2021年12月16日木曜日

企業物価指数上昇は絶好機 財政・金融政策フル稼働で「デフレ完全脱却」の可能性も―【私の論評】岸田政権に期待するのは、安倍・菅両政権の置き土産を台無しにしないことだけ(゚д゚)!

日本の解き方



 11月の企業物価指数は前年同月比9・0%上昇の108・7で、伸び率は比較可能な1981年1月以降で最大、指数は85年12月以来、約35年11カ月ぶりの高い水準となった。

 背景には、原油などの資源価格の上昇がある。その上、円安による円ベースの輸入価格の上昇も拍車をかけた。

 問題は、企業物価がどのように消費者物価に波及するかだ。

 まず考慮しておきたいのは、企業物価指数と消費者物価指数は、それらの対象が異なっていることだ。

 企業物価指数は、企業間で取引される財に関する物価の変動を測定するものだ。消費者物価指数には、企業物価指数が対象としていない授業料、家賃、外食などのサービスの価格もウエートにして5割程度含まれている。サービスの価格は、財に比べて人件費の割合が高いため、財の価格が上昇・低下しても、財と一致した動きをするとはかぎらない。

 また、消費者物価指数が対象としている財は世帯が購入するものについてであり、企業物価が対象とする原油などの原材料、電気部品などの中間財、建設機械などの設備機械は含まれていない。

 このため、企業物価指数と消費者物価指数は、必ずしも一致しないが、一定程度の連動はある。一般的に、企業物価の変動は大きいが、その一定割合はタイムラグを経て消費者物価に反映される。

 2000年以前、消費者物価指数上昇率は、直近3カ月程度の企業物価指数上昇率の6割程度となって9割程度の相関があった。00年以降、連動の度合は低くなったが、それでも企業物価指数上昇率の2~3割程度となって6割程度の相関がある。その関係式を考慮すると、直近3カ月移動平均での企業物価指数上昇率が8%程度なので、近い将来、消費者物価指数上昇率が2%程度になっても不思議ではない。

 もっとも、企業物価の消費者物価への反映は、企業がどの程度、価格転嫁できるかどうかに依存する。

 00年以降をみても、企業物価が上昇したのは、08年のリーマン・ショック直前と、14年の消費増税時があるが、前者では世界経済の急落、後者では消費増税による景気ショックがあり、消費者物価に反映する余裕もなく、その直後に企業物価は急落している。

 今回は、世界での新型コロナ後の景気拡大への方向もあり、日本にとってはまたとないチャンスである。ここで、日本は財政政策と金融政策をフル稼働すれば、GDPギャップ(完全雇用を達成するGDPとの乖離)も縮小し、景気の腰折れもなく、賃金と物価がともに上昇する好循環にも入れる。

 菅義偉前政権のおかげであるが、岸田文雄政権は、新型コロナの感染が少ないという運にも恵まれている。ここで、財務省の緊縮病さえ抑え込むことができれば、マクロ経済でデフレからの完全脱却という良い結果を残せる可能性がある。ここは岸田政権の正念場でもある。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)
【私の論評】岸田政権に期待するのは、安倍・菅両政権の置き土産を台無しにしないことだけ(゚д゚)!

上の高橋洋一氏の記事では、菅義偉前政権のおかげでという言葉があり、新型コロナ感染が少ないという運にも恵まれているとしています。

安倍元総理と菅前総理

確かに、岸田内閣は菅政権と、安倍政権の置き土産で、恵まれたスタートを切っています。これは、以前のブログにも述べたことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
本文わずか“2ページ”立民の残念なアベノミクス検証 雇用創出の実績を分析できず、支持母体の労働者に響くのか ―【私の論評】安倍・菅両氏の「お土産」と立憲民主党の体たらくで、新政権は安定(゚д゚)!
この記事の元記事は、9月29日のものですです。総裁選の結果は同月29日に公表されていますから、この記事は総裁選の前に書かれたものです。詳細はこの記事をご覧いただくものとしして、この記事から少し長いですが、一部を引用します。
アベノミクスによる雇用増は、以下のグラフをご覧いただければ、一目瞭然です。


このような成果がなぜ得られているかといえば、安倍政権の時には、結局増税を2回も実施してしまったにもかかわらず、日銀はイールド・カーブ・コントロールにより、緩和を手控えながらも緩和姿勢を崩していないからです。

さらに、上のグラフでみても、わかるとおりコロナ感染症が経済に悪影響を与えても、日本では雇用が悪化しなかったのは、以前のこのブログにも掲載したように、日本には雇用調整助成金があるからです。
この制度は、労働者の失業防止のために事業主に給付するものです。類似制度は世界ではそれほど多くないが、似た制度があるドイツも、ピーク時の失業率上昇は0・7ポイントと他国と比べて抑えられています。

日本の失業率はコロナ前の2020年2月に2・4%でしたが、その後上昇し、10月に3・1%とピークになり、21年7月は2・8%まで低下しました。米国は20年2月に3・5%でしたが、4月に14・8%とピークで、21年7月は5・4%。EUは20年3月が6・3%でしたが、8月に7・7%、21年7月は6・9%となりました。

それぞれ、コロナ前とコロナ後のピークの差は日本が0・7ポイント、米国が11・3ポイント、EUが1・4ポイントでした。コロナ前と直近の差は日本が0・4ポイント、米国が1・9ポイント、EUは0・6ポイントです。

これらの数字から、コロナ禍による失業率の上昇を最も抑えたのが日本であることがわかります。

ご存知のように、本日自民党総裁選においては、岸田氏が勝利しました。

これまでの歴史を見ると長期政権の後は短命政権が続いています。ただ岸田政権には「貯金」と「お土産」があります。

「貯金」は安倍元首相が残した「雇用の改善」と「国政選挙6連勝」です。このおかげで衆参ともに自公で過半数をがっちり確保しており、一度の選挙で多少負けても毎年の予算は通ります。

だから短命になりにくいでしょう。政権が長く続くと成果も出ます。

「お土産」は退陣する菅首相からもあり、ワクチン接種を強力に進めたおかげでコロナは終息しつつありますし、先にも述べたように、コロナで雇用が激減することもなく、菅政権下で東京オリパラも開催してもオリパラが感染を加速することもなく終えたので、国内では大きな懸案事項もありません。安倍・菅路線を継承すれば、大やけどすることもないでしょう。
そうして、今後自民党はさらにコロナ対策のために、補正予算を組むことになるでしょう。それは、様々な日程を考えると、衆院選後になるでしょう。そうして、日本経済は復活するでしょう。 つまりこれだけの貯金とお土産があれば、当面首相は誰でも務まるかもしれません。

菅退陣で政党支持率が上がり衆院選で大負けすることもないでしょう。

なぜなら、上の記事にもあるように、最大野党の立憲民主党の体たらくがあるからです。今年は、自民党の総裁選ですっかり影が薄くなったのですが、昨年も同じでした。

そうして、実際自民党は、この予想通り衆院選では大負けすることもなく、議席数は減らしたとはいえ、予想をはるかに上回る善戦をしました。

こうした大きな置き土産を前・前々政権から受け取った岸田政権は余程の間違いをしない限り、かなり運営しやすいはずです。今回の企業物価指数上昇も、安倍・菅政権の置き土産がなければ、デフレからの脱却へのチャンスともなり得なかったことでしょう。

特に経済面では、すぐに増税をするなどして緊縮に走ることなくまともな財政・金融政策を実施すれば、上の記事で高橋洋一氏の言うように、岸田政権は、マクロ経済でデフレからの完全脱却という良い結果を残せる可能性はあります。

ただ、気がかりなのは岸田政権の進める新しい資本主義は、日本の経済を窒息死させる恐れがあるということです。選挙公約で所得倍増の旗を振りながら引っ込めてしまったり、歴代の政権が必ず提唱してきた規制改革を言わなかったり、成長より分配を先に言ってしまったりしているからです。


そもそも、政府が経済政策でできることは限られており、税制、公共投資、規制改革などが中心です。その3つとも、具体的な政策も方向も示せていないのが、岸田政権です。岸田政権は、公共投資になるグリーン政策も、当初にはCOP26に参加見送りを言ってしまうほど、新たなビジネスチャンスがわかってないくらいに経済オンチです。

18歳以下に現金5万円クーポンで支給するとしていた特別給付金についても11月に補正予算出して、来月に国会で審議しますから、その後すぐ年末年始の休みになり、年明けくらいから実務作業が始まりますから、うまくいって3月くらいに給付できれば良いという状況になるのは最初からわかっていたことです。

さらにクーポンはデザインや印刷に時間かかりますから、もたもたしていると参院選後に給付ということになりかねません。そのようなことは、最初からわかっていたことです。

様々な批判を受けた後で、ようやっと政府は14日、18歳以下の子どもへの現金5万円とクーポン5万円分の給付について、現金での全額支給を容認する方針に転じたことを踏まえ、自治体向けの指針をまとめました。現金給付を認めるケースについて「自治体の判断を尊重するとの考えの下、政府において一律の条件を設け、審査を行うことは考えていない」と明記しました。

それだけではなく、GOTOキャンペーンも来年2月からを予定するなど、岸田政権の政策はあまりに「とろい」です。

新型コロナウイルスからの経済回復も「日本だけが出遅れている」います。どうしようもないこのスピード感のない、岸田政権で来年夏の参院選をまともに戦えるでしょうか。

このような岸田政権は、せっかくの安倍・菅両政権の置き土産を台無しにしてしまう可能性が大です。そのため、マクロ経済でデフレからの完全脱却という良い結果を残せる可能性は低いです。

岸田政権に期待できるのは、今以上に日本経済を毀損(きそん)することがないようように、現状維持することだけです。それ以上の期待はできません。長期政権になれば、日本経済を毀損する確率が高まるだけです。自民党は、岸田政権は短命で終わらせ、他のまともな総裁のもとで、やり直すべきと思います。

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2021年12月15日水曜日

安倍元首相、中国を再び批判 国際フォーラムで講演―台湾―【私の論評】「中国による台湾武力侵攻は、控えめに言っても自殺的になる」は事実(゚д゚)!

安倍元首相、中国を再び批判 国際フォーラムで講演―台湾

安倍晋三元首相=6日、東京都港区

安倍晋三元首相は14日、台湾や米国、日本のシンクタンクなどが台北で開催した国際フォーラムでビデオ講演し、「中国のように巨大な経済体が、軍事における冒険を追い求める場合、控えめに言っても自殺的になる」と強調した。台湾統一を目標に掲げ、軍事的威圧を強める中国を再び批判した。

【中国ウォッチ】安倍氏の台湾有事発言に異例の強硬対応─中国高官「火遊びで焼け死ぬ」

 安倍氏は、「中国に対しては、領土拡張を追い求めてはならないと強く言うべきだ。隣国を挑発したり、しばしば追い詰めたりする行いは控えるべきだと言うべきだ」と発言。台湾や沖縄県の尖閣諸島、南シナ海の周辺で軍事活動を活発化させている中国を強くけん制した。その上で、日米台などの民主主義陣営の結束を呼び掛けた。

【私の論評】「中国による台湾武力侵攻は、控えめに言っても自殺的になる」は事実(゚д゚)!

上の記事にもあるように、自由民主党の安倍元総理大臣は12月14日、日米台のシンクタンクが共催したシンポジウムのなかでビデオメッセージを寄せ、軍備増強と海洋進出を進める中国と台湾との間で高まる緊張関係に関し、「中国に対し、隣国を挑発したり、追い詰めたりする行いは控えるべきだと言うべきだ。中国自身の利益を損ねるからだ」と重ねて指摘しました。 

 安倍さんはここ最近、精力的に発言されていらっしゃいますが、 総理でなくなったということを、良い意味で活用されていると思います。中国共産党によるウイグル人に対する弾圧に対する批判を中国は「内政問題だ」と主張することに対して、安倍氏は総理の時代から反論されて来ましたけれど、ここまではっきりとは言えませんでした。

来年は、ますます「中国に対してどういう姿勢で臨むのか」ということが日本の鍵になるという示唆でもあると思います。アジアのなかで、いま中国共産党の独裁主義にものを言える国は、実は日本しかいないのです。

ナチズムの専制主義に対して、1930年代当時のヨーロッパでものを言うことができたのは、ドーバー海峡を挟んだ英国だけでした。 しかし、その英国でさえも最初はチェンバレン首相が宥和政策を取り、宥めようとして、かえってチェコやポーランドを差し出す結果となり、それが大きな戦争につながることになりました。

英国はそこで切り替えて、チャーチルが現れたのです。岸田総理は、その分岐点に立っていると思います。チェンバレンのようになるのか、チャーチルになるのか。

チャーチル(左)とチェンバレン(右)

最近の安倍氏は、自由に意見を述べていますが、岸田総理に対しては「対中国に宥和的な姿勢はもう通用しない」と語りかけているのだと思います。 そうして、このメッセージは対中国のというよりは、日本国内に向けてのもでしょう。 

中国共産党に対してメッセージを出すのも大事ですが、それで方向転換するような中国ではありません。というより、独裁体制ではそれは、できないのです。 

民主主義のようにいろいろな意見が出て来ないですから、独裁者が失脚するような極端なことがなければ意見を変えられないのが、独裁主義の大きな弊害の1つです。

そのため、中国共産党をこのメッセージで動かそうとしているのではなく、岸田現政権に対して、「いたずらな宥和政策は、アジアの平和にとって有害ですよ」ということを言いたいのでしょう。台湾のことを例にして語っていますが、本当の真意はそこだと思います。

ただし、台湾国防部からすると、中国は演習に見せかけていきなり攻撃して来る可能性もなきにしもあらずです。その可能性の恐れを指摘されることは正しいのですが、現実の中国軍にはこのブログでも何回か述べたように、台湾に侵攻できるような能力はありません。 

ただ、台湾の南には東沙諸島があり、日本の尖閣諸島と似ているのですが、そこに対して攻撃をしかける可能性はあると思います。そこに拠点を置き、台湾を破壊することはせず、そこを拠点に台湾の内政を動かし、中国共産党の思い通りにするという懸念はあります。


 東沙諸島まで、横須賀からアメリカ海軍の主力である第7艦隊が向かっても、数日はかかりますから、狙われる可能性は否定できません。現在台湾海峡から南にかけては異常な緊張状態にあります。ただ、私自身は、このブログでも述べてきたようにすでに米国は台湾付近に強力な攻撃型原潜を潜ませていると考えています。

米海軍は、中国海軍よりもはるかに対潜水艦戦闘能力(ASW)が強力ですから、攻撃型原潜の脅威があれば、中国は迂闊に手を出せません。手を出した海軍部隊は破滅することになります。東沙諸島にさえ手をだすのは、中国にとっては大冒険です。

「中国のように巨大な経済体が、軍事における冒険を追い求める場合、控えめに言っても自殺的になる」という安倍総理の発言は、このことを意味していると思います。中国が台湾に武力侵攻した場合、米軍の攻撃型原潜の猛攻撃を受けるのは間違いありません。

そうなると、中国海軍はほぼ壊滅するでしょう。おびただしい数の犠牲者が出ることになります。これを安倍元総理は、「自殺的」と表現したのでしょう。

これは、わかりやすい言葉です。特に、米攻撃型原潜の攻撃力は以前にも述べたように、強力ですから、中国のほとんどの艦艇は撃沈され、壊滅状態になる一方米側にはほとんど被害がでず、このような言葉は使いたくないですが一方的な「虐殺」に近いことになるでしょう。中国が台湾に武力侵攻するということは、これだけ無謀なことなのです。

さらに、中国海軍が壊滅するだけではなく、米国は報復のため国際金融支配力を用いて本格的に中国を世界経済から切り離すことになるでしょうから、そうなるとまさに「自殺行為」になってしまいます。安倍総理のこういった実体を中国側に認識させるという意味もあったでしょう。

安倍元総理は、今回のメッセージのなかで、「日米台は海洋や空中、サイバー空間、宇宙においても能力を高め続ける必要がある」と、ここを連携すべきだと強く訴えています。

ただ、現状では、日本の自衛隊と台湾軍が何かをやろうという動きは、公式にはできないところがありまます。 法的にできないわけではないのですが、ただ、簡単に言うと、自衛隊は活動範囲がかなり限定されています。

もちろん憲法9条の制約もあります。安倍政権下で平和安全法制ができて、集団的自衛権を認めたのですが、米軍筋の反応として、むしろ逆にこの安保法制は限定条件が厳しすぎてで使えないとみているようです。 

第二次世界大戦当時からそうですが、戦争を避けるには、一国だけで自国を守備するというのではなく、様々な国と組まなければならないという厳しい現実があります。この時代に米国側からは「自衛隊だけで国防ができる」という考え方を、日本はいつまで続けるのかと見られているのです。

存立危機という奇妙な言葉を使ったり、「〇〇事態」なるものがたくさんあり、国民には理解しにくいですが、米国にとっても理解しにくいのです。無論台湾にとつても理解しにくいです。ただ、中国にとっては、いざというときに自衛隊かが動けないわけですから、理解しにくいままで良いのです。

ただし、このブログで過去に主張してきたように、自衛隊の海戦能力、特に潜水艦艇の能力は、世界最高レベルです。原子力潜水艦より、日本の通常艦の方が局地戦で見れば上といっても良いです。

確かに、日本の潜水艦は、攻撃力や巡航能力は米攻撃型原潜には劣るところがあります。ただし原子力潜水艦は構造上どうしてもある程度騒音が出ますから、中国海軍でも探知できる可能性があります。ところが日本の潜水艦は、ステルス性(静寂性)がかなり高いですから中国はこれを探知できません。

そうりゅう型潜水艦「とうりゅう」 「出典:海上自衛隊ホームページ」 クリックすると拡大します

そのため台湾や米国から、「平和を守る範囲内において、もう少し活動範囲を広げるべきだ」という議論がずっとあります。安倍元総理の発言はそこに対しても問題提起をしていると思います。

私たちの国日本は民主主義の国です。総理大臣をはじめとする国会議員の後ろには有権者がいるわけですから、主権者の方も改めて客観的に冷静に、「平和を守るために何をすべきなのか」ということを、現実の中国の動きをよく見て考えるべきです。 

ただ、「中国にとっても利益にならない」と、安倍元総理は語っています。例えば経済から言うと、中国がものを買ってくれる大きさと、台湾がものを買う大きさは、桁がゼロ3つくらい違います。

それでも、これだけ台湾の存在感が増して来ているということは、あまりにも中国共産党の最近の動きが、習近平国家主席の独裁が極端に強化されているからです。それは自滅につながるでしょう。

 それに対して、諫言するような人は、習近平政権の体制下では生まれ得ないです。 もともと少なかったのが、習近平は、汚職追及の名の下に徹底的に敵対勢力を失脚させ、追放し逮捕し、投獄ししました。

しかし、習近平の派閥に属する人たちは一切そういう目に遇いません。習近平、あるいは中国共産党自身は独裁体制のほうが良いのです。決定も早いし、ブレもないのだと自負しているようですが、弊害も自分で大きくしているというのが実情です。

そうすると、いろいろな諫言は国外からもせざるを得ません。 さらに人間の尊厳、命に関わる台湾、ウイグル、チベット、南モンゴルなどの問題は、内政問題で片付けるわけにはいきません。

来年(2022年)の通常国会まで待たずに、対中国、人権非難決議を本国会で行うべきです。とは言っても、もう時間がなくなってしまったのですが。少しでもはやくすべきです。

安倍元総理の発言は、そういうことを促すと意味もあると思います。

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2021年12月14日火曜日

フランス・スペイン共同開発 インド海軍期待の新型潜水艦「ヴェラ」就役―【私の論評】多くの国々が対潜戦闘力を強化し、中国の多くの艦艇を持てば勝てるという幻想を打ち消すことに(゚д゚)!

フランス・スペイン共同開発 インド海軍期待の新型潜水艦「ヴェラ」就役

インド海軍「ヴェラ」の就役式典の様子

同型6隻あるうちの4番艦として就役

 インド国防省はこのたび、同国海軍向けの新型潜水艦「ヴェラ」の就役式典を2021年11月25日に挙行したと発表しました。

「ヴェラ」はインド海軍が整備を進めるカラヴァリ級潜水艦の4番艦です。全長は67.5m、幅は6.2m、高さ(深さ)は12.3m、水上航行時の喫水は5.8mで、満載排水量は1775トン。乗員数は43人で、ディーゼルエンジンと発電機によって、水中ならば最大20ノット(約37km/h)、水上ならば11ノット(約20km/h)の速力で航行できるといいます。

 主武装は魚雷並びに対艦ミサイルで、配備先は司令部をムンバイに置く西海軍コマンドになるそう。

 カラヴァリ級は、フランスのDCNS社とスペインのナバンティア社が共同開発した輸出用のスコルペヌ級潜水艦をインドがライセンス生産し導入しているもので、開発元であるフランスとスペイン両国での採用実績こそないものの、インド以外にもチリやマレーシア、ブラジルなどで購入・配備されています。

 累計建造隻数はすでに「ヴェラ」を含めて12隻を数えており、さらにインド海軍では1隻が進水済みで現在艤装中、もう1隻も2023年初頭の就役を目指して建造中です。

 なお、インド海軍によると「ヴェラ」とはアカエイを指す言葉で、海中を泳ぐモノとしてピッタリとのこと。その由来から、同艦のマスコットキャラクターとして艦名イラストにもアカエイが描かれているとのことです。

【私の論評】多くの国々が対潜戦闘力を強化し、中国の多くの艦艇を持てば勝てるという幻想を打ち消すことに(゚д゚)!

インドの新型潜水艦の就役は、インドが対潜水艦戦闘力(ASW)を強化する決意の現れとみることができます。インドをはじめ、中国を警戒する多くの国々が、ASW(対潜水艦戦闘能力)を強化するのは当然の流れといえます。

中国の対米海洋戦略では、中国は中距離ミサイルの配備などで(沖縄、台湾、フィリピンなど結ぶ軍事戦略上の防衛ライン)第1列島線内で米空母が活動できない体制を実現しようとしているのですが、沖縄や台湾など全てを中国のものにしない限りその実現は不可能です。

仮に中国のミサイルなどにより米空母が近づけなくなるとしても、米軍には「見えない空母」と言われる巡航ミサイル原子力潜水艦(SSGN)が4隻あります。1隻でトマホークを154発積むことができます。

中国の最大の弱点はASWで、特に潜水艦を見つけ出す能力が低いでのです。仮に台湾有事が発生した場合、600発の巡航ミサイルを積んだ「見えない空母」が、第1列島線の内側に入り込み、ピンポイントで中国のレーダーや宇宙監視の地上施設を攻撃して、まず「目」を奪うでしょう。そうなれば、中国は米空母などがどこにいるか把握できず、ミサイルを当てようがなくなります。

そもそも中国の空母キラーと呼ばれる弾道ミサイル「DF21D」は米空母には当たらないとみらている専門家も多いです。弾道ミサイルはスピードがありすぎてコントロールが難しく、自由に動く対象に簡単には当てられないからです。

先に述べたように、中国のASWはかなり低いので、結果として海戦においては、日米などにとっては脅威ではありません。これは、ロシアも同じことです。そもそも、中国のASWは、ロシアから導入したものです。それよりも、警戒しなければならないのは、中国の軍人が米国に勝てると誤認することです。

軍事筋では昔からいわれているように、艦艇には二種類しかありません。水上に浮いている艦艇と、水中に潜む潜水艦です。水上に浮いている艦艇は、巨大な空母であろうと、巨大軍艦であろうと、航空機やミサイル等の標的に過ぎません。現在なら、対艦ミサイル一発で撃沈されてしまいます。

艦艇には二種類しかない、水上艦艇と潜水艦である

しかし、水中に潜む潜水艦は違います。ただ、潜水艦があったにしても、ASWが相手方よりも劣っていれば、不利です。潜水艦も撃沈されることになり、その後に水上艦艇もすぐに撃沈され無力化されてしまいます。

そのため、中国がいくら多くの艦艇を有していたとしても、現在の海戦では圧倒的に不利なのです。ただ、海戦戦闘の経験がほとんどない中国の軍人は、多くの艦艇を持てば勝てると勘違いするかもしれません。それで、米国などに挑めば、とんでもないことになります。

ただ勘違いしていないとしても、ASWの低い国々に対しては、脅威になります。そのため、インドをはじめ各国がASWに力を入れているのでしょう。それに日米等海戦能力が高い国々でも無用な衝突は避けたいでしょう。もし衝突して、本格的な海戦になれば、中国海軍は壊滅します。おびただしい死傷者がでるでしょう。

日本のASWは対潜哨戒力が元々高く強力ですが、近年は特に潜水艦隊を重視しており、毎年のように新しい潜水艦を進水、就役させており、昨年3月には世界初のリチウムイオン電池搭載の通常動力型潜水艦「おうりゅう」も就役しました。これはステルス性にすぐれ、ほとんど無音に近いとされており、潜航して行動していても中国軍が発見するのは困難です。

10月14日進水排水量3000トンの「たいげい」

潜水艦に抗う最も有効な手段は、潜水艦に他ならず、新しい最新型潜水艦が続々就役させることにより、海上自衛隊の対潜戦闘能力がさらに高まることは間違いないないです。このような流れの中で、インドはすでに新型通常型潜水艦を就役させており、オーストラリアは原潜、台湾は通常型潜水艦の開発を決めました。

インドは対潜水艦哨戒能力も高めつつあります。ボーイングは、インド海軍に11機目のP-8I哨戒機をこのほど引き渡しました。インド国防省が2016年に発注した追加4機のオプション契約のうち3機目の納入となりました。

インド海軍のP-8Iと奥にはラジャリ基地配備のTu-142MK-Eも見える

インド海軍はP-8初の海外顧客で、2013年から導入。米国外では最多機数で、ボーイングによると飛行時間は3万時間を超えたといいます。P-8の米国外の顧客ではインドのほか、豪州空軍、英国空軍が運用しています。

P-8は、小型旅客機の737-800をベースに開発された対潜水艦、対水上戦、情報収集、監視、偵察を担う多目的哨戒機で、2004年6月14日に公開されました。胴体は737-800、主翼は737-900を基に開発されました。今年8月にはノルウェー空軍向けの初号機が初飛行し、9月にはドイツ連邦軍向けに5機を受注しています。

このように世界各国が、ASWに力を入れつつあります。多くの国々がASWに力をいれるようになれば、中国の軍人の、多くの艦艇を持てば勝てるという誤解を打ち消すことになるでしょう。

そうして、ASWに力をいれることこそ、中国に対抗するためには、最も費用対効果が高いことはいうまでもありません。空母を開発するくらなら、一隻でも多くの高性能潜水艦、一機でも多くの対潜哨戒機をもつことが、中国の海洋進出の野望を打ち砕くことに近づくことになります。


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2021年12月13日月曜日

仏領ニューカレドニアの独立は否決 大統領、仏残留を宣言―【私の論評】貧しい国・小さな国が、そのノウハウがない中国の支援をうけ入れても、国民一人ひとりが豊かになる見込みは全くない(゚д゚)!

仏領ニューカレドニアの独立は否決 大統領、仏残留を宣言

ニューカレドニアの首都ヌメアからボートで20分のメトル島

南太平洋にあるフランスの海外領土ニューカレドニアで12日、独立の是非を問う住民投票が行われ、96・5%の反対で独立は否決された。マクロン大統領はテレビ演説で「仏領残留」を宣言したが、独立派は投票をボイコットして再投票を要求しており、対立は続きそうだ。

ニューカレドニアは世界屈指のニッケル産出国で、仏軍が基地を置くインド太平洋の拠点。近年は経済進出を続ける中国が、独立支持派に接近しており、仏国内で投票の行方に警戒感が強まっていた。独立派は「新型コロナウイルス犠牲者への服喪期間」だとして不参加を呼びかけ、投票率は44%にとどまった。

マクロン氏は演説で、住民投票は「住民の自由意思で決めた。誇りに思う」と結果を正当化し、ニューカレドニアの医療、経済の改善に取り組むと訴えた。中国の台頭を念頭に、「インド太平洋は(地政学的な)再編で緊張が高まっている。この地域で、ニューカレドニアの新たな地位を構築する」とも述べた。独立派重鎮は仏公共ラジオで、「これは投票として成立しない」と反発した。

住民投票は今回で3度目。先住民カナック系の独立要求を受けて、1998年に政府協定が結ばれ、独立を問う投票を3度行うことが決まった。18年の第1回投票で独立支持は43%、昨年の第2回投票では47%で、いずれも否決された。投票率は共に80%を超えていた。

住民投票を前に今年9月、仏国防省傘下の「フランス軍事学校戦略研究所(IRSEM)」は報告書で、中国がニューカレドニアで在外中国人を通じて独立派に接近していると警告。背景には、経済権益に加え、島を中国包囲網打破の拠点とし、オーストラリアを孤立させる狙いがあると指摘していた。ニューカレドニア周辺のフィジー、バヌアツなどでは、中国が影響力を強めている。

ニューカレドニアは19世紀にフランスに併合され、現在は人口約27万人。仏軍基地には約1700人の部隊が駐留する。今年9月には海上自衛隊の護衛艦が寄港し、日仏共同訓練を行った。

【私の論評】貧しい国・小さな国が、そのノウハウがない中国の支援をうけ入れても、国民一人ひとりが豊かになる見込みは全くない(゚д゚)!

この記事先日も似たような記事を掲載しました。あの記事は、間違えていました。元記事が2018年のものであり、それが今年の結果であると私が勘違いして掲載したものです。過ちに気づいたので、先日の記事は削除し、本日今年の記事を元記事として書き直したのがこの記事です。誠に申し訳ありませんでした。今後は、このようなことがないように気をつけます。

ただ、【私の論評】の内容はほぼ同じです。2018年にも住民投票があり、また今年も住民投票があり、結果として両方ともニューカレドニアの住民はフランス領であることを選んだといとうことです。いずれ、また住民投票が行われることも考えられ、ニューカレドニアが将来どうなるかは、わかりません。

ただ、この記事において、主張したように、ニューカレドニアの人々には、中国から支援を受けることができれば、一見良いようにもみえますが、中国は世界第二位の経済大国などともいわれますが、そもそもそれが事実であるかどうかもわかりません。なぜなら、中国のGDPの統計はでたらめであるからです。それは、世界中の経済学者が指摘しています。

さら、中国の統計が本当であったとしても、個人あたりのGDP約9,600ドルで世界第72位に過ぎないのです。日本円でいうと、100万円を切るほどです。自国内でこの程度のことしかできない国が、他国を支援して。国民一人ひとりを豊かにすることはできません。なぜなら、そのようなノウハウが中国共産党政府にはないからです。

ですから、中国に支援してもらい、国が豊かになり、国民一人ひとりが豊かになると、考えるのは大きな間違いです。

ニューカレドニア地図、赤い円内がニューカレドニア

ニューカレドニアの住民たちは、良い選択をしたと思います。現状では、独立すれば中国につけこまれる可能性が大きいです。

中国は世界中で、小さな国を取り込もうとしています。たとえば中米のニカラグアが「台湾は中国の領土の一部」だとして、台湾と断交すると発表しました。これに対し、台湾側も「尊厳を守るため」として、ニカラグアとの断交を決めました。


ニカラグアの外務省は9日「即日、台湾との外交関係を断つ」という声明を発表しました。

声明では「ニカラグア政府は、世界に中国は1つしかないと認識する。中華人民共和国が中国の唯一の合法的な政府であり、台湾は中国の不可分の領土の一部だ」としています。

これは中国政府の主張と一致します。

台湾の蔡英文総統は10日、新北市内で開かれた行事のあいさつでニカラグアとの断交について触れ「台湾の民主主義が成功すればするほど、国際社会からより強く支持され、権威主義陣営からの圧力もより大きくなる」と述べました。

そのうえで「外交的な圧力であろうと、言論による攻撃や武力による威嚇であろうと、民主主義と自由を貫いて世界に向かって進み、国際的な民主主義のコミュニティーに参加するというわれわれの決意と努力は変えようがない」と述べて、中国の圧力に屈しない姿勢を強調しました。

また、台湾外交部は、10日午後の報道発表文で「『民主主義サミット』の初日にニカラグアを誘惑して台湾と断交させた中国の行いは下劣で、民主主義の世界を公然と挑発するものだ」と、中国を非難しました。

では、なぜ中国がそのようなことをするのでしょうか。それは、以前もこのブログで指摘したように、人口が 1 万 7,000 人と、国連加盟国の中で最小 の部類に入るパラオも国連の会議等で1票の投票権を持っているからです。

2018年 菜々緒 パラオにて 自身のインスタグラムから

小さな国でも、多くの国々を中国の味方につければ、国連で中国の意見が通りやすくなります。そうして、中国は台湾併合への道を引き寄せることができます。

ニューカレドニアなどは、それ以外にも上の記事にもあるように、太平洋地域での中国の覇権構築の脅威があります。ここに中国の原潜の潜水艦の基地などをつくられてしまえば、中国の南太平洋の覇権は、南シナ海から西大西洋にも及ぶことになりかねません。それは、日米はもとより、この地域に領土を持つフランス、南太平洋に領土ををもつ英国、これらの地域近いオーストラリアにとっても脅威がますことになります。

そうして、最後にこれらの小さな国々の人々に警告をしたいと思います。これは、内容は中東欧諸国についてのものですが、これは一般に小さな国や、貧乏な国にあてはまることだと思いスマ。以前このブログで主張したことですが、以下に再掲します。
中国は人口が多いので、国全体ではGDPは世界第二位ですが、一人あたりということになると未だこの程度(約9,600ドルで世界第72位)なのです。このような国が、他国の国民を豊かにするノウハウがあるかといえば、はっきり言えば皆無でしょう。

そもそも、中国が「一帯一路」で投資するのを中東欧諸国が歓迎していたのは、多くの国民がそれにより豊かになることを望んでいたからでしょう。

一方中国には、そのようなノウハウは最初からなく、共産党幹部とそれに追随する一部の富裕層だけが儲かるノウハウを持っているだけです。中共はそれで自分たちが成功してきたので、中東欧の幹部たちもそれを提供してやれば、良いと考えたのでしょうが、それがそもそも大誤算です。中東欧諸国が失望するのも、最初から時間の問題だったと思います。
これは、中東欧諸国だけではなく、他の国にもあてはまることです。いずれの小さな国、経済的に貧しい国が、中国の支援などを受け入れても、そもそも中国には国民一人ひとりを豊かにするノウハウなどまったくないのです。

このような支援を受け入れて成功するのは、独裁者のみでしょう。独裁者やそれに追随する富裕層だけが、さらに豊かになり、多くの国民は何も変わらないか、ますます悪くなるだけです。次の住民投票では、こうした事実を住民にしっかりと伝えるべきでしょう。

国民一人ひとりを幸せにできるノウハウは、中国などよりも、フランスなどの先進国のほうがより優れていると思います。実際先進国においては、国民一人あたりのGDP(≒一人ひとりの賃金)が100万円を軽く超えています。

実際、ニューカレドニアの一人あたりのGDPは2019年で34,942ドルであり、フランスの38,625ドル(2020年)よりは低いですが、それでも中国よりははるかに高いです。無論経済だけが、幸せの尺度ではありませんし、先進国の国民全員が幸せかといえば、そうとばかりもいえないですが、それにしても100万円以下では厳しいです。

私はニューカレドニアの人々には、独立の道を選んでも良いとは思いますが、中国の甘い言葉にのって支援をうけ、その結果中国に良いように扱われ、住民の利益が損なわれることがあってはならないと思います。

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2021年12月12日日曜日

米潜水母艦「フランク・ケーブル」6年ぶり来航 台湾情勢にらみ抑止力強化【日曜安全保障】―【私の論評】オースティン長官の「抑止」とは、最恐の米攻撃型原潜による台湾包囲のこと(゚д゚)!

米潜水母艦「フランク・ケーブル」6年ぶり来航 台湾情勢にらみ抑止力強化【日曜安全保障】

長崎佐世保港に寄港した「フランク・ケーブル」

緊迫する台湾情勢について、「抑止力を強化している」と発言した、アメリカオースティン国防長官。

その「抑止力」とは何なのか? 

日本に来航した、アメリカ軍のある1隻の艦船に注目した。

 深緑の台湾海峡を航行する黒い影。

 11月29日に撮影された衛星写真には、中国の「094型晋級戦略核ミサイル原子力潜水艦」が浮上したまま、北上する姿がとらえられていた。

 定期点検か、修理か。 中国北部の造船所へ移動していたとみられている。 この潜水艦には、核ミサイル「JL-2」の発射口が12カ所ある。

 「JL-2」は、核弾頭を最大3個搭載でき、最大射程は8,000kmとされていて、潜水艦の基地に面した南シナ海中央部からは、日本全域がすっぽり射程に入る。

 そんな脅威が、台湾海峡を進んでいた。 台湾情勢をにらみ、抑止力を強化しているアメリカは同じ日、長崎県の佐世保基地に、1隻の船を寄港させていた。

 これは、アメリカ海軍の潜水母艦「フランク・ケーブル」。 船の甲板に横たわっている、巨大なクレーン。 

「フランク・ケーブル」は、搭載されたクレーン3基を駆使して横づけされた原子力潜水艦に、水や食料のほか、魚雷などの武器を補給し、簡単な修理を行うこともできるとされている。

 6年ぶりに日本に来航した「フランク・ケーブル」は、たった2隻しかないアメリカ海軍の潜水母艦のうちの1隻。 

これまで何度も実戦で使われてきた「トマホーク巡航ミサイル」を、アメリカ海軍の原子力潜水艦に搭載することが可能で、今回、神奈川・横浜、広島・呉、長崎・佐世保、そして沖縄と、立て続けにその姿を見せた。 

「フランク・ケーブル」が原子力潜水艦に補給できる「トマホーク巡航ミサイル」。

 1,600km以上先の地上の標的を、ピンポイントで攻撃することができるミサイルで、1991年の湾岸戦争以降、さまざまな作戦で使われてきた。 

トランプ政権下で行われた2018年のシリア攻撃では、60発以上の「トマホーク」が撃ち込まれた。

 フジテレビ・能勢伸之解説委員「原子力潜水艦の動力は原子力なので、航続距離はほぼ無限だが、トマホークを撃ち尽くせば、どこかで再び搭載しなければならない。巨大なアメリカ軍基地があるグアムやハワイなど太平洋の半分を渡るより、潜水母艦が日本のような同盟国に展開すれば、すぐにトマホークの搭載が可能になる。アメリカ海軍には、トマホークを発射できる、さまざまなタイプの潜水艦がある。トマホークを最大154発連射できる巡航ミサイル原潜もある。この数は、敵に大打撃を与えるだろう。海の中の動きは見えなくても、こうした潜水母艦の存在は抑止力を強化するといえ、それが日本各地に姿を見せ、極東でにらみをきかせたことの戦略的意義は、決して小さくはないだろう」

【私の論評】オースティン米国防長官の「抑止」とは、最恐の米攻撃型原潜による台湾包囲のこと(゚д゚)!

フランク・ケーブルについては、すでに11月30日にこのブログにも掲載しています。その記事のリンクを以下に掲載します。上の記事で注目すべきは、フランク・ケーブルは、トマホークの補給も行えるということです。私の記事では、これは当たり前の事実なので、それについては、はっきりとは掲載しませんでした。私の記事と、上の記事の両方を読んでいただければ、さらに理解が深まると思います。
米潜水艦母艦「フランク・ケーブル」 佐世保に入港 原潜運用に変化か―【私の論評】米軍は攻撃型原潜を台湾近海、南シナ海に常時潜航させている(゚д゚)!

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事の結論部分のみを以下に引用します。

米国はすでにこのブログで掲載して説明したように、緊迫している台湾近海に攻撃型原潜を複数隻派遣している可能性が大です。さらに、南シナ海にも要所要所に原潜を潜ませていることでしょう。

メンテナンス中のシーウルフ級攻撃型原潜(コネティカットと同級) 巨大さがよくわかる
台湾近海や南シナ海に常時潜水艦を配置するということになれば、さすがに米国でも、潜水艦の数には限りがあり、交代のために時間をかけて日本等に寄港するのはやめて潜水母艦で潜水艦に対する物資補給と乗組員休息に切り替え効率的に運用するように切り替えたのでしょう。

ただ、潜水母艦での原潜の交代要員の休憩も長い期間は続けられません。さらに潜水母艦自体の物資補給や乗組員の休息も必要です。そのため、攻撃型原潜や潜水母艦も日本等にも寄港するのでしょうが、それにしても特に原潜の寄港回数は減っていると解釈できます。

このブログでは、何度か述べましたが、米軍は中国に比較すると圧倒的にASW(対潜水艦戦闘力)が優れており、米攻撃原潜が、台湾近海、南シナ海に常時潜んでいれば、中国側は迂闊なことはできません。これは、かなりの抑止力になります。

上の記事では、「クラーク・ケーブル」そのものに、注目していますが、潜水母艦は単体で行動しても無意味であり、潜水艦に対して補給したり、乗組員を休養させることによってはじめて意味がでてきます。

上の記事では「潜水艦」自体の記述は少なく、「クラーク・ケーブル」の寄港の意味が理解しにくくなっていると思います。もっと潜水艦に関する記述を増やすべきだったと思います。

米国のオースティン国防長官は上の記事にもあるように、緊迫する台湾情勢について、「抑止力を強化している」と発言しているとしています。

これは、おそらく米国のオースティン国防長官と韓国の 徐旭ソウク 国防相が2日、ソウルで米韓定例安保協議(SCM)を開き、「台湾海峡の平和と安定の重要性を確認する」と明記した共同声明を採択したあとの記者会見での発言だと思われます。聯合ニュースによると、SCMの共同声明に台湾問題が盛り込まれるのは初めてです。

オースティン氏は協議後の記者会見で、中国の軍事力強化に懸念を示し、「中国が米国と同盟国に向けている全ての脅威を防御し、抑制する」と強調しました。

この抑止力に関しては、上であげた私の記事でも古森義久氏の記事を引用した上で、説明しています。古森義久氏の記事のリンクと一部を以下に引用します。
アメリカ海軍の潜水艦が中国への抑止誇示
古森義久氏
 この潜水艦群の動きは太平洋艦隊司令部のあるハワイ州ホノルルの新聞が同司令部からの非公式な通告を受けて5月下旬(ブログ管理人注:昨年5月下旬)に報道した。アメリカ海軍は通常は潜水艦の動向を具体的には明らかにしていない。だが今回は太平洋艦隊所属の潜水艦の少なくとも7隻が西太平洋に出動中であることが同司令部から明らかにされた。

 その任務は「自由で開かれたインド太平洋」構想に沿っての「有事対応作戦」とされている。この構想の主眼は中国のインド太平洋での軍事膨張を抑えることだとされるため、今回の潜水艦出動も中国が覇権を目指す南シナ海や東シナ海での展開が主目的とみられる。 
 同報道によると、太平洋艦隊所属でグアム島基地を拠点とする攻撃型潜水艦(SSN)4隻をはじめ、サンディエゴ基地、ハワイ基地を拠点とする戦略ミサイル原子力潜水艦(SSBN)など少なくとも合計7隻の潜水艦が5月下旬の時点で西太平洋に展開して、臨戦態勢の航海や訓練を実施している。

このブログでも何度か掲載したように、米軍のASW(対潜水艦戦闘能力)は中国よりも格段にすぐれていますから、台湾有事のときには、米軍が三隻程度の攻撃型潜水艦で、台湾を包囲してしまえば、中国軍はこの包囲を突破することはできません。

無理に突破しようとすれば、米攻撃型潜水艦はトマホークで中国軍の内陸のレーダー基地や環視衛星の地上施設を破壊するでしょう。米国はこれらの施設がどこにあるかをすでに知っていることでしょう。さらに、中国の潜水艦や対潜水艦戦闘用艦艇を魚雷などで撃沈するでしょう。空母などは、格好の攻撃目標です。またたくまに撃沈されるでしょう。 対潜哨戒機も対空ミサイルで撃墜するでしょう。

これによって、中国は対潜水艦戦闘に欠かせない、目と耳を失うことになります。これで、中国は台湾侵攻を諦めざるを得なくなります。

それで諦めずに、強襲揚陸艦や上陸用舟艇やこれを護衛する艦艇や潜水艦などを送れば、これもことごとく撃沈ということになります。なにしろ、この時点で中国軍には目も、耳もない状態になっているので、米攻撃型原潜に対してはなすすべがありません。

運良く台湾に部隊を上陸させることできたにしても、多くの部隊を送ることはできないでしょうし、それに米潜水艦によって補給をたたれるでしょうから、お手上げになるだけです。

一方米攻撃型潜水艦は、潜水母艦から迅速に補給を受けつつ攻撃ができますから、トマホークなど1000発でも、2000発でも打ち放題になるので、圧倒的に有利に戦闘を展開できます。それにもしかすると、台湾にも補給基地を用意しているかもしれません。それに、日本の米軍基地からも補給が受けられます。交代しながら、24時間臨戦態勢で、攻撃ができます。

もし、それでも台湾に上陸した中国の地上部隊が台湾軍を攻撃をしようとすれば、台湾軍に撃破されることになるでしょう。それでも諦めなければ、潜水艦によりほぽすべての艦艇が撃沈され、中国海軍は壊滅します。このような攻撃ができる米軍の攻撃型原潜がすでに台湾付近に潜航しているとみなすべきです。

そのことを米軍は、「フランク・ケーブル」を神奈川・横浜、広島・呉、長崎・佐世保、そして沖縄と、立て続けに寄港させるこによって、中国に対してはっきりわかるように示しているのです。

米オースティン国防長官

私は、オースティン国防長官が述べた「抑止」の全貌はこのようなことだと思います。これでは、中国は台湾への武力侵攻はあきらめざるをえません。侵攻すれば、中国海軍は崩壊し多数の犠牲者を出し、習近平の権威は地に落ちることになります。

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2021年12月10日金曜日

安倍元首相「政治的メッセージ出すとき」 北京五輪外交的ボイコット、岸田政権に決断促す ウイグルの人権状況懸念で米・英が対中強硬姿勢強める―【私の論評】日本は、過去に瀕死の中共を2度助けたが、3度目はないという強力なメッセージに(゚д゚)!

安倍元首相「政治的メッセージ出すとき」 北京五輪外交的ボイコット、岸田政権に決断促す ウイグルの人権状況懸念で米・英が対中強硬姿勢強める

安倍元首相

 安倍晋三元首相が動いた。米国や英国などが、中国当局による新疆ウイグル自治区などでの人権弾圧に抗議し、来年2月の北京冬季五輪に政府代表を派遣しない「外交的ボイコット」を宣言するなか、岸田文雄政権に早期決断を促した。こうしたなか、米下院や英国の非政府組織は、対中強硬姿勢を強めている。


 「五輪はアスリートにとって夢の舞台。しっかり支援する立場には変わりない」

 安倍氏は9日、自身が率いる安倍派の会合でこう前置きして、同派所属の松野博一官房長官の前で、次のように続けた。

 「ウイグルでの人権状況について政治的な姿勢とメッセージを出すことがわが国には求められている」「日本の意思を示すときは近づいているのではないか」

 ジョー・バイデン米政権が宣言した「外交的ボイコット」に、オーストラリアや英国、カナダは賛同した。同盟国・日本の対応が注目されるなか、政界屈指の「親中派」である林芳正外相を起用した岸田首相は9日の衆院代表質問への答弁でも、「諸般の事情を総合的に勘案し、わが国の国益に照らして自ら判断したい」と述べるにとどめている。

 安倍氏は最近、岸田首相との距離が指摘される。ただ、6日の安倍派のパーティーで、安倍氏は「一致結束して岸田政権を支えていく」と語っており、抑えたトーンで早期の対応を求めたといえる。

 一方、米国や英国は、対中強硬姿勢を強めている。

 米下院本会議は8日、強制労働が疑われるとして、ウイグルからの物品輸入を原則禁止とする「ウイグル強制労働防止法案」を、超党派の賛成多数で可決した。さらに同日、安否が懸念される中国の女子テニス選手、彭帥(ほう・すい)への国際オリンピック委員会(IOC)の対応が、人権配慮の義務を怠っていると非難する決議を全会一致で可決した。

 弁護士や人権専門家らによる英国の非政府組織「ウイグル法廷」は9日、報告書を発表し、中国政府によるウイグルでの人権侵害を「ジェノサイド(民族大量虐殺)」と認定した。習近平国家主席や中国共産党の高官らが人権侵害に関して「主要な責任を負っていると確信している」とも強調した。

【私の論評】日本は、過去に瀕死の中共を2度助けたが、3度目はないという強力なメッセージに(゚д゚)!

中国が、東京で開かれた夏季オリンピックを取り上げ、日本が相互主義に基づき、北京冬季オリンピックの「外交的ボイコット」に参加しないことを促しました。米国の同盟国が外交的ボイコットを続々と表明している中で、日本がどのような決定を下すのか注目されます。

 中国外交部の汪文斌副報道局長は9日、定例会見で「中国は、全面的に日本の東京オリンピック開催を支持した」とし、「今は当然、日本の基本的な信義を見せる番」と述べました。 

東京五輪には、中国は最初は副首相が出席するという話でしたが、防衛白書での中国に関する記述に反発してこれを見送りました

最終的に五輪に来たのは、国家体育総局の苟仲文局長でした。中国共産党のなかの序列を見ると、上に政治局員が25人いて、これは日本の閣僚に相当すると思いますが、苟仲文氏はそれ以下の中央委員に属する普通の官僚です。

国家体育総局の苟仲文局長

中央委員は200人くらいますが、苟仲文の序列はそのうちの150~160番目くらいです。政治的には中立といっても良いでしょう。そのため日本では、誰も名前さえも知りませんでした。日本も北京五輪には、同ランクの人を送れば良いです。実務者として文科省の課長レベルの人十分でしょう。

 米国は去る6日、北京冬季オリンピックに対する外交的ボイコットを公式的に表明しました。

中国は東京五輪を支援し参加してきたのだから、日本が北京冬季五輪をボイコットするなどということはできないと思っているようです。

事実11月25日の外交部定例記者会見で趙立堅報道官は以下のように述べています。
中国と日本は、互いの五輪開催を支援するという重要なコンセンサスがある。 中国は、東京五輪の開催にあたり、既に日本側を全面的に支持してきた。日本側には基本的な信義があるべきだ。
「重要なコンセンサス」が出来上がっていたということは即ち、日本は「こっそり」=「水面下で」、「すでに中国と固く約束を交わしていた」ものと解釈することができます。趙立堅は意図的というか、上層部からの命令で公にしたのでしょう。ただ、東京大会開催時に日本は中国と水面下で「互いに協力し支持し合う」と約束していたのは確かでしょう。

だから中国は日本に「約束を守れ」と「信義」を要求しているのでしょう。ただし、「重要なコンセンサス」は、どの部分でなされていたのかという問題もあります。自民党としたものか、自民党とはいってもたとえば二階幹事長等と交わしたものなのか、それとも日本政府(当時は菅政権)としての約束なのか、それによって今後の岸田政権の対応は変わってくるでしょう。

それにしても、苟仲文・国家体育総局長を東京五輪に送ってきたのですから、これが「重要なコンセンサス」といえるほどのものだったといえるのでしょうか。防衛白書に何が書いてあろうと、そのことは批判しても、「重要」と考えるのであれば、もっと上の人物を送り込むべきでした。

また、尖閣付近に連日のように艦艇等を繰り出し、さらにはロシアととも、複数の軍艦で日本列島を一周したりしておいて、「約束」「信義」を持ち出すのは筋近いというものです。

ただ「重要なコンセンサス」があったことをわざわざ表に出したということは、「日本が約束を破って、外交的ボイコットをすること」は中国、もしくは習近平政権には大きな痛手になるのでしょう。おそらくは、後者でしょう。

岸田首相は去る7日、記者に向け「日本はオリンピックの意味、われわれ外交の意味などを総合的に勘案し、国益の観点から自ら判断する」と述べました。岸田首相が言葉を濁すのは、「重要なコンセンサス」を意識してのことかもしれません。


米国の外交的ボイコットに続き、ニュージーランドとオーストラリアが後に続きました。続いて英国とカナダが参加しました。

これにより、米国、英国、オーストラリアの外交安全保障三者協議体であるオーカス(AUKUS)諸国すべてが、北京冬季オリンピックに外交使節団を派遣しないことになりました。

ここにカナダまで加わり、米国の安保同盟であるファイブアイズ(Five Eyes)も、やはり不参加になりました。 ヨーロッパ諸国の不参加についても、さらに後に続く可能性があります。欧州連合(EU)は声明を通じて「どんな形でもオリンピック参加については、個別加盟国の決定」と明らかにしました。

Five Eyesが外交的ボイコットをするであろうことは、習近平政権には織り込み済みなのでしょうが、日本にはよほど「外交的ボイコット」してもらいたくないようです。

政治的メッセージとは、はやい話がプロパガンダのことです。広く触れ知らせること。宣伝。多く思想や教義などの宣伝をいいます。ただ、プロパガンダにはマイナスのイメージがついてしまっているので、安倍元総理は「政治的メッセージ」と語ったのでしょう。

日本としては、先に述べたように、中国に対する東京五輪への返礼として、北京五輪には文科省の課長レベルを送り、はっきりと「外交的ボイコット」と表明するのが相応しい対応です。


間違っても、閣僚級などを送れば、中国に舐められるだけです。岸田政権が課長級を北京五輪に送り込むことにし、それだけでなく「外交的ボイコット」を表明すれば、習近平政権にとっては大きな打撃になります。

中国共産党の人権侵害は絶対に許さないという強いメーセージとなります。そうして、これは、日本は過去に瀕死の中国共産党を2度助けたが、中国が人権問題を解決しない限り3度目はないという強力なメッセージとなります。これが、安倍元首相が語る「政治的メッセージ出すとき」 という意味だと思います。

一度目は、日本が国民党軍と戦いこれを弱らせたことで結果として、中共軍を救いました。これは、毛沢東も認めました。二度目は、天安門事件後当時の日本政府が、天皇皇后両陛下を中国に訪問していただいてまで、中国が国際社会に復帰できるように助けました。

現在の米中冷戦においても、日本が何らかの形で中国に助けの手を延べることを期待しているのでしょうが、「外交ボイコット」とはそれはないことを伝えるメッセージとなります。

この「政治的メッセージ」は中国共産党だけではなく、広く多くの中国国民に伝わることでしょぅ。人権侵害を受けている多くの中国国民に対しての強力なメッセージになることでしょう。

もし、岸田総理が瀕死の中国をまた助けようと考えているのなら、問題外です。であれば、岸田総理は国賊です。そのような、政権は挙党一致で退陣に追い込むべきです。

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2021年12月9日木曜日

「ファクターX」判明か 新型コロナが欧米より少ないわけ 理研―【私の論評】この発見により、いずれ新型コロナを普通の風邪並に扱える日がくる(゚д゚)!

「ファクターX」判明か 新型コロナが欧米より少ないわけ 理研

 日本の新型コロナウイルスの感染者数が欧米と比べて少ないとされる要因「ファクターX」について、HLAと呼ばれる細胞の表面にある物質の種類が関係しているのではないかという研究結果を理研(理化学研究所)の研究チームがまとめました。


 人間には様々な種類の免疫機能があり、ウイルスが感染した細胞を殺傷する白血球の一種「キラーT細胞」もその一つです。キラーT細胞は「エピトープ」と呼ばれるウイルスの特定の部分に反応して「敵」であると認識し、ウイルスを攻撃します。同時にウイルスを記憶して次に同じウイルスがやってきたときに、速やかに反応します。

 理研で「風邪を引き起こす従来のコロナウイルス」と「新型コロナウイルス」のエピトープを調べたところ、「極めてよく似たエピトープ」があることがわかりました。さらに、そのエピトープは日本人の6割近くが持つといわれるHLA-A24型によく結合することもわかりました。HLAは細胞の表面にあって、様々な種類があり、免疫に深く関わっている物質です。このためHLA-A24型を持っている人は、新型コロナの抗体を持っていなくても、従来のコロナウイルスの記憶を持つキラーT細胞が速やかに活性化して新型コロナウイルスを攻撃するため、感染や重症化が防げたのではないかと理研では見ています。ちなみに欧米ではHLA-A24型を持っている人は1割から2割だということです。

 研究チームの藤井眞一郎リーダーは研究の成果について、「日本の感染が少ない『ファクターX』の一部であるのは間違いないと考えている」「今後、新たな変異株にも有効なワクチン開発などにつながる可能性がある」と話しています。

【私の論評】この発見により、いずれ新型コロナを普通の風邪並に扱える日がくる(゚д゚)!

ファクターXについて、理研の研究を一言でまとめると、「日本人に多い特定の免疫タイプの影響」ということです。これは、かなり有力だと思います。要因の一部がどの程度のものであったのか、もし70%以上であった場合、「ファクターX」はこれが主要因としても良いと思います。

この研究の詳細については、以下の動画をご覧になってください。非常にわかりやすく解説しています。


「ファクターX」については、以前から様々なことが言われてきました。コロナ感染がはじまってから数ヶ月した6月あたりには、「ファクターX」について報道されるようになりました。下の表は、昨年6月11日の中日新聞から引用したものです。


どれも、あまり信憑性がありそうにもないものばかりです。唯一「遺伝的要因」というのは近いかもしれません。「日本人に多い特定の免疫タイプ」はほぼ遺伝で決まると考えられるからです。HLAの型は、親から子へ遺伝するからです。


日本医事新報社のサイトを検索してみたところ、「ファクターX」については、以下の3つの記事が掲載されていました。
【識者の眼】「日本人の協調性こそファクターX」神野正博|Web医事新報
【識者の眼】「ファクターXは実在しない」岩田健太郎|Web医事新報
新型コロナ禍で日本の医療崩壊を防いだファクターXは 民間病院の存在であった[炉辺閑話]

 「日本人に多い特定の免疫タイプ」=「ファクターX」ということになれば、これらの説はことごとく間違いということになるでしょう。

上の記事の「新型コロナの抗体を持っていなくても、従来のコロナウイルスの記憶を持つキラーT細胞が速やかに活性化して新型コロナウイルスを攻撃する」というくだりでは、「はたらく細胞」というアニメのキャラクターを思い出してしまいました。


「ファクターX」の解明にかなり大きな一歩を踏み出した理研の快挙です。日本人が欧米人に比べ武漢コロナの死者と重傷者が極端に少ない理由を解明し。日本人の遺伝子にその秘密があったことを明らかにしました。この研究により、従来の感染者は勿論、オミクロン株や基礎疾患等でワクチンが効かない感染者の治療薬開発も可能と期待されています。

この発見により、いずれ日本でも、そうし世界中で新型コロナも普通の風邪並に扱える日がくるのが、かなり早まったといえます。そうなれば、過度に恐れる人もいなくなると思います。

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2021年12月8日水曜日

自民に“財政”2組織が発足 財政再建派と積極財政派が攻防―【私の論評】「○○主義」で財政を考えるなどという愚かなことはやめるべき(゚д゚)!

自民に“財政”2組織が発足 財政再建派と積極財政派が攻防

財政政策検討本部役員会で発言する安倍晋三元首相=1日午後、東京・永田町の自民党本部

 自民党内に財政をめぐる2つの組織が、ほぼ同時に立ち上がりました。財政再建派と積極財政派の攻防が始まっています。

 きょう、初めて役員会を開いた自民党の「財政健全化推進本部」。先月立ち上がった、岸田総理直轄の組織です。

岸田首相
 「財政健全化について考えていく。責任政党であります自民党にとっても大切な使命だと考えています」

 岸田総理は新型コロナ対応のための財政出動と、中長期的な財政健全化は決して矛盾しないとの考えを強調しました。今後、財政政策についての提言をまとめる方針です。

 一方、自民党内では、安倍元総理など財政支出に積極的なメンバーが参加する「財政政策検討本部」という別の組織も立ち上がったばかりです。

安倍晋三 元首相
 「失業率2.8%、先進国の中でも最もしっかりと守っている。それはやはり、今まで積極的な財政出動を行い、その成果でもあるのではないかと」

 こちらの本部でも、今後、望ましい財政政策を検討するとしていますが、結論は積極財政派に配慮したものになるとの見方が大勢です。党内では新型コロナ対策もあって、積極財政派の存在感が増しているといいます。

財政再建派の閣僚経験者
 「それは大盤振る舞いを続けた方が楽だからな。党内の財政再建派は息苦しい」

 関係者は議論の行方を注視しています。

【私の論評】「○○主義」で財政を考えるなどという愚かなことはやめるべき(゚д゚)!

「財政再建派と積極財政派の攻防」とは一体どういうことなのかと考えてしまいます。財政再建派といわれる人々は、どんな時でも財政再建を主張するのでしょうか。そうして、積極再生派の人々はどんなときでも積極財政をするというのでしょうか。

現状の財政が危機なのか、そうでないのか、あるいは現状は積極財政すべきなのかという「事実判断」をまず検討すべきです。それから再建すべきなのか、積極でいけるかのがわかるはずです。「主義」として議論する人は最初から間違えています。

デフレになっても、それでも財政再建ばかりしていれば、いずれさらに酷いデフレになるのは必定です。平成年間のほとんどの期間にわたり、このようなことを実施し続けたのと日銀が金融引締を続けたので、現在の日本はデフレ傾向にが続いています。積極財政主義にも確かに問題があります。積極財政を主義としていつまでも行いつづければ、いつかは超インフレになってしまいます。

日本は、財政再建主義を長い間続けてきた結果平成年間のほとんどの期間がデフレだったという、大失敗をやらかしたのですから、いい加減「主義」で財政を考えるという愚かな、馬鹿真似はやめるべきです。必要なのは、実体経済を分析した上で、積極財政すべきときは、積極財政をして、緊縮財政すべきときは積極財政をするという柔軟な姿勢てす。

安倍氏や高市氏などこのようなことは、重々承知なのでしょうが、岸田政権の枠組みの中で、このような二つの組織ができているので、「財政政策検討本部」の中で財政を検討するよりないのでしょう。

これを前提として、直近の経済を振り返ります。


総務省が7日発表した10月の家計調査によると、2人以上世帯の消費支出は28万1996円と、物価変動の影響を除いた実質で前年同月比0.6%減りました。前年同月を下回るのは3カ月連続。新型コロナウイルスの感染拡大で発令されていた緊急事態宣言が9月末に解除されましたが、飲食店の営業時間短縮や人数制限が続いた影響で伸び悩みました。

前月比(季節調整済み)では実質3.4%増でした。新型コロナの新規感染者の減少や行動制限の緩和により、前年同月比のマイナス幅は8月(3.0%減)や9月(1.9%減)に比べて縮小しました。

品目別にみると「食料」は前年同月比0.9%減でした。10月下旬まで飲食店の時短や酒類提供の制限が残っていたため外食が減りました。

宿泊料などを含む「教養娯楽」は5.4%減少しました。旅行需要は回復しつつありますが、政府の観光需要喚起策「Go To トラベル」が適用されていた20年10月の支出には及ばず、宿泊料や国内パック旅行費が減りました。

「交通・通信」は10.9%増でした。緊急事態宣言の解除で外出機会が増えて交通機関を利用する人が多くなり、鉄道運賃や航空運賃が伸びました。

コロナ感染拡大前の19年10月と比べると、飲酒代(57.3%減)や航空運賃(55.2%減)、婦人服(20.2%減)などコロナ前の水準に戻っていない品目も多いです。

足元では外出関連の消費が回復しつつあるが、先行きについて総務省の担当者は「新たにオミクロン型が出てくるなどコロナ感染で不透明な状況もある」と説明しました。

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この状況ではどう考えても、財政再建よりも積極財政をすべきでしょう。

さて、オミクロン株が話題ですが、この感染者は南アフリカがいちばん多いです。南アフリカの8割以上がデルタ株からオミクロン株に変わっています。南アフリカの新規感染者数は急増しています。

感染力はグラフの傾きでわかるのです。従来に比べて傾きが大きいので、間違いなく感染力は高いということができます。

一方死者数のデータを見ると、増えていません。逆に下がっています。死者数のデータは感染者数のデータは少しあとに出て来てきますが、11月の頭からのデータを見ると、感染者数に比べて死者数が低いので、「毒性が低い」ということが推測できます。

現段階でこういうことを言うと「時期尚早」と言われかもしれませんが、あと1~2週間もすれば、「オミクロン株の毒性の強さ」についてはデータに基づきはっきり言えるようになるでしょう。

米政府の首席医療顧問を務めているファウチ氏は、「断定するのは時期尚早だが、これまでの重症化の度合いは高くないようだ」とCNNのインタビューで答えています。

データをみるとそのようなことがいえます。11月初旬からアフリカで感染が始まったことがわかっています。そこから40日くらい経っていますので、確定的ではないもののある程度の特性は言えると思います。

この種データは長ければ長いほど理解しやすいのですが。ただ、いまのところの重症化率や死者の出方から見ると、毒性は強くなさそうです。これはウイルス学の基本ですが、「感染力が強いと毒性が下がる」という傾向があります。変異するとそうなる傾向があります。ただ、オミクロン株については、現状では断定まではできません。

政府としては、1〜2週間して、オミクロン株の毒性が低いということがはっきりすれば、すぐにも大型の対策を打つべきでしょう。無論、財政再建など二の次にして、積極財政に打ってでるべきです。

南アフリカ・ケープタウン在住 岩瀬早織さん

しかし、先にもあげたように、「財政健全化推進本部」と「財政政策検討本部」の二つの組織を立ち上げる岸田政権ではまともな経済対策は期待できないです。

岸田氏としては、財政健全化主義者の組織と、財政政策を検討する組織の二つの組織の意見を聴いたうえで、財政政策を実施することになるのでしょう。これは、どちらがわの意見も聴いたということをアピールするためとしか考えられません。

このようなことを実施すれば、財政政策としては、両者の意見を折衷したものとなり、不十分なものしかできないでしょう。無論先日もこのブログで述べたような米国における「高圧経済」など望むべくもないでしょう。

「高圧経済論」とは潜在成長率を超える経済成長や完全雇用を下回る失業率といった経済の過熱状態を暫く容認することで、格差問題の改善も含めて量・質ともに雇用の本格改善を目指すというものです。

これによって、コロナで落ち込んだ経済を素早く回復させることができます。岸田政権下では、これは望むべくもないので、来年にかけて景気は落ち込み、失業率もあがり、岸田内閣への風当たりが強くなり、参議院選挙でボロ負けして、その後岸田総理は引責辞任ということになるでしょう。

その後に、総裁選で経済対策では一番まともなことを言っていた高市氏が総裁になるか、安倍総理の経済政策を引き継ぎ、それを高市氏が補佐するような形にでもならない限り、日本での「高圧経済」は難しいでしょう。一番良いのは、安倍氏がまた総理大臣になることだと思います。

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2021年12月7日火曜日

トランプ減税が富裕層より労働者層を助けたことがIRSデータで証明されたと新聞論説―【私の論評】トランプ減税が花咲いた米国、日本には花さか爺はいないのか(゚д゚)!

トランプ減税が富裕層より労働者層を助けたことがIRSデータで証明されたと新聞論説

ドナルド・トランプ前大統領

<引用元:JustTheNews 2021.12.5

ヒル紙に先週出た論説は、ドナルド・トランプ前大統領が2017年に実施した減税が富裕層よりも労働者―そして中間層に利益をもたらしたことが、IRSのデータから明らかだと認定した。
「IRSの発表した所得データは、共和党による税制改革法によって平均してすべての所得階層が大幅に利益を受け、中でも最大の受益者は、非常に多くの民主党が主張しているように上位1パーセントではなく、労働者・中間所得層であったことを明らかに示している」と、保守派シンクタンク・ハートランドインスティテュートの社会主義研究センター所長である著者のジャスティン・ハスキンズは書いた。

ハスキンズはIRSデータを分析して、納税者に以下のような利益があったことがわかったと述べた。
  • 1万5千ドルから5万ドルの所得層では、法成立後でIRSの全データが得られる最初の年である2018年に、16パーセントから26パーセントの減税となった。
  • 5万ドルから10万ドルでは、平均で15パーセントから17パーセントの減税。
  • 10万ドルから50万ドルでは、11パーセントから13パーセントの個人所得税の減税。
  • 50万ドル以上では、平均9パーセント以上の減税となり、100万ドル以上では平均で6パーセント未満の減税となった。
「実際のところ、共和党による2017年の税制改革法は、約束されたとおりのことを実現した。つまりすべての所得グループの税金を引き下げ、中間所得世帯に最大の利益をもたらし、経済成長に拍車をかけたことで貧困を減らし豊かさを増すのに役立った」とハスキンズは書いた。

訳注:記事の引用元と思われる論説

【私の論評】トランプ減税が花咲いた米国、日本には花さか爺はいないのか(゚д゚)!

トランプ減税により、米国の財政赤字は10年間で1兆ドル強増える見込みで、中期的に米長期金利の上昇要因となり、結局富裕層だけが恩恵を受けるなどとされました。しかし、上の記事ではそうではなかったことが明らかにされました。

これについては、トランプ減税が導入された直後の2018年でも、明らかになっていました。

2018年日経新聞(1月18日電子版)に掲載された表

2018会計年度(2017年10月~2018年9月)の財政収支そのものは、1132億ドルの赤字となっていました。この数字は、6年ぶりの水準でした。

しかし、それが「トランプ減税」に結び付けられて日米のメディア報じられたのは、強引に過ぎました。なぜなら、税収を主とする歳入そのものは、減税が実施される2017会計年度よりも増えていたからです(923億ドル増)。

財政赤字が膨らんだ主因は、それ以上に歳出が増えたことによるものでした(1270億ドル増)。

歳出がかさんだ要因として最も大きかったのは、公的債務への「利払い」が増えたこと(620億ドル増)。背景には、米連邦準備理事会(FRB)が引き締め政策として、政策金利を引き上げたことがありました。

そうして「利払い」に次ぐ歳出拡大要因は「国防費」です(333億ドル増)。これも、中国の覇権拡大に対抗するためのものでした。軍事費を減らし続けたオバマ政権のツケであり、未来の平和維持のためのコストです。

つまり、財政赤字拡大の"主因"はどちらも、減税したこととは別の話だったのです。

こうした事実を前提にすると、当時の報道の、「減税が財政赤字拡大の主因」という書き方はあまりにもミスリーディングだったと言わざるを得ません。


むしろ注目すべきだったのは、「減税したにもかかわらず、歳入が増えたこと」です。連邦法人税率を10%以上も引き下げ、個人所得税も下げるというのは、かなり大胆な減税でした。

さすがに法人税収入は大幅に落ち込みました(923億ドル減)。しかしそれを上回って、個人所得税が増え、減税分を帳消しにしていたのだ(964億ドル)。その背景は、減税や規制緩和による歴史的な好景気でした。そうなると「減税が赤字の主因」という論は、ますます苦しく見えまました。

「税率を下げ、税収が増える」という現象が起きていたのです。

大幅な歳出拡大の影で起きている、この重要なパラドックスにこそ注目すべきだったのです。なぜ報道はそれを黙殺したのでしょうか。

トランプ景気については日米メディアともに「副作用がある」「脆弱だ」などと議論していました。しかし少なくとも新聞は、まずは目の前の現象を素直に報じるべきでした。

以下に、世界各国の名目GDP成長率(1980年を1.0とする)を掲載します。


明らかに、日本だけが伸び率が低いです。これは、過去に、特に平成年間【明仁(第125代天皇)の在位期間ある1989平成)1月8日から2019平成31)4月30日まで】のほとんどの期間を、日銀は金融引締をし、財務省は緊縮財政を主導して、消費税を何度もあげ、その他の緊縮財政を実施してきたからにほかなりません。

トランプ減税では、富裕層よりも労働者―そして中間層に利益をもたらしたことがはっきりしました。日本でも、減税をすれば、このような成果が期待できます。消費税の減税が法的に難しいというのなら、所得税でも、その他でも様々な減税ができるはずです。

是非実行して、していただきたいものです。岸田政権では絶対に無理でしょうから、ポスト岸田に期待したいものです。

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