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2019年8月30日金曜日

日本のメディアは日韓関係悪化ばかり報じている場合なのか―【私の論評】増税で7年間に及ぶアベノミクスは帳消しになる。特に雇用は最悪に(゚д゚)!

日本のメディアは日韓関係悪化ばかり報じている場合なのか
消費増税の悪影響が断然大きい




8月22日に韓国大統領府が日韓軍事包括保護協定(GSOMIA)の破棄を決定したことで、歴史問題などをめぐり悪化していた日韓関係はさらに深刻になり、安全保障分野に影響が及ぶことになりました。

この韓国政府の判断が米中を含めアジア地域の地政学動向に将来どのような影響をもたらすかが筆者の最大の関心ですが、これは門外漢の筆者の力量を超えるテーマです。以下では、両国の金融市場、そして経済活動への影響について考えてみます。

日韓関係悪化の市場への影響

金融市場では、通貨ウォン(対ドル)は年初来で約8%安と下落。韓国の株価指数も年初から▲5%と、日本を含めた多くの主要国対比でアンダーパフォームしています。

日韓関係悪化などの韓国における政治リスクは、金融市場である程度反映されているといえます。文在寅(ムン・ジェイン)大統領が、将来の北朝鮮との経済統合を目指すことを見据えるなど、北朝鮮に融和的な外交姿勢を示しており、経済への悪影響だけではなく、朝鮮半島を取り巻く地政学情勢が変わることに伴うリスクが市場で意識されているかもしれません。

それでは、最近の日韓関係悪化によって、日本や韓国経済にどの程度、悪影響が及ぶでしょうか。まず日本は、7月に半導体の材料の一部品目の韓国への輸出に関して審査ルールを変更しました。

これについて、韓国に対して禁輸あるいは輸出規制強化を日本政府が行ったなどと報じられ、日本の対応が韓国政府の軋轢を強めたなどとの見方も散見されます。日韓という微妙な2国間の関係ゆえに、メディアもこれをセンセーショナルに報じたり、さまざまな立場の論者の声も大きくなっているようにみえます。

企業活動に及ぼす悪影響は限定的

実際には、韓国への輸出の取り扱い変更は、安全保障に関わる一部の材料のみが対象です。それらの輸出ができなくなるわけではなく、審査に関するこれまでの優遇措置が取りやめとなり、輸出する際の審査・許可を通常のルールに戻すのが、日本政府の対応です。特別な優遇措置を、他国同様の原則のルールに戻したということです。

輸出品が三国などを経由して問題国へ輸出されるのをしっかり管理することは、安全保障の観点から、どの国も責任を持ってやる必要があります。今回の日本の対応は、安全保障の理由で、どの国も自国の裁量で行うことができる対応です。

また、今回通常の管理対象になったのは半導体の材料になる3品目ですが、管理変更の対象になるのは試作段階のものに限られ、すでに量産されている半導体分の材料については対象外になる、との専門家による指摘もあります。

これらを踏まえれば、今回の韓国への輸出規制変更が、韓国の半導体セクターの生産活動を含めて、日韓の貿易など企業の活動に及ぼす悪影響は限定的といえます。

観光面へのインパクトは大きいが…

一方、政治的な日韓関係の悪化は、観光面については無視できない影響が及ぶでしょう。韓国からの訪日客の2割を占め、すでに7月時点で訪日客数は前年比▲7.6%と減少に転じています。一方、中国などからの訪日客が引き続き大きく伸びているため、訪日客全体は同+5.6%と底堅い伸びが続いています。

韓国からの訪日客は8月からさらに落ち込むとみられ、このまま関係悪化が長期化すれば、前年対比で半分程度まで落ち込む可能性もありえるでしょう。2018年のインバウンド消費は約4.5兆円ですが、約2割の韓国人訪日客が半減すると大胆に仮定すると、約1割訪日客数全体が減るため、単純計算で0.4兆~0.5兆円のインバウンド消費が減る可能性があります。

実際には韓国からの訪日客が減った分は、中国、台湾など他のアジアからの訪日客が増える可能性があるため、これはインパクトを最大限見積もるための仮定ですが、それでも日本のGDP(国内総生産)の0.1%の規模で経済全体への影響ではほぼ誤差といえます。

これまで判明している日韓関係悪化の、日本経済への影響はほぼありません。そして、日本から韓国への観光客も大きく減るため、韓国経済も悪影響を受けるでしょうが、同様に誤差程度の悪影響しか想定されないでしょう。

消費増税は失政になる可能性が高い

むしろ、日本経済全体に影響を及ぼすのは、10月から行われる消費増税です。2014年の消費増税は判断ミスだったと安倍首相は後悔していた、とメディアで報じられました。今回も同様に、失政だったと振り返られる可能性が高い、と筆者は考えています。

消費増税による家計負担増の金額を確認すると、消費増税にともない約4.6兆円の税収負担が増えます。増税によって、幼児教育と高等教育の無償化などの制度が始まりますが、これらによって約2.4兆円が政府から家計に支給されます。このため、今回の増税によって、恒久的な家計負担は約2.2兆円増えます。

この家計負担に対して、政府は平成31年度予算として2兆円規模の臨時の景気対策を行いますが、このうち1.35兆円は防災、国土強靭化政策で、家計の所得負担を直接軽減させることになりません。時限的な対策として、いわゆるポイント還元制度などがありますが、これらは0.66兆円となっています。

これらの予算が実際にすべて政府支出として家計に給付されるかは不明なので、先に挙げた2.2兆円の恒久的な家計負担のごく一部しか相殺されないことになります。

なお、2兆円は家計の可処分所得300兆円の約0.7%に相当します。今回の増税で個人消費がどの程度落ち込むかは見方が分かれますが、名目賃金が1%程度しか伸びていない中で、家計所得に無視できない規模の負担が生じれば、少なくとも個人消費はほぼゼロに失速すると筆者は予想します。消費増税以降、日本経済の成長率はほぼゼロ成長に減速するリスクが大きいと考えています。

日韓関係の悪化が大きなニュースになっていますが、それよりも日本人の生活に直結する問題として、消費増税の影響のほうがかなり大きいことは明らかです。最近の日本の報道では、こうした冷静な視点が欠けていると筆者は感じています。

<文:シニアエコノミスト 村上尚己>

【私の論評】増税で7年間に及ぶアベノミクスは帳消しになる。特に雇用は最悪に(゚д゚)!

日本の昭和末期から平成に至る政治史を振り返ったとき、消費税の導入や消費税の税率引き上げにまつわる動きは「呪われた歴史」といってもいいほど政権を潰し、苦境に追い込んできた。さらにはその都度、景気回復の兆しを迎える日本経済をどん底に突き落とすなど、悲劇的な状況を数々もたらす結果となった。

本来、消費税というのは優れた税制です。脱税がしにくく、徴税コストが安く、安定財源となる税制です。その優れた税制を正しく運営すべきでした。

しかし、その導入において、国民や野党の反対をかわすためだけにあまりにも誤った論理をふりかざし、嘘に嘘を重ね、しかもインボイス制度(適格請求書等保存方式)がない不完全な形で導入してしまいました。
そしてそれ以後、税理論や社会保障理論を歪めてまで、ひたすら消費税の増税こそが正義であるかのように志向してきた歴史が日本にはあります。
このような思惑で消費税の制度が歪めば歪むほど、無理が生じて、呪いにかかったかのように政権が潰され、日本経済にも悪影響を与えてきました。現在の消費増税議論がいかに歪んだものであるかを知るためにも、日本における消費税の歴史を振りかえってみます。

中根蘇康弘氏 首相当時

中曽根康弘首相は1986年7月に大方の意表を突くかたちで解散し(死んだふり解散)、衆参同日選挙に打って出ます。この折には、「国民や自民党員が反対する大型間接税はやりません」「この顔が嘘をつく顔に見えますか」と発言をし、衆院で300議席以上を獲得する大勝利を収めていました。
しかし、同年12月に政府税制調査会と自民党税制調査会が「売上税」を提案し、中曽根内閣は翌1987年2月に「売上税法案」を国会に提出したのです。

売上税はもちろん「大型間接税」ですから、「嘘つき」という批判が満ち満ちることになりました。結局、1987年の地方選挙で敗北をし、売上税は撤回に追い込まれました。大平内閣の挫折と、中曽根内閣の「嘘つき」で、消費税には決定的に悪いイメージが付くことになってしまいました。

1993年6月、野党が当時の宮沢喜一内閣の不信任案を出し、小沢一郎氏たちが造反して野党に賛成した結果、内閣不信任案は成立し、衆院選が行われることになりました。

ここで自民党は衆院での過半数を失い、逆に自民党を飛び出して新生党を結党した小沢氏たちは「非自民」勢力を糾合。かくして、自民党が下野し、八党派連立(日本新党、日本社会党、新生党、公明党、民社党、新党さきがけ、社会民主連合、民主改革連合)の細川護熙内閣が成立しました。



その細川首相が1994年2月3日未明に突然、記者会見を開いて「国民福祉税」構想を打ち出しました。税率3%の消費税を廃止して税率7%の福祉目的税にする、というものです。

細川内閣は、赤字国債を発行しないことを公約の一つにしていました。しかも当時、米国が日本の内需拡大を促すために、日本の所得減税を求めていました。

赤字国債を発行せず、所得減税も行うとなれば、消費税を増税するしかない状況でした。ところが、消費増税は、消費税反対を訴えて支持層を広げてきた社会党から受け容れられないことは目に見えていました。

ならば、いっそのこと「消費税」を廃止してしまい、「新税」の衣をまとわせようと考えたのでしょう。袋小路に陥った状況を活かそうと考えた大蔵省と小沢氏が、よく事情をわかっていない細川首相を抱き込み、一気に税制改革も進めてしまおうとしたのではないかと思います。

ところが、これが見事に頓挫します。政治家が目論む「新税」などすぐに見透かされるのであって、大蔵省とすれば、細川首相をうまく取り込んだつもりだったのかもしれませんが、連立政権内でも話し合われておらず、根回しがまったく不十分だったこともあって社会党などは猛反発しました。

たちまち翌4日の連立与党代表者会議で撤回されるに至りました。政権の求心力は急速に失われて、細川内閣は同年4月25日に総辞職しました。

そうして時代は下り、2012年12月の総選挙で、単独過半数を大きく超える294議席を獲得して圧勝した自民党が政権に返り咲き、第二次安倍晋三内閣が誕生しました。

それに先立つ2012年9月の自民党総裁選の際、安倍首相は消費税を上げる前にデフレ解消をする、といいました。安倍首相は消費税の増税には消極的でしたが、法律になったものを無視することはできず、「法律どおり」2014年4月、消費税率が5%から8%に引き上げられました。

せっかくアベノミクスによってデフレ対策が打たれ、2014年4月時点ではインフレ目標達成にかなり近いところまで行っていたのですが、消費税率を上げたことで景気は逆戻り。離陸し始めた状態で安定飛行に入っていなかった景気は、消費税の増税によって急失速してしまいました。

こうした状況を受けて、2015年10月の増税予定は一年半先送りされ、2017年4月の増税予定がさらに2年半先送りに。安倍首相が財務省の意向を退け、かろうじて踏みとどまったかたちでした。

現在、デフレは解消されつつありますが、脱却には至っていません。企業で人手不足の状況が生まれ、雇用回復に次いで当初の狙いである「賃金上昇」がようやく始まる、と思ったところで、政府は事実上の「移民」緩和政策を決めてしまいました。

過去3回の消費増税のうち、3%の税率で導入した1回目(1989年)は、バブル期で景気がよい状況でした。しかも物品税の減税と同時に行なったので、タイミングとしては悪くありませんでした。

しかし、税率が3%から5%に引き上げられた2回目(1997年)、5%から8%に引き上げられた3回目(2014年)の消費増税は最悪でした。いずれもデフレのときに行なったため、景気を大きく冷え込ませる結果となりました。

外国人労働者の流入が日本の賃金を押し下げていることは、このブロクでも過去に説明してきたように、はっきりしています。あまりにもタイミングが悪く、さらに2019年10月に消費増税を実行してしまえば、2012年以降、7年に及ぶアベノミクスの努力はすべて水の泡でしょう。

現在のマスコミは、このようなことを知ってか知らずか、増税のことなど忘れてしまったかのように、韓国問題ばかり報道しています。財務省の発表を鵜呑みにした報道ばかりで、おそらく知らないのでしょう。

2012年以降、7年に及ぶアベノミクスの努力が水の泡になるとはどういうことでしょう。結局、またデフレ円高に戻るということです。さらに、アベノミクスの大成果でもあった、雇用の改善もまた元に戻ってしまうということです。

再び、就活が最悪の状況に戻るということです。そうしてそれは、何をいみするのでしょうか。人は喉元すぎれば熱さを忘れ、という具合にわずか数年前のことでも忘れてしまいます。以下の動画は2013年に放映されていた東京ガスのCMです。

あまりにもリアルで、生々しい就活の悲惨さが批判の的になって、このCMは放送中止になりました。


以下の動画は、就活狂想曲」animation "Recruit Rhapsody"というタイトルです。

ごく普通の大学生として何となく過ごしてきた主人公。ところが近頃友人たちの様子がおかしい。聞けば、彼らは噂の"就活"に躍起になっているらしい。それが一体どのようなものなのか見極められぬまま、主人公もまた「ニッポン式就活」の渦中へと引きずり込まれて行くさまを描いています。 

作成は、「吉田まほ」さんです。2012年度の作品です。


この時代の就活ではいわゆる「コミュニケーション」を重視していました。

デフレの時期にはモノやサービスが売れないので、企業としてはなるべく新規採用を控えて、採用するにしても、デフレ対応型の無難な人材を採用する傾向が強かったものです。

デフレ対応型の無難な人材とは、どういう人材かといえば、「コミュニケーション能力に長けた人材」です。だから、採用の面談においても突飛な質問をするにしても、過去のデフレ期には「コミュニケーション能力」に関するものが多かったものです。

結局のところ、デフレという厳しい環境の中で、顧客や、会社や会社の中で働く人やに共感でき、苦難をともに乗り越えて行く人材が重視されたのです。創造性などは、あったほうが良いということで、最優先の資質ではありませんでした。

いずれかの方面に優れた才能や能力があったとしても、それはデフレの世の中ではなかなか役に立たず、結局そのような才能がなくても、コミュニーけション能力にたけた人間が一番無難だったのです。

デフレはモノ・サービスが売れず、創造性のある人材も登用されなくなるということで、想像以上に企業をかなり毀損してしまうのです。

以下は当時の就職面接を描いた動画です。声の詰まり方とかリアル過ぎてこちらがハラハラする。それにしても、このような面接現在なら考えられません。まさに、買い手市場だったからこそこのような面接になっていたのです。


そうして、このような面接が行われたのは、何も本人が悪いとか、面接官が悪いということではないのです。結局デフレのため、採用側は採用に慎重だったのが理由です。

企業その中でも、まともな企業であれは、デフレだからとっいって、一定期間に極端に採用を減らしていては、将来の管理職や幹部候補を選ぶ段になったときに、候補者がいないという状況になりかねたいため、無理をしてでも採用をしていたのです。

今年の新卒のある男性新入社員に綺譚のないところを聞いてみたところ、なかなか思った就職先に就職できなかったので、「就職浪人したい」との旨を就職担当の先生に伝えたところ、「就職状況は今は良いがいつ悪くなるかわかったものではないから、今からでも頑張って、とにかく就職しろ」と言われ、そこから就活を再開し就職したそうです。

この先生は正しかったようです。今後増税でこのようなことになるのは目に見えています。今後、就職面接でコミュニケーションが重視されることになるでしょう。

私は、安倍政権には、柔軟になっていただきたいと思います。今後、増税によって悪影響が出た場合には、柔軟に対応して、減税も実施していただきたいものです。いよいよになれば、機動的な財政政策と、金融政策を実行して、デフレから完璧脱却していただきいものです。

令和年間は、平成年間のように経済政策を間違い続け、ほとんどの期間がデフレスパイラルの底に沈んでいたというようなことは繰り返さないで欲しいです。

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2017年9月5日火曜日

民進党・山尾志桜里議員に私生活をめぐる問題発覚! 週刊文春が“K弁護士”との不倫疑惑を掲載する模様―【私の論評】根本的なコミュニケーション不足が民進党を駄目にした(゚д゚)!

民進党・山尾志桜里議員に私生活をめぐる問題発覚! 週刊文春が“K弁護士”との不倫疑惑を掲載する模様

山尾氏断念の背景を伝えるテレビ東京
民進党の新しい幹事長をめぐり前原新代表が山尾志桜里氏の起用を断念した背景に、山尾氏の私生活をめぐる問題が影響していたことがテレビ東京の取材で分かりました。

関係者によりますと、山尾氏はすでに一部週刊誌に私生活をめぐるスキャンダルについて取材を受けているということです。

前原代表は、山尾氏について幹事長に代えて、代表代行で処遇する方向で調整していますが、党内から更なる異論が出かねない情勢です。
ネット上には、未だ詳細は出ていませんが、以下にこれに関す山本一郎氏のツイートを掲載しておきます。
【私の論評】根本的なコミュニケーション不足が民進党を駄目にした(゚д゚)!

確かに、山尾志桜里氏の不倫等に関しては、ネット上では一部話題になっていましたが、確証がなかったため、このブログにも掲載はして来ませんでした。これで、週刊文春の新しい号が出てからは、この話題は解禁になるということです。

それにしても、これを察知できなかった、前原氏にも問題があるかもしれません。とにかく、企業でもなんでも組織というものは、常に組織の人員に関して熟知していなければ、なかなかつとまりません。

私は、会社で現場にいたときには、日々朝礼などで従業員の変化に気を使っていたものです。数年現場でマネジャーをやってからは、朝礼で従業員の様子を見ていると、今日は誰が調子が悪いとか、注意散漫状態にあるとか、女子の場合は誰が生理であるかもわかった程です。これを把握していないと、後で酷い目にあうこともありました。

その後も、組織に関わる情報、それも正規の会社の組織図上の組織だけではなく、人間の集合体としての、生身の人間の組織に関する情報も極力集めるようにしました。これなしに、組織を効率的にそうして、効果的に動かすことは不可能です。

朝礼をコミュニケーションの場として成り立たせることが管理者の重要な役割でもある
そのため、普段から従業員と食事に行ったり、時々外回りからお菓子を買ってきて、従業員と一緒に話をしながら食べるというようなこともやっていました。それ以外にも、公的なものでも私的なものでも、色々と面倒をみたり、引き受けたりということも意図して意識して行いました。

そのようにして、従業員と様々な関係を構築しておき、コミュニケーションを円滑にしておきました。そうして、このコミュニケーションというのが曲者で、いわゆる「ホウレンソウ」などと巷で言われてるものは、真のコミュニケーションではありません。いくら「報告・連絡・相談」をこまめに行ったとしても、成り立っていないことは、往々にしてみられることです。

そもそも、コミュニケーションとは、「私からあなたへ」「あなたから私へ」と単一方向に伝わるものではありません。コミュニケーションとは、「私達の中の一人から、私達の中のもう一人に伝わる」ものです。饒舌で、しょっちゅう人と話をする人が、コミュニケーションの達人であるとは限らないのです。

だからこそ、普段から組織の中の人々と「私達」といえる関係を意図して意識して構築しておかなければならないのです。これが、構築できなければ、まともな仕事などできません。

民進党ではこのようなコミュニケーションがかなりないがしろにされているのではないでしょうか。
そもそも「私達」という関係を構築していない
間柄ではコミュニケーションは成り立たない
最初に私は山尾志桜里氏が、幹事長と聴いたときには、民進党は彼女を幹事長にしなければならないほど、人材が逼迫しているのかと思いました。と思いながらも、他にもまだふさわしい人物はいるのではと訝しみました。

そうして、今回の山尾氏のスキャンダル発覚で、やはり民進党は党内でのコミュニケーションが十分ではないのだと確信しました。

民進党の旗揚げ
昨年の3月27日、民進党が衆参両院議員合わせて156人の参加によって旗揚げしました。

民進党は、1996年に誕生し、結党20周年目となる民主党が党名を変更することによって誕生した形でした。ただし、英語名はDemocratic Partyと以前のDemocratic Party of Japanとほぼ同じであり、なんとも中途半端です。かつて、財務省は大蔵省から名称変更しましたが、そのときの英語表記はMinistry of Financeとそのままにして、対外的には同じ、国内的には一応名称変更したというのを彷彿させました。

代表は岡田克也氏、幹事長に枝野幸男氏は、政調会長は細野豪志氏に代わり山尾志桜理氏を起用しました。

政治的にいえば、もったいないチャンスを逃したものです。せっかく伝統ある名前を変更したのですから、一気にイメージ・チェンジして政権時の失敗を払拭すべきでした。

そうして、政策に関しては、少なくともマクロ経済政策の基本を押さえるべきでした。そうして、このマクロ経済政策に関しては、保守派、革新派(今やこの分類方法もほとんど意味をなしませんが・・・・)に関係なく、正しい方向性を定めることができるはずです。そうして、これが党を一つまとめる縁になったかもしれません。

その上で、憲法、格差など価値観の違いによって差が出るものについては、おおいに政策論争して、その結果党の方針が定まれば、全党員がそれに従うという形にすれば良かったと思います。

しかし、ご存知のように民進党はこのせっかくの大チャンスを無為にしました。そうして、この大失敗の根底にはコミュニケーション不足があると思います。

前原氏
ここで、前原氏の主張する経済政策を振り返っておきます。前原誠司氏は代表戦では、All for Allを掲げて戦っていました。経済政策もそのAll for Allの精神に基づく、税負担を上げて再分配を重視するという政策です。

彼の政策は慶應義塾大学教授の井出栄策氏の影響を非常に強く受けたものです。そして、枝野幸男氏もこの井出教授と非常に深い関係にあり、前原氏と経済政策に関しては大きく違わないという意見を表明していました。

そのため、前原氏の目指す経済政策、すなわち民進党の目指す経済政策であるといえます。前原氏の経済政策で一番大きく、根幹にあるのが再分配の強化でしょう。

前原氏は、再分配政策をする前の貧困率と分配後の貧困率が、ドイツは8.1から3.3に、フランスでは18.0から6.7に大幅に改善しているのもかかわらず、日本では13.5から12.9とほとんど改善されていないことを指摘しています。

そしてこの原因は、若い世代に対する再分配の冷たさにあることも指摘しています。これを改善するために、老人の分配先を減らすとなると、高齢者が反発されるので、みんなが負担をして、みんなが受益する社会を目指そうといいます。

そして、社会に不安がなくなることで、過剰貯蓄に回るお金が消費に周り、経済が好循環するボトムアップの経済を目指せると語っています。

そうして、例えば現役世代に向けては、教育の無償化、安心して子供を生み育てられる社会の実現、介護士・保育士の処遇改善などを挙げています。

そして、年金に関しては、基礎年金をマクロ経済スライドから外すことで、減らない基礎年金を実現するとしています。

マクロ経済スライドは、簡単にいえば、経済情勢によって年金の額を左右させるという自民党が現在導入しているもので、これは、年金支給年齢を引き上げ、年金の額を減らすためのものだとして、前原氏は批判しているわけです。

そして、これを成し遂げるために当然指摘されるのが財源の問題です。前原氏は全世代の負担という意味で消費税を主眼で考えられている趣旨の発言をしています。

消費税増税を回避して他の財源に頼れば、サラリーマン、中小企業への負担増となり、前原氏の掲げるAll for Allの理念に反するとしています。

そして、低所得者層対策を考えながら、法人税、相続税などのベストミックスを目指すとのことです。

以上のように、前原氏の経済政策には、現在日本がデフレから抜けきっていないにもかかわらず、マクロ経済政策の根幹をなす、景気変動的に対応する金融政策も財政政策も含まれていません。

致命的なのは、経済成長が停滞しているというのに、増税して再分配政策の財源に使うという点です。これに関しては、マクロ経済学でも禁じ手とされているものであり、さらには平成14年度からの消費税の8%増税によって、最早誰もが失敗だったと認めざるをえない悪手であったことが明らかになっています。

今更ながら、なぜ前原氏がもう失敗だったということがはっきりわかっているし、これからも必ず失敗するであろう政策を採用しようとするのか、全く理解に苦しみます。

そんなことよりも、まともな財政政策、金融政策を採用することにより、経済成長をしたうえで、再分配政策を強化するという政策を打ち出したほうがはるかに効果的であり、多くの国民の支持を得られたと思います。

民進党の中には、マクロ経済対策に関してはまともな認識を持っている人も数少ないながら存在します。それは、馬淵澄夫衆議院議員と金子洋一前参議院議員(昨年落選)です。金子洋一氏のようなキーマンを落選させてしまう、民進党の選挙戦略もいかがなものかと思います。

特に、金子氏はカネコノミクスとでも呼びたくなるような経済対策の切れ者です。しかも、彼は元官僚で、霞が関や学者とも戦い合えるぐらいの知識量と実行力があります。

しかし、民進党の幹部はもとより、他の議員たちもカネコノミクスに関心を抱くものはありません。

慶應義塾大学教授の井出栄策氏
前原氏は、慶應義塾大学教授の井出栄策氏を経済ブレーンとしているようですが、私自身は井出氏の主張する経済対策が一体何を意味しているのかほとんど理解不能です。正しいとか間違いなどと言う前に、私には理解不能です。

井手氏の経済対策の理解不能ぶりは以下の記事をご覧下さい。
井手教授のいう「新しいリベラル」がちっとも新しくない件
それよりも、金子氏の主張する経済対策のほうがはるかに理解しやすいです。これについて、ご存知のない方は是非以下の記事をご覧になって下さい。
消費再増税をすればアベノミクスの息の根はとまる
 前原氏は、経済に関して、井出教授の話は聞くようですが、金子洋一氏の話は聞かないようです。金子洋一に関しては、ネットなどで調べればすぐにわかります。

党内にこれほどの、経済に関する切れ者が存在するわけですから、前原氏のような民進党の幹部は少なくとも一度は金子洋一氏と腹を割って話をすべきものと思います。

金子洋一氏
これは、業績の悪い企業にありがちなことですが、経営者が社内の意見を聴かず、社外のコンサルタントなどの意見ばかり重用することがあります。

経営者と社員とは立場が違うので、場合によっては立場の違いにより、社員のいうことなどあてにならないと思えることもあるかもしれません。しかし、社員が社員の立場から述べているということを前提に話を聴けば、それも同じ項目に関して複数の社員から話を聴けば役立つことは極めて多いです。

それは、当然といえば、当然です。何しろ、社員の話は一次情報であることも多いからです。

そうして、普段から社員と真の意味でのコミュニケーションを深めておくことにより、社員から正しい情報が迅速に入ってきやすくなるものです。コミュニケーションが成り立っていなければ、いくら「ホウレンソウ」を綿密にしたところで、まともな情報が迅速に入入ってくることはありません。

民進党の諸悪の根源は、コミュニケーション不足なのかもしれません。民主党は組織としてのコミュニケーションが成立していないのでしょう。だからこそ、まとまりに乏しく、組織としてまとまった行動ができないのだと思います。

もし、組織としてのコミュニケーションが十分に成り立っていれば、山尾氏を幹事長に指名したそのすぐ後で取り消さざるをえないような状況に追い込まれることはなかったと思います。

民進党の組織そのものは、民間企業と比較してさほど大きいものではありません。何しろ、衆参議員あわせて、200人もいないのですから、この中でコミュニケーションを成り立たせることは、本来さほど難しいことではないと思います。このあたりは、業績を上げている中小企業の社長などのほうがはるかに円滑に社内のコミュニケーションを円滑に成り立たせていると思います。

民進党がまともになりたかったら、まずは党内のコミュニケーションを密にするこだと思います。ただし、だからといって「ホウレンソウ」を多くするなどしても、何の役にもたちません。重要なことは民進党の議員らが相互に「私達」といえる関係を築くことです。

今回の山尾志桜里氏の問題は、スキャンダル自体がどうのこうのということ自体はさほど重要ではなく、民進党のコミュニケーション不足を露呈したことのほうがはるかに深刻であると思います。

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2015年9月24日木曜日

【HBR】なぜ動き回っていると働いている気になるのか―【私の論評】獲得すべきは、成果!民主党のように忙しく動きまわることではない(゚д゚)!


中央にいるキーパーがボールを止める確率は最も高く、33.3%なのだが?

フランチェスカ・ジーノ,ブラッドレイ・スターツ

ハーバード・ビジネス・レビューより

多忙による生産性の低下――つまり活動量と成果が比例していない状況に、どう対処すべきか。誰もが持つアクション・バイアス(とにかく行動しようという姿勢)を抑えることが有効だ。

自分は忙しいと感じている人は、手を挙げてほしい。その忙しさによって、むしろ生産性に支障が出ているという人はいるだろうか。ならばこの先を読み進めてほしい。

人はいとも簡単に、「忙しくしていたい」という誘惑に屈してしまう。たとえそれが生産性を下げることになってもである。私たちの脳がそのようにできているのだ。しかし生来のその性質を、成果へと転換できる方策がある。

諸研究を見ると、私たちがしばしば忙しいと感じる(しかし生産的だとは必ずしも感じられない)理由が2つある。どちらも、みずからが招いているものだ。

●人は何もしていない状態を嫌う
あなたの周囲にも、車の運転で数分間の信号待ちを避けるために、もっと時間がかかると知りつつ回り道を選ぶ人がいるはずだ。研究によれば、同じことが仕事にも当てはまるという。つまり、私たちが選んでいる行動の多くは、自分自身を暇にさせないための手段にすぎないのだ(英語論文)。

●人はアクション・バイアス(行動ありきの姿勢)を持つ
私たちは不確実性の高い状況や問題に直面すると、何か行動を起こそうとする。たとえそれが逆効果であり、何もしないことが最善の策であったとしてもである。

プロサッカーのゴールキーパーの場合を考えてみよう。ペナルティーキックでボールを止めるのに最も効果的な戦略は何だろうか。ほとんどの人は、自分なら右か左にジャンプするだろうと考える。だが最善の策は、中央に留まることなのだ。イスラエルの研究者らの調査によれば、右に飛んだキーパーがボールを止める確率は12.6%で、左に飛んだ場合は少しだけましな14.2%だった。一方、中央にいたキーパーがボールを止める確率は最も高く、33.3%であった(英語論文。世界各地のトップリーグに所属するキーパーを対象に286本のPKを分析)。

ところが、キーパーが中央に留まる頻度はわずか6.3%なのだ。どうしてだろうか。それは、反対の方向にダイブ(という行動)をしてボールを止められなかったほうが、動かずにいてボールが通り過ぎるのを横目で見ている屈辱と比べたら、まだ格好がつくし、気持ちも楽だからだ。アクション・バイアスはたいていの場合、「何をすべきかわかっていなくても、何か行動すべきだ」という感覚に基づく感情面の反応である。しかし行動を控え、観察し、状況を見極めるほうが良い選択となることは多い。

アクション・バイアスを持っていると、問題について十分に理解する前に、一足飛びに解決策を求めようとしてしまう。我々が実施したある実験では、被験者は課題を計画している時よりも、課題を実行している時のほうが生産的だと感じていた。特に時間の制約がある場合には、計画は時間の無駄だと考えられがちだった。課題にいきなり取り掛かるよりも、計画を立てるほうが実際には優れた成果に結びつくにもかかわらずである。

本当の成果よりも、「忙しくしていること」を選ぶのはたやすい。だが実際に生産的になることは、はるかに難しい。ではどうすればよいか。「振り返りの時間を持つ」ことが生産性を高めるのに役立つ、という事実を忘れずにいればよい。

我々はインドのバンガロールに拠点を置くビジネス・プロセス・アウトソーシング会社ウィプロで、技術サポートのコールセンターを対象にある実験を行った。そこでわかったのは、考えるという作業がパフォーマンスを向上させるということだ。研修を受けている従業員たちの中で、1つのグループには毎日講習の最後の15分間を使って、その日に学んだ内容を振り返って文章に記すよう求めた。別のグループは対照群として、振り返りの15分を与えず時間いっぱいまで講習を受けてもらった。すると1カ月後の最終テストで、毎日振り返りをしたグループは、対照群(振り返りをしない分、講習を15分長く受けていたグループ)よりも平均で22.8%良い成績を収めた。

振り返りによって、パフォーマンスがこれほど向上するのだ。なぜなら、そうすることで自分の今の状態をしっかり認識でき、進捗具合を把握でき、課題と目標を達成するうえで必要な自信が持てるからである。

このような思考は、計画の立案という形で実践しても有効だ。ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスのオリアナ・バンディエラの研究チームはあるフィールド実験で、インドの上場製造企業のCEO354人を対象に、仕事に関わる活動を1週間記録した。そして研究チームはCEOを2種類に分けた。タイプ①は、事前に計画を立て、直属の部下たちと多くの時間を過ごし、自社のさまざまな職能にある多くの人々と会議をするCEO。タイプ②は、事前に計画していない行動を多く取り、自社の従業員よりも社外の人と1対1で会う時間が多いCEOだ。すると分析の結果、より計画的なタイプ①のほうが、全社レベルでのより高い生産性と収益性に寄与していた(英語論文)。

優れたゴールキーパーのように中央に留まる姿勢を会得するためには、一歩下がり、考えることだけに時間を取り、その後に初めて行動を起こすことだ。振り返りの時間を持つことで、自分が何をやろうとしているのか、それが生産性を高めるのかを吟味できる。かつて、筆者の1人にとってのメンターである人物がこう言った――「忙しくすることで、考えることを避けようとしてはならない」と。

【私の論評】獲得すべきは、成果!民主党のように忙しく動きまわることではない(゚д゚)!

ハーバード・ビジネス・レビュー(HBR)はアメリカの有名な経営関係の論文を掲載する雑誌です。数年前までは、私も購読していました。最近は、時々気に入ったものが掲載されていると年に数回購入する程度です。

HDRの最新号の表紙

HBRを購読し続けていて、思ったのは、やはり記事のほとんどが、米国のものがほとんどで、扱われる問題が、日本とはまた異なるということでした。日本ほど長い間、デフレに見舞われた国はないので、日本の課題は過去15年くらいはデフレからの脱却や、デフレ経済下における対処法であったのですが、アメリカでは全く異なるということで、日本では大事ことが忘れ去られていることを実感させられました。

たとえば、人材採用についても、米国では様々なことが論じられていたものの、日本での採用の現場では、デフレでものが売れないため、結局採用するにしても、デフレの最中で無難な人材を採用するということで、いわゆる「コミュニケーション能力」の高い人材がもてはやされるという具合でした。

本当は、日本も高度知識社会に突入しているわけですから、コミュニケーション能力とともに、新しい事柄を短時間に自分で学び、それを仕事に適用していける力こそ、重要なのですが、モノの売れない時代には、このような能力があっても仕方ないので、そんなことよりも、共感力を含むコミュニケーション能力が重視されたのです。

そんなわけで、私は、HDRは少し前までの日本の状況とは異なる米国の状況に即した内容の論文を掲載していると感じたので、読んでもすぐに役に立つということもないと考え、定期購読はやめてしまったのです。

しかし、久しぶりで、上の記事を読んだところ、これは、今日の日本の状況を説明するために非常に役立つと考えたので、掲載させていただくこととしました。

さて、前置きが長くなってしまいましたので、そろそろ本題に入ります。

まずは、この論文は、なぜ民主党が安保法制反対の立場であのように動きまわっていたのかの理由を明らかにすると思います。

民主党が安保法案に反対した理由は、以下の三点につきます。これは、民主党のサイトから引用したものです。


政府の集団的自衛権行使を認める「新3要件」は基準があいまいで、自衛隊の海外での活動の歯止めにはなりません。

「新3要件」は立憲主義に反した便宜的・意図的な解釈変更であり、専守防衛の原則から明らかに逸脱しています。

政府が集団的自衛権を行使して対応すべきとする事例は蓋然性や切迫性が認めらません。邦人輸送中の米艦防護の事例は集団的自衛権の行使とは解されませんし、ホルムズ海峡の海上封鎖については日本が武力行使で解決すべき「日本の存立を脅かす事態」とは考えられません。


民主党のこの反対の理由は、あまりにも単純で、これらが間違いというか、見当違いであることはすぐに論破できます。「新3要件」に関しては、演繹法的、帰納法的な考えの区別がつけば、すぐに解消するものです。

以下に、演繹と帰納についてwikipediaから掲載します。
演繹(えんえき、: deduction)は、一般的・普遍的な前提から、より個別的・特殊的な結論を得る論理的推論の方法です。帰納の導出関係は蓋然的に正しいのみですが、演繹の導出関係は前提を認めるなら絶対的、必然的に正しいのです。したがって実際上は、前提が間違っていたり適切でない前提が用いられれば、誤った結論が導き出されることがあります。近代的には、演繹法とは記号論理学によって記述できる論法の事を指します。

これだけでは、何のことやら良く理解できないですから、以下に具体例をこれもwikipedia
から掲載します。
例えば、物体が落下するとき、重いものほど速く落ちるというのがかつての常識であった。これに対して詳しい実験からガリレオ・ガリレイは物体の落下時間が質量比例するものではないことを示ししました。これは帰納的な判断です。 
また、ここから彼は物体の落下速度は質量にかかわらず一定だろうと判断した。これはアブダクション(仮説形成)である。その後、様々な実験や研究から物体がそれに従うべき法則として万有引力の法則運動の法則が設定されました。

これが認められた後は、物体を落下させる実験を行わなくても、その落下時間は計算できるし、全く異なる条件下、たとえば金星で同じ実験を行った場合の結果についても値を得られます。これが演繹的な判断です。仮に実験結果が異なった値を取れば、実験の失敗を疑うか、そこに差を与える他の要素を探求することになるでしょう。なぜならば、その実験の範囲では、前提とする法則が正しいものと判断できた上での結果だからです。
法律は、帰納的に個別のものを扱うことにでもなれば、ありとあらゆる事例を対象としなければならないことになります。そんなことは、事実上不可能です。演繹的に考えて、定めるのは当然のことです。

ホルムズ海峡のときはどう、イラクの時はどう、朝鮮の場合はどう、中国の場合はどう、人質が絡んだ複数のパターンはの場合はどうなどと一々法律を定めていては際限がありません。法律は元々演繹的なものになるのが当たり前のことです。

民主党の主張のように、あのときはどう、このときはどうなどと言い出したら際限がなくなり、簡単な法律一つ定めるにしても、とんでもない数の条項が必要とされるようになります。これは、不可能です。

さらに、帰納的に様々な例をあげて論じることは、安全保障の面からも、非常に良くないことです。これは、敵国や、スパイなどに対して、日本の自衛隊や警察は、どのような状況になれば、どのような行動をとるのか、わかりやすく教えるようなものです。

こんなことは、どこの国でも実施してはいません。日本も当然、例外になるべきではありません。演繹的な考えで作成する法律には、場合によっては、法の隙間ができることは避けられません。この隙間は、附則をつけることで補ったり、それでも、対処できなければ、改定すれば良いわけです。

さらに、時の政府が法の隙間を利用して、悪事を働くというのなら、そのときこそ国民は、選挙で時の政府を潰せば良いのです。それが、民主的手続きというものです。だから、新三要件に関する民主党の指摘は全く妥当ではありません。

さて、次に集団的自衛権に関する民主党の反対なのですが、これも、民主党が基本的なことをわかっていないことを露呈しています。

そもそも、集団安全保障と、集団的自衛権は異なります。民主党は、これ自体も良く理解していないようです。

集団安全保障とは、潜在的な敵国も含めた国際的な集団を構築し、不当に平和を破壊した国に対しては、その他の国々が集団で制裁するという国際安全保障体制の一種です。

これに対して、集団的自衛権とは、ある国家が武力攻撃を受けた場合に直接に攻撃を受けていない第三国が協力して共同で防衛を行う国際法上の権利です。その本質は、直接に攻撃を受けている他国を援助し、これと共同で武力攻撃に対処するというところにあります

国連が本来、想定しているのは集団安全保障のための国連軍であり、その手続きは国連憲章の第7章にくわしく書かれています。集団的自衛権は、その末尾(第51条)に書かれているだけです。これは各国の「権利」を書いただけで、国連の活動についての規定ではありません。

これは、きわめて重要な相違です。集団安全保障は、憲法が想定している「諸国民の公正と信義に信頼して」行なう国連活動なのです。これを禁止すると、湾岸戦争ときのように世界から馬鹿にされることになるというだけではなく、いざというとき国連に助けてもらえないことになります。

しかし正式の国連軍は、朝鮮戦争や湾岸戦争を除いては、一度も結成されたことはありません。なぜなら、安保理事会で拒否権が発動されるからです。この難点を回避するために利用されるのが集団的自衛権です。国家の自衛権は自然権(国家として当然の権利)であり、国連が認める必要はありません。集団的自衛権は安保条約でも、国連憲章で最初から認められている権利であり、本来今さら閣議決定するような問題ではないのです。

ただし、国連の集団安全保障体制が機能しない現状には問題があります。集団的自衛権が違憲とする民主党は、「何でも反対」を叫ぶのではなく、国連部隊がもっと機動的に活動できる国連改革を提案すべきなのです。

一歩引いて、いろいろ情報を集めて、考えると、民主党の主張は全く的を射ていないことが良くわかります。

どうして、このようなことになるかといえば、このブログ冒頭の記事をご覧いただければ、良くご理解いただけると思います。以下の二点につきるのです。

●人は何もしていない状態を嫌う
●人は行動ありきの姿勢を持つ

民主党は、人ではありませんが、民主党という組織は人で構成されていて、その行動は幹部によって定められます。幹部が、何もしない状態を嫌い、行動ありきの姿勢を持っているから、安保法制に関しても、反対の行動ありきということで、動いたので、非生産的な結果を招いてしまったのです。

実際、政党支持率など見れば、良くわかります。

最近の調査では、民主党の支持率は、下がっています。自民党もさがっていますが、もともと30%台の支持率が、数%下がったという状態で、10%台の民主党も数%下がっていますから、この下がり方は、かなりのものです。実際には、自民党の下がり方よりも、さらに下がっています。

さて、ブログ冒頭の記事には、以下のようにこれらに対する対処法が書かれています。
本当の成果よりも、「忙しくしていること」を選ぶのはたやすい。だが実際に生産的になることは、はるかに難しい。ではどうすればよいか。「振り返りの時間を持つ」ことが生産性を高めるのに役立つ、という事実を忘れずにいればよい。
民主党は、本当の成果をあげることは捨て去り、安保法案に対案を出すこともなく、ただただ反対の行動をとり、国会でも皆さんご存知のように、委員長を監禁してみたり、必要もないくらい長い演説をしてみたりして、本当に生産性の低い行動を繰り返していました。

とにかく、民主党は重要なことには何でも反対です。それも、反対するならするで、それなりに、時間をかけて対案を出すということもせず、何をしているのかはわかりませんが、とにかく何か動いているようではありますし、安保法案審議のときには、下の写真のように、ものすごい動き方をしました。しかし、何も成果をあげていません。


これは、民主党の幹部が、「振り返りの時間」を持たずに、 本当の成果よりも、「忙しくしていること」を選ぶという安易な道を選んでいるからです。

そうして、これは民主党だけとは限りません、他の共産党などの安保に反対する野党も同じことです。そうして、「違憲」とか「戦争法案」などという報道を垂れ流したマスコミも同じことです。

安保反対デモなどをした人々や、SIELDsなどの若者も同じことです。無論、彼らのデモなどは、彼らの仕事ではありませんが、彼らも成果をあげることもなく、忙しく動くことで、意味のあること、意義のあることをしていると錯覚しているだけです。

結局彼らは、振り返る時間、考える時間を持たずに、行動を繰り返し、過去の60年安保、70年安保、PKO法案のときと同じく、何の成果もだせないのです。


いや、それだけに及びません。左翼だけではなく、ヘイトスピーチなどを繰り返す、右翼なども同じことです。実際、ヘイトスピーチだけでは、何の成果もあげることはできません。ただし、最近は安保反対で、マスコミが一斉に左翼の運動の報道をしたので目立っただけです。右、左、上下に関係なく、このような落とし穴にはまっている人は大勢います。

私たちは、このような愚かな行動をすべきではありません。一見何も行動していないように見える時間を持つことを恐れず、行動ありきという誘惑を絶ち、行動する前や、行動した後に「振り返る時間」を持ち、非生産的な行動を繰り返すことは慎み、成果をあげるための行動をすべきです。まさしく、忙しくすることで、考えることを避けようとしては、破滅的な結果を招くだけなのです。

私は、そう思います。皆さんは、どう思われますか?

【関連記事】

大丈夫か? 民主党 このままでは「第二の社会党」になる―【私の論評】安保はもう終了!来年の衆参同時w選挙で、民主党は完璧に凋落しかつての社会党なみになる(゚д゚)!



【関連図書】

新聞、テレビなどの報道を鵜呑みしていては、民主党のように、忙しそうにしているだけで、何も成果をあげられなくなります。そうなりたくない人々に贈りたい三冊の書籍を以下に掲載します。岡田さんあたり、この三冊を読めば、随分と民主党も変わると思うのですが・・・・・・。多くの人が目覚めて、成果をあげる行動をできるようになっていただきたいものです。

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2015年6月18日木曜日

「おにぎりを1万円で売る方法を答えよ」 採用面接での奇問にどう答えればいい??―【私の論評】この質問への模範解答はこれだ!しかしあまり必要なくなるかも(゚д゚)!

「おにぎりを1万円で売る方法を答えよ」 採用面接での奇問にどう答えればいい??

就活女子
新卒採用の面接では、学生の思考力を見るために突飛な質問をすることがある。その最たる例が「〇〇を1万円で売るにはどうすればいいですか?」というものだろう。

〇〇に入るのは、ボールペンだったり1杯の水道水だったりと様々だが、2ちゃんねるに5月23日に登場したスレッドでは「普通のおにぎり1個」をいかにして1万円で売るか、というテーマで議論が行われている。

まず出てくるのが、おにぎりに付加価値をつけて特定の層に売る、という作戦だ。

「アイドルに握らせて、ファンに売りつける」

という回答は、もはやこの手の質問では定番。ほかにも「高級食材を使う」「おにぎりに嵐のライブチケットをつける」といった回答がある。

ただ、アイドルに握らせたり高級食材を使ったりすれば、「それはもう『普通のおにぎり』と呼べないのでは」という指摘も。そこで次に出てくるのが、需要が極めて高い状況を作って売る、という回答だ。

ネットには、「食料の尽きた山小屋で売ります」「一万払ってでも、お腹がすきすぎてとにかく食べたい状況をつくる」といった意見が出る。生死を分けるような極限状態では、背に腹は代えられない。ただのおにぎりでも1万円で売れる、というわけだ。

より大きな観点から経済にアプローチする作戦もあった。「周りのおにぎりを全部買い占めて、おにぎりの価値を上げる」というアイデアのほか、「インフレにして1万円の価値を落とす」という回答も。ここまで行くともう日銀レベルだ。

「10万円の文字を横線で消して90%OFFのロゴをドーンとつける」というアイデアも。詐欺まがいであるが、何とかして売り上げを生んでくれる人材なら、会社はノドから手が出るほど欲しいのではないだろうか。

この記事の詳細はこちらから(゚д゚)!

【私の論評】この質問への模範解答はこれだ!しかしあまり必要なくなるかも(゚д゚)!

おにぎりを1万円で売るには?

「〇〇を1万円で売るにはどうすればいいですか?」という質問を、突飛な質問ととらえた人は、デフレ脳である可能性が高く、面接試験ではねられる可能性が高いです。

この質問は、現状の日本を考えると決して突飛な質問ではないと思います。私は、人事担当をしていたこともありますから、こうした質問をする人事担当者あるいはその背後にある企業の考えが手に取るようにわかります。

今の日本は、20年ぶりくらいの大転換期にあたっています。それは何かといえば、無論過去20年のデフレから脱却して、インフレ状況に突入しようとしているということです。

ただし、8%増税が昨年4月より実施されたので、金融緩和による景気回復が削がれた形になったので、実際にはなかなか金融緩和の実態を実感しにくい状況にあります。しかし、金融緩和による景気の上向き傾向はじんわりとながらも、確実に進んでいます。それは、各種統計数値をみても明らかです。

この変化に気づいていない人は多いです。言葉としては、気づいていても、実行動に移せる人は少ないです。多くの人にとっては、大きな経済環境の変化はなかなか理解できないようです。

これについては、以前このブログでも解説したことがあるので、その記事のリンクを以下に掲載します。
【世界の議論】中国企業「爆社員旅行」フランスを“占拠”…6400人、ブランド品買い漁り経済効果「40億円超」―【私の論評】爆社員旅行は、中国でジュリアナ東京シンドロームが発生したという証なのか!?
ジュリアナ東京のお立ち台で踊る女の子たち
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事ではあのバブルの象徴ともいわれた「ジュリアナ東京」が、実はバブル崩壊後にできたことを紹介しました。この事例をみれば、多くの人にとって、経済の大変化は直後に気付くことはなく、ずいぶんたってから気付くことになります。私はこれを「ジュリアナ東京シンドローム」と命名しました。

それに関する部分のみを以下に引用します。

日本では、バブルが崩壊した後も、多くの人々はその実感がなく、バブル絶頂期の気質をそのまま受け継いだような、ジュリアナ東京が創立され、しばらくの間営業を続けていました。多くの人は、バブルが崩壊しても、このような狂乱状態を続けていたのです。
日本では、1990年にバブルが崩壊してから、本格的デフレに突入したのは1997年になってからです。
経済の大きな変動に関しては、それに直接関与している人などはすぐに実感するのでしょうが、そうではない人たちには、なかなか実感できないものなのだと思います。
日本の最近の状況でいえば、増税はしたものの、金融緩和を継続している現在、統計数値などみていれば、明らかに景気が良くなっているにもかかわらず、まだまだそれを実感できない人が多いようです。
このように、経済の大きな変動があっても、多くの人がそれを実感できない状況を私は、ジュリアナ東京シンドロームと命名したいと思います。
今日の日本はまさに当時とは真逆の状況で、大きな変化が起こりつつあります。この大きな変化についてあまり認識していない人も多いようです。

しかし、企業としてはこの大変化に気づいている人や、気づいているだけではなくそれに対応できる人を入社させたいので、このような一見突飛とも見えるような質問をしているのだと思います。

デフレの時期にはモノやサービスが売れないので、企業としてはなるべく新規採用を控えて、採用するにしても、デフレ対応型の無難な人材を採用する傾向が強かったものです。

デフレ対応型の無難な人材とは、どういう人材かといえば、「コミュニケーション能力に長けた人材」です。だから、採用の面談においても突飛な質問をするにしても、過去のデフレ期には「コミュニケーション能力」に関するものが多かったものです。

結局のところ、デフレという厳しい環境の中で、会社や会社の中で働く人々に共感でき、苦難をともに乗り越えて行く人材が重視されたのです。創造性などは、あったほうが良いということで、最優先の資質ではありませんでした。

しかし、世の中は過去のデフレの悪影響は色濃くは残ってはいるものの、もうインフレ傾向です。物価は下がり続け、賃金も下がり続け、モノ・サービスがなかなか売れないことを前提で物事を考えたり、判断する、デフレ脳の人はこれからの社会にはなかなか対応できないです。

これからは、物価が上がり続け、賃金も上がり続け、モノ・サービスが売れやすいことを前提で物事を考えることができる、インフレ脳の人がこれからの社会にかなり対応しやすいです。

一番良い人材は、デフレになっても、インフレになっても柔軟に対応できる人材です。しかし、デフレへの対応と、インフレへの対応は180度異なります。その両方を兼ね備えた柔軟な人材は滅多にいません。

だから、企業としては、これからの時代に備えるため、インフレ脳である人材を採用したいと考え「おにぎりを1万円で売る方法を答えよ」という質問をなげかてけインフレ脳の人材を探しているのだと思います。

上の質問「おにぎりを1万円で売る方法を答えよ」の答えで、「アイドルに握らせて、ファンに売りつける」という答えはなかなかセンスの良いものだと思います。

しかし、「アイドル」と言った場合、たとえばAKB48などと答えてしまえば、あまり良い結果は得られないと思います。なぜなら、AKB48はこのブログでも掲載したように、不況型アイドルだからです。その記事のリンクを以下に掲載します。
指原莉乃 噂の「中国票」は本当だったのか?本人がコメント―【私の論評】AKB48は不況型ビジネスモデル、中国経済が落ち込む今後ますます総選挙では中国票が幅をきかすようになる(゚д゚)!

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、いろいろ反論もあることでしょうが、AKB48は不況型ビジネスモデルの典型と言っても良いと思います。景気が良くなるにつれて、このビジネスはなかなか成り立たなくなると思います。

であれば、「アイドルに握らせて、ファンに売りつける」という答えの「アイドル」とは誰にすれば良いのでしょうか。

残念ながら、私はあまりアイドル界には、詳しくないので今のアイドルに関しては、これにすべきということはいえません。

頭に思い浮かんだのは、最近ベビーシッター問題で話題となった「神田うの」さんです。彼女の場合は、不況型ビジネスモデルのアイドルでないことだけは確かだと思います。

だから、上の答えでは、「神田うのさんにおにぎりを握らせて、ファンに販売する」という答えが模範解答かもしれません。無論、神田うのさんの部分は、不況型ビジネスモデルのアイドル以外のアイドルにすれば、誰であっても構わないと思います。この模範解答とともに、上記で述べたような背景を説明できれば、完璧だと思います。


こんなことから、デフレ脳じゃ就職戦線突破できないぞと言いたいところですが、そうでもなくなる可能性も高いです。

なぜなら、デフレが克服され、インフレ傾向になれば、雇用状況もかなり緩和され、人材不足となり、企業もインフレ脳でないと採用しないなどと呑気なことを言ってはいられなくなるからです。

おそらく、企業にとっても、今年は将来のリーダ格の人材を採用する最後のチャンスなのかもしれません。来年、再来年になればそれどころではなくなります。

私は、そう思います。皆さんは、どう思われますか?

【関連記事】




【関連図書】

面接では、この記事を読んでいただきその背景まで十分に頭に叩き込んでいただれば、一見突飛にみられるような質問にも十分答えられると思います。その上で、以下の就活関連本を読んでいただければ、就活には鬼に金棒になると思われる以下書籍をチョイスさせていただきました。

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2015年2月4日水曜日

実はモチベーションと生産性が低い日本人――理由はこれだ―【私の論評】過去の日本が、デフレ・スパイラルのどん底に沈んでいたことを無視して、日本企業の生産性や社員のモチベーションを語っても百害あって一利なしと心得よ(゚д゚)!


この記事の著者ロッシェル・カップ

日本企業の社員は、なぜこんなにもモチベーションが低いのか?』という私が最近出した本のタイトルを見て、日本のビジネスパーソンの多くが「本当にそうなの?」と思うことだろう。実際、この本を書いている最中にも同様のことを聞かれた。「日本人はバリバリ働いて、とても頑張っているのに」という意見が多かった。しかし私は、「勤労意欲が高い」「仕事の生産性が高い」という日本人が自分たちについて思うイメージに、本書の中で多くの疑問を呈している。

社員が自分の仕事についてどう思っているかを測定する手段として、最近アメリカで注目を集めているのが、社員のエンゲージメントというコンセプトである。また、社員のアウトプットを測定する直接的尺度となるのが、経済学者の言う生産性である。これらを通して、日本人の働き方と昨今の経済不振の間にどのような関係があるのかを探ってみよう。

社員のエンゲージメントとは、社員の企業に対する関与の度合いと、仕事に対する感情的なつながりを表現するものである。 これは「活力、献身、没頭などに特徴付けられる、仕事に関連するポジティブで充実した精神状態」と表現することができ、エンゲージメントの高い社員は「仕事にエネルギッシュで効果的なつながり」を持っている。つまり、仕事に対して社員が感じている包括的な情熱というレベルにまで焦点をあてているのが、エンゲージメントである。

社員のエンゲージメントが最近アメリカで注目を浴びている一番の理由は、高いエンゲージメントによって数多くの恩恵がもたらされるためだ。エンゲージメントの高い社員は企業に留まる傾向が高く、さらに企業とその製品・サービスの支持者として、より熱心な営業と優れた顧客サービスを提供する。ここで最も重要なのは、そのような社員は、仕事に対するやる気が非常に高いことである。このような社員が、顧客との関係を深め、企業が提供する製品やサービスを刷新し向上する原動力となる。

逆に、エンゲージメントの低い社員は、やる気がなく、仕事にも関心がなく、必要最低限のことしかしない。このような社員は欠勤が多く、安全に関する事故を起こしたり、品質問題を発生させたり、顧客を遠ざけたりする原因となる。また、ネガティブな態度で自分の周囲のモラルを低下させる原因にもなる。多くのアメリカ企業は、エンゲージメントの高い社員を増やし、低い社員を減らすことが、ダイナミックで成功した企業となる秘訣であることを認識し始めた。

社員にやる気を起こさせるためにエンゲージメントが重要であるとしたとき、日本企業の社員のエンゲージメントのレベルは一体どの程度であろうか? 例えば、エンゲージメントの国際比較研究の先駆者、タワーズワトソンの「2014年グローバル労働力調査」によると、日本でエンゲージメントレベルが高い社員は21%(持続可能なエンゲージメントの3要素すべてが高得点)、ある程度高い社員は11%(従来のエンゲージメントは高いがイネーブルメントとエネルギーが低い)、低い社員は23%(イネーブルメントとエネルギーは高いが従来のエンゲージメントが低い)、非常に低い社員は45%(持続可能なエンゲージメントの3要素すべてが低得点)であった。これに比較して、世界平均は同順に40%、19%、19%、24%、アメリカは39%、27%、14%、20%であった。 タワーズワトソンのコンサルティングディレクター、クリス・ピンツによると、少なくとも過去8年間、日本はこの調査の対象国中最低スコアを記録し続けているという。その他エンゲージメントの調査を行っている会社も、似たような結果を示している。

次に生産性を比較してみよう。生産性は一定のインプットでどれだけのアウトプットを作り出すことが可能かの測定である。 OECDが提供する2013年の数値によると、実労1時間あたりの国民総生産GDP(米ドル、時価、現在の購買力平価)は、日本が41.1、OECD平均が47.4、G7平均が56.8、アメリカが66.6となっている。つまり、2013年の日本の生産性はアメリカの61.7%、G7の72.3%、OECD全体の86.7%しかないことを意味する。この数値は、 日本企業の社員は他国企業の社員と比較して、時間を生産的または効果的に使うことをしていないことを示唆している 。

他国と比較して日本企業のエンゲージメントと生産性が低い原因は何だろうか? 幾つもの要素が複雑に絡んでいるため 、どこから始めてよいかわからないくらいだが、大きく分けて、雇用の構造、人事管理の慣行、 人材育成の方法、企業文化の4つのエリアに問題があると私は考える。(これらの問題点については、本書で詳しく解説している)

雇用の構造
  • 「仕事とは何か」に対する柔軟性に欠けるアプローチ
  • 柔軟性に欠ける労働力の区分
  • 「非標準的」労働者の女性、外国人、高齢者などの活用に消極的
  • 社員が自分の仕事内容を選べないシステム
人事管理の慣行
  • 報酬と業績評価の関連性の低さ
  • リスクに立ち向かうことへのサポートの欠如
  • 仕事内容の明確な定義の欠如
  • 社員を解雇する効率的プロセスの欠如
  • 社員のやる気育成への取り組みの欠如
人材育成の方法
  • ソフトスキルに価値が置かれない
  • マネジメントスキルの不足
  • 人事異動の計画性の欠如
企業文化
  • 過度の緊急性の風潮を作り出すヒエラルキー構造
  • お役所仕事的な柔軟性に欠けるプロセス
  • 長時間労働によるワークライフバランスの難しさ
  • 権限付与と自主性の欠如
これらの問題は、今日の日本企業のあり方に内在しているため、取り組むためには著しい構造的変化が必要とされるだろう。しかし今のままでは、日本はこれから他の先進国にどんどん取り残されていってしまう。日本のビジネスは今、将来を左右する重要な分岐点に立たされているといっても過言ではないだろう。

注)上記記事で、太文字はブログ管理者が施しました

【私の論評】過去の日本が、デフレ・スパイラルのどん底に沈んでいたことを無視して、日本企業の生産性や社員のモチベーションを語っても百害あって一利なしと心得よ(゚д゚)!

日本企業の社員は、なぜこんなにもモチベーションが低いのか?
上の記事の元となっている書籍


上の記事、一見新しい『日本ダメ論』なのかもしれないと思い、全文掲載しました。私は、この書籍を読んでいないので、論評して良いかどうか迷いましたが、上の記事の内容だけでも、十分に論評できると判断したので、以下に論評させていただきます。

最初に結論を言いますが、過去の日本がデフレスパイラルのどん底に沈んていたことを無視して、日本企業の社員のモチベーションの低さを論評しても無意味ということです。

日本がデフレに突入した直後の1998年より、それまで自殺者が2万人台だったものが、一挙に3万人台にはねあがりました。これについては、以前のこのブログにも掲載したことがあります。その記事のURLを以下に掲載します。
【田中秀臣氏TW】財務省は「人殺し」の機関の別称だといって差し支えない―【私の論評】政治主導を実現するため、財務省殺人マシーンは分割して破壊せよ!日銀殺人マシーンの亡霊を蘇らせないために、日銀法を改正せよ(゚д゚)!
 

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、 この記事では、デフレと年間自殺者数との間には、相関関係があるということを前提として、経済学者の田中秀臣氏のツイートなどを掲載しました。

過去の日本においては、15年以上もデフレが続いたという異常事態に見舞われていました。それが、社会に悪影響を及ぼしてきたことも事実です。経済対策は場合によっては人を殺す場合もあると田中秀臣氏もそう思っているようですが、私もそのよう思います。自殺まではいかなくても、モチベーションが下がる人々が多くなることも十分あり得ると思います。

そもそも、デフレでは企業が物がサービスを売りだそうとしても、なかなか売れません。そのような中で企業は、新しく製品やサービスを創造するよりは、既存の製品やサービスを品質を落とさずにいかに低価格で提供するかに知恵を絞るしかありませんでした。さらに、デフレに起因する、超円高で輸出産業にとっても、まるで手枷・足枷をされながら、グローバル市場での戦いを余儀なくされました。

こういう環境下では、企業も当然のことながら、採用を控えます。ただし、ある一定年齢層を全く雇用しないとか、極端に少なくしか採用しないということにでもなれば、将来特定の期間に管理職不足に悩まされることにもなりかねません。だから、消極的ではあるものの採用は続けてきました。

しかし、デフレ下においては、創造性・能力・才能があっても、それを十分に活用することもできませんでした。だから、企業としては、結果として「コミュニケーショ能力のある人」などして、あたりさわりのない採用を行ってきたというのが実情です。

無論、コミュニケーション能力が必要ないなどというつもりはありません。しかし、「コミュニケーション能力」など当たり前であり、これが欠如する人はそもそも、社会生活を営むことができません。企業側としては、この先もデフレが継続するものと想定して、あたりさわりのない採用をして、将来の特定年代の管理職の候補として、調整型の「コミュニケーション能力」をもっとも重視してきたのだと思います。

上の記事の筆者は、このようなデフレの影響は、無視して、日本人の働き方と昨今の経済不振の間にどのような関係があるかを探ろうしています。そもそも、経済不信は日本人の働き方に問題があると考えているようです。また、生産性の低さもそれが原因であると考えているようです。

しかし、これは、原因と結果をはき違えています。私は、長期デフレによる経済不信が日本人の働き方に問題をもたらしたのです。さらに、生産性の低さもそもそも、デフレ下においては、低価格にせざるをえず、低価格にすれば、必然的に生産性が低くなるのも当然の帰結です。

さらに、この筆者は、他国と比較して日本企業のエンゲージメントと生産性が低い原因は大きく分けて、雇用の構造、人事管理の慣行、 人材育成の方法、企業文化の4つのエリアに問題と考えているとしています。

本当に日本人だけがモチベーションが低いといえるか・・・

しかし、デフレであたりさわりのない採用をしている企業が、これらの改革に熱心に取り組むでしょうか。そんなことよりも、ありとあらゆる方面で、コストを下げて、企業の存続をはかることが精一杯だったと思います。

かといって、私は企業などを責めるつもりはありません。企業がデフレ下で、企業を存続させるために、防衛的な行動をすることは、やむを得ないことです。それは、個々人の努力や、企業努力も超えたものであり、その責任は日本銀行の金融政策の失敗によるものです。それを助長した日銀官僚や、政治家、マスコミによるものです。

このような最中に、過去のデフレを無視して、日本人のモチベーションが低いとか、その理由は、今日の日本企業のあり方に内在しているなどとするのは間違いです。

無論、個々人や、日本企業に問題がないなどとはいいません。しかし、欧米でも、欧米企業でも、問題がない企業はありません。

しかし、現状ではどうなるかわかりませんが、日本が長期のデフレ・スパイラルのどん底に沈んでいるときは、欧米は景気が悪いことはあっても、少なくともデフレではありませんてでした。

長期デフレであった日本の過去を無視して、日本人の生産性やモチベーションが低いなどと論ずるのは、百害あって一利なしであると思います。

この記事は日本人の現状のエンゲージメントや、生産性の低さを一方的に日本人のモチベーションの低さに結びつけているという点で、既存の「日本ダメ論」の域を全く超えておらず、全く無意味な論評だと思います。

デフレから完璧に脱出したとき真の日本がみえてくる・・・・・・・

最近の日本は、もはやデフレではありませんが、過去15年以上にもわたって、続いたデフレの悪影響はまだまだ続いています。デフレではないとはいっても、物価目標2%にはまだまだほど遠い上記ょうです。しかし、物価目標が達成され、デフレが完璧に過去のものとなり、緩やかなインフレが続く時代となれば、そのときこそ、日本人の真の姿や、日本企業の真の姿が見られるようになると思います。それだけ、過去のデフレは酷かったということです。

私は、そう思います。皆さんは、どう思われますか?

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2014年12月8日月曜日

各党の金融政策を比較すれば明らか「自民党圧勝」予測は覆らないだろう―【私の論評】金融政策が雇用政策であることを知らない世界水準でみれば異様な日本人!この異様さから訣別することも今回の選挙の大義かもしれない(゚д゚)!


札幌にも安倍総理はやってきた。かなりの手応えを感じたに違いない(゚д゚)!

最近発表された新聞各紙の選挙予測は、自民党が300議席を超える勢いとなっている。また、yahooがやっている選挙予測は面白い。「Yahoo!検索」データから得票数の推定するものだ。投票率50%台前半でも、自民党300議席と予測されている。

お灸をすえる党首がいない

どうも、これだけ、いろいろなソースで300議席という予測結果なので、そうなる公算が高い。

筆者の1ヵ月前の予測では270議席程度なので、その後、自民党の投票する人が加速しているようだ。

今回の党首の論戦を見ているかぎり、野党党首は完全に論戦に負けている。これでは、お灸の役目を果たさない。

なお、この点はこれまでの各党首の言動を見れば明らかなのだが、1ヵ月以上前に書いた本コラムで既に予測しており、筆者にとっては珍しいものではない。

金融政策が雇用政策であることを初めて理解した首相

どうして、各党党首が安倍首相にまったくかなわなかったのか。おそらく政治記者はわからないだろうが、たった一つ金融政策への理解度がまったく違うからだ。

2年前の総選挙でもまったくかなわなかった。それが今まで続いている。金融政策が雇用政策であるという点について、野党党首はまったく不勉強としかいいようがない。

難しい理論はわからなくてもいいが、政治家たるもの、金融政策で失業をなくせるとだけ覚えておけばいい。現に、米国FRBは、雇用者数を増やしたり、失業率を下げるために金融政策をしている。これは米国だけではなくどこの先進国でも同じである。

日本では、日銀は雇用問題が苦手なので、マスコミにまともなレクをしない。このため、マスコミも金融政策が雇用政策であることをまったく理解していない。それと政治家も同じレベルなのだ。

安倍首相は、金融政策が雇用政策であることを初めて完璧に理解した首相だ。筆者の感じをいえば、安倍首相は、金融政策について、①多方面に大きな影響があること(マクロ経済政策の重要性)、②日銀人事をしっかりやった後は任せられること(日銀の手段の独立性)、③左派政策を取り込めること(政治的優位性)から、その重要性をしっかり理解していた。

だから、安倍首相は、2012年の自民党総裁戦でも、劣勢と言われながらも、勝利した。2012年12月の総選挙では、本来自民党よりも金融政策を理解して雇用政策を行うべき民主党を負かすのは簡単だった。

そして、今回は、今年4月からの消費増税の政策失敗はあったが、2015年10月からの消費増税はすんでのところでとどまった。金融政策による雇用創出効果は、遅行指標でタイムラグがあり、今のところまだ4月からの消費増税の影響は少ない。おそらく、来年春頃になると、良かった雇用も陰りが出てくるだろう。その前に、解散・総選挙を行ったのはまったく合理的である。

いかに各党が金融政策を理解していないかは、公約をみればわかる(下図)。

自民党以外は、落第である。特に、左派政党である民主党、共産党、社民党、生活の党は国際的な観点から見て、ちょっと酷すぎる。どこか、日銀法改正して、雇用義務を盛り込むなどの左派政党らしい、まともな政策がいえないのだろうか。

就業者数100万人増

安倍政権の押してきた金融政策の実績は文句をつけようがない。一番重要な経済指標をあげるとすれば、就業者数である。これが民主党政権と安倍政権では雲泥の差がある(下図)。



傾向線でいえば、民主党政権時代に50万人弱減少したが、安倍政権では逆に100万人程度増えたのだ。これに対して、民主党などは、非正規が増えただけで正規社員は増えていないという。まったく反論になっていない。正規でも非正規でも職があるほうが、無職よりいいのは自明だ。それに増加に転じる時には非正規がまず増える。

野党の自民党攻撃は、やや小ぶりの局所戦になっている。例えば、株価の上昇に着目して、資産家だけがいい思いをしている。円安等に着目してアベノミクスで潤ったのは大企業だけで中小企業に恩恵は回っていない。公務員給与は早く回復したが、民間企業ではまだできていないところもある。これらは、一部のところには恩恵が出ているが、まだ出ていないところもあるという反論だ。

たしかにそれは一面の事実だ。異次元金融緩和の後、2年くらいすれば本格的な景気回復であっただろうが、1年の道半ばのところで、消費増税してしまったので、波及が遅れた。

また、雇用についてみても、就業出来た人は、新卒者や解雇されていたパートが復職出来た場合などであり、正規雇用の人には関係ない。賃金も非正規の人はかなりの急ピッチで上がるが、正規の人ではまだら模様だ。賃金では、平均賃金を算出するとき、職を得ている人で計算するが、無職から有職になったわけで、すべての人の賃金を合算すれば大きくなっている。

パイの拡大が多くの経済問題を解決する

消費も、資産効果で一部の金持ちが活発になっているが、消費増税の影響を受けた低所得者層は苦しい。こうした「限界的なところ」で恩恵があるのは事実だ。

サッチャー元首相が「お金持ちを例え貧乏にしても、それで貧乏な人がお金持ちになるわけでない」といったが、どうも、今回の選挙では、格差といいながら、やっかみ話が多い。

パイが拡大しているのに、自分のところがまだかという愚痴のようなものだ。パイの拡大が多くの経済問題を解決する。

恩恵を受けている層は、新卒者などの雇用弱者・非正規雇用と金持ちであるが、これは金融政策から予想されたことで、政策が正しい方向であることを示しているにすぎない。政策波及経路が間違っていなければ、その政策を進めるだけになる。

金融政策による雇用の増加は、自殺率の低下、強盗率の低下、生活保護率の低下にもなる。こうした社会環境に大きな影響を与える金融政策について、左派政党は早く目覚めないと、左派の受け皿がなくなってしまう。

この記事は要約です。詳細はこちらから(゚д゚)!

【私の論評】金融政策が雇用政策であることを知らない世界水準でみれば異様な日本人!この異様さから訣別することも今回の選挙の大義かもしれない(゚д゚)!

 高橋氏が指摘するように、日本では金融政策が雇用政策であるということはまだまだ理解されていません。野党の党首らも理解していないのですから、一般の人はまだまだ理解していないというのが実情でしょう。そもそも、これが理解できないのであれば、今回の選挙は、投票率がかなり減るのではないかと思います。

そもそも、人は理解のできないことには関心は示しません。私自身は、金融政策は雇用政策であるということは、それこそ、高校生の頃から理解していました。なぜ理解していたかといえば、高校の『政治経済』という教科書にそう書かれていたからであり、その他参考書などにもそう書かれていたからです。

受験科目に『政治経済』も選択したので、それなりに勉強したので、金融政策が雇用政策になるという事自体は、あたり前のことであり、何の疑念も抱いたとこはありません。

日本でみられる就活風景

しかし、それから社会人になって、投票をするときに、候補者の話を聴いたり、あるいは周りの人と話しをしていると、金融政策と雇用政策とは全く関係ないと思い込んでいる人がほとんどであることが良くわかりました。

それは、政治家や役人などは、言うに及ばず、社内や取引先のほとんどの人がそのようでした。たまに、結構まともな大学の経済学部を卒業した人と話をしても、たいていは、金融政策と雇用政策との関連を意識している人などほとんどいませんでした。

ただし、まともな大学院で経済を学んだ人の中には、これを理解する人がいて、ある程度話があったということを記憶しています。ただし、大学院卒でもそうではない人も散見しました。内心では、一体こういう人は何を勉強してきたのかと疑問を感じました。

しかし、この現象は最近でも続いているようです。たとえば、本日以下のような報道をNewsPicsで見ました。
【世界一笑えないアニメ】日本の就活がどれほど狂っているのか?
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事には以下の動画が掲載されています。



「就活狂想曲」animation "Recruit Rhapsody"
ごく普通の大学生として何となく過ごしてきた主人公。ところが近頃友人たちの様子がお­かしい。聞けば、彼らは噂の"就活"に躍起になっているらしい。­それが一体どのようなものなのか見極められぬまま、主人公もまた「ニッポン式就活」の­渦中へと引きずり込まれて行く。
吉田まほ 2012年度作品。http://blog.goo.ne.jp/damaho

2012年度といえば、日本はデフレスパイラルのまっただ中であり、デフレ・円高不況のど真ん中でした。そうして、日本銀行はこうした日本の経済の停滞をみても、何の対策も打たないどころか、金融引締のスタンスを崩していませんでした。

金融引締をすれば、雇用は悪化するし、デフレはさらに深化するだけで、何も良いことはありません。企業も日本国内では、物が売れないため、設備投資も控え、新規採用も控えます。無論、借金などとんでもありません。なるべくお金を借りないようにして、借りているお金は一刻も早くかえすというのがあたり前でした。

あれだけの、デフレ状況であれば、企業がこのような行動とるのは、あたり前です。そうしなければ、潰れてしまいます。人の新規採用も、積極的なものではなく、毎年ある程度は人を採用しておかなければ、人員構成がいびつになり、将来的に不都合が生じるので、そんなことにならないように採用するだけで、積極的な採用でありません。

また、こういう採用では、個性がどうのとか、特技がどうのというよりは、無難な人材を採用するということになり、特にコミュニケーション能力を重視する企業が増えました。コミュニケーション能力といえば、聴こえは良いですが、要するに無難さの最たるものです。

だからこそ、画一的になり、このアニメのような酷い有様になっていたのは事実です。しかし、このアニメでは、雇用問題の本質は何なのかには全く触れていません。無論、このアニメを政策した人も、金融政策と、雇用政策の関連など知らないのでしょう。

知らないからこそ、こういう現象に恐怖を感じるのだと思います。もし、知っていれば、金融政策の異常性を訴えたものと思います。

NewsPicsには、記事に対してコメントができるので、私はこの記事に以下のようなコメントをしました。
このアニメ表面的なことしか扱っていないのが、残念。この問題の本質は、企業や就活生などに問題があるわけではなく、15年以上も、デフレを放置してきたことに原因があります。特に、金融政策について、リベラル派も労働組合もそのまずさを追求してこなかったことにも原因があります。 
他国ではあたり前になっている、金融政策が直接雇用に結びついている事を知らない日本人のほうが、私にはかなり異様にみえます。 
雇用というと、何やら日本では、厚生労働省管轄のような感覚しかないのが不自然です。他国では、雇用といえば、まずは中央銀行の金融政策ということになり、雇用状況が悪いと中央銀行がやり玉にあげられるのが普通です。 
そのあたりが、全く表現されていない、底の浅いアニメです。この底の浅さが、日本の異様さを感じさせます。
しかし、こうした傾向もここ数年では、ある程度は緩和されて来たように思います。最近では、小数ながら、雇用と金融政策とが密接に結びついている事を理解する人が増えてきました。そもそも、政治家の中にも、安倍総理のようにキチンと理解する人がでてきました。

 上の記事では、高橋氏が、以下のように締めくくっています。
金融政策による雇用の増加は、自殺率の低下、強盗率の低下、生活保護率の低下にもなる。こうした社会環境に大きな影響を与える金融政策について、左派政党は早く目覚めないと、左派の受け皿がなくなってしまう。
本当にこのとおりだと思います。 今回の選挙において、特に野党は、金融政策が雇用に密接に結びついている政策なのかをしっかりと理解していただきたいものだと思います。

8%増税で低迷気味の消費。このままデフレへ逆戻りすることは、若者世代に対して経済的虐待をしているのに等しい

欧米などでは、金融政策によって、雇用を増やすという政策は、左翼やリベラルや、労働組合の人たちが推進しようとする政策です。そもそも、お金持ちにとっては、雇用などどうでも良いわけであって、金融政策による雇用の拡大になどさほど興味もないわけです。

だからこそ、私は金融政策が雇用政策であることを知らない世界水準でみれば異様な日本人!この異様さから訣別することも今回の選挙の大義かもしれないと思っているのです。

そうして、この異様さから訣別できれば、日本の経済だけではなく、政治もかなりまともになると思います。私は、そう思います。


皆さんは、どう思われますか?

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