2023年5月18日木曜日

GDP、3期ぶりプラス 年1.6%増、消費けん引―海外減速に不安・1~3月期―【私の論評】安倍・菅両政権における100兆円の補正予算がもっと使われていれば、経済はさらに伸びたはず(゚д゚)!

GDP、3期ぶりプラス 年1.6%増、消費けん引―海外減速に不安・1~3月期


 内閣府が17日発表した2023年1~3月期の国内総生産(GDP、季節調整済み)速報値は、物価変動の影響を除いた実質で前期比0.4%増、この成長が1年続いた場合の年率換算で1.6%増となった。22年10~12月期がマイナスに改定されたため、プラス成長は3期ぶり。コロナ禍からの経済活動の正常化に伴う個人消費の増加が景気の持ち直しを支えたが、海外経済減速の影響もみられ、回復の持続には課題が残る。

 1~3月期のGDPの増減に与える影響(寄与度)は内需がプラス0.7%だったのに対し、外需はマイナス0.3%だった。内需の柱である個人消費は前期比0.6%増と4期連続のプラス。外出の増加で外食や宿泊などサービス消費が好調だったことに加え、供給制約の緩和で、自動車の販売が回復した。設備投資も0.9%増と2期ぶりのプラス。国内販売が好調だった自動車への投資支出の増加が寄与した。

 一方、輸出は4.2%減と6期ぶりのマイナス。統計上は輸出に分類するインバウンド(訪日外国人)消費が伸びたが、世界的な半導体市況の悪化を受けた半導体製造装置の落ち込みや自動車の減少などが響いた。

 同時発表した22年度の実質GDP成長率は前年度比1.2%増と2年連続のプラスを確保した。金額は、名目ベースでは物価上昇の影響で561兆円と比較可能な1994年度以降で最高となったが、実質では547兆円とコロナ前の19年度(550兆円)を下回った。

【私の論評】安倍・菅両政権における100兆円の補正予算がもっと使われていれば、経済はさらに伸びた(゚д゚)!

このGDPの速報に関して、高橋洋一氏が動画で説明しています。その動画を下に掲載します。

高橋洋一氏は、動画の中で、GDPが伸びていることは評価すると述べています。これは、安倍・菅政権合わせて100兆円の補正予算が組まれ、経済対策が行われたものによるとしています。

ただ、目詰まりがあり、100兆円がフルに使われていないため、本来もっと伸びているはずがさほとでもないことになっていると考えられるとも語っています。

それには、具体的な根拠があります。

100兆円の補正予算のうち、2022年10月末までに消化されたのは約45兆円にとどまっています。岸田政権が成立したのは、2021年(令和3年)10月4日ですから、岸田政権が成立して1年近くたってもこの程度しか消化されていなかったことになります。

2023年5月18日現在では、100兆円の補正予算のうち約87兆円が消化されました。(出典:財務省「令和3年度第3次補正予算の執行状況について」)。それでも、まだ13兆円が未消化です。

これは、財務省が財政規律をを重視し、補正予算の使い方に慎重になっていることが一因と考えられます。高橋洋一氏流にいえば、まさに「姑息な手段で財政出動をさせないZ?のやり口」ということです。

また、補正予算の対象となる事業が、受注者や実施団体などの調整に時間がかかっていることも、消化の遅れにつながっていると考えられます。

例えば、2021年度補正予算で計上された「デジタル田園都市国家構想推進交付金」は、2022年10月末時点でまだ10%程度しか消化されていませんでし。これは、交付金の対象となる事業が、まだ具体的に決まっていないことが一因と考えられます。

デジタル田園都市国家構想推の概念図

高橋洋一の氏語る、目詰まりとは何なのでしょうか、無論財務省による財政重視の姿勢があることはいうまでもないですが、その具体的な現れの一つとして、日本の経済対策のほとんどが補助金・助成金によることがあげられます。

補助金、助成金は、申請から交付までに時間がかかることがあり、また、交付後も事業の実施状況の確認や検査など、多くの事務が発生します。そのため、地方自治体などの事務が追いつかず、未消化となっている可能性があります。

政府の経済対策における補助金・助成金のほぼすべてが、主管は中央省庁ですが、実際に交付するのは地方自治体の事務ということになります。となると、100兆円分の補助金・助成金の事務処理は地方自治体の事務処理量をかなり増やすことになります。これは、コロナ対策の初期のクラスターの把握で、各地の保健所の事務量がとてつもなく増えたことでも、ご理解いただけると思います。


無論、到底地方自治体だけでは、処理仕切りれない事務の場合は、外部に委託しますが、外部に委託にするのにも時間がかかります。

また、補助金、助成金は、事業の実施に一定の条件が設けられている場合が多く、これらの条件を満たす事業者がいないことも、未消化の一因となっている可能性があります。

このように、100兆円の補正予算の消化が遅れている原因は、補助金、助成金などの事務が追いつかず、未消化の原因となっている可能性は十分にあると思います。

経済対策の柱を補助金・助成金ではなく、減税にすれば、対策を素早く行える可能性は十分にあると思います。減税は、補助金・助成金のように、申請や審査などの手続きが不要なため、すぐに効果を発揮することができます。また、減税は、国民のすべての人に行き渡る可能性があるため、補助金・助成金のように、特定の層に偏った効果をもたらす可能性は低くなります。

無論、政策によっては、補助金・助成金も必要ですが、日本では例外はあるものの、ほとど減税策はとられず、補助金・助成金によって実施されます。この体質はいずれ、変えるべきでしょう。そうでないと、せっかく補正予算を組んでも、経済対策が滞ることになります。

ジョン・メイナード・ケインズなどの経済学者が提唱した有効需要論は、経済生産と雇用の水準を決定する総需要の重要性を強調するものです。この理論によれば、減税措置と補助金・助成金のいずれを景気刺激策として用いるにしても、最終的な目的は総需要を高め、経済活動を活性化させることになります。

これを考えれば、やはり地方自治体の事務量を減らし、対策を速やかに行うためには、政府の経済対策における減税の比率を高めたほうが良いと思います。

日本のようにデフレが続いている場合には、減税によって消費を喚起し、景気回復を促すことが期待できます。また、減税は、企業の設備投資や研究開発を促進し、経済成長につながる効果もあります。

このように、減税には、財政赤字を拡大するリスクと、景気回復や経済成長につながる効果の両方があります。

もし、経済対策でもっと減税策が用いられ、すみやかに行われていれば、今回の速報値でももっとGDPが伸びていた可能性が十分にあります。特に、消費税減税などが行われていれば、かなり効き目があり、かなり伸びていた可能性があります。

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2023年5月17日水曜日

ウクライナが「キンジャール」6発撃墜と発表、ロシアが迎撃不可能とうたう極超音速兵器―【私の論評】全ての防空システムを貫通できるとロシアが豪語していたキンジャールの性能は否定された(゚д゚)!

 ウクライナが「キンジャール」6発撃墜と発表、ロシアが迎撃不可能とうたう極超音速兵器



 ウクライナ軍は、極超音速ミサイル「キンジャール」6発を含むロシアのミサイル18発を迎撃したと発表した。この発表が事実なら、ロシアがかつて迎撃は不可能な「超兵器」と豪語していたキンジャール(ロシア語で「短剣」の意)ミサイルに対する、新たに配備された西側の防空網の有効性を示すことになる。

 キンジャールミサイルとはどんな兵器で、その撃墜は何を意味するのだろうか。

 これは、ミサイルの残骸が落下した現場を撮影したとされる写真。残骸落下に伴い3人が負傷したという。


 キンジャールは音速の10倍で飛行できるとされ、それゆえ極超音速ミサイルと呼ばれている。一方ロシア国防省はキンジャールが、ウクライナに最近配備された米国製のパトリオット防空システムを破壊したと主張している。

 ロシアのプーチン大統領は、キンジャールを北大西洋条約機構(NATO)に対抗できる「次世代兵器」だとたびたび述べている。射程は2000マイルで、核弾頭または通常弾頭を搭載することが可能だ。

 キンジャールが初めて公開されたのは2018年。ロシア国防省が公開したこの映像は、戦闘機から発射される様子を写したものだ。ロシアは、昨年ウクライナで初めて使用したとしているが、使用を認めたのは数回しかない。

 ウクライナ側は今月、パトリオットを使ってキンジャール1発を初めてキーウ上空で迎撃したと発表していた。これまでパトリオットによるキンジャールの迎撃は理論上のものでしかなかった。一度に6機を撃墜したことは、単にまぐれではなく、信頼できる防衛手段になり得ることを示唆している。

 ロシアが保有する極超音速兵器はキンジャールだけではない。海軍の艦船に搭載可能なツィルコンと呼ばれる極超音速巡航ミサイルも保有している。

【私の論評】全ての防空システムを貫通できるとロシアが豪語していたキンジャールの性能は否定された(゚д゚)!

ウクライナが「キンジャール」6発撃墜が事実ならパトリオットによる迎撃は「まぐれ」ではなく、全ての防空システムを貫通できると豪語していたキンジャールの性能は否定されたことになります。

ロシアがキンジャールは全ての防空システムを貫通できると豪語したことに対して、疑義を挟む人々はたくさんいます。代表的な人物をいくつか挙げます。

スウェーデンの防衛研究所の研究員であるミカエル・ペルソンは、「キンジャールは複雑なミサイルであり、迎撃が難しいことは事実です。しかし、不可能ではない」と述べています。

英国の王立国際問題研究所の研究員であるマーク・ガノンは、「キンジャールは非常に高速で機動性の高いミサイルですが、無敵ではありません。迎撃できる防御システムは存在します」と述べています。

米国の戦略国際問題研究所の研究員であるジェフリー・ルイスは、「キンジャールは脅威には違いありませんが、壊滅的な兵器ではありません。迎撃できる防御システムは存在します」と述べています。

これらの専門家は、キンジャールは確かに脅威ではありますが、無敵ではないと考えています。キンジャールは迎撃が難しいミサイルですが、不可能ではないし、壊滅的な兵器でもありません。キンジャールを迎撃できる防御システムは存在し、ウクライナ軍はキンジャールを撃墜できることを今回証明したのです。

キンジャールミサイルと従来の大陸間弾道ミサイル(ICBM)の主な違いは、その推進システムと運用特性にあります。

キンジャールを搭載したMIG31

推進装置: 従来のICBMが液体燃料または固体燃料エンジンを使用しているのに対し、キンジャールミサイルは固体燃料ロケットエンジンを搭載しています。

発射プラットフォーム: キンジャールミサイルはMiG-31のようなロシアの戦闘機から空中で発射されるのに対し、従来のICBMは地上のサイロや移動式発射台から発射されます。

作戦範囲 :キンジャールは、従来のICBMに比べ、比較的短い運用距離です。従来のICBMが数千キロメートルの大陸間射程を持つのに対し、キンジョールは数百キロメートルまでの短距離精密攻撃用として設計されています。

速度:キンジャールも従来のICBMも超音速に達することができますが、具体的な速度はミサイルの種類と設計によって異なります。

ロシア北西部のプレセツク宇宙基地から発射される大陸間弾道ミサイル「サルマト」=2022年4月20日

つまり、キンジャールミサイルは空から発射され、射程が短く、精密な攻撃を目的とし、従来のICBMは地上から発射され、射程が長く、主に戦略的抑止のために使用されます。

キンジャールははるかに高速で飛行するため、従来の防空システムでは迎撃が困難とされてきました。また、キンジャールのもう1つの特徴は、非常に機動性が高いことです。キンジャールは、急旋回や急降下などの複雑な機動を行うことができるとされ。これにより、迎撃がさらに困難とされました。

ウクライナ軍がロシア軍のキンジャールを撃墜したことは、ウクライナ軍がロシア軍の最新兵器に対する防御力を備えていることを示しています。無論、これには米軍などの協力もあるでしょう。米軍などの哨戒機は日々ポーランドの上空などを飛行しウクライナの情報を収集しているでしょうし、監視衛星も情報収集し、これらをウクライナ側に伝えていることでしょう。

今回の撃墜はこうした米国などの支援も含めた結果によるものでしょうが、ウクライナがロシアの侵略に抵抗する能力を高めるという意味で、軍事的に大きな意味があります。

ウクライナ軍がキンジャールを撃墜できたことは、ウクライナ軍の士気の向上にもつながる可能性があります。ウクライナ軍は、ロシアの侵略に対して大きな苦戦を強いられており、兵士の士気が低下しているという報告もあります。キンジャールを撃墜できたことは、ウクライナ軍がロシア軍に立ち向かうことができることを示しており、士気の向上につながる可能性があります。

さらに、ウクライナ軍がキンジャールを撃墜できたことは、ロシアがウクライナに対して核兵器を使用できない可能性、使用したとしても撃墜される可能性を示しています。これは、ロシアがウクライナに核兵器を使用することを思いとどまらせるのに役立つ可能性があります。

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2023年5月16日火曜日

電気料金、6月から14~42%値上げへ…平均家庭で月1000円超の負担増―【私の論評】電気料高騰は、誰にとっても身近な問題。岸田政権が真摯にむきあわなければ、これが政権のアキレス腱に(゚д゚)!

電気料金、6月から14~42%値上げへ…平均家庭で月1000円超の負担増

 経済産業省は16日、電力大手7社が申請した家庭向け電気料金の値上げについて14~42%の引き上げを認可する方針を固めた。各社は6月1日から料金を見直す見通しだ。平均的な使用量の家庭で7月請求分の電気料金は、6月分に比べて1000円を超える負担増となる見込みだ。

 政府が16日朝の物価問題を議論する関係閣僚会議で、東京電力など7社が申請した、家庭向け契約の多くを占める「規制料金」の値上げ幅を決める査定方針案を了承した。査定方針に基づき、西村経産相が今週にも値上げを正式に認可する。


 値上げは、中部、関西、九州の3電力を除く大手7電力が申請していた。経産省によると、値上げ率は、各社が当初申請した28~48%から4~14ポイント縮小した。経産省が有識者会議で値上げ幅の査定方法を議論した結果、燃料費や修繕費、業務委託費などを切り詰めた。また、申請当初に比べて値下がりした燃料価格も考慮した。

 西村経産相は16日の閣議後記者会見で、「前例にとらわれず極めて厳格な査定を行った」と述べた。

 実際の電気料金の値上げ幅は、各社が今後詰めるが、月1000円を超える見込みだ。

 一方、経産省は、電力各社が値上げを申請した昨年11月に比べると、料金負担は軽くなるケースが多いとしている。今年に入って以降、政府が電気料金を抑える負担軽減策などを講じているためだ。具体的には、平均的な使用量の家庭の7月請求分の電気料金は、北陸電力と沖縄電力を除く5社で、申請前の時点に比べて値下がりとなる。

 電力大手は、燃料費の高騰などに伴う経営環境の悪化を受けて、昨年11月以降、東北、北陸、中国、四国、沖縄が今年4月から、北海道、東京が同6月からの値上げを申請した。しかし、申請前後で、電力大手の間で顧客情報の不正閲覧問題や事業者向け電力販売でのカルテル問題など不祥事が相次ぎ発覚した。不信感の高まりを踏まえ、政府が電力会社に値上げ幅の再検討を要請したほか、消費者庁が経産省に厳しくチェックするよう求めていた。

【私の論評】電気料高騰は、誰にとっても身近な問題。岸田政権が真摯にむきあわなければ、これが政権のアキレス腱に(゚д゚)!。

東京電力など電力大手7社の家庭向け規制料金の値上げ申請を巡り、有識者が経済産業省に説明を求める会合が10日、消費者庁で開かれた。経産省側は、カルテルなどの不祥事が電力業界の高コスト体質に影響した可能性があるとの認識を示しました。

会合は3回目。有識者はこれまで、電力業界のカルテル問題や顧客情報の不正閲覧などの不祥事が値上げ幅に影響した可能性を指摘し、経産省に説明を求めていました。

この日の会合では、経産省側が、不正の影響があったとした上で「厳しい査定が必要」と説明しました。有識者は、認可後もコストの効率化や不正が電気料金へ与えた影響を検証するよう求めました。

経産省がカルテルなどの不祥事が電力業界の高コスト体質に影響した可能性があると認識した根拠は、以下のようなものです。

  • 2012年に発覚した電力小売業者の燃料費調整制度に関するカルテル事件。この事件では、電力小売業者9社が燃料費調整制度のルールを操作し、不当に利益を得ていたことが発覚しました。
  • 2013年に発覚した電力会社による顧客情報の不正閲覧事件。この事件では、東京電力を含む複数の電力会社が、顧客の個人情報を不正に閲覧していたことが発覚しました。
  • 2016年に発覚した電力会社による原子力発電所の安全対策費の不正計上事件。この事件では、東京電力を含む複数の電力会社が、原子力発電所の安全対策費を不正に計上していたことが発覚しました。
これらの不祥事は、電力業界における競争の不公正や、コストの不透明化につながり、電力料金の高騰の一因となったと考えられます。

また、電力業界は規制産業であり、新規参入が難しいことも、高コスト体質の一因となっています。

電力業界の高コスト体質を改善するためには、競争を促進し、コストの透明化を図ることが重要です。また、新規参入の規制緩和も必要です。

以下に主要国の電力料金の国際比較のグラフを掲載します。

クリックすると拡大します

グラフでみてもわかるように、日本の電気料金は、世界でも高い水準にあります。

電気料金の高さは、日本経済に様々な影響を及ぼしています。まず、電気料金の高騰は企業のコスト増につながり、企業の収益を圧迫しています。また、電気料金の高騰は家計の負担も増やしており、消費の低迷につながる可能性があります。さらに、電気料金の高騰は、脱炭素化への移行を困難にする可能性もあります。

今後も日本の電気料金は高止まりが予想されています。これは、世界的なエネルギー価格の高騰や、再生可能エネルギーの導入コストの上昇などが原因です。電気料金の高騰は、日本経済に大きな影響を及ぼす可能性があるため、政府は対策を講じる必要があります。

また、原発の稼働が進んでいないことにも原因があると考えられるでしょう。

2011年の福島第一原子力発電所事故以降、日本では原発の稼働が停止し、電力供給の一部を補うことができなくなりました。そのため、電力会社は石炭や天然ガスなどの他の燃料に切り替えざるを得なくなり、電気料金が上昇しました。

福島第一原発の制御室

また、原発は安定した電力供給源であるため、原発の稼働が停止したことで、電力供給の安定が悪化しました。これにより、電力会社は電力不足に備えて、電気料金に余裕を持たせざるを得なくなり、電気料金が上昇しました。

近年、日本では原発の再稼働が進められていますが、それでも原発が震災前の稼働率に戻るには時間がかかるでしょう。そのため、今後も日本の電気料金は高止まりが続く可能性があります。

具体的な稼働の遅れに関して事例をいくつかあげます。

  • 東北電力女川原発2号機:2012年に再稼働の申請を行ったものの、2023年現在も再稼働の目処が立っていません。
  • 関西電力高浜原発1号機:2015年に再稼働の申請を行ったものの、2023年現在も再稼働の目処が立っていません。
  • 九州電力玄海原発3号機:2016年に再稼働の申請を行ったものの、2023年現在も再稼働の目処が立っていません。
  • 泊原発には、3基の原子炉があります。2013年7月に再稼働の申請を行ったものの、2023年現在も再稼働の目処がたっていません。

泊原発、再稼働すれば、北海道の電力供給の逼迫は確実に解消される

これらの原発は、いずれも新規制基準に適合していると認定されていますが、地元自治体の同意を得ることができず、再稼働が遅れています。また、原子力規制委員会による審査も厳格化されており、再稼働までに時間がかかっています。

岸田政権は、2021年にエネルギー基本計画を改定し、原発の再稼働を進める姿勢を打ち出しました。しかし、その後の状況を見ると、計画通りに進んでいるとは言い難い状況です。

まず、再稼働の申請が進んでいる原発の数は、計画した数を下回っています。計画では、2030年までに30基の原発を再稼働させるとしていました。しかし、現在、再稼働の申請が進んでいる原発は19基にとどまっています。これは、原発の再稼働に反対する声が根強く、地元の同意が得られないことが原因です。

また、再稼働が進んでいる原発についても、計画通りに再稼働できるかどうかは不透明です。例えば、関西電力高浜原発の再稼働は、2022年11月に地元の同意が得られました。しかし、原子力規制委員会の審査は遅れており、2023年中の再稼働は難しいと見られています。

このように、岸田政権の原発再稼働計画は、計画通りに進んでいるとは言い難い状況です。これは、原発の再稼働に反対する声が根強く、地元の同意が得られないことが原因です。また、原子力規制委員会の審査も遅れているため、原発の再稼働が遅れる可能性もあります。

これらの原発が再稼働すれば、日本の電力供給の安定に大きく貢献する可能性がありますが、現時点では再稼働の目処は立っていません。

私自身は、原発反対派が新しく既存のタイプの原子力発電所を設置することに反対することに関しては、ある程度理解できなくもありません。

しかし、すでに稼働していて、それを地震や津波などの被害で、一時的に稼働を廃止した原子炉についても、全部廃炉にしろというような意見には、とても同意できません。

なぜなら、原子力発電所は、廃炉を決定したとたんに安全になるわけではないからです。原子力発電所の廃炉を決定することは、施設の安全な閉鎖と解体を確実にするために、慎重に計画され管理されたプロセスの最初のステップに過ぎません。

放射性物質の存在に関連するリスクを軽減し、安全上の懸念に対処するための一連の行動や対策が含まれます。廃炉は複雑で時間のかかるプロセスであり、慎重な計画、実施、規制要件の遵守が必要です。作業員、公衆、環境を守るため、廃止措置の全過程において安全への配慮が重要であることに変わりはありません。

経済合理性から考えると、廃炉にしようが、しまいが危険であることには変わりなく、であれば、安全性が確保できたとみられる原発に限ってはすみやかに稼働させるべきと思います。電気料が高騰し続ければ、産業界からも国民からもこういう声が大きくなっていくことでしょう。

さらに日本は地震や台風などの自然災害が多い国です。このような自然災害が発生した場合、電力供給が不足し、停電が発生する可能性があります。あるいは、電力需要が大きい時間帯には計画停電をせざるを得ない状況に追い込まれことも十分にあります。

2018年の北海道胆振東部地震では、北海道全域で停電が発生しました。この停電は、東大日本震災により原発の危険が認識され、安全点検などのため停止しされていたため、電力供給が不足したことが原因です。

もし、このまま原発の再稼働がされず、自然災害が発生した場合、全国各地で停電が発生する可能性があります。これは、日本は火力発電に依存しているため、自然災害によって発電所が停止すると、電力供給が不足するからです。

また、日本は人口密度が高く、送電線の整備が進んでいないため、停電が広範囲に及ぶ可能性があります。

全国各地で停電が発生すると、交通機関が停止し、生活に必要な物資が行き渡らなくなる可能性があります。また、病院や学校も停止する可能性があるため、人命にも危険が及ぶ可能性があります。

このような危機を回避するためには、原発の再稼働を進め、電力供給の安定化を図る必要があります。また、送電線の整備を進め、停電の拡大を防ぐ必要があります。

さらに、停電に備えて、家庭や企業が自家発電設備を導入することも重要です。自家発電設備があれば、停電時でも電気を供給することができるため、生活に大きな支障をきたすことを防ぐことができます。ただ、これも一時しのぎにすぎす、やはり安定的な電力供給をしていく必要があります。

岸田政権には、これらの課題に真正面から取り組み、電気料の問題をなるべくはやく解決していただきたいです。電気料に関しては、誰にとっても身近な問題であり、これに対して岸田政権が真摯にむきあわなければ、これが政権のアキレス腱になりかねないと思います。

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2023年5月15日月曜日

ウクライナ復興100兆円超必要―【私の論評】海外支援は気前よく、国内で何かするとなると、「財源=増税」というのは変という感覚は正しい(゚д゚)!

ウクライナ復興100兆円超必要

シュミハリウクライナ首相

 ウクライナのシュミハリ首相は4日、同国がロシアの侵攻で受けた被害の復興計画に必要な資金が「既に7500億ドル(約101兆7千億円)に上ると見積もられている」とし、資金源として各国が凍結したロシア政府や同国の新興財閥オリガルヒの資産を没収し、これを充当するよう訴えた。スイス南部ルガノで開かれた「ウクライナ復興会議」での演説で述べた。

 凍結したロシア資産をウクライナ復興に利用する案は、各国の法制度上の取り扱いなど解決すべき課題が多く、実現に向けたハードルは高い。

【私の論評】海外支援は気前よく、国内で何かするとなると「財源=増税」というのは変という感覚は全く正しい(゚д゚)!

岸田首相

政府は15日、ロシアの侵攻が続くウクライナの経済復興に向けた関係省庁による準備会議(議長・木原誠二官房副長官)の初会合を首相官邸で開いた。19~21日の先進7カ国首脳会議(G7広島サミット)に先立ち、ウクライナ復興を重視する姿勢を内外に示す狙いがあります。

交通機関や電気、通信などのインフラ復旧、産業振興の具体策を検討。岸田文雄首相は冒頭あいさつで「復興は日本ならではの貢献の柱だ。ウクライナ復興には、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の未来が懸かっている」と強調しました。

岸田政権は、ウクライナ復興にかなりの額の支援もすることになるでしょう。100兆円を世界中の国々で分割して支援するしても、おそらく日本は数兆円程度の支援が求められることになるでしょう。

実際、岸田文雄首相は、就任以来、多くの国に支援を表明してきました。以下は、その一例です。
  • 2021年10月、岸田首相は、インド洋・太平洋地域における気候変動対策のために、5年間で1兆円を拠出すると発表しました。
  • 2021年11月、岸田首相は、東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟国への支援強化を表明し、5年間で1兆円を拠出すると発表しました。
  • 2022年1月、岸田首相は、ウクライナへの人道支援として、1億ドル(約110億円)を拠出すると発表しました。
  • 2022年2月、岸田首相は、フィリピンへの支援強化を表明し、5年間で2,000億円を拠出すると発表しました。
これらの支援は、岸田首相の「自由で開かれたインド太平洋」構想の一環として行われるものであり、日本が地域の安定と繁栄に貢献する姿勢を示すものです。また、岸田首相は、これらの支援を通じて、日本が世界的なリーダーとして発信力を高めていきたいと考えていることも明らかです。

しかし、これらの支援は、国内の課題を解決するために使われるべきだという批判もあります。実際、日本では、物価高騰や少子高齢化など、多くの課題が山積しています。そのため、岸田首相は、これらの支援をどのように説明していくのか、難しいかじ取りを迫られることになるでしょう。

私自身は、こうした支援自体を否定するつもりはありません。ただ、こうした海外への支援への拠出に関しては、気前よく行うのに、なぜか国内では、防衛増税とか子育て支援ということになると、すぐに「安定財源=増税」という言葉がでてくることには疑問を感じます。

「今後の海外支援をスムーズに行うため、増税を行うべきだ」という言葉等聞いたことがありませんし、もしそのようなことを言えば、さすがに国内から大バッシングを受けるのは必定でしょう。とこが国内の施策となると、必ずといっていいほど「財源はどうする」「財源は増税」ということになります。

無論海外支援と、子育て支援や防衛費の増額など国内の施策に用いられる資金を比較すれば、国内の施策のほうが金額は大きいです。しかし、海外に拠出する資金はドル建で行うでしょうし、拠出した資金は、海外にでていくわけですから、日本国内で行う防衛費増や子育て支援などのように、日本国内に還元されそれがまた税金として政府に戻ってくることはありません。

海外支援そのものは、直接的に日本に経済的メリットをもたらすものではありません。そのため、海外支援に関しては、たとえ少額であっても、負担は大きいはずです。

私が言いたいのは、海外支援に関しては、政府も野党なども「財源は」ということにはならないのに、子育て支援とか、防衛費増額となど国内のことになるとすぐにいわゆる「財源論」がでてきて、結局消費税の増税などが論議されることになります。

はなはだしい例は、あの復興税です。復興のための資金を、増税で賄ったなどというのは、古今東西を調べても、日本の復興税だけです。岸田首相は、「復興は日本ならではの貢献の柱だ」だと語っており、これには東日本大震災の復興が念頭にあるのでしょうが、復興を増税で賄ったという点では、これはウクライナ復興の参考にはなりません。

日本の復興税のように「ウクライナ復興」は増税で賄うべきなどと主張したら、世界中から失笑され、不興を買うのは目にみえています。ウクライナも当然反発するでしょう。世界では不興を買うようなことが、日本国内では平然と行われてきたといえます。

海外に対して岸田政権が気前よく拠出金を支出できるのには、それなりの背景があります。これは、以前このブログにも掲載したことがあります。その記事のリンクを掲載します。
防衛財源確保法案のカラクリ 本当は「増税なしでも手当可能」だ 透けてみえる財務省の思惑―【私の論評】確実に税収が上ブレする現状で防衛財源確保法案は、財務省の増税の意図を隠す表看板に過ぎない(゚д゚)!
これは、今年4月29日の記事です。2022年度の税収は確実に予定より上ブレしそうです。しかも、6.8兆円の上ブレになりそうです。それに関する内容とグラフを以下に掲載します。
期防衛力整備計画の財源を毎年度予算で対処することは可能であり、しかも、国の一般会計税収が大幅に増加していることからこれは確実にできます。

さらに足元の月次税収の趨勢を踏まえ、2022 年度は 72 兆円程 度への着地を予想されています。22 年度税収は当初予算時点で 65.2 兆円のところ、昨年 11 月の補正予算時点 で 68.4 兆円と上方修正がなされましたが、ここから更なる上振れ着地が予想されます。 
一般会計税収(4~翌 2 月の累計値)
背景にはインフレ・円安、賃金・雇用の回復などがあります。足元で特徴的なのが景気の振幅に影響 されにくい消費税が大きく伸びている点です。およそ 40 年ぶりの物価急上昇は、税収にもこれまでに ない変化をもたらしています。
しかも、これは今年だけのことではなく、このブログの他の記事にも示したように、2018年に一般会計税収がバブル期を超え、2021年に過去最高となり、2022年にはさらにこれを更新するのです。

この潤沢な税収により、岸田政権は気前よく海外支援金を拠出できるわけです。ただ、こうした状況ですから、増税などはしぱらくすべきではないです。

そもそも、高橋洋一氏の試算によれば、日本では、需給ギャップが20兆円はあるとされています。これは、内閣府の試算よりは、若干大きいですが、それにはカラクリがあります。ただ、ここでは、それは説明しません。興味のある方は、高橋洋一氏の記事などに当たって下さい。

需給ギャップ20兆円、今の日本は20兆円の需要不足があるわけですから、このギャップを埋める必要があるわけです。ということは、政府が20兆円の国債を発行し、それを日銀が買い取れば、政府は20兆円の資金を得ることができ、さらにそれを子育て支援や防衛費増税にあてたとしても、インフレになることはないのてす。

普通の感覚の人だと、海外支援は気前よくやって、国内で何かするというとすぐに「財源=増税」となるのはおかしいと思うに違いありません。この感覚は、全く正しいです。

破壊されたウクライナの建物

岸田政権が正しい政策をすれば、ウクライナに対して支援をしても国民から不満が出ることないでしょうが、国内で増税、ウクライナには気前よく支援ということになれば、国民の怒りは頂点に達することになるでしょう。

岸田政権は正しい経済運営を行い、ウクライナにも支援をして、日本が世界的なリーダーとしての発信力を高めていくようにすべきです。

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2023年5月14日日曜日

EU・インド太平洋が対中露で結束 閣僚会合―【私の論評】死してなお世界を動かす安倍晋三元首相に感謝(゚д゚)!

EU・インド太平洋が対中露で結束 閣僚会合

インド太平洋閣僚会合

 欧州連合(EU)は13日、議長国スウェーデンのストックホルムで「インド太平洋閣僚会合」を開いた。EU加盟国と日韓や東南アジア、ウクライナなどのパートナー国を合わせ、約60カ国が参加した。19日に開幕する先進7カ国首脳会議(G7広島サミット)を前に、林芳正外相はロシアと中国の連携に警鐘を鳴らした。

 会合はロシアと中国に対抗し、安全保障や貿易などで幅広い協力関係を探る狙いがある。

 EUのボレル外交安全保障上級代表は会合の冒頭に演説し、ロシアのウクライナ侵略でインド太平洋の自由主義国との連携は重要性を増したと強調した。「侵略の影響は食料、エネルギーなど世界中に広がった。これは欧州だけの戦争ではない」と訴えた。

 林氏は「中国は台湾周辺で、軍事行為を強めている。中国とロシアは軍事協力を強め、日本の周辺で軍事演習を行った」と訴えた。広島サミットは、法に基づく国際秩序への決意を示す場になると述べた。また、インドネシアのルトノ外相は、東南アジア諸国連合(ASEAN)はインド太平洋の中心に位置すると指摘し、「われわれは、国際法を尊重するすべての国を受け入れる」と主張。地元メディアによると、中国は会合に招かれなかった。

 EUがインド太平洋閣僚会合を開くのは、昨年に続き2度目。12日のEU外相会議では、重要物資の供給で、中国への過剰な依存を脱却することで合意した。

 林氏は「中国は台湾周辺で、軍事行為を強めている。中国とロシアは軍事協力を強め、日本の周辺で軍事演習を行った」と訴えた。広島サミットは、法に基づく国際秩序への決意を示す場になると述べた。また、インドネシアのルトノ外相は、東南アジア諸国連合(ASEAN)はインド太平洋の中心に位置すると指摘し、「われわれは、国際法を尊重するすべての国を受け入れる」と主張。地元メディアによると、中国は会合に招かれなかった。

 EUがインド太平洋閣僚会合を開くのは、昨年に続き2度目。12日のEU外相会議では、重要物資の供給で、中国への過剰な依存を脱却することで合意した。

【私の論評】死してなお世界を、動かす安倍晋三元首相に感謝(゚д゚)!

EUは上記のように「インド太平洋閣僚会合」を開催し、EUとインド太平洋地域の結束を深めるほか、覇権主義的な行動を強める中国を巡り、欧州連合(EU)が見直しを進めている対中国戦略文書の原案に、台湾有事への危機感が盛り込まれ、緊張が高まらないよう関係国と関与していく方針が初めて明記されたことが13日、分かっています。


この文書の正式名称は「The EU's Revised Strategic Guidelines on China」です。日本語に訳すと「中国との戦略的関係に関するEUの見直しされた行動指針」です。2022年9月に承認されました。

この文書は、EUの中国に関する改訂された戦略的ガイドラインであり、2022年9月にEUの外務・安全保障政策担当高官の集まりである欧州理事会によって採択されました。この文書は、中国の台頭に直面してEUがより積極的な役割を果たすことを目的としています。

文書は、EUは中国と協力する分野と、中国に立ち向かう分野を明らかにしています。

EUは、経済、貿易、気候変動などの分野で中国と協力することを望んでいます。これらの分野では、EUは中国と協力して、より開放的で包括的な国際秩序を構築したいと考えています。

ただし、EUはまた、人権、台湾、南シナ海などの分野で中国に立ち向かうことも望んでいます。これらの分野では、EUは中国の行動が国際法や国際規範に違反していると考えています。

この文書は、EUが中国の台頭に直面してよりバランスの取れたアプローチを取ろうとしていることを示しています。EUは中国と協力することを求めていますが、中国に立ち向かうことも恐れていません。

この文書はまた、EUが中国を単一の脅威とは見なしていないことを示しています。むしろ、EUは中国が複雑な国であり、協力と対立の両方の機会を提供すると考えています。

EUは現在、この文書を見直しています。その原案には、台湾有事に対する懸念が盛り込まれており、EUは関係国と協力して緊張を緩和するよう努める方針を初めて明確に示しています。

文書は、台湾海峡で紛争が発生した場合の影響は「深刻で不安定なもの」になると述べています。また、EUは「台湾の平和と安定を支持し、台湾海峡の緊張を緩和するために関係国と協力する」としています。

上記の一連の動きは、まさにインド・太平洋地域の国々の同盟、「インド太平洋諸国同盟」が出来上がり、これとEU、NATOが協力していく方向に向かう一里塚とも捉えることができます。

昨日の記事で、「インド太平洋戦略」の生みの親である、亡くなられた安倍元総理は、「インド太平洋諸国同盟」の可能性を夢見ておられたに違いないだろうことを掲載しました。

今、われわれが目にしているのはその始まりにすぎないのです。そうして、まさに中国はこれを恐れていると見られます。

このような動きは、安倍元首相がいなければ、なかったかもしれないです。また、あったにしても極めて進展が遅かったかもしれません。

ボストン・グローバル・フォーラムは、マイケル・デュカキス元マサチューセッツ州知事が主宰するシンクタンクですが、同フォーラムは、2023年4月7日、安倍晋三元首相を追悼する国際会議をオンラインで開催しました。会議には、日米やインドの有識者ら約30人が出席しました。

戦車に搭乗するデュカキス氏 1988年

デュカキス氏は会議で、安倍氏について「世界を平和と安定に導くリーダーシップを発揮した」と悼み、安倍氏の遺志を継いで日米同盟を強化していく必要があると訴えました。

また、林芳正外務大臣もビデオメッセージで出席し、「安倍氏は自由で開かれたインド太平洋地域の実現に尽力した」と述べ、安倍氏の遺志を継いで同地域の平和と安定に貢献していくことを表明しました。

会議では、安倍氏の外交政策や日米同盟の重要性などについて議論が行われました。参加者からは、安倍氏のリーダーシップを称賛するとともに、安倍氏の遺志を継いで日米同盟をさらに強化していく必要があるとの意見が相次ぎました。

安倍元首相の国葬儀

安倍氏は、2022年7月8日、奈良市で演説中に銃撃され、亡くなられました。安倍氏は、1993年から2006年まで、そして2012年から2020年まで、日本の首相を務めました。安倍氏は、日米同盟の強化や自由で開かれたインド太平洋地域の実現など、日本の外交政策に大きな影響を与えました。

世界は、安倍元首相の描いた理想の世界秩序に向けて今も模索を続けています。まさに、死してなお世界を動かす安倍晋三氏といえると思います。私達は安倍晋三氏の遺志を引き継ぐことができます。世界中でも多くの人がそれを引き継いでいるからこそ、世界は新たな秩序づくり向かって日々前進しているのだと思います。

このような人は安倍晋三氏をおいて他に、現代の日本にはいません。過去にはいました。それは安倍元総理と同郷の吉田松陰先生です。吉田松陰先生は、安倍元総理よりさらに短命で、享年29歳(満)で亡くなりましたが、その後の日本の礎となる人たちを育てました。

吉田先生の思想は、先生の育てた弟子たち等により、日本の秩序を変えることになりました。吉田先生が、弟子たちらに大きな影響を及ぼしていなければ、日本は、当時の列強にのみこまれていたかもしれません。

安倍晋三氏の思想は、その遺志を引き継ぐ世界中の人々によって、世界の秩序を変えることになるでしょう。そのような思想が安倍氏から世界に向けて発信されたことを、私達は、感謝すべきです。そうでなければ、世界は行き先を見失い混乱に陥っていたかもしれないです。

有難うございます。吉田先生、安倍先生。そうして安らかにお休み下さい。


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2023年5月13日土曜日

中国、NATO日本事務所に反発 「歴史の教訓くみ取れ」―【私の論評】中国は、将来「インド太平洋諸国同盟」が出来上がることを恐れている(゚д゚)!

中国、NATO日本事務所に反発 「歴史の教訓くみ取れ」

中国外務省の汪文斌(おう・ぶんひん)報道官

 中国外務省の汪文斌(おう・ぶんひん)報道官は12日の記者会見で、北大西洋条約機構(NATO)が日本に連絡事務所開設を検討していることについて「日本が真剣に歴史の教訓をくみ取って、地域の国家間の相互信頼や、平和と安定を損なうことをしないよう求める」と反発した。

 汪氏は、アジア太平洋地域はNATOの地理的範囲には入っておらず、アジア版NATO創設も必要ないとした上で「NATOはアジア太平洋国家との関係を強化し、地域に干渉し続けている」と批判した。

 日本政府に対しては「本当にNATOアジア化の急先鋒になりたいのか」と対応に強い疑問を呈し、日本が平和発展の道を堅持するよう求めると強調した。

【私の論評】中国は、将来「インド太平洋同盟」が出来上がることを恐れている(゚д゚)!

北大西洋条約機構(NATO)は、1949年にソビエト連邦に対抗するために設立された軍事同盟です。本部はベルギーのブリュッセルにあり、現在、30か国が加盟しています。NATOは攻撃された場合、加盟国の防衛を約束する集団安全保障体制です。

4月25日、 ディエラNATO国際軍事幕僚部国際安全保障局長 (イタリア陸軍中将)の表敬を受けた吉田統合統幕長

中国は、NATOが東アジアに進出することで、自国の安全保障上の利益に影響を及ぼすことを懸念しています。中国は、米国との緊張関係が高まっている中で、NATOが東アジアに進出することで、米国との連携を強化し、中国に対する圧力を増大させることを危惧していると考えられます。

さらに、中国は、日本がNATOと協力することで、日本が自国に対してより強硬な姿勢を取る可能性があると見ています。日本がより積極的に自衛隊の装備や兵力を増強することで、中国にとっては軍事的脅威になると考えているようです。

最後に、中国は、NATOが日本に事務所を開設することで、アジア太平洋地域の地政学的バランスが変化することを懸念しているのでしょう。NATOが日本に進出することで、米国や日本を中心とした新たな安全保障体制が形成される可能性があり、中国の影響力が低下することを恐れているためです。

歴史的にも、同盟が離合した例は数多くあります。以下にいくつかの例を挙げます。

1.第一次世界大戦中の中央同盟国

第一次世界大戦中、ドイツ、オーストリア=ハンガリー、イタリア、オスマン帝国は「中央同盟国」として同盟を結びました。しかし、戦争が長引くにつれ、同盟国の間で緊張が高まり、イタリアは1915年に同盟から離脱し、連合国側に参戦しました。

2.第二次世界大戦中の枢軸国

第二次世界大戦中、ドイツ、イタリア、日本は「枢軸国」として同盟を結び、戦争に参戦しました。しかし、同盟国の間での意見の相違や利害の対立などが生じ、枢軸国内部でも分裂が生じました。イタリアは1943年に連合国に負け、連合国側に与し参戦、ドイツは1945年5月に降伏、三国同盟は崩壊しました。

3.冷戦期の東西陣営

冷戦期には、米国とその同盟国が「西側陣営」、ソ連とその同盟国が「東側陣営」として、それぞれ同盟関係を結びました。しかし、同盟国の間での意見の相違や利害の対立が生じ、同盟内部でも分裂が生じました。例えば、ソ連と中国は意見が合わず、1960年代後半には対立が深まり、両国間での軍事衝突も発生しました。

以上のように、同盟が離散例は歴史的にも多く存在します。同盟は国家の利益や関心事が一致する場合に結ばれますが、同盟内部での意見の相違や利害の対立が生じることもあるため、必ずしも同盟が結束を維持することはできません。

一方、集散の例も多々あります

1.ヨーロッパ連合(EU)

ヨーロッパ連合は、かつてのヨーロッパ共同体を発展させて結成された同盟です。EUは加盟国が増え、経済・政治的な統合が進んでいます。EUは経済面や外交面などで、一定の成果を上げています。

2.アフリカ連合(AU)

アフリカ連合は、アフリカ諸国の統合を目指して結成された同盟です。AUは、アフリカ大陸の平和・安全保障や経済発展の促進を目的としています。AUは、加盟国が増え、地域的な協力や統合が進んでいます。

3.東南アジア諸国連合(ASEAN)

東南アジア諸国連合は、東南アジア地域の統合を目指して結成された同盟です。ASEANは、東南アジア地域の平和・安定・繁栄の促進を目的としています。ASEANは、加盟国が増え、地域的な協力や統合が進んでいます。

インド太平洋地域

AUKUS、QUAD、CPTPPはすべて、インド太平洋地域の安全保障を強化することを目的とした新しいイニシアチブです。これらの同盟はすべて、中国の台頭に対抗することを目的としています。

中国はインド太平洋地域でますます積極的な役割を果たしており、米国とその同盟国にとって脅威と見なされています。これらの同盟は、中国の野心を抑制し、地域の安定を維持するために設計されています。

AUKUS、QUAD、CPTPP、それらはやがて一つにまとまり、作り替えられて、将来、「インド太平洋諸国同盟(仮称)」として花開く可能性を秘めています。それは、NATOのような加盟国の防衛を約束する集団安全保障体制をも内包するものになるかもしれません。それには、NATOは貢献できるかもしれません。

NATOとしては、中国の動きはロシアの動きなどとも無関係ではないので、情報共有という意味合いで、インド太平洋諸国同盟と関係を持つことになるかもしれません。場合によっては、強調することもあるかもしれません。これは、中国にとってのみならず、ロシア、北朝鮮、イランなどに対しても強い牽制になります。


インド太平洋戦略の生みの親である、亡くなられた安倍元総理も、「インド太平洋諸国同盟」の可能性を夢見ておられたと思います。

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2023年5月12日金曜日

なぜ台湾を守る必要があるのか、その三つの理由―【私の論評】台湾有事に備えて、日本は台湾への軍事支援ができる体制を整えるべき(゚д゚)!

なぜ台湾を守る必要があるのか、その三つの理由

岡崎研究所

台湾有事は米国にも大きな損失をもたらす

 4月10日付の英フィナンシャル・タイムズ紙(FT)で、同紙外交問題コメンテーターのギデオン・ラックマンが「なぜ台湾が世界にとって重要なのか。北京との緊張の危険な増大は、繁栄するアジアの民主主義を保護するために支払う価値のある代償である」との論説を書いている。

 台湾への軍事圧力の増大に対し、バイデン大統領は4回、米国は中国の攻撃から台湾を守ると約束した。米国の一部の人は、なぜ米国が人口2400万人の台湾を守るために、もう一つの核兵器国中国と戦うのかと疑問に持つ。

 台湾を守ることへの懐疑論は欧州の一部ではもっと強い。訪中から帰ったマクロンは台湾を守るためにフランスは指一本あげないと含意した。

 台湾にこだわる三つの主たる議論がある。第1は世界での政治的自由の未来について、第2は世界的なパワーバランスについて、第3は世界経済についてである。これらは台湾を北京の手から離しておく説得力のある議論になる。

 北京は既に香港での民主主義を粉砕した。習近平が台湾で同じことをすれば、世界は暗い政治的意味を持つ。

 もし中国が台湾の自律を侵攻により、または台湾が欲しない政治連合の強制で粉砕すれば、地域における米国のパワーは大きな打撃を受けるだろう。

 中国によるインド太平洋の支配は世界的意味をもつだろう。この地域は世界の人口と国内総生産(GDP)の約3分の2を占める。もし中国がこの地域を支配すれば、中国は最強国として米国にとって代わるだろう。

 台湾は世界の半導体の60%以上、最も先進的なものの90%を生産する。電話や車から工業機械まで台湾のチップで動いている。もし台湾の半導体工場が中国の支配下に入れば、中国が世界経済を牛耳ることを可能にする。

 これら経済的、戦略的、政治的考慮は、米国とその同盟国が台湾を守る説得力ある議論となる。戦争に備えることが平和を維持するために時には必要である。

*   *   *

 この台湾の重要性に関するラックマン論説は、よく考えられた論説であり、賛成できる。

 台湾は、米ソ冷戦時代のベルリンのような役割を米中冷戦においては果たすと考えられる。自由民主主義体制陣営と専制主義陣営に分断されつつある世界において、台湾は最前線に立つと言って過言ではない。マクロンの台湾に対する認識は相当問題があり、主要7カ国(G7)広島サミットの際には、彼に台湾の重要性を印象付ける必要があるだろう。この論説の議論はそのために使い得ると思われる。

人権問題は国際関心事項

 中国は台湾問題を中国の内政問題としているが、これはそうではない。中国はチベット、ウイグル地区で酷い人権侵害をしている。香港でもそうである。人権問題は、南アフリカのアパルトへイトのように、戦後の国際秩序の中では国際関心事項とされており、台湾を中国が併合した後には2400万人の台湾人の人権が侵害されることが目に見えている。台湾問題はそういう観点から内政問題とされるべき問題ではない。国際的関心事項と言える。

 中国は、世界は発展しようとしている国とそれを封じ込めようとする米国をはじめとする勢力との間で分断されているのであって、自由民主主義と専制主義との間で分断されているのではない、われわれ(中国)も民主主義であるという論理を展開している。しかし人権尊重をしない民主主義はあり得ないのであり、この点を強く主張していくことが中国に対抗する上でも必要なように思われる。

【私の論評】台湾有事に備えて、日本は台湾への軍事支援ができる体制を整えるべき(゚д゚)!

台湾軍

台湾は、その地政学的優位性、民主主義、経済力など、いくつかの理由で世界にとって重要です。

台湾は、東シナ海に位置する島国です。この島は、中国本土の南東約1,000キロメートル、フィリピンの西約1,800キロメートルに位置しています。台湾は、東シナ海の戦略的に重要な位置にあり、この地域の貿易と航行を支配する可能性があります。

台湾は、繁栄した民主主義国家でもあります。台湾は、1988年から自由で公正な選挙を実施しており、民主的な統治の長い歴史があります。台湾は、アジアで最も成功した民主主義国の1つであり、その成功は、他の国々にとっての模範となっています。

台湾は、強力な経済力を持っています。台湾は、半導体や電子機器の主要な生産国であり、世界の貿易と経済において重要な役割を果たしています。台湾は、アジアで最も成功した経済国の1つであり、その成功は、他の国々にとっての模範となっています。

中国は、台湾を自国の領土の一部と主張しており、武力を使って台湾を「統一」することを辞さない姿勢を示しています。中国の台湾に対する脅威は、アジアの平和と安定に対する深刻な脅威です。台湾を守ることは、アジアの平和と安定を守るために不可欠です。

北京との緊張の危険な増大は、繁栄するアジアの民主主義を保護するために支払う価値のある代償です。台湾は、自由で開かれたアジアを支えるために不可欠な民主主義国家です。台湾を守ることは、自由と民主主義の価値観を守るために不可欠です。

中国は強大な軍事力を持つといわれなが、今まで台湾に侵攻しませんでした。これは、なぜなのでしょう。まずは、これを正確に捉える必要があると思います。

中国が過去に台湾に侵攻しなかった理由は多岐にわたりますが、主要な理由は以下の通りと考えられます。

国際社会からの批判:中国が台湾に侵攻する場合、世界中の国々から批判を浴びることになります。中国は国際的な信頼を失うことになり、外交的な影響力を損なうことになるため、侵攻を躊躇する理由の1つとなっていると考えられます。これに関しては、最近の中国は腹をくくったようで、国際社会の批判などものともせず、香港を中国に併合しました。

経済的な損失:台湾はアジア太平洋地域で経済的に重要な役割を担っており、中国にとって台湾を併合することは莫大な経済的損失をもたらすことになると考えられています。


上の記事では、

「中国が台湾の自律を侵攻により、または台湾が欲しない政治連合の強制で粉砕すれば、地域における米国のパワーは大きな打撃を受けるだろう。

 中国によるインド太平洋の支配は世界的意味をもつだろう。この地域は世界の人口と国内総生産(GDP)の約3分の2を占める。もし中国がこの地域を支配すれば、中国は最強国として米国にとって代わるだろう」

としていますが、それほどうまくいくのでしょうか。

中国が台湾を併合することが、その経済的な利益を獲得するための最適な手段であるかどうかは議論が分かれます。例えば、併合によって中国が得るであろう経済的な利益は、長期的には政治的な不安定さや国際的な孤立などのリスクを伴う可能性があるため、実際のところ得られる利益は限られるという指摘もあります。

加えて、中国が台湾を併合することによって、台湾に対する輸出制限や投資制限が生じ、台湾企業が海外展開することが困難になることから、中国と台湾の経済的な結びつきが弱まることも懸念されています。このような理由から、中国が台湾を併合することが、必ずしも経済的な利益を獲得する最適な手段であるとは限りません。

それは、半導体について考えれば、良く理解できます。台湾の半導体製造業は、最終工程においては、世界1ともいわれています。台湾の半導体製造会社(ファウンドリー)であるTSMCは、世界で最も先端の半導体製造技術を持ち、世界の半導体受託生産の60%以上を占めています。TSMCの半導体は、スマートフォン、コンピューター、自動車など、あらゆる電子機器に使用されています。

しかし、その半導体産業も、日本、米国、オランダなどの半導体製造装置がなけば成り立ちません。日本からの、半導体製造原材料の供給がなくなれば、歩留まりがかなり悪くなります。米国等の設計技術がなければ、最先端の半導体は製造できません。

このようなことを考えれば、中国が台湾の半導体産業を手に入れたとたん、半導体産業で世界一になるとはとても思えません。それどころか、中国に併合された台湾は半導体製造ができなくなる可能性のほうが高いです。他の産業も似たところがあります。

よって英フィナンシャル・タイムズ紙(FT)のギデオン・ラックマンの記事は、飛躍しすぎていると思います。ただし、習近平がこうした考えを持たないという保証はありません。


軍事力のバランス:中国が台湾に侵攻する場合、米国をはじめとする多くの国々が介入することが予想されます。これにより、軍事力のバランスが大きく崩れることになり、中国の国内安定に影響を与えることが懸念されます。

台湾国民の反発:台湾は独自の政治・社会・文化を持ち、自由な価値観を持つ人々が多数居住しています。中国が台湾を併合することは、台湾国民の反発を招き、中国による支配に対する抵抗運動が起こる可能性が高いとされています。

これはかなり厄介な問題になるでしょう。中国はアフガニスタンで米国が長い間、米軍を駐留させたようにかなりの軍隊を駐留させなけばなりません。数十万人の軍隊を50年くらいは駐留させ、体制をつくりかえす必要があります。中途半端をすれば、アフガニスタンの二の舞いになりかねません。台湾は小さな島ながら、山岳地帯が多いので、抵抗勢力の潜伏先は多くあります。

さらに、台湾を守備する方が台湾に侵攻するよりもはるかに有利であると考えられています。

第一に、台湾は島国であり、中国本土から約100マイル離れています。これは、中国軍が台湾に侵攻するためには、大規模な海上輸送作戦を行う必要があることを意味します。海上輸送作戦は非常に複雑で費用がかかり、台湾海峡には多くの機雷があることを考えると、中国軍にとって非常に困難となるでしょう。

第二に、台湾は山岳地帯が多く、防御がしやすい地形です。これは、中国軍が台湾に上陸したとしても、台湾軍に阻止される可能性があることを意味します。台湾軍は、近年、強力な軍事力を構築してきました。台湾は、米国から最新の武器や装備を輸入しており、多くの兵士が訓練を受けています。

台湾最高峰 玉山(3,952m) 富士山より高い

第三に、米国は台湾の防衛にコミットしており、中国が台湾に侵攻した場合は米国が介入する可能性があります。これは、中国軍が台湾に侵攻するリスクを高めます。米国は世界最強の軍隊を有しており、中国軍と戦う準備ができています。

第四に、台湾は世界の半導体サプライチェーンの重要な部分であり、台湾への攻撃は世界経済に大きな影響を及ぼす可能性があります。これは、中国政府が台湾への攻撃を躊躇させる要因となる可能性があります。台湾は、世界最大の半導体製造国の1つであり、半導体はスマートフォン、コンピューター、その他の電子機器に不可欠です。台湾への攻撃は、世界の半導体供給に混乱を引き起こし、経済に壊滅的な影響を及ぼす可能性があります。

これらの要因により、中国の台湾侵攻は非常に困難でリスクの高いものとなります。中国政府は、侵攻の潜在的なコストと利益を慎重に検討する必要があるでしょう。

ただし、だからといって、中国による台湾に対する武力侵攻がないという結論にはなりません。中国による台湾併合は、習近平にとって政治的に大きな意味を持つ可能性があります。習近平は、中国共産党の最高指導者であり、2012年から中国を統治しています。習近平は、中国を復活させ、世界の主要な強国にすることを約束しています。

中国が台湾を併合すれば、習近平の政治的野心を達成する上で大きな前進となるでしょう。台湾は、人口2,300万人を超える、豊かで民主的な島国です。台湾の併合は、中国に大きな領土と経済的利益をもたらすでしょう。また、中国の軍事力と影響力を世界に示すこともできます。

習近平

ウクライナ戦争も、プーチンの政治的野心を満たすという側面も大きかったとみられます。政治的野心のほうが、侵攻の難しさを上回れば、習近平も侵攻を決断するかもしれません。台湾は、中国の侵攻をくいとめることができるかもしれませんが、それにしても現在のウクライナのように、甚大な被害を受けることは免れないでしょう。

それは、できるなら避けるべきです。戦争によって、大きな被害を受ければ、建物やインフラなどは復旧できますが、戦争で亡くなった人々は戻ってきません。

いかなる国も軍事力なしに独立を維持することは困難です。軍事力は、攻撃から身を守り、領土と国民を保護するために必要です。また、他の国との交渉の強みにもなります。

台湾は、中国の脅威に直面しているため、強力な軍隊を維持することが不可欠です。中国は台湾を自国の領土の一部と主張しており、武力を使って台湾を「統一」することを辞さない姿勢を示しています。台湾は武力で自国を守る準備をする必要があります。

台湾はまた、他の国との関係を強化する必要があります。台湾は米国、日本、オーストラリアなどの国と緊密な関係を築いています。これらの関係は、台湾を中国からの侵略から守るのに役立ちます。

軍事力と強力な外交関係は、台湾が独立を維持するために不可欠です。日台は外交面では、連携を強めつつありますが、台湾への防衛装備品の供与や軍事訓練などはあまり進展していません。

日本の防衛装備品の輸出には、制約があります。日本の輸出管理制度である「戦略物資等の輸出 管理」に基づき、日本政府は、輸出品目や輸入国によって厳しい輸出許可の審査を行っています。

さらに、日本の憲法9条によって、自衛隊は自衛のために存在するとされており、他国に対する攻撃を行うことはできません。そのため、軍事訓練なども自衛隊の能力を向上させるためのものであり、他国に対する攻撃のためのものではありません。このような制約があるため、日本の軍事協力は慎重な審査や手続きを経ることになり、進展が遅れがちです。

台湾が軍事危機に直面した場合、日本に直接的な影響が及ぶ可能性があります。その影響には、次のようなものがあります。
  • 地理的に近いため、日本の領土や国民が攻撃を受ける可能性があります。
  • 台湾の海峡は、日本のエネルギーや物資の輸送にとって重要なルートです。海峡が封鎖されると、日本の経済に大きな影響を与える可能性があります。
  • 台湾危機は、東アジアの安全保障環境に大きな影響を与える可能性があり、日本はこれに巻き込まれざるを得なくなる可能性があります。
日本政府は、このような事態に備えて、台湾と防衛協力を強化しています。また、台湾海峡の平和と安定を維持するために、国際社会と協力していく姿勢を表明しています。ただ、まだまだ十分ではありません。

自衛隊は、憲法第9条によって、他国に対する攻撃を禁止されています。しかし、自衛隊は、日本の領土、領海、領空を攻撃された場合にのみ、武力による反撃を行うことができます。これは、個別的自衛権と呼ばれています。また、日本が攻撃されていない場合でも、同盟国が攻撃された場合に、同盟国を守るために武力行使を行うこともできます。これは、集団的自衛権と呼ばれています。

2014年、日本政府は集団的自衛権の行使を容認する解釈を変更しました。これにより、自衛隊は、同盟国が攻撃された場合、より積極的に武力行使を行うことができるようになりました。しかし、自衛隊は、攻撃の必要性、攻撃の手段の相当性、攻撃の目的の正当性という3つの要件を満たす必要があります。

こういう制約はありますが、法律の解釈を変更したり、運用を弾力化するなどして、日本から、台湾への武器や装備を輸出を容易にし、台湾軍兵士を訓練できる体制を整えるべきです。

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2023年5月11日木曜日

中国、外資系コンサル摘発強化 「機微な情報」警戒―【私の論評】機微な情報の中には、実は中国の金融システムの脆弱性が含まれる可能性が高い(゚д゚)!

中国、外資系コンサル摘発強化 「機微な情報」警戒

習近平主席


 中国の国家安全当局が、外資系コンサルティング会社や調査会社の摘発を活発化させている。米欧が対中抑止のために、コンサル会社を使って中国の機密情報を不正に入手しているという見方を強めているためだ。習近平政権は、7月に改正反スパイ法の施行を予定するなど「国家安全」の強化を急いでおり、中国でビジネスを行う外資企業は懸念を強めている。

 中国メディアは11日までに、中国の国家安全機関が、米ニューヨークと中国・上海に拠点を置くコンサルティング会社「凱盛融英(キャップビジョン)」の中国国内の拠点を調査したと報じた。同社の従業員が共産党や政府機関、国防企業の関係者などと接触し、高額な報酬を渡して中国の「デリケートなデータ」を得ていたと伝えた。

 中国国営中央テレビは、「海外の組織」がコンサル会社などを使い、「わが国の重点分野の国家秘密や情報を盗み取っている」という当局の見方を強調した。

 ロイター通信によると、3月には米企業調査会社「ミンツ・グループ」の北京事務所が家宅捜索を受け、4月には米コンサル会社「ベイン」の上海事務所が従業員の聴取を受けている。外資系コンサル会社などへの摘発をキャンペーン的に進めているもようだ。

 中国外務省の汪文斌(おう・ぶんひん)報道官は9日の記者会見で、キャップビジョンへの調査について「正常な法執行であり、業界の健全な発展を促し、国家の安全と発展の利益を守ることが目的だ」と主張した。

 コンサル会社や調査会社は、企業が事業判断を行うのに必要な現地情報を収集している。その中には軍事関連など政権にとって機微な情報も含まれているとみられ、こうした情報が米国などに流れることを当局は警戒しているもようだ。

 習政権は、米国など西側諸国との対立長期化を視野に入れ、「国家安全」を重視する姿勢を強めている。7月1日に施行される改正反スパイ法は、スパイ行為の定義を広げており、当局の恣意(しい)的な判断で外国人も摘発対象になる可能性が増すと懸念されている。

 3月には、中国の当局者や企業幹部と交友が深かったアステラス製薬の現地法人幹部が、反スパイ法などに違反した疑いで北京で拘束された。

 習政権は「ゼロコロナ」政策で傷んだ中国経済を回復させるため、外資企業の呼び込みも同時に進めているが、北京の日系企業幹部は「安心して新規投資ができる状況ではない」と困惑する。

■中国の反スパイ法 習近平政権が2014年に施行した。今年4月には中国の立法機関、全国人民代表大会(全人代)常務委員会が反スパイ法の改正案を可決し、7月1日に施行することが決まっている。現行法はスパイ行為の定義を「国家機密」の提供などとしているが、改正法では「国家の安全や利益に関わる文献やデータ、資料、物品」の提供、窃取、買い集めも盛り込んだ。「国家安全」の定義はあいまいなため、当局の恣意的な摘発がさらに増えることが懸念されている。


【私の論評】機微な情報の中には、実は中国の金融システムの脆弱性が含まれる可能性が高い(゚д゚)!

中国の国家安全当局が摘発している外資系コンサルティング会社や調査会社は、主に以下の分野の機微な情報を入手していると考えられています。

  • 軍事関連:軍事技術、兵器システム、軍事戦略など
  • 先端技術関連:人工知能、半導体、量子技術など
  • 経済関連:経済政策、企業情報、貿易情報など
  • 政治関連:政府機関の内部情報、政権の政策方針など

これらの情報は、中国の安全保障や経済に大きな影響を及ぼす可能性があるため、中国政府は機密扱いしています。しかし、米欧のコンサルティング会社は、中国の企業や政府機関と取引する際に、これらの機密情報を不正に入手しているという疑いを持たれています。

具体的な事例としては、2022年に中国の国家安全当局が摘発した米系コンサルティング会社「ベイン・アンド・カンパニー」が挙げられます。ベイン・アンド・カンパニーは、中国の通信大手・華為技術(ファーウェイ)の内部情報を不正に入手したとして、中国政府から罰金を科されました。

中国政府は、外資系コンサルティング会社や調査会社による機密情報の不正入手に対して、厳しい取り締まりを行っています。今後も、このような摘発が活発化していくと考えられます。

ただ、中国の軍事技術や先端技術が欧米由来であるため、進展度合いに凸凹があります。たとえば、中国はステルス戦闘機や弾道ミサイルなどの最先端兵器の開発に成功したようですが、対潜戦争や電子戦などの分野では依然として欧米に遅れをとっています。

対潜戦争は、潜水艦を探知、追跡、撃沈する能力を必要とする複雑な分野です。中国海軍は、この分野で経験が不足しており、必要な能力を獲得するために努力しています。電子戦は、敵の電子機器を妨害または無効にする能力を必要とする分野です。中国海軍もこの分野で経験が不足しており、必要な能力を獲得する必要があります。

ロサンゼルス級原子力潜水艦の上空を飛行するオライオン対潜哨戒機

対潜戦は、海洋の戦いでの勝敗を決める決定的な要素です。電子戦はすべての戦いでの勝敗を決める決定的な要素です。

中国は軍事技術の分野で急速に進歩していますが、欧米に追いつくにはさらに時間がかかります。すでに確立された研究をもとに開発は進んでいるものの、次世代の研究は欧米から比べると遅れている可能性があります。

いわゆる先端技術もこれと似たような状況にあると考えられます。このようなことから、欧米が中国から軍事技術や先端技術を手に入れるというよりは、どの段階にまだ達したかという情報を入手している可能性はあります。

私自身は、軍事・先端技術情報よりも、経済関連に関しての情報に注目しています。

現在中国は国際金融のトリレンマに直面しています。国際金融のトリレンマとは、金融政策の独立性、為替相場の安定性、資本移動の自由化の3つは、同時に達成できないというものです。正式名称は、不可能の三角形(Impossible Trinity)です。米国の経済学者であるロバート・マンデルとアラン・テイラーによって提唱されました。これは、経験則によっても、数学的にも確かめられています。

中国は、金融政策の独立性と為替相場の安定性を重視しているため、資本移動の自由化を制限しています。しかし、資本移動の自由化が制限されていることで、中国の金融システムは脆弱になっています。


中国が独立した金融政策を実施できないことを示す具体的な兆候がいくつかあります。1つの兆候は、中国人民銀行が為替レートを安定させるためにしばしば介入していることです。これは、人民銀行が為替レートを操作する能力に制限があることを示しています。もう1つの兆候は、中国人民銀行が金利を引き上げることに消極的であることです。これは、人民銀行がインフレを抑制する能力に制限があることを示しています。

先程述べたように、国際金融のトリレンマにより、国境を越えて資本が自由に移動できる場合、中央銀行は為替レートの安定、低インフレ、金融政策の独立の3つをすべて達成することはできません。

これは、中国の金融システムの脆弱性を高める可能性があり、中国人民銀行が経済の安定を維持するための十分な柔軟性を持たないことを意味しています。

たとえば、中国人民銀行がインフレを抑制しようとする場合、為替レートの安定化や金融政策の独立を犠牲にすることになります。これは、中央銀行が金利を引き上げると、国内の金利と世界的な金利の差が生じ、資本が国内に流入する可能性があるためです。資本流入は、為替レートの上昇と金融政策の独立の喪失につながる可能性があります。

この脆弱性は、中国の金融システムがショックやストレスにさらされた場合に、金融危機につながる可能性があります。たとえば、米国が中国に制裁を課した場合、中国人民銀行は為替レートを安定させるために大量のドルを購入することを余儀なくされる可能性があります。これは、中国人民銀行の外貨準備を枯渇させ、金融危機につながる可能性があります。

さらに、中国人民銀行が金利を引き上げることに消極的であれば、インフレが制御不能になる可能性があります。これは、中国の経済成長の減速と金融危機につながる可能性があります。

全体として、国際金融のトリレンマにより、中国人民銀行が独立した金融政策を実施できないことは、中国の金融システムの脆弱性を高める可能性があります。この脆弱性は、中国の金融システムがショックやストレスにさらされた場合に、金融危機につながる可能性があります。

米国は、中国の金融システムの脆弱性を把握し、金融制裁をより効果的にするために、米欧のコンサルティング会社等による金融システムに関する機密情報の不正入手を行う可能性があります。これは、諜報活動の一般的な手法であり、米国が過去に使用した手法でもあります。

中国は、米国が過去にサイバー攻撃やスパイ活動を通じて中国の機密情報を盗んだ実績があるため、米国が中国の金融システムに関する機密情報を不正に入手する可能性を懸念していると考えられます。

全体として、中国は米国が中国の金融システムに関する機密情報を不正に入手する可能性を懸念しており、それに対処するための措置を講じています。その一つが、上の記事にも述べられているように、改正反スパイ法です。


改正法では「国家安全」の定義はあいまいなため、当局の恣意的な摘発がさらに増えることが懸念されています。

改正反スパイ法に関しては、当局の恣意的な摘発の問題が指摘されることが多いですが、それだけではなく中国での投資環境に悪影響を及ぼす可能性があります。

「国家安全」の定義があいまいなため、当局は、「国家安全」を理由に、企業や個人を恣意的に摘発することができる可能性があります。これは、投資家や企業にとって大きな不確実性を生み、中国への投資を思いとどまらせる可能性があります。

また、改正反スパイ法は、中国の金融システムや市場の不透明性を高める可能性もあります。これは、投資家にとってリスクが高まり、投資を思いとどまらせる可能性があります。

最後に、改正反スパイ法は、中国の国際的な評判を傷つける可能性もあります。これは、中国への投資や貿易を思いとどまらせる可能性があります。

全体として、改正反スパイ法は、中国での投資環境に悪影響を及ぼす可能性があります。投資家や企業は、これらのリスクを認識し、中国への投資を慎重に判断する必要があります。

これだけ弊害がありながら、中国政府が外資系コンサルタントの摘発を強化するのは、いくつか理由があるのでしょうが、やはり中国の金融システムの脆弱性を隠したいという意図もあるのではないでしょうか。それだけ、中共はこの脆弱性を表には出したくないのではないかと思われます。

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