2016年3月2日水曜日

【米大統領選】トランプ氏、中国に敵意むき出し クリントン氏も「中国は大量の政府情報盗んでる」―【私の論評】トランプが大統領になる日、日本はどうなる(゚д゚)!




米大統領選のスーパーチューズデーで大勝し、指名獲得に近付いた共和党のトランプ氏と民主党のクリントン氏。いずれも環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)に反対しているほか、対中強硬姿勢を鮮明にしており、両氏が大統領になった場合の対中、対日政策が注目されている。

「貿易でも軍事でも(他国に)勝利する」「日本や中国から雇用を取り戻す」

1日、オハイオ州の空港に専用機で現れたトランプ氏は、お決まりのフレーズで支持者に呼びかけた。夜にはフロリダ州の自身が所有する社交クラブで勝利宣言を行い、「建機大手のキャタピラーは、コマツと競争するのが円安で難しくなっている」などと発言し日本にクギを刺した。

「強い米国」の復活を掲げるトランプ氏は米中貿易改革も公約の一つで「中国の輸入関税を45%にする」と極論を展開。「中国は米国民が飢え死にすることを望んでいる」と発言するなど敵意をむき出しにする。

これに対し、クリントン氏も昨年7月、中国の南シナ海の軍事拠点化を「同盟国の脅威」と指摘し、サイバー攻撃では「中国は大量の政府情報を盗んでいる」と言い切った。9月には、中国の習近平国家主席が女性の権利向上に関する会合を国連で開いたことにツイッターで「恥知らず」と批判し、話題を集めた。

また今年2月、米紙への寄稿で改めてTPP反対を表明し、中国や日本が輸出拡大のために為替操作を行っていると批判。大統領に就任した場合は対抗措置を取るとしている。

競い合うように対中強硬姿勢を打ち出す両氏だが、トランプ氏の政策は実現困難との見方が多い。クリントン氏も自由貿易政策を支持してきた経緯があり、実際の政策運営がどうなるかは未知数だ。

【私の論評】トランプが大統領になる日、日本はどうなる(゚д゚)!

トランプ氏は、従来から中国に対しては厳しい発言をしてきました。ただし、日本に対しても、厳しい発言をしていました。

クリントン氏も、習近平に対して「恥知らず」と批判したことは、このブログでも掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
ヒラリー氏が習主席に「恥知らず」抗議女性拘束の中国が人権会合のホスト?―【私の論評】次期米大統領は、口先オバマのようには御せないことを思い知った習近平(゚д゚)!
ヒラリー・クリントン
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事は昨年の9月28日のものです。以下に、元記事から以下に一部を引用します。

"
ヒラリー・クリントン前国務長官は27日、中国の習近平国家主席がニューヨークの国連本部で同日、女性の権利向上に関する会合を国連と共催したことに関し、自身のツイッター上で「恥知らず」とののしった。
ヒラリー・クリントン氏のツイッターから
ロイター通信によれば、中国当局は今春、公共交通機関内でのセクハラ行為に抗議しようとした女性5人を拘束。釈放したのは約1カ月後だった。これについてパワー米国連大使は「女性の権利向上を実現したいのなら、信条や考えを問題視して投獄などするな」と中国を非難していた。

習氏がホスト役を務めた会合は、女性の権利保障をうたった「北京宣言」(1995年)から20年になるのを記念する特別行事。潘基文(パン・ギムン)国連事務総長や各国首脳らも出席した。
"
そろって、対中強硬論を打ち出すトランプ、クリントン両氏のいずれもが大統領になってもおかしくはない状況になりつつあります。実際にいずれかが、大統領になったとして、どの程度対中強硬路線を打ち出すのか、未だ未知数ではありますが、結局中国を増長させてしまったオバマ大統領のようなわけにはいかないと、習近平も覚悟を決めていることでしょう。

さて、クリントン氏が大統領になれば、日本としてはオバマ大統領が民主党であったこともあり、オバマが大統領であとったときとアメリカの政策はあまり変わらないものの、クリントン氏は及び腰だったオバマよりは、はるかに中国に対して強硬派であることから、かなり御しやすいことでしょう。

しかし、まかり間違って、トランプ氏が大統領になったとしたら、日本も習近平なみに覚悟を決める必要があることでしょう。

演説するトランプ氏

ご存知のように、トランプ氏の発言は超過激です。例えば、不法入国した1100万人のメキシコ人を全員強制送還し、国境に「万里の長城」を作り、その費用はメキシコに払わせると宣言しました。

これは、非現実的ではありますが、最近の米国は及び腰のオバマのせいで、世界中で中国、ロシア、中東諸国に譲歩を重ねてきた反動なのか、米国人は今、トランプのような強い指導力に飢えています。

オバマ氏は、米国は世界の警察官をやめると公言し、中国やロシアを増長させ、移民問題も含めて、外交政策には大失敗しました。この外交音痴ぶりについては、日本におけるあの鳩山氏よりも、米国内では評判が悪いです。

また、オバマが在任中に、財政赤字も膨らむ一方でした。一方、連邦議会も膠着状態に陥っています。政治家が公約を守らないことに、国民はあきれ果てています。不満が鬱積した米国民は少しくらい独裁的で下品でも、真実を語り、やるべきことをやる強いリーダーを求めています。


ドナルド・トランプ氏とエクイタブル生命保険が共同所有するトランプタワー
他の共和党候補は、トランプ氏のなりふり構わぬ戦い方に圧倒されています。政治経験全くなく、4度の破産経験があるトランプ氏が大統領になったら米国は一体どうなるのか、世界がどうなるのか、まったく読めません。良くなるかもしれないですが、悪くなる可能性も十分にあります。

特に、トランプ氏は、日本に対しては、集団的自衛権の片務性に関して、強く非難しています。

日本は、自国を攻撃されれば米国に防衛してもらうのに、米国が攻撃されても何もしないというのでは不公正だ、と声高々に批判しました。

昨年の8月21日、アラバ州モービル市の巨大なフットボールスタジアムに集まった3万人の聴衆に向かい、トランプ氏はこの発言を行いました。聴衆の間からは「ノー」という声がいっせいにわきあがりました。

昨年8月21日のアラバマ州モービル市の集会では、トランプ氏は赤いキャップを被っていた
トランプ氏は、「集団的自衛権」などという一般に馴染みのない用語は使っていません。日本や日米関係にも詳しくない平均的な米国民にとって理解しやすい表現で、米国からみて日本の集団的自衛権問題がいかに特殊であるのかをはっきりと描写しました。大衆アピールや扇動の巧みなトランプ流の演説だといえます。しかし、このような形で日米同盟の年来の片務性が米国一般に問題として提示されることは、日本側にとって好ましいはずはありません。

トランプ氏の演説には、この片務性は、本来米国による日本の弱体化の一環であるという歴史的背景を示す言葉が一切ありません。これでは、親日派や、知日派の人々は別にして、一般の人々には日本が卑怯であるとしか映りません。

そうして何よりも衝撃的だったのは、このトランプ氏の発言が行われたときに、ほかならぬ日本では、国会で集団的自衛権の行使を含む安保法案の審議が行われていたにもかかわらず、この発言に関してほとんど顧みられることなく、野党の「戦争法案」というレッテル貼りによる、審議拒否により、怒号と混乱の中で、安保法案が成立したことです。

及び腰の、オバマ氏の任期中、世界がどれほど揺れ動いたかを考えると、日本の安全保障を、いつまでも米国に依存するのは危険です。安全保障法制にまだ抗議している野党議員は、国家観や世界観など頭の片隅にもありません。日本は早く自立した国家になり、平和を愛する他の国々と協力して、リーダーシップを発揮すべきです。

特に中国に対しては、アジア一極支配や、海洋進出の野望を打ち砕きアジアの平和と安定を実現し、引き続きアジアの繁栄を確かなものにしていくべきです。

そのためには、私たち日本人も覚悟を決める必要があります。マスコミや、いわゆる識者の間では、トランプ氏は絶対に大統領になるべきではない人物との定評ですが、トランプ氏が大統領になることは、悪いことばかりではないと思います。

そもそも、アメリカは二大政党制の国で、大統領が民主党のオバマから共和党のトランプに変わったからといって、政治が驚天動地の変化をするということはありません。60%〜70%はどちらの政党がなったにしても、内容は変わりません。残りの、40%〜30%で前政権との違いを出します。

さらに、現状は、大統領は民主党ですが、議会は共和党が多数派です。それに、アメリカ大統領は、平時においては世界でもっとも権限が少ない国家元首ともいわれています。アメリカにも三権分立がありますが、平時には大統領の権限がかなり弱く、司法が最も強いともいわれています。

アメリカの政治は大統領独りで自由に変えられるものではない

そんな中で、トランプ氏がいくら強行発言をしたからといって、まともな手続きを経てでないと何もできませんから、トランプ氏が大統領になったからといって、実際にどの程度のことができるのか疑問です。

ただし、アメリカの法律は不思議なもので、平時は権限の少ない大統領なのですが、一旦戦争することを議会が承認したとなると、突然大統領の権限が増大し、オールマイティーになってしまうという国柄です。

トランプ氏は自らの強硬な発言を実現しようとすれば、議会を説得して、正式に戦争に突入するという道しかないです。

ただし、今年に入ってから、世界の各地でいつどこで戦争になってもおかしくはない状況にあります。もしアメリカがいずれの国であれ、正式に戦争ということになれば、トランプ氏が大統領なら、かなりのことができるようになります。

そんなことになっても私たちは、うろたえることなく、日本の正しい道を選択できるように今から準備をしておくべきです。

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2016年3月1日火曜日

【マイナンバー】システムが危機に直面! 障害1カ月連続発生 追加サーバーも欠陥、原因不明―【私の論評】この体たらくは、政治主導ではなく官僚主導ですすめられた制度だから(゚д゚)!



全国民に12桁の番号を割り当てるマイナンバーカードをめぐるシステムが危機に直面している。カードを発行する地方公共団体情報システム機構のサーバーで原因不明のシステム障害が1カ月以上にわたり1日に1回のペースで発生していることが1日、判明。1月25日までの約2週間に6回発生した公表済みの障害以降も続いていた。機構は、原因不明の障害を起こした既存サーバー2台の欠陥を知りながら追加導入した同機種3台全てに障害が発生したが、リスクを抱えた運用を続ける構えだ。

機構によると、1月26日から2月29日までに、カード作成のための「中継サーバー」のデータ処理が、平均で1日1回遅滞する障害が発生。カード交付に必要な情報を自治体に伝達できなくなった。そのたびに再起動を繰り返し毎回数分間サーバーの機能が停止した。1月末には1日に3回も障害が発生したことがあった。

結局、1月25、28、2月5日に追加導入した3台全てに障害が相次ぎ再起動を余儀なくされたが、いずれも原因は判明していない。サーバーは、トラブルがなければ再起動せずに常時稼働しているはずだった。

機構は2月1日、各自治体に対し、障害時の対応として「サーバーを再起動し、事象を解消するよう努める」と説明。具体的には自治体と交信中のサーバーを再起動した場合、自治体の処理が無効になるため別のサーバーを活用する考えを伝達した。再起動が実際に頻発し、再処理に迫られた自治体が複数あった。

だが、機構は障害の影響について「大きな問題だが、多くの自治体から問い合わせはなかったので、住民サービスへの影響はなかった」と主張している。

障害をめぐり、機構は1月22日、それまでの1、2号両機のシステム障害を受け「契約上の望んだ機能がない」と納品した情報通信会社に抗議した。両機で計6回も障害が起こったものの、同機種のサーバーでも複数あればデータ処理を補えると判断し、相次ぎ追加導入した。現在、障害が深刻な2号機を切り離し、追加サーバーを含めた4機態勢で運用を続けている。

【用語解説】地方公共団体情報システム機構

住基ネットなど個人認証業務を全国の自治体から請け負う地方自治情報センターが平成26年に組織改編し、地方共同法人として発足。マイナンバーカード発行を独占するが、省庁のように情報公開制度の対象になっていない。

【私の論評】この体たらくは、政治主導ではなく官僚主導ですすめられた制度だから(゚д゚)!


私自身としては、マイナンバー制度自体には、税金を確実に収めさせるとか、反社会的な組織の資金源をつきとめたり、断ったりすることもでき、非常に良い制度だと思います。

これにあからさまに反対する人は、脱税しているか、反社勢力とのお付き合いがあることを告白しているようなものではないかと思います。

以下にマイナンバー制度の意義に関する動画を掲載させていただきます。




さて、ブログ冒頭の記事のように、マイナンバー制度の運用が始まる中、カード発行を担う地方公共団体情報システム機構のプログラムに誤りがあったことが分かりました。

また、システム障害の情報開示について、マイナンバーを管理する地方公共団体情報システム機構が拒否していたことも明るみになり、機構の隠蔽体質が浮き彫りになった形となりました。
機構は平成26年、マイナンバー業務など公的個人認証業務を専門に行う「地方共同法人」として発足しましたが、秘匿性の高い個人情報を取り扱うため、省庁や地方自治体のように情報公開制度の対象になっていません。

個人情報を扱うので、情報開示制度の対象外というのはわからなくもないです。しかし、運用方法などが法律で定めれられているとしても、システムトラブルやにバグについては公開しても良いのではないと思います。

実際にバグがあるのであれば、運用を延期するか、管理情報の内容を浅くするべきです。かつて会社のシステムを組んでいた経験もある私としては、多少のバグはやむを得ないと思います。

ウィンドウズのOSでも、バグ修正のアップロードしないといけないということもありますし、原子力のプラントとかシステムにも、バグがあると書いてある読み物もあるくらいですから・・・・。

しかし、データのアップロード程度ことで、バグがあるとすれば、セキュリティーに関しても脆弱な部分があると疑うべきでしょう。

対策としては、マイナンバーの運用材料を最小限(税金と保険・年金に限るとか)にして、安定したシステム運営が確立してから、膨大な情報(銀行預金データ・パスポート・本籍など)とのリンクを開始すべきではないでしょうか。

税金や保険・年金に関する個人情報が多少漏れたとしても、さほど大きな問題になるとは思えません。


しかし、パスポート情報や運転免許証にリンクされている本籍の情報などは、それこそ、当の本人が拉致・抹殺された後に第三者が当人成り変わることもできるようなことも可能になる重要なデータです。

これらのリンクは、セキュリティーの完成度を確認してからにすべきです。それにしても、情報開示もしない組織ですから、すでにそのような重要な情報を既にリンクしているかもしれません。これは、恐ろしいことです。


さて、これはこれとしてこのマイナンバー制度の推進機関でもある、地方公共団体情報システム機構について、触れます。

この組織、実は総務省の天下り機関として有名な「財団法人地方自治情報センター」が、マイナンバー制度の導入をきっかけに形を変えたのものです。略称として、「機構(きこう)」や「J-LIS(ジェイリス)」と呼ばれています。

この機構は、法律(地方公共団体情報システム機構法)で定められた「地方公共団体が共同して運営する組織(地方共同法人)」なので、その資本金は地方公共団体から出資されています。言ってみれば、全国の自治体が株主になった株式会社みたいなものです。さらに機構の運営に要する費用についても、同法で地方公共団体が負担することになっています。

ですから、機構の運用費用は、この法律に従い市などの自治体から機構へ、その市町村が負担する分の費用を支出するという形になります。

機構の業務範囲も法律で定められていて、マイナンバー制度に関する事務もその一つです。マイナンバー以外にも、住基ネットや公的個人認証など、自治体の情報システムに関する業務のほとんどを、機構が取り仕切っていると言って良いでしょう。

マイナンバー制度は、国の事業ですから、国から市に対して補助がありますが、他の機構の業務も国の補助を受けるものが多いので、「国から市に入ったお金(補助)を右から左へ機構に(機構運営の自治体負担分として)支出」と見えることがあります。

役員の報酬及び退職金については、自治体の首長等で構成される「代表者会議」の議決を経る必要があるので、市の議会で「理事長の報酬が高いのではないか」といった議論を行い、その結論を踏まえて、機構の「代表者会議」に提言することは当然に認められます。

財団法人(公益法人)から「地方共同法人」になったことで、機構の経営についても自治体の権限が強化されたのですが、依然として総務省の所管(総務大臣への届出等が必要)であり、その影響を強く受けているのが実態です。実際、機構の役員情報(PDF)を見ると、副理事長と理事の一人は旧自治省出身者となっています(注意]現在は閲覧できません)。

機構の役割は何かと言えば、「国や地方の税金を財源とする自治体情報システム市場のハブとしての機能」です。

国(総務省)の配下に機構があり、その機構に全国の自治体がぶら下がっていて、さらにその下にITベンダーやシンクタンクがぶらさがっているという「エコシステム(生態系)」が出来上がっているわけです。「ITや情報システム」の名目で集められた税金を、官民学の関係者に再分配するということです。

さて、総務省では、マイナンバー導入にかこつけて2016年度予算に向け「自治体支援費」を計上しようと検討が進められていました。

全国の自治体には、個人情報を扱っているパソコンを、インターネット接続できる系統から完全分離している自治体は1割弱しかありません。サポートが切れたウィンドウズXPをまだ使っている自治体もかなりあります。マイナンバーの個人情報漏れを防ぐためには、各自治体で新しいパソコンを増やし、システムを更新しなければならない。しかし地方では予算がないから、国が支援する必要があるとの理由で、検討がすすめられ、番号制度の円滑な導入と利活用の促進ということで 204.3 億円の予算がつきました。

 地方自治体ではサポートの切れた、ウィンドウズXPを使用している場合も・・・
厚生労働省では、年金や健康保険の手続きでマイナンバーを利用するため全国300か所の年金事務所のシステムを構築する必要があり、巨額の費用がかかります。それに加えて労働基準監督署やハローワークでもマイナンバーを使おうと準備が進められています。

そもそも、「地方公共団体情報システム機構」に組織改編されたときの、予算書を見ると本年度は700億円もの事業費を計上しており、うち500億円以上がマイナンバー関連事業とされています。同機構の副理事長と理事は、もちろん総務省出身の天下りです。

内閣官房には、「政府CIO(チーフ・インテリジェンス・オフィサー)」なる聞き慣れない肩書きを持つ「内閣情報通信政策監」を長とする、「IT総合戦略室」という組織がある。ここにもマイナンバーを担当する班が存在する。



こう見てくると、“マイナンバー特需”に沸いているのは官僚たちだけだということがよく分かる。

今後、会社員は家族分を含めたマイナンバーを会社に提出し、2016年1月からは証券口座開設の際に番号を求められ、2018年からは預貯金口座のマイナンバー登録も始まる。企業には厳しい個人情報管理が要求され、従業員100人の企業のコスト負担は初期費用で1000万円、毎年400万円ほどになるという試算もある。

本当に「国民の利便性を高め、公平・公正な社会を実現する」仕組みになるか、監視が必要です。

こうした「エコシステム」が良いか悪いかは賛否の分かれるところですが、各自治体がバラバラに情報システムを構築・運用している現状を考えると、「お金の分配」はそれなりに上手くやってきたものの、「費用対効果の高い効率的で持続可能な自治体の情報システム」は結局のところ、ブログ冒頭の記事もわかるように、実現できなかったわけで、機構のガバナンスについても経営・運営についても課題が多いです。

総務省エコシステムは、官僚にとって最適のシステムであり国民にとって最適なシステムではない
なぜこのようになってしまうかといえば、やはり官僚主導で新しいマイナンバー制度が推進されるからだと思います。マイナンバー制度の導入や、法律などは確かに国会で政治家によって、決められたことですが、具体的な導入は、方針等を含めて、そのほとんどが総務・財務官僚などによって、推進されたからです。

これでは、当然のことながら、官僚にとって都合の良いシステムになるのが当然のことです。そうして、これからも、「地方公共団体情報システム機構」は官僚の天下り先としての役割を果たし、官僚のハッピーライフのために奉仕します。

それを是正するためには、政治主導にするしかありません。それを打破するためには、まずは役所の中の役所ともいわれる財務省を解体する必要があります。

ただし、この財務省、単純に解体すると、解体された組織を時間をかけて植民地化するという習性があり、それを放置しておくと、解体したときよりもさらに自分たちの権益を増大するという恐ろしい怪物です。

これは、経済学者の田中秀臣氏が私にツイッターで教えていただいたことです。田中氏は、これを防ぐ手段として、解体した財務省の各々を、他の省庁の下部組織として配置することを提案していました。これだと、完璧です。

そうして、ここからは、私の提案ですが、これにプラスして、さらにマイナンバー制度などを実施するにあたっては、各省庁が直接行うというのではなく、政治主導で、NPOに委託する形として、競争入札で民間NPOに実施させる形とすべきです。

これで、完璧に官僚主導は終焉し、政治主導の政治を推進することができるようになります。

NPOというと、日本では、善意で集まった人々が手弁当で実施する奇特な事業くらいの感覚しかありませんが、欧米では違います。特にアメリカでは、全NPOの予算は国家予算に匹敵するほどで、かなり大型のプロジェクトも手がけています。

アメリカでは、たとえば、大きな建築会社や、銀行などもNPOのメンバーに入っていて、アメリカ各地で、貧困層住宅の包括的プログラムで、住宅だけではなく、雇用のための教育・訓練や雇用までも含む、包括的パッケージで貧困層を支援するなどということが手広く行われています。



そうして、NPOは大学や大学院を卒業した前途ある若者の、雇用先としても注目されている、立派な組織でもあります。

それにしても、このようなことを推進するにしても、やはり最初の崩さなければならない本丸は財務省です。

日本で、なぜ欧米型のNPOが成り立たないかといえば、それは寄付金の文化がないためです。そうして、寄付金の文化がない理由は、大量の寄付がなされるということは、財務省からすれば、財政民主主義の立場から良くないとして、様々な制限があるからです。

いずれにせよ、まずは財務省を解体して、他省庁の下部組織にしてしまうことが、ブログ冒頭の記事に書かれているような過ちを防ぐための第一歩となることは確かなようです。

【関連記事】

財務省が軽減税率で無理筋の還付案を出した狙い―【私の論評】安保法制が通った今、日本最大の危機である増税呪詛を回避する方法はこれ一つ(゚д゚)!




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2016年2月29日月曜日

【湯浅博の世界読解】「自滅する中国」という予言と漢民族独特の思い込み―【私の論評】すでに自滅した中国、その運命は変えようがない(゚д゚)!


孫子の兵法書
中国の習近平国家主席は昨年9月に訪米し、確かに「南シナ海を軍事拠点化しない」といった。果たして、この言葉を素直に信じた沿岸国の指導者はいただろうか。

その数カ月前、米国防総省の年次報告書「中国の軍事力」は、南シナ海の岩礁埋め立てが過去4カ月で面積が4倍に拡大していると書いた。中国の国防白書も、「軍事闘争の準備」を書き込んで、航行の自由を威嚇していた。

かつて、マカオの実業家がウクライナから空母ワリヤーグを購入したとき、中国要人が「空母に転用する考えはない」と語ったのと同様に信用できない。中国の退役軍人がマカオ企業の社長だったから、尻を隠して頭を隠さずというほど明白だった。

漢民族は自らを「偉大なる戦略家である」と思い込んでいる。孫子の兵法を生んだ民族の末裔(まつえい)であるとの自負が誤解の原因かもしれない。米国の戦略国際問題研究所(CSIS)の上級顧問、E・ルトワク氏は、戦略家であるどころか「古いものをやたらとありがたがる懐古的な趣味にすぎない」と酷評する。実際には、中核部分の「兵は詭道(きどう)なり」というだましのテクニックだけが生きている。

その詐術も足元が乱れることがある。米メディアが南シナ海のパラセル諸島への地対空ミサイル配備を報じた直後、王毅外相が「ニュースの捏造(ねつぞう)はやめてもらいたい」といった。すると、中国国防省がただちに「島嶼(とうしょ)の防衛体制は昔からだ」と反対の見解を表明して外相発言を打ち消していた。

国家の外交が、ひそかに動く共産党の軍に振り回されている。軍優位の国にあっては、当然ながら国際協調などは二の次になる。

ミサイル配備が明らかになったウッディー島は、南シナ海に軍事基地のネットワークを広げる最初の飛び石になるだろう。早くも22日には、CSISが南シナ海スプラトリー諸島のクアテロン礁に中国が新たにレーダー施設を建設しているとの分析を明らかにした。

やがて、これら人工島にもミサイルを配備して戦闘機が飛来すれば、船舶だけでなく南シナ海全域の「飛行の自由」が侵される。

ルトワク氏はそんな中国を「巨大国家の自閉症」と呼び、他国に配慮することがないから友達ができないと指摘する。例外的に1国だけ、核開発に前のめりの北朝鮮がいるが、それも近年は離反気味である。

中国が脅威を振りまけば、沿岸国など東南アジア諸国連合(ASEAN)は、共同で対処する道を探る。オバマ米大統領が昨年はじめてASEAN大使を任命し、米・ASEAN関係を戦略的パートナーに格上げすることで、その受け皿にした。

中国がアジアインフラ投資銀行(AIIB)を含む札束外交で歓心を買おうとしても、従属を強要する意図が見えれば中国への警戒心はむしろ高まろう。ASEAN首脳が米西海岸サニーランズでオバマ大統領との会談に応じたのも、対中ヘッジ(備え)になってくれると考えるからだ。

オバマ政権のアジア・リバランス(再均衡)に中身がなくとも、中国のごり押しで米国とASEANの緊密化が進み、中国の影響力をそぎ落とす。それがルトワク氏のいう『自滅する中国』という予言なのだろう。(東京特派員)

【私の論評】すでに自滅した中国、その運命は変えようがない(゚д゚)!

『自滅する中国』は、アメリカの戦略家E・ルトワク氏による、中国はなぜ対外政策面で今後行き詰まるのかを、大まかながら鋭く分析した異色の書です。

以下に、この書籍を読んで私自身が考えたことなどを掲載します。

著者は中国行き詰まる理由として、中国が巨大国家であるがゆえの「内向き」な思考を持っており、しかも古代からの漢民族の「戦略の知恵」を優れたものであると勘違いしており、それを漢民族の「同一文化内」ではなく、「他文化」に過剰に使用することによって信頼を失っていると指摘しています。

この「内向き」な思考にはしばしば驚かされます。中国でかつて行われた、反日デモは官製でもであることが明るみに出ていますが、なぜ国家があのようなことをするかといえば、日本を敵にしたたて、共産党政府に人民の怨嗟の矛先が向かないようにするためです。

最近ほとんど見られなくなった中国の反日デモ。
デモするのも、しないのも、中国内部の事情だ。 
しかし、この反日デモも、発生してしばらくすると、必ずといって良いほど、反政府デモに変わってしまうため、最近では政府が逆に規制をして実施させないようにしています。尖閣や、南シナ海の中国の行動に関しても、対外的な示威行動という側面は無論ありますが、中国内の人民や政敵にむけての示威行動という部分もかなりあります。

さらにこのようなことに、追い打ちするように、著者は中国(漢民族)は実は戦略が下手だという意外な指摘を行なっています。その理由として著者は「過去千年間に漢民族が中国を支配できていたのはそのうちの3分の1である」と語っています。そしてこの戦略の下手さが、現在のように台頭した中国にも随所に見られるというのです。

後半では日本を始めとする東アジアの周辺国の、過去五年間ほどの対中的な動きについて大まかに理解できる構成になっており、著者が驚くほど「嫌韓派」であることがわかるのは意外で面白いところですが、私が最も気になったのは、おそらく誰もが読み過ごしてしまうであろう22章の、アメリカの三つの対中戦略についての話です。

ここには、キッシンジャーがなぜここまで親中派なのか、その理由があからさまに書いてあります。

文章はやや固くて多少読みにくいと感じましたが、それでも原著者の原文の読みにくさを考えれば、これは十分読みやすいほうの部類に入ると思います。

ヘンリー・キッシンジャー氏 

この書籍には、甘言、阿諛、ウソ、脅し、裏切り、毒盛り、暗殺、奇襲・・・という中国の文化と政治を書いてあります。われわれ日本人なら多かれ少なかれ知っている事柄ですが、欧米人にはなじみのない中国のことですから、啓蒙の効果はあるでしょう。しかし、多くの欧米人には「本当? ウソでしょう?」と、すぐには信じられないかもしれません。

中国の演劇とか小説のことにもふれてあれば、中国がどんな世界かわかりやすかったかもしれないです。アメリカ人のルトワック自身も、われわれが何となく知っている、こうした中国の政治文化や外交政策を理解するには、ずいぶんと時間と研究をしなくてはいけなかったのではと想像します。

しかし、たとえばこの戦後の日中関係、あるいは日中国交樹立以後の日中関係、だけをみても、中国の伝統がわかります。たとえば数日前の新聞報道によると、反日政策が強い反中感情を生み出したので、こんどは一般の日本人をターゲットに親中的態度や感情を培養醸成するというようなことがよく見られます。微笑み、もてなし、平手打ち、足げり、罵り、甘言、握手、唾ふきかけ・・・と、ころころ手をかえます。

こうなると、騙す中国より、騙される日本が悪いのかもしれません。

中国は他者を政治的に支配しておかないと安心できません。冊封(さくほう)関係がそれで。まず甘言と賄賂からはいり、次は経済的に依存させ洗脳。最終的に中国の支配下におく。こうなるともう中国は遠慮会釈もなく、冷淡冷酷残忍なとりあつかいをします(第4章)。

さらに、ルトワック氏はこの書籍で、中国の孫子の兵法をとりあげます。これは2500年以上もまえ春秋戦国時代時代の中国の状況から生まれたものですが、この時代の中国内は群雄割拠の時代です。

これはルネッサンス期のイタリアの国際政治とおなじく、文化的に等質でおなじ規模の国家からなりたっていた時代の産物であり、第一に相互に徹底した実利主義と日よみり主義で闘争と協調がなされます。第二に故意に挑発し交渉に持ち込もうとします。第三に虚偽や騙しや、それにもとづく奇襲や暗殺が正当化されあたりまえになっています。

いまの中国もこれをそのまま繰り返しています。

以下に漢民族のコラージュを掲載します。


上段から左から右:蒋中正嬴政
毛沢東楊広郭躍中国人民解放軍の兵士達、パトリック・ルイス・ウェイクワン・チャン
楊玉環曹操司馬懿孫武
劉備関羽張飛孫権

中国人はこの古代からの戦略に深い知恵があるものと信じて疑わず、これさえあれば欧米などをあやつれ、優位にたてると考えています。キッシンジャーはこの中国の考えに敬意をはらう人間です(第9章)。(ただし、この本には書いてはいませんが、キッシンジャーはかって中国を嫌悪軽蔑していました。)

なお、著者は語っていませんが、脅し、甘言、賄賂、裏切りなどは、中国人どうしの対人関係でも用いられる常套手段です。だから中国は信用度の低い社会で、ご存じのとおり日本では考えられないことが起きています。

2012年の習近辺の主席就任でも、激烈なパワー・ポリティックスがありました。あの薄煕来(はっきらい)の裁判も法の正義が実現されるのではなく、単なる政治裁判のショーでした。



こうした中国のあきれるばかりの現金でお粗末なやり方は、かえって信用低下をまねき、中国に対する公式非公式の包囲網を自然と形成させました。第13章以下ではオーストラリア、日本、ヴェトナムなどの中国への警戒が述べられています。

ただこうしたなかで、事大主義・朱子学ファンダメンタリストの韓国だけは中国にすり寄りました(第16章)。その立派な口先とはうらはらに、自分は安全保障のコストをはらわずに、ただ乗りするありさまが書かれています。北朝鮮の核問題をどれだけ真剣に考えているのでしょうか。

私は、韓国の政策からして、もう日本は韓国を朝鮮半島唯一の正統政府をみとめる理由や義務はなくなったと思います。北が核を放棄し、拉致問題を解決すれば、アメリカが強く反対しないかぎり、北ももう一つの正統政府と考えていいのではないでしょうか。

中国がその表面とは違い、実態は多くの脆弱性をもつことは、近年欧米でもさかんに指摘されるようになりました。最後に著者は、この本はいままでどおり中国が成長していうという前提で議論をすすめてきたと断り、この前提に立ちはだかる中国の現実問題にふれます。

著者は中国の民主化に望みをつないでいますが、社会が豊かになれば民主化するわけではありません。これが欧米人の考えの弱いところです。中国の中産階級は西欧の中産階級と違い、歴史上王朝権力を支持してきました。いまは共産党政府を支持しています。また民主化した中国が親日とか親欧米だとは限りません。やはり中華的でしょう。

この本の主題からすれば小さなことですが、著者には欧米人のあいも変らぬロシアについての無理解があります。ロシアはその歴史的経験から中国を大変警戒しています。ロシアが伝統的にタタールの軛を離れ、ヨーロッパに復帰したいというその深層に理解がおよばないようです。ロシアはヨーロッパでありたいのです。

ルトワック氏はウクライナ危機でシナとロシアの接近は氷の微笑だと分析した
この本のどこかで著者は、中国は日欧米から貿易で管理的に差別されれば、ロシアから資源を買いつけることによって、問題を解決できるとしています。しかし資源の爆食国家中国に資源さえあればいいというものではありません。

資源を魅力ある製品化する効率的技術とか、その製品の販路販売の市場といった点で、ロシアが日欧米に代れるわけではありません。

ただし、最近のルトワック氏は、ウクライナ危機でシナとロシアの接近は、氷の微小だと分析しており、両国が本格的な協力関係になることはあり得ないと分析しています。

中国は無差別公平な自由貿易により大いにうるおい、かつ巨大化してきました。逆に、著者もいっているように、中国にたいし管理貿易をおこなえば、中国は大いに損をして弱体化します。この案は、著者に限らず、多くの人にも論じられています。
◆エドワード・ルトワック
エドワード・ルトワック氏 
ワシントンにある大手シンクタンク、戦略国際問題研究所(CSIS)の上級アドバイザー。戦略家であり、歴史家、経済学者、国防アドバイザーとしての顔も持つ。国防省の官僚や軍のアドバイザー、そしてホワイトハウスの国家安全保障会議のメンバーを務めた経歴もあり。

米国だけでなく、日本を含む世界各国の政府や高級士官学校でレクチャーやブリーフィングを行う。1942年、ルーマニアのトランシルヴァニア地方のアラド生まれ。イタリアやイギリス(英軍)で教育を受け、ロンドン大学(LSE)で経済学で学位を取った後、アメリカのジョンズ・ホプキンス大学で1975年に博士号を取得。

同年国防省長官府に任用される。主著の『戦略:戦争と平和のロジック』(未訳)を始め、著書は約20ヵ国語に翻訳されている。邦訳には『クーデター入門:その攻防の技術』、『ペンタゴン:知られざる巨大機構の実体』、『アメリカンドリームの終焉:世界経済戦争の新戦略』、そして『ターボ資本主義:市場経済の光と闇』がある。
さて、ルトワック氏の分析もそうですが、過去の中国、そうして最近の中国を見ていても、何も大きな変化はなく「内向き」で最初から自滅することが運命づけられているようです。

事実、中国は大帝国を築き、分裂、また大帝国を築き分裂という歴史を繰り返してきました。そうして、大帝国と大帝国との間には、何のつながりもなく分断されているという、愚策を何千年にもわたって繰り返してきました。

中国の歴史を振り返ると、時代が移り変わり、登場人物も変わり、一見すべてが変わって見えるのですが、非常に単純化すると以下のような図式になります。
1.天下統一して、現代中国に近い版図の大国家ができる。

2.官僚主義により行政が腐敗する。

3.民衆が官僚主義の現況である大国家に反発する。それにつけこんだ新興宗教が広がり、大国家全土で反乱が多数興る。

4.叛乱の多発に乗じて地方軍が軍閥化する。軍閥が肥大化して群雄割拠の時代となる。

5.国内の乱れにより周辺異民族の活発化する。大国家の権威が地に落ちる。長い戦乱の世が続き多くの人民が疲弊する。厭戦的な世論が形成される。

6.大国家の権威が地に落ちたのを機に英雄が現われ周辺異民族を巻き込み再びの天下統一をはかる。
多少の前後があったとしても、大体がこのパターンに従うのが中国の歴史です。

現中国もその例外ではないでしょう。いずれ、分裂して小国の集合体になるか、分裂しなかったにしても、図体だけが大きい、アジアの凡庸な、独裁国家になり、他国に対しての影響力を失い自滅することになります。

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2016年2月28日日曜日

「沖縄2紙の偏った報道 沖縄と本土を分断する…」我那覇真子さん講演―【私の論評】沖縄左翼も成田闘争と同じくやがて姿を消す(゚д゚)!

「沖縄2紙の偏った報道 沖縄と本土を分断する…」我那覇真子さん講演

我那覇真子さん
昨年9月の国連人権理事会で、翁長雄志沖縄県知事の政治姿勢を批判した我那覇真子氏の講演会(産経新聞西部本部主催)が27日、山口県防府市のルルサス多目的ホールで開かれた。

我那覇氏は「琉球新報、沖縄タイムスを正す県民・国民の会」の代表を務めており、講演でも「沖縄の2紙は、沖縄と本土の間に溝を作って分断しようとする人が、新聞という仮面を被っている。(2紙などの)偏った報道によって、『沖縄は日本の問題児だ』と認識されるが、それは誤りだ」と強調した。講演の詳報は次の通り。

みなさん、沖縄のことを、どのように思われているでしょうか。

「わがままばっかりして、自分の国のことを思っている県民がどれだけいるのか」。あるいは「翁長雄志知事を当選させる県民性は一体どうなっているのか」。そんな怒りの感情が多いと思います。

実は沖縄県民も、翁長知事には迷惑をしています。

皆さまがお持ちの情報と、本当の沖縄の姿は違います。しかし、本当のことを口にすると、自由の身でなくなってしまうほど窮屈な社会になっています。沖縄は今、非常に危険な状況に陥っている。

琉球新報、沖縄タイムスの2紙は「平和を愛する方々が、基地に反対して抗議活動を行っている」と報じます。ですが沖縄では「平和、平和」と口にする方々ほど、非常に危険で暴力的だというのが実態です。

基地に反対なら何をしてもよいと、基地のフェンスの外から横断幕の棒で、内側にいる人を串刺しのように突く人もいます。《その様子を動画で紹介すると、聴衆からざわめきが起こる》やりたい放題です。

昨年、米軍提供区域の内側に不法侵入して逮捕された人もいました。だれが見ても逮捕されて当たり前です。しかし、2紙は不当逮捕だとキャンペーンを打ちました。

不法侵入の様子を撮影した動画が(ネットなどで)公開されると、「動画が流出したことはけしからん」と問題をずらして批判しました。いつもは「情報を開示しなさい」というメディアがです。

映像を公開した在沖縄米海兵隊のロバート・エルドリッジ政務外交部次長は、解任されてしまいました。このように沖縄の2紙は、権力と化しているのです。

オスプレイの沖縄配備に反対するために「逮捕されても生活に影響がない65~75歳を募る」と呼びかけた活動家の発言を、そのまま掲載した新聞もあります。《該当する記事を示すと、聴衆から失笑も》

2紙は新聞という仮面を被って活動家が一緒に行動していると指摘されても仕方ない。

オール沖縄で基地反対と、よくいわれます。

しかし、沖縄で開かれる集会は「オール日本左翼集会」なのです。会場には、全国各地の旗が掲げられていたそうです。学生運動などをやっていた方が、沖縄という仮面を被って活動している。

沖縄の人も(他の地域と同じように)ノンポリが多いのです。基地について頭を抱えて、毎日のように苦しんでいるという報道は真実ではない。

また、国防のために、経済のために基地は必要だと考えている県民もたくさんいる。沖縄県民の生活にマスコミが入り込み、180度ひっくり返って、沖縄についての話が、みなさまの所へ伝わっているのです。

だから、「沖縄は日本の問題児だ」と誤った認識をされます。日本を愛している人も、沖縄に対して反感を持っています。

沖縄と本土の間に溝を作って分断しようというのは、2紙や翁長知事の活動そのものです。

沖縄の良識が示されたのが、(与党推薦の現職候補が大差で勝利した)宜野湾市長選でした。

基地反対の人々は今、焦っています。沖縄にとって日本を悪くする人と、さよならをするよいチャンスなのです。私はそういう思いで、活動をしています。

【私の論評】沖縄左翼も成田闘争と同じくやがて姿を消す(゚д゚)!




宜野湾市長選でいわゆる「オール沖縄」が敗北して、与党推薦の現職候補が大差で勝利したという事実が、多数の沖縄県民の考えを沖縄二紙が代弁しているわけではないないことを如実に示したと思います。

そもそも、この「オール沖縄」という言葉の起源は、2012年に沖縄県知事に就任した翁長雄志氏が先頭に立ち、オスプレイ配備反対を明確に打ち出し、県民大会を行なった少し前あたりから出てきた言葉です。

この県民大会に先立ち、沖縄の全ての市町村長にオスプレイ配備反対の建白書にサインをさせたことで、オール沖縄との言葉が明確なものになりました。

しかし、この時点で積極的にサインをした首長から、サインせざるを得ない県内のメディア(沖縄二紙など)が作った雰囲気でサインをした首長も多いです。

石垣市長・中山義隆氏


事実、石垣市長などは、建白書にサインをした際、辺野古移設は別物とするとした確認書も別途交わしていました。

さらに、2012年の県知事選挙においては、多くの市町村長が仲井眞氏を支持していました。この時点で、オール沖縄の趣旨は最初から破綻しています。

オール沖縄とは、最初はオスプレイ配備反対の言葉でしたが、今では、"保守も革新も関係なく、沖縄県民全体で普天間基地の辺野古移設を阻止しよう!"という意味での「オール沖縄」との言葉に変わっています。

しかし、実際には、県知事選挙や衆院選では、4割以上の有権者が辺野古移設容認の立場の候補者に票を投じていました。

翁長氏は、元々は保守(自民)の立場であったため、保革を乗り越えて、オール沖縄で辺野古移設を!とのスローガンを掲げたのですが、実際のところ、保守の立場の自民、公明、維新、みんなの党系、次世代、幸福などは一切応援はしていませんでした。現在では、党名などは当時と変わってしまった等もありますが、基本的ににはその頃から何も変わっていません。

そうして、今回の宜野湾市長選における、「オール沖縄」の敗北です。これによつて、いわゆる「オール沖縄」は「オール沖縄左翼」であることがはっきりしたわけです。

沖縄というか、沖縄でさわぐ、東京をはじめとする日本の沖縄以外からの流入者に関しては、私自身それを知る機会があり、それに関してはこのブログにも掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
【中国の本性】翁長知事の危険な中国接近 左翼活動家や沖縄メディアが触れない南シナ海問題 ―【私の論評】沖縄左翼のゴネ得を間近で見た私の結論は、結局奴らへの対処は毅然として絶対に妥協はしないこと(゚д゚)!
アメリカを訪問した翁長知事

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事ではゴネ得の東京都民の左翼運動家の実態をあぶり出しました。

以下にこの記事の結論部分のみ掲載します。
ゴネ得沖縄左翼に対しては、毅然として対応して、資金源を絶てば、奴らには主義主張など何もなく、ただ安易にカネになることを望んでいる連中がほとんどですから、すぐに活動などやめます。 
国、自治体にもそのように取り組んでいただきたいものです。左翼の皆様がたには、中国が好きなら、中国に移住して下さい。ただし、中国ではゴネ得は全くききません。それどころか、日本から移住した日本政府に反抗的だった連中といういうことで、徹底的に監視され弾圧されることでしよう。 
沖縄が、中国のものになってしまえば、全くゴネ得など効かなくどころか、ぼやぽやして沖縄に残っていれば、すぐに身柄を拘束され、徹底的に弾圧されることになるでしょう。 
結局楽して、カネ儲けなどということはあり得ないのです。まともな多くの人々に役立つことをしているから、その対価としておカネをいただくことができるのです。だから、成田がそうであったように、いずれ 沖縄から左翼は消えることでしょう。未だゴネ得がきく左翼にとって、沖縄は最後の牙城なのです。その牙城が切り崩されそうなので、それを必死に守り抜こうと日々戦っているのです。そんなことをするくらいなら、まともに働けといいたいです。愚かなことです。
沖縄左翼には、地元企業や共産党や中国が資金を提供していることは、今日ではすでに多くの筋から明らかになっています。

しかし、これらが、いくら沖縄県民などに金を費やしたとしても、その対価を得られいようであれば、そんなことは無駄なので止めます。

成田闘争など、今さらいくら反対運動してみたところで、何の効果も期待できません。だからこそ、誰も支援をしないので、左翼もこれに対していまさらそのようなことはしないのです。

沖縄も同じです。偏った沖縄二紙などいくら操作誘導しても、何も変わらなければ、左翼や中国もいずれ手を引きます。日本中が暇な老人をいくら動員しても、何も変わらなければ、いずれ資金提供をする組織も国もなくなります。

沖縄県民も、我が国の国民も馬鹿でも愚かでもありません。馬鹿で愚かなのは、翁長知事などのごく一部に過ぎません。

沖縄にとって日本を悪くする人と、さよならする時期が近づきつつあります。時期的に早いか遅いかの話だけです。20年もたてば、成田闘争のように跡形もなく完璧に消えています。歴史は繰り返します。


【関連記事】


【朝まで生テレビ】ケント・ギルバート氏、沖縄基地反対のデモ隊の日当を中国共産党が間接的ではありますけども、払ってますと発言―【私の論評】公然の秘密ともいえる日当の資金源はここだ(゚д゚)!



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2016年2月27日土曜日

消費増税、先送りの兆候?…首相の発言に変化―【私の論評】消費税先送り以外にもこれだけある衆参同時選挙の根拠だが(゚д゚)!

消費増税、先送りの兆候?…首相の発言に変化

安倍首相が、2017年4月の消費税率10%への引き上げを先送りする場合の状況について、「世界経済の収縮」を条件に掲げ始めた。

これまでは「リーマン・ショックや大震災のような重大な事態」が起きない限り、予定通り実施する考えを強調してきた。与党内では「首相は軌道修正を図っている。再増税を見送る可能性が高まっているのではないか」(自民党中堅)との見方も出ている。


首相は最近の国会審議で、予定通り税率を引き上げる方針を明言する一方、「世界経済の大幅な収縮が実際に起きているかなど、専門的見地からの分析を踏まえ、その時の政治判断で決める」(24日の衆院財務金融委員会)などと強調している。

 26日の衆院総務委員会でも、「株価、市場変動のみでなく、実体経済にどういう影響が出ているかも含め考えないといけない」と語った。年初から急激な円高、株安が進み、世界経済が不安定になる中、再増税を既定路線にしたくないとの思いが強まっているようだ。

周辺には「消費税を8%に引き上げたら景気が冷え込んだ。上げなければ、税収は今頃もっと増えていただろう」と、半ば悔やむように語っている。

【私の論評】消費税先送り以外にもこれだけある衆参同時選挙の根拠だが(゚д゚)!

上の記事に掲載されているように、消費税先送りの可能性がますます高まってきています。このブログでも過去に何度か、8%増税でも大失敗ということはっきりしたのに、10%増税などしてしまえば、安倍政権は崩壊するという趣旨のことを掲載してきました。

それを回避すためにも、安倍総理は10%増税見送りも公約として、衆参同時選挙に打って出るであろうことを掲載しました。

さて、それに関しては以下の【関連記事】のところに、それに関する記事を掲載しておきますので、それをご覧になってください。

しかし、それ以外にも今年は最初から予定の決まっている参院選挙の他にも、安倍総理は、衆院を解散して、衆参同時選挙に打って出る背景がいくつかあります。本日は、それについて掲載します。

まず第一に衆参同時選挙ともなれば、野党間の連携が非常に難しくなるということがあります。衆議院と参議院では選挙の制度が異なります。参議院選挙では、3人区、4人区、5人区があり、そこでは野党間の争いが激しいです。

また参議院では比例区も重要です。野党としては他の野党との違いを打ち出すことが重要です。みんな仲良く、というわけにはいきません。この状態で、衆議院の小選挙区での選挙協力は非常に困難です。一方で激しく争い、他方では選挙協力というのはなかなかできることではありません。

与党の自民党と公明党はそうした選挙協力はかなりスムーズにできるようになっています。野党は大変です。つまり衆参同時選挙は与党に圧倒的に有利になります。



第二に2016年5月26日、27日に開催予定の伊勢志摩サミットも考慮すべきです。このサミットのホストは安倍首相です。メディアでの露出度がかなり高くなり、内閣支持率もさらに上がる可能性が高いです。その勢いを保ったまま、6月半ばに衆議院解散、7月中旬か下旬に衆参同時選挙となると、またまた与党の大勝利となる可能性が高いです。

その頃には安保関連法案の採決の影響はかなり小さくなっているでしょう。サミットにはアメリカが参加し、中国も韓国も参加しないのですから、安保関連法案もその時にはむしろ自民党に追い風になることでしょう。

伊勢志摩サミットのポスター

第三に、第46回衆議院選挙は2012年12月16日に行われ、第47回衆議院選挙は2014年12月14日に行われています。その間は僅かに2年でした。

2016年7月に次の衆議院選挙が行われるなら、1年半くらいの間しかありません。46回選挙でも47回選挙でも自民党は圧勝しています。ということは、自民党の議員はほとんどの選挙区に現職としているのですが、野党議員は非常に少ないということです。

選挙期間が短くなると、各選挙区に候補者さえ擁立できない状態に陥ることになります。民主党は野党の最大政党として候補者をたてたいところですが、これほど時間に余裕がないというのであれば、なかなか実行できません。不戦敗に近い選挙区が多く生まれるの可能性が高いです。

台47回衆議院議員選挙後の議席数


以上の4点から、衆参同時選挙は多いにありそうな状況です。

このような状況に備えて、民主党の岡田代表と維新の党の松野代表は26日、国会内で党首会談を行い、3月に両党が合流することで正式に合意しました。

衆参両院で計150人規模となります。両党は新たな党名や綱領の検討に着手する一方、夏の参院選に向けて他の野党にも合流を呼びかけ、野党勢力の結集を図ろうとしています。

さて、以上4つの背景から、衆参同時選挙は多いにありそうなのですが、私はこの中で、安倍総理を衆参同時選挙に踏み切らせる背景として最も大きいのは何かと問われれば、やはり増税見送りのためということだと思います。

8%増税の大失敗は、日を追うごとに明らかになっています。ブログ冒頭の記事にもあったように安倍総理は、「消費税を8%に引き上げたら景気が冷え込んだ。上げなければ、税収は今頃もっと増えていただろう」と考えています。

ただし、アベノミクスが始まってから、税収が減ったということは全くありません。それは以下のグラフでも明らかです。


アベノミクスが始まって以来税収は増え続けています。しかし、なぜか26年6月あたりからは、上のグラフをみてもわかるように、対民間支出が減って、結果として増税+支出減の緊縮財政を行っています。これでは、景気が良くなるはずがありません。

これは、おそらく財務省による緊縮財政路線のためこのようなことになっているものと思います。安倍総理としては、10%増税阻止と、財務省のさらなる緊縮路線を打破するためにも、腹の中では衆参同時選挙も予定にあがっているものと思います。ただし、どのタイミングにするのか、機会をうかがっているということだと思います。

それにしても、民主党は最近は増税に反対のようですが、民主党のロジックでは、議員定数大幅削減がなければ消費増税しないというものです。自民党は、菅官房長官の発言にみられるように、税収が下がるくらいなら消費増税しないというものです。

民主党のロジックでは、消費税増税の前提として、国会議員定数の削減と軽減税率の撤回が必要で、これがある限り消費税増税は認められないというのですが、こは基本的に消費税増税は良いことで実施すべきことであることが前提であり、国会議員の定数削減と軽減税率の導入をしなければ賛成するってことです。

では、民主党の主張通りに、衆院議員の定数を10減らして、軽減税率を適用せずに全品目10%の消費税にしたとしたらどうなるというのでしょうか。

まずは、単純に議員定数を減らすのでは、憲法上の急務である一票の格差を是正するのはむしろ難しくなります。

そうして、軽減税率を適用せずに全品10%の消費税にしたとしたら、以下のグラフをご覧いただいてもおわかりのように、低所得層のほうが負担率が高くなるという逆進性がさらに高くなります。民主党は、このようなことは全く考慮に入れないのでしょうか。



そうして、10%増税をしてしまえば、ブログ冒頭の記事で菅官房長官が語るように、税収は下がることが十分見込まれます。同じ増税反対にしても、自民党ののほうが経済ロジックとしてまともです。

このような最初から崩れたロジックしか展開できない、民主党であれば、いくら維新の党と合流して、党名を変えたにしても、次の選挙で勝利することはかなわないと思います。

こうした状況をみていると、ますます今年の夏には衆参両院同時選挙の可能性が高まったようです。

ただし、一方で、同日選には反対論も根強いです。公明党は、同日選を極端に嫌っているます。支持母体の創価学会員は選挙のたびに、知人らに公明党候補(比例区では政党名)への投票を呼びかけます。一人ずつ、地道に支持を広げていきます。衆参同日選となれば、衆参両院で選挙区と比例、計4種の投票を頼まなければならないことになります。創価学会員の手間がかかり、負担が増えることは間違いありません。

それに、同日選になれば、有権者の関心は高まり、投票率が上がることになります。固い組織票に頼る公明党にとっては、投票率が上昇すれば、その分、投票総数に占める公明党の比率が低くなります。それも同日選を避けたい大きな理由です。

同日選で憲法改正を正面から訴えれば、護憲勢力が強く反発し、有権者の関心が高まって投票率がさらに上昇、自民党には不利に働くという見方もあります。

過去3回の総選挙の投票率(選挙区)と自民党の勝敗を見てみましょう。
▽2009年=69%、自民党119議席で惨敗、民主党政権誕生
▽2012年=59%、自民党294議席で圧勝、安倍政権誕生
▽2014年=53%、自民党290議席で再び圧勝、安倍政権存続 
要するに、自民党は低投票率の選挙で圧勝し、高投票率の時には敗れているのです。衆参同日選で憲法が争点となり、投票率が上がれば、自民党にとって有利とはいえない構図になります。ただし、2014年より、2012年のほうが投票率がわずかながら高いですが、それでも議席数は2014年よりは、2012年のほうが4議席多いです。この傾向は今後も続くのか、それを見極めるのは困難です。

さまざまな条件を考慮して、安倍首相が解散に踏み切るかどうかを決断するのは、春の大型連休の前後になることでしょう。4月24日投票の衆院北海道5区の補欠選挙の結果が、大きな判断材料になるとみられます。

町村信孝前衆院議長の死去に伴うこの補欠選挙には、自民党から町村氏の娘婿新人和田義明氏(44)が立候補する予定です。野党からは民主党系の女性候補が出馬し、共産党も支援する構えです。与野党一騎打ちの選挙で自民党が大勝利ということになれば、解散機運は一気に高まることになるでしょう。

和田義明氏
加えて、解散の判断を大きく左右するのは春先の経済情勢です。アベノミクスは、一本目の矢の金融緩和が効果を発揮したものの、二本目の財政出動に関しては、財政出動どころか、増税して緊縮財政を行い、さらに上のグラフでも示したように、26年6月あたりから、実質的に緊縮財政に入っています。

この状況を打開するためには、選挙の前に補正予算を組んで、大々的な経済対策を実行することが肝要です。できれば、最低でも10兆円規模の補正予算を組んで、経済対策を実施することです。

2016年春先になっても、8%増税の悪影響でマイナス成長が続き国民にとって景気回復の実感が薄ければ、安倍首相が衆院解散に踏み切れるような環境にはなりません。しかし、かといって、今の状況を放置しておき、17年度4月からの増税を実行すれば、日本経済はとんでもない状況陥り、失われた20年の再来となる可能性は十分あります。

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