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2020年5月20日水曜日

コロナの裏で進められる中国の香港支配―【私の論評】米国や台湾のように日本と香港の関係を強化すべき(゚д゚)!


 国際社会は目下、新型コロナウイルス(COVID-19)への対応で精一杯であるが、この機会に乗じたような形で、中国政府は香港への締め付け強化に乗り出した。香港警察は、4月18日、民主派主要メンバー15人を一斉摘発した。この中には、現職の立法会議員である梁耀忠氏や「民主の父」と呼ばれる李柱銘(マーティン・リー)元議員、民主化運動支持のメディア、蘋果日報(アップル・デーリー)の創設者である黎智英(ジミー・ライ)氏も含まれる。


 また、香港政府は、4月19日、「香港基本法」(ミニ憲法と呼ばれるもの)の解釈を変更し、中国による香港への事実上の介入を合法化した。

 4月18日付の台湾の英字紙タイペイ・タイムズ紙は、社説で、中国政府がCOVID-19 に関するプロパガンダを世界に拡散させている陰で、香港の司法の独立を破壊する企てを進めていることを警告している。このような香港での動きの背後にある中国の介入意図に対して、警戒を怠るべきではないと呼び掛けている。もっともな内容である。

 香港では、昨年6月に、民主派諸勢力による反政府デモが本格化して以降、今回の摘発は最大の規模に当たる。民主派諸勢力は新型コロナウイルスへの対策もあり、デモの際には、5人以上が1か所に集まることがないように、香港政府や中国共産党に対するデモを自粛してきた。その間隙に乗じるような形で、今回の民主派主要メンバー15人の摘発行為が行われた。

 さらに、中国及び香港政府側は、この摘発行為の直後に唐突な形で、「香港基本法」の解釈を変更した。「香港基本法」第22条には、「中国政府所属の各部門は香港特別行政区が管理する事務に干渉できない」と規定されている。ところが4月17日、突如として、中央政府駐香港連絡弁公室等は、従来の解釈を変更し、「自分たちは中国政府所属の各部門ではない」と主張しはじめた。

 そして、4月19日には、香港政府もこの主張を追認し、事実上、中国政府が合法的に香港の問題に介入することができる道が開かれた。そして、香港政府の林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官は、香港の民主化運動を「国家安全保障への脅威」と位置付けた。

香港政府の林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官

 中国共産党は、昨年11月の香港区議会議員選挙における民主派勢力の圧倒的勝利に危機意識を募らせていたが、本年9月に予定されている立法院(議会)選挙を控え、香港基本法の解釈を変えてでも、民主化運動を阻止することを決めたのであろう。

 このようにして、事実上、香港における「一国二制度」の法的運用は挫折し、中国共産党の言う「法の支配」は空念仏に終わることとなった。

 昨年までの香港の大規模デモなどの動きを考えれば、香港での民主化運動がこれで直ちに終止符を打つとは考え難い。香港民主派諸勢力は、本年7月には大規模デモを行うことを準備しているとも伝えられるが、中国・香港をめぐる緊張関係は今後一層強まるものと見るべきだろう。

 4月18日の香港の民主派逮捕等に関しては、ポンペオ国務長官が声明を出し、中国共産党政府は、香港返還後も高度な自治を保障し、法の支配と透明性を確保するとの中英共同宣言のコミットメントに反する行為であると非難した。マッコネル上院院内総務も、中国共産党が新型コロナウィルスを利用して平和裡に抗議する民主派を逮捕することは許されない、我々は香港と共にある(We stand with Hong Kong)とツイートした。

 香港問題は、今後も、香港内の対立を生むばかりでなく、米中対立の1つの火種にもなるだろう。

【私の論評】米国や台湾のように日本と香港の関係を強化すべき(゚д゚)!

台湾のコロナ対策については、このブログでも何度か掲載しました。昨年夏に中国政府が発表した台湾への個人旅行禁止令。台湾の香港デモ支持や蔡英文(ツァイ・インウェン)総統の訪米などに対する仕返しと考えられ、台湾経済に大きな打撃を与えていたが、結局はそれで台湾人の命が救われました。「人間万事塞翁馬」という言葉そのものでした。

ただし、台湾政府の反応も素早いものでした。今年1月23日に武漢が封鎖されると、台湾は2月6日に中国人の入境を全面禁止しました。台湾は中国の隠蔽体質をよく知っていて、公表されたデータを決して信じないので、迷わず決断しました。ちなみにもう1つ、どこよりも早く中国人の入国を禁止した国がある。中国の最も親しい兄弟と称する北朝鮮です。

香港の対応も素早いものでした。中国国内で武漢における感染発生がまだ隠され、警鐘を鳴らした医者が警察に処分されていた1月1日前後、一国二制度のおかげで報道の自由がある香港メディアは問題を大きく報道し、市民に注意を呼び掛けました。中国官僚のごまかしをよく知っている香港人が、2003 年のSARS(重症急性呼吸器症候群)の教訓をしっかりと心に刻み、徹底的な対策をしたことも効果的でした。

そうして、その背後には日本人の活躍もあります。それは、香港大学公共衛生学院の福田敬二院長です。福田氏は、東京生まれです。幼少期の頃に医師だった父の仕事の関係でアメリカで育ちました。

香港大学公共衛生学院の福田敬二院長
バーモント大学で医師の資格を取得し、カリフォルニア大学バークレー校で公衆衛生の修士号を取得。その後、アメリカ疾病予防管理センター(CDC)で疫学の専門家としてインフルエンザ局疫学部長を務めたほか、世界保健機関(WHO)の事務局長補などの要職を歴任し、2016年12月から現職です。

1997年に鳥インフルエンザA(N5N1)が広がった際、CDCのメンバーとして来港したほか、重症急性呼吸器症候群(SARS)の時にも香港を訪れてアドバイスしています。エボラ出血熱などでも手腕を発揮するなど疫学の世界的権威の1人です。

香港では、福田敬二氏の指導により、欧米のようにロックダウンをせず、外出も認めています。一方、レストランは総座席数の50%しか利用させないなどの制限付きの営業活動を認め、経済にも配慮しつつ感染爆発を防ぎました。市民一人ひとりにソーシャルディスタンスを呼び掛けるだけではなく、意図的に作り出したのです。

その香港では、大学入試で出された歴史の問題をめぐり、中国側が「日本の侵略を美化するものだ」と取り消しを要求、民主派や教師が中国の介入に反発を強めています。

批判されているのは、14日に行われた統一試験の歴史の設問。(1)1905年に清国側の要望で日本の法政大に1年の速成課程が設置されることが記された文書(2)12年に中華民国臨時政府が日本側に支援を求めた書簡-を資料として挙げた上で、「1900~45年の間に日本は弊害よりも多くの利益を中国にもたらした」とする説について、どう考えるかを問うものでした。

大学入試問題に日中の歴史が出題されたことを伝える香港の新聞

試験後、中国系香港紙や中国外務省の香港出先機関が「日本の弊害を示す資料が提示されていない」「中国国民の感情を著しく害する設問だ」などと非難。香港政府の楊潤雄教育局長は「(日本の侵略が)有害無益だったことは議論の余地がない」として、入試を担当する独立機関に対し、設問を無効とするよう求める異例の事態に発展しました。

中国国営の新華社通信も15日、「設問を取り消さなければ、中国人の憤怒は収まらない」と強く反発し、「香港の教育は学生に毒をばらまいている。根治させよ」と香港政府に要求する論評を配信した。

これに対し、教育界選出の香港立法会(議会)議員(民主派)である葉建源氏は、「設問は学生に同意を求めているのではなく、分析能力を問うものだ」として、香港・中国当局の過剰な反応を批判しています。

香港は41年から45年まで日本の支配を受けた歴史があり、香港政府や中国の見解を支持する声もあります。一方で当局の激しい批判をめぐり、「青少年の自由な思考を抑圧するものだ。文化大革命を想起させる」(高校教師)との懸念も出ています。

民主派寄りの香港紙、蘋果日報は、毛沢東が生前、日本軍が中国の大半を占領しなければ中国共産党は強大になれなかったとして、「日本軍閥に感謝しなければならない」と述べていたことを紹介、設問を問題視する当局を揶揄(やゆ)しています。

さて、香港は日本人にとって人気の渡航先の1つで、2018年に香港を訪問した日本人の数は128万7800人に上りました。距離も近く、美食も豊富で、アジアと欧米の文化の交差点ともいえる香港は独特の魅力であふれています。

日本が好きな香港人も少なくなく、英語が通じる利点もあります。中国メディアの百度家は15日、香港は日本人旅行者を歓迎するのに、中国人はさほど歓迎されていないと不満を示す記事を掲載しました。

どんなところに、日本人と中国からの旅行者に対する対応の違いを感じるのでしょうか。記事は、「滞在できる期間が全然違う」と伝えています。中国からの旅行者は、「わずか7日」しか滞在できないのに、日本人は90日も滞在できることを強調しました。

記事は、この理由について「中国から人が流入しすぎた」ことにあると分析。香港は世界でもまれにみる超過密地域で、極めて小さなエリアに700万人以上がひしめき合って暮らしています。そのため、住宅と交通に深刻なひずみが出ているが、記事はそうなってしまったのはひとえに香港の進んだ経済・生活・教育に引き寄せられて移住してきた中国からの流入者のためだとしています。

記事では指摘していないですが、中国から越境して香港で出産しようとする女性もいるため、妊婦の入境にも厳しいです。香港政府はこれ以上の流入を抑えようとしているようです。

それに引き換え、日本からの旅行客は移住が目的ではなく短期旅行者です。そのため、香港にとっては「経済を回してくれる」貴重な存在で、むしろ「長期滞在して欲しい」くらいだ、と差別的に感じる香港政府の対応には理由があると伝えています。

香港は訪日旅行者の多い地域でもあります。2018年には人口が700万の香港から220万人もの香港人が日本を訪問しており、その多くがリピート客だったと言われています。今は日本も香港も、双方が旅行客を受け入れられない状態が続いていますが、早く以前のように旅行者が行き来できるようになってほしいものです。


日本人が、香港のコロナ禍の封じ込めに寄与したこと、コロナ以前には、互いの交流が盛んだったことを考えると、日本と香港は良好な関係にあると言って良いでしょう。

ただ、残念なのは、米国のように香港を支援する動きが日本ではあまりないことです。米国では法的措置をとってまで、香港を支持する姿勢を明確にしています。

世界が香港情勢を注視するなかにあって、香港人の苦悩にとりわけ心を寄せ、支援を行ってきたのが、台湾の人びとです。蔡英文総統は国際社会に対して香港の自由と法治のための行動を呼びかけました。

桃園市のような地方レベルでも香港からの移民支援に関する議論が始まっています。大学でも、香港からの学生の短期受け入れが積極的に行われています。

市民レベルでの支援も活発です。昨年6月以来、台湾各地では、香港に連帯する集会やデモが頻繁に行われていました。大学の構内には、学生たちが香港への連帯の言葉を綴った紙をびっしり貼り付けた「レノンウォール」が出現し、教会は、カンパを集めて防毒マスクやヘルメットをデモ隊に送り届ける地下チャネルの窓口となりました。

最近では、逮捕のリスクにさらされる香港の若者たちを台湾へ逃亡させる地下ネットワークが立ち上がり、牧師、漁民、富裕な資金援助者といった支援者たちが協力して、200人以上の香港の若者を台湾に逃したことが報じられています。

昨年の、香港の抗議活動の特徴は、破壊行動も辞さない過激派と、平和な集会やデモを行う穏健派のあいだの連帯が一貫して保たれていることにありました。両者の団結が、デモ発生前の香港社会の状況と抗議活動の展開のなかから創り出された「連帯の倫理(ethic of solidarity)」――仲間割れを避け、団結を維持しようとする精神――に支えられているこようです。

台湾の香港に対する精神的支援も、この「連帯の倫理」に貫かれています。台湾の学生や知識人たちの多くは、香港の穏健派がそうであるように、過激派の破壊活動を非難するのではなく、彼らをそのような行動に追い詰める香港の政府・警察の対応、そして中国政府の姿勢を強く問題視しています。

台湾の人びとは、2019年の香港人の苦難に、自らの歴史を重ねて深い同情を寄せています。台湾は、1947年の「二二八事件」とそれに続く白色テロの時代に、多くの有為の若者を失いました。これによって国民党政権と台湾の本省人社会の間に生まれた不信感と社会の亀裂は、何十年にもわたって続き、今なお完全に癒えてはいません。

香港の一部の若者たちの破壊行動に対して、年配者を含む台湾の人びとが「連帯の倫理」を発揮するのは、若者たちが払いつつある犠牲の大きさと社会の傷の深さを、台湾の人びとが我がこととして深く理解しているからであるように思われます。

日本でも、市民ベースで、「連帯の倫理」で台湾・香港の人々との絆を深めるとともに、日本政府としても、香港支援の具体的な動きをしてほしいものです。

コロナ禍に乗じて世界への覇権を強め、あわよくば、世界秩序を中国にとって都合の良いものに作り変えようとする、中国の野心はあからさまになりました。

これに対して、米国をはじめとして、世界中の国々が中国に対抗しようとしている現状で日本だけがこの動きに乗り遅れているようです。

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2020年5月18日月曜日

WHOが台湾をどこまでも排除し続ける根本理由 ―【私の論評】結果として、台湾に塩を贈り続ける中国(゚д゚)!

WHOが台湾をどこまでも排除し続ける根本理由
「コロナ対策の優等生」参加を阻む中台関係

劉 彦甫 : 東洋経済 記者 

台湾の蔡英文総統(左)とWHOのテドロス・アダノム事務局長

 「武漢肺炎」――。台湾では新型コロナウイルスをこう呼び続けている。

 世界保健機関(WHO)は差別につながる恐れから、地名や国名を病名に付けることを避けるよう指針を出している。世界各国の報道機関はWHOが定めた正式名称の「COVID-19」や「コロナウイルス」を呼称として用い、差別的言動を助長しないように配慮する方針も示している。

 ただ、台湾がWHOの方針に従っていないことを責められない面もある。台湾はWHOに加盟していない。WHO自身が台湾を排除しているからだ。

WHO総会に参加できない台湾

 5月18日からWHO年次総会の開催が予定されている。新型コロナウイルスが流行している影響で今年の総会はテレビ電話形式で開かれる。新型コロナ対策も重要な議題にのぼるが、開催が迫る5月16日現在でも台湾が総会へオブザーバー参加できる見通しは立っていない。

 台湾は早期に新型コロナウイルスの感染を封じ込めたことで知られる。5月16日時点で累計感染者数は440人、死者数も7人にとどまる。帰国者などを除く国内の感染例は1カ月以上確認されておらず、世界各国から注目が集まる。防疫において国際的な協力が必要とされるなか、台湾を排除することで「地理的な空白が生まれるのはいいことではない」と日本の茂木敏充外相は指摘したうえで、「国際社会やWHOが学ぶべきことは非常に大きい」と訴える。

 アメリカのポンペオ国務長官やニュージーランドの複数の閣僚も台湾の総会への参加を支持。15日にはドイツ外務省が「(総会)参加に国としての地位は必要ない」として、WHOに台湾を招待するよう求める書簡を他の賛同国と送ったと明らかにした。

 しかし、WHOは台湾の参加問題に消極的だ。5月11日の記者会見でWHOのテドロス・アダノム事務局長は台湾の総会参加について「判断する権限はない」と回答を避け、法務責任者のスティーブン・ソロモン氏が「総会に参加する国は参加国のみが決定できる」と述べた。

 台湾は対中関係が良好だった2009~16年にWHOの総会にオブザーバーとして参加していたが、中国が台湾独立派とみなす蔡英文(ツァイ・インウェン)総統が就任してからは参加が認められていない。WHOは新型コロナ発生後も今年1月に行われた緊急委員会に台湾を招待しなかったほか、4月にはテドロス氏が人種差別的な攻撃を台湾から受けていると名指しで批判するなどぎくしゃくした関係が続く。

台湾の参加を阻む最大の障壁は中国

 台湾の総会参加を阻んでいるのが、中国との関係だ。台湾の大手紙「自由時報」によれば台湾の呉釗燮外交部長(外相)は、5月11日に立法院(国会相当)で中国政府とWHO事務局との間に「秘密のメモ」が存在しており、それが台湾の参加可否に影響していると言及した。

 台湾外交部によれば備忘録には台湾がWHOの活動に参加する場合は5週間前に申請する必要があり、中国の同意も必要と定められているという。中国外務省はメモの存在自体は認めているが、その内容については説明していない。アメリカが「WHOは中国寄りだ」として、資金拠出を停止する意向を示したのに対し、中国が追加で資金拠出をするなどWHOへの中国の影響力は高まっているとみられる。

 5月15日には中国外務省が、「規則の中に主権国家の1地区(台湾のこと)がオブザーバーとして参加する根拠はない」として、台湾の総会への参加に反対すると改めて強調した。

 中国政府が台湾のWHO参加を認めないのは台湾が自国の一部とする「一つの中国」原則を堅持しており、台湾については中国が代表して責任を持つとの立場にあるからだ。だが、直近は新型コロナ対策で脚光を浴び、国際的な存在感を高める台湾との確執が深まってきている。

 台湾は新型コロナウイルス発生直後から検疫体制の強化や感染症対策の緊急指令センターを設置して対策をとったほか、マスクの生産増強や流通管理も徹底した。先手の対応で蔡英文政権は高い評価を獲得し、2年前には2割台に落ち込んでいだ政権支持率が6割以上に回復。対外的にも各国の保健当局に助言しているほか、日米欧にマスクの寄付や輸出を行っており、日本を含む台湾と外交関係がない国から感謝の意が表明された。

 中国は蔡英文政権の一連の動きを「以疫謀独」(防疫対策を利用して、独立を謀っている)と批判する。また民主社会の台湾が積極的な情報公開を行って感染症対策に成功していることも、ロックダウンなどで感染封じ込めを行った中国とは対照的だ。対外的に自国の制度の優越性をアピールするうえで、中国にとって台湾の存在が矛盾を抱える。
波乱含みの中台関係

 5月20日には1月に行われた総統選で再選した蔡英文総統が2期目の任期をスタートさせる。中国はWHOからの台湾排除だけでなく、4月以降は台湾周辺で海上軍事演習や偵察機を台湾の防空識別圏内に侵入させるなど威嚇を続ける。5月14日にはアメリカ太平洋艦隊のミサイル駆逐艦が台湾海峡を通過。米中台の緊張が高まるなか、蔡政権の2期目は中台関係が改善する見込みが少ない状態で始まることになる。
中国軍が東沙諸島の奪取演習計画 南シナ海で、台湾実効支配の要衝

 そもそも蔡英文総統再選の背景にも中台関係がある。2019年初に中国の習近平国家主席が台湾について一国二制度による統一を強調する演説を行ったほか、一国二制度のもとにある香港で2019年半ばから顕著になった抗議デモに対して、香港や中国当局が弾圧を加えた。中国による高圧的な態度は台湾社会での対中警戒心を高めた。

 新型コロナウイルスへの対策に台湾がいち早く動けた背景には高まっていた対中警戒感や情報を隠匿する中国への不信もあった。新型コロナウイルスを「武漢肺炎」と呼び続けているように、圧力を強める中国に対して台湾の対中観はますます悪化するとみられる。逆に中国も台湾に対して強硬的な態度を続けるだろう。台湾をめぐる国際的な緊張が高まり続けるのか、WHO総会後も見通しは明るくない。

【私の論評】結果として、台湾に塩を贈り続ける中国(゚д゚)!

中国は、台湾を叩きつつ逆に結果として敵に塩を送るようなことを繰り返してきました。その最たるものは、中国から台湾への個人旅行を禁止したことでした。それについては、このブログにも掲載したことがあります。その記事の、リンクを以下に掲載します。
大陸客の個人旅行禁止から2週間強、それでもあわてぬ台湾―【私の論評】反日の韓国より、台湾に行く日本人が増えている(゚д゚)!
台湾の有名ビーチ「墾丁・白沙灣 (White Sand Bay)」
 
この記事は、2019年8月25日のものです。詳細は、この記事をご覧いただくものといて、以下に一部を引用します。
中国政府が8月1日に中国大陸から台湾への個人旅行を停止してから半月あまりが経過した。台湾メディアによれば、足元では、中国個人客が1日単位で貸し切ることの多い観光タクシーの利用に落ち込みが目立っているとのことだが、ホテルや飲食店などへの影響はなお未知数のようだ。 
今回の中国政府の動きには2020年1月に実施予定の台湾総統選が背景にあると考えられている。「一つの中国」原則を認めない蔡英文政権に圧力をかけることで、彼女の再選を阻止しようとする狙いがあると言われている。また7月に蔡総統がカリブ海諸国への外遊の途中、米ニューヨークに長期滞在したり、米国から武器を購入したりと、米トランプ政権と親密な関係をアピールする動きも、中国の強硬姿勢につながった。 
加えて、多くの台湾メディアが、香港の民主派市民のデモとの関係を報じている。中国大陸から台湾に渡航すると、本土では流れていない香港デモの情報に接する機会が多くなる。情報統制の観点から自由な渡航を制限しようとする意図があるとの見方だ。
昨年の8月時点で、中国は中国人の台湾への個人渡航を禁止していたわけですが、今年の1月24からの春節の時期にも、中国人は台湾を訪れていないでしょう。

もし、中国が中国人の台湾訪問を禁じていなかったとすれば、武漢などからも大勢が台湾を訪ね、台湾でも中国ウイルス禍はもつと深刻になっていた可能性があります。

台湾で中国ウイルスによる被害が少なかったのは、中国からの個人旅行客がいなかったことも大きく寄与していると思います。無論、これに加えて、台湾政府の中国ウイルス対策が優れていたからこそ、5月16日時点で累計感染者数は440人、死者数も7人にとどまっているものと考えられます。

これは、中国側からいえば、台湾に対して塩を送ったような結果になってしまいました。なぜかといえば、今回の中国ウイルス禍で、台湾がウイルスの封じ込めに成功したことは、台湾国内のみではなく、世界に対して大きな貢献になったからです。

もし、台湾が封じ込めに失敗し、中国に助けられるような事態になっていれば、そうして日本も大失敗していれば、何しろ、現状では米国が深刻な感染に悩まされている状況ですから、中国はアジアで大攻勢にでて、中国ウイルス後の新たな世界秩序は大きく中国側に有利なものに傾く可能性がありました。

中国としては、台湾が中国ウイルス封じ込めに失敗していれば、中国がイタリアなどのEU諸国に対して実施している、マスクや医療機器の提供や、医療チームの派遣などで微笑外交を台湾に対しても実行したことでしょう。

これにより、中国は今年1月の台湾総統選での蔡英文氏の再選により、失った台湾での失地回復を行うことができたかもしれません。

そうして、中国ウイルスが終息した後には、甚大な被害を受けた台湾に対して、莫大な経済的援助をすることになったと思います。

そうなると、台湾独立派が台頭した台湾を馬英九政権時代のように、親中派を増やすことができたかもしれません。

考えてみると、中国は昨年11月には、香港区議会議員選挙で親中派が敗北しています。今年1月には、台湾選挙で蔡英文総統が再選されています。いわば連敗続きでした。

中国ウイルスに関しては、韓国は当初は対策に失敗しましたが、最近では収束に向かっています。日本も、感染者が増えつつはありますが、それでも死者は相対的に少なく、米国、EU諸国に比較すれば、中国ウイルス封じ込めには成功しています。

香港の対応も素早いものでこれも封じ込めに成功しています。中国国内で武漢における感染発生がまだ隠され、警鐘を鳴らした医者が警察に処分されていた1月1日前後、一国二制度のおかげで報道の自由がある香港メディアは問題を大きく報道し、市民に注意を呼び掛けました。

もし、台湾、韓国、香港そうして日本が、中国ウイルス封じ込めに失敗していたとしたら、中国は東アジアでマスク外交や、その後の経済支援などで、東アジアで経済的にも軍事的にも、大攻勢に出て、中国ウイルス後のアジアの中国にとって都合の良い新たな秩序を打ち立てることができたかもしれません。

これは、完璧に頓挫しました。今後、上の記事にもあるように、圧力を強める中国に対して台湾の対中観はますます悪化するとみられます。逆に中国も台湾に対して強硬的な態度を続けるでしょう。

しかし、中国の台湾政策は、また今回の中国ウイルスのように、結果として台湾に塩を送ることになるかもしれません。


台湾をWHOに参加させないということで、逆に日米英印欧豪と台湾の絆は深まることになるでしょう。それでもさらに中国がゴリ押しを続けると、日米英欧印豪、台湾等を中心とした国々は、WHOに変わる新たな組織をつくることになるかもしれません。そのような動きはすでにあります。

WHOと中国の結びつきが強い現状では、多くの国が、再度中国ウイルス惨禍に見舞われる可能性は否定できません。そのため、新WHOは実際にあり得るシナリオだと思います。

中国が台湾に対して武力で圧力をかけ続ければ、日米英印欧豪などの国々は、台湾海峡等の台湾の周辺に艦艇を派遣することになるかもしれません。そうなると、中国はうかつに台湾に手をだすことはできなくなります。

このように、中国の台湾政策は結果として、台湾に塩を贈り続けることになるかもしれません。

【関連記事】

2020年4月16日木曜日

米軍コロナ禍、その隙に台湾を恫喝する中国の卑劣さ―【私の論評】東アジアで失敗続きの中国は、今後軍事的挑発をエスカレートし、台湾武力奪取の可能性大(゚д゚)!

米軍コロナ禍、その隙に台湾を恫喝する中国の卑劣さ
日本にも迫る中国海洋戦力による危機

台湾海峡を通過中の米海軍イージス駆逐艦「バリー」(写真:米海軍)

(北村 淳:軍事社会学者)

前回の本コラム(「米空母『コロナ感染』でチャンス到来の中国海軍」https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/60070)で取り上げたように、南シナ海で対中牽制作戦を実施していた米海軍空母「セオドア・ルーズベルト」は艦内で新型コロナウイルス感染が発生したため急遽グアム島の米海軍基地に撤収した。

 作戦中断ならびに乗組員上陸措置を巡ってセオドア・ルーズベルト艦長のブレット・クロージャー大佐とトーマス・モドリー海軍長官代理をはじめとする海軍指導部が衝突し、クロージャー大佐は艦長を解任されてしまった。しかし、モドリー海軍長官代理に対する批判が湧き起こり、モドリー氏は辞職に追い込まれた。

 現時点(4月13日)で、およそ5000名のセオドア・ルーズベルト乗組員のうち感染が確認されたのはクロージャー大佐を含めて600名(全乗組員に対するPCR検査は現在も継続中)に上る。70機の航空機を積載した空母セオドア・ルーズベルトは完全に戦列を離脱してしまった。

 新型コロナウイルス感染のために緊急出動が不可能となってしまっている米海軍空母はセオドア・ルーズベルトだけではない。横須賀を母港としている「ロナルド・レーガン」、シアトル郊外のブラマートンで出動調整中であった「カール・ビンソン」と「ニミッツ」の3隻の乗組員にも感染者が発生している。

 このように大平洋艦隊の空母が4隻も新型コロナウイルス感染に見舞われたため、当面の間は東アジア海域に米海軍空母打撃群が緊急出動することは不可能な状況となっている。そのため米海軍などでは、「中国軍が米海軍空母戦力の不在につけ込んで、台湾を武力恫喝したり軍事攻撃するようような事態が起こらなければ良いのだが」と真剣に危惧している。

台湾東岸沖に中国の空母艦隊が接近

 米海軍がそうした危機感を抱くことはけっして杞憂ではない。実際に中国軍は台湾周辺で活動を活発化させている。

 4月10日午前、中国本土からH-6爆撃機、KJ-500早期警戒管制機、それに4機のJ-11戦闘機という計6機の中国空軍機編隊が、バシー海峡上空を台湾南端沖から台湾東岸沖へ抜けて、西太平洋上空での遠距離機動訓練を実施した。台湾空軍機が緊急発進し、監視活動を行ったところ、往路と同じくバシー海峡上空を経て中国大陸へ戻っていった。

中国福建省と台湾の間が台湾海峡。台湾とフィリピン(正確にはマヴディス島)の間がバシー海峡

 中国空軍機が中国へ取って返したのと入れ替わりに、アメリカ空軍EP-3E電子偵察機が台湾南端の南シナ海沖上空で情報収集活動を実施した。また、その日の夕方、アメリカ海軍第7艦隊に所属し、横須賀を母港としている米海軍イージス駆逐艦「バリー」が、中国軍による台湾周辺上空や海域における威嚇的行動を牽制するために、台湾海峡に北側から進入し南下を開始した。すると中国海軍はミサイルフリゲート「南通」を派遣して、バリーの追尾を開始した。

 バリー(および南通)が台湾海峡を南下中の4月10日夜7時頃、長崎南西沖東シナ海を南下する中国海軍の空母艦隊を海上自衛隊駆逐艦「あきづき」とP-1哨戒機が確認した。空母艦隊は空母「遼寧」、052D型ミサイル駆逐艦2隻、054A型ミサイルフリゲート2隻、そして901型高速戦闘支援艦「呼倫湖」の6隻で編成されていた。

中国海軍「遼寧」(写真:統合幕僚監部)

 4月11日、東シナ海を南下してきたその空母艦隊は沖縄本島と宮古島の間のいわゆる宮古海峡を西太平洋に抜けた。南下してきた中国艦隊は南西方向へ転進し、バシー海峡方面へと向かった。

 台湾東岸沖に中国空母艦隊が接近してきたため、台湾海軍では厳戒態勢が発令され、軍艦が出撃準備を開始した。それとともに台湾軍当局は台湾市民に向けて、「わが軍は台湾周辺の空域と海域に対する警戒態勢を固めている。台湾市民は安心してください」とのメッセージを発した。

 台湾東岸沖をゆっくりと南下した中国空母艦隊はバシー海峡を抜けて南シナ海へと抜ける模様である(4月13日時点で公式確認は取れていない)。

東アジア「唯一」の空母で台湾を恫喝

 東シナ海を南下し南西諸島島嶼線を抜けて台湾東岸を回り込んでバシー海峡を南シナ海へと向かった中国海軍空母「遼寧」は、現時点において東アジア海域で作戦行動を実施中の「唯一」の航空母艦である。

 上記のように東アジア海域に展開している米海軍空母セオドア・ルーズベルトとロナルド・レーガンはともに新型コロナウイルス感染のために緊急出動ができず、このほかの米大平洋艦隊空母も台湾・日本周辺海域に急行できる状態ではない。

 佐世保を母港としている米海軍強襲揚陸艦「アメリカ」は、軽空母としての運用は可能であるが、現在までのところ運用可能な艦載機F-35Bは最大で13機といわれている。したがって、練習空母の域を出ていないとみなせる「遼寧」に対してすら“空母”といえる状態ではない。

 もちろん中国海軍が空母艦隊を台湾東海岸沖に展開させて台湾を軍事攻撃するような愚劣な作戦を実施することはほとんどあり得ないが、現時点において東アジアで「唯一」の航空母艦を台湾周辺海域で航行させるということは、明らかに台湾に対する恫喝ということになる。

 実戦における航空母艦の威力に関しては、アメリカ海軍内においても疑義が生じてきている。だが、航空母艦という強力で巨大な軍艦を派遣することの政治的意義は、依然として強いのである。

 実際、中国軍当局者たちは、「中国軍航空機や艦艇による台湾周辺での各種機動訓練は、台湾分離独立分子に対する斬首作戦ならびに台湾独立分子を援助しようとする外国勢力の介入を阻止するための抑止効果を期待してのものである」と繰り返し述べている。

 そして「このような各種訓練を繰り返すことにより、台湾独立分子は自らの企てが無謀であることと、もはや外国勢力による効果的な支援は期待できないことを悟るであろう。そして、そのように独立分子が目を覚ますまで、この種の訓練は繰り返されるし、さらに強化されることになる」と警告している。

危機感を共有しなければならない日本

 確かに中国側が宣伝しているように、少なくとも現時点においては、アメリカ海軍による強力な台湾支援は極めて厳しい状況にある。また、かつてはアメリカ軍や台湾軍が僅かながらも期待していた日本による何らかの支援も、新型コロナウイルスに対する日本政府の危機感のなさや無為無策から判断すると、そもそも期待することが誤っていたと考えざるをえない状況に陥っている。

 とはいっても、台湾に対する軍事的危機は日本にとっても全く同様の危機である。日本にはCOVID-19だけでなく中国海洋戦力による危機も差し迫っていることを、日本政府・国会は直視しなければならない。

【私の論評】東アジアで失敗続きの中国は、今後軍事的挑発をエスカレートし、台湾武力奪取の可能性大(゚д゚)!

米軍もコロナ感染で深刻なダメージを受けています。しかし、中国の人民解放軍もダメージを受けているはずです。

中国ウイルスは相手を選びません。中国人民解放軍内にも感染が広がっている気配があります。護衛艦や国産空母を備え、世界に海洋覇権を打ち立てようという解放軍も、ウイルス相手では勝手が違うのかもしれないです。

湖北省孝感市の解放軍空軍降兵軍保障部の軍官に新型肺炎感染が確認されたのは1月25日、すぐさま同じ部隊の200人が隔離されたと1月27日に香港蘋果日報が報じています。孝感市は武漢から70キロ離れた小都市です。

湖北省は解放軍唯一の空軍降兵軍(空降兵15軍)が配置され、武漢全体で5000人以上の兵士を有する。感染の恐れのある兵士たちは軍用機倉庫に隔離されたといいますが、そこは暖房設備もなく外と気温がそう変わらず、劣悪な環境であると、香港に拠点のある中国人権民主化運動情報センターが指摘していました。

その後、軍内の感染状況についてはほとんど情報がありませんでしたが、解放軍報が2月17日に、東部戦区の多くの軍官兵士が隔離監察を受けており、その中には新型ミサイル護衛艦「常州」艦長・余松秋も含まれていると報じていました。

小さな記事ではありますが、解放軍内で新型コロナウイルス感染が起きていることを公式に認めた記事です。過去、エイズやSARSの感染が軍内で発生したときも、解放軍内の感染状況は国家安全にかかわる問題として公表してこなかったことを考えると、この新型コロナウイルス感染はかなり大規模なものではないか、という憶測も流れています。

「常州」は、解放軍艦艇として初めて紅海での船舶救援オペレーションを成功させ、映画「オペレーション:レッド・シー」のモデルともなった解放軍・東海艦隊のエース艦です。感染が発生してからは厳格な管理、体温測定と消毒、隔離措置などを行い、今年の訓練、任務においての影響はない、としています。また余松秋艦長は招待所で1月30日から隔離監察を受けており、隔離先で訓練の難題を研究していたとされています。

また、中国人権民主化運動情報センターによれば、国産空母「山東」からも1人の軍人の感染が確認され100人が隔離中といいます。山東は大連港でメンテナンス中であり、3月に海南島の三亜軍港に戻る予定でしたが、帰港は遅れるといいます。

ちなみにCCTV4(国際チャンネル)で放送された最近の山東の様子は乗員全員がマスクをつけ、密閉式の完璧管理で防疫対策を実施しており、「死角なし、感染者ゼロである」と報じています。

このほか、武漢にある海軍工程大学が1月初め封鎖されたという情報が一部で流れています。

中国人民解放軍とて、中国ウイルスには相当を手を焼いているようです。では、中国人民解放軍もコロナ禍で手を焼いている最中に、東アジアで「唯一」の航空母艦を台湾周辺海域で航行させてまで、台湾に対する恫喝するのでしょうか。

その理由は以前もこのブログに述べた、台湾が独力で中国ウイルス封じ込めに成功したことにあると思います。当該記事のリンクを以下に掲載します。
新型コロナが証明した「独立国家」台湾―【私の論評】台湾が独力で中国ウイルス封じ込めに成功したことは、その後の世界に大きな影響を与える(゚д゚)!
flickerより Robin Huang 台湾国旗柄のビキニの女性 写真はブログ管理人挿入
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下に一部を引用します。
今回の中国ウイルス禍で、台湾がウイルスの封じ込めに成功したことは、台湾国内のみではなく、世界に対して大きな貢献になりました。
もし、台湾が封じ込めに失敗し、中国に助けられるような事態になっていれば、そうして日本も大失敗していれば、何しろ、現状では米国が深刻な感染に悩まされている状況ですから、中国はアジアで大攻勢にでて、中国ウイルス後の新たな世界秩序は大きく中国側に有利なものに傾く可能性がありました。
中国としては、台湾が中国ウイルス封じ込めに失敗していれば、中国がイタリアなどのEU諸国に対して実施している、マスクや医療機器の提供や、医療チームの派遣などで微笑外交を台湾に対しても実行したことでしょう。

これにより、中国は今年1月の台湾総統選での蔡英文氏の再選により、失った台湾での失地回復を行うことができたかもしれません。

そうして、中国ウイルスが終息した後には、甚大な被害を受けた台湾に対して、莫大な経済的援助をすることになったと思います。

そうなると、台湾独立派が台頭した台湾を馬英九政権時代のように、親中派を増やすことができたかもしれません。

考えてみると、中国は昨年11月には、香港区議会議員選挙で親中派が敗北しています。今年1月には、台湾選挙で蔡英文総統が再選されています。いわば連敗続きでした。

中国ウイルスに関しては、韓国は当初は対策に失敗しましたが、最近では収束に向かっています。日本も、感染者が増えつつはありますが、それでも死者は相対的に少なく、中国や米国、EU諸国に比較すれば、中国ウイルス封じ込めには成功しています。

香港の対応も素早いものでこれも封じ込めに成功しています。中国国内で武漢における感染発生がまだ隠され、警鐘を鳴らした医者が警察に処分されていた1月1日前後、一国二制度のおかげで報道の自由がある香港メディアは問題を大きく報道し、市民に注意を呼び掛けました。

中国官僚のごまかしをよく知っている香港人が、2003 年のSARS(重症急性呼吸器症候群)の教訓をしっかりと心に刻み、徹底的な対策をしたことも効果的でした。

中国は、中国ウイルスで、台湾、香港、日本がかなり痛めつけられていれば、得意の微笑外交で、台湾、香港、日本に対して存在感を高めることができたかもしれません。

しかし、台湾は世界的にみても、最高水準で中国ウイルスの封じ込めに独力で成功し、独立国としての意地をみせました。

今の中国が、台湾統一のためにできることといえば、軍事的な脅威をみせつけて、存在感を強調することです。

だからこそ、本当は中国人民解放軍の中にも感染者がいるにもかかわらず、遼寧で台湾を恫喝しているのです。

おそらく、遼寧にも欠員ででいるかもしれません。欠員が出て、未熟な交代要員を乗鑑させて急場をしのいでいるかもしれません。

それにしても、今後中国ウイルスが終息するにつれて、中国による台湾への恫喝はさらに度合いを強めていくかもしれません。

香港も中国ウイルスで中国に頼ることなく、収束をみせています。

そうなると、中国に残されている道は、もう軍事的な示威行動による恫喝でしか、存在感を発揮できなくなります。

米軍が中国ウイルスから早期に立ち直れば、今後も中国は軍事的な恐喝どまりで終わらせるかもしれませんが、そうでなければ、台湾を武力で統一してしまおうと考えるかもしれません。

本年2020年は、中国の二つの100年計画の一つ「小康社会の全面的実現」目標の期限である建党100周年の2021年より一年前であり、もしこの時点で台湾統一が実現できれば、習近平政権にとっては長期独裁を全党および人民に納得させるだけの効果を持つ歴史的偉業となるからです。

ウイルスの封じ込めと、台湾統一に成功すれば、これは、習近平が成し遂げた大偉業ということになります。今まで、際立った業績のが一切なかった習近平にとって大きな手柄となり、習近平体制が定着することになります。

この脅威は日本にとっても他人事ではありません。台湾の次は、尖閣、尖閣の次は、沖縄、その次は日本ということになるかもしれません。

こうした脅威があることを前提に、日本は現行の憲法、法律内でこれに対処できることは実行し、さらに将来に備えて、憲法改正も急ぐべきです。特に、緊急事態条項は、中国ウイルスなどへの脅威への対処や、今後予想される中国による軍事的脅威に備えるためにも、必要不可欠であると考えます。

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新型コロナが証明した「独立国家」台湾―【私の論評】台湾が独力で中国ウイルス封じ込めに成功したことは、その後の世界に大きな影響を与える(゚д゚)!


2020年4月14日火曜日

新型コロナが証明した「独立国家」台湾―【私の論評】台湾が独力で中国ウイルス封じ込めに成功したことは、その後の世界に大きな影響を与える(゚д゚)!



flickerより Robin Huang 台湾国旗柄のビキニの女性 写真はブログ管理人挿入 以下同じ 

 今回の新型コロナウイルス禍をめぐる世界の反応を見れば、台湾が中国の一部でないことを世界の人々に認識せしめた意味は極めて大きい。

 台湾においては、2003年のSARS禍の際、84人の死者を出したことが教訓として残されていることもあり、今回の新型コロナウィルス禍の対策においては、初期対応、検査、隔離、治療などの諸措置が透明性を以て極めて効率的に行われた。これによって、諸外国に比べ、感染者数、死者数とも、今のところ、抑えられた状況にある。台湾は、中国、欧州、米国などに比べて、この災禍を見事なまでに制御していると言える。

 これまでのこの台湾の制御策は世界的にも評価されており、この状況から見れば、台湾と中国の違いは一目瞭然である。

 最近、中国外交部の報道官は、自らのツイッターに、この新型コロナウィルス禍の発生源として、米国軍人がウイルスを武漢に持ち込んだ可能性がある、と投稿した。これに対し、米国は、新型コロナウィルス禍の発生源が中国であることは疑いのない事実であり、初期段階における中国の隠ぺい工作の結果、世界各国が犠牲を払わざるをえなくなった、としてこの投稿内容を非難した。トランプ大統領は、これを新型コロナウイルスではなく、「CHINESE VIRUS」(中国ウィルス)と呼んだ。ポンペオ国務長官は「武漢ウイルス」と呼んだ。

 ごく最近、米国下院においても、この中国報道官のツイッター内容を「偽情報」であると非難して、超党派の決議案がまとめられた。

 中国共産党の習近平政権としては、自分たちの過ちを米国に転嫁する必要から、このようなやり方をとったのであろうが、これは米国の識者を憤慨させるものとなっている。中国としては、新型コロナウィルスを拡散したことの責任を曖昧にし、中国自身が被害者であるかのような印象を与えようと躍起になっているように見える。

 台湾の住民たちにとっては、中国における新型コロナウィルス禍の感染拡大、その後の様々な処置を見ていて、中国の一党独裁体制がいかに新型コロナウィルス対策において限界を有するかを改めて認識させられたに違いない。

 日本はこれまで台湾をWHO(世界保健機関)のメンバーに入れるよう支持してきた。しかし、今回のWHOの動きを見れば、中国の実質的な影響下にあるためであろうが、台湾の存在を無視するような態度を取り続けている。そのため、台湾が新型コロナウィルス禍を如何に抑え込んでいるかについての知識、経験が世界に直ちに共有される状況になっていないのは残念なことと言わねばならない。

 では、台湾がいかに、この新型コロナウィルスの危機に対応してきたかを、改めて、ここで共有しておきたい。日本にとっても参考になるはずである。

 台湾は、早い段階で、国境を閉め、中国との行き来を制限した。学校を2週間閉め、その間に消毒を徹底した。学校の再開時には、徹底した検温検査等を行なった。学校の入り口に、テントの待機所を設け、微熱等で感染可能性のある人はそこで控えるようにしてもらった。台湾の保険証のチップには、渡航歴が分かるようになっていて、診察した段階で、中国や日本に行っていた人かが一目でわかる仕組みが出来ていた。病院はもちろん、レストラン、ホテル等の入り口でも、入館者にはアルコール消毒液を噴射して対処した。そうしない人は、中に入れない。マスクは、早い段階で輸出を禁止し、国内で購入する人は、数を制限し、保険証等のチップで管理する。こうする事で、価格の急騰や品不足、買いだめを防止できた。

 これらの国内的対処のみではない。台湾は、小さい国ながら、世界第3の経済大国である日本に、救いの手を差し伸べてくれた。新型コロナウィルスによって国境が封鎖された南米ペルーで足止めされた日本人観光客29人を、台湾政府のチャーター便に乗せてくれた。104人の日本人観光客は旅行会社が手配したチャーター機で出国した。台湾政府は、自ら、遠いペルーまでチャーター機を手配して自国民の出国を助けたが、その恩恵に、日本も預からせてもらった格好だ。

 3月下旬、トランプ大統領は、超党派の支持で成立した「台湾同盟国際保護強化イニシアチブ法(TAIPEI法)」に署名した。この法律は、台湾の外交関係強化についての施策を、国務省が議会に報告することを義務付けるとともに、台湾の安全保障に脅威となる国との係わりを再検討することを政府に義務付けている。

 日本も、米国の同盟国として、そして台湾への感謝も含め、今後、台湾との関係をより一層強化すべきであろう。将来的には、日米両国がリードして、国際社会の世論を喚起し、台湾の国際的地位の向上を推進できれば良い。今回の新型コロナウィルスの危機は、台湾が実体として独立した国家であることを証明したのだから。

岡崎研究所

【私の論評】台湾が独力で中国ウイルス封じ込めに成功したことは、その後の世界に大きな影響を与える(゚д゚)!

本年1月11日の台湾総統選で史上最多得票で再選された台湾の蔡英文総統は英BBC放送のインタビューに応じ、台湾の地位について「独立国家だと宣言する必要性はない。既に独立国家であり、われわれは自らを中華民国、台湾と呼んでいる」と述べました。インタビューは英国時間の14日に公表されました。

台湾蔡英文総統

これに対し、中国外務省の耿爽副報道局長は15日の記者会見で、「中華人民共和国が中国を代表する唯一の合法政府であり、台湾は中国の分割できない一部分だ。『一つの中国』原則は国際社会の普遍的な共通認識だ」と不快感を表明しました。

蔡氏はBBCのインタビューで「台湾独立」に対する見方を問われ、与党・民進党の立場を改めて強調。中台統一のためなら武力行使も辞さない方針を示す中国に対し、「われわれは多大な努力をし、能力を高めてきた。台湾を侵略すれば、非常に大きな代償を払うことになるだろう」とけん制しました。

そうして、現在台湾は、中国の助けを一切借りることなく、独力で中国ウイルス対策を実施し、名実ともに独立国であることを世界に向かって、示すことができました。中国は現在国内の中国ウイルスは終息傾向にあるとして、イタリアなどに医療チームを送る等のいわゆる微笑外交をしていますが、台湾には全くその必要がありません。

新型中国ウイルスへのWHO=世界保健機関の初期対応をめぐり、台湾当局は、去年12月にWHOに送った文書を公表し、中国でヒトからヒトへの感染が疑われる事案が起きていると警告していたと強調しました。

WHOの対応を批判する米国に歩調をあわせた形です。

米国国務省は10日、WHOについて「台湾から早期に受けた通知を国際社会に示さなかった。公衆衛生より政治を優先した」などと批判しましたが、AFP通信の取材に対しWHOは「台湾からの通知にヒトからヒトへの感染について言及はなかった」と否定しました。

これについて台湾当局は11日、WHOに対して去年12月末に送った通知の全文を公表しました。

文書には「中国の武漢で非定型の肺炎が少なくとも7例出ていると報道されている。現地当局はSARSとはみられないとしているが、患者は隔離治療を受けている」などと書かれています。

台湾の陳時中衛生福利部長は会見で「隔離治療がどのような状況で必要となるかは公共衛生の専門家や医師であれば誰でもわかる。これを警告と呼ばず、何を警告と呼ぶのか」と述べ、文書はヒトからヒトへの感染が疑われる事案が起きていると警告していたと強調しました。

世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長が台湾から人種差別攻撃があったと主張している問題で、台湾人がインターネット投稿で謝罪しているように中国側が見せかけていると台湾当局が指摘している。

台湾法務部(法務省)調査局は10日の記者会見で、中国のネットユーザーが台湾人を装い、テドロス氏に対する人種差別攻撃について謝っているように見せていると説明。同局情報セキュリティー部門の張尤仁主任によれば、こうした投稿は全て同じ言葉遣いのためフェイク(偽)だと容易に分かるとしています。

投稿は全て「台湾人として、このような悪意のあるやり方でテドロス氏を攻撃したことを極めて恥ずかしく思う。台湾人を代表してテドロス氏に謝り、許しを乞う」というものですが、いずれも中国に拠点を置くアカウントから発せられたようだとしています。

テドロス氏は8日、新型中国ウイルス感染症(COVID19)の対応を巡りオンライン上で3カ月にわたり台湾からの攻撃の標的になっていると述べましたが、台湾の関与を示す証拠は何も示しませんでした。これに対し、台湾の蔡英文総統はテドロス氏の主張に「強い抗議」を表明するとともに、同氏に台湾訪問を呼び掛けました。

台湾はWHOなど国連機関への加盟を長く求めていますが、台湾を領土の一部と見なしている中国が反対し続けています。米ジョンズ・ホプキンス大学によると、台湾は新型中国ウイルスの感染拡大を他のアジア諸国・地域よりうまく封じ込めており、10日時点で確認症例数は約380件です。ちなみに、これを10万人あたりの感染者数でみると,1.59人です。驚異的な少なさです。

中国国務院台湾事務弁公室はウェブサイトに同日掲載した声明で、蔡政権は「うそを並べ憎悪をあおる」ことをやめ、ウイルスとの闘いに焦点を絞るべきだとコメントしました。

これでは、先程も述べたように、中国が台湾に対してマスクや、防護服の提供、医療チームの派遣などで台湾に微笑外交を展開しようとしても全く無理です。逆に「自分の頭の上の蝿を追え」といわれてしまいそうです。

ちなみに、日本も台湾よりは、感染者数の数は多いですが、それでも10万人あたりに換算(感染者数➗人口✖10万)すると、5.6人(4/11現在)です。台湾は、1.59人です。これは、米中や他の先進国と比較すれば、極端に少ないです。中国は人口も約14億人と多いので、10万人あたりでは、一応6人程度ですが、中国統計は全くあてにならないので、この数字は無意味です。

韓国もひところは、感染者数が拡大してしまいましたが、それでも最近は収束しつつあり、11日時点では、10万人あたりの感染者数は19.4人です。これも、他の先進国から比較するとかなり少ないほうです。

ちなみに、なぜ10万人あたりでみるかといえば、無論人口の多い少ないで、その深刻度は異なってくるからです。10万人あたりでみると、感染者が一番多い都道府県は東京ではなく、福井県です(下表参照)。


北朝鮮はどうなのかは、わかりませんが、いずれにしても、台湾、韓国、日本に関しては、中国は「消防士のふりをする放火犯」のように、中国ウィルス関連で、微笑外交を展開するわけにもいきません。

中国自身は、自国の被害の程度を熟知しているでしょうから、近隣の国々では微笑外交もままならないのです。だかこそ、被害がかなり大きかったEU等で微笑外交を展開しているのでしょう。

もし、台湾や日本がヨーロッパや、米国なみに被害が大きかったとすれば、今頃微笑外交で、台湾、日本、韓国などで、存在感を増していたかもしれません。その後には、様々な方法を駆使して、台湾、日本、韓国を取り込みに走ったかもしれません。恐ろしいことです。

今回の中国ウイルス禍で、台湾がウイルスの封じ込めに成功したことは、台湾国内のみではなく、世界に対して大きな貢献になりました。

もし、台湾が封じ込めに失敗し、中国に助けられるような事態になっていれば、そうして日本も大失敗していれば、何しろ、現状では米国が深刻な感染に悩まされている状況ですから、中国はアジアで大攻勢にでて、中国ウイルス後の新たな世界秩序は大きく中国側に有利なものに傾く可能性がありました。

しかし、台湾は、日米の支援などではなく、独力で封じ込めに成功しました。これは、その後の世界に大きな影響をもたらすことでしょう。

冒頭の記事では、「新型中国ウィルスによって国境が封鎖された南米ペルーで足止めされた日本人観光客29人を、台湾政府のチャーター便に乗せてくれた」とありますが、これは3月29日のことです。

日本もすかさず、台湾におかえしをしています。

新型ウイルスの感染拡大防止のため都市封鎖を実施しているインドから、台湾人12人が現地時間4月1日夜、日本航空(JAL)の臨時便で出国し、2日早朝に東京に到着したことを台湾の外交部が2日、明らかにしました。

  都市封鎖を実施しているインドから、台湾人12人が現地時間4月1日夜、
  日本航空(JAL)の臨時便で出国し、2日早朝に東京に到着

会見を行った欧江安報道によると、現地に滞在する台湾人から、駐インド代表処(大使館に相当)に対し帰国支援を求める問い合わせがあり、代表処が在インド日本国大使館、日本航空などと調整を行い、日本政府が手配する臨時便に同乗できるようになったとのことで、「外交部として心から感謝する」と日本や関係者に謝意を表明しています。なお、東京に到着した12人は、すでに台湾に帰国されています。

日台が、それぞれ独力で、現時点では中国ウイルスの囲い込みに成功していること、日台のこうした友情が、これからの世界を良い方向に変える原動力になるかもしれません。

後は、米国が一日もはやく中国ウイルスから立ち直り、台湾を強力にサポートし、EUに手を伸ばそうとする中国を牽制していただきたいものです。

そうして、このブログにも何度か掲載したように、米国と比較して、日本の経済対策があまりにお粗末です。今のままでは、リーマン・ショック時に、震源地の米国や、その悪影響を直に被った英国が素早く回復したにもかかわらず、日本だけが一人負けになった状況を繰り返すことになりかねません。

この状況では、中国ウイルス後の世界秩序の大きな変更の先頭に米台と同じスタート地点に立つことができないかもしれません。それは、日本だけの損失ではなく、中国を有利してしまうという大きな損失を招く恐れがあります。

そのようなことにならないように、安倍総理は、減税、追加経済対策、憲法改正などを公約にして、はやく解散総選挙を実施して、大勝利をして、維新の党とともに、中国ウイルス収束後におこる、世界秩序の大変更にリーダーシップを発揮できる体制を築くべきです。そうして、台湾なみに、はやく日本も中国ウイルスを収束させるべきです。

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2020年3月5日木曜日

<独自>事実上、中国人と韓国人の入国を制限 イランも新たに対象―【私の論評】台湾の動きに注目!日本の親中派は今のままだと中共の道連れに(゚д゚)!


新型コロナウイルスによる肺炎の感染拡大を受け、関西国際空港の検疫検査場では、
サーモグラフィーで入国者の体温を確認していた=1月23日午前(須谷友郁撮影)

政府は5日、肺炎を引き起こす新型コロナウイルスの感染を防ぐ水際対策として、中国と韓国に所在する日本大使館で発行した査証(ビザ)の効力を停止する方針を固めた。香港・マカオ・韓国はビザなし入国の特例も停止する。

 中国と韓国には、観光客の来日を自粛するよう要請する。これにより、事実上中国人と韓国人の入国を制限することになる。

 韓国に対しては、滞在歴のある外国人の入国を拒否する地域を大幅に拡大する。具体的には、慶尚北道慶山市、安東市、永川市、漆谷郡、義城郡、星州郡、軍威郡が新たに対象となる。これまでは、大邱と慶尚北道の一部が入国制限の対象だった。

 イランも新たに入国の制限対象とし、コム州、テヘラン州、ギーラーン州を対象地域にあげた。

 5日夕の国家安全保障会議(NSC)の会合で確認する。

 中国と韓国からの入国者は、検疫法に基づく「停留」措置を取り、政府指定の施設などで2週間隔離したうえで、入国許可を出す。

 また、中国と韓国からの航空便の到着空港を成田空港と関西空港に限定する。船舶は、中国と韓国からの旅客運送を停止するよう要請する。

【私の論評】台湾の動きに注目!日本の親中派は今のままだと中共の道連れに(゚д゚)!

私自身は、上記の措置を待ち望んでいました。特に中国からの入国制限は、一ヶ月前から実行すべきと思っていました。

何やら、様々な理由で、中国全域からの入国制限には意味はないとする人々もいましたが、たとえそれが正しかろうと、間違いであろうと、まずは中国からの入国は最初制限すべきだったと思います。

最初の時点で、中国からの入国者はを検疫法に基づく「停留」措置を取り、政府指定の施設などで2週間隔離したうえで、入国許可を出すようにしていれば、そもそも中国全域の入国制限に意味がないか、あるかは実際に検査できたはずです。

その時に、中国全域からの入国制限が無意味とわかれば、入国制限を解除すれば良いですし、意味があるなら継続ということで良かったと思います。

しかし、一ヶ月遅れたとはいえ、実施されたことは非常に良かったです。

本日は、この他菅義偉官房長官が午後の記者会見で、日中両政府が4月上旬で調整してきた中国の習近平国家主席の国賓としての来日について、時期を再調整すると発表しました。

菅官房長官

これに関しては、首相は2月28日、首相官邸で中国の外交担当トップである楊潔●(=簾の广を厂に、兼を虎に)(よう・けつち)共産党政治局員と面会した際、「十分な(習氏来日の)成果を挙げるために入念な準備を行わなければならない」と述べ、来日時期よりも成果を重視する考えを強調し、延期を示唆していました。事実上この時で延期は決まっていたのですが、今日正式に発表したということです。

今日まで、発表が遅れたのは、やはり党内の親中派に対して懐柔する必要があったのかもしれません。私自身は、もうとっくに延期は決まったものと断定していたので、本日の発表には驚きました。そういわれてみれば、正式の発表は今日までなかったことに気づきました。

日本における新型コロナウイルスの流行はもはや危機的状況であり、これを抑えるためには、できることは何でもしなければいけない段階にきていると見るべきであると、台湾と比較して、そういう人も多いです。しかし、これは本当に正しいのかどうかは、なんともいえないことをこのブログで以前掲載しました。その記事のリンクを以下に掲載します。
五輪延期では済まぬ。韓国式「新型肺炎」検査が日本経済を潰す―【私の論評】武漢肺炎も、数値で見て客観的に物事を判断しないとフェイクに煽られる(゚д゚)!
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下に一部を引用します。

今後、このようなデマが多く出回ることでしょう。以下はデマとまでいえるかどうかわかりませんが、日本での感染者数はかなり多いと認識されているようですが、そうともいえないデータがあります。それを以下に掲載します。

以下の表は、武漢肺炎感染者数の人口比率(2020/03/03)です。

感染に限らず統計は、客観的に見ないと理解できませんし、見方を誤ってしまいます。上の表は、感染者➗人口の比率で比較した表です。 
この表でみると、現在では韓国が世界で一番感染率が高いです。少なくとも、韓国の防疫体制が優れているとはいえないことがわかります。それと、中国の統計は単純に信じることはできないと思います。中国の経済統計はデタラメです。コロナウイルスの感染者数だけが、正しいということはできないと思います。 
この表によれば、日本は16位ということで、19位の台湾とあまり変わりません。現時点では、特に日本が台湾などの他国と比較して、格段に防疫体制が格段に劣っているとは思えません。
台湾の人口は、約2千3百万人です。日本の人口は、1億2千万人 です。日本の人口は、台湾の5倍以上です。これでは、単純比較はできないわけで、やはり感染者者数の人口比でみるのが正しいです。

そうすると、台湾と日本とでは、感染比にさほど大きな差異があるとはいえないことがわかります。しかし、若干の違いはあります。この差異が当初に中国からの入国を制限したものによるかどうかは今後の経過をみていけばわかるでしょう。

さて、日本と台湾では感染比ではさほど違いはないのですが、それでも日本は台湾に見習うべきところがあります。

とにかく、台湾の反応は素早かったです。まず中国大陸との各種往来をいったん絶ちました。また、中国の意向を汲んで台湾の出席を拒み続けてきたWHOに対して、「台湾人の健康と命の安全」という人道上の問題として訴えることで国際会議への台湾のオブザーバー参加を認めさせました。

1月早々に専門家を交えた緊急対応会議を開き、2月2日から空港などの検疫体制を強化。台湾での感染者が出ていない1月20日の段階で「国家感染症指揮センター」を立ち上げて、水際作戦の体制を整えました。

1月23日には蘇貞昌行政院長の「マスク輸出制限指示」があり、2月6日にはマスク購入実名制度を導入し、オンラインマップでマスク在庫状況を公開しました。さらには政府補填による民間企業へのマスク増産指示、医療機関への優先的配布といったと素早い対応で、各国で起きているマスクの買い占めによる不足や高額転売問題を回避しました。

台湾がこれほど果断に素早く政策を打ち出せたのは、蔡英文政権がここにきて台湾の親中派財界や大陸世論を考慮しなくてよいほど、台湾社会の反中感情が高まったせいもあります。

蔡英文台湾総統

こうした台湾の動きと対照的なのが、日本の中国政府への配慮からくる新型肺炎対応の鈍さです。

どうして日本がこういうことになったかといえば、主に以下に3つの点があると思います。
①WHOの機能不全と厚労省のリスク管理部門が杜撰
②二階幹事長を初め多数の親中媚中派がいて中国に支援すべきと動いたこと。そのため、菅官房長官と総理の関係が現在最悪の状態になっていること  
③日本企業は中国で利益を得ても持って帰れない。撤退すればBSが一気に壊れ 倒産する企業も出てくる可能性が高いという現実がある。
このような複合的な要因が重なり、日本政府は中国に配慮して、なかなか思い切った措置がとれなかったようです。

しかし、かつての台湾も中国との結びつきが強く、中国への配慮は欠かせなかったのですが、最近の台湾はそうではなくなっています。

蔡英文政権2期目のテーマは台湾の国際社会における国家承認の推進です。こうした方向性は中国側から武力恫喝と経済制裁を伴う強い圧力を受けると想像されていました。

武力に関しては、さすがの中国側もなかなか実際の行動はとらないとしても、台湾と中国の長年の経済緊密化のせいで、中国からの経済制裁はかなり台湾経済に強い打撃を与えると予想されていました。

ところが幸か不幸か、新型肺炎という突然の疫病蔓延で、台湾だけでなく世界各国で中国との人的交流、物流の制限が否応なくかけられることになったのです。

2月10日は中国が全国の工場再稼働を宣言した日ですが、台湾はこれに合わせて、中国との直行便を北京、上海など5空港をのぞき全面一時停止措置をとり、海運交通なども大幅に制限をかけました。

中国に工場をもつ台湾企業社員や、中国工場で働く台湾人労働者に足止めを食らわせた格好です。台湾企業としては早々に中国に戻って工場を再稼働させたいところでしょうが、「両岸の人民に感染を拡大させていいのか」と問われればイエスとは言えずにいます。

武漢封鎖当初、武漢市に残っていた1140人余りの台湾人の帰国問題も、2月3日に第1チャーター便で戻った247人の中に感染者が出たことから、台湾政府としては受け入れが整っていないとして、依然900人が台湾に戻れないままだ。

一方、総統選挙の動きの中で、完全に中国共産党の代理政党に落ちぶれていることが発覚した国民党は、親中路線からの脱却を図ろうとしている。中国共産党の言いなりだった呉敦義が選挙惨敗の責任をとって党主席を辞任したあと、元台北市長の郝竜斌と立法委員の江啓臣が主席の座を争うことになったが、ともに台湾ファースト、脱中国イメージを訴えています。

中国全域からの入国禁止の措置に関しては、政府の小中高校などのほぼ全面休日など国民に対して厳しい措置をしていながら、中国人は日本に自由に入り我が者顔で、町を闊歩するようなことにでもなれば、国民の反発は必至ということで、さすがに親中派もいつまでも、全域からの入国禁止を拒むことはできなかったのでしょう。

安倍総理は、元々セキュリティダイヤモンド構想で中国封じ込め政策を主張していました。これは、オーストラリア、インド、アメリカ合衆国(ハワイ)の3か国と日本を四角形に結ぶことで4つの海洋民主主義国家の間で、インド洋と太平洋における貿易ルートと法の支配を守るために設計されたものです。

中国の東シナ海、南シナ海進出を抑止することを狙いとします。日本政府としては尖閣諸島の領有問題や中東からの石油輸出において重要なシーレーンの安全確保のため、重要な外交・安全保障政策となっています。インド太平洋、Free and Open Indo- Pacific Strategyの概念の確立、アメリカの対アジア戦略に「Indo-Pacific economic vision」(インド太平洋構想)として採用されました。

その安倍首相が、二階氏など自民党内で重要なポストについている議員などのため、党内政治を円滑にするため、中国に配慮せざるを得なくなっているので、新コロナウイルス対策においても、なかなか思い切った手が打てなかったのでしょう。

しかし、安倍首相も、中国全域から入国制限に踏み切ることを決意したのです。台湾では、すでに国内世論は反中国に大きく傾いています。この世論には、さすがの国民党も逆らえなくなっているのです。

台湾にできたことは、日本にもできるはずです。日本も、今回の新コロナウィルスを奇貨として、自民党内はもとより政治家の親中派、マスコミの親中派、財界の親中派などの力を弱めていくべきです。

台湾もそうですが、わずか数年前までの米国も親中派が幅をきかせていて、その状況はどうにもらないように見えていました。トランプ氏など絶対に大統領にならないだろうと見られていました。しかし、そうではありませんでした。

米台にできて日本にできないはずがありません。現在の中国はもともと経済がかなり弱っていたことに加えて、現状はコロナ肺炎で大変なことになっています。しかも、経済もコロナ肺炎も中国共産党の自業自得である部分がほとんどです。

それに、米国からかなり厳しい対中国冷戦を挑まれています。これは、どう考えても、中国に勝ち目はありません。

米国は、民主化、政治と経済の分離、法治国家化などするつもりのない中国共産党に見切りをつけ、かつてのソ連に対してそうしたように、中国の経済がかなり弱体化するまで冷戦を継続します。

日本の親中派も、かつての米国のパンダハガー(親中派)のように中国に配慮しても無意味であることを理解すべきです。そうでないといずれ中共の道連れになるでしょう。

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2020年2月29日土曜日

台湾の新型コロナ対策が「善戦」しているワケ―【私の論評】日本の国会は、台湾の立法府を見習え(゚д゚)!


早川友久 (李登輝 元台湾総統 秘書)

新型コロナへの対応を高く評価され、支持率が急上昇している台湾の蔡英文総統。その政策を支える土台にあるものとは――?

蔡英文総統

 李登輝が台湾社会に大きく貢献したもののひとつに、全民健康保険制度がある。1995年にスタートした「全民健康保険」は、全国民はもちろん、居留証(外国人登録証に相当)を持つ外国人も加入が義務付けられる。それまでの台湾では、軍人や公務員、教師だけが社会保険制度を享受してきたが、その制度から漏れていた約4割の国民にも安心して医療を受けられる国民皆保険の環境を整備したのである。

 それと同時に、健康保険カードも導入した。このカードはのちにICチップが内蔵され、様々な情報を収められるようになった。氏名や生年月日などの個人情報のほか、いつ、どこの病院で診療を受けたのか、処方箋や薬物アレルギー、過去の予防接種記録、女性の場合は妊娠や出産に関する記録なども収められている。

マスクの「買い占め」を防止

 目下、日本も台湾もコロナウイルスによる新型肺炎の感染拡大防止に躍起になっている。台湾は2003年にSARSを経験したこともあり、政府がとった動きは迅速かつ厳格だった。中国の感染拡大が報じられると、中国人の団体旅行客の入国を拒否したことを手始めに、矢継ぎ早に入国制限(現在は、中国籍の人間は一律入国拒否)した。

 また、折悪しく旧正月とぶつかったため、マスク工場が稼働しておらず、マスク不足のパニックかと思われたが、政府は即座に備蓄を放出すると発表。その後、買い占めや転売を防ぐため、台湾国内で製造されたマスクはすべて政府が買い取ったうえで「記名制」によるマスク販売を行った。

 この「記名制」で活用されたのが健康保険カードである。政府は身分証(外国人の場合は居留証)の末尾によって購入できる曜日を指定し、購入間隔を7日以上空けなければならないと定めた。薬局には必ず処方箋を処理するための健康保険カード読み取り機が設置されているため、ICチップに購入履歴が残る。一人が代理購入できるのは他の一人分までと決まっており、イカサマがやりにくい、公平性のある制度になっている。

 現在ではマスクの増産も順調で、来週あたりから購入できる枚数が増えるものと報じられている。台湾でマスク不足が叫ばれていた旧正月前は、日本から大量にマスクを持ち込む人の姿がニュースで流れたが、もう少し経てば、今度は台湾から日本へマスクが売られていく事態になるかもしれない。

感染拡大地域への「渡航歴」も登録

 また、2月21日には、感染拡大地域として指定されている日本や韓国などへの渡航歴を健康保険カードに登録すると発表された。仮に体調を崩して診察を受けた際、医師がその場で患者の渡航歴を確認できるようにするものだ。こうした取り組みは「性善説」でなく「性悪説」に立つものだ。患者のなかには、自宅隔離を嫌うなどして虚偽の申告をする場合もあるという。こうした「悪意」を出来うるかぎり排除して、徹底的に防疫しようという台湾政府の真剣さがうかがえる。一方、日本政府は中国から日本に入国する旅客に、(感染発生源とされる)湖北省への滞在の有無を自己申告させているという。国家の非常事態に、あまりにもお人よし過ぎるのではないか。

台湾と中国の「決定的な違い」

 中国は今回のコロナウイルス騒動で、東アジアどころか、全世界をパニックに陥れた。感染はむしろますます拡大している。それでもなお、中国は台湾がWHOに参加することを「『一つの中国』の原則のもとで許可」と発言した。SARSのときと同様、人命や健康よりも、イデオロギーを優先する国家なのだ。

 李登輝は2018年に訪れた沖縄での講演で次のように語った。

「中国の覇権主義に直面する台湾は、自主的な思想を持たなければならない。自分たちの道を歩む必要があるのだ。(中略)民主改革を成し遂げ、民主国家となった台湾は、もはや民族国家へと後戻りするべきではない。私たちは、幻の大中華思想から、脱却しなければならないのだ。台湾の国民が持つ共通の意識は『民主主義』であって『民族主義』ではないのだ」

 中国は「一つの民族に二つの国家はいらない」と明言している。中華民族には、中国はひとつだけ(中華人民共和国だけ)存在すればよく、中華民国は存在しない、という論法だ。李登輝は「民族主義」に走るべきではないと主張するが、個人的には、台湾が中国のいう「一つの中華民族」に入らない、別の「台湾民族」を打ち立てるべきではないかと考える。

 例えば、コロナウイルスの感染拡大の問題が報じられた当初から台湾政府の行動は素早かった。今のところ、台湾社会は冷静を保ち、感染者数も抑えられているようにみえる。ネット上では「我OK、你先領」というスローガンが踊った。「私たちは大丈夫だから、マスクが必要なところに優先して届けて」という意味である。

 政府が情報を公開し、国民の安全健康第一を掲げるとともに、国民も公徳心を発揮して行動する姿は、中国のそれと対をなすものである。これがまさに「台湾民族」を「中華民族」と決定的に異ならせる価値観になるだろう。台湾と中国の決定的な差を国際社会に示しつつ、やはり台湾が誇るべき最大の価値観は、李登輝が打ち立てた「民主主義」ではなかろうか。


早川友久(李登輝 元台湾総統 秘書)
1977年栃木県足利市生まれで現在、台湾台北市在住。早稲田大学人間科学部卒業。大学卒業後は、金美齢事務所の秘書として活動。その後、台湾大学法律系(法学部)へ留学。台湾大学在学中に3度の李登輝訪日団スタッフを務めるなどして、メディア対応や撮影スタッフとして、李登輝チームの一員として活動。2012年より李登輝より指名を受け、李登輝総統事務所の秘書として働く。

【私の論評】日本の国会は、台湾の立法府を見習え(゚д゚)!

確かに今回の台湾政府の対応は、打てば響くような速さでした。衛生福利省の疾病管制署(CDC、疾病対策センター)は、1月15日に早くも同肺炎を法定伝染病に指定。20日にはCDCに専門の指揮所を開設しました。1月26日には中国本土観光客の台湾入りを躊躇なく禁止。2月6日には中国人全員の入国を禁止したほか、中国から戻った台湾人には、14日間の自宅待機を求めました。なお、CDCは米国にもありますが、日本にはないことも台湾で不思議がられています。

台湾・基隆に1月31日に寄港した国際クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」から同肺炎の患者が出たことが2月1日に分かると、6日には国際クルーズ船の寄港を一切禁じました。8日夜には、台北などの住民約700万人の携帯端末に警報のショートメッセージを一斉発信。乗客約2700人の全遊覧先51カ所を赤丸で示した地図をつけ、乗客と接触した台湾人に、14日間の自己観察を求めました。

なお、陳時中・衛生福利相が毎日、出動服姿で記者会見を続けていることは、国民に安心感を与えています。台湾民意基金会が2月24日に発表した世論調査結果だと、蔡英文政権の感染対策を信頼する台湾人は85.6%に上っています。

陳時中・衛生福利相
ただし、運の良さもあります。今年1月の台湾総統選で蔡英文総統が圧勝し、中国当局が嫌がらせのため、中国人の台湾観光旅行を規制していました。この見方は、反政権側の国民もしぶしぶ認めています。国民党の対立候補、韓国瑜氏は観光を含む中国との交流強化を訴えていました。ある市民は「韓氏が当選して、中国の観光客が押し寄せていたら、今ごろどうなっていたか」と話しています。

それにしても、今回の打てば響くような台湾の反応は、今回の新型肺炎の直前にもみられらました。それについては、このブログにも掲載しています。当該記事のリンクを以下に掲載します。
台湾・蔡総統「一国二制度は信用破産」 新年談話で中国の圧力牽制―【私の論評】日本こそ、台湾のように『中国反浸透防止法』を成立させるべき(゚д゚)!
12月月31日、台北市内の立法院で、「反浸透法案」に反対し、本会議場で座り込む国民党の立法委員ら
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下に一部を引用します。
 台湾の蔡英文総統は1日午前、台北の総統府で新年の談話を発表し、「(台湾の)主権を守り民主主義と自由を守ることが総統として堅持すべき立場だ」と述べ、中国の圧力に屈しない姿勢を改めて強調した。
    台湾の立法院(国会に相当)は12月31日の本会議で、中国を念頭に域外からの選挙運動などへの介入を禁止する「反浸透法案」を採決し、法案を提出した与党・民主進歩党の賛成多数で可決した。10日以内に蔡英文(さい・えいぶん)総統の署名を経て成立する。野党・中国国民党は、来月11日の総統選直前の立法は「100%選挙目的だ」と反発しています。
要するに、12月31日台湾立法院本会議で「反浸透法案」を採決、可決し、1月1日にはこの法律に関する内容も含めた、 蔡英文総裁による、新年の談話を発表したということです。

野党が反対しようがしまいが、とにかく必要とあらば、大晦日でも立法院で審議し、そうそうに法律を成立させ、元旦にはもう、それを発表するという超スビードぶりです。

日本の国会と、台湾の立法院を単純に比較するわけにはいかないと思いますが、いずれにしても、蔡英文総裁の並々ならぬ決意がみられます。

日本の国会といえば、野党は28日に衆院を通過した2020年度予算案について「新型コロナウイルス関連の予算が全く入っていない。考えられない」(立憲民主党の安住淳国対委員長)と一斉に批判しました。3月2日に始まる参院予算委員会の審議では、初動態勢の在り方などを厳しく追及する方針だそうです。

安住氏は感染拡大に関し「安倍晋三首相がリーダーシップを取り、初期の段階から対応していれば後手後手に回ることはなかった」と酷評。国民民主党の玉木雄一郎代表は、野党が共同提出した予算案の組み替え動議が否決されたことに触れ「われわれの反対を一顧だにせず、数の力で成立させた」と指摘しました。

しかし、新型コロナウィルス対策には、新年度予算に計上されている予備費当面あてることにし、後から補正予算組めば良いことです。すでに組まれた2020年度予算は、すぐにでも実行しなければ、国政等に支障が出てしまいます。

このようなことは、予算に関する知識がある人なら、誰にでもわかることであり、野党の批判は、全くの筋違いです。野党は、コロナウィルスの撲滅よりも、これを政治問題にすることを企図しているとしか思えません。

それに、国会のはじめには、コロナウイルス関連ではなく、桜問題の追求をすると宣言していました。これでは、全く説得力がありません。野党としては、国会当初にはコロナウイルスよりも、桜問題のほうが重要だとしていたのですから、私はあの時点で全く呆れ返っていました。以下に、コレに関するフィフィさんと、世耕大臣のツイートを掲載しておきます。



野党は、長期間にわたる審議拒否を繰り替えたことでも、すっかり国民から信用を失っていることに気づかないのでしょう。台湾の野党は「反浸透法案」に大反対していましたが、さすがに審議拒否など思いもつかないことでしょう。

安倍政権も長期にわたったので、政権内にも足を引っ張る勢力が多くなったようですし、特に財務省とその走狗は安倍政権の邪魔ばかりしています。また、財界の親中・媚中派の蠢きが大きくなってきたようです。安倍政権としては、これらの勢力を弱体化させないとますます身動きがとれなくなるでしょう。

これらを弱体化させるには、まずは、目前のコロナウィルスの終息宣言をなるべく早くだせるようにし、大規模な減税なども含む十分な経済対策を行い、国民に安心感を与えたうえで、衆参両院同時選挙に打ってでるしかないでしょう。

日本の国会も台湾の立法府を見習ってほしいものです。

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2019年11月29日金曜日

米中対立の”最前線”台湾で多国間サイバー演習―【私の論評】日台間は、対話から実践に移るべき時が来た(゚д゚)!


 11月4日から8日にかけて、台湾と米国の共催により、多国間サイバー演習が行われた。台湾では2年に一回、サイバー攻撃に対する台湾の防衛力強化を目的にサイバー演習が行われているが、外国のチームが招待されたのは今回が初めてである。




 主催者によれば、今回の演習では、日本、マレーシア、チェコ、米国の「赤チーム」が台湾政府・軍当局と共にプレーし、台湾の金融セクターへの攻撃をシミュレートし、台湾人のみからなる「青チーム」が防衛の役割を担ったとのことである。また、その他の6カ国のサイバー関連当局者がオブザーバーとして訓練を視察した。

 台湾は中国のサイバー作戦の最前線にいる。台湾のサイバー安全保障局のハワード・ジャン事務局長によると、台湾政府のネットワークは国境外から月平均2億回スキャンされ、月に約3000万回の攻撃を受けており、その約半分は中国からのものと疑われる。2018年には、6件の深刻な侵入を含む262件の侵入があった、という。AIT(在台湾協会、事実上の米大使館)は、今回の演習について「対北朝鮮である」と言っているが、中国を対象としたものであることは明らかであろう。

 台湾において、国際的な参加も得て、米台共催でサイバーに関連した演習が行われたこと自体、一つの大きなニュースである。これは、中国が躍起になって台湾の国際的生存空間を狭めようとしていることに対する一つの応答になると思われる。

 中国は、来年の1月11日の台湾総統選挙に向けて、種々の工作を行ってくると予想される。その工作は色々な形態をとると思われるが、インターネットを通じた選挙介入がかなり大きな部分を占めることが考えられる。2016年の米大統領選挙の際には、ロシアの介入があった。自由で民主主義的な国は情報の流通が自由な開かれた社会を前提としているが、こういう社会は偽情報の拡散などに対しての脆弱性を持っている。この脆弱性を中国などが悪用しないように、サイバーによる介入を見つけ次第、暴露するなどの対応が必要になる。一方で、こちらの能力を秘匿しておく必要もあり、難しい判断もあろう。今回の演習で、台湾側の能力が向上したとしたら、良いことである。

 今回の演習は、米国が台湾のグローバル技術製造ハブに対するサイバースパイ活動を防ぐための取り組みを強化する一環でもある。台湾は、半導体の委託生産受注で重要な位置を占めている。今後の米中対立は5G技術をめぐる対立など技術覇権の争いの側面もある。台湾の技術はその中で重要である。これがサイバーで窃取されないように防護する必要がある。

 日本からのこの演習への参加者が誰であったか、つまびらかにしないが、日本がこういうことで台湾と協力することは推奨されるべきであろう。中国のサイバー攻撃は日本にも向けられ得るものである。

【私の論評】日台間は、対話から実践に移るべき時が来た(゚д゚)!

台湾では日常的に中国のサイバー攻撃を受け、かなりのマスコミが中国寄りの報道をし、フェイクニュースが垂れ流されていることに大きな危機感を抱いていました。だからこそ、冒頭の記事にもあるような、サイバー演習を実施し、日本も招かれたのです。

日本も、このような事態が「対岸の火事」として軽視できるような状況ではないことを銘記しなければならないです。

日本は、これまで中国の言う「1つの中国」を認めたことはありません。

日本や米国は台湾との断交にあたって中国が「1つの中国だ」と言っていることを尊重する、すなわち、「中国が台湾を含めて1つの中国だと言っていることを聞きました」と言っているに過ぎないのです。

日本は、台湾のみならず、日本に対する中国の軍事的脅威を見て見ぬ振りすることなく、真っ向から中国の脅威に向かい合うことが必要な時期に来ているのではないでしょうか。

1949年、米軍の台湾からの撤退後、苦境に陥った台湾の国民党軍の再建にあたり、中共軍を打ち破ることができたのは、旧日本軍の将校団で編成された軍事顧問団のお蔭だったことを知る人は少ないでしょう。

彼らは台湾で「白団(パイダン)」と言われたのですが、戦後、他のアジア諸国に残って独立を助けた日本人のように、台湾を救ったのです。



台湾の次期民進党総統候補の頼清徳氏が来日時、「日本と台湾は家族のような関係であると思っている」と述べたのですが、まさに金言でしょう。

台湾は、アジアにおける家族のような唯一の「親日国家」であり、日本とともに発展していこうと志す友人なのです。

また、台湾は、その自然、都市など発展の土壌があり、優秀な人材にも恵まれ、一緒に繁栄を築いていける国家でもあります。

台湾は、自由と民主主義を基調とする理念を共有する「共同体」であり、共産主義独裁の監視・抑圧社会の中国とは、全く異なる意識を持つ「国家」です。

特に抑圧ではなく「Freedom Nation」を目指していることこそが、台湾が同胞である本質です。本来大陸中国こそが、台湾を参考にして、大陸中国を変えていくべきなのです。この同胞を日本が見捨てるのなら、日本は長く「人類の恥」として記憶されることになるでしょう。

日本、台湾、フィリピンは、中国が東・南シナ海から太平洋に進出するための大きな障害です。

中国は、これを列島線バリアーと称していますが、これを安全に突破できなければ、海洋強国にはなれず、米国の覇権に立ち向かうことはできないと考えています。

列島線バリア

台湾はその3連のつり橋の要となる中心柱です。台湾が中国に占領されれば、中国は、台湾に対艦ミサイル、防空ミサイル、空軍、潜水艦を配置し、自由に東・南シナ海から海洋戦力を太平洋に流し込むことができるようになるでしょう。

こうなれば米軍は、グアムあるいはハワイ以東に下がらざるを得なくなります。そして、日本は中国の軍事的影響下に置かれ、白旗を上げることになるでしょう。

日本は、米国の同盟国であり、米中対決は、他人事ではなく日本の問題そのものです。米中対決の間に漁夫の利を得ようなどと思わないことです。

米国は、40年ぶりに「現在の危機に関する委員会:中国」(元々は対ソ連として立ち上げられた委員会)を立ち上げ、最終的には中国の共産主義体制が諸悪の根源というところまで追求する決意です。

「現在の危機に関する委員会:中国」会長のブライアン・ケネディ氏

米海軍は6月4日にテロの戦いの時に掲げた「ガラガラヘビ」の海軍旗から元の「国籍旗」、すなわち、大国間競争に入ったと言う旗に変わりました。

6月4日はミッドウエー海戦の初日であり、米海軍が太平洋の覇権を日本から奪い取った日でもあります。

日本は、目を閉じても、この嵐は簡単には過ぎ去ることはありません。

この期に及んでも中国へ向かう自殺行為は直ちにやめ、唯一の友好国である台湾を本気で助けるべきです。

助けるといっても、単に台湾と安全保障に関する対話をするという次元から米国のように、実際に武器を提供したり、米国の台湾旅行法の日本版を作成し、さらに台湾に関与していく政策を実行すべきです。

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