2021年11月26日金曜日

中国軍改革で「統合作戦」態勢整う 防衛研報告―【私の論評】台湾に侵攻できない中国軍に、統合作戦は遂行できない(゚д゚)!

中国軍改革で「統合作戦」態勢整う 防衛研報告


 防衛省のシンクタンク、防衛研究所は26日、中国の安全保障に関する動向を分析した年次報告書「中国安全保障レポート2022」を公表した。中国は習近平国家主席が主導した軍改革により、伝統的な陸海空の軍隊に加え、宇宙やサイバーなどの新たな領域を加えた「一体化統合作戦」が遂行できる軍体制を整えたと指摘した。ただ、残された課題も多く、今後の動向に注視が必要と訴えた。

 報告書のテーマは「人民解放軍の統合作戦能力がどこまで深化したのか」。2012年に発足した習体制のもとで断行した建国以来最大規模の軍改革について、一体化統合作戦が実現可能な態勢を整えたと評価した。

 習体制の軍改革では、全土を5つの「戦区」に再編し、陸海空各部隊の指揮権限を付与している。レポートでは、中央と各戦区にそれぞれ作戦指揮システムを導入し、台湾周辺や南シナ海での訓練を活発化させていると分析した。

 一方、レポートでは指揮系統や人材育成制度など細部にわたり分析を加え、課題もあぶり出した。陸海空司令部と戦区の間の権限調整や、各戦区に配置された政治委員の指揮権限などが残されており、「その克服には時間がかかると目される」とした。

 また、中国軍が各レベルで人材育成に力を入れているとも指摘した。各戦区の政治委員が作戦指揮や科学技術も学び、統合作戦の指揮を可能にすることで、共産党体制との両立を模索しているとした。

【私の論評】台湾に侵攻できない中国軍に、統合作戦は遂行できない(゚д゚)!

このレポートは以下のリンクからご覧いただけます。
http://www.nids.mod.go.jp/publication/chinareport/pdf/china_report_JP_web_2021_A01.pdf
今年のレポートは、1991年の湾岸戦争以降に中国が本格的に研究を始め、2000年代半ばから提唱した「統合作戦構想」に焦点を当てています。

統合作戦そのものは、中国独自のものではなく、同じ軍隊における異なる軍種・部隊間が連携して行う軍事作戦であり、第二次世界大戦の頃から重要性が認識されるようになってきました。その必要性としては軍事技術特に航空機、電子戦、ミサイルの発達によって作戦地域における前線、後方、地上、空中などに限定されることなく戦力が複雑に交錯することになったことが挙げられます。

また、集団安全保障体制の重要性が高まり、軍隊内の意思疎通を万全にして連合作戦を実施する必要性が出てきたことがあります。また軍隊に対する政治統制の希求、徹底した合理化、効率性と経済性の追求なども理由として大きいです。

中国の「統合作戦構想」とは、簡単に言ってしまうと、陸海空の「伝統的安全保障領域」に、宇宙やサイバー電磁波、認知領域など「新型安全保障領域」を連動させるものです。レポートでは、習近平指導部が建国以来最大の軍改革を断行し、習氏の統制力・指揮権限が強化され、統合化を重視した軍上層部の人事が行われたことなどを挙げ、「構想を実現し得る体制を整備した」と記述しています。

また中国軍が台湾周辺や南シナ海での訓練を活発化させていることについて、「一連の訓練を通じて、各軍種間で情報共有体制と指揮体制システムの相互接続などを強化している」と指摘しました。

さらに人材育成面では、軍の学校やオンライン教育によって統合作戦人材の育成に力を入れていることを紹介する一方、課題として、軍と民間との給与面の差が大きく、高度な科学技術知識に優れた人材の確保、維持、育成が難しいことなどを挙げています。

著者の防衛研究所・杉浦康之主席研究官は、今年のテーマについて「中国の軍改革は2020年に完成することになっていた。一体、中国はどこまで能力を強化できたのか、この時点で評価するのは重要と考えた」と語りました。

「統合作戦構想」自体は、いずれの軍隊でも考えておくべきことであり、いずれ将来の戦争はこのような作戦に基づき実行されるようになるのは間違いないでしょう。しかし、それと現状の差異はまだまだあります。

昨日も述べたように、中国には台湾に侵攻できるだけの力はありません。それについては、機能はある記事を引用しましたが、本日は再度別の角度から述べてみます。

中国が台湾を武力統一しようとする場合、最終的には上陸侵攻し、台湾軍を撃破して占領する必要があります。来援する米軍とも戦わなければならないです。

国防関係の展示会で展示された対艦ミサイル「雄風3」とキャニスターの模型(手前)=2015年8月、台北市内

その場合、中国は100万人規模の陸上兵力を発進させる必要があります。なぜなら台湾軍の突出した対艦戦闘能力を前に、上陸部隊の半分ほどが海の藻くずとなる可能性があるからです。

それに、昨日も述べたように、日米の潜水艦隊が台湾に加勢すると、上陸部隊のさらに半分が海の藻屑となります。これでは、台湾に到達する前に、全部隊が撃破されることになります。

日米が加勢しないとしても、100万人規模の陸上兵力を投入するためだけにでも5000万トンほどの海上輸送能力が必要となります。これは中国が持つ全船舶6000万トンに近い数字です。

台湾有事を気楽に語っている軍事評論家も忘れているようですが、旧ソ連軍の1個自動車化狙撃師団(定員1万3000人、車両3000両、戦車200両)と1週間分の弾薬、燃料、食料を船積みする場合、30万~50万トンの船腹量が必要だとされています。

旧ソ連軍の演習

船舶輸送は重量トンではなく容積トンで計算するからです。それをもとに概算すると、どんなに詰め込んでも、3000万トンの船舶が必要になります。

この海上輸送の計算式は、世界に共通するもので、中国も例外ではありません。むろん、来援する米軍機を加えると、中国側には上陸作戦に不可欠な台湾海峡上空の航空優勢を確保する能力もありません。

それだけではありません。軍事力が近代化するほど、それを支える軍事インフラが不可欠です、中国側にはデータ中継用の衛星や偵察衛星が決定的に不足しています。

その不足したインフラも、昨日も述べたように米軍が台湾に加勢することになれば、米国は真っ先に攻撃型原潜を派遣し、それをもって中国軍の偵察衛星の地上施設やレーダーなどを破壊するでしょう。そうなると、中国は目を塞がれた状態で戦わざるを得ないです。

しばしば脅威が喧伝される空母キラーと呼ばれる対艦弾道ミサイルも、移動する空母を追跡して直撃する能力には至っていません。さらに、これが機能したにしても、海に潜航する米国の攻撃型原潜を沈めることはできません。そういう中国側が、サイバー攻撃を仕掛けたにしても、上陸作戦の成功がおぼつかないのは明らかです。

それよりも何よりも、昨日も掲載したように、初戦において米攻撃型原潜が3隻くらいででも、台湾を包囲すれば、最初から中国の艦艇も、航空機も台湾に近づくことすらできません。近づけば破壊されます。こうすれば、米軍も台湾軍もほとんど犠牲が出ません。中国軍が無駄に犠牲を増やすだけになります。

中国軍が素早く行動して、運良く台湾に上陸部隊を揚陸できたとしても、その後に米攻撃型原潜に台湾を包囲されてしまえば、上陸部隊に対して補給ができなくなりお手上げになります。

そんなことよりも、注意すべきなのは、台湾国内で親中国的な世論が生まれ、内乱のような混乱に乗じて、傀儡(かいらい)政権が登場することでしょう。中国によるあらゆる手段を駆使するハイブリッド戦こそ警戒すべきです。

米軍トップのミリー統合参謀本部議長

6月17日、米軍トップのミリー統合参謀本部議長は上院で「中国が台湾への侵攻能力を備えるには長い時間がかかり、その意図もない」と述べ、3月の米国のデービッドソン・インド太平洋軍司令官(当時)の「中国の台湾への脅威は6年ほどで現実のものとなる」との発言を否定しましたが、上記のようなリアリズムに基づいていることを知っておくべきです。

先に述べたように、「統合作戦構想」自体は、中国に限らずいずれの国も持っていてしかるべきであり、そこに向けて努力すべきものだとは思います。

しかし、台湾に侵攻できない中国軍が、組織改編等したからといって、すぐに精緻な統合作戦ができるというわけではありません。その前にすべきことが多くあります。その道のりはまだまだ遠いとみるべきでしょう。

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2021年11月25日木曜日

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 「民主主義サミット」米が台湾招待、事実上の“国家承認”か 中国は反発「火遊びすれば、自ら身を滅ぼす」 識者「岸田政権はあらゆる対策を」


 ジョー・バイデン米政権が12月9、10日、民主主義国の首脳らを集めてオンライン形式で開催する「民主主義サミット」に、蔡英文総統=顔写真=率いる台湾が招待された。米国としては、台湾が「自由」「民主」「人権」「法の支配」など、共通の価値観を持つ自由主義陣営の一員だと世界に示し、中国などの専制主義勢力に対峙(たいじ)する姿勢を明確にする。事実上、「台湾の国家承認の場」となるという見方もある。

 民主主義サミットは、バイデン大統領が2月初め、就任後初となる外交政策演説で明言していた。国務省によると、(1)権威主義からの防衛(2)腐敗との闘い(3)人権の尊重-をテーマに議論を深め合うという。

 国務省が23日までに公表した招待リストには、計約110の国・地域の名前が並んだ。日本と欧州地域の同盟・友邦諸国、オーストラリア、インド、台湾は入っていたが、中国やロシアは招かれなかった。

 これを受け、台湾総統府は24日、サミットに台北駐米経済文化代表処の蕭美琴代表(駐米大使に相当)と、デジタル担当政務委員(閣僚)のオードリー・タン(唐鳳)氏が出席すると発表した。

 総統府の張惇涵報道官は「台湾での民主主義の成功経験を共有し、自由と民主主義の価値観を守っていきたい」と強調した。

 これに対し、中国は反発してきた。

 中国外務省の趙立堅副報道局長は24日の記者会見で、「米国が台湾独立勢力と一緒に火遊びすれば、自ら身を滅ぼすだろう」と述べ、米国を牽制(けんせい)した。

 来年2月の北京冬季五輪を見据えて、自由主義陣営は、習近平国家主席率いる中国共産党政権と向き合うことになる。

 拓殖大学海外事情研究所の川上高司教授は「民主主義サミットは事実上、台湾を『国家として承認する場』になりそうだ。中国が台湾侵攻を見据えた軍事的圧力を強めるなか、米国が堂々と向かい合ったことで、一触即発の危機が増した。『台湾有事』は『沖縄有事』『日本有事』に直結する。岸田文雄政権は台湾有事に備えて『日米同盟を強化』するとともに、『邦人退避の計画・準備』『南西諸島の離島防衛の強化』『中国のミサイル攻撃を想定した避難訓練の実施』など、考え得るあらゆる対策を、本気になり、覚悟を持って講じるべきだ」と語っている。

【私の論評】サミットに台湾を招いても何もできない中国の実体を国内外に見せつけるバイデンの腹の中(゚д゚)!

民主主義サミットについては、以前もこのブログに掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
民主主義サミットに向けてバイデンが抱えるジレンマ―【私の論評】バイデンは「民主化」こそ、経済発展して国の富を増やし、先進国になる唯一の道であることを示すべき(゚д゚)!

詳細は、この記事を是非ご覧になってください。この記事は、11月10日のものです。この時点では、このサミットは「権威主義からの防衛」「汚職との戦い」「人権尊重の推進」の3つをテーマに、各国が民主主義を活性化させる具体的な方策を協議するとされていました。

そうして、参加国の中には、ボーランド、メキシコ、フィリピンなどの民主的とは言いきれない、国も招待されているとされていました。

これでは、ピンポケしたサミットになるのではないかとも思いました。そのため、一人あたりのGDPで比較すれば、民主化されている国のほうが、経済発展していると言う事実を根拠に、バイデンは「民主化」こそ、経済発展して国の富を増やし、先進国になる唯一の道であることを示すべきであると主張しました。

なぜなら、これを主張することによって、民主化されていない国々がこのサミットに参加することの意味や意義がでてくると考えたからです。

ただ、このサミットに台湾を招待するということになれば、話が違ってきます。民主化された台湾を参加させることにより、このサミットは大きな意味を持つことになります。

昨日もこのブログで示したように、2018年時点で世界第2位の経済大国とれさる中国は一人あたりのGDPでは約9,600ドルで世界第72位に過ぎません。台湾の一人当たりGDPは、同年25,026ドルを記録しました。以下に台湾の一人あたりGDPの推移を示すグラフを掲載します。


中国のGDP統計は、全くのデタラメなので、掲載しませんが、公表されているデタラメのGDPですら2018年時点では、9,600ドルです。やはり、明らかに民主台湾は大陸中国よりも一人あたりのGDPではまさっています。

無論経済だけが、国民一人ひとりの幸福に直接つながるわけではありませんが、経済は健全で豊かな社会を築く大きな要素であることは間違いありません。

昨日のブログにも掲載しましたが、そもそも、中国が「一帯一路」で投資するのを中東欧諸国が歓迎していたのは、多くの国民がそれにより豊かになることを望んでいたからでしょう。

一方中国には、そのようなノウハウは最初からなく、共産党幹部とそれに追随する一部の富裕層だけが儲かるノウハウを持っているだけです。中共はそれで自分たちが成功してきたので、中東欧の幹部たちもそれを提供してやれば、良いと考えたのでしょうが、それがそもそも大誤算です。中東欧諸国が失望するのも、最初から時間の問題だったと思います。

このことは、台湾と中国の間でもあてはまります。民主主義サミットでは、これを強調すべきです。これで、この民主主義サミットは大きな意義をもつことになるでしょう。

上の記事では、もう一つ気になることがあります。上の記事の結論部分には「中国が台湾侵攻を見据えた軍事的圧力を強めるなか、米国が堂々と向かい合ったことで、一触即発の危機が増した」とあります。

しかし、私はバイデンは一触即発の危機などないし、中国が台湾に侵攻することなどありえないし、あれば中国が惨敗するだろうとみているからこそ、台湾を民主主義サミットに招くのだと思います。

平和ボケが続いた日本では、台湾侵攻がいかに困難なことであるかについて認識する人は少ないです。これについては、たとえば下の記事が参考になります。
【兵力想定】中国最大の「台湾上陸作戦」
台湾の海軍兵

この記事は4月のものです。詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下にこの記事の出だしの部分を引用します。
2021年1月に米バイデン政権が発足して3カ月、米中対立はますます激化し、今や「新冷戦」と呼ばれるほどになっている。この余波というべきか、中国が悲願の国家統一を果たそうと近々台湾に一大上陸侵攻作戦を展開するのでは、との観測がにわかに高まっている。しかし、それが成功する可能性はほぼゼロ。理由は簡単、今の中国軍の実力では無理なのだ。

さらに、以下に一部を引用します。

中国軍の上陸作戦能力を分析すると、揚陸艦艇の総数は約370隻で、うち上陸部隊を満載し130~180kmの台湾海峡をムリなく渡航できる艦艇(大体満載排水量500トン以上)は70隻程度、輸送可能兵員数は2万数千人。これに民間フェリーの徴用やヘリコプター、落下傘降下で展開できる兵員数千人を加え、上陸作戦第1陣の投入兵力はざっと3万人程度だろう。

だが実際は待ち構える台湾軍が雨あられのごとく銃弾と砲爆撃を浴びせるなかでの強行上陸となるので、最低でも全体の20~30%が死傷、実働戦力は2万人前半レベルまで落ちると考えるべきだろう。

片や台湾軍の動員兵力は約180万人。上陸が予想される西海岸(台湾海峡を臨み上陸作戦に最適な遠浅海岸のため地理的にここ以外ありえない)を、例えば「北・中・南」の3戦域に分け各戦域に50万人ずつ配置(残り30万人は他地域の防備や予備部隊)したとすれば、上陸地点における中国軍上陸部隊と台湾守備部隊の兵力差は「3(実質2)対50」となる。これでは中国軍側が一方的に大打撃を被るだけで短期間のうちに全滅または全面降伏するしかない。
それでもなお楽観的な観測で、中国軍は数十万人規模の上陸を成功させ、いよいよ台湾全土の完全占領に臨むとしても、今度は3000m級の山岳地帯と周辺に広がる密林地帯。さらには2400万人の台湾市民が待ち構えている。

占領作戦は敵地の制圧よりもその地の治安を確保・維持するほうがはるかに大変で、日中戦争で中国大陸に進出した日本軍や、イラク戦争、アフガン戦争(2001年~)のアメリカ軍、アフガン紛争(1978年~)の旧ソ連軍など過去に苦戦した例は枚挙にいとまがない。いずれも占領軍はテロ・ゲリラ活動で出血を強いられ、敵が誰だかわからない状況で占領軍将兵のモチベーションは大きく低下、犠牲や戦費も膨大となりやがて国家財政にとっても重圧になってくる。

そうして、この記事には、このブログでは頻繁に述べている対潜戦闘力(ASW)に優れた日米の潜水艦隊のことが一切触れられていません。ASWでは日米にはるかに遅れをとっていることがね中国の台湾侵攻をためらわせる大きな原因の一つになっています。

米国が攻撃力では空母に匹敵する巨大攻撃型原潜を三隻も台湾海域に派遣して、台湾を包囲してしまえば、中国にはこの包囲網をかいくぐることはできません。

なぜなら、中国は対潜哨戒力では米国に及ばず、米国は中国の潜水艦を含め多くの艦艇を、中国に妨害されることなく撃沈できるからです。攻撃力にすぐれた米潜水艦は、初戦で中国のレーダー基地や、監視衛星の地上施設等をことごとく破壊し、中国海軍の目を塞ぐことでしょう。その後に中国の潜水艦、その後に他の揚陸艦などの艦艇を撃沈することでしょう。

日本も同じく、中国には日本の潜水艦隊の位置を捉えることができないので、日本は中国の潜水艦や他の艦艇を中国に妨害されることなく撃沈できます。また、静寂性(ステルス性)利用して、台湾近海を中国に妨害されることなく潜航し、情報収集できます。

日米が台湾に加勢した場合、中国の大半の艦艇は台湾に到達することなく撃沈され、残りはいのちからがら母港に引き上げることになります。

運良く人民解放軍が台湾に上陸したとしても、米軍や日本の、あるいは両方の潜水艦隊に台湾を包囲されてしまえば、補給が途絶えて上陸部隊はお手上げになってしまいます。

こういうことをいうと、ドローンがどうのこうのとか、核兵器や宇宙兵器や超音速ミサイルががどうのこうのという人もいますが、そういう人には良く考えていただきたいです。そもそも、発見できない敵に対しては、何をもってしても攻撃はできないのです。

核攻撃をすれば良いなどという人もいるかもしれませんが、台湾を核攻撃しても無意味です。なぜなら、中国の最終目的は台湾を併合することであって、台湾を破滅させることではないからです。

そうして、どこにいるかもわからない海域の潜水艦に向けて核兵器を打ち放つことも無意味です。そもそも、深海に潜んでいれば、破壊できるかどうかも覚束ないですし、仮に破壊できたとしても、その確認すらできないのです。まさか、関連する全海域に同時に核兵器を放つことなどとうていできないです。

台湾を武力侵攻するのはこれだけ困難なことなのです。であれば、中国は台湾を併合するにしても、武力以外の方法でやろうとすると見るべきです。

バイデンとしては、このようなことは知り抜いた上で、中国が台湾を侵攻すれば、中国海軍を破滅させ、中国を追い込むでしょう。そうなれば、習近平の権威は雲散霧消し、バイデンの国内での支持率は上向くことになります。しかしその可能性は低いでしょう。

もう一つの可能性としては、民主主義サミットに台湾を招けば、中国は猛烈に抗議することでしょう。しかし、台湾には侵攻できません。結局軍事的には何もできない中国の実体を国内外に見せつけることにより、米国の威信をたかめ、国内では支持率向上が期待できます。

岸田政権にも、以上のようなことを理解して、今後の中国対応を見直す機会とすべきです。

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2021年11月24日水曜日

中東欧が台湾への接近を推し進める―【私の論評】中国が政治・経済の両面において強い影響力を誇った時代は、徐々に終わりを告げようとしている(゚д゚)!

中東欧が台湾への接近を推し進める

 10月26日付のウォール・ストリート・ジャーナル紙(WSJ)が、最近、中東欧諸国が台湾に接近し、中国はこれに激怒している、との解説記事を書いている。中東欧諸国がなぜ台湾に接近することになったのか、その原因として、WSJが指摘する主たる点は次の二点である。


  第一は、中国との貿易や中国からの投資が当初期待されていたほどには効果を挙げていないことである。「一帯一路」の対象地域になるなどと宣伝されていたが、その実態は明確ではなく、中東欧諸国に経済的実利をもたらしていない。さらには、もし中国からの債務が増えれば、それがどのような中国の対応を生み出すかよくわからないことへの恐怖心も手伝っているようだ。

  第二に、覇権主義を強めつつある専制独裁国家としての中国は、 とくに冷戦期にソ連から属国扱いをされた東欧諸国にとっては、その当時の悪い記憶をよびさます存在となってきた。

 台湾と中東欧諸国の接近ぶりを示す一好例は、昨年チェコの上院議長一行が台湾を訪問した際、台湾議会で演説し、「私は台湾人である」と述べたことであり、この言葉は台湾において大きな反響を呼び興した。最近、呉釗燮外交部長(外相)がチェコやスロバキアへの訪問を行ったことは、このチェコ上院議長の台湾訪問への返礼と見ることもできよう。

  リトアニアは、台湾との間で事実上の大使館連絡事務所を開設することに合意し、このことは、中国のきわめて強い報復的反発を引き起こした。リトアニアは台湾との間の代表所の名称を、通常の 「台北経済文化代表所」にかえて実態に即して、「台湾代表所」へ変更しようとしている。これが中国を激怒させ、中国は駐リトアニ ア中国大使の召還と駐北京リトアニア大使の追放という措置に出た。

  さらに、本年11月に入ってから、欧州連合(EU)欧州議会代表団が台湾を訪問し、フランス人団長(グリュックスマン)は、「台湾は決して孤立無援ではない(Taiwan is not alone)。ヨーロッパの長期的利益にとって、台湾の民主主義は決定的に重要」などと発言した。

 この発言に対し、中国側報道官は「欧州諸国は直ちに過ちを正し、 台湾独立分裂勢力に間違ったシグナルを発するな」などと猛反発した。

インド・太平洋地域への関心も高まる

 ごく最近、中国はEU諸国が台湾の「分裂主義者」たちと誤った方向に協力し合っているとして、台湾の蘇行政院長(首相に相当)、游立法院長(国会議長)、呉外相の三人を「台湾分裂主義者」として刑事責任がある、と指名の上、「生涯追求」のリストに載せ、 今後、中国大陸、香港、マカオなどへの入境を禁止する、との新しい措置を打ち出した。

  このような措置が、台湾当局の指導幹部を「制裁」する上でどの程度の効果があるのかわからないが、今日の習近平指導体制の対台湾強硬姿勢から見れば、このような形を取りたいのであろう。多分に、中国国内向けの措置のようである。

  台湾海峡の緊張増大に呼応した形で、中東欧のみならず欧州全体のインド・太平洋地域への安全保障上の関心が高まりつつある。 本年に入ってから、英国の空母打撃軍をはじめとして、フランス、 ドイツ、カナダの艦隊が覇権主義的動きを強める中国を牽制するために台湾海峡を含むインド・太平洋地域に回遊した。これら艦隊のいくつかは、日本の港湾に寄港し、自衛隊との間で共同訓練を実施したりした。

  これら東欧を含む欧州全体の動きを見れば、安全保障上の理由や人権問題への考慮から、台湾に対する親近感を抱く国々が、徐々にではあるが着実に増大しつつあることが明白に見て取れる。

岡崎研究所

【私の論評】中国が政治・経済の両面において強い影響力を誇った時代は、徐々に終わりを告げようとしている(゚д゚)!

最近中東欧諸国が台湾に接近するのは、当然といえば当然でしょう。中東欧諸国は、ソ連、中国、北朝鮮と並んで冷戦の敗戦国であり、しかも無理やりソ連に引き込まれ、東側陣営に組み込まざるを得なくなり、その挙げ句の果にソ連崩壊で、冷戦の敗戦国にされてしまったのです。

そうして、米ソ冷戦終結後にEU加盟を果たした中東欧諸国は、旧西側陣営の資本を取り入れることで、ドイツやフランスの半分から3分の1程度まで発展できた国が多く、EUに加盟した恩恵は大きかったと言えます。

ただ、その中東欧諸国の中でも、補助金や多国籍企業に依存した経済体質から十分に脱却できていないという問題を抱えており、経済発展の持続性には疑問符を付けざるを得ないところがあります。

一方、旧東側陣営の盟主だったロシアは中東欧諸国に後塵を拝しており、2018年時点の一人当たりGDPは11,289ドルに留まっています。

そのロシアでは、ユーコス事件の起きた2006年ごろから民主主義が後退して強権化し、国家資本主義的な経済運営に転換し動き始めました。そして、2014年のクリミア危機に伴い旧西側陣営の諸国から経済制裁を受けたことを背景に、それが本格化してきています。

米ソ冷戦終結後の民主主義指数(Index of Democracy)と一人当たりGDPの伸びの関係を見ると(下図)、旧東側陣営で一人当たりGDPの伸びが最も高かったのは、共産党による一党独裁の政治体制の下で1986年に「ドイモイ(刷新)路線」を宣言し、市場経済を導入したベトナムでした。


ソ連崩壊とほぼ同時に共産党政権が崩壊し民主化を進めた中東欧諸国の一人当たりGDPを見ると、水準という観点では民主化が後退したロシアやCIS諸国を上回っている国が多いものの、伸び率という観点では大きな差異が見られません。

そして、CISを中途脱退し民主化を進めたウクライナ(2004年にオレンジ革命、2018年にCIS脱退)やジョージア(2003年にバラ革命、2009年にCIS脱退)の伸びは低迷しています。

ただ、一般にいえるのは、民主化が進んでいる国のほうが、一人当たりGDPが高いというのは事実です。これは高橋洋一氏がグラフにまとめており、これは当ブログにも掲載したことがあります。下に再掲します。

一人あたりGDP 1万ドル超と民主主義指数の相関係数は0.71 。これは社会現象の統計としてはかななり相関関係が強い

世界各国地域の一人当たりGDPのトップ30を見ると、米国は約6.3万ドルで世界第9位、西側に属した日本は約3.9万ドルで第26位、同じくドイツは第18位、フランスは第21位、英国は第22位、イタリアは第27位、カナダも第20位と、米ソ冷戦で資本主義陣営(西側)に属した主要先進国(G7)はすべて30位以内にランクインしています。

一方、米ソ冷戦で共産主義陣営(東側)の盟主だったロシアは約1.1万ドルで第65位、東側に属していたハンガリーは約1.6万ドルで第54位、ポーランドは約1.5万ドルで第59位とランク外に甘んじている。また、世界第2位の経済大国である中国は約9,600ドルで第72位に位置しており、人口が13億人を超える巨大なインドも約2,000ドルで第144位に留まっています。

中国は人口が多いので、国全体ではGDPは世界第二位ですが、一人あたりということになると未だこの程度なのです。このような国が、他国の国民を豊かにするノウハウがあるかといえば、はっきり言えば皆無でしょう。

そもそも、中国が「一帯一路」で投資するのを中東欧諸国が歓迎していたのは、多くの国民がそれにより豊かになることを望んでいたからでしょう。

一方中国には、そのようなノウハウは最初からなく、共産党幹部とそれに追随する一部の富裕層だけが儲かるノウハウを持っているだけです。中共はそれで自分たちが成功してきたので、中東欧の幹部たちもそれを提供してやれば、良いと考えたのでしょうが、それがそもそも大誤算です。中東欧諸国が失望するのも、最初から時間の問題だったと思います。

「16+1」は、中国と中東欧の16ヵ国の対話・協調を促進するための枠組みであり、年に1度の首脳会合を通じて様々な合意を生み出すものとされていました。元々は「17+1」でした。ギリシャは遅れて入ったので、「+1」されています。後にチェコが離脱したので現在は「16+1」とされています。


しかし「16+1」を通じた中国の対中・東欧投資は、多額のコミットがなされたものの、その多くが実現されず、実現されても大幅に遅れたり、当初の想定を遙かに超える莫大な費用がかかることが明らかとなったりしてきました。

インフラ工事のための労働力も全て中国から調達したため、中・東欧現地の雇用も促進されませんでした。「16+1」の枠組みを用いて中国と協議を行い、中国の市場開放を促すことを試みていたバルト諸国なども、頑なに市場開放に応じない中国の態度に失望を隠さなくなりました。

このため、中国からの投資に対する中・東欧の期待は大きく損なわれていきました。米トランプ政権が中・東欧諸国に対して、HUAWEI製品の不使用等を含め、対中アプローチの見直しを粘り強く働きかけたことも奏功し、複数の中・東欧諸国はHUAWEI製品排除を表明しています。

「16+1」の大きなメリットと思われてきた中国執行部との協議も、中国からの大型投資が期待できない以上、もはや魅力ではなくなったと見られます。2021年2月にオンライン実施された「16+1」の首脳会議には、習近平自らが出席したにもかかわらず、「16+1」側からは6カ国もの参加国が首脳の出席を見合わせたことが、これを雄弁に物語っていまし 。2021年5月にはリトアニアが、「『16+1』からは得られるものがなにもなかった」として、「16+1」からの離脱を表明しました。

これらを総合的に勘案すると、中・東欧で中国が政治・経済の両面において強い影響力を誇った時代は、徐々に終わりを告げようとしているとみるのが妥当でしょう。そうして、それは中東欧だけではなく、他の地域にも広がっていくことでしょう。

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2021年11月23日火曜日

「GoToイート」食事券 年末年始の販売自粛呼びかけ―【私の論評】役人にまかせていれば浮世離れするだけ、岸政権は政権維持のために大規模経済対策を実施せよ(゚д゚)!

「GoToイート」食事券 年末年始の販売自粛呼びかけ


 飲食業界への支援策「GoToイート」のプレミアム食事券について、農林水産省は35の都道府県に対して年末年始は販売を控えるように呼び掛けました。

  「GoToイート」は新型コロナの感染拡大でプレミアム食事券の販売を停止していましたが、19日に閣議決定した政府の追加経済対策に盛り込まれました。

  ところが、年末年始は需要の高まる時期であることから、農水省は食事券の販売を終えていない35の都道府県に対して最大1カ月の販売停止期間を設けるよう呼び掛けました。

  食事券の販売や利用期限は各都道府県の判断で決まり、地域によっては期間が来年のゴールデンウィーク前後まで延長されることになります。

【私の論評】役人にまかせていれば浮世離れするだけ、岸政権は政権維持のために大規模経済対策を実施せよ(゚д゚)!

この販売自粛について、高橋洋一氏は以下のようにツイートしています。


まあ、年末年始は需要がただでも高まるので、それはそれとして、他のシーズンの売上をあげてトータルで売上をあげようという考えもなきにしもあらずです。

もう一つの考え方として、下のグラフでみてもわかるように最近は失業率が低下しています。ひといきついていた人手不足がまた深刻になりそうです。


そうであれば、年末年始に人手が欲しくてもままならない可能性もあります。であれば、年末年はあえてあまり販促をせず、それ以外のシーズンに販促をして、売上を平準化して、少ない人員で最大の成果をあげるという考え方もあります。

経営者であれば、それぐらいのことは考えます。ただ、そこまでは役人は考えていないでしょう。

やはり、コロナを心配しているのかもしれません。ただ、コロナ感染は最近は下火です。

東京都内の23日の感染確認は17人で、12日連続で30人を下回りました。東京都は23日、都内で新たに10歳未満から60代までの男女合わせて17人が新型コロナウイルスに感染していることを確認したと発表しました。1週間前の火曜日より2人増えました。

都内の一日の感染確認が50人を下回るのは38日連続、30人を下回るのは12日連続です。23日までの7日間平均は17.4人で前の週の83.3%です。一方、都の基準で集計した23日時点の重症の患者は22日と同じ8人でした。また死亡した人の発表はありませんでした。

この状況では、例年のインフルエンザよりもさらに低い感染者数ですし、死者もいないのですから、上であげた二つの理由以外に、飲食業者側からみてわざわざ年末年始の販売を自粛する必要はないようです。

全く、役人は浮世離れしていると言わざるを得ません。

私は、昔はイタリアンレストランのマネジメントをしていたこともありますから、その経験からいうと、人手不足などが深刻でない限りは、年末年始に一時的に人手を増やしても、年末年始の売上を上げるべきと思います。さらに、この時期は予約が多く、予想もたちます。多めにやとった人員を無駄にすることもあまりないです。

先がどうなるかなど、正確には予想できないですし、予測しないことも起こりがちですから、まずは目の前の売上を確実にとるというのが健全な経営者のあり方だと思います。それは、国の経済にも相通じるところがあると思います。

内閣府が15日に公表した7~9月期国内総生産(GDP)の1次速報は、年率換算で民間消費が4・5%減、住宅投資が10・1%減、設備投資が14・4%減、公共投資が5・8%減、輸出が8・3%減、輸入が10・5%減と、マイナスのオンパレードでした。

消費は4~6月期に3・4%増だったのがマイナスに転じ、住宅投資は1~3月期に4・3%増、4~6月期には8・3%増と2期連続プラスだったが、これもマイナスとなりました。設備投資も4~6月期の9・1%増からマイナスに落ち込んでしまいました。


新型コロナの緊急事態宣言などで個人消費が低迷し、輸入も国内消費と連動しマイナスでした。自動車の減産で輸出も落ち込んだ。GDP全体としてもマイナス成長は2四半期ぶりです。

これに対して政府は、財政支出55.7兆円規模の経済対策を19日の臨時閣議で決定しました。これに対しては、政府はGDP5.6%押し上げ効果があると試算していますが、これは疑わしいとする識者もいます。

この識者は以下のような発言もしています。
今まで実施されてきた巨額の経済対策の効果が薄れる中で、成長率は押し下げられるはずだ。いわゆる「財政の崖(フィスカル・クリフ)」が生じるのである。今回の経済対策は、それがなければ相応に落ち込むはずだった成長率を支える効果を持つのであって、成長率を大きく押し上げる効果を発揮するものではないだろう。
一方米国では米国は約200兆円の米国救済計画に加え、114兆円のインフラ投資法案を成立させました。約200兆円のビルドバックベター法案も控えています。

米国下院は11月19日、「ビルド・バック・ベター」法案(H.R.5376)を賛成220、反対213で可決した。共和党は全員が反対に回り、民主党からは1人が反対した。通過した法案は上院に送付され、同法案をベースにさらに審議されます。

日本の人口は1億二千万人です。一方米国の人口は3億3千万人です。大雑把にみて日本の3倍はあるということです。当然のことながら財政規模が大きくなるのは当然のことです。しかし、日本は米国の1/3 程度の規模であってしかるべきです。

「ビルド・バック・ベター」法案は、どうなるかはまだわかりませんが、それにしても、米国と比較すると日本の財政政策はあまりに、みすぼらしいです。

普通の経営者サイドからみれば、年末年始に売上をできればとれるだけとっておく、それも人手をある程度厚くし、予約などを通じて無理なくあげておくというのが普通だと思います。

経済対策もやはり、直近(ここ1〜2年:直近というと3秒と考える人もいるようなので念の為)で経済をできるだけ良くしておくというのが健全な行き方ではないかと思います。

直近でできるものはどんどん実施して、後でまずいことがおこれば、様々な修正をするというのは王道だと思います。そうして、それは意外に簡単にできることだと思います。それこそ、緊縮財政、金融引締などです。だからこそ、バイデン政権も大きな予算を組んでいるのだと思います。

支持率の低下に苦慮するバイデン

直近で出し渋って、後でデフレの悪影響が出て、それに対処するというのでは大変なことになります。たとえば、失業者が大量に出てから手当をするなどのことをするよりは、最初に失業者が出ないように手を打っておけば、インフレなどの悪影響が出ても容易に手をうつことができます。

その逆は大変なことです。日本がとてつもない貧乏国でそもそもやりようがないとか、中国のように国際金融のトリレンマにはまって金融緩和できないというのなら別ですが、日米などには十分にできるだけの余裕があります。ましてや、日本は未だに物価目標2%すら達成できないのですから、余裕は十分すぎるほどです。

日本も、やる気になれば、できるはずです。役人にまかせておけば、浮世離れした政策しかできません。今年が駄目なら、来年春には是非とも大型補正予算を組んでいただきたいものです。そうでないと、来年の夏頃にはかなり経済が悪化し、失業率の上がりその状態で岸田政権は参院選に突入し大敗することになるでしょう。

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2021年11月22日月曜日

天安門広場の観光が事前予約制に 北京五輪控え警戒強化か―【私の記事】女性蔑視として森会長を辞任に追い込んでおきながら、北京五輪に笑顔で選手を送り込むことができるのか(゚д゚)!

天安門広場の観光が事前予約制に 北京五輪控え警戒強化か

 北京市政府は21日までに、市中心部の天安門広場への観光客の入場を12月15日から予約制にすると発表した。新型コロナウイルス対策を主な理由に挙げているが、来年2月の北京冬季五輪を目前に控え、抗議やテロなどへの警戒を強化する狙いもあるとみられる。予約は、スマートフォンのアプリを中心としたオンライン上で行う。

北京で、新型コロナウイルス感染症予防のためマスクを着けて天安門の下に立つ警察官=9月18日

 天安門広場は中国有数の観光地として知られており、毎朝の日の出の時間に行われる国旗掲揚式には多くの観光客が集まる。同時に、今年7月に開かれた中国共産党創建100年の祝賀大会など重要な政治・外交活動も行われている。

 市政府は19日付の通知で、「(天安門広場は)国事や外交などの重要な活動を行う場所で、中国のイメージを世界に発信する窓だ」と強調した。

 かつて広場は特別な日を除き自由な出入りが可能だったが、2008年の北京夏季五輪直前から安全検査が日常的に行われるようになった。現在、広場に入場する際は、身分証(外国人はパスポート)を提示してセキュリティーゲートを通る必要がある。外国人記者は入場を阻まれることが多くなっている。

【私の記事】女性蔑視として森会長を辞任に追い込み、北京五輪に笑顔で選手を送り込むことができのるか(゚д゚)!

北京五輪、中国共産党は何が何でもやり抜くつもりでしょうが、一体どうなるのでしょうか。

カナダでは、北京五輪反対運動が起こっています。 インド紙「ヒンドゥスタンタイムズ」は「カナダ・インド友好協会がバンクーバーで、中国の人権問題を巡る北京五輪開催に反対するデモを行った。デモ参加者は中国が強権的な国家安全保障法を施行したことで抑制された香港の自治権の回復を要求した」と報道。

デモ参加者は「Free Hong Kong」「Fight for freedom」などとと書かれた横断幕を掲げていたといいます。 中国が強硬手段で香港の権力を掌握したのは記憶に新しいです。

さらに、直近では昨日もこのブログでも取り上げたように、75歳の元中国副首相・張高麗氏に性的関係を強要されたことを告発した女子テニスの彭帥(35=中国)に関する騒動など、定期的に人権問題が話題となっています。 そんな中、同紙は「中国は長い間人権を侵害してきた。

また、コロナウイルス感染症のパンデミックに関連する初期のデータを隠そうとしているという疑惑にも直面している」と指摘した上で「マイク・ポンペオ元米国務長官は、来年の北京五輪のボイコットを求める声の高まりに参加した」と伝えました。 

彭帥さん


実際に、ポンペオ元米国務長官はツイッターで「中国共産党は、武漢ウイルスについて書いている記者、中国共産党の研究所について真実を語っている博士、テニスのプロ選手、ウイグル人、香港人、インターポールの責任者を消滅させた。彼らから五輪を消滅させ、世界に誇れる場所で開催しようではありませんか」などとツイートしています。

米ニュース専門局「FOXニュース」は「テネシー州選出の共和党上院議員マーシャ・ブラックバーン氏が北京五輪で米国の選手が中国を訪れることは安全ではないと懸念を表明した」と報道しました。 

ブラックバーン氏は同局の番組に出演し「中国共産党には命の価値はありません。もしあなたが一線に従わないのであれば、彼らはあなたを消滅させるでしょう」と皮肉った上で「私たちのアスリートが北京五輪に行くのは安全ではないと思う。

このようなことは、もっと定期的に起こっているように思う。米国のオリンピック委員会は、なぜわれわれの選手をこのような環境に送り込むのだろうか」と疑問を投げかけました。 すでにジョー・バイデン大統領は北京五輪の外交ボイコットを検討中です。今後の展開によっては、さらなる行動に出る可能性も十分にありそうです。

テネシー州選出の共和党上院議員マーシャ・ブラックバーン氏



英紙タイムズ紙(電子版)は20日、ジョンソン英首相が北京五輪への閣僚派遣を見送る方針を検討中と報じまとた。ウイグル自治区での人権侵害などを問題視するトラス外相が外交的ボイコットに賛成しているといいます。

英政府内では以前から、外交的ボイコットの声が強まっており、英下院は今年7月、人権状況が改善されない限り、北京五輪への招待を拒否するよう英政府代表らに求める決議を採択しました。

欧州連合(EU)欧州議会も7月、人権状況次第で政府代表らの招待を断るよう加盟国に求める決議を採択しました。欧州メディアによると、EUのミシェル大統領は10月、中国の習近平国家主席との電話会談で、中国の人権状況への懸念を表明しました。

ここ最近は北京五輪の開催に否定的な見解が増えているだけに、同様の運動が今後増えるのは間違いなさそうです。

一方日本では、松野博一官房長官は22日の記者会見で、米国に続き、英国も北京冬季五輪の「外交ボイコット」を検討していると報じられたことを巡り、日本政府の対応について「現時点で何ら決まっていない」と述べました。政府対応の判断時期も示しませんでした。

 

同時に「北京冬季大会が五輪、パラリンピックの理念にのっとり、平和の祭典として開催されることを期待している」と従来の政府の立場も説明しました。米英など各国の対応への評価については言及を避けました。


米国では今年1月19日、トランプ政権の最終日に当時のポンペオ国務長官が、中国の新疆ウイグル自治区におけるイスラム教徒少数民族への「ジェノサイド(民族大量虐殺)」を認定。バイデン政権もその姿勢を変えていません。

米国議会ではその直後に、開催地の変更を求める決議案や、IOC(国際オリンピック委員会)が応じないのなら米国のボイコットを求める決議案の提出が相次ぎ、5月には民主党のペロシ下院議長が各国に外交的ボイコットへの賛同を呼びかけていました。

それどころか昨年のうちから、世界各地の160以上の人権団体がIOCに北京開催の見直しを求める共同書簡を送っているとされ、英国、カナダ、オーストラリアでも政治家がボイコットについて言及。今年7月には、欧州議会や英国議会が、中国が人権問題を改善する姿勢を示さない場合は外交的ボイコットをすべきとの決議や動議を採択していました。

東京五輪開催直前の日本では、女性差別する組織委員会森会長のもとでは、オリンピックなんてやっていられない、というマスコミやから野党、識者による非難囂々からはじまり、女性会長の誕生で、これで日本がようやくオールドスタイルから抜け出し、世界標準に追いつけると称賛の声すら上がっていました。

そうして東京五輪での女子サッカーでは、英国チームがキックオフ前に片膝をついて人種差別に抗議の姿勢を表明すると、各国のチームがこれに賛同しました。予選リーグで英国と対戦した日本チームもはやり、片膝をついて人種差別に抗議を示していました。

試合前に片膝をついて人種差別への抗議を示す日英の選手=7月24日、札幌ドーム

その日本が、北京オリンピックに笑顔で選手を送り出すことからして、もはやおかしいです。

ジェノサイドというもっとも深刻な人権問題が指摘される来年の北京オリンピックに、日本が選手を平然と送り込んでいたら、本当に異常です。

五輪組織委員会会長の交代人事を正当とするなら、もはや日本もボイコットの足並みから外れられなくなったといえるでしょう。最低限、外交的ボイコットは行うべきです。そうでなければ、先進諸国から爪弾きされてしまいかねません。

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日米VS中国で応酬! WHOのコロナ起源追加調査巡り…米は賛同、中国「科学に反する」と反発 北京五輪に影響も―【私の論評】北京五輪、先進国は経済的・外交的ボイコットではなく、選手団を送り込まない本格的なボイコットをすべき(゚д゚)!

2021年11月21日日曜日

中国テニス選手不明でIOC委員、五輪中止の可能性示唆「事態が制御できなくなるかも」―【私の論評】北京五輪が中止になって、習近平が権威を失墜し、統治の正当性を失い失脚するというシナリオは十分あり得る(゚д゚)!

中国テニス選手不明でIOC委員、五輪中止の可能性示唆「事態が制御できなくなるかも」

彭帥(ポンシュアイ)さん

 中国の女子テニス選手、 彭帥(ポンシュアイ)さん(35)と 張高麗(ジャンガオリー) 前筆頭副首相(今月で75歳)の不倫関係を暴露する内容がSNSに投稿された後、彭さんの消息が不明となっている問題で、国際オリンピック委員会(IOC)の委員が、来年2月の北京冬季五輪開催に関してIOCが厳しい態度を取る可能性があるとの見解を示した。ロイター通信が19日報じた。

 この委員は、IOCで最古参のディック・パウンド氏。「早急に良識ある方法で解決されなければ、事態が制御できなくなるかもしれない」と述べ、IOCが中国に人権問題を提起する可能性を指摘した。「五輪の中止にまで発展するとは思わないが、分からない」とも語った。

【私の論評】北京五輪が中止になって、習近平が権威を失墜し、統治の正当性を失い失脚するというシナリオは十分あり得る(゚д゚)!

張高麗(ジャンガオリー) 前筆頭副首相(今月で75歳)

張高麗(1946 年 11 月~)は中国政界の保守本流である「石油派」の重鎮で、文化大革命時代の 1970 年 に廈門大学を卒業し、広東省茂名市の石油工業部傘下の国営工場に就職し、中国石油化工集団(Sinopec) 傘下の中国石油化工・茂名分公司のトップ(総経理)を勤めた後に政界入りしました。

 その後、山東省や天津市トップを経て、12年に発足の習近平第 1 次政権で党内序列7位の政治局常務 委員兼「副総理」をつとめました。名前は珍しい「高麗」ですが、朝鮮族ではなく漢族です。

中国語で「国務院」とは中国政府を意味します。首長である「国務院総理(= 首相)1名」の下に「常務副総理(=筆頭副首相)1名」、「副総理(=副首相)現在3名」、「国務委員、 現在 5 名」。国務院はこれに「部長、主任等」の閣僚(26 名)が加わり運営されています。

 現首相(第 2 次習近平政権)は李克強(党内序列第 2 位)、筆頭副首相は韓正(同 7 位)。この 2 名 は俗に“チャイナ 7(=最高指導部)”と呼ばれる「党中央政治局常務委員」。

 副首相は 25 名で構成される「党中央政治局委員」の中から選出、孫春蘭(文化・教育・香港マカオ 担当)、胡春華(農業・商務)、劉鶴(金融・財政)の 3 名。 “副首相格”の国務委員は「党中央委員(党内序列 26~約 200 位)」の中から選ばれ、閣僚ポストを 兼務するケースが多いです。

現政権では肖捷(秘書長)、魏鳳和(国防部長)、王毅(外交部長)、趙克志 (公安・司法・諜報)、王勇(国資委)の 5 名です。

 因みに、なぜ副首相と閣僚との間に「国務委員」と云う役職をもうけたかというと、文化大革命が終結して鄧小平時代が始まった時、文革時代に失脚して辛酸を嘗めた幹部たちを大量に復活させたため華国鋒首相の下に「鄧小平、李先念、徐向前、紀登奎、余秋里、陳錫聯、耿飈、陳永貴、方毅、王震、谷牧、 康世恩、陳慕華、王任重、陳雲、薄一波、姚依林、姫鵬飛、趙紫陽、万里」、何と 20 名もの副総理を一気に 誕生させてしまったからとされています。

この反省から副首相の人数を絞り、面子にこだわる老幹部たちのために副首相格 の国務委員ポストを設けたという経緯があったようです。

張高麗は 02 年に中央委員として、山東省トップ(=党委書記)をつとめた後、07 年に政治局委員に昇格し、「4 大直轄市」天津市のトップに就任しました。

そうして 12 年、習近平政権が誕生すると、張高麗は(末席の第 7 位ですが)最高指導部(=政治局常務委員) 入りを果たし、筆頭副首相を 5 年つとめて、17 年に 71 歳で政界から身を引きました。

 さて、一方彭帥(86 年 1 月~)は、湖南省・湘潭市の出身。湘潭市出身の有名人といえば、 中国画壇の巨人・斉白石や、朝鮮戦争で活躍した彭徳懐元帥が有名ですが、中国人にとって「湘潭市出身者」 と云えば毛沢東が筆頭です。

湘潭生まれの彭帥、彼女の両親は毛沢東によって粛清された英雄・彭徳懐元帥に因んで命名したような 印象がありますが、それはさておき、彼女は 13 年ウィンブルドン選手権と、14 年全仏オープン女子ダブルスの 優勝者であり、WTA ツアーのシングルスで 2 勝、ダブルスで 22 勝を挙げています。

自己最高ランキングは、 シングルス 14位、ダブルス1位といいますから、ちょっと前の時代の強豪で、中国では張德培(マイケル・チャン) や李娜と共に有名な世界的なテニスプレーヤーと云えます。

そんな花形選手が、時の権力者とは云え、よりによって張高麗なんぞとわりない仲になるとは驚きです。人を外見 で判断するのは失礼ですが、「よりによって」と書いた理由は上の張高麗を写真をご覧いただければ、ご理解いただけるものと思います。

 さて、その彭帥さんの禍々しい告白に接した中国当局はブチ切れたのか、韓国の人気ドラマ「総理と私」 を削除したといわれています。

韓国の人気ドラマ「総理と私」

韓流ドラマには何の咎もないのですが、中国当局は 11 月 8 日から北京で開催された党の 重要会議・第19期中央委員会第6回総会に水を差し、威信を傷つける“不穏当な”出来事として神経を 尖らせていたようです。

 各種報道によると張高麗が66歳、彭帥が26歳の時、彼は最高指導部に抜擢され、その後の連絡は途絶 えたようです。しかし彼女の告白によると、彼が引退してから再び連絡が入るようになり、二人でテニスを楽し んだ後、張高麗の妻と自宅に招かれ、そこで性的関係を迫られたことがあるといいます。

 引退後、即ち人生七十古来稀なりの張高麗。“七十にして心の欲する所に従いて矩(のり)を踰(こ)えず”の齢ですか、 中国で最高指導部までつとめた方は元気一杯。40歳の年齢差を考えると、端倪すべからざる 絶倫の士です。

でもあちらの国では、党政府高官と芸能人など若い女性との不倫は珍しくもない現象であることは、 習主席が腐敗追放キャンペーンで抹殺した周永康や薄熙来などの事案からも明らかです。

 真偽のほどは不明ですが、本事案、年齢差を乗り越えた純愛物語などではなく、援交のもつれの果ての 内輪揉めといったところでしょうか。習近平三選を巡る権力闘争の余波が元副総理にも波及し、元カノが取り調べを 受けた可能性もあります。

そうして、この余波は大事になる可能性も秘めています。なぜなら、冒頭の記事にあるようにIOCで最古参のディック・パウンド氏が「早急に良識ある方法で解決されなければ、事態が制御できなくなるかもしれない」ということがあるからです。

米英はどうやら北京五輪の政治ボイコットをしようとしているようです。このようなことに、この余波が利用される可能性は大きいです。それどころか、この余波が大きなさざなみとなり、さらに大きな波となることもありえます。

先月秋の行楽シーズン中に新型コロナウイルスのデルタ株の感染が広がっていました。中国本土で、市民の移動制限が強まっていました。

一部の地域で省などをまたぐツアー旅行が禁止され、北西部の甘粛省蘭州市などで公共交通機関が停止。北京市や武漢市ではマラソン大会が延期されました。夏に約1カ月で拡大を抑え込んだように、大規模なPCR検査と隔離の「ゼロコロナ」対策が各地で進められていました。

これからも、コロナ禍が拡大する可能性は否定できません。中国はコロナ感染症を隠蔽していたことが明らかにされたため、IOCとしてもかなり注意深く北京の感染者数や、死者数などを注視していることでしょう。

今後コロナ禍が広がれば、IOCはこれプラス人権問題と、 彭帥(ポンシュアイ)さんの行方がはっきりしなかった場合、これも理由の一つとて、北京五輪を中止するかもしれません。

そうなった場合、習近平の権威が一気に失われる可能性もなきにしもあらずです。

中国共産党の元高級幹部の子弟で構成されるグループ「太子党」のうち、1949年の新中国成立の前に共産革命に参加し、日中戦争や中国国民党との内戦で貢献した幹部たちの子女のことを「紅二代」といいます。

一方、戦争を経験せず平和な時代に党や政府の指導者となった幹部らの子女は「官二代」とよばれます。たとえば、1928年に共産党に入党した習仲勲(しゅうちゅうくん)(1913―2002)元副首相を父親にもつ習近平(しゅうきんぺい)国家主席は紅二代ですが、1964年に共産党に入党した胡錦濤(こきんとう)前国家主席の長男、胡海峰(こかいほう)(1971― )嘉興(かこう)市共産党委員会副書記は官二代とよばれます。

紅二代のうち、現在中国のチャイナセブン(最高指導部)となっているのは、習近平のみです。これをもって、習近平をもって「革命の正統性」を持った唯一の人物として、習近平体制が崩れることはないとみるむきもあります。

確かに、紅二代の父母は「共産革命のために血を流したことがある」として、太子党のなかで、官二代より格上とされています。しかし、紅二代は高齢化が進んで現役を退く人が増えており、これに対し官二代が頭角を現し、太子党の主流になりつつあります。それに、そもそも共産主義において、血統が大きな位置を占めるということ自体が矛盾しています。

それは、共産党体制とされている北朝鮮が実質金王朝によって支配されてきたということと同じです。私としては、習近平はたしかに「革命の正当性」を主張することはできるとは思いますが、これをもって他の中国の幹部よりも「統治の正当性」の主張ができるとは限らないと思います。

もし習近平が現代中国で「統治の正当性」の主張が十分できていれば、韓国人気番組を削除したり、第19期中央委員会第6回総会を前にして神経を 尖らせることもなく、落ちついているはずです。

それよりも、習近平が「統治の正当性」を十分に主張できているなら、習近平の統治下の中国国内で頻繁に暴動が起こるなどということはありえないはずです。

中国国内では経済発展に取り残された民衆による暴動が年間20~30万件ほど発生しているとも言われています。そして、中国共産党は内乱を鎮圧するために人民武装警察(武警)を150万人配備しているとされています。
北京五輪が中止になって、習近平が権威を失墜し、統治の正当性を失い失脚するというシナリオは十分ありえると思います。

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2021年11月20日土曜日

中国軍艦が領海侵入 4年ぶり、爆撃機周辺飛行も―防衛省―【私の論評】中国測量船の領海侵入は、日米対中国の対潜水艦戦闘の一環として行われている(゚д゚)!

中国軍艦が領海侵入 4年ぶり、爆撃機周辺飛行も―防衛省

2014年我が国EZZ(経済的履いた水域)に侵入した中国の測量艦 今回は艦艇の種類までは公表されていない

 防衛省は19日、鹿児島県・屋久島南方を航行していた中国海軍の測量艦1隻が、日本の領海に侵入したと発表した。同省によると、中国軍艦の領海侵入は2017年7月以来で、4度目。日本政府は外交ルートを通じて中国側に懸念を伝えた。

 同日には中国、ロシア両空軍の爆撃機が共同で日本周辺を飛行したことも確認され、同省は警戒を強めるとともに、目的などを分析している。

 同省統合幕僚監部によると、17日午後8時40分ごろ、屋久島南方の接続水域を日本領海に向けて西進する中国海軍の「シュパン」級測量艦1隻を、海上自衛隊のP1哨戒機が発見。同艦はその後、18日午前1時20分ごろには同県の口永良部島西方の接続水域まで移動していた。このため同省は、17日夜に両島周辺の領海に侵入したと判断した。同艦はその後、中国本土方向に進み、海上警備行動の発令はなかった。

 沖縄県の尖閣諸島沖では中国海警局の公船が領海侵入を繰り返しているが、中国軍艦は4年ぶり。17年には津軽海峡を航行していた情報収集艦が、北海道松前町沖で領海を侵した。

【私の論評】中国測量船の領海侵入は、日米対中国の対潜水艦戦闘の一環として行われている(゚д゚)!

中国海軍の測量艦が我が国領海内に入って何をしていたかといえば、当然のことながら、「地理空間情報」(GEOINT : Geospatial Intelligence)を収集です。「地理的空間情報」というと、陸の上のことをイメージしがちですが、海にも関わりがあります。

海底の地形には起伏があり、地質の違い(岩とか砂とか)などもあります。しかも海では潮の満ち干がある、同じ場所なら水深が常に同じというわけでありません。

そこで、船舶の安全な航行のために、海図が必要になります。海図には、水深、底質、海底の危険物、航路標識などといった情報が描かれています。この海図の作成のための測量が測量艦の役割です。

日本では、海図の作成と、それに必要なデータの収集を海上保安庁が担当しており、海図を作成するためのデータ収集に必要な機材を搭載した「測量船」を運用しています。例えば水深の測定であれば、音響測深儀を用います。海中では電波は使えないので音響センサーを使うのですが、これは潜水艦を捜索するのに、レーダーではなくソナーを使うのと同じ原理です。

音響測深儀は海底に向けて音波を発信して、それが戻ってくるまでの時間を使って水深を調べます。基本的には真下に向けて音波を出すから「点」あるいは「線」のデータしかとれません。

ところが、マルチビーム音響測深儀という測深儀もあり、これは左右方向に広がりを持つ扇形の音波を出します。これを作動させながら船を前進させれば、前後・左右を同時に走査できて海底地形の調査が迅速になります。

海上自衛隊の艦艇一般公開で艦橋に立ち入ったことがある人なら、艦橋の片隅に海図台があるのを見たことがあるかもしれません。

艦船が航行している時は、海図を常に参照しているし、そこに現在位置を書き込んでいく作業もあります。そのため海図台がある一角には、GPS(Global Positioning System)を初めとする測位機材の表示器も置かれています。

「おやしお型潜水艦」の海図台

水上艦の場合は、座礁するかどうかが問題ですから、水深が吃水よりも大きい分には、水深が50mだろうが5,000mだろうが大差はありません。しかし潜水艦の場合、水深は「どこまで潜航できるか」に関わる大問題です。だから、正確な海底地形情報がないと、潜水艦の運用に差し障りがでてきます。

また、潜水艦にとっても水上艦にとっても、ソナーの動作に影響する海底からのソナー音波の反射、海中でのソナー音波の偏向・湾曲・反射といったことがあるため、海底地形だけでなく水温や塩分濃度のデータが重要になります。

そのため、潜水艦を運用する国なら、大抵は海洋観測艦を配備して独自にデータ収集に当たらせています。海上保安庁(日本の場合)が収集しているデータだけでは足りないですし、情報の管理・保全という問題もあるので、内輪で情報を集める必要があります。

海自の海洋観測船「にちなん」

米軍は、海洋観測艦と測量艦を別々に保有・運用しています。海水そのものを相手にするか、海底や周囲の陸地を相手にするか、という違いがあります。それに対して、我が海上自衛隊は海洋観測艦だけで、その両方を兼ねています。

ただし、海上保安庁は現在8隻の測量船を有しています。平成28年12月に関係閣僚会議で決定した「海上保安体制強化に関する方針」に基づき、海洋調査体制の強化の一環として整備を進めてきた大型測量船「光洋」が、令和3年3月16日に就役します。

「光洋」は、昨年1月に就役した「平洋」の同型船であり、「平洋」と同じく海上保安庁最大の測量船です。

海保の測量船「平洋」

日本では、領海に限っては海上保安庁が測量を、海自が海洋観測をするという役割分担になっているのだと考えらます。領海外は、米国の情報に頼るとともに、海自が測量と海洋観測の両方を行っていると考えられます。

そしてこの分野では近年、無人潜水艇(UUV : Unmanned Underwater Vehicle)、あるいはAUV : Autonomous Underwater Vehicle)の利用事例が増えています。ソナーや測深儀などのセンサー機器を搭載した無人艇を目標海域に放ち、自動的に走り回らせてデータを収集、最後に無人艇を揚収してデータを取り出すという原理です。

海底の地形を知っておくべき理由はまだあります。潜水艦を探知するために、海底にパッシブ・ソナー・アレイ、いわゆるSOSUS(Sound Surveillance System)を設置しようとしても、当然ながら設置する場所の海底地形がわかっていないとできません。

浅くて平らなつもりでいたら、実は深い落ち込みがありました、ということになれば、SOSUSの敷設そのものがやりづらくなりますし、SOSUSで探知できる範囲にも影響があります。この辺は、民間で実施する海底ケーブルの敷設と共通するところかもしれません。

海洋観測艦や測量艦を平時から走り回らせて収集したデータは、「基本資料」になります。海底地形は、大地震や海底火山の大噴火でもない限り、そうコロコロ変動するものではないだろうから、それでも用が足ります。

しかしそれとは別に、「いま現在」のデータが欲しい場合もあります。その一例が水温です。そこで、ソナーを扱う艦艇や航空機は、海中に投入する温度計を備え付けています。

つまり、海面から下に温度計を降ろしていって、深度に応じて水温がどう変化するかをその場で調べるのです。

そういう機材の一例が、AN/SSQ-36 BT(Bathythermograph)ブイです。着水したブイから水温計をケーブルで海中に降ろして、そのデータを無線で送るというものです。これも一種の海洋観測です。

もしも広い外洋でBTを投下して、たとえば「深度○○メートルで急に温度が変化する」ということになれば、「その変温層の下に敵潜が隠れているかもしれない」と推測できるわけです。

なぜそのようなことが必要になるかといえば、潜水艦がスクリューなどの推進器を止めて、海中潜んだり、潮流によって移動している場合通常は発見する手段がないわけですが、海水温の変化があれば、潜んでいるかもしれないと推測できます。

特に、日本の潜水艦、その中でも最新鋭の潜水艦は、リチウムイオンバッテリーで駆動し、ほとんど無音であり、発見するのは難しいですが、水温の変化があれば、潜んでいるかもしれないと推測できるわけです。

ただ、実際中国がどの程度まで、発見できるかということは未知数です。そうして一ついえるのは、日本の潜水艦探知能力はかなり中国の上をいっているのは間違いないということです。

たとえば、防衛省は6月20日に中国潜水艦の接続水域通過を発表した。「奄美群島において太平洋から東シナ海に潜航潜水艦が通過した。日本領海には入らなかった」という内容からそれを推し量ることができます。

この発見は音響探知の結果と推測されています。南西諸島線に配置した水中聴音機で中国潜水艦の騒音を聴取したと、一般的にはそう考えられています。

しかし、そうではない可能性も否定できません。温度変化に基づくものかもしれないでし、電磁波による観測によるものかもしれません。

これについては、述べていると長くなってしまうので、興味のある方は、是非以下の記事を参照してください。
海自は対潜戦に力を注いでいるのは間違いありません。また他国でもこの手のセンサー利用は進められています。ところが海自はその研究や整備について一言も公表していません。

そうして、私自身は日米の潜水艦は当然のことながら、東シナ海、南シナ海、北朝鮮の近海、黄海などを潜航して航行していると思っていますし、中国がそれを発見すれば、激しく非難するようなところも航行していると思うのですが、現在までのところでは、中国はこれを非難したことはありません。

日本は発見の事実を公表することがあるのですが、中国はそのようなことを過去にしたことがありません。したことがないというよりは、できないのでしょう。これらを考慮すれば、現状では日米の対潜水艦戦闘力(ASW)は、中国のそれを凌駕しているのは間違いないといえると思います。

そうして、すでに日米と中国は様々な海域で、一般には知られることもなく、対潜水艦戦闘を前提として様々な行動をして、相手の能力を探ったり、牽制をしたりしてしのぎを削っていることでしょう。

今回の中国海軍の測量艦の日本の領海に侵入は、日米対中国の対潜水艦戦の一環として行われていることを忘れるべきではありません。そうして、ASWは現代海戦の決定打であることも忘れるべきではありません。もはや、空母打撃群や強襲揚陸艦などは海戦の主役ではないないのです。ASWこそ主役なのです。

実際に魚雷やミサイルは飛び交っていませんが、ASWに劣る中国は、いまのところ台湾侵攻や尖閣侵攻などできないことを認識しているでしょう。この優位性はしばらくはゆるがないでしょう。この海戦における絶対優位性を日米はこれからも保持しつづけるべきです。

この絶対優位性が崩れれば、中国は現在行っているような、海上や空での示威行動など一切おこなわず、すぐさま日米潜水艦隊を駆逐し、その後に台湾を武力侵攻します。尖閣にも侵攻するでしょう。沖縄もすぐです。その後は日本本土にも侵攻するでしょう。それに呼応してロシアも北海道にも侵攻するでしょう。

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2021年11月19日金曜日

米大統領「外交ボイコット」検討 北京五輪で、中国は反発―【私の論評】岸田総理が、財政・対中国政策を間違え続ければ三ヶ月後にはバイデン政権の後を追うように支持率が落ち参院選に突入することになる(゚д゚)!

米大統領「外交ボイコット」検討 北京五輪で、中国は反発


 バイデン米大統領は18日、ホワイトハウスで記者団に、来年2月の北京冬季五輪に政府高官らを派遣しない「外交ボイコット」を検討していることを明かした。中国政府による新疆ウイグル自治区などでの人権侵害への対抗措置とみられる。カナダのトルドー首相との会談冒頭で語った。

 バイデン氏は15日、中国の習近平国家主席とオンライン形式で初めて会談し、米中の衝突回避で一致したばかり。米選手団の派遣には影響しない見通しだが、日本や欧州など各国の北京五輪への対応を左右する可能性もあり、中国は反発している。

 中国外務省の趙立堅副報道局長は19日の記者会見で、「新疆問題は純粋に中国の内政であり、外国勢力の干渉は決して許せない。米国は新疆でジェノサイド(集団虐殺)や強制労働があると顔に泥を塗ろうとしているが、中国人民からすれば笑い話だ」と主張した。

 その上で「北京冬季五輪の主役は世界各国の選手だ。スポーツの政治化は五輪精神に反し、各国選手の利益を損ねる」と、米国の動きをけん制した。中国政府にとって、習氏の異例の3期目入りが確実視される来年秋の共産党大会を控え、北京五輪の成功は至上命令だ。

 サキ大統領報道官は18日の記者会見で、ウイグル族迫害に懸念を表明したが、「追加する情報はない」と述べるにとどめ、ボイコットの具体的な内容などには触れなかった。米紙ワシントン・ポストは、中国政府の人権侵害への対抗措置として、バイデン政権が近く「外交ボイコット」を発表すると報道していた。

【私の論評】岸田総理が、財政政策・対中国政策を間違え続ければ三ヶ月後にはバイデン政権の後を追うように支持率が落ち参院選に突入することになる(゚д゚)!

バイデン大統領が、北京五輪の外交的ボイコットを決めるのは当然です。このブログにも述べているように、バイデン大統領の支持がかなり落ちているからです。

この状況で、バイデン政権が北京五輪に何もせずに、通常どおりに参加ということになれば、国民からの批判がさらに高まり、支持率がさらに低下して、とんでもないことになりかねないからです。以下に支持率の推移を掲載します。

バイデン大統領野支持率と不支持率の推移 日次、期間:2021年1月27日~2021年11月17日、ポリティコの日次平均出所

米バイデン政権は財政政策としてインフラ投資法案(1兆2000ドル)と民主党単独法案を看板政策としてきました。インフラ投資法案は成立しましたが、育児や教育を支援する3.5兆ドル規模の計画を実施するとされた民主党単独法案は民主党内からの抵抗で規模縮小を余儀なくされたうえ、法案成立の見通しも不透明です。バイデン大統領の支持率も右肩下がりで、バイデン政権の政策運営に気迷いも見られます。

バイデン政権の2つの政権運営の最近の動向を振り返ります。2つの看板政策のうち、新規財源が5500億ドル規模のインフラ投資法案は超党派の合意により既に成立しました。 一方、当初は3.5兆ドル規模とより大型の民主党単独法案は、ビルド・バック・ベター(よりよき再建)法案に置き換え、規模を半減させ成立を目指していますが、採決の時期も不透明です。

特に上院の先行きが不透明です。上院は民主党と共和党が議席数で拮抗しており、民主党内から1人でも反対が出れば、それを上回る共和党からの支持が必要となります。しかし、インフラ投資法案と異なり、分配の色合いが濃いビルド・バック・ベター(よりよき再建)法案で共和党の協力が得られる可能性は低いと思われます。

 共和党の協力はそもそも期待できないとして、問題なのは民主党が一枚岩になれないことです。民主党内で分配政策を支持するグループと、これに強硬に反対する穏健派(少数ながら)が対立しています。

穏健派の代表的議員はウェストバージニア州選出のマンチン上院議員です。ウェストバージニア州は伝統的に共和党の地盤だけに、巨額の財政政策に否定的です。また最近では巨額の財政政策がインフレをさらに加速させると主張しています。

ある意味、正当な主張にバイデン政権は説得に苦慮しています。 そうしてもバイデン政権の支持率を見ると低下が止まりません。下落のきっかけは、何と言ってもちくはぐな移民政策でしょう。そうして、それに続くアフガン撤退の不手際でしたが、最近の世論調査ではインフレへの不満が背景の一因となっているようです。

また、バイデン大統領の後継者として期待がかかるハリス副大統領の支持率も30%前後と、バイデン大統領より低迷しています。ハリス副大統領も、移民問題で大失言したことがひびいているようです。

バイデン大統領は、移民2世のハリス副大統領を対策の責任者に任命。ハリス副大統領は6月7日メキシコとグアテマラを訪問し移民増加の背景にある貧困問題などへの支援を表明しました。

ハリス副大統領

ところが、グアテマラの記者会見での以下の発言が波紋を呼びました。
「国境を越えようと考えている人たちにはっきりと言っておきたい。来ないでほしい。来ないでほしい」
これはいかにも矛盾した発言です。受け入れるような受け入れないような、発言などすべきてではありませんでした。受け入れるなら受け入れるで、上限はどのくらいなのかはっきりすべきでした。あいまいな発言が一番困ります。

この状況で、バイデン政権が中国に対して甘い態度をとれば、ますます支持率が低下する可能性が高いです。

なぜなら、日米など先進諸国で中国に対する否定的評価が最高水準にあることが米調査機関ピュー・リサーチセンターが実施した国際世論調査で明らかになったからです。

同センターが2~5月に実施した先進17カ国・地域の成人約1万8900人を対象に実施した調査によると、15カ国・地域で過半数の人々が中国を「好ましくない」とみていました。

特に否定的な評価が多かったのが日本で、88%が「好ましくない」と回答しました。スウェーデン80%、オーストラリア78%、韓国77%。米国76%がこれに続きました。また、韓国と米国、カナダ(73%)、ドイツ(71%)では「好ましくない」がこれまでの調査で最高となったのです。

中国を「好ましい」とする回答の方が多かったのは、シンガポールとギリシャだけでした。

また、「中国は国民の自由を尊重していない」との回答は、17カ国中15カ国で80%を超えた。

米中のどちらと強い経済関係を望むかについては、シンガポールを除く16カ国・地域が米国を選んだ。

中国の習近平国家主席への信頼度は、シンガポール(70%)を除く16カ国・地域で10~36%の低水準でした。最低は日本で10%でした。

また、中国との経済関係を犠牲にしてでも人権問題を重要視する回答が70%以上を占めたのは米国、オーストラリア、ニュージーランド。日本は54%、台湾は45%。一方「経済関係を優先する」との回答が上回ったのは韓国(57%)とシンガポール(55%)でした。


中国との経済関係を犠牲にしてでも人権問題を重要視する回答が70%以上を占めたのは米国という数字をみれば、バイデン政権が北京五輪に対して、何もしなければ、支持率が落ちるだろうと見るのは当然のことだと思います。

まだ実際のボイコットの詳細は決まっていませんが、バイデン政権は何らかの形でボイコットをせざるを得ないでしょう。

一方日本はどうなのかといえば、昨日もこのブログで指摘したように、10月31日の衆院総選挙で、自民党が身分不相応に勝ってしまったため、というか分不相応に負けなかったために、岸田政権が国民から信任を受けたと、岸田総理が勘違いしてしまったという可能性が大きいです。

そうして、この勘違いにより、二つの大きな錯誤をした可能性が大きいです。一つは、経済対策です。もう一つは対中国政策です。

現状ではコロナからの復活のため、大型補正予算を組みすぐにも実行すべきなのですが、給付金一つとってもトロトロしており、しかもチマチマしています。

米国では上の記事にもあるように確かにインフレ傾向です。

米労働省が10日発表した10月の消費者物価指数(CPI、季節調整済み)は前月比0.9%上昇。前年同月比の上昇率は6.2%に達しました。食料品とエネルギー品目を除いたコアインフレ率も前年同月比4.6%上昇し、年間上昇率はどちらも30年以上ぶりの高い伸びとなりました。


一方、日本はどうなのかといえば、物価目標は1%にも達しておらず、インフレ懸念からは程遠い状況にあります。バイデン政権はインフレをものともせず、財政政策としてインフラ投資法案と(1兆2000億ドル)民主党単独法案(3.5兆ドル)を実施しようとしていたのと比較すると、どこか頭のネジが緩んだような対策をやろうとしているのではと、疑念を持ってしまいます。(なお、円・ドル換算には、ドルのほうを100倍すれば概要がつかめます、わたしはてっとりばやくそうしています。それでみると米国の対策がいかに巨額かわかります)

バイデンとしては、需要が供給を上回り、消費や投資が活発化するような「高圧経済」を早期に実現して、いちはやく米国を成長軌道にのせ、それをもって支持率の上昇を狙っただと思います。

いま必要な政策は、日米ともに政府が総需要を創出することです。それは失業を回避するための政府の大きな役割です。日本では、総裁選、衆院選を経て経済対策の機運がせっかく高まったのですが、先にも述べたように最近の給付金での政府与党のやり方は「トロトロ」「チマチマ」で本当に情けない限りです。

バイデンが狙ったように、補正予算でGDPギャップを埋めるほどの有効需要をまず創出しなと問題外で。その中身については、いろいろな政治家が語ってくれればいいが、総額が足りないというのでは論外です。

日本でも、需要が供給を上回り、消費や投資が活発化するような「高圧経済」を実現すべきであり、これには真水でいえば50兆円程度が必要です。昨年の経済対策などの使い残しが何と20兆円程度もあります。それを含め50兆円程度であれば、今後の雇用悪化は回避できるでしょうが、それを渋ると失業が増え、経済が悪化に加えて失業対策や生活保護費などの経費が増えることになります。

そうなる前に、経済を回復させるべきです。政府・与党は、新たな経済対策と2021年度補正予算案を固めました。国と地方の負担を含む財政支出は55・7兆円程度、民間などの支出を含めた事業規模は78・9兆円程度になるそうです。19日に閣議決定するそうです。しかし、真水でどの程度の規模になるのかはわかりません。

バイデン政権はしばらく前から支持率が落ちているので、何とかこれを打開しようと、大規模経済対策を打とうとしたり、北京五輪の政治的ボイコットをしようとしています。

しかし、昨日もこのブログに掲載したように、自民党では、中国当局による香港やウイグルなどでの人権弾圧を念頭に、海外での人権侵害行為に制裁を科す「日本版マグニツキー法」の整備が検討されてきたのですが、岸田首相が当面見送る方針を固めたと報じられました。

岸田総理が、財政政策と、対中国政策を間違え続ければ、少なくとも三ヶ月後には、バイデン政権の後を追うように支持率が落ちて、それを取り返すのに苦慮することになります。そうして、その状態で参院選に突入することになりかねません。

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2021年11月18日木曜日

岸田首相、安倍元首相と初会談 マレーシア特使派遣を伝達 「有意義な意見交換ができた」―【私の論評】マレーシアの帰りに安倍特使が台湾に寄れば、岸田政権は二つの大きな錯誤を是正することに(゚д゚)!

岸田首相、安倍元首相と初会談 マレーシア特使派遣を伝達 「有意義な意見交換ができた」


 岸田文雄首相は17日夕、衆院議員会館の安倍晋三元首相の事務所を訪れ、約30分間会談した。関係者によると、マレーシアに特使として安倍氏を派遣する方針を伝達。新型コロナウイルス対応を盛り込んだ2021年度補正予算案やロシアとの関係など外交が話題に上ったという。両氏の会談は首相就任後初めて。

 岸田首相は会談後、官邸で記者団に「これからの政治の動きの中で話題になる課題について、有意義な意見交換ができた」と語った。

 自民党総裁選で、安倍氏が高市早苗政調会長を全面支援したため、岸田首相と安倍氏に距離が生じたとの指摘がある。

【私の論評】マレーシアの帰りに安倍特使が台湾に寄れば、岸田政権は二つの大きな錯誤を是正することに(゚д゚)!

上の記事、最後の結論部分は間違っていると思います。自民党総裁選で安倍氏が高市氏を応援したのは、河野氏を総裁にはしたくなかったので、高市氏を応援したとみるのが、妥当だと思います。もし安倍氏が高市氏を応援していなければ、河野総裁ということもあり得たかもしれません。

総裁選決選投票へ向けて岸田・高市両陣営は前日9月28日午後からトップレベルの調整を進めました。岸田氏が決選投票に駒を進め、高市氏が敗れた場合に決選投票で高市陣営は岸田氏支持で合意し、本選で高市氏が獲得した議員票114の大半は岸田氏に流れたとされています。

そこに、自民党最大派閥旧細田派(現安倍派)の意思が働いていたのは間違いありません。

総裁選では、岸田派と旧細田派の共通の利益でもある河野総裁阻止と、当初は泡沫候補ともみられていた高市氏の初の女性総理への可能生を切り開いたということで、安倍氏の目論見は成功したと思います。

高市早苗政調会長

そういうこともあり、岸田氏は安倍氏や自民党最大派閥旧細田派(現安倍派)に一定の配慮を示していました。ただ、昨日もこのブログで示したように、10月31日の衆院総選挙で、自民党が身分不相応に勝ってしまったため、というか分不相応に負けなかったために、岸田政権が国民から信任を受けたと、岸田総理が勘違いしてしまったという可能性が大きいです。

それに関しては、昨日は財政面での「ショボさ、とろさ」について掲載しました。財政面での岸田首相の勘違いについては昨日の記事でまとめましたので、それを参照してください。

岸田首相のもう一つの勘違いとしては、外交上の勘違いです。

自民党では、中国当局による香港やウイグルなどでの人権弾圧を念頭に、海外での人権侵害行為に制裁を科す「日本版マグニツキー法」の整備が検討されてきたのですが、岸田首相が当面見送る方針を固めたと報じられました。

第2次岸田内閣では、政界屈指の「親中派」である林芳正外相を起用した一方、法整備に積極的な中谷元(げん)元防衛相を「国際人権問題担当の首相補佐官」に登用してバランスをとったとされたのですが、このバランスはすでに崩れつつあります。

中谷元・首相補佐官(国際人権問題担当)は15日夜のBS日テレ番組で、中国新疆(しんきょう)ウイグル自治区や香港での人権状況について「看過できないような状況がある。日本としてどう対応していくか政府で検討する必要がある」と語りました。

 一方、重大な人権侵害行為に制裁を科すための日本版マグニツキー法の制定については「簡単にいかない」と慎重な姿勢を示しました。

「一方的に価値観を押し付けて制裁するやり方も一つだが、寄り添って問題を解決する役割を日本は期待されている。紛争を助長したり、事を荒立てたりするのがすべてではない」と述べ、「対話と協力」を人権外交の基本とする日本政府の立場を説明しました。 中谷氏は「人権外交を超党派で考える議員連盟」の共同会長として、日本版マグニツキー法の制定を訴えていました。

これら二つの錯誤を起こしている可能性が高い岸田総理ですが、これに対する是正の動きが自民党内で必ずでてくるはずです。

なぜなら、まずはくてショボくてとろい経済対策では、コロナ禍からの経済の回復が遅れ、国民の不満が高まるからです。

外交面での錯誤、特に中国に配慮するような政策をとれば、以前このブログにも示したように、米国ピュー・リサーチ・センターの調査では、反中感情を持つ人の割合は、日本では86%にものぼるわけですから、国民の不満は高まることになります。以下に昨年10月のピュー・リサーチ・センターの調査結果のグラフを掲載します。


このまま岸田政権がこれらの錯誤を続けた場合、岸田政権の支持率は確実に下がることになるでしょう。

これに対する是正の動きが、自民党内から出てくるのは当然のことです。それでもこれに岸田政権がこれ対して何もしなければ、それこそ昨日もこのブログで指摘したように、岸田おろしの嵐が吹き荒れ、来年また総裁選ということになりかねません。

このような動きがどうなるか、見定めるための一つの目印があります。それは、安倍晋三台湾に電撃訪問のタイミングはいつごろになるかで推し量ることができます。

以前このブログでも述べたように、安倍晋三元首相が、首相経験者として初めて台湾を訪問する計画が持ち上がっています。安倍氏は超党派で作る親台議連「日華議員懇談会」の顧問を務めており、その動きは、中国との距離が近いとされる岸田文雄首相や林芳正外相、党内では茂木幹事長へのけん制と指摘する声も少なくないです。


岸田首相は、どのようなつもりで、これらの人事を決めたのかわかりませんが、外相、幹事長ともに中国との距離が近いとされる人を任命するのは、明らかにバランスを欠いています。これは、中国に誤ったメッセージを与えかねません。

バランスを保つ意味でも、安倍元総理は台湾訪問を考えたのでしょう。冒頭の記事にもあるように、マレーシア特使に任命された安倍晋三元首相は来月12月にマレーシア訪問が予定されています。その帰りに台湾訪問をするにはマレーシア帰りに、台湾に寄るのではないかという憶測があります。

もしこれが成就すれば、岸田・安倍会談においても、このことが話し合われ、岸田総理には安倍元総理や安倍派に対して一定の配慮をするつもりがあると考えられます。

もし、これが成就せず、安倍元総理が台湾を訪問することがなけれは、岸田総理には先にあげた二つの錯誤を訂正するつもりはないと考えられます。さすがに安倍元総理も、岸田現総理にはっきりと反対されれば、台湾に自己判断でいくことはできないでしょう。

果たしてどうなるのでしょう。私としては、無論来月是非とも安倍元総理の台湾訪問を実現していただきたものと思います。

そうして、これを皮切りに以前このブログでも提唱したように、岸田総理はマレーシア以外にも、特使として安倍総理を派遣すべきと思います。

このブログでは、米国バイデン政権では、ジョン・ケリー氏が、気候変動問題担当特使を担っていることから、日本でも、安倍晋三氏を日仏関係担当特使に任命して、日仏関係の強化ならびに、米豪とフランスの関係修復を推進していただいてはどうかという主張をしたことがあります。

マレーシアを皮切りに、米・仏・豪などに特使として派遣し、過去に安倍氏が成したように、大きな方向性や枠組みを構築してもらうようにすべきです。このような役割は、林外務大臣はもとより、岸田総理にも荷が重すぎです。

当面は岸田政権は、安倍元総理に外交の道筋をつけてもらうべきです。そのようなことになれば、無論財政面でも、岸田政権は安倍派に一定の配慮を示し、緊縮財政に走ることもなくなるでしょう。

何よりも、岸田総理は、安倍元総理の言うことに耳を傾けるべきです。そうしなければ、自分では人のことを良く聞いているつもりであっても結果として、唯我独尊に陥ってしまいかねません。


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