につき従っていては、一蓮托生で自分自身が包囲網に押し潰されてしまうという危機感を抱き、支那陣営からの脱走とトランプ側への寝返りを画策するだろう。

 北朝鮮はこの時に保有する核兵器を外交交渉のカードとして使うはずだ。核放棄に応じる代わりに、それまでの数々の悪行の許しを得ようとトランプに縋り付くだろう。習近平からトランプへの寝返りを受け入れなければトランプタワーのあるNYに核兵器を打ち込むなどと凄んでみせるかもしれない。

 旧東側陣営からNATO加盟国というれっきとした米国の同盟国に鞍替えした国が現にいくつもあるではないかと叫びながら、死に物狂いで同盟国の列の末席に滑り込もうとする絵も想像できる。

 しかし北朝鮮内部では、核放棄に応じたものの、最終的には体制崩壊を招いたリビアのカダフィ大佐の例をひいて核放棄に反対する意見が出るだろう。そうなれば、金正恩vs反金正恩の内乱が起き、寝返り前に“北朝鮮崩壊”との結末になる。首尾よく寝返りが成功すれば、支那大大包囲網が築き上げられ、支那は早晩崩壊する可能性が高い。

 いずれにしても北朝鮮の運命を左右するのは支那がどうなるかだ。一人の野次馬としては、支那が崩壊する前にキャラ立ちしているトランプと金正恩の直接会談を見てみたい。(文中敬称略)

 【PROFILE】むらかみ・まさとし/1983年大阪市生まれ。東京大学法学部卒。2008年4月外務省入省後、北京大学、ロンドン大学に留学し支那情勢分析などに携わる。2012年12月~2014年11月衆議院議員。現在、同志社大学嘱託講師、皇學館大学非常勤講師、桜美林大学客員研究員を務める。著書に『最後は孤立して自壊する支那 2017年習近平の支那』(石平氏との共著、ワック刊)がある。
 ※SAPIO2017年2月号

【私の論評】日本は自国防衛のため軍事作戦を遂行する意思や能力があることを示せ(゚д゚)!

上のシナリオは十分にあり得るものだと思います。その根拠としては、このブログでも以前掲載したことのある、ルトワック氏の支露関係の分析です。ルトワック氏は、支那と露の関係は、氷の微笑であるとしていました。

今一度以下にルトワック氏の支露関係に関する分析を掲載します。これは、日経新聞に掲載されたものです。なお、このブログでは、中国という表記は使いませんので、以下の文中で特に断りがない限り、中国のことは支那、支と変更して表記しています。
接近する支ロ、氷の微笑が消えるとき

2014/5/25 3:30
ルトワック
 ウクライナ危機をきっかけに中ロはさらに接近し、日米へのけん制を強める……。世界ではこんな見方が多いが、ルトワック氏の予想はちがった。

ロシアは、支那とは仲良くならない。シベリアなどに侵食してくる支那を脅威だとみているからだ。むしろ、ロシアは支那をにらみ、本当は日米と協力を広げたいはずだ――。ルトワック氏はこんな趣旨の予測を披露したという。 
 中ロの表面的な動きをみるかぎり、この分析は必ずしも当たっていない。まさに同じ20日、中ロはこれでもかと言わんばかりの仲良し劇を演じたからだ。 
 訪中したプーチン大統領は、習近平国家主席と懸案だった天然ガスの輸出交渉を決着。対ロ制裁への反対をかかげ、来年に対日・独戦勝70周年式典を共催することも決めた。 
 だが、会談では結局、日米の安保当局者がいちばん注目していた商談が署名にいたらなかった。ロシアの最新鋭戦闘機スホイ35(24機)と地対空ミサイルS400を、支那が買うための契約だ。 
 売却の条件で折り合わなかったとされるが、理由はそれだけではさそうだ。モスクワからは、ルトワック氏の読みを裏づけるような本音が聞こえてくる。 
 「プーチン氏は支那に相当、いら立っている」。クレムリンの内情を知るロシアの安保専門家らは、こう明かす。プーチン氏はかねて支那の台頭に懸念を抱いていたが、昨年12月、不信感を一気に強めるできごとが起きたのだという。 
 それは、習主席とヤヌコビッチ・ウクライナ大統領(当時)が北京で署名した友好協力条約だった。「ウクライナが核で脅されたら、支那が必要な安全を保障する」。条約にはこんな趣旨の合意が入った。 
 支那は「核の傘」を使い、ロシアの縄張りであるウクライナにまで手を突っ込むつもりか。プーチン氏はこう反発したようだ。 
 支那の国内総生産(GDP)はロシアの4倍を超える。支那はその分、ウクライナを含めた周辺国に影響力を広げるのは自然なこと、と考えているのだろう。 
 歴史的にも、長い国境を接する中ロの相性は良いとはいえない。新支那建国の直後、毛沢東、スターリンの両首脳はモスクワで会い、同盟の契りを交わした。それもつかの間、やがて路線対立が始まり、蜜月は10年と続かなかった。 
 「いまの支那は共産党体制だったときのソ連と同じだ。何を考えているのか、外からは分からない。しばしば、唐突な行動にも出る」。公式な場では決して支那を批判しないロシアの政府関係者からも、こんなささやきが聞かれる。 
 では、日本はどうすればよいのか。中ロの結束が弱まれば、日本の選択肢は広がる。それでもロシアが対中外交で協力したり、領土交渉で譲ったりすると期待するのは禁物だ。 
 米政府当局者は「ロシアに過剰な期待を抱かないほうがいい。日本には戦中の経験もある」と語る。第2次大戦末期、日本の降伏が確実とみるや、ソ連は日ソ中立条約を一方的に破棄し、攻め込んできた。 
 ユーラシアの両雄はどこに向かうのか。日本は歴史の教訓をひもときながら、冷徹に次の一手を練るときである。(編集委員 秋田浩之)
習近平とプーチン
http://www.nikkei.com/article/DGXNZO71758060V20C14A5SHA000/?dg=1
日本では、著書『支那4.0』が話題のエドワード・ルトワック氏は、トランプ新政権は支那の冒険主義的な行動をもはや許容せず、米中関係は大きく変わると予測しています。

安全保障のダイヤモンド
さて、このブログでは、以前から北方領土交渉をめぐる安倍首相のプーチン接近の背後には、ロシアを支那封じ込め政策である「安全保障のダイヤモンド」の一角に据えようという目論見があることを主張してきました。それを掲載した記事のリンクを以下に掲載します。
【日露首脳会談】支那、日露連携を警戒「包囲網」強化に対抗―【私の論評】会談のもう一つの目的は、ロシアを安全保障のダイヤモンドの一角に据えること(゚д゚)!
日露による「対中包囲網」を警戒する習近平
詳細は、この記事をご覧いただくもとして、以下に結論部分のみを掲載します。
日本がいくら「日本はこうありたい」と理想論を語ったとしても、自分だけではどうにもなりません。
いくら「平和な日本でありたい」と願ったとしても、他国が侵略してきたら日本の平和は維持できません。そんな時に、憲法9条があっても、何の役にも立ちません。実際に北朝鮮は今年日本海に21発のミサイルを発射しています。支那は軍艦を動員して尖閣諸島を脅かしています。韓国は、未だに竹島を実力で占拠しているます。

こういう現実の中では、日本はできるだけ多くの国と友好関係を深めて、支那や北朝鮮が暴発しないように抑止していくことが日本の安全保障にとってより良いことになります。無論、支那や北朝鮮などと直接友好関係を結ぼうにも、結べるものではありません。

こんなときに、日本がロシアとの友好関係を深めれば、ロシアは支那になど軍事技術を供与しなくても良いと考えるかもしれません。もし、そう考えなかったにしても、支那側はそのように受け取るかもしれません。

安全保障のダイヤモンドを構想し、それを全方位外交を通じて実行してきた安倍総理は、当然の腹の中で、このように考えており、何とか、支那封じ込めの一角にロシアを加えたいと当然考えていることでしょう。そうして、これは、今回の日露首脳会談の目的の一つであることは間違いありません。

ロシアのプーチンは、以前にもこのブログに掲載したように、政敵は暗殺するなどして容赦なく潰すのが常であり、腹の中では何を考えているかは見えないところがあります。だから、本当に信頼できるかどうかはわかりません。

しかし、私たちは、支那やロシアのやり方で学ぶべきところがあります。それは、腹の中では互いに相手を信頼していないにもかかわらず、中ロはウクライナ危機をきっかけに中さらに接近したように首脳会談などを実施して見せつけて、日米へのけん制を強めるように中ロは動くと、世界中に思わせたという実績があります。 
これは、ルトワック氏には見ぬかれてしまいましたが、成功していれば、ロシア・支那連合は、日本はもとより、世界中の国々にとって、かなりの脅威となったことでしょう。ロシアの軍事技術と、支那の経済力が結びつけば、これは大変なことです。しかし、現実はそうではありませんでした。

日本も彼らのこのやり方を参考にして、支那に脅威を与えるべきです。実際にその効果はブログ冒頭の記事にある、新華社の「ロシアを引き込み、支那を包囲しようとの考えは希望的観測に基づく妄想だ」という言葉にもあるように、支那は日露首脳会談に警戒感を抱いています。

安倍総理としては、ロシアをうまく操っての脅威を少しでも除去できるように努力して頂きたいです。
さて、ロシアというとあまり信用できないところはあります。しかし、安倍首相はもとより、トランプ氏も支那と比較すれば、ロシアのほうが扱いやすいと考えていることと思います。

ロシアというと、日本では多くの人が大国というイメージが抜け切れていないところがあると思いますが、ソ連の末期は経済がガタガタでどうしようもない状況になっていました。現在のロシアになったばかりのときも、哨戒用のジエット戦闘機の燃料がないような状態になり、米国などから支援を受けていたこともあったくらいです。

現在でも、ロシアのGDPは日本の1/4程度に過ぎません。支那とは比較の対象にもなりません。人口も、支那は14億人であるのに対して、ロシアは1億4千万人に過ぎません。これは、日本よりわずかに2千万人多いに過ぎません。

そのロシアは、いっとき原油などで経済が潤い、BRICSの一国として脚光を浴びていた時期もあるのですが、従来から比較すると原油安の状況が続いています、

さすがに、軍事力や軍事技術ではまだ先端を行っていますが、それにしても国力の衰えは隠し仰せない程度にまで顕になっています。かつてのように、NATO軍と戦争する力など全くありません。

この状況ですから、当然のことながら、日米にとっては支那よりは御しやすいのは当然です。ロシアも、支那と同じように民主化、政治と経済の分離、法治国家が遅れている面はありますが、それでも支那よりははるかにましです。

そうして、何よりも、支那は腐敗撲滅運動の名のもとに習近平が反習近平派と熾烈な権力闘争をしていますが、ロシアはプーチンが強力なリーダーシップを発揮して、ロシアを統治しており、国民からの支持を集め安定しています。

であれば、日米はロシアと支那の両方を敵に回すよりは、ロシアを味方につけて支那から分断して、日米露の支那包囲網を構築したほうが、はるかに有利です。

だからこそ、安倍首相はその方向にすでに動き、トランプ氏もそれに続くことになるでしょう。これで、支那は日米はもとより、ロシアに対してもうかつに手をだせなくなるわけで、安全保障の面からかなり有利になるのは間違いありません。

ただし、日本については一つ懸念材料があります。それは、ルトワック氏も以下のように分析しています。
 日本について言うならば、2017年には支那が尖閣諸島に多数の「漁民」を軽武装で上陸させてくる可能性がある。実際には民兵であるこれら「漁民」は人民解放軍の指揮下にある「漁船」で上陸し、日本側が出動させるヘリコプターに対してフレア・ガン(照明弾や発煙弾を発射する信号銃)を一斉発射して撃退するだろう。 
 この尖閣攻撃は、支那側が日本のなまぬるい対応を事前に知っているためにその可能性が高くなってきた。 
 日本側は憲法上の規制などで尖閣に侵入してくる支那の軍事要員に対しても警察がヘリで飛来して、違法入国で逮捕し、刑事犯として扱おうとする対応を明らかにしている。だから支那側の偽装漁民はフレア・ガンでまずそのヘリを追い払うわけだ。ヘリがフレア・ガンに弱いことはよく知られている。この場合、米軍の介入も難しくなる。 
 日本に必要なのは、尖閣諸島を、重要施設が集中している「東京都千代田区」と同じにみなし、そこへの侵略は本格的な軍事作戦で撃退することだ。日本側はいまその軍事反撃ができないことを内外に広報しているような状態であり、支那の侵略をかえって誘発する危険を高くしている。 
 日本は自国の防衛のために現実的かつ本格的な軍事作戦を遂行する意思や能力があることを示さねばならない。そのことこそが支那の軍事的な侵略や威嚇への抑止となるのだ。

 トランプ次期大統領の安倍晋三首相への信頼度は高い。安倍氏をいまの世界で最高水準の指導者とみなし、日本をアメリカにとって第一の同盟国とみていると言える。11月17日の両首脳の会談ではトランプ氏は安倍氏に支那への新たな強硬策を伝えたと私は聞いている。 
 だからトランプ政権下では日本は支那に対して強い措置をとる際にこれまでのようにアメリカ政府にいちいち了解を求める必要はもうなくなるだろう。 
 トランプ氏は安倍首相に今後のアメリカが支那に対して新たに厳しい姿勢をとることを内密に告げ、その後に台湾の蔡英文総統と電話会談することでその姿勢を内外に明示したのだ。 
 だから2017年は、アメリカはこれまでと異なる対支政策をとり、その結果、まったく新たな米支関係が始まるだろう。その変化は日本にとっても、プラスが多いと言える。
トランプ大統領が登場すれば、世界は変わります。日本もその変化に対応しなければなりません。先日、トランプ氏がトヨタに苦言を呈しました。

このトランプ氏の苦言に関して、「なぜ一民間会社であるトヨタにまで・・・」などと批判する人も多かったです。トヨタのほうも最初は「心外である」などと語っていました。しかし、トヨタはアメリカに随分前から進出していて、現地の人々を多く採用し地域に根付き、アメリカで日本を代表するものというと「トヨタ」といっても良いほど親しまれています。

だから、トランプ氏の発言は一民間企業に対する発言というより、日本を代表する企業「トヨタ」に対する発言であったとみるべきです。そうして、その真意は、日本はトランプ率いる米国の味方であるのかどうかを確かめるためのものだったと解釈すべきです。

米国においては、トランプ氏もそうなのでしょうが、特に軍人はこの「味方」ということを強く意識します。信頼のおける相手かどうかを単純に「味方であるか否か」で判断します。

問題の発言が飛び出したのは今月5日。2019年の稼働を目指してメキシコに新工場を建設中のトヨタに対し、トランプ次期アメリカ大統領が自身のツイッターで、〈ありえない! 米国内に工場を作らないなら高額の『国境税』を払え〉と事実上の工場新設の撤回を求めたのです。

「アメリカ・ファースト(米国第一)」を掲げるトランプ氏は、これまでも米国内の雇用増大を最優先に掲げ、メキシコに工場を持つ米自動車大手のゼネラル・モーターズ(GM)やメキシコに新工場を計画するフォード・モーターに「口撃」を仕掛けてきたのですが、それが日本企業にまで及んだのです。

9日、米デトロイトで開催された北米国際自動車ショーで豊田氏はメキシコ工場の計画に変更がないことを述べた上で、「これまでの60年間で米国に220億ドル(約2.5兆円)を投資してきたが、今後5年間でさらに100億ドル(約1.1兆円)を米国に投資する」と表明しました。慎重な姿勢で知られるトヨタが即断即決で1兆円規模の投資計画を明言したことは、日米の経済界で大きなインパクトを持って受け止められました。

トヨタ自動車の豊田章男社長は9日、米デトロイトで開幕した北米国際自動車ショーの新型車
発表会で、今後5年間で米国の事業に100億ドル(約1兆1600億円)を投じる考えを表明した。
そもそもトランプが問題視しているのは、米国国内の雇用を減らすことです。トヨタは米国国内の工場を閉めてメキシコに新工場を作るわけではありません。メキシコ国内で雇用が生まれることは不法移民を抑えることにもつながり、トランプ政策にはむしろプラスと考えられます。

しかし、そうした理屈を説明してもトランプ氏は納得しなかったでしょう。そこでトヨタは1兆円というインセンティブを示したのです。しかも、このタイミングで出したことでトランプに良いイメージを与えました。結果的にメキシコ工場の撤回は避けられるでしょう。

フォードと比べれば、トヨタの対応はトランプ発言の真意を見抜いた「最高のアンサー」だったと思います。これによって、トランプ氏は日本の代表である、トヨタという企業を味方とみなしたことでしょう。そうして、これはトヨタという一企業だけにとどまらず、日本を「味方」とみなす上での最上の判断材料となったことでしょう。

私は、このトヨタの判断には、日本政府の意向も働いたのではないかと思います。意向まではいかなくとも、豊田氏は政府にも相談をしたのではないかと思います。そうして、政府は「最高のアンサー」になるようなアドバイスをしたものと睨んでいます。

さて、尖閣諸島の話に戻ります。ルトワック氏が「尖閣諸島を、重要施設が集中している「東京都千代田区」と同じにみなし、そこへの侵略は本格的な軍事作戦で撃退することだ。 日本は自国の防衛のために現実的かつ本格的な軍事作戦を遂行する意思や能力があることを示さねばならない。そのことこそが支那の軍事的な侵略や威嚇への抑止となるのだ」と指摘するように、日本は少なくとも自国の領土を守れるように、法整備などをすべきです。

自国の領土は自国で守る、それが独立国というものだ
これが出来ないようであれば、トランプ氏は自国の領土を自分で守ることをしない日本を「味方」とみなすことはしなくなることでしょう。日本を「味方」であると認識しなかったにしても、トランプ氏は支那に対して当面厳しく対峙することでしょうから、日本にとって良い状態がしばらく続くかもしれません。

しかし、その後支那の現体制が崩れて、支那がある程度の民主化、政治と経済の分離、そうして法治国家化を進めて、ある程度まともになり、特にブラック国家として、人民を搾取して、安い製品を製造して米国に輸出するなどのことをやめ、為替の不当な操作をすることもやめた場合、今度は支那を「味方」とみなすようになるかもしれません。

そうなれば、日本にとっては最悪です。そのようなことにならないためにも、ルトワック氏が語るように、日本は自国の防衛のために現実的かつ本格的な軍事作戦を遂行する意思や能力があることを示さねばならないのです。

【関連記事】





2015年11月23日月曜日

【東アジア首脳会議】「完勝だ!」 3年越し…安倍首相、南シナ海「対中包囲網」に成功―【私の論評】中国の嫌がることだけを、やり続ければアジアは平和だ(゚д゚)!


李克強首相(右)と言葉をかわす安倍首相=22日、クアラルンプール
東アジア首脳会議での南シナ海情勢をめぐる議論は、日米両政府による対中包囲網が奏功し、安倍晋三首相の「完勝」(同行筋)に終わった。ただ、東南アジア情勢をめぐる駆け引きでは、世界中で“爆買い”を展開し、その豊富な資金力で東南アジア諸国連合(ASEAN)への影響力を強める中国と、民主主義や日米同盟を前面に関係強化を図る日本との間で、今後も攻防が続きそうだ。

突然、近寄ってきた李克強首相だが…

「本当に良かったな」

安倍首相は東アジア首脳会議後、安堵の表情を見せた。南シナ海情勢で1カ国を除くすべての国が中国を非難し、国際世論で自制を促すことができたためだ。

2年前はこうではなかった。首相は今回と同様に中国の海洋進出を非難したが、参加18カ国で懸念を表明したのは「8カ国程度だった」(同行筋)という。

“変化”の兆しは会議の直前に表れた。控室にいる安倍首相に中国の李克強首相が突然、近づき語りかけた。この時、李氏は日本語の堪能な通訳を同行させていた。李氏は、話を続けながら各国報道陣がカメラを構える通路を一緒に歩く一幕も演出した。政府高官は「友好的な関係を演出し、首脳会議で日本から南シナ海で厳しい批判がでないようにしたのではないか」と分析する。

首脳会議では、安倍首相が口火を切ることなく次々と中国非難が発言され、安倍首相は最後に発言を求めるボタンを押した。

「軍事、民生利用を問わず恒常的な変更を与える一方的行動を自制すべきだ」

軍事利用でなくても岩礁埋め立てなどを自制する必要があると訴えた。

習主席、APEC夕食会では下座に

李氏は今月1日の日中韓首脳会談のように日本批判を展開することもなかった。首脳会議が終わると、オバマ大統領が安倍首相の席に近づいてきた。2人は会議の成功を確認し、中国覇権の阻止に向け、3年越しの外交努力を続けてきた労をねぎらい合った。

首相周辺は東アジア首脳会議を「完勝だ」と振り返る。フィリピンで開かれたアジア太平洋経済協力会議(APEC)の歓迎夕食会では、議長のアキノ大統領の横にオバマ氏、その横に安倍首相が座り、中国の習近平国家主席は同じ円卓の下座だったという。 (クアラルンプール 坂本一之)

【私の論評】中国の嫌がることだけを、やり続ければアジアは平和だ(゚д゚)!

ブログ冒頭の記事で、"南シナ海情勢で1カ国を除くすべての国が中国を非難"とありますがこの一カ国というのがわからないので、いろいろ調べたのですが、結局わかりませんでした。ひょっとすると、それは中国のことなのかもしれません。いわずもがなのことなので、わざわざ記載しなかったのかもしれません。

これは、いかにもありそうなことです。あれだけの埋め立てを平気の平座でやり抜くくらい、傍若無人、厚顔無恥なのですから、当然といえば当然です。

それにしても、今日アジアのほんどの国が、中国の南シナ海での振る舞いについて非難するようになったのは、日本の安倍総理による行動がものをいっています。

上の記事では、それについてあまり詳しくは掲載していませんが、これは安倍総理が最初に総理に就任する直前に、「安全保障のダイヤモンド」の構想を打ち上げ、打ち上げるだけではなく、その後全方位外交を通じて、各国に訴えてきたものによるものです。

それについては、このブログにも掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
安倍首相の「安保ダイヤモンド構想」、対中抑止へ完成間近-【私の論評】鳩山の構想は報道しても、安部総理の構想は一切報道しない日本のマスコミの存在意義を問う(゚д゚)!
安倍晋三首相とインドのモディ首相
この記事は、昨年9月2日のものです。インドのモディ首相が日本を訪問した際の記事です。この記事から一部を以下にコピペします。
安倍晋三首相とインドのモディ首相との会談で、両国の外務・防衛閣僚協議(2プラス2)設置の検討で合意したのは、海洋進出を進める中国を牽制(けんせい)し、南シナ海やインド洋などの海上交通路(シーレーン)を守る狙いがある。安倍首相は海洋安全保障強化を図るため、日本とハワイ(米国)、オーストラリア、インドの4カ所をひし形に結ぶ「安全保障ダイヤモンド構想」を提唱しており、今回の会談は構想実現に向けた大きな一歩となった。 
ダイヤモンド構想は、首相が第2次政権を発足させた直後に英文で発表した論文「アジアの民主主義 セキュリティーダイヤモンド」で披露した戦略。中国は、バングラデシュやスリランカなどインド周辺国への支援を通じてインドを包囲する「真珠の首飾り戦略」を進めており、首相はダイヤモンド構想が中国と隣接するインドにとってもメリットがあると踏んでいた。 
首相は7月の日豪首脳会談でも、共同声明に「特別な」の文言を明記した。豪印両国との連携が進み、ひし形の完成は間近といえる。
一昨年のアジア首脳会議では、中国の海洋進出を非難したのは、参加18カ国中「8カ国程度だった」のが、安倍総理の「安全保障のダイヤモンド構想」に基づいた昨年の具体的な外交活動により、今年の首脳会議では、ほとんど全部のアジアの国々が、中国の海洋進出を非難したのです。

さて、中国外務省の洪磊副報道局長は23日、李克強首相が22日にマレーシアのクアラルンプールで開催の東アジアサミットの前に安倍晋三首相と立ち話をした際、「改善に向かっている中日関係は依然、もろくて弱い。日本が約束を守るかどうかを見なければならない」と述べたと発表しました。安倍氏が、南シナ海問題などで中国を批判していることにくぎを刺した発言です。

李氏は「中日関係のさらなる改善に悪影響を与えないように、日本側が、両国の相互理解にとって有益な話を多く語るべきだ」と述べたとされています。
李克強は20日付のマレーシアの中国語紙「星洲日報」への寄稿の中で、「外部の干渉が招いた一部地域の混乱が続いており、その悪影響は外にもあふれ出している」と述べ、暗に米国の中東戦略を批判し、南シナ海問題への干渉を牽制(けんせい)していました。

李氏が指摘する「一部地域の混乱」は、イスラム教スンニ派過激組織「イスラム国」が勢力を拡大するイラク、シリア情勢を指すとみられます。また「悪影響」は、米国が主導する有志連合による空爆などが引き金になったとされる、パリでの同時多発テロを意味するとみられます。

さらに、李は、積極的な対外政策で明の黄金期を築いた永楽帝の重臣、鄭和が行った南方への大航海が、「海賊を駆逐し、衝突を鎮め、海上の安寧を守った」などと強調しました。人工島建設に対する国際社会の批判に対し、航行の安全を守るためなどと反論する中国の主張と重ね合わせました。

しかし、鄭和の大航海については、艦隊が通過した国々が、明の実質的な支配下に組み入れられたとの説も根強い。当時の明は、軍事力と経済力でアジアの国々を影響下に置いたとの見方もあります。

「中華民族の偉大な復興の実現」を掲げ、「海洋強国」の建設を進める習近平指導部の理想像の一つが、明代の隆盛である可能性も否定できません。

さて、前近代の中国といえば、朝貢貿易が思い出されます。朝貢とは、中国の皇帝に対して周辺国の君主が貢物を捧げ、これに対して皇帝側が確かに君主であると認めて恩賜を与えるという形式を持って成立します。

中国は、いずれこの朝貢を現代的な形で、再興させようとしています。近世においては、日本は朝貢はしていませんでしが、琉球を含む多くの国々が朝貢を続けていました。

そうして、朝貢をしていた琉球、今の沖縄は、中国の領土であるとするのが現代中国の見方です。しかしながら、アジアの他国も朝貢をしていましたから、沖縄だけを中国領とするのは、非常に奇異な話です。

これは、結局のところ、現中国の屁理屈に過ぎません。前近代に自国の領だった版図をすべて自国の領土と宣言するのは、許されることではありません。

いずれにしても、現代の世界においては、特殊な事例を除いて、いわゆる第二次世界大戦前の各国の版図が、現状の各国の領土の目安とすべきです。現中国も、本来は第二次世界大戦直前の版図とすべきです。

モンゴル、ウィグル、チベット、満州は本来外国であるはずです。



結局中国は版図を増やしたいというだけです。最近では、国境溶解といって、多くの中国人が、国境を超えてありとあらゆるところに進出し、そこにいついて仕事をし、国境が曖昧になっています。特に、現状ではロシア国境が顕著です。

そうして、最近では、本格的に海洋進出にのりだしました。中国の野望は放置しておけば、とんでもないことになります。尖閣を中語に取られれば、次は沖縄、次は日本に職種を伸ばします。

こんな魂胆が、見え透いているので、安倍総理は、アジアの平和のため「安全保証のダイヤモンド構想」を打ち出し、それに向けて行動し、今日の対中包囲網の完成をみることになったのです。

それにしても、中国かなり劣勢になりました。劣勢になる過程では、会議などでも吠えまくっていたのですが、安倍総理や他国の首脳にさんざんぱら引っ掻き回されたせいでしょうか、安倍総理はもとより他国に対しても吠えまくって非難するようなことはなくなりました。

この状況をみていると、中国の嫌がることだけを、徹底的にやり続ければアジアは平和だということがいえそうです。

とにかく、安倍総理にはこれからも、習近平や李克強がとことん嫌がることをどんどん実施して、中国を締めあげていただきたいものです。それで、日中友好などが損なわれても、それで良いと思います。

過去の政府や国民にもそのような覚悟が希薄だったと思います。そこに付け入る隙を与えたため、尖閣問題など長期化してしまいました。これからも、徹底的に厳しい態度を撮り続け、中国の崩壊を待つべきです。

私は、そう思います。皆さんは、どう思われますか?

【関連記事】

日本経済はリセッション入り?中国「わが国経済の減速を喜べない日本」―【私の論評】主要な原因は8%増税によるGDPギャップの放置!中国向け輸出減少は軽微(゚д゚)!






【関連図書】

China 2049
China 2049
posted with amazlet at 15.11.23
マイケル・ピルズベリー
日経BP社
売り上げランキング: 16

「中国の終わり」にいよいよ備え始めた世界
宮崎正弘
徳間書店
売り上げランキング: 318

余命半年の中国経済 これから中国はどうなるのか
渡邉 哲也
ビジネス社
売り上げランキング: 919

2016年12月16日金曜日

【日露首脳会談】中国、日露連携を警戒「包囲網」強化に対抗―【私の論評】会談のもう一つの目的は、ロシアを安全保障のダイヤモンドの一角に据えること(゚д゚)!

【日露首脳会談】中国、日露連携を警戒「包囲網」強化に対抗

日露による「対中包囲網」を警戒する習近平
中国の習近平指導部は、日本がロシアと連携を深める動きを「対中包囲網」の強化と見なし、強く警戒。ロシアとは経済、軍事協力を通じて「歴史上最良」(中国メディア)の関係を維持し、日本に対抗する構えだ。中国は安全保障面で「厳しい状況」(北京の外交筋)が続いている。

米軍の最新鋭迎撃システム「高高度防衛ミサイル(THAAD)」の配備を決めた韓国とは関係が悪化。トランプ次期米大統領は台湾に接近する姿勢を見せ、南シナ海の軍事拠点化にも批判的だ。日本とも東シナ海を巡る緊張が解けていない。

こうした状況の中でも、ロシアとは良好な関係を保っており「日米韓をけん制する重要なカード」(中国人研究者)。それだけに日ロ首脳会談の行方には神経をとがらせており、国営通信、新華社は「ロシアを引き込み、中国を包囲しようとの考えは希望的観測に基づく妄想だ」と批判した。

【私の論評】会談のもう一つの目的は、ロシアを安全保障のダイヤモンドの一角に据えること(゚д゚)!

今回の日露首脳会談に関しては、日本のメデイアは北方四島の返還ばかりがクローズアップしており、いささか謝狭窄にすぎてあまりにも話にならないので、以下に「対中包囲網」の準備としてのこの会談の意義について以下に掲載します。

日本のメディアなどは、中露というと、無条件で同盟国であるくらいの認識しかないと思います。しかし、これは無論表面上はそのように装っていますが、どちらも互いに相手を信頼のおける同盟国などとは見ていません。

それに関しては、このブログでも何度も掲載してきました。それに関する記事のリンクを以下に掲載します。
【西村幸祐氏FB】ルトワックはウクライナ危機でシナとロシアの接近は氷の微笑だと分析する。―【私の論評】東・南シナ海が騒がしくなったのは、ソ連が崩壊したから! 安全保障は統合的な問題であり、能天気な平和主義は支那に一方的に利用されるだけ(゚д゚)!
エドワード・ルトワック氏
この記事は、2014年5月27日のものです。詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この頃米の著名な戦略研究家、地政学者でもあるルトワックが来日中だったが、安倍首相と会っていました。ルトワックは当時ウクライナ危機でシナとロシアの接近がみられたものの、内実は氷の微笑だと分析していました。

この記事には、西村幸祐氏のFBを掲載しましたが、それにルトワック氏の支那とロシアの関係を分析した内容の日経新聞の記事が掲載されていました。それを以下に引用します。
接近する中ロ、氷の微笑が消えるとき

2014/5/25 3:30
 ウクライナ危機をきっかけに中ロはさらに接近し、日米へのけん制を強める……。世界ではこんな見方が多いが、ルトワック氏の予想はちがった。

ロシアは、中国とは仲良くならない。シベリアなどに侵食してくる中国を脅威だとみているからだ。むしろ、ロシアは中国をにらみ、本当は日米と協力を広げたいはずだ――。ルトワック氏はこんな趣旨の予測を披露したという。 
 中ロの表面的な動きをみるかぎり、この分析は必ずしも当たっていない。まさに同じ20日、中ロはこれでもかと言わんばかりの仲良し劇を演じたからだ。 
 訪中したプーチン大統領は、習近平国家主席と懸案だった天然ガスの輸出交渉を決着。対ロ制裁への反対をかかげ、来年に対日・独戦勝70周年式典を共催することも決めた。 
 だが、会談では結局、日米の安保当局者がいちばん注目していた商談が署名にいたらなかった。ロシアの最新鋭戦闘機スホイ35(24機)と地対空ミサイルS400を、中国が買うための契約だ。 
 売却の条件で折り合わなかったとされるが、理由はそれだけではさそうだ。モスクワからは、ルトワック氏の読みを裏づけるような本音が聞こえてくる。 
 「プーチン氏は中国に相当、いら立っている」。クレムリンの内情を知るロシアの安保専門家らは、こう明かす。プーチン氏はかねて中国の台頭に懸念を抱いていたが、昨年12月、不信感を一気に強めるできごとが起きたのだという。 
 それは、習主席とヤヌコビッチ・ウクライナ大統領(当時)が北京で署名した友好協力条約だった。「ウクライナが核で脅されたら、中国が必要な安全を保障する」。条約にはこんな趣旨の合意が入った。 
 中国は「核の傘」を使い、ロシアの縄張りであるウクライナにまで手を突っ込むつもりか。プーチン氏はこう反発したようだ。 
 中国の国内総生産(GDP)はロシアの4倍を超える。中国はその分、ウクライナを含めた周辺国に影響力を広げるのは自然なこと、と考えているのだろう。 
 歴史的にも、長い国境を接する中ロの相性は良いとはいえない。新中国建国の直後、毛沢東、スターリンの両首脳はモスクワで会い、同盟の契りを交わした。それもつかの間、やがて路線対立が始まり、蜜月は10年と続かなかった。 
 「いまの中国は共産党体制だったときのソ連と同じだ。何を考えているのか、外からは分からない。しばしば、唐突な行動にも出る」。公式な場では決して中国を批判しないロシアの政府関係者からも、こんなささやきが聞かれる。 
 では、日本はどうすればよいのか。中ロの結束が弱まれば、日本の選択肢は広がる。それでもロシアが対中外交で協力したり、領土交渉で譲ったりすると期待するのは禁物だ。 
 米政府当局者は「ロシアに過剰な期待を抱かないほうがいい。日本には戦中の経験もある」と語る。第2次大戦末期、日本の降伏が確実とみるや、ソ連は日ソ中立条約を一方的に破棄し、攻め込んできた。 
 ユーラシアの両雄はどこに向かうのか。日本は歴史の教訓をひもときながら、冷徹に次の一手を練るときである。(編集委員 秋田浩之)
http://www.nikkei.com/article/DGXNZO71758060V20C14A5SHA000/?dg=1
習近平とプーチン
この日経の記事にもあるように、「中ロの結束が弱まれば、日本の選択肢は広がる。それでもロシアが対中外交で協力したり、領土交渉で譲ったりすると期待するのは禁物です」。

ルトワック氏は、「ロシアは、中国とは仲良くならない。シベリアなどに侵食してくる中国を脅威だとみているからだ。むしろ、ロシアは中国をにらみ、本当は日米と協力を広げたいはずだ――」ど分析しているそうですが、それを裏付けるような情報はいくつもあります。

このブログ記事には、いくつか引用記事があります。それをご覧いただければ、これはすぐにご理解いただけるものと思います。その記事のリンクを以下に掲載します。
米海軍幹部、自衛隊にNATO加盟国並みの役割期待― 【私の論評】自滅する現中国の現実を見つめよ!現中国は、モンゴル帝国の末裔であり漢民族の中国は唐の時代に滅んでいることを(゚д゚)!
上念司「中国包囲網の決定打はモンゴル・トルコのランドパワー強化に在り!」―【私の論評】ソ連崩壊後、小国ロシアになってから国境溶解が顕著になり中国にとって軍事的脅威はなくなった!日本は経済援助を通じて中国と国境を接する国々のランドパワーを強化すべき(゚д゚)!
 詳細は、この記事をご覧いただくものとして、要旨とそれに簡単に説明をつけて以下に簡単にまとめておきます。

ロシアというと、日本では未だに強国というイメージがあるものの、それはイメージに過ぎず現在のロシアは人口は、日本と同程度(日本1億2千万人、ロシア1億4千万人)、GDPは日本の1/5に過ぎません。

そのロシアは、世界で最も長い国境線を中国と接しています。そうして、この国境線付近では、多数の中国人が国境を越境して、ロシア側で、様々な事業を営んでいます。今では、従来のように国境ははっきりしなくなってしまい、この現象を国境溶解と呼びます。

国境溶解が急速に進む中ロ国境
国境溶解の勢いは衰えることなく、さらに加速され、ますます多くの中国人がロシア領内に自由に入り込んだり、中国領内に戻って大量の物資をロシア領内に持ち込むようなことが、日常茶飯事で繰り返されています。

そうして、このような状況により、中国はかつてのようにソ連との国境線上に軍隊を配置するなど、ソ連の脅威に備える必要はなくなったこともあり、今日海洋新進出が実行しやすくなっているという点は否めません。

これに対処する策として、経済評論家上念氏は、中国と国境を接する国々が経済成長をして、ランドパワーを強化することが有効であることを主張していました。

強面ロシアは、ウクライナではかなり強気にでているようにもみえますが、ロシア側の立場たてば、ウクライナが完璧に西側に落ちてしまえば、西側でも国境溶解がはじまりとんでもないことになるとの脅威からあのような行動にでたものと思います。



そうして、NATO諸国などが本気で、ウクライナに対して軍事援助をした場合、ロシアの脅威は頂点に達します。今のロシアは、米国と戦争する力などまったくありません。おそらく、米軍抜きのNATOとも戦えば負けるし、そもそもそれだけの戦争を遂行する力(経済力および軍事力)はありません。

このように分析すると、ロシアの外国に対する脅威は半端なものではないことが十分に理解できます。

そうして、中国を封じ込めたいということで、まさにロシアと日本の利害は一致しているわけです。

中国を封じ込めたいということでは、ロシアと日本の利害は一致している
さて、首脳会談に対する日本側の関心は「北方領土が返ってくるか否か」に集中しています。歯舞、色丹の2島返還が実現するとの期待が高まっていた事情もあって「2島返還は当然。国後、択捉にも道筋が付かなければ失敗」という厳しい見方もあるほどです。

4島の帰属問題と対ロ経済協力が今回の会談のテーマなのですから、日本側で北方領土の行方に関心が集中するのは当然ではあります。そもそも4島は先の戦争終結後のどさくさに紛れて旧ソ連が奪ったのだから、返してもらうのは当然でもあるとは思います。

しかし、日本とロシアが友好関係が深まれば、今度は中国にとって脅威になります。中国とロシアは地中海や日本海で合同軍事演習をしたり、たびたび首脳会談を開いて蜜月ぶりをアピールしてきましたし、軍事技術においてはまだまだ中国はロシアに頼りっきりです。

現在に中国で日本や米国とまともに渡りええる戦闘機は、ロシアから輸入した最新式のスホーイ戦闘機のみといっても良いくらいです。

そんなロシアが日本と北方領土問題の解決で一致したり、日本が本格的な対ロ経済協力に乗り出せば、中国は脅威に感じるはずです。現在中国を1番の潜在的脅威と認識している日本にとって日ロ友好は、中国を牽制する上でこの上ない良い機会となります。

日本がいくら「日本はこうありたい」と理想論を語ったとしても、自分だけではどうにもなりません。

いくら「平和な日本でありたい」と願ったとしても、他国が侵略してきたら日本の平和は維持できません。そんな時に、憲法9条があっても、何の役にも立ちません。実際に北朝鮮は今年日本海に21発のミサイルを発射しています。中国は軍艦を動員して尖閣諸島を脅かしています。韓国は、未だに竹島を実力で占拠しているます。

日本の平和と安定はアジアの平和と安定抜きには考えられない
こういう現実の中では、日本はできるだけ多くの国と友好関係を深めて、中国や北朝鮮が暴発しないように抑止していくことが日本の安全保障にとってより良いことになります。無論、中国や北朝鮮などと直接友好関係を結ぼうにも、結べるものではありません。

こんなときに、日本がロシアとの友好関係を深めれば、ロシアは中国になど軍事技術を供与しなくても良いと考えるかもしれません。もし、そう考えなかったにしても、中国側はそのように受け取るかもしれません。

安全保障のダイヤモンドを構想し、それを全方位外交を通じて実行してきた安倍総理は、当然の腹の中で、このように考えており、何とか、中国封じ込めの一角にロシアを加えたいと当然考えていることでしょう。そうして、これは、今回の日露首脳会談の目的の一つであることは間違いありません。

ロシアのプーチンは、以前にもこのブログに掲載したように、政敵は暗殺するなどして容赦なく潰すのが常であり、腹の中では何を考えているかは見えないところがあります。だから、本当に信頼できるかどうかはわかりません。

しかし、私たちは、中国やロシアのやり方で学ぶべきところがあります。それは、腹の中では互いに相手を信頼していないにもかかわらず、中ロはウクライナ危機をきっかけに中さらに接近したように首脳会談などを実施して見せつけて、日米へのけん制を強めるように中ロは動くと、世界中に思わせたという実績があります。

これは、ルトワック氏には見ぬかれてしまいましたが、成功していれば、ロシア・中国連合は、日本はもとより、世界中の国々にとって、かなりの脅威となったことでしょう。ロシアの軍事技術と、中国の経済力が結びつけば、これは大変なことです。しかし、現実はそうではありませんでした。

日本も彼らのこのやり方を参考にして、中国に脅威を与えるべきです。実際にその効果はブログ冒頭の記事にある、新華社の「ロシアを引き込み、中国を包囲しようとの考えは希望的観測に基づく妄想だ」という言葉にもあるように、中国は日露首脳会談に警戒感を抱いています。

安倍総理としては、ロシアをうまく操って中国の脅威を少しでも除去できるように努力して頂きたいです。

日露首脳会談そのものについては、いずれ日を改めて、掲載したいと思います。それにしても、日本のメディアや知識人など、このような見方は全くできないようで、単なる領土交渉とそのための経済協力の話くらいにしか思っていないようです。だから、本日は日露首脳会談がらみのテレビ番組など見ていません。あまりにくだらなく幼稚です。

【関連記事】

邪魔者は殺す プーチン大統領のデスノート―【私の論評】プーチンは、生かさず殺さず利用することが我が国の目指すべき道(゚д゚)!

安倍首相の「安保ダイヤモンド構想」、対中抑止へ完成間近-【私の論評】鳩山の構想は報道しても、安部総理の構想は一切報道しない日本のマスコミの存在意義を問う(゚д゚)!

【西村幸祐氏FB】ルトワックはウクライナ危機でシナとロシアの接近は氷の微笑だと分析する。―【私の論評】東・南シナ海が騒がしくなったのは、ソ連が崩壊したから! 安全保障は統合的な問題であり、能天気な平和主義は支那に一方的に利用されるだけ(゚д゚)!

米海軍幹部、自衛隊にNATO加盟国並みの役割期待― 【私の論評】自滅する現中国の現実を見つめよ!現中国は、モンゴル帝国の末裔であり漢民族の中国は唐の時代に滅んでいることを(゚д゚)!

上念司「中国包囲網の決定打はモンゴル・トルコのランドパワー強化に在り!」―【私の論評】ソ連崩壊後、小国ロシアになってから国境溶解が顕著になり中国にとって軍事的脅威はなくなった!日本は経済援助を通じて中国と国境を接する国々のランドパワーを強化すべき(゚д゚)!

2013年3月30日土曜日

首相外遊、5カ国目はモンゴル 対中戦略、外堀から着々―【私の論評】安倍首相は、すでに情報戦を開始していた!!

首相外遊、5カ国目はモンゴル 対中戦略、外堀から着々


安倍晋三首相は30日から、就任以来5カ国目の外遊先としてモンゴルを訪問する。これまで東南アジア諸国連合(ASEAN)の3カ国と米国を自ら訪れ、オーストラリアとも活発なな外交を展開。今後はインド首相の来日も予定される。一見ばらばらに映るこれらの外交だが、いずれも日本の対中国戦略に欠かせないピースに他ならない。

中国とロシアに挟まれるモンゴルは、日米欧を「第三の隣国」と位置づけ、経済面などでの中露への依存度を下げる外交戦略を描いている。首相はこの戦略に歩調を合わせて連携を深めれば、「対中包囲網というパズルを埋める上で有効な『北方』のピースになる」(政府高官)と判断し、今回の訪問を決めた。

この記事の続きはこちらから!!

【私の論評】安倍首相は、すでに情報戦を開始していた!!


安倍首相、モンゴル訪問の裏の目的は、中国牽制と鉱物資源開発での協力であることははっきりしていると思います。また、モンゴルは北朝鮮と国交があることも視野にいれているものと思います。

それにしても、安倍総理今回のモンゴル訪問も、本当に抜け目がないです。このようなことを見て、ただ親善訪問などと思っているいる人はいないとは思いますが、もしいたら、よほど鈍感な人だと思います。一連の安倍総理の動きは、中国包囲の意図もありますが、アメリカに対する牽制でもあります。

日本としては、アジアにおいて、アメリカと中国が強力に結びついて、日本が除外されるということにでもなれば、大きな損失です。これは、日本だけではなく、多くの国々にとって大きな損失となります。そんなことにならないために、中国包囲網を築き、このブログにも再三掲載したように、安全保障のダイヤモンドを着々と築いていっているのです。 TPP交渉参加も、対中国包囲網の一つです。

そもそも、安倍総理が、オバマ大統領と会談した後の発表を覚えいらっしゃるでしょうか?以下にその時の動画を掲載します。

訪米中の安倍晋三首相は22日午後(日本時間23日未明)、初めてオバマ大統領とホワ­イトハウスで会談した。


この動画は、訪米中の安倍晋三首相が22日午後(日本時間23日未明)、初めてオバマ大統領とホワ­イトハウスで会談した後の声明の発表に関するものです。

北朝鮮の核実験に対し、両国が連携して厳しく対処する方針を確認。日米両首脳は環太平­洋戦略的経済連携協定(TPP)交渉参加について「一方的に全ての関税撤廃をあらかじ­め約束することを求められるものではない」と確認する共同声明を発表しました。

首相は会談後、記者団に「日米同盟の信頼、強い絆は完全に復活したと自信をもって宣言­したい」と述べました。

この強い絆は完全に復活したと自信をもって宣言というところに、注目していただきたいです。実際には、虚々実々のやりとり、かなり強烈なやりとりがあったようですが、安倍総理は、最後にこのようにダメ押しをしています。安倍総理は、このようにはっきり言うことにより、オバマ大統領の言質をとっています。

言質をとるとは、相手の言ったことを自分の言葉に置き換えて、相手の発言の意味をとることです。相手の言葉の言質を取るのは、自分が相手の言葉を理解するために必要なことです。

また、言質を取るのは相手にも自分の発言が理解されたということを示すうってつけの行動です。安倍さんのこの言質は、それを超えて、オバマ大統領に対して、全世界の人々の目の前で、同盟関係を確かなものにしなければならないという負い目すら与えているという点で、大成功だったと思います。

それに、TPPに関して、「一方的に全ての関税撤廃をあらかじ­め約束することを求められるものではない」という言質をとることにも成功しています。

この二点においても、この会談は日本側からすれば、かなり成功したものと思います。そうして、この会談の前から、安倍総理は、安全保障のダイヤモンド構想を発表しており、その後の発言、行動なども、この構想と全く矛盾していないどころか、完全に一致しているし、整合性があります。

それにしても、この安倍さんの一貫した態度当たり前だと思ってもらっては困ります。それは、過去の民主党の総理大臣の態度と比較してもらえば良くわかります。以下にその良い事例となる動画を掲載させていただきます。



この菅、胡錦濤会談は、あまりに酷すぎますが、これと比較すると、安倍総理の行動が、確たる信念を持って行われてるいることが良くお分かりになると思います。菅さんをはじめとする、民主党の閣僚の外遊などとは比較の対象にもなりません。

それから、今から思えば、とんでもない小沢さんの朝貢外交もありました。その時の動画を以下に
掲載させていただきます。


これは、2009年のことですから、2010年の中国漁船の巡視船の体当たり事件の前の年にあたります。本当に、今から見ると、バカ真似以外の何ものでもありません。

こんなことも、配慮せずに以下のような見方をするマスコミもあります。

「オバマ・安倍会談」の成果は特になし

 これは、言質を取られた側の米太平洋軍太平洋安全保障研究センターのジェフリー・ホーナン准教授への東洋経済によるインタビューです。言質を撮られた側として、成果は特になしとして、打ち消ししておいたほうが、アメリカの国益にはかなっています。マスコミはやはり、こういう報道をして、安倍総理の成果を日本国内でなるべく薄めたいのだと思います。

それにしても、オバマ大統領との単発の会談だけではこの手は成功しても、その後の安倍総理の外遊と、その行動を見ていれば、安倍外交の全面否定はできないものと思います。 安倍総理は、すでに情報戦を開始して、意図して意識して一連の外遊を行なっているということです。私は、そう思います。皆さんは、どう思われますか?

【関連記事】

安倍首相、初外遊に出発 東南アジア3カ国「価値観同じ国と関係強化」―【私の論評】安倍首相の中国外しに、鳩山外交で応酬したつもりの中国の国際感覚?!! 

 

安倍首相のFacebookに韓国人・中国人が反日コメント するも、 何故かフランス人が論破した件―【私の論評】この件は安倍総裁の安全保障のダイヤモンドが関係しているかもしれない。もっと、俺達も海外にアピールしようぜエ~~!! 

 

TPP 安倍総理の施政方針演説の真意と偏向報道―【私の論評】安倍首相がTPP参加に積極的と思い込む前に疑ってみよう!!強烈な反対派の印象操作に惑わされていないかい?

 

安倍首相を待つ“どす黒い孤独”の壁-再チャレンジ宰相はストレスフルな日々をどう乗り越えるか(日経ビジネス)―【私の論評】首相指名のはや次の日に、焦るゾンビマスコミの速攻戦線布告!!

 

次期日銀総裁人事と「参議院の壁」 竹中治堅―【私の論評】まさに安倍首相の勝負の時!!日銀法改正は必須か?!!これは日本人の行末を決める大事な俺たちの合戦だ!!

 

【関連図書】

 
新しい国へ 美しい国へ 完全版 (文春新書 903)
安倍 晋三
文藝春秋
売り上げランキング: 5,612

約束の日 安倍晋三試論
約束の日 安倍晋三試論
posted with amazlet at 13.03.30
小川 榮太郎
幻冬舎
売り上げランキング: 7,341

取り戻せ、日本を。 安倍晋三・私論
渡部 昇一
PHP研究所
売り上げランキング: 5,991

美しい国へ (文春新書)
美しい国へ (文春新書)
posted with amazlet at 13.03.30
安倍 晋三
文藝春秋
売り上げランキング: 54,335

2014年5月29日木曜日

米国議会で日増しに強くなる対中強硬論―【私の論評】世界は複雑だ!米中一体化、G2など中国の妄想にすぎない!しかし、日本にとってはこの妄想につけこむ絶好のタイミングかもしれない(゚д゚)!

米国議会で日増しに強くなる対中強硬論

米国国会議事堂

 米国連邦議会下院外交委員会のアジア太平洋小委員会が5月20日に開いた公聴会は、米国全体の中国への姿勢が著しく険悪化している様子をあらわにした。米国の中国への敵対傾向が明らかに強まり、米中間の「新冷戦」という言葉をも連想させるようになったのだ。 

 「中国はいまや全世界の平和と安定と繁栄への主要な脅威となったのです!」

 この公聴会ではこんな強硬な発言が出た。

 公聴会の主題は米国の「アジアへの旋回」である。このスローガンはオバマ政権が新政策として鳴り物入りで宣伝してきたが、どうも実態がはっきりしない。もしも安全保障面でアジアでの備えを重視するならば、当然、米軍の新たなアジア配備や、そのための国防予算の増額が見られるはずなのだが、見当たらない。オバマ政権の唱える「アジア最重視」も、レトリック(修辞)だけで実効措置が伴わない意図表明にすぎないという懸念がワシントンでも広がって久しい。

 中国の威嚇的な行動はますます激しさを増している。異常とも言えるほどの急ペースで軍拡をもう20年も続けているうえに、東シナ海での防空識別圏(ADIZ)の一方的な宣言、尖閣諸島での恒常的な日本側の領空領海への侵犯、南シナ海での無法な領有権拡張、対米サイバー攻撃、そして他国領土を強引に奪うロシアへの接近など、国際規範無視の中国の荒っぽい行動は、ついに米国側の忍耐の限界を超えたかのようにも見える。

 さらに、この5月には、中国人民解放軍の房峰輝総参謀長が訪米し「アジアでの紛争は米国のアジア政策のせいだ」と非難した。習近平国家主席は、ロシアやイランの首脳を交えた上海での「アジア信頼醸成措置会議」で「アジアの安全はアジアの人間が守る」と述べ、事実上、米国のアジア撤退をも求めた。オバマ政権の宥和政策にもかかわらず、中国は明らかに米国を敵視しているとしか思えないのである。

 こうした現況について、米国では以下のようにも総括された。

 「中国に対して、米側には伝統的に『敵扱いすれば、本当に敵になってしまう』として踏みとどまる姿勢が強く、中国を『友好国』『戦略的パートナー』『責任ある利害保有者』『拡散防止の協力国』などと扱ってきました。だが、そうして40年も宥和を目指してきたのにもかかわらず、中国はやはり敵になってしまったのです」(元国防総省中国担当、ジョー・ボスコ氏)

 皮肉な表現ではあるが、明らかにオバマ政権の対中宥和策への批判だと言える。

 中国が少なくともアジアにおいて、米国主導の現在の国際秩序を従順に受け入れる構えがないことはすでに明白となってきた。いや、受け入れないだけではなく、むしろ打破したいと意図していると言う方が正確だろう。

 そうした中国がロシアに本格的な接近をしてきたことは米国にとってさらに気がかりな動きである。万が一、中国とロシアの両国が団結し、連帯して、米国に対抗するとなると、いまの世界の国際秩序や安全保障構造は根本から変わってしまう。1991年にソビエト連邦が完全に瓦解して以来の最大の出来事ともなろう。米中関係の険悪化には、世界大動乱の予兆とも言える、そんな重大な要素も絡んでいるのだ。

 だがその一方でわが日本では、集団的自衛権をめぐる論議でも、肝心の外部の安保情勢ではなく国内の法的手続きを最優先しての内向きな攻防が続く。

 多数の国家が絡み合ういまの世界の安全保障情勢の中で、日本だけが孤立して安全が高まるはずがない。防衛や安保の面での国際的な連帯や協調がいまほど重要な時期はない。それにもかかわらず、日本内部での集団的自衛権容認への反対論は、砂に頭を突っこむことで見たくない現実から目を背ける、ダチョウの平和を思わせるのである。

上の記事は、要約です。詳細をご覧になりたい方は、こちらから(゚д゚)!

【私の論評】世界は複雑だ!米中一体化、G2など中国の妄想にすぎない!しかし、日本にとってはこの妄想につけこむ絶好のタイミングかもしれない(゚д゚)!

上の記事でも明らかなように、オバマ大統領の中国宥和政策は、あまり実を結ばなかったのが現実です。オバマの前の大統領、ブッシュ氏は宥和政策はとりませんでした。少なくとも、年に一回くらいは、中国に対して声明を発表し、民主化をすること、政治と経済を分離すること、法治国家化をすることなど厳しく要求していました。

オバマになってからは、そのようなことはなくなり、宥和政策ばかりとるようになりました。

こうした宥和政策は、過去においても失敗しています。それは、ナチスドイツに対するイギリの宥和政策です。

これについては、以前のこのブログでも掲載したことがありますので、その記事のURLを以下に掲載します。
歴史に学ぶ-(1)ミュンヘン会議(1938年9月29日~30日)、チェコスロバキア解体(1939年)
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事では当時のイギリスの首相チェンバレンによる対独宥和政策が、結果として第二次世界大戦開戦の誘引ともなったことを掲載しました。

握手を交わすチェンバレン(左)とヒトラー

以下にこの記事から現代でも学ぶべき点に関して私が掲載した文章をコピペさせていただきます。
理不尽な要求には、絶対に屈しないということにつきる。このときに、イギリスをはじめフランス、ソビエト連邦、ポーランドをはじめとする東欧諸国も構えを崩さず、さらにアメリカの応援も要請して徹底抗戦も辞さずという態度をみせれば、戦争が回避できた可能性もあったはずである。無論、歴史にもしも、という言葉に意味はないが、これからのことを考えるためには役にたつだろう。 
現在チベット問題がクローズアップされているが、この問題も絶対に譲歩すべきではないだろう。少なくともチベットの自治は認めさせるべきであるとの意思表示は、はっきりすべきだろう。さらに、中国がこれ以上領土拡張の野心を見せたときは、たとえどのようなことになろうとも、絶対に認めないという姿勢が必要だろう。
さら、福田総理大臣はどうなのだろう。少なくとも日本のチェンバレンと呼ばれるようなことには、なってもらいたくない。
この記事は、 2008年のものです。この当時は、福田首相でした。福田首相にかぎらず、日本の歴代の総理大臣は安部総理は別として、ほとんどが対中宥和策をとってきました。最近の中国の暴虐非道は、他にも様々な理由もありましたが、こうし宥和政策も誘引したことは否めませせん。

ソ連の崩壊により、その後継者たるロシアは、小国化してしまいました。これにより、中国は特に陸上で国境を接する国々からの脅威はほとんどなくなりました。ソビエト帝国が瓦解した現在、今や世界唯一の超大国(中国は、超大国とはいえない発展途上国です)アメリカのオバマ大統領の対中宥和政策です。

これが、中国の海洋進出に拍車をかけています。これに関しては、このブログでも何度か掲載してきました。その代表的なものを以下に掲載します。
上念司「中国包囲網の決定打はモンゴル・トルコのランドパワー強化に在り!」―【私の論評】ソ連崩壊後、小国ロシアになってから国境溶解が顕著になり中国にとって軍事的脅威はなくなった!日本は経済援助を通じて中国と国境を接する国々のランドパワーを強化すべき(゚д゚)!

小国化したロシアは、未だに大国
のように見せかけているが・・・・・
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事では、ロシアが小国になった(GDPは日本の1/5)事実をもとに、中ロ国境の国境溶解(中国人のシベリアなどへの移動により、国境が不明確になっている現象)により、中国は陸上での差し迫った脅威がなくなり、それが、中国の海洋進出の誘引になっていることを掲載しました。

さらに、ロシアとしては、こうした国境溶解などにかなり脅威を感じていることを掲載しました。

このような状況のもと、日本はもともと対中宥和的で、アメリカのオバマが対中宥和政策をとれば、中国が海洋進出をして、傍若武人な振る舞いをすることは必然といっても良いです。尖閣問題もこうした流れの中で発生したものです。

しかし、日本では安倍政権が成立してからは、少なくとも対中宥和政策はとらなくなりました。

そんな中で、外交オンチのオバマは、対中宥和政策をとりつづけました。

オバマがもう少し早い時点で、尖閣は日本固有の領土であることをはっきり表明すれば、尖閣問題はあそこまで激しくならなかったことが考えられます。南シナ海についても同じことです。

こうしたオバマの煮え切らない態度に、アメリカ議会は黙認していることはできず、このブログ冒頭の記事が掲載しているように、対中強硬論に傾いているのだと思います。

日本の安部首相が中国を意識した安全保障のダイヤモンドを構築し、アメリカはオバマはともかく、議会が対中恐慌論に傾いている現在。これは、日本にとっては大きな外交上のチャンスかもしれません。

ブログの冒頭の記事では、「中国とロシアの両国が団結し、連帯して、米国に対抗する」などということはほとんど考えられません。まずは、過去においてはソ連が現在ではロシアは、中国に対して譲歩したということは一回もありません。

大国ロシアの復活を目論むプーチン

現在の中ロ国境は、比較的安定していますが、これは中国がロシアに一方的に屈辱的譲歩して定まったものです。今後暫くは、中国が軍事的にロシアの脅威になるような行動をしても、ロシアは何一つ譲歩することなく、中国を軍事的に屈服させることでしょう。

しかし、これも長くは続きません。今やロシアは日本のGDPの1/5、人口も日本より多少多い1億4千万人程度に過ぎません。その中でも支配者階層のロシア人の数は、日本人と同程度です。現状では、旧ソ連邦時代に築いた軍事技術などが中国を圧倒していますが、これから先はどうなるかはわかりません。

現在、ロシアと中国が強く結びつくということにでもなれば、ロシアは中国の属国になりかねません。ロシアは絶対にそのような道は選ばないでしょう。まずは、ロシアと中国の結びつきとは、表面上のことであり、現実的ではありません。これに関しては、昨日一昨日も掲載した中ロの接近は、「氷の微笑」に過ぎないとする、ルトワック氏の分析が的を射ているようです。詳細を知りたい方は、是非ご覧になって下さい。

ルトワック氏

さて、現状は、オバマが外交オンチではあっても、米国議会が対中強硬論に傾いている状況にあるわけです。それに、ロシアは中ロ国境の国境溶解に苦しみ、何とか打開策を探していますロシア以外の中国と陸並びに海で、国境を接する国々も中国の脅威が日増しに増大しています。

この状況は、良く考えてみれば、日本にとってはかなり有利な状況でもあります。日本は、安部総理の実行するアメリカなどに偏る外交ではなく、他の国々も含めた全方位外交が今後さらに効果を増すことになると思います。

今の日本は、対中強硬論のアメリカ議会を後ろ盾とすることができます。国境溶解に悩むロシアは、北方領土の交渉を続けるとしています。ロシアは、日本の経済援助を望んいます。そうして、経済が発展すれば、国境溶解に備えることができます。アジアにおいては、中国・韓国・北朝鮮以外の国々は日本の再軍備を望んですらいます。

この状況はかなり日本にとって良い状況であり、中国の脅威をはねのけ、アジアのリーダーになる可能性が高めるものでもあります。

しかし、残念ながら、ブログ冒頭の記事でも指摘しているように、以下のような状況にあります。
集団的自衛権をめぐる論議でも、肝心の外部の安保情勢ではなく国内の法的手続きを最優先しての内向きな攻防が続く。 
 多数の国家が絡み合ういまの世界の安全保障情勢の中で、日本だけが孤立して安全が高まるはずがない。防衛や安保の面での国際的な連帯や協調がいまほど重要な時期はない。それにもかかわらず、日本内部での集団的自衛権容認への反対論は、砂に頭を突っこむことで見たくない現実から目を背ける、ダチョウの平和を思わせるのである。
安全保障は、上の文章が示しているように国際的な連帯や協調が重要です。そうして、それだけではありません。

安全保障は、軍事力や国際的な連帯や協調だけではなく、金融・経済・外交が密接にからみあった、統合的なものてあり、これに対応するには統合的思考によらなければ、なかなか解決できるものでありません。海にだけ気を取られていたり、集団的自衛権や国内のことだけを考えていては何も成就しません。

世界は、複雑です。米中二極体制、G2などという考えはとうてい成り立たないものであり、これは中国の妄想に過ぎません。ただし、中国がこの妄想にふけり続ければ、過去のソ連と同じよう崩壊することになります。そこに日本がつけいる隙があります。そうして、今は日本がこれを最大限に活用できる絶好のタイミングにあります。安部総理はこれを狙っています。

能天気な平和主義は支那に一方的に利用されるだけです。実際、外交オンチのオバマは、宥和政策を中国に利用されてきました。日本の宥和政策も、過去には支那に貪り尽くされ、今もそうです。将来がそうであっては絶対になりません。

私は、そう思います。皆さんは、どう思われますか?

【関連記事】

歴史に学ぶ-(1)ミュンヘン会議(1938年9月29日~30日)、チェコスロバキア解体(1939年)

上念司「中国包囲網の決定打はモンゴル・トルコのランドパワー強化に在り!」―【私の論評】ソ連崩壊後、小国ロシアになってから国境溶解が顕著になり中国にとって軍事的脅威はなくなった!日本は経済援助を通じて中国と国境を接する国々のランドパワーを強化すべき(゚д゚)!




【関連図書】

国土と安全は経済(カネ)で買える~膨張中国包囲論~ (扶桑社新書)
上念 司
扶桑社
売り上げランキング: 505


中国を捨てよ (イースト新書)
石平 西村 幸祐
イースト・プレス
売り上げランキング: 7,046

国境 奪い合いの世界地図 (KAWADE夢文庫)

河出書房新社
売り上げランキング: 355,421


2015年8月18日火曜日

専門家も驚いた台湾“厚遇”の背景 日米台による中国包囲網への布石か ―【私の論評】台湾を巡る世界の動きを察知できないマスコミや政治家どもは完璧に世界情勢から蚊帳の外(゚д゚)!


衆院第1議員会館で講演した台湾の李登輝元総統=7月22日

安倍晋三政権や周辺で、台湾への“厚遇”といえるエピソードが続いている。安倍首相が14日に発表した「戦後70年談話」では、「台湾」を「中国」より先に登場させたうえ、先月末には、李登輝元総統が初めて日本の国会内で講演したのだ。安倍首相と李氏が極秘会談に臨んだとの観測もある。こうした背景に、一体何があるのか。

「インドネシア、フィリピンはじめ東南アジアの国々、台湾、韓国、中国など、隣人であるアジアの人々が歩んできた苦難の歴史を胸に刻み…」

安倍首相の談話の中に登場したこのフレーズが、外交専門家らの注目を集めている。

国際政治学者の藤井厳喜氏は「談話で『台湾』と『中国』が並立していることに驚いた。安倍政権が(中国の一部ではない)台湾の政治的実態を認めたということだ。中国にとっては強烈な1発になったはずだ」と語る。

伏線はあった。李氏の来日は当初、今年秋ごろに予定されていた。ところが、日本側の「異例の厚遇」(藤井氏)で、先月末に前倒しになったとされる。

李氏は7月22日、衆院第1議員会館で行われた講演で、国会議員有志らを前に、安倍政権が整備を進める安全保障法制を「日本が主体的に安全保障に意識を持つことが、アジア全体の平和につながっていく」と高く評価し、日台の連携を印象づけた。講演に先立ち、安倍首相の側近である下村博文文科相が超党派議員の発起人代表としてあいさつした。

産経新聞の報道によると、李氏は7月23日に安倍首相と都内で会談し、対中関係などについて協議したともいう。

日台関係の進展を図る有識者の団体「日本李登輝友の会」の柚原正敬事務局長は「安倍政権に、中国への牽制という狙いがあるのは間違いない。安倍首相は、第2次政権発足以降、台湾を『同じ価値観を共有する国々』に含めた言及を増やしている。台湾と緊密に連携し、海洋進出を強める中国への包囲網を構築しようとしているのだろう」と分析する。

安倍政権のこうした方向性は、米国の姿勢とも連動しているようだ。

前出の藤井氏は「米国は最近、台湾への扱いを明らかに変えてきている」と指摘し、続ける。

「5月末から6月にかけて訪米した台湾・民主進歩党の総統選候補者、蔡英文主席は、閣僚級と会談するなどの厚遇を受けた。米国は、南シナ海問題などをめぐって緊張が高まる中国を牽制するため、『台湾カード』を切り始めている。安倍首相は、米国と平仄(ひょうそく)を合わせた動きをしている」

日米台の連携強化によって、中国は東アジアで孤立を深めることになるのか。

【私の論評】台湾を巡る世界の動きを察知できないマスコミや政治家どもは完璧に世界情勢から蚊帳の外(゚д゚)!

この安倍総理の動きは当然のことだと思います。安倍総理はもともと、アジアの安全保障のダイヤモンド構想を打ち出していました。

これにつしいては、このブログでも何度か掲載したことがあります。その代表的な記事のリンクを以下に掲載します。
安倍首相の「安保ダイヤモンド構想」、対中抑止へ完成間近-【私の論評】鳩山の構想は報道しても、安部総理の構想は一切報道しない日本のマスコミの存在意義を問う(゚д゚)!
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、日本ではなぜかメデイアが「アジアの民主主義セキュリティダイヤモンド」については、ほとんど報道しませんので、以下に安倍総理大臣が、2012年の暮れに外国のメデイアに寄稿した、その構想の内容そのものを以下に掲載します。

以下に日本分のものを全文掲載させていただきます。
アジアの民主主義セキュリティダイアモンド 
 2007年の夏、日本の首相としてインド国会のセントラルホールで演説した際、私は「二つの海の交わり」 ─1655年にムガル帝国の皇子ダーラー・シコーが著わした本の題名から引用したフレーズ─ について話し、居並ぶ議員の賛同と拍手喝采を得た。あれから5年を経て、私は自分の発言が正しかったことをますます強く確信するようになった。 
 太平洋における平和、安定、航海の自由は、インド洋における平和、安定、航海の自由と切り離すことは出来ない。発展の影響は両者をかつてなく結びつけた。アジアにおける最も古い海洋民主国家たる日本は、両地域の共通利益を維持する上でより大きな役割を果たすべきである。 
 にもかかわらず、ますます、南シナ海は「北京の湖」となっていくかのように見える。アナリストたちが、オホーツク海がソ連の内海となったと同じく南シナ海も中国の内海となるだろうと言うように。南シナ海は、核弾頭搭載ミサイルを発射可能な中国海軍の原潜が基地とするに十分な深さがあり、間もなく中国海軍の新型空母がよく見かけられるようになるだろう。中国の隣国を恐れさせるに十分である。 
 これこそ中国政府が東シナ海の尖閣諸島周辺で毎日繰り返す演習に、日本が屈してはならない理由である。軽武装の法執行艦ばかりか、中国海軍の艦艇も日本の領海および接続水域に進入してきた。だが、このような“穏やかな”接触に騙されるものはいない。これらの船のプレゼンスを日常的に示すことで、中国は尖閣周辺の海に対する領有権を既成事実化しようとしているのだ。 
 もし日本が屈すれば、南シナ海はさらに要塞化されるであろう。日本や韓国のような貿易国家にとって必要不可欠な航行の自由は深刻な妨害を受けるであろう。両シナ海は国際海域であるにもかかわらず日米両国の海軍力がこの地域に入ることは難しくなる。 
 このような事態が生じることを懸念し、太平洋とインド洋をまたぐ航行の自由の守護者として、日印両政府が共により大きな責任を負う必要を、私はインドで述べたのであった。私は中国の海軍力と領域拡大が2007年と同様のペースで進むであろうと予測したが、それは間違いであったことも告白しなければならない。 
 東シナ海および南シナ海で継続中の紛争は、国家の戦略的地平を拡大することを以て日本外交の戦略的優先課題としなければならないことを意味する。日本は成熟した海洋民主国家であり、その親密なパートナーもこの事実を反映すべきである。私が描く戦略は、オーストラリア、インド、日本、米国ハワイによって、インド洋地域から西太平洋に広がる海洋権益を保護するダイアモンドを形成することにある。 

 対抗勢力の民主党は、私が2007年に敷いた方針を継続した点で評価に値する。つまり、彼らはオーストラリアやインドとの絆を強化する種を蒔いたのであった。 
 (世界貿易量の40%が通過する)マラッカ海峡の西端にアンダマン・ニコバル諸島を擁し、東アジアでも多くの人口を抱えるインドはより重点を置くに値する。日本はインドとの定期的な二国間軍事対話に従事しており、アメリカを含めた公式な三者協議にも着手した。製造業に必要不可欠なレアアースの供給を中国が外交的な武器として使うことを選んで以後、インド政府は日本との間にレアアース供給の合意を結ぶ上で精通した手腕を示した。 
 私はアジアのセキュリティを強化するため、イギリスやフランスにもまた舞台にカムバックするよう招待したい。海洋民主国家たる日本の世界における役割は、英仏の新たなプレゼンスとともにあることが賢明である。英国は今でもマレーシア、シンガポール、オーストラリア、ニュージーランドとの五カ国防衛取極めに価値を見いだしている。私は日本をこのグループに参加させ、毎年そのメンバーと会談し、小規模な軍事演習にも加わらせたい。タヒチのフランス太平洋海軍は極めて少ない予算で動いているが、いずれ重要性を大いに増してくるであろう。 
 とはいえ、日本にとって米国との同盟再構築以上に重要なことはない。米国のアジア太平洋地域における戦略的再編期にあっても、日本が米国を必要とするのと同じぐらいに、米国もまた日本を必要としているのである。2011年に発生した日本の地震、津波、原子力災害後、ただちに行なわれた米軍の類例を見ないほど巨大な平時の人道支援作戦は、60年かけて成長した日米同盟が本物であることの力強い証拠である 
 私は、個人的には、日本と最大の隣国たる中国の関係が多くの日本国民の幸福にとって必要不可欠だと認めている。しかし、日中関係を向上させるなら、日本はまず太平洋の反対側に停泊しなければならない。というのは、要するに、日本外交は民主主義、法の支配、人権尊重に根ざしていなければならないからである。これらの普遍的な価値は戦後の日本外交を導いてきた。2013年も、その後も、アジア太平洋地域における将来の繁栄もまた、それらの価値の上にあるべきだと私は確信している。
安倍総理は、このような構想を表明していて、これを具体化するために、総理に就任直後から、積極的に海外にでかけ、この構想に沿った形で、各国首脳に様々な働きかけを行い、かなりの成果を収めています。

この構想は文字通り、中国の脅威に対して対抗していこうとするものです。安倍総理が着々と中国への対抗措置を推進してきた間、米国は及び腰のオバマ大統領が煮え切らない態度を取り続けていたため、中国に対して断固とした措置をとることができませんでした。

そのせいもあって、日本の尖閣は、中国の公船が領海を侵犯し、中国の航空機が、領空を侵犯するようになり、それが日常になってしまいました。南シナ海では、中国は環礁を埋め立て、飛行場を設営するなどの暴挙を行い、東シナ海の日中中間線の自国側海域で、海洋プラットホームを急速に増設し、軍事転用が懸念されています。

このような中国の暴挙は、及び腰オバマが自ら招いたようなものです。しかし、安倍総理は就任以来継続して、中国包囲網の構築に努力してきました。その成果は、着実に実りつつあります。確かに、尖閣問題は解決はしていませんが、それでも着実ににアジアの中国を取り囲む国々と折衝し、橋頭堡を築いています。

こうした、安倍総理が台湾を厚遇するのは、当たり前のことです。

1972年2月21日に当時のアメリカ合衆国大統領リチャード・ニクソンが世界中が注目する中で中華人民共和国を初めて訪問し、毛沢東主席や周恩来総理と会談して、米中関係をそれまでの対立から和解へと劇的に展開して第二次世界大戦後の冷戦時代の転機ともなりました。

これより前に、前年7月15日に、それまで極秘ですすめてきた米中交渉を明らかにして、自身が中華人民共和国を訪問することを突然発表して世界を驚かせたことでニクソンショックと呼ばれています。これ以降アメリカは中国と国交を結んだわけです。

しかし、米国は台湾と国交を断絶することなく、二つの中国を認めることになりました。しかし、その後年数を経るにつれて、中国が台頭し、大陸中国は台湾を自らの版図に組み入れようとの画策をしていました。

そうして、世界もそのように傾き、中国は一つであるべきという雰囲気が形成されていきました。

しかし、台湾はそのような風潮にも負けず、今でも独立国としての気概を崩していません。今の台湾の総統馬英九は大陸中国寄りですが、台湾の多くの人々がそれに反対しています。

李登輝元総統は、大陸中国には見向きもせず、台湾が中国の領土になることに公然と反対していますし、親日派でもあります。それに、まだまだ台湾国内でも多大な影響力があります。

このような李登輝元総統を安倍総理が厚遇するのは当然といえば、当然です。

及び腰オバマのせいで、アジアでは中国の台頭を許してしまったところがありますが、現在オバマはすでに死に体です。次の大統領は誰がなったとしても、少なくともオバマよりは中国に対して、厳しい措置をとると思います。

オバマ大統領

それに、アメリカの国会議員のなかには中国は軍事・経済などで将来アメリカの覇権を脅かす存在として認識している封じ込め派と、中国の輸出攻勢によって被害を受けている中小企業などの支持を受けた議員(中国の人権問題を重視する人権派も含まれる)が中心となった圧力派が存在します。またアメリカ議会のなかには一定の親台湾派が存在しており、中華民国総統のアメリカ訪問を実現しようとする動きもあります。

さすがに、アメリカも中国に対しては、警戒を強めているでしょうし、今や誰がみても、中国はとんでもない状態にあるのは確かで、今の中国の体制がいつまでも続くと考えるのは間違いです。

上の記事では、「5月末から6月にかけて訪米した台湾・民主進歩党の総統選候補者、蔡英文主席は、閣僚級と会談するなどの厚遇を受けた。米国は、南シナ海問題などをめぐって緊張が高まる中国を牽制するため、『台湾カード』を切り始めている。安倍首相は、米国と平仄(ひょうそく)を合わせた動きをしている」などとしていますが、私はそうではないと思います。

平仄を合わせているのは、こと中国対策に関しては、米国のほうです。オバマが中国に対して、及び腰で煮え切らない態度をとっているときに、安倍総理は安全保障のダイヤモンドの構想にそって、中国への対抗策を他国と練ってきました。それに追随しているというのが、今のアメリカです。日本の安倍総理がいなかったら、とんでもないことになっていたかもしれません。

そうして、中国対抗策の一つの大きな節目が、憲法解釈の変更による集団的自衛権の行使も含む、安保法案の成立です。

この成立には、各国が大賛成しています。

まずは、米政府は、安全保障関連法案の成立に強く期待しています。オバマ政権は、戦略の重要な柱のひとつに日本を据えています。だからこそ、安保法案の成立には賛成しています。さらに、ローズ米国務次官補は15日、「日本を強く支援したい」と述べています。

米国の反応も含めて、特に太平洋に接する国々の反応はどんなものだったのか、以下にわかりやすい図を掲載させていただきます。


このように、太平洋に接する国で、日本の集団的自衛権の行使容認に対して、ほとんどの国が賛成です。反対するのは、中国と韓国くらいなものです。ロシアは意見を表明していましせん。

もし、集団的自衛権を含む安保法案が、本当に「戦争法案」というのなら、これだけの国々が賛成するわけもありません。これは、安倍総理が安全保障のダイヤモンド構想実現のため、各国を周り、その意義の説明と、各国の理解を得たからに他なりません。

結局のところ、外国がこれだけ、賛成しているのに、日本国内で「戦争法案」などして、反対するのは、結果として、中国を支援しているようなものです。

日本のマスコミは、安全保障のダイヤモンドについてほとんど報道しませんし、今日に至るまで、安倍総理がこの構想に沿って様々な努力を重ねてきたことについても、ほとんど報道しません。李登輝元総統の来日と、国会での演説もほとんど報道しませんでした。

挙句の果てに、「違憲」「戦争法案」などという報道を垂れ流すという有様です。野党も野党です。中国をめぐってこれだけ、世界が変わっているにもかかわらず、60年安保、70年安保、PKO法案のときとかわらず、ただただ反対するだけで、中国の差し迫った脅威に対する、対抗策を代案としてあげようともしません。

本当に愚かです。こういう馬鹿者どもは、結局のところ中国スパイそのものか、同列であり、いずれ国民からの信頼を本格的に失ってしまうことになります。

台湾を巡る世界の動きを察知できず、ひたすら中国に媚びるような報道を続けるマスコミ、中国を支援する行動を取り続ける政治家どもも、完璧に世界情勢からは、蚊帳の外です。

私は、そう思います。皆さんはどう思われますか?

【付記】8月25日

ジャーナリストの西村幸祐氏に、この記事を以下のようにリツイートしていただきました。


なお、このTweetにある西村氏の『 21世紀の脱亜論』の説明を以下に掲載させていただきます。

21世紀の「脱亜論」 中国・韓国との訣別(祥伝社新書)
西村幸祐
祥伝社
売り上げランキング: 13,700

福澤諭吉が「脱亜論」を書いた当時、まさに日本は時代の分水嶺で、もがき苦しんでいた。その「脱亜論」の一三〇年後の意味はどこにあるのか。

実は、福澤の「脱亜論」はアジア蔑視ではなく、特別な東アジアとは別の道を歩もうという「別亜論」に過ぎなかった。つまり、現在ではますますその意味が重要になっていることを、本書は詳(つまび)らかにするであろう。

閉じた特別なアジアから、開けた普通のアジアと連携し、世界と繋がることが「21世紀の脱亜論」なのである。  

日本は特定アジアと文明圏が異なっていること。日本人は特定アジアの人々と人種的にも異なっていること。そして、日本は古代から特定アジアから離れていた時代に、平和で安定した時代を築いていた事実。そんな事実を解き明かすことが、日本の今後の進路の取り方にヒントを与える第一歩になるのである。

まさに、本書はそのヒントを満載しています。そうして、これを読んでいただければ、西村氏が指摘したように、安倍総理の素晴らしい外交のやり方を理解することができます。


【関連記事】



天津の大爆発は江沢民派の反撃か!? 習近平vs江沢民の仁義なき戦い、いよいよ最終局面へ―【私の論評】株価、尖閣、反日デモ、天津市大爆発など、何でも権力闘争のツールにする崩壊間近の中国はかなり危ない(゚д゚)!




【関連図書】

中国壊滅
中国壊滅
posted with amazlet at 15.08.18
渡邉 哲也
徳間書店
売り上げランキング: 142

「アジアインフラ投資銀行」の凄惨な末路
宮崎 正弘
PHP研究所
売り上げランキング: 7,037

中国「歴史認識」の正体 ~繰り返される歴史改ざんの大罪
石平
宝島社
売り上げランキング: 31,789

親中と言われるパプアとソロモン 中国が日本から盗めなかったもの―【私の論評】南太平洋島嶼国では、中国による歴史修正を繰り返させるな

親中と言われるパプアとソロモン 中国が日本から盗めなかったもの 牧野 愛博 | Official Columnist 朝日新聞外交専門記者 まとめ ソロモン諸島議会は親中派のマネレ前外務・貿易相を新首相に指名し、中国への接近路線を継承する見通し。 中国はメラネシア地域への影響力を...