2024年8月21日水曜日

候補者乱立する総裁選〝保守共倒れ〟危機 小林鷹之氏「自民党は生まれ変わる」と出馬表明も〝支持層〟被る高市早苗氏、青山繁晴氏―【私の論評】小林鷹之氏の出馬と「無能な働き者」:自民党内の新たな政策論争の行方

候補者乱立する総裁選〝保守共倒れ〟危機 小林鷹之氏「自民党は生まれ変わる」と出馬表明も〝支持層〟被る高市早苗氏、青山繁晴氏

まとめ
  • 自民党総裁選で保守系議員への支持が注目され、高市早苗氏、小林鷹之氏、青山繁晴氏が支持層を競っている。
  • 小林鷹之氏が出馬を表明し、自民党の刷新と明確な日本の将来ビジョンを示した。
  • 小林氏は優秀だが党内基盤が弱く、主に岸田首相に不満を持つ若手・中堅議員の支持を得ている。
  • 小林氏は保守的な政治信条を持ち、憲法改正や経済安保に積極的な姿勢を示している。
  • 保守系候補の乱立により支持が分散する可能性があり、総裁選がリベラル派中心になれば岩盤保守層の自民党離れが加速する懸念がある。

青山繁晴氏

9月の自民党総裁選では、保守系議員への支持に注目が集まっている。岸田文雄内閣の支持率が低下している背景には、「岩盤保守層」の離脱が影響している。この状況の中、高市早苗経済安保相(63)や小林鷹之前経済安保相(49)、青山繁晴参院議員(72)といった保守派候補が注目を集めている。

特に、小林氏は19日に正式に出馬表明を行い、自民党の刷新を訴えながら、日本の未来に関する明確なビジョンを示した。彼は「まずは信頼回復」「政策活動費や旧文通費の透明化」「脱派閥選挙の徹底」といった具体的な政策を提案し、国民に強いメッセージを送っている。しかし、政治評論家の有馬晴海氏によれば、小林氏は党内基盤がまだ弱く、財務相や外相などの大臣経験がないことがネックとなっている。

小林氏の出馬会見には、党所属の中堅若手議員が多数同席しており、彼らは岸田首相に対する不満を抱えている層とされている。さらに、小林氏の保守的な政治信条に期待する声もあり、憲法改正や自衛隊の明記を訴える姿勢が評価されている。彼は経済安全保障の重要性を早くから指摘しており、先の国会で高市氏が成立させた「セキュリティ・クリアランス(SC)制度」の法制化に貢献したとも言われている。

一方で、候補者の乱立が懸念されており、知名度の低い新顔の保守系候補が登場したことで、議員や党員の支持が分散する可能性も指摘されている。最近の世論調査では、次期総裁にふさわしい人物として石破茂元幹事長がトップに立ち、小林氏も支持率を急上昇させているが、依然として知名度が課題だ。

高市氏は自身のSNSで「国家経営を担うべく、心を固めている」と述べるなど、出馬準備を進めている。彼女は岩盤保守層からの強い支持を受けており、全国各地での講演会には多くの聴衆が集まっている。青山氏も強固な保守派として知られ、支持を集めている。

総裁選には20人の推薦人が必要だが、候補者の乱立や推薦人の引きはがしが発生すれば、高市氏や青山氏の出馬が難航する可能性がある。もしそうなれば、岩盤保守層の自民党への支持が低下する恐れがあり、9月27日に投開票される総裁選がリベラル派だけの戦いとなる可能性もある。

この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事を御覧ください。

【私の論評】小林鷹之氏の出馬と「無能な働き者」:自民党内の新たな政策論争の行方

まとめ
  • 小林鷹之氏の出馬会見に同席した議員の中に7名の令和臨調参加議員が含まれており、これは小林氏の政策方針を理解する上で重要な手がかりとなる。
  • 小林氏は財務省出身で緊縮財政派の立場を取っていると考えられるが、これは必ずしも伝統的な保守派の政策と一致するとは限らない。
  • 小林氏の出馬は財務省や緊縮財政派の影響力を維持・強化しようとする動きの一環である可能性がある。
  • この状況は自民党内での政策論争や総裁選の展開に大きな影響を与える可能性があり、「保守」の定義や自民党の政策方針をめぐる議論が活発化する可能性がある。
  • 小林氏の総裁選出馬は時期尚早である可能性が高く、次の次、もしくはその次の総裁選を目指すべきかもしれない。

高橋洋一氏のツイートによると、小林氏の出馬会見に同席した議員の中に、7名の令和臨調参加議員が含まれています
(右表の塗りつぶしの部分)。令和臨調(令和国民会議)は財政健全化を重視する議員グループであり、小林氏自身もこのグループに属しているという事実は、彼の政策方針を理解する上で重要な手がかりとなります。
小林氏は財務省出身であり、緊縮財政派の立場を取っていると考えられます。これは、彼の経歴や支持基盤と整合性があります。しかし、この立場が必ずしも伝統的な保守派の政策と一致するとは限りません。

小林氏が保守的な政策を掲げながらも、実際には財政規律を重視する財務省的な考え方を持っているという見方を示唆しています。

この観点から見ると、小林氏の出馬は単なる世代交代や党の刷新を目指すものではなく、財務省や緊縮財政派の影響力を維持・強化しようとする動きの一環である可能性があります。

これは、従来の「岩盤保守層」とは異なる政策方針を持つ候補者が台頭してきていることを意味し、自民党内の路線対立がより複雑化する可能性を示唆しています。したがって、小林氏の出馬と彼を支持する議員グループの背景には、財務省との強いつながりがあると考えられます。これは単に小林氏の経歴だけでなく、彼を支持する議員の多くが緊縮財政派であることからも裏付けられます。

この状況は、自民党内での政策論争や総裁選の展開に大きな影響を与える可能性があり、「保守」の定義や自民党の政策方針をめぐる議論が今後さらに活発化する可能性があります。

令和臨調については、以前このブログでも、高橋洋一氏の記事を元記事として論評しました。その記事のリンクを以下に掲載します。

「令和臨調」提言に透けてみえる〝アベノミクス否定〟と〝利上げ・増税〟 方向性を間違えると改革も困難に―【私の論評】「無能な働き者」の巣窟と化したか「令和臨調」(゚д゚)!

令和臨調の平野信行共同座長(左)、翁百合共同座長(右)ら

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下にこの元記事の要点だけをまとめておきます。
令和臨調は2023年1月30日に、政府と日銀の新たな共同声明に関する提言を行った。この団体は比較的政府寄りで、改革系の民間経営者が集まっており、岸田文雄政権をサポートする傾向が強い。
提言の主な内容は、2%のインフレ目標を「長期的な目標」と位置付け直すこと、日銀に対しては金融政策の正常化を求め、政府には財政規律の回復を促すものだ。これらの提言は、アベノミクスの否定とも解釈でき、実質的に「利上げ・増税」を求めていると考えらる。
現在の日本経済の状況を考慮すると、これらの提言のタイミングは適切ではない。特に、消費者物価指数が4%増であっても、エネルギー価格などの海外要因が主な原因であり、GDPデフレーターは依然としてマイナスであることを指摘している。このため、経済がデフレから完全に脱却するまでは、金融緩和と積極財政を継続する必要がある。。
最終的に、令和臨調の提言には評価できる改革案も存在するものの、マクロ経済政策については誤った方向性を示している。
詳細は、この記事をご覧いただくか、元記事を御覧ください。

私も令和臨調に関して【私の論評】で批判していますが、その批判はタイトルにもあるように一言でいうと"「無能な働き者」の巣窟"というものです。

令和臨調は、財政規律の回復や社会保障改革を重視し、金融政策の正常化(利上げ、量的緊縮)を提言しています。しかし、高橋洋一氏の指摘によれば、この組織は「財務省のポチ」のような人々で構成されており、アベノミクスの政策方向を転換したい意図がみられます。

マクロ経済の常識からすると、デフレ脱却が完全ではない現状で財政規律の急激な引き締めや金融政策の正常化を急ぐことは、経済成長を阻害するリスクがあります。この点で、令和臨調の提言は「無能な働き者」といえます。

ゼークトの組織論における「無能な働き者」は、正しい判断力や行動力が備わっていないにもかかわらず、自身の判断で行動してしまう特徴を持っています。令和臨調の提言が、現在の日本経済の実態を十分に考慮せずに、財政規律や金融政策の正常化を急ぐ姿勢を示しているとすれば、この定義に当てはまる可能性があります。

小林鷹之氏が令和臨調に属していたという点から、彼もこの「無能な働き者」的な特徴を持っている可能性があります。特に、財務省出身であり緊縮財政派の立場を取っているとされる小林氏の政策方針が、現在の日本経済の実態と乖離している可能性があります。

ただし、小林氏が今後どのような行動をとるのか、さらに総裁になれたとしてどのような政策をとるのかは未知数であって現在の時点で「無能」という表現は主観的で厳しすぎる可能性があるかもしれません。

小林鷹之氏

しかし、その可能性があることは否定できません。私が、小林氏に指摘したいのは、政治家は、せっかく有能な政治家になれる素質があったとしても、時期や順番を間違えると、凡庸な政治家になってしまうか、最悪汚名をきせられることになってしまうということです。

小林鷹之氏の総裁選出馬については、現時点では時期尚早である可能性が高いと考えられます。政治家のキャリアにおいて、タイミングは極めて重要です。適切な時期を逃すと政治家としての影響力や評価を大きく損なう恐れがあります。小林氏は49歳という若さと4期目の衆院議員という経歴から、党内基盤が十分に固まっていない可能性があります。また、経済安全保障という重要な分野での経験はありますが、総合的な国家運営のビジョンがまだ十分に熟していない可能性もあります。上でも指摘したように、特にマクロ経済に関する知見が欠落しているようです。

したがって、小林氏は次の総裁選ではなく、次の次、もしくはその次の総裁選を目指すべきかもしれません。その間に、党内での地位向上、政策立案能力の向上、国民的知名度の向上、国際経験の蓄積などを進めることが望ましいでしょう。ただし、すでに総裁選出馬を表明した後でも、この機会を学びの場として捉え、自身の政策や理念を丁寧に説明し、将来のリーダーシップに向けた準備期間として活用することは可能です。また、仮に今回の総裁選で勝利を収めることができなくても、その過程で得た経験や支持者を基盤に、次の機会に向けてより強固な政治基盤を築くことができるでしょう。

ただ、そうはいっても、上の記事にもある通り、次の総裁選がリベラルだけの選挙になる可能性もあるわけで、これだけは避けるべきです。そうなってしまえば、自民党内の保守派の存在はなきものにされる可能性もあります。


候補乱立の総裁選はリベラルだけの選挙になる可能性がある

小林鷹之氏が総裁選でリベラル派だけの戦いを避けるためには、保守派の支持を得られる政策を明確に提示し、アピールを強化することが重要です。高市早苗氏や青山繁晴氏といった他の保守系候補者との連携を深め、保守派の分断を避ける努力も必要です。党内の若手・中堅保守系議員を積極的に取り込み、新しい保守の形を示すことや、メディア露出を増やして保守的な立場からの発信を強化することも効果的でしょう。

保守とリベラルということでは、財政は直接関係はないようにもみられまずか、実体としてリベラル派のほとんどはマクロ経済に疎く、緊縮一辺倒の財務省の意向に大きく左右されますが、保守派はそうではなく、積極財政派が多いです。マクロ経済音痴ということでは、保守派の支援は得られないと言っても過言ではありません。

小林氏は財務省出身であることから、財務省の影響力を削ぐ姿勢を示すことが重要です。特に、財政規律を重視する姿勢では保守派の支持を得ることは難しいため、経済発展の明確な方向性を示し、積極財政派の支持を得ることが必要です。例えば、大規模な公共投資や防衛費の増額、科学技術への投資拡大などを通じた経済成長戦略を打ち出すべきです。

これにより、保守派からの支持を固めつつ、財務省色の強い候補者というイメージを払拭し、経済成長と国家の安全保障を重視する候補者としての立場を確立することができるでしょう。このような多面的なアプローチを通じて、小林氏は保守派の代表としての立場を強化し、リベラル派だけの戦いにならないよう努めることができるはずです。その努力すれば、次の機会が訪れるでしょう。

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2024年8月20日火曜日

尖閣で日本の実効支配示す 海保、上陸のメキシコ人を救出後に警察権を行使―【私の論評】尖閣諸島での救助活動と中国海警船の不作為:日本の法的根拠とNHKの不適切発言事案

尖閣で日本の実効支配示す 海保、上陸のメキシコ人を救出後に警察権を行使

まとめ
  • 尖閣諸島での出入国管理法違反: 石垣海上保安部は、カヌーで魚釣島に上陸した40代のメキシコ人男性を出入国管理法違反で書類送検し、日本の領有権を強調。
  • 海上保安庁の迅速な救助活動: 男性は巡視船に発見され、ヘリコプターで安全に救助された。この行動は、日本が尖閣諸島を実効支配していることを示す重要な事例。
  • 中国海警局の動向と日本の対応: 中国海警局の船が尖閣周辺を頻繁に航行する中、海上保安庁の対応は日本の領有権を再確認させるものであり、過去の救助事例とも関連付けられる。
石垣海上保安部

 石垣海上保安部は、尖閣諸島にある魚釣島にカヌーで上陸した40代のメキシコ人男性を、出入国管理法違反の疑いで書類送検した。この男性は、16日午後に魚釣島の東岸に上陸しているところを巡視船に発見され、ヘリコプターによって救助した。海上保安庁のこの行動は、尖閣諸島が日本の有効な支配下にあることを国内外に示す重要な意味を持っている。

 元海上保安本部長の遠山純司氏は、「尖閣諸島は上空と海上から常に監視されており、発見されたのは必然である」と指摘している。男性は与那国島から台湾に向かっていたとされ、尖閣上陸に政治的意図はなかったと考えられているが、実際には巡視船や航空機の警備をかいくぐって上陸を許す結果となった。遠山氏は、「カヌーのような小型艇では夜間に紛れることができ、目視での発見は難しい」と述べている。

 また、ネット上では「海保がボートで上陸し救助すべきだった」という意見も見られるが、海保関係者によると、魚釣島には巡視船を接岸できる場所がなく、ヘリコプターによる救助が最も安全で迅速な方法であったと説明している。

 中国海警局の船は、尖閣周辺の領海外側の接続水域を航行しており、今年7月には215日間連続で航行していたことが報告されている。日本漁船に対して執拗に追尾するケースも多く、これらは領有権を誇示する狙いがあるとされている。

 そのため、今回の救助活動は、日本が尖閣諸島を実効支配していることを再確認させる重要な出来事となった。過去にも、禁漁明けの中国漁船が尖閣周辺に押し寄せた際、海上保安庁は中国漁船とギリシャ船籍の大型貨物船の衝突事故で6人の漁船乗組員を救助した実績がある。遠山氏は「これらの救助は海保が淡々と行ったものであり、特別な対応ではない」と述べている。

 このように、海上保安庁の冷静かつ迅速な対応は、日本の領有権を強調するものであり、尖閣諸島の実効支配を改めて示す形となった。

 この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になってください。

【私の論評】尖閣諸島での救助活動と中国海警船の不作為:日本の法的根拠とNHKの不適切発言事案

まとめ
  • 日本の海上保安庁による尖閣諸島での救助活動は、日本の実効支配を示す一方、中国海警船の不作為は中国の領有権主張の弱さを浮き彫りにしている。
  • 海上保安庁の活動には明確な法的根拠があるが、中国側には法的権限や国際的正当性の欠如など複合的な要因がある。
  • NHKの国際放送での不適切発言事案は、日本の国家安全保障と国益を脅かす可能性のある重大な問題であるが、これに対してスムーズな対応はできない。
  • 日本にはスパイ防止法がなく、既存の法律では対応に限界があるため、包括的な安全保障法制の整備が喫緊の課題である。
  • 諸外国ではスパイ防止法や関連法が一般的に存在しており、日本も国際標準に合わせた法整備を進めるべきである。

日本の海上保安庁は、尖閣諸島で遭難したメキシコ人男性を適切に救助し、法的手続きを行いました。一方、中国海警船は尖閣周辺を航行しているにもかかわらず、同様の救助活動を行うことができませんでした。この対比は、日本が尖閣諸島を実効支配していることを強調し、中国の領有権主張の弱さを浮き彫りにしています。

中国海警船は尖閣周辺を航行しているにもかかわらず、同様の救助活動を行うことができなかった背景には、法的権限の欠如や実質的な支配力の不足、国際的な正当性の欠如、政治的判断といった複合的な要因を含んでいると解釈できます。

具体的には、中国海警船は日本が実効支配している尖閣諸島の領域内で救助活動を行う法的権限を持っておらず、また尖閣周辺の海域で自由に活動することが難しい状況にあります。さらに、中国が救助活動を行うと、国際社会から日本の主権を侵害する行為と見なされる可能性があります。

中国が自国の国内法を根拠に尖閣諸島周辺で法執行活動を行うことは、国際法的に正当化されず、日本を含む国際社会から認められない行為となります。

加えて、中国側が意図的に介入を避けた可能性も考えられ、直接的な行動は日本との緊張を高める恐れがあるためです。このように、「できなかった」は単純な意図的な不作為を示すのではなく、様々な要因が複合的に作用した結果であると考えられます。

一方日本の海上保安庁には、主に以下のような法的根拠があります。

海上保安庁法は海上保安庁の任務と権限を定めており、特に第2条で「海難救助」を任務の一つとして明確に規定しています。遭難船舶救助法は、遭難船舶の救助に関する規定を定めており、海上保安庁の救助活動の根拠となっています。

また、出入国管理及び難民認定法に基づき、不法入国の疑いがある外国人に対して適切な法的手続きを行う権限があります。領海及び接続水域に関する法律により、尖閣諸島を含む日本の領海が定められており、その海域での法執行活動の根拠となっています。

さらに、海上における人命の安全のための国際条約(SOLAS条約)などの国際法も、遭難者救助の義務を定めています。

これらの法的根拠により、海上保安庁は尖閣諸島周辺海域で適切に活動し、遭難者の救助や必要な法的手続きを行うことができます。

NHK放送センター

一方、尖閣関連で別の事案が発生しています。NHKは19日、国際放送とラジオ第2放送の中国語ニュースで、外部スタッフが尖閣諸島について「中国の領土である」など、原稿にない不適切な発言を約20秒間行ったと発表しました。

このスタッフは、NHKの関連団体と業務委託契約を結んでいる中国籍の40代男性で、2002年から翻訳と読み上げ業務を担当していました。NHKは関連団体を通じて男性に厳重に抗議し、関連団体は契約を解除する方針です。

問題の発言は、靖国神社の落書きに関するニュースの後に行われました。NHKは謝罪し、再発防止策として生放送ニュースの事前収録を検討しています。

NHKの国際放送でのこの不適切な発言事案は、単に中国人スタッフ個人の発言というだけではなく、こうした発言の背後には中国当局の工作があるかもしれず、日本の国家安全保障と国益を著しく損なう可能性のある重大な問題です。これに対して、上で述べたような海上保安庁のようなすみやかな行動はいまのところできません。それは、このような事案にたいする法律が整備されていないからです。

既存の法的枠組みとして、特定秘密保護法や出入国管理法などがあり、一定の対応は可能ですが、これらはスパイ行為に特化したものではないため、限界があります。スパイ防止法がないことで、スパイ行為に対する直接的な法的対応が困難になっているのは事実です。また、2024年に成立した重要経済安保情報保護法(通称サイバーセキュリティー法)は経済安全保障分野での対応を強化しますが、まだ施行されていません。
一方、NHKとの契約解除や業務委託の見直しなど、組織的な対応は可能であり、公安機関による調査も行われる可能性があります。さらに政府としては、NHKに対して、会長辞任やNHK解体などの厳しい措置をとることもできるかもしれません。

ただし、表現の自由や報道の自由との兼ね合いから、現状では政府や公安機関のスパイ活動等に対する直接的な介入には慎重な判断が求められ実際には、こうした工作活動、スパイ行為など自体に関しては、情報収集などに限定される可能性が高いです。

これでは、根本的な解決には至らないです。現状では工作・スパイ活動そのものは裁くことはできず、その活動の過程において、犯罪をおかしたときのみ、その犯罪についてのみ裁く事が可能です。このようなことを防ぎ、国家の安全を守るためには、スパイ防止法の制定を含む包括的な法整備が不可欠です。

具体的には以下の法律や制度の整備・強化が求められます。
  1. スパイ防止法:外国勢力による情報操作や影響力行使を法的に規制し、国家の重要な利益を守るための基本的な法的枠組みを提供します。
  2. 特定秘密保護法:既に施行されていますが、さらなる強化により、重要な国家機密の保護を徹底します。
  3. 重要経済安保情報の保護及び活用に関する法律(通称:セキュリティクリアランス法):経済面での安全保障を強化し、技術流出や産業スパイ活動を防止します。重要な情報にアクセスできる人物の適格性を厳密に審査します。法律は成立していますが、具体的な運用基準の策定や、企業側の準備期間の確保などが必要なため、まだ施行には至っていません。今後、有識者会議での議論や運用基準の策定を経て、2025年5月までには施行される見込みです。より厳格な運用基準とすべきです。
  4. 外国為替及び外国貿易法(外為法)の強化:安全保障上重要な技術や情報の海外流出を防ぐため、さらなる規制強化が必要です。
  5. サイバーセキュリティ基本法の拡充:サイバー空間での情報窃取や攻撃に対する防御能力を高めます。
  6. 出入国管理及び難民認定法の厳格化:潜在的なスパイの入国を防ぐため、入国審査をより厳格化します。
これらの法律や制度を包括的に整備・強化することで、外国勢力による情報操作や影響力行使から国家を守る体制を構築できます。NHKの事案のような問題は、このような総合的な法体系の不備が招いた結果とも言えます。

表現の自由や報道の自由への配慮を過度に重視し、これらの法整備を躊躇することは、国家安全保障上の重大な危機を招く可能性があります。むしろ、これらの法律の不在や不十分さが、外国勢力による日本の情報インフラへの侵入や操作を容易にし、結果として国益を著しく毀損する事態を招いています。

したがって、スパイ防止法を中心とした包括的な安全保障法制の整備は国家安全保障上の喫緊の課題であり、これ以上の遅延は許されません。

各法律の適用範囲を明確に定義し、適正な運用を確保する仕組みを設けつつ、速やかに法整備を進めるべきです。国益を守るためには、一定の制限は必要不可欠であり、それによって得られる安全保障上の利益は、表現の自由に対する影響を大きく上回るものと考えられます。

国家秘密法案(スパイ防止法案)に反対し、名古屋市内でデモ行進した弁護士ら=1985年

これらの法律や制度の整備・強化は、実際に多くの先進国で既に実施されています。スパイ防止法およびその関連法は、諸外国では一般的に存在する法律です。例えば、アメリカの防諜法(Espionage Act)は1917年に制定され、イギリスの公務秘密法(Official Secrets Act)は1889年に最初に制定された後、数回の改正を経ています。ドイツでは刑法典(Strafgesetzbuch)の中に国家保護に関する条項が含まれており、フランスには国家安全保障法(Code de la sécurité intérieure)があります。

日本では1985年にスパイ防止法案が提出されましたが成立には至りませんでした。しかし、特定秘密保護法(2013年成立)や重要施設周辺地域等調査法(2021年成立)など、国家安全保障に関連する法律の整備が進められています。これらの法律は、国際情勢の変化や近年のサイバー攻撃の増加など、より広い文脈での安全保障上の必要性から制定されています。

諸外国の例を参考にしつつ、日本の実情に合わせた適切な法整備を進めることが重要です。これにより、NHKの事案のような問題に対しても、より迅速かつ効果的な対応が可能になると考えられます。国際標準に合わせた法整備を進めることで、より効果的な国家安全保障体制を構築することができるでしょう。

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2024年8月19日月曜日

高市早苗氏「国家経営を担うべく心を固めている」と投稿 総裁選出馬、重ねて意欲―【私の論評】高市早苗氏のリーダーシップが自民党と日本の未来を切り拓く

高市早苗氏「国家経営を担うべく心を固めている」と投稿 総裁選出馬、重ねて意欲

高市早苗氏

 9月の自民党総裁選をめぐり、高市早苗経済安全保障担当相(63)は18日、自身のX(旧ツイッター)に「国家経営を担うべく、心を固めている」と投稿し、重ねて意欲を見せた。

 高市氏はこの日、都内で保守系団体「日本会議」の関連会合で講演。出席者によると「日本を強く豊かにするため働く決意だ」と訴えたという。

 総裁選は10人程度の出馬が取り沙汰されている。

【私の論評】高市早苗氏のリーダーシップが自民党と日本の未来を切り拓く

まとめ
  • 高市早苗氏は、安倍晋三元首相の政治理念を忠実に受け継ぎ、保守派から厚い信頼を得ている。
  • 彼女は中国に対して毅然とした姿勢を示し、台湾との関係強化や「自由で開かれたインド太平洋」構想の推進に取り組んでいる。
  • 高市氏は米国の民主党議員のスタッフとしての経験を持ち、国際的な視野と米国政治への理解を深めている。
  • 彼女は日銀官僚や財務官僚に対峙できる豊富な政治経験を持ち、経済政策に関する深い理解と強い信念を有している。
  • 高市氏の総裁就任は、自民党の再生と日本の国益を守る強い政権の実現につながると期待されている。
高市早苗氏は、安倍晋三元首相の政治理念を最も忠実に受け継ぐ政治家として、保守派から厚い信頼を得ています。彼女の政治姿勢は、日本の伝統と文化を重んじ、国家の安全保障を最優先する点で、多くの保守派の共感を呼んでいます。


安倍元首相との深い信頼関係は、様々なエピソードからも窺えます。

例えば、2015年3月、高市氏が総務大臣を務めていた際、放送法の解釈について安倍元首相と電話会談を行ったとされる出来事がありました。この時、安倍元首相は「今までの放送法の解釈がおかしい」と述べ、具体的な番組名を挙げて問題意識を共有したとされています。このエピソードは、両者が政策方針について緊密に連携していたことを示しています。

また、安倍元首相は生前、高市氏の政治的才能を高く評価し、閣僚ポストの増員を望んでいたことが知られています。この信頼関係は、高市氏が安倍元首相の政治理念を継承し、発展させる最適な人物であることを示しています。

岸田首相(左)と高市早苗氏(右)

高市氏は中国に対して毅然とした姿勢を示し、軍事的脅威や経済的圧力に対して明確な警鐘を鳴らしています。台湾との関係強化にも積極的で、「自由で開かれたインド太平洋」構想の推進を通じて、中国の影響力拡大に対抗する姿勢を示しています。

特筆すべきは、先日このブログにも書いたように、高市氏が米国の民主党議員のスタッフとして働いた経験を持つことです。この稀有な経験は、彼女に国際的な視野と米国政治の深い理解をもたらしています。この知見と人脈は、次の米国大統領がドナルド・トランプ氏であれ、カマラ・ハリス氏であれ、十分に対応できる能力を高市氏に与えています。

高市氏は、靖国神社参拝を毎年欠かさず行い、憲法改正に関しては自衛隊の明記だけでなく緊急事態条項の導入も強く主張しています。経済政策では、アベノミクスの継承と発展を掲げつつ、経済安全保障の観点から重要技術の国内保護やサプライチェーンの強靭化を提唱しています。

靖国神社を参拝した高市氏(中央)

さらに、高市氏は日銀官僚や財務官僚に対峙できる政治家でもあります。彼女の豊富な政治経験、特に総務大臣や経済安全保障担当大臣としての経歴は、官僚機構との交渉や対峙の基盤となっています。経済政策への深い理解と強い政治的信念は、日銀や財務省との議論において重要な武器となるでしょう。高市氏は独自の経済政策ビジョンを持ち、過去の予算委員会では日銀の責任について議論を展開した実績もあります。

高市氏が総裁にならなければ、自民党は大きな転換点を逃すことになります。現状維持的な政策や曖昧な政治姿勢では、有権者の期待に応えることができず、党の求心力が低下する恐れがあります。特に、保守層の支持を失うことは、自民党の基盤を揺るがす重大な問題となるでしょう。

高市氏の総裁就任は、自民党に新たな活力をもたらし、保守層の結集と新たな支持層の開拓につながる可能性があります。彼女の明確な政策ビジョンと強いリーダーシップ、特に中国に対する毅然とした態度は、党の再生と日本の変革に不可欠です。さらに、彼女の米国での経験は、日米関係の強化と国際舞台での日本の地位向上に大きく貢献する可能性があります。高市氏が総裁にならなければ、自民党は変革の機会を逃し、政権政党としての地位を失う危険性が高まると言えるでしょう。

日本が直面する内外の課題に立ち向かうには、高市氏のような強い信念と明確なビジョンを持つリーダーが不可欠です。彼女の総裁就任は、自民党の結束を固め、日本の国益を守り抜く強い政権の実現につながります。今こそ、保守派の皆さんは高市早苗氏の下に結集し、新たな日本の未来を切り開く時です。高市氏を総裁に、そして首相に押し上げることが、日本の繁栄と安全を確保する唯一の道なのです。

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2024年8月18日日曜日

トランプは、フクシマが「3000年は戻れない」とは言っていない…!主流メディアがねじ曲げて報じる「イーロン・マスクとの対談」本当の中身―【私の論評】トランプとマスクの対談:福島事故に関する誤解とメディアの偏向報道

まとめ
  • 8月12日に行われたイーロン・マスクとドナルド・トランプの対談は、DDOS攻撃による遅延を経て130万人以上が視聴し、10億回を超える再生回数を記録したが、日本の主流メディアはトランプの発言を文脈から切り取って否定的に報じた。
  • トランプは福島第一原発事故に関して「3000年は戻れない」との噂を問題視し、実際に日本を訪れた経験から「根拠のない話はひどい」と述べ、原子力発電のイメージを変える必要性を強調した。
  • マスクは福島の安全性を証明するために現地の野菜を食べたことを紹介し、福島は危険ではないと反論。トランプも冗談を交えつつ、噂を広める人々を皮肉った。
  • 化石燃料の使用について、マスクは急激な脱炭素を求めず、経済を支えるために石油やガス産業の重要性を認め、トランプも同様の見解を示した。
  • 日米の主流メディアはトランプに対する偏見を持ち、彼の発言を歪めて報じていることが、今回の対談の報道を通じて明らかになった。

8月12日に行われたイーロン・マスクとドナルド・トランプの対談は、DDOS攻撃による遅延にもかかわらず、130万人以上が視聴し、10億回を超える再生回数を記録した。この対談では、日本の主流メディアがトランプの発言を文脈から切り取って報じた。

トランプは福島第一原発事故に関して「3000年は戻れない」と言ったと報じられたが、実際には文脈からすると「根拠のない噂話が広がっている」ことと指摘していた。彼は、原子力発電の「nuclear」という名前が核兵器を連想させるため、イメージを変える必要があると述べている。トランプは、福島の事故についても「3000年は上陸できない」と言われていることを問題視し、実際にそうなのかを問う形で発言した。これに対し、イーロン・マスクは福島で地元の野菜を食べた経験を語り、福島が安全であることを証明したと述べた。

さらに、トランプはチェルノブイリ原発事故についても触れ、「再びあの土地を人々が利用できるようになるのは2000年後だという根拠の薄いうわさ話が広がっていることが問題だ」と指摘した。このような誤解を招く噂話が広がっていることを問題視し、イメージを変える必要があると述べている。

化石燃料の使用に関する議論では、マスクは急激な脱炭素を求めるのではなく、緩やかな移行を主張た。彼は、経済を支えるために石油やガスの産業が重要であり、急激な変化は必要ないと述べている。トランプも同様に、化石燃料からの脱却には100年から500年かかる可能性があるとし、ゆっくりと取り組むべきだと語っている。マスクは、二酸化炭素の濃度が危険な領域の1000ppmに達するまでには300年かかるとし、それまでに脱炭素を実現すべきだと述べている。

このように、メディアの報道はトランプの発言を歪めて伝えており、日米両国でトランプに対する偏見が存在する。トランプとマスクの対談は、エネルギー政策や原子力発電のイメージについても議論が交わされ、トランプは原子力の名前を変えることで誤解を解消する必要があると述べている。この対談を通じて、メディアがどのように情報を切り取って報じるのか、トランプに対する偏見がどのように形成されているかが浮き彫りになった。

この記事は元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事を御覧ください。

【私の論評】トランプとマスクの対談:福島事故に関する誤解とメディアの偏向報道

まとめ
  • 対談中のトランプ氏の発言中の「They」は、原発反対派やメディア、環境保護派を指していると解釈するのが妥当である。
  • トランプ氏は原子力発電を支持し、小型モジュール炉の開発も推進している。
  • 再生可能エネルギーに対しては批判的で、特に風力や太陽光発電の信頼性を疑問視している。
  • トランプ氏のエネルギー政策は、化石燃料の生産と利用を重視し、環境規制の緩和を主張している
  • メディアはトランプ氏の発言を文脈を無視して字義通りに解釈を報道し、印象操作しようとした可能性がある。

トランプとイーロン・マスクの対談は、以下のサイトからご覧いただけます。

Elon Musk and Donald Trump Interview

問題の箇所の発言自体は以下のようなものです。
DONALD: When you see what happened in Japan, where they say, you won't be able to go on the land for about 3,000 years. Did you ever see that? And in Russia, where they had the problem. You know, there's a lot of bad things happened. And they have a problem. And they say that in 2000 years, people will start to occupy the land again. You realize it's pretty bad.

ELON: No. That's not true. It's actually not that bad. So like after Fukushima happened in Japan, like, people were asking me in California and, you know, are we worried about like a nuclear cloud coming from Japan? I'm like, no. That's crazy. It's actually -- it's not even dangerous in Fukushima.
以下に、日本語に翻訳したものを掲載します。
ドナルド:日本で起こったことを見ると、3000年くらいは土地に戻れないと言われています。それを見たことがありますか?ロシアでも問題がありました。多くの悪いことが起こりました。彼らには問題があります。そして、2000年後に人々が再びその土地を占有し始めると言われています。かなりひどいことだと分かりますね。

イーロン:いいえ、それは事実ではありません。実際にはそれほど悪くありません。福島で事故が起きた後、カリフォルニアの人々が私に、日本から核の雲が来ることを心配すべきかと尋ねてきました。私は「いいえ、それは馬鹿げています。実際には福島でさえ危険ではありません」と答えました。
トランプ氏のこの発言に関する解釈は、彼の立場や文脈を考慮すると非常に興味深いものです。まず、トランプ氏は原子力発電と化石燃料の推進派であり、彼の政策は環境規制の緩和と国内エネルギー生産の促進に焦点を当てています。

この背景を踏まえると、彼が発言した「When you see what happened in Japan, where they say, you won't be able to go on the land for about 3,000 years」という言葉における主語「They」は、原発に反対する人々、特にメディアや環境保護派を指している可能性が高いです。

日本語には主語がないことが多いが、英語でも主語を曖昧にしたり省略することもある

英語では、主語が文脈から明らかな場合、代名詞(It や They など)を使って主語を省略することがあります。これは「省略された主語」や「暗黙の主語」と呼ばれることがあります。

結論として、この発言は原子力エネルギーに対するトランプ氏の支持と、それに反対する人々の主張への懐疑を示唆していると解釈できます。メディアによる批判は、この文脈を無視し、発言を字義通りに解釈した結果であると考えられます。

トランプ氏は、これらのグループが福島の状況を誇張していると示唆していると解釈するのが妥当であると考えられます。彼の発言は、原子力エネルギーの危険性に関する一般的な認識に疑問を投げかけようとしていたと考えられます。「3000年」という数字を引用することで、彼はこの主張の極端さを強調したのです。


しかし、メディアがこの発言を批判的に報道したのは、「They」の曖昧さを利用して、トランプ氏が直接この主張をしているかのような印象操作をしたからとみられます。この発言を正確に理解するには、トランプ氏のエネルギー政策全体と、原子力に対する彼の支持的な立場を考慮する必要があります。

トランプ氏のエネルギー政策は、主に化石燃料の生産と利用を重視するもので、石油、天然ガス、石炭の推進を強く支持しています。彼は環境規制の緩和を進め、化石燃料産業の発展を促進しようとしています。

また、再生可能エネルギーに対しては批判的で、特に風力や太陽光発電の信頼性を疑問視しています。パリ協定からの離脱を主張し、アメリカのエネルギー自給自足を重視しています。

原子力発電については、現存する原子炉の運転継続と小型モジュール炉の開発を支持しており、経済成長とエネルギー生産の拡大を目指す姿勢が見られます。全体として、トランプ氏の政策は環境保護よりも経済的利益を優先しています。

トランプ氏の環境政策は、単に環境保護に反対しているわけではなく、過度な規制や極端な環境保護主義に対抗する姿勢を示しています。彼は、一部の環境保護団体が経済成長を阻害し、雇用に悪影響を与えると考えています。

特に環境保護の名の下に個人の自由や経済活動を過度に制限することに反対しています。このアプローチは、極端な環境主義に対抗しつつ、経済的利益を優先するものと解釈できます。

そのようなトランプ氏が被災した福島の人々が「3000年くらいは土地に戻れない」と主張するのは、著しく矛盾しています。やはりマスコミの印象操作とみるべきです。

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2024年8月17日土曜日

総裁選「地震」で不出馬に追い込まれた岸田首相 ダメ押しは日向灘地震と中央アジア訪問ドタキャン 米対応で高市氏の存在が浮上―【私の論評】高市早苗氏の米国連邦議会での経験と自民党総裁選の重要性

 高橋洋一「日本の解き方」

総裁選「地震」で不出馬に追い込まれた岸田首相 ダメ押しは日向灘地震と中央アジア訪問ドタキャン 米対応で高市氏の存在が浮上

まとめ
  • 岸田文雄首相が9月の自民党総裁選への不出馬を表明し、党内外に衝撃を与えた。
  • 政権の危機管理能力の低下が背景にあり、能登半島地震後の補正予算未実施や日向灘地震後の中央アジア訪問中止が問題視された。
  • 総裁選は事実上開始され、麻生太郎副総裁と菅義偉前首相が争う可能性が高い。
  • 高市早苗経済安保相が注目されており、彼女は米大統領選への対応力を持つ稀有な候補者とされている。
  • 今後の総裁選では活発な政策論争が期待され、日本の政治の方向性を左右する重要な選挙となる見込み。
麻生太郎副総裁と菅義偉前首相

 岸田文雄首相が9月の自民党総裁選への不出馬を突如表明したことは、党内外に大きな衝撃を与えた。この決定は、前日まで出馬を検討しているとみられていただけに、より一層驚きを呼んだ。岸田政権の末期症状は、特に危機管理の面で顕著に表れていた。

 能登半島地震後の対応は、その綻びの一つだった。震度7の大地震に対して補正予算を組むことは政治家として絶好の機会であったにもかかわらず、岸田首相はその機会を逃した。さらに、8月8日の日向灘地震への対応も批判を浴びることとなった。南海トラフ巨大地震への懸念がある中、首相は予定されていた中央アジア訪問をキャンセルした。これは危機管理の観点からも、外交面からも適切ではない。

 中央アジア5カ国への訪問は、日本にとって戦略的に重要な機会だった。これらの国々はロシア、中国、イラン、アフガニスタンに囲まれ、ユーラシア大陸の中心に位置している。日本の国益確保の面でも重要な地域であり、この訪問のキャンセルは「外交の岸田政権」の看板に疑問を投げかけるものとなった。

 こうした一連のミスが、岸田首相の政権運営の限界を示すこととなり、総裁選不出馬という決断につながったと考えらる。もちろん、「政治とカネ」の不祥事も政権に打撃を与えてきたが、最終的には地震対応の危機管理の問題が決定打となったようだ。

 総裁選は事実上始まり、キングメーカーとして麻生太郎党副総裁と菅義偉前首相の争いが注目されている。菅氏は小泉進次郎元環境相、石破茂元幹事長、河野太郎デジタル相らへの影響力があり、優勢とみられている。一方、麻生氏は高市早苗経済安保相を推す可能性もある。

 高市氏は特に注目されており、米大統領選への対応力が評価されいる。政策の観点からトランプ氏が勝利しても、女性同士であることや高市氏はかつて米民主党議員のスタッフの経験もあることからハリス氏が勝利しても対応できる稀有な人物といえる。保守政策への理解と、過去の民主党議員スタッフの経験を持つ高市氏は、幅広い対応力を持つ候補者といえる。

 今後の総裁選では、こうした候補者たちによる活発な政策論争が期待されており、日本の政治の方向性を左右する重要な選挙となることが予想される。

 この記事は、元記事の要約です。詳細知りたい方は、元記事を御覧ください。

【私の論評】高市早苗氏の米国連邦議会での経験と自民党総裁選の重要性

まとめ

  • 高市早苗氏は、米国連邦議会でCongressional Fellowとして活動し、米民主党下院議員パトリシア・シュローダーの事務所で議員立法の調査や分析を行った経験がある。この経歴は日米関係において重要な意味を持つ可能性がある。
  • 高市氏の経歴については、過去に「議会立法調査官」としての呼称が経歴詐称と指摘されたが、後に「Congressional Fellow」という正式な名称に訂正され、事実であることが証明されている。
  • 自民党総裁選の情勢が変わる中、麻生太郎副総裁が高市氏を推す可能性が注目されている。麻生氏は高市氏との政策的親和性が高く、保守派の結集を図る狙いがあると見られている。
  • 他の総裁候補では、トランプ氏の予測不可能な政策に対して十分な対応策を持っているとは言い難く、特に安倍元首相のような個人的な信頼関係を構築できる候補がいないことが課題である。
  • 自民党総裁選は、単なる人気投票ではなく、自民党や岸田政権の支持率低下の原因を真摯に反省し、信頼回復と政策の明確化を図る選挙でなければ、党勢は衰え、下野する危機に直面することになるだろう。

上の記事では、高市氏はかつて民主党議員のスタッフの経験もあるとされていますが、これは意外と知られていないようです。私も色々調べてみましたが、これに関する情報はなかなか見当たりませんでした。

結局のところ米国連邦議会Congressional Fellowであったことがわかりました。これについ調べていくと、2016年あたりに、いわゆる経歴詐称問題があったことを思い出しました。

米国連邦議会Congressional Fellowは、研究者や実務家に米国連邦議会の仕組みや政策形成プロセスについて実践的に学ぶ機会を提供するプログラムです。参加者は議員オフィスや委員会スタッフとして実際の業務に携わり、政策立案や法案作成のプロセスを間近で観察・参加します。通常、数ヶ月から1年程度の期間で行われ、参加者は無給または低賃金の研修生的な立場で活動します。

高市早苗氏は、このCongressional Fellowの経験を持っています。高市氏の公式プロフィールによると、彼女は「米国連邦議会Congressional Fellow(金融・ビジネス)」として活動しました。具体的には、1987年から1989年にかけて、アメリカ下院議員パトリシア・シュローダーの事務所でCongressional Fellowとして勤務し、議員立法のための調査や分析を行ったとされています。

アメリカ下院議員パトリシア・シュローダー氏

パトリシア・シュローダーは、1973年から1997年まで24年間にわたり、コロラド州第1選挙区選出の民主党下院議員を務めました。彼女はコロラド州から初めて連邦議会に選出された女性議員であり、リベラルな立場から社会福祉、女性の権利、軍事支出などの問題に取り組みました。シュローダーは下院軍事委員会の初の女性メンバーとなり、軍事費削減や女性の軍隊での権利擁護に尽力しました。

パトリシア・シュローダーが活躍した時代の民主党は、確かにリベラルな立場を取りながらも、現代の民主党とは異なる特徴を持っていました。

当時の民主党は、リベラルな政策を推進しつつも、より穏健で中道的な立場を維持していました。労働者の権利や社会福祉の拡充を重視しながら、経済政策においては比較的バランスの取れたアプローチを取っていました。

この時期の民主党は、今日見られるような極端な左翼思想の影響を受けておらず、アイデンティティ政治やポリティカル・コレクトネスへの傾斜も顕著ではありませんでした。代わりに、幅広い有権者層の利益を代表することに重点を置いていました。

特に注目すべきは、当時の民主党と共和党の間に存在した相互尊重の雰囲気です。両党間での対話や妥協が可能であり、政策立案においてより建設的な協力が行われていました。これは、現代の極端な政治的分断とは対照的です。

シュローダー氏自身も、強い信念を持ちながらも、他党の議員とも協力できる柔軟性を示しました。これは当時の政治文化を反映しており、今日の民主党とは異なる、より実務的で妥協を重視するアプローチを示しています。

このように、シュローダー氏が活躍した時代の民主党は、リベラルな価値観を持ちつつも、今日のような極端な左傾化や分断を避け、より広範な国民の支持を得られる政党として機能していたと言えるでしょう。

ただし、この経験の呼称については後に議論がありました。高市氏は帰国後、「議会立法調査官」という訳語を使用していましたが、これが2016年2月ジャーナリスト鳥越太郎氏により経歴詐称ではないかという指摘を受けました。その後、高市氏は「Congressional Fellow」という正式な名称を使用し、「議会立法調査官」という呼称の使用を止めました。高市氏は自身の業務内容に関するシュローダー議員によるサイン入り文書と、研究費としての月2000ドルの送金記録を提示し、自身の経験を証明しています。

米国連邦議会Congressional Fellow時代の高市早苗氏

このように、高市早苗氏のCongressional Fellow経験は事実であり、米国議会政治の実態を学ぶ貴重な機会となったと考えられますが、その経験の呼称や内容については一時期議論があったことが分かります。

結局のところ、経歴詐称とマスコミが騒ぎ立てたのですが、その後それが事実ではないことがわかり、現在でマスコミなどがこの問題に関しては、沈黙しているということなのでしょう。そのため、「民主党議員のスタッフの経験」とだけ検索すると、ほとんど出てこないという状況になっているのだと思われます。

高市早苗氏の経歴は、確かに他の総理候補と比較して特異であり、その経験は日米関係において重要な意味を持つ可能性があります。トランプ氏、ハリス氏のいずれが大統領になったにしても十分に対応できる可能性が高いです。

全体として、他の候補ではトランプ氏の予測不可能な政策や交渉スタイルに対して、十分な対応策を持っているとは言い難い状況です。特に、安倍元首相のようなトランプ氏との個人的な信頼関係を構築できる候補が見当たらないことが、大きな課題です。

また、トランプ氏の「アメリカ・ファースト」政策に対して、日本の国益を守りつつ協調関係を維持するための具体的な戦略が、いずれの候補からも明確に示されていないことも懸念材料です。

自民党総裁選の情勢が大きく変わる中、麻生太郎副総裁の動向が注目されています。岸田文雄首相の不出馬表明を受け、麻生氏が高市早苗経済安保相を推す可能性が浮上しています。

麻生氏は党内で強い影響力を持つ実力者であり、高市氏との政策的親和性が高いことから、保守派の結集を図る狙いがあると見られています。高市氏は女性リーダーとしての注目も集めており、自民党が女性の登用を重視する中で有力な候補者となっています。

一方で、河野太郎デジタル担当相の動向も注目されています。河野氏は麻生氏と菅義偉前首相の間で板挟みになっている状況が報告されています。麻生氏が河野氏の出馬を認めない可能性がある一方、菅氏は河野氏を重要な候補者と見なしているようです。

麻生氏が高市氏を推すことで、党内のパワーバランスを保とうとする可能性もあります。しかし、高市氏の一部の政策や発言が党内リベラル派や親中派の反発を招くこともあり、麻生氏の判断は慎重になると予想されます。

安倍総理と高市氏

総裁選に向けて、麻生氏の動向は党内外から注目されており、高市氏への支持表明があれば、それは大きな政治的意味を持つことになるでしょう。今後の展開や、新たな総裁が誰になるかについては、まだ不透明な状況が続いています。

このような状況の中で、自民党総裁選が単に次の選挙に当選したいだけの議員らによる人気投票になってはいけません。自民党や岸田政権の支持率が落ちた理由、特に従来の保守岩盤支持層が離れていった理由を精査し、かつ真摯に反省し、その前提に立った総裁選を行わなければ、自民党の党勢は衰え、下野する危機に直面することになるでしょう。党としての信頼回復と政策の明確化が急務であり、これを怠れば、国民の支持を失いかねません。

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2024年8月16日金曜日

太陽電池の過剰生産で自滅しかねぬ習政権 大掛かりな奨励策でメーカー同士の競争が白熱化 日本は中国製輸入の大幅削減を―【私の論評】日本の太陽光発電における課題とリスク:制度の欠陥と国際的影響


まとめ
  • 災害時の太陽光パネルの破壊が、感電事故や環境破壊につながる懸念がある。
  • 中国が世界シェアの8割を占める太陽光発電の負の側面が政治家やメディアに無視されている。
  • 太陽光発電は環境改善効果がなく、不安定な電力供給や国民負担増加、人権問題などの問題がある。
  • 日本政府や政治家は中国製パネルの輸入見直しに消極的で、むしろ設置拡大を推進している。
  • 中国の過剰生産と安値輸出により、日本を含む西側世界は中国製パネルへの依存を強いられている。

自然災害による太陽光パネルの破壊

 台風シーズンや南海トラフ巨大地震のリスクが高まる中、太陽光パネルの破壊が感電事故や環境破壊を引き起こす懸念が強まっている。特に、中国が世界の太陽光発電パネルの80%を生産しており、日本が大量に輸入していることは問題である。

 さらに、太陽光発電が地球環境改善に寄与せず、不安定で質の悪い電気を生み出すことで国民に経済的負担を強いる可能性も高い。また、中国における新疆ウイグル自治区での強制労働による生産の問題も浮上しており、日本の政治家やメディアは太陽光発電の負の側面を無視している。

 さらに、中国国内では太陽電池の過剰生産が進んでおり、安価な輸出攻勢が強化されている。習近平政権は太陽電池を「新質生産力」と位置づけ、大規模な生産奨励策を展開している。特に地方では、不動産バブル崩壊後の景気対策として太陽光発電に注目が集まっている。

 しかし、この政策には問題点がある。太陽電池メーカー間の過当競争が激化し、農地が太陽光パネルで覆われることで食料生産能力が損なわれている。さらに、過剰生産が祟って習近平政権が自滅の道をたどる可能性もある。

 このような状況下で、日本の農地が太陽光発電所の建設に転用され、農業生産能力が損なわれる事態になっている。

 日本政府は、太陽光発電の弊害を適切に評価し、中国製パネルの輸入を大幅に削減すべきである。これにより、国民の安全や環境保護、さらには人権問題への配慮をすべきである。

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【私の論評】日本の太陽光発電における課題とリスク:制度の欠陥と国際的影響

まとめ
  • 日本の太陽光発電に関する問題点には、公金の不適切な利用や無秩序な導入があり、固定価格買取制度(FIT)が長期的な視点を欠いた導入を助長している。
  • 一部の地方自治体では、補助金を受け取りながら発電設備の導入が進んでいない疑惑があり、特に静岡県企業局や宮崎県串間市の事例が指摘されている。
  • 太陽光パネルの輸入依存度が高まり、特に中国製パネルへの依存が産業政策や安全保障の観点から懸念されている。
  • 習近平政権の「新質生産力」政策は過剰生産と過当競争を招き、第二の不動産バブルを引き起こす危険性がある。
  • 日本政府が中国製パネルの輸入を続けることは、習近平政権の無為無策を助長し、エネルギー安全保障や環境問題に悪影響を及ぼす可能性がある。
日本での太陽光パネル設置に関する問題点として、公金の不適切な利用や無秩序な導入があげられます。

太陽光発電投資における利益獲得の仕組み

固定価格買取制度(FIT)の導入により、太陽光発電事業が投資や利益目的の対象となり、長期的な視点や計画性を欠いた導入が進んだ面は否めません。FIT制度による国民負担の増加も問題視されており、再生可能エネルギー賦課金の上昇により電気料金への上乗せが増加しています。

具体的な事例として、静岡県企業局が運営する太陽光発電所で、実際の発電量を上回る売電収入を得ていた疑惑が報じられています。また、大手電機メーカーの子会社が、FIT制度を利用して不当に高額な売電収入を得ていた疑いで経済産業省から調査を受けたとの報道もあります。

さらに、一部の地方自治体では、太陽光発電事業の名目で国からの補助金を受け取りながら、実際には発電設備の導入が進んでいない可能性が指摘されています。例えば、宮崎県串間市では、市が出資する第三セクター「串間エネルギー」が、太陽光発電事業で財政難に陥ったとの報道がありました。

これらの問題に加え、太陽光パネルの輸入依存度の高さも課題となっています。国産パネルの比率が低下し、輸入品の割合が高まっているとされています。特に中国製パネルへの依存度が高いとされ、産業政策や安全保障の観点から懸念が示されています。

また、太陽光発電の大量導入に伴う電力系統の安定性の問題も指摘されています。天候に左右される発電量の変動が大きいため、既存の火力発電所の稼働率低下や、余剰電力の処理などの課題が生じる可能性があります。

これらの問題に対し、より組織的で計画的なエネルギー供給体制の構築が求められています。しかし、現状では短期的な利益追求や無秩序な導入が先行している面があり、長期的な視点に立った政策の見直しが必要です。

習近平政権は太陽電池やEV車を「新質生産力」として推進していますが、過剰生産と過当競争が深刻なリスクをもたらしています。特に、太陽電池の輸出価格は2023年6月に前年同期比で46%も下落しました。これにより、中国の太陽電池メーカー同士の競争が激化し、経済の健全性が損なわれています。

EV車についても、米国が中国製品に対する制裁関税を引き上げる方針を示しており、国際的な摩擦が増加しています。

中国製EV

さらに、「新質生産力」の推進は、第二の不動産バブルを招く危険性があります。政府の大規模な投資と奨励策により、特定の産業に資金が集中し、過剰な設備投資や投機的な動きを引き起こす可能性があります。これは、かつての不動産バブルと同様のパターンを繰り返すリスクがあります。

これらの問題が続けば、企業の経営悪化や失業の増加、国際市場での信用低下などが進行し、習近平政権の政治的安定性にも影響を及ぼす可能性があります。「新質生産力」政策が、持続可能な経済成長ではなく、新たな経済バブルを生み出す危険性に注意を払う必要があります。

日本政府が太陽光発電の弊害を適切に評価せず、中国製パネルの輸入を大幅に続ける場合、さまざまな問題が生じるでしょう。まず、習近平政権の過剰生産政策を助長することになります。中国の太陽電池産業は既に過剰生産と過当競争の状態にあり、日本の大量輸入はこの状況をさらに悪化させる恐れがあります。

また、この行動は人権問題への加担にもつながります。中国の新疆ウイグル自治区での強制労働の疑いがある中で、日本の大量輸入は習近平政権による人権弾圧を助けることになります。

さらに、中国製パネルへの依存度が高まることで、エネルギー安全保障上のリスクも高まります。特定の国からの輸入に過度に依存することは、地政学的リスクを増大させる可能性があります。

中国製パネルの輸入を続けることは、習近平政権の無為無策や無能を助長することに

加えて、環境問題や廃棄物問題を悪化させることになります。中国製パネルの品質や耐久性、廃棄時の環境負荷が適切に評価されていない場合、長期的な環境問題につながる恐れがあります。

これらの問題を考慮せずに中国製パネルの輸入を続けることは、習近平政権の無為無策や無能を助長するだけでなく、日本自身にもさまざまな悪影響をもたらすことになるでしょう。

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