2016年7月10日日曜日

【参院選】「右翼勢力が改憲と軍事化画策」警戒強める中国メディア…背景に南シナ海で米との軍事行動恐れる?―【私の論評】選挙の争点は中国封じ込めの是非も大きい(゚д゚)!


南シナ海に設置された新空港には中国南方航空の
エアバスA319型機が着陸した(新華社通信ウェブサイトより)
中国国営新華社通信は10日、参院選の投票開始後に「自民党と公明党をはじめとする改憲勢力が(憲法改正の国会発議の要件となる)3分の2以上の議席を獲得できるかが焦点となる」との記事を配信し、高い関心を示した。

新華社は、多くの日本メディアが、参院で改憲勢力が3分の2を確保できる可能性があると報じていることにも触れた。

中国の通信社、中国新聞社は10日、「安倍(晋三首相)をはじめとする日本の右翼勢力は“平和憲法”の9条改正を画策し、日本の軍事化を進めようとしてきた。自民党は民意の反発を恐れ、まず緊急事態条項を創設して改憲の先鞭(せんべん)をつけようとしている」と報じた。世論には改憲への反対意見も強いとして、「自民党は選挙期間中、改憲の議論を避けて経済や暮らしの問題を重点的に訴えた」とも指摘した。


北京の日本研究者は、中国が参院選に高い関心を示している理由について「日本で憲法が改正されれば、南シナ海などで米国と一緒に自由に軍事行動を取れるようになり、中国に対する軍事的脅威が一挙に高まると認識しているためだ」と分析した。

【私の論評】選挙の争点は中国封じ込めの是非も大きい(゚д゚)!

中国は相変わらず、頓珍漢で奇妙奇天烈な報道を繰り返すばかりです。改憲勢力が(憲法改正の国会発議の要件となる)3分の2以上なろうがなるまいが、これは日本の選挙であり、日本の選挙に関して嘴をはさむのは、単なる内政干渉に過ぎません。

しかし、それにしてもなぜこのような報道をするかといえば、やはり、選挙によって日本が変わって、中国にさらに強力に対峙することになるかもしれないことを極度に恐れているということです。

しかし、日本の選挙がどのような結果になろうと、中国には直接関係のないことです。それに、中国は日本のことを心配するよりも自国内の心配をするべきです。

本日も以下のようなニュースがありました。
中国 5年間で党政府幹部120人が自殺・異常死
7月2日に自殺した劉小華・広東省党委副書記
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、中国では習近平のいわゆる「腐敗撲滅運動」が始まってから、確かに自殺者が多いです。それについては、このブログでも以前から掲載していることです。その記事のリンクを以下に掲載します。
中国、高官ら40人超不審死 事実上「粛清」との声も 汚職撲滅キャンペーンで―【私の論評】二種類の亡霊が示す、中国の政治権力闘争は命がけであることと出鱈目さ加減!こんな国に将来はない(゚д゚)!
当時自殺した遼寧省高級人民法院(高裁)の女性副裁判長、徐安生氏(55)
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事は2014年11月5日のものです。あれから、すでにもう二年目に入っているというのに、中国では未だ高官の不審死が相次いでいるということです。

最近の舛添元東京都知事の辞任をみるまでもなく、日本ではたとえ腐敗があったにしても、自殺したり、不審死に至ることは稀で、それなりの手続きを経て辞任ということになります。

それだけ中国の権力闘争は激烈だということです。そうして、なぜ激烈になるかといえば、そもそも習近平など中国の為政者の統治の正当性が低いからです。

そもそも、中国では建国以来選挙は一度も行われたことがありません。あくまで、指名で要職が決まります。その意味では、中国には国民の付託を得た、政治家は一人も存在しません。全部が、官僚です。

日本では、議会制民主主義という制度によって、正当な手続き経て、政治家が誕生します。選挙という手続きを経た議員による政府や国会によって、政治が行われるので、統治の正当性は中国などよりはるかに強固です。そんな制度が運用されているような国では、中国のような激烈な権力闘争など起こることはありません。

中国のような国では、どこのだれともわからない統治の正当性の低い、馬の骨が何らかの手段で権力を得て、より強い権力のものが要職についているので、その権力が揺らげば、激烈な権力闘争が始まるのです。

このような中国に、日本の選挙がどうのこうのと言う資格など全くありません。日本人としては、中国には、この件に関しては「おととい来やがれ」と言ってもさしつかえないと思います。

それにしても、中国が内政干渉まがいの批判さえするほど、改憲勢力が3分の2を確保できる可能性を恐れているということです。そうして、それは、上の記事にもあるように、南シナ海での日米による集団的自衛権の行使を脅威に感じているということです。

そうして、なぜそれを恐れるかといえば、昨日もこのブログに掲載したように、中国は南シナ海を戦略型原潜の聖地にし、ここに戦略原潜を潜ませ、ここから原潜のSLBM(潜水艦発射型核弾頭)の米国までの射程距離内に原潜を定期的に航行させ、常時米国をSLBMの標的にすることを狙っているからです。

このことによって、中国は将来米国と対等の核戦略を実現することを目論んでいます。そのためには、中国は南シナ海を実効支配し、自分たちの内海にする必要があります。

しかし、日本が南シナ海で、米国とともに集団的自衛権を行使すれば、この目論見は限りなく実現不可能になります。

実際、このブログでは以下の様な記事を掲載したことがあります。
海自哨戒機、南シナ海飛行拡大へ…中国をけん制―【私の論評】これは中国にとってはかなりの脅威、南シナ海の中国の艦船と潜水艦の動きが丸裸に(゚д゚)!

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下に一部引用します。
防衛省・自衛隊は、アフリカ・ソマリア沖で海賊対処活動に参加したP3C哨戒機が日本に帰還する際の飛行ルートを見直し、フィリピンやベトナムなど南シナ海に面する国の基地を優先的に経由させる方針を固めた。
高度な監視能力を持つP3Cの飛行範囲が、中国が「領海」と主張する南シナ海で拡大する見通しだ。「上空飛行の自由」の保護にもつながり、米軍が中国の人工島周辺で実施している巡視活動を日本が独自に支援する活動といえる。
日本の憲法が改正されたりすれば、このような活動がさらに強化され、日本が南シナ海で常時対潜哨戒活動をすることになるかもしれません。

そうなることを中国は一番恐れているのです。なぜなら、日本の対潜哨戒能力は、世界一の水準だからです。なぜそうなったかといえば、日本は米ソ冷戦の最中で、ソ連の戦略型原潜の哨戒活動により、かなりの経験を積むことができたからです。

当時のソ連は、オホーツク海を原潜の聖域としました。この海域は比較的深いところが、多くそこに戦略型原潜を潜ませれば、米国などに発見されることなく、隠密裏に行動することができたからです。

そうなると、核戦争で、ソ連内のICBM基地がことごとく米国に破壊されたとしても、戦略原潜のSLBMは生き残り、米国に報復することができるからでした。

ロシアの戦略型原潜
しかし、こうしたソ連の原潜に対して、日本は独自で対潜哨戒活動を実施し、それでかなりの経験を積んだため日本の海上自衛隊の対潜哨戒能力は世界一の水準となったのです。

ちなみに、海軍戦略における聖域(せいいき、英語:bastion)とは、友軍の海軍部隊が安全に活動できるよう堅固に防備された海域のことです。典型的には、そうした海域は友好国の海岸線によって部分的に閉ざされ、機雷による防護、センサーによる監視、さらに水上艦艇、潜水艦、哨戒機によって厳重な哨戒が実施されています。

冷戦期を通じて、ソビエト海軍の弾道ミサイル潜水艦隊にとって、聖域戦略は重要な戦略となっていました。北方艦隊によってバレンツ海が、太平洋艦隊によってオホーツク海がそれぞれ聖域化されました。両方の海域は今日のロシア海軍にとっても重要であり続けています。

中国の新型戦略原潜「晋級」(094 SSBN)
この日本の自衛隊が南シナ海で中国潜水艦の対潜哨戒活動にあたれば、中国にとっては非常に脅威です。中国の核戦略が水の泡のとなって消えてしまう可能性すらあります。

それを中国は、極度に恐れているのです。

それにして、日本の正しい進路は、中国を観察していると良くわかります。中国が本当に嫌がることこそ、日本の正しい道です。中国が大喜びして絶賛するような選挙結果であれば、日本にとっては良くないということです。今回の選挙の結果は、正しい進路を国民が選ぶことになって欲しいです。選挙の開票結果など、現在テレビで徐々に報道されつつありますが、なにやらそちらの方向性にいくような気配です。

そうなれば、日本国民は正しい選択をしたということになると思います。今回の選挙の争点は、中国封じ込めの是非を国民問うということでもあったといって過言ではないと思います。

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【7・10参院選 私はこれで投票する】国防に無知な政党・個人には投票しない KAZUYA氏―【私の論評】明日の選挙では、中国の顕な野望を無視する政党、個人には投票するな(゚д゚)!




2016年7月9日土曜日

【7・10参院選 私はこれで投票する】国防に無知な政党・個人には投票しない KAZUYA氏―【私の論評】明日の選挙では、中国の顕な野望を無視する政党、個人には投票するな(゚д゚)!

【7・10参院選 私はこれで投票する】国防に無知な政党・個人には投票しない KAZUYA氏

京本和也氏
これまでは20歳以上だった選挙権が、今回の参院選から18歳以上に引き下げられる。新たに有権者になる約240万人の票の行方が注目されているところだ。

最近の若者は新聞を読まないと揶揄(やゆ)される。確かに、その通りなのだろう。だが、裏を返せば、必死に「雰囲気」で世論を誘導しようとする新聞の影響をあまり受けないと見ることもできる。読まないことがプラスに働くこともあるのではないかと思う。

日本は危機の時代を迎えている。その原因の1つとして挙げられるのが、中国の膨張である。

中国海軍の軍艦が、鹿児島県・口永良部島(くちのえらぶじま)沖の領海を侵犯したとの話題も記憶に新しい。今年4~6月に日本領空に接近した中国軍機に対する航空自衛隊戦闘機の緊急発進(スクランブル)の回数が、昨年の同時期に比べて80回以上増え、過去最多の約200回となった。

ネットでは中国の行き過ぎた行動が盛んにシェアされている。新聞を読まなくても、こうした情報は入ってくる。

虎視眈々と沖縄県・尖閣諸島を狙い、領海・領空への揺さぶりをかけて着実に侵略の歩みを進める中国。しっかりと、わが国の領土・領海・領空を守りぬく気概が求められているのだ。

しかし、今回の参院選において、民進党や共産党、社民党、生活の党などは徒党を組んで、まったく真逆の方向のことを訴えている。4党といっても、実際の主力は民進党と共産党だろう。岡田克也代表と志位和夫委員長をもじって、ネットでは「岡志位(おかしい)コンビ」などと揶揄(やゆ)されることもある。

岡志位コンビ
共産党は「自衛隊を段階的に解消していく」などと公言し、国防に対する無知からか「防衛費=人を殺すための予算」などと共産党特有の本音が飛び出している。この危機の時代にあって、いや危機の時代でなくても時代にそぐわないのは間違いない。

「戦争になる」などと扇動家が煽り、安全保障法制にしても反対の論調を多くとる一部メディアにだまされることなく、私たちは現実的な視点で判断しなければいけない。

国防は国家の根幹だ。まず外敵から身を守ることができなければ、私たちの安心な生活も何もない。家もまず雨風をしのぎ、防犯をしっかりやってこそ、インテリアをどうするという話になるのは当然だ。

しかし、野党連合の国防観は、雨風・防犯を無視してインテリアをどうするか議論するようなものではないのか。吹きっさらしで泥棒が自分の資産を狙って侵入するような状態では、インテリアも何もない。

国防に対し、まったくの無知をさらす政党、個人には投票しない。これが基本だろう。国防観・国家観がある上で、どういった政策をするかに注目する。自分はこういう基準で投票したい。 =おわり

KAZUYA(かずや)

【私の論評】明日の選挙では、中国の顕な野望を無視する政党、個人には投票するな(゚д゚)!

京本和也氏といえば、youTuber として有名な若者です。私も、時折その動画を視聴させていただいています。このブログにも動画を何度か掲載させていただいたこてともあります。彼の動画は視聴者が35万人ともいわれているので、その意味では、上の記事は、多くの若者に受け入れられるものと思います。登録者が35万人なのですから、時々見るひともあわせると莫大な数になると思います。

私自身は、一度倉山満氏と京本和也氏の二人の講演会に行ったことがあります。京本氏は、保守的な内容とともに、自らの動画の運営の仕方などについて熱心に語っていました、自ら開拓してきたノウハウをいろいろと開陳していました。その中で自分は、いろいろな保守的な内容のうち入門的なものを専門に扱っているしていました。

しかしこれをそのまま真似たとしても、京本氏のように35万人もの視聴者が登録するようなチャンネルなどなかなかできないと思います。

そもそも、京本氏の選んだ保守的なテーマが多くの人に注目を浴びたことと、その内容がかなり平易で噛み砕いたもので、誰にでも理解できるものであったこと、そうしてタイミングもあったことでしょう。まさに、彼の動画は、多くの人の疑問に応えるものであったし、それに視覚・聴覚に訴える動画でありながら、既存のテレビとは全く違う媒体ということが、何よりも革新的でした。彼は、既存のテレビ・新聞・雑誌などのメデイアとは異なる媒体であるインターネットの動画がこれだけ多くの人にアピールをするということを実証した、一人ということもできます。

若者こそ、これからの日本を担っていくわけですから、若者である和也氏がこのような記事を書いているのですから、和也氏以外の日本の若者の多くも日本の将来についてしっかり考えているのだと思います。SEALDsやそれに同調する若者など、ごく一部なのでしょうが、マスコミが喧伝するので、いかにも影響力があるようにみえるだけで、とても京本和也氏ほどの影響力はないでしょう。

私は、SEALDsは若いころ、新左翼運動をしたか、しないまでもそのシンパであった老人たちのアイドルにすぎないと思っています。明日選挙に初めて行く若者の中にも、京本氏の動画を日常的に視聴している若者も結構いるものと思います。

以下に、京本和也氏の明日の選挙がらみの本日の動画を掲載します。


上の記事で、京本和也氏は、「国防に対し、まったくの無知をさらす政党、個人には投票しない。これが基本だろう。国防観・国家観がある上で、どういった政策をするかに注目する。自分はこういう基準で投票したい」と結んでいますが、まさにその通りです。

この記事は、夕刊フジのサイトであるZAKZAKに掲載されているものですが、本日は、以下のような記事もありました。
【緊迫・南シナ海】中国が南シナ海でミサイル・魚雷の実弾演習 仲裁裁定前に実効支配を誇示 100隻の軍艦と数十機の航空機が参加
南シナ海の西沙諸島付近の海域で実弾演習する中国海軍=8日
 中国海軍は8日、南シナ海のパラセル(中国名・西沙)諸島付近の海域で、約100隻の軍艦と数十機の航空機、ミサイル部隊が参加して実弾演習を行った。新華社電などが9日、伝えた。ミサイルや魚雷数十発を発射したという。
南シナ海の西沙諸島付近の海域で実弾演習する中国海軍=8日
 中国による南シナ海の大半の管轄権主張を巡り、フィリピンが申し立てた国連海洋法条約に基づく仲裁手続きの判断が12日に示されるのを前に、軍事力を誇示して実効支配をアピールする狙いとみられる。 
南シナ海の西沙諸島付近の海域で演習する中国海軍兵士=8日
 演習は、赤と青のチームに艦船などが分かれて対抗する形で行われ、制空権確保や海上作戦、対潜水艦作戦に重点が置かれたという。中国海事局は軍事演習のため南シナ海の一部海域で5~11日、船舶の進入を禁止している。
それに本日は、午前中には、北朝鮮がSLBM(潜水艦発射弾道ミサイル)の発射実験を行ったことも伝えています。最近では、北朝鮮がしょっちゅうミサイルを発射するので、多くの人は麻痺してしまったようでもありますが、これも脅威であることには変わりありません。

北朝鮮の国営朝鮮中央通信が配信した、SLBMの発射実験の写真(2016年4月24日配信)

 中国がここまでして、南シナ海の実効支配に拘りつづけ、さらに強めるのはなぜでしょうか。それには、いろいろな見方ができますが、私は中国の核戦略のためであるという記事をこのブログに掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。

中国の膨張路線は止まらないが国際社会から強い逆風 南シナ海のハーグ裁定―【私の論評】通常戦力で勝ち目のない中国は、南シナ海に戦術核を配備する(゚д゚)!
中国によるスプラトリー諸島にあるファイアリー・
クロス礁の完成した飛行場(昨年9月20日撮影)
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、趣旨のみ元記事を再構成して以下に掲載します。

ICBM(大陸間弾道弾)と、SLBM(潜水艦発射弾道弾)を比較すると、ICBMは地上あるいは、サイロに格納されているものですので、最近では衛星写真などから、その位置を比較的容易に敵に察知されやすく、いざ核戦争になった場合、先に敵に破壊される可能性が高いです。

しかし、SLBMの場合は、深海に深く潜行すると、敵からは容易には発見されません。そのため、最近ではSLBMが各戦略において重要な役目を担うようになってきています。

そうして、中国も当然のことながら、SLBMに力を入れています。ところが、中国大陸の近くの海域は比較的水深が浅いので、中国の潜水艦は日本や米国などの対潜哨戒機にたやすく捕捉されてしまいます。

これでは、SLBMを有効に使うことはできないわけです。しかし、南シナ海の海域では、水深が深いので、ここに戦略型原潜を深く潜行させることができれば、ここから比較的アメリカの近くまで深く潜行したまま航行し、いざという場合核攻撃ができるわけです。

中国としては、南シナ海に複数の戦略型原潜を潜行させておき、交代でアメリカの射程距離内まで定期的に航行させることができれば、常時アメリカ全土を中国のSLBMの標的にすることができるわけです。

中国が、南シナ海にこだわるのは、こうした核戦略を成就させるという狙いがあるということです。

そうして、最初中国は、戦略型原潜を中国本土から南シナ海まで航行させ、そこからさらにアメリカへの射程距離内に航行させ、そこにしばらく滞在して、次の戦略型潜水艦と交代して、南シナ海に戻り、さらに中国に帰還するという方式をとるのだろうと思います。

しかし、わざわざ南シナ海を毎回経由するというのでは、いろいろと不都合も生じると思います。原潜を修理したり、補給するのに、わざわざ南シナ海を毎回通過するのはいかにも不経済です。それに、中国大陸の基地に戻るということは、中国の戦略型原潜の行動をその都度日本や、米国に知られてしまうことになります。さらに、大陸付近の東シナ海などは比較敵水深が浅いので、簡単に敵に捕捉され、撃沈されることになります。

であれば、中国はいずれ、南シナ海の環礁埋立地に原潜基地を移すことが考えられます。ただし、中国本土であれば、中国が戦略型原潜の基地を置いても、どこの国もクレームをつけることはないですが、南シナ海だとそういうわけにはいきません。だからこそ、中国は

それに、さらに恐ろしいシナリオもあります。南シナ海に中国が原潜基地を設置した場合、残念ながら中国は通常兵力では、とても米国や日本などには勝つことができません。これにインドや、オーストラリア場合によっては、タヒチに駐屯するフランス海軍もくわわることになれば、全く勝ち目はなく、原潜基地を守ることはできません。

そうなると、中国が是が非でも、南シナ海の戦略型原潜の基地を守ろうとした場合、通常兵力ではかなわないので、戦術核を配備する可能性もあります。

そうなると、南シナ海の中国の実効支配はより強固になります。そうなってからでは、これを翻すことはかなり困難になります。

そうなる前に、日米や南シナ海の近隣諸国はこれを阻止する必要があります。

このような状況のなか、明日の選挙では、京本和也氏のように"国防に対し、まったくの無知をさらす政党、個人には投票しない。これが基本だろう。国防観・国家観がある上で、どういった政策をするかに注目する"というのが当然のことと思います。

実はわたしは、昨日期日前投票をしてきました。私は、当然国防に対して、まったく無知をさらす政党、個人には投票しませんでした。また、マクロ経済に関しても無知をさらす政党、個人には投票しませんでした。真逆の政党、個人に投票しました。

明日投票に行かれる方は、是非ともこの京本和也氏の基準も考慮に入れて投票していただきたいものです。

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2016年7月8日金曜日

【お金は知っている】下落続く人民元 中国不動産バブル崩壊と同時に暴落が起きる―【私の論評】日本は、必ず起こる人民元暴落に備えよ(゚д゚)!

【お金は知っている】下落続く人民元 中国不動産バブル崩壊と同時に暴落が起きる

中国の通貨、人民元の下落が続いている。7月5日時点では1年前に比べて対ドルで8・8%安くなっている。円に対してはさらに下落幅が大きく、20%安である。

グラフは過去1年間の元の対ドル相場と中国の外貨準備高の推移である。元安トレンドは外貨準備の減少と密接に連動している。


中国は中央銀行である中国人民銀行が外貨を集中管理する制度をとっている。人民銀行は流入する外貨の大半を買い上げるかわりに元資金を供給するし、大量の元売り、外貨買いを引き起こす資本逃避が起きると、人民銀行は外準を取り崩して外貨を売って元を買い取る。

人民銀行は原則として前日の元相場の終値を基準にして、当日の元の交換基準レートを決め、その基準値の上下各2%の幅で変動させる管理変動相場制をとっている。人民銀行は昨年8月13日、同10日に比べて4・57%基準値を下げたが、前日比で2%以内の幅での切り下げを繰り返した結果だった。

人民銀行は既存の管理変動制度の枠内での操作であり、大幅切り下げではないと説明したが、中国内外の投資家は元安政策への転換だとみた。元安を恐れた中国国内の投資家や富裕層は海外の不動産に投資し、消費者は元の価値が高いうちに日本など海外で爆買いに走った。

爆買いの担い手は、主婦など個人が周囲の知り合い向けに日本製品などをまとめ買いし、手数料を稼ぐ代行業者だ。上海などの空港税関は今年初めから、何個も同じ日本製品を抱えた帰国者に対し規則通りの高い関税率を適用するようになった。その途端、爆買いブームが吹っ飛んだ。

他方で、習近平政権は元安を必要としている。国内では鉄鋼など設備過剰が深刻化しているため、輸出に頼らざるをえない。

習政権はいつまで元安路線を続けられるだろうか。その鍵は外貨準備にある。豊富な外準がある限り、元売り投機のチャンスをうかがっているジョージ・ソロス氏らヘッジファンドの攻勢をかわすことができるからだ。

その外準は年間で5000億ドル(約51兆円)以上も減っている。資本逃避が収まらない。それでもまだ外準は3兆ドル(約306兆円)以上もあり、世界ダントツだと当局者は言い張るが、実は虚勢でしかない。

外準というのは帳簿上、資産だが、外からカネを借り入れてもそのまま外準に参入できる。中国の場合、対外負債は3月末現在で外準を1・3兆ドル上回っている。いわば、借金によって外準の落ち込みを何とか食い止めている。中国にカネを持ち込むのは主として中国資本である。

上海など沿海部の大都市では不動産バブルが再発している。香港経由でタックスヘイブン(租税回避地)に資産を移した党幹部一族など特権層が不動産市場に投資する。そこで名義上だけは「外資」のカネが流入するのだが、これらチャイナマネーの逃げ足は速い。バブル崩壊と人民元暴落は同時に起きるだろう。 (産経新聞特別記者・田村秀男)

【私の論評】日本は、必ず起こる人民元暴落に備えよ(゚д゚)!

結局のところ、あの中国人による爆買いブームは、元安を恐れた消費者の一時的な消費に過ぎなかったということです。

どうりで、「爆買い」は2015年には流行語大賞も受賞するほど大きな注目を集めたにもかかわらず、今年になってからは影を潜めつつあります。

そうして、15年に見られた「大型バスで乗り付けて列をなして店に入り、買い物をするような光景」は16年は見られませんでした。

いずれ、元安が一層すすめば、爆買いどころから、中国人旅行者の数そのものが激減したり、中国人旅行者の消費そのものが萎んでしまうことになります。

ひところの日本では、中国人の爆買いをあてこんだ、商売などが盛んだったようですが、そもそも爆買いはたいしたものではなかったことがはっきりしています。それに関しては、このブログにも掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
【国内】爆買いやインフラ特需のはずが…東京のGDPなぜマイナス?―【私の論評】官邸は徹底的に財務省を追撃し、殲滅し、財務省を他省庁なみの官庁に叩き落とすべき(゚д゚)!
この記事は、昨年12月27日のものです。詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事より以下に一部を引用します。

昨年まで中国人の爆買いが目立っていた銀座
 クビをかしげた人も多かったんじゃないのか。東京都が公表した2015年度の都内の実質経済成長率(見込み)。中国人の「爆買い」や、2020年の東京五輪に向けた施設建設やインフラ整備による“特需”でウハウハと思ったら、ナント! 「マイナス0.6%」だったからだ。 
 都がGDP(国内総生産)の都内分を推計したもので、マイナス成長は14年度(2.8%減=速報値)に続いて2年連続。「製造業」(5.6%減)や「卸売・小売業」(1.8%減)、「サービス業」(1.4%減)が主な要因とみられるが、内閣府が7月に公表した全国の経済成長率見通し(1.5%増)よりも大幅に下回っているとは驚きだ。 
 都内では今も、あちこちで高層マンション建設が見られるし、銀座や秋葉原には大型スーツケースを持った中国人の団体客がウジャウジャいる。それに何といっても、東京五輪だ。過去に五輪招致委員会と都スポーツ振興局が試算した五輪開催に伴う「需要増加額」は、東京だけで約9600億円。GDPを押し上げるプラス要素ばかりなのに、全国よりも“冷え込んでいる”のは不思議だ。
これは、今から振り返ると不思議でも何でもありません。結局のところ、平成14年4月からの8%増税がかなり響いて、東京都内でも個人消費が低迷したからです。

そうして、東京都民等の個人消費の低迷によるマイナスは、中国人の爆買いがあっても、その他、高層マンションの建設があったり、東京五輪による需要増があったにしても、個人消費のマイナスを補うまでにはいかなかったということです。

なぜそのようなことになるかといえば、大まかにいうと日本では、GDPの約6割が個人消費によるものだからです。個人消費が8%増税で冷え込めば、東京ですらこのような状況になるのです。

これが、日本全国ということになれば、それはさらに、はっきりします。消費税増税など平気で言い出す人たちは、このような実体を知らないのでしょう。

8%消費税増税は誰がみても失敗したのは明白
中国に関しても、実体を知らない人たちが、いずれ近いうちに回復するなどと甘い期待を持っているようです。しかし、その期待はことごとく裏切られることになるでしょう。

今年の1月7日、中国の中央銀行である人民銀行が公式に外貨準備高の減少を発表しました。2014年末の外貨準備は3兆8400億ドルでした。2015年末の外貨準備高は3兆3300億ドルになっていまし。マイナス5127億ドルです。これは「公式」数字ですから、実態はおそらく倍以上でしょう。

元安に振れようとするマーケットに対して通貨当局が元買い(ドル売り)介入をした結果外貨準備は減り、さらなる元安観測や資本逃避懸念が高まるというスパイラルに陥った可能性が大です。

そうして、中国人民銀行の為替操作が、もはや厳重に管理できず、実勢市場では機能しなくなって、外圧と逃亡資金のメカニズムが当局の意図とは異なる方向へ暴走を始めているようです。

すでに昨夏の株暴落と人民元下落により、海外華僑が中国から一斉に資金を引き揚げており、年明けとともに株式市場で導入された「7%のサーキットブレーカー」が年初から連日発動され、4日連続、しかも7日は開始後わずか30分で取引停止しました。

人民元のオフショア市場ではすでに当時から10%、崩落していました。人民元のオフォショアは香港、シンガポール、倫敦、そしてフランクフルトでも崩落しました。

人民元暴落はもはや避けられない
日本の株式市場は人民元安と上海株の暴落への連鎖で年初の時点で2・9%程度下げたましたが、もっとも無惨な崩落はウォール街でした。

人民元の暴落は、このように年初から明らかてでした。これから、未曾有の人民元暴落がおこることが予想されます。その悪影響は、甚大です。リーマンショック級のショックが日本を襲うかもしれません。

現在の日本は、消費税増税を見送るのは当然のこととして、中国の人民元の暴落、英国のEU離脱の悪影響なども織り込み済みで、政府は、消費税増税の見送りは当然のこととして、そこから一歩進んで、消費税減税(5%に戻す)、追加金融緩和などを実行して、備えるべきです。

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2016年7月7日木曜日

中国の膨張路線は止まらないが国際社会から強い逆風 南シナ海のハーグ裁定―【私の論評】通常戦力で勝ち目のない中国は、南シナ海に戦術核を配備する(゚д゚)!

中国の膨張路線は止まらないが国際社会から強い逆風 南シナ海のハーグ裁定

オランダ・ハーグの常設仲裁裁判所(PCA) 
 南シナ海の領有権問題をめぐり、フィリピンが中国を相手に申し立てていた仲裁手続きについて、オランダ・ハーグの常設仲裁裁判所(PCA)は7月12日に裁定を下す予定だ。

 中国に対して厳しい内容になるとの見方もあるが、必ずしもフィリピンに有利な判断が示されるとはかぎらない。そして中国は、どういう裁定であっても受け入れないと主張している。

 常設仲裁裁判所は、国際紛争を解決するために国家間に設けられた裁判所だ。1899年の第1回ハーグ平和会議で採択された国際紛争平和的処理条約に基づき、1901年にハーグに設立された。同じくハーグにある国連の機関、国際司法裁判所(ICJ)としばしば混同されるが、別組織である。

 本件は、各国が領有権を争う南シナ海の島々をめぐり、フィリピンが仲裁を求めたことが発端だ。フィリピンと中国はともに国連海洋法条約を批准しており、フィリピンは同条約に基づいて南シナ海問題を処理することを主張した。一方、中国は、南シナ海の島々の主権に関わる問題であり、同裁判所の管轄ではないと強調している。

 これを受けて、同裁判所は、南シナ海問題は同条約の解釈と適用に関する両国間の係争であり、管轄権を有すると判断していた。同裁判所が管轄権を認めたのは、中国が埋め立てた岩礁を「領海」の起点とすることの合法性やフィリピン漁民への妨害行為などである。

 中国は、フィリピン側が提出した南シナ海の仲裁案を受け入れないとして、「決定は無効で中国に対して何の拘束力も持たない」としてきた。

 常設仲裁裁判所の下す裁定は、南シナ海の領有権紛争に国際法を適用することで、国際社会がこの問題をどう見ているかを示すことになる。

中国によるスプラトリー諸島にあるファイアリー・
クロス礁の完成した飛行場(昨年9月20日撮影)
 外交では、「法と正義の原則」という用語がよく用いられる。これは、日本の北方四島に対するロシアの不法占拠を非難するときにも使われていることからもわかるように、国際法を無視した、力による変更を認めないというものだ。

 常設仲裁裁判所が裁定を下すということは、南シナ海問題の存在を国際社会が認めることになる。これは、中国を国際法の舞台に載せることであり、国際社会の動向を考えると、中国はそう簡単に武力を行使できなくなるだろう。

 常設仲裁裁判所の裁定だけで、中国の南シナ海での拡張路線を食い止めることはできない。ただ、中国にとっては南シナ海への米海軍の艦艇派遣とともに、国際社会からの大きな逆風になることは間違いない。

 常設仲裁裁判所による審理は非公開であったが、マレーシア、インドネシア、ベトナム、タイ、日本は傍聴してきた。それらの国に加え、日米豪印の4カ国で共同して中国の南シナ海進出の野望をくじく必要がある。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】通常戦力で勝ち目のない中国は、南シナ海に戦術核を配備する(゚д゚)!

上の記事では、日米豪印の4カ国で共同して中国の南シナ海の野望をくじく必要があるとしています。私もそう思います。ただし、その理由は単なる中国の南シナ海の拡張路線を食い止めるだけに及びません。

その最大の理由は、上の記事では言及されていませんが、結論からいうと、中国の南シナ海のへの核兵器の配備を阻むことです。

中国は、明らかにこの地域への核兵器の配備を企図しています。それに関しては、以前から指摘されていました。 それに関する記事のURLを以下に掲載します。
【なぜ南シナ海に進出するのか?】南シナ海 対米核戦略の内幕 - 能勢伸之(フジテレビ解説委員)
この記事は、今年の6月16日にBLOGOSに掲載されたものです。詳細は、この記事をご覧いいただくものとして、以下に一部分を抜粋、要約して掲載させていただきます。
 G2として、米国と並びたとうとする中国は、経済面だけではなく、軍事面、特に核抑止の強化が急務となるはずだ。 
 核戦略のために南シナ海をおさえこもうとしているのなら、むしろ、そのように捉えた方が、中国の南シナ海での行動に一貫した戦略を見出すことができる。

 それはいかなる戦略なのか? 現代の核抑止理論をベースに考えてみることにしよう。 
 その理論は歴史的には米ソ核戦争の想定によって鍛えられてきた。第二次世界大戦後、全面核戦争をしうる国は、米ソ以外には考えられなかったからだ。
 
米ロ中の戦略核兵器
 米ソ核戦争において、勝敗を分けると考えられ、核抑止の要とされたのは、互いの敵国本土の都市や核ミサイル基地などの標的を破壊する「戦略核兵器」である。戦略核は、①大陸間弾道ミサイル(ICBM=射程5500㎞以上の地上発射弾道ミサイル)、②潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)、③重爆撃機の三種類の遠距離核打撃システムから構成されている。これを核の三本柱=トライアドと呼ぶ。

 米国とソ連の核兵器を継承したロシアは、依然として戦略核を大量に保有しているが、トライアドを構成する兵器と搭載される核弾頭の数量などについては、米ロ間で繰り返し条約で規定し、現在は新START条約(新戦略兵器削減条約)の下、両国とも2018年までに核弾頭を1550個まで、ICBM、SLBM、重爆撃機の合計を700までに削減することになっている。

 では、中国の戦略核兵器を見てみよう。中国はICBMとSLBMを保有しているが、米国本土を打撃できる重爆撃機は持っていない。

 中国のICBM(DF‐31A、CSS‐4別名DF‐5、DF‐5AはDF‐5の発達型)は、米国に届く(次頁図1参照)。しかし、その数は米国の7分の1以下である(次頁図2参照)。また、中国のSLBMであるJL‐1の射程は2000㎞台で、米国本土には届かない。同JL‐2の射程は7400㎞以上で、中国沿岸からだと、アラスカやグアムには届くものの、その他には到達しない。
図1 中国の戦略核兵器の射程(米国防総省によるMilitary and Security Developments Involving the People's Republic of China 2015, p.88を基に作成)*出典にはDF-4、DF-5Aの射程は図示されていない。
図2 米国・ロシア・中国の戦略核兵器(the Military Balance 2016による)の三本柱*ICBMは発射装置の数。中国はH-6K爆撃機を約50機保有している。米B-1B爆撃機は、核任務から外れているため、表には入れていない。
核戦争の勝敗を決するSLBM 
 一般にICBMの発射装置は、2種類ある。一つは竪穴にミサイルを収め、蓋をする固定式サイロ。もう一つは車両や列車にミサイルを搭載し、発射地点を変えて行く移動式。これは元々は発射地点を敵国に捕捉されないようにするための工夫だった。しかし、今では偵察衛星や偵察機の技術が相当に進歩したので、移動式の場合も特定されないとは言えない。

 したがって、平時から場所を割り出される可能性の高いICBM発射機(基)は、まず敵国の戦略核兵器の標的となる。

 このことを踏まえると、戦略核兵器の標的は、主に敵国のICBM発射機(基)や軍事中枢となる。重爆撃機はミサイルや爆弾の投下前に迎撃すればよい。敵国の都市を狙うとすれば、敵国の国力の破壊と戦意喪失のためであり、ICBMの発射機(基)や軍事中枢を狙うのは、反撃を防ぐためである。むろん核戦争が実際に起これば、自国の都市やICBM発射機(基)、軍事中枢も相当に破壊されるだろうが、核戦争における敗北は、反撃が不可能になった時点で訪れる。逆に言えば、核戦争は、反撃が可能なうちは、物理的に続行しうる。

 このような想定の下で、非常に重要な役割を担うのが、SLBMである。SLBMを搭載して、海深く潜航するミサイル原子力潜水艦は、場所を特定されにくいため、敵国による先制攻撃を免れやすく、SLBMによる反撃に転じられるからだ。

 このことは、敵国にすれば、戦略核戦力によって、ICBM発射機(基)を壊滅させても、反撃される可能性が残ることを意味する。そうなれば、戦略核兵器による先制攻撃を思いとどまるかもしれない。SLBMが核抑止にとって、非常に重要な役割を担うのは、このためである。

 このことを正確に認識していたのは、冷戦期のソ連である。

 ソ連はSLBMによる反撃可能性を保つためにオホーツク海を「ミサイル原潜の聖域」にしようとした。具体的に言えば、ソ連はオホーツク海に米軍の航空機や艦船が入ることを困難にし、そこに潜ったミサイル原潜が捕捉されたり、攻撃されたりしないようにしていた。

 オホーツク海は水深が2000m以上の水域が多く、偵察衛星でミサイル原潜を捕捉することは難しい。また、北も東も西もソ連領土に囲まれている。つまり、聖域化しやすい地理的条件を備えていた。聖域化ができれば、オホーツク海に潜ったミサイル原潜は、千島列島の間を抜けて太平洋に進出することもできた。

 さて、いよいよ米中の核戦争を想定してみよう。戦略核兵器の比較をすると、中国の戦略核兵器は米国に比べてかなり劣るため、頼みの綱は、やはりSLBMだが、中国にはソ連におけるオホーツク海のような「聖域」はあるだろうか。ミサイル原潜が米軍に捕捉されることなく、米国本土を狙うSLBMを隠せる海を持っているだろうか。

 中国が面する海は大きく分けて、黄海、東シナ海、南シナ海の三つである。そして、SLBMを搭載した中国の晋級ミサイル原潜の基地は、知られている限り、2カ所にある。それは、大連の小平島海軍基地と海南島南端にある玉林(三亜)である。

 小平島海軍基地が面している黄海の平均水深は、50m弱で、そこにつながる東シナ海のほとんどの水深は、200m未満と浅い。この水深だと、ミサイル原潜は偵察衛星や哨戒機に捕捉されてしまう。その上、より深い太平洋に出ようとしても、その入口には日本の薩南諸島と琉球諸島が関所のように控え、米海軍最新の潜水艦ハンター、P‐8Aポセイドン哨戒機が沖縄嘉手納基地から展開し、常に目を光らせている。つまり、黄海、東シナ海は中国にとってのオホーツク海にはなりえない。
南シナ海は「聖域」たりうるか? 
 では、玉林がある南シナ海はどうだろうか。

 南シナ海には水深2000〜4000mとオホーツク海並みの海域が広がる。また、南シナ海周辺には、P‐8A哨戒機のような強力な潜水艦ハンターを配備している国や米海軍哨戒機を常備する基地はない。中国にとって南シナ海は、SLBMによる反撃可能性を保つ「聖域」にしうる地理的条件を備えていることになる。

 しかし、聖域化にはいくつか越えなければならないハードルがある。

 一つ目は中国のSLBMの射程である。先ほども述べたが、中国が保有するSLBMは2種類で、JL‐1は射程2000㎞台で、米国本土には到底届かず、JL‐2は射程7400㎞で、グアムやアラスカにしか届かない。つまり、南シナ海から太平洋に進出しないと、その射程内に米国本土を収められない。そのためか、米国防総省が2016年5月に発表したリポートによれば、中国はJL‐2に代わるJL‐3を開発中である。

 もう一つは、南シナ海とオホーツク海でもっとも異なる地理的条件に関わっている。それはオホーツク海が北、東、西と三方をソ連に囲まれていたのに対して、南シナ海は東はフィリピン、西はベトナム、南はマレーシア、ブルネイと中国以外の国に囲まれていることだ。

 これでは、中国は玉林から南シナ海にミサイル原潜を密かに潜航させ、太平洋に進出させようとしても、中国以外の国、特に米国にその動きを察知されかねない。それを防ぎ、SLBMによる反撃可能性を保つためには、南シナ海に民間船舶や民間機はともかくとして、海中の潜水艦を捕捉、追尾する能力を持つ他国の水上艦、潜水艦、哨戒機が平時から入れないようにしなければならない。

 中国がここ数年、南シナ海で行っていることは、そのためだと考えると平仄が合う。つまり、中国は「南シナ海の聖域化」のために領域内の島嶼や埋立てで造った人工島に滑走路やレーダー、港湾施設を建設していると考えられるのだ。

 すでに米国国防総省は、2015年5月、晋級ミサイル原潜と海南島南端の玉林について、次のような評価を下している。

「中国は、晋級弾道ミサイル原潜の建造を継続しており、4隻を就役、1隻を建造中である。晋級は推定射程7400㎞のCSS‐NX‐14(JL‐2)SLBMを搭載することになる。この組み合わせは中国人民解放軍海軍に初めて信頼できる長距離海洋発射核保有能力をもたらすことになるだろう。南シナ海の海南島を拠点とする複数の晋級弾道ミサイル原潜は核抑止の哨戒行動を可能とするだろう。恐らく、それは、2015年中に実施されうるだろう」(*1)

 ここで「核抑止の哨戒行動」と記されているものこそ、SLBMによる反撃可能性にほかならない。

 南シナ海における晋級ミサイル原潜の存在に懸念を隠さない米国は、南シナ海で、中国が建設した人工島周囲の「領海」(国際法で領海は陸地から12カイリまでと定められているが、人工島の領海は認められていない)の内側に2015年10月にはイージス駆逐艦ラッセン、2016年1月にはイージス駆逐艦カーティス・ウィルバー、2016年5月にはイージス駆逐艦ウィリアム・P・ローレンスを派遣した。これこそが人工島周辺に中国の領海を認めないという「航行の自由作戦」である。

 米軍の行動は、これだけに留まらない。それらを列挙してみよう。

 2015年11月、揚陸艦エセックス(LHD‐2)、ラッシュモア(LSD‐47)などからなる米揚陸艦部隊が、南シナ海入りし、マレーシア海軍と共同演習を実施。 
 2015年11月8日夜から9日にかけて、「通常任務」(米国防総省)として、南沙諸島付近をB‐52H大型爆撃機2機が飛行。 
 2015年11月11日、イージス駆逐艦フィッツジェラルドが南シナ海を航行。 
 2015年11月14日、原潜支援艦エモリー・S・ランド(AS39)が、マレーシアのセパンガー港で、巡航ミサイル原潜オハイオに補給(岡部いさく氏の取材による)。 
 オハイオは大型原潜で、射程1500㎞のトマホーク・ブロックⅣ巡航ミサイルを最大154発搭載し、100発以上連射できる。

 岡部氏はオハイオが「通常任務」で南シナ海の海中に長期間、展開していた可能性を指摘する。それが正しければ、その期間中、中国海軍の原潜基地にある海南島だけでなく、中国本土南部の広範囲がトマホークの射程内だったことになる。

 このように米国は南シナ海において、「航行の自由作戦」だけでなく、軍事的抑止としてより実効性の高い「通常任務」を展開していたと考えられる。

 日本の安全保障という観点から南シナ海問題を考えると、晋級ミサイル原潜に搭載されるJL‐2は、南シナ海から日本が射程内だ。

 日本にとっても軽視できない事態となるかもしれない。
さて、この記事から読み取れるのは、中国が南シナ海を戦略型原潜の基地にする可能性です。確かにこれに成功することができれば、中国はここから西太平洋に進出さらに米国の近くまで潜行させることによって、米国を核攻撃できます。

これを交代で定期的に巡回させれば、常時戦略型原潜をアメリカ本土への核攻撃に使用することができます。

私として、もっと恐ろしいシナリオを想定しています。

それは、南シナ海のいずれかの環礁埋立地に、中国が戦術核を配置することです。なぜそのようなことを言うかといえば、中国は海軍の通常兵器では、米軍はおろか、日本にも勝つことができないからです。

日米豪印の4カ国で共同で中国海軍と対峙されると、中国海軍には全く勝ち目がありません。そうなると、中国による南シナ海の戦略型原潜の基地化はかなり望み薄です。

しかし、対抗できる力がひとつだけあります。それは、戦術核です。これは、比較的小型で、射程が短くても十分に役に立ちます。

南シナ海のいずれかの中国の埋め立て地に、配備できれば、かなりの抑止力となり、中国の戦略型原潜の基地化にはもってこいです。

戦術核を配備することにより、南シナ海の実効支配はより強固なものとなり、中国の戦略型原潜は南シナ海を基地として、常時米国をSLBMの射程距離内に収めることが可能になります。

私は、それを中国が企図していると思います。その根拠として、以前このブログに掲載した、浮体原子力発電所の開発とその南シナ海への設置計画があります。それに関しては、このブログでも掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
【緊迫・南シナ海】中国が「海上原発」建設を計画 人工島に電力を安定供給―【私の論評】核戦争瀬戸際までいったキューバ危機の再来になる可能性も十分にあり(゚д゚)! 
4月22日、中国共産党機関紙・人民日報傘下の有力国際情報紙、環球時報は、南シナ海で行う
活動に電力を供給するため、中国が海上浮動式の原子力発電所を建設する計画だと報じた。写真は
衛星から撮影した南沙諸島のミスチーフ礁。1月8日撮影
 中国共産党機関紙、人民日報傘下の国際情報紙、環球時報は22日、中国が周辺諸国と領有権を争っている南シナ海の人工島などに電力を供給するため、海上浮動式の原子力発電所の建設を計画していると伝えた。海上原発の設計・建設を担当する造船大手の幹部が同紙に計画を明らかにした。 
 海上原発は南シナ海の人工島や軍事転用可能な施設に電力を安定供給することが期待される。中国の専門家は同紙に、「長期的な南シナ海戦略に重要な役割を持つ」と指摘。「防衛のための軍備」にも電力を提供できるとしている。2019年の実用開始を目指し最終的に20基が建設されるとの情報もあるという。 
 一方、中国外務省の華春瑩報道官は22日の定例記者会見で「そうした報道に関する情報は持ち合わせていない」と確認を避けた。
さて、この記事では、2019年の実用化を目指しているらしい、とのことが掲載されていますが、その後の記事では、このブログにも掲載しましたが、やはり2019年を目指していることが中国の環球時報で報道されています。その記事を以下に引用します。
不安だらけの中国製原発が新設されるのは自国領土内ばかりではない。『環球時報』によると、国有企業の中国核工業集団は、南シナ海の洋上に、小型原子炉をはしけで浮かべる浮体原子力発電所を20基敷設する計画を進行させている。目的は、海底に眠る原油の掘削に必要な電力を賄うことだという。設置費用は1基あたり30億元(約500億円)で、19年までの運転開始を目指す。
ロシアの浮体原子力発電所概念図
 上のロシアの浮体原子力発電所の概念図でもわかるように、これは動力のないヘリポートも備えた船のようなものに、原発を搭載しているイメージです。

このくらいの規模のものになると、当然南シナ海の環礁の埋立地などでは、建造できるとは思えません。

おそらく、中国本土のいずれかの造船所などで製造して、核燃料なども搭載の上、南シナ海のいずれかの環礁埋立地のそばまで、タグボートなどで曳航してくるのだと思います。

私としては、この時に戦術核も持ち込むのではないかと思います。この浮体原子力発電所に戦術核を搭載すれば、それこそ、臨検をして調べなければ、戦術核なのか原子力発電所用の核物質を運んでいるのか、あるい両方を運んでいるのか検知不能だと思います。

そもそも、未だ世界で稼働事例もない浮体原子力発電所を、その経験もない中国が拙速に2019年から稼働させるというのは、非常に不自然です。

しかし、これを許してしまえば、中国の南シナ海の実効支配はかなり強固なものとなり、これを翻させることはかなり困難になることが予想できます。それどころか、南シナ海は中国の戦略型原潜の基地となり、アメリカは常時中国の戦略型原潜の脅威にさらされることになります。そうして、中国の妄想、世界支配のための米中二国間関係が成立することになりかねません。

そうなれば、中国は尖閣諸島や沖縄まで触手を伸ばしてくるかもしれません。それこそ、南シナ海で味をしめてしまえば、尖閣や、南シナ海の海洋調査用のリグに戦術核を配備するかもしれません。そうして、中国の大々的な西太平洋への進出が始まることでしょう。

当然そのようなことは、アメリカは許容できないでしょう。かつて、ソ連がキューバに核兵器を持ち込もうとしたときに、生じたキューバ危機に似たような状況になることも想定できます。核戦争も辞さない姿勢で、中国に本気で軍事的に挑むことになります。

その前に、中国の南シナ海進出の野望をくじく必要があります。

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2016年7月6日水曜日

韓国で日本との通貨スワップ再開論 協定終了のいきさつを棚上げ?―【私の論評】リフレ派皆無の韓国を通貨スワップで助けても全く無意味(゚д゚)!

韓国で日本との通貨スワップ再開論 協定終了のいきさつを棚上げ?

歴史を修正して反日姿勢を崩さない朴槿恵大統領

韓国政府から、日本と緊急時に通貨を融通し合う「通貨交換(スワップ)協定」の再開を望む声が強まっている。英国の欧州連合(EU)離脱決定や中国経済失速などの要因でウォン暴落や外貨流出の懸念があるためだ。ただ、朴槿恵(パク・クネ)政権の反日姿勢で協定が終了した経緯もあり、その身勝手さにあきれる声も聞かれる。

今月1日に駐日大使に就任した李俊揆(イ・ジュンギュ)氏は2日付の日本経済新聞のインタビューで、日本との通貨スワップ再開について「危機はいつ誰に訪れるかわからず、通貨スワップは危機対応として互いに役立つ」として望ましいとの姿勢を示したという。

韓国は中国と最大の通貨スワップ協定を結んでいるが、調達できるのは人民元だ。一方、2001年に締結した日韓通貨スワップは、韓国はウォンを日本に渡し、米ドルと日本円を受け取ることができるものだった。

11年には700億ドル(約7兆1960億円)の規模に拡大したが、反日姿勢を強めた朴政権側から「協定延長は不要」との声が出て、昨年2月に打ち切られた。

その後も韓国で経済不安が発生するたびに、韓国側の政財界やメディアからスワップ再開話が浮上していた。今年6月には英国民投票で離脱派が勝利したことでウォンや人民元など新興国の通貨が軒並み売られたことから、崔相穆(チェ・サンモク)企画財政部次官が日本や米国との通貨スワップ再開に言及した。

韓国内では、外貨準備高が今年5月末時点で3709億ドル(約38兆880億円)にのぼるため、通貨安や資本流出にも対応可能との論調もある。また、円高とウォン安が進むことは、日本と競合する韓国の輸出産業にとっては有利だ。

ただ、ウォンの対ドルや対円レートは英国民投票直後の急変からいったん落ち着いたが、韓国への影響が大きい中国の人民元も下落が続いているうえ、今後の米国の追加利上げ観測もあることから先行きは予断を許さない。

週刊東洋経済元編集長の勝又壽良氏は、「米国に為替操作国と認定される恐れがあるため、韓国は介入に頼れなくなり、通貨スワップ再開の動きが出てきている。ただ、日本にとっては韓国とのスワップを再開するメリットは小さく、事実上は韓国救済になることを韓国政府はわきまえるべきだろう」と指摘している。

【私の論評】リフレ派皆無の韓国を通貨スワップで助けても全く無意味(゚д゚)!

韓国経済は、このままだと低迷しいずれ過去日本のように「失われた20年」に突入するのは必定です。そのような国を通貨スワップで救済しても無意味です。

現在、韓国では、過去の1990年代後半からの20年に及ぶ経済停滞( 失われた20年)を警戒する論調が盛んになっています。そうして、韓国の政策当事者や経済学者、エコノミストたち主流派の意見は、韓国経済低迷の主因を「構造的要因」に求めているのが一般的です。

日本の小泉純一郎政権発足間もない頃に標語になっていた「構造改革なくして景気回復なし」と同じ議論です。しかし、小泉政権のときもそうでしたが、韓国経済の低迷もまた、「構造問題説」でとらえるのは間違いです。

日本では90年代から経済成長率が低迷し、失業率が高止まりし、低インフレからデフレへの長期継続といった現象が観測されていました。この原因は、消費や投資など総需要不足であることは全く疑いがありませんでした。ところが、当時の政府はもとより、マスコミや経済学者まで経済の無駄をなくせというばかりで、やるべきであった金融緩和など一切せず、何かといえば構造改革一本槍ということが続けられました。

小泉内閣時代の自民党のポスター
この状況を解消するべく方向転換をしたのが、第2次安倍晋三政権のアベノミクスでした。その中でも、異次元の金融緩和とも呼ばれた、大規模な金融緩和が功を奏しました。しかし、本来積極財政を行うべき、財務省が緊縮財政の手法である消費税増税に拘りつづけ、8%増税が実施され、GDPは伸びませんでした。

しかし、雇用のほうは改善し、それこそ数十年ぶりの回復をみました。そうして、今年は消費税10%への増税はまた、延期されました。

日本はなぜ、20年近くにも及ぶほど正しい経済政策を取れなかったのでしょうか。簡単にいうと、それは財務省は積極財政をすべきときに緊縮財政を行い続け、日本銀行は、金融緩和をすべきときに、金融引き締めを行いつづけたからです。

日銀は、金融政策の間違いを、財務省は財政政策の間違いを頑として認めず、あろうことか、それを政治家やマスコミ、多くの経済学者までもがそれを許容してきたからです。

すでに2014年あたりから、韓国の経済指標は日本の失われた20年の時代と同じような兆候

同じようなことが今の韓国経済にもあてはまります。問題の本質は、総需要不足であり、構造改革は問題解決になり得ないどころか、解決を遅らせるだけで、「害」をもたらす政策以外の何ものでもありません。

韓国銀行(日本の日銀にあたる韓国の中央銀行)は度重なる金利低下を実施しています。しかし、韓国銀行は金融緩和をせずにこれを実施しているので、為替レート市場では一貫してウォン高が進行しています。これが韓国の代表的な企業の国際競争力を著しく低下させていることには疑いの余地はありません。

では、なぜ韓国は大胆な金融緩和政策を採用できないのでしょうか。田中秀臣氏などのリフレ派かみると、韓国政府や韓国銀行は、大胆な金融緩和を行えば、一挙にウォン安が加速し、ウォン建て資産の魅力は急減することを恐れているとみなしているようです。

そうなると、海外の投資家たちは韓国市場から投資を引き揚げ、株価なども大幅に下落してしまうことを恐れているというのです。しかし、私はそれだけが原因では無いと思います。

元々、韓国の個人消費は、GDPの50%程度しかなく、これはかなり低い水準です。日本などの先進国では、これが60%台であるのが普通です。米国では、これが70%にも及びます。日本は失われた20年でデフレ・スパイラルどん底に沈んでいるときですら、60%近くを維持していました。

極端なグローバル化で歪な韓国経済
どうしてそのような構造になったのかといえば、極端なグローバル化を進めた結果です。しかし、韓国政府は低い個人消費を伸ばそうという意識はないようです。だからこそ、金融緩和などには、無関心なのでしょう。

しかし、現状をそのまま放置しておけば、過去の日本の失われた20年のように、韓国経済は長期停滞に埋没していくのは必定です。これを打開するためには、個人消費を伸ばす政策を採用すべきです。それを実行するには、金融緩和は不可欠です。

そうして、構造改革をするというのなら、何をさておいても、内需を拡大することを優先すべきです。そのためには、金融緩和、積極財政は欠かせません。

日本には、韓国が大胆な金融緩和を行えないのは、日韓スワップ協定などで潤沢なドル資金を韓国に融通する枠組みに欠けているからだ、と指摘する人もいます。確かに、その側面はあるかもしれません。しかし、これよりよりもはるかに深刻なのは、朴政権と韓国銀行に蔓延している間違った構造改革政策です。

このようなニュースがまた、報道されるかもしれない。日韓スワップ協定は、
事実上の韓国への支援、ただし支援しても何の効果も期待できない
日韓スワップ協定による、潤沢なドル資金がなかったにしても、ウォンは韓国の貨幣なのですから、韓国銀行はウォンを増刷することができます。であれば、韓国内で金融緩和はできるはずです。それを実行すれば、日韓スワップ協定を再開しなくても、韓国は自力でも何とか困難を回避できるはずです。

しかし、これを実行せずに、昔の日本のように「構造改革ありき」などとしていれば、韓国も「失われた20年」に見舞われるのは確実です。そうして、これは日韓スワップ協定を再開したとしても、そもそも政策が間違っているのですから、改善されることはあり得まず、無意味です。

それにしても、韓国はどうして日本が「失われた20年」を招いてしまったのか、理解できないのでしょうか。虚心坦懐に日本での出来事をみていれば、理解できるはずです。

しかし、彼らは「反日」で目が曇っています。だから、日本の状況を正しく判断する事ができないのだと思います。日本のリフレ派の識者がこれを、韓国に対して説明しても彼らは聞く耳を持たないでしょう。であれば、全く効果が期待できないので、支援しないのが一番です。支援しても、何も効果がでないので、さらに日本に対して面妖な要求をつきつけるようになるだけです。そんなことは、私達は過去の例で嫌というほど、見せつけられています。

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時代遅れの偵察衛星システムで日本は隣国からのミサイル攻撃を防げるのか?―【私の論評】シギント(信号諜報)の重要性と日米台の宇宙からの監視能力 - 中国の脅威に備えるべき課題

時代遅れの偵察衛星システムで日本は隣国からのミサイル攻撃を防げるのか? ■ 江崎 道朗   茂田 忠良 書籍『シギント 最強のインテリジェンス』より まとめ 日本が「反撃能力」の保有を決定したが、具体的にどの武器をどう使うかが曖昧 トマホーク巡航ミサイル購入、国産ミサイル射程延伸...