2022年11月18日金曜日

国が後押しする次世代半導体 かつて世界シェアの5割も円高と引き締めで10年遅れに 新会社「ラピダス」は迅速な意思決定が追撃の鍵―【私の論評】日銀の金融政策の間違いが中・韓の企業をぬるま湯に浸け、日本企業を痛めつけてきた(゚д゚)!

日本の解き方


記者会見後、写真撮影に応じる「Rapidus(ラピダス)」の小池淳義社長(左)と東哲郎会長=11日午後、東京都港区


 トヨタ自動車やソニーグループ、NTTなど8社が次世代半導体の国内生産に向けた新会社「ラピダス」を設立し、政府は700億円を補助するとしている。経済安全保障の観点からの動きとみられるが、その狙いや成否はどうか。

 今の岸田文雄政権は、経済産業省主導の振興策ではかなりまともだ。第2次補正予算案では半導体支援策が充実している。日米連携の次世代研究拠点整備に約3500億円、先端品の生産拠点支援に約4500億円、製造に不可欠な部素材の確保に約3700億円など、計1・3兆円を充てている。

 日米は次世代半導体分野の研究開発での協力で合意している。上記の研究拠点整備予算に基づく拠点は年内にも設置され、国内外の企業や研究機関とも連携する見通し。萩生田光一前経済産業相が既に道筋をつけ、具体的な企業名も挙がっている。今回の次世代新会社は、その研究成果を量産につなげる役割で、既に700億円の支援は決まっている。

 日本の半導体産業は、1970年代に日立製作所やNECなどの総合電機メーカーが高い競争力を備え、80年代後半には日本勢が世界シェアの5割を握っていた。

 しかし、日米などの「プラザ合意」を契機として、それまでの円安が是正され始めると、時を同じくして、日本の半導体産業に陰りが見え始めた。

 円高による競争力低下と同時に、日米貿易摩擦に伴う輸出制限などもあり、韓国、台湾勢が急速に力をつけてきた。90年代以降、バブル潰しに躍起になり、金融引き締めを行ったので、半導体産業でも先端製品の開発や量産に不可欠な設備投資余力を失った。そしてリーマン・ショック以降、さらなる金融引き締めで円高を誘発し、2010年代における回路線幅の微細化を巡る投資競争にもついて行けなかった。

 筆者の記憶に残っているのは、12年2月のエルピーダメモリの破綻だ。当時の坂本幸雄社長は「為替については、リーマン・ショック前と今とを比べると、韓国のウォンとは70%もの差がある。70%の差は、テクノロジーで2世代先に行かないとペイしない。為替変動の大きさは、企業の努力ではカバーしきれないほどだ」と語っていた。

 日本は自国通貨高だったが、韓国や台湾勢などは不況期も巨額投資を続け、日本は10年近い技術的な差をつけられた。

 半導体では、国の資金が投入されても失敗も少なくなかった。06年の日立と東芝、ルネサステクノロジ(現ルネサスエレクトロニクス)によるファウンドリー(生産受託会社)設立構想、前述した日立とNEC、三菱電機の半導体事業が母体となった旧エルピーダメモリなどだ。当時は競争力を大きく損なう円高時期とも重なっていたが、今回は円安であるので、そうした言い訳はできない。

 新会社ラピダスは利害関係者が多いので迅速な意思決定ができるかどうかが鍵となる。必要なエンジニアを十分に確保し、過去よりはるかに良い円安という外部環境を生かしてほしい。 (元内閣参事官・嘉悦大教授 高橋洋一)

【私の論評】日銀の金融政策の間違いが中・韓の企業をぬるま湯に浸け、日本企業を痛めつけてきた(゚д゚)!

日本の半導体産業に関して、あれが駄目、これが駄目などと批判ばかりしている人がいます。こういった人たちに対しては、苦言を呈したいです。

上の高橋洋一氏の記事でも、以下のように語っています。
 90年代以降、バブル潰しに躍起になり、金融引き締めを行ったので、半導体産業でも先端製品の開発や量産に不可欠な設備投資余力を失った。そしてリーマン・ショック以降、さらなる金融引き締めで円高を誘発し、2010年代における回路線幅の微細化を巡る投資競争にもついて行けなかった。

 筆者の記憶に残っているのは、12年2月のエルピーダメモリの破綻だ。当時の坂本幸雄社長は「為替については、リーマン・ショック前と今とを比べると、韓国のウォンとは70%もの差がある。70%の差は、テクノロジーで2世代先に行かないとペイしない。為替変動の大きさは、企業の努力ではカバーしきれないほどだ」と語っていた。
90年代以降のバブル潰しは完璧に間違っていました。当時の経済統計資料をみると、たしかに当時は株価や土地がかなり値上がりしていましたが、一般物価はさほどではありませんでした。当時は物価が上がり、「狂乱物価」であったと記憶している人もいるようですが、それは完璧に間違いです。

にもかかわらず、日銀は金融引締をしてしまったため、バブルは崩壊してしまいました。ただし、バブルというのも間違いです。当時の統計資料を見返すと、さほどではありません。それは、下のグラフをみてもわかります。


なぜ物価が上がらなかったかといえば、日銀が金融引締を繰り返したからです。2014年から、日銀は金融緩和に転じましたが、あまりに長い間金融引締を続けてきたため、未だ物価は十分に上がっていません。この時代は、ひどい円高だったことを覚えていらっしゃる方も大勢いると思います。

円高の理由も簡単です。他国がまともに金融緩和しているときに、日本だけが緩和をしなければ、円高になるのは当然の理屈です。

為替レートに関して、難しいことをいいたてて、煙に巻くような愚かな人が大勢いますが、それは非常に簡単です。

日銀

為替レート(円ドル)≒世界全体に流通している円の総額÷世界全体に流通しているドルの総額(円/ドル)です。これを計算すれば、どう考えても140〜150円くらいに収まると考えられますが、500円になると予測愚か者も存在します。

短期では、他の要素も複座に絡むので、この通りにならないことも多いですが、中長期では、これに近い値になります。

この式をみれば、世界中の国が普通に金融緩和しているのに、日本だけが金融緩和しなければ、円高になるのは当然といえば、当然です。

最近は、日本では、輸入に頼るエネルギー価格やその他の資源が値上がりしているため、大変だ、大変だと語る愚か者も増えていますが、実際に物価をみてみれば、以下の通りです。

10月の物価指数をみると以下の通りです。
(1)  総合指数は2020年を100として103.7  総合CPI
    前年同月比は3.7%の上昇  
(2)  生鮮食品を除く総合指数は103.4 コアCPI
    前年同月比は3.6%の上昇   
(3)  生鮮食品及びエネルギーを除く総合指数は101 コアコアCPI
    前年同月比は2.5%の上昇  
コアコアCPIが、前年同月比で2.5%であることをもって、2%を超えたから大変だ、すぐに金融引締すべきだなどと叫ぶ愚か者もいますが、これも間違いです。

この判断をするには、雇用をみていく必要があります。

9月の雇用指数は以下の通りです。
(1) 就業者数
  就業者数は6766万人。前年同月に比べ40万人の増加。2か月連続の増加
(2) 完全失業者数
  完全失業者数は187万人。前年同月に比べ7万人の減少。15か月連続の減少
(3) 完全失業率
  完全失業率(季節調整値)は2.6%。前月に比べ0.1ポイントの上昇
現在日銀は、金融緩和を継続していますが、9月の時点で2ヶ月連続で就業者が増加しています。完全失業者は、15ヶ月連続で減少しています。完全失業率は前月に比べ0.1ポイントの上昇です。

金融緩和をやめる判断は、緩和を続けても、就業者数が増えない、完全失業率が下がらない状態になってから判断すべきものです。そうなれば、金融引締に転ずることを検討するのです。

9月には、完全失業率が0.1ポイント上昇しているわけですから、これでは積極的に金融引締すべきではありません。金融緩和を続けて物価がある程度上がったにしも、失業率が下がり続けているなら、緩和を続けるべきなのです。

日銀は、このようなことは、無視して、90年年代以降金融引締を2012年まで継続したのです。これは、金融政策の大失敗で、極度の円高をもたらしました。

そのため、日本の産業界で何が起こったかといえば、日本で部品を組み立てて、製品を製造し、それを海外に輸出するよりも、中国や韓国に部品を送り、そこで組み立てて、輸出したほうがコスト的にはるかに安いという状況になりました。

特に、韓国や中国は地理的にも近いですから、運賃を上乗せしても、日本から部品を輸入して、それを組み立てて製品を作るほうが有利でした。

ただ、円高の日本から部品を輸入するのは割高ですから、今度は中国や韓国で部品を製造する動きが加速しました。日本企業もそのほうがさらにコストを低減できるため、様々な企業が中国や韓国に進出して、そこで部品を製造する動きができました。

そうこうしているうちに、中国や韓国は、半導体の製造に多大な投資をして、自前で部品を作れるようになったのです。

超円高でこのようなことが起こっていたのです。日本企業が後塵を拝するようになるのは当たり前です。

これを他の例にたとえると、日本企業は円高という重たい重りを背負わされ、さらに両手、両足を縛られ遠泳をしろといわれているようなものでした。一方中国や韓国の企業は、手首、両足を縛られることもなく、それどころからライフジャケットを付けた状態で、遠泳をするようなものでした。

海自の遠泳訓練

この遠泳で、日本と中国・韓国が競争すれば、日本が負けるのは当然です。そのような状況ですから、日本が経済発展もせず、賃金も上がらなかったのです。中国や韓国が、1990年代に経済成長ができた要因は、日本の円高によるものです。これがなければ、中韓の今日の発展はなかったでしょう。

中国韓国は、日本の円高によって、ぬるま湯に浸かったような状態になり、自らはあまり努力をしなくても、経済発展することができました。一方、日本企業は日本国内で製造した海外に輸出すれは、かなりのコスト高になり、国際競争力は衰えました。一方、国内では強烈なインフレで、良い製品を開発しても売れませんでした。

私は、日本企業が往年の輝きを失った最大の原因は、日銀の金融政策の間違いによるものだと思っています。これさえなければ、日本企業もかなり成長していたことでしょう。

さて、現在は円安です。円安になってから、特に中韓の経済は落ち込んでいます。その理由は、上で述べてきたことから、十分にご理解いただけると思います。

現在は、円安が続いています。中韓にとっては、厳しい状況になっています。しかし、長年ぬるま湯に浸かってきた中韓は、このぬるま湯が麻薬のように悪いほうに効いてしまい、この厳しい状況を打開するのは困難を極めるでしょう。そうして、自分たちの実力のなさを思い知ることになるでしょう。

一方、日本企業は、円高で辛酸を舐め、現在の状況は天国のような状況です。今こそ、日本復活時なのです。日本企業は捲土重を期し、世界のリーダーへと復活していただきたものです。そうして、日本企業は、日銀が金融政策を間違え、円高にさえならなければ、成長を続けられると信じています。

現在の日銀は、金融緩和政策を継続しており、先にも述べたように、この政策は正しいです。現状で、金融引締に転じることになれば、また円高で日本企業が苦しみ、中韓企業はぬるま湯につかることになります。経済安全保障上の観点からも、日銀は正しい金融政策を実施すべきです。

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2022年11月17日木曜日

暗号資産FTX経営破綻 米で12月に公聴会へ 債権者は100万人超か―【私の論評】トランプの大統領選を有利にする、民主党リベラルの大スポンサーFTXの経営破綻(゚д゚)!

暗号資産FTX経営破綻 米で12月に公聴会へ 債権者は100万人超か


暗号資産の交換業大手「FTXトレーディング」が経営破綻した問題で、アメリカ議会下院の金融サービス委員会は来月、公聴会を開くと発表しました。債権者は100万人を超える可能性があり顧客の資産を保全し、返還できるかどうかが焦点です。

暗号資産の交換業大手「FTXトレーディング」は自社と、日本法人を含むおよそ130のグループ会社について連邦破産法第11条の適用をアメリカの裁判所に申請し、11日、経営破綻しました。

これを受けてアメリカ議会下院の金融サービス委員会は16日、FTXの経営破綻と影響について来月、公聴会を開くと発表しました。

経営破綻するまでCEOを務めたバンクマンフリード氏など、関係者から話を聞く予定だとしています。

FTXは国際的に事業を展開し、これまでに裁判所に提出した資料によりますと、債権者は100万人を超える可能性があるということで、顧客の資産を保全し、返還できるかどうかが焦点となっています。

金融サービス委員会のウォーターズ委員長は「FTXの転落は100万人以上の利用者に甚大な被害をもたらした」と指摘し、再発を防ぐために議会がとるべき立法措置などを明らかにするとしていて、暗号資産業界への規制をめぐる議論が活発になりそうです。

米財務長官「暗号資産市場をより監視する必要性」

アメリカのイエレン財務長官は16日、声明を発表し、FTXの経営破綻の影響が暗号資産の保有者や投資家に広がったことについて「暗号資産の市場をより効果的に監視することの必要性を示している」と指摘しました。

また、暗号資産の市場の混乱が金融の安定に及ぼす影響は今のところ限定的となっているものの、金融業界と暗号資産業界のつながりが強まれば、金融の安定により大きな懸念が生じるおそれもあるとの認識を示しました。

そのうえで「消費者を保護し、金融の安定を促進するために行動することが重要だ」と述べ、政府や議会は迅速に動き、ほかの金融商品の投資家と同じように、暗号資産の投資家も保護することが重要だという考えを示しました。

大谷翔平や大坂なおみなど 広告塔務めたと提訴される

「FTXトレーディング」の経営破綻をめぐっては、事業の広告塔を務めていた大リーグ、エンジェルスの大谷翔平選手や、テニスの大坂なおみ選手など日本のトップアスリートも提訴される異例の事態となっています。

訴状では著名なスポーツ選手が事業の広告塔を務めていたことで、投資家の信頼を集めた責任があるとしていますが、請求額は明らかにしていません。

提訴されたのは元CEOのバンクマンフリード氏をはじめ、NFL=アメリカプロフットボールリーグのトム・ブレイディ選手やNBA=アメリカプロバスケットボールのステフィン・カリー選手などで、日本選手ではエンジェルスの大谷選手やテニスの大坂選手も含まれています。

FTXの経営破綻は、スポーツ界を代表するスター選手たちが数多く訴えられる異例の事態に発展し、アメリカのメディアも大きく報じています。

【私の論評】トランプの大統領選を有利にする、民主党リベラルの大スポンサーFTXの経営破綻(゚д゚)!

暗号資産については、私自身は利用したことはありません。ですから、今回のことで、損失を被ることはありませんでした。

FTXは世界中で期待されていました。たとえば「世界経済フォーラム」もサイトでFTXを推していました(下の「世界経済フォーラム」のサイトのキャプチャー画面)が、FTXが経営危機に陥ると、すぐにしれっと削除しています。


ニューヨーク・タイムズも擁護記事をだし共犯と言われ出しています。大谷翔平や大坂なおみなどより、「世界経済フォーラム」やNYTのほうがはるかに影響力が強いと思います。そのうち、さまざまなメディアや組織がその責任を追求されることになると思います。

一般的に、暗号資産(仮想通貨)は、ブロックチェーンという技術によって記録・管理されています。ブロックチェーンは、データの破壊・改ざんが極めて困難な仕組みであることから、暗号資産(仮想通貨)がシステム障害やハッキング等によって消失する可能性はほとんどありません。

しかし、暗号資産(仮想通貨)の保有者は暗号資産(仮想通貨)の所有を示す鍵を安全に管理する必要があり、鍵を無くしたり、ハッキングされた際には、暗号資産(仮想通貨)を失うことになります。(詳細は、「ブロックチェーンって何?」も併せてお読みください。)

ただ、運営元が経営破綻してしまえば、現状ではどうしようもないです。

FTXのサム・バンクマンフリード前最高経営責任者(CEO)は、FTXのレバレッジ水準について間違えていたとツイートしました。実際は130億ドル(約1兆8100億円)だったが、約50億ドルだと考えていたといいます。

サム・バンクマンフリード前最高経営責任者(CEO)

「今週は流動性を高めるためにできる限りのことをします」と、バンクマンフリードは説明している。「ユーザーにとって正しい対応をするために、いまある資産の最後の1セントまですべてをユーザーにまっすぐに返します」とも語っています。

資金を取引所から引き出せない人にとって慰めにはならないでしょうが、バンクマンフリード自身も多額の損失を被っています。ブルームバーグの報道によると、バンクマンフリードの個人資産は先週まで160億ドル(約2兆2,000億円)の価値があったのですが、FTXの破綻で1ドル残らず完全に消し飛んだそうです。ブルームバーグはこれを「史上最大級の富の消失のひとつ」と表現しています。

さて、日本でも損をした人もいますが、一番損をした、あるいはそうなりそうなのは誰でしょうか。

それは、米国民主党等のリベラル派かもしれません。破綻したFTXのバンクフリードマン氏は、 民主党No2の巨額献金をしている選挙スポンサーであり、気候変動対策の取り組みやリベラルメディアの巨額スポンサーの一人です。 民主党とリベラル派は、自由に金が引き出せた巨大なスポンサーも失いました。

バンクマンフリード氏は進歩派の主張に賛同し、文字通りリベラルに(気前良く、またリベラル派的に)資金を出すことで、暗号資産業界のセレブでスポークスマンとなったのです。FTXは昨年、取引プラットフォームを「カーボンニュートラル(二酸化炭素排出量実質ゼロ)」にする方針を示し、何百万ドルもの資金を気候変動対策の取り組みに提供することを約束していました。

これは、民主党にとって痛手でしょう。ダメージは金が引き出せなくなったことだけではありません。広告塔の人間が批判され、提訴されたというのですから、多額の寄付を受けていた、民主党やリベラル派も、FTXに政治利用されたということで、大きな批判にさらされることになるでしょう。

米財務長官「暗号資産市場をより監視する必要性」と語っていますが、民主党自体がFTXの広告塔になっていたともいえるわけですから、今更何を言っているのでしょうか。

ただ、米国のリベラルメディアはこれを問題をあまり大きくならないように、印象操作し沈静化しようとするでしょうが、共和党支持者やトランプ支持者は黙っていないでしょう。また、トランプ自身も黙ってはいないでしょう。

これは、共和党にとって有利に働くのは間違いありません。そうして、2024年の大統領選手場を宣言したトランプ氏にも有利に働くでしょう。


トランプ氏の次期大統領選出馬表明について日米のメディアは強く批判ばかりしています。その最大の根拠は「中間選挙で共和党が惨敗」したという見方です。

しかし上院で今回選挙戦が争われたのは35選挙区です。民主党の改選議席数は14(非改選36)、共和党の改選議席数は21(非改選29)下院は共和217、民主207。これでは、共和党が惨敗とはいえません。むしろ、選挙戦そのものでは共和党のほうが勝っているともいえます。

そうして、トランプが支持した候補は予備選等も含めて235人当選し、敗北は22人です。これもトランプが敗北したとはいえません。

そうでなけば、2024年の大統領選に出馬することを表明したりはできなかったでしょう。

日本のメディアは、米国のリベラルメディアの報道を垂れ流すのみで、以上のようなことを報道しません。


米共和「反トランプ」急先鋒のチェイニー氏、下院予備選でトランプ氏「刺客」に敗れる―【私の論評】24年の次期大統領選に向け、着実に道筋をつけつつあるトランプ氏(゚д゚)!

2022年11月16日水曜日

中国航空器材集団、エアバスから140機一括購入―【私の論評】米国は、昨日の技術を今日使えるようにした中国初の大型旅客機「C919」を中国の主力旅客機にすることすら許さないかも(゚д゚)!

中国航空器材集団、エアバスから140機一括購入
独首相の訪中に合わせ、集中購買で有利に交渉

中国企業がエアバスと大型購入契約を結んだのは、7月に続いて今年2回目だ

 航空関連器材の集中購買を手がける中国航空器材集団(CASC)は11月4日、ヨーロッパの航空機製造大手エアバスと航空機140機の大型購入契約を結んだと発表した。ドイツのオラフ・ショルツ首相の中国訪問期間に合わせた動きで、契約の内訳は短距離路線用の「A320シリーズ」が132機、長距離路線用の「A350」が8機。カタログ価格ベースの総額は約170億ドル(約2兆5148億円)に上る。

 「中国の航空運輸市場の緩やかな回復とともに、今後は比較的速いペースの市場拡大が見込まれる。それに伴う航空会社の輸送力増強の需要に対応するため、エアバス機の大量導入を決めた」。今回の契約の背景について、CASCはそうコメントした。

 同社は中国政府の国有資産監督管理委員会直属の国策企業で、中国国内の航空会社に代わって航空機の買い付け交渉にあたる。集中購買方式を通じて航空機メーカーから(各航空会社が個別に交渉するよりも)大きな優遇を引き出しており、航空業界関係者によれば、今回の商談でも実際の契約総額は170億ドルをはるかに下回るという。

ボーイングは大型受注5年なし

 2020年に新型コロナウイルスの流行が始まって以降、中国企業がエアバス機を大量購入するのはこれが2回目だ。前回は2022年7月、国有航空大手の中国国際航空、中国東方航空、中国南方航空の3社がそれぞれエアバスと商談し、合計292機を契約。カタログ価格ベースの総額は約372億5700万ドル(約5兆5115億円)に上った。

 一方、エアバスのライバル企業であるアメリカのボーイングは、中国との大型契約が途絶えて久しい。前回は5年前の2017年11月、当時のドナルド・トランプ大統領の中国訪問に合わせてCASCが300機を購入。カタログ価格ベースの総額は370億ドル(約5兆4734億円)を超えた。

 だが、その後は米中両国政府の関係悪化が続いたうえ、ボーイングは主力機種「B737MAXシリーズ」の2度にわたる墜落事故の影響により航空機市場での評判を落としてしまった。中国では、航空安全当局によるB737MAXの運航再開許可が今も下りておらず、新規受注が得られない状況が続いている。

【私の論評】米国は、昨日の技術を今日使えるようにした中国初の大型旅客機「C919」を中国の主力旅客機にすることすら許さないかも(゚д゚)!

中国で旅客機というと、中国初の国産大型旅客機「C919」の開発プロジェクトはどうなったのでしょうか。

中国初の旅客機「C919」

中国は2006年の5カ年計画で、国産の大型旅客機の開発プロジェクトを立ち上げて以来、16年の歳月と数百億ドルの資金を費やして、「C919」と呼ばれる商用機を製造し、規制当局の認可を受ける態勢を整えています。6機の試験機のうち1機は、年内に中国東方航空が運航を開始する予定です。

ただし、中国に技術を盗まれることを警戒した海外のサプライヤーが、最新技術を搭載した部品の納入を躊躇した結果、この機体の性能は、最先端とは言い難いものになっています。C919は昨日の技術を今日使えるようにしたものといえます。

中国政府は、C919の開発を行う国有メーカーの中国商用飛機(COMAC)に、目を見張るような大金を注ぎ込みました。ワシントンの戦略国際問題研究所で中国経済を専門とするスコット・ケネディは、2008年の設立から2020年までにCOMACが受け取った資金は490億ドルから720億ドル(約10兆円)にのぼると推定しています。

COMACは、この機体の製造で海外のサプライヤーに大きく依存せざるを得ませんでした。Airframer.comに掲載されているC919の約80の主要サプライヤーのうち、中国企業はわずか7社で、別の7社は外国企業と中国企業のジョイントベンチャーだとケネディは指摘しました。

欧米企業がどのグレードの技術を提供しているかは不明ですが、競合の成長を手助けしたくないという気持ちと、知的財産の盗難への恐怖が、それを抑制したと考えられています。

おそらく最も重要な部品であるエンジンは、ゼネラル・エレクトリックとフランスのサフラン社の合弁会社であるCFM社のもので、同社はC919のエンジンが同社の最高グレードのエンジンであるLEAPエンジンの改良型だと述べています。しかし、コンサルティング企業AeroDynamic AdvisoryのRichard Aboulafiaは、このエンジンが実際には旧型のCFM56のアップグレード版ではないかと疑っています。

二流のテクノロジーを搭載したC919は、性能の重要な指標である航続距離で大きく劣ることになりました。COMACによると、この旅客機の航続距離は約2500海里で、エアバスA320neoやボーイング737 MAXに大きく遅れをとっています。このため、すでにA320や737 MAXが就航している世界中の数百の路線でC919を使うことはできず、ボイドは、この機体の海外での販売は困困難です。

C919の定価は6億5300万元(約130億円)と高くはないかもしれないですが、航空会社がパイロットや整備士を訓練して新しい機種に乗り換えるには、費用も時間もかかります。A320や737と比較して、運用コストの削減や性能の優位性がなければ、C919を導入する意味はないでしょう。

一方で、中国経済は減速し、新型コロナウイルス関連の規制が旅行需要を抑制する中でも、長期的には中国の航空会社はより多くの欧米の飛行機を必要とすると、業界ウォッチャーは予想しています。ボーイングは、今後20年間に中国が8485機の旅客機を導入し、世界市場の約20%を占めると予測しています。

しかし、その中でボーイングが獲得するかもしれないシェアは、トランプ政権時代に始まった米国の対中貿易戦争などの影響で脅かされています。さらに、その貿易戦争が、C919の今後に疑問を投げかけています。米国政府は2020年後半から、米国の企業が中国軍と関係のある企業に部品を輸出する場合、特別なライセンスの申請を義務付けています。

米国が不満を募らせた結果、中国への部品の輸出を完全に停止する可能性もあります。その場合、C919をすべて中国製の部品で作り直すためには、10年から15年が必要になるでしょう。

ただ、それもできないかもしれません。なぜなら、米商務省は7日、半導体や製造装置の新たな対中輸出規制強化策を発表したからです。最先端半導体を扱う中国企業の工場への製造装置販売を原則禁止し、スーパーコンピューターなどに使われる関連製品の輸出も制限しました。

半導体の小ささや精密性は、「プロセス(製造工程)」という指標で優秀性が示されます。米国はこれまで、「10ナノメートル」レベルのプロセスで半導体を製造する中国企業への装置輸出を原則禁じていました。新規制では、現行の主力世代である「14ナノメートル」未満のプロセスを用いる先端半導体を製造する中国企業まで装置輸出が原則禁じられます。

一連の措置が正式適用されれば、中国の半導体製造業がストップするだけでなく、米国の半導体技術を使って中国で生産をしてきた世界各国の企業の事業継続が不可能となる。影響は幅広い商品に及びそうです。その中には、無論航空機も含まれます。

新規制の対象は、最先端技術だけでなく、現行技術も含まれており、生活に密着した製品の製造・流通が途絶し得るのだ。半導体枯渇で、電子製品が前世代に「先祖返り」すれば、高速大容量の第5世代(5G)移動通信システムの利用や、クラウド構築も不可能となる。

さらに、米当局は、自国技術や製品を最終的に手にする組織・個人の目的、用途がはっきり確認できないケースを「未検証エンドユーザーリスト(EL)」として集約しており、ここにもメスを入れる構えです。

リスト対象に製品を送る場合、対象を調査して米国政府の許可を得る必要があます。新規制では、対象が「米国の国家安全保障または外交政策に反する重大なリスクがある者」に拡大されました。調査に協力しないと、ELに追加されることになります。米国の経済制裁のスキームを示す、チャートを以下に掲載します。

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この状況ですから、エアバスにも米国制の半導体が使われている可能性は高いですから、エアバスを輸出するにしても、米国の許可が必要かもしれません。

輸出ができたにしても、その後半導体を供給できないかもしれません。

C919は昨日の技術を今日使えるようにしたものであり航続距離も短いですが、今後中国ではこれを用いるしかなくなるかもしれません。いずれ、この航空機が、中国の主力旅客機という時代が来るかもしれません。

以下にC919がどのような部品を用いているのか示すチャートを掲載します。部品名の横に国旗がありますが、これはその部品がいずれの国のものかを示すものです。


なんとは、中国製はほとんどなくて、多くの部品は米国のものです。これで、本当に中国国産といえるのでしょうか。

米国がこれらの、部品を中国に輸出できなくすれば、中国で航空機の製造はできなくなります。実際に、そのように主張する人もいます。

上の記事では、こうしたことが触れられていませんが、米国の中国制裁は凄まじい段階に達していることは、認識すべきと思います。これでも、日本の親中派の方々は、未だ中国の輝かしい未来を信じているのでしょうか。

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2022年11月15日火曜日

ロシアエリートの「プーチン離れ」 後継者は誰になるか―【私の論評】今のままだと、岸田首相は年金支払期限の延長で窮地に至ったプーチンと同じ目にあう(゚д゚)!

ロシアエリートの「プーチン離れ」 後継者は誰になるか

岡崎研究所 


Economist誌10月30日号が「ロシアのエリートがプーチンなき将来を考え始めている。プーチンの排除が少なくとも考えられている」との記事を掲載している。主要点は次の通り。



・ロシアのエリート、官僚、実業家たちは、「次は何か。プーチン後の生活はあるのか。彼はどう立ち去るのか。そして誰が彼にとって変わるのか」といった疑問を抱いている。

・ウクライナ侵攻は、プーチンは全面戦争のリスクを冒さないと考えていたロシアの支配層にとってはショックであったが、当初の軍事的前進、ロシアの経済が崩壊しなかったこと、和平交渉への初期努力を見て、自らを落ち着かせようとしていた。

・エリートたちの考えはプーチンの「部分」動員で粉砕された。大勢の人の国外出国、広範な徴兵逃れは、この冒険を新しい「大祖国戦争」にするプーチンの試みが失敗したことを示す。

・プーチンはこの戦争に勝てない。なぜなら戦争当初から明確な目標がないからである。多くを失い、彼は深い屈辱をうけることなく、戦争を終わることはできない。

・9月までロシアのエリートはプーチンを支持するとの実利的選択をしてきたが、今や彼らは種々の敗北のシナリオの中で選択しなければならないところまで事態は進展した。

・軍事的敗北はそれを支持した者へのリスクを伴いながら、政権の崩壊につながるだろう。プーチンは安定の源泉と思われてきたが、不安定と危険の源と考えられるに至っている。

・政治アナリストのガリアモフによれば、次の数週間、数カ月で、エリートたちはシステム内でのプーチンの後継者探しを行うだろう。

・ガリアモフが挙げる後継者の候補は、ドミトリー・パトリシェフ(ニコライ・パトリシェフ安全保障会議書記の息子)、セルゲイ・キリエンコ(大統領府次官)、ソビヤニン(モスクワ市長)、ミシュスチン首相など。

・逆に、「もっと攻撃的なグループ」も既に姿を現し始めている。エヴゲニー・プリゴジンや(元刑法犯でプーチンのコックとして知られ、傭兵のワグナーグループを率いる)、ラムザン・カディロフ(チェチェンの強権指導者で私的な軍を持つ)である。二人はプーチンに個人的に忠誠である。プーチンはウクライナを破綻国家にしようと望んだが、代わりに彼はロシアを破綻国家にしかねない。

*   *   *   *   *   *

 エコノミスト誌は相当な調査能力を持つ会社で、ロシアのエリートがプーチンとウクライナ戦争をどう見ているかという難しい問題にこの記事で取り組み、プーチン後継問題にも言及している。

 ここで描写されているロシア国内の状況はおそらく現実であると思われる。プーチン離れやプーチン批判がエリートの中で広がっていることは、ウクライナ戦争がうまく行っていない中、当然予想されることである。

 最近、ショイグ国防相がプーチンに「30万人の動員は実現した。追加動員の計画はない」と報告した画像をロシア国営テレビは流したが、動員がロシア国内に与えたショックが如何に大きかったか、それへの反発をなくしたいとの政権側の意図は明確である。この戦争は、今やロシア国民の支持を得ておらず、ロシア軍の士気もよくなる見込みはない。

多くのオリガルヒは戦争に反対

 この戦争はプーチンが起こしたもので、彼の責任は重い。プーチンの統治への不満はこれからも高まっていくだろう。権威主義政権が権威をなくしてきていると考えても大きな間違いではない。国内のみならず、中央アジア諸国もロシア離れを起こしている。

 クセニア・ソプチャクがリトアニアに逮捕を避けるために逃げたことは特に大きな衝撃を与えた。プーチンが今の地位にいるのはクセニアの父、ソプチャク・レニングラード市長が彼を副市長にしたことが契機になっている。支配層の中で分裂が見られる。

 エリツィンの次女の夫で大富豪のデリパスカが、プーチンの戦争に起因する経済的損失が大きすぎると批判しているのが良い例だが、オリガルヒは大体戦争に反対である。

 引退後の後継者としてはニコライ・パトリシェフが最有力のようにも思われるが、上記の記事が言うように彼の息子、ドミトリー・パトリシェフが選好される可能性はある。考えてみれば、ニコライ・パトリシェフはプーチンより2歳年上であるから、後継者にはなりにくい面がある。

 ドミトリーは44歳で、農業大臣をしたほか、農業銀行の頭取をしたことがあり、経済がわかるとの利点がある。さらに自身も治安機関で働いたことがあり、父のコネもあるので、いわゆるシロビキ(治安関係者)に近い。有能とされている。

 「もっと攻撃的グループ」といわれるプリゴジンやカディロフがポスト・プーチンで力を得た場合には、とんでもないことになりかねない。われわれ自身が「プーチンはまだましだった」と懐かしむことにさえなりかねない。

【私の論評】今のままだと、岸田首相は年金支払期限の延長で窮地に至ったプーチンと同じ目にあう(゚д゚)!

プーチンはウクライナ侵略をしたから、支持率が低下したという側面は否定できませんが、実は元々支持率は低下しつつありました。それは、年金問題です。ロシアの平均寿命は、他国と比較すると短いですが、それでも最近では平均寿命が延び、少子高齢化が進む中、ロシアにおいても2028年から年金の受給開始年齢が引き上げられることになりました。

しかし、この改革を巡る一連の騒動が、プーチン強権の地盤を揺るがしたといわれています。水面下では、終身大統領の野望に燃える大統領と国民の温度差が、ますます広がりました。

2018年モスクワで年金支給年齢の引き上げに抗議する人々

ロシア政府が2018年に発表した年金改革計画は、年金受給開始年齢を男性は現行の60歳から65歳へ、女性は55歳から63歳へと引き上げるというものでした。どの国においても該当することだが、国民の負担が増える改革は多くの痛みと反発をともないます。

ところがロシア国民の反応は、政府の予想をはるかに上回っていました。ロシア全土で反対デモや署名運動が行われました。慌てた政府が行ったのは、女性の開始年齢の引き上げを60歳にとどめるなどの複数の譲歩案の提出でした。

しかし、政府の骨折りも虚しく、国民の憤りはすぐさまプーチン大統領の支持率に跳ね返りました。2014年3月~18年4月にわたり80%前後を維持していた支持率が、わずか数ヵ月で70%台を下回ったのです。ロシアの独立系世論調査機関レヴァダセンターが同年9月に実施した調査では、国民のほぼ90%が受給年齢の引き上げに反対の立場を示しました。

一部の人々は、この出来事が「プーチン神話のほころび」になったと見ています。「国民の意見を尊重して譲歩した」という見方をすれば美談ですが、突き詰めると「強硬君主として知られるプーチン大統領が、支持率の低下を恐れてUターンした」ことに他ならないです。

もちろん、支持率の低下は年金改革だけが原因ではありません。ウクライナを巡る欧米諸国の経済制裁や独裁政権の拡大など、ロシアが抱えているさまざまな問題に対して、一部の国民は長年にわたり不満を抱いていました。年金改革はターニングポイントに過ぎないようです。

これを機に支持率は低下の一途をたどり、そこへパンデミックが蓄積した国民の不満に拍車をかけました。2020年5月の支持率は59%と、2000年代で過去最低水準に落ち込みました。


年金受給開始年齢を含め、年金改革は多数の国で実施されています。少子高齢化に加えて、生活様式や雇用環境の変化、貧困格差の拡大など、社会は大きく様変わりしました。変化に対応可能な制度へと再編することは、社会保障制度を維持する上で必要不可欠です。

ちなみに、ロシアで年金制度の基盤が確立されたのは、旧ソ連時代の1930年です。当時のロシア人の平均寿命は43歳でした。

このような背景を認識しているにも関わらず、ロシア国民はなぜそこまで強硬に反発したのでしょうか。ロシア国民が猛反対している理由は、以下の3つに集約されます。

1.前言撤回

かつてプーチン大統領は、「自分の就任期間中は年金受給開始年齢を引き上げない」と公言しました。しかし、2014年の時点で歳出総額13兆9,600億ルーブル(約20兆9,039億円)のうち、社会保障と軍事が占める割合がそれぞれ30%を超えました。いずれかの削減を迫られたプーチン大統領は、年金の給付総額を減らす選択をし、膨らみ続ける財政赤字を補填せざるを得なくなったのです。

2.平均寿命の短さ

WHO のデータによると、2019年のロシアの男女の平均寿命は世界183の国や地域のうち96位の73.2歳でした。2002年以降は年々上昇しているものの、1位の日本(84.3歳)と比べると10年以上低いです。平均寿命をベースに算出すると、日本では65歳からほぼ20年間にわたり年金を受給できますが、ロシアでは男性は8年強、女性は13年強しか受け取れないです。

3.年金格差

国家年金を受給する国家職員と一般人では、加入できる年金制度の種類や優遇措置、支給額が大幅に異なります。

このように、ただでさえ年金制度に対する不信感が強いところへ、開始年齢の引上げが通告されたような状況です。プーチン大統領を英雄視していた国民が、強い絶望感と怒りに包まれたのは想像に難くないです。

日本でも、年金の納付期間の延長が話題になっています。年金保険料の納付期間は現在、20歳から59歳までの40年間。この納付期間を5年延長し、20歳から64歳までの45年間にする案が政府内で検討されています。

そうして、その理由として少子高齢化が報道で挙げられています。

働く世代が少なくなり、保険料を納付する人数が減ると、年金を支払うための財源は少なくなります。その一方で年金をもらう高齢者は増えるため、財源の確保が難しい状況になっていくという説明です。

ただし、この説明は全くの間違いとまでは言わないですが、年金の本質から外れています。

年金の本質とは何かといえば、それは、長生きした時の「保険」です。死亡保険は死んだ時の保険ですが、長生きした時の保険はイメージしにくいです。ざっくりいえば、みんなから保険料をとって、平均寿命より早死にした人には年金を払わず、平均寿命より長生きした人に年金を払うという仕組みです。

平均寿命が伸びれば、年金額を維持しようとすれば納付期間の延長しか、解がないです。延長しなというなら、納付金額を上げるしかありません。

これについては、高橋洋一氏が簡単な算式を用いて、わかりやすいく以下の記事で解説しています。
知っておくべき「年金の本質」 保険料納付の期間延長しか「解がない」理由
年金数理から見れば、平均寿命が伸びれば、年金額を維持しようとすれば納付期間の延長しか、解がない。ちょっとした「算数」なので、マスコミはこうした解説もしないとまずいのではないでしょうか。無用の誤解を生む可能性もあります。

年金は保険という観点からすれば、高橋洋一氏の主張は正しいです。納付期間の延長に関して、ネガティブな意見を語る人は、これを理解していないのではないでしょうか。高橋洋一氏は、消費税増税をはじめとする、緊縮財政には反対しています。それも、きちんとしたマクロ経済的な背景を説明しつつ反対しています。税金の問題と年金問題とは分けて議論すべきなのです。

ただ、ロシアにおいては、ロシアの特殊事情があります。ロシアは、現在GDPでは韓国を若干下回る程度であり、しかも人口は1億4千万人とと韓国の数千万人よりは、はるかに多く、一人あたりのGDPでは1万ドルを若干上回る程度です。

それに比較すると、軍事費は世界では3%を占める程度、日本と比較してさえ、かなり多いとはいえないですが、ロシアのGDPからみれば、かなり費やしているのは間違いありません。何しろロシアのGDPは日本の1/3です。


プーチン大統領が年金改革を発表してから、3年以上が経過した。2021年4月の改正大統領選挙法成立を経て、「終身大統領」の野望に一歩近づいた現在も、足元の不安要素は拡大し続けています。プーチン大統領の大きな誤算は、年金改革が英雄の地位や強権を揺るがすほど、国民にとって重要な問題であることを見誤った点のようです。

先に述べたように、平均寿命が伸びれば、保険である年金は、年金額を維持しようとすれば納付期間の延長しか、解がないです。延長しなというなら、納付金額を上げるしかありません。

そのため、年金数理的にはプーチンの選択は間違いではないのですが、それにしても、元々ロシア国民の収入は多くはないところにもってきた、2014年のクリミア併合以降、ロシアに対する制裁で多くの国民の生活は苦しくなっていますし、インフレ傾向が続いていることから、多くの国民の生活は苦しく、思いの外強い反発を招いてしまったのです。

第1次政権からのプーチン大統領支持率を見ると、22年間ずっと、60%以上を上回っていて、最新の今年2月には71%となっています。戦争を仕掛けるたびに支持率をアップさせていて、2008年8月、現在のジョージアと“衝突”した時や、2014年3月、ウクライナ南部のクリミアを併合した時に支持率が上昇しています。 

もしウクライナ侵略もその背景に、支持率を上げるためであったとすれば、全く本末転倒の結果になってしまった言わざるを得ません。

昨年の税収が過去最高だったことや、円安で為替特会の含み益が増大し、その一部は為替介入で実現益になっていること、多くの国民が国債は将来世代へのつけではないことを理解しつつあり、日本においても、年金の支払い期間の延長で国民の反発が高まることも十分考えられます。

ロシアのプーチン大統領は5月25日、一般国民に対する年金を6月1日から、最低賃金を7月1日から、それぞれ10%引き上げると表明しました。モスクワのクレムリンで開かれた閣僚や地方知事らとの会議で述べました。

プーチン氏は同時に、ウクライナでの軍事作戦に参加した軍関係者らへの金銭的補償を充実させるよう指示しました。戦闘長期化や欧米の制裁による物価上昇などの経済悪化を受け、国民の不満を抑える意図があるとみられます。

ただ、ロシアは制裁を受けていることから、インフレ率が亢進しており、9月のロシアのインフレ率は前年比で13.68%となり8月の14.30%から低下したとはいえ、まだかなりの高水準です。

これでは、年金や賃金を上げてもほとんど意味がないです。というより、上げなければとんでもないことになります。上げて当たり前です。ただ、これはインフレにさらに拍車をかけることになるでしょう。現在のロシアはまさに、八方塞がりです。

このようなロシアの状況からみれば、日本は随分良い状態です。岸田首相は、ここしばらくは、増税などの緊縮財政はしないと表明した上で為替特会を経済対策に当てる旨を公表すれば良いです。そうして、これを実行すれば良いのです。そうすれば、多くの国民は納得するはずです。

さらに、防衛費の嵩上げで実質的に防衛費をあまりあげないようにするにすぎない「総合的な防衛体制の強化に資する経費」化をやめる旨を公表し、実際にそうすれば、保守派の国民を納得させることができます。

これらを実行すれば、岸田内閣はまた支持率を上げることができるかもしれません。八方塞がりのロシアのプーチンからみれば、日本の岸田首相が羨ましいことでしょう。

岸田総理が、これらのことを実行せずに、年金の支払期限だけを伸ばせば、プーチンのように窮地に至ることは必定です。

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2022年11月14日月曜日

岸田首相が〝中国名指し批判〟の豹変 閣僚の相次ぐ辞任、内閣支持率続落で覚醒して奮起したか 八幡和郎氏「言葉だけで腰砕けにならないよう注目すべき」―【私の論評】日中首脳会談で何をいうかで、岸田総理の評価が定まる(゚д゚)!

岸田首相が〝中国名指し批判〟の豹変 閣僚の相次ぐ辞任、内閣支持率続落で覚醒して奮起したか 八幡和郎氏「言葉だけで腰砕けにならないよう注目すべき」

東アジアサミットに参加した岸田首相

 岸田文雄首相は13日、カンボジアの首都プノンペンで開催していた東アジアサミットで、軍事的覇権拡大を進める中国を名指しで批判した。米国や中国、ロシアなど、各国代表も出席していた。葉梨康弘前法相など閣僚の相次ぐ辞任や、親中派閣僚の存在、防衛費のGDP(国内総生産)比2%以上の増額に合わせた増税検討、物価高騰への対応などから内閣支持率が続落するなか、やっと覚醒して奮起したのか。

 「東シナ海では中国による日本の主権を侵害する活動が継続・強化されている」「(台湾海峡の平和と安定が)地域の安全保障に直結する重要な問題だ」

 岸田首相はこう訴えた。

 東南アジア諸国連合(ASEAN)と、日米中韓露など計18カ国が参加した同サミットには、ジョー・バイデン米大統領や、中国の李克強首相、ロシアのセルゲイ・ラブロフ外相らも参加していた。

 岸田首相は、中国軍が8月、台湾周辺での大規模軍事演習時に、日本のEEZ(排他的経済水域)内に弾道ミサイル5発を撃ち込んだことにも言及した。さらに、中国による新疆ウイグル自治区での人権弾圧や香港情勢への「深刻な懸念」も表明した。

 昨年10月の内閣発足以来、岸田内閣には親中傾向が見られ、「政界屈指の親中派」である林芳正外相の言動には疑問が指摘されていた。

 インドネシア・バリ島で15、16日に開かれるG20(20カ国・地域)首脳会議などに合わせて、岸田首相と中国の習近平国家主席との首脳会談が調整されている。岸田首相の変化をどう見るか。

 評論家の八幡和郎氏は「中国に気を使う従来の姿勢からみると突出した発言で、岸田首相の真意は分からない。ただ、欧米はじめ各国が中国に厳しい姿勢をとるなか、違う判断が働いた可能性もある。いずれにしても、言葉だけで腰砕けにならないよう、注目すべきだ」と語った。

【私の論評】日中首脳会談で何をいうかで、岸田総理の評価が定まる(゚д゚)!

東アジアサミットにおける岸田首相による「東シナ海では、中国による日本の主権を侵害する活動が継続・強化されている」という発言は、

SNSでは、話題になっており、
他の事に関しては言いたい事は沢山あるけど、名指しした事は評価する。国防に関しては岸田総理に期待出来ると思ってる。
等と、評価する声が多数あります。

歌手の世良公則氏も、自身のTwitterに「これは高く評価したい 隣国の脅威は深刻」と投稿しました。

有森香氏は、以下のようにツイートしていました。

確かに、このような発言は、良いことだとは思うのですが・・・・・・。

これについて今のところ中国から猛烈な反発はありません。事前に根回しも何もしておらず、この発言をすれば、中国は激烈な反発をしたと思います。

ということは、事前に根回ししていたと見るのが妥当のようです。本当に中国の覇権主義に懸念を示すならまず林外相を更迭し、松下新平議員を党として徹底調査した上で然るべき対処をすべきです。それ以外にもやるべきことは、多くあります。それらを行わずに口頭で抗議しても自己矛盾を露呈するだけです。

それに、中国の弾道ミサイルは今年8月与那国や波照間の沖合のEEZにも着弾しました。これで、中国批判は当然です。 逆に批判しない方がおかしいです。批判は当たり前です。今後日中首脳会談が予定されているからといって批判しなかったとしたら、本末転倒ともいえます。


岸田文雄首相は中国の習近平国家主席と17日に会談します。タイで開かれるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議に合わせて実施。対面での日中首脳会談は約3年ぶりで、岸田氏にとっては初となります。

松野博一官房長官が14日の記者会見で発表しました。岸田氏は、14日の習氏とバイデン米大統領による初の対面会談の内容も見極めた上で、日中の建設的かつ安定的な関係構築へとつなげたい考えです。


岸田氏は13日、訪問先のカンボジアで日中関係に関して「主張すべきは主張し、責任ある行動を求める」と記者団に強調。対話を重ねて安定的な関係を構築していく考えを示しました。

この動き、支持率低下で、岸田総理が吹っ切れて、奮起したというのなら、良い兆しですが、次の日中首脳会談での発言に注目すべきと思います。

本日公表されたFNN世論調査では 内閣支持率38.6%。また下落 初の30%台に

岸田総理自身は気づいているかどうかはわかりませんが、この会談で習近平に対して主張すべきことを主張しないようでは、ますます民意が離れていくことになると思います。

これは、ある意味岸田総理のラストチャンスかもしれません。ここで、習近平に対して物別れになっても良いから、主張すべきことを主張し、それだけではなく、間髪をいれず、日本国内の孔子学院を閉鎖させるとか、自民党参議院議員の「松下新平氏」が高級顧問である「中国秘密警察日本支部」を徹底的に調査したり、防衛費の嵩上げを狙うとみられる防衛費の「総合防衛費」化をやめさせるなどの行動を起こせば、支持率が上がることも期待できるかもしれません。

私自身は、あまり期待していません。岸田首相は、統一教会問題や葉梨法相の事実上の更迭などで、ワイドショー政治にまっしぐらですし、経済対策では、財務真理教団の信者であることを露呈しました。

もう、ほとんどの人は期待していないでしょう。ただ、次の総裁としては、河野太郎氏がなる可能性も高いです。そんなことになれば、岸田総理よりさらに駄目になる可能性が大きいです。改めて、安倍元総理の偉大さを感じてしまいます。

かといって野党には、ほとんど期待できませんし、本当に困ったものです。いっときの繋でも良いから、政権をある程度まともに担当できる野党ができてほしいものです。

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2022年11月13日日曜日

共和、上院敗北で敗因追及加速 トランプ氏、党指導層を攻撃―【私の論評】黄金の3年間に自民党は、米共和党の中間選挙での敗北を他山の石とし党内の結束を固めよ(゚д゚)!

米中間選挙


 米中間選挙で12日夜(日本時間13日午前)、与党・民主党がバイデン大統領の政権運営でカギを握る上院の多数派を維持することが確実になったことで、野党・共和党では「敗北」の責任が誰にあるかを追及する動きが加速するのは必至だ。一部で責任論が浮上しているトランプ前大統領はすでに、中間選挙での不振の原因は上院トップのマコネル院内総務にあるとして攻撃を強めている。

 激戦区の西部アリゾナ州で民主党候補の当選が確実となり、同党が上院維持に王手をかけた11日、トランプ氏は自身の交流サイト(SNS)でマコネル氏を「ポンコツ」と呼び、同氏が党の選挙資金の投入先を間違えたと批判。「あいつは最悪だ!」とまで罵(ののし)った。トランプ派議員らが同調し、マコネル氏をはじめとする党指導部との対立が深まる可能性がある。

 急速なインフレ下でバイデン政権への支持率が低迷する中で行われた今回の中間選挙は、共和党にとって圧倒的に有利だとみられてきた。にもかかわらず上院の多数派を獲得できなかったことは、共和党にとって痛恨の痛手だ。

 同党の得票が伸び悩んだ要因として、各種出口調査に基づく分析では、2020年大統領選で「大規模な不正があった」と主張し続けているトランプ氏が、自派候補の大量当選を狙ったことが嫌気されたとの見方が強い。米CNNテレビの調査では、政権運営への不満などからバイデン大統領を「支持しない」とした有権者のうち、それでも民主党に投票した人は49%に上り、共和党の45%を上回った。元来は政権への「信任投票」の意味合いが強い中間選挙としては異例の現象だ。

 このため共和党では、中間選挙後、トランプ氏が党の前面に出るべきではないとの声が表面化しつつある。

 その中でトランプがマコネル氏への攻撃をエスカレートさせているのは、自分への批判の矛先をそらして責任を転嫁し、求心力を維持する思惑があるためだ。

 民主党は上院を維持したことで、政府高官や連邦裁判所判事の人事がスムーズに進めることが可能になる。また、仮に下院が共和党に奪還され、政権と民主党に不利な法案が下院を通過した場合でも、上院でそれを否決することができる。

【私の論評】黄金の3年間に自民党は、米共和党の中間選挙での敗北を他山の石とし、党内の結束を固めよ(゚д゚)!

今回どうして、共和党旋風が吹かなかったのでしょうか。結論からいうと、民主党のほうがより結束して選挙戦活動ができ、共和党のほうはそうではなかったからだと考えられます。

民主党は、投票日直前に共和党優勢という報道が飛び交ったために、危機感を持った有権者が投票所に押し寄せたという見方があります。いわゆるアンダードッグ効果が働いたという見方です。

アンダードッグ効果とは、勝敗や投票の結果予測で、不利な状況にあると報じられた方に同情票が集まり逆転勝利につながる現象のことです。

アンダードッグ(underdog)は、日本語でいうと「かませ犬」。かませ犬は、もともと闘犬用語で、自信を付けさせたい闘犬に「噛ませるため」にあてがわれる犬のことで、転じて「戦いに勝ちそうにない/不利な状況に置かれている方」を指すようになりました。アンダーという語感から日本語の「負け犬」の意味で捉えられることもありますが、「負け犬」は「すでに敗北が決定している」状態を指す言葉なの意味が異なります。
〈アンダードッグ効果の例〉
・大柄な選手と小柄な選手が戦う試合で、小柄な選手の方を応援したくなる
・「対して何もしていないのに成果が出ている人」と「頑張っているのに結果が伴わない人」がいた場合、後者を応援したくなる。
共和党優勢という予測の背景には、有権者の超インフレと治安への大きな不満があり、現政権への強い批判となるだろうという見通しがありました。ところが、これも、民主党支持者にとっては、トランプ復権への強い抵抗感、あるいは環境や中絶問題などへの危機感を覆すまでには至らなかったとみえます。

結果として、民主党は結束力を強める方向に動いていたといえます。

一方の共和党については、分散する方向に動いていたといえます。

まずは、多くの予備選において、ドナルド・トランプ前大統領は、現職もしくは共和党の穏健派の候補を「引きずり下ろして」自派の候補を押し込んでいました。その候補の多くが、急遽政界入りを決めた「素人候補」であり、結果的に選挙戦で民主党に競り負けたと考えられます。

典型例は、今後の政局を左右した、ペンシルベニア州上院の選挙です。トランプ氏は、知名度の高いTVタレントであるメフメト・オズ医師を激しい予備選の結果、共和党の統一候補に押し込むことに成功しました。
メフメト・オズ医師

投票日直前に「オズ候補は隣のニュージャージーに豪邸を構えており、ペンシルベニアの代表ではない」という暴露キャンペーンを張られて結果的に落選しました。怒ったトランプは、オズ医師を推薦したメラニア夫人を罵倒したという報道すらあります。

終盤の選挙戦において、共和党の本部は「トランプ隠し」をしたようです。

上院議員選で敗北したペンシルベニア州の場合は、11月5日の夕刻に演説会が行われましたが、これは本来であれば、大都市であるフィラデルフィアかピッツバーグで行うのが有効なはずでした。

ところが、演説会の行われたのはラトローベという山間部の小さな町の小さな空港でした。つまり、長距離をドライブして駆けつける熱心な支持者「だけ」が参加できるイベントだったのです。

大都市での大規模イベントはただでさえ目立つのに、そこにトランプが登壇すれば、さらに目立つからです。無党派層が「やっぱりトランプはイヤだ」として、共和党への投票を控える危険があるので、そうしたという見方があります。

元々大統領選と比較すると、中間選挙は地味なイベントです。熱心なトランプ派の中には「トランプが登場しない」のであれば、選挙に関心を持たないし、投票にも行かないという「シラけたムード」が広がったかもしれない。「トランプ隠し」が共和党の集票にマイナスとなった可能性は十分あります。

その反対の見方もあります。党本部は「隠そう」としたのですが、結局トランプは「11月14日(後に15日訂正)には大統領選出馬について重大な発表をする」などと発言し、メディアで取り上げられて「悪目立ち」しました。つまり、共和党はトランプを隠そうとしたが隠すことが出来ずに、結局は無党派層を呼び込むチャンスを逸したという見方です。

この2つのものは、相反するようでもありますが、両方とも当たっている可能性があります。いずれにしても、現在の共和党は「トランプの党」なのか、それとも「脱トランプ党」なのかをはっきりさせず、なし崩し的に二兎を追うような姿勢で選挙戦に臨んでしまったのです。この中途半端な姿勢が、チャンスを活かしきれなかった最大の原因でしょう。

いずれの党なのか、早い時期に党の上層部が決めて、決まった以上は、それに従って選挙戦を闘うという方向で一致していれば、共和党は、今回のチャンスを活かせた可能性があったと思います。

私自身は、今回の中間選挙は民主党が優勢であったのではなく、共和党が自らを劣勢に導いてしまったと思っています。

いずれにしても、トランプ氏は共和党の姿勢を徹底的に批判するでしょう。それでも、共和党上層部が「トランプ党」路線をいくのか、「脱トランプ党」路線を行くかをはっきりさせなければ、2024年大統領選挙にも負けてしまうことになるでしょう。

そうして、どちらの路線に決まったとしても、決まってしまった以上は、党の方針に従って動くべきでしょう。ただ、各派閥で不満もあるでしょうから、それは選挙が終わってから本格的に調整すれば良いことです。選挙中にそれをやれば、今回のように、せっかく良い風向きだったものを活かしきれないということになるのです。

これは、日本でも同じようなことがいえると思います。永田町では、すでに岸田政権が長く持っても、広島サミットまでだろうという見方が広がっています。

今後しばらくは国政選挙はありませんが、それまでの間に、自民党は総裁選を行い、新しい総裁のもとで、本格的な選挙を闘うことになると考えられます。

選挙戦の争点は、各候補者が様々なことを言うでしょうが、つまるところは、安倍路線継承か、そうでないかということが焦点になるのは間違いありません。

安倍元総理が亡くなってから、世界中の国々が安倍元総理が亡くなってしまったことを残念に思っているようです。そうして、米国を筆頭に多くの国々が日本に対して、安倍路線を踏襲することを期待しています。インドのモディ首相は、安倍首相との思い出を語るときに、泣きそうになったとも報道されています。

日本では、あまり報道されませんが、安倍元首相の国際的な働きは、インド太平洋戦略やQuadの成立など実際に世界の構造を変え、今日に至っています。安倍元首相の働きなしに、今日の世界はないと言っても過言ではありません。

国内では、岸田総理による内閣改造において、旧統一教会を利用したともいえる、露骨な安倍派外しが行われ、増税や防衛予算の総合防衛費化など自民党内の保守派の憤怒のマグマに油を注ぐような政策ばかり実施しようとしています。その結果岸田政権は、大ブーメランに見舞われ、支持率がかなり落ちています。

黄金の3年間を享受するであろうと見られていた岸田政権は、もはや最長で広島サミットまでしかもたないという見方は正しいです。ただ、次の総裁選では、できれば、安倍路線を継承する人物を総裁とすべきです、仮にそうでない人物が総裁になったとしても、自民党全体では安倍路線を継承すべきです。

そうではなく、自民党内でこれを自民党最大派閥安倍派(清和政策研究会)潰しの絶好の機会であると捉えて、安倍派潰しに動き、安倍派が空中分解ということにでもなれば、それこそ自民党の空中分解につながりかねないです。実際、岸田総理は内閣改造でこの失敗をしています。これさえなければ、岸田政権がもっと長期政権になった可能性はあったと思います。

まだ先の話しではありますが、来たるべき選挙では、米国の共和党のように、負けてしまうことになりかねません。そのようなことだけは、避けるべきです。

黄金の3年間において、数の力を知る自民党は、米国の共和党の今回の中間選挙での敗北を他山の石として、党内の結束を固める方向で動くべきです。

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2022年11月12日土曜日

侵攻〝唯一の成果〟ヘルソン州喪失の危機 プーチン大統領に屈辱的な大打撃 一方「撤退がロシアに有利に働く可能性も」専門家―【私の論評】たとえ現状維持しても、プーチンのカリスマ性は失われ、ロシアは激烈な権力闘争に(゚д゚)!

侵攻〝唯一の成果〟ヘルソン州喪失の危機 プーチン大統領に屈辱的な大打撃 一方「撤退がロシアに有利に働く可能性も」専門家


ロシアのウラジーミル・プーチン大統領にとっては屈辱的な大打撃となりそうだ。ウクライナ南部ヘルソン州の州都ヘルソン市を、奪われつつあるのだ。ヘルソン市は今年2月に始まったウクライナ侵攻で、ロシアが唯一掌握していた州都。ウクライナ側は完全掌握に向けて作戦を進めており、ロシアが今回の侵攻で得た数少ない成果を失う時が近づいている。

ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は11日、ビデオ演説でヘルソン市を「取り戻している」と延べ、奪還が間近との認識を示した。さらにゼレンスキー氏は通信アプリで、「私たちのヘルソン」というタイトルの映像を公開した。そこにはウクライナ軍を歓迎するヘルソン市民の姿が映っていた。

ウクライナ国防省情報総局は同日、ヘルソン市内の統制を取り戻しつつあると発表した。「ロシア軍は兵士に民間人の服装に着替えて自己責任で逃げるよう命じていた」と市内に置き去りにされた露軍兵がいると指摘。逃走は不可能だとして、ロシア兵に投降を呼び掛けた。

ロシア国防省はすでに、ヘルソン市を含むドニエプル川西岸地域から東岸地域へのロシア軍部隊の移送が11日未明に完了したと発表していた。ドニエプル川の両岸を結ぶアントノフスキー橋の一部が崩落したと報じられており、ウクライナ軍の追撃を防ぐためにロシア軍が橋を破壊したとみられている。

プーチン氏は撤退について公にコメントを発表していない。このため、欧米メディアでは、ロシア当局が、プーチン氏と今回の撤退決定を切り離そうとしているとの見方が浮上している。

一方、ロイター通信は、今回の撤退がロシアにとって有利に働く可能性もあるとして、「ロシアを敗者と見なしてしまうのは、あまりにも時期尚早だ」という専門家の分析を報じている。

【私の論評】たとえ現状維持しても、プーチンのカリスマ性は失われ、ロシアは激烈な権力闘争に(゚д゚)!

「ロシアを敗者と見なしてしまうのは、あまりにも時期尚早だ」という専門家の分析は、以下のリンクからご覧になれます。
焦点:ロシア軍のヘルソン撤退、ウクライナには「もろ刃の剣」

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下にこの記事の結論部分を掲載します。

英国の元駐ロシア大使、アンソニー・ブレントン氏は、ロシアはしばらく前から、ドニエプル川西岸から撤退するための準備を進めてきたと指摘。冬の間に部隊を再編成するための時間を稼ぎたいのは明らかだと解説する。

「ヘルソンがもはや防御不能になった以上、(撤退は)合理的な動きだ。ロシアは依然として(冬の終わりまでに)軍を結集させられる可能性に賭けている」とブレントン氏は語った。

ブレントン氏の見立てでは、ロシアは相次ぐ後退にもかかわらず、クリミア半島、半島につながる陸の回廊、クリミアにとって必要なウクライナ海域へのアクセス、そしてウクライナ東部ドンバスの広い地域について、できる限り掌握することを今も望んでいる。

ブレントン氏は「トップは自分たちが現状をほぼ維持できる結末を望んでいると思われるが、それは不可能だろう」と述べ、ロシア側も最終的に何らかの合意を結ぶ必要があることを理解しているが、今は合意の可能性は極めて低いようだとの見方を示した。
ロシアは今後、今秋に新たに招集した約30万人の動員兵も投入し、ドニエプル川東岸の守りを固める方針です。西岸地域を奪還される失策を取り返すため、東部の戦線も立て直し、ドネツク、ルガンスク両州の全域の占領をめざすとみられます。

青い線がドニエプル川

第2次世界大戦注のロシア軍というか当時のソ連軍は、最初は撤退を続けましたが、冬季になってから大反撃に出ています。現在のウクライナ軍は、欧米から支援を受けているので、第二次世界大戦中のドイツ軍のようにはならないでしょうが、それにしも、ロシア軍はドニエプル川より東の、ヘルソン州、既存のザポロジェ州及びドネツク州、ルガンスク州の占領地域を死守することでしょう。

ウクライナ侵攻を命令したのは、プーチン大統領です。彼が「特別軍事作戦」と呼ぶものは、プーチン氏の発案です。その当人がいくらこの戦争の一部から距離を置こうとしても、簡単なことではありません。

ヘルソン撤退の前から、この戦争はプーチン氏にとって危険要素をはらんでいました。この9カ月間の出来事は、ロシア国内での大統領に対する認識を変える危険があります。ロシア国民の受け止め方というよりも、大事なのはプーチン氏の周りにいて権力を握る、ロシアのエリートの見方です。

ロシアのエリート層はもう何年もプーチン氏のことを、一流の戦略家だとみなしてきました。何があっても必ず最後には勝つ、カリスマであると信じてきたのです。自分たちが属する体制は、プーチン氏を中心として作られたもので、彼こそがこのシステムの要なのだと、ロシアのエリートたちはずっと考えてきました。

しかし2月24日以降、ロシアには「勝利」が不足しています。プーチン氏の侵略戦争は計画通りには進んでいません。ウクライナに多くの死と破壊をもたらしただけでなく、彼の戦争は自軍にも甚大な被害をもたらしました。

大統領は当初、戦うのは「職業軍人」だけだと主張したのですが、のちに何十万人ものロシア市民を戦争に動員しました。ロシア人にとっての経済的な負担も、相当なものになっています。

クレムリンはかつて、プーチン氏は「ミスター安定」だとするイメージをロシア国内に広めました。


そのイメージ戦略は、今ではかなり説得力を欠いています。ひょってして、今後ロシアの現実的な軍事戦略によって、ドニエプル川より東の、ヘルソン州とザポロジェ州および、既存の占領地であるドネツク州、ルガンスク州はロシア軍によって維持されるかもしれません。

ただプーチンのカリスマ性は元には戻らないでしょう。

2018年3月18日に行われた、大統領選挙において、ウラジミール・プーチンは圧勝しました。ただ、当時からロシア政治の問題は2024年であるということがいわれていました。


ロシアの大統領は任期が6年ですので、2018年にプーチン氏が勝ったので、2024年に次の任期が終わるわけです。そこで、次の任期が終わった時に一体どうなるのかが、重要な課題となります。

ウクライナ侵攻がなければ、プーチンがまた勝つ可能性はかなり高いと考えられました。それを前提として、プーチンは権力の永続化を目指していたようでが、カリスマ性を失ったプーチンはもはやただの人であり、しかも2024年3月に71歳になります。平均寿命の短いロシアではこれはかなりの高齢です。権力の永続化どころか、大統領に当選することも不可能でしょう。

そこで、これから先、一体どんな形のどんな姿の政権になるのかという疑問がわきます。後継者について憶測はありますが、それは憶測の域を出ないものばかりです。

プーチンは昔の専制君主のように、自身は不滅だと信じていたようです。ロシアに後継者育成計画や緊急時対応計画、もしくは現実には何の計画もありません。メディアが「プーチン後」について口を閉ざしていた理由もここにあります。

ロシアがこれと似たような状況にあったのは、100年も昔のことではありません。スターリンが死去した後には、ロシアのニュースはしばらく途絶えました。米国の識者たちは当時、スターリンには自ら選んだ後継者がいるのか考えを巡らせていました。

スターリンの遺体

しかし、スターリンの没後数年のうちに、後継者育成の計画や手続きがなかったことは明白になりました。ロシアには混乱が生じ、権力闘争が繰り返し繰り返し行われました。この限られた観点で言えば、歴史は悪くない教科書でしょう。プーチン後のロシアがどうなるか、またはどうなるべきか、それを知る者は誰もいないと考えて差し支えないでしょう。

激烈な権力闘争になるのは確実であり、それで終れば良いですが、悪くするとそれが高じて内乱から内戦になる可能性すらあります。


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2022年11月11日金曜日

岸田首相「任命責任重く受け止める」 葉梨法相更迭―【私の論評】ワイドショー政治まっしぐらの岸田総理には、一刻も早く退場願うべき(゚д゚)!

岸田首相「任命責任重く受け止める」 葉梨法相更迭

記者団の質問に応じる岸田文雄首相=11日午後、首相官邸

 岸田文雄首相は11日、葉梨康弘法相を事実上更迭したことについて、「(葉梨氏の)任命責任を重く受け止めている。山積する課題への取り組みを進めていくことによって職責を果たしていきたい」と述べた。

 首相は、葉梨氏から11日の参院本会議後に辞任の申し入れがあったと言及。山際大志郎前経済再生担当相に続き、閣僚が短期間のうちに相次ぎ辞任したことは「大変遺憾に思う」と語った。

【私の論評】ワイドショー政治まっしぐらの岸田総理には、一刻も早く退場願うべき(゚д゚)!

葉梨法務大臣

法務相の問題発言とされた内容は以下から御覧ください。


葉梨法務大臣の発言の問題となっている部分は次の部分です。

「法相というのは、朝、死刑のはんこを押しまして、それで昼のニュースのトップになるというのはそういう時だけ、という地味な役職」という挨拶の後で、「実は法務省は憲法を具現化する、理念を具現化する、そういう行政」と繋げています。これがなぜ問題発言なのかよくわかりません。

本文では、判子を押すことを指して地味とは言っていません。どちらかというとこの発言はマスコミのスタンスを批判しているというか、皮肉っている内容だと思います。。

しかし、マスコミは「死刑のはんこ押す地味な仕事」という発言であるかのように印象操作しています。マスコミが蛇蝎のように嫌われるのは、こういうところだと思います。

ただ、この発言は誤解される可能性もあるので、「配慮が足りなかったかもしれない」で謝ればそれですむことだと思います。あっさり辞任とは驚きです。

今回の法相の発言により、特に誰も損害を被っていないようですし、リベラル・左派系のひとの一部は騒いでいるようですが、他の人達はさほど大きな批判もしていないようです。大批判してるのは、マスコミです。私は、これに関する報道がされたとき、「何が大問題」なのか、というかマスコミが何を大問題にしているのか、すぐには理解できませんでした。

「ワイドショーを重視してる岸田総理なら葉梨法相をひょっとしたら更迭するかも」と今日は、他の人と雑談しましたが、まさかこんなに早いタイミングで更迭したのには驚きました。岸田総理はワイドショー民のためにはサービス精神旺盛なようで、なぜか検討もろくにせず即断するようです。まさに岸田政治は、ワイドショー政治ということがいえそうです。


葉梨康弘法相の“死刑ハンコ発言”で更に窮地に陥った岸田政権です。NNN読売の11月調査で防衛力強化に賛成は68%で反対23%を圧倒しました。反撃能力保持も賛成52%で反対41%を上回りました。中国の脅威への危惧は80%。そんな中岸田政権は、“総合防衛費”なる目眩ましで真水の防衛費増を拒否する始末です。


我が国の国益の為には、法相ではなく、林外務大臣こそいち早く交代させるべきです。

それに、一昨日このブログでもとりあげたように、自民党参議院議員の「松下新平氏」は「中国秘密警察日本支部」の高級顧問です。法相発言よりこちらのほうがよほどの大問題です。法相解任ではなく、辞めるべきは中国のスパイでしょう。

松下新平議員(右)

“辞めさせません”から一転“更迭”と、信念のない岸田首相の迷走です。直接の部下である大臣を護らず、敵に迎合し首を切る総理大臣を部下は信頼できるでしょうか。部下を護らない者には誰もついて行くものはいません。自民党は総裁交替を真剣に検討する時がきたようです。

人の話しを聞く岸田総理は、そもそも信念などなく、バイデン氏と会えば米に良い顔をし、習近平氏と会えば中国に引きずられ、プーチンに会えばロシアに良い顔をし、金正恩に会えば北朝鮮にひきづられるレベルの人としか思えません。

永田町では“来年の広島サミットまでもたない”の声がありますが、焦点は「総合防衛費」問題に移ってきたようです。国民の命を危うくするこの方針を葬れなければ今度は自民党が毀損されることになりかねません。

岸田総理には、一刻も早く退場願うべきです。自民党は、新たな総裁のもとで、新たなスタート切っていただきたいものです。

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2022年11月10日木曜日

三選果たした習近平の誤算―【私の論評】習が現役のうちに党規約に「習近平思想」と表記されれば、独裁体制確立とみるべき(゚д゚)!

三選果たした習近平の誤算


【中国深層リポート】共産党内の反発で、思い通りにならなかった党規約改正

 中国共産党二十回代表大会(二十大)は衝撃的な指導部人事を発表して幕を閉じた。習近平主席の浙江閥が通称チャイナセブン(共産党政治局常務委員会の7人)を独占し、表向きは習派の完全勝利。だが、実は習の高笑いは聞こえてこない。

 習近平への忠誠心とイデオロギーの一致が、能力よりも重視された指導部メンバーが発表された。その翌日、中国株は国内外の市場で急落した。投資家が新指導部に対する失望を表明したのだ。習近平が市場開放追加策など株暴落を防ぐ手を打ったにも関わらず、外資は競い合って逃げ出す有様だった。

 中国国内にも悲観的な雰囲気が漂っている。不動産市場もバブル崩壊の兆しをみせ、豪邸が半額で売られ始めた。

 知人からは「定年になったが資産は持っているので、日本への移民は可能か」との問い合わせがあり、驚いた。著名な映画監督の馮小剛がアメリカ・ロサンゼルスの豪邸で暮らす写真がSNS「微博」で拡散し、彼と家族がアメリカに逃げ出したと伝えられた。22万のフォロワーを誇る彼の「微博」の書き込みは全て消された。

 知人の多くは「二十大のあとに、中国はゼロコロナ政策を中止すると期待していたのに、この指導部の顔ぶれではもう期待ができない」と嘆く。「CCTV」など政府系メディアに習近平の”勝利”と宣言された「二十大」のあと、中国の人々は重苦しい失望感に襲われて「習近平の新時代」を祝う雰囲気はなかった。

 習近平の最大の誤算は党の規約修正だ。目指す「北朝鮮化」の実現のために、個人崇拝禁止の条項を取り除き、自分を毛沢東並みの地位に持ち上げるはずだった。だが、実際に発表された修正案にはその目的は反映されていなかった。

 「習近平思想」もなければ、「人民領袖」や「二つの確立」もなかった。台湾に関しても「台湾独立を断固として反対し,抑制する」と追加しただけで、習近平が大会報告で公表した「決して武力行使の放棄を約束しない」と言う文言は加えることができなかった。党内に武力統一への反対意見が多く存在するのだろう。

 習近平が台湾を香港のように早く手にいれることに拘っていることは周知の通りだ。「二十大」期間中の17日に、「中国は台湾統一を早める意志を持っている」とブリンケン米国務長官が警告を発した。習政権に対する牽制だが、米国なりに掴んだ情報を分析した結果だろう。

 習近平は自分の任期内の台湾統一を計画しているのだ。従って、党規約に習近平の意向をもっと盛り込んでもいいはずだった。しかし、ふたを開けてみたら、修正は習近平報告よりもソフトな内容となった。また習近平終身制に有利な国家主席制度の復活のための規約改正も実現できなかった。

 この点こそ、一部の長老たちや軍のトップ及び党内の改革派など”反習近平勢力”の抵抗が功を奏した結果だと思う。今夏の「北戴河」会議では激しい争い(【中国深層リポート】
北戴河会議後も習・李の路線の違いくっきりを参照)があったと伝えられたが、その結果は「二十大」につながり、現在のような修正案となったとみられる。

 李克強首相も含めた共青団派が全員排除されたというのが大半の意見だが、李自らが引退覚悟で習近平に異議を唱え続けたという見方もあった。中国の路線を改革開放と逆の方向に向かわせようとする習近平派に抗議する意味で「青年団派」が全員身を引いたとも見える。

 その見方を裏打ちするのが10月24日の記事だ。新華網が新華社記者の署名付きの記事で新しい政治局常務委員選抜を取り上げた。それによると、習近平は年初から党員たちと対話を重ね、意見をくみ上げたうえで、人事を決定、一部の党と国家指導同志は自ら退職を希望したと強調した。

 習近平派が勝利した指導部人事だが、晴れの舞台に登場した7人の顔には笑顔がなく、規則を破った後ろめたさが隠せなかった。

 胡錦涛が大会の閉幕式で不本意に退場させられたことも習近平の勝利をアピールしたい「二十大」に影を落とした出来事の一つだ。習政権は胡氏の健康問題が退場の理由だとごまかしたが、余波は大きく広がった。

 胡一族軟禁説から息子の逮捕説まで、噂が後を絶たない。中国政府は息子の胡海峰・浙江麗水市書記をメディアに登場させるなどして、噂の取り消しに躍起だ。恩人である胡錦涛をあのような形で退場させた習の冷酷さが世間に知られ、大きなイメージダウンとなったことは確かだ。

 このことは、今後の政権運営にも影を落とすだろう。

林 愛華 (国際ジャーナリスト)

【私の論評】習が現役のうちに党規約に「習近平思想」と表記されれば、独裁体制確立とみるべき(゚д゚)!

日本のほとんどメディアでは、共産党大会において、習近平の一方的勝利のように報道されていますが、上の記事と同じく私はそうではないと思っています。そのため、上の記事を読んだときには我が意を得たりという思いがしました。

それについては、以前このブログも掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
習氏、3期目へ権威確立 李首相は最高指導部退く 中国共産党大会が閉幕―【私の論評】習近平の独裁体制構築までには、まだ一波乱ある(゚д゚)!

10月22日、中国・北京で開かれた共産党大会の閉幕式に出席した習近平総書記(国家主席)

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下にこの記事の結論部分のみを掲載します。

党規約の中の習近平の思想が「習近平思想」と書かれるようになれば、そうして習近平が現役のうちにそうなれば、習近平の独裁体制が成立したとみなせるでしょうが、まだそうはなっていません。

習近平の独裁体制が確立できるかどうか、それまでにはまだ一波乱ありそうです。また、習近平が権力を握るにしても、握れないにしても、中国経済は以前このブログでも述べたように、国際金融のトリレンマと、米国による半導体の〝対中禁輸〟という2つの構造要因でこれから、従来のように伸びることありません。それどころか、かなり落ち込むことになります。

中国経済が誰の目からみても、かなり落ち込み続けることが明らかになる前までに、習近平が独裁体制を整えなければ、それは不可能になるでしょう。期限は来年中でしょう。

中国の党規約に「習近平思想」という文字は未だに見られません。いまでも「習近平新時代の中国の特色ある社会主義思想」と長たらしい名前で掲載されています。

この意味についいては、以下の記事でその詳細を説明しました。

中国で進められる「習近平思想」の確立と普及―【私の論評】党規約に「習近平思想」と平易に記載されたとき、習近平の野望は成就する(゚д゚)!

2019年4月中国社会科学院が編集した『習近平新時代中国特色社会主義思想学習叢書』が出版された

 もし習近平が毛沢東主席並みに偉大な思想家であれば、シンプルに「習近平思想」とすればよいのなぜ、「習近平新時代中国特色社会主義思想」としたのでしょうか。

もうひとつは「習近平新時代」の意味するところが、よくわかりません。

結論からいえば、長い思想名となったのは政治的妥協の産物だからでしょう。演説集は、出版されているものの、著作が一作もない習氏の考え方を「思想」と位置づけて良いものなのでしょうか。

党内でも様々な意見がありながらも、周到な根回しが済んでいる重要案件を、党大会で無下に却下するわけにもいかず、そこで党内の知恵者が『新しい時代をユニークな社会主義路線で指導する習近平思想』はどうか等と提議して、双方が歩み寄った結果ではないでしょうか。
今回も「習近平思想」なる言葉が党規約に盛り込まれることはありませんでした。ということは、この読みは正しかったと考えらます。

中国共産党内の内部抗争は、非常に複雑で、外部からはうかがい知れないところがありますが、この見方は、非常にシンプルで理解しやすいです。

今後も習近平が独裁体制を完全に掌握したかどうかの、メルクマール(目印)になり続けるでしょう。

やはり、習近平が独裁体制を掌握するまでには、一波乱ありそうです。

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