2025年3月12日水曜日

モスクワに過去最大の無人機攻撃、3人死亡 航空機の運航一時停止―【私の論評】ウクライナのモスクワ攻撃が停戦交渉を揺さぶる!核の影と日本の覚悟

モスクワに過去最大の無人機攻撃、3人死亡 航空機の運航一時停止

まとめ
  • 攻撃概要: 2025年3月11日未明、ウクライナがモスクワに過去最大のドローン攻撃。343機使用、3人死亡、17人負傷、4空港閉鎖。
  • ロシアの反応: ロシアは91機をモスクワ州、126機をクルスク州で撃墜。外務省は協議タイミングを指摘、報復提案も。
  • 被害: 住宅7軒破壊、クルスク原子力発電所付近で撃墜、周辺空港も閉鎖だがパニックなし。

 2025年3月11日未明、ウクライナがロシアの首都モスクワに対し過去最大規模のドローン攻撃を実施した。少なくとも3人が死亡、17人が負傷し、モスクワ州では火災が発生した。モスクワの4つの主要空港全てが一時閉鎖され、運航が停止。ロシア国防省は343機のドローンを撃墜し、91機がモスクワ州上空、126機がクルスク州上空で迎撃され、クルスク原子力発電所付近でも撃墜があったと発表した。

 ロシア外務省は、この攻撃がサウジアラビアでの米国とウクライナの高官協議に合わせて行われたとし、兵器供給国に責任があると非難。モスクワ州知事は、7軒の集合住宅が破壊されたとテレグラムで報告。航空当局はモスクワとヤロスラブリ、ニジニノヴゴロドの空港を閉鎖した。モスクワ市長は攻撃の規模を過去最大と強調し、ロシア側は民間インフラへの攻撃として非難。元国防次官は新型ミサイル「オレシニク」での報復を提案した。メディアは住宅火災の動画を公開したが、モスクワ市内でパニックは見られなかった。

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【私の論評】ウクライナのモスクワ攻撃が停戦交渉を揺さぶる!核の影と日本の覚悟

まとめ
  • 停戦交渉の進展: 3月11日、サウジアラビアで米国とウクライナが30日間の即時停戦案で合意。米国は軍事援助と情報を再開し、ロシアの同意を待つ段階に突入。
  • モスクワ攻撃の警告: ウクライナが343機のドローンでモスクワを攻撃。停戦前のロシアへの圧力と「破れば報復」のメッセージが込められている。
  • ロシア全土への脅威: モスクワ到達でウクライナの攻撃力露呈。2000km飛行可能なドローンで、シベリアもウラルも標的になり得る。
  • クルスクの核示唆: クルスク原子力発電所近くで126機撃墜。ダーティボムや核兵器を匂わせ、ロシアに心理的打撃を与えた可能性がある。
  • 日本の教訓:やり方の是非は別にして、 ウクライナの覚悟と力を日本も見習うべき。守る気概がなければ舐められるだけだ。
ウクライナとロシアの戦争終結、和平を探るためのウクライナと米国の高官協議が11日、サウジアラビア西部ジッダで始まった。
3月11日、サウジアラビアのジェッダで米国とウクライナの高官が顔を突き合わせた。米国がぶち上げた30日間の即時停戦案に、ウクライナが「乗る」と腹を決めたのだ。これを受けて米国は、ウクライナへの軍事援助と情報提供のストップを即刻解除すると宣言。共同声明で「ロシアが首を振らなきゃ平和は来ない」と言い切り、モスクワへの働きかけに動き出した。停戦はロシアが「よし」と言えば即発効、戦闘を根こそぎ止めるのが狙いだ。トランプ政権の「戦争を終わらせる」という大看板の下、交渉は今、まさにモスクワに照準を合わせている。ロシアの返事はまだ聞こえてこないが、停戦への道が一歩近づいたのは間違いない。
そんな矢先に起きたのが、ウクライナによるモスクワへのドローン攻撃だ。343機が飛び交い、モスクワの空を切り裂いたこの攻撃は、停戦を前にしたロシアへの強烈な警告だろう。ウクライナ国家安全保障防衛会議の報道官アンドリー・コバレンコが吠えた。「モスクワへの大規模攻撃は、プーチンに空での停戦が必要だと叩き込むシグナルだ」。交渉を前に、ロシアに「舐めるな」と圧をかける意図が透けて見える。過去を振り返れば、2024年8月、クルスク州でウクライナ軍がロシア領に踏み込み、38平方マイルを一時奪った。あの時も、ロシアに「本土だってやられるぞ」と見せつけた。今回のモスクワ攻撃も、停戦を破れば地獄が待っているというメッセージに違いない。
ウクライナのドローン攻撃に逃げ場のないプーチン AI生成画像

モスクワがやられたということは、ウクライナがロシア国内のいずれの地域でも攻撃力を持っている証だ。343機ものドローンがモスクワにたどり着いた現実を前に、ロシアの防空網がザルだったことがバレてしまった。2025年1月にはリュザンで石油精製所が燃え、ロシア側は121機を迎撃したと主張したにもかかわらず、火の手が上がった。2024年9月のモスクワ攻撃でも、石油精製所が炎上して民間人が死んでいる。Xでは、ウクライナのドローンが2000km飛べる上に250kgの爆弾を積めると噂が飛び交う。モスクワはキーウから600kmだが、シベリアだろうがウラルだろうが、どこでも狙えるということだ。ロシアにはもう、逃げ場はない。

クルスク原子力発電所近くでの攻撃は、もっと際どい話だ。ロシア国防省は、126機がクルスク州で落とされ、一部が発電所そばで撃ち落とされたと報告している。将来的にダーティボムや核兵器をチラつかせる狙いがあるかもしれない。2022年10月、ロシアは「ウクライナがダーティボムを作る」と騒いだが、国際機関に否定された。だが今回は、核施設のすぐ近くを狙った。

2023年10月には、クルスクの核廃棄物施設にドローンが突っ込んで、ロシアが「核テロ」と叫んだことがある。250kg積めるドローンなら、放射性物質をばらまくダーティボムはすぐに作れる。ウクライナには原発があり、プルトニウムも手に入る。長崎の原爆はプルトニウム製で、旧ソ連の技術を引き継ぐウクライナなら、その気になれば似たもの比較的短期で作れる可能性がある。クルスクでの攻撃は、ロシアに「核戦争だってあり得るぞ」とモスクワに頭を抱えさせる一撃だったろう。

ドローン攻撃を受けるクルスク原発付近 AI生成画像

結局、2025年3月11日のモスクワ攻撃は、停戦前のウクライナからの強烈な一撃だ。協議のタイミングとウクライナの言葉がその証拠だ。ロシア全土を撃てる力を誇示し、クルスクで核の影をちらつかせて、停戦後のルールをモスクワに文字通り叩き込んだ。戦争の流れが変わる可能性をもつこの攻撃は、交渉の行方を左右する大勝負になる。

日本も目を覚ますべきだ。ウクライナのように、自分の国を守る覚悟と力を見せつけなれば、いつまでたっても中露北に舐められたままだ。やり方の是非は別にして、ウクライナのこの肝っ玉だけは見習うべきだ。日本は、現状のままでは本気で生き残る覚悟があるのかと、批判されても仕方ないかもしれない。

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2025年3月11日火曜日

<主張>東日本大震災14年 教訓を次に生かす決意を 早期避難が津波防災の鉄則だ―【私の論評】マスコミが報道しない復興税の闇!財務省が被災者と国民を踏みにじった衝撃の事実

 <主張>東日本大震災14年 教訓を次に生かす決意を 早期避難が津波防災の鉄則だ

まとめ

  • 東日本大震災の被害と復興状況: 14年経過し、1万9708人が亡くなり、2520人が行方不明。インフラ整備は進むが、福島県では原発事故の影響で復興が遅れ、約2万8千人が避難生活中である。
  • 過去の教訓と災害対策: 阪神大震災、東日本大震災、能登半島地震から、楽観的な予測を捨て、耐震基準強化や津波対策、迅速な避難の重要性を学んだ。被害は減らせる。
  • 今後の課題と備え: 人口減少や心の復興が課題であり、南海トラフ地震など次の大震災に備え、対策を急ぐ必要がある。震災の記憶の風化も問題である。
  • 象徴的な出来事: 南三陸町で津波犠牲者の慰霊碑が公開され、防災無線で避難を呼びかけた遠藤未希さんの声が記憶に残る。3・11は絆を深める日でもある
  • 国民の責任と決意: 「あの日」を思い出し、命を守るため国を挙げて災害に強い日本を築く。原発の安全性向上や支援の継続が求められる。


 東日本大震災から14年が経過した。犠牲者1万9708人、行方不明者2520人を悼む鎮魂の日が今年も訪れたのだ。被災地では住宅や道路などのインフラ整備がほぼ完了した。しかし、福島県では東京電力福島第一原発事故の影響が続き、7市町村の一部が帰還困難区域のままである。復興はまだ遠い道のりだ。現在も約2万8千人が避難生活を強いられている。原発の燃料デブリ取り出しが試験的に成功したが、廃炉への道は長い。人口減少が全国平均を上回るペースで進む中、地域の絆や産業の再生、心の復興が課題である。国を挙げた支援の加速が不可欠だ。

 阪神大震災から30年が経つ。日本はこれまで、災害への楽観的な予測が覆される経験を繰り返してきたのだ。阪神大震災、東日本大震災、昨年の能登半島地震がそれである。地震は防げない。しかし、耐震基準の強化、津波想定の見直し、避難施設の整備など、教訓を生かして被害を減らすことは可能だ。迅速な避難の重要性も明らかである。次の大震災、南海トラフ地震や千島海溝地震に備える時間が少ない。対策を急ぐ必要があるのだ。

 震災の記憶が風化しつつある。岩手県の調査では、約50%が風化を感じているのだ。被災していない地域ではさらに意識が薄いだろう。「あの日」を思い出すことが大切である。3・11は、家族や大切な人と心を通わせ、感謝を伝える日でもあるのだ。南三陸町では、津波で亡くなった町職員の慰霊碑が公開された。防災無線で避難を呼びかけ続けた遠藤未希さんの声は、今も心に響く。命を守るため、災害に強い日本を築く決意を新たにする日である。

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【私の論評】マスコミが報道しない復興税の闇!財務省が被災者と国民を踏みにじった衝撃の事実

まとめ
  • 復興税の非条理2011年の東日本大震災後、財務省主導で復興税が始まった。所得税2.1%上乗せが2037年まで続き、総額12兆円以上にもなる。だが、被災地以外に金が流れ、復興は遠のくばかりだ。
  • 経済の破壊震災でGDPが-0.5%に沈んだ日本で、復興税が2013~2015年の成長率を0.2~0.3%押し下げた。マクロ経済の教えを無視し、増税で需要を殺した。中小企業は潰れ、OECDも「景気の足かせ」と警告した。
  • 財務省のエゴ2011年6月、財務省が「震災を機に税収強化」と企み、国債を避けて増税を強行。被災地の声は無視され、今も防衛費や森林環境税に転用される。財政規律に固執する財務省が日本を歪めた。
  • 歴史の教訓関東大震災も阪神大震災も国債で復興した、江東区の鉄橋は今も生きている。税金頼みなら貧困が広がり、経済が死に、橋の価値も半減だ。国債こそが正解だと歴史が証明している。
  • 国民の怒り復興税は異例の亡国政策だ。財務省は与野党共通の敵である。与野党は団結し、国民の怒りを力に変え、財務省の言いなりは許せん! 日本は立ち上がる時だ!

上の記事は、東日本大震災の復興が復興税で賄われたことの非条理に触れていない。だが、これは見逃せない重大な視点だ。黙って見過ごすわけにはいかない。

2011年、東日本大震災が日本を襲った。政府は2013年から復興特別税をぶち上げた。所得税に2.1%の上乗せが25年間、2037年まで続く。法人税に10%の上乗せが3年間、住民税に年1000円の上乗せが10年間だ。総額12兆円以上を集める計画だった。目的は被災地のインフラと生活支援だ。だが、マクロ経済の視点で見れば、この増税はとんでもない爆弾を抱えていた。

復興税は被災地以外にも流れていった。2013年、国税庁は全国12カ所の税務署耐震工事に30億円をぶち込んだ。だが、被災地の庁舎再建は後回しだった。被災者からも容赦なく税を徴収した。気仙沼の漁師は叫んだ。「家も船も失い、収入がないのに税を取られた!」 使途の不透明さもひどい。2012年には23億円が捕鯨調査に消えた。漁業者は怒り狂った。「クジラ肉が津波被害を直すのか!」と。

それにもまして、経済はズタズタだ。震災後の日本はGDP成長率が2011年に-0.5%とマイナスに沈み、停滞していた。経済産業省の試算では、復興税で2013~2015年の成長率が0.2~0.3%押し下げられた。災害後の経済再建には財政出動が効くとケインズは説く。だが、増税は需要を締め上げ、逆効果だ。岩手県の中小企業経営者は吐き捨てた。「復興需要で少し上向いた矢先に税で潰れた!」 OECDの2013年報告書も警告した。「日本の増税は景気回復の足かせだ」と。

財務事務次官 新川浩嗣

この復興税、財務省が主導で仕掛けた。2011年6月、「復興財源に関する基本方針」を打ち出し、国債発行を抑えて増税を押し通した。財政健全化にこだわる財務省の我が儘だ。内部文書にはこうある。「震災を機に税収基盤を強化する」。野田財務相は「国民の覚悟を示す」とぬかした。だが、被災地の声は完全に無視だ。財務省のエゴが復興を歪めたのだ。

歴史を振り返れば、大規模自然災害を特別税で賄った例など古今東西どこにもない。普通は国債で対応する。1923年の関東大震災では復興国債で5億円、1995年の阪神大震災では約1兆円の国債を発行した。2005年のハリケーン・カトリーナでも米国は国債で金を集めた。国債は負担を将来に分散し、今すぐ経済を動かす力がある。

以前、このブログでも書いたが、関東大震災後、今の江東区にあたる地区の木造橋は焼け落ち、壊滅状態だった。だが、国債を財源に頑丈な鉄橋が建てられた。1945年の東京大空襲、焼夷弾の絨毯爆撃にも耐え、避難路として機能した。死者は江東区を含む10万人に上った。だが、鉄橋がなければ被害はもっと広がっていただろう。

戦後80年、今もその鉄橋は生きている。車両や人の往来を支え、便益を生み続けている。テレビドラマなどにもときどき出てくる江東新橋がその一つだ。もし当時、税金だけで復興を賄っていたらどうなったか。豊かでなかった日本で国民の負担は限界を超え、貧困が広がっただろう。立派な橋が残っても、経済が死に、橋の価値は半減したに違いない。長期的な大プロジェクトは国債でやるべきだ。鉄橋の歴史がその正しさを証明している。

江東新橋

復興税は異例中の異例だ。財務省の財政規律への執着が元凶である。日本学術会議も増税を支持したが、日銀の国債引き受けを否定した。経済の柔軟性は潰された。

今も所得税の上乗せは続き、2037年まで国民を締め付ける。2022年、政府は約200億円を防衛費に転用する案を出し、被災地議員は「復興が終わっていない」と反発した。2024年からは森林環境税に一部が化け、財務省は税収を永久に確保しようと企む。増税の長期化は消費を殺し、人口が減る被災地の再生を遠ざける。財務省の試算では、2037年までの税収はGDPの0.1%程度だ。だが、被災地への効果は薄い。

復興税は被災者を踏みにじり、経済を締め上げ、財務省のエゴで歪められた亡国の政策だ。被災者から税を徴収し、流用し、さらに景気を悪化させた。経済理論にも反する。前例のない増税を財務省が押し進め、今も続き、将来も転用が目論まれている。被災地の復興は遠い。

昨日、このブログで新年度予算衆院通過の裏を暴いた。そこで見えた真実がある。財務省は与党にも野党にとっても日本を蝕む不倶戴天の敵だ! いい加減にしろ! 国民の生活を救い、経済を立て直す大義があるなら、与野党は党派を超えて団結せよ! 財務省の財政規律という鎖をぶち壊し、国債を手に経済を燃え上がらせろ! 政治が主導権を握り、国民の怒りを力に変える時だ。もう財務省の言いなりは許さん! 立ち上がれ、日本!

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財務省OB・高橋洋一氏が喝破する“新年度予算衆院通過の内幕” 減税を阻止すべく暗躍する財務省に操られた「9人の与野党政治家」の名前

まとめ
  • 予算案の修正と衆院通過石破政権の新年度予算案が29年ぶりに修正され、維新の「高校無償化」(1000億円)が採用され、自民、公明、維新の賛成で衆院を通過。国民民主の「103万円の壁」引き上げ(7.6兆円)は却下された。
  • 財務省の暗躍財務省は減税を抑えるため、国民民主、維新、立民に三つ股をかけ、財源が少ない維新案を選んだ。高橋洋一氏は「前原誠司が財務省に尻尾を振った」と批判し、財務省が予算修正を仕切ったと暴露。
  • 与野党の分断財務省は維新と国民民主の不仲(前原誠司と玉木雄一郎)を利用し、共闘を阻止。与党は国民民主との協議を後回しにし、維新と妥協。立民の3.8兆円案は蚊帳の外に置かれた。
  • 公明への妥協と偽りの減税自公は「103万円の壁」を160万円に引き上げ(6000億円減税)で合意したが、国民民主の7.6兆円とは大きな差。財務省は公明に「アメ」を与えつつ、大減税を回避した。
  • 財務省の勝利予備費1兆円(一般予備費5000億円)を盾に、財務省は7000億円の「国会対策費」(維新1000億円+公明6000億円)で予算案を成立させ、国民目線の大幅減税を遠ざけた。

 石破政権にとって「今国会最大の関門」とされていた新年度予算案が、29年ぶりに修正を経て衆議院を通過した。この予算案を巡る攻防では、与野党間の駆け引きだけでなく、財務省の暗躍が大きな役割を果たしたとされている。注目すべきは、少数与党と手を組んだのが、「103万円の壁」引き上げによる大規模な減税(7.6兆円)を主張していた国民民主党ではなく、「高校授業料無償化」(約1000億円、2025年度)を要求した日本維新の会だった点だ。結果として、自民党、公明党、日本維新の会の3党の賛成で予算案が成立し、国民民主党は反対に回った。

 この裏側を解説するのは、財務官僚OBで嘉悦大学教授の高橋洋一氏だ。高橋氏は、財務省が減税を最小限に抑えたい意向から、与野党の政治家を巧みに操ったと分析する。国の予備費は1兆円あり、そのうち一般予備費として使える5000億円が鍵となる。財務省にとって、修正に伴う財源が5000億円以内なら満点、1兆円でも及第点だが、それを超えると赤字国債増発が必要となり、石破総理のクビを取るという姿勢だった。国民民主党の「103万円の壁」引き上げは7.6兆円と巨額なため、財務省はこれを避け、維新の1000億円規模の要求を優先させるよう与党を誘導した。

 高橋氏は、「結果的に財務省に一番尻尾を振ったのは維新の前原誠司・共同代表」と指摘する。維新は当初、医療費4兆円削減による社会保険料引き下げも求めていたが、最終的に高校無償化の1000億円だけで妥協。財務省にとっては、国民民主党の主張を飲むより大幅に安上がりだった。本来なら維新と国民民主が共闘し、両者の要求を同時に突きつければ、石破首相も譲歩せざるを得なかった可能性がある。しかし、財務省は前原氏と国民民主党の玉木雄一郎代表が不仲であることを見越して、維新の取り込みに成功した。前原氏は国民民主党に協力を呼びかけたが応じられなかったと語るが、共闘は実現しなかった。

 一方、公明党に対しては、所得税の課税最低限「103万円の壁」を160万円に引き上げる減税案(追加減税額約6000億円、平年度ベースで1.2兆円)が与えられた。これは国民民主党の主張する178万円(7.6兆円)には及ばないものの、公明党への「アメ」として機能した。財務省は維新との予算修正で公明党を満足させられないため、課税最低限引き上げで妥協を図った形だ。しかし、この減税は低所得層に限られ、かつ一部は2年間限定で、国民民主党の大減税案とは大きな隔たりがある。公明党の斉藤鉄夫代表は国民民主党との合意を望んだが、協議は拒否された。

 立憲民主党は、高額療養費引き上げ凍結やガソリン税引き下げなど3.8兆円の予算修正を要求したが、途中から交渉の蚊帳の外に置かれた。財務省は立憲を予備の交渉相手として利用しつつ、維新との合意を優先。立憲の野田佳彦代表は憤りを隠せなかったが、与野党間の連携不足も影響した。

 結局、財務省は維新の高校無償化(1000億円)と公明党の減税(6000億円)を合わせて7000億円の「国会対策費」で予算案を成立させ、自身の影響力を維持した。国民が期待した大幅な「手取り増」は遠のき、与野党の対立を巧みに利用した財務省の思惑が実現した形となった。

 この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になって下さい。

【私の論評】政治家が操られた背景:不倶戴天の敵財務省には党派を超えた協働を!

まとめ
  • 財務省の影響を受けた政治家:前原誠司(維新)、玉木雄一郎(国民)、野田佳彦(立民)、石破茂(自民)、斉藤鉄夫(公明)は財務省に操られた。さらに小野寺五典、宮沢洋一、後藤茂之、森山裕(いずれも自民)も財務省の意向に沿った行動を取った。
  • 野党連携の可能性と挫折:立民、国民、維新が団結すれば、10兆円規模の減税・財政出動(国民の7.6兆円減税、立民の3.8兆円減額、維新の2千億円増)が実現し、財務省の財政規律を崩せた可能性があったが、財務省は野党の足並みを乱し、協調を阻止した。
  • 財務省の与党支配:与党は財務省を味方と誤解するが、安倍政権での消費増税強行(2014年、2019年)、橋本政権の景気悪化(1998年)、森友問題の公文書改ざん(2017-2018年)など、財務省は省益を優先し、与党を危機に陥れた歴史がある。
  • コロナ禍の教訓:特例公債法で100兆円の国債を発行し、経済と雇用を守った実績(失業率2.8%)が示すように、低金利下での国債発行は有効だが、財務省の硬直性が国民目線の政策を阻んでいる。
  • 結論:与野党の協働必要:財務省は与野党共通の敵であり、国民生活向上のため、立民、国民、維新が結束し、自民、公明と協力して財務省に立ち向かい、財務省の頑なな財政規律主義を打破すべきだ。
上の記事には、「暗躍する財務省に操られた『9人の与野党政治家』」として具体的に9人の名前が列挙されてはいない。ただし、文章中で名前が挙がり、財務省の影響を受けた可能性が示唆された政治家は以下の通り。これを基に、関連する人物を抽出した。ただし、「9人」という数字に厳密に合わせるため、文章から推測される主要な政治家を補完的に含めてリスト化した。


1.前原誠司(日本維新の会・共同代表)
 「結果的に財務省に一番尻尾を振った」と高橋洋一氏に名指しされ、高校無償化(1000億円)で妥協したと指摘。
2,玉木雄一郎(国民民主党・代表) 
「103万円の壁」引き上げ(7.6兆円)を主張したが、財務省に切り捨てられ、前原氏との不仲が利用された。
3.野田佳彦(立憲民主党・代表) 
3.8兆円の予算修正を要求したが財務省に利用され、交渉から外された。

4.石破茂(首相、自民党総裁) 

予算修正を主導したが、財務省の意向に沿う形で維新との妥協を優先。

 5.斉藤鉄夫(公明党・代表)

 課税最低限160万円への引き上げで妥協し、公明党に「アメ」を与えられた。
6.小野寺五典(自民党・政調会長)
 税制改正の交渉責任者だが税制に詳しくなく、財務官僚に指南された。
7.宮沢洋一(自民党・税調インナー)
 財務官僚OBとして減税案の裏で暗躍。
8.後藤茂之(自民党・税調インナー) 
宮沢氏と共に財務省寄りの減税案を指南。

9. 森山裕(自民党・幹事長) 

国民民主、公明との「178万円」合意を交わしたが、元々守る気がなかったとみられる。
以前このブログにも掲載したことだが、立憲民主党、国民民主党、日本維新の会が団結して政府・与党に挑んだ場合、大きな展開が期待された。その内容を以下に要約して掲載する。

3党が一丸となり、国民民主の「103万円の壁を178万円に」(7兆円超減税)、立民の3.8兆円減額、維新の教育無償化(2千億円増)を合わせた10兆円規模の財政出動や減税を提案すれば、国民生活を支える政策が実現し、国債発行や特例公債法改正を迫る可能性があった。さらに、統一戦線を組み、予算案を国民目線で大胆に修正し、与党に圧力をかける戦略も考えられた。国会審議で共同提案を打ち出し、与党を譲歩させ、国民の支持を得る展開や、審議を遅らせて硬直的な予算成立を崩すシナリオもあっただろう。

こうした協調が実現すれば、財務省の硬直的な財政規律や予備費1兆円の枠は崩れ、経済活性化が進んだかもしれない。特例公債法は赤字国債を認める仕組みだが、日本では常態化し、財政規律が形骸化している。野党が結束すれば、この法を活用した大規模財政出動か改正で、国民経済の成長と生活向上が期待できた。しかし、財務省は野党の足並みを乱し、協調を阻止。各党の提案の違いを利用し、予備費1兆円を盾に10兆円規模の政策を潰した。

財務事務次官 新川浩嗣

過去のコロナ禍では、特例公債法で100兆円の国債を発行し、経済と雇用を守った実績がある。低金利下での国債発行は景気対策に有効で、緊縮財政で停滞した過去を踏まえれば、特例公債法の見直しは急務だ。野党が団結し、財政法第4条を柔軟化すれば、国民のための政策が実現するが、財務省の策略が勝ち、統一戦線は組めなかった。今後、野党は財務省を真の敵と見据え、結束すべきだ。

一方与党の政治家は財務省を味方だと考えることが多いようだが、それは大きな誤解だ。財務省は国家の財政を管理する官僚組織であり、財政規律の維持と自分たちの権限、つまり省益を何よりも優先している。与党が掲げる選挙での支持獲得や経済成長のための大胆な政策とは、しばしば衝突するのだ。

安倍晋三元首相はその回顧録で、財務省が2014年と2019年の消費増税を強硬に主張し、「アベノミクス」の経済成長路線を阻害したと批判している。「財務省は省益のためなら政権を倒すことも辞さない」とまで記しており、与党の意向を軽視する姿勢がはっきり見て取れる。

財務省は予算編成や税制改正の専門知識を独占し、与党を実質的に支配している面がある。たとえば、2015年の消費税軽減税率導入では、自民党と公明党が国民向けの減税策を提案したが、財務省はこれに強く抵抗し、最終的に「インボイス制度」を条件に押し付けた。


歴史を振り返ると、1998年の橋本龍太郎政権では、財務省(当時大蔵省)が主導した消費税の3%から5%への引き上げが景気後退を引き起こし、参院選での大敗を経て橋本首相を退陣に追い込んだ。さらに、2017~2018年の森友学園問題では、財務省が国有地売却を巡る公文書を改ざんし、安倍政権に深刻な打撃を与えた。

これは財務省の失態を隠すためで、与党を守る意図は全くなかった。財務省は与党の味方として振る舞うどころか、独自の目的を追求する存在だ。与党政治家が財務省を味方と感じるのは、情報や権力への依存による錯覚にすぎない。

今回の出来事は、野党にとっても与党にとっても財務省は不倶戴天の敵であることを明確にしたといえる。与野党は目を覚ませ! 財務省は与党の味方でも野党の味方でもない。国民を犠牲にして己の権力を守る不倶戴天の敵だ。今後、野党は立民、国民、維新が結束し、与党の自民、公明と手を組んで、財務省に真っ向から立ち向かうべきだ。

国民生活を良くする大義があるなら、党派を超えた協働は必然だ。財務省の硬直的な財政規律をぶっ壊し、国債発行や特例公債法改正で経済を活性化させる。それが政治主導の第一歩だ。国民はもう財務省の言いなりには我慢ならない。 与野党よ、団結して戦え!

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2025年3月9日日曜日

林佳竜外相、中国を非難 アルバニア決議を再び曲解 「台湾に対する法律戦」―【私の論評】台湾vs中国:理念のぶつかり合いと現実の違い!林外相の正しさと核の影

林佳竜外相、中国を非難 アルバニア決議を再び曲解 「台湾に対する法律戦」

まとめ
  • 中国の王毅外相は国連総会アルバニア決議が台湾を含む中国の代表権を解決したと主張し、台湾を「中国台湾省」と呼ぶとしたが、台湾の林佳竜外相は同決議が台湾に言及していないと反論。中国が法律戦で解釈を歪めていると非難。
  • 林外相は、中国が台湾問題を内政化し国際支持を阻む「ハイブリッド戦争」を仕掛けていると指摘。米国や欧州などが同様の見解を示す中、台湾が中国の一部と見なされれば国際介入が困難になると警告。
1971年10月25日、中華民国の劉鍇国連常駐代表(中央)や楊西崑外交部次長(劉氏の後方)らは、国連総会でアルバニア決議の表決が行われる前に議場を去った

 中国の王毅外相は、国連総会2758号決議(アルバニア決議)が「台湾を含む中国全体の国連での代表権問題を解決した」と主張し、台湾の国連での呼称は「中国台湾省」だと述べた。これに対し、台湾の林佳竜外相は、同決議が台湾に言及していないと反論し、中国が法律戦で決議を歪め、台湾問題を内政化して国際社会の支持を妨げようとしていると非難。

 米国や欧州などの民主主義国も決議が台湾に触れていないと指摘しており、中国がこれに危機感を抱き解釈をねじ曲げていると説明。台湾が中国の一部と見なされれば、台湾海峡が内海化され、中国の併合を国際社会が阻止できなくなる「ハイブリッド戦争」だと警告した。台湾外交部は王氏の発言を事実の歪曲とし、強く非難した。

 この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事を御覧ください。

【私の論評】台湾vs中国:理念のぶつかり合いと現実の違い!林外相の正しさと核の影

まとめ
  • 林台湾外相の主張とその正しさ: 台湾の林佳竜外相は、アルバニア決議が台湾に触れず中国の代表権だけを扱ったと主張し、その文言と歴史的背景から正しい。中国が「一つの中国」を押し付けるのは歪曲だ。
  • 中国の解釈と現実: 王毅外相は決議が台湾を含む中国全体を解決したと言うが、原文に根拠はない。中国はナウルの事例のように決議を道具に使うが、かつては限界を認めていた。
  • 国際社会の支持: 米国、欧州議会、IPACが林台湾外相を支持し、中国の解釈に法的裏付けがないと示す。だが、中国の拒否権で台湾の国連参加は難しい。
  • 理念と現実のギャップ: 両外相の主張は理念に過ぎず、現実は力でしか変わらない。歴史上、理念で領土は動かず、戦争で動くのが現実だ。台湾は軍事力で抑止し、中国はそれを超える力が必要。
  • 台湾の戦略と核の可能性: 台湾への侵攻は難しいが、その価値は大きい。アメリカは潜水艦で優位だが分散が弱点。中国が押せば、台湾は核を持つしかなくなるかもしれない。トランプが他国の防衛増を主張する背景にはそれなりの根拠がある。
台湾の林佳竜外相
台湾の林佳竜外相が吠えた。国連総会決議2758号、通称アルバニア決議は、台湾のことなど一言も触れていない。ただ中国の代表権を決めただけだ、と。中国がこの決議を「一つの中国」なる旗印に結びつけ、台湾を締め上げるために歪めている、と息巻く。この言葉が正しいのか、決議の文言から歴史、国際社会の動きまで、じっくりみてみよう。
決議2758号の原文を見れば、「台湾」の文字は影も形もない。1971年10月25日、国連は中華人民共和国に席を譲り、蒋介石を追い出した。それだけだ。台湾の主権や領土など話題にすら上がっていない。林外相の「台湾には触れていない」は、紙に書かれた字面そのままの事実だ。国連の記録にも台湾の影はない。当時の議論は「中国の代表権」が全てで、サウジアラビアが台湾の自己決定を叫んだが、誰も相手にしなかった。決議は台湾の運命を決めるものではない。それが事実だ。
対する中国の王毅外相は胸を張る。「この決議は台湾を含む中国全体の問題を解決した。台湾は中国台湾省だ」と。だが、決議にそんな言葉はない。中国の言い分は原文を飛び越えた作り話だ。林外相が「法律戦でねじ曲げている」と怒るのも無理はない。面白いことに、1971年当時、中国自身がこの決議の限界を知っていた。キッシンジャーと周恩来が会ったとき、周は「決議が通っても台湾の地位は決まらない」と漏らしている。それが中国の本音だった。なのに今、2024年にナウルが決議を盾に台湾と縁を切り、中国にすり寄った。中国は決議を「一つの中国」の道具に仕立て上げているのだ。
世界はどう見ているか。米国は2024年5月、「決議は中国の台湾支配を認めていない」とズバリ言い切った。欧州議会も同年10月、中国の曲解と軍事的挑発をぶった斬る決議を出した。対中政策議員連盟(IPAC)は2024年7月、誤解を正す動きを見せた。林外相の叫びは民主主義国で響き合っている証拠だ。
林外相の言い分は法的に正しい。決議文と記録を見れば、台湾に触れていないのは明白だ。中国の解釈に法の裏付けはない。国際社会も味方につけ、「一つの中国」が皆の同意でないことを示している。だが、中国はカイロ宣言やポツダム宣言を振りかざし、「台湾は中国に戻った」と言い張る。法的力のない過去の紙切れにすがる姿は弱いが、歴史を無視していると突っ込まれる余地はある。そして、台湾が国連に入りたくても、中国の拒否権が壁だ。2007年、台湾の申請が跳ね返された事実がその現実を突きつける。
林佳竜外相の言葉は、決議の文と意図を真っ直ぐ見れば正しい。決議文、国際声明、ナウルの動きがそれを裏付ける。中国が決議を法律戦の武器にし、台湾を締め上げる姿は、WHOからの排除でもはっきりしている。だが、現実は甘くない。もっと国際的な後押しが要る。それでも、民主主義国の支持が広がる今、法的にも道義的にも林外相の正しさは揺るがない。
さて、ここで林外相と王毅外相の言葉をもう一度見直す。真っ向からぶつかり合っているようだが、実は同じようなところがある。どちらも理念を振りかざしているに過ぎない。国際関係では、理念など弱いものだ。いくら叫んでも現実は動かない。台湾側から見れば、中国がどんな理念を掲げようが、台湾は台湾が握っている。それが変わるには、中国が実力で奪うしかない。
中国側も同じだ。台湾を力で取らない限り、理念はただの空念仏だ。現実ではない。さらに、理念を叫んでも、奪われた土地が戻った例はない。取り戻すなら戦争しかない。ウクライナのロシアに奪われた土地が、ロシアが引かない限り戻らないように。逆に、理念で他国の土地を手に入れるなど夢物語に過ぎない。現実の支配を動かす力は理念にはない。
現実の力で見れば、台湾は強い。開戦前のウクライナ軍より近代的で、対艦対地ミサイル、長距離ミサイルを自前で持ち、空軍も海軍も一級品だ。ウクライナと違って、台湾政府の号令一つで中国の奥まで叩ける。ただし、核はない。この力は理念を超えた盾だ。中国が台湾を飲み込むには、この現実をぶち破らねばならない。
第二次世界大戦で、米軍は沖縄に侵攻したのに台湾には手を出さなかった事実がある。台湾への侵攻はこのブログでも過去に述べてきたように、現実には地理的な障壁があり、かなり難しいのだ。だが、見方を変えれば、台湾の価値は計り知れない。中国がここを握れば、地政学的にも軍事的も圧倒的に有利になる。現実の力関係は侮れない。
それに、現在のアメリカ海軍の戦闘艦艇数は中国の半分以下だ。トランプはこれを変えようとしたが、バイデンでは動かなかった。でも、単純に数だけ比べても意味はない。中国は小型艦艇を大量に抱え、アメリカは持たない。それに海戦の主役は潜水艦だ。水上艦はミサイルや魚雷の的でしかない。対潜戦の力が勝負を決める。中国の対潜戦能力はアメリカに遠く及ばない。アメリカは攻撃型原潜を50隻、中国は6~7隻だ。さらに、攻撃能力でも米国には及ばない。
オハイオ型原潜のミサイル発射ハッチを全開した写真 人との対比でみるとその巨大さがわかる

だが、アメリカには弱点もある。太平洋と大西洋に戦力を割かねばならない。2023年10月、ハマスとイスラエルの衝突で、USSジェラルド・R・フォードが東地中海へ飛び、2024年初頭にUSSアイゼンハワーが紅海へ、2025年2月にはUSSトルーマンがフーシー派を睨んでジェッダ沖に現れた。中国が世界中で動けば、アメリカは全てに対応できない。中国が台湾を「ハイブリッド戦争」と武力で押し潰そうとするなら、台湾は核を持つしかなくなる。核がない今、中国の物量と核戦力に最後の切り札がないからだ。
結局、台湾問題は理念では動かない。現実の力が動かす。アメリカ以外の国が軍事力を強化し、中国が世界で暴れても対抗できるようにしないと、台湾は飲み込まれ、世界は中国の都合に塗り替えられるかもしれない。

だからトランプは各国に軍事費を増やせと叫ぶ。ウクライナはEUに任せろと言うのも同じだ。アメリカの現実を見れば、これは単なる「アメリカ第一主義」ではない。しかし、現状では中国が今すぐ台湾に侵攻するのは難しい。だから両者とも理念を振りかざす。理念が薄れ、力が静かに動き出す時が真の危機だ。
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2025年3月8日土曜日

中国、カナダの農産物・食品に報復関税 最大100%―【私の論評】中国vs加 関税戦争の裏側:中国が圧倒的に不利に陥る中、日本の使命とは

 中国、カナダの農産物・食品に報復関税 最大100%

まとめ

  • 中国は、カナダが中国製電気自動車(EV)や鉄鋼・アルミニウム製品に輸入関税を課したことへの報復として、3月20日からカナダ産の菜種油、油かす、エンドウ豆に100%、水産物と豚肉に25%の関税を適用すると発表した。
  • カナダは昨年、中国からのEVに100%、鉄鋼とアルミニウムに25%の関税を課す方針を示しており、中国商務省はこれを「WTOルールに違反する保護主義的かつ差別的な措置」と批判している。

対立する王 毅とトルドー AI生成画像

中国は8日、カナダの農産物や食品の一部に関税をかけると発表した。カナダが中国の電気自動車(EV)や鉄鋼・アルミニウム製品に輸入関税を適用したことへの報復とみられる。

商務省によると、カナダ産の菜種油、油かす、エンドウ豆に3月20日から100%の関税を適用。水産物と豚肉に25%の関税をかけるとした。

カナダは昨年、中国から輸入するEVに対し100%の関税を課すと発表した。中国製の鉄鋼とアルミニウムについても25%の関税を課す方針を示した。

商務省は今回、声明で、カナダの対中関税について「世界貿易機関(WTO)のルールに著しく違反し、典型的な保護主義行為であり、中国の正当な権利と利益を著しく害する差別的措置だ」などと批判した。

【私の論評】中国vs加 関税戦争の裏側:中国が圧倒的に不利に陥る中、日本の使命とは

まとめ
  • 中国とカナダの関税合戦は、2025年3月8日に中国がカナダ産農産物に高関税を課したことから始まり、カナダの2024年8月の中国製EVなどへの関税への報復だ。米中貿易戦争の影響で、カナダは米国と連携し、中国はカナダを叩いて米国を牽制している。
  • 米国は2025年3月4日にカナダなどに25%の関税を課し、関税戦争が拡大。カナダは両国から圧力を受け、農産物輸出が危機に。中国は固定相場制で為替調整ができず不利だ。
  • ポール・クルーグマンは、関税が短期で産業を助けるが長期で市場を歪めると警告。米国とカナダは為替でカバー可能だが、固定相場制の中国は直撃を受け、輸出依存経済が苦境に。
  • 中国は政府介入や内需拡大を試みるが、長期的効果は薄く、内需拡大も体制上難しい。CPTPPは関税削減とルールで注目され、日本主導で11カ国、2024年に英国も参加。
  • RCEPは2022年発効で市場は大きいが、自由化が浅くCPTPPに劣る。中国はCPTPPに入れず不利。日本はCPTPPを推進し、自由貿易で米国による関税戦争のバカバカしさ、中国の現体制の弱さを示すべきだ。

カナダ アルバータ州の広大な菜種畑

中国とカナダの関税合戦は、2025年3月8日に中国がカナダ産の菜種油やエンドウ豆に100%、水産物や豚肉に25%の関税をぶちかましたことから火蓋が切られた。きっかけは、カナダが2024年8月に中国製EVや鉄鋼、アルミニウムに高関税を叩きつけたことへの報復である。カナダは中国の過剰生産が自国産業を潰すと焦り、米国とタッグを組んだ形だ。中国は「WTOを無視した保護主義」とブチ切れ、カナダ経済を締め上げるべく菜種油を狙い撃ちしたのだ。両国の因縁は深く、2018年のファーウェイ事件で冷え切った関係が、ついに爆発したのである。

このバトルは、米中貿易戦争の余波である。カナダは米国の舎弟として中国にケンカを売り、中国はカナダを叩いて米国に「舐めるな」と警告している可能性がある。一方、米国は2025年3月4日にカナダやメキシコに25%の関税をぶち込み、「貿易赤字とフェンタニルをぶっ潰す」とトランプが吠えた。すると中国もすぐカナダに報復関税をぶつけ、連鎖反応で関税戦争が燃え上がったのだ。カナダは両巨人に挟まれ、農産物輸出が崖っぷちである。米国の関税は移民問題が主因だが、カナダが中国に喧嘩を売った裏には米国の影があり、中国との対立をドロ沼にしているのだ。

タリフマン(関税男)を自認するトランプ大統領

関税の話を前に書いたことがあるが、経済への打撃は為替変動で和らぐ場合があるのだ。関税で輸入品が値上がりすると物価が跳ね上がり、消費者は安い代替品に走る。だが購買力が落ちて経済が失速する危険もある。ドルが強まれば米国輸出は苦しくなるのだ。ノーベル賞のポール・クルーグマンは「関税は短期で国内産業を儲けさせるが、長期的には市場がガタガタになる」と警告する。

為替が動けば輸出国の通貨が下がり、競争力が戻って均衡が取れると彼は言うのだ。だが、これは変動相場制の国だけの話である。中国のような固定相場制では為替が動かず、緩和の余地はないのだ。だからこそ、米中加の関税戦争は中国に不利である。米国とカナダは為替で多少カバーできるが、中国は関税の直撃をモロに食らうのだ。

中国は輸出で食っている国である。その割には、WTOの貿易ルールなど無視しているくせに、カナダがそれを守らないになどと批判している。片腹痛いとはこのことだ。米国やカナダからの関税で輸出が死ねば、経済はさらにガタつくしかない。長引けば苦しい立場に追い込まれるのだ。政府の介入や内需拡大で誤魔化せるかもしれないが、短期の小細工にすぎない。長期で介入し続けるのは無理である。内需を増やしたいが、民主化も、法治国家化も、政治と経済の分離すらされていない今の体制では難しい。中国はジリ貧である。

イギリスが加盟して12カ国になったCPTPP

そんな中、貿易協定のCPTPPが熱い視線を浴びている。関税で貿易が困難になれば、加盟国間の関税を廃止し、安定したルールを提供するCPTPPは輝いて見えるのだ。日本主導でカナダも含む11カ国が動き、2024年12月には英国も仲間入りした。知的財産や電子商取引までカバーする本格的で先進的である。米中が殴り合う中、「米国抜き」の経済圏としてアジア太平洋を仕切る可能性があるのだ。

中国や韓国、台湾も興味津々だが、中国は厳しい加入条件に跳ね返されるだろう。地政学的に見ても、関税戦争がエスカレートすれば、米国以外の国々がCPTPPで結束を固める流れが加速するだろう。

対する中国が実質的な旗振り役の貿易協定RCEPは2022年に発効し、15カ国の巨大市場を誇るが、自由化が中途半端である。関税削減は緩く、ルールも甘いのだ。市場は巨大だが、深みがない。CPTPPの方が関税戦争で頼りになる選択肢である。特に貿易に命をかける国にはたまらない魅力だ。だが、成果は政治と情勢次第である。中国はCPTPPに入れず、RCEPでも勝てない。固定相場制の足枷もあり、関税戦争では完全に不利なのだ。

日本はCPTPPの旗を振って仲間を増やし、厳しいルールで自由貿易を推進すべきだ。日本も含めた加盟国全体を豊かにし、関税戦争のバカバカしさと、中国のような手前勝手な国の不利な状況を世界に見せつけるのだ。それでこそ、日本の存在感が世界中に響くことになる。日本が動かなければ、誰が動く。自由貿易の旗を掲げて、米中の鼻を明かすのが日本の使命である。

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2025年3月7日金曜日

米国は対ロシア制裁強化も辞さず、和平につながるなら-ベッセント氏―【私の論評】米国がロシアとイランを締め上げる制裁の本質、ウクライナのためだけではない

米国は対ロシア制裁強化も辞さず、和平につながるなら-ベッセント氏

まとめ
  • ロシア制裁、「最大限の効果もたらすべく積極的に活用される」
  • 対イラン制裁も強化、石油セクターを「シャットダウン」へ-長官

ベッセント米財務長官

ベッセント米財務長官は6日、ウクライナ停戦のためならロシア産エネルギーへの追加制裁も検討すると述べた。ニューヨークの講演で、トランプ大統領の指示に基づき対ロシア制裁を積極活用すると話し、停戦交渉での影響力増を期待。バイデン前政権の制裁躊躇を批判し、イランへの制裁強化も表明、石油セクターを「シャットダウン」して再び破産させると語った。

原題:US Won’t Hesitate on Russia and Iran Sanctions, Bessent Says (1)(抜粋)

【私の論評】米国がロシアとイランを締め上げる制裁の本質、ウクライナのためだけではない

まとめ
  • 制裁の概要: 米国はロシアとイランに制裁を課す。ロシアは2022年のウクライナ侵攻以来、エネルギーや軍事産業が対象。2025年1月、250の個人・団体が追加された。イランは核開発やロシア支援で、2025年2月に石油産業が締め上げられた。
  • 背景: イランは2024年9月の国連報告でロシアへのミサイル供与が発覚。2024年米選挙介入疑惑も制裁理由。トランプ政権はイラン石油をゼロに近づける計画だ。
  • 継続性: ロシアへの制裁は2025年3月7日時点で継続。トランプは和平次第で緩和を示唆。イランは新制裁で石油輸出を潰す方向だ。
  • 誤解の否定: 「ウクライナばかり厳しい」は誤り。2025年2月、インド・UAEとイラン石油摘発。ロシアとの和平論もあるが、裏切りリスクで単純ではない。
  • 本質: 制裁は軍事力疲弊が目的。2025年3月IMFはロシア成長を報告するが、2024年12月国防総省は兵器開発遅れを指摘。イランも勢力削減が狙いだ。

米国によるロシア制裁(sanctions)は、ウクライナ戦争のためだけではない

米国がロシアとイランに突きつける制裁は、ただの経済圧力ではない。そこには国際政治のドロドロした力学が渦巻いている。まずはロシアだ。2022年、ウクライナに軍を突っ込んで以来、アメリカは容赦なく締め上げてきた。狙いは明確だ。エネルギー、金融、軍事産業をズタズタにして、ロシアの息の根を止めること。石油やガスの輸出を絞り、北極や深海での新プロジェクトを潰す。

2025年1月、米国務省がぶち上げた発表では、軍事産業を支える250もの個人や団体が新たに制裁の標的となった。中国経由の裏ルートまで叩き潰す気満々である。これぞ、ロシアの戦争マシンをぶっ壊し、同盟国と手を組むアメリカのしたたかな一手だ。

次にイランだ。これは1979年の大使館占拠からずっとアメリカとケンカ状態だ。最近では、核開発、ロシアへの武器支援、中東でのテロ資金ばらまきが制裁の火種である。2025年2月25日、米国務省がイランの石油・石油化学産業に絡む16の団体や船を新たに締め上げ、「最大圧力」をまたぶちかました。

なぜか。イランがロシアに弾道ミサイルを渡している証拠が暴露されたからだ。2024年9月、国連で公開された報告書がそれを白日の下に晒した。イラン製ミサイルがウクライナ戦場で火を噴いてるなんて、ゾッとする話だ。さらには、2024年の米大統領選に介入した疑惑で、イラン革命防衛隊(IRGC)の連中も制裁の網に引っかかった。圧力は全方位だ。


この制裁は、続くのだろうか? 新たな一撃はあるのか? 答えは簡単ではない。ロシアを見ろ。バイデン時代に作った制裁の鉄の枠は、2025年3月7日時点で未だ残っている。1月20日にトランプ政権が船出した今も、ウクライナ戦争がくすぶっている限り、方針は揺るがないだろう。

だが、トランプは一筋縄ではいかない。「ロシアが和平交渉に乗るなら、制裁を緩める余地もある」と、2025年2月20日のブルームバーグで口にした。3月4日のロイター報道では、ホワイトハウスが条件付きで緩和をチラつかせてるという話しもある。実際、2024年末にはトランプ陣営がウクライナと接触し、停戦の糸口を探ってたらしい。制裁は外交の切り札だ。

イランはどうだ。トランプは核合意(JCPOA)をゴミ箱に叩き込んで、「最大圧力」をガンガン進める気だ。ベッセント財務長官が吼えた。「イランの石油をシャットダウンする。計画はもう動いてる」。石油輸出をゼロ近くまで絞り、経済を再び破産させる魂胆だ。2025年2月の制裁強化はその第一歩。

2020年、トランプがイランの石油を日量50万バレル以下に叩き落とした再現を狙ってるって、専門家も騒いでる。ロシアとの軍事タッグをぶち壊す意味でも、新たな制裁がどんどん追加される可能性は大きい。

2025年1月、ワシントンの戦略国際問題研究所(CSIS)での討論会(注: CSISと推定。公式記録は未確認で、他の可能性もあり得る)で、専門家が叫んだ。「イランの石油マネーを断てば、ロシア支援も終わる」。アメリカの政策屋もその線に乗り気だ。

最近は、「アメリカはウクライナにばかり厳しい」などという声があるが、その見立ては間違っている。ロシアやイランの締め上げは、ウクライナ支援と肩を並べて進んでいる。ロシアに遠回しにプレッシャーをかけるイラン制裁は続いている。2025年2月、インドやUAEと組んでイラン石油の裏輸出を摘発した動きは、それが続いている証だ。アメリカは世界の安全保障を睨んだ多面作戦を繰り出しているのだ。

トランプ政権の安全保障チームには、こんな声もある。「ロシアと握ってでも、欧州のグダグダ戦争を終わらせよう。欧州の安保は欧州人に押し付けろ」。2025年2月、ヘリテージ財団の報告書がそう吠えた。「ロシアとのケンカを緩めて、中国に集中すべきだ」。しかし、米国が中国とバチバチやってる最中にロシアに裏切られたらどうする?

 2014年のクリミア併合で、西側との約束を平気でぶち壊したロシアだぞ。トランプだって、2024年選挙戦で「ロシアは信用ならん。しかし交渉で押さえ込む」とハッキリ言った。対ロシア戦略は単純ではない。トランプは和平模索と中国牽制の二刀流で、制裁の緩急を巧みに操るだろう。

ロシアが併合したウクライナ南部クリミア半島セバストポリの街頭に掲げられた、プーチン露大統領のポスター

何にせよ、単純で薄っぺらい見方では、この本質は掴めない。ロシア制裁がウクライナのためだけだけなどという見方は噴飯ものだ。2025年3月のIMF報告では、ロシア経済が制裁下で2.1%成長だとぬかしてる。効果がない? こういう連中は、大きな戦争を遂行するための戦争経済においては、GDPが伸びるという経験則を知らないようだ。米国の本当の狙いは、GDPがどうのこうのという前に、ロシアの軍事力をジワジワ疲弊させることだ。

2024年12月、国防総省が「ロシアの軍事予算が圧迫され、新兵器が遅れている」と暴露した。イラン制裁も同じだ。経済的締め付けなどは表層に過ぎない。本当の狙いは、中東でのイランの勢力を削ぎ、ロシアとの連携を断つことだ。2025年2月、シリアでイラン支援の民兵が後退したニュースがそれを証明してる。

表向きの経済数字や外交の甘言に騙されず、裏の戦略と、長期の視点で見るべきだ。ロシアとイランへの制裁は、両国の経済と軍事力を削ぐため続いている。トランプ政権でもその流れは変わらない。ロシアは和平交渉で緩む隙があるが、イランは石油と軍事支援への新制裁でガチガチに締め上げられる公算大だ。

ウクライナや中東の動き次第で、どうなるかまだ流動的だ。ロシアが停戦飲めばある程度、制裁が軽くなるかもしれないし、イランが核を加速させればさらに制裁はきつくなるだろう。しかし、米国がロシアと握って中国と対峙するなどとう単純な見方だけでは、現実を見誤ることになるだろう。

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2025年3月6日木曜日

トランプ大統領が「日本の消費税廃止」を要求? JEEP以外のアメ車が日本で売れない理由は「そこじゃない」―【私の論評】トランプの圧力で変わるか?都内の頑丈な鉄橋の歴史が物語る日本の財政政策の間違い

トランプ大統領が「日本の消費税廃止」を要求? JEEP以外のアメ車が日本で売れない理由は「そこじゃない」

まとめ
  • 2025年1月20日就任のトランプ大統領が日本の消費税廃止に言及したとネットで話題だが、伝統メディアではあまり報じられていない。
  • 「相互関税」を提案し、アメリカ製造業の再生と販売促進を目指す。メキシコやカナダに25%関税を検討中。日本・EUには付加価値税(消費税)は、関税と同じようなものと主張。
  • 日本で消費税が廃止されても、アメリカ車の販売が大きく伸びるとは限らず、右ハンドル対応や販売網整備等が課題。
  • アメリカ車は、燃費や品質で日本車に劣るイメージが根強く、アメリカ市場でも日本車や欧州車が人気。
  • 関税政策は公正な貿易環境整備が目的と見られ、日本での販売拡大より企業判断に委ねる姿勢とみられる。筆者は消費税引き下げを期待。

なにかと話題なトランプ大統領の言動は、今後自動車の分野でも影響が出そうだと関係者たちは語る。今すぐは難しいかもしれないが、もしかすると今後アメ車が日本で買いやすくなる可能性も!?

 2025年1月20日に就任したアメリカのドナルド・トランプ大統領は、物議を醸す発言で注目を集めており、最近では日本の消費税廃止に言及したとの報道がネット上で話題となっている。ただし、新聞やテレビなどの伝統的なメディアではほとんど取り上げられていない。トランプ氏は「関税」を武器に各国との交渉を進めており、アメリカ製造業の再生と製品の販売促進を背景に、メキシコやカナダに対しては不法移民や違法薬物の取り締まり強化を求めつつ、全輸入品に25%の関税を課す計画を進めている。本稿執筆時点では、この関税導入が目前に迫っている状況だ。

 さらにトランプ氏は「相互関税」という概念を提案し、相手国がアメリカ製品に課す関税と同じ水準をアメリカへの輸入品に課すことを検討中。この調査対象に消費税のような付加価値税が含まれ、トランプ氏は「付加価値税と関税は本質的に同じ」と発言したと報じられた。これがネット上で「日本の消費税廃止を要求している」と解釈され、議論を呼んでいる。しかし、消費税が廃止されただけでアメリカ車が日本で売れるようになるかは疑問だ。シボレー・コルベットやジープの一部は右ハンドル仕様があるが、ドイツ車ほど右ハンドル対応が一般的ではなく、アメリカ車ファンの中には「ジャパンナイズ」された仕様に抵抗を示す人もいる。

 一方、アメリカ車を個人輸入する愛好家もおり、左ハンドル車を好む層も存在する。販売網の充実がなければ、消費税廃止だけでは販売が飛躍的に伸びるのは難しい。過去、バブル期には「燃費が悪く品質が劣るアメリカ車」とのイメージが報道で強調され、その印象が今も残る。現在のアメリカ車はダウンサイズが進み、1.5~2リッターのターボエンジンが主流だが、日本車に比べ燃費性能が劣るとの声もある。

 アメリカ国内では、日本車や欧州車、韓国車が人気で、特にハイブリッド車が売れている。フォードは日本市場から撤退したが、ジープやGMは右ハンドル車を用意し堅実な展開を続ける。トランプ氏の関税政策は公正な貿易環境整備が目的と見られ、日本でのアメリカ車販売拡大を直接目指しているわけではないだろう。筆者は、消費税の大幅引き下げを庶民として期待している。

 この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になってください。

【私の論評】トランプの圧力で変わるか?都内の頑丈な鉄橋の歴史が物語る日本の財政政策の間違い

まとめ
  • トランプ圧力によって、日本の消費税廃止が実施されれば、購買力が増え、GDPが3~5%押し上げられる可能性がある。
  • 消費税撤廃で消費が活性化し、アップルやハーレーなど輸入が増え、米国製品の輸入も増える可能性がある。
  • しかし、関税引き上げをすれで、景気が悪化し、米国製品が売れなくなる可能性がある。
  • コルビーが防衛費GDP比3%超を主張、石破首相は増税を検討するかもしれないが、それでは経済低迷で米国製品の売上減少を招くことになる。
  • 増税でなく国債で賄えば現世代の負担が減り、景気回復で米国に利点。関東大震災復興の鉄橋がその有効性を示す。
トランプ大統領が、「日本の消費税廃止を要求している」という話題については、最近このブログに述べたばかりである。その記事のリンクを以下に掲載する。
日中の通貨安誘導を批判 関税引き上げ示唆―トランプ米大統領―【私の論評】トランプの相互関税が日本を直撃!消費税撤廃で米国製品輸入増か、関税戦争で景気後退か?

この記事では、日本が消費税を撤廃した場合、どうなるかについて述べた。以下にその部分を引用する。

日本で消費税が撤廃されれば、消費者の可処分所得が増え、購買意欲が高まる。2025年3月時点で日本の消費税率は10%。これがゼロになれば、家計の実質的な購買力は大きく向上する。2014年に消費税が5%から8%に引き上げられた際、個人消費が落ち込み、GDP成長率がマイナスに転じた。逆に、消費税を撤廃すれば、内閣府の試算によるとGDPは3~5%押し上げられる可能性がある。

景気が回復すれば輸入需要も増し、米国産の農産物やエネルギー、工業製品の需要が拡大するかもしれない。日本は米国農産物の主要輸出先であり、年間約150億ドルを輸入している。消費税撤廃で日本の消費が活性化すれば、米国の農家にとっても追い風となる。結果として、米国の対日貿易赤字(2024年で約600億ドル)も縮小する可能性がある。

しかし、輸入増加が米国製品に集中するとは限らない。為替レートや中国、EUとの競争が影響し、米国製品が割高なら効果は限定的だ。

確かに、消費税を撤廃したからといって、急激にアメ車が売れるとは限らない。しかし、消費税があるよりは、売れやすくなるのは間違いない。

アメリカ製品といえば、車以外にも様々なものがある。パソコンなどのデバイスではアップル製品があり、バイクはハーレダビッドソンなど、根強い人気がある。ハーレーダビッドソンは、輸入二輪車市場でシェアトップを維持している。

これらだけではなく、他の製商品も米国企業が日本にあわせたマーケティング戦略をとれば、さらに売れる可能性は高まるだろう。

私自身も、50年代の米国音楽や、雰囲気が好きで、そのようなテーストのある店には、今でも足繁く通っている。ただ、そのような店は減りつつあり残念に思っている。

50年代ジャズが聴ける"D-Bop"Jazz Club

消費税を撤廃すれば、米国製品・商品は今以上に売れる可能性は高まる。しかし、関税があがると岸田、石破政権の経済差政策の不味さもあいまって、日本の景気は後退し、米国製品が今以上に売れる可能性はなくなるどころさらに売上は下がるだろう。一般にどこの国でも、景気が良くなると輸入が増え、景気が悪くなると輸入は減る。米国にとっては、短期的には関税は良いかもしれないが、中長期的には良くない。

このような状況のなか、エルブリッジ・コルビー元国防副次官補は、トランプ米大統領による国防総省政策担当次官への指名に伴い、上院の承認プロセスで、日本が防衛費をGDP比3%以上に早期に引き上げるべきだと主張した。

現在の日本の方針である2027年度の2%目標を「不十分」と批判し、中国や北朝鮮の脅威を考慮すれば2%では不合理だと述べた。また、日本は西太平洋の防衛で更さらに大きな役割を担うべきとし、台湾にはGDP比10%の防衛費を求めた。一方、石破茂首相は5日の参院予算委で、防衛費は他国の指示で決めるものではなく、積み上げによる慎重な議論が必要との立場を示した。

石破総理は、防衛費増の財源としては、消費税などの増税しかないと考えているのだろう。しかし、現状で増税すれば、日本経済は低迷し米国製品はますます売れなくなってしまうだろう。

いつまでも、増税に拘っていれば、ますます米国製品は日本国内で売れなくなるだろう。このジレンマを解決するには、財源を消費税などの増税ではなく、国債によって賄うことを考えるるべきだろう。

長期政策を実施を税金だけに頼ると、現世代が長期政策の全コストを背負い、将来世代がその恩恵をほとんど負担せずに受け取る構造になる。これは現世代に過剰な負担を強いるだけでなく、世代間の不公平を生み、経済的・社会的な歪みを引き起こす。現実は、財務省が主張する、将来世代への付け回しではなく、現世代が多大なコストを背負わせることを意味するのだ。国債を活用すれば、この負担を将来に分散させ、現世代と将来世代の間でより公平な分担が可能になる。

このことは、都内の江東地区に多い頑丈な鉄橋をみてもわかる、これらの橋梁は関東大震災の復興で実施されたものだが、この復興はほとんどが国債で賄われている。関東大震災で江東地区は灰燼に帰し、ほんどの木造の橋が燃えてなくなってしまった。それを復興で現在のような丈夫な鉄橋に架替えたのだ。

江東新橋

これらの頑丈な鉄橋は、建造後20年後に絶大な威力を発揮した。1945(昭和20)年3月9日深夜から10日未明、アメリカ軍のB-29重爆撃機の大編隊が東京を焼夷弾で絨毯爆撃し、江東地区は再び灰燼と化した。しかし幸いなことに、震災復興橋梁のうち鉄橋のほぼ全部が激しい空襲に耐えて避難路となったため、多くの被災者の命が助かっている。無論それでも死者数は多く、このときの東京大空襲の死者は江東区を含めて10万人とされている。しかし、もし鉄橋がなかったら、更に多くの人々がなくなっていただろう。

さらに、これらの橋は、戦後80年を経ても今でも使われていて、多くの車両や人々が行き交い、私達は今でもその便益を受けている。今でも、江東新橋などの橋がテレビドラマなどにでてくるのを見かける。

この橋の建設を含むを首都崩壊の復興が、税金だけで賄われたとしたら、どうだっただろう。建設当時の人々の負担は、目を覆うばかりのものとなっただろう。当時豊かではなかった日本では、多くの人々が貧困にあえぐことになっただろう。そうして、その後の世代は立派な橋が残っても、貧困で、せっかくの立派な橋も経済活動が乏しいため、あまり有効に使われないという結果になっただろう。この事例のように長期にわたって便益を与える大きなブロジェクトは、国債で賄うべきなのだ。これらの橋とその歴史がその正しさを示している。

トランプ大統領の関税圧力や防衛費増額圧力などが、日本の財政政策を結果として良い結果に導くならば、歓迎したい。ただ、米国の圧力で日本経済が復活するのではなく、やはり自発的にこれを行うべきだろう。

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2025年3月5日水曜日

ウクライナと米国、鉱物資源で合意か トランプ氏が演説で発表意向 米報道―【私の論評】ウクライナ戦争はいつ終わる?適切なタイミングを逃したゼレンスキーと利権の闇

ウクライナと米国、鉱物資源で合意か トランプ氏が演説で発表意向 米報道

まとめ
  • トランプ米政権とウクライナが鉱物資源(レアアース)の共同開発合意を計画し、トランプ大統領が3月5日の施政方針演説で発表意向を示したものの、2月28日のゼレンスキー大統領との首脳会談が決裂し、署名に至っていない。
  • 会談での激しい対立によりウクライナ側がホワイトハウスから退去させられ、合意は未署名のまま流動的だが、ゼレンスキー氏は協議を続ける意向を示し、トランプ氏との言い合いを「残念」と表現した。

トランプ、ゼレンスキーの会談は決裂

 トランプ米政権とウクライナが鉱物資源に関する合意に署名する計画が報じられた。トランプ大統領は3月5日の施政方針演説でこの合意を発表する意向を示したが、2月28日のゼレンスキー大統領との首脳会談が決裂し、署名は実現していない。

 会談では激しい言い合いとなり、ウクライナ側がホワイトハウスから退去させられた。合意はまだ署名されておらず、状況は流動的。ゼレンスキー氏は協議継続の意向を示しつつ、トランプ氏との対立を「残念」と述べた。

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【私の論評】ウクライナ戦争はいつ終わる?適切なタイミングを逃したゼレンスキーと利権の闇

まとめ
  • 戦争は適切なタイミングで終えるべきだという鉄則があらゆる戦争に当てはまる。戦略的バランスを重視する米戦略家ルトワックは、ウクライナ戦争をロシアの誤算と膠着状態とみなし、住民投票による妥協的終戦を提案した。
  • 日露戦争は適切なタイミングで終わった好例だ。日本は成果を上げつつ国力の限界で1905年に終戦を選び、歴史家半藤一利が「絶妙な判断」と評価する。
  • 戦争が長引くと、ゼレンスキーの権力維持や西側の戦争継続派(EUリベラル派、米民主党、ネオコン)の利権が強まる。ウクライナ戦争では支持率65%を維持するゼレンスキーだが、終戦後、パナマ文書疑惑や経済難で地位が危うくなるのは確実。
  • 第一次世界大戦やベトナム戦争は長期化で利権と私的動機が顕著になり、適切なタイミングを逃した。軍需産業の儲けが戦争を延ばしたと解釈できる。
  • ウクライナ戦争はルトワックの提案を逃し、2025年3月時点で利権(支援金1830億ドルやロッキード株価上昇)が肥大化。トランプの終戦主張は戦争継続派と対立し、マスコミが追随する中、終戦の決断が求められている。
戦争などというものは、どの時代でもどの場所でも、「適切なタイミングでやめるべき」と私はは思う。どんな戦争にも当てはまる、シンプルで揺るぎない鉄則だ。特に戦争が長引いた場合はそうだ。

米国の戦略家ルトワック氏

アメリカの戦略家エドワード・ルトワックは、ウクライナ戦争を冷徹に見つめ、ロシアのプーチンが「ウクライナを一気に叩ける」と見誤った結果、双方が限界にぶち当たって膠着状態に陥ったと言う。

2023年7月のUnHerd記事「Why no one can end the Ukraine war」では、「ウクライナがモスクワを落とせるわけないし、ロシアだってキエフを奪えやしない」とバッサリ切り捨てている。彼は現実を直視し、住民投票でドネツクとルガンスクの帰属を決めて、ロシアに他の占領地から手を引かせる案をぶち上げた。

2022年4月の記事「How the Ukraine war must end」で、核戦争の火種を消しつつ、勝ち負けにこだわらない戦略的バランスを説く。この視点は、戦争の目的と損失を天秤にかけ、ズルズル長引かせて消耗する愚を避けるべきだと示す。まさに「適切なタイミング」の証明だ。

歴史を振り返れば、日露戦争(1904~1905年)がその典型だ。日本は旅順を落とし、日本海海戦でロシアを叩きのめし、朝鮮半島と南満州の利権を握った。だが、戦費は国家予算の2倍に膨れ上がり、16万もの命が消えた。そこで1905年、ポーツマス条約でスパッと戦争を終えた。

歴史家の半藤一利は「勝ちすぎず負けすぎず、絶妙なところで引いた」と言い切り、国力のピークで終わらせた判断が日本を救ったと断言する。ルトワックの目で見ても、ロシアを完膚なきまで潰すような無茶をせず、現実的な成果で手を打った好例だ。

日露戦争で用いられた日本陸軍の28センチ榴弾砲

ところが、戦争が長引くと話は変わってくる。ウクライナ戦争は2022年から2025年3月まで続き、死傷者が公式で5万人超、非公式なら数十万人とも言われる中、ゼレンスキーの支持率は戦争前の20%台から今や65%をキープしている(キーウ国際社会学研究所)。

だが、戦争が終われば、汚職の闇が噴き出し、経済はどうしようもないほど落ち込んでいる。2016年のパナマ文書や2021年のパンドラ文書で暴露されたゼレンスキーのオフショア口座疑惑が再燃するのは確実だ。ゼレンスキーは大統領になる前、テレビ会社「クヴァルタル95」の稼ぎを英領バージン諸島などで隠し、4000万ドル以上を動かしていたとされる。戦争が終われば、この汚点が国民の怒りを呼び、彼の地位はガタガタになるだろう。それが戦争を続ける理由かどうかは定かではないが、可能性は大きい。

他にも、戦争が長引くと私利私欲や利権が顔を出す。第一次世界大戦(1914~1918年)は、当初の目的が霞み、消耗戦に突入。軍需産業や指導者の権力維持が裏で糸を引いた。ドイツは1918年に停戦を選んだが、それまでのグダグダで経済はボロボロ、ヴェルサイユ条約でさらに締め上げられ、それが後の第二次世界大戦の引き金の一つにもなったとされる。

ルトワックなら「タイミングを逃した」と言うだろうが、戦争継続派の利権が遅らせたとも考えられる。アメリカの軍需生産は1914年の1億ドルから1918年には20億ドル超に跳ね上がり(米国商務省データ)、戦争が一部の連中の飯の種だったのは明らかだ。

ベトナム戦争(1955~1975年)もそうだ。アメリカは共産主義を潰そうと20年戦って、死者5万8000人、戦費3兆ドルをドブに捨て、南ベトナムが崩れて終わりだ。歴史家のスタンリー・カーノウは「勝てないと分かった時点でやめるべきだった」と喝破するが、軍産複合体、ロッキードやボーイングの儲けが戦争を引っ張ったとしか思えない。

ウクライナ戦争に戻れば、ルトワックの「住民投票で終わらせる」が正しいタイミングだったはずだ。だが、2025年3月までダラダラ続く今、ゼレンスキーは権力を守るために、西側の「戦争継続派」――EUのリベラル派、米民主党、ネオコン――は軍需産業の儲けや地政学的野心のために、戦争をやめさせない。

フォンデアライエン次期EU委員長はマクロン仏大統領

支援金1830億ドル(米国)や1450億ドル(EU)が軍需や復興企業に流れ、ブラックロックが暗躍する状況は、長期化が利権を大きくしている証だ。ロッキードの株価だって、2022年の350ドルから500ドル超に跳ね上がってる。

「戦争は適切なタイミングでやめるべき」は、ルトワックの現実主義から見れば正しい。日露戦争のように、成果と損失を見極めて終わらせるのが賢い道だ。だが、長引けばゼレンスキーの私的動機や利権が絡み、タイミングを逃す。

今のウクライナがまさにそれだ。ルトワックが言うように、ロシアもウクライナも適切な瞬間を逃したのかもしれない。もうグズグズしてる場合じゃない。トランプ大統領が「終わらせろ」と叫ぶのも当然だ。だが、ゼレンスキーは権力を握り続けたいし、西側の戦争継続派とは真っ向からぶつかる。マスコミがトランプを叩くのも、そいつらの尻馬に乗っているだけだ。こうしている間にも、多くの人々が、亡くなり、重症を負っている。結局、戦争を終わらせるのは誰かが見極めるしかない。そこに真実がある。

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