2021年8月8日日曜日

五輪後の「対中包囲網」強化へ 米国務長官「中国による人権侵害に『深刻な懸念』」 北京五輪の是非にも注目 日米外相会談―【私の論評】コロナウイルスの「研究所流出説」が明らかになれば、中国は五輪開催どころではなくなる(゚д゚)!

五輪後の「対中包囲網」強化へ 米国務長官「中国による人権侵害に『深刻な懸念』」 北京五輪の是非にも注目 日米外相会談

アントニー・ブリンケン米国務長官

 アントニー・ブリンケン米国務長官が、東京五輪閉会後の「対中包囲網」強化に向けて動き出した。東南アジア諸国連合(ASEAN)地域フォーラム(ARF)閣僚会議で、中国の人権弾圧や軍事的覇権拡大を厳しく批判したうえ、日米外相電話会談で、日米同盟の強化や「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向けた連携を再確認したという。

 「中国によるチベット自治区や香港、新疆ウイグル自治区での人権侵害に『深刻な懸念』を表明し、南シナ海での挑発行為の停止も求めた」

 米国務省は6日、日米中韓やASEAN、欧州連合(EU)など計27カ国・機構が同日、オンライン形式で開催したARF閣僚会議で、ブリンケン氏が発言した内容をこう発表した。

 「平和の祭典」である東京五輪が終わると、国際社会では、半年後に迫った「北京冬季五輪」の是非が注目される。

 欧米の議会では、中国当局によるウイグルでの人権弾圧を「ジェノサイド(民族大量虐殺)」と認定する決議が相次いで出ており、「外交的ボイコット」や「開催地変更」を求める意見も続出している。

 ASEAN諸国では、ベトナムが中国に厳しい立場であるのに対し、カンボジアなどは親中姿勢が目立つなど、中国への態度は一枚岩ではない。

 ブリンケン氏の発言は、欧米と東南アジア諸国の状況を踏まえて、「対中包囲網」強化を狙ったものとみられる。

 ARF閣僚会議の途中、茂木敏充外相とブリンケン氏による日米外相電話会談が約30分間行われた。日米同盟の強化や、「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向けた連携が再確認された。

 この中で、ブリンケン氏は、日本が「安全で安心な東京五輪・パラリンピックの開催」に取り組んでいるとして「感謝の意」を表明した。

【私の論評】コロナウイルスの「研究所流出説」が明らかになれば、中国は五輪開催どころではなくなる(゚д゚)!

上の記事では、触れられていませんが、「対中包囲」の有力な根拠となるのが、いうまでもなく、コロナです。武漢でコロナ感染の危機を李医師が報告したにもかかわらず、中国共産党はこれを隠蔽しました。

李文亮氏

中国共産党がこれを隠蔽せずに、早い時期に対処していれば、世界はコロナ感染症によるパンデミックには見舞われなかったかもしれません。うまく対処していれば、武漢市内だけの感染ですんだかもしれません。

最悪でも、中国国内の一部の感染で終わったかもしれません。しかし、中国共産党はこれを隠蔽、それがパンデミックのきっかけとなりました。

米ジョンズ・ホプキンス大学の集計によると、新型コロナウイルスの世界の累計感染者数が4日午後(日本時間5日朝)、億人を突破しました。1月下旬に1億人を超えてから半年余りで倍増しました。死者数は約425万人に上ります。

その後各地で変異株がみられていますが、コロナウイルスに限らず、ウイルスそのものが、時とともに変異するものであり、コロナウイルスもその例外ではありません。すべては最初は武漢から伝播したものであることには違いありません。

さらに、最近ではコロナウイルスの「研究所流出説」が有力になりつつあります。これは、昨年は非科学的であるとの批判があり、多くの科学者が口をつぐんでいたのですが、このブログでも掲載したように、「ドラステイック」という素人集団が、「研究所流失説」を否定できない証拠を見出し、これを発表したことがきっかけとなり、各方面で追求が進んでいます。

武漢ウイルス研究所

2日には、米下院外交委員会ナンバー2で共和党のマイケル・マコール議員が報告書を公表した。2019年9月と10月の衛星写真で武漢ウイルス研究所周辺の病院に集まる人が急増している様子や、同年9月12日深夜に研究所のウイルスデータベースが突然削除されたことなどを指摘しており、初症例を「19年12月」とする中国の見解と食い違っています。

この報告書の詳細については、以下のリンクをご覧になってください。
「コロナは武漢研究所から流出」米共和党が衝撃の報告書 ロイター報道 識者「バイデン政権と中国側の“談合”を強く牽制」―【私の論評】Intelligence(諜報活動)はもう、専門家だけの独占領域ではなくなった。変化を起こすチャンスは誰でもある(゚д゚)!
これとは別に、中国の武漢ウイルス研究所が扱っていた膨大なデータを米情報機関が入手、解析を進めているとCNNが報じています。

情報機関は、武漢のウイルス研究所が扱っていたウイルスのサンプルの遺伝子情報を含むデータを入手したとみられます。入手方法や時期は明らかになっていませんが、CNNテレビは、ウイルスの遺伝子情報を解析する機器は通常、外部サーバーとつながっていることが多いことなどから、ハッキングで得た可能性があるとしました。

ウイルスの遺伝情報、特に変異の解析をすれば、かなりのことがわかります。昨年このブログにも掲載したように、遺伝子の変異情報から、各国のコロナ対策の可否までわかる可能性が高いです。「研究所流出」に関しても解析できる可能性が高いです。

武漢ウイルス研究所をめぐっては、世界保健機関(WHO)の調査団が今年になって入ったのですが、まともな成果は得られませんでした。

中国がデータの提供を拒否する中、バイデン政権は5月下旬、新型コロナウイルスについて研究所からの流出説と動物を介した感染説があるとして、追加調査の上で「90日以内」に結果を報告するよう情報機関に指示しました。結果の公表期限が今月24日です。

どのような報告書になるのかはわかりませんが、いずれにしても「研究所流出」を覆すものにはならないでしよう。

トランプ氏は6月5日、東部ノースカロライナ州で開かれた共和党集会で演説し、武漢の研究所流出説が再び真実味を帯びてきていると指摘しました。「中国は彼らがもたらした死と破壊の代償として10兆ドルを、アメリカ、そして世界に対して支払うべきだ」と述べたほか、制裁として中国製品に100%の関税を適用すべきだとの考えを明らかにしました。

トランプ氏

ウイルスの流出は意図的ではなくとも、公表遅れやデータ隠蔽が確認されれば、賠償請求や制裁につながりかねず、五輪ボイコット論もさらに補強されることになるでしょう。米中対立のレベルを超え、『世界vs中国』の構図になってもおかしくないです。

中国は冬季五輪開催どころではなくなるかもしれません。日本では相対的にかなり死者が少なかったため、なかなか想像しにくいことかもしれませんが、死者の多かった国々では、中国に対する恨みつらみは相当なものだと思います。世界中から憤怒のマグマが湧き上がり、中国共産党は、そのマグマをそらすこともできず、まともに浴びることになるかもしれません。

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2021年8月7日土曜日

対中政策として日本はバイデンに脱保護主義求めよ―【私の論評】米国が経済安全保障という観点から、中国に制裁を行うのは同盟国には異論はないが、保護主義に走るのは筋違い(゚д゚)!

対中政策として日本はバイデンに脱保護主義求めよ

岡崎研究所



 7月17日付の英Economist 誌は、「バイデンの新しい中国ドクトリン。その保護主義と、米国か中国かの選択をせまるレトリックは、米国を害し同盟国を遠ざける」との社説を掲載している。

 長い間、米国の楽観主義者たちは、世界経済に中国を歓迎することは、中国を「責任ある利害関係者」にし、中国に民主化をもたらすと考えてきた。しかし、現実は、その期待を裏切った。トランプ政権において、既に米中対立は、貿易や技術を通じて始まっていたが、バイデン政権は、米中対立を、民主主義対独裁主義という政治システムないしイデオロギーの闘争にしている。これを、エコノミスト誌は、「トランプとバイデンはニクソン訪中後の50年で最も劇的な対中外交の転換をもたらしている」と位置付ける。そして、その基本方針を是認しながらも、詳細には幾つか問題があると指摘する。

 エコノミスト誌の社説は、バイデン政権の対中政策に関連して、主として労働組合に配慮するバイデン政権の貿易に関する保護主義を批判したものであり、適切な論を展開している。貿易面で保護主義を実施しながら、米中対立で米国の側に立つように同盟国や新興アジア諸国を説得していくのは難しいのではないかとのこの社説の論旨をバイデン政権はよく考えてみるべきであろう。

 オバマ政権が締結し、アジアにおける貿易の自由化その他に大きな影響を与えるはずであったTPP(環太平洋パートナーシップ) をトランプは拒絶してしまったが、日本が努力して部分的に環太平洋パートナーシップに関する包括的および先進的な協定(CPTPP)として復活させた。今やこれに英国も加入の道を探っている。これには台湾も経済地域として条文上参加できることになっており、それが実現すれば、台湾の国際的地位の向上や経済面での良い効果が見込まれる。米中対立の中で、台湾は米ソ冷戦時代のベルリンに似たような重要性を持っているのであるから、バイデン政権はこの問題をもっと真剣に検討すべきであると思われる。

 バイデン政権の対中政策には中国の国際法を無視した行動を看過すべきではないと考えるので、全体として賛成であるが、エコノミスト誌の社説が言うように詳細なところで効果的ではないところがある。信頼されている同盟国として、日本も、米国には率直な意見を述べていくことが望ましいと思われる。

 中国の台頭は、少子化、高齢化の人口上の問題、水の枯渇や大気の汚染などの環境問題があり、これまでのように順調にいくとは思えない。対外的には習近平は早々と鄧小平の「能ある鷹は爪を隠す」政策を放棄し、国際的に対外強硬路線を打ち出しているが、結局のところ、自ら中国を取り巻く国際環境を悪くしているようである。

【私の論評】米国が経済安全保障という観点から、中国に制裁を行うのは同盟国には異論はないが、保護主義に走るのは筋違い(゚д゚)!

保護主義とは、外国から輸入する商品に関税をかけたり、商品の輸入の量を制限したり、輸入時の手続きや検査を厳しくして、実際に輸入する量を制限したりして(非関税障壁といわれる)、自由な貿易を制限をすることです。 自国の産業・企業の保護や、貿易赤字を解消する目的で行われます。



保護主義のメリットとデメリットを以下にあげます。

〈保護主義のメリット〉

・国内産業の保護・育成
安い外国製品との競争から守られるので、その産業が成長します。また、高い品質の製品を外国から買うだけでは、いつまでも国内産業は技術発展しません。
・雇用の増加
保護された産業が成長すると、人を雇います。働く人が増えれば、税金を収め国も豊かになります。
・貿易赤字の減少
貿易で、輸入額>輸出額だと貿易赤字となります。保護貿易で輸入が減れば、貿易赤字の減少につながります。
〈保護主義のデメリット〉

・他国から非難される
関税を上げると、その商品を多く輸出していた国は儲からなくなるので、非難されます。
・制裁や報復を受ける
保護貿易の理由を説明しても納得してもらえない場合、他国からもお返しで関税アップなどの報復を受けます。
・貿易摩擦の発生
お互いに関税をアップし続け、それがエスカレートしてしまい、他の分野にも悪影響を及ぼしてしまう貿易摩擦・貿易戦争につながる可能性があります。
・外国の良い商品が買えない
国民は、安くて品質の良い海外製品を購入することができません。
・外国へ商品を売りにくくなる
外国からの報復で、海外へ売る時に高い関税をかけられますので、商品を売りにくくなります。
以上からみて明らかなように、発展途上国などの場合は、保護主義にはメリットがあり、さらに保護主義に走っても他国から一定の理解を得やすいといえます。

先進国の場合は、保護主義にはデメリットのほうが多く、さらに保護主義に走れば、他国からの反発をくらいやすいといえます。

米国のように自由主義を標榜する国が、保護主義に走れば、他国、特に先進国からは、反発をくらうのは必至です。

バイデン米大統領は4月28日の施政方針演説で「米国人の雇用を生み、米国でつくられた米国製品を買うのに米国人の税金を使う」と述べ、保護主義的な姿勢を鮮明にしました。中国の通商問題に対処するとしつつも、具体的な政策に踏み込みませんでした。

施政方針演説におけるバイデン大統領

バイデン氏は「『米国雇用計画』の投資は1つの原則が指針となる。バイ・アメリカンだ」と力を込めました。トランプ前大統領が施政方針演説で「米国製品を買い、米国人を雇う原則が指針となる」と語ったのとほぼ同じです。内向きの姿勢は変わらりません。

バイデン氏はインフラ投資で外国製品を使う例外を限定すると強調しました。米国は公正な調達ルールを定めた世界貿易機関(WTO)の政府調達協定に加わるのですが「どんな貿易協定にも違反しない」と正当性を主張しました。

通商政策では対中国を取り上げました。国有企業への補助金や、技術や知的財産権の窃取を挙げて「米国は不公正な貿易慣行に立ち向かう」と語気を強めました。中国に構造問題の是正を迫る方法は明示し

トランプ氏は演説で、関税を使って圧力をかけると表明しました。バイデン政権はこれから具体策を問われることになる。

米政府の年間予算規模は4.7兆ドルに達するが、物品などを購入する政府調達は約6000億ドル程度といわれる。

"バイ・アメリカン"という言葉は、バイデン氏の専売特許ではなく以前からあるものです。そもそも、バイ・アメリカン政策は、政府調達や政府が財政支援するプロジェクトにおいてアメリカ製品の購入を優先するもので、1933年に成立したバイ・アメリカン法(ハーバート・フーバー大統領の任期最終日に署名された)や、バラク・オバマ政権下の2009年に成立した景気対策法におけるバイ・アメリカン条項などを根拠とします。

連邦政府の調達規則では、バイ・アメリカン政策に従う場合、価格ベースで自国製品や自国資材を50%以上にすることを求めていますが、バイデン政権は、この比率を上げて米国製品の調達を増やします。また例外適用についての判断基準も厳格化するといいます。

民主党はもともと労働組合が支持母体であり、時に保護主義的な政策によって雇用維持を図ることがあるので、これはある程度、予想された事態と言ってよいです。バイデン氏自身は自由貿易論者といわれ、本来なら過度な保護主義には走らないはずですが、今回は少し様子が違うようです。バイデン氏は脱炭素シフトを重要な政策に掲げており、国境炭素税の導入まで検討しているからです。

国境炭素税とは、脱炭素を促すため環境規制が緩い国からの輸入品に税金を課すもので、EUが既に導入を表明しています。ところが、この税金は事実上、特定の国を対象とした関税そのものであり、本来ならWTO(世界貿易機関)の協定違反となりかねないものです。

ところが、脱炭素シフトの必要性から、これを例外適用すべきとの議論が盛り上がっています。もしバイデン政権が国境炭素税を導入すれば、トランプ政権が実施した中国に対する高関税の対象や製品が替わるだけで、事実上、保護貿易が継続される可能性が高まってきます。

菅政権は2050年までの温暖化ガス排出量実質ゼロ宣言を行い、日本も脱炭素シフトに舵を切り始めました。

ところが日本の環境規制は欧州などと比較すると甘く、米国が本格的に脱炭素シフトを進めた場合、中国からの輸入品に加え、日本からの輸入品についても高関税が課される可能性が否定できないです。政府調達における外国製品の採用比率も下がってしまえば、まさに日本の輸出産業にとってはダブルパンチです。

日本では、「アメリカ・ファースト」などの言葉尻を捉えて、トランプ前大統領が保護主義的傾向を強めたと見る向きも多いですが、米国の保護主義的傾向は今に始まったことではなく、トランプ政権以前のオバマ政権時代あたりからかなり顕著となっていました。在日米軍や在韓米軍の撤退論もこの頃から本格化しているという現実を考え合わせると、これは長期的な動きであり、今だけの現象とは考えないほうがよいです。

トランプ前大統領が最初に保護主義的政策を打ち出したという認識は間違い

ただし、自由主義を標榜する米国が、保護主義に走れば、先進国、特に同盟国からの反発は免れないでしょう。

現在の戦争は、武力を用いれば、抜き差しならない状況になるのが目に見えており、経済などで行う、経済安全保障で行うのが通例になりつつあります。

米国が経済安全保障という観点から、中国共産党が産業を保護するために、輸出企業に対して補助金を出したり、低賃金や強制労働や、先進国からの技術の剽窃で、コストを低減しているという事実があるので、中国に制裁を行うのは日本を含む同盟国には異論はないでしょう。

しかし、中国だけではなく、同盟国に対しても保護主義的な政策を打ち出せば、同盟にひびが入るのは必至です。これは、米国にとっても、同盟国にとっても得策ではありません。そのことを日本は、バイデン政権に強く訴えるべきです。

ただし、自由貿易を阻害しないための、国際ルールの再徹底はすべきとは思います。たとえば、TPPのルールをWTOのルールに盛り込むなどもその一つの方法だと思います。これは、以前もこのブログに掲載したとことがあります。国際ルールを破り続けてきた中国が制裁を受けるのは、自業自得です。

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2021年8月6日金曜日

感染拡大の原因は五輪ではない 1年以上遅れの法改正議論より医療体制の供給拡大をなぜ言わない ―【私の論評】医師会の医療体制の供給拡大反対は、「加計問題」と本質は同じ(゚д゚)!

感染拡大の原因は五輪ではない 1年以上遅れの法改正議論より医療体制の供給拡大をなぜ言わない 
高橋洋一 日本の解き方

札幌大通り公園の五輪モニュメントの前で記念撮影する女性たち

 東京五輪が開催されているが、東京都をはじめ各地で新型コロナウイルスの感染者が増えている。「五輪の開催で気が緩んだ」「五輪関係者の入国で水際対策が甘かった」などの指摘もあるが、現状の感染拡大と五輪は関係があるのか。

 「気が緩んだ」というのは、客観的に計測しようがないので検証不能だが、「五輪関係者の入国のため」というのは、五輪関係者に明確なクラスター(感染者集団)が発生しておらず、関係はないといえるだろう。

 現在の感染拡大は日本だけでなく、世界でも起きているので、感染力の強い変異株によるものと考えられる。ちなみに、昨年1月からこれまで人口当たり新規感染者数について、日本と先進7カ国(G7)の相関係数(1が最大)をとると、0・35~0・68となっており、日本の新規感染者数は世界とかなりの程度連動している。

 五輪期間といっても、感染傾向は従来通りであり、特に五輪の影響とは思えない。なお、G7では、日本はカナダ、ドイツとともに人口当たり新規感染者数、死亡者数は低位である。

 世界で新規感染者数を増やしているのはデルタ株である。実際、東京の新規感染者も大半はデルタ株となっている。感染力が従来のものに比べて高いのは事実であるが、感染症ウイルスの経験則によれば、感染力の高いものは致死力は反比例するようにそれほど高くない。

 デルタ株の致死率はまだデータではっきりと検証されていないが、従来のワクチンはほとんど同様に効果があることなどを基礎知識として理解しておいたほうがいいだろう。

 そうした中、政府は8月2日から31日まで、埼玉、千葉、神奈川、大阪の4府県に新たに緊急事態宣言を発令した。対象はすでに発令中の東京都と沖縄県を合わせ6都府県に拡大された。さらに、北海道、京都、兵庫、石川、福岡の5道府県は蔓延(まんえん)防止等重点措置を新たに適用した。

 期限を8月31日としたのは、同月末までに全人口のうちワクチンを2回打った人の割合が4~5割に達すると見込まれているためで、現役世代のワクチン接種を見極めたいとしている。

 7月30日の政府分科会において、欧米のロックダウン(都市封鎖)のような強い措置を実施するための法改正も必要との意見が出たという。今後の検討課題だというが、こうした意見は1年以上前に言うべきだった。

 ちなみに、こうした議論は、過去のインフルエンザ等特別措置法の制定時にも議論された。私権は憲法上認められているので、それを制限するには憲法に緊急事態宣言の根拠規定がないとできないということだった。こうした過去の経緯も無視して、再び議論するつもりなのだろうか。

 そんな議論より、医療機関がコロナ患者を受け入れる病床の確保に必要な費用などに充てる「緊急包括支援交付金」約1兆5000億円の予算措置の未消化などを議論すべきではないか。分科会は、医療体制の供給拡大について何も言わずに、社会経済活動を抑制することしか言わないのか。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】医師会の医療体制の供給拡大反対は、「加計問題」と本質は同じ(゚д゚)!

医師会は医療体制の供給拡大に反対です。なぜなら、そのようなことをすれば、既得権益が脅かされるからです。その意味では、本質は数年前に取り沙汰された「加計問題」とその本質は同じです。

ただし、「加計問題」とはいっても、マスコミが報道したり、一部野党による倒閣のための問題指摘などとは全く異なります。

前川喜平・前文科省事務次官(右)の主張と真っ向から対立する証言をした、加戸守行・前愛媛県知事(左)。

学校法人「加計学園」の獣医学部新設問題で、柳瀬唯夫元首相秘書官が学園関係者と首相官邸で計3回会っていたという平成27(西暦2015)年4月前後には、新設に反対する日本獣医師会が閣僚らに猛烈なロビー活動を展開していた時期と重なっています。学園側による柳瀬氏らへの面会要請は、活発化した獣医師会の動きへの対抗策だったとみるのが自然でした。

問題の本質は、獣医学部新設を目指す「愛媛県、今治市、加計学園、内閣府」と、新規参入を阻む「日本獣医師会、文部科学省」による権力闘争です。

何しろ獣医師会の会議録に、関連政治団体「日本獣医師政治連盟」の北村直人委員長が、衆院議員当選同期の石破茂地方創生担当相(当時)に複数回面会し、働きかけていた様子が詳細に記されていたのです。

会議録によると26(2014)年10月3日、国家戦略特区での獣医学部新設を目指していた新潟市について、北村氏は「石破大臣にお会いし」「本件が特区になじまないことを申し上げた」とされていました。27(2015)年6月22日には、北村氏はこう述べていました。 

「蔵内(勇夫獣医師会)会長は麻生(太郎)財務大臣、下村(博文)文部科学大臣へ、担当大臣である石破大臣へは私が折衝を続けている」「(獣医学部新設に)一つ大きな壁を作っていただいている状況である」

その後、27(2015)年6月30日に安倍晋三内閣は獣医学部新設に関わる厳しい4条件、いわゆる「石破4条件」を閣議決定しました。9月10日の獣医師会会議で北村氏は、石破氏が「誰がどのような形でも現実的に参入は困難という文言にした」と述べたと紹介していました。


そうして当時柳瀬氏の「首相に面会を報告しなかった」との証言が疑問視されていましたが、ならば安倍内閣の閣僚で、獣医師会から100万円の政治献金を受けたことがある石破氏は、北村氏との面会をいちいち首相に報告していたのでしょうか。なぜ加計学園よりはるかに大々的な獣医師会による働きかけは、一切問われなかったのでしょうか。

同じく獣医師会から100万円の政治献金を受けた国民民主党の玉木雄一郎共同代表は2018年8月14日の衆院予算委員会で、官僚が首相を守るために仕事をしていると決めつけてこう主張しました。

「優秀な秘書官をはじめとした官僚が、悪知恵をめぐらせているのではないか。本来もっと天下国家のことに使うべき頭を、そんなことに使っている」


野党議員こそ、倒閣ばかりでなく、もっと日本のためになる違う頭の使い方があるのではないかと痛感させられたものです。

今回のコロナ禍に対応するための病床の増床なども似たようなところがあります。結局病床拡大を医師会側が、自分たちへの既得権益の脅威とみなし、政治家、官僚などに対する働きかけがあったものとみるのが、自然でしょう。

結局1年以上たっても、病床の大幅な増床はみられず、その範囲の中で医療体制を考えるといったことがなされ続けているようです。

記者会見する日本医師会の中川俊男会長=昨年12月23日午後、東京都内

公益社団法人日本医師会(にほんいしかい、英: Japan Medical Association、英略称: JMA)は、日本の医師であることを入会の要件とする職能団体です。入会は任意であり、組織率は、2019年12月1日時点で172,763人(有資格者の約5割強)です。

法人の種類としては公益社団法人ですが、開業医らが運営する利益団体としての性格をもちます。世界医師会に加盟し、本部は東京都文京区本駒込2-28-16に所在します(日本医師会館)。略称は日医(にちい)。都道府県医師会、全国に約890存在する郡市区医師会は、いずれも独立した公益法人ですが、日本医師会の下部組織です。本会・日本歯科医師会・日本薬剤師会を合わせて「三師会」と称します。

医師会は、開業医のための団体と考えて良いでしょう。公立病院の勤務医などの利益を代表するものではないといえるでしょう。

この医師会は、開業医の利益を守るため、政治家、官僚などに働きかけを行っているのは間違いないでしょう。今回も結局、他の国にみられるような、バラックのコロナ病棟を建てる、公立病院などで、コロナ病棟を設けるなど、あまり目立った形で、大掛かりになされず、「緊急包括支援交付金」約1兆5000億円の予算措置の未消化などの問題に発展しているのは、こうした経緯があるからでしょう。

そもそも、医師会には既得権益を守るため、従来から医療体制の供給拡大に反対する傾向がありました。

そのため、公正取引委員会は、「医師会の活動に関する独占禁止法上の指針」を定めています。これは、昭和56年に定められ、平成22年に改正しています。

詳細は、以下のサイトをご覧になってください。
医師会の活動に関する独占禁止法上の指針
詳細は、この記事をごらんいただくものとして、以下にその趣旨だけをこの記事から引用します。
 医師会、特に地区医師会の活動については、いわゆる医療機関の適正配置に関する活動等に関し、独占禁止法違反とされた事例もあり、当委員会は、医師会の活動に関してアンケート調査を実施し、その実態の把握に努めたのを機に、今般、医師会の活動と独占禁止法との関係についての考え方を、活動指針として取りまとめた。この活動指針は、医師会の諸活動に対する独占禁止法の適用について当委員会の考え方を参考例を挙げつつ、具体的に明らかにすることにより、同法に抵触することとなる活動を未然に防止しようとするものである。
 なお、医師会の具体的な活動が、独占禁止法に抵触するおそれがあるか否かについては個々の事案ごとに判断を要する場合も多いと考えられるので、かかる場合には、当委員会に設けられた一般相談、あるいは、事前相談制度により個別の相談に応じることとした。
高橋洋一氏は、上の記事の最後で「分科会は、医療体制の供給拡大について何も言わずに、社会経済活動を抑制することしか言わないのか」と述べていますが、まさにそのとおりであると思います。 それどころか、オリンピック中止まで提言するというありさまです。

医療体制の拡大には、触れずに、社会経済活動を抑制することしか言わないことには、問題がありすぎます。感染者数だけが減れば良いという考え方には、賛同できません。インフルエンザでいちいち社会が麻痺したとしたらとんでないことになります。

コロナに関しても、昨年コロナ感染がはじまったばかりのときなら、正体がわからず、とにかく感染者数を低減することに注力することは理解できますし、それは正しかったと思います。あの時点で、コロナは風邪やインフルエンザと同じと、言い切ることには問題があったと思います。

ただし、現在では、コロナ感染症について知見がかなり深まり、何よりもワクチンの接種が進んでいます。現在では、コロナ感染症に対する昨年までの考え方は捨て去り、新たな取組をすべきです。

今後、わたしたちは、コロナウイルスが今後長い間にわたって撲滅することはできないと見るべきです。そうなると、多少感染者が増えたくらいでは、社会・経済が機能しなくなるようでは、強い社会とはいえません。

やはり、感染者が増えたにしても、社会・経済が簡単には機能しなくなることのない強靭な社会を目指すべきです。そのためには、「医療体制の供給拡大」に関しての論議は避けて通れません。

医師会がどこまでも、反対するというなら、公取委が動いても良いのではないかと思います。今後も長きにわたって、コロナに社会・経済が翻弄され続けることがあってはならないです。

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2021年8月5日木曜日

「一国二制度」崩壊で進む香港でのビジネスリスク―【私の論評】中国を放置しておけば、世界は中国製品で埋め尽くされ闇となる(゚д゚)!

「一国二制度」崩壊で進む香港でのビジネスリスク

岡崎研究所


 7月16日、バイデン政権は香港について「ビジネス注意情報」を発出した。これは9ページの長文で、香港についてこの種の注意情報が出されるのは初めてだという。国家安全法を含む香港の法制の変化に伴い、香港でビジネスを行う米国企業は「世評や財務上の、また或る場合には法的なリスク」に警戒すべきことを警告する趣旨のものである。

 この注意情報が指摘するリスクは、概括的には次の4つである。

(1)国家安全法に直接巻き込まれるリスク。同法の下で一人の米国人を含む外国国民も逮捕されている。法人格の有無にかかわらず、同法に違反する企業や組織は、そのライセンスやビジネス申請が取り消され得る。

(2)データの秘匿性が保全されないリスク。これは国家安全法によって当局に「国家安全保障」を理由にデータの開示を要求する権限が与えられていることなどを指している。

(3)自由な報道・情報へのアクセスが制限されるリスク。これも国家安全法の制定以来顕著な現象で、蘋果日報の弾圧がその一例。

(4)米国の制裁に従うことにより、反外国制裁法の発動を含め、中国の報復に遭遇するリスク(反外国制裁法は本土、香港、マカオを区別していない)。報復措置にはビザ発給拒否、入国拒否、資産凍結、取引き禁止などが含まれる。

 以上に加えて、米国の制裁の対象とされている個人と企業と不用意に関係を持つことにより民事および刑事の処罰が及び得るリスクを指摘している。

 7月16日付のウォールストリート・ジャーナル紙社説‘Biden’s Warning on Hong Kong’は、バイデン政権がこの注意情報を発出したことを適切な行動と評価している。同社説は、明言しているわけではないが、香港はもはやビジネスを安心して行える環境にはなく、米国企業がそれを悟って香港を脱出すれば、香港は金融の国際センターの地位を失うかも知れない、そういう形で中国は香港の自治を破壊した代償を払うことになるかも知れない、と言っているように読める。

 しかし、香港の米国商業会議所は、ビジネス環境はより複雑で厳しくなっているが、その間を縫ってビジネスの機会を捉えることについて会員企業を支援して行きたいと述べている。実際、民主派活動家の弾圧や選挙制度形骸化の抑圧にもかかわらず、香港の地位は揺らぐどころか、香港は活気を帯びているとされている。香港の株式市場はIPOの数で4位である。香港の外国銀行は人員増強に乗り出しており中国本土での新たな投資の機会を狙っている。香港には中国本土と諸外国から資金が流入しているという。

 そうなのかも知れない。しかし、だからと言って、「一国二制度」を一方的に破壊され、植民地化された状況を放置して良いことにはならない。今回、制裁対象に新たに7人の中国当局者が追加されたが、ビジネス注意情報は、今後も制裁の拡大があり得ること、それに伴い香港情勢が更に悪化し得ることの警告かも知れない。そもそも、ここまでくれば、香港を中国と別個に扱い、香港が金融センターとしての地位を維持することに手を貸す理由はないと言うべきであろう。

 縮小されたとは言え、米国など諸外国は未だ香港に対する優遇措置を残しているのではないかと思われるが、その撤廃を考えざるを得ないこととなろう。

 そういう状況になるとすれば、大切なことは、香港を脱出することを希望する人達の移住を受け入れることである。英国では1月31日に香港の英国海外市民旅券(BNO passport)を持つ人達に対する特別ビザの制度が導入されたが、3月までに3万4300件の申請があり、うち5600件のビザが付与された由である。去る4月28日、香港の立法会で入境条例が改正され(8月1日に効力を生ずる)、潜在的には当局が出国を禁ずることが出来るようになったというから、懸念されるところではある。

【私の論評】中国を放置しておけば、世界は中国製品で埋め尽くされ闇となる(゚д゚)!

バイデン政権は香港について「ビジネス注意情報」を発出とともに、中国が香港の民主主義弾圧しているとして、同国政府の香港出先機関に勤務する政府高官7人を新たに制裁対象に追加すると発表しています。

財務省によると、7人は中国の駐香港連絡弁公室の幹部。ブリンケン国務長官は声明で、中国当局は過去1年間にわたり香港の民主機関を「組織的に阻害」し、選挙を延期し、選挙で選ばれた議員の資格を奪い、政府の政策に反対する数千人の人々を逮捕したと指摘。「香港市民に対する断固とした支持を示すために、米国はきょう、明白なメッセージを送る」としました。

ブリケン国務長官

リスク警告の文書は国務省、財務省、商務省、国土安全保障省が共同で作成。香港で操業する企業に対し、「香港国家安全維持法」などの法律が適用される可能性があると警告しました。同法律の下、米国人一人がすでに逮捕されています。

一国二制度がなくなってから、香港には自由はなく、自由がないということはビジネスもまとにできないということはわかっていたことです。

一国二制度とは、「中国政府は関与しない」ということが前提になっていたわけですから、それがなくなり、中国政府が関与することがわかった以上は、ビジネスは無論のこと多くの人々にとって危険になったことは確かです。 

従来は、香港には立法会(議会)があって、そこで別途、立法化しないと中国は香港で様々な取締や、弾圧ができなかったのですが、国安法ができてからはそうではなくなってしまったのです。

 国安法により一国二制度はなくなり、中国の体制に従わなくてはならなくなっので、当然、中国に輸出している企業にはリスクが出てきます。従来のように一国二制度で守られているのとは違うという意味で、バイデン政権の「リスクがある」という主張は正しいです。

ただ、まともな企業の経営者であれば、割り切って「もう香港でビジネスできない」と香港から出るか、もしくは「中国政府に従う」という選択はもうしているとでしょう。

上の記事によれば、「米国の制裁の対象とされている個人と企業と不用意に関係を持つことにより民事および刑事の処罰が及び得る」ともされていますから、場合によって米国の連邦法に今抵触する可能性もあるのです。

米中には域外適用の法律がかなりあります。米国と中国はそれぞれに域外適用がある。 国安法が成立した現在では、中国から見れば、「香港は域内」ということになります。

米中双方が「俺たちのルールは正しい」と言っているわけです。明らかなのは、「香港においては従来のルールと違っている」ということです。それは大きなリスクです。

日本企業も他人事ではありません。 日本企業も香港で自由なビジネスをするか、もしくは中国政府に従うかの選択を迫られているわけです。かなりの企業が「香港は無理だな」と感が手いることでしょう。

例のアップルデイリー、蘋果日報が完全に中国側の圧力で潰されたようなものですから、マスコミも香港に支社を置いているところが少なくなりつつあります。自由のないところでは、まともに報道活動ができません。 一部をソウルや台北などに移すというようなところが出て来ています。


もはや中国では法律上、欧米の企業だけを優先することはできません。普通の国では外資企業も「内国民待遇」と言って、同じ扱いですが、香港でもそうではなくなりました。

新疆ウイグル自治区の人権の問題や、日本企業の中国ビジネス全般に対しても、「米中のどちらに付くのか」ということは、以前に増して強烈に、両国から突きつけられるようになるはずです。

従来は、日本では「経済と政治は別」という考え方だったのですが、最近は本当の戦争は難しいから、「経済安全保障」という考え方で、経済も武器なのだという考えかたに変わってきました。

新疆綿を用いている製品に関して、米国では通関を止められたり、フランスでは行政捜査がありましたが、経済産業省と繊維の業界団体は、統一されたガイドラインをつくろうという動きがでいます。

新疆綿を使用した製品は日本でも多くの企業で販売されている

経済産業省は先月12日、アパレルなど繊維産業の持続可能性に関する報告書をまとめした。製造・流通などのサプライチェーン(供給網)で強制労働や不当な低賃金などの人権侵害がないか、繊維企業が確認するガイドライン(指針)を業界団体に策定するよう提言。中国・新疆ウイグル自治区産の「新疆綿」をめぐる人権問題など、労働環境への関心が高まっていることを念頭に置きました。

経産省は「個別の事案を踏まえたものではない」と説明していますが、業界団体の日本繊維産業連盟は、国際労働機関(ILO)と連携し、1年後をめどに指針を取りまとめる方針です。

これは繊維業界だけの話ではないです。香港に拠点をおいている企業は、すべからく自分の属している業界が特にガイドラインを設けようとする動きがなかったにしても、リスク管理を徹底すべきです。

それに今一度経営者は考えるべきです。新疆綿の場合、日本ではすでに綿を収穫する作業をする労働者は日本には存在しません。しかし、開発途上国においては、それを生業とする人も多いです。

新疆綿を用いるということは、こういう人たちの生活を奪っていることになります。さらに、綿を加工する事業も新疆で強制労働で行われるようになれば、日本でもそれを生業とする人がいるので、その人たちの雇用を奪うことになります。

さらに、他の産業でも同じです。中国は様々な製品を低賃金もしくは、強制労働で、製造しそれを輸出していますし、さらにその輸出量を増やすようにすれば、先進国の雇用も奪われることになります。それが、ローテク産業だけではなく、中国による技術の剽窃により、ハイテク産業にも及ぶようになったらどうなるでしょう。

現在の製造業では、賃金が占める割合はかなり減っています。しかし、ハイテク産業の技術者をも強制労働させて、様々な製品を研究開発させたらどうなるでしょうか。まともな賃金を支払う企業が中国と、競争することなどできません。すべての産業は中国の一人勝ちになり、世界は中国製品で埋め尽くされ、世界中の産業が崩壊し、中国の富裕層と、中国共産党だけが潤うことになりかねません。

そのような世界は暗黒です。そのような世の中で、まともなビジネスができるはずはありません。世の中が一昔前の中世以前に戻ってしまうようなものです。そのようなことはできるはずがありません。できるはずのないことを中国は本気で推進しているのです。このことを日本の企業経営者も良く考えるべきです。

それを目指しているからこそ、中国は最大の商売の相手である米国を本気で怒らせることをしても、突っ走っているのです。いや、中国共産党の幹部はそのようなことを考えていないかもしれません。彼らからすれば、当然と考えることを実行しているだけなのかもしれません。しかし、その結果として世界は闇になるのです。

そのことに気づいたからこそ、前トランプ政権は中国と対峙し始めたのです。そうして、バイデン政権もそれを継承しているのです。

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2021年8月4日水曜日

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サモアの女性新首相就任、中国支援の港湾開発中止を表明

サモアのフィアメ・ナオミ・マタアファ氏

南太平洋の島嶼(とうしょ)国、サモアで4月の議会選挙の結果が確定し、フィアメ・ナオミ・マタアファ氏を同国初の女性首相とする新政権が始動した。フィアメ氏は就任後、中国が支援する港湾開発事業を中止する意向を表明。米国と中国が影響力拡大を競い、「陣取り合戦」の様相を呈する地域情勢に影響を与える可能性がある。

サモアでは4月に議会(定数51)選挙が行われ、ツイラエパ前首相の人権擁護党と、フィアメ氏のFAST党がともに25議席を獲得。その後、無所属の当選者1人を加えたFAST党が多数派を形成した。

フィアメ氏は5月に独自に首相就任の宣誓を行ったが、敗北を認めないツイラエパ氏は「私は神に任命された」などと主張し、政権を明け渡さない姿勢を示していた。裁判所が7月23日、就任宣誓は「有効」との判断を示し、27日にフィアメ氏を首相とする内閣が発足した。

サモアは23年間続いたツイラエパ政権が中国接近を進め、対中債務の膨張が課題となっている。そのうえ、中国が支援する1億ドル(約110億円)の大規模港湾開発計画も進んでおり、フィアメ氏は選挙戦で見直しを訴えていた。

フィアメ氏は首相就任後、ロイター通信に港湾開発事業について「現時点で優先順位が低い。自国に明確な利益がある投資のみを承認する」と表明。対中関係は「他の二国間関係と同じように評価する」と述べ、前政権の中国傾斜を修正する意向を示した。

【私の論評】中国が南太平洋の安定を揺るがす事態を防ぐため、日米豪は南太平洋諸国への関与を強めるべき(゚д゚)!

サモアは人口約20万人の小国。観光業が頼りで、慢性的な貿易赤字に悩まされています。

サモアの絶景スポット トスア・オーシャン・トレンチ

トゥイラエパ氏は1998年11月、首相に就任し、長期政権を維持してきました。空港や病院、政府庁舎などのインフラ整備を中国に頼り、中国からの借款は約1億6000万ドル(約175億円)に達し、サモアの対外債務の約40%を占めます。中国の巨大経済圏構想「一帯一路」にも組み込まれていました。

サモアでは、上の記事にもある通り、中国が資金提供するバイウス湾の埠頭建設プロジェクト(2021~26年)が進められていました。トゥイラエパ氏は今年1月、地元紙の取材に、プロジェクトは交渉の最終段階にあり、新型コロナウイルス感染症が収まれば作業が始まるとの見通しを伝えていました。

トゥイラエパ氏

旧政権は雇用創出や貿易・観光促進という効果を全面に押し出していましたが、埠頭の設計や資金調達の方法は公開していませんでした。米国やオーストラリアなどの専門家の間では「埠頭が軍事利用されるのでは」という懸念が持ち上がり、中国の駐サモア大使館が「根拠のない主張」と反論してきた経緯がありました。

FAST党は、中国と良好な関係を維持しつつも、プロジェクトについて「サモアの輸出入産業の規模に見合わない」「軍事基地でなければ、規模の大きさを説明できない」などとして中止を公約に掲げてきました。

地元紙によると、無所属当選者もFAST党との連携を発表した際、こう語っていました。

「わが国に中国系企業が増え、非常に多くの中国人がいる。われわれが知らないこと、気づいていないことの背後に、何か大きなものがある。中国人はわれわれのビジネスを支配し、地元企業がそれに対抗するのは難しい。そして彼ら(中国人)が稼いだカネは彼らの祖国に行くだろう」

サモア総選挙後の混乱について、中国外務省の趙立堅(Zhao Lijian)副報道局長は5月25日の定例記者会見で「中国とサモアは良い関係にある。中国は一貫して内政不干渉の原則を堅持している。サモア側には内政をうまく処理する能力と知恵があると信じている」と述べるにとどめました。

フィアメ氏は首相就任後、ロイター通信に港湾開発事業について「現時点で優先順位が低い。自国に明確な利益がある投資のみを承認する」と表明。対中関係は「他の二国間関係と同じように評価する」と述べ、前政権の中国傾斜を修正する意向を示した。 

南太平洋諸国には中国が影響力拡大を狙っており、2019年にはキリバスとソロモン諸島が台湾と断交して中国と国交を樹立しました。一方、米国は国防権限を米国に委ねる「自由連合盟約」を結ぶパラオなどと連携を深めています。

オーストラリアの調査機関によると、中国は2006年からの10年間で、南太平洋の国々に17億8000万ドル(約1920億円)を援助しました。今や豪米両国に次ぐ主要な援助国となりました。

この地域の秩序を主導する米豪に対抗する戦略でしょう。

懸念されるのは、中国の南太平洋への進出によって、地域の緊張が高まる事態です。



「海洋強国」を国家目標とする中国は、太平洋やインド洋など遠海へと活動範囲を広げています。国際ルールに反した一方的な海洋進出や、相手国の財政状況を無視した融資が批判されてきました。

中国の習近平国家主席は南シナ海について「軍事拠点化しない」と約束しました。にもかかわらず、岩礁を埋め立てた人工島にレーダーやミサイルを設置し、「航行の自由」を脅かしています。

インド洋の島国スリランカは中国への債務返済が出来なくなり、南アジア最大級のハンバントタ港の権益を事実上、譲渡しました。

南太平洋で同様の問題が起きないとは言い切れません。島嶼国の多くが中国への経済的な依存度を高めています。バヌアツでは中国が港湾整備を進め、軍事利用するとの見方が出ています。

南太平洋はアジアと米大陸をつなぐシーレーン(海上交通路)にあたります。米軍がアジア太平洋の戦略拠点として基地を置くハワイやグアムに近いです。日米豪などが共有する「自由で開かれたインド太平洋」構想でも大切な地域です。

中国が島嶼国を拠点に軍事活動を強化し、地域の安定を揺るがす事態を防ぐため、米豪や日本が南太平洋諸国への関与を強めることが求められます。

経済援助に加え、安全保障協力が重要です。米豪はパプアニューギニア・マヌス島の海軍基地を拡充し、周辺での軍事演習も強化しています。島嶼国の防衛力向上に資する支援を積み重ねねるべきです。

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2021年8月3日火曜日

「コロナは武漢研究所から流出」米共和党が衝撃の報告書 ロイター報道 識者「バイデン政権と中国側の“談合”を強く牽制」―【私の論評】Intelligence(諜報活動)はもう、専門家だけの独占領域ではなくなった。変化を起こすチャンスは誰でもある(゚д゚)!


中国科学院武漢ウイルス研究所=1月、中国・武漢

 東京五輪の大半を「無観客」開催にした、新型コロナウイルスの「起源」が注目されている。ジョー・バイデン米大統領は5月末、情報機関に「90日以内」の追加調査を指示したが、タイムリミットが今月末に迫っているのだ。こうしたなか、米議会共和党が、中国・武漢の中国科学院武漢ウイルス研究所から漏洩(ろうえい)した大量の証拠があるとの衝撃の報告書を出したという。

 ロイター通信(2日)によると、報告書は、米下院外交委員会の共和党トップ、マイク・マッコール議員が公表した。

 「武漢ウイルス研究所の研究員がコロナウイルスを秘密裏に操作し、2019年9月12日以前にウイルスが流出し、人に感染させた多くの証拠がある」などと記されているという。

 新型コロナの「起源」をめぐっては、米紙ウォールストリート・ジャーナルが5月23日、米情報機関の報告書を引用し、感染拡大が発表される前の一昨年11月、武漢ウイルス研究所の研究者3人が深刻な体調不良に陥っていたとスクープした。

 バイデン氏はこの直後、追加調査を指示したが、その後も、英紙デーリー・メールが5月末、「新型コロナウイルスは中国・武漢の研究所の実験室で作成された」と主張する、英国とノルウェーの研究者による論文について報じた。

 世界保健機関(WHO)は1月から調査団を中国に派遣し、3月に「武漢の研究所から漏洩した可能性は低い」とする報告書を出したが、不満足な代物だった。

 英コーンウォールで6月に開かれた先進7カ国(G7)首脳会議では、中国を「巨大な脅威」と位置付け、コロナの「起源」について再調査を求める声が上がった。

 自由主義陣営の強い怒りを受け、WHOのテドロス・アダノム事務局長は7月、WHO会合で武漢の研究所などへの追加調査を提案した。

 米共和党が、このタイミングで報告書を公表した意味をどう見るか。

 福井県立大学の島田洋一教授(国際政治)は「米議会共和党は、これまでも中国語に堪能なマット・ポティンジャー前大統領安保副補佐官らが、中国側から得た秘密文書を精査し、『武漢研究所漏洩説』に自信を持っているようだ。『親中派』とされるバイデン民主党政権と中国側が“談合”して、中身の緩い報告書を発表しないよう、民主党政権と中国を強く牽制(けんせい)した動きだ」と語っている。

【私の論評】Intelligence(諜報活動)はもう、専門家だけの独占領域ではなくなった。変化を起こすチャンスは誰でもある(゚д゚)!

上の記事にもあるように、多くの筋から、コロナは武漢研究所から流出したとする説が噴出しています。その中で、なぜか日本ではあまり注目されないものがあります。それについては、このブログに掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
「研究所流出説」を甦らせた素人ネット調査団、新型コロナの始祖ウイルスを「発見」!―【私の論評】今やいかなる組織も、何らかの非合法な活動や隠蔽をすれば、オシントで合法的に素人に暴かれる(゚д゚)!


なお、この記事の元記事となっている、ニューヨーク・タイムズの記事には、続編があります。その続編のリンクを以下に掲載します。

武漢研究所は長年、危険なコロナウイルスの機能獲得実験を行っていた

これらのニュースは、日本でももっと注目されても良いと思うのですが、なぜか日本ではあまり報道されません。

これらの記事の急所は、パンデミック発生後早い段階で「反中の陰謀説」とされてきた新型コロナウイルスの「研究所流出説」が6月あたりから、急に見直されたのは、中国の説明がおかしいと感じた世界各地のアマチュアネットユーザーがチームを組んで否定しがたい新事実を科学界と大メディアに突きつけたということです。

このアマチュアネットユーザーの名称は、言ってみれば「オープンソースの自由参加型ブレインストーミング」であり、ネット調査と市民ジャーナリズムの要素が合体した、全く新しい調査方法といえます。彼らは自分たちをDRASTIC(Decentralized Radical Autonomous Search Team Investing COVID-19=新型コロナウイルス感染症に関する分散型の急進的な匿名の調査チームの頭文字を取った略称だ)と名乗っています。

そうして、彼らの調査方法は、諜報機関でいうところのOSINTに近いものです。OSINTとは、オープン・ソース・インテリジェンス(open source intelligence)の略称です。これは諜報活動の一種で、一般に公開され利用可能な情報を情報源に、機密情報等を収集する手法を指します。

一般に公開され利用可能な情報とは、合法的に入手できる情報で、トップに対するインタビュー記事や企業のプレスリリース、書籍、インターネット情報等が挙げられます。これらを合法的に調べて分析することにより、一見、断片的なデータから、意味を持った情報が得られる場合があります。

身近な例から考えると、例えば自社の戦略を考えるために、他社を分析することが挙げられるでしょう。ライバル企業の資料やウェブページ、IR情報等を分析して、ライバル企業が次にどのような戦略を取りうるかを予測するのです。OSINTはこのようにビジネスで有効に活用することもできますが、攻撃者がターゲットの情報をつかむ目的で用いる場合もあるため、注意が必要です。

近年、情報収集の手法として「OSINT(オシント)」が注目されています。OSINTとは本来、国家保障等の専門領域で使われる言葉ですが、OSINTの考え方や手法がサイバー攻撃でも用いられていることから、最近ではサイバーセキュリティ分野でも耳にする言葉となりました。

最近では、「OSINT」に用いることができる、様々なツールがオープンソースとして提供され誰でも使用できるようになっています。そのため、様々な使い方がされるようになりましたがDRASTICの情報の収拾・集約もこのような手法も用いているのは確実だと思います。

オープンソースのオシントツールの一つMaltego

ただし、本来のOSINTは軍事目的であり、軍関係者ならびにその協力者などが用いるということで、オープンなものとは言えなかったと思いますが、このOSINTの手法がDRASTCなどにも用いられているのは確実であり、これは、今後新たな動きを作り出すことになるでしょう。

従来だと不可能だった、情報の収拾と集約ができるようになりつつあるといえます。誰かが何かの目的で、何かを実施して、それが好ましくない影響を及ぼした場合、あるいは及ぼしそうな場合、それを隠蔽することは、おうおうにしてあることです。

しかし、情報社会においては、そのようなことをしても、必ず何らかの痕跡が残ります。その痕跡を丹念に調べて、つなぎ合わせていけば、何かを隠蔽しているかを突き止めることができます。

インターネットが発達していない時代においては、新聞記事、雑誌記事、書籍、論文などがOSINTの対象であり、それらを集めるにも膨大な時間と、労力と、資金が必要でしたが、最近ではそれ以外にも、様々なネット上の情報が加わわったために、従来と比較すれば、比較的短時間にしかもあまりお金をかけなくても、情報が集められようになりました。

今でも膨大な労力が必要なのは変わりはないですが、現在ではインターネットが普及したため、大勢の人が、それも世界中の人々が関わり情報を交換したり、分析する事により、その労力は従来と比較すれば、かなり低減できるようになりました。

だかこそ、DRASTICのようなグループができあがり「コロナは武漢研究所から流出」した可能性を否定することはできないということを、様々な根拠によって、提示することができたのです。

先にあげた、ニュースウィークの続編の記事の結論部分には、以下のようなことが掲載されています。
新たな情報が暴露され、サイエンス誌に公開書簡が発表されてから数日以内に、さらに多くの学者や政治家、主流メディアまでもが研究所流出説を真剣に受け止め始めた。そして5月26日、ジョー・バイデン米大統領が情報機関に対して、「我々を明確な結論に近づけるような情報の収集・分析に改めて励む」よう命じた。

「アメリカは同じような考え方を持つ世界のパートナーたちと協力して、中国に対して全面的で透明性のある、証拠に基づく国際調査に協力するよう圧力をかけ、また全ての関連データや証拠へのアクセスを提供するよう強く求めていく」と語った。

中国はもちろん強く反発している。彼らが調査に協力することはないかもしれない。だが確かなことは、武漢の研究所がパンデミックの元凶だったのかどうか(そして次のパンデミックを引き起こしかねないのかどうか)について、調査研究が行なわれるだろうということだ。それも、DRASTICのようなアウトサイダーたちが援軍として加わった形で。

「科学はもう、専門家だけの独占領域ではなくなった」と、シーカーは本誌に述べた。「変化を起こすチャンスは誰にでもある」

最後の文章の「科学」という言葉は、今回の事例にはあてはまることだと思います。DRASTICが、暴いたのはコロナ感染症に関することであり、テーマが生物学的なものだからです。

しかし、今回はたまたまそうだったのであり、今後は「科学」に限られることなく、ありとあらゆる分野でDRASTICのようなグループが発生する可能性があります。いや、もうすでにあります。

ただ、今回のDRASTICのようなドラスティックな、公表をしていないので、わからないだけだと思います。また、怪しげな陰謀論に終始するグループも多数あることも事実です。

OSINTトレーニングの様子

シーカー(DRASTICの1人、「シーカー(探索者)」と名乗る20代後半のインド人男性)がニューヨーク誌に語った、「科学はもう、専門家だけの独占領域ではなくなった」「変化を起こすチャンスは誰にでもある」という言葉は、もっと大きな括りでは、「Inteligence(諜報活動)はもう、専門家だけの独占領域ではなくなった」「変化を起こすチャンスは誰でもある」とすべきだと思います。 

これは、本当だと思います。実際私自身も、政治家や官僚、識者といわれる人々の言動の内容の真偽が判断しかねる場合、ネットで検索すると、その言動の内容の真偽がはっきりすることがあります。歴史的な経緯や、統計資料からはっきりすることが良くあります。

現在のところは、調べるだけなのですが、いずれOSINT的なことも実行してみようと考えています。そのためには、現在の世界の共通語にもなっている英語の能力をもっと磨くべきであると考えています。翻訳という手もありますが、基本的な情報のやりとりまで、いちいち翻訳に頼っているようでは、不可能だと思います。

今後、政治家や企業経営者らもOSINT的な考え方をすべきです。無論、彼らが直接キーボードを叩いて、情報を収拾する必要はないですが、得るべき情報の方向性や、得られた情報を統合する能力が求められることになるでしょう。特に統合力がなければ、せっかく良い情報が得られても、それが何を意味するのか理解できません。こういう分野では、分析力が重視されるようにみえますが、それだけでは無意味です。

分析した結果が、全体のどの部分に相当するものなのか、全体にどのような影響を与えるのか、あるいは何をすれば大きな影響を与えられるのかを認識するには、統合力は欠かせません。

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資本市場での米中分離が見えてきたディディへの規制

岡崎研究所



 7月10日付の英Economist誌が「中国の共産主義者がテク企業を統制下に置く。滴々(ディディ)への攻撃は共産党が統制のためにどれだけ高いコストを払うかを示す」との社説を掲載し、配車会社への介入問題を論じている。

 中国の配車会社であるディディ・グローバルは、最近、ニューヨーク証券市場に上場した。ディディは、中国のスーパースター企業で、Uberよりも多い4億9300万人の利用者、1500万人の運転手を有し、ブラジルとメキシコに支店を持つ。ディディは、6月30日、世界中の投資家からの資金を集め、企業価値を680億ドルにする株式上場を行った。

 しかし、上場直後の7月4日、中国共産党の規制当局は、ディディが個人データの収集規則に違反したとして、中国でのアプリ店からディディを締め出した。これはディディの株式価格を20%下げる結果をもたらした。

 中国の規制当局がテク企業の海外、特に米証券市場への上場を問題であると考え、規制を強めようとしている。今度問題になっている滴々(ディディ)は、米国のUberと同じような配車事業を行っているが、ここにはソフトバンクやトヨタが出資している。中国の規制当局の規制強化を受け、滴々の株価はニューヨークで20%以上減価したが、ソフトバンクやトヨタはかなりの損失を出したと思われる。

 今度の中国の規制強化の動きがどうなるのか、やっていることがよくわからないので評価しがたい面があるが、中国テク企業が海外で上場して資金調達することには今後大きなブレーキがかかり、海外の投資家も中国テク企業への投資に慎重になることは確実であると思われる。中国へのお金の流れが減ることが中国経済にどういう影響を与えるかと言えば、中国の経済成長率を押し上げる方向に働くとは思われない。しかし、その影響をいま測定することは難かしい。

 中国がなぜこういうことをしているのかといえば、中国共産党が全般的に統制強化を進めており、テク企業の株式上場にもその統制を及ぼそうとしているからだろう。

 米国でも中国企業をたとえばニューヨーク証券市場から締め出すべしとの議論が投資家保護の観点から提起されている。中国が別の視点から海外証券市場での中国企業の上場を抑えるということになれば、資本市場での中国と米国のいわゆるディカプリングは深まっていくとみておいてよいのではないかと思われる。

 中国の経済は少子高齢化の人口問題、水問題などの環境問題など多くの問題を抱えており、共産党の権力強化以上にすべきことがあるのではないかと思えるが、1992年の鄧小平の南巡講話のような政策転換は、今の習近平には望めないと考えている。鄧小平の改革開放は西側との協調路線でもあったが、習近平にはそれを望めないだろう。


【私の論評】民主化しなければ古代からの愚行の繰り返しになることに、中国共産党は気づいていない(゚д゚)!

6月25日、国務院新聞弁公室が『中国新型政党制度』と題した白書を出版しました。共産党が領導し、“民主派”政党が参政する政党制度(中国語で「共産党領導、多党合作制」)がいかに中国に根付き、発展に寄与してきたかを強調しています。

同白書も認めているように、中国で8つある民主派政党は、日本や欧米を含めた民主主義国家で言うところの「野党」ではありません。現体制が続く限り、民主選挙を通じた政権交代も制度的にあり得ません。

『中国新型政党制度』の表紙

中国の政治体制において、民主派政党とは、共産党一党支配下において、共産党のイデオロギー、政策、戦略、方針などを擁護、支持することを大前提に、政策提言を行っていく組織に過ぎません。

そして、習総書記に権力が一極集中し、共産党が絶対的領導を強調する現状において、体制内部においても、異なる意見や提言をする状況は考えられません。「右に倣(なら)え」の姿勢で、習近平総書記は偉大だ、共産党万歳を徹底するしかないのが昨今の空気感です。

中国共産党自身は、あらゆる公式な場面、談話、声明などで、中国が実践してきたのは「民主政治」だと断固主張してきました。

しかし、実際のところ、習近平総書記をはじめとした最高意思決定機関である中央政治局の常務委員(計7人)や委員(計25人)、約3,000人から成る「国会議員」に当たる全国人民代表、そのトップにいる栗戦書(リー・ジャンシュー)全国人民代表大会常務委員会委員長兼政治局常務委員(序列3位)を含め、彼らは人民(有権者)によって直接的、あるいは間接的に選ばれたわけではありません。

中国の官僚機構システムの中で、出身、経歴、派閥、業績などあらゆる指標を根拠に選抜されてきたのです。

たとえば、永田町ではなく、霞が関の省庁において、あるいは大手企業において、激しい競争、人事をめぐる駆け引きやつぶし合いの中で、新入社員からトップまで駆け上がってきたイメージです。習近平、李克強(リー・カーチャン)両指導者とて例外ではありません。

その意味では、中国共産党には、日本を含めた先進国でいうところの政治家は、一人もいません。中国共産党は、すべて官僚の集まりです。

そうして、政策や人事はブラックボックスの中で決定されます。体制に近い、政策に影響力のある知識人や企業家が何らかの役割を果たすことはありますが、基本的に、党指導部の政策決定に、民間人や一般人が関与することはありません。

メディアは原則党・政府の統制、管轄下にあり、政策を監視、批判する機能は持ち合わせていません。基本的に、党・政府の政策を代弁、擁護する宣伝機関です。

政治の現場で共産党の政権運営を監視監督する「野党」も存在しません。デモ集会は厳しく制限、抑圧されているため、人民が直接、間接的に権力者に異を唱える場面もありません。

 そんな中、人々が自らの意見を発表できる唯一のプラットフォームが、インターネット上だと言われてきました。すでにユーザー数は10億を超えています。

確かにそういう側面はあるでしょう。しかし、習近平政権下において、ネット上の議論や言論も、24時間体制で厳格に監視され、例えば、中国版ツイッターと言われる「ウェイボー(微博)」上で、当局が嫌がるつぶやきをしたユーザーには、公安派出所から直接電話がいく、突如訪問されるといった形で、すぐさまツイートを削除するように、さもなければアカウントを永久に凍結するといった措置が取られています。

中国では自らの「お上」として君臨する為政者を自らの意思で選べないのです。政策や世論の形成過程に関与する権利もありません。自らの考えや要望を訴える空間もありまん。

にもかかわらず、なぜ14億の中国人民は、そんな現状を甘んじて受け入れているのでしょうか? 

それは、経済成長ということができるかもしれません。14億の人民が非民主的に選ばれ、治める共産党を受け入れているのは、経済が成長しているから、生活が物質的に豊かに、便利になっているからです。沿岸部と内陸部、都市部と農村部のいわゆる格差が問題視されることがありますが、これらすべての地域において、人々は、他者、他地域との比較ではなく、自らの昔と比べて豊かになっているのです。

ただ、仮にこのような前提が崩れたらどうなるでしょうか。

たとえば、物価の高騰に収入が追い付かなくなったら? 子供の教育にかかる費用が高すぎて、生活が困窮したら? あるいは、中国と諸外国との関係が悪化し、経済的に孤立する中、取引が停止、経営が苦しくなり、多くの倒産企業、失業者が出たら?

それでも、人々は非民主的に君臨、運営する共産党政権を“甘んじて”受け入れるでしょうか?とてもそうは、思えません。人民が経済成長の果実を直接的に享受できなくなれば、それこそ、捨て身の精神で、暴動や造反を引き起こす場面も出てくるでしょう。盛衰を繰り返した中国の歴史が証明しているとおりです。

非民主的な中国共産党による国家運営が持続的に実行され、そのために、経済が持続的に発展していくことができるでしょうか。

そもそも、経済が永遠に成長し続けることはあり得ません。中国共産党は、人々の生活が永遠に経済の恩恵を受け続けることはないという合理的判断・予測に立脚し、経済成長以外で、人々の納得感を増大させる分野を増やしておくべきです。

景気が悪くなり、企業経営が悪化したり、中国と諸外国との関係が悪化しても、それを解決するための政策議論や世論形成に、自らも参加しているのだからという当事者意識(オーナーシップ)が普及すれば、人民の共産党政権への許容度、包容力も増していくでしょう。

さらに、経済を持続的に成長させるための措置を取る、対策を打つことです。この意味で、鍵を握るのがイノベーション(中国語で「創新」)です。習近平政権は「創新」国家戦略の観点から重視し、これからは、投資、資源、労働力といった要素ではなく、イノベーションに立脚した成長戦略を掲げ、経済を持続的に発展させるべきだと主張しています。

しかしながら、習近平政権になって、政治の経済に対する介入、政府の市場に対する干渉が横行し、マーケットの主体となる民間のプレーヤーが伸び伸びと活動できていないのが気になります。製造業、サービス業、研究開発、インターネット企業、フィンテック、文化芸術などを含めてです。習近平一強政治の弊害だといえます。

この意味で、中国経済がイノベーションに立脚する形で、持続的に成長していけるか否かは、共産党が「創新」を国家戦略の次元で重視しつつも、必要以上に干渉、介入しないこと、あらゆる規制緩和や市場主導を通じて、タレントぞろいの中国の人材に伸び伸びと、生き生きと、市場の論理で、日々の仕事に打ち込んでもらうことに懸かっているように思います。

このブログでも以前何度か述べたように、こうしたことをするために、必要不可欠なのは、民主化であり、政治と経済の分離であり、法治国家化です。

これができてはじめて、中間層が星の数ほど大量に輩出し、この中間層がありとあらゆる地域と階層において、社会変革へと結びつくイノベーションを行う素地ができます。そもそも、イノベーションとは社会を変革するものです。社会変革に結びつかないイノベーションは単なる思いつきか、珍奇な発明か、暇つぶしでしかありません。

しかし、中国共産党は、創新をそのようには、捉えていないようです。単なる技術革新、経済的に豊かになるための道具としてしかみていないようです。

この状況では、たとえ中国共産党が、音頭をとって、掛け声をかけ、それだけではなく、莫大な投資をして、技術革新をしても、それは点か、良くてもせいぜい、線のイノベーションにしかなりえず、社会に様々な不合理・非合理が残ったままとなり、結果として経済発展もできません。

やはり、民主化、政治と経済の分離、法治国家化が行わて、はじめて大量の中間層が生まれ、それらが、ありとあらゆる地域と階層でイノベーションを行うことにより、はじめて社会全体が豊かになりその結果として、経済成長するのです。

そうでなければ、結局ほとんどすべての発展途上国がそうであったように、社会は豊かになることもなく、国民一人当たりの年収が100万円(1000ドル)を超えられないという「中所得国の罠」から抜け出せなくなるのです。


先進国がなぜ「中所得国の罠」から抜け出せて、豊かになれたかといえは、それは先に述べたように、政府が国内において、民主化、政治と経済の分離、法治国家化を推進して、多数の中間層を生み出すようにして、それらが、自由に社会経済活動を行えるように担保したために、社会革新が爆発的に起こり、結果として豊かになり先進国となったのです。

多くの発展途上国が現在の中国共産党のように、政府主導でイノベーションを推進して、経済的に豊かになろうとしましたが、ことごとく国民一人当たりの所得が100万円に迫るまでは、経済発展しましたが、その後は行き詰まり、結局「中所得国の罠」から抜け出ることができず、発展途上国のままです。経済的に豊かになりたいと思えば、まず民主化することは絶対に避けられないのです。

中国共産党と政府は先月6日、中国企業の海外市場での上場に関する規制を強化する方針を発表した。企業が保有するデータの国境を越えた取り扱いに関する管理を厳格化し、既に海外で上場している企業に対する監督についても強めます。

中国IT大手に対する締め付けを増している習近平政権が、米中対立を背景に米上場の中国企業への統制を強める狙いがあるとみられます。活発だった中国企業の海外上場の動きに影響を与えるのは必至で、米中対立の新たな火種になる可能性もあります。

中国国営新華社通信によると、共産党中央弁公庁と国務院(政府)弁公庁が連名で「法に照らして証券の違法行為を厳重に取り締まる」という文書を公表。この中で「資本市場の秩序を守る」として、証券犯罪の厳格な取り締まりを行う方針などを示しています。

目立つのは、海外上場に関する規制強化の方針です。国境を越えたデータの移動や機密情報の管理に関わる法制度の整備のほか、中国の証券法の域外適用を可能とする仕組みを確立するとしています。

中国当局は7月に入り、上の記事にもあるように、中国配車サービス最大手の滴滴出行(ディディ)などネット企業3社に対し、国家安全上の理由で相次ぎ審査に着手。3社ともニューヨーク証券取引所など米市場に上場したばかりでした。習政権は「国家安全」を守ることを重視しており、新たは規制強化方針もその一環とみられます。

海外に上場しようとする中国企業は、中国内では自由な活動ができないので、海外に活路を見出そうとしたのでしょうが、反民主、政治と経済の不可分の結びつきを志向し、法治国家ではない中国は、これを放置しておけば、自らの統治の正当性が崩れるとみたのでしょうか。

しかし、先程も述べたように、中国共産党の統治の正当性は「経済発展」です。しかし、海外に進出しようとしている企業にまで、規制を加える中国共産党のやり方では、今後「経済発展」は望めず、共産党はいずれ統治の正当性を失うことになるでしょう。

新しい体制ができたとしても、新体制が、民主化、政治と経済の分離、法治国家化をすすめなければ、結局同じ間違いを繰り返すことになるでしょう。

過去に大帝国を築き、やがて衰退して、また先の帝国とは全く無関係の、大帝国を築き、それもまた衰退してまた次の大帝国を築くということを中国は延々と巨大なスケールで繰り返してきました。

どこかで踏ん切りをつけて、民主化を進めない限り、中国は今後もそれを繰り返すことになるかもしれません。そうして、現在ような異質な体制を繰り返せば、市場においても、その他あらゆる面で米中分離が進むことになるでしょう。世界で孤立することになるでしょう。

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2021年8月1日日曜日

熱中症とコロナ 万全の警戒で医療を守れ―【私の論評】暑さ対策に試してみる価値のあるアイススリラー(゚д゚)!

熱中症とコロナ 万全の警戒で医療を守れ


 梅雨が明け、本格的な夏を迎えるこの時期は熱中症で救急搬送される人も増える。

 熱中症は対応が遅れると命にかかわる。しかし注意することで相当程度避けることができる。身を守るための注意を惜しんではならない。

 しかも、医療現場は今新型コロナウイルスの感染拡大で崩壊の危機に瀕(ひん)している。例年以上に熱中症に注意を払い、患者増で現場の混乱に拍車をかけないようにしたい。

 今年7月19日から25日までの7日間に、熱中症で救急搬送された人は全国で8千人を超えた。昨年の同時期の2倍超だ。

 昨年に比べて数が多いのは、梅雨明けが早かったからだろう。マスクを着用していることが、リスクを高めている可能性もある。皮膚からの熱が逃げにくくなり、心拍数や体感温度が上がりやすくなるからだ。

 救急医療の現場では、新型コロナの患者と熱中症の患者の搬送が重なり、通常医療の維持が困難になりつつある。「平時なら助けられる命が、助けられない」との悲鳴が上がっている。

 熱中症の症状は発熱、頭痛、倦怠(けんたい)感、筋肉痛など、コロナに似ている。新型コロナを疑いながら対処せざるを得ないことが医療現場のさらなる負担になる。

 しかし、熱中症は自らの注意で防ぐことができる。日中はできるだけ外出を控え、暑さを避けて過ごすことだ。人混みに出ないことはコロナ対策にも有効である。

 戸外で人との距離を2メートル以上取れるときはマスクを外すようにしたい。のどの渇きにかかわらず、水分をたっぷり取り、汗をかいたら塩分補給も重要である。

 部屋の中では扇風機やエアコンをつける。コロナ対策の換気も忘れないようにしたい。すだれ、よしず、打ち水なども暑さ対策の一助になろう。

 リスクの高い高齢者や小児には周囲が目を配り、声をかけることも大切だ。自力で水が飲めなかったり、意識が混濁しかけたりしたら、救急車を呼ぶのをためらってはいけない。

 何よりも重要なのは、自分で自分の身を守る心がけである。

 今夏、熱中症にならないことは、新型コロナとの闘いで最前線に立つ医療職らと危機感を共有することになる。ささやかな協力を惜しんではならない。

【私の論評】暑さ対策に試してみる価値のあるアイススリラー(゚д゚)!

この暑さ、こちら北海道も続いています。7月28日には、北海道内では、初めて熱中症警戒アラートが網走・北見・紋別地方に出されました。

昨日(31日)の北海道は、全道的に晴れて強い日差しが降り注ぎました。上空に暖かい空気が流れ込んだ影響もあって、気温が高くなっています。

午後3時までの最高気温は、上川地方の旭川市江丹別で38・4度と、道内の7月の最高気温の記録を更新しました。なお、これまでの記録は1924年に帯広で観測された37・8度で、97年ぶりに7月の最高気温を更新したことになります。

道内では今日を含めて8日連続で猛暑日を観測しましたが、猛暑日連続記録としては、観測史上初めてのことです。また、38度以上の気温を観測したのは、全国でも今年初めてのことになります。

本当に驚くほどの暑さです。私自身は、北海道で育ち、通算で10年くらいは、東京にいたこともあるのですが、その経験の中では、今年の札幌が一番暑く感じるくらいです。

かなりの暑さだった"おたるドリームビーチ"

"おたるドリームビーチ"にも異変がありました。北海道ではたとえ外気温がかなり低くても、海水は冷たいので、5分以上も海水に浸かると寒くなり、10分も浸かっていると唇が青みを帯びてくるほどなのですが、今年はそのようなことはありません。15分位浸かっていても、寒くありません。これは、驚きです。まるで、昔行った沖縄の海のようです。

気象庁の統計によりますと、現在、道内周辺の海水温は、過去30年間の平均と比べると4度から6度ほど高くなっています。 暑さが続き、海水温がどんどん上昇していて、平年差は、全国の海の中でも最も大きくなっています。

これだけ海水温が高いと、漁業にも悪い影響がでるのではないかと心配です。

おたるドリービーチ

北海道は例年涼しいので、北海道民は、今年の暑さはかなりこたえていると思います。自宅にはエアコンがあるので重宝しています。しかしこれだけ毎日のように、長時間使用するのははじめてですので、電気料金がどうなるのか、心配です。

これだけ、暑いと上の記事にも触れられているとおり、熱中症が心配になってきますが、これを防止するには、水分をこまめにとるということですが、その他にも注目すべきものがあります。

熱中症対策とパフォーマンス維持のための内部冷却の方法として、スポーツ界で注目されているのが『アイススラリー』です。アイススラリーとは、液体に微細な氷の粒が混じったシャーベット状の飲み物で、冷蔵庫から出した飲み物が4℃くらいなのと比べて、マイナス1℃と低温。細かい氷の粒に液体が混じった流動性のある飲み物のため、体に浸透しやすく、効率よく内側から体を冷やせるという特徴もあります。

アイススリラーの作り方は簡単です。ポカリスウェットなら、コンビニなどで、アイススリラー用を売っています。ただし、慢性疾患などて塩分を控えている人には、ポカリスエットが向かいない場合もありますが、そのような場合はかき氷の機会で氷をクラッシュして、水と混ぜれば良いです。これを魔法瓶などに入れて持ち歩けば、その時々で適量を飲むことができます。

アイススリラーをつくる野球部のマネジャー

これ実際飲んでみると、結構効き目があります。なにやら、体感温度が低まった感じがします。夏にビーチにでかけたり、どうしても外出しなければならないとき、あるいは部活などで、どうしてもある程度運動をしなければならないようなときに活用してみてはいかがでしょうか。

東京五輪でも、多くのアスリートがアイススリラーを用いているようです。暑さに負けず頑張っていただきたいものです。

アイススリラーは試してみる価値があります。ただ、飲みすぎには気をつけましょう。

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2021年7月31日土曜日

中国のサイバー攻撃に対抗措置! 米政権の“キーパーソン3人”に注目 対中制裁「香港ドルペッグ制」停止の可能性―【私の論評】バイデンの胸先三寸で決まる、香港ドルペッグ制の停止(゚д゚)!

中国のサイバー攻撃に対抗措置! 米政権の“キーパーソン3人”に注目 対中制裁「香港ドルペッグ制」停止の可能性

日米欧による「中国のサイバー攻撃非難」について報じる新聞各紙(右上・産経、左上・読売、、下・朝日)

 7月20日朝刊の新聞各紙の見出しは、珍しく一致した。

 「日米欧、中国を一斉非難-MSソフト『サイバー攻撃』と結論」(産経新聞)、「サイバー攻撃、中国を非難-米英など声明 日本も支持」(朝日新聞)、「中国サイバー攻撃非難-米、日欧と声明 対抗措置示唆」(読売新聞)。

 各紙報道を要約すると、以下のようなことである。

 中国政府(国家安全保障省)が関与したとされるサイバー攻撃は、3月に発覚した米マイクロソフトの企業向け電子メールソフトに対する攻撃が典型である。

 中国政府につながるハッカー集団がランサムウェア(身代金要求型ウイルス)などで攻撃を行い、日米欧で経済活動の脅威となっている(=NECの防衛関連ファイルが不正アクセスされた)。こうした中国のサイバー攻撃に対処するため、ジョー・バイデン米政権は19日、ハッカー集団の手口を公表するだけでなく具体的対抗措置を取るとの声明を発表した。

 では、誰がどの組織・機関を主導して具体的な対抗措置を打ち出すのかである。残念ながら、新聞報道にその言及はない。

 「バイデン政権7人の侍」と名付けた経済安全保障政策のプロがいる。その中でも際立つ3人が、中国への対抗措置を決定するキーパーソンである。(1)デビッド・コーエン米中央情報局(CIA)副長官(2)ダリープ・シン米国家安全保障会議(NSC)大統領次席補佐官(3)タラン・チャブラNSC技術・安全保障担当上級部長だ。

 まず、バラク・オバマ政権時の財務次官(金融テロ担当)として、「金融制裁のグル」と呼ばれたコーエン氏。カウンターインテリジェンスの責任者として、NSC、財務省、連邦捜査局(FBI)と協力してサイバー攻撃を取り締まる。

 次のシン氏も、オバマ政権下で財務次官補(国際金融犯罪・サイバー犯罪担当)を歴任した。現在は、米中対立の先鋭化が進む中で、対中金融制裁の責任者とされる。

 3人目のチャブラ氏は、6月初旬に米上院が賛成多数で可決した「米国イノベーション・競争法」の策定を始め、中国との技術覇権競争で注目を集めたECRA(輸出管理改革法)の執行などにも関与している。経済産業省の経済安全保障政策部局がマークしている人物だ。

 上述の3人以外に、NSCのローラ・ローゼンバーガー中国担当、エドガード・ケーガン東アジア大洋州担当の両上級部長もキーマンである。

 今後の展開いかんで、対中制裁として、米ドルと香港ドル交換の「ドルペッグ制度」の停止もあり得る。(ジャーナリスト・歳川隆雄)

【私の論評】バイデンの胸先三寸で決まる、香港ドルペッグ制度の停止(゚д゚)!

イギリス、アメリカ、欧州連合(EU)ら数十カ国は19日、中国が今年初めに米マイクロソフトの企業向け電子メールソフト「エクスチェンジサーバー」に大規模なサイバー攻撃を行ったと非難しました。この攻撃で、世界中で少なくとも3万もの組織に影響が出ました。

中国のサイバー攻撃を避難するブリケン国務長官

欧米のセキュリティ・サービスは、標的を絞ったスパイ活動から、破壊的な攻撃への移行を示しているとみており、中国によるサイバー行為のエスカレートが懸念されています。

中国国家安全部(MSS)は、より幅広いスパイ活動や「見境のない」広範な行動パターンについても非難されてきました。

中国はこれまでハッキング疑惑を否定しており、あらゆるかたちのサイバー犯罪に反対するとしてきました。

欧米の情報機関によると、今回の事案はこれまでに見られたものよりはるかに深刻だといいます。

事の発端は1月、中国とつながりのあるハッカー集団「Hafnium」がマイクロソフト・エクスチェンジの脆弱(ぜいじゃく)性を悪用したことでした。ハッカーはシステム内に後から侵入できるよう、「バックドア」と呼ばれる侵入口を設置しました。

イギリスは、今回の攻撃によって、個人情報や知的財産の取得を含む大規模なスパイ活動ができるようになる可能性が高いと指摘しました。

この攻撃は主に、防衛関連企業やシンクタンク、大学など、Hafniumの過去のターゲットに沿った特定のシステムに対して行われました。



これだけなら、単なるスパイ活動の一つに過ぎなかったでしょうが、2月下旬に重大な変化がありました。

中国に拠点を置く他のグループがマイクロソフトの脆弱性を悪用し始めたことで、この標的型攻撃は大規模なものになり、標的が世界の主要産業や政府にまで拡大しのですた。

欧米のセキュリティ関係者によると、Hafniumはマイクロソフトが脆弱性がみとめられる部分について、修正パッチを公開または廃止にする方針であるという情報を事前に入手。この情報を中国のほかのグループと共有し、修正が行われる前に利益を最大限得ようとしたといいます。

こうした脆弱性についての情報を拡散するという見境のない判断が、今回中国を公然と非難する事態を招いたと、当局は説明しています。

イギリスは、中国のサイバー活動について証拠書類を渡すなどし、長期にわたって中国政府に内々に問題を提起してきたとも言われています。

マイクロソフトは3月2日にこの脆弱性を公表し、問題を解消するための修正パッチを提供しました。この時点で、世界中のさらに多くのハッカーがこの脆弱性の価値を認識し、攻撃を開始しました。

この結果、世界中の約25万ものシステムが危険にさらされ(その多くは中小企業や組織)、少なくとも3万もの組織が不正にアクセスされました。

米国司法省は、MSSのハッカー4人の起訴を発表しています。この4人は、少なくとも12カ国の政府および主要部門の企業を標的とした長期的な活動に関与しているといいます。

欧米の安全保障関係者は、今回明らかになったすべての活動の背後にはMSSがいると考えており、国際的な協調行動で圧力をかけられることを期待しています。

香港ドル

上の記事では、今後の展開いかんで、対中制裁として、米ドルと香港ドル交換の「ドルペッグ制度」の停止もあり得るとしいます。

米ドルと香港ドル交換の「ドルペッグ制度」が停止されると、中国の金融・経済は破滅的な影響を受けることになります。

香港ドルHKD=D3は米ドルに対する変動幅を1米ドル=7.75-7.85香港ドルの狭い範囲に設定。香港金融管理局(中央銀行、HKMA)が香港ドルを売買し、値動きをこの範囲内に収めます。HKMAが香港ドルを買えば需給が引き締まり、香港ドルをショートにするコストが上昇します。HKMAが香港ドルを売れば逆になります。

ペッグ制を維持するため、香港の公定金利は米国の政策金利を上回るように設定されます。香港ドルがレンジ内ながら変動するのは、香港と米国の市場金利の差によります。香港の銀行間取引金利は米国の銀行間取引金利よりも高くなっているため、昨年の国安法に関連した資金流出の懸念にもかかわらず、香港ドルは堅調を維持していました。

米中間の緊張がエスカレートすれば米国が香港の銀行による米ドルへのアクセスを制限する可能性があるとの懸念もあります。そうなればペッグ制が揺らぐことになります。

香港は1997年に中国に返還されて以降、中国本土に比べた経済的な重要性は薄れましたが、金融面での存在意義は増しています。ペッグ制が本物の脅威に見舞われれば、脅威がいかなるものであっても、そうした存在意義は低下することになります。

中国政府が本土で厳しい資本統制を続けているため、香港が果たす役割は、主要な資金調達の経路から世界最大級の株式市場、中国本土の株式や債券に流入する国際投資の最大の入り口まで幅広くあります。

中国本土の富裕層も香港に信頼を置いています。1兆米ドル超と推定される香港の個人資産の半分以上は、本土の個人資産とされています。

現在は米ドルペッグを続けている香港ドルですが、香港基本法によれば、どの資産を裏付けとして使用することも可能です。実際に香港はドルペッグ以前には英ポンドにペッグされていたことや銀に紐づけて管理されていた時代があります。ですから今後、例えば香港ドルの為替レートを日本円にペッグさせる、人民元にペッグさせると言うことも法制度上は可能で選択肢に入ってくる訳です。

ただし現在、人民元は資本の自由移動に制限がありますから、現行の制度を活かす形で運用する場合には、香港側の選択肢に入らないはずです。では日本円を裏付け資産に使うかと言うと、それもまた基軸通貨である米ドルの方が良いとなるわけです。ですから現在のところ香港側が裏付け資産を米ドルから他の何かに変えるインセンティブはないです。

となると、現行の米ドルペッグが崩れる唯一想定される事態は、米国が米ドルと香港ドルとの自由な交換を認める香港政策法を改正して、香港ドルと米ドルの交換に制限を加える場合です。これは米中対立において米国側の最終手段として発動される可能性はあります。ただその際には当然人民元についても同様の制限を加えることが想定されるため、人民元と香港ドルにセットで交換制限を加えることになるでしょう。

この場合に、香港ドルは裏付けとなる資産を米ドル以外から探さなくてはなりません。日本円を裏付け資産にするという可能性もありますが、そこは米国のほうから、日本に対して裏付け資産にはしないようにとの強い要請をするでしょうから、これはないでしょう。

次の選択肢としては英ポンドに戻すという可能性もあるかもしれません。ただ、香港の一国二制度を破った中国に英国は業を煮やしており、それを許すことはないでしょう。もしくはこのような事態になれば、いよいよ中国が人民元の資本移動制限を外すかもしれません。

そうなれば裏付け資産は当然人民元が最有力候補ということにはなりますが、香港のドルペッグ制を停止した、中国の人民元をペッグ制の対象にすることはあり得ません。あるとすれば、現中国の体制が崩壊して、新たな体制になった場合のみでしょう。

そうなれば、中国は世界から膨大な資金の調達することが不可能になり、金融・経済はかなり落ち込むことになります。これは、予め予想されたことではありますが、米中の対立が続く限り、いずれこれは実行されるかもしれません。

なお、香港ドルペッグ制度の停止についてはは、すでに法律が定められており、議会の承認がなくても、大統領令だけで速やかに実行できます。まさに、バイデンの胸先三寸なのです。

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2021年7月30日金曜日

【日本の解き方】かけ声ばかりのコロナ対策 医療や補償の予算も未消化 ワクチン接種急ぐしかない―【私の論評】コロナと共存できる強靭な社会を目指すべき(゚д゚)!

【日本の解き方】かけ声ばかりのコロナ対策 医療や補償の予算も未消化 ワクチン接種急ぐしかない


モデルナ社製のワクチンの瓶

 現状の新型コロナウイルス感染は50代以下が大半で、入院患者数は増えているが死者や重症者は大きく増えていないという状況だ。東京都は緊急事態宣言下にもかかわらず目立った人出の減少はみられていないが、どのような対策が望ましいのか。

 筆者が理想としているコロナ対応は以下の通り。まず、一定期間後(例えば2カ月後)の新規感染者数、重症者数を予測する。そこで、現時点の医療キャパシティーで、病床数などで対応できるかどうか判断する。

 もし対応ができない場合、まず「供給」対策として医療資源の増加を試みる。公立医療機関であれば直接的な予算措置が必要だし、民間医療機関でも間接的な助成措置が必要となるので、その適否を検討する。

 供給対策ができないのであれば、「感染」対策として、感染者数の増加を抑制するために、人々の行動規制を考える。この場合も、何ら対策をしないで行動規制だけに依存するのではなく、「3密」を避けるために諸施策を組み合わせて実施する。

 以上が基本であるが、感染症の増加はある時点から指数関数的になるので、そうなったら「供給」対策は意味を持たなくなる。その意味で将来予測が極めて重要だ。

 しかし、今の日本の対策を見ていると、まず将来予測でとんでもない数字が出て人々の不安をあおり、その結果、供給対策に意味はなく、感染者数の増加を抑制するために、人々の行動規制を「自粛」という形で政府が要請する。その中で、決定的なエビデンスがあると思えない飲食・旅行規制を、業者に対する規制の形で行ってきた。

 実際、医療機関がコロナ患者を受け入れる病床の確保に必要な費用などに充てる「緊急包括支援交付金」は約1兆5000億円の予算措置がなされたが、その多くは未消化だ。飲食・旅行規制での業者への代償として、地方自治体の協力金の財源となるはずの「地方創生臨時交付金」は約4兆5000億円も予算措置がなされたが、これもかなりの部分が未消化になっている。

 これらの未消化については、実務的にできなかったとされているが、官僚が裁量的に支出を渋ったのかどうかを含め原因をしっかり究明する必要がある。

 要するに、予算では供給対策も業者規制への補償も手当てされていたが、それらがあまり実行されずに、人々への行動規制という「かけ声」ばかりが行われたというのが実態だ。

 こうしてみると、政府のコロナ対策が、前提となるべき科学的な予測がないので、それに基づく供給対策も業者規制に対する補償も行われない中身のないものであったことが分かる。

 この中で、かろうじてうまくできているのがワクチン接種だ。ワクチン接種は海外の例でも、コロナの感染者数を減少させ、特にその中でも重症者数や死者を減らし、医療崩壊を防ぐ。今となっては、ワクチン接種を進めていくのがベストの策だ。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】コロナワクチン接種の推進で、

厚労省の発表によれば、7月27日の全国の新規感染者数は7000人を超えていますが、移動平均では6000人程度です。新規感染者数は急増しており、これがマスコミ報道で強調されています。しかし、より重要な重症者数、死亡者数はそれぞれ500人、10人程度であり、これは過去の1月の3波や5月の4波のピークの半分以下の水準です。


なお、人口あたりの新規感染者数と新規死亡者数、それに、100人当たりのワクチン接種状況のG7における国際比較をみると、いずれも日本はG7の中では優等生です。

なぜ、新規感染者数が急増しているのに、重症者数が増えない理由は簡単で、ワクチンが順調に接種され、新規感染者のほとんどはリスクの低い若者で、リスクの高い高齢者はそれほど多くないからです。 

ちなみに、東京都でみると、28日の新規感染者は3177人(移動平均では1954人)ですが、そのうち60才以上は172人(移動平均では98人)で、1月の第3波の三分の一程度です。 


重症者数や死者数が著しく多いと医療逼迫やひいては医療崩壊をもたらすので大変ですが、ワクチン接種のおかげで、それらのリスクの高い高齢者の感染が抑えられているので、すぐには大事に至りにくいです。 

7月27日、東京都福祉保健局の吉村憲彦局長は、重症化のリスクの高い高齢者の割合は少なくなり、病床の確保も進んでいるとして、「年明けの第3波のときとは本質的に異なっているので、医療に与える圧迫は変わっている。いたずらに不安をあおることはしていただきたくない」と述べています。

日本のコロナ感染の状況はこのようなものですが、結局のところ上の高橋洋一記事にもあるように、ワクチン接種を進めていくことが、決め手です。これが進めば、感染者数が増えたとしても、さほど気にしなくても良いようになります。

そのワクチンですが、厚生労働省は8月後半に配布を予定していた新型コロナウイルスワクチンについて、「在庫があると判断した自治体への供給量を1割減らす」としていた方針を撤回すると発表しました。自治体からは、在庫とされるなかには予約済みのワクチンも含まれているなどとして、反発の声が上がっていました。

 V-SYSという厚労省が管理しているワクチンの在庫管理システムのなかで、在庫が積みあがっているように見えるのですが、もう既予約済みのワクチンも含まれている場合もあります。

そもそも在庫は、極めて管理するのが難しいです。需要を予測しなければいけないわけです。どんな業界でも、在庫管理をすることは難しいので、少し余分にあるくらいがいいのです。 さらに、新型コロナワクチンは厳しい温度管理も必要です。

足りないよりは、少し余るくらいでちょうど良いです。たくさん余っても、管理すれば良いだけです。冷凍庫への保管が重要です。そこで期限切れにならなければよいわけです。これは、アイスクリームに近いです。アイスクリームも長いこと保存できます。 

ワクチンはそれに近いですから、在庫管理より電源管理の方が重要な品物なのです。だから積極的に出して、余ればストックでいいのです。削減なんて、何を言っているのか理解できません。 在庫は多くて良いです。米国では、どんどん製造してどんどん接種しています。

日本でも、ワクチンはどんど製造してどんどん接種するという方式で、良いです。なぜ供給の削減をしようとしたのか理解に苦しみます。

そもそもコロナワクチンは、国外から入って来るものですから、厚生労働省に貯めないで、どこにでも配るべきです。配っておけば、あとは自治体間で調整が必要ですが、ワクチンを打ちたい人がどこでも打てるという大規模接種会場のようなものを実施すれば、在庫は無駄にせず使い切ることができるはずです。

コロナと共存できる強靭な社会を目指すべき

高齢者へのワクチン接種は一巡したようですが、これからは若年層に対して接種を強化し、コロナと共存できる強靭な社会を目指すべきです。

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