2021年2月26日金曜日

各国で激化する宇宙開発競争、軍事予算と表裏一体の側面も 日本は豪印との協力が現実的 韓国も候補だが… ―【私の論評】日本では、宇宙開発を「研究開発」主体から、「宇宙ビジネス」へと高めていくことが必要不可欠(゚д゚)!

 各国で激化する宇宙開発競争、軍事予算と表裏一体の側面も 日本は豪印との協力が現実的 韓国も候補だが… 

高橋洋一 日本の解き方

母船からつり下げられ火星に着陸する探査車パーシビアランスの想像図)

 米航空宇宙局(NASA)の探査車が火星に着陸した。中国やアラブ首長国連邦(UAE)も火星に探査機を投入しているが、各国が宇宙開発を積極的に進める背景と、日本の技術力や資金力の現状はどうか。

 火星には、これまでにも、米国、欧州宇宙機関(ESA)、ロシア、インドが探査してきた。今回、中国とUAEがこれらの国に加わることになる。中国は、今年5月に搭載している探査車を火星に着陸させることを目指しており、成功すれば、米国に次いで2番目となる。

 なぜ、宇宙開発をするのかという素朴な問いに答えるのは案外と難しい。なぜ山に登るのかと聞かれて、そこに山があるからだと答えた人がいるが、それに似ている。意味がないようにみえるが、フロンティアスピリット(開拓者精神)が答えだ。もちろん宇宙開発には目先の利益は考えられないが、開発の過程でさまざまな技術が生み出されて、日常生活に応用される。どのような応用が出てくるのか分からないから、基本的にはフロンティアスピリットに委ねつつ研究開発をするのだが、実務上いろいろな名目も考えられている。その一つが、軍事だ。

 正直にいえば、世界の大国は、軍事を隠すために宇宙開発をしているのか、宇宙開発のスピルオーバー(余剰)分野として軍事が主力なのか、判然としないのが実情で、軍事予算と宇宙開発予算はかなり連動している。実際、軍事開発は国力を上げるし、その逆に国力があれば軍事もついてくる。

 宇宙開発をリードしている米国、中国、ロシア、インドはいずれも軍事大国だが、欧州のESAも主要メンバー国は北大西洋条約機構(NATO)の欧州国とかなり重複している。

 それぞれの軍事支出を、ストックホルム国際平和研究所の2019年データから見ると、米国が7318億ドル(約77兆円)で国内総生産(GDP)比3・4%、中国が2611億ドル(約28兆円)で同1・9%、ロシアが651億ドル(約7兆円)で同3・9%、インドが711億ドル(約8兆円)で同2・4%、ESAメンバー国が2503億ドル(約26兆円)で同1・4%だ。ちなみに日本は476億ドル(約5兆円)で同0・9%だ。

 宇宙開発当局の予算をみても、軍事費の格差ほどではないものの日本は貧弱だ。ちなみにNASAとESAの予算は、それぞれ日本の宇宙航空研究開発機構(JAXA)予算の10倍、2・5倍になっている。

 欧州諸国は、軍事同盟をベースとしつつ、宇宙開発で協力して、ESAを運営している。ESAは有人飛行をやらないので、日本と似ている。

 日本も単独で宇宙開発予算を確保するのが大変なので、そろそろ国際協力も視野に入れたほうがいい。その場合、クアッドで連携をとっているインドがパートナーとなるのが一番現実的だろう。それに、昨年7月オーストラリア宇宙庁とJAXAは協力覚書を結んだので、オーストラリアもいい。本来であれば、韓国も候補であるが、日韓間では軍事情報包括保護協定(GSOMIA)でも問題になったので絶望的だ。(内閣官房参与・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】日本では、宇宙開発を「研究開発」主体から、「宇宙ビジネス」へと高めていくことが必要不可欠(゚д゚)!


日本の宇宙開発は予算も少なく、他国と比較して遅れているようにも報道されることがありますが、それは「はやぶさ2」のことを全く無視しているのではないかと思います。

日本の「はやぶさ2」をはじめとする宇宙航空技術は世界有数の水準にあると言って良いと思います。これだけの技術水準を軍事は無論宇宙ビジネスに転用すれば、かなりの水準のものになるのは確かです。

小惑星でのクレーター作製に世界で初めて成功した「はやぶさ2」

「はやぶさ2」は2014年13月に打ち上げられ、4年という時間をかけて果てしなく遠くに存在する小惑星リュウグウに到着し、その後は1年半にわたってリュウグウの探査を行い、2度にわたるサンプル採取にも成功しました。はやぶさ2の功績によって太陽系の誕生の秘密が解き明かされるかもしれないです。

「はやぶさ2」の難易度の高いミッションを遂行することで、日本の宇宙機が持つ高い信頼性を世界中に示したと同時に、はやぶさ2が無事に地球にサンプルを持ち帰ったことで、日本の小惑星探査は世界をリードしていることを示したと言えます。

将来的には、はやぶさ2が採用したサンプル採取の手法は宇宙資源の開発における「スタンダード」な手法になるかもしれないです。つまりは日本の宇宙開発技術の潜在価値は予測できないほど大きく、前途も途方もなく大きいといえます。

「はやぶさ2」が成し遂げたことは消えることのない偉業であり、将来的には世界中で小惑星探査ブームが起きるかもしれないです。

「はやぶさ2」のような小惑星の地下物質を持ち帰るプロジェクトは、難易度が高く、これと同じようなことをするには米国などは20年はかかるともいわれています。

従来のように小惑星の地面にドリルで穴を掘る方法は、重力が非常に小さいため、反動で探査機が浮いたり動いたりします。

一方、人工クレーターで地下物質を地表に噴出させれば、①観測で地表・地下物質の性質の違いがある程度分かり、②採取・帰還して地球で詳細分析できます。

さらには、③人工クレーター形成時やその後の状況の観測によって、小惑星の固さ、岩石の大きさ、内部構造など、小惑星の様々な情報が得られます。

「はやぶさ2」のブロジェクトでは、世界初の画期的なこの一連の探査手法を確立できたのです。

ただし、今後日本も宇宙開発に取り組むためは、様々な改革が必要になるでしょう。

日本の宇宙機器産業に携わっている従業員数をご存知でしょうか。実は、日本では1万人を下回る規模で、日本の自動車産業就業人口が534万人ということと比較すると著しく少ないと感じます。


関係者数が非常に少ない背景のひとつには、日本の宇宙分野の実に9割が官需により成り立っているという事実があります。宇宙用の製品は、一度打ち上げたら修理が難しいことから非常に高い信頼性が求められる一方で、需要自体が少なく一品モノが多いです。

まさに、超高品質な製品の少量生産が求められることから、対応できる企業が限られ、参入障壁が非常に高くなっており、宇宙分野へ新規参入する企業は少ないのです。日本では、三菱電機/重工、NEC、IHIエアロスペースが有名どころでしょう。

そのため、宇宙関係が集まる場に出席してもすでに見知った顔が多く、定期的に開催される親戚の集まりのような空気感になることから「宇宙村」という自虐的な単語が関係者から発せられることがしばしばあるのです。

もちろん日本の宇宙ビジネスも海外の発展を指をくわえて傍観しているというわけではなく、日本から新たな宇宙ビジネスの種も続々と生まれてきています。そもそも「宇宙村」を生んだ背景には、日本だけではどうしようもなかった国際政治的な要因が少なからずあります。

日本は1970年に初めての人工衛星「おおすみ」を打ち上げて以降、米国からの技術供与も受けながら、衛星開発能力を高めてきました。日本は日本の衛星開発能力を高めるために、日本の企業に限定して衛星製造を発注してきていました。

日本初の人工衛星「おおすみ」の組立作業

しかし、日本が着実に経験を積み、商用化できるレベルまであと少しと迫った1989年、米国は、商用に資する衛星の調達先を国内に限ることは不当な貿易制限であり、人工衛星の調達は国際調達であるべきだと迫ったのです。

これはすなわち、商用衛星を政府が調達する場合、その時点で日本よりも力のある米国の衛星メーカーも入札に含めなければならず、日本の衛星メーカーが受注することが困難になることを示していました。事実、その後しばらく、気象衛星「ひまわり」はアメリカの衛星メーカーが受注することになりました。

この事態を危惧した日本政府は、日本の衛星メーカーに衛星受注の機会を与えるために、”商用”ではない”研究開発”のための人工衛星を企画し、国内メーカーに限定した入札を行えるように配慮しました。これが、日本の宇宙産業が”商用”すなわちビジネスよりも、”研究開発”に注力せざるを得なかった事情の顛末です。

2001年にこの制約は解除されたものの、この一件で日本は世界に対し大きな後れを取りました。1990年以降、2009年までに行われた国際競争入札15機のうち、日本は落札できたのはわずか3機のみでした。

この約10年の間に、欧米諸国の衛星メーカーでは商用衛星のための競争力(設計の共通化によるコスト低減、納期短縮など)を着々と高めて来ました。他方日本の衛星メーカーは政府から守られる形で、”研究開発”の名を冠するために、コストや納期を後回しにしました、オンリーワンの衛星を作り続けていたのです。

他業種への展開に向けては、徐々に潮目が変わる予兆もありますが、「宇宙村」の村人は村から飛び出し、自ら市場を開拓しなければならないのです。もちろん、金額の大きいビジネスであるため、民間企業単独での脱却は難しく、政府の関与は不可避ですが、政府の資金援助の仕方は十分に考慮される必要があります。(各国政府の宇宙施策についてはこちら)。

また、宇宙ビジネスの発展のためには宇宙産業界隈の変化だけでは不足です。なぜならば、宇宙を利用しようと他産業が思わなければ話が前に進まないからです。

宇宙ビジネスが他産業の既存の課題を解決する種を持っている可能性があるにもかかわらず、
宇宙ビジネス≒ロケット、宇宙ビジネス≒ロマンと言ったイメージはなかなか払拭できず、距離を置かれてしまうことが多いようです。

そのイメージを払拭するためには何か衝撃的な宇宙ビジネスのインパクトを生み出すか、宇宙ビジネスがどのようなものかということを他産業の人にとって親しみやすい言葉で丁寧に届けていくしかないでしょう。

一般に知られていない、すでに実用化されている宇宙ビジネスを以下にあげておきます。

農業×宇宙

たとえばデータを用いた農業が進んでいるオランダでは、例えばDacomという会社が衛星データを使って、顧客の畑情報の「見える化」を行っている。衛星データだけでなく、地上で取れるデータや気象データを組み合わせて、効率的に農業が行えるように支援しています。

これは、テレビドラマ「下町ロケット」でも、その内容が知られるようになりました。

  ドラマ『下町ロケット』(TBS、2018年10月~2019年1月放送)の撮影から。
  クボタの農業機械がドラマ内で使用された。

私の親戚の人でも、こうした宇宙ビジネスに携わっている人もいますが、衛星データ+ドローンによるデータ+気象データできめ細かいデーターの取得により、効率的に農業が行えるような支援事業をしています。

漁業×宇宙

漁業においては、衛星から得られる海の情報をサービス提供している会社もあります。Raymarineは衛星データを用いて、海面温度の情報などを提供します。漁師はそれをみて効率的に漁場にたどり着きます。

貿易(船)×宇宙

宇宙から察知が出来て嬉しいのは魚の動きだけではなく、船の動きもまた同じです。国際海事機関(IMO)のデータによれば、世界における貿易の約90%は海上輸送で行われています。そこでSpireは特定の地域における船の位置を宇宙から網羅的に把握することで、どこかで海難事故が発生したことを早い段階で察知したり、危険物を運んでいる船の情報提供、違法漁船の検知などといったトラッキングデータを提供しています。Spireが提供する船舶トラッキング情報Credit : Spire

さらに、船の燃費代は40日間の航海で1億円を超えることはざらであり、今後もしも効率的な船の航路を算出することができれば、大幅なコストダウンにつなげられるというメリットがあります。

現在は実用化されていませんが、今後航空機のトラッキングシステムの登場が期待されています。

エネルギー(金融)x宇宙

上から俯瞰的に見るということは、視点を変えれば他国の領空を衛星が周回することもあるということです。つまり、各国が本来であれば自国しか把握し得ないであろうことも宇宙から見れば分かることがこれから増えてくるでしょう。

その代表例として、石油の貯蔵量があげられます。世界中の石油の貯蔵量が分かることで、投資家は生産量を正確に把握し、今後の石油価格を予想する目安にできるのだ。データを提供する企業としては「Orbital insight」「Ursa Space Systems」「BlackSky」などが上げられます。

今後様々な産業が宇宙ビジネスと結びつく可能性が大です。政府が宇宙開発をすることも大切なことですが、まずは宇宙開発を「研究開発」の分野に留めるのではなく、「宇宙ビジネス」へと高めていくことが、日本の宇宙開発を発展させるためには必要不可欠です。

そうして、日本は宇宙ビジネスで成功する可能性は大きいです。なぜなら、ほとんどすべての産業技術を蓄積しているのが日本だからです。たとえば、工作機械や素材産業は、世界のトップ水準にあります。

あらゆる技術の結晶ともいえる潜水艦でも、日本は通常型潜水艦で、その静寂性は世界一です。米国は、原潜を作る能力はありますが、それに特化し、もはや通常型潜水艦は製造できない状況です。

中国は、おもいっきり背伸びをしていますが、様々な技術分野で未だに遅れているところがあり、技術水準が日本のようにすべての産業が一定レベル以上にはなっておらず、優れているところがあると思えば、極端に劣っているところもあり、極端に凸凹であるというのが実情です。

その象徴が、現代の海洋戦で雌雄を決するといわれている、現在最先端をいっている日米の対潜哨戒能力です。現状では、中国のそれは著しく劣っています。

日本では、あるりとあるゆる産業が宇宙産業と提携し、新たな宇宙ビジネスを生み出せる可能性は非常に高いです。

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2021年2月25日木曜日

悪質「組織ぐるみ」の総務省接待 なぜ全額自腹にしなかったか悔やむだろう―【私の論評】民間と比較すると、あまりに杜撰な官庁の利害関係者接待に対する備え(゚д゚)!

 悪質「組織ぐるみ」の総務省接待 なぜ全額自腹にしなかったか悔やむだろう


 どうしても飲食したいなら、自腹で割り勘なら接待にならないのでいい

率直にいえば、20年以上前には、どこの省庁でもよく見られた許認可官庁と対象業者間の関係だ。なお、1998年に発覚した大蔵省スキャンダルでは、大蔵省官僚4名が収賄の疑いで逮捕されたほか、内部調査の結果、112人が処分を受けた。

1998年に発覚した大蔵省スキャンダルでは官僚がノーパンしゃぶしゃぶで
接待をうけていたことが発覚した。写真はブログ管理人挿入(以下同じ)



この大蔵省スキャンダルを契機として、1999年に国家公務員倫理法が公布、2000年に施行された。

ざっくり公務員の感覚をいえば、それ以前の接待は収賄の対象で、その相場はおおむね100万円。100万円を超えると、収賄で逮捕されるが、それ以下ならまあ許されるという感覚だった。実際、大蔵省スキャンダルでは公務員も何人か逮捕されているが、それらは100万円以上の接待を受けていた。もっとも、100万円という当時の相場は、官僚側が勝手に思っていた数字であり、何も根拠もない。実際には、社会通念で変わりうるので、今なら50万円とかもっと低いかもしれない。

100万円未満はいいとなると、社会通念とずれるので、国家公務員倫理法が作られ、5000円以上の利益供与があれば届け出ること、特に飲食では1万円以上を届け出るとされた。ということは、100万円未満の接待でも、1万円以上は事実上禁止だ。どうしても飲食したいなら、自腹で割り勘なら接待にならないのでいいとなった。

 今回の接待問題、組織ぐるみという点ではかなり悪質

筆者は、国家公務員倫理法の施行時に海外にいたので、帰国したら浦島太郎になると思い、国家公務員倫理法・倫理規定の資料を何度も読み返した記憶がある。

国家公務員倫理法の施行により、かつての接待はなくなったとされていたが、今回の総務省接待問題は、それに反し組織ぐるみという点ではかなり悪質だ。

しかも、自腹を切らないという点でセコい。今回総務省の処分を退職後ということで免れた人もいるが、飲み会の誘いは断らないということで有名だという。毎回自腹で断らないなら立派だが、おごってもらう接待を断らないというなら、何を言っているのかわけわからない。

かつて「飲み会を断らない」と豪語していた今回処分を受けた山田真貴子内閣広報官(60)

ある人は、本件は贈収賄の可能性があるので、菅首相の息子にも責任があるといっていた。総務省内部調査では、一人当たりの接待額は10万円程度なので、100万円というかつての相場ではないといっても、これで贈収賄の立件は難しいだろう。

ある人は、首相の息子に誘われたら官僚は断れないと批判したが、利害関係者であっても会食がいけないのではない。おごってもらう接待がいけないのであって、自腹で割り勘であれば事後に会食事実を役所に報告しておけばいい。

処分を受けた官僚のうち高ランクの者は、これ以上の出世は難しいだろう。ただ飯が高くついた。今回処分を受けた者の中には、一部自腹を切っていたが、なぜ全額自腹にしなかったのかを悔やむだろう。そして、公務員を退職しても、すぐには天下りも難しい。しかし、ほとぼりが冷めるのをまって、それなりのところに再就職できるだろう。

++ 高橋洋一プロフィール
高橋洋一(たかはし よういち) 内閣官房参与、元内閣参事官、現「政策工房」会長
1955年生まれ。80年に大蔵省に入省、2006年からは内閣参事官も務めた。07年、いわゆる「埋蔵金」を指摘し注目された。08年に退官。10年から嘉悦大学教授。20年から内閣官房参与(経済・財政政策担当)。著書に「さらば財務省!」(講談社)、「国民はこうして騙される」(徳間書店)、「マスコミと官僚の『無知』と『悪意』」(産経新聞出版)など。

【私の論評】民間と比較すると、あまりに杜撰な官庁の利害関係者接待に対する備え(゚д゚)!

接待は、企業対企業、企業対監督官庁の間でも、つきものとも言って良いくらいのものです。この接待に関しては、かなり厳しいところもあります。

私の会社でも、これはかなり厳しい方だったと思います。入社したばかりの頃、新入社員研修で教えられたことの一つに、接待に関する対応の仕方がありました。

それは、取引先などから接待の誘いがあった場合どう対処すべきかというものでした。社員の場合は、自分で判断しないで、GM(ゼネラルマネジャー、一般の会社だと部長にあたる)に必ず報告せよというものでした。

その新人教育の内容は今でもなんとなく、一部は覚えいます。それはスイカを売るたとえ話です。講師が一般的なスーパーなどで売られているスイカの原価率等を示したうえで、「あなた方がスイカを100個売るとして、99個スイカを売ったとして、それで良しとしますか?」と質問しました。

ほとんどの人は「良くない」と答えました。講師は「そのとおりです。スーパーなどでは、利益率が少ないので、最後の一個を売りきらないと利益は出ないのです」、そうして講師はこう続けました「利益率が少ないのに、さらに取引先の接待を受け、仕入れのときに判断が鈍ればそれだけで損をしてしまうこともあり得るのです」、「だからこそ、先程述べたように取引先からの接待を受けたときに、GMに報告しないと教えているのです」。

私自身は、新人教育で教えられた通りに、接待に誘われた場合は、必ずGMに報告しました。ある職位以上になると、接待の誘いはかなりありましたが、必ず報告しました。

最近はQRコードで割り勘もできるのだが、総務省の役人は知らない?

それでも、接待になりそうな場合も時折ありました。たとえば、何かのイベントがあって、イベント会場でも酒を含む飲食があり、その後取引先から一緒に飲みに行こうととの誘いがあり、流れで取引先と一緒に飲みにいかざるをえない時もありました。

その場合には、取引先と自分の分を含めて、飲食店に取引先には悟られないようにして、飲食店に飲食代を現金で払う旨を伝えて、飲食が終了する前に自腹で払うようにしていました。

このようなことが何回もあったので、それが習性になり、取引気ではない人、たとえば大学の先生等と飲むときも、自腹ではらってしまうことが何度かありました。

取引先ではない、利害関係のない人と飲む機会もありましたが、そのようなときに、聞いていると、なかにはこのようなことに酷い緩い会社もあって、たとえば、取引先の企業の人間が病気で入院したときにわざわざ入院したことを知らせる人間がいたそうです。それは、暗に見舞いを請求しているということです。

企業によっては、在職中には社内の人間に年賀状を出すことすら禁止している会社もあるそうです。年賀状を出せるということは、その人間の住所を知っているということですから、当然のことながら、お中元やお歳暮等を送ることができるわけで、そうなると人事のときなどに情実が入るため禁止しているそうです。

こんな話も聞いたことがあります。ある大手スーバーの店のGM(店長)が、取引先の園芸店に行って、その店に青々とした竹が植えてあったので、その竹をポンと叩いて「この竹青々としていて、いい竹ですね」と取引先に話したそうです。

その日、家に帰ってくると、自宅の庭にその竹が植わっていたので、驚いて、その竹の代金を自腹で払ったそうです。その取引先は、竹をよこせと、店長が言ったと、忖度したようです。

そのときには、いずれの会社でもこのようなことはあるのだと、改めて再認識しました。

その自分からみると、今回の役人どもの態度は、自腹を切らないという点でセコすぎると思います。

高橋洋一氏は、冒頭の記事の最後で「処分を受けた官僚のうち高ランクの者は、これ以上の出世は難しいだろう。ただ飯が高くついた。今回処分を受けた者の中には、一部自腹を切っていたが、なぜ全額自腹にしなかったのかを悔やむだろう。そして、公務員を退職しても、すぐには天下りも難しい。しかし、ほとぼりが冷めるのをまって、それなりのところに再就職できるだろう」としていますが、そのとおりです。

人事の原理原則からみても、処分を受けた官僚のうち高ランクの者は、これ以上の出世が難しいのも当然のことです。

経営学の大家ドラッカーは人事について以下のように語っています。
貢献させたいのならば、貢献する人たちに報いなければならない。つまるところ、企業の精神は、どのような人たちを昇進させるかによって決まる」(『創造する経営者』)
ドラッカーは、組織において真に力のあるコントロール手段は、人事の意思決定、特に昇進の決定だといいます。

それは組織が信じているもの、望んでいるもの、大事にしているものを明らかにします。

人事は、いかなる言葉よりも雄弁に語り、いかなる数字よりも明確に真意を明らかにします。

「強みによる人事」チャート クリックすると拡大します

組織内の全員が、息を潜めて人事を見ています。小さな人事の意味まで理解しています。意味のないものにまで意味を付けます。この組織では、気に入られることが大事なのでしょうか。

“業績への貢献”を企業の精神とするためには、誤ると致命的になりかねない“重要な昇進”の決定において、真摯さとともに、経済的な業績を上げる能力を重視しなければならないのです。

致命的になりかねない“重要な昇進”とは、明日のトップマネジメントが選び出される母集団への昇進のことです。それは、組織のピラミッドが急激に狭くなる段階への昇進の決定です。

そこから先の人事は状況が決定していきます。しかし、そこへの人事は、もっぱら組織としての価値観に基づいて行なわれます。
重要な地位を補充するにあたっては、目標と成果に対する貢献の実績、証明済みの能力、全体のために働く意欲を重視し、報いなければならない。(『創造する経営者』)
今回処分された、官僚は高橋洋一氏が述べているように、公務員を退職しても、すぐには天下りも難しいでしょう。しかし、ほとぼりが冷めるのをまって、それなりのところに再就職でしょう。しかし、本来このような不祥事をしなかった場合のランクの高いところは無理でしょう。それでも、再就職できるだけましと思うべきでしょう。

それにしても、このようなことをみるにつけ、ドラッカー氏が主張していたように、統治の部分を除いてそれ以外の部分は政府の外に出すべきと言う考えは妥当だと思います。

そうでないと、このような問題はときがたてばまたぶり返すこになります。どのような組織でも、統治と実行を同じ組織が担うと、今回のような不祥事はもとより様々な腐敗が生じるのです。

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2021年2月24日水曜日

孔子廟に敷地無償提供は違憲 最高裁―【私の論評】この判決は、今後沖縄が進むべき道を示した(゚д゚)!

 孔子廟に敷地無償提供は違憲 最高裁


 儒教の祖、孔子を祭る「孔子廟(びょう)」を設けるため、那覇市が公園内の敷地を無償で提供していることが憲法の「政教分離の原則」に違反するかが争われた住民訴訟の上告審で、最高裁大法廷(裁判長・大谷直人長官)は24日、違憲と判断した。那覇の孔子廟は宗教性が軽微とはいえず、無償提供は特定の宗教に便宜を提供していると評価されてもやむを得ないと認定した。

 政教分離に関し最高裁が違憲と判断したのは3例目。差し戻し後の1、2審判決はいずれも無償提供を違憲と指摘していた。

 最高裁は平成22年、違憲と判断した空知太(そらちぶと)神社訴訟の判決で、宗教的施設に公有地を無償提供する是非について「施設の性格や無償提供の経過と態様、一般人の評価などを考慮し、社会通念に照らし判断すべきだ」との判断枠組みを示していた。

【私の論評】今回の最高裁判決、沖縄の治外法権状況を是正する方向に舵をきるべき(゚д゚)!

孔子廟

孔子廟というと、あまりご存知の方は多くは無いかと思いますが、中国春秋時代の思想家で論語で有名な儒教の創始者、孔子を祀っている霊廟のことです。

中国などの外国から琉球に帰化した人たちの多くは、那覇の久米村に住んで久米三十六姓と呼ばれていました。 そして1676年にこの孔子廟を完成させお参りをしていましたが、第二次大戦で消失。

旧霊廟があった場所も国道が通り同じ場所での再建もかなわず、改めて波之上に1975年再建されました。 そして2013年、那覇市久米の松山公園の隣に新しく建設されたのがこの孔子廟です。

日本では最南端の孔子廟でもあり、当事の琉球が中国と密な交流関係が有ったことを忍ばせてくれる場所でも有ります。

普段は正門が閉まっていますが、両側の入口は開いているので自由に入って参観することができます。

儒教の祖・孔子を祭る「孔子廟(びょう)」のため、那覇市が公園内の土地を久米崇聖会に無償で提供していることが憲法の政教分離の原則に違反するかが争われた住民訴訟の控訴審判決で、福岡高裁那覇支部は2018年4月18日に、一審那覇地裁に続いて違憲との判断を示し、市が使用料を請求しないことは違法だとしていました。

大久保正道裁判長は、廟の管理団体について、営んでいる祭礼行事の内容を踏まえ宗教団体だと認定。土地の無償使用は「特定の宗教に便宜を提供し、援助していると評価されてもやむを得ない」と述べました。

その上で、原告の市民(91)が監査請求した2014年4~7月の使用料を請求すべきだと指摘しました。2017年4月の一審判決は使用料を約180万円と算定しましたが、高裁支部は額を示しませんでした。

判決によると、故翁長雄志氏が市長だった11年、市内の松山公園に廟の設置を許可して土地使用料の全額免除を決め、14年に更新した。

判決を受け城間幹子市長は「主張が認められず残念だ。判決内容を確認し対応する」とコメントしました。土地は当時から現在まで、無償で提供され続けています。

那覇市の孔子廟の公園使用料を那覇市が無料としていたことが違法であるとして市民団体が裁判に訴えていました。孔子廟をめぐる訴訟においての主な主張は以下のようなものです。


今回の最高裁の判決は、原告の市民側の主張をみとめたわけです。今回この判決が出たことは良かったと思います。

この問題の本質を簡単にいうと、首里士族由来の出自を持つ那覇市長・翁長雄志氏(当時)が、久米士族由来の出自を持つ仲井眞弘多県知事(当時)などといった有力者が属する宗教的血縁団体に対して公有地を無償で提供した構図です。

旧支配階級内部での馴れ合い行政の産物であり、王朝時代(封建時代)の支配構造を引きずった沖縄の時代錯誤を象徴するものでした。

それは政治的保守派による行政の「私物化」でもなければ、政治的左派の支持を得た翁長雄志氏による中国派に対する優遇策でもありません。久米崇聖会には仲井眞弘多元知事だけでなく、各界の人士が会員となっており政治的にはむしろ中立です。中国とのパイプもありますが、会としての姿勢はどちらかといえば台湾寄りです。

今回の案件で政治的イデオロギーを問題とすべきではないかもしれません。最大の問題は沖縄に残る封建制の残滓が、県民や国民の諸権利・諸権益を踏みにじるかたちで露出したところにあります。

したがって、歴史的な観点からすると、那覇市の対応は、孔子廟設置に用地を無償で提供することにより、封建制下における久米人の特権的立場を復活させたことになります。

そうして、このようなことは、中国の沖縄工作をやりやすくするものでもあります。

今回の判決においては、「政教分離」という日本国憲法の条文に照らしてその違法性を明らかにした裁判所の判断並びに原告・弁護団の弁論は、沖縄社会に今も根強く残る非近代的要素をあぶり出すと同時に、今後沖縄が進むべき方向性を示したものであるといえます。

沖縄では、沖縄以外の人からみると、信じがたいことが平気でまかり通っているところがあります。たとえば、基地反対派が道路でまるで検問のような交通妨害してみたり、防衛省の役人や、警察などに乱暴狼藉を働いてみたりと、枚挙に暇がありません。


この判決の延長線上に、基地反対派の横暴による治外法権を是正する方向に進んでいただきたいものです。

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2021年2月23日火曜日

【主張】天皇誕生日 令和の「行幸」国民の力に―【私の論評】全体主義とは対局にある日本の天皇、天皇弥栄(゚д゚)!

 【主張】天皇誕生日 令和の「行幸」国民の力に


 
 天皇陛下は61歳の誕生日を迎えられた。令和の時代を国民とともに歩まれる陛下に心よりお祝いを申し上げたい。

 新型コロナウイルス感染防止のため、誕生日の一般参賀は2年連続で中止となったが、陛下は先立つ記者会見で、広く国民に寄り添う思いを語られた。

 コロナ禍に関し、命を落とした人々を悼み、医療関係者や困難な状況にある人々を支援する関係者の尽力に感謝の気持ちを話された。そして「忍耐強く乗り越える先に、明るい将来が開けることを心待ちにしております」と述べられた。国民も心を一つに取り組みを新たにしたい。

 陛下は、まもなく発生10年を迎える東日本大震災の被災地にも思いを寄せられた。そうしたお言葉、お気持ちに力づけられる人々は少なくないだろう。

 コロナ禍で皇室の活動が制限される中、皇室活動の基本に言及され、「国民の幸せを常に願って、国民と苦楽を共にすることだと思います」と述べられた。

 それを実践される姿は、昭和天皇から上皇陛下へと引き継がれ、今上陛下が間近で学ばれてきた皇室の伝統である。

 陛下は、そうした歴史、伝統を踏まえ、時代や社会の変化に応じた行動の大切さも話された。

 コロナ禍にあって天皇陛下がお出かけになる行幸(ぎょうこう)の機会など、国民と触れ合う場はたしかに限られている。会見でも、触れ合うことが難しい状況を残念に思うお気持ちを率直に語られた。

 そうした中で、天皇、皇后両陛下が、コロナ対応にあたる病院とお住まいをオンラインで結び、医療関係者をねぎらうなど、交流・活動を工夫されている。

 元日には、ビデオメッセージを発表し、国民を案じる気持ちを込められた。

 延期された新年の歌会始の儀を例にしても国民が楽しみにしている伝統の行事は多い。宮内庁は皇室と国民の交流を深めるため、さらに知恵を絞ってほしい。

 天皇陛下が数多くの宮中祭祀(さいし)を通し、日本と国民の安寧や豊穣(ほうじょう)を祈られていることにも、一層の理解を深めたい。

 天皇が国民のために祈り、国民は天皇に限りない敬意と感謝の念を抱いてきた。それが日本の国柄であり、皇位が安定して続いていくことは国民の願いである。

【私の論評】全体主義とは対局にある日本の天皇、天皇弥栄(゚д゚)!

天皇陛下の誕生日を祝う「茶会の儀」で乾杯される天皇、皇后両陛下(2020年2月23日)

日本の皇室は、ほかに類を見ない、2000年以上続く『世界最古の王朝』です。ただし、これは海外の王朝と比較の上で言っているだけであり、日本の天皇と朝廷は、他国の王朝とは違い、日本独自のものです。

歴史が長い国はほかにもありますが、国名が変わらずひとつの国として突出した歴史を持つ国は日本以外にはありません。そうした貴重な歴史の中心にいたのが、天皇と皇室なのです。

世俗の権力から一定の距離を置き、ひたすら国民の安寧を祈り続ける天皇という存在は、世界に唯一無二の奇跡的な存在です。そのことに、世界の国々が敬意と憧れを持っているのです。

事実、ギネスブックにも、日本の皇室は「世界最古の王朝」と記録されています。

上皇陛下から天皇陛下への譲位は、第119代光格天皇以来、約200年ぶりだったことが注目されました。日本人にとっては“たった200年前か”という感覚の人もいるかもしれませんが、世界の歴史を振り返ってみるとたとえば、太平洋の向こうの米合衆国は建国そのものから250年も経っていないのです。

世界の外交の常識で言えば、総理大臣よりも、大統領よりも、国王よりも、エンペラー(天皇、皇帝)が最も“格式”が高いのです。首相や大統領はその時代の国民に選ばれた代表であり、国王は王家を継いできた人ですが、エンペラーは国の文化や宗教などを含めたもの、つまり“文明の代表”という位置づけになります。

20世紀まではドイツやオーストリア、エチオピアなどの国でエンペラーを名乗ることがありましたが、長い歴史の中でずっとエンペラーであり続けたのは日本の天皇だけです。今の世界の主要国の中で、エンペラーはたった1人、日本にしか存在しないのです。

皇室がこれほど長い歴史を保てたこと自体が国民から敬愛されてきたことの証です。

海外では、フランスやロシア、イランなど国民による革命によって王室が廃絶に追い込まれたケースも少なくありません。日本も終戦後に皇室廃絶運動やクーデターが起きても不思議ではありませんでした。しかし、昭和天皇は戦争で焼け野原になった全国各地をすすんで巡幸され、国民はそれを大歓待しました。

戦争で苦しみ、指導者に対する恨みや憎悪が高まる国も多いですが、日本人は“普通の国”とはまったく違う反応をしたのです。

「普通ではない」反応を引き出したのは、昭和天皇の人柄だったといいます。

昭和天皇は巡幸に際し、質素な庶民的な洋服をお召しでした。「国民は着るものに不自由しているのに、自分だけがいい服を着て国民の前に立てない」と配慮されたのです。

1947年広島に行幸された昭和天皇 奥に広島ドームが見える

そうした天皇の存在を、古来、日本人が敬愛し続けていること、そうした天皇と国民の関係が、世界の多くの国で敬意を持って受け入れられているのです。

諸外国にとって、天皇という存在は比較対象のない非常に特殊な存在です。しかし、その異質な存在を中心に日本の人々は精神的に充実した生活を送っています。

あらゆる組織、無論企業や国であっても、変えてはいけないものと、変えるべきものがあります。これが明確でない組織は安定しません。その点日本は、安定しています。これは、日本に住んでいる私達にはあまりに当たり前すぎて意外と気づきにくいかもしれません。

たとえば、世界中が惨禍に見舞われ、多くの国が消滅したとして、ある国が国を再興したとして、その国が従来存在した国の正当な後継国であるのか、それによって統治の正当性が国民に認められるかどうかを判定するのは意外と難しいかもしれません。

再興されたとされるその国が、統治者や為政者の政敵からすれば、正当な後継国とは認められないかもしれません。旧国民の間でも価値観や文化によって、認められないかもしれません。

しかし、日本国の場合はそれは簡単です。皇統を引き継ぐ方が、天皇となり、日本の要となれば、それ以外の統治者、為政者は誰がなっても構いません。それで、すぐに正当な後継国であると多くの国民に認められ、天皇が認めた政府であれば、すべての国民が統治の正当性を認めることになるでしょう。

このような国は世界で唯一なのです。そのため、日本は政局が混乱しようと、世界中が混乱したとしても、安定を保っていられるのです。

あらゆる組織には、変わるもの、変えられないものがあります。グローバル化した今日でも、変えてはならないものがあるのです。
今日では企業のマネジメントはグローバルに行われる。世界は、たとえ政治的には分かれていようとも、需要、欲求、価値の観点から見たとき、一つのショッピングセンターになった。そのため企業にとっては、国境を越え、生産資源、市場機会、人的資源を最適化すべく、自らをグローバル化することが、経済の実体に対する正常かつ必然的な対応となった。(ドラッカー名著集(13)『マネジメント─課題、責任、実践』[上])

市場がグローバルになったために、あらゆる経済活動がグローバルに行なわれるようになり、かつ、企業そのものがグローバルな存在になりました。一国の文化、慣習、法律にとらわれることなく、グローバル経済において成果を上げるべき存在となりました。

もちろん、今日は行き過ぎたグローバル化に反対の声もあがっています。しかし、自由貿易の優位性に気がついた人類は、完璧にグローバリズムを捨て去ることは困難です。これからも、自由貿易は継続していくことでしょう。

ところが、そのために、事態がおそろしく複雑になりました。じつは、マネジメントは、それ自体が文化的な存在たるべきものです。しかもそのマネジメントが、それぞれの文化を生産的なものにするという役割を持ちます。つまり、自らが文化でありつつ、文化の道具とならなければならないのです。

マネジメントは、個人、コミュニティ、社会の価値、願望、伝統を生産的なものとしなければならないです。もしマネジメントが、それぞれの国に特有の文化を生かすことに成功しなければ、世界の真の発展は望みえないのです。

ここでドラッカーは、世界は日本に学ばなければならないといいます。ドラッカーに言わせれば、今世界は、世界的な規模において、明治維新の必要に直面しているといいます。

コミュニティの伝統と朝廷を含む独自の価値観を近代社会の成立に生かしたことこそ、他の非西欧諸国が近代化に失敗したなかにあって、日本だけが成功した原因だといいます。

明治天皇

インドは、インドの西洋化を試みて失敗しました。ペルシャはペルシャの西洋化を試み、ブルガリアはブルガリアの西洋化を試みて失敗しました。現在においても、発展途上国から先進国に転身した国は、日本のみです。ところが、その日本は、日本の西洋化を試みもしせんでした。日本は、「和魂洋才」という言葉に象徴されるように、西洋の日本化を行なったために成功しました。それが明治維新でした。

つまるところマネジメントは、急激にグローバル化しつつある文明と、伝統、価値、信条、遺産となって現れる多様な文化との懸け橋にならなければならない。文化的な多様性が人類の繁栄の実現に資する上での道具とならなければならない。(『マネジメント』[上])

「変わるもの」つまり「change」はドラッカーによるとイノベーションを生み出し、進化、発展をもたらします。

一方「変わらないもの」はドラッカーの言う文化と言われるものです。より大きな括りでいえば、文明です。

「変わるもの」と「変わらないもの」を見極めるのは簡単なようで実は難しいです。多くの人が、変わらなければいけないのに、変わらないものにこだわって、新しい時代から取り残される例は歴史に枚挙のいとまがありません。

一方、変えてはいけないものを変えてしまう失敗も人類は多く犯してきました。上でも述べたように、文化そのものを変えようとして、本質からずれて衰退していった例もたくさんあります。

それでは、どうすればこの両者の違いを間違えることなく、正しい判断ができるのでしょうか。

そのためには謙虚な心が必要です。両者の判別がつかない人の心には「常に自分が正しい」という強い自己中心性が存在しています。最近の極端なポリティカル・コレクトネスにも、それがみられるようです。

謙虚な心こそドラッカーの言う「真摯さ(integrity)」なのです。この真摯さを忘れた、統治者が「変えてはならないもの」まで変えて全体主義に走るのです。一方日本では変えてはならないものの守護者が天皇なのです。

日本が、どのような政局の争いがあっても、戦争で敗北しても、今日のようにコロナ禍に見舞われても、比較的安定しているのは、日本は他国と異なり、「変わないもの」の具現者である天皇を日本国民の要として仰いでいるからに他ならないのです。

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2021年2月22日月曜日

文系マスコミが叩く「株価3万円」がまったく不思議なことではないワケ―【私の論評】株高も円高も、明快に説明できないマスコミには、日本経済への提言などできない(゚д゚)!

 文系マスコミが叩く「株価3万円」がまったく不思議なことではないワケ

数字を見れば一目瞭然だった! マスコミは「経済が悪かった」と…

先週15日(月)、東京株式市場で日経平均株価が3万円を超える高値を記録した。3万円台の大台に乗ったのはバブル期以来、約30年ぶりで、週末19日(金)の終値は3万0017.92円だった。

これに対して、マスコミの報道は、2020年は、新型コロナの影響で、完全失業者数は前年に比べ29万人、休業者数は80万人増加と、経済が悪かったことを指摘する。実態経済と株価が乖離していて、この株高はバブルではないのか、株高の要因は、日銀が低金利を続けていることと、日銀が株へ投資しているからだという。

つまるところ、単純な論調でマスコミは冷ややかに株高を見ているようだ。

筆者は、株式投資を実際に「職業柄」やらない。筆者はもともと財務省で公務員だったので、インサイダー情報に触れることも少なくなかった。そのため、財務省の内規で株式投資をやらないように言われていたため、公務員時代はまったくやっていない。

公務員を辞めてからも、発言が自己のポートフォリオに有利になるようにといわれないように、株式投資をやっていない。

ただし、標準的なファイナンス論は米国留学の時に勉強したので知っている。このファイナンス論は、日本ではあまり大学でやっていない。率直に言えば、ファイナンス論はほぼ数学と同じなので、日本の文系経済学部ではちょっと荷が重いのだろう。

もちろん、日本にもファイナンス学会はあり、筆者も会員であるが、その研究は欧米に見劣らない。

ちなみに、日本の数学者の故伊藤清氏は東大数学科の大先輩であり、筆者は現役学生時に同氏の講義を聴いたことがあるが、同氏が開発した確率微分方程式など確率解析はファイナンス論では必須で、世界中のファイナンス学者が使っており、同氏を尊敬している。

 株高を説明できないマスコミ

余談だが、伊藤氏は実は戦前1938年に大蔵省に入省され、筆者はそれ以来4人目の東大数学科卒の大蔵省官僚だと聞いた。伊藤氏は戦時中内閣統計局で勤務しているときに、確率解析の基礎理論を生み出されたらしく、今でも信じられないほどの世界的な業績だった。

いずれにしても、標準的なフィアナンス論では、確率解析以前の話であるが、株価は将来収益の現在価値の総和で決まるとされている。もちろん、この単純な定式化をベースとして、実戦的で様々な応用バージョンがあり、それぞれで優劣を競っている。

しかし、単純な基本形でも、今の株価について、マスコミが言っている解説が的外れであることくらいは言える。

株価が将来収益の現在価値の総和になるということは、将来収益/金利が大きな要素になる。これを定性的にいえば、将来収益予想が高まったり、金利が低くなると、株価が上がるわけだ。

まず、日銀が低金利を継続しているというのはその通りだが、金利はイールドカーブコントロールなので、ここ1年くらいあまり変動していない。今の株高は昨年10月あたりから始まっているので、金利引き下げによるものではない。

株価をきちんと式で理解していれば、金利が変わらないので、金利要因は排除できるはずだが、文系マスコミの悲しいところで、式が理解できないから、ロジカルな議論ができない。

それでは、日銀が株式を購入しているという話はどうだろうか。根拠となるのは、昨年3月にETF購入枠を6兆円から12兆円へと拡大したことだ。しかし、3月と10月の間はどうだったのか、説明できない。

しかも、購入枠は6兆円増である。株式市場全体の時価総額は700兆円もあるが、その1%にも満たない額なので、それが大きな影響を与えているとも思えない。定量的な議論が苦手な文系マスコミは大げさに話しがちだ。

  まったく驚く株高ではない

基本に返って、株価が将来収益/金利で決まるとして、金利要因でないとすれば、将来収益予想の高まりがしっくりくる。

将来収益といっても、半年から1年以内の将来予想を取り込んで、株価は決まることが多い。「桐一葉、落ちて天下の秋を知る」という諺があるが、一枚の葉が落ちるのを見て、秋の訪れを察することで、わずかな前兆から将来を予知することだ。

筆者は、この言葉が好きだったので、現役官僚のころ、匿名コラムのペンネームに使っていたくらいだ。

予兆は、昨年4,5月に行ったコロナ対策であった。もちろん、新型コロナにより経済は落ち込むが、それでも落ち込みがどれだけ少なくできるか、特に世界と比べてどうかという視点が重要だ。

マスコミはいろいろな論調を述べるときに、何と比較しているのかさっぱりわからないことが多いが、それは評価する座標軸が定まっていないからだ。そのため、ただ単に政権批判をしたいために、都合のいい数字を取り上げたりするので、マスコミ記事を読んでも参考にならない。

これを、これまでの株価を踏まえてみると、株価3万円はそれほど不思議ではない。

まず、これまでの日米の株価の推移を見ておこう。


この図を見れば、日本の株価は、バブル崩壊後、10年余の長い調整局面が続き、2000年代はじめから、やっとアメリカと同じ歩調で上がりだした。こうした中、他の先進国よりコロナの落ち込みが少なければ、それなりに株高になるのは不思議な現象ではない。

経済を2019年10-12月第四四半期と昨2020年10-12月第四四半期で比較してみてみよう。この期間が、新型コロナ対応により大きく影響を受けるからだ。

 「経済と乖離」は本当ではない

OECD諸国で比較可能な国をすべて選ぶと、この間、日本の財政支出の高さと行動制限の緩さは世界でトップクラスだった。ここで、財政支出はIMFデータ、行動制限指数はオックスフォード大学が公表している厳格度指数のデータを用いている。引用先は、資料を参考にしてほしい。


実は、財政支出の多寡と行動制限の強弱で、経済落ち込みがほとんど説明できる。つまり、財政支出が大きいほど、行動制限が緩いほど、経済落ち込みが少ないのだ。


日本は、先進国中で、経済落ち込みがトップクラスで少なかった国だ。これから、株価に悪いはずないだろう。今年の後半の経済を見通すと、世界中で新型コロナワクチンが徐々に行き渡り、行動制限は緩くなる。

となると、スタートダッシュで、財政支出の多さで有利になった日本とその他の先進国も同じように、経済拡大のメリットが出てくる。

ということを、昨年10月前に読んでいた投資家が、半年から1年先の将来を「買って」、その読みが当たって、今の株高になっているのだろう。

以上が、筆者の今の株高の説明である。もちろん、この説明はこれまでの株高を説明するだけで、今後の株価については何もいっていないのも同然だ。これからの株価となると、来年、再来年がどうなるかを当てるに等しい難作業、というか、これからの政策対応でいかにでも変わりうるので、言わないのが無難だろう。

こうした説明からみると、マスコミはよくいう今の株価が実態から乖離しているというのは、陳腐で意味のない表現であることがわかるだろう。単に、9ヶ月前にあった1,2次補正予算によるその後の出来事を予想できなかった人の戯言だ。

あの時、1、2次補正予算が大きすぎると批判したのはマスコミである。今考えてみると、いかに勘違いだったのかがわかる。株価は将来を少し映し出す鏡なのだ。

【私の論評】株高も円高も、明快に説明できないマスコミには、日本経済への提言などできない(゚д゚)!

株価については、上記の高橋洋一氏の解説は過去の推移により、現在の株価を十分に説明できると思います。現在の株高は、なるべくしてそうなったのです。マスコミは現在の株高を、説明できず、現在の株価が実態から乖離しているようなことを語るのみです。

これと、同じようなことが、為替についてもいえます。マスコミは、円高や円安になる理由を説明できません。

昨年7月に、外国為替市場の円相場で一時1ドル=104円台と約4カ月半ぶりの円高水準をつける場面がありました。日本と米国の金融緩和の状況を受けて、中長期的に為替はどのように動くと考えられるのでしょうか。

当時の新型コロナウイルス感染拡大の状況を見ると、欧州では落ち着きが見られるのに対し、米国では拡大が収まっていませんでした。このため、欧州より米国のほうが景気回復が遅れそうだという見方になっていました。

日本はコロナ「第2波」になっていましたが、感染者数や死亡者数は欧州の落ち着いたときの水準程度かそれを下回る。やはり日本より米国のほうが景気回復が遅れそうでした。

そうなると、米国は日欧に比べて、失業がより多く出てくるので、雇用対策である金融政策をより長く、さらに強力に実施せざるを得なくなりました。

為替の説明にはいろいろありますが、経済学的には、2国間の金融政策の差で決まるというのが一番しっくりきます。為替が2国間の通貨の交換レートであることから、2国の通貨量の比率で決めるというのが最も自然であるからです。

であれば、当時日欧に比べて米国の金融政策がより強力になるという見方から、ドルが相対的に円・ユーロに比べて多くなり、相対的に多いものの価値は安くなります。つまりドル安になると説明できます。この現象を、円からみれば、円高です。

このような見方を、マスコミはできないようです。長期的にみれば、ドルが円に比較して多くなれば、ドルの価値は下がりドル安になり、円の価値は上がり、円高になります。無論短期的には為替は様々な要因があり、明快に説明できない場合もあります。

しかし、中長期的には米国が金融緩和政策をとりドルが円に比較して多くなれば、間違いなくドル安、円高傾向になります。

これは、誰でも理解できるでしょう。ドルが多くなり、相対的に円が少なくなれば、ドルの価値は下がり、円の価値は上がるので、ドル安、円高になります。この当たり前のことを知らない人がマスコミ関係者には結構多いです。

それどころか、金融関係者にも知らないのではないかと考えてしまうような人が、多いです。いわゆる金融アナリストとわれる人々が、金融緩和なと無視して、「米国では○○が起きていて、■■だから、円高になる」などの不可解な解説ばかりする人がいます。

このようなことは、中短期であたることはあっても、中長期的にみれば、為替は各国の金融政策によって、決まりまるのでは、長期的にはあたることはありません。

以上が経済的な見方ですが、これに米中対立の激化という政治的な側面も為替動向に大きく影響していました。米政府がテキサス州ヒューストンの中国総領事館を閉鎖したのに対し、中国政府は中国の四川省成都にある米国の総領事館を閉鎖するという対抗措置に出ました。

また、米司法当局は、サンフランシスコの中国総領事館でかくまわれていた中国人研究者を拘束しました。こうした有事にも通じるようなとき、とりあえずドルを売っておくという連想になりがちでした。

ただし、短期的にはドル売りという動きがあったにしても、中長期的には、米国および関係国のの金融政策がドルの価値を決めることになります。他国に比較して、緩和の度合いが高ければ、当然のこといずれドル安になります。

ともあれ、世界経済はコロナショックで大変で、世界各国で一定程度の金融緩和が行われています。リーマン・ショックの時のように、日本だけが金融緩和しないというのはありえないでしょう。となれば、為替は、一時的な変動はあるものの、長い目で見れば大きく変動しないのと考えるのが無難なようです。

マクロ経済を理解するための基本中基本

それにしても、株高も円高も、明快に説明できないマスコミには、当然のことながら、日本経済への提言など全くできないと考えるべきでしょう。

この大きな2つの項目ですら、明快に説明できないですから、当然のことながら、雇用も、財政も、金融政策も駄目でしょう。雇用というと、欧米では社会人の常識でもある、金融政策=雇用政策であることを理解できていない人が多いです。

これは、マスコミも理解していないのはもとより、多くの日本人が理解していないようです。そのためか、金融政策=雇用政策という話てもしようものなら、目を丸くして、信じられないという人も多いです。それどころか、胡散臭いやつと思われてしまうことすらあります。内容としては、高校の政治経済程度の話なのですが・・・・・・。

雇用が激減していた、平成年間の真ん中あたりのときに、ハローワークで働いていた女性が上司の課長が「自分は雇用というものを理解していない」と語ったので驚いたという話を聞いたことがありましたが、この課長さんは正直だといえます。

厚生労働省は、雇用の主管官庁ではありません。厚生労働省は、あくまで労務とか、雇用統計の主管場所であって、厚生労働省がいくら頑張っても、雇用を増やすことなどできません。できるのは、せいぜい雇用のミスマッチをある程度是正するくらいです。雇用を創出することはできません。それができるのは、日銀です。中央銀行こそ、雇用に責任があるというのが、欧米の社会常識です。

さらにマスコミは、財政赤字、経常収支の赤字もまるで家計のように赤字自体が悪い事のように報道します。このようなマスコミに日常的に接している、多くの日本人がマクロ経済音痴になってしまうのも無理からぬところがあります。

日本でも、高校や大学あたりで、一般教養として実践的なマクロ経済学を教えたほうが良いと思います。

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30年前の水準に戻った日本株、アベノミクスでバブルの後遺症を脱却 コロナ収束と景気回復反映か 

高橋洋一 日本の解き方



 日経平均株価が約30年半ぶりに3万円を回復したが、なぜこの水準に戻るのに30年もかかったのか。経済的な背景はどうだろうか。

 株価は、半年後の経済を映し出すといわれる。世界経済の落ち込みは、新型コロナ禍に伴う経済活動の抑制によるところが大きい。昨年末からワクチン接種が世界各国で行われた始めたのとともに、既存の薬も効果の高いものが判明しつつある。

 感染症の一般論であるが、季節が暖かくなると流行らなくなる。となると新型コロナ禍は今年後半には、かなり波が静かになるだろう。そして景気回復が予想されることが今の株価に反映しているとみていいだろう。

 たしかに今の株価については金融緩和が後押ししている側面があるものの、将来の先行きが悪いのであれば、そもそも株価が上がるはずないだろう。

 ここ30年間の日本の株価を米国と比較してみると、1990年代は日本が下がり続けたが、米国は堅調に上昇した。この時期の日本の金融政策は猛烈に引き締めを継続したので、当然ながら株価は上がらなかった。

 2000年代になると、日本でもデフレが意識され始め、金融政策は若干緩和基調だったが、インフレ目標が導入されていなかったので、金融政策は不徹底だった。その結果、日本の株価は徐々に上がりだしたが、08年のリーマン・ショックで日米ともに沈んだ。

 10年代は、日米ともに上昇し、特に、インフレ目標が導入されたアベノミクスの13年以降、日本のほうが値上がりスピードが若干速くなった。

 こうしてみると、金融政策がインフレ目標で運営されていると為替が大きく変動しづらくなり、日本の株価は米国とほぼ連動してくる。

 アベノミクスは、マクロ経済からみれば、金融政策についてはインフレ目標を中央銀行に課し、財政政策と金融政策を協調させ、GDPギャップ(完全雇用を達成する潜在GDP水準と現実のGDP水準の差)を少なくするように運営するものだ。これは、失業率を最小化させる効果を持ち、そうした意味では世界標準である。

     マクロ経済政策を理解するにはこのグラフを理解していないと困難
     だがこれ理解していれば、直感的に理解できる

 これが、良好なマクロ経済環境を招き、実体経済を回復させ、13年以降、株価は日本で2・5倍程度になっている。なお、同期間の米国の株価は2・2倍程度だった。

 以上をまとめると、30年間のはじめの10年間、次の10年間、最後の10年間で、だんだんとマクロ経済政策、特に金融政策が世界標準に近づいてきたので、株価も先進国並みになってきた。こうした意味において、日本でのバブルの後遺症は、13年以降のアベノミクスでやっと脱却できたともいえる。その象徴が30年半ぶりの3万円台だ。

 米国の株価は、00年ごろのITバブルの崩壊、08年のリーマン・ショックなどで一時落ち込むことはあっても、その後は回復して、結果として右肩上がりになっている。おそらくきちんとしたマクロ経済政策をとれば、長期にわたる落ち込みはなく、それは日本でも同じであろう。(内閣官房参与・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】今後さらなる増税・緊縮財政がなく、日銀が金融引締に転じない限り、半年以内に実体経済も間違いなく良くなる(゚д゚)!

米国の株価について、きちんとしたマクロ経済政策をとれば、長期にわたる落ち込みはないとしていますが、それには裏付けがあります。

バイデン氏の大統領選における経済政策の公約は、増税によって様々な政策を賄うというものであり、コロナ禍の現在それは明らかに間違いであり、私自身はバイデン政権になれば、米国の景気は低迷し、日本も悪影響を受けることになるのではないかと危惧していました。

しかし、それは杞憂に終わりました。なぜなら、バイデン氏はイエレン氏を財務長官に任命したからです。彼女であれば、きちんとしたマクロ経済政策をとることは明らかだからです。

それを裏付けるように、イエレン米財務長官は12日、オンライン形式で開いた主要7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議で、新型コロナウイルス危機からの脱却へ「今こそ大胆な財政出動に踏み切るときだ」などと主張しました。バイデン米政権は1.9兆ドル(約200兆円)の追加対策を検討するとしています。米国と同様世界屈指の財政出動をしている日本は別にして、特に欧州は景気回復がもたついており、各国にも協調的な追加策を促しました。

イエレン米財務長官

米連邦準備理事会(FRB)前議長のイエレン氏は中銀トップとして繰り返しG7会議に出席してきましたが、今回は財務長官としては初めて参加しました。欧州は新型コロナで再び経済活動の制限を余儀なくされ、景気に停滞感があります。イエレン氏は米国が大型の追加財政出動に踏み切る考えを強調し、各国にも「G7として、現時点でできうる追加的な経済支援策に注力すべきだ」などと訴えました。

イエレン氏は間違いなく、きちんとした財政政策をこれからも展開してくことでしょう。その意味では、日本国内でも、きちんとしたマクロ経済政策を実行すべきと考えている人達の中には、イエレン氏の提言に勇気をもらった人も多いでしょう。

 物価目標に達するには、日銀はさらに金融緩和を実行し政府は積極財政を
 継続すれば良いだけ、そうすれば日本はデフレから完全脱却できる

そうした中で、もし日本が今後景気が低迷することになれば、イエレン氏の提言を実行せずに、異様な経済政策をした場合のみです。たとえば、復興税制のような、コロナ税制を導入し、緊縮財政を実施し、日銀が金融引締政策をするという、まともではない政策を実行した場合です。

ちなみに、もしコロナ税制を導入することになれば、市場は将来を悲観して、日本の株価は確実に下がることになるでしょう。

そのようなことをせずに、物価目標が2%を超えるまで、政府は積極財政を行い、日銀はさらなる金融緩和を実行すれば良いのです。そうすれば、日本は確実にデフレから脱却できます。これを続けるとインフレになりますが、2%を超えてさらにインフレになり、特に物価が上がっても、失業率が下がるようなことがなくなれば、政府は緊縮財政に転じ、日銀は金融引締に転ずれば良いのです。

これ以外のことをすれば、確実に日本はデフレに舞い戻り、デフレスパイラルと円高に悩まされることになります。

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2021年2月20日土曜日

米海軍の太平洋「最恐」兵器?、巡航ミサイル原潜オハイオ―【私の論評】オハイオにも弱点はあるが、それを日本の通常型潜水艦で補えば無敵となる(゚д゚)!


 

巡航ミサイル潜水艦「オハイオ」が米海兵隊の戦闘強襲偵察用舟艇と統合訓練を行う様子=2月、沖縄沖

香港(CNN) 米海軍がこれまで就役させた中で最大の潜水艦「オハイオ」。冷戦期に生まれた同艦は、1回の集中攻撃で十数都市を破壊する火力を備えて実戦投入されたものの、近年は核ミサイルを外して運用されている。 


だが、オハイオが太平洋で活動する「最恐」かつ最も万能な米軍の兵器プラットフォームであることに変わりはないかもしれない。

  バイデン米政権は現在、同盟国や「自由で開かれたインド太平洋」の防衛を重視する姿勢を示しており、海軍兵器でその姿勢を鮮明にしている。 

1月下旬から2月上旬の2週間を振り返ると、米政権は誘導ミサイル駆逐艦に台湾海峡を通過させることで、台湾防衛への変わらぬ決意を表明。同駆逐艦は続けて、南シナ海における中国の領有権主張に対抗するため西沙(パラセル)諸島に向かった。米国はまた、南シナ海での演習に巨大空母を派遣したほか、最新鋭駆逐艦のひとつを日本に派遣した。

 そして先々週には、東アジア地域でオハイオの姿を公開し、排水量1万8000トンの巡航ミサイル潜水艦が沖縄周辺で米海兵隊と共同訓練を行う様子を見せつけた。

 英ロンドンの王立防衛安全保障研究所に所属する海軍の専門家、シドハース・カウシャル氏はオハイオや姉妹艦の「ミシガン」、「フロリダ」、「ジョージア」について、ミサイルと兵士を同時に敵の領域近くまで運べる万能艦だと指摘する。

 この点は中国のような敵国と比較する場合に重要だろう。中国は強力な対艦ミサイル能力を保有するが、対潜防衛力はまだ更新と強化の途上にある。

 「多くの火力を迅速に運搬」 

オハイオ潜水艦は今はもう核ミサイルを搭載していないが、米海軍のすべての潜水艦と同様、原子力を動力とする。現在の呼称は「巡航ミサイル搭載原子力潜水艦(SSGN)」で、原子炉によってタービン2基に蒸気を送り、その力でプロペラを回すことで推進する。 

海軍によると、その航続距離は「無制限」。連続潜航能力の唯一の制約となるのは、乗組員の食料を補給する必要性のみだ。

 オハイオは比較的大型の艦体や動力ゆえに、トマホーク巡航ミサイルを154基も搭載できる。これは米誘導ミサイル駆逐艦の1.5倍以上、米海軍の最新鋭攻撃型潜水艦の4倍近い。

         トマホークミサイルが2018年の試験で米海軍の潜水艦から発射される様子。
         オハイオ級巡航ミサイル潜水艦はトマホーク154基を搭載できる

 トマホーク1基では、爆発力の高い弾頭を最大1000ポンド(約450キロ)搭載可能だ。

 米海軍の元大佐で、米太平洋軍統合情報センターの作戦責任者を務めたこともあるカール・シュスター氏は「SSGNなら多くの火力を迅速に運搬できる」と指摘する。

「154基のトマホークは甚大な打撃を正確に与えることができる。いかなる米国の敵もその脅威を無視できない」(シュスター氏) 

その火力の威力が披露されたのは2011年3月、潜水艦フロリダが「オデッセイの夜明け作戦」で100発近いトマホークをリビア国内の目標に発射した時のことだ。SSGNが戦闘で使用されたのは初めてだった。

 ただ、リビアは中国とは異なる。中国人民解放軍海軍(PLAN)はリビアにはない対潜戦兵器を数多く持ち、その能力を向上させつつある。

 中国は近年、対潜哨戒機やフリゲート艦、攻撃型潜水艦といった増大する海軍戦力に大量のリソースを投入してきた。いずれも敵の潜水艦を撃沈するのが目的だ。

 こうした戦力拡充にもかかわらず、冷戦時代に潜水艦大国でなかった中国は依然として遅れを取り戻す段階にある。しかも、対潜戦では数に加えて経験も必要となる。

 もしオハイオが太平洋のただ中に展開している場合、中国の対潜部隊はより陸地に近い場所で活動するように設計されたため、探知はいっそう難しくなるという。

 ただし陸地に近い場所であっても、オハイオはステルス能力ゆえの優位性を持つと、アナリストらは指摘する。米艦隊の他の攻撃型潜水艦に比べて静粛性が高いことから、陸地に近い海域であっても中国が探知するのは至難の業になりそうだ。

 つまりオハイオなら、内陸部の目標により近いところまで対地攻撃ミサイルを運搬できる。

「SSGNはそのステルス能力のおかげで前方展開して、敵防衛領域の奥深くにある目標を攻撃することが可能だ」(カウシャル氏)

 新たな脅威に適応する オハイオはこれまでに建造された潜水艦の中で屈指の静粛性を誇る。

 1970年代に構想され、大陸間弾道ミサイル「トライデント」を搭載する初の核ミサイル潜水艦として就役したオハイオは、一時は戦略抑止の代名詞だった。 

オハイオ級18隻はいずれも24基のトライデントを装備し、各トライデントにはそれぞれ独立した目標を設定した核弾頭が最大8発搭載されていた。理論上、1隻の潜水艦による1回の発射で旧ソ連の複数の都市を消滅させることも可能だった。

 これらの潜水艦は一度に数カ月連続で潜航するように設計されており、ソ連が核ミサイルで米国の領土を攻撃した場合に浮上して、壊滅的な反撃を加えることを任務としていた。

 海中では深くまで潜航して静かに待機することで、ソ連の監視を困難にした。これにより抑止力としての価値を保っていたと言える。

 しかし、冷戦終結で米ロ間の緊張が和らぐと、これほど多くの弾道ミサイル潜水艦を保有する必要性は薄れた。オハイオ、ミシガン、フロリダ、ジョージアの4隻はいったん退役が決まったものの、海軍はその後、4隻のステルス能力をテロ対策支援に振り向けることができると判断した。

 これはつまり、特殊部隊を収容するスペースをつくることを意味していた。

 SEALなどの海軍特殊部隊員を66人収容できるよう、核ミサイル搭載用のスペースは寝台やバスルームに改装された。 

ミサイル発射管は艦に出入りする潜水士のため、注水や排水ができるロックアウトエリアに改造された。小型潜水艇に乗っての出動も可能だ。

 また改造後の艦内には指揮統制所として使うスペースや設備があり、海中に潜みつつ、付近の海岸での作戦に指示を出すことができる。

 オハイオは4隻のうちで最初に巡航ミサイル潜水艦に改造され、2007年にSSGNとして初の任務に就いた。 

その後はワシントン州のキットサップ海軍基地を拠点に活動し、太平洋のグアム島にある潜水艦基地に前方展開されることが多い。

 太平洋の緊張 

オハイオとその乗組員150人超は先々週、沖縄沖で第3海兵遠征軍の偵察部隊と共同訓練を行った。沖縄を含む島嶼(とうしょ)ラインは「第1列島線」と呼ばれ、中国が太平洋の外海に部隊を展開するために通過しなくてはならない障壁を指す。

 米海軍第7艦隊によって提供された写真には、オハイオが小型艦艇やティルトローター機「オスプレイ」に乗った海兵隊員と連携する様子が写っている。

 オハイオの艦長を務めるカート・バラグナ大佐は声明で、「海兵隊と訓練するたびに我々の能力は研ぎ澄まされる。地域の課題に柔軟に対応し、戦闘で実証済みの能力を展開して、日々の競争や危機、紛争で勝利することができるようになる」としている。

【私の論評】オハイオにも弱点はあるが、それを日本の通常型潜水艦で補えば無敵となる(゚д゚)!

最近では、中国の海軍力が強化されたことを報道する記事は多いですが、それをほとんど無効にしてしまうような米軍の軍事力を示す、上の記事のようなものはあまりみかけません。

そのためでしょうか、多くの人が中国海軍の脅威をことさら煽られてしまう結果になっている点は否めません。無論、中国の軍事力を侮るべきではありませんが、等身大に見るへきです。

そうして、米海軍は未だに中国海軍の攻撃を無効化してしまう能力を持っているのは確かです。例えば、中国の空母や強襲揚陸艦を含めた打撃群が、台湾に侵攻しようとした場合、米国最大の巡航ミサイル原潜オハイオ型一隻で、中国の打撃群を全部撃沈することも可能です。

その後も、台湾付近の海域にとどまり、警戒にあたることも可能です。運悪く人民解放軍が、上陸したとしても、巡航ミサイルオハイオが台湾を包囲して、上陸した軍の補給を絶てば、上陸部隊はお手上げになります。

このような強力な通常兵器巨の攻撃力を備えた大潜水艦を米国は、4隻も保有しているのです。そうして、他の原潜も、その攻撃力・破壊力はそれぞれに凄まじいものがあります。米軍はこうした原潜を70隻以上も所有しています。そうして、米軍の最大の強みは、世界一の対潜哨戒能力です。

こうした強力原潜と、優れた対潜哨戒能力により、米海軍は中国海軍を未だに圧倒しています。

仮に米海軍と、中国海軍が武力衝突をすれば、初戦で中国の艦艇は潜水艦も含めてほとんど撃沈されてしまうでしょう。

中国海軍潜水艦隊の主軸を務める「039」型 画像:中国国防部

ただし、米軍最恐兵器といわれる、オハイオ級原潜にも弱点はあります。これは、オハイオ級原潜だけというよりは、すべての原潜の弱点ともいえます。

原子力は基本的には蒸気機関です。原子力の熱源で高温高圧の蒸気を発生させ、その蒸気から動力を取り出します。蒸気でタービンを回転させる事により取り出すのですが、回転数が高すぎるので、減速させる必要があります。その減速機の歯車が擦れる音が大きく、外に漏れる音源となります。

更に、原子炉に冷却水や、蒸気の元となる水を送り込むポンプの音があります。これらは装置類の工作精度や設計に依存するところもありますが、低騒音にするには高い技術とノウハウが必要です。

それと配管を冷却水や蒸気が流れる音もします。勿論どちらも今はそれなりの対策がされているのですが、それにしても構造的な問題なので、どうしてもそれがネックになります。

そのため原潜の場合は、現状ではどうしても原子力を使わない通常型潜水艦には、静寂性(ステルス性)で劣るのです。

上の記事では、「米艦隊の他の攻撃型潜水艦に比べて静粛性が高い」としていますが、米国が所有しているのは例外的にスウェーデンから乗組員ごと導入た通常型潜水艦一隻を除いて、すべてが原潜です。

これは、正確に述べると、「オハイオ級原潜は、米艦隊の他の攻撃型原潜に比べて静寂性が高い」ということです。

ただし、それにしても相対的には静寂性が高いので、対潜哨戒能力が低い中国には探知されにくいのは事実です。どの程度発見されにくいのは、軍事機密なので、はっきりしたことはわかりませんが、たとえば台湾近海で頻繁に動き回れば、中国海軍に探知される可能性はあります。

予め一箇所に潜み、攻撃の必要性があれば、攻撃してすぐに移動して、また潜むということを繰り返すというのであれば、中国海軍はなかなか発見できないでしょう。

そのため、台湾近海を自由に動き回り、情報を収集するという任務などには不利です。

そういいながら、中国の潜水艦はかなり騒音が出て、米軍にはすぐに探知されやすいので、これが米軍を圧倒的に有利にしています。

昨年の5月に、太平洋艦隊所属の潜水艦の少なくとも7隻が西太平洋派遣されたことを米軍の異例の公表からも、米軍は有事の時には、特に海洋での有事の時には最初に潜水艦隊を用いる戦術に変えたと認識すべきです。私自身は、ずっと前から変えていると思います。海洋で、わざわざ初戦で空母打撃群を派遣して、中国海軍に格好の的を提供する必要性などありません。

ただ、手の内をわざわざバラす必要もないので、黙っていただけだと思います。ただ、コロナ禍に中国につけこまれることを防ぐため、わざわさ公表したのです。この公表の裏には、以上で述べたことを、それとなく中国に伝える目的もあったと思います。

ちなみに、日本は米国とは異なり、すべての潜水艦は通常型です。特に、最新型はリチュウム・バッテリーを動力源として、静寂性というか、ほとんど無音です。さらに、最新型以前の潜水艦では、2週間連続して水中を航行することができたのですが、最新型ではそれをはるかに上回るそうです。具体的な数値は、これまた軍事秘密ですが、はるかに上回ることは確認できます。

最新型以前の潜水艦でも、静寂性はかなり高いので、日本の潜水艦のほぼすべてを中国側探知できません。そのため、中国が尖閣諸島に武力侵攻してきた場合、潜水艦隊を派遣すれば、中国の空母や強襲揚陸艦を含む打撃群を撃沈することができます。

運悪く上陸されたにしても、潜水艦隊で尖閣を包囲して、補給を絶てば上陸した人民解放軍もしくは民兵はお手上げになります。

ただ、日本の潜水艦は通常型であり、しかもオハイオのように攻撃力は高くはないという弱点があります。しかし、静寂性(ステルス性)においては世界一です。

攻撃力の高い米原潜と、静寂性の高い日本の通常型潜水艦が組めば、世界最強の潜水艦隊ができあがることになります。

日本の潜水艦が、静寂性を活用して、自由に動き周り情報を収集し、米原潜はその情報を活用して敵を攻撃するなどの協同が理想的です。

世界最高水準の潜水艦開発・探知技術を持つ日米にとって、ノイズの多い中国製潜水艦の追跡は比較的容易です。一方中国はこの分野でまだ遅れを取っており、(対潜)哨戒機の配備数最近は増やしていますが、日米に比較すると決定的に少ないです。

日米は中国潜水艦の音紋(スクリューが出す個別の雑音)もすべて把握し、加えて米軍は日本列島~台湾~フィリピンにSOSUS(潜水艦音響監視システム)までも構築しているため、日米にマン・ツー・マンで追尾されていて、ほぼすべての行動が把握されているといっても過言ではない状態です。

無論、日米は以上を意図して、意識して、合同訓練を行っていることでしょう。ただ、中国が尖閣を何度も挑発してもこれを放置すれば、日本が無敵であるはずの潜水艦を出してくることはないという間違った認識を与えるかもしれません。

日米合同演習

こうしたことを防ぐためにも、日米は尖閣で合同で潜水艦隊による尖閣諸島包囲演習を行うべきです。

日本の潜水艦が情報収集を行い、米軍のオハイオ級の原潜で仮想的を攻撃する演習などを尖閣諸島付近で大々的に行えば、中国海軍はパニックに陥るでしょう。

それどころか、南シナ海の中国軍基地も維持できなくなると懸念するようになるでしょう。是非実現すべきです。

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2021年2月19日金曜日

習近平も青ざめる…中国共産党「内部崩壊」を指摘した“ヤバすぎる論文”の内容―【私の論評】日本は、アジアにおいて強い存在感を示し、対中政策に関しては米国を牽引していくくらいのリーダーシップを発揮すべき(゚д゚)!

 習近平も青ざめる…中国共産党「内部崩壊」を指摘した“ヤバすぎる論文”の内容

中国は、「内ゲバ」によって自爆する


 習近平を「狙い撃ち」した匿名論文

匿名の筆者が米国の対中戦略を提言した1本の報告書が、世界で大反響を巻き起こしている。米国は「中国共産党ではなく、党内で批判勢力との亀裂を深める習近平総書記に攻撃の的を絞るべきだ」と主張しているのだ。中国は当然、猛反発した。米国はどうするのか。

「より長い電報:米国の新たな対中戦略に向けて」と題された報告書は1月28日、米国の超党派シンクタンクである大西洋評議会から発表された(https://www.atlanticcouncil.org/content-series/atlantic-council-strategy-paper-series/the-longer-telegram/)。本文は85ページ。プロでなければ書けないような図表(別掲)と詳細な注釈付きだ。


この表題を見て、ピンときた読者も少なくないだろう。

このタイトルは米国の外交官、故・ジョージ・ケナンが1946年、国務省に送った「長い電報」から援用している。ケナンは電報でソ連に対する「封じ込め戦略」を提唱し、その後の米ソ冷戦を戦う外交政策の基礎を作った。今回の「より長い電報」は、米中新冷戦での対中戦略を提言している。

同じ論文の要約版も同日、米国の政治メディア「ポリティコ」に掲載された(https://www.politico.com/news/magazine/2021/01/28/china-foreign-policy-long-telegram-anonymous-463120)。こちらも匿名である。ただ、タイトルは「中国の台頭に対抗するために、米国は習氏に焦点を当てよ」と、より刺激的だ。

筆者は不明だが、ポリティコの紹介文によれば「中国問題を扱うのに、十分な専門性と経験を持つ元政府高官」とされている。実名を明かせば、外交サークルでは、だれもが知る人物かもしれない。現実の米中外交に悪影響を及ぼすのを懸念した可能性もある。

 共産党内部の情勢を的確に分析

論文はいったい、どんな内容なのか。ポリティコ版を基に紹介しよう。
〈21世紀に米国が直面している、もっとも重要な挑戦は、国家主席であり中国共産党総書記の習近平氏が率いて、ますます全体主義を強めている中国の台頭である。中国の経済力や軍事力、技術革新のスピード、米国とは根本的に異なる世界観のために、中国の台頭は米国のあらゆる国益に深刻なインパクトを与えている〉

〈習氏は中国を伝統的なマルクス・レーニン主義に戻し、毛沢東主義者のような個人崇拝を促し、政治的ライバルを組織的に排除してきた。市場改革は頓挫し、民間部門はますます党の支配下に置かれている。自分の権力に対する挑戦は国の内外を問わず、民族的国家主義で対抗した。手に負えない国内の少数民族に対する扱いは、ジェノサイド(大量虐殺)に近い〉

〈習氏の下での中国は、鄧小平や江沢民、胡錦濤など過去の指導者とは違って、もはや現状維持勢力ではない。この国は、国際関係論の世界で言う修正主義勢力、すなわち自分を取り巻く世界を組み替えようと決心した国家になってしまった。習氏は、もはや米国だけの問題ではない。民主的な世界全体に対する深刻な挑戦なのだ〉

〈今後30年間にわたって、習氏の中国に対抗する米国の政策を作るために、統合された超党派の国家戦略を構築するのは、いまや緊急の課題である。米国はケナンの封じ込め戦略でソ連に対抗したが、中国に対しては、何もない。これは国家的な責任放棄だ。貿易戦争による経済改革促進から、中国共産党の打倒を目指す全面的な体制変革まで、さまざまな議論があるが、いったい米国の目標は何か〉
〈ソ連は自らの矛盾のために自己崩壊した。だが、中国は「何がソ連の失敗だったか」を学んでおり、はるかに利口だ。「中国のシステムは不可避的に内側から崩壊する」と仮定するのは、非常に危険である。9100万人の党員を抱える中国共産党を打倒する、という政治的スローガンにふけるのは、戦略的に自滅する。それでは、習氏が政治的エリートと大衆を団結させてしまう〉

〈中国共産党全体を相手にするのではなく、もっと狭く、習氏個人に焦点を絞った戦略が達成可能な目標を提供する。彼の独裁的リーダーシップを一層、大胆にさせるのではなく、弱体化させる政策に絞るのだ〉

〈ケナンはソ連がどう内部で動いているのか、を分析した。同じことが中国にも必要だ。政治的現実を見れば、中国共産党は習氏の指導力と壮大な野心をめぐって、とてつもなく分裂している。習氏の政治路線のために、上級党員は大変な困難に直面し、果てしない忠誠を求める彼の要求に怒っている〉
〈彼らは自分自身の命と家族の将来生活に不安を抱いている。習氏への深い疑念を示す例は、数え切れないほどだ。中でも、習氏が断行した反汚職キャンペーンにもかかわらず、習氏の家族と政治的インナーサークルの人々が貯め込んだ富に対する国際的メディアの報道は重要である〉

〈内部の亀裂があきらかなのに、共産党全体をターゲットに据える戦略は洗練されているとは言えない。共産党に焦点を絞った戦略は、毛沢東以降、習氏まで5人の指導者の下では、米国と一緒に仕事をしていくのが可能だった事実を無視している。彼らが指導した中国は、自分たちが思うように国際秩序を作り直すのではなく、既存の秩序に参加することを目指していたのだ〉
〈中国指導層内部の亀裂に焦点を合わせた戦略は、非常に重要だ。米国の指導者たちはしばしば、中国共産党政府と中国国民を区別してきた。ワシントンはその先に進むべきだ。党エリートと習近平を区別するように、政府と党エリートも区別しなければならない。この点は、もっと穏健な習氏の後継者が姿を表してくるにつれて、一層重要になる〉

〈彼らの意思決定を変えるには、彼ら内部の政治的枠組みを理解し、操作し、時間をかけて、彼らの政治的かつ戦略的計算を変えていく必要がある。中国の振る舞いを変えようとする米国のすべての政策は、こうした現実の下で展開されるべきだ。そうでなければ、成果を生まない。この戦略は長期になる。習氏のような指導者が中国の政治機構に影響力を及ぼしてきた時間軸の下で、初めて機能するのだ〉

〈中国共産党は「戦争でもっとも重要なのは、敵の戦略を攻撃することだ」という孫武(注・孫子)の格言をよく理解している。米国もそうあるべきだ。米国の戦略は主要な同盟国と完全に調整されていなければならない。米国が勝利するためには、彼らが必要である。2020年代を通じて、中国と米国の戦力格差は縮小してきたが、米国の戦力が同盟国によって強化されるのであれば、そうした流れを変えることができる〉
以上で、論文が中国をどのように変えようとしているのか、あきらかと思う。

ようするに、習氏と不満分子との亀裂を深めて、習氏を権力の座から退場させる。そして、あわよくば、米国と良好な関係を築ける穏健な後継者の登場を促そう、としているのだ。ターゲットは中国共産党ではない。習氏その人である。

 共産党の「内部対立」を利用する

論文が発表されると、インドやパキスタン、英国、シンガポールなど英語圏で賛否両論を含めて、議論を巻き起こした(https://www.atlanticcouncil.org/blogs/new-atlanticist/the-world-reacts-to-the-longer-telegram/)。英フィナンシャル・タイムズは著名コラムニストのマーチン・ウルフ氏がコラムで取り上げ、習氏の独裁体制に対する評価に同意しつつも「論文が掲げた目標は達成できない」と指摘した。中国の経済的発展が目覚ましく、かつ潜在的な可能性にも富んでいる、という理由からだ(https://www.ft.com/content/83a521c0-6abb-4efa-be48-89ecb52c8d01)。

当の中国は、外務省報道官が記者会見で筆者が匿名である点をとらえて「闇の動機を持ち、臆病者」と批判し、論文を「米中新冷戦やイデオロギー対立を引き起こそうとするのは、時代の流れと人々の意思に反する」と非難した(http://www.fmcoprc.gov.mo/eng/zxxw/fyrth_1/t1850326.htm)。

一方、米国では、ダン・サリバン上院議員(共和党)が上院でのスピーチで「完璧ではないとしても、これまで私が読んだ中で最良の戦略を提示している。民主党であれ共和党であれ、みんなにこれを読んでほしい。対中政策が成功するためには、超党派が必要であり、数十年にわたって実行されなければならない」と語った(https://www.atlanticcouncil.org/blogs/new-atlanticist/the-world-reacts-to-the-longer-telegram/)。

共和党のダン・サリバン上院議員

日本との関連で注目されるのは、論文が台湾と並んで、尖閣諸島を米国の「核心的利益」の1つに位置付け、中国が越えてはならない「レッドライン」として例示した点だ。ここは力強い。論文は次のように書いている。
〈米国は中国のどんな行動を抑止するのか、また抑止が失敗した場合、どんな行動が米国の直接介入を招くかについて、あきらかにしておかなければならない。そんな行動について、中国が注意するように、高度な外交チャンネルを通じて、あいまいさを残さず、北京に通告しておくべきだ。…それには、尖閣諸島に対する中国のいかなる攻撃も含まれる〉
私は「習近平という独裁者はエリート党員との内ゲバで倒れる」という見方に賛成する。これは古今東西、左翼崩壊の一般理論と言ってもいい。独裁者はいかに政治をもっともらしく語ったとしても、自己保身が究極の目的である。同じように、普通の党員も出世すればするほど、自己保身が最大の行動原理になる。

幹部党員たちが習氏に不満を抱いている事実は、昨年8月に中国共産党から党籍剥奪処分を受けた党中央党校の蔡霞元教授が、英ガーディアンのインタビューに答えた中で、明らかにしていた(https://www.theguardian.com/world/2020/aug/18/china-xi-jinping-facing-widespread-opposition-in-his-own-party-claims-insider)。

お互いの自己保身が調和している間は、なんとか均衡を保てるが、やがて崩壊する時が来る。独裁者は1人しか存在できないからだ。1人、2人と消えていき、最後の2人に近づけば、互いの潰し合いが避けられなくなる。

すでに、そのプロセスは始まっているかもしれない。たとえば、習氏の側近中の側近と言われた王岐山国家副主席の部下たちは粛清され始めた(https://www.epochtimes.jp/p/2020/10/63035.html)。論文が習氏に焦点を合わせたのは正解、と思う。

【私の論評】日本は、アジアにおいて強い存在感を示し、対中政策に関しては米国を牽引していくくらいのリーダーシップを発揮すべき(゚д゚)!

第二のX論文の著者については、いまのところ、何の情報もありませんが、トランプ政権のときにそれに向けての動きがありました。それについては、このブログにも掲載したことがあります。その記事のリンクを掲載します。
米国務省の凄腕女性局長が「中国封じ込め宣言」 新冷戦時代の対中戦略を策定中―【私の論評】日本も文明論の次元で中国をとらえるべき時がやってきた(゚д゚)!
キロン・スキナー氏

この記事は、2019年6月18日のものです。詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下にこの記事から一部を引用します。
     米国務省のキロン・スキナー政策企画局長の名前を知っている読者は、ほとんどいないと思う。

 シカゴ出身の黒人女性58歳。生粋の共和党員である。米ハーバード大学で国際政治学博士号取得。昨年8月に現在のポストに就くまでは、私立の名門、カーネギー・メロン大学教授(国際関係論)を務めた。

 スタンフォード大学フーバー研究所主任研究員、ニュート・ギングリッチ元下院議長の外交アドバイザー、ブッシュ政権(子)の国家安全保障教育委員会(NSEB)メンバーなどを歴任。同ブッシュ政権のコンドリーザ・ライス国務長官との共著『レーガン大統領に学ぶキャンペーン戦略』は、共和党選挙関係者の間でバイブルとされている。

 このような大物を単なる局長であるが、長官直轄の政策企画局長に任命したのはマイク・ポンペオ国務長官だ。

 この人事は、同氏の慧眼に負う。その証しといえるのが、4月29日にワシントンで開催されたニュー・アメリカ(新米国研究機構)主催の「安全保障セミナー」でのスキナー氏の基調講演である。

 「中国はわれわれにとって、長期にわたる民主主義に立ちはだかる根本的脅威である。中国は経済的にもイデオロギー的にも、われわれのライバルであるのみか、数十年前まで予想もしなかったグローバル覇権国とみることができる」

 ドナルド・トランプ米政権が、中国を覇権抗争の相手国と見なしていることを明確にしたのだ。

 一方、「今後、米国史上初めて、白人国家ではない相手(中国)との偉大なる対決に備えていく」と発言、「非白人国家」という人種の違いに言及したことで物議を醸した。

 同発言への批判は別にして、筆者が注目したのは「米国務省は現在、中国を念頭に置いた『X書簡』のような、深遠で広範囲にまたがる対中取り組みを検討中」と語ったことである。

 言うまでもなくこれは、米ソ冷戦時代に対ソ連封じ込め戦略を打ち出した初代政策企画局長のジョージ・ケナン氏の『X論文』を念頭に置いたものだ。

 要は、新冷戦時代のための対中戦略を策定中と宣言したのである。

 想起すべきは、昨年10月4日のマイク・ペンス副大統領による対中“宣戦布告的”講演である。

 再びペンス氏は24日、ウッドロー・ウィルソン国際センターで講演する。米中和解からほど遠い内容になるはずだ。

 ちなみに、スキナー発言を紹介した新聞は、「産経新聞」(5月31日付)と、英紙フィナンシャル・タイムズ(6月5日付)の2紙だけだった。

 以上のことから「より長い電報:米国の新たな対中戦略に向けて」と題されたこの報告書が、キロン・スキナー氏によるものかどうかは、断定はできませんが、そうである可能性は十分にあります。これについては、いずれ明らかにされるでしょう。

当時は、米国と中国の対峙は文明論的に言って、不可避とされていましたので、私もこの記事の論評から文明論的な観点から、サミュエル・ハンチントンの考えを参考にして論評しました。興味のある方はぜひご覧になってください。

まだ、この報告書は全部読んでいませんが、それでもいわゆる文明論はあまり論じられていないことがわかります。しかし、これは当然なのかもしれません。中国共産党は中国文明の破壊者であり、古代中国とは何の関係もありません。

文明論の文脈でいうと、西欧諸国の民主主義を育んできた文化と、文化などとは縁遠い中国共産党の全体主義による、西欧民氏主義への挑戦ということはいえるかもしれません。

バイデン氏はCNNの生番組で「私は彼(習近平)が香港やウィグル、チベットでやっていること、台湾の1つの中国政策に対して触れるつもりはない」「それぞれの国は独自の文化を持っているから、その国の指導者はそれに従うべきだ」と述べています。

要はウィグルなどでの中国政府の残虐行為は「文化の違い」ということなのでしょうか。これは、個人の見解なのか、それともバイデン政権の見解なのか、良く理解できませんが、いずれにしても馬鹿げた発言であることには変わりありません。

このようなこともあるので、この論文では、いわゆる文明・文化は強調しなかったのかもしれません。

この論文で、最も注目すべきは、ロシアを中国同様に戦略的競争相手とした点や、中国共産党を攻撃目標としたトランプ政権を批判し、ロシアと中国の、そして習近平と中国共産党のデカップリングを図るべきと主張している点です。

また、中国には北朝鮮、パキスタン及びロシアぐらいしか信頼できる国はいないですが、米国には多くの同盟国があることが米国の強みだと国際的枠組みの重要性を強調していることです。

同論文に対しては、上の記事にもあるように、2月1日の中国解放軍報は、「新たな冷戦思考」に基づくイデオロギー対立をあおるものであり、時代の潮流に逆行し、一般的ではないと批判しています。

更には、米国安全保障専門誌であるThe National Interest誌では「習近平と共産党の間に亀裂など生じるはずもない。中国の高圧的な姿勢は習近平だけのものではなく、長期間続く」と批判する論文が掲載されています。

しかしながら、最近改正された中国国防法を見ても、習近平の権威が強化されていることは間違い無いです。同法では、習近平の、新時代の中国的価値を持つ社会主義思想を国防活動の指導的思想とし、中央軍事員会主席(習近平)が国防任務全般を調整、責任を負う、と規定されています。

中国人民解放軍は、国民国家の軍ではなく共産党の軍、もっといえば共産党の私兵であることに加え、習近平の軍であることが明確にされたと言えます。

2月4日に、バイデン大統領は「世界における米国の位置(America‘s Place in the World)」という外交方針に関する演説を行いました。この中で、トランプ前大統領の「アメリカ第一主義」からの変更という方針を示しました。

パートナー(カナダ、メキシコ、イギリス、ドイツ、フランス、NATO、日本、韓国、オーストラリア)との協力強化と国際的枠組みへの復帰を明確にしています。ロシアに対し、志を同じくする国と協力し、新たなアプローチをとる、とした点が、中国とロシアのデカップリングを主張する大西洋評議会論文と一致します。

北大西洋評議会の匿名論文が、ジョージ・ケナンのいわゆる「X論文」と比肩し得る影響力を獲得し、第2のX論文となるのかどうか、今後のバイデン政権の外交政策への影響に注目されます。

ジョージ・ケナン氏

今後注目すべきは、バイデン政権の対ロ政策がどの様に変化するか、ナワリヌイ氏の拘束がその政策にどのような影響を与えるかでしょう。

中国に対しては、国益が合致する範囲で協力するとしていますが、その枠組みとして環境問題以外に何が含まれるかということでしょう。大西洋論文が主張する習近平と共産党のデカップリングは、どのような方策であれ、中国が態度を硬化させる可能性があり、実施することは困難にもみえます。

ただ、それは中国を他国と同じようにみているからであって、中国ほど他国の関係においても、国内の状況が大きく反映される国はありません。そもそも、中国においては外交はあまり重視されていません。それよりも、自国内部の都合が優先されるのです。ここに、習近平と共産党あるは、他派閥とのデカップリングのチャンスがあります。

日米電話首脳会談において「自由で開かれたインド太平洋」という概念が共有されたことは、日本外交の勝利であったと言えます。さらには、2月3日の日英2+2で、「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向け協力することがうたわれたことも同様です。

しかしながら、日米英の国益が完全に一致しているわけではありません。ただし、このブログでも以前掲載したように、日英はユーラシアというランドパワーに対峙している点では完全に一致をみています。それぞれの国の政策に落とし込んでいく段階で齟齬が生じる可能性は否定できないとはいえ、対峙している対象が同じという点では心強いです。

バイデン政権は同盟国やパートナー国との協力を優先するとしています。これは、逆の見方をすれば、トランプ政権のように米国一国でも、中国と対峙していく気はないと表明しているともいえます。

日本政府としてはバイデン政権の対中政策に積極的に関与するだけではなくアジアにおいては英国とともに、米国よりもより強い存在感を示し、対中政策に関しては米国を牽引していく、くらいのリーダーシップを発揮していくべきです。

実際、「インド太平洋地域の平和と安定」においては、当初は安倍総理がこれを主張し、トランプ政権を牽引しました。Quad(日米豪印)についても、安倍総理が最初に主張したものです。そうして、これにいずれ英国も参加しそうです。対ロ政策については、北方領土問題が置き去りになることのないような事前調整が求められます。

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