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2022年8月14日日曜日

トランプ前大統領に〝スパイ容疑〟機密文書11件を押収 「捜査は不当」と大激怒 「共和党潰し」の声も 「韓国のようで、異例ずくめ」―【私の論評】米民主党はトランプ弾劾に続き、スパイ容疑でトランプ氏を貶めようとしたが、失敗に終わる(゚д゚)!

トランプ前大統領に〝スパイ容疑〟機密文書11件を押収 「捜査は不当」と大激怒 「共和党潰し」の声も 「韓国のようで、異例ずくめ」

マルアラーゴ

 ドナルド・トランプ前米大統領に、スパイ法違反容疑が直撃している。米連邦捜査局(FBI)は、トランプ氏が退任時に重要な国家機密を持ち出した容疑で、フロリダ州の邸宅「マールアラーゴ」の家宅捜索を行い、11件もの機密文書を押収していたという。FBIによる、前大統領への強制捜査は極めて異例で、2024年の次期大統領選への出馬に意欲を示しているトランプ氏は捜査は不当だなどと激怒している。まるで隣国のような騒動だが、一体何が起きているのか。


 米紙ウォールストリート・ジャーナル(電子版)や、米紙ワシントン・ポスト(同)などの報道によると、FBIは8日、フロリダ州パームビーチにあるトランプ氏の邸宅「マールアラーゴ」の家宅捜索を行い、11点の書類などを押収した。捜索時は、トランプ氏は不在だったという。

 容疑は、国立公文書館(NARA)に引き渡すことが義務付けられている大統領在任中の機密文書を、トランプ氏側が保管しているというもの。フロリダ州の連邦裁判所が、捜索令状や付属文書を公開した。

 約20箱分の押収物品には、米国の最高機密文書にあたる文書も含まれているといい、押収品のリストには、写真がまとめられたバインダー、手書きのメモなどのほか、フランス大統領に関する情報と分類されたものもあった。

 トランプ氏は家宅捜索を受け、「すべて機密解除された文書だ」と反論する声明を発表した。「(マールアラーゴは)現在、包囲され、捜索され、占拠されている」「関連する政府機関と協力しており、この抜き打ちの家宅捜索は必要でも適切でもなかった」と、怒りをぶちまけた。

 ワシントン・ポストは、今回の捜索について、核兵器に関連する機密文書を捜すためだったが、実際に押収したかは不明だと報じている。

 核兵器に関する機微な情報が含まれる文書は、限られた政府関係者しか触れることができない。もし、トランプ氏が外部に持ち出して機密漏洩(ろうえい)があれば、敵対国を利するうえ、他国の不安も招くという指摘がある。

 こうしたなか、メリック・ガーランド司法長官は11日の記者会見で、「捜索令状を申請する決定は、私自身が承認した」と明言した。容疑については明かさなかったが、「前大統領が捜索を公に認めたことや、公益性」を考慮して、捜査状況を公表したと説明した。

 今回の捜索をめぐっては、支持率低下が著しいジョー・バイデン大統領(民主党)の政権側が、11月の中間選挙や次期大統領選を見据えながら、「トランプ潰し」「共和党潰し」を狙ったとの指摘もある。バイデン氏は2020年の大統領選で、共和党候補のトランプ氏を接戦の末、破った。

 共和党の一部や、トランプ支持者は「FBIの政治利用」と猛烈に批判しているが、ガーランド氏は先の会見で、「司法省がこのような決定を軽々しく行うことはない」と強調した。

 トランプ支持者とみられる人物の過激事件も発生した。

 米中西部オハイオ州シンシナティのFBI事務所に11日、武装した男が侵入を試みて逃走、警察との銃撃戦の末、射殺された。男はトランプ氏の熱烈な支持者だったとみられる。

■島田教授「政争の一面」

 トランプ氏は、大統領在任中も過激な言動で注目を集め、熱狂的な支持者らが連邦議会議事堂に乱入する事件も起きている。今回のFBIの捜索への報復を叫ぶ声も一部で強まっており、緊張が高まっている。

 米国政治に詳しい福井県立大学の島田洋一教授は「今回の捜査は、政争の一面がある。背景には、バイデン氏の次男、ハンター氏が役員を務めていたウクライナ企業などから得た報酬をめぐる疑惑がある。米議会では、共和党がハンター疑惑を徹底追及する構えで、その前にバイデン氏側が政敵に攻撃を仕掛けたかたちだ。大統領が退任時に文書を持ち出すことは過去にもあり、さまざまな手続きで適正な管理が行われてきた。捜査の是非で米国世論が分断され、党派で激しく対立している。辞めた大統領を捜査する動きは、さながら韓国のようで、異例ずくめだ」と語っている。

【私の論評】米民主党はトランプ弾劾に続き、スパイ容疑でトランプ氏を貶めようとしたが、失敗に終わる(゚д゚)!


米連邦捜査局(FBI)が8日、ドナルド・トランプ前大統領のフロリダ州パームビーチ「マールアラーゴ」別荘を家宅捜索したのに続き、10日(現地時間)には検察がトランプ氏を呼んで捜査しました。

そもそも、自分が大統領時代の公文書を、退任してからも、一定期間保管しているというのは、トランプ氏だけではなく、自らが関わった外交上の問題などについて曖昧な部分を確認して、何か新たな問題が発生したとき備え等や、将来の回想録などの準備として、歴代の大統領が実施してきたことです。オバマ氏もそうしていました。

今回のこのような暴挙によって246年の米国史上初めて元大統領が刑事起訴される可能性が高まり、マールアラーゴとニューヨークのトランプタワーなどではバイデン大統領の支持者とトランプ氏の支持者がそれぞれ賛否デモを行いました。

FBIによる強制捜査を受けて、トランプ氏の邸宅「マールアラーゴ」には複数の支持者が集まった。8日

ニューヨークタイムズ(NYT)・CNBCなどによると、トランプ氏はこの日、ニューヨーク州の検察当局で行われた約6時間ほど調査で「自身の証人になることを強要されてはならない」という修正憲法第5条を根拠に黙秘権を行使しました。トランプ氏はすべての質問に「同じ(Same Answer)」という言葉を440回以上繰り返したといいます。

トランプ氏は調査前に立場を表明し「人種差別論者のニューヨーク州司法長官に会うことになった」とし「米国史上最大の魔女狩りの一環」と主張しました。民主党支持者の黒人女性レティシア・ジェームズ・ニューヨーク州司法長官が政治的な理由で自身を標的捜査するという意味です。

ニューヨーク州の検察当局は、トランプ一家が保有不動産の資産価値を脱税のために縮小し、銀行の融資を受ける過程では膨らませたという容疑を過去3年間にわたり捜査してきました。

捜査をめぐり米メディアの意見も分かれました。ワシントンポストのコラムニスト、イシャン・サルア氏は9日、「米国、元指導者を捜査する民主国家に合流」というコラムで「米国に前例がないだけで、健全な民主主義国家が元指導者を調査して有罪で収監するのは正常」とし「誰も法の上に存在しないというのは民主主義国家の基本」と指摘しました。

続いて韓国の李明博(イ・ミョンバク)朴槿恵(パク・クネ)元大統領に対する処罰に言及しながら「韓国は米国のように政治的に二極化したが、元大統領に対する怒りを眠らせ、保守から進歩、また保守への平和で民主的な政権交代を成し遂げた」とし「米国人はこれに注目すべき」と強調しました。ブルームバーグ通信のコッシュ氏は「元国家首班が法の審判台に立つのは民主主義の尺度になる」と評価しました。

李明博元大統領(左)と朴槿恵元大統領

一方、ウォールストリートジャーナル(WSJ)はこの日、[FBIの危険なトランプ捜索」と題した社説で「家宅捜索が11月の中間選挙を約90日後に控えて行われ、政治的な目的が疑われる」とし「ガーランド司法長官が米国を危険な道に導いている」と批判しました。

WSJは「トランプ氏が容疑を晴らすことになれば『殉教者』のイメージで2024年の大統領選挙に出馬し、自身に否定的だった共和党員の支持まで受けることができるだろう」と予想しました。NYTも「トランプ氏が『魔女狩りされた殉教者』イメージを固めるかもしれない」とし「今回の捜査が『弱者』である前大統領に対する政治報復として映り、支持層結集の好材料になる可能性がある」と指摘しました。

今年の米中間選挙は11月8日に行われ、連邦議会の選挙では上院の100議席のうち35議席と下院の435議席すべてが改選される予定で、現在、上下両院ともに主導権を握る与党・民主党が議席を維持できるかが最大の焦点です。

ただ、バイデン大統領の支持率は今月4日時点の各種世論調査の平均で39.6%と、アメリカ国内で続く記録的なインフレなどを背景に低迷しています。


中間選挙は歴史的に政権与党に厳しい結果になることが多く、今回も与党・民主党の苦戦を予想する見方が広がっています。

米国では物価の高騰が市民生活を直撃し、国民の不満がバイデン政権に向かっていて、特定の支持政党がないいわゆる無党派層や民主党支持層の間でも支持が揺らいでいます。

中間選挙で与党・民主党の苦戦を予想する見方が広がるなか、攻勢を強めているのが共和党のトランプ前大統領です。

220人以上の候補者に推薦を出して勢力を広めつつ、共和党内の「反トランプ派」には「刺客候補」をぶつけて再選を阻んできました。近く、2年後の大統領選に向けた出馬宣言をするかどうかも注目されています。

 「また1人、弾劾(だんがい)者を倒した」。今月10日、トランプ氏は祝福の言葉をSNSに投稿しました。

ワシントン州における下院議員候補を決める予備選で、7選を狙った共和党のボイトラー下院議員が敗れたためだ。代わって当選したのは、トランプ氏が送り込んだ「刺客候補」でした。

昨年1月の議会襲撃事件を受け、民主党はトランプ氏の弾劾(だんがい)訴追を提案しました。これに共和党から賛成した下院議員が10人。これらの議員が「裏切り者」として狙い撃ちにされているのです。

10人のうち、予備選を勝ち抜いて11月の中間選挙に出馬できる議員は2人にとどまります。3人は予備選で「刺客」に敗れ、4人は不出馬を決めました。

そして最後の1人が、リズ・チェイニー下院議員だ。ブッシュ(子)政権の副大統領だったディック・チェイニー氏を父に持ち、自らも過去3回の選挙で圧勝してきました。

ところがトランプ氏を批判したことで状況は一変しました。16日に投開票されるワイオミング州予備選に向けて、世論調査では「刺客候補」にリードを許す苦しい展開となっています。

リズ・チェイニー氏

中間選挙をめぐり、トランプ氏は刺客候補を含む220人以上(上下院、州知事選など)の候補者たちに推薦を出してきました。

このようなトランプ氏の動きに、脅威をいだき、とにかくトランプ大統領再選絶対阻止の構えのなかで、今回のスパイ法違反容疑の件が浮上してきています。これは、露骨なトランプ叩きの一環と断言しても良いでしょう。

民主党のどのレベルがこのようなことを実行する決定をしたのか、わかりませんか、相当ハイレベルなところでの決定であることは間違いなです。そうでないと、FBIや司法省を動かすことはできません。

しかし、このようなことをしても、トランプ氏をスパイ容疑で逮捕するのは、かなり難しいでしょう。なにしろ、トランプ氏は大統領のときに、スパイなどの取締を強化した張本人です。そのような人物を、スパイ容疑で逮捕するのは至難の業でしょう。

ただ、民主党はそれを認識した上で、そのようなことをした可能性が高いです。このブログでも指摘したように、民主党はそのようなことは不可能と知った上で、トランプ氏を弾劾しようとしました。これは、当然のことながら失敗しました。

そのようなことをなぜしたのかとえば、弾劾できるできないは別にして、トランプ氏にマイナスのイメージを植え付けようとしたのでしょう。とにかく、トランプ氏大統領再選の芽を摘んでおきたいというのが本音でしょう。

民主党は、トランプ氏を本気でスパイ容疑で逮捕させようとしているわけではないのでしょう。本気だとすれば、弾劾の時のように相当いかれていると言わざるを得ません。これも、やはりトランプ氏にマイナスのイメージを植え付ける一環だと考えられます。

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2021年3月1日月曜日

ドナルド・トランプがCPAC2021で基調講演―【私の論評】トランプは未だ意気軒昂(゚д゚)!

 ドナルド・トランプがCPAC2021で基調講演

CPACで演説するトランプ氏

<引用元:ニューヨーク・ポスト 2021.2.28

ドナルド・トランプ前大統領は、2月28日の保守政治活動会議(CPAC)で6週間弱前にホワイトハウスを去ってから初の公の場での演説を行い、2024年の出馬の可能性をちらつかせバイデン政権を強く非難した。

トランプはオーランドで舞台に上がるとスタンディングオベーションで迎えられ、「我々の運動・・・は始まったばかりだ」と宣言した。

「私は今日みなさんの前に立ち、我々が4年前にともに始めた驚くべき旅はまだまだ続いていくと宣言します」とトランプは熱狂的な聴衆に語った。

「誇りある勤勉なアメリカの愛国者の運動は始まったばかりです。そして最後に我々が勝利します!」とトランプは述べた。

トランプは共和党で影響力を保つ意向であることを明言しながら、2024年の大統領選への出馬をほのめかした。

民主党について言及して「私は彼らを3度目に打ち負かそうと決意するかもしれません」と述べると、参加者からは割れるような喝采が起こった。

トランプはまた「強くタフな」共和党が選出されるよう取り組むと述べ、新政党を始める計画だという噂を「フェイクニュース」だと一蹴した。

「我々には共和党があり、団結してかつてないほど強力になろうとしています」とトランプは話した。

「我々は新党を始めません。『彼は全く新しい党を始めようとしている』と言い続ける人たちがいます。我々には共和党があり、団結してかつてないほど強力になろうとしています。私は新党を始めません。それはフェイクニュースでした。フェイクニュースです。違うのです。それが華々しいことになるでしょうか?新党を始めて票を分けましょう、では決して勝てません。いいえ、我々はそのようなつもりはありません」

トランプがその後、2020年大統領選に「不正があった」という主張を繰り返すと、聴衆から「あなたが勝った!」という声援が沸き起こりました。


トランプは、米国最高裁判所は結果に異議を唱える訴訟で「行動する勇気を持たなかった」と主張し、「彼らは自分たちが国に対して行ったことを恥ずべきです。正しい判断をするための根性も勇気もありませんでした」と続けた。

また後任の大統領を狙い撃ちし、バイデン大統領は「現代の歴史上の大統領の中で最も悲惨な最初の月」だったと主張した。

「我々全員がバイデン政権は悪くなると知っていましたが、どれほど悪くなるかは誰も知りませんでした」とトランプは述べた。

「南部国境での新たな悲惨な危機ほど良い例はありません。わずか1カ月の短期間でアメリカ・ファーストからアメリカ・ラストになってしまいました」とトランプは続けた。

トランプはバイデンの移民政策が次の2つの連邦選挙で民主党の足を引っ張ることになると主張した。

「我々は1つの国です。世界の問題を被る余裕はありません。喜んで―喜んで助けたいという気持ちは山々です。それはできないことです。それで彼らはみな約束と愚かな言葉のためにやって来ているのです」とトランプは語った。

前大統領はまたパンデミックの中での米国の学校再開を呼びかけ、バイデンは「アメリカの生徒たちを教員組合に売り渡した」と非難した。

「ジョー・バイデンは恥ずべきことにアメリカの若者を裏切りました。そして彼は残酷にも子供たちを家庭に閉じ込めています。そうする理由は全くありません。彼らは外に出たいのです」とトランプは語った。

「彼らは次世代のアメリカ人から彼らにふさわしい未来を騙し取っています。彼らは本当にこの未来に値します。彼らは成長しようとしていますが、傷を負おうとしています・・・こうした若者の精神的肉体的健康は限界点に達しつつあります」とトランプは続けた。

「アメリカのお母さん、お父さん、そして子供たちのために、私はジョー・バイデンに学校の再開を今すぐに行うよう要求します」とトランプが語ると喝采が起こった。

またトランプは自政権のコロナウイルス・ワクチン準備の取り組みを自賛し、「彼らの手柄にさせてはなりません。彼らは我々の計画に従っているに過ぎません」と述べた。

トランプは、前大統領が何も残さなかったので全国ワクチン配布計画を開発するために「ゼロから着手」していたという主張についてバイデン政権を非難した。

「バイデンは我々にワクチンがなかったと言いました。今私は、彼がそう言ったのは一体何が起こっているのかを分かっていなかったからだと本当に思います」とトランプはジョークを飛ばした。

また「ビッグテック」を非難し、独占の解消と「公平な競争」が取り戻されることを求めた。

「ツイッター、グーグル、そしてフェイスブックのようなビッグテックの巨人は、保守派の意見を黙らせる時はいつでも大きな制裁で罰するべきです」とトランプは述べた。

トランプは、共和党が2022年の中間選挙で多数を取り戻し2024年にホワイトハウスを勝ち取ることを願う中、オーランドでの年に1回の4日間の会議の最後を締めくくって全国の注目を取り戻した。

トランプは「民主党はアメリカに対する率直な軽蔑を基盤としている」と述べ、チャック・シューマー上院多数党院内総務、ナンシー・ペロシ下院議長、そして民主党を非難しながら、共和党を団結させるために演説を利用した。

「我々の党はアメリカ人に対する愛と、これが神に祝福された並外れた国だという信念を基盤としています」

「我々は偉大なアメリカ国旗を尊重します!」とトランプが語ると、聴衆からは「あなたを愛している」という掛け声が長時間続いた。

前大統領は聴衆の熱愛を受けるのは「名誉」だと述べ、共和党のことを「罪のない命を守ることと」アメリカ建国者の「ユダヤ・キリスト教の価値観をアップロードすることに全力で取り組んでいる」と表現した。

会場に登場したトランプの金ピカの像

「我々は自由思想を歓迎し・・・そして左翼の暴挙を拒否し、『キャンセル・カルチャー』を拒否します。我々は法と秩序を信じており・・・『警察の資金を断ち切る』ことはありません」と彼は述べた。

また「トランピズム」という言葉が現れたことを指摘し、減税、強固な国境、憲法修正第二条の保護、そして「非常に長い利用されていた忘れ去られたた男女に対する支持」と同様に、「私が考え出したものではなかったが意味するところはとても大きい」と述べた。

同時に前大統領は反トランプの共和党を追及し、「スタンドプレーをする」議員を名指しで批判した。その多くは下院と上院でトランプ弾劾に賛成した人々だった。

「ワシントンの共和党エスタブリッシュメントのトップは、バイデン、ペロシ、シューマーと民主党に反対することにエネルギーを注ぐべきです。私は彼らの一部にこう言ったことがあります。『オバマ時代、そして今はバイデン時代に、私に対する攻撃と同じだけのエネルギーを彼らを攻撃することに費やせば、実際に成功するだろう』と」

トランプが自分に反対する共和党議員を「RINO」つまり「名ばかりの共和党」と呼ぶと、聴衆は彼らに向けてブーイングを浴びせた。

「彼らを全員追い出せ」とトランプは述べた。

トランプがミッチ・マコーネル上院少数党院内総務からの推薦を指摘すると、聴衆のブーイングの声がさらに強まった。

「民主党は常に協力し合っていて、グループの中にミット・ロムニーはいません。共和党にとって幸運なことに、民主党はひどい政策です。おめでとうございます。ですから我々には共和党があります」とトランプは語った。

「しかし、共和党が協力し合わなければ、我々を取り巻くRINOが共和党とアメリカの労働者を破壊し国自体を破壊するでしょう」

「今はこれまで以上にタフで強く、精力的な、鋼のような勇気を持つ共和党指導者が求められる時代です。我々には強いリーダーシップが必要です」とトランプは語った。

トランプの待望の演説までには、共和党の大統領有望候補者ら―ジョシュ・ホーリー上院議員やテッド・クルーズ上院議員など―が週末にかけて前座を務め、かつての最高司令官を待つCPACの聴衆に勢いをつけた。

1月20日に退任してから、トランプはフロリダ州マーアラゴのリゾートで過ごしており、自身と共和党の政治の舞台での復帰に向けた下準備をする中で元陣営幹部や共和党議員らと面談していた。

トランプはCPACの演説の最後をこう締めくくった。「我々はまず下院を取り戻し、共和党大統領がホワイトハウスに勝利の帰還を果たすでしょう。それは誰になるでしょうね?」

【私の論評】トランプは未だ意気軒昂(゚д゚)!

CPAC2021の会場

CPAC(シーパック)は"The Conservative Political Action Conferenc"の略であり、守政治活動協議会または保守政治行動会議と訳されます。 American Conservative Union (ACU).が主催し、100を超える他組織が参画し、全米の保守主義の活動家・政治家が出席する、年に1度のスピーチ討論会です。

まずは、以下にこの演説を日本語に翻訳した、動画を掲載します。


この演説で、「バイデン現大統領は、アメリカ第1主義をアメリカ最後主義に転換させた」と語り、バイデン現大統領の就任からの1ヶ月を歴代大統領の中で史上最悪のスタートだとしました。

特に、バイデン大統領の移民政策や新型コロナウイルス感染拡大への対応を改めて批判する一方、ワクチン開発は「私たちの業績だ」と強調しました。

また共和党支持者への演説で、「私たちは一緒に信じられないほどの旅に乗り出し、現在、米国の将来のための歴史的な闘争の真っ只中にいる」とし、自身と支持者らが4年前に始めた「素晴らしい旅」は「決して終わってなどいない」と強調しました。

さらに、「自分は米国で新党を結成する気はなく、共和党に留まるであろう」と強調しました。

そして、「われわれは勝利し、米国はかつてないほど強く偉大な国になるだろう」と述べて、2022年の中間選挙で共和党の主導権奪還に向け、大きな役割を果たす姿勢を強調しました。

さらに「私自身が3度目の民主党の打倒を決意するかもしれない」と言明し、昨年の大統領に勝っていたとの主張を繰り返しつつ、24年大統領選に出馬する可能性を示唆しました。

米大統領選では、民主党が黒人や若者に有権者登録を呼び掛ける中、トランプが共和党支持者らに不在者投票を促さなかったことが700万票もの差で同氏がバイデン氏に敗北する要因になったとみられています。

選挙の日程は投票日当日までの数日間ではなく、実際の投票日1日のみとするべきだと主張。また「不在者投票には正当な理由が必要だ」と述べました。

さらに、もう1つの敗因となった郵便投票の廃止や、投票所での身分証明書の提示義務付けなどを提案しました。

これに先立ち、米上院の共和党最有力者の1人である上院野党指導者ミッチ・マコーネル氏は、数週間前に上院でトランプが今年1月6日の議事堂襲撃に関与したことを鋭く批判していました。

CPACで演説するポンペオ前国務長官

その一方で、トランプが党の指名争いに勝った場合、共和党は2024年の選挙でトランプを支持する、と表明しています。

トランプは、今年1月6日の米議事堂襲撃事件で支持者を騒乱へと煽動した罪に問われています。

しかし、こうした中トランプ弾劾法案は、米国上院での総議席の3分の2を得られず、否決されました。

トランプは、共和党内で同氏の弾劾に賛同した造反議員ら全員を名指しし、特に下院ナンバー3のリズ・チェイニー氏に対して強い怒りを示しています。

ひさしぶりのトランプ演説ですが、未だ意気軒昂です。今後の展開が楽しみです。今後も既存の政治家の枠を大きくはみ出た行動で、米国政界をリードしていくのは間違いないようです。

このトランプ演説に関しては、翻訳や、様々な見方が、報道されるようになると思います。今後もこのブログでは、そうした内容も取り上げていきます。よろしくお願いします。

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2019年2月2日土曜日

トランプ氏、米のみの制限を認めず 「全核保有国の新条約を」INF破棄で―【私の論評】今回の破棄は、日本の安保にも関わる重要な決断(゚д゚)!

トランプ氏、米のみの制限を認めず 「全核保有国の新条約を」INF破棄で

演説前に眉を整えるトランプ大統領=1日,ホワイトハウス

    トランプ米大統領は1日、ロシアとの中距離核戦力(INF)全廃条約の破棄を同日発表したことに関連し、ホワイトハウスで記者団に対し、「全ての核保有国を集めて新しい条約を結ぶ方が(米露2国間よりも)はるかにましだし、見てみたい」と述べた。

 トランプ氏は一方で、「条約は全ての国が順守しなければならないが、一部の国は条約など存在しないかのような振る舞いをする」と指摘し、ロシアのINF条約違反を批判した。

 同氏はその上で、「全ての国が同意する新条約ができたとしても、他国が条約を守らない一方で米国の行動が制限され、不利な立場に陥るようなことがあってはならない」と強調した。

 一方、トランプ政権高官は1日の電話記者会見で、米国が条約破棄を2日に通告し、6カ月後に失効するまでの期間が「ロシアが条約を順守する唯一にして最後のチャンスだ」と訴えた。ただ、これまでにロシアは条約を順守する意向を示していないとしている。

 同高官はまた、2021年2月に期限を迎える米露の新戦略兵器削減条約(新START)の延長の是非について、関係省庁が検討を始めたことを明らかにした。新STARTは、米露が合意すれば5年間の延長が可能となる。

【私の論評】今回のINF破棄は、日本の安保にも関わる重要な決断(゚д゚)!

トランプ大統領の決定は単なる無謀な核軍拡競争につながり、日本、そして世界にとって迷惑なものなのでしょうか。 

この認識は、はっきりいって間違いです。なぜなら、ソ連時代は極東になかった中距離核ミサイルが、今では北朝鮮と中国に100基以上も存在するようになっているからです。

東アジアの核戦力配置図 クリックすると拡大します

1987年の合意以降、米ソ双方は中距離核ミサイルをかなり撤廃しました。ところがその後、周辺諸国の各配備によりロシアが割を食うことが増えたのです。そして今では日米にとっても、「中国の中距離核ミサイル」という新たな要因が登場しているます。

双方とも相手を表向きは「お前こそ条約に違反して中距離核ミサイルを開発しているではないか」と非難していますが、1987年の合意見直しは、今や米ロ双方にとって必要になったのです。

1987年の合意後、ロシア周辺の諸国が中距離核ミサイルの開発・配備を始めたのです。それは、中国、イラン、北朝鮮による、米国を狙う長距離核ミサイル開発の途上の成果でもあったし、パキスタン、インド(そしておそらくイスラエルのもの)等紛争を抱える隣国を狙ったものでもありました。これは、直接ロシアを狙ったものではありませんが、ロシアにとって脅威になったのはいうまでもありません。

ロシアはこれらの国と紛争になった場合、米国向けの長距離核ミサイルICBMを使うわけにはいかないです。と言うのは、これが発射された瞬間、上空の米国の衛星が探知して、米国はこれを米国向けのものと誤認、対応した行動をとってくるからです。

こうしてロシアは、中国やイランの核ミサイルに対して抑止手段を持たない状況に陥ったのです。中ロは準同盟国同士と言っても、互いに信用はしていません。今でもロシア軍は、極東・シベリア方面での演習では、「国境を越えて押し寄せる大軍」に対して戦術核兵器(小型で都市は破壊できないが、大軍を一度に無力化できる)を使用するシナリオを使っています。

これに加えてブッシュ政権のチェイニー副大統領は、東欧諸国に「イランのミサイルを撃ち落とすため」と称して、ミサイル防御ミサイル(MD)の配備を始める構えを見せました。

これは防御と言いながら、実質的にはかつて廃棄したパーシング2ミサイルの技術を使ったミサイルで、容易にロシアを標的とした中距離核ミサイルとなり得るとロシアは判断したようです。

カリーブルを発射したロシアの駆逐艦

「ロシアが秘密裏にINF開発のための実験をしている」と米国が言い始めたのはこの頃、つまり2000年代初頭のことです。ロシアはそれを否定しつつ、実は開発にはげみ、その成果は中距離巡航ミサイル「カリーブル」等として実りました。

カリーブルは2017年12月、ボルガ河口のロシア軍艦から発射され(1987年のINF全廃条約は「陸上」配備のものしか規制していません。水上から撃てば違反ではない、という理屈)、みごとはるか遠くのシリアに着弾したとされています。

今やロシアは中距離核ミサイルを再び手に入れて、これを極東に配備すれば中国、北朝鮮、韓国、グアム、日本を射程に収めることができるようになったのです。

米オバマ前大統領は国防支出を削減、特に核兵器の近代化を止めました。その間、ロシアは、中距離核兵器だけでなく、長距離核戦力を制限する新START条約の枠内ではありましたが、長距離ICBM、潜水艦発射の長距離SLBMの近代化を着々と進めました。経済力のないロシア(GDPは韓国と同程度)は、核戦力でしか米国との同等性を確保できないからです。

だからトランプは大統領に就任早々、核軍備充実を公約のようにして言及し続けてきました。今回のINF全廃条約脱退は、ボルトン大統領安全保障問題補佐官等、かつてのチェイニー副大統領のラインを受け継ぐ超保守派の進言によるものとも言われています。

しかし、これはトランプ自身の信念を反映していると見られ、たとえこの先ボルトンが更迭されても政策の大元は揺るがないでしょう。

すると、米国の新型中距離核ミサイルはまたドイツ等西欧諸国に配備されることになり、轟然たる反米、反核運動を引き起こすのでしょうか。 

おそらくそうはならないでしょう。と言うのは、中距離の核弾頭つき巡航ミサイルや弾道ミサイルは冷戦時代に米国がそうしていたように、西側原潜に搭載して、北極海に潜航させておけば、ロシアを牽制することができるからです。

だからこそ、昨年10月27年ぶりに、米軍空母が北極海で演習し、力をロシアに誇示したのでしょう。これまでも長距離核ミサイルを搭載した原潜の潜航海域を確保することは、米国、ソ連・ロシア、そして中国(南シナ海がその海域にあたる)にとって重要な問題でしたが、今度は中距離核ミサイル搭載原潜の潜航海域を確保することが必要になっているのです。

昨年北極海で演習した米空母ハリー・S・トルーマン

冷戦時代には、ソ連のINFが極東に配備されなかったことで、ソ連の核の脅威は日本には直接及びことはありませんでした。

しかし現在の最大の問題は、北朝鮮の核は言うに及ばず、中国保有の中距離核ミサイルです。

後者は100発を越えるものと推定されていて、中国軍による台湾武力統合などの有事には、日本が米軍を支援するのを止めるため、中国は中距離核ミサイルで日本の戦略拠点、米軍、自衛隊の基地を狙うことでしょう。

こういう時に、「お前が撃つなら、俺も撃つぞ」と言って中国を思いとどまらせることのできる抑止用の核兵器は、今、西太平洋の米軍にわずかしかありません。

かつてはトマホークという核弾頭つき巡航ミサイルが米国原潜等に配備されていたのだですが、これはブッシュ時代の決定でオバマ政権が廃棄してしまったままになっているのです。

これでは、日本は有事に米国との同盟義務を果たすことはできず、米国は日本を見捨てて裸のままに放置することになるでしょう。中国は日本に中立の地位を認めることなく、政治・経済・軍事、あらゆる面で服属を求めてくるでしょう。

そうなると、日本も核抑止力を強化せざるを得ないです。しかし、日本本土に米国の中距離核ミサイルを配備することは、ドイツ以上に難しいです。それに陸上に核ミサイルを配備することは、敵の先制・報復攻撃を容易にして、危険です。

いま米国が開発しようとしている、トマホーク巡航ミサイル新型は海中の潜水艦、あるいはグアムの爆撃機や戦闘機に装備するのが妥当です。

しかし、米国は日本に開発の費用分担を求めてくるでしょう。それは当然のことです。このままでは日本は、中国の属国になってしまう可能性もあります。

しかし日本を守ることは、米国の利益にもなります。在日の米軍基地は、米軍が西太平洋、そしてインド洋方面に展開するに当たって、不可欠の補修・兵站基地となっていますし、日本や西欧等の同盟国が、中国やロシアの中距離核ミサイルに脅されて次々に同盟関係から「脱退」したら、米国は本当の裸の王様になってしまうからです。日本は費用を分担するが、何か見返りに米国から獲得しておくべきでしょう。

ドイツには、昔から米国が置いている「戦術」核弾頭が今でも数十発あるが、これはDual Keyと言って、実戦に使用する時にはドイツ、米国両国政府の合意が必要になっています。ドイツ政府も、これの使用を積極的に米国に発議できるようになっているのです。そして米政府はドイツ政府の了解なしには、これを使用できないです。日本もこのような権利を得るべきです。

そして将来的には、日本も核兵器を開発する可能性の余地を残すのです。その「可能性」自体が抑止力になります。インドが、核ミサイルを保有していながら米国と原子力協力協定を結んでいることを念頭に置くべきです。

なお、中ロ両国周辺の海域は、米国原潜からの中距離核ミサイル発射拠点として、中ロ両国にとって戦略的意味を増していくことになるでしょう。米空母が北極海でわざわざ演習するのは、そういう意味を持っているのです。

長距離の戦略核兵器については、米ロ双方とも増強・近代化というトレンドは中距離核戦力と同じですが、こちらの方は別の条約が機能しており、長距離とは別の問題となります。2021年には失効するので、更新が必要となります。

いずれにしても、今回のロシアとの中距離核戦力(INF)全廃条約の破棄は、トランプがやみくもに核増強に突っ走ろうとしている等という単純な話ではないのです。

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2019年1月26日土曜日

韓国「救助」主張の北漁船は『特殊部隊用』か レーダー問題で軍事専門家が衝撃解析 ―【私の論評】なぜ米国はレーダー照射問題に無関心なのか、その背後に何が?

韓国「救助」主張の北漁船は『特殊部隊用』か レーダー問題で軍事専門家が衝撃解析 

韓国“暴挙”海自機にレーダー照射

軍事アナリストの西村金一氏

 韓国による「理不尽な言いがかり」の背景として、韓国海軍の駆逐艦による火器管制用レーダー照射問題の「論点ずらし」を狙っている可能性が高い。こうしたなか、韓国側が救助活動をしていたという“北朝鮮漁船”への疑問が強まっている。アンテナの形状などから、軍事専門家は「軍や特殊部隊が使用する船舶」との疑いを強める。日米情報当局も「北朝鮮工作船と酷似している」と分析。文在寅(ムン・ジェイン)政権は、一体何を隠しているのか。

 衝撃の解析をしたのは、元防衛省の情報分析官だった軍事アナリストの西村金一氏。夕刊フジで「北朝鮮漁船は、朝鮮人民軍や工作機関所属の可能性がある」と語っていた(10日発行)が、さらに解析を進めて、新たな事実を発見した。

 北朝鮮船には、前方と後方にそれぞれ3~4メートルのマストがあり、イカ釣り用とみられる電球が並んでブラ下がっていた。実は、その上に「モールス通信用とみられるケーブル」が架かっていたのだ。漁船の装備を偽装した“特殊アンテナ”といえる。

TV番組で「モールス通信用とみられるケーブル」を指摘する西村氏のボールペンのペン先

 西村氏は「こうしたアンテナは、普通の北朝鮮漁船には見られない。一般の音声通信だと50~70キロ先までしか届かないが、『トントン、ツーツー』と長さが違う符号を組み合わせたモールス通信を使えば、少なくとも1000キロ先まで届く。北朝鮮船が、軍や特殊部隊が使用する工作船の可能性がさらに高まった」と語った。

 北朝鮮は2001年12月、鹿児島県・奄美大島沖の日本の排他的経済水域(EEZ)内に、中国漁船を偽装した不審船を侵入させ、海上保安庁の巡視船に発見された。銃撃戦の末、不審船は自爆沈没した。日本が船を引き揚げて調べたところ、「北朝鮮の工作船」と判明した。

 西村氏は「あの事件以来、北朝鮮はより本物の漁船のように偽装した工作船を出してきている。今回が、まさにそうだろう。工作機関の司令部がある、北朝鮮北東部の清津(チョンジン)か、東部の元山(ウォンサン)の所属ではないか」と語った。

 救難信号(SOS)の疑問もある。

 日本のEEZ内でありながら、自衛隊も海保も北朝鮮船のSOSを受信していない。それなのに、北朝鮮や韓国から約500キロも離れた現場海域に、韓国海洋警察の警備艇と、韓国海軍駆逐艦が集合していた。

 西村氏は「普通の漁船なら、SOSに音声や有線通信を使うはずだが、使用した形跡がない。加えて、あれだけ広い海域で、レーダーにも映らない北朝鮮船の位置がピンポイントで分かり、所属が異なる海洋警察と海軍の船が同時に集まったのも尋常ではない。北朝鮮船が、暗号化されたモールス通信で本国に救助要請し、ハイレベルのルートから韓国側に救助依頼した可能性が高いのではないか」と分析した。

 工作船とみられる北朝鮮船は、日本のEEZ内で何をしていたのか。韓国がもし、北朝鮮の工作船をひそかに救助したとすれば、同盟国・米国や、国際社会に対する説明責任を果たさなければならない。


【私の論評】なぜ米国はレーダー照射問題に無関心なのか、その背後に何が?

工作船とみられる北朝鮮船が、日本のEEZ内で不穏な動きをみせ、それに韓国海軍が何らかの関わりを持っているかもしれないこと自体については、十分にあり得ることだと思います。

最近のなりふり構わない韓国の北朝鮮への擦り寄り姿勢をみていれば、何らかの形で韓国が北に恒常的に支援をしていて、それが今回たまたま露見しそうになったのでレーダー照射という事態になったことは十分にあり得ることです。

それよりも、私が気になるのは、これだけ徴用工問題やレーダー照射で日韓関係がかなり悪いのに、それに対していまのところ米国が何の動きも見せていないことです。

過去においては日韓関係が大きくこじれると、米国が調停役として振る舞ってきました。記憶に新しいところでは2014年。歴史問題をめぐる軋轢から両国首脳が1年以上も会談していないことを見かねたオバマ政権が仲介し、安倍晋三首相と朴槿恵(パク・クネ)大統領の会談を実現させました。翌15年末には、いわゆる慰安婦問題をめぐり深刻化した日韓対立の仲裁に入り、慰安婦合意を締結させました。

安倍晋三首相と朴槿恵(パク・クネ)大統領の会談を実現させた米国オバマ大統領

米国が日韓の外交問題に介入してきたのは北朝鮮問題があったからです。中国(とロシア)を支援国とする北朝鮮と対峙するために、米国は日韓とスクラムを組む必要があったのです。91年にアジアを外遊したベーカー国務長官は、チェイニー国防長官に宛てた外電で「対北朝鮮政策において米国と同じ方向性を維持させるために、日本と韓国を仲介するという重要な役割がある」と述べています。

ところが、トランプ政権が従来の外交路線を一転させてから潮目が変わりました。北朝鮮の金正恩党(キム・ジョンウン)委員長と直接対話するなど自己流の外交を進めるトランプは、かつての米政権ほど日米韓の同盟を重要視していないようです。特に韓国は、重要視していないようです。

実際、徴用工やレーダー照射問題で日韓対立が深まってもトランプ政権から表立って懸念の声は聴かれていません。歴史問題ならまだしも、軍事問題でもだんまりを決め込むあたり、無関心ぶりは本物かもしれないです。

この無関心ぶりは一体どこから来ているのでしょうか。私は、やはり最近の米国の対中国冷戦に関係していると思います。

米国からすれば、北朝鮮問題など中国との対峙と比較すれば、小さなものであり、大きな枠組みでの問題を解決するにおいては小さな従属関数にすぎないのでしょう。

中国との対峙に勝利を収めれば、北朝鮮問題などすぐに解決すると踏んでいるのでしょう。さらに、日韓の問題などとるに足りない些細な出来事と見ているのでしょう。

それと、以前からこのブログに掲載しているように、トランプ政権自体が北朝鮮や韓国の見方を変えたのだと思います。

かねてから、中国に従属しよう、北朝鮮に擦り寄ろうとする韓国については、トランプ政権は最早米韓同盟は形骸化したとみなしているのでしょう。

一方北朝鮮に関しては、従来は核で米国を脅かす存在と考えていたのでしょうが、ある事実に気づいたのでしょう。

それは、以前からこのブログに掲載してきたように、北の核が中国の朝鮮半島への浸透を防いできたという事実です。このブログにも掲載してきましたが、韓国とは異なり北は反中もしくは嫌中であり、中国から完全独立することを希求しています。

韓国は日米にとって安全保障上は空地としてか意味をなさなくなった

もし、北が核開発をしていなければ、いくら反中嫌中であったにしても、ずいぶん前に完璧に中国に浸透され、金ファミリーは中国のいいなりなっていたか、最悪滅ぼされて中国の傀儡政権が権力を握っていたかもしれません。

この傀儡政権は、やがて韓国を飲み込んだかもしれません。そうなると、半島全体が中国の覇権の及ぶ地域となり、半島全体が日本や台湾などの周辺地域に浸透するための前進基地になったかもしれません。

ところが、この事態を北朝鮮が事実上回避しているのです。北朝鮮の核は、中国にとっても大きな脅威なのです。中国が北に本格的に侵攻する構えを見せたり、北に本格的に傀儡政権を作ろうという動きをみせれば、北は核兵器によって中国に報復することができます。

ただし、北が中国に報復ということにでもなれば、北は確実に中国によって葬り去られることになるでしょうから、北としては、ありったけの核を中国に打ち込むことになるでしょう。中国の主要都市である重慶市、上海市、北京市、成都市、天津市、広州市、保定市、、蘇州市、深セン市などは標的になるでしょう。北京は火の海になるでしょう。中国はこれを恐れているため、北は中国から独立していられるのです。

この事実に気づいたトランプ政権は、現状の半島の状況を中国に対峙するには、ベストであるという考えに変わったのでしょう。

米国にとっては、韓国については何も期待していませんが、ただ中国に対峙するためには、朝鮮半島の南半分が中国にかなり浸透されているとはいえ、それでも一応独立国として安全保障上の空き地のような状態になっていることは望ましいです。

そうして、その空き地のすぐ北には、北朝鮮が控えているわけです。これでは、韓国があからさまに完璧に中国に従属しようと望んでも、中国はなかなかそれを実行に移すことは難しいでしょう。

そもそも、軍隊を送り込もうにも、陸続きではないので、軍隊は船で送らなければなりません。そうなると、遅れた現在の中国海軍は、米国などに簡単に駆逐されてしまいます。

トランプ政権がこのような見方をしているとすれば、韓国が北に制裁破りをするような行為は、余程のことがなければ、それは大局からみれば、どうでも良い些細なことに過ぎないのでしょう。

北は、韓国のように中国に従属することはしません。その意味では、現在の韓国は北の都合の良いように利用されているだけです。韓国がかなり大掛かりな支援をしない限り、米国はこれを放置するかもしれません。

ただし、北の核は米国も狙っていることは事実ですし、北は拉致問題や人権問題もあるのは事実です。また、金正恩は、叔父や血のつながった兄を殺した、人物でもあります。だからこそ、米国も未だ表立っては、北朝鮮を認めるようなことはできないのです。だからこそ、現在でも制裁を継続しているのです。

おそらく、次の米朝会談で、米国がどのような条件で北を認めるのかはっきりさせることでしょう。核の扱いについても、北の望む通りにはさせないでしょう。かといってすぐに核廃棄といえば、中国が喜ぶだけです。このあたりのバランスが難しいところです。

下手をすると、朝鮮半島は中国のものになってしまいます。中国を睨みつつ、核の廃棄方法や時期を明確にするでしょう。その内容により、トランプ政権はどのくらいの期間でどの程度中国を叩くつもりなのか、知ることができるかもしれません。その意味でも、次の米朝会談に注目です。

ただし、日本としては、将来的に空地の韓国が中国にそそのかされて、対馬に侵攻するなどということもあり得るかもしれないと覚悟すべきです。韓国が対馬奪取に成功することでもあれば、中国は尖閣や沖縄などに侵攻可能とみて、これらを本格的に奪取しにやってくるかもしれません。これらは、日本が独自に迅速に阻止しなければなりません。

そうでなければ、米国は日本も韓国と同じく安全保障上の空地とみなすようになるかもしれません。

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2019年1月6日日曜日

本物のシビリアン・コントロール 「マティス氏退任」は米の民主主義が健全な証拠 ―【私の論評】トランプ大統領は正真正銘のリアリスト(゚д゚)!

本物のシビリアン・コントロール 「マティス氏退任」は米の民主主義が健全な証拠 


トランプ大統領とマティス氏

ジェームズ・マティス氏は昨年12月31日付で、ドナルド・トランプ政権の国防長官を退任した。マティス氏は退役海兵隊大将であり、米国統合戦力軍司令官、NATO(北大西洋条約機構)変革連合軍最高司令官、米国中央軍事司令官などの要職を歴任した人物だ。

 2017年1月20日のトランプ政権発足と同時に、第26代国防長官に就任した。本来は「シビリアン・コントロール(文民統制)」の観点から、元軍人は退役後7年経過しないと国防長官になれない。だが、上院が承認すれば就任できる。議決は「賛成98票、反対1票」だった。

 マティス氏は間違いなく米国のヒーローであり、世論やメディアの評価はいまなお高い。私自身、彼のキャラクターが大好きだし、尊敬している。

 だが、生粋の軍人であるマティス氏と、ビジネスマン出身のトランプ氏は、価値観に大きな食い違いがあったと感じる。

 トランプ氏がビジネスで成功を収めた要因の1つは、「合理主義の追求」である。人事面では、有能な人材を年齢や社歴と関係なく抜擢(ばってき)し、能力給と成功報酬を与える。逆に、無能と判断した人間は過去と関係なく解雇する。いわば人間関係も「損切り」するのだ。

 一方、マティス氏が人生を捧げた海兵隊では、戦場で傷付いた戦友を見捨てることは許されない。米軍でも、特に海兵隊は日本的な「義理人情」に厚いという印象がある。

 今回、シリアからの米軍完全撤退という決定を契機に、マティス氏は辞意を固めた。米軍が撤退すれば、IS(過激派組織・イスラム国)掃討作戦に全面協力したクルド人勢力は、再びアサド政権下で弾圧されるだろう。この厳しい「損切り」の責任者になることが、マティス氏にはとても許容できなかったのだと思う。

 私は、クリスマス前から年始まで米国で過ごしてきた。今回、信頼が厚くて人気の高いヒーローの退任に、多くの米国人が強いショックを受けたかといえば、実はそうでもない。トランプ支持者が愛想を尽かしたかといえば、それもなかった。

 なぜなら、米国民が選挙を通じて自ら選んだのはトランプ大統領だからだ。マティス氏は大統領が選んだ人物に過ぎない。

 大統領の方針に異議があり、説得したが失敗した。健全な民主主義国なら、方針に従うか、退任しか選択肢はない。それが本物の「シビリアン・コントロール」である。

 ちなみに、シリア国内にISの残党がいたら、すぐたたけるように、米軍はシリアからは撤退しても、イラクには残る。この文章の「シリア」が「韓国」に、「イラク」が「日本」になる日は、そう遠くないのかもしれない。

 ■ケント・ギルバート 米カリフォルニア州弁護士、タレント。1952年、米アイダホ州生まれ。71年に初来日。著書に『儒教に支配された中国人・韓国人の悲劇』(講談社+α新書)、『トランプ大統領が嗤う日本人の傾向と対策』(産経新聞出版)、『日本覚醒』(宝島社)など。

【私の論評】トランプ大統領は正真正銘のリアリスト(゚д゚)!

冒頭の記事で、ケント・ギルバート氏は以下のように述べています。
トランプ氏がビジネスで成功を収めた要因の1つは、「合理主義の追求」である。人事面では、有能な人材を年齢や社歴と関係なく抜擢(ばってき)し、能力給と成功報酬を与える。逆に、無能と判断した人間は過去と関係なく解雇する。いわば人間関係も「損切り」するのだ。
トランプ大統領のイラク撤退の考えが合理的であることは以前このブログにも掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
もう“カモ”ではない、トランプの世界観、再び鮮明に―【私の論評】中東での米国の負担を減らし、中国との対峙に専念するトランプ大統領の考えは、理にかなっている(゚д゚)!
昨年末電撃的イラク訪問をしたトランプ大統領
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事からシリアから撤退することを決断したトランプ大統領の考え方が、合理的であると説明した部分を引用します。
この判断には、合理性があります。アサド政権の後ろにはロシアが控えていますが、そのロシアは経済的にはGDPは東京都より若干小さいくらいの規模で、軍事的には旧ソ連の技術や、核兵器を受け継いでいるので強いですが、国力から見れば米国の敵ではありません。

局所的な戦闘には勝つことはできるかもしれませんが、本格的な戦争となれば、どうあがいても、米国に勝つことはできません。シリアやトルコを含む中東の諸国も、軍事的にも、経済的にも米国の敵ではありません。

一方中国は、一人あたりのGDPは未だ低い水準で、先進国には及びませんが、人口が13億を超えており、国単位でGDPは日本を抜き世界第二位の規模になっています。ただし、専門家によっては、実際はドイツより低く世界第三位であるとするものもいます。

この真偽は別にして、現在のロシアよりは、はるかに経済規模が大きく、米国にとっては中国が敵対勢力のうち最大であることにはかわりありません。

トランプ政権をはじめ、米国議会も、中国がかつてのソ連のようにならないように、今のうちに叩いてしまおうという腹です。

であれば、トルコという新たな中東のプレイヤーにシリアをまかせ、トルコが弱くなれば、トルコに軍事援助をするということで、アサド政権を牽制し、中東での米国の負担を少しでも減らして、中国との対峙に専念するというトランプ大統領の考えは、理にかなっています。 
物事には優先順位があるのです、優先順位が一番高いことに集中し、それを解決してしまえば、いくつかの他の問題も自動的に解決してしまうことは、優れた企業経営者や管理者なら常識として知っていることです。
無論、このような論評の前提には、そもそもシリアにはアサド政権を含めて、クルド人勢力などの反政府勢力も元々反米的という前提があります。クルド人勢力が反政府勢力となったのは、一時的に米国と利害が一致していたに過ぎません。その証左として、米軍引き上げという 窮地に、トルコと敵対するアサド・シリア政権に庇護を求め、手を結んでいます。

結局、シリアには、アサド政権は無論のこと、クルド人勢力のような反政府勢力も反米的なのです。

だとすれば、いずれが勝利したとしても、米国の勝利にはならないのです。だから、米国の戦略家であるルトワック氏は、米国の対シリア政策は、アサド政権と反政府勢力を拮抗させておくべきというものでした。

であれは、新たな拮抗勢力として、トルコが名乗りをあげたのです。これからトルコがシリアを攻撃して、勝利を収めたとしても、米国としてはアサド政権よりははるかにましです。であれば、シリアから撤退すべきと考えるのが合理的です。

トランプ氏の考え方は、どこまでも合理的なのです。そうして、トランプ大統領はリアリストなのかもしれません。

日本で「リアリスト」というと、あえて大雑把にいえばいわゆる「現実派」というイメージになります。汚い仕事からも目をそらさず実行するという「実務派」という意味でとらえられがちです。

これは米国でも同じであり、時と場合によっては政治信条などを度外視して、生臭い権力闘争や、利権の力学で政治をおこなう実務派たちを「リアリスト」と呼ぶことがあります。例えば、チェイニー元副大統領などがその代表的な人物であり、血の通わない冷酷な人物である、とみられがちです。トランプ氏はそのような側面があることは否めないと思います。

しかし、「リアリスト」にはもう一つの意味があります。それは、「国際関係論」(International Relations)という学問の中の「リアリズム」という理論を信じる人々のことも意味します。

「リアリズム」というと、美術などの分野では「写実主義」のような意味になりますが、
国際政治を理論的に分析しようとする「国際関係論」という学問では、「国際関係を、主に『権力(パワー)』という要素にしぼって分析、予測する理論」です。

ハイパーリアリズムの絵画 もはや写真にしか見えない

つまり、「リアリズム」とは、「国際政治というのはすべて権力の力学による闘争なのだ!」と現実的(realistic)に考える理論です。よってリアリズム(現実主義)となるのです。

さて、この理論の中核にある「権力=パワー」というコンセプトがまずクセものです。「リアリズム」学派では、伝統的に、「権力=パワー」というのは、主に「軍事力」によって支えられると考えられています。

よって、彼らにとってみれば、国際政治を動かす「パワー(power)」というのは、
「軍事力による脅しや実際の行動(攻撃)によって、相手の国を自国の意思にしたがわせる能力」ということなのです。

究極的にいえば、「リアリズム」では、この「パワー」こそが国際社会を動かす唯一最大の要素なのです。ですから、ここに注目してさえいれば、概ね相手の動きは読めてしまう、ということなのです。

このような考え方は、平和信仰の強い日本人にしてみれば、「なんとえげつない理論だ」と思われるかもしれません。

ところが欧米の国際関係論の学界では、この「リアリズム」という概念が一番説得力のある強い理論だとされており、あえて刺激的な言い方をしますと、これを知らない、いや、知っていても認めないし、知ろうともしないアカく染まった日本の学者や知識人たちだけとも言える状況なのです。

国際関係学においては、「リアリズム(現実主義派)」と「リベラリズム(自由主義)」
がメジャーな存在ですが、その他にも、「マルクス主義」や、「コンストラクティビズム」などがあります。


リアリストたちが「国際社会はパワーの闘争によって動かされている!」と考えていることはすでに述べたとおりですが、その彼らにすれば、「平和」というのは単なる「闘争の合間の小休止」、もしくは「軍事バランスがとれていて、お互いに手出しできない状態」ということになります。

よって、軍事バランスがくずれれば、世界の国々はいつでも戦争を始める、というのが彼らの言い分なのです。

では、国際社会を「平和」に保つためにはどうしたらいいのか?彼ら「リアリスト」に言わせれば、そんなことは単純明快であり、「軍事バランスを保つこと」なのです。

より具体的に言えば、世界中のライバル国家たちに軍事力でバランスをとらせて、お互いに手出しさせないようにする、ということなのです。

そうして、現在トランプ政権は、軍事パランスを崩そうとする中国に対して、武力ではなく経済制裁を中心とした、冷戦Ⅱ(ペンス副大統領の言葉)を挑んでいます。

こうしてみると、トランプ氏は、正真正銘の「リアリスト」なのかもしれません。すくなくと「マティス流」の「義理人情」で動くのではなく、あくまでも合理的な判断で政治を行い、「国際関係を、主に『権力(パワー)』という要素にしぼって考えて行動しているのではないでしょうか。

そうなると、トランプ氏は、「リアリスト」と考えるのが妥当だと思います。

最近の韓国 レーダー照射問題においては、言い訳がコロコロ変わっています。これは、軍としては致命的です。 自衛隊記録動画に反証する動画を公表しましたが反証証拠を出せず、レーダー照射そのものは認めざるえなくなっています。

韓国の反証動画。サムネイルに「自衛隊機の低空飛行」を見せかける加工がなされている。

自衛隊はデータリンクを通じて、他国(特に米国)とも情報共有しているわけで、いくらでも証明できるでしょう。特に米国は、日本海で艦船を恒常的に航行させていますから、その一部始終をすでに分析していることでしょう。

韓国の今回の対応は、まさに最悪のクレーム対応の見本のようなものです。これをリアリストのトランプ氏が見れば、韓国の信用度はますます低下したに違いありません。慰安婦問題や、徴用工問題における韓国の妄想による捻じ曲げられた理屈など、トランプ氏には通用しません。

これは、冒頭の記事の最後で、ケント・ギルバート氏が"この文章の「シリア」が「韓国」に、「イラク」が「日本」になる日は、そう遠くないのかもしれない"と語ったように、米軍韓国撤退の日は近いかもしれません。

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2014年3月12日水曜日

人民元変動幅拡大のウラに習主席の地元利権 矛盾から目をそらす対日批判 ―【私の論評】中国の矛盾が次々と明るみに出たこの10年、もう現体制の綻びは明白、世界は中国崩壊に備え現中国の指導層の裁判に備え「普遍的管轄権」による公正な判決ができるように備えよ(゚д゚)!

人民元変動幅拡大のウラに習主席の地元利権 矛盾から目をそらす対日批判 

北京の人民大会堂
5日開幕した中国の全国人民代表大会(全人代)では、経済成長率7・5%の目標や国防費2ケタ増、人民元の変動幅拡大などが打ち出された。

全人代は、中国の今後1年間の重要政策について話し合う場で、例年3月上旬から中旬にかけて北京の人民大会堂に全国の省や軍などの代表約3000人が出席する。形式的には日本の国会と似ているが、中国は共産党の一党独裁であり、政党間の政権交代はなく、重要事項は共産党の指導部が決定する。全人代は党の決定を確認するだけとも指摘されている。

全人代で掲げられた成長率目標7・5%は、消費者物価指数(CPI)の伸び率3・5%とともに、前年と同じである。これは、そろそろ中国経済が頭打ちになってきていることを示している。

また、中国経済が「ルイス転換点」にぶつかってしまったという識者の指摘とも合致している。

・・・・・・・・・・・・<中略>・・・・・・・・・・・

習近平国家主席は太子党(共産党幹部の子弟)出身で、沿海部の福建省や浙江省の党要職を務め頭角を現してきた。その地域は中国の大手輸出企業が集まっており、人民元は安くしておくことが既得権を守ることになる。そのため、変動相場制への移行は政権のアキレス腱(けん)となる。

そうした国内の矛盾から目をそらすために、対日批判を使っているフシがある。そして、それが国防費2ケタ増につながっている。

先日のコラムでも紹介したが、中国の国防費は国内総生産(GDP)の2%と、日本の倍である。その国防費を中国はさらに伸ばして、アジア地域の軍事バランスを歪めている。

中国のシャドーバンキング問題は世界経済の弾薬庫であり、大波乱要因になる。その来たるべき日に備えて、日本も今のうちから経済力を強化する必要がある。 

【私の論評】中国の矛盾が次々と明るみに出たこの10年、もう現体制の綻びは明白、世界は中国崩壊に備え現中国の指導層の裁判に備え「普遍的管轄権」による公正な判決ができるように備えよ(゚д゚)!

このブログでも従来から紹介させていただいたように、この10年中国の大矛盾が次々と明らかになっています。その矛盾度合いは、日本の比ではありません。日本の政治家の利権など、中国の官僚(中国に厳密な意味で政治家は存在しません。全部官僚です)に比較すれば微々たるものであり、最悪のものでも、中国のそれと比較すれば「天使の戯事」に過ぎないと言っても良いくらいです。他のアジアの諸国と比較しても、幅と奥行きのスケールが根本に異なります。

カナダ紙グローバルポストは記事「中国:愛人の報復」を掲載した

習近平国家主席の沿海部の福建省や浙江省の利権など、想像を絶するものがあり、変動相場制への移行も実行できません。とにかく、利権は凄まじく、習近平国家主席の義兄や、温家宝前首相の息子、温雲松氏を含む中国指導部の親族ら少なくとも十数人が、タックスヘイブン(租税回避地)の英領バージン諸島の企業を資産管理に活用しています。

バージン諸島のタックスヘイブンは、中国と香港の2万1000人以上が利用。中国からは2000年以降、1兆~4兆ドル(約104兆~約417兆円)の資産が流出していると推計されています。

習主席は公務員に「倹約令」を出すなど腐敗防止に力を入れていますが、義兄夫妻が中国や香港に高級ホテルを所有していると一方で、「3億人以上が1日2ドル未満で生活している」という事実があります。

こうしたなか、中国経済は「ルイス転換点」にぶつかってしまったということです。「ルイス転換点」とは、イギリスの経済学者、アーサー・ルイスによって提唱された概念です。
工業化前の社会においては農業部門が余剰労働力を抱えています。工業化が始まると、低付加価値産業の農業部門から都市部の高付加価値産業の工業部門やサービス部門へ余剰労働力の移転が起こり、高成長が達成されます。工業化のプロセスが順調に進展した場合、農業部門の余剰労働力は底をつき、工業部門により農業部門から雇用が奪われる状態となります。この底を突いた時点がルイスの転換点です。日本においては1960年代後半頃にこの転換点に達したと言われています。 
ルイスの転換点以降は、雇用需給が締まるため、賃金率の大きな上昇が起きます。古典派経済成長理論における人口増加による成長モデルはここで限界になるため、経済構造の変革が起こらない限り中所得国の罠(英語版)に陥り1970年代から1980年代の南米諸国に見られたような長期のスタグフレーションに突入することになります。

要するに、社会構造そのものを根本的に変えない限り、中国はこれから長期のスタグフレーションに突入するということです。

とりあえず、デフレから脱却さえすれば、かなり良くなる日本などとは根本的に経済状況が異なるということです。

中国の矛盾は経済だけではありません。 現中国は、建国以来毎年平均2万件もの暴動が発生したとされていました。それが、2010年からは、毎年平均10万件もの暴動が発生するようになり、政府もこれを公表しなくなりました。現在の中国は、人民の怨嗟のマグマが頂点に達し、いつどこで、その大爆発が起こっても不思議ではないような状況になっています。

江沢民元国家主席や李鵬元首相らかつての中国指導部お歴々に対し、スペインの裁判所が逮捕状に基づき国際手配を求めました。これは、スペインの法には、普遍的管轄権が設定されているという根拠に基づくものです。

スペインの裁判所から逮捕状が出ている中国の面々

チベット族へのジェノサイド(民族・人種などの計画的殲滅(せんめつ)、人道犯罪の一つ)のかどだといいます。高齢の江氏らは外遊しないでしょうし、中国の反発を受けて国外の人道犯罪に対するスペイン特有の裁判を制限する法改正が進んでいることもあり、氏らの逮捕・訴追は現実にはあり得ないでしょう。

日本での犯罪は日本で裁かれますし、米国での犯罪は米国で裁かれます。それぞれの国が国内の裁判管轄権を持つからで、国家主権と司法が密接に結びついている現代では、当たり前のように見えます。



しかし、ある国での犯罪が別の国で裁かれることも、ないわけではありません。その条件や法理論は複雑ですが、わかりやすい例が、ジェノサイドや、人道に対する罪の場合です。これらの犯罪は国際秩序を脅かす性格を持ち、その影響は一国のうちにとどまりません。だから、犯罪者が処罰を免れてはいけないのですが、往々にして権力者自身や国家機関が手を染めており、その国の法制度で対応するには限界があります。だから、別の国家が、捜査や訴追に乗り出さなければならならなくなります。このような考え方を、国家に縛られない管轄権であることから「普遍的管轄権」と呼びます。

とはいえ、この件は、チベット族に対する中国当局の過酷な弾圧について国際社会に強烈な印象を与えたという意義はあります。

スペインだけではありません。普遍的管轄権を設定していたベルギーの裁判所に、1991年の湾岸戦争を遂行した前述のブッシュ元大統領、チェイニー元国防長官、パウエル元統合参謀本部議長らが戦争犯罪で告訴されるという事態が2003年に起きて、ベルギーはやはり米政府の圧力で普遍的管轄権を撤廃するに至っています。

とはいいながら、旧ソ連が崩壊したときのように、国が崩壊してしまえば、「普遍的管轄権」による国際裁判なども考えられるわけで、中国という現体制が崩壊すれば、それもあり得る話です。

東京裁判

さて、この「「普遍的管轄権」といえば、あの東京裁判を思い出します。大日本帝国が崩壊したため、大日本帝国の管轄による裁判はできないため、あのようなとんでもない形の裁判が行われたわけです。この点については、皆さんご存知でしょうから、ここでは詳細は述べないですが、あの裁判は、「普遍的管轄権」どころか、勝者による敗者に対する一方的なリンチ以外の何ものでもありません。

国際法的にみれば、日本にはあの裁判における戦犯など一人存在しませんでした。中国の現体制が崩壊したときには、私は中国の現体制の指導層は、「普遍的管轄権」による裁きを受けるべきと思います。しかし、その裁きは、東京裁判のように一方的なリンチであってはならないと思います。

ただし、現中国の指導層は、明らかに犯罪を犯していると思います。かといつて、東京裁判のような過ちを二度と繰り返してはいけません。このへんが明確になるように、今から世界は、中国崩壊にともなう、「普遍的管轄権」のあり方を考えておき、公正な裁判ができるように準備をしておくべきと思います。

私は、そう思います。皆さんは、どう思われますか?

本日は、震災に関する記事を掲載しようとも思いましたが、結局本日の記事にしました。

震災で亡くなられた方々のご冥福をお祈りさせていただきます。

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2010年10月27日水曜日

「無知」が選挙争点になっているアメリカ ティーパーティーに誰が金を払っているのか―日本も似たり寄ったり?(アメリカのシンクタンクのリスト掲載)

「無知」が選挙争点になっているアメリカ 誰がティーパーティーに金を払っているのか



今年、中間選挙を控える米国で、反オバマ運動が拡大している。同政権の医療保険改革や金融機関救済策などに反対する草の根運動が、昨年から全米の各地で発生。その多くが「ティーパーティー」(茶会)を名乗っています。

命名の由来は、米国独立の契機を作ったボストン茶会事件(Boston Tea Party)です。1773年に港湾都市のボストンで、英国議会の植民地政策(茶への課税や東インド会社に対する税の免除)に反対した急進派が停泊中だった東インド会社の船を襲い、積荷の紅茶を海に投げ入れた事件でした。この事件が英国の植民地政策をさらに強め、最終的には米国の独立運動につながりました。

反オバマ運動を展開する人々は、おそらく現在の政権を当時の英国と重ね合わせて見ています。オバマ政権が大規模な財政出動を行い「増税」を志向する姿が、当時の英国の姿に重なったのです。政治による過剰な介入を嫌う感覚は、米国の底流に流れる文化とも言えます。

Gooには、ニュースな英語というコラムがあります。今週は、この茶会運動に関して、『「無知」が選挙争点になっているアメリカ 誰が金を払っているのか』というタイトルで掲載されています。その要約を以下に掲載します。本文は以下のURLをご覧になってください。

http://news.goo.ne.jp/article/newsengm/world/newsengm-20101022-01.html
茶会運動や共和党の候補たちの全てが政教分離について無知なわけではありません。けれどもほぼ全員が等しく(世界の多数意見に抵抗して)否定している、科学知見があります。人為的な地球温暖化です。
『ニューヨーク・タイムズ』紙は社説で、今年の共和党候補たちはほとんどが、地球温暖化は人為的なものだという科学的知見を否定していると批判。「かつてディック・チェイニーが10年前に完成させた戦法を、繰り返しているのだ」と。たとえばネバダ州で民主党のハリー・リード上院院内総務と戦い、すさまじい中傷戦を展開しているシャロン・アングル候補は「温暖化が人為的だというのは、左翼のスローガンに過ぎない」と公言。カリフォルニア州から上院に出馬したヒューレット・パッカード元CEOのカーリー・フィオリーナ候補も「はっきりどちらとも言えない」と発言していると。
同紙社説は「共和党は今でもディック・チェイニーの物まねをしている」と批判しています。ピュリツァー賞受賞の『ワシントン・ポスト』紙連載をもとにした『策謀家チェイニー』によると、チェイニー前副大統領はブッシュ政権のエネルギー政策を掌握し、経済活動の効率化を最優先に掲げ、地球温暖化は人為的なものだという科学知見に懐疑の目を向け、排出規制を次々と緩和・撤廃していった中心人物とされています。
チェイニー氏自身は決して、政治と信仰をごちゃまぜにするような人ではありません。しかし、議員や有権者がごちゃまぜにするのを止めさせようとはしない。有権者が勝手に聖書を論拠に温暖化を否定するなら、それに反論もしない。他人の信仰や誤解や無知蒙昧を、自ら掲げる政策実現のために利用するのが、チェイニー流です。
チェイニー的な温暖化否定はあくまでも経済活動を最優先させてのものです。しかし茶会運動では、それがキリスト教原理主義と結びつき、私たち日本人には(というか世界のほとんどには)分かりにくいことになっている。たとえばインディアナ州で茶会運動グループを主催する男性は、『ニューヨーク・タイムズ』紙にこう答えています。
「(人為的な温暖化は)まったくの嘘っぱちだ。自分は聖書を読んでるから分かる。神様は、私たち人間が活用するためにこの世を作ったんだ」
確かに、6日間かけて世界を作って7日目にお休みになった神様と、その神様が作った世界ならそうかもしれませんが……。
○アメリカのアンチ知性
最後に。無知を善しとするこの一部のアメリカ保守派の価値観はどこから来るのだろうとずっと考えています。たとえば、彼らが強烈に信仰する、アメリカ的キリスト教の影響ではないだろうかと。アメリカに渡ったキリスト教は、欧州の大神学校や修道院と切り離されて、西部開拓と組み合わさり、独自の発展をしました。大雑把に言うと、聖書さえ読めばいい、あとは個人の霊験を重視するという新興宗派が多いと言えます。そういうキリスト教宗派では、学問や思索を軽視する風潮がセットになっている気がしてなりません。キリスト教を離れても、アメリカでは学問や思索で得る知識や洞察ではなく、体験的な直感をなにより重視する風潮が(主にキリスト教右派の間に)ある。1964年にピュリツァー賞を得た『Anti-intellectualism in American Life(アメリカの反知性主義)』の論考は、いまだに有効なのだと思います。
【私の論評】日本も似たり寄ったりか?
さて、アメリカの無知の系譜、象徴的なのは、ペイリンさんでしょう。ベイリンさんは、アメリカ合衆国アイダホ州生まれの保守派の政治家です。共和党所属。アラスカ州知事(第11代)、2008年アメリカ合衆国大統領選挙における共和党の副大統領候補です。最近はティーパーティー運動でも活躍しています。
アフリカを国だと思っていたベイリンさん
さて、彼女の無知ぶりを示す査証として、私がはっきり覚えていることとしては、以下のようなものがあります。

米FOXテレビは2008年11月6日、米大統領選で敗れた共和党マケイン上院議員の陣営関係者の話として、副大統領候補だったアラスカ州知事のサラ・ペイリン氏がアフリカを大陸ではなく国名だと思っていたと伝えていしまた。

マケイン陣営は「副大統領に不可欠な知識」の欠落に驚き、ペイリン氏の能力に強い懸念を抱いていました。

実は、ブッシュ元大統領も、アフリカという国という失言をしています。また、ペイリンは、北米自由貿易協定(NAFTA)の加盟3カ国(米国、カナダ、メキシコ)を知らなかったというが、ブッシュもソーシャル・セキュリティ(アメリカの公的年金)を知りせんでした。二人はよく似たところがあります。

まあ、元大統領や、大統領候補がこの有様ですから、ティーパーテーイーのメンバーがどの程度のものかさっしがつくというものです。

アメリカ、それも地方に行かれたかた、ご存じの方も多いと思いますが、本当に彼地の、住民は自分のまわりのことしか関心がなく、無知な人が多いです。それに、都市部でも、無知な人はかなり多いです。以前このブログでも紹介しましたが、「アメリカ人の半分はニューヨークを知らない」などというセンセーショナルなタイトルの書籍もあるくらいです。

上の、コラムの要約では、要約の都合でカットしてしまった部分もありますが、タイトルにでているように誰が金を払っているかが問題です。こうした、大衆の無知につけこんで、世論を形成し、自分たちの都合の良いように政治を動かそうとしているのです。無知なブッシュや、ペイリンも自分でもきがつかないうちにこうして動かされているということです。

私は、以前このブログで欧米諸国の国民の政治的成熟について語りました。しかし、こういう事例をみていると、混迷ぶりがうかがわれます。しかし、こうしたアメリカですら、日本のように頻繁にいわゆる国家元首(アメリカでは大統領、日本では総理大臣)が頻繁に変わるということはありません。

こう考えると、日本もやはり、似たり寄ったりのところがあるのかもしれません。

ただし、日本に比較すると、アメリカにはいわゆる政治に関する安全装置のようなものがあるのだと思います。これは、大きくいって二つあると思います。

まず、一つは二大政党制です。この二大政党制によって、政治の継続性が保たれるということがあります。アメリカでは、政権交代をしたからといって、日本のように政治の内容ががらりとかわるということはありません。6割~7割くらいは、共和党だろうと、民主党だと変わりはありません。その時々で違いますが、残りの4割から3割が変わるということです。国の根幹をなすようなことは、どちらの政党になっても変わりません。日本の場合は、そのような土壌が形成されていません。

それと、もう一つは有能なシンクタンクがあります。多くのシンクタンクが、アメリカの長期ビジョンを持って、政策提言を行っています。それも、多くのタイプがあります。それこそ、政党に属するもの、国の機関、あるいはNPOもあります。これらが、国政にかなり大きな影響を及ぼしています。アメリカの政治も日本と同じように、政府はそのときどきの思惑で、政策転換などに流されやすいということがあります。日本にも、自民党、民主党のシンクタンクがありますが、これらはシンポジュウムや、パネルディスカッションを行うだけで、実効的な活動はしていませんし、出来ないのだと思います。

日本でこのような本来の意味でシンクタンク的な役割をしていたのは、官僚だと思います。しかし、この官僚のシンクタンクでは、もう用をなさなくなっているのが実体なのだと思います。特に、現在はいろいろな意味で大変革の必要なときです。あまり変化のない時代であれば、官僚シンクタンクでもなんとかなったのでしょうが、やはり、今の時代にはあいません。官僚は、立場上官僚を中心にものを考えるのであって、日本国や、国民のことはあまり考えているわけではありません。

アメリカでも、日本でも、一般国民は目先のことや、自分の感覚だけでものを考え、選挙をしているのだと思います。だからこそ、小泉さんの郵政民営化選挙で、自民党が大勝したり、今度は、民主党の政権交代で民主党が圧勝してしまったり、極端から、極端に動くのだと思います。それは、ある意味仕方のない事だと思います。多くの人は、まずは、自分が自立できるように努力すること、企業であれば、まずは、企業が成り立つように努力することが、つとめだからです。それは、日米とも変わりがないと思います。

しかしながら、日本は、日本なりの日本の風土にあった安全装置を設置する必要があると思います。有権者は、自分の身の回りのことから選挙をするしかないし、政治家は有権者の意向に左右されるのはある程度しかたのないことです。だからこ、私はは、特に、民間のシンクタンクの役割はかなり大きいと思います。残念ながら、日本では、政策提言をできるような民間のシンクタンクはありません。日本でも、こうした政策提言のできる複数のNPOのシンクタンクを育てていく必要があると思います。

そうでないと、政治の混迷はこれからも続いていくと思います。まずは、日本の政治とはどうあるべきか、これを明らかにする必要があります。それに、長期ビジョンもとづき、現在は何に優先順位をつけるのかもはっきりさせる必要があります。私は、このブログでも掲載したように、日本の政治の緊急の課題はデフレの克服だとしてきました。しかし、これだって、私の知見が及ぶ限りの範囲内で語っいるだけて、まともなシンクタンクがいろいろ調査すれば、もっと重要なことがあるかもしれません。

そうして、最後に多くの皆様に、いや世界中の皆さんに言っておきたいことがあります。それは、世界のどんな政党が政権の座をいとめようとも、その国のすべての国民にとって大満足ということはあり得ないということです。それは、たとえば、家庭において、父親や母親が理想の父や母であってもらいたいのはやまやまですが、だからといって彼らだって普通の人間です。そんなことは、最初から不可能です。しかし、だからといって、父親や母親の役割をまっとうしなければなりません。それにも段階があります。でも、これだけはやらなければという線もあります。

父親や、母親などそうした葛藤の中で努力しているということです。そうして、それを理解できるようになったら、そのとき始めて大人ということです。政治だって同じことです。

だからといって、外してはいけない線もあります。民主党は、日本国解体を推進しようとしていますが、これは、完全ある一定線を超えています。これだけは、やめていただきたいです。世界広しといえども、国民国家の解体を進める国は少し前までは存在しましたが、いまでは、全部失敗して消滅してしまいました。まあ、中国などは例外中の例外かもしれません。

以下にアメリカのシンクタンクのリストを掲載しておきます。なお、以下のリスト、中国問題を調べるときにピックアップしました。だから、中国の記述がありますが、特に他意はありません。ただし、これらのシンクタンクの出す中国関係の資料は役立つものが多いです。

アメリカのシンクタンク

A

B

  • 1916年にロバート・S・ブルッキングスによって政府活動研究所として創立した。その後経済研究所や公共政策研究所を統合して1927年に現在の体制となった。米 国では最大の影響力を持つシンクタンクと言われている。2005年4月、中国研究プロジェクトが設立され、中国研究の実力はかなりある。

C

  • カーネギー国際平和基金は国際相互理解と世界平和の推進を目的に,1910年 アンドリュー・カーネギーによって設立されたアメリカの事業財団で、米 国屈指のシンクタンクである。2003年、全米のシンクタンクの中で最大規模の“中国研究プロジェクト” が設立され、中国の内政や外交、発展についての概観および米中関係などの研究に力を発揮している。米 国シンクタンク初の中国語のウェブサイトを公開し、ネット上で中国語の月刊誌を発行している。
  • カーターセンターは、1982年に前アメリカ大統領カーターによって創立された、人類が健康かつ平和な生活を送ることができる世界の実現を目指す非営利、非 政府の組織である。エモリー大学(Emory University)と特に密接な関係にある。カーターセンターのプログラムはエモリー大学教員らによって運営されている。1998年に中国プログラムが設立された。
  • CATO研究所は1977年に設立されたワシントンD.C.に本部を置く非営利の公共政策研究機構で、アメリカ保守系シンクタンクである。
  • 海軍分析センターは米国の軍事安全問題を研究する専門のシンクタンクである。中国研究は主に戦略研究センターとアジアプロジェクト部で行っている。
  • 戦略国際問題研究所、かつてはジョージタウン大学に属した、米共和党に大きな影響をもつシンクタンクの一つである。中台関係や米日台関係の研究の拠点である。
  • アトランタ中国研究センターは2001年に設立され、非営利組織である。当センターと提携している大学は、アグネススコット、ドルトン州立、エモリー、ジ ョージア州立、ジョージア工科大学、Kennesaw州立、マーサー、オグルソープとジョージア大学などを含む。また、「China Currents」というジャーナルを出版している。
  • 米外交問題評議会は1921年にウォール・ストリートの財界人とニューヨークの弁護士が中心になって組織された非営利の外交シンクタンクで、米 市民の会員制組織である。中国との関係を一貫して重視し、かつて20世紀70年代には米中関係の雪解けに重要な役割を果たした。

E

F

  • ハーバード大学フェアバンク東アジア研究センターは1955年に設立され、米国での東アジア研究、近代中国研究の先駆であり、歴史を中心とした総合研究機構である。
  • フォード財団はヘンリー・フォードの一族とフォード社の関係者により1936年に設立され、当初はフォード社と深いかかわりをもっていた。1976年にヘンリー・フ ォード2世が責任者を辞任してからは、フォード社およびその一族とのかかわりはほとんどなくなったと言われている。1988年に北京事務所を開設した。
  • 外交政策研究所は1955年に創立され、当時はペンシルベニア大学に属していた。1971年大学から離れて独立した。しかし現在も大学と密接な関係を保っている。中 国の研究では国勢および歴史、伝統についての研究を中心としている。

H

  • ヘンリー・L.・スティムソンセンターは米国の無党派だが、国会や政府に密着したシンクタンクである。軍事背景の研究を中心としているのが特徴である。近年、東 アジア、特に中台問題の研究の人材を強化している。米国のシンクタンクの中ではわりに影響力を持つ若い機関の一つである。
  • ヘリテージ財団 は1973年に設立されたアメリカ合衆国ワシントンD.C.に本部を置く保守系シンクタンクで、米国政府、特 に共和党の政策決定に大きな影響力を持つ。中国については1982年より主としてアジア研究センターで研究している。
  • フーバー研究所はスタンフォード大学フーバー戦争および革命、平和研究所の略称であり、共産主義および共産主義国家の研究に独自のスタイルで取り組んでいる。

R

  • ランド研究所はアメリカ軍からの調査分析を請け負うことを目的として設立された総合シンクタンクである。アメリカ国内では、カリフォルニア州サンタモニカ(本部)の ほか、ワシントンD.C.(現在はヴァージニア州アーリントンにある)、ペンシルバニア州ピッツバーグ(カーネギーメロン大学の隣)に支部がある。ヨーロッパでは、オランダのライデン、ドイツのベルリン、イ ギリスのケンブリッジに支部がある。2003年、ドーハに RAND本部政策研究所をオープンした。

U

W

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