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背景には、原油などの資源価格の上昇がある。その上、円安による円ベースの輸入価格の上昇も拍車をかけた。
問題は、企業物価がどのように消費者物価に波及するかだ。
まず考慮しておきたいのは、企業物価指数と消費者物価指数は、それらの対象が異なっていることだ。
企業物価指数は、企業間で取引される財に関する物価の変動を測定するものだ。消費者物価指数には、企業物価指数が対象としていない授業料、家賃、外食などのサービスの価格もウエートにして5割程度含まれている。サービスの価格は、財に比べて人件費の割合が高いため、財の価格が上昇・低下しても、財と一致した動きをするとはかぎらない。
また、消費者物価指数が対象としている財は世帯が購入するものについてであり、企業物価が対象とする原油などの原材料、電気部品などの中間財、建設機械などの設備機械は含まれていない。
このため、企業物価指数と消費者物価指数は、必ずしも一致しないが、一定程度の連動はある。一般的に、企業物価の変動は大きいが、その一定割合はタイムラグを経て消費者物価に反映される。
2000年以前、消費者物価指数上昇率は、直近3カ月程度の企業物価指数上昇率の6割程度となって9割程度の相関があった。00年以降、連動の度合は低くなったが、それでも企業物価指数上昇率の2~3割程度となって6割程度の相関がある。その関係式を考慮すると、直近3カ月移動平均での企業物価指数上昇率が8%程度なので、近い将来、消費者物価指数上昇率が2%程度になっても不思議ではない。
もっとも、企業物価の消費者物価への反映は、企業がどの程度、価格転嫁できるかどうかに依存する。
00年以降をみても、企業物価が上昇したのは、08年のリーマン・ショック直前と、14年の消費増税時があるが、前者では世界経済の急落、後者では消費増税による景気ショックがあり、消費者物価に反映する余裕もなく、その直後に企業物価は急落している。
今回は、世界での新型コロナ後の景気拡大への方向もあり、日本にとってはまたとないチャンスである。ここで、日本は財政政策と金融政策をフル稼働すれば、GDPギャップ(完全雇用を達成するGDPとの乖離)も縮小し、景気の腰折れもなく、賃金と物価がともに上昇する好循環にも入れる。
菅義偉前政権のおかげであるが、岸田文雄政権は、新型コロナの感染が少ないという運にも恵まれている。ここで、財務省の緊縮病さえ抑え込むことができれば、マクロ経済でデフレからの完全脱却という良い結果を残せる可能性がある。ここは岸田政権の正念場でもある。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)
安倍元総理と菅前総理 |
本文わずか“2ページ”立民の残念なアベノミクス検証 雇用創出の実績を分析できず、支持母体の労働者に響くのか ―【私の論評】安倍・菅両氏の「お土産」と立憲民主党の体たらくで、新政権は安定(゚д゚)!
アベノミクスによる雇用増は、以下のグラフをご覧いただければ、一目瞭然です。
このような成果がなぜ得られているかといえば、安倍政権の時には、結局増税を2回も実施してしまったにもかかわらず、日銀はイールド・カーブ・コントロールにより、緩和を手控えながらも緩和姿勢を崩していないからです。さらに、上のグラフでみても、わかるとおりコロナ感染症が経済に悪影響を与えても、日本では雇用が悪化しなかったのは、以前のこのブログにも掲載したように、日本には雇用調整助成金があるからです。
この制度は、労働者の失業防止のために事業主に給付するものです。類似制度は世界ではそれほど多くないが、似た制度があるドイツも、ピーク時の失業率上昇は0・7ポイントと他国と比べて抑えられています。日本の失業率はコロナ前の2020年2月に2・4%でしたが、その後上昇し、10月に3・1%とピークになり、21年7月は2・8%まで低下しました。米国は20年2月に3・5%でしたが、4月に14・8%とピークで、21年7月は5・4%。EUは20年3月が6・3%でしたが、8月に7・7%、21年7月は6・9%となりました。
それぞれ、コロナ前とコロナ後のピークの差は日本が0・7ポイント、米国が11・3ポイント、EUが1・4ポイントでした。コロナ前と直近の差は日本が0・4ポイント、米国が1・9ポイント、EUは0・6ポイントです。
これらの数字から、コロナ禍による失業率の上昇を最も抑えたのが日本であることがわかります。
ご存知のように、本日自民党総裁選においては、岸田氏が勝利しました。これまでの歴史を見ると長期政権の後は短命政権が続いています。ただ岸田政権には「貯金」と「お土産」があります。「貯金」は安倍元首相が残した「雇用の改善」と「国政選挙6連勝」です。このおかげで衆参ともに自公で過半数をがっちり確保しており、一度の選挙で多少負けても毎年の予算は通ります。だから短命になりにくいでしょう。政権が長く続くと成果も出ます。「お土産」は退陣する菅首相からもあり、ワクチン接種を強力に進めたおかげでコロナは終息しつつありますし、先にも述べたように、コロナで雇用が激減することもなく、菅政権下で東京オリパラも開催してもオリパラが感染を加速することもなく終えたので、国内では大きな懸案事項もありません。安倍・菅路線を継承すれば、大やけどすることもないでしょう。
そうして、今後自民党はさらにコロナ対策のために、補正予算を組むことになるでしょう。それは、様々な日程を考えると、衆院選後になるでしょう。そうして、日本経済は復活するでしょう。 つまりこれだけの貯金とお土産があれば、当面首相は誰でも務まるかもしれません。菅退陣で政党支持率が上がり衆院選で大負けすることもないでしょう。
なぜなら、上の記事にもあるように、最大野党の立憲民主党の体たらくがあるからです。今年は、自民党の総裁選ですっかり影が薄くなったのですが、昨年も同じでした。
そうして、実際自民党は、この予想通り衆院選では大負けすることもなく、議席数は減らしたとはいえ、予想をはるかに上回る善戦をしました。
こうした大きな置き土産を前・前々政権から受け取った岸田政権は余程の間違いをしない限り、かなり運営しやすいはずです。今回の企業物価指数上昇も、安倍・菅政権の置き土産がなければ、デフレからの脱却へのチャンスともなり得なかったことでしょう。
特に経済面では、すぐに増税をするなどして緊縮に走ることなくまともな財政・金融政策を実施すれば、上の記事で高橋洋一氏の言うように、岸田政権は、マクロ経済でデフレからの完全脱却という良い結果を残せる可能性はあります。ただ、気がかりなのは岸田政権の進める新しい資本主義は、日本の経済を窒息死させる恐れがあるということです。選挙公約で所得倍増の旗を振りながら引っ込めてしまったり、歴代の政権が必ず提唱してきた規制改革を言わなかったり、成長より分配を先に言ってしまったりしているからです。
そもそも、政府が経済政策でできることは限られており、税制、公共投資、規制改革などが中心です。その3つとも、具体的な政策も方向も示せていないのが、岸田政権です。岸田政権は、公共投資になるグリーン政策も、当初にはCOP26に参加見送りを言ってしまうほど、新たなビジネスチャンスがわかってないくらいに経済オンチです。
さらにクーポンはデザインや印刷に時間かかりますから、もたもたしていると参院選後に給付ということになりかねません。そのようなことは、最初からわかっていたことです。
様々な批判を受けた後で、ようやっと政府は14日、18歳以下の子どもへの現金5万円とクーポン5万円分の給付について、現金での全額支給を容認する方針に転じたことを踏まえ、自治体向けの指針をまとめました。現金給付を認めるケースについて「自治体の判断を尊重するとの考えの下、政府において一律の条件を設け、審査を行うことは考えていない」と明記しました。
それだけではなく、GOTOキャンペーンも来年2月からを予定するなど、岸田政権の政策はあまりに「とろい」です。
新型コロナウイルスからの経済回復も「日本だけが出遅れている」います。どうしようもないこのスピード感のない、岸田政権で来年夏の参院選をまともに戦えるでしょうか。
このような岸田政権は、せっかくの安倍・菅両政権の置き土産を台無しにしてしまう可能性が大です。そのため、マクロ経済でデフレからの完全脱却という良い結果を残せる可能性は低いです。
岸田政権に期待できるのは、今以上に日本経済を毀損(きそん)することがないようように、現状維持することだけです。それ以上の期待はできません。長期政権になれば、日本経済を毀損する確率が高まるだけです。自民党は、岸田政権は短命で終わらせ、他のまともな総裁のもとで、やり直すべきと思います。
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