2023年9月25日月曜日

まさかの「岸田減税」あるか?田崎史郎氏が“爆弾発言”、木原誠二氏「やりゃいいんだよ」―【私の論評】保守派の願いを叶えよ!岸田首相は消費税減税を(゚д゚)!

まさかの「岸田減税」あるか?田崎史郎氏が“爆弾発言”、木原誠二氏「やりゃいいんだよ」

まとめ
  • 岸田政権は、野党の減税攻勢に対抗するため、経済対策で減税を検討している。
  • 田崎史郎氏や木原誠二氏の発言を根拠に、所得税や消費税の減税が有力視されている。
  • ネット世論からは冷ややかな声も上がるが、本格的な減税となれば、野党側は争点を失うことになる。
山形産のサクランボを試食する岸田首相

 岸田政権は、ガソリン税のトリガー条項発動や消費税率の引き下げなど「減税」を訴える野党に対抗するため、経済対策で「減税」を打ち出す可能性がある。

 政治ジャーナリストの田崎史郎氏は、岸田首相周辺から聞いた話として、所得税や消費税の減税を検討していると発言した。また、木原誠二前内閣官房副長官も、減税をすべきだと主張している。

 しかし、ネット世論からは「選挙前の小手先」や「やるやる詐欺」といった冷ややかな声も上がっている。

 もし、岸田政権が本格的な減税を打ち出せば、衆院解散に突入した場合、野党側は数少ない争点を失うことになる。また、トリガー条項発動などガソリン減税に踏み出せば、長らく要求してきた国民民主を連立政権に加えるシナリオが一段と現実味を増す。

 果たして、岸田政権は「減税サプライズ」を打ち出すのか。その出方が注目される。

【私の論評】保守派の願いを叶えよ!岸田首相は消費税減税を(゚д゚)!

まとめ
  • 保守主義とは、既存の制度や秩序を守る思想である。
  • 保守派は、消費税減税を実現させるよう、岸田首相に求めている。
  • 消費税減税は、既存の制度や秩序を守るためにも重要である。
  • 消費税減税は、日本経済を活性化させるためにも重要である。
  • 岸田首相は、保守派の願いを叶え、日本の未来を守るために、消費税減税を実現すべきである。

増税のイメージがついてしまった岸田首相がやるべきことは・・・・

増税のイメージがついてしまった岸田政権が起死回生策を実行するつもりなら、減税サプライズが最も効果があると考えられます。所得税減税もありですが、最大のものはやはり消費税減税でしょう。これに関しては、このブログでは何度か掲載したことがあります。それらの記事のうちで、最近のもののリンクを以下にあげます。
政府からの「需要不足解消」はミスリード 望まれる政策は最後の「ひと押し」 増収分は減税で国民に還元を―【私の論評】消費減税は現状の日本で最も有効な政策!岸田首相は消費税減税で空前絶後の大サプライズを(゚д゚)!

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下にこの記事より一部を引用します。 

具体的には、消費税率を5%に引き下げることが効果的であると考えられます。消費税率を5%に引き下げることで、国民の可処分所得を約10兆円増加させることができます。

デフレから完全脱却していないうえ、さらにエネルギー資源が高騰している現在、消費税減税が行われれば、かなりの効果があると考えられます。

内閣府の発表では、潜在GDPの計算方法の見直しによって、需要不足が解消されたように見せかけたり、財務省やその影響にある政治家や専門家たちは、国民が減税まで買い控えるという理屈で、消費税減税に反対しています。

岸田首相はこのような言説には惑わされず、消費税減税を実行すべきです。日本では、過去には消費税は増税される一方で、減税は一度もありません。安倍首相でさえ、三党合意の壁に阻まれ、二度消費税の増税を延期し、財務省にはじめて楯突いた首相として評価されましたが、最終的には在任中に二度の消費税増税をせざるを得ませんでした。

ここで、もし岸田首相が消費税減税に踏み切れば、大サプライズとして、国民や市場関係者などの評価は高まるでしょう。これは、大サプライズで終わらず、日本はデフレから完全脱却して、再び成長軌道にのることでしょう。
そうして、この記事では以下のように締めくくりました。
現状では、百田新党の動きや、維新の躍進、国民の動きもありますし、岸田政権が続投しても、大きな悪影響はないと思います。それよりも、来年の総裁選で、あり得ないような人が総理大臣になって日本を毀損することだけは避けたいところです。それに、大サプライズをした岸田首相なら、今後はまともな政策を実施することが期待できると思います。

岸田首相が政権の安定と継続を願うなら、消費税減税こそ最大の手立てです。そうして、消費税減税はEU諸国などでもその効果は確かめられています。減税という大きな括りでは、米国をはじめとする多数の国々で、その効果は確かめらています。

保守主義の本質は、既存の制度や秩序を守り、社会の安定を維持することです。そのため、改革は必要に応じて行うものの、その際には既存の制度や秩序を壊さないように、慎重に進めることを重視します。要するに体操競技でいうところの、ウルトラCはしないということです。

具体的には、以下の3つの要素が保守主義の基本的な考え方として挙げられます。
  • 漸進主義:改革は、既存の制度や秩序を壊さないように、慎重に進めるべきである。
  • 実証主義:改革は、すでに確かめられた方法で実現すべきである。
  • 中庸:改革は、過激なものではなく、バランスのとれたものであるべきである。
女子体操

もちろん、保守主義にもさまざまな立場があり、必ずしもすべての保守派がすべての政策に反対するわけではありません。しかし、一般的には、上記のような考え方を共有しているといえるでしょう。

こうした正統的な保守主義の立場からすれば、LGBT法の拙速な成立は、これに反するものです。これを一つをもっても、自民党は保守政党とはいえません。他にも、自民党が保守政党とは呼べない理由はいくつもあります。

ただ、保守主義の立場からいえば、岸田政権がLGBT法成立の過程で行った拙速さは許さないものの、現状では岸田政権を継続しつつ、改革をすすめていくというのが、正統な行き方だと思います。しかし、その前提として、少なくともすでに効果が確かめられている、消費税減税などの減税策を実行すべき、というのが多数の保守派の本音だと思います。

さて、保守派のこうした願いを、岸田首相は、今年の秋に15兆円の補正予算と、消費税減税のサプライズで、叶えてくれるのでしょうか。

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2023年9月24日日曜日

ソロモン諸島 首相 “処理水の海洋放出にがく然” 国連で批判―【私の論評】中国の脅威に立ち向かう南太平洋諸国と日米とその同盟国の展望(゚д゚)!

ソロモン諸島 首相 “処理水の海洋放出にがく然” 国連で批判

まとめ
  • ソロモン諸島のソガバレ首相が、福島第一原発の処理水の海洋放出を批判
  • ソガバレ首相は、中国との関係を強めていることから、中国の立場を支持する形で批判
  • 日本は、処理水の安全性について科学的な根拠に基づいて説明を行い、放出を停止することはない旨を反論
  • この件は、日本と中国の外交関係においても影響を与える可能性がある
国連で演説するソロモン諸島ソガバレ首相

中国との関係を強めている南太平洋の島国、ソロモン諸島のソガバレ首相は、国連総会で演説し、福島第一原発の処理水の海洋放出を「がく然としている」と批判し、放出の停止を求めました。

ソガバレ首相は、ソロモン諸島が中国との関係を強めていることを踏まえ、中国を評価する一方で、日本政府の処理水海洋放出を批判しました。首相は、IAEAの報告書についても不十分だとしたうえで、安全であるなら日本で保管されるべきだと主張し、放出の停止を求めました。

これに対し、日本の代表は、日本政府は科学的な根拠に基づいて処理水の安全性を判断しており、人体や環境を脅かす水は放出していないと反論しました。

【私の論評】中国の脅威に立ち向かう南太平洋諸国と日米とその同盟国の展望(゚д゚)!

まとめ
  • ソロモン諸島の首相は中国との関係を強化しており、福島第一原発の処理水の海洋放出に対して中国の立場を支持する形で批判した。
  • ソロモン諸島は気候変動の影響を受けやすい小さな島国であり、中国からの資金援助に依存している可能性がある。
  • 日本と米国はソロモン諸島を含む南太平洋諸国が中国の影響下に入ることに懸念を抱いており、協力と連帯を強調して南太平洋地域の秩序を維持しようとしている。
  • 南太平洋諸国は自身の経済発展のために多角化やインフラ整備、貿易協定、教育の改善などの取り組みを検討すべきである。
  • 地域協力や健康の改善など、太平洋地域全体で協力し、共に持続可能な未来を築くべきである。
  • 中国の一帯一路イニシアティブは多くの国々に影響を与えており、南太平洋の島嶼国と日米同盟国にとっても新たな協力の機会を提供している。
ソガバレ首相は、2023年7月に中国の習近平国家主席と会談し、巨大経済圏構想「一帯一路」を称賛するなど、中国を評価しています。また、2022年には、ソロモン諸島と中国が安全保障協定を締結しています。これらのことから、ソガバレ首相が中国の立場を支持する形で福島第一原発の処理水の海洋放出を批判したと考えられます。

ソガバレ首相(左)と習近平主席(右)

ソガヴァレ首相が日本の福島第一原子力発電所の処理水の海洋排出を批判したことは、ソロモン諸島が中国との関係を強めていることから、政治的な動機があると多くの人が考えるでしょう。

処理水に関するIAEAの報告書は包括的なもので、海洋放出が人の健康や環境に与えるリスクはないとしまし。しかし、中国はこの報告書に批判的であり、ソガヴァレ首相が北京の主張を代弁しただけの可能性もあります。

一方、ソロモン諸島が気候変動の影響を受けやすい小さな島国であることも注目に値します。中国はソロモン諸島が気候変動に適応できるよう資金援助を行っており、ソガヴァレ氏はこの援助の見返りとして、福島原発事故など他の問題でも中国を支援しなければならないというプレッシャーを感じている可能性があります。

最終的に、福島原発事故に関するソガヴァレの立場を支持するかどうかは、ソロモン諸島の人々が決めることです。しかし、ソガヴァレ氏の批判がどのような政治的背景のもとでなされているのかを認識しておくことは重要だと考えます。

ソロモン諸島が中国の覇権の影響下に入る可能性について懸念を抱く一方で、私たちは新たな協力と希望の道も探る必要があります。インド太平洋地域における中国の台頭は確かに注目すべきですが、この挑戦を共に乗り越え、未来を切り拓くために日本、米国、そしてその同盟国は力を合わせるべきです。

ソロモン諸島が中国の影響下に入れば、日本、米国、およびその同盟国にとって地政学的な危機が生じるかもしれませんが、私たちはその前に立ち向かう覚悟を持たなければなりません。中国の影響力が拡大する中、私たちは協力と連帯を強調し、太平洋地域における自由で開かれた秩序を維持するために行動しなければなりません。

ソロモン諸島が中国に支配されれば、日本の経済と安全保障にとって重要な海上交通(SLOC)が脅かされるでしょう。しかし、私たちはこの危機を克服し、新たな協力の機会を見出すことができます。日米とその同盟国は、ソロモン諸島と協力し、太平洋地域の繁栄と安全を支える役割を果たすことができるのです。

ソロモン諸島が中国の基地となる可能性については懸念がありますが、私たちは太平洋の平和と安定を守るために共に努力すべきです。我々は、太平洋地域における安全保障協力を一層強化し、南太平洋島嶼国に安全保障上の支援を提供することによって、危機に対処できるのです。

南太平洋の島々は、ミクロネシア、メラネシア、ポリネシアの3つに分類されている

また、私たちは南太平洋島嶼国との外交関係を深化させ、安全保障と独立へのコミットメントを再確認する必要があります。気候変動や経済成長など、太平洋島嶼国の発展にも協力し、共に持続可能な未来を築く手助けを行うべきです。

最後に、ソロモン諸島と他の南太平洋島嶼国は独自の選択を持つ主権国家です。私たちは彼らにどちらか一方を選ばせるのではなく、相互尊重と協力に基づく関係を築くことに焦点を当てるべきです。太平洋の未来は、私たちが共に築くものであり、新たな協力と希望と繁栄のチャンスが広がっています。

南太平洋諸国の繁栄のための具体的な方法は以下のような事が考えられます。

1. 多角化された経済:観光、漁業、農業のみに依存せず、金融サービス、軽工業、テクノロジーなど他の分野にも投資し、税制優遇措置や投資を活用する。

2. インフラ整備:道路、港湾、送電網などのインフラを整備し、貿易やビジネスの発展を促進する。

3. 貿易協定:主要経済国との自由貿易協定を交渉し、自国の商品やサービスの市場アクセスを拡大する。

4. 教育の改善:専門学校、大学、大学院の増加により、現代的なスキルや知識を習得できる教育体制を整備し、奨学金や交換プログラムを提供する。

5. 民間企業の促進:お役所仕事、汚職、投資障壁の削減を通じて、起業や事業運営を容易にし、マイクロファイナンスや中小企業向け融資を支援する。

6. 持続可能な産業:漁業、林業、クリーンエネルギー、観光業など持続可能な産業の発展を推進し、自然の利点を生かす。

7. ガバナンス改革:汚職削減、透明性と効率性向上、独立した司法、自由な報道、民主的制度の強化により、経済への信頼を高める。

8. 地域協力:政策、インフラ、規制について協力し、経済を統合し、ブロック交渉を通じて影響力を持つ。

9. 健康の改善:基本的な医療、衛生、公衆衛生対策を強化し、生産性を向上させ、経済的損失を減少させる。

これらの取り組みには欧米の同盟国と太平洋諸国政府の協力と改革への意欲が必要です。適切な政策と協力により、これらの国々は繁栄する可能性があります。

以上のようなノウハウは、日米とその同盟国には豊富ですし、実績もありますが、そもそも中国の一人あたりのGDPは一万ドルを少し超えた程度(日本、韓国、台湾よりも低い)であり、社会の安定性に欠ける中国には、そのようなノウハウも実績も乏しいです。だからこそ、中国は一帯一路などで多くの国々から不興を買っているとみられます。

ソロモン諸島の位置(赤枠)

これは、別な方向からみれば、中国によって、南太平洋の島嶼国と日米とその同盟国がともに繁栄する機会があることを、浮き立たせたともいえます。そうしてこうしたことを実施しなければ、南太平洋の危機、インド太平洋地域の危機につながることも浮き彫りにしたといえます。

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2023年9月23日土曜日

中国の軍備増強に対抗して、アメリカは“水面下での対抗策”をここまで進めていた!―【私の論評】IUSS(統合海底監視システム)の強化がインド太平洋地域の安保に革新をもたらす(゚д゚)!

中国の軍備増強に対抗して、アメリカは“水面下での対抗策”をここまで進めていた!

まとめ
  • 米国と中国は、ウクライナ情勢や台湾問題などについて協議したが、対立は深まるばかりである。
  • 中国とロシアは、米国主導の西側に対抗するため、関係を深めている。
  • 米国は、中国の軍事力増強に対抗するため、冷戦時代の海底諜報プログラムを復活させた。
ニューヨークで会談した米国の国務長官ブリンケンと中国の韓正国家副主席

 米国の国務長官ブリンケンと中国の韓正国家副主席は、9月18日に国連総会に合わせて米ニューヨークで会談し、米国は中国に対し、ウクライナに侵攻しているロシアへの軍事支援を控えるよう再度求めた。

 両国は数週間後に高官協議を再開し、対話を続けることで一致したと報じられている。同日、中国の外相王毅はロシアの外相ラブロフとモスクワで会談し、プーチン大統領と北朝鮮の金正恩総書記の首脳会談や米国の安全保障政策について協議したと言われている。

 また、米国が中国に対抗するために冷戦時代の統合海底監視システム(IUSS)を再開し、最新化し、さらに海洋の監視にAIソフトウェアを活用していることも報じられている。

 一方で、中国とロシアの関係は緊密化し、両国は米国主導の西側に対抗する姿勢を強化しており、世界再編を共同で推し進め、途上国での影響力を拡大しようとしている。現時点では正式な軍事同盟はないものの、大きな衝突があればその可能性もあるとされている。

COURRiER Japon

 この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になってください。

【私の論評】IUSS(統合海底監視システム)の強化がインド太平洋地域の安保に革新をもたらす(゚д゚)!

まとめ

  • IUSS(統合海底監視システム)は、米国が旧ソ連の潜水艦を監視するために設置された海底諜報プログラムで、海底に固定されたケーブルを使用して潜水艦の航跡や通信を監視する。
  • 米国国防総省の2023年予算書によれば、IUSSの近代化のために約1兆円の予算が割り当てられており、海底ケーブルの更新や監視船の改良、AIソフトウェアの開発などに充てられる。
  • IUSSの最新化により、高精度で広範囲の監視が可能になり、中国の潜水艦をより正確に位置特定できるようになる。
  • IUSSの強化により、インド太平洋地域においても安全保障が強化されることになる。
IUSSの強化は、インド太平洋地域の安全保障に大きな影響を与え、日本とアメリカの協力を通じて地域の平和と安定を維持し、中国の海洋進出に対抗するための重要な措置となります。


これは「統合海底監視システム(Integrated Undersea Surveillance System)」の略で、1950年代に米国が旧ソ連の潜水艦を監視するために設置した海底諜報プログラムです。海底に固定されたケーブルを使って、潜水艦の航跡や通信を傍受するものです。

IUSSの一環で用いられるとみられる水中ドローン

また、米国国防総省の2023年会計年度予算書によると、海軍の「統合海底監視システムの強化」のための予算は、106億ドル(日本円では1兆超)とされています。この予算は、海底ケーブルの更新、監視船の改良、AIソフトウェアの開発などに充てられるとされています。
米国は、2022年から2023年にかけて、IUSSの海底ケーブルの更新や、監視船やドローンの改良などを進めているとされています。これにより、米国は以下の点で軍事的に有利になると考えられます。以下に、IUSSの最新化による具体的な影響について、解説します。

高精度で広範囲の監視が可能になる

IUSSの最新化により、海底に固定されたケーブルの性能が向上し、より高精度で広範囲の監視が可能になります。これにより、中国の潜水艦が海底に潜んでいる場合でも、米国はより正確に位置を特定できるようになるでしょう。

より早く潜水艦の位置を特定できるようになる

IUSSの最新化により、海底に固定されたケーブルの設置場所が増え、また、より高性能なセンサーが搭載されるようになると考えられます。これにより、中国の潜水艦が海上に出てきた時点で、米国はより早く位置を特定できるようになるでしょう。

潜水艦の通信をより確実に傍受できるようになる

IUSSの最新化により、海底に固定されたケーブルの性能が向上し、また、より高性能なセンサーが搭載されるようになると考えられます。これにより、中国の潜水艦の通信をより確実に傍受できるようになるでしょう。

これらの利点により、米国は中国の潜水艦戦力をより効果的に監視・抑止できるようになると期待されます。

これについては、以下のロイターの記事が詳しく報道しています。

U.S. revives Cold War submarine spy program to counter China

IUSSの海底ケーブルは、北極海から南極海までの世界中の海底に設置されています。特に、中国の潜水艦戦力が活発な太平洋や大西洋の海底に重点的に設置されていると考えられます。

具体的には、以下の海域に設置されているとされています。
  • 北極海:グリーンランド海、ノルウェー海、バーents海
  • 大西洋:北大西洋、地中海、インド洋
  • 太平洋:北太平洋、南太平洋
IUSSの海底ケーブルは、海底に固定されたセンサーと、海中を航行する監視船によって構成されています。センサーは、潜水艦の航跡や通信を傍受する役割を果たし、監視船は、センサーで収集したデータを収集・分析する役割を果たします。

IUSSの海底ケーブルの設置場所は、米国政府の機密情報となっており、具体的な位置は明らかにされていません。しかし、海底ケーブルの設置場所は、中国の潜水艦戦力の脅威を踏まえて決定されていると考えられます。

中国もまた、独自の海底監視システムを構築しています。このシステムは「グレート・アンダーウォーター・ウォール」と呼ばれており、南シナ海を中心に海底ケーブルが敷設されています。このシステムは、音声のみを拾うものとみらています。

米国と中国の海軍力競争は、今後も激化していくと考えられています。

日本は、2022年に「海上監視体制強化事業」を開始し、海底監視能力の強化を進めています。この事業では、海底ケーブルや無人船などの新たな技術を活用した海底監視システムの整備が計画されています。

海底ケーブルを用いた海底監視システムは、米国のIUSSと同様に、海底に固定されたケーブルを使って、潜水艦の航跡や通信を傍受するものである。電磁波を用いた海底監視システムは、海中の電磁波を観測することで、潜水艦の位置や航跡を特定するものです。

日本政府は、これらの新しい海底監視システムを活用することで、中国の海洋進出に対抗し、日本の海洋権益を守る体制を整えていきます。

なぜ、日米や中国が海底監視システムを構築するかといえば、それは現代海戦の主役は潜水艦だからです。

艦艇には二種類しかありません。水上艦艇と潜水艦です。水上艦艇は、監視衛星などでも簡単に発見できます。水上艦艇は、大型空母であっても、現代海戦においては、ミサイルの大きな目標に過ぎません。発見されれば、すぐに撃沈されます。無論対抗措置はありますが、ミサイルで飽和攻撃などされてしまえば、防ぎようはありません。

中国のミサイルに攻撃される米空母(想像画)

しかし、潜水艦は違います。そもそも、現在の監視衛星は、水上艦艇を発見することはできますが、水中の潜水艦は発見できません。無論、哨戒機や哨戒挺は特定の広さの海域に予め潜水艦が存在するとわかっている場合は、これを発見することはできますがそうでない場合は、難しいです。

潜水艦が水中に潜み、駆動装置などを駆動させず水中に潜んだり、潮流に乗って移動している場合は、これは発見するのはかなり難しいです。ただし、駆動しはじめると、音がでたり、海水温が微妙に変化したり、微弱な電磁波がでたりするので、これを発見することができます。

しかし、広大な海で、捜索範囲が限られている、哨戒機や哨戒挺でこれをすべて発見することは不可能です。だからこそ、海底監視システムが必要なのです。そうして、米国による海底システムの強化は、現在でも世界トップクラスの米国の対潜水艦戦争(ASW:Anti Submarine Wafare)をさらに高めることになり、中国の海洋進出をより困難にすることになります。

現代海戦の主役潜水艦 写真は日本の潜水艦「はくげい」

特に米国のIUSSの強化は、特にインド太平洋地域の地政学的景観に大きな影響を与える可能性が高いです。

中国は最近では、空母を建造したり、原潜を建造したりして、海軍力の増強を図ってきました。しかし、米国は大規模に艦艇を増やしたり、潜水艦を増やすことはしてきませんでした。海底監視システムを強化することを優先したのでしょう。

米国の海洋監視システム(IUSS)の強化は、インド太平洋地域に大きな影響をもたらすことが予想されます。IUSSは、海底監視だけではなく、海底地震や津波のモニタリング、違法漁業の取り締まりなど、多くの情報を提供しています。

日米安全保障協議委員会(「2+2」)共同発表では、日本と米国はインド太平洋地域へのコミットメントを強調し、地域の平和と安全、繁栄における日米同盟の重要性を再確認しています。IUSSの強化は、変化する安全保障の課題に適応し、同盟を現代化し、共同の能力を向上させるための重要な一環です。

IUSSはインド太平洋地域における安定を維持し、必要に応じて行動を起こすための協力の一環として位置づけられています。また、自由な通商と国際法の尊重、航行・上空飛行の自由なども再確認されています。

米国は東シナ海での中国の活動にも懸念を表明し、尖閣諸島や南シナ海における中国の不法な海洋権益に対しても強く反対しています。米国は、日米が協力し、インド太平洋地域で共有する安全、平和、繁栄に向けた取り組みにコミットしています。また、日本、米国、豪州、インドの「Quad(クアッド)」協力も非常に重要視しています。

IUSSの強化により、地域全体の安全保障が強化され、地政学的なバランスが改善され、私たちの未来に向けた希望がより一層高まることになるでしょう。

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2023年9月22日金曜日

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中国 掘削装置を尖閣周辺にえい航へ 日中中間線を大きく越える海域…政府関係者が危機感「外交問題に発展するだろう」

まとめ

  • 中国が尖閣諸島周辺海域に天然ガスなどを掘削作業装置(リグ)を運ぶと発表
  • リグを運ぶ海域は日中中間線からも大きく日本側に入り込んだ場所
  • 中国はこれまでにも一方的にガス田などを開発してきたが、今回はさらに強硬な措置
  • 中国政府は福島第一原発の処理水放出を批判しており、今回の措置は圧力を強める狙いか
  • 作業装置が設置された場合、日中間の緊張が高まる

天然ガスなどを掘削する作業装置(ドリルシップ型)リグ


 中国は、日本が実効支配する沖縄県尖閣諸島の周辺海域に、天然ガスなどを掘削する作業装置を運ぶと発表た。この海域は日中中間線からも大きく日本側に入り込んだ場所にあたり、日本政府は危機感を示している。

 中国はこれまでにも、日中中間線の付近で一方的にガス田などを開発してきたが、今回はさらに強硬な措置に打って出てきたと言える。日本政府は、中国の行動は「従来に比べてはるかに大胆だ」と警戒している。

 中国政府は、先月始まった福島第一原発の処理水放出を受けて日本政府への批判を強めてきたが、今回の措置は、日本政府への圧力を強める狙いもあると考えられる。

 もし、作業装置が尖閣諸島周辺に設置された場合には、日中間の緊張がさらに高まるのは必至だ。

この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になってください。

【私の論評】中国の挑戦に立ち向かう、安倍元首相の遺志を継ぐべき日本の決意(゚д゚)!

まとめ
  • 中国の挑戦に立ち向かう時が来た!
  • 習近平のナショナリズムと領土拡張主義に対抗せよ。
  • 安倍元総理のインド太平洋戦略を強化し、同盟を固めよう。
  • 岸田首相の防衛力増強に支持を示し、国の安全を守れ。
  • 我々保守派は国際社会で存在感を示し、日本の繁栄を守り抜こう。

最近中国の東シナ海における活動は、活発になってきており、先日も、中国が日本のEEZ内に海上ブイ設置したことが報道されたばかりです。これについては、このブログにも掲載しました。その記事のリンクを以下に掲載します。
中国、日本のEEZ内に海上ブイ設置 松野長官明らかに―【私の論評】日本の自信と強さ:中国の挑発に果敢に立ち向かへ(゚д゚)!


 詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事より日本がこれに対処すべき方法に関する部分を以下に引用します。

必要に応じて、中国の野望を物理的に拒絶するために自衛隊を適切に配置する覚悟が必要です。もうすでに、中国海軍が対処するのが難しい、ステルス性の高い潜水艦などは極秘裏に配置しているでしょう。これを示すエビデンスはありませんが、これが抑止力となって、中国の尖閣諸島での示威行動の拡大を抑制していると思います。そうでないと、もっとエスカレートしていた可能性は高いです。
海自の最新型潜水艦「白鯨」(SS514)
尖閣諸島に中国の民兵や漁民が頻繁に上陸したり、挙げ句の果に南シナ海のように実行支配をしていた可能性すらあると思います。

日本の潜水艦が尖閣諸島周辺に配備されていたとしても公表されていない可能性が高いです。中国の活動に関する情報を収集し、中国の野望を抑止し、日本の支配権を主張するために、あからさまな挑発を避けながら、この地域を積極的にパトロールしていると考える理由はたくさんあります。日本の潜水艦艦隊の能力は高く、このような秘密任務は標準的な作戦手順です。

これ以外にも、海保ではなく、海自の護衛艦を派遣したり、尖閣諸島に施設を構築したり、監視員を常駐させるなどのことも考えられます。これは最後の手段であるとも考えられてきましたが、もうこれを段階的に実施する時期にきたといえるかもしれません。強く反抗的な姿勢だけが、中国を攻撃的な行動から引き下がらせるでしょう。
最近、東シナ海での中国の活動が活発化しており、我々保守派はその挑戦に立ち向かうべき重要な岐路に立たされています。中国が日本のEEZ内に海上ブイを設置したことや、尖閣諸島周辺海域での天然ガスの掘削計画を発表したことは、我々にとって大きな警鐘です。この海域は日中中間線からも大きく日本側に入り込んでおり、日本政府は危機感を抱いています。

これに対する対策は、中国に対して日本の力を誇示する以外にないと思いますが、それにしても、この時期に中国がわざわざこのようなことをするには、それなりの背景があると思います。

まず、習近平は現在自らの権力を固めるため、ナショナリズムを煽っていることがあります。習近平は、国内の支持を集めるために、領土問題で自身を強く見せたいのでしょう。日本を威嚇することは、習近平が力の誇示をするには、もっと簡単な方法なのでしょう。

中国経済は最近、トランプ大統領から始まる、対中国制裁と自らの不始末のせいでかなり減速していますし、改善するにはかなりの時間を要しそうです。習近平は中国国民の気をそらすために危機を演出している可能性が高いです。日中対立を煽り、日本にその責任をなすりつけ、これで国民の敵愾心を煽るつもりかもしれません。中共の統治の正当性は、主に経済成長と繁栄の継続にかかっています。領土拡張主義は、強さと進歩のイメージを国民植え付ける印象操作ともみられます。

岸田首相は防衛費の倍増を表明しており、中国は日本の軍事力増強と米国等の他国との同盟強化の動きに反対しています。今、日本を威嚇するのは、日本が軍備を増強の動きを牽制するという意味もあるでしょう。

バイデン政権は、対中国政策ではトランプ路線を継承しています。これは、中国にとって脅威であり、中共は早期に彼の決意を試したいと考えているかもしれません。今押せば、バイデンは衝突を避けるために引き下がる可能性もあるとみているのかもしれません。その可能性がみられれば、中国はさらに強気にでるでしょう。

中国は軍事力を急速に拡大しています。彼らは新たな能力を手に入れ、その力を鍛え、誇示しようとしています。これを実行するには、中国の隣国であり、米国の同盟国である日本を威嚇するのは、もっともやりやすい方法なのでしょう。

中国共産党は、中国の領土支配に関する拡張主義的なビジョンを推進しています。現在他国が支配している領土であっても、「歴史的に中国領」であるとの根拠が全く薄弱な理由から、他国の領土を奪おうとしています。

以上のような背景があり、中国は東シナ海での行動を活発化させているとみられます。これは、日本の尖閣諸島などいくつかの島だけでは終わらないでしょう。私達は、中国の赤い脅威にどう対処すべきでしょうか。

結局のところ、軍事力や経済力の力しか信じていない中共に対して理想や理念を説いても無駄であり、それに対抗するには、安倍元総理が主張した「インド太平洋戦略」を強化するしかないのです。

安倍元総理

インド太平洋戦略とは、簡単に言ってしまえば、この地域に属する国々の同盟やパートナーシップを強化し、力のバランスによる平和を構築しようとするものです。これがあるからこそ、中国はインド太平洋地域で手前勝手な行動をやりたい放題ということはできないのです。

もし、これがなくて、日米同盟等やこの地域の国々と米国の二国間同盟やパートナーシップしかなければ、今頃中国はインド太平洋地域でやりたい放題で、とんでもないことになっていたかもしれません。

壮大な地政学的なビジョンに基づいた安倍元総理の先駆的な慧眼に今更ながら感謝したいです。

我々は彼の理念を実現し、中国の挑戦に立ち向かう覚悟を持ち続けるべきです。保守派として、我々は日本の安全と繁栄を守るために力を合わせ、国際社会における我々の存在感を示し続けるべきです。

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2023年9月21日木曜日

岸田首相が掲げる〝雇用と投資拡大〟の経済対策 目途の「真水15兆円」指示できるかがカギ、財務省色の濃淡も注目―【私の論評】岸田首相の経済対策、15兆円規模で実現か?保守派は警戒を怠るな(゚д゚)!

高橋洋一「日本の解き方」

まとめ
  • 岸田文雄首相は新たな経済対策を提案し、「物価高から国民を守り、賃上げと投資の拡大の流れを強化したい」と述べた。
  • 経済対策の中核は雇用創出と投資促進で、インフレ目標を設定して賃上げを実現する方針を採用すること。
  • 真の需給ギャップがマイナス3%(約15兆円)であるとの見方から、経済対策の規模は15兆円が必要。
  • 望ましい政策は、マクロ経済の視点からは柔軟で、政権が優先する分野に財政を投入すること。
  • 改造内閣では大きなメンバー変更はなく、15兆円の経済対策の実現が注目されており、財務省の影響や政策路線が焦点となる。
 岸田文雄首相は新たな経済対策について、「物価高から国民を守り、賃上げと投資の拡大の流れをより強いものとする総合経済対策にしたい」と発言した。経済対策の規模や内容、改造内閣の顔ぶれから、実際にはどのような政策が出てくるだろうか。

岸田首相

 岸田首相は物価高などに対応する経済対策を来月中をめどに取りまとめると述べ、「必要な予算に裏打ちされた思い切った対策とする」として、裏付けとなる補正予算案の編成を指示する考えを明らかにした。

 まず、賃上げしたいなら雇用を作らなければならない。なので、冒頭の発言は「物価高から国民を守り、雇用と投資の拡大」という表現が正しい。

 マクロ経済学の言葉でいえば、物価と失業率の逆相関関係を示すフィリップス曲線上で、最低の失業率と最低のインフレ率を示す「NAIRU(インフレを加速させない失業率)」を目指すということになる。

 そのなかで、インフレ率に対応するのがインフレ目標だ。この状態になれば、「インフレ率プラス1~2パーセント程度」の継続的な賃上げが実現しやすい。

 こうした経済状況は、需給ギャップ(供給サイドの潜在GDPと、実際の需要サイドのGDPの差)がない状態で達成される。もちろん、ここでの需給ギャップは本コラムで筆者が繰り返して指摘しているもので、内閣府などが出している数字とは異なるものだ。

 先日の本コラムで、真の需給ギャップはマイナス3%(約15兆円)程度あるとした。この見方からいえば、マクロ経済的に必要な経済対策は、需給ギャップを埋める真水15兆円だ。

 こういうと、「民間需要が出てくるので、公的需要ですべてを埋める必要はない」という意見も出てくるだろう。もっとも、民間需要をどれだけ誘発できるかは不確定な要素が大きいので、安全サイドに立てば需給ギャップを景気対策規模の目途にした方がいい。先日の本コラムで、真の需給ギャップはマイナス3%(約15兆円)程度あるとした。この見方からいえば、マクロ経済的に必要な経済対策は、需給ギャップを埋める真水15兆円だ。

 その内容については、マクロ経済の観点からは何でもいい。ミクロ経済からみて、時の政権が重視するところに財政を充てればいいだけだ。

 岸田首相は、今回の改造を「変化を力にする内閣だ」とも語った。具体的な分野としては、ガソリン対策、災害対策、15兆円規模のGX(グリーントランスフォーメーション)投資、異次元少子化対策などを挙げた。

 今回の改造では、財務相、経済産業相、国土交通相、官房長官ら、具体的な分野のほとんどが留任閣僚なので、改造の顔ぶれによる変化はあまりないだろう。

 あとは、岸田首相が15兆円規模の対策を指示できるかどうかだ。対策全体の規模はまさに首相の判断によるところが大きい。木原誠二氏の後任で新たに官房副長官となった同じ財務省出身の村井英樹氏がどのようにアドバイスするかも注目だ。

 緊縮路線なのか、積極路線なのか、財務省色がどの程度なのかもわかるだろう。

【私の論評】岸田首相の経済対策、15兆円規模で実現か?保守派は警戒を怠るな(゚д゚)!

まとめ
  • 岸田首相が15兆円規模の経済対策を支持できるかどうかは、岸田首相の経済政策の方向性と、党内勢力や支持率の影響を受ける。
  • 岸田首相が経済対策を行ったとしても、その後の財政再建に向けて増税に踏み切る可能性が高い。
  • 国民は、現政権がいつでも増税を検討していることを意識し、警戒しておくべきである。
高橋洋一氏は上の記事で「緊縮路線なのか、積極路線なのか、財務省色がどの程度のかもわかるだろうと」としています。岸田首相が15兆円規模の対策を支持できるかどうかに、焦点をあてています。

自民党世耕幹事長

この点については、私自身は、世耕幹事長の発言等から、意外と実現する可能性は高いのではないかと思います。以下にその発言の内容を掲載します。
政府がまとめる経済対策について、自民党の世耕参議院幹事長は19日の記者会見で、15兆円から20兆円規模の対策を講じるべきだとの考えを示しました。

世耕氏は、電気やガス料金の負担軽減策に加え、投資を後押しする施策や低所得者への支援策なども盛り込むべきだと述べました。

世耕氏は、過去には増税や緊縮的な財政で経済の勢いの腰を折ってきた歴史があると指摘し、経済がよい局面に入りつつある中でさらに加速させる対策が必要だと強調しました。
ただ、本当に警戒すべきは、このような経済対策を行った後です。

内閣改造後の閣僚の顔ぶれをみると、鈴木俊一財務相が留任し、首相側近の官房副長官に財務省出身の村井英樹氏が就任しています。両氏とも、増税派です。

木原稔氏

一方、「非緊縮派」の立場からは、初入閣の木原稔防衛相が、積極的な財政政策を支持する党の財政政策検討本部のメンバーとして知られています。

今回人事には「増税・負担増」批判や保守派への配慮も見られますが、全体的に見れば、政府の財政政策が強く財務省に依存する方向に進んでいることが明らかです。さらに、岸田首相の経済政策は党内勢力や支持率に影響を受けやすいものです。

首相が大規模な経済対策と補正予算を採用したとしても、その後の「負担増」路線には警戒が必要です。

岸田首相が経済において、真の変化を実現したいのであれば、補正予算で少なくとも真水15兆円程度の資金が必要です。本来なら消費減税が望ましいところですが、実現が難しいでしょう。

次期衆院選対策として大胆な策を打ち出しても、選挙後に「デフレ脱却宣言」をし、財政再建に向けて動き出す可能性があるかもしれません。国民は、現政権がいつでも「増税」を検討していることを意識し、警戒しておくべきです。それを予感させるようなことはすでにあります。
  • 防衛費の増額
2022年12月8日、岸田首相は、防衛費の増額をめぐり、自民・公明両党に税制措置の検討を指示しました。2027年度時点で年間1兆円程度の税収増を目指す方針で、増税の開始時期は経済情勢などを見極めて決定するとしています。
  • 少子化対策
2023年7月20日、岸田首相は、少子化対策の財源確保に向け、社会保険料の引き上げを検討する考えを示しました。具体的には、医療保険と介護保険の料率を引き上げる案が有力となっています。
  • 社会保障制度の持続性
2023年8月3日、岸田首相は、社会保障制度の持続性を確保するためには、消費税の引き上げも検討すべきとの考えを示しました。ただし、現時点では具体的な検討は行われておらず、2024年度末の税制改革大綱で議論される見通しです。

9月20日 税金に関して本音をポロリと出した岸田首相

これらのエビデンスから、現政権は、防衛費の増額、少子化対策、社会保障制度の持続性など、さまざまな政策の財源確保のために、いつでも「増税」を検討する姿勢にあることがわかります。

国民は、現政権がいつでも「増税」を検討していることを意識し、警戒しておくべきです。

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2023年9月20日水曜日

中国、日本のEEZ内に海上ブイ設置 松野長官明らかに―【私の論評】日本の自信と強さ:中国の挑発に果敢に立ち向かへ(゚д゚)!

中国、日本のEEZ内に海上ブイ設置 松野長官明らかに

松野博一官房長官

まとめ
  • 松野官房長官が中国の尖閣諸島周辺での新たな海上ブイ設置を発表。
  • 政府が中国に抗議し、ブイの即時撤去を求める。
  • 中国は以前にも同様の行動を起こし、軍事目的のデータ収集疑惑がある。松野氏は国の領土保護を強調。
 松野博一官房長官は、中国が尖閣諸島周辺の日本の排他的経済水域(EEZ)内で新たな海上ブイを設置したことを19日に明らかにした。

 政府は中国に対して抗議し、ブイの即時撤去を要求した。松野氏は、この行為が国際海洋法に違反すると批判した。

 海上保安庁によると、ブイは7月に東側の地理的中間線内で確認され、その後航行警報が出さた。

 ブイには「中国海洋観測浮標QF212」と書かれており、現在も撤去されていないと報告されている。

 中国は過去にも尖閣諸島周辺にブイを設置しており、気象観測だけでなく、軍事目的でデータを収集する可能性も指摘されている。松野氏は、国の領土や領海を守る決意のもと、冷静に対処する姿勢を示した。

【私の論評】日本の自信と強さ:中国の挑発に果敢に立ち向かへ(゚д゚)!

まとめ
  • 中国の挑発行為: 中国が尖閣諸島の近くにブイを設置し、日本の主権を脅かす行動を起こしている。
  • 日本の対応策: 日本は強さと決意をもって対抗し、尖閣諸島の領土性を宣言し、ブイの監視と即時の撤去要求を行うべきだ。
  • 自衛隊の配置: 必要に応じて自衛隊を配置し、中国の野望を物理的に拒絶する覚悟が必要であり、潜水艦などの抑止力があると考えられる。
  • 啓蒙活動: 国際社会に尖閣諸島の合法的な支配を啓蒙し、中国のプロパガンダに立ち向かうべきである。
  • 同盟強化と国防力増強: 他の民主主義国家との同盟を強化し、さらなる挑発を阻止するために国防力を増強すべきである。

皆さん、今回も中国の挑発行為が明らかになりました。尖閣諸島の近くにブイを設置することは、日本の主権を脅かし、侵害する行動です。その意図は明白です。日本を恫喝し、中国が支配するべきではない領土を不法に奪おうとする意図を示すものでしょう。

日本はどのように対応すべきかを考えなければなりません。日本は強さと決意を持って立ち向かうべきです。尖閣諸島は日本の領土であると声高に宣言し、ブイを監視し、即時の撤去を要求すべきです。

もし中国がこれに応じない場合、日本は領土を守るために別の手段を検討する余地があるかもしれません。最近では「処理水」を巡ってもあきらかになったように、中国共産党は国際法を無視し、必要とあらばエビデンスを捏造したり、無視したりします。彼らは、力の強さしか理解しないため、このような相手には、日本も同じく力の強さを示す必要があります。

必要に応じて、中国の野望を物理的に拒絶するために自衛隊を適切に配置する覚悟が必要です。もうすでに、中国海軍が対処するのが難しい、ステルス性の高い潜水艦などは極秘裏に配置しているでしょう。これを示すエビデンスはありませんが、これが抑止力となって、中国の尖閣諸島での示威行動の拡大を抑制していると思います。そうでないと、もっとエスカレートしていた可能性は高いです。

海自の最新型潜水艦「白鯨」(SS514)

尖閣諸島に中国の民兵や漁民が頻繁に上陸したり、挙げ句の果に南シナ海のように実行支配をしていた可能性すらあると思います。

日本の潜水艦が尖閣諸島周辺に配備されていたとしても公表されていない可能性が高いです。中国の活動に関する情報を収集し、中国の野望を抑止し、日本の支配権を主張するために、あからさまな挑発を避けながら、この地域を積極的にパトロールしていると考える理由はたくさんあります。日本の潜水艦艦隊の能力は高く、このような秘密任務は標準的な作戦手順です。

これ以外にも、海保ではなく、海自の護衛艦を派遣したり、尖閣諸島に施設を構築したり、監視員を常駐させるなどのことも考えられます。これは最後の手段であるとも考えられてきましたが、もうこれを段階的に実施する時期にきたといえるかもしれません。強く反抗的な姿勢だけが、中国を攻撃的な行動から引き下がらせるでしょう。

日本には、これらの課題に立ち向かう力があります。自信と強さをもって、中国の威嚇行為に果敢に立ち向かい、国を守りぬくべきです。

同時に、日本は尖閣諸島の合法的な支配について国際社会に啓蒙活動を行い、中国のプロパガンダに立ち向かうべきです。

尖閣諸島に属する魚釣島

中国は、尖閣諸島は中国領であるというプロパガンダを展開しています。しかし、歴史的にも国際法上も、尖閣諸島は日本の固有の領土です。
  • 1970年代から、中華人民共和国と中華民国(台湾)は、日本が実効支配する尖閣諸島の領有権を主張しています。
  • 1951年に署名されたサンフランシスコ平和条約では、尖閣諸島は日本の南西諸島の一部として米国の施政下に置かれました。
  • 2012年9月11日、日本国政府は、日本人の私有地であった尖閣諸島を20億5000万円で購入し、国有化しました。
  • 2008年12月、中国国家海洋局に所属する船舶2隻が、尖閣諸島周辺の日本の領海に侵入しました。日本政府は、海上保安庁巡視船からの退去要求と外交ルートによる抗議を通じて毅然と対処しました。
また、中国の野心に対抗するために、米国を含む他の民主主義国家との同盟をさらに強化すべきです。そして、さらなる挑発を阻止するために、国防力を増強し続けなければなりません。

世界が注目する中、日本が堅固に領土を守る姿勢は、民主主義国家が中国共産党のような独裁者に屈しない決意を示す重要なシグナルとなります。日本よ、強く立ち向かへ!我々の未来と主権を守り抜きましょう!

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2023年9月19日火曜日

沖縄知事「平和脅かされている」 国連で辺野古「反対」演説―【私の論評】玉城知事の主張は地政学的、戦略的、現実的、法的に全く根拠がない(゚д゚)!

沖縄知事「平和脅かされている」 国連で辺野古「反対」演説

まとめ
  • 沖縄県知事、玉城デニー氏、国連人権理事会で演説。
  • 米軍基地集中による沖縄の平和への懸念表明。
  • 沖縄が米軍基地の多くを抱え、県民の反対を強調。
  • 国際的な関心喚起と外交努力を要請。

沖縄県の玉城デニー知事

 沖縄県の玉城デニー知事が、国連人権理事会での演説で、沖縄における米軍基地の集中が平和を脅かしていると主張し、日本政府による新基地建設への反対を表明した。

 彼は沖縄が日本全体の0.6%しか占めていないにもかかわらず、米軍基地の70%が沖縄に集中していることを強調し、これが平和と平等な意思決定への参加を脅かしていると指摘した。

 また、普天間飛行場の名護市辺野古への移設についての県民投票結果と、それに反して埋め立て工事が進行していることに不満を表明し、軍事力の増強が地域の緊張を高める可能性を懸念している。

 最後に、関係政府に外交努力を強化し、平和への権利を実現するよう要請した。玉城知事の演説は、沖縄の人々の自己決定権と人権が尊重されていないという立場を示すものであり、国連での発言は2回目。

 この演説は、NGOの発言枠を譲り受けて行われた。また、辺野古移設に関する上告審では県側が国に敗訴し、玉城知事は設計変更を承認するかどうかについて態度を明らかにしていない。

【私の論評】玉城知事の主張は地政学的、戦略的、現実的、法的に全く根拠がない(゚д゚)!

まとめ
  • 沖縄県の米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設は、国の勝訴で確定した。
  • 沖縄における米軍基地の集中は平和を脅かすものではない。
  • 米国は沖縄をしっかりと守る決意と準備を整えている。
  • 日米同盟は揺るぎない。
すでに、沖縄県の米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移転をめぐる訴訟で、国の勝訴が確定しています。辺野古移転について支障がなくなりました。形式的には、国と地方は対等の関係なので、諸手続があり、沖縄県は時間稼ぎはできるでしょう。しかし、いくら時間稼ぎをしても、結論を覆すことはできません。

時間稼ぎをする犬 AI生成画像

沖縄における米軍基地の集中が平和を脅かしているという主張は、全く根拠が薄弱です。このような発言を許した「国連人権理事会」の行動は、米国の力強い存在を減少させようとするリベラルな勢力の一環に過ぎないようです。かつて安倍晋太郎氏(安倍晋三氏父)が外務大臣であったときの第102回国会(85年1月25日)において以下のような外交演説を行っています。
自由民主主義諸国としては,基本的姿勢として,今後とも平和を確保するための十分な抑止力を維持するとともに,ソ連をはじめとする東側諸国との対話と交渉を進めていくことが重要であります。

我が国は,世界の平和が,核を含む力の均衡により維持されているという現実を認識しつつ,この均衡の水準を確実な保障の下に可能な限り引き下げるべく,国連,軍縮会議等の場を通じ,実効的かつ具体的な軍縮措置の実現に貢献すべく積極的に努力してまいりました。特に軍縮会議については,昨年6月,私自らこれに出席し,この会議が世界の軍縮促進の1つの梃子となるべきことを訴えました。
このような発言や発言のもととなった考え方は、安倍晋三氏にも大きな影響を与えたことでしょう。世界の平和は、善意とか思いやりで成り立っているのではなく、力のバランスにより成り立っているのです。

玉城知事や、彼を支持する人々は、米国の軍隊が「力のバランスによる平和」により、沖縄の安全と民主主義をも守っていることを認識していないか、認識していないように装っているようです。

この玉城知事は、おそらく中国や他国の勢力に取り込まれ、米軍が沖縄から手を引くように画策しているのでしょう。しかし、米国が貴重な軍事基地を手放すことは、中国や北朝鮮、イランなどの国々を勢いづけるだけです。

また、玉城知事がNGOに頼る姿勢は、その信頼性と権威の欠如を示しています。国連理事会は、これらの些細で無意味な苦情を無視し、米国が自由世界の安全を守るために必要なことを続けるべきです。第二次世界大戦で太平洋で日米が激戦を広げた結果として新たな秩序の一環として沖縄に米軍基地があるわけで、それを現状維持するのではなく、破壊することは現在の世界秩序を崩壊させることに繋がります。

米国は必要な場合、沖縄をしっかりと守る決意と準備を整えています。ロナルド・レーガン氏が言った通り、「力で平和を保つ」のです。沖縄は、アジアでの米国の力の投影と、中国や北朝鮮などの脅威に立ち向かうために不可欠な米軍の主要拠点です。国防総省の情報によれば、沖縄にはF-35戦闘機やアパッチ攻撃ヘリ、第11海兵遠征部隊などの先進的な武器を持つ2万6000人以上の部隊が駐留しています。

米国は沖縄を国家安全保障にとって極めて重要な場所と考えており、軍の指導者たちは何度も、沖縄を守ると宣言しています。また、2018年の国家防衛戦略で、中国を「戦略的競争相手」と位置付け、沖縄の基地アクセスやロジスティクスなどを含め、インド太平洋地域での中国の軍事増強に対抗する必要性を強調しました。

このような基地を米国が失うことは絶対に許されません。ハリー・ハリス提督などの卓越した将軍たちは、必要であれば米軍は沖縄のような貴重な拠点を守るために「軍事力」を行使することを議会で明言しています。実際、沖縄はアジアでの米国の軍事的な即応能力の重要な拠点です。

ハリー・ハリス提督

沖縄が敵の手に渡ることは考えられません。米国の軍事体制と指導者の言葉が示す通り、米軍は沖縄を防衛するために必要な措置を講じる覚悟があります。日米同盟はその基盤にあり、沖縄は米国の支えを頼りにできるのです。

日本の防衛能力と責任は時代とともに大きくなっていますが、米国が日本の領土を攻撃された場合の防衛から手を引くという明確なエビデンスはありません。公式の政策や指導者の声明は、日本の安全保障に対する米国の誓約を再確認しています。

また、翻訳や過去の文書をめぐる些細な問題は、共通の懸念に対する緊密な日米軍事協力という現在の現実を覆すものではないです。同盟関係は依然として強固であり、日本の防衛に対するアメリカのコミットメントは揺るぎないものです。

『仮面の日米同盟』の著者で国際ジャーナリストの春名幹男氏は「米軍は日本を守らない!」という事実が米公文書によって明らかになったと主張しています。この公文書等を論拠として、米軍は日本や沖縄、尖閣を守らないと主張する人も多いです。

しかし、春名幹男氏の指摘は、一部事実に基づいているものの、過度に誇張されている部分もあると言えます。

1971年のアメリカ政府の機密文書には、「在日米軍は日本を守るために駐留してはいない。日本防衛は、日本の責任だ」との記述があります。これは、日本が自衛隊を創設し、自国防衛の責任を果たすようになったことを意味するものであり、必ずしも米軍が日本防衛から撤退し始めているということを意味するものではありません。

また、2015年の日米新ガイドラインには、日本が武力攻撃を受けた際、主体的に防衛するのは自衛隊であり、米軍の任務は「あくまで自衛隊を支援するのみ」ということが書かれています。しかし、これはあくまでもガイドラインであり、具体的な支援の内容は、両国の間で協議して決定されることになります。したがって、春名氏が指摘するように、支援の中身が不明確であることは事実ですが、それは米軍が日本を守らないことを意味するものではありません。

一方で、春名氏が指摘する外務省の作為的な翻訳については、一定の根拠があると言えます。例えば、日米新ガイドラインの英語版では、「Bilateral operations」と「Supplement」という語句が使用されていますが、日本語版ではそれぞれ「共同作戦」と「補完する」と訳されています。これらの訳語は、英語版の意味を正確に反映したものではありません。

また、「日本の防衛には自衛隊がPrimary responsiblity(主たる責任、第一次的責任)を持つ」というくだりも、日本語版では「自衛隊が主体的に実施する」と訳されていますが、これは英語版の意味をより弱めたものと言えます。

このように、春名氏の指摘は、一部事実に基づいているものの、過度に誇張されている部分もあると言えます。したがって、有事の際、米軍が日本を守るとは限らないという春名氏の主張は、必ずしも正しいとは言えません。

春名氏の主張は、地政学的な現実を反映するというよりも、疑念を広めることを意図しているように見えます。しかし、事実は日米の永続的なパートナーシップを指し示しています。

米国の国益は、中国の野心に対抗し、同盟を堅持し、民主主義を守り、自由で開かれたインド太平洋を確保することを必要としています。日本の安全保障は、このビジョンと切っても切れない関係にあります。

米軍地理的戦闘司令部責任領域地図です。米インド太平洋軍の名称変更に伴い、2018年6月1日現在更新

どんなに美辞麗句を並べても、米国が日本の防衛に失敗した場合の破滅的な戦略的結末を覆い隠すことはできません。それに反する玉城知事の主張は、地政学的事実を故意に無視しているように見えます。

日米はともにあります。地政学は、米国が日本を守り、沖縄や日本の領土が中国に支配されるのを防ぐ理由を明確に示しています。米国の国家安全保障がそれを要求しているのです。米国が日本を見捨てるという言説には、根拠がありません。これらを無視できるのは玉城知事のような愚か者だけでしょう。

玉城知事の主張は地政学的、戦略的、現実的、法的に全く根拠がありません。わたしたちは、米国がいざというときに日本を、そうして沖縄を守らないなどという根拠に乏しい言説に惑わされることなく、日米同盟を前提として、日本と世界の安全保障を考えていくべきです。

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2023年9月18日月曜日

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岸田内閣支持率横ばい25% 発足以来最低タイ 毎日新聞世論調査

まとめ
  • 岸田内閣の支持率は25%で、前回調査から1ポイント減、3カ月連続で30%を下回った。
  • 支持率低下の要因は、マイナンバーカードのトラブルや、物価高騰への対応などが挙げられる。
  • 岸田首相の内閣改造・自民党役員人事は、支持率浮揚にはつながらなかった。
岸田改造内閣

 2023年9月17日、毎日新聞が実施した世論調査によると、岸田内閣の支持率は25%で、前回調査から1ポイント減、3カ月連続で30%を下回った。不支持率は68%で、前回調査から変わらなかった。

 支持率低下の要因は、マイナンバーカードのトラブルや、物価高騰への対応などが挙げられる。岸田首相は8月に内閣改造・自民党役員人事を行ったが、支持率浮揚にはつながらなかった。

 今回の調査は、携帯電話のショートメッセージサービス(SMS)機能を使う方式と、固定電話で自動音声の質問に答えてもらう方式を組み合わせ、携帯449件、固定581件の有効回答を得た。

【私の論評】岸田首相は、政治的な駆け引きや自らの権力維持を優先する「桜吹雪」のような政治家(゚д゚)!

さくらんぼの試食をする岸田首相

まとめ
  • 岸田内閣の支持率が低迷している。
  • 保守層の離反が原因と考えられる。
  • 岸田首相は、保守的な政策を追求していない。
  • 保守派は、信念や価値観を貫くリーダーを求めている。
  • 岸田首相は、保守派を取り戻すために、真摯な姿勢で臨む必要がある。

今回の調査結果は、岸田内閣にとって厳しい結果と言えます。支持率が低迷する中、岸田首相は今後、物価高騰や外交・安全保障など、さまざまな課題にどう対応していくのかが注目されます。

ちなみに、他の新聞社の調査をあげます。
共同通信社6.2ポイント上昇 nordot.app/10749971935742 読売新聞横ばい youtube.com/watch?v=erZTi3 日本経済新聞横ばい nikkei.com/article/DGXZQO 毎日新聞1ポイント減 mainichi.jp/articles/20230

共同通信を除いて、横ばいもしくは、毎日の1ポイント減です。

岸田政権の支持率が戻らない原因として、保守政党を謳いながらも、実質的にはリベラル左派的自民党から、保守層が逃げている可能性があります。

岸田首相の支持率が低迷する原因は、大きく分けて2つあります。1つは、政治的な駆け引きや自民党各有力派閥への配慮に重点を置いているため、国民へのメッセージが曖昧で弱々しいことです。

岸田首相は、自らの政治的野心を満たすために、各派閥のバランスをとり、誰も不満を抱かないように努めています。そのため、保守派の期待に応えるような政策を打ち出せず、国民からの支持を得られていません。

もう1つの原因は、岸田首相が保守的な政策を追求するよりも、自らの権力を維持することを重視していることです。

自民党会館

来年の自民党総裁選に向け、岸田首相は、保守派の支持を固めるために、さまざまな政策を検討しています。しかし、その姿勢は、保守派の支持を得るどころか、逆に疑念を抱かせています。

保守派は、自らの信念や価値観を貫くリーダーを求めています。しかし、岸田首相は、政治的な風潮に流され、常に自分の立場を守ろうとしています。

岸田首相は、政治的な駆け引きや自らの権力維持を優先する「桜吹雪」のような政治家です。彼は、国民の声を無視し、自らの利益のために政権を運営しているようです。ちなみに「桜吹雪のような人」とは、桜の花びらが舞うように、一言で言い表せないような人のことを指す言葉です。

桜吹雪はやめて、保守なら保守、リベラルならリベラルの旗幟を鮮明にしていただきたいものです。保守派としては残念ですが、リベラルとはっきり打ち出せば、支持率は確実にあがるのではないでしょうか。無論、保守派議員は自民党を抜け出すなどのことをするかもしれませんが、その数は意外と少ないかもしれません。それはLGBT法案の成立の過程でよく認識できました。

桜吹雪

保守岩盤支持層を取り戻すためには、岸田首相は、真の信念やビジョンに基づいた政策を打ち出し、国民に真摯に向き合うことが必要です。そのような姿勢を打ち出せるか否かが焦点となることでしょう。

そのようなことが期待できないからこそ、百田氏は、日本保守党を設立しようとしているのでしょう。

ただ、岸田首相が退陣に追い込まれたとしても、次の総裁が保守派となる可能性は低く、ますます自民党がリベラル左派に傾いていく懸念は払拭できません。

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